事業の内容
サンバイオグループは、再生医療を通じて患者さんに価値を提供することをミッションとし、日米で細胞治療薬の研究、開発、製造、販売を行う再生医療事業を展開しています。主に中枢神経系の疾患(慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳梗塞など)を対象とした治療薬の販売を目指しています。収益は、主に医薬品の販売網を持つパートナー製薬会社へのライセンス許諾(契約一時金、マイルストン収入、開発協力金、ロイヤルティ収入、製品供給収入)で得ていますが、今後は自社での製造販売承認取得と販売(製品売上収入)も併用する方針です。主力製品候補は、脳の再生を促す世界初の治療薬「SB623」です。
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FY2026|12,601 文字|出典 docID: S100XZTW
3【事業の内容】(1)当社の事業領域当社グループ(以下、当社及びSanBio, Inc.(米国カリフォルニア州オークランド市)2社を指します。)は「再生医療の開発を通して、患者さんをはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、日米において細胞治療薬の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生医療事業を展開しています。当社グループでは、主に中枢神経系の疾患(眼科を含む)における、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しています。 ≪細胞治療薬とは≫当社グループが手掛ける細胞治療薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品です。 (2)事業の内容当社グループは、大学等の研究機関から導入した技術を基盤として、当社グループにおいて製造開発、非臨床試験及び臨床試験等を実施し、再生医療等製品の研究、開発、製造及び販売を行っています。 当社グループの事業モデルは、主として、医薬品の販売網及び商業化能力を有するパートナー製薬会社に対して、当社グループが保有する開発権及び販売権をライセンス許諾することにより収益を獲得するライセンスアウト型モデルを基本としています。これに加え、今後は、当社グループ自らが製造販売承認を取得し、販売体制を構築した上で製品を販売する自社販売型モデルも、収益機会の一つとして併存させる方針としています。収入形態の内容は以下のとおりです。 ≪当社グループの収入形態≫ 収入形態内容A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入Bマイルストン収入開発進捗又は製品上市後の売上高等、予め設定したマイルストン達成時に一時金として得られる収入C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先が負担する部分として得られる収入Dロイヤルティ収入ライセンスアウト先による製品販売後、製品売上高の一定割合として得られる収入E製品供給収入ライセンスアウト先に対し、当社グループが製品を供給する対価として得られる収入F製品売上収入(自社販売)当社グループが製造販売承認を取得し、自社で販売する製品について、医療機関等への販売により直接得られる売上収入 ≪収入構造の概要≫当社グループの収入は、開発段階においては、主として(A)契約一時金、(B)マイルストン収入及び(C)開発協力金により構成されます。製品上市後は、ライセンスアウト型モデルにおいては、売上マイルストンに係る(B)マイルストン収入に加え、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が主な収入形態となります。一方、自社販売型モデルにおいては、当社グループが製造・物流・販売体制を構築し、製品を販売することにより、(F)製品売上収入を直接計上することとなります。この場合、製品売上高は当社グループの売上として計上される一方で、販売活動に伴う販売管理費等が発生します。当社グループでは、対象疾患の市場規模、医療提供体制、販売効率、必要となる経営資源等を総合的に勘案し、ライセンスアウト型モデルと自社販売型モデルのいずれが当社グループの企業価値最大化に資するかを、製品及び地域ごとに個別に判断する方針としています。 ≪ライセンス許諾及び販売戦略≫ライセンス許諾のタイミングについては、ヒトでの安全性及び有効性を確認するProof of Concept(POC)段階まで当社グループにおいて開発を進めた時点を想定しています。また、今後のパイプラインについては、パートナー製薬会社との提携によるライセンスアウトのみならず、自社販売の可能性も含めて、柔軟に検討していきます。なお、条件及び期限付き製造販売承認を取得したアクーゴ®については、当社グループによる自社販売を想定しています。 (3)開発の状況① 当社グループが手掛ける細胞治療薬当社グループが開発を進める細胞治療薬はSB623(間葉系間質細胞、対象疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系間質細胞、対象疾患は末梢神経障害等)、SB308(骨格筋幹細胞、対象疾患は筋ジストロフィー等)、MSC1(間葉系間質細胞、対象疾患はがん疾患等)、MSC2(間葉系間質細胞、対象疾患は炎症性疾患等)の5種類です。当連結会計年度末時点での研究開発パイプラインの進捗状況を以下の表に示します。当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である細胞治療薬SB623(間葉系間質細胞)における各種対象疾患での開発を最優先に進める方針です。 ※1: 「外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善」を効能・効果とする※2: これまでの慢性期脳梗塞及び慢性期外傷性脳損傷の臨床試験で安全性が確認できているため、フェーズ2b臨床試験以降から開始※3: OcuMension(Hong Kong) Limited社との共同開発※4: D&P Bioinnovations, Inc社と食道再生インプラントの開発及び商業化に関する業務提携 ≪SB623の概要≫SB623は「脳の再生」を促す世界初の治療薬です。脳内の損傷した神経組織に移植することで、複数のタンパク質等が放出され、損傷した神経細胞が本来持つ再生能力を促し、神経細胞の増殖・分化を促進する効果が期待されています。また、基礎試験の結果から、神経細胞の保護作用、血管新生促進作用、免疫調整作用が報告されています。当社グループが開発を手掛ける細胞治療薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品です。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、発売開始後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した間葉系間質細胞がSB623です。SB623は慢性期外傷性脳損傷や慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能です。長期入院は不要で、投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能です。作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる)、(B)神経新生(神経細胞をつくる)、(C)血管新生(血管をつくる)、(D)抗炎症(炎症を抑える)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されています。特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが非臨床試験(In Vivo試験)において確認されています。 ② SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの開発状況外傷性脳損傷は、世界中の主な死因および障害の原因の一つです。2016年の世界の急性外傷性脳損傷の新規患者数は2,700万人(推定)、外傷性脳損傷に続発する慢性障害の患者数は5,550万人(推定)でした※1。外傷性脳損傷及び外傷性脳損傷に続発する長期に渡る運動機能障害は、患者さんの自立、雇用、およびQOLを著しく損ない、総じて各国の医療システムの大きな負担になっています。米国では、外傷性脳損傷で入院し生存した患者さんの約43%が長期の運動機能障害を経験しており※2、2,317万人が外傷性脳損傷に続発する運動機能障害を長期に抱えて生活していると推定されています※3。また、日本における外傷性脳損傷(TBI)の患者数は約6万人※4で、そのうち20%は後遺症を伴うと推定されています※5。損傷を受けた脳組織の自然回復は難しいと言われており、慢性期に入り運動麻痺が定着した患者さんは、日常生活や社会生活における影響を生涯に渡って抱えることとなり、未だ有効な治療法がないことから大きなアンメットメディカルニーズが存在していました。これまで、脳の機能を回復する治療薬は存在しておらず、慢性期の外傷性脳損傷の運動麻痺における治療薬は存在しませんでしたが、アクーゴ®脳内移植用注(以下、「アクーゴ®」)は慢性期の外傷性脳損傷(TBI)の運動麻痺において、有効性・安全性の点から規制当局に承認された、世界初の新たな治療選択肢です。 当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2aにおいてSB623の安全性が示唆されたことを受けて、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ2から開始しました。日米を含むグローバル試験(二重盲検、被験者61名)として実施したフェーズ2試験については、2018年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成」という良好な結果を得ました。本試験結果を踏まえて、2019年4月に厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象品目の指定を受け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議を重ね、2022年1月までに先駆け総合評価相談を完了し、2022年3月に厚生労働省に対して再生医療等製品製造販売承認申請(以下、「本申請」)を行い、2024年7月に厚生労働省より外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺を効能・効果として条件及び期限付き製造販売承認を取得し、SB623はアクーゴ®となりました。その後、承認条件の一つである治験薬と製品薬の同等性/同質性を確認し、2025年12月に製造販売承認事項一部変更承認を取得しました。現在、販売に向けて国内の製造・物流・販売体制の構築を進めています。最大市場となる米国市場においては、日本でのアクーゴ®の実績を基に、米国規制当局(FDA)と臨床試験の実施に向けて協議を行っており、臨床試験フェーズ3の試験デザインについて合意を得ています。翌連結会計年度から臨床試験に向けた準備を行っていく予定です。なお、慢性期外傷性脳損傷を対象としたSB623については、「先駆け審査指定制度」の対象品目指定に加え、厚生労働省から「希少疾病用再生医療等製品」の指定を、米国食品医薬品局(FDA)からは、RMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)の指定を受けています。 <出典>※1: James SL, et al. “Global, regional, and national burden of traumatic brain injury and spinal cord injury, 1990- 2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016.” Lancet Neurol 2019;18:56-87.※2: Selassie AW, et al. “Incidence of long-term disability following traumatic brain injury hospitalization, U.S.”, 2003. J Head Trauma Rehabil 2008;23:123-31※3: Zaloshnja E, Miller T, Langlois JA, Selassie AW. Prevalence of long-term disability from traumatic brain injury in the civilian population of the United States, 2005. J Head Trauma Rehabil. 2008 Nov-Dec;23(6):394-400.※4: 厚生労働省患者調査 2020 「19損傷,中毒及びその他の外因の影響(頭蓋内損傷)」の患者数※5: 厚生労働省患者調査 2020 「T905頭蓋内損傷の続発・後遺症」の患者数 ③ SB623慢性期脳梗塞プログラムの開発状況脳梗塞は血栓が脳の血管に詰まるために引き起こされ、脳の神経細胞に十分な血液が供給されなくなる病気です。発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。 当社グループでは、2011年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験を米国にて実施し、この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、SB623が慢性期脳梗塞患者の運動機能を改善する可能性があること(有効性の示唆)が確認されました。本フェーズ1/2a臨床試験に続き、2015年12月には、米国でのフェーズ2b臨床試験(二重盲検、被験者163名)を開始し、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。しかし、2020年9月には、STR-02試験の追加解析として、梗塞巣サイズが一定量未満の患者77名(当試験組み入れ患者全体の47%)を対象に、複合FMMSエンドポイントを用いてSB623の投与から6カ月後における有効性を評価したところ、偽手術群26名のうち19%の改善に対し、SB623投与群51名のうち49%において改善が見られ、統計学的に有意な結果(P値=0.02)を得ました。本追加解析結果を踏まえて、慢性期脳梗塞における新たな臨床試験の実施に向けて、日米の規制当局との協議を進める予定です。 ④その他のパイプラインの開発状況≪SB623慢性期脳出血プログラム≫上記の慢性期外傷性脳損傷プログラムの良好な結果を受けて、外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血プログラムをパイプラインに追加しました。脳出血は、血管が詰まって引き起こされる脳梗塞に対して、血管が破れることで引き起こされる疾患であり、半身麻痺、感覚障害又は記憶障害等の症状が起こりますが、現状では根治治療は存在していないとされています。当社グループとしては、現在、本プログラムの臨床試験は、フェーズ2又はフェーズ3からの開始を見込んでおり、今後準備を進めていきます。 ≪SB623網膜疾患プログラム≫SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性です。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしています。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性です。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されています。網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針の中、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を対象疾患とした共同開発を行なう契約(中華圏以外の開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保)を締結しました。現在、Ocumension(Hong Kong)Limitedとの共同開発の枠組みの中で非臨床試験を開始し、臨床試験開始に向けたデータの取得を進めています。 ≪SB623その他の疾患への展開≫パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施します。アルツハイマー病等その他の疾患については非臨床試験(In Vivo試験)において適応可能性について検討していきます。 ≪SB618≫細胞治療薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用が期待される治療薬ですが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系間質細胞です。SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養します。このプロセスにより間葉系間質細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えています。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷を対象とした非臨床試験(In Vivo試験)で効果が示唆されており、今後、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めていきます。 ≪SB308≫細胞治療薬SB308は骨髄由来の骨格筋幹細胞です。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気です。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの非臨床試験(In Vivo試験)で、その応用可能性が示唆されています。 ≪MSC1・MSC2≫2018年9月にMSC1、MSC2という間葉系間質細胞由来の細胞治療薬に関する特許ポートフォリオを他社から取得しました。間葉系間質細胞の細胞膜上に存在する特定のToll様受容体を刺激することで、間葉系間質細胞の特徴である安全性及び忍容性を維持したまま抗炎症機能を増強する技術及び炎症機能を増強する技術です。炎症機能を高めたMSC1は、通常の間葉系間質細胞が腫瘍の成長に促進的に働くのに対し、腫瘍の成長を減衰させることが非臨床試験で確認されており、がん治療薬としての開発が期待できます。高い抗炎症作用を有するMSC2は、視神経炎、多発性硬化症やクラッベ病といった脱髄疾患、糖尿病性神経障害、関節リウマチ、クローン病等の炎症性疾患に対する治療薬としての開発が期待されており、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏における視神経炎を適応疾患とした細胞薬の開発及び販売権の取り決めをしました。 ⑤ パートナー製薬会社との契約の締結状況当社グループは、2020年3月にOcumension(Hong Kong)Limitedと眼科領域における細胞治療薬の研究・開発・商業化を目的として、SB623及びMSC2に関して、業務提携契約を締結しました。また、2021年11月にはD&P BioinnovationsとMSC2細胞を利用した食道再生インプラントの開発及び商業化に関する業務提携契約を締結しました。それぞれの契約において、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされています。今後も、当社グループの保有するパイプラインにおける開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携のみならず、自社販売の可能性も含め検討していきます。 (4)事業の特徴① 収益性の確保に向けた取組a. 他家移植であること一般に再生医療は、自家移植と他家移植に分けられます。自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法です。この場合、細胞調製に手間がかかる等、実用化に当たっての課題が存在しています。一方、当社グループが開発を進める細胞治療薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっています。 b. 量産化技術が確立されていることドナーの骨髄液を培養して、均質な製品を大量に製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されています。なお、当社グループが開発を進める細胞治療薬は、もともと体内に存在する骨髄液由来の間葉系間質細胞を細胞源としているため、安全性に優れており、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクも低いと認識しています。また、倫理的な点が懸念されるES細胞由来又は中絶胎児由来の細胞に対して、健常者の骨髄液由来のSB623は、臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えています。 c. 製品供給権が確保されていること他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。一方、当社グループの細胞治療薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品です。そのため、ライセンスアウト型モデルにおいては、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として(E)製品供給収入を獲得することができ、また、自社販売型モデルにおいては、(F)製品売上収入を獲得することができます。 ② 対象となる患者数の多さ当社グループが手掛ける細胞治療薬は、従来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、米国における外傷性脳損傷の患者数は約550万人、脳梗塞は約685万人と推計しています。外傷性脳損傷及び脳梗塞のほか、脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、細胞治療薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えています。 ③ 販売に必要な知的財産を自己保有当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、細胞治療薬の事業化に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている細胞治療薬(SB623、SB618、SB308、MSC1、MSC2)の特許は基本的に全て自社で保有しています。2015年3月3日に当社グループの細胞治療薬SB623に関する物質特許が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬「SB623」及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しています。また、2024年秋にはSB623を用いた慢性期脳梗塞の細胞治療に関する米国での新規特許を取得し、最大市場である米国におけるSB623の用途特許の期間を大幅に延長することができました。今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めていきます。特許取得地域については、開発を進捗させている日本及び米国に加え、今後、開発を進める予定の欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における製品販売に向けた基盤の整備を進めています。 ≪SB623関連の特許取得地域≫米国、日本、イギリス、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール他 (5)今後の展開前連結会計年度の2024年7月に、アクーゴ®は、日本における条件及び期限付き製造販売の承認を取得し、当連結会計年度の2025年12月に製造販売承認事項一部変更が承認され、出荷制限の条件が解除されました。これに伴い、販売の準備を行い、初出荷は翌連結会計年度の下半期(2026年8月~2027年1月)を見込んでいます。また、当連結会計年度の2025年11月に海外募集による新株式発行により142億円(差引手取額)の成長資金を確保しており、今後の米国におけるSB623慢性期外傷性脳損傷プログラム及び日本のSB623慢性期脳梗塞プログラムの臨床試験を進める予定です。このほか、SB623の適応疾患拡大として、すでに非臨床試験(In Vivo試験)で良好な結果が得られている網膜疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施していきます。さらに、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、非臨床試験(In Vivo試験)で適応可能性について検討していきます。 <用語解説> 番号用語意味・内容1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。5細胞治療薬健康成人骨髄液由来の間葉系間質細胞を加工・培養して作製されたヒト(他家)骨髄由来加工間葉系間質細胞です。脳内の損傷した神経組織に移植するとFGF-2(タンパク質の一種)が放出され、損傷した神経細胞が本来持つ再生能力を促し、神経細胞の増殖・分化を促進する効果が期待されています。細胞治療薬は、主に自家(じか)と他家(たか)に分けられますが、他家細胞治療薬は細胞提供者(ドナー)から採取した細胞を大量培養して治療薬を製造するため、量産化が可能で多くの患者さんへ治療薬を提供することができます。6細胞調製ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。8米国食品医薬品局(FDA)U.S. Food and Drug Administration。食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。9分注一定量で少量ずつに分けること。10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。14INDミーティングInvestigational New Drug Exemption。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。15先駆け審査指定制度2014年6月に厚生労働省における「世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を促進するための省内プロジェクトチーム」において発表された「先駆けパッケージ戦略」に基づき新たに設けられた制度であり、世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階で顕著な有効性が見込まれる革新的な医薬品について、優先審査をする制度。 番号用語意味・内容16RMATRegenerative Medicine Advanced Therapy。米国における21st Century Cures Act(21世紀治療法)のもとに設立され、アンメットメディカルニーズがある重篤な疾患に対する再生医療であり、臨床試験において一定の効果を示した治療法を対象として、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)より指定されるもの。17欧州医薬品庁(EMA)European Medicines Agency。EUにおいて医薬品認可制度が施行された1995年にロンドンに設置されたEUの機関であり、人間及び動物用医薬品の評価及び管理を行う。18先端医療医薬品(ATMP)Advanced Therapy Medicinal Product。遺伝子、組織、又は細胞に基づいたヒト用の薬であり、指定については EMA の先進療法委員会(Committee for Advanced Therapies:CAT)によって決定される。ATMPを用いた治療は、その病気や怪我の治療に対し画期的で新しい好機を提供する。19医薬品医療機器総合機構(PMDA)Pharmaceuticals and Medical Devices Agency。医薬品の副作用又は生物由来製品を介した感染等による健康被害の救済を図り、医薬品等の品質、有効性及び安全性の向上に資する審査等の業務を行う、厚生労働省所管の独立行政法人。
FY2025|12,319 文字|出典 docID: S100VNSW
