研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
| 2025-03 |
- |
9,128 |
| 2024-03 |
- |
6,509 |
| 2023-03 |
- |
7,886 |
| 2022-03 |
- |
6,473 |
| 2021-03 |
- |
6,803 |
研究開発活動(本文)
FY2025|4,815 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、通信を基盤とした様々なサービスの提供を目指し、AI、IoT、ロボット、6G、HAPS(注)、デジタルツイン、自動運転や量子技術などの先端技術の研究開発を実施しています。「情報革命で人々を幸せに」という経営理念のもと、来たるAI社会を支える基盤の構築と通信ネットワークの高度化を推進し、社会に広がる課題をテクノロジーの力で解決することを目指し、日々研究開発に取り組んでいます。 (注)HAPS(High Altitude Platform Station):成層圏を長期間飛び続ける無人航空機を通信基地局のように運用し広域エリアに通信サービスを提供するシステムの総称。 (研究開発活動の目的)お客さまに対して最先端技術の製品を安定的に供給していくこと、および当社グループ内での情報通信技術の中長期的なロードマップを策定していくことを目標に、情報通信技術に関わる最先端技術の動向の把握、対外的なデモンストレーションを含む研究開発および事業化検討を目的としています。 (研究成果)当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は以下の通りです。 HAPS向け大型機体「Sunglider」が成層圏飛行に成功当社は、AeroVironment,Inc.と米国国防総省が2024年8月に米国で行った実証実験において、ソフトバンクの成層圏から通信サービスを提供するプラットフォーム(HighAltitude Platform Station、以下「HAPS」)向け大型無人航空機「Sunglider(サングライダー)」が成層圏飛行に成功しました。「Sunglider」は翼幅78mと他のHAPS向け無人航空機と比較しても大型で、75kgまでの通信ペイロードを搭載することができ、高速かつ大容量のモバイル通信を安定的に提供できることが特長です。今回の実証実験では、構造面や機能面で改良された機体が使用され、そのパフォーマンスは米国国防総省の要求を満たしました。当社はこの実験結果を今後の機体開発に活用し、更なる性能向上、長期間滞空、光無線通信の実現を目指し、商用化を加速させていきます。 AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」の開発当社は、AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」の開発を本格的に開始しました。「AITRAS」により、従来は別々に構築されていたAI(人工知能)インフラとRAN(無線アクセスネットワーク)インフラを、同一のNVIDIA製プラットフォーム上で動作させることが可能となります。国内外の通信事業者は「AITRAS」を導入することで、従来のRANインフラを生かしながらAIインフラを構築することができるため、インフラ投資の効率化、運用の簡素化、リソースの最適化を実現できます。当社が開発した「AITRAS」の L1(注1)ソフトウエアは、NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip(注2)プラットフォーム上で動作するように設計されており、信号の並列処理やタスク起動タイミングの最適化などにより、通信事業者が求める高いレベルの安定性と高性能を実現すると同時に、RAN容量の最大化や消費電力の削減にも貢献します。また当社は、AI-RANのコンセプトの一つである、AIアプリケーションとvRAN(virtualized Radio Access Network、仮想無線アクセスネットワーク)アプリケーションを同一の仮想化基盤上で動作させることが可能なオーケストレーターを開発しました。オーケストレーターは、AIアプリケーションとvRANアプリケーションという特性の異なるソフトウエアを一つの仮想基盤上で高効率に共存させることができます。これにより限られた資源を最大限に活用し、かつ消費電力の削減といった経済的なメリットが期待できます。「AITRAS」のエッジAIサーバーには、大規模言語モデル(LLM)の開発・展開を容易にする機能軍で構成されたソフトウエアプラットフォームであるNVIDIA AI Enterprise(注3)が実装されており、顧客である企業自身でAIアプリケーションを開発・展開することも可能になります。当社は2025年以降に、通信事業者向けに「AITRAS」のリファレンスキットの提供を開始する予定です。当社は「AITRAS」を通じて、通信事業者の新たな強みを創出し、AIと通信の融合による豊かな社会の発展を促進してまいります。 (注1)L1:vRANソフトウエア構造におけるOSI参照モデル「物理層(第1層)」。(注2)NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip:NVIDIA が開発した高性能計算(HPC)とAIに特化した巨大なプロセッサ。1つのパッケージにCPUとGPUを統合した点が特徴で、高性能かつ低消費電力な処理を実現する。(注3)NVIDIA AI Enterprise:企業が AI を開発・導入するためのエンドツーエンドのソフトウエアプラットフォーム。 国内最大級のAI基盤の整備に向け、4.7エクサフロップスの計算能力の実現と「二相式DLC技術を最適化したラック統合型ソリューション」の開発当社は、AIとの共存社会に向け、AI時代を支えるさまざまな社会基盤の構築に取り組んでいます。AI計算基盤の構築においては、2024年10月に新たに約4,000基のNVIDIA Hopper GPUの整備を完了し、AI計算基盤全体のGPUを約6,000基に拡張しました。これにより2023年9月から稼働しているAI計算基盤と比較して約7倍となる4.7EFLOPS(エクサフロップス)(注1)の計算処理能力を実現しています。 国内最大級(注2)のAI基盤の整備と国産大規模言語モデル(LLM)の開発に取り組む中、データセンターのエネルギー効率向上は、AI開発の加速と持続可能な社会の実現に不可欠といえますが、当社は、ZutaCore,Inc.(以下、ZutaCore)、Hon Hai Precision Industry Co.,Ltd.と協業し、NVIDIA H200 GPUを搭載したAIサーバー向けに、ZutaCoreの二相式DLC(Direct Liquid Cooling、直接液冷)技術(注3)を世界に先駆けて(注4)実装しました。また当社は、二相式DLC技術を搭載した冷却機器をはじめとするサーバーの各構成要素を、ラックスケールで統合したラック統合型ソリューションを設計・開発し、このソリューションでラック単位での冷却効率としてpPUE1.03(実測値)を達成しました(注5)。 (注1)エクサ:10の18乗、フロップス:コンピューターの処理能力の単位。(注2)2024年10月31日時点での公開情報に基づく。当社調べ。(注3)二相式DLC技術:サーバー内部の半導体チップ(プロセッサ)上のコールドプレートに、水を使用しない絶縁性冷媒を二相式(液体、気体)で循環させて冷却する技術。