4021

日産化学(4021)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

化学 素材・化学

事業の概要

  • 主要事業の多角化
    日産化学は、化学品、機能性材料、農業化学品、ヘルスケア、卸売といった多岐にわたる事業を展開しています。基礎化学品から最先端のディスプレイ材料や半導体材料、さらには農薬や医薬品原薬まで、幅広い分野で製品を提供し、収益源を分散させています。これにより、特定の市場変動リスクを低減し、安定的な経営基盤を構築しています。
  • 研究開発型ビジネスモデル
    同社は、精密有機合成や機能性高分子設計など5つのコア技術に加え、微生物制御や情報科学といった新技術を育成し、新製品開発に注力しています。年間売上高の7~9%を研究開発費に投じ、総合職人員の約40%を研究に従事させることで、技術革新を追求し、高付加価値製品の創出を通じて収益を上げています。
  • グローバルな事業展開
    日産化学は、日本国内だけでなく、NCK Co., Ltd.(機能性材料)、Nissan Chemical America Corporation(半導体材料)、Nissan Chemical Europe S.A.S.(農薬)など、海外にも子会社や関連会社を展開しています。これにより、世界中の市場ニーズに対応し、製品供給を行うことで、事業の成長機会を広げ、国際的な競争力を高めています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • 化学品事業の収益性
    化学品事業は売上高251.58億円に対し、営業利益は1.79億円と、他の事業と比較して利益率が低い傾向にあります。基礎化学品(メラミン、硫酸、硝酸、アンモニア等)やファインケミカル(特殊エポキシ、難燃剤、殺菌消毒剤等)を提供しており、原燃料価格の変動や市場の需給バランスの影響を受けやすい特性があります。
  • 機能性材料事業の成長性
    機能性材料事業は売上高736.14億円、営業利益289.8億円と、最も高い営業利益を上げており、同社の稼ぎ頭となっています。ディスプレイ材料(液晶表示用材料ポリイミド等)、半導体材料(半導体用反射防止コーティング材等)、無機コロイド(電子材料用研磨剤等)を手掛け、スマート社会の実現に貢献する高付加価値製品が主力です。
  • 農業化学品事業の安定性
    農業化学品事業は売上高707.11億円、営業利益255.71億円と、機能性材料事業に次ぐ高い収益を上げています。農薬(除草剤、殺虫剤、殺菌剤等)や動物用医薬品原薬を提供し、安定した食料供給に貢献しています。新規薬剤の探索から開発・製造・販売まで一貫して行い、製品ポートフォリオの拡充を通じて安定的な収益を確保しています。
2025-03 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
Chemicals 事業 252 2 0.7%
PerformanceMaterials 事業 736 290 39.4%
Agrochemicals 事業 707 256 36.2%
Medicines 事業 59 19 32.1%
Trading 事業 904 41 4.5%
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2025|794 文字
3【事業の内容】当社グループ(当社および当社の関係会社)は、連結財務諸表提出会社(以下「当社」という。)および子会社34社、関連会社7社により構成されております。 事業の内容の区分とセグメント区分は同一であり、当社および関係会社の当該事業に係る位置付けならびに各セグメントの関連は、次のとおりであります。 区分主要製品・事業事業を構成する会社化学品事業基礎化学品当社、(メラミン※2022年6月生産停止、硫酸、硝酸、アンモニア等)その他会社 1社ファインケミカル (封止材用等特殊エポキシ、難燃剤、殺菌 消毒剤等) (会社総数 2社)機能性材料事業ディスプレイ材料当社、(液晶表示用材料ポリイミド等)NCK Co., Ltd.、半導体材料Nissan Chemical America Corporation、(半導体用反射防止コーティング材等)その他会社 2社無機コロイド (電子材料用研磨剤、各種表面処理剤等) (会社総数 5社)農業化学品事業農薬当社、(除草剤、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、Nissan Chemical Europe S.A.S. 植物成長調整剤) Nissan Bharat Rasayan Pvt., Ltd.動物用医薬品原薬NCアグロ函館㈱その他会社 7社 (会社総数 10社)ヘルスケア事業高コレステロール血症治療薬原薬当社ファインテック(課題解決型受託事業) (会社総数 1社)卸売事業化学品の卸売等 日星産業㈱、その他会社 10社(会社総数 11社)その他の事業肥料(高度化成等)、造園緑化、運送、プラントエンジニアリング、硫酸の製造、電子材料の製造販売等日本肥糧㈱、日産物流㈱、日産緑化㈱、日産エンジニアリング㈱、NC東京ベイ㈱、日本ポリテック㈱ その他会社 10社 (会社総数 16社) 以上の当社グループについて図示すると、次のとおりであります。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
高純度薬品や先端材料、新規薬剤開発に注力し、特定の技術優位性を持つため。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
精密有機合成、機能性高分子設計、微粒子制御、生物評価、光制御などのコア技術。
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか 中程度
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:事業ポートフォリオ戦略の失敗 / 新製品の開発、外部の技術革新 / 原料調達、製品供給の不安定化
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 10 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★☆☆
根拠:中程度ブランド・特許・許認可

