研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
| 2025-12 |
- |
68 |
| 2024-12 |
- |
15 |
| 2023-12 |
- |
38 |
| 2022-12 |
- |
27 |
| 2021-12 |
- |
13 |
研究開発活動(本文)
FY2025|5,887 文字
6 【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、グループ全体で利用可能な要素技術開発と、製品カテゴリーに特化した技術開発があります。要素技術には、楽音合成、モデリング、音響効果、音響解析、高効率符号化等の理論構築、電子楽器の心臓部である音源とエフェクター用オリジナル・システムLSIやその上で動作するデジタル信号処理システムの開発があります。また、USBやBluetooth、Wireless LAN等の通信規格を利用したオーディオやMIDI(Musical Instrument Digital Interface)の伝送を行う通信技術及び、当社のネットワークサービスであるRoland Cloudのプラットフォームの開発も行っています。2024年には、「Roland Future Design Lab」という新しい開発組織を発足し、AIやWeb3といった新しい技術の調査、研究、開発に取り組んでいます。一方で、製品カテゴリーに特化した技術としては、鍵盤、パーカッションや管楽器などの演奏のためのセンサー技術、ギター関連事業製品のサウンド・エフェクト技術、ビデオ映像機器用の映像処理技術などの開発があります。当連結会計年度の具体的な研究開発活動は次のとおりです。なお、当社及び連結子会社の事業は、電子楽器の開発、製造及び販売であり、区分すべき事業セグメントが存在しないため単一セグメントとなっており、セグメント情報に関連付けては記載していません。 (a)鍵盤楽器電子ピアノ製品において、当社は長年モデリング音源技術による表現力向上に取り組んできました。上位モデルである「LXシリーズ」においては、最新のモデリング音源と、鍵盤、ペダル、再生系を高度に連携する「ピアノ・リアリティ・テクノロジー」を搭載しています。ピアノの発音をより高い精度でモデリングした音源、弾き方による音の違いを忠実に再現する鍵盤センシング技術、スピーカーシステムと信号処理による立体感のある音場再現技術を搭載し、ピアノ演奏の表現力をさらに高めました。一方、エントリーモデルのポータブルキーボード「GO:KEYS 3」「GO:KEYS 5」では、当社音源技術「ZEN-Core」(注1)とコード検出技術を組み合わせた自動伴奏機能を搭載しています。独自アルゴリズムによって、演奏に合わせてアレンジや音量がリアルタイムに変化するインタラクティブな自動伴奏機能を搭載することで、伴奏の臨場感を高めています。(注1)オリジナル・システムLSIやコンピューター上で動作する拡張及びカスタマイズ可能なシンセサイザー音源をいいます。 (b)管打楽器電子ドラムにおいては、2024年9月に発売したフラグシップ音源「V71」の技術を活用した下位音源「V51」「V31」を開発し、これらの音源を使ったドラムセットを2025年10月に発売しました。これによりVシリーズ音源は全機種共通でベストなドラム音色を提供できるようになりました。一方で操作性では、ライブや音楽制作、自宅練習など、ユーザーのニーズに合わせて製品を選べるよう、それぞれユーザー・インターフェースを最適化しています。またドラムパッドもデザインを一新し、クローム・フープとラバー・リム採用により打感を向上させたタム・パッド「PD-Pシリーズ」、その下位モデルの「PD-Hシリーズ」を新ラインナップとして追加しました。また、電子ドラムの音源モジュールとパットの接続方法を変える新しいワイヤレス・システム「DrumLink」(注2)を搭載したワイヤレストリガーとワイヤレスハブをDrum Workshop社(以下、DW社)と共同開発しました。これらはV-DrumsシリーズやDW社とのコンバーチブル・ドラム・キット「DWe」に対応しており、ワイヤレストリガーと音源の間のケーブルを無くすことで、ドラム製品のセットアップが従来以上に自由になりました。電子パーカッションにおいては、アコースティック・ハンドパンを電子化した「Mood Pan MN-10」を2025年7月に発売しました。ハンドパンの演奏性はそのままに、各国の民族音楽に合わせたスケール設定や、エフェクトの設定、パッドごとのキー設定など、電子ならではの機能を追加し、音色を含めたパラメーターをコントロールするソフトウエア「Mood Pan Plus」も同時リリースしました。コンテンツ面においては、Roland Cloudと連携した新規ドラム音色のリリースを継続しています。2024年10月からVシリーズ音源用に市場投入した「V-Drums Instrument Expansions」を継続投入し、マルチ・サンプルされたアコースティック・ドラム音色や電子ドラム音色をVシリーズ音源に追加することで、音源のサウンドバリエーションを充実させることができます。加えて内蔵音色や外部音色と自由に組み合わせて、カスタム・キットを制作することも可能です。また名曲のドラム・サウンドをV-Drumsで再現した「V-Drums Kick Pack」もVシリーズ音源用に新たにリリースしました。これらコンテンツにより、製品のライフタイム・バリューの向上を実現しています。電子管楽器においては、フルートのデザインとキー配置を採用しながら、多彩な音色、豊かな表現力、使いやすさなど電子楽器ならではの特長を備えた「Aerophone Brisa」を2025年11月に発売しました。これらの特長を実現するために自然な管楽器表現を追求した新しいサウンドエンジンである「SuperNATURAL Winds」や、全ての奏者にとって自然で扱いやすい息のコントロールを実現するデュアル・ブレスセンサーを新規開発し搭載しています。(注2)DrumLinkは、電子ドラムのパッドやドラム・トリガー用のワイヤレス・テクノロジーです。ドラム専用に設計されており、最大30のパッド接続が可能で、ケーブル接続時と同等の超高速レスポンスと確実なパフォーマンスを実現しています。 (c)ギター関連機器BOSSブランド製品においてもミュージシャンに新たな表現力と創造力を提案するため、新規技術開発に注力を続けています。2025年2月には、新次元の演奏体験を実現するV-Guitarプロセッサー「VG-800」を発売しました。ギター、ベースギターの各弦を独立して取り出すことができるディバイデッド・ピックアップ「GK-5」「GK-5B」と組み合わせることで、さまざまな種類のギターやシタール、バンジョーといった弦楽器サウンドの演奏が楽しめます。なかでも、かつてのアイコニックなサウンドで多くのファンを持つGR-300サウンドや、バイオリンのサウンドをモチーフとした新開発のVIOギターが特徴的で、得られるサウンドの幅が広がりました。各弦を独立してピックアップできる性能を活かし、弦ごとのチューニングを自在に設定も可能です。近年では一般的となってきたヘビーなサウンドが得られるダウンチューニングや、独特の響きをもたらすオープンチューニングなども瞬時に設定完了します。このような機能は特にツアーミュージシャンの機材を減らすことにも貢献しており好評を得ています。ギターエフェクトにおいては、ロータリー・スピーカーにより生み出される特徴的な揺れと豊かな空間的な広がりを細部に至るまで再現するコンパクトペダル「RT-2」を2025年8月に発売しました。クラシックなロータリー・サウンドに加え、新規開発した3種類のロータリー・サウンドを搭載し、シンプルな操作でロータリー・エフェクトに求められる多くの機能をコントロールすることが可能です。2025年9月には、時代を超えて愛されるBOSSのアイコニックなサウンドを体験できる革新的なコンパクトペダル「PX-1」を発売しました。「PX-1」には、1977年に登場したコンパクトペダルの初代3モデルを含む計8モデルがプリインストールされており、搭載する強力なDSP(Digital Signal Processor)により、オリジナルのペダルが持つサウンドはもちろん、特有のレスポンスや特徴的なノイズ成分まで再現することが可能です。また、有償の「モデル・パス」ライセンスにより、以降提供される新しいエフェクトに入れ替えることを可能にしています。2025年10月には、新たに開発した高度なアルゴリズムの採用により、楽器のキャラクターや弾き心地を維持したまま、自然な音程変化を実現するピッチシフター「XS-100」と「XS-1」を発売しました。「XS-100」は、搭載したエクスプレッション・ペダルやフットスイッチで±4オクターブの範囲をコントロールし、従来のピッチシフターを超えるダイナミックな演奏表現を実現しています。「XS-1」は「XS-100」と同様のアルゴリズムをコンパクトペダルのシンプルな操作性に落とし込み、より直感的なチューニング切り替えを実現しています。