経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループは、2026年1月からの3年間を対象とした中期経営計画を策定しました。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。 (1) 経営の基本方針(経営理念)ローランド・グループの経営理念は、以下の3つのスローガンに集約されています。これらは、ローランド・グループが何のために存在し、どのような企業であろうとしているのかを表した、創業時から変わらない考え方です。 - 創造の喜びを世界にひろめよう - BIGGESTよりBESTになろう - 共感を呼ぶ企業にしよう 「創造の喜びを世界にひろめよう」いつでも、誰でも、どこにいても、自分にあった音や映像の楽しみ方に一人でも多くの人がめぐり合える。そんなワクワクする世界の実現を、私たちは目指します。新たな作品を創りだす喜び、仲間たちと楽器を演奏する時の充実感、そして、それを多くの人と分かち合うひととき―無限に拡がる喜びの可能性を、追求し続けます。 「BIGGESTよりBESTになろう」お客様一人ひとりにとって、常にBESTで特別な企業であること。私たちはそのためにたゆまず努力し、最善を尽くします。日々成長し続け、お客様の想いにこたえる。そしてまた、新たな夢や期待を寄せていただく。そんな信頼関係を大切にしていきます。 「共感を呼ぶ企業にしよう」私たちは、支えていただいているお客様、取引先様、そして株主様など多くの方々に愛され、応援される企業を目指します。新しい価値を創り出す中においてもこうした方々の信頼を決して裏切らず、事業活動をよりよく理解していただく。そうして皆様からの共感を力にかえ、全てのステークホルダーにとっての事業価値を持続的に向上させていきます。 (2) 事業環境・重要課題認識当社グループの属する世界楽器市場は、海外市場を成長ドライバーとして、概ね1%~2%程度の安定的な成長を続けてきましたが、近年では、地政学リスクや為替変動、物価上昇、中国市場の回復遅延など、不透明感の強い事業環境が続いています。コロナ後のサプライチェーンの混乱やディーラーの在庫調整は概ね終息したものの、2025年には新たに米国相互関税の影響も重なり、世界楽器市場の需要正常化には想定以上の時間を要しています。しかしながら、2025年後半より主力である北米市場を中心に、電子楽器分野には底打ちの兆しが見られることから、2026年以降は徐々に成長軌道へ回帰することが見込まれます。AIやIoTをはじめとする技術革新は、音楽の楽しみ方や演奏スタイルを多様化させ、消費者の価値観に変化をもたらすことで、市場構造そのものを大きく変えています。一方で、先進国では、楽器演奏に挑戦したい、あるいは再開したいという膨大な潜在顧客が存在するものの、実際にはさまざまな障壁に直面し離脱してしまうという課題があります。また、新興国では高い経済成長に伴い楽器購入者が増加し、趣味として演奏を楽しむ層が拡大していますが、顧客が気軽に楽器に触れ、演奏を始められる機会は依然として限定されています。こうした先進国・新興国双方の顧客課題に対し、近年の技術革新は有効な解決策となり得ます。最新技術を取り込み、また活用することのできる電子楽器は、これらの変化を追い風に、重要な成長機会を迎えると期待されます。 (3) 中期経営計画2026-20281.当社が実現したい未来 当社は、「次世代のユーザーと共に新たな音楽生活と音楽文化を創出し、音楽の未来を切り開く」ことを、実現したい未来に掲げています。人々があきらめていた演奏の喜びを実現し、日常の中に音楽体験が自然に根付いていくような新しい音楽生活を社会に生み出すことを目指します。同時に、当社の製品やサービスがミュージシャンの創造性を刺激し、まだ世界に存在しない音楽が芽生えるような、新たな音楽文化の創出にも挑戦します。 2.中期経営計画の位置づけ中期経営計画(2026–2028)は、当社が描く未来の実現を加速させるための戦略的ステップとして位置づけています。前中期経営計画では、環境変化への対応に取り組みながら、基幹システム更新や研究開発拠点となる新本社建設など将来に向けた基盤整備を着実に進めてきました。本中期経営計画では、これらの基盤を確かな土台として、電子楽器の需要創造と体験価値(CX)向上に向けた投資を本格的に進め、持続的な成長が可能な高収益企業へのトランスフォームを推進します。 3.業績目標中期経営計画の業績目標は以下のとおりです。 2025年12月期(実績)2028年12月期(目標)CAGR売上高1,009億円1,200億円+5.9%営業利益94億円144億円+15.2%親会社株主に帰属する当期純利益21億円102億円+67.6%[+9.2%](注)ROE5.0%[16.8%](注)20%-ROIC15.2%18%- (注)2025年度に計上したDrum Workshop, Inc.