研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-12 | - | 576 |
| 2024-12 | - | 900 |
| 2023-12 | - | 755 |
| 2022-12 | - | 2,164 |
| 2021-12 | - | 880 |
研究開発活動(本文)
FY2025|3,316 文字
6 【研究開発活動】(1) 研究開発活動の体制および方針当社グループの研究開発活動は、現在から近い将来にかけて必要とされるデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発において、自動車向け製品、産業・インフラ・IoT向け製品を、それぞれを担当する事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、実装技術、設計基盤・テスト手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。加えて、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うための委託先の活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。家電製品や自動車などあらゆるモノがネットワークに繋がり、相互に情報交換しサービスが提供される超スマート社会では、これまで当社が強みとしてきたマイコンやSoCといったデジタル製品が担う演算機能、アナログ製品が得意とする人の目・耳・鼻などに相当するセンシング機能、さらにパワー製品が得意とするモータ等を動かすためのアクチュエータ機能が有機的に繋がり連携する必要があります。当社グループは、センシングからアクチュエータ機能まで幅広くサポートするための製品ポートフォリオを拡充し、アナログ製品とデジタル製品を組み合わせたソリューション(ウィニング・コンビネーションと呼称)を強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を行うことにより注力する市場での成長を実現してまいります。 (2) 主な研究開発の成果 ① 次世代AIインフラを支えるGaN電源ソリューションを強化・拡充近年、データセンターなどの次世代AIインフラにおいては、大量のデータ処理に伴い電力消費が急増しております。これを解決するため、高効率で拡張性の高い次世代電源アーキテクチャが注目されております。なかでも、800ボルト直流電源アーキテクチャは、従来よりも高効率で安定した電力供給が可能な次世代方式として期待されております。当社グループは、次世代AIインフラに向けて、高効率な電力変換・供給を可能にするGaN(窒素ガリウム)電源ソリューションの提供に取り組んでおります。本ソリューションは、48ボルトから400ボルトまで対応し、複数のデバイスを組み合わせることで最大800ボルトまで拡張できます。これにより、次世代AIインフラだけでなく、EV充電、UPS(無停電電源装置)、蓄電システム、太陽光発電インバータなど、幅広い分野で活用できます。当社グループは、本ソリューションの中核となる高耐圧650ボルトを実現するGaNパワー半導体を発売しました。同製品は、新プロセス「第4世代プラス(Gen IV Plus)」と、2024年に買収したTransphorm社のSuperGaN技術を採用することにより、従来世代よりダイサイズと電気抵抗を低減し、高い操作性と信頼性を実現しております。また、放熱性に優れた3種類のパッケージ製品を用意し、用途に応じて最適な製品設計が可能となります。当社グループは、今後もGaN技術を軸にスマートで高速な電力ソリューションを提供することにより、幅広い市場ニーズに応え続けます。 ② 微細な22nmプロセス対応のNVM技術を採用し、1ギガヘルツ動作を実現する32ビットマイクロコントローラ「RA8シリーズ」を発表当社グループでは、当社グループの競争力と収益性の向上が期待できるSecular Growth分野の一つであるIntelligence at the Edge向けに製品開発の強化・拡充を推進しております。その一環として、32ビットマイクロコントローラ「RAシリーズ」の最上位に位置づけられる高性能製品群である「RA8シリーズ」のラインアップを強化しました。具体的には、微細な22nmプロセス対応のNVM技術を採用し、1ギガヘルツの動作を可能とするCPUコアを搭載し、「マイコンでAI」を実現するAIアクセラレーションや高精度モータ制御に対応した「RA8P1」、モータ制御向けとして最高性能を持つ「RA8T2」、多用途に対応した「RA8M2」、さらには、高性能グラフィックス表示およびHMI(ヒューマンマシンインタフェース)向けに最適な「RA8D2」の4製品を発売しました。これらの製品は、低消費電力性や高いセキュリティ機能も備えております。当社グループは、これらのスケーラブルでセキュア、かつAIにも対応した製品群により、顧客による産業機器やIoT領域での価値創出と開発期間の短縮を支援し、低消費電力かつ総所有コストの最小化の実現に貢献します。 ③ 電子機器の開発を革新する「Renesas 365 Powered by Altium」を発表当社は、2024年に買収したAltium社とともに、半導体の選定からシステムライフサイクル管理に至るまで、顧客における電子機器の開発プロセス全体を効率化する業界初のプラットフォーム「Renesas 365 Powered by Altium」を発表しました。