6 【研究開発活動】当連結会計年度は、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」の1stフェーズ、「挑戦の5年間」と位置付ける中期経営計画「BSP2025」の4年目として、3つの重点戦略①「EPC事業のさらなる深化」、②「高機能材製造事業の拡大」、及び③「将来の成長エンジンの確立」に取り組んでまいりました。①「EPC事業のさらなる深化」では、設計・プロジェクトマネジメントのデジタル化、高度メンテナンス、現場建設の効率化・省人化などに関する技術開発及び協業に注力しております。また、②「高機能材製造事業の拡大」を目指し、触媒、ファインケミカル、ファインセラミックス製品などの開発投資及び設備投資を確実に進めております。さらに、③「将来の成長エンジンの確立」として、バイオものづくり分野では、2件の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」という。)によるプロジェクトの採択を受け、微生物を活用した素材・食料・エネルギーなどの幅広い製品を製造するプロセスを開発し、ライセンス事業の確立に取り組んでおります。その一環として、神戸市ポートアイランドにCO2を原料とした世界初のガス発酵プロセス研究所の建設を開始しました。加えて、国内初となる国産SAF大規模製造プラントを竣工させ、国産SAF実用化に係る継続的な生産及び供給体制の構築を図ったほか、SAFが持続可能な事業となるための機運醸成活動を行い、SAF製造のための原料となる廃食用油回収促進のパートナリングを加速するなど、国内初の本格的な大規模SAF製造の共同事業が順調に進展しております。このように、当社グループでは、様々な分野・領域において知財・無形資産の創出と活用を推進しております。重要テーマとなる事業・技術開発の戦略立案においては、IPランドスケープによる分析結果を活用し、市場ポジショニングの明確化やパートナー選定に役立てております。これら知財インテリジェンス機能を強化し、協業やアライアンスなどの広い視点から事業拡大に取り組んでまいります。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額9,770百万円には、総合エンジニアリング事業に関するもの2,541百万円及び機能材製造事業に関するもの3,098百万円に加え、その他の事業に関するもの31百万円及び各セグメントに配分できないもの4,099百万円が含まれております。 ① 総合エンジニアリング事業等設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野現地セキュリティが厳しい地域や自然環境が過酷な地域、労働者の確保が困難な地域等、建設工事の遂行が困難な地域においてEPCプロジェクトが増加する傾向にある中で、当社グループは現地での工事量を減らすために、大型モジュール工法の採用や、EPCプロジェクト遂行の効率性向上のためにAWP(Advanced Work Packaging)による工事管理の採用などを実践しております。また、当社グループのIT戦略「ITグランドプラン2030」による新しい設計手法(AI設計やデジタルツイン)や現場省人化につながるような新しい工法(ロボティクスによる自動化、3Dプリンター導入、中・小型モジュール工法、リモート化など)、要素技術の導入(新素材、設計へのAIやBIM導入など)、EPC全領域でのAWP採用拡大などを図り実装することによって、熟練労働者不足や不安定な現場生産性、スケジュール遅延などのEPCプロジェクトリスクを低減し、現場工事の安全性を高めることを目指しております。同時にこうした取組みが当社グループの競争力強化にもつながると考え、EPCを担う事業会社を中心に全社的な活動を展開しております。 IT/DX関連1. EPC効率向上を目指して行っているもの(1) プロットプラン自動化Auto Plot PATHFINDER®プラント全体の配置図であるプロットプランの設計は、プラントの運転・メンテナンスのし易さ、安全性の確保、環境保全はもちろんのこと、建設コストを決定付ける最も重要なものとして位置付けられております。したがって、複雑な制約条件のもとで様々な要求を最適化するという大変難しい技術が必要であり、従来、経験豊富なシニア技術者の感覚に頼る部分が大きい領域でした。もっとも、当社グループはIT戦略「ITグランドプラン2030」において、AI設計イノベーションを掲げ、プロットプラン設計を自動化するAuto Plot PATHFINDER®を開発しました。Auto Plot PATHFINDER®による設計は、形式知化・コード化されたシニア技術とAIによるユニット分割をもとにしたユニット単位・機器単位の自動配置、位置確定などのエンジニアによる指示取込み、最適配置のステップで行われます。Auto Plot PATHFINDER®により、多数のプロットプラン案を超短時間で作成することが可能になり、人間が思いつかないものを含む多くの提案が瞬時にできることから、新しい提案型設計 (Generative Design)への変革につながり、基本設計の段階から顧客の検討に貢献できると考えております。前連結会計年度からはFS(フィージビリティスタディ)やFEED(基本設計)業務で、加えて当連結会計年度には見積業務でもプロットプランの提案に適用しました。今後は、さらに適用プロジェクトを増やし、顧客により良い価値を提供してまいります。 (2) Data Centric EPC遂行、AWPData Centric EPC遂行は、従来の人の手を介した図書ベースの情報交換に代え、ICT技術を最大活用したデータ中心の効率の良い情報交換とタイムリーな意思決定を図ることを目指した新たなEPCプロジェクト遂行手法であり、EPCプロジェクト遂行におけるリスクを低減し品質・コスト・納期それぞれの要素を向上させることが期待されております。当社グループにおけるData Centric EPC開発においては、設計・調達・建設の作業対象となるタグを一元管理し、そのタグのデータをデータソースとなるシステムから集約し、またそのデータを活用するシステムへ連携する仕組みを構築しております。AWPは、Data Centric EPC遂行の仕組みを活用した一例であり、対象作業の開始を制限する可能性がある先行作業の特定とモニタリングが可能となります。現在進行中の複数プロジェクトにおいて、建設工事に実装したほか、設計・調達業務との連携と効果波及を目指してAWP管理の拡大を進めております。また、当社グループでは、Data Centric EPC遂行とAWPの統合を主軸に置き、EPC全体におけるデジタルトランスフォーメーション (Digital Project Delivery) にも取り組んでおります。 (3) 3D プリンタ導入3Dプリンタは、省力化施工による生産性向上やリードタイム短縮による工期短縮など、建設産業においても大きな革新をもたらすポテンシャルを持つ技術として注目されております。また、海外顧客などがプラントのメンテナンス分野への適用を検討する動きも出てまいりました。当社グループのIT戦略「ITグランドプラン2030」においても「3Dプリンタ導入や建設自動化による建設工法最適化」を掲げ、取組みを進めております。具体的には、セメント系材料を扱うデンマークのCOBOD International A/S社の3Dプリンタを導入し、国内EPCプロジェクトでの基礎型枠としての適用などを経て、海外EPCプロジェクトにおいても適用を進めております。また、金属系材料を扱うオランダのMX3Dとの共同研究を通じて、炭素鋼を用いた形状最適化により、配管部材の重量削減や強度向上への本技術に寄与することを確認しました。今後も、当社グループの競争力強化に向けて検証活動及びEPCプロジェクトへの導入を継続してまいります。 2. 顧客によるオペレーション&メンテナンス(O&M)業務の面からの要求に応えるもの(1) アセットインフォメーションマネジメント(IM)アセットインフォメーションは、顧客が安定したプラント操業を維持するために重要な情報です。近年は顧客要求の高まりもあり、複数のEPCプロジェクトでアセットインフォメーションマネジメントを実現するシステムの実装が進み、当社グループにおける技術の蓄積が進んでおります。EPCの各フェーズの中で、プラントを構成する膨大な量の各種アセットインフォメーションが生成されます。これらを一貫性をもって管理・統合するため、当社グループではデジタルツイン技術への取組みを進めており、その社内標準化を進めることでインフォメーションの精度を飛躍的に向上させるとともに、データハンドオーバーの国際業界標準規格である「CFIHOS」に準拠したインフォメーションマネジメント遂行を実現しております。これにより遂行したプラントの引渡し後においては、顧客はスムーズに運転・保全に移行できます。加えて、プラント操業を通じてアセットやプラントのオペレーション&メンテナンス(O&M)コストの低減に係る情報を蓄積し、かかる情報を将来の設備改良や業務改善に繋げることで、さらなる顧客の事業価値向上に貢献することができます。 (2) スマート保全ビジネスプラントの高経年化や人材確保が難しくなる中で、正常運転のために一層重要性が増している保全業務に対して、当社グループは、プラントの設備診断業務を強力に支援する設備管理システム(A-MIS®)の販売・運用を行ってまいりました。また、このシステムも包含するIoTやビッグデータを活用した統合型スマート保全サービス(INTEGNANCE®)の事業化を進めております。 INTEGNANCE®では、検査結果や運転情報などをもとに検査ポイントの推奨や故障リスクのアラートなどを行うAI予兆保全と定期修理計画の立案を保全戦略支援サービスとして提供するほか、モバイル端末タブレットやスマートフォンを活用した作業状況の電子化とタイムリーな情報共有による工事進捗管理を行っております。また、3Dビューア「INTEGNANCE® VR」を開発し、デジタルツインの構築・運用を行うために設立した「ブラウンリバース株式会社」にて、既存プラント全体を撮影した360°パノラマ写真上にアノテーション(関連データをタグ登録)することで、各機器や部材の関係を可視化しています。また、この360°パノラマ写真空間に対しマウスで自由な視点移動を実現、プラント内のあらゆる情報に視覚的かつ迅速にアクセスすることで実務者の運用・保守業務の大幅な効率化を可能にし、多くのプラント保全の現場で活用頂いております。さらに、当社グループは、英国の原子力業界をはじめ、高度かつ確実な安全管理が求められる分野で幅広く利用されている事故想定シナリオ管理手法「フォルトスケジュール」をベースに開発したスマート保安の最適化を支援するリスクマネジメントソフトウェア(CoreSafety®)を提供しております。 天然ガス分野昨今、温室効果ガスの1つである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められておりますが、当社グループでは、CO2の排出抑制、分離回収、有効利用・貯留、資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を継続して積み上げております。当社グループでは、効率的にCO2を分離・回収し有効に活用するための技術開発を進めております。その一つであるHiPACT®は、溶剤を用いた天然ガスからのCO2分離技術であり、従来技術よりも高圧でCO2を回収することで効率的なCO2の有効活用に資する技術です。HiPACT®は既に商業化されており、現在も商業機は稼働を続けております。また、さらなるCO2分離技術として、高濃度CO2を含む天然ガス及びCO2-EOR(原油増進回収)に伴って産出される随伴ガスから、特殊なゼオライト膜を用いて効率的にCO2を分離回収する技術を開発しており、米国テキサス州等での実証試験を継続して実施中です。これらの技術とともにカーボンマネジメント・サイクルの知見と合わせて、産油ガス国、企業向けにCO2に関する課題解決に向けたトータルソリューションを提供していく方針です。また、当連結会計年度にJOGMECの先進的CCS事業として採択された「マレーシア・サラワク沖CCS事業」に取り組み、日本から排出されるCO2を回収、輸送し、大規模貯留適地でのCCSを実現、日本の脱炭素化に寄与することを目指していきます。本プロジェクトが実現すれば、アジア地域における国境を越えたCCS事業のモデルになるものと期待しております。さらに、温室効果ガスの中でもメタンの排出量は、既存の計算や計測では精度高く求めることが困難とされております。欧州や米国などでは、規制によりメタン排出量の実測が求められつつありますが、実際に精度の高い計測を実施している企業は多くありません。精度の高いメタン排出量の計測がなされていないために、排出源が特定されておらず、正しいメタン削減ソリューションに繋げられていない現状があります。当社グループは、石油・天然ガス設備からのメタン排出を想定した「メタン排出計測技術評価設備」を技術研究所に建設し、国内外の計測器メーカーなどと幅広い協働を通じて計測技術を向上させることにより、一層効果的なメタン排出対策を実現してまいります。優れた温室効果ガス測定技術とエンジニアリング技術を駆使し、温室効果ガス排出の少ない設備の実現を目指しております。加えて、既設LNGプラントの運転データ解析及び気象解析を通じて得られた知見をもとに、操業改善によるLNG増産サービスを海外顧客向けに展開しております。例えば、空冷式LNGプラントの場合、生産量減退の要因となるHot Air Recirculation(HAR)に対しコンピューター解析を活用した予測モデル「HARview®」による対策や、Dry Fogging systemによるHARの緩和等、LNGプラントの運転改善ソリューション「AIRLIZE LNG®」を提案し、増産やプラントの低炭素化に貢献しております。 オフショア分野世界には未開発の中小規模海洋ガス田や、発生する随伴ガスを再圧入・フレアリングしている既存石油生産設備が多数存在し、それらのガス資源の効率的な開発手段が期待されております。その最有力候補は、当社グループが世界有数の建造実績を持つ洋上LNGプラント(以下、「FLNG」という。)です。FLNGは、現地ガス消費市場規模に限界のある、またセキュリティ・環境問題を抱えるような地域での陸上パイプラインガス、及び操業中の洋上石油生産設備で大量に生産される随伴ガスなどの現金化ソリューションでもあります。 また、当連結会計年度でも、海洋石油・ガス開発分野において、低炭素化・脱炭素化に代表されるSDGs達成に向けたソリューションへのニーズのさらなる高まりを受け、当社グループは、社会と顧客の課題に応えるべく、2023年から浮体式海洋石油生産・貯蔵・出荷設備上で、従来技術よりも効率的かつ低コストで高濃度CO2を分離・回収し、海底への再注入を行うゼオライト膜の適用技術開発を継続して取り組んでおります。 低炭素・脱炭素化分野温室効果ガス排出量削減に向けた取組みとして、当社グループではCO2フリー燃料の導入促進やカーボンリサイクル及びEMS(エネルギーマネジメントシステム)の観点で研究開発を行っております。CO2フリー燃料としてCO2フリーアンモニアが国内で着目されており、2020年代半ばの日本でのCO2フリーアンモニアの商業実装に向けた検討が進められております。当社グループは、2014~2018年度に実施した内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトの成果を活用し、再生可能エネルギーや化石資源からのCO2フリーアンモニアの製造・供給の社会実装を目指して、様々な案件のフィージビリティスタディに参画するとともに、CO2フリーアンモニアのより効率的な製造方法やコストダウンに向けた研究開発を行っております。特に、変動する再生可能エネルギー由来のCO2フリーアンモニア製造について、従来にはないダイナミックな変動型アンモニア合成を目指したシステムを開発しております。再生可能エネルギー由来の水素を利用したグリーンケミカルの普及に際しては、天候・時刻・季節によって変動する再生可能エネルギーを利用し、いかにして安定的・効率的にケミカルを製造するかが課題になります。その課題解決のためには、統合制御システムの開発が必須となります。当社グループは、福島県浪江町の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)で製造される水素利用を想定したアンモニア製造プラントの基本設計や、統合制御システムの要件定義を行ってまいりました。この統合制御システムを組み込んだ再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニア製造技術の実証プラントを福島県浪江町に建設しており、技術実証に向けて大きく進展しました。当社グループは、かかる実証プロジェクトを通じて、再生可能エネルギー由来の水素を原料とするグリーンアンモニア製造技術の確立を引き続き目指してまいります。また、当社グループでは、NEDOの支援を受けて、輸入したアンモニアを熱分解し、水素を製造する技術の開発を行っております。現在、アンモニアを分解して水素を製造する技術は、要素技術の多くが商業レベルに達する一方で、実際は小型の装置でしか商業利用されておらず、大規模には行われていません。特に、アンモニア分解管と、アンモニア分解ガスから窒素ガスとアンモニアを分離精製する一段ガス製造装置(PSA方式)については、さらなる要素試験による検証・開発が必要であり、かかる技術開発による進展が期待されております。今後も、国内外で水素の利用拡大が見込まれる2030年の社会実装を視野に入れ、カーボンニュートラル社会に欠かせない大規模な水素製造の技術開発を行ってまいります。 資源循環分野1. ケミカルリサイクル当社グループでは、中期経営計画「BSP2025」において、ケミカルリサイクルを注力分野の1つと位置づけており、ガス化ケミカルリサイクル、油化、モノマー化(廃繊維リサイクル)を含め、幅広いプロセス技術を通じてケミカルリサイクルを推進し、循環型社会の構築に貢献していくことを目指しております。廃プラスチックのケミカルリサイクルは、リサイクルが困難な異種素材や不純物を含むプラスチックを分解し、様々な化学物質に再生することが可能であり、リサイクル率の大幅な向上をもたらす技術として期待されております。当社グループは、荏原環境プラント株式会社とUBE株式会社からEUP(Ebara Ube Process)に関する技術供与、また株式会社レゾナック・ホールディングスから量産化技術の供与と運転支援を受け、廃プラスチックのリサイクル推進に向けて、①廃プラスチックのガス化設備及びガス化設備から製造される合成ガスを用いた化学品製造設備の提案、②廃プラスチックを原料とする水素製造装置の提案、並びに③廃プラスチックリサイクルを実現するためのバリューチェーン構築を行っております。このEUPは、2003年より稼働を続けているガス化設備で、世界で唯一の長期商業運転実績を有する極めて信頼性が高いプロセスです。さらに、EUPでは、混合プラスチックや不純物を含むプラスチックの活用が可能となります。当社グループは、廃プラスチックの活用及び地産地消水素の製造により、水素社会の実現にも貢献してまいります。 また、プラスチックのケミカルリサイクル技術の1つに油化技術があり、当社グループでは、10年間の運転実績を有する国内大型商用装置をベースとして、廃プラスチックの油化ケミカルリサイクルに関する自社ライセンス(Pyro-Blue®)の開発・提供を推進しております。当社グループの油化技術は、他の油化プロセスでは事前除去する必要があるPVC(塩化ビニル)やPET(ポリエステル)を含む混入プラスチックの処理が可能です。顧客が処理したい廃プラスチックを試験的に処理しサンプル油を製造できるベンチ装置も完成し、実際にサンプルを希望している顧客向けの提供を始めております。今後、処理できるプラスチックの種類拡大、装置の大型化による経済性向上、効率化等を進め、プラスチックの資源循環社会の実現に貢献していきます。繊維産業においては、製造工程における大量のCO2排出や衣類の大量廃棄が課題となっております。使用済繊維製品の利用は、現状、熱利用を目的とする「サーマルリカバリー」や別の製品原料とする「マテリアルリサイクル」が一般的ですが、「ケミカルリサイクル」は繊維製品を再び繊維の原料へ化学分解することにより、繊維 to 繊維のリサイクルができる画期的な方法です。