9041

近鉄グループホールディングス(9041)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

陸運業 運輸・物流

事業の概要

近鉄グループホールディングスは、鉄道やバス、タクシーなどの運輸事業を基盤とし、不動産の販売・賃貸・管理、国際的な航空・海上貨物輸送やロジスティクスを手掛ける国際物流事業も展開しています。百貨店やスーパーマーケットなどの流通事業、ホテル・旅行・映画・水族館などのホテル・レジャー事業も多角的に運営しており、幅広い事業を通じて収益を上げています。特に運輸事業と国際物流事業が事業規模を牽引していると考えられます。

出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成

近鉄グループの事業セグメントは多岐にわたります。運輸事業は鉄道、バス、タクシーなどを運営し、売上2144.64億円、営業利益346.64億円です。不動産事業は不動産の販売、賃貸、管理を行い、売上1393.01億円、営業利益138.64億円です。国際物流事業は航空・海上貨物輸送やロジスティクスを手掛け、売上7967.78億円、営業利益129.67億円と、最も大きな売上を誇ります。流通事業は百貨店やストア・飲食業を含み、売上2132.7億円、営業利益70.22億円です。ホテル・レジャー事業はホテル、旅行、映画、水族館などを運営し、売上3426.62億円、営業利益139.84億円です。国際物流事業が売上の大部分を占める一方で、運輸事業が最も高い営業利益を上げています。

2025-03 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
Transportation 事業 2,145 347 16.2%
RealEstate 事業 1,393 139 10.0%
InternationalLogistics 事業 7,968 130 1.6%
MerchandiseSales 事業 2,133 70 3.3%
HotelAndLeisure 事業 3,427 140 4.1%
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2026|1,114 文字
3【事業の内容】当社グループは、当社、子会社237社及び関連会社15社で構成され、セグメント情報に記載された区分ごとの主要な事業内容及び関係会社は、次のとおりであります。なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。<子会社>(1)運輸事業の内容会社名鉄軌道事業近畿日本鉄道㈱バス事業近鉄バスホールディングス㈱、近鉄バス㈱、奈良交通㈱、北日本観光自動車㈱、防長交通㈱タクシー業近鉄タクシーホールディングス㈱、近鉄タクシー㈱、奈良近鉄タクシー㈱、三重近鉄タクシー㈱、名古屋近鉄タクシー㈱、石川近鉄タクシー㈱、北交大和タクシー㈱鉄道施設整備業近鉄技術ホールディングス㈱、近鉄電気エンジニアリング㈱、近鉄車両エンジニアリング㈱、近鉄軌道エンジニアリング㈱、全日本コンサルタント㈱その他運輸関連事業㈱アド近鉄、国道九四フェリー㈱、近鉄レンタリース㈱、近畿日本鉄道㈱(2)不動産事業の内容会社名不動産販売業不動産賃貸業不動産管理業近鉄不動産㈱近鉄不動産㈱近鉄ファシリティーズ㈱、ミディ総合管理㈱(3)国際物流事業の内容会社名航空貨物輸送事業(フォワーディング事業)海上貨物輸送事業(フォワーディング事業)ロジスティクス事業㈱近鉄エクスプレス、APL Logistics Ltd ㈱近鉄エクスプレス、APL Logistics Ltd ㈱近鉄エクスプレス、APL Logistics Ltd(4)流通事業の内容会社名百貨店業㈱近鉄百貨店ストア・飲食業近鉄リテールホールディングス㈱、㈱近鉄リテーリング、㈱近商ストア(5)ホテル・レジャー事業の内容会社名ホテル業㈱近鉄・都ホテルズ、KINTETSU ENTERPRISES CO.OF AMERICA旅行業KNT-CTホールディングス㈱、クラブツーリズム㈱、近畿日本ツーリスト㈱、㈱近畿日本ツーリストブループラネット、㈱ユナイテッドツアーズ映画業㈱きんえい水族館業㈱海遊館観光施設業近鉄レジャークリエイト㈱、㈱賢島宝生苑、㈱志摩スペイン村(6)その他事業の内容会社名その他の事業㈱サカエ、近鉄ケーブルネットワーク㈱、近鉄情報システム㈱、近鉄保険サービス㈱(注)「会社名」には、主要な連結子会社を記載しております。 <関連会社>事業の内容会社名鉄軌道事業奈良生駒高速鉄道㈱不動産業三重交通グループホールディングス㈱鉄道車両製造業近畿車輛㈱建設業大日本土木㈱(注)「会社名」には、主要な持分法適用関連会社を記載しております。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2026時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
公共交通機関としての性質と、競合他社やモータリゼーションの進展による影響。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 ネットワーク
鉄軌道事業やバス事業など、広範な運輸ネットワークとそれに伴う設備投資。
顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい 低い(分散)
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか 中程度
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:大規模事故等の発生 / 大規模自然災害の発生 / 人財不足
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 10 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★☆☆☆
根拠:中程度ブランド・特許・許認可

近鉄グループは、近鉄沿線という広範な地域における強力なブランド認知度と、沿線開発で培われた地域社会との結びつきを持つ。特に、百貨店(近鉄百貨店)やホテル(近鉄・都ホテルズ)などのブランド力は一定の評価に値するが、特許やIPによる明確な競争優位性は限定的。

スイッチングコスト★★★☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

近鉄沿線の沿線住民にとって、近鉄電車は日常生活に不可欠な移動手段であり、他の交通手段への乗り換えには時間的・地理的な制約が伴う。また、沿線に居住・通勤・通学する顧客は、近鉄グループが提供する不動産、商業施設、レジャー施設などを複合的に利用する傾向があり、グループ全体としてのスイッチング・コストが形成されている。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

近鉄グループの事業構造において、ユーザー数の増加が直接的にサービスの価値を高めるネットワーク効果はほとんど見られない。各事業は独立性が高く、相互のネットワーク効果は限定的である。

コスト優位★☆☆☆☆
根拠:弱い同じ物を安く作れる

鉄道事業においては、インフラ維持費や人件費などの固定費が高く、規模の経済によるコスト優位性は限定的。沿線開発や不動産事業においては、土地の取得コストや開発コストが変動要因となるため、構造的なコスト優位性を確立することは難しい。

規模の経済★★★★☆
根拠:強い規模が参入障壁になる

近鉄グループは、鉄道事業を核に、不動産、流通、レジャー、ホテルなど多岐にわたる事業を展開しており、沿線という広範な地域における総合的な事業規模は大きい。特に鉄道事業と沿線開発事業のシナジーは、業界内でも特筆すべき規模であり、効率的な事業運営を可能にしている。

近鉄グループは、近畿圏を中心に広範な鉄道・バスネットワークを保有しており、地域に根差した強固な顧客基盤とブランド力が優位性です。不動産事業では沿線開発との連携、国際物流事業ではグローバルな輸送ネットワークとロジスティクス機能が強みです。ホテル・レジャー事業では多様な施設を運営し、顧客の幅広いニーズに対応しています。これらの多角的な事業展開は、特定の事業に依存しない安定した収益構造を築き、景気変動や市場の変化に対する耐性を高めていると考えられます。