(注4)2025年1月時点、ZutaCore調べ。(注5)ZutaCore調べ。pPUE(partial Power Usage Effectiveness)とは、データセンターの冷却効率を示す指標の一つであるPUE(Power Usage Effectiveness)に対して、サーバールームやモジュールなど特定の範囲や設備の効率を示す指標。数値が1.0に近いほど、エネルギー効率が良いことを示す。 自動運転の社会実装に向け「交通理解マルチモーダルAI」と「遠隔自動運転サポートシステム」を開発当社は、自動運転車の運行業務の完全無人化を目指し、低遅延なエッジAIサーバーで動作する自動運転向け「交通理解マルチモーダルAI」(注1)を開発しました。「交通理解マルチモーダルAI」は、自動運転車から送信された走行映像などを基に交通状況を判断し、そのリスクと対処法をリアルタイムで言語化することが可能です。また、日本の交通知識、走行シーン、リスクと対処方法を学習済みのAI基盤モデルを使用しているため、交通状況と走行リスクを高度に理解できることも特徴としてあげられます。2024年10月に開始した実証実験では、エッジAIサーバー上で稼働させた「交通理解マルチモーダルAI」が、現在の「交通状況」「走行リスク」「リスク対処のための推奨動作」を生成し、外部から自動運転を遠隔サポートできることを確認しました。当社はまた、レベル4(高度運転自動化)(注2)の自動運転の社会実装に向けて、AI-RANの統合ソリューション「AITRAS(アイトラス)」のエッジAI(人工知能)サーバー上で動作する「遠隔自動運転サポートシステム」を開発しました。このシステムは、自動運転車に搭載した前方カメラの映像を5Gネットワーク経由でエッジAIサーバーに送信し、エッジAIサーバー上にある認知AIが送信された映像を基に前方の障害物や路面の形状などを即座に認知し、その結果を自動運転車へ伝送することで、自動走行をサポートします。更に「遠隔自動運転サポートシステム」と「交通理解マルチモーダルAI」を連携させることで、自動運転車の自動運転システムや認知AIでは対応できない予測困難な事態に直面した場合でも、スムーズに走行を続けることが可能になります。2025年2月に開始した実証実験では、横断歩道に障害物がある状況を「交通理解マルチモーダルAI」が分析して停車指示を出し、その停車指示を「AITRAS」のエッジAIサーバー上で動作する「遠隔自動運転サポートシステム」がリアルタイムで自動運転車へ伝送することで、障害物の手前で安全に停車できることを確認しました。当社は「交通理解マルチモーダルAI」の精度を向上させ、将来的には「遠隔自動運転サポートシステム」と「交通理解マルチモーダルAI」を活用した自動運転車の運行業務の完全無人化を目指します。また当社は今後も自動運転の社会実装に向けた研究開発を推進してまいります。 (注1)マルチモーダルAI:テキストや音声、画像、センサー情報など、複数の異なるデータ種別から情報を収集し、それらを統合して処理するAIシステムのこと。(注2)レベル4:特定の条件下で、システムが全ての運転のタスクを実施する状態のこと。 金属リチウム電池の寿命予測モデルの構築に成功当社は国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下「NIMS」)との共同研究で、現行のリチウムイオン電池よりも複雑な劣化機構を持つ金属リチウム電池において、特定の劣化機構を仮定することでなく、機械学習を用いて高精度な寿命予測モデルを構築することに成功しました。当社は、多数の金属リチウム電池セルの充放電データから抽出した放電、充電、緩和プロセスにおける特微量(注1)に基づいたデータ駆動型のアプローチを採用することで、予測精度に寄与する特微量を特定させ、決定係数(注2)R² = 0.89という高い精度の寿命予測を可能としました。当社は、今後も寿命予測モデルの更なる高精度化、新規材料開発への活用を進めることで、高エネルギー密度金属リチウム電池の早期実用化を目指してまいります。 (注1)特微量:機械学習のモデルが学習や予測を行う際に使う、データの特徴を数値で表したもの。(注2)決定係数:予測モデルのあてはまりの良さを表す指標。この値が1に近いほど、より予測精度の高いモデルであるといえる。 上記の他、主にHAPS、AI、広告関連サービスやアプリの研究開発を行い、当連結会計年度における研究開発費は73,934百万円となりました。
FY2024|5,374 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、通信を基盤とした様々なサービスの提供を目指し、AI、IoT、ロボット、6G、HAPS(注)、デジタルツイン、自動運転や量子技術などの先端技術の研究開発を実施しています。「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を実現し、通信を介してヒト・モノ・コトをつなぎお客さまに新たな体験や価値を提供するため、より良い技術の実現を目指して日々研究開発に取り組んでいます。なお、当社グループの研究開発は複数のセグメント間に共通した基礎技術に関するものがほとんどであるため、特定のセグメントに区分して記載していません。 (注)HAPS(High Altitude Platform Station)とは、成層圏を長期間飛び続ける無人航空機を通信基地局のように運用し広域エリアに通信サービスを提供するシステムの総称です。 (研究開発活動の目的)お客さまに対して最先端技術の製品を安定的に供給していくこと、および当社グループ内での情報通信技術の中長期的なロードマップを策定していくことを目標に、情報通信技術に関わる最先端技術の動向の把握、対外的なデモンストレーションを含む研究開発および事業化検討を目的としています。 (研究成果)当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は以下の通りです。 ルワンダ政府と協力して世界で初めて成層圏からの5Gの通信試験に成功当社は、成層圏通信プラットフォーム(以下「HAPS」)の研究開発の一環として、HAPSの無人航空機の試験機体に自社で開発した5Gに対応するペイロード(通信機器)を搭載し、2023年9月24日に、成層圏で5Gの通信試験に成功しました。本試験は、当社とルワンダ共和国の政府が協力し、ルワンダの領空で実施したものです。HAPSの無人航空機を活用して、成層圏からの5Gの通信試験に成功したのは、世界で初めてです。(注)当社が開発したペイロードは、成層圏の高度最大16.9kmにおいて、約73分間連続して5Gの通信を提供し、厳しい条件下でも想定通りの性能を発揮しました。本試験では、一般に販売されている5G対応スマートフォンを使用し、通常の通信で利用されている電波を利用して、ルワンダの試験場と日本の間で5Gによるビデオ通話(Zoom)を実現しました。本試験の結果を受け、当社とルワンダ政府は、ルワンダなどのアフリカ地域におけるHAPSの活用の可能性と商用化に向けた研究に取り組む予定です。その他、通信環境が整っていない農村地域の学校やコミュニティーのデジタル化なども検討していきます。 (注)成層圏において、飛行機型のHAPSを活用した5Gの通信試験に成功したのは世界初。2023年10月17日時点での公開情報に基づく。当社調べ。 国内最大級の生成AI開発向け計算基盤の稼働および国産大規模言語モデル(LLM)の開発を本格開始当社は、生成AI(人工知能)開発向けの計算基盤の稼働を開始し、当社の子会社であるSB Intuitions㈱(以下「SB Intuitions」)は、この計算基盤を活用して、日本語に特化した国産大規模言語モデル(LLM)の開発を本格的に開始しました。