事業等のリスク
JR東海グループの事業にはいくつかのリスクがあります。まず、鉄道事業法により、路線の休廃止や運賃・料金の設定・変更には国土交通大臣の許可や認可が必要です。これらの法的規制が変更された場合、費用増加や事業活動の制限により、経営成績に影響が出る可能性があります。また、運賃等の改定が国の審査基準(総括原価方式)に縛られるため、機動的な運賃変更が難しい状況です。これにより、競争環境の変化や物価上昇に対応した収益確保が困難になるリスクがあります。当社は、柔軟な運賃設定が可能となるよう国に要望を続けています。
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FY2025|9,880 文字
3【事業等のリスク】 当社グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。(1) 事業に係る法律関連事項① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号) 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。 これらの法的規制が変更された場合には、規制を遵守するための費用の増加や事業活動の制限により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号) 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が2001年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は2001年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。 なお、当社はこれまでも指針に定められた事項に沿った事業運営を行ってきており、この指針は今後の当社の事業運営に大きな影響を及ぼすものではないと考えています。 (2) 運賃及び料金の設定又は変更 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないこととなっており(鉄道事業法第16条第1項)、認可に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないもの(以下「総括原価」という。)であるかどうかを審査して認可することとなっています(鉄道事業法第16条第2項)。また、認可を受けた上限の範囲内での運賃等の設定・変更又は在来線特急料金等その他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第8項)。その場合でも、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、以下に該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされています(鉄道事業法第16条第9項)。 ○ 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき ○ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき これらの手続きが変更される場合や、何らかの理由により手続きに基づいた運賃又は料金の変更を機動的に行えない場合には、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。 また、当社の場合、鉄道事業法第16条第2項の定めにより、運賃等の改定が難しい状況ですが、引き続き、収入の確保と効率化を進め、能率的な経営に努めます。その上で、鉄道の競争環境の変化や物価上昇に伴う費用の増加等、当社の経営環境が大きく変化する中、将来にわたって輸送機関としての使命を果たし続けるとともに、持続的に企業価値を向上できるように、国土交通省に対して、柔軟・簡便な運賃等の設定が可能となるよう要望を続けます。 ≪参考≫ 国土交通省の考え方 運賃等の改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。a 鉄道事業の運賃等の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、総括原価を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。総括原価=営業費等(注1)+事業報酬・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)等・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注5) (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り及び全産業の自己資本利益率の過去5年平均(年数については、直近に急激な景気動向の変化があった場合等は、合理的と認められる範囲で適切に設定する。(注5)において同じ)を基に、以下の算定式により算定する。ただし、全産業の自己資本利益率が公社債応募者利回りを下回る場合には、公社債応募者利回りによる。なお、公社債利回り実績値は国債(10年もの)、地方債、政府保証債の平均の過去5年平均とし、βはTOPIXの変化率と鉄道会社の株価変化率の共分散をTOPIXの変化率の分散で除したものとする。 自己資本報酬率=公社債利回り実績値+β×(全産業(陸運業を除く)平均自己資本利益率 -公社債利回り実績値)5 他人資本報酬率は、法定債務を除き、債務実績利子率のJR旅客会社のうち北海道旅客鉄道株式会社及び四国旅客鉄道株式会社を除くグループ平均の過去5年平均とする。d なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、以下に該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第9項)。○ 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき○ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき(3) 競合等 当社グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向等の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢及び少子高齢化等に伴う将来的な人口動態が、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 特に、当社グループの主力事業である東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善等、航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。 また、近年はリモートワークやWeb会議が浸透しており、今後も鉄道のご利用に影響を与える可能性があります。 以上のような競合等に対しては、安全・安定輸送を確保しつつ、新幹線においては、「のぞみ12本ダイヤ」による需要にあわせた弾力的な列車設定、N700Sの投入及び「EXサービス」のさらなるご利用拡大等に取り組むとともに、在来線においては、通勤型電車315系の投入や新型特急車両385系量産先行車の新製に向けた詳細設計を進めるなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。(4) 長期債務 1987年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を1991年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。なお、4兆4,944億円については、2017年1月に支払を完了しています。(注) 保有機構は1991年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は1997年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は2003年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。 また、2016年11月に、中央新幹線の建設の推進のため、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(以下「鉄道・運輸機構法施行令」という。)に基づき、財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、2017年7月までに、長期、固定かつ低利の中央新幹線建設長期借入金について、総額3兆円の借入を行い、金利上昇リスク、資金調達リスク、償還リスクを低減しました。 これらを含めた連結長期債務残高は、当期末現在で4兆7,786億円、そのうち中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆7,786億円となっており、当期の支払利息は790億円となっています。 今後の金利動向により調達金利が変動する場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、引き続き調達手段の多様化や低利かつ安定的な資金の確保に努めてまいります。(5) 自然災害等 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害、テロの発生、感染症の流行等により大きな影響が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 なお、鉄道インフラについて当社は、安全の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等への対策に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災等における他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚及び高架橋柱について必要な箇所の耐震補強を完了し、盛土の耐震補強は協議案件と関係する一部の箇所を除き完了しました。そのほか、脱線防止ガードの全線への敷設をはじめとする脱線・逸脱防止対策等も積極的に進めています。また、在来線においても、構造物等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施しています。さらに、感染症の流行時には、お客様及び社員への感染拡大防止を徹底しながら十分な輸送力の確保に努めるなど、鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを行うこととしています。(6) 安全対策 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、安全の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、当社の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線においては、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)を導入するなど、より一層の安全性向上に努めています。 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(32件)は会社発足初年度である1987年度(60件)と比較して大幅に減少しました。(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護 当社グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、サイバー攻撃や自然災害、人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合等には、当社グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社グループでは、障害対策として、日常より最新の技術動向等を勘案しながら自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに、関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。(8) 超電導リニアによる中央新幹線 当社は、健全経営と安定配当を堅持しながら、自己負担により、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。中央新幹線計画を進める目的、必要性等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおりです。 当社は超電導リニアによる中央新幹線計画について、2007年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、2010年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するに当たり、それぞれの時点で合理的と考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。 また、2007年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。 その後、全幹法の手続きが進み、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会の答申を受け、2011年5月、国土交通大臣は、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。 【中央新幹線の整備計画(2011年5月決定)】 建設線 中央新幹線 区間 東京都・大阪市 走行方式 超電導磁気浮上方式 最高設計速度 505キロメートル/時 建設に要する費用の概算額 (車両費を含む。) 90,300億円 その他必要な事項 主要な経過地 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス)中南部、 名古屋市附近、奈良市附近 (注) 建設に要する費用の概算額には、山梨リニア実験線既設分及び利子を含みません。 これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法の手続きを進め、2014年8月に、最終的な環境影響評価書(以下「評価書」という。)を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。また、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、土木構造物を中心とした品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、2014年10月に認可を受け、その後工事を開始しました。 品川・名古屋間の総工事費については、工事実施計画(その1)及び2018年3月に認可を受けた電気設備等を含む同(その2)の段階において、5.52兆円と見込んでいました。その後、工事を進める中で、個別の工事案件によっては、当初の想定額を超えるものが発生したことにより、工事費の増加を見込むこととなりました。その一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で、経営環境が急激に悪化したことから、2021年4月に、工事に必要な資金計画と健全経営の確保を確認するため、品川・名古屋間全体の工事費の見通しについて、合理的と考えられる要素を盛り込んで精査を進めたところ、難工事への対応、地震対策の充実、発生土活用先の確保等により、総工事費が7.04兆円に増加する見通しとなりました。これを受け、一定の合理的な前提条件を置いて資金確保の状況を試算し、健全経営と安定配当を堅持しながら工事を完遂できることを確認しました。その後、2023年12月に、総工事費を7.04兆円とした、駅・車両基地の建築工事や設備工事、車両等の工事実施計画(その3)及び変更の認可を受けました。 品川・名古屋間の開業時期(工事の完了の予定時期)については、工事実施計画(その1)及び同(その2)において、2027年として認可を得ました。一方、南アルプストンネル静岡工区においては、静岡県の理解が得られず、トンネル掘削工事に着手できない状態が続いています。このため、2027年の開業は困難であり、新たな開業時期を見通すことができない状況を踏まえ、2023年12月に、工事の完了の予定時期を2027年以降とした工事実施計画(その3)及び変更の認可を受けました。その後、2024年3月に開催された国土交通省の「第2回リニア中央新幹線静岡工区モニタリング会議」で、静岡工区の工事計画を示し、静岡工区が品川・名古屋間の開業の遅れに直結しており、2027年の開業は実現できない旨を説明しました。引き続き、静岡工区のトンネル掘削工事の早期着手、さらには品川・名古屋間の早期開業に向けて取り組みます。 名古屋・大阪間については、品川・名古屋間と同様に、工事に着手する前段の環境影響評価法の手続きの中でルートの絞り込みや駅位置の選定を行い、工事費等を精査した上で、工事実施計画の認可申請を行います。これらは品川・名古屋間の開業が近づいた際に行う計画ですが、その時点で合理的と考えられる前提条件の下で健全経営と安定配当を堅持できることを確認した上で工事を進めます。 大阪までの全線開業については、2010年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するに当たり実施した長期試算見通しにおいて、品川・名古屋間の開業後、大阪への工事に着手するまでに必要となる経営体力回復期間を設けることなどを前提として試算を行った結果、開業時期は2045年となりました。その後、政府からの提案を受け、鉄道・運輸機構から財政投融資を活用した総額3兆円の長期借入を行ったことを踏まえ、経営の自由及び投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けによる経営リスクの低減を活かし、全線開業までの期間の最大8年前倒しを目指すこととしました。品川・名古屋間について、2027年の開業は実現できず、新たな開業時期を見通すことができない状況ですが、品川・名古屋間の開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手する方針に変更はありません。 今後とも、健全経営と安定配当を堅持しつつ、中央新幹線の早期開業を目指して、計画を推進していきます。 中央新幹線の建設は当社の自己負担で進め、工事費に充てる資金は、営業キャッシュ・フローを主体に、不足分について返済可能な借入資金によって賄っていきます。プロジェクトの推進に当たり、例えば、次のようなリスクが考えられ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 ⅰ 建設資材の高騰等による工事費の増大 ⅱ 難工事その他による工事遅延・完成時期の遅れ ⅲ 金利上昇 ⅳ 経済停滞、人口減少による収入減 ⅴ 他輸送機関との競合による収入減 ⅵ 社会全体の物価上昇 ⅶ 訴訟の提起 このうち、ⅰからⅵの経費増、収入減を伴うリスクに対しては、工事のペースを調整し、債務縮減により経営体力回復のための時間調整を行うことにより、健全経営と安定配当を堅持し、計画を完遂します。 ⅶの訴訟については、工事実施計画認可の取消し等を国に求める行政訴訟、工事差止め等を求める民事訴訟が提起されています。 ≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線
FY2024|10,365 文字