3【事業の内容】(1)当社の事業領域当社グループ(以下、当社及びSanBio, Inc.(米国カリフォルニア州オークランド市)2社を指します。)は「再生医療の開発を通して、患者さんをはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、日米において細胞治療薬の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生医療事業を展開しています。当社グループでは、主に中枢神経系の疾患(眼科を含む)における、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しています。 ≪細胞治療薬とは≫当社グループが手掛ける細胞治療薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品です。 (2)事業の内容当社グループは、当社及びSanBio, Inc.(米国カリフォルニア州オークランド市)2社により構成されています。当社設立は2013年2月ですが、SanBio, Inc.は2001年2月の設立しており、一貫して細胞治療薬の研究開発を進めています。 大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっています。収入形態の内容は以下のとおりです。ライセンス許諾のタイミングは、ヒトでの安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しています。 ≪当社グループの収入形態≫ 収入形態内容A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。Bマイルストン収入開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。Dロイヤルティ収入製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。E製品供給収入製品供給の対価として得られる収入。 当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。※条件及び期限付き承認を取得したアクーゴⓇについては、自社での販売を想定しています。 (3)開発の状況① 当社グループが手掛ける細胞治療薬当社グループが開発を進める細胞治療薬はSB623(間葉系幹細胞、対象疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、対象疾患は末梢神経障害等)、SB308(骨格筋幹細胞、対象疾患は筋ジストロフィー等)、MSC1(間葉系幹細胞、対象疾患はがん疾患等)、MSC2(間葉系幹細胞、対象疾患は炎症性疾患等)の5種類です。当連結会計年度末時点での研究開発パイプラインの進捗状況を以下の表に示します。当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である細胞治療薬SB623(間葉系幹細胞)における各種対象疾患での開発を最優先に進める方針です。 ※1: 「外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善」を効能・効果とする※2: これまでの慢性期脳梗塞及び慢性期外傷性脳損傷の臨床試験で安全性が確認できているため、フェーズ2b臨床試験以降から開始※3: OcuMension(Hong Kong) Limited社との共同開発※4: D&P Bioinnovations, Inc社と食道再生インプラントの開発及び商業化に関する業務提携 ≪SB623の概要≫SB623は「脳の再生」を促す世界初の治療薬です。脳内の損傷した神経組織に移植することで、複数のタンパク質等が放出され、損傷した神経細胞が本来持つ再生能力を促し、神経細胞の増殖・分化を促進する効果が期待されています。また、基礎試験の結果から、神経細胞の保護作用、血管新生促進作用、免疫調整作用が報告されています。当社グループが開発を手掛ける細胞治療薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品です。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品承認取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した間葉系幹細胞が最終製品SB623です。SB623は慢性期外傷性脳損傷や慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能です。長期入院は不要で、投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能です。作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる)、(B)神経新生(神経細胞をつくる)、(C)血管新生(血管をつくる)、(D)抗炎症(炎症を抑える)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されています。特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが非臨床試験(In Vivo試験)において確認されています。 ② SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの開発状況外傷性脳損傷は、世界中の主な死因および障害の原因の一つです。2016年の世界の急性外傷性脳損傷の新規患者数は2,700万人(推定)、外傷性脳損傷に続発する慢性障害の患者数は5,550万人(推定)でした※1。外傷性脳損傷及び外傷性脳損傷に続発する長期に渡る運動機能障害は、患者さんの自立、雇用、およびQOLを著しく損ない、総じて各国の医療システムの大きな負担になっています。米国では、外傷性脳損傷で入院し生存した患者さんの約43%が長期の運動機能障害を経験しており※2、2,317万人が外傷性脳損傷に続発する運動機能障害を長期に抱えて生活していると推定されています※3。また、日本における外傷性脳損傷(TBI)の患者数は約6万人※4で、そのうち20%は後遺症を伴うと推定されています※5。損傷を受けた脳組織の自然回復は難しいと言われており、慢性期に入り運動麻痺が定着した患者さんは、日常生活や社会生活における影響を生涯に渡って抱えることとなり、未だ有効な治療法がないことから大きなアンメットメディカルニーズが存在していました。これまで、脳の機能を回復する治療薬は存在しておらず、慢性期の外傷性脳損傷の運動麻痺における治療薬は存在しませんでしたが、アクーゴ®脳内移植用注(以下、「アクーゴ®」)は慢性期の外傷性脳損傷(TBI)の運動麻痺において、有効性・安全性の点から規制当局に認可された、世界初の新たな治療選択肢です。 当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2aにおいてSB623の安全性が示唆されたことを受けて、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ2から開始しました。日米を含むグローバル試験(二重盲検、被験者61名)として実施したフェーズ2試験については、2018年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成」という良好な結果を得ました。本試験結果を踏まえて、2019年4月に厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象品目の指定を受け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議を重ね、2022年1月末日までに先駆け総合評価相談を完了し、2022年3月に厚生労働省に対して再生医療等製品製造販売承認申請(以下、「本申請」)を行いました。本申請については、2024年7月31日に厚生労働省より外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺を効能・効果として条件及び期限付き製造販売承認を取得し、SB623はアクーゴ®となりました。承認条件の一つである同等性/同質性を確認するために2回程度の市販品製造の適合を得ることを想定し製造を行い、本日までに1回の製造で、規格試験、特性解析にて全ての基準値を満たし、適合と判断されました。残り1回の適合を得るための製造は既に開始しており、これが適合である場合、その結果を用いて製造販売承認事項一部変更申請を行い、出荷解除のための承認取得を目指します。同時に、国内の製造・物流・販売体制の構築を着実に進めていきます。最大市場となる米国市場における今後については、日本でのアクーゴ®の実績を基に、米国規制当局と臨床試験の実施に向けて協議を再開しています。引き続き、米国での慢性期外傷性脳損傷の臨床試験の推進を行っていきます。なお、慢性期外傷性脳損傷を対象としたSB623については、「先駆け審査指定制度」の対象品目指定に加え、厚生労働省から「希少疾病用再生医療等製品」の指定を、米国食品医薬品局(FDA)からは、RMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)の指定を受けています。 <出典>※1: James SL, et al. “Global, regional, and national burden of traumatic brain injury and spinal cord injury, 1990- 2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016.” Lancet Neurol 2019;18:56-87.※2: Selassie AW, et al. “Incidence of long-term disability following traumatic brain injury hospitalization, U.S.”, 2003. J Head Trauma Rehabil 2008;23:123-31※3: Zaloshnja E, Miller T, Langlois JA, Selassie AW. Prevalence of long-term disability from traumatic brain injury in the civilian population of the United States, 2005. J Head Trauma Rehabil. 2008 Nov-Dec;23(6):394-400.※4: 厚生労働省患者調査 2020 「19損傷,中毒及びその他の外因の影響(頭蓋内損傷)」の患者数※5: 厚生労働省患者調査 2020 「T905頭蓋内損傷の続発・後遺症」の患者数 ③ SB623慢性期脳梗塞プログラムの開発状況脳梗塞は血栓が脳の血管に詰まるために引き起こされ、脳の神経細胞に十分な血液が供給されなくなる病気です。発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。 当社グループでは、2011年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験を米国にて実施し、この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、SB623が慢性期脳梗塞患者の運動機能を改善する可能性があること(有効性の示唆)が確認されました。本フェーズ1/2a臨床試験に続き、2015年12月には、米国でのフェーズ2b臨床試験(二重盲検、被験者163名)を開始し、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。しかし、2020年9月には、STR-02試験の追加解析として、梗塞巣サイズが一定量未満の患者77名(当試験組み入れ患者全体の47%)を対象に、複合FMMSエンドポイントを用いてSB623の投与から6カ月後における有効性を評価したところ、偽手術群26名のうち19%の改善に対し、SB623投与群51名のうち49%において改善が見られ、統計学的に有意な結果(P値=0.02)を得ました。本追加解析結果を踏まえて、慢性期脳梗塞における新たな臨床試験の実施に向けて、日米の規制当局との協議を進める予定です。 ④その他のパイプラインの開発状況≪SB623慢性期脳出血プログラム≫上記の慢性期外傷性脳損傷プログラムの良好な結果を受けて、外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血プログラムをパイプラインに追加しました。脳出血は、血管が詰まって引き起こされる脳梗塞に対して、血管が破れることで引き起こされる疾患であり、半身麻痺、感覚障害又は記憶障害等の症状が起こりますが、現状では根治治療は存在していないとされています。当社グループとしては、現在、本プログラムの臨床試験は、フェーズ2又はフェーズ3からの開始を見込んでおり、今後準備を進めていきます。 ≪SB623網膜疾患プログラム≫SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性です。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしています。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性です。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されています。網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針の中、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を対象疾患とした共同開発を行なう契約を締結しました。現在、Ocumension(Hong Kong)Limitedとの共同開発の枠組みの中で非臨床試験を開始し、臨床試験開始に向けたデータの取得を進めています。なお、中華圏以外の開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB623その他の疾患への展開≫パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施します。アルツハイマー病等その他の疾患については非臨床試験(In Vivo試験)において適応可能性について検討していきます。その他の用途においても、初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB618≫細胞治療薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用が期待される治療薬ですが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞です。SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養します。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えています。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷を対象とした非臨床試験(In Vivo試験)で効果が示唆されており、今後、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めていきます。 ≪SB308≫細胞治療薬SB308は骨髄由来の骨格筋幹細胞です。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気です。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの非臨床試験(In Vivo試験)で、その応用可能性が示唆されています。 ≪MSC1・MSC2≫2018年9月にMSC1、MSC2という間葉系幹細胞由来の細胞治療薬に関する特許ポートフォリオを他社から取得しました。間葉系幹細胞の細胞膜上に存在する特定のToll様受容体を刺激することで、間葉系幹細胞の特徴である安全性及び忍容性を維持したまま抗炎症機能を増強する技術及び炎症機能を増強する技術です。炎症機能を高めたMSC1は、通常の間葉系幹細胞が腫瘍の成長に促進的に働くのに対し、腫瘍の成長を減衰させることが非臨床試験で確認されており、がん治療薬としての開発が期待できます。高い抗炎症作用を有するMSC2は、視神経炎、多発性硬化症やクラッベ病といった脱髄疾患、糖尿病性神経障害、関節リウマチ、クローン病等の炎症性疾患に対する治療薬としての開発が期待されており、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏における視神経炎を適応疾患とした細胞薬の開発及び販売権の取り決めをしました。 ⑤ パートナー製薬会社との契約の締結状況当社グループは、2020年3月にOcumension(Hong Kong)Limitedと眼科領域における細胞治療薬の研究・開発・商業化を目的として、SB623及びMSC2に関して、業務提携契約を締結しました。また、2021年11月にはD&P BioinnovationsとMSC2細胞を利用した食道再生インプラントの開発及び商業化に関する業務提携契約を締結しました。それぞれの契約において、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされています。今後も、当社グループの保有するパイプラインにおける開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携のみならず、自社販売の可能性も含め検討していきます。 (4)事業の特徴① 収益性の確保に向けた取り組みa. 他家移植であること一般に再生医療は、自家移植と他家移植に分けられます。自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法です。この場合、細胞調製に手間がかかる等、実用化に当たっての課題が存在しています。一方、当社グループが開発を進める細胞治療薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっています。 b. 量産化技術が確立されていることドナーの骨髄液を培養して、均質な製品を大量に製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されています。なお、当社グループが開発を進める細胞治療薬は、もともと体内に存在する骨髄液由来の間葉系幹細胞を細胞源としているため、安全性に優れており、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクも低いと認識しています。また、倫理的な点が懸念されるES細胞由来又は中絶胎児由来の細胞に対して、健常者の骨髄液由来のSB623は、臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えています。 c. 製品供給権が確保されていること他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。一方、当社グループの細胞治療薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品です。そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することができます。 ② 対象となる患者数の多さ当社グループが手掛ける細胞治療薬は、従来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、米国における外傷性脳損傷の患者数は約550万人、脳梗塞は約685万人と推計しています。外傷性脳損傷及び脳梗塞のほか、脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、細胞治療薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えています。 ③ 販売に必要な知的財産を自己保有当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、細胞治療薬の事業化に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている細胞治療薬(SB623、SB618、SB308、MSC1、MSC2)の特許は基本的に全て自社で保有しています。2015年3月3日に当社グループの細胞治療薬SB623に関する物質特許が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬「SB623」及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しています。また、2024年秋にはSB623を用いた慢性期脳梗塞の細胞治療に関する米国での新規特許を取得し、最大市場である米国におけるSB623の用途特許の期間を大幅に延長することができました。今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めていきます。特許取得地域については、開発を進捗させている日本及び米国に加え、今後、開発を進める予定の欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における製品販売に向けた基盤の整備を進めています。 ≪SB623関連の特許取得地域≫米国、日本、イギリス、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、他 (5)今後の展開アクーゴ®の製造販売承認事項一部変更承認取得を行い、出荷解除を目指すとともに、製造・物流・販売体制の構築を着実に進めていきます。また、「日本発の再生医療を世界へ」という創業時から変わらぬビジョンに原点回帰し、グローバル事業を再び進めていきます。最大市場となる米国を中心に据え、日本でのアクーゴ®の実績を基に、慢性期外傷性脳損傷については、米国規制当局と臨床試験の協議を再開しています。また、慢性期脳梗塞における新たな臨床試験の実施に向けても、日米の規制当局との協議を進める予定です。このほか、SB623の適応疾患拡大として、すでに非臨床試験(In Vivo試験)で良好な結果が得られている網膜疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施していきます。さらに、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、非臨床試験(In Vivo試験)で適応可能性について検討していきます。 <用語解説> 番号用語意味・内容1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。5細胞治療薬健康成人骨髄液由来の間葉系間質細胞を加工・培養して作製されたヒト(他家)骨髄由来加工間葉系幹細胞です。脳内の損傷した神経組織に移植するとFGF-2(タンパク質の一種)が放出され、損傷した神経細胞が本来持つ再生能力を促し、神経細胞の増殖・分化を促進する効果が期待されています。細胞治療薬は、主に自家(じか)と他家(たか)に分けられますが、他家細胞治療薬は細胞提供者(ドナー)から採取した細胞を大量培養して治療薬を製造するため、量産化が可能で多くの患者さんへ治療薬を提供することができます。6細胞調製ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。8米国食品医薬品局(FDA)U.S. Food and Drug Administration。食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。9分注一定量で少量ずつに分けること。10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。14INDミーティングInvestigational New Drug Exemption。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。15先駆け審査指定制度2014年6月に厚生労働省における「世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を促進するための省内プロジェクトチーム」において発表された「先駆けパッケージ戦略」に基づき新たに設けられた制度であり、世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階で顕著な有効性が見込まれる革新的な医薬品について、優先審査をする制度。 番号用語意味・内容16RMATRegenerative Medicine Advanced Therapy。米国における21st Century Cures Act(21世紀治療法)のもとに設立され、アンメットメディカルニーズがある重篤な疾患に対する再生医療であり、臨床試験において一定の効果を示した治療法を対象として、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)より指定されるもの。17欧州医薬品庁(EMA)European Medicines Agency。EUにおいて医薬品認可制度が施行された1995年にロンドンに設置されたEUの機関であり、人間及び動物用医薬品の評価及び管理を行う。18先端医療医薬品(ATMP)Advanced Therapy Medicinal Product。遺伝子、組織、又は細胞に基づいたヒト用の薬であり、指定については EMA の先進療法委員会(Committee for Advanced Therapies:CAT)によって決定される。ATMPを用いた治療は、その病気や怪我の治療に対し画期的で新しい好機を提供する。19医薬品医療機器総合機構(PMDA)Pharmaceuticals and Medical Devices Agency。医薬品の副作用又は生物由来製品を介した感染等による健康被害の救済を図り、医薬品等の品質、有効性及び安全性の向上に資する審査等の業務を行う、厚生労働省所管の独立行政法人。
FY2024|10,751 文字|出典 docID: S100TBLH
3【事業の内容】(1)当社の事業領域当社グループ(以下、当社及びSanBio, Inc.(米国カリフォルニア州オークランド市)2社を指します。)は「再生医療の開発を通して、患者さんをはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、日米において再生細胞医薬品の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生細胞事業を展開しています。当社グループでは、主に中枢神経系の疾患(眼科を含む)における、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しています。 ≪再生細胞薬とは≫当社グループが手掛ける再生細胞薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品です。 (2)事業の内容当社グループは、当社及びSanBio, Inc.(米国カリフォルニア州オークランド市)2社により構成されています。当社設立は2013年2月ですが、SanBio, Inc.は2001年2月の設立しており、一貫して再生細胞薬の研究開発を進めています。 大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっています。収入形態の内容は以下のとおりです。ライセンス許諾のタイミングは、ヒトでの安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しています。なお、国内で進めているSB623慢性期外傷性脳損傷プログラムについては、自社での販売を目指しています。 ≪当社グループの収入形態≫ 収入形態内容A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。Bマイルストン収入開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。Dロイヤルティ収入製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。E製品供給収入製品供給の対価として得られる収入。 当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。 (3)開発の状況①当社グループが手掛ける再生細胞薬当社グループが開発を進める再生細胞薬はSB623(神経再生細胞、対象疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、対象疾患は末梢神経障害等)、SB308(筋肉幹細胞、対象疾患は筋ジストロフィー等)、MSC1(間葉系幹細胞、対象疾患はがん疾患等)、MSC2(間葉系幹細胞、対象疾患は炎症性疾患等)の5種類です。当連結会計年度末時点での研究開発パイプラインの進捗状況を以下の表に示します。当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である再生細胞薬SB623(神経再生細胞)における各種対象疾患での開発を最優先に進める方針です。 ≪SB623の概要≫SB623は神経機能を再生する作用が期待される治療薬です。体の自然な再生プロセスを促進させ、失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生をターゲットとしています。当社グループが開発を手掛ける再生細胞薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品です。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品承認取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した神経再生細胞が最終製品SB623です。SB623は慢性期外傷性脳損傷や慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能です。長期入院も不要で、臨床試験では、投与翌日には退院している被験者もいます。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能です。作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる)、(B)神経新生(神経細胞をつくる)、(C)血管新生(血管をつくる)、(D)抗炎症(炎症を抑える)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されています。特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが非臨床試験(In Vivo試験)において確認されています。 ②SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの開発状況外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり、脳が傷つくことによって起こる疾患です。脳の損傷によって、半身の麻痺や感覚障害・記憶障害等の高次脳機能障害症状が起こります。外傷性脳損傷ではリハビリ等による改善を期待できる期間は損傷後1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされています。当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2aにおいてSB623の安全性が示唆されたことを受けて、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ2から開始しました。日米を含むグローバル試験(二重盲検、被験者61名)として実施したフェーズ2試験については、2018年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成」という良好な結果を得ました。本試験結果を踏まえて、2019年4月に厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象品目の指定を受け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議を重ね、2022年1月末日までに先駆け総合評価相談を完了し、2022年3月に外傷性脳損傷後の運動機能障害の改善を効能、効果として、厚生労働省に対して再生医療等製品製造販売承認申請(以下、「本申請」という。)を行いました。本申請については、2024年3月25日開催の薬事食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会において、審議されました。審議の結果、臨床に関する論点については、臨床現場に提供する意義はあると評価されたため、承認取得に向けては品質に関する論点に絞られたものと認識しています。今後は、当局と協議し、品質に関する追加のデータ等を提出します。慢性期外傷性脳損傷を対象としたSB623については、「先駆け審査指定制度」の対象品目指定に加え、厚生労働省から「希少疾病用再生医療等製品」の指定を、米国食品医薬品局(FDA)からは、RMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)の指定を受けています。 ③SB623慢性期脳梗塞プログラムの開発状況脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして(脳出血)、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう疾患です。