研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-12 | - | 20 |
| 2024-12 | - | - |
| 2021-12 | - | - |
研究開発活動(本文)
FY2025|4,321 文字
6 【研究開発活動】当社グループでは、「防災・インフラ」「環境・エネルギー」「国際」の3つのセグメントでの事業戦略推進を目的としてイノベーション開発(研究開発、DX)に積極的に取り組んでいます。昨今のAI技術の発展及び国のAI技術の利用推進の方針に鑑み、AI技術の利活用推進が各セグメントの価値創造及び業務効率化に資すると考え、開発を進めています。開発方針としては、当社グループの事業全体を支える基盤開発と、セグメントの事業拡大及び効率化の開発に分類されます。事業全体を支える基盤開発では、創業以来の膨大な地盤情報をデータベース化し、これらのデータベースから必要な情報を抽出し、ニーズに応じた分析が可能な「地盤情報データプラットフォーム」の開発を行っています。また、事業分野、バックオフィスの事業変革を支えるためのエージェント型AIの開発にも着手しています。セグメントの事業拡大及び効率化を目的とした開発については、各セグメントについて以下に説明します。防災・インフラセグメントでは、頻発化・激甚化・同時多発化(複合化)する自然災害に対応するため、地震・津波・火災・浸水などに関する被害予測技術の高度化を進めています。また、防災計画の策定を支援するためのプラットフォーム開発にも取り組んでいます。昨年8月には京都大学防災研究所と包括的連携協定を締結し、異常気象に伴い激甚化・頻発化する水害・土砂災害、あるいは切迫する南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの地震災害に対し、その予測技術および防災・減災技術の開発を進め、継続的な国土強靱化と地方創生に貢献していきます。昨年2月に発生した八潮での陥没事故は、高度成長期以降に整備された社会インフラの老朽化という課題を改めて認識させるものでした。インフラ維持管理においては、深刻化する人手不足の解消が急務であり、点検・調査業務の効率化・自動化を図るため、AI技術を活用した点検支援技術や、光ファイバセンシングなど新技術を活用した調査手法の開発を進めています。環境・エネルギーセグメントでは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた研究開発を推進しています。国内トップシェアを有する洋上風力発電事業向け海底地盤調査技術については、今後の洋上風力の着床式から浮体式への移行や、海外への調査技術の展開を目標として、調査技術の開発を継続しています。生物多様性評価技術としては、昨年、新たに環境DNA分析技術を導入しました。水辺の国勢調査では令和8年度から環境DNAが導入される予定であり、当社も野外生物の効率的な調査・モニタリング手法として同技術を活用していきます。国内トップシェアを誇る災害廃棄物処理計画サービスにおいては、「令和6年能登半島地震」での経験を踏まえ、公費解体業務を効率的に行う仕組みを構築し、被災地の早期復興に寄与しています。国際セグメントの機器製造会社ではグローバル市場を対象に、インフラ整備、自然災害への防災、鉱山開発、洋上風力建設等の調査に必要な機器を提供し、サービスプロバイダーの会社では東南アジア市場を中心にインフラ整備に関する地盤調査、設計、施工監理、土木工事に関するモニタリング業務を提供しています。現在、国際セグメント事業を取り巻く状況は複雑なものとなっております。社会情勢の不安定化や米国の関税施策によって発生したサプライチェーンの混乱、原材料や人件費の高騰が各社の事業に影響を与えています。一方で、このような世界情勢に関わらず、インフラ整備への投資、防災・減災対策に関わるソリューションへのニーズは減ることはないと考えています。国際セグメント事業を担っている国際グループ各社は、これらのニーズをしっかりとつかむために必要な研究開発を推進していきます。当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は2,403百万円であります。 (1) 防災・インフラ事業地震・風水害・土砂災害といった自然災害から人と事業を守ることを目的に、災害発生前のリスク評価から災害直後の被害予測、事業継続計画(BCP)の策定・運用支援までをワンストップで提供するサービス「OYONAVI」をリリースしました。「OYONAVI」のサービスの一つであるリアルタイム地震被害予測は、地震の振動情報受信から約3分で被害想定結果を提供できます。現在、プロトタイプの開発が完了し、能登半島地震で被災した自治体などで試用を開始しています。河川管理施設の点検効率化を目的に、ドローンで取得した画像にAI技術を適用し、護岸ブロックのひび割れや鋼矢板の腐食などを自動検出する「河川護岸点検システム」のプロトタイプを開発しました。従来の作業員による目視点検では、1日あたりの点検距離は約500m程度でしたが、ドローン活用により1日あたり数km規模まで点検範囲を拡大することが可能となります。この開発では、グループ会社であるOX社のAI技術を採用しており、グループシナジーの最大化を図っています。昨年埼玉県八潮市で発生した陥没事故を受け、国土交通省より「道路陥没の被害軽減に資する技術研究開発」の公募が行われました。当社は東京大学を研究代表者とした共同研究開発「道路陥没リスクを最小化する逐次更新型地盤監視統合プラットフォームの開発」を応募し、採択されました。本研究開発は3か年計画で進められ、弊社は光ファイバセンシング(DAS)を活用した道路下地盤の健全性リアルタイムモニタリング技術、および道路陥没リスクを逐次更新・評価するプラットフォームの開発を担当します。本開発を通じて、八潮のような陥没事故の防止に貢献してまいります。当連結会計年度における研究開発費の金額は274百万円であります。 (2) 環境・エネルギー事業洋上風力発電事業では、海底微動アレイ探査技術の効率化を目的として、クラウドサーバーを利用した探査システムの開発を進めました。従来の海底微動アレイ探査では、探査データを現地でPCに保存してから品質チェックを行う必要がありましたが、クラウドサーバーにデータを転送する仕組みを開発したことで、リアルタイムでの品質確認および解析が可能となりました。なお、クラウドへのデータ転送システムは、将来的な海外展開も見据えてシステムを構築しています。着床式洋上風力の O&M(Operation & Maintenance:運転保守)事業を推進するため、応用地質本体と三洋テクノマリン、日本ジタン、オーシャンエンジニアリングの国内グループ会社3社により、マリンネクサスプロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトでは、光ファイバセンシング技術(DAS、DTS)を活用し、海底ケーブルの健全性をリアルタイムで監視するほか、遠隔操作型無人潜水機(ROV)などの無人探査機を活用した、即時応答可能な無人ケーブル点検技術の確立を目指しています。環境分野では、有機フッ素化合物(PFAS)が新たな環境汚染リスクとして注目されています。2026年4月より PFOS などの水質基準が改定・強化されることもあり、PFAS 汚染に対する分析手法および対策技術の開発が急務となっています。当社は、これまで培ってきた土壌・地下水汚染対策技術のノウハウを活かし、グループ会社である NS 環境とともに、PFAS 汚染に関する分析技術の開発を進めてまいります。 当連結会計年度における研究開発費の金額は177百万円であります。 (3) 国際事業 国際セグメント事業を担う会社で当期に研究開発活動を行ったのは、GEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS, INC.(米国)、GEOMETRICS,INC.(米国)、ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)、KINEMETRICS,INC.(米国)の4社です。これらは全て地盤調査に関わる機器製造・販売会社です。GEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS, INC.社は、地中レーダの専門メーカーであり、同社の地中レーダは、地盤中の埋設管等の探索、インフラ設備の劣化など、肉眼で見えない個所の調査・診断に多く用いられております。インフラ・メンテナンス用途向けに2023年にFlex NXの販売開始後、ここで培われた製造技術をベースにコスト削減を図ったシリーズのFlex LT、NEXSUS ELEMENTSへと製品のバリエーションを拡大しました。また、道路舗装に用いるアスファルト材料の材質管理、舗装工事の品質管理などに有効な装置としてあらたにPaveScan RSを開発し、道路舗装用のロードローラーに搭載しアスファルト舗装工事中の品質をリアルタイムで行えるシステムの提供も開始しました。GEOMETRICS,INC.社は、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、資源探査や土木地質調査向けの製品の提供を行っています。当期は主に米国政権の政策変更により洋上風力発電所建設事業が縮小された影響を受けましたが、過去の戦争や紛争で投下された不発弾の探索のための磁気探査装置の需要は堅調です。これらのニーズに応えるために前期に販売開始した磁気探査装置MagEX、および、ドローンに懸架して使用する磁気探査装置MagArrowⅡの売上は好調です。これらは従来に比べて小型の磁気センサを用いており、可搬性に優れた装置です。当期はさらに新たに海洋での磁気探査装置としてMagElement の販売を開始しました。ROBERTSON GEOLOGGING LTD.社は、インフラ整備や資源探査のために掘削するボーリング孔で使用する検層機器の開発・製造・販売、調査サービスを行う専門メーカーです。地盤を伝わるP波、S波速度をもとめてその地盤の工学的性質を調べるPS-Loggerの機能向上とデータQC、P波とS波速度解析を行うGeoCADソフトのPSモジュールの開発を行いました。KINEMETRICS,INC.社は、地震観測機器の専門メーカーとして、地震観測やインフラ設備の健全性調査などに必要な地震計の開発、製造・販売、観測システムの構築およびソリューション提供を行っている会社です。当期においては既存製品の後継機種の開発、およびサステイニングとして、Pebble(小型地震データ収録機)、QME(センサとデータ収録機をワイヤレスで接続するインターフェース)の開発を行いました。当連結会計年度における研究開発費の金額は1,952百万円であります。
FY2024|4,331 文字