出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。(1)経営の基本方針当社グループは、経営理念『「いつも」を支え、「いつも以上」を創ります。』のもと、誠実な企業活動により暮らしの安心を支え、果敢な挑戦により新たな価値を創出し、多様な人々との協働により社会に貢献することを経営の基本方針に、鉄道、不動産、国際物流、流通、ホテル・レジャーなど幅広い事業を営んでおります。それぞれの事業において、サステナビリティを重視して社会課題の解決に努めることにより、持続的な成長を目指すとともに、多様なステークホルダーの皆さまと「共創による豊かな社会」の実現に貢献してまいります。 (2)中長期的な経営戦略及び対処すべき課題今後の当社グループを取り巻く事業環境は、地政学リスクの高まりによる資源価格の上昇やインバウンド需要の縮減など、各種リスク要因の顕在化により、先行き不透明な状況が継続することが予想されます。また、国内人口減少・少子高齢化や人財不足、さらなる物価・金利の上昇に加え、地球温暖化の進行による事業制約等も懸念されるところです。このような事業環境に適切に対応し、当社グループが、株主様をはじめ顧客・取引先・従業員・地域社会等のマルチステークホルダーの皆様から将来にわたり信頼され選ばれる存在となるため、昨年3月、「近鉄グループが目指す方向性」を明示した上で、10年後の「ありたい姿」を「長期ビジョン2035」としてとりまとめ、その達成に向けてバックキャスト思考で目標・施策を設定した「中期経営計画2028」を策定いたしました。本「中期経営計画」では、沿線の価値深化・活性化と沿線外・グローバルでの事業深化・拡張に向け、伊勢志摩のブランド力強化やインバウンド需要の取込み拡大など6つの重点戦略に取り組むとともに、経営指標としてROIC(投下資本利益率)を導入し、資本コストをより強く意識した経営を行うこととしております。こうした取組により、事業成長性と財務健全性を両立させながら、「新たな基盤構築」と「着実な成長」を実践するという方針のもと、計画初年度である2025年度は、利益面において期初の目標を達成いたしました。しかしながら、新型鉄道車両の代替新造や首都圏における賃貸資産の取得等による有利子負債の一時的な増加や想定を上回る金利上昇に伴うWACC(資本コスト)の上昇等により、株価形成要素の一つであるROIC-WACCスプレッド(投下資本に対して資本コストを上回る利益が創出できているかを測る指標)が縮小したこと等が影響して、当社株価は市場全体や鉄道業界と比較して相対的に低位で推移し、資本市場から十分に評価されませんでした。当社の強みは、近鉄グループが営む各事業が沿線・沿線外において有機的に連携し、各事業の総和を上回るコングロマリット・プレミアムを創造できる点にあると考えております。こうした当社グループの強みを持続的に発揮していくためには、資本コストを意識した経営資源の適切な配分が不可欠であるとの認識のもと、「中期経営計画2028」のアップデートを行い、事業や資産の「選択と集中」を一層加速させ、また必要に応じて外部との連携・協業も活用することでバランスシートの入替えを積極的に進めるなど、事業ポートフォリオの最適化に取り組んでまいります。これにより、ROIC-WACCスプレッドの向上を図るとともに、経営計画に掲げた重点戦略を引き続き推進し、「稼ぐ力」をさらに強化して、株価の向上を目指します。また、経営の重要な基盤であるコーポレート・ガバナンス体制の強化にも取り組むこととし、この一環として、第115期定時株主総会のご承認を得た上で、当社は監査等委員会設置会社へ移行する予定です。これにより、取締役会の監督機能を強化するとともに、迅速かつ機動的な業務執行を実現し、持続的な価値創造とさらなる成長につなげてまいります。当社グループの経営理念『「いつも」を支え、「いつも以上」を創ります。』を実現するため、商品・サービス・情報・サプライチェーンの提供などにより人々の暮らし・交流を支えることで、地域社会に貢献し、共に成長する地域社会のパートナーでありたいと考えています。そして、「近鉄グループにしかできないこと」にチャレンジし続け、幅広いフィールドで躍動し、強さとしなやかさを両立した、社会に貢献し続ける企業グループ構築を目標に、企業価値・株主価値の向上に邁進してまいります。各部門別の中長期的な重点施策は以下のとおりであります。① 運輸運輸業におきましては、鉄軌道事業で、より安全・安心・快適な輸送サービスを提供していくため、新型一般車両の導入拡大、バリアフリー整備、防災対策を計画的に推進します。また、沿線の魅力深耕による交流人口の拡大や地域共創を通じた定住人口の維持・拡大を図るとともに、本年11月1日から名古屋と伊勢志摩を結ぶレストラン列車「Les Saveurs 志摩(レ・サヴール・しま)」を導入するなど、高付加価値サービスを強化し、収益の拡大を目指してまいります。一方で、深刻化する人手不足に対応するため、さらなる生産性向上や、ワンマン運転の主要線区への導入拡大に取り組み、持続可能な事業体制を強化してまいります。② 不動産不動産業におきましては、アセット事業及びマンション事業において、学園前駅・河内小阪駅等の沿線主要駅周辺での再開発や首都圏等沿線外の開発プロジェクトを推進するとともに、仲介・リフォームなどのハウジング事業の強化を図り、これらを3本柱として確立してまいります。また、昨年4月に設立した不動産アセットマネジメント会社「近鉄インベストメント・パートナーズ㈱」を活用し、回転型不動産ビジネスの伸長を図ってまいります。③ 国際物流国際物流業におきましては、物量拡大に依存した従来型の成長モデルから脱却し、低マージンビジネスの条件見直し等を図るとともに、各法人等の状況に応じた組織・拠点の統廃合やDXの推進による生産性向上などの構造改革を推進することで費用の削減・抑制に努め、利益率の向上に取り組んでまいります。さらに、営業利益の伸長につながる事業に対して積極的に経営資源(ヒト・モノ・カネ)を投入し、成長が見込まれるイントラアジア(アジア発着)における航空輸送及びボリュームゾーンであるアジア発北米向け市場における海上輸送の拡大、インド・中近東アフリカ市場の基盤強化を図り、収益力の強化に努めます。④ 流通流通業におきましては、百貨店業で、あべのハルカス近鉄本店及び周辺施設の活性化により、引き続きあべの・天王寺エリアの魅力最大化を推進します。また、近鉄グループ連携による外商の強化や新たな収益源の開発にも挑戦するなど、「百貨店」から「百"価"店」への進化を目指してまいります。ストア・飲食業では、お客様のニーズに合わせた売場づくりに注力するほか、駅ナカの活性化を図り、沿線の価値向上に取り組んでまいります。また、適正な人員配置やDXによる省力化など、ローコスト運営体制の確立に注力してまいります。⑤ ホテル・レジャーホテル・レジャー業におきましては、ホテル業で、外資ブランドとの協業により積み重ねてきたグローバルスタンダードに準拠した運営ノウハウをもとに、世界水準のサービスクオリティを追求し、国際的にも確固たる評価の獲得を目指します。また、国内外を問わず、直営型と運営受託型の両軸で運営ホテルの拡大を図り、収益力とブランド力の向上に取り組んでまいります。旅行業では、2027年4月を目途にKNT-CTホールディングス㈱、クラブツーリズム㈱、近畿日本ツーリスト㈱及び㈱近畿日本ツーリストブループラネットの4社の統合を計画しており、仕入から商品企画、販売まで一気通貫で対応できる事業運営基盤の共通化に取り組みます。また、訪日事業では誘客推進を加速させるために海外拠点を増設するほか、地域共創事業ではDMC事業の構築を推進するなど、成長領域での取組を進めてまいります。 (3)目標とする経営指標 [アップデート後の「中期経営計画2028」で目指す経営指標] 2025年度実績2028年度計画(アップデート前)2028年度計画(アップデート後)収益性営業利益894億円1,000億円以上1,000億円以上資金調達純有利子負債1兆758億円1兆円未満でコントロール9,000億円程度でコントロール経営効率ROE9.3%更なる向上8%以上の維持 ROIC4.2%4.5%以上WACC+1%以上財務規律自己資本比率23.6%25%以上30%程度 純有利子負債/EBITDA倍率6.8倍6.0倍程度6.0倍程度株主還元DOE2.6%(予定)(中期経営計画期間中) 下限2.0%下限2.5% 連結配当性向21.2%(予定)-30%程度外部評価格付け(R&I)BBB+ポジティブ(JCR) A-    安定的-(目標)Aフラット以上(注)1.「(予定)」は2026年6月開催の株主総会において剰余金の配当(普通株式1株につき30円)が決議を得た場合の値2.純有利子負債=有利子負債(借入金+社債)+リース債務(IFRS第16号による計上分を除く)-現預金3.ROE=親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本4.ROIC=税引後営業利益(営業利益×(1-実効税率))÷(純有利子負債+株主資本)5.EBITDA=営業利益+減価償却費(IFRS第16号による計上分を除く)+のれん償却費6.各指標値は2027年度から適用予定の新リース会計による影響額を除く数値