発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。 当社グループでは、2011年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験を米国にて実施し、この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、SB623が慢性期脳梗塞患者の運動機能を改善する可能性があること(有効性の示唆)が確認されました。 本フェーズ1/2a臨床試験に続き、2015年12月には、米国でのフェーズ2b臨床試験(二重盲検、被験者163名)を開始し、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。しかし、2020年9月には、STR-02試験の追加解析として、梗塞巣サイズが一定量未満の患者77名(当試験組み入れ患者全体の47%)を対象に、複合FMMSエンドポイントを用いてSB623の投与から6カ月後における有効性を評価したところ、偽手術群26名のうち19%の改善に対し、SB623投与群51名のうち49%において改善が見られ、統計学的に有意な結果(P値=0.02)を得ました。本追加解析結果を踏まえた臨床試験デザインの検討等、次の臨床試験の開始に向けた取り組みを、国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの承認取得後速やかに進めていきます。 ④その他のパイプラインの開発状況≪SB623慢性期脳出血プログラム≫上記の慢性期外傷性脳損傷プログラムの良好な結果を受けて、外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血プログラムをパイプラインに追加しました。脳出血は、血管が詰まって引き起こされる脳梗塞に対して、血管が破れることで引き起こされる疾患であり、半身麻痺、感覚障害又は記憶障害等の症状が起こりますが、現状では根治治療は存在していないとされています。当社グループとしては、現在、本プログラムの臨床試験は、フェーズ2又はフェーズ3からの開始を見込んでおり、国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムの承認取得後速やかに準備を進めていきます。 ≪SB623網膜疾患プログラム≫SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性です。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしています。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性です。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されています。網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針の中、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む)における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を対象疾患とした共同開発を行なう契約を締結しました。現在、Ocumension(Hong Kong)Limitedとの共同開発の枠組みの中で非臨床試験を開始し、臨床試験開始に向けたデータの取得を進めています。なお、中華圏以外の開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB623その他の疾患への展開≫パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施します。アルツハイマー病等その他の疾患については非臨床試験(In Vivo試験)において適応可能性について検討していきます。その他の用途においても、初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB618≫再生細胞薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用が期待される治療薬ですが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞です。SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養します。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えています。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷を対象とした非臨床試験(In Vivo試験)で効果が示唆されており、今後、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めていきます。 ≪SB308≫再生細胞薬SB308は骨髄由来の筋肉幹細胞です。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気です。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの非臨床試験(In Vivo試験)で、その応用可能性が示唆されています。 ≪MSC1・MSC2≫2018年9月にMSC1、MSC2という間葉系幹細胞由来の細胞治療薬に関する特許ポートフォリオを他社から取得しました。間葉系幹細胞の細胞膜上に存在する特定のToll様受容体を刺激することで、間葉系幹細胞の特徴である安全性及び忍容性を維持したまま抗炎症機能を増強する技術及び炎症機能を増強する技術です。炎症機能を高めたMSC1は、通常の間葉系幹細胞が腫瘍の成長に促進的に働くのに対し、腫瘍の成長を減衰させることが非臨床試験で確認されており、がん治療薬としての開発が期待できます。高い抗炎症作用を有するMSC2は、視神経炎、多発性硬化症やクラッベ病といった脱髄疾患、糖尿病性神経障害、関節リウマチ、クローン病等の炎症性疾患に対する治療薬としての開発が期待されており、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む)における視神経炎を適応疾患とした細胞薬の開発及び販売権の取り決めをしました。 ⑤パートナー製薬会社との契約の締結状況当社グループは、2020年3月にOcumension(Hong Kong)Limitedと眼科領域における再生細胞薬の研究・開発・商業化を目的として、SB623及びMSC2に関して、業務提携契約を締結しました。また、2021年11月にはD&P BioinnovationsとMSC2細胞を利用した食道再生インプラントの開発及び商業化に関する業務提携契約を締結しました。それぞれの契約において、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされています。今後も、当社グループの保有するパイプラインにおける開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携のみならず、自社販売の可能性も含め検討していきます。 (4)事業の特徴①収益性の確保に向けた取り組みイ.他家移植であること一般に再生医療は、自家移植と他家移植に分けられます。自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法です。この場合、細胞調製に手間がかかる、費用が高額化する等、実用化に当たっての課題が存在しています。一方、当社グループが開発を進める再生細胞薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっています。 ロ.量産化技術が確立されていることドナーの骨髄液を培養して、均質な製品を大量に製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されています。なお、当社グループが開発を進める再生細胞薬は、もともと体内に存在する骨髄液由来の間葉系幹細胞を細胞源としているため、安全性に優れており、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクも低いと認識しています。また、倫理的な点が懸念されるES細胞由来又は中絶胎児由来の細胞に対して、健常者の骨髄液由来のSB623は、臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えています。 ハ.製品供給権が確保されていること他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。一方、当社グループの再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品となっています。そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することができます。 ②対象となる患者数の多さ当社グループが手掛ける再生細胞薬は、従来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、米国における外傷性脳損傷の患者数は約550万人、脳梗塞は約685万人と推計しています。外傷性脳損傷及び脳梗塞のほか、脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、再生細胞薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えています。 ③販売に必要な知的財産を自己保有当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の事業化に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308、MSC1、MSC2)の特許は基本的に全て自社で保有しています。2015年3月3日に当社グループの再生細胞薬SB623に関する物質特許が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬「SB623」及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しており、今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めています。特許取得地域については、開発を進捗させている日本及び米国に加え、今後、開発を進める予定の欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における製品販売に向けた基盤の整備を進めています。 ≪SB623関連の特許取得地域≫米国、日本、イギリス、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、他 (5)今後の展開国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムについては、2024年3月25日開催の薬事食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会における審議結果を踏まえて、製造販売承認の早期取得に向けて、当局と協議し、品質に関する追加のデータ等を提出します。また、承認後のSB623の国内普及に向けた製造・物流・販売体制の構築も並行して推進していきます。その後、脳梗塞プログラムと脳出血プログラムの国内における臨床試験の開始に向けた取り組みを進めていきます。両プログラムの具体的な臨床試験デザインや開発内容については、確定次第速やかに公表する予定です。SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムのグローバル展開についても、他社との提携等のオプションを含め、臨床試験の開始に向けた準備を進めていきます。このほか、SB623の適応疾患拡大として、すでに非臨床試験(In Vivo試験)で良好な結果が得られている網膜疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施していきます。さらに、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、非臨床試験(In Vivo試験)で適応可能性について検討していきます。 <用語解説> 番号用語意味・内容1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。5再生細胞薬病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある。6細胞調製ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。8米国食品医薬品局(FDA)U.S. Food and Drug Administration。食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。9分注一定量で少量ずつに分けること。10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。14INDミーティングInvestigational New Drug Exemption。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。15先駆け審査指定制度2014年6月に厚生労働省における「世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を促進するための省内プロジェクトチーム」において発表された「先駆けパッケージ戦略」に基づき新たに設けられた制度であり、世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階で顕著な有効性が見込まれる革新的な医薬品について、優先審査をする制度。 番号用語意味・内容16RMATRegenerative Medicine Advanced Therapy。米国における21st Century Cures Act(21世紀治療法)のもとに設立され、アンメットメディカルニーズがある重篤な疾患に対する再生医療であり、臨床試験において一定の効果を示した治療法を対象として、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)より指定されるもの。17欧州医薬品庁(EMA)European Medicines Agency。EUにおいて医薬品認可制度が施行された1995年にロンドンに設置されたEUの機関であり、人間及び動物用医薬品の評価及び管理を行う。18先端医療医薬品(ATMP)Advanced Therapy Medicinal Product。遺伝子、組織、又は細胞に基づいたヒト用の薬であり、指定については EMA の先進療法委員会(Committee for Advanced Therapies:CAT)によって決定される。ATMPを用いた治療は、その病気や怪我の治療に対し画期的で新しい好機を提供する。19医薬品医療機器総合機構(PMDA)Pharmaceuticals and Medical Devices Agency。医薬品の副作用又は生物由来製品を介した感染等による健康被害の救済を図り、医薬品等の品質、有効性及び安全性の向上に資する審査等の業務を行う、厚生労働省所管の独立行政法人。
FY2023|10,572 文字|出典 docID: S100QNMK
3【事業の内容】(1)当社の事業領域当社グループ(以下、当社、SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)及びSanBio Asia Pte. Ltd.(シンガポール)の3社を指します。)は「再生医療の開発を通して、患者さんをはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、東京を本社とし、SanBio, Inc.のある米国に研究開発の主たる拠点を構え、日米亜において再生細胞医薬品の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生細胞事業を展開しています。当社グループでは、主に中枢神経系の疾患(眼科を含む。)における、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しています。 ≪再生細胞薬とは≫当社グループが手掛ける再生細胞薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品です。 (2)事業の内容当社グループは、当社、SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)及びSanBio Asia Pte. Ltd.(シンガポール)の3社により構成されています。当社設立は2013年2月ですが、SanBio, Inc.は2001年2月の設立以降、一貫して再生細胞薬の研究開発を進めています。 大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっています。収入形態の内容は以下のとおりです。ライセンス許諾のタイミングは、ヒトでの安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しています。なお、国内で進めているSB623慢性期外傷性脳損傷プログラムについては、自社での販売を目指しています。 ≪当社グループの収入形態≫ 収入形態内容A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。Bマイルストン収入開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。Dロイヤルティ収入製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。E製品供給収入製品供給の対価として得られる収入。 当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。 (3)開発の状況① 当社グループが手掛ける再生細胞薬当社グループが開発を進める再生細胞薬はSB623(神経再生細胞、対象疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、対象疾患は末梢神経障害等)、SB308(筋肉幹細胞、対象疾患は筋ジストロフィー等)、MSC1(間葉系幹細胞、対象疾患はがん疾患等)、MSC2(間葉系幹細胞、対象疾患は炎症性疾患等)の5種類です。当連結会計年度末時点での研究開発パイプラインの進捗状況を以下の表に示します。当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である再生細胞薬SB623(神経再生細胞)における各種対象疾患での開発を最優先に進める方針です。 ≪SB623の概要≫SB623は神経機能を再生する作用が期待される治療薬です。体の自然な再生プロセスを促進させ、失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生をターゲットとしています。当社グループが開発を手掛ける再生細胞薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品です。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品承認取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した神経再生細胞が最終製品SB623です。SB623は慢性期外傷性脳損傷や慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能です。長期入院も不要で、臨床試験では、投与翌日には退院している被験者もいます。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能です。作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる。)、(B)神経新生(神経細胞をつくる。)、(C)血管新生(血管をつくる。)、(D)抗炎症(炎症を抑える。)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する。)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されています。特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが非臨床試験(In Vivo試験)において確認されています。 ② SB623 慢性期外傷性脳損傷プログラムの開発状況外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり、脳が傷つくことによって起こる疾患です。脳の損傷によって、半身の麻痺や感覚障害・記憶障害等の高次脳機能障害症状が起こります。外傷性脳損傷ではリハビリ等による改善を期待できる期間は損傷後1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされています。当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2aにおいてSB623の安全性が示唆されたことを受けて、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ2から開始しました。日米を含むグローバル試験(二重盲検、被験者61名)として実施したフェーズ2試験については、2018年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。本試験結果を踏まえて、2019年4月に厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象品目の指定を受け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議を重ね、2022年1月末日までに先駆け総合評価相談を完了し、2022年3月に外傷性脳損傷後の運動機能障害の改善を効能、効果として、厚生労働省に対して再生医療等製品製造販売承認申請を行いました。慢性期外傷性脳損傷を対象としたSB623については、「先駆け審査指定制度」の対象品目指定に加え、厚生労働省から「希少疾病用再生医療等製品」の指定を、米国食品医薬品局(FDA)からは、RMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)の指定を受けています。 ③ SB623 慢性期脳梗塞プログラムの開発状況脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして(脳出血)、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう疾患です。発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。 当社グループでは、2011年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験を米国にて実施し、この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、SB623が慢性期脳梗塞患者の運動機能を改善する可能性があること(有効性の示唆)が確認されました。 本フェーズ1/2a臨床試験に続き、2015年12月には、米国でのフェーズ2b臨床試験(二重盲検、被験者163名)を開始し、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。しかし、2020年9月には、STR-02試験の追加解析として、梗塞巣サイズが一定量未満の患者77名(当試験組み入れ患者全体の47%)を対象に、複合FMMSエンドポイントを用いてSB623の投与から6カ月後における有効性を評価したところ、偽手術群26名のうち19%の改善に対し、SB623投与群51名のうち49%において改善が見られ、統計学的に有意な結果(P値=0.02)を得ました。本追加解析結果を踏まえた臨床試験デザインの検討等、次の臨床試験の開始に向けた取り組みを進めていきます。 ④ その他のパイプラインの開発状況≪SB623 慢性期脳出血プログラム≫上記の慢性期外傷性脳損傷プログラムの良好な結果を受けて、外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血プログラムをパイプラインに追加しました。脳出血は、血管が詰まって引き起こされる脳梗塞に対して、血管が破れることで引き起こされる疾患であり、半身麻痺、感覚障害又は記憶障害等の症状が起こりますが、現状では根治治療は存在していないとされています。当社グループとしては、現在、本プログラムの臨床試験は、フェーズ2又はフェーズ3からの開始を見込んで準備を進めています。 ≪SB623 網膜疾患プログラム≫SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性です。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしています。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性です。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されています。網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針の中、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む。)における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を対象疾患とした共同開発を行なう契約を締結しました。現在、Ocumension(Hong Kong)Limitedとの共同開発の枠組みの中で非臨床試験を開始し、臨床試験開始に向けたデータの取得を進めています。なお、中華圏以外の開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB623 その他の疾患への展開≫パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施します。アルツハイマー病等その他の疾患については非臨床試験(In Vivo試験)において適応可能性について検討していきます。その他の用途においても、初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB618≫再生細胞薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用が期待される治療薬ですが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞です。SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養します。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えています。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷を対象とした非臨床試験(In Vivo試験)で効果が示唆されており、今後、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めていきます。 ≪SB308≫再生細胞薬SB308は骨髄由来の筋肉幹細胞です。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気です。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの非臨床試験(In Vivo試験)で、その応用可能性が示唆されています。 ≪MSC1・MSC2≫2018年9月にMSC1、MSC2という間葉系幹細胞由来の細胞治療薬に関する特許ポートフォリオを他社から取得しました。間葉系幹細胞の細胞膜上に存在する特定のToll様受容体を刺激することで、間葉系幹細胞の特徴である安全性及び忍容性を維持したまま抗炎症機能を増強する技術及び炎症機能を増強する技術です。炎症機能を高めたMSC1は、通常の間葉系幹細胞が腫瘍の成長に促進的に働くのに対し、腫瘍の成長を減衰させることが非臨床試験で確認されており、がん治療薬としての開発が期待できます。高い抗炎症作用を有するMSC2は、視神経炎、多発性硬化症やクラッベ病といった脱髄疾患、糖尿病性神経障害、関節リウマチ、クローン病等の炎症性疾患に対する治療薬としての開発が期待されており、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む。)における視神経炎を適応疾患とした細胞薬の開発及び販売権の取り決めをしました。 ⑤ パートナー製薬会社との契約の締結状況当社グループは、2020年3月にOcumension(Hong Kong)Limitedと眼科領域における再生細胞薬の研究・開発・商業化を目的として、SB623及びMSC2に関して、業務提携契約を締結しました。また、2021年11月にはD&P BioinnovationsとMSC2細胞を利用した食道再生インプラントの開発及び商業化に関する業務提携契約を締結しました。それぞれの契約において、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされています。今後も、当社グループの保有するパイプラインにおける開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携のみならず、自社販売の可能性も含め検討していきます。 (4)事業の特徴① 収益性の確保に向けた取り組み(ⅰ)他家移植であること一般に再生医療は、自家移植と他家移植に分けられます。自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法です。この場合、細胞調製に手間がかかる、費用が高額化する等、実用化に当たっての課題が存在しています。一方、当社グループが開発を進める再生細胞薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっています。 (ⅱ)量産化技術が確立されていることドナーの骨髄液を培養して、均質な製品を大量に製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されています。なお、当社グループが開発を進める再生細胞薬は、もともと体内に存在する骨髄液由来の間葉系幹細胞を細胞源としているため、安全性に優れており、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクも低いと認識しています。また、倫理的な点が懸念されるES細胞由来又は中絶胎児由来の細胞に対して、健常者の骨髄液由来のSB623は、臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えています。 (ⅲ)製品供給権が確保されていること他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。一方、当社グループの再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品となっています。そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することができます。 ② 対象となる患者数の多さ当社グループが手掛ける再生細胞薬は、従来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、米国における外傷性脳損傷の患者数は約550万人、脳梗塞は約685万人と推計しています。外傷性脳損傷及び脳梗塞のほか、脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、再生細胞薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えています。 ③ 販売に必要な知的財産を自己保有当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の事業化に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308、MSC1、MSC2)の特許は基本的に全て自社で保有しています。2015年3月3日に当社グループの再生細胞薬SB623に関する物質特許が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬「SB623」及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しており、今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めています。特許取得地域については、開発を進捗させている日本及び米国に加え、今後、開発を進める予定の欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における製品販売に向けた基盤の整備を進めています。 ≪SB623関連の特許取得地域≫米国、日本、イギリス、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、他 (5)今後の展開国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムについては、製造販売承認の早期取得に向けて、当局による審査に迅速に対応していきます。また、承認後のSB623の国内普及に向けた製造・物流・販売体制の構築も並行して推進していきます。その後、脳梗塞プログラムと脳出血プログラムの国内における臨床試験の開始に向けた取り組みを進めていきます。両プログラムの具体的な臨床試験デザインや開発内容については、確定次第速やかに公表する予定です。SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムのグローバル展開についても、他社との提携等のオプションを含め、臨床試験の開始に向けた準備を進めていきます。このほか、SB623の適応疾患拡大として、すでに非臨床試験(In Vivo試験)で良好な結果が得られている網膜疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施していきます。さらに、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、非臨床試験(In Vivo試験)で適応可能性について検討していきます。 <用語解説> 番号用語意味・内容1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。5再生細胞薬病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある。6細胞調製ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。8米国食品医薬品局(FDA)U.S. Food and Drug Administration。食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。9分注一定量で少量ずつに分けること。10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。14INDミーティングInvestigational New Drug Exemption。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。15先駆け審査指定制度2014年6月に厚生労働省における「世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を促進するための省内プロジェクトチーム」において発表された「先駆けパッケージ戦略」に基づき新たに設けられた制度であり、世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階で顕著な有効性が見込まれる革新的な医薬品について、優先審査をする制度。 番号用語意味・内容16RMATRegenerative Medicine Advanced Therapy。米国における21st Century Cures Act(21世紀治療法)のもとに設立され、アンメットメディカルニーズがある重篤な疾患に対する再生医療であり、臨床試験において一定の効果を示した治療法を対象として、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)より指定されるもの。17欧州医薬品庁(EMA)European Medicines Agency。EUにおいて医薬品認可制度が施行された1995年にロンドンに設置されたEUの機関であり、人間及び動物用医薬品の評価及び管理を行う。18先端医療医薬品(ATMP)Advanced Therapy Medicinal Product。遺伝子、組織、又は細胞に基づいたヒト用の薬であり、指定については EMA の先進療法委員会(Committee for Advanced Therapies:CAT)によって決定される。ATMPを用いた治療は、その病気や怪我の治療に対し画期的で新しい好機を提供する。19医薬品医療機器総合機構(PMDA)Pharmaceuticals and Medical Devices Agency。医薬品の副作用又は生物由来製品を介した感染等による健康被害の救済を図り、医薬品等の品質、有効性及び安全性の向上に資する審査等の業務を行う、厚生労働省所管の独立行政法人。
FY2022|10,559 文字|出典 docID: S100NYCJ
3【事業の内容】(1)当社の事業領域当社グループ(以下、当社、SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)及びSanBio Asia Pte. Ltd.(シンガポール)の3社を指します。)は「再生医療の開発を通して、患者さんをはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、東京を本社とし、SanBio, Inc.のある米国に研究開発の主たる拠点を構え、日米亜において再生細胞医薬品の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生細胞事業を展開しています。当社グループでは、主に中枢神経系の疾患(眼科を含む。)における、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しています。 ≪再生細胞薬とは≫当社グループが手掛ける再生細胞薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品です。 (2)事業の内容当社グループは、当社、SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)及びSanBio Asia Pte. Ltd.(シンガポール)の3社により構成されています。当社設立は2013年2月ですが、SanBio, Inc.は2001年2月の設立以降、一貫して再生細胞薬の研究開発を進めています。 大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっています。収入形態の内容は以下のとおりです。ライセンス許諾のタイミングは、ヒトでの安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しています。なお、国内で進めているSB623慢性期外傷性脳損傷プログラムについては、自社での販売を目指しています。 ≪当社グループの収入形態≫ 収入形態内容A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。Bマイルストン収入開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。Dロイヤルティ収入製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。E製品供給収入製品供給の対価として得られる収入。 当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。 (3)開発の状況① 当社グループが手掛ける再生細胞薬当社グループが開発を進める再生細胞薬はSB623(神経再生細胞、対象疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、対象疾患は末梢神経障害等)、SB308(筋肉幹細胞、対象疾患は筋ジストロフィー等)、MSC1(間葉系幹細胞、対象疾患はがん疾患等)、MSC2(間葉系幹細胞、対象疾患は炎症性疾患等)の5種類です。当連結会計年度末時点での研究開発パイプラインの進捗状況を以下の表に示します。当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である再生細胞薬SB623(神経再生細胞)における各種対象疾患での開発を最優先に進める方針です。 ≪SB623の概要≫SB623は神経機能を再生する作用が期待される治療薬です。体の自然な再生プロセスを促進させ、失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生をターゲットとしています。当社グループが開発を手掛ける再生細胞薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品です。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品承認取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した神経再生細胞が最終製品SB623です。SB623は慢性期外傷性脳損傷や慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能です。長期入院も不要で、臨床試験では、投与翌日には退院している被験者もいます。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能です。作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる。)、(B)神経新生(神経細胞をつくる。)、(C)血管新生(血管をつくる。)、(D)抗炎症(炎症を抑える。)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する。)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されています。特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが非臨床試験(In Vivo試験)において確認されています。 ② SB623 慢性期外傷性脳損傷プログラムの開発状況外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり、脳が傷つくことによって起こる疾患です。脳の損傷によって、半身の麻痺や感覚障害・記憶障害等の高次脳機能障害症状が起こります。外傷性脳損傷ではリハビリ等による改善を期待できる期間は損傷後1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされています。当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2aにおいてSB623の安全性が示唆されたことを受けて、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ2から開始しました。日米を含むグローバル試験(二重盲検、被験者61名)として実施したフェーズ2試験については、2018年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。本試験結果を踏まえて、2019年4月に厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象品目の指定を受け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議を重ね、2022年1月末日までに先駆け総合評価相談を完了し、2022年3月に外傷性脳損傷後の運動機能障害の改善を効能、効果として、厚生労働省に対して再生医療等製品製造販売承認申請を行いました。慢性期外傷性脳損傷を対象としたSB623については、「先駆け審査指定制度」の対象品目指定に加え、厚生労働省から「希少疾病用再生医療等製品」の指定を、米国食品医薬品局(FDA)からは、RMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)の指定を受けています。 ③ SB623 慢性期脳梗塞プログラムの開発状況脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして(脳出血)、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう疾患です。発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。 当社グループでは、2011年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験を米国にて実施し、この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、SB623が慢性期脳梗塞患者の運動機能を改善する可能性があること(有効性の示唆)が確認されました。 本フェーズ1/2a臨床試験に続き、2015年12月には、米国でのフェーズ2b臨床試験(二重盲検、被験者163名)を開始し、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。しかし、2020年9月には、STR-02試験の追加解析として、梗塞巣サイズが一定量未満の患者77名(当試験組み入れ患者全体の47%)を対象に、複合FMMSエンドポイントを用いてSB623の投与から6カ月後における有効性を評価したところ、偽手術群26名のうち19%の改善に対し、SB623投与群51名のうち49%において改善が見られ、統計学的に有意な結果(P値=0.02)を得ました。本追加解析結果を踏まえた臨床試験デザインの検討等、次の臨床試験の開始に向けた取り組みを進めていきます。 ④ その他のパイプラインの開発状況≪SB623 慢性期脳出血プログラム≫上記の慢性期外傷性脳損傷プログラムの良好な結果を受けて、外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血プログラムをパイプラインに追加しました。脳出血は、血管が詰まって引き起こされる脳梗塞に対して、血管が破れることで引き起こされる疾患であり、半身麻痺、感覚障害又は記憶障害等の症状が起こりますが、現状では根治治療は存在していないとされています。当社グループとしては、現在、本プログラムの臨床試験は、フェーズ2またはフェーズ3からの開始を見込んで準備を進めています。 ≪SB623 網膜疾患プログラム≫SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性です。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしています。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性です。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されています。網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針の中、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む。)における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を対象疾患とした共同開発を行なう契約を締結しました。現在、Ocumension(Hong Kong)Limitedとの共同開発の枠組みの中で非臨床試験を開始し、臨床試験開始に向けたデータの取得を進めています。なお、中華圏以外の開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB623 その他の疾患への展開≫パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施します。アルツハイマー病等その他の疾患については非臨床試験(In Vivo試験)において適応可能性について検討していきます。その他の用途においても、初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB618≫再生細胞薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用が期待される治療薬ですが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞です。SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養します。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えています。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷を対象とした非臨床試験(In Vivo試験)で効果が示唆されており、今後、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めていきます。 ≪SB308≫再生細胞薬SB308は骨髄由来の筋肉幹細胞です。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気です。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの非臨床試験(In Vivo試験)で、その応用可能性が示唆されています。 ≪MSC1・MSC2≫2018年9月にMSC1、MSC2という間葉系幹細胞由来の細胞治療薬に関する特許ポートフォリオを他社から取得しました。間葉系幹細胞の細胞膜上に存在する特定のToll様受容体を刺激することで、間葉系幹細胞の特徴である安全性及び忍容性を維持したまま抗炎症機能を増強する技術及び炎症機能を増強する技術です。炎症機能を高めたMSC1は、通常の間葉系幹細胞が腫瘍の成長に促進的に働くのに対し、腫瘍の成長を減衰させることが非臨床試験で確認されており、がん治療薬としての開発が期待できます。高い抗炎症作用を有するMSC2は、視神経炎、多発性硬化症やクラッベ病といった脱髄疾患、糖尿病性神経障害、関節リウマチ、クローン病等の炎症性疾患に対する治療薬としての開発が期待されており、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む。)における視神経炎を適応疾患とした細胞薬の開発及び販売権の取り決めをしました。 ⑤ パートナー製薬会社との契約の締結状況当社グループは、2020年3月にOcumension(Hong Kong)Limitedと眼科領域における再生細胞薬の研究・開発・商業化を目的として、SB623及びMSC2に関して、業務提携契約を締結しました。また、2021年11月にはD&P BioinnovationsとMSC2細胞を利用した食道再生インプラントの開発及び商業化に関する業務提携契約を締結しました。それぞれの契約において、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされています。今後も、当社グループの保有するパイプラインにおける開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携のみならず、自社販売の可能性も含め検討していきます。 (4)事業の特徴① 収益性の確保に向けた取り組み(ⅰ)他家移植であること一般に再生医療は、自家移植と他家移植に分けられます。自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法です。この場合、細胞調製に手間がかかる、費用が高額化する等、実用化に当たっての課題が存在しています。一方、当社グループが開発を進める再生細胞薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっています。 (ⅱ)量産化技術が確立されていることドナーの骨髄液を大量に培養して、均質な製品を製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されており、製品販売後の量産化に対応できる段階に達しています。なお、当社グループが開発を進める再生細胞薬は、もともと体内に存在する骨髄液由来の間葉系幹細胞を細胞源としているため、安全性に優れており、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクも低いと認識しています。また、倫理的な点が懸念されるES細胞由来または中絶胎児由来の細胞に対して、健常者の骨髄液由来のSB623は、臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えています。 (ⅲ)製品供給権が確保されていること他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。一方、当社グループの再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品となっています。そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することができます。 ② 対象となる患者数の多さ当社グループが手掛ける再生細胞薬は、従来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、米国における外傷性脳損傷の患者数は約550万人、脳梗塞は約685万人と推計されています。外傷性脳損傷及び脳梗塞のほか、脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、再生細胞薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えています。 ③ 販売に必要な知的財産を自己保有当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の事業化に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308、MSC1、MSC2)の特許は基本的に全て自社で保有しています。2015年3月3日に当社グループの再生細胞薬SB623に関する物質特許が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬「SB623」及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しており、今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めています。特許取得地域については、開発を進捗させている日本及び米国に加え、今後、開発を進める予定の欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、イスラエル、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における製品販売に向けた基盤の整備を進めています。 ≪SB623関連の特許取得地域≫米国、日本、イギリス、ドイツ、デンマーク、アイルランド、スペイン、スイス、ギリシャ、スウェーデン、フランス、ベルギー、オランダ、イタリア、オーストリア、フィンランド、ポルトガル、ポーランド、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、イスラエル、他 (5)今後の展開国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムについては、製造販売承認の早期取得に向けて、当局による審査に迅速に対応していきます。また、承認後のSB623の国内普及に向けた製造・物流・販売体制の構築も並行して推進していきます。また、SB623慢性期外傷性脳損傷の一日も早い国内承認及び上市に向けた対応と並行し、脳梗塞プログラムと脳出血プログラムの国内における開発準備も優先していきます。両プログラムの具体的な臨床試験デザインや開発内容については、確定次第速やかに公表する予定です。SB623慢性期外傷性脳損傷プログラムのグローバル展開についても、他社との提携等のオプションを含め、臨床試験の開始に向けた準備を進めていきます。このほか、SB623の適応疾患拡大として、すでに非臨床試験(In Vivo試験)で良好な結果が得られている網膜疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施していきます。さらに、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、非臨床試験(In Vivo試験)で適応可能性について検討していきます。 <用語解説> 番号用語意味・内容1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。5再生細胞薬病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある。6細胞調製ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。8米国食品医薬品局(FDA)U.S. Food and Drug Administration。食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。9分注一定量で少量ずつに分けること。10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。14INDミーティングInvestigational New Drug Exemption。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。15先駆け審査指定制度2014年6月に厚生労働省における「世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を促進するための省内プロジェクトチーム」において発表された「先駆けパッケージ戦略」に基づき新たに設けられた制度であり、世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階で顕著な有効性が見込まれる革新的な医薬品について、優先審査をする制度。 番号用語意味・内容16RMATRegenerative Medicine Advanced Therapy。米国における21st Century Cures Act(21世紀治療法)のもとに設立され、アンメットメディカルニーズがある重篤な疾患に対する再生医療であり、臨床試験において一定の効果を示した治療法を対象として、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)より指定されるもの。17欧州医薬品庁(EMA)European Medicines Agency。EUにおいて医薬品認可制度が施行された1995年にロンドンに設置されたEUの機関であり、人間及び動物用医薬品の評価及び管理を行う。18先端医療医薬品(ATMP)Advanced Therapy Medicinal Product。遺伝子、組織、または細胞に基づいたヒト用の薬であり、指定については EMA の先進療法委員会(Committee for Advanced Therapies:CAT)によって決定される。ATMPを用いた治療は、その病気や怪我の治療に対し画期的で新しい好機を提供する。
FY2021|12,373 文字|出典 docID: S100L8XA
