研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
| 2025-03 |
- |
758 |
| 2024-03 |
- |
700 |
| 2023-03 |
- |
783 |
| 2022-03 |
- |
482 |
| 2021-03 |
- |
528 |
研究開発活動(本文)
FY2025|7,245 文字
6【研究開発活動】(1)研究開発の考え方と体制エプソンは創業以来、「省・小・精の技術」を核とした独自の技術力を強みに、社会に価値を提供してきました。現在は、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」のもと、社会課題の解決を起点とした技術開発へとシフトし、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。技術開発においては、顧客価値や事業性を踏まえたうえで、当社の技術的実力を客観的に評価し、ありたい姿とのギャップを明確化します。そのギャップを埋めるために、複数の開発シナリオを構築するアプローチを採用しています。最も高い成果が期待できる「プランA」を主軸としつつ、QCD(品質・コスト・納期)の一部を調整することで実現性を高めた「プランB」「プランC」も並行して検討。これにより、商品化・事業化への最短ルートを確保しています。また、開発初期段階から社外パートナーとの共創を積極的に取り入れ、試行錯誤のプロセスに多様な知見を取り込む「開発のフロントローディング化」を推進しています。課題解決のサイクルを高速化させることで開発の質とスピードの両立を図っています。エプソンは、研究開発を経営基盤強化の中核と位置づけ、基盤技術・コア技術・製品技術の継続的な進化に取り組んでいます。特に今後は、ものづくり力に加え、材料技術、AI、デジタル技術の強化を通じて、既存事業の競争力向上と新規事業創出に向けた技術基盤の構築を加速させます。研究開発体制は、各事業部門が製品開発および事業に直結するコア技術開発を担い、本社開発部門が複数事業にまたがる基盤技術や長期的視点での新技術開発を担当しています。明確な役割分担のもと、密接な連携を図りながら全社一体となって技術革新に取り組んでいます。エプソンは、これからも技術開発を通じて社会課題の解決に挑み、新たな価値創造に果敢にチャレンジしてまいります。 (2)研究開発費当連結会計年度の研究開発費総額は428億円であり、売上収益の3.1%にあたります。各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が172億円、ビジュアルコミュニケーション事業が69億円、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業が57億円、その他および全社が127億円です。なお、その他および全社の研究開発費には、事業強化や新規事業創出のための技術基盤の構築に必要な研究開発などを含みます。 ■セグメント別研究開発費(2024年度)セグメントの名称研究開発費(億円)プリンティングソリューションズ事業172ビジュアルコミュニケーション事業69マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業57その他および全社127合計428 (3)セグメント別の研究開発の目的および成果①プリンティングソリューションズ事業セグメント<オフィス・ホームプリンティングイノベーション>当領域は、インクジェット技術・紙再生技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、印刷の進化を主導することを目指しています。そのために、エプソン独自のインクジェット技術「Heat-Free Technology」による商品ラインアップの拡大、ソリューションの提供を進め、環境性能の訴求によるレーザープリンターからインクジェットプリンターへのテクノロジーシフトの実現に取り組んでいます。 この方針に基づき、オフィスの印刷状況に合わせてプランや機器を選べる「スマートチャージ」シリーズの新商品として、「LM-C400」を発売しました。ラインヘッドを搭載することで印刷速度40枚/分(※1)の高い生産性を実現し、新たにA4カラーインクジェット複合機をラインアップすることでオフィスにおけるさまざまなニーズに対応します。加えて、印字プロセスに熱を使わない「Heat-Free Technology」を採用したインクジェット方式によって、稼働時の最大消費電力160W以下(※2)を実現し、待機時も含めたトータルの消費電力量を示すTEC値も0.19kWh(※3)と低く、オフィスの脱炭素化の取り組みとして有効な手段となります。紙再生技術では、乾式オフィス製紙機PaperLabのメインユニット「Q-5000」および紙源プロセッサー「Q-40」を発売しました。PaperLabは、水を使わず(※4)に使用済みの紙を原料として新たな紙を生産できるため、オフィス内などでの紙資源循環に関連する活動を通じ、環境負荷低減に加えて多様な人材へも活躍の場を提供し、持続可能な社会の実現に貢献してきました。紙源プロセッサーは使用済みの紙を再生紙に適した形状かつ機密内容が判読できなくなるレベル(※5)まで細かく細断したあと、メインユニットに細断紙片を投入することで新たな紙「Dry Fiber Paper」(※6)を生み出します。このプロセスにより、様々な場所から安心して古紙を回収することが可能となり、複数の企業や事業所間、自治体を中心とした地域社会の皆さまをつなぐ新たな資源循環の形を実現します。※1 A4縦片面。印刷スピード算出条件は下記参照 https://www.epson.jp/products/printer/sokutei.htm※2 本体のみの最大消費電力(用紙カセット1段時)※3 本体のみのTEC値(用紙カセット1段時)。TEC値:オフィスでの使用を想定した1週間の平均電力量。国際エネルギースタープログラムで定められた測定方法による数値※4 機器内の湿度を保つために少量の水を使用。「Q-5000」では繊維結合の際にも少量の水を使用※5 ISO/IEC 21964-2 Security Level P4に準拠※6 PaperLabを用いて製紙した再生紙の総称 <商業・産業プリンティングイノベーション>当領域は、インクジェット技術と多様なソリューションにより、印刷のデジタル化を主導し、環境負荷低減・生産性向上の実現を目指しています。そのために、多様なメディア・素材への印刷を実現するインクジェット技術のポテンシャルを引き出し、商業・産業印刷のデジタル化を後押しするとともに、分散印刷を支援するクラウドサービス「Epson Cloud Solution PORT」などのソリューションを通じて印刷業務における生産性向上のサポートに取り組んでいます。この方針に基づき、エプソンでは初めてとなるDTFilm(※7)専用プリンター「SC-G6050」を発売しました。プリントヘッドを清潔に保つために必要な「吸引キャップ」に自動クリーニング機能を搭載したほか、ロール式の布製ワイパーにより常に新しい布でプリントヘッドを拭きとるため、毎日の部品清掃が不要です。さらに、ホワイトインクの自動循環システムでインク詰まりを防ぐなど、充実した自動メンテナンス機能によるメンテナンス工数の大幅削減と安定稼働を実現します。また、用途に合わせて選べるプリントモードにより、高画質でDTFilmならではの鮮やかな発色と、短納期でも安心して作業が進行できる生産性を両立しました。また、ラベル印刷業の人手不足や、デジタル印刷機を導入したもののスキル習得までの課題を解決するために、 「SurePress」を活用したデジタル印刷ワークフロー「Epson Workflow Cloud for SurePress」の提供を開始しました。電子作業指示書(JDF)によるワークフローの自動化に加え、「一括印刷機能」によって刃型違いの複数ジョブの連続印刷を実現し、ラベル生産工程における自動化および効率化を図り、「省人化」と「スキルレス」を実現します。※7 Direct to Film:転写印刷用フィルムなどへの直接印刷のこと ②ビジュアルコミュニケーション事業セグメント<ビジュアルイノベーション>当領域は、感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションで人・モノ・情報・サービスをつなぎ、「学び・働き・暮らし」を支援することを目指しています。そのために、高画質な大画面を実現するレーザー光源採用の高輝度プロジェクターの開発や、スマート化により使用環境・用途・シーンを拡大する設置性の高いホームプロジェクターの開発に取り組んでいます。 この方針に基づき、ビジネスプロジェクター高輝度モデル「EB-PQシリーズ」を発売しました。4Kの高画質を実現する2軸シフトテクノロジー「4K Crystal Motion Technology」(※8)を搭載し、高輝度かつ高解像度による迫力あるプロジェクションでイマーシブな空間演出での映像体験価値の向上を実現します。