7011

三菱重工業(7011)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

機械 機械

事業の概要

  • 多岐にわたる重工業分野
    三菱重工業は、火力・原子力発電システム、航空機エンジン、製鉄機械、商船、物流機器、防衛航空機、宇宙機器など、非常に幅広い重工業製品・サービスを提供しています。これは、社会インフラから産業機械、先端技術まで多岐にわたる分野で事業を展開し、収益源を分散していることを意味します。
  • 設計から据付まで一貫
    多くの事業において、設計、製造、販売、サービス、据付までを一貫して自社グループで行っています。これにより、顧客のニーズに合わせたきめ細やかな対応が可能となり、製品の品質管理やアフターサービスまで責任を持って提供するビジネスモデルを構築しています。
  • グローバルな事業展開
    有価証券報告書に記載されている関係会社には、海外の企業名も多く見られます。これは、日本国内だけでなく、世界各国で事業を展開し、国際的な市場から収益を得ていることを示唆しています。特にエナジー分野では、海外での電力インフラ需要を取り込んでいると考えられます。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • パワースシステムズ事業
    火力発電システム(GTCC、スチームパワー)、原子力発電システム、風力発電システム、航空機用エンジンなどを手掛ける事業です。売上高は1兆4939億円、営業利益は1089億円と、最も収益性の高い稼ぎ頭となっています。世界の電力需要や脱炭素化の流れに合わせたエネルギーソリューションを提供しています。
  • インダストリー&インフラ事業
    製鉄機械、商船、エンジニアリング、環境設備、機械システムなどを扱う事業です。売上高は1兆8989億円と最も規模が大きいですが、営業利益は408億円とパワースシステムズに比べて収益性は低めです。社会インフラの整備や産業の効率化に貢献する製品・サービスを提供しています。
  • 航空・防衛・宇宙事業
    民間航空機、防衛航空機、飛しょう体、艦艇、宇宙機器などを手掛ける事業です。売上高は7229億円ですが、営業利益は-151億円と赤字となっています。国の安全保障や宇宙開発といった重要な分野を担っており、長期的な視点での投資や開発が求められる事業特性があります。
FY2018 セグメント別業績
セグメント区分売上(億)営業利益(億)営業利益率
PowerSystems 事業 14,940 1,090 7.3%
IndustryAndInfrastructure 事業 18,990 409 2.2%
AircraftDefenseAndSpace 事業 7,230 -151 -2.1%
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2025|1,075 文字
3【事業の内容】当社グループでは、多くの事業において当社及び関係会社が連携して設計、製造、販売、サービス及び据付等を行っており、当社グループの主な事業内容と当社又は主な関係会社の当該事業における位置付け及びセグメントとの関連は次のとおりである。なお、次の4セグメント等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」に掲げる報告セグメント等の区分と同一である。また、当連結会計年度からセグメントの区分を変更している。 (エナジー)当セグメントにおいては、火力発電システム(GTCC※1、スチームパワー)、原子力発電システム(軽水炉、原子燃料サイクル・新分野)、風力発電システム、航空機用エンジン、コンプレッサ、排煙処理システム(AQCS※2)、舶用機械等の設計、製造、販売、サービス及び据付等を行っている。※1 Gas Turbine Combined Cycle※2 Air Quality Control System[主な関係会社]Mitsubishi Power Aero LLC、Mitsubishi Power Americas, Inc.、三菱重工航空エンジン㈱、三菱重工コンプレッサ㈱、三菱重工マリンマシナリ㈱ (プラント・インフラ)当セグメントにおいては、製鉄機械、商船、エンジニアリング、環境設備、機械システム等の設計、製造、販売、サービス及び据付等を行っている。[主な関係会社]三菱重工環境・化学エンジニアリング㈱、三菱造船㈱、三菱重工機械システム㈱、三菱重工交通・建設エンジニアリング㈱、Primetals Technologies, Limited (物流・冷熱・ドライブシステム)当セグメントにおいては、物流機器、冷熱製品、エンジン、ターボチャージャ、カーエアコン等の設計、製造、販売、サービス及び据付等を行っている。[主な関係会社]三菱重工サーマルシステムズ㈱、三菱重工エンジン&ターボチャージャ㈱、三菱ロジスネクスト㈱ (航空・防衛・宇宙)当セグメントにおいては、民間航空機、防衛航空機、飛しょう体、艦艇、特殊機械(魚雷)、特殊車両、宇宙機器等の設計、製造、販売、サービス及び据付等を行っている。[主な関係会社]三菱重工マリタイムシステムズ㈱、MHI RJ Aviation Inc. なお、報告セグメントに含まれない電化・データセンター事業等の成長分野に関する事業及びアセットビジネス等は「その他」の区分に含めている。同区分の主な関係会社として、Concentric, LLCがある。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 中程度
高度な技術力と幅広い分野でのソリューション提供により、一定の価格決定力を持つ。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
エナジー、プラント・インフラ、航空・防衛・宇宙等の幅広い分野で高度な技術力が必要。
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか 中程度
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:国際情勢の変化と経済安全保障施策 / 脱炭素化関連プロジェクトの停滞と環境規制強化 / 自然災害、戦争・テロ、社会インフラ麻痺
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 11 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★☆☆
根拠:中程度ブランド・特許・許認可

三菱重工業は、長年にわたり培ってきた高度な技術力、設計能力、そして信頼性の高いブランドイメージを強みとする。特に、航空宇宙、防衛、原子力、プラントなどの分野における長年の実績と、そこで培われた独自のノウハウは、新規参入企業にとって容易に模倣できない無形資産となっている。これらの分野は、高度な技術的障壁と厳格な品質基準が求められる。

スイッチングコスト★★☆☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

プラント事業や防衛関連事業など、一度納入された大型設備やシステムにおいては、保守・メンテナンス・アップグレード等で顧客との継続的な関係が生まれる。しかし、新規設備投資の決定においては、価格や性能、納期などの要因が重視される傾向があり、顧客のスイッチングコストは限定的である場合が多い。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

