研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-03 | - | 1,216 |
| 2024-03 | - | 1,167 |
| 2023-03 | - | 939 |
| 2022-03 | - | 770 |
| 2021-03 | - | 401 |
研究開発活動(本文)
FY2025|5,695 文字
6【研究開発活動】当社グループは成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。加えて、「地球環境課題の解決」への貢献と、「社会とくらしのウェルビーイング」へのお役立ちを目指した技術開発にも、積極的に取り組みました。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,778億円となりました。主な内訳は、「くらし事業」1,454億円、「オートモーティブ」613億円、「コネクト」1,235億円、「インダストリー」612億円、「エナジー」395億円です。なお、「オートモーティブ」は、2024年12月2日にパナソニック オートモーティブシステムズ㈱の株式譲渡が完了し非連結化したことに伴い、非連結化した事業の非連結化するまでの期間(当連結会計年度は約8ヵ月分)の実績を表示しています。 各報告セグメント及びその他の事業、部門の主な成果は、以下のとおりです。(1) くらし事業 主に「くらし」領域において、家電、空調、照明、電気設備や業務用機器など、家庭から店舗、オフィス、街にいたる様々な空間に対応した商品・サービスの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・クリーンで効率的な、純水素型燃料電池・太陽電池・蓄電池を連携させたエネルギーマネジメントシステムを開発 純水素型燃料電池、太陽電池、蓄電池を統合し、AIとクラウド技術を活用したエネルギーマネジメントシステムで電気や熱を最適に供給することで、環境に優しく、エネルギー効率を向上させ、高い信頼性と柔軟性を提供するシステムを実現しました。これにより、経済的メリットとエネルギーレジリエンス(注)1を実現する持続可能で効率的なエネルギーソリューションの提供が可能となりました。技術の実証実験も行っており、2022年に開始した草津拠点の発電プラントでは、工場需要の98%の電力をカバーしました。また2024年に英カーディフの電子レンジ工場では、脱炭素化、コスト最適化の実証を開始、2025年にはオフィスのエネルギーレジリエンスの実証を独ミュンヘンで開始しました。こうした3電池連携を含めた、環境負荷の少ない水素の本格活用を図るエネルギーソリューション「Panasonic HX」の構築に貢献していきます。・再生可能エネルギーを含めた電力を無駄なく有効に利用する技術の開発 エネルギー創出技術とともに、電力を無駄なく有効活用する技術の開発も進めています。真空断熱ガラスともう一枚のガラスを複層化した独自構造のガラス扉を搭載した冷凍リーチインショーケースを開発しました。このショーケースは保冷効率が向上したほか、ガラス表面の結露防止のヒーター通電も抑制できるため、従来品と比較して約33%(注)2の省エネを実現し、省エネ大賞を受賞しました(注)3。また、翌日の日射量予測をもとに太陽光パネルの発電量が多い時間帯を中心にお湯を沸かす「日射量シフト」機能を搭載した昼間沸上げ形自然冷媒(CO2)ヒートポンプ給湯機「おひさまエコキュート」を業界に先駆けて開発・販売しました。「おひさまエコキュート」は、太陽光発電と組み合わせることで、昼間の余剰電力でお湯を沸かし、効率的なエネルギー利用を実現します。さらに、貯湯ユニットやヒートポンプユニットなどの高効率化により、業界最高水準の年間給湯保温効率 3.5(注)4を達成しました。 (2) コネクト 主に「サプライチェーン」「公共サービス」「生活インフラ」「エンターテインメント」分野での企業・法人向けのハードを含むソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・製造・物流現場での効率化・最適化に寄与するAI・ロボット技術を開発、主要国際学会でも採択・発表 視覚と言語情報を同時に扱えるAIマルチエージェントシステム、追加のアルゴリズムなしで現場の多様な制約条件に合わせて最適化する多目的最適化技術を開発しました。さらに、現場で動く対象物を光沢などのノイズがあっても高精度かつ1ミリ秒以下で検出するセンシング技術を開発しました。物流や製造現場でAIやロボットを活用したこれらの技術を活用してサプライチェーンの最適化、製造現場の計画立案の効率化、物流の自動化など製造、物流、流通のあらゆる現場の効率化と生産性向上を支援していきます。・非接触指紋認証における照合精度を向上する技術を開発し、出入国在留管理庁 羽田空港実証実験に採択指を押し付けて取得した圧着指紋のデータと、非圧着で指の変形が生じない非接触指紋の照合を可能にする技術を開発しました。本技術は出入国在留管理庁が実施する日本初の非接触指紋認証の実証実験にも導入されています。非接触で取得した指紋画像から圧着時の特徴変動を予測する独自のディープラーニング手法により、非接触指紋と圧着指紋の照合精度を大幅に向上させ、従来の圧着指紋データベースとの照合におけるエラー率を、一般的な未変換の非接触指紋と比べ約5分の1以下に抑えることができます。顔認証や非接触指紋認証といった生体認証技術を強みに、お客様やパートナー企業と実証実験を重ねて実現したUX(ユーザー体験)やデザインとを融合させ、引き続きお客様のくらしや現場で貢献していきます。 今後も製造業100年の知見とソフトウェアを組み合わせたソリューションや高度に差別化されたハードウェアの提供を通じて、現場にイノベーションをもたらし多様な人々が幸せに暮らせる、持続可能な社会の実現を目指していきます。 (3) インダストリー 主に電子部品、FA・産業デバイス、電子材料などのBtoB事業を中心とした幅広い技術分野の研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・知見やノウハウとデジタル技術を組み合わせ、開発・実験設備を自動化した「スマートラボ」を進化 大阪府門真市の構内に開設した自動実験室「スマートラボ」にて、導電性高分子コンデンサの開発におけるプロセス条件の最適化に適用することで、連続的な稼働を実現。これまで人手が介在することが多かった開発・実験手法と比較し、開発効率を大幅に加速させることができます。今後はこうした「スマートラボ」でのプロセスを他の開発にも活用することで、人手による単純作業の自動化を進め、技術者はより創造性ある付加価値の高い研究開発業務に集中できる環境を充実させていきます。 今後も、スマートラボを起点にインダストリー事業の技術開発を強化していきます。 (4) エナジー 主に乾電池、二次電池、産業用電池、車載用電池の研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・最新の4680サイズの車載用円筒形リチウムイオン電池セルの量産技術を確立 4680セルは、従来の2170セルと比較して約5倍の容量を持つため、電気自動車(EV)の航続距離の延長に貢献するほか、EVに搭載するセル数の大幅な削減が可能なため、バッテリーパックの組み立て工程の効率化や、EVコストの低減に繫がることなどが期待される新型電池です。1セルあたりの容量が大きくなるため、製造工程において、より高度な技術や工法が求められる中で、当社の30年にわたる円筒形リチウムイオン電池の生産技術開発とノウハウの蓄積により、業界に先駆けて高性能な4680セルの量産技術を確立しました。和歌山工場を4680セル生産のマザー工場と位置付け、ここで得られた実証結果を国内外の工場へ展開するなど、競争力を持つコア拠点の構築を目指します。 今後もリチウムイオン電池の製造基盤の拡充並びに競争力強化に向けて寄与していきます。 (5) その他エンターテインメント&コミュニケーション 主に、有機ELテレビなどのAV機器、デジタルカメラ、ヘッドホン、電話機、インターホンなどの民生用商品、並びに放送・業務用映像制作システム、業務用音響機器などに関する研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・磁性流体を適用した完全ワイヤレスイヤホンを開発、臨場感あるクリアな音質を実現 昨今、通信環境の発達や映像・音声の配信サービスの拡充、ストリーミングサービスの高音質化の加速に伴い、ワイヤレスイヤホンで高音質に視聴したいというニーズが高まっています。一般的なドライバーユニットは音を伝える振動板をイヤホンの外周部分だけで支える構造となっており、極薄にすると振動板を安定して支えきれず振動板の動きが乱れることで音の歪みの増加原因となり、逆に厚くすると大きな振幅を必要とする低音の振幅範囲が小さくなり低域の再生能力に影響が出る課題がありました。今回磁性流体ドライバーを新たに内周部分に適用し振動板を安定的に支えることで、大きな振幅(低域)から高速で小さな振幅(高域)まで正確な動作を可能とすることで超低歪かつ超低域までの音質を実現しました。 今後も映像・音響・通信の技術で、お客様のウェルビーイングに貢献する商品サービスを提供していきます。 ハウジングシステム 主に住宅設備・建材や技術を活かしたデバイス・ソリューションの研究開発を行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・AIを活用した住宅間取り図からの自動積算機能を開発 昨今の建設業界を取り巻く環境は、大工の減少や物流2024年問題が顕在化し、労働生産性の向上への取り組みが課題となっています。一部の建材製品の見積り積算においては、居室の数や広さ、部屋の形などの住宅プランが都度変わるため定型化することが困難でした。こうした業界課題の解決に向けて、当社積算システムに2023年には国内住宅CADメーカーとの連携機能を導入し、今回新たに「紙の図面」からも自動で拾い出し可能な「AI積算」機能を開発・導入し、CADソフトに限定することなく、拾い出し業務の効率化を実現しました。また、コーディネートした7つの空間パッケージから仕様を一括選定できる連携機能や活用する住宅会社様の標準仕様呼び出し機能等も追加することで、前述した当社建材製品1棟分の見積り時間を最大で約1/3に短縮できる「間取り図AI積算」の提供を開始しました。 今後も、『くらしの「ずっと」をつくる。』という理念に基づき、人々の「くらし」に寄り添い、人と社会へ新たな価値を提供していきます。 技術部門・共通事項 主に、技術・モノづくりに関わる全社戦略の統括、中長期視点での先端技術開発、生産技術・要素技術・共通技術基盤開発などを行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・ガラス型ペロブスカイト太陽電池の大面積モジュール(1m×1.8m)試作ラインを稼働 当社は独自の材料技術やインクジェット塗布製法、レーザー加工技術を組み合わせることにより、サイズ、透過度、デザインなどのカスタマイズにも対応可能なガラス型ペロブスカイト太陽電池の技術開発を進めています。当年度は、建材としての実証サイズである大面積(1m×1.8m)の試作ラインを立ち上げ、作製した大面積モジュールをCEATEC 2024、CES 2025に出展しました。また、大阪・関西万博にも出展します。今後はこの大面積モジュールでプロセス最適化や実装に向けた開発を推進し、再生可能エネルギーの創出と都市景観の調和、さらなるCO2削減に貢献していきます。・AIの開発期間短縮を図り、信頼性を確保する技術の開発 AI開発においては、事前学習に膨大な時間を要するデータセット構築の効率化や信頼性の確保が課題となります。このような課題に対して、国内最大規模の日本語に特化した自社向け大規模言語モデル「Panasonic-LLM-100b」の開発を他社との協業により進めています。「Panasonic-LLM-100b」は1,000億パラメータを持ち、当社の社内データを追加事前学習させることでビジネス領域における知識を強化し、AIのハルシネーション(注)5を大幅に抑止することが期待できます。さらに、当社開発のマルチモーダル基盤モデル(注)6を進化させることで、開発工数の大幅削減と認識能力の高精度化を両立する技術の開発も行っています。・AIのくらしや仕事(現場)への実装に向けた技術開発を推進 AI開発の効率化を図るとともに、くらしや仕事への実装も推進しています。くらしへの実装においては、冷蔵庫に搭載したAIカメラでドアを開けた際に庫内の画像を撮影し、在庫を確認できる機能を開発しました。広角と狭角望遠の2つのカメラで、食材を高精度に検出。野菜室の撮影画像からAIが野菜の種類を自動認識し、食材をアプリに登録した入庫日の記録と連携して、早く食べたほうがよい順にリスト化するなど、フードロス削減にも貢献しています。仕事における実装事例としては、生成AIを活用した自社プラットフォームにより、業務生産性の向上や、開発現場での実験自動化による次世代コンデンサ-や基板材料の開発効率化を進めています。特に自動化した実験環境では無人で365日、24時間稼働し、AIやマテリアルズ・インフォマティクス(注)7と組み合わせることで、材料開発プロセスの高度化・短期化を実現しています。 (注)1 エネルギー供給に障害が発生した場合に、被害を最小限に抑え、迅速に復旧する能力 2 「標準扉(トリプルガラス)」搭載機種と「VIG省エネ扉」搭載機種との比較 3 省エネルギーセンター会長賞:真空断熱ガラスを利用した冷凍リーチインショーケース「REシリーズ」 4 年間給湯保温効率=1年間で使用する給湯とふろ保温に係る熱量÷1年間で必要な消費電力量×100 5 事実に基づかない情報を生成する現象 6 画像やテキストなどを同時に解析し、これらの複数の情報間の関係を評価する能力を持つモデル 7 機械学習などの情報科学を用いて材料開発を高速化・効率化する革新的な技術・手法
FY2024|6,579 文字
6【研究開発活動】当社グループは成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。加えて、「地球環境課題の解決」への貢献と、「一人ひとりの生涯の健康・安全・快適」へのお役立ちを目指した技術開発にも、積極的に取り組みました。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,912億円となりました。主な内訳は、「くらし事業」1,420億円、「オートモーティブ」1,006億円、「コネクト」1,249億円、「インダストリー」630億円、「エナジー」232億円です。 各報告セグメント及びその他の事業、部門の主な成果は、以下のとおりです。(1) くらし事業 主に「くらし」領域において、家電、空調、照明、電気設備や業務用機器など、家庭から店舗、オフィス、街にいたる様々な空間に対応した商品・サービスの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・省エネ・CO2排出削減に貢献する空調・給湯・暖房領域での研究開発を強化 空調・給湯・暖房領域で中長期研究開発を強化するための体制構築に取り組みました。滋賀県草津市に新研究拠点を設立、カーボンニュートラル実現に向けてZEH(ネットゼロエネルギーハウス)対応やヒートポンプ・自然冷媒など地球環境に配慮した技術開発を推進、拠点建屋では当社省エネ製品をフル活用し、従来の建物で消費される一次エネルギーを基準に53%のエネルギー削減を実現、ZEB Ready(注)を達成しています。またAI・クラウドを活用した空質空調のソリューション事業開発に特化した拠点を大阪の梅田に開設、当社が培ってきたデータ分析・AI技術を活用し顧客接点強化を図りました。・投入から部品ごとの解体まで一貫処理可能な「廃家電自動解体システム」を開発 使用済み家電製品の解体作業のさらなる効率化を目指し、平林金属㈱の協力のもと、「廃家電自動解体システム」を開発しました。家電製品のリサイクルにおいて、業界初となる投入から部品ごとの解体まで一貫処理可能なシステムとなります。国内では、家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)に沿って、適切にリサイクル処理を行っていますが、一方で、家電リサイクル工場においては、労働人口の減少や、繁忙期に集中する作業負荷などの課題を抱えており、さらなる作業の効率化が求められています。