有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2024|18,549 文字
3【事業等のリスク】 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。 なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。 1.アサヒグループのリスクマネジメント体制 アサヒグループは、グループ全体を対象に、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)を導入しています。この取り組みの中で、グループ理念「Asahi Group Philosophy」の具現化、並びに『中長期経営方針』の戦略遂行及び目標達成を阻害しうる重大リスクを、戦略、オペレーション、財務、コンプライアンス等の全ての領域から特定及び評価し、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを継続的に実施することで、効果的かつ効率的にアサヒグループのリスク総量をコントロールしています。 ERMを推進するにあたり、代表執行役社長Group CEO以下の執行役、Group CxO及び委員長が指名するFunctionのHeadで構成されるリスクマネジメント委員会を設置しています。ERMはグループ全体を対象とし、リスクマネジメント委員会の委員長である代表執行役社長Group CEOが実行責任を負います。 アサヒグループ各社は、事業単位ごとにERMを実施し、リスクマネジメント委員会に取り組み内容を報告します。同委員会はそれらをモニタリングするとともに、委員自らがグループ全体の重大リスクを特定、評価、対応計画を策定し、その実行及びモニタリングを実施します。これらの取り組みは取締役会に報告され、取締役会はこれらをモニタリングすることで、ERMの実効性を確認します。 2.アサヒグループ リスクアペタイト アサヒグループは、ERMを推進するとともに、『中長期経営方針』の目標達成のために、「とるべきリスク」と「回避すべきリスク」を明確化する「アサヒグループ リスクアペタイト」を制定しています。 「アサヒグループ リスクアペタイト」は、アサヒグループのリスクマネジメントに関する「方針」です。ERMの運用指針及び意思決定の際のリスクテイクの指針となるものであり、リスクに対する基本姿勢を示す「リスクアペタイト ステートメント」と、実務的な活用を想定した、事業遂行に大きく影響する主要なリスク領域に対する姿勢(アペタイト)を示す「領域別リスクアペタイト」で構成されます。グループ戦略、リスク文化とリスク状況、及びステークホルダーの期待をもとに検討し、取締役会にて決定、グループ全体に適用され、実施状況はリスクマネジメント委員会でモニタリング、取締役会へ報告されます。本取り組みを通じて、アサヒグループ全体で適切なリスクテイクを促進していきます。 3.アサヒグループのクライシスマネジメント体制 アサヒグループでは、ERMにおけるグループ全体の重大リスクの中でも、人・モノ・カネ・情報等の経営資源遮断の危機があり「即時対応」する領域を「クライシスマネジメント」の対象としています。 クライシスマネジメントの実効性を上げるため、平時から「事前の想定」を行い、クライシス時に混乱なく速やかに対応できるよう「緊急時の即応体制」を構築しています。事前の想定については、経営資源遮断の危機を想定した「リスクシナリオ」を作成し対応を準備しています。 また、緊急時の即応体制については、クライシス類型に応じた対応主体を予め明確にし、危機発生時の初動における事実確認と重大性の評価を迅速・的確に実施し対応する体制を構築しています。 4.主要リスク 当社グループでは、「1.アサヒグループのリスクマネジメント体制」に記載の通り、代表執行役社長Group CEO以下の執行役及び委員長が指名するFunctionのHeadで構成されるリスクマネジメント委員会で、中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを特定及び評価し、以下の「(2)個別戦略リスク」として認識しています。 加えて、それ以外に考えられる当社グループの事業等のリスクについても、「(1)全体リスク」及び「(3)その他リスク」に記載しています。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。 また、前述の、当社グループリスクマネジメントの取り組みの中で、以下に記載する各リスクに対する対応策を含む種々の対応策をとりますが、それらの対策が有効に機能しない等によりリスクが解消できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (1)全体リスク1)中長期経営方針について 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指して、2019年に「Asahi Group Philosophy(AGP)」を制定し、2022年、それに基づいて、また、その後のグループ内外の環境変化も踏まえて中長期経営方針を更新しました。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、本方針では、3年程度を想定した主要指標のガイドラインや、財務・キャッシュ・フロー方針を示していますが、これらのガイドライン・方針は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定されたものです。そのため、本「3 事業等のリスク」に記載の各リスク等を含む様々な要因により変更を余儀なくされるものであり、当社グループの事業や業績が中期経営方針内の同ガイドライン・方針等を達成できない可能性があります。 2)事業環境について 当社グループの売上収益において日本の占める割合は約46.4%(2024年12月期決算)となっています。今後の日本国内での景気の動向によって、酒類・飲料・食品の消費量に大きな影響を与える可能性があり、人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類・飲料・食品の消費量が減少する可能性があります。また、原材料・エネルギー価格の高騰やインフレの影響などにより、国内での競争環境がさらに激化することで当社売上数量・金額が低下するとともに、コスト構造の悪化を招き、当社グループ事業の収益性が想定より損なわれる可能性があります。 日本の売上収益のうち、ビール類は4割を超えます。このような状況は、当社グループのビール類商品に対するお客様の信頼を反映したものであり、当社グループ国内酒類事業での効率的な利益創出に寄与していますが、消費者の嗜好性の変化、世代交代等により、お客様の支持を失ってしまうと、本商品群の売上が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループは海外での事業領域を拡大しており、2024年12月期決算での売上収益における欧州、オセアニア、東南アジアの占める割合は、約53.2%となっています。今後、欧州、オセアニア地域を中心とする当社グループが事業を展開する各国における景気の悪化、当該各国での競争環境の激化、消費者の嗜好の変化等、市場の需要動向が変化すること等により、当該地域における当社グループの売上収益の低下、利益率の悪化が生じる可能性があります。 当社グループは、中長期経営方針に『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』を掲げ、『アサヒスーパードライ』や『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルブランドをはじめとした高付加価値ブランドの価値向上や新市場の創造を目指すとともに、今後の環境変化も見据えた収益構造改革を加速することで、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図っていきます。また、ビール類に加えて、RTDなども含めたBACのラインアップを充実させることで売上収益を増加させるとともに、飲料、食品事業においては、消費の多様化や健康志向の高まりなどに応え、新たな付加価値提案を行い、事業拡大を図っていきます。 当社グループは、テクノロジーの発展が、人類に新たな技術力と自由な時間を与え、気候変動・資源不足といった地球規模の課題を抱える中、社会・経済だけではなく人類の幸福(Well-being)のあり方も変化していくものと想定しています。そうしたメガトレンドを踏まえて更新した「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」という方針のもと、変化しつつあるWell-beingへの迅速な対応、市場環境の変化を先取りした事業戦略の立案と展開、ならびに新たなオペレーティングモデルの構築を通じて、当社グループの戦略及び事業の競争力を強化していきます。 (2)個別戦略リスク 当社リスクマネジメント委員会は、中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを以下の通り認識しています。その中で、中長期的に顕在化が懸念されるリスクを①、短中期的に顕在化が懸念されるリスクを②、及び継続的に顕在化を留意すべきリスクを③、とそれぞれ分類し記載しました。 ① 中長期的に顕在化が懸念されるリスク1)事業拡大について 当社グループは、Schweppes Australia社の買収(2009年、買収額1,185百万豪ドル(適時開示の際に公表した金額、以下同じ))、カルピス社の買収(2012年、買収額920億円)、旧SAB Miller社の西欧ビール事業の取得(2016年、買収額2,550百万ユーロ)、中東欧ビール事業の取得(2017年、買収額7,300百万ユーロ)及びCUB事業の買収(2020年、買収額160億豪ドル)をはじめとして、国内外での事業領域拡大のため、積極的に外部の経営資源を獲得してきました。2020年6月には、CUB事業を取得する手続きを完了することで、日本、欧州に加え、オセアニア地域での事業を盤石にし、日本、欧州、オセアニアの3極を核としたグローバルプラットフォームを構築、成長基盤の拡大を実現しました。ここ数年は財務基盤の強化を優先し大型の買収は控えていましたが、今後条件が揃えば、成長のために、外部の経営資源を活用していきます。 外部の経営資源獲得にあたっては、慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ実行します。しかしながら、営業、人員、技術及び組織の統合ができずコスト削減等の期待したシナジー効果が創出できなかった場合、アルコールや砂糖の摂取に対する社会の価値観の変化や人口動態の変化等により、買収した事業における製品に対する継続的な需要を維持できない場合、買収した事業における優秀な人材を保持し又は従業員の士気を維持することができない場合、高付加価値ブランドの育成不振等、効果的なブランド及び製品ポートフォリオを構築することができない場合、並びに異なる製品ラインにおける販売及び市場戦略の連携(クロスセルの拡大)ができない場合等により、当社グループの期待する成果が得られない可能性があります。 当社グループは、買収に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、2024年12月末現在、のれん及び無形資産の金額はそれぞれ、連結総資産の40.8%(22,034億円)及び21.3%(11,504億円)を占めています。 当社グループは、当該のれん及び無形資産につきまして、それぞれの事業価値及び将来の収益力を適切に反映したものと考えていますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が将来にわたって大きく損なわれると判断された場合、又はカントリーリスクの顕在化による金利高騰や市場縮小等により適用される割引率や長期成長率が大きく変動した場合等は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、AGP及び中長期経営方針に基づいた価値創造経営により、事業の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しています。『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』、や『持続的成長を実現するためのコア戦略の推進』とともに、『長期戦略を支える経営基盤の強化』の一環としてグループガバナンスの更なる実効性向上に向けた取り組みを実施することで、グループ戦略の実行と期待成果をより確実なものとします。 2)アルコール摂取に対する社会の価値観 アルコールの摂取は人々の生活を豊かにしてきた一方で、その不適切な摂取は健康面あるいは社会的悪影響が指摘されています。世界保健機関(WHO)においては世界的な規模での酒類販売に関する規制が推奨されており、当社グループの予想を上回る規制強化が行われる可能性があります。将来、不適切な飲酒による酒類業界や当社グループのレピュテーション及びブランド価値を毀損する可能性や、行政による行動規制が重なると、アルコールに対する消費者の需要が縮小する可能性もあります。その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、アルコール飲料を製造・販売する企業としての社会的責任を果たすため、WHOが2022年5月に採択したグローバルアルコールアクションプラン2022-2030の中で掲げたグローバル目標「有害なアルコール使用20%低減」の達成に貢献する戦略の方向性を経営の中で議論し、地域ごとに貢献できる取り組みを進めています。グループ全体では、責任ある飲酒の取り組み促進のためにグループスローガン「Responsible Drinking Ambassador」を打ち出し、不適切な飲酒の撲滅に向けた活動を強化するとともに、社員に対する「責任ある飲酒」の研修の取り組みを推進してきました。今後さらに社会インパクトを創出する取り組みを強化していきます。また、新しい飲用機会の創出に向けた取り組みとして、2030年までにアサヒグループにおけるノンアルコール・低アルコールの販売構成比20%達成を目標に掲げ、アルコール起因の課題解決にも取り組んでいます。アサヒビール株式会社は2020年に「スマートドリンキング宣言」を発表し、商品ごとの純アルコール量の積極的な開示を開始しました。消費者が適正飲酒をスマートに実践できるようにするため、様々な度数の低アルコール飲料やノンアルコール飲料の商品開発とその販促強化を進めています。2022年にはノンアルコールや低アルコール飲料のメニューを100種提供し、飲む人も飲まない人も楽しめる『SUMADORI-BAR SHIBUYA(スマドリバー シブヤ)』を、2023年には、酔わなくても楽しめる新しい大人の嗜好品を提供するバー『THE 5th by SUMADORI-BAR』を展開するなど、新たな飲食店のあり方を提案しています。 アルコールの有害な使用の低減による健康被害の予防をさらに推進するためには産業界が協力し合って課題解決に取り組むことも重要です。酒類事業を行う各地の関連法令遵守のほか、IARD※をはじめとする業界団体や他業種の業界と協力・連携して販売や広告に関する自主基準を設け、責任あるマーケティングに取り組んでいます。2020年1月、IARDは加盟企業のCEOによる未成年者飲酒防止に向けた取り組みを推進する共同声明を発表しました。その中の一つとして、酒類に関するオンラインマーケティングが未成年者に届かないようにするデジタル・ガイディング・プリンシプル(DGP)の遵守率を2024年までに95%以上にすることを目標としました。当社グループは、IARDの目標設定を上回る100%の遵守を独自の目標として掲げ、2024年内にこれを達成しました。今後も当社は未成年者飲酒を防止するために、関連団体と協力しながら様々な取り組みを進めていきます。※ IARD=International Alliance for Responsible Drinking(責任ある飲酒国際連盟)の略称。不適切な飲酒の撲滅と、責任ある飲酒を促進するという共通の目的のもとに、世界のビール、ワイン、スピリッツの製造業者である大手企業15社の加盟企業で構成される非営利団体。 3)技術革新による新たなビジネスモデルの出現 当社グループが国内外で事業を展開する、酒類・飲料・食品業界は、その製造販売に関して、技術革新による競争環境の変化が比較的少ない安定した業界でしたが、最近では、低アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、BACによる新たな飲用シーンの提案ができるようになり、最新デジタル技術を活用して“変化するWell-Being”に応えることで新たな価値の提供、AI活用による各種業務の効率化、あるいはアルコール代替品等、技術革新による新たなビジネスモデルの可能性も示されています。さらに、2020年以降世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークの急激な普及や、EC等のオンラインチャネル利用の加速等、それまで将来的に発生すると想定されていた変化が前倒しで出現しています。 こうした環境変化や新たなビジネスモデルの出現により、当社グループ事業がコスト構造や顧客体験で劣後し、業界での主導権喪失や競争力の低下につながり、売上収益、事業利益の低下等、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。その一方で、当社グループがこのようなイノベーションを先導することによって、市場優位性獲得や、新規市場創出につなげることが期待できます。 当社グループは、このような状況に対して、単なるリスク対応に留まることなく技術革新を先取りすることを目指して、中長期経営方針において「DX=BX※と捉え、3つの領域(プロセス、組織、ビジネスモデル)でのイノベーションを推進」及び「R&D(研究開発)機能の強化による既存商品価値の向上・新たな商材や市場の創造」を掲げ、領域を特定した戦略的DX及びR&D投資を推進していきます。 DX領域においては、グローバル調達プラットフォーム、グローバルサプライチェーンマネジメント、環境負荷等サステナビリティ情報の見える化といった生産性を向上するグローカル基盤を構築するとともに、新たな消費者データ、多様化・細分化する顧客ニーズの把握と新しい素材や製法による新たなビジネスモデルの開発、及びこれらのイノベーションを実現するためのデジタル技術やデータ活用スキルの習得とアジャイル型働き方の導入によるデジタルネイティブ組織への変革を推進します。 R&Dにおいては、中長期的な社会環境や競争環境の変化を見据え、メガトレンドから策定した未来シナリオとこれまでの研究で蓄積してきた技術・知見・ノウハウを踏まえ、変化するアルコールに関する価値観に対応した新たな価値創造、消費者の身体と心の健康の実現、サステナビリティ実現に向けた環境・気候変動リスクの軽減、及び新規事業につながる非凡なシーズの開発を重点領域と位置づけ、新たな価値創造やリスク軽減に向けた商品・技術開発への投資を推進します。さらに、革新的技術を速やかに製品やサービスに落とし込むためにプロトタイピング機能やアジャイル開発能力の拡充を図り、RHQとの連携をより強化しながら、迅速な成果導出へとつなげていきます。 また、米国サンフランシスコに投資運用会社を設立し、2023年1月から運用を開始したスタートアップ投資ファンドは、低アルコール飲料やノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料など、将来大きく成長する可能性のある魅力的なブランドや、新たな販売手法や製造手法につながるテクノロジーを持った米国のスタートアップ企業にマイノリティ出資を行い、当社グループの市場優位性獲得や、新規市場創出につながるイノベーションに貢献することが期待できます。※ DX=BX:デジタル・トランスフォーメーション = ビジネス・トランスフォーメーション 4)気候変動に関わるリスク 地球温暖化による気候変動は、干ばつや洪水といった異常気象の激化を引き起こし、世界中の人々の生活や多様な生態系に大きな影響を与えています。「自然の恵み」を享受して事業を行うアサヒグループにとって、気候変動問題への対策は重要な課題と認識しています。 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「Beyondカーボンニュートラル」を2050年の世界のあるべき姿として掲げています。脱炭素社会に向けて、事業の枠を超えた社会全体におけるカーボン排出量が削減され、生物多様性が保全された世界を目指すため、バリューチェーンのCO2削減と生態系の保全の両立、CO2の排出量削減・吸収・回収の技術開発・展開などに取り組んでいきます。 将来的な気候変動が業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性がある物理リスクを以下の通り認識しています。海外の生産拠点における干ばつが深刻化し、水需給が逼迫、水価格の高騰による操業コストが上昇する可能性があります。気温上昇(生育環境や労働環境の変化)・天候・自然災害・CO2濃度等が需給バランスや品質に影響し、主要な原材料価格が変動する可能性があります。さらに、必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失と工場移転費用が発生する可能性があります。異常気象の激甚化により、深刻な風水害及び土砂災害が発生することで生産ラインや物流が停止し、設備被害や機会損失、製品廃棄による損失が発生する可能性があります。 また、将来的な気候変動を見据えた脱炭素社会への移行リスクを以下の通り認識しています。炭素税が導入され、特にPETボトル等の製品原材料への価格転嫁や生産拠点の操業コストが上昇する可能性があります。水ストレスの高い地域の生産拠点において取水制限を受けて操業が停止、機会損失が発生する可能性があります。エシカル志向の高まりにより、環境配慮が不十分な製品があった場合、その需要が低下し、当社グループの売上に影響を与える可能性があります。 当社グループは、脱炭素社会の速やかな実現を目指し、CO2排出量ゼロを目指す中長期目標「アサヒカーボンゼロ」を設定しています。この中期目標として、Scope1,2※においては、2025年に40%削減、2030年に70%削減、Scope3※においても、2030年に30%削減(ともに2019年比)の目標を設定しています。その上で、長期目標として掲げていたScope1,2,3におけるCO2排出量ネットゼロの目標年を2040年へ前倒しし、今後更なる省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用を推進していきます。また、グループ全体で水使用量削減に向けた取り組みを進めて、水リスクに対応していきます。 気候変動によるリスクと機会に関連する事業インパクトの評価及び対応策の立案が、持続可能な社会の実現及び事業の持続可能性に不可欠であると認識し「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言への賛同を表明しています。※ Scope1は、自社(工場・オフィス・車など)での燃料の使用によるCO2の直接排出、Scope2は、自社が購入した電気・熱・蒸気の使用によるCO2の間接排出、Scope3は、自社のバリューチェーンからのCO2の排出を指します。 5)プラスチック使用 アサヒグループは、環境負荷低減に寄与しない容器包装への規制や、リサイクル素材やバイオ由来の素材の需要増加に伴うコスト増加、素材不足への対応が遅れることによる調達への影響、また、プラスチックに対する消費者の忌避感によって売上が減少する可能性を想定しており、そのリスク軽減に取り組む重要性を認識しています。 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」において2050年の世界のありたい姿として掲げた「容器包装廃棄物のない社会」の実現に向けて、「3R+Innovation」のもと推進してきたプラスチックの課題への対応を継続し、2030年までにPETボトルを100%、リサイクル素材またはバイオ由来の素材などへ切り替えることを目標とします。また、リデュースの取り組みや、環境負荷低減に寄与する新容器の開発にも取り組んでいきます。缶、びん、樽、紙など、その他の容器包装資材についても、3Rの観点から、省資源・軽量化・リサイクル性向上に努めます。それに基づき、グループ各社において様々な取り組みを進めています。 国内では、アサヒ飲料株式会社がリサイクルPET等リサイクル素材の使用、リデュースの推進、環境への配慮を前提とした新容器開発等に関する目標「容器包装2030」の達成に向けた取り組みを進めています。さらなる「ラベルレスボトル」製品の拡大やリサイクル素材活用拡大のために「ボトルtoボトル」の水平リサイクルを進めています。 業界の枠を超えた連携体制により使用済のプラスチックを再資源化する会社に共同出資も行い、中長期的なPET調達に向けた取り組みも強化しています。 また、2023年には飲料他社と共同で、複数の地方自治体との間で使用済みペットボトルを新たなペットボトルに再生する水平リサイクル「ボトルtoボトル」事業の連携協定を締結しました。各地で2024年から取り組みを開始し、プラスチック資源循環を推進しています。 海外では、オーストラリアの子会社Asahi Beverages Pty Ltdが、業界の枠を超えたパートナーシップ構築を通じて、PETボトルのリサイクルを推進しています。リサイクル大手企業や容器メーカーと合弁会社を設立し、2022年にはニューサウスウェールズ州でリサイクルPET樹脂のさらなる生産と供給のための工場を稼働しました。さらに2023年にビクトリア州で2拠点目のリサイクル工場の操業を開始しました。オーストラリアではミネラルウォーターブランド『Cool Ridge』でキャップとラベルを除いて、100%リサイクルPET樹脂を利用したボトルへ移行しています。 当社グループ全体として、プラスチックのリサイクル素材、バイオ由来の素材等のさらなる活用を推進していきます。 ② 短中期的に顕在化が懸念されるリスク1)主要原材料の調達リスク 当社がグローバルに事業展開する酒類・飲料・食品の製造においては、原材料の調達に関し、市況悪化による価格高騰、気候変動や自然災害及びパンデミック等による納期遅延や供給停止に陥るリスクがあります。このようなリスクに直面した場合、製造コストが上昇し、また製造数量が計画を下回ることで、グループの業績及び財政に大きな影響を及ぼす可能性があります。 このようなリスクに対し、当社では、コモディティリスクマネジメントポリシーを確立し、このポリシーのもと、特定コモディティについては、ガードレールに基づくヘッジを実践する等、グループグローバルで標準化したコモディティ管理の取り組みを行っています。 また、グループグローバル調達組織であるAsahi Global Procurement Pte. Ltd.が、コモディティ価格変動による影響の低減を目的に、グローバルリスクマネジメントコミッティを立ち上げ、グループの調達戦略をリードしています。 2)地政学的リスク 現在、当社グループは20を超える国に拠点を構え、グローバルに事業を展開しています。世界経済全体の動向に加え、当社グループが事業活動を展開する国・地域における政治、経済、社会、法規制、自然災害等の要素が、各事業に影響を与える可能性があります。 さらに、近年は、地政学的な要因が事業に影響を及ぼす可能性が高まっていると認識しています。例えば、ウクライナ情勢や中東情勢、台湾を巡る緊張の高まり、米国と中国の対立関係、自国第一主義の政策などの要因により、当社グループが事業を展開する複数の国・地域において、輸出入制限、新たな関税導入、差別的な措置、商品不買運動、技術の分断、データに関する規制等の具体的なリスクが想定され、同時に、今後の事業の強化やエリアの拡大を進める上でも影響を与える要素となります。地政学的な要因によりこれらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの中長期経営方針の実行や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、地政学的リスクに関する動向の情報収集と分析をもとに、リスクシナリオの策定及びリスクの把握を行い、その影響を低減するための適切な対策の検討を進めていきます。また、事業展開国・地域のカントリーリスクの調査、情報収集、評価をもとに、リスクを早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をする取り組みも継続しています。 3)情報セキュリティ 当社グループは、高い市場競争力を確保するため、事業活動の多くをITシステムに依存しています。停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、あるいはサイバー攻撃によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩、詐欺被害、EU一般データ保護規則(GDPR)等の各国法令違反が発生する可能性があります。 このようなリスクが顕在化した場合、事業の中断、損害賠償請求やセキュリティ対策費用の増加等によるキャッシュアウト、GDPR違反による制裁金等により、当社グループの業績及び財政状態、並びに企業ブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。 サイバー攻撃リスクの高まりへの対応としては2022年10月にグループ全体で遵守すべきサイバーセキュリティ基準を制定し、運用の徹底を図っています。当基準に準じて国内・海外グループ会社のサイバー攻撃対策状況を評価し、セキュリティ体制の維持及び向上に努めており、本件リスクが顕在化しないようにセキュリティの改善に取り組んでいます。また、当基準内でインシデント発生時の報告ルールを明示することでグループ全体でのインシデント情報を集約し、リスク対応の強化を目的とした体制整備も完了しています。 当社グループは、ビジネスの多様な分野における生成AIの活用を積極的に推進しています。我々は、この技術が企業の競争力を高める重要な要素であると認識しており、その有効な活用を通じて、業務効率の向上とイノベーションの促進を図っています。一方で、生成AIの使用に伴うリスクに対処するため、国内・海外グループ会社に適用される包括的なガイドラインを制定しました。このガイドラインは、生成AIの安全かつ責任ある使用を確実にするための運用基準と注意事項を定めており、リスクの軽減と管理に努めています。 また、オフィスのIT環境は高度なセキュリティ対策が施されていますが、工場などでの機器を制御し運用するシステムやその技術であるオペレーショナルテクノロジー(OT)環境はセキュリティ面で脆弱な場合があり、マルウェア等の攻撃対象となる可能性があります。当社グループは、当リスクの対策を定めた「OTセキュリティガイドライン」を制定、事業を展開している各地の生産拠点に導入しました。 4)多様で有能な人材の確保 中長期経営方針の目標達成には、多様な価値観や専門性を持つ社員の貢献が不可欠です。そのため、当社グループは社員の多様性を尊重し、一人ひとりの成長を支援する人材育成プログラムへの投資を増やし、必要に応じて、経営幹部や一般社員を外部から採用する取り組みを進めています。しかし、グローバルな事業の成長に伴う人材需要の増加や必要なスキルの変化、高度化により、多様で有能な経営幹部や一般社員の確保、育成、定着が難しく、中長期経営方針の戦略実行に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは中長期経営方針で「目指す事業ポートフォリオの構築やコア戦略を支える高度な人的資本の確保」を掲げ、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進を通じて、戦略を支える経営基盤を強化し、従業員のエンゲージメントを高める企業文化を醸成しています。定期的にエンゲージメント調査を実施し、望ましい企業文化の実現度を確認しています。 また、経営者候補の育成を計画的に進めるため、多様な人材の成長と活躍を促進する方針を明文化したグローバルタレントフィロソフィーやグループ全体で共通のコンピテンシーモデルを策定し、将来の経営幹部候補を育成するグローバルリーダーシッププログラムを実施し、人材パイプラインを拡充・強化しています。さらに、各地域の人材を可視化し、国籍や性別に関係なく適材適所で配置するためのタレントレビューを実施し、多様な有能な人材の活用を推進しています。新しいケイパビリティを獲得するために、社外からの人材登用も積極的に行っています。 ③ 継続的に顕在化を留意するリスク1)大規模自然災害 2024年1月に能登半島で発生した地震が甚大な被害をもたらすなど、国内外問わず世界各地で地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、大規模災害が現実のものとなっています。このような大規模自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断により製造が停止、倉庫損壊及び保管製品破損により出荷が停止、並びに物流機能停止により原材料資材の調達及び製品の出荷が不能になる可能性があります。さらに、事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能、及びシステム障害に伴う重要データの消失等もあわせて、事業活動が停止する可能性があります。事業活動の復旧に長期を要した場合、施設等の改修に多額の費用が発生した場合、消費マインドが落ち込んだ場合等、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、大規模災害が発生した際に、いち早く従業員及びその家族の安否を確認する仕組みを導入するとともに、大規模地震を含め災害リスクが高い日本においては、早急に被災地の被害状況を把握するため、災害時優先電話や災害用無線の配備をはじめとした緊急時通信体制の強化を進めています。そのうえで、定期的な訓練を実施することで、有事の対応力を強化するとともに、災害対応意識の啓発に努めています。 また、生産工場では、建物倒壊対策のため、全建物を対象に耐震診断を実施しており、対策が必要な物件については、順次計画的に補強工事を実施しています。ボイラー、冷凍機等の大型エネルギー供給設備には大地震(震度5弱相当)を検知すると、安全に自動停止する機能が付属し、大型ビール工場では電力供給が遮断した場合でも、自家発電によりタンクを冷却させることで、半製品の大量腐敗を防止する等2次災害のリスク低減対策を進めています。 また、主要グループ会社において、過去の防災対策の実績及び自然災害の経験を踏まえた「事業継続計画(BCP)」の策定を行い、主要商品の供給を継続するための需給調整機能を早急に復旧する体制を構築するとともに、受発注処理等に関する重要なデータを処理するサーバーセンターのバックアップセンターを設置する等、大規模な自然災害が起こった場合であっても被災地以外での事業活動が継続出来るように備えています。 なお、大規模な災害等が発生した際には、代表執行役社長Group CEOを本部長とした「緊急事態対策本部」を設置して対応する危機管理体制を構築しており、平常時のリスクマネジメントにおいて、顕在化した際に即時対応を要するリスクを抽出し、その影響度と必要な対応を想定することで、危機発生時にクライシスマネジメントへ寸断なく移行できるよう準備しています。あわせて、危機の類型に応じてRHQと当社の役割を明確にするとともに、危機発生時の情報ラインの整流化を図り、グローバルなクライシスマネジメント体制の強化も進めています。 これらの事前対策により災害による被害の最小化、当社グループの業績及び財政状態に対する影響の低減に努めています。 2)人権尊重に関わるリスク 近年、企業による人権尊重の活動を義務付ける気運は高まり、ステークホルダーからの企業の人権デューデリジェンス活動への期待も一層強まっています。