経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 ヤマトグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてヤマトグループが判断したものです。 (1)経営方針 ヤマトグループは、社会的インフラとしての宅急便ネットワークの高度化、より便利で快適な生活関連サービスの創造、革新的な物流システムの開発を通じて、豊かな社会の実現に貢献することを経営理念に掲げ、生活利便性の向上に役立つ商品・サービスを開発してきました。 今後も、社会の一員として社会の課題に正面から向き合い、お客様、社会のニーズに応える「新たな物流のエコシステム」を創出することで、豊かな社会の創造に持続的に貢献していきます。また、テクノロジーを起点に次世代の営業・幹線輸送・ラストマイルオペレーションを構築し、収益力の強化に努めることで、安定した経営を目指していきます。 (2)経営環境、経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を2030年の目指す姿として定めました。この実現に向け、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」を推進しつつ、取組みの進捗状況や事業環境の変化等を踏まえたアップデートをおこなっています。 当連結会計年度における経済環境は、物価上昇の見通しが強まる中での実質賃金減少の継続などにより、個人消費の停滞感が根強く残りました。また、深刻化する人手不足や、年度末にかけての中東情勢の緊迫化を背景としたエネルギー・原材料価格の高騰など、依然として厳しい事業環境が続いており、先行きは見通しづらい状況にあります。 このような状況の中、中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」に基づき、宅急便ネットワークの強靭化による基盤領域の利益成長、エクスプレス事業の顧客基盤や営業網を活用した事業間のシナジーによる法人向けビジネスの拡大、多様化する顧客や社会のニーズに応える新たなビジネスモデルの事業化およびグループ経営基盤の強化など、「経済価値」を生み出すとともに、持続可能な社会に向けた「環境価値」「社会価値」を創造する取組みを推進しています。 基盤領域では、宅急便ビジネスを安定的に利益確保できる事業構造に転換させるため、大口法人のお客様に対するプライシングの適正化や2025年10月に実施した「宅急便」届出運賃の改定により、コスト上昇分の適切な転嫁を進めています。セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービス提供に専念できる環境整備に注力するとともに、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの開発を進め、専用資材の事前購入により全国一律料金で荷物が送れる「こねこ便420」の全国での拡販や、宅急便のサービスラインアップの拡充として2025年11月には、午前中にお預かりした荷物を当日中にお届けする「宅急便当日配送サービス」の提供開始と、同一都道府県内運賃を新設しました。 法人ビジネス領域では、エクスプレス事業の顧客基盤や営業網を活用し、輸配送ネットワークに倉庫オペレーションや国際フォワーディングなどの付加価値を組み合わせ、お客様のビジネス拡大を支援することで、ヤマトグループの利益成長を目指しています。2025年10月には、ヤマトグループの輸送ターミナルと高付加価値機能を持つロジスティクスセンターを融合した統合型ビジネスソリューション拠点を、福島県郡山市に開設しました。同様の拠点を需要地に展開し、お客様や地域に新たな価値を提供していきます。また、グローバル事業では、インドで生産拡大を目指す製造業のグローバルサプライチェーン構築を支援するため、2026年1月にヤマトグループとして海外最大のロジスティクスセンターを開設しました。北米、中国、そして東南アジアを中心に営業力を強化し、国際フォワーディングの効率向上、越境EC事業者様への提案強化、内需拡大に伴う物流需要の取込みなどを、M&Aや戦略的業務提携も検討しながら推進しています。 また、中長期的な輸送力不足の深刻化や気候変動への対応など、環境・社会課題に向き合い、ビジネスパートナーとともに課題解決に積極的に取り組むことで、温室効果ガス排出量の削減や、持続可能で効率的な物流システムの構築、社員の健康管理などの知見とノウハウを蓄積してきました。それらを「グリーン・モビリティ」のビジネスモデルとして磨き上げ、サプライチェーンの持続可能性を高めるソリューションとしてお客様に提供することで、ヤマトグループの新たな成長につなげていきます。 [目指す姿] 「SX2030 ~1st Stage~」主要施策①基盤領域:宅急便ネットワークの強靭化と提供価値の拡大 付加価値に応じたプライシング適正化、セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービスの提供に専念できる環境を整備する「営業所改革」、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの開発、地域の市場性に基づく集配拠点の再配置と荷物の発送・受取に留まらない新たなサービス拠点の展開などを迅速に進めていきます。輸送領域においては、顧客ニーズに対応しつつ、輸送・積載効率を高め、固定費の抑制および業務量に応じた変動費のコントロールを実現するため、荷物の流動量の変化に即したターミナル間およびターミナル・集配拠点間の運び方見直し、仕分け作業を担う働き手の適正配置などに取り組んでいきます。 ②成長領域:法人ビジネス領域の拡大 既存の輸送ネットワークや国内外の倉庫に加え、輸送ターミナルと高付加価値機能を持つロジスティクスセンターを融合した統合型ビジネスソリューション拠点、貨物航空輸送、通関や不動産関連のノウハウなどのグループ経営資源を活かした付加価値の高いソリューションを法人のお客様に提供することで、利益成長を加速させていきます。 ③新規領域:新たなビジネスモデルの事業化 既存の経営資源を活用しつつ、多様なパートナーとともに、環境・社会課題を解決するビジネスモデルの創出を通じて経済価値を生み出し、社会と物流業界全体の持続性を高めるとともに、新たな収益基盤として成長を加速させていきます。 ④グループ経営基盤の強化 持続的な企業価値向上を実現するための基盤として、引き続き、人事戦略、デジタル戦略、環境・社会戦略を推進し、サステナブル経営およびコーポレート・ガバナンスの強化などに取り組みます。また、あらゆる事業領域においてAI技術を駆使したビジネスモデルの再構築を推進し、グループ全体のビジネス構造を変革していきます。 ⑤資本効率をより重視した経営の浸透 資本効率をより重視した経営の浸透を図り、資本コストを上回る資本収益性の実現に取り組むため、営業利益率およびROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を経営指標として設定しています。事業の収益性向上および利益成長の加速に加えて、バランスシート・マネジメントの強化とキャッシュ・フローの最適化に取り組むことで、資本効率の改善を図り、EPS(1株当たり当期純利益)および株主価値向上の基盤を構築していきます。 