当社の経営理念である「情報革命で人々を幸せに」の実現に向けて、デジタル社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供するという長期ビジョンを、2023年5月に発表しました。この長期ビジョンの実現に向けて、生成AI開発向けの計算基盤の構築に取り組んでいます。この計算基盤は、2023年7月に経済産業省から、経済安全保障推進法に基づく特定重要物資である「クラウドプログラム」の供給確保計画について認定を受けております。この計算基盤は、NVIDIA Tensor コア GPUを2,000基以上搭載したAI スーパーコンピューター NVIDIA DGX SuperPOD™、NVIDIA ネットワーキング、NVIDIA AI Enterpriseソフトウエアで構成された大規模クラスターで、国内最大級の(注)計算基盤となります。また、伊藤忠テクノソリューションズ㈱の協力の下、設備導入および構築をスピーディーに進め、稼働を開始しました。この計算基盤は、まず当社とSB Intuitionsで段階的に利用しながら、早期に大学や研究機関、企業などに提供する予定です。計算基盤の稼働開始に伴い、SB Intuitionsは事前検証を完了させて、日本語に特化した国産LLMの開発を本格的に開始しました。高速処理が可能な計算基盤と豊富な技術者、圧倒的な顧客接点を持つ当社が、日本語のデータセットを活用した高品質な国産LLMを開発することで、日本の商習慣や文化に適した生成AIサービスの提供を実現します。 (注)2023年10月31日時点での公開情報に基づく。当社調べ。 AI-RANアライアンス設立~AIを駆使し、5Gおよび来るべき6G時代に備えたRANの変革に向けた研究開発を推進~AI-RANアライアンスは、Amazon Web Services, Inc.、Arm、DeepSig Inc.、Telefonaktiebolaget LM Ericsson、Microsoft Corporation、Nokia、 Northeastern University、NVIDIA、Samsung Electronics、当社およびT-Mobile USA, Inc.により設立されました。AI-RANアライアンスは、モバイルネットワークの効率性をグローバル規模で向上させ、ネットワークによる消費電力を削減し、既存のインフラを改善することで、5Gおよび6Gに向けて、AIを活用した新たなビジネスの機会を創出することをミッションとします。 加盟企業・大学は、それぞれのリーダーシップと技術力を活用し、下記の主要な三つのテーマに関する研究開発に取り組みます。・ AI for RAN:AIの活用により、既存のRANの周波数利用効率および性能を向上させる・ AI and RAN:AIとRANの処理を統合し、インフラの利用効率を上げることで、AIを活用した新たな収益機会を創出・ AI on RAN:RANを通じて、ネットワークエッジ側にAIを展開。RANの運用効率を上げ、モバイルユーザー向けの新規サービスを展開今後は、加盟企業・大学で連携して、AI-RANの研究や実証実験を進め、新規技術の普及を推進していきます。 NISTが開催した映像解析コンテスト「TRECVID 2023」の映像検索部門と映像説明文生成部門で世界最高水準の精度を達成明星大学と当社が共同研究した映像解析技術が、米国国立標準技術研究所(以下「NIST」)が開催した世界的な映像解析コンテスト「TRECVID 2023」の映像検索部門(AVS:Ad-hoc Video Search)と映像説明文生成部門(VTT:Video To Text)において、世界最高水準の精度を達成しました。映像検索部門では、メインタスクで世界第2位、プログレスタスクで世界第1位、映像説明文生成部門では、五つの評価指標のうち三つで世界第1位を、二つで第3位を獲得し、明星大学と当社の技術が世界最高水準の精度であることが示されました。「TRECVID」は、世界各国の企業や大学などが参加して、映像解析に関するさまざまな課題について技術の性能を競い合う、世界的にも権威のあるコンテストです。近年、ディープラーニングなどの機械学習技術の発展により、物体などを高精度に検出・分類することは可能になりつつありますが、文章と映像が持つ意味の概念を正確に関連付けることができないという問題点がありました。明星大学と当社は、多種多様な映像について、画像と言語を関連付けて処理することができるマルチモーダル学習に関する研究をはじめとした、映像解析技術の研究開発を進めています。これらの映像解析技術は、将来的にさまざまな映像コンテンツを自動解析することができ、多くのサービスやソリューションへの応用が期待できる技術です。例えば、人間の目視による映像の確認作業を軽減し、作業の省力化や迅速化につながることが期待されます。 Beyond 5G/6Gの実現に向けて障害物による電波の遮蔽に強いテラヘルツ無線伝送を自己修復ビームにより実証当社と岐阜大学工学部、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、名古屋工業大学大学院工学研究科(以下「本研究グループ」)は、Beyond 5G/6G時代を見据え、障害物による電波の遮蔽に強い300GHz帯(注1)テラヘルツ無線伝送(以下「テラヘルツ無線(注2)」)を自己修復ビーム(注3)により実証しました。このたび本研究グループは、300GHz帯においてベッセルビーム(注4)を生成し、ベッセルビーム断面内に設置された障害物により乱されたビーム形状が、伝搬とともに自己修復することと、通常のガウスビームと比べて障害物による通信エラーの発生が少なくなることを実験的に確認しました。自己修復ビームにより、障害物による電波の遮蔽に強いテラヘルツ無線通信路が形成可能であることを示した本研究成果は、これまでテラヘルツ無線の大きな弱点であるとされてきた、障害物によるビーム遮蔽に脆弱であるという問題を解決し、Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信の実用化への重要な一歩と位置付けられます。今後は、今回の研究成果を拡張し、屋外でのデータ通信のユースケースを目指した長距離化や、さらに大きな障害物でも対応を可能にする自己修復ビームの発生に関する研究を進めていきます。 (注1)200GHz~300GHzは大気の窓と呼ばれる吸収が低い周波数領域であり、中距離(~1km程度)で利用可能な帯域として期待されている。(注2)100GHz~3THzの周波数領域を用いた無線通信技術であり、特に100GHz~300GHzがBeyond 5G/6Gでの利用が期待されている。(注3)通常の電磁ビームが障害物によって一部分遮蔽されると、ビーム断面内の強度分布は乱され、元のビーム分布と異なったものとなる。一方、自己修復ビームは、障害物によって乱された強度分布が伝搬とともに修復され、元のビーム強度分布に近い分布にまで戻る性質を持つ。(注4)ビーム断面内の振幅分布がベッセル関数に従うビーム。自己修復特性がある。 光無線を活用したQKDの動作実証に成功~都市部のQKDセキュアネットワークの拡大へ前進~当社と東芝デジタルソリューションズ㈱は、東芝デジタルソリューションズ㈱の量子鍵配送(Quantum Key Distribution、以下「QKD」)システムを、当社の光無線通信の試験環境に導入し、光ファイバーと光無線を組み合わせたQKDの動作実証に成功しました。