6 【研究開発活動】当社グループにおける研究開発活動はイノベーション開発と称し、研究開発とDXの2本柱で構成されております。活動内容は、「防災・インフラ」「環境・エネルギー」「国際」の3つ事業セグメントごとに重要課題を設定し、課題解決に向けて、地盤調査技術、3次元可視化技術、モニタリング技術およびAI技術などの要素技術の開発を進めています。また、これらの情報をIoT技術およびモニタリング解析プラットフォームを始めとした各種プラットフォームに載せて、新規ビジネスの創出、競争力の優位性確保、生産性向上に活かしていくことを目指しています。防災・インフラ事業では、頻発化・激甚化している自然災害や高度成長期以降に整備した社会インフラの急速な老朽化などの社会課題に対して、それらを解決するためのソリューション開発を進めています。頻発化・激甚化する自然災害への対応としては、当社が開発したハザードマッピングセンサーとそれを集中管理するモニタリングプラットフォーム、これら様々な情報を用いて被害予測を行うシミュレーション技術を当社独自のクラウドで連携することで、現地でのリアルタイムの調査から危険度分析、アラートの発信までをワンストップで発信するサービスの構築を進めています。老朽化した社会インフラ構造物への対応としては、当社の強みである物理探査技術および計測技術を駆使して、効率的なモニタリング手法の開発を推進しています。環境・エネルギー事業では、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた再生可能エネルギーの主力電源化の推進への対策支援の取り組みや、サーキュラーエコノミー(資源循環)およびネイチャーポジティブ(自然再興)の実現に向けた活動を推進しています。再生可能エネルギーに関しては、現在洋上風力発電事業における海底地盤調査では国内トップシェアを誇っておりますが、このシェアを維持・拡大するための技術開発を継続的に推進しています。ネイチャーポジティブに関しては、2024年3月に当社つくばオフィス内の緑地が自然共生サイトとして認定され、OECM(*)として国際データベースに登録されました。今後も、自然共生サイトの認証ノウハウを活用し、生物多様性の保全や創出、持続可能な社会の実現に向けて貢献していきます。国際事業では、中東および東南アジアを主に、全世界のインフラ整備事業や洋上風力発電所立地調査を事業の柱としています。そして、これらに必要な地盤調査技術サービスの提供と関連する機器の製造・販売を行っています。現在、国際事業を取り巻く状況は、当期においても複雑化の様相を呈しています。新型コロナウィルスの蔓延をきっかけに発生したサプライチェーンの混乱、原材料や人件費の高騰は現在も継続しています。これに加えて懸念されることとしては、中国における景気減速と米国の関税引き上げ政策による米中関係の影響が不透明であることです。これらによりグループ会社は難しい経営環境に直面しています。一方で、このような世界情勢に関わらず、気候温暖化にともなう風水害、あるいは、地震災害などの脅威はますます増加しています。インフラの整備、防災・減災、エネルギー開発、地球環境の全てにおいて、地球上で起きている脅威を解決するソリューションへのニーズは減ることはないと考えています。国際事業を担っている国際グループ各社は、これらのニーズをしっかりとつかむために必要な研究開発を推進していきます。(*)OECM (Other Effective area-based Conservation Measures):保護地域以外で生物多様性保全に資する地域当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は2,527百万円であります。 (1) 防災・インフラ事業地盤振動を3次元かつリアルタイムで計測・解析して、地盤状況の変化(S波速度構造など)を可視化する技術「OYO Tracker 4D(R)」を開発しました。本技術は2025年2月12日に開催された国土交通省主催の令和6年度インフラDX大賞授与式で、i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム会員の取組部門「優秀賞」を受賞しました。「3次元調査」から「4次元モニタリングサービス」へ進化させることにより、様々な事業の施工・維持管理において地盤のリスクを見える化し、安全・安心で持続可能な社会実現に貢献してまいります。近年、光ファイバをセンサとして利用する光ファイバセンシング技術がめまぐるしく進化しており、当社でも光ファイバで振動を計測するDAS技術を利用した物理探査技術の開発を進めております。これまでに国道や河川堤防にすでに設置されている通信用の光ファイバを利用して、光ファイバ直下の地盤構造を推定できることを確認しました。OYO Tracker 4D(R)では、多数の地震計を長期間にわたり地面に設置する必要がありますが、地震計を光ファイバに置き換えることで作業性の課題を解決できる可能性があります。今後もDAS技術の開発を推進していきます。令和5年11月に施行された気象業務法及び水防法の一部を改正する法律により、土砂災害に関する気象予報業務が民間開放されました。当社でも防災・減災の促進を目的に土砂災害を高度に予測するための技術開発を推進しています。豪雨発生時に水が集まりやすい斜面である0次谷を機械学習により抽出する手法の開発はその一部であり、表層崩壊危険斜面全国マップとして公開しています。当連結会計年度における研究開発費の金額は241百万円であります。 (2) 環境・エネルギー事業洋上風力発電事業で重要な建設海域の海底地盤調査においては、当社の強みである物理探査および機器開発技術を活用した海底微動アレイ探査を提案・実施し、過酷な環境下の地盤調査の高度化および効率化を図ってまいりました。洋上風力の開発が着床式から浮体式へと移行し、沿岸から数10㎞~数100㎞離れた海域が対象となる場合、微動の発生源である海岸線から離れてしまうため、微動探査の実施が困難になることが予想されます。この問題を解決するために、海底に重錘を落下させて表面波を発生させて地盤のS波速度構造を推定する「大水深表面波探査」を開発し、複数の海域での実証実験を通じて調査手法の有効性を確認いたしました。2025年1月には、(独)エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が公募した洋上風力発電の導入促進に向けた浮体式海底地盤調査実施者に採択されました。今後も洋上風力発電を始めとした再生可能エネルギーに係る開発支援を推進していきます。サーキュラーエコノミーにおいては、当社は災害廃棄物処理計画サービスを展開しています。当社の強みである国内トップレベルの地震被害予測技術と融合させ、廃棄物量の算定の高精度化や適切な運搬・処理計画の策定に活用しています。昨年発生した能登半島地震では、災害廃棄物の円滑・迅速な処理をおこなうために、石川県の災害廃棄物処理の計画策定支援を行いました。仮置き場の廃棄物を迅速に処理するには廃棄物を種類ごとに分別することが重要となるため、ドローンによって撮影した画像をもとに分別する技術を実用化いたしました。今後も自然災害発生前の自治体職員の研修を始め、処理計画の策定支援、発生直後の初動対策支援および復旧・復興対策支援のフェイズを一元管理したシステムの開発を推進し、自然災害へのレジリエンスの強化および減災対策支援を推進していきます。 当連結会計年度における研究開発費の金額は169百万円であります。 (3) 国際事業国際事業を担う会社で当期に研究開発活動を行ったのは、GEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS, INC.(米国)、GEOMETRICS,INC.(米国)、ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)、KINEMETRICS,INC.(米国)の4社で、これらは全て地盤調査に関わる機器製造・販売会社です。GEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS, INC.社は、地中レーダの専門メーカーであり、同社の地中レーダは、地盤中の埋設管等の探索、インフラ設備の劣化など、肉眼で見えない個所の調査・診断に多く用いられております。2023年度に、インフラ・メンテナンス用途向けの新型地中レーダの次世代機として、Flex NX (R)シリーズの販売を開始しました。今期は、Flex NX (R)で培われた製造技術をベースに、さらにコスト削減を図ったFlex LTをリリースしました。今後は他の製品群も、Flex NX (R)をベースに設計・製造のコストの低減化を図った製品を開発して提供していきます。また、前期に続いてアスファルト舗装道路のアスファルト材料の材質管理、舗装工事の品質管理などに有効な装置としてPaveScanシリーズの販売拡大を進める為の開発も行っております。GEOMETRICS,INC.社は、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、資源探査や土木地質調査向けの製品の提供を行っている中、近年は洋上風力発電所建設の立地に関わる調査などにおいて、過去の戦争や紛争で投下された不発弾の探索のために磁気探査装置の需要が増えてきています。そこで当期において、新しい磁気探査装置、MagEXをリリースしました。これは既存の製品に比較して小型の磁気センサを用いることで可搬性に優れた製品となっています。現在はこれを海域での調査でも適用できるものを開発しています。ROBERTSON GEOLOGGING LTD.社は、インフラ整備のための地盤調査、資源探査のために掘削するボーリング孔内で使用する検層機器の開発・製造・販売を行う専門メーカーとして、近年は洋上風力発電所立地調査などへの適用が増えてきたことを受けて、これら検層機器が深い水深でも稼働するように機能の向上や専用の解析ソフトとのパッケージ化などの開発を行っています。KINEMETRICS,INC.社は、地震観測機器の専門メーカーとして、地震防災やインフラ設備の耐震調査などに必要な地震計の開発、製造・販売、観測システムの構築およびソリューション提供を行っており、サプライチェーン問題の克服、データ収録機の小型化、低消費電力化を実現するために、新しいデータロガーの開発、既存の地震計の改良作業に取り組んでいます。当連結会計年度における研究開発費の金額は2,116百万円であります。
FY2023|3,725 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、事業基盤となる三次元化技術やIoT技術および地盤情報データベース等の基盤技術の研究開発を推進するとともにビジネスモデルの変革や業務効率化が図れる分野に対して積極的にDXを推進しています。これらの研究開発成果をインフラ・メンテナンス事業、防災・減災事業、環境事業、資源・エネルギー事業の4つのセグメントにおいて活用し、顧客ニーズを第一優先としたソリューション創出に取り組んでいます。当社グループの核となるべき基盤技術の開発およびその開発成果をソリューションにするための開発を技術本部が主導、業務の効率化やDX技術を利用した新規事業の開発をDX推進本部が主導し、さらに両本部と事業主体部門が連携して開発を遂行しています。これにより,新規ビジネスの創出および既存ビジネスの高付加価値ソリューションの創出をスピーディーに実現でき、市場価値・環境価値・顧客価値(ESG)の向上を図ることができます。社会課題解決に寄与する組織として、2022年に大学等の研究機関と密接に連携した共創ラボを開設いたしましたが、引き続き最新の学術的情報を吸収しながら、自然災害、気候変動、人口減少といった社会問題の解決を行っています。研究成果については、学会やメディアを通じて社会に広く発信しており、2023年は豪雨・台風などの自然災害とそれによる経済被害の推定に関する研究成果を発表いたしました。海外グループ社を取り巻く状況は、2023年度においてさらに複雑化の様相を呈しています。新型コロナウィルスの蔓延をきっかけに発生したサプライチェーンの混乱による影響、ロシアによるウクライナ侵攻、ガザ地区によるイスラエルとハマスとの紛争、および、これに呼応した武装組織が紅海における海上輸送ルートへの攻撃は、国際物流の混乱、製造に必要なエネルギー、素材、輸送費の高騰を世界規模でもたらしており、これによるグループ社への影響も長期化の様相を呈する状況になっています。また、中国における景気減速と中国政府による国産化政策は、中国市場の構図を大幅に変化させており、中国市場に依存をしてきた海外グループ社は大きな影響を受けています。しかし、いかなる状況においても、気候温暖化にともなう風水害や地震災害による脅威の増加、生活環境の悪化は、地球上の全ての人にとって解決するべき共通の課題です。当社グループはこれらの課題解決に向けて必要な研究開発を推進していきます。 