本システムでは、今後、回収量の増加が見込まれるエアコン室外機に焦点を当て、部品ごとに解体品位を維持したまま、解体工程で最も時間がかかる室外機カバーからコンプレッサー外しまでの工程を自動化することで、より安定的・継続的な家電リサイクルを実現します。 今後も開発を推進し、さらなる資源循環に貢献してまいります。 (2) オートモーティブ 主に車載向けのコックピットシステム、キャビンUX(ユーザーエクスペリエンス)、EVパワエレなどの研究開発を行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・クラウド対応したデジタルコックピットソリューションの開発 車両開発サイクルの初期段階から自動車開発者を支援するための、クラウドサービス環境の利用を前提としたクラウドネイティブな車載ソフトウェア開発環境Virtual SkipGen™(vSkipGen™)を開発・構築しました。vSkipGen™は、自動車においてこれまで一体であったハードウェアとソフトウェアを分離し、クラウドサーバーの計算能力を活用して、それぞれを独立して進化させることで、市場投入までの時間を短縮し、ソフトウェアの品質を向上させています。新たな開発環境による試作段階でのハードウェアの削減を含め、パナソニックグループの環境目標にも貢献してまいります。 また、複数のECU(Electronic Control Unit)の機能を集約し冗長なコンポーネントを削除することにより、車両のコストと重量の削減との統合による複雑さを軽減ができる、Neuron™ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)システムも開発しました。このHPCシステムは、高性能かつ大量データの入力処理機能を備え、アップグレード可能で拡張性があり、進化する車載プラットフォームに対応できる将来性を備えています。 これらの先端的な取り組みにより、コックピット領域において、インフォテインメント機器やフルディスプレイメーターなどの実績のある商材をさらに発展させUX価値の向上・環境への貢献を図り、今後、急速に進化するモビリティニーズに対応するソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)化の進化に貢献してまいります。 ・車載サイバーセキュリティ対策をより強固で安全にするサイバーセキュリティ堅牢化ソリューションを開発 自動運転技術の発展や、デジタル化の進展、コネクテッドカーと呼ばれるネットワークに接続する車両の増加などに伴い、年々高まる自動車を狙ったサイバー攻撃リスクに対し、セキュリティソリューション・サービス「VERZEUSE®」を開発しています。 本年開発した「VERZEUSE®」のサイバーセキュリティ堅牢化ソリューションは、セキュアブートによるプログラム起動時のチェックのみならず、実行中もセキュリティ監視機能が正しく動作していることを完全性監視ソフトウェアが常時チェックします。この完全性監視ソフトウェアを信頼された領域に配置し、信頼された領域からセキュリティ監視機能のチェックを行う多段構成を取ることで、車両内におけるセキュリティ監視機能を堅牢化します。「VERZEUSE®」の仮想化セキュリティソリューションは、ICT分野の世界的アワードInforma Tech Automotive Award2023において「Collaborative Partnership of the Year」を受賞しています。 サイバー攻撃の脅威からの車両の保護を一段階上位の安全性で実現するセキュリティソリューション・サービス「VERZEUSE®」により、安心・安全なモビリティ社会の発展に寄与してまいります。 (3) コネクト 主に「サプライチェーン」「公共サービス」「生活インフラ」「エンターテインメント」分野での企業・法人向けのハードを含むソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・倉庫ソリューションの上位レイヤーから実行レイヤーまでの最適化を実現する技術を開発 倉庫管理システム上の入出荷情報に応じて、AIアルゴリズムがロボットアームや自動倉庫、人による作業などのタスクを最適に割り当て、商品の出荷作業の同期を実現する新技術「タスク最適化エンジン(仮称)」を開発しました。本技術により、物流の大きな課題であるトラックの荷待ち時間を最大50%削減することが可能です。さらに、本技術と連動して倉庫内で商品のピッキングを行うロボットハンドを制御するロボット制御プラットフォームを開発しました。これらをオープンプラットフォームとして提供していきます。 今後も、ハードとソフト、AIに加え、IE(Industrial Engineering)の知見を組み合わせた当社の実行系ソフトウェアと、米国子会社Blue Yonder Holding, Inc.のソフトウェアを繋げることで、世界トップクラスのサプライチェーンプラットフォームを構築し、世界中の社会課題やお客様の経営課題解決に貢献してまいります。・つかんだものを落とさずに回し続けられるロボットハンド制御技術を開発 カメラ画像を、ロボットを制御するための視覚機能として活用し、対象物の形状や姿勢に応じてロボットハンドを制御しながら、把持した対象物の位置や姿勢をロボットハンド内で変更することが可能な技術を中央大学と共同開発しました。本技術は、製造現場での部品組立作業、物流現場での様々な形状の対象物を高密度に整列させる箱詰め作業や、形状に個体差がある青果等において個体毎に形状をリアルタイムで検出し対象物を整列させる作業など、これまで人手に頼っていた作業の自動化に貢献します。こうした技術は、小売店舗等の流通現場においても、商品陳列など対象物を決まった姿勢で並べる作業への応用が見込まれます。 (4) インダストリー 主に電子部品、FA・産業デバイス、電子材料などのBtoB事業を中心とした幅広いソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・開発ノウハウとデジタル技術を組み合わせて実験設備を自動化したスマートラボを開設 大阪府門真市の旧本社構内に24時間/365日稼働する自動実験室スマートラボを導入・開設しました。スマートラボは、これまで進めていたAIやMI(マテリアルインフォマティクス)、PI(プロセスインフォマティクス)と装置を組み合わせることで、飛躍的に材料開発プロセスの高度化・スピード化が図れます。 コンデンサの開発向けに導入しており、材料準備、濃度調整や温度管理、実験データの収集など、これまでは技術者が手作業で行っていた単純作業を自動化することで、技術者はより創造性ある付加価値の高い研究開発業務に集中することができるようになります。また、遠隔操作による実験が可能になることで、日本国内に限らずグローバルで技術者の活躍の場を広げていきます。 今後は、電子材料やモータなど他の製品開発にも展開していく予定で、スマートラボを起点にインダストリー事業の技術開発を強化してまいります。 (5) エナジー 主に乾電池、二次電池、産業用電池、車載用電池の研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・EV電池のエネルギー密度のさらなる向上を実現する次世代電池開発を加速 現在負極材に広く使用されている黒鉛に比べ、理論値で約10倍という高い容量を有する特徴を持つシリコン材を使いこなす技術を開発してきました。加えてパートナー企業と連携して高容量かつ充電時の膨張を抑制する技術を導入することで、負極材中の黒鉛をより多くの比率でシリコン材に置き換え、エネルギー密度を向上させることが可能となります。 今後も更なる電池の高性能化を推進し、体積当たりのエネルギー密度を現行比で2025年までに5%向上、2030年までに25%向上させるという目標の実現を目指します。 (6) その他エンターテインメント&コミュニケーション 主に有機ELテレビなどのAV機器、デジタルカメラ、ヘッドホン、電話機などのコミュニケーション機器等の映像・音響・通信関連の商品・サービスに関する研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・新たなオペレーションシステム(OS)搭載による体験価値を創出するテレビを開発 これまで培ってきた高画質・高音質技術、通信・デジタル技術、機器連携などのハード・ソフトウェア技術を活用し、Amazon Fire TVが持つUX開発力やコンテンツ力を融合することで、視聴者一人ひとりのライフスタイルや視聴環境に応じたストレスフリーなコンテンツとの出会い、コンテンツに最適な画質・音質による映像の没入体験、家と移動空間またIoT機器や録画機器とのシームレスなつながりを実現する技術開発を行います。2024年度のグローバルフラッグシップモデルから、OSにAmazon Fire TVを搭載し、コンテンツ適応画質などの独自技術を取り入れ、操作性や機器連携を進化させた新製品を導入していきます。 今後も映像・音響・通信の技術で、お客様のウェルビーイングに貢献する商品サービスを提供してまいります。 ハウジングシステム 主に住宅設備・建材や技術を活かしたデバイス・ソリューションの研究開発を行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・震度7の繰り返す巨大地震にも耐えられる独自の基準を設定した「テクノストラクチャーEX」を開発 1995年阪神淡路大震災以降に震度6弱以上の地震は60回以上発生しており、2016年熊本地震においては震度7の激震が同一観測点で2回計測されるなど、繰り返す地震によって建物の被害が拡大しました。地震への備えがより求められる背景のもと、「テクノストラクチャー工法」の特徴である緻密な許容応力度計算による耐震性に加え、独自人工地震波による動的な建物変形を可視化する「4D災害シミュレーション」と、地震の力を吸収するオリジナル制震ダンパー「テクノダンパー」を組み合わせることで、建物への影響を最小限に抑制する技術「テクノストラクチャーEX」を開発し、繰り返す巨大地震への強さを実現しました。 今後も、人々の「くらし」に寄り添い、人と社会へ新たな価値を提供してまいります。 技術部門・共通事項 主に、技術・モノづくりに関わる全社戦略の統括、中長期視点での先端技術開発、生産技術・要素技術・共通技術基盤開発などを行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・世界初、ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池を開発 当社独自の材料技術やインクジェット塗布製法と、レーザー加工技術を組み合わせることでサイズ、透過度、デザインなどの自由度を高め、カスタマイズにも対応可能な世界初ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池を開発しました。30cm角モジュールで18.1%の世界最高レベルの光電変換効率を有しています。プロトタイプを試作し神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウンにて性能や耐久性などの技術検証を含めた1年以上にわたる長期実証実験を昨年8月より実施しています。またメートル級の試作ラインを導入し、大面積製造プロセスを開発中です。 今後もペロブスカイト太陽電池をまち・くらしに調和する「発電するガラス」と位置づけ、再生可能エネルギーの創出と都市景観の調和を両立するとともにCO2削減に貢献してまいります。 ・画像認識を中心としたAI技術の社会実装に向けた技術開発を推進 当社が長年培ってきた画像認識技術をAIに適用、膨大なデータ数・計算量を低減し社会実装する技術を開発しています。例えば、種々の属性に共通して有効となる顔認証モデルを学習することで、データ数が少ない特定モデルの認証精度低下を抑制する技術や、AIモデルが学習していない物体の「知ったかぶり誤認識」を防ぐ技術、悪天候環境で画像認識精度を上げる技術などを開発、いずれもAIや画像認識領域で権威のある国際学会に採択されました。こうした採択数は年々増加(前年比1.5倍)しています。また生成AI活用による業務効率向上を目的に大規模言語モデルをベースに自社向けのAIアシスタントサービスを開発、自社独自情報も活用できるよう機能を拡大、業務での活用を目的とした運用を開始しています。 今後も当社は、AI活用技術の社会実装を加速し、お客様のくらしやしごとの現場へのお役立ちに貢献する研究開発を推進していきます。・くらしに密着し、しごとの現場で社会課題解決に貢献するロボット活用技術を開発 深刻化する物流領域での労働力不足や効率化に貢献するロボット活用技術を推進しました。荷物配送の現場では、これまで培ってきた自動配送ロボット技術・実証実績に基づき、改正道路交通法を踏まえた届出制による自動配送ロボットの運用を業界に先駆け実現しました。また物流倉庫の現場では、ロボット制御技術、センシング技術、AI技術を組み合わせて一元制御することにより、倉庫で変動する多様な商品への対応が可能となった「ロボット制御プラットフォーム」を開発、ひとによる作業や機能の制約を解き放つ技術群を開発しました。 今後も当社は、ロボット技術があるからこそ実現できる、より便利な世の中や、より豊かな世界を目指し、開発を加速いたします。 (注) 「ZEB(ネットゼロエネルギービル)」を見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な 省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の削 減に適合した建築物
FY2023|5,656 文字
6【研究開発活動】当社グループは、成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。加えて、一人ひとりのくらしや社会の持続可能(サステナブル)な発展とともに心身が豊かな状態(ウェルビーイング)を目指した技術開発にも、積極的に取り組みました。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,698億円となりました。主な内訳は、「くらし事業」1,398億円、「オートモーティブ」999億円、「コネクト」1,088億円、「インダストリー」606億円、「エナジー」251億円です。 各報告セグメント及びその他の事業、部門の主な成果は、以下のとおりです。(1) くらし事業 主に「くらし」領域において、家電、空調、照明、電気設備や業務用機器など、家庭から店舗、オフィス、街にいたる様々な空間に対応した商品・サービスの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・自然冷媒(R290)に対応したヒートポンプ技術を開発 フロン類に比べて、はるかに温室効果の低い冷媒であるR290(プロパンガス)を用いた冷凍サイクルを開発するとともに、冷媒が可燃性であることを考慮し、冷媒自体を室外に配置することで、万が一冷媒が漏れた場合でも、お客様のいる室内への被害を発生させず、室外機中の電気部品に冷媒が接触しない密閉構造により、室外での発火リスクも最小限にしたヒートポンプシステムを新たに開発しました。 熱を運ぶ役割を担う冷媒は、これまで地球温暖化やオゾン層破壊への影響が大きいことが指摘されてきましたが、本技術により、低環境負荷な自然冷媒への切り替えが可能となりました。 今後も、技術開発を通じて地球温暖化対策に貢献してまいります。・電気自動車と蓄電池の連携で、より多くの太陽光発電を家庭内で有効活用できる住宅用V2H(自動車から家へ)蓄電システムを開発 業界初となる電気自動車と蓄電池による同時充放電を実現し、より多くの太陽光発電の電気を家庭内で自家消費することが可能な技術を開発しました。家庭内のさまざまな家電や住宅設備機器をつなぐHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)と連携すれば、日々の電力使用量と翌日の日射量予報を元に余剰電力量を予測し、蓄電池の充放電を自動制御することで、自家消費効果を従来の約50%から約90%に大きく向上させ、CO2排出量では年間1.0トンの削減向上に貢献します。また、停電発生時でも業界トップクラスの自立出力6kVAに対応することで、温かい食事や快適な空調環境で普段に近いくらしをご提供します。 今後も、エネルギーソリューションの提供を通して、快適で豊かなくらしの実現に貢献してまいります。 (2) オートモーティブ 主に車載向けのコックピットシステム、HUD(ヘッドアップディスプレイ)、先進運転支援システム(ADAS)などの研究開発を行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・車の次世代コックピットシステム向け仮想化セキュリティソリューションを開発 家電・モバイルなどで培ったセキュリティ組み込み技術を車の領域に展開し、次世代コックピットシステムへのサイバー攻撃に対抗する仮想化セキュリティソリューションを開発しました。次世代コックピットシステムでは、複数ECU(電子制御ユニット)の搭載機能を一つのECUへ集約、車両制御機能なども統合され、新たなセキュリティリスクが生まれます。高い堅牢性と拡張性を有する本ソリューションを、仮想化プラットフォームへ適用し、プラットフォーム上の機能間の通信を監視することで、不正アクセスやサイバー攻撃へのセキュリティ対策を可能にします。 日米欧の特許分析の結果、当社は、この領域の技術力において圧倒的な優位性が示されており、今後も業界のセキュリティレベルの強化に貢献するとともに、安全・安心なモビリティ社会の発展に寄与してまいります。・コックピットHPC(ハイパフォーマンス・コンピュータ)プラットフォームを開発 車のSDV(ソフトウェア定義型自動車)化におけるソフトウエアシステムアーキテクチャの革新に向け、当社は車の電子プラットフォームの進化に重要な仮想化技術を確立しました。次世代CDC(コックピット・ドメイン・コントローラー)/統合システム(HPC)のプラットフォームを実現するとともに、その技術進化を支えるエコシステム構築のための標準化活動で業界を牽引しています。また、SDV化によるヒューマンインターフェースの革新に向け、シニア層への運転支援機能や、画像・音を適切な状態でドライバーへ提供する機能も開発しました。このような技術を用いて、よりエンドユーザに寄り添った安全でわかりやすい豊かなUX(ユーザエクスペリエンス)開発を進めます。 今後も、車室空間の進化に必要となる基盤技術を確立し、SDV化の進展に貢献してまいります。 (3) コネクト 主に「サプライチェーン」「公共サービス」「生活インフラ」「エンターテインメント」分野での企業・法人向けのハードを含むソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・小売店の「ロボットフレンドリーな環境」の実現に向けた新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の商品情報データベースの研究開発に参画 NEDOが実施する、ロボットが人工知能を活用して効率的に商品画像を認識し、小売店における入荷検品・棚卸しや商品の陳列、決済などを自動化するための商品情報データベースを構築する技術開発事業に参画しました。事業内容は入荷検品などに必要な学習用の商品画像データの他、ロボットが形状などに応じて商品を適切に把持するために必要な動作支援用の画像データを、重量などの商品の各種基礎データとひもづけて、小売店やメーカー、卸業者などの各事業者で共有するための仕組み作りになります。この中で、当社は商品画像・データを生成する撮像・計測装置試作開発、関連ソフトウェア・データベースの構築、またそれらを活用した実証実験を進め、各事業者における現場課題解決に取り組みます。 今後も、食品や日用品などを対象としたデータベースを整備し、継続的に更新・運用する仕組みを構築することで、ロボットの活用を早期に実現することを目指してまいります。・米国国立標準技術研究所(NIST)の顔認証ベンチマークテストで世界1位の評価を獲得 Vision Transformerと呼ばれる最新のディープラーニングに独自改良を加え、経年変化・顔の向き・照明変動といった厳しい環境下で高精度に顔認証できる技術を開発しました。これにより、NISTが実施する顔認証ベンチマークテスト(NIST FRVT 1:1)において、経年変化を含む評価データで本人認証時のエラー率(本人拒否率)0.206%を達成し、世界1位の評価を獲得しました。また、顔の向き・照明変動を含む評価データにおいても世界最高水準の評価を得ました。これにより、当社の顔認証技術は本人確認で求められる厳格性と入退管理で求められるユーザビリティとを兼ね備えた現場に強い技術であることが認められました。 今後は、カメラ画像利活用におけるプライバシー配慮や個人情報保護の知見を生かしながら、より安全・安心な技術を開発し、お客様やパートナー企業との共創で、社会の課題解決や新しい価値創造に貢献してまいります。 (4) インダストリー 主に電子部品、FA・産業デバイス、電子材料などのBtoB事業を中心とした幅広いソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・人工嗅覚センサ-を用いた呼気による個人認証技術の原理実証を産学官連携で成功 開発中の人工嗅覚センサ-を用いて人間の呼気をセンシングし、得られたデータ-を人工知能で分析することにより、被験者20人に対する個人認証技術の原理実証に正答率97%の高い精度で成功しました。本研究成果は東京大学、九州大学、名古屋大学との共同研究で、科学技術振興機構が支援したものです。 この方法は、種類が膨大で、かつ本人以外に再現困難な呼気分子群の化学情報を利用するため、偽造やなりすましが極めて困難な生体認証技術の実現に繋がると期待されています。・アルミニウム比270分の1の超軽量電磁波遮蔽材料の共同研究を産学官連携で開始 航空宇宙分野における人工衛星・探査機などの宇宙機やドローン・eVTOL(電動垂直離着陸機)などの電動航空機の軽量化と電磁波策の両立が求められる中、カーボンナノチューブを用いた超軽量材料と、当社が保有する熱硬化性樹脂の配合設計の組合せにより、一般的な電磁波遮蔽材料の中でも軽量なアルミニウムの270分の1の軽さ(かさ密度0.01g/cm3レベル)を実現しながら同等の電磁波遮蔽性能を有する「超軽量電磁波遮蔽材料」技術の開発を開始しました。この新材料は材料組成を変更することで遮蔽電磁波の周波数帯域設定も可能で、今後、航空宇宙分野や次世代高速通信分野などに使用される様々な機器への採用が期待されており、2024年の実用化を目指しています。 なお、本研究は名古屋大学、山形大学、秋田大学とともに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で実施しています。 (5) エナジー 主に乾電池、二次電池、産業用電池、車載用電池の研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・コバルトフリー電極材料やリサイクル材料の利活用技術で環境負荷低減と高性能・高信頼性を両立させるリチウムイオン電池を開発 材料インフォマティクスを最大活用し、レアメタルであるコバルトを使用しない正極材料としたコバルトフリー電池を開発しました。レアメタルは鉱物中に含まれる量が少ないため、精製の際により多くのCO2を排出します。このためレアメタル使用の削減は、レアメタルそのものの省資源化に加え、CO2削減にも大きく寄与します。 また、正極材や銅箔にはリサイクル材料の活用で原料精製時のCO2を削減、加えて工場のカーボンニュートラル化にも取り組み、脱炭素社会の実現に大きく貢献してまいります。 (6) その他エンターテインメント&コミュニケーション 主に有機ELテレビなどのAV機器、デジタルカメラ、ヘッドホン、電話機などのコミュニケーション機器等の映像・音響・通信関連の商品・サービスに関する研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・石膏ボードの壁にもスッキリ掛けられるウォールフィットテレビの開発 これまでのテレビの構造を見直す事で、ディスプレイ部の薄型化と軽量化を実現するデザインに進化させるとともに、石膏ボードの壁に細いピンで固定可能な専用金具を新たに開発。当社独自の4K放送無線伝送技術を活用し、ディスプレイ部とチューナー部を分離し、部屋内のアンテナ取り出し口の位置に縛られることなく、壁とディスプレイが一体となったスタイリッシュな壁掛け設置が可能なテレビを実現しました。 今後も、映像・音響・通信の技術で、人々に新しい「感動と安らぎ」を提供してまいります。 ハウジングシステム 主に住宅設備・建材や技術を活かしたデバイス・ソリューションの研究開発を行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・業界初の植物油脂由来塗料を採用したリサイクル木材活用の床材「サステナブルフロアーTM」を開発 近年、ウッドショックや国際情勢による基材の入手困難、森林破壊などさまざまな課題を抱えている中、家屋解体の際に出る廃材や森林の未利用材などをリサイクル材として再利用し、2007年より業界に先駆けて床材に採用してきました。今回、施工性向上のための床材構造技術を新たに開発。塗料メーカーとも協業し、バイオマスマークを取得した植物油脂由来の塗料を業界で初めて床材表面に採用しました。この床材で1坪当たり約38kgの炭素を貯蔵(CO2換算)できます。 今後も、こうした環境配慮型製品を市場に投入してまいります。 技術部門 主に技術・モノづくりに関わる全社戦略の統括、中長期視点での先端技術開発、生産技術・要素技術開発などを行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・完全生分解性のセルロースファイバー成形材料を開発 植物由来のポリ乳酸を含む複数の生分解性樹脂を適正な添加剤を加えブレンド、これにセルロースファイバーを高濃度添加することで、1mmの薄肉成形と高弾性率を両立する完全生分解性成形材料を開発しました。また、着色自由性が高い白色の樹脂ペレット化にも成功、素材そのものを褐色化させることで、木目調のようなデザイン性の高い表現も可能です。 今後も、本成形材料の特徴である高強度とデザイン性を活かし、さまざまな商品の外装・部材などへの展開を進め、持続可能社会の実現に貢献してまいります。・AI・ロボティクス分野のトップカンファレンスに最先端の研究開発成果が採択 当社では、くらしや社会課題の解決を目指し開発した、先進AI技術の研究成果について、分野発展への貢献とともに、技術を客観的に評価するため、積極的に学会・論文誌へ投稿しています。昨年度は、AI・コンピュータ-ビジョンのトップ国際会議 ECCV(European Conference on Computer Vision)2022、およびロボティクスのトップ国際会議 IROS(International Conference on Intelligent Robots and Systems)2022に、5つの研究開発成果をはじめ多くのテーマが採択されました。 今後も、こうした対外発表や、製品やサービスへの技術適用を通じて、お客様の幸せに貢献してまいります。
FY2022|6,017 文字
5【研究開発活動】当社グループは、主要領域の成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。加えて、人ひとりのくらしや社会の持続可能(サステナブル)な発展とともに心身が豊かな状態(ウェルビーイング)を目指した技術開発にも、積極的に取り組みました。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,198億円となりました。主な内訳は、「くらし事業」1,309億円、「オートモーティブ」1,012億円、「コネクト」864億円、「インダストリー」565億円、「エナジー」191億円です。 各報告セグメント及びその他の事業、部門の主な成果は、以下のとおりです。(1) くらし事業 主に「くらし」領域において、家電、空調、照明、電気設備や業務用機器など、家庭から店舗、オフィス、街にいたる様々な空間に対応した商品・サービスの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・業界最高発電効率56%を実現した5kW純水素型燃料電池「H2 KIBOU」を開発 燃料電池のキーデバイスであるスタック部材など一部の部品をエネファームと共用化するなど、これまで培った技術やノウハウをベースに、水素から直接発電し発電時にはCO2を排出しない、小型で業界最高の発電効率56%を有する5kW出力の純水素型燃料電池「H2 KIBOU」を開発しました。さらに、複数台を連結制御する技術を開発・搭載することで、電力需要に応じて発電出力のスケールアウトが可能になるほか、建物の屋上や狭小地などへの設置が可能になりました。また、草津拠点では、純水素型燃料電池と太陽電池を組み合わせた自家発電により事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄う「RE100ソリューション」の実証にも取り組んでいます。 今後も、水素の本格活用という再生可能エネルギーの導入拡大に向けた新たな選択肢の提案を通じて、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。・OHラジカル生成量が「ナノイー」比100倍の新「ナノイー X」デバイスを開発 当社独自の「ナノイー」デバイスをさらに進化させ、円周状に放電してOHラジカル生成領域を大幅に増加させた「ラウンドリーダ放電」を産学連携で新たに開発し、OHラジカルが「ナノイー」比100倍生成する新「ナノイーX」デバイスを開発しました。これにより、花粉・ダニの死がいやフン(アレル物質)の抑制、ニオイの脱臭スピードが格段にアップしました。 昨今、外出自粛の広がりや、テレワークの浸透など生活様式の変化に伴う在宅時間の増加により、より良い空気環境への関心がますます高まる中、「ナノイーX」や次亜塩素酸 空間除菌脱臭機「ジアイーノ」といった当社独自のクリーンテクノロジーを継続的に進化させ、くらしや社会のさまざまなシーンにおいて、清潔で快適な空間を提供してまいります。 (2) オートモーティブ 主に車載向けのコックピットシステム、HUD(ヘッドアップディスプレイ)、先進運転支援システム(ADAS)などの研究開発を行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・視線追跡システムを搭載した、拡張現実HUD(AR HUD)2.0を開発 デジタルカメラや液晶ディスプレイで培った独自技術を応用し、低歪で明るく鮮明な映像を可能にすると同時に、小型化と軽量化を実現したHUDをグローバルに展開しています。 今回、ドライバーの視線を認識し、AR画像を最適化する視線追跡システム (ETS:eye tracking system)を開発しました。本技術を運転席前方の現実空間に奥行き感のある大画面映像を重ねて表示する方式のAR HUDに搭載することで、画像の明瞭性と正確性を向上させ、眠気、障害、注意散漫を検出するなどの運転サポートが可能になります。 今後も、HUDの技術革新を続け、安全・安心で快適なドライビング環境に貢献してまいります。・安全運転支援のための人を理解する技術開発 人のくらしに寄り添ってきた当社の技術蓄積を活かし、人間の特性を理解した上での安全運転支援を実現するため、さらに人を理解する技術開発に取り組んでいます。 大脳皮質の動作原理として有力な予測符号化を組み込んだ深層学習モデルをベースに、運転時にドライバーが認識したであろう映像を、直前の走行映像から生成するドライバー視覚モデルを当社で開発。実際の走行映像との比較分析により、交通ヒヤリハット事象の要因分析ができるようになりました。 今後も、さらなる安全運転支援を実現する技術開発をしてまいります。(3) コネクト 主に「サプライチェーン」「公共サービス」「生活インフラ」「エンターテインメント」分野での企業・法人向けのハードを含むソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・顔認証技術を活用した富士五湖周辺エリアで観光型MaaS「手ぶら観光サービス」実証実験を開始 ディープラーニングを応用した世界最高水準の顔認証技術を活用し、国内初の観光型MaaS「手ぶら観光サービス」として富士五湖周辺エリアで実証を開始しました。複数の観光施設や交通機関の利用や決済を共通のIDで顔認証利用できる統合ID管理機能、鉄道駅での顔認証改札、周遊eチケットのダイナミックプライシング、利用者の位置情報などに応じたレコメンド配信機能、各観光施設の混雑可視化機能を開発し、本サービスに適用しています。これにより、エリア内に点在する複数の観光施設と交通機関における入場や決済が、顔一つでシームレスに利用が可能になりました。 今後も、顔認証の技術を基盤として、観光や鉄道、空港、スマートシティなど、様々な業界に向けてユーザーと運営側の利便性を向上する仕組みを提供してまいります。