現代社会において、国家安全保障や銀行取引、個人情報の保護など、幅広い分野でサイバーセキュリティが重要な課題となっています。特に量子コンピューター技術の急速な発展や暗号解読アルゴリズムの研究の進展により、従来の暗号技術の危殆化が懸念されています。QKDは重要な機密データを保護するための暗号鍵を配信する仕組みで、量子力学の原理に基づき、暗号鍵を盗聴して解読することが理論上不可能な通信技術です。QKDは、量子力学に基づく原理を通信に応用することで、データの送信側と受信側の双方に共通の暗号鍵(以下「共通鍵」)をそれぞれ生成し、共通鍵を生成するための情報を光子(光の粒子)に乗せて伝送します。従来のQKDでは、都市部の拠点間の接続には光ファイバーを用いる必要があるため、ビル間や公道をまたいだ建屋間など、光ファイバーの敷設が困難な拠点や敷設に多くの時間を要する拠点では、QKDの導入が阻害されてしまう場合があります。この課題を解決するため、従来のQKDの構成に光無線も加えて活用する実証実験を行いました。動作実証において、光子の伝送路の途中に光無線を組み合わせた場合でも、光ファイバー向けのQKDシステムを変更することなく安定した鍵生成が可能であることを確認できました。また、性能評価において、暗号鍵の生成が可能な伝送路全体の光の減衰量について把握することができました。今後さらに特性の把握を深めることで、光無線を組み合わせたQKDシステムの運用に必要となる無線機の要件定義や無線区間の回線設計が可能になるため、QKDセキュアネットワークの設計に大きく寄与するものと考えています。将来的には、ビルの屋上などに光無線機を設置して活用することで、光ファイバーを新設することなく短期間でQKDを利用することが可能になります。当社と東芝デジタルソリューションズは、今後も光無線の伝送路の長距離化によるエリア拡大など、QKDセキュアネットワークの拡張性を高める技術の研究開発を進めていきます。 上記の他、主にAI、HAPS、広告関連サービスやアプリの研究開発を行い、当連結会計年度における研究開発費は60,380百万円となりました。
FY2023|3,093 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、通信を基盤とした様々なサービスの提供を目指し、AI、IoT、ロボット、6G、HAPS、デジタルツイン、自動運転や量子技術などの先端技術の研究開発を実施しています。「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を実現し、通信を介してヒト・モノ・コトをつなぎお客さまに新たな体験や価値を提供するため、より良い技術の実現を目指して日々研究開発に取り組んでいます。 なお、当社グループの研究開発は複数のセグメント間に共通した基礎技術に関するものがほとんどであるため、特定のセグメントに区分して記載していません。 (研究開発活動の目的)お客さまに対して最先端技術の製品を安定的に供給していくこと、および当社グループ内での情報通信技術の中長期的なロードマップを策定していくことを目標に、情報通信技術に関わる最先端技術の動向の把握、対外的なデモンストレーションを含む研究開発および事業化検討を目的としています。 (研究成果)当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は以下の通りです。 次世代リチウム金属電池セルの電池パックをソフトバンクが開発、成層圏で動作実証に成功当社は、重量エネルギー密度439Wh/kgの次世代リチウム金属電池セル(Enpower Japan製)を使用した成層圏通信プラットフォーム向けの電池パックを開発し、HAPSモバイル㈱と2023年1月30日~2月2日に米国において、成層圏での電池パックの充放電サイクル試験を実施しました。HAPSによる通信サービスの実現には、成層圏で動作する高重量エネルギー密度の次世代電池の開発が必要不可欠です。これまで成層圏環境の温度・気圧を模擬した試験環境槽での動作実証を行ってきましたが、今回初めて成層圏での正常な動作実証に成功しました。なお、今回使用したHAPS向けの電池パックは、エナックス㈱の協力の下、開発したものです。重量エネルギー密度が高く軽量で安全な次世代電池について、既存のデバイスやHAPSをはじめとする次世代通信システムなどへの導入を見据え、研究開発を推進しています。また、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、高性能な電池の実現を目指し、今後も研究開発を促進していきます。 「JR博多シティ」における、AIを活用した来館者数や売り上げの高精度予測の研究を開始九州旅客鉄道㈱、JR九州駅ビルホールディングス㈱、㈱JR博多シティ、国立大学法人東京大学および当社の5者は、JR博多駅に立地する大型商業施設「JR博多シティ」において、来館者数や売り上げに影響を及ぼす要因をAIで特定し、さらに高精度な長期予測を行う研究を、2023年1月から共同で開始しました。ビッグデータやAIの活用により、現状の可視化および来館者数や売り上げの予測を行うことで、「JR博多シティ」における施策に反映し売り上げの拡大を図るとともに、お客さまにとって、より楽しく、より生活が豊かになるような魅力的な施設づくりを目指します。本研究はBeyond AI 研究推進機構の研究の一環として行うもので、東京大学と当社は、本研究成果をもとにAIを活用した実用性と汎用性の高いサービス提供を目指し、さまざまな都市におけるスマートシティ化の推進に貢献します。 自動運転のレベル4の解禁に向けて、自動運転の走行経路の設計や遠隔監視の運行業務などをAIで完全無人化する実証実験を開始持続性が高い自動運転サービスの早期社会実装を目指して、竹芝エリア(東京都港区)で自動運転の走行経路の設計や遠隔監視の運行業務などをAIで完全無人化する実証実験を、2023年1月に開始しました。自動運転は、2023年4月の改正道路交通法の施行に伴って、レベル4(高度運転自動化)(注)が解禁されます。自動運転の実用化には、ドライバー不足の解消や交通事故の削減などさまざまな期待が高まる一方で、サービスの提供に多くの機能やシステムが必要となり、導入のコストや維持費の高さが課題として挙げられます。当社は、自動運転のレベル4の解禁やこれらの課題解決を見据えて、持続性が高い自動運転サービスの早期社会実装を目指し、運行業務の無人化などに向けた実証実験を実施します。 (注)特定の条件下で、システムが全ての運転のタスクを実施する状態。 Beyond 5G/6Gに向けて、テラヘルツ波を活用した屋外での通信エリア構築の検証に成功Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信などの実用化に向けた研究開発を進めており、このたびテラヘルツ波を活用した屋外での通信エリア構築の検証に成功しました。Beyond 5G/6Gの時代では、デジタルツインやメタバースの普及が予測されており、屋内外におけるXRデバイスを介したサービスを支える通信インフラとして、5Gよりも伝送帯域が広い無線通信が必要になるとされています。また、100GHzを超えて10THzまでの周波数の電磁波が「テラヘルツ波」と呼ばれており、テラヘルツ波を利用した通信では100Gbpsを超える伝送帯域が実現できるとして、超高速無線システムの候補として期待されています。当社は240.5GHz帯と300GHz帯の周波数の実験試験局免許を取得して、2022年9月に東京都港区台場でテラヘルツ波による通信エリア構築の検証を開始しました。