こうした動向を背景に、自社の事業活動に関連する人権リスクに対して適切な対策が講じられない場合は、法令違反や経済的損失などのリスクが増大し中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害する可能性があります。 当社グループは、グローバルな企業グループとして、自社の事業活動が環境や人権に与える潜在的または実際的な影響を十分に認識しており、人権尊重をビジネスの基盤と位置付けています。2023年末には人権に関する最上位方針である「アサヒグループ人権方針」を改訂し、2024年以降、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」に準拠する取り組みを推進しています。さらに、人権方針を反映した事業活動の推進や全従業員の人権尊重への理解浸透も不可欠であるという認識のもと、活動を強化しています。 当社グループは、サプライチェーンと自社従業員に関する人権デューデリジェンス、及び人権侵害への被害者への救済の仕組みの構築・運用を優先事項として取り組んでいます。 サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスについては、2023年に、2030年までに原材料一次サプライヤー(年間10万ドル以上取引のある既存の原材料及び包装資材のサプライヤー)へのリスクアセスメントを100%実施する目標を定め、2024年8月に「アサヒグループ責任ある調達プログラム」を策定し、原材料一次サプライヤーへのリスクアセスメントを段階的に進めています。 自社従業員に関する人権デューデリジェンスについては、2030年までにすべての事業展開国(ディストリビューターを通じた輸出事業を除く)においてUNGPsに準拠した活動が実行されており、継続的にPDCAをモニタリングできている状態を目指しています。2024年は高リスク国の全生産拠点におけるリスクアセスメントとその一部で第三者現地監査を実施しました。これらの結果に基づく是正対応も着実に進めています。 人権侵害の被害者への救済の仕組みの構築・運用については、2024年5月に事業展開国の現地語に対応可能な新しい内部通報制度「Speak Up」の運用を開始しました。24時間365日すべてのステークホルダーが通報しやすい環境を整備し、コンプライアンス問題や人権侵害を早期に認識して対応することを目指しています。 3)法規制とソフトローのコンプライアンス 当社グループは事業の遂行にあたって、食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法規制の適用を受けています。これらの法令が変更される、又は予期し得ない法律、規制等が新たに導入される等の理由による法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが増加し、又はお客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が毀損し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、事業活動を行う全ての国・地域において、適用される法令・ルールを遵守することを含め、「Asahi Group Philosophy」で示したステークホルダーに対する5つのPrinciplesに基づき、企業倫理・コンプライアンスを実践するための「アサヒグループ行動規範」を制定し、グループ全体での実践を推進しています。そして、代表執行役社長Group CEOが委員長を務め、代表執行役社長Group CEO以下の執行役、Group CxO及び委員長が任命したFunctionのHeadで構成される「コンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体の企業倫理・コンプライアンスを推進・監督するとともに、「アサヒグループ行動規範」に関する社員の研修等を通じてコンプライアンスのレベルを高め、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。 ④ 個別戦略リスクのヒートマップ ⑤ 個別戦略リスクの経営方針・戦略との関連性 (3)その他リスク1)品質について 当社グループは、研究開発、調達、生産、物流、販売、お客様とのコミュニケーションに至る全てのプロセスにおいて、お客様の期待を超える商品・サービスを提供することで、お客様の満足を追求することをグループ品質基本方針とし、いずれのグループ会社も品質を通して、お客様との信頼関係を築くことに不断の努力を続けています。お客様の健康に密接に関連する事業を展開しているため、万一、不測の事態により、お客様の健康を脅かす可能性が生じたときは、お客様の安全を最優先に考え、迅速に対応します。 しかしながら、万一、品質に問題が生じて、商品の安全性に疑義が持たれた場合には、商品の回収や製造の中止を余儀なくされ、その対応に費用や時間を要するだけでなく、お客様からの信頼を失う可能性があります。このような事象が発生した場合、中長期経営方針に掲げた「既存地域でのプレミアム化とグローバルブランドによる成長、展開エリアの拡大」の未達を含む、当社グループの業績及び財政状態、並びにレピュテーション及びブランド価値に対して影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、品質リスク低減を目的とした品質保証レベル向上の取り組みとして、サプライチェーンの全てのプロセスにおいて、品質に影響を与える業務や注意すべき事項を抽出し、その点検と是正による改善のPDCAサイクルをグローバル共通の仕組みとして展開しています。 また、食の安全に関わる分野においては、研究開発部門を中心に微生物・農薬・カビ毒・重金属・樹脂・放射性物質等多岐にわたる最新の分析技術を開発しており、グループ内の連携によりグローバルでの品質保証活動を展開する体制・仕組みを通じて、技術面からグループ全体をサポートしています。 さらに、各グループ会社の商品特性や製造工場の環境に応じて、国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの考え方を取り入れ、必要に応じて外部認証取得しています。 2)財務リスク為替変動: 当社グループはグローバルに事業を展開しているため為替リスクを負っています。このうち、海外子会社及び関連会社における資産や負債については円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、必要に応じて為替リスクのヘッジをする等の施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。また、海外連結子会社等の損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。一方、本国で行う輸出入、及び外国間等の貿易取引から発生する、外貨建債権及び債務等は為替レートの変動によるリスクを有しておりますが、このリスクは為替予約等と相殺されるため影響は限定されます。金利変動: 当社グループは銀行預金や国債等の金融資産及び銀行借入金や社債、リース負債等の負債を保有しております。これらの資産及び負債に係る金利の変動は受取利息及び支払利息の増減、あるいは金融資産及び金融負債の価値に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、金利リスクを回避する目的で、金利を実質的に固定化する金利スワップを利用することがあります。またヘッジ会計の要件を満たす取引については、ヘッジ会計を適用しております。格付低下: 当社グループに対する外部格付機関による格付けが引き下げとなり、当社グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される場合には、当社グループの業務運営や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。保有資産の価格変動:当社グループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 3)税務リスク 当社グループはグローバルに事業を展開しており、本国をはじめとする、各国の税制による適用を受けており、予期し得ない改正や税務当局からの更正処分を受けた場合、大幅なコストの増加、競争環境の悪化、事業活動の制限等が懸念され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 4)訴訟リスク 当社グループは、事業を遂行していくうえで、訴訟を提起される可能性があります。万一当社グループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
FY2023|19,438 文字
3【事業等のリスク】 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。 なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。 1.アサヒグループのリスクマネジメント体制 アサヒグループは、グループ全体を対象に、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)を導入しております。この取り組みの中で、グループ理念「Asahi Group Philosophy」の具現化、並びに「中長期経営方針」の戦略遂行及び目標達成を阻害しうる重大リスクを、戦略、オペレーション、財務、コンプライアンス等全ての領域から特定及び評価し、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを継続的に実施することで、効果的かつ効率的にアサヒグループのリスク総量をコントロールします。 ERMを推進するにあたり、代表取締役社長兼Group CEO以下の業務執行取締役、Group CxO及び委員長が指名するFunctionのHeadで構成される、リスクマネジメント委員会を設置しています。ERMはグループ全体を対象とし、リスクマネジメント委員会の委員長である代表取締役社長兼Group CEOが実行責任を負います。 アサヒグループ各社は、事業単位毎にERMを実施し、リスクマネジメント委員会に取組内容を報告します。同委員会はそれらをモニタリングするとともに、委員自らがグループ全体の重大リスクを特定、評価、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを実施します。これらの取り組みは取締役会に報告され、取締役会はこれらをモニタリングすることで、ERMの実効性を確認します。 2.アサヒグループ リスクアペタイト アサヒグループは、ERMを推進するとともに、「中長期経営方針」の目標達成のために、「とるべきリスク」と「回避すべきリスク」を明確化する、「アサヒグループ リスクアペタイト」を制定しております。 「アサヒグループ リスクアペタイト」は、アサヒグループのリスクマネジメントに関する「方針」です。ERMの運用指針及び意思決定の際のリスクテイクの指針となるものであり、リスクに対する基本姿勢を示す「リスクアペタイト ステートメント」と、実務的な活用を想定した、事業遂行に大きく影響する主要なリスク領域に対する姿勢(アペタイト)を示す「領域別リスクアペタイト」で構成されます。グループ戦略、リスク文化とリスク状況、及びステークホルダーの期待をもとに検討し、取締役会にて決定、グループ全体に適用され、実施状況はリスクマネジメント委員会でモニタリング、取締役会へ報告されます。本取り組みを通じて、アサヒグループ全体で適切なリスクテイクを促進してまいります。 3.アサヒグループのクライシスマネジメント体制 アサヒグループでは、ERMにおけるグループ全体の重大リスクの中でも、人・モノ・カネ・情報等の経営資源遮断の危機があり「即時対応」する領域を「クライシスマネジメント」の対象としております。 クライシスマネジメントの実効性を上げるため、平時から「事前の想定」を行い、クライシス時に混乱なく速やかに対応できるよう「緊急時の即応体制」を構築しております。事前の想定については、経営資源遮断の危機を想定した「リスクシナリオ」を作成し対応を準備しております。 また、緊急時の即応体制については、クライシス類型に応じた対応主体を予め明確にし、危機発生時の初動における事実確認と重大性の評価を迅速・的確に実施し対応する体制を構築しております。 4.主要リスク 当社グループでは、「1.アサヒグループのリスクマネジメント体制」に記載の通り、代表取締役社長兼Group CEO以下の業務執行取締役、Group CxO及び委員長が指名するFunctionのHeadで構成されるリスクマネジメント委員会で、中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを特定及び評価し、以下の「(2)個別戦略リスク」として認識しております。 加えて、それ以外に考えられる当社グループの事業等のリスクについても、「(1)全体リスク」及び「(3)その他リスク」に記載しております。但し、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。 また、前述の、当社グループリスクマネジメントの取り組みの中で、以下に記載する各リスクに対する対応策を含む種々の対応策をとりますが、それらの対策が有効に機能しない等によりリスクが解消できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (1)全体リスク1)中長期経営方針について 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指して、2019年に「Asahi Group Philosophy(AGP)」を制定し、2022年、それに基づいて、また、その後のグループ内外の環境変化も踏まえて中長期経営方針を更新しました。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、本方針では、3年程度を想定した主要指標のガイドラインや、財務・キャッシュ・フロー方針を示しておりますが、これらのガイドライン・方針は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定されたものです。そのため、本「3 事業等のリスク」に記載の各リスク等を含む様々な要因により変更を余儀なくされるものであり、当社グループの事業や業績が中期経営方針内の同ガイドライン・方針等を達成できない可能性があります。 2)事業環境について 当社グループの売上収益において日本の占める割合は約49.2%(2023年12月期決算)となっております。今後の日本国内での景気の動向によって、酒類・飲料・食品の消費量に大きな影響を与える可能性があり、人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類・飲料・食品の消費量が減少する可能性があります。また、原材料・エネルギー価格の高騰やインフレの影響などにより、国内での競争環境がさらに激化することで当社売上数量・金額が低下するとともに、コスト構造の悪化を招き、当社グループ事業の収益性が想定より損なわれる可能性があります。 日本の売上収益のうち、ビール類は4割を超えます。このような状況は、当社グループのビール類商品に対するお客様の信頼を反映したものであり、当社グループ国内酒類事業での効率的な利益創出に寄与しておりますが、消費者の嗜好性の変化、世代交代等により、お客様の支持を失ってしまうと、本商品群の売上が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループは海外での事業領域を拡大しており、2023年12月期決算での売上収益における欧州、オセアニア、東南アジアの占める割合は、約50.5%となっております。今後、欧州、オセアニア地域を中心とする当社グループが事業を展開する各国における景気の悪化、当該各国での競争環境の激化、消費者の嗜好の変化等、市場の需要動向が変化すること等により、当該地域における当社グループの売上収益の低下、利益率の悪化が生じる可能性があります。 当社グループは、中長期経営方針に『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』を掲げ、『アサヒスーパードライ』や『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルブランドをはじめとした高付加価値ブランドの価値向上や新市場の創造を目指すとともに、今後の環境変化も見据えた収益構造改革を加速することで、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図っていきます。また、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させることで売上収益を増加させるとともに、飲料、食品事業において、消費者の健康志向の高まり及び高齢化社会に対応する領域へ挑戦することで、事業拡大を図っていきます。 当社グループは、テクノロジーの発展が、人類に新たな技術力と自由な時間を与え、気候変動・資源不足といった地球規模の課題を抱える中、社会・経済だけではなく人類の幸福(Well-being)のあり方も変化していくものと想定しています。そうしたメガトレンドを踏まえて更新した「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」という方針のもと、変化しつつあるWell-beingへの迅速な対応、市場環境の変化を先取りした事業戦略の立案と展開、ならびに新たなオペレーティングモデルの構築を通じて、当社グループの戦略及び事業の競争力を強化してまいります。 (2)個別戦略リスク 当社リスクマネジメント委員会は、中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを以下の通り認識しております。その中で、中長期的に顕在化が懸念されるリスクを①、短中期的に顕在化が懸念されるリスクを②、及び継続的に顕在化を留意すべきリスクを③、とそれぞれ分類し記載しました。 ① 中長期的に顕在化が懸念されるリスク1)事業拡大について 当社グループは、Schweppes Australia社の買収(2009年、買収額1,185百万豪ドル(適時開示の際に公表した金額、以下同じ))、カルピス社の買収(2012年、買収額920億円)、旧SAB Miller社の西欧ビール事業の取得(2016年、買収額2,550百万ユーロ)、中東欧ビール事業の取得(2017年、買収額7,300百万ユーロ)及びCUB事業の買収(2020年、買収額160億豪ドル)をはじめとして、国内外での事業領域拡大のため、積極的に外部の経営資源を獲得してきました。2020年6月には、CUB事業を取得する手続きを完了することで、日本、欧州に加え、オセアニア地域での事業を盤石にし、日本、欧州、オセアニアの3極を核としたグローバルプラットフォームを構築、成長基盤の拡大を実現しました。ここ数年は財務基盤の強化を優先し大型の買収は控えておりましたが、今後条件が揃えば、成長のために、外部の経営資源を活用していきます。 外部の経営資源獲得にあたっては、慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ実行します。しかしながら、営業、人員、技術及び組織の統合ができずコスト削減等の期待したシナジー効果が創出できなかった場合、アルコールや砂糖の摂取に対する社会の価値観の変化や人口動態の変化等により、買収した事業における製品に対する継続的な需要を維持できない場合、買収した事業における優秀な人材を保持し又は従業員の士気を維持することができない場合、高付加価値ブランドの育成不振等、効果的なブランド及び製品ポートフォリオを構築することができない場合、並びに異なる製品ラインにおける販売及び市場戦略の連携(クロスセルの拡大)ができない場合等により、当社グループの期待する成果が得られない可能性があります。 当社グループは、買収に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、2023年12月末現在、のれん及び無形資産の金額はそれぞれ、連結総資産の40.6%(21,471億円)及び21.5%(11,368億円)を占めております。 当社グループは、当該のれん及び無形資産につきまして、それぞれの事業価値及び将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が将来にわたって大きく損なわれると判断された場合、又はカントリーリスクの顕在化による金利高騰や市場縮小等により適用される割引率や長期成長率が大きく変動した場合等は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、AGP及び中長期経営方針に基づいた価値創造経営により、事業の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しており、『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』、や『持続的成長を実現するためのコア戦略の推進』とともに、『長期戦略を支える経営基盤の強化』の一環としてグループガバナンスの更なる実効性向上に向けた取り組みを実施することで、グループ戦略の実行と期待成果をより確実なものとします。 2)アルコール摂取に対する社会の価値観 アルコールの摂取は人々の生活を豊かにしてきた一方で、その不適切な摂取は健康面あるいは社会的悪影響が指摘されています。世界保健機関(WHO)においては世界的な規模での酒類販売に関する規制が推奨されており、当社グループの予想を上回る規制強化が行われる可能性があります。新型コロナウイルス感染症の拡大時には、アルコールの製造販売の禁止や制限を含む行動規制が世界各国で布かれ、このような規制が消費者のライフスタイルの見直しに直結することを体験しました。将来、不適切な飲酒による酒類業界や当社グループのレピュテーション及びブランド価値を毀損する可能性や、行政による行動規制が重なると、アルコールに対する消費者の需要が縮小する可能性もあります。その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、アルコール飲料を製造・販売する企業としての社会的責任を果たすため、WHOが2022年5月に新たに採択したグローバルアルコールアクションプラン2022-2030の中で掲げたグローバル目標「有害なアルコール使用20%低減」の達成に貢献する戦略の方向性を経営の中で議論し、地域ごとに具体的なアクションプランの策定に取り組んできています。責任ある飲酒の取り組み促進のためにグループスローガン「Responsible Drinking Ambassador」を打ち出し、不適切な飲酒の撲滅に向けた活動を強化するとともに、社員に対する「責任ある飲酒」の研修の取り組みを推進してきました。今後更に社会インパクトを創出する取り組みを強化していきます。更に、新しい飲用機会の創出に向けた取り組みとして、2030年までにアサヒグループにおけるノンアルコール・低アルコールの販売構成比20%を新たな目標に掲げ、アルコール起因の課題解決にも取り組んでいます。アサヒビール株式会社は2020年に「スマートドリンキング宣言」を発表し、商品ごとの純アルコール量の積極的な開示を開始。多様な飲み方に対応すべく、様々な度数の低アルコール飲料による飲み方提案や、ノンアルコール飲料の強化などを進めています。2022年にはノンアルコールや低アルコール飲料のメニューを100種提供し、飲む人も飲まない人も楽しめる『SUMADORI-BAR SHIBUYA(スマドリバー シブヤ)』を、2023年には、酔わなくても楽しめる新しい大人の嗜好品を提供するバー『THE 5th by SUMADORI-BAR』を展開するなど、新たな飲食店のカタチを提案しています。 アルコールの有害な使用の低減による健康被害の予防を更に推進するためには産業界が協力し合って課題解決に取り組むことも重要になります。酒類事業を行う各地の関連法令遵守のほか、IARD※をはじめとする業界団体や他業種の業界と協力・連携して販売や広告に関する自主基準を設け、責任あるマーケティングに取り組んでいます。2020年1月に、IARDに加盟する企業のCEOによる未成年飲酒防止に向けた取り組みを推進する共同声明を公表しました。2021年にはIARDとしてeコマースのプラットフォームなどと共にeコマースにおける世界基準を策定し実践を開始したほか、インフルエンサーマーケティングの世界基準を新たに策定し広告代理店やPR代理店などと共に取り組むことを宣言しています。※ IARD=International Alliance for Responsible Drinking(責任ある飲酒国際連盟)の略称。不適切な飲酒の撲滅と、責任ある飲酒を促進するという共通の目的のもとに、世界のビール、ワイン、スピリッツの製造業者である大手企業15社の加盟企業で構成される非営利団体。 3)技術革新による新たなビジネスモデルの出現 当社グループが国内外で事業を展開する、酒類・飲料・食品業界は、その製造販売に関して、技術革新による競争環境の変化が比較的少ない安定した業界でしたが、最近では、低アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料などのビール隣接カテゴリー(BAC:Beer Adjacent Categories)による新たな飲用シーンの提案ができるようになり、最新デジタル技術を活用して“変化するWell-Being”に応えることで新たな価値の提供、AI活用による各種業務の効率化、あるいはアルコール代替品等、技術革新による新たなビジネスモデルの可能性も示されております。更に、2020年以降世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークの急激な普及や、EC等のオンラインチャネル利用の加速等、それまで将来的に発生すると想定されていた変化が前倒しで出現しています。 こうした環境変化や新たなビジネスモデルの出現により、当社グループ事業がコスト構造や顧客体験で劣後し、業界での主導権喪失や競争力の低下につながり、売上収益、事業利益の低下等、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。その一方で、当社グループがこのようなイノベーションを先導することによって、市場優位性獲得や、新規市場創出につなげることが期待できます。 当社グループは、このような状況に対して、単なるリスク対応に留まることなく技術革新を先取りすることを目指して、中長期経営方針において「DX=BX※と捉え、3つの領域(プロセス、組織、ビジネスモデル)でのイノベーションを推進」及び「R&D(研究開発)機能の強化による既存商品価値の向上・新たな商材や市場の創造」を掲げ、領域を特定した戦略的DX及びR&D投資を推進していきます。 DX領域においては、グローバル調達プラットフォーム、グローバルデータマネジメント、環境負荷の予測と見える化といった生産性を向上するグローカル基盤を構築するとともに、新たな消費者データ、多様化・細分化する顧客ニーズの把握と新しい素材や製法による新ビジネスモデルの開発、及びこれらのイノベーションを実現するためのデジタルネイティブ組織への変革、インキュベーション機能の強化、アジャイル型働き方の組み込みを推進します。 R&Dにおいては、中長期的な社会環境や競争環境の変化を見据え、メガトレンドからバックキャストで導いた未来シナリオとこれまでの研究で蓄積してきた技術・知見・ノウハウを踏まえ、変化するアルコールに関する価値観に対応した新たな価値創造、消費者の身体と心の健康の実現、サステナビリティ実現に向けた環境・気候変動リスクの軽減、及び新規事業につながる非凡なシーズの開発を重点領域と位置づけ、新たな価値創造やリスク軽減に向けた商品・技術開発への投資を推進します。 また、米国サンフランシスコに投資運用会社を設立し、2023年1月から運用を開始したスタートアップ投資ファンドは、低アルコール飲料やノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料など、将来大きく成長する可能性のある魅力的なブランドや、新たな販売手法や製造手法に繋がるテクノロジーを持った米国のスタートアップ企業にマイノリティ出資を行い、当社グループの市場優位性獲得や、新規市場創出につながるイノベーションに貢献することが期待できます。※ DX=BX:デジタル・トランスフォーメーション = ビジネス・トランスフォーメーション 4)気候変動に関わるリスク 地球温暖化により、これまで経験したことのない気候の変化や熱波による干ばつ、台風や豪雨による洪水など異常気象が世界各地で発生し、生命や財産に大きな被害をもたらしています。この気候変動問題は、「自然の恵み」を享受して事業を行うアサヒグループにとってきわめて重要な環境課題です。 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「Beyondカーボンニュートラル」を2050年の世界のあるべき姿として掲げています。脱炭素社会に向けて、事業の枠を超えた社会全体におけるカーボン排出量が削減され、生物多様性が保全された世界を目指すため、バリューチェーンのCO2削減と生態系の保全の両立、CO2の排出量削減・吸収・回収の技術開発・展開などに取り組んでいきます。 将来的な気候変動が業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性がある物理リスクとして、以下の通り認識しています。海外の生産拠点における干ばつが深刻化し、水需給が逼迫、水価格の高騰による操業コストが上昇する可能性があります。気温上昇(生育環境や労働環境の変化)・天候・自然災害・CO2濃度等が需給バランスや品質に影響し、主要な原材料価格が変動する可能性があります。更に、必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失と工場移転費用が発生する可能性があります。異常気象の激甚化により、深刻な風水害及び土砂災害が発生することで生産ラインや物流が停止し、設備被害や機会損失、製品廃棄による損失が発生する可能性があります。 また、将来的な気候変動を見据えた脱炭素社会への移行リスクを以下の通り認識しています。炭素税が導入され、特にPETボトル等の製品原材料への価格転嫁や生産拠点の操業コストが上昇する可能性があります。水ストレスの高い地域の生産拠点において取水制限を受けて操業が停止、機会損失が発生する可能性があります。エシカル志向の高まりにより、環境配慮が不十分な製品があった場合、その需要が低下し、当社グループの売上に影響を与える可能性があります。 当社グループは、脱炭素社会の速やかな実現を目指し、CO2排出量ゼロを目指す中長期目標「アサヒカーボンゼロ」を改訂しました。「アサヒカーボンゼロ」の中期目標として、Scope1,2※においては、2025年に40%削減、2030年に70%削減の脱炭素目標を設定しています。Scope3※においても、2030年に30%削減(ともに2019年比)を設定しています。その上で、長期目標として掲げていたScope1,2,3におけるCO2排出量ネットゼロの目標年を2050年から2040年へ上方修正し、今後更なる省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用を推進していきます。また、グループ全体で水使用量削減に向けた取り組みを進めて、水リスクに対応していきます。 将来的な気候変動リスクに関連する経営のレジリエンスと持続性を高めるために、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言への対応を行っています。シナリオ分析によって明確化された重要なリスクと機会に対してそれぞれの対策を講じ、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげていきます。特に、炭素税による生産コストなどへの影響を軽減するため、「アサヒカーボンゼロ」に基づくCO2排出量削減施策として、2030年までに500億円以上を投資していきます。※ Scope1は、自社(工場・オフィス・車など)での燃料の使用によるCO2の直接排出、Scope2は、自社が購入した電気・熱・蒸気の使用によるCO2の間接排出、Scope3は、自社のバリューチェーンからのCO2の排出を指します。 5)プラスチック使用 近年、廃棄プラスチックの規制強化の動きが加速しています。同時に、プラスチックを大量に使用する製品に対する社会の目は厳しくなってきており、容器包装をプラスチック素材に依存している当社グループの飲料・食品製品の需要が著しく低下し、売上に影響を与えるだけでなく、対応不十分とのことで、当社グループに対するレピュテーションが低下する可能性があります。また、リサイクル費用の負担が増加することや、バイオマス素材等の代替素材を使用した場合の材料費が増加すること等で、製造原価が増嵩する可能性があります。 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「容器包装廃棄物のない社会」を2050年の世界のあるべき姿として掲げています。容器包装の中でも海洋汚染や生態系への影響が世界的に喫緊の課題となっている海洋プラスチック問題への対応については、2020年、グループの戦略の方向性として「3R+Innovation」を定め、2022年に目標を上方修正してグローバル統一の新たな目標として2030年までにPETボトルを100%リサイクル素材、バイオ由来の素材等に切り替えることを設定しました。それに基づき、グループ各社において様々な取り組みを進めています。 国内では、アサヒ飲料株式会社がリサイクルPET等リサイクル素材の使用、リデュースの推進、環境への配慮を前提とした新容器開発等に関する目標「容器包装2030」の達成に向けた取り組みを進めています。更なる「ラベルレスボトル」製品の拡大やリサイクル素材活用拡大のために「ボトルtoボトル」の水平リサイクルを進めています。後者の取り組みとして、再生事業者である株式会社JEPLANへの融資を行い、アサヒ飲料販売株式会社が管理・運営する首都圏エリア約3万台の自動販売機から使用済みPETボトルを回収、ケミカルリサイクルPET樹脂に再生させ、当社商品に再利用する循環システムを構築し、水平リサイクルを進めています。 2022年4月から、一部の大型ペットボトル(「三ツ矢」「カルピス」「アサヒ 十六茶」「アサヒ おいしい水」「バヤリース」)でこのリサイクルPET樹脂を使用することにより、年間のCO2排出量は従来比で約47%削減され、約18,400tのCO2が削減される見込みです。また、業界の枠を超えた連携体制により使用済のプラスチックを再資源化する会社に共同出資を行い、中長期的なPET調達に向けた取り組みも強化しています。 また、2023年には飲料他社と共同で、複数の地方自治体との間で使用済みペットボトルを新たなペットボトルに再生する水平リサイクル「ボトルtoボトル」事業の連携協定を締結しました。各地で2024年から取り組みを開始し、プラスチック資源循環を推進していきます。 海外では、オーストラリアの子会社Asahi Beverages Pty Ltdが、業界の枠を超えたパートナーシップ構築を通じて、PETボトルのリサイクルを推進しています。リサイクル大手企業や容器メーカーと合弁会社を設立し、2022年にはニューサウスウェールズ州でリサイクルPET樹脂の更なる生産と供給のための工場を稼働しました。さらに2023年にビクトリア州で2拠点目のリサイクル工場の操業を開始しました。オーストラリアでは既に2019年より水ブランドの「Cool Ridge(クールリッジ)」に100%リサイクルPETボトルを使用しCO2排出量を従来の約半分に削減しました。 当社グループ全体として、プラスチックのリサイクル素材、バイオ由来の素材等の更なる活用を推進してまいります。 ② 短中期的に顕在化が懸念されるリスク1)主要原材料の調達リスク 当社がグローバルに事業展開する酒類・飲料・食品の製造においては、原材料の調達に関し、市況悪化による価格高騰、気候変動や自然災害及びパンデミック等による納期遅延や供給停止に陥るリスクがあります。