三菱重工業の事業は、個別の大型プロジェクトや製品提供が中心であり、ユーザー数の増加が直接的に製品・サービスの価値を高めるようなネットワーク効果は基本的に見られない。

コスト優位★★☆☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

大規模な生産設備やサプライチェーンを持つが、多品種少量生産やカスタムメイドの要素が強く、一般的な製造業に見られるような圧倒的なコスト優位性を確立しているとは言えない。ただし、長年の経験に基づく効率的な生産プロセスや調達力は一定の競争力を持つ。

規模の経済★★★★☆
根拠:強い規模が参入障壁になる

航空宇宙、エネルギー、インフラ、防衛といった多岐にわたる基幹産業において、世界でも有数の規模と技術力を持つプレイヤーである。特に、これらの分野では、巨額の設備投資と高度な技術開発能力が求められるため、規模の経済と業界構造による寡占状態が競争優位の源泉となっている。

  • 総合的な技術力と実績
    長年にわたり培ってきた重工業分野における総合的な技術力と豊富な実績が強みです。特に、火力発電システム(GTCC)、原子力発電システム、航空機用エンジンなど、高度な技術と信頼性が求められる分野で事業を展開しており、これが他社との差別化要因となっています。
  • 幅広い製品ポートフォース
    エナジー、プラント・インフラ、物流・冷熱・ドライブシステム、航空・防衛・宇宙といった多岐にわたるセグメントで事業を展開しているため、特定の市場の変動に左右されにくい安定した事業基盤を持っています。これにより、リスクを分散し、各分野でのシナジー効果も期待できます。
  • 強固な顧客基盤と信頼
    社会インフラや防衛といった公共性の高い事業を多く手掛けていることから、国や大手企業との強固な顧客基盤と信頼関係を構築していると考えられます。これは、新規参入が難しい分野での安定的な受注につながり、長期的な収益の確保に貢献しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。 (1)経営方針・経営戦略等①当連結会計年度の経営環境当社グループを取り巻く経営環境は、世界経済は地域により差はあるものの、全体としては底堅い成長を続け、日本経済も、個人消費と設備投資を中心に緩やかに持ち直した。一方、地政学的なリスク、中国経済の低迷に加え、保護主義的な動きの高まりなどで、先行きには不透明感が残る状況となった。かかる経営環境下においても、当社グループは長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、サステナブルで安全・安心・快適な社会と人々の豊かな暮らしの実現に貢献していく。 ②中期経営計画「2024事業計画」2024年4月から開始した中期経営計画「2024事業計画」は、事業成長と収益力の更なる強化の両立に向け、「伸長事業」と「成長領域」を重点領域とし、「ポートフォリオ経営の強化」、「技術・人的基盤の強化」及び「MISSION NET ZEROの推進」に取り組み、その結果、2026年度における「売上収益5.7兆円以上」、「事業利益4,500億円以上(事業利益率8%以上)」、「ROE12%以上」等の目標達成と、安定配当と利益成長に応じた増配による株主還元を進めていく。初年度に当たる当事業年度では、受注、売上、事業利益ともに過去最高となった。特に、「2024事業計画」の目標達成に向けては、伸長事業を中心に旺盛な受注を確保することができた。 ③「MISSION NET ZERO」に向けた取組みサステナブルで安全・安心な社会の実現に向け、MISSION NET ZEROに取り組んでおり、Scope1、2※1のCO2排出量を2030年に2014年比で50%削減するという目標に対して、2024年で47%削減を見込んでいる。これに加え、三原製作所では工場のカーボンニュートラル化を進めており、太陽光発電設備等の既存技術の導入にとどまらず、工場脱炭素化に向けた新たな技術の実証と導入を進めている。また、Scope3※1については当社のバリューチェーン全体からのCO2排出量削減(2019年比で、2030年に50%)が目標であり、この達成に向けて高砂水素パークや長崎カーボンニュートラルパークなどで様々なソリューションの開発・実証を進めている。※1 Scope1は当社のCO2直接排出を、Scope2は主に電気の使用に伴うCO2間接排出を、Scope3はScope1、   Scope2以外の当社バリューチェーン全体でのCO2間接排出を示す。算定基準は温室効果ガス(GHG)   排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルに準じる。 (2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当社グループは、当社を取り巻く環境の不確実性に備えつつ、様々な変化に柔軟に対応し、新たな事業機会を着実に捉えていく必要がある。このため、従来の取組みの継続に加え、新たな価値を創造することで社会の進歩に貢献していくことを経営目標に掲げ、これを実現するために、「Innovative Total Optimization」(ITO)という新たな考え方を実践する。具体的には、基盤技術の組合せによって社会や顧客のバリューチェーンを革新する製品・サービスを創出することで事業領域を拡大する。また、縦のバリューチェーンと横の事業部間の連携を強化してシナジー効果を追求することで、全体最適による生産性の向上・収益力強化を実現する。こうした取組みを通じて、「2024事業計画」で掲げた事業成長と収益力の更なる強化の両立に向けた各種施策をより力強く推進していく。 ①伸長事業の着実な遂行エネルギー、原子力、防衛の分野は、旺盛な需要を受け、多くの受注を確保している。計画したQCD(品質・コスト・納期)で顧客に届けるため、人的リソースを拡充し、生産能力強化・生産性向上を図るとともに、サプライチェーンを強化する。また、将来を見据えた研究開発・設備投資も積極的に実施して、大きな成長実現の布石とする。エネルギー分野のガスタービンでは、海外拠点も含めた生産能力増強やサプライチェーンの強靭化、工場の自動化・IT化を推進する。また、発電効率向上のための技術開発に取り組むとともに、水素・アンモニア焚きガスタービンに関しては経済性や燃料供給インフラの状況を考慮し実証を進める。原子力分野では、プラントの新設を見据えた生産設備の更新や高機能化と、革新軽水炉開発等を更に推進する。防衛分野では、組織横断タスクフォースにより生産効率向上、サプライヤー支援及び物流改善等の増産準備を進めるとともに、将来事業の創出に向けた技術開発を加速する。 ②成長領域の事業化推進需要が拡大しているデータセンターでは、当社が強みを持つ電源・冷却・制御に関する幅広い製品とエンジニアリングを統合して最適なソリューションを提供する。これにより、ユーティリティの安定稼働等に貢献していく。また、水素・アンモニア・CCUS※2の分野では、各国の市場・政策動向を踏まえたエナジートランジションへの備えとして、世界最高クラスの経済性を持つ製品を提供するために、案件組成・研究開発を推進していく。CCUSの関係では、関西電力姫路第二発電所内に新設したCO2回収パイロットプラントでの実証を進める。また、現地工事の効率化・省力化や工期短縮を可能とする小型CO2回収装置の市場投入を進める。さらには、ExxonMobil社との次世代CO2回収技術に関する研究開発を加速する。水素・アンモニアの関係では、SAF※3や合成燃料製造にも繋がる高効率な水素製造装置であるSOEC※4の開発を促進する。※2 Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(二酸化炭素回収・利用・貯留)※3 Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)※4 Solid Oxide Electrolysis Cell(高温水蒸気電解) ③DXの活用等当社グループでは、デジタル・プラットフォーム「ΣSynX」(シグマシンクス)を活用して事業分野を跨ぐ製品群を「かしこく・つなぐ」ことで、事業競争力強化に取り組んでいる。