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。(1)経営の基本方針当社グループは、経営理念『「いつも」を支え、「いつも以上」を創ります。』のもと、誠実な企業活動により暮らしの安心を支え、果敢な挑戦により新たな価値を創出し、多様な人々との協働により社会に貢献することを経営の基本方針に、鉄道、不動産、国際物流、流通、ホテル・レジャーなど幅広い事業を営んでおります。それぞれの事業において、サステナビリティを重視して社会課題の解決に努めることにより、持続的な成長を目指すとともに、多様なステークホルダーの皆さまと「共創による豊かな社会」の実現に貢献してまいります。 (2)中長期的な経営戦略及び対処すべき課題今後の当社グループを取り巻く事業環境は、地政学リスクの高まりによる資源価格の上昇やインバウンド需要の縮減など、各種リスク要因の顕在化により、先行き不透明な状況が継続することが予想されます。また、国内人口減少・少子高齢化や人財不足、さらなる物価・金利の上昇に加え、地球温暖化の進行による事業制約等も懸念されるところです。このような事業環境に適切に対応し、当社グループが、株主様をはじめ顧客・取引先・従業員・地域社会等のマルチステークホルダーの皆様から将来にわたり信頼され選ばれる存在となるため、昨年3月、「近鉄グループが目指す方向性」を明示した上で、10年後の「ありたい姿」を「長期ビジョン2035」としてとりまとめ、その達成に向けてバックキャスト思考で目標・施策を設定した「中期経営計画2028」を策定いたしました。本「中期経営計画」では、沿線の価値深化・活性化と沿線外・グローバルでの事業深化・拡張に向け、伊勢志摩のブランド力強化やインバウンド需要の取込み拡大など6つの重点戦略に取り組むとともに、経営指標としてROIC(投下資本利益率)を導入し、資本コストをより強く意識した経営を行うこととしております。こうした取組により、事業成長性と財務健全性を両立させながら、「新たな基盤構築」と「着実な成長」を実践するという方針のもと、計画初年度である2025年度は、利益面において期初の目標を達成いたしました。しかしながら、新型鉄道車両の代替新造や首都圏における賃貸資産の取得等による有利子負債の一時的な増加や想定を上回る金利上昇に伴うWACC(資本コスト)の上昇等により、株価形成要素の一つであるROIC-WACCスプレッド(投下資本に対して資本コストを上回る利益が創出できているかを測る指標)が縮小したこと等が影響して、当社株価は市場全体や鉄道業界と比較して相対的に低位で推移し、資本市場から十分に評価されませんでした。当社の強みは、近鉄グループが営む各事業が沿線・沿線外において有機的に連携し、各事業の総和を上回るコングロマリット・プレミアムを創造できる点にあると考えております。こうした当社グループの強みを持続的に発揮していくためには、資本コストを意識した経営資源の適切な配分が不可欠であるとの認識のもと、「中期経営計画2028」のアップデートを行い、事業や資産の「選択と集中」を一層加速させ、また必要に応じて外部との連携・協業も活用することでバランスシートの入替えを積極的に進めるなど、事業ポートフォリオの最適化に取り組んでまいります。これにより、ROIC-WACCスプレッドの向上を図るとともに、経営計画に掲げた重点戦略を引き続き推進し、「稼ぐ力」をさらに強化して、株価の向上を目指します。また、経営の重要な基盤であるコーポレート・ガバナンス体制の強化にも取り組むこととし、この一環として、第115期定時株主総会のご承認を得た上で、当社は監査等委員会設置会社へ移行する予定です。これにより、取締役会の監督機能を強化するとともに、迅速かつ機動的な業務執行を実現し、持続的な価値創造とさらなる成長につなげてまいります。当社グループの経営理念『「いつも」を支え、「いつも以上」を創ります。』を実現するため、商品・サービス・情報・サプライチェーンの提供などにより人々の暮らし・交流を支えることで、地域社会に貢献し、共に成長する地域社会のパートナーでありたいと考えています。そして、「近鉄グループにしかできないこと」にチャレンジし続け、幅広いフィールドで躍動し、強さとしなやかさを両立した、社会に貢献し続ける企業グループ構築を目標に、企業価値・株主価値の向上に邁進してまいります。各部門別の中長期的な重点施策は以下のとおりであります。① 運輸運輸業におきましては、鉄軌道事業で、より安全・安心・快適な輸送サービスを提供していくため、新型一般車両の導入拡大、バリアフリー整備、防災対策を計画的に推進します。また、沿線の魅力深耕による交流人口の拡大や地域共創を通じた定住人口の維持・拡大を図るとともに、本年11月1日から名古屋と伊勢志摩を結ぶレストラン列車「Les Saveurs 志摩(レ・サヴール・しま)」を導入するなど、高付加価値サービスを強化し、収益の拡大を目指してまいります。一方で、深刻化する人手不足に対応するため、さらなる生産性向上や、ワンマン運転の主要線区への導入拡大に取り組み、持続可能な事業体制を強化してまいります。② 不動産不動産業におきましては、アセット事業及びマンション事業において、学園前駅・河内小阪駅等の沿線主要駅周辺での再開発や首都圏等沿線外の開発プロジェクトを推進するとともに、仲介・リフォームなどのハウジング事業の強化を図り、これらを3本柱として確立してまいります。また、昨年4月に設立した不動産アセットマネジメント会社「近鉄インベストメント・パートナーズ㈱」を活用し、回転型不動産ビジネスの伸長を図ってまいります。③ 国際物流国際物流業におきましては、物量拡大に依存した従来型の成長モデルから脱却し、低マージンビジネスの条件見直し等を図るとともに、各法人等の状況に応じた組織・拠点の統廃合やDXの推進による生産性向上などの構造改革を推進することで費用の削減・抑制に努め、利益率の向上に取り組んでまいります。さらに、営業利益の伸長につながる事業に対して積極的に経営資源(ヒト・モノ・カネ)を投入し、成長が見込まれるイントラアジア(アジア発着)における航空輸送及びボリュームゾーンであるアジア発北米向け市場における海上輸送の拡大、インド・中近東アフリカ市場の基盤強化を図り、収益力の強化に努めます。④ 流通流通業におきましては、百貨店業で、あべのハルカス近鉄本店及び周辺施設の活性化により、引き続きあべの・天王寺エリアの魅力最大化を推進します。また、近鉄グループ連携による外商の強化や新たな収益源の開発にも挑戦するなど、「百貨店」から「百"価"店」への進化を目指してまいります。ストア・飲食業では、お客様のニーズに合わせた売場づくりに注力するほか、駅ナカの活性化を図り、沿線の価値向上に取り組んでまいります。また、適正な人員配置やDXによる省力化など、ローコスト運営体制の確立に注力してまいります。⑤ ホテル・レジャーホテル・レジャー業におきましては、ホテル業で、外資ブランドとの協業により積み重ねてきたグローバルスタンダードに準拠した運営ノウハウをもとに、世界水準のサービスクオリティを追求し、国際的にも確固たる評価の獲得を目指します。また、国内外を問わず、直営型と運営受託型の両軸で運営ホテルの拡大を図り、収益力とブランド力の向上に取り組んでまいります。旅行業では、2027年4月を目途にKNT-CTホールディングス㈱、クラブツーリズム㈱、近畿日本ツーリスト㈱及び㈱近畿日本ツーリストブループラネットの4社の統合を計画しており、仕入から商品企画、販売まで一気通貫で対応できる事業運営基盤の共通化に取り組みます。また、訪日事業では誘客推進を加速させるために海外拠点を増設するほか、地域共創事業ではDMC事業の構築を推進するなど、成長領域での取組を進めてまいります。 (3)目標とする経営指標 [アップデート後の「中期経営計画2028」で目指す経営指標] 2025年度実績2028年度計画(アップデート前)2028年度計画(アップデート後)収益性営業利益894億円1,000億円以上1,000億円以上資金調達純有利子負債1兆758億円1兆円未満でコントロール9,000億円程度でコントロール経営効率ROE9.3%更なる向上8%以上の維持 ROIC4.2%4.5%以上WACC+1%以上財務規律自己資本比率23.6%25%以上30%程度 純有利子負債/EBITDA倍率6.8倍6.0倍程度6.0倍程度株主還元DOE2.6%(予定)(中期経営計画期間中) 下限2.0%下限2.5% 連結配当性向21.2%(予定)-30%程度外部評価格付け(R&I)BBB+ポジティブ(JCR) A-    安定的-(目標)Aフラット以上(注)1.「(予定)」は2026年6月開催の株主総会において剰余金の配当(普通株式1株につき30円)が決議を得た場合の値2.純有利子負債=有利子負債(借入金+社債)+リース債務(IFRS第16号による計上分を除く)-現預金3.ROE=親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本4.ROIC=税引後営業利益(営業利益×(1-実効税率))÷(純有利子負債+株主資本)5.EBITDA=営業利益+減価償却費(IFRS第16号による計上分を除く)+のれん償却費6.各指標値は2027年度から適用予定の新リース会計による影響額を除く数値
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度(以下、4において「当期」という。)における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、4において「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況当期の世界経済は、米国の通商政策の影響に加え、中東等における地政学リスクのさらなる高まりなどもあり、予断を許さない情勢が続きました。わが国経済についても、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加などにより緩やかな回復基調にあったものの、物価上昇や急速な金利上昇のほか、中国政府による日本への渡航自粛要請の影響等もあり、先行き不透明な状況で推移しました。このような情勢のもと、当社グループでは、大阪・関西万博等による旅客・消費需要やインバウンド需要の取込みに努めるなど、各事業で収益向上に取り組みました。これによって、運輸業、流通業などで業績が概ね順調に進捗した結果、国際物流業での市場競争の激化や、期の終盤にかけての中東情勢悪化などの下押し要因はあったものの、連結営業収益は前期に比較して0.5%増の1兆7,503億7百万円、営業利益は6.0%増の894億36百万円、経常利益は3.7%増の845億77百万円となり、法人税等を控除した後の親会社株主に帰属する当期純利益は15.1%増の537億71百万円となりました。 各報告セグメントの経営成績は、次のとおりであります。 