3【事業等のリスク】 当社グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。(1) 事業に係る法律関連事項① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号) 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。 これらの法的規制が変更された場合には、規制を遵守するための費用の増加や事業活動の制限により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号) 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が平成13年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は平成13年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。 なお、当社はこれまでも指針に定められた事項に沿った事業運営を行ってきており、この指針は今後の当社の事業運営に大きな影響を及ぼすものではないと考えております。(2) 運賃及び料金の設定又は変更① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。 また、上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。 これらの手続きが変更される場合、また物価上昇時等において何らかの理由により手続きに基づいた運賃・料金の変更を機動的に行えない場合には、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。 鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっています。 (注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きです。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められています。2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められています。 なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、旅客運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしています。② 運賃改定に対する当社の考え方a 当社では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月、平成9年4月、平成26年4月及び令和元年10月)を除くと、これまで運賃改定を実施していません。 大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。当社の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保しうるような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えています。b 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する利益配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えています。③ 国土交通省の考え方 当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。a 東海旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。総括原価=営業費等(注1)+事業報酬・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)等・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注5) (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り及び全産業の自己資本利益率の過去5年平均(年数については、直近に急激な景気動向の変化があった場合等は、合理的と認められる範囲で適切に設定する。(注5)において同じ)を基に、以下の算定式により算定する。ただし、全産業の自己資本利益率が公社債応募者利回りを下回る場合には、公社債応募者利回りによる。なお、公社債利回り実績値は国債(10年もの)、地方債、政府保証債の平均の過去5年平均とし、βはTOPIXの変化率と鉄道会社の株価変化率の共分散をTOPIXの変化率の分散で除したものとする。 自己資本報酬率=公社債利回り実績値+β×(全産業(陸運業を除く)平均自己資本利益率 -公社債利回り実績値)5 他人資本報酬率は、法定債務を除き、債務実績利子率のJR旅客会社のうち北海道旅客鉄道株式会社及び四国旅客鉄道株式会社を除くグループ平均の過去5年平均とする。d なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、次のア又はイに該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。ア 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるときイ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき (3) 競合等 当社グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向等の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢及び少子高齢化等に伴う将来的な人口動態が、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 特に、当社グループの主力事業である東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善など航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。 また、近年はリモートワークやWeb会議が浸透しており、今後も鉄道のご利用に影響を与える可能性があります。 以上のような競合等に対しては、安全・安定輸送を確保しつつ、新幹線においては、「のぞみ12本ダイヤ」による需要にあわせた弾力的な列車設定、N700Sの投入及び「EXサービス」のさらなるご利用拡大等に取り組むとともに、在来線においては、通勤型電車315系の投入や新型特急車両385系量産先行車の新製に向けた詳細設計を進めるなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。(4) 長期債務 昭和62年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。なお、4兆4,944億円については、平成29年1月に支払を完了しています。(注) 保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。 また、平成28年11月に、中央新幹線の建設の推進のため、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(以下「鉄道・運輸機構法施行令」という。)に基づき、財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、平成29年7月までに、長期、固定かつ低利の中央新幹線建設長期借入金について、総額3兆円の借入を行い、金利上昇リスク、資金調達リスク、償還リスクを低減しました。 これらを含めた連結長期債務残高は、当期末現在で4兆8,461億円、そのうち中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆8,461億円となっており、当期の支払利息は790億円となっています。 今後の金利動向により調達金利が変動する場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、引き続き調達手段の多様化や低利かつ安定的な資金の確保に努めてまいります。(5) 自然災害等 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害、テロの発生、感染症の流行等により大きな影響が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 なお、鉄道インフラについて当社は、安全の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等への対策に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などにおける他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚については必要な箇所の耐震補強を完了し、高架橋柱及び盛土の耐震補強は協議案件等と関係する一部を除き完了しました。そのほか、脱線防止ガードの敷設をはじめとする脱線・逸脱防止対策等も積極的に進めています。また、在来線においても、輸送の安全確保のため、構造物等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施しています。さらに、感染症の流行時には、お客様及び社員への感染拡大防止を徹底しながら十分な輸送力の確保に努めるなど、鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを行うこととしています。 (6) 安全対策 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、安全の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、当社の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線では、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)の導入を行うなど、より一層の安全性向上に努めてきました。 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(32件)は会社発足初年度である昭和62年度(60件)と比較して大幅に減少しました。(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護 当社グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、サイバー攻撃や自然災害、人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合等には、当社グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社グループでは、障害対策として、日常より最新の技術動向等を勘案しながら自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに、関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。(8) 超電導リニアによる中央新幹線 当社は、健全経営と安定配当を堅持しながら、自己負担により、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。中央新幹線計画を進める目的、必要性等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおりです。 当社は超電導リニアによる中央新幹線計画について、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で合理的と考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。 また、平成19年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。 その後、全幹法の手続きが進み、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会の答申を受け、平成23年5月、国土交通大臣は、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。 【中央新幹線の整備計画(平成23年5月決定)】 建設線 中央新幹線 区間 東京都・大阪市 走行方式 超電導磁気浮上方式 最高設計速度 505キロメートル/時 建設に要する費用の概算額 (車両費を含む。) 90,300億円 その他必要な事項 主要な経過地 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス)中南部、 名古屋市附近、奈良市附近 (注) 建設に要する費用の概算額には、山梨リニア実験線既設分及び利子を含みません。 これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法の手続きを進め、平成26年8月に、最終的な環境影響評価書(以下「評価書」という。)を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。また、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、土木構造物を中心とした品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、その後工事を開始しました。 品川・名古屋間の総工事費については、工事実施計画(その1)及び平成30年3月に認可を受けた電気設備等を含む同(その2)の段階において、5.52兆円と見込んでいました。その後、工事を進める中で、個別の工事案件によっては、当初の想定額を超えるものが発生したことにより、工事費の増加を見込むこととなりました。その一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で、経営環境が急激に悪化したことから、令和3年4月に、工事に必要な資金計画と健全経営の確保を確認するため、品川・名古屋間全体の工事費の見通しについて、合理的と考えられる要素を盛り込んで精査を進めたところ、難工事への対応、地震対策の充実、発生土活用先の確保等により、総工事費が7.04兆円に増加する見通しとなりました。これを受け、一定の合理的な前提条件を置いて資金確保の状況を試算し、健全経営と安定配当を堅持しながら工事を完遂できることを確認しました。その後、令和5年12月に、総工事費を7.04兆円とした、駅・車両基地の建築工事や設備工事、車両等の工事実施計画(その3)及び変更の認可を受けました。 品川・名古屋間の開業時期(工事の完了の予定時期)については、工事実施計画(その1)及び同(その2)において、令和9年(2027年)として認可を得ました。一方、南アルプストンネル静岡工区においては、静岡県の理解が得られず、トンネル掘削工事に着手できない状態が続いています。このため、令和9年(2027年)の開業は困難であり、新たな開業時期を見通すことができない状況を踏まえ、令和5年12月に、工事の完了の予定時期を令和9年(2027年)以降とした工事実施計画(その3)及び変更の認可を受けました。その後、令和6年3月に開催された国土交通省の「第2回リニア中央新幹線静岡工区モニタリング会議」で、静岡工区の工事計画を示し、工事契約締結から既に6年4か月が経過している静岡工区が品川・名古屋間の開業の遅れに直結しており、令和9年(2027年)の開業は実現できない旨を説明しました。引き続き、静岡工区のトンネル掘削工事の早期着手、さらには品川・名古屋間の早期開業に向けて取り組みます。 名古屋・大阪間については、品川・名古屋間と同様に、工事に着手する前段の環境影響評価法の手続きの中でルートの絞り込みや駅位置の選定を行い、工事費等を精査した上で、工事実施計画の認可申請を行います。これらは品川・名古屋間の開業が近づいた際に行う計画ですが、その時点で合理的と考えられる前提条件の下で健全経営と安定配当を堅持できることを確認した上で工事を進めます。 大阪までの全線開業については、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり実施した長期試算見通しにおいて、品川・名古屋間の開業後、大阪への工事に着手するまでに必要となる経営体力回復期間を設けることなどを前提として試算を行った結果、開業時期は令和27年(2045年)となりました。その後、政府からの提案を受け、鉄道・運輸機構から財政投融資を活用した総額3兆円の長期借入を行ったことを踏まえ、経営の自由及び投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けによる経営リスクの低減を活かし、全線開業までの期間の最大8年前倒しを目指すこととしました。品川・名古屋間について、令和9年(2027年)の開業は実現できず、新たな開業時期を見通すことができない状況ですが、品川・名古屋間の開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手する方針に変更はありません。 今後とも、健全経営と安定配当を堅持しつつ、中央新幹線の早期開業を目指して、計画を推進していきます。 中央新幹線の建設は当社の自己負担で進め、工事費に充てる資金は、営業キャッシュ・フローを主体に、不足分について返済可能な借入資金によって賄っていきます。プロジェクトの推進にあたり、例えば、次のようなリスクが考えられ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 ⅰ 建設資材の高騰等による工事費の増大 ⅱ 難工事その他による工事遅延・完成時期の遅れ ⅲ 金利上昇 ⅳ 経済停滞、人口減少による収入減 ⅴ 他輸送機関との競合による収入減 ⅵ 社会全体の物価上昇 ⅶ 訴訟の提起 このうち、ⅰからⅵの経費増、収入減を伴うリスクに対しては、工事のペースを調整し、債務縮減により経営体力回復のための時間調整を行うことにより、健全経営と安定配当を堅持し、計画を完遂します。 ⅶの訴訟については、工事実施計画認可の取消しを国に求める行政訴訟、工事差止め等を求める民事訴訟が提起されています。 ≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線
FY2023|10,989 文字
3【事業等のリスク】 当社グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。(1) 事業に係る法律関連事項① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号) 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。 これらの法的規制が変更された場合には、規制を遵守するための費用の増加や事業活動の制限により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号) 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が平成13年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は平成13年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。 なお、当社はこれまでも指針に定められた事項に沿った事業運営を行ってきており、この指針は今後の当社の事業運営に大きな影響を及ぼすものではないと考えております。(2) 運賃及び料金の設定又は変更① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。 また、上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。 これらの手続きが変更される場合、また物価上昇時等において何らかの理由により手続きに基づいた運賃・料金の変更を機動的に行えない場合には、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。 鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっています。 (注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きです。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められています。2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められています。 なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、旅客運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしています。② 運賃改定に対する当社の考え方a 当社では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月、平成9年4月、平成26年4月及び令和元年10月)を除くと、これまで運賃改定を実施していません。 大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。当社の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保しうるような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えています。b 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する利益配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えています。③ 国土交通省の考え方 当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。a 東海旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。総括原価=営業費等(注1)+事業報酬・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注4) (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り、全産業平均自己資本利益率及び配当所要率の平均、他人資本報酬率は、借入金等の実績平均レートd なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、次のア又はイに該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。ア 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるときイ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき(3) 競合等 当社グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向等の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢及び少子高齢化等に伴う将来的な人口動態が、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 特に、当社グループの主力事業である東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善など航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。 以上のような競合等に対しては、安全・安定輸送の確保を最優先に、新幹線においては、「のぞみ12本ダイヤ」による適切な列車設定、新型車両N700Sの追加投入及びネット予約・チケットレス乗車サービスの拡大等に取り組むとともに、在来線においては、新形式の通勤型電車315系やハイブリッド方式を採用した新型特急車両HC85系を追加投入するなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。(4) 長期債務 昭和62年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。なお、4兆4,944億円の債務については、平成29年1月に返済を完了しています。(注) 保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。 また、平成28年11月に、中央新幹線の建設の推進のため、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(以下「鉄道・運輸機構法施行令」という。)に基づき、財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、平成29年7月までに、長期、固定かつ低利の中央新幹線建設長期借入金について、総額3兆円の借入を行い、金利上昇リスク、資金調達リスク、償還リスクを低減しました。 