アンプ関連製品では、洗練された質の高いレコーディングやシームレスなアッテネーション(信号や音量を減衰させること)を可能にした真空管アンプの「WAZA Tube Amp Expander Core」を2025年2月に発売しました。当社独自の設計思想である「Tube Logic」(注3)に基づいて開発されたアナログ設計のリアクティブ・ロードを搭載しており、真空管アンプの特性を損なうことなく最適な音量をコントロールすることができます。また、高品位なレコーディングを実現する2つの機能を備えており、多くのプレイヤーが愛用する真空管ギターアンプの活躍の場を広げるコンパクトなロードボックスです。(注3)真空管アンプの入力から出力までの各パーツやコンポーネントの精密な動作、さらにそれぞれの相互作用によって発生する複雑な振る舞いを徹底的に分析し、アンプ全体をトータルに設計する設計思想です。 (d)クリエーション関連機器&サービスシンセサイザーカテゴリーにおいては、ステージキーボードの新たなフラッグシップモデルとして、「V-STAGE88」と「V-STAGE76」を2025年2月に発売しました。これは、長年にわたり培ってきた当社の音源技術の粋を集め、まさにその集大成と言える製品です。「V-STAGE」には、V-Pianoテクノロジー、Virtual Tone Wheel、スーパーナチュラル・ピアノ、そしてZEN-Coreという、当社が誇る4つの革新的なモデリング音源が堅牢な筐体に凝縮されています。それぞれの技術が持つ豊かな表現力と、これまでの開発で培われた膨大なノウハウが融合することで、どんなステージにおいてもプレイヤーの最高のパフォーマンスを引き出すことができるステージキーボードです。Dance&DJカテゴリーにおいては、新世代リズムマシン「TR-1000」を2025年10月に発売しました。「TR-1000」は、伝統的な「TR-808」「TR-909」を継承するアナログ・サウンドに最新のデジタル音源とサンプリング技術を融合し、幅広いジャンルの音楽制作に対応します。直感的な操作性と多彩なエフェクト機能を備え、ライブパフォーマンスやスタジオワークで高い創造性を発揮します。ネット配信ユーザーに向けては、「BRIDGE CAST」シリーズをリリースしており、ビデオキャプチャー機能を統合することで、ゲーム機の映像と音声の取り込みを可能にした「BRIDGE CAST X」もラインナップされています。2系統の接続が可能なUSB-C端子とHDMI入力端子によって複数の機器に接続し、シンプルな配線の機材環境を実現するとともに、直感的なユーザー・インターフェースでゲーム実況の高品質なリアルタイム配信が可能です。さらに、同シリーズで最もコンパクトなゲーミング・オーディオ・ミキサー「BRIDGE CAST ONE」では、操作性の高い大きなノブ一つで、プレイ中でもチャットやゲームの音量をシンプルに調整できます。手のひらサイズの小型ボディながら、上位モデル譲りの高ゲインを誇るマイク用プリアンプや、配信者のトークやチャット音質を向上させる様々な音声処理機能を搭載しました。場所を取らず、持ち運びもしやすいため、ゲーム対戦遠征先や旅行先でも優れたサウンドでのゲームプレイやこだわりの配信が可能です。音楽・メディア制作者向けのクラウドを利用したソフトウエア音源のサブスクリプション・サービスであるRoland Cloudにおいては、ネットワーク上のプラットフォームの整備、サービスの拡大を継続しています。BOSSのエフェクターをソフトウエア製品化した「BOSS Effects Pedals」シリーズを2025年5月より継続リリースし、ソフトウエア製品の種類とユーザーを拡大しています。2025年11月には「Roland Future Design Lab」とNeutone社にて共同開発を行った、音色変換のAI技術が搭載されたエフェクター「LYDIA」のプロトタイプを発表しました。急速に発展するAI技術を活用し、ユーザーのクリエイティビティを刺激する楽器体験をユーザーに提供すべく、研究開発を進めています。 (e)映像音響機器アフター・コロナ以来、ステージのリモートでの演出が一般化した一方で、従来からのライブ演出も復調し、多種多様なイベントが活況です。このような状況において、当社のAVミキサーのVRシリーズや、ビデオ・ミキサーのVシリーズはそれらイベントでの需要に応えています。最新のVシリーズとしては、操作性や安定性に加えて、現在求められる高い汎用性やより高度な映像演出を可能にした「V-80HD」があります。この「V-80HD」とPCをHDMIケーブル1本で接続するだけのセットアップで、高品質なテロップや動きのあるグラフィックを合成して、映像演出のクオリティを高めるソフトウエア「GRAPHICS PRESENTER」も公開中です。「GRAPHICS PRESENTER」のコンテンツは、Roland Cloudから無償でダウンロードできます。 以上のような研究開発活動の成果により、当連結会計年度の研究開発費は、5,438百万円となりました。
FY2024|5,778 文字
6 【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、グループ全体で利用可能な要素技術開発と、製品カテゴリーに特化した技術開発があります。要素技術には、楽音合成、モデリング、音響効果、音響解析、高効率符号化等の理論構築、電子楽器の心臓部である音源とエフェクター用オリジナル・システムLSIやその上で動作するデジタル信号処理システムの開発があります。また、USBやBluetooth、Wireless LAN等の通信規格を利用したオーディオやMIDI(Musical Instrument Digital Interface)の伝送を行う通信技術及び、当社のネットワークサービスであるRoland Cloudのプラットフォームなどの開発も行っています。2024年7月には、「Roland Future Design Lab」という新しい開発組織を発足し、AIやWeb3といった新しい技術の調査、研究、開発に取り組んでいます。一方で、製品カテゴリーに特化した技術としては、鍵盤、パーカッションや管楽器などの演奏のためのセンサー技術、ギター関連事業製品のサウンド・エフェクト技術、ビデオ映像機器用の映像処理技術などの開発があります。当連結会計年度の具体的な研究開発活動は次のとおりです。なお、当社及び連結子会社の事業は、電子楽器の製造販売であり、区分すべき事業セグメントが存在しないため単一セグメントとなっており、セグメント情報に関連付けては記載していません。 (a)鍵盤楽器電子ピアノ製品において、当社は長年モデリング音源技術による表現力向上に取り組んできました。2024年3月には、最新のモデリング音源と、鍵盤、ペダル、再生系を高度に連携する「ピアノ・リアリティ・テクノロジー」を搭載した「LXシリーズ」を発表しました。ピアノの発音をより高い精度でモデリングした音源、弾き方による音の違いを忠実に再現する鍵盤センシング技術、スピーカーシステムと信号処理による立体感のある音場再現技術を搭載し、ピアノ演奏の表現力をさらに高めました。また、当社音源技術「ZEN-Core」(注1)とコード検出技術を組み合わせた自動伴奏機能を搭載したポータブルキーボード「GO:KEYS 3」「GO:KEYS 5」を2024年4月に発売しました。独自アルゴリズムによって、演奏に合わせてアレンジや音量がリアルタイムに変化するインタラクティブな自動伴奏機能を搭載することで、伴奏の臨場感を高めています。(注1)オリジナル・システムLSIやコンピューター上で動作する拡張及びカスタマイズ可能なシンセサイザー音源をいいます。 (b)管打楽器電子ドラムにおいては、自然な演奏感とリアルな響きを実現する新たな音源モジュールを開発しました。新音源モジュールは、スマートフォンを使用してRoland Cloudからプレミアムな音色が追加できる拡張性を備えています。また非常に自由度の高いエディット機能やツアーを意識した高い堅牢性、ドラマーをサポートする多彩な機能を搭載しており、プロフェッショナルの要求に応える次世代の音源モジュールです。この新音源モジュールと、音の響きを変える「ストレイナー」を搭載した新開発のデジタル・スネア、キック・ペダルやビーターの位置をストレスなく調整できる打面クッションを大型化したバス・ドラム、新設計のパッド構造と4つのヘッド・センサーにより、ドラマーの演奏のダイナミクスに正確に応えるタム・パッドを採用した電子ドラムのフラッグシップ・シリーズを2024年9月に発売しました。2024年10月には、静粛性を追求し、「V-Drums」史上最も打撃音と振動の発生を抑えた「V-Drums Quiet Design」の電子ドラム「VQD106」を発売しました。ハニカム形状のソフト・ラバーとメッシュ・ヘッドを組み合わせた打面を採用したパッド、同構成の打面とフローティング構造を採用したシンバル、同じく多層クッションとメッシュ・ヘッドで構成された打面のキック・パッド、そして、足元は独自形状の防振ゴム足を持つペダル・ベースとスタンドをそれぞれ新設計しています。