ホームプロジェクターでは、気軽に高画質な大画面映像を楽しめる「EF-21」「EF-22」を発売しました。エプソン独自の3LCD技術と先進のレーザー光源により、明るく鮮明かつ色再現性の高い映像を実現したほか、シームレスに自動で映像のゆがみとフォーカス補正が行えるため、設置性が向上しました。また、Google TVTM機能とスピーカー内蔵により、Wi-FiⓇの接続環境があればこれ一台で音楽や有料/無料の動画配信サービスを大画面で楽しめます。※8 4K信号を入力し、2軸シフトテクノロジーによってスクリーン上で4Kの高画質を表示 ③マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント<マニュファクチャリングイノベーション>当領域は、環境負荷に配慮した「生産性・柔軟性が高い生産システム」を共創し、ものづくりを革新することを目指しています。 この方針に基づき、産業用スカラ(水平多関節)ロボットの新商品として、「GXシリーズ」に対応したコントローラー「RC800-A」(※9)およびティーチペンダント「TP4」(※10)の受注を開始しました。ロボットの動きを制御するための装置であるコントローラー「RC800-A」は、お客様のニーズが高い「コンベヤートラッキング」の精度向上や、力覚センサーボードを標準搭載することで、より自由度の高いシステム構築ができるなど、お客様の使い勝手を向上させています。コントローラーオプションのティーチペンダント「TP4」は、エプソンロボット統合ソフトウエア「Epson RC+8.0」(※11)を内蔵し、パソコンなしでもプログラム開発が可能です。また、従来品より重さを1.2kgに軽量化したことで作業時の負荷を軽減したことに加え、消費電力を25Wから15W以下へ削減したことで環境負荷低減に貢献します。自動化ニーズが高まる食品製造業向けには、食品グリス仕様モデルの「Tシリーズ」「LSシリーズ」「GXシリーズ」の受注を開始しました。3モデル7機種の豊富なラインアップにより、お客様の用途に合わせた機種の選択が可能で、さまざまな食品製造工程における自動化を支援し、労働人口減少といった社会課題解決に貢献していきます。※9 「GX-Cシリーズ」ロボットの「GX4-C」「GX8-C」に対応※10 スカラロボットと6軸(垂直多関節)ロボットに対応※11 詳細については下記参照 https://www.epson.jp/products/robots/lineup/software/ <ライフスタイルイノベーション>当領域は、匠の技能、センシング技術を活用したソリューションを共創し、お客様の多様なライフスタイルを彩ることを目指しています。ウオッチ分野では、感性に訴えるデザイン・高品質な商品を、お値打ち感ある価格で提供すること、センシング分野では、センシング技術や分析アルゴリズムを活用した新たなソリューションの共創に取り組んでいます。 ウオッチ分野では、「Orient Star」のコンテンポラリーコレクションM34から、ペルセウス座流星群をデザインテーマとした独創的なダイヤルと、シリコン製がんぎ車搭載の高性能ムーブメントを特長とする「M34 F8 デイト」の新モデルを発売予定です。ブラック文字盤の限定2モデルには、エレクトロニクス分野で使用されている「金属ナノ粒子積層技術」を世界で初めて腕時計作りに応用(※12)し、極めて繊細で精巧、かつ奥行き感のある文字板を表現しました。センシング分野において、エプソンはマテリアリティの一つである「生活の質向上」の価値創造戦略のもと、センシング技術を活用して、パーソナライズされた理想的なトレーニングを提供し、お客様の多様なライフスタイルを豊かにすることを目指しています。当期は、小中学生を対象とするスポーツスクールの運営団体向けに、子どもの運動能力向上を支援する新サービス「RevUp Physical Trainer」の提供を開始しました。本サービスでは、エプソン独自のモーションセンシング技術「M-Tracerテクノロジー」を搭載した小型センシング端末を装着し、基本的な運動動作を行うことで、動作回数の計測に加え、身体の詳細な動きの解析が可能です。解析結果に基づき、一人ひとりに合わせた正しい身体の動かし方を習得するための診断アドバイスをレポートとして提供します。さらに、計測・解析結果を時系列で確認できる「成長ログ」により、継続的な指導を通じた運動能力の向上をサポートします。また、本サービスは複数ユーザーの同時計測に対応しており、大人数でも効率的な計測が可能です。※12 腕時計の文字板への加飾において、金属ナノ粒子/金属ナノインクを積層させてプリントする技術として世界初。2024年12月~2025年1月実施の「金属ナノ粒子積層技術(金属ナノ粒子/金属ナノインクを用いた時計文字板加飾技術)」に関する市場調査(※13)および当該領域における先行事業者(類似競合事業者)に関する知財調査※13 「世界初」検証調査。株式会社未来トレンド研究機構調べ(2025年1月27日現在) 「RevUp Physical Trainer」サービスコンセプト <マイクロデバイス>当領域は、「省・小・精の技術」を極めた水晶と半導体の技術融合の強みを生かし、タイミングデバイス、半導体、センサーにより、成長が著しい高速・大容量通信インフラ、IoT社会、およびモビリティ社会など、スマート化する社会の実現に貢献する商品開発に取り組んでいます。 水晶発振器分野では、低消費電力かつ小型で、次世代通信インフラの基準信号源に対応した恒温槽付水晶発振器「OG7050CAN」を開発しました。近年、第5世代通信システム(5G)/IoTの普及等による通信データトラフィック増大に伴い、基地局やデータセンターの電力消費量が急増することが予想されており、そこで使用される機器には低消費電力化が求められています。そのような中、エプソン独自の水晶デバイスと半導体、さらには実装技術の融合により、従来品と比較して56%減の低消費電力化および体積比85%減の小型化を実現しました。半導体分野では、補聴器などの小型機器向けパワーマネジメントIC「S1A00210B」を開発しました。MHz帯の電磁誘導周波数に対応させることで小型コイルの使用が可能になり、本体の小型化に貢献します。また、特性の異なるバッテリーを使い分けできるように充電プロファイルを2種類記憶できることと、充放電回数(サイクル回数)管理して充電回数に応じた最適な充電方法を適用する機能を備えています。これらにより、充電時間の短縮やバッテリー寿命を延ばすことに貢献し、補聴器使用者の利便性向上につながることが期待できます。 ④その他および全社当領域では、各事業セグメントに共通する生産技術の高度化、DX基盤の強化、事業競争力を支える基礎研究、新規事業創出に向けた先端技術の研究開発に取り組んでいます。 全社的な取り組みとしては、「環境ビジョン2050」の実現に向けた環境技術の開発を推進しています。2024年度は、長期的な取り組みとして、CO2除去技術と藻類を活用したカーボンマイナス技術の研究開発を推進しました。インクジェットプリンターで培った薄膜技術を応用し、CO2を効率的に分離・回収する分離膜フィルターを開発しました。従来の熱処理を伴う方式に比べ、低エネルギーでCO2回収が可能となるこの技術は、小型・効率の良い回収システムから、火力発電所や製鉄所などへの導入を視野に入れた研究が進められています。また、微細藻類(円石藻)を活用したCO2固定化技術の研究も進行中で、森林の数十倍に相当するCO2吸収能力を持つ藻類の育種・培養技術の最適化を図っています。さらに、緑藻を用いたCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)技術の開発も進めており、CO2を資源として活用する新たな循環モデルの構築を目指しています。 加えて、グループ会社であるエプソンアトミックスでは、金属資源の循環利用を目的とした新工場の建設を青森県八戸市で進めています。2025年6月の稼働を目指すこの工場では、エプソングループ内外から排出される金属端材や使用済み金型などの不要な金属を再資源化し、金属粉末製品の原料として再利用することでバージン原料の使用を削減し、CO2排出量の低減に貢献します。また、同工場では新精錬プロセスの導入により、金属資源の循環利用を実現することに加え、安定的に高品質な製品を供給し、次世代の省電力・小型デバイスの実現に貢献します。また、エプソングループの「環境ビジョン2050」に基づく「地下資源(※14)消費ゼロ」を目指す取り組みの一つとして、金属の資源循環可能な拠点を目指します。※14 原油、金属などの枯渇性資源
FY2024|6,370 文字
