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日本郵船(9101)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

海運業 運輸・物流

事業の概要

日本郵船グループは、海運を主軸に多岐にわたる物流サービスを提供しています。主な事業は、コンテナ船による国際海上輸送を行う定期船事業、倉庫や貨物運送を取り扱う物流事業、自動車専用船での輸送を行う自動車事業です。その他にも、ばら積み貨物船によるドライバルク事業、タンカーなどによるエネルギー事業を展開しており、これらの事業を通じて世界の貨物輸送を支え、収益を上げています。

出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成

日本郵船グループの事業セグメントは多岐にわたります。定期船事業(Liner Trade)は国際海上貨物輸送、航空貨物輸送事業(Air Cargo Transportation)は航空機による貨物輸送、物流事業(Logistics)は倉庫や貨物運送取扱をグローバルに展開しています。自動車事業(Automotive)は自動車専用船による輸送、ドライバルク事業(Dry Bulk)はばら積み貨物船による輸送、エネルギー事業(Energy)はタンカーなどによる輸送を担っています。売上高を見ると、物流事業が最も大きく、次いでドライバルク事業、自動車事業が主要な収益源となっています。

2025-03 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
LinerTrade 事業 1,744
AirCargoTransportation 事業 1,792
Logistics 事業 8,090
Automotive 事業 5,319
DryBulk 事業 6,013
Energy 事業 1,782
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|1,813 文字
3【事業の内容】 当社グループは、定期船事業、物流事業、自動車事業、ドライバルク事業、エネルギー事業、その他事業の6部門に属する事業を行っています。各事業における当社及び関係会社の位置付け等は次のとおりです。 なお、次の6部門は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメント情報の区分と同一です。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。 航空運送事業は、2023年7月10日の取締役会において決議した当社の連結子会社である日本貨物航空株式会社の全株式の株式交換を、2025年8月1日に実施しました。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりです。  2026年3月31日現在の社名を記載しています。 (定期船事業) 当社及び当社の関係会社が運賃、貸船料、コンテナ関連収益等の収受を目的として、定期船による国際的な海上貨物輸送、コンテナターミナル業、港湾運送業、曳船業を行っています。主な関係会社㈱ユニエツクスNCT、㈱新日本海洋社、旭運輸㈱、郵船港運㈱、日本コンテナ輸送㈱、内海曳船㈱、㈱ホンマ、大分臨海興業㈱、OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD. (物流事業) 当社及び当社の関係会社が倉庫業、貨物運送取扱業、沿海貨物海運業をグローバルに展開し、海・陸・空の総合物流ネットワークを提供しています。主な関係会社郵船ロジスティクス㈱、近海郵船㈱、カメリアライン㈱、YUSEN LOGISTICS (AMERICAS) INC.、YUSEN LOGISTICS (CHINA) CO., LTD.、YUSEN LOGISTICS (UK) LTD.、YUSEN LOGISTICS (BENELUX) B.V.、YUSEN LOGISTICS (THAILAND) CO., LTD. (自動車事業) 当社及び当社の関係会社が運賃、貸船料、ターミナル利用料等の収受を目的として、自動車専用船等による国際的な海上貨物輸送、自動車物流事業、その他海運事業等を行っています。主な関係会社INTERNATIONAL CAR OPERATORS N.V.、NYK INDIA PVT. LTD.、NYK TDG PHILIPPINES INC.、UNITED EUROPEAN CAR CARRIERS B.V. (ドライバルク事業) 当社及び当社の関係会社が運賃、貸船料、運航受託手数料等の収受を目的として、ドライバルカー等による国際的な海上貨物輸送、船舶貸渡業、その他海運事業等を行っています。主な関係会社NYKバルク・プロジェクト㈱、旭海運㈱、三菱鉱石輸送㈱、八馬汽船㈱、太平洋汽船㈱、SAGA SHIPHOLDING (NORWAY) AS、NYK BULKSHIP (ATLANTIC) N.V.、NYK BULKSHIP (KOREA) CO., LTD.、NSユナイテッド海運㈱、TATA NYK SHIPPING PTE. LTD. (エネルギー事業) 当社及び当社の関係会社が運賃、貸船料、運航受託手数料等の収受を目的として、タンカー等による国際的な海上貨物輸送、船舶貸渡業、その他海運事業等を行っています。主な関係会社NYK ENERGY OCEAN㈱、NYK BULKSHIP (ASIA) PTE. LTD.、NORTHERN OFFSHORE GROUP AB、OKRA SHIPPING NO.1 LTD.、OKRA SHIPPING NO.2 LTD.、共栄タンカー㈱、TAMANDARE OWNING B.V.、MERO 4 OWNING B.V.、KNUTSEN NYK OFFSHORE TANKERS AS (その他事業) 当社の関係会社が不動産の賃貸・管理・販売業、客船事業、機械器具卸売業(船舶用)、その他運輸付帯サービス業、情報処理サービス業、石油製品の卸売業、その他各種事業を行っています。主な関係会社郵船商事㈱、㈱NYK BUSINESS SYSTEMS、㈱郵船商事マリン、郵船クルーズ㈱事業系統図 以上述べました事項を事業系統図によって示しますと、次のとおりです。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2026時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 弱い
海運市況の変動に左右され、運賃水準が大幅に下落する可能性があるため。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 設備
大型外航船の使用期間が長く、新造船の発注から竣工まで数年を要する大規模な設備投資が必要。
顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい 中程度
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか シクリカル
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:コンプライアンスリスク / 重大な事故等による影響 / 自然災害等のリスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 11 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★☆☆☆☆
根拠:弱いブランド・特許・許認可

日本郵船は長年の歴史と実績を持つが、特定の強力なブランドや特許による独占的な優位性は限定的。ただし、海運業界における信頼性やグローバルネットワークは無形資産の一部と言える。

スイッチングコスト★★☆☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

顧客は特定の航路やサービスに慣れている場合、乗り換えには手間やコストが発生する可能性がある。しかし、運賃や納期が最優先されることも多く、スイッチング・コストは中程度。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

海運業は個々の顧客と事業者の関係が主であり、プラットフォーム型のようなネットワーク効果は基本的に見られない。

コスト優位★★★☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

日本郵船は大規模な船隊と効率的な運航管理により、スケールメリットを活かしたコスト競争力を有する。特にコンテナ船事業では、定期的な配船による効率化が図られている。

規模の経済★★★★★
根拠:強い規模が参入障壁になる

海運業界は巨額の設備投資が必要であり、参入障壁が高い。日本郵船は世界有数の規模を持つ船隊を保有し、多数の航路をカバーすることで、効率規模の経済を享受している。

日本郵船グループは、海・陸・空にわたるグローバルな総合物流ネットワークを強みとしています。特に海上運送事業では、独自の安全規格「NAV9000 Plus」による品質向上に努め、安全運航と環境保護を重視しています。これにより、顧客からの信頼を獲得し、安定的な事業運営を可能にしています。また、長年の経験と実績に基づく広範な事業展開と、多様な貨物に対応できる船隊が競争優位の源泉となっています。