このようなリスクに直面した場合、製造コストが上昇し、また製造数量が計画を下回ることで、グループの業績及び財政に大きな影響を及ぼす可能性があります。 このようなリスクに対し当社では、原材料毎にヘッジポリシー及びガードレールを定め、原材料商品及び為替市況をつぶさにモニタリングし、状況に応じ複数年での契約締結や、金融商品を活用することで価格高騰リスクを回避し、また必要量の安定確保に努めております。併せて、グローバル各製造拠点で原材料毎に在庫量を定め、安全在庫を確保すると共に、シナジー創出を期待できる品目については、2024年1月に運営を開始したグループグローバル調達組織であるAsahi Global Procurementが、カテゴリーマネジメントとソーシング機能を集約し、スケールメリットを活かしコスト低減に努めております。加えて、グループ間での在庫情報共有による調整機能を活用し、調達困難時でも全製造拠点で十分な在庫量を維持できるよう努めております。 2)地政学的リスク 現在、当社グループは20を超える国に拠点を構え、グローバルに事業を展開しております。世界経済全体の動向に加え、当社グループが事業活動を展開する国・地域における政治、経済、社会、法規制、自然災害等の要素が、各事業に影響を与える可能性があります。 さらに、近年は、地政学的な要因が事業に影響を及ぼす可能性が高まっていると認識しています。例えば、ウクライナ情勢や中東情勢、台湾を巡る緊張の高まり、米国と中国の対立関係などの要因により、当社グループが事業を展開する複数の国・地域において、輸出入制限、差別的な措置、商品不買運動、技術の分断、データに関する規制等の具体的なリスクが想定され、同時に、今後の事業の強化やエリアの拡大を進める上でも影響を与える要素となります。地政学的な要因によりこれらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの中長期経営方針の実行や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、地政学的リスクに関する動向の情報収集と分析をもとに、リスクシナリオの策定及びリスクの把握を行い、その影響を低減するための適切な対策の検討を進めてまいります。また、事業展開国・地域のカントリーリスクの調査、情報収集、評価をもとに、リスクを早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をする取り組みも継続しております。 3)情報セキュリティ 当社グループは、高い市場競争力を確保するため、事業活動の多くをITシステムに依存しており、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、あるいはサイバー攻撃によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩、詐欺被害、EU一般データ保護規則(GDPR)等の各国法令違反が発生する可能性があります。 このようなリスクが顕在化した場合、事業の中断、損害賠償請求やセキュリティ対策費用の増加等によるキャッシュアウト、GDPR違反による制裁金等により、当社グループの業績及び財政状態、並びに企業ブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。 サイバー攻撃リスクの高まりへの対応としては2022年10月にグループ全体で遵守すべきサイバーセキュリティ基準を制定し、運用の徹底を図っています。当基準に準じて国内・海外グループ会社のサイバー攻撃対策状況を評価し、セキュリティ体制の維持、及び向上に努めており、本件リスクが顕在化しないようにセキュリティの改善に取り組んでいます。また、当基準内でインシデント発生時の報告ルールを明示することでグループ全体でのインシデント情報を集約し、リスク対応の強化を目的とした体制整備も完了しています。 当社グループは、ビジネスの多様な分野における生成AIの活用を積極的に推進しています。我々は、この技術が企業の競争力を高める重要な要素であると認識しており、その有効な活用を通じて、業務効率の向上とイノベーションの促進を図っています。さらに、生成AIの使用に伴うリスクに対処するため、国内・海外グループ会社に適用される包括的なガイドラインを制定しました。このガイドラインは、生成AIの安全かつ責任ある使用を確実にするための運用基準と注意事項を定めており、リスクの軽減と管理に努めています。 4)多様で有能な人材の確保 中長期経営方針の目標達成には、多様な価値観や専門性を持つ社員の貢献が不可欠です。そのため、当社グループは社員の多様性を尊重し、一人ひとりの成長を支援する人材育成プログラムへの投資を増やし、必要に応じて、経営幹部や一般社員を外部から採用する取り組みを進めています。しかし、グローバルな事業の成長に伴う人材需要の増加や必要なスキルの変化、高度化により、多様で有能な経営幹部や一般社員の確保、育成、定着が難しく、中長期経営方針の戦略実行に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは中長期経営方針で「目指す事業ポートフォリオの構築やコア戦略を支える高度な人的資本の確保」を掲げ、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進を通じて、戦略を支える経営基盤を強化し、従業員のエンゲージメントを高める企業文化を醸成しています。定期的にエンゲージメント調査を実施し、望ましい企業文化の実現度を確認しています。 また、経営者候補の育成を計画的に進めるため、グループ全体で共通のコンピテンシーモデルを策定し、将来の経営幹部候補を育成するグローバルリーダーシッププログラムを実施し、人材パイプラインを拡充・強化しています。さらに、各地域の人材を可視化し、国籍や性別に関係なく適材適所で配置するためのタレントレビューを実施し、多様な有能な人材の活用を推進しています。新しいケイパビリティを獲得するために、社外からの人材登用も積極的に行っています。 ③ 継続的に顕在化を留意するリスク1)大規模自然災害 2024年1月に能登半島で発生した地震が甚大な被害をもたらすなど、国内外問わず世界各地で地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、大規模災害が現実のものとなっています。このような大規模自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断により製造が停止、倉庫損壊及び保管製品破損により出荷が停止、並びに物流機能停止により原材料資材の調達及び製品の出荷が不能になる可能性があります。更に、事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能、及びシステム障害に伴う重要データの消失等もあわせて、事業活動が停止する可能性があります。事業活動の復旧に長期を要した場合、施設等の改修に多額の費用が発生した場合、消費マインドが落ち込んだ場合等、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、大規模災害が発生した際に、いち早く従業員及びその家族の安否を確認する仕組みを導入するとともに、大規模地震を含め災害リスクが高い日本においては、早急に被災地の被害状況を把握するため、衛星携帯電話の配備をはじめとした緊急時通信体制の強化を進めています。そのうえで、定期的な訓練を実施することで、有事の対応力を強化するとともに、災害対応意識の啓発に努めています。 また、生産工場では、建物倒壊対策のため、全建物対象に耐震診断を実施しており、対策が必要な物件については、順次計画的に補強工事を実施しています。ボイラー、冷凍機等の大型エネルギー供給設備には大地震(震度5弱相当)を検知すると、安全に自動停止する機能が付属し、大型ビール工場では電力供給が遮断した場合でも、自家発電によりタンクを冷却させることで、半製品の大量腐敗を防止する等2次災害のリスク低減対策を進めています。 また、主要グループ会社において、過去の防災対策の実績及び自然災害の経験を踏まえた「事業継続計画(BCP)」の策定を行い、主要商品の供給を継続するための需給調整機能を早急に復旧する体制を構築するとともに、受発注処理等に関する重要なデータを処理するサーバーセンターのバックアップセンターを設置する等、大規模な自然災害が起こった場合であっても被災地以外での事業活動に支障が無いように備えています。 なお、大規模な災害等が発生した際には、代表取締役社長兼Group CEOを本部長とした「緊急事態対策本部」を設置して対応する危機管理体制を構築しており、平常時のリスクマネジメントにおいて、顕在化した際に即時対応を要するリスクを抽出し、その影響度と必要な対応を想定することで、危機発生時にクライシスマネジメントへ寸断なく移行できるよう準備しています。あわせて、国内を含めた4つのRegional Headquarters(RHQ)体制において、危機の類型に応じてRHQと当社の役割を明確にするとともに、危機発生時の情報ラインの整流化を図り、グローバルなクライシスマネジメント体制の強化も進めています。 これらの事前対策により災害による被害の最小化、当社グループの業績及び財政状態に対する影響の低減に努めています。 2)人権尊重に関わるリスク 格差や貧困の拡大、気候変動等環境問題の深刻化、感染症や紛争の勃発、さらに欧米を中心とした人権尊重に関する法規制強化などを背景に、当社グループにとって人権尊重並びに関連法規制の遵守は特に重要と認識しています。2023年は全社の人権取り組みを強化する目的で、「アサヒグループ人権方針」を改定しました。その中で、脆弱なステークホルダー(例:子ども、女性、移住労働者、先住民族)や人権擁護者の権利尊重や、グリーバンスメカニズムへの通報者保護と救済措置の実行強化を加えました。また「清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利」へのコミットメントを新たに加え、今後は気候変動や生物多様性の喪失等による人権リスクも理解し、これらを人権デューデリジェンスに組み込んで取り組みを強化していきます。 具体的な取り組みとしては、2019年以降、サプライヤーと自社従業員への人権デューデリジェンスと教育、救済へのアクセスの構築を優先して進めています。サプライヤーについては、2024年1月からAsahi Global Procurementが本格稼働することに伴い、グローバル調達活動を一元化し人権デューデリジェンスの方針や基準整備、計画と実行を同組織の中で担い、今後取組内容を深化させます。新たに2030年までに原材料一次サプライヤー(※既存の原材料及び包装資材の年間10万ドル以上取引のある一次サプライヤー)へのリスクアセスメントを優先的に100%実施することを目標に実施する計画です。また、2021年には現代奴隷リスク分析でハイリスクとの結果が出たエチオピアとタンザニアのコーヒー豆に関わるサプライヤー等を対象とし、2022年はブラジルのサトウキビを対象にデスク・リサーチを行いました。2023年にはブラジルのサトウキビを対象に現地訪問調査を実施しています。これら調査結果を踏まえて人権リスクを特定・評価し、負の影響の是正や発生予防に取組む予定です。 自社従業員については、2030年までに事業展開国(※ディストリビューターを通じた輸出事業を除く)へのリスクアセスメントを100%実施し、各事業会社、機能部門が継続的にPDCAをモニタリングができている状態を目指します。2024年は高リスク国の全生産拠点におけるSedexによるリスクアセスメントと、高リスクと判断した生産拠点への実態把握調査、インタビュー、指摘事項の是正を計画しています。従業員一人ひとりが人権方針を遵守するための人権教育として、2023年は国内全役員・社員を対象にした3つの「ビジネスと人権」eラーニングを実施しました。 救済へのアクセス構築については、「クリーン・ライン制度」へのアンケート結果や人権有識者との対話等を通じて抽出した課題を基に検討を進め、2024年春に新しい通報システムの運用を開始する予定です。 3)法規制とソフトローのコンプライアンス 当社グループは事業の遂行にあたって、食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法規制の適用を受けています。これらの法令が変更される、又は予期し得ない法律、規制等が新たに導入される等の理由による法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが増加し、又はお客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が毀損し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、事業活動を行う全ての国・地域において、適用される法令・ルールを遵守することを含め、「Asahi Group Philosophy」で示したステークホルダーに対する5つのPrinciplesに基づき、企業倫理・コンプライアンスを実践するための「アサヒグループ行動規範」を制定し、グループ全体での実践を推進しています。そして、代表取締役社長兼Group CEOが委員長を務め、代表取締役社長兼Group CEO以下の業務執行取締役、Group CxO及び委員長が任命したFunctionのHeadで構成される「コンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体の企業倫理・コンプライアンスを推進・監督するとともに、「アサヒグループ行動規範」に関する社員の研修等を通じてコンプライアンスのレベルを高め、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。 ④ 個別戦略リスクのヒートマップ [評価変更リスク]②-1)主要原材料の調達リスク2024年1月に運営を開始したグループグローバル調達組織であるAsahi Global Procurementへのカテゴリーマネジメントとソーシング機能の集約により、グローバルでの安定調達と更なるコストベネフィット獲得につながる体制が整備された。社外環境としては今後も予断を許さない状況が続くと認識するが、前項取り組みの進捗により、当該リスク顕在時の影響度が低減していると評価する。 ②-4)多様で有能な人材の確保引き続き人材獲得が難しい状況が続く国や地域がある中で、当社グループ内の多様で有能な人材を機動的に活用できる体制が整い、またグループ内人材育成の強化や競争力ある報酬制度の導入等により、当該リスク顕在化の蓋然性が低減していると評価する。 ⑤ 個別戦略リスクの経営方針・戦略との関連性 (3)その他リスク1)品質について 当社グループは、研究開発、調達、生産、物流、販売、お客様とのコミュニケーションに至る全てのプロセスにおいて、お客様の期待を超える商品・サービスを提供することで、お客様の満足を追求することをグループ品質基本方針とし、いずれのグループ会社も品質を通して、お客様との信頼関係を築くことに不断の努力を続けています。お客様の健康に密接に関連する事業を展開しているため、万一、不測の事態により、お客様の健康を脅かす可能性が生じたときは、お客様の安全を最優先に考え、迅速に対応します。 しかしながら、万一、品質に問題が生じて、商品の安全性に疑義が持たれた場合には、商品の回収や製造の中止を余儀なくされ、その対応に費用や時間を要するだけでなく、お客様からの信頼を失う可能性があります。このような事象が発生した場合、中長期経営方針に掲げた「既存地域でのプレミアム化とグローバルブランドによる成長、展開エリアの拡大」の未達を含む、当社グループの業績及び財政状態、並びにレピュテーション及びブランド価値に対して影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、品質リスク低減を目的とした品質保証レベル向上の取り組みとして、サプライチェーンの全てのプロセスにおいて、品質に影響を与える業務や注意すべき事項を抽出し、その点検と是正による改善のPDCAサイクルをグローバル共通の仕組みとして展開しています。 また、食の安全に関わる分野においては、研究開発部門を中心に微生物・農薬・カビ毒・重金属・樹脂・放射性物質等多岐にわたる最新の分析技術を開発しており、グループ内の連携によりグローバルでの品質保証活動を展開する体制・仕組みを通じて、技術面からグループ全体をサポートしています。 さらに、各グループ会社の商品特性や製造工場の環境に応じて、国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの考え方を取り入れ、必要に応じて外部認証取得しています。 2)財務リスク為替変動: 当社グループはグローバルに事業を展開しているため為替リスクを負っています。このうち、海外子会社及び関連会社における資産や負債については円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、必要に応じて為替リスクのヘッジをする等の施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。また、海外連結子会社等の損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。一方、本国で行う輸出入、及び外国間等の貿易取引から発生する、外貨建債権及び債務等は為替レートの変動によるリスクを有しておりますが、このリスクは為替予約等と相殺されるため影響は限定されます。金利変動: 当社グループは銀行預金や国債等の金融資産及び銀行借入金や社債、リース負債等の負債を保有しております。これらの資産及び負債に係る金利の変動は受取利息及び支払利息の増減、あるいは金融資産及び金融負債の価値に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、金利リスクを回避する目的で、金利を実質的に固定化する金利スワップを利用することがあります。またヘッジ会計の要件を満たす取引については、ヘッジ会計を適用しております。格付低下: 当社グループに対する外部格付機関による格付けが引き下げとなり、当社グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される場合には、当社グループの業務運営や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。保有資産の価格変動:当社グループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 3)税務リスク 当社グループはグローバルに事業を展開しており、本国をはじめとする、各国の税制による適用を受けており、予期し得ない改正や税務当局からの更正処分を受けた場合、大幅なコストの増加、競争環境の悪化、事業活動の制限等が懸念され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 4)訴訟リスク 当社グループは、事業を遂行していくうえで、訴訟を提起される可能性があります。万一当社グループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
FY2022|18,851 文字
2【事業等のリスク】 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。 なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。 1.アサヒグループのリスクマネジメント体制 アサヒグループは、グループ全体を対象に、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)を導入しております。この取り組みの中で、グループ理念「Asahi Group Philosophy」の具現化、並びに「中長期経営方針」の戦略遂行及び目標達成を阻害しうる重大リスクを、戦略、オペレーション、財務、コンプライアンス等全ての領域から特定及び評価し、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを継続的に実施することで、効果的かつ効率的にアサヒグループのリスク総量をコントロールします。 ERMを推進するにあたり、代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び代表取締役社長が指名する執行役員で構成される、リスクマネジメント委員会を設置しています。ERMはグループ全体を対象とし、リスクマネジメント委員会の委員長である代表取締役社長が実行責任を負います。 アサヒグループ各社は、事業単位毎にERMを実施し、リスクマネジメント委員会に取組内容を報告します。同委員会はそれらをモニタリングするとともに、委員自らがグループ全体の重大リスクを特定、評価、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを実施します。これらの取り組みは取締役会に報告され、取締役会はこれらをモニタリングすることで、ERMの実効性を確認します。 2.アサヒグループ リスクアペタイト アサヒグループは、ERMを推進するとともに、「中長期経営方針」の目標達成のために、「とるべきリスク」と「回避すべきリスク」を明確化する、「アサヒグループ リスクアペタイト」を制定しております。 「アサヒグループ リスクアペタイト」は、アサヒグループのリスクマネジメントに関する「方針」です。ERMの運用指針及び意思決定の際のリスクテイクの指針となるものであり、リスクに対する基本姿勢を示す「リスクアペタイト ステートメント」と、実務的な活用を想定した、事業遂行に大きく影響する主要なリスク領域に対する姿勢(アペタイト)を示す「領域別リスクアペタイト」で構成されます。グループ戦略、リスク文化とリスク状況、及びステークホルダーの期待をもとに検討し、取締役会にて決定、グループ全体に適用され、実施状況はリスクマネジメント委員会でモニタリング、取締役会へ報告されます。本取り組みを通じて、アサヒグループ全体で適切なリスクテイクを促進してまいります。 3.アサヒグループのクライシスマネジメント体制 アサヒグループでは、ERMにおけるグループ全体の重大リスクの中でも、人・モノ・カネ・情報等の経営資源遮断の危機があり「即時対応」する領域を「クライシスマネジメント」の対象としております。 クライシスマネジメントの実効性を上げるため、平時から「事前の想定」を行い、クライシス時に混乱なく速やかに対応できるよう「緊急時の即応体制」を構築しております。事前の想定については、経営資源遮断の危機を想定した「リスクシナリオ」を作成し対応を準備しております。 また、緊急時の即応体制については、クライシス類型に応じた対応主体を予め明確にし、危機発生時の初動における事実確認と重大性の評価を迅速・的確に実施し対応する体制を構築しております。 4.主要リスク 当社グループでは、「1.アサヒグループのリスクマネジメント体制」に記載の通り、当社代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び執行役員で構成されるリスクマネジメント委員会で、中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを特定及び評価し、以下の「(2)個別戦略リスク」として認識しております。 加えて、それ以外に考えられる当社グループの事業等のリスクについても、「(1)全体リスク」及び「(3)その他リスク」に記載しております。但し、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。 また、前述の、当社グループリスクマネジメントの取り組みの中で、以下に記載する各リスクに対する対応策を含む種々の対応策をとりますが、それらの対策が有効に機能しない等によりリスクが解消できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (1)全体リスク1)中長期経営方針について 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指して、2019年に「Asahi Group Philosophy(AGP)」を制定し、昨年、それに基づいて、また、その後のグループ内外の環境変化も踏まえて中長期経営方針を更新しました。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、本方針では、3年程度を想定した主要指標のガイドラインや、財務・キャッシュ・フロー方針を示しておりますが、これらのガイドライン・方針は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定されたものです。そのため、本「2 事業等のリスク」に記載の各リスク等を含む様々な要因により変更を余儀なくされるものであり、当社グループの事業や業績が中期経営方針内の同ガイドライン・方針等を達成できない可能性があります。 2)事業環境について 当社グループの売上収益において日本の占める割合は約51.8%(2022年12月期決算)となっております。今後の日本国内での景気の動向によって、酒類・飲料・食品の消費量に大きな影響を与える可能性があり、人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類・飲料・食品の消費量が減少する可能性があります。また、原材料・エネルギー価格の高騰やインフレの影響などにより、国内での競争環境がさらに激化することで当社売上数量・金額が低下するとともに、コスト構造の悪化を招き、当社グループ事業の収益性が想定より損なわれる可能性があります。 日本の売上収益のうち、ビール類は4割を超えます。このような状況は、当社グループのビール類商品に対するお客様の信頼を反映したものであり、当社グループ国内酒類事業での効率的な利益創出に寄与しておりますが、消費者の嗜好性の変化、世代交代等により、お客様の支持を失ってしまうと、本商品群の売上が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループは海外での事業領域を拡大しており、2022年12月期決算での売上収益における欧州、オセアニア、東南アジアの占める割合は、約48.1%となっております。今後、欧州、オセアニア地域を中心とする当社グループが事業を展開する各国における景気の悪化、当該各国での競争環境の激化、消費者の嗜好の変化等、市場の需要動向が変化すること等により、当該地域における当社グループの売上収益の低下、利益率の悪化が生じる可能性があります。 当社グループは、中長期経営方針に『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』を掲げ、グローバル5ブランド『アサヒスーパードライ』、『Peroni Nastro Azzurro』、『Pilsner Urquell』、『Grolsch』、『Kozel』をはじめとした高付加価値ブランドの価値向上や新市場の創造を目指すとともに、今後の環境変化も見据えた収益構造改革を加速することで、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図っていきます。また、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させることで売上収益を増加させるとともに、飲料、食品事業において、消費者の健康志向の高まり及び高齢化社会に対応する領域へ挑戦することで、事業拡大を図っていきます。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、多くの国や地域でワクチン接種の進展や治療薬の承認といった、同ウイルスとの共生に向けた進展が見られる一方で、変異種の断続的感染拡大が続き、今なお予断を許さない状況です。世界全体では、2023年内にも事態が鎮静化するとの見方も示されているものの、当社グループが事業展開する個々の地域において鎮静化が遅れ、ロックダウンや緊急事態宣言が発出される事態に陥った場合には、業務用ビールを中心とした売上低迷により、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、テクノロジーの発展が、人類に新たな技術力と自由な時間を与え、気候変動・資源不足といった地球規模の課題を抱える中、社会・経済だけではなく人類の幸福(Well-being)のあり方も変化していくものと想定しています。そうしたメガトレンドを踏まえて更新した「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」という方針のもと、変化しつつあるWell-beingへの迅速な対応、市場環境の変化を先取りした事業戦略の立案と展開、ならびに新たなオペレーティングモデルの構築を通じて、当社グループの戦略及び事業の競争力を強化してまいります。 (2)個別戦略リスク 当社リスクマネジメント委員会は、中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを以下の通り認識しております。その中で、中長期的に顕在化が懸念されるリスクを①、短中期的に顕在化が懸念されるリスクを②、及び継続的に顕在化を留意すべきリスクを③、とそれぞれ分類し記載しました。 ① 中長期的に顕在化が懸念されるリスク1)事業拡大について 当社グループは、Schweppes Australia社の買収(2009年、買収額1,185百万豪ドル(適時開示の際に公表した金額、以下同じ))、カルピス社の買収(2012年、買収額920億円)、旧SAB Miller社の西欧ビール事業の取得(2016年、買収額2,550百万ユーロ)、中東欧ビール事業の取得(2017年、買収額7,300百万ユーロ)及びCUB事業の買収(2020年、買収額160億豪ドル)をはじめとして、国内外での事業領域拡大のため、積極的に外部の経営資源を獲得してきました。2020年6月には、CUB事業を取得する手続きを完了することで、日本、欧州に加え、オセアニア地域での事業を盤石にし、日本、欧州、オセアニアの3極を核としたグローバルプラットフォームを構築、成長基盤の拡大を実現しました。当面は財務基盤の強化を優先し大型の買収を積極的に行う予定はありませんが、今後も、成長のために、外部の経営資源を活用していきます。 外部の経営資源獲得にあたっては、慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ実行します。しかしながら、営業、人員、技術及び組織の統合ができずコスト削減等の期待したシナジー効果が創出できなかった場合、アルコールや砂糖の摂取に対する社会の価値観の変化や人口動態の変化等により、買収した事業における製品に対する継続的な需要を維持できない場合、買収した事業における優秀な人材を保持し又は従業員の士気を維持することができない場合、高付加価値ブランドの育成不振等、効果的なブランド及び製品ポートフォリオを構築することができない場合、並びに異なる製品ラインにおける販売及び市場戦略の連携(クロスセルの拡大)ができない場合等により、当社グループの期待する成果が得られない可能性があります。 当社グループは、買収に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、2022年12月末現在、のれん及び無形資産の金額はそれぞれ、連結総資産の40.7%(19,669億円)及び22.0%(10,609億円)を占めております。 当社グループは、当該のれん及び無形資産につきまして、それぞれの事業価値及び将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が将来にわたって大きく損なわれると判断された場合、又はカントリーリスクの顕在化による金利高騰や市場縮小等により適用される割引率や長期成長率が大きく変動した場合等は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、AGP及び中長期経営方針に基づいた価値創造経営により、事業の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しており、『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』、や『持続的成長を実現するためのコア戦略の推進』とともに、『長期戦略を支える経営基盤の強化』の一環としてグループガバナンスの更なる実効性向上に向けた取り組みを実施することで、グループ戦略の実行と期待成果をより確実なものとします。 2)アルコール摂取に対する社会の価値観 アルコールの摂取は人々の生活を豊かにしてきた一方で、その不適切な摂取は健康面あるいは社会的悪影響が指摘されています。世界保健機関(WHO)においては世界的な規模での酒類販売に関する規制が推奨されており、当社グループの予想を上回る規制強化が行われる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大によって一次的にアルコールの製造販売の禁止や制限を含む行動規制が行われたことでライフスタイルを見直す動きも見られました。現状は元の状況に戻りつつありますが、将来似たような行動規制が重なると、アルコールに対する消費者の需要が縮小する可能性もあります。これらの要因により、規制に対応するための費用支出による利益圧迫や酒類の消費が減少することによる売上収益の縮小、さらにはアルコールを製造・販売する当社グループのレピュテーション及びブランド価値を毀損する等し、その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、アルコール飲料を製造・販売する企業としての社会的責任を果たすため、WHOが2022年5月に新たに採択したグローバルアルコールアクションプラン2022-2030の中で掲げたグローバル目標「有害なアルコール使用20%削減」の達成に貢献する戦略の方向性を経営の中で議論してきました。今後は地域ごとに具体的なアクションプランの策定に取り組んで行きます。これまでも、責任ある飲酒の取り組み促進のためにグループスローガン「Responsible Drinking Ambassador」を打ち出し、不適切な飲酒の撲滅に向けた活動を強化するとともに、社員に対する「責任ある飲酒」の研修の取り組みを推進してきましたが、今後更に社会インパクトを創出する取り組みを強化していきます。更に、新しい飲用機会の創出に向けた取り組みとして、2025年までにアサヒグループにおけるノンアルコール・低アルコールの販売構成比を15%にする目標を掲げ、アルコール起因の課題解決にも取り組んでいます。アサヒビール株式会社は2020年に「スマートドリンキング宣言」を発表し、商品ごとの純アルコール量の積極的な開示を開始。多様な飲み方に対応すべく、様々な度数の低アルコール飲料による飲み方提案や、ノンアルコール飲料の強化などを進めています。2022年にはノンアルコールや低アルコール飲料のメニューを100種提供する店舗『SUMADORI-BAR SHIBUYA(スマドリバー シブヤ)』を展開し、飲む人も飲まない人も楽しめる飲食店のカタチを提案しています。 アルコールの有害な使用の低減による健康被害の予防に更に推進するためには産業界が協力し合って課題解決に取り組むことも重要になります。酒類事業を行う各地の関連法令遵守のほか、IARD※をはじめとする業界団体や他業種の業界と協力・連携して販売や広告に関する自主基準を設け、責任あるマーケティングに取り組んでいます。2020年1月に、IARDに加盟する企業のCEOによる未成年飲酒防止に向けた取り組みを推進する共同声明を公表しました。2021年にはIARDとしてeコマースのプラットフォームなどと共にeコマースにおける世界基準を策定し実践を開始したほか、インフルエンサーマーケティングの世界基準を新たに策定し広告代理店やPR代理店などと共に取り組むことを宣言しました。※ IARD=International Alliance for Responsible Drinking(責任ある飲酒国際連盟)の略称。不適切な飲酒の撲滅と、責任ある飲酒を促進するという共通の目的のもとに、世界のビール、ワイン、スピリッツの製造業者である大手企業14社の加盟企業で構成される非営利団体。 