見通しがよい環境下において、最大900m超の距離で電波伝搬の測定および通信エリア構築を確認することができた他、送信側が受信側を見通せない(見通し外)の環境下においても、当社が独自開発した高利得で360度方向の送受信ができる「回転反射鏡アンテナ」を使用した測定で受信に成功し、通信エリアが構築できる可能性を確認しました。この検証結果によって、テラヘルツ波による超高速通信は限られた場所だけではなく、これまで移動通信で利用されてきた周波数帯域による通信と同様の環境でも実現できる可能性が示されました。今後さまざまな環境で測定を行うことで、テラヘルツ波の伝搬特性を研究していく予定です。また、これらの試験や研究で得られた知見を基に研究開発を加速し、通信事業の発展に貢献していきます。 超デジタル社会の実現に向けて、次世代デジタルインフラに関する研究開発を開始当社は超デジタル社会の実現に向けて、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」)と共同で、次世代デジタルインフラの基になる超分散コンピューティング基盤に関する研究を開始しました。5GやMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)などの技術が進化して、スマートシティやドローンによる配送、物流の自動化など産業のデジタル化がますます加速することで、超デジタル社会が到来することが期待されています。超デジタル社会の実現に向けた取り組みの一環として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発(委託)/(f1)超分散コンピューティング技術の開発」の公募に、産総研と共同で取り組む「超分散コンピューティング基盤の研究開発」を提案し、研究課題として採択されました。最先端技術を社会実装することで、日本のデジタル化をリードし、社会のDXの実現に向けた取り組みを推進していきます。 上記の他、主にAIやFintech、HAPS等の研究開発費が増加し、当連結会計年度における研究開発費は56,094百万円となりました。
FY2022|3,564 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、通信を基盤とした様々なサービスの提供を目指し、AI、IoT、ロボット、6G、HAPS、自動運転や量子技術などの先端技術の研究開発を実施しています。「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を実現し、通信を介してヒト・モノ・コトをつなぎお客さまに新たな体験や価値を提供するため、より良い技術の実現を目指して日々研究開発に取り組んでいます。 なお、当社グループの研究開発は複数のセグメント間に共通した基礎技術に関するものがほとんどであるため、特定のセグメントに区分して記載していません。 (研究開発活動の目的)お客さまに対して最先端技術の製品を安定的に供給していくこと、および当社グループ内での情報通信技術の中長期的なロードマップを策定していくことを目標に、情報通信技術に関わる最先端技術の動向の把握、対外的なデモンストレーションを含む研究開発および事業化検討を目的としています。 (研究成果)当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は以下の通りです。 デジタルツインを活用した 『次世代AI都市シミュレーター』の研究開発を開始国立大学法人東京大学、当社、小田急電鉄㈱および㈱グリッドの4者は、東京大学と当社が行うBeyond AI 研究推進機構の研究テーマの一つとして、来訪者の行動変容を促す人流誘導アルゴリズムを実装する『次世代AI都市シミュレーター』の研究開発において連携し、研究を開始しました。1日の乗降客数が10万人を超える小田急線海老名駅とその周辺地域を研究の対象とすることで、都市におけるAI活用の有用性を、効果的に検証します。オンラインでの消費活動の普及や、新型コロナウイルス感染症拡大に伴って生活様式が大きく変化する中、新たな都市づくりに向けて、スマートシティに関する取り組みが加速しています。スマートシティの実現に当たっては、データの可視化や分析だけでなく、データによる予測を基に、人々に役立つ情報と価値を提供して人々の行動変容を促し、地域全体の最適化と活性化に貢献することが重要です。地域におけるより多様なデータを活用し、人流誘導に加えて、エネルギーや物流の効率化など、環境負荷軽減に貢献する都市づくりの検討を進めます。また、今回の研究結果を基に、実用性・汎用性が高いソリューションの開発を進め、人と人を結び、地域への来訪者、住民、企業・自治体などの地域に関わる全ての人にとって価値のあるスマートシティの実現を目指します。 JR西日本と当社、「自動運転・隊列走行BRT」の実証実験を開始西日本旅客鉄道㈱と当社は、自動運転と隊列走行技術を用いたバス高速輸送システムBRT(以下「自動運転・隊列走行BRT」)(注)の実証実験を専用テストコース(滋賀県野洲市)で開始しました。両社は、まちづくりと連携した持続可能な地域交通としての次世代モビリティサービスの実現に向けて、「自動運転・隊列走行BRT」の開発プロジェクトを2020年3月に立ち上げました。このプロジェクトでは、日本初となる連節バスの自動運転化および自動運転バス車両の隊列走行の実用化を目指して、専用テストコースの設置など実証実験に向けた準備を進めてきました。このたび、専用テストコースの走行路が完成することに伴い、3種類の自動運転車両(連節バス・大型バス・小型バス)を用いて、車種が異なる自動運転車両が合流して隊列走行などを行う実証実験を開始しました。テストコースでの実証実験を通して、「自動運転・隊列走行BRT」の技術確立とシステムの標準パッケージ化を目指し、2020年代半ばをめどに次世代モビリティサービスとして社会実装を進めていきます。 (注)Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム ITU-RでHAPSの「電波伝搬推定法」の国際標準化を達成当社と当社子会社であるHAPSモバイル㈱は、成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下「HAPS」)の移動通信システムを実現するために、高高度における電波の干渉量の推定と通信エリアの設計を行うことができる世界共通のモデルを新たに開発し、この新しいモデルが国際電気通信連合の無線通信部門(以下「ITU-R」)(注1)のHAPS向け「電波伝搬推定法」へ追加・改訂され、ITU-R勧告P.1409-2として発行されました(注2)。この推定法は、国内での審議を経て、日本案としてITU-Rに提案されたものです。当社とHAPSモバイルは、HAPS事業の実現に向けて、HAPSに係る電波伝搬モデルに関する国際標準化活動を行ってきました。両社が開発した新しいモデルが追加・改訂されたHAPS向け「電波伝搬推定法」が国際標準化を達成したことは、HAPSの事業展開を目指す世界の事業者にとっても大きな一歩となります。今回の国際標準化により、HAPSの商用化を目指している世界各国の事業者は、この推定法を活用することで、電波干渉の影響などを踏まえ、既存の無線通信システムとの周波数の共用・共存の検討や、HAPSを活用した無線通信システムの設計を効果的に行うことができます。当社とHAPSモバイルの両社は、HAPSの商用化に向けた国際標準化活動をはじめ、各国の規制当局に対する働きかけやHAPSのエコシステム構築などを引き続き推進していきます。 (注1)国際電気通信連合(ITU)は、情報通信技術のための専門機関です。無線通信部門は、国際電気通信連合の部門の一つで、無線通信に関する標準化や勧告を行う機関です。傘下に数々のStudy Group(SG)を持ち、Recommendation(勧告)を策定しています。 (注2)2012年に国際標準化されたHAPS向け「電波伝搬推定法」に追加・改訂され、2021年10月にITU-R勧告P.1409-2として発行されました。 日本初、自動走行ロボットと信号機の連携による屋外配送に成功当社と佐川急便㈱は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」の事業実施者として、2021年4月下旬に自動走行ロボットによる屋外配送の実証実験を実施し、日本で初めて(注)信号機と連携した屋外配送に成功しました。今回の実証実験で、自動走行ロボットと信号機の連携システムを開発し、ロボットが信号機の表示情報を受信し表示に従って交差点を横断することで、公道を安全に走行しながら荷物を配送しました。また、走行時における荷物の温度変化および段差による衝撃を測定し、ロボットによる配送の有効性を確認した他、スマートフォンのアプリケーションで、ロボットの現在位置の確認や目的地到着時の通知受信機能についても実証を行いました。当社と佐川急便は、今後も自動走行ロボットによる配送サービス実現に向けて実証実験を継続していきます。 (注)2021年6月15日時点(両社調べ)。 完全ワイヤレス社会の実現に向けたワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術に関する研究開発を推進当社、国立大学法人京都大学および学校法人金沢工業大学は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「Beyond 5G研究開発促進事業」に係る2021年度新規委託研究の公募(第1回)で、「完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」が研究課題として採択され、共同研究を開始しました。「Society 5.0」社会が到来することで、2035年には全世界のIoTデバイス数が1兆個に到達して、一人100台以上のIoTデバイスを扱うような世界になることが予測されています。近年、5Gの整備によって、膨大な通信トラフィックを処理できるネットワークインフラが構築されていますが、IoTデバイスのバッテリー交換や給電方法が課題になっています。バッテリー交換のコスト削減や給電方法の簡略化を実現するには、給電のワイヤレス化が重要なテーマです。また、Beyond 5Gの世界を見据えて、データのみではなく電力についてもワイヤレス化するといった、完全ワイヤレス社会の実現に向けた研究開発が必要になります。完全ワイヤレス社会の実現に向けて、ワイヤレス電力伝送の高周波化や通信との融合・連携、基地局電波の電力利用などの技術について、研究開発を進める予定です。 上記の他、LINE㈱との経営統合により、主にAIやFintech等の研究開発費が増加し、当連結会計年度における研究開発費は42,802百万円となりました。
FY2021|3,791 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、通信を基盤とした様々なサービスの提供を目指し、AI、IoT、ロボット、6GやHAPSなどの先端技術の研究開発を実施しています。「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を実現し、通信を介してヒト・モノ・コトをつなぎお客さまに新たな体験や価値を提供するため、より良い技術の実現を目指して日々研究開発に取り組んでいます。 なお、当社グループの研究開発は複数のセグメント間に共通した基礎技術に関するものがほとんどであるため、特定のセグメントに区分して記載していません。 (研究開発活動の目的)お客さまに対して最先端技術の製品を安定的に供給していくこと、および当社グループ内での情報通信技術の中長期的なロードマップを策定していくことを目標に、情報通信技術に関わる最先端技術の動向の把握、対外的なデモンストレーションを含む研究開発および事業化検討を目的としています。 (研究成果)当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は以下の通りです。 リチウム空気電池の実用化に向けた共同研究開発 リチウム空気電池は、重量エネルギー密度が圧倒的に大きいことから、軽量性が重視されるドローンやIoT機器、さらには電気自動車や家庭用蓄電システムなど、幅広い分野への応用が期待されています。2018年に国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)と共同でNIMS-SoftBank先端技術開発センターを設立し、携帯電話基地局やIoT、HAPSなどに向けたリチウム空気電池の実用を目指した開発研究を行ってきましたが、この度エネルギー密度の高いリチウム空気電池のサイクル寿命が、電解液量と面積容量の比に支配されていることを明らかにしました。反応に使われる酸素に加えて、副反応に伴って生成される物質の定量的な測定法を開発し、電池反応全体での反応物、生成物の収支を精密に評価できるようなったことで、サイクル寿命の主要因の決定に成功しました。今回の成果は、リチウム空気電池の実用化研究開発において重要な指針を与えるものです。今後は、本研究で得られた知見をふまえ、リチウム空気電池内部の副反応抑制手法を確立することで、NIMS-SoftBank先端技術開発センターでのリチウム空気電池の早期実用化につなげます。 東京大学と当社による『Beyond AI 研究推進機構』、本格始動 世界最高レベルのAI(人工知能)研究機関として『Beyond AI 研究推進機構』を設立し、2020年7月30日に共同研究を開始しました。共同研究開始に当たり、AI自体の進化や他分野との融合など、最先端AIを追究する中長期の研究テーマ10件および研究リーダー10人を決定しました。また、研究成果を基に10年間で10件の事業化と3件の新学術分野の創造を目指すなど具体的な数値目標を設定するとともに、当社が組成する50人規模の事業化推進チームとの連携により、初期段階から事業化を見据えた研究活動を行います。本研究推進機構は、東京大学の学内および海外の有力大学の研究者による最先端のAI研究を行う中長期研究と、研究成果を基に事業化を目指すハイサイクル研究の二つの方向性で研究を行い、事業によって得たリターン(事業化益)をさらなる研究活動や次世代AI人材育成のための教育活動に充てることでエコシステムの構築を目指すことを特長としています。当社、ソフトバンクグループ㈱およびYahoo! JAPANから10年間で最大200億円を拠出し、日本が世界をリードするための研究・事業活動を大胆に推進することで、AIを超える学術分野の開拓を目指していきます。 安全運転支援や自動運転技術に関わるユースケースに関する実証実験 ㈱SUBARUと共同で、自動運転社会の実現に向けた5GおよびセルラーV2X通信システム(以下「C-V2X」)を活用した安全運転支援や自動運転制御に関わるユースケースの研究を2019年から進めていますが、このたび合流時車両支援の実地検証を行い、2020年8月に世界で初めて(注)成功しました。一つ目のユースケースでは、高速道路などで自動運転車が合流路から本線車道へスムーズに合流することを目指して、検証を行いました。