経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針 当社グループは、存在意義、社会的使命として“Bringing value to life.”を企業理念に掲げています。 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標 当社グループは、2023年3月に中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定し、2030年に向けた新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、その実現を目的とする2026年度までの4年間の行動計画にもとづき事業を進めています。ESGを中核に据えた成長戦略を推進し、経営戦略としては、各事業における機会とリスクを踏まえた事業戦略の方向性(両利きの経営:AX、及び事業変革:BX)を定めるとともに、人的資本の更なる充実・グループ経営の変革・ガバナンスの強化(CX)、デジタル基盤の整備推進(DX)等のコーポレート基盤の強化に加え、脱炭素に向けた取組みの加速(EX)を推進します。事業投資計画としては、中期経営計画策定時点において2026年度までに予定していた1.2兆円規模の事業投資を1.6兆円規模に増額して実施します。当連結会計年度末時点で中期経営計画期間中の投資が決定している案件は約1.3兆円です。 (“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標) 2025年度実績中期目標(2026年目途)当期純利益2,117億円2,000~3,000億円ROIC6.4%6.5%以上ROE7.1%8.0~10.0% (株主還元策) 当社は、株主の皆様への安定的な利益還元を経営上の最重要課題の一つと位置付け、連結配当性向40%を目安に1株あたりの配当下限金額を年間200円として、業績の見通し等を総合的に勘案して利益配分を決定します。配当の詳細については「第4 提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。 自己株式の取得については、2025年5月8日開催の取締役会決議に基づき、2026年4月30日まで28,779,900株(取得価額の総額 約1,500億円)の取得を完了し、上記取締役会決議による自己株式の取得は終了しました。また、取得した自己株式は全株消却いたしました。 (3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題① 中期経営計画の遂行 地政学リスクの高まりを受け混迷を極める世界情勢の中、エネルギーや生活必需品を世界中に届け、人々のライフラインを守るべく “Bringing value to life.” を企業理念(ミッション)とし、新たに掲げたありたい姿(ビジョン)「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を目指して、中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” を進めています。 両利きの経営(AX)と事業変革(BX)から成る「基軸戦略」の下、既存中核事業を深化させると同時に新規成長事業を進化させ、これを「支えの戦略」となる人材・組織・グループ経営変革(CX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)が支えます。 ■中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” 完遂への取組み 経営戦略であるAX~EXの2024年度の主な進捗状況は以下の通りです。2025年度についても「既存中核事業の深化」と「新規成長事業の開拓」を加速していきます。 ◆脱炭素社会実現に向けたアンモニアサプライチェーン構築 アンモニア燃料アンモニア輸送船CGイメージ図 当社グループは脱炭素社会の実現に向けた有力な次世代燃料の一つとしてアンモニアに注力し、製造・輸送・供給を含む燃料アンモニアバリューチェーン全体における事業開発に取り組んでいます。 アンモニア燃料船の開発に関しては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金の助成を受ける40,000㎥級アンモニア燃料アンモニア輸送船(Ammonia-Fueled Medium Gas Carrier:AFMGC)の建造が順調に進行しており、2025年にはアンモニア燃料主機と補機の搭載も完了しました。高い環境性能と世界最高水準の安全対策を備えたAFMGCは、2026年11月の竣工後、世界最大級のアンモニアプレーヤーであるYara International ASAのグループ会社であるYara Clean Ammonia Switzerland SAに定期傭船される予定です。 また、商用燃料アンモニア輸送船に関しては、2025年12月には、当社グループのNYK Bulkship (Asia) Pte. Ltd.が株式会社JERAと、アンモニア輸送船2隻に関する定期傭船契約の基本条件合意書を締結しました。本合意に基づき、米国で製造される低炭素アンモニアを、碧南火力発電所(愛知県)へ海上輸送する計画を推進します。本計画は、商用燃料アンモニア輸送として先駆的な取組みであり、日本のエネルギートランジションの実現を後押しします。 当社は、アンモニア燃料船を中核に、将来の燃料供給・輸送需要を見据えたアンモニアサプライチェーンの社会実装を着実に進め、持続的な成長と企業価値向上を目指します。 ◆バイオ燃料の長期使用・保存に関する実証を経て、本格活用の段階へ 当社は、バイオ燃料B24(バイオ由来成分を24%混合)について、複数の船種において長期使用に関する実証を重ね、安定的な運用に向けた知見を蓄積しました。