これらの技術により、演奏時の打撃音と振動を従来の「V-Drums」より75%軽減しました(当社設定条件下の測定)。またRoland Cloudと連携した電子ドラムコンテンツのリリースを継続し、タイトルの充実を図りました。「V-Drumsキット・パック」は、音源モジュールの編集機能を最大限に活用して制作されたV-Drums専用のドラム・キット(注2)であり、Roland Cloudからダウンロードすることで厳選されたドラム・サウンドを簡単に増やすことができるようになっています。これにより、製品のライフタイム・バリューの向上を実現しています。一方で、次世代製品のためのブレスセンサーやバイトセンサーなどの管楽器要素技術開発、電子ドラムの音源やセンサー、通信技術など打楽器要素技術の開発を継続しています。特に電子ドラムにおいては、Drum Workshop社との共同開発を通じ、技術シナジーを追求していきます。(注2)バス・ドラムやスネア・ドラムなど複数種類のドラム音色をひとまとめにしたセットです。 (c)ギター関連機器BOSSブランドではギター関連機器だけでなくさまざまな製品を開発しています。2024年2月にはボーカル・エフェクターの最新モデル「VE-22」を発売しました。簡単な操作でボーカリストにさらなる表現力をもたらすエフェクトやハーモニーを付けることが可能です。フロントパネルには視認性に優れた鮮やかなカラー・ディスプレイを搭載しており、暗いステージでも本体のステータスを瞬時に把握できます。また、USB-C端子を装備しており、PCやモバイル端末と接続することでレコーディングや配信にも活用できます。また、ギターと並ぶ弦楽器であるベース用製品にも注力しており、2024年4月には直感的な操作性を継承したベース用マルチ・エフェクター「ME-90B」を発売しました。BOSS独自の「AIRD(Augmented Impulse Response Dynamics)」テクノロジー(注3)を駆使したプリアンプとベース専用にチューニングした高品位なエフェクト機能を備え、コンパクト・エフェクターのようにノブ操作だけで簡単に音を作ることができます。同2024年4月には、ベース用ヘッド・アンプ「KATANA-500 BASS HEAD」とベース・アンプ用キャビネット「KATANA CABINET 112 BASS」も発売しています。「KATANA-500 BASS HEAD」はコンパクトでありながら最大出力500Wを誇り、上質なトーンをもたらすだけでなく接続するスピーカー・キャビネットの理想的なレスポンスを実現する独自の「CAB RESONANCE」機能を搭載しています。「KATANA CABINET 112 BASS」はパワフルかつコンパクトなベース・アンプ用キャビネットであり、「KATANA-500 BASS HEAD」のリアクティブ回路を最適化することで、常にベストなマッチングを実現することができます。BOSSは独自の設計思想として、「Tube Logic」(注4)を進化させています。これに基づいて開発された技術を使い、真空管アンプ特有の上質なサウンドや弾き心地を実現し、よりダイナミックなサウンドと豊かな表現力をもたらすギター・アンプ「KATANA GEN 3」シリーズを2024年6月から順次発売しています。ナチュラルなクリーン・サウンドから激しく歪んだメタル・サウンドを実現する幅広いアンプ・タイプと共にBOSSが誇る高品位なエフェクトを内蔵しており、アンプ単体であらゆる音色を網羅しています。ギター用エフェクターとしては、2024年10月にコンパクト・ペダルタイプのデジタル・ディレイ「SDE-3」を発売しました。このペダルは、1983年に登場したデジタル・ディレイの名機とされる「SDE-3000」のクリアでありながら、音楽的な温かさを兼ね備えた特徴的なサウンドを再現しています。音色を再現するだけではなく、コンパクトな本体に2台分の機能を搭載しており、1つのディレイ・ペダルでは得られない立体的な音像やリズムをもたらす音作りを実現します。同2024年10月には、タッチパネルを用いたモダンなユーザー・インターフェイスとAIRDテクノロジーによる豊富なプリアンプとエフェクトを搭載し、幅広いサウンドメイクを可能とした「GX-10」を発売しました。ポータブルで堅牢な仕様により、卓上でのレコーディングや練習、スタジオでのセッションからステージのライブまで、さまざまなシーンで活躍します。2024年12月には、定評のあるKATANA AMPシリーズのサウンドをコンパクトなボディに凝縮したギター・アンプ「KATANA-MINI X」を発売しました。段階的にサウンドを歪ませるアナログ・ゲイン回路によってミニ・アンプとは思えない真空管アンプのような弾き心地、レスポンスを得ることを可能にし、木製キャビネットやカスタム・スピーカーを採用することで豊かな低域と迫力のあるサウンドを実現しています。さらには、Bluetoothや充電式バッテリー搭載など毎日の演奏に有用な機能を網羅しています。(注3)アンプを構成するプリアンプやパワーアンプ、電源トランス、スピーカー・キャビネットなどのコンポーネント間で起きる相互作用を忠実に再現し、真空管アンプ特有のダイナミックなサウンドと弾き心地をアンプやPAといった出力環境を問わず再生することができる独自技術です。(注4)真空管アンプの入力から出力までの各パーツやコンポーネントの精密な動作、さらにそれぞれの相互作用によって発生する複雑な振る舞いを徹底的に分析し、アンプ全体をトータルに設計する設計思想です。 (d)クリエーション関連機器&サービスシンセサイザーカテゴリーにおいては、初代モデルの登場から20年の節目の年に「高品質」「軽量」「簡単操作」をコンセプトとした新「JUNO-Dシリーズ」として3つの新製品を2024年10月に発売しました。3機種ともサウンド、鍵盤、操作性などすべてが強化されています。本体には3,800以上のプリセット音色が収録されていますが、Roland Cloudよりさらに音色を拡張することも可能です。2024年2月には、前年度発売したゲーム配信者向けの「BRIDGE CAST」にビデオキャプチャー機能を統合することで、ゲーム機の映像と音声の取り込みを可能にした「BRIDGE CAST X」を発売しました。2系統の接続が可能なUSB-C端子とHDMI入力端子によって複数の機器に接続でき、シンプルな配線の機材環境を実現できます。また、直感的なユーザー・インターフェイスでゲーム実況のリアルタイム配信を高品質で行うことができます。2024年10月には、同シリーズで最もコンパクトなゲーミング・オーディオ・ミキサー「BRIDGE CAST ONE」を発売しました。操作性の高い大きなノブ一つで、プレイ中でもチャットやゲームの音量調整をシンプルに行えます。手のひらサイズの小型ボディながら、上位モデル譲りの高ゲインを誇るマイク用プリアンプや、配信者のトークやチャット音質を向上させるさまざまな音声処理機能を搭載しました。ゲーミングディスク上で場所を取らず、持ち運びもしやすいため、遠征先や旅行先でも優れたサウンドでのゲームプレイやこだわりの配信が可能です。音楽・メディア制作者向けのクラウドを利用したソフトウエア音源のサブスクリプション・サービスであるRoland Cloudにおいては、ネットワーク上のプラットフォームの整備、サービスの拡大を継続して行っています。2024年3月には、電子ドラム、電子キーボードのレッスンアプリケーション・ソフトウエアを開発するMelodics社と協業し、弊社製品を効率よく学習できるレッスンサービス「Melodics Essentials for Roland」をリリースしました。同2024年3月には、「ユニバーサル ミュージック グループ」と共に、AI技術を音楽に活用するための基本原則をまとめた宣言「AIによる音楽創造のための原則(Principles for Music Creation with AI)」を発表しました。その後世界的に著名な50以上の音楽関連企業、団体や機関からの賛同をいただいています。2024年11月には「Roland Future Design Lab」にて開発を行った、AIが人間の音楽制作をサポートするソフトウエア「Tone Explorer」を発表しました。急速に発展するAI技術を活用し、よりよい音楽制作環境や楽器体験をユーザーに提供すべく、今度も研究開発を進めていきます。 (e)映像音響機器アフター・コロナとなり、ステージのリモートでの演出が一般化した一方で、従来からのライブ演出も復調し、多種多様なイベントが活況です。このような状況において、当社のAVミキサーのVRシリーズや、ビデオ・ミキサーのVシリーズはそれらイベントでの需要に応えています。2024年8月には、Vシリーズの操作性や安定性に加えて、現在求められる高い汎用性やより高度な映像演出を可能にした「V-80HD」を発売しました。同時に「V-80HD」とPCをHMDIケーブル1本で接続するだけの簡単なセットアップで、高品質なテロップや動きのあるグラフィックを合成して、映像演出のクオリティを高めるソフトウエア「GRAPHICS PRESENTER」を公開しました。「GRAPHICS PRESENTER」のコンテンツは、Roland Cloudから無償でダウンロードできます。 以上のような研究開発活動の成果により、当連結会計年度の研究開発費は、5,585百万円となりました。