3【事業の内容】(1)当社の事業領域当社グループ(以下、当社、SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)及びSanBio Asia Pte. Ltd.(シンガポール)の3社を指します。)は「再生医療の開発を通して、患者さんをはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、東京を本社とし、SanBio, Inc.のある米国に研究開発の主たる拠点を構え、日米亜において再生細胞医薬品の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生細胞事業を展開しています。 ≪再生細胞薬とは≫当社グループが手掛ける再生細胞薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品です。 当社グループでは、主に中枢神経係の疾患(眼科を含む。)における、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しています。例えば、当社グループが治療薬の開発を進めている慢性期脳梗塞は、これまでリハビリやリハビリ補助機器等による理学療法による対処が主流とされてきた疾患であり、麻痺、半身不随等が残った場合の有効な治療薬は存在していませんでした。このような領域において再生細胞薬による治療法を確立することで、世界中の上記の疾患を抱えた患者の身体機能の改善に寄与することが当社グループのミッションです。 (2)事業の内容当社グループは、当社、SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)及びSanBio Asia Pte. Ltd.(シンガポール)の3社により構成されています。当社設立は2013年2月ですが、SanBio, Inc.は2001年2月の設立以降、一貫して再生細胞薬の研究開発を進めています。 大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっています。収入形態の内容は以下のとおりです。ライセンス許諾のタイミングは、ヒトでの安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しています。なお、国内で進めているSB623慢性期外傷性脳損傷プログラムについては、自社での販売を目指しています。 ≪当社グループの収入形態≫ 収入形態内容A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。Bマイルストン収入開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。Dロイヤルティ収入製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。E製品供給収入製品供給の対価として得られる収入。 当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。 (3)開発の状況① 当社グループが手掛ける再生細胞薬当社グループが開発を進める再生細胞薬はSB623(神経再生細胞、適応疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、適応疾患は末梢神経障害等)、SB308(筋肉幹細胞、適応疾患は筋ジストロフィー等)、MSC1(間葉系幹細胞、適応疾患はがん疾患等)、MSC2(間葉系幹細胞、適応疾患は炎症性疾患等)の5種類です。現在、SB623については、日米を中心に慢性期外傷性脳損傷プログラムと慢性期脳梗塞プログラムの開発を進めています。当社グループ単独で進めている日米の慢性期外傷性脳損傷プログラムのフェーズ2臨床試験は、2018年4月に被験者(61名)の組み入れを完了し、同年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。これをもって、日本の慢性期外傷性脳損傷プログラムにおいては、国内の再生医療等製品に対する条件及び期限付承認制度を活用し、再生医療等製品としての製造販売の承認申請を目指します。そのため、当期はこの承認後のSB623の国内普及に向けた製造・物流・販売体制の構築に着手しています。一方、米国で進めている被験者163名を対象としたSB623慢性期脳梗塞プログラムのフェーズ2b臨床試験は、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。現在、この詳細結果等を踏まえ、今後の開発及び事業計画を組み立てていきます。当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である再生細胞薬SB623(神経再生細胞)の適応拡大を図ることを最優先に開発を進める方針です。 ≪SB623の概要≫SB623は神経機能を再生する作用を持つ治療薬です。体の自然な再生プロセスを促進させ、失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生をターゲットとしています。当社グループの再生細胞薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品です。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品認可取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した神経再生細胞が最終製品SB623です。当社グループでは一人の健常者の骨髄液から患者数千人分の最終製品を製造可能な技術を確立しています。SB623は慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能です。長期入院も不要で、臨床試験で被験者は一日入院し、投与翌日には退院しています。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能です。作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる。)、(B)神経新生(神経細胞をつくる。)、(C)血管新生(血管をつくる。)、(D)抗炎症(炎症を抑える。)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する。)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されています。特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが動物試験において確認されています。 ② SB623 慢性期外傷性脳損傷の開発状況≪SB623 慢性期外傷性脳損傷プログラム≫SB623は神経機能の再生を促すことから、慢性期脳梗塞以外にも、中枢神経系の多くの疾患への適応が見込まれています。とりわけ外傷性脳損傷については、受傷直後こそ症状は異なりますが、慢性期においては、脳梗塞とよく似た症状であるとともに、投与方法なども脳梗塞と同様の方法を採用できるといった点もあり、神経機能の再生を促すSB623の次の適応として可能性が高い疾患です。外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり、脳が傷つくことによって起こる疾患です。脳の損傷によって、半身の麻痺や感覚障害・記憶障害等の高次脳機能障害症状が起こります。外傷性脳損傷ではリハビリ等による改善を期待できる期間は脳梗塞に比べてやや長いものの、損傷後1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされています。当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2aにおいてSB623の安全性が示唆されたことで、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ1をスキップしフェーズ2から開始しており、米国では2016年4月に最初の被験者の組み入れを実施し、その後、日本においても治験許可が下りたことから、日米グローバル試験(二重盲検、被験者61名)として進めています。そのような中で、本試験については、2018年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。これをもって、2019年4月には、国内で厚生労働省より再生医療等製品として「先駆け審査指定制度」の対象品目の指定を受けました。加えて、2020年6月には、外傷性脳損傷における後遺症の改善を効能として、厚生労働省より「希少疾病用再生医療等製品」の指定を受けました。 現在、国内では、製造販売承認申請を目指し、先駆け審査指定制度の枠組みにおいて独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議を活発に進めています。 ③ SB623 慢性期脳梗塞の開発状況≪SB623 慢性期脳梗塞プログラムの概要≫脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして(脳出血)、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう疾患です。脳梗塞は、発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。SB623は、脳梗塞の発作後、慢性期に入り、他に有効な治療法の存在しない症状の改善を狙うアンメットメディカルニーズを満たす医薬品として期待されています。 ≪臨床試験の状況≫当社グループでは、2011年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験(フェーズ1とフェーズ2の一部を同時に行い、再生細胞薬の安全性と有効性を同時に確認したため、フェーズ1/2aとしています。)を実施し、2014年2月に投与後6カ月の効果測定が完了しました。この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、脳梗塞患者の運動機能が改善したこと(有効性)が確認されました。 下図は米国で慢性期脳梗塞を対象に行ったフェーズ1/2aの臨床試験の結果の一部を、リハビリなどで運動機能の効果を測定する際に使われる代表的な指標Fugl-Meyer Motor Scale(フューゲルマイヤー運動機能)を使ってまとめたものです。横軸はSB623投与後の経過月数、縦軸は運動機能の改善度合いです。縦軸に示された数値が高くなるほど、機能改善の度合いが大きいことを示しています。投与前と投与後の機能改善例として、車いすが必要な患者が歩けるようになった、動かなかった腕が上がるようになった、うまく話すことができなかった患者がスムーズに話すことができるようになった等の事例が確認されています。本フェーズ1/2a臨床試験に続き、2015年12月には、北米でのフェーズ2b臨床試験(二重盲検、被験者163名)を開始し、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。しかし、2020年9月には、STR-02試験の追加解析として、梗塞巣サイズが一定量未満の患者77名(当試験組み入れ患者全体の47%)を対象に、複合FMMSエンドポイントを用いてSB623の投与から6カ月後における有効性を評価したところ、偽手術群26名のうち19%の改善に対し、SB623投与群51名のうち49%において改善が見られ、統計学的に有意な結果(P値=0.02)を得ました。今後、経営資源の選択と集中によりSB623の価値最大化を図るため、SB623慢性期外傷性脳損傷の一日も早い国内承認申請に向けた準備と並行し、脳梗塞プログラムと脳出血プログラムの国内における開発準備も優先していきます。両プログラムの具体的な臨床試験デザインや開発内容については、確定次第速やかに公表する予定です。 ④ その他のパイプラインの開発状況≪SB623 慢性期脳出血プログラム≫上記の慢性期外傷性脳損傷プログラムの良好な結果を受けて、当期に新しいSB623のパイプラインとして外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血プログラムを追加しました。脳出血は、血管が詰まって引き起こされる脳梗塞に対して、血管が破れることで引き起こされる疾患であり、半身麻痺、感覚障害又は記憶障害等の症状が起こりますが、現状では根治治療は存在していないとされています。当社グループとしては、現在、本プログラムの臨床試験は、フェーズ2またはフェーズ3からの開始を見込んで準備を進めています。 ≪SB623 網膜疾患プログラム≫SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性です。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしています。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性です。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されています。2014年1月に、網膜疾患の動物試験の結果をもとに、米国食品医薬局とINDミーティングを実施しました。現在はドライ型加齢黄斑変性を対象疾患として、臨床試験の実施許諾に必要な非臨床試験を実施しています。網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針の中、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む。)における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を適応疾患とした共同開発を行なう契約を締結しました。現在、Ocumension(Hong Kong)Limitedと非臨床試験の開始に向けた協議を活発に行っています。なお、中華圏以外の開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB623 その他の疾患への展開≫パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施します。アルツハイマー病等その他の疾患については動物試験において適応可能性について検討していきます。その他の用途においても、初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB618≫再生細胞薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用を持った治療薬ですが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞です。SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養します。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えられます。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷について動物試験での効果が確認されており、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めています。 ≪SB308≫再生細胞薬SB308は骨髄由来の筋肉幹細胞です。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気です。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの動物試験で、その応用可能性が示唆されています。 ≪MSC1・MSC2≫2018年9月にMSC1、MSC2という間葉系幹細胞由来の細胞治療薬に関する特許ポートフォリオを他社から取得しました。間葉系幹細胞の細胞膜上に存在する特定のToll様受容体を刺激することで、間葉系幹細胞の特徴である安全性及び忍容性を維持したまま抗炎症機能を増強する技術および炎症機能を増強する技術です。炎症機能を高めたMSC1は、通常の間葉系幹細胞が腫瘍の成長に促進的に働くのに対し、腫瘍の成長を減衰させることが非臨床試験で確認されており、がん治療薬としての開発が期待できます。高い抗炎症作用を有するMSC2は、視神経炎、多発性硬化症やクラッベ病といった脱髄疾患、糖尿病性神経障害、関節リウマチ、クローン病等の炎症性疾患に対する治療薬としての開発が期待されており、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む。)における視神経炎を適応疾患とした細胞薬の開発及び販売権の取り決めをしました。 ⑤ パートナー製薬会社との契約の締結状況当社グループでは、SB623の脳梗塞用途の開発、製造並びに販売について、大日本住友製薬株式会社と米国及びカナダにおける共同開発契約及び販売権に係る契約を締結していましたが、2019年12月をもって、本契約を解消しました。また、国内のSB623の脳梗塞用途についても、帝人株式会社と開発権及び販売権に係る契約を締結していましたが、2018年2月に本契約を解消しました。一方で、Ocumension(Hong Kong)Limitedと2020年3月に、眼科領域における再生細胞薬の研究・開発・商業化を目的として、業務提携契約を締結しており、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされています。 今後も、SB623の適応疾患における開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携のみならず、自社販売の可能性も含め検討していきます。 (4)事業の特徴① 収益性の確保に向けた取り組み(ⅰ)他家(たか)移植であること一般に再生医療は、自家(じか)移植と他家(たか)移植に分けられます。自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法です。この場合、細胞調整に手間がかかる、個人間のばらつきが大きくなる、費用が高額化する等、実用化に当たっての課題が存在しています。一方、当社グループが手掛ける再生細胞薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっています。 (ⅱ)量産化技術が確立されていることドナーの骨髄液を大量に培養して、均質な製品を製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されており、製品販売後の量産化に対応できる段階に達しています。なお、当社グループの再生細胞薬は、骨髄液由来の間葉系幹細胞を細胞源としているため、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクが低く、安全性に優れていると認識しています。また、骨髄液は健常者から取得することが一般的となっていることもあり、大半が受精卵の破壊を伴うES細胞由来または中絶を伴う胎児由来の細胞を使用し倫理的な点が懸念されるのに対して、骨髄液由来のSB623はそうした問題もなく臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えています。 (ⅲ)製品供給権が確保されていること他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。一方、当社グループの再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品となっています。そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することができます。 ② 対象となる患者数の多さ当社グループが手掛ける再生細胞薬は、世界的に旧来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、米国における外傷性脳損傷の患者数は約550万人、脳梗塞は約685万人と推計されています。外傷性脳損傷及び脳梗塞のほか、脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、再生細胞薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えています。 ③ 開発に必要な知的財産を自己保有当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の開発に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308)の基本特許は全て取得済みです。2015年3月3日に当社グループの再生細胞薬SB623に関する物質特許が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬「SB623」及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しており、今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めています。特許取得地域については、開発を進捗させている米国に加え、今後、開発を進める予定の日本、欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、イスラエル、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における臨床試験、製造開発、製品販売に向けた基盤の整備を進めています。 ≪SB623関連の特許取得地域≫米国、日本、イギリス、ドイツ、デンマーク、アイルランド、スペイン、スイス、ギリシャ、スウェーデン、フランス、ベルギー、オランダ、イタリア、オーストリア、フィンランド、ポルトガル、ポーランド、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、イスラエル、他 ④ 今後の展開当社グループ単独で進めている日米の慢性期外傷性脳損傷プログラムのフェーズ2臨床試験は、2018年4月に被験者(61名)の組み入れを完了し、同年11月には「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。これをもって、日本の慢性期外傷性脳損傷プログラムにおいては、国内の再生医療等製品に対する条件及び期限付承認制度を活用し、再生医療等製品としての製造販売の承認申請を目指します。そのため、この承認後のSB623の国内普及に向けた製造・物流・販売体制の構築に着手しています。今後、SB623慢性期外傷性脳損傷の一日も早い国内承認に向けた準備と並行し、脳梗塞プログラムと脳出血プログラムの国内における開発準備も優先していきます。両プログラムの具体的な臨床試験デザインや開発内容については、確定次第速やかに公表する予定です。このほか、SB623の適応疾患拡大として、上述のとおり良好な結果を得た慢性期外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血についてはフェーズ2またはフェーズ3からの開始を見込み、また、すでに動物試験で良好な結果が得られている網膜疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施していきます。これらの疾患領域のうち、網膜疾患については、2020年3月に、Ocumension(Hong Kong)Limitedと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む。)における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を適応疾患とした共同開発を行なう契約を締結しました。さらに、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、動物試験で適応可能性について検討していきます。 <用語解説> 番号用語意味・内容1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。5再生細胞薬病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある。6細胞調整ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。8米国食品医薬品局(FDA)U.S. Food and Drug Administration。食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。9分注一定量で少量ずつに分けること。10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。14INDミーティングInvestigational New Drug Exemptiom。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。15先駆け指定制度2014年6月に厚生労働省における「世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を促進するための省内プロジェクトチーム」において発表された「先駆けパッケージ戦略」に基づき新たに設けられた制度であり、世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階で顕著な有効性が見込まれる革新的な医薬品について、優先審査をする制度。 番号用語意味・内容16RMATRegenerative Medicine Advanced Therapy。米国における21st Century Cures Act(21世紀治療法)のもとに設立され、アンメットメディカルニーズがある重篤な疾患に対する再生医療であり、臨床試験において一定の効果を示した治療法を対象として、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)より指定されるもの。17欧州医薬品庁(EMA)European Medicines Agency。EUにおいて医薬品認可制度が施行された1995年にロンドンに設置されたEUの機関であり、人間及び動物用医薬品の評価及び管理を行う。18先端医療医薬品(ATMP)Advanced Therapy Medicinal Product。遺伝子、組織、または細胞に基づいたヒト用の薬であり、指定については EMA の先進療法委員会(Committee for Advanced Therapies:CAT)によって決定される。ATMPの指定を受けた治療は、その病気や怪我の治療に対し画期的で新しい好機を提供する。
FY2020|12,408 文字|出典 docID: S100III0
3【事業の内容】(1)当社の事業領域当社グループ(以下、当社及び連結子会社SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)の2社を指します。)は「再生医療の開発を通して、患者さんをはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、東京を本社とし、SanBio, Inc.のある米国に研究開発の主たる拠点を構え、日米において再生細胞医薬品の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生細胞事業を展開しています。 ≪再生細胞薬とは≫当社グループが手掛ける再生細胞薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品です。 当社グループでは、主に中枢神経係の疾患(眼科を含む)における、慢性期脳梗塞(発症後6カ月が経過した脳梗塞)、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しています。例えば、当社グループが治療薬の開発を進めている慢性期脳梗塞は、これまでリハビリやリハビリ補助機器等による理学療法による対処が主流とされてきた疾患であり、麻痺、半身不随等が残った場合の有効な治療薬は存在していませんでした。このような領域において再生細胞薬による治療法を確立することで、世界中の上記の疾患を抱えた患者の身体機能の改善に寄与することが当社グループのミッションです。 (2)事業の内容当社グループは、当社と連結子会社SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)の2社により構成されています。当社設立は2013年2月ですが、SanBio, Inc.は2001年2月の設立以降、一貫して再生細胞薬の研究開発を進めています。 大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっています。収入形態の内容は以下の通りです。なお、上記のライセンス許諾のタイミングは、ヒトでの安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しています。 ≪当社グループの収入形態≫ 収入形態内容A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。Bマイルストン収入開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。Dロイヤルティ収入製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。E製品供給収入製品供給の対価として得られる収入。 当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。 (3)開発の状況① 当社グループが手掛ける再生細胞薬当社グループが開発を進める再生細胞薬はSB623(神経再生細胞、適応疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、適応疾患は末梢神経障害等)、SB308(筋肉幹細胞、適応疾患は筋ジストロフィー等)、MSC1(間葉系幹細胞、適応疾患はがん疾患等)、MSC2(間葉系幹細胞、適応疾患は炎症性疾患等)の5種類です。現在、SB623については、日米を中心に慢性期外傷性脳損傷プログラムと慢性期脳梗塞プログラムの開発を進めています。当社グループ単独で進めている日米の慢性期外傷性脳損傷プログラムのフェーズ2臨床試験は、2018年4月に被験者(61名)の組み入れを完了し、同年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。これをもって、日本の慢性期外傷性脳損傷プログラムにおいては、国内の再生医療等製品に対する条件及び期限付承認制度を活用し、2021年1月期(2020年2月~2021年1月)中に、再生医療等製品としての製造販売の承認申請を目指します。そのため、当期はこの承認後のSB623の国内普及に向けた製造・物流・販売体制の構築に着手しています。一方、米国で進めている被験者163名を対象としたSB623慢性期脳梗塞プログラムのフェーズ2b臨床試験は、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。現在、この詳細結果等を踏まえ、今後の開発及び事業計画を組み立てていきます。当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である再生細胞薬SB623(神経再生細胞)の適応拡大を図ることを最優先に開発を進める方針です。 ≪SB623の概要≫SB623は神経機能を再生する作用を持つ治療薬です。体の自然な再生プロセスを促進させ、失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生をターゲットとしています。当社グループの再生細胞薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品です。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品認可取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した神経再生細胞が最終製品SB623です。当社グループでは一人の健常者の骨髄液から患者数千人分の最終製品を製造可能な技術を確立しています。SB623は慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能です。長期入院も不要で、臨床試験で被験者は一日入院し、投与翌日には退院しています。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能です。作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる)、(B)神経新生(神経細胞をつくる)、(C)血管新生(血管をつくる)、(D)抗炎症(炎症を抑える)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されています。特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが動物試験において確認されています。 ② SB623 慢性期脳梗塞の開発状況≪SB623 慢性期脳梗塞プログラムの概要≫脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして(脳出血)、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう疾患です。脳梗塞は、発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。SB623は、脳梗塞の発作後、慢性期に入り、他に有効な治療法の存在しない症状の改善を狙うアンメットメディカルニーズを満たす医薬品として期待されています。 ≪臨床試験の状況≫当社グループでは、2011年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験(フェーズ1とフェーズ2の一部を同時に行い、再生細胞薬の安全性と有効性を同時に確認したため、フェーズ1/2aとしています。)を実施し、2014年2月に投与後6カ月の効果測定が完了しました。この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、脳梗塞患者の運動機能が改善したこと(有効性)が確認されました。 下図は米国で慢性期脳梗塞を対象に行ったフェーズ1/2aの臨床試験の結果の一部を、リハビリなどで運動機能の効果を測定する際に使われる代表的な指標Fugl-Meyer Motor Scale(フューゲルマイヤー運動機能)を使ってまとめたものです。横軸はSB623投与後の経過月数、縦軸は運動機能の改善度合いです。縦軸に示された数値が高くなるほど、機能改善の度合いが大きいことを示しています。投与前と投与後の機能改善例として、車いすが必要な患者が歩けるようになった、動かなかった腕が上がるようになった、うまく話すことができなかった患者がスムーズに話すことができるようになった等の事例が確認されています。本フェーズ1/2a臨床試験に続き、2015年12月には、北米でのフェーズ2b臨床試験(二重盲検、被験者163名)を開始し、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。現在、この詳細結果等を踏まえ、今後の開発及び事業計画を組み立てていきます。 ③ その他のパイプラインの開発状況≪SB623 慢性期外傷性脳損傷プログラム≫SB623は神経機能の再生を促すことから、慢性期脳梗塞以外にも、中枢神経系の多くの疾患への適応が見込まれています。とりわけ外傷性脳損傷については、受傷直後こそ症状は異なりますが、慢性期においては、脳梗塞とよく似た症状であるとともに、投与方法なども脳梗塞と同様の方法を採用できるといった点もあり、神経機能の再生を促すSB623の次の適応として可能性が高い疾患です。外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり、脳が傷つくことによって起こる疾患です。脳の損傷によって、半身の麻痺や感覚障害・記憶障害等の高次脳機能障害症状が起こります。外傷性脳損傷ではリハビリ等による改善を期待できる期間は脳梗塞に比べてやや長いものの、損傷後1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされています。当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2aにおいてSB623の安全性が示唆されたことで、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ1をスキップしフェーズ2から開始しており、米国では2016年4月に最初の被験者の組み入れを実施し、その後、日本においても治験許可が下りたことから、日米グローバル試験(二重盲検、被験者61名)として進めています。そのような中で、本試験については、2018年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。これをもって、日本の慢性期外傷性脳損傷プログラムにおいては、国内の再生医療等製品に対する条件及び期限付承認制度を活用し、2021年1月期(2020年2月~2021年1月)中に、再生医療等製品としての製造販売の承認申請を目指しています。 ≪SB623 慢性期脳出血プログラム≫上記の慢性期外傷性脳損傷プログラムの良好な結果を受けて、当期に新しいSB623のパイプラインとして外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血プログラムを追加しました。脳出血は、血管が詰まって引き起こされる脳梗塞に対して、血管が破れることで引き起こされる疾患であり、半身麻痺、感覚障害又は記憶障害等の症状が起こりますが、現状では根治治療は存在していないとされています。当社グループとしては、現在、本プログラムの臨床試験は、フェーズ2またはフェーズ3からの開始を見込んで準備を進めています。 ≪SB623 網膜疾患プログラム≫SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性です。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしています。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性です。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されています。2014年1月に、網膜疾患の動物試験の結果をもとに、米国食品医薬局とINDミーティングを実施しました。現在はドライ型加齢黄斑変性を対象疾患として、臨床試験の実施許諾に必要な非臨床試験を実施しています。網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針の中、2020年3月に、OCUMENSION (HONG KONG) LIMITEDと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む。)における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を適応疾患とした共同開発を行なう契約を締結しました。なお、中華圏以外の開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB623 その他の疾患への展開≫パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施します。アルツハイマー病等その他の疾患については動物試験において適応可能性について検討していきます。その他の用途においても、初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB618≫再生細胞薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用を持った治療薬ですが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞です。SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養します。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えられます。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷について動物試験での効果が確認されており、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めています。 ≪SB308≫再生細胞薬SB308は骨髄由来の筋肉幹細胞です。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気です。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの動物試験で、その応用可能性が示唆されています。 ≪MSC1・MSC2≫2018年9月にMSC1、MSC2という間葉系幹細胞由来の細胞治療薬に関する特許ポートフォリオを他社から取得しました。間葉系幹細胞の細胞膜上に存在する特定のToll様受容体を刺激することで、間葉系幹細胞の特徴である安全性及び忍容性を維持したまま抗炎症機能を増強する技術および炎症機能を増強する技術です。炎症機能を高めた MSC1は、通常の間葉系幹細胞が腫瘍の成長に促進的に働くのに対し、腫瘍の成長を減衰させることが非臨床試験で確認されており、がん治療薬としての開発が期待できます。高い抗炎症作用を有するMSC2は、視神経炎、多発性硬化症やクラッベ病といった脱髄疾患、糖尿病性神経障害、関節リウマチ、クローン病等の炎症性疾患に対する治療薬としての開発が期待されており、各疾患モデル動物での非臨床試験が進んでいます。 ④ パートナー製薬会社との契約の締結状況当社グループでは、SB623の脳梗塞用途の開発、製造並びに販売について、大日本住友製薬株式会社と米国及びカナダにおける共同開発契約及び販売権に係る契約を締結していましたが、2019年12月をもって、本契約を解消しました。また、国内のSB623の脳梗塞用途についても、帝人株式会社と開発権及び販売権に係る契約を締結していましたが、2018年2月に本契約を解消しました。一方で、OCUMENSION (HONG KONG) LIMITEDと2020年3月に、眼科領域における再生細胞薬の研究・開発・商業化を目的として、業務提携契約を締結しており、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされています。 ≪OCUMENSION (HONG KONG) LIMITEDとの契約の概要≫2020年3月に締結した当社グループとOCUMENSION (HONG KONG) LIMITEDとの契約により、当社グループは、中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む。)における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を適応疾患としたSB623細胞薬の開発と視神経炎を適応疾患としたMSC2細胞薬の開発及び販売権の取り決めをしました。今後は、網膜疾患用途の当該地域における開発費用は、両社で、当該契約に基づき、負担を分担します。、また、開発段階では、マイルストン収入、製品上市後には、売上に応じたロイヤルティ収入が当社グループの収入となる見込みです。 今後も、SB623の適応疾患における開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携のみならず、自社販売の可能性も含め検討していきます。 (4)事業の特徴① 収益性の確保に向けた取り組み(ⅰ)他家(たか)移植であること一般に再生医療は、自家(じか)移植と他家(たか)移植に分けられます。自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法です。この場合、細胞調整に手間がかかる、個人間のばらつきが大きくなる、費用が高額化する等、実用化に当たっての課題が存在しています。一方、当社グループが手掛ける再生細胞薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっています。 (ⅱ)量産化技術が確立されていることドナーの骨髄液を大量に培養して、均質な製品を製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されており、製品販売後の量産化に対応できる段階に達しています。なお、当社グループの再生細胞薬は、骨髄液由来の間葉系幹細胞を細胞源としているため、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクが低く、安全性に優れていると認識しています。また、骨髄液は健常者から取得することが一般的となっていることもあり、大半が受精卵の破壊を伴うES細胞由来または中絶を伴う胎児由来の細胞を使用し倫理的な点が懸念されるのに対して、骨髄液由来のSB623はそうした問題もなく臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えています。 (ⅲ)製品供給権が確保されていること他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。一方、当社グループの再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品となっています。そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することができます。 ② 対象となる患者数の多さ当社グループが手掛ける再生細胞薬は、世界的に旧来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、脳卒中(脳梗塞を含む)の患者数は、米国において約700万人(出典:Heart Disease and Stroke Statistics - 2020 Update)、日本において約111万人(出典:2017年患者調査)と推計され、このうち一定割合が慢性期脳梗塞の患者と見込まれます。脳梗塞のほか、外傷性脳損傷、脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、再生細胞薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えています。 ③ 開発に必要な知的財産を自己保有当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の開発に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308)の基本特許は全て取得済みです。2015年3月3日に当社グループの再生細胞薬SB623に関する物質特許(注)が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬「SB623」及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しており、今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めています。特許取得地域については、開発を進捗させている米国に加え、今後、開発を進める予定の日本、欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、イスラエル、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における臨床試験、製造開発、製品販売に向けた基盤の整備を進めています。 ≪SB623関連の特許取得地域≫米国、日本、イギリス、ドイツ、デンマーク、アイルランド、スペイン、スイス、ギリシャ、スウェーデン、フランス、ベルギー、オランダ、イタリア、オーストリア、フィンランド、ポルトガル、ポーランド、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、イスラエル、インド ④ 今後の展開当社グループ単独で進めている日米の慢性期外傷性脳損傷プログラムのフェーズ2臨床試験は、2018年4月に被験者(61名)の組み入れを完了し、同年11月には「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。これをもって、日本の慢性期外傷性脳損傷プログラムにおいては、国内の再生医療等製品に対する条件及び期限付承認制度を活用し、2021年1月期(2020年2月~2021年1月)中に、再生医療等製品としての製造販売の承認申請を目指します。そのため、当期はこの承認後のSB623の国内普及に向けた製造・物流・販売体制の構築に着手しており、製造体制構築準備の一環として、日立化成株式会社と製造委託業務を提携し、販売体制構築に向けて流通(商流)に関する契約を締結しました。これらの構築準備により、グローバルな対応が可能な製造体制及び品質管理体制の構築(特に日本での市販が可能になった際に、相当量の細胞薬を安定して医療機関に供給する製造体制及び製造能力の構築及び医療機関にスムーズに製品を供給するための物流・販売体制の構築)を図っていきます。一方、米国での被験者163名を対象としたSB623慢性期脳梗塞プログラムのフェーズ2b臨床試験は、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。現在、この詳細結果等を踏まえ、今後の開発及び事業計画を組み立てていきます。このほか、SB623の適応疾患拡大として、上述の通り良好な結果を得た慢性期外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血についてはフェーズ2またはフェーズ3からの開始を見込み、また、すでに動物試験で良好な結果が得られている網膜疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施していきます。これらの疾患領域のうち、網膜疾患については、2020年3月に、OCUMENSION (HONG KONG) LIMITEDと中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾を含む。)における網膜色素変性症及び加齢黄斑変性症(ドライ型)等を適応疾患とした共同開発を行なう契約を締結しました。さらに、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、動物試験で適応可能性について検討していきます。 <用語解説> 番号用語意味・内容1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。5再生細胞薬病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある。6細胞調整ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。8米国食品医薬品局(FDA)U.S. Food and Drug Administration。食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。9分注一定量で少量ずつに分けること。10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。14INDミーティングInvestigational New Drug Exemptiom。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。15先駆け指定制度2014年6月に厚生労働省における「世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を促進するための省内プロジェクトチーム」において発表された「先駆けパッケージ戦略」に基づき新たに設けられた制度であり、世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階で顕著な有効性が見込まれる革新的な医薬品について、優先審査をする制度。 番号用語意味・内容16RMATRegenerative Medicine Advanced Therapy。米国における21st Century Cures Act(21世紀治療法)のもとに設立され、アンメットメディカルニーズがある重篤な疾患に対する再生医療であり、臨床試験において一定の効果を示した治療法を対象として、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)より指定されるもの。17欧州医薬品庁(EMA)European Medicines Agency。EUにおいて医薬品認可制度が施行された1995年にロンドンに設置されたEUの機関であり、人間及び動物用医薬品の評価及び管理を行う。18先端医療医薬品(ATMP)Advanced Therapy Medicinal Product。遺伝子、組織、または細胞に基づいたヒト用の薬であり、指定については EMA の先進療法委員会(Committee for Advanced Therapies:CAT)によって決定される。ATMPの指定を受けた治療は、その病気や怪我の治療に対し画期的で新しい好機を提供する。
FY2019|11,399 文字|出典 docID: S100FP81
3【事業の内容】(1)当社の事業領域当社グループ(以下、当社及び連結子会社SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)の2社を指します。)は「再生医療の開発を通じて、患者様をはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、東京を本社とし、SanBio, Inc.のある米国に研究開発の主たる拠点を構え、日米において再生細胞医薬品の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生細胞事業を展開しています。 ≪再生細胞薬とは≫当社グループが手掛ける再生細胞薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品です。 当社グループでは、主に中枢神経係の疾患(眼科を含む)における、慢性期脳梗塞(発症後6カ月が経過した脳梗塞)、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しています。例えば、当社グループが治療薬の開発を進めている慢性期脳梗塞は、これまでリハビリやリハビリ補助機器等による理学療法による対処が主流とされてきた疾患であり、麻痺、半身不随等が残った場合の有効な治療薬は存在していませんでした。このような領域において再生細胞薬による治療法を確立することで、世界中の上記の疾患を抱えた患者の身体機能の改善に寄与することが当社グループのミッションです。 (2)事業の内容当社グループは、当社と連結子会社SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)の2社により構成されています。当社設立は2013年2月ですが、SanBio, Inc.は2001年2月の設立以降、一貫して再生細胞薬の研究開発を進めています。現在は同社を研究開発の主たる拠点としながら、日米両国において研究開発のための提携研究機関、大学病院、研究/製造受託機関、アドバイザー等とのネットワークを構築しています。 主な提携研究機関:スタンフォード大学、ピッツバーグ大学、ノースウェスタン大学、東京大学、北海道大学主なアドバイザー:米国食品医薬局(元)長官、スタンフォード大学(元)学長、米国国立衛生研究所(NIH)老化研究所(元)所長、間葉系幹細胞発見者 当社グループは、大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっています。収入形態の内容は以下の通りです。なお、上記のライセンス許諾のタイミングは、ヒトでの安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しています。 ≪当社グループの収入形態≫ 収入形態内容A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。Bマイルストン収入開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。Dロイヤルティ収入製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。E製品供給収入製品供給の対価として得られる収入。 当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。 (3)開発の状況① 当社グループが手掛ける再生細胞薬当社グループが開発を進める再生細胞薬はSB623(神経再生細胞、適応疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、慢性期脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、適応疾患は末梢神経障害等)、SB308(筋肉幹細胞、適応疾患は筋ジストロフィー等)の3種類です。現在、SB623については、日米を中心に慢性期外傷性脳損傷プログラムと慢性期脳梗塞プログラムの開発を進めています。当社グループ単独で進めている日米の慢性期外傷性脳損傷プログラムのフェーズ2臨床試験は、2018年4月に被験者(61名)の組み入れを完了し、同年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。これをもって、日本の慢性期外傷性脳損傷プログラムにおいては、国内の再生医療等製品に対する条件及び期限付承認制度を活用し、2020年1月期(2019年2月~2020年1月)中に、再生医療等製品としての製造販売の承認申請を目指します。そのため、当期はこの承認後のSB623の国内普及に向けた製造・物流・販売体制の構築に着手しています。一方、米国で大日本住友製薬株式会社と共同で進めている被験者163名を対象としたSB623慢性期脳梗塞プログラムのフェーズ2b臨床試験は、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。現在、この詳細結果は解析中であり、その結果等を踏まえ、今後の開発及び事業計画を組み立てていきます。当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である再生細胞薬SB623(神経再生細胞)の適応拡大を図ることを最優先に開発を進める方針です。 ≪SB623の概要≫SB623は神経機能を再生する作用を持つ治療薬です。体の自然な再生プロセスを促進させ、失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生をターゲットとしています。当社グループの再生細胞薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品です。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品認可取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した神経再生細胞が最終製品SB623です。当社グループでは一人の健常者の骨髄液から患者数千人分の最終製品を製造可能な技術を確立しています。SB623は慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能です。長期入院も不要で、臨床試験で被験者は一日入院し、投与翌日には退院しています。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能です。作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる)、(B)神経新生(神経細胞をつくる)、(C)血管新生(血管をつくる)、(D)抗炎症(炎症を抑える)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されています。特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが動物試験において確認されています。 ② SB623 慢性期脳梗塞の開発状況≪SB623 慢性期脳梗塞プログラムの概要≫脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして(脳出血)、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう疾患です。脳梗塞は、発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。SB623は、脳梗塞の発作後、慢性期に入り、他に有効な治療法の存在しない症状の改善を狙うアンメットメディカルニーズを満たす医薬品として期待されています。 ≪臨床試験の状況≫当社グループでは、2011年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験(フェーズ1とフェーズ2の一部を同時に行い、再生細胞薬の安全性と有効性を同時に確認したため、フェーズ1/2aとしています。)を実施し、2014年2月に投与後6カ月の効果測定が完了しました。この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、脳梗塞患者の運動機能が改善したこと(有効性)が確認されました。 下図は米国で慢性期脳梗塞を対象に行ったフェーズ1/2aの臨床試験の結果の一部を、リハビリなどで運動機能の効果を測定する際に使われる代表的な指標Fugl-Meyer Motor Scale(フューゲルマイヤー運動機能)を使ってまとめたものです。横軸はSB623投与後の経過月数、縦軸は運動機能の改善度合いです。縦軸に示された数値が高くなるほど、機能改善の度合いが大きいことを示しています。投与前と投与後の機能改善例として、車いすが必要な患者が歩けるようになった、動かなかった腕が上がるようになった、うまく話すことができなかった患者がスムーズに話すことができるようになった等の事例が確認されています。 本フェーズ1/2a臨床試験に続き、2015年12月には、北米でのライセンス先である大日本住友製薬株式会社との共同開発によるフェーズ2b臨床試験(二重盲検、被験者163名)を開始し、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。現在、この詳細結果は解析中であり、その結果等を踏まえ、今後の開発及び事業計画を組み立てていきます。 ③ その他のパイプラインの開発状況≪SB623 慢性期外傷性脳損傷プログラム≫SB623は神経機能の再生を促すことから、慢性期脳梗塞以外にも、中枢神経系の多くの疾患への適応が見込まれています。とりわけ外傷性脳損傷については、受傷直後こそ症状は異なりますが、慢性期においては、脳梗塞とよく似た症状であるとともに、投与方法なども脳梗塞と同様の方法を採用できるといった点もあり、神経機能の再生を促すSB623の次の適応として可能性が高い疾患です。外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり、脳が傷つくことによって起こる疾患です。脳の損傷によって、半身の麻痺や感覚障害・記憶障害等の高次脳機能障害症状が起こります。外傷性脳損傷ではリハビリ等による改善を期待できる期間は脳梗塞に比べてやや長いものの、損傷後1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされています。当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2aにおいてSB623の安全性が示唆されたことで、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ1をスキップしフェーズ2から開始しており、米国では2016年4月に最初の被験者の組み入れを実施し、その後、日本においても治験許可が下りたことから、日米グローバル試験(二重盲検、被験者61名)として進めています。