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セイコーエプソン(6724)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

電気機器 電機・精密

事業の概要

セイコーエプソンは、プリンター、プロジェクター、産業用ロボット、スマートグラス、ウオッチ、半導体などを開発・製造・販売する会社です。主な収益源は、オフィスや家庭向けのインクジェットプリンターや商業・産業用プリンター、およびそれらの消耗品を含む「プリンティングソリューションズ事業」です。独自のマイクロピエゾ技術などを強みに、幅広い製品とサービスを提供しています。

出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成

セイコーエプソンの事業セグメントは、「プリンティングソリューションズ事業」、「ビジュアルコミュニケーション事業」、「マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業」の3つです。プリンティングソリューションズ事業は、オフィス・家庭用プリンターや商業・産業用プリンター、消耗品などを扱っており、同社の連結売上収益の約7割を占める主要な稼ぎ頭です。ビジュアルコミュニケーション事業は、液晶プロジェクターやスマートグラスなどを提供しています。マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業は、産業用ロボット、ウオッチ、半導体、水晶デバイスなどを手掛けています。これらの事業は、国内外の製造・販売関係会社を通じてグローバルに展開されています。

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FY2025|4,355 文字
3【事業の内容】当社および当社の関係会社(以下「エプソン」という。)は、プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業およびマニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業などに係る各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を主な事業としております。エプソンでは、事業部制による世界連結マネジメントのもと、開発活動については先行研究開発や製品開発を主に当社(本社研究開発部門および事業部研究開発部門)で行い、生産活動および販売活動については国内外の製造・販売関係会社を中心に展開しております。各事業の内容と事業に携わる主要な関係会社は、次のとおりです。なお、エプソンの報告セグメントは、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」に基づき、「プリンティングソリューションズ事業」、「ビジュアルコミュニケーション事業」および「マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業」の3つとしております。各報告セグメントは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.セグメント情報」に掲げるセグメントの区分と同一です。 (プリンティングソリューションズ事業セグメント)当セグメントは、オフィス・ホームプリンティング事業、商業・産業プリンティング事業から構成されており、独自のマイクロピエゾ技術のほか、ドライファイバーテクノロジーなどの強みを生かし、各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を行っております。各事業の主な内容は、次のとおりです。 <オフィス・ホームプリンティング事業>当事業では、オフィス・ホーム向けのインクジェットプリンター、シリアルインパクトドットマトリクスプリンター、ページプリンター、カラーイメージスキャナー、乾式オフィス製紙機、およびこれらの消耗品などを取り扱っております。 <商業・産業プリンティング事業>当事業では、商業・産業向けのインクジェットプリンター、インクジェットプリントヘッド、POSシステム関連製品、ラベルプリンター、およびこれらの消耗品、デジタル印刷ソフトウエアソリューションなどを取り扱っております。 なお、前記各事業に携わる主要な関係会社は、次のとおりです。事業領域主要製品等主要な関係会社製造会社販売会社オフィス・ホームプリンティング事業オフィス・ホーム用インクジェットプリンター、シリアルインパクトドットマトリクスプリンター、ページプリンター、カラーイメージスキャナー、乾式オフィス製紙機、およびこれらの消耗品 等東北エプソン㈱秋田エプソン㈱Epson Portland Inc.Epson do Brasil Industria e Comercio Ltda.Epson Telford Ltd.Epson Como Printing Technologies S.r.l.Epson Engineering (Shenzhen) Ltd.Tianjin Epson Co., Ltd.PT. Epson BatamPT. Indonesia Epson IndustryEpson Precision (Philippines), Inc.エプソン販売㈱Epson America, Inc.Epson do Brasil Industria e Comercio Ltda.Epson Europe B.V.Epson (U.K.) Ltd.Epson Deutschland GmbHEpson France S.A.S.Epson Italia S.p.A.Epson Como Printing Technologies S.r.l.Epson Iberica, S.A.U.Epson Middle East FZCOEpson (China) Co., Ltd.Epson Singapore Pte. Ltd.Epson Korea Co., Ltd.Epson Hong Kong Ltd.Epson Taiwan Technology & Trading Ltd.PT. Epson IndonesiaEpson (Thailand) Co., Ltd.Epson Philippines CorporationEpson Australia Pty. Ltd.Epson India Pvt. Ltd.商業・産業プリンティング事業商業・産業用インクジェットプリンター、インクジェットプリントヘッド、POSシステム関連製品、ラベルプリンター、およびこれらの消耗品、デジタル印刷ソフトウエアソリューション 等Fiery, LLC(※)(※)2024年12月、Fiery, LLCの全持分を取得し完全子会社化いたしました。 (ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)当セグメントは、独自のマイクロディスプレイ技術やプロジェクション技術などの強みを生かし、ビジネス・教育・ホーム・イベント向けなどの液晶プロジェクターのほか、スマートグラスなどの開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を行っております。なお、当事業に携わる主要な関係会社は、次のとおりです。事業領域主要製品等主要な関係会社製造会社販売会社ビジュアルコミュニケーション事業液晶プロジェクター、スマートグラス 等Epson Engineering (Shenzhen) Ltd.Epson Precision (Philippines), Inc.エプソン販売㈱Epson America, Inc.Epson do Brasil Industria e Comercio Ltda.Epson Europe B.V.Epson (U.K.) Ltd.Epson Deutschland GmbHEpson France S.A.S.Epson Italia S.p.A.Epson Iberica, S.A.U.Epson Middle East FZCOEpson (China) Co., Ltd.Epson Singapore Pte. Ltd.Epson Korea Co., Ltd.Epson Hong Kong Ltd.Epson Taiwan Technology & Trading Ltd.PT. Epson IndonesiaEpson (Thailand) Co., Ltd.Epson Philippines CorporationEpson Australia Pty. Ltd.Epson India Pvt. Ltd. (マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント)当セグメントは、マニュファクチャリングソリューションズ事業、ウエアラブル機器事業、マイクロデバイス事業他、PC事業から構成されており、以下の各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を行っております。各事業の主な内容は、次のとおりです。 <マニュファクチャリングソリューションズ事業>当事業では、高度な精密メカトロニクス技術のほか、高精度のセンシング技術やソフトウエア技術などの強みを生かし、生産性を革新する産業用ロボットなどの開発、製造、販売などを行っております。 <ウエアラブル機器事業>当事業では、超微細・超精密加工技術や高密度実装技術のほか、高精度のセンシング技術などの強みを生かし、ウオッチ、ウオッチムーブメントなどの開発、製造、販売などを行っております。 <マイクロデバイス事業他>当事業では、小型化・高精度化や低消費電力を特長とする各種デバイスを取り扱うほか、グループ内各事業のニーズに対応したデバイスの開発および製造を行っております。また、金属粉末事業や表面処理加工事業を展開しております。[水晶デバイス]民生機器・車載・産業機器向けなどに水晶振動子、水晶発振器、水晶センサーなどを提供しております。[半導体]民生機器・車載向けなどにCMOS LSIなどを提供しております。[その他]電子部品などの原材料として使用されるさまざまな高機能金属粉末の開発、製造、販売などを行っております。また、幅広い産業分野向けに高付加価値の表面処理加工を提供しております。 <PC事業>当事業では、国内市場において子会社を通じてPCなどの販売を行っております。 なお、前記各事業に携わる主要な関係会社は、次のとおりです。事業領域主要製品等主要な関係会社製造会社販売会社マニュファクチャリングソリューションズ事業産業用ロボット 等Epson Engineering (Shenzhen) Ltd.エプソン販売㈱Epson America, Inc.Epson Deutschland GmbHEpson Italia S.p.A.Epson (China) Co., Ltd.Epson Korea Co., Ltd.Epson Hong Kong Ltd.Epson Taiwan Technology & Trading Ltd.ウエアラブル機器事業ウオッチ、ウオッチムーブメント 等秋田エプソン㈱Epson Precision (Thailand) Ltd.Epson Precision (Johor) Sdn. Bhd.エプソン販売㈱Epson Europe B.V.Epson (China) Co., Ltd.Epson Hong Kong Ltd.マイクロデバイス事業 他[水晶デバイス]水晶振動子、水晶発振器、水晶センサー 等宮崎エプソン㈱Epson Precision (Thailand) Ltd.Epson Precision Malaysia Sdn. Bhd.Epson America, Inc.Epson Europe Electronics GmbHEpson Singapore Pte. Ltd.Epson Korea Co., Ltd.Epson Hong Kong Ltd.Epson Taiwan Technology & Trading Ltd.[半導体]CMOS LSI 等東北エプソン㈱Singapore Epson Industrial Pte. Ltd.[その他]金属粉末、表面処理加工エプソンアトミックス㈱Singapore Epson Industrial Pte. Ltd.PC事業PC 等―エプソン販売㈱エプソンダイレクト㈱ 以上の事項を事業系統図によって示すと、おおむね次のとおりです。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 弱い
他社との競合激化による販売価格の低下や低価格品への需要シフト
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
独自のマイクロピエゾ技術、ドライファイバーテクノロジー、3LCD方式などの技術的優位性
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか 中程度
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 混合
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 中程度
会社が挙げる主要リスク:プリンターの売上変動による経営成績への影響 / 他社との競合激化による販売・技術への影響 / 経営環境の急激な変化による影響
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 9 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★☆☆☆
根拠:中程度ブランド・特許・許認可