出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針 当社グループは、存在意義、社会的使命として“Bringing value to life.”を企業理念に掲げています。 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標 当社グループは、2023年3月に中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定し、2030年に向けた新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、その実現を目的とする2026年度までの4年間の行動計画にもとづき事業を進めています。ESGを中核に据えた成長戦略を推進し、経営戦略としては、各事業における機会とリスクを踏まえた事業戦略の方向性(両利きの経営:AX、及び事業変革:BX)を定めるとともに、人的資本の更なる充実・グループ経営の変革・ガバナンスの強化(CX)、デジタル基盤の整備推進(DX)等のコーポレート基盤の強化に加え、脱炭素に向けた取組みの加速(EX)を推進します。事業投資計画としては、中期経営計画策定時点において2026年度までに予定していた1.2兆円規模の事業投資を1.6兆円規模に増額して実施します。当連結会計年度末時点で中期経営計画期間中の投資が決定している案件は約1.3兆円です。 (“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標) 2025年度実績中期目標(2026年目途)当期純利益2,117億円2,000~3,000億円ROIC6.4%6.5%以上ROE7.1%8.0~10.0% (株主還元策) 当社は、株主の皆様への安定的な利益還元を経営上の最重要課題の一つと位置付け、連結配当性向40%を目安に1株あたりの配当下限金額を年間200円として、業績の見通し等を総合的に勘案して利益配分を決定します。配当の詳細については「第4 提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。  自己株式の取得については、2025年5月8日開催の取締役会決議に基づき、2026年4月30日まで28,779,900株(取得価額の総額 約1,500億円)の取得を完了し、上記取締役会決議による自己株式の取得は終了しました。また、取得した自己株式は全株消却いたしました。 (3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題① 中期経営計画の遂行 地政学リスクの高まりを受け混迷を極める世界情勢の中、エネルギーや生活必需品を世界中に届け、人々のライフラインを守るべく “Bringing value to life.” を企業理念(ミッション)とし、新たに掲げたありたい姿(ビジョン)「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を目指して、中期経営計画  “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” を進めています。 両利きの経営(AX)と事業変革(BX)から成る「基軸戦略」の下、既存中核事業を深化させると同時に新規成長事業を進化させ、これを「支えの戦略」となる人材・組織・グループ経営変革(CX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)が支えます。 ■中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” 完遂への取組み 経営戦略であるAX~EXの2024年度の主な進捗状況は以下の通りです。2025年度についても「既存中核事業の深化」と「新規成長事業の開拓」を加速していきます。  ◆脱炭素社会実現に向けたアンモニアサプライチェーン構築 アンモニア燃料アンモニア輸送船CGイメージ図  当社グループは脱炭素社会の実現に向けた有力な次世代燃料の一つとしてアンモニアに注力し、製造・輸送・供給を含む燃料アンモニアバリューチェーン全体における事業開発に取り組んでいます。 アンモニア燃料船の開発に関しては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金の助成を受ける40,000㎥級アンモニア燃料アンモニア輸送船(Ammonia-Fueled Medium Gas Carrier:AFMGC)の建造が順調に進行しており、2025年にはアンモニア燃料主機と補機の搭載も完了しました。高い環境性能と世界最高水準の安全対策を備えたAFMGCは、2026年11月の竣工後、世界最大級のアンモニアプレーヤーであるYara International ASAのグループ会社であるYara Clean Ammonia Switzerland SAに定期傭船される予定です。 また、商用燃料アンモニア輸送船に関しては、2025年12月には、当社グループのNYK Bulkship (Asia) Pte. Ltd.が株式会社JERAと、アンモニア輸送船2隻に関する定期傭船契約の基本条件合意書を締結しました。本合意に基づき、米国で製造される低炭素アンモニアを、碧南火力発電所(愛知県)へ海上輸送する計画を推進します。本計画は、商用燃料アンモニア輸送として先駆的な取組みであり、日本のエネルギートランジションの実現を後押しします。 当社は、アンモニア燃料船を中核に、将来の燃料供給・輸送需要を見据えたアンモニアサプライチェーンの社会実装を着実に進め、持続的な成長と企業価値向上を目指します。  ◆バイオ燃料の長期使用・保存に関する実証を経て、本格活用の段階へ 当社は、バイオ燃料B24(バイオ由来成分を24%混合)について、複数の船種において長期使用に関する実証を重ね、安定的な運用に向けた知見を蓄積しました。また、その一環として、シンガポールの非営利団体Global Centre for Maritime Decarbonisationと共同で、船上における長期使用及び保存に関する実証を行いました。その結果、技術的な安全性並びに長期運用の実現可能性を確認しました。これらの検証結果を踏まえ、現在は自動車専用船を中心にバイオ燃料の本格的な活用を進めており、使用量を拡大しています。 さらに2026年度には、バイオ由来成分100%のバイオ燃料B100について、酸化劣化や長期保管時の品質安定性への配慮がより重要であることを踏まえ、実運航における約1年間の検証を実施する予定です。 当社は、既存船舶インフラを活用し、バイオ燃料及びLNG燃料を、燃料転換期における現実的かつ即効性のある対応手段として位置付けています。第三者認証により持続可能性及びGHG排出削減効果が客観的に担保された低・脱炭素燃料は、欧州規制対応に活用できるほか、環境価値として分離し、お客様に提供することで新たな価値の創出も可能であり、脱炭素の推進と企業価値の向上の双方に資するものとなります。これらの取組みを通じ、当社は海運業界の脱炭素化を着実にリードしていきます。  ◆洋上風力発電を支える作業員輸送船の建造で3D技術を本格適用 作業員輸送船 本船写真(上)と3Dモデル(下)の比較  当社は、洋上風力発電事業を支える作業員輸送船(Crew Transfer Vessel:CTV)の建造において、設計から建造まで一貫して3D技術を活用する新たな取組みを進めています。 船の構造や機器配置、作業のしやすさを事前に3D上で確認することで、設計変更や手戻りを減らし、効率的で確実な建造を実現しました。 また、建造途中でも3Dデータを活用して品質を確認し、安全性の向上につなげています。さらに、完成後の点検や保守にも活用できる「3Dデジタル完成図書」を整備することで、運航開始後の管理効率向上も期待されます。本取組みを通じて、成長が見込まれる洋上風力分野において、安全で信頼性の高い輸送サービスを支えると同時に、当社の技術力と競争力を強化していきます。  ◆飛鳥Ⅲ就航 新造客船「飛鳥Ⅲ」提供:郵船クルーズ株式会社  客船事業では、34年ぶりの新造客船「飛鳥Ⅲ」が2025年7月に就航しました。 「飛鳥Ⅲ」では日本のクルーズ船で初となる船位保持制御システム、ポッド推進器や陸上電源受電装置、さらに世界の中型客船で数少ないLNG燃料に対応したエンジンを搭載し、環境に配慮したクルーズを実現します。 1991年に就航した初代「飛鳥」が日本におけるラグジュアリークルーズの礎を築き、続いて2006年に「飛鳥Ⅱ」が就航し、客船文化の発展を支えてきました。「飛鳥Ⅱ」、「飛鳥Ⅲ」の2隻体制の始動により、ラグジュアリー市場における競争力をさらに高めるとともに、より多くのお客様に“最幸時間”を提供する体制を強化していきます。  ◆NYKバルクシップパートナーズ株式会社発足 NYKバルクシップパートナーズ株式会社会社ロゴドライバルク船「KEY HUNTER」  NYKバルクシップパートナーズ株式会社は、当社グループにおけるドライバルク船事業の中核会社として、2026年4月に発足しました。 旭海運株式会社、八馬汽船株式会社、三菱鉱石輸送株式会社の3社が事業統合し、長い歴史に裏打ちされた知見と人材を結集することで、ドライバルク輸送分野における競争力の一層の強化を図ります。海上輸送業、船舶管理業、船主業を主な事業とし、当社が100%出資する完全子会社としてグループ戦略と一体で事業を推進します。保有隻数21隻及び船舶管理隻数約90隻を基盤に、安全運航の徹底と高品質なワンストップサービスの提供を通じ、安定的かつ持続的な収益創出と顧客価値の最大化を目指します。  ◆LNG輸送事業を通じた環境負荷低減と企業価値向上の両立 LNG運搬船「QUEST KIRISHIMA」  当社は、クリーンエネルギー需要の拡大を背景に、LNG輸送事業を重要な成長分野の一つと位置付けています。 2025年12月にはノルウェーの大手船主であるOcean Yield ASと協業し、米国の大手LNG生産事業者であるCheniere Energy Inc.の完全子会社であるCheniere Marketing International LLPに複数隻の新造LNG運搬船を長期定期傭船する契約を締結しました。長期輸送契約に基づくLNG船の運航を通じて、安定的な収益基盤を構築するとともに、グローバルなLNGサプライチェーンを支えていきます。 北米を起点とするLNG輸送は、地政学的分散やエネルギー安全保障の観点からも重要性が高まっており、当社は高度な安全運航ノウハウと豊富な実績を活かし、信頼性の高い輸送サービスを提供しています。今後もLNG需要の中長期的な成長を取り込みつつ、環境負荷低減と企業価値向上の両立を図ります。  ◆バルセロナ港に次世代完成車ターミナル建設 当社グループが運営する欧州の完成車ターミナル拠点  2025年5月に自動車物流事業における欧州拠点の強化を目的として、スペイン・バルセロナ港において完成車ターミナルの27年間の運営権を取得しました。2028年に稼働予定の完全自動立体駐車場を建設し、再生可能エネルギー活用により環境に配慮した効率的な自動車輸送を実現します。本事業は、西地中海エリアにおける完成車物流需要への対応力向上を図るものであり、北欧港湾に集中する既存物流の補完的役割を担う拠点として位置付けています。バルセロナ港は、海上輸送に加え鉄道・内陸輸送との接続性を有しており、欧州域内外を結ぶ物流拠点としての利便性を備えています。当社は、完成車物流及びターミナル運営におけるこれまでの知見を活かし、安定的な運営を通じて顧客ニーズへの対応力を高めるとともに、自動車物流事業の基盤強化を進めていきます。  ◆欧州物流企業Waldenグループのヘルスケア物流事業の買収 欧州ヘルスケア物流事業  当社グループは、中核事業と位置付ける物流事業の成長を担う存在として、郵船ロジスティクスグループ(以下、YLグループ)を中心に事業基盤の強化を進めています。 その一環として、2025年12月、欧州物流企業Waldenグループのヘルスケア物流事業を買収し、同事業を担う42社をYLグループ傘下に迎え入れました。 本買収により、欧州12カ国に展開する医薬品・医療機器物流の高品質ネットワークと、YLグループが有するグローバルな物流基盤及び運営ノウハウを融合させることで、温度管理や各国規制への対応が求められる高度な物流ニーズへの対応力を一層高めています。 ヘルスケア物流は今後も着実な成長が見込まれる分野であり、本件はYLグループの一層の成長を通じ、物流事業全体の収益基盤の拡大と付加価値の向上に資するものです。今後も当社グループは、成長分野である物流事業への戦略的投資を継続していきます。  ◆先進のクラウドとプラットフォームの導入による経営基盤の刷新  当社は、グローバル競争の激化や経営環境の不確実性が高まる中、データに基づく迅速な意思決定を根幹としたデータドリブン経営の実現を目的に、クラウド型の統合基幹業務システムや財務・経営管理の統合支援プラットフォームをはじめとした複数の先進的なデジタル基盤を導入し、社内システム基盤を刷新しました。 本取組みでは、本社及び国内外子会社3社と、その他船舶保有のための特別目的会社も合わせた約350社の会計基幹システムをクラウドへ移行し、財務・会計領域の主要機能を統合することで、従来分散していた会計基盤を一元化しました。これにより、業務の標準化と効率化を進めるとともに、経営管理における高度な計画・分析を可能とする体制を構築しています。また、クラウドの特長である定期的な機能更新を活用することで、稼働後も最新技術を継続して取り込める仕組みを整えました。 当社グループは今後も、業務プロセスの標準化とAI活用による定型業務の自動化を進め、より高度な分析・判断・提案を行う業務体制への転換を図ります。中期経営計画の実行を支える基盤として、データドリブン経営のさらなる高度化と企業価値向上に取り組んでいきます。  ◆CX Neo ~海技者の活躍促進プロジェクト~ 矢野美希 機関長  当社は、中核事業の深化と新規事業の開拓を両輪とする基軸戦略を支えるCXの一環として、海技者の活躍促進を目的としたプロジェクト「CX Neo」を推進しています。本プロジェクトでは、安全運航を支える高度な専門性と使命感を備えた人材が、長期にわたり情熱と誇りを持って働き続けられる会社であることを目標に、海技者に求める人物像の再定義を行うとともに、働き方、キャリアの柔軟性、船内環境といった多面的な課題の検討と改善に取り組んでいます。具体的には、船上経験を基礎とした陸上業務との往来を含むキャリアパスの整備や、就労・居住環境の改善を進めています。 また、当社は2004年から女性を海上職として採用しており、現在では30名超が海上・陸上を問わず全世界で活躍しています。2025年4月には、矢野美希一等機関士を機関長に登用しました。140年の歴史を持つ当社で女性の機関長登用は初めてです。今後も、多様な人材が活躍できる職場環境づくりと人材育成を推進していきます。 ② 遵法の徹底 当社グループは、遵法の徹底を最重要事項と位置付け、当社と国内外にある様々な事業を展開するグループ会社を対象にグローバルなガバナンス体制の構築を目指しており、以下の対策を着実に実行し、法令に則った公正な事業の遂行を徹底することに全力を尽くしていきます。・米州・欧州・東アジア・南アジアの各拠点にRegional Management Officeを設置・ベストプラクティスの共有や課題の速やかな解決を図るため、Regional Governance Officerの下に法務担当や内部監査人を配置・国内外グループ会社が制定している行動規準に対する誓約書の取得等の活動を継続・独占禁止法の遵守を徹底すべく、社内各部門・グループ会社にヒアリングを実施し、これらを踏まえた独占禁止法に関する行動指針の作成、研修の実施・コンプライアンス委員会や遵法活動徹底委員会の開催を通じ、独占禁止法対応に加え贈収賄・ハラスメント防止等、包括的な法令遵守体制の整備・強化
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針 当社グループは、存在意義、社会的使命として“Bringing value to life.”を企業理念に掲げています。 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標 当社グループは、2023年3月に中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定し、2030年に向けた新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、その実現を目的とする2026年度までの4年間の行動計画にもとづき事業を進めています。ESGを中核に据えた成長戦略を推進し、経営戦略としては、各事業における機会とリスクを踏まえた事業戦略の方向性(両利きの経営:AX、及び事業変革:BX)を定めるとともに、人的資本の更なる充実・グループ経営の変革・ガバナンスの強化(CX)、デジタル基盤の整備推進(DX)等のコーポレート基盤の強化に加え、脱炭素に向けた取組みの加速(EX)を推進します。事業投資計画としては、中期経営計画策定時点において2026年度までに予定していた1.2兆円規模の事業投資を1.6兆円規模に増額して実施します。当連結会計年度末時点で中期経営計画期間中の投資が決定している案件は約1.3兆円です。 (“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標) 2025年度実績中期目標(2026年目途)当期純利益2,117億円2,000~3,000億円ROIC6.4%6.5%以上ROE7.1%8.0~10.0% (株主還元策) 当社は、株主の皆様への安定的な利益還元を経営上の最重要課題の一つと位置付け、連結配当性向40%を目安に1株あたりの配当下限金額を年間200円として、業績の見通し等を総合的に勘案して利益配分を決定します。配当の詳細については「第4 提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。  自己株式の取得については、2025年5月8日開催の取締役会決議に基づき、2026年4月30日まで28,779,900株(取得価額の総額 約1,500億円)の取得を完了し、上記取締役会決議による自己株式の取得は終了しました。また、取得した自己株式は全株消却いたしました。 (3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題① 中期経営計画の遂行 地政学リスクの高まりを受け混迷を極める世界情勢の中、エネルギーや生活必需品を世界中に届け、人々のライフラインを守るべく “Bringing value to life.” を企業理念(ミッション)とし、新たに掲げたありたい姿(ビジョン)「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を目指して、中期経営計画  “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” を進めています。 両利きの経営(AX)と事業変革(BX)から成る「基軸戦略」の下、既存中核事業を深化させると同時に新規成長事業を進化させ、これを「支えの戦略」となる人材・組織・グループ経営変革(CX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)が支えます。 ■中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” 完遂への取組み 経営戦略であるAX~EXの2024年度の主な進捗状況は以下の通りです。2025年度についても「既存中核事業の深化」と「新規成長事業の開拓」を加速していきます。  ◆脱炭素社会実現に向けたアンモニアサプライチェーン構築 アンモニア燃料アンモニア輸送船CGイメージ図  当社グループは脱炭素社会の実現に向けた有力な次世代燃料の一つとしてアンモニアに注力し、製造・輸送・供給を含む燃料アンモニアバリューチェーン全体における事業開発に取り組んでいます。 アンモニア燃料船の開発に関しては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金の助成を受ける40,000㎥級アンモニア燃料アンモニア輸送船(Ammonia-Fueled Medium Gas Carrier:AFMGC)の建造が順調に進行しており、2025年にはアンモニア燃料主機と補機の搭載も完了しました。高い環境性能と世界最高水準の安全対策を備えたAFMGCは、2026年11月の竣工後、世界最大級のアンモニアプレーヤーであるYara International ASAのグループ会社であるYara Clean Ammonia Switzerland SAに定期傭船される予定です。 また、商用燃料アンモニア輸送船に関しては、2025年12月には、当社グループのNYK Bulkship (Asia) Pte. Ltd.が株式会社JERAと、アンモニア輸送船2隻に関する定期傭船契約の基本条件合意書を締結しました。本合意に基づき、米国で製造される低炭素アンモニアを、碧南火力発電所(愛知県)へ海上輸送する計画を推進します。本計画は、商用燃料アンモニア輸送として先駆的な取組みであり、日本のエネルギートランジションの実現を後押しします。 当社は、アンモニア燃料船を中核に、将来の燃料供給・輸送需要を見据えたアンモニアサプライチェーンの社会実装を着実に進め、持続的な成長と企業価値向上を目指します。  ◆バイオ燃料の長期使用・保存に関する実証を経て、本格活用の段階へ 当社は、バイオ燃料B24(バイオ由来成分を24%混合)について、複数の船種において長期使用に関する実証を重ね、安定的な運用に向けた知見を蓄積しました。また、その一環として、シンガポールの非営利団体Global Centre for Maritime Decarbonisationと共同で、船上における長期使用及び保存に関する実証を行いました。その結果、技術的な安全性並びに長期運用の実現可能性を確認しました。これらの検証結果を踏まえ、現在は自動車専用船を中心にバイオ燃料の本格的な活用を進めており、使用量を拡大しています。 さらに2026年度には、バイオ由来成分100%のバイオ燃料B100について、酸化劣化や長期保管時の品質安定性への配慮がより重要であることを踏まえ、実運航における約1年間の検証を実施する予定です。 当社は、既存船舶インフラを活用し、バイオ燃料及びLNG燃料を、燃料転換期における現実的かつ即効性のある対応手段として位置付けています。第三者認証により持続可能性及びGHG排出削減効果が客観的に担保された低・脱炭素燃料は、欧州規制対応に活用できるほか、環境価値として分離し、お客様に提供することで新たな価値の創出も可能であり、脱炭素の推進と企業価値の向上の双方に資するものとなります。これらの取組みを通じ、当社は海運業界の脱炭素化を着実にリードしていきます。  ◆洋上風力発電を支える作業員輸送船の建造で3D技術を本格適用 作業員輸送船 本船写真(上)と3Dモデル(下)の比較  当社は、洋上風力発電事業を支える作業員輸送船(Crew Transfer Vessel:CTV)の建造において、設計から建造まで一貫して3D技術を活用する新たな取組みを進めています。 