PET(ポリエステル)は、繊維製品だけではなく、ボトルをはじめ、フィルムや食品トレーなど多くの製品に使用されております。当社グループが提供するケミカルリサイクル技術は、着色されたポリエステルから染料や不純物を除去できるため、添加物、付着物等の影響によりメカニカルリサイクルできないポリエステル製品の受け皿としても機能し、製品を限定せず素材としてのポリエステル全体の資源循環を目指すことが可能な技術です。当社グループは、本技術のライセンスを提供する目的において「株式会社RePEaT(リピート)」を設立し、既に中国の浙江建信佳人新材料有限公司とライセンス契約を締結いたしました。 2. 持続可能な航空燃料(SAF)2050年のカーボンニュートラルに向けて、航空分野における脱炭素化として、「空のカーボンニュートラル」の機運が高まっております。中・大型機に対しては、機体の軽量化と効率化を進める一方、燃料の低脱炭素化が必須とされております。また、空のカーボンニュートラル達成のためには、実質的にはSAF(Sustainable Aviation Fuel)が切り札とも言われており、世界的なSAF需要の高まりに対し、日本でも国産SAFの安定的な供給及び利用拡大は急務となっております。当社グループは、廃食用油を原料としたSAFの継続的な生産及び利用体制の確立とバリューチェーンの構築による国内初となる国産SAFの実用化を達成いたしました。具体的には、「合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY」を設立し、最大で年間約3万キロリットルのSAFを継続的に供給できる国内初の国産SAF大規模生産プラントを竣工させました。同社を通じて、2025年4月以降、当該プラントにて長期にわたるSAFの生産及び供給を行ってまいります。加えて、SAFが持続可能な事業となるための機運醸成活動として、個人や自治体、企業がSAFの原料となる廃食用油の提供を通じ国内における資源循環の促進に直接参加ができる場である「Fry to Fly Project」を、当社が事務局となって2023年より開始し、既に200を超える企業、自治体、学校などの方々に参加していただいております。また、主に原料の種類にかかわらず国産SAFのサプライチェーン構築、普及と拡大を目指す「Act for Sky」についても、当社が代表幹事となって2022年より取り組んでおり、40を超える企業や自治体に参画していただいております。今後とも、国内において脱炭素化に向けた資源循環の促進に積極的に参加できる機会を創出し、また、これらの活動を通じて、個人や自治体、企業の行動変容に繋げていくことを目指してまいります。 バイオ分野バイオ分野における取組みとして当社グループが注力しているものは、NEDOより前事業年度に採択された「グリーンイノベーション基金事業・バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進/CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発」(以下、「グリーンイノベーション基金事業」という。)、及び当事業年度に採択された「バイオものづくり革命推進事業・木質等の未利用資源を活用したバイオものづくりエコシステム構築事業」(以下、「バイオものづくり革命推進事業」という。)となります。これらのバイオものづくりは、微生物を活用し、素材、エネルギー、食品など幅広い分野の製品を生み出す手法であり、経済協力開発機構(OECD)によると、2030年には世界の市場規模が200兆円に達すると試算されております。グリーンイノベーション基金事業では、NEDOに対する共同提案者の株式会社カネカ、株式会社バッカス・バイオイノベーション及び株式会社島津製作所とともにバイオものづくりの社会実装に向けた開発を推進しております。その一環として、神戸市ポートアイランドにCO2を原料とした世界初のガス発酵プロセス研究棟建設を進めており、2025年12月に完成の予定です。当社は、将来市場の拡大が見込まれるバイオものづくりに向けて、株式会社バッカス・バイオイノベーションと共同で、微生物の開発・改良から生産プロセスの開発までをワンストップで手掛ける「統合型バイオファウンドリ®」※の事業を推進しており、当社グループが長年培ってきた安全にガスを取扱うハンドリング技術を活用し、世界初のガス培養技術開発を行っております。当該開発により、従来、数十年かかっていた微生物の開発から商業化までの期間を1/10以下に短縮し、社会実装に向けた時間とコストを大幅に削減することを目指してまいります。バイオものづくり革命推進事業は、化石資源を原料とした既存の製造プロセスからバイオマスをベースとした製造プロセスへの転換を目指し、持続可能な原料の開発、微生物の育種、培養・分離・精製・加工プロセスの開発及び生産実証を一貫して実施するものであり、NEDOに対する共同提案者の王子ホールディングス株式会社、株式会社ENEOSマテリアル、大阪ガス株式会社、東レ株式会社、株式会社バッカス・バイオイノベーション及び当社が知見や技術を結集して開発を推進してまいります。当社グループは、ライフサイエンス分野の知見とエンジニアリング技術を融合し、木質等の多種多様な原料、微生物、プロダクト(製品)に対応したデータ駆動型の生産プロセス開発基盤を確立し、バイオものづくりプロセス開発に貢献するとともに、「バイオものづくりプラットフォーマー」としてバイオものづくり産業の普及推進に取り組みます。また、当社グループは、「タイヤ原料のブタジエン選択率が高い」独自の触媒を保有しており、バイオマス由来の原料(エタノール)を使用してタイヤの原料となるブタジエンを製造するプロセス開発に取り組んでおります。株式会社ブリヂストン、株式会社ENEOSマテリアル及び当社は、2022年より各社の経営ビジョンに共通する持続可能な社会の実現に向けて、植物資源由来のバイオブタジエン及びタイヤ用合成ゴム製造の基礎的な技術検討や市場調査を進めており、今後も植物資源由来の合成ゴムを使用したタイヤの商業化に向けた取組みを加速してまいります。かかる取組みにより、タイヤ原材料のサステナビリティの向上や将来的なブタジエンの安定確保へ貢献していくとともに、植物資源由来の合成ゴムの使用により、タイヤの廃棄・リサイクル段階でのCO2削減にも貢献していきます。※統合型バイオファウンドリは、株式会社バッカス・バイオイノベーションの登録商標です。 ライフサイエンス・ヘルスケア分野1. ライフサイエンスライフサイエンス分野においては、低分子合成医薬品に加え核酸及びペプチドを含む中分子合成医薬品、バイオ医薬品を主体とする高分子医薬品の設備投資が増加傾向であり、これらの複合製剤を含む従来にない複雑な医薬品や活性の強い医薬品など、付加価値の高い医薬品が開発されております。当社グループでは、こうしたマーケット変化に対応すべく、以下の技術開発活動を推進しており、建設するプラント・施設への導入事例を増やすことで、技術差別化に繋げております。① 高薬理活性物質製造への対応:高薬理活性の医薬品製造において必要とされる高度な封じ込め技術と封じ込め性能を正しく評価する測定手法について医薬品業界内への浸透を進めております。② 合成医薬品製造への対応:合成医薬品製造におけるプロセスの連続化について近年注目度が高まっており、知財戦略に基づき開発した製造技術の実装を推進しております。③ 中分子医薬品製造への対応:上流の合成工程から下流の精製工程に対応する多様な製造法の実績を積み上げております。④ バイオ医薬品製造への対応:大量培養に向けたスケールアップ技術及び高度な品質モニタリング技術の他、合成医薬品製造と同様に連続生産に向けた技術開発を進めております。⑤ 再生医療等製品への対応:中期的に需要拡大が見込まれる根治治療に対し、個別プロセスの効率化や実現可能な設備コンセプト開発を支援し、社会実装を推進しております。⑥ 製造DXシステム:新規大型設備だけでなく研究開発段階の設備や既設製造設備も適用可能な当社グループ独自の情報管理システム(HistoHub®)の開発及び実装を推進しております。⑦ 固形製剤/無菌製剤製造におけるスマート工場の実現:ロボット活用による無人(塵)化の実現、情報管理と一体化した生産設備など、スマート工場のコンセプト開発を進めております。⑧ 環境負荷低減対策:近年重要視されているライフサイクルアセスメント技術の強化を進めております。 2. ヘルスケアヘルスケア分野においては、「病院からのまちづくり」及び「病院から地域をデザインする」をキーワードとする「まちづくり×医療」への取組みを進めております。横浜市泉区ゆめが丘エリアに整備された複合商業施設「ゆめが丘ソラトス」及び「ゆめが丘総合病院」(当社グループが設計及び施工)並びに大規模居住施設を中心とするまちづくり活動においては、エリアマネジメント協議会に参画し、新たなコンセプト「WELL-BEING TOWN ゆめが丘」のもと、「食を中心としたサステナブルな社会を体感できるまち」、「自然、人との交流で健康になれるまち」、「子育てしやすいまち」及び「最先端で安全な暮らしやすいまち」の実現を目指してまいります。また、健康データ管理システム及びかかりつけ医連携システムを包含する「クラウドチェックアップ」の実装などに取り組み、「まちづくり×医療」を具現化したヘルスケアシティの実現を目指しております。また、カンボジア王国で当社グループが出資するSunrise Japan Hospitalにおいては、順天堂大学医学部附属順天堂医院と初期臨床研修の実施に関する協定を締結し、公立大学法人奈良県立医科大学とは学術交流に関する協定及び同大学附属病院との初期臨床研修の実施に関する覚書を締結しました。これらの取組みを通じて、日本の高度な医療技術のカンボジア王国への導入をさらに進め、同国の医療水準の向上に貢献してまいります。加えて、当社グループでは、病院経営に参画することで得た医療、経営、運営の知見と、医療施設の設計との融合を図り、高い機能性とホスピタリティを持つ病院づくりを進めております。 原子力分野当社グループは、原子力発電所及び再処理工場の廃止措置に係るプロジェクトマネジメントのサービス提供と廃棄物処理関連技術の開発を進めております。このうち、原子力発電所の廃止措置について、発電所内に貯蔵されている放射線量の高い使用済イオン交換樹脂を安全、かつ安定的に貯蔵するための分解技術の実用化に目処が得られつつあります。また、分解されたイオン交換樹脂を含む、多種・多様な放射性廃棄物への適用を目指し、閉じ込め性能の高い固型化技術の開発を進めております。さらに、原子力発電所や再処理工場を含む様々な原子力施設の廃止措置を対象に、長期間にわたる廃止措置プロジェクトを安全かつ効率的に実施するためのマネジメント支援システムを開発中です。核融合については、実用化に向けた取組みが各国で加速していることを踏まえ、国内スタートアップのなかでも核融合関連技術に独自の強みを有する京都フュージョニアリング株式会社や核融合燃料の供給に不可欠な技術を有する株式会社MiRESSOへのCVCからの出資を通じて、技術の共創に向けた取組みを行っております。国内外で注目されている小型モジュール炉(以下、「SMR」という。)をはじめとする次世代原子炉技術については、水素や再生可能エネルギーと並んで脱炭素社会の実現への貢献が期待され多くの炉型が提案されておりますが、なかでも米国NuScale Power, LLC(以下、「ニュースケール社」という。)が開発を進めるSMRが米国で初となる設計認証を取得しており、商業化に最も近いSMR技術であると言われております。この様な状況を踏まえ、当社グループは2021年3月に米国の特別目的会社を通じてニュースケール社に出資いたしました。また、2022年4月には株式会社国際協力銀行(JBIC)が、2024年11月には中部電力株式会社がそれぞれニュースケール社に出資しております。米国初のニュースケール社SMR実証プラントとして計画されていたプロジェクトは建設に至ることなく終了しましたが、新たな建設プロジェクトに向けた検討が進められており、当社グループも新規案件に向けてEPC準備業務を実施中です。当社グループは、AIデータセンター電力需要や脱炭素電力需要に向けたSMRの将来的な市場拡大に伴って、中長期的には海外市場を中心にSMRのEPCプロジェクトを受注・遂行していくことを視野に入れ活動するほか、SMRと再生可能エネルギー設備、水素製造設備とのインテグレーションも検討していく予定です。 洋上風力発電分野国内の洋上風力発電分野においては、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(平成30年法律第89号)に基づくラウンド1からラウンド3までの事業者グループが決定されております。世界的な物価高騰を受けて、一部のプロジェクトの動向に不透明さはあるものの、日本政府は制度の見直しを含めた対応などにより、引き続き洋上風力発電の本格的な導入を推進しております。当社グループは、洋上風力発電分野の主力EPCコントラクターとなるべく、事業性検討や基本設計など早い段階から計画に関与しプロジェクトの受注を目指しております。今後成長が期待されている浮体式洋上風力分野についても、NEDOのグリーンイノベーション基金における浮体式洋上風力実証事業の事業者が決定され、2030年以降の本格的な導入へ向けた動きが加速しております。当社もこれまで取り組んできた撤去実証事業やフィージビリティスタディ、浮体の要素技術の検討などに加えて、浮体のサプライチェーン構築に向けた取組みを開始しており、継続的に技術力・競争力の強化を図りながら、プロジェクト全体の最適化とマネジメント力を武器に受注拡大を目指して取り組んでまいります。 ② 機能材製造事業石油精製分野石油精製企業は、化石燃料及び石化原料の安定供給に加え、カーボンニュートラルに向けたエネルギーシフトに対応する製油所の事業変革が求められております。当社グループでは、これら顧客のニーズ変化に対応する触媒及び触媒素材開発に取り組んでおります。FCC触媒については、各製油所ニーズに対応する最適化触媒と技術サービスによる国内外製油所へのソリューション展開を図るとともに、高液収率と高オクタン価が両立する新規マトリックス素材を使用したFCC触媒を新たに開発し、市場展開に着手しました。水素化処理触媒については、競争力強化のため活性とコストの両立を目指し製造技術の高度化に取り組みました。また、海外石油会社と共同開発し採用された水素化分解触媒の改良にも取り組み、採用された製油所での継続採用及び他製油所への新たな採用に繋がりました。当社グループの触媒調製技術を活用して開発されたゼオライトや非晶質シリカアルミナなどの触媒素材は、主に水素化分解触媒用材として触媒メーカーに採用されております。今後は石油精製分野だけでなくケミカルや環境保全分野にも素材販売を拡大する方針のもと、固体酸や細孔径制御に訴求性を有する触媒素材の開発を行い、顧客へのサンプルワークを開始しております。 石油化学分野汎用石油化学市場は、汎用化学製品の需要減少と中国の化学プラント新設による供給過多が重なり低迷が継続しております。そのため、国内ケミカルメーカーは、汎用石化から高機能ケミカル製品へのポートフォリオ変革や競争力のあるプロセスへの転換及びケミカルリサイクルなどカーボンニュートラルの実現による持続可能な社会に向けた取組みを進めております。当社グループにおいては、国内ケミカルメーカーの高機能ニーズに対応する高活性で高選択性を有する水添触媒の開発に取り組んでおり、高ニッケル含有水添触媒が良好な評価を得て採用されました。また、石精・石化原料中の硫黄や塩素を高効率で除去可能な各種吸着剤の市場展開により販売が拡大しております。これらの水添触媒や吸着剤技術開発は将来のケミカルリサイクルやCO2リサイクルプロセスへの触媒、吸着剤展開につながるため開発を継続してまいります。また、国内の実績と技術サービスをもとに触媒、吸着剤の海外展開に取組み販売拡大を目指しております。 環境保全分野・クリーンエネルギー分野環境保全・クリーンエネルギー分野では、バイオマス混焼、専焼用及びごみ焼却場など低温脱硝向けの触媒開発に取り組み、触媒への高被毒環境物質存在環境下での初期活性と長寿命が両立する脱硝触媒の開発に目途を付け、工業化段階に進捗しました。当社グループでは、かかる触媒の早期の実商化及び拡販に向けて取り組んでおります。また、石油精製触媒部門と連携して、当社グループの特殊ゼオライトや素材を活用した次世代エネルギー源として期待される水素やアンモニアに関連する触媒や吸着剤の開発にも取り組んでおります。 生活関連(眼鏡、ライフサイエンス、化粧品)分野薄肉化(高屈折率化)が進むプラスチック眼鏡レンズ用高屈折率ハードコート向け材料として、レンズの屈折率及び耐候性を高めるチタニアナノ粒子の顧客評価が進んでおります。一方、薄肉レンズの汎用化に合せたコスト競争力を高める検討も進めており、ブルーライトカット機能を有する高屈折率粒子や硬化時間短縮可能な高屈折率ハードコートラッカー塗布液を提案し、市場拡大に取り組んでおります。ナノ粒子技術を活用しライフサイエンス分野に展開する検討の一環として、金属ナノ粒子技術を用いた特殊施設向け高濃度硝酸廃水分解触媒を開発し、パイロットプラントでの評価が開始されました。また、本技術を応用して一般事業所工業廃液に対応する汎用硝酸分解触媒についても開発を進めております。マイクロプラスチック海洋汚染問題の原因の一つである化粧品マイクロプラスチックビーズ代替採用が進んでおります。当社グループでは、プラスチックビーズの使用感触に近いシリカマイクロビースを開発しており、その採用が拡大しております。また、より環境負荷の小さいボタニカルマイクロビーズに関しても、2023年より上市米澱粉(でんぷん) ビーズやもみ殻から抽出したシリカ原料を用いたビーズ開発に取り組んでおり、2026年度の商品化を目指しております。 電子材料分野ChatGPTなど世界的な生成AIの拡大によりデータセンター向けストレージデバイスなどの需要が回復・拡大し、ハードディスクやHBMなど半導体デバイス市場が復調しております。ディスプレイ市場は中国政府の経済刺激策もあり市場は堅調に推移しております。ただし、かかる施策は需要の先食い懸念もあり今後の見通しは不透明な部分もあります。現在、シリカゾルについては、ハードディスクやシリコンウェハー市場拡大対応として、増設プラントの2025年度竣工、顧客認定評価を経て、計画通り2026年度からの本格稼働を見込んでおります。また、一時停滞していた半導体CMP向け研磨材は、2026年度の本格採用に向け評価が進捗しております。高速通信用低誘電率シリカバルーン封止材も顧客中量テストが終了し、顧客へのサンプルワークが開始されており、2026年の量産化に向け順調に進んでおります。高品位テレビ用機能性光学材料については、有機ELテレビ、QLEDテレビなどに展開しておりますが、デジタルサイネージュ、車載ディスプレイ、光学デバイスなど多用途展開に向けた材料開発とサンプルワークを進めております。 ファインセラミックス分野ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LEDなどの高出力化や省エネルギーを達成するために、パワー半導体の高性能化が進んでおりますが、同時に絶縁放熱基板への要求が厳しくなってきております。その要求に応えるため、当社グループでは、ファインセラミックス分野における開発加速のためのオープンイノベーション及びアライアンスを強化し、推進しております。新規市場への参入を見据えた知財戦略については、日本ファインセラミックス株式会社が当社ガバナンス統括オフィス知的資産ユニット等と連携して立案し、実施しております。当社グループでは、国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同開発した独自の製造方法により世界最高レベルの放熱性・信頼性を持つ「高熱伝導窒化ケイ素基板」の開発及び事業化を推進してまいりました。既に新量産工場を立ち上げ、製品の品質及び生産性向上を実現しながら、さらなる高性能品開発及び増産体制の構築にも取り組んでおります。通信分野においては、自動運転やIoTの普及に欠かせない5Gが本格導入され、今後、さらなるデータ量の増大に向けたBeyond 5Gなどの無線通信や光通信回線の大容量化・高速化が必須になります。当社グループでは、最先端の無線通信技術、光通信技術に対応できる薄膜回路基板、単板コンデンサなどの性能・信頼性向上などの開発・製造・販売を行っております。今後成長が期待される再生医療分野においては、最先端の骨再生材料について国立大学法人東北大学などとの共同研究を継続しております。その他、当社グループ独自のセラミックス材料技術と高精度加工技術により、補助人工心臓用部品や「はやぶさ2」などの宇宙衛星用部品、半導体装置用部材や燃料電池用部材など、先端分野で使用される製品の開発や新材料の開発に大学や各研究機関などと連携して取り組んでおります。