日産化学は、農薬・医薬中間体分野で長年の研究開発により培われた独自の合成技術とノウハウを持つ。特に、主力農薬である殺菌剤「フェナックス」や殺虫剤「アセフェート」などの有効成分開発におけるIPは、競合他社に対する参入障壁となっている。また、医薬中間体分野でも、特定の医薬品原薬製造における高度な有機合成技術は、製薬会社との長期的な信頼関係と新規取引獲得の源泉となっている。

スイッチングコスト★★☆☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

農薬事業においては、農家が一度効果を実感し、慣行として使用している農薬を切り替えるには、効果の不確実性や新たなコスト発生のリスクが伴うため、一定のスイッチング・コストが存在する。しかし、より安価で同等以上の効果を持つ代替品が登場した場合や、規制変更があった場合には、乗り換えの可能性も否定できない。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

日産化学の事業モデルは、直接的なネットワーク効果を生み出す性質のものではない。製品の価値は、個々の性能や効果に依存し、ユーザー数の増加によって製品自体の価値が向上するような構造ではない。

コスト優位★★☆☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

化学品製造においては、スケールメリットや製造プロセスの効率化によるコスト削減が競争力の源泉となりうる。日産化学も生産効率の向上に努めているが、特殊化学品分野では、研究開発費や設備投資が先行するため、汎用品化学品のような圧倒的なコスト優位性を確立しているとは言えない。原料調達力や製造技術の改善によるコスト競争力はある程度存在する。

規模の経済★★★☆☆
根拠:中程度規模が参入障壁になる

農薬事業においては、グローバルな販売網と一定の生産規模を持つことで、開発・製造コストを回収し、収益性を確保している。特に、特定の地域や作物に特化した製品群においては、その市場規模に対して一定のシェアを確保しており、効率的な事業運営が可能となっている。しかし、グローバルな大手化学メーカーと比較すると、規模の経済性は限定的である。