6【研究開発活動】(1)研究開発の考え方と体制エプソンは創業以来、「省・小・精の技術」に代表される優れた技術を持ち、それをどう社会に役立てていくか、という考え方で価値を提供してきました。そして長期ビジョン「Epson 25 Renewed」では、社会課題を起点とし、解決にはどんな技術が必要かを考える技術開発へシフトしました。技術開発において最善の開発シナリオをつくるうえで、顧客価値や事業性などを加味してエプソンの実力を客観的に評価し、その結果、生じたありたい姿とのギャップを分析します。現状把握のなかで、「クリアできなければ企画が成り立たない課題」をボトルネックとして抽出し、解消策を考えながら、目的達成に向け複数のシナリオを準備する手法に取り組んでいます。複数シナリオの考え方は、開発に成功した際の成果がもっとも大きく見込め、最優先で取り組むべきものをプランAとしながらも、QCDいずれかの達成レベルは下がるが、実現の障害が軽減され主目的を達成できるものをプランB、Cとしてあらかじめ考え、商品化・事業化にたどり着くための近道として同時に想定します。ボトルネック解消の具体策は、社外パートナーとの共創・協業も含め検討しています。共創については、技術開発における重要なファクターとし、開発の初期段階となる試行錯誤のプロセスから多くの知見ある方々の参画により、検証精度を高めていくという「開発のフロントローディング化」を進めています。これにより、課題を解決するサイクルを早く回して開発の質を高めることで、商品化・事業化までのスピードアップを図っています。エプソンは、研究開発を経営基盤強化の取り組みのひとつとして位置付け、イノベーションを実現するための基盤技術、コア技術、製品技術の進化を推し進めています。なかでも今後はものづくり力に加え、材料、AI、デジタル技術の強化により、事業強化や新規事業創出のための技術基盤の構築を進めます。主に各事業における製品の競争力向上などの製品開発やコア技術開発を事業部開発部門で行い、複数事業にわたる基盤技術や、長期に取り組む必要がある新規技術、新領域に対応するためのコア技術開発を本社開発部門で行うなど、役割分担を明確にしながら連携し取り組んでいます。エプソンは、技術開発を通じた社会課題の解決を目指し、新しい発想や、やり方に果敢にチャレンジしていきます。 (2)研究開発費当連結会計年度の研究開発費総額は442億円であり、売上収益の3.4%にあたります。各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が166億円、ビジュアルコミュニケーション事業が65億円、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業が68億円、その他および全社が142億円です。なお、その他および全社の研究開発費には、事業強化や新規事業創出のための技術基盤の構築に必要な研究開発などを含みます。 ■セグメント別研究開発費セグメントの名称研究開発費(億円)プリンティングソリューションズ事業166ビジュアルコミュニケーション事業65マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業68その他および全社142合計442 (3)セグメント別の研究開発の目的および成果①プリンティングソリューションズ事業セグメント<オフィス・ホームプリンティングイノベーション>当領域は、インクジェット技術・紙再生技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、分散化に対応した印刷の進化を主導することを目指しています。そのために、エプソン独自のインクジェット技術「Heat-Free Technology」による商品ラインアップの拡大、ソリューションの提供を進め、環境性能の訴求によるレーザープリンターからインクジェットプリンターへのテクノロジーシフトの実現に取り組んでいます。 ソリューション提供の具体事例として、学習塾向けICTコンテンツを運営販売する株式会社スタディラボとのオープンイノベーションにより、家庭学習もサポートする塾向け学習支援サービス「StudyOne(スタディワン)」を開発し、2023年4月より正式販売を開始しました。「StudyOne」は、同社のLMS(※1)と、エプソンの遠隔印刷・スキャン技術を組み合わせ、デジタルと紙を融合させた家庭学習をデザインできるサービスです。子ども部屋と学習塾をつなぎ、紙教材の課題提出までのやりとりをLMSによって記録することで、先生が生徒の学習過程全体を把握でき、生徒一人一人に合わせた学習指導を行う環境を提供します。また、商品ではデザインも機能も一新したA4ドキュメントスキャナーを発売しました。「DS-C480W」「DS-C420W」は、限られたスペースでも効率的に電子化したいというニーズに応え、Uターンとストレートの2Way給紙を採用し、省スペースでの使用と高い用紙対応力を実現しました。コンパクトな本体に30枚/分の高速スキャン(※2)や、5GHz対応のWi-FiⓇを搭載し、プライベートやテレワークでの個人利用はもちろん、狭いデスクや受付カウンターでの日々の電子化業務を支援します。※1 学習管理システム(Learning Management System)※2 読み取り速度はエプソン自社基準測定値であり、使用環境・方法によって異なる。測定条件は下記参照 https://www.epson.jp/products/scanner/sokudo_jyouken.htm <商業・産業プリンティングイノベーション>当領域は、インクジェット技術と多様なソリューションにより、印刷のデジタル化を主導し、環境負荷低減・生産性向上の実現を目指しています。そのために、多様なメディア・素材への印刷を実現するインクジェット技術のポテンシャルを引き出し、商業・産業印刷のデジタル化を後押しするとともに、分散印刷を支援するクラウドサービス「Epson Cloud Solution PORT」を通じて印刷業務における生産性向上のサポートに取り組んでいます。 このような商業・産業印刷におけるイノベーションの実現に向け、顔料によるデジタルプリントで生産現場に新たな価値をお届けするデジタル捺染機Monna Lisaシリーズの新商品「ML-13000」を発売しました。本商品はプリント工程で必要な箇所のみに機能性インクを吐出するため、別工程での前処理が不要となります。そのため、プリントしない箇所の風合いを損ねず、生地全体の風合いを生かして仕上げることができます。さらに、使用する顔料インクは染料プリントで必要とされる「蒸し」「洗い」工程が不要のため、水の使用量を大幅に削減することができ、サステナブルなプリントプロセスにより環境負荷低減に貢献します。また、布製品への直接印刷とフィルムへの印刷(Direct to Film)の両方に対応したハイブリッドタイプのガーメントプリンター「SC-F1050」、アクリル板やプラスチック、ゴルフボールなどのさまざまな素材にプリントが可能なUVインク搭載プリンター「SC-V1050」も発売しました。加えて、プリンターの色あわせをサポートするエプソン初の自動測色テーブル「SD10ACRT」も同時発売しており、エプソンの測色器「SD-10」と合わせて使うことでカラーチャートの自動測色からプロファイル作成までを誰でも簡単に行うことができます。 ②ビジュアルコミュニケーション事業セグメント<ビジュアルイノベーション>当領域は、感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションで人・モノ・情報・サービスをつなぎ、「学び・働き・暮らし」を支援することを目指しています。そのために、高画質な大画面を実現するレーザー光源採用の高輝度プロジェクターの開発や、スマート化により使用環境・用途・シーンを拡大する設置性の高いホームプロジェクターの開発に取り組んでいます。 このような方針のもと、超短焦点壁掛け対応モデルプロジェクター「EB-810E」「EB-770F」「EB-760W」を発売しました。レーザー光源採用により、くっきり鮮やかな映像投写を実現したほか、壁掛け設置ならほぼ真上から投写するため、投写面の近くに人が立っても影ができにくく、投写光が目に入り眩しく感じることがありません。さらに、ランプ交換が不要なため導入後もコストや手間がかかりません。ホームプロジェクターでは、4K(※3)相当の高画質映像を楽しめる「EH-LS650B」「EH-LS650W」を発売しました。超短焦点レンズの採用により、壁際に置くだけで最大120インチの大画面の投影が可能です。また、Android TVTM機能搭載(※4)により、Wi-FiⓇの接続環境があればこれ一台で有料/無料の動画配信サービスを大画面で楽しめます。※3 4K信号を入力し、4Kエンハンスメントテクノロジーによる4K相当の高画質で表示※4 NetflixはオプションのAndroid TVTM端末「ELPAP12」や市販のメディアストリーミング端末を装着することで視聴可能 ③マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント<マニュファクチャリングイノベーション>当領域は、環境負荷に配慮した「生産性・柔軟性が高い生産システム」を共創し、ものづくりを革新することを目指しています。今後の事業拡大を見据えた生産基盤強化に向けて、国内のロボット工場を富士見事業所に拡大移転し、ロボットを用いた工場の自動化を実現しました。