a.運 輸運輸業におきましては、鉄軌道事業で大阪・関西万博開催に伴うお客様の増加や、前年2月に実施したダイヤ変更による名阪特急「ひのとり」の増発効果が寄与したことに加え、インバウンド需要や伊勢志摩方面への観光需要も堅調に推移しました。安全面の取組としては、鶴橋駅及び近鉄名古屋駅で、ホームドアの供用を開始しました。また、激甚化・頻発化する自然災害への対策については、安全で安定的な輸送の確保を目指し、線路の法面補強、橋梁・トンネルの耐震補強、電気設備の雷害対策などを継続して実施しております。当期の営業収益は前期に比較して3.9%増の2,320億21百万円、営業利益は9.8%増の380億64百万円となりました。 業   種単 位当   期(2025年4月~2026年3月)前期比(%)鉄軌道事業百万円167,1904.2バス事業百万円36,7605.8タクシー業百万円10,5535.1鉄道施設整備業百万円24,086△7.0その他運輸関連事業百万円13,2862.6調整百万円△19,857-営業収益計百万円232,0213.9 (近畿日本鉄道㈱ 運輸成績表)区   分単 位当   期(2025年4月~2026年3月)前期比(%)営業日数日365-営業キロ程キロ501.1-客車走行キロ千キロ278,9222.2旅客人員定期千人321,1350.9定期外千人216,5584.2計千人537,6932.2旅客運輸収入旅客収入定期百万円50,3470.6定期外百万円109,6365.9計百万円159,9844.2荷物収入百万円6△18.2合計百万円159,9904.2運輸雑収百万円7,2003.2営業収益計百万円167,1904.2乗車効率%28.60.7(注)乗車効率の算出は、延人キロ/(車両走行キロ×平均定員)によります。 b.不動産不動産業におきましては、不動産販売業で、首都圏を中心にマンション分譲が好調に推移したほか、中古住宅等の買取再販ビジネスが伸長したことで増収となり、不動産賃貸業でも、首都圏における収益物件の取得等により、増収となりました。また、2027年春に開業予定の「近鉄シニアレジデンス学研奈良登美ヶ丘(仮称)」の建設を進めるなど、今後の収益拡大に向けた取組を推進しました。当期の営業収益は前期に比較して5.1%増の1,738億21百万円、営業利益は3.6%増の143億68百万円となりました。 業   種単 位当   期(2025年4月~2026年3月)前期比(%)不動産販売業百万円87,1704.9不動産賃貸業百万円44,78411.8不動産管理業百万円46,280△0.1調整百万円△4,413-営業収益計百万円173,8215.1 c.国際物流国際物流業におきましては、半導体関連や電子部品の荷動きは堅調に推移したものの、前年4月のシステム障害の影響や欧州市場の低迷、荷主の在庫積増しによる緊急出荷需要の落ち込みにより、全体的な取扱物量は微増にとどまり、減収となりました。また、仕入価格が高止まりする一方で、競合他社との競争激化や販売価格への転嫁の遅れもあり、利益面においても厳しい状況が続きました。一方、東南アジアでの販売拡大に向けてシンガポールで新たな倉庫建設に着手するなど、今後の成長戦略に基づく施策を推進しました。当期の営業収益は前期に比較して5.5%減の7,532億円、営業利益は7.4%減の120億12百万円となりました。 区   分単 位当   期(2025年4月~2026年3月)前期比(%)日台韓百万円210,372△3.1米州百万円98,5423.0欧州・中近東・アフリカ百万円53,108△0.3東アジア百万円103,030△7.1東南アジア・オセアニア百万円101,427△8.0APLL百万円207,974△9.5その他百万円7,2718.3調整百万円△28,527-営業収益計百万円753,200△5.5 d.流 通流通業におきましては、百貨店業で、大阪・関西万博のオフィシャルストアが好調に推移しました。また、「旗艦店あべのハルカス近鉄本店『リモデル』」の一環として菓子売場などを改装するとともに、隣接する商業施設「Hoop」の改装や医療モール「あべのウェルビーイングテラス」の開業等により、あべの・天王寺エリアの魅力最大化を図りました。ストア・飲食業では、人流の増加を駅ナカ店舗等の収益向上につなげるとともに、近商ストア高の原店のリニューアルなど、お客様のニーズに合わせた売場づくりを推進しました。当期の営業収益は前期に比較して5.1%増の2,263億67百万円、営業利益は30.4%増の91億59百万円となりました。 業   種単 位当   期(2025年4月~2026年3月)前期比(%)百貨店業百万円125,4508.5ストア・飲食業百万円101,1361.5調整百万円△220-営業収益計百万円226,3675.1 e.ホテル・レジャーホテル・レジャー業におきましては、ホテル業で大阪・関西万博の効果が顕著であった大阪エリアを中心に、旺盛なインバウンド需要の着実な取込みを図り、客室単価及び稼働率の上昇につなげました。また、シェラトン都ホテル東京で順次客室改装工事を進めたほか、米国テキサス州プレイノ市でホテル建設に着手するなど、今後の需要拡大を見据えた施策も実施しました。旅行業では、大阪・関西万博関連で各地発着の宿泊・日帰りツアーを販売したほか、個人旅行では、ヨーロッパ方面のツアーやテーマ性の高い商品の造成を積極的に進め、団体旅行では、MICE案件や視察旅行などの受注拡大に努めました。さらに、インバウンド需要の取込みのため、個人旅行者向けオンラインサイトでの販売や多言語対応を強化するとともに、団体旅行で東京2025世界陸上競技選手権大会に関する商品の取扱いに注力しました。水族館業では、開業35周年を迎えた海遊館及び開業10周年を迎えたニフレルにおいて、記念イベントの実施や記念グッズの販売を通じて来館促進を図りました。当期の営業収益は前期に比較して7.1%増の3,693億7百万円となりましたが、志摩スペイン村の入場者数が前期開催した30周年記念コラボイベントの反動によって減少したことなどにより、営業利益は1.4%減の137億91百万円となりました。 業   種単 位当   期(2025年4月~2026年3月)前期比(%)ホテル業百万円47,9984.5旅行業百万円297,0658.4映画業百万円3,7715.6水族館業百万円10,5920.7観光施設業百万円10,032△10.5調整百万円△154-営業収益計百万円369,3077.1 f.その他その他の事業におきましては、ケーブルテレビ業で、積極的な営業活動によりサービス加入者数が増加しました。当期の営業収益は前期に比較して5.9%増の478億5百万円、営業利益は7.7%増の25億24百万円となりました。 資産合計は、前期末に比較して862億46百万円増加し、2兆5,935億2百万円となりました。これは、現金及び預金が減少した一方で、棚卸資産や有形固定資産が増加したことによるものであります。負債合計は、前期末に比較して80億6百万円増加し、1兆9,015億37百万円となりました。これは、社債の償還を進めた一方で、資金調達により借入金が増加したことによるものであります。純資産合計は、前期末に比較して782億40百万円増加し、6,919億64百万円となりました。これは、利益剰余金が純利益の計上から配当を差し引き増加したほか、為替換算調整勘定の増加などによりその他の包括利益累計額が増加したことによるものであります。 ② キャッシュ・フローの状況当期における現金及び現金同等物の期末残高は2,001億24百万円で、前期末に比較して316億23百万円減少しました。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益の計上に加え、棚卸資産の取得が減少したことなどにより、前期に比較して283億59百万円収入が増加し、1,180億87百万円の収入となりました。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得が増加したことなどにより、前期に比較して561億2百万円支出が増加し、1,388億91百万円の支出となりました。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金が増加したものの、社債の純償還額が増加したことなどにより、前期に比較して20億61百万円支出が増加し、199億35百万円の支出となりました。 ③ 生産、受注及び販売の実績当社グループは、受注生産形態をとらない事業が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため、生産、受注及び販売の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各報告セグメントの経営成績に関連付けて記載しております。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において判断したものであります。 ① 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しておりますが、この作成にあたり、当期末の資産及び負債並びに当期に係る収益及び費用の報告金額に影響を与える事項について、過去の実績や現在の状況等に応じた合理的な判断に基づき仮定及び見積りを行っております。これらのうち主なものは以下のとおりでありますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。なお、会計上の見積りを行う上で、当社グループの主要な事業で用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。 a.固定資産の減損当社グループは、運輸業、不動産業、国際物流業、流通業、ホテル・レジャー業等、多くの事業を展開する特性上、多額の固定資産を保有しており、これらの固定資産の回収可能額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき見積もっております。