当該中期経営計画の最終年度となる2027年3月期においては、計画策定時に連結営業収益2兆~2兆4,000億円、連結営業利益1,200~1,600億円(連結営業利益率6%以上)、ROE12%以上、ROIC8%以上を目標と設定しましたが、事業環境の変化や取組みの進捗状況等を踏まえ、2027年3月期の連結業績見通しを連結営業収益1兆9,200億円、連結営業利益420億円(連結営業利益率2.2%)、ROE4.2%、ROIC3.7%へ見直しました。 当計画では「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を目指し、引き続き「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオの変革」に注力します。当連結会計年度において着実に進捗しているプライシングの適正化や法人向けビジネスの拡大、オペレーティングコストの適正化、間接コストの削減といった利益成長ドライバーの強化を図るとともに、バランスシート・マネジメントの強化とキャピタル・アロケーションの最適化を通じて持続的な企業価値向上に取り組んでいきます。 [成長イメージ] (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ヤマトグループを取り巻く事業環境は、不安定な国際情勢や金融市場の変動などにより、依然として先行き不透明な状況が続いています。また、物価上昇の影響や中長期的な輸送力不足の深刻化など、外部環境の変化に伴うコスト上昇が継続すると見込まれます。さらに、中長期的には、EC化のさらなる進展や地政学リスクの増大、少子高齢化・過疎化の進展、労働力不足や気候変動の深刻化などを想定しています。このような中、ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を2030年の目指す姿として定めています。そして、2027年3月期を最終年度として策定した中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」を「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオを変革する3年間」と位置づけ、以下①~⑤の取組みを推進していきます。 ① 宅急便ネットワークの強靭化と提供価値の拡大 宅配便市場は、ECの成長とともに拡大傾向にあるものの、基盤領域である個人および小口法人の市場は、人口減少や個人消費の低迷に伴う影響を受けています。また、EC化の進展と人口動態の変化に伴い、ラストマイル領域における集荷と配達の業務量や輸送領域における都市部・地方部間の荷物の流動量が変化しており、宅急便ネットワークの収益性は低下傾向にあります。 これらの状況を踏まえ、基盤領域である宅急便ビジネスを安定的に利益を確保できる事業構造に転換させるため、収益構成の変革に取り組み、付加価値に応じたプライシングの適正化を計画的に進めていきます。また、セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービスの提供に専念できる環境を整備するとともに、地域の市場性に基づく集配拠点の再配置、お客様のニーズを捉えた商品・サービスや、宅急便の発送・受け取りにとどまらないサービス開発を進めています。 輸送領域においては、社会的インフラとしての宅急便ネットワークをより効率的かつ持続的な形に強靭化し、顧客ニーズに対応しつつ、輸送・積載効率を高め、固定費の抑制および業務量に応じた変動費のコントロールを実現するため、荷物の流動量の変化に即したターミナル間およびターミナル・集配拠点間の運び方見直し、仕分け作業を担う働き手の適正配置などに取り組みます。 ② 法人向けビジネスの拡大 世界の政治・経済とサプライチェーンのブロック化や環境問題などのリスク要因が増大し、企業が対応を求められる中、ヤマトグループは変化を機会と捉え、サプライチェーン全体に拡がるお客様の経営課題の解決を目指すソリューションビジネスを成長領域と位置付けています。 法人のお客様の物流全般や経営課題の解決に取り組むコントラクト・ロジスティクス事業では、企業間物流における在庫・配送拠点やEC事業者様の総合物流センターの運営など、提供価値を拡大していきます。また、事業成長の基盤として、全国の物流拠点への仕分け・輸配送機能とロジスティクス機能が一体となった統合型ビジネスソリューション拠点の活用および展開を進めます。全国を網羅する強靭な輸配送ネットワークと一体化したこれらの拠点を活用し、お客様のサプライチェーン全体の最適化と事業戦略に貢献することで、法人向けビジネスのさらなる拡大を推進します。 グローバル事業においては、国際輸送と海外コントラクト・ロジスティクスも組み合わせることで、お客様のサプライチェーン全体に対する価値提供を進めています。北米、中国、そして東南アジアを中心に営業力を強化し、国際フォワーディングの効率向上、越境EC事業者様への提案強化、内需拡大に伴う物流需要の取込みなどを、M&Aや戦略的業務提携も検討しながら推進していきます。 ③ 新たなビジネスモデルの事業化 持続可能な未来の実現に向けて、中長期的な輸送力不足の深刻化や気候変動への対応など、環境・社会課題に向き合い、ビジネスパートナーとともに課題解決に積極的に取り組むことで、温室効果ガス(GHG)排出量の削減や、効率的な物流システムの構築、社員の健康管理などの知見とノウハウを蓄積してきました。それらを「グリーン・モビリティ」のビジネスモデルとして磨き上げ、ヤマトグループの新たな成長につなげていきます。 具体的には、EVの導入・運用を支援する「EVライフサイクルサービス」の拡販や、ヤマトエナジーマネジメント株式会社を中心とした再生可能エネルギーの供給などのエネルギー事業を推進します。あわせて、多様なステークホルダーが参画する共同輸配送のオープンプラットフォームの展開、自動車運送事業者向けの健康管理支援サービス等を通じ、物流業界全体の持続可能性向上と課題解決に貢献します。 ④ グループ経営基盤の強化 持続的な企業価値向上を実現するための基盤として、引き続き、人事戦略、デジタル戦略、環境・社会戦略を推進し、サステナブル経営およびコーポレート・ガバナンスの強化などに取り組んでいきます。 人事戦略については、引き続きセールスドライバーをはじめとした社員の待遇のさらなる向上や、働く環境の整備に向けた投資を推進しています。また、お客様に向き合う第一線の組織と人材をこれまで以上に強化するため、間接部門の業務効率化と組織のスリム化を図りながら、宅急便の営業所や法人営業支店などへの人材配置を進めるとともに、リーダー人材の育成に注力しています。そして、社員の働きがい向上のため、営業職や企画職などを対象に、パフォーマンスに応じて報酬を決定する制度改正を進めます。 デジタル戦略については、「AI・データドリブン経営」を本格化させ、データ活用による最適な経営資源の配置やバックオフィス業務の効率化を通じ、オペレーション全体の生産性向上を図るとともに、新たな顧客体験価値を創出することで、収益力の強化を図ります。あわせて、各組織でAI活用推進の中心となる人材育成を進めます。 