また、その一環として、シンガポールの非営利団体Global Centre for Maritime Decarbonisationと共同で、船上における長期使用及び保存に関する実証を行いました。その結果、技術的な安全性並びに長期運用の実現可能性を確認しました。これらの検証結果を踏まえ、現在は自動車専用船を中心にバイオ燃料の本格的な活用を進めており、使用量を拡大しています。 さらに2026年度には、バイオ由来成分100%のバイオ燃料B100について、酸化劣化や長期保管時の品質安定性への配慮がより重要であることを踏まえ、実運航における約1年間の検証を実施する予定です。 当社は、既存船舶インフラを活用し、バイオ燃料及びLNG燃料を、燃料転換期における現実的かつ即効性のある対応手段として位置付けています。第三者認証により持続可能性及びGHG排出削減効果が客観的に担保された低・脱炭素燃料は、欧州規制対応に活用できるほか、環境価値として分離し、お客様に提供することで新たな価値の創出も可能であり、脱炭素の推進と企業価値の向上の双方に資するものとなります。これらの取組みを通じ、当社は海運業界の脱炭素化を着実にリードしていきます。 ◆洋上風力発電を支える作業員輸送船の建造で3D技術を本格適用 作業員輸送船 本船写真(上)と3Dモデル(下)の比較 当社は、洋上風力発電事業を支える作業員輸送船(Crew Transfer Vessel:CTV)の建造において、設計から建造まで一貫して3D技術を活用する新たな取組みを進めています。 船の構造や機器配置、作業のしやすさを事前に3D上で確認することで、設計変更や手戻りを減らし、効率的で確実な建造を実現しました。 また、建造途中でも3Dデータを活用して品質を確認し、安全性の向上につなげています。さらに、完成後の点検や保守にも活用できる「3Dデジタル完成図書」を整備することで、運航開始後の管理効率向上も期待されます。本取組みを通じて、成長が見込まれる洋上風力分野において、安全で信頼性の高い輸送サービスを支えると同時に、当社の技術力と競争力を強化していきます。 ◆飛鳥Ⅲ就航 新造客船「飛鳥Ⅲ」提供:郵船クルーズ株式会社 客船事業では、34年ぶりの新造客船「飛鳥Ⅲ」が2025年7月に就航しました。 「飛鳥Ⅲ」では日本のクルーズ船で初となる船位保持制御システム、ポッド推進器や陸上電源受電装置、さらに世界の中型客船で数少ないLNG燃料に対応したエンジンを搭載し、環境に配慮したクルーズを実現します。 1991年に就航した初代「飛鳥」が日本におけるラグジュアリークルーズの礎を築き、続いて2006年に「飛鳥Ⅱ」が就航し、客船文化の発展を支えてきました。「飛鳥Ⅱ」、「飛鳥Ⅲ」の2隻体制の始動により、ラグジュアリー市場における競争力をさらに高めるとともに、より多くのお客様に“最幸時間”を提供する体制を強化していきます。 ◆NYKバルクシップパートナーズ株式会社発足 NYKバルクシップパートナーズ株式会社会社ロゴドライバルク船「KEY HUNTER」 NYKバルクシップパートナーズ株式会社は、当社グループにおけるドライバルク船事業の中核会社として、2026年4月に発足しました。 旭海運株式会社、八馬汽船株式会社、三菱鉱石輸送株式会社の3社が事業統合し、長い歴史に裏打ちされた知見と人材を結集することで、ドライバルク輸送分野における競争力の一層の強化を図ります。海上輸送業、船舶管理業、船主業を主な事業とし、当社が100%出資する完全子会社としてグループ戦略と一体で事業を推進します。保有隻数21隻及び船舶管理隻数約90隻を基盤に、安全運航の徹底と高品質なワンストップサービスの提供を通じ、安定的かつ持続的な収益創出と顧客価値の最大化を目指します。 ◆LNG輸送事業を通じた環境負荷低減と企業価値向上の両立 LNG運搬船「QUEST KIRISHIMA」 当社は、クリーンエネルギー需要の拡大を背景に、LNG輸送事業を重要な成長分野の一つと位置付けています。 2025年12月にはノルウェーの大手船主であるOcean Yield ASと協業し、米国の大手LNG生産事業者であるCheniere Energy Inc.の完全子会社であるCheniere Marketing International LLPに複数隻の新造LNG運搬船を長期定期傭船する契約を締結しました。長期輸送契約に基づくLNG船の運航を通じて、安定的な収益基盤を構築するとともに、グローバルなLNGサプライチェーンを支えていきます。 北米を起点とするLNG輸送は、地政学的分散やエネルギー安全保障の観点からも重要性が高まっており、当社は高度な安全運航ノウハウと豊富な実績を活かし、信頼性の高い輸送サービスを提供しています。今後もLNG需要の中長期的な成長を取り込みつつ、環境負荷低減と企業価値向上の両立を図ります。 ◆バルセロナ港に次世代完成車ターミナル建設 当社グループが運営する欧州の完成車ターミナル拠点 2025年5月に自動車物流事業における欧州拠点の強化を目的として、スペイン・バルセロナ港において完成車ターミナルの27年間の運営権を取得しました。2028年に稼働予定の完全自動立体駐車場を建設し、再生可能エネルギー活用により環境に配慮した効率的な自動車輸送を実現します。本事業は、西地中海エリアにおける完成車物流需要への対応力向上を図るものであり、北欧港湾に集中する既存物流の補完的役割を担う拠点として位置付けています。バルセロナ港は、海上輸送に加え鉄道・内陸輸送との接続性を有しており、欧州域内外を結ぶ物流拠点としての利便性を備えています。当社は、完成車物流及びターミナル運営におけるこれまでの知見を活かし、安定的な運営を通じて顧客ニーズへの対応力を高めるとともに、自動車物流事業の基盤強化を進めていきます。 ◆欧州物流企業Waldenグループのヘルスケア物流事業の買収 欧州ヘルスケア物流事業 当社グループは、中核事業と位置付ける物流事業の成長を担う存在として、郵船ロジスティクスグループ(以下、YLグループ)を中心に事業基盤の強化を進めています。 その一環として、2025年12月、欧州物流企業Waldenグループのヘルスケア物流事業を買収し、同事業を担う42社をYLグループ傘下に迎え入れました。 本買収により、欧州12カ国に展開する医薬品・医療機器物流の高品質ネットワークと、YLグループが有するグローバルな物流基盤及び運営ノウハウを融合させることで、温度管理や各国規制への対応が求められる高度な物流ニーズへの対応力を一層高めています。 ヘルスケア物流は今後も着実な成長が見込まれる分野であり、本件はYLグループの一層の成長を通じ、物流事業全体の収益基盤の拡大と付加価値の向上に資するものです。今後も当社グループは、成長分野である物流事業への戦略的投資を継続していきます。 ◆先進のクラウドとプラットフォームの導入による経営基盤の刷新 当社は、グローバル競争の激化や経営環境の不確実性が高まる中、データに基づく迅速な意思決定を根幹としたデータドリブン経営の実現を目的に、クラウド型の統合基幹業務システムや財務・経営管理の統合支援プラットフォームをはじめとした複数の先進的なデジタル基盤を導入し、社内システム基盤を刷新しました。 本取組みでは、本社及び国内外子会社3社と、その他船舶保有のための特別目的会社も合わせた約350社の会計基幹システムをクラウドへ移行し、財務・会計領域の主要機能を統合することで、従来分散していた会計基盤を一元化しました。これにより、業務の標準化と効率化を進めるとともに、経営管理における高度な計画・分析を可能とする体制を構築しています。また、クラウドの特長である定期的な機能更新を活用することで、稼働後も最新技術を継続して取り込める仕組みを整えました。 当社グループは今後も、業務プロセスの標準化とAI活用による定型業務の自動化を進め、より高度な分析・判断・提案を行う業務体制への転換を図ります。中期経営計画の実行を支える基盤として、データドリブン経営のさらなる高度化と企業価値向上に取り組んでいきます。 ◆CX Neo ~海技者の活躍促進プロジェクト~ 矢野美希 機関長 当社は、中核事業の深化と新規事業の開拓を両輪とする基軸戦略を支えるCXの一環として、海技者の活躍促進を目的としたプロジェクト「CX Neo」を推進しています。本プロジェクトでは、安全運航を支える高度な専門性と使命感を備えた人材が、長期にわたり情熱と誇りを持って働き続けられる会社であることを目標に、海技者に求める人物像の再定義を行うとともに、働き方、キャリアの柔軟性、船内環境といった多面的な課題の検討と改善に取り組んでいます。具体的には、船上経験を基礎とした陸上業務との往来を含むキャリアパスの整備や、就労・居住環境の改善を進めています。 また、当社は2004年から女性を海上職として採用しており、現在では30名超が海上・陸上を問わず全世界で活躍しています。2025年4月には、矢野美希一等機関士を機関長に登用しました。140年の歴史を持つ当社で女性の機関長登用は初めてです。今後も、多様な人材が活躍できる職場環境づくりと人材育成を推進していきます。 ② 遵法の徹底 当社グループは、遵法の徹底を最重要事項と位置付け、当社と国内外にある様々な事業を展開するグループ会社を対象にグローバルなガバナンス体制の構築を目指しており、以下の対策を着実に実行し、法令に則った公正な事業の遂行を徹底することに全力を尽くしていきます。・米州・欧州・東アジア・南アジアの各拠点にRegional Management Officeを設置・ベストプラクティスの共有や課題の速やかな解決を図るため、Regional Governance Officerの下に法務担当や内部監査人を配置・国内外グループ会社が制定している行動規準に対する誓約書の取得等の活動を継続・独占禁止法の遵守を徹底すべく、社内各部門・グループ会社にヒアリングを実施し、これらを踏まえた独占禁止法に関する行動指針の作成、研修の実施・コンプライアンス委員会や遵法活動徹底委員会の開催を通じ、独占禁止法対応に加え贈収賄・ハラスメント防止等、包括的な法令遵守体制の整備・強化
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針 当社グループは、存在意義、社会的使命として“Bringing value to life.”を企業理念に掲げています。 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標 当社グループは、2023年3月に中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定し、2030年に向けた新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、その実現を目的とする2026年度までの4年間の行動計画にもとづき事業を進めています。ESGを中核に据えた成長戦略を推進し、経営戦略としては、各事業における機会とリスクを踏まえた事業戦略の方向性(両利きの経営:AX、及び事業変革:BX)を定めるとともに、人的資本の更なる充実・グループ経営の変革・ガバナンスの強化(CX)、デジタル基盤の整備推進(DX)等のコーポレート基盤の強化に加え、脱炭素に向けた取組みの加速(EX)を推進します。事業投資計画としては、中期経営計画策定時点において2026年度までに予定していた1.2兆円規模の事業投資を1.6兆円規模に増額して実施します。当連結会計年度末時点で中期経営計画期間中の投資が決定している案件は約1.3兆円です。 (“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標) 2025年度実績中期目標(2026年目途)当期純利益2,117億円2,000~3,000億円ROIC6.4%6.5%以上ROE7.1%8.0~10.0% (株主還元策) 当社は、株主の皆様への安定的な利益還元を経営上の最重要課題の一つと位置付け、連結配当性向40%を目安に1株あたりの配当下限金額を年間200円として、業績の見通し等を総合的に勘案して利益配分を決定します。配当の詳細については「第4 提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。 自己株式の取得については、2025年5月8日開催の取締役会決議に基づき、2026年4月30日まで28,779,900株(取得価額の総額 約1,500億円)の取得を完了し、上記取締役会決議による自己株式の取得は終了しました。また、取得した自己株式は全株消却いたしました。 (3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題① 中期経営計画の遂行 地政学リスクの高まりを受け混迷を極める世界情勢の中、エネルギーや生活必需品を世界中に届け、人々のライフラインを守るべく “Bringing value to life.” を企業理念(ミッション)とし、新たに掲げたありたい姿(ビジョン)「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を目指して、中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” を進めています。 両利きの経営(AX)と事業変革(BX)から成る「基軸戦略」の下、既存中核事業を深化させると同時に新規成長事業を進化させ、これを「支えの戦略」となる人材・組織・グループ経営変革(CX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)が支えます。 ■中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” 完遂への取組み 経営戦略であるAX~EXの2024年度の主な進捗状況は以下の通りです。2025年度についても「既存中核事業の深化」と「新規成長事業の開拓」を加速していきます。 ◆脱炭素社会実現に向けたアンモニアサプライチェーン構築 アンモニア燃料アンモニア輸送船CGイメージ図 当社グループは脱炭素社会の実現に向けた有力な次世代燃料の一つとしてアンモニアに注力し、製造・輸送・供給を含む燃料アンモニアバリューチェーン全体における事業開発に取り組んでいます。 アンモニア燃料船の開発に関しては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金の助成を受ける40,000㎥級アンモニア燃料アンモニア輸送船(Ammonia-Fueled Medium Gas Carrier:AFMGC)の建造が順調に進行しており、2025年にはアンモニア燃料主機と補機の搭載も完了しました。高い環境性能と世界最高水準の安全対策を備えたAFMGCは、2026年11月の竣工後、世界最大級のアンモニアプレーヤーであるYara International ASAのグループ会社であるYara Clean Ammonia Switzerland SAに定期傭船される予定です。 また、商用燃料アンモニア輸送船に関しては、2025年12月には、当社グループのNYK Bulkship (Asia) Pte. Ltd.が株式会社JERAと、アンモニア輸送船2隻に関する定期傭船契約の基本条件合意書を締結しました。本合意に基づき、米国で製造される低炭素アンモニアを、碧南火力発電所(愛知県)へ海上輸送する計画を推進します。本計画は、商用燃料アンモニア輸送として先駆的な取組みであり、日本のエネルギートランジションの実現を後押しします。 当社は、アンモニア燃料船を中核に、将来の燃料供給・輸送需要を見据えたアンモニアサプライチェーンの社会実装を着実に進め、持続的な成長と企業価値向上を目指します。 ◆バイオ燃料の長期使用・保存に関する実証を経て、本格活用の段階へ 当社は、バイオ燃料B24(バイオ由来成分を24%混合)について、複数の船種において長期使用に関する実証を重ね、安定的な運用に向けた知見を蓄積しました。また、その一環として、シンガポールの非営利団体Global Centre for Maritime Decarbonisationと共同で、船上における長期使用及び保存に関する実証を行いました。その結果、技術的な安全性並びに長期運用の実現可能性を確認しました。これらの検証結果を踏まえ、現在は自動車専用船を中心にバイオ燃料の本格的な活用を進めており、使用量を拡大しています。 さらに2026年度には、バイオ由来成分100%のバイオ燃料B100について、酸化劣化や長期保管時の品質安定性への配慮がより重要であることを踏まえ、実運航における約1年間の検証を実施する予定です。 当社は、既存船舶インフラを活用し、バイオ燃料及びLNG燃料を、燃料転換期における現実的かつ即効性のある対応手段として位置付けています。第三者認証により持続可能性及びGHG排出削減効果が客観的に担保された低・脱炭素燃料は、欧州規制対応に活用できるほか、環境価値として分離し、お客様に提供することで新たな価値の創出も可能であり、脱炭素の推進と企業価値の向上の双方に資するものとなります。これらの取組みを通じ、当社は海運業界の脱炭素化を着実にリードしていきます。 ◆洋上風力発電を支える作業員輸送船の建造で3D技術を本格適用 作業員輸送船 本船写真(上)と3Dモデル(下)の比較 当社は、洋上風力発電事業を支える作業員輸送船(Crew Transfer Vessel:CTV)の建造において、設計から建造まで一貫して3D技術を活用する新たな取組みを進めています。 