船の構造や機器配置、作業のしやすさを事前に3D上で確認することで、設計変更や手戻りを減らし、効率的で確実な建造を実現しました。 また、建造途中でも3Dデータを活用して品質を確認し、安全性の向上につなげています。さらに、完成後の点検や保守にも活用できる「3Dデジタル完成図書」を整備することで、運航開始後の管理効率向上も期待されます。本取組みを通じて、成長が見込まれる洋上風力分野において、安全で信頼性の高い輸送サービスを支えると同時に、当社の技術力と競争力を強化していきます。  ◆飛鳥Ⅲ就航 新造客船「飛鳥Ⅲ」提供:郵船クルーズ株式会社  客船事業では、34年ぶりの新造客船「飛鳥Ⅲ」が2025年7月に就航しました。 「飛鳥Ⅲ」では日本のクルーズ船で初となる船位保持制御システム、ポッド推進器や陸上電源受電装置、さらに世界の中型客船で数少ないLNG燃料に対応したエンジンを搭載し、環境に配慮したクルーズを実現します。 1991年に就航した初代「飛鳥」が日本におけるラグジュアリークルーズの礎を築き、続いて2006年に「飛鳥Ⅱ」が就航し、客船文化の発展を支えてきました。「飛鳥Ⅱ」、「飛鳥Ⅲ」の2隻体制の始動により、ラグジュアリー市場における競争力をさらに高めるとともに、より多くのお客様に“最幸時間”を提供する体制を強化していきます。  ◆NYKバルクシップパートナーズ株式会社発足 NYKバルクシップパートナーズ株式会社会社ロゴドライバルク船「KEY HUNTER」  NYKバルクシップパートナーズ株式会社は、当社グループにおけるドライバルク船事業の中核会社として、2026年4月に発足しました。 旭海運株式会社、八馬汽船株式会社、三菱鉱石輸送株式会社の3社が事業統合し、長い歴史に裏打ちされた知見と人材を結集することで、ドライバルク輸送分野における競争力の一層の強化を図ります。海上輸送業、船舶管理業、船主業を主な事業とし、当社が100%出資する完全子会社としてグループ戦略と一体で事業を推進します。保有隻数21隻及び船舶管理隻数約90隻を基盤に、安全運航の徹底と高品質なワンストップサービスの提供を通じ、安定的かつ持続的な収益創出と顧客価値の最大化を目指します。  ◆LNG輸送事業を通じた環境負荷低減と企業価値向上の両立 LNG運搬船「QUEST KIRISHIMA」  当社は、クリーンエネルギー需要の拡大を背景に、LNG輸送事業を重要な成長分野の一つと位置付けています。 2025年12月にはノルウェーの大手船主であるOcean Yield ASと協業し、米国の大手LNG生産事業者であるCheniere Energy Inc.の完全子会社であるCheniere Marketing International LLPに複数隻の新造LNG運搬船を長期定期傭船する契約を締結しました。長期輸送契約に基づくLNG船の運航を通じて、安定的な収益基盤を構築するとともに、グローバルなLNGサプライチェーンを支えていきます。 北米を起点とするLNG輸送は、地政学的分散やエネルギー安全保障の観点からも重要性が高まっており、当社は高度な安全運航ノウハウと豊富な実績を活かし、信頼性の高い輸送サービスを提供しています。今後もLNG需要の中長期的な成長を取り込みつつ、環境負荷低減と企業価値向上の両立を図ります。  ◆バルセロナ港に次世代完成車ターミナル建設 当社グループが運営する欧州の完成車ターミナル拠点  2025年5月に自動車物流事業における欧州拠点の強化を目的として、スペイン・バルセロナ港において完成車ターミナルの27年間の運営権を取得しました。2028年に稼働予定の完全自動立体駐車場を建設し、再生可能エネルギー活用により環境に配慮した効率的な自動車輸送を実現します。本事業は、西地中海エリアにおける完成車物流需要への対応力向上を図るものであり、北欧港湾に集中する既存物流の補完的役割を担う拠点として位置付けています。バルセロナ港は、海上輸送に加え鉄道・内陸輸送との接続性を有しており、欧州域内外を結ぶ物流拠点としての利便性を備えています。当社は、完成車物流及びターミナル運営におけるこれまでの知見を活かし、安定的な運営を通じて顧客ニーズへの対応力を高めるとともに、自動車物流事業の基盤強化を進めていきます。  ◆欧州物流企業Waldenグループのヘルスケア物流事業の買収 欧州ヘルスケア物流事業  当社グループは、中核事業と位置付ける物流事業の成長を担う存在として、郵船ロジスティクスグループ(以下、YLグループ)を中心に事業基盤の強化を進めています。 その一環として、2025年12月、欧州物流企業Waldenグループのヘルスケア物流事業を買収し、同事業を担う42社をYLグループ傘下に迎え入れました。 本買収により、欧州12カ国に展開する医薬品・医療機器物流の高品質ネットワークと、YLグループが有するグローバルな物流基盤及び運営ノウハウを融合させることで、温度管理や各国規制への対応が求められる高度な物流ニーズへの対応力を一層高めています。 ヘルスケア物流は今後も着実な成長が見込まれる分野であり、本件はYLグループの一層の成長を通じ、物流事業全体の収益基盤の拡大と付加価値の向上に資するものです。今後も当社グループは、成長分野である物流事業への戦略的投資を継続していきます。  ◆先進のクラウドとプラットフォームの導入による経営基盤の刷新  当社は、グローバル競争の激化や経営環境の不確実性が高まる中、データに基づく迅速な意思決定を根幹としたデータドリブン経営の実現を目的に、クラウド型の統合基幹業務システムや財務・経営管理の統合支援プラットフォームをはじめとした複数の先進的なデジタル基盤を導入し、社内システム基盤を刷新しました。 本取組みでは、本社及び国内外子会社3社と、その他船舶保有のための特別目的会社も合わせた約350社の会計基幹システムをクラウドへ移行し、財務・会計領域の主要機能を統合することで、従来分散していた会計基盤を一元化しました。これにより、業務の標準化と効率化を進めるとともに、経営管理における高度な計画・分析を可能とする体制を構築しています。また、クラウドの特長である定期的な機能更新を活用することで、稼働後も最新技術を継続して取り込める仕組みを整えました。 当社グループは今後も、業務プロセスの標準化とAI活用による定型業務の自動化を進め、より高度な分析・判断・提案を行う業務体制への転換を図ります。中期経営計画の実行を支える基盤として、データドリブン経営のさらなる高度化と企業価値向上に取り組んでいきます。  ◆CX Neo ~海技者の活躍促進プロジェクト~ 矢野美希 機関長  当社は、中核事業の深化と新規事業の開拓を両輪とする基軸戦略を支えるCXの一環として、海技者の活躍促進を目的としたプロジェクト「CX Neo」を推進しています。本プロジェクトでは、安全運航を支える高度な専門性と使命感を備えた人材が、長期にわたり情熱と誇りを持って働き続けられる会社であることを目標に、海技者に求める人物像の再定義を行うとともに、働き方、キャリアの柔軟性、船内環境といった多面的な課題の検討と改善に取り組んでいます。具体的には、船上経験を基礎とした陸上業務との往来を含むキャリアパスの整備や、就労・居住環境の改善を進めています。 また、当社は2004年から女性を海上職として採用しており、現在では30名超が海上・陸上を問わず全世界で活躍しています。2025年4月には、矢野美希一等機関士を機関長に登用しました。140年の歴史を持つ当社で女性の機関長登用は初めてです。今後も、多様な人材が活躍できる職場環境づくりと人材育成を推進していきます。 ② 遵法の徹底 当社グループは、遵法の徹底を最重要事項と位置付け、当社と国内外にある様々な事業を展開するグループ会社を対象にグローバルなガバナンス体制の構築を目指しており、以下の対策を着実に実行し、法令に則った公正な事業の遂行を徹底することに全力を尽くしていきます。・米州・欧州・東アジア・南アジアの各拠点にRegional Management Officeを設置・ベストプラクティスの共有や課題の速やかな解決を図るため、Regional Governance Officerの下に法務担当や内部監査人を配置・国内外グループ会社が制定している行動規準に対する誓約書の取得等の活動を継続・独占禁止法の遵守を徹底すべく、社内各部門・グループ会社にヒアリングを実施し、これらを踏まえた独占禁止法に関する行動指針の作成、研修の実施・コンプライアンス委員会や遵法活動徹底委員会の開催を通じ、独占禁止法対応に加え贈収賄・ハラスメント防止等、包括的な法令遵守体制の整備・強化
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】1.経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。(1)経営成績の状況 (単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率売上高25,88724,236△1,650△6.4%売上原価21,19319,942△1,250△5.9%販売費及び一般管理費2,5852,90732212.5%営業利益2,1081,386△722△34.3%経常利益4,9082,111△2,797△57.0%親会社株主に帰属する当期純利益4,7772,117△2,659△55.7% 平均為替レート152.73円/US$150.23円/US$△2.50円平均消費燃料価格US$618.78/MTUS$539.11/MT△US$79.67 (概況) 当連結会計年度の業績は、売上高2兆4,236億円、営業利益1,386億円、経常利益2,111億円、親会社株主に帰属する当期純利益2,117億円となりました。なお、営業外収益で持分法による投資利益として850億円を計上しました。うち、当社持分法適用会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(“ONE社”)からの持分法による投資利益計上額は190億円となりました。 <セグメント別概況> 当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。(単位:億円) 売上高経常利益前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率前連結会計年度当連結会計年度増減額ロラジイスナテ|ィ&クス事業定期船事業1,8041,80950.3%2,743497△2,245航空運送事業1,857411△1,446△77.9%21021△189物流事業8,1218,047△73△0.9%212102△110自動車事業5,3235,268△55△1.0%1,133979△154ドライバルク事業6,0725,510△561△9.3%18195△85エネルギー事業1,7852,36958432.7%46154482その他事業2,0461,813△232△11.4%69△0△69 <定期船事業> コンテナ船事業:新造船の竣工による船舶供給量の増加に加え、関税政策や中東情勢等の影響を受け、運賃市況は不安定に推移した結果、前連結会計年度の水準を下回りました。ONE社においても、運賃市況が下落した結果、利益水準は前連結会計年度を下回りました。  ターミナル関連事業:国内ターミナルでは前連結会計年度比で取扱量が減少しました。  以上の結果、定期船事業全体では前連結会計年度比で増収減益となりました。 <航空運送事業> 2025年8月1日を効力発生日として、日本貨物航空株式会社とANAホールディングス株式会社との株式交換が完了したことにより、2026年3月期第2四半期以降の業績には日本貨物航空株式会社を含みません。  以上の結果、航空運送事業では前連結会計年度比で減収減益となりました。 <物流事業> 航空貨物取扱事業:取扱量は前連結会計年度と概ね同水準を維持し、また、仕入価格の下落やスポット貨物の獲得により、利益水準は前連結会計年度を上回りました。  海上貨物取扱事業:取扱量は底堅く推移したものの、市況変動の影響を受け収益性が低下し、利益水準は前連結会計年度を下回りました。  ロジスティクス事業:関税政策等の影響による経済見通しの不透明さから、主要顧客の取扱量が減少した結果、利益水準は前連結会計年度比で下落しました。  以上の結果、物流事業全体では前連結会計年度比で減収減益となりました。 <自動車事業> 自動車船事業:輸送台数は概ね前連結会計年度並みの水準を維持しました。また、為替が前連結会計年度比で円高に推移したこと、及びインフレによる荷役費等のコスト上昇の影響を受けました。  自動車物流事業:欧州や一部東南アジア事業の取扱高が前連結会計年度比で増加しました。  以上の結果、自動車事業全体では前連結会計年度比で減収減益となりました。 <ドライバルク事業> 各船型の市況は前連結会計年度を上回りました。  ドライバルク事業全体では、為替が前連結会計年度比で円高に推移したことや、小型バルカー・ボックスシェイプ船における収益性の低下の影響を受けました。  以上の結果、前連結会計年度比で減収減益となりました。 <エネルギー事業> VLCC(大型原油タンカー):市況は大西洋域の貨物需要の増加や中東情勢の緊迫によりホルムズ海峡が事実上封鎖された影響等を受け、前連結会計年度を上回りました。  VLGC(大型LPGタンカー):関税政策等の影響により、トレードパターンが変化したことや、中東情勢の緊迫により中東地域からのLPG輸出が実質的に停止し、長距離輸送が増加したことで船腹需給が引き締まり、市況は前連結会計年度を上回りました。  石油製品タンカー:中東情勢の緊迫による原油価格の上昇が波及し、市況は前連結会計年度を上回りました。  LNG船:安定的な収益を生む中長期契約に支えられて順調に推移しました。  海洋事業:新規のFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)の稼働開始に伴い、一過性の利益を計上しました。既存のFPSO、シャトルタンカーは安定的に推移しました。  以上の結果、エネルギー事業全体では前連結会計年度比で増収増益となりました。 <その他事業> 船舶・技術事業:燃料油販売事業は燃料油価格の低下や販売数量の減少に伴い、低調に推移しました。  客船事業:飛鳥Ⅱ、飛鳥Ⅲともに順調にクルーズを催行したものの、飛鳥Ⅲの就航に向けた準備費用を計上しました。  以上の結果、その他事業全体では前連結会計年度比で減収減益となりました。 (2)キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて609億円増加し、2,108億円となりました。 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益2,767億円、減価償却費1,751億円、持分法による投資損益△850億円、利息及び配当金の受取額2,254億円等により4,733億円(前年同期5,107億円)となりました。 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△3,712億円(前年同期△597億円)となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払い等により△333億円(前年同期△4,277億円)となりました。 (3)生産、受注及び販売の実績 当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。 当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)定期船事業180,938100.3航空運送事業41,10222.1物流事業804,76799.1自動車事業526,88399.0ドライバルク事業551,06090.7エネルギー事業236,990132.7その他事業181,38188.6計2,523,12493.4消去(99,435)88.4合計2,423,68993.6(注) 売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。 2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。(1)財政状態及び経営成績等の分析 当連結会計年度末の総資産は、のれんや船舶の増加等により、前連結会計年度末に比べ8,748億円増加し、5兆2,016億円となりました。有利子負債は、長期借入金の増加等により4,630億円増加して1兆2,014億円となり、負債合計額も7,076億円増加し、2兆582億円となりました。純資産の部では、利益剰余金が1,802億円減少し、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が3兆719億円となり、これに非支配株主持分714億円を加えた純資産の合計は、3兆1,434億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は0.39に、また自己資本比率は59.1%となりました。経営成績については「1.経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」をご参照ください。 (2)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況 当社グループは、2023年4月から開始する4カ年の中期経営計画として“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定しました。“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標並びに2025年度実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標及び(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題」をご参照ください。 (3)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性① キャッシュ・フローの状況 「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。 ② 資金需要 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの自動車事業、ドライバルク事業及びエネルギー事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空貨物輸送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては、中期経営計画における船舶脱炭素化投資など既存事業への投資、新規事業やM&A投資を予定しています。当連結会計年度中には3,053億円の設備投資を行いました。 ③ 財務政策 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶に関してはリース等を活用しています。 当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金や内部留保した資金も投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。2026年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は7,646億円で、通貨は円のみならず米ドル等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、2026年3月31日現在1,420億円となっています。 当社グループは、資金の流動性確保に努めており、2026年3月31日現在2,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、予備的借入枠として円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。 なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。2026年3月31日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「AA-」、格付投資情報センター(R&I):「A+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Baa3」となっています。 (4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。 当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。 ① 収益の認識 当社グループの収益の認識は、主に一定の期間にわたり充足される履行義務として、航海期間及び輸送期間における日数等に基づき進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しています。 ② 貸倒引当金 当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。 ③ 投資の評価について 当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。 ④ 減価償却資産の償却 当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。 ⑤ 退職給付 従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 繰延税金資産 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。 ⑦ 固定資産の減損 当社グループは、原則として事業用資産においては投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。 (5)今後の見通し<定期船事業> コンテナ船事業:スエズ運河迂回に伴う喜望峰ルートの利用が年度を通じて継続すること、また中東情勢の緊迫が一定期間継続することによる費用の増加等を想定し、利益水準は当連結会計年度比で低下することを見込んでいます。 <物流事業> 航空貨物取扱事業・海上貨物取扱事業:取扱量は当連結会計年度比で増加することを見込んでいます。  ロジスティクス事業:2025年度に実施した欧州地域におけるヘルスケア物流事業の買収に伴うのれん償却額等の計上により、利益水準は当連結会計年度比で低下することを見込んでいます。 <自動車事業> 中東情勢の緊迫が一定期間継続することを想定し、輸送台数は当連結会計年度比で減少することを見込んでいます。 <ドライバルク事業> 全船型について、市況は堅調な荷動きを背景に底堅く推移することを見通し、利益水準は当連結会計年度比で上昇することを見込んでいます。 <エネルギー事業> VLCC・VLGC:中東情勢の緊迫が一定期間継続することを想定し、市況は当連結会計年度の水準を上回ることを見通します。  LNG船:新造船の竣工に加え、中長期契約による安定収益にも支えられ、堅調に推移する見込みです。  以上を踏まえ、翌連結会計年度は当連結会計年度比で増収減益を見込んでいます。