低遅延・高信頼な通信が求められるこのユースケースでは、5GネットワークとMECサーバーを活用することで、合流車両が制御情報をもとに、本線車道を走行する2台の車両間にスムーズに合流することに成功しました。二つ目のユースケースでは、渋滞などによって本線車道を走行する車両の間に合流可能なスペースがない場合に、自動運転車がスムーズに合流することを目指して、検証を行いました。このユースケースでは、合流直前の限られた時間とスペースでのコミュニケーションという観点から、狭域での通信に有用性があるC-V2Xの車車間通信を活用し、合流車両と本線車両間の最適な位置関係を計算して、スムーズに合流することに成功しました。今後も車両制御システムと5GおよびC-V2Xの連携を見据えたユースケース検証を行い、安全・安心なクルマ社会の実現に向けて研究開発を進めていきます。(注)2020年11月24日現在。(両社調べ)5G、C-V2X使用による自動運転車を用いた実車ベースでの合流支援の検証および挙動確認として世界初。 Beyond 5G/6Gに向けたテラヘルツ無線通信用の超小型アンテナの開発 テラヘルツ無線は、5Gで利用されるミリ波帯と比べて、より広い周波数帯域が利用可能なため、超高速無線システムの候補として期待される一方で、スマートフォンなどへの実装を考えると、小型で利得の高いアンテナの開発が必要不可欠であり、サイズと利得の両立が課題とされていました。国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学、国立研究開発法人情報通信研究機構、National Research Tomsk State UniversityおよびTomsk Polytechnic Universityと共同研究において、300GHz帯テラヘルツ無線で動作する超小型アンテナを開発し、600mmという小区間で17.5Gbpsの通信実験に成功しました。この距離は最初の一歩として、テラヘルツ帯がスマートフォンなどの近距離通信に使えることを示し、また現在開発が進められているテラヘルツ無線に対応するトランシーバーの出力と受信感度の性能が向上することで、より長距離の通信への可能性を示すものです。今後もBeyond 5G/6G時代の超高速無線通信などの実用化に向けた研究開発を加速し、通信事業の発展に貢献していきます。 自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた実証実験 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)の「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」に係る公募において、NEDOから事業実施者に選定されました。東京都が実施する「スマート東京」の実現に向けたプロジェクトとして、最先端のテクノロジーを街全体で活用するスマートシティのモデルケースの構築に取り組んでいる竹芝エリアで、自動走行ロボットによる配送サービスを実現するための実証実験を実施しています。近年、物流業界では宅配便の取扱量の増加による人手不足が課題になっています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から接触機会の削減が求められています。以上の課題の解決に向けて、自動走行ロボットによる非対面・非接触での配送サービスの早期実現を目指していきます。 成層圏飛行中のLTE通信に成功 当社の子会社であるHAPSモバイル㈱と、米Alphabet Inc.の子会社であるLoon LLCは、2020年9月21日に米国ニューメキシコ州のSpaceport Americaで実施した、HAPSモバイルの成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「Sunglider」のテストフライトにおいて、共同で開発したペイロードと呼ばれる成層圏対応無線機の通信に成功しました。自律型航空式のHAPS(High Altitude Platform Station)によって、成層圏からLTEの通信に成功するのは、世界で初めてです。今回のテストフライトでは、自律型航空式のHAPSにおいて、世界最大級および最重量の成層圏対応無線機(一式約30キログラム)を使用し、飛行中にMIMO技術を用いたLTE通信を約15時間(成層圏では5時間38分)実施し、LTEの実装を確認することができました。最大風速58ノット(秒速約30メートル)、最低気温マイナス73度という厳しい環境の中でも、成層圏対応無線機は問題を起こすことなくその性能を発揮しました。また通信試験では、成層圏対応無線機を通してインターネットに接続されたスマートフォンを用い、低遅延かつ高解像度なビデオ通話を実現しました。今後は、HAPS機体および関連技術の改良を継続し、2027年頃の量産化・商用サービス本格化を見据えて標準化の推進や通信事業者への提案活動を行っていきます。 以上により、当連結会計年度における研究開発費は16,457百万円となりました。
FY2020|2,221 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、主にコンシューマ事業および法人事業の基幹となる通信サービスの研究開発を実施しています。「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を実現するため、そしてお客さまに使いやすく安心して利用できる通信サービスを提供するため、より良い技術の実現を目指して日々研究開発に取り組んでいます。なお、当社グループの研究開発は複数のセグメント間に共通した基礎技術に関するものがほとんどであるため、特定のセグメントに区分して記載していません。 (研究開発活動の目的)お客さまに対して最先端技術の製品を安定的に供給していくこと、および当社グループ内での情報通信技術の中長期的なロードマップを策定していくことを目標に、情報通信技術に関わる最先端技術の動向の把握、対外的なデモンストレーションを含む研究開発および事業化検討を目的としています。 (研究成果)当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は以下の通りです。 高速道路で5Gの車両間通信を用いた車間距離自動制御の実証実験 5Gの新たな無線方式(以下「5G-NR」)の無線伝送技術に基づく車両間通信の屋外フィールド試験として、新東名高速道路でトラック隊列走行(先頭車両が有人運転で、後続車両が自動運転で先頭車両を追従)の実証実験を行いました。新東名高速道路の試験区間(約20km)を時速約80kmで走行する3台のトラック車両間で、5Gの車両間通信(4.5GHz帯)を用いて位置情報や速度情報、操舵情報などを共有し、目標車間距離10mでのリアルタイムでCACC(Coordinated Adaptive Cruise Control、協調型車間距離維持制御)を実施、実験は一般車両が走行する高速道路という実用的な環境下で行い、試験区間において、CACCによる安定した隊列維持に成功しました。今後も「5G-NR」の無線伝送技術に基づく車両間通信に特有な電波伝搬環境や技術的要求条件を把握する目的で、車両間通信の標準化に先駆けて、実証試験を進めていきます。トラック隊列走行の早期実現に向けて、引き続き技術検証および実証評価を行います。 