に係る一時費用の影響を除く。 4.成長機会当社は以下の成長機会を積極的に捉えていきます。① 膨大な潜在層:主に先進国に数多く存在する「演奏離脱層」、「演奏関心層」へのアプローチによる新たな需要創出② テクノロジーの進化:AIやIoTなどの先端技術の進展による電子楽器での演奏体験やサービスの高度化③ 電子楽器化の拡大:アコースティック楽器の電子楽器化という長期トレンド④ 新興国需要の拡大:1人当たりGDPの成長による中間層の購買力向上を背景にした新興国市場の拡大 5.重点戦略① Direct Connect顧客との直接的かつ継続的な接点を強化することを目的に、AI/IoTを実装した革新的な電子楽器の開発・販売、直販チャネルの拡大、データ活用プラットフォームの新規開発や既存サービスを強化し、これらを相互に連携させることで、顧客の演奏活動を支援し、体験価値の最大化を図ります。1)Connected Instruments:Wi-Fiによるネット接続機能を標準搭載し、ソフト・クラウドと統合された新たな体験価値を提供する電子楽器。2)Roland Retail:直営店“Roland Store”、直営店を基盤にしたダイレクトEコマース。3)Roland Cloud:当社独自のVirtual instrumentsや製品のアップデータを提供し、顧客のLTVを最大化する基盤となるクラウドサービス。4)Roland App(仮称):顧客が当社製品やサービスを最大活用するための日次タッチポイントとなるアプリ。 ② Innovationアコースティック楽器の電子化の潮流を加速させるとともに、アライアンス、共同研究・開発を積極的に推進します。1)電子楽器化の拡大:ドラムやピアノでの電子楽器化の流れの促進に加え、電子管楽器のシリーズ拡大や電子化の進んでいないアコースティック楽器の電子化の促進。2)共同開発による新規技術の開発:アライアンスや共同研究・開発、異業種・異分野とのコラボレーションを推進し、革新的な顧客体験を実現する新規技術の開発、新規製品、サービスを拡充。 ③ 新興国販売拡大新興国での楽器需要拡大に対応し、現地ニーズに適合した専用モデルの投入や、顧客のタッチポイントとなる新規チャネルの開拓等の新興国での取り組みを強化します。1)中国ホビー市場の拡大:趣味需要が増加傾向にある中国でのホビー市場開拓。2)インド、中南米、中東での販売強化:先進国を上回る市場成長が続き、文化を背景とした独自の音楽マーケットを保持する新興国での販売強化。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループは、2026年1月からの3年間を対象とした中期経営計画を策定しました。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。 (1) 経営の基本方針(経営理念)ローランド・グループの経営理念は、以下の3つのスローガンに集約されています。これらは、ローランド・グループが何のために存在し、どのような企業であろうとしているのかを表した、創業時から変わらない考え方です。 - 創造の喜びを世界にひろめよう - BIGGESTよりBESTになろう - 共感を呼ぶ企業にしよう 「創造の喜びを世界にひろめよう」いつでも、誰でも、どこにいても、自分にあった音や映像の楽しみ方に一人でも多くの人がめぐり合える。そんなワクワクする世界の実現を、私たちは目指します。新たな作品を創りだす喜び、仲間たちと楽器を演奏する時の充実感、そして、それを多くの人と分かち合うひととき―無限に拡がる喜びの可能性を、追求し続けます。 「BIGGESTよりBESTになろう」お客様一人ひとりにとって、常にBESTで特別な企業であること。私たちはそのためにたゆまず努力し、最善を尽くします。日々成長し続け、お客様の想いにこたえる。そしてまた、新たな夢や期待を寄せていただく。そんな信頼関係を大切にしていきます。 「共感を呼ぶ企業にしよう」私たちは、支えていただいているお客様、取引先様、そして株主様など多くの方々に愛され、応援される企業を目指します。新しい価値を創り出す中においてもこうした方々の信頼を決して裏切らず、事業活動をよりよく理解していただく。そうして皆様からの共感を力にかえ、全てのステークホルダーにとっての事業価値を持続的に向上させていきます。 (2) 事業環境・重要課題認識当社グループの属する世界楽器市場は、海外市場を成長ドライバーとして、概ね1%~2%程度の安定的な成長を続けてきましたが、近年では、地政学リスクや為替変動、物価上昇、中国市場の回復遅延など、不透明感の強い事業環境が続いています。コロナ後のサプライチェーンの混乱やディーラーの在庫調整は概ね終息したものの、2025年には新たに米国相互関税の影響も重なり、世界楽器市場の需要正常化には想定以上の時間を要しています。しかしながら、2025年後半より主力である北米市場を中心に、電子楽器分野には底打ちの兆しが見られることから、2026年以降は徐々に成長軌道へ回帰することが見込まれます。