  • 多様な事業ポートフォリオ
    化学品、機能性材料、農業化学品、ヘルスケア、卸売と多角的な事業を展開しており、特定の市場や製品に依存しない安定した収益構造を築いています。例えば、ディスプレイ材料や半導体材料といった成長分野から、社会インフラを支える基礎化学品まで幅広く手掛けることで、景気変動や市場トレンドの変化に強い事業基盤を持っています。
  • 高度な研究開発力
    精密有機合成、機能性高分子設計、微粒子制御、生物評価、光制御といった5つのコア技術に加え、微生物制御や情報科学といった新技術の育成に注力しています。年間売上高の7~9%を研究開発費に投じ、総合職人員の約40%を研究開発に充てることで、EUV用半導体材料や次世代ディスプレイ材料など、最先端の技術を要する製品開発を可能にしています。
  • グローバルな供給体制と顧客基盤
    海外に子会社や関連会社を多数持ち、グローバルな生産・販売ネットワークを構築しています。これにより、世界30カ国で承認・販売されている高コレステロール血症治療薬原薬のように、国際的な市場で製品を提供できる体制が整っています。また、多様な産業分野の顧客に対して製品を供給することで、安定した顧客基盤を確保しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 中長期的な会社の経営戦略並びに会社の対処すべき課題 当社グループは、2022年度に6ヵ年の中期経営計画Vista2027を始動しました。前半3ヵ年(2022年度~2024年度)のStageⅠにおいて、最終年度の2024年度営業利益は568億円と最高益を更新しましたが、数値目標に対して未達となりました。その要因を分析し、主要課題は新製品・新事業の創出、適切な経営資源配分、化学品セグメントの収益性改善であると捉えました。これらの解決に向け、M&A(合併・買収)を含め戦略投資を積極的に行うことで、事業ポートフォリオの拡充、現有事業の拡大および製品開発期間の短縮を図ります。また、化学品セグメントでは、2024年度にサブセグメントであるファインケミカルの固定資産を減損処理しました。2025年度以降、不採算製品の見極めや種々のコストダウンをさらに進め、2027年度には営業利益率5%以上を確保します。 2025年4月、当社グループは、後半3ヵ年(2025年度~2027年度)にあたるStageⅡをスタートさせました。最終年度(2027年度)の数値目標を売上高2,930億円、営業利益650億円と定め、最重要課題を新製品の創出としたうえで、基本戦略として次の3つを掲げました。(1)「現有事業の利益拡大」(2)「2030年を見据えた新製品の開発」(3)「事業基盤の強化」 第1の戦略「現有事業の利益拡大」では、成長が見込まれる機能性材料および農業化学品セグメントへM&Aを含めて経営資源を集中的に投下し、既存製品や新製品の販売・開発を進め、利益の最大化を図ります。戦略の具体的施策として、機能性材料セグメントでは、半導体材料の次世代製品創出に呼応した組織改定を2025年4月に行いました。今後、研究部門を中心に段階的に人員や評価設備を増大、かつ半導体向け研究・開発の機能を拡充し、顧客満足度の高い製品・サービスを提供します。農業化学品セグメントでは、2027年までに当社開発原体を含む農薬新製品(除草剤2種、殺ダニ剤1種、殺虫剤1種)を相次ぎ上市し、国内販売シェア1位を堅持することに加え、海外向け販売をさらに伸ばします。化学品セグメントでは前述の施策に加え、高収益性製品の普及拡大、ヘルスケアセグメントではファインテック事業での原薬増販および新規原薬の受託製造販売に取り組みます。 第2の戦略「2030年を見据えた新製品の開発」では、2028年度以降を視野に入れ、新たな成長の柱となる製品創出を目指します。環境エネルギー領域では、二次電池材料、水素エネルギー材料やペロブスカイト太陽電池用材料などの創出に注力します。情報通信領域では、ターゲット材料を明確化し、半導体向けの実装材料、光導波路材料、電子機器放熱材およびCIS(CMOSイメージセンサー)や位相差フィルム用配向材の開発を加速します。ライフサイエンス領域の創薬研究では、新規動物薬の創出加速に向け有機合成研究員を増員するとともに良好関係にある協業先とパートナーシップを高めた共同研究開発に合意しました。また、新農薬原体や核酸医薬品創出の開発ステージアップに注力するとともに、将来有望なバイオ分野については、新たなコア技術の獲得、外資企業との協業を推進します。 第3の戦略「事業基盤の強化」では、当社グループの企業理念およびあるべき姿の実現のため、人材育成を推進し、研究開発の基盤や機能を拡充します。人材育成では、挑戦・共創を実践する人材、目利き力を備えた人材輩出の基盤となる組織風土づくりのため、人材開発の本質は「社員一人ひとりが自発的に自己研鑽を積み、自己の成長を図ること」と認識し、研修制度を充実することで社員をバックアップします。また、データサイエンティストの育成、マテリアルズ・インフォマティクス(データ駆動型研究)による素材・材料の探索、最先端技術を活用した解析技術などを通して、事業を支える研究開発の基盤や機能の増強および早期化・効率化を図ります。加えて、IPランドスケープによる市場分析などにより、知的財産の面から事業拡大を支援し、事業の競争優位性を向上するための特許戦略を実行します。 StageⅡでは、前述の戦略遂行に加え、持続可能な社会に貢献するため、当社のマテリアリティ(重要課題)要素の重要業績評価指標(KPI)である、「日産化学サステナブルアジェンダ(社会課題解決に貢献する製品・サービス)の連結売上高に占める割合」の2027年度目標を60%以上へ、「食料問題への貢献」の2027年度目標を2021年度比+25%以上へ、それぞれ引き上げました。「気候変動の緩和」に資する温室効果ガス排出量削減においては、StageⅡ期間内に、硝酸プラントから排出する亜酸化窒素の削減設備を完工し、2027年度までに2018年度比で30%の削減を実現します。 当社グループは、これまで安定した業績と積極的な株主還元などにより、市場から一定の評価を得てきたと認識しています。より一層期待される企業へと成長戦略を描き、強固な事業ポートフォリオの確立を目指すことに加え、経営の健全性と透明性の向上、経営意思決定の迅速化、リスク管理や内部統制システムの強化、コンプライアンスの徹底、社会・環境を配慮した事業活動の推進を通し、すべてのステークホルダーから信頼される企業グループの実現に総力を挙げて取り組んでまいります。 (2)目標とする経営指標当社グループは、株主からの受託資本の運用効率を示す指標である「自己資本当期純利益率(ROE)」、高付加価値企業としての指標となる「売上高営業利益率」を最重要指標と認識し、今後も収益力の一層の強化に向けた事業展開を推進してまいります。なお、2025年4月に始動した中期経営計画「Vista2027 StageⅡ」では、数値目標を以下のように定めております。 非財務指標気候変動の緩和温室効果ガス(GHG)排出量2018年度比30%以上削減ダイバーシティの推進研究員に占める女性総合職比率18%以上人々の豊かな暮らしに役立つ新たな価値の提供連結売上高に占める社会課題解決に貢献する製品・サービスの合計売上高60%以上人材の確保・育成社員意識調査の設問、人材育成に対する肯定回答者65%以上 経営指標売上高営業利益率ROE配当性向総還元性向20%以上18%以上55%以上75%以上