当工場は技術検証の場としても活用し、エプソンのロボット製品の利用価値を進化させていきます。 この方針のもと、主力商品である産業用スカラロボット「GXシリーズ」のラインアップを一新しました。新商品「GX4/GX8/GX10/GX20」は、ロボットアームに超小型ジャイロセンサーを搭載し、動作中に生じるアームの振動を抑え、高速移動でも指定ポイントでピタッと止まる正確な制動能力を兼ね備えています。力覚センサーシステムにも対応し、高速性が求められる搬送作業だけでなく、今まで人手に頼っていた、ねじ締めや、押し圧検査などの精度が求められる難作業にも対応します。また、ロボットの安全規格である「ISO10218-1」に適合し、第三者認証機関から「NRTL認証」(※5)を取得しました。これにより、ロボットをより安全・安心にお使いいただけるとともに、エンドユーザーによるロボット装置としての安全認証取得が容易になります。※5 NRTLはアメリカ労働安全衛生局(OSHA)によって承認された第三者認証機関。本シリーズはその認証機関の一つである「TUV SUD」により安全規格適合を認証 <ライフスタイルイノベーション>当領域は、匠の技能、センシング技術を活用したソリューションを共創し、お客様の多様なライフスタイルを彩ることを目指しています。ウオッチ分野では、感性に訴えるデザイン・高品質な商品を、お値打ち感ある価格で提供すること、センシング分野では、センシング技術や分析アルゴリズムを活用した新たなソリューションの共創に取り組んでいます。 センシング分野では、エプソンがマテリアリティの一つとして掲げた「生活の質向上」の価値創造戦略として、「パーソナライズされた健康支援」に取り組んでいます。当期は、株式会社バンダイとのオープンイノベーションにより、同社の子ども向け超体感型スマートシューズ「DIGICALIZED」(デジカライズ)の専用アプリケーション向けに、人の動作やモノの動きをセンシングして捉えるM-TracerテクノロジーのモーションアルゴリズムSDK「M-Tracer for Motion SDK」のライセンス提供を開始しました。本SDKをアプリケーションに組み込むことにより、モーションセンサーから取得した足の動きのデータを解析・判定し、ゲームに必要となる動態変容をリアルタイムに提供します。 システム構成図 アルゴリズムSDK機能概念図 <マイクロデバイス>当領域は、「省・小・精の技術」を極めた水晶と半導体の技術融合の強みを生かし、タイミングデバイス、半導体、センサーにより、成長が著しい高速・大容量通信インフラ、IoT社会、およびモビリティ社会など、スマート化する社会の実現に貢献する商品開発に取り組んでいます。 水晶発振器分野では、エプソン独自の差動出力(※6)「Wide Amplitude LVDS(WA-LVDS)」を開発しました。デジタル化が進み、通信機器への要求性能がますます高度化する中、使用されるLSIに適した差動出力の要求はさらに強まることが予想されます。本商品では、LSIが求める振幅レベルに最適な出力をフレキシブルに選択することが可能となりました。なお、本商品を搭載した水晶発振器は2025年度の商品化を目指しています。半導体分野では、ブザー音声機能、音声データ用フラッシュメモリー、内蔵発振回路を搭載した音声再生専用LSI「S1V3F351/S1V3F352」を開発しました。近年では音声機能を備えた家電などの機器の普及や、健康機器、オフィスビル、工場においても音声による警報・案内の活用が進んでいます。そのような中、本商品はエプソンが独自開発した音声アルゴリズムにより、ブザーでの音声・メロディー再生を実現しました。お客様の既存製品に、本商品をシリアルインターフェイス接続するだけで、簡単に音声再生機能の組み込みが可能となります。※6 互いに極性が反対の周波数信号を出力する方式。高い周波数の伝送が可能で、ノイズに強いなどの特長がある ④その他および全社当領域は、各事業セグメントに共通する生産技術分野の技術開発や、DX基盤を強化するための技術開発、事業強化のための技術基盤となる基礎研究、新事業に関連する研究開発などに取り組んでいます。 全社的な取り組みとして、「環境ビジョン2050」の実現に向け環境技術開発を行っており、そのひとつが独自技術「ドライファイバーテクノロジー」の紙以外の素材への応用です。2023年8月には「セイコーエプソン×東北大学 サスティナブル材料共創研究所」を開設し、古紙・衣類・木材を解繊した繊維を活用し、複合化したバイオプラスチック・再生プラスチックに関する技術確立に向け、開発体制を強化し研究を加速しています。また、世界的に高まる再生繊維のニーズに応えるため、ドライファイバーテクノロジーを応用した繊維再生の社会実装を目指しています。2024年1月には、香港を拠点とし、繊維・衣類・ファッション産業に向けて革新的なソリューションを開発しているHKRITA(※7)と共同開発に関する契約を締結しました。エプソンの持つ技術と同社の持つ技術や市場知力を組合せ、新しい繊維リサイクルソリューションの実現を目指します。このソリューションにより、従来は再繊維化が困難だった機能性衣類や、シーツ、ワイシャツなどの高密度繊維についても、工場の端材・売れ残った衣料品・不要となった衣類から新たな再生繊維を作り出すことが可能となり、再生繊維の普及加速に大きく貢献することができます。エプソンは早期に技術確立を行い、社会実装を目指します。※7 The Hong Kong Research Institute of Textiles and Apparel Limited(香港繊維アパレル研究開発センター)
FY2023|5,970 文字
6【研究開発活動】(1)研究開発の考え方と体制エプソンは創業以来、「省・小・精の技術」に代表される優れた技術を持ち、それをどう社会に役立てていくか、という考え方で価値を提供してきました。そして長期ビジョン「Epson 25 Renewed」では、社会課題を起点とし、解決にはどんな技術が必要かを考える技術開発へシフトしました。技術開発において最善の開発シナリオをつくるうえでは、顧客価値や事業性などを加味したうえでエプソンの実力を客観的に評価し、その結果生じたありたい姿とのギャップを分析します。現状把握のなかで、「クリアできなければ企画が成り立たない課題」をボトルネックとして抽出し、解消策を考えながら、目的達成に向け複数のシナリオを準備する手法に取り組んでいます。複数シナリオの考え方は、開発に成功した際の成果がもっとも大きく見込め、最優先で取り組むべきものをプランAとしながらも、QCDいずれかの達成レベルは下がるが、実現の障害が軽減され主目的を達成できるものをプランB、Cとしてあらかじめ考え、商品化・事業化にたどり着くための近道として同時に想定します。ボトルネック解消の具体策は、社外パートナーとの共創・協業も含め検討しています。共創については、技術開発における重要なファクターとし、開発の初期段階となる試行錯誤のプロセスから多くの知見ある方々の参画により、検証をしっかり行いながら開発を進めていくという「開発のフロントローディング化」を進めています。これにより、課題を解決するサイクルを早く回して開発の質を高めることで、商品化・事業化までのスピードアップを図っていきます。エプソンは、研究開発を経営基盤強化の取り組みのひとつとして位置付け、イノベーションを実現するための基盤技術、コア技術、製品技術の進化を推し進めています。なかでも今後はものづくり力に加え、材料、AI、デジタル技術の強化により、事業強化や新規事業創出のための技術基盤の構築を進めます。主に各事業における製品の競争力向上などを事業部開発部門で行い、複数事業にわたる基盤技術や、長期に取り組む必要がある新規技術、新領域に対応するための技術開発を本社開発部門で行うなど、役割分担を明確にしながら連携のうえ取り組んでいます。エプソンは、技術開発を通じた社会課題の解決を目指し、新しい発想や、やり方に果敢にチャレンジしていきます。 (2)研究開発費当連結会計年度の研究開発費総額は443億円であり、売上収益の3.3%にあたります。各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が161億円、ビジュアルコミュニケーション事業が57億円、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業が70億円、その他および全社が154億円です。なお、その他および全社の研究開発費には、事業強化や新規事業創出のための技術基盤の構築に必要な研究開発などを含みます。 ■セグメント別研究開発費セグメントの名称研究開発費(億円)プリンティングソリューションズ事業161ビジュアルコミュニケーション事業57マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業70その他および全社154合計443 (3)セグメント別の研究開発の目的および成果①プリンティングソリューションズ事業セグメント<オフィス・ホームプリンティングイノベーション>当領域は、インクジェット技術・紙再生技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、分散化に対応した印刷の進化を主導することを目指しています。