AIやIoTをはじめとする技術革新は、音楽の楽しみ方や演奏スタイルを多様化させ、消費者の価値観に変化をもたらすことで、市場構造そのものを大きく変えています。一方で、先進国では、楽器演奏に挑戦したい、あるいは再開したいという膨大な潜在顧客が存在するものの、実際にはさまざまな障壁に直面し離脱してしまうという課題があります。また、新興国では高い経済成長に伴い楽器購入者が増加し、趣味として演奏を楽しむ層が拡大していますが、顧客が気軽に楽器に触れ、演奏を始められる機会は依然として限定されています。こうした先進国・新興国双方の顧客課題に対し、近年の技術革新は有効な解決策となり得ます。最新技術を取り込み、また活用することのできる電子楽器は、これらの変化を追い風に、重要な成長機会を迎えると期待されます。 (3) 中期経営計画2026-20281.当社が実現したい未来 当社は、「次世代のユーザーと共に新たな音楽生活と音楽文化を創出し、音楽の未来を切り開く」ことを、実現したい未来に掲げています。人々があきらめていた演奏の喜びを実現し、日常の中に音楽体験が自然に根付いていくような新しい音楽生活を社会に生み出すことを目指します。同時に、当社の製品やサービスがミュージシャンの創造性を刺激し、まだ世界に存在しない音楽が芽生えるような、新たな音楽文化の創出にも挑戦します。 2.中期経営計画の位置づけ中期経営計画(2026–2028)は、当社が描く未来の実現を加速させるための戦略的ステップとして位置づけています。前中期経営計画では、環境変化への対応に取り組みながら、基幹システム更新や研究開発拠点となる新本社建設など将来に向けた基盤整備を着実に進めてきました。本中期経営計画では、これらの基盤を確かな土台として、電子楽器の需要創造と体験価値(CX)向上に向けた投資を本格的に進め、持続的な成長が可能な高収益企業へのトランスフォームを推進します。 3.業績目標中期経営計画の業績目標は以下のとおりです。 2025年12月期(実績)2028年12月期(目標)CAGR売上高1,009億円1,200億円+5.9%営業利益94億円144億円+15.2%親会社株主に帰属する当期純利益21億円102億円+67.6%[+9.2%](注)ROE5.0%[16.8%](注)20%-ROIC15.2%18%- (注)2025年度に計上したDrum Workshop, Inc.に係る一時費用の影響を除く。 4.成長機会当社は以下の成長機会を積極的に捉えていきます。① 膨大な潜在層:主に先進国に数多く存在する「演奏離脱層」、「演奏関心層」へのアプローチによる新たな需要創出② テクノロジーの進化:AIやIoTなどの先端技術の進展による電子楽器での演奏体験やサービスの高度化③ 電子楽器化の拡大:アコースティック楽器の電子楽器化という長期トレンド④ 新興国需要の拡大:1人当たりGDPの成長による中間層の購買力向上を背景にした新興国市場の拡大 5.重点戦略① Direct Connect顧客との直接的かつ継続的な接点を強化することを目的に、AI/IoTを実装した革新的な電子楽器の開発・販売、直販チャネルの拡大、データ活用プラットフォームの新規開発や既存サービスを強化し、これらを相互に連携させることで、顧客の演奏活動を支援し、体験価値の最大化を図ります。1)Connected Instruments:Wi-Fiによるネット接続機能を標準搭載し、ソフト・クラウドと統合された新たな体験価値を提供する電子楽器。2)Roland Retail:直営店“Roland Store”、直営店を基盤にしたダイレクトEコマース。3)Roland Cloud:当社独自のVirtual instrumentsや製品のアップデータを提供し、顧客のLTVを最大化する基盤となるクラウドサービス。4)Roland App(仮称):顧客が当社製品やサービスを最大活用するための日次タッチポイントとなるアプリ。 ② Innovationアコースティック楽器の電子化の潮流を加速させるとともに、アライアンス、共同研究・開発を積極的に推進します。1)電子楽器化の拡大:ドラムやピアノでの電子楽器化の流れの促進に加え、電子管楽器のシリーズ拡大や電子化の進んでいないアコースティック楽器の電子化の促進。2)共同開発による新規技術の開発:アライアンスや共同研究・開発、異業種・異分野とのコラボレーションを推進し、革新的な顧客体験を実現する新規技術の開発、新規製品、サービスを拡充。 ③ 新興国販売拡大新興国での楽器需要拡大に対応し、現地ニーズに適合した専用モデルの投入や、顧客のタッチポイントとなる新規チャネルの開拓等の新興国での取り組みを強化します。1)中国ホビー市場の拡大:趣味需要が増加傾向にある中国でのホビー市場開拓。2)インド、中南米、中東での販売強化:先進国を上回る市場成長が続き、文化を背景とした独自の音楽マーケットを保持する新興国での販売強化。