新しい事業機会開拓のため、更にデジタル技術を活用し、サービスの高度化を図っていく。例えば、画像監視プラットフォーム「ΣSynX Supervision」によるO&M※5の高度化や、発電プラントの配管画像のデータ処理により、プラントの安定運用に貢献する。一方で、デジタルイノベーションを加速するための教育プログラムの充実等による人材育成を進める。また、デジタル技術で可視化した熟練技能を技能伝承に活用するなど、技術・人的基盤の強化も図っていく。※5 Operation & Maintenance(運転・保守) 当社グループは、以上の諸施策を通じ、社会課題の解決によってサステナブルな社会の実現に貢献していく。このように事業を発展し成長させていく上では、従来同様コンプライアンスが大前提であるとの認識の下で各種施策を進めていく。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。 (1)経営方針・経営戦略等①当連結会計年度の経営環境当社グループを取り巻く経営環境は、世界経済は地域により差はあるものの、全体としては底堅い成長を続け、日本経済も、個人消費と設備投資を中心に緩やかに持ち直した。一方、地政学的なリスク、中国経済の低迷に加え、保護主義的な動きの高まりなどで、先行きには不透明感が残る状況となった。かかる経営環境下においても、当社グループは長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、サステナブルで安全・安心・快適な社会と人々の豊かな暮らしの実現に貢献していく。 ②中期経営計画「2024事業計画」2024年4月から開始した中期経営計画「2024事業計画」は、事業成長と収益力の更なる強化の両立に向け、「伸長事業」と「成長領域」を重点領域とし、「ポートフォリオ経営の強化」、「技術・人的基盤の強化」及び「MISSION NET ZEROの推進」に取り組み、その結果、2026年度における「売上収益5.7兆円以上」、「事業利益4,500億円以上(事業利益率8%以上)」、「ROE12%以上」等の目標達成と、安定配当と利益成長に応じた増配による株主還元を進めていく。初年度に当たる当事業年度では、受注、売上、事業利益ともに過去最高となった。特に、「2024事業計画」の目標達成に向けては、伸長事業を中心に旺盛な受注を確保することができた。 ③「MISSION NET ZERO」に向けた取組みサステナブルで安全・安心な社会の実現に向け、MISSION NET ZEROに取り組んでおり、Scope1、2※1のCO2排出量を2030年に2014年比で50%削減するという目標に対して、2024年で47%削減を見込んでいる。これに加え、三原製作所では工場のカーボンニュートラル化を進めており、太陽光発電設備等の既存技術の導入にとどまらず、工場脱炭素化に向けた新たな技術の実証と導入を進めている。また、Scope3※1については当社のバリューチェーン全体からのCO2排出量削減(2019年比で、2030年に50%)が目標であり、この達成に向けて高砂水素パークや長崎カーボンニュートラルパークなどで様々なソリューションの開発・実証を進めている。※1 Scope1は当社のCO2直接排出を、Scope2は主に電気の使用に伴うCO2間接排出を、Scope3はScope1、   Scope2以外の当社バリューチェーン全体でのCO2間接排出を示す。算定基準は温室効果ガス(GHG)   排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルに準じる。 (2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当社グループは、当社を取り巻く環境の不確実性に備えつつ、様々な変化に柔軟に対応し、新たな事業機会を着実に捉えていく必要がある。このため、従来の取組みの継続に加え、新たな価値を創造することで社会の進歩に貢献していくことを経営目標に掲げ、これを実現するために、「Innovative Total Optimization」(ITO)という新たな考え方を実践する。具体的には、基盤技術の組合せによって社会や顧客のバリューチェーンを革新する製品・サービスを創出することで事業領域を拡大する。また、縦のバリューチェーンと横の事業部間の連携を強化してシナジー効果を追求することで、全体最適による生産性の向上・収益力強化を実現する。こうした取組みを通じて、「2024事業計画」で掲げた事業成長と収益力の更なる強化の両立に向けた各種施策をより力強く推進していく。 ①伸長事業の着実な遂行エネルギー、原子力、防衛の分野は、旺盛な需要を受け、多くの受注を確保している。計画したQCD(品質・コスト・納期)で顧客に届けるため、人的リソースを拡充し、生産能力強化・生産性向上を図るとともに、サプライチェーンを強化する。また、将来を見据えた研究開発・設備投資も積極的に実施して、大きな成長実現の布石とする。エネルギー分野のガスタービンでは、海外拠点も含めた生産能力増強やサプライチェーンの強靭化、工場の自動化・IT化を推進する。また、発電効率向上のための技術開発に取り組むとともに、水素・アンモニア焚きガスタービンに関しては経済性や燃料供給インフラの状況を考慮し実証を進める。原子力分野では、プラントの新設を見据えた生産設備の更新や高機能化と、革新軽水炉開発等を更に推進する。防衛分野では、組織横断タスクフォースにより生産効率向上、サプライヤー支援及び物流改善等の増産準備を進めるとともに、将来事業の創出に向けた技術開発を加速する。 ②成長領域の事業化推進需要が拡大しているデータセンターでは、当社が強みを持つ電源・冷却・制御に関する幅広い製品とエンジニアリングを統合して最適なソリューションを提供する。これにより、ユーティリティの安定稼働等に貢献していく。また、水素・アンモニア・CCUS※2の分野では、各国の市場・政策動向を踏まえたエナジートランジションへの備えとして、世界最高クラスの経済性を持つ製品を提供するために、案件組成・研究開発を推進していく。CCUSの関係では、関西電力姫路第二発電所内に新設したCO2回収パイロットプラントでの実証を進める。また、現地工事の効率化・省力化や工期短縮を可能とする小型CO2回収装置の市場投入を進める。さらには、ExxonMobil社との次世代CO2回収技術に関する研究開発を加速する。水素・アンモニアの関係では、SAF※3や合成燃料製造にも繋がる高効率な水素製造装置であるSOEC※4の開発を促進する。※2 Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(二酸化炭素回収・利用・貯留)※3 Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)※4 Solid Oxide Electrolysis Cell(高温水蒸気電解) ③DXの活用等当社グループでは、デジタル・プラットフォーム「ΣSynX」(シグマシンクス)を活用して事業分野を跨ぐ製品群を「かしこく・つなぐ」ことで、事業競争力強化に取り組んでいる。新しい事業機会開拓のため、更にデジタル技術を活用し、サービスの高度化を図っていく。例えば、画像監視プラットフォーム「ΣSynX Supervision」によるO&M※5の高度化や、発電プラントの配管画像のデータ処理により、プラントの安定運用に貢献する。一方で、デジタルイノベーションを加速するための教育プログラムの充実等による人材育成を進める。また、デジタル技術で可視化した熟練技能を技能伝承に活用するなど、技術・人的基盤の強化も図っていく。※5 Operation & Maintenance(運転・保守) 当社グループは、以上の諸施策を通じ、社会課題の解決によってサステナブルな社会の実現に貢献していく。