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 中長期的な会社の経営戦略並びに会社の対処すべき課題 当社グループは、2022年度に6ヵ年の中期経営計画Vista2027を始動しました。前半3ヵ年(2022年度~2024年度)のStageⅠにおいて、最終年度の2024年度営業利益は568億円と最高益を更新しましたが、数値目標に対して未達となりました。その要因を分析し、主要課題は新製品・新事業の創出、適切な経営資源配分、化学品セグメントの収益性改善であると捉えました。これらの解決に向け、M&A(合併・買収)を含め戦略投資を積極的に行うことで、事業ポートフォリオの拡充、現有事業の拡大および製品開発期間の短縮を図ります。また、化学品セグメントでは、2024年度にサブセグメントであるファインケミカルの固定資産を減損処理しました。2025年度以降、不採算製品の見極めや種々のコストダウンをさらに進め、2027年度には営業利益率5%以上を確保します。 2025年4月、当社グループは、後半3ヵ年(2025年度~2027年度)にあたるStageⅡをスタートさせました。最終年度(2027年度)の数値目標を売上高2,930億円、営業利益650億円と定め、最重要課題を新製品の創出としたうえで、基本戦略として次の3つを掲げました。(1)「現有事業の利益拡大」(2)「2030年を見据えた新製品の開発」(3)「事業基盤の強化」 第1の戦略「現有事業の利益拡大」では、成長が見込まれる機能性材料および農業化学品セグメントへM&Aを含めて経営資源を集中的に投下し、既存製品や新製品の販売・開発を進め、利益の最大化を図ります。戦略の具体的施策として、機能性材料セグメントでは、半導体材料の次世代製品創出に呼応した組織改定を2025年4月に行いました。今後、研究部門を中心に段階的に人員や評価設備を増大、かつ半導体向け研究・開発の機能を拡充し、顧客満足度の高い製品・サービスを提供します。農業化学品セグメントでは、2027年までに当社開発原体を含む農薬新製品(除草剤2種、殺ダニ剤1種、殺虫剤1種)を相次ぎ上市し、国内販売シェア1位を堅持することに加え、海外向け販売をさらに伸ばします。化学品セグメントでは前述の施策に加え、高収益性製品の普及拡大、ヘルスケアセグメントではファインテック事業での原薬増販および新規原薬の受託製造販売に取り組みます。 第2の戦略「2030年を見据えた新製品の開発」では、2028年度以降を視野に入れ、新たな成長の柱となる製品創出を目指します。環境エネルギー領域では、二次電池材料、水素エネルギー材料やペロブスカイト太陽電池用材料などの創出に注力します。情報通信領域では、ターゲット材料を明確化し、半導体向けの実装材料、光導波路材料、電子機器放熱材およびCIS(CMOSイメージセンサー)や位相差フィルム用配向材の開発を加速します。ライフサイエンス領域の創薬研究では、新規動物薬の創出加速に向け有機合成研究員を増員するとともに良好関係にある協業先とパートナーシップを高めた共同研究開発に合意しました。また、新農薬原体や核酸医薬品創出の開発ステージアップに注力するとともに、将来有望なバイオ分野については、新たなコア技術の獲得、外資企業との協業を推進します。 第3の戦略「事業基盤の強化」では、当社グループの企業理念およびあるべき姿の実現のため、人材育成を推進し、研究開発の基盤や機能を拡充します。人材育成では、挑戦・共創を実践する人材、目利き力を備えた人材輩出の基盤となる組織風土づくりのため、人材開発の本質は「社員一人ひとりが自発的に自己研鑽を積み、自己の成長を図ること」と認識し、研修制度を充実することで社員をバックアップします。また、データサイエンティストの育成、マテリアルズ・インフォマティクス(データ駆動型研究)による素材・材料の探索、最先端技術を活用した解析技術などを通して、事業を支える研究開発の基盤や機能の増強および早期化・効率化を図ります。加えて、IPランドスケープによる市場分析などにより、知的財産の面から事業拡大を支援し、事業の競争優位性を向上するための特許戦略を実行します。 StageⅡでは、前述の戦略遂行に加え、持続可能な社会に貢献するため、当社のマテリアリティ(重要課題)要素の重要業績評価指標(KPI)である、「日産化学サステナブルアジェンダ(社会課題解決に貢献する製品・サービス)の連結売上高に占める割合」の2027年度目標を60%以上へ、「食料問題への貢献」の2027年度目標を2021年度比+25%以上へ、それぞれ引き上げました。「気候変動の緩和」に資する温室効果ガス排出量削減においては、StageⅡ期間内に、硝酸プラントから排出する亜酸化窒素の削減設備を完工し、2027年度までに2018年度比で30%の削減を実現します。 当社グループは、これまで安定した業績と積極的な株主還元などにより、市場から一定の評価を得てきたと認識しています。より一層期待される企業へと成長戦略を描き、強固な事業ポートフォリオの確立を目指すことに加え、経営の健全性と透明性の向上、経営意思決定の迅速化、リスク管理や内部統制システムの強化、コンプライアンスの徹底、社会・環境を配慮した事業活動の推進を通し、すべてのステークホルダーから信頼される企業グループの実現に総力を挙げて取り組んでまいります。 (2)目標とする経営指標当社グループは、株主からの受託資本の運用効率を示す指標である「自己資本当期純利益率(ROE)」、高付加価値企業としての指標となる「売上高営業利益率」を最重要指標と認識し、今後も収益力の一層の強化に向けた事業展開を推進してまいります。なお、2025年4月に始動した中期経営計画「Vista2027 StageⅡ」では、数値目標を以下のように定めております。 非財務指標気候変動の緩和温室効果ガス(GHG)排出量2018年度比30%以上削減ダイバーシティの推進研究員に占める女性総合職比率18%以上人々の豊かな暮らしに役立つ新たな価値の提供連結売上高に占める社会課題解決に貢献する製品・サービスの合計売上高60%以上人材の確保・育成社員意識調査の設問、人材育成に対する肯定回答者65%以上 経営指標売上高営業利益率ROE配当性向総還元性向20%以上18%以上55%以上75%以上
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 (1) 経営成績当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)の国内景気は、インバウンド需要の拡大や所得環境の改善が進む一方で、食品や原材料の価格の高止まりなどを背景に緩やかな回復に留まりました。このような状況のもと、当社グループの事業につきましては、化学品セグメントは、基礎化学品、ファインケミカルともに増収となりました。機能性材料セグメントは、半導体材料が好調に推移したことに加え、無機コロイドおよびディスプレイ材料が増収となりました。農業化学品セグメントは、増収となりました。ヘルスケアセグメントは、減収となりました。 この結果、当期間における業績は以下の結果となり、売上高、各利益ともに前年同期および2月に発表した業績予想を上回りました。 (単位:百万円、百万円未満切捨て) 2024年3月期(実績)2025年3月期(実績)前年比増減 2025年3月期(業績予想)業績予想比増減売上高226,705251,365+24,659 247,600+3,765営業利益48,20156,833+8,631 55,000+1,833経常利益51,62958,018+6,389 55,900+2,118親会社株主に帰属する当期純利益38,03343,043+5,009 40,900+2,143 セグメント別概況は以下のとおりであります。 