セイコーエプソンは、時計事業で培われた精密加工技術や、プリンターヘッド技術(マイクロピエゾ)などの独自の知的財産を有している。特に、プリンターヘッドは他社が模倣しにくい技術であり、一定の競争優位性を持つ。しかし、ブランド力は限定的であり、特許の有効期間や競合技術の進化により、無形資産の強固さは中程度と評価。

スイッチングコスト★★☆☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト

プリンター事業においては、純正インクの使用を促す仕組みや、特定のソフトウェアとの連携により、一定のスイッチング・コストが発生する可能性がある。しかし、互換インクの存在や、他社製プリンターへの乗り換え障壁が極めて低いケースも多く、顧客の囲い込み力は限定的。法人向けソリューションでは、より高いスイッチング・コストが期待できる。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

セイコーエプソンの主要製品であるプリンターや時計は、直接的なネットワーク効果を生み出すビジネスモデルではない。ユーザーが増えることで製品価値が向上するような、プラットフォーム型のビジネスは展開していないため、ネットワーク効果は期待できない。

コスト優位★★☆☆☆
根拠:中程度同じ物を安く作れる

長年の製造業としての経験と、垂直統合型の生産体制により、一定のコスト競争力は有していると考えられる。特に、自社で部品製造から組み立てまでを行うことで、外部調達コストを抑制している可能性がある。しかし、グローバルな価格競争が激しい市場であり、圧倒的なコスト優位性を確立しているとは言えない。

規模の経済★★★☆☆
根拠:中程度規模が参入障壁になる

プリンター事業においては、世界的に見て一定の市場シェアを確保しており、規模の経済を活かした生産・販売体制を構築している。特に、インクジェットプリンター分野では、主要プレイヤーの一つとして、効率的なサプライチェーンと販売網を有している。しかし、業界全体が成熟しており、寡占化が進んでいるとは言えない状況。

セイコーエプソンは、独自のマイクロピエゾ技術(インクを熱でなく圧力で噴射する方式)や3LCD方式(プロジェクターの表示技術)といった独自の技術を強みとしています。これにより、他社の技術と差別化を図り、製品の競争優位性を確立しています。また、長年の経験で培われた精密メカトロニクス技術や超微細・超精密加工技術も、産業用ロボットやウオッチなどの製品開発に活かされており、高い技術力による参入障壁を築いています。