・世界最高水準の話者識別・マルチモーダル認証技術を開発 世界最高水準の話者識別技術と顔認証技術を組み合わせたマルチモーダル認証技術をアメリカの大学研究グループと共同開発しました。話者識別技術は、当社独自のディープラーニング学習手法と類似度計算手法により、多様な収録条件下の音声に対応することが可能になります。マルチモーダル認証技術は、顔認証技術と話者識別技術を組み合わせることで、顔が隠れている場合でも大幅な精度向上を実現します。 今後は、高度な認証が必要な用途に向けマルチモーダル認証技術を活用し、さらには指紋認証技術等を組み合わせた「非接触マルチモーダル認証ソリューション」を創出し、より安心・安全・便利な社会の実現に貢献してまいります。 (4) インダストリー 主に電子部品、FA・産業デバイス、電子材料などのBtoB事業を中心とした幅広いソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・高速通信ネットワーク機器向け「低伝送損失多層基板材料 MEGTRON 8」を開発 高多層基板に求められる伝送損失の低減と耐熱性・信頼性とを両立する独自の樹脂設計・材料配合技術をベースに低誘電正接ガラスクロス・低粗度銅箔との複合化技術を確立し、業界最高の低伝送損失(当社従来材比 約30%改善)を有する多層基板材料「MEGTRON 8」を開発しました。これによりデータ通信の大容量・高速化に貢献、また低伝送損失化は消費電力低減にもつながります。5Gなど通信ネットワークの高速化・高周波化ニーズは急速に高まっており、今後も電子回路基板や部品など材料デバイス技術の進化を加速してまいります。・業界最長の125℃ 5,500時間保証の導電性高分子アルミ電解コンデンサ「SP-Cap KXシリーズ」を開発 今まで培ってきた独自技術である導電性高分子の形成技術と製造プロセス技術を組み合わせた導電性高分子アルミ電解コンデンサ「SP-Cap® KXシリーズ」を開発し、従来品(JXシリーズ)の1.8倍となる業界最長の125℃ 5,500時間の耐久性保証を実現しました。また、積層セラミックコンデンサ(MLCC)と同等の実効静電容量で使用個数を削減できるため、複数のMLCCをSP-Cap®に置き換えることで、実装面積の省スペース化が図れ、機器の小型化を実現するとともに、使用部材の削減による環境負荷の低減にもつながります。これにより、通信基地局やサーバーなどの電源回路の信頼性向上に貢献してまいります。 当社は、低ESRと大容量特性に優れた導電性高分子アルミ電解コンデンサの開発により、電源回路の安定化に貢献してまいります。 (5) エナジー 主に乾電池、二次電池、産業用電池、車載用電池の研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・車載用新型高容量リチウムイオン電池「4680」セルを開発 長年培ってきた電池技術・製造知見を生かし、電極や電解液、生産プロセスにインフォマティクスを活用して技術開発を加速し、エネルギー容量が従来の「2170」セルの約5倍となる車載用新型高容量リチウムイオン電池「4680」セルを開発しました。これにより高品質・高安全という当社の強みをさらに磨きつつ、徹底した生産性向上によって業界をリードするコスト力の実現を目指して、和歌山工場に生産設備を設置し量産検証を実施します。 当社は、車載用円筒形セルを現在約50GWh/年生産しており、これは年間800万トンのCO2削減に相当しています。世界が温室効果ガスの削減に向け取り組む中、電気自動車のキーデバイスであるリチウムイオン電池開発を通じ、今後も地球温暖化対策に貢献してまいります。・東大生研とPPES、パナソニック、豊田通商、電池の資源・リサイクルに関する産学連携研究を開始 リチウムイオン電池に使用される資源ならびにリサイクル材を原料とした電池材料開発・製造プロセスを題材に、革新的な新規プロセス構築を行い、電池のサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルならびに大幅な生産コスト低減の実現を目指し、東京大学生産技術研究所(東大生研)、プライム プラネット エナジー&ソリューションズ株式会社(PPES)、豊田通商株式会社と共同研究を開始しました。当社は電池適用に向けた原料基準の明確化など電池メーカーとしての知見を広く活用し、サプライチェーン強靱化ならびにリサイクル等の社会システム構築に向けて貢献してまいります。 今後ますます市場拡大が見込まれるリチウムイオン電池に対し、より一層の安定供給とライフサイクル全体でのCO2排出量低減・低コスト化を図るため、技術革新、社会実装に取り組んでまいります。 (6) その他エンターテイメント&コミュニケーション 主に有機ELテレビなどのAV機器、デジタルカメラ、ヘッドホン、電話機などのコミュニケーション機器等の映像・音響・通信関連の商品・サービスに関する研究開発を行っています。主な成果としては、以下のとおりです。・業界初の4K放送の無線伝送によるレイアウトフリーテレビを開発 映像・音響・通信機器の開発で培った無線伝送技術と4K映像圧縮技術により、民生用テレビとして業界で初めて4K放送の無線伝送を可能にする技術を開発しました。これにより、テレビ(モニター)とチューナー部を分離し、4K画質にも対応した無線接続により、テレビ(モニター)のアンテナ線接続が不要になります。また、テレビ設置の自由度をさらに高めるためにキャスター付きスタンドを採用し、使いたい場所に簡単に動かして使えるレイアウトフリーを実現しました。部屋のインテリアにもフィットするスタイリッシュなデザインでありながら、BS4K・110度CS4Kダブルチューナー搭載で2TBの内蔵ハードディスクへの新4K衛星放送の裏番組録画が可能となるなど、豊富なネット動画サービスにも対応しています。 今後も映像・音響・通信の技術で、人々に新しい「感動と安らぎ」を提供してまいります。 ハウジングシステム 主に住宅設備・建材や技術を活かしたデバイス・ソリューションの研究開発を行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・アブラヤシ廃材を活用した再生木質ボード化技術「PALM LOOP(パームループ)」を開発 地球温暖化防止の新たな取り組みとして、業界で初めてアブラヤシ廃材を活用した再生木質ボード化技術を開発しました。食用油や洗剤の原料となるパーム油はアブラヤシ果実から採取され、採取後のアブラヤシ廃材の多くは放置され、腐敗時にメタンガスを含む温室効果ガスが発生し問題視されています。アブラヤシ廃材の幹は水分や不純物を多く含み活用が困難でしたが、洗浄工程により不純物を除去し、抽出した長繊維を圧縮成形する中間材化技術を開発。これにより、アブラヤシ廃材を任意の配合率で再生木質ボードに再生することができるとともに、炭素固定により廃材1本分で約1.3トンの温室効果ガス削減(CO2換算値)を可能にします。 また、中間材化により輸送性・保管性も向上し、世界各地の既存木質ボード工場で生産が可能となり、原料の海上輸送の効率化による温室効果ガス削減にも貢献してまいります。 技術部門 主に技術・モノづくりに関わる全社戦略の統括、中長期視点での先端技術開発、生産技術・要素技術開発などを行っています。 主な成果としては、以下のとおりです。・環境分野にも貢献する遠赤外領域での新たな光学デバイスやセンサ技術を開発 エネルギーマネジメントや自動運転の需要の高まりから、当社は高感度化・低価格化が要求される遠赤外線センサの普及に貢献するデバイス技術群の開発に取り組んでいます。 ①独自のガラスモールド成形工法と金型技術により、遠赤外線の透過特性に優れるカルコゲナイドガラスを材料とした遠赤外非球面レンズの量産技術を開発し、低価格化(従来比約1/2)が可能になりました。また、世界初の接着剤不使用で高気密なフレーム一体レンズを実現し、鏡筒への組付け時にレンズ周辺部が欠けやすいという課題を解決するとともに、ガス封入などでの断熱構造が可能になり、センサ感度向上に寄与します。 ②フォノニック結晶構造を搭載した遠赤外線センサの感度向上技術を開発しました。従来の断熱性能を大きく上回るフォノニック結晶構造をSiウェハ上に量産適用可能な作製方法で形成し、熱検出感度を飛躍的に向上することができます。本技術を遠赤外線センサの受光部に適用することで、受光部からの熱の漏れを約1/10に抑制し、従来のSiベースの遠赤外線センサに比べて約10倍の感度向上が可能になります。 今後も、新たなセンシングソリューションの提供で、サステナブルな地球環境の実現に貢献してまいります。
FY2021|6,194 文字
5【研究開発活動】当社グループは、主要領域の成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。加えて、IoT・人工知能(AI)等の技術開発や、ニューノーマル時代の社会課題の解決、環境エネルギーへの貢献にも積極的に取り組みました。カンパニーや事業部などの組織を横断した主な取り組みと成果は、以下のとおりです。 ・ニューノーマル時代に向けたロボティックモビリティソリューションを開発安定・低遅延なAV伝送技術とハッキング対策セキュリティ技術を融合した、無人搬送サービスソリューションを開発しました。独自のAI監視システムにより、公道における搬送サービスでは国内で初めて、搬送ロボット2台を1人で遠隔監視及び制御することを可能としました。早期実用化を目指し、Fujisawaサスティナブル・スマートタウンにおいて、街にお住まいの皆様や企業様とともに、複数のサービス実証を進めています。今後、深刻化する人手不足や労働負荷軽減、非対面・非接触などへの需要に応えることで、便利でいきいきとしたくらしの実現に貢献してまいります。 ・北米でのV2X(Vehicle-to-Everything)向け交通管理システム(Cirrus)の開発次世代モビリティ社会に向けて、車両OEM向け事業で培ったノウハウを生かし、北米でV2X技術を活用した新たな交通管理システム「Cirrus」を開発しました。無線通信技術やクラウドベースのデータプラットフォーム技術などにより、車両同士、または車両と路側機とが通信することで、安全性を高めるとともにCO2排出量及び渋滞を削減することができます。また、車両端末から収集する車の安全に関わるデータを中心に、リアルタイムデータを交通管理機関へ提供。天候・渋滞状況の把握や事故発生箇所の特定に加え、設置機器の遠隔モニタリングやソフトウェアアップデートなど交通局側オペレーションの効率化に貢献します。当社は、本プラットフォームの構築に留まらず、実際に交通管理車両や路側機へ搭載する情報端末ハードのデザインから設置、メンテナンスに至るまでシステムを総合的に手掛け、ユタ州をはじめ複数の州と協働開発を推進しています。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,198億円となりました。主な内訳は、「アプライアンス」1,070億円、「ライフソリューションズ」550億円、「コネクティッドソリューションズ」708億円、「オートモーティブ」1,141億円、「インダストリアルソリューションズ」694億円です。各セグメント及び本社イノベーション推進部門の主な成果は、以下のとおりです。 (1) アプライアンス 主に当社の研究開発部門を中心として、白物家電や情報家電、空調機器、燃料電池をはじめとするデバイス等の研究開発を行っています。主な成果としては、・家電で培った技術群を進化・展開させ、公衆衛生・空調空質の新たな社会課題に挑戦 冷蔵庫などの省エネ化に寄与してきた真空断熱パネルの製造技術を進化させ、箱型の立体形状に一体成型する独自の加工技術を開発。継ぎ目を無くすことで冷気漏れの課題を解決し、ドライアイスなどの保冷剤を用いて、-75℃±15℃を最長18日間保持できる真空断熱保冷ボックス「VIXELL」を開発しました。これによりワクチンなど医薬品の輸送に求められる厳格な温度維持が可能となりました。 また空気中の水分に高電圧を加えることで生成されるOHラジカルを含んだ帯電微粒子水(ナノイーX)の研究にも長年取り組み、細菌、真菌、ウイルスやアレルゲンの抑制効果を確認してきました。今回、世界的に感染が拡大する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)について第三者機関とともに所定の条件下で試験を行った結果、帯電微粒子水(ナノイーX)による抑制効果を確認できました。 今後も、家電で培ってきた技術群を活かして、公衆衛生・空調空質の新たな社会課題に挑戦し、世界中の人々が健やかに過ごせる社会づくりに貢献してまいります。 ・世界初、ルームエアコンの熱エネルギーを冷房へ有効活用する「新・エネチャージシステム」を開発 当社のルームエアコン「エオリア」は、2011年より排出される熱エネルギーを暖房時の霜取り運転に活用していましたが、今回、コンプレッサーの排熱を顕熱蓄熱する回路構成を見直して「新・エネチャージシステム」を開発しました。世界で初めて、今まで活用されていなかった熱エネルギーを蓄えて、冷房運転時にも有効活用します。運転のON/OFFを繰り返さずに、設定温度をキープしながら除湿もし続ける「快湿制御」により無駄な電力消費を抑え、省エネ性が約10%向上しました。さらに、暖房運転時には、加湿空気清浄機が連動運転するIoT連携で「うるおい暖房」を実現し、「健康で快適な空気」を提供します。 (2) ライフソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、電設資材や住設建材等の研究開発とともに、それらの連携によりお客様へ快適をお届けする空間ソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、・人起点の価値創出を目指したアップデート型ワークプレイス空間を実現する技術を開発 ニューノーマル時代のワークプレイス実現に向け、オフィスなどの空間内での人やモノの情報を可視化するとともに、温湿度・CO2・音などの環境センシング情報及びオフィス内の稼働率や入退履歴管理データをクラウド上で解析し、密回避や空質・照明などの設備管理を最適化していくことで、オフィスワーカーがいきいきと健やかに働けるウエルネス環境構築技術を開発しました。センサーなどで取得・蓄積したデータは、人の状態を正確に推定し、設備状態の異常を予見することで新たな価値創出へと繋げていくことができます。東京汐留地区に開設したライブオフィス「worXlab(ワークスラボ)」にて、さまざまなパートナーとの共創活動の加速も図ってまいります。こうした取り組みを通じて、ニューノーマル時代のアップデート型ワークプレイス空間実現を目指してまいります。 ・「調湿」「除菌」「気流」を最適制御するIAQ(Indoor Air Quality)技術を開発 空質4要素(湿度・温度・清浄度・気流)と感性3要素(除菌・脱臭・香り)をコントロールすることで室内空間価値を向上させるIAQ技術を開発しました。高速回転するドラムから遠心方向に吹出した水滴を壁面にぶつけて微細化し、空調で加熱した空気に含ませる当社独自の「遠心破壊加湿技術」により、加湿量を細かく制御できる「調湿ユニット」を新たに開発しました。このユニットに次亜塩素酸生成ユニットで作り出した次亜塩素酸を供給することで、加湿効果に加えて除菌効果が期待できる空間を提供することが可能となりました。これにより、空質4要素と感性3要素を、さまざまな空間に合わせて自在にコントロールが出来ます。こうした最新のIAQ技術をパッケージ化し設備システム化することで、スッキリとした空間を提供するソリューションを構築し、お客さまの声をお聞きしながら商品化を目指してまいります。 (3) コネクティッドソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、企業・法人向けの機器やIoTソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、・従来比10倍の高速化を実現した顔認証技術をコアにした非接触認証ソリューションを開発 世界最高水準の顔認証技術をさらに進化させ、認証速度を当社従来比で最大10倍高速化した認証システムを開発しました。これにより1時間あたり10万回以上の照合回数への対応が可能になりました。またアルゴリズムの改善によりマスク着用時等の顔認証率を当社従来比2.2倍に向上でき、これらをコアエンジンにした非接触認証ソリューションの提供を開始しました。 昨今の新型コロナウイルス感染症拡大を受け、非接触センシングのニーズは急速に高まっており、今後も顔認証技術の進化を加速してまいります。 ・AIや3次元データ解析を駆使した溶接外観検査の自動化・省人化技術を開発 溶接現場では溶接点数が多く検査の作業負荷が大きく、また人による目視検査によりビード(溶接痕の盛り上がり)検査基準がばらつく課題がありました。今回、「人による目視検査」を自動化・省人化して作業負荷を低減し、検査基準の統一とともに、検査結果をデジタル化してトレーサビリティを確保する技術を開発しました。 当社がこれまで蓄積してきた溶接実績を予め学習させたAIエンジンによる外観検査に加え、良品となる形状比較をする検査機能も搭載しました。デジタルデータとして蓄積・解析することで、溶接欠陥の多い箇所は溶接条件を見直すことが出来るようになります。こうした技術を、3次元データ解析技術を有するリンクウィズ株式会社と共同開発し、外観検査ソリューション「Bead Eye(ビードアイ)」を発売し、溶接後の検査工程の自動化・省人化に貢献してまいります。 (4) オートモーティブ 主に当社の研究開発部門を中心として、車載向けのコックピットシステム、HUD(ヘッドアップディスプレイ)、先進運転支運システム(ADAS)、リチウムイオン電池などの研究開発を行っています。主な成果としては、・地球温暖化対策による電気自動車需要拡大に向けリチウムイオン電池の高容量化技術を開発 1つの電池の中にどれだけの電気を蓄えられるかを表す「エネルギー密度」を飛躍的に向上させる新技術を開発し、安全性を維持しつつ体積当たりのエネルギー密度を当社従来比で5%向上しました。さらに今後5年以内には、当社従来比20%まで向上できる見込みです。加えて、高コストな素材であるコバルトの使用量ゼロを実現する技術も既に確立し、今後2~3年以内に商品化の見込みです。 世界が温室効果ガスの削減に向け取り組む中、電気自動車のキーデバイスであるリチウムイオン電池開発を通じ、今後も地球温暖化対策に貢献してまいります。 ・大画面・低歪の映像投影を可能にすると同時に、HUD本体の小型化を実現 デジタルカメラの開発で培ったレンズ設計・レンズ成形技術を活用し、高精度のフル自由曲面ミラーを開発し、低歪で明るく鮮明な映像投影を可能にすると同時に、HUD本体の小型・軽量化を実現しました。また、液晶ディスプレイの照明技術を応用した独自のHUD向けバックライト設計により、太陽光下やサングラス越しのような表示が見えにくい状況においても、鮮明な画像を表示します。当社は、コンバイナタイプから大画面までのHUDを展開しており、今後もさまざまなニーズに対応し、安全・安心な快適ドライビング環境に貢献してまいります。 (5) インダストリアルソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、二次電池をはじめとした電子部品、電子材料等の研究開発を行っています。主な成果としては、・業界最高の低損失・高耐電圧の磁性材料を用いた車載用パワーチョークコイルを開発 独自の金属磁性材料を用いたメタルコンポジット材料をベースに、大電流、低損失かつ高耐電圧の磁性材料を新たに開発しました。またこの新磁性材料を採用し、排ガス規制やCO2低減目標により燃費の改善が求められる内燃機関(エンジン)搭載のガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車などの車載電子制御ユニット(ECU)の電源回路に適したパワーチョークコイルを開発しました。これにより、損失電力を従来品比で半減させ、2倍の高耐電圧を実現するとともに、体積を当社従来品の直噴用パワーチョークコイルと比べ40%減少させ、高性能化による搭載員数の削減にもなることからECUの省スペース化が可能です。加えて、独自の巻線及び成型技術により、端子の引出し位置の高さを当社従来品比1/2に低減しました。これを実装基板に近い位置に配置することで優れた耐振性を実現し、振動補強が不要となり実装工程の合理化にも貢献します。 ・業界初、高調波センサとAIの組み合わせによる 「AI設備診断サービス」を開発 独自に開発した高調波センサとクラウド上のAIの組み合わせによって設備の状態変化を検知する「AI設備診断サービス」を、業界で初めて開発しました。専用の高周波センサにより、一般的な電流センサでは難しかった、機械要素部品の状態変化が現れやすい電流内の高調波領域の波形変動をクリアに取得することが可能になります。本サービスでは、AI分析の前に、設備の動作特性に基づいてデータの重要部分の判定・抽出処理を実施するため、AIの学習期間の短縮と分析結果の精度向上を実現します。また、センサを設備本体ではなく、制御盤内に設置することで設備を止めることなく導入が可能になるため、幅広い製造現場での生産性向上に寄与します。 (6) イノベーション推進部門 主に、技術・モノづくり・デザインに関わる全社戦略の統括、中長期視点での先端技術開発、生産技術・要素技術開発及びくらしアップデート業への貢献に向けた取り組みの推進などを行っています。主な成果としては、・植物由来の繊維を活用し、石油由来の樹脂使用量を削減した環境配慮型材料の複合/成形加工技術を開発 素材の持つ自然感を生かしながら、セルロースファイバー濃度をこれまでの55%から70%の高濃度で樹脂に均一に混ぜ込む複合加工技術を開発しました。セルロース原料の最適化、混練方法の改良により、車載機構部材にも適用可能な高剛性タイプ、及び高濃度な中でも従来の55%濃度と同等の薄肉成形加工が可能で家電筐体や日用品に展開可能な高流動タイプの2種類の複合樹脂成形材料の開発にも成功しています。さらに着色自由度が高く、着色剤なしでも素材そのものを褐色化させることで色むらを制御することが可能で、木質感などの高いデザイン性も実現できます。 今後は、材料特性や素材優位性をさらに高めることで幅広い商品への展開を加速し、石油由来の樹脂使用量の削減を通して持続可能社会の実現に向けた企業活動を推進してまいります。 ・バッテリーの状態をリアルタイムに把握し安心して電動モビリティを利用できるクラウド型サービスを提供 クラウドに収集したバッテリーログを学習データとして、これまでの電池開発で培った知見とノウハウを盛り込んだAIを活用するバッテリー状態推定技術を開発しました。本技術により様々なバッテリーに対して高精度な電池残量推定モデルを構築することで、正確な電池残量を把握できるため、予期しない電欠を防止できます。また運用するバッテリーの状態をクラウド経由で遠隔から即時に把握できることから、モビリティ事業者にとっては利用者への適切な電池交換案内、シェアリング事業者にとっては効率的な充電オペレーションなど、適切なサービス運用も行うことができます。 本サービスの提供を通じて、電動モビリティ利用者への提供価値向上に繋がるソリューション、電動モビリティ事業者の抱える運用上の課題解決に貢献するソリューションを継続的に拡充・提供してまいります。
FY2020|5,788 文字
5【研究開発活動】当社グループは、主要領域の成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。加えて、『くらしアップデート』の実現を支えるIoT・人工知能(AI)・ビッグデータ等の技術開発やこれらを用いた新規事業創出にも積極的に取り組みました。カンパニーや事業部などの組織を横断した主な取り組みと成果は、以下のとおりです。 ・ソフトウエアを起点としたビジネスモデルの変革・商品開発に向け体制を強化世界トップレベルの技術専門性と従来にない製品やサービスを創出してきた経験をもち、元GoogleバイスプレジデントでNest CTOの松岡陽子氏をフェローとして招聘、ソフトウエアを起点としたビジネスモデルの変革とユーザーファーストな視点での新たな商品やサービスを開発する体制を米国シリコンバレーにて強化しました。今後も、松岡フェローの知見を活かし、カンパニーや事業部との共創で、既存の事業や組織の枠を超えて『くらしアップデート』を加速していきます。 ・本社(大阪府門真市)敷地内で社員向け自動運転ライドシェアサービスを運用開始ディープラーニングによる高精度な人認識技術、低遅延無線通信による遠隔監視・制御技術を開発し、これらをシステムにまで統合した自動運転ライドシェアサービスを、本社の敷地内で社員向けに本格運用を開始しました。人が行き交うリアルな環境において、人にやさしい自動走行を複数台の同時運行で実現しており、自動運転サービスをより身近なものとしました。今後も、こうしたモビリティサービスをさらに進化させ、街やコミュニティ内での運用展開に向けて取り組みを加速していきます。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,750億円となりました。主な内訳は、「アプライアンス」1,081億円、「ライフソリューションズ」592億円、「コネクティッドソリューションズ」856億円、「オートモーティブ」1,343億円、「インダストリアルソリューションズ」842億円です。各セグメント及び本社イノベーション推進部門の主な成果は、以下のとおりです。 (1) アプライアンス 主に当社の研究開発部門を中心として、白物家電や情報家電、空調機器、燃料電池をはじめとするデバイス等の研究開発を行っています。主な成果としては、・豊かな食生活をサポートする「くらしアップデートサービス」を提供開始 食のプラットフォームアプリ「キッチンポケット」を開発。本アプリを介して、お客様とレシピ、キッチン家電とをつなぎ、最適メニューの提案や献立に応じた食材の買い物リストの自動生成、調理サポート、必要な食材の注文・配送など、お客様一人ひとりのライフスタイルに合わせて豊かな食生活を支援する食の「くらしアップデートサービス」を開始しました。献立の悩みや買い物、調理にかける労力を軽減し、楽しい食事や家族の団らんに充てる時間を創出できます。また、無線LAN対応スチームオーブンレンジを開発。アプリから最新のレシピや旬の食材を用いたメニューを送信、本体に保存することで、購入後もアップデート可能です。家電・サービスの両面で、お客様一人ひとりのライフスタイルに合わせた新たな体験価値を提供します。 ・水電解とガス改質の2方式を採用した水素エネルギーの実用性検証を開始 次世代エネルギーとして期待される水素の実用性を検証するため、当社草津拠点構内に水素ステーション「H2 Kusatsu Farm」を建設し、同ステーションから水素を補給する燃料電池フォークリフトの構内運用を開始しました。本ステーションは、太陽光パネルの電力で水を電気分解する水電解水素製造装置と、家庭用燃料電池「エネファーム」で培った技術を生かしたガス改質による小型水素製造装置の2方式を組み合わせて水素を製造します。 本実証を通して水素エネルギーの安定運用や経済性などを検証するとともに、知見と技術を生かした水素エネルギー活用の技術開発を加速し、脱炭素社会の実現に貢献していきます。 (2) ライフソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、電設資材や住設建材等の研究開発とともに、それらの連携によりお客様へ快適をお届けする空間ソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、・オフィス空間ソリューションに向けた取り組みを推進 1)電力線を利用してデータ通信できる「HD-PLC」技術を使い、配線ダクトに直付可能で、PoE給電機能を搭載したファクトライン20「HD-PLC」対応PLCプラグを開発。配線ダクトを利用して簡単にネットワーク構築やレイアウト変更が可能になります。 2)ネットワークカメラや無線LANアクセスポイント接続用として、全ポートギガビット対応で、1ポートあたり30Wまで給電が可能なPoE Plus給電スイッチングハブを開発。PoEオートリブート機能により通信障害を早急に復旧することができるとともに、豊富な認証機能サポートで、より強固なセキュリティを確保します。 3)空間データの協創プラットフォーム『CRESNECT』プロジェクトに参画し、会員型コワーキングスペース『point 0 marunouchi(ポイントゼロ マルノウチ)』において、未来のオフィス空間づくりに向けた実証実験を開始。参画各社の最新技術やデータ、ノウハウを活用し、多様な働き方に合わせた空間コンテンツを導入します。 これらの取り組みを通し、未来のオフィス空間ソリューションに貢献してまいります。 ・健康スマートタウンに関する取り組みを推進 1)多世代居住型健康スマートタウン『Suita SST』の構想を策定。2022年春予定のまちびらきに向けて、タウンコンセプトを実現するタウン共創プラットフォームを構築し、北大阪健康医療都市と相互連携を図りながら、参画事業者とともにタウンデータを活用した新しいサービスづくりを行います。 2)国立研究開発法人国立循環器病研究センターと共同で、軽度認知障害(MCI)の早期発見に関する医学的エビデンスに基づいたモデルケースの構築を目指す研究を開始。MCIを早期発見することで、認知機能の向上・維持、低下の遅延の対応をサポートします。 3)タブレット一台で手軽に導入できるデイサービス事業者向けのリハビリ支援クラウドシステムを開発。生活機能訓練の一連業務のガイドやスケジュール管理、必要書類の自動作成を行います。 これらの取り組みを通し、地域の価値向上につながる取り組みを推進するとともに、超高齢社会を迎える日本の社会課題解決やSDGsの達成、Society5.0の実現へ寄与することを目指します。 (3) コネクティッドソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、企業・法人向けの機器やIoTソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、・高度な映像解析技術によりスポーツイベント運営を“より円滑”に“より楽しく”サポート スポーツへの関心がますます高まる中、家電で培った映像解析技術を進化・応用した様々なイベント運営向けソリューションを開発しました。チケットレスの入退場に向けては、ディープラーニングを応用した顔認証ソリューションを開発、入退場の効率化に加え、安心・安全なイベント運営への貢献を実現しました。バレーボールでは、競技中のボール位置を3次元にリアルタイムで計測し、ボールの軌跡・速度・高さ・角度を自動算出、選手一人ひとりやチームのパフォーマンスを数値化しました。また、アーチェリー競技では、映像から選手の心拍数を非接触で測定、真剣勝負に挑む選手の緊張感を可視化しました。 今後も、映像解析技術を駆使し、様々な用途への展開を推進していきます。 ・5Gを活用した4Kテレビ中継の実証実験の成功に貢献5Gの超大容量帯域に追従する可変レートコーデックを搭載した高精細映像伝送技術を開発し、山形放送㈱様、㈱NTTドコモ東北支社様による5Gを活用したテレビ中継の実証実験に協力しました。本技術は、5G-AV-OoS技術によりあらゆるシーンで高精細な映像伝送を実現し、最大4K(~100Mbps)までの広範な帯域変動にも追従ができます。また、利用可能なネットワーク帯域を推定し、映像の画質を調整する当社独自の帯域推定技術で無線帯域の変動にも滑らかな映像伝送を実現するため、再生遅延を最小に抑え音声や映像の途切れや乱れを防止します。 これにより、本実証実験では、従来の4Gによる中継システム(HD画質)と比較し、高精細な映像(4K画質)をより低遅延で送信できることが確認できました。 (4) オートモーティブ 主に当社の研究開発部門を中心として、車載向けのコックピットシステム、先進運転支援システム(ADAS)、リチウムイオン電池などの研究開発を行っています。主な成果としては、・大画面AR-HUD(Augmented Reality Head Up Display)を開発 大画面AR-HUDには、デジタルカメラや監視カメラ、プロジェクター、テレビなどのAV製品の開発で培った光学技術や手振れ補正技術、精密金型技術を応用し、表示距離7 m~41 mの奥行き感ある高品位な大画面表示技術と、車両の振動等による現実空間と表示映像のズレを低減する高精度な重畳表示技術を搭載しています。 これにより、ドライバーがフロントガラス越しに見ている風景に、注意喚起(車線、標識など)や経路案内などの運転支援情報を立体的にわかりやすく表示し、ドライバーの視線移動が少ないナビゲーションを提供します。 ・無人自動バレーパーキングシステムを開発 車両や駐車場に専用の高価なセンサーを設置することなく、限定された領域での高度運転自動化(SAEレベル4)を実現する無人自動バレーパーキングシステムを開発しました。車両に搭載された複数のカメラ、ソナー、レーダーと、駐車枠や停止線といった簡単な2次元路面マップを用いることにより、ドライバーが駐車場入口で降車後、車は自動で駐車スペースを探し、狭い場所でも車両間隔20cmの高精度な自動駐車が可能です。