そのために、エプソン独自のインクジェット技術「Heat-Free Technology」による商品ラインアップの拡大、ソリューションの提供を進め、環境性能の訴求によるレーザープリンターからインクジェットプリンターへのテクノロジーシフトの実現に取り組んでいます。こうしたオフィス・ホームにおけるプリンティングイノベーションの実現に向け、A3カラーインクジェット複合機の中速帯機種(40~60枚/分の印刷速度帯(※1))となる新商品<LM>シリーズを発表しました。設置場所を選ばないコンパクト設計で、ビジネスで必要とされる印刷速度と高画質を両立し、一般的なオフィス向けのレーザー方式のプリンターと比べ低消費電力、省資源化を実現することで、利用における環境負荷低減を後押しし、業務における生産性の向上や、人々の働き方が大きく変わるなかでの企業における印刷の分散化への対応をサポートしていきます。紙再生技術では、乾式オフィス製紙機「PaperLab」の新コンセプトモデル(開発中)を発表しました。水を使わず(※2)多様な素材を繊維化し結合・成形を行う独自技術「ドライファイバーテクノロジー」によって、新たな紙の循環利用サイクルを提供するための取り組みを進めています。紙の再生工程では、繊維化した古紙を結合する際に使用する「結合材」を天然由来の材料に置き換え、再生した紙を繰り返し循環できるようにすることで、さらなる環境負荷の低減に貢献します。※1 A4横片面。印刷スピード算出条件はエプソンのホームページ参照※2 機器内の湿度を保つために少量の水を使用 <商業・産業プリンティングイノベーション>当領域は、インクジェット技術と多様なソリューションにより、印刷のデジタル化を主導し、環境負荷低減・生産性向上の実現を目指しています。そのために、多様なメディア・素材への印刷を実現するインクジェット技術のポテンシャルを引き出し、商業・産業印刷のデジタル化を後押しするとともに、分散印刷を支援するクラウドサービス「Epson Cloud Solution PORT」を通じて印刷業務における生産性向上のサポートに取り組んでいます。このような商業・産業印刷におけるイノベーションの実現に向け、大判インクジェットプリンターSureColorシリーズに、鮮やかな赤が求められるPOPポスターに適したレッドインク搭載の「SC-T7750DL」、人肌など階調性重視のフォト・グラフィックに適したグレーインク搭載の「SC-P8550DL」を発売しました。両機種は、新たに大容量インクサーバーを搭載し作業者のインク交換を軽減することで、現場の人手不足や限られた工数での作業を支援します。また、従来のインクカートリッジと比較し廃棄時の体積が約10分の1となり、廃棄時の取り扱いの簡便化と廃棄プラスチックの減量化を実現します。また、インクジェットデジタル捺染機Monna Lisa(モナリザ)シリーズの新商品として「ML-32000」を発売しました。PrecisionCoreプリントヘッドを32個搭載し、標準モードで毎時423平方メートルの高い印刷生産性を実現するとともに、各プリントヘッドチップの波形を個別に制御する「Dynamic Alignment Stabilizer」技術などで、グラデーションや精緻で複雑な幾何学模様まで、高品質で美しい印刷を実現します。これらの商品を基に、新たなものづくりを目指すさまざまなパートナーとの共創拠点である「インクジェット イノベーションラボ富士見」(富士見事業所)での活動を通じ、インクジェットによるデジタル捺染の拡大を目指します。エプソンの大判プリンターを活用するためのクラウドサービスのプラットフォーム「Epson Cloud Solution PORT」では、プリンターの稼働状況の見える化機能、エラーをお知らせする遠隔サービスに加え、新たにプリンターの印刷ジョブを管理する「ワークフローソリューション」と、色合わせの業務を効率化する「カラーマネジメントソリューション」を、有償の月額プランサービスでの提供を開始しました。これにより、働く場所にとらわれない分散印刷を実現します。 ②ビジュアルコミュニケーション事業セグメント<ビジュアルイノベーション>当領域は、感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションで人・モノ・情報・サービスをつなぎ、「学び・働き・暮らし」を支援することを目指しています。そのために、高画質な大画面を実現するレーザー光源採用の高輝度プロジェクターの開発や、スマート化により使用環境・用途・シーンを拡大する設置性の高いホームプロジェクターの開発に取り組んでいます。このような方針のもと、明るく鮮やかな色再現が可能な高輝度モデルのビジネスプロジェクター新商品として、世界最小(※3)120,000lm(ルーメン)の「EB-PU2220B」「EB-PU2120W」を発売しました。両機種はレーザー光源を搭載し、高精細な4K相当の高画質映像を実現します。また、従来機「EB-L20000U」に比べ本体サイズは約64%減(※4)、質量は約50%減(※4)となっており、倉庫保管や配送などに関わるさまざまなコスト削減に貢献します。また、ホームプロジェクターでは「EH-LS800B/W」「EH-TW6250」を発売しました。プロジェクターで映画やドラマ、ライブを視聴するなど、大画面映像を楽しむシーンが生活の日常的になってきたなか、テレビ代わりにプロジェクターを使用することや、さらにはホテルやグランピング施設など、ご家庭内以外での利用も増えています。両機種は、本格的なホームシアターを気軽に楽しみたい方、初めて高画質プロジェクターを購入する方に適したモデルとなっています。※3 発売済み20,000lmの3LCD方式プロジェクター商品の本体(突起部、レンズ含まず)において、エプソン調べ(2022年5月17日現在)※4 「EB-L20000U」と「EB-PU2220B」との比較(突起部含む、レンズ含まず) 「EB-PU2220B」:本体サイズW×D×H(mm)586×492×218(突起部含む)本体質量約24.4kg(レンズ含まず) 「EB-L20000U」:本体サイズW×D×H(mm)620×790×358.5(突起部含む)本体質量約49.6kg(レンズ含まず) ③マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント<マニュファクチャリングイノベーション>当領域は、環境負荷に配慮した「生産性・柔軟性が高い生産システム」を共創し、ものづくりを革新することを目指しています。今後の事業拡大を見据えた生産基盤強化に向けて、国内のロボット工場を富士見事業所に拡大移転し、ロボットを用いた工場の自動化を実現しました。当工場は技術検証の場としても活用し、エプソンのロボット製品の利用価値を進化させていきます。 <ライフスタイルイノベーション>当領域は、匠の技能、センシング技術を活用したソリューションを共創し、お客様の多様なライフスタイルを彩ることを目指しています。ウオッチ分野では、感性に訴えるデザイン・高品質な商品を、お値打ち感ある価格で提供すること、センシング分野では、センシング技術や分析アルゴリズムを活用した新たなソリューションの共創に取り組んでいます。センシング分野では、2022年6月25日に開催された、「スワコエイトピークス ミドルトライアスロン大会 2022」において、公式大会では日本初(※5)となる、最先端位置測位テクノロジーを採用したGPSトラッキングシステムによる大会支援を行いました。同システムは、エプソン独自の高精度・低消費センシングデバイスおよび低消費無線通信を複合した「M-Tracer」テクノロジーによって、トライアスロンのような長時間競技でも、リアルタイムで位置や運動情報の計測および可視化が可能なシステムです。今後は、安全・安心な大会運営の支援や、参加者、観戦者への運動情報・位置情報を生かした楽しさによるソリューション提供を目指します。※5 トライアスロン雑誌Triathlon LUMINA編集部調べ <マイクロデバイス>当領域は、「省・小・精の技術」を極めた水晶と半導体の技術融合の強みを生かし、タイミングデバイス、半導体、センサーにより、成長が著しい高速・大容量通信インフラ、IoT社会、およびモビリティ社会など、スマート化する社会の実現に貢献する商品開発に取り組んでいます。タイミングデバイス製品では、小型化が求められる次世代800G光通信モジュール向けに、当社従来品(※6)に対し、体積比で54%の小型化を実現した水晶発振器(SPXO)「SG2016」シリーズを開発しました。同製品は、HFF水晶振動子(※7)とエプソン独自開発の小型発振器用ICを採用し、高周波・高精度および低位相ジッタ(※8)特性を従来品からそのまま引き継いでいます。今後も、エプソンはタイミングデバイスのリーディングカンパニーとして、「デバイス技術によるスマート社会の実現」を目指し、さまざまな電子機器や社会インフラのニーズに対応するデバイスソリューションを提供していきます。