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浜松ホトニクス

電気機器 電機・精密

研究開発費(時系列)

年度R&D費用(億円)設備投資(億円)
2025-09 - 348
2024-09 - 309
2023-09 - 312
2022-09 - 204
2021-09 - 130

研究開発活動(本文)

FY2025|3,419 文字
6【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、「光の本質に関する研究及びその応用」をメインテーマとし、主に当社の中央研究所及び各事業部において行っております。光の世界は未だその本質すら解明されていないという、多くの可能性を秘めた分野であり、光の利用という観点からみても、光の広い波長領域のうち、ごく限られた一部しか利用することができていないのが現状であります。こうした中、当社の中央研究所においては、光についての基礎研究と光の利用に関する応用研究を進めており、また、各事業部においては、製品とその応用製品及びそれらを支える要素技術、製造技術、加工技術に関する開発を行っております。当連結会計年度の研究開発費の総額は、18,439百万円であり、これを事業のセグメントでみますと、電子管事業4,198百万円、光半導体事業3,676百万円、画像計測機器事業843百万円、レーザ事業3,939百万円、その他事業474百万円及び各事業区分に配賦できない基礎的研究5,306百万円であります。当連結会計年度における主要な研究開発の概要は次のとおりであります。 <量子分野の取り組み> 量子技術は、「超高速計算(量子コンピュータ)」や「極めて高精度な計測(量子センシング)」、「安全性の高い暗号通信(量子コミュニケーション)」など、新たな産業や科学の可能性を切り開く鍵として注目されております。当社は、これらの各量子分野において中核となるデバイスを提供しております。ここでは、量子分野の中でも、特に次世代のコンピュータとして期待される量子コンピュータに関する当社の取り組みをご紹介いたします。 量子コンピュータとは 量子コンピュータとは、量子(原子や分子、電子など)の重ね合わせや量子もつれといった特徴を利用したコンピュータで、実現すれば特定の分野において従来のコンピュータよりも圧倒的に速く計算処理ができるほか、量子アルゴリズムによる計算回数の圧縮によりAIの学習や推論に伴う膨大な電力消費を抑えられる可能性があります。また、革新的な新素材や高性能触媒の開発をはじめ、エネルギー効率の飛躍的な向上や環境負荷の大幅な低減といった、持続可能な社会の実現に直結する分野での活用が期待されております。さらに、物流や金融システムなど社会インフラにおいても、従来の枠組みに抜本的な革新をもたらすとされております。 量子コンピュータの実現に向けてはいくつかの方式が検討されており、当社は、特に光技術を用いる方式で中核となるデバイスの研究開発を推進しております。例えば、その方式の一つである「中性原子方式」は、レーザを用いて原子を特定の位置に配列したうえで、その状態を精密に制御して計算を行っております。この方式の実現にあたり、原子を適切に配列させるためのレーザ光源や光変調器、原子を観察するための高感度な検出器やカメラが必要とされており、そのいずれも当社製品の有用性が期待されております。 量子コンピュータ実現への課題とそれを解決する当社の強み 実用的な量子コンピュータを実現するためには、エラーを抑えた信頼性の高い計算を可能にし、以下の技術課題を段階的に乗り越える必要があります。当社は製品開発ロードマップの中で、課題解決に直結する仕様目標と検証アプローチを明確化し、当社技術・製品の強みをいかした実効性ある開発を推進してまいります。・量子状態の高精度な観測(エラーの高速検知・訂正):当社は、光子数の識別が可能な多画素・高感度・超高速・低ノイズカメラを有しており、大規模に配列した量子系の観測に有用とされております。今後、さらに超高感度・超高速化することで、量子状態の正確な観測とエラーとなる量子状態を高速に検知し、誤り訂正をすることを支援してまいります。・量子ビット数増加に対応可能な拡張性の確保:量子コンピュータは、計算に用いる情報の最小単位である量子ビット数を増やすことで、より高度な計算を行うことができるとされております。