FY2023|14,898 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度は、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」の1stフェーズ「挑戦の5年間」と位置付ける中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure (BSP2025)」の2年目として、引き続き3つの重点戦略①EPC事業のさらなる深化、②高機能材製造事業の拡大、③将来の成長エンジンの確立に注力してきました。その結果、将来のビジネスの核となる技術の早期獲得を目的とした実証事業の推進の継続に加えて新たな実証事業の推進、事業推進のための特別目的会社の設立、事業化推進のための関係者との連携構築、新たな産学の連携を促進することができました。なお、研究開発費については、当社で行っている各セグメントに配分できない研究開発費用2,096百万円が含まれており、当連結会計年度の研究開発費の総額は、7,862百万円です。 ① 総合エンジニアリング事業設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野現地セキュリティや自然環境が厳しい地域や労働者の確保が困難な地域等、建設工事の遂行が困難な地域におけるプロジェクトが増加傾向にある中で、当社グループは大型モジュール工法の採用や、プロジェクト遂行の効率性向上のためにAWP(Advanced Work Packaging)による工事管理の採用などを実践しています。さらに新しい工法(ロボット化、自動化、3Dプリンター導入、小型モジュール工法、リモート化など)、要素技術の導入(新素材、設計にAIやBIM導入など)、EPC全領域でAWP採用拡大などを図り実装することによって、熟練労働者不足、不安定な現場生産性、スケジュール遅延などのプロジェクトリスクを低減することを目指しています。同時にこうした取組みが当社グループの競争力強化にもつながると考えEPC事業会社を中心に全社的な活動を展開しています。 IT/DX関連1. EPC効率向上を目指して行っているもの(1) プロットプラン自動化Auto Plot PATHFINDER®プラント全体の配置図であるプロットプランの設計は、プラントの運転・メンテナンスのし易さ、安全性の確保、環境保全はもちろんのこと、建設コストを決定付ける最も重要なものとして位置付けられています。したがって複雑な制約条件のもとで様々な要求を最適化するという大変難しい技術が必要であり、従来、経験豊富なシニア技術者の感覚に頼る部分が大きい領域でしたが、当社グループのIT戦略「ITグランドプラン2030」においてAI設計イノベーションを掲げ、プロットプラン設計を自動化するAuto Plot PATHFINDER®を開発しました。Auto Plot PATHFINDER®による設計は、形式知化・コード化されたシニア技術とAIによるユニット分割をもとにしたユニット単位・機器単位の自動配置、位置確定などエンジニアによる指示取込み、最適配置のステップで行われます。Auto Plot PATHFINDER®により、多数のプロットプラン案を超短時間で作成することが可能になり、人間が思いつかないものを含む多くの提案が瞬時にできることから、新しい提案型設計 (Generative Design)へ変革し、基本設計の段階から顧客の検討に貢献できると考えております。2022年度ではPreFEED業務に初実装し、複数のプロットプラン案の定量評価が客先説明時に好評だったことから、今後のFS(フィージビリティスタディ)やFEED(基本設計)業務に適用していきます。(2) Data Centric EPC遂行、AWP Data Centric EPC遂行は、従来の人の手を介した図書ベースの情報交換に代え、ICT技術を最大活用したデータ中心の効率の良い情報交換とタイムリーな意思決定を図ることを目指した新たなプロジェクト遂行手法であり、プロジェクト遂行におけるリスクを低減し品質・コスト・納期それぞれの要素を向上させることが期待されています。当社グループにおけるData Centric EPC開発においては、設計・調達・建設の作業対象となるタグを一元管理し、そのタグのデータをデータソースとなるシステムから集約し、またそのデータを活用するシステムへ連携する仕組みを構築しています。AWPは、Data Centric EPC遂行の仕組みを活用した一例であり、対象作業の開始を制限する可能性がある先行作業の特定とモニタリングが可能となります。現在進行中の複数プロジェクトにおいて、建設工事に実装したほか、設計・調達業務との連携と効果波及を目指してAWP管理の拡大を進めています。また、当社グループでは、Data Centric EPC遂行とAWPの統合を主軸に置き、EPC全体におけるデジタルトランスフォーメーション (Digital Project Delivery) へも取り組んでいます。2. 顧客によるオペレーション&メンテナンス(O&M)業務の面からの要求に応えるもの(1) アセットインフォメーションマネジメント(IM)アセットインフォメーションは、顧客が安定したプラント操業を維持するために重要な情報です。近年は本分野の顧客要求の高まりもあり、複数のプロジェクトでアセットインフォメーションマネジメントの実装が進み、当社グループにおける技術の蓄積が進んでいます。設計・調達・建設(EPC)の各フェーズの中で生成されるプラントを構成する各種のアセットのインフォメーションに関し、一貫性をもって管理・統合するため、当社グループではデジタルツイン技術への取組みを進めています。社内標準化を進めることでインフォメーションの精度を飛躍的に向上させるとともに、データハンドオーバーの国際業界標準規格である「CFIHOS」に準拠したインフォメーションマネジメント遂行を実現しています。これにより遂行したプラントの完成・引渡し後に顧客がスムーズに運転・保全に移行し、アセットやプラントのオペレーション&メンテナンス(O&M)コストの低減という付加価値を提供し、顧客の事業価値向上に貢献しています。(2) スマート保全ビジネスプラントの高経年化が進む中で重要性が増している保全業務に資するべく、当社グループは、プラントの設備診断業務を強力に支援する設備管理システム(A-MISTM)の販売・運用を行ってきました。また、このシステムを包含する情報プラットフォームを構築し、IoTやビッグデータを活用した統合型スマート保全サービス(INTEGNANCE®)の事業化を進めています。INTEGNANCE®では、検査結果や運転情報などをもとにしたプラントのAI予兆保全と定期修理計画の立案を保全戦略支援サービスとして提供するほか、モバイル端末タブレットやスマートフォンを活用した作業状況の電子化とタイムリーな情報共有による工事進捗管理を行います。また、3Dビューア「INTEGNANCE® VR」(以下、「本ビューア」という。)を開発、デジタルツインの構築・運用を行う事業会社「ブラウンリバース株式会社」を設立し、2022年9月より有償提供を開始しました。本ビューアでは、既存プラント全体を撮影した360°パノラマ写真上にアノテーション(関連データをタグ登録)することで、各機器や部材の関係を可視化するいわば“プラントのストリートビュー※”を実現、プラント内のあらゆる情報に視覚的に迅速にアクセスすることで実務者の運用・保守業務の大幅な効率化を可能にしています。さらに、英国の原子力業界をはじめ、高度かつ確実な安全管理が求められる分野で幅広く利用されている事故想定シナリオ管理手法「フォルトスケジュール」をベースに開発したスマート保安の最適化を支援するリスクマネジメントソフトウェア(Coresafety®)の提供を2023年3月より開始いたしました。※ストリートビューは、Google LLCの登録商標です。 天然ガス分野昨今、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められていますが、当社グループではCO2の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を継続して積み上げています。CO2-EOR(原油増進回収)においては、原油とともに随伴されるCO2を有効に活用するために、当社グループは特殊なゼオライト膜で効率的にCO2を分離回収することを可能とする技術を開発し、米国テキサス州での実証試験を継続して実施中です。本技術とともにカーボンマネジメント・サイクルの知見と合わせて、産油ガス国、企業向けにCO2に関する課題解決に向けたトータルソリューションを提供していく方針です。さらに、「尼国グンディガス田におけるCCUSのJCM実証に向けた準備調査」において、現在、大気放散されているCO2を近郊の圧入井までパイプライン輸送して、地下に圧入・貯留するCCS実証プロジェクトの事業化調査を完了しました。今後、実証設備の基本設計、建設を経て、2020年代後半を目途にCO2の圧入、モニタリングを開始することを想定しています。本プロジェクトが実現すれば、アジア地域におけるCCS事業のモデルになるものと期待しています。また、温室効果ガスの中でもメタンの排出量は、既往の計算では精度高く求めることが困難とされており、欧州や米国などではセンサーによる実測が求められつつありますが、実際に計測をしている企業は多くありません。精度の高いメタン排出量の計測がなされていないために、排出源が特定されておらず、正しいメタン削減ソリューションにつなげられていない現状があります。当社は石油・天然ガス設備からのメタン排出を想定した「メタン排出計測技術評価設備」を技術研究所に建設し、国内外の計測器メーカーなどと幅広い協働を通じて計測技術を向上させることにより、一層効果的なメタン排出対策を実現していきます。今後、メタン排出量削減が温室効果ガス削減に向けて重要であることを引き続きアピールし、優れた温室効果ガス測定技術とエンジニアリング技術を駆使し、温室効果ガス排出の少ない設備の実現を目指していきます。さらに、既設LNGプラント関連のAI・IoTビジネスとして、運転ビッグデータ解析及び気象解析を通じて得られた知見を基に操業改善によるLNG増産サービスを海外顧客向けに展開しています。例えば空冷式LNGプラントの場合、生産量減退の要因となるHot Air Recirculationに対しFoggingを適用しLNG増産につなげた試みのほか、アジアの国営石油会社向けにHot Air Recirculationの予測モデルを開発、本モデルを操業と連携させ増産するシステムを構築、運用中です。増産量を正確に把握するため、機械学習やシミュレータを利用したデジタルツインの開発も行っています。また、その他複数社のLNGプラントオーナー向けに、月次で運転ビッグデータ解析から解析結果・改善案を提供するサブスクリプション型サービスをLNG3 Envisionとして提供しています。 オフショア分野世界には未開発の中小規模海洋ガス田が多数存在し、効率的な開発手段が期待されています。その最有力候補が、当社グループが世界有数の建造実績を持つ洋上LNGプラント(FLNG)です。FLNGは、現地ガス消費市場規模に限界のある、またセキュリティ・環境問題を抱えるような地域での陸上パイプラインガス、並びに操業中の洋上石油生産設備で大量に生産される随伴ガスなどの現金化ソリューションでもあります。また、当連結会計年度では、海洋石油・ガス開発分野において、低炭素化・脱炭素化に代表されるSDGs達成に向けたソリューションへのニーズの高まりを受け、当社グループは、社会と顧客の課題に応えるべく、以下2点に取り組んできました。 1. 浮体式海洋石油生産・貯蔵・出荷設備上で効率的に高濃度CO2を分離し、海底への再注入を目指す、CO2を分離回収するゼオライト膜の経済性検討(既存別技術との比較)を実施しています。2. 洋上生産設備の遠隔・無人操業の実現に向けて、遠隔で操業状況を監視するシステムのパイロット運用を実施し、自動化・省力化・遠隔操作に関連するデジタルテクノロジーの運用方法の検討を進めています。 低炭素・脱炭素化分野温室効果ガス排出量削減に向けた取組みとして、当社ではCO2フリー燃料の導入促進やカーボンリサイクル、及びEMS(エネルギーマネジメントシステム)の観点で研究開発を行っています。CO2フリー燃料としてCO2フリーアンモニアが国内で着目されており、2020年代半ばの日本でのCO2フリーアンモニアの商業実装に向けた検討が進められています。当社グループは、2014~2018年度に実施した内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトの成果を活用し、再生可能エネルギーや化石資源からのCO2フリーアンモニアの製造・供給の社会実装を目指して、様々な案件のフィージビリティスタディに参画するとともに、CO2フリーアンモニアのより効率的な製造方法やコストダウンに向けた研究開発を行っています。特に変動する再生可能エネルギー由来のCO2フリーアンモニア製造について、従来にはないダイナミックな変動型アンモニア合成システムを開発しています。再生可能エネルギー由来の水素を利用したグリーンケミカルの普及に際しては、天候・時刻・季節によって変動する再生可能エネルギーを利用し、いかにして安定的・効率的にケミカルを製造するかが課題になります。その課題解決のためには、統合制御システムの開発が必須となります。当社グループは、福島県浪江町の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)で製造される水素利用を想定したアンモニア製造プラントの基本設計や、統合制御システムの要件定義を行ってきました。当連結会計年度には、この統合制御システムを組み込んだ再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニア製造技術の実証プラントを福島県浪江町に建設することが決まり、技術実証に向けて大きく進展しました。当社グループは、本実証プロジェクトを通じて、再生可能エネルギー由来の水素を原料とするグリーンアンモニア製造技術の確立を引き続き目指していきます。 資源循環分野中期経営計画「BSP2025」において、ケミカルリサイクルを注力分野の一つと位置づけており、ガス化(EUPガス化ケミカルリサイクル)、油化、モノマー化(廃繊維リサイクル)を含め、幅広いプロセス技術を通じてケミカルリサイクルを推進し、循環型社会の構築に貢献していくことを目指しています。廃プラスチックのケミカルリサイクルは、リサイクルが困難な異種素材や不純物を含むプラスチックを分解し、様々な化学物質に再生することが可能であり、リサイクル率の大幅な向上をもたらす技術として期待されています。当社グループは、荏原環境プラント株式会社とUBE株式会社からEUP(Ebara Ube Process)に関する技術供与、株式会社レゾナック・ホールディングスから量産化技術の供与と運転支援を受け、廃プラスチックのリサイクル推進に向けて、①廃プラスチックのガス化設備並びにガス化設備から製造される合成ガスを用いた化学品製造設備の提案、②廃プラスチックを原料とする水素製造装置の提案、及び③廃プラスチックリサイクルを実現するためのバリューチェーン構築を行っています。このEUPは、2003年より稼働を続けているガス化設備で、世界で唯一の長期商業運転実績を有する極めて信頼性が高いプロセスです。さらにEUPでは混合プラスチックや不純物を含むプラスチックの活用が可能となります。2022年度から岩谷産業株式会社、豊田通商株式会社と共同で国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業にて、都市部における廃プラスチックガス化リサイクルによる地域低炭素水素モデル構築に向けた調査を実施し、その調査結果として、3社は、廃プラスチックガス化設備を活用した低炭素水素製造に関して、愛知県名古屋港近郊での協業を検討する基本合意書を締結するにいたりました。今回の基本合意書の締結により、早期に基本設計業務を開始し、2020年代中頃での水素製造開始を目標として取り組んでいます。廃プラスチックの活用並びに地産地消水素の製造により水素社会の実現にも貢献してまいります。プラスチックのケミカルリサイクル技術の一つに油化技術があり、当社グループは、10年間の運転実績を有する国内大型商用装置をベースに、廃プラスチックの油化ケミカルリサイクルに関する自社ライセンス(Pyro-BlueTM)の開発・提供を推進しています。当社グループの油化技術は、他の油化プロセスでは事前除去する必要があるPVC(塩化ビニル)やPET(ポリエステル)を含む混入プラスチックの処理が可能です。顧客が処理したい廃プラスチックを試験的に処理し、サンプル油を提供できるベンチ装置も完成しました。今後、処理できるプラスチックの種類拡大、装置の大型化による経済性向上、効率化等を進め、プラスチックの資源循環社会の実現に貢献していきます。繊維産業においては、製造工程における大量のCO2排出や衣類の大量廃棄が課題となっています。使用済繊維製品の利用は、現状、熱利用を目的とする「サーマルリカバリー」や別の製品原料とする「マテリアルリサイクル」が一般的ですが、「ケミカルリサイクル」は繊維製品を再び繊維の原料へ化学分解することにより、繊維 to 繊維のリサイクルができる画期的な方法です。PET(ポリエステル)は、繊維製品だけではなく、ボトルをはじめ、フィルムや食品トレーなど多くの製品に使用されています。当社グループが提供するケミカルリサイクル技術は、着色されたポリエステルから染料や不純物を除去できるため、添加物、付着物等の影響によりメカニカルリサイクルできないポリエステル製品の受け皿としても機能するため、製品を限定せず素材としてのポリエステル全体の資源循環を目指すことが可能な技術です。本技術のライセンスを提供する目的として「株式会社RePEaT(リピート)」を設立しました。2050年のカーボンニュートラルに向けて、航空分野における脱炭素化として、「空のカーボンニュートラル」の機運が高まっています。中・大型機に対しては、機体の軽量化、効率化もほぼ限界と言われています。そして、空のカーボンニュートラル達成のためには、実質的にはSAF(Sustainable Aviation Fuel, 持続可能な航空燃料)が切り札とも言われており、その利用拡大は急務となっています。当社グループは使用済食用油を原料としたSAF製造体制の確立とバリューチェーンを構築していくことを目指しています。具体的には、国内初の国産SAF大規模生産に向けて「合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY」を設立し、2025年に年間3万キロリットルのSAFの国内供給を目指します。個人や自治体、企業がSAFの原料となる使用済食用油の提供を通じて、国内における資源循環の促進に直接参加ができる場として「Fry to Fly Project」を開始しました。今後とも、国内において脱炭素化に向けた資源循環の促進に積極的に参加できる機会の創出、これらの活動を通じて、市民・自治体、企業の行動変容につなげていくことを目指しています。今後も自動車・交通需要の増加に伴い、タイヤ需要の増加が見込まれています。将来、資源の枯渇やCO2排出量の増加による気候変動などの問題に直面する可能性が指摘されている中、今後もより持続可能な形でタイヤを提供し続ける必要があります。当社グループは、関係する企業とバイオマス由来の原料(エタノール)を使用してタイヤの原料となるブタジエンを製造するプロセス開発に取り組み中です。当社グループは、競合技術より「タイヤ原料のブタジエン選択率が高い」独自の触媒を保有しています。今後、関係する企業と2023年までに実証試験を終了し、技術を確立し、持続可能な社会実現への貢献を目指します。 バイオ分野CO2削減やサステナビリティなどの観点から、バイオマスを原料とする化学品や燃料の社会的需要が高まっています。