出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

経営戦略

有価証券報告書「経営方針・対処すべき課題・MD&A」の全文を見る(年度切替)
経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。 (1)経営の基本方針エプソンのあらゆる企業活動の中心にはパーパスがあります。エプソンが社会に対してどのような価値を提供する存在であるかを定めるとともに、エプソンならではの存在意義と志を社内外に示すため、2022年9月にパーパス「『省・小・精』から生み出す価値で、人と地球を豊かに彩る」を制定しました。そして、エプソンは、グループの価値観・行動様式を定めた「エプソンウェイ」の普遍的な考え方である経営理念を礎とし、ビジョンによりパーパスを実現することで社会へと新しい価値を提供します。これにより、将来にわたって持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図ってまいります。           (2)長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の考え方エプソンは、将来にわたって追求するありたい姿として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、「Epson 25 Renewed」を策定しています。現在、気候変動をはじめ、人類はさまざまな社会課題に直面しています。また、物質的、経済的な豊かさだけでなく、もっと精神的な豊かさ、文化的な豊かさ、そういったさまざまな豊かさを含めた「こころの豊かさ」が望まれる時代となったと考えています。そのためには、持続可能な社会であることが大前提になります。このような背景のもと、エプソンは、常に社会課題を起点として、その解決に向けて私たちに何ができるか、私たちの技術を使ってどう課題解決し、社会に貢献できるか、という発想でビジネスを展開していきます。 ①「Epson 25 Renewed」ビジョンステートメント「Epson 25 Renewed」のビジョンステートメントとして、「『省・小・精の技術』とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する」と定めています。人・モノ・情報をスマートにつなげるソリューションを、個人の生活や、産業や製造の現場にまで広く社会へ提供し、ありたい姿の実現のために取り組みます。そこで重要となるのは、「環境」「DX」「共創」の3つの取り組みです。 (環境への取り組み)●「脱炭素」と「資源循環」に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進する(DXへの取り組み)●強固なデジタルプラットフォームを構築し、人・モノ・情報をつなげ、お客様のニーズに寄り添い続けるソリューションを共創し、カスタマーサクセスに貢献する(共創への取り組み)●技術、製品群をベースとし、共創の場・人材交流、コアデバイスの提供、協業・出資を通して、さまざまなパートナーと社会課題の解決につなげる ②「Epson 25 Renewed」方針不透明な社会環境の継続が予想されるなか、取り組みにメリハリをつけることにより、収益性を確保しながら将来成長を目指します。そして、すべての領域に必要な環境、DX、共創への取り組みも継続的に強化していきます。 領域区分対象事業方針成長領域オフィスプリンティング、商業・産業プリンティング、プリントヘッド外販、生産システム環境変化を機会と捉えて経営資源投下成熟領域ホームプリンティング、プロジェクション、ウオッチ、マイクロデバイス構造改革や効率化などにより、収益性重視新領域センシング、環境ビジネス新たな技術・ビジネス開発に取り組む (3)「環境ビジョン2050」の考え方エプソンは、以下のとおり持続可能な社会の前提である環境への取り組みに関するビジョン「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に達成する目標と、その実現に向けた取り組みを定めています。 項目内容ビジョンステートメント2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ(※1)」を達成し、持続可能でこころ豊かな社会を実現する達成目標2030年:1.5℃シナリオ(※2)に沿った総排出量削減2050年:「カーボンマイナス」、「地下資源消費ゼロ(※1)」アクション●商品・サービスやサプライチェーンにおける環境負荷の低減●オープンで独創的なイノベーションによる循環型経済の牽引と産業構造の革新●国際的な環境保全活動への貢献※1 原油、金属などの枯渇性資源※2 SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)のクライテリアに基づく科学的な知見と整合した温室   効果ガスの削減目標 (4)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題① イノベーション戦略の方針と進捗、今後の取り組み目指す姿の実現に向けた戦略を実行するために、お客様価値や社会課題の軸で5つのイノベーション領域を設定しています。そして、それらのイノベーションを支えるマイクロデバイス事業においては、「省・小・精の技術」を極めた水晶・半導体ソリューションにより、スマート化する社会の実現に貢献していきます。 <オフィス・ホームプリンティングイノベーション>当領域では、インクジェット技術・紙再生技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、印刷の進化を主導することを目指しています。ホームプリンティングでは、大容量インクタンクプリンターが2010年の発売以来、世界累計販売台数1億台を達成するなど、安定的な収益基盤となっています。オフィスプリンティングでは、中速帯のA3ラインインクジェット複合機などの販売拡大により、オフィス共有IJP全体の売上は継続的に伸長しています。今後は、各地域でのサブスクリプションやコンテンツアプリ等のサービス展開を充実させるとともに、顧客接点の基盤を強化することで、オフィス共有IJP、大容量インクタンクプリンターともシェア拡大による売上伸長を目指します。 <商業・産業プリンティングイノベーション>当領域では、インクジェット技術と多様なソリューションにより、印刷のデジタル化を主導し、環境負荷低減・生産性向上の実現を目指しています。完成品ビジネスでは、世界経済の低迷やインフレによる顧客の投資意欲減退の影響を受けながらも、着実な成長を続けています。今後はサイネージや捺染などの成長分野をさらに拡大すべく、高生産機の新商品を投入しラインアップの一層の充実を図ります。優れた商品競争力と技術支援体制により高いシェアを獲得しているプリントヘッド外販ビジネスでは、市場成長が著しいDTFilm(※3)やペロブスカイト太陽電池などの新市場での販売拡大を目指します。また、産業系インクジェット市場のさらなる拡大に対応するため、プリントヘッドおよび周辺のインクジェット技術の強化に注力します。当期には、デジタル印刷機のパフォーマンスを最大化するデジタルフロントエンドおよびワークフローソフトウエアのリーディングカンパニーであるFiery, LLCを買収しました。特に産業領域でシナジー効果を創出し成長を実現すべく、取り組みを進めていきます。※3 Direct to Film:転写印刷用フィルムなどへの直接印刷のこと <マニュファクチャリングイノベーション>当領域では、環境負荷に配慮した「生産性・柔軟性が高い生産システム」を共創し、ものづくりを革新することを目指しています。マニュファクチャリングソリューションズ事業は、顧客の投資意欲減退や中国メーカーとの競争により厳しい市場環境が継続しています。そのような中、当期より抜本的な収益性の改善に着手し、開発・生産・販売体制の見直しを進めています。また、戦略商品の投入により中国を含む既存市場における競争力向上や新規分野の開拓に取り組み、成長局面に備えます。 <ビジュアルイノベーション>当領域では、感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションで人・モノ・情報・サービスをつなぎ、「学び・働き・暮らし」を支援することを目指しています。プロジェクション事業では、構造改革により収益性は改善したものの、当期は欧米政府の予算出動による教育需要の一巡や、ビジネス・教育領域でのフラットパネルディスプレイによる侵食継続などの影響を受けています。今後は、プロジェクターの性能向上や用途開発を進めて新商品を投入し、安定した事業運営を継続していきます。 <ライフスタイルイノベーション>当領域は、匠の技能、センシング技術を活用したソリューションを共創し、お客様の多様なライフスタイルを彩ることを目指しています。ウオッチ事業は、採算性を意識した商品ラインアップの絞り込みや高級品へのシフト、販売価格の見直しなど、これまで続けてきた構造改革により収益性は大きく改善しており、今後も生産ラインの自動化を含めた生産性向上の施策を継続的に行っていきます。また、自社ブランドであるオリエントの認知向上や拡販に取り組みます。 ② 財務目標エプソンは、「Epson 25 Renewed」のもと収益性重視の経営へとシフトし、過度な売上成長を追わず、取り組みにメリハリをつけ、収益性の確保と将来成長を目指しています。2025年度の業績予想は、外部環境変化を踏まえ下記の通りといたします。なお、米国の関税政策影響については、2025年度の業績予想に追加関税率10%、対中国は20%(※4)およびその対応策への効果を織り込んでおります。引き続き関税政策の動向を注視し、迅速かつ柔軟に対応し、お客様への供給責任を果たすべく全力で取り組んでまいります。※4 米国の対中国追加関税率の動向が不透明かつエプソンへの影響は軽微(対応策を実施前提) 全社業績目標2020年度(実績)2021年度(実績)2022年度(実績)2023年度(実績)2024年度(実績)2025年度(予想)ROIC(※5)5.6%7.3%7.1%4.6%6.1%5.2%ROE5.9%15.2%10.8%6.8%6.8%5.1%ROS6.2%7.9%7.1%4.9%6.6%5.7%※5 ROIC=税引後事業利益/(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債) ③ キャッシュ・アロケーション「Epson 25 Renewed」の実現に向けて、創出したキャッシュは成長戦略に基づく投資をした上で、積極的な利益還元、財務体質強化を実施していく方針です。2024年度は、成長戦略に基づく投資を概ね計画通りに実施したことに加え、Fiery, LLCを子会社化するM&Aを実施しました。2025年度以降も引き続き成熟領域の競争力維持・生産性向上に加え、成長領域・環境関連・デジタル基盤整備などにM&Aを含めて積極投資を行ったうえで、利益還元、財務体質強化を実施していきます。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。 (1)経営の基本方針エプソンのあらゆる企業活動の中心にはパーパスがあります。エプソンが社会に対してどのような価値を提供する存在であるかを定めるとともに、エプソンならではの存在意義と志を社内外に示すため、2022年9月にパーパス「『省・小・精』から生み出す価値で、人と地球を豊かに彩る」を制定しました。そして、エプソンは、グループの価値観・行動様式を定めた「エプソンウェイ」の普遍的な考え方である経営理念を礎とし、ビジョンによりパーパスを実現することで社会へと新しい価値を提供します。これにより、将来にわたって持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図ってまいります。           (2)長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の考え方エプソンは、将来にわたって追求するありたい姿として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、「Epson 25 Renewed」を策定しています。現在、気候変動をはじめ、人類はさまざまな社会課題に直面しています。また、物質的、経済的な豊かさだけでなく、もっと精神的な豊かさ、文化的な豊かさ、そういったさまざまな豊かさを含めた「こころの豊かさ」が望まれる時代となったと考えています。そのためには、持続可能な社会であることが大前提になります。このような背景のもと、エプソンは、常に社会課題を起点として、その解決に向けて私たちに何ができるか、私たちの技術を使ってどう課題解決し、社会に貢献できるか、という発想でビジネスを展開していきます。 ①「Epson 25 Renewed」ビジョンステートメント「Epson 25 Renewed」のビジョンステートメントとして、「『省・小・精の技術』とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する」と定めています。人・モノ・情報をスマートにつなげるソリューションを、個人の生活や、産業や製造の現場にまで広く社会へ提供し、ありたい姿の実現のために取り組みます。そこで重要となるのは、「環境」「DX」「共創」の3つの取り組みです。 (環境への取り組み)●「脱炭素」と「資源循環」に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進する(DXへの取り組み)●強固なデジタルプラットフォームを構築し、人・モノ・情報をつなげ、お客様のニーズに寄り添い続けるソリューションを共創し、カスタマーサクセスに貢献する(共創への取り組み)●技術、製品群をベースとし、共創の場・人材交流、コアデバイスの提供、協業・出資を通して、さまざまなパートナーと社会課題の解決につなげる ②「Epson 25 Renewed」方針不透明な社会環境の継続が予想されるなか、取り組みにメリハリをつけることにより、収益性を確保しながら将来成長を目指します。そして、すべての領域に必要な環境、DX、共創への取り組みも継続的に強化していきます。 領域区分対象事業方針成長領域オフィスプリンティング、商業・産業プリンティング、プリントヘッド外販、生産システム環境変化を機会と捉えて経営資源投下成熟領域ホームプリンティング、プロジェクション、ウオッチ、マイクロデバイス構造改革や効率化などにより、収益性重視新領域センシング、環境ビジネス新たな技術・ビジネス開発に取り組む (3)「環境ビジョン2050」の考え方エプソンは、以下のとおり持続可能な社会の前提である環境への取り組みに関するビジョン「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に達成する目標と、その実現に向けた取り組みを定めています。 項目内容ビジョンステートメント2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ(※1)」を達成し、持続可能でこころ豊かな社会を実現する達成目標2030年:1.5℃シナリオ(※2)に沿った総排出量削減2050年:「カーボンマイナス」、「地下資源消費ゼロ(※1)」アクション●商品・サービスやサプライチェーンにおける環境負荷の低減●オープンで独創的なイノベーションによる循環型経済の牽引と産業構造の革新●国際的な環境保全活動への貢献※1 原油、金属などの枯渇性資源※2 SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)のクライテリアに基づく科学的な知見と整合した温室   効果ガスの削減目標 (4)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題① イノベーション戦略の方針と進捗、今後の取り組み目指す姿の実現に向けた戦略を実行するために、お客様価値や社会課題の軸で5つのイノベーション領域を設定しています。そして、それらのイノベーションを支えるマイクロデバイス事業においては、「省・小・精の技術」を極めた水晶・半導体ソリューションにより、スマート化する社会の実現に貢献していきます。 <オフィス・ホームプリンティングイノベーション>当領域では、インクジェット技術・紙再生技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、印刷の進化を主導することを目指しています。ホームプリンティングでは、大容量インクタンクプリンターが2010年の発売以来、世界累計販売台数1億台を達成するなど、安定的な収益基盤となっています。オフィスプリンティングでは、中速帯のA3ラインインクジェット複合機などの販売拡大により、オフィス共有IJP全体の売上は継続的に伸長しています。今後は、各地域でのサブスクリプションやコンテンツアプリ等のサービス展開を充実させるとともに、顧客接点の基盤を強化することで、オフィス共有IJP、大容量インクタンクプリンターともシェア拡大による売上伸長を目指します。 <商業・産業プリンティングイノベーション>当領域では、インクジェット技術と多様なソリューションにより、印刷のデジタル化を主導し、環境負荷低減・生産性向上の実現を目指しています。完成品ビジネスでは、世界経済の低迷やインフレによる顧客の投資意欲減退の影響を受けながらも、着実な成長を続けています。今後はサイネージや捺染などの成長分野をさらに拡大すべく、高生産機の新商品を投入しラインアップの一層の充実を図ります。優れた商品競争力と技術支援体制により高いシェアを獲得しているプリントヘッド外販ビジネスでは、市場成長が著しいDTFilm(※3)やペロブスカイト太陽電池などの新市場での販売拡大を目指します。また、産業系インクジェット市場のさらなる拡大に対応するため、プリントヘッドおよび周辺のインクジェット技術の強化に注力します。当期には、デジタル印刷機のパフォーマンスを最大化するデジタルフロントエンドおよびワークフローソフトウエアのリーディングカンパニーであるFiery, LLCを買収しました。特に産業領域でシナジー効果を創出し成長を実現すべく、取り組みを進めていきます。※3 Direct to Film:転写印刷用フィルムなどへの直接印刷のこと <マニュファクチャリングイノベーション>当領域では、環境負荷に配慮した「生産性・柔軟性が高い生産システム」を共創し、ものづくりを革新することを目指しています。マニュファクチャリングソリューションズ事業は、顧客の投資意欲減退や中国メーカーとの競争により厳しい市場環境が継続しています。そのような中、当期より抜本的な収益性の改善に着手し、開発・生産・販売体制の見直しを進めています。また、戦略商品の投入により中国を含む既存市場における競争力向上や新規分野の開拓に取り組み、成長局面に備えます。 <ビジュアルイノベーション>当領域では、感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションで人・モノ・情報・サービスをつなぎ、「学び・働き・暮らし」を支援することを目指しています。プロジェクション事業では、構造改革により収益性は改善したものの、当期は欧米政府の予算出動による教育需要の一巡や、ビジネス・教育領域でのフラットパネルディスプレイによる侵食継続などの影響を受けています。今後は、プロジェクターの性能向上や用途開発を進めて新商品を投入し、安定した事業運営を継続していきます。 <ライフスタイルイノベーション>当領域は、匠の技能、センシング技術を活用したソリューションを共創し、お客様の多様なライフスタイルを彩ることを目指しています。ウオッチ事業は、採算性を意識した商品ラインアップの絞り込みや高級品へのシフト、販売価格の見直しなど、これまで続けてきた構造改革により収益性は大きく改善しており、今後も生産ラインの自動化を含めた生産性向上の施策を継続的に行っていきます。また、自社ブランドであるオリエントの認知向上や拡販に取り組みます。 ② 財務目標エプソンは、「Epson 25 Renewed」のもと収益性重視の経営へとシフトし、過度な売上成長を追わず、取り組みにメリハリをつけ、収益性の確保と将来成長を目指しています。2025年度の業績予想は、外部環境変化を踏まえ下記の通りといたします。なお、米国の関税政策影響については、2025年度の業績予想に追加関税率10%、対中国は20%(※4)およびその対応策への効果を織り込んでおります。引き続き関税政策の動向を注視し、迅速かつ柔軟に対応し、お客様への供給責任を果たすべく全力で取り組んでまいります。※4 米国の対中国追加関税率の動向が不透明かつエプソンへの影響は軽微(対応策を実施前提) 全社業績目標2020年度(実績)2021年度(実績)2022年度(実績)2023年度(実績)2024年度(実績)2025年度(予想)ROIC(※5)5.6%7.3%7.1%4.6%6.1%5.2%ROE5.9%15.2%10.8%6.8%6.8%5.1%ROS6.2%7.9%7.1%4.9%6.6%5.7%※5 ROIC=税引後事業利益/(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債) ③ キャッシュ・アロケーション「Epson 25 Renewed」の実現に向けて、創出したキャッシュは成長戦略に基づく投資をした上で、積極的な利益還元、財務体質強化を実施していく方針です。2024年度は、成長戦略に基づく投資を概ね計画通りに実施したことに加え、Fiery, LLCを子会社化するM&Aを実施しました。2025年度以降も引き続き成熟領域の競争力維持・生産性向上に加え、成長領域・環境関連・デジタル基盤整備などにM&Aを含めて積極投資を行ったうえで、利益還元、財務体質強化を実施していきます。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況当連結会計年度の経営成績につきましては、以下のとおりとなりました。(単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減金額増減率主な増減理由売上収益13,13913,6294893.7%[売上収益]プリンティングソリューションズ事業セグメント+614ビジュアルコミュニケーション事業セグメント△136マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント+15[事業利益]プリンティングソリューションズ事業セグメント+287ビジュアルコミュニケーション事業セグメント△25マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント△16売上原価△8,573△8,699△125-売上総利益4,5664,9303638.0%販売費及び一般管理費△3,919△4,034△114-事業利益(※)64789524838.4%その他の営業収益・その他の営業費用△71△144△72-為替差損の増加等営業利益57575117530.5% 金融収益・金融費用12532△92-為替差益の減少等税引前利益7007838311.8% 法人所得税費用△174△232△57-税引前利益の増加等当期利益526551254.9% 親会社の所有者に帰属する当期利益526551254.9% ※ 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。 報告セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。 (プリンティングソリューションズ事業セグメント)オフィス・ホームプリンティング事業の売上収益は増収となりました。インクジェットプリンター本体の売上は、販売数量の増加や為替のプラス影響により、増加となりました。