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1) 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の金額並びに開示に影響を与える見積りを行っています。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断をしていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、経営者が行う見積りや判断のうち、特に次の重要な会計方針及び見積りが財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があると考えています。(a) 棚卸資産の評価「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。 (b) 固定資産の減損当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討し、固定資産に減損が見込まれる場合は、将来キャッシュ・フローの現在価値又は正味売却価額に基づいて減損損失を計上しています。将来の事業計画の変更や経営環境等の悪化により将来キャッシュ・フローの見積りが著しく減少する場合は、減損損失を計上する可能性があります。なお、Drum Workshop, Inc.の固定資産の減損については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。 (c) 投資の減損当社グループは、時価のある有価証券について、市場価格等が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。また、下落率が30%以上50%未満の有価証券については、過去2年間の平均下落率においても概ね30%以上に該当した場合に減損処理を行っています。時価のない有価証券については、その発行会社の財政状態の悪化により実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、評価損を計上する可能性があります。 (d) 繰延税金資産の回収可能性当社グループは、繰延税金資産の算定にあたって、将来の業績予測やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。経営環境等の悪化により、その見積りに変更が生じた場合は、繰延税金資産が取り崩されることにより税金費用を計上する可能性があります。 (e) 退職給付債務の算定当社は確定給付企業年金制度(キャッシュバランスプラン)を採用しており、従業員の退職給付費用及び退職給付債務について、数理計算に使用される前提条件に基づいて算定しています。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率及び昇給率、年金選択率、年金資産の期待運用収益率等の重要な見積りが含まれており、特に損益に重要な影響を与えると思われる割引率については、期末における日本の長期国債の利回りを基礎として設定しています。また、長期期待運用収益率については、運用方針等に基づき設定しています。実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合、その影響は累計され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来の会計期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。 (2) 経営成績等の状況の概要並びに経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当連結会計年度における当社グループを取り巻く世界経済は、米国の関税政策による混乱や、世界中に広がりつつある地政学リスク、不安定な為替動向など、引き続き不確実性の高い状況が継続しました。当社が展開する電子楽器市場では、コロナ禍に伴う特需の反動減や小売店の在庫調整が一巡し、全体としては回復基調が見られました。主要市場の米国では、様々な懸念は存在するものの好調に推移し、また低迷の続いていた中国市場においても、当社製品群の需要は回復に向かいました。欧州においては、楽器小売店間の競争激化により、一部の小売店が倒産するなど減速が見られましたが、今後存在感の高まりが期待される新興国は引き続き好調に推移しました。一方で、米国の関税政策の大幅な転換により、サプライチェーンやコスト面では新たな課題も顕在化しました。当社は関税影響の低減を目的とし、コストのゼロベースでの見直しを実施するとともに、主要国における価格調整や生産地の最適化を速やかに開始しました。これらの成果に加え、プロダクトミックスの改善効果等もあり、影響は概ね吸収することができました。