FY2023|5,141 文字
6 【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、グループ全体で利用可能な要素技術開発と、製品カテゴリーに特化した技術開発があります。要素技術には、楽音合成、モデリング、音響効果、音響解析、高効率符号化等の理論構築、電子楽器の心臓部である音源とエフェクター用オリジナル・システムLSIやその上で動作するデジタル信号処理システムの開発があります。また、USBやBluetooth、Wireless LAN等の通信規格を利用したオーディオやMIDI(Musical Instrument Digital Interface)の伝送を行う通信技術及び、当社のネットワークサービスであるRoland Cloudのプラットフォームなどの開発も行っています。一方で、製品カテゴリーに特化した技術としては、鍵盤、パーカッションや管楽器などの演奏のためのセンサー技術、ギター関連事業製品のサウンド・エフェクト技術、ビデオ映像機器用の映像処理技術などの開発があります。当社では要素開発の機能を製品開発の部門に持たせることで両者の距離を縮め、戦略的なテーマもスピード感をもって開発できるようにしています。当連結会計年度の具体的な研究開発活動は次のとおりです。なお、当社及び連結子会社の事業は、電子楽器の製造販売であり、区分すべき事業セグメントが存在しないため単一セグメントとなっており、セグメント情報に関連付けては記載していません。 (a)鍵盤楽器電子ピアノ製品において、当社は長年モデリング音源技術による表現力向上に取り組んできました。2023年3月には、最新のモデリング音源と新開発した鍵盤、ペダル、再生系を連携した技術「ピアノ・リアリティ・テクノロジー」を搭載したデジタル・グランドピアノ「GPシリーズ」を発表しました。ピアノの発音とホール音響特性をモデリングした臨場感の高い音源、弾き方による音の違いを忠実に再現する鍵盤センシング技術、マルチ・スピーカーと信号処理による立体感のある音場再現技術を搭載し、ピアノ演奏の表現力を高めました。また、当社音源技術「ZEN-Core」(注1)とコード検出技術を組み合わせた自動伴奏機能を搭載したポータブルピアノ「FP-E50」を2023年1月に発売しました。独自アルゴリズムによって、演奏に合わせてアレンジや音量がリアルタイムに変化するインタラクティブな自動伴奏機能を搭載することで、伴奏の臨場感を高めています。(注1)オリジナル・システムLSIやコンピューター上で動作する拡張及びカスタマイズ可能なシンセサイザー音源をいいます。 (b)管打楽器デジタル管楽器の製品において、2023年3月には「ZEN-Core」音源とサウンドをコントロールするブレスセンサーやバイトセンサーなどの演奏表現を高める技術を組合せた新製品「AE-20W」を発売しました。同時に、既存製品「AE-30」もソフトウエア・アップデートにより、本体はそのままで新しい機能を追加するなど、Aerophoneシリーズは管楽器ならではの表現力を実現しつつ、演奏の楽しみを広げる進化を続けています。電子ドラムカテゴリーでは、2023年1月には「Vドラム」のエントリー・モデルとして、コンパクト・サイズながら本格的なサウンドや演奏感を家で楽しめる「TD-02KV」「TD-02K」を発売しました。新規開発された音源「TD-02」には上位モデルから継承したドラム・キット音色を搭載し、幅広いドラム・キットで様々な音楽スタイルに対応しました。別売りのアダプター「BT-DUAL」(BOSS ブランド) によりスマートフォンなどとワイヤレス接続し、手軽に好きな曲と一緒に演奏することを可能にしました。また、2023年11月には「DW」ブランドからアコースティック・ドラム、電子ドラムどちらでも演奏を楽しめるコンバーチブル・ドラム・キット「DWe」のラインアップを発売しました。DWの高品質なシェルや独自の電子技術に加え、当社の電子ドラムの技術や知見を融合させることで、まったく新しいドラム・キットとして誕生しました。電子ドラムとして使用する際には、ドラム・パッドとPC(ソフトウエア音源)のワイヤレス接続を実現したことでケーブル接続の手間なく電子ドラムの演奏を楽しめます。また、DWドラムの名器サウンドを収録したソフトウエア音源「DW Soundworks」と連携することを可能にしました。 (c)ギター関連機器2023年はBOSSの前身となるメグ電子の創業(1973年)から50年を迎えました。BOSSブランドでは創業当時からギタリストに愛され続けているアナログ製品の開発とともに、長年にわたるエフェクト/アンプ開発で培ってきた知識と経験を自社システムLSIに実装し、多くの新たな製品提案をしました。2023年5月には、唯一無二のヴィンテージ・デジタル・ディレイとして今もなお高く評価されている「SDE-3000」を再現した「SDE-3000D」を発売しました。サウンドを忠実に再現するだけでなく、現代のニーズに応える機能をフロア・タイプにまとめることで高い汎用性を得ています。2023年6月には、「SDE-3000」を愛用したギタリストEddie Van Halenが構築したウエット/ドライ/ウエットの独自セットアップによる迫力あるサウンドを再現するバリエーション・モデルとして「SDE-3000EVH」を発売しました。2023年7月には、最新のテクノロジーをアナログ回路と融合させたディレイ「DM-101」を発売しました。信号経路にはBBDと呼ばれる電子部品を採用し温かく包み込まれるディレイ・サウンド(注2)を実現しながら、回路をCPUで制御することにより多彩なサウンドやメモリー機能、MIDIコントロールへの対応など、現代のギタリストに不可欠な機能を実現しています。2023年8月には、新方式のギター・シンセサイザー・システムを発売しました。各弦の信号を独立して検出するディバイデッド・ピックアップ「GK-5(ギター用)/GK-5B(ベース用)」は、信号伝送方式を従来のアナログからデジタルに変更することで安定した通信を実現しています。また、システムのコアとなるギター・シンセサイザー「GM-800」は音声信号からMIDI信号へのトラッキング性能を向上させることで自然な弾き心地を実現するとともに、ZEN-Core音源エンジンをこのカテゴリーで初めて採用し、多彩で高品位な音色を提供しています。同2023年8月には、自宅において至高のアコースティック・サウンドを実現するアンプ、「AC-22LX」を発売しました。タッチに対して素直に呼応するアコースティック楽器の豊かなサウンドを余すところなく再現するとともに、高い専門性を備えたサウンド・エンジニアによるマイキング・サウンドを再現するAIR FEEL機能を搭載しました。2023年10月には、MDP(注3)を駆使することで原音を損なうことなくノイズを取り除くノイズ・サプレッサー「NS-1X」を発売しました。極めて自然にノイズを除去するREDUCTIONモードだけでなく、ハイゲイン・サウンドでの演奏時にキレをよくするGATEモードを搭載することで、新しい演奏表現をギタリスト/ベーシストに提供しています。(注2)発音のタイミングをずらして、エコーや広がりを持たせる効果を付加した音のことをいいます。(注3)Multi-Dimensional Processing:入力された音声を瞬時に解析し、時間経過に伴う変化に対し最適な処理をリアルタイムに行うBOSS独自の多次元的信号処理技術をいいます。音楽的な表現力を失うことなく最適な効果を付加することで、従来にはないサウンドが得られる画期的な先進技術です。 (d)クリエーション関連機器&サービスシンセサイザーカテゴリーにおいて、国産初のシンセサイザー「SH-1000」を1973年に発売してから50周年を迎える節目の年となる中、3つの新製品とフラグシップ・シンセサイザーのアップグレード・キットを発売しました。2023年3月には、多彩なサウンド作りが可能な11種類のオシレーター・モデルを新規開発し、スタジオやステージはもちろん、外出先でもUSBバス電源で使用できる汎用性の優れたデスクトップ・シンセサイザー「SH-4d」を発売しました。2023年5月には、ポケットサイズで場所を選ばず楽しめるAIRA Compactシリーズの新モデル「S-1」を発売しました。ローランド往年のアナログ・シンセサイザー「SH-101」をデジタルで再現した音源とモーション・センサーを内蔵し、楽器本体を傾けることで音程を変化させたり、音を左右に揺らしたりしてサウンドに効果を加える「D-Motion」を新開発しました。