事業リスク

日本郵船グループは、世界経済や地政学的な要因による事業・業績への影響、および株価や財務状況への影響をリスクとして認識しています。具体的には、法令違反や贈収賄、経済制裁などによるコンプライアンスリスク、油濁事故や感染症、海賊行為などによる重大な事故・オペレーションリスクがあります。また、自然災害やサイバー攻撃によるシステム障害、情報漏洩のリスク、さらに脱炭素化に向けた技術革新の遅れやコスト増といった気候変動リスクも重要な課題としています。

出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|11,125 文字
3【事業等のリスク】当社グループの定期船事業、物流事業、自動車事業、ドライバルク事業、エネルギー事業、その他事業の事業活動において、世界各国の経済情勢、政治的又は社会的な要因等により、当社グループの事業や業績が影響を受け、その結果当社グループの株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、リスク管理方針及びリスク管理規則に基づき、リスク管理委員会を年2回実施し、当社グループの事業継続に重大な影響を与えうる最重要リスクと当社の経営に大きな影響を与えうる重要リスクの管理状況の報告と評価を行い、その結果を取締役会に報告します。当社グループは、「当社グループの継続的成長にとって影響を与えうる不確実性」をリスクと定義し、社長を委員長、本部長をメンバーとするリスク管理委員会において各本部からの報告を基に重要リスクを特定し、重要リスク毎にリスク対応の推進役となる本部を決定し、グループ全体のリスク低減活動を推進します。「最重要リスク」には、コンプライアンスリスク、重大事故などのオペレーションリスク、サイバーリスク、自然災害などの災害や気候変動への対応に関するリスクがあります。また、「重要リスク」には、戦略リスクや市況変動リスク、オペレーショナルリスク、財務と会計リスク、人権リスク、感染症リスク、従業員の人命安全危機等があります。有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (最重要リスク)(1)コンプライアンスリスクについて 世界的にさまざまなルールの強化が進むなかで、企業にはより一層高いコンプライアンス意識が求められています。当社グループは、コンプライアンスを推進、強化するための体制の整備及び、重要方針に関する事項等を審議・決議するための場として、年2回コンプライアンス委員会を開催しています。また、毎年9月を当社グループのコンプライアンス総点検月と定め、役員・従業員自らの行動・業務プロセスを見直し、コンプライアンス推進活動を実施しています。同活動では、「コンプライアンスDAY」と定めた日にNYK Chief Compliance Officer 自らコンプライアンスについてのメッセージを発信し、また、当社グループにおける知識向上や意識改革のためにテーマを決め、弁護士による研修を行っています。 更に、遵法活動徹底委員会を設置し、独占禁止法、贈収賄関連法令、経済制裁などの特定の法令のみならず、法令全般及び各種許認可等も含めた遵法の徹底を図っています。 しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (2)重大な事故等による影響について 当社グループは、「Bringing value to life.」という企業理念のもと、幅広い物流事業を展開しています。船舶の安全運航及び環境保護対策を最重要課題と認識しています。 当社グループの海上運送事業においては、独自の安全規格である「NAV9000 Plus」によるアセスメントを通じた安全品質の向上に努めています。船舶をはじめ各現場での実行状況は、社長を委員長とする「安全・環境対策推進委員会 」で定期的にレビューされ、安全品質レベルを更に向上・改善させるシステムが構築されており、また、緊急事態に際しては、適切な対応ができる体制を整えています。しかしながら、もし不測の事故、特に油濁その他の環境汚染、乗組員、乗客、及び荷役関係者を含む訪船者の死傷、船舶の喪失又は損傷等につながる重大な事故等が発生した場合、また、船内における感染症の発生、感染症の世界規模の蔓延による検疫強化、もしくは海賊・テロ事案等保安事件が発生した場合には、貨物輸送の遅延・不能、運送契約の解除、債務不履行、過料、訴訟、罰金、営業制限、保険料の引き上げ、評判及び顧客関係の悪化といった事態に直面する可能性があり、かかるリスクを保険で適切にカバーできない場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (3)本社及び主要な事業会社(拠点)の事業運営に重大な影響を与える自然災害等のリスクについて 地震、津波、竜巻、台風、寒波等の自然災害や戦争・テロ、紛争、その他の要因による社会混乱により、本社や主要な事業会社(拠点)が被災し、経営体制の本社機能が麻痺するリスクや本社の管理機能が麻痺することによるオペレーション上の事業継続リスクや、主要な事業会社のオペレーション機能が麻痺することによる事業継続リスクがあります。 災害や社会混乱等で被害を受けた際に、重要な事業・機能を可能な限り中断せず、また中断した場合にもできるだけ早急に復旧できるように、主要な事業ごとに「事業継続計画(BCP: Business Continuity Plan)」を策定しています。しかしながら、上記のような自然災害や社会混乱等が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (4)情報システムセキュリティに関するリスクについて 当社グループにおいて情報システムの円滑な運用は今や欠かせない企業基盤となっており、地震・火災等の罹災に際しても、事業継続への影響を最小限に抑えるべく、システムの安全及び安定稼動の確保に努めています。サイバー攻撃に対しても、ゼロトラストセキュリティモデルを念頭においた多層的なセキュリティ対策の強化に加え、被害の最小化及び早期復旧にも重点を置き、定期的な訓練の実施やグローバルにおける情報セキュリティ管理体制の構築・運用を進めています。また、情報システムにAIが組み込まれることによって、法令違反・倫理的問題・技術的な予測限界・プライバシー問題等の点で発生するリスクが生じる可能性があります。当社グループでは、これらのリスクを認識した上で、関連するルールやガイドラインの整備、管理体制の構築、並びに従業員への教育・啓発等を通じて、包括的な管理に向けた取組みをおこなっています。 しかしながら、これらの対策を講じても、サイバー攻撃の高度化・巧妙化により完全にリスクを排除することは困難であり、システムダウンによる当社の業務の一時的な停止、顧客情報の流出、信頼の毀損、損害賠償、監督当局からの指導・制裁、対応コストの発生等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (5)気候変動リスクへの対応について 当社グループはサステナビリティ要素の一つである「気候変動」を重要な経営課題の一つとして認識しており、2023年3月に発表した中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の中で経営戦略としてのEX(エネルギー転換)の位置づけを再定義、財務影響を含めた具体的な取組みを策定しました。 この内容を更に補強する形として同年11月に「NYK Group Decarbonization Story」を発表、2050年に向けた脱炭素戦略を公表しました。 最新の科学的知見である1.5℃目標水準に準じた野心的なGHG削減目標を設定、脱炭素社会の達成を目指し当社グループ全体のGHG排出量削減に努めます。 一方、本長期目標を達成するためには、アンモニアや水素等のゼロエミッション燃料の実用化が不可欠であり、そのためには現時点の水準から大きな技術革新が必要です。 大型外航船の使用期間は15年から20年程度であるため、仮に革新的技術が利用可能となったとしても、全世界の船舶に普及するまでには、相当の時間とコストが発生すると見込まれています。 このような認識の下、技術革新と具現化の途上においては、世界の持続的な成長に必要な輸送需要に、その時々において最も環境負荷が低いソリューションで応えつつ、社会に対して相応の負担への理解を得る必要があると考えています。 今後、当社グループが気候変動リスクに適切に対応できなかった場合には、顧客離れ、地域社会との関係悪化や船舶に対する融資が得られないなどの事態が生じ、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (重要リスク)(6)経営戦略に関するリスクについて 当社グループは、中期経営計画に基づき、「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」というビジョン達成に向けた具体的施策に取り組んでいます。しかしながら、事業戦略の遂行や次世代の成長分野への積極的な取組みを実行する際には、以下に記載したリスクがあります。