このように事業を発展し成長させていく上では、従来同様コンプライアンスが大前提であるとの認識の下で各種施策を進めていく。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。次の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。なお、当連結会計年度から、セグメントの区分を変更しており、以下の前連結会計年度との比較は、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較している。 (1)財政状態の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容当連結会計年度における当社グループの資産は、「現金及び現金同等物」及び「棚卸資産」の増加等により、前連結会計年度末から4,026億65百万円増加の6兆6,589億24百万円となった。負債は、「契約負債」の増加等により、前連結会計年度末から2,934億96百万円増加の4兆1,891億1百万円となった。資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益の発生等による「利益剰余金」の増加等により、前連結会計年度末から1,091億68百万円増加の2兆4,698億23百万円となった。以上により、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は35.2%(前連結会計年度末の35.9%から△0.7ポイント)となった。 (2)経営成績の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容当連結会計年度における当社グループの受注高は、エナジーセグメントをはじめ全てのセグメントで増加し、前連結会計年度を3,872億24百万円(+5.8%)上回る7兆712億59百万円となった。売上収益は、物流・冷熱・ドライブシステムセグメントが減少したものの、航空・防衛・宇宙セグメント、エナジーセグメント及びプラント・インフラセグメントが増加し、前連結会計年度を3,700億29百万円(+7.9%)上回る5兆271億76百万円となった。事業利益は、物流・冷熱・ドライブシステムセグメントが減少したものの、エナジーセグメント、航空・防衛・宇宙セグメント及びプラント・インフラセグメントが増加し、前連結会計年度を1,006億56百万円(+35.6%)上回る3,831億98百万円となり、税引前利益も前連結会計年度を593億43百万円(+18.8%)上回る3,745億31百万円となった。また、親会社の所有者に帰属する当期利益も、前連結会計年度を234億24百万円(+10.6%)上回る2,454億47百万円となった。 セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。ア.エナジー電力需要の高まりや低炭素化により、市場が拡大しているGTCCが増加したほか、サービス需要が堅調なスチームパワーや、航空需要が再成長軌道に入った航空機用エンジンが増加したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を2,102億80百万円(+8.7%)上回る2兆6,224億66百万円となった。売上収益は、GTCCや航空機用エンジンが増加したことなどにより、前連結会計年度を921億31百万円(+5.3%)上回る1兆8,157億96百万円となった。事業利益は、GTCCや航空機用エンジンが増加したことなどにより、前連結会計年度を554億90百万円(+37.0%)上回る2,053億56百万円となった。 イ.プラント・インフラ脱炭素への動きを背景に欧州で製鉄機械が増加したほか、機械システムや商船が増加したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を1,169億93百万円(+13.2%)上回る1兆2億7百万円となった。売上収益は、製鉄機械や商船、機械システムが増加したことなどにより、前連結会計年度を188億97百万円(+2.3%)上回る8,521億12百万円となった。事業利益は、製鉄機械や機械システム、エンジニアリングが増加したことなどにより、前連結会計年度を148億96百万円(+33.3%)上回る596億34百万円となった。 ウ.物流・冷熱・ドライブシステム東南アジア等の需要拡大を背景に冷熱製品が増加したほか、データセンター向けを中心にエンジンが増加したことなどにより、受注高は前連結会計年度を118億77百万円(+0.9%)上回る1兆3,305億25百万円となった。売上収益は、冷熱製品やエンジンが増加したものの、物流機器が減少したことなどにより、前連結会計年度を74億87百万円(△0.6%)下回る1兆3,071億1百万円となった。事業利益は、物流機器やターボチャージャが減少したことなどにより、前連結会計年度を234億97百万円(△32.3%)下回る493億21百万円となった。 エ.航空・防衛・宇宙防衛力整備計画の拡充への対応等により、艦艇や宇宙機器が増加したほか、民間航空機が増加したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を314億35百万円(+1.5%)上回る2兆1,001億44百万円となった。売上収益は、飛しょう体や防衛航空機等の防衛関連製品、民間航空機が増加したことなどにより、前連結会計年度を2,390億98百万円(+30.2%)上回る1兆306億46百万円となった。事業利益は、飛しょう体や防衛航空機等の防衛関連製品が増加したことなどにより、前連結会計年度を272億91百万円(+37.5%)上回る999億84百万円となった。 オ.その他受注高は前連結会計年度を466億17百万円(+122.6%)上回る846億28百万円、売上収益は前連結会計年度を413億円(+124.5%)上回る744億74百万円、事業利益は前連結会計年度を141億47百万円(+89.2%)上回る300億2百万円となった。 (3)キャッシュ・フローの状況の概要及びこれに関する分析・検討内容当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,265億29百万円増加し、6,578億16百万円となった。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりである。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、5,304億59百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ1,992億72百万円収入が増加した。これは、「税引前利益」が増加したことや受注拡大に伴う「契約負債」の獲得等によるものである。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、1,877億14百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ566億66百万円支出が増加した。これは、「有形固定資産及び無形資産の取得による支出」及び「投資(持分法で会計処理される投資を含む)の取得による支出」が増加したことなどによるものである。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、1,141億23百万円の資金の減少となったが、前連結会計年度に比べ447億79百万円支出が減少した。これは、「債権流動化等による収入」の増加及び「債権流動化等の返済による支出」が減少したことなどによるものである。 (4)生産、受注及び販売の状況①生産の実績セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)金額(百万円)前連結会計年度比(%)エナジー1,888,789+6.2プラント・インフラ793,584△2.2物流・冷熱・ドライブシステム1,294,998△2.4航空・防衛・宇宙1,063,983+33.8その他74,050+87.1全社又は消去10,543―合計5,125,949+7.6(注)1.上記金額は、大型製品については契約金額に工事進捗度を乗じた額、その他の製品については完成数量に販売金額を乗じた額を基に算出計上している。   2.セグメント間の取引については、各セグメントの金額から消去しており、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない生産高である。   3.上記金額には、消費税等は含まれていない。 ②受注の実績セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)受注高(百万円)前連結会計年度比(%)受注残高(百万円)前連結会計年度比(%)エナジー2,622,466+8.74,918,439+16.3プラント・インフラ1,000,207+13.21,705,361+5.0物流・冷熱・ドライブシステム1,330,525+0.979,355+36.0航空・防衛・宇宙2,100,144+1.53,514,580+42.0その他84,628+122.618,239+27.6全社又は消去△66,712―320―合計7,071,259+5.810,236,296+21.9(注)1.受注高については、「エナジー」、「プラント・インフラ」、「物流・冷熱・ドライブシステム」、「航空・防衛・宇宙」及び「その他」にはセグメント間の取引を含んでおり、「全社又は消去」でセグメント間の取引を一括して消去している。また、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない受注高を含んでいる。   2.受注残高については、セグメント間の取引を各セグメントの金額から消去しており、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない受注残高である。   3.上記金額には、消費税等は含まれていない。 ③販売の実績セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)金額(百万円)前連結会計年度比(%)エナジー1,815,796+5.3プラント・インフラ852,112+2.3物流・冷熱・ドライブシステム1,307,101△0.6航空・防衛・宇宙1,030,646+30.2その他74,474+124.5全社又は消去△52,954―合計5,027,176+7.9(注)1.「エナジー」、「プラント・インフラ」、「物流・冷熱・ドライブシステム」、「航空・防衛・宇宙」及び「その他」にはセグメント間の取引を含んでおり、「全社又は消去」でセグメント間の取引を一括して消去している。また、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない販売金額を含んでいる。   2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりである。相手先前連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)防衛省489,77810.5704,18114.0   3.上記金額には、消費税等は含まれていない。 (5)資本の財源及び資金の流動性に係る情報ア.資金需要の主な内容当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための引合費用等の販売費、製品競争力強化・ものづくり力強化及び新規事業立上げに資するための研究開発費が主な内容である。投資活動については、事業伸長・生産性向上及び新規事業立上げを目的とした設備投資並びに事業遂行に関連した投資有価証券の取得が主な内容である。今後、成長分野を中心に必要な設備投資や研究開発投資、投資有価証券の取得等を継続していく予定である。 イ.有利子負債の内訳及び使途2025年3月31日現在の有利子負債の内訳は下記のとおりである。(単位:百万円) 合計償還1年以内償還1年超短期借入金62,30762,307―長期借入金305,62135,965269,656社債225,00035,000190,000小計592,928133,272459,656ノンリコース借入金58,45899157,467合計651,387134,263517,123当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることもあり、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要がある。当連結会計年度においては、当社グループは継続的に資金創出に努め、事業拡大局面においても運転資金を抑制しつつ、期限の到来した借入金を返済してきた結果、当連結会計年度末の有利子負債の構成は、償還期限が1年以内のものが1,342億63百万円、償還期限が1年を超えるものが5,171億23百万円となり、合計で6,513億87百万円となった。これらの有利子負債により調達した資金は、事業活動に必要な運転資金、投資資金に使用しており、具体的には火力発電システム、原子力発電システム、防衛等の伸長事業及び「2024事業計画」で掲げている成長領域が中心である。 ウ.財務政策当社グループは、運転資金、投資資金については、まず営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分について有利子負債による調達を実施している。長期借入金、社債等による長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしている。一方で、有利子負債を圧縮するため、キャッシュマネジメントシステムにより当社グループ内での余剰資金の有効活用を図っており、また、営業債権、棚卸資産の圧縮や固定資産の稼働率向上等を通じて資産効率の改善にも取り組んでいる。自己株式については、事業計画の推進状況、当社の業績見通し、株価動向、財政状況及び金融市場環境等を総合的に勘案して取得を検討していくこととしている。 (6)経営方針・経営戦略及び経営指標等に照らした経営成績等の分析・検討当社グループは、以前の中期経営計画「2021事業計画」において、「収益力の回復・強化」及び「成長領域の開拓」に優先的に取り組み、長期安定的に企業価値を向上させることを目指して事業を遂行してきた。これにより、足元の収益力の回復が図られ、事業基盤を強化することができた。「2024事業計画」においては、「売上収益5.7兆円以上」、「事業利益4,500億円以上(事業利益率8%以上)」、「ROE12%以上」を2026年度の目標として設定しており、当連結会計年度の実績は「売上収益5兆271億円」、「事業利益3,831億円(事業利益率7.6%)」、「ROE10.7%」となった。エナジーセグメント及び航空・防衛・宇宙セグメントを中心とした大型案件の受注、売上収益の増加、利益率改善等により、受注高、売上収益、事業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益のいずれも、過去最高を更新した。また、有利子負債については、成長領域の強化のための投資を実施したが、受注拡大に伴う契約負債の獲得等により、キャッシュ・フローは黒字を確保し、有利子負債残高は6,513億円となった。 (7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されている。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っている。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の注記「2.作成の基礎(5)見積り及び判断の利用」及び「3.重要性がある会計方針」に記載している。