従来、電子機器の開発においては、手作業での部品検索やドキュメントの分散管理、組織間での情報共有不足などが課題となっております。本プラットフォームは、当社とAltium社の知見と技術を融合して開発したクラウド型のプラットフォームで、電子機器の開発者は、ハードウェア、ソフトウェアおよびライフサイクルに関連するデータをクラウド上で一元的に管理し、開発スピードの向上と市場投入までの時間短縮を図ることができます。また、リアルタイムに必要な情報の把握や開発に要する迅速な意思決定、変更履歴の追跡など、デジタルトレーサビリティも実現します。 本プラットフォームは、主として、次の5つのコンセプトで構成されております。コンセプト内 容Silicon電子機器の要となる半導体を即時かつ適切に選択することができ、IoTからAIまで幅広い製品分野で利用可能Discover - Powered by Altium当社グループの製品ポートフォリオから最適なソリューションを検索でき、製品設計を加速Develop - Powered by Altiumクラウド上で開発部門横断でのコラボレーションを実現Lifecycle - Powered by Altium持続的なデジタルトレーサビリティを確立し、製品ライフサイクルのコンプライアンスとセキュリティを確保SoftwareAI対応の開発ツールにより、最新のアプリケーションに最適化した製品開発を支援 本プラットフォームについては、2025年3月にドイツで開催された「embedded world 2025」においてデモンストレーションを実施しました。その後も開発は順調に進展し、本年3月に開催されるドイツの展示会での発表を機に本格的に市場投入すべく準備を進めております。「Renesas 365 Powered by Altium」は、当社グループのデジタライゼーション推進の中核を担うプラットフォームであり、将来の成長基盤として期待されております。当社とAltium社は、本プラットフォームを通じて、次世代電子機器開発を革新し、スマートで安全なライフサイクル管理を実現します。 (3) 研究開発費当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は2,403億円となり、前連結会計年度の2,498億円と比べ95億円減少しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。なお、当社グループの研究開発は、大半が自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業の双方に係るものであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
FY2024|3,570 文字
6 【研究開発活動】(1) 研究開発活動の体制および方針当社グループの研究開発活動は、現在から近い将来にかけて必要とされるデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発において、自動車向け製品、産業・インフラ・IoT向け製品を、それぞれを担当する事業本部(注)が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、実装技術、設計基盤・テスト手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としてまいりました。 加えて、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。 家電製品や自動車などあらゆるモノがネットワークに繋がり、相互に情報交換しサービスが提供される超スマート社会では、これまで当社が強みとしてきたマイコンやSoCといったデジタル製品が担う演算機能、アナログ製品が得意とする人の目・耳・鼻などに相当するセンシング機能、さらにパワー製品が得意とするモータ等を動かすためのアクチュエータ機能が有機的に繋がり連携する必要があります。当社グループは、センシングからアクチュエータ機能まで幅広くサポートするための製品ポートフォリオを拡充し、アナログ製品とデジタル製品を組み合わせたソリューション(ウィニング・コンビネーションと呼称)を強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を行うことにより注力する市場での成長を実現していきます。(注)当社グループは、2024年1月1日付で組織体制の変更を発表し、技術分野に基づく4プロダクトグループを発足しております。 (2) 主な研究開発の成果 ① 最先端の3nmプロセス技術を採用した車載用マルチドメインSoC 「R-Car X5H」を発表当社グループは、第5世代R-Carシリーズの第一弾製品として、ADAS、IVI、ゲートウェイなど多用途に対応する車載用SoC「R-Car X5H」を発表しました。本製品は、最先端の3nmプロセス技術を採用し、業界最高レベルの高性能と低消費電力化を実現しています。ユーザは、セントラルコンピューティングECU(電子制御ユニット)に本製品を使用することで、将来を見据えた効率的なシステム開発が可能です。また、本製品は、最大400 TOPS(注1)のAIアクセラレータと最大4TFLOPS(注2)のGPU(画像処理用半導体)を搭載し、従来製品と比べて、性能が大幅に向上しています。