※6 「SG2520EGN」「SG2520EHN」および「SG2520VGN」「SG2520VHN」※7 フォトリソ加工により、励振部のみを数ミクロンという極薄な構造(逆メサ構造)にすることで、強度を保 ちながら高周波での基本波発振を可能にした水晶振動子。近傍の高調波成分を抑制することができるため、 高速・大容量通信の安定に貢献する※8 クロック周期の揺らぎのことで、画像の揺らぎやデータ転送でのビットエラーなどの原因になることがある ④その他および全社当領域は、各事業セグメントに共通する生産技術分野の技術開発や、DX基盤を強化するための技術開発、事業強化のための技術基盤となる基礎研究、新事業に関連する研究開発などに取り組んでいます。全社的な取り組みとして、「環境ビジョン2050」の実現に向け環境技術開発を行っており、そのひとつが独自技術「ドライファイバーテクノロジー」の紙以外の素材への応用です。繊維・アパレル業界において、衣類の縫製工程で大量に発生する繊維端材の利用が課題となっているなか、エプソンはコットン端材を原料としてアップサイクルした新たな包装材を実用化しました。この包装材は2022年よりエプソンが販売する一部のウオッチ商品に採用されています。エプソンは、脱炭素や資源循環に寄与する環境技術開発のひとつとして、この「ドライファイバーテクノロジー」を活用し、紙の再生や高機能化だけではなく、脱プラスチックを目指した梱包材・建材などの構造材・成形材へ展開することで、地上資源を最大限活用し、地下資源に依存しない循環型経済へ貢献していきます。
FY2022|3,370 文字
5【研究開発活動】エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」に加え、デジタル技術により、人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創することを目指しています。そのための経営基盤強化の取り組みのひとつとして研究開発活動を位置づけ、イノベーションを実現するための基盤技術、コア技術、製品技術の進化を推し進めています。なかでも今後は材料、AI、デジタル技術を特に強化していくこととし、成長領域や新領域を中心に、ものづくり基盤の強化に加え、新規事業創出や事業強化などのための技術基盤の構築のほか、各事業における製品の競争力向上などに本社開発部門および事業部開発部門が連携のうえ取り組んでいます。技術開発においては「共創」を重要なファクターとし、開発の初期段階となる試行錯誤のプロセスから多くの知見ある方々の参画により、検証をしっかり行いながら開発を進めていくという「開発のフロントローディング化」を進めていきます。これにより、課題を解決するサイクルを早く回して開発の質を高めることで、商品化・事業化までのスピードアップを図っていきます。当連結会計年度の研究開発費総額は460億円であり、各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が183億円、ビジュアルコミュニケーション事業が55億円、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業が59億円、その他および全社が161億円です。各セグメントの主な開発成果は、次のとおりです。 (プリンティングソリューションズ事業セグメント)商業・産業プリンティング事業においては、SureColorシリーズ初の6色機として、ポスター出力に適した大判インクジェットプリンター2機種を発売しました。「SC-T7750D」は鮮やかな赤を含むPOPポスターに適したレッドインク搭載B0プラス対応モデル、「SC-P8550D」は人肌など階調性重視の高品位ポスターに適したグレーインク搭載B0プラス対応モデルです。新エンジン搭載のPSユニット(※1)標準搭載で、透明・特色レイヤー、オーバープリント処理など特殊な加工を持つPDFファイル印刷に対しての印刷処理を速く正確に実現しました。両機種の本体は、奥行き50センチの薄い箱型形状で、設置面積を従来機から約25%削減(※2)しました。捺染市場向けには、インクジェットデジタル捺染機Monna Lisa(モナリザ)シリーズの新商品として、「ML-64000」を発売しました。アパレルやファッション業界では環境負荷を考慮したサステナブルなファッションへの取り組みが急速に拡がっています。捺染市場においても、持続可能な社会の実現に向けて、環境負荷を軽減する生産工程の実現と作業負担の低減に貢献するデジタル捺染へのシフトが進んでいます。「ML-64000」は、最新のPrecisionCoreプリントヘッドを64個搭載し、標準モードで毎時774平方メートル(600x600dpi–2Pass)の高速印刷で、高い生産性を実現しました。各プリントヘッドチップの波形を個別に制御する「Dynamic Alignment Stabilizer(DAS)」技術により、高精度かつ高密度のドット配置を行い安定した印捺品質を提供します。プリントヘッドでは、高画質・高速印刷をより簡単に実装できるサイネージ向けプリントヘッド「T3200」発売しました。ひとつのプリントヘッドでCMYK4色インクによる高速・高画質印刷の実現が可能です。さらにプリントヘッドにヒーターを内蔵することで、さまざまな粘度のUVインクに対応し、特にサイネージや商品パッケージの印刷に対して最適なデジタル印刷環境を提供することができます。また、広くデザインに関わる業務において色合わせの課題解決を目指す商品として、分光測色方式の測色器「SD-10」を発売しました。同商品は、環状に並んだ9つの光源を使って、早く正確に色を測定します。メディア表面の凹凸の形を拾わず、一度で正確な数値が出せるため、色合わせにかかる時間を削減できます。これまで正確に色合わせを行う作業は、経験や勘など、特定オペレーターに依存するケースが多く見られました。測色器を使うことで、誰でも簡単に専門的な知識がなくても色を測り数値化できるため、業務を標準化することができます。※1 Adobe® PostScript®対応。PSユニットとSSDの両方装着できます。PSユニット単体の場合、本体での再印刷はできません※2 「SC-P8050」との比較において (ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)ビジネスプロジェクターでは、高コントラストな映像投写を実現するレーザー光源搭載の6機種8モデルを発売しました。企業や学校の中~大会議室・講堂など広い空間の後ろからでも見やすく、明るく鮮やかな大画面投写が可能です。スタンダードモデルは、上下(50%)左右(20%)のレンズシフト機能搭載で、設置場所の自由度が広がります。高輝モデルは、1画素を斜めに0.5画素シフトさせる「4Kエンハンスメントテクノロジー」により、4K相当のスクリーン解像度を実現しました。大空間にふさわしい高精細な高画質映像を投写します。ホームプロジェクターでは、3LCD方式のホームプロジェクター「dreamio(ドリーミオ)シリーズ」の新商品2機種を発売しました。「EH-LS12000」は、4K対応(※3)で、圧倒的な高画質映像を大画面で楽しめます。2,700lmの明るい映像と、レーザー光源による高コントラストを実現しました。また新たに、コントラストを自動で調整し、映像の一部分を鮮やかでメリハリのある映像にする「自動コントラスト強調」や、シーンに応じて階調表現を最適化し、メリハリのある映像を実現する「シーン適応ガンマ補正」を搭載しました。「EH-TW5825」は、気軽に動画配信サービスなどを大画面でお楽しみいただきたい方をターゲットにした、明るさ2,700lm・Full HDの映像投写が可能なモデルです。※3 2軸シフトテクノロジーを採用したスクリーン上の解像度 (マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント)マニュファクチャリングソリューションズ事業においては、汎用材料が使用できる新しい産業用3Dプリンターを開発しました。エプソンの小型射出成形機に搭載されているフラットスクリュ(※4)による独自の材料押出方式を採用したことで、一般的に価格が安く入手しやすいペレット材(樹脂・金属)、環境に配慮したバイオマスペレット材、高い耐熱性を実現できるPEEK材など、さまざまな汎用的な材料を使用できることが特長です。さらにヘッド内の圧力制御や造形速度と連動したバルブ調整により、材料の射出量を精密に制御するとともに、部品の強度を出す際に課題となる造形面の温度制御も独自機構により繊細に管理することで、造形部品の精度と強度の両立を実現しました。汎用材料で造形物の精度と強度を両立したことで、最終製品向けの工業部品への展開が実現しやすい仕様となり、お客様の個々のニーズに合わせた多品種部品をより高品質・短納期・低コストで生産するマスカスタマイゼーションの推進に貢献します。マイクロデバイス他においては、高性能な6軸センサーを搭載した慣性計測ユニット(IMU)(※5)「M-G370PDS0」を開発しました。近年、空中・海中など無人機による映像撮影・測量など利活用分野が広がり、より正確な位置・姿勢制御のニーズが増大しています。それにともないIMUには姿勢制御において重要とされる精度、特にノイズ性能への要求が高まっています。同製品は、機器やシステムに発生するわずかな姿勢変化をセンサーノイズに埋もれさせることなく、より正確に検知することが可能となります。さらに、小型・軽量・低消費電力の特長により、お客様製品の小型化、軽量化にも貢献します。※4 インラインスクリュをフラット化した技術※5 IMU:Inertial Measurement Unit 3軸の角速度センサーと3軸の加速度センサーからなる慣性運動量を検出する装置