当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は2,251百万円でありました。 (1) インフラ・メンテナンス事業国内のインフラ・メンテナンス事業セグメントにおいては、道路、トンネル、堤防、建築基礎などのインフラの建設と維持管理に関するソリューション開発を行っております。老朽化するトンネルの維持管理分野では、走行型の高感度カメラで撮影した8K画像に対してAI技術を活用し、ひび割れの発生状況およびその進行性を把握する技術を開発しています。この技術は、トンネル全体ではなくどの地点で点検を行えば良いのかスクリーニングする技術であり、トンネル点検での人手不足・トンネルの老朽化進行といった社会課題に対して、点検の効率化、コスト縮減などで貢献することができます。地盤振動を3次元かつリアルタイムで計測・解析し、地盤状況の変化(S波速度構造など)を可視化する技術「OYO Tracker 4D(仮称)」を開発しました。この技術は当社が開発した3次元常時微動トモグラフィ技術をリアルタイムでモニタリングができるように改良したものです。シールドトンネルなどの地下工事や地盤改良工事において発生する地盤の変化をモニタリングし、工事や周辺環境に与える重大な影響を未然に防ぐことで社会に貢献します。海外グループ社のGEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、インフラ・メンテナンス用途向けの地中レーダの次世代機の開発、および、それに付随するサービス提供に関わる開発が終了し、FLEX NXシリーズとして販売を開始しました。前期につづいてアスファルト舗装道路のアスファルト材料の材質管理、舗装工事の品質管理などに有効な装置としてPaveScanシリーズの適用拡大を図っており、米国以外の複数の国におけるアスファルト舗装道路での適用検証を行っています。当連結会計年度における研究開発費の金額は912百万円であります。 (2) 防災・減災事業近年の気候変動による局所的大雨の増加により、地下鉄などの地下空間への浸水をどのように防止するかが社会課題となっており、施設および地下空間への浸水を正確に予測する技術が重要とされています。そこで建物内部と外部の点群データから精密な3次元モデルを構築し、サイバー空間上で浸水の状況をシミュレーションする技術を開発しました。モデルには止水版などの浸水対策も付与することができ、浸水対策の効果を検証することができます。当社が開発済みのIoTセンサ(冠すいっち、水位計)との連動により、センサドリブンな浸水対策および避難計画支援が可能になると考え、ソリューション開発を継続推進しています。海外グループ社のKINEMETRICS,INC.(米国)は、地震観測機器の専門メーカーとして地震防災に必要な地震計の開発、販売、観測システムの構築およびソリューション提供を行っています。サプライチェーン問題の克服、データ収録機の小型化、低消費電力化に向けた製品開発に取り組んでいます。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国内では再生可能エネルギーの主力電源化などの様々な取り組みが行われています。その実現のためには、地域レベルでの脱炭素の取り組み『地域脱炭素』が必要不可欠とされています。日本は自然災害リスクが高く、また地方では少子高齢化・過疎といった課題もあり、地域脱炭素を実行していくためには、地域ごとに多面的な考察が必要となります。再生エネルギーのポテンシャルのポジティブ要因、自然災害などのハザード情報などのネガティブ要因、そこに都市の基本情報や人口の将来予測を組みあわせて評価する手法「ポジティブゾーニング」を開発しました。対象となる地域の最適な「脱炭素」を実現するための戦略策定を応用地質は支援していきます。 当連結会計年度における研究開発費の金額は605百万円であります。 (3) 環境事業低コスト・低環境負荷型の自然由来重金属等の新たな対策方法が望まれますが、特に岩石を掘削した岩砕(ずり)の対策では、盛土内部における重金属等の溶出や吸脱着といった物質挙動は十分に解明されておらず、万が一の事態をおそれて封じ込めや吸着層工法などの安全側の過大な対策が講じられているのが現状です。そこで重金属を含む盛土中に様々なIoTセンサを配置し、盛土中の間隙水のPHと酸化還元電位をリアルタイムでモニタリングする技術「MNAD(Monitored Natural Adsorption and Desorption)工法」を開発しました。当社つくばオフィスに作成した実験盛土に様々な最新の IoT センサを設置し、盛土の内部環境の測定と間隙水・浸出水の定期水質分析を行い、重金属等の挙動やシステムの安定性を確認しています。今後は、本工法の低コストおよび低環境負荷という利点を発信するとともに、さらなる本工法の改良開発と普及を目指していきます。当連結会計年度における研究開発費の金額は54百万円であります。 (4) 資源・エネルギー事業洋上風力発電事業で重要な建設海域の海底地盤調査においては、当社の強みである物理探査および機器開発技術を活用し、これまでに海底微動アレイ探査や3次元音波探査方法などを開発してきました。今後の洋上浮力開発の浮体式への移行やEEZ海域への展開に対応するために、継続的に手法の開発を行っております。海外グループ社のGEOMETRICS,INC.(米国)は、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、鉱物資源探査や土木地質調査向けの製品の開発を行っております。再生エネルギー開発に向けて世界的に洋上風力発電所建設が世界各国でおこなわれています。これらの海域には先の大戦やその後の紛争で投下された不発弾が多くあり、これらの探索のために磁気探査装置が用いられています。この販売が好調ですが、さらに超小型磁気センサを組み込んだ製品を開発し、既存の磁気探査装置の小型化、軽量化を図ることに取り組んでいます。ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した調査(検層)機器の開発・製造・販売を行っています。同社も洋上風力発電所建設やインフラ整備に関わる土木地質調査への適用が増えてきたことを受けて、関連する検層機器が深い水深でも稼働するように機能の向上や専用の解析ソフト(GeoCAD)とのパッケージ化などの開発を行っています。当連結会計年度における研究開発費の金額は678百万円であります。
FY2022|4,422 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、将来の技術開発を支える基盤的技術として、三次元化技術やIOT技術そして地盤情報データベースの開発を行っております。またデジタル技術を活用することでビジネスモデルの変革や業務効率化が図れる分野に対しては積極的にDXを推進し、インフラ・メンテナンス事業、防災・減災事業、環境事業、資源・エネルギー事業の4つのセグメントにおいて、顧客ニーズに対するソリューションとして技術および製品の開発を進めております。新型コロナウィルスの感染状況は収束に向かいつつありますが、これに起因して発生したサプライチェーンの混乱による影響は今も製品製造部門は受けております。米国に拠点を置くグループ会社はドル高による価格競争力の低下による成約機会の逸失、そしてロシアによるウクライナ侵攻を契機に起きたエネルギー・食料価格の高騰が各国にもたらしたインフレーションは、すべてのグループ会社に経営上の負のインパクトを与えています。もちろん各国の経済対策や、脱炭素事業として洋上風力発電所立地調査事業が拡大するなど、当社グループ社にとって追風となっている部分もあります。さらに、地球温暖化にともなう気候変動による洪水や地すべり等の土砂災害は激甚化し、地震災害なども含む自然災害の脅威はますます増大していることも当社グループが貢献できる可能性が多くあるという状況に変わりありません。企業活動に対しては、SDGsやESGに配慮した経営が求められています。このような世界の情勢に対応した技術を創出していくことが課題です。地球科学に関わる事業を担っている当社グループは、最新の地球科学にもとづく研究開発をさらに加速していくことが求められます。DXを推進するにあたりBIM(Building Information Modeling)を業務に取り込むことが重要です。BIMは、インフラストラクチャの計画、調査、設計、施工、維持管理までの全てのステージの情報を連携させ、事業者や施工者のみならず地域住民も含む全てのステークホルダー間で共有し、インフラストラクチャの管理、および、ライフサイクルマネジメントに活かしていくための取り組みです。今までのBIMは建築構造物を対象として発展してきたため、地盤そのものの構造や地中埋設物のモデル化、それをBIMに取り込むまでのプロセスの標準化が遅れています。国土交通省は令和5年度から公共事業におけるBIM/CIM原則適用の準備を進めてきており、3次元モデルを活用した地質・土質調査、概略設計、予備設計も推奨項目となりました。これに対応するためには現在の既存プラットフォームでは不十分であり、土木調査で作成した3次元地盤モデルが設計・施工の段階でシームレスに活用できるように改良していかなくてはなりません。当社は、地盤モデルの作成、解析、情報連携に必要なソフトウェア群をGeoToolsとして開発してきましたが、さらなる利便性向上をめざし、機能強化を進めていきます。なお、当社が2018年に加入したBIMの国際標準化機関であるbSI(building SMART International、本部:英国)では、地盤モデルの規格案を策定するコモンスキーマプロジェクトとトンネルプロジェクトに運営メンバーとして参画してきましたが、2022年は施設および地盤も含めたすべての情報のデジタル化を可能とするIFC4.4 (Industry Foundation Classes)の策定に大きく貢献いたしました。研究開発は、当社の技術本部研究開発センターが中心となり、IOT技術やAI技術を利用してDXを推進する情報企画本部や8事業部(計測システム事業部、情報システム事業部、メンテナンス事業部、砂防・防災事業部、地震防災事業部、地球環境事業部、流域・水資源事業部、エネルギー事業部)そして当社グループが連携して実施しております。研究開発を効率的に推進するため、外部機関の優れた技術の活用を図ることにも積極的に取り組み、公的研究機関、大学、民間企業との共同研究を進めるとともに、国内外の大学への寄付講座の設定、研究員の派遣、コンソーシアムへの参加を行っております。また、オープンイノベーションを実現するため、業種の異なる企業との技術開発や製品開発を積極的に行っております。当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は2,135百万円でありました。 (1) インフラ・メンテナンス事業インフラ・メンテナンス事業セグメントにおいては、道路、トンネル、堤防、建築基礎などのインフラストラクチャの建設と維持管理に関するソリューション開発を行っております。老朽化する道路構造物の維持管理分野では、トンネルやカルバートの三次元形状や表面の状況を自動計測し、AIを用いて診断するシステムや道路のり面の安全確保のために設置されたグランドアンカーの状況を効率的に検査する方法を開発し、市場投入を開始しました。海外グループ会社のGEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、インフラ・メンテナンス用途向けの地中レーダの次世代機の開発、および、それに付随するサービス提供に関わる開発を行っています。従来の地中レーダは地下の埋設物や空洞探査などの位置を探索することに用いられてきましたが、最近の研究・開発によりアスファルト舗装道路のアスファルト材料の材質管理、舗装工事の品質管理などに有効な手法であることが確認できて、現在は米国での適用拡大を図っています。