また、車載カメラと監視カメラがディープラーニングによる人検知を行い、駐車場内の歩行者を検知して、人の飛び出しに対する高性能な緊急ブレーキシステムも提供します。 (5) インダストリアルソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、二次電池をはじめとした電子部品、電子材料等の研究開発を行っています。主な成果としては、・残存価値評価を支援するバッテリーマネジメント技術を開発機器搭載中のリチウムイオン電池の残存価値評価に有効な交流インピーダンス測定を実行する新しいバッテリーマネジメント技術を、立命館大学 理工学部 福井研究室と共同で開発しました。新開発のBMICチップ化技術によって、現行バッテリーマネジメントシステムの構成を大きく変更することなく、稼働中の電池の交流インピーダンス測定を可能にします。また、専用測定器と同等精度の交流インピーダンス測定を実現。さらに温度補正技術を開発し、稼働している機器の温度変化への対応も可能としました。今後は測定データの蓄積・分析により、劣化診断や故障推定などの残存価値評価の実現を目指すことで、将来のリチウムイオン電池がリユース・リサイクルされる持続可能な社会の実現に貢献します。 ・IoT機器及び産業機器の重要データを保護する多機能セキュアICを開発さまざまな分野における機器のIoT化にともない、高度多様化するセキュリティ対策を担う多機能セキュアICを開発しました。IC内部で固有の認証鍵を生成・保有、使用後に消去することで鍵の抜き取りをブロックし、重要データを強固に保護します。また、無線インターフェース機能のNFC(Near Field Communication)や放射線耐性が高いメモリー(ReRAM)を搭載しているため、インターネット未接続機器や医療機器などへの適用が可能です。さらに機器の使用中だけでなく、製造から廃棄または再利用までのライフサイクル全体にわたって安全性の確保が可能となり、安心安全なIoT社会の実現に貢献します。 (6) イノベーション推進部門 主に、技術・モノづくり・デザインに関わる全社戦略の統括、中長期視点での先端技術開発、生産技術・要素技術開発及びくらしアップデート業への貢献に向けた取り組みの推進などを行っています。主な成果としては、・高速電力線通信技術「IoT PLC」技術を開発、家電製品や住設機器への組み込みも可能に 経済産業省の新技術実証(サンドボックス)制度を活用し、当社が開発したIoT PLCの家庭内機器への組み込みに向けた実証実験を実施、この実証に基づき電気用品安全法に関わる法改正がなされました。これによりIoT PLCを住設・家電機器に組み込んだ商品開発が可能となりました。また、この技術は国際標準規格IEEE 1901aにも認定されました。 IoT PLCは、無線電波が届きにくい地下設備や遮蔽の多いビル空間や住宅でも活用でき、今後のIoT基盤となる技術として、さらなる普及拡大を図っていきます。 ・ペロブスカイト太陽電池大面積モジュールで世界最高変換効率16.09%を達成 ガラスを基板とする軽量化技術や、インクジェットを用いた大面積塗布法を開発し、これらの技術を用いて作製したペロブスカイト太陽電池モジュール(開口面積802㎠:縦30cm×横30cm×厚さ2mm)で世界最高のエネルギー変換効率16.09%を達成しました。本モジュールの製造工程に大面積に均一なペロブスカイト層を形成する独自の塗布方法を採用し、製造コストを低減。また、本モジュールの大面積、軽量、高変換効率の特性を利用することで、ビル壁面など、従来は設置が困難だった場所での高効率な太陽光発電が可能となります。 今後、ペロブスカイト層の材料組成改善により結晶シリコン太陽電池並みの高効率達成を推進し、新規市場での実用化に向けた技術確立を目指します。
FY2019|5,692 文字
5【研究開発活動】当社グループは、主要領域の成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。加えて、『くらしアップデート』の実現を支えるIoT・人工知能(AI)・ビッグデータ等の技術開発やこれらを用いた新規事業創出にも積極的に取り組みました。セグメントや事業部などの組織を横断した主な取り組みと成果は、以下のとおりです。・人を中心に考えた新しいくらしのオープンなサービス基盤「HomeX」を開発 『家そのものをもう一人の「家」族としてとらえ、毎日の新しい体験を提供し、よりあなたらしいワクワクする生活を創る、くらしの統合プラットフォーム「HomeX」』を開発しました。その第一弾として、専用端末「HomeX Display」を発表。この端末と連動した家電、住宅設備、そして毎日の新しい情報を提供されるクラウドサービスを通じて、住む人の好みや生活シーンに合わせた、一人ひとりに寄り添ったきめ細やかな生活提案を行います。 今後も「HomeX」をオープンな住空間の基盤と位置付け、サービス事業者や家電・住宅設備メーカーとの共創を加速し『住めば住むほど豊かになるくらし』に貢献します。・年齢、性別、身体負荷や感情など人を理解するセンシング技術群を開発 1)画像処理技術とAIを活用し、顔認識による年齢/性別などの外見的な人の特徴や心拍数といったバイタル情報を同時に認識・推定する「人センシング技術」 2)複数のカメラを使い、空間における人の動きや姿勢を立体的に検知して、身体への負荷を定量化・可視化する「身体負荷センシング技術」 3)熱感知カメラ、感圧センサ、匂いセンサなどからのデータと独自の分析アルゴリズムを組み合わせることで、感情、集中度、温冷感など人の状態を高精度に推定する「感情センシング技術」を開発しました。これらの先進的な技術により、人の状態や感情を深く理解できるようになり、一人ひとりの快適なくらしへの提案に貢献します。・高度化するサイバー攻撃をAIで迅速に検知するサイバーセキュリティ技術を開発 長年培ってきた技術を進化させ、ビル、自動車、工場内の通信をAIで監視し、正常から逸脱したものをサイバー攻撃と判断する「攻撃検知AI技術」を開発しました。これにより、過去に出現した例がない未知のサイバー攻撃に対しても迅速に対応できるようになります。 今後もサイバーセキュリティの研究開発を強化し、IoT時代における安心・安全な社会の実現に貢献します。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,888億円となりました。主な内訳は、「アプライアンス」1,152億円、「エコソリューションズ」573億円、「コネクティッドソリューションズ」899億円、「オートモーティブ&インダストリアルシステムズ」2,259億円です。各セグメントの主な成果は以下のとおりです。 (1) アプライアンス 主に当社の研究開発部門を中心として、白物家電や情報家電、空調機器等の研究開発を行っています。主な成果としては、・世界初、気象情報と連携するルームエアコンのAI予測機能を開発 住宅の環境データに気象情報を掛け合わせて室内の清浄度や室温、電気代を予測する独自アルゴリズムを搭載した「エオリアAI」を開発しました。これにより、学習した気密性や断熱性などの住宅情報に株式会社ウェザーニューズから提供されるPM2.5や花粉の飛散予報データを掛け合わせて室内の空気が汚れるタイミングを予測し、先読みして自動で空気清浄を行う世界初の「AI先読み空気清浄」を実現しました。さらに、住宅情報と気温予報データを用いた分析から未来の室温を予測。アプリで外出時間を入力すれば「運転したまま外出する場合」と「帰宅後に運転を再開する場合」の電気代と帰宅時の室温を判定する「つけっぱなし判定」機能を実現しました。・テクニクス ダイレクトドライブターンテーブルシステム「SL-1000R」を開発 高トルクとなめらかな回転を実現する、コアレス・ダイレクトドライブ・モーターを開発しました。ステーターコイルを両面に配置した12極18コイル駆動を採用し、高トルクを実現。さらに、モーターの高トルク化に合わせて、回転制御アルゴリズムを進化させ回転中の不要な振動を抑えてきめ細かい制御を行います。ターンテーブルプラッターには、10mm厚の真鍮、アルミダイカスト、高減衰ラバーによる3層構造に加え、最上部の真鍮の最外周部にタングステンウェイトを12個埋め込むことで、約1トン・cm²におよぶ慣性質量で安定した回転を実現します。また、コントロールユニットを別筐体とし、不要なノイズの影響を徹底して排除しました。 これらの技術により、アナログレコードの豊かな音を鮮やかにありのままに再現します。・純水素燃料電池の製品化に向けた基盤技術を開発 5kWタイプの純水素燃料電池を開発し、山梨県「ゆめソーラー館やまなし」と神奈川県「Tsunashima SST」にて実証実験を開始しました。本開発には、家庭用燃料電池「エネファーム」の開発で培った技術を応用し、水素と酸素を反応させて発電を行う「スタック」の小型・高効率化に成功。コンパクトな筐体で5kWの発電出力を実現しました。また、複数台の純水素燃料電池を連携制御して発電出力を高めることが可能なため、施設の規模に応じた適切な出力に対応します。 (2) エコソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、エネルギーマネジメントをはじめ、住宅設備や建材、環境空質機器等の研究開発を行っています。主な成果としては、・毎日のくらしをアップデートしながら、家族をつなぎ、見守り、応援する都市型IoT住宅『カサート アーバン』を開発 くらしの統合プラットフォーム 「HomeX」を搭載した都市型IoT住宅『カサート アーバン』を開発しました。専用端末「HomeX Display」を複数の居室に設置し、照明やシャッターを遠隔操作したり、多彩な情報を得たり、クラウドにつながることができます。住むほどに新しい機能が届き、一人ひとりのライフスタイルに合わせてくらしをアップデートしていくことができます。 また、強固な構造を可能にする柱や間仕切りの少ない開放的な空間設計、業界最小の15cmモジュールや勾配架構・ダウンフロアで、都市の限りある敷地を最大限に活用することが可能になります。さらに、汚れた外気をキレイにして室内に取り入れ、居室ごとの温度調整も可能な換気・空調システム「エアロハス」や、くらしのニオイを抑える「エアイーX」の採用等、一年を通じて安心で健康的な室内環境を実現し、ヒートショック対策も可能にします。・「オゾンウォーター」搭載のIoT対応全自動おそうじトイレ「アラウーノ」を開発 水と電気のみで除菌効果のあるオゾン水を生成する「オゾンウォーター」デバイスを開発しました。ダイヤモンド電極を搭載することで効率良くオゾンを生成し、さらに独自の斜めスリット構造により、オゾンの溶解効率向上を実現しました。このデバイスを全自動おそうじトイレに搭載することにより、トイレ退出後3分後に、除菌・防カビ・脱臭に効果を発揮する「オゾンウォーター」を洗浄ノズルや便器に約1分間散布することで、便器内の汚れの元になる菌などを抑制します。また、新開発のスマートフォン専用アプリにより、スマートフォン操作で洗浄位置などの各種設定や、健康をサポートするお通じ記録、使用状況確認によるみまもり、電気・水道代金などの確認が可能になり、便利と健康をサポートできるIoTサービスを提供します。・パワーが必要な急勾配で力を発揮し高い走破性を実現する電動アシストマウンテンバイクを開発 内部に変速機能を持つ国内初のマルチスピードドライブユニットを開発し、電動アシストマウンテンバイクに搭載しました。これにより、チェーン変速に比べ変速不具合が少ない上に、1回の変速に要する時間は0.5秒で、ペダル停止状態でも変速が可能なため、スムーズで静かにいつでも変速できます。また、フロント変速の採用により、フロント2段×リヤ10段の20段変速とギヤレシオを広くし、車輪の出力トルクは従来モデルの1.41倍を実現。パワーが必要な急勾配の坂道などで力を発揮します。さらに、12Ahの大容量バッテリーを搭載することで従来モデルを超える長距離走行を可能にしました。 (3) コネクティッドソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、企業・法人向けの機器やIoTソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、・高臨場感をリアルタイムで伝える第5世代移動通信(5G)映像伝送技術を開発 大容量・低遅延の特徴を有する5G技術と、移動時・混雑時などでも高精細な映像を途切れることなくスムーズに伝送できる可変符号化レート技術とを組み合わせた「5G-AV-QoS技術」を開発しました。これにより遠隔地であってもその場にいるかのような高臨場感を実現しました。また、総務省が実施した5G総合実証試験にも参加し、この技術を用いて移動するサテライトオフィスや、バーチャル博物館の実証を行いました。 また、5Gの特長を生かし、災害時に強く、高いセキュリティを実現する新たな地域内通信である、ローカル5Gシステムの開発にも積極的に取り組んでいます。・JDA Software Group, Inc (JDA社)と工場・物流・流通業向けのジョイントソリューションの提供に合意 JDA社のサプライチェーンマネジメント(SCM)向けソフトウェアと、当社の技術とエッジデバイスを組み合わせた統合的なジョイントソリューションの提供について発表しました。JDA社の提供するソフトウエアと、当社の倉庫のベルトコンベヤー上の荷物の仕分け業務の効率を改善する「荷仕分支援システム」、店舗での欠品情報をリアルタイムに伝達することで製造・配送の優先順位を最適化する「欠品検知システム」、人の行動や物の検知により工場、倉庫、店舗などで人、物、レイアウトの最適化を実現する「マルチモーダルセンシング技術」、作業員のIDと位置検知により最適配置を実現する「顔認証技術」の連携により、SCMの現場におけるプロセスを革新し、製造・物流・流通業界に貢献します。・「顔認証による入退セキュリティ&オフィス可視化システム」の実証実験を実施 ディープラーニング技術を応用した世界最高水準の顔認証技術の活用により、「入退セキュリティ&オフィス可視化システム」を開発し、「CEATEC JAPAN 2018」のプレスセンターで実証実験を行いました。従来のICカードを用いた入退セキュリティシステムは、登録・発行・配布に手間がかかるなどの課題がありましたが、本システムでは顔画像と名刺を登録すれば、以降は顔認証のみで入退室が可能になり、バッジの貸し借りや盗難による不正入場を防ぎ、セキュリティ強化と利便性向上が図れます。さらに、入退室管理に加え名刺情報と顔情報の連携により、従業員や一時的な来訪者が施設のどこを通過したか、会議室で誰と誰がミーティングを行ったかを可視化が可能になります。 (4) オートモーティブ&インダストリアルシステムズ 主に当社の研究開発部門を中心として、車載向けなどのインフォテインメント関連機器、二次電池をはじめとした電子部品、電子材料等の研究開発を行っています。主な成果としては、・EV向け新プラットフォーム「48V ePowertrain」を開発 モーター設計や冷却構造を見直すことで、従来と同じ容積で2倍以上の出力(出力密度2倍以上)となる18kW(従来8kW)の高出力を実現するEV向け新プラットフォーム「48V ePowertrain」を開発しました。高出力の実現により、同じ出力の場合従来は2ユニット必要だったものを1ユニットに削減することができ、小型化も同時に実現しました。この新しいプラットフォームを採用することにより、小型EVのさらなる軽量化、車室空間の拡大、走行距離の延長が可能になります。 このプラットフォームをベースとした上下分離構造のコンセプト小型モビリティ「SPACe_C」を米国で開催されたCES2019に出展し、人、モノ、コトを細かくつなぐことで人々のくらしを支え、観光地や街中などで小型モビリティの新たな活用を提案しました。・Time of Flight (TOF)方式長距離画像センサを開発 視認性の悪い夜間でも250m先の物体を検知するTOF方式距離画像センサを開発しました。本センサには、増倍性能を維持しながらアバランシェフォトダイオード(APD)画素の面積を大幅に低減する「APD画素化技術」と、高密度な距離画像を実現する「長距離計測画像化技術」を新たに開発し採用しました。これらの新規技術により、従来は困難であった三次元距離画像の長距離化と高解像度化との両立に成功しました。このセンサは、車載用距離測定や暗闇での広域監視など、さまざまな分野へ展開が可能になります。・車載部品の実装信頼性を向上させる高耐熱性二次実装アンダーフィル材料の製品化技術を確立 従来の車載部材用のアンダーフィル材に使用される速硬化の樹脂は、高いガラス転移温度と低い熱膨張係数の両立が難しく、耐熱性を高めることが困難でしたが、当社独自の樹脂設計技術、反応制御技術により、高い転移温度(180℃)を維持しつつ、低い熱膨張係数(20ppm)を実現しました。また、樹脂設計技術とフィラー制御技術により、高い流動性を実現し、20mm角以上の半導体パッケージの実装補強に対応できます。 これらの技術により、車載用途に適した実装信頼性と、大型半導体パッケージの生産性向上に貢献する高耐熱性 二次実装アンダーフィル材の製品化を実現しました。