FY2021|3,477 文字
5【研究開発活動】エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」に加え、デジタル技術により、人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創することを目指しています。そのための経営基盤強化の取り組みの一つとして研究開発活動を位置づけ、イノベーションを実現するための基盤技術、コア技術、製品技術の進化を推し進めています。なかでも今後は材料、AI、デジタル技術を特に強化していくこととし、成長領域や新領域を中心に、ものづくり基盤の強化に加え、新規事業創出や事業強化などのための技術基盤の構築のほか、各事業における製品の競争力向上などに本社開発部門および事業部開発部門が連携のうえ取り組んでいます。当連結会計年度の研究開発費総額は464億円であり、各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が170億円、ビジュアルコミュニケーション事業が83億円、ウエアラブル・産業プロダクツ事業が55億円、その他および全社が156億円です。各セグメントの主な開発成果は、次のとおりです。 (プリンティングソリューションズ事業セグメント)プリンター事業においては、家庭用インクジェットプリンターの新製品として、本体に大容量インクタンクを搭載した「エコタンク搭載モデル」(3機種)を発売しました。新開発の「ClearChrome K2 Plusインク」を搭載、顔料と染料の2種類のブラックインクを含む6色モデルです。特に、新たに搭載した顔料のブラックインクにより、これまで表現が難しかった「Velvet Fine Art Paper」などのアート紙での表現が格段に向上しました。ビジネス向けには、プリントやコピーの使用状況に合わせてプランや機器を選べる「エプソンのスマートチャージ」の新製品として、モノクロ専用のA3複合機「LX-10020MFシリーズ」を発売しました。本製品は、100枚/分※1の高速印刷、大容量インク搭載によるインク交換の手間軽減や、大容量給紙・排紙による用紙補給の手間軽減など使い勝手の良さはそのままに、中折りや中綴じが可能な、高速で使いやすいフィニッシャーに対応しました。また印字プロセスに熱を使わない「Heat-Free Technology※2」により、消費電力を320W※3以下に抑え、環境負荷を低減します。プロフェッショナルプリンティング事業においては、サインディスプレイ業界向けSureColorシリーズの新商品として、2機種を発売しました。VOC(揮発性有機化合物)の含有量が少なく環境に配慮した、新開発の水性ベースのレジンインク「UltraChrome RSインク」搭載した「SC-R5050/R5050L」は、印刷後の乾燥時間が不要で、印刷後すぐに後加工が可能になるなど業務の大幅な納期短縮に貢献します。本製品は溶剤インクが得意とする塩ビやターポリン、フィルムへの印刷だけでなく、普通紙や壁紙、テキスタイルなど幅広いメディアにも印刷できるほか、長年のインクジェット技術で培ってきた独自の「マイクロウィーブ」「ハーフトーンモジュール」「LUT※4」の3つの技術「Epson Precision Dot Technology(エプソン プレシジョン ドット テクノロジー)」により、粒状感やバンディングが少ない高画質プリントを実現します。捺染市場向けには、インクジェットデジタル捺染機Monna Lisa(モナリザ)シリーズの新商品として、少量・多品種生産に適した「ML-8000」を発売しました。捺染市場では、消費者ニーズの多様化に伴う少量・多品種生産の拡大、持続可能な社会の実現に向けた環境への配慮など、アナログからデジタル捺染へのシフトが求められています。「ML-8000」は、高い生産性と印捺品質、安定稼働を実現しながら、導入コストを抑えたMonna Lisaシリーズのエントリーモデルです。4.7インチの最新PrecisionCoreマイクロTFPプリントヘッドを8個搭載し、標準モードで毎時155平方メートル(600x600dpi※5 – 2Pass)の印刷速度を実現しました。※1 測定データおよび測定条件につきましては、エプソンのホームページをご覧ください。※2 「Heat-Free Technology」につきましては、エプソンのホームページをご覧ください。※3 本体のみの最大消費電力値です。※4 LUT(Look Up Table)とは、データの色を忠実に再現するために、どの色のインクをどれだけの量で表現するかを決めるテーブル。※5 マルチレイヤーハーフトーンでの出力時。 (ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)ビジネスプロジェクターでは、大空間から小空間まで、映像演出の利用シーンが広がる高輝度モデル、サイネージモデル全2機種4モデルを発売しました。高輝度モデル「EB-L30000U」および「EB-L30002U」は、世界最小最軽量※6で、エプソンのプロジェクターとして最高輝度の30,000lmの圧倒的な明るさを実現します。さらに、「Epson Projector Professional Tool」と本体内蔵カメラを使ったスタッキング機能により、複数のプロジェクターからの映像を1つに重ねて明るさを増した映像を素早く簡単に作成でき、設置時の調整時間が短縮できます。サイネージモデル「EV-110」および「EV-115」は、スポットライトのように天井や配線ダクト、また床にも設置できるほか、アーム型の形状により可動範囲が広いため、真上からのテーブルマッピングなど、優れた設置性で幅広い映像演出に対応しています。スマートグラスにおいては、次世代MOVERIOシリーズ向けにエプソン最先端の光学技術を搭載した第四世代スマートグラス向け光学エンジン「VM‐40」を開発しました。新開発の光学エンジンは、エプソン独自のシリコンOLED(Organic Light Emitting Diode:有機EL)ディスプレイと光学技術により、当社従来製品比較で、精細度1.5倍、コントラスト5倍、画角1.5倍を実現しました。※6 発売済み30,000lmの3LCD方式プロジェクター製品の本体(突起部、ハンドル、レンズ含まず)において。エプソン調べ。(2020年10月現在) (ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント)マイクロデバイス事業においては、大容量メモリーや高解像度液晶ドライバーを搭載したシングルチップマイコン「S1C31W73」を開発しました。近年、あらゆる電子機器において多機能化が進み、プログラミングサイズや表示する情報量が増加する傾向にあります。一方で、機器自体は従来サイズを維持、あるいはさらなる小型化が求められ、実装面積や部品点数の削減が必須となっています。本製品は、このような課題を解決するため、384Kバイト大容量フラッシュメモリーを内蔵し、最大2,560ドットの表示を直接駆動できる液晶ドライバーを搭載したシングルチップマイコンであり、従来、エプソンマイコンが強みとしてきた表示駆動の技術を、業界でも実績のあるArm®Cortex®-M0+プロセッサーと組み合わせることで、お客様製品の高機能化と開発負担低減の両面で貢献します。このほか、当社初となる車載ディスプレイシステム向け警告灯 モニタリングIC「S2D13V02」を開発しました。自動車の高機能化・電動化・自動化が進む中、本製品により、運転者にとって特に重要な情報である警告灯を液晶ディスプレイ上で正しく表示させることができます。本製品は、ホスト(SoC※7)からストリーミングされる画像をモニタリングし、警告灯に異常を検知した場合、ホストへ通知を行い、必要に応じた表示処理(警告灯の上書きやエラーメッセージなど)を行います。また、地図表示など背景が変化する画像に警告灯がオーバーレイされた状態においても、視認性を考慮した表示のエラー判定・検知を行うことが可能です。当機能を含む充実した表示安全機能により、信頼性の高いディスプレイシステム構築をサポートします。※7 SoC(System on Chip):あるシステムの動作に必要な機能の多く、または全てを、一つの半導体チップに実装するもの。システムにより構成は異なるが、CPU、メモリ、I/Oといった機能が統合されているものが一般的。