このうち賃貸施設、百貨店店舗、ホテルやレジャー施設等につきましては、不動産市況の著しい下落や消費環境の悪化による収益性の低下等のリスクをはらんでおります。従って、当初見込んでいた収益が得られない、あるいは正味売却価額が下落したことにより、将来キャッシュ・フローが減少するなど前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施する可能性があります。また、当社グループは、過去の企業買収時に発生したのれんを含む固定資産を保有しており、これらの将来キャッシュ・フローにつきましては、営業収入の成長率、販売費及び一般管理費の見込みを主要な仮定として用いております。将来の不確実な経済条件や市場価格の変動などによって影響を受ける可能性があり、今後、実際の結果が見積りと乖離した場合、のれんの減損を実施する可能性があります。b.繰延税金資産の回収可能性当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を判断するに際して将来の課税所得を合理的に見積もり、タックスプランニングを行った上で、税務上の繰越欠損金や将来減算一時差異のうち、将来課税所得を減算できる可能性が高いものについて繰延税金資産を認識しております。従って、今後、経営環境の変化や将来の収支予測の変更などにより将来の課税所得の見積額やタックスプランニングが変更された場合には、繰延税金資産が増額又は減額される可能性があります。c.退職給付債務及び費用の計算当社グループは、退職給付債務及び費用の計算について、割引率や年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件に基づき行っており、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合には、その影響額は数理計算上の差異や過去勤務費用として累積され、将来にわたって規則的に認識されます。従って、年金資産の運用結果が長期期待運用収益率と乖離した場合のほか、割引率や長期期待運用収益率の見直しあるいは退職給付制度の変更がなされた場合には、退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。 ② 当期の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容(経営成績に重要な影響を与える要因)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。 (経営成績の状況に関する分析)経営成績に重要な影響を与える各要因を踏まえた当期の経営成績の状況に関する分析は、次のとおりであります。a.営業収益及び営業利益大阪・関西万博開催による旅客・消費需要に加え、万博閉幕後は伊勢志摩方面への誘客が好調に推移したほか、インバウンド需要の増加もあり、運輸業、流通業及びホテル・レジャー業で増収となったものの、国際物流業が減収により減益となり、連結全体の営業収益は前期に比較して0.5%増の1兆7,503億7百万円、営業利益は6.0%増の894億36百万円となりました。運輸業では、鉄軌道事業で大阪・関西万博開催に伴う旅客の増加、前年2月に実施したダイヤ変更による名阪特急増発効果やインバウンド需要の増加に加え、万博閉幕後は伊勢志摩方面への旅客需要も堅調に推移したため、運輸業全体の営業収益は、前期に比較して3.9%増の2,320億21百万円、営業利益は9.8%増の380億64百万円となりました。不動産業では、不動産販売業で首都圏を中心にマンション販売が堅調であったほか、不動産賃貸業で物件取得等による賃貸収入の増加に加え収益物件の売却もあり、不動産業全体の営業収益は、前期に比較して5.1%増の1,738億21百万円、営業利益は3.6%増の143億68百万円となりました。国際物流業では、取扱物量が増加しましたが、市場競争の激化により販売価格が下落したため、国際物流業全体の営業収益は、前期に比較して5.5%減の7,532億円、営業利益は7.4%減の120億12百万円となりました。流通業では、百貨店業で前期に好調であった免税売上の反動はあったものの、大阪・関西万博のオフィシャルストアが好調に推移したほか、ストア・飲食業で国内観光客やインバウンドによる人流の増加が駅ナカ店舗の売上に寄与したため、流通業全体の営業収益は、前期に比較して5.1%増の2,263億67百万円、営業利益は30.4%増の91億59百万円となりました。ホテル・レジャー業では、ホテル業で宿泊部門及び料飲部門で堅調に推移したほか、旅行業では海外旅行の取扱いが増加したものの、観光施設業では前期にコラボイベントで好調であった志摩スペイン村の入場者数が減少したため、ホテル・レジャー業全体の営業収益は、前期に比較して7.1%増の3,693億7百万円となり、営業利益は1.4%減の137億91百万円となりました。b.経常利益営業外収益で受取利息及び配当金が増加する一方で、営業外費用で金利上昇に伴い支払利息が増加しましたが、前期に比較して3.7%増の845億77百万円となりました。c.親会社株主に帰属する当期純利益特別利益で、近鉄百貨店名古屋店閉店に伴う受取補償金等を計上する一方、特別損失で減損損失やのれん償却額を計上しましたが、繰延税金資産の計上により法人税等が減少したため、前期に比較して15.1%増の537億71百万円となりました。 (経営判断のために採用している経営指標とその達成状況及びその理由)当社は、2025年3月に2025年度から2028年度までの4カ年を計画期間とする「近鉄グループ中期経営計画2028」を策定しました。計画初年度である2025年度は、利益面において期初の目標を達成しましたが、鉄道・一般車両の代替新造や首都圏における賃貸アセットの取得等による有利子負債の一時的な増加や、想定を上回る金利上昇に伴うWACC(資本コスト)の上昇等により、株価形成要素の一つであるROIC-WACCスプレッドが縮小したこと等が影響して、当社株価は市場全体や鉄道業界と比較して相対的に低位で推移し、資本市場から十分に評価されませんでした。こうした状況から、資本コストを意識した経営資源の適切な配分が不可欠であるとの認識のもと、2026年5月に「近鉄グループ中期経営計画2028」のアップデートを行っております。本中期経営計画の基本方針は、『価値を創造する企業グループへの進化に向けた「新たな基盤構築」と「着実な成長」』であり、資本収益性に関する経営指標として「ROIC」を導入し、「営業利益」「純有利子負債残高」「ROE」「ROIC」「自己資本比率」「純有利子負債/EBITDA倍率」を重要な経営指標と位置付けております。アップデートにおいては、資本コストの上昇を再認識した経営指標を新たに掲げ、株主還元についても、DOEの下限を2.0%から2.5%へ引き上げ、連結配当性向も考慮するとともに、本中期経営計画の達成を踏まえたうえで、株主還元の多様化を進めます。 [アップデート後の「中期経営計画2028」で目指す経営指標] 2025年度実績2028年度計画(アップデート前)2028年度計画(アップデート後)収益性営業利益894億円1,000億円以上1,000億円以上資金調達純有利子負債1兆758億円1兆円未満でコントロール9,000億円程度でコントロール経営効率ROE9.3%更なる向上8%以上の維持 ROIC4.2%4.5%以上WACC+1%以上財務規律自己資本比率23.6%25%以上30%程度 純有利子負債/EBITDA倍率6.8倍6.0倍程度6.0倍程度株主還元DOE2.6%(予定)(中期経営計画期間中) 下限2.0%下限2.5% 連結配当性向21.2%(予定)-30%程度外部評価格付け(R&I)BBB+ポジティブ(JCR) A-    安定的-(目標)Aフラット以上(注)1.「(予定)」は2026年6月開催の株主総会において剰余金の配当(普通株式1株につき30円)が決議を得た場合の値2.純有利子負債=有利子負債(借入金+社債)+リース債務(IFRS第16号による計上分を除く)-現預金3.ROE=親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本4.ROIC=税引後営業利益(営業利益×(1-実効税率))÷(純有利子負債+株主資本)5.EBITDA=営業利益+減価償却費(IFRS第16号による計上分を除く)+のれん償却費6.各指標値は2027年度から適用予定の新リース会計による影響額を除く数値 ③ キャッシュ・フローの状況の分析内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当社グループでは、2028年度を最終年度とする「近鉄グループ中期経営計画2028」において、価値を創造する企業グループへの進化に向けた「新たな基盤構築」と「着実な成長」を基本方針としております。引き続き「成長」と「財務健全性」のバランスに配慮し、資本コストと資本収益性を意識した投資、回転型不動産ビジネスの導入やバランスシートのスリム化等による財務効率の高度化を図り、純有利子負債のコントロール及び資本の蓄積による自己資本の強化を推し進めてまいります。資金需要の主なものは、各事業の運営資金、販売用不動産など資産の取得に加え、既存設備の維持更新、安全関連投資及び所有不動産の建替や改装といった設備投資に関するものであります。これらの資金需要に対応すべく、短期資金については、各事業が生み出す営業キャッシュ・フローに加え、当座貸越やコミットメントラインなどによる金融機関からの借入れ、コマーシャル・ペーパーの発行などにより資金の流動性を確保しております。また、長期資金については、金融機関からの借入れ、シンジケート・ローンの組成、社債の発行及びリースなどの多様な選択肢の中から最適な調達手段を採用しております。さらに、市場金利とのバランスに留意しつつ返済年限の長期化を図り、原則として固定金利で調達することで金利上昇リスクに対応するとともに、年度別返済額を平準化することで将来の借り換えリスクの低減にも努めております。