3)技術革新による新たなビジネスモデルの出現 当社グループが国内外で事業を展開する、酒類・飲料・食品業界は、その製造販売に関して、技術革新による競争環境の変化が比較的少ない安定した業界でしたが、最近では、低アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料などのビール隣接カテゴリー(BAC:Beer Adjacent Categories)による新たな飲用シーンの提案ができるようになり、最新デジタル技術を活用して“変化するWell-Being”に応えることで新たな価値の提供、AI活用によるサプライチェーンの効率化、あるいはアルコール代替品等、技術革新による新たなビジネスモデルの可能性も示されております。更に、2020年以降世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークの急激な普及や、EC等のオンラインチャネル利用の加速等、それまで将来的に発生すると想定されていた変化が前倒しで出現しています。 こうした環境変化や新たなビジネスモデルの出現により、当社グループ事業がコスト構造や顧客体験で劣後し、業界での主導権喪失や競争力の低下につながり、売上収益、事業利益の低下等、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。その一方で、当社グループがこのようなイノベーションを先導することによって、市場優位性獲得や、新規市場創出につなげることが期待できます。 当社グループは、このような状況に対して、単なるリスク対応に留まることなく技術革新を先取りすることを目指して、中長期経営方針において「DX=BX※と捉え、3つの領域(プロセス、組織、ビジネスモデル)でのイノベーションを推進」及び「R&D(研究開発)機能の強化による既存商品価値の向上・新たな商材や市場の創造」を掲げ、領域を特定した戦略的DX及びR&D投資を推進していきます。 DX領域においては、グローバル調達プラットフォーム、グローバルデータマネジメント、環境負荷の予測と見える化といった生産性を向上するグローカル基盤を構築するとともに、新たな消費者データ、多様化・細分化する顧客ニーズの把握と新しい素材や製法による新ビジネスモデルの開発、及びこれらのイノベーションを実現するためのデジタルネイティブ組織への変革、インキュベーション機能の強化、アジャイル型働き方の組み込みを推進します。 R&Dにおいては、中長期的な社会環境や競争環境の変化を見据え、メガトレンドからバックキャストで導いた未来シナリオとこれまでの研究で蓄積してきた技術・知見・ノウハウを踏まえ、変化するアルコールに関する価値観に対応した新たな価値創造、消費者の身体と心の健康の実現、サステナビリティ実現に向けた環境・気候変動リスクの軽減、及び新規事業につながる非凡なシーズの開発を重点領域と位置づけ、新たな価値創造やリスク軽減に向けた商品・技術開発への投資を推進します。 また、米国サンフランシスコに投資運用会社を設立し、スタートアップ投資ファンドの運営を2023年1月から開始しました。本投資ファンドは、低アルコール飲料やノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料など、将来大きく成長する可能性のある魅力的なブランドや、新たな販売手法や製造手法に繋がるテクノロジーを持った米国のスタートアップ企業にマイノリティ出資を行い、当社グループの市場優位性獲得や、新規市場創出につながるイノベーションに貢献することを期待します。※ DX=BX:デジタル・トランスフォーメーション = ビジネス・トランスフォーメーション 4)気候変動に関わるリスク 地球温暖化により、これまで経験したことのない気候の変化や熱波による干ばつ、台風や豪雨による洪水など異常気象が世界各地で発生し、生命や財産に大きな被害をもたらしています。この気候変動問題は、「自然の恵み」を享受して事業を行うアサヒグループにとってきわめて重要な環境課題です。 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「Beyondカーボンニュートラル」を2050年の世界のあるべき姿として掲げています。脱炭素社会に向けて、事業の枠を超えた社会全体におけるカーボン排出量が削減され、生物多様性が保全された世界を目指すため、バリューチェーンのCO2削減と生態系の保全の両立、CO2の排出量削減・吸収・回収の技術開発・展開などに取り組んでいきます。 将来的な気候変動が業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性がある物理リスクとして、以下の通り認識しています。海外の生産拠点における干ばつが深刻化し、水需給が逼迫、水価格の高騰による操業コストが上昇する可能性があります。気温上昇(生育環境や労働環境の変化)・天候・自然災害・CO2濃度等が需給バランスや品質に影響し、主要な原材料価格が変動する可能性があります。更に、必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失と工場移転費用が発生する可能性があります。異常気象の激甚化により、深刻な風水害及び土砂災害が発生することで生産ラインや物流が停止し、設備被害や機会損失、製品廃棄による損失が発生する可能性があります。 また、将来的な気候変動を見据えた脱炭素社会への移行リスクを以下の通り認識しています。炭素税が導入され、特にPETボトル等の製品原材料への価格転嫁や生産拠点の操業コストが上昇する可能性があります。水ストレスの高い地域の生産拠点において取水制限を受けて操業が停止、機会損失が発生する可能性があります。エシカル志向の高まりにより、環境配慮が不十分な製品があった場合、その需要が低下し、当社グループの売上に影響を与える可能性があります。 当社グループは2050年のCO2排出量ゼロを目指す中長期目標「アサヒカーボンゼロ」の達成に向けて、2030年にScope1,2において70%削減、Scope3※において30%削減(ともに2019年比)を目標としています。さらに、Scope1,2については2025年までに40%削減する中間目標を新たに設定するとともに、使用電力の100%再生可能エネルギー化を目指すRE100の目標年を2050年から2040年へ上方修正し、今後更なる省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用を推進していきます。また、グループ全体で水使用量削減に向けた取り組みを進めて、水リスクに対応していきます。 将来的な気候変動リスクに関連する経営のレジリエンスと持続性を高めるために、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言への対応を行っています。シナリオ分析によって明確化された重要なリスクと機会に対してそれぞれの対策を講じ、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげていきます。特に、炭素税による生産コストなどへの影響を軽減するため、「アサヒカーボンゼロ」に基づくCO2排出量削減施策として、2030年までに500億円以上を投資していきます。※ Scope1は、自社(工場・オフィス・車など)での燃料の使用によるCO2の直接排出、Scope2は、自社が購入した電気・熱・蒸気の使用によるCO2の間接排出、Scope3は、自社のバリューチェーンからのCO2の排出を指します。 5)プラスチック使用 近年、廃棄プラスチックの規制強化の動きが加速しています。同時に、プラスチックを大量に使用する製品に対する社会の目は厳しくなってきており、容器包装をプラスチック素材に依存している当社グループの飲料・食品製品の需要が著しく低下し、売上に影響を与えるだけでなく、対応不十分とのことで、当社グループに対するレピュテーションが低下する可能性があります。また、リサイクル費用の負担が増加することや、バイオマス素材等の代替素材を使用した場合の材料費が増加すること等で、製造原価が増嵩する可能性があります。 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「容器包装廃棄物のない社会」を2050年の世界のあるべき姿として掲げています。容器包装の中でも海洋汚染や生態系への影響が世界的に喫緊の課題となっている海洋プラスチック問題への対応については、2020年、グループの戦略の方向性として「3R+Innovation」を定め、2022年に目標を上方修正してグローバル統一の新たな目標として2030年までにPETボトルを100%環境配慮素材に切り替えることを設定しました。それに基づき、グループ各社において様々な取り組みを進めています。 国内では、アサヒ飲料株式会社がリサイクルPET・環境配慮素材の使用、リデュースの推進、環境への配慮を前提とした新容器開発等に関する目標「容器包装2030」の達成に向けた取り組みを進めています。更なる「ラベルレスボトル」製品の拡大やリサイクル素材活用拡大のために「ボトルtoボトル」の水平リサイクルを進めています。後者の取り組みとして、再生事業者である株式会社JEPLANへの融資を行い、アサヒ飲料販売株式会社が管理・運営する首都圏エリア約3万台の自動販売機から使用済みPETボトルを回収、ケミカルリサイクルPET樹脂に再生させ、当社商品に再利用する循環システムを構築し、水平リサイクルを進めています。2022年4月から、一部の大型ペットボトル(「三ツ矢」「カルピス」「アサヒ 十六茶」「アサヒ おいしい水」「バヤリース」)でこのリサイクルPET樹脂を使用することにより、年間のCO2排出量は従来比で約47%削減され、約18,400tのCO2が削減される見込みです。また、業界の枠を超えた連携体制により使用済のプラスチックを再資源化する会社に共同出資を行い、中長期的なPET調達に向けた取り組みも強化しています。 海外では、オーストラリアの子会社Asahi Beverages Pty Ltdが、業界の枠を超えたパートナーシップ構築を通じて、PETボトルのリサイクルを推進しています。リサイクル大手企業や容器メーカーと合弁会社を設立し、2022年にはニューサウスウェールズ州でリサイクルPET樹脂の更なる生産と供給のための工場を稼働しました。さらにビクトリア州で2拠点目のリサイクル工場の建設を進めています。オーストラリアでは既に2019年より水ブランドの「Cool Ridge(クールリッジ)」に100%リサイクルPETボトルを使用しCO2排出量を従来の約半分に削減しました。 当社グループ全体として、プラスチック環境配慮素材の更なる活用を推進してまいります。 ② 短中期的に顕在化が懸念されるリスク1)主要原材料の調達リスク 当社がグローバルに事業展開する酒類・飲料・食品の製造においては、原材料の調達に関し、市況悪化による価格高騰、気候変動や自然災害及びパンデミック等による納期遅延や供給停止に陥るリスクがあります。このようなリスクに直面した場合、製造コストが上昇し、また製造数量が計画を下回ることで、グループの業績及び財政に大きな影響を及ぼす可能性があります。 このようなリスクに対し当社では、原材料毎にヘッジポリシー及びガードレールを定め、原材料商品及び為替市況をつぶさにモニタリングし、状況に応じ複数年での契約締結や、金融商品を活用することで価格高騰リスクを回避し、また必要量の安定確保に努めております。併せて、グローバル各製造拠点で原材料毎に在庫量を定め、安全在庫を確保すると共に、共通する原材料については、スケールメリットを活かした共同調達によりコスト低減に努めております。加えて、グループ間での在庫情報共有による調整機能を活用し、調達困難時でも全製造拠点で十分な在庫量を維持できるよう努めております。 2)地政学的リスク 現在、当社グループは20を超える国に拠点を構え、グローバルに事業を展開しております。世界経済全体の動向に加え、当社グループが事業活動を展開する国・地域における政治、経済、社会、法規制、自然等の要素が、各事業に影響を与える可能性があります。 さらに、近年は、地政学的な要因が事業に影響を及ぼす可能性を考慮する必要性が高まっていると認識しています。例えば、台湾を巡る緊張の高まり、米国と中国の覇権争い、米中対立構造における日本の対応などの要因により、当社グループが事業を展開する複数の国・地域において、台湾有事、輸出入制限、差別的な措置、商品不買運動、技術の分断、データに関する規制等の具体的なリスクが想定され、同時に、今後の事業の強化やエリアの拡大を進める上でも影響を与える要素となります。地政学的な要因によりこれらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの中長期経営方針の実行や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、グループ会社での情報収集や外部コンサルタント起用等通じて、事業展開国・地域のカントリーリスクの調査、情報収集、評価をもとに、リスクを早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をする取り組みを継続しております。これに加えて、地政学的な観点での情報収集・分析を強化し、リスクシナリオの策定及びリスクの把握を行い、その影響を低減するための適切な対策を継続的に検討するための運営体制の整備を進めてまいります 3)情報セキュリティ 当社グループは、高い市場競争力を確保するため、事業活動の多くをITシステムに依存しており、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、あるいはサイバー攻撃によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩、詐欺被害、EU一般データ保護規則(GDPR)等の各国法令違反が発生する可能性があります。 このようなリスクが顕在化した場合、事業の中断、損害賠償請求やセキュリティ対策費用の増加等によるキャッシュアウト、GDPR違反による制裁金等により、当社グループの業績及び財政状態、並びに企業ブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、サイバー攻撃リスクの高まりへの対応として2022年10月にグループ全体で遵守すべきサイバーセキュリティの基準文書を制定し、運用の徹底を図っています。当基準に準じて国内・海外グループ会社のサイバー攻撃対策状況を評価し、セキュリティ体制の維持、及び向上に努めており、本件リスクが顕在化しないようにセキュリティの改善に取り組んでいます。また、当基準内でインシデント発生時の報告ルールを明示することでグループ全体でのインシデント情報を集約し、リスク対応の強化を目的とした体制整備も完了しています。 4)多様で有能な人材の確保 中長期経営方針に掲げる目標達成のためには、多様な価値観や専門性を持った社員の力が必要不可欠です。そのため、当社グループは、社員の多様性を尊重するとともに、一人ひとりが成長できる人材育成プログラムへの投資を拡大し、必要に応じて、経営幹部、一般社員問わず、外部からの登用も進めています。 しかしながら、グローバルな事業の拡大に伴う人材需要の増高及び必要スキルの変化や高度化により、多様で有能な経営幹部並びに一般社員を、必要数確保、育成及び定着させることができず、中長期経営方針の戦略を実行し目標を達成する能力を損ねる可能性があります。 当社グループは、中長期経営方針に「目指す事業ポートフォリオの構築やコア戦略を遂行するための人的資本の高度化」を掲げ、戦略を支える経営基盤を強化するために、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを推進し、エンゲージメントの高い企業風土を醸成しています。エンゲージメントサーベイを実施することで、目指す企業風土の実現度合いを定期的に確認しています。また、計画的に経営者人材を育成するため、グループの経営幹部に共通に求められるコンピテンシーモデルを策定するとともに、将来の経営幹部候補を育成するグローバルリーダーシッププログラムを継続的に実施することで、人材パイプラインの拡充・強化を進めています。また、グループの経営幹部の後継者計画を討議するタレントレビューを実施することで、各地域の人材の可視化や国籍や性別等にとらわれない、グローバルでの適材適所配置を実施し、多様で有能な人材のグループ内での活用を推進しています。加えて、今後必要となる新たなケイパビリティを獲得するため、社外からの人材登用も積極的に行っています。 ③ 継続的に顕在化を留意するリスク1)大規模自然災害 大規模な地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、近年国内外問わず、世界各地で大規模災害が現実のものとなっています。今後も、中長期的に継続するとともに規模の拡大が懸念されております。このような大規模な自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断により製造が停止、倉庫損壊及び保管製品破損により出荷が停止、並びに物流機能停止により原材料資材の調達及び製品の出荷が不能になる可能性があります。更に、事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能、及びシステム障害に伴う重要データの消失等もあわせて、事業活動が停止する可能性があります。事業活動の復旧に長期を要した場合、施設等の改修に多額の費用が発生した場合、消費マインドが落ち込んだ場合等、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、大規模災害が発生した際に、いち早く従業員及びその家族の安否を確認する仕組みを導入するとともに、大規模地震を含め災害リスクが高い日本においては、早急に被災地の被害状況を把握するため、衛星携帯電話の配備をはじめとした緊急時通信体制の強化を進めています。そのうえで、定期的な訓練を実施することで、有事の対応力を強化するとともに、災害対応意識の啓発に努めています。 また、生産工場では、建物倒壊対策のため、全建物対象に耐震診断を実施しており、対策が必要な物件については、順次計画的に補強工事を実施しています。ボイラー、冷凍機等の大型エネルギー供給設備には大地震(震度5弱相当)を検知すると、安全に自動停止する機能が付属し、大型ビール工場では電力供給が遮断した場合でも、自家発電によりタンクを冷却させることで、半製品の大量腐敗を防止する等2次災害のリスク低減対策を進めています。 また、主要グループ会社において、過去の防災対策の実績及び自然災害の経験を踏まえた「事業継続計画(BCP)」の策定を行い、主要商品の供給を継続するための需給調整機能を早急に復旧する体制を構築するとともに、受発注処理等に関する重要なデータを処理するサーバーセンターのバックアップセンターを設置する等、大規模な自然災害が起こった場合であっても被災地以外での事業活動に支障が無いように備えています。 なお、大規模な災害等が発生した際には、代表取締役社長を本部長とした「緊急事態対策本部」を設置して対応する危機管理体制を構築しており、平常時のリスクマネジメントにおいて、顕在化した際に即時対応を要するリスクを抽出し、その影響度と必要な対応を想定することで、危機発生時にクライシスマネジメントへ寸断なく移行できるよう準備しています。あわせて、国内を含めた4つのRegional Headquarters(RHQ)体制において、危機の類型に応じてRHQと当社の役割を明確にするとともに、危機発生時の情報ラインの整流化を図り、グローバルなクライシスマネジメント体制の強化も進めています。 これらの事前対策により災害による被害の最小化、当社グループの業績及び財政状態に対する影響の低減に努めています。 2)人権尊重に関わるリスク 格差や貧困の拡大、気候変動等環境問題の深刻化、感染症や紛争の勃発、さらに欧米を中心とした人権尊重に関する法規制強化などを背景に、当社グループにとって人権尊重並びに関連法規制の遵守は特に重要と認識しています。そのため2021-2022年にCEOを始めとする経営層が有識者と人権に関するダイアログを実施し、そのダイアログ内容も踏まえて経営戦略会議で継続的に人権に関する討議を行いました。その中で、人権尊重は全ての事業活動の基盤であり、全社員がいかなる理由があっても人権を尊重し、バリューチェーン全体で人権リスクを低減していくことを確認しました。またこういった社内外の動きに基づいて「人権尊重」の位置づけを変更し、取り組みテーマからマテリアリティに再定義しなおしました。 具体的な取り組みとしては、2019年に「アサヒグループ人権方針」を制定後、サプライヤーと自社従業員への人権デューデリジェンスと教育、救済へのアクセスの構築を優先して進めています。サプライヤーについては、国内外事業会社の原材料全一次サプライヤーに対してセルフアセスメント質問表(SAQ)への回答を依頼しました。この結果も踏まえて2021-22年は国内のサプライヤーを対象とし、人権を尊重した労働環境を整えていくための対話等を行い、改善を進めました。また、2021年には現代奴隷リスク分析でハイリスクとの結果が出たエチオピアとタンザニアのコーヒー豆に関わるサプライヤー等を対象とした現地調査やデスク・リサーチを行いました。2022年はブラジルのサトウキビを対象に同様の調査を実施しています。これら調査結果を踏まえて人権リスクを特定・評価し、負の影響の是正や発生予防に取組む予定です。 自社従業員については、従業員一人ひとりが人権方針を遵守するための人権教育として、国内外全役員・社員に対し、「差別・ハラスメント」をテーマにした人権動画の配信や、世界人権デーに合わせたCEOによる人権メッセージの動画配信、担当役員による人権研修動画の配信等を行いました。また、AHSEA社の主要製造拠点の2工場を対象として、NGOとともに労働環境調査とインタビュー調査を実施しました。労働通知書や契約書への労働条件に関する記載内容の変更、就業規則や注意喚起ステッカー等に外国人労働者に伝わりやすい母国語表記を取り入れる等の指摘がありました。今後、指摘事項について改善を進めていきます。 救済へのアクセス構築については、2022年に有識者ダイアログを実施し、社内外からの声に対して適切に救済を行うために必要な体制整備の検討を進めています。 3)法規制とソフトローのコンプライアンス 当社グループは事業の遂行にあたって、食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法規制の適用を受けています。これらの法令が変更される、又は予期し得ない法律、規制等が新たに導入される等の理由による法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが増加し、又はお客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が毀損し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、事業活動を行う全ての国・地域において、適用される法令・ルールを遵守することを含め、「Asahi Group Philosophy」で示したステークホルダーに対する5つのPrinciplesに基づき、企業倫理・コンプライアンスを実践するための「アサヒグループ行動規範」を制定し、グループ全体での実践を推進しています。そして、代表取締役社長が委員長を務め、業務執行取締役及び委員長が任命した執行役員で構成される「コンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体の企業倫理・コンプライアンスを推進・監督するとともに、「アサヒグループ行動規範」に関する社員の研修等を通じてコンプライアンスのレベルを高め、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。 ④ 個別戦略リスクのヒートマップ ⑤ 個別戦略リスクの経営方針・戦略との関連性 (3)その他リスク1)品質について 当社グループは、研究開発、調達、生産、物流、販売、お客様とのコミュニケーションに至る全てのプロセスにおいて、お客様の期待を超える商品・サービスを提供することで、お客様の満足を追求することをグループ品質基本方針とし、いずれのグループ会社も品質を通して、お客様との信頼関係を築くことに不断の努力を続けています。お客様の健康に密接に関連する事業を展開しているため、万一、不測の事態により、お客様の健康を脅かす可能性が生じたときは、お客様の安全を最優先に考え、迅速に対応します。 しかしながら、万一、品質に問題が生じて、商品の安全性に疑義が持たれた場合には、商品の回収や製造の中止を余儀なくされ、その対応に費用や時間を要するだけでなく、お客様からの信頼を失う可能性があります。このような事象が発生した場合、中長期経営方針に掲げた「既存地域でのプレミアム化とグローバルブランドによる成長、展開エリアの拡大」の未達を含む、当社グループの業績及び財政状態、並びにレピュテーション及びブランド価値に対して影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、品質リスク低減を目的とした品質保証レベル向上の取り組みとして、サプライチェーンの全てのプロセスにおいて、品質に影響を与える業務や注意すべき事項を抽出し、その点検と是正による改善のPDCAサイクルをグローバル共通の仕組みとして展開しています。 また、食の安全に関わる分野においては、研究開発部門を中心に微生物・農薬・カビ毒・重金属・樹脂・放射性物質等多岐にわたる最新の分析技術を開発しており、グループ内の連携によりグローバルでの品質保証活動を展開する体制・仕組みを通じて、技術面からグループ全体をサポートしています。 さらに、各グループ会社の商品特性や製造工場の環境に応じて、国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの考え方を取り入れ、必要に応じて外部認証取得しています。 2)財務リスク為替変動: 当社グループはグローバルに事業を展開しているため為替リスクを負っています。このうち、海外子会社及び関連会社における資産や負債については円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、必要に応じて為替リスクのヘッジをする等の施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。また、海外連結子会社等の損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。一方、本国で行う輸出入、及び外国間等の貿易取引から発生する、外貨建債権及び債務等は為替レートの変動によるリスクを有しておりますが、このリスクは為替予約等と相殺されるため影響は限定されます。金利変動: 当社グループは銀行預金や国債等の金融資産及び銀行借入金や社債、リース負債等の負債を保有しております。これらの資産及び負債に係る金利の変動は受取利息及び支払利息の増減、あるいは金融資産及び金融負債の価値に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、金利リスクを回避する目的で、金利を実質的に固定化する金利スワップを利用しております。またヘッジ会計の要件を満たす取引については、ヘッジ会計を適用しております。格付低下: 当社グループに対する外部格付機関による格付けが引き下げとなり、当社グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される場合には、当社グループの業務運営や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。保有資産の価格変動:当社グループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 3)税務リスク 当社グループはグローバルに事業を展開しており、本国をはじめとする、各国の税制による適用を受けており、予期し得ない改正や税務当局からの更正処分を受けた場合、大幅なコストの増加、競争環境の悪化、事業活動の制限等が懸念され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 4)訴訟リスク 当社グループは、事業を遂行していくうえで、訴訟を提起される可能性があります。万一当社グループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
FY2021|18,803 文字
2【事業等のリスク】 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。 なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。 1.アサヒグループのリスクマネジメント体制 アサヒグループは、グループ全体を対象に、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)を導入しています。この取組みの中で、「Asahi Group Philosophy」の具現化、並びに「中長期経営方針」の戦略遂行及び目標達成を阻害しうる重大リスクを、戦略、オペレーション、財務、コンプライアンス等全ての領域から特定及び評価し、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを継続的に実施することで、効果的かつ効率的にアサヒグループのリスク総量をコントロールします。 ERMを推進するにあたり、代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び代表取締役社長が指名する執行役員で構成される、リスクマネジメント委員会を設置しています。ERMはグループ全体を対象とし、リスクマネジメント委員会の委員長である代表取締役社長が実行責任を負います。 アサヒグループ各社は、事業単位毎にERMを実施し、リスクマネジメント委員会に取組内容を報告します。同委員会はそれらをモニタリングするとともに、委員自らがグループ全体の重大リスクを特定、評価、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを実施します。これらの取組みは取締役会に報告され、取締役会はこれらをモニタリングすることで、ERMの実効性を確認します。 2.アサヒグループ リスクアペタイト アサヒグループは、ERMを推進するとともに、「中長期経営方針」の目標達成のために、「とるべきリスク」と「回避すべきリスク」を明確化する、「アサヒグループ リスクアペタイト」を制定しました。 「アサヒグループ リスクアペタイト」は、アサヒグループのリスクマネジメントに関する「方針」です。ERMの運用指針及び意思決定の際のリスクテイクの指針となるものであり、リスクに対する基本姿勢を示す「リスクアペタイト ステートメント」と、実務的な活用を想定した、事業遂行に大きく影響する主要なリスク領域に対する姿勢(アペタイト)を示す「領域別リスクアペタイト」で構成されます。グループ戦略、リスク文化とリスク状況、及びステークホルダーの期待をもとに検討し、取締役会にて決定、グループ全体に適用され、実施状況はリスクマネジメント委員会でモニタリング、取締役会へ報告されます。本取組みを通じて、アサヒグループ全体で適切なリスクテイクを促進してまいります。 3.主要リスク 当社グループでは、「1.アサヒグループのリスクマネジメント体制」に記載の通り、当社代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び執行役員で構成されるリスクマネジメント委員会で、中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを特定及び評価し、以下の(2)から(16)までの事項をかかるリスクとして認識しております。 加えて、それ以外に考えられる当社グループの事業等のリスクについても、(17)にまとめて記載しております。但し、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。 また、前述の、当社グループリスクマネジメントの取組みの中で、以下に記載する各リスクに対する対応策を含む種々の対応策をとりますが、それらの対策が有効に機能しない等によりリスクが解消できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (1)中長期経営方針について 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指して、2019年に「Asahi Group Philosophy(AGP)」を制定し、本年、それに基づいて、また、その後のグループ内外の環境変化も踏まえて中長期経営方針を更新しました。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、本方針では、3年程度を想定した主要指標のガイドラインや、財務・キャッシュ・フロー方針を示しておりますが、これらのガイドライン・方針は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定されたものです。そのため、本「2 事業等のリスク」に記載の各リスク等を含む様々な要因により変更を余儀なくされるものであり、当社グループの事業や業績が中期経営方針内の同ガイドライン・方針等を達成できない可能性があります。 (2)事業環境について 当社グループの売上収益において国内事業の占める割合は約54.5%(2021年12月期決算)となっております。今後の日本国内での景気の動向によって、酒類・飲料・食品の消費量に大きな影響を与える可能性があり、人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類・飲料・食品の消費量が減少する可能性があります。また、これまでのデフレ環境が想定以上に継続することにより国内での競争環境がさらに激化する結果、販売単価の下落を招き、当社グループ事業の収益性が想定より損なわれる可能性があります。 国内事業の売上収益のうち、ビール類は4割を超えます。このような状況は、当社グループのビール類商品に対するお客様の信頼を反映したものであり、当社グループ国内酒類事業での効率的な利益創出に寄与しておりますが、消費者の嗜好性の変化、世代交代等により、お客様の支持を失ってしまうと、本商品群の売上が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループは海外での事業領域を拡大しており、2021年12月期決算での売上収益における海外事業の占める割合は、約45.5%となっております。今後、欧州、豪州地域を中心とする当社グループが事業を展開する各国における景気の悪化、当該各国での競争環境の激化、消費者の嗜好の変化等、市場の需要動向が変化すること等により、当該地域における当社グループの売上収益の低下、利益率の悪化が生じる可能性があります。 当社グループは、中長期経営方針に『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』を掲げ、グローバル5ブランド『アサヒスーパードライ』、『Peroni Nastro Azzurro』、『Pilsner Urquell』、『Grolsch』、『Kozel』をはじめとした高付加価値ブランドの価値向上や新市場の創造を目指すとともに、今後の環境変化も見据えた収益構造改革を加速することで、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図っていきます。また、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させることで売上収益を増加させるとともに、飲料、食品事業において、消費者の健康志向の高まり及び高齢化社会に対応する領域へ挑戦することで、事業拡大を図っていきます。 (3)新型コロナウイルス感染拡大の影響 2020年に世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、当社グループでは、顧客、取引先及び社員の安全第一を考え、また更なる感染拡大を防ぐために、WHO並びに各国保健行政の指針に従った感染防止策の徹底をはじめとして、感染リスクが高い国や地域への、及びそれらの国や地域からの渡航の原則禁止、各国と地域の感染状況に合わせて、工場見学や販売促進企画等の多くのお客様にお集まりいただくイベントの休止や制限、テレワーク(在宅勤務)の原則化等、対応を実施しております。主要原材料の十分量確保、業務用商品の需要低迷を家庭用商品で補完する等により、事業影響の低減を図っておりますが、2021年12月期決算においては、世界各国における外食産業の低迷や外出制限による経済停滞のマイナス影響等、当社グループの業績への影響が生じております。多くの国や地域でワクチン接種が進み、治療薬の承認も始まるといった進展が見られる一方で、同ウイルスの変異種の断続的感染拡大が続き、今なお予断を許さない状況です。世界全体では2022年内にも事態が鎮静化するとの見方もあるものの、当社グループが事業展開する個々の地域において沈静化が遅れた場合、また更なる変異種の感染拡大或いは事態の長期化並びにそれに伴うロックダウンや緊急事態宣言が新たに生じた場合には、業務用ビールを中心とした売上低迷の長期化、利益率が比較的低い新ジャンルやRTDの売上高構成比の上昇による収益性の悪化等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、新型コロナウイルス感染拡大によって、消費者が、経済の先行き不透明感に伴い節約志向が強まる一方で、健康志向及び環境への意識が高まるとともに、信頼性・安全性の高いブランドをより重視するようになりました。また、オンラインチャネル(EC等)の利用がスタンダード化し、デジタルデバイス及びサービスの活用が拡大しています。このような消費者、市場、社会等の変化には不可逆的なものもあり、当社グループの従来の戦略及び事業の競争力が失われ、当社グループの中長期的業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大による環境変化の加速に加えて今後のテクノロジーの発展が、人類に新たな技術力と自由な時間を与え、気候変動・資源不足といった地球規模の課題を抱える中、社会・経済だけではなく人類の幸福(Well-being)のあり方も変化していくものと想定しています。そうしたメガトレンドを踏まえて中長期経営方針を見直し、「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」との方針をより強く打ち出しました。本方針のもと、変化しつつあるWell-beingへの迅速な対応、市場環境の変化を先取りした事業戦略の立案と展開、ならびに新たなオペレーティングモデルの構築を通じて、当社グループの戦略及び事業の競争力を強化してまいります。 (4)事業拡大について 当社グループは、Schweppes Australia社の買収(2009年、買収額1,185百万豪ドル(適時開示の際に公表した金額、以下同じ))、カルピス社の買収(2012年、買収額920億円)、旧SAB Miller社の西欧ビール事業の取得(2016年、買収額2,550百万ユーロ)、中東欧ビール事業の取得(2017年、買収額7,300百万ユーロ)及びCUB事業の買収(2020年、買収額160億豪ドル)をはじめとして、国内外での事業領域拡大のため、積極的に外部の経営資源を獲得してきました。2020年6月には、CUB事業を取得する手続きを完了することで、日本、欧州に加え、豪州地域での事業を盤石にし、日、欧、豪の3極を核としたグローバルプラットフォームを構築、成長基盤の拡大を実現しました。当面は財務基盤の強化を優先し大型の買収を積極的に行う予定はありませんが、今後も、成長のために、外部の経営資源を活用していきます。 外部の経営資源獲得にあたっては、慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ実行します。しかしながら、営業、人員、技術及び組織の統合ができずコスト削減等の期待したシナジー効果が創出できなかった場合、アルコールや砂糖の摂取に対する社会の価値観の変化や人口動態の変化等により、買収した事業における製品に対する継続的な需要を維持できない場合、買収した事業における優秀な人材を保持し又は従業員の士気を維持することができない場合、高付加価値ブランドの育成不振等、効果的なブランド及び製品ポートフォリオを構築することができない場合、並びに異なる製品ラインにおける販売及び市場戦略の連携(クロスセルの拡大)ができない場合等により、当社グループの期待する成果が得られない可能性があります。 当社グループは、買収に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、2021年12月末現在、のれん及び無形資産の金額はそれぞれ、連結総資産の40.0%(18,168億円)及び22.1%(10,027億円)を占めております。 当社グループは、当該のれん及び無形資産につきまして、それぞれの事業価値及び将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が将来にわたって大きく損なわれると判断された場合、又はカントリーリスクの顕在化による金利高騰や市場縮小等により適用される割引率や長期成長率が大きく変動した場合等は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、AGP及び中長期経営方針に基づいた価値創造経営により、事業の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しており、『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』、や『持続的成長を実現するためのコア戦略の推進』とともに、『長期戦略を支える経営基盤の強化』の一環としてグループガバナンスの更なる実効性向上に向けた取り組みを実施することで、グループ戦略の実行と期待成果をより確実なものとします。 (5)気候変動に関わるリスク 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)においてパリ協定が採択、各国で批准されたのを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取組みが世界的に進められています。 当社グループは、将来的な気候変動が、その業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性がある物理リスクとして、以下の通り認識しています。海外の生産拠点における干ばつが深刻化し、水需給が逼迫、水価格の高騰による操業コストが上昇する可能性があります。気温上昇(生育環境や労働環境の変化)・天候・自然災害・CO2濃度等が需給バランスや品質に影響し、主要な原材料価格が変動する可能性があります。更に、必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失と工場移転費用が発生する可能性があります。異常気象の激甚化により、深刻な風水害及び土砂災害が発生することで生産ラインや物流が停止し、設備被害や機会損失、製品廃棄による損失が発生する可能性があります。 また、将来的な気候変動を見据えた脱炭素社会への移行リスクを以下の通り認識しています。炭素税が導入され、特にPETボトル等の製品原材料への価格転嫁や生産拠点の操業コストが上昇する可能性があります。水ストレスの高い地域の生産拠点において取水制限を受けて操業が停止、機会損失が発生する可能性があります。エシカル志向の高まりにより、環境配慮が不十分な製品があった場合、その需要が低下し、当社グループの売上に影響を与える可能性があります。 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、2050年のCO2排出量ゼロを目指す中長期目標「アサヒカーボンゼロ」の達成に向けて取組みを加速させるために、2030年のScope1,2※の目標値を従来の50%削減(2019年比)から70%削減(2019年比)に上方修正し、更なる省エネルギーと再生可能エネルギーの活用に取り組んでいきます。2020年12月に同目標値を30%削減(2015年比)から50%削減(2019年比)に上方修正したことに続き、二度目の上方修正となります。Scope3※においては、2030年までに2019年比30%削減を目指して取り組んでまいります。また、グループ全体で水使用量削減に向けた取組みを進めて、水リスクに対応していきます。 将来的な気候変動リスクに関連する経営のレジリエンスと持続性を高めるために、2019年5月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に賛同しました。2019年にビール事業、2020年にはビールを含む全酒類事業及び飲料事業に対象を拡大してシナリオ分析を実施し、統合報告書やホームページ等において情報開示を行いました。2021年は、更に食品事業を含む主要事業へ分析の対象を拡大し、より包括的に気候変動が当社グループ事業に及ぼすリスクと機会の分析と対応の検討を行い、5月発行の統合報告書、Webなどで開示する予定です。2022年は、TCFD提言に基づく分析を更に深化させ、取組みを強化してまいります。※ Scope1は、自社(工場・オフィス・車など)での燃料の使用によるCO2の直接排出、Scope2は、自社が購入した電気・熱・蒸気の使用によるCO2の間接排出、Scope3は、自社のバリューチェーンからのCO2の排出を指します。 (6)主要原材料の調達リスク 当社グループが国内外で事業を展開する酒類・飲料・食品の製造に関して、市況の悪化による原材料価格の高騰、サプライヤーの倒産や買収、競合による買い占め等により原材料が調達不能となる可能性があります。また、大規模な自然災害や新型コロナウイルス感染症の拡大等により、サプライヤーでの原材料の製造制限や物流遅延等により、原材料の調達が困難・遅延となる可能性があります。また、環境配慮対応への社会からの要求の高まりによるコスト影響も増加傾向にあります。これにより、原料高騰による製造コストの上昇、必要量の原材料が調達できず生産数量が減少、原材料供給の停止や遅延により製品の製造が困難等の事象が発生し、グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、市況と連動する原材料については、固定価格や複数年契約に加え、金融商品を活用し相場状況に応じて安定価格で調達することにより価格高騰リスクを回避しています。また、複数購買化による競争環境構築での価格高騰の抑制及び調達リスクの分散、代替原料の検討による調達リスクの回避及びコスト抑制に取り組んでいます。また、原材料の確保については、安全在庫確保の観点で、必要性に応じて数ヶ月分の在庫を保持することによる原材料の調達困難時での対応時間の確保、在庫保管場所の複数拠点への振り分けにより、地理的な供給リスクの分散にも取り組んでいます。 (7)技術革新による新たなビジネスモデルの出現 当社グループが国内外で事業を展開する、酒類・飲料・食品業界は、その製造販売に関して、技術革新による競争環境の変化が比較的少ない安定した業界でしたが、最近では、低アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料などのビール隣接カテゴリー(BAC:Beer Adjacent Categories)による新たな飲用シーンの提案ができるようになり、最新デジタル技術を活用して“変化するWell-Being”に応えることで新たな価値の提供、AI活用によるサプライチェーンの効率化、あるいはアルコール代替品等、技術革新による新たなビジネスモデルの可能性も示されております。更に、2020年以降世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークの急激な普及や、EC等のオンラインチャネル利用の加速等、それまで将来的に発生すると想定されていた変化が前倒しで出現しています。 こうした環境変化や新たなビジネスモデルの出現により、当社グループ事業がコスト構造や顧客体験で劣後し、業界での主導権喪失や競争力の低下につながり、売上収益、事業利益の低下等、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。その一方で、当社グループがこのようなイノベーションを先導することによって、市場優位性獲得や、新規市場創出につなげることが期待できます。 当社グループは、このような状況に対して、単なるリスク対応に留まることなく技術革新を先取りすることを目指して、中長期経営方針において「DX=BX※と捉え、3つの領域(プロセス、組織、ビジネスモデル)でのイノベーションを推進」及び「R&D(研究開発)機能の強化による既存商品価値の向上・新たな商材や市場の創造」を掲げ、領域を特定した戦略的DX及びR&D投資を推進していきます。DX領域においては、デジタルネイティブ組織を整備するとともに、データプラットフォームの構築やデータマネジメントの高度化、個々人のWell-being欲求への対応や社会的責任に応える情報開示やサービス提供に対して投資を推進します。また、R&Dにおいては、変化する価値観に対応した新たな価値創造、消費者の身体と心の健康の実現、サステナビリティ実現に向けた環境・気候変動リスクの軽減、及び新規事業に繋がる非凡なシーズの開発を重点領域と位置づけ、投資を推進します。※ DX=BX:デジタル・トランスフォーメーション = ビジネス・トランスフォーメーション (8)情報セキュリティ 当社グループは、高い市場競争力を確保するため、事業活動の多くをITシステムに依存しており、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、あるいはサイバー攻撃によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩、詐欺被害、EU一般データ保護規則(GDPR)等の各国法令違反が発生する可能性があります。 このようなリスクが顕在化した場合、事業の中断、損害賠償請求やセキュリティ対策費用の増加等によるキャッシュアウト、GDPR違反による制裁金等により、当社グループの業績及び財政状態、並びに企業ブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、2016年8月にASAHI-CSIRTを設置し、ITシステム上でサイバーセキュリティインシデントが起きていないかどうか監視すると共に、万が一インシデントが発生した場合には、その適切な対応を行うことは勿論のこと、原因解析や影響範囲の調査を行い、再発防止並びに防御の最適化を図る体制を敷いています。そのうえで、ソフトウェアや機器でのセキュリティ対策、及び社員教育や訓練を実施し、本件リスクが顕在化しないように取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症拡大によってテレワークが普及・定着しつつありますが、このような環境においてもASAHI-CSIRTが有効に機能し、インシデント防止に役立っています。また、海外においても、地域毎にセキュリティ対策を維持、及び向上させるための取組みを実施し、定期的にその取組みをモニタリングしています。 (9)アルコール摂取に対する社会の価値観 アルコールの摂取は、人々の生活を豊かにしてきた一方で、その不適切な摂取は、健康面あるいは社会的悪影響が指摘されています。WHOにおいては、世界的な規模での酒類販売に関する規制が検討されており、当社グループの予想を上回る規制強化が行われる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に健康志向が更に高まっていることもあり、アルコールに対する消費者需要が縮小する可能性もあります。これらの要因により、規制に対応するための費用支出による利益圧迫や、酒類の消費が減少することによる売上収益の縮小、さらにはアルコールを製造・販売する当社グループのレピュテーション及びブランド価値を毀損する等し、その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任を果たすため、WHOの目指すアルコールの有害な使用の低減による健康被害の予防について、酒類事業を行う各地の関連法令遵守のほか、IARD※をはじめとする業界団体や業界と協力、連携して、販売や広告に関する自主基準を設け、責任あるマーケティングに取り組んでいます。2020年1月28日には、IARDに加盟する企業のCEOによる、未成年飲酒防止に向けた取組みを推進する共同声明を公表しました。その後もIARDとして、2021年1月にeコマースのプラットフォームなどと共にeコマースにおける世界基準の策定と実践、9月にはインフルエンサーマーケティングの世界基準を新たに策定し広告代理店やPR代理店などと共に取り組むことを宣言するなど、適正飲酒の啓発活動を積極的に推進し、不適切な飲酒の撲滅に取り組んでいます。また、当社グループとして責任ある飲酒の取り組み促進のために、グループスローガン「Responsible Drinking Ambassador」を打ち出し、現在取り組んでいる不適切な飲酒撲滅活動を強化すると同時に、社員に対する責任ある飲酒の研修の取り組みを拡大する等活動を加速させています。更に、新しい飲用機会の創出に取り組みとして、2025年迄にアサヒグループにおけるノンアルコール・低アルコールの販売構成比を15%にする目標を掲げ、アルコール起因の課題解決にも取り組んでいます。2020年12月、アサヒビールは「スマートドリンキング宣言」を発表し、商品毎の純アルコール量の積極的な開示を開始。多様な飲み方に対応すべく、様々な度数の低アルコール飲料による飲み方提案や、ノンアルコール飲料の強化などを進めています。※IARD=International Alliance for Responsible Drinking(責任ある飲酒国際連盟)の略称。不適切な飲酒の撲滅と、責任ある飲酒を促進するという共通の目的のもとに、世界のビール、ワイン、スピリッツの製造業者である大手企業12社の加盟企業で構成される非営利団体。 (10)大規模自然災害 大規模な地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、近年国内外問わず、世界各地で大規模災害が現実のものとなっています。今後も、中長期的に継続するとともに規模の拡大が懸念されております。このような大規模な自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断により製造が停止、倉庫損壊及び保管製品破損により出荷が停止、並びに物流機能停止により原材料資材の調達及び製品の出荷が不能になる可能性があります。更に、事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能、及びシステム障害に伴う重要データの消失等もあわせて、事業活動が停止する可能性があります。事業活動の復旧に長期を要した場合、施設等の改修に多額の費用が発生した場合、消費マインドが落ち込んだ場合等、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、大規模災害が発生した際に、いち早く従業員及びその家族の安否を確認する仕組みを導入するとともに、大規模地震を含め災害リスクが高い日本においては、早急に被災地の被害状況を把握するため、衛星携帯電話の配備をはじめとした緊急時通信体制の強化を進めています。そのうえで、定期的な訓練を実施することで、有事の対応力を強化するとともに、災害対応意識の啓発に努めています。 また、生産工場では、建物倒壊対策のため、全建物対象に耐震診断を実施しました。対策が必要な物件については、順次計画的に補強工事を実施しています。ボイラー、冷凍機等の大型エネルギー供給設備には大地震(震度5弱相当)を検知すると、安全に自動停止する機能が付属し、大型ビール工場では電力供給が遮断した場合でも、自家発電によりタンクを冷却させることで、半製品の大量腐敗を防止する等2次災害のリスク低減対策を進めています。 また、主要グループ会社において、過去の防災対策の実績及び自然災害の経験を踏まえた「事業継続計画(BCP)」の策定を行い、主要商品の供給を継続するための需給調整機能を早急に復旧する体制を構築するとともに、受発注処理等に関する重要なデータを処理するサーバーセンターのバックアップセンターを設置する等、大規模な自然災害が起こった場合であっても被災地以外での事業活動に支障が無いように備えています。 なお、大規模な災害等が発生した際には、代表取締役社長を本部長とした「緊急事態対策本部」を設置して対応する危機管理体制を構築しており、平常時のリスクマネジメントにおいて、顕在化した際に即時対応を要するリスクを抽出し、その影響度と必要な対応を想定することで、危機発生時にクライシスマネジメントへ寸断なく移行できるよう準備しています。あわせて、国内を含めた4つのRegional Headquarters(RHQ)体制への移行に伴い、危機の類型に応じてRHQとHDの役割を改めて明確にするとともに、危機発生時の情報ラインの整流化を図るなど、グローバルなクライシスマネジメント体制の強化も進めています。 これらの事前対策により災害による被害の最小化、当社グループの業績及び財政状態に対する影響の低減に努めています。 (11)多様で有能な人材の確保 中長期経営方針に掲げる目標達成のためには、多様な価値観や専門性を持った社員の力が必要不可欠です。そのため、当社グループは、社員の多様性を尊重するとともに、一人ひとりが成長できる人材育成プログラムへの投資を拡大し、必要に応じて、経営幹部、一般社員問わず、外部からの登用も進めています。 しかしながら、グローバルな事業地域の拡大に伴う人材需要の増高及び必要スキルの変更や高度化により、多様で有能な経営幹部並びに一般社員を、必要数確保、育成及び定着させることができず、中長期経営方針の戦略を実行し目標を達成する能力を損ねる可能性があります。 当社グループは、中長期経営方針に「目指す事業ポートフォリオの構築やコア戦略を遂行するための人的資本の高度化」を掲げ、戦略を支える経営基盤を強化するために、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを推進し、エンゲージメントの高い企業風土を醸成しています。エンゲージメントサーベイを実施することで、目指す企業風土の実現度合いを定期的に確認し、結果に基づき、地域を超えた人材育成プログラムの実施や国籍や性別等にとらわれない人材の登用・配置を推進しています。また、計画的に経営者人材を育成するため、将来の経営幹部候補を育成するグローバルリーダーシッププログラムを継続的に実施することで、人材パイプラインの拡充・強化を進めています。また、グループの経営幹部の後継者計画を討議するグローバルタレントレビューを実施することで、各地域の人材の可視化やグローバルでの適材適所配置を実施し、多様で有能な人材のグループ内での活用を推進しています。加えて、今後必要となる新たなケイパビリティを獲得するため、社外からの人材登用も積極的に行っています。 (12)国内物流需給ギャップの拡大 当社グループが事業展開する、酒類・飲料・食品の製造販売業界においては、物流は重要、かつ費用の構成比も高い機能です。国内の物流環境は、少子高齢化による労働人口減少に加え、電子商取引の拡大で、ドライバー需給ギャップの拡大が予想されます。2021年も新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、企業間取引の荷量の減少と、同時に、外出自粛、人の移動制限による巣ごもり需要による電子商取引の増加がさらに加速し、物流環境全体のバランスに大きな変化が起きています。物流業界が従来から取り組む長時間労働の削減、生産性の向上等に加え、先の読めない時代の環境変化への柔軟な対応が求められており、課題の複雑性が増しています。 当社グループ全事業の、売上収益ベースで54.5%、事業利益ベースで35.5%(2021年12月期決算)を占める国内事業において、製品の運搬に必要な量の物流機能を適切な費用で確保することが安定的に事業展開する上で不可欠ですが、ドライバー不足による製品供給の滞りや運搬費の増嵩等が、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、地産地消ロジスティクスの推進や効率的な物流体制の実現による輸送量の削減及び長距離トラック輸配送の削減、並びに物流機器・システムの導入による物流業務省人化と物流負荷低減に取り組んでいます。この一環として、2021年にはアサヒビール名古屋工場にアサヒ飲料製品製造ライン及び自動倉庫の新設稼働、長距離配送を要する消費地に新たな物流拠点の設置稼働等、輸配送網の整備を進めています。また、物流業務支援ツールに最新技術を積極的に活用し、業務効率化・負荷軽減を推進しています。 従来から取り組んでいるモーダルシフト(鉄道・船舶輸送)や、効率化・省人化を目指した新たな幹線輸送スキームの確立、軽重貨物混載による積載率向上等、同業他社や異業種、物流事業者との連携による高効率輸送の実現や物流効率化施策による労働環境改善も推進しています。これらの取組みは、日本社会全体の課題とも密接に関連しており、当社グループは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が推進する「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同する旨を表明しており、実証施策に積極的に参画しています。 (13)プラスチック使用 近年、廃棄プラスチックの規制強化の動きが加速しています。同時に、プラスチックを大量に使用する製品に対する社会の目は厳しくなってきており、容器包装をプラスチック素材に依存している当社グループの飲料・食品製品の需要が著しく低下し、売上に影響を与えるだけでなく、対応不十分とのことで、当社グループに対するレピュテーションが低下する可能性があります。また、リサイクル費用の負担が増加することや、生分解性素材等の代替素材を使用した場合の材料費が増加すること等で、製造原価が増嵩する可能性があります。 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「持続可能な資源利用100%を目指す(農産物原料、容器包装、水)」ことを目標に掲げ、容器包装の中でも喫緊の課題である海洋汚染や生態系への影響が世界的に問題視されている海洋プラスチック問題への対応については、2020年、グループの戦略の方向性として、「3R+Innovation」を定め、グローバル統一の新たな目標として、2030年までのPETボトルを100%環境配慮素材に切り替えることを設定しました。それに基づき、グループ各社において、様々な取組みを進めています。 国内では、アサヒ飲料株式会社が、リサイクルPET・環境配慮素材の使用、リデュースの推進、環境への配慮を前提とした新容器開発等へ取り組む目標「容器包装2030」の達成に向けて、更なる「ラベルレスボトル」製品の拡大やリサイクル素材100%PETボトルのために「ボトルtoボトル」の再生事業者である日本環境設計株式会社への融資を行い、ケミカルリサイクルPET樹脂の調達を進めています。また、業界の枠を超えた連携体制による、使用済のプラスチックを再資源化する会社に共同出資を行い、中長期的なPET調達に向けた取組みも強化しています。 海外では、オーストラリアの子会社Asahi Beverages Pty Ltdが、2030年までに、特定のブランドでリサイクルPET素材100%を達成する目標の達成に向けて、業界の枠を超えたリサイクル大手企業、容器メーカーと合弁会社を設立し、リサイクルPET樹脂の更なる生産と供給のための工場建設を進めています。 当社グループ全体として、プラスチック環境配慮素材の更なる活用を推進してまいります。 (14)法規制とソフトローのコンプライアンス 当社グループは事業の遂行にあたって、食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法規制の適用を受けています。これらの法令が変更される、又は予期し得ない法律、規制等が新たに導入される等の理由による法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが増加し、又はお客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が毀損し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、「アサヒグループ行動規範」を制定し、事業活動を行う全ての国・地域において、適用される法令・ルールを遵守することを含め、「Asahi Group Philosophy」で示したステークホルダーに対する5つのPrinciplesに基づき、企業倫理・コンプライアンスを実践するための10条の行動規範を規定し、グループ全体での実践を推進しています。そして、代表取締役社長が委員長を務め、業務執行取締役及び委員長が任命した執行役員で構成される「コンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体の企業倫理・コンプライアンスを推進・監督するとともに、「アサヒグループ行動規範」に関する社員の研修等を通じてコンプライアンスのレベルを高め、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。(人権について) グローバルな事業地域が大きく拡大した今、当社グループにとって、人権保護並びに関連法規制の遵守は特に重要と認識しています。そこで、『ESGへの取組み深化』における重点課題の一つとして「人権の尊重」を掲げ、第一ステップとして、2019年、人権に関する最上位の方針として、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「アサヒグループ人権方針」を制定しました。本方針で掲げた人権デューデリジェンスについては、サプライヤー、自社従業員、救済へのアクセスの構築を優先度が高い取組みとして進めています。サプライヤーについては、2020年は国内外事業会社の原材料全一次サプライヤーに対して、セルフアセスメント質問表(SAQ)への回答を依頼し、回答いただいた全サプライヤーに対し、調達担当者からのコメントを付けて結果をフィードバックしました。2021年はこの結果も踏まえて、国内12社のサプライヤーをインタビュー調査の対象とし、人権を尊重した労働環境を整えていくための対話等を行い、改善を進めました。2022年もサプライヤーとの対話を継続していきます。また2020年にはサプライヤーエシカル情報共有プラットフォームを提供しているNPO会員組織Sedex(Supplier Ethical Data Exchange)に加入し、サプライヤーの人権や労働の管理状況を確認しながら進めています。また、2017年に実施した現代奴隷リスク分析の結果に基づき、2021年はエチオピアとタンザニアのコーヒー豆に関わるサプライヤー等を対象とした現地調査やデスク・リサーチを行いました。2022年はこの調査結果を踏まえて人権リスクを特定・評価し、負の影響の是正や発生予防に取組む予定です。自社従業員については、従業員一人一人が人権方針を遵守するための人権教育として、2021年は国内外全役員・社員に対し、CEOによる人権メッセージの動画配信や、担当役員による人権研修動画の配信等を行いました。また、2020年に外国人技能実習生が在籍するアサヒグループ食品岡山工場を対象に、NGOとともに実習生の労働実態調査及び実習生への母国語によるヒアリングを実施し、2021年には指摘事項の改善を行いました。また救済へのアクセス構築については、内部通報制度の認知拡大や、社外からの問い合わせに対して適切に救済を行うために必要な体制整備の検討を進めています。 (15)事業展開国のカントリーリスク 現在、当社グループは20を超える国に拠点を構え、世界経済全体の動向に加え、各国固有の政治、経済、社会、法規制、自然等の要素が、各国事業に影響を与える可能性があります。具体的なリスクとしては、政情不安、経済危機、関税報復措置、難民排斥運動、人種差別、規制強化、税制改正、自然災害、新興感染症等が想定されます。 これらのリスクが顕在化した場合には、関税引き上げ等、在外資本企業に対する不利益条件によるコスト競争力の低下、利益の圧縮、政治的・軍事的・社会的圧力による営業困難あるいは営業停止、社員の安全不安、経営計画未達、中長期的損失計上、さらには事業撤退により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、グループ各社での情報収集や外部コンサルタント起用等を通じて、各事業展開国/地域の該当リスクの調査、情報収集、評価をもとに、これらリスクを早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組むことで、その予防・回避に努めるとともに、重大インシデント発生に備えた事業継続計画の策定等を行っていきます。また、当社グループは、今後の更なるグローバル化により収益源の分散化を進め、本件リスク顕在化時の、グループ全体への影響の低減を図ってまいります。 (16)品質について 当社グループは、最高の品質をお客様にお届けすることをグループ理念に掲げ、いずれのグループ会社も品質を通して、お客様との信頼関係を築くことに不断の努力を続けています。お客様の健康に密接に関連する事業を展開しているため、万一、不測の事態により、お客様の健康を脅かす可能性が生じたときは、お客様の安全を最優先に考え、迅速に対応します。 しかしながら、万一、品質に問題が生じて、商品の安全性に疑義が持たれた場合には、商品の回収や製造の中止を余儀なくされ、その対応に費用や時間を要するだけでなく、お客様からの信頼を失う可能性があります。このような事象が発生した場合、中長期経営方針に掲げた「既存地域でのプレミアム化とグローバルブランドによる成長、展開エリアの拡大」の未達を含む、当社グループの業績及び財政状態、並びにレピュテーション及びブランド価値に対して影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、品質確保及び向上の取組みとして、商品設計から販売に至るまでのプロセス毎に、品質に影響を与える業務や注意すべき事項を抽出し、その点検と是正を実施しています。また、品質保証技術の高度化のため、AI等先端技術の導入にも取り組んでいます。特に、生産工程においては、重要な管理項目を整理し、必須要求事項としてグローバルへ展開し、工場毎の定期自己点検や生産工程の監査へ活用しています。これらの取組みについては、今後も深化させていきます。 また、当社グループは、食の安全に関わる最新の分析技術を開発しています。その対象は、微生物・農薬・カビ毒・重金属・樹脂・放射性物質等多岐にわたっており、海外も含めたグループ全体の高度な品質保証体制を技術面から支えています。 さらに、各グループ会社の商品特性や製造工場の環境に応じて、国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの考え方を取り入れ、必要に応じて外部認証取得しています。 (17)その他のリスク財務リスク為替変動 :当社グループはグローバルに事業を展開しているため為替リスクを負っています。このうち、海外子会社及び関連会社における資産や負債については円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、必要に応じて為替リスクのヘッジをする等の施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。また、海外連結子会社等の損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。一方、本国で行う輸出入、及び外国間等の貿易取引から発生する、外貨建債権及び債務等は為替レートの変動によるリスクを有しておりますが、このリスクは為替予約等と相殺されるため影響は限定されます。金利変動 :当社グループは銀行預金や国債等の金融資産及び銀行借入金や社債、リース負債等の負債を保有しております。これらの資産及び負債に係る金利の変動は受取利息及び支払利息の増減、あるいは金融資産及び金融負債の価値に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、金利リスクを回避する目的で、金利を実質的に固定化する金利スワップを利用しております。またヘッジ会計の要件を満たす取引については、ヘッジ会計を適用しております。格付低下 :当社グループに対する外部格付機関による格付けが引き下げとなり、当社グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される場合には、当社グループの業務運営や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。保有資産の価格変動:当社グループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 税務リスク 当社グループはグローバルに事業を展開しており、本国をはじめとする、各国の税制による適用を受けており、予期し得ない改正や税務当局からの更正処分を受けた場合、大幅なコストの増加、競争環境の悪化、事業活動の制限等が懸念され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 訴訟リスク 当社グループは、事業を遂行していくうえで、訴訟を提起される可能性があります。万一当社グループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