これらを含めた連結長期債務残高は、当期末現在で4兆9,498億円、そのうち中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆9,498億円となっており、当期の支払利息は791億円となっています。 今後の金利動向により調達金利が変動する場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、引き続き調達手段の多様化や低利かつ安定的な資金の確保に努めてまいります。(5) 自然災害等 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害、テロの発生、感染症の流行等により大きな影響が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 なお、鉄道インフラについて当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等に対する設備強化に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などにおける他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚については必要な箇所の耐震補強を完了し、高架橋柱及び盛土の耐震補強は開発案件等と関係する一部を除き完了しました。そのほか、脱線・逸脱防止対策をはじめとする設備の強化など、より一層安定した輸送を確保するための設備強化を積極的に進めています。また、在来線においても、輸送の安全確保のため、構造物等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施しています。さらに、感染症の流行に対しては、お客様及び社員への感染拡大防止を徹底しながら十分な輸送力の確保に努めるなど、鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを行っています。 (6) 安全対策 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、当社の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線では、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全・安定輸送の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)の導入を行うなど、より一層の安全性向上に努めてきました。 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(24件)は会社発足初年度である昭和62年度(60件)と比較して大幅に減少しました。(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護 当社グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、サイバー攻撃や自然災害、人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合等には、当社グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社グループでは、障害対策として、日常より最新の技術動向等を勘案しながら自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに、関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。(8) 超電導リニアによる中央新幹線 当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。 現在この役割を担う東海道新幹線は開業から半世紀以上が経過しており、早急に大動脈輸送を二重系化し、将来の経年劣化や大規模災害に対して抜本的に備える必要があります。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。 このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。また、工事費全般について、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的にコストダウンを図るとともに、開業後の運営費の圧縮に取り組みます。その上で、まずは工事実施計画の認可を受けた東京都・名古屋市間を実現し、さらに、大阪市まで実現することとしています。 当社は、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。 また、平成19年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。 その後、全幹法の手続きが進み、平成23年5月、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会が、中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業主体等として当社を指名することが適当であること及び整備計画について下表のとおりとすることが適当であることを答申しました。国土交通大臣は、これを踏まえ、同5月、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て、下表の整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。 【整備計画の内容】 建設線 中央新幹線 区間 東京都・大阪市 走行方式 超電導磁気浮上方式 最高設計速度 505キロメートル/時 建設に要する費用の概算額 (車両費を含む。) 90,300億円 その他必要な事項 主要な経過地 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス) 中南部、名古屋市附近、奈良市附近 (注) 建設に要する費用の概算額には、山梨リニア実験線既設分及び利子を含みません。 これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法に基づき、環境アセスメントの手続きを進め、平成23年6月及び8月の計画段階環境配慮書の公表、同9月の環境影響評価方法書の公告、平成25年9月の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)の公告を経て、平成26年3月に沿線7都県の知事から受け取った準備書に対する意見を勘案し、同4月に国土交通大臣に環境影響評価書(以下「評価書」という。)を送付しました。その後、同7月に国土交通大臣から受け取った評価書に対する意見を勘案し、同8月、最終的な評価書を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。 当社は、環境アセスメントの手続きと並行して、全幹法第9条に基づく工事実施計画の認可申請に必要な準備を進め、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、土木構造物を中心とした品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、その後工事を開始しました。また、平成28年11月には、鉄道・運輸機構法施行令に基づき、鉄道・運輸機構に対して、中央新幹線の建設の推進のため、財政投融資を活用した長期借入の申請を行い、平成29年7月までに総額3兆円を借り入れました。 当社としては、経営の自由、投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けを受けることにより経営のリスクが低減され、品川・名古屋間開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手し、全線開業までの期間を最大8年間前倒すことを目指して、建設を推進します。 その後、平成30年3月には、電気設備等を含む品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の認可を受けました。品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の概要は以下のとおりです。 1.区 間 品川・名古屋間 2.駅の位置 品川駅 (併設:東京都港区港南) 神奈川県(仮称)駅 (新設:神奈川県相模原市緑区橋本) 山梨県(仮称)駅 (新設:山梨県甲府市大津町字入田) 長野県(仮称)駅 (新設:長野県飯田市上郷飯沼) 岐阜県(仮称)駅 (新設:岐阜県中津川市千旦林字坂本) 名古屋駅 (併設:愛知県名古屋市中村区名駅) 3.車両基地の位置 関東車両基地(仮称)(新設:神奈川県相模原市緑区鳥屋) 中部総合車両基地(仮称)(新設:岐阜県中津川市千旦林) 4.線路延長 285.6km (構造物種別) トンネル:246.6km(約86%) 高 架 橋: 23.6km(約8%) 橋りょう: 11.3km(約4%) 路 盤: 4.1km(約2%) 5.線路の概要 最小曲線半径 8,000m 最急勾配 40‰ 軌道中心間隔 5.8m以上 6.工事費 4兆8,536億円 7.完成予定時期 令和9年 (注)今後申請を予定する車両、駅設備等を含む品川・名古屋間の総工事費(山梨リニア実験線既設分を除く) は、5兆5,235億円です。 上記の認可に基づき工事を進めている品川・名古屋間のうち、南アルプストンネル静岡工区においては、静岡県等の理解が得られず、トンネル掘削工事に着手できない状態が続いており、2027年の開業は難しい状況となっています。 こうした中、大井川の水資源への影響について、国土交通省の「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」が令和3年12月に取りまとめた「大井川水資源問題に関する中間報告」を踏まえて、主に、地域へのわかりやすい説明、リスク対応とモニタリングの具体化、工事の一定期間、例外的に県外へ流出するトンネル湧水量と同量を大井川に戻す方策の検討の3点に取り組んでいます。また、南アルプスの生態系等の環境保全については、令和4年6月から有識者会議において議論が進められています。引き続き、地域の理解と協力を得られるよう、真摯に対応していきます。 また、工事を進める中で、品川駅・名古屋駅の両ターミナル等の個別の工事案件によっては、当初の想定額を超えるものが発生したことにより、工事費の増加を見込むこととなりました。その一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で、経営環境が急激に悪化したことから、令和3年4月に、工事に必要な資金計画と健全経営の確保を確認するため、品川・名古屋間全体の工事費の見通しについて、合理的と考えられる要素を盛り込んで精査を進めたところ、総工事費が品川・名古屋間の工事実施計画(その2)時の見込み額5.52兆円を上回り、7.04兆円となる見通しとなりました。工事費増の理由は、難工事への対応、地震対策の充実、発生土の活用先確保等です。 今後も経営に関しては、これまでと同様に健全経営と安定配当を堅持することを優先し、工事費に充てる資金は営業キャッシュ・フローを主体に、不足分について返済可能な借入資金によって賄っていきます。仮に健全経営と安定配当を堅持できないと想定される場合には、工事のペースを調整し、十分に経営体力を回復することで、工事の完遂を目指します。 参考として、工事の完遂に必要な資金の確保を確認するため、現実的に想定しうるペースで収益が回復した場合に、一定の合理的な前提をおいて営業キャッシュ・フローを算出し、これに新規の資金調達約1兆円を加えれば、品川・名古屋間の建設に充当できる資金の累計が、令和10年度中には、算出した総工事費の見通し額7.04兆円を上回ることを確認しました。なお、これは開業の目標時期を新たに設定したものではなく、あくまで参考として、一定の前提の下での資金確保の状況を試算したものです。 今後とも、健全経営と安定配当を堅持しつつ、中央新幹線の早期実現を目指して、計画を推進していきます。 なお、中央新幹線(東京都・大阪市間)の建設を進めるにあたっては、例えば、次のようなリスクが考えられ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 ⅰ 建設資材の高騰等による工事費の増大 ⅱ 難工事その他による工事遅延・完成時期の遅れ ⅲ 金利上昇 ⅳ 経済停滞、人口減少による収入減 ⅴ 他輸送機関との競合による収入減 ⅵ 社会全体の物価上昇 ⅶ 訴訟の提起 こうした経費増、収入減を伴うⅰからⅵまでのリスクに対しては、工事のペースを調整し、債務縮減により経営体力回復のための時間調整を行うことにより、健全経営と安定配当を堅持し、計画を完遂します。 なお、ⅶの訴訟については、工事実施計画認可の取消しを国に求める行政訴訟、工事差止め等を求める民事訴訟が提起されています。 ≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線
FY2022|10,949 文字
2【事業等のリスク】 当社グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。(1) 事業に係る法律関連事項① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号) 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。 これらの法的規制が変更された場合には、規制を遵守するための費用の増加や事業活動の制限により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号) 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が平成13年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は平成13年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。 なお、当社はこれまでも指針に定められた事項に沿った事業運営を行ってきており、この指針は今後の当社の事業運営に大きな影響を及ぼすものではないと考えております。(2) 運賃及び料金の設定又は変更① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。 また、上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。 これらの手続きが変更される場合、また物価上昇時等において何らかの理由により手続きに基づいた運賃・料金の変更を機動的に行えない場合には、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。 鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっています。 (注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きです。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められています。2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められています。 なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、旅客運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしています。② 運賃改定に対する当社の考え方a 当社では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月、平成9年4月、平成26年4月及び令和元年10月)を除くと、これまで運賃改定を実施していません。 大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。当社の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えています。b 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する利益配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えています。③ 国土交通省の考え方 当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。a 東海旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。総括原価=営業費等(注1)+事業報酬・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注4) (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り、全産業平均自己資本利益率及び配当所要率の平均、他人資本報酬率は、借入金等の実績平均レートd なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、次のア又はイに該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。ア 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるときイ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき(3) 競合等 当社グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向等の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢及び少子高齢化等に伴う将来的な人口動態が、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 特に、当社グループの主力事業である東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善など航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。 以上のような競合等に対しては、安全・安定輸送の確保を最優先に、新幹線においては、「のぞみ12本ダイヤ」による適切な列車設定、新型車両N700Sの追加投入及びネット予約・チケットレス乗車サービスの拡大等に取り組むとともに、在来線においては、新形式の通勤型電車315系の追加投入やハイブリッド方式を採用した新型特急車両HC85系の営業運転を開始するなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。(4) 長期債務 昭和62年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。なお、4兆4,944億円の債務については、平成29年1月に返済を完了しています。(注) 保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。 また、平成28年11月に、中央新幹線の建設の推進のため、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(以下「鉄道・運輸機構法施行令」という。)に基づき、財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、平成29年7月までに、長期、固定かつ低利の中央新幹線建設長期借入金について、総額3兆円の借入を行い、金利上昇リスク、資金調達リスク、償還リスクを低減しました。 これらを含めた連結長期債務残高は、当期末現在で4兆9,416億円、そのうち中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆9,416億円となっており、当期の支払利息は790億円となっています。 今後の金利動向により調達金利が変動する場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、引き続き調達手段の多様化や低利かつ安定的な資金の確保に努めてまいります。(5) 自然災害等 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害、テロの発生、感染症の流行等により大きな影響が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 なお、鉄道インフラについて当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等に対する設備強化に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などにおける他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚については必要な箇所の耐震補強を完了し、高架橋柱及び盛土の耐震補強は開発案件等と関係する一部を除き完了しました。そのほか、脱線・逸脱防止対策をはじめとする設備の強化など、より一層安定した輸送を確保するための設備強化を積極的に進めています。また、在来線においても、輸送の安全確保のため、構造物等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施しています。さらに、感染症の流行に対しては、お客様及び社員への感染拡大防止を徹底しながら十分な輸送力の確保に努めるなど、鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを行っています。 (6) 安全対策 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、当社の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線では、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全・安定輸送の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)の導入を行うなど、より一層の安全性向上に努めてきました。 