さらに、半導体の相互接続に関する標準規格UCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)とAPI(注3)を提供することで、チップレット(注4)のチップ間の接続や他社製半導体との相互運用性を確保しています。これにより、ユーザはシステムを柔軟に設計・カスタマイズし、製品開発のプラットフォーム全体の性能向上や将来的なアップグレードに対応できます。本製品は、2025年上期を目処に一部の自動車顧客向けにサンプル出荷を開始し、2027年下期頃に量産を開始する予定です。当社グループは、次世代の自動車技術の進展を見据えて、最先端かつ多様な性能・機能を有する製品・ソリューションを提供することにより、安心・安全なクルマ社会と自動車の早期開発に繋がる「シフトレフト」の実現に向けて、業界をリードしていきます。(注)1.TOPS:コンピュータの処理速度を表す単位の一つで、1秒間に実行できる演算回数を1兆回単位で表したものです。2.TFLOPS:コンピュータの処理速度を表す単位の一つで、1秒間に実行できる浮動小数点演算の回数を1兆回単位で表したものです。3.API:Application Programming Interfaceの略称で、ソフトウェア、プログラム等を繋ぐインタフェースです。4.チップレット:複数の小さな半導体チップを組み合わせて単一のパッケージに組み込む技術で、規模回路と同等の機能を実現することができます。 ② データセンタ向けに業界初の第2世代DDR5 MRDIMM用メモリインタフェースチップセットを発表 近年、AIやHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)をはじめとするデータセンタの用途において、膨大なデータを高速かつ効率的に処理することが求められており、その中でも特に、コンピュータに使用されるメモリの最新規格「DDR5」は、より高速なデータ転送速度と低消費電力を実現する規格の一つとして、国内外で普及しています。そして、第2世代DDR5 MRDIMM(マルチプレックスランクDIMM)の転送速度は最大毎秒12.8ギガバイトで、そのメモリ帯域幅は第1世代の1.35倍に拡大しています。 このようなニーズに対応するため、当社グループは、データセンタ向けに最適化された次世代のメモリモジュールとして、業界で初めて、第2世代DDR5サーバ用MRDIMM向けにトータルメモリインタフェースチップセットを発表しました。 本製品は、MRCD(マルチプレックス・レジスタード・クロックドライバ)、MDB(マルチプレックス・データバッファ)およびPMIC(パワーマネジメントIC)から構成され、第1世代より約45%もの消費電力を削減でき、優れた電力効率も実現しています。これらにより、本製品を使用するデータセンタの効率性と処理能力を大幅に向上することができます。 当社グループでは、DDR5用温度センサなども既に提供しており、ユーザは本製品と組み合わせて使用することで、高性能なデータセンタを効率的に構築・開発できます。 当社グループは、これからもCPUやメモリのプロバイダをはじめとする業界のリーディング企業と連携し、ハイパフォーマンスシステムのトレンドの最先端で次世代の技術・仕様を開発していきます。 ③ 独自開発の32ビットRISC-V CPUコアを搭載した第一弾マイコンを発売 当社グループは、独自開発の32ビットRISC-V CPUコアを搭載した汎用マイコン「R9A02G021」を発表し、量産を開始しました。 RISC-Vはオープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)を採用しており、近年、多くのマイコンメーカーがRISC-V製品の開発を推進しています。当社グループでは、この分野でいち早く同技術を実現する独自のRISC-V CPUコアを開発し、テストを重ね、マイコン製品として市場に投入しました。また、必要な開発環境や量産体制も整備し、今回の市場投入に至りました。 これにより、ユーザは、IoT機器や産業機器などの幅広い用途において、消費電力とコストを重視して製品開発する際に、RISC-Vを有力な選択肢の一つとして活用でき、当社グループとそのパートナー企業が提供する開発環境とあわせて本製品を利用すれば、開発工数やコストの削減が可能となります。 本製品は、最大48MHzの動作周波数という高い性能を持ちながら、スタンバイ時の消費電力が0.3µAという非常に低い電力設計を実現しています。また、128キロバイトの高速フラッシュメモリや16キロバイトのSRAM、4キロバイトのデータ保存用フラッシュメモリを搭載しており、マイナス40℃から125℃までの広範な温度環境でも安定して動作することができます。さらに、A/DコンバータとD/Aコンバータを内蔵し、標準的なシリアル通信インタフェースを備えているため、センサやディスプレイなどの外部モジュールと、迅速かつ確実に接続することが可能です。 当社グループのRISC-Vマイコンは、省電力でコストパフォーマンスに優れた幅広い製品に対応する革新的な選択肢をユーザに提供するものであり、当社グループは、本製品に続き、RISC-V CPUコアを搭載したマイコンを増やしていく予定です。 (3) 研究開発費当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は2,498億円となり、前連結会計年度の2,335億円と比べ164億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。なお、当社グループの研究開発は、大半が自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業の双方に係るものであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