FY2018|5,027 文字
5【研究開発活動】 当社グループは、各セグメントの主要領域における成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。 カンパニーや事業部などの組織を横断した主な取り組みと成果は、以下のとおりです。・IoT機器を用いた「みまもり安心サービス」を開発、介護施設や遠隔在宅ケアサービスに展開 エアコンやルームセンサーを活用して、部屋の温湿度や在宅者の睡眠リズム、活動量を遠隔監視するサービスソリューションを開発しました。これをサービス付き高齢者住宅などの施設に導入し、ケアスタッフの業務効率向上を図るサービスを実用化しました。 また、さらなる用途拡大を見据え、大阪府箕面市、大阪府交野市、愛知県豊田市と遠隔在宅ケアサービスの実証実験を開始しました。2025年には、3人に1人が高齢者となる時代となり、介護人材の需給ギャップが課題となります。こうした中で当社は、IoTを活用した地域包括ケアシステムの実現により、在宅介護の効率化や自立支援に向けたケアサービスに貢献します。・三相電力線を通信に利用する高速電力線通信技術を開発、大規模施設におけるIoT活用の実証を開始 電力線を高速通信として利用する技術「HD-PLC」と、複数の端末を経由してデータを安定的に送るマルチホップ技術との融合により、既存の電力線を用いて数km程度の長距離通信と端末1,000台規模のネットワークを実現できる通信技術を開発しました。さらに、モーター系動力や基幹電力系に用いる三相電力線での実証を当社佐賀工場で開始しました。本技術により、通信専用回線が不要となることで柔軟なレイアウト変更が可能となり、さらに、無線通信に比べセキュリティ強度の高いネットワークを安価に構築することができます。 今後「HD-PLC」をIoTの基盤技術の一つと位置付け、さらなる普及拡大を図っていきます。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,489億円となりました。主な内訳は、「アプライアンス」1,187億円、「エコソリューションズ」574億円、「コネクティッドソリューションズ」870億円、「オートモーティブ&インダストリアルシステムズ」1,900億円です。各セグメントの主な成果は以下のとおりです。 (1) アプライアンス 主に当社の研究開発部門を中心として白物家電や情報家電、空調機器等の研究開発を行っています。主な成果としては、・高感度撮影に強く、世界初Cinema4K/60p動画記録が可能なミラーレス一眼カメラを開発 専用回路を1画素ごとに2系統備えた「デュアルネイティブISOテクノロジー」を搭載したイメージセンサーを開発。従来、高感度になるほど増幅されていたノイズを、「低ISO感度回路」と「低ノイズ・高ISO感度回路」の2系統を切り換えることで、低減することが可能になりました。さらに、最新の画像処理ヴィーナスエンジンとの組み合わせで、暗部まで美しく描写できる高感度画質を実現しました。 また、ミラーレス一眼としては世界初「Cinema4K/60p」動画記録や「4:2:2 10bit Cinema4K/30p」動画記録機能を搭載し、映像制作の現場でも活躍できるプロフェッショナル動画性能をも可能にしています。・テクニクスの高音質技術を継承したオールインワンタイプのプレミアムオーディオシステムを開発 部屋の環境や設置場所に合わせて最適な音質に調整する「Space Tune」を開発し、テクニクスの上位機種で採用したフルデジタルアンプ「JENO Engine」や振幅と位相の周波数特性を平坦化するスピーカー負荷適応アルゴリズム「LAPC(Load Adaptive Phase Calibration)」などの高音質技術とともに一体型ボディに凝縮したオールインワンタイプを実現しました。また、スピーカー部のツィーターには「逆ドーム形状フィン」構造の音響レンズを新たに開発し、前面に実装したルーバーをフィンの間隔に合わせることで音道の連続性を高めました。 これらの技術により、一体型でありながら豊かな広がりのある音場を実現します。・業界初「液体洗剤・柔軟剤自動投入」機能とスマートフォンで操作が可能な、ななめドラム洗濯乾燥機を開発 近年の主流である液体合成洗剤・柔軟剤に対応し、計量・投入の手間削減ができる、業界初の「液体洗剤・柔軟剤自動投入」機能を開発しました。この機能は、銘柄や温度環境などで違いが生じる洗剤や柔軟剤の粘度に対応し、様々な環境下においても自動的に適量の洗剤・柔軟剤を投入するピストン方式の機構を新たに開発したことにより実現しています。 また、スマートフォン操作で外出先からも運転予約や状況確認が可能となるアプリ「スマホで洗濯」も併せて開発することで、洗濯乾燥機の使いやすさを向上させました。 (2) エコソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、エネルギーマネジメントをはじめ、住宅設備や建材、環境空質機器等の研究開発を行っています。主な成果としては、・工業化住宅業界初、住む人の健康と快適に配慮した新概念の空調システム「エアロハス」を開発 「専用エアコン+換気システム」による換気・空調システムを開発し、家中を快適な温度に保ちながら、自然の力(地熱)の活用と各室を温度センサーで制御することにより、快適性と省エネを実現し、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)への対応が容易になりました。 このシステムにより、①住宅内でヒートショックを引き起こす原因となる室内の温度差の解消、②高い除湿能力で空調がOFFでもダクトのカビを抑制、③地熱活用と高断熱な建物等による省エネ、④PM2.5にも対応できる空気浄化能力など、様々な特長を実現しました。・約6mmの薄さで業界最高クラスの断熱性能を有する真空断熱ガラスの開発および量産化に成功 プラズマディスプレイパネルの開発・製造技術を応用することで、従来のアルゴンガス入りトリプルガラス(総厚約30mm)と同等以上の断熱性能を有しながら、総厚約6mmの薄型真空断熱ガラスの開発および量産化に成功しました。真空層内で発生するガスを吸着する薄型のガス吸着剤や、2枚のガラス間に0.1mm程度の隙間を形成する低熱伝導性材料などを新たに開発することで、総厚約6mmのガラスとしては業界最高クラスの断熱性能である熱貫流率(Ug値)0.7(W/m²・K)を実現しています。さらに、独自の真空断熱ガラス製造方法により、2枚のガラス間に真空空間を形成する際に必要な排気孔の封止部をガラス表面からなくすことができ、フラットですっきりとした外観を可能にしました。・4K・8K高精細テレビ放送において、より高品位な色再現を可能にするLED投光器を開発 次世代テレビ放送に配慮した独自の照明設計により、広色域4K・8K放送に対応したLED投光器を開発しました。大規模スポーツ競技場の夜間照明にも適した、広色域4K・8K超高精細テレビ放送(UHDTV)向けの演色性指標と推奨値をクリアし、高品質な映像表現をサポートします。 また、スーパースロー撮影時に適した点灯技術により、チラツキを抑制します。さらに、独自の配光設計技術の開発により、光源からの光を絞る配光を実現し、まぶしさの原因となる光の重なりを減らすことで、グレア(まぶしさ)を低減しています。 (3) コネクティッドソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、企業・法人向けの機器やIoTソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、・経年・化粧・表情の影響を受けずに本人確認ができる顔認証技術を開発 デジタルカメラなどで培ってきた画像センシング技術と多くの人を識別し学習したAI技術との組合せで、ひげや化粧、しわやしみなどに対応した顔認証技術を開発しました。この技術を顔認証ゲートに搭載、人間工学に基づくユニバーサルデザインとの融合で初心者や高齢者が直感的に使える顔認証自動審査ゲートを実現しました。本ゲートは、羽田空港に導入され、帰国手続きの合理化に貢献しています。 なお、本ゲートは、「2017年度グッドデザイン賞」を受賞しました。・世界初「イメージセンサー先端搭載 次世代血管内視鏡カテーテル」の開発 国立大学法人 大阪大学と連携し、世界で初めてイメージセンサーをカテーテル先端に搭載した次世代血管内視鏡カテーテルを開発・実用化し、フルカラーで血管の前方方向を観察することを可能にしました。また、長年培ってきたカメラの超精密加工技術や超解像技術により、先端部は直径1.8mmでありながら48万画素相当という高画質を実現しました。 本技術により、血管内の動脈硬化の様子や、血栓、ステント(狭心症や心筋梗塞の手術時に、血管内に留置されるメッシュ状の金属筒)留置後の状態を、高画質のフルカラー画像で把握することが可能になります。・B2B向けIoTサービス「μSockets(ミューソケッツ)」の構築 IoT向けテクノロジープラットフォーム「Panasonic Digital Platform」を使って、当社の豊富なIoT対応商品・デバイスと、業界トップレベルのセンシング技術や解析技術(エッジコンピューティング技術)、ネットワーク技術、アクチュエーション技術など先進コア技術に加え、これまで、企業・官公庁様向けシステム納入で培った豊富な現場ノウハウをB2B向けIoTサービス、μSockets(ミューソケッツ)として体系化しました。 これにより、お客様の現場で生まれる様々なデータをリアルタイムに可視化・分析し、ボトルネックの解消や業務効率改善などの課題解決や、快適な現場環境やサービス向上を実現します。 (4) オートモーティブ&インダストリアルシステムズ 主に当社の研究開発部門を中心として、車載向けなどのインフォテインメント関連機器、二次電池をはじめとした電子部品、電子材料等の研究開発を行っています。主な成果としては、・眠気を非接触で検知・予測し、快適に覚醒状態を維持させる眠気制御技術を開発 カメラ画像から測定した、瞬き、表情などをAI処理することにより、初期段階の浅い眠気を非接触で高精度に検知する技術を開発しました。また、人の放熱量や照度といった車室内環境の計測データを用いた眠気推移の予測に成功し、これに人の温熱快適性のモニタリングを併用することで、目的地まで快適に覚醒状態を維持させる眠気制御技術を開発しました。これらの技術をシステム化することで、居眠り運転の抑制に貢献します。 本技術は日刊工業新聞社主催「2017年十大新製品賞 60回記念特別賞」を受賞しました。・福井県、永平寺町と共同で自動運転車両走行の実証実験を実施 福井県と永平寺町との連携により、当社がこれまで社内の車両試験場や構内で検証を重ねてきた自動運転技術を用いて、公道に準じる環境の「永平寺参(まい)ろーど」で自動運転走行システムの技術的な実証と、自動運転EVコミューターを用いたモビリティサービスの社会受容性への検証を実施しました。また、平成30年3月より京都府のけいはんな学研都市においても公道での実証実験を開始しました。 これらの実験により、自動運転EVコミューターの公道走行における技術課題を確認し、今後の自動運転技術及び、モビリティサービスの実用化を目指していきます。・自律移動ロボットの普及に貢献する三次元距離計測センサ「3D LiDAR(ライダー)」を開発 光ディスクドライブ事業で培った光学設計技術とモーター制御技術の活用により、独自構造を用いたレーザスキャン技術を開発し、垂直方向60度、水平方向270度の広角スキャンができる三次元距離センサ3D LiDARを開発しました。これにより、単一センサによる広範囲な三次元距離計測を可能とし、他センサと組み合わせることなく、自律移動ロボットの走行制御システムの構成を単純にすることが可能となります。 また、垂直方向のスキャン範囲と解像度を数種類のモードから設定できるため、利用シーンに適したスキャン範囲や解像度で距離計測が可能となり、ロボットの安定かつ効率的な走行を実現します。
FY2017|4,505 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、各セグメントの主要領域における成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。 カンパニーや事業部などの組織を横断した主な取り組みと成果は、以下のとおりです。・積層型有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサーによる近赤外線域撮像を可能とする電子制御技術を開発 イメージセンサーの同一画素内で、近赤外線域の感度を電気的に変えることが可能な電子制御技術を開発しました。可視光域と近赤外線域に感度を持つ有機薄膜を積層し、この積層型有機薄膜へ加える電圧を変えることにより、イメージセンサーの感度波長域を全画素同時に電子制御することが可能になりました。 これにより、可視光/近赤外線域での撮像をフレーム単位で切り替えることができるようになります。・世界最高水準の高効率モーターを搭載した圧縮機の省エネ性能を実証 東北大学「東北発 素材技術先導プロジェクト」(文部科学省)の超低損失磁心材料技術領域が開発する新ナノ結晶合金NANOMET®を用いて試作した家電用モーターを圧縮機に搭載し、圧縮機としての駆動に世界ではじめて成功しました。 今回の試作では、従来の電磁鋼板(ケイ素鋼板)を使用したモーターに比べ約3%の効率改善を実証しました。さらに、このモーターを圧縮機に搭載して圧縮機の性能を表す成績係数を約3%改善し、目標とする世界最高水準の高効率モーターおよび高効率圧縮機が実現可能であることが確認できました。・非接触肌センシングおよびメイクアップシート技術の開発 可視光で、肌表面/表面下の状態により異なる光の反射吸収の違いから、人の肌状態(シミ、シワ、毛穴等)を非接触で測定する独自の肌センシング技術を確立しました。さらに、そこから得られた肌の情報をもとに、シミなどをカバーするコンシーラー層などをナノレベルの極薄のシートに微細に印刷する技術を開発しました。 これにより、一人ひとりのシミ(サイズ・色)に合ったメイクアップシートを印刷し、肌に貼ることで肌の悩みを解消します。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,361億円となりました。主な内訳は、「アプライアンス」985億円、「エコソリューションズ」548億円、「AVCネットワークス」932億円、「オートモーティブ&インダストリアルシステムズ」1,896億円です。各セグメントの主な成果は以下のとおりです。 (1) アプライアンス 主に当社の研究開発部門を中心として白物家電や情報家電、空調機器等の研究開発を行っています。主な成果としては、・OHラジカル生成量が従来比10倍の「ナノイーX」を開発 従来の「ナノイー」デバイスの放電部を改良し、広いプラズマ発生領域を形成することでオゾン量はそのままで、OHラジカルを従来比10倍生成する「ナノイーⅩ」を開発しました。 OHラジカルは空気中の菌・アレル物質に含まれる水素を抜き取ることで無力化などを行うことができ、このOHラジカルの数が多ければ多いほど除菌効果が期待できます。 この「ナノイーⅩ」を加湿空気清浄機、ルームエアコンに搭載、これにより地域や季節に関係なく、日本全国に飛散する花粉(12種類)の無力化や生活5大臭の脱臭に対応、より安心で快適な空気環境を提供できるようになりました。・700W純水素燃料電池を開発、社会実装に向けて運転実証試験を開始 エネファームの技術をベースに、水素から直接発電する小型で高い発電効率を有する700W出力の純水素燃料電池のプロトタイプを開発しました。また地方自治体・関連企業などと連携し、「ゆめソーラー館やまなし」や「水素ステーション静岡」に試作機を設置、社会導入に向け実環境でのデータ収集や複数台の連携運転などの実証試験を開始しました。 今後は、本実証試験を通じ実用化開発を加速させていくとともに、将来の水素社会発展に貢献してまいります。