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(25件)は会社発足初年度である昭和62年度(60件)と比較して大幅に減少しました。(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護 当社グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、サイバー攻撃や自然災害、人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合等には、当社グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社グループでは、障害対策として、日常より最新の技術動向等を勘案しながら自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに、関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。(8) 超電導リニアによる中央新幹線 当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。 現在この役割を担う東海道新幹線は開業から半世紀以上が経過しており、鉄道路線の建設・実現に長い期間を要することを踏まえれば、早急に大動脈輸送を二重系化し、将来の経年劣化や大規模災害に対して抜本的に備える必要があります。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。 このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。また、工事費全般について、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的にコストダウンを図るとともに、開業後の運営費の圧縮に取り組みます。その上で、まずは工事実施計画の認可を受けた東京都・名古屋市間を実現し、さらに、大阪市まで実現することとしています。 当社は、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。 また、平成19年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。 その後、全幹法の手続きが進み、平成23年5月、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会が、中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業主体等として当社を指名することが適当であること及び整備計画について下表のとおりとすることが適当であることを答申しました。国土交通大臣は、これを踏まえ、同5月、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て、下表の整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。 【整備計画の内容】 建設線 中央新幹線 区間 東京都・大阪市 走行方式 超電導磁気浮上方式 最高設計速度 505キロメートル/時 建設に要する費用の概算額 (車両費を含む。) 90,300億円 その他必要な事項 主要な経過地 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス) 中南部、名古屋市附近、奈良市附近 (注) 建設に要する費用の概算額には、山梨リニア実験線既設分及び利子を含みません。 これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法に基づき、環境アセスメントの手続きを進め、平成23年6月及び8月の計画段階環境配慮書の公表、同9月の環境影響評価方法書の公告、平成25年9月の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)の公告を経て、平成26年3月に沿線7都県の知事から受け取った準備書に対する意見を勘案し、同4月に国土交通大臣に環境影響評価書(以下「評価書」という。)を送付しました。その後、同7月に国土交通大臣から受け取った評価書に対する意見を勘案し、同8月、最終的な評価書を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。 当社は、環境アセスメントの手続きと並行して、全幹法第9条に基づく工事実施計画の認可申請に必要な準備を進め、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、土木構造物を中心とした品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、その後工事を開始しました。また、平成28年11月には、鉄道・運輸機構法施行令に基づき、鉄道・運輸機構に対して、中央新幹線の建設の推進のため、財政投融資を活用した長期借入の申請を行い、平成29年7月までに総額3兆円を借り入れました。 当社としては、経営の自由、投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けを受けることにより経営のリスクが低減され、品川・名古屋間開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手し、全線開業までの期間を最大8年間前倒すことを目指して、建設を推進します。 その後、平成30年3月には、電気設備等を含む品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の認可を受けました。品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の概要は以下のとおりです。 1.区 間 品川・名古屋間 2.駅の位置 品川駅 (併設:東京都港区港南) 神奈川県(仮称)駅 (新設:神奈川県相模原市緑区橋本) 山梨県(仮称)駅 (新設:山梨県甲府市大津町字入田) 長野県(仮称)駅 (新設:長野県飯田市上郷飯沼) 岐阜県(仮称)駅 (新設:岐阜県中津川市千旦林字坂本) 名古屋駅 (併設:愛知県名古屋市中村区名駅) 3.車両基地の位置 関東車両基地(仮称)(新設:神奈川県相模原市緑区鳥屋) 中部総合車両基地(仮称)(新設:岐阜県中津川市千旦林) 4.線路延長 285.6km (構造物種別) トンネル:246.6km(約86%) 高 架 橋: 23.6km(約8%) 橋りょう: 11.3km(約4%) 路 盤: 4.1km(約2%) 5.線路の概要 最小曲線半径 8,000m 最急勾配 40‰ 軌道中心間隔 5.8m以上 6.工事費 4兆8,536億円 7.完成予定時期 令和9年 (注)今後申請を予定する車両、駅設備等を含む品川・名古屋間の総工事費(山梨リニア実験線既設分を除く) は、5兆5,235億円です。 上記の認可に基づき工事を進めている品川・名古屋間のうち、南アルプストンネル静岡工区において、大井川の水資源への影響について、静岡県、流域市町等の理解が得られず、トンネル掘削工事に着手できない状態が続いており、2027年の開業は難しい状況となっています。 こうした中、科学的・工学的な議論を行うことを通して問題の解決を図るため、令和2年4月に国土交通省主催の「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」が設置され、令和3年12月に「大井川水資源問題に関する中間報告」が取りまとめられました。引き続き、有識者会議の中間報告を踏まえて、地域の理解と協力を得られるよう、真摯に対応していきます。 また、工事を進める中で、品川駅・名古屋駅の両ターミナル等の個別の工事案件によっては、当初の想定額を超えるものが発生したことにより、工事費の増加を見込むこととなりました。その一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で、経営環境が急激に悪化したことから、令和3年4月に、工事に必要な資金計画と健全経営の確保を確認するため、品川・名古屋間全体の工事費の見通しについて、合理的と考えられる要素を盛り込んで精査を進めたところ、総工事費が品川・名古屋間の工事実施計画(その2)時の見込み額5.52兆円を上回り、7.04兆円となる見通しとなりました。工事費増の理由は、難工事への対応、地震対策の充実、発生土の活用先確保等です。 今後も経営に関しては、これまでと同様に健全経営と安定配当を堅持することを優先し、工事費に充てる資金は営業キャッシュ・フローを主体に、不足分について返済可能な借入資金によって賄っていきます。仮に健全経営と安定配当を堅持できないと想定される場合には、工事のペースを調整し、十分に経営体力を回復することで、工事の完遂を目指します。 参考として、工事の完遂に必要な資金の確保を確認するため、現実的に想定しうるペースで収益が回復した場合に、一定の合理的な前提をおいて営業キャッシュ・フローを算出し、これに新規の資金調達約1兆円を加えれば、品川・名古屋間の建設に充当できる資金の累計が、令和10年度中には、算出した総工事費の見通し額7.04兆円を上回ることを確認しました。なお、これは開業の目標時期を新たに設定したものではなく、あくまで参考として、一定の前提の下での資金確保の状況を試算したものです。 今後とも、健全経営と安定配当を堅持しつつ、中央新幹線の早期実現を目指して、計画を推進していきます。 なお、中央新幹線(東京都・大阪市間)の建設を進めるにあたっては、例えば、次のようなリスクが考えられ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 ⅰ 建設資材の高騰等による工事費の増大 ⅱ 難工事その他による工事遅延・完成時期の遅れ ⅲ 金利上昇 ⅳ 経済停滞、人口減少による収入減 ⅴ 他輸送機関との競合による収入減 ⅵ 社会全体の物価上昇 ⅶ 訴訟の提起 こうした経費増、収入減を伴うⅰからⅵまでのリスクに対しては、工事のペースを調整し、債務縮減により経営体力回復のための時間調整を行うことにより、健全経営と安定配当を堅持し、計画を完遂します。 なお、ⅶの訴訟については、工事実施計画認可の取消しを国に求める行政訴訟、工事差止め等を求める民事訴訟が提起されています。 ≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線
FY2021|10,894 文字
2【事業等のリスク】 当社グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。(1) 事業に係る法律関連事項① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号) 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。 これらの法的規制が変更された場合には、規制を遵守するための費用の増加や事業活動の制限により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号) 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が平成13年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は平成13年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。 なお、当社はこれまでも指針に定められた事項に沿った事業運営を行ってきており、この指針は今後の当社の事業運営に大きな影響を及ぼすものではないと考えております。(2) 運賃及び料金の設定又は変更① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。 また、上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。 これらの手続きが変更される場合、また物価上昇時等において何らかの理由により手続きに基づいた運賃・料金の変更を機動的に行えない場合には、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。 鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっています。 (注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きです。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められています。2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められています。 なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、旅客運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしています。② 運賃改定に対する当社の考え方a 当社では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月、平成9年4月、平成26年4月及び令和元年10月)を除くと、これまで運賃改定を実施していません。 大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。当社の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えています。b 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する利益配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えています。③ 国土交通省の考え方 当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。a 東海旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。総括原価=営業費等(注1)+事業報酬・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注4) (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り、全産業平均自己資本利益率及び配当所要率の平均、他人資本報酬率は、借入金等の実績平均レートd なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、次のア又はイに該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。ア 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるときイ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき(3) 競合等 当社グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向等の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢及び少子高齢化等に伴う将来的な人口動態が、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 特に、当社グループの主力事業である東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善など航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。 以上のような競合等に対しては、安全・安定輸送の確保を最優先に、新幹線においては、「のぞみ12本ダイヤ」による適切な列車設定、新型車両N700Sの投入及びネット予約・チケットレス乗車サービスの拡大等に取り組むとともに、在来線においては、新形式の通勤型電車315系の営業運転を開始するなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。(4) 長期債務 昭和62年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。なお、4兆4,944億円の債務については、平成29年1月に返済を完了しています。(注) 保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。 また、平成28年11月に、中央新幹線の建設の推進のため、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(以下「鉄道・運輸機構法施行令」という。)に基づき、財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、平成29年7月までに、長期、固定かつ低利の中央新幹線建設長期借入金について、総額3兆円の借入を行い、金利上昇リスク、資金調達リスク、償還リスクを低減しました。 これらを含めた連結長期債務残高は、当期末現在で4兆9,326億円、そのうち中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆9,326億円となっており、当期の支払利息は792億円となっています。 今後の金利動向により調達金利が変動する場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、引き続き調達手段の多様化や低利かつ安定的な資金の確保に努めてまいります。(5) 自然災害等 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害、テロの発生、感染症の流行等により大きな影響が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 なお、鉄道インフラについて当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等に対する設備強化に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などにおける他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚については必要な箇所の耐震補強を完了し、高架橋柱及び盛土の耐震補強は開発案件等と関係する一部を除き完了しました。そのほか、脱線・逸脱防止対策をはじめとする設備の強化など、より一層安定した輸送を確保するための設備強化を積極的に進めています。また、在来線においても、輸送の安全確保のため、構造物等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施しています。さらに、感染症の流行に対しては、お客様及び社員への感染拡大防止を徹底しながら十分な輸送力の確保に努めるなど、鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを行っています。(6) 安全対策 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、当社の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線では、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全・安定輸送の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)の導入を行うなど、より一層の安全性向上に努めてきました。 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(19件)は会社発足初年度である昭和62年度(60件)と比較して大幅に減少しました。(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護 当社グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、サイバー攻撃や自然災害、人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合等には、当社グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社グループでは、障害対策として、日常より最新の技術動向等を勘案しながら自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに、関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。(8) 超電導リニアによる中央新幹線 当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。 現在この役割を担う東海道新幹線は、平成26年10月に開業50年を迎え、鉄道路線の建設・実現に長い期間を要することを踏まえれば、将来の経年劣化や大規模災害に対する抜本的な備えを考えなければならない時期にきています。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。 このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。また、工事費全般について、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的にコストダウンを図るとともに、開業後の運営費の圧縮に取り組みます。その上で、まずは工事実施計画の認可を受けた東京都・名古屋市間を実現し、さらに、大阪市まで実現することとしています。 当社は、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。 また、平成19年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。 その後、全幹法の手続きが進み、平成23年5月、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会が、中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業主体等として当社を指名することが適当であること及び整備計画について下表のとおりとすることが適当であることを答申しました。