サステナブル経営の強化については、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けた2つのビジョン「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」「共創による、フェアで、“誰一人取り残さない”社会の実現への貢献」に基づき、特定した重要課題(マテリアリティ)に対して引き続き取組みを強化していきます。 環境の領域については、「2050年温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ(自社排出)」および「2030年温室効果ガス排出量48%削減(2021年3月期比)」の実現に向け、引き続き「EVの導入」「太陽光発電設備の導入」「再生可能エネルギー由来電力の使用率向上」などの施策を推進するとともに、サプライチェーンにおけるGHGの実質排出量(Scope3)の把握や削減目標の設定などに取り組んでいきます。 社会の領域については、引き続き、人命の尊重を最優先とし、社員やパートナーの安全・健康に対する取組みを強化するとともに、多様な社員が活躍できる職場環境に向けた整備を進めています。そして、社会の諸課題に向き合い、ビジネスパートナーとの定期的な協議の実施や、課題の早期発見と解消のための体制・プロセス・仕組みの整備など、適切な関係に基づくサステナブル・サプライチェーンの構築を推進していきます。 コーポレート・ガバナンスの強化については、引き続き、経営の監督と執行の分離、経営の透明性の維持・強化などに取り組むとともに、経営管理の高度化を推進し、株主・投資家との建設的な対話や情報開示の充実を通じて、持続的な企業価値向上に努めていきます。 ⑤ 資本効率をより重視した経営の浸透 上記の①~④を推進することに加え、資本効率をより重視した経営の浸透を図り、資本コストを上回る資本収益性の実現に取り組むため、営業利益率およびROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を経営指標として設定しています。事業の収益性向上および利益成長の加速に加えて、バランスシート・マネジメントの強化とキャッシュ・フローの最適化に取り組むことで、資本効率の改善を図り、EPS(1株当たり当期純利益)および株主価値向上の基盤を構築していきます。 本中期経営計画期間においては、オペレーションの効率化に資する拠点戦略やAI・DX推進などへの成長投資を実施するとともに、お客様に対する環境負荷の少ない物流サービスの提供とオペレーションのエネルギー効率向上の両立を通じた低炭素社会の実現に向けて、EVや太陽光発電設備等への環境投資も実施します。なお、成長領域であるコントラクト・ロジスティクス事業およびグローバル事業では、自律的な成長施策に加え、M&Aや戦略的業務提携も活用していきます。 上記計画を財務面から支えるため、バランスシート・マネジメントの強化に取り組み、固定資産の流動化等を適宜検討するとともに、キャッシュの創出状況、保有現預金や自己資本比率等の状況、グループ資金の有効活用など、財務の健全性と効率性を意識しながら、必要に応じて金融機関からの借入および社債の発行を通じた資金調達を実施していきます。財務の健全性の観点から自己資本比率は45%程度、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.3~0.5倍程度を目安とします。株主還元については、親会社株主に帰属する当期純利益を基準とする配当性向40%以上を目標とし、自己株式の取得については、成長投資の進捗状況、キャッシュ・フローの動向、株価等の観点を踏まえ、柔軟に検討していきます。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 ヤマトグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてヤマトグループが判断したものです。 (1)経営方針 ヤマトグループは、社会的インフラとしての宅急便ネットワークの高度化、より便利で快適な生活関連サービスの創造、革新的な物流システムの開発を通じて、豊かな社会の実現に貢献することを経営理念に掲げ、生活利便性の向上に役立つ商品・サービスを開発してきました。 今後も、社会の一員として社会の課題に正面から向き合い、お客様、社会のニーズに応える「新たな物流のエコシステム」を創出することで、豊かな社会の創造に持続的に貢献していきます。また、テクノロジーを起点に次世代の営業・幹線輸送・ラストマイルオペレーションを構築し、収益力の強化に努めることで、安定した経営を目指していきます。 (2)経営環境、経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を2030年の目指す姿として定めました。この実現に向け、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」を推進しつつ、取組みの進捗状況や事業環境の変化等を踏まえたアップデートをおこなっています。 当連結会計年度における経済環境は、物価上昇の見通しが強まる中での実質賃金減少の継続などにより、個人消費の停滞感が根強く残りました。また、深刻化する人手不足や、年度末にかけての中東情勢の緊迫化を背景としたエネルギー・原材料価格の高騰など、依然として厳しい事業環境が続いており、先行きは見通しづらい状況にあります。 このような状況の中、中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」に基づき、宅急便ネットワークの強靭化による基盤領域の利益成長、エクスプレス事業の顧客基盤や営業網を活用した事業間のシナジーによる法人向けビジネスの拡大、多様化する顧客や社会のニーズに応える新たなビジネスモデルの事業化およびグループ経営基盤の強化など、「経済価値」を生み出すとともに、持続可能な社会に向けた「環境価値」「社会価値」を創造する取組みを推進しています。 基盤領域では、宅急便ビジネスを安定的に利益確保できる事業構造に転換させるため、大口法人のお客様に対するプライシングの適正化や2025年10月に実施した「宅急便」届出運賃の改定により、コスト上昇分の適切な転嫁を進めています。セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービス提供に専念できる環境整備に注力するとともに、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの開発を進め、専用資材の事前購入により全国一律料金で荷物が送れる「こねこ便420」の全国での拡販や、宅急便のサービスラインアップの拡充として2025年11月には、午前中にお預かりした荷物を当日中にお届けする「宅急便当日配送サービス」の提供開始と、同一都道府県内運賃を新設しました。 法人ビジネス領域では、エクスプレス事業の顧客基盤や営業網を活用し、輸配送ネットワークに倉庫オペレーションや国際フォワーディングなどの付加価値を組み合わせ、お客様のビジネス拡大を支援することで、ヤマトグループの利益成長を目指しています。