FY2023|2,916 文字
6 【研究開発活動】(1) 研究開発活動の体制および方針当社グループの研究開発活動は、現在から近い将来にかけて必要とされるデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発において、自動車向け製品、産業・インフラ・IoT向け製品を、それぞれを担当する事業本部(注)が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、実装技術、設計基盤・テスト手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としてまいりました。 加えて、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。 家電製品や自動車などあらゆるモノがネットワークに繋がり、相互に情報交換しサービスが提供される超スマート社会では、これまで当社が強みとしてきたマイコンやSoCといったデジタル製品が担う演算機能、アナログ製品が得意とする人の目・耳・鼻などに相当するセンシング機能、さらにパワー製品が得意とするモータ等を動かすためのアクチュエータ機能が有機的に繋がり連携する必要があります。当社グループは、センシングからアクチュエータ機能まで幅広くサポートするための製品ポートフォリオを拡充し、アナログ製品とデジタル製品を組み合わせたソリューション(ウィニング・コンビネーションと呼称)を強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を行うことにより注力する市場での成長を実現していきます。(注)当社グループは2024年1月1日付で組織体制の変更を発表、技術分野に基づく4プロダクトグループを発足しております。 (2) 主な研究開発の成果 ① 自動車向けのマイクロコントローラおよびSoCのサイバーセキュリティマネジメントシステムが国際規格「ISO/SAE 21434:2021」の認証を取得当社グループは、欧州の大手認証機関であるTÜV Rheinland社から、当社グループの自動車向けのマイクロコントローラとSoCの開発プロセスに適用されるCSMS(Cyber Security Management System:サイバーセキュリティマネジメントシステム)が、自動車のCSMSに関する国際規格「ISO/SAE 21434:2021」に準拠している旨の認証を取得しました。近年、自動車に関するシステムの高度化が進む中、サイバー攻撃への懸念が高まりつつあります。自動車メーカは、自社が製造・販売する自動車の型式承認を取得する場合、その自動車がUnited Nations Economic Commission for Europe(UNECE:国連欧州経済委員会)の制定したサイバーセキュリティ規則「UNR155」に遵守することが求められ、その審査には、CSMSへの適合が必須となります。そのため、自動車メーカやその部品の製造メーカは、CSMS認証を取得した当社グループ製品を使用することにより、その開発の負荷を軽減することができるとともに、自動車の型式認証を様々な国で取得する際、よりスピーディーにサイバーセキュリティに対応することが可能となります。当社グループが2022年1月1日以降に開発した自動車向けのマイクロコントローラ(RL78、RH850)およびSoC(R-Car)に関する開発プロセスのCSMSは、今回認証を取得した規格に準拠しています。当社グループは、「セーフティ(安全)&セキュリティ(安心)」を第一に製品の設計開発に取り組んでおり、今回認証を取得したセキュリティの分野だけでなく、セーフティの分野でも、自動車メーカーが自動車の機能安全規格「ISO 26262」に準拠することを支援する体制を整備しています。顧客は、次世代の車載システムに当社グループ製品を使用することにより、サイバーセキュリティや機能安全における国際規格に早期に準拠することができます。当社グループは、最先端の性能・機能・セキュリティや多様なAI実装ソリューションを提供することにより、顧客がその製品開発の初期段階からハードウェアがなくてもその仕様や機能、性能の検証を行うことができる「シフトレフト」とソフトウェアが自動車の価値を主導する「ソフトウェアファースト」の実現に貢献していきます。 ② クラウド上で開発したソフトウェアをハードウェアに展開することで、試作品の設計サイクルを高速化できる「クイックコネクトスタジオ」を公表当社グループは、顧客がクラウド上で開発したソフトウェアをハードウェアに展開することができるIoT機器向けプラットフォーム「クイックコネクトスタジオ」の提供を開始しました。本プラットフォームは、顧客がクラウド上で使用したいマイクロコントロール基板を選択し、センサや通信ボードなどの必要な機能ブロックをグラフィカルに搭載するだけで、自動的にソフトウェアを生成し、ハードウェアで動作検証することを可能にする開発環境であります。顧客がその製品を開発する場合、市場に製品を投入するまでの工程は極めて複雑で、多くの時間と労力を必要とします。