さらに、日本におけるアスファルト舗装道路への適用について検討を行っています。併せて、構造物点検用としてお使いいただいている地中レーダについても後継機種の開発や取得したデータ管理をクラウドサービスで提供できるプラットフォームの構築を進めています。当連結会計年度における研究開発費の金額は849百万円であります。 (2) 防災・減災事業防災・減災事業セグメントにおいては、自然災害に対する防災・減災に関わるソリューション開発を行っております。今期は、激甚化する降雨災害や降雨に伴う斜面災害に対応するため広域災害監視ソリューションの構築を目指したクラウドベース監視システムの機能強化を図るとともに、災害を早期に検知するネットワーク対応の監視センサとして、クリノポール(斜面傾斜計)の品揃えの強化や簡易雨量計、下水道水位計の開発を行い、センサーラインナップを強化しました。政府が主導するSIPプロジェクトでは、災害危険個所を自動抽出する技術や大規模災害時に飲料水を確保する技術の開発に参画しております。また、自治体や地域住民へ避難情報を迅速に提供するため、センサーネットワークで観測された災害関連データに加え、公的に利用可能な情報を一元管理して提供するシステムの社会実装にも取り組んでおります。海外グループ会社のKINEMETRICS,INC.(米国)は、地震観測機器の専門メーカーとして地震防災に必要な地震計の開発、販売、観測システムの構築、および、ソリューション提供を行っています。グローバルに起きているサプライチェーン問題に直面しているものの、継続的に新しい地震計、データ収録機を市場投入できるように開発に取り組んでいます。インフラ・メンテナンス事業とも重複しますが、耐震工学的視点に立って、橋梁、ダム、プラントなどの構造物の健全度診断と維持管理を行うためのソリューション提供を行う事業の拡大を図っており、それに対応できる地震観測システムの構築も行っています。 当連結会計年度における研究開発費の金額は573百万円であります。 (3) 環境事業環境事業セグメントにおいては、環境保全を支援するソリューション開発に取り組んでおります。2020年から開始した建設工事で発生する有害重金属を含んだ廃土を安全かつ経済的に処理する技術の開発では、今期は実証実験を実施するとともに、実用化に向けて公的研究機関や総合建設会社とコンソーシアムを設立しました。地方自治体のSDGsやESGに係わる目標設定やその達成を支援するため、地域の地盤特性や自然環境の特性を活かした開発可能性を評価するポジティブゾーニングの技術開発を行い、自治体向けの提案活動を開始しました。また、発展途上国のグリーンインフラ整備を通じて国際的な事業展開を図るために実施しているウズベキスタンの荒廃地の緑化プロジェクトでは、緑化に用いる節水型保育ブロックやそれと覆土を組み合わせた育成方法の実証実験で効果が確認されました。2023年以降は、得られた知見や開発した技術を用いて緑化プロジェクトの事業化を開始する予定です。当連結会計年度における研究開発費の金額は95百万円であります。 (4) 資源・エネルギー事業資源・エネルギー事業セグメントにおいては、資源・エネルギーの探査、再生エネルギー事業開発、ならびにエネルギー関連施設の維持管理に必要な技術開発を行っております。 今期は、洋上風力発電所の立地に関わる地盤調査業務が大きく進展し、海底地盤の形状や強度を探査する海底微動アレイ探査の業務が急増しました。これまでに海底浅部地盤の状況を正確に知るために海底微動アレイ探査のシステムを開発し、サービスを開始しました。これまでの探査システムは水深40m以浅の着床式風力発電を対象としていましたが、今後主流になっていく浮体式風力発電にも対応できるようにする必要がありました。より深い深度にも対応できる大深度の海底微動アレイ探査の開発に着手し、水深80m程度で探査が可能なシステムを開発しました。さらに探査深度200m程度の三次元音波探査システムも開発を行い、洋上風力の地盤調査分野での地位を不動なものとしていきます。海外グループ社のGEOMETRICS,INC.(米国)は、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、鉱物資源探査や土木地質調査向けの製品の開発を行っております。 洋上風力発電所建設予定地で行われる磁気探査や海上3次元反射法探査システムの販売が好調ですが、超小型磁気センサ技術を活用して、既存の磁気探査装置の小型化、軽量化を図ることに取り組んでいます。ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した調査(検層)機器の開発・製造・販売を行っています。同社も鉱物資源探査分野以外の洋上風力発電所建設予定地やインフラ整備に関わる土木地質調査への適用が増えてきたことを受けて関連する検層機器の機能向上、専用の解析ソフト(GeoCAD)とのパッケージ化など製品ラインナップの拡充を目指しています。当連結会計年度における研究開発費の金額は617百万円であります。
FY2021|4,243 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、将来の技術開発を支える基盤的技術として、三次元化技術やIOT技術そして地盤情報データベースの開発を行うとともに、インフラ・メンテナンス事業、防災・減災事業、環境事業、資源・エネルギー事業の4つのセグメントにおいて、AI等のDX技術を積極的に活用して、顧客ニーズに応えるソリューションを提供するための技術および製品の研究開発を進めております。今期も新型コロナウィルスの感染が全世界で猛威を振るい、さらにこれに起因するサプライチェーンの混乱による影響を製品製造部門は受けております。各国の経済対策に加え、原油等の資源価格も回復したことにより炭素エネルギーを始めとした地下資源産業に多くを依存してきた海外に拠点をもつ当社グループ各社にとっては部分的に追風となった側面はあるものの、周囲をとりまく経営環境は依然不透明です。一方、地球温暖化にともなう気候変動による洪水や地すべり等の土砂災害は激甚化し、地震災害なども含む自然災害の脅威はますます増大しています。企業活動に対しては、脱炭素の流れが加速し、SDGsやESGに配慮した経営への関心が高まっており、このような世界の情勢に対応した技術を創出していくことが求められています。地球科学に関わる事業を担っている当社グループにとっても、最新の地球科学にもとづく研究開発をさらに加速して推進していくことが求められます。BIM(Building Information Modeling)は、インフラストラクチャの計画、調査、設計、施工、維持管理までの全てのステージの情報を連携させ、事業者や施工者のみならず地域住民も含む全てのステークホルダー間で共有し、管理するライフサイクルマネジメントの取り組みです。海外では、欧州やシンガポールなどで、建設事業における三次元情報の相互連携を可能にするBIMが公共事業のみならず民間プロジェクトでも普及しつつあります。BIMは建築構造物を対象として発展してきたため、地盤の構造や地中埋設物のモデル化と、それをBIMに組み込むまでのプロセスの標準化が遅れています。当社グループは、世界に先駆けてBIMにおける地盤モデルの開発と標準化に取り組んでおります。当社は2018年にBIMの国際標準化機関であるbSI(building SMART International、本部:英国)に加入し、地盤モデルの規格案を策定するコモンスキーマプロジェクトとトンネルプロジェクトに運営メンバーとして参画し、地盤のモデル化と標準化に向けた提言を積極的に発信するとともに、関連する研究開発を行っております。また、地盤モデルの作成、解析、情報連携に必要なソフトウェア群をGeoToolsとして開発し、販売しております。研究開発は、当社の技術本部研究開発センターが中心となり、IOT技術やAI技術を利用してDXを推進する情報企画本部や8事業部(計測システム事業部、情報システム事業部、メンテナンス事業部、砂防・防災事業部、地震防災事業部、地球環境事業部、流域・水資源事業部、エネルギー事業部)そして当社グループ会社が連携して実施しております。研究開発を効率的に推進するため、外部機関の優れた技術の活用を図ることにも積極的に取り組み、公的研究機関、大学、民間企業との共同研究を進めるとともに、国内外の大学への寄付講座の設定、研究員の派遣、コンソーシアムへの参加を行っております。また、オープンイノベーションを実現するため、業種の異なる企業との技術開発や製品開発を積極的に行っております。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は1,454百万円でありました。 (1) インフラ・メンテナンス事業インフラ・メンテナンス事業セグメントにおいては、道路、トンネル、堤防、建築基礎などのインフラストラクチャの建設と維持管理に関するソリューション開発を行っております。今期は、当社の有する地中レーダ探査装置やノウハウと株式会社日立製作所の有するAIや画像解析技術を組み合わせて地中のガス管や水道管といった埋設物に関する位置や寸法などを高精度に可視化・一元管理し、地下掘削工事などで必要となる埋設物情報を提供する「地中可視化サービス」を開発し、サービス提供を開始しました。また、老朽化する道路構造物の維持管理分野では、トンネルやカルバートの三次元形状や表面の状況を自動計測し、AIを用いて診断するシステムや道路のり面の安全確保のために設置されたグランドアンカーの状況を効率的に検査する方法を開発し、市場投入を開始しました。海外グループ会社のGEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、インフラ・メンテナンス用途向けの地中レーダの次世代機の開発、および、それに付随するサービス提供に関わる開発を行っています。現在、コンクリート構造物点検用として多くのユーザにお使いいただいているStructure Scanシリーズの地中レーダなどの後継機種の検討を行っています。今後の開発においては、設計・製造方法を一新して他のシリーズの製品と共通化を図ることで、顧客ニーズに応じた多品種機種の開発、製造、修理対応が効率的に、かつ、迅速に応えることができる体制に転換することを目指しています。当連結会計年度における研究開発費の金額は659百万円であります。 (2) 防災・減災事業 防災・減災事業セグメントにおいては、自然災害に対する防災・減災に関わるソリューション開発を行っております。今期は、激甚化する降雨災害や降雨に伴う斜面災害に対応するため広域災害監視ソリューションの構築を目指したクラウドベース監視システムの機能強化を図るとともに、災害を早期に検知するネットワーク対応の監視センサとして、クリノポール(斜面傾斜計)の品揃えの強化や簡易雨量計の開発を行い、センサーラインナップを強化しました。政府が主導するSIPプロジェクトでは、災害危険個所を自動抽出する技術や大規模災害時に飲料水を確保する技術の開発に参画しております。また、自治体や地域住民へ避難情報を迅速に提供するため、センサーネットワークで観測された災害関連データに加え公的に利用可能な情報を一元管理して提供するシステムの社会実装にも取り組んでおります。海外グループ会社のKINEMETRICS,INC.(米国)は、地震観測機器の専門メーカーとして地震防災に必要な地震計の製品開発、および、ソリューション提供を行っています。しかしCOVID-19によって発生した全世界的な物流の停滞への対応、老朽化した使用部品の代替のための製品の再設計が発生するなどで開発作業への影響があるものの、昨年に引き続いて低価格タイプの新しい地震データ収録機の開発に取り組んでいます。また、橋梁、ダム、プラントなどの構造物の維持管理などの新たな市場開拓に向けて、それに対応できる地震観測システムの構築も行っています。 当連結会計年度における研究開発費の金額は353百万円であります。 (3) 環境事業環境事業セグメントにおいては、環境保全を支援するソリューション開発に取り組んでおります。2020年から開始した建設工事で発生する有害重金属を含んだ廃土を安全かつ経済的に処理する技術の開発では、今期は実証事件を実施するとともに、実用化に向けて公的研究機関や総合建設会社とコンソーシアムを設立しました。地方自治体のSDGsやESGに係わる目標設定やその達成を支援するため、地域の地盤特性や自然環境の特性を活かした開発可能性を評価するポジティブゾーニングの技術開発を行い、自治体向けの提案活動を開始しました。また、発展途上国のグリーンインフラ整備を通じて国際的な事業展開を図るために実施しているウズベキスタンの荒廃地の緑化プロジェクトでは、緑化に用いる植物の選定や保育苗の育成技術の実証実験で効果が確認されました。2022年以降は、得られた知見や開発した技術を用いて緑化プロジェクトの事業化を開始する予定です。当連結会計年度における研究開発費の金額は43百万円であります。 (4) 資源・エネルギー事業資源・エネルギー事業セグメントにおいては、資源・エネルギーの探査、再生エネルギー事業開発、ならびにエネルギー関連施設の維持管理に必要な技術開発を行っております。今期は、洋上風力発電所の立地に関わる地盤調査業務が大きく進展し、海底地盤の形状や強度を探査する海底微動アレイ探査の業務が急増しました。海底浅部地盤の状況を正確に知りたいという要望に応えるため、海底微動アレイ探査の浅部分解能を向上させ、かつROV(海中ロボット)で設置するだけで測定が可能な一体型の極小探査システムを開発し、サービスを開始しました。海外グループ会社のGEOMETRICS,INC.(米国)は、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、鉱物資源探査や土木地質調査向けの製品の開発を行っております。既にリリースしているドローンに吊り下げて使用する小型の磁気探査装置のMagArrowについては鉱物資源探査だけではなく、土木地質調査用途への発展の期待が大きいものとして、搭載しているGPSの精度向上、顧客の使用時の操作性向上のためのソフトウェアの改良を行っています。また、MagArrowで使用されている超小型磁気センサ技術を活用して、陸域で使用する既存の磁気探査装置の小型化、軽量化を図ることにも取り組んでいます。海外グループ会社のROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した調査(検層)機器の開発・製造・販売を行っています。最近は鉱物資源探査分野以外の洋上風力発電所の立地調査やインフラ整備にともなう土木地質調査用途にも多くの検層機器が使われていますので、鉱物資源探査、土木地質調査の両方の用途に使えるような製品ラインナップの拡充を目指しています。既に孔内観察用のボアホールカメラはリリースが開始されました。また、解析ソフトウェア(GeoCad)のうち超音波で孔内状況を画像化するモジュールが完成し、次には音波検層の解析ができるモジュールの開発へと順次作業を行っています。当連結会計年度における研究開発費の金額は397百万円であります。
FY2020|3,943 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、将来の技術開発を支える基盤的技術として、三次元化技術やIOT技術そして地盤情報データベースの開発を行うとともに、インフラ・メンテナンス事業、防災・減災事業、環境事業、資源・エネルギー事業の4つのセグメントにおいて、顧客ニーズに応えるソリューションを提供するための技術および製品の研究開発を進めております。2020年度は新型コロナウィルスの感染が全世界に拡大し、各国の経済に対して大きな影響を与えました。この影響は原油価格の低迷をもたらし、従来の炭素エネルギー産業に依存している海外に拠点をもつ当社グループ各社はこの影響を大きく受けました。さらに、地球温暖化にともなう気候変動による洪水、地すべり、あるいは、地震災害などの自然災害の脅威は増大しています。企業活動に対しては、SDGsやESGに配慮した経営への関心が高まっており、このような世界の情勢に対応した技術を創出していくことが求められています。地球科学に関わる事業を担っている当社グループにとっても、最新の地球科学にもとづく研究開発をさらに加速して推進していくことが求められます。国土交通省では、社会経済状況の激しい変化に対応し、デジタル技術を活用して社会資本や公共サービスを変革すると共に、建設業の働き方を変革する取組みを推進しています。具体的には、①新型感染症対策を契機とした非接触・リモートな働き方への転換と抜本的な生産性や安全性の向上のためインフラ分野のDXを推進し、②インフラのデジタル化を進め2023年度までに小規模なものを除く全ての公共工事でBIM/CIM(Building Information Modeling/Construction Information Modeling and Management)を導入し、そして③三次元データ等を活用した新技術の開発や導入を促進しています。当社グループにおいても、三次元化技術に時間軸を取り入れてBIM/CIMプラットフォーム上で四次元として展開することで地球科学分野でのDXを進め、新しいソリューションを提供することを研究開発の基本戦略としています。BIMは、インフラストラクチャの計画、調査、設計、施工、維持管理までの全てのプロセスの情報を最新の情報技術を利用して管理するライフサイクルマネジメントの取り組みです。海外では、欧州やシンガポールなどで、建設事業における三次元情報の相互連携を可能にするBIMが公共事業のみならず民間プロジェクトでも普及しつつあります。BIMは建築構造物を対象として発展してきたため、地盤の構造や地中埋設物のモデル化と、それをBIMに組み込むまでのプロセスの標準化が遅れています。当社グループは、世界に先駆けてBIMにおける地盤モデルの開発と標準化に取り組んでおります。当社は2018年にBIMの国際標準化機関であるbSI(building SMART International、本部:英国)に加入し、地盤モデルの規格案を策定するコモンスキーマプロジェクトとトンネルプロジェクトに運営メンバーとして参画し、地盤のモデル化と標準化に向けた提言を積極的に発信するとともに、関連する研究開発を行っております。研究開発は、当社の技術本部研究開発センターが中心となり、IOT技術を担う情報企画本部や8事業部(計測システム事業部、情報システム事業部、メンテナンス事業部、砂防・防災事業部、地震防災事業部、地球環境事業部、流域・水資源事業部、エネルギー事業部)そして当社グループ会社と連携して実施しております。研究開発を効率的に推進するため、外部機関の優れた技術の活用を図ることにも積極的に取り組み、公的研究機関、大学、民間企業との共同研究を進めるとともに、国内外の大学への寄付講座の設定、研究員の派遣、コンソーシアムへの参加を行っております。また、オープンイノベーションを実現するため、業種の異なる企業との技術開発や製品開発を積極的に行っております。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は1,427百万円でありました。 (1) インフラ・メンテナンス事業インフラ・メンテナンス事業セグメントにおいては、トンネル、道路、堤防、建築基礎などのインフラストラクチャの建設と維持管理に関するソリューション開発を行っております。今期は、路面下の埋設管や空洞調査にAI技術等の自動解析・判定技術を導入することで調査~解析~評価までのパッケージ化が進展し、試験的な市場投入を開始しました。また、標準的な地盤調査に三次元物理探査を組み合わせた建築基礎解析システムや堤防健全度評価システムの商品化にも取り組んでおります。国際グループ社のGEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、地中レーダ技術を各種インフラストラクチャの診断や地質調査に用いるために、それぞれの使用用途に合わせた製品ラインナップの拡充を行っております。コンクリート構造物点検用として新しいハンドヘルドタイプで表示器がオールインワンタイプ化されたStructure Scan Mini LT、アスファルト道路のアスファルトの密度を測定し舗装品質をチェックできるPaveScan RDM 2.0をリリースしました。インフラストラクチャの診断用途の地中レーダのニーズは高く、新型のハンドヘルドタイプの地中レーダの開発も行い、顧客の用途に応じた製品群を提供していきたいと考えています。当連結会計年度における研究開発費の金額は625百万円であります。 (2) 防災・減災事業 防災・減災事業セグメントにおいては、自然災害に対する防災・減災に関わるソリューション開発を行っております。今期は、激甚化する降雨災害や降雨に伴う斜面災害に対応するため広域災害監視ソリューションの構築を目指したクラウドベース監視システムの機能強化を図るとともに、災害を早期に検知するネットワーク対応の監視センサとして、クリノポール(斜面傾斜計)、都市下水水位センサ、夜間でも使える高感度監視カメラを開発し、センサーラインナップを強化しました。また、地すべり発生機構を三次元的に解明し、その対策効果をシミュレーションすることで経済性を評価し最適な対策を提案する方法を開発しました。政府が主導するSIPプロジェクトでは、災害危険個所を自動抽出する技術や大規模災害時に飲料水を確保する技術の開発に参画しており、開発成果の社会実装に取り組んでおります。国際グループ社では、KINEMETRICS,INC.(米国)が、地震観測機器の専門メーカーとして地震防災に必要な地震計の製品開発を行っています。昨年に引き続き、低価格タイプの新しい地震データ収録機の開発を行うとともに、自然地震以外の分野で適用可能な製品開発を強化しています。米国西部で発生した大規模山火事に対するモニタリング機器の開発、ダムや橋梁のヘルスモニタリングのためのモニタリング機器の開発に取り組んでいます。当連結会計年度における研究開発費の金額は384百万円であります。 (3) 環境事業環境事業セグメントにおいては、環境保全を支援するソリューション開発に取り組んでおります。今期は、建設工事で発生する重金属を含んだ廃土を安全かつ経済的に処理する技術の開発を開始し、実用化に向けて公的研究機関や総合建設会社との協議を開始しました。さらに、発展途上国のグリーンインフラ整備を通じて国際的な事業展開を図るため実施しているウズベキスタン「アラル海」及びその周辺荒廃地の緑化と、経済性の高い土壌水保全技術の開発は、新型コロナウィルスの感染拡大のため現地での実験を延期せざるをえませんでしたが、現地とオンラインを通じた技術開発を継続しております。当連結会計年度における研究開発費の金額は50百万円であります。 (4) 資源・エネルギー事業資源・エネルギー事業セグメントにおいては、資源・エネルギーの探査、再生エネルギー事業開発、ならびにエネルギー関連施設の維持管理、必要な技術開発を行っております。洋上風力発電所の立地に関わる地盤調査技術として、前期までに、陸上の調査法として開発された微動アレイ探査を海底で実施できるように、またCPT(コーン貫入試験)を海上櫓から経済的に実施できるように改良しました。今期は、前期に開発した海底微動アレイ探査の浅部分解能を向上させ、かつROV(海中ロボット)で設置するだけで測定が可能な一体型の極小探査システムを開発し、実証試験に成功しました。国際グループ社では、GEOMETRICS,INC.(米国)が、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、鉱物資源探査や土木地質調査向けの製品開発を行っております。分散型地震探査装置の”ATOM”は、当社の地盤の3次元可視化技術には欠かせない機器になっています。さらに、ドローンを用いた小型の磁気探査装置の”MagArrow”がリリースされ地雷探査等の調査で活用されておりますが、ここで使用されている超小型磁気センサ技術を活用して、従来の陸域で使用していた磁気探査装置の小型化にも取り組んでいます。ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した調査(検層)機器の開発・製造・販売を行っています。小型でかつ、複数の検層機器を連結したシステム(スタッカブルシステム)の開発はほぼ終了し、2021年度にはリリース予定です。当連結会計年度における研究開発費の金額は371百万円であります。