2025年10月には、ヤマトグループの輸送ターミナルと高付加価値機能を持つロジスティクスセンターを融合した統合型ビジネスソリューション拠点を、福島県郡山市に開設しました。同様の拠点を需要地に展開し、お客様や地域に新たな価値を提供していきます。また、グローバル事業では、インドで生産拡大を目指す製造業のグローバルサプライチェーン構築を支援するため、2026年1月にヤマトグループとして海外最大のロジスティクスセンターを開設しました。北米、中国、そして東南アジアを中心に営業力を強化し、国際フォワーディングの効率向上、越境EC事業者様への提案強化、内需拡大に伴う物流需要の取込みなどを、M&Aや戦略的業務提携も検討しながら推進しています。 また、中長期的な輸送力不足の深刻化や気候変動への対応など、環境・社会課題に向き合い、ビジネスパートナーとともに課題解決に積極的に取り組むことで、温室効果ガス排出量の削減や、持続可能で効率的な物流システムの構築、社員の健康管理などの知見とノウハウを蓄積してきました。それらを「グリーン・モビリティ」のビジネスモデルとして磨き上げ、サプライチェーンの持続可能性を高めるソリューションとしてお客様に提供することで、ヤマトグループの新たな成長につなげていきます。 [目指す姿] 「SX2030 ~1st Stage~」主要施策①基盤領域:宅急便ネットワークの強靭化と提供価値の拡大 付加価値に応じたプライシング適正化、セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービスの提供に専念できる環境を整備する「営業所改革」、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの開発、地域の市場性に基づく集配拠点の再配置と荷物の発送・受取に留まらない新たなサービス拠点の展開などを迅速に進めていきます。輸送領域においては、顧客ニーズに対応しつつ、輸送・積載効率を高め、固定費の抑制および業務量に応じた変動費のコントロールを実現するため、荷物の流動量の変化に即したターミナル間およびターミナル・集配拠点間の運び方見直し、仕分け作業を担う働き手の適正配置などに取り組んでいきます。 ②成長領域:法人ビジネス領域の拡大 既存の輸送ネットワークや国内外の倉庫に加え、輸送ターミナルと高付加価値機能を持つロジスティクスセンターを融合した統合型ビジネスソリューション拠点、貨物航空輸送、通関や不動産関連のノウハウなどのグループ経営資源を活かした付加価値の高いソリューションを法人のお客様に提供することで、利益成長を加速させていきます。 ③新規領域:新たなビジネスモデルの事業化 既存の経営資源を活用しつつ、多様なパートナーとともに、環境・社会課題を解決するビジネスモデルの創出を通じて経済価値を生み出し、社会と物流業界全体の持続性を高めるとともに、新たな収益基盤として成長を加速させていきます。 ④グループ経営基盤の強化 持続的な企業価値向上を実現するための基盤として、引き続き、人事戦略、デジタル戦略、環境・社会戦略を推進し、サステナブル経営およびコーポレート・ガバナンスの強化などに取り組みます。また、あらゆる事業領域においてAI技術を駆使したビジネスモデルの再構築を推進し、グループ全体のビジネス構造を変革していきます。 ⑤資本効率をより重視した経営の浸透 資本効率をより重視した経営の浸透を図り、資本コストを上回る資本収益性の実現に取り組むため、営業利益率およびROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を経営指標として設定しています。事業の収益性向上および利益成長の加速に加えて、バランスシート・マネジメントの強化とキャッシュ・フローの最適化に取り組むことで、資本効率の改善を図り、EPS(1株当たり当期純利益)および株主価値向上の基盤を構築していきます。 当該中期経営計画の最終年度となる2027年3月期においては、計画策定時に連結営業収益2兆~2兆4,000億円、連結営業利益1,200~1,600億円(連結営業利益率6%以上)、ROE12%以上、ROIC8%以上を目標と設定しましたが、事業環境の変化や取組みの進捗状況等を踏まえ、2027年3月期の連結業績見通しを連結営業収益1兆9,200億円、連結営業利益420億円(連結営業利益率2.2%)、ROE4.2%、ROIC3.7%へ見直しました。 当計画では「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を目指し、引き続き「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオの変革」に注力します。当連結会計年度において着実に進捗しているプライシングの適正化や法人向けビジネスの拡大、オペレーティングコストの適正化、間接コストの削減といった利益成長ドライバーの強化を図るとともに、バランスシート・マネジメントの強化とキャピタル・アロケーションの最適化を通じて持続的な企業価値向上に取り組んでいきます。 [成長イメージ] (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ヤマトグループを取り巻く事業環境は、不安定な国際情勢や金融市場の変動などにより、依然として先行き不透明な状況が続いています。また、物価上昇の影響や中長期的な輸送力不足の深刻化など、外部環境の変化に伴うコスト上昇が継続すると見込まれます。さらに、中長期的には、EC化のさらなる進展や地政学リスクの増大、少子高齢化・過疎化の進展、労働力不足や気候変動の深刻化などを想定しています。このような中、ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を2030年の目指す姿として定めています。そして、2027年3月期を最終年度として策定した中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」を「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオを変革する3年間」と位置づけ、以下①~⑤の取組みを推進していきます。 ① 宅急便ネットワークの強靭化と提供価値の拡大 宅配便市場は、ECの成長とともに拡大傾向にあるものの、基盤領域である個人および小口法人の市場は、人口減少や個人消費の低迷に伴う影響を受けています。また、EC化の進展と人口動態の変化に伴い、ラストマイル領域における集荷と配達の業務量や輸送領域における都市部・地方部間の荷物の流動量が変化しており、宅急便ネットワークの収益性は低下傾向にあります。 これらの状況を踏まえ、基盤領域である宅急便ビジネスを安定的に利益を確保できる事業構造に転換させるため、収益構成の変革に取り組み、付加価値に応じたプライシングの適正化を計画的に進めていきます。また、セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービスの提供に専念できる環境を整備するとともに、地域の市場性に基づく集配拠点の再配置、お客様のニーズを捉えた商品・サービスや、宅急便の発送・受け取りにとどまらないサービス開発を進めています。 