国土交通大臣は、これを踏まえ、同5月、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て、下表の整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。【整備計画の内容】 建設線 中央新幹線 区間 東京都・大阪市 走行方式 超電導磁気浮上方式 最高設計速度 505キロメートル/時 建設に要する費用の概算額 (車両費を含む。) 90,300億円 その他必要な事項 主要な経過地 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス) 中南部、名古屋市附近、奈良市附近 (注) 建設に要する費用の概算額には、山梨リニア実験線既設分及び利子を含みません。 これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法に基づき、環境アセスメントの手続きを進め、平成23年6月及び8月の計画段階環境配慮書の公表、同9月の環境影響評価方法書の公告、平成25年9月の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)の公告を経て、平成26年3月に沿線7都県の知事から受け取った準備書に対する意見を勘案し、同4月に国土交通大臣に環境影響評価書(以下「評価書」という。)を送付しました。その後、同7月に国土交通大臣から受け取った評価書に対する意見を勘案し、同8月、最終的な評価書を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。 当社は、環境アセスメントの手続きと並行して、全幹法第9条に基づく工事実施計画の認可申請に必要な準備を進め、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、土木構造物を中心とした品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、その後工事を開始しました。また、平成28年11月には、鉄道・運輸機構法施行令に基づき、鉄道・運輸機構に対して、中央新幹線の建設の推進のため、財政投融資を活用した長期借入の申請を行い、平成29年7月までに総額3兆円を借り入れました。 当社としては、経営の自由、投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けを受けることにより経営のリスクが低減され、品川・名古屋間開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手し、全線開業までの期間を最大8年間前倒すことを目指して、建設を推進します。 その後、平成30年3月には、電気設備等を含む品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の認可を受けました。品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の概要は以下のとおりです。 1.区 間 品川・名古屋間 2.駅の位置 品川駅 (併設:東京都港区港南) 神奈川県(仮称)駅 (新設:神奈川県相模原市緑区橋本) 山梨県(仮称)駅 (新設:山梨県甲府市大津町字入田) 長野県(仮称)駅 (新設:長野県飯田市上郷飯沼) 岐阜県(仮称)駅 (新設:岐阜県中津川市千旦林字坂本) 名古屋駅 (併設:愛知県名古屋市中村区名駅) 3.車両基地の位置 関東車両基地(仮称)(新設:神奈川県相模原市緑区鳥屋) 中部総合車両基地(仮称)(新設:岐阜県中津川市千旦林) 4.線路延長 285.6km (構造物種別) トンネル:246.6km(約86%) 高 架 橋: 23.6km(約8%) 橋りょう: 11.3km(約4%) 路 盤: 4.1km(約2%) 5.線路の概要 最小曲線半径 8,000m 最急勾配 40‰ 軌道中心間隔 5.8m以上 6.工事費 4兆8,536億円 7.完成予定時期 令和9年 (注)今後申請を予定する車両、駅設備等を含む品川・名古屋間の総工事費(山梨リニア実験線既設分を除く) は、5兆5,235億円です。 上記の認可に基づき工事を進めている品川・名古屋間のうち、特に長期間の工期が必要となる南アルプストンネルについては、静岡工区において、大井川の水資源への影響について、静岡県、流域市町等の理解が得られず、実質的に工事が進捗しない状態が続いており、2027年の開業は難しい状況となっています。 こうしたなか、科学的・工学的な議論を行うことを通して問題の解決を図るため、令和2年4月に国土交通省主催の「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」が設置され、議論が進められています。引き続き、この会議に真摯に対応することにより、大井川流域の方々の懸念を解消することに努めます。 また、工事を進める中で、品川駅・名古屋駅の両ターミナル等の個別の工事案件によっては、当初の想定額を超えるものが発生したことにより、工事費の増加を見込むこととなりました。その一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で、経営環境が急激に悪化したことから、工事に必要な資金計画と健全経営の確保を確認するため、品川・名古屋間全体の工事費の見通しについて、合理的と考えられる要素を盛り込んで精査を進めたところ、総工事費が品川・名古屋間の工事実施計画(その2)時の見込み額5.52兆円を上回り、7.04兆円となる見通しとなりました。工事費増の理由は、難工事への対応、地震対策の充実、発生土の活用先確保等です。 今後の経営に関しては、今までと同様に健全経営と安定配当を堅持することを優先し、工事費に充てる資金は営業キャッシュ・フローを主体に、不足分について返済可能な借入資金によって賄っていきます。仮に健全経営と安定配当を堅持できないと想定される場合には、工事のペースを調整し、十分に経営体力を回復することで、工事の完遂を目指します。 参考として、工事の完遂に必要な資金の確保を確認するため、現実的に想定しうるペースで収益が回復した場合に、一定の合理的な前提をおいて営業キャッシュ・フローを算出し、これに新規の資金調達約1兆円を加えれば、品川・名古屋間の建設に充当できる資金の累計が、令和10年度中には、算出した総工事費の見通し額7.04兆円を上回ることを確認しました。なお、これは開業の目標時期を新たに設定したものではなく、あくまで参考として、一定の前提の下での資金確保の状況を試算したものです。 今後とも、健全経営と安定配当を堅持しつつ、中央新幹線の早期実現を目指して、計画を推進していきます。 なお、中央新幹線(東京都・大阪市間)の建設を進めるにあたっては、例えば、次のようなリスクが考えられ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 ⅰ 建設資材の高騰等による工事費の増大 ⅱ 難工事その他による工事遅延・完成時期の遅れ ⅲ 金利上昇 ⅳ 経済停滞、人口減少による収入減 ⅴ 他輸送機関との競合による収入減 ⅵ 社会全体の物価上昇 ⅶ 訴訟の提起 こうした経費増、収入減を伴うⅰからⅵまでのリスクに対しては、工事のペースを調整し、債務縮減により経営体力回復のための時間調整を行うことにより、健全経営と安定配当を堅持し、計画を完遂します。 なお、ⅶの訴訟については、工事実施計画認可の取消しを国に求める行政訴訟、工事差止め等を求める民事訴訟が提起されています。 ≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線
FY2020|10,232 文字
2【事業等のリスク】 当社グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。(1) 事業に係る法律関連事項① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号) 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。 これらの法的規制が変更された場合には、規制を遵守するための費用の増加や事業活動の制限により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号) 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が平成13年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は平成13年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。 なお、当社はこれまでも指針に定められた事項に沿った事業運営を行ってきており、この指針は今後の当社の事業運営に大きな影響を及ぼすものではないと考えております。(2) 運賃及び料金の設定又は変更① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。 また、上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。 これらの手続きが変更される場合、また物価上昇時等において何らかの理由により手続きに基づいた運賃・料金の変更を機動的に行えない場合には、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。 鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっています。 (注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きです。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められています。2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められています。 なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、旅客運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしています。② 運賃改定に対する当社の考え方a 当社では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月、平成9年4月、平成26年4月及び令和元年10月)を除くと、これまで運賃改定を実施していません。 大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。当社の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えています。b 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する利益配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えています。③ 国土交通省の考え方 当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。a 東海旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。総括原価=営業費等(注1)+事業報酬・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注4) (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り、全産業平均自己資本利益率及び配当所要率の平均、他人資本報酬率は、借入金等の実績平均レートd なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、次のア又はイに該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。ア 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるときイ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき(3) 競合等 当社グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向等の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢及び少子高齢化等に伴う将来的な人口動態が、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 特に、当社グループの主力事業であり、当社グループの営業収益の約7割の運輸収入をあげる東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善など航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。 以上のような競合等に対しては、安全・安定輸送の確保を最優先に、新幹線においては、「のぞみ12本ダイヤ」による弾力的な列車設定、新型車両N700Sの投入及びネット予約・チケットレス乗車サービスの拡大等に取り組むとともに、在来線においては、「しなの」、「ひだ」等の特急列車について、需要に合わせ弾力的に増発や増結を行うなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。(4) 長期債務 昭和62年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。なお、4兆4,944億円の債務については、平成29年1月に返済を完了しています。(注) 保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。 また、平成28年11月に、中央新幹線の建設の推進のため、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(以下「鉄道・運輸機構法施行令」という。)に基づき、財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、平成29年7月までに、長期、固定かつ低利の中央新幹線建設長期借入金について、総額3兆円の借入を行い、金利上昇リスク、資金調達リスク、償還リスクを低減しました。 これらを含めた連結長期債務残高は、当期末現在で4兆8,460億円、そのうち中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆8,460億円となっています。また、当期の支払利息は799億円であり、これは営業利益の12.2%に相当します。 今後の金利動向により調達金利が変動する場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、引き続き調達手段の多様化や低利かつ安定的な資金の確保に努めてまいります。(5) 自然災害等 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害、テロの発生、新たな感染症の流行等により大きな影響が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 なお、鉄道インフラについて当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等に対する設備強化に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などにおける他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚については必要な箇所の耐震補強を完了し、高架橋柱及び盛土の耐震補強は開発案件等と関係する一部を除き完了しました。そのほか、脱線・逸脱防止対策をはじめとする設備の強化など、より一層安定した輸送を確保するための設備強化を積極的に進めています。また在来線においても、輸送の安全確保のため、構造物等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施するなど、自然災害等による鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを進めています。(6) 安全対策 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、当社の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線では、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全・安定輸送の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)の導入を行うなど、より一層の安全性向上に努めてきました。 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(17件)は会社発足初年度である昭和62年度(60件)と比較して大幅に減少しました。(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護 当社グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、サイバー攻撃や自然災害、人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合等には、当社グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 当社グループでは、障害対策として、日常より最新の技術動向等を勘案しながら自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに、関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。(8) 超電導リニアによる中央新幹線 当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。 現在この役割を担う東海道新幹線は、平成26年10月に開業50年を迎え、鉄道路線の建設・実現に長い期間を要することを踏まえれば、将来の経年劣化や大規模災害に対する抜本的な備えを考えなければならない時期にきています。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。 このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。また、工事費全般について、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的にコストダウンを図るとともに、開業後の運営費の圧縮に取り組みます。その上で、まずは工事実施計画の認可を受けた東京都・名古屋市間を実現し、さらに、大阪市まで実現することとしています。 当社は、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。 また、平成19年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。 その後、全幹法の手続きが進み、平成23年5月、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会が、中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業主体等として当社を指名することが適当であること及び整備計画について下表のとおりとすることが適当であることを答申しました。国土交通大臣は、これを踏まえ、同5月、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て、下表の整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。【整備計画の内容】 建設線 中央新幹線 区間 東京都・大阪市 走行方式 超電導磁気浮上方式 最高設計速度 505キロメートル/時 建設に要する費用の概算額 (車両費を含む。) 90,300億円 その他必要な事項 主要な経過地 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス) 中南部、名古屋市附近、奈良市附近 (注) 建設に要する費用の概算額には、山梨リニア実験線既設分及び利子を含みません。 これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法に基づき、環境アセスメントの手続きを進め、平成23年6月及び8月の計画段階環境配慮書の公表、同9月の環境影響評価方法書の公告、平成25年9月の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)の公告を経て、平成26年3月に沿線7都県の知事から受け取った準備書に対する意見を勘案し、同4月に国土交通大臣に環境影響評価書(以下「評価書」という。)を送付しました。その後、同7月に国土交通大臣から受け取った評価書に対する意見を勘案し、同8月、最終的な評価書を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。 当社は、環境アセスメントの手続きと並行して、全幹法第9条に基づく工事実施計画の認可申請に必要な準備を進め、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、土木構造物を中心とした品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、その後工事を開始しました。また、平成28年11月には、鉄道・運輸機構法施行令に基づき、鉄道・運輸機構に対して、中央新幹線の建設の推進のため、財政投融資を活用した長期借入の申請を行い、平成29年7月までに総額3兆円を借り入れました。 当社としては、経営の自由、投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けを受けることにより経営のリスクが低減され、品川・名古屋間開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手し、全線開業までの期間を最大8年間前倒すことを目指して、建設を推進します。 その後、平成30年3月には、電気設備等を含む品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の認可を受けました。品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の概要は以下のとおりです。 1.区 間 品川・名古屋間 2.駅の位置 品川駅 (併設:東京都港区港南) 神奈川県(仮称)駅 (新設:神奈川県相模原市緑区橋本) 山梨県(仮称)駅 (新設:山梨県甲府市大津町字入田) 長野県(仮称)駅 (新設:長野県飯田市上郷飯沼) 岐阜県(仮称)駅 (新設:岐阜県中津川市千旦林字坂本) 名古屋駅 (併設:愛知県名古屋市中村区名駅) 3.車両基地の位置 関東車両基地(仮称)(新設:神奈川県相模原市緑区鳥屋) 中部総合車両基地(仮称)(新設:岐阜県中津川市千旦林) 4.線路延長 285.6km (構造物種別) トンネル:246.6km(約86%) 高 架 橋: 23.6km(約8%) 橋りょう: 11.3km(約4%) 路 盤: 4.1km(約2%) 5.線路の概要 最小曲線半径 8,000m 最急勾配 40‰ 軌道中心間隔 5.8m以上 6.工事費 4兆8,536億円 7.完成予定時期 令和9年 (注)今後申請を予定する車両、駅設備等を含む品川・名古屋間の総工事費(山梨リニア実験線既設分を除く) は、5兆5,235億円です。 上記の認可に基づき工事を進めている品川・名古屋間のうち、特に長期間の工期が必要となる南アルプストンネルについては、静岡工区において、大井川の水に関する問題から、静岡県、流域市町等の理解が得られず、実質的に工事が進捗しない状態が続いています。このままの状態が続けば、開業時期に影響を及ぼしかねないことから、令和元年5月以降、その旨を繰り返し表明していますが、時間の経過とともに、状況は一段と厳しくなってきています。 こうしたなか、令和2年4月、国土交通省において、この問題について、科学的・工学的な議論を行うことを通して解決を図るため、「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」が設置されました。当社は、この会議に真摯に対応することにより、地域の不安を解消し、問題の早期解決に努めているところです。 中央新幹線(東京都・大阪市間)の建設を進めるにあたっては、例えば、次のようなリスクが考えられ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。 ⅰ 建設資材の高騰等による工事費の増大 ⅱ 難工事その他による工事遅延・完成時期の遅れ ⅲ 金利上昇 ⅳ 経済停滞、人口減少による収入減 ⅴ 他輸送機関との競合による収入減 ⅵ 社会全体の物価上昇 ⅶ 訴訟の提起 こうした経費増、収入減を伴うⅰからⅵまでのリスクに対しては、工事のペースを調整し、債務縮減により経営体力回復のための時間調整を行うことにより、健全経営と安定配当を堅持し、計画を完遂します。 なお、ⅶの訴訟については、工事実施計画認可の取消しを国に求める行政訴訟、工事差止め等を求める民事訴訟が提起されています。 ≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線