化学品セグメント 基礎化学品では、高純度硫酸(半導体用洗浄剤)が増収となりました。ファインケミカルでは、環境化学品(プール・浄化槽用殺菌・消毒剤等)やファインオキソコール(化粧品原料等)が増収となりました。 この結果、当セグメントの売上高は378億35百万円(前年同期比22億72百万円増)、営業利益は1億79百万円(同1億31百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は7億円の下ぶれ、営業利益は1億円の上ぶれとなりました。なお、基礎素材であるアンモニアの生産量は前連結会計年度を下回りました。 機能性材料セグメント ディスプレイ材料では、「サンエバー」(液晶配向材用ポリイミド)が増収となりました。半導体材料では、半導体用反射防止コーティング材(ARC®*)および多層材料(OptiStack®*)が顧客の稼働回復を受けて大幅な増収となりました。無機コロイドでは、「スノーテックス」(電子材料用研磨剤、各種表面処理剤等)やオルガノシリカゾル・モノマーゾル(各種コート剤、樹脂添加剤)が増収となりました。 この結果、当セグメントの売上高は1,000億98百万円(前年同期比155億30百万円増)、営業利益は289億80百万円(同64億49百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は27億円の上ぶれ、営業利益は7億円の上ぶれとなりました。* ARC®、OptiStack®はBrewer Science, Inc.の登録商標です。 農業化学品セグメントフルララネル(動物用医薬品原薬)は増収となりました。国内向け農薬は、2月より販売が開始された「ベルダー」(水稲用除草剤)に加え、「アルテア」(水稲用除草剤)や「グレーシア」(殺虫剤)が堅調に推移しました。一方、「ラウンドアップ」(非選択性茎葉処理除草剤)は減収となりました。海外向け農薬は、「タルガ」(除草剤)は減収となりましたが、「ライメイ」(殺菌剤)および「グレーシア」が伸長しました。 この結果、当セグメントの売上高は862億26百万円(前年同期比41億12百万円増)、営業利益は255億71百万円(同21億73百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は1億円の下ぶれ、営業利益は1億円の下ぶれとなりました。 ヘルスケアセグメント 「リバロ」(高コレステロール血症治療薬)原薬は国内、海外ともに減収となりました。「ファインテック」(課題解決型受託事業および共同開発型事業)は増収となりました。 この結果、当セグメントの売上高は59億93百万円(前年同期比3億6百万円減)、営業利益は18億93百万円(同9億21百万円減)となりました。業績予想比では、売上高は2億円の下ぶれ、営業利益は4億円の下ぶれとなりました。卸売セグメント当セグメントの売上高は1,171億55百万円(前年同期比133億60百万円増)、営業利益は40億89百万円(同3億88百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は48億円の上ぶれ、営業利益は4億円の上ぶれとなりました。 その他のセグメント当セグメントの売上高は291億75百万円(前年同期比9億92百万円減)、営業利益は5億94百万円(同22百万円増)となりました。 生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。① 生産実績当社グループの生産品目は、広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため、生産実績については、「(1) 経営成績」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。 ② 受注実績当社グループは原則として、受注生産方式を採用しておりません。 ③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)前連結会計年度比(%)金額(百万円)化学品セグメント37,8356.4機能性材料セグメント100,09818.4農業化学品セグメント86,2265.0ヘルスケアセグメント5,993△4.9卸売セグメント117,15512.9その他のセグメント29,175△3.3セグメント間の内部売上高(消去)△125,1188.0合計251,36510.9 (注) 上記の金額は外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高の合計であります。 (2) 財政状態当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金、無形固定資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末比73億5百万円増の3,307億63百万円となりました。負債は、社債、コマーシャルペーパーが増加したことなどにより、前連結会計年度末比20億77百万円増の945億82百万円となりました。また、純資産は前連結会計年度末比52億27百万円増の2,361億80百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末比0.2ポイント増加し、70.5%になりました。 (3) キャッシュ・フロー当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費、運転資金の増減などから法人税等の支払額を控除した結果、591億78百万円の収入(前連結会計年度は337億1百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、工場などの設備投資を中心に176億12百万円の支出(前連結会計年度は187億41百万円の支出)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローでは、配当金の支払、自己株式の取得による支出などにより356億50百万円の支出(前連結会計年度は221億1百万円の支出)となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、換算差額の減少額12億15百万円を調整した結果、前連結会計年度末に比較し46億99百万円増加しており、これに新規連結に伴う現金及び現金同等物の増減額17百万円を加味した結果、274億54百万円(前連結会計年度末は227億38百万円)となりました。 以上の営業活動・施策により、中期経営計画「Vista2027」の前半3ヵ年(2022年度~2024年度)のStageⅠにて掲げた以下の経営目標に対し、各指標は順調に推移しました。 経営目標2024年度実績売上高営業利益率20%以上22.6%ROE18%以上18.7%配当性向21年度:45%、22年度以降:55%維持55.5%株主総還元性向19年度:72.5%、20年度以降:75%維持82.0% (4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