輸送領域においては、社会的インフラとしての宅急便ネットワークをより効率的かつ持続的な形に強靭化し、顧客ニーズに対応しつつ、輸送・積載効率を高め、固定費の抑制および業務量に応じた変動費のコントロールを実現するため、荷物の流動量の変化に即したターミナル間およびターミナル・集配拠点間の運び方見直し、仕分け作業を担う働き手の適正配置などに取り組みます。 ② 法人向けビジネスの拡大 世界の政治・経済とサプライチェーンのブロック化や環境問題などのリスク要因が増大し、企業が対応を求められる中、ヤマトグループは変化を機会と捉え、サプライチェーン全体に拡がるお客様の経営課題の解決を目指すソリューションビジネスを成長領域と位置付けています。 法人のお客様の物流全般や経営課題の解決に取り組むコントラクト・ロジスティクス事業では、企業間物流における在庫・配送拠点やEC事業者様の総合物流センターの運営など、提供価値を拡大していきます。また、事業成長の基盤として、全国の物流拠点への仕分け・輸配送機能とロジスティクス機能が一体となった統合型ビジネスソリューション拠点の活用および展開を進めます。全国を網羅する強靭な輸配送ネットワークと一体化したこれらの拠点を活用し、お客様のサプライチェーン全体の最適化と事業戦略に貢献することで、法人向けビジネスのさらなる拡大を推進します。 グローバル事業においては、国際輸送と海外コントラクト・ロジスティクスも組み合わせることで、お客様のサプライチェーン全体に対する価値提供を進めています。北米、中国、そして東南アジアを中心に営業力を強化し、国際フォワーディングの効率向上、越境EC事業者様への提案強化、内需拡大に伴う物流需要の取込みなどを、M&Aや戦略的業務提携も検討しながら推進していきます。 ③ 新たなビジネスモデルの事業化 持続可能な未来の実現に向けて、中長期的な輸送力不足の深刻化や気候変動への対応など、環境・社会課題に向き合い、ビジネスパートナーとともに課題解決に積極的に取り組むことで、温室効果ガス(GHG)排出量の削減や、効率的な物流システムの構築、社員の健康管理などの知見とノウハウを蓄積してきました。それらを「グリーン・モビリティ」のビジネスモデルとして磨き上げ、ヤマトグループの新たな成長につなげていきます。 具体的には、EVの導入・運用を支援する「EVライフサイクルサービス」の拡販や、ヤマトエナジーマネジメント株式会社を中心とした再生可能エネルギーの供給などのエネルギー事業を推進します。あわせて、多様なステークホルダーが参画する共同輸配送のオープンプラットフォームの展開、自動車運送事業者向けの健康管理支援サービス等を通じ、物流業界全体の持続可能性向上と課題解決に貢献します。 ④ グループ経営基盤の強化 持続的な企業価値向上を実現するための基盤として、引き続き、人事戦略、デジタル戦略、環境・社会戦略を推進し、サステナブル経営およびコーポレート・ガバナンスの強化などに取り組んでいきます。 人事戦略については、引き続きセールスドライバーをはじめとした社員の待遇のさらなる向上や、働く環境の整備に向けた投資を推進しています。また、お客様に向き合う第一線の組織と人材をこれまで以上に強化するため、間接部門の業務効率化と組織のスリム化を図りながら、宅急便の営業所や法人営業支店などへの人材配置を進めるとともに、リーダー人材の育成に注力しています。そして、社員の働きがい向上のため、営業職や企画職などを対象に、パフォーマンスに応じて報酬を決定する制度改正を進めます。 デジタル戦略については、「AI・データドリブン経営」を本格化させ、データ活用による最適な経営資源の配置やバックオフィス業務の効率化を通じ、オペレーション全体の生産性向上を図るとともに、新たな顧客体験価値を創出することで、収益力の強化を図ります。あわせて、各組織でAI活用推進の中心となる人材育成を進めます。 サステナブル経営の強化については、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けた2つのビジョン「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」「共創による、フェアで、“誰一人取り残さない”社会の実現への貢献」に基づき、特定した重要課題(マテリアリティ)に対して引き続き取組みを強化していきます。 環境の領域については、「2050年温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ(自社排出)」および「2030年温室効果ガス排出量48%削減(2021年3月期比)」の実現に向け、引き続き「EVの導入」「太陽光発電設備の導入」「再生可能エネルギー由来電力の使用率向上」などの施策を推進するとともに、サプライチェーンにおけるGHGの実質排出量(Scope3)の把握や削減目標の設定などに取り組んでいきます。 社会の領域については、引き続き、人命の尊重を最優先とし、社員やパートナーの安全・健康に対する取組みを強化するとともに、多様な社員が活躍できる職場環境に向けた整備を進めています。そして、社会の諸課題に向き合い、ビジネスパートナーとの定期的な協議の実施や、課題の早期発見と解消のための体制・プロセス・仕組みの整備など、適切な関係に基づくサステナブル・サプライチェーンの構築を推進していきます。 コーポレート・ガバナンスの強化については、引き続き、経営の監督と執行の分離、経営の透明性の維持・強化などに取り組むとともに、経営管理の高度化を推進し、株主・投資家との建設的な対話や情報開示の充実を通じて、持続的な企業価値向上に努めていきます。 ⑤ 資本効率をより重視した経営の浸透 上記の①~④を推進することに加え、資本効率をより重視した経営の浸透を図り、資本コストを上回る資本収益性の実現に取り組むため、営業利益率およびROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を経営指標として設定しています。事業の収益性向上および利益成長の加速に加えて、バランスシート・マネジメントの強化とキャッシュ・フローの最適化に取り組むことで、資本効率の改善を図り、EPS(1株当たり当期純利益)および株主価値向上の基盤を構築していきます。 本中期経営計画期間においては、オペレーションの効率化に資する拠点戦略やAI・DX推進などへの成長投資を実施するとともに、お客様に対する環境負荷の少ない物流サービスの提供とオペレーションのエネルギー効率向上の両立を通じた低炭素社会の実現に向けて、EVや太陽光発電設備等への環境投資も実施します。なお、成長領域であるコントラクト・ロジスティクス事業およびグローバル事業では、自律的な成長施策に加え、M&Aや戦略的業務提携も活用していきます。 上記計画を財務面から支えるため、バランスシート・マネジメントの強化に取り組み、固定資産の流動化等を適宜検討するとともに、キャッシュの創出状況、保有現預金や自己資本比率等の状況、グループ資金の有効活用など、財務の健全性と効率性を意識しながら、必要に応じて金融機関からの借入および社債の発行を通じた資金調達を実施していきます。財務の健全性の観点から自己資本比率は45%程度、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.3~0.5倍程度を目安とします。