事業リスク

近鉄グループは、大規模な事故や自然災害の発生により、復旧費用や事業中断による業績への深刻な影響を受ける可能性があります。特に、経営資源が近鉄沿線に集中しているため、南海トラフ地震などの大規模災害はグループ全体に大きな打撃を与えるおそれがあります。また、労働集約型の事業が多いため、労務管理の不足や感染症の拡大による経済活動の規制、移動・観光需要の激減も収益悪化のリスクとなります。さらに、国際紛争や軍事衝突によるカントリーリスクは、サプライチェーンの寸断や訪日外国人の減少を通じて、国際物流事業や運輸・流通・ホテル・レジャー事業に影響を及ぼす可能性があります。

出典: FY2026 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2026|10,956 文字
3【事業等のリスク】当社グループでは、企業経営におけるリスクの把握・回避と影響の軽減、再発防止、有事における対応力強化、そしてリスク管理の意識向上を目的に、2024年3月、下図のとおり、グループ横断的なリスク管理体制を再整備・強化しました。本体制のもと、お客様・従業員の生命・健康に関わる「安全」、社会から当社グループへの「信頼」、当社グループに金銭的損失を与える「経済損失」という3つの視点から、当社及びグループ各社において具体的なリスクを抽 出・把握しました。そのうえで、把握したリスクを影響度・発生頻度の二軸で評価して近鉄グループ全体のリスクマップを作成し、対処すべき重要リスクを特定いたしました。当社及びグループ各社において、これらのリスクへの対応計画を決定して実行しており、リスク管理の運用状況や対応計画の実施状況については、本リスク管理体制のもと、総合政策本部において、リスク管理室が中心となり、リスク管理委員会を通じてモニタリングすることで、一元的なリスク管理を行っています。なお、リスク管理活動を通じて重要リスクの変化や追加を検討した結果、「カントリーリスク」を新たに重要リスクとして追加いたしました。 特定した重要リスクを踏まえ、「第2 事業の状況」「第5 経理の状況」等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスク及びリスクへの対応につきましては、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。 (1)主に「安全」に関わるリスク① 大規模事故等の発生万一大規模事故や大規模火災、テロ等が発生した場合、その復旧や損害賠償に巨額の費用が必要となるほか、長期間にわたる事業の中断が発生する可能性があり、業績に深刻な影響を与えるおそれがあります。当社グループでは、公共交通機関として多数のお客様の輸送にあたる鉄軌道事業やバス事業をはじめ、その他の各事業においてもお客様の安全の確保を第一義に考えております。このため、運輸安全マネジメントの推進・徹底、従業員の教育・訓練、鉄軌道事業における運転保安設備の新設、更新、増強ほか各事業において計画的に投資を継続するなど、各種の安全対策に万全を期しております。② 大規模自然災害の発生南海トラフ地震等とそれらに伴う津波や、気候変動の影響により激甚化している大規模な風水害などが発生した場合、長大橋梁・鉄道トンネル・線路等鉄道施設の毀損、特急座席予約システムの停止・損壊などのほか、ホテルや百貨店、賃貸施設、レジャー施設等についても大きな被害が生じるおそれがあり、当社グループにおいて大規模な損害及び復旧費用が発生する可能性があります。また、当社グループの経営資源が大阪府、奈良県、三重県をはじめ、近鉄沿線に集中していることから、特に南海トラフ地震が発生した際は、グループ全体の業績に深刻な影響を与えるおそれがあります。このため、鉄軌道事業における駅や高架橋、シールドトンネルの耐震補強、橋梁洗堀対策、電気設備等の浸水対策等の計画的な実施、各事業における耐震補強など防災対策工事の推進、従業員の教育、大規模地震の発生を想定した異例事態対応訓練の実施によるグループ各社との連携強化、事業継続計画の定期的な見直し等、大規模な災害・事故等の発生に備えた危機管理体制の整備を一層推し進めております。 ③ 労務管理の不足運輸業をはじめ労働集約型の事業を幅広く展開している当社グループにおいては、自責・他責によらない事故の発生、就業環境等に起因するメンタル面の不調等、心身両面での健康被害や死傷者の発生等の労働災害が生じる可能性があります。また、働き方改革など労働環境改善のための法改定への対応が遅れた場合、従業員が心身両面での健康被害を受けるおそれに加え、ステークホルダーからの信用低下や業績悪化を招く可能性があります。当社グループでは、労働安全衛生の向上を図るため、安全管理意識の徹底や設備面の充実によるバックアップ等を進めております。また、働きやすい職場環境の整備、従業員との対話や各種支援制度の充実、「近鉄グループ健康経営宣言」に基づく健康経営の積極的な推進などを通じて、従業員のエンゲージメント向上、心身の健康増進を図っております。さらに、グループ全体で法令遵守の徹底や必要な情報の収集・共有に努めております。④ 感染症の拡大新規または既存の感染症の発生・拡大に伴う経済活動の規制、顧客の事業活動の停止、移動需要や観光需要の激減が生じた場合、収支の著しい悪化、従業員の罹患による事業中断の可能性があります。また、アフターコロナ社会において、感染症がもたらした社会構造や行動様式の変化により、通勤・出張需要の減少、オンラインビジネスの拡大などが定着したように、事業形態や事業収支への影響が恒常的なものになるおそれがあります。当社グループでは、社会・経済環境、行動様式の変化に応じた各事業の構造改革や新サービスの創出を進めるとともに、感染症が発生した場合には感染予防と拡大防止に全力で取り組んでまいります。⑤ 商品・サービスの品質、安全性、表示の信用棄損主として一般消費者を顧客としている流通業及びホテル・レジャー業において、当社グループが販売する商品・提供するサービスの品質や、食品類等の表示について信用毀損が生じた場合、お客様の減少による減収や損害賠償、争訟費用等のコスト発生により業績が悪化するおそれがあります。当社グループでは、2024年に改組した食品表示衛生管理委員会を通じて、食品表示及び食品衛生に関する法令の遵守状況の確認や品質・衛生管理・食品類等の表示のチェック、従業員に対する定期的な研修などを実施し、商品・サービスの品質、安全性の確保、適切な表示に努めております。⑥ カントリーリスク国際紛争や軍事衝突等が発生した場合、現地滞在中の顧客や従業員の安全性に影響が及ぶおそれがあるとともに、サプライチェーンの寸断により、事業中断の可能性があります。また、輸出入量の変動や物流網の変化に伴う国際物流事業の収益への影響や、長期間にわたって渡航自粛が発生した場合、訪日外国人の減少により運輸業、流通業、ホテル・レジャー業の業績が悪化するおそれがあります。当社グループでは、カントリーリスク発現時における顧客や従業員の安全確保について体制整備を充実させるとともに、迅速な情報収集と適切な対応に取り組んでまいります。 (2)主に「信頼」に関わるリスク① 人権侵害国内及び海外で幅広く事業を展開する当社グループは、従業員のみならずサプライチェーンなど多岐にわたる人々の支えのもと事業を営んでおります。グループ内やサプライチェーンにおいて人権侵害や各種ハラスメントが発生した場合、被害者の方の心身の健康被害につながるほか、社会的信用の低下や企業イメージの悪化、取引先企業からの取引停止、売上減少のおそれがあります。当社グループでは、2022年11月に人権に関する国際規範に基づき制定した「近鉄グループ人権基本方針」のもと、人権リスクの特定、教育や研修を通じた予防・軽減、相談窓口等による救済・是正等、人権デュー・ディリジェンスの実施に努めており、グループ内及びサプライチェーンにおける対応を進めてまいります。また、お客様の満足度を高めていくとともに、お客様・従業員などの全てのステークホルダーの人権が尊重される社会を実現するため、2024年12月に「近鉄グループ カスタマーハラスメントに対する基本方針」を制定しました。グループ各社の実情に応じて、相談窓口や対応手順を整備し、従業員に対する教育研修に取り組んでいます。このほか、法令遵守や人権尊重など、当社グループとともにサプライチェーンに実践していただきたいことを掲げた「近鉄グループ サプライチェーン方針」を2025年4月に制定し、グループ各社に周知しました。事業活動に関わる全ての人々の人権を尊重し、ともに協力しながらサステナブルな社会の実現を目指してまいります。② 情報セキュリティの不備当社グループは、定期乗車券の発売やカード会員の募集、ホテル業、百貨店業、旅行業等の営業を通じ、お客様の個人情報その他の機密情報を保有しております。