一方で、量子ビット数の増加によって、それを制御するためのレーザパワーも増やす必要がありますが、当社は強力なレーザにも耐性をもちながら、レーザを精密に制御することが可能な空間光位相変調器(LCOS-SLM)を有しており、量子配列の光ピンセットなどの制御精度の向上に寄与しております。今後は、LCOS-SLMのさらなる改善により、量子コンピュータの高度化に伴う量子ビット数の増加に応じた多点同時制御を実現してまいります。・量子の計算精度の向上:当社子会社であるエヌケイティ・ホトニクス・エイ・エスの有する特徴的なレーザを活用することで、量子計算に欠かせない波長・強度・位相が安定したレーザを提供しております。今後は、量子ビットの操作精度の向上のため、さらなる高出力化・低ノイズ化を実現するとともに、長時間の連続運転にも耐えうるレーザの開発に取り組んでまいります。 国のプロジェクトへの参画 当社は、これまでの実績が評価され、国主導プロジェクトであるNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の量子コンピュータの産業化に関する事業(注)に単独で採択されました。採択期間は2025~2027年度の3年間の予定で、量子コンピュータに不可欠な中核デバイス(超高速カメラ、多画素・高感度カメラ、多画素空間光変調器ほか)の研究開発をさらに推進いたします。目的:量子コンピュータの大規模化、安定動作を支える光源・検出器・光変調技術の確立体制:当社主導で、国内有力研究機関・量子コンピュータメーカーと連携のもと、試作~評価~応用展開まで一貫して推進期待効果:産業化のボトルネック解消を通じた、当社製品の採用領域拡大と継続的な収益基盤の強化 <細胞等の観察を大幅に効率化させるバーチャルスライドスキャナ「NanoZoomer®S540」> 開発の背景 患者から採取した組織・細胞を観察・解析し、疾患の性質やメカニズムを明らかにする病理診断は、近年、分子や遺伝子レベルでの解析の進展と患者一人ひとりの体質や病態にあった有効かつ副作用の少ない治療法 (個別化医療)の発展に伴い、その重要性がますます高まっております。特にがんなどの疾患に対するメカニズムの解明や治療法・薬剤の研究開発が加速しており、患者由来の組織・細胞を病理学的に観察・解析するアプローチは、個別化医療の実現において極めて重要な役割を果たしております。従来は、組織・細胞をガラス標本にして顕微鏡で観察する手法が主流でしたが、近年ではガラス標本をスキャンして高精細な画像データに変換し、観察・保存・共有を可能にする「デジタル病理」への移行が世界的に急速に進んでおります。 当社では約20年前より、デジタル病理分野の普及を目的としてバーチャルスライドスキャナ「NanoZoomer」シリーズの開発を開始し、用途に応じたラインナップの拡充を進めてまいりました。このたび、従来以上に効率的かつ迅速な観察を実現するため、大量のガラス標本を高速にデジタル化できる新モデル「NanoZoomer S540」を研究用途向けにリリースいたしました。 製品の特長 本製品は、最大540枚のガラス標本をセット可能で、短時間での自動処理が可能なハイエンドモデルです。特に装置の動作を停止することなく新しいガラス標本を追加できる機能の搭載に加え、ガラス標本内の組織・細胞を人工知能(AI)により自動認識する機能を大幅に向上させることで研究者の作業効率と利便性を大きく高めております。今後は、国内外での医療機器化を目指し、研究用途及び医療用途の両面でグローバル市場への展開を進めてまいります。 このように、長年にわたり培ってきた当社グループ独自の光技術を駆使し、バイオ、医療、情報、通信、エネルギー、物質、宇宙・天文、農業等の分野において、新しい知識、新しい産業の創成を目指した基礎研究を推し進めるとともに、新製品の開発及び既存製品の高機能化・高付加価値化を目指した開発を行っております。 (注)「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」における「量子コンピュータの産業化に向けた開発の加速」事業において「量子コンピュータの産業化に向けた光部素材技術の開発」をテーマとして採択されました。

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