事業リスク

  • 事業環境の急激な変化
    米中対立、ウクライナ情勢、経済安全保障を目的とした輸出規制など、国際情勢の複雑化が事業活動に制約をもたらす可能性があります。また、原材料価格や輸送費の高騰、為替レートの変動も収益を圧迫する要因となり、競争力の維持が困難になるリスクがあります。
  • 脱炭素化の遅延と規制
    世界的な脱炭素化の流れはあるものの、関連プロジェクトへの投資低迷や再生可能エネルギー普及の停滞が、CCSや水素といった当社製品・サービスの実装を遅らせる可能性があります。また、火力発電システムや化学プラント関連事業では、環境規制強化により需要が減少し、事業規模縮小や投下資本回収困難のリスクがあります。
  • 人材不足と技術継承
    日本国内における人口減少・少子高齢化による人材不足の深刻化や、若年層の製造業離れ、工学系技術者の確保難が懸念されています。これにより、技術・技能の断絶が生じ、競争力の低下や事業活動の停滞につながる可能性があります。また、M&A・アライアンスが計画通り進まない場合、減損損失を計上するリスクもあります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2025|7,468 文字
3【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下の(3)に挙げるようなものがある。当社グループでは、事業運営に重要な影響を及ぼしうるリスクを網羅的に抽出・可視化し、経営管理サイクルに生かすことのできるよう毎年取りまとめ、抽出・可視化したリスクに対しては考えうる対応策をあらかじめ講じている。しかし、これらのリスクの顕在化を完全に回避することは困難であり、リスクに留意しながら事業計画に従い事業活動を進めている。また、仮にリスクが顕在化した場合は、その影響を最小化するよう努めている。抽出・可視化したリスクには中長期的に事業環境や社会構造の更なる変化をもたらす可能性があるものも含まれている。当社グループは、将来を見据えて、それらの変化に対応できるよう、先んじて対策を取っていかなければならないと認識している。また、抽出・可視化したリスクについては、事業機会の創出を考える契機としても活用している。なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。 (1)主要なリスクを検討するプロセス当社グループは、事業遂行上のリスクを抽出・討議する経営管理プロセスを策定し、これに基づきリスクの一覧化に取り組んでいる。リスク抽出は、おおむね10年以内に顕在化する可能性が懸念される具体的なリスクの洗い出しを実施している。その上で、講じている対応策の効果も踏まえて当該リスクが顕在化した場合に、当社グループの事業に重要な影響を与える可能性があり、かつ定量化可能なリスクを特定し、そのリスクの影響額と発生確率を軸に、以下のようなリスクマップに整理している。これに加え、定量化の難しい定性的なリスクもまとめて可視化している。 ※リスクマップ(イメージ) (2)当社グループにおけるリスクへの対応策当社グループでは、各種リスクを適切に管理するため、リスクの類型に応じた体制を整備し、責任の明確化を図っている。また、リスクを定期的に評価・分析し、必要な回避策又は低減策を講じるとともに、内部監査によりその実効性と妥当性を監査し、定期的に取締役会及び監査等委員会に報告することとしている。加えて、重大リスクが顕在化した場合に備え、緊急時に迅速かつ的確な対応ができるよう速やかにトップへ情報を伝達する手段を確保し、各事業部門に危機管理責任者を配置している。また、当社グループでは、「事業リスクマネジメント憲章」により、リスクマネジメントの対象・要領等を明確化し、これを遵守・実践している。「事業リスクマネジメント委員会」においては、トップマネジメントレベルでの重要リスク情報の共有や対応方針を協議することにより、経営幹部・事業部門・コーポレート部門の三者の役割分担と連携を明確化している。また、第1線(事業部門・事業会社による自律的な事業リスクマネジメントの実践)、第2線(コーポレート部門による個別案件のリスク審議等を通じた支援・監督)、第3線(監査部門による事業リスクマネジメント・プロセスの有効性確認)がそれぞれの役割を十分発揮できるよう体制を整備し、グループ全体として事業リスクマネジメントに取り組んでいる。なお、以下「(3)主要なリスク」の①から⑥までの各項目のア.において、各項目に関して当社グループがあらかじめ講じている具体的な対応策を例示しているが、当社グループは、これらに限らず、主要リスク以外のものも含め、各種リスクの類型や性質に応じて、リスクを回避・低減するための取組みを進めるとともに、①から⑥までの各項目の「イ.経営成績等の状況に与えうる影響」等のリスクが顕在化した場合の影響の最小化に努めている。 (3)主要なリスク①事業環境の変化ア.当社グループを取り巻く事業環境の変化当社グループを取り巻く事業環境は、非常に速いスピードで変化するとともに複雑化している。国際情勢に関しては、米中対立、既存政策の急激な転換、ウクライナや中東での軍事行動の激化やポピュリズムの台頭等が、世界的な軍事予算の増額、安全保障・治安維持関連の法制強化、経済安全保障を目的とした各種輸出規制及び知的財産やデータなどの移転制限等の施策につながり、国際秩序の分断が一層進んでいる。また、これに伴う市場環境の悪化、資材や輸送費の高騰による生産コストの増加といった経済環境の変化も生じている。こうした環境変化の中、全世界的な中長期での脱炭素化の流れに変わりはないものの、脱炭素化関連プロジェクトへの投資が低迷し、再生可能エネルギー、水素、アンモニア等の普及に停滞傾向が見られる一方で、当社が従来取り組んでいる現実的なエナジートランジションが評価され、天然ガスの役割が増加し、GTCC等で当社にとっての事業機会が生じている。我が国においては、人口減少・少子高齢化の一層の進展による人材不足の深刻化、人材流動化もあいまった人材獲得競争の激化が進んでいることに加え、若年層の製造業離れや工学系学科の技術者の確保難による技術・技能の断絶等が懸念されている。また、高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化や脆弱化の進行によるインフラ遮断で、一時的に事業活動が停滞する可能性も否定できない状況にある。