万一これらの情報への不正なアクセス、情報の紛失、改ざん、漏洩、消失等が起こった場合、損害賠償等による費用が発生するほか、信用失墜などにより業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、想定を超えるコンピュータシステム障害、通信障害、近年巧妙化しているコンピュータウイルスやサイバーテロ等により、システムが長時間にわたり機能しなくなる等の不測の事態が発生した場合にも、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、情報の漏洩等を防ぐため、法令、「近鉄グループ情報セキュリティ基本方針」並びに各社 が制定する規程等に基づき、各社がその責任において情報セキュリティを確保し、情報を厳重に管理しているほか、デジタル人財の採用・育成強化を実施しております。さらに、「グループセキュリティ対策標準」に準拠した対策を進めることで、グループ全体でのセキュリティ対策を実施しており、不正アクセスやコンピュータウイルスに対しては、ハード・ソフトの両面からセキュリティ体制の強化に取り組んでおります。 ③ 法令違反当社グループの役員、従業員ほか、会社関係者の各種法令違反、犯罪・不祥事、反社会勢力との取引等が発生した場合、社会的信用の失墜・企業イメージの著しい低下を招くとともに、行政・司法からの処分、ペナルティーの支払い、収支への影響、事業継続への支障のおそれがあります。当社グループでは、近鉄グループ経営理念の一つに「わたしたちは、誠実な企業活動により、暮らしの安心を支えます。」を掲げ、法令遵守を最優先に事業を営んでおります。さらに、社員一人ひとりが遵守すべき「近鉄グループ企業行動規範」、法令や企業倫理の遵守に関する「法令倫理指針」を制定し、周知の徹底・教育の充実を図っております。また、2024年3月にCSR委員会が担っていた機能のうち法令倫理遵守に特化した「法令倫理委員会」を独立させて機能強化し、主要会社役員が委員となって、法令及び企業倫理に則った誠実な企業行動の確立に努めております。さらに、2025年3月に「税の透明性に関する方針」を、同年4月に「近鉄グループ 腐敗行為(贈収賄等)の防止に関する基本方針」をそれぞれ制定し、グループ各社に周知しました。事業活動を行う国や地域の法令等を遵守し、企業倫理に則った企業活動を推進してまいります。④ 新規事業特有のリスク新たな事業機会を求めて新規事業に取り組む場合、業界やエリア特有の法令・商慣行の認識不足による法令・契約違反や、不慣れなオペレーションによる安全確保の不備、労働災害を発生させる可能性があり、それにより、お客様や取引先へのご迷惑や従業員の心身の健康阻害、また、企業イメージ・社会的信用の低下を招くおそれがあります。当社グループでは、新規事業特有のこのようなリスクを踏まえ、マニュアル・規程類の整備や業務システムによるバックアップ、また、外部パートナーや有識者とも連携し、当該業界固有の仕組み等に関する関係者への教育や潜在的リスクに対する情報収集、対応力の強化等を図ってまいります。 (3)主に「経済損失」に関わるリスク① 人財不足当社グループにおいては、鉄軌道事業をはじめとする多くの事業が労働集約型であり、人財の安定的な確保が不可欠であります。しかしながら、少子高齢化により生産年齢人口の減少が続いており、また、終身雇用を前提としない働き方の浸透や、労働市場の流動化が進んでいることから、今後十分な人財が確保できない場合及び優秀な人財がグループ外に流出した場合は、事業機会の損失や競争力低下により、事業運営への支障や収支に影響を及ぼす可能性があります。また、社会インフラである交通サービスを計画通りに提供できず、皆様の生活にご迷惑をおかけするおそれがあります。当社グループとしては、採用区分や採用エリアの拡大など多様な形態の採用活動により、引き続き適材適所の人財の確保に努めるとともに、働きがいがあり働きやすい魅力ある職場環境の整備、業務の合理化・システム化等による効率的な運営体制の構築、グループ全体で人財を有効活用する仕組みづくり等に取り組んでおります。また、2024年10月、当社グループ全体の人に関する業務を担う新会社「㈱近鉄HRパートナーズ」を設立しました。グループ各社の人事施策を支援していきながら、新たなビジネス機会の探究にも取り組んでまいります。② 沿線人口の減少、沿線の魅力低下少子高齢化及び都心への人口移転により、近鉄沿線での人口、特に就労人口及び通学人口が減少しており、今後もその傾向が続くと予想されます。この状況は鉄軌道事業収入、流通業収入や不動産業収入等、各事業の需要減少を招き、収支に悪影響を及ぼすと見込まれます。また、沿線の街や観光地の賑わいが乏しくなり魅力が低下することによって、定住人口や交流人口がさらに減少するおそれがあります。当社グループとしては、お客様・地域社会のニーズに対応した商品・サービスの拡充、競争力のあるエリアでの不動産業等の展開、テクノロジーを活用した新たなビジネスモデルや効率的な運営体制の構築などの諸施策を積極的に進めてまいります。また、グループ各社間のみならず、自治体ほか幅広い関係者との連携を強化し、まちづくり推進、産業振興等による沿線の定住人口の減少抑制・増加、沿線観光資源の活用、観光魅力の向上による交流人口の拡大を目指してまいります。③ 競合他社への顧客転移近鉄線と競合する高速道路網の整備等によりモータリゼーションが一層進展しているほか、一部路線が鉄道他社と競合しております。また、沿線の観光地は、他の観光地と競合関係にあるため、観光客が減少し、鉄軌道事業のほかホテル・レジャー業の収入が影響を受ける可能性があります。さらに、大阪・奈良・三重地区等で競合する他の百貨店や異業態の新店舗開業・改装により、流通業の収入が影響を受ける可能性があります。当社グループとしては、関係者と連携しながら、持続可能で魅力ある公共交通サービスの提供、豊富な沿線観光資源の活用やお客様・地域社会のニーズに対応した商品・サービスの拡充に努めるほか、競争力のあるエリアでの不動産業等の展開、テクノロジーを活用した新たなビジネスモデルや効率的な運営体制の構築などの諸施策を積極的に進め、グループ各社の連携によりグループ事業全体の基盤強化を図ってまいります。④ 事業領域等の偏り当社グループは、近畿・東海を主たる事業エリアとする鉄軌道事業など人の移動を前提とするBtoC事業に事業領域が偏っていました。その結果、新型コロナウイルス感染症の拡大により、人流が激減したことが損益の大幅な悪化をもたらしました。グループの事業が特定の事業領域及び事業エリアに偏っていることは、外部環境の急激な変化に柔軟に対応しきれず、事業収支の大幅な悪化を招く可能性があります。これに対して、2021年に工業用製品を製造する㈱サカエをグループに加え、2022年には物流業界で世界的にフォワーディング事業を展開する㈱近鉄エクスプレスを完全子会社化して、国際物流業をグループの中核事業とするなど、M&Aなどを活用してバランスある事業ポートフォリオを構築するとともに、海外へも事業エリアを拡大しております。この流れを継続深化するとともに、グループ間連携の強化によってグループ全体の企業価値向上を図ってまいります。⑤ 気候変動気候変動の物理的リスクのうち、急性リスクとして、大型台風、豪雨に伴う風水害や土砂災害により列車が運行不能になるおそれがあります。また、旅行やホテルのキャンセルや、買物・レジャーの出控えが発生します。慢性リスクとしては、猛暑等により空調などの電力使用量やエネルギーコストが増加するおそれがあります。また移行リスクとして、法律等の規制強化や、旅行や日常生活における消費者行動の変化により、大規模な設備投資や事業構造の見直しを迫られるおそれがあります。鉄道事業においては、「炭素税等の導入」「エネルギーコストの増加」「災害激甚化」リスクの影響が特に大きいと見込んでおります。当社グループとしては、TCFDの枠組みに沿って気候関連の影響に関するシナリオ分析を行い、戦略検討やリスク管理、統合報告書等での情報開示を進めております。激甚化する災害に備え鉄道の防災・安全対策を推進するとともに、2023年11月に、2050年カーボンニュートラルを目指す「近鉄グループ環境目標」における2030年度のCO2排出量削減目標を引き上げ、各事業で省エネルギー、省資源等の取組を一層推進し、気候変動への対応に努めております。⑥ デジタル社会の進展ITの進化により在宅勤務やオンライン会議の環境が整備されてきた中、コロナ禍を経てこれらが急速に普及し、公共交通機関を利用した通勤や遠距離の出張が減少しております。今後この動きやデジタル化の進展による新たな技術革新、生産性向上等がさらに進んだ場合は、人流に依拠する鉄道・バスなどの運輸収入やオフィスビルなどの不動産賃貸収入が減少したり、生産性が低下したりするおそれがあります。当社グループとしては、交流人口を拡大するため、乗ること自体を目的とした鉄道車両の開発、伊勢志摩や奈良など沿線観光地の一層の魅力向上等により観光旅客の増加を図るとともに、競争力のあるエリアでの不動産事業の展開に加え、施設のリニューアル等により資産価値の維持・向上を図ってまいります。