① 投資計画に係る影響について 当社グループは、船隊の整備等に係る投資を計画し、実行していますが、今後の世界経済の状況や海運市況及び公的規制等の動向によって、これらが計画どおりに進捗しない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 新造船の発注から竣工までには数年の年月を要し、その間の需要の変化も一つの要因です。造船スケジュールの遅延や、造船所における労働争議、造船所の経営難など造船所自体に関わる要因によっても左右されます。 また、鋼材価格の高騰等により新造船の価格が上昇し、それを適切に運賃等に反映させることができない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 ② 運航船舶等の処分に関する影響と市況悪化による固定資産の減損損失について 当社グループは、海運市況の著しい変動、運航する船舶の新技術開発・導入に起因する陳腐化あるいは安全規制・諸規則の変更等による物理的使用制限等により、当社グループが保有する船舶を売却する場合、又は当社グループが傭船する船舶の傭船契約解約等を実施する場合があります。その結果、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 船舶を売却する際、常に有利な条件で売却できる保証はなく、また売却できない可能性もあります。市況が低迷し、船舶の市場価格が下落しているときに、減価償却が済んでいない船舶を簿価より低い価格で売却しなければならない場合もあり、その場合売却損を被る可能性もあります。また、売却をしない場合でも、市場低迷が回復せず、又は更に悪化した場合、船舶、その他の固定資産の収益性低下により投資額の回収が見込めなくなる場合があります。この場合資産価値が下落して減損損失が発生し、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 傭船契約を解約又はそれに準じる行為を行う場合は、船主と協議の上、違約金等を支払う可能性があります。 ③ 他社との提携戦略について 当社グループは、コンテナ船事業において、他の海運会社との戦略的提携であるプレミア・アライアンスのメンバーとなっています。当社グループは、コンテナ船事業の効率的かつグローバルなネットワークを保つために、かかるアライアンスが必要であると考えています。しかしながら、アライアンスの活動には、均一の安全・運航基準及び管理方針・手続を維持する難しさ、アライアンス統合及び解散の可能性、アライアンスに加盟している会社の撤退又はアライアンスによって必ずしも期待していた結果が得られない可能性、また各国規制等によりアライアンス自体が認められなくなる等のリスクを伴います。当社グループがかかる要因に適切に対処できない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 ④ 長期安定的な収益基盤の維持・構築について 当社グループは、長期の安定契約に重点を置いており、船隊の多くを船舶の保有又は長期傭船により調達しています。しかしながら、その船隊規模に見合った貨物の長期契約が十分に獲得できない場合、それら船舶は短期契約による運航に供することとなり、運賃水準が大幅に下落すると、船舶の運航により得られる収益が、保有船及び長期傭船の固定費用を十分にまかなうことができず、その結果として当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 当社グループのドライバルク事業部門及びエネルギー事業部門においては、取引先との長期契約に重点を置いています。かかる長期契約には、決定された運賃、使用船腹量及び費用調整条項が定められ、市場環境の変化による影響を軽減するのに役立っています。しかしながら、当社グループが長期契約を結んでいる一部の取引先の経営状態等が悪化し、取引先が契約条項の全部又は一部の履行を継続できなくなる可能性があります。一方当社グループは、かかる長期契約上の義務を履行するにあたって、第三者からの傭船によって船舶を調達する場合があります。船主が、傭船期間終了前に当社グループとの契約を履行できなくなる可能性があり、これによって他の船舶を調達するための費用が発生する可能性もあります。今後このような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。なお、長期契約は市況の変動による影響を軽減する効果がありますが、市況の上昇局面においても直ちに運賃に反映できなくなる可能性があります。 当社グループの重要な取引先には、自動車メーカー、製鉄会社、製紙会社、公共事業会社、電機メーカーや小売業者等が含まれています。仮に、重要な取引先との間の取引規模が縮小したり、重要な取引先を失うようなことがあれば、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (7)市況変動に関するリスクについて① 海運市況・荷動き等の変動による影響について 当社グループは、海運市況の変動に左右されない安定的な営業収益の確保に努めていますが、世界の経済動向、国際間の荷動き、競争激化、船腹需給バランス等の影響により、運賃収入及び傭船料収入などが大きく変動する可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 特に、海上運賃は、船腹需給の不均衡により大幅に変動する傾向にあります。一方、船腹の供給が需要を上回ると、市場における傭船料の水準が下落する可能性があります。 なお、船腹の需要に影響を及ぼす可能性のある要因には、以下のものがあります。 ・世界的、地域的な紛争、政治動向及び経済状況 ・世界的な感染症の蔓延 ・当社グループが輸送するエネルギー資源、原材料及び商品の需要及び在庫水準 ・工場のグローバル化(サプライチェーンの世界規模の展開と国際情勢の変化に応じた再編) ・海上輸送及びその他の輸送方法の変化並びに代替輸送手段の発展 ・環境及びその他の規制の動向 一方、船腹の供給に影響を及ぼす可能性のある要因には、以下のものがあります。 ・新造船の竣工による船腹量の増加 ・老齢船の解撤による船腹量の減少 ・港、運河及び海峡の混雑又は閉鎖 ・環境規制及び船舶の耐用年数を制限する可能性のあるその他の規制の変更 また、フォワーディング等の物流事業においても、海上貨物と同様にスペース供給と需要の不均衡により、運賃が大幅に変動する可能性があります。物流事業での大幅な運賃の変動や取扱貨物量の変動により当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 ② 為替レートの変動による影響について 当社グループの事業においては、外貨建て取引の収入が多く、為替レートの変動が損益に影響を与える可能性があります。収入と費用の通貨を一致させる施策を進めるとともに、為替予約や通貨スワップ等のヘッジ取引により、為替レート変動の影響の軽減に努めています。また、当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、在外子会社等の財務諸表を円換算しており、為替レートが変動した場合、当社グループの財務状況が影響を受ける可能性があります。 ③ 燃料価格の変動による影響について 当社グループは、世界中で当社グループが運航する船舶に使用される燃料を常時購入しています。 燃料費は、当社グループの定期船事業、自動車事業、ドライバルク事業、エネルギー事業における費用の大きな割合を占めています。燃料の価格水準及び入手可能量は、世界的な原油・天然ガス需給、外国為替市場の変動、産油国やOPEC及び産ガス国の動向、環境規制の状況、その他の多くの要因により変動し、特に26年2月に勃発した中東域での戦争による広範な影響から、これらの動向を正確に予測することは更に困難です。当社グループとして、燃料調達地域の分散及び燃料サーチャージの適用、ヘッジ手段としてのデリバティブ取引の利用、燃料の消費量節減等の対策を講じて業績に与える影響の軽減に努めていますが、価格の変動又は供給不足から十分に影響を軽減できない可能性があります。 ④ 金利動向による影響について 当社グループは、船舶、輸送関連施設等の取得に係る設備投資需要や事業活動に係る運転資金需要に対し、内部資金を充当する他、外部から資金を調達しています。 これらの外部資金については、現在、変動金利調達と固定金利調達があり、金利環境を勘案の上その割合を注視し金利変動による影響の軽減に努めていますが、将来の金利変動によっては、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (8)投資有価証券における評価損による影響について 当社グループは、有価証券の評価基準及び評価方法として、その他有価証券のうち市場価格のない株式等以外のものについては決算期末日の市場価格等に基づく時価法を採用しています。