事業リスク

  • 事業ポートフォリオ戦略の失敗
    化学品事業では、原燃料価格の変動や中国市況の変化による需給バランスの崩れが販売に影響を与える可能性があります。機能性材料事業では、有機ELや次世代ディスプレイ材料の開発競争激化により、採用未達やシェア喪失のリスクがあります。ヘルスケア事業では、新薬創出の遅れやジェネリック医薬品の台頭により、収益が圧迫される可能性があります。
  • 新製品開発の不確実性
    新製品の開発には高度な技術、多額の資金、人的資源、そして長い時間を要します。年間売上高の7~9%を研究開発費に投じ、総合職人員の約40%を研究開発に充てていますが、市場環境や技術動向の急激な変化により、開発が成功しない場合や、期待通りの成果が得られない場合、経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 原料調達と製品供給のリスク
    高度な技術を要する化合物など、供給元が限定されている原料があるため、特定のサプライヤーに依存するリスクがあります。また、国内外のサプライヤーや業務委託先のサステナビリティに関する問題(環境・健康・安全など)が発生した場合、安定的な原料調達や製品供給に支障が生じ、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2025|6,914 文字
3【事業等のリスク】 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 体制 リスクマネジメント活動全般について継続的改善を推進する専門組織として、経営企画部リスク・コンプライアンス室を設置しています。 また、リスクマネジメントの実効性を高めるとともに、コンプライアンスを維持向上、推進するための機関として、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、年2回定期的に開催しています。 本委員会は取締役会が指名するCRO(チーフ・リスクマネジメント・オフィサー)を委員長とし、CROが指名する各部門、箇所および国内連結子会社のリスク・コンプライアンス責任者から構成されています。リスク・コンプライアンス責任者は、定期的に、リスクの洗い出し・評価・対策計画立案、リスク対策実施状況、課題の自己評価、改善案の策定を行う他、計画的に各部門、箇所および国内連結子会社にて教育、訓練等を行います。 リスクマネジメントに関する重要事項、対策計画等は本委員会の審議を経て、取締役会で決議します。 (2) リスクアセスメント 各部門の事業特性やグローバルな政治・経済・社会情勢等、ビジネスを取り巻く環境を考慮してリスクを洗い出し、各部門、各箇所および国内連結子会社のリスク・コンプライアンス責任者からの意見集約などを通じて、発生可能性と事業への影響度を評価、その後当社取締役へのヒアリングを実施した上で、リスクマップを作成し、「グループ重要リスク」を選定しました。その内容はリスク・コンプライアンス委員会での審議を経て、取締役会で決議しています。(3) グループ重要リスク 当社グループの経営成績、財政状態等につき、投資者の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、以下に記載したリスクは主要なものであり、これに限られるものではありません。1) 事業ポートフォリオ戦略の失敗①化学品事業部 工業薬品類などの基礎化学品をさまざまな産業に提供する一方で、先端分野に対応する製品の生産・供給にも努めており、限界まで不純物を除去した高純度薬品、さらには電子材料用途で需要が伸びていますシアヌル酸由来の高機能化学品などを市場に投入しています。 これら製品は、天然ガスを出発原料とするアンモニアの誘導品であることから、原燃料価格の影響を受けるほか、中国市況等の変化により、世界の需給バランスが崩れ、当社販売にも影響が波及する可能性があります。 また、IoT、AIなどのデジタル技術導入による工場保全技術の高度化に努めてまいりますが、近年、設備老朽化に伴うプラントトラブルが発生し、一定期間の操業停止および損失が生じています。②機能性材料事業部 「ディスプレイ材料」「半導体材料」「無機コロイド」事業を通じて、スマート社会の実現に貢献しています。 ディスプレイ材料は、液晶分子を一定方向に揃えるための配向材を主幹材料とし、現在は主にスマートフォン、タブレット向けに供給していますが、今後はTVなどの大型ディスプレイ向けにも展開してまいります。一方で、液晶より薄型軽量で高速応答などの特長を有し、フレキシブル化などの意匠性にも優れた有機ELが、スマートフォン、高画質・大型のテレビなどに採用されるケースが増えてきました。当社は、有機EL関連材料、有機ELに続く次世代自発光ディスプレイ向け材料の開発も進めておりますが、開発状況、企業間競争の激化などによっては、採用未達となるおそれがあります。 半導体材料は、光照射によりフォトレジストを微細加工する際に、光の乱反射や干渉、塗布不良などのトラブルを防止するコーティング材料からスタートし、半導体回路幅のさらなる微細化に対応する材料を開発、現在はEUV(極端紫外線)露光技術の実需化、微細化の限界に備え、それぞれEUV用材料、三次元実装用材料にも注力しています。しかし、開発状況、企業間競争の激化などによっては、採用未達、シェア喪失のおそれがあります。 無機コロイドは、ナノシリカの水分散液を販売して以来、現在では有機溶媒分散液、無溶剤で使用できる製品を提供し、光学フィルムのコーティング材、電子記録媒体の研磨剤などに使用されています。最近では、シェールオイル・ガスの採掘効率向上剤などへの用途展開を図っておりますが、原油価格の変動によりシェールオイル需要に変化が生じ、当社剤の販売にも影響が及ぶ可能性があります。③農業化学品事業部 新規薬剤の探索から開発・製造・販売までの一貫した事業活動と、他社剤の買収や共同開発による幅広い製品ラインアップの拡充を通じて、安定した食料の供給に貢献しています。