FY2019|9,228 文字
2【事業等のリスク】 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。(1) 事業に係る法律関連事項① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号) 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号) 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が平成13年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は平成13年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。 そのほか、JR会社法改正法の施行日前に本州旅客会社が発行した社債について、JR会社法第4条の一般担保の規定が施行日以後も効力を有する(附則第7条)とするなど、一定の経過措置が定められています。(2) 運賃及び料金の設定又は変更① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。 また、上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。 鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっています。 (注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きです。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められています。2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められています。 なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、旅客運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしています。② 運賃改定に対する当社の考え方a 当社では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月、平成9年4月及び平成26年4月)を除くと、これまで運賃改定を実施していません。 大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。当社の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えています。b 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する利益配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えています。③ 国土交通省の考え方 当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。a 東海旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。総括原価=営業費等(注1)+事業報酬・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注4) (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り、全産業平均自己資本利益率及び配当所要率の平均、他人資本報酬率は、借入金等の実績平均レートd なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、次のア又はイに該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。ア 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるときイ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき(3) 競合等 当社グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢等が、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。 特に、当社グループの主力事業であり、当社グループの営業収益の約7割の運輸収入をあげる東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善など航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。(4) 長期債務 昭和62年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。なお、4兆4,944億円の債務については、平成29年1月に返済を完了しています。(注) 保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。 また、平成28年11月に、中央新幹線の建設の推進のため、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(以下「鉄道・運輸機構法施行令」という。)に基づき、財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、平成29年7月までに、長期、固定かつ低利の中央新幹線建設長期借入金について、総額3兆円の借入を行いました。 これらを含めた連結長期債務残高は、当期末現在で4兆8,511億円、そのうち中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆8,511億円となっています。また、当期の支払利息は807億円であり、これは営業利益の11.4%に相当します。(5) 自然災害等 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害やテロ等により大きな影響が生じる可能性があります。 なお、鉄道インフラについて当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等に対する設備強化に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などにおける他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚については必要な箇所の耐震補強を完了し、高架橋柱及び盛土の耐震補強は開発案件等と関係する一部を除き完了しました。そのほか、脱線・逸脱防止対策をはじめとする設備の強化など、より一層安定した輸送を確保するための設備強化を積極的に進めています。また在来線においても、輸送の安全確保のため、構造物等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施するなど、自然災害等による鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを進めています。(6) 安全対策 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が出る可能性があります。 当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、当社の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線では、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全・安定輸送の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)の導入を行うなど、より一層の安全性向上に努めてきました。 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(13件)は会社発足初年度である昭和62年度(60件)と比較して大幅に減少しました。(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護 当社グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、サイバー攻撃や自然災害、人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合等には、当社グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。 当社グループでは、障害対策として、日常より最新の技術動向等を勘案しながら自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに、関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。(8) 超電導リニアによる中央新幹線 当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。 現在この役割を担う東海道新幹線は、平成26年10月に開業50年を迎え、鉄道路線の建設・実現に長い期間を要することを踏まえれば、将来の経年劣化や大規模災害に対する抜本的な備えを考えなければならない時期にきています。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。 このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。その上で、まずは工事実施計画の認可を受けた東京都・名古屋市間を実現し、さらに、大阪市まで実現することとしています。 当社は、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。 また、平成19年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。 その後、全幹法の手続きが進み、平成23年5月、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会が、中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業主体等として当社を指名することが適当であること及び整備計画について下表のとおりとすることが適当であることを答申しました。国土交通大臣は、これを踏まえ、同5月、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て、下表の整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。 建設線 中央新幹線 区間 東京都・大阪市 走行方式 超電導磁気浮上方式 最高設計速度 505キロメートル/時 建設に要する費用の概算額 (車両費を含む。) 90,300億円 その他必要な事項 主要な経過地 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス) 中南部、名古屋市附近、奈良市附近 (注) 建設に要する費用の概算額には、利子を含みません。 これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法に基づき、環境アセスメントの手続きを進め、平成23年6月及び8月の計画段階環境配慮書の公表、同9月の環境影響評価方法書の公告、平成25年9月の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)の公告を経て、平成26年3月に沿線7都県の知事から受け取った準備書に対する意見を勘案し、同4月に国土交通大臣に環境影響評価書(以下「評価書」という。)を送付しました。その後、同7月に国土交通大臣から受け取った評価書に対する意見を勘案し、同8月、最終的な評価書を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。 当社は、環境アセスメントの手続きと並行して、全幹法第9条に基づく工事実施計画の認可申請に必要な準備を進め、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、土木構造物を中心とした品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、その後工事を開始しました。平成29年9月には、国土交通大臣に対し、電力設備や信号通信設備等の電気設備を中心に、既に工事実施計画(その1)で認可を受けた土木工事の一部変更をあわせて、品川・名古屋間の工事実施計画(その2)として認可申請を行い、平成30年3月に認可を受けました。今後申請予定である車両、駅設備等の現時点の見込み額を合算した総工事費は5兆5,235億円となり、工事実施計画(その1)の認可申請の際に示した総工事費から変更ありません。 品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の概要は以下のとおりです。 1.区 間 品川・名古屋間 2.駅の位置 品川駅 (併設:東京都港区港南) 神奈川県(仮称)駅 (新設:神奈川県相模原市緑区橋本) 山梨県(仮称)駅 (新設:山梨県甲府市大津町字入田) 長野県(仮称)駅 (新設:長野県飯田市上郷飯沼) 岐阜県(仮称)駅 (新設:岐阜県中津川市千旦林字坂本) 名古屋駅 (併設:愛知県名古屋市中村区名駅) 3.車両基地の位置 関東車両基地(仮称)(新設:神奈川県相模原市緑区鳥屋) 中部総合車両基地(仮称)(新設:岐阜県中津川市千旦林) 4.線路延長 285.6km (構造物種別) トンネル:246.6km(約86%) 高 架 橋: 23.6km(約8%) 橋りょう: 11.3km(約4%) 路 盤: 4.1km(約2%) 5.線路の概要 最小曲線半径 8,000m 最急勾配 40‰ 軌道中心間隔 5.8m以上 6.工事費 4兆8,536億円 (総工事費は5兆5,235億円(車両費を含む。山梨リニア実験線既設分は除く。)) 7.完成予定時期 令和9年 引き続き、中央新幹線の工事費全般について、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的にコストダウンを図るとともに、開業後の運営費の圧縮に取り組みます。 さらに、毎年の経営努力を積み重ね、経営状況に応じた資源配分の最適化を図るなど柔軟に対応することにより、健全経営と安定配当を堅持しながら、計画を完遂していきます。 なお、平成28年11月に鉄道・運輸機構法施行令に基づき、中央新幹線の建設の推進のため、総額3兆円(予定)の財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、平成29年7月までに総額3兆円の借入を完了しました。 当社としては、経営の自由、投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けを受けることにより、経営のリスクが低減され、品川・名古屋間開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手し、全線開業までの期間を最大8年間前倒すことを目指して、建設を推進します。 また、中央新幹線計画に関し、工事実施計画認可の取消しを国に求める行政訴訟、工事差止め等を求める民事訴訟が提起されています。≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線 (注) 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線は、東京都内の東海道新幹線品川駅付近を起点とし、山梨リニア実験線(全体で42.8km)、甲府市付近、赤石山脈(南アルプス)中南部を経て、名古屋市内の東海道新幹線名古屋駅付近に至る、延長約286km(地上部約40km、トンネル約246km)の区間です。駅については、品川駅付近、名古屋駅付近のほか、神奈川県内、山梨県内、長野県内、岐阜県内に一駅ずつ設置する計画です。
FY2018|9,188 文字
2【事業等のリスク】 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。(1) 事業に係る法律関連事項① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号) 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号) 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が平成13年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は平成13年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。 そのほか、JR会社法改正法の施行日前に本州旅客会社が発行した社債について、JR会社法第4条の一般担保の規定が施行日以後も効力を有する(附則第7条)とするなど、一定の経過措置が定められています。(2) 運賃及び料金の設定又は変更① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。 また、上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。 鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっています。 (注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きです。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められています。2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められています。 なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、旅客運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしています。② 運賃改定に対する当社の考え方a 当社では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月、平成9年4月及び平成26年4月)を除くと、これまで運賃改定を実施していません。 大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。当社の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えています。b 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する利益配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えています。③ 国土交通省の考え方 当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。a 東海旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。