株主還元については、親会社株主に帰属する当期純利益を基準とする配当性向40%以上を目標とし、自己株式の取得については、成長投資の進捗状況、キャッシュ・フローの動向、株価等の観点を踏まえ、柔軟に検討していきます。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 当連結会計年度におけるヤマトグループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析は次のとおりです。 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてヤマトグループが判断したものです。 (1)経営成績 当連結会計年度における経済環境は、物価上昇の見通しが強まる中での実質賃金減少の継続などにより、個人消費の停滞感が根強く残りました。また、深刻化する人手不足や、年度末にかけての中東情勢の緊迫化を背景としたエネルギー・原材料価格の高騰など、依然として厳しい事業環境が続いており、先行きは見通しづらい状況にあります。 このような状況の中、ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」に基づき、宅急便ネットワークの強靭化による基盤領域の利益成長、ビジネスソリューションの提供を通じた法人向けビジネスの拡大、多様化する顧客や社会のニーズに応える新たなビジネスモデルの事業化およびグループ経営基盤の強化など、「経済価値」を生み出すとともに、持続可能な社会に向けた「環境価値」「社会価値」を創造する取組みを推進しています。 当連結会計年度の連結業績は、以下のとおりとなりました。 区分前連結会計年度当連結会計年度増減伸率(%)営業収益(百万円)1,762,6961,865,675102,9795.8営業利益(百万円)14,20628,30414,09899.2経常利益(百万円)19,58726,2586,67034.1親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)37,93713,662△24,275△64.0 当連結会計年度の営業収益は1兆8,656億75百万円となり、前連結会計年度に比べ1,029億79百万円の増収となりました。これは、宅急便部門が向き合う小口法人・個人のお客様からの宅急便取扱数量の拡大、法人部門が向き合う大口法人のお客様に対するプライシングの適正化、および法人向けビジネスの拡大など、収益構成の変革に向けた取組みが進展したことによるものです。 営業費用は1兆8,373億70百万円となり、前連結会計年度に比べ888億80百万円増加しました。これは、宅急便ネットワークの強靭化に向けた社員やパートナーの待遇向上など人的資本への投資や集配拠点の再配置などネットワーク投資の実行、調達単価の上昇などによるものです。一方で、輸送領域のオペレーションの見直しに取り組み、コストコントロールに注力しました。 この結果、当連結会計年度の営業利益は283億4百万円となり、前連結会計年度に比べ140億98百万円の増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、当連結会計年度においても資本効率の向上に向けた資産の流動化や政策保有株式の売却を継続して進めたものの、前連結会計年度に本社ビル等の大型のセール・アンド・リースバックに伴う特別利益を計上した反動などにより136億62百万円となり、前連結会計年度に比べ242億75百万円の減益となりました。 <セグメント別の概況>○エクスプレス事業① エクスプレス事業は、個人および法人のお客様に対し、宅急便を中心とした国内輸配送サービスを提供しており、宅急便部門が向き合う小口法人・個人のお客様からの宅急便取扱数量の拡大、法人部門が向き合う大口法人のお客様を中心とした付加価値に応じたプライシングの適正化を進めています。また、セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービス提供に専念できる環境整備に注力するとともに、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの開発、地域の市場性に基づく集配拠点の再配置、宅急便の発送・受け取りにとどまらないサービスを提供する地域密着型のサービス拠点の展開を進めています。また、宅急便ネットワークの強靭化に資する輸送の効率化も進めています。 ② 当連結会計年度においては、引き続き、外部環境の変化によるコスト上昇を踏まえ、宅急便部門における小口法人・個人のお客様に対する営業強化および法人部門における大口法人のお客様の多様な輸送ニーズへの対応や、付加価値に応じたプライシング適正化の取組みを推進しました。具体的には、2025年10月より宅急便の届出運賃を改定するとともに、同年11月には、午前中にお預かりした荷物を当日中にお届けする「宅急便当日配送サービス」の提供開始と、同一都道府県内運賃を新設しました。また、EC事業者様との連携による「置き配」サービスの提供拡大など、より多くのお客様に快適な受け取り体験を提供し、再配達の削減、物流の効率化や温室効果ガス排出量の削減にも資する取組みを推進しました。加えて、小さな荷物の配送ニーズに応えるため、専用資材の事前購入により全国一律料金で荷物が送れる「こねこ便420」について、沖縄県を除く全国で拡販を推進しました。宅急便ネットワークの強靭化については、お客様のニーズや輸送パートナーの適切な働き方に対応しつつ、輸送・積載効率を高め、オペレーティングコストを適正化するため、長距離区間は、中継拠点を定め、リレー方式でつなぐ輸送方法への切り替えや、貨物専用機の活用を含めたモーダルシフトの推進など、これまでの運び方を見直すとともに、仕分け作業を担う人材の適正配置などの取組みを推進しました。③ 外部顧客への営業収益は、宅急便部門が向き合う小口法人・個人のお客様からの宅急便取扱数量の拡大、および法人部門が向き合う大口法人のお客様に対するプライシングの適正化が進展したことなどにより1兆5,579億78百万円となり、前連結会計年度に比べ1.5%増加しました。営業利益は22億99百万円となり、前連結会計年度に比べ151億98百万円増加しました。 ○コントラクト・ロジスティクス事業① コントラクト・ロジスティクス事業は、輸配送ネットワークに倉庫オペレーションなどの付加価値を組み合わせ、法人のお客様の課題解決や事業成長を支援するソリューションを提供しています。② 当連結会計年度においては、連結子会社化した株式会社ナカノ商会のノウハウも活用し、企業間の在庫・配送拠点やEC事業者様の総合物流センターの運営など、より付加価値の高いサプライチェーンソリューションの提案や、オペレーションの品質・生産性改善などに取り組みました。また、2025年10月には、ヤマトグループの輸送ターミナルと高付加価値機能を持つロジスティクスセンターを融合した統合型ビジネスソリューション拠点を、福島県郡山市に開設しました。③ 外部顧客への営業収益は、新規案件の獲得が進展したこと、および株式会社ナカノ商会の連結子会社化などにより1,646億2百万円となり、前連結会計年度に比べ69.6%増加しました。営業利益は62億17百万円となり、前連結会計年度に比べ6億34百万円増加しました。 ○グローバル事業① グローバル事業は、日本国内および海外事業会社が連携し、国際フォワーディングや国際エクスプレス、海外現地におけるコントラクト・ロジスティクス等を組み合わせ、法人のお客様のグローバルサプライチェーン全体を最適化するソリューションを提供しています。サプライチェーンの変化を好機と捉え、これまで宅急便で培った国内の膨大な顧客基盤を活かしつつ、オートモーティブやハイテク、食品産業などヤマトグループが強みを発揮している領域のさらなる拡大に努めるとともに、日本、北米、中国、東南アジアを中心に営業力の強化を進めています。② 当連結会計年度においては、国内事業会社および各国に展開するグループ現地法人がこれまで以上に連携を強化し、一体的に事業推進する体制を整備するとともに、引き続き、国際フォワーディングの混載効率向上や、拡大する越境EC事業者様への提案強化、注力地域の内需拡大に伴う物流需要の取込みなどを推進しました。③ 外部顧客への営業収益は、国際フォワーディングの拡販が進展したことなどにより975億52百万円となり、前連結会計年度に比べ13.5%増加しました。営業利益は81億50百万円となり、前連結会計年度に比べ8億77百万円減少しました。(参考)区分前連結会計年度当連結会計年度増減伸率(%)宅急便・宅急便コンパクト・EAZY(百万個)1,9611,941△20△1.0ネコポス・クロネコゆうパケット(百万個)3914516015.4クロネコゆうメール(百万冊)11095△14△13.6 ○モビリティ事業① モビリティ事業は、これまでヤマトグループ内での環境投資や実証実験を通じて蓄積したEV、太陽光発電設備、エネルギーマネジメントなどのノウハウを活用し、車両を使用する法人のお客様の環境対応ニーズに応えるため、車両整備サービスに加え、EVの調達や効率的な活用ノウハウ、再生可能エネルギー由来電力の供給、ヤマトグループで開発したエネルギーマネジメントシステムなどをパッケージ化した「EVライフサイクルサービス」の拡販を推進しています。また、運送事業者様の安全運行と車両稼働時間の拡大に資する、稼働を止めない車両整備サービスを提供しています。② 当連結会計年度においては、「EVライフサイクルサービス」の営業体制を強化し、拡販を推進しました。また、業務プロセスの見直しにより自動車整備士が本業に注力できる環境作りを推進するとともに、車両整備サービスの拡販と適正料金の収受に取り組みました。③ 外部顧客への営業収益は、契約車両台数の増加に加え、適正料金の収受などにより220億33百万円となり、前連結会計年度に比べ7.5%増加しました。営業利益は、コストの適正化に注力したことなどにより52億21百万円となり、前連結会計年度に比べ14億40百万円増加しました。 ○その他① ヤマトグループが保有するITやコールセンター、金融サービスなどの機能は、お客様のサプライチェーン全体に対する提供価値拡大に向けた取組みを支えています。当連結会計年度においては、引き続き、お客様の業務効率化とエンドユーザーの利便性向上に資するITサービスの提供などを推進しました。② 外部顧客への営業収益は235億7百万円となり、前連結会計年度に比べ3.9%減少しました。営業利益は66億29百万円となり、前連結会計年度に比べ15億71百万円減少しました。 <その他の取組み>① ヤマトグループは、人命の尊重を最優先とし、安全に対する様々な取組みを実施しており、輸送を主な事業とするグループ各社を中心に、安全管理規程の策定および管理体制の構築、年度計画の策定など、運輸安全マネジメントに取り組んでいます。ヤマト運輸株式会社では、2025年10月より集配車両約4.6万台のドライブレコーダーを順次リニューアルし、運転状況の可視化を通じた安全意識と運転技術のさらなる向上を図っています。また、引き続き「こども交通安全教室」を幼稚園・小学校などで開催するとともに、グループ全体での「交通事故ゼロ運動」を実施するなど、安全意識の向上を図る取り組みを推進しました。② ヤマトグループは、豊かな地域づくりがヤマトグループの成長と発展の基盤であると考え、地域社会の健全で持続的な発展とそこに暮らす人々の質の高い生活の確保を目指し、企業市民活動に取り組んでいます。環境の領域では、全国にネットワークを有する企業グループとして、地域の豊かな自然を将来に繋げていくため、次世代を担う子どもたちへの環境教育をサポートする「クロネコヤマト環境教室」を、2005年から全国で3,600回以上開催しており、累計参加人数は約27万人となりました。また、地域コミュニティの領域では、お客様や地域の皆様に対する感謝の気持ちを込めて、年齢や地域の枠を超えたすべての皆様へ本物の音楽をお届けすることを目的とした音楽宅急便「クロネコ ファミリーコンサート」を、1986年から全国で367回開催しており、累計参加人数は約60万人となりました。③ ヤマトグループは、社会とともに持続的に発展する企業を目指し、公益財団法人ヤマト福祉財団を中心に、障がい者が自主的に働く喜びを実感できる社会の実現に向けて様々な活動を行っています。具体的には、パン製造・販売を営むスワンベーカリーにおける積極的な雇用や、就労に必要な技術や知識の訓練を行う就労支援施設の運営など、障がい者の経済的な自立支援を継続的に行っています。 (2)生産、受注及び販売の実績 セグメントごとの営業収益は次のとおりです。 なお、ヤマトグループは、貨物運送事業を中心とするサービスを主要な商品としているため、生産および受注の実績は記載を省略しています。 セグメントの名称 前連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) 当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) 比 較 増減率 (%) 収入金額(百万円)構成比(%)金額(百万円)構成比(%)エクスプレス事業運送収入1,514,93185.91,544,12282.81.9物流支援収入47,6062.747,0652.5△1.1その他41,0092.339,6582.1△3.3内部売上消去△68,837△3.9△72,867△3.95.9計1,534,71087.11,557,97883.51.5コントラクト・ロジスティクス事業運送収入18,8251.154,6122.9190.1物流支援収入81,9164.6117,2316.343.1その他5,1210.316,8220.9228.5内部売上消去△8,789△0.5△24,063△1.3173.8計97,0745.5164,6028.869.6グローバル事業運送収入6,5100.46,2430.3△4.1物流支援収入116,4806.6134,7747.215.7その他3,7450.24,5600.221.8内部売上消去△40,786△2.3△48,025△2.617.7計85,9504.997,5525.213.5モビリティ事業その他57,6303.370,4473.822.2内部売上消去△37,125△2.1△48,413△2.630.4計20,5051.222,0331.27.5その他その他71,8724.167,4103.6△6.2内部売上消去△47,417△2.7△43,902△2.4△7.4計24,4551.423,5071.3△3.9合 計1,762,696100.01,865,675100.05.8 (3)財政状態 総資産は1兆2,801億70百万円となり、前連結会計年度末に比べ127億42百万円増加しました。