FY2020|17,881 文字
2【事業等のリスク】 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。 なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。 1.アサヒグループのリスクマネジメント体制 アサヒグループは、グループ全体を対象に、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)を導入しています。この取組みの中で、「Asahi Group Philosophy」の具現化、並びに「中期経営方針」の戦略遂行及び目標達成を阻害しうる重大リスクを、戦略、オペレーション、財務、コンプライアンス等全ての領域から特定及び評価し、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを継続的に実施することで、効果的かつ効率的にアサヒグループのリスク総量をコントロールします。 ERMを推進するにあたり、代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び代表取締役社長が指名する執行役員で構成される、リスクマネジメント委員会を設置しています。ERMはグループ全体を対象とし、リスクマネジメント委員会の委員長である代表取締役社長が実行責任を負います。 アサヒグループ各社は、事業単位毎にERMを実施し、リスクマネジメント委員会に取組内容を報告します。同委員会はそれらをモニタリングするとともに、委員自らがグループ全体の重大リスクを特定、評価、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを実施します。これらの取組みは取締役会に報告され、取締役会はこれらをモニタリングすることで、ERMの実効性を確認します。 2.アサヒグループ リスクアペタイト アサヒグループは、ERMを推進するとともに、「中期経営方針」の目標達成のために、「とるべきリスク」と「回避すべきリスク」を明確化する、「アサヒグループ リスクアペタイト」を制定しました。 「アサヒグループ リスクアペタイト」は、アサヒグループのリスクマネジメントに関する「方針」です。ERMの運用指針及び意思決定の際のリスクテイクの指針となるものであり、リスクに対する基本姿勢を示す「リスクアペタイト ステートメント」と、実務的な活用を想定した、事業遂行に大きく影響する主要なリスク領域に対する姿勢(アペタイト)を示す「領域別リスクアペタイト」で構成されます。グループ戦略、リスク文化とリスク状況、及びステークホルダーの期待をもとに検討し、取締役会にて決定、グループ全体に適用され、実施状況はリスクマネジメント委員会でモニタリング、取締役会へ報告されます。本取組みを通じて、アサヒグループ全体で適切なリスクテイクを促進してまいります。 3.主要リスク 当社グループでは、「1.アサヒグループのリスクマネジメント体制」に記載の通り、当社代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び執行役員で構成されるリスクマネジメント委員会で、中期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを特定及び評価し、以下の(2)から(16)までの事項をかかるリスクとして認識しております。 加えて、それ以外に考えられる当社グループの事業等のリスクについても、(17)にまとめて記載しております。但し、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。 また、前述の、当社グループリスクマネジメントの取組みの中で、以下に記載する各リスクに対する対応策を含む種々の対応策をとりますが、それらの対策が有効に機能しない等によりリスクが解消できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 なお、文中においては、将来に関する事項が含まれておりますが、別段の記載が無い限り、当該事項は当年度末日現在において判断したものです。 (1)中期経営方針について 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指して、2019年に「Asahi Group Philosophy(AGP)」を制定し、それに基づいて、また、その後のグループ内外の環境変化も踏まえて中期経営方針を更新しました。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、本方針では、3年程度を想定した主要指標のガイドラインや、財務・キャッシュ・フロー方針を示しておりますが、これらのガイドライン・方針は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定されたものです。そのため、本「2 事業等のリスク」に記載の各リスク等を含む様々な要因により変更を余儀なくされるものであり、当社グループの事業や業績が中期経営方針内の同ガイドライン・方針等を達成できない可能性があります。 (2)新型コロナウイルス感染拡大の影響 2020年に世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、当社グループでは、顧客、取引先及び社員の安全第一を考え、また更なる感染拡大を防ぐために、WHO並びに各国保健行政の指針に従った感染防止策の徹底をはじめとして、感染リスクが高い国や地域への、及びそれらの国や地域からの渡航の原則禁止、工場見学や販売促進企画等の多くのお客様にお集まりいただくイベントの休止や制限、国内でのテレワーク(在宅勤務)の原則化等、対応を実施しております。主要原材料の十分量確保、業務用商品の需要低迷を家庭用商品で補完する等により、事業影響の低減を図っておりますが、2020年12月期決算においては、世界各国における外食産業の低迷や外出制限による経済停滞のマイナス影響等により、当社グループの業績への影響が生じております。いくつかの国や地域でワクチンの接種が始まるといった進展が見られる一方で、同ウイルスの変異種の感染が確認され、また2020年12月前後でいくつかの国や地域においてロックダウンや緊急事態宣言が発出されており、事態の鎮静化に向けては未だ予断を許さない状況です。今後も当社グループが事業展開する地域においてこのような状況が続いた場合、また更なる感染拡大及び事態の長期化並びにそれに伴うロックダウンや緊急事態宣言が新たに生じた場合には、業務用ビールを中心とした売上低迷の長期化、利益率が比較的低い新ジャンルやRTDの売上高構成比の上昇による収益性の悪化等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、新型コロナウイルス感染拡大によって、消費者が、経済の先行き不透明感に伴い節約志向が強まる一方で、健康志向及び環境への意識が高まるとともに、信頼性・安全性の高いブランドをより重視するようになりました。また、オンラインチャネル(EC等)の利用がスタンダード化し、デジタルデバイス及びサービスの活用が拡大しています。このような消費者、市場、社会等の変化には不可逆的なものもあり、当社グループの従来の戦略及び事業の競争力が失われ、当社グループの中長期的業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大及びその他の環境変化を受けて中期経営方針を見直し、「環境変化を見据えた収益構造改革の加速」との方針をより強く打ち出しました。本方針のもと、変化しつつある消費者動向への迅速な対応、市場環境の変化を先取りした事業戦略の立案と展開、ならびに新たなオペレーティングモデルの構築を通じて、当社グループの戦略及び事業の競争力を強化してまいります。 (3)事業拡大について 当社グループは、Schweppes Australia社の買収(2009年、買収額1,185百万豪ドル(適時開示の際に公表した金額、以下同じ))、カルピス社の買収(2012年、買収額920億円)、旧SAB Miller社の西欧ビール事業の取得(2016年、買収額2,550百万ユーロ)、中東欧ビール事業の取得(2017年、買収額7,300百万ユーロ)及びCUB事業の買収(2020年、買収額160億豪ドル)をはじめとして、国内外での事業領域拡大のため、積極的に外部の経営資源を獲得してきました。2020年6月には、CUB事業を取得する手続きを完了することで、日本、欧州に加え、豪州地域での事業を盤石にし、日、欧、豪の3極を核としたグローバルプラットフォームを構築、成長基盤の拡大を実現しました。当面は財務基盤の強化を優先し大型の買収を積極的に行う予定はありませんが、今後も、成長のために、外部の経営資源を活用していきます。 外部の経営資源獲得にあたっては、慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ実行します。しかしながら、営業、人員、技術及び組織の統合ができずコスト削減等の期待したシナジー効果が創出できなかった場合、アルコールや砂糖の摂取に対する社会の価値観の変化や人口動態の変化等により、買収した事業における製品に対する継続的な需要を維持できない場合、買収した事業における優秀な人材を保持し又は従業員の士気を維持することができない場合、高付加価値ブランドの育成不振等、効果的なブランド及び製品ポートフォリオを構築することができない場合、並びに異なる製品ラインにおける販売及び市場戦略の連携(クロスセルの拡大)ができない場合等により、当社グループの期待する成果が得られない可能性があります。 当社グループは、買収に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、2020年12月末現在、のれん及び無形資産の金額はそれぞれ、連結総資産の38.8%(17,239億円)及び22.0%(9,780億円)を占めており、2020年12月末現在、CUB事業の買収により追加で1兆193億円ののれんを暫定的に計上しております(CUB事業買収に伴って、発生したのれんの金額、企業結合日に受け入れた資産及び引き受けた負債の額等については、企業結合日における識別可能資産及び負債の特定を精査中であり、取得価額の配分が完了していないため、暫定的な会計処理を行っております。)。当社グループは、当該のれん及び無形資産につきまして、それぞれの事業価値及び将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が将来にわたって大きく損なわれると判断された場合、又はカントリーリスクの顕在化による金利高騰や市場縮小等により適用される割引率や長期成長率が大きく変動した場合等は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、AGP及び中期経営方針に基づいたグローカルな価値創造経営により、事業の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しており、『稼ぐ力の強化』、『経営資源の高度化』や、『ESGへの取組み深化』の一環としてグループガバナンスの更なる実効性向上に向けた取り組みを実施することで、グループ戦略の実行と期待成果をより確実なものとします。 (4)技術革新による新たなビジネスモデルの出現 当社グループが国内外で事業を展開する、酒類・飲料・食品業界は、その製造販売に関して、技術革新による競争環境の変化が比較的少ない安定した業界でしたが、最近では、アルコールテイスト清涼飲料による新たな飲用シーンの提案ができるようになり、IoTやAI等の最新デジタル技術を活用した新たな価値の提供、AI活用によるサプライチェーンの効率化、あるいはアルコール代替品等、技術革新による新たなビジネスモデルの可能性も示されております。更に、2020年に世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークの急激な普及や、EC等のオンラインチャネル利用の加速等、それまで将来的に発生すると想定されていた変化が前倒しで出現しています。 こうした環境変化や新たなビジネスモデルの出現により、当社グループ事業がコスト構造や顧客体験で劣後し、業界での主導権喪失や競争力の低下につながり、売上収益、事業利益の低下等、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。その一方で、当社グループがこのようなイノベーションを先導することによって、市場優位性獲得や、新規市場創出につなげることが期待できます。 当社グループは、このような状況に対して、単なるリスク対応に留まることなく技術革新を先取りすることを目指して、中期経営方針において「イノベーション、新価値創造に向けた無形資産(研究開発・人材力等)への投資強化」及び「DX(デジタル・トランスフォーメーション)への投資拡大による新たなオペレーティングモデルの構築」を掲げ、領域を特定した戦略的R&D及びIT投資を推進しています。また、各事業領域においてもイノベーションは重点課題の一つと認識し、取り組みを進めています。これらの取り組みを加速すべく、革新的技術の早期認識及びグループへの取込み、並びに事業化を支援する体制の構築を推進しており、その一環として設立したアサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社では、既存事業の強化につながる基礎研究や素材開発を始めとして、環境負荷低減、新規事業創出等、グループの先端研究の拠点として独自価値の創造に取り組んでいます。また、デジタル・トランスフォーメーションの取組みについては、従来からの既存業務の高度化・効率化を目的とした施策に加え、既存事業の拡大、新規事業の創出を強化して、更に進化・発展させてまいります。具体的には、オープンイノベーションも活用しながら新たな価値体験の創出や、デザイン思考等によるアイデアの創出に積極的に取り組み、さらに、データ分析の重要性が高まっている状況を踏まえ、専門機能の立ち上げやビジネス・アナリストの社内での育成にも注力しています。 (5)情報セキュリティ 当社グループは、高い市場競争力を確保するため、事業活動の多くをITシステムに依存しており、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、あるいはサイバー攻撃によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩、詐欺被害、EU一般データ保護規則(GDPR)等の各国法令違反が発生する可能性があります。 このようなリスクが顕在化した場合、事業の中断、損害賠償請求やセキュリティ対策費用の増加等によるキャッシュアウト、GDPR違反による制裁金等により、当社グループの業績及び財政状態、並びに企業ブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、2016年8月にASAHI-CSIRTを設置し、ITシステム上でサイバーセキュリティインシデントが起きていないかどうか監視すると共に、万が一インシデントが発生した場合には、その適切な対応を行うことは勿論のこと、原因解析や影響範囲の調査を行い、再発防止並びに防御の最適化を図る体制を敷いています。そのうえで、ソフトウェアや機器でのセキュリティ対策、及び社員教育や訓練を実施し、本件リスクが顕在化しないように取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症拡大によってテレワークが普及・定着しつつありますが、このような環境においてもASAHI-CSIRTが有効に機能し、インシデント防止に役立っています。また、海外においても、地域毎にセキュリティ対策を維持、及び向上させるための取組みを実施し、定期的にその取組みをモニタリングしています。 (6)アルコール摂取に対する社会の価値観 アルコールの摂取は、人々の生活を豊かにしてきた一方で、その不適切な摂取は、健康面あるいは社会的悪影響が指摘されています。WHOにおいては、世界的な規模での酒類販売に関する規制が検討されており、当社グループの予想を上回る規制強化が行われる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に健康志向が更に高まっていることもあり、アルコールに対する消費者需要が縮小する可能性もあります。これらの要因により、規制に対応するための費用支出による利益圧迫や、酒類の消費が減少することによる売上収益の縮小、さらにはアルコールを製造・販売する当社グループのレピュテーション及びブランド価値を毀損する等し、その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任を果たすため、WHOの目指すアルコールの有害な使用の低減による健康被害の予防について、酒類事業を行う各地の関連法令遵守のほか、IARD※をはじめとする業界団体や業界と協力、連携して、販売や広告に関する自主基準を設け、責任あるマーケティングに取り組んでいます。2020年1月28日には、IARDに加盟する企業のCEOによる、未成年飲酒防止に向けた取組みを推進する共同声明を公表しました。また、適正飲酒の啓発活動を積極的に推進し、不適切な飲酒の撲滅に取り組んでいます。当社グループとして責任ある飲酒の取り組み促進のために、グループスローガン「Responsible Drinking Ambassador」を打ち出し、現在取り組んでいる不適切な飲酒撲滅活動を強化すると同時に、社員に対する責任ある飲酒の研修の取り組みを拡大する等活動を加速させています。この一環として、2020年12月、アサヒビールは「スマートドリンキング宣言」を発表し、商品毎の純アルコール量の積極的な開示、多様な飲み方に対応すべく、低アルコール飲料、ノンアルコール飲料の商品構成比20%を2025年の目標に掲げる等、健康に配慮した商品の展開により、新しい飲用機会の創出に取り組んでいます。※IARD=International Alliance for Responsible Drinking(責任ある飲酒国際連盟)の略称。不適切な飲酒の撲滅と、責任ある飲酒を促進するという共通の目的のもとに、世界のビール、ワイン、スピリッツの製造業者である大手企業12社の加盟企業で構成される非営利団体。 (7)事業環境について 当社グループの売上収益において国内事業の占める割合は約60.9%(2020年12月期決算)となっております。今後の日本国内での景気の動向によって、酒類・飲料・食品の消費量に大きな影響を与える可能性があり、人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類・飲料・食品の消費量が減少する可能性があります。また、これまでのデフレ環境が想定以上に継続することにより国内での競争環境がさらに激化する結果、販売単価の下落を招き、当社グループ事業の収益性が想定より損なわれる可能性があります。 国内事業の売上収益のうち、ビール類は4割を超えます。このような状況は、当社グループのビール類商品に対するお客様の信頼を反映したものであり、当社グループ国内酒類事業での効率的な利益創出に寄与しておりますが、消費者の嗜好性の変化、世代交代等により、お客様の支持を失ってしまうと、本商品群の売上が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループは海外での事業領域を拡大しており、2020年12月期決算での売上収益における海外事業の占める割合は、約39.1%となっております。今後、欧州、豪州地域を中心とする当社グループが事業を展開する各国における景気の悪化、当該各国での競争環境の激化、消費者の嗜好の変化等、市場の需要動向が変化すること等により、当該地域における当社グループの売上収益の低下、利益率の悪化が生じる可能性があります。 当社グループは、中期経営方針に『稼ぐ力の強化』を掲げ、グローバル5ブランド『アサヒスーパードライ』、『Peroni Nastro Azzurro』、『Pilsner Urquell』、『Grolsch』、『Kozel』をはじめとした高付加価値ブランドの価値向上や新市場の創造を目指すとともに、今後の環境変化も見据えた収益構造改革を加速することで、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図っていきます。また、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させることで売上収益を増加させるとともに、飲料、食品事業において、消費者の健康志向の高まり及び高齢化社会に対応する領域へ挑戦することで、事業拡大を図っていきます。 (8)大規模自然災害 大規模な地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、近年国内外問わず、世界各地で大規模災害が現実のものとなっています。今後も、中長期的に継続するとともに規模の拡大が懸念されております。このような大規模な自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断により製造が停止、倉庫損壊及び保管製品破損により出荷が停止、並びに物流機能停止により原材料資材の調達及び製品の出荷が不能になる可能性があります。更に、事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能、及びシステム障害に伴う重要データの消失等もあわせて、事業活動が停止する可能性があります。事業活動の復旧に長期を要した場合、施設等の改修に多額の費用が発生した場合、消費マインドが落ち込んだ場合等、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、大規模災害が発生した際に、いち早く従業員及びその家族の安否を確認する仕組みとして、安否確認システムを導入するとともに、早急に被災地の被害状況を把握するため、衛星携帯電話の配備をはじめとした緊急時通信体制の強化を進めています。そのうえで、定期的な訓練を実施することで、有事の対応力を強化するとともに、災害対応意識の啓発に努めています。 生産工場では、建物倒壊対策のため、国内全建物対象に耐震診断を実施しました。対策が必要な物件については、順次計画的に補強工事を実施しています。ボイラー、冷凍機等の大型エネルギー供給設備には大地震(震度5弱相当)を検知すると、安全に自動停止する機能が付属し、大型ビール工場では電力供給が遮断した場合でも、自家発電によりタンクを冷却させることで、半製品の大量腐敗を防止する等2次災害のリスク低減対策を進めています。 また、主要グループ会社において、過去の地震防災対策の実績及び東日本大震災の経験を踏まえた「事業継続計画(BCP)」の策定を行い、主要商品の供給を継続するための需給調整機能を早急に復旧する体制を構築するとともに、受発注処理等に関する重要なデータを処理する関東のサーバーセンターのバックアップセンターを関西に設置し、大規模な自然災害が起こった場合であっても被災地以外での事業活動に支障が無いように備えています。 これらの事前対策により災害による被害の最小化、当社グループの業績及び財政状態に対する影響の低減に努めています。 (9)多様で有能な人材の確保 中期経営方針に掲げる目標達成のためには、多様な価値観や専門性を持った社員の力が必要不可欠です。そのため、当社グループは、社員の多様性を尊重するとともに、一人ひとりが成長できる人材育成プログラムへの投資を拡大し、必要に応じて、経営幹部、一般社員問わず、外部からの登用も進めています。 それでも、日本国内での少子高齢化による労働人口減少、及びグローバルな事業地域の拡大に伴う人材需要の増高及び必要スキルの変更や高度化により、多様で有能な経営幹部並びに一般社員を、必要数確保、育成及び定着させることができず、中期経営方針の戦略を実行し目標を達成する能力を損ねる可能性があります。 当社グループは、中期経営方針に「グローカルタレントマネジメントやダイバーシティの推進」を掲げ、将来のグループ会社の経営幹部候補のサクセッション・プランを策定し、それに基づいたグローバルリーダーシッププログラムや2021年から新たに始めるアサヒタレントエクスチェンジプログラム等の育成施策を連動させることによって、人材パイプラインの拡充・強化を進めています。加えて、グローバル人材会議等を通じて各国の人材の可視化を図り、グローバルでの適材適所配置も推進し、能力と適性のある人材を積極的に登用していきます。また、日本を含めて、地域を越えた人材交流の活性化、国籍や性別を超えた登用等、ダイバーシティを推進しています。 (10)国内物流需給ギャップの拡大 当社グループが事業展開する、酒類・飲料・食品の製造販売業界においては、物流は重要、かつ費用の構成比も高い機能です。国内の物流環境は、少子高齢化による労働人口減少に加え、電子商取引の拡大で、ドライバー需給ギャップの拡大が予想されます。2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響による企業間取引の荷量の減少と、同時に、外出自粛、人の移動制限による巣ごもり需要による電子商取引の増加がさらに加速し、物流環境全体のバランスに大きな変化が起きています。物流業界が従来から取り組む長時間労働の削減、生産性の向上等に加え、先の読めない時代の環境変化への柔軟な対応が求められており、課題の複雑性が増しています。 当社グループ全事業の、売上収益ベースで60.9%、事業利益ベースで51.3%(2020年12月期決算)を占める国内事業において、製品の運搬に必要な量の物流機能を適切な費用で確保することが安定的に事業展開する上で不可欠ですが、ドライバー不足による製品供給の滞りや運搬費の増嵩等が、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、地産地消ロジスティクスの推進や効率的な物流体制の実現による輸送量の削減、並びに物流機器・システムの導入による物流業務省人化と物流負荷低減に取り組んでいます。この一環として、2021年4月にはアサヒビール名古屋工場に新設するアサヒ飲料製品製造ライン及び自動倉庫の稼働を開始する予定です。また、従来から取り組んでいるモーダルシフト(鉄道・船舶輸送)や、効率化・省人化を目指した新たな幹線輸送スキームの確立、軽重貨物混載による積載率向上等、同業他社や異業種、物流事業者との連携による高効率輸送の実現や物流効率化施策による労働環境改善を推進しています。これらの取組みは、日本社会全体の課題とも密接に関連しており、当社グループは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が推進する「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同する旨を表明しています。 (11)気候変動にかかわるリスク 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)においてパリ協定が採択、各国で批准されたのを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取組みが世界的に進められています。 当社グループは、将来的な気候変動が、その業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性がある物理リスクとして、以下の通り認識しています。海外の生産拠点における干ばつが深刻化し、水需給が逼迫、水価格の高騰による操業コストが上昇する可能性があります。気温上昇(生育環境や労働環境の変化)・天候・自然災害・CO2濃度等が需給バランスや品質に影響し、主要な原材料価格が変動する可能性があります。更に、必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失と工場移転費用が発生する可能性があります。異常気象の激甚化により、深刻な風水害及び土砂災害が発生することで生産ラインや物流が停止し、設備被害や機会損失、製品廃棄による損失が発生する可能性があります。 また、将来的な気候変動を見据えた脱炭素社会への移行リスクを以下の通り認識しています。炭素税が導入され、特にPETボトル等の製品原材料への価格転嫁や生産拠点の操業コストが上昇する可能性があります。水ストレスの高い地域の生産拠点において取水制限を受けて操業が停止、機会損失が発生する可能性があります。エシカル志向の高まりにより、環境配慮が不十分な製品があった場合、その需要が低下し、当社グループの売上に影響を与える可能性があります。 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、2050年のCO2排出量ゼロを目指す中長期目標「アサヒカーボンゼロ」の達成に向けて取組みを加速させるために、2030年のScope1,2※の目標値を従来の30%削減(2015年比)から50%削減(2019年比)に上方修正し、更なる省エネルギーと再生可能エネルギーの活用に取り組んでいきます。Scope3※においては、2030年までに2015年比30%削減を目指して取り組んでまいります。また、グループ全体で水使用量削減に向けた取組みを進めて、水リスクに対応していきます。 将来的な気候変動リスクに関連する経営のレジリエンスと持続性を高めるために、2019年5月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate- related Financial Disclosures)」の提言に賛同しました。2020年は、ビール事業における気候変動が事業に及ぼすリスクと機会の分析と対応について積極的に取り組み、統合報告書やホームページ等において情報開示を行いました。2021年は、飲料事業へ拡大し、取組みを強化してまいります。※Scope1は、自社(工場・オフィス・車など)での燃料の使用によるCO2の直接排出、Scope2は、自社が購入した電気・熱・蒸気の使用によるCO2の間接排出、Scope3は、自社のバリューチェーンからのCO2の排出を指します。 (12)法規制とソフトローのコンプライアンス 当社グループは事業の遂行にあたって、食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法規制の適用を受けています。これらの法令が変更される、又は予期し得ない法律、規制等が新たに導入される等の理由による法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが増加し、又はお客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が毀損し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、「アサヒグループ行動規範」を制定し、事業活動を行う全ての国・地域において、適用される法令・ルールを遵守することを含め、「Asahi Group Philosophy」で示したステークホルダーに対する5つのPrinciplesに基づき、企業倫理・コンプライアンスを実践するための10条の行動規範を規定し、グループ全体での実践を推進しています。そして、代表取締役社長が委員長を務め、業務執行取締役及び委員長が任命した執行役員で構成される「コンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体の企業倫理・コンプライアンスを推進・監督するとともに、「アサヒグループ行動規範」に関する社員の研修等を通じてコンプライアンスのレベルを高め、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。 また、グローバルな事業地域が大きく拡大した今、当社グループにとって、人権保護並びに関連法規制の遵守は特に重要と認識しています。そこで、『ESGへの取組み深化』における重点課題の一つとして「人権マネジメント体制の構築」を掲げ、第一ステップとして、2019年、人権に関する最上位の方針として、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「アサヒグループ人権方針」を制定しました。本方針で掲げた人権デューデリジェンスについては、優先度が高い取組みとして、サプライヤー、自社従業員、救済へのアクセスの構築の3点を決定し、取組みを進めています。サプライヤーについては、2020年は国内外事業会社の原材料一次サプライヤーに対して、セルフアセスメント質問表(SAQ)への回答を依頼し、2021年はこの結果も踏まえた訪問調査でサプライヤーと対話し、改善を進めていきます。また2020年にはサプライヤーエシカル情報共有プラットフォームを提供しているNPO会員組織Sedex(Supplier Ethical Data Exchange)に加入しました。今後はSedexも活用してサプライヤーの人権や労働の管理状況を確認していきます。また、2017年に実施した現代奴隷リスク分析の結果に基づき、2021年は高リスクカテゴリー(農産物の栽培段階)のサプライヤーを対象とした現地調査等を行う予定です。自社従業員については、2020年は国内事業会社全役員・社員に対し、人権・LGBT基礎知識のE-ラーニングを実施しました。 新型コロナウイルス感染症拡大等の厳しい状況が続くなか、社会的立場が弱い人々の人権が侵害されるリスクが高まっています。その中の一つとして、日本の外国人技能実習生制度に関連した人権侵害が国内外で問題視されています。当社グループは、実習生が在籍するアサヒグループ食品岡山工場を対象に、NGOとともに実習生の労働実態調査及び実習生への母国語によるヒアリングを実施しました。今後、ここでの指摘事項を改善していきます。また救済へのアクセス構築については、国内外事業会社の内部通報制度や外部からの問い合わせ窓口の状況を確認しました。現在、二次以降のサプライヤー等の人権侵害被害者のための苦情処理メカニズム構築を進めています。 (13)プラスチック使用 近年、廃棄プラスチックの規制強化の動きが加速しています。同時に、プラスチックを大量に使用する製品に対する社会の目は厳しくなってきており、容器包装をプラスチック素材に依存している当社グループの飲料・食品製品の需要が著しく低下し、売上に影響を与えるだけでなく、対応不十分とのことで、当社グループに対するレピュテーションが低下する可能性があります。また、リサイクル費用の負担が増加することや、生分解性素材等の代替素材を使用した場合の材料費が増加すること等で、製造原価が増嵩する可能性があります。 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「持続可能な資源利用100%を目指す(農産物原料、容器包装、水)」ことを目標に掲げ、容器包装の中でも喫緊の課題である海洋汚染や生態系への影響が世界的に問題視されている海洋プラスチック問題への対応については、2020年、グループの戦略の方向性として、「3R+Innovation」を定め、それに基づき、グループ各社において、様々な取組みを進めています。 