2018年には殺虫剤を上市・発売、2019年、2020年には殺菌剤を他社より買収し、製品ポートフォリオを充実させました。また、農業用殺虫剤の開発を進めるなかで、農作物の害虫だけでなく、イヌ・ネコに寄生するノミ・マダニの駆除にも効果がある化合物を発見し、動物用医薬品分野にも進出しました。現在は殺虫剤・水稲用除草剤の開発、次製品の研究を続けています。増加する原体ラインナップ・需要増に対応すべく、生産・供給にまつわる各種対策を実施しておりますが、完了までに時間を要した場合、一時的に販売機会を逸する可能性があります。④ヘルスケア事業部 当社化合物を原薬とする高コレステロール血症治療剤は、現在世界30ヵ国で承認を受け販売されていますが、国内の物質特許が2013年8月に満了となり、ジェネリック医薬品によるシェア低下、薬価改定の影響を受け、国内では厳しい状況が続いています。新薬創出が急務となっているなか、低分子医薬ではAIの活用に取り組むとともに、核酸医薬に注力、さらにはヘルスケアという総合的な視点で、生体界面制御材料や化粧品材料などの医療材料の実需化や拡販を進めます。また、顧客のニーズに合わせて医薬品原薬開発をトータルにサポートする課題解決型受託事業および共同開発型事業では、海外でのビジネスおよびペプチド事業への展開を図ります。しかし、自社創薬の成果獲得には研究開発費と時間を要することから、その結果次第では、中長期的に経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 2) 新製品の開発、外部の技術革新 当社グループは、これまで培ってきた「精密有機合成」「機能性高分子設計」「微粒子制御」「生物評価」「光制御」の5つのコア技術に、「微生物制御」、「情報科学」という新技術を育成することで、「情報通信」「ライフサイエンス」「環境エネルギー」「素材・サービス」の事業領域で、社会課題の解決に貢献すべく、新製品の開発を積極的に進めています。新製品の開発には、高度な技術と多くの資金、人的資源が必要であり、長い時間を要します。当社では、近年、年間売上高の7~9%を研究開発費に投じるとともに、総合職人員の約40%を研究に従事させるなど、研究開発に経営資源を傾斜配分、さらには最新技術情報を踏まえた研究テーマの設定、定期的評価に基づく継続または改廃などを行っておりますが、当社がターゲットとする市場環境や技術動向の急激な変化が生じ、開発の成否、ひいては経営成績および財務状況に影響を受ける可能性があります。 3) 原料調達、製品供給 当社は、原料および資材の調達に関する方針(購買方針)を定め、重要な原料、中間体、製品の製造などを委託する際は事前に、またその他新規および既存のサプライヤーに対しても必要に応じ、サステナビリティ調査票への回答を求め、当社の基準を満たす企業との取引を優先的に進めるとともに、取引先に対する啓蒙・改善活動を行っています。 さらに、国内外のサプライヤーおよび業務委託先を訪問監査し、サステナブル活動、とくに、環境・健康・安全(EHS)への取り組みを詳細に確認し、サステナブル調達の推進を図るなど、コスト・品質等を考慮の上、安定的な調達先の確保に努めております。しかし、高度な技術により合成された化合物など、供給元が限定されている原料があることに加え、中国をはじめ、海外からの輸入に頼る原料もあり、何らかのトラブル、調達先所在国における突如とした法規制の強化等により、調達先からの供給が滞った場合、製品の安定的な製造・販売体制に支障をきたし、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 4) 法的規制、法令違反 当社グループは、事業の特性上、化学物質の取り扱いに関する国内外の法令等により規制を受けています。近年の環境問題、生体への影響に対する世界的な意識の高まりなどから、各種規制はますます強まる傾向にあり、現行規制の改正や強化等がなされた場合、事業活動が制限される、その対応のための費用を要する、あるいは当該製品が対象国にて販売できなくなるなど、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループでは、コンプライアンスを法令および広く社会規範に従うことと認識し、コンプライアンス規則を策定し、コンプライアンス基本方針を定めています。さらに、内部通報制度を設置し、コンプライアンス違反の未然防止、早期解決のための体制を整えるとともに、役員・社員等に対し、各種研修、コンプライアンスマニュアルの周知などを通じて、知識向上、啓蒙に努めておりますが、法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等を取った場合、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受ける可能性があります。 5) 労働災害、事故災害、自然災害 当社グループは、化学物質の開発から製造、物流、使用、最終消費を経て廃棄・リサイクルに至る全ての過程において、自主的に「環境・健康・安全(EHS)」を確保し、活動の成果を公表し社会との対話・コミュニケーションを行うレスポンシブル・ケア(RC)活動に、取り組んでいます。 RCマネジメントシステムを通じて、化学製品の研究開発、製造、販売、変更などに至る各段階で、リスク評価(事前評価)を実施し、その結果に基づき、法規制順守対応、製造現場での作業者ばく露低減のための設備改良、作業方法の改善、手順の明確化・文書化や教育訓練などの適切な対策を講じるなど、労働災害の防止、労働者の健康増進、快適な職場環境の形成に努め、各事業所の安全衛生レベルの向上を図っています。また、安全確保と安定操業、保安力向上を目指し、製造事前評価によるリスクの洗い出し、プロセスKY(危険予知)、設備KYを実施し、必要な設備投資を行うとともに、毎年の各種訓練等を通じ、緊急時あるいは事故発生時に確実な対応が取れるように備えております。 地震をはじめとする自然災害に対しては、工場および主要な事業拠点を対象に災害対策、事業継続計画(BCP)を策定しており、今後も強化と充実を図ってまいります。 