総括原価=営業費等(注1)+事業報酬・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注4) (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り、全産業平均自己資本利益率及び配当所要率の平均、他人資本報酬率は、借入金等の実績平均レートd なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、次のア又はイに該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。ア 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるときイ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき(3) 競合等 当社グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢等が、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。 特に、当社グループの主力事業であり、当社グループの営業収益の約7割の運輸収入をあげる東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善など航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。(4) 長期債務 昭和62年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。なお、4兆4,944億円の債務については、平成29年1月に返済を完了しています。(注) 保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。 また、平成28年11月に、中央新幹線の建設の推進のため、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(以下「鉄道・運輸機構法施行令」という。)に基づき、財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、平成29年7月までに、長期、固定かつ低利の中央新幹線建設長期借入金について、総額3兆円の借入を行いました。 これらを含めた連結長期債務残高は、当期末現在で4兆8,562億円、そのうち中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆8,562億円となっています。また、当期の支払利息は787億円であり、これは営業利益の11.9%に相当します。(5) 自然災害等 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害やテロ等により大きな影響が生じる可能性があります。 なお、鉄道インフラについて当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等に対する設備強化に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などにおける他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚については必要な箇所の耐震補強を完了し、高架橋柱及び盛土の耐震補強は開発案件等と関係する一部を除き完了しました。そのほか、脱線・逸脱防止対策をはじめとする設備の強化など、より一層安定した輸送を確保するための設備強化を積極的に進めています。また在来線においても、輸送の安全確保のため、構造物等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施するなど、自然災害等による鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを進めています。(6) 安全対策 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が出る可能性があります。 当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、当社の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線では、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全・安定輸送の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)の導入を行うなど、より一層の安全性向上に努めてきました。 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(18件)は会社発足初年度である昭和62年度(60件)と比較して大幅に減少しました。(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護 当社グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、自然災害や人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合、当社グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。 当社グループでは、障害対策として、日常より自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。(8) 超電導リニアによる中央新幹線 当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。 現在この役割を担う東海道新幹線は、平成26年10月に開業50年を迎え、鉄道路線の建設・実現に長い期間を要することを踏まえれば、将来の経年劣化や大規模災害に対する抜本的な備えを考えなければならない時期にきています。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。 このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。その上で、まずは工事実施計画の認可を受けた東京都・名古屋市間を実現し、さらに、大阪市まで実現することとしています。 当社は、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。 また、平成19年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。 その後、全幹法の手続きが進み、平成23年5月、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会が、中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業主体等として当社を指名することが適当であること及び整備計画について下表のとおりとすることが適当であることを答申しました。国土交通大臣は、これを踏まえ、同5月、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て、下表の整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。 建設線 中央新幹線 区間 東京都・大阪市 走行方式 超電導磁気浮上方式 最高設計速度 505キロメートル/時 建設に要する費用の概算額 (車両費を含む。) 90,300億円 その他必要な事項 主要な経過地 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス) 中南部、名古屋市附近、奈良市附近 (注) 建設に要する費用の概算額には、利子を含みません。 これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法に基づき、環境アセスメントの手続きを進め、平成23年6月及び8月の計画段階環境配慮書の公表、同9月の環境影響評価方法書の公告、平成25年9月の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)の公告を経て、平成26年3月に沿線7都県の知事から受け取った準備書に対する意見を勘案し、同4月に国土交通大臣に環境影響評価書(以下「評価書」という。)を送付しました。その後、同7月に国土交通大臣から受け取った評価書に対する意見を勘案し、同8月、最終的な評価書を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。 当社は、環境アセスメントの手続きと並行して、全幹法第9条に基づく工事実施計画の認可申請に必要な準備を進め、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、土木構造物を中心とした品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、その後工事を開始しました。平成29年9月には、国土交通大臣に対し、電力設備や信号通信設備等の電気設備を中心に、既に工事実施計画(その1)で認可を受けた土木工事の一部変更をあわせて、品川・名古屋間の工事実施計画(その2)として認可申請を行い、平成30年3月に認可を受けました。今後申請予定である車両、駅設備等の現時点の見込み額を合算した総工事費は5兆5,235億円となり、工事実施計画(その1)の認可申請の際に示した総工事費から変更ありません。 品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の概要は以下のとおりです。 1.区 間 品川・名古屋間 2.駅の位置 品川駅 (併設:東京都港区港南) 神奈川県(仮称)駅 (新設:神奈川県相模原市緑区橋本) 山梨県(仮称)駅 (新設:山梨県甲府市大津町字入田) 長野県(仮称)駅 (新設:長野県飯田市上郷飯沼) 岐阜県(仮称)駅 (新設:岐阜県中津川市千旦林字坂本) 名古屋駅 (併設:愛知県名古屋市中村区名駅) 3.車両基地の位置 関東車両基地(仮称)(新設:神奈川県相模原市緑区鳥屋) 中部総合車両基地(仮称)(新設:岐阜県中津川市千旦林) 4.線路延長 285.6km (構造物種別) トンネル:246.6km(約86%) 高 架 橋: 23.6km(約8%) 橋りょう: 11.3km(約4%) 路 盤: 4.1km(約2%) 5.線路の概要 最小曲線半径 8,000m 最急勾配 40‰ 軌道中心間隔 5.8m以上 6.工事費 4兆8,536億円 (総工事費は5兆5,235億円(車両費を含む。山梨リニア実験線既設分は除く。)) 7.完成予定時期 平成39年 引き続き、中央新幹線の工事費全般について、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的にコストダウンを図るとともに、開業後の運営費の圧縮に取り組みます。 さらに、毎年の経営努力を積み重ね、経営状況に応じた資源配分の最適化を図るなど柔軟に対応することにより、健全経営と安定配当を堅持しながら、計画を完遂していきます。 なお、平成28年11月に鉄道・運輸機構法施行令に基づき、中央新幹線の建設の推進のため、総額3兆円(予定)の財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、平成29年7月までに総額3兆円の借入を完了しました。 当社としては、経営の自由、投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けを受けることにより、経営のリスクが低減され、品川・名古屋間開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手し、全線開業までの期間を最大8年間前倒すことを目指して、建設を推進します。 また、中央新幹線計画に関し、工事実施計画認可の取消しを国に求める行政訴訟が提起されています。≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線 (注) 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線は、東京都内の東海道新幹線品川駅付近を起点とし、山梨リニア実験線(全体で42.8km)、甲府市付近、赤石山脈(南アルプス)中南部を経て、名古屋市内の東海道新幹線名古屋駅付近に至る、延長約286km(地上部約40km、トンネル約246km)の区間です。駅については、品川駅付近、名古屋駅付近のほか、神奈川県内、山梨県内、長野県内、岐阜県内に一駅ずつ設置する計画です。
FY2017|9,534 文字
4【事業等のリスク】 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。(1) 事業に係る法律関連事項① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号) 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号) 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が平成13年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は平成13年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。 そのほか、JR会社法改正法の施行日前に本州旅客会社が発行した社債について、JR会社法第4条の一般担保の規定が施行日以後も効力を有する(附則第7条)とするなど、一定の経過措置が定められています。(2) 運賃及び料金の設定又は変更① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。 また、上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。 鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっています。 (注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きです。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められています。2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められています。 なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、旅客運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしています。② 運賃改定に対する当社の考え方a 当社では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月、平成9年4月及び平成26年4月)を除くと、これまで運賃改定を実施していません。 大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。当社の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えています。b 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する利益配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えています。③ 国土交通省の考え方 当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。a 東海旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。総括原価=営業費等(注1)+事業報酬・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注4) (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り、全産業平均自己資本利益率及び配当所要率の平均、他人資本報酬率は、借入金等の実績平均レートd なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、次のア又はイに該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。ア 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるときイ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき(3) 競合等 当社グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢等が、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。 特に、当社グループの主力事業であり、当社グループの営業収益の約7割の運輸収入をあげる東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善など航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。(4) 長期債務 昭和62年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。なお、4兆4,944億円の債務については、平成29年1月に返済を完了しています。(注) 保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。 当社グループは、キャッシュ・フローの相当部分を活用してこれら長期債務の縮減に努めてきました。一方、中央新幹線の建設の推進のため、平成28年11月18日に鉄道・運輸機構法施行令に基づき、総額3兆円(予定)の「中央新幹線の建設に係る貸付金借入申請書(以下「借入申請書」という。)」を鉄道・運輸機構に対して提出しました。その借入申請書に基づき、平成28年11月から平成29年3月にかけて、平成28年度に予定していた財政投融資を活用した中央新幹線建設長期借入金1兆5,000億円を借り入れています。その結果、連結長期債務残高は、当期末現在で3兆3,954億円、そのうち中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆8,954億円となっています。また、当期の支払利息は602億円であり、これは営業利益の9.7%に相当します。 また、平成29年5月には上記に加え中央新幹線建設長期借入金7,500億円を借り入れており、残りの7,500億円についても平成29年度中に借入を完了する予定です。(5) 自然災害等 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害やテロ等により大きな影響が生じる可能性があります。 なお、鉄道インフラについて当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等に対する設備強化に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などにおける他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚については必要な箇所の耐震補強を完了し、高架橋柱及び盛土の耐震補強は開発案件等と関係する一部を除き完了しました。そのほか、脱線・逸脱防止対策をはじめとする設備の強化など、より一層安定した輸送を確保するための設備強化を積極的に進めています。また在来線においても、輸送の安全確保のため、高架橋柱等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施するなど、自然災害等による鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを進めています。(6) 安全対策 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が出る可能性があります。 当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、当社の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線では、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全・安定輸送の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)の導入を行うなど、より一層の安全性向上に努めてきました。 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(9件)は会社発足初年度である昭和62年度(60件)と比較して半数以下に減少しました。(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護 当社グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、自然災害や人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合、当社グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。 当社グループでは、障害対策として、日常より自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。(8) 超電導リニアによる中央新幹線 当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。 現在この役割を担う東海道新幹線は、平成26年10月に開業50年を迎え、鉄道路線の建設・実現に長い期間を要することを踏まえれば、将来の経年劣化や大規模災害に対する抜本的な備えを考えなければならない時期にきています。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。 このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。その上で、まずは工事実施計画の認可を受けた東京都・名古屋市間を実現し、さらに、大阪市まで実現することとしています。 当社は、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。 また、平成19年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。 