加えて、近年では、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの普及等により、誰もが情報を受発信できる環境となっており、当社に対する批判的な評価や評判が拡散された場合には、当社の信用やブランド価値が毀損されるおそれもある。当社グループは、これらの事業環境変化の中で、エナジートランジションを成長戦略としており、これを推進する「GX(Green Transformation)セグメント」では、プロジェクトマネジメント機能及びエンジニアリング機能を強化した体制を構築し、市場の動きを先取りした新たな機能やソリューションの提案に注力している。これに加え、各種製品分野で企図するM&A・アライアンスに関しては、入口での審議やモニタリングといった活動により、円滑なPMI※1の推進に向けた取組みを実践している。このほか、熟練技能をデジタル技術で可視化して技能伝承に活用するなど、技術・人的基盤の強化も図っている。※1 Post Merger Integrationイ.経営成績等の状況に与えうる影響上記のような世界的な事業環境の急激な変化と複雑化に伴って、商談への参加、サプライヤ選定等の場面での当社グループの事業活動への制約の発生や、為替レートの急激な変動、原材料価格・輸送費の高騰のほか、我が国における人材不足や製造現場の空洞化、社会的評価及び信用の失墜等によって当社グループの競争力の維持が困難又は低下することとなった場合には、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。また、脱炭素化に関しては、全体としては脱炭素を目指しながらも現実的な着地点を模索する動きによって当社事業計画策定時の想定よりも停滞していることに伴い、CCS※2や水素等の当社製品・サービスの実装が著しく遅延するなど、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。加えて、火力発電システムや自動車向けターボチャージャ、化学プラント関連のエンジニアリングなどの事業においては、環境規制が強化された場合、製品・サービスの需要が減少し、事業規模が縮小する可能性や投下資本の回収が困難となる可能性があるほか、顧客が自らの判断で火力発電プラントなどの営業運転を停止することとしたときには、これに伴うサービス事業の停滞等により、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。このほか、当社グループは、各種製品事業において、他社とのM&A・アライアンスを行っているが、市場環境の変化、事業競争力の低下、他社における経営戦略の見直し、その他予期せぬ事象を理由として、これらのM&A・アライアンス対象事業が目論見どおり進捗しない場合、資産の評価見直しによって減損損失等を計上するなど、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。※2 Carbon dioxide Capture and Storage ②各種の災害ア.自然災害や戦争・テロ等の発生地震、津波、豪雨、洪水、暴風、噴火、火災、落雷、感染症の世界的流行等の自然災害の発生、その発生頻度の上昇や被害の甚大化、戦争・テロ、政情不安、反日運動、人質・誘拐等の犯罪、不当拘束、社会インフラの麻痺、労働争議、停電、設備の老朽化・不具合、重大事故や労働災害等により、様々な物的・人的被害が生じ、円滑な経済活動が阻害され、さらには社会基盤が破壊されるといった事態が考えられる。なお、自然災害については、気候変動等に伴いその影響の甚大化が想定される。当社グループでは、これらの影響を低減するため、災害対策支援ツールの活用や報告体制・事業継続計画の策定・整備等の事業継続マネジメントの実施、工場の点検や設備の耐震化、各種訓練の定期的な実施に加え、適切な保険を付保するとともに、各国の情勢や安全に関する情報収集やこれを踏まえた各種対応、関連省庁との連携等を進めている。イ.経営成績等の状況に与えうる影響当社グループは、製品・サービスを提供するための拠点を世界各地に有しているが、特に日本やタイなどに生産拠点が集中しているため、これらの国・地域において、地震・津波・洪水等の大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの生産能力に重要な影響を及ぼす可能性がある。具体的には、生産設備の滅失・毀損、サプライチェーンの停滞・混乱、生産に必要な材料・部品等の不足やサービスの提供停止、生産拠点の操業低下・稼働停止等のほか、代替となる生産設備や取引先の喪失、損害保険等で補填されない損害の発生等の可能性がある。これらの影響に伴う受注や売上の減少等により、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。 ③製品・サービス関連の問題ア.製品・サービスに関連する品質・安全上の問題、コスト悪化等当社グループは、ものづくりとエンジニアリングのグローバルリーダーとして、エナジー、プラント・インフラ、物流・冷熱・ドライブシステム、航空・防衛・宇宙の幅広い分野で高度な技術力を活かしてソリューションを提供している。当社グループは、製品の品質や信頼性の向上に常に努力を重ねているが、製品の性能・納期の問題や製品に起因する安全上の問題が生じる可能性がある。また、仕様変更や工程遅延等に起因するコスト悪化、材料・部品等の調達や工事に伴う問題の発生、納期遅延や性能未達等による顧客からの損害賠償請求や契約解除、顧客の財務状況の悪化等の問題が生じる可能性がある。サプライヤ、協業パートナー等との間でも、製品・サービス・品質等に起因して、同様の問題が発生する可能性がある。また、重要かつ代替性の限られる特定の材料・部品のサプライヤ等が倒産・廃業等により取引不能となった場合に代替調達先の手配ができないことや、サプライヤ等の労働力不足、品質問題、工程混乱等が発生することにより、生産活動や顧客への製品・サービスの提供等に影響が生じるおそれがある。これらに加え、近年のAIの進展により、製品価値が物理性能よりもソフトウェア制御やデータ活用にシフトすることで、当社グループは高い製造技術を強みとしているものの、この優位性が相対的に低下する可能性がある。