当社グループでは、CO2の削減効果が高く、かつ食料と競合しない非可食バイオマス原料を効率的にバイオエタノールやバイオプラスチック等の原料に転換するための技術開発を進めています。バイオマス原料の変換技術としては、バガス(サトウキビ搾汁後の残渣)や木質資源(木材やパルプ等)を効率よく糖に変換するための前処理技術の開発、及びこれらの糖に含まれる発酵阻害物質を除去するための糖精製技術の開発に注力しております。現在は石油から製造されている1,3-ブタジエン(主にタイヤの原料となる製品)をバイオマス由来のエタノールから製造する技術の開発を化学会社と共同で進めています。日本は、国土の約7割を森林が占めています。その森林の未利用バイオマスを化石燃料の代替原料として活用する「グリーンリファイナリー」の機運が高まっています。森林の未利用バイオマスは、化石燃料と同じ炭素と水素を持っているため、森林の未利用バイオマスを化石燃料の代替として利用できれば、製品の炭素を固定することになり、再生可能な取組みとなります。「バイオリファイナリー」実現のために、具体的なプロセス選定(急速熱分解)のみならず、川上(森林)から川下(製造)までのプレーヤーインテグレーション&バリューチェーン構築が進みつつあります。当社グループは、今まで培ってきたプロセスエンジニアリング力を活かして、「森林×化学」で化石燃料に頼らない暮らし、つまり、脱化石燃料社会の実現を引き続き目指していきます。今年度は、株式会社カネカ、株式会社バッカス・バイオイノベーション、株式会社島津製作所と共同で国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発」に共同提案し、採択されました。このプロジェクトは日本政府の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」におけるカーボンリサイクルの実現に貢献するものです。4社がこれまで培ってきた知見や技術を結集し、化石資源に依存しない循環型バイオものづくり技術の実現を目指してまいります。 ライフサイエンス・ヘルスケア分野医薬品業界では、これまでの低分子合成医薬品に加え中分子合成医薬品、バイオ医薬品を主体とする高分子医薬品、再生医療等製品の開発が増加傾向であり、製造が複雑な医薬品や活性の強い医薬品が増え、付加価値の高い医薬品が開発されています。これに対し、当社グループは、合成医薬品製造に関して、高薬理活性物質の製造に適応するための新たな封じ込め技術の確立と高度な封じ込め測定手法を含めた技術強化、中分子医薬品製造に関しては独自製造設備の更なる展開、医薬品業界の注目度が高まっている連続生産に関しては知財戦略を含めた製造技術の開発など、多角的に技術開発を進めています。バイオ医薬品製造に関しては、マイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクター開発、大量培養に向けたスケールアップ技術開発、製造DXシステム開発、連続生産に向けた技術開発等を進めています。再生医療等製品に関しては、再生医療関連施設の多くの建設実績を踏まえ、効率的な細胞・組織培養環境基準の構築、及び関連要素技術の高度化を進めています。固形製剤、無菌製剤製造工場ではロボット活用による無人(塵)化の実現、スマート工場化の開発を進めています。このような研究開発活動の成果として、当社グループが建設するプラント・施設への導入事例も増えており、当社グループの技術差別化につながっています。さらに、病院分野では、カンボジアでの病院経営、日本国内でのPFI事業における病院運営で得た医療、経営、運営の知見をもとに施設設計との融合を図るとともに、ICTの活用により利便性、効率性を高め、より高い機能性とホスピタリティを持つ病院づくりを進めています。また、病院と地域を情報ネットワークで結び、住民が安心して生活できる病院を核にしたまちづくり「ヘルスケアシティ」の構築を目指した取組みを始めています。 原子力分野当社グループは、原子力発電所及び再処理工場の廃止措置に係わるプロジェクトマネジメントのサービス提供と廃棄物処理関連技術の開発を進めています。このうち、原子力発電所の廃止措置について、発電所内に貯蔵されている放射線量の高い使用済イオン交換樹脂を安全、かつ安定的に貯蔵するための分解技術の実用化に目処が得られつつあります。また、分解されたイオン交換樹脂を含む、多種・多様な放射性廃棄物への適用を目指し、閉じ込め性能の高い固型化技術の開発を進めています。さらに、再処理工場を含む様々な原子力施設の廃止措置を対象に、長期間にわたる廃止措置プロジェクトを安全、かつ効率的に実施するためのマネジメント支援システムを開発中です。国内外で注目されている小型モジュール炉(SMR)をはじめとする次世代原子炉技術については、水素や再生可能エネルギーと並び、脱炭素社会の実現への貢献が期待できること、NuScale Power, LLC(ニュースケール社)の技術が他のSMR技術に先駆けて、2020年8月に米国初の設計認証を取得し、米国原子力規制委員会によりその安全面が認められ、商業化に最も近いSMR技術であることから、SMRプラントのEPC事業への進出を目指し、当社グループは2021年3月に米国の特別目的会社を通じてニュースケール社に出資しました。さらに2022年4月には株式会社国際協力銀行(JBIC)が出資し、日本政府としてニュースケールSMRの実現を後押ししています。現在、米国アイダホ国立研究所敷地内に米国初のニュースケールSMR実証プラントを建設するCarbon Free Power Projectが始まっており、2029年の運転開始に向けて米国フルア社/ニュースケール社等が建設運転一括許可申請(COLA)とEPC準備業務を実施中です。当社グループは、2022年度からフルア社の設計部門とプロジェクト管理部門組織への当社エンジニア人員の派遣を開始しています。当社グループは、SMRの将来的な市場拡大に加えて、SMRが中長期的には海外市場を中心にSMRのEPCプロジェクトを受注・遂行していくことを視野に入れ活動していくほか、SMRと再生可能エネルギー設備、水素製造設備、海水淡水化設備とのインテグレーションも検討していく予定です。 洋上風力発電分野国内の洋上風力発電は、現在進行中の港湾区域に続いて一般海域の促進区域におけるプロジェクトが動き出しています。今後、国内の洋上風力発電は毎年複数案件が継続的に開発される見通しであり、当社グループも主力EPCプレーヤーを目指し、事業性検討や基本設計など早い段階から関与しながら将来のEPC受注と遂行を目指しています。最近では電力ケーブルの最適設計技術を確立しました。また、今後特に成長が期待されている浮体式洋上風力分野に関しては、これまで既に浮体式実証設備の撤去実証事業や今後の事業開発に関するフィージビリティスタディ、浮体の要素技術の検討などに取り組んできており、継続して技術力・競争力の強化を図りながら、プロジェクト全体の最適化を目指して取り組んでまいります。 知財・無形資産に関する活動当社グループでは、パーパス(存在意義)である「Enhancing planetary health」の実現を目指し、事業戦略・開発戦略・知財戦略の3つを連携させることで、深化・探索領域の技術開発と事業化を推進しています。コア技術領域となるEPC(設計・調達・建設)事業では、設計やプロジェクトマネジメントのデジタル化、建設工法最適化等の受注競争力向上に役立つ知財・無形資産の確保に注力するとともに、各種技術契約を重要視し、円滑なビジネスパートナリングに努めています。また、将来の成長エンジンとなる成長事業領域では、ケミカルリサイクル等の資源循環技術、ブルー水素・燃料アンモニア等の新エネルギー分野でのビジネス創出を支援すべく、ノウハウ・特許・商標等の知財ミックスによる保護に取り組んでいます。さらに、2040年ビジョンにおける5つの注力分野及びDX等の分野における特許出願比率を段階的に増やしていく計画です。特に重要な技術開発テーマでは、技術開発から事業化までを複数のステージに分けてステージ移行時にゲート審査を実施するとともに、知財戦略のPDCAサイクルを用いて必要なアクションをモニタリングしています。 なお、当事業での研究開発費は2,648百万円です。 ② 機能材製造事業石油精製分野石油精製企業は、新型コロナ禍からの経済回復による燃料需要増加への供給対応と、カーボンニュートラルに向けたエネルギーシフトに対応する製油所の事業変革、両面からの対応が求められています。当社グループは、石油精製分野において、これら顧客のニーズ変化に対応する触媒及び触媒素材開発に取り組んでいます。FCC触媒は顧客ニーズを取り込んだ改良型触媒で海外大型案件の継続採用や国内採用を果たしました。また、今後拡大が期待されるケミカルリファイナリー用に開発したFCC触媒は、海外で石化型FCC装置にトライアル採用が決定しました。水素化処理触媒は海外石油会社と共同開発した水素化分解触媒が、海外石油会社で採用され良好な実績を上げており、今後同社での採用拡大が期待されています。水素化分解触媒に用いられるゼオライトや無定形シリカアルミナ材は、当社グループの触媒開発技術を活用して開発された触媒素材であり、これら触媒素材は石油精製分野だけでなくケミカル分野にも広く展開が期待されています。触媒素材販売拡大に向けてゼオライト生産設備の生産能力を増強し、製品種の拡大や用途開拓に取り組んでいます。 石油化学分野ケミカル分野は汎用樹脂原料の需要低迷により、ケミカル製品種の見直しや事業再編の動きが活発化する一方、競争力のある、高効率なプロセスや高機能ケミカル製品への転換が進められています。また循環型社会の実現に向けたCO2・ケミカルリサイクルやバイオマス由来原料、生分解性プラスチックへの原料転換の検討が進められています。当社グループにおいては、顧客の高効率プロセスニーズに対応するケミカル触媒や吸着剤開発に取り組んでいます。今後拡大が期待される水素化触媒の開発のため、実機プロセスを模擬したラボ反応評価設備の導入と、反応生成物の構造解析を行うための分析装置を導入しました。それらの分析結果を機械学習ソフトにより解析しながら、製品開発の迅速化にも取り組んでいます。今後ケミカルリサイクルプロセスでも必要とされる、炭化水素中の塩素を高効率で除去可能な新規の塩素吸着剤の開発を完了し、実証段階に入っています。さらに塩素除去に加え硫黄除去、酸素除去等のケミカルリサイクル前処理材の開発にも取り組んでいます。今後も新たなニーズに対応する触媒や吸着剤の拡充を図っていきます。 環境保全分野・クリーンエネルギー分野環境保全・クリーンエネルギー分野では、カーボンニュートラルに向けた、CO2削減のためのバイオマス混焼及び専焼用の発電所向けに、排ガス中のアルカリ成分に耐性のある脱硝触媒の開発に取り組み、高い劣化抑制能を有する触媒を開発しました。現在、幾つかのバイオマス専焼発電所での実証試験を開始しており、早期の実商化及び拡販を目指しています。また、クリーンエネルギーとして期待されているアンモニアを、燃料として混焼させた時に排出される窒素酸化物を効率的に除去するための新規触媒の開発に着手しています。さらに、CO2回収・利用・貯蔵(CCUS)やクリーンな水素利活用等に使用される、新規材料の探索にも着手しました。 生活関連・化粧品分野プラスチック眼鏡レンズはレンズ厚の薄肉化・軽量化のため高屈折率化傾向は継続して進行しています。大手眼鏡メーカーの高屈折レンズ用ハードコート膜に採用された高屈折率チタニアナノ粒子の需要も着実に増加しています。また、耐光性を大幅に向上させた開発品は大手メーカーで良好な評価結果を得られており、量産化検討段階に進捗しました。さらに、高屈折率酸化物ナノ粒子と短時間硬化マトリックスを組み合わせたハードコートラッカー材は、プロセスの低エネルギー化に寄与しうることに加えて顧客のプロセス短縮ニーズとマッチして採用評価が進んでいます。化粧品やサニタリー分野では、マイクロプラスチックビーズ代替としての独自の感触用シリカ材は既に一部の顧客に採用されていますが、スクラブ材や化粧品への採用検討が引き続き加速しています。それと並行して、シリカ素材以外のラインナップとして米澱粉粒子など植物由来のボタニカルな新商品開発にも顧客の期待が大きく寄せられ、環境と人に優しい化粧品材料開発に取り組んでいます。 電子材料分野半導体関連製品の需要は中長期な成長が見込まれており、当社グループのシリコンやHDD基板用研磨砥粒において、次世代用の研磨面品質と研磨効率を両立した開発品の顧客評価は活発に進んでいます。このため、市場回復への備えや次期展開に向けて、シリカゾルの生産能力増強を進めています。また、新たに参入を目指しているCMP研磨用途では微細化・多層化に伴い多様化するニーズに対して独自の無機複合型研磨砥粒を中心に、純度や形状制御された砥粒でラインナップを揃え、顧客評価を進めています。光学フィルム用機能性光学材料では、有機ELテレビやQLEDテレビの高画質化のトレンドは変わらないと見込まれ、顧客による視認性向上のための反射防止フィルム用低屈折率粒子の採用検討が継続しています。当社グループは、多用途展開として車載用ディスプレイ向けにも低屈折粒子の開発を行うなど新用途開拓に取り組んでいます。新規開発材による用途開拓として、高速通信用低誘電率、高誘電率材料開発への取組みを継続しています。重要顧客を中心に活動しており商品化に向けた検討ステージが着実にステップアップしています。 ファインセラミックス分野ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LEDなどの高出力化や省エネルギーを達成するために、パワー半導体の高性能化が進んでいますが、同時に絶縁放熱基板への要求が厳しくなってきています。その要求に応えるため、当社グループは国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同開発した独自の製造方法により世界最高レベルの放熱性・信頼性を持つ「高熱伝導窒化ケイ素基板」の開発並びに事業化を推進してきました。既に新量産工場を立ち上げ、製品の品質及び生産性向上を実現しながら、更なる高性能品開発にも取り組んでいます。通信分野においては、自動運転やIoTの普及に欠かせない5Gが本格導入され、今後、更なるデータ量の増大に向けたBeyond5Gなどの無線通信や光通信回線の大容量化・高速化が必須になります。当社グループは、最先端の無線通信技術、光通信技術に対応できる薄膜回路基板、単板コンデンサなどの性能・信頼性向上などの開発・製造・販売を行っています。今後成長が期待される再生医療分野においては、最先端の骨再生材料について国立大学法人東北大学などとの共同研究を継続しています。その他、当社グループ独自のセラミックス材料技術と高精度加工技術により、補助人工心臓用部品や「はやぶさ2」などの宇宙衛星用部品、次世代Liイオン2次電池や燃料電池用部材など、先端分野で使用される製品の開発や新材料の開発に大学や各研究機関などと連携して取り組んでいます。 なお、当事業での研究開発費は3,070百万円です。 また、総合エンジニアリング事業及び機能材製造事業に加え、その他の事業において46百万円の研究開発費を計上しております。
FY2022|15,966 文字
5 【研究開発活動】昨年度に策定した「2040年ビジョン」の1stフェーズ「挑戦の5年間」と位置付ける中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure (BSP2025)」の初年度として、3つの重点戦略として、①EPC事業のさらなる深化、②高機能材製造事業の拡大、③将来の成長エンジンの確立に注力してきました。その結果、将来のビジネスの核となる技術の早期獲得を目的とした実証事業の推進、ライセンス技術の習得、事業化推進のための関係者との連携構築、新たな産学の連携を促進することができました。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、6,987百万円です。 ① 総合エンジニアリング事業設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野現地セキュリティや自然環境が厳しい地域や労働者の確保が困難な地域等、建設工事の遂行が困難な地域におけるプロジェクトが増加傾向にある中で、当社グループは大型Module工法の採用や、プロジェクト遂行の効率性向上のためにAWP(Advanced Work Packaging)による工事管理の採用などを実践していますが、更なる新しい工法(ロボット化、自動化、3Dプリンター導入、小型Module工法、リモート化など)、要素技術の導入(新素材、設計にAIやBIM導入など)、EPC全領域でAWP採用拡大などを図り実装することによって、熟練労働者不足、不安定な現場生産性、スケジュール遅延などのプロジェクトリスクを低減することを目指しています。同時にこうした取組みが当社グループの競争力強化にもつながると考えEPC事業会社を中心に全社的な活動を展開しています。 IT/DX関連1. EPC効率向上を目指して行っているもの(1) プロットプラン自動化Auto Plot PATHFINDER TMプラント全体の配置図であるプロットプランの設計は、プラントの運転・メンテナンスのし易さ、安全性の確保、環境保全はもちろんのこと、建設コストを決定付ける最も重要なものとして位置付けられています。したがって複雑な制約条件のもとで様々な要求を最適化するという大変難しい技術が必要であり、従来、経験豊富なシニア技術者の感覚に頼る部分が大きい領域でしたが、ITグランドプラン2030においてAI設計イノベーションを掲げ、プロットプラン設計を自動化するAuto Plot PATHFINDER TMを開発しました。Auto Plot PATHFINDER TMによる設計は、形式知化・コード化されたシニア技術とAIによるユニット分割をもとにしたユニット単位・機器単位の自動配置、位置確定などエンジニアによる指示取込み、最適配置のステップで行われます。Auto Plot PATHFINDER TMにより、多数のプロットプラン案を超短時間で作成することが可能になり、人間が思いつかないものを含む多くの提案が瞬時にできることから、新しい提案型設計 (Generative Design)へ変革し、基本設計の段階から顧客の検討に貢献できると考えております。2021年度から、複数のフィージビリティスタディやFEED(基本設計)業務を題材にシステムのトライアルを実施し、2022年3月にシステム開発を完了し社内リリースしました。(2) Data Centric EPC遂行、AWP Data Centric EPC遂行は、従来の人の手を介した図書ベースの情報交換に代え、ICT技術を最大活用したデータ中心の効率の良い情報交換とタイムリーな意思決定を図ることを目指した新たなプロジェクト遂行手法であり、プロジェクト遂行におけるリスクを低減させ品質・コスト・納期それぞれの要素を向上させることが期待されています。当社グループにおけるData Centric EPC開発においては、設計・調達・建設の作業対象となるタグを一元管理し、そのタグのデータをデータソースとなるシステムから集約し、またそのデータを活用するシステムへ連携する仕組みを構築しています。AWPは、Data Centric EPC遂行の仕組みを活用した一例であり、対象作業の開始を制限する可能性がある先行作業の特定とモニタリングが可能となります。現在進行中の複数プロジェクトにおいて、建設工事に実装したほか、設計・調達業務との連携と効果波及を目指してAWP管理の拡大を進めています。また、当社グループでは、Data Centric EPC遂行とAWPの統合を主軸に置き、EPC全体におけるデジタルトランスフォーメーション (EPC DX) へも取り組んでいます。2. 顧客によるオペレーション&メンテナンス(O&M)業務の面からの要求に応えるもの(1) アセットインフォメーションマネジメント(IM)アセットインフォメーションは、当社グループが遂行したプラントの完成・引き渡し後に顧客がスムーズに運転・保全に移行し、安定したプラント操業を維持するために重要な情報となります。設計・調達・建設(EPC)の各フェーズの中で生成されるプラントを構成する各種のアセットのインフォメーションに関し、一貫性をもって管理・統合する手法を構築し、社内標準化を進めることでインフォメーションの精度を飛躍的に向上させるとともに、データハンドオーバーの国際業界標準規格である「CFIHOS」に準拠したインフォメーションマネジメント遂行を実現しています。