しかし、本プラットフォームを使用すれば、顧客は、当社グループの半導体やツール、開発ワークフローに関する知識がなくても、自分の製品のアイデアを素早く具現化し、検証することが可能になるほか、ハードウェアとソフトウェアの開発を同時に実行できるようになるため、製品開発の期間短縮や効率化を図ることができます。また、本プラットフォームは、最新のGUI(注)により簡単に操作することができ、操作の習熟に要する時間も不要となります。当社グループは、本プラットフォームの第一弾として、RAファミリと各種センサやコネクティビティ機能からその提供を開始し、RXファミリ、RL78ファミリなど、対応する製品を増やしています。当社グループは、今後も顧客の製品・サービスの開発を楽(ラク)にするため、ユーザ・エクスペリエンスの向上を推進していきます。(注)GUI:「Graphical User Interface」の略称で、コンピュータの画面上に表示されるアイコンやボタン等のグラフィックを用いて、マウス等のポインティングデバイスで操作できるインターフェースであります。 (3) 研究開発費当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、2,335億円となり、前連結会計年度の2,067億円と比べ268億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。なお、当社グループの研究開発は、大半が自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業の双方に係るものであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
FY2022|2,919 文字
5 【研究開発活動】(1) 研究開発活動の体制および方針当社グループの研究開発活動は、現在から近い将来にかけて必要とされるデバイス、ソフトウエアおよびシステムなどの開発において、車載制御、車載情報に関する製品はオートモーティブソリューション事業本部が、産業、インフラストラクチャーおよびIoTに関する製品はIoT・インフラ事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、実装技術、設計基盤・テスト手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。 加えて、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。 家電製品や自動車などあらゆるモノがネットワークに繋がり、相互に情報交換しサービスが提供される超スマート社会では、これまで当社が強みとしてきたマイコンやSoCといったデジタル製品が担う演算機能、アナログ製品が得意とする人の目・耳・鼻などに相当するセンシング機能、さらにパワー製品が得意とするモータ等を動かすためのアクチュエータ機能が有機的に繋がり連携する必要があります。当社グループは、センシングからアクチュエータ機能まで幅広くサポートするための製品ポートフォリオを拡充し、アナログ製品とデジタル製品を組み合わせたソリューション(ウィニング・コンビネーションと呼称)を強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウエアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を行うことにより注力する市場での成長を実現していきます。 (2) 主な研究開発の成果 ① 従来技術と比べ最大10倍の電力効率を実現したAIチップ開発を発表当社グループは、複雑なタスクを処理するDRP(Dynamically Reconfigurable Processor)を用いたAIチップを開発しました。本AIチップは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」プロジェクトにおいて、当社グループ独自のAIアクセラレーター「DRP-AI」と電力効率を一層高めるAI軽量化技術を組み合わせて開発しました。本AIチップの電力効率は1ワット当たり10TOPS(演算10兆回/秒)で、従来技術と比べ最大で10倍もの電力効率を実現し、また、セキュリティカメラや自動搬送車、サービスロボットなど、低い消費電力のもとでリアルタイムに応答することが求められるAI機器に組み込むことができます。さらに、使用する装置側において、その使用環境の変化に応じて適切に対応できる学習システムも開発し、その基本動作を実証しました。当社グループは、本AIチップの開発により、スマート市場やロボティクスをはじめとした様々な産業において自動化を推進・拡大し、DX(Digital Transformation:デジタル変革)の加速に伴う新たなサービスの創造にも貢献します。 ② ECUレベルのソフトウエア開発をハードウエアなしで実現する統合開発環境の提供を開始当社グループは、自動車の開発に際し、ソフトウエアが自動車の価値を主導する「ソフトウエアファースト」と、自動車開発の初期段階からハードウエアがなくてもその仕様や機能、性能の検証を行うことができる「シフトレフト」の実現に貢献するための開発環境の拡充の一環として、統合開発環境の提供を開始しました。本開発環境は、従来、SoCやマイクロコントローラなどの個別の半導体用に提供していたR-Car Virtual Platform等のシミュレータ群を統合・連動させることにより、複数のLSIが搭載された自動車のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)の動作シミュレーションを可能にし、個々の半導体に対して、同時かつ同期した実行やブレーク制御、トレース情報の取得を実現します。