国内では、アサヒ飲料株式会社が「容器包装2030」を制定し、リサイクルPET・環境配慮素材の使用、リデュースの推進、環境への配慮を前提とした新容器開発等へ取り組む目標「容器包装2030」の達成に向けて、更なる「ラベルレスボトル」製品の拡大や「ボトルtoボトル」の再生事業者である日本環境設計株式会社への融資を行い、新たにケミカルリサイクルPET樹脂調達への取組みを強化しております。また、業界の枠を超えた連携体制による、使用済のプラスチックを再資源化する会社に共同出資を行い、中長期的なPET調達に向けた取組みも強化しています。 海外では、オーストラリアの子会社Asahi Beverages Pty Ltdが、2030年までに、プラスチック容器における環境配慮素材の使用率を100%にする目標の達成に向けて、リサイクル大手企業と容器メーカーと共同して、JVを設立し、リサイクルPETの調達を強化しています。 当社グループ全体として、更なる環境配慮素材の活用を推進してまいります。 (14)事業展開国のカントリーリスク 現在、当社グループは20を超える国に拠点を構え、世界経済全体の動向に加え、各国固有の政治、経済、社会、法規制、自然等の要素が、各国事業に影響を与える可能性があります。具体的なリスクとしては、政情不安、経済危機、関税報復措置、難民排斥運動、人種差別、規制強化、税制改正、自然災害、新興感染症等が想定されます。2019年7月以降、韓国での日本商品の不買運動により、同国での当社グループ製品の販売数量が大幅に減少しました。これらのリスクが顕在化した場合には、関税引き上げ等、在外資本企業に対する不利益条件によるコスト競争力の低下、利益の圧縮、政治的・軍事的・社会的圧力による営業困難あるいは営業停止、社員の安全不安、経営計画未達、中長期的損失計上、さらには事業撤退により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、グループ各社での情報収集や外部コンサルタント起用等を通じて、各事業展開国/地域の該当リスクの調査、情報収集、評価をもとに、これらリスクを早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組むことで、その予防・回避に努めるとともに、重大インシデント発生に備えた事業継続計画の策定等を行っていきます。また、当社グループは、今後の更なるグローバル化により収益源の分散化を進め、本件リスク顕在化時の、グループ全体への影響の低減を図ってまいります。 (15)主要原材料の調達リスク 当社グループが国内外で事業を展開する酒類・飲料・食品の製造に関して、市況の悪化による原材料価格の高騰、サプライヤーの倒産や買収、競合による買い占め等により原材料が調達不能となる可能性があります。また、大規模な自然災害や新型コロナウイルス感染症の拡大等により、サプライヤーでの原材料の製造制限や物流遅延等により、原材料の調達が困難・遅延となる可能性があります。これにより、原料高騰による製造コストの上昇、必要量の原材料が調達できず生産数量が減少、原材料供給の停止や遅延により製品の製造が困難等の事象が発生し、グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、市況と連動する原材料については、固定価格や複数年契約に加え、金融商品を活用し相場状況に応じて安定価格で調達することにより価格高騰リスクを回避しています。また、複数購買化による競争環境構築での価格高騰の抑制及び調達リスクの分散、代替原料の検討による調達リスクの回避及びコスト抑制に取り組んでいます。また、原材料の確保については、安全在庫確保の観点で、必要性に応じて数ヶ月分の在庫を保持することによる原材料の調達困難時での対応時間の確保、在庫保管場所の複数拠点への振り分けにより、地理的な供給リスクの分散にも取り組んでいます。 (16)品質について 当社グループは、最高の品質をお客様にお届けすることをグループ理念に掲げ、いずれのグループ会社も品質を通して、お客様との信頼関係を築くことに不断の努力を続けています。お客様の健康に密接に関連する事業を展開しているため、万一、不測の事態により、お客様の健康を脅かす可能性が生じたときは、お客様の安全を最優先に考え、迅速に対応します。 しかしながら、万一、品質に問題が生じて、商品の安全性に疑義が持たれた場合には、商品の回収や製造の中止を余儀なくされ、その対応に費用や時間を要するだけでなく、お客様からの信頼を失う可能性があります。このような事象が発生した場合、中期経営方針に掲げた「高付加価値ブランドの育成とグローバル5ブランドの拡大によるプレミアム戦略の推進」の未達を含む、当社グループの業績及び財政状態、並びにレピュテーション及びブランド価値に対して影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、品質確保及び向上の取組みとして、商品設計から販売に至るまでのプロセス毎に、品質に影響を与える業務や注意すべき事項を抽出し、その点検と是正を実施しています。また、品質保証技術の高度化のため、AI等先端技術の導入にも取り組んでいます。特に、生産工程においては、重要な管理項目を整理し、必須要求事項として展開し、工場毎の自己点検や生産工程の監査へ活用しています。これらの取組みについては、今後も深化させていきます。 また、当社グループは、食の安全に関わる最新の分析技術を開発しています。その対象は、微生物・農薬・カビ毒・重金属・樹脂・放射性物質等多岐にわたっており、海外も含めたグループ全体の高度な品質保証体制を技術面から支えています。 さらに、各グループ会社の商品特性や製造工場の環境に応じて、国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの考え方を取り入れ、必要に応じて外部認証取得しています。 (17)その他のリスク財務リスク為替変動 :当社グループはグローバルに事業を展開しているため為替リスクを負っています。このうち、海外子会社及び関連会社における資産や負債については円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、必要に応じて為替リスクのヘッジをする等の施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。また、海外連結子会社等の損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。一方、本国で行う輸出入、及び外国間等の貿易取引から発生する、外貨建債権及び債務等は為替レートの変動によるリスクを有しておりますが、このリスクは為替予約等と相殺されるため影響は限定されます。金利変動 :当社グループは銀行預金や国債等の金融資産及び銀行借入金や社債、リース負債等の負債を保有しております。これらの資産及び負債に係る金利の変動は受取利息及び支払利息の増減、あるいは金融資産及び金融負債の価値に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、金利リスクを回避する目的で、金利を実質的に固定化する金利スワップを利用しております。またヘッジ会計の要件を満たす取引については、ヘッジ会計を適用しております。格付低下 :当社グループに対する外部格付機関による格付けが引き下げとなり、当社グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される場合には、当社グループの業務運営や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。保有資産の価格変動:当社グループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 税務リスク 当社グループはグローバルに事業を展開しており、本国をはじめとする、各国の税制による適用を受けており、予期し得ない改正や税務当局からの更正処分を受けた場合、大幅なコストの増加、競争環境の悪化、事業活動の制限等が懸念され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 訴訟リスク 当社グループは、事業を遂行していくうえで、訴訟を提起される可能性があります。万一当社グループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
FY2019|14,751 文字
2【事業等のリスク】 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年1月31日内閣府令第3号)による改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」第二号様式記載上の注意(31)の規定を当事業年度に係る有価証券報告書から適用しております。 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。 なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。 1.アサヒグループのリスクマネジメント体制 アサヒグループは、2019年1月より、エンタープライズリスクマネジメント(事業目的を達成するために、組織全体の視点からリスクを管理する取り組み。以下「ERM」といいます。)を導入しました。この取組みの中で、「Asahi Group Philosophy」の具現化、並びに「中期経営方針」の戦略遂行及び目標達成を阻害しうる重大リスクを、戦略、オペレーション、財務、コンプライアンスなど全ての領域から特定及び評価し、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを継続的に実施することで、効果的かつ効率的にアサヒグループのリスク総量をコントロールします。 ERMを推進するにあたり、代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び代表取締役社長が指名する執行役員で構成される、リスクマネジメント委員会を設置しています。ERMはグループ全体を対象とし、リスクマネジメント委員会の委員長である代表取締役社長が実行責任を負います。 アサヒグループ各社は、事業単位毎にERMを実施し、リスクマネジメント委員会に取組内容を報告します。同委員会はそれらをモニタリングするとともに、委員自らがグループ全体の重大リスクを特定、評価、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを実施します。これらの取組みは取締役会に報告され、取締役会はこれらをモニタリングすることで、ERMの実効性を確認します。 2.アサヒグループ リスクアペタイト アサヒグループは、ERMを推進するとともに、「中期経営方針」の目標達成のために、「とるべきリスク」と「回避すべきリスク」を明確化する、「アサヒグループ リスクアペタイト」を制定しました。 「アサヒグループ リスクアペタイト」は、アサヒグループのリスクマネジメントに関する「方針」です。ERMの運用指針及び意思決定の際のリスクテイクの指針となるものであり、リスクに対する基本姿勢を示す「リスクアペタイト ステートメント」と、実務的な活用を想定した、事業遂行に大きく影響する主要なリスク領域に対する姿勢(アペタイト)を示す「領域別リスクアペタイト」で構成されます。グループ戦略、リスク文化とリスク状況、及びステークホルダーの期待をもとに検討し、取締役会にて決定、グループ全体に適用され、実施状況はリスクマネジメント委員会でモニタリング、取締役会へ報告されます。本取組みを通じて、アサヒグループ全体で適切なリスクテイクを促進してまいります。 3.主要リスク 当社グループでは、「1.アサヒグループのリスクマネジメント体制」記載の通り、当社代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び執行役員で構成されるリスクマネジメント委員会で、中期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを特定及び評価し、以下の(2)から(14)までの事項をかかるリスクとして認識しております。 加えて、それ以外に考えられる当社グループの事業等のリスクについても、(15)にまとめて記載しております。但し、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。 また、前述の、当社グループリスクマネジメントの取組みの中で、以下に記載する各リスクに対する対応策を含む種々の対応策をとりますが、それらの対策が有効に機能しない等によりリスクが解消できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 なお、文中においては、将来に関する事項が含まれておりますが、別段の記載が無い限り、当該事項は当年度末現在において判断したものです。 (1)中期経営方針について 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指して、2019年に、「Asahi Group Philosophy(AGP)」を制定し、それに基づいて中期経営方針を更新しました。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、本方針では、3年程度を想定した主要指標のガイドラインや、財務・キャッシュ・フロー方針を示しておりますが、これらのガイドライン・方針は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定されたものです。そのため、本「2 事業等のリスク」に記載の各リスク等を含む様々な要因により変更を余儀なくされるものであり、当社グループの事業や業績が中期経営方針内の同ガイドライン・方針等を達成できない可能性があります。 (2)技術革新による新たなビジネスモデルの出現 当社グループが国内外で事業を展開する、酒類・飲料・食品業界は、その製造販売に関して、技術革新による競争環境の変化が比較的少ない安定した業界ですが、最近では、アルコールテイスト清涼飲料による新たな飲用シーンの提案ができるようになり、IoTによる付加価値の提供、AI活用によるサプライチェーンの効率化、あるいはアルコール代替品など、技術革新による新たなビジネスモデルの可能性も示されております。 これらの新たなビジネスモデルが、短期的に当社グループ事業に影響を及ぼす可能性は低いと考えますが、中長期的には、コスト構造や顧客体験で劣後し、業界での主導権喪失や競争力の低下につながり、売上収益、事業利益の低下など、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性もあります。その一方で、当社グループがこのようなイノベーションを先導することができれば、市場優位性獲得や、新規市場創出につながることが期待できます。 本件に対しては、単なるリスク対応に留まることなく技術革新を先取りすることを目指して、中期経営方針において「イノベーション、ディスラプションを実現する風土改革、無形資産(研究開発・人材力等)への投資」及び「デジタルトランスフォーメーションによる構造改革、ビジネスモデルの進化」を掲げ、領域を特定した戦略的R&D及びIT投資を推進しています。また、各事業領域においてもイノベーションは重点課題の一つと認識し、取り組みを進めています。以上の取り組みを加速すべく、革新的技術の早期認識及びグループへの取込み、並びに事業化を支援する体制の構築を推進しております。その取り組みの一環として、本年度、研究戦略の立案、研究開発、及び新規事業創出に取り組む新会社、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社を設立しました。当社では、これまで蓄積してきた酵母や乳酸菌研究の知見等を深掘りし、新たな事業や価値の創出を目指すとともに、AIなどの新技術やオープンイノベーションを積極的に活用し、従来の研究開発領域に捉われない取り組みを進めています。また、中期経営方針に掲げた『稼ぐ力の強化』、「新たな成長の源泉獲得」及び「イノベーション文化の醸成」を目的として、「ADX(Asahi Digital Transformation)戦略モデル」を策定し、新たな価値体験の創出等、デザイン思考によるアイデアの創出やオープンイノベーションに積極的に取り組んでいます。 (3)事業拡大について 当社グループは、Schweppes Australia社の買収(2009年、買収額1,185百万豪ドル(適時開示の際に公表した金額、以下同じ))、カルピス社の買収(2012年、買収額920億円)、旧SAB Miller社の西欧ビール事業の取得(2016年、買収額2,550百万ユーロ)、及び中東欧ビール事業の取得(2017年、買収額7,300百万ユーロ)をはじめとして、国内外での事業領域拡大のため、積極的に外部の経営資源を獲得してきました。中期経営方針において「既存事業を補完するボルトオン型M&Aや競合・異業種とのアライアンスの拡大」を掲げ、現在、Anheuser-Busch InBev SA/NVが豪州で保有するビール・サイダー事業の買収成立に向けて取り組んでおり、今後も、成長のために、外部の経営資源を活用していきます。 外部の経営資源獲得にあたっては、慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ実行致します。しかしながら、営業、人員、技術及び組織の統合ができずコスト削減等の期待したシナジー効果が創出できなかった場合、アルコールや砂糖の摂取に対する社会の価値観の変化や人口動態の変化等により、買収した事業における製品に対する継続的な需要を維持できない場合、買収した事業における優秀な人材を保持し又は従業員の士気を維持することができない場合、高付加価値ブランドの育成不振等、効果的なブランド及び製品ポートフォリオを構築することができない場合、並びに異なる製品ラインにおける販売及び市場戦略の連携(クロスセルの拡大)ができない場合等により、当社グループの期待する成果が得られない可能性があります。 当社グループは、買収に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、当年度末現在、のれん及び無形資産の金額はそれぞれ、連結総資産の22.4%(7,029億円)及び22.1%(6,955億円)を占めております。当社グループは、当該のれん及び無形資産につきまして、それぞれの事業価値及び将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が将来にわたって大きく損なわれると判断された場合、又はカントリーリスクの顕在化による金利高騰や市場縮小等により適用される割引率や長期成長率が大きく変動した場合等は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、AGP及び中期経営方針に基づいたグローカルな価値創造経営により、事業の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しており、『稼ぐ力の強化』、『経営資源の高度化』や、『ESGへの取組み深化』の一環としてグループガバナンスの更なる実効性向上に向けた取り組みを実施することで、グループ戦略の実行と期待成果をより確実なものとします。 (4)情報セキュリティ 当社グループは、高い市場競争力を確保するため、事業活動の多くをITシステムに依存しており、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、あるいはサイバー攻撃によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩、詐欺被害、EU一般データ保護規則(GDPR)などの各国法令違反が発生する可能性があります。 このようなリスクが顕在化した場合、事業の中断、損害賠償請求やセキュリティ対策費用の増加等によるキャッシュアウト、GDPR違反による制裁金等により、当社グループの業績及び財政状態、並びに企業ブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、2016年8月にASAHI-CSIRTを設置し、ITシステム上でサイバーセキュリティインシデントが起きていないかどうか監視すると共に、万が一インシデントが発生した場合には、その適切な対応を行うことは勿論のこと、原因解析や影響範囲の調査を行い、再発防止並びに防御の最適化を図る体制を敷いています。そのうえで、ソフトウェアや機器でのセキュリティ対策、及び社員教育や訓練を実施し、本件リスクが顕在化しないように取り組んでいます。 (5)アルコール摂取に対する社会の価値観 アルコールの摂取は、人々の生活を豊かにしてきた一方で、その不適切な摂取は、健康面あるいは社会的悪影響が指摘されています。WHOにおいては、世界的な規模での酒類販売に関する規制が検討されており、当社グループの予想を上回る規制強化が行われる可能性があります。また、世界的健康志向の高まりにより、アルコールに対する消費者需要が縮小する可能性もあります。これらの要因により、規制に対応するための費用支出による利益圧迫や、酒類の消費が減少することによる売上収益の縮小、さらにはアルコールを製造・販売する当社グループのレピュテーション及びブランド価値を毀損するなどし、その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任を果たすため、WHOの目指すアルコールの有害な使用の低減による健康被害の予防について、酒類事業を行う各地の関連法令遵守のほか、IARD※をはじめとする業界団体や業界と協力、連携して、販売や広告に関する自主基準を設け、責任あるマーケティングに取り組んでおります。2020年1月28日には、IARDに加盟する企業のCEOによる、未成年飲酒防止に向けた取組みを推進する共同声明を公表しました。また、適正飲酒の啓発活動を積極的に推進し、不適切な飲酒の撲滅に取り組んでいます。また、アルコールテイスト清涼飲料など、健康に配慮した商品の展開により、新しい飲用機会の創出に取り組んでおります。※IARD=International Alliance for Responsible Drinking(責任ある飲酒国際連盟)の略称。不適切な飲酒の撲滅と、責任ある飲酒を促進するという共通の目的のもとに、世界のビール、ワイン、スピリッツの製造業者である大手企業12社の加盟企業で構成される非営利団体。 (6)国内事業環境 当社グループの売上収益において国内事業の占める割合は約66.5%となっております。今後の日本国内での景気の動向によって、酒類・飲料・食品の消費量に大きな影響を与える可能性があり、人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類・飲料・食品の消費量が減少する可能性があります。また、これまでのデフレ環境が想定以上に継続することにより、国内での競争環境がさらに激化する結果、販売単価の下落を招き、当社グループ事業の収益性が、想定より損なわれる可能性があります。以上の要因により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 国内事業の売上収益のうち、ビール類は約5割を占めます。このような状況は、当社ビール類商品に対するお客様の信頼を反映したものであり、当社グループ国内酒類事業での効率的な利益創出に寄与しておりますが、消費者の嗜好性の変化、世代交代等により、お客様の支持を失ってしまうと、本商品群の売上が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、中期経営方針に『稼ぐ力の強化』を掲げ、『アサヒスーパードライ』など主力ブランドの価値向上や新市場の創造を目指すとともに、最適生産物流体制の構築など収益構造改革に継続して取り組むことで、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図っていきます。また、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させることで売上収益を増加させるとともに、飲料、食品事業において、消費者の健康志向の高まり及び高齢化社会に対応する領域へ挑戦することで、事業拡大を図っていきます。 しかしながら、経済不況、消費者の嗜好の変化等、市場の需要動向によって酒類、飲料、食品の消費量の大幅な減少を余儀なくされる等、予期せぬ事態が発生した場合は、上記対策が有効に機能せず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (7)国内物流需給ギャップの拡大 当社グループが事業展開する、酒類・飲料・食品の製造販売業界においては、物流は重要、かつ費用の構成比も高い機能です。国内の物流環境は、少子高齢化による労働人口減少に加え、電子商取引の拡大による宅配便の増加等の影響もあり、ドライバー需給ギャップの拡大が予想されます。さらには、物流業界特有の長時間労働の削減、生産性の向上等、社会問題の積極的な解消無くしては、今後想定を上回る需給ギャップが生じる可能性も否めません。 これらの事業環境の変化により、当社グループ全事業の、売上収益ベースで66.5%、事業利益ベースで56.3%を占める国内事業において、運搬費の増嵩に留まらず、製品の運搬に必要な量の物流機能を適切な費用にて確保することができないこと等により、製品供給が滞るリスクをも想定しておく必要があります。 本件リスクは、日本社会全体の課題とも密接に関連しており、当社グループは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が推進する「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同する旨を表明しております。 当社グループは、本件リスクへの具体的な対応として、地産地消ロジスティクスの実現による効率的な物流体制の実現及び輸送量の削減、並びに物流機器・システムの導入による物流業務省人化及び物流負荷低減を目的として、アサヒビール名古屋工場でアサヒ飲料製品の製造ラインを新設するとともに自動倉庫を建設しています(2021年稼働予定)。また、従来から取り組んでいるモーダルシフト(鉄道・船舶輸送)や、効率化・省人化を目指した新たな幹線輸送スキームの確立など、同業他社や異業種、物流事業者との連携による効率性の高い輸送の実現を推進しています。 但し、これらの対策の実施を妨げる事象が発生する又は対策が有効に機能しない、あるいは物流需給ギャップが想定をはるかに上回ってしまう等により、上記リスクが解消しなかった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (8)多様で有能な人材の確保 中期経営方針に掲げる目標達成のためには、多様な価値観や専門性を持った社員の力が必要不可欠です。そのため、当社グループは、社員の多様性を尊重するとともに、一人ひとりが成長できる人材育成プログラムへの投資を拡大し、必要に応じて、経営幹部、一般社員問わず、外部からの登用も進めております。 それでも、日本国内での少子高齢化による労働人口減少、及びグローバルな事業地域の拡大にともなう人材需要の増高及び必要スキルの変更及び高度化により、多様で有能な経営幹部並びに一般社員を、必要数確保、育成及び定着させることができず、中期経営方針の戦略を実行し目標を達成する能力を損ねる可能性があります。 本件リスクに対して、中期経営方針に「グローカルタレントマネジメントやダイバーシティの推進」を掲げ、取り組みを進めております。将来の経営幹部候補のサクセッション・プランを策定し、それに基づいたグローバルリーダーシッププログラム等の育成施策を連動させることによって、人材パイプラインの拡充・強化を進めています。加えて、グローバル人材会議等を通じて各国の人材の可視化を図り、グローバルでの適材適所配置も推進し、能力と適性のある人材を積極的に登用していきます。また、日本を含めて、地域を越えた人材交流の活性化、国籍や性別を超えた登用など、ダイバーシティを推進しております。 (9)品質について 当社グループは、最高の品質をお客様にお届けすることをグループ理念に掲げ、いずれのグループ会社も品質を通して、お客様との信頼関係を築くことに不断の努力を続けています。お客様の健康に密接に関連する事業を展開しているため、万一、不測の事態により、お客様の健康を脅かす可能性が生じたときは、お客様の安全を最優先に考え、迅速に対応します。 当社グループは、品質確保及び向上の取組みとして、商品設計から販売に至るまでのプロセス毎に、品質に影響を与える業務や注意すべき事項を抽出し、その点検と是正を実施しています。また、品質保証技術の高度化のため、AI等先端技術の導入にも取り組んでいます。特に、生産工程においては、重要な管理項目を整理し、必須要求事項として展開し、工場毎の自己点検や生産工程の監査へ活用しています。これらの取組みについては、今後も深化させていきます。 また、当社グループでは、食の安全に関わる最新の分析技術を開発しています。その対象は、微生物・農薬・カビ毒・重金属・樹脂・放射性物質など多岐にわたっており、海外も含めたグループ全体の高度な品質保証体制を技術面から支えています。 さらに、各グループ会社の商品特性や製造工場の環境に応じて、国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの考え方を取り入れ、必要に応じて外部認証取得しています。 しかしながら、以上並びにその他の品質リスクに対する対策にもかかわらず、万一、品質に問題が生じて、商品の安全性に疑義が持たれた場合には、商品の回収や製造の中止を余儀なくされ、その対応に費用や時間を要するだけでなく、お客様からの信頼を失う可能性があります。このような事象が発生した場合、中期経営方針に掲げた「国内外での高付加価値ブランドの育成とクロスセルの拡大などによる売上成長」の未達を含む、当社グループの業績及び財政状態、並びにレピュテーション及びブランド価値に対して影響を及ぼす可能性があります。 (10)大規模自然災害 大規模な地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、近年国内外問わず、世界各地で大規模災害が現実のものとなっています。今後も、中長期的に継続するとともに規模の拡大が懸念されております。このような大規模な自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断により製造が停止、倉庫損壊及び保管製品破損により出荷が停止、並びに物流機能停止により原材料資材の調達及び製品の出荷が不能になる可能性があります。更に、事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能、及びシステム障害に伴う重要データの消失等もあわせて、事業活動が停止する可能性があります。事業活動の復旧に長期を要した場合、施設等の改修に多額の費用が発生した場合、消費マインドが落ち込んだ場合など、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、大規模災害が発生した際に、いち早く従業員(及びその家族)の安否を確認する仕組みとして、安否確認システムを導入するとともに、早急に被災地の被害状況を把握するため、衛星携帯電話の配備をはじめとした緊急時通信体制の強化を進めています。そのうえで、定期的な訓練を実施することで、有事の対応力を強化するとともに、災害対応意識の啓発に努めています。 生産工場では、建物倒壊対策のため、国内全建物対象に耐震診断を完了。対策が必要な物件については、順次計画的に補強工事を実施中です。ボイラー、冷凍機等の大型エネルギー供給設備には大地震(震度5弱相当)を検知すると、安全に自動停止する機能が付属し、大型ビール工場では電力供給が遮断した場合でも、自家発電によりタンクを冷却させることで、半製品の大量腐敗を防止するなど2次災害のリスク低減対策を進めています。 また、主要グループ会社において、過去の地震防災対策の実績及び東日本大震災の経験を踏まえた「事業継続計画(BCP)」の策定を行い、主要商品の供給を継続するための需給調整機能を早急に復旧する体制を構築するとともに、受発注処理等に関する重要なデータを処理する関東のサーバーセンターのバックアップセンターを関西に設置し、大規模な自然災害が起こった場合であっても被災地以外での事業活動に支障が無いように備えています。 これらの事前対策により災害による被害の最小化、当社グループの業績及び財政状態に対する影響の低減に努めています。 (11)プラスチック使用 近年、廃棄プラスチックの規制強化の動きが活発化しております。同時に、プラスチックを大量に使用する製品に対する社会の目は厳しくなってきており、容器包装をプラスチック素材に依存している当社グループの飲料・食品製品の需要が著しく低下し、売上に影響を与えるだけでなく、対応不十分とのことで、当社グループに対するレピュテーションが低下する可能性があります。また、リサイクル費用の負担が増加することや、生分解性素材などの代替素材を使用した場合の材料費が増加することなどで、製造原価が増高する可能性があります。 本件リスクへの対応として、当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「持続可能な資源利用100%を目指す(農産物原料、容器包装、水)」ことを目標に掲げ、容器包装に関しては、グループ各社において、海洋汚染や生態系への影響が世界的に問題視されている海洋プラスチック問題への対応を、国内外で様々な取組みを進めています。 国内では、アサヒ飲料株式会社が「容器包装2030」を制定し、リサイクルペット・環境配慮素材の使用、リデュースの推進、環境への配慮を前提とした新容器開発等に取り組んでおり、ラベルの無い「ラベルレスボトル」、さらにリサイクル素材を20%使用したペットボトル入りの『カルピス』等を販売しています。また海外では、オーストラリアの飲料子会社Asahi Beverages Pty Ltdが、リサイクル素材を100%使用したペットボトル入りのミネラルウォーター『Cool Ridge』を販売しています。 当社グループ全体としては、更なる環境配慮素材の活用を推進してまいります。 (12)気候変動にかかわるリスク 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)においてパリ協定が採択、各国で批准されたのを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取組みが世界的に進められています。 当社グループは、将来的な気候変動が、その業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性がある物理リスクとして、以下の通り認識しています。海外の生産拠点における干ばつが深刻化し、水需給が逼迫、水価格の高騰による操業コストが上昇する可能性があります。気温上昇(生育環境や労働環境の変化)・天候・自然災害・CO2濃度などが需給バランスや品質に影響し、主要な原材料価格が変動する可能性があります。更に、必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失と工場移転費用が発生する可能性があります。異常気象の激甚化により、深刻な風水害及び土砂災害が発生することで生産ラインや物流が停止し、設備被害や機会損失、製品廃棄による損失が発生する可能性があります。 また、将来的な気候変動を見据えた低炭素社会への移行リスクを以下の通り認識しております。炭素税が導入され、製品原材料への価格転嫁や生産拠点の操業コストが上昇する可能性があります。水ストレスの高い地域の生産拠点において取水制限を受けて操業が停止、機会損失が発生する可能性があります。エシカル志向の高まりにより、環境配慮が不十分な製品があった場合、その需要が低下し、当社売上に影響を与える可能性があります。 