これにより顧客のスムーズな操業への移行を可能とするとともに、アセットやプラントのO&Mコストの低減という付加価値を提供し、顧客の事業価値向上に貢献しています。近年は本分野の顧客要求の高まりもあり、複数のプロジェクトでアセットインフォメーションマネジメントの実装が進み、技術の蓄積が進んでいます。(2) 保全サービスINTEGNANCE®当社グループは、プラントの設備診断業務を強力に支援する設備管理システム(A-MISTM)の販売・運用を行ってきました。また、このシステムを包含する、情報プラットフォームを構築し、業務の効率化と付加価値創造を目的とした統合型スマート保全サービス(INTEGNANCE®)の事業化を進めています。プラントの予知保全と定期修理計画の立案を保全戦略支援サービスとして提供するほか、モバイル端末タブレットやスマートフォンを活用した作業状況の電子化とタイムリーな情報共有による工事進捗管理を行っています。2020年4月から、日揮株式会社内に新たにデジタルイノベーション室(DI室)を設立し、保全部門とも連携したINTEGNANCE®構想並びにデジタル技術を活用したソリューションを提案、実装することで顧客の課題解決を目指しています。また、INTEGNANCE®の一環として3Dビューア「INTEGNANCE® VR」(以下、「本ビューア」という。)を開発し、プロトタイプ版を2021年11月から提供開始しました。本ビューアは、既存プラント全体を撮影した360°パノラマ写真上にアノテーション(関連データをタグ登録)することで、各機器や部材の相関関係を可視化するいわば“プラントのストリートビュー※”を実現するものです。プラント内のあらゆる情報に視覚的に迅速にアクセスできるため、広大な敷地を保全する実務者の運用・保守業務の大幅な効率化を可能とします。※ストリートビューは、Google LLCの登録商標です。 天然ガス分野昨今、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められていますが、当社グループではCO2の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を継続して積み上げています。CO2-EORにおいては、原油とともに随伴されるCO2を有効に活用するために、当社グループは特殊なゼオライト膜で効率的にCO2を分離回収することを可能とする技術を開発し、米国テキサス州で実証試験を実施しています。本技術とともにカーボンマネジメント・サイクルの知見と合わせて、産油ガス国、企業向けにCO2に関する課題解決に向けたトータルソリューションを提供しています。さらに、「尼国Gundihガス田におけるCCSプロジェクトのJCM実証に向けた調査」において、現在、大気放散されているCO2を近郊の圧入井までパイプライン輸送して、地下に圧入・貯留するCCS実証プロジェクトの事業化調査を実施しました。今後、実証設備の基本設計、建設を経て、2025年を目途にCO2の圧入、モニタリングを開始することを想定しています。本プロジェクトが実現すれば、東南アジア初のCCS実証プロジェクトとなり、アジア地域におけるCCS事業のモデルになるものと期待しています。また、世界的に資源・エネルギーの低・脱炭素化の動きが加速するなか、その生産・輸送・利用過程で排出される温室効果ガス(GHG)量の正確性や透明性を確保した算定が必要不可欠です。当社グループは、「LNG・水素・アンモニア事業における国際的な手法と調和したGHG排出量算定のMRV手法及びCI算定手法の技術検討・策定にかかる委託調査業務」において、既存の国際的なGHG排出量算定のMRV手法を分析した上で、GHG排出量を算定する過程において、MRV手法の透明性や正確性等を担保する上での課題について検討を行いました。加えて、国際的な算定手法と調和したGHG排出量のMRV手法及びCI算定方法について検討・策定・検証を行いました。本業務を通して策定したMRV手法及びCI算定手法を用いて、LNG等の既存及び新規プラント・関連施設の低・脱炭素化の実現に向けたコンサルティングからプラント等の改造工事の受注活動に今後取り組んでいきます。さらに、既設LNGプラント関連のAI・IoTビジネスとして、運転ビッグデータ解析及び気象解析を通じて得られた知見を基に操業改善によるLNG増産サービスを海外顧客向けに展開しています。例えば空冷式LNGプラントの場合、生産量減退の要因となるHot Air Recirculationに対しFoggingを適用しLNG増産に繋げた試みのほか、昨年に引き続き、アジアの国営石油会社向けにHot Air Recirculationの予測モデルを開発、本モデルを操業と連携させ増産するシステムを構築、運用中です。増産量を正確に把握するため、機械学習やシミュレータを利用したデジタルツインの開発も行っています。また、その他複数社のLNGプラントオーナー向けに、月次で運転ビッグデータ解析から解析結果・改善案を提供するサブスクリプション型サービスをLNG3 Envisionとして提供しています。 オフショア分野世界には未開発の中小規模海洋ガス田が多数存在し、効率的な開発手段が期待されています。その最有力候補が、当社グループが世界有数の建造実績を持つ洋上LNGプラント(FLNG)です。FLNGは、現地ガス消費市場規模に限界のある、またセキュリティ・環境問題を抱えるような地域での陸上パイプラインガス、並びに操業中の洋上石油生産設備で大量に生産される随伴ガスなどの現金化ソリューションでもあります。また、当連結会計年度は、海洋石油・ガス開発分野において、低炭素化・脱炭素化に代表されるSDGs達成に向けたソリューションへのニーズの高まりを受け、当社グループは、社会と顧客の課題に応えるべく、以下3点に取り組んできました。 1. FLNGに関する豊富な経験を活かし、既存LNG輸送船のLNG貯蔵タンクを利活用した新形式のFLNG(浮体式LNG設 備)ハルの概念設計を確立し、アメリカ船級協会の設計基本承認(AIP:Approval in Principle)を取得しました。(川崎汽船株式会社と共同開発、国土交通省支援事業) 2. 浮体式海洋石油生産・貯蔵・出荷設備上で効率的に高濃度CO2を分離し、海底への再注入を目指す、CO2を分離回 収するゼオライト膜の顧客指定条件によるラボ試験並びに経済性検討(既存別技術との比較)を実施しています。(2020年日本財団オーシャンイノベーションプロジェクト Phase 2として採択)3. 洋上生産設備の遠隔・無人操業の実現に向けて、遠隔で操業状況を監視するシステムのパイロット運用を開始し、自動化・省力化・遠隔操作に関連するデジタルテクノロジーの運用方法の検討を引き続き進めています。 低炭素・脱炭素化分野温室効果ガス排出量削減に向けた取組みとして、当社ではCO2フリー燃料の導入促進やカーボンリサイクル、及びEMS(エネルギーマネジメントシステム)の観点で研究開発を行っています。CO2フリー燃料としてCO2フリーアンモニアが着目されており、2020年代半ばの日本でのCO2フリーアンモニアの商業実装に向けた検討が進められています。当社グループは、2014~2018年度に実施した内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトの成果を活用し、再生可能エネルギーや化石資源からのCO2フリーアンモニアの製造・供給の社会実装を目指して、様々な案件のフィージビリティスタディに参画するとともに、CO2フリーアンモニアのより効率的な製造方法やコストダウンに向けた研究開発を行っています。特に変動する再生可能エネルギー由来のCO2フリーアンモニア製造について、従来にはないダイナミックな変動型アンモニア合成システムを開発しています。当連結会計年度の具体的な取組みとしては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業として、「大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発及びグリーンケミカルプラントの実証」と題したプロジェクトを旭化成株式会社とともに共同提案し、採択されました。本プロジェクトでは、100MW級を見通した大規模アルカリ水電解システム及び再生可能エネルギー由来の水素を原料としたグリーンケミカルプラントの実証を行います。グリーンケミカルプラント開発では、変動する再生可能エネルギー由来水素を原料としたプロセスにおいて、水素供給量を制御し運転最適化を実現する統合制御システムを旭化成株式会社と共同開発します。さらに、統合制御システムを活用し、グリーンアンモニアなどの化学品の合成プラントのフィージビリティスタディ及び技術実証に取り組みます。また、グリーン水素やグリーンケミカルのサプライチェーンを構成する企業に本プロジェクトに参加いただき、社会実装における便益や課題を抽出することで、事業化と市場創出を加速していきます。また、カーボンリサイクル技術の一つとして、化石燃料等の利用により排出されるCO2の固定化技術の開発を目的として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発委託事業「廃コンクリートなど産業廃棄物中のカルシウム等を用いた加速炭酸塩化プロセスの研究開発」を引き続き実施しています。本事業では、廃コンクリート等カルシウムを多く含む産業廃棄物から原料となるカルシウムを抽出し、廃ガス中のCO2と反応させて固定化させるプロセスの実用化と普及を目指した技術開発を行います。また、カルシウム分の抽出と炭酸塩化の効率を高めるため、加速炭酸塩化技術について試験・評価を実施するとともに、プロセス全体の最適化を図りながら技術を確立させ、CO2削減効果を評価していきます。電気を蓄えることが可能な蓄電池は、太陽光などの再生可能エネルギーと併用することで、昼間に発電して蓄えた電気を夜に使うなど、全体として効率的な運用が可能となります。当社グループは、EMSやVPP(Virtual Power Plant)のリソースとして、最適な蓄電池を提供することで、再生可能エネルギーの出力安定化、需給調整、災害対策などに貢献します。気象条件によって出力が左右される再生可能エネルギーの導入が進んだ結果、出力変動や余剰電力の発生といった、電力系統に影響を及ぼす課題が顕在化しており、電力系統の安定化を低コストで実現する技術に対するニーズが高まっています。当社グループは、蓄電池、工場設備などからの余剰電力を集めて、再生可能エネルギーの出力変動に応じて適切に配分を行う仮想発電所としての役割を果たすVPPの開発にも取り組んでいます。 資源循環分野中期経営計画「BSP2025」でケミカルリサイクルを重点分野に位置づけており、ガス化(EUPガス化ケミカルリサイクル)、油化、モノマー化(廃繊維リサイクル)を含め、幅広いプロセス技術を通じてケミカルリサイクルを推進し、循環型社会の構築に貢献してまいります。廃プラスチックのケミカルリサイクルは、リサイクルが困難な異種素材や不純物を含むプラスチックを分解し、様々な化学物質に再生することが可能であり、リサイクル率の大幅な向上をもたらす技術として期待されています。当社グループは、荏原環境プラント株式会社とUBE株式会社からEUP(Ebara Ube Process)に関する技術供与、昭和電工株式会社から量産化技術の供与と運転支援を受け、廃プラスチックのリサイクル推進に向けて、①廃プラスチックのガス化設備並びにガス化設備から製造される合成ガスを用いた化学品製造設備の提案、②廃プラスチックを原料とする水素製造装置の提案、及び③廃プラスチックリサイクルを実現するためのバリューチェーン構築を行っています。具体的な事例としては、岩谷産業株式会社、豊田通商株式会社と共同で国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業にて、都市部における廃プラスチックガス化リサイクルによる地域低炭素水素モデル構築に向けた調査を実施しています。本調査では、愛知県・福岡県を対象とし、廃プラスチックのガス化による水素製造と地域での利活用モデルの可能性を検討します。これにより、都市部での工場や家庭などから排出される廃プラスチックを活用することで、早期に水素を安定的かつ安価に供給することが可能となります。CO2排出量の削減が急務となっている発電所や各種モビリティ、港湾設備などにおける水素利用の促進をはじめ、水素供給による幅広い分野の脱炭素化と資源循環の促進に貢献することを目指します。不純物を多く含むプラスチックをケミカルリサイクルするには、ガス化、油化などの手法がありますが、油化プロセス技術は他の技術と比較して、プラスチックへのリサイクル効率が高く、製油所・石油化学プラントの既存設備を最大限活用することで、初期設備投資を抑えることができる利点を有しています。当社は旧札幌プラスチックリサイクル株式会社によって商用運転が行われた実績のある廃プラスチックの油化プロセスに関する技術を活用した、ケミカルリサイクルに関する自社ライセンスの開発を開始しました。本技術は、他の油化プロセス技術では事前除去する必要がある塩化ビニル(PVC)を同時に処理することが可能であり、また残渣を適切に排出することで安全かつ安定的に連続運転が可能という技術的な優位性を有しています。また本技術は、旧札幌プラスチックリサイクル株式会社によって2000年から10年間、年間1万5千トン規模の処理量で商用運転が行われた実績を有しており、油化プロセス技術の中で最も信頼性の高い技術であると考えています。当社グループは、本技術の技術的優位性、及び実績をベースに、プロセス技術全体の更なる効率化や処理能力の向上を目指した装置の大型化による経済性向上に向けた技術改良を図り、2022年のライセンス開始を目指します。当社及び帝人株式会社、伊藤忠商事株式会社は、廃棄されるポリエステル繊維製品からポリエステルをケミカルリサイクルする技術のライセンス事業に向けた共同協議書を締結しました。昨今、温室効果ガスによる地球温暖化や、廃棄プラスチック及び遺棄漁具などによる海洋汚染といった環境破壊が深刻化しており、世界中で対策が急がれています。繊維産業においても衣料品の大量廃棄問題や製造工程におけるCO2排出量などの環境負荷がクローズアップされるなど、サステナビリティ課題の解決が急務となっています。今般の協議書締結においては、帝人株式会社の持つポリエステルのケミカルリサイクル技術と、グローバルにエンジニアリング事業を展開する当社の知見、伊藤忠商事株式会社の持つ繊維業界の幅広いネットワークを活用し、廃棄されるポリエステル繊維製品を原料としたポリエステルのケミカルリサイクルシステムの構築を検討します。これにより、繊維製品の大量廃棄問題に対する有効な解決手段の更なる拡大を目指します。また、当社は、帝人株式会社及び国立大学法人東京大学と共同で、持続可能な繊維産業のエコシステムを構築する際の課題抽出や、これらの課題克服に向けたステークホルダー間の連携、更には廃棄物処理法の改定、民間の活力を活かしてリサイクルを促進する個別リサイクル法の制定に関する協議を行う産学連携のワーキンググループを設立し、活動を開始しました。本ワーキンググループ活動を通じて、エンジニアリング事業を通じて培ってきた当社グループの技術力や知見、帝人株式会社の有する繊維リサイクルに関するノウハウ、国立大学法人東京大学・平尾雅彦研究室の持つリサイクルシステムの価値評価の知見を活用し、参画メンバーとともに持続可能な繊維産業のエコシステム構築に向けた取組みを推進してまいります。航空業界においては、運航時のCO2排出量の削減が喫緊の課題であり、産業廃棄物などから製造される持続可能な航空燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel)の開発・安定供給への期待が高まっています。当社グループは、使用済み食用油を用いたSAF製造に関して、製造体制の確立とバリューチェーンの構築に向けて検討を行っています。具体的な事例としては、当社グループと株式会社レボインターナショナル及びコスモ石油株式会社と共同で、「国産廃食用油を原料とするバイオジェット燃料製造サプライチェーンモデルの構築」を提案し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業に採択されました。本事業では、技術的に実現し得るSAF製造技術を軸に、将来の事業化を見据えた規模でのSAF製造及び供給に係る空港納入までのサプライチェーンモデルを構築する実証事業を実施し、SAFサプライチェーンの早期確立を図ります。これにより、2025年までに国内初となる商用規模でのSAF製造・供給開始を目指します。さらに、当社は株式会社レボインターナショナル、全日本空輸株式会社及び日本航空株式会社と「ACT=行動を起こす」意志を持つその他の12の企業と共に、国産のSAFの商品化及び普及・拡大に取り組む有志団体「ACT FOR SKY」を設立しました。ACT FOR SKYは、前述の目的のために、業界の垣根を超えた企業が協調・連携し、SAFやカーボンニュートラル、資源循環の重要性を訴えながら市民・企業の意識改革を通じて、行動変容につなげていくことを目指しています。今後も自動車・交通需要の増加に伴い、タイヤ需要の増加が見込まれています。また、現在は、タイヤの主な材料の一つとして石油由来の合成ゴムが使われており、使用済タイヤの多くは、サーマルリカバリー(熱回収)により燃料の一つとして有効利用されています。将来、資源の枯渇やCO2排出量の増加による気候変動などの問題に直面する可能性が指摘されている中、今後もより持続可能な形でタイヤを提供し続ける必要があります。そのために当社は、株式会社ブリヂストン、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人東北大学、ENEOS株式会社と共同で、使用済タイヤから合成ゴムの素原料であるイソプレンを高収率で製造するケミカルリサイクル技術の共同研究を開始しました。本研究開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に採択された実証事業「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」における2つの研究開発項目の一つです。本研究開発は、使用済タイヤを特殊な触媒を使って分解し、合成ゴムの素原料であるイソプレン等を高収率で製造し、タイヤ原料として再利用するための技術の開発と社会実装に取り組むものです。本研究開発を通じて、タイヤ・ゴム産業及び石油化学産業のバリューチェーン全体における合成ゴムの資源循環性の向上とカーボンニュートラル化、さらにその先の持続可能な社会の実現への貢献を目指します。 バイオ分野CO2削減やサステナビリティなどの観点から、バイオマスを原料とする化学品や燃料の社会的需要が高まっています。当社グループでは、CO2の削減効果が高く、かつ食料と競合しない非可食バイオマス原料を効率的にバイオエタノールやバイオプラスチック等の原料に転換するための技術開発を進めています。バイオマス原料の変換技術としては、バガス(サトウキビ搾汁後の残渣)や木質資源(木材やパルプ等)を効率よく糖に変換するための前処理技術の開発、及びこれらの糖に含まれる発酵阻害物質を除去するための糖精製技術の開発に注力しております。現在は石油から製造されている1,3-ブタジエン(主にタイヤの原料となる製品)をバイオマス由来のエタノールから製造する技術の開発を化学会社と共同で進めています。日本は、国土面積の67%を森林が占める世界有数の森林大国でありながら、過去数十年に亘る国産木材の価格低迷などを背景に、収穫期を迎えながらも手入れがされない森林が増加しています。このような地域の未利用森林資源を活用することにより、森林の再生や災害リスクの低減、海外の資源に頼らない地産地消型経済の確立など、循環型社会の構築に向けた貢献が期待されています。また、各業界でCO2排出量削減に向けた具体的な取組みが求められる中、化石燃料の代替原料として、バイオマス由来の燃料やケミカルなどを製造するグリーンリファイナリーに対するニーズが高まっています。当社は、太陽石油株式会社と共同で、国内初の森林資源を有効活用したグリーンリファイナリー事業の共同検討に関する基本合意書を締結しました。本共同検討では、主に四国内の未利用森林資源の収集から、木質バイオマスの分解油化によるバイオ原油の製造、バイオ原油を原料としたバイオマスプラスチック原料やバイオ燃料などバイオ製品の製造に至るまでの一連のサプライチェーンの構築に向けた検討を行います。