FY2016|3,698 文字
6【研究開発活動】エプソンは、創業以来培ってきたDNAである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」の独自のコア技術を徹底的に極め、これらをあらゆるお客様に提供できるように共通化(プラットフォーム化)し、お客様の期待を超える価値ある製品・サービスを作り出すことを目指して研究開発活動を行っています。この基本方針のもと、事業部開発部門では、短期から長期的視野で市場における位置付けを強化するために、コア技術の開発および技術基盤の共通化を行っています。一方、本社開発部門では、既存技術に加えて、新規事業創出および事業革新を目指した新たなコア技術・技術基盤の開発に取り組んでいます。当連結会計年度の研究開発費総額は531億円であり、各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が221億円、ビジュアルコミュニケーション事業が102億円、ウエアラブル・産業プロダクツ事業が65億円、その他および全社が141億円です。各セグメントの主な開発成果は、次のとおりです。 (プリンティングソリューションズ事業セグメント)プリンター事業においては、カラリオ・プリンターの新製品として、印刷の基本となるシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色に「レッド」と「グレー」インクを加えた新6色染料インク「Epson ClearChrome(クリアクローム)K2インク」を搭載し、カラー、モノクロを問わず写真作品づくりを楽しむことができるA3対応多機能複合機を、フラッグシップモデルとして発売しました。本製品は、プロセレクションシリーズで採用されている色生成テクノロジー・LCCS(論理的色変換システム)を、カラリオシリーズとして初めて全面的に採用し、滑らかな階調性と高い色再現性で安定した画質を実現します。また、ビジネスインクジェットプリンターの新製品として、当社A4サイズにおいて最速の印刷速度と30万ページの高耐久性を実現したモデルを発売しました。本製品は、プリントヘッドに「PrecisionCore(プレシジョンコア)プリントヘッド」を採用し、カラー/モノクロともに約24ipm(※1、従来はカラー/モノクロともに20ipm(※2))の高速印刷を実現すると同時に、ウォームアップ時間が短いため、1枚目の印刷スピードもカラー/モノクロともに約7秒と高速で、プリント待ちのストレスを感じることなく利用が可能です。プロフェッショナルプリンティング事業においては、大判インクジェットプリンターの新製品として、「PrecisionCoreプリントヘッド」を採用した、新インクテクノロジー「UltraChrome(ウルトラクローム)HDXインク」搭載の10色顔料インクモデルおよび「UltraChrome(ウルトラクローム)HDインク」搭載の8色顔料インクモデルを発売しました。本製品は、新インクテクノロジーにより、フォトブラックインクの顔料粒子量が従来比約1.5倍(※3)に増量したことで黒濃度が向上しており、写真・ポスター・プルーフ用途などの高品位印刷に適しています。※1 ipm(image per minute)は、ISO(国際標準化機構)が策定したプリンティング生産性測定方法規格のオフィスカテゴリに基づき、1分あたりに印刷可能な面の数を示す。※2 当社ビジネスインクジェットプリンター「PX-M840F」の基本仕様。※3 当社の評価結果に基づく。 (ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)ビジネス向け3LCD方式のプロジェクターの新ラインアップとして、レーザー光源を採用し世界最高(※4)の明るさ25,000lm(※5)から6,000lmまでのモデルを開発しました。本製品は、レーザー光源に世界で初めて(※4)となる無機の素材でできた蛍光体と無機のLCDパネルを組み合わせることで、約20,000時間(※6)のメンテナンスフリーという高い信頼性を実現しました。また、メガネのように装着して使用するウエアラブル機器である第3世代のスマートグラスMOVERIO(モベリオ)を開発しました。本製品は、光学エンジンにエプソン独自の0.43型超小型高精細カラーのシリコンOLED(Organic Light Emitting Diode:有機EL)ディスプレイをMOVERIOシリーズとして初採用し、100,000:1以上の高コントラストの特長を生かして、従来品のコントラスト(230:1)ではできなかったスクリーン感を意識させない映像表現を実現しました。加えて、本OLEDディスプレイをスマートグラス専用に最適化したことにより、光学レンズの小型化など、一層の軽量化が可能となり、ヘッドセット部の重量を前モデルから約20%削減することに成功しました。さらに、スマートグラスを利用してさまざまな分野で共同実証実験に取り組み、作業支援によって実現する業務改善を提案し、それらを通じて得られたニーズを開発にフィードバックすることにより、業務用途に機能を進化させたスマートヘッドセットを発売しました。本製品は、両眼シースルーにより視野内に情報を大画面で表示でき、かつ、ハンズフリーで作業を行うことができるため作業現場の効率化を実現します。※4 発売済みの3LCDプロジェクター製品において。2015年12月現在、当社調べ。※5 lm(ルーメン)とは、光源から出る光の量(光束)を表す単位。※6 製品の使用開始時と比較して、明るさが50%低減するまでのおおよその時間。(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント)ウエアラブル機器事業においては、GPS Sports Monitor「WristableGPS」の新製品として、センサー・フュージョン・テクノロジー(複数のセンサー情報を融合して、より高度な計測精度を実現する技術)を搭載し、安全・安心な登山にご活用いただけるエプソン初のGPSトレッキングギアである「WristableGPS for Trek」を発売しました。また、ランナーにとって重要な指標であるVO2Max(体重1㎏あたり1分間に体内に取り込める最大酸素量)推定計測機能(※7)と活動量計測機能を新たに搭載し、これ1台でランナーのトレーニングから日常生活までフルサポートすることが可能となるGPSランニングギアを発売しました。ロボティクスソリューションズ事業においては、世界初(※8)の折りたたみ式新型アーム構造を採用した、省スペースでの設置が可能な新小型6軸(垂直多関節型)産業用ロボットを開発しました。本製品は、設置面積600㎜×600㎜と当社従来機種比で約40%削減を達成し、重量は従来機種の3分の2へ大幅に軽量化しました。また、干渉回避動作が減ったため、約30%のタクトタイム(※9)短縮を実現しました。マイクロデバイス事業においては、通信ネットワークおよび産業分野向けに、高安定・小型の原子発振器を開発しました。本製品は、新方式を採用し、内製のレーザー素子VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)および専用ICを独自設計することで、当社従来機種(1,200㏄)と同等の長期周波数安定度を維持しながら、体積比16分の1(75㏄)の小型化を実現しました。また、制御システムの最適化により、消費電力も従来比6分の1に抑えました。※7 走行速度と脈拍数から簡易的に算出。また、走行条件を満たした場合に計測可能。※8 6軸ロボットにおいて。2015年10月末現在、当社調べ。※9 製造工程において、ある決まった作業を行うのに要する時間。 (その他および全社)独自の新技術である「Dry Fiber Technology(ドライファイバーテクノロジー)により、世界で初めて(※10)、使用済みの紙(一般コピー用紙(A4、A3))を原料として、水を使わずに(※11)、文書情報を完全に抹消したうえで、新しい紙を生産できる小型のオフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)」を開発しました。エプソンは、印刷コストや消費電力に優れた高画質・高速のビジネスインクジェットプリンターを販売し、プリントによる価値でお客様の業務効率向上を支援していますが、さらに今後、お客様が使い終わった紙を「PaperLab」で新しい紙につくり変えて使う循環型オフィスを実現することにより、紙の未来を変える「スマートサイクル事業」の取り組みを進めていきます。「PaperLab」については、2016年内の商品化を予定していますが、企業や自治体は本製品の導入により、オフィスのバックヤードなどで、紙厚の異なるオフィス用紙や名刺用紙、色や香り付きの紙など、さまざまな紙を生産することが可能になります。※10 乾式の製紙機において。2015年11月時点、当社調べ。※11 機器内の湿度を保つために、少量の水を使用。