FY2019|3,347 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、インフラ・メンテナンス事業、防災・減災事業、環境事業、資源・エネルギー事業の4つのセグメントにおいて、顧客ニーズに応えるソリューションを提供するための技術および製品の研究開発を進めております。日本では、少子高齢化時代の中で技術者不足が深刻になってきたため、国土交通省のi-Constructionの施策など、情報技術を駆使して品質の確保と労働生産性の向上に関する施策が取り入れられようとしています。i-Constructionでは、構造物を三次元として可視化することで当事者間の合意形成を容易にし、計画、調査、設計、施工、維持管理の品質の確保と生産性の向上が重要となります。また、海外では、欧州やシンガポールなどで、建設事業における三次元情報の相互連携を可能にするBIM(Building Information Modeling)が公共事業のみならず民間プロジェクトでも普及しつつあります。BIMでは、インフラストラクチャの計画、調査、設計、施工、維持管理までの全てのプロセスの情報を、最新の情報技術を利用して管理するライフサイクルマネジメントの取り組みが始まっております。しかし、BIMは建築構造物を対象として発展してきたため、各種建築物が構築されている地盤の構造や地中埋設物のモデル化と、それをBIMに組み込むまでのプロセスが、国内外ともに標準化がなされていません。当社グループは、世界に先駆けてBIMにおける地盤モデルの標準化と実用化に取り組んでおります。当社は2018年にBIMの国際標準化機関であるbSI(building SMART International、本部:英国)に加入しました。そして、2019年には、地盤モデルの規格案を策定するコモンスキーマプロジェクトとトンネルプロジェクトに運営メンバーとして参画し、地盤のモデル化と標準化に向けた提言を積極的に発信するとともに、関連する研究開発を行っております。研究開発体制は、当社の技術本部研究開発センターと8事業部(計測システム事業部、情報システム事業部、メンテナンス事業部、砂防・防災事業部、地震防災事業部、地球環境事業部、流域・水資源事業部、エネルギー事業部)が、当社グループ会社と連携して実施しております。研究開発を効率的に推進するため、外部機関の優れた技術の活用を図ることに積極的に取り組み、公的研究機関、大学、民間企業との共同研究を進めるとともに、国内外の大学への寄付講座の設定、研究員の派遣、コンソーシアムへの参加を行っております。また、オープンイノベーションを実現するため、業種の異なる企業との技術開発や製品開発を積極的に行っております。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は、16億1千2百万円でありました。 (1) インフラ・メンテナンス事業 インフラ・メンテナンス事業セグメントにおいては、トンネル、道路、堤防、工場施設などのインフラストラクチャの維持管理に関するソリューション開発を行っております。今期は、路面下の埋設管や空洞調査およびトンネル点検にAI技術等の自動解析・判定技術を導入し、調査~解析~評価までをパッケージ化することに取り組んでおります。また、堤防の漏水問題や斜面の維持管理の自動化にも取り組んでおります。海外グループでは、GEOPHYSICAL SURVEY SYSRWMS,INC.(米国)が、地中レーダ技術を各種インフラストラクチャの診断や地質調査に用いるために、それぞれの使用用途に合わせた製品ラインナップの拡充を行っております。今期においては、従来の200MHz用アンテナを用いた地中レーダに比較して、探査可能深度が1.5倍に向上させた”200MHz HS (Hyper Stacking)”を開発しました。これにより、今まで探索が困難であった深部に埋設されている水道管、ガス管などの調査、深部の地質構造や歴史遺産構造物などの調査に有効なものとして期待しております。当連結会計年度における研究開発費の金額は6億5千1百万円であります。 (2) 防災・減災事業防災・減災事業セグメントにおいては、自然災害に対する防災・減災に関わるソリューション開発を行っております。今期は、激甚化する降雨災害や降雨に伴う斜面災害に対応するため広域災害監視ソリューションの構築を目指して、ネットワーク用センサーとクラウドベース監視システムの開発を行いました。また、火山防災分野では、火山噴火に起因する降灰を監視するための自動降灰量計を開発しました。政府が主導するSIPプロジェクトでは、災害危険個所を自動抽出する技術や大規模災害時に飲料水を確保する技術の開発に参画しております。海外グループでは、KINEMETRICS,INC.(米国)が、地震観測機器の専門メーカーとして地震防災に必要な地震計の製品開発を行っています。現在、低価格タイプの新しい地震データ収録機の開発を進めております。また、米国西部で発生した大規模山火事に対するモニタリング機器の開発を米国の研究機関、大学と共同で開始しました。当連結会計年度における研究開発費の金額は4億3千1百万円であります。 (3) 環境事業環境事業セグメントにおいては、環境保全を支援するソリューション開発に取り組んでおります。今期は、地盤あるいは建設工事で発生する廃土の重金属汚染を迅速簡易に測定するため、これまで土壌への適用が難しいとされていたハンドヘルド蛍光X線分析装置を用いた土壌の測定法とその分析精度を高める試薬の開発を行いました。また、自然災害からの復旧を阻害する要因である災害廃棄物の処理ノウハウを自治体の管理者に指導するための教育研修アプリの開発を行い、実習効果の向上に効果を発揮しました。福島県三春町の応用生態工学研究所では、淡水域における魚類の効率的なモニタリング手法として、環境DNA(魚の糞や鱗などから溶け出したDNA)を用いた魚類の現存量把握や外来魚の効果的な駆除と駆除効果確認方法に関する研究を進めております。さらに、発展途上国のグリーンインフラ整備を通じて国際的な事業展開を図るため、ウズベキスタンで「アラル海」及びその周辺荒廃地の緑化と、経済価値の高い低木林栽培を通じた不法伐採防止にも取り組みました。当連結会計年度における研究開発費の金額は6千1百万円であります。 (4) 資源・エネルギー事業資源・エネルギー事業セグメントにおいては、資源・エネルギーの探査、再生エネルギー事業開発、ならびにエネルギー関連施設の維持管理、必要な技術開発を行っております。洋上風力発電所の洋上立地に関わる地盤調査技術として、これまで陸上の探査法として開発してきた微動アレイ探査システムを海底から、またCPT(コーン貫入試験)を海上櫓から経済的に実施できるように改良しました。海外グループでは、GEOMETRICS,INC.(米国)が、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、鉱物資源探査や土木地質調査向けの製品開発を行っております。3次元探査に有効な地震探査装置の”ATOM”は、既に製品発売がなされてその出荷台数も徐々に増えてきております。さらに、今期においてはその高機能化を図るために直交3方向の地盤振動を同時測定できる探査機を当社の計測システム事業部と共同で開発しました。これを使用することで地盤の震動特性を評価することも可能になり、地震工学分野においても利用できる地震探査装置として期待をしております。ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した調査(検層)機器の開発・製造・販売を行っています。石油や鉱山などの資源調査市場では、最近価格競争の激化に対応するために、小型でかつ、複数の検層機器を連結したシステム(スタッカブルシステム)の開発を行っております。これにより、一回の検層作業で複数の測定項目の測定が可能になり検層作業時間の短縮化を図ることができます。当連結会計年度における研究開発費の金額は4億6千8百万円であります。
FY2018|3,066 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、インフラ・メンテナンス事業、防災・減災事業、環境事業、資源・エネルギー事業の4つのセグメントにおいて、顧客ニーズに応えるソリューションを提供するための技術及び製品の研究開発を進めております。日本では、国土交通省のi-Constructionの施策など、少子高齢化時代の中で技術者不足が深刻になってきたため、情報技術を駆使して品質の確保と労働生産性の向上に関する施策が取り入れられようとしています。また、海外では、欧州やシンガポールなどで、BIM(BuildingInformation Modeling)が通常業務の中に既に取り込まれ始めております。情報技術の革新により、計画、調査、施工、維持管理までの全てのプロセスの情報が一元管理されていく状況に対して応えていくことが必要です。しかし、BIMの現状を鑑みますと、各種建築物が構築されている下部の地盤構造、地中埋設物のモデル化とそれをBIMに組み込むまでのプロセスは、国内外ともまだ標準化がなされていません。当社グループは、世界に先駆けて地盤構造のBIM化に向けて実用化、標準化をすることを優先課題としています。2018年に、当社はbSI(building SMART International、本部:英国)に加入いたしました。地盤のモデル化やBIMに載せるための技術的課題への対処と標準化に向けた提言を積極的に発信するとともに、関連する研究開発を行っております。研究開発体制は、当社の技術本部研究開発センターと7事業部(計測システム事業部、エネルギー事業部、社会システム事業部、地球環境事業部、メンテナンス事業部、砂防・防災事業部、流域・水資源事業部)が、当社グループ会社と連携して実施しております。また、研究開発を効率的に推進するため、外部機関の優れた技術の活用を図ることに積極的に取り組み、公的研究機関、大学、民間企業との共同研究を進めるとともに、大学への寄付講座の設定、並びに、研究員の派遣を行っております。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は、16億7千5百万円でありました。 <基盤技術開発>前連結会計年度に引き続き、基盤技術開発として下記の2課題に取り組みました。 ① 地盤の3次元可視化に関わる地盤調査技術の開発と既保有技術との体系化 ② 地盤情報のIcTプラットフォームの整備地盤の3次元可視化に関わるものとしては、物理探査技術の3次元化(従来のように2次元探査の組み合わせで3次元の解析や表示をするのではない)については、微動アレイ探査、電気探査、地中レーダー探査において、そのシステム化が終了いたしました。現在は、実証試験を通じて適用事例の蓄積を図っている段階です。地盤情報のIcTプラットフォームの整備については、情報技術ツールの導入による現場作業の効率化・自動化、創業以来蓄積してきた地盤データのデータベース化、安価・小型センサの開発などに取り組んでおります。 セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。 (1) インフラ・メンテナンス事業インフラ・メンテナンス事業セグメントにおいては、堤防、トンネル、道路、工場施設などのインフラストラクチャーの維持管理に関するソリューション開発を行っております。