今後、当社が有するエンジニアリング技術及びプロジェクト管理能力と、太陽石油株式会社が有する製油所の運転技術やノウハウを活用し、地域事業者や自治体、大学などとの連携を通じて、2022年から分解油化プロセスの選定を含めた実現可能性調査を実施し、将来的な商業化を目指します。 ライフサイエンス・ヘルスケア分野医薬品業界では、これまでの低分子合成医薬品に加え中分子合成医薬品、バイオ医薬品を主体とする高分子医薬品、再生医療等製品の開発が増加傾向であり、製造が複雑な医薬品や活性の強い医薬品が増え、付加価値の高い医薬品が開発されています。これに対し、合成医薬品製造に関しては、高薬理活性物質の製造に適用するための封じ込め技術等に加え、これまでの多くの実績に基づく封じ込め測定結果の設計への反映、中分子医薬品製造に関する独自技術の設備開発など、多角的な面から技術開発を進めています。また、医薬品業界の注目度が高まっている原薬及び製剤の連続生産に関し、独自の連続技術開発を進めています。バイオ医薬品製造に関しては、マイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクター開発、バイオ医薬品連続生産に向けた技術開発等を進めています。再生医療等製品に関しては、再生医療関連施設の多くの建設実績を踏まえ、細胞・組織培養環境基準の構築、再生医療関連要素技術の高度化を進めています。固形製剤、無菌製剤製造工場ではロボット活用による無人(塵)化の実現、スマート工場化の開発を進めています。このような研究開発活動の成果として、当社グループが建設するプラント・施設への導入事例も増えており、当社グループの技術差別化に繋がっています。さらに、病院分野では、カンボジアでの病院経営、日本国内でのPFI事業における病院運営で得た医療、経営、運営の知見をもとに施設設計との融合を図るとともに、ICTの活用により利便性、効率性を高め、より高い機能性とホスピタリティを持つ病院づくりを進めています。また、健診事業を対象にデジタル化やAI、センシング技術を駆使した未来型健診施設の開発を進め、さらに健診データを利活用するシステムの開発に取り組んでいます。 原子力分野当社グループは、原子力発電所及び再処理工場の廃止措置に係わるプロジェクトマネジメントのサービス提供と廃棄物処理関連技術の開発を進めています。このうち、原子力発電所の廃止措置について、発電所内に貯蔵されている放射線量の高い使用済イオン交換樹脂を安全、かつ安定的に貯蔵するための分解技術の実用化に目処が得られつつあります。また、分解されたイオン交換樹脂を含む、多種・多様な放射性廃棄物への適用を目指し、閉じ込め性能の高い固型化技術の開発を進めています。さらに、再処理工場を含む様々な原子力施設の廃止措置を対象に、長期間にわたる廃止措置プロジェクトを安全、かつ効率的に実施するためのマネジメント支援システムを開発中です。国内外で注目されている小型モジュール炉(SMR)をはじめとする次世代原子炉技術については、海外におけるSMRプラントのEPC事業への進出を目指し、当社はSMRの開発を行っている米国NuScale Power, LLCに2021年3月に出資しました。当社は、SMRの将来的な市場拡大に加えて、SMRが水素や再生可能エネルギーと並び、脱炭素社会の実現への貢献が期待できること、さらにNuScale Power, LLCの技術が他のSMR技術に先駆けて、2020年8月に米国初の設計認証を取得し、米国原子力規制委員会によりその安全面が認められ、商業化に最も近いSMR技術であることから、今般、SMRプラントのEPC事業への進出を目指し、NuScale Power, LLCに出資を決定したものです。中長期的には海外市場を中心にSMRのEPCプロジェクトを受注・遂行していくことを視野に入れ活動していくほか、SMRと再生可能エネルギー設備、水素製造設備、海水淡水化設備とのインテグレーションも検討していく予定です。 洋上風力発電国内の洋上風力発電は、現在進行中の港湾区域に続いて一般海域の促進区域におけるプロジェクトが動き出そうとしています。今後、国内の洋上風力発電は毎年複数案件が継続的に開発される見通しであり、当社グループも主力EPCプレーヤーを目指し、事業性検討や基本設計など早い段階から関与しながら将来のEPC受注と遂行を目指しています。また、今後特に成長が期待されている浮体式洋上風力分野に関しては、昨年度浮体式実証設備の撤去実証事業にも参画し、加えて今後の事業開発に関するフィージビリティスタディや、浮体に関する要素技術の習得など、技術力・競争力の強化を図りながら、プロジェクト全体の最適化を目指して取り組んでまいります。 なお、当事業での研究開発費は4,136百万円です。 ② 機能材製造事業石油精製分野国内石油精製会社では、エネルギー供給構造高度化法の施行や地球環境保護に向けた燃料油需要構造変化を踏まえ、ガソリン留分から軽油やジェット燃料といった中間留分、ナフサやアロマといった化学原料を中心とする石化シフトへの生産体制の転換や更なるボトムレス化が進められています。当社グループは、こうした動きに対応する高いボトム分解能を有し、石化型運転に対応できる流動接触分解触媒の開発・実証化や付加価値の高いプロピレン収率アップ用アディティブの国内外への展開を図っています。また多様化する顧客ニーズに適合した触媒開発の迅速化や効率化を目的に、蓄積した試作データや性能データを構築した触媒設計シミュレータに取り込み、各種触媒の改良や新触媒の提案に活用しています。一方、世界全体では新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」という。)の影響で一時的な影響はあるものの、アジアを中心に低硫黄分の燃料油需要は増加が見込まれています。そのため、残油流動接触分解装置の前処理や船舶燃料油硫黄規制に対応する高性能の残油水素化脱硫触媒やVGO脱硫触媒が求められています。当社グループが新たに開発した脱硫触媒は、国内で採用され良好な結果が得られており、今後海外展開についても進める計画です。また、国内石油精製会社の研究所と共同開発した水素化分解触媒及び海外石油精製会社と共同開発した水素化分解触媒は、共に採用された製油所で高性能を発揮しており、継続採用や他製油所への展開を目指しています。 石油化学分野汎用ケミカル製品の市場競争激化に加え、地球環境保護に向けた資源リサイクルやプラスチック汚染防止などの対応要請により、ケミカル市場は競争力のあるプロセスや製品開発及びケミカルリサイクルによる環境負荷の低いプラスチック製品開発の取組みが進んでいます。当社グループにおいても、市場ニーズに対応する高活性、高選択性の触媒を顧客に提供するため、コア技術を深化させ、新規プロパー触媒や吸着剤開発にも取り組んでいます。新たに開発したニッケル系水素化触媒は、反応評価とシミュレーション技術を強化することにより、高い顧客要求性能を満たし、採用検討段階に進捗しました。一方、ケミカルリサイクルやバイオマス利活用プロセスにおいて、塩素除去や硫黄除去、酸素除去等の前処理ニーズが顕在化し、実証プラントでの提案触媒採用が決定しました。今後も本ニーズに対応する触媒や吸着剤についても積極的に取り組んでまいります。 環境保全分野・クリーンエネルギー分野環境保全分野では、カーボンニュートラルに向けた、CO2削減のためのバイオマス混焼、及び専焼用の発電所向けに、排ガス中のアルカリ成分に耐性のある脱硝触媒の開発を行い、実証試験を行っています。また、ごみ焼却場の脱硝処理用途においても、排ガスの低温化に対応する新規低温脱硝触媒開発に取り組み、良好な性能を示す触媒を開発しました。今後、実機焼却場での実証試験開始予定です。クリーンエネルギー分野では、定置型水素燃料電池ユニット用に、効率的でコンパクトな素材が、実商化に向けた工業化試験段階に進捗しています。 生活関連・化粧品分野プラスチック眼鏡レンズは高屈折率化によるレンズ厚の薄肉化が継続して進行しています。大手眼鏡メーカーの高屈折レンズ用ハードコート膜に採用された高屈折率酸化物粒子は、確実にシェアを広げています。また、次世代品として更なる耐光性と高屈折率を両立する粒子の開発にも取り組んでおり、本開発品は大手メーカーで好評価を得て、早期の商品化を目指しています。さらに、高屈折率酸化物粒子と短時間硬化マトリックスを組み合わせたハードコートラッカー材は、顧客のプロセス短縮ニーズとマッチして採用評価が進んでいます。化粧品やサニタリー分野では、マイクロプラスチックビーズ代替としてのシリカ材がスクラブ材や化粧品への採用検討に進むと共に、植物由来のボタニカルな新商品開発の活動も顧客の注目を集めるなど、環境と人に貢献する化粧品材料開発に取り組んでいます。 電子材料分野COVID-19からの市場回復と合わせ、高速通信やデジタル化の流れにより高記憶容量ストレージ需要が急拡大し、ハードディスク用研磨砥粒の需要が伸びています。また、半導体活況でシリコン研磨材も堅調に推移しており、市場の活況と合わせて次世代用の研磨面品質と研磨効率を両立した開発品の顧客評価も活発に進んでいます。このような需要旺盛な市場に対して、当社グループは生産能力増強検討に着手しました。またデバイスの高速通信用としての低誘電率、高誘電率材料開発への取組みは、一部顧客で商品化検討評価にステップアップしました。半導体製造研磨用途では微細化・多層化に伴い、低欠陥かつ高研磨速度の研磨砥粒として独自の無機複合型研磨砥粒が採用に向けた顧客評価も進捗しています。光学フィルム用機能性光学材料では、高画質テレビの視認性向上のための反射防止フィルム用途で低屈折率粒子が採用されています。汎用化に向かう液晶テレビでは反射防止ニーズは低下傾向にある一方で、有機ELテレビ用途やQLEDテレビなどの新領域テレビでは低反射防止ニーズは強く、より低屈折率で信頼性の高い粒子の開発・工業化に取り組んでいます。また、車載用に搭載される液晶ディスプレイ用途に向けた光学ナノ粒子の開発も進行するなど新しい用途開拓にも取り組んでいきます。 ファインセラミックス分野ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LEDなどの高出力化や省エネルギーを達成するために、パワー半導体の高性能化が進んでいますが、同時に絶縁放熱基板への要求が高くなっています。その要求に応えるため、当社グループは、国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同開発した独自の製造方法により世界最高レベルの放熱性・信頼性を持つ「高熱伝導窒化ケイ素基板」の開発並びに事業化を推進してきました。既に新量産工場を立ち上げ、製品の品質及び生産性向上を実現しながら、更なる高性能品開発にも取り組んでいます。通信分野においては、自動運転やIoTの普及に欠かせない5Gが本格導入され、今後、更なるデータ量の増大に向けたBeyond5Gなどの無線通信や光通信回線の大容量化・高速化が必須になります。当社グループは、最先端の無線通信技術、光通信技術に対応できる薄膜回路基板、単板コンデンサなどの性能・信頼性向上などの開発・製造・販売を行っています。今後成長が期待される再生医療分野においては、最先端の骨再生材料について国立大学法人東北大学等との共同研究を継続しています。その他、当社グループ独自のセラミックス材料技術と高精度加工技術により、補助人工心臓用部品や「はやぶさ2」などの宇宙衛星用部品、次世代Liイオン2次電池や燃料電池用部材、豪雨対策ポンプ用部品など、先端分野で使用される製品の開発や新材料の開発に大学や各研究機関などと連携して取り組んでいます。 なお、当事業での研究開発費は2,810百万円です。 また、総合エンジニアリング事業及び機能材製造事業に加え、その他の事業において40百万円の研究開発費を計上しております。
FY2021|12,476 文字
5 【研究開発活動】中期経営計画「Beyond the Horizon」の最終年度に当たる当連結会計年度は、差別化技術に基づいたビジネス開発を推進してきました。重点戦略を環境問題の解決を通じて持続可能な社会の実現に貢献する①低炭素・脱炭素化分野、②資源循環分野、③バイオ分野とし、資源、環境、ライフサイエンス、新エネルギー、ものづくりの各分野に注力してきました。その結果、プロジェクト受注や技術ライセンス供与などの実績をあげるとともに、成長分野における将来のビジネスの核となる技術の早期獲得を目的とした産官学の連携による開発を促進することができました。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、7,742百万円(消費税等は含まない)です。 ① 総合エンジニアリング事業設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野現地セキュリティや自然環境が厳しい地域や労働者の確保が困難な地域等、建設工事の遂行が困難な地域におけるプロジェクトが増加傾向にある中で、当社グループは大型Module工法の採用や、プロジェクト遂行の効率性向上のためにAWP(Advanced Work Packaging)による工事管理の採用などを実践していますが、さらなる新しい工法(ロボット化、自動化、3Dプリンター導入、小型Module工法、リモート化など)、要素技術の導入(新素材、設計にAIやBIM導入など)、EPC全領域でAWP採用拡大などに挑戦し続けそれらを実装することで、熟練労働者不足、不安定な現場生産性、スケジュール遅延などのプロジェクトリスクを低減することを狙っています。同時にこれらの挑戦が競争力強化につながると考え全社的な活動を展開しています。 IT/DX関連1. EPC効率向上を目指して行っているもの(1) プロットプラン自動化Auto Plot PATHFINDER TMプラント全体の配置図であるプロットプランの設計は、プラントの運転・メンテナンスのし易さ、安全性の確保、環境保全はもちろんのこと、建設コストを決定付ける最も重要なものとして位置付けられています。従って複雑な制約条件のもとで様々な要求を最適化するという大変難しい技術が必要であり、従来、経験豊富なシニア技術者の感覚に頼る部分が大きい領域でしたが、ITグランドプラン2030でAI設計イノベーションを掲げる中で、プロットプラン設計を自動化するAuto Plot PATHFINDER TMを開発しました。Auto Plot PATHFINDER TMによる設計は、形式知化・コード化されたシニア技術とAIによるユニット分割をもとにしたユニット単位・機器単位の自動配置、位置確定などエンジニアによる指示取込み、最適配置のステップで行われます。Auto Plot PATHFINDER TMにより、多数のプロットプラン案を超短時間で作成することが可能になり、人間が思いつかないものを含む多くの提案が瞬時にできることから、新しい提案型設計 (Generative Design)へ変革し、基本設計の段階から顧客の検討に貢献できると考えております。(2) Data Centric EPC遂行、AWP Data Centric EPC遂行は、従来の人の手を介した図書ベースの情報交換に代え、ICT技術を最大活用したデータ中心の効率の良い情報交換とタイムリーな意思決定を図ることを目指した新たなプロジェクト遂行手法であり、プロジェクト遂行におけるリスクを低減させ品質・コスト・納期それぞれの要素を向上させることが期待されています。当社におけるData Centric EPC開発では、設計・調達・建設の作業対象となるタグを一元管理し、そのタグのデータをデータソースとなるシステムから集約し、またそのデータを活用するシステムへ連携する仕組みを構築しています。AWPは、Data Centric EPC遂行の仕組みを活用した一例であり、対象作業の開始を制限する可能性がある先行作業の特定とモニタリングが可能となります。現在、建設工事への実装に続き、設計・調達業務との連携と効果波及を目指してAWP管理の拡大を進めています。また、当社では、Data Centric EPC遂行とAWPの統合を主軸に置き、EPC全体におけるデジタルトランスフォーメーション (EPC DX) にも取り組んでまいります。 2. 顧客によるオペレーション&メンテナンス(O&M)業務の面からの要求に応えるもの(1) アセットインフォメーションマネジメント(IM)アセットインフォメーションは、当社グループが遂行したプラントの完成・引き渡し後に顧客がスムーズに運転・保全に移行し、安定したプラント操業を維持するために重要な情報となります。設計・調達・建設(EPC)の各フェーズの中で生成されるプラントを構成する各種のアセットのインフォメーションに関し、一貫性をもって管理・統合する手法を構築し、社内標準化を進めることでインフォメーションの精度を飛躍的に向上させるとともに、データハンドオーバーの国際業界標準規格である「CFIHOS」に準拠したインフォメーションマネジメント遂行を実現しています。これにより顧客のスムーズな操業への移行を可能とするとともに、アセットやプラントのO&Mコストの低減という付加価値を提供し、顧客の事業価値向上に貢献しています。(2) 保全サービスINTEGNANCE®当社グループは、プラントの設備診断業務を強力に支援する設備管理システム(A-MISTM)の販売・運用を行ってきました。また、このシステムを包含する、情報プラットフォームを構築し、業務の効率化と付加価値創造を目的とした統合型スマート保全サービス(INTEGNANCE®)の事業化を進めています。プラントの予知保全と定期修理計画の立案を保全戦略支援サービスとして提供するほか、モバイル端末タブレットやスマートフォンを活用した作業状況の電子化とタイムリーな情報共有による工事進捗管理を行っています。2020年4月から、日揮株式会社内に新たにデジタルイノベーション室(DI室)を設立し、保全部門とも連携したINTEGNANCE®構想並びにデジタル技術を活用したソリューションを提案、実装することで顧客の課題解決への貢献を目指しています。 天然ガス分野昨今、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められていますが、当社グループではCO2の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を継続して積み上げています。CO2-EORにおいては、原油とともに随伴されるCO2を有効に活用するために、当社グループは特殊なゼオライト膜で効率的にCO2を分離回収することを可能とする技術を開発し、米国テキサス州で実証試験を実施しています。本技術とともにカーボンマネジメント・サイクルの知見と合わせて、産油ガス国/企業向けにCO2に関する課題解決に向けたトータルソリューションを提供しています。さらに、「尼国Gundihガス田におけるCCSプロジェクトのJCM実証に向けた調査」として、現在、大気放散されているCO2を近郊の圧入井までパイプライン輸送して、地下に圧入・貯留するCCS実証プロジェクトの詳細計画を策定しています。本ガス田におけるCCSプロジェクトを実証フェーズに移行させるため、我が国の先進的な技術の適用可能性及びJCM(二国間クレジット)方法論を検討しています。本プロジェクトが実現すれば、東南アジア初のCCS実証プロジェクトとなり、アジア地域におけるCCS事業のモデルになるものと期待しています。また、既設LNGプラント関連のAI・IoTビジネスとして、運転ビッグデータ解析及び気象解析を通じて得られた知見を基に制御方法改善によるLNG増産サービスを海外顧客向けに展開しています。LNG生産量減退の要因となるHot Air Recirculationに対しFoggingを適用しLNG増産に繋げた試みの他、昨年に引き続き、マレーシア国営石油会社(ペトロナス社)向けにHot Air Recirculationの予測モデルを開発、本モデルを操業と連携させ増産するシステムを構築、運用中です。増産量を正確に把握するため、機械学習やシミュレータを利用したデジタルツインの開発も行っています。また、その他複数社のLNGプラントオーナー向けに、月次で運転ビッグデータ解析から解析結果・改善案を提供するサブスクリプション型サービスをLNG3 Envisionとして提供しています。 オフショア分野世界には未開発の中小規模海洋ガス田が多数存在し、効率的な開発手段が期待されています。その最有力候補が、当社グループが世界有数の建造実績を持つ洋上LNGプラント(FLNG)です。