その後、全幹法の手続きが進み、平成23年5月、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会が、中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業主体等として当社を指名することが適当であること及び整備計画について下表のとおりとすることが適当であることを答申しました。国土交通大臣は、これを踏まえ、同5月、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て、下表の整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。 建設線 中央新幹線 区間 東京都・大阪市 走行方式 超電導磁気浮上方式 最高設計速度 505キロメートル/時 建設に要する費用の概算額 (車両費を含む。) 90,300億円 その他必要な事項 主要な経過地 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス) 中南部、名古屋市附近、奈良市附近 (注) 建設に要する費用の概算額には、利子を含みません。 これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法に基づき、環境アセスメントの手続きを進め、平成23年6月及び8月の計画段階環境配慮書の公表、同9月の環境影響評価方法書の公告、平成25年9月の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)の公告を経て、平成26年3月に沿線7都県の知事から受け取った準備書に対する意見を勘案し、同4月に国土交通大臣に環境影響評価書(以下「評価書」という。)を送付しました。その後、同7月に国土交通大臣から受け取った評価書に対する意見を勘案し、同8月、最終的な評価書を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。 当社は、環境アセスメントの手続きと並行して、全幹法第9条に基づく工事実施計画の認可申請に必要な準備を進め、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、工事を進めています。 品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の概要は以下のとおりです。 1.区 間 品川・名古屋間 2.駅の位置 品川駅 (併設:東京都港区港南) 神奈川県(仮称)駅 (新設:神奈川県相模原市緑区橋本) 山梨県(仮称)駅 (新設:山梨県甲府市大津町字入田) 長野県(仮称)駅 (新設:長野県飯田市上郷飯沼) 岐阜県(仮称)駅 (新設:岐阜県中津川市千旦林字坂本) 名古屋駅 (併設:愛知県名古屋市中村区名駅) 3.車両基地の位置 関東車両基地(仮称)(新設:神奈川県相模原市緑区鳥屋) 中部総合車両基地(仮称)(新設:岐阜県中津川市千旦林) 4.線路延長 285.6km (構造物種別) トンネル:246.6km(約86%) 高 架 橋: 23.6km(約8%) 橋りょう: 11.3km(約4%) 路 盤: 4.1km(約2%) 5.線路の概要 最小曲線半径 8,000m 最急勾配 40‰ 軌道中心間隔 5.8m以上 6.工事費 4兆158億円 (総工事費は5兆5,235億円(車両費を含む。山梨リニア実験線既設分は除く。)) 7.完成予定時期 平成39年 工事実施計画(その1)は、隧道、橋梁、停車場等の土木構造物が中心であり、電灯・電力線路や車両等の開業設備については、工事内容が確定した段階で、工事実施計画(その2)として認可申請する予定です。また、工事実施計画(その1)で申請した工事費は、4兆158億円の計画であり、これに、工事実施計画(その2)として認可申請予定である開業設備の見込み額を合算した総工事費は、5兆5,235億円の計画です。この総工事費は、平成21年12月の全幹法第5条に基づく調査報告での5兆4,300億円に対し、それ以降、工事内容の精査を行い、誘導集電の採用等の高性能設備の導入や労務単価の上昇等による増額を見込む一方、コストダウンの取組みの成果等を見込んだ結果として、935億円増加しました。 引き続き、中央新幹線の工事費全般について、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的にコストダウンを図るとともに、開業後の運営費の圧縮に取り組みます。 さらに、毎年の経営努力を積み重ね、経営状況に応じた資源配分の最適化を図るなど柔軟に対応することにより、健全経営と安定配当を堅持しながら、計画を完遂していきます。 なお、平成28年11月に鉄道・運輸機構法施行令に基づき、中央新幹線の建設の推進のため、総額3兆円(予定)の財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、これまでに同機構より、平成28年度に1兆5,000億円、平成29年5月に7,500億円の借入を行い、平成29年度中に残りの7,500億円についても借入を完了する予定です。 当社としては、経営の自由、投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けを受けることにより、経営のリスクが低減され、品川・名古屋間開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手し、全線開業までの期間を最大8年間前倒すことを目指して、建設を推進します。 また、中央新幹線計画に関し、工事実施計画認可の取消しを国に求める行政訴訟が提起され、工事差止めの仮処分が申し立てられています。≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線 (注) 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線は、東京都内の東海道新幹線品川駅付近を起点とし、山梨リニア実験線(全体で42.8km)、甲府市付近、赤石山脈(南アルプス)中南部を経て、名古屋市内の東海道新幹線名古屋駅付近に至る、延長約286km(地上部約40km、トンネル約246km)の区間です。駅については、品川駅付近、名古屋駅付近のほか、神奈川県内、山梨県内、長野県内、岐阜県内に一駅ずつ設置する計画です。
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4【事業等のリスク】 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。(1) 事業に係る法律関連事項① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号) 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号) 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が平成13年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は平成13年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。 そのほか、JR会社法改正法の施行日前に本州旅客会社が発行した社債について、JR会社法第4条の一般担保の規定が施行日以後も効力を有する(附則第7条)とするなど、一定の経過措置が定められています。(2) 運賃及び料金の設定又は変更① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。 また、上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。 鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっています。 (注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きです。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められています。2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められています。 なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、旅客運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしています。② 運賃改定に対する当社の考え方a 当社では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月、平成9年4月及び平成26年4月)を除くと、これまで運賃改定を実施していません。 大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。当社の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えています。b 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する利益配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えています。③ 国土交通省の考え方 当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。a 東海旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。総括原価=営業費等(注1)+事業報酬・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注4) (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り、全産業平均自己資本利益率及び配当所要率の平均、他人資本報酬率は、借入金等の実績平均レートd なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、次のア又はイに該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。ア 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるときイ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき(3) 競合等 当社グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢等が、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。 特に、当社グループの主力事業であり、当社グループの営業収益の約7割の運輸収入をあげる東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善など航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。(4) 長期債務 昭和62年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。(注) 保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。 当社グループは、キャッシュ・フローの相当部分を活用してこれら長期債務の縮減に努めてきました。その結果、連結長期債務残高は、当期末現在、1兆9,450億円となっています。また、当期の支払利息は655億円であり、これは営業利益の11.3%に相当します。 今後とも、東海道新幹線をはじめとする諸事業の経営基盤の強化並びに中央新幹線の建設に向けた取組みを着実に推進していく中で、引き続き収益力の強化、設備投資を含めた業務執行全般にわたる効率化・低コスト化を徹底するとともに、グループ会社も含め、効果的かつ効率的な資金調達等に努め、財務面での体力の向上を図ります。(5) 自然災害等 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害やテロ等により大きな影響が生じる可能性があります。 なお、鉄道インフラについて当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等に対する設備強化に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などにおける他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚については必要な箇所の耐震補強を完了し、高架橋柱及び盛土の耐震補強は開発案件等と関係する一部を除き完了しました。そのほか、脱線・逸脱防止対策をはじめとする設備の強化など、より一層安定した輸送を確保するための設備強化を積極的に進めています。また在来線においても、輸送の安全確保のため、高架橋柱等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施するなど、自然災害等による鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを進めています。(6) 安全対策 当社グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が出る可能性があります。 当社は、安全・安定輸送の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、当社の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線では、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全・安定輸送の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)の導入を行うなど、より一層の安全性向上に努めてきました。 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(19件)は会社発足初年度である昭和62年度(60件)と比較して半数以下に減少しました。(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護 当社グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、自然災害や人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合、当社グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。 当社グループでは、障害対策として、日常より自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。(8) 超電導リニアによる中央新幹線 当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。 現在この役割を担う東海道新幹線は、平成26年10月に開業50年を迎え、鉄道路線の建設・実現に長い期間を要することを踏まえれば、将来の経年劣化や大規模災害に対する抜本的な備えを考えなければならない時期にきています。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。 このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。その上で、まずは東京都・名古屋市間を実現し、さらに、経営体力を回復させた上で、速やかに大阪市まで実現することとしています。 当社は、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。 また、平成19年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。 その後、全幹法の手続きが進み、平成23年5月、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会が、中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業主体等として当社を指名することが適当であること及び整備計画について下表のとおりとすることが適当であることを答申しました。国土交通大臣は、これを踏まえ、同5月、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て、下表の整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。 建設線 中央新幹線 区間 東京都・大阪市 走行方式 超電導磁気浮上方式 最高設計速度 505キロメートル/時 建設に要する費用の概算額 (車両費を含む。) 90,300億円 その他必要な事項 主要な経過地 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス) 中南部、名古屋市附近、奈良市附近 (注) 建設に要する費用の概算額には、利子を含みません。 これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法に基づき、環境アセスメントの手続きを進め、平成23年6月及び8月の計画段階環境配慮書の公表、同9月の環境影響評価方法書の公告、平成25年9月の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)の公告を経て、平成26年3月に沿線7都県の知事から受け取った準備書に対する意見を勘案し、同4月に国土交通大臣に評価書を送付しました。その後、同7月に国土交通大臣から受け取った評価書に対する意見を勘案し、同8月、最終的な評価書を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。 当社は、環境アセスメントの手続きと並行して、全幹法第9条に基づく工事実施計画の認可申請に必要な準備を進め、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、工事を進めています。 品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の概要は以下のとおりです。 1.区 間 品川・名古屋間 2.駅の位置 品川駅 (併設:東京都港区港南) 神奈川県(仮称)駅 (新設:神奈川県相模原市緑区橋本) 山梨県(仮称)駅 (新設:山梨県甲府市大津町字入田) 長野県(仮称)駅 (新設:長野県飯田市上郷飯沼) 岐阜県(仮称)駅 (新設:岐阜県中津川市千旦林字坂本) 名古屋駅 (併設:愛知県名古屋市中村区名駅) 3.車両基地の位置 関東車両基地(仮称)(新設:神奈川県相模原市緑区鳥屋) 中部総合車両基地(仮称)(新設:岐阜県中津川市千旦林) 4.線路延長 285.6km (構造物種別) トンネル:246.6km(約86%) 高 架 橋: 23.6km(約8%) 橋りょう: 11.3km(約4%) 路 盤: 4.1km(約2%) 5.線路の概要 最小曲線半径 8,000m 最急勾配 40‰ 軌道中心間隔 5.8m以上 6.工事費 4兆158億円 (総工事費は5兆5,235億円(車両費を含む。山梨リニア実験線既設分は除く。)) 7.完成予定時期 平成39年 工事実施計画(その1)は、隧道、橋梁、停車場等の土木構造物が中心であり、電灯・電力線路や車両等の開業設備については、工事内容が確定した段階で、工事実施計画(その2)として認可申請する予定です。また、工事実施計画(その1)で申請した工事費は、4兆158億円の計画であり、これに、工事実施計画(その2)として認可申請予定である開業設備の見込み額を合算した総工事費は、5兆5,235億円の計画です。この総工事費は、平成21年12月の全幹法第5条に基づく調査報告での5兆4,300億円に対し、それ以降、工事内容の精査を行い、誘導集電の採用等の高性能設備の導入や労務単価の上昇等による増額を見込む一方、コストダウンの取組みの成果等を見込んだ結果として、935億円増加しました。 引き続き、中央新幹線の工事費全般について、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的にコストダウンを図るとともに、開業後の運営費の圧縮に取り組みます。 さらに、毎年の経営努力を積み重ね、経営状況に応じた資源配分の最適化を図るなど柔軟に対応することにより、健全経営と安定配当を堅持しながら、計画を完遂していきます。≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線 (注) 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線は、東京都内の東海道新幹線品川駅付近を起点とし、山梨リニア実験線(全体で42.8km)、甲府市付近、赤石山脈(南アルプス)中南部を経て、名古屋市内の東海道新幹線名古屋駅付近に至る、延長約286km(地上部約40km、トンネル約246km)の区間です。駅については、品川駅付近、名古屋駅付近のほか、神奈川県内、山梨県内、長野県内、岐阜県内に一駅ずつ設置する計画です。(9) JRゲートタワー計画 JRゲートタワー計画については、名古屋ターミナルビル跡地に、立地を活かした利便性の高い高層複合ビルを建設する計画です。 ・開発主体 当社、ジェイアールセントラルビル㈱ ・建物規模 延床面積 約26万㎡ 高さ 約220m 階数 地上46階、地下6階 ・主要用途 オフィス、商業施設、ホテル、駐車場、バスターミナル、駅施設 ・総事業費 約1,200億円 ・工事着手 平成22年5月 ・開業予定 平成28年11月 オフィス入居開始 平成29年4月 タカシマヤ ゲートタワーモール、 名古屋JRゲートタワーホテル 当計画においては、JRセントラルタワーズと一体で利便性の高い魅力ある都市空間を創造し、名古屋駅周辺地区にさらなる賑わいを創出するとともに、オフィス集積地にふさわしい都市機能を補強し、同地区における多様なワーキングスタイルに対応し、また、自然エネルギーの活用等により環境への負荷軽減に配慮したゆとりある都市空間を形成することとしています。これにより、当社グループの鉄道事業、流通業、不動産業等に寄与するものと考えています。 しかし、事業を取り巻く環境の変化等により計画どおり進捗できない場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。