これは、大容量インクタンクモデルの販売数量が需要の堅調だった新興国を中心に増加したこと、オフィス共有IJPも西欧および南米を中心に大幅な販売増となったことなどによります。インクジェットプリンター消耗品の売上は、為替のプラス影響があり、増加となりました。インクカートリッジは売上減となりましたが、それを上回る大容量インクタンクモデルのインクボトルおよびオフィス共有IJPのインク売上の増加となりました。商業・産業プリンティング事業の売上収益は増収となりました。商業・産業IJP完成品の売上は、本体販売数量の伸長は停滞しましたが、消耗品は堅調な販売が継続しており、為替のプラス影響もあり、若干の増加となりました。小型プリンターの売上は、主に欧州における販売が堅調であったことに加え、為替のプラス影響により、増加となりました。また、プリントヘッド外販ビジネスの売上は、中国印刷機メーカーの旺盛な需要があり、大幅な増加となりました。プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益は、増収となったことに加え、為替のプラス影響があり、在庫削減による利益マイナス影響が大きかった前期に対して大幅な増益となりました。以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は9,801億円(前期比6.7%増)、セグメント利益は1,248億円(同29.9%増)となりました。なお、本決算におけるFiery, LLCの子会社化による連結決算への影響は、12月度から3月度の影響額を第4四半期において計上し、商業・産業プリンティング事業に含めております。 (ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は、為替のプラス影響はあったものの、中国市場の悪化に加え、欧米および中東・アフリカ地域の教育市場において販売減となった影響が大きく、減収となりました。ビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント利益は、減収によるマイナス影響が大きく、為替のプラス影響があったものの、減益となりました。以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は2,037億円(前期比6.3%減)、セグメント利益は290億円(同8.1%減)となりました。 (マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント)マニュファクチャリングソリューションズ事業の売上収益は、中国や欧米での投資需要停滞から低調な販売が継続し、減収となりました。ウエアラブル機器事業の売上収益は、国内におけるインバウンド需要に伴い販売が増加したことなどにより、増収となりました。マイクロデバイス事業の売上収益は、減収となりました。水晶デバイスの売上は、市場での在庫調整影響により市況悪化が顕著だった前期と比較すると、民生機器向けを中心に市場が回復基調にあることに加え、為替のプラス影響があり、増加となりました。半導体の売上は、主に第1四半期に受注残解消による売上増があった前期に対し、産業向けを中心とした顧客需要の停滞が継続していることにより、減少となりました。マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメントのセグメント利益は、マイクロデバイス事業を中心とした減収の影響が大きく、大幅な減益となりました。以上の結果、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメントの売上収益は1,814億円(前期比0.9%増)、セグメント損失は32億円(前期はセグメント損失15億円)となりました。なお、上記の他、マニュファクチャリングソリューションズ事業において、中国を含めた主要販売地域における市場回復の遅れ等により収益性の低下が継続していることから、減損損失7億円を計上しております。 (調整額)報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る収益、費用の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△610億円(前期の調整額は△614億円)となりました。 ②キャッシュ・フローの状況当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、主に当期利益551億円や減価償却費及び償却費の計上といった増加要因により、1,380億円の収入(前期は1,655億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、Fiery, LLCの株式取得に伴う支払が大きく、1,507億円の支出(前期は589億円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の起債による収入、配当金支払や自己株式の取得などによる支出があり、451億円の支出(前期は653億円の支出)となりました。以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響を合わせて、前連結会計年度末から614億円減少し、2,670億円となりました。 ③生産、受注及び販売の実績a.生産実績 エプソンの生産実績は、販売実績と近似しているため、記載を省略しております。 b.受注実績 エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。 c.販売実績 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)前期比(%)プリンティングソリューションズ事業(百万円)980,078106.7ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)203,78293.7マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業(百万円)172,210100.8報告セグメント計(百万円)1,356,070103.8その他(百万円)6,87396.8合計(百万円)1,362,944103.7(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。2.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点によるエプソンの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。①経営成績等(財政状態)当連結会計年度末における資産合計は、配当金支払や自己株式取得の株主還元などにより現金及び現金同等物は減少となった一方、Fiery, LLCの子会社化に伴うバランスシート取り込みにより、のれん及び無形資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に対して433億円増加し、1兆4,564億円となりました。負債合計は、主にFiery, LLCの子会社化に伴う資金調達に際して社債を起債し、社債、借入金及びリース負債が増加したことなどにより、前連結会計年度末に対して496億円増加し、6,515億円となりました。 親会社の所有者に帰属する持分合計は、主に親会社の所有者に帰属する当期利益551億円の計上があった一方、自己株式の取得や配当金の支払いといった株主還元を行ったことなどにより、前連結会計年度末に対して62億円減少し、8,047億円となりました。 運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して1,243億円減少し、4,367億円となりました。 (経営成績) 経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。 (キャッシュ・フローの状況) キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。 ②資金の源泉および流動性 当連結会計年度後1年間の設備投資計画金額は700億円であり、所要資金につきましては、内部資金によりまかなう予定です。セグメントごとの設備投資計画金額につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。なお、上記設備投資計画金額には、リースによる設備投資を含めております。 エプソンでは、設備投資等の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入と社債の発行により資金を調達しております。 有利子負債の当連結会計年度末残高は、社債の発行などにより前連結会計年度と比較して199億円増加し、2,247億円となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して614億円減少し、2,670億円となり、手元流動性は十分に確保しております。 また、有事に備えた財務基盤強化の一環として、2020年5月に主要行との間で、環境評価融資商品のコミットメントライン契約を締結し、2023年5月に契約を更新しておりますが、当連結会計年度末における当該コミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。 なお、エプソンは、株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、当連結会計年度末において、A(シングルA)となっております。 ③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 エプソンは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、社会課題の解決のために、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦し、イノベーションを起こすことに取り組んでいます。そして、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮しつつ、自律的に行動するように努めています。これにより、画期的なお客様価値を継続的かつタイムリーに創造・提供し、より良い社会の構築に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすとともに、持続的成長および中長期的な企業価値向上を実現してまいります。 エプソンは、将来にわたって追求する「ありたい姿」として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年3月に長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定しました。また、エプソンとして重視している環境問題への対応では、「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※)消費ゼロ」の達成を目指すこととしました。※ 原油、金属などの枯渇性資源 なお、当該長期ビジョンの実現に向けて設定した財務目標の進捗状況は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。 ④重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定 エプソンの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRS会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。 なお、エプソンの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しております。