船の構造や機器配置、作業のしやすさを事前に3D上で確認することで、設計変更や手戻りを減らし、効率的で確実な建造を実現しました。 また、建造途中でも3Dデータを活用して品質を確認し、安全性の向上につなげています。さらに、完成後の点検や保守にも活用できる「3Dデジタル完成図書」を整備することで、運航開始後の管理効率向上も期待されます。本取組みを通じて、成長が見込まれる洋上風力分野において、安全で信頼性の高い輸送サービスを支えると同時に、当社の技術力と競争力を強化していきます。 ◆飛鳥Ⅲ就航 新造客船「飛鳥Ⅲ」提供:郵船クルーズ株式会社 客船事業では、34年ぶりの新造客船「飛鳥Ⅲ」が2025年7月に就航しました。 「飛鳥Ⅲ」では日本のクルーズ船で初となる船位保持制御システム、ポッド推進器や陸上電源受電装置、さらに世界の中型客船で数少ないLNG燃料に対応したエンジンを搭載し、環境に配慮したクルーズを実現します。 1991年に就航した初代「飛鳥」が日本におけるラグジュアリークルーズの礎を築き、続いて2006年に「飛鳥Ⅱ」が就航し、客船文化の発展を支えてきました。「飛鳥Ⅱ」、「飛鳥Ⅲ」の2隻体制の始動により、ラグジュアリー市場における競争力をさらに高めるとともに、より多くのお客様に“最幸時間”を提供する体制を強化していきます。 ◆NYKバルクシップパートナーズ株式会社発足 NYKバルクシップパートナーズ株式会社会社ロゴドライバルク船「KEY HUNTER」 NYKバルクシップパートナーズ株式会社は、当社グループにおけるドライバルク船事業の中核会社として、2026年4月に発足しました。 旭海運株式会社、八馬汽船株式会社、三菱鉱石輸送株式会社の3社が事業統合し、長い歴史に裏打ちされた知見と人材を結集することで、ドライバルク輸送分野における競争力の一層の強化を図ります。海上輸送業、船舶管理業、船主業を主な事業とし、当社が100%出資する完全子会社としてグループ戦略と一体で事業を推進します。保有隻数21隻及び船舶管理隻数約90隻を基盤に、安全運航の徹底と高品質なワンストップサービスの提供を通じ、安定的かつ持続的な収益創出と顧客価値の最大化を目指します。 ◆LNG輸送事業を通じた環境負荷低減と企業価値向上の両立 LNG運搬船「QUEST KIRISHIMA」 当社は、クリーンエネルギー需要の拡大を背景に、LNG輸送事業を重要な成長分野の一つと位置付けています。 2025年12月にはノルウェーの大手船主であるOcean Yield ASと協業し、米国の大手LNG生産事業者であるCheniere Energy Inc.の完全子会社であるCheniere Marketing International LLPに複数隻の新造LNG運搬船を長期定期傭船する契約を締結しました。長期輸送契約に基づくLNG船の運航を通じて、安定的な収益基盤を構築するとともに、グローバルなLNGサプライチェーンを支えていきます。 北米を起点とするLNG輸送は、地政学的分散やエネルギー安全保障の観点からも重要性が高まっており、当社は高度な安全運航ノウハウと豊富な実績を活かし、信頼性の高い輸送サービスを提供しています。今後もLNG需要の中長期的な成長を取り込みつつ、環境負荷低減と企業価値向上の両立を図ります。 ◆バルセロナ港に次世代完成車ターミナル建設 当社グループが運営する欧州の完成車ターミナル拠点 2025年5月に自動車物流事業における欧州拠点の強化を目的として、スペイン・バルセロナ港において完成車ターミナルの27年間の運営権を取得しました。2028年に稼働予定の完全自動立体駐車場を建設し、再生可能エネルギー活用により環境に配慮した効率的な自動車輸送を実現します。本事業は、西地中海エリアにおける完成車物流需要への対応力向上を図るものであり、北欧港湾に集中する既存物流の補完的役割を担う拠点として位置付けています。バルセロナ港は、海上輸送に加え鉄道・内陸輸送との接続性を有しており、欧州域内外を結ぶ物流拠点としての利便性を備えています。当社は、完成車物流及びターミナル運営におけるこれまでの知見を活かし、安定的な運営を通じて顧客ニーズへの対応力を高めるとともに、自動車物流事業の基盤強化を進めていきます。 ◆欧州物流企業Waldenグループのヘルスケア物流事業の買収 欧州ヘルスケア物流事業 当社グループは、中核事業と位置付ける物流事業の成長を担う存在として、郵船ロジスティクスグループ(以下、YLグループ)を中心に事業基盤の強化を進めています。 その一環として、2025年12月、欧州物流企業Waldenグループのヘルスケア物流事業を買収し、同事業を担う42社をYLグループ傘下に迎え入れました。 本買収により、欧州12カ国に展開する医薬品・医療機器物流の高品質ネットワークと、YLグループが有するグローバルな物流基盤及び運営ノウハウを融合させることで、温度管理や各国規制への対応が求められる高度な物流ニーズへの対応力を一層高めています。 ヘルスケア物流は今後も着実な成長が見込まれる分野であり、本件はYLグループの一層の成長を通じ、物流事業全体の収益基盤の拡大と付加価値の向上に資するものです。今後も当社グループは、成長分野である物流事業への戦略的投資を継続していきます。 ◆先進のクラウドとプラットフォームの導入による経営基盤の刷新 当社は、グローバル競争の激化や経営環境の不確実性が高まる中、データに基づく迅速な意思決定を根幹としたデータドリブン経営の実現を目的に、クラウド型の統合基幹業務システムや財務・経営管理の統合支援プラットフォームをはじめとした複数の先進的なデジタル基盤を導入し、社内システム基盤を刷新しました。 本取組みでは、本社及び国内外子会社3社と、その他船舶保有のための特別目的会社も合わせた約350社の会計基幹システムをクラウドへ移行し、財務・会計領域の主要機能を統合することで、従来分散していた会計基盤を一元化しました。