当社グループは、新たに制定した「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、CO2排出量を、2030年までに2015年比30%を削減し、2050年迄にゼロとする目標を掲げ、更なる省エネルギーと再生可能エネルギーの活用に取組み、水リスクへの対応としましては、グループ全体として、水使用量削減に向け、取り組んでまいります。また、当社は、2019年5月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に賛同しました。気候変動が事業に及ぼすリスクと機会の分析と対応について積極的に取り組み、今後、有価証券報告書、統合報告書やホームページ等において情報開示を行っていきます。 (13)事業展開国のカントリーリスク 現在、当社グループは20を超える国に拠点を構え、世界経済全体の動向に加え、各国固有の政治、経済、社会、法規制、自然などの要素が、各国事業に影響を与える可能性があります。具体的なリスクとしては、政情不安、経済危機、関税報復措置、難民排斥運動、人種差別、規制強化、税制改正、自然災害、新興感染症等が想定されます。2019年7月以降、韓国での日本商品の不買運動により、同国での当社グループ製品の販売数量が大幅に減少しました。これらリスクに対しては、グループ各社での情報収集や外部コンサルタント起用等を通じて早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組むことで、その予防・回避に努めるとともに、重大インシデント発生に備えた事業継続計画の策定などを行っていますが、これらのリスクが顕在化した場合には、関税引き上げなど、在外資本企業に対する不利益条件によるコスト競争力の低下、利益の圧縮、政治的・軍事的・社会的圧力による営業困難あるいは営業停止、社員の安全不安、経営計画未達、中長期的損失計上、さらには事業撤退の可能性もあります。また、当社グループは、今後の更なるグローバル化により収益源の分散化を進め、本件リスク顕在化時の、グループ全体への影響の低減を図っていきますが、当社想定を大きく超える事態が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 (14)法規制とソフトローのコンプライアンス 当社グループは事業の遂行にあたって、食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法規制の適用を受けています。これらの法令が変更される、又は予期し得ない法律、規制等が新たに導入される等の理由による法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが増加し、又はお客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が毀損し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 当社グループは、「アサヒグループ行動規範」を制定し、事業活動を行う全ての国・地域において、適用される法令・ルールを遵守することを含め、「Asahi Group Philosophy」で示したステークホルダーに対する5つのPrinciplesに基づき、企業倫理・コンプライアンスを実践するための10条の行動規範を規定しました。そして、代表取締役社長が委員長を務め、業務執行取締役及び委員長が任命した執行役員で構成される「コンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体の企業倫理・コンプライアンスを推進・監督するとともに、「アサヒグループ行動規範」に関する社員の研修などを通じてコンプライアンスのレベルを高め、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。 また、グローバルな事業地域が大きく拡大した今、当社グループにとって、人権保護並びに関連法規制の遵守は特に重要と認識しています。そこで、『ESGへの取組み深化』における重点課題の一つとして「人権マネジメント体制の構築」を掲げ、第一ステップとして、2019年、人権に関する最上位の方針として、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「アサヒグループ人権方針」を制定しました。本方針で掲げた人権デューデリジェンスについては、2017年に実施した現代奴隷リスク分析の結果に基づき、2020年にサプライチェーンから開始する予定です。今後、人権マネジメント体制の更なる高度化を図り、人権侵害リスク低減に向けた取り組みを推進します。 (15)その他のリスク新型コロナウィルス感染拡大の影響 2019年末、中国で初めて確認され、提出日現在100を超える国や地域へ拡大している新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対して、当社グループでは、顧客、取引先及び社員の安全第一を考え、また更なる感染拡大を防ぐために、WHO並びに各国保健行政の指針に従った感染防止策の徹底をはじめとして、感染リスクが高い国や地域への、及びそれらの国や地域からの渡航の原則禁止、工場見学や販売促進企画等の多くのお客様にお集まりいただくイベントの休止や制限、国内でのテレワーク(在宅勤務)の原則化等、対応を実施しております。提出日現在、主要原材料の十分量確保、業務用商品の需要低迷を家庭用商品で補完する等により、事業影響の低減を図っておりますが、今後、事態が長期化又は更なる感染拡大やパンデミックにあたる状況が進行すれば、世界的な景気の悪化及び各種イベントの中止や延期等による酒類・飲料・食品の全体消費量の減少、原材料価格の高騰、又は原材料確保の困難等が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 財務リスク為替変動 :当社グループはグローバルに事業を展開しているため為替リスクを負っています。このうち、海外子会社及び関連会社における資産や負債については円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、必要に応じて為替リスクのヘッジをするなどの施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。また、海外連結子会社等の損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。一方、本国で行う輸出入、及び外国間などの貿易取引から発生する、外貨建債権及び債務等は為替レートの変動によるリスクを有しておりますが、このリスクは為替予約等と相殺されるため影響は限定されます。金利変動 :当社グループは銀行預金や国債等の金融資産及び銀行借入金や社債、リース負債等の負債を保有しております。これらの資産及び負債に係る金利の変動は受取利息及び支払利息の増減、あるいは金融資産及び金融負債の価値に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、金利リスクを回避する目的で、金利を実質的に固定化する金利スワップを利用しております。またヘッジ会計の要件を満たす取引については、ヘッジ会計を適用しております。格付低下 :当社グループに対する外部格付機関による格付けが引き下げとなり、当社グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される場合には、当社グループの業務運営や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。保有資産の価格変動:当社グループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 税務リスク 当社グループはグローバルに事業を展開しており、本国をはじめとする、各国の税制による適用を受けており、予期し得ない改正や税務当局からの更正処分を受けた場合、大幅なコストの増加、競争環境の悪化、事業活動の制限等が懸念され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 訴訟リスク 当社グループは、事業を遂行していくうえで、訴訟を提起される可能性があります。万一当社グループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
FY2018|3,647 文字
2 【事業等のリスク】 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。 なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。 (1)国内市場・経済の動向及び人口の変動による影響について アサヒグループの売上収益において国内酒類事業の占める割合は約43%となっております。今後の国内景気の動向によって、酒類消費量に大きな影響を与える可能性が考えられます。また、日本国内での人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類の消費量の減少、また酒類のみならず飲料事業、食品事業における消費量にも影響を与え、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (2)税制改正について消費税や酒税の増税等が行われた場合、消費マインドの変化によって酒類事業、飲料事業、食品事業における消費量が変化し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に、2020年から段階的に実施される酒税の税率変更に伴う価格変更により、ビール類の需要が他ブランドや他カテゴリーへ流出した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (3)特定商品への依存についてアサヒグループの売上収益の中で重要な部分を占めるのが、ビール類販売による売上であります。アサヒグループとしましては、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させ売上収益を増加させるとともに、酒類事業以外に飲料、食品といった事業の拡大を図っております。しかしながら、市場の需要動向によってビール類消費量の大幅な減少を余儀なくされる等、予期せぬ事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (4)食品の安全性についてアサヒグループは、最高の品質をお客様にご提供することを経営理念として掲げており、グループ内の多様な検査管理体制によって食品の安全性を確立しております。一方で、食品業界を取り巻く昨今の環境においては、残留農薬、遺伝子組み換え、アレルギー物質等の管理や異物混入防止等の従来の食品安全への取組みに加え、品質データの改ざん防止や、意図的な異物混入を防止するフードディフェンスの取組みの必要性が増しております。アサヒグループでは、そのリスクを事前に察知あるいは評価し、顕在化する前に対処するよう取組みを強化しておりますが、取組みの範囲を超える事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (5)原材料価格の変動についてアサヒグループの製品に使用する主要な原材料の価格は、天候、自然災害、需給バランス等によって変動します。価格が高騰した場合には製造コストの上昇に繋がり、また市場の状況によって販売価格に転嫁することができない場合があり、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (6)気象条件、自然災害等による影響についてアサヒグループの酒類及び飲料の売上については、異常気象や天候不順によって市場が低迷した場合、その販売量が影響を受ける可能性があります。また、突発的に発生する災害や不慮の事故等の影響で製造、物流設備等が損害を被ることにより、資産の喪失、商品の滞留等による損失計上、設備復旧のための費用、生産、物流の停止による機会損失が考えられ、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (7)情報システムのリスクについてアサヒグループは、販促キャンペーン、通信販売等により多数のお客さまの個人情報を保持しております。アサヒグループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、システムを含め情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施しております。しかしながら、停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、コンピュータウィルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超える出来事により、情報システムの崩壊、停止または一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクがあります。このような事態が発生した場合、営業活動に支障をきたし、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (8)海外事業におけるリスクについてアサヒグループは、欧州、オセアニア及びアジアにて海外での事業を展開しております。アサヒグループとしましては、海外事業におけるリスクを早期に察知し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組んでおりますが、以下のような予期できない、または予測の範囲を超える変化があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 ・ 予期できない租税制度や法律、規制等の改正 ・ 政治的要因及び経済的要因の変動 ・ 伝染病の流行による社会的・経済的混乱 ・ 予測の範囲を超えた市場の変動、為替レートの変動 ・ テロ・戦争の勃発による社会的・経済的混乱 ・ 異常気象や地震等の自然災害の発生 (9)環境に関するリスクについてアサヒグループは、廃棄物再資源化、省エネルギー、二酸化炭素排出の削減、容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していくうえで環境に関連する各種法律、規制を遵守しております。しかしながら、関係法令等の変更によって、新規設備の投資、廃棄物処理方法の変更等による大幅なコストの増加が発生する場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (10)法律、規制等の変更によるリスクについてアサヒグループは、国内で事業を遂行していくうえで、酒税法、食品衛生法、製造物責任法等様々な法的規制の適用を受けております。また海外事業を展開していくうえでも関係する法律、規制等の適用を受けております。これらの法律、規制等が変更された場合、または予期し得ない法律、規制等が新たに導入された場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (11)アルコール飲料規制の動きについてアサヒグループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任(CSR)を果たすため、広告の表現や容器への表示に関して細心の注意をはらうとともに、未成年飲酒・妊産婦飲酒の防止等、適正飲酒の啓発活動に積極的に取り組んでおりますが、国際的にアルコール問題が議論される中、予想を大幅に超える規制が行われた場合、酒類消費量が減少し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (12)訴訟のリスクについてアサヒグループは、事業を遂行していくうえで、各種関係法令を遵守し、また社員がコンプライアンスを理解し、実践することに最善の努力をしております。しかしながら、国内国外を問わず事業を遂行していくうえで、訴訟提起されるリスクを抱えております。万一アサヒグループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (13)保有資産の価格変動についてアサヒグループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (14)退職給付関係についてアサヒグループの従業員及び元従業員の退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で使用される割引率等に基づき算出されております。制度資産の公正価値変動、金利の変動、年金制度の変更等、前提条件に大きな変動があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (15)事業・資本提携についてアサヒグループは、中期経営方針に沿って、成長基盤確立の一環として国内外他社との事業・資本提携を推進しています。しかしながら、アサヒグループ、提携先及び出資先を取り巻く事業環境の変化等の影響によって、当初想定していたシナジー効果を得られない可能性があります。 また、そのような環境変化によって、提携先及び出資先の事業、経営及び財務状況の悪化等が生じた場合、アサヒグループの事業、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、出資先が業績不振となり、出資に伴い発生した「のれん」等について多額の減損損失を計上する必要が生じた場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 アサヒグループは、2019年1月より、エンタープライズリスクマネジメント(事業目的を達成するために、組織全体の視点からリスクを管理する取り組み)を導入します。この取り組みにより、アサヒグループ全体の重要リスクを特定・評価のうえ、対応策を策定し、その実行とモニタリングを継続的に実施いたします。
FY2017|3,522 文字
4 【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。 なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。(1)国内市場・経済の動向及び人口の変動による影響についてアサヒグループの売上収益において酒類事業の占める割合は約46%となっており、またその大部分は国内市場での売上となっております。今後の国内景気の動向によって、酒類消費量に大きな影響を与える可能性が考えられます。また、日本国内での人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類の消費量の減少、また酒類のみならず飲料事業、食品事業における消費量にも影響を与え、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (2)税制改正について消費税や酒税の増税等が行われた場合、消費マインドの変化によって酒類事業、飲料事業、食品事業における消費量が変化し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に、2020年から段階的に実施される酒税の税率変更に伴う価格変更により、ビール類の需要が他ブランドや他カテゴリーへ流出した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (3)特定商品への依存についてアサヒグループの売上収益の中で重要な部分を占めるのが、ビール類販売による売上であります。アサヒグループとしましては、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させ売上収益を増加させるとともに、酒類事業以外に飲料、食品といった事業の拡大を図っております。しかしながら、市場の需要動向によってビール類消費量の大幅な減少を余儀なくされる等、予期せぬ事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (4)食品の安全性についてアサヒグループは、最高の品質をお客様にご提供することを経営理念として掲げており、グループ内の多様な検査管理体制によって食品の安全性を確立しております。一方で、食品業界を取り巻く昨今の環境においては、残留農薬、遺伝子組み換え、アレルギー物質、放射性物質等の管理や異物混入防止等の従来の食品安全への取組みに加え、品質データの改ざん防止や、意図的な異物混入を防止するフードディフェンスの取組みの必要性が増しております。アサヒグループでは、そのリスクを事前に察知あるいは評価し、顕在化する前に対処するよう取組みを強化しておりますが、取組みの範囲を超える事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (5)原材料価格の変動についてアサヒグループの製品に使用する主要な原材料の価格は、天候、自然災害等によって変動します。価格が高騰した場合には製造コストの上昇に繋がり、また市場の状況によって販売価格に転嫁することができない場合があり、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (6)気象条件、自然災害等による影響について アサヒグループの酒類及び飲料の売上については、異常気象や天候不順によって市場が低迷した場合、その販売量が影響を受ける可能性があります。また、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等の影響で製造、物流設備等が損害を被ることにより、資産の喪失、商品の滞留等による損失計上、設備復旧のための費用、生産、物流の停止による機会損失が考えられ、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (7)情報システムのリスクについてアサヒグループは、販促キャンペーン、通信販売等により多数のお客さまの個人情報を保持しております。アサヒグループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、システムを含め情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施しております。しかしながら、停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、コンピュータウィルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超える出来事により、情報システムの崩壊、停止または一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクがあります。このような事態が発生した場合、営業活動に支障をきたし、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (8)海外事業におけるリスクについてアサヒグループは、欧州、オセアニア及びアジアにて海外での事業を展開しております。アサヒグループとしましては、海外事業におけるリスクを事前に察知し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組んでおりますが、以下のような予期できない、または予測の範囲を超える変化があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 ・ 予期できない租税制度や法律、規制等の改正 ・ 政治的要因及び経済的要因の変動 ・ 伝染病の流行による社会的・経済的混乱 ・ 予測の範囲を超えた市場の変動、為替レートの変動 ・ テロ・戦争の勃発による社会的・経済的混乱 ・ 異常気象や地震等の自然災害の発生 (9)環境に関するリスクについてアサヒグループは、廃棄物再資源化、省エネルギー、二酸化炭素排出の削減、容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していくうえで環境に関連する各種法律、規制を遵守しております。しかしながら、関係法令等の変更によって、新規設備の投資、廃棄物処理方法の変更等による大幅なコストの増加が発生する場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (10)法律、規制等の変更によるリスクについてアサヒグループは、国内で事業を遂行していくうえで、酒税法、食品衛生法、製造物責任法等様々な法的規制の適用を受けております。また海外事業を展開していくうえでも関係する法律、規制等の適用を受けております。これらの法律、規制等が変更された場合、または予期し得ない法律、規制等が新たに導入された場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (11)アルコール飲料規制の動きについて アサヒグループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任(CSR)を果たすため、広告の表現や容器への表示に関して細心の注意をはらうとともに、未成年飲酒・妊産婦飲酒の防止等、適正飲酒の啓発活動に積極的に取り組んでおりますが、国際的にアルコール問題が議論される中、予想を大幅に超える規制が行われた場合、酒類消費量が減少し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (12)訴訟のリスクについてアサヒグループは、事業を遂行していくうえで、各種関係法令を遵守し、また社員がコンプライアンスを理解し、実践することに最善の努力をしております。しかしながら、国内国外を問わず事業を遂行していくうえで、訴訟提起されるリスクを抱えております。万一アサヒグループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (13)保有資産の価格変動についてアサヒグループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (14)退職給付関係についてアサヒグループの従業員及び元従業員の退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で使用される割引率等に基づき算出されております。制度資産の公正価値変動、金利の変動、年金制度の変更等、前提条件に大きな変動があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (15)事業・資本提携についてアサヒグループは、中期経営方針に沿って、成長基盤確立の一環として国内外他社との事業・資本提携を推進しています。しかしながら、アサヒグループ、提携先及び出資先を取り巻く事業環境の変化等の影響によって、当初想定していたシナジー効果を得られない可能性があります。また、そのような環境変化によって、提携先及び出資先の事業、経営及び財務状況の悪化等が生じた場合、アサヒグループの事業、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 また、出資先が業績不振となり、出資に伴い発生した「のれん」等について多額の減損損失を計上する必要が生じた場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
FY2016|3,450 文字
4 【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。(1)国内市場・経済の動向及び人口の変動による影響について アサヒグループの売上収益において酒類事業の占める割合は約56%となっており、またその大部分は国内市場での売上となっております。今後の国内景気の動向によって、酒類消費量に大きな影響を与える可能性が考えられます。また、日本国内での人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類の消費量の減少、また酒類のみならず飲料事業、食品事業における消費量にも影響を与え、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (2)税制改正について 消費税や酒税の増税が行われた場合、販売価格の上昇によって酒類事業、飲料事業、食品事業における消費量が減少し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (3)特定商品への依存について アサヒグループの売上収益の中で重要な部分を占めるのが、ビール類販売による売上であります。アサヒグループとしましては、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させ売上収益を増加させるとともに、酒類事業以外に飲料、食品といった事業の拡大を図っております。しかしながら、市場の需要動向によってビール類消費量の大幅な減少を余儀なくされる等、予期せぬ事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (4)食品の安全性について アサヒグループは、最高の品質をお客様にご提供することを経営理念として掲げており、グループ内の万全な検査管理体制によって食品の安全性を確立しております。しかしながら、食品業界を取り巻く昨今の環境においては、放射能汚染、鳥インフルエンザ、残留農薬、遺伝子組替、アレルギー物質の表示、異物混入等様々な問題が発生しております。また、従来の食品安全の取り組みに加え、意図的な異物混入を防止するフードディフェンスの取り組みの必要性が増しております。アサヒグループとしましては、そのリスクを事前に察知あるいは評価し、顕在化する前に対処するよう取組みを強化しておりますが、アサヒグループの取組みの範囲を超える事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (5)原材料価格の変動について アサヒグループの製品に使用する主要な原材料の価格は、天候、自然災害等によって変動します。価格が高騰した場合には製造コストの上昇に繋がり、また市場の状況によって販売価格に転嫁することができない場合があり、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (6)気象条件、自然災害等による影響について アサヒグループの酒類及び飲料の売上については、異常気象や天候不順によって市場が低迷した場合、その販売量が影響を受ける可能性があります。また、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等の影響で製造、物流設備等が損害を被ることにより、資産の喪失、商品の滞留等による損失計上、設備復旧のための費用、生産、物流の停止による機会損失が考えられ、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (7)情報システムのリスクについて アサヒグループは、販促キャンペーン、通信販売等により多数のお客さまの個人情報を保持しております。アサヒグループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、システムを含め情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施しております。しかしながら、停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、コンピュータウィルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超える出来事により、情報システムの崩壊、停止または一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクがあります。このような事態が発生した場合、営業活動に支障をきたし、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (8)海外事業におけるリスクについてアサヒグループは、アジア、オセアニア及び欧米にて海外での事業を展開しております。アサヒグループとしましては、海外事業におけるリスクを事前に察知し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組んでおりますが、以下のような予期できない、または予測の範囲を超える変化があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 ・ 予期できない租税制度や法律、規制等の改正 ・ 政治的要因及び経済的要因の変動 ・ 伝染病の流行による社会的・経済的混乱 ・ 予測の範囲を超えた市場の変動、為替レートの変動 ・ テロ・戦争の勃発による社会的・経済的混乱 ・ 異常気象や地震等の自然災害の発生 (9)環境に関するリスクについて アサヒグループは、廃棄物再資源化、省エネルギー、二酸化炭素排出の削減、容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していくうえで環境に関連する各種法律、規制を遵守しております。しかしながら、関係法令等の変更によって、新規設備の投資、廃棄物処理方法の変更等による大幅なコストの増加が発生する場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (10)法律、規制等の変更によるリスクについて アサヒグループは、国内で事業を遂行していくうえで、酒税法、食品衛生法、製造物責任法等様々な法的規制の適用を受けております。また海外事業を展開していくうえでも関係する法律、規制等の適用を受けております。これらの法律、規制等が変更された場合、または予期し得ない法律、規制等が新たに導入された場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (11)アルコール飲料規制の動きについて アサヒグループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任(CSR)を果たすため、広告の表現や容器への表示に関して細心の注意をはらうとともに、未成年飲酒・妊産婦飲酒の防止等、適正飲酒の啓発活動に積極的に取り組んでおりますが、国際的にアルコール問題が議論される中、予想を大幅に超える規制が行われた場合、酒類消費量が減少し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (12)訴訟のリスクについて アサヒグループは、事業を遂行していくうえで、各種関係法令を遵守し、また社員がコンプライアンスを理解し、実践することに最善の努力をしております。しかしながら、国内国外を問わず事業を遂行していくうえで、訴訟提起されるリスクを抱えております。万一アサヒグループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (13)保有資産の価格変動についてアサヒグループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (14)退職給付関係について アサヒグループの従業員及び元従業員の退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で使用される割引率等に基づき算出されております。制度資産の公正価値変動、金利の変動、年金制度の変更等、前提条件に大きな変動があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 (15)事業・資本提携について アサヒグループは、中期経営方針に沿って、成長基盤確立の一環として国内外他社との事業・資本提携を推進しています。しかしながら、アサヒグループ、提携先及び出資先を取り巻く事業環境の変化等の影響によって、当初想定していたシナジー効果を得られない可能性があります。また、そのような環境変化によって、提携先及び出資先の事業、経営及び財務状況の悪化等が生じた場合、アサヒグループの事業、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 また、出資先が業績不振となり、出資に伴い発生した「のれん」等について多額の減損損失を計上する必要が生じた場合、アサヒグループの業績に影響を及ぼす可能性があります。