健康・医療情報データプラットフォームの活用によるAIソリューションサービスの共同研究 東京大学との共同研究として、人生100年時代を見据えた健康・医療情報やライフスタイル情報などの多岐にわたる情報を解析し、いつまでも健康で働ける社会を早急につくることが重要であり、IoTやAI、ロボット、シェアリングエコノミーなど第4次産業革命の社会実装によって、人口減少・超高齢化などの様々な社会課題を解決する「Society 5.0」の実現を共同で目指すという考えで合意しました。セキュアかつ幅広くデータ利活用が促進できるプラットフォームを構築し、このデータプラットフォームを活用した新たなAIソリューションの開発を共同で実施します。AIによる未病・予防や医師サポート型電子カルテ・自動問診システムの開発等、健康・医療情報データプラットフォームの活用によるAIソリューションサービスの実現を目指しています。 成層圏から通信ネットワークを提供する航空機のフライト実験 成層圏に位置する通信プラットフォームHAPS(High Altitude Platform Station)における、ソーラーパネルを搭載した成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「HAWK30」のテストフライトを実施、約1時間30分の連続飛行実験を行いました。飛行中における急旋回など、24項目以上のテストをパスし、飛行推進力のパフォーマンスなどについて、航空電子工学の観点による検証を推し進めることができました。その他、商用化を想定した滑走路への正確な着陸制御も実施し成功しました。HAPSを活用した上空からの通信ネットワークをグローバルに提供することを見据えて、各国の関係当局との調整、事業に関わる各種法令・規制などに配慮しながら、研究開発やフライトテストを実施し、2023年ごろに「HAWK30」の量産化およびサービスの提供を目指しています。 5Gで伝送したライブ映像をテレビ局で遠隔操作・編集をリアルタイムに行う実証実験 近年インターネットを活用した映像サービスや高精細な4K映像など、臨場感のある映像コンテンツの需要が高まっており、一方、放送業界では映像の高度化に伴う番組制作における作業の負荷や、編集機材のコスト増加などが課題となっています。このようなニーズや課題に対して、5Gを活用した実証実験を行いました。沖縄県のプロサーファーがサーフィンする姿を3台のカメラでライブ撮影し、5Gを活用して都内のデータセンターまで伝送し、テレビ局から遠隔でスイッチング操作(全映像を遠隔視聴し必要な映像のみを切り換えて転送)することに成功しました。また、全映像はデータセンターに設置したサーバー内へリアルタイムで保存され、テレビ局の映像制作のエンジニアが遠隔で編集を行えることも確認できました。これまで撮影現場の中継車などで行っていたスイッチング操作や映像編集をテレビ局から効率的に行うことができるようになります。放送業界が抱える課題解決や需要に対して、今後も5GやIoTを活用した様々な検討を進めていきます。 以上により、当連結会計年度における研究開発費は14,671百万円となりました。
FY2019|1,814 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、主にコンシューマ事業および法人事業の基幹となる通信サービスの研究開発を実施しています。「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を実現するため、そしてお客さまに使いやすく安心して利用できる通信サービスを提供するため、より良い技術の実現を目指して日々研究開発に取り組んでいます。なお、当社グループの研究開発は複数のセグメント間に共通した基礎技術に関するものがほとんどであるため、特定のセグメントに区分して記載していません。 (研究開発活動の目的)お客さまに対して最先端技術の製品を安定的に供給していくこと、および当社グループ内での情報通信技術の中長期的なロードマップを策定していくことを目標に、情報通信技術に関わる最先端技術の動向の把握、対外的なデモンストレーションを含む研究開発および事業化検討を目的としています。 (研究成果)当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は以下の通りです。 車両間直接通信の屋外フィールド試験 総務省の受託研究として「高速移動時において無線区間1ms(1,000分の1秒)、End-to-Endで10msの低遅延通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討」に取り組みました。その中で、5Gの新たな無線方式である「5G-NR」の無線伝送技術に基づく車両間直接通信を行う実験用試作機をトラックに搭載し、5Gの候補周波数帯である4.5GHz帯の実験局設備を使用して、走行中の車両間で通信試験を行い、車両間直接通信の遅延時間が1ms以下となる低遅延通信に世界で初めて成功しました。また、基地局圏外でも自律的に直接通信を行う5G車載端末(4.5GHz帯使用)を新たに開発したうえで、基地局圏外で走行中の車両間で通信試験を実施し、無線区間の遅延時間が1ms以下となる低遅延通信にも世界で初めて成功しました。 「5G×IoT Studio」の実施 5GやIoTを活用した新たなサービス、ソリューション、プロダクトの提供を目指す企業向けに、5G実験機器での技術検証ができるトライアル環境を提供し、さまざまな企業と新たな価値の共創を目指す「5G×IoT Studio」を実施しています。2018年5月にオープンし、360度カメラ映像ライブ視聴や力触覚通信技術などの5G技術を活用したデモンストレーションや、さまざまな業界の企業との実証実験を通じて、将来の5Gネットワークの安定したサービス提供の実現、および5Gを使った革新的なサービスの実現を目指しています。 3Dパノラマ映像を用いたVR試合観戦実験 ヤフオクドームのホームベース後方フェンス内など、特別な場所に設置した高画質VRカメラで撮影した試合の模様を、3.7GHz帯および28GHz帯で構築した5Gネットワークを通して、VRヘッドセットに伝送する実証実験を行いました。結果、高画質な3Dパノラマ映像としてVRヘッドセットから試合観戦することができたほか、複数設置されたVRカメラの視点を自由に切り替えながら観戦することもでき、新時代のスポーツ観戦体験が可能なサービスの提供に向けた一歩となりました。 NIDD(Non-IP Data Delivery)技術の商用環境での接続試験 IoTデバイス向けのLTE通信規格であるNB-IoTにおいて、3GPP(3rd Generation Partnership Project、移動通信システムの仕様を標準化するプロジェクト)で新たに規格化されたNIDD(Non-IP Data Delivery)技術の商用環境での接続試験に世界で初めて成功しました。 成層圏から通信ネットワークを提供する航空機の開発 成層圏に飛行させた航空機などの無人機体を通信基地局のように運用し、広域のエリアに通信サービスを提供する構想のHAPS(High Altitude Platform Station)事業を2019年4月に発表しました。上空からの通信ネットワークをグローバルに提供することを見据えて、地上約20キロメートルの成層圏で飛行させる成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「HAWK30(ホーク30)」を開発し、2023年頃の機体量産化およびサービスの提供を目指しています。 以上により、当連結会計年度における研究開発費は14,129百万円となりました。