事業リスク

セイコーエプソンの主なリスクは、プリンター製品の売上変動が経営成績に大きく影響することです。連結売上収益の約7割をプリンティングソリューションズ事業が占めており、プリンター本体や消耗品の売上が変動すると業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、プリンターやプロジェクターなどの主力製品において、他社との競合激化による販売価格の低下や販売数量の減少、さらには技術競争における優位性の喪失もリスクとして挙げられます。加えて、新たな競合企業の参入や、技術革新のスピードが速い経営環境の急激な変化も、事業に影響を与える可能性があります。

出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2025|12,135 文字
3【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは次のとおりです。これらのリスクについては、リスク要因になる可能性があると考えられる事項を記載していますが、すべてのリスクを網羅したものではなく、有価証券報告書提出日現在では想定していないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも、今後、エプソンの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、エプソンは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針ですが、かかる施策などが成功する保証はなく、効果的に対応できない場合には、エプソンの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてエプソンが判断したものです。 (1)リスク管理体制エプソンは、「内部統制システムの基本方針」に基づき、子会社を含むグループ全体のリスク管理の総括責任者を社長とし、グループ共通のリスク管理については本社主管部門が各事業部門および子会社と協働してグローバルに推進し、各事業固有のリスク管理については事業部長が担当事業に関する子会社を含めて推進する体制としています。リスク管理統括部門は、グループ全体のリスク管理全般をモニタリングおよび是正・調整し、リスク管理活動の実効性を確保しています。これらのリスク管理体制は、エプソングループリスク管理基本規程で定めています。贈収賄・腐敗行為・カルテルなどの不正行為に加え、情報の透明性、知的財産の保護、公正な競争、内部通報者の保護、責任ある鉱物調達、プライバシー保護など、RBA(Responsible Business Alliance)行動規範に基づく幅広い倫理的リスクを重要な経営課題と認識しています。これらのリスクは、内部統制フレームワーク「COSO(※1)」やリスクマネジメント国際規格「ISO 31000」を参考にしたリスク評価により優先度を定め、エプソングループオペレーションに重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「全社重要リスク」、事業オペレーションに重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「事業重要リスク」、また子会社オペレーションに重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「子会社重要リスク」として特定しています。その特定した重要リスクに対し、制御計画の立案・実行と進捗状況のモニタリングを定期的に行っています。制御活動の有効性については、「全社重要リスク」は四半期ごとに、「事業重要リスク」「子会社重要リスク」は半期ごとに定期評価を実行していることに加え、常にリスク環境のモニタリングに努め、重大化しうる変化を認識した場合には、リスクを分析・評価し、必要に応じて重要リスクとして扱うよう制御計画を見直し、実効性の確保に努めています。また、社長はリスク管理に関する重要事項を四半期ごとに取締役会に報告しています。さらには、株主、顧客、従業員、取引先、地域社会、環境など、グループ内外の多様なステークホルダーに対して説明責任を果たすとともに、リスク管理の透明性と実効性の向上に継続的に取り組んでいます。※1 Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission :ビジネスの倫理観を高め、内部統制を実施し、企業統治などを目的とした組織委員会 (2)事業等のリスク①プリンターの売上変動による経営成績などへの影響について2025年3月期におけるプリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益9,801億円は、エプソンの連結売上収益1兆3,629億円の約7割を占めており、そのなかでもオフィス・ホーム市場向けのほか、商業・産業向けのインクジェットプリンターを中心とする各種プリンターと、これらの消耗品が売上収益および利益の多くを占めています。したがって、これらのプリンターおよび消耗品の売上収益が変動した場合には、エプソンの経営成績などに重大な影響を及ぼす可能性があります。 ②他社との競合について(販売における影響)エプソンの主力製品であるプリンターやプロジェクターをはじめとする製品全般について、他社との競合の激化により、販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などの影響を受けることがあります。エプソンでは、これらの状況に対して、各市場での顧客ニーズに対応した製品や高付加価値製品およびサービスの提供に取り組むとともに、設計・開発の効率化やコストダウンなどにより製造コストの削減に努め、かかる販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などに対処していく方針です。しかしながら、今後、これらの施策が成功する保証はなく、エプソンがかかる販売価格の低下などに効果的に対応できない場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。 (テクノロジーにおける影響)エプソンの販売する一部の製品については、他社のテクノロジーと競合しており、例えば、次のような事例があります。・インクジェットプリンターにおけるエプソンのマイクロピエゾ方式(※2)と他社のサーマルインクジェット方式(※3)との競合・プロジェクターにおけるエプソンの3LCD(三板透過型液晶)方式(※4)と他社のDLP方式(※5)などとの競合ならびにエプソンのプロジェクターと他社のFPD(フラットパネルディスプレイ)(※6)との競合エプソンは、これらのエプソンの製品において採用している方式について、現時点では競合他社の方式に対する技術的な競争優位性があると考えていますが、消費者によるエプソンの技術に対する評価が変化した場合や、エプソンの技術と競合するほかの革新的な技術が出現した場合などには、エプソンの技術的な競争優位性が損なわれ、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。※2 マイクロピエゾ方式とは、ピエゾと呼ぶ圧電素子を伸縮させて、インク滴をノズルから噴射させるエプソン独自のインクジェット技術をいいます。※3 サーマルインクジェット方式とは、インクに熱を加えることで発生する気泡の圧力により、インク滴を噴射する技術をいいます。なお、バブルジェット方式といわれることもあります。※4 3LCD(三板透過型液晶)方式とは、ライトバルブに高温ポリシリコンTFT液晶パネルを用いる方式であり、光源から出射された光を特殊な鏡を使って赤・緑・青の3原色に分離し、各色専用のLCDで映像を作った後、無駄なく再合成し投影します。※5 DLP方式とは、表示デバイスにDMD(Digital Micromirror Device)を用いる方式です。DMDとは、ミクロンサイズの微極小な鏡が多数並んだ半導体で、ひとつの鏡が1画素に対応し光源からの光を反射することで映像を投影します。なお、DLPおよびDMDは、米国テキサス・インスツルメンツ社の登録商標です。※6 FPDとは、薄型・平坦な画面の薄型映像表示装置の総称です。 (新たな競合の発生)エプソンは、現在、高度な技術力、豊富な資金力または強固な財務基盤を有する大企業あるいは市場における認知度、供給力または価格競争力を有する国内外の企業との間で競合関係にありますが、これらに加え、将来、ほかの企業が、ブランド力、技術力、資金調達力、マーケティング力、販売力および低コストの生産能力などを生かしてエプソンの事業領域へ新規参入してくる可能性もあります。 ③経営環境の急激な変化などについてエプソンは、現在、自社として取り組む社会課題の解決に向けて、「オフィス・ホームプリンティングイノベーション」「商業・産業プリンティングイノベーション」「マニュファクチャリングイノベーション」「ビジュアルイノベーション」「ライフスタイルイノベーション」という5つのイノベーション領域において、それぞれのイノベーションを起こすことによりお客様が真に求める価値を創出し、各事業領域のビジョンを実現することに取り組んでいます。この実現に向けて、エプソンでは、長期ビジョン Epson 25 Renewed や各事業戦略などに基づく諸施策を展開していますが、技術的な競争優位性を確立することが競争力を高めるために重要な要素であると考えており、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」などの独自のコア技術とデジタル技術などの製品技術およびこれらを支える基盤技術を進化させることにより、顧客ニーズに対応した製品の開発・製造・販売およびサービスの提供を行っています。しかしながら、エプソンが経営資源を集中しているこれらの事業領域における製品の属する市場は、一般的に技術革新の速度が速いとともに製品ライフサイクルが短く、また、世界景気の変動やデジタル化の進展などにともなうエプソンの主要市場における需要・投資動向が、エプソンの製品の販売に影響を及ぼす可能性があるほか、現在推進している長期ビジョンや事業戦略およびこれらで定められた各種の施策が必ずしも実現または成功する保証はありません。