FLNGは、現地ガス消費市場規模に限界のある、またセキュリティ・環境問題を抱えるような地域での陸上パイプラインガス、並びに操業中の洋上石油生産設備で大量に生産される随伴ガスなどの現金化ソリューションでもあります。また、当連結会計年度は、海洋石油・ガス開発分野において、低炭素化・脱炭素化に代表されるSDGs達成に向けたソリューションへのニーズの高まりを受け、当社グループは、社会と顧客の課題に応えるべく、以下4点に取り組んできました。 1. 現在遂行中の2件のFLNGの設計、調達、建設、据付、試運転(EPCIC)プロジェクトの経験を活かし、低価格・短納期型FLNGコンセプトを開発中です。(2020年度国土交通省・海洋資源開発関連技術高度化研究開発事業テーマとして採択)2. 浮体式海洋石油生産・貯蔵・出荷設備上で効率的に高濃度CO2を分離し、海底への再注入を目指す、CO2を分離回 収するゼオライト膜(前述)の顧客指定条件によるラボ試験並びに経済性検討(既存別技術との比較)を実施しています。(2020年日本財団オーシャンイノベーションプロジェクト Phase 2として採択)3. 洋上生産設備の遠隔・無人操業の実現に向けて、現状の洋上での機能・業務・組織を分析し、自動化・省力化・遠隔操作に関連するデジタルテクノロジーの調査・検討を進めています。4. 低炭素化FLNGや、ゼロエミッション燃料として期待されるアンモニアの洋上設備(Floatingブルーアンモニア)の開発方針策定にあたっての予備調査を実施しました。 低炭素・脱炭素化分野温室効果ガス排出量削減に向けた取り組みとして、当社ではCO2フリー燃料の導入促進やカーボンリサイクル、及び、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の観点で研究開発を行っています。CO2フリー燃料としてCO2フリーアンモニアが着目されており、2020年代半ばの日本でのCO2フリーアンモニアの商業実装に向けた検討が進められています。当社グループは、2014~2018年度に実施した内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトの成果を活用し、再生可能エネルギーや化石資源からのCO2フリーアンモニアの製造・供給の社会実装を目指して、様々な案件のフィージビリティスタディに参画するとともに、CO2フリーアンモニアのより効率的な製造方法やコストダウンに向けた研究開発を行っています。特に変動する再生可能エネルギー由来のCO2フリーアンモニア製造について、従来にはないダイナミックな変動型アンモニア合成システムを開発しています。当連結会計年度の具体的な取り組みとしては、住友商事株式会社が豪州クイーンズランド州のグラッドストンで計画中の水素製造・販売プロジェクトにおける、水素製造プラントの基本設計役務が挙げられます。本プロジェクトでは、太陽光由来の電力を主電源として、水の電気分解装置から水素を製造、現地で販売し、地産地消型の水素コミュニティの構築を検討するものです。今般基本設計を行う初期の水素製造プラントでは、年間250-300トンの水素製造を予定しています。初期プラントで水素製造実証を行うとともに、同地域での需要開発を進め、地産地消型の水素事業の可能性を検討します。また、カーボンリサイクル技術の一つとして、化石燃料等の利用により排出されるCO2の固定化技術の開発を目的として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発委託事業として、以下2件が採択され、二酸化炭素を炭酸塩として固定化する技術の開発を行っています。「廃コンクリートなど産業廃棄物中のカルシウム等を用いた加速炭酸塩化プロセスの研究開発」では、廃コンクリート等カルシウムを多く含む産業廃棄物から原料となるカルシウムを抽出し、廃ガス中のCO2と反応させて固定化させるプロセスの実用化と普及を目指した技術開発を行います。また、カルシウム分の抽出と炭酸塩化の効率を高めるため、加速炭酸塩化技術について試験・評価を実施するとともに、プロセス全体の最適化を図りながら技術を確立させ、CO2削減効果を評価していきます。 「海水および廃かん水を用いた有価物併産CO2固定化技術の研究開発」では、火力発電所などから排出されるCO2を、海水及び海水淡水化プラントの廃水である「廃かん水」に含まれるマグネシウムと反応させることで、炭酸マグネシウムとして固定化し、コンクリート製品の骨材などの部材として有効利用するまでの一連の技術の開発に取り組みます。資源として豊富に存在する海水や廃かん水を活用することで、供給安定性を実現するだけでなく、マグネシウムを抽出する過程で副生される各種イオン物質(カルシウム、ナトリウム、カリウムなど)を軟水、石膏、芒硝、食塩、塩酸、肥料といった工業製品として併産することによる収益性への貢献を期待しています。電気を蓄えることが可能な蓄電池は、太陽光などの再生可能エネルギーと併用することで、昼間に発電して蓄えた電気を夜に使うなど、全体として効率的な運用が可能となります。当社グループは、EMS(エネルギーマネジメントシステム)やVPP(Virtual Power Plant)のリソースとして、最適な蓄電池を提供することで、再生可能エネルギーの出力安定化、需給調整、災害対策などに貢献します。大規模蓄エネルギーは、再生可能エネルギー電源などを用いて発電された電力を貯蔵し、需要が急増する夕方以降に集中して供給するなどの大規模な調整を可能にするシステムです。当社グループは蓄電の性能を向上させることで、季節による電力需要の変動などにも対応する大規模ユニットの開発を目指しています。一方で、気象条件によって出力が左右される再生可能エネルギーの導入が進んだ結果、出力変動や余剰電力の発生といった、電力系統に影響を及ぼす課題が顕在化しており、電力系統の安定化を低コストで実現する技術に対するニーズが高まっています。当社グループは、蓄電池、工場設備などからの余剰電力を集めて、再生可能エネルギーの出力変動に応じて適切に配分を行う仮想発電所としての役割を果たすVPPの開発にも取り組んでいます。 資源循環分野当社グループは、荏原環境プラント株式会社と宇部興産株式会社からEUP(Ebara Ube Process)に関する技術供与、昭和電工株式会社から量産化技術の供与と運転支援を受け、廃プラスチックのリサイクル推進に向けて、①廃プラスチックのガス化設備並びにガス化設備から製造される合成ガスを用いた化学品製造設備の提案、②廃プラスチックを原料とする水素製造装置の提案、及び、③廃プラスチックリサイクルを実現するためのバリューチェーン構築を行っています。具体的な事例としては、韓国初となる廃プラスチックガス化リサイクルプラントの実現に向けた事業化調査業務を実施しています。本プロジェクトは、韓国における十数カ所の廃プラスチック選別施設から、リサイクルが困難な混合フィルムや選別残渣のプラスチックを収集し、EUPを活用した廃プラスチックガス化リサイクルを実現するプラント(日量数百トン規模)の建設に係る事業化調査を実施するものです。また、航空業界においては、運航時のCO2排出量の削減が喫緊の課題であり、産業廃棄物などから製造される持続可能な航空燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel)の開発・安定供給への期待が高まっています。当社グループは、使用済み食用油や廃プラスチックなどを用いたSAF製造に関して、製造体制の確立とバリューチェーンの構築に向けて検討を行っています。具体的な事例としては、日本航空株式会社、丸紅株式会社、ENEOS株式会社、大成建設株式会社、株式会社タケエイと共同で、廃棄プラスチックを含む産業廃棄物・一般廃棄物等からSAFを日本で製造・販売することについての事業性調査を実施しています。本調査では、米国の代替航空燃料製造企業の技術を活用し、現在リサイクルできず、国内で焼却処理されている中・低品位の廃棄プラスチックを含む産業廃棄物や一般廃棄物を原料とする「国産」代替航空燃料の製造・販売に関わるサプライチェーン構築に向けた事業性評価を行います。さらに、株式会社レボインターナショナル及びコスモ石油株式会社と共同で、使用済み食用油を原料としたSAFの国内におけるサプライチェーン構築に向けた事業化検討を実施しています。現在、国内におけるSAFの製造体制の確立とサプライチェーンの構築に向けて、原料となる使用済み食用油の調達計画、欧米等で商業実績のある技術を適用した製造プロセスの導入、製造設備のコスト積算、製品輸送・販売スキーム等を中心に具体的なサプライチェーンの構築に向けた検討を進めています。また、利用者である航空会社、航空機燃料供給に関わる関係省庁等との連携強化も進めており、これらの取り組みを通じて最終的には2025年頃を目標とするSAF製造設備の稼働及び本格商業化に向けた事業計画を具現化させていく予定です。 バイオ分野バイオLNGとは、有機廃棄物のメタン発酵により発生させたバイオガスを液化させることで得られる持続可能なバイオ燃料です。化石燃料由来の従来のLNGと比較してCO2をLCA(ライフサイクルアセスメント)ベースで約80%削減できることから、特に船舶燃料の脱炭素化に向けた切り札としても注目されています。当社グループは、バイオLNGの経済的な製造プロセスの確立に加え、バリューチェーンの構築に向けた検討を行っています。さらに、CO2削減やサステイナビリティなどの観点から、バイオマスを原料とする化学品や燃料の社会的需要が高まっています。当社グループでは、CO2の削減効果が高く、かつ食料と競合しない非可食バイオマス原料を効率的にバイオエタノールやバイオプラスチック等の原料に転換するための技術開発を進めています。また、現在は石油から製造されている1,3-ブタジエン(主にタイヤの原料となる製品)をバイオマス由来のエタノールやブタンジオールから製造する技術の開発を化学会社と共同で進めています。 ライフサイエンス分野医薬品業界では、これまでの低分子合成医薬品に加え中分子合成医薬品、バイオ医薬品を主体とする高分子医薬品、再生医療等製品の開発が増加傾向であり、製造が複雑な医薬品や活性の強い医薬品が増え、付加価値の高い医薬品が開発されています。これに対し、合成医薬品製造に関しては、高薬理活性物質の製造に適用するための封じ込め技術等に加え、これまでの多くの実績に基づく封じ込め測定結果の設計への反映、中分子医薬品製造に関する独自技術の設備開発など、多角的な面から技術開発を進めています。また、医薬品業界の注目度が高まっている原薬及び製剤の連続生産に関し、独自の連続技術開発を進めています。バイオ医薬品製造に関しては、マイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクター開発、バイオ医薬品連続生産に向けた技術開発等を進めています。再生医療等製品に関しては、再生医療関連施設の多くの建設実績を踏まえ、細胞・組織培養環境基準の構築、再生医療関連要素技術の高度化を進めています。固形製剤、無菌製剤製造工場ではロボット活用による無人(塵)化の実現、スマート工場化の開発を進めています。このような研究開発活動の成果として、当社グループが建設するプラント・施設への導入事例も増えており、当社グループの技術差別化に繋がっています。さらに、病院分野では、カンボジアでの病院経営、日本国内でのPFI事業における病院運営で得た医療、経営、運営の知見をもとに施設設計との融合を図るとともに、ICTの活用により利便性、効率性を高め、より高い機能性とホスピタリティを持つ病院づくりを進めています。また、BIM(Building Information Modeling)をさらに進め、プロジェクト遂行の効率化を図るとともに、より高いレベルでの設計技術の構築を進めています。 原子力分野当社グループは、原子力発電所及び再処理工場の廃止措置に係るプロジェクトマネジメントのサービス提供と廃棄物処理関連技術の開発を進めています。このうち、原子力発電所の廃止措置について、発電所内に貯蔵されている放射線量の高い使用済イオン交換樹脂を安全、かつ安定的に貯蔵するための分解技術の実用化に目処が得られつつあります。また、分解されたイオン交換樹脂を含む、多種・多様な放射性廃棄物への適用を目指し、閉じ込め性能の高い固型化技術の開発を進めています。さらに、再処理工場を含む様々な原子力施設の廃止措置を対象に、長期間にわたる廃止措置プロジェクトを安全、かつ効率的に実施するためのマネジメント支援システムを開発中です。国内外で注目されている小型モジュール炉(SMR)をはじめとする次世代原子炉技術については、米国NuScale社が開発している炉型を中心に海外で開発中の技術や原子力に係る国内の議論を踏まえつつ、将来的に事業展開を進めること等を視野に検討を進めています。 洋上風力発電国内の洋上風力発電は、港湾区域に続いて一般海域の促進区域におけるプロジェクトが動き出そうとしています。今後、洋上風力発電は毎年複数案件が継続的に開発される見通しであり、当社グループも主力EPCプレーヤーを目指し、事業性検討や基本設計などの早い段階から継続して関与しながら将来のEPC遂行を目指しています。また、浮体式洋上風力に関しては、事業のフィージビリティスタディや、国の浮体式実証設備の撤去にも参画しており、将来成長が期待されている浮体式へのノウハウと実績を蓄積することによって、技術力・競争力の強化を図りながら、プロジェクト全体コストの最適化を目指しています。 なお、当事業での研究開発費は5,122百万円(消費税等は含まない)です。 ② 機能材製造事業石油精製分野国内石油精製会社では、エネルギー供給構造高度化法の施行や地球環境保護に向けた燃料油需要構造変化を踏まえ、ガソリン留分から軽油やジェット燃料といった中間留分、ナフサやアロマといった化学原料を中心とする石化シフトへの生産体制の転換や更なるボトムレス化が進められています。当社グループは、こうした動きに対応する高いボトム分解能を有し、石化型運転に対応できる流動接触分解触媒の開発・実証化や付加価値の高いプロピレン収率アップ用アディティブの国内外への展開を図っています。また多様化する顧客ニーズに適合した触媒開発の迅速化や効率化を目的に、蓄積した試作データや性能データを構築した触媒設計シミュレータに取り込み、各種触媒の改良や新触媒の提案に活用しています。一方、世界全体ではCOVID-19の影響で一時的な影響はあるものの、アジアを中心に低硫黄分の燃料油需要は増加が見込まれています。そのため、残油流動接触分解装置の前処理や船舶燃料油硫黄規制に対応する高性能の残油水素化脱硫触媒やVGO脱硫触媒が求められています。当社グループが新たに開発した脱硫触媒は、国内で採用され良好な結果が得られており、今後海外展開についても進める計画です。また、国内石油精製会社の研究所と共同開発した水素化分解触媒及び海外石油精製会社と共同開発した水素化分解触媒は、共に採用された製油所で高性能を発揮しており、継続採用や他製油所への展開を目指しています。 石油化学分野汎用ケミカル製品は中国をはじめとする新興国での生産が進み、市場競争が激しくなっています。国内ケミカルメーカーは生産性の高いプロセスや高付加値製品へのシフトを進めています。当社グループは、新規プロセスに対応する触媒や高活性、高選択性の触媒を顧客に提供するため、コア技術のブラッシュアップに努めながら、研究開発・工業化に取り組んでいます。一方、ケミカル触媒素材と調製技術及び評価技術を活用して、新規プロパー触媒や吸着剤開発にも取り組んでおり、従前から開発に取り組んできた硫化カルボニル吸着剤は顧客評価も良好で、化学メーカーや石油精製会社での採用が拡大しています。また、塩素吸着剤や新規ニッケル系水素化触媒などプロパー触媒、吸着剤開発などに加え、ケミカルリサイクル用触媒開発についても積極的に取組を開始しました。 環境保全分野環境保全分野では、国内の石炭火力発電用の脱硝触媒に一定の取り換え需要があるものの、CO2削減のためバイオマス混焼や専焼発電への動きが進んでいます。バイオマスを用いた発電はバイオマス中のアルカリ成分が脱硝触媒を被毒するため、当社グループは劣化を抑制する脱硝触媒の開発を行い、実証試験を行っています。また、ごみ焼却場の脱硝処理用途として、200℃以下での低温脱硝触媒のニーズが高まっており、低温での活性向上を図るため、触媒活性成分素材から新規低温脱硝触媒開発にも注力しています。 クリーンエネルギー分野温暖化ガス排出抑制に向け定置型水素燃料電池や再生エネルギーの拡大が進んでいます。当社グループは、都市ガス水素燃料電池向けに既に吸着型脱硫剤を実商化していますが、さらに効率的でコンパクトな水素化脱硫剤の開発にも取り組んでおり、実験室レベルの検討から実商化に向けた工業化試験段階に進捗しています。また、再生可能エネルギーの一つである独立電源に用いられる低照度光発電用材料が顧客での実証試験段階に入りました。 生活関連・化粧品分野プラスチック眼鏡レンズは高屈折率化によるレンズ厚の薄肉化が進んでいます。大手眼鏡メーカーの高屈折レンズ用ハードコート膜に採用された当社グループの高屈折率酸化物粒子は、顧客の世界展開に一部遅れはあるものの着実に採用に向けた動きが進んでいます。より耐光性と高屈折率を両立する粒子の開発にも取り組んでおり、プラスチックレンズの高屈折率化のニーズに対応しています。また、高屈折率酸化物粒子の多用途展開にも着手し、新しい光学電子デバイス向けの顧客評価が進んでいます。化粧品やサニタリー分野では、海洋汚染問題となっているマイクロプラスチックビーズを環境負荷の小さな材料に代える検討が進行しています。プラスチックビーズの代替としてシリカ材は、既にスクラブ材に採用され、化粧品への採用の検討も進んでいます。プラスチックビーズの感触に近い新たなシリカ製品も開発し、サンプル展開に着手しました。また、EUナノ材料規制に適合する紫外線防止材の開発など、環境と人に貢献する化粧品材料開発に取り組んでいます。 電子材料分野高速通信やデジタル化の流れにより、デバイスの高記憶容量、高速化ニーズは拡大していくと見込まれています。当社グループは、この高記憶容量化に向けた研磨面品質と研磨効率を両立したハードディスク用研磨砥粒の改良検討に継続して取り組んでいます。また、高速通信用として低誘電率、高誘電率材料開発にも取り組み、顧客評価が進んでいます。半導体製造研磨用途では微細化・多層化に伴い、低欠陥かつ高研磨速度の研磨砥粒が求められています。当社グループ独自の無機複合型研磨砥粒や異形状シリカ砥粒の開発が進捗し、顧客の採用に向けた評価も始まっています。光学フィルム用機能性光学材料では、高画質テレビの視認性向上のための反射防止フィルム用途で低屈折率粒子が採用されていますが、液晶テレビでは汎用化に伴い反射防止ニーズも低下しています。一方、高画質を訴求する有機ELテレビ用途では低反射防止ニーズは強く、当社グループはより低屈折率な粒子の開発・工業化に取り組んでいます。また、車載用に搭載される液晶ディスプレイ用途に向けた光学ナノ粒子開発など、新しい用途開拓にも取り組んでいきます。 ファインセラミックス分野ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LEDなどの高出力化や省エネルギーを達成するために、パワー半導体の高性能化が進んでいますが、同時に絶縁放熱基板への要求が厳しくなってきています。その要求に応えるため、当社グループは、産業技術総合研究所と共同開発した独自の製造方法により世界最高レベルの放熱性・信頼性をもつ「高熱伝導窒化ケイ素基板」の開発並びに事業化を推進してきました。既に新量産工場を立ち上げ、製品の品質及び生産効率向上を実現しながら、更なる高性能品開発にも取り組んでいます。通信分野においては、自動運転やIoTの普及に欠かせない5Gの本格導入が目前に迫っており、今後データ量の増大に伴い光通信回線の大容量化・高速化が求められています。当社グループは、最先端の光通信技術に対応できる薄膜回路基板の性能・信頼性向上等の開発・製造・販売を行っています。今後成長が期待される再生医療分野においては、最先端の骨再生材料について東北大学等との共同研究を継続しています。その他、当社グループ独自のセラミックス材料技術と高精度加工技術により、補助人工心臓用部品や「はやぶさ2」などの宇宙衛星用部品など先端分野で使用される製品の開発や新材料の開発に大学や各研究機関などと連携して取り組んでいます。 なお、当事業での研究開発費は2,582百万円(消費税等は含まない)です。 また、総合エンジニアリング事業及び機能材製造事業に加え、その他の事業において37百万円(消費税等は含まない)の研究開発費を計上しております。
FY2020|8,764 文字