当社では、トンネル点検や路面下空洞調査の観測結果の判定にAI技術を導入することにより、調査~解析~評価までをパッケージ化することに取り組んでおります。また、Geophysical Survey Systems, Inc.(米国)では、非接触でアスファルト舗装の品質を測定できるPaveScan RDMを開発いたしました。米国の複数の州においてアスファルト舗装管理技術として承認を受けています。また、現在、自動運転を補助するための地下マップデータを取得するための地下レーダー探査装置の開発を進めております。さらに、Geometrics,Inc.(米国)では、ドローンに搭載可能な磁気探査装置MagArrowを開発いたしました。航空機による従来の磁気探査法に比べて安価に実施でき、山岳部など人が立ちいることが難しい場所での磁気探査が可能です。当連結会計年度における研究開発費の金額は6億7千3百万円であります。 (2) 防災・減災事業防災・減災事業セグメントにおいては、自然災害に対する防災・減災に関わるソリューション開発を行っております。当社は、名古屋大学減災連携研究センターに寄付講座を設け、最新の地盤モデルによる被害想定から経済被害予測手法の開発、減災策の提案・提言までの流れを作るべく研究を行っております。また、火山防災分野では、火山噴火に起因する降灰厚を安価な自動降灰量計を開発し、現在、検証試験中です。さらに、Kinemetrics, Inc.(米国)では、地震観測機器の専門メーカーですが、2018年は核実験監視モニタリングシステム向け地震波形データ収録装置「Q330M+」を開発いたしました。長期観測を実施することができる地震計として、低消費電力地震データ収録装置「Q8」の開発を現在進めております。また、地震時の建物健全性評価および地震時の避難行動支援のための情報発信を組み合わせたサービスである「OASIS PLUS」の病院施設への展開を進めております。当連結会計年度における研究開発費の金額は4億5千4百万円であります。 (3) 環境事業環境事業セグメントにおいては、環境保全を支援するソリューション開発に取り組んでおります。当社は、北海道大学大学院工学研究院の循環・エネルギー技術システム分野に寄付を行い、バイオマス(廃棄物系、未利用、資源作物)を中心とした安全・安心な再生可能エネルギーの普及化促進技術システムと、廃棄物のリサイクル・処理技術の効率化と採算性向上を目指した研究開発を行っております。また、福島県三春町の応用生態工学研究所では、淡水域における魚類の効率的なモニタリング手法として、環境DNA(魚の糞や鱗などから溶け出したDNA)を用いた魚類の現存量把握に関する研究を進めております。さらに、グリーンインフラ整備に資するものとして、ウズベキスタンで「アラル海」及びその周辺荒廃地の緑化と、経済価値の高い低木林を造り、不法伐採を防ぎ経済が回るシステムの構築にも取り組みました。当連結会計年度における研究開発費の金額は6千8百万円であります。 (4) 資源・エネルギー事業資源・エネルギー事業セグメントにおいては、資源・エネルギーの探査、及び、エネルギー関連施設の維持管理、再生エネルギー事業開発に必要な基盤技術の開発を行っております。洋上風力発電所の立地に関わる地盤調査技術として、Geometrics, Inc.(米国)が、海洋土木調査向けの小型超高分解能探査システムの開発を進めるとともに、同社製の微動アレイ探査システムを海底に設置できるように改良して、地盤構造を把握する方法を開発いたしました。また、Robertson Geologging, Limited(英国)では、ボーリング孔を利用した調査(検層)機器の開発・製造・販売を行っておりますが、鉱山市場向け検層市場において、実用性を向上させた複数の検層機器を連結したシステム(スタッカブルシステム)の開発を進めております。当連結会計年度における研究開発費の金額は4億7千8百万円であります。
FY2017|4,462 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、地震災害、斜面災害などに対する防災や減災、社会インフラの維持管理、地球環境保全などの問題に対して、最適なソリューションを提供するための技術及び製品の研究開発を進めております。研究開発を推し進める組織体系としては、本社情報技術企画室、技術本部研究開発センター、計測システム事業部、エネルギー事業部、社会システム事業部、地球環境事業部、維持管理事業部、砂防・防災事業部が主となり、各支社及びグループ会社の連携のもとに、研究開発及び市場展開を行っております。また、研究開発を効率的に推進するため、外部機関の優れた技術の活用を図ることに積極的に取り組み、公的研究機関、大学、民間企業との共同研究を進めるとともに、大学への寄付講座の設定、並びに、研究員の派遣も行っております。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は、16億5千4百万円でありました。研究開発の主な内容は次のとおりであります。 (1) 調査・コンサルティング事業国が推し進めているi-Constructionや働き方改革などに関わる諸施策、IoT、AI、及び、大量のデータを蓄積するDB(データベース)などの情報技術をベースとする第4次産業革命が、当社グループの研究開発の考え方を大きく変えつつあります。当社もこれらの動きに迅速に対応できるように、研究開発課題の実施項目を設定し、その実施項目に対して集中的に経営資源を投入する形で研究開発を進めているところであります。 基本的には、当社グループビジョンである「地球科学に関わるグローバルな総合専門企業グループ」として、私たちが暮らしている地球上で発生する様々な自然災害による被害の軽減のために、グループ会社の総力を挙げて取り組んでおります。その究極の目標は、地球がもたらすさまざまなリスク(地質リスク)を正しく認識し、そのリスクを専門家以外の方々からの理解も得て、社会全体で共有できる技術を提供することと考えております。そして、平成29年度においては、下記の2つの事項を優先課題として研究開発に取り組んできました。 ①地盤の3次元可視化に関わる地盤調査技術の開発と既保有技術との体系化 ②地盤情報のICTプラットフォームの整備 ① 地盤の3次元可視化に関わる地盤調査技術の開発と既保有技術との体系化当社は、各種地盤調査技術を保有しております。そのうち、物理探査技術は地盤の状況を広範囲に把握できるところに特徴があります。世界的には、3次元の物理探査技術は、石油資源探査などの分野では既に実用化されているものではありますが、それを日本の国土に適用し、土木事業を進めるための調査技術として適用していくためには、コストの低減や操作性の向上など、様々な工夫、改良が必要です。 そこでまずは、当社が保有する地中レーダー、電気探査法、表面波探査法の3次元化の実用化に取り組みました。インフラストラクチャ―の構築や都市部での再開発などに必要な地盤状況を把握することに特化し、地表から概ね30mまでの浅い深度の地盤で利用する3次元探査技術の開発を行っております。これらの物理探査に必要な機器類は全て海外グループ会社製のものですが、昨今の電子技術の発展により、GPSの標準装備化、取得した観測データのワイヤレス伝送化、そして、インターネットに接続することで解析作業をクラウド上で実施することができるシステム化を図っております。また、得られた解析結果は、3次元の地盤モデルの構築に反映できるようにし、国が推進しようとしている土木事業におけるCIM(Construction Information Modeling)に組み込むことを検討しております。 このように土木事業の中に物理探査技術を組み込むことで、単に3次元物理探査が可能な機器の販売や調査サービスの提供という事業展開に止まるのではなく、「機器」と「サービス」を融合させた新たな事業を展開することを目指しております。平成29年度においては、調査・解析技術の実用化には目途をつけることができました。今後の課題は、専門家以外の方々でも誰もが皆、その解析結果をわかりやすく理解することのできる表現技術の提供とリーズナブルなコスト設定ができるように検討を行うことです。 ② 地盤情報のICTプラットフォームの整備当社グループが保有する地盤に関わる様々な知見、多くの地盤データ、観測データ、調査データを蓄積したDBを骨格とするICTプラットフォームの整備に取り組みました。創業以来蓄積してきた地盤に関わる情報や知見をDB上に蓄積し、そのDBを利用してコンサルティングサービスや機器販売事業に新たな付加価値を加え、既存事業の拡大と新たなサービス展開を目指すものです。 今後、当社グループ会社製の計測機器で計測されるデータ、当社のコアラボ試験センターで実施した室内試験結果、各支社、事業部で実施した地盤調査結果がこのDBに蓄積されるよう体系化することを目指しております。そして、様々なアプリケーションソフトウェアを充実させて、DB上のデータを活用した国土保全マネジメント、自然災害リスクコンサルティングサービス、インフラストラクチャ―の維持管理サービスなどを展開することを考えております。 (2) 計測機器事業(国内)国内における計測機器事業は、応用地質株式会社の計測システム事業部が主管しているモニタリング機器や原位置試験機の製造、販売、応用地震計測株式会社が主管している地震計の製造、販売、そして、応用計測サービス株式会社が主管している原位置試験の製造、販売と地盤調査機全般に関わるレンタル事業の3つの柱から構築されております。 IoT化の進展により、モニタリング機器及び原位置試験機は、インターネット接続可能なものにするように順次改良を加えております。応用地質株式会社が提供するモニタリング機器(i-SENSOR2)は、全てインターネットに接続可能であり、グループ会社のOYOリソースマネージメント株式会社が運営するクラウドデータサーバにデータを伝送することで、データ蓄積と図化、表示サービスを提供することが可能なものになっております。その他、新しい電気探査装置としてMcOHM Profiler-8iの開発が終了し、販売を開始いたしました。現場測定の効率化を図るために、マルチチャンネル化した電気探査装置です。製品には市販のタブレットPCをベースにしたコントローラを組み込むなど、製造上の工夫も行うことで、開発の短縮化、開発コストの抑制を図りました。応用地震計測株式会社の製造販売している小型地震計(EPDP)は、建物に設置することで精度の高い揺れの大きさを計測し、建物の損傷度の迅速把握など“地震時に役立つ地震情報”を配信する地震情報配信システムを開発しております。当システムもOYOリソースマネージメント株式会社が提供するクラウドサーバに接続することで、同社の広域地盤情報WEB-GISシステム「ReportMAP」と組み合わせ、地震情報に加えて多彩な情報提供が可能となります。また、これまで1000mクラスの大深度観測用として特注作成していた孔中地震計の標準化に着手いたしました。センサとしては加速度計の他に速度計も組み込める拡張性を持ち、運搬時の扱いやすさ、及び、現地での作業効率を考慮し、組み立て時間を短縮できる構造になっております。当技術は他の孔中地震計へもフィードバックし、製品群の高付加価値化を図る予定です。本装置は重要施設における地震時の地盤の増幅度特性の掌握や地震発生機構の研究等の基礎データとして利活用が期待されます。応用計測サービス株式会社では、平成29年に自走式ミニラムの開発と多目的透水試験装置の改造を開始いたしました。従前のミニラムは、貫入装置、ポンプユニット、コントロールユニット、引抜装置から構成されていました。そのため、多地点での貫入試験時には多くの労力と時間を要し、また、貫入装置の設置においては人力で立てた後、サポーターで固定する構造となっていたため、危険性の高い作業となっていました。そこで、上記装置を小型キャタピラーに一体化させ、作業効率と安全性を高めた自走式ミニラムを開発し、平成29年6月より販売とレンタルを開始いたしました。