このような事業環境のもと、エプソンでは、引き続き各市場や顧客のニーズの把握に努め、製品市場予測による中・長期的な研究開発や投資を行うほか、開発・設計のプラットフォーム化などにより、既存製品から新製品への迅速かつ円滑な移行などにも取り組んでいく方針です。しかしながら、今後、市場でのニーズや技術革新の変化に適切に対応できない場合、他社との競争が激化した場合、景気後退などにより需要が回復しない場合および主要市場における急激な需要変動に適切に対応できない場合などには、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。 ④第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売についてインクジェットプリンターの主な消耗品であるインクカートリッジなどは、エプソンの売上収益および利益にとって重要なものとなっています。インクカートリッジなどのインクジェットプリンター用消耗品については、第三者によりエプソンのプリンター本体で使用することができる代替品が供給されています。これらの第三者からの代替品は、一般的にエプソンの純正品よりも廉価で販売されており、また、先進国市場と比較して新興国市場においてより流通している状況にあります。エプソンは、こうした第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について、純正品としての高い品質の訴求のほか、大容量インクタンクを搭載したモデルの販売など、各市場における顧客ニーズに的確に対応したインクジェットプリンターを提供し、顧客の利便性をさらに高めることにより、引き続きお客様価値の実現を図っていく方針です。また、エプソンが保有するインクカートリッジに関する特許権および商標権の侵害に対しては、適宜、法的措置を講じていく方針です。しかしながら、これらの施策が必ずしも有効である保証はなく、将来において第三者による代替品の販売が拡大し、純正品のシェア低下にともなう販売数量の減少や、これに対応するための販売価格の引下げなどにより、インクカートリッジなどの売上収益および利益が減少した場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。 ⑤海外での事業展開についてエプソンは、グローバルに事業を展開しており、2025年3月期の連結売上収益のうち8割以上は海外における売上収益が占めています。エプソンは、中国、インドネシア、シンガポール、マレーシアおよびフィリピンなどのアジア地域をはじめ、アメリカやイギリスなどにも生産拠点を有し、販売会社も世界各地域に設立しています。また、2025年3月末における海外従業員数はエプソンの全従業員数の7割以上を占めています。エプソンでは、こうしたグローバルな事業展開は地域ごとの市場ニーズを的確に捉えたマーケティング活動を可能とし、また、製造コストの削減およびリードタイムの短縮によるコスト競争力の確保など、事業上の多くのメリットがあると考えています。一方で、海外における製造・販売に関しては、各国政府の製造・販売に関する諸法令・規制、社会・政治および経済状況の変化、輸送の遅延、電力・通信などのインフラの障害、為替制限、熟練労働力の不足、地域的な労働環境の変化、各国における税制改正および税務当局による税務執行の不確実性、保護貿易諸規制、各種地政学的リスク、そのほかエプソンの製品の輸出入に対する諸法令・規制など、海外事業展開に不可避のリスクがあります。 ⑥特定の仕入先からの部品などの調達についてエプソンは、第三者から一部の部品などを調達していますが、一般的に長期仕入契約を締結することなく継続的な取引関係を維持しています。また、エプソンは、部品などに関して複数社からの調達を原則としていますが、特定の部品などについては、他社からの代替調達が困難であるため、1社のみからの調達となる場合があります。エプソンでは、品質の維持・改善やコスト低減活動などに調達先と協同で取り組むことなどにより、安定的かつ効率的な調達活動を展開していく方針ですが、仮にこれらの調達先からの供給の不足や供給された部品などの品質不良などにより、製造・販売活動に支障をきたした場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。 ⑦品質問題についてエプソンの製品保証の有無および内容は顧客との個別の契約により異なります。エプソンの製品に不良品または規格に適合しないものがあった場合には、エプソンは当該製品の無償での交換または修理など、不良品を補償するコストを負担し、また、当該製品が人的被害または物的損害を生じさせた場合には、製造物責任などの責任を負う可能性があります。このほか、エプソンの製品の性能に関し適切な表示または説明がなされなかったことを理由として、顧客などに対し責任を負う場合や、改良のためのコストが発生する可能性があります。さらに、エプソンの製品にこのような品質問題が発生した場合には、エプソンの製品への信頼性を損ない、顧客の喪失または当該製品への需要の減少などにより、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。 ⑧知的財産権についてエプソンにとって、特許権およびそのほかの知的財産権は競争力維持のために非常に重要です。エプソンは、自らが必要とする多くの技術を自社開発してきており、それを国内外において特許権、商標権およびそのほかの知的財産権として、あるいは他社と契約を締結することにより、製品および技術上の知的財産権を設定し保持しています。また、知的財産権の管理業務に人員を重点的に配置し、知的財産権の強化を図っています。しかしながら、次に想定されるような知的財産権に関する問題が発生した場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。・エプソンが保有する知的財産権に対して異議申し立てや無効請求などがなされる可能性、その結果、当該知的財産権が無効と認められる可能性・第三者間での合併または買収の結果、従来、エプソンがライセンスを付与していない第三者がライセンスを保有し、その結果、エプソンが知的財産権の競争優位性を失う可能性・第三者との合併または買収の結果、従来、エプソンの事業に課せられなかった新たな制約が課せられる可能性およびこれらを解決するために支出を強いられる可能性・エプソンが保有する知的財産権が競争優位性をもたらさない、またはその知的財産権を有効に行使できない可能性・エプソンまたはその顧客が第三者から知的財産権の侵害を主張され、その解決のために多くの時間とコストを費やし、または経営資源などの集中が妨げられることになる可能性・第三者からの侵害の主張が認められた場合に多額の賠償金やロイヤリティの支払い、該当技術の使用差し止めなどの損害が発生する可能性・エプソンの従業員などにより発明などに対する報酬に関する訴訟が提起され、その解決のために多くの時間とコストを強いられる可能性、その結果、多額の報酬の支払いが決定される可能性 ⑨環境問題についてエプソンは、国内外において製造過程で発生する廃棄物および大気中への排出物などについて、さまざまな環境規制に対応した活動が求められています。さらに、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)にて採択されたパリ協定により、世界的な気候変動への対応に関心が高まるなか、企業としてもより高い削減目標を掲げて取り組む必要性が増しています。かかる状況のもと、エプソンは、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※7)消費ゼロ」の達成を目指す「環境ビジョン2050」に基づき、環境負荷を低減した製品の開発・製造、環境技術の開発、使用エネルギー量の削減、使用済み製品の回収・リサイクル・再生利用の推進、国際的な化学物質規制(主に欧州のRoHS指令やREACH規則)への対応および環境管理システムの改善など、多くの側面から環境保全活動に取り組んでいます。GHGの排出削減目標に関しては、2050年のネットゼロ目標とその達成に向けた2030年の総排出量削減目標についてSBTi(Science Based Targets initiative)の承認を受けるとともに、再生可能エネルギー100%活用の維持や自社発電の導入拡大など、中長期に向けた削減活動を推進しています。こうした活動の結果、エプソンのGHG排出量は着実に減少しています。詳細な数値は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動(TCFD) ④ 指標及び目標」をご参照ください。なお、2021年11月に完了した国内拠点の再生可能エネルギー転換の維持に加え、2023年12月海外拠点の転換完了により、以降の電力起因によるスコープ2排出量はゼロとなります。エプソンでは、これまで重大な環境問題が発生したことはありませんが、将来において環境問題が発生し、損害の賠償や浄化などの費用負担、罰金または生産中止などの影響を受ける可能性、あるいは新しい規制が施行され多額の費用負担が必要となるリスクがあり、このような事態が実現した場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。一方で、エプソンは環境への対応を機会と捉えた取り組みを進めています。特にお客様のもとでの環境負荷低減に貢献できる商品・サービスで事業拡大の機会があると確認しており、機会を最大化する経営を継続していきます。具体的には、環境負荷低減・生産性向上・印刷コスト低減を実現するインクジェット技術によるプリンティング、商業・産業プリンティング、プリントヘッド外販と、環境負荷低減を実現する新生産装置の拡充による生産システムの提供により、売上収益成長を見込みます。加えて、地球温暖化対策やサーキュラーエコノミーへのシフトに有効なソリューションとして、ドライファイバーテクノロジー応用や原料リサイクル技術確立などによる環境ビジネスの展開を見込んでおります。※7 原油・金属などの枯渇性資源 ⑩人材の確保についてエプソンの高度な新技術・新製品の開発・製造には、国内外における優秀な人材の確保が重要ですが、これらの人材の獲得競争は激しいものとなっています。