しかしながら、不測の大規模地震や台風等の自然災害による生産設備への被害、工場における事故、輸送・外部保管中の事故等により、工場の操業や顧客への供給に支障が生じることで、当社グループの信用、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。 6) 製品品質 当社グループは、各工場で品質マネジメントシステムの認証取得および維持・更新を行うとともに、製造部門とは独立した品質保証部門の設置、顧客の商品に関する声(苦情情報)を迅速に収集、評価し、必要な是正を実施するための社内ネットワークを構築するなど、品質保証体制の確立に努めています。また、昨今大きな社会問題となりました品質管理に関わる不正・改ざんに対しても、防止ガイドラインを策定・運用を開始、監査を実施し、潜在リスクが発見された場合は改善を行ってきました。しかし、製造・輸送・保管等の過程において予期せぬトラブルが発生、品質への影響が生じ、顧客または当社材料が使用された製品ユーザーにて人的・物的損害が起こった場合、損害賠償請求を提起され、経営成績および財務状態のみならず、当社グループへの社会的信用が失墜し、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。 7) 知的財産 当社は、研究成果と知的財産が事業の根幹であるとの考えのもと、知的財産権保護は極めて重要な経営課題と認識し、知的財産の取得にとどまらず、訴訟による権利行使も実施しています。当社は国内外で事業を展開し、世界各国で特許を出願・申請、取得していることから、グローバルに知的財産の権利確保を図り、侵害を監視する体制を強化しております。 しかし、他社との間で知的財産を巡って係争が生じた場合や、他社が当社の知的財産権を侵害した場合において、当事者間での和解交渉、法定での係争結果次第では、賠償金の支払いや売上計画の見直しを余儀なくされ、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。 8) 情報セキュリティ 当社グループは、研究開発、生産などに関する機密情報、販売促進等に用いるお客様の個人情報を保有しています。また、将来的に予想される労働力不足に備え、IoT、AIなどのデジタル技術を工場に導入することで、生産性の引き上げ、保全体制の確立を進めています。 当社グループでは、情報管理規則、各種ガイドラインを定めるとともに、定期的な研修を実施して社員のセキュリティ意識を高めるなど、ハード、ソフト双方のセキュリティ対策を実施しておりますが、外部攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスの感染等により、制御系・基幹システムの障害、保有する機密情報・個人情報の漏洩が発生した場合、当社グループへの信用、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。 9) 人材確保 当社グループでは、多様化・高度化する市場の要求への対応力を高めるために、研究開発力の強化や製品品質の向上に取り組むとともに、多様で優秀な人材の確保・育成や働きやすい職場づくりなどの取り組みを通じて、事業基盤の強化を目指しています。 人材開発の本質は「社員一人ひとりが自発的に自己研鑽を積み、自己の成長を図ること」にあるとの考えのもと、望む社員のために、さまざまな人材育成制度を整備しています。 また、多様な人材が、生産性の高い働き方を実現し、仕事と生活の調整(ワーク・ライフ・バランス)を図るとともに、職場で多様な意見を発信し、才能を最大限に発揮できるよう、各種取り組みを推進しています。 しかしながら、雇用情勢の悪化等により、必要な人材を確保できない場合、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。 10) 海外展開 当社グループは、各事業分野において、アジア、欧州、北米などを中心に世界各地に生産・販売拠点を設け、より市場に密着した形での事業展開を進めていることから、進出先の政治、経済、社会情勢の変化などにより、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、各拠点において有効な内部統制システムの構築に努めているものの、従業員等の悪意あるいは重大な過失による行為、もしくはシステムが十分に機能しなかったことに伴い、将来的に法令違反等の問題が発生し、行政処分による課徴金、刑事・民事訴訟による罰金、損害賠償金等の支払いに加え、当社グループへの社会的信用が失墜し、事業に悪影響が生ずる可能性があります。 11)環境保全 温室効果ガスの排出量削減や自然資本・生物多様性保全対策への取り組みについて、投資家等ステークホルダーからの関心が高まっています。 当社は、パリ協定を支持し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同、インターナルカーボンプライシングを導入し、温室効果ガス(GHG)排出量削減および省エネルギー化を考慮した脱炭素投資を推進するほか、環境・健康・ 安全に配慮するレスポンシブル・ケア活動を通じて、環境負荷低減に努めるとともに、事業を通して環境課題の解決に貢献します。また、当社の事業活動が生物多様性の恩恵に依存していることや、生物多様性に影響を与えていることを認識しています。「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」という企業理念のもと、生物多様性保全を重要な経営課題と位置付け、地球環境の保全に寄与するため、生物多様性に配慮した事業活動を展開します。 しかし、温室効果ガスの排出量削減や自然資本・生物多様性保全対策への取り組みが十分ではない場合、当社ステークホルダーからの評判が低下するリスクがあります。

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