5【研究開発活動】中期経営計画「Beyond the Horizon」の4年目に当たる当連結会計年度は、差別化技術に基づいたビジネス開発を推進してきました。重点戦略を①開発技術の早期商業化とライセンスビジネスの拡大、②成長分野における新規ビジネスの創出と推進、③オープンイノベーションの活用による社外との連携強化とし、資源、環境、ライフサイエンス、新エネルギー、ものづくりの各分野に注力してきました。その結果、プロジェクト受注や技術ライセンス供与などの実績をあげるとともに、成長分野における将来のビジネスの核となる技術の早期獲得を目的とした産官学の連携による開発を促進することができました。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、6,861百万円(消費税等は含まない)です。 ① 総合エンジニアリング事業設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野自然環境が厳しい地域や労働者の確保が困難な地域等、建設工事の遂行が困難な地域におけるプロジェクトが増加傾向にあるなかで、当社グループは大型Module工法の採用や、プロジェクト遂行の効率性向上のためにAWP(Advanced Work Packaging)による工事管理の採用などを実践していますが、さらなる新しい工法(自動化、3Dプリンター導入、小型Module工法など)、要素技術の導入(新素材、設計にAI導入など)、EPC全領域でAWP採用拡大などに挑戦しそれらを実装する事が、熟練労働者不足、不安定な現場生産性、スケジュール遅延などのプロジェクトリスクを低減可能と考え全社的な活動を展開しています。 保全ビジネス分野プラントの保全データや検査診断データによる設備管理システム(A-MISTM)の運用を行ってきました。また、このシステムに加えて、業務の省力化や可視化を目的とした統合的なビッグデータ一元管理プラットフォーム(INTEGNANCE®)を構築し、客先ニーズなど取り入れ、プラントの予知保全と定期修理計画の立案をする管理システムを実現化しています。また、モバイル端末タブレットやスマートフォンを活用しタイムリーに作業データを現場で入力しデータ管理システムを実証し業務の効率化、電子データ化で情報共有した保全工事管理を進めています。2020年4月から、日揮㈱内に新たにデジタルイノベーション室(DI室)を設立し、保全部門とも連携したINTEGNANCE®構築ならびにデジタル技術を活用した提案、導入で客先課題解決を目指します。 石油資源・精製分野天然ガスの需要増加に伴い、その副生物として生産量が増えているコンデンセートは、石油化学原料としても需要が拡大しています。当社はコンデンセートに含まれる硫黄分を一つの反応器で一括して脱硫処理する技術を保有しています。この技術はコンデンセートを各留分に分けた後に脱硫処理する従来法に比べて、設備費と運転費を大幅に削減できることから、産ガス国や消費国に対して継続してプロモーションを行っています。なお、本プロセスには連結子会社の日揮触媒化成㈱が開発した高性能水素化脱硫触媒を採用しています。 天然ガス分野昨今、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められていますが、当社ではCO2の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を継続して積上げています。分離回収においては、化学吸収法による高圧再生型CO2回収(HiPACT®)プロセスがセルビア共和国の天然ガス処理・CO2地中貯留(CCS: Carbon dioxide Capture and Storage)複合プロジェクトに採用され、現在まで順調に稼働しています。本プロセスは、CCSのみならず原油増進回収(EOR: Enhanced Oil Recovery)などのCO2有効利用プロジェクトにおいて不可欠なCO2の圧縮設備の費用とエネルギー消費を大幅に削減できる画期的な技術として注目されています。さらにCO2-EORにおいては、原油とともに随伴されるCO2を有効に活用するために、特殊なセラミック膜で効率的にCO2を分離回収することを可能とする技術を開発し、米国テキサス州で実証試験を開始しました。本技術とともにカーボンマネジメント・サイクルの知見と合わせて、産油ガス国/企業向けにCO2に関する課題解決に向けたトータルソリューションを提供していきます。また、既設LNGプラント関連のAI・IoTビジネスとして、運転ビッグデータ解析及び気象解析を通じて得られた知見を基に制御方法改善によるLNG増産サービスを海外顧客向けに展開中です。マレーシア国営石油会社(ペトロナス社)向けにLNG生産量減退の要因となるHot Air Recirculationの予測モデルを開発、本モデルを操業と連携させ増産するシステムを構築、運用中です。またその他複数社のLNGプラントオーナー向けに運転ビッグデータ解析から、運転改善手法を創出、実操業適用までの総合コンサルテーションサポートを行っています。これらサービスをLNG3(LNG Cube)としてブランド化し、サービス提供を行っています。 ケミカル分野当社グループが開発したWINTRAY®は、液液抽出塔に適応されるトレイの技術であり、高体積流束、高効率、汚れに強い、という3つの特徴があります。石化プラントおよび化学プラントに適用することで大きな経済的なメリットがあり、顧客企業から高い評価を頂いております。現在も国内外の複数社から引き合いを頂いており、商業装置の受注に向けた具体的な検討が進んでいます。さらに、当社グループは、硫化水素(H2S)およびこのH2Sから硫化水素ナトリウム(NaSH)を製造するプロセス技術を保有し、数々の国内外化学メーカーにライセンス供与してきました。H2Sは、鳥などの動物の飼料に添加する必須アミノ酸であるメチオニンの製造原料となり、NaSHは、電気自動車部品などに用いられるスーパーエンジニアリングプラスチックのPPS(ポリフェニレンスルフィド)の原料となります。いずれも今後の需要の伸びとともにプラント大型化のニーズも高まってきていることから、さらなるスケールアップ等によるコストダウンを図っています。 オフショア分野世界には未開発の中小規模海洋ガス田が多数存在し、効率的な開発手段が期待されています。その最有力候補が、当社グループが世界有数の建造実績を持つ洋上LNGプラント(FLNG)です。海洋石油開発においても、操業中の洋上石油生産設備で大量に生産される随伴ガスの処理方法が課題です。ガス中に含まれる高濃度酸性ガスの分離および海底への再注入、また操業員の安全確保と操業効率化によるライフサイクルコスト低減のための遠隔・無人操業といったニーズに応える技術も、海洋石油・ガス開発事業者に強く望まれています。当社グループは、このような海洋石油・ガス開発事業者の課題に応えるべく、以下3点の技術を重点的に開発しています。1) 現在遂行中の2件のFLNGの設計、調達、建設、据付、試運転(EPCIC)プロジェクトの経験を活かし、低価格・短納期型FLNGコンセプトを開発中です(2019年度国土交通省・海洋資源開発関連技術高度化研究開発事業テーマとして採択)。2) 浮体式海洋石油生産・貯蔵・出荷設備上で効率的に高濃度CO2を分離し、海底への再注入を目指す、CO2を分離回収するセラミック膜のシミュレーションスタディを実施しています(2019年日本財団オーシャンイノベーションプロジェクト Phase1として採択)。3) 洋上生産設備の遠隔・無人操業の実現に向けて、当社「IT Grand Plan 2030」で取組むEPCICプロジェクト遂行のデジタル化に加えて、操業デジタル化に必要な設備思想ならびに仕様をプロジェクト早期に決定するための遂行技術の開発を進めています。 環境分野温室効果ガス排出量削減に向けた取り組みとして、当社ではCO2フリー燃料の導入促進やカーボンリサイクルの観点で研究開発を行っています。CO2フリー燃料としてCO2フリーアンモニアが着目されており、2020年代半ばの日本でのCO2フリーアンモニアの商業実装に向けた検討が進められています。当社グループは、2014~2018年度に実施した内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトの成果を活用し、再生可能エネルギーや化石資源からのCO2フリーアンモニアの製造・供給の社会実装を目指して、様々な案件のフィージビリティスタディに参画するとともに、CO2フリーアンモニアのより効率的な製造方法やコストダウンに向けた研究開発を行っています。こうした活動を通じて、CO2フリーアンモニアの商業実装に貢献していきます。また、カーボンリサイクル技術の一つとして、化石燃料等の利用により排出される炭酸ガスの固定化技術の開発を目的として、2019年3月に出光興産㈱、宇部興産㈱およびシーズ技術保有大学とともにCCSU(Carbon dioxide Capture and Storage with Utilization)研究会を設立し活動を開始しました。本研究会では、廃コンクリート、焼却灰などカルシウム等を多く含む産業廃棄物等を活用し、これらから抽出したカルシウムイオン、マグネシウムイオン等と二酸化炭素を反応させ炭酸塩として固定化する技術の開発を行っています。さらに、この炭酸塩やカルシウム等抽出後の残渣を付加価値の高い工業材料や使用量が多い土木・建設材料として活用することを目指しています。加えて、環境関連技術として、乾式脱硫脱硝システムの開発を行っています、中国やインドでは、環境汚染が社会問題になったのをきっかけに、火力発電所などからの排ガスに対する環境規制が強化されました。排ガスからSOxおよびNOxを効率的に除去する当社の乾式脱硫脱硝システムの技術は、これら新興国の環境規制に対応するための有効な手段です。中国のコークス炉ガスの燃焼排ガスの浄化向けの技術ライセンスの実績は60基以上となりました。今後は技術改良によるコストダウンによって競争力を高めるとともに、コークス炉以外の産業用焼成炉からの排ガスの浄化など、新たな業界の環境対応ニーズに対応することで実績を伸ばしていきます。さらに、CO2削減やサステイナビリティなどの観点から、バイオマスを原料とする化学品や燃料の社会的需要が高まっています。当社では、CO2の削減効果が高く、かつ食料と競合しない非可食バイオマス原料を効率的にバイオプラスチック等の原料に転換するための技術開発を大学等と共同で進めています。また、現在は石油から製造されている1,3-ブタジエン(主にタイヤの原料となる製品)をバイオマス由来のエタノールやブタンジオールから製造する技術の開発を化学会社と共同で進めています。ライフサイエンス分野医薬品業界では、これまでの合成医薬品からバイオ医薬品を主とした高分子医薬品の開発が増加の傾向となり、製造が複雑な医薬品や活性の強い医薬品が増え、付加価値の高い医薬品が開発されています。これに対し、バイオ医薬品製造に関しては、シングルユース適用の製造技術、マイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクター開発、高薬理活性物質の製造に適用するための封じ込め技術等に加え、これまでの多くの実績に基づく、封じ込め測定結果の設計への反映など、多角的な面から技術開発を進めています。また、医薬品業界の注目度が高まっている原薬および製剤の連続製造に関し、独自の連続技術開発を進めています。再生医療分野では、再生医療関連施設の多くの建設実績を踏まえ、細胞・組織培養環境基準の構築や再生医療関連要素技術の高度化を進めています。さらに、医薬品のあらたな技術として注目されている中分子医薬品製造に関する独自技術の設備開発や、包装ラインではロボット活用による無人(塵)化の実現についても開発を進めています。このような研究開発活動の成果として、プラント建設への採用事例が増えてきています。さらに、病院分野では、カンボジアでの病院経営、日本国内でのPFI事業における病院運営で得た医療、経営、運営の知見をもとに施設設計との融合を図り、より高い機能性とホスピタリティを持つ病院づくりを進めています。また、BIM(Building Information Modeling)をさらに進め、プロジェクト遂行の効率化を図るとともに、より高いレベルでの設計技術の構築を進めています。 原子力分野当社グループは、原子力発電所および再処理工場の廃止措置に係わるプロジェクトマネジメントのサービスと廃棄物処理関連技術の開発を進めています。このうち、原子力発電所の廃止措置について、発電所内に貯蔵されている放射線量の高い使用済イオン交換樹脂を安全、かつ、安定的に貯蔵するための分解技術の実用化に目処が得られつつあります。また、分解されたイオン交換樹脂を含む、多種・多様な放射性廃棄物への適用を目指し、閉じ込め性能の高い固型化技術の開発を進めています。さらに、再処理工場を含む様々な原子力施設の廃止措置を対象に、長期間にわたる廃止措置プロジェクトを安全、かつ、効率的に実施するためのマネジメント支援システムを開発中です。国内外で注目されている小型モジュール炉(SMR)をはじめとする次世代原子炉技術については、海外で開発中の技術や原子力に係る国内の議論を踏まえつつ、将来的に国内に導入すること等を視野に検討を進めています。 洋上風力発電国内の洋上風力発電は、一般海域における促進区域の有望エリアが指定されるなど動きが活発になってきています。当社グループは、日本を含むアジアの特殊性を考慮した風力基礎設計や施工のためのガイドライン策定に参画することにより、新しい要素技術開発にも積極的に取り組んでいます。また、国内では実証プラントから次のステップに移行しつつある浮体式洋上風力のフィージビリティスタディなどに関与しながら、プロジェクト全体コストの最適化を目指しています。 なお、当事業での研究開発費は3,402百万円(消費税等は含まない)です。 ② 機能材製造事業石油精製分野国内石油精製会社では、エネルギー供給構造高度化法の施行や地球環境保護に向けた燃料油需要構造変化を踏まえ、ガソリン留分から軽油やジェット燃料といった中間留分、ナフサやアロマといった化学原料を中心とする石化シフトへの生産体制の転換や更なるボトムレス化が進められています。この動きに対応する高いボトム分解能を有する流動接触分解触媒の開発,実証化や石化シフト変化に対応する流動接触分解装置用のプロピレン増産アディティブの国内外への展開を図っています。また多様化する顧客ニーズに適合した触媒開発の迅速化や効率化を目的に、蓄積した試作データや性能データを構築した触媒設計シミュレータに取り込み、各種触媒の改良や新触媒の提案に活用しています。一方、世界全体ではアジアを中心に石油需要は増加しており、精製能力の増加が見込まれています。そのため、残油流動接触分解装置の前処理や船舶燃料油硫黄規制に対応する高性能の残油水素化脱硫触媒やVGO脱硫触媒は、国内での実績を重ねながら海外展開を進める計画です。また、国内石油精製会社の研究所と共同開発した水素化分解触媒は、採用された製油所で高性能を発揮しており、継続採用や他製油所への展開を進めています。さらに、海外石油精製会社と共同開発した水素化分解触媒は、海外製油所の継続採用が決定しており、今後は良好な実績をもとに他製油所への展開に取り組んでまいります。 石油化学分野石油化学品は中国を主体とする経済低迷の影響で、コストダウンに対する要求が増すと見込まれることから、当社グループは、高品質、低価格で競争力のある触媒を提供し、顧客価値を高める受託研究・工業化に取り組んでいます。一方、ケミカル触媒調製技術と評価技術を活用して、新規プロパー触媒や吸着剤開発にも取り組んでおり、三年前から開発に取り組んだ硫化カルボニル吸着剤は顧客評価も良好で、化学メーカーや石油精製会社に採用が拡大しています。また、塩素吸着剤や新規ニッケル系水素化触媒などプロパー触媒,吸着剤開発などに加え、ケミカルリサイクル用触媒についても積極的に取り組んでまいります。環境保全分野環境保全分野では、国内の石炭火力発電用の脱硝触媒に一定の取り換え需要があるものの、CO2削減のためバイオマス混焼や専焼発電への動きが進んでいます。バイオマスを用いた発電はバイオマス中のアルカリ成分が脱硝触媒を被毒するため、劣化を抑制する脱硝触媒の開発を行い、実証試験を行っています。また、ごみ焼却場の低温脱硝触媒の需要が高まっており、低温での活性向上を図るため、触媒活性成分素材から新規低温脱硝触媒開発に取り組んでいます。 クリーンエネルギー分野脱カーボンの流れを受け、定置型水素燃料電池や再生エネルギーの拡大が進んでいます。都市ガス水素燃料電池向けに吸着型脱硫剤を販売していますが、さらに効率的でコンパクトな水素化脱硫剤の開発にも取り組んでおり、実験室レベルの検討が完了し、実用化に向けた工業化試験段階に入っています。また、再生可能エネルギーの一つである独立電源に用いられる低照度光発電用材料は顧客での実証試験から判明した課題を解決し、拡販の準備を進めています。 生活関連・化粧品分野プラスチック眼鏡レンズは、高屈折率化によるレンズ厚の薄肉化が進んでいます。また、新興国への普及も着実に進んでいますが、大市場である中国の経済低迷により一部停滞感も見られています。大手眼鏡メーカーの高屈折レンズ用ハードコート膜に採用された高屈折率酸化物粒子は、顧客の世界展開に一部遅れはあるものの着実に進んでいます。高屈折率酸化物粒子の多用途展開では、新しい光学電子デバイス向けの顧客評価も進んでおり、今後も新たな展開分野を探索してまいります。化粧品やサニタリー分野では、海洋汚染問題となっているマイクロプラスチックビーズから環境負荷の小さな材料に代える検討が進行しています。プラスチックビーズの代替としてシリカ材は、スクラブ材に採用され、化粧品へ採用も進んでいます。プラスチックビーズの感触に近い新たなシリカ製品も開発し、採用も進んでいます。また、ナノ材料を使用しない紫外線防止材の開発など、環境と人に貢献する化粧品材料開発に取り組んでいます。 電子材料分野データセンター投資の一段落などの動きもありましたが、5G、IoT、CASEなど通信、データを活用した世界的な技術開発の活発化などに伴い、高容量サーバー用途は拡大していくと見込まれています。この高記憶容量化に向けた研磨精度の高いハードディスク用研磨砥粒の改良検討に継続して取り組んでいます。また、半導体製造研磨用途では微細化・多層化に伴い、低欠陥かつ高研磨速度の研磨砥粒が求められています。独自の無機複合型研磨砥粒や異形状シリカ砥粒の開発が進捗し、採用も進んでいます。光学フィルム用機能性光学材料では、高画質テレビの視認性向上のための反射防止フィルム用途で低屈折率粒子が採用されていますが、中国への液晶テレビ生産シフトと汎用化が進み、反射防止ニーズも低下しています。一方、韓国テレビメーカーは高画質有機ELテレビに軸足を移しつつあることから、より低屈折率な粒子の開発・工業化に取り組んでいます。また、車載用に搭載される液晶ディスプレイ用途に向けた光学ナノ粒子開発など、新しい用途開拓にも取り組んでいきます。 ファインセラミックス分野ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LEDなどの高出力化や省エネルギーを達成するために、パワー半導体の高性能化が進んでいますが、同時に絶縁放熱基板への要求が厳しくなってきています。その要求に応えるため、当社グループは、産業技術総合研究所と共同開発した独自の製造方法により世界最高レベルの放熱性・信頼性をもつ「高熱伝導窒化珪素基板」の開発ならびに事業化を進め、新生産工場を建設し量産化に向けた品質および生産効率向上に取り組んでいます。通信分野においては、自動運転やIoTの普及にかかせない5Gの本格導入が目前に迫っており、今後データ量の増大に伴い光通信回線の大容量化・高速化が求められています。当社グループは、最先端の光通信技術に対応できる薄膜回路基板の性能・信頼性向上等の開発・製造・販売を行っています。今後成長が期待される再生医療分野においては、最先端の骨再生材料について東北大学等との共同研究を継続しています。その他、当社独自のセラミックス材料技術と高精度加工技術により、補助人工心臓用部品や「はやぶさ2」などの宇宙衛星用部品など先端分野で使用される製品の開発や新材料の開発に大学や各研究機関などと連携して取組んでいます。 なお、当事業での研究開発費は2,887百万円(消費税等は含まない)です。 また、総合エンジニアリング事業および機能材製造事業に加え、その他の事業において570百万円(消費税等は含まない)の研究開発費を計上しております。