これにより、業務の標準化と効率化を進めるとともに、経営管理における高度な計画・分析を可能とする体制を構築しています。また、クラウドの特長である定期的な機能更新を活用することで、稼働後も最新技術を継続して取り込める仕組みを整えました。 当社グループは今後も、業務プロセスの標準化とAI活用による定型業務の自動化を進め、より高度な分析・判断・提案を行う業務体制への転換を図ります。中期経営計画の実行を支える基盤として、データドリブン経営のさらなる高度化と企業価値向上に取り組んでいきます。 ◆CX Neo ~海技者の活躍促進プロジェクト~ 矢野美希 機関長 当社は、中核事業の深化と新規事業の開拓を両輪とする基軸戦略を支えるCXの一環として、海技者の活躍促進を目的としたプロジェクト「CX Neo」を推進しています。本プロジェクトでは、安全運航を支える高度な専門性と使命感を備えた人材が、長期にわたり情熱と誇りを持って働き続けられる会社であることを目標に、海技者に求める人物像の再定義を行うとともに、働き方、キャリアの柔軟性、船内環境といった多面的な課題の検討と改善に取り組んでいます。具体的には、船上経験を基礎とした陸上業務との往来を含むキャリアパスの整備や、就労・居住環境の改善を進めています。 また、当社は2004年から女性を海上職として採用しており、現在では30名超が海上・陸上を問わず全世界で活躍しています。2025年4月には、矢野美希一等機関士を機関長に登用しました。140年の歴史を持つ当社で女性の機関長登用は初めてです。今後も、多様な人材が活躍できる職場環境づくりと人材育成を推進していきます。 ② 遵法の徹底 当社グループは、遵法の徹底を最重要事項と位置付け、当社と国内外にある様々な事業を展開するグループ会社を対象にグローバルなガバナンス体制の構築を目指しており、以下の対策を着実に実行し、法令に則った公正な事業の遂行を徹底することに全力を尽くしていきます。・米州・欧州・東アジア・南アジアの各拠点にRegional Management Officeを設置・ベストプラクティスの共有や課題の速やかな解決を図るため、Regional Governance Officerの下に法務担当や内部監査人を配置・国内外グループ会社が制定している行動規準に対する誓約書の取得等の活動を継続・独占禁止法の遵守を徹底すべく、社内各部門・グループ会社にヒアリングを実施し、これらを踏まえた独占禁止法に関する行動指針の作成、研修の実施・コンプライアンス委員会や遵法活動徹底委員会の開催を通じ、独占禁止法対応に加え贈収賄・ハラスメント防止等、包括的な法令遵守体制の整備・強化
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】1.経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。(1)経営成績の状況 (単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率売上高25,88724,236△1,650△6.4%売上原価21,19319,942△1,250△5.9%販売費及び一般管理費2,5852,90732212.5%営業利益2,1081,386△722△34.3%経常利益4,9082,111△2,797△57.0%親会社株主に帰属する当期純利益4,7772,117△2,659△55.7% 平均為替レート152.73円/US$150.23円/US$△2.50円平均消費燃料価格US$618.78/MTUS$539.11/MT△US$79.67 (概況) 当連結会計年度の業績は、売上高2兆4,236億円、営業利益1,386億円、経常利益2,111億円、親会社株主に帰属する当期純利益2,117億円となりました。なお、営業外収益で持分法による投資利益として850億円を計上しました。うち、当社持分法適用会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(“ONE社”)からの持分法による投資利益計上額は190億円となりました。 <セグメント別概況> 当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。(単位:億円) 売上高経常利益前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率前連結会計年度当連結会計年度増減額ロラジイスナテ|ィ&クス事業定期船事業1,8041,80950.3%2,743497△2,245航空運送事業1,857411△1,446△77.9%21021△189物流事業8,1218,047△73△0.9%212102△110自動車事業5,3235,268△55△1.0%1,133979△154ドライバルク事業6,0725,510△561△9.3%18195△85エネルギー事業1,7852,36958432.7%46154482その他事業2,0461,813△232△11.4%69△0△69 <定期船事業> コンテナ船事業:新造船の竣工による船舶供給量の増加に加え、関税政策や中東情勢等の影響を受け、運賃市況は不安定に推移した結果、前連結会計年度の水準を下回りました。ONE社においても、運賃市況が下落した結果、利益水準は前連結会計年度を下回りました。 ターミナル関連事業:国内ターミナルでは前連結会計年度比で取扱量が減少しました。 以上の結果、定期船事業全体では前連結会計年度比で増収減益となりました。 <航空運送事業> 2025年8月1日を効力発生日として、日本貨物航空株式会社とANAホールディングス株式会社との株式交換が完了したことにより、2026年3月期第2四半期以降の業績には日本貨物航空株式会社を含みません。 以上の結果、航空運送事業では前連結会計年度比で減収減益となりました。 <物流事業> 航空貨物取扱事業:取扱量は前連結会計年度と概ね同水準を維持し、また、仕入価格の下落やスポット貨物の獲得により、利益水準は前連結会計年度を上回りました。 海上貨物取扱事業:取扱量は底堅く推移したものの、市況変動の影響を受け収益性が低下し、利益水準は前連結会計年度を下回りました。 ロジスティクス事業:関税政策等の影響による経済見通しの不透明さから、主要顧客の取扱量が減少した結果、利益水準は前連結会計年度比で下落しました。 以上の結果、物流事業全体では前連結会計年度比で減収減益となりました。 <自動車事業> 自動車船事業:輸送台数は概ね前連結会計年度並みの水準を維持しました。また、為替が前連結会計年度比で円高に推移したこと、及びインフレによる荷役費等のコスト上昇の影響を受けました。 自動車物流事業:欧州や一部東南アジア事業の取扱高が前連結会計年度比で増加しました。 以上の結果、自動車事業全体では前連結会計年度比で減収減益となりました。 <ドライバルク事業> 各船型の市況は前連結会計年度を上回りました。 ドライバルク事業全体では、為替が前連結会計年度比で円高に推移したことや、小型バルカー・ボックスシェイプ船における収益性の低下の影響を受けました。 以上の結果、前連結会計年度比で減収減益となりました。 <エネルギー事業> VLCC(大型原油タンカー):市況は大西洋域の貨物需要の増加や中東情勢の緊迫によりホルムズ海峡が事実上封鎖された影響等を受け、前連結会計年度を上回りました。 VLGC(大型LPGタンカー):関税政策等の影響により、トレードパターンが変化したことや、中東情勢の緊迫により中東地域からのLPG輸出が実質的に停止し、長距離輸送が増加したことで船腹需給が引き締まり、市況は前連結会計年度を上回りました。 石油製品タンカー:中東情勢の緊迫による原油価格の上昇が波及し、市況は前連結会計年度を上回りました。 LNG船:安定的な収益を生む中長期契約に支えられて順調に推移しました。 海洋事業:新規のFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)の稼働開始に伴い、一過性の利益を計上しました。既存のFPSO、シャトルタンカーは安定的に推移しました。 以上の結果、エネルギー事業全体では前連結会計年度比で増収増益となりました。 <その他事業> 船舶・技術事業:燃料油販売事業は燃料油価格の低下や販売数量の減少に伴い、低調に推移しました。 客船事業:飛鳥Ⅱ、飛鳥Ⅲともに順調にクルーズを催行したものの、飛鳥Ⅲの就航に向けた準備費用を計上しました。 以上の結果、その他事業全体では前連結会計年度比で減収減益となりました。 (2)キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて609億円増加し、2,108億円となりました。 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益2,767億円、減価償却費1,751億円、持分法による投資損益△850億円、利息及び配当金の受取額2,254億円等により4,733億円(前年同期5,107億円)となりました。 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△3,712億円(前年同期△597億円)となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払い等により△333億円(前年同期△4,277億円)となりました。 (3)生産、受注及び販売の実績 当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。 当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)定期船事業180,938100.3航空運送事業41,10222.1物流事業804,76799.1自動車事業526,88399.0ドライバルク事業551,06090.7エネルギー事業236,990132.7その他事業181,38188.6計2,523,12493.4消去(99,435)88.4合計2,423,68993.6(注) 売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。 2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。(1)財政状態及び経営成績等の分析 当連結会計年度末の総資産は、のれんや船舶の増加等により、前連結会計年度末に比べ8,748億円増加し、5兆2,016億円となりました。有利子負債は、長期借入金の増加等により4,630億円増加して1兆2,014億円となり、負債合計額も7,076億円増加し、2兆582億円となりました。純資産の部では、利益剰余金が1,802億円減少し、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が3兆719億円となり、これに非支配株主持分714億円を加えた純資産の合計は、3兆1,434億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は0.39に、また自己資本比率は59.1%となりました。経営成績については「1.経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」をご参照ください。 (2)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況 当社グループは、2023年4月から開始する4カ年の中期経営計画として“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定しました。