また、デジタル戦略部が中心となり、グループ全体のビジョンの策定、グループ共通顧客基盤の整備ほかDX施策の推進、DX人財の確保と育成等に努めております。これらの取組により、近鉄沿線の交流人口の増加、新しい生活様式に適応したサービスの提供やデジタル技術を活用した新サービス創出、生産性向上等による業績の向上に努めてまいります。⑦ 景気、個人消費動向、国際情勢等の変動運輸業、不動産業、流通業及びホテル・レジャー業は、いずれも主に一般消費者を顧客としており、景気、個人消費動向等の経済情勢のほか、冷夏、暖冬などの異常気象や天候不順等の影響により、業績が悪化するおそれがあります。また、これらの事業は、天災・悪天候や通商問題、テロ攻撃・戦争等による国際情勢の悪化により訪日外国人が減少し、業績が悪化するおそれがあります。また、国際物流業は、国内外の経済・景気動向、顧客企業の輸送需要、政治的又は社会的な要因の地政学リスク、それに伴うテロ攻撃や地域紛争、天災・悪天候、パンデミックなど様々な要因により、業績が悪化するおそれがあります。当社グループとしては、構造改革の実施による損益分岐点の引き下げを図るとともに、BtoB事業の育成・強化による事業ポートフォリオのリスク耐性強化等を通じて、事業環境の変化、顧客の動向・ニーズに迅速かつ柔軟に対処して、業績の向上に努めてまいります。⑧ 原油・電気料金・資材価格等の高騰、資材サプライチェーンの混乱原油等の資源価格・電気料金・資材価格等の上昇は、当社グループの鉄軌道事業のほか、各事業に大きな影響を与えます。また、資材サプライチェーンの混乱が発生した場合、不動産事業のマンション建設計画や、鉄軌道事業の設備投資計画などの投資額上昇や遅延、休止等の影響が想定されます。当社グループとしては、各事業において原価の抑制に努めているほか、各社及びグループ共同で資源の供給会社に対する価格交渉を随時行っております。また、新型車両導入や設備更新等による省エネの推進、資源価格に左右されない再生可能エネルギーの調達拡大の検討を進めております。⑨ 貨物運賃・運送原価の高騰国際物流業の航空貨物輸送においては、チャーター便を利用した輸送スペースを確保する際には、チャーター契約が固定的な仕入となることから、輸送需要が想定以上に低迷した場合は販売価格の下落により業績に影響を与える可能性があります。これに対し、従前より取り組む機材スペースの部分的な確保や市場価格での買付けの比重を高めるなど、業績への影響を最小限に抑えるべく対処してまいります。また、安定的な供給スペースとサービスの提供による物量の拡大と継続的な成長を図るために、航空会社との関係を強化するとともに集中購買も進め、事業環境の変化に迅速かつ柔軟に対処してまいります。他方、物流に関わる人財不足も顕在化しており、今後の情勢によっては、運送、荷役原価も大きく変動する可能性があります。仕入原価が想定以上に上昇し、一方顧客から適正料金の収受が困難となった場合は、業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。これらの可能性に対し、航空会社、船会社、トラック会社などの実運送事業者との協力関係の強化や集中購買の強化を図るとともに、顧客からの環境変化に応じた適正料金収受に努める等、事業環境の変化に迅速かつ柔軟に対処し、業績への影響を最小限にすべく努めております。⑩ 法令による規制等鉄道事業法(1986年法律第92号)の定めにより旅客運賃の設定・変更は国土交通大臣の認可を受けなければならず、鉄軌道事業における運賃の設定・変更を制限される可能性があります。当社グループの事業活動においては各種法令の規制を受けており、法令改正の内容によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、国内外の法令に関する情報を収集することで、当社グループの業績への影響を最小限とするよう努めております。⑪ 大規模投資・新規投資の失敗、保有資産の価値棄損駅周辺再開発や観光振興に向けた沿線及び沿線外での大規模投資、成長に向けた新規事業への投資等を決定・着手した後の投資額の大幅な増額や、社会情勢の変化等によって完成後に期待した収益を創出できなかった場合、また、不動産市況の低迷や地価の下落に伴う販売用土地及びマンションの販売不振、不動産賃料収入の減少が生じた場合には、投資回収の遅れや固定資産及び販売土地建物についての評価損失の計上などにより、業績が悪化するおそれがあります。当社グループとしては、経済動向や投資効果等を慎重に見極めて判断を行うとともに、地価変動の影響を極力避けるための保有資産の入替え、競争力のあるエリアでの事業展開、付加価値の高い案件への投資や新規物件の開発促進、低利用地の更なる有効利用等によって業績向上に努めております。⑫ 為替レートの変動国際物流業や旅行業は、グローバルに事業を展開しているため、各地域における通貨の変動が業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。これに対し、当社グループでは、外貨建債権・債務及び外貨建予定取引に係る為替の変動リスクを回避する目的で、為替予約取引や通貨スワップ取引等を利用しております。取引の運用にあたっては、社内管理規程等に則って執行と管理が行われており、投機目的及びレバレッジ効果の高い取引は行わない方針としております。また、海外での事業拡大に向けた投資に際しては、グループの海外法人が有する外貨資金の活用も資金調達の一つとして為替リスクの軽減及び財務の効率的運用を図ってまいります。⑬ 調達金利の変動景気の急激な変動や金融市場の混乱等により、今後市場金利が上昇又は乱高下した場合や、信用格付業者による格付が引き下げられた場合には、調達金利が上昇し、支払利息が増加することで業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、2025年度末の連結有利子負債残高は1兆2,655億39百万円、2025年度の連結営業外費用における支払利息は145億93百万円であります。当社グループでは、バランスシートの質的向上と各事業のキャッシュ・フロー創出により、有利子負債の圧縮を加速させ、財務リスクの低減を優先課題として取り組んでまいります。また、財務規律を強化し、自己資本比率、純有利子負債/EBITDA倍率などの指標向上、キャッシュ・フロー創出力の向上により、信用格付業者による格付の引き上げにも努めてまいります。(注)1.純有利子負債=有利子負債(借入金+社債)+リース債務(IFRS第16号による計上分を除く)-現預金2.EBITDA=営業利益+減価償却費(IFRS第16号による計上分を除く)+のれん償却費⑭ 株式相場の変動株式相場の変動により、時価のある投資有価証券の価格が下落し、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、年金資産(退職給付信託を含む。)の一部は上場株式で運用しており、株価の下落は退職給付費用の増加や掛金拠出の増加につながるおそれがあります。当社グループでは、上場株式の売却を進めるとともに、定期的に投資有価証券の市場価格を把握し、リスクを抑制しております。年金資産の運用については、外部の専門家によるアドバイスを参考にしつつ、定期的に運用状況の確認と見直しを行っております。⑮ 企業買収等当社グループ各社は、今後の成長に向けた競争力強化や収益性の向上及び事業ポートフォリオの最適化のため企業買収等を行っており、また、将来行うことがあります。当社グループとしては、個々の案件の規模等に応じて、取締役会及び各社における各種の会議体での審議並びに投資先に対するデュー・ディリジェンスを十分に実施することにより、企業買収等の検討を進めるとともに、買収先の資産効率の向上及び利益の最大化に努めてまいります。なお、買収先企業の業績が買収時の想定を下回る場合、又は事業環境の変化や競合状況等により期待する成果が得られないと判断された場合には、企業買収等を行ったグループ各社においてのれんを含む固定資産の減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。2015年5月には、持分法適用関連会社であった㈱近鉄エクスプレスがグローバルにロジスティクス事業を展開するAPL Logistics Ltdの買収を行ったほか、2022年7月には、当社が㈱近鉄エクスプレスの発行済株式を対象とする公開買付けにより、同社を連結子会社化しております。2026年3月末時点において、当社の連結財務諸表で上記の買収に関連する固定資産2,594億41百万円(顧客関連資産400億94百万円、商標権322億72百万円及びのれん494億40百万円を含む。)が計上されております。

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