2023年10月には、アナログ・シンセサイザー由来の直感的なサウンド作りプロセスを受け継ぎつつ、これまで表現できなかった先進的なサウンドを可能にし、また、演奏性に優れたフルサイズの37鍵キーボードを搭載したシンセサイザー「GAIA2」を発売しました。当社独自のアナログシンセ・モデリング音源技術やウェーブテーブル音源技術によりスピーディーなサウンド作りを行えるのに加え、新規開発のモーショナル・パッドやシーケンサーにより、ダイナミックな動きをもつ複雑なサウンドやフレーズを簡単に作成することができます。また、2023年11月に、アップグレード・キットとして、フラッグシップ・シンセサイザー「FANTOM-6/7/8」に当社独自のACB(注4)を新たに追加したことを含む「FANTOM EXアップグレード」をリリースしました。音楽・メディア制作者向けのクラウドを利用したソフトウエア音源のサブスクリプション・サービスである「Roland Cloud」においては、ネットワーク上のプラットフォームの整備、サービスの拡大を継続して行っています。2023年7月には、ゲーム実況配信時にBGMや効果音が流せるサービス「BGM CAST」を公開しました。ユーザーの嗜好に合わせてBGMを自動的に流し続ける独自の選曲アルゴリズムを搭載し、ゲーム実況配信を盛り上げます。また、2023年11月には、Roland Cloud上の40種以上のソフトウエア音源や20,000種以上の音色を統合的に扱えるアプリケーション・ソフトウエア「Galaxias」をリリースしました。Galaxiasの音作りから音源制御までの統合環境により、新しい音楽制作の可能性が拡大していきます。(注4)Analog Circuit Behavior:アナログ電子楽器の音色を再現するため、アナログ・パーツの特性、アナログ回路独特の振舞いをデジタルでモデリングする技術をいいます。 (e)映像音響機器アフター・コロナとなり、ステージのリモートでの演出が一般化した一方で、従来からのライブ演出も復調し、多種多様なイベントが活況です。このような状況において、当社のAVミキサーのVRシリーズや、ビデオ・ミキサーのVシリーズはそれらイベントでの需要に応えています。2023年6月には、4K AVストリーミング・ミキサー「VR-400UHD」を発売しました。「誰にでもプロの演出を行える」をコンセプトにし、ビデオ機器に詳しくないユーザーも簡単に扱えるビデオ・スイッチャーとなっています。従来のVRシリーズで好評を得ている、ビデオ、オーディオ、ストリーミング機能をオールイン・ワンパッケージ化し、4K対応により高画質の映像演出を実現しています。VRシリーズの特徴でもあるUSBストリーミング出力においても4K対応を実現し、コンピューターを用いた高品位な配信が可能です。また新たにプレビュー付シーン機能も搭載しました。合成済みの画像を常に動画として複数プレビュー表示できるシーン機能と大型タッチスクリーンにより、出力したい映像をタッチで選択することを実現しています。ヘッドホンカテゴリーでは,当社が30年以上にわたり蓄積した電子ドラム開発技術とV-MODAのヘッドホン開発技術を結集させ、独自チューニングで電子ドラムのサウンドを余すところなく引き出し、快適でストレスなく演奏に集中できるヘッドホン「VMH-D1」を2023年2月に発売しました。 以上のような研究開発活動の成果により、当連結会計年度の研究開発費は、5,187百万円となりました。
FY2022|5,541 文字
5 【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、グループ全体で利用可能な要素技術開発と、製品カテゴリーに特化した技術開発があります。要素技術には、楽音合成、モデリング、音響効果、音響解析、高効率符号化等のデジタル信号処理システムの開発、USBやBluetooth、Wireless LAN等の通信規格を利用したオーディオやMIDI(Musical Instrument Digital Interface)の伝送を行う通信技術及び、当社のネットワークサービスであるRoland Cloudのワールドワイドのプラットフォームなどの技術開発があります。一方で、製品カテゴリーに特化した技術としては、鍵盤、パーカッションや管楽器などの演奏のためのセンサー技術、ギター関連事業製品のサウンドエフェクト技術、ビデオ映像機器用の映像処理技術などの開発があります。前連結会計年度まではそれぞれの技術を独立の組織で開発してきましたが、当連結会計年度より要素開発の機能を製品開発の部門に持たせることで両者の距離を縮め、戦略的なテーマもスピード感をもって開発できるようになりました。なお、専門性が高く、開発に期間を要したBMC(Behavior Modeling Core)のような音源とエフェクター用オリジナル・システムLSIについては、引き続き独立した部署で開発を継続しています。当連結会計年度の具体的な研究開発活動は次のとおりです。なお、当社及び連結子会社の事業は、電子楽器の製造販売であり、区分すべき事業セグメントが存在しないため単一セグメントとなっており、セグメント情報に関連付けては記載していません (a)鍵盤楽器電子ピアノ関連では、BMC共通プラットフォーム(注1)の普及価格帯電子ピアノへの展開を進め、高品質で競争力の高い製品を効率的に開発しました。2022年10月発売の「RP107」「F107」は、上位モデルに搭載され、グランドピアノの音の響きを忠実に再現し、プロミュージシャンからも高い評価を得ている「スーパーナチュラル・ピアノ音源」を採用しています。無段階の音色変化や自然な減衰音を特長としており、繊細な表現から迫力のあるダイナミックな表現まで、思い通りの演奏を実現します。 また、よりピアノを楽しめるアプリ「Roland Piano App」を2022年8月より公開しました。スマートフォンやタブレットと当社電子ピアノをBluetoothで接続し、ピアノ機能のコントロール、レッスン機能、端末での譜面表示、伴奏機能などデジタルならではの機能で練習や演奏の楽しさを広げることができます。さらに音楽制作用の高品位なシンセサイザー音源やソフトウェアを提供するクラウド・ベースのプラットフォーム「Roland Cloud」からのコンテンツ提供機能も搭載し、「Roland Cloud」有料メンバーシップに加入すると300以上の楽曲や譜面データを練習や演奏に活用することが可能です。これらのBluetooth による電子楽器との接続やコントロールの仕組みを共通APIとして開発し、今後展開する製品でも活用していく予定です。電子キーボード関連では、エンターテインメントキーボード「E-Xシリーズ」の新製品として「E-X50」を2022年7月に発売しました。新規開発のバスレフポート搭載2wayフルレンジのステレオ・スピーカー・システムによる迫力あるサウンド、多彩な707音色と新規制作を含む300種類以上の高品位な自動伴奏により一人でも楽しく演奏できます。Roland Cloudからのコンテンツ提供も開始し、2022年12月には、「Essential Dance Hits Vol.1,2」「Essential Pop Hits Vol.1,2」の4タイトル、合計20スタイルのコンテンツを取り揃えています。(注1) 従来ピアノ、シンセ、ドラム等楽器の種類毎に音源をつくっていたものを、各機器で利用できる音源として必要な機能を一つのチップに実装し共通基盤としたものをいいます。 (b)管打楽器デジタル管楽器の製品においては、音をコントロールするブレスセンサーやバイトセンサーなどの演奏表現を高める技術と新世代音源技術「ZEN-Core」(注2)を組み合せた新製品「AE-20」を2022年1月に発売しました。Aerophoneシリーズは管楽器ならではの表現力を実現する進化を続けています。電子ドラムカテゴリーの製品においては、プロのステージでの高度な要求に応えるプロドラマー向けのサンプリング・パッド最上位モデル「SPD-SX PRO」を2022年9月に発売しました。2003年からスタートしたSPDシリーズの最上位モデルとして、長年にわたり当社が培ってきたトリガー技術をもとに、現場からのフィードバックを各機能の強化に活かしました。さらにマルチ・カラーのPAD LEDやセンサー構造の改良によりステージでの視認性が向上し、高い演奏性を実現しました。また、自宅での演奏に最適な「Vドラム」シリーズと、存在感のあるデザインにこだわった電子ドラム「VAD(Vドラム・アコースティック・デザイン)」シリーズから新機種を2022年10月に発売しました。従来以上の自然な演奏感を実現した新開発の薄型シンバルと高性能ハイハットを搭載し、演奏表現力が向上しました。(注2) BMC、コンピューター上で動作する拡張及びカスタマイズ可能なシンセサイザー音源をいいます。 (c)ギター関連機器BOSSブランドの製品においては、長年にわたるエフェクト/アンプ開発で培ってきたBOSSの知識と経験を、32bit浮動小数点演算による超高音質信号処理技術としてBMCなどの自社システムLSIに実装し、ギタリストにとっての最高の音の表現力を追求してきました。