当社グループでは、これらのリスクに対して、各種規則の制定・運用、事業リスクマネジメント体制の整備・強化、個別案件の事前審議や受注後のモニタリング、プロジェクト遂行責任者や事業部長クラスへの教育の実施、製品安全に関する講座の継続的な開催等を行うとともに、過去に生じた大口赤字案件については、その原因や対策を総括し社内教育に反映するなど、再発防止に努めているほか、サプライチェーンの強化も図っている。イ.経営成績等の状況に与えうる影響このような製品・サービス関連の問題発生等を理由として、追加費用の発生、顧客やサプライヤ等への損害賠償、社会的評価及び信用の失墜等につながる可能性がある。また、顧客・サプライヤ等やその他第三者から国内外で訴訟・仲裁を提起されることがあり、当社グループは、これらに対応している。訴訟・仲裁においては、当社グループの主張が認められるように最大限の対応を行っているものの、当社グループにとって不利な判断が下される可能性は否定できない。また、当社グループが最終的に支払うべき賠償額等の負担が、各種の保険で必ずしも補填されるとは限らない。このような製品・サービス関連の問題だけでなく、重要かつ代替性の限られる顧客、サプライヤ、協業パートナー等の経営状況の悪化や事業方針の転換等も、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。 ④知的財産関連の紛争ア.当社グループの知的財産に対する侵害、当社グループによる第三者の知的財産に対する侵害等当社グループは、研究開発の成果である知的財産を重要な経営資源の一つと位置づけ、グローバルに活用している。しかしながら、当社グループに対して、第三者から知的財産を侵害していると主張されるような事態が生じる可能性がある。また、従業員又は元従業員から、職務発明の対価に関する訴訟が提起される可能性も否定はできない。当社グループでは、知的財産を特許権等により適切に保護し、また、第三者の知的財産を尊重し、当社グループによる侵害回避に努め、必要に応じて当該第三者から技術導入を行うなど適切な対応を取っている。具体的には、製品の基本計画・設計・製造の各段階で他者が保有する知的財産を十分に調査することによる知的財産関連の紛争の未然防止、教育・人材育成を通じた知的財産部門の専門性向上等の対策を進めている。イ.経営成績等の状況に与えうる影響当社グループの知的財産の利用に関して競合他社、従業員等から訴訟等を提起されて敗訴した場合、損害賠償責任を負うほか、特定の技術を利用することができなくなり、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。また、当社グループが事業遂行のために必要とする技術の権利を第三者が保有している場合に、当該第三者からの技術導入を受けられず、当社グループの事業遂行に支障を来たすおそれがある。 ⑤サイバーセキュリティ上の問題等ア.サイバーセキュリティインシデントの発生等当社グループは、事業の遂行を通じて、顧客等の機密情報及び当社グループの技術・営業その他事業に関する機密情報を保有しており、業務上も情報技術への依存度は高まっている。これに対して日々高度化・巧妙化しているサイバー攻撃等が現在の想定を上回るなどして、マルウェア感染や不正アクセスその他の不測の事態が生じた場合には、機密情報が滅失又は社外に漏洩する可能性がある。また、サイバー攻撃等の結果、工場での生産活動など事業運営に影響が出る可能性がある。当社グループでは、これらのリスクに対して、CTO※3直轄のサイバーセキュリティ推進体制を構築し、サイバーセキュリティに関する統制(標準整備、自己点検/検査、啓発/教育/訓練、防御対策、検知体制整備等)を強化し続けている。※3 Chief Technology Officerイ.経営成績等の状況に与えうる影響情報漏洩が生じると、競争力の大幅な低下、社会的評価及び信用の失墜等によって当社グループの事業遂行に重大な影響が生じうる。また、当局等による調査の対象となるほか、顧客等から損害賠償請求等を受ける可能性がある。加えて、サイバー攻撃等の結果、サーバなどの使用に障害が出た場合には、業務の遂行に大きな影響が生じ、その結果生産活動や顧客への製品・サービスの提供等に影響が生じるおそれがある。 ⑥法令等の違反等ア.重大な法令等の違反等当社グループは、国内外の様々な法令・規制(租税法規、環境法規、労働・安全衛生法規、独占禁止法・下請代金支払遅延等防止法・反ダンピング法等の経済法規、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法等の事業関連法規、金融商品取引所の上場規程、個人情報保護法等をいい、これらを総称して以下「法令等」という。)を遵守するとともに、サプライチェーン上も含めて人権尊重に関する責任を果たさねばならない。これらを役員及び従業員にも遵守させるとともに、決してリスクとリターンをトレードしてはならない厳守事項として周知と対策を徹底している。具体的な対策としては、当社グループの全ての役員・従業員を対象とした「三菱重工グループ グローバル行動基準」や各種規則の制定・運用を行うとともに、コンプライアンス委員会の定期的な開催、内部通報体制の整備、法令遵守の徹底に関する経営層からのメッセージの発信、コンプライアンス・情報管理・ブランド戦略等の各種社内教育の充実と継続的な実施、各部門の課題を踏まえた内部監査、人権を尊重した事業活動を遂行するための人権デューデリジェンスを行っている。しかし、一部の役員・従業員が、法令等の違反や人権侵害を生じさせる可能性は完全には排除できない。イ.経営成績等の状況に与えうる影響万一法令等の違反が生じた場合、当局等による捜査・調査の対象となるほか、当局等から過料、更正、決定、課徴金納付、営業停止、輸出禁止等の行政処分若しくはその他の措置を受け、又は当局やその他の利害関係者から損害賠償等を請求されるおそれがある。さらに、法令等の違反や人権侵害が生じた場合には、当社グループの事業遂行が困難となるなどの影響を受ける可能性があり、また、社会的評価及び信用の失墜等につながるおそれがある。特に当社グループの事業の性質に鑑み、国内外の独占禁止法、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法、下請代金支払遅延等防止法等の違反に関しては、当社グループへの影響は一層重大なものとなる可能性がある。

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