株式市況の変動等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (9)人権問題について 当社グループは、自らの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権を尊重し、多様な価値観や異文化を認め合い、尊重することを当社の行動規準でも謳い、その責務を果たす指針として、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく「日本郵船グループ人権方針」を2022年11月に定めました。社内委員会を設置し、専門的知見を有する第三者機関からの助言を定期的に受けつつ、人権デュー・ディリジェンスをはじめとした人権尊重の取組みを推進しています。 また、企業活動が社会にもたらす影響の重要性への認識が高まる中、当社グループはサプライチェーン全体で、強制労働、児童労働、環境破壊行為などによる人権・環境への負の影響を防止・軽減するため、サプライヤーの皆さまと共に目指す基準を示す「日本郵船グループ サプライヤー行動規範」を策定しています。当社グループの取引先に日本郵船グループサプライヤー行動規範の配布・説明を行い、人権にも配慮した調達活動を推進しています。 しかしながら、当社グループの事業活動において人権問題が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (10)従業員の人命安全危機に関するリスクについて 当社グループは、世界各地で事業を展開しており、従業員(駐在員及びその家族、出張者、現地従業員を含む)が、戦争、紛争、テロ、暴動、治安悪化、感染症の流行、自然災害その他の突発的な事象に巻き込まれることにより、従業員の生命又は身体に重大な危険が生じ、当社グループの事業活動に支障を来す可能性があります。 当社グループでは、従業員の安全確保を重要な経営課題の一つとして認識し、海外情勢や各地域におけるリスク動向の把握に努めるとともに、リスクが高まった場合には、現地の状況や他社動向等を含めた情報収集を行い、従業員の安全確保策の検討・実施を行う体制を整備しています。 しかしながら、これらの対応を講じていたとしても、突発的かつ大規模な事態が発生した場合には、従業員の安全を十分に確保できない可能性があり、その結果、当社グループの事業運営、業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (11)感染症(新型コロナウイルス感染症・インフルエンザ等)の流行によるリスクについて 新型コロナウイルス感染症やインフルエンザを含む感染症の蔓延は、依然として、当社グループの全ての事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループは引き続き社内外への感染拡大防止と社員の安全確保を最優先に、船舶の安全運航を継続し、生活を支えるエネルギー、資源、その他物資の安定輸送に従事します。客船では、従前からの感染症対策プランに則り手洗い、手指消毒などを実施し、商業クルーズを実施しています。 しかしながら、特定の事務所において従業員の病欠者が増加し、サービスの提供が一時的に滞ることや、個別の船舶等において感染拡大することによって運航に影響が出ること、また、感染拡大地域へのサービスの提供に影響が出ることなど、当社グループの事業運営、業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (その他経営全般に係るリスク)(12)当社グループの重要課題「安全」「環境」「人材」について 当社グループの船舶の安全な運航のためには、優秀な船員を確保することが特に重要となります。当社グループは、優秀な船員を確保するために、教育と訓練の提供及び多様な国からの採用など、様々な手段を取ってきましたが、将来において、適切な費用で必要な技術水準を持った船員を十分に確保できるという保証はありません。新型コロナウイルス感染症の再拡大や新たな感染症等の発生により、必要な船員を合理的な費用で雇用、維持、あるいは交代できない場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループが事業を行う各地域において、当社グループの船舶は安全運航及び海難事故の防止に関する国際法を遵守する必要があります。加えて、環境保護に関する地域固有の法令及び規制を遵守する必要があります。 当社グループは、環境保全活動及び物流サプライチェーンの安全・保安対策の重要性を認識しつつ、グローバルに事業を展開・拡大しています。例えば、アンモニアや水素など将来代替燃料に向けた研究開発促進、LNG/LPG/メタノール/アンモニア燃料船建造の拡大、LNG/アンモニア燃料供給船建造の拡大、省エネ運航や風力利用、燃料制御技術によるGHG排出量削減、バラスト水管理のための処理装置の搭載、藻、貝類等の船体付着物の移動防止に関する規制への対応、サイバーセキュリティ対策導入などを実施しています。 今後、これらに関連する対策費用が増加した場合や、特定の地域における法令又は規制を遵守することが困難となった場合には、当該地域における当社グループの事業運営が制限され、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 (13)グローバルな事業展開による影響について 当社グループの活動の範囲は、世界各地に及んでおり、各々の地域における経済状況等により影響を受ける可能性があります。具体的には、以下に掲げるいくつかのリスクが内在しています。 ・政治的又は経済的要因 ・事業・投資許可、租税、為替管制、国際資産の没収、独占禁止、通商制限など公的規制の影響 ・他社と合弁・提携する事業の動向により生じる影響 ・戦争、暴動、テロ、海賊、感染症、ストライキ、サイバー攻撃、その他の要因による社会的混乱 ・地震、津波、台風等の自然災害や異常気象の影響 ・各国規制・制裁などの把握不全 これらリスクに対しては、グループ内での情報収集、外部コンサルタント起用等を通じ、その予防・回避に努めていますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。船員を含む当社グループの従業員の一部は、労働組合に所属しており、当社グループの従業員によってストライキ、業務停止又はサボタージュが行われた場合、さらには北米の港湾施設など当社グループ従業員以外の第三者によるストライキ又は業務停止によっても、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。加えて、戦争や政治的な要因も、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、昨今のイラン、ロシア・ウクライナ情勢等、世界中の紛争やテロによる治安・情勢不安・各国規制・制裁の強化等の影響を受けます。海賊被害は近年減少していますが、今もなお海賊行為が発生するマラッカ・シンガポール海峡、西アフリカ沿岸及びソマリア海賊襲撃エリアであるアラビア海、インド洋などを航行しています。なお、情勢が緊迫化している紅海・アデン湾、ホルムズ海峡においては、当社グループ船舶の航行を停止しています。当社グループでは、関係機関からの情報収集を行い海賊行為について対策を講じていますが、テロ及び海賊の襲撃を受けた場合、あるいは政情不安及び戦闘などが起こった場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。今後、紅海、アデン湾、ソマリア沖及びペルシャ湾を含む周辺水域が通常の戦争保険除外地域として指定された場合(一部水域は既に指定されています。)には、情勢により保険料率は変動しうる状況でもあり、保険料の水準及び保険会社による保険金の支払いに影響を与える可能性があります。また、物流事業等、特定の国において行う事業活動は、当該事業を行う国の治安・情勢不安等による事業環境の悪化により、事業の縮小、廃止、撤退等を決定する場合があり、その場合当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。2025年1月に発足したトランプ米政権の通商政策等により世界経済の不確実性が高まっており、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 (14)訴訟その他の法定手続の発生について 当社グループの定期船事業、物流事業、自動車事業、ドライバルク事業、エネルギー事業、その他事業の事業活動において、各種の訴訟や規制当局による調査及び処分に関するリスクを有しています。以下の事例も含め、訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。 当社グループは、2012年9月以降完成自動車車両等の海上輸送について、主要自動車船社と共同して運賃を設定したとして、請求金額を特定しないまま損害賠償及び差し止め等を求める集団民事訴訟を、一部の地域にて提起されていますが、現時点ではこれらの訴訟の結果を合理的に予測することは困難です。  なお、上記は当社グループが事業を継続する上で、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、これらに限定されるものではありません。

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