エプソンは、役割に基づいた処遇制度の導入、人材育成、ダイバーシティの取り組み、働き方改革と健康経営の推進および現地人材の積極的な登用などにより、多様な人材がその能力を発揮できる風土づくりや働きやすい環境づくりを推進し優秀な人材の確保に努めていますが、仮にこれらの人材を十分に採用または雇用し続けることができない場合や、技術などの継承が適切にできない場合には、エプソンの事業計画の遂行などに影響を及ぼす可能性があります。 ⑪為替変動についてエプソンの売上収益の相当部分は、米ドルおよびユーロなどの外貨建てとなっています。エプソンは、海外調達の拡大および生産拠点の海外移転などを進めたことにより、現状、米ドル建ての費用は米ドル建ての売上収益を上回る状況となっていますが、一方でユーロ建ての売上収益は依然としてユーロ建ての費用よりもかなり多い状況にあります。また、これら以外の外国通貨についても、全般的に売上収益が費用をかなり上回っています。エプソンは、為替変動リスクをヘッジするために為替予約取引などを行っていますが、米ドル、ユーロおよびこれら以外の外国通貨の日本円に対する為替変動は、エプソンの財政状態および経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。 ⑫年金制度についてエプソンの設けている確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度および退職一時金制度があります。エプソンは、確定給付型の退職年金制度について、年金資産の運用収益率の低下や受給権者の増加といった状況を踏まえ、今後の環境変化に適応するとともに、将来にわたり安定的に維持運営することを目的として2014年4月に制度改定を実施しましたが、年金資産の運用成績の変動および退職給付債務の数理計算の基礎となる割引率の見積数値の変動などが発生した場合には、エプソンの財政状態および経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。 ⑬法規制および関係当局などによる調査についてエプソンは、グローバルに事業を展開しており、各国・各地域および各事業におけるさまざまな法規制や関係当局などによる調査の対象になる場合があります。例えば、エプソンは、現在、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律など、国内外の独占禁止法令に基づく手続の対象となっているほか、今後、公的機関などを含む新規顧客への営業活動の強化にあたり、これらの活動に関係する各種の法規制やコンプライアンス(法令遵守)への対応が一層求められることがあります。このような状況を踏まえ、エプソンでは従来、コンプライアンスを重要な経営方針のひとつとして位置付け、適宜、未然防止・制御活動(RBA(Responsible Business Alliance)加盟による労働者保護や環境保全活動のさらなる促進を含む)を展開していますが、今後も海外の競争法関係当局が特定の業界などを対象に調査または情報収集を行うことがあり、その一環としてエプソンも市場状況および販売方法一般に関する調査などを受けることがあります。また、腐敗防止法規制、広告・表示規制、個人情報保護・プライバシー規制のほか、安全保障貿易管理などにおいて、関係法令などへの抵触またはそのおそれが生じることや、より厳格な法規制の導入や関係当局による法令運用の強化が行われることがあります。これらの関連法規の違反があった場合や関係当局による調査・手続が実施された場合には、エプソンの販売活動に支障が生じ、またはエプソンの社会的信用を損なうこと、もしくは多額の制裁金が課されることがあるほか、事業活動に制約が生じるおそれがあるとともに、かかる法規制を遵守するための費用が増加することなどにより、エプソンの経営成績や今後の事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。有価証券報告書提出日現在、エプソンに対する法規制などに基づく調査は、次のとおりです。フランスにおいて販売されるインクジェットプリンター製品に関し、2017年に同国の消費者団体による消費者保護法に基づく申し立てがなされ、当局による調査が開始されています。なお、同消費者団体が主張するような製品の寿命を短くしているという意図はなく、エプソンは、今後とも品質や環境をもっとも重視し、お客様のニーズに合わせた設計をしてまいります。現時点においてかかる調査の進展、結果および終結の時期ならびにそのエプソンの経営成績および今後の事業展開などへの影響を予測することは困難です。 ⑭重要な訴訟についてエプソンは、プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業およびマニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業などに関する各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を主な事業として、国内外においてさまざまな事業活動を展開しています。その事業の特性上、知的財産権、製造物責任、独占禁止法、環境規制などに関連して訴訟が提起される場合や、法的手続が開始される可能性があります。有価証券報告書提出日現在、エプソンに係争している重要な訴訟は、次のとおりです。当社の連結子会社であるEpson Europe B.V.(以下「EEB」という。)は、2010年にベルギーにおける著作権料徴収団体であるLa SCRL REPROBEL(以下「REPROBEL」という。)に対して、マルチファンクションプリンターに関する著作権料の返還などを求める民事訴訟を提起しました。その後、REPROBELがEEBを提訴したことにより、これら二つの訴訟は併合され、かかる訴訟の第1審ではEEBの主張を棄却する判決がなされましたが、EEBはこれを不服として上訴する方針です。現時点において上記の訴訟の結果および終結の時期を予測することは困難ですが、訴訟または法的手続の結果によっては、エプソンの経営成績や今後の事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。 ⑮財務報告に関する内部統制についてエプソンは、財務報告の信頼性に関する内部統制の構築および運用を重要な経営課題のひとつとして位置付け、グループを挙げて関係会社の管理体制などの点検・改善などに取り組んでいます。しかしながら、常に有効な内部統制システムを構築および運用できる保証はなく、また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、上記の対応が有効に機能しなかった場合や、財務報告に関する内部統制の不備または開示すべき重要な不備が発生した場合には、エプソンの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。 ⑯他社との提携についてエプソンは、事業戦略の選択肢のひとつとして、他社と業務提携などを行うことがあります。しかしながら、当事者間における提携などの見直しにともない、提携関係が解消される可能性があるほか、提携内容の一部変更が行われる可能性があります。また、提携などによる事業戦略が必ずしも想定どおり成功し、エプソンの経営成績などに寄与する保証はありません。 ⑰自然災害・感染症などについてエプソンは、研究開発、調達、製造、物流、販売およびサービスの拠点を世界に展開していますが、これらの地域において予測不可能な自然災害、新興感染症の流行、調達先罹災によるサプライチェーン上の混乱、戦争・テロなどが発生した場合には、エプソンの経営成績や事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。これらのうち、特にエプソンの主要な事業拠点が所在する長野県中部は、糸魚川静岡構造線に沿った活断層帯があるなど、地震発生リスクが比較的高い地域であるため、エプソンでは、設備の耐震構造強化のほか、防災訓練などの地震防災計画や事業継続計画の策定などにより、かかる災害にともなう影響の軽減に向けた対応を可能な範囲において行っています。しかしながら、長野県中部に大規模な地震が発生した場合には、これらの施策にも関わらず、エプソンが受ける影響は甚大なものになる可能性があります。なお、エプソンは、地震により発生する損害に対しては地震保険を付保しているものの、その補償範囲は限定されています。2020年から猛威を振るっていたCOVID-19は、2023年5月8日以降感染症法上の位置付けが「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から「5類感染症」へ移行され、節目を迎えました。しかし、今後も感染力や重症化リスクの強い変異株流行や、COVID-19に代わる新たな感染症の流行が発生する可能性があります。エプソンはこうした事態にそなえ、COVID-19への対応をベースに新興感染症を想定したBCP(事業継続計画)を整備し、感染拡大の防止、事業の継続およびすみやかな復旧が図れるよう、平常時・流行初期・流行期の各段階における行動計画を定めてリスクの最小化を図っています。 ⑱情報セキュリティーについてエプソンでは、情報システムにおいてネットワークの利用範囲の拡大や利用頻度の増加が続いており、その重要性が増しています。また、グローバルな事業活動を通じて顧客の個人情報や取引先の機密データを扱っています。セキュリティー上の脅威が年々増しているなか、コンピュータウイルスの感染、顧客データの漏洩、社内重要基幹システムの障害発生、サイバー攻撃、AIの誤用に起因する情報漏洩・第三者の権利侵害、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)における風評被害などが発生した場合には、エプソンの経営成績や事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。これに対しエプソンでは、全従業員に情報セキュリティー教育を実施しているほか、サイバーセキュリティー対策に関する方針を定めたグランドデザインを策定・制定し、各種施策を実施し対策を講じています。また、グローバルでのセキュリティー事故への対応体制の確立、サイバーセキュリティー対策についての対応計画の策定と対策の実施、製品セキュリティーの強化などに取り組んでいく方針です。

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