そのような中で、本試験については、2018年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。これをもって、日本の慢性期外傷性脳損傷プログラムにおいては、国内の再生医療等製品に対する条件及び期限付承認制度を活用し、2020年1月期(2019年2月~2020年1月)中に、再生医療等製品としての製造販売の承認申請を目指しています。 ≪SB623 慢性期脳出血プログラム≫上記の慢性期外傷性脳損傷プログラムの良好な結果を受けて、当期に新しいSB623のパイプラインとして外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血プログラムを追加しました。脳出血は、血管が詰まって引き起こされる脳梗塞に対して、血管が破れることで引き起こされる疾患であり、半身麻痺、感覚障害又は記憶障害等の症状が起こりますが、現状では根治治療は存在していないとされています。当社グループとしては、現在、本プログラムの臨床試験は、フェーズ2またはフェーズ3からの開始を見込んで準備を進めています。 ≪SB623 網膜疾患プログラム≫SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性です。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしています。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性です。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されています。2014年1月に、網膜疾患の動物試験の結果をもとに、米国食品医薬局とINDミーティングを実施しました。現在はドライ型加齢黄斑変性を対象疾患として、臨床試験の実施許諾に必要な非臨床試験を実施しています。網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB623 その他の疾患への展開≫パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施します。アルツハイマー病等その他の疾患については動物試験において適応可能性について検討していきます。その他の用途においても、初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しています。 ≪SB618≫再生細胞薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用を持った治療薬ですが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞です。SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養します。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えられます。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷について動物試験での効果が確認されており、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めています。 ≪SB308≫再生細胞薬SB308は骨髄由来の筋肉幹細胞です。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気です。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの動物試験で、その応用可能性が示唆されています。 ④ パートナー製薬会社との契約の締結状況当社グループでは、SB623の脳梗塞用途の開発、製造並びに販売について、大日本住友製薬株式会社と米国及びカナダにおける共同開発契約及び販売権に係る契約を締結しており、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされています。日本においては、SB623の脳梗塞用途について2009年に帝人株式会社と開発権及び販売権に係る契約を締結しましたが、2018年2月14日をもって、本契約を解消することで合意しました。今後は、当社が日本における当該プログラムの開発を進めていく予定です。 ≪大日本住友製薬株式会社との契約の概要≫2014年9月に締結しました当社グループと大日本住友製薬株式会社との契約により、当社グループは米国及びカナダにおけるSB623脳梗塞用途の開発・販売権を大日本住友製薬株式会社にライセンス許諾しました。当該契約に基づき、今後は、SB623脳梗塞用途の当該地域における開発費用は当社グループ、大日本住友製薬株式会社それぞれが一定割合を分担し、また販売に係る費用は大日本住友製薬株式会社が全額を負担することになります。また、契約締結時の契約一時金に加え、開発段階では、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金の合計額が当社グループの収入となり、製品上市後は、売上に応じた(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入の合計額が当社グループの収入となる見込みです。 今後は、SB623の慢性期脳梗塞用途のその他の地域の開発権及び販売権、並びに外傷性脳損傷等、その他用途の世界各地における開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携のみならず、自社販売の可能性も含め検討していきます。 (4)事業の特徴① 収益性の確保に向けた取り組み(ⅰ)他家(たか)移植であること一般に再生医療は、自家(じか)移植と他家(たか)移植に分けられます。自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法です。この場合、細胞調整に手間がかかる、個人間のばらつきが大きくなる、費用が高額化する等、実用化に当たっての課題が存在しています。一方、当社グループが手掛ける再生細胞薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっています。 (ⅱ)量産化技術が確立されていることドナーの骨髄液を大量に培養して、均質な製品を製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されており、製品販売後の量産化に対応できる段階に達しています。なお、当社グループの再生細胞薬は、骨髄液由来の間葉系幹細胞を細胞源としているため、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクが低く、安全性に優れていると認識しています。また、骨髄液は健常者から取得することが一般的となっていることもあり、大半が受精卵の破壊を伴うES細胞由来または中絶を伴う胎児由来の細胞を使用し倫理的な点が懸念されるのに対して、骨髄液由来のSB623はそうした問題もなく臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えています。 (ⅲ)製品供給権が確保されていること他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。一方、当社グループの再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品となっています。そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することについて契約上の取り決めがなされています。 ② 対象となる患者数の多さ当社グループが手掛ける再生細胞薬は、世界的に旧来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、脳卒中(脳梗塞を含む)の患者数は、米国において約660万人(出典:Heart Disease and Stroke Statistics - 2016 Update)、日本において約117万人(出典:平成26年(2014)患者調査)と推計され、このうち一定割合が慢性期脳梗塞の患者と見込まれます。脳梗塞のほか、外傷性脳損傷、脳出血、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、再生細胞薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えています。 ③ 開発に必要な知的財産を自己保有当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の開発に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308)の基本特許は全て取得済みです。2015年3月3日に当社グループの再生細胞薬SB623に関する物質特許(注)が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬「SB623」及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しており、今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めています。特許取得地域については、開発を進捗させている米国に加え、今後、開発を進める予定の日本、欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、イスラエル、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における臨床試験、製造開発、製品販売に向けた基盤の整備を進めています。 ≪基本特許取得地域≫米国、日本、イギリス、ドイツ、デンマーク、アイルランド、スペイン、スイス、ギリシャ、スウェーデン、フランス、ベルギー、オランダ、イタリア、オーストリア、フィンランド、ポルトガル、ポーランド、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、イスラエル ④ 今後の展開当社グループ単独で進めている日米の慢性期外傷性脳損傷プログラムのフェーズ2臨床試験は、2018年4月に被験者(61名)の組み入れを完了し、同年11月には「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成。」という良好な結果を得ました。これをもって、日本の慢性期外傷性脳損傷プログラムにおいては、国内の再生医療等製品に対する条件及び期限付承認制度を活用し、2020年1月期(2019年2月~2020年1月)中に、再生医療等製品としての製造販売の承認申請を目指します。そのため、当期はこの承認後のSB623の国内普及に向けた製造・物流・販売体制の構築に着手しており、製造体制構築準備の一環として、日立化成株式会社と製造委託業務を提携し、流通・販売体制構築準備の一環として、株式会社ケアネット等4社と共同研究を開始しました。これらの構築準備により、グローバルな対応が可能な製造体制及び品質管理体制の構築(特に日本での市販が可能になった際に、相当量の細胞薬を安定して医療機関に供給する製造体制及び製造能力の構築及び医療機関にスムーズに製品を供給するための物流・販売体制の構築)を図っていきます。一方、米国で大日本住友製薬株式会社と共同で進めている被験者163名を対象としたSB623慢性期脳梗塞プログラムのフェーズ2b臨床試験は、2019年1月に主要評価項目未達という解析結果を得ました。現在、この詳細結果は解析中であり、その結果等を踏まえ、今後の開発及び事業計画を組み立てていきます。このほか、SB623の適応疾患拡大として、上述の通り良好な結果を得た慢性期外傷性脳損傷と類似性がある慢性期脳出血についてはフェーズ2またはフェーズ3からの開始を見込んでいますし、すでに動物試験で良好な結果が得られている、網膜変性疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施していきます。また、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、動物試験で適応可能性について検討していきます。 <用語解説> 番号用語意味・内容1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。5再生細胞薬病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある。6細胞調整ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。8米国食品医薬局食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。9分注一定量で少量ずつに分けること。10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。14INDミーティングInvestigational New Drug Exemptiom。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。
FY2018|11,444 文字|出典 docID: S100CV8O
3【事業の内容】(1)当社の事業領域当社グループ(以下、当社及び連結子会社SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)の2社を指します。)は「再生細胞薬の開発を通じて、患者様をはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、東京を本社とし、SanBio, Inc.のある米国に研究開発の主たる拠点を構え、日米において再生細胞薬の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生細胞事業を展開しております。 ≪再生細胞薬とは≫当社グループが手掛ける再生細胞薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品であります。 当社グループでは、主に中枢神経係の疾患(眼科を含む)における、慢性期脳梗塞(発症後6カ月が経過した脳梗塞)、慢性期外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しております。例えば、当社グループが治療薬の開発を進めている慢性期脳梗塞は、これまでリハビリやリハビリ補助機器等による理学療法による対処が主流とされてきた疾患であり、麻痺、半身不随等が残った場合の有効な治療薬は存在しておりませんでした。このような領域において再生細胞薬による治療法を確立することで、世界中の上記の疾患を抱えた患者の身体機能の改善に寄与することが当社グループのミッションであります。 (2)事業の内容当社グループは、当社と連結子会社SanBio,Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)の2社により構成されています。当社設立は平成25年2月ですが、SanBio,Inc.は平成13年2月の設立以降、一貫して再生細胞薬の研究開発を進めております。現在は同社を研究開発の主たる拠点としながら、日米両国において研究開発のための提携研究機関、大学病院、研究/製造受託機関、アドバイザー等とのネットワークを構築しております。 主な提携研究機関:スタンフォード大学、ピッツバーグ大学、ノースウェスタン大学、東京大学、北海道大学主なアドバイザー:米国食品医薬局(元)長官、スタンフォード大学(元)学長、米国国立衛生研究所(NIH)老化研究所(元)所長、間葉系幹細胞発見者 当社グループは、大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっております。収入形態の内容は以下のとおりであります。なお、上記のライセンス許諾のタイミングは、ヒトでの安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しております。 ≪当社グループの収入形態≫ 収入形態内容A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。Bマイルストン収入開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。Dロイヤルティ収入製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。E製品供給収入製品供給の対価として得られる収入。 当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。 (3)開発の状況① 当社グループが手掛ける再生細胞薬当社グループが開発を進める再生細胞薬はSB623(神経再生細胞、適応疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、適応疾患は末梢神経障害等)、SB308(筋肉幹細胞、適応疾患は筋ジストロフィー等)の3種類であります。現在、SB623については、慢性期脳梗塞用途の開発を米国で、また、慢性期外傷性脳損傷用途の開発を日米2か国で進めております。米国のSB623慢性期脳梗塞用途についてはライセンス先の大日本住友製薬株式会社との共同開発のもと、平成27年12月にフェーズ2b臨床試験(被験者156人規模、二重盲検試験)が開始され、その後、平成29年12月に最後の被験者の組み入れが実施され、最終的に163人の被験者の組み入れを終了しました。現在は、12か月の経過観察期間中で、試験結果は平成32年1月期前半に発表される予定です。また、同プログラムの日本の開発については、平成21年に帝人株式会社と開発及び販売に関する独占的ライセンス契約を締結しましたが、平成30年2月14日付で本契約を解消することで両社合意いたしました。これにより、国内の本プログラムに関する権利は当社グループに返還され、今後は当社グループが日本における慢性期脳梗塞を適応症とする開発を行っていきます。SB623の慢性期外傷性脳損傷用途については、当社単独で開発を進めており、米国にて、平成27年10月にフェーズ2の臨床試験を開始し、平成28年7月には米国における最初の被験者の組み入れが実施されました。また、日本においては平成28年4月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)より治験実施許可がおりたことから、同臨床試験は現在、日米グローバル治験として進んでおり、日本における被験者の組み入れも平成28年10月に開始しております。当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である再生細胞薬SB623(神経再生細胞)の適応拡大を図ることを最優先に開発を進める方針です。 ≪SB623の概要≫SB623は神経機能を再生する作用を持つ治療薬であります。体の自然な再生プロセスを促進させ、失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生をターゲットとしております。当社グループの再生細胞薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品であります。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品認可取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した神経再生細胞が最終製品SB623です。当社グループでは一人の健常者の骨髄液から患者数千人分の最終製品を製造可能な技術を確立しております。SB623は慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能であります。長期入院も不要で、臨床試験で被験者は一日入院し、投与翌日には退院しております。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能であります。作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2か月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる)、(B)神経新生(神経細胞をつくる)、(C)血管新生(血管をつくる)、(D)抗炎症(炎症を抑える)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されております。特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが動物試験において確認されております。 ② SB623 慢性期脳梗塞の開発状況≪SB623 慢性期脳梗塞プログラムの概要≫脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして(脳出血)、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう疾患であります。脳梗塞は、発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。SB623は、脳梗塞の発作後、慢性期に入り、他に有効な治療法の存在しない症状の改善を狙うアンメットメディカルニーズを満たす医薬品として期待されています。 ≪臨床試験の状況≫当社グループでは、平成23年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験(フェーズ1とフェーズ2の一部を同時に行い、再生細胞薬の安全性と有効性を同時に確認したため、フェーズ1/2aとしています。)を実施し、平成26年2月に投与後6カ月の効果測定が完了しました。この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、脳梗塞患者の運動機能が改善したこと(有効性)が確認されました。 下図は米国で慢性期脳梗塞を対象に行ったフェーズ1/2a臨床試験の結果の一部を、リハビリなどで運動機能の効果を測定する際に使われる代表的な指標Fugl-Meyer Motor Scale(フューゲルマイヤー運動機能)を使ってまとめたものです。横軸はSB623投与後の経過月数、縦軸は運動機能の改善度合いであります。縦軸に示された数値が高くなるほど、機能改善の度合いが大きいことを示しております。投与前と投与後の機能改善例として、車いすが必要な患者が歩けるようになった、動かなかった腕が上がるようになった、うまく話すことができなかった患者がスムーズに話すことができるようになった等の事例が確認されております。 本フェーズ1/2a臨床試験に続き、平成27年12月には、北米でのライセンス先である大日本住友製薬株式会社との共同開発によるフェーズ2b臨床試験(被験者156人規模、二重盲検試験)を開始し、翌平成28年3月には最初の被験者の組み入れを開始し、平成29年12月に最終的に163人の被験者の組み入れを終了しました。現在、投与後12か月の経過観察期間中であり、結果は平成32年1月期前半に発表される予定です。また、同プログラムの日本の開発については、平成21年に帝人株式会社と開発および販売に関する独占的ライセンス契約を締結しましたが、平成30年2月14日付で本契約を解消することで両社合意いたしました。これにより、国内の本プログラムに関する権利は当社グループに返還され、今後は当社グループが日本における慢性期脳梗塞を適応症とする開発を行っていきます。 ③ SB623 慢性期外傷性脳損傷の開発状況≪SB623 慢性期外傷性脳損傷プログラム≫SB623は神経機能の再生を促すことから、慢性期脳梗塞以外にも、中枢神経系の多くの疾患への適応が見込まれます。とりわけ外傷性脳損傷については、受傷直後こそ症状は異なりますが、慢性期においては、脳梗塞とよく似た症状であるとともに、投与方法なども脳梗塞と同様の方法を採用できるといった点もあり、神経機能の再生を促すSB623の次の適応として可能性が高い疾患です。外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり、脳が傷つくことによって起こる疾患であります。脳の損傷によって、半身の麻痺や感覚障害・記憶障害等の高次脳機能障害症状が起こります。外傷性脳損傷ではリハビリ等による改善を期待できる期間は脳梗塞に比べてやや長いものの、損傷後1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされています。当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2a臨床試験においてSB623の安全性が示唆されたことで、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ1をスキップしフェーズ2から開始しており、米国では平成28年4月に最初の被験者の組み入れを実施し、その後、日本においても治験許可が下りたことから、日米グローバル試験(被験者52人規模、二重盲検試験)として進めています。本試験については、平成30年4月に予定組み入れ被験者数52人のところ最終的に61人の被験者の組み入れを終了しました。今後は、6か月の経過観察期間を経て、日本における条件・期限付き早期承認制度を活用することにより当社SB623プログラムの中では最も早い販売を目指してまいります。具体的には平成31年1月期中の結果公表と平成32年1月期中の承認申請を目指します。 ④ その他のパイプラインの開発状況≪SB623 網膜疾患プログラム≫SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性であります。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしております。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性であります。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されております。平成26年1月に、網膜疾患の動物試験の結果をもとに、米国食品医薬局とINDミーティングを実施いたしました。現在はドライ型加齢黄斑変性を対象疾患として、臨床試験の実施許諾に必要な非臨床試験を実施しております。網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しております。 ≪SB623その他の疾患への展開≫パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施いたします。アルツハイマー病等その他の疾患については動物試験において適応可能性について検討してまいります。その他の用途においても、初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しております。 ≪SB618≫再生細胞薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用を持った治療薬でありますが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞であります。SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養いたします。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えられます。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷について動物試験での効果が確認されており、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めております。 ≪SB308≫再生細胞薬SB308は骨髄由来の筋肉幹細胞であります。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気であります。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの動物試験で、その応用可能性が示唆されています。 ⑤ パートナー製薬会社との契約の締結状況当社グループでは、SB623の脳梗塞用途の開発、製造並びに販売について、大日本住友製薬株式会社と米国及びカナダにおける共同開発契約及び販売権に係る契約を締結しており、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされております。日本においては、SB623の脳梗塞用途について平成21年に帝人株式会社と開発権及び販売権に係る契約を締結しましたが、平成30年2月14日をもって、本契約を解消することで合意しました。今後は、当社が日本における当該プログラムの開発を進めていく予定です。 ≪大日本住友製薬株式会社との契約の概要≫平成26年9月に締結しました当社グループと大日本住友製薬株式会社との契約により、当社グループは米国及びカナダにおけるSB623脳梗塞用途の開発・販売権を大日本住友製薬株式会社にライセンス許諾しました。当該契約に基づき、今後は、SB623脳梗塞用途の当該地域における開発費用は当社グループ、大日本住友製薬株式会社それぞれが一定割合を分担し、また販売に係る費用は大日本住友製薬株式会社が全額を負担することになります。また、契約締結時の契約一時金に加え、開発段階では、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金の合計額が当社グループの収入となり、製品上市後は、売上に応じた(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入の合計額が当社グループの収入となる見込みであります。 今後は、SB623の慢性期脳梗塞用途のその他の地域の開発権及び販売権、並びに外傷性脳損傷等、その他用途の世界各地における開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携のみならず、自社販売の可能性も含め検討してまいります。 (4)事業の特徴① 収益性の確保に向けた取り組み(ⅰ)他家(たか)移植であること一般に再生医療は、自家(じか)移植と他家(たか)移植に分けられます。自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法であります。この場合、細胞調整に手間がかかる、個人間のばらつきが大きくなる、費用が高額化する等、実用化に当たっての課題が存在しております。一方、当社グループが手掛ける再生細胞薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっております。 (ⅱ)量産化技術が確立されていることドナーの骨髄液を大量に培養して、均質な製品を製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されており、製品販売後の量産化に対応できる段階に達しております。なお、当社グループの再生細胞薬は、骨髄液由来の間葉系幹細胞を細胞源としているため、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクが低く、安全性に優れていると認識しております。