・家庭用ルームエアコン向けダブル温度・同時吹き分け気流システムを開発 1つの熱交換器で温度の異なる2つの温風を作り出す世界初のダブル温度熱交換器と、その異なる温度の温風を同時に吹き分ける新開発のダブル温度気流システムを開発し、快適性とともに省エネ性の向上を実現しました。 昨年搭載した「温冷感センサー」との組み合わせで、「暑い」と感じている人、「ちょうどいい」「寒い」と感じている人、それぞれに応じた温風を同時に届けることで、より速く無駄なく快適な温度空間を実現します。 (2) エコソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、エネルギーマネジメントをはじめ、住宅設備や建材、環境空質機器等の研究開発を行っています。主な成果としては、・部屋の明るさ感を向上するLEDシーリングライトの配光制御技術を開発 シーリングライト本体に2つのLED発光部を搭載し、各々の光を異なる2つの方向へ効率よく導く独自の配光制御技術を開発しました。直下を照らす直射用LED発光部と、導光クリアパネルを用いて上下左右に広く拡散し壁面や天井面も照らす発光部を有する独自構造により、これまでの直射タイプLEDシーリングライトより部屋の明るさ感が向上しました。・美しい天然石の表情を再現した有機ガラス系人造大理石を開発 アクリル素材をベースとした特殊な樹脂の有機ガラス系素材に、天然の雲母を配合し、深みと透明感のある天然石の表情を再現するとともに、凹凸のある表面加工と硬度9Hという硬さで、傷に対する強さを実現しました。さらにはっ水・はつ油成分を配合することで汚れにくくお手入れがしやすくなりました。 これにより、システムキッチンやシステムバス、洗面化粧台などの幅広い水周り設備への採用で空間価値を向上させます。・空気清浄機の花粉除去性能を従来品の約2倍に向上する気流制御技術を開発 2本の気流を生み出す新形状の「ツインルーバー」を採用した気流制御技術を開発しました。気流を1方向から2方向にするため、吸引がよりスムーズになり、従来は吸い込む気流が吹き出す気流に誘引されて一部発生していた花粉の舞い上がりを軽減し、花粉除去性能が従来品の約2倍向上しました。 これにより、ハウスダストの中でも、特に大きく重い花粉をパワフル吸引します。 (3) AVCネットワークス 主に当社の研究開発部門を中心として、AVとICTとを融合し、企業・法人向けの機器やソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、・メガホン型多言語音声翻訳サービス基盤を開発 大きな騒音下でも正確に入力できる高性能な音声認識機能を搭載したメガホン型多言語音声翻訳機「メガホンヤク」を開発しました。発話した日本語を英語・中国語・韓国語にその場で翻訳します。「メガホンヤク」には約300の定型文をあらかじめ登録しています。また、頻繁に変更が想定される数字などの単語を含む文章は、いくつかのパターンから選択できるワード選択機能にも対応し、全体で約1800パターンの文章が利用可能です。さらに、定型文の管理や更新、ソフトウエアのアップデートなどメンテナンスを行うためのクラウドサービスも構築しました。 これにより、空港、駅といった交通機関や、展示会、イベントなどホールやスタジアムのほか、テーマパークや観光地等、さまざまな場所や場面で来場者やお客様の誘導をスムーズに行うことができます。・高コントラストな画質を実現する透明スクリーンを開発 特殊ポリマーとカプセルを入れた透明-白濁スイッチング層と、色調コントロール層からなる「高コントラスト調光フィルム」をガラスに内蔵し、設置時に最適なコントラスト画質に調整できる、透明スクリーンを開発しました。電圧をかけることで透明モード、電圧オフでスクリーンモードに変化させ、ショーウィンドーのガラスをデジタルサイネージとしても活用できます。さらに、水平方向に複数枚をつなげて大型スクリーンとしても使用ができ、さまざまな場面で効果的な演出が可能になります。・独自のセンシング技術を活用した「ダム維持管理システム」を開発 独自のセンシング・イメージング技術により、これまで人が水中でダム壁面を目視点検していた作業を、人に代わって水中に潜り、網羅的なダム点検を実現する「ダム維持管理システム」を開発しました。濁度が高い水中の撮影でも点検箇所をクリアに再現する画像処理技術、撮影カメラ画面全体を一様輝度で均一化する均一照明技術、つねに壁面勾配と正対した状態を自動でキープする自律制御技術を搭載し、老朽化するダムを高精度に点検することが可能になります。 (4) オートモーティブ&インダストリアルシステムズ 主に当社の研究開発部門を中心として、車載向けなどのインフォテインメント関連機器、二次電池をはじめとした電子部品、電子材料等の研究開発を行っています。主な成果としては、・自動運転に貢献する技術を開発、電動コミューターを試作し技術検証を実施 電源回路、インバーター、モーターなどを一つの筐体に高密度実装した独自の統合電動化システムを開発、あわせて家電で培ったデジタルAV、画像認識、人工知能技術を活用し、自動運転にチャレンジ。道路の状況を車両が自ら把握し、停車中のクルマを避けたり、設定されたルートを自動運転する機能を搭載した自動運転電動コミューターを試作しました。すでにテストコースや公道に近い環境のある当社敷地内での試験走行を開始しています。 これらの開発を通して、自動運転関連技術を蓄積するとともに先進運転支援システム(ADAS)関連事業の強化、加速を図ってまいります。・業界初の完全自動セルフレジ機「レジロボ」の実証実験を実施 IoTを活用したセンシング技術で商品とレジを紐づけ、製造業で培ったロボティクス関連技術も駆使し、商品を入れた「スマートバスケット」を専用レジに設置すると自動的に精算と袋詰めができる自動セルフレジ機「レジロボ」を開発しました。この「レジロボ」は、まず社内の共創の場 Wonder Lab Osakaでの試験運用でお客様の声を得て進化させた後、㈱ローソンと共同で次世代型コンビニエンスストア店舗にて実証試験を実施しました。 「レジロボ」の導入により、精算とレジ作業の大幅な時間短縮を図り、今後も、技術でお客様の豊かな生活をサポートしてまいります。・ロボット用「モーションセンシングユニット」を開発 高精度に加工した超小型素子を用いたセンサーと、そのセンサーの長所を生かすアルゴリズム技術の開発により、XYZ方向の回転運動や直進運動を6軸検出し、精度が高い姿勢情報を高速に出力するユニットを開発しました。また、用途に応じたパラメータ値を設定した提供が可能で、ロボットメーカー側での開発負担の軽減に貢献できます。 これにより、縦方向、横方向、斜め方向に取り付けても、複雑な動きを検出することができ、多様な使用環境や設置環境に対応し、ロボット用途を拡大します。
FY2016|4,304 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、それぞれのセグメントにおいて、成長を目指し、急速に発展するIoT、ロボティクス技術や環境課題への貢献に向けた技術の開発に注力しました。 カンパニーや事業部などの組織を横断した主な取り組みと成果は、以下のとおりです。・画像処理に人工知能技術を活用した人物検出技術を開発 ディープラーニング(深層学習)を用いて、傘をさした状態や様々な姿勢を取っている複数の人物を同時にリアルタイム検出できる技術と、従来に比べ最大10分の1程度の計算量で人物らしさの識別処理をする新たなアルゴリズムを開発しました。 この方式により、小型・省エネ化が必須の自動運転車への搭載に大きく前進しました。・有機CMOSイメージセンサー向け広ダイナミックレンジ化技術を開発 1画素内に感度の異なる2種類のセルとノイズキャンセル機能を備えた独自構造の明暗同時撮像センサーを開発し、チップサイズはそのままで、従来比100倍のダイナミックレンジを実現しました。 これにより逆光やライト照射下に被写体があるような明暗差の大きいシーンの撮像においても、画像の飛びやつぶれのない豊かな色階調が再現できるようになりました。・非接触で心拍間隔を計測する生体情報センシング技術を開発 呼吸や心臓の鼓動によるわずかな体表面の変位を非接触かつ高感度に検出できる独自のミリ波レーダー技術を開発しました。この技術と特徴点抽出による心拍推定アルゴリズムを組合せることにより、検出した変位信号から呼吸信号と心拍信号とを分離し、心電計相当の精度で心拍間隔をリアルタイムに計測することに成功しました。これにより、家庭やオフィスでの人の健康状態やストレス状態などのモニタリングをすることで、新しい応用サービスやシステム・ソリューションへの展開が期待できます。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,498億円となりました。主な内訳は、「アプライアンス」882億円、「エコソリューションズ」533億円、「AVCネットワークス」1,013億円、「オートモーティブ&インダストリアルシステムズ」1,895億円です。各セグメントの主な成果は以下のとおりです。 (1) アプライアンス 主に当社の研究開発部門を中心として白物家電や情報家電、空調機器等の研究開発を行っています。主な成果としては、・自動制御運転で状況に応じたきめ細かい掃除を実現するロボット掃除機RULOを開発 多彩なセンサーでゴミの量や床面の材質を検出し、走行経路や吸引力、ブラシ回転数を掃除機自らが判断する新たな技術を開発しました。加えて、機械工学に基づいた当社独自の三角形状(ルーローの三角形)の採用と、家庭用掃除機で培った技術を応用することで、ゴミの溜まりやすい部屋の隅々まできめ細かい掃除を可能にしました。 今後も、センサー技術や人工知能技術によってロボティクス家電を進化させ、日々の家事の負担軽減に貢献します。・水素から直接発電する純水素燃料電池のプロトタイプを開発 将来の水素社会に向けて、発電時にCO2を発生しない純水素燃料電池のプロトタイプを開発し、地方自治体の施設にて実証実験を推進しています。 加えて、水素の製造、貯蔵、利用のバリューチェーン全体の技術開発も進め、地産地消により効率よくエネルギーを使う分散型エネルギー社会の実現に貢献します。・マイクロ波をらせん状に放射させ加熱する技術「サイクロンウェーブ加熱」を業界初で実現 独自開発した新形状の3Dアンテナにより、マイクロ波をらせん状に放射させる「サイクロンウェーブ加熱」を業界で初めて実現し、オーブンレンジに搭載しました。従来のマイクロ波では食品の周囲から解凍されやすくムラが大きくなる傾向でしたが、「サイクロンウェーブ加熱」では、らせん状のマイクロ波が食品の中央付近にも放射され、食品中央から周囲へと広範囲に浸透するため、解凍のムラを抑えた「芯までほぐせる解凍」を可能にしました。(2) エコソリューションズ 主に当社の研究開発部門を中心として、エネルギーマネジメントをはじめ、住宅設備や建材、環境空質機器等の研究開発を行っています。主な成果としては、・高い除菌・脱臭効果を発揮する次亜塩素酸 空間清浄機ジアイーノを開発 電解水技術で生成した次亜塩素酸を含浸させた除菌フィルターに汚れた空気を通過させる気液接触方式の除菌・脱臭技術を開発しました。 この結果、病院や幼稚園など多くの人が集まる空間での感染対策や介護施設等でのにおいの除去が可能となり、より安心で快適な空気環境を提供できるようになりました。・高効率・高光束な大規模スポーツ施設向けのLED投光器を開発 従来のマルチハロゲン灯を用いた投光器と同等の明るさを保ちながら、100 lm/W(ルーメン・パー・ワット)を超える高効率で、消費電力を削減するLED投光器を開発しました。LEDの特長である瞬時点灯の特徴に加え、前面パネルには耐衝撃性に優れ破損時にも飛散しにくいポリカーボネイトを採用しました。ビーム角の異なる投光器モジュールを組み合わせ、用途に応じた明るさと配光を実現できるため、スポーツ施設での視環境の改善とともに省エネルギーにも貢献していきます。・光熱費(電気料金)削減をサポートする「スマートHEMSサービスアプリ」を開発 当社の「スマートHEMS®」で計測した家庭の電力データを、利用者自らが身近なものとして利活用できるスマートフォン向けアプリ「スマートHEMSサービスアプリ」を開発しました。 アプリには、業界で初めて電気の使い過ぎ情報をプッシュ配信する機能や、電気の利用状況や節電ポイントを色で識別し分かりやすく示す機能を搭載しました。これにより電気料金削減をサポートし、節電に対する意識を自然に高めることでHEMS利用度を大幅(約3.5倍)に向上させ、HEMSのさらなる需要の拡大と普及に貢献していきます。 (3) AVCネットワークス 主に当社の研究開発部門を中心として、AVとICTとを融合し、企業・法人向けの機器やソリューションの研究開発を行っています。主な成果としては、・言葉の壁を感じることなくコミュニケーションできる多言語音声翻訳技術を開発 3次元に配置した4つのマイクで話者の位置を特定する指向性収音技術で聞き取り精度を高め、クラウド上の音声認識・翻訳・合成エンジンによりスムーズな翻訳を行う多言語音声翻訳システムを開発しました。 この結果、人ごみなど騒音環境下でのハンズフリー翻訳が可能となりました。今後も引き続き実証実験を通じて性能向上を図り、実用化を目指していきます。・IoT/M2M向けサイバーセキュリティ対策基盤を開発 CPUやROM・RAMなどのリソースに使用制約があるIoT/M2Mデバイスを「ハッキング」や「なりすまし」などの「サイバー攻撃」から守るため、従来は実装が困難とされてきたパソコン並のセキュリティを実現できる暗号・認証モジュールを開発しました。このモジュールには当社独自の暗号実装技術を組み入れており、IoT/M2Mデバイスでも軽量で高速な動作が可能になります。併せて各種セキュリティ対策のサービス基盤を構築し、製品への実装コンサルティングから保守・運用までトータルで提供することが可能となります。・光ディスクを使ったデータセンター用データアーカイブシステム「freeze-ray」を開発 データセンターでの、アクセス頻度が低い、あるいはアクセスされることがないものの、長期間保存が必要なデータの保存とアクセスにおいて、高効率で持続可能な光ディスクを使ったデータアーカイブシステム「freeze-ray」を開発しました。当社は主に高密度光学技術、主要装置(光ディスク、ドライブ、関連ロボット)、そしてデータセンターでのシステム制御を容易にするライブラリーソフトの開発に貢献しました。 これにより、データセンター運営の経費やエネルギー消費量を削減させることができます。 (4) オートモーティブ&インダストリアルシステムズ 主に当社の研究開発部門を中心として、車載向けなどのインフォテインメント関連機器、二次電池をはじめとした電子部品、電子材料等の研究開発を行っています。主な成果としては、・伸縮自在なストレッチャブル樹脂フィルムを開発 熱可塑性樹脂に、この樹脂の特徴である3次元架橋構造を生かした独自の樹脂設計技術を採用することで、伸縮自在で繰り返し使用が可能なフィルム状の絶縁材料を開発しました。併せて、この材料を用いたストレッチャブル樹脂をベースに、繰返しの伸縮によっても導電性が維持できる透明電極材料や配線用導電ペーストも開発しました。 これにより、衣服や体に付けるなど、あらゆる形に追従できる柔らかく、しなやかなエレクトロニクスデバイスが実現でき、ウエアラブル、センサ、ディスプレイ、ロボットなど幅広い分野への適用が期待されます。・電磁ノイズ抑制・熱拡散一体シートを開発 電磁ノイズを抑制する効果のある均質な金属磁性粒子を樹脂中へ高密度に配向分散できる分散・圧縮プロセス技術を独自開発し、これまで困難であった高い電磁ノイズ抑制能力とシートの薄型化の両立を実現しました。また、電磁ノイズ抑制効果を有する機能性接合層を開発し、電磁ノイズ抑制シートに付与する一体貼りあわせ技術を採用することで、熱拡散特性とノイズ抑制特性を向上しています。 これにより、業界で初めて1枚の薄型シートで熱とノイズの対策を同時に行うことができ、機器設計の簡素化と効率化を実現し、モバイル端末や車載機器、産業機器など幅広い分野に貢献します。・次世代高速無線LAN向けのミリ波アクセスポイント技術を開発 既存の無線LANの10倍以上の高速通信を実現する、マルチユーザ向けの次世代高速無線WiGig®対応のミリ波アクセスポイント技術を開発しました。本技術を搭載した無線モジュールは約120度の送受信指向角を持つため、3つのユニットの組合せでアクセスポイント周囲360度をカバーするとともに、複数ユーザの同時接続時において1ユーザあたり1Gbps以上の実効速度を実現します。これは120分の動画を約10秒でダウンロードできる速度に相当します。 これにより、アクセスポイントを設置した空港などの施設で大容量コンテンツをストレスなくダウンロードし、旅先で楽しむなどさまざまなサービスに適用が期待されます。