2022年3月には、BOSSブランドが誇る信号処理技術の集大成ともいえるギター/ベース用マルチ・エフェクター「GX-100」を発売しました。高品位なサウンドと高い汎用性を誇りつつ、タッチ操作に対応した視認性の高いカラー・ディスプレイを採用し、ストレスのないサウンドメイクが可能です。また「AIRD(Augmented Impulse Response Dynamics)」テクノロジー(注3)を採用し、表現力豊かなサウンドを得ることが可能です。2022年4月には、多くのミュージシャンに愛されたテープ・エコーの名器、Roland Space Echo RE-201をデジタル技術でシミュレートした「RE-2」「RE-202」を発売しました。かつてないレベルでSpace Echoの自然で深みのあるサウンドを再現し、オリジナルを知り尽くしたBOSSの技術により、磁気テープやモーターなどの構造による音色の変化までも徹底的に追求しました。2022年10月には、BOSSブランド初のディストーション・ペダルとして1978年に登場し、40年以上の歴史を持つレジェンド・ペダル「DS-1」を熟練のエンジニアが再設計した「DS-1W」を発売しました。また同年11月には、サウンドに強烈なインパクトとビートを加えるユニークなエフェクター「SL-2」を発売しました。アナログ、デジタル技術の両面からBOSSの代名詞でもあり広く愛されるコンパクト・ペダルを拡充しています。(注3) アンプを構成するプリアンプやパワーアンプ、電源トランス、スピーカー・キャビネットなどのコンポーネント間で起きる相互作用を忠実に再現し、真空管アンプ特有のダイナミックなサウンドと弾き心地をアンプやPAといった出力環境を問わず再生することができる技術です。 (d)クリエーション関連機器&サービスシンセサイザーカテゴリーの製品においては、BMC共通プラットフォーム、新世代音源「ZEN-Core」を活用した「JUNO-X」を2022年5月に発売しました。「JUNO-60」「JUNO-106」といったヴィンテージシンセのモデリングに加え、新世代JUNOとして新しいネイティブ・エンジン「JUNO-X」を搭載し、JUNOらしい広がりのあるサウンドを提案しています。FANTOMシリーズ 「FANTOM-6」「FANTOM-7」「FANTOM-8」でサウンドメイクの楽しさを刺激する音楽ツールとして、新たなモデルエキスパンション「n/Zyme」(エンザイム)を2022年1月にリリースしました。「n/Zyme」は、63種類のWavetableを備えた2種類のWavetable Oscillatorにより、複雑で個性的な音色変化を創造することができ、またFANTOMのタッチスクリーンで自在にオリジナル波形を描画することも可能です。さらにオシレーター波形のPhase/Shape変調機能などを備えており、これら複数の音源や多くのパラメーターなど複雑な音色変化をLCD上でリアルタイムかつ感覚的に楽しむことができるようになりました。また2022年3月には、FANTOMシリーズとプラットフォームを共通化することで、高品質なサウンド、拡張性の高いシステム、シームレスな操作性をそのまま軽量化ボディに凝縮させたFANTOM-0シリーズ「FANTOM-06」「FANTOM-07」「FANTOM-08」を発売しました。Dance & DJカテゴリーの製品においては、ポケットに入るほど小型でありながら、AIRAシリーズに採用されているAnalog Circuit Behavior(ACB)(注4)のハイクオリティなサウンドを、高効率な内蔵バッテリーの制御設計によって、場所を選ばずお楽しみいただける新製品AIRA Compactシリーズ「T-8」「J-6」「E-4」を2022年に5月に発売しました。また、2021年11月に発売した「SP-404MKII」のシステム・プログラムVersion2.0を、2022年7月に発表しました。かつてシンセサイザー・サウンドに変革をもたらした製品「V-Synth」(2003年発売)のVariPhrase技術(注5)を復活させ、機能を追加・改善し、これまで事前にエンコード処理が必要であったものをリアルタイムにエンコード処理することが可能となり、さらに最大同時発音数も32音まで向上させることができました。音楽・メディア制作者向けのクラウドを利用したソフトウエア音源のサブスクリプション・サービスである「Roland Cloud」においては、ネットワーク上のプラットフォームの整備、サービスの拡大を継続して行っています。2022年6月には、BOSSブランドのギターアンプやエフェクターの音色データをユーザー間で交換が行えるオンライン・サービス「BOSS TONE EXCHANGE」を公開しました。また、同年8月には、ピアノ製品と接続して、ピアノのレッスンコンテンツが利用できる「Roland Piano App」を公開しました。サービス拡大にあたり、Roland Cloudでは、課金や支払いの仕組みを共通APIライブラリとして開発し、今後展開していく他のアプリでも簡単にCloudの課金システムに接続できるようになりました。(注4) アナログ電子楽器の音色を再現するため、アナログ・パーツの特性、アナログ回路独特の振舞いをデジタルでモデリングする技術をいいます。(注5) オーディオ・フレーズのピッチ/タイム/フォルマントを独立してコントロールできるオリジナルの信号処理技術をいいます。 (e)映像音響機器昨今のコロナウイルス対策による活動制限で、会場の参加者への映像/音声演出と、ネットワーク上の参加者への 映像/音声演出の両方を同時に行う「ハイブリッド・イベント」が多く開催されるようになり、当社のAVミキサーのVRシリーズや、ビデオミキサーのVシリーズはその需要に応えてきました。2022年8月には、映像や音声の切り替え、配信、録画の機能を1台に集約し、パソコンを使用せずにライブ配信ができるダイレクト・ストリーミング・AVミキサー「SR-20HD」を発売しました。映像のスイッチングと音声のミキシングを行うAVミキサー機能に加え、トラブルを回避して高品質で安定した配信を行えるさまざまな機能を搭載しています。さらには、ネットワークの状態を監視し、ストリーミング・データを自動的に調整して配信の中断を防ぐアダプティブ・ビットレート機能、アクシデント発生時に映像や音声をスムーズに静止画に切り替えるセーフティ・ディレイ機能、物理的な回線トラブルが発生した際、スマートフォンを予備回線として使用できるテザリング機能などにより、安心してライブ配信を行うことが可能です。 (f)その他2022年10月3日には、ドラム事業のさらなる成長に向け、当社の100%子会社として新たに設立したRoland Drum Corporationが、Drum Workshop, Inc.(以下、DW)の全発行済株式を取得し子会社化しました。当社グループとDWの専門知識と経験が融合することで、アコースティック・ドラム、電子ドラム及びパーカッションの製品開発を加速させ、次世代に向けて画期的な製品を生み出し、ドラマー/ミュージシャンのためのイノベーションを推し進めることを目指します。 以上のような研究開発活動の成果により、当連結会計年度の研究開発費は、4,196百万円となりました。
FY2021|4,658 文字
5 【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、グループ全体で利用可能な基礎的要素技術の先行開発と、製品カテゴリーに特化した技術開発の二つに分けられます。基礎的要素技術の先行開発については、当社の基礎技術部、応用技術部にて行っています。また、製品カテゴリーに特化した技術開発については、当社の機構技術部、システム開発部、デザイン部及び製品開発部門にて行っています。なお、当社及び連結子会社の事業は、電子楽器の製造販売であり、区分すべき事業セグメントが存在しないため単一セグメントとなっており、セグメント情報に関連付けては記載していません。 技術部門で行っている研究開発の具体的なテーマとしては、楽音合成、モデリング、音響効果、音響解析、高効率符号化等のデジタル信号処理アルゴリズムの開発、USBやBluetooth、Wireless LAN等の通信規格を利用したオーディオやMIDI(Musical Instrument Digital Interface)の伝送を行う通信技術及び楽器の音色を合成(シンセサイズ)したり、オリジナルの音声に付加効果(エフェクト)をかけたりするオリジナルのシステムLSIの開発を行っています。上記に加えて、当社のネットワークサービスであるRoland Cloudのワールドワイドのプラットフォームの開発も進めています。共通顧客データベース、Webサービスに加え、コンテンツ/ソフトウエアの販売、更にはグローバル・カスタマー・サービスの基盤として充実させていきます。一方で、製品カテゴリーに特化した技術としては、鍵盤、パーカッションや管楽器などの演奏のためのセンサー技術、ギター関連事業製品のサウンドエフェクト技術、ビデオ映像機器用の映像処理技術の開発などがあります。具体的な内容は次のとおりです。 (a)BMC共通プラットフォーム(注1)当社は自社電子楽器の心臓部である音源とエフェクター用オリジナル・システムLSIの開発に取り組んできました。これらの独自システムLSIは、当社の差別化要因となるコア技術として進化を続け、最新LSIであるBMC(Behavior Modeling Core)では、様々なジャンルの楽器を生み出すことのできる共通プラットフォームを構築しました。この共通プラットフォームにより、高品質、高機能製品の早期開発や、競争力のある価格が可能となっています。2021年は、電子ピアノFP-Xシリーズ、電子ドラムTD-07シリーズのようなボリューム・ゾーン製品へ展開し、上位モデルで達成した高品質の音源を広く普及させました。(注1)従来ピアノ、シンセ、ドラム等楽器の種類毎に音源をつくっていたものを、各機器で利用できる音源として必要な機能を一つのチップに実装し共通基盤としたものをいいます。 (b)新世代音源「ZEN-Core」(注2)の展開2019年に開発したシンセサイザー向け新世代音源技術(ZEN-Core)は、音源メモリの拡大による楽器の表現力豊かなサウンド、解像度を上げたコントロールによる滑らかな演奏表現、製品間のコンテンツ互換性を実現し、更にモデリング技術により、デジタル音源でありながらアナログシンセサイザーのような深みやダイナミクスを持つ出音を可能にしています。2021年はこのZEN-Coreをテーブルトップの音楽制作機器MV-1に展開し、パターンやステップ・シーケンサーといったなじみやすい方法で曲作成を可能にするツールとしてまとめ上げました。既に昨年、BMC上でのみ動作していたZEN-Coreをコンピューター上のソフトウエア音源にも移植し、ZENOLOGYとしてリリースしましたが、2021年はZENOLOGY内蔵のエフェクト・ユニットを単独でソフト化し、90種類以上のエフェクト機能をユーザー自身のオーディオ・トラック作成のために開放しました。ここにも音源だけにとどまらないZENOLOGY技術の奥深さが表れています。また、ローランドのデジタル・シンセサイザーのレジェンドであるJD-800を、ZENOLOGY及び一部対応するZEN-Coreハードウエアで使用可能なModel Expansionとしてリリースしました。(注2)BMC、コンピューター上で動作する拡張及びカスタマイズ可能なシンセサイザー音源をいいます。 (c)デジタル信号処理技術当社は音源技術と並び、音声を音楽的な表現に処理する高精度、高品位のデジタル信号処理技術も培ってきました。例えば、楽器が置かれている室内やホールの残響効果をシミュレートして楽器音だけでなく音場までも再現する技術や、ギターの弦振動を32bit/96kHz浮動小数点の高精度で演算するギター・マルチ・エフェクターの開発、また歌声を素材としてハーモニーを付加したり、低く太い声やその反対の声質に変えたりすることができるボイスエフェクターの開発なども行っています。ここでもBMCなどオリジナル・システムLSIが使用されています。2021年はボコーダー技術(人間の声を入力として、そこから抽出した周波数成分や強弱をシンセサイザーのコントロールに使う技術)を刷新し、Vocal Designer Model ExpansionとしてJUPITER-XやJUPITER-Xmに実装しました。これによりZEN-Coreの出音に人間の声ならではの表現力や暖かさを与えるだけでなく、より深いカスタマイズを行うことで唯一無二の印象的なトーンを作成することが可能となりました。 (d)BOSS技術の開発BOSSブランドの製品においては、技術の総合力が発揮される年となりました。長年にわたるエフェクト/アンプ開発で培ってきたBOSSの知識と経験を、32bit浮動小数点演算による業界最高クラスの超高音質信号処理技術としてBMCなどの自社DSPに実装し、ギタリストにとっての最高の音の表現力を追求してきました。また1980年代から培ってきた、弦振動から正確な演奏情報を抽出し、低レイテンシで音源を発音させるギター・シンセサイザー技術があります。これらに現代のBluetooth MIDIを使ってスマートフォンでサウンドをカスタマイズする技術を加え、2021年7月にエレクトロニック・ギターEURUS GS-1に融合させました。GS-1は創造力を掻き立てるサウンドと、極限まで高められた演奏性により、ギタリストに新たなパフォーマンスの可能性を提供しています。アンプ・カテゴリにおいても技術の総合力はいかんなく発揮されています。従来から得意としてきた、バッテリー駆動でありながらあらゆる環境において高品位かつパワフルなサウンドを出力する技術と2001年から取り組んできた重ね録りによるフレーズ作成技術(ルーパー機能)を融合し、2021年6月にモバイル・アンプCUBE STREET IIとしてリリースしました。また同時に、アンプ本体に装着してスマートフォンやタブレットとのワイヤレス接続を可能にするBluetooth Audio MIDI Dual Adaptor(BT-DUAL)もリリースしました。電池駆動、高音質の基本性能に加え、BT-DUALによるワイヤレス機能の拡張を可能にし、ライブ・パフォーマンスの新たなソリューションとして好評を得ています。 (e)ビデオ信号処理技術当社はこれまでも4K解像度やHDR(High Dynamic Rangeの略、従来に比べてより広い明暗の幅を表現できる表示技術)といった最新のニーズに応えつつ、従来フォーマットの映像信号にも対応し両者間をシームレスに変換/出力できる独自の「ULTRA SCALER機能」を開発し、それらを実装した製品群で多様化するプロの映像現場で柔軟な運用を可能にしてきました。昨今のコロナウイルス対策による活動制限で、多人数の参加者を伴う大規模イベントに代わり、ネットワーク上で映像を配信するイベントやライブ・コマース活動が増えています。これらの映像作成にはより小型で小回りの利く映像機器が求められ、当社もAVミキサーVRシリーズやビデオミキサーVシリーズでその需要に応えてきました。近年では、収録機器としてスマートフォンのカメラが使われるケースも増えてきましたが、従来の当社映像機器にはこれに対応する入出力端子がなく、簡単にシステムに組み入れることができるソリューションが求められてきました。これに応えるため2021年9月にiPad用アプリケーション・ソフト「AeroCaster Switcher」をリリースしました。このソフトをインストールしたiPadは、最大4台のスマートフォンからの映像をワイヤレス接続で受信し、自由にそれらをスイッチ/ミックスすることが可能で、さらに合成した映像はそのままiPadのHDMIアダプタ経由で対応するVRシリーズ、Vシリーズ当社製品に送り、他のカメラ映像とさらにスイッチ/ミックスすることが可能です。「AeroCaster Switcher」はスマートフォン、アプリケーション・ソフト、ビデオミキサー/スイッチャー製品をひとつのパッケージとして提案する革新的なソリューションです。 (f)Roland Cloud音楽・メディア制作者向けのクラウドを利用したソフトウエア音源のサブスクリプション(月額・年額の定額会費制)サービスであるRoland Cloudにおいては、ネットワーク上のプラットフォームの整備を継続して行っています。またハードウエアとなる電子楽器側のコンテンツ・プロテクトの仕組み構築、Roland Cloud Manager(Roland Cloudのアカウントの作成や管理、プランの選択、購入、すべてのインストゥルメンツとサウンドをシンプルに管理することができるアプリ)のユーザー認証機能の充実と併せて三位一体で開発を進め、2020年5月には新たなサブスクリプション・プランのサービスの提供を開始しました。さらに上述したZENOLOGYをサービスに加えることで、コンテンツ/プラグインソフトの購入、PC上での音源・各種設定の管理、ZEN-Core対応ハードウエア製品への保存・活用までをトータルでサポートすることが可能となり、音楽制作からライブ演奏まで一貫した、スムーズで迅速なワークフローを実現しています。また、電子楽器のIoTを進める技術を開発し、2021年11月にはRoland Cloud Connectをリリースしました。楽器本体のUSB端子に装着することでWireless LAN接続機能を付加するワイヤレス・アダプターWC-1と専用アプリケーション・ソフトとの連携で、電子楽器によるサブスクリプション・サービスを可能にしました。Roland Cloudの豊富なコンテンツを電子楽器に直接ダウンロードできるだけではなく、ユーザー・アカウント管理、コンテンツ保護、セキュリティなどの機能も含んでいます。この仕組みによって、今後はよりきめ細かいサービスや、コンテンツビジネスを展開していきます。 以上のような研究開発活動の成果により、「世界中の人々をワクワクさせる」ビジョンを実現する製品やサービスを継続的に市場に供給していきます。なお、当連結会計年度の研究開発費は、4,145百万円です。
FY2020|3,896 文字