このような大きな外部環境変化の中、当社では適切な対応を迅速に進めると同時に、中期経営計画の最終年度として「需要創造」、「シェア拡大」、「LTV(ライフタイムバリュー)向上」、「基盤強化」にも取り組みました。「需要創造」においては、既存製品のラインアップ強化や主力製品群のリニューアルに加え、新たな市場創出にも注力しました。具体的には、前期発売の電子ドラムのハイエンド・モデル「V-Drums 7シリーズ」に始まる新世代V-Drumsの流れを受けたミドル・モデル「V-Drums 5シリーズ」、「V-Drums 3シリーズ」を発売しました。また、ビンテージ製品として位置付けられている、1980年代を中心に発売されたリズムマシン「TRシリーズ」の現代版として、新開発デジタル音源に加え、Roland史上約40年ぶりとなる新開発アナログ音源を搭載した「TR-1000」を発売しました。加えて、新たな形態の製品として、フルート型の電子管楽器「Aerophone Brisa」を発売し、今後電子化の拡大が期待される管楽器市場における、認知拡大と新規ユーザーの獲得を図りました。「シェア拡大」においては、ポータブルキーボード市場再参入の足掛かりとして、前期に発売した「GO:KEYSシリーズ」のバージョンアップを実施し、製品の魅力向上と市場浸透に取り組みました。また新興国においては、人口増加と中間層の購買力向上が進むインド、インドネシアや中南米等での販売体制強化に注力し、製品面でも専用モデルを発売しました。世界の主要都市へ出店を進めている直営店舗「ローランドストア」、新興国を中心に出店を進めている「ストア・イン・ストア」については、市況を鑑み出店を厳選したものの、販売実績は好調に推移しました。「LTV(ライフタイムバリュー)向上」においては、Roland Cloudの新規サービスやサウンド・コンテンツ、また製品を長く楽しむためのアプリ等を継続的にリリースしました。V-Drumsの新シリーズにはWireless LANを搭載し、よりスムーズなRoland Cloud経由でのサウンド拡張が可能となっています。「基盤強化」においては、前期に導入した経営基幹システム「SAP S/4HANA」の安定稼働に加え、当期は需要予測とそれに基づく生産計画をオートメーション化しました。これにより市場の状況をより柔軟かつ迅速にオーダー、生産に反映することが可能となりました。さらに10月には、浜松市の新本社「Roland Inspiration Hub」社屋が竣工しました。市内に点在していた研究開発部門、生産部門、管理部門などの機能を一体化し、社員同士がアイデアを生み出しながらクリエイティブに働ける環境を実現しました。 (a) 売上高当連結会計年度の売上高は、100,952百万円(前期比1.5%増)となりました。製品カテゴリーごとの販売状況(対前期比)は以下のとおりです。 (鍵盤楽器)売上高27,223百万円(前期比1.3%増)電子ピアノは、苦戦が継続していた中国で回復の動きが見られました。その他の主要地域においては、中型タイプがやや低調であるものの、ポータブルタイプは好調に推移しました。ポータブルキーボードは、前期及び当期投入の新製品効果により、堅調に推移しました。 (管打楽器)売上高29,364百万円(前期比2.7%増)電子ドラムは、前期及び当期に発売した主力新製品群が大きく貢献し大変好調に推移しました。アコースティックドラムでは、米国関税政策に関連する生産影響やインフレの影響等により伸び悩みました。電子管楽器は、新たにフルート型の製品を投入しアドオンとなりましたが、主力市場である中国において需要減少、競争激化の影響を受けました。 (ギター関連機器)売上高25,149百万円(前期比0.6%増)ギターエフェクターは、受注残の解消や新製品群の貢献、また定番製品の底堅い需要により好調に推移しました。楽器用アンプにおいては、前第2四半期にモデルチェンジした主力機種が好調に推移しましたが、屋外使用に最適な製品群に需要低下が見られました。 (クリエーション関連機器&サービス)売上高13,060百万円(前期比3.4%増)シンセサイザーは、前期及び当期に投入した新製品群が貢献し大変好調に推移しました。ダンス&DJ関連製品では、欧州を中心に既存製品の需要減少が見られましたが、当第4四半期に発売した大型新製品は大変好調に推移しました。ソフトウエア/サービス分野では、ユーザーのLTV(ライフタイムバリュー)を高めるためのコンテンツやサービスの提供をRoland Cloudや外部チャネルを活用し継続的に行い、売上高は計画以上に増加しました。 (映像音響機器)売上高3,057百万円(前期比4.4%減)ビデオ関連製品は、前期投入の新製品効果がありましたが、配信需要が一巡し関連製品の販売が鈍化しました。 (b) 営業利益価格適正化の効果により利益は増加しましたが、関税影響や人件費、広告販促費等の販管費の増加により、当連結会計年度の営業利益は9,412百万円(前期比5.4%減)となりました。 (c) 経常利益営業外収益は195百万円、営業外費用は585百万円となりました。営業外費用では為替差損316百万円が発生しました。以上の結果、当連結会計年度の経常利益は9,022百万円(前期比7.3%増)となりました。 (d) 親会社株主に帰属する当期純利益特別利益362百万円には、受取和解金361百万円、特別損失4,112百万円には、米国を拠点とする連結子会社のDrum Workshop,Inc.(以下、DW)の固定資産に対する減損損失3,860百万円が計上されています。税金費用はDWの繰延税金資産の取崩し等により法人税等調整額1,724百万円が計上された結果、3,089百万円となりました。以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は2,168百万円(前期比63.7%減)となりました。 (e) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標ROE(自己資本利益率)は、自己株式の取得及び消却を実施したものの、上記のとおり親会社株主に帰属する当期純利益が減少したことから、5.0%(前期比8.9ポイント減)となりました。ROIC(投下資本利益率)は、上記のとおり営業利益が減少した一方で、運転資本が減少したことにより、15.2%(前期比0.9ポイント増)となりました。 (f) 生産、受注及び販売の実績当社グループは電子楽器事業の単一セグメントであるため、セグメントに関連付けては記載していません。 (イ)生産実績品目第54期連結会計年度(自 2025年 1月 1日 至 2025年12月31日)前期比(%)鍵盤楽器(百万円)25,9871.5管打楽器(百万円)30,82510.1ギター関連機器(百万円)24,224△2.4クリエーション関連機器&サービス(百万円)10,621△7.7映像音響機器(百万円)2,85116.3その他(百万円)2,046△8.9合計(百万円)96,5552.0 (注)金額は、販売価格によっています。 (ロ)受注実績当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。 (ハ)販売実績品目第54期連結会計年度(自 2025年 1月 1日 至 2025年12月31日)前期比(%)鍵盤楽器(百万円)27,2231.3管打楽器(百万円)29,3642.7ギター関連機器(百万円)25,1490.6クリエーション関連機器&サービス(百万円)13,0603.4映像音響機器(百万円)3,057△4.4その他(百万円)3,097△2.0合計(百万円)100,9521.5 (3) 財政状態の分析総資産は、前連結会計年度末と比較して1,891百万円増加し、83,477百万円となりました。その主な要因は、棚卸資産が1,826百万円、無形固定資産が4,418百万円それぞれ減少した一方、次項に詳述するキャッシュ・フローの状況により現金及び預金が1,397百万円、有形固定資産が4,668百万円、退職給付に係る資産が2,566百万円それぞれ増加したことによるものです。負債は、前連結会計年度末と比較して7,209百万円増加し、42,113百万円となりました。その主な要因は、仕入債務が2,110百万円、借入金が3,669百万円、未払費用が524百万円、繰延税金負債が607百万円それぞれ増加したことによるものです。純資産は、前連結会計年度末と比較して5,318百万円減少し、41,364百万円となりました。その主な要因は、自己株式の消却などにより純資産の控除科目である自己株式が1,262百万円減少し、主要国通貨に対する円安基調により為替換算調整勘定が1,423百万円、退職給付に係る調整累計額が1,351百万円それぞれ増加し、また親会社株主に帰属する当期純利益が2,168百万円あった一方で、自己株式の消却や配当金の支払いなどにより剰余金が11,503百万円減少したことによるものです。以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して7.6ポイント減少し、49.2%となりました。 (4) キャッシュ・フローの状況当連結会計年度において現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,397百万円増加(前年同期は1,595百万円増加)し、期末残高は15,876百万円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、主として税金等調整前当期純利益及び運転資金の減少により、13,699百万円(前年同期に得られた資金は11,717百万円)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、主として有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出により、6,439百万円(前年同期に使用した資金は1,193百万円)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、主として長期借入れによる収入があったものの、自己株式の取得による支出や配当金の支払いなどにより、7,417百万円(前年同期に使用した資金は9,658百万円)となりました。 (5) 経営成績に重要な影響を与える要因当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。 (6) 資本の財源及び資金の流動性当社グループの主な資金需要は、当社グループ製品を製造するための原材料の仕入、労務費、外部委託にて製造された当社グループ商品の仕入、研究開発費や広告販促費等の営業費用の運転資金及び製造設備の刷新、拡充です。当社グループは、必要な運転資金及び設備投資資金について、自己資金又は外部借入で対応しています。効率的な資金調達を行うため、取引金融機関と当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクを管理しています。当連結会計年度末において、これらの契約に基づく当社グループの借入未実行残高は14,000百万円です。当社グループは、今後とも営業活動によって得る自己資金を基本的な資金源としながら、資金繰りの見通しや市場金利の状況を考慮し、必要に応じて銀行借入を活用することで資金調達コストを抑制し、資本効率の最適化を図ります。また事業活動により創出される付加価値の最大化とその適正な分配を通じて、全てのステークホルダーの共感を得ながら持続的な企業価値の成長を図ります。株主還元につきましては、持続的かつ安定的な配当を行うとともに、株式市場動向や資本効率等を考慮した機動的な自己株式の取得も適宜行うことで、中計3ヵ年累計で連結総還元性向50%を目指し、成長投資資金の留保が必要な場合も、DOE(自己資本配当率)5.0%を下限目標とします。なお当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。 [参考情報]当社グループは、投資家が当社グループの業績評価を行い、当社グループの企業価値を把握するうえで有用な情報を提供することを目的として、連結財務諸表に記載された売上高以外に、当社グループの主要な市場ごとの外部顧客への売上高及び製品カテゴリーごとの外部顧客への売上高の推移を下表のとおり把握しています。なお、比率(%表示)は売上高の構成比を示しています。 (1) 地域ごとの売上高 (単位:百万円) 2021年2022年2023年2024年2025年日本9,66612.1%9,73610.2%9,6939.5%9,0549.1%9,2629.2%北米 (注)125,95932.4%34,90436.4%38,92038.0%38,38238.6%38,76438.4%欧州 (注)224,95831.2%26,43927.6%29,66328.9%28,75528.9%28,96828.7%中国 (注)38,67310.8%9,64110.1%8,7968.6%7,4117.5%7,5617.5%アジア・オセアニア・その他の地域10,77513.5%15,11815.7%15,37215.0%15,83015.9%16,39416.2%合計80,032100.0%95,840100.0%102,445100.0%99,433100.0%100,952100.0% (注)1.アメリカ及びカナダでの売上高になります。2.オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ及び英国での売上高を含みます。3.中国本土での売上高になります。 (2) 製品カテゴリーごとの売上高 (単位:百万円) 2021年2022年2023年2024年2025年鍵盤楽器24,79231.0%29,86931.2%27,54626.9%26,86927.0%27,22327.0%管打楽器19,05323.8%23,04624.1%29,34228.6%28,58828.8%29,36429.1%ギター関連機器19,09323.9%23,54024.6%25,72625.1%24,98825.1%25,14924.9%クリエーション関連機器&サービス10,12212.6%12,20612.7%12,66212.4%12,62712.7%13,06012.9%映像音響機器4,2825.3%4,3574.5%4,0734.0%3,1993.2%3,0573.0%その他2,6893.4%2,8192.9%3,0943.0%3,1603.2%3,0973.1%合計80,032100.0%95,840100.0%102,445100.0%99,433100.0%100,952100.0%