これは主に、現金及び預金が301億58百万円増加した一方で、不動産戦略に基づく固定資産の流動化により土地が104億79百万円減少したこと、およびコントラクト・ロジスティクス事業においてのれんの評価に伴いのれんを134億34百万円償却したことによるものです。これに加え、エクスプレス事業を中心として車両の調達を一部リースに切り替えたことから、車両が75億25百万円減少した一方で、リース資産が132億98百万円増加しました。 負債は6,981億13百万円となり、前連結会計年度末に比べ310億35百万円増加しました。これは主に、リース資産を取得したことによりリース債務が174億41百万円増加したこと、およびその他の事業における割賦販売の取扱高が増加したことに伴い運転資金としての借入が増加したことなどから短期借入金が70億96百万円増加したことによるものです。 純資産は5,820億57百万円となり、前連結会計年度末に比べ182億93百万円減少しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益が136億62百万円となった一方で、剰余金の配当を148億7百万円実施したこと、ならびに自己株式を189億15百万円取得したことによるものです。 以上により、自己資本比率は前連結会計年度末の46.5%から44.6%となりました。 (4)キャッシュ・フロー○営業活動によるキャッシュ・フロー 営業活動によるキャッシュ・フローは722億18百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入が244億85百万円増加しました。これは主に、税金等調整前当期純利益が前連結会計年度に比べ249億36百万円減少した一方で、非資金損益項目である減価償却費およびのれん償却額が前連結会計年度に比べ191億45百万円増加したこと、投資活動によるキャッシュ・フローに含まれる損益項目である固定資産売却損益および投資有価証券売却損益が前連結会計年度に比べ185億33百万円増加したことによるものです。これに加え、未払消費税等の増加により未払消費税等の増減額が前連結会計年度に比べ147億29百万円増加した一方で、法人税等の支払額が前連結会計年度に比べ149億10百万円増加しました。○投資活動によるキャッシュ・フロー 投資活動によるキャッシュ・フローは72億70百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が370億86百万円減少しました。これは主に、車両の調達をリースに切り替えたことに伴い有形固定資産の取得による支出が前連結会計年度に比べ173億93百万円減少したこと、および前連結会計年度にコントラクト・ロジスティクス事業において連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が353億7百万円あった一方で、投資有価証券の売却による収入が前連結会計年度に比べ120億13百万円減少したことによるものです。○財務活動によるキャッシュ・フロー 財務活動によるキャッシュ・フローは370億73百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が464億94百万円増加しました。これは主に、借入れによる収入が前連結会計年度に比べ578億83百万円減少した一方で、自己株式の取得による支出が前連結会計年度に比べ121億78百万円減少したことによるものです。 以上により、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は2,378億22百万円となり、前連結会計年度末に比べ297億65百万円増加しました。 (5)資本の財源及び資金の流動性に関する情報 ヤマトグループは、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」に基づき「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を目指し、経済価値のみならず環境価値、社会価値を同時に創出していくことで、中長期的な企業価値向上を実現していく取組みを推進しています。本中期経営計画期間においては、オペレーションの効率化に資する拠点戦略やAI・DX推進などへの成長投資を実施するとともに、お客様に対する環境負荷の少ない物流サービスの提供とオペレーションのエネルギー効率向上の両立を通じた低炭素社会の実現に向けて、EVや太陽光発電設備等への環境投資も実施します。なお、成長領域であるコントラクト・ロジスティクス事業およびグローバル事業では、自律的な成長施策に加え、M&Aや戦略的業務提携も活用していきます。 上記計画を財務面から支えるため、バランスシート・マネジメントの強化に取り組み、固定資産の流動化等を適宜検討するとともに、キャッシュの創出状況、保有現預金や自己資本比率等の状況、グループ資金の有効活用など、財務の健全性と効率性を意識しながら、必要に応じて金融機関からの借入および社債の発行を通じた資金調達を実施していきます。財務の健全性の観点から自己資本比率は45%程度、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.3~0.5倍程度を目安とします。株主還元については、親会社株主に帰属する当期純利益を基準とする配当性向40%以上を目標とし、自己株式の取得については、成長投資の進捗状況、キャッシュ・フローの動向、株価等の観点を踏まえ、柔軟に検討していきます。 (6)目標とする指標の達成状況等 当該中期経営計画の最終年度となる2027年3月期においては、計画策定時に連結営業収益2兆~2兆4,000億円、連結営業利益1,200~1,600億円(連結営業利益率6%以上)、ROE12%以上、ROIC8%以上と設定しましたが、事業環境の変化や取組みの進捗状況等を踏まえ、2027年3月期の連結業績見通しを連結営業収益1兆9,200億円、連結営業利益420億円(連結営業利益率2.2%)、ROE4.2%、ROIC3.7%へ見直しました。 当計画では「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を目指し、引き続き「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオの変革」に注力します。当連結会計年度において着実に進捗しているプライシングの適正化や法人向けビジネスの拡大、オペレーティングコストの適正化、間接コストの削減といった利益成長ドライバーの強化を図るとともに、バランスシート・マネジメントの強化とキャピタル・アロケーションの最適化を通じて持続的な企業価値向上に取り組んでいきます。 (7)重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定 ヤマトグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っています。 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。