多目的透水試験装置は、平成15年に開発し、販売とレンタルを開始した装置です。長きに亘って使用されている顧客の声を本装置に生かし、流量と圧力コントロールの精度を高めた装置の開発を行っております。平成29年11月にプロトタイプを開発し、平成30年中にレンタル品の改造と販売を目指しております。 (3) 計測機器事業(海外)① 地震観測・監視装置KINEMETRICS,INC.(米国)は、地震観測機器の専門メーカーとして、地震計や地震観測システムの開発・製造・販売を行っております。KINEMETRICS,INC.では、地震観測システムをベースにした地震防災ソリューション事業を展開しており、商業施設やテナントビルのユーザー向け事業継続マネジメントソリューションとして、地震発生時の入居建物の健全性と入居者の避難行動を支援する情報を発信するサービス「OASIS+」の提供を開始いたしました。また、モニタリング機器では消費電力の抑制が重要になることから、低消費電力の地震波形データ収録装置「Q8」の開発を進めております。 ② 物理探査装置GEOMETRICS,INC.(米国)は、弾性波探査装置、磁気探査装置及び電磁探査装置の開発・製造・販売を行っております。平成29年には、ワイヤレス弾性波探査装置「Atom」の販売を開始いたしました。また、新たに開発した超小型磁気センサ(MFAM)をドローンに搭載した「MagArrow」の開発を進めております。GEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、地下レーダー探査装置において世界トップシェアを占めております。平成29年には、コンクリート検査市場を対象としたStractureScanシリーズのアクセサリとして狭隘部探査用の「PalmXT Antenna」を開発した他、埋設管市場を対象としたUtilityScanシリーズに、従来より安価で小型、軽量、一体型の新製品を加えるなど、既存製品群の充実に取り組んでおります。ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した検層機の開発、製造、販売を行っております。ROBERTSON GEOLOGGING LTD.は、検層業界の世界的な潮流であるメモリ内蔵型検層機の開発を進めるとともに、次世代検層システムとしてネットワーク機能などを有する新型データ収録装置MICROLOGGER IIIの開発を進めております。
FY2016|3,972 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、地震災害、斜面災害などに対する防災や減災、既存の社会インフラの維持管理などの問題に対して、最適なソリューションを提供するための技術及び製品の研究開発を進めております。研究開発を推し進める組織体系としては、当社技術本部研究開発センター、計測システム事業部が中心となり、各事業所及びグループ企業との連携のもとに行ってきました。また、研究開発を効率的に推進するため、外部機関の優れた技術の活用を図るために、公的研究機関、大学、民間企業との共同研究も積極的に進めております。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は、20億2千2百万円でありました。研究開発の主な内容は次のとおりであります。 (1) 調査・コンサルティング事業重点事業分野に挙げている国土マネジメント、維持管理、エネルギー、情報サービス、地球環境、地震防災、計測システムの7つの事業分野ごとに紹介いたします。① 国土マネジメント分野平成28年も、平成28年台風10号等により、岩手県、北海道で多くの土砂災害、河川の氾濫が発生しました。豪雨による土砂災害や河川の増水による堤防決壊に対して、そのメカニズムを解明し、崩壊予測や対策技術の確立を目指し、現地調査、モニタリング、地質解析等の各技術の研究開発を進めております。また、液状化対策技術として開発したピエゾドライブコーン(PDC:抵抗体を地盤に打ち込むだけで液状化判定が可能な技術)の適用範囲の拡大を図っております。② 維持管理分野社会インフラの維持管理に関しては、膨大な数のインフラ施設をいかに効率的に調査し、問題箇所を検出し、劣化等による災害・事故を未然に防ぐのかが課題となっています。そのため、走行しながら道路下の空洞を探査する空洞探査車(ロード・ビジュアライザー)の機能強化、橋梁床版の劣化を効率的に診断する技術、既設トンネル点検を効率化するためのシステム、切土法面に設置されているアンカーの健全度評価、河川堤防の堤体の診断技術等の研究開発を行っております。③ エネルギー分野再生可能エネルギーとして注目されている地中熱利用に際しては、地形や地質、地下水の情報から適地を判定することが重要であり、そのために、地盤情報データベースを用いた地中熱ポテンシャルマップの研究開発を継続的に進めております。さらに、地熱資源開発についても、広範囲を探査できるタイムドメイン空中電磁探査法(P-THEM)の開発と実証を進めております。 ④ 情報サービス分野国土交通省では三次元モデルを構築しながら土木構造物の設計や施工を進めるCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング/マネジメント)の普及が進み、地盤の三次元モデルはCIM全体の中で重要な要素になっています。それに対応して、CIM支援ソフトウェアの機能の追加・向上を図るとともに、コンソーシアム活動を通じた三次元地質解析技術の普及拡大を進めております。 また、自治体や企業などのBCP(Business Continuity Plan)実行支援のために、災害発生時に被災現場と災害対策本部を情報通信技術で繋ぎ、被害状況の情報収集から報告までを自動化し、対応行動を支援するシステム(ServiBers:サバイバーズ)を新規に開発いたしました。⑤ 地球環境分野福島県田村郡三春町にある応用生態工学研究所では、三春ダム建設前から、周辺の生態調査、気象観測、水質観測を継続的に行っております。昨年来、淡水域における魚類の効率的なモニタリング手法として、環境DNA(魚の糞や鱗などから溶け出したDNA)を用いた魚類の現存量把握に関する研究を進めております。また、街路樹等の樹木の健全度(倒壊危険度)について、物理探査手法を活用して診断する研究開発も行っております。さらに、世界的な荒廃地化、砂漠化に対しては、中国の清華大学等と共同で半乾燥地域の生態環境復元に関する研究を継続しております。⑥ 地震防災分野名古屋大学減災連携研究センターに地域社会減災計画部門を寄附講座として設け、主に経済被害予測手法の研究を進めております。また、世界的な地震ハザード/リスクモデルを開発する組織であるGEM(Global Earthquake Model Project:世界地震モデル)に参画し、世界最先端技術の習得と活用に努めております。さらに、平成28年12月に発生した新潟県糸魚川市における大火にみられるように、火災延焼リスクも課題となっていることから、火災の延焼をシミュレーションする技術についても継続的に研究開発を行っております。⑦ 計測システム分野斜面の表層崩壊の予測、検知が可能な計測機器およびシステムの開発や、インターネットを介してクラウド上でデータを処理し、各種ソフトで予測等ができるクラウド型遠隔監視システムの開発を進めております。また、GNSS(全地球航法衛星システム)を活用した高精度ポジショニングレーダー探査機器の開発と実用化も進めております。 また、NCS SUBSEA,INC.(米国)では、超高分解能海洋地震探査サービスを提供しております。同社は、GEOMETRICS,INC.(米国)が製造・販売する超高分解能海洋地震探査システムP-Cableを開発したP-CABLE 3D SEISMIC AS(ノルウェー)を買収し、GEOMETRICS,INC.と協力して同サービスの改良と事業の強化に努めております。P-Cableシステムで測定したデータの品質は、研究機関や石油探査業界で高い評価を得ております。 (2) 計測機器事業(国内)応用地震計測株式会社では、地震の揺れ方や大きさが建物や地盤の特性により大きく異なることから、小型地震計を設置し、揺れの大きさを高精度で計測し、その際の対処方法など“地震時に役立つ地震情報”を素早く配信する地震情報配信システムを開発し、平成29年中の販売を目指しております。このシステムは、グループ会社であるOYOリソースマネージメント株式会社が提供するクラウドサーバーに接続することができ、同社の広域地盤情報WEB-GISシステムReportMAPと組み合わせることで、地震情報に加えて多彩な情報提供が可能となります。応用計測サービス株式会社では、平成28年度に自走式バイブロサンプラーと繰返し載荷が可能な全自動孔内載荷試験装置AUTO LLT3を開発いたしました。これまでのバイブロサンプラーは、打撃装置、ポンプユニット、コントロールユニット、引抜装置から構成されておりました。そのため、多地点でのサンプリング作業時には多くの労力と時間を要し、また、打撃装置を人力で地上1m程度まで持ち上げてサンプリングを行うため、危険性の高い作業となっておりました。そこで、上記装置を小型キャタピラーに一体化させ、作業効率と安全性を高めた自走式バイブロサンプラーを開発し、平成28年5月より販売とレンタルを開始いたしました。また、自動孔内載荷試験装置AUTO LLT3は、平成26年6月より販売とレンタルを開始している自動孔内載荷試験装置AUTO LLT2の上位機種であり、電磁バルブによる繰返し載荷が可能となる装置として開発いたしました。平成28年12月より販売とレンタルを開始しております。 (3) 計測機器事業(海外)① 地震観測・監視装置KINEMETRICS,INC.(米国)は、地震観測機器の専門メーカーとして、地震計や地震観測システムの開発・製造・販売を行っております。同社では、地震観測システムをベースとした地震防災ソリューション事業を拡大させるため、緊急地震速報や高層ビルの健全性モニタリングに適した新型地震計ETNA-2の販売を開始いたしました。また、商業施設やテナントビル向けの被災時の事業継続マネジメント(BCM)ソリューションOASIS+の開発を進めております。② 物理探査装置GEOMETRICS,INC.(米国)は、弾性波探査装置、磁気探査装置および電磁探査装置の開発・製造・販売を行っております。平成28年には、ワイヤレス弾性波探査装置Atomを開発いたしました。また、海域での不発弾探査プロジェクトを支援するために、陸上用MetalMapperを改良したMarine MetalMapperの開発に取り組んでおります。加えて、GEOMETRICS,INCが、開発中の超小型磁気センサ(MFAM)で、物理探査市場以外の市場への展開にも取り組んでおります。GEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、地下レーダー探査装置において世界トップシェアを誇っております。同社では、新たに道路舗装の品質管理を目的とした地下レーダー探査装置PaveScan RDMの販売を開始いたしました。また、コンクリート検査市場を対象としたStractureScanシリーズのアクセサリとして、コンクリート内部の交流電線を検知するLineTracを開発した他、埋設管市場を対象としたUtilityScanシリーズ用に、ハイパースタッキング技術を利用した高性能アンテナ350HSを新たに開発するなど、既存製品群の充実にも取り組んでおります。ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した検層機の開発・製造・販売を行っております。同社は、検層業界の世界的な潮流であるメモリ内蔵型検層機の開発を進めるとともに、次世代検層システムとしてネットワーク機能などを有した新型データ収録装置MICROLOGGER3の開発を進めております。