“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標並びに2025年度実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標及び(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題」をご参照ください。 (3)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性① キャッシュ・フローの状況 「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。 ② 資金需要 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの自動車事業、ドライバルク事業及びエネルギー事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空貨物輸送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては、中期経営計画における船舶脱炭素化投資など既存事業への投資、新規事業やM&A投資を予定しています。当連結会計年度中には3,053億円の設備投資を行いました。 ③ 財務政策 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶に関してはリース等を活用しています。 当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金や内部留保した資金も投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。2026年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は7,646億円で、通貨は円のみならず米ドル等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、2026年3月31日現在1,420億円となっています。 当社グループは、資金の流動性確保に努めており、2026年3月31日現在2,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、予備的借入枠として円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。 なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。2026年3月31日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「AA-」、格付投資情報センター(R&I):「A+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Baa3」となっています。 (4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。 当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。 ① 収益の認識 当社グループの収益の認識は、主に一定の期間にわたり充足される履行義務として、航海期間及び輸送期間における日数等に基づき進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しています。 ② 貸倒引当金 当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。 ③ 投資の評価について 当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。 ④ 減価償却資産の償却 当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。 ⑤ 退職給付 従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 繰延税金資産 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。 ⑦ 固定資産の減損 当社グループは、原則として事業用資産においては投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。 (5)今後の見通し<定期船事業> コンテナ船事業:スエズ運河迂回に伴う喜望峰ルートの利用が年度を通じて継続すること、また中東情勢の緊迫が一定期間継続することによる費用の増加等を想定し、利益水準は当連結会計年度比で低下することを見込んでいます。 <物流事業> 航空貨物取扱事業・海上貨物取扱事業:取扱量は当連結会計年度比で増加することを見込んでいます。 ロジスティクス事業:2025年度に実施した欧州地域におけるヘルスケア物流事業の買収に伴うのれん償却額等の計上により、利益水準は当連結会計年度比で低下することを見込んでいます。 <自動車事業> 中東情勢の緊迫が一定期間継続することを想定し、輸送台数は当連結会計年度比で減少することを見込んでいます。 <ドライバルク事業> 全船型について、市況は堅調な荷動きを背景に底堅く推移することを見通し、利益水準は当連結会計年度比で上昇することを見込んでいます。 <エネルギー事業> VLCC・VLGC:中東情勢の緊迫が一定期間継続することを想定し、市況は当連結会計年度の水準を上回ることを見通します。 LNG船:新造船の竣工に加え、中長期契約による安定収益にも支えられ、堅調に推移する見込みです。 以上を踏まえ、翌連結会計年度は当連結会計年度比で増収減益を見込んでいます。