5 【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、グループ全体で利用可能な基礎的要素技術の先行開発と、製品カテゴリーに特化した技術開発の二つに分けられます。基礎的要素技術の先行開発については、当社の基礎技術部、応用技術部にて行っています。また、製品カテゴリーに特化した技術開発については、当社の機構技術部、システム開発部、デザイン部及び製品開発部門にて行っています。なお、当社及び連結子会社の事業は、電子楽器の製造販売であり、区分すべき事業セグメントが存在しないため単一セグメントとなっており、セグメント情報に関連付けては記載していません。 技術部門で行っている研究開発の具体的なテーマとしては、楽音合成、モデリング、音響効果、音響解析、高効率符号化等のデジタル信号処理アルゴリズムの開発、USBやイーサネット、Bluetooth等の通信規格を利用したオーディオやMIDI(Musical Instrument Digital Interface)の伝送を行う通信技術及び楽器の音色を合成(シンセサイズ)したり、オリジナルの音声に付加効果(エフェクト)をかけたりするオリジナルのシステムLSIの開発を行っています。上記に加えて、当社のネットワークサービスであるRoland Cloudのワールドワイドのプラットフォームの開発も進めています。共通顧客データベース、Webサービスに加え、コンテンツ/ソフトウエアの販売、更にはグローバル・カスタマー・サービスの基盤として充実させていきます。一方で、製品カテゴリーに特化した技術としては、鍵盤、パーカッションや管楽器などの演奏のためのセンサー技術、ギター関連事業製品のサウンドエフェクト技術、ビデオ映像機器用の映像処理技術の開発などがあります。具体的な内容は次のとおりです。 (a)BMC共通プラットフォーム(注1)当社は自社電子楽器の心臓部である音源とエフェクター用オリジナル・システムLSIの開発に取り組んできました。これらの独自システムLSIは、当社の差別化要因となるコア技術として進化を続け、最新LSIであるBMC(Behavior Modeling Core)では、様々なジャンルの楽器を生み出すことのできる共通プラットフォームを構築しました。この共通プラットフォームにより、高品質、高機能製品の早期開発や、競争力のある価格が可能となっています。2020年は、電子和太鼓TAIKO-1や電子管楽器Aerophone Proのような、新しいジャンルの製品への実装を行い、従来の電子楽器の枠を超えた表現力を実現することができました。(注1)従来ピアノ、シンセ、ドラム等楽器の種類毎に音源をつくっていたものを、各機器で利用できる音源として必要な機能を一つのチップに実装し共通基盤としたものをいいます。 (b)新世代音源「ZEN-Core」(注2)の展開2019年に開発したシンセサイザー向け新世代音源技術(ZEN-Core)は、音源メモリの拡大による楽器の表現力豊かなサウンド、解像度を上げたコントロールによる滑らかな演奏表現、製品間のコンテンツ互換性を実現し、更にモデリング技術により、デジタル音源でありながらアナログシンセサイザーのような深みやダイナミクスを持つ出音を可能にしています。2020年はこのZEN-Coreを上述の電子管楽器Aerophone Proにも搭載し応用領域を広げています。更に、それまでBMC上でのみ動作していたZEN-Coreをコンピュータ上のソフトウエア音源にも移植し、ZENOLOGYとしてリリースしました。ハードウエア、ソフトウエアを問わず音色や演奏データに互換性を持たせ、音楽制作からライブ演奏まで一貫した、スムーズで迅速なワークフローを実現しました。 (注2)BMC、コンピューター上で動作する拡張及びカスタマイズ可能なシンセサイザー音源をいいます。 (c)デジタル信号処理技術当社は音源技術と並び、音声を音楽的な表現に処理する高精度、高品位のデジタル信号処理技術も培ってきました。例えば、楽器が置かれている室内やホールの残響効果をシミュレートして楽器音だけでなく音場までも再現する技術や、ギターの弦振動を32bit/96kHz浮動小数点の高精度で演算するギター・マルチ・エフェクターの開発、また歌声を素材としてハーモニーを付加したり、低く太い声やその反対の声質に変えたりすることができるボイスエフェクターの開発なども行っています。ここでもBMCなどオリジナル・システムLSIが使用されています。ZEN-Core搭載製品のマルチ・エフェクトでは、音源の音に音場効果を付加したり、わざと歪ませて目立つ音にしたりしていますが、2020年はこれらもコンピューター上のソフトウエアに移植し、ZENOLOGYの一部として出音に効果を付与しています。 (d)BOSS技術の開発BOSSブランドの製品においては、長年にわたるエフェクト/アンプ開発で培ってきたBOSSの知識と経験を、32bit浮動小数点演算による業界最高クラスの超高音質信号処理技術として最新LSIであるBMC上に応用し、高度なアルゴリズムにより設計された最新のエフェクトと多彩なルーティングやアサイン/コントロール機能により、最高の表現力を実現しています。これら技術をポータブルなサイズに凝縮し、2020年10月にリリースした、ホームスタジオからライブステージまでシーンを選ばず活躍できるGT-1000Coreに搭載しました。また、刻々と変化するギター演奏の音から、信号処理の対象となる周波数成分を抽出するトラッキング技術を磨き、原音に様々なタイプのオクターブサウンドをより正確で自然なフィーリングで付加するコンパクトペダルOC-5を2020年10月に発売しました。分厚いモノフォニック・オクターブ・サウンドや音域をシフトしたコード演奏など、かつてないほどの広い音域で、最高の演奏性と洗練されたサウンドを実現しました。アンプ・カテゴリにおいては、真空管アンプの一つ一つのパーツの精密な動作、更にそれぞれが相互に作用し合って起きる複雑な振る舞いを徹底的に分析し、アンプ全体をトータルに設計する技術「Tube Logic」を更に発展させました。2020年12月発売のNextone Specialでは、DSPでのデジタル信号処理とアナログ回路の電流/電圧を相互にフィード・バック/フォワードするハイブリッドな設計で、より躍動感のある真空管アンプのサウンドと弾き心地を実現しました。 (e)ビデオ信号処理技術当社は放送やイベントといったプロの映像制作、映像演出の現場でも通用する映像機器を開発しています。2019年より、4K解像度やHDR(High Dynamic Rangeの略、従来に比べてより広い明暗の幅を表現できる表示技術)といった最新のニーズに応えつつ、従来フォーマットの映像信号にも対応し両者間をシームレスに変換/出力できる独自の「ULTRA SCALER機能」を開発し、多様化するプロの映像現場で柔軟な運用を可能にしています。2020年10月には、上記に加え、HDMI 240/144/120 Hzのハイフレームレート入力/スルー出力にも対応したVC-100UHDを発売し、近年勢いを増しつつあるeスポーツイベントでの配信需要にも応えています。またローランド独自のビデオ録画再生機能を実装した製品として、2020年11月にビデオ・インスタント・リプレイヤー P-20HDを製品化しました。HDビデオ映像をリアルタイムでスムーズに録画再生することにこだわって開発した結果、スケーラーを搭載した2系統のHDMI入力によるシームレスな画面切り替えを実現し、また録画メディアにSDカードを、録画フォーマットに汎用的なH.264を採用することで、大容量SDカードに低ビットレートでも高品質を保ち小さいファイルサイズで高画質な映像を長時間録画することが可能となりました。加えて録画を継続しながら、任意のシーンを抜き出して、直感的な操作でスロー再生できるインスタント・リプレイ機能を実現しました。 (f)Roland Cloud2017年からサービスの提供を開始した、音楽・メディア制作者向けのクラウドを利用したソフトウエア音源のサブスクリプション(月額・年額の定額会費制)サービスであるRoland Cloudにおいては、ネットワーク上のプラットフォームの整備を継続して行っています。またハードウエア楽器側のコンテンツ・プロテクトの仕組み構築、管理アプリRoland Cloud Managerのユーザー認証機能の充実と併せて三位一体で開発を進め、2020年5月には新たなサブスクリプション・プランのサービスの提供を開始しました。これに合わせて、上述したZENOLOGYをサービスに加えることで、コンテンツ/プラグインソフトの購入、PC上での音源・各種設定の管理、ZEN-Core対応ハードウエア製品への保存・活用までをトータルでサポートすることが可能になりました。これにより、音楽制作からライブ演奏まで一貫した、スムーズで迅速なワークフローを実現しました。 以上のような研究開発活動の成果により、「世界中の人々をワクワクさせる」ビジョンを実現する製品やサービスを継続的に市場に供給していきます。なお、当連結会計年度の研究開発費は、4,039百万円です。