また、骨髄液は健常者から取得することが一般的となっていることもあり、大半が受精卵の破壊を伴うES細胞由来または中絶を伴う胎児由来の細胞を使用し倫理的な点が懸念されるのに対して、骨髄液由来のSB623はそうした問題もなく臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えております。 (ⅲ)製品供給権が確保されていること他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。一方、当社グループの再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品となっております。そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することについて契約上の取り決めがなされております。 ② 対象となる患者数の多さ当社グループが手掛ける再生細胞薬は、世界的に旧来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、脳卒中(脳梗塞を含む)の患者数は、米国において約660万人(出典:Heart Disease and Stroke Statistics - 2016 Update)、日本において約117万人(出典:平成26年(2014)患者調査)と推計され、このうち一定割合が慢性期脳梗塞の患者と見込まれます。脳梗塞のほか、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、再生細胞薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えております。 ③ 開発に必要な知的財産を自己保有当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の開発に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308)の基本特許は全て取得済みであります。平成27年3月3日に当社グループの再生細胞薬SB623に関する物質特許(注)が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬SB623及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しており、今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めてまいります。特許取得地域については、開発を進捗させている米国に加え、今後、開発を進める予定の日本、欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、イスラエル、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における臨床試験、製造開発、製品販売に向けた基盤の整備を進めております。 ≪基本特許取得地域≫米国、日本、イギリス、ドイツ、デンマーク、アイルランド、スペイン、スイス、ギリシャ、スウェーデン、フランス、ベルギー、オランダ、イタリア、オーストリア、フィンランド、ポルトガル、ポーランド、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、イスラエル ④ 今後の展開当社の主力開発品である神経機能の再生を促す細胞薬SB623については、米国における慢性期脳梗塞用途のフェーズ2bの被験者組み入れが終了し、現在投与後12か月の経過観察中であり、その結果については平成32年1月期前半に発表される予定です。また、同プログラムの日本の開発については、平成21年に帝人株式会社と開発及び販売に関する独占的ライセンス契約を締結しましたが、平成30年2月14日付で本契約を解消することで両社合意いたしました。これにより、国内の本プログラムに関する権利は当社グループに返還され、今後は当社グループが日本における慢性期脳梗塞を適応症とする開発を行っていきます。外傷性脳損傷用途については、脳梗塞のフェーズ1/2a臨床試験で安全性を示唆するデータが確認されたことから、米国においてフェーズ1をスキップして、フェーズ2から試験が開始されています。同試験は、平成28年4月に米国で最初の被験者の組入れを実施して以降、日本でも医薬品医療機器総合機構(PMDA)より治験実施許可がおりたことから、日米で組み入れを進めており、平成30年4月に予定組み入れ被験者数52人のところ最終的に61人の被験者の組み入れを終了しました。今後は、6か月の経過観察期間を経て、日本における条件・期限付き早期承認制度を活用することにより当社SB623プログラムの中では最も早い販売を目指してまいります。具体的には平成31年1月期中の結果公表と平成32年1月期中の承認申請を目指します。このほか、SB623の適応疾患拡大として、すでに動物試験で良好な結果が得られている、網膜変性疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施してまいります。また、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、動物試験で適応可能性について検討してまいります。 <用語解説> 番号用語意味・内容1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。5再生細胞薬病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある。6細胞調整ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。8米国食品医薬局食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。9分注一定量で少量ずつに分けること。10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。14INDミーティングInvestigational New Drug Exemptiom。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。
FY2017|10,838 文字|出典 docID: S100A51F
3【事業の内容】(1)当社の事業領域当社グループ(以下、当社及び連結子会社SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)の2社を指します。)は「再生細胞薬の開発を通じて、アンメットメディカルニーズ(未だ有効な治療法がない治療ニーズ)を充たし、ステークホルダーにとっての価値を創造する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、SanBio, Inc.を研究開発の主たる拠点として再生細胞薬の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生細胞事業を展開しております。 ≪再生細胞薬とは≫当社グループが手掛ける再生細胞薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品であります。 当社グループでは、主に中枢神経係の疾患(眼科を含む)における、慢性期脳梗塞(発症後6カ月が経過した脳梗塞)、慢性期外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした治療薬の販売を目指しております。例えば、当社グループが治療薬の開発を進めている慢性期脳梗塞では、これまでリハビリやリハビリ補助機器等による理学療法による対処が主流とされてきた疾患であり、麻痺、半身不随等が残った場合の有効な治療薬は存在しておりませんでした。このような領域において再生細胞薬による治療法を確立することで、世界中の上記の疾患を抱えた患者の身体機能の改善に寄与することが当社グループのミッションであります。 (2)事業の内容当社グループは、当社と連結子会社SanBio,Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)の2社により構成されています。当社設立は平成25年2月ですが、SanBio,Inc.は平成13年2月の設立以降、一貫して再生細胞薬の研究開発を進めております。現在は同社を研究開発の主たる拠点としながら、日米両国において研究開発のための提携研究機関、大学病院、研究/製造受託機関、アドバイザー等とのネットワークを構築しております。 主な提携研究機関:スタンフォード大学、ピッツバーグ大学、ノースウェスタン大学主なアドバイザー:米国食品医薬局(元)長官、スタンフォード大学(元)学長、米国国立衛生研究所(NIH)老化研究所(元)所長、間葉系幹細胞発見者 当社グループは、大学等の研究機関から導入した技術を当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっております。収入形態の内容は以下のとおりであります。なお、上記のライセンス許諾のタイミングは、ヒトでの安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しております。 ≪当社グループの収入形態≫ 収入形態内容A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。Bマイルストン収入開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。Dロイヤルティ収入製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。E製品供給収入製品供給の対価として得られる収入。 当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。 (3)開発の状況① 当社グループが手掛ける再生細胞薬当社グループが開発を進める再生細胞薬はSB623(神経再生細胞、適応疾患は慢性期脳梗塞、慢性期外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、適応疾患は末梢神経障害等)、SB308(筋肉幹細胞、適応疾患は筋ジストロフィー等)の3種類であります。現在、SB623については、慢性期脳梗塞用途の開発を米国で、また、慢性期外傷性脳損傷用途の開発を日米2か国で進めております。米国のSB623慢性期脳梗塞用途についてはライセンス先の大日本住友製薬株式会社との共同開発のもと、平成27年12月にフェーズ2bの臨床試験(被験者156名規模)が開始され、翌平成28年3月には最初の被験者への組み入れが実施され、その後開発が進展しています。SB623の慢性期外傷性脳損傷用途については、当社単独で開発を進めており、米国にて、平成27年10月にフェーズ2の臨床試験を開始し、平成28年7月には米国における最初の被験者の組み入れが実施されました。また、日本においては平成28年4月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)より治験実施許可がおりたことから、同臨床試験は現在、日米グローバル治験として進んでおり、日本における被験者の組み入れも平成28年10月に開始しております。当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補である再生細胞薬SB623(神経再生細胞)の適応拡大を図ることを最優先に開発を進める方針です。 ≪SB623の概要≫SB623は神経機能を再生する作用を持つ治療薬であります。体の自然な再生プロセスを促進させ、失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生をターゲットとしております。当社グループの再生細胞薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して均質な細胞を大量製造して製品化した他家由来の医薬品であります。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品認可取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液から得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した神経再生細胞が最終製品SB623です。当社グループでは一人の健常者の骨髄液から患者数千人分の最終製品を製造可能な技術を確立しております。SB623は慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能であります。長期入院も不要で、臨床試験で被験者は一日入院し、投与翌日には退院しております。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能であります。作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月間の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる)、(B)神経新生(神経細胞をつくる)、(C)血管新生(血管をつくる)、(D)抗炎症(炎症を抑える)、(E)バイオブリッジの形成(成人の脳の奥深いところに僅かに存在する神経細胞の元である神経幹細胞を誘引ないしは増幅する)等複合的に作用することを示唆するデータが確認されております。特に、上記作用メカニズムのうち(E)については、通常、脳が損傷を受けた場合、損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありませんが、同じ条件下でSB623を損傷部周辺に移植すると、その作用により、脳の奥深くに僅かに存在していた神経幹細胞が誘引ないしは増幅され損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられることになります。こうした作用データが動物試験において確認されております。② SB623 慢性期脳梗塞の開発状況≪SB623 慢性期脳梗塞プログラムの概要≫脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして(脳出血)、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう疾患であります。脳梗塞は、発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。SB623は、脳梗塞の発作後、慢性期に入り、他に有効な治療法の存在しない症状の改善を狙うアンメットメディカルニーズを満たす医薬品として期待されています。 ≪臨床試験の状況≫当社グループでは、平成23年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2a臨床試験(フェーズ1とフェーズ2の一部を同時に行い、再生細胞薬の安全性と有効性を同時に確認したため、フェーズ1/2aとしています。)を実施し、平成26年2月に投与後6カ月の効果測定が完了しました。この結果、SB623に起因する重篤な副作用は認められないこと(安全性)と、脳梗塞患者の運動機能が改善したこと(有効性)が確認されました。 下図は米国で慢性期脳梗塞を対象に行ったフェーズ1/2aの臨床試験の結果の一部を、リハビリなどで運動機能の効果を測定する際に使われる代表的な指標Fugl-Meyer Motor Scale(フューゲルマイヤー運動機能)を使ってまとめたものです。 横軸はSB623投与後の経過月数、縦軸は運動機能の改善度合いであります。縦軸に示された数値が高くなるほど、機能改善の度合いが大きいことを示しております。投与前と投与後の機能改善例として、車いすが必要な患者が歩けるようになった、動かなかった腕が上がるようになった、うまく話すことができなかった患者がスムーズに話すことができるようになった等の事例が確認されております。 本フェーズ1/2a臨床試験に続き、平成27年12月には、北米でのライセンス先である大日本住友製薬株式会社との共同開発によるフェーズ2b臨床試験(被験者156名規模)を開始し、翌平成28年3月には最初の被験者の組み入れを開始しております。現在、フェーズ2bの早期完了を目指し開発を加速しているところです。③ SB623 慢性期外傷性脳損傷の開発状況≪SB623慢性期外傷性脳損傷プログラム≫SB623は神経機能の再生を促すことから、慢性期脳梗塞以外にも、中枢神経系の多くの疾患への適応が見込まれます。とりわけ外傷性脳損傷については、受傷直後こそ症状は異なりますが、慢性期においては、脳梗塞とよく似た症状であるとともに、投与方法なども脳梗塞と同様の方法を採用できるといった点もあり、神経機能の再生を促すSB623の次の適応として可能性が高い疾患です。外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり、脳が傷つくことによって起こる疾患であります。脳の損傷によって、半身の麻痺や感覚障害・記憶障害等の高次脳機能障害症状が起こります。外傷性脳損傷ではリハビリ等による改善を期待できる期間は脳梗塞に比べてやや長いものの、損傷後1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされています。当社グループでは、慢性期脳梗塞用途のフェーズ1/2aにおいてSB623の安全性が示唆されたことで、外傷性脳損傷を対象とした臨床試験については、フェーズ1をスキップしたフェーズ2を平成27年10月に開始しております。なお、SB623の外傷性脳損傷用途ではPOCまで自社で開発を進めたのち、製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階においては、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しております。 ④ その他のパイプラインの開発状況≪SB623網膜疾患プログラム≫SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適応も期待されます。対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性であります。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしております。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が死滅していく結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性であります。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されております。平成26年1月に、網膜疾患の動物試験の結果をもとに、米国食品医薬局とINDミーティングを実施いたしました。現在はドライ型加齢黄斑変性を対象疾患として、臨床試験の実施許諾に必要な非臨床試験を実施しております。網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しております。 ≪SB623その他の疾患への展開≫パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施いたします。アルツハイマー病等その他の疾患については動物試験において適応可能性について検討してまいります。その他の用途においても、初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しております。 ≪SB618≫再生細胞薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用を持った治療薬でありますが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞であります。SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養いたします。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えられます。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷について動物試験での効果が確認されており、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めております。 ≪SB308≫再生細胞薬SB308は骨髄由来の筋肉幹細胞であります。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気であります。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの動物試験で、その応用可能性が示唆されています。⑤ パートナー製薬会社との契約の締結状況当社グループでは、SB623の脳梗塞用途の開発、製造並びに販売について、大日本住友製薬株式会社と米国及びカナダにおける共同開発契約及び販売権に係る契約を締結しており、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めがなされております。また、日本においてはSB623の脳梗塞用途について帝人株式会社と開発権及び販売権に係る契約を締結しております。 ≪大日本住友製薬株式会社との契約の概要≫平成26年9月に締結しました当社グループと大日本住友製薬株式会社との契約により、当社グループは米国及びカナダにおけるSB623脳梗塞用途の開発・販売権を大日本住友製薬株式会社にライセンス許諾しました。当該契約に基づき、今後は、SB623脳梗塞用途の当該地域における開発費用は当社グループ、大日本住友製薬株式会社それぞれが一定割合を分担し、また販売に係る費用は大日本住友製薬株式会社が全額を負担することになります。また、契約締結時の契約一時金に加え、開発段階では、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金の合計額が当社グループの収入となり、製品上市後は、売上に応じた(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入の合計額が当社グループの収入となる見込みであります。 ≪帝人株式会社との契約の概要≫平成21年12月に締結しました当社グループと帝人株式会社との契約により、当社グループは日本におけるSB623脳梗塞用途の開発・販売権を帝人株式会社にライセンス許諾しました。当該契約に基づき、SB623脳梗塞用途の日本における開発・販売の全ての費用を帝人株式会社が負担します。また、当該ライセンス許諾の対価として、製品上市後は、製品売上のうちの一定割合が(D)ロイヤルティ収入として当社グループに支払われるほか、製品供給権は当社グループで保有したままとし、製品上市後の製品売上の一定割合が(E)製品供給収入として当社グループに支払われる見込みであります。 今後は、SB623の慢性期脳梗塞用途のその他の地域の開発権及び販売権、並びに外傷性脳損傷等、その他用途の世界各地における開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携を検討してまいります。(4)事業の特徴① 収益性の確保に向けた取り組み(ⅰ)他家(たか)移植であること一般に再生医療は、自家(じか)移植と他家(たか)移植に分けられます。自家移植の再生医療は、患者の細胞や組織を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法であります。この場合、細胞調整に手間がかかる、個人間のばらつきが大きくなる、費用が高額化する等、実用化に当たっての課題が存在しております。一方、当社グループが手掛ける再生細胞薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっております。 (ⅱ)量産化技術が確立されていることドナーの骨髄液を大量に培養して、均質な製品を製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されており、製品販売後の量産化に対応できる段階に達しております。なお、当社グループの再生細胞薬は、骨髄液由来の間葉系幹細胞を細胞源としているため、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクが低く、安全性に優れていると認識しております。また、骨髄液は健常者から取得することが一般的となっていることもあり、大半が受精卵の破壊を伴うES細胞由来または中絶を伴う胎児由来の細胞を使用し倫理的な点が懸念されるのに対して、骨髄液由来のSB623はそうした問題もなく臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと考えております。 (ⅲ)製品供給権が確保されていること他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。一方、当社グループの再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品となっております。そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することについて契約上の取り決めがなされております。 ② 対象となる患者数の多さ当社グループが手掛ける再生細胞薬は、世界的に旧来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズの高い)中枢神経系疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、脳卒中(脳梗塞を含む)の患者数は、米国において約660万人(出典:Heart Disease and Stroke Statistics - 2016 Update)、日本において約117万人(出典:平成26年(2014)患者調査)と推計され、このうち一定割合が慢性期脳梗塞の患者と見込まれます。脳梗塞のほか、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、脊髄損傷、パーキンソン病及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系疾患に対して、再生細胞薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えております。 ③ 開発に必要な知的財産を自己保有当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の開発に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308)の基本特許は全て取得済みであります。平成27年3月3日に当社グループの再生細胞薬SB623に関する物質特許(注)が米国において承認されました。当社は、独自の細胞薬SB623及びその後続開発品について、物質特許のみならず、製造・用途に係る特許、及び周辺特許も取得しており、今後も引き続き競争力の源泉となる知的財産権確保に努めております。特許取得地域については、開発を進捗させている米国に加え、今後、開発を進める予定の日本、欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、イスラエル、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における臨床試験、製造開発、製品販売に向けた基盤の整備を進めております。 ≪基本特許取得地域≫米国、日本、イギリス、ドイツ、デンマーク、アイルランド、スペイン、スイス、ギリシャ、スウェーデン、フランス、ベルギー、オランダ、イタリア、オーストリア、フィンランド、ポルトガル、ポーランド、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、イスラエル ④ 今後の展開当社の主力開発品である神経機能の再生を促す細胞薬SB623については、米国における慢性期脳梗塞用途のフェーズ2bが開始しているほか、外傷性脳損傷用途の臨床試験についても、脳梗塞のフェーズ1/2a試験において安全性を示唆するデータが確認されたことから、フェーズ1をスキップして、フェーズ2から試験が開始されています。また、外傷性脳損傷については、平成28年4月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)より日本での治験実施許可がおりたことから、すでに米国で開始しているフェーズ2臨床試験を日米2か国のグローバル治験として、平成28年10月には日本からの被験者の組み入れも開始しています。今後は、米国における慢性期脳梗塞用途フェーズ2b(被験者156人規模)及び日米で実施している外傷性脳損傷用途フェーズ2(日米合計で被験者52人規模)について被験者の早期組み込み完了を目指すとともに、日本においては、再生医療等製品に係る早期承認制度の活用を視野に早期の上市に向けて、開発活動の一層の加速に努めていく計画です。このほか、SB623の適応疾患拡大として、すでに動物試験で良好な結果が得られている、網膜変性疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性等)、脊髄損傷、パーキンソン病といった疾患領域に関しては、臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施してまいります。また、将来的には、アルツハイマー病やその他の疾患について、動物試験で適応可能性について検討してまいります。 <用語解説> 番号用語意味・内容1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと。2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること。3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと。4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと。5再生細胞薬病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある。6細胞調整ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう。7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズ1からフェーズ3の3段階がある。8米国食品医薬局食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと。9分注一定量で少量ずつに分けること。10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる。11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの。12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの。13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)。14INDミーティングInvestigational New Drug Exemptiom。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。