また、本開発環境は、オープンソースの仮想環境であるQEMU(コンピュータの動作をソフトウエア的に再現するエミュレータ型の仮想化ソフトの一つ)をベースに、高い抽象度でSoCやマイクロコントローラなどをモデル化することで、自動車のECUレベルの大規模な動作シミュレーションをより高速に実現できます。当社グループは、本開発環境により、顧客に対し、顧客製品の開発の初期段階から検証環境を提供するとともに、その製品価値を向上させるECUレベルでのソフトウエア開発を可能にし、ソフトウエアファーストとシフトレフトの実現に貢献します。 ③ RAファミリ向けセキュア暗号エンジンが米国セキュリティ認証CAVPを取得 当社グループは、Arm社Cortex®-Mコア搭載32ビットマイクロコントローラ「RAファミリ」に搭載するセキュア暗号エンジンである「SCE(Secure Crypto Engine)9」に実装する暗号アルゴリズムについて、NIST(National Institute of Standards and Technology:米国国立標準技術研究所)の暗号アルゴリズム認証制度であるCAVP(Cryptographic Algorithm Verification Program)の認証を取得しました。本認証制度は、暗号アルゴリズムが正しく実装されているか否かをNISTが第三者の立場から検証する制度で、セキュリティの相互運用性を担保するために不可欠なものであります。当社グループは、今回、SCE9を搭載するRAファミリ製品(RA6M4、RA6M5、RA4M2、RA4M3の各製品グループ)で利用可能な暗号方式(共通鍵方式:AES、公開鍵方式:RSA等)や、復元化(ハッシュ)、鍵生成と認証、鍵合致の仕組みなどのアルゴリズムについて、CAVPの認証を取得したことになります。当社グループは、本認証の取得により、同様の認証制度であるPSA Certifiedレベル2およびSESIPレベル1とあわせて、包括的なIoTセキュリティソリューションを提供できるようになり、その結果、幅広いコネクテッドデバイス分野において、顧客によるデータの安全性確保を支援することができます。 (3) 研究開発費当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、2,067億円となり、前連結会計年度の1,553億円と比べ515億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。なお、当社グループの研究開発は、大半が自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業の双方に係るものであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
FY2021|3,395 文字
5 【研究開発活動】(1) 研究開発活動の体制および方針当社グループの研究開発活動は、現在から近い将来にかけて必要とされるデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発において、車載制御、車載情報に関する製品はオートモーティブソリューション事業本部が、産業、インフラストラクチャーおよびIoTに関する製品はIoT・インフラ事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、実装技術、設計基盤・テスト手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。 加えて、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。 家電製品や自動車などあらゆるモノがネットワークに繋がり、相互に情報交換しサービスが提供される超スマート社会では、これまで当社が強みとしてきたマイコンやSoC(System-on-Chip)といったデジタル製品が担う演算機能、アナログ製品が得意とする人の目・耳・鼻などに相当するセンシング機能、さらにパワー製品が得意とするモータ等を動かすためのアクチュエータ機能が有機的に繋がり連携する必要があります。当社グループは、センシングからアクチュエータ機能まで幅広くサポートするための製品ポートフォリオを拡充し、アナログ製品とデジタル製品を組み合わせたソリューション(ウィニング・コンビネーションと呼称)を強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を行うことにより注力する市場での成長を実現してまいります。 (2) 主な研究開発の成果 ① 次世代ハイブリッド車や電気自動車を構成するアーキテクチャに対応する「RH850/U2B」を発表当社グループは、28ナノメートル(注)プロセス技術を採用した車載用マイクロコントローラ「RH850/U2B」を発表しました。本製品は、2022年4月からサンプル出荷を開始する予定です。近年、地球温暖化対策の一環として、各国がCO2排出規制を強化する中、CO2排出量を削減できるxEVは、環境に優しく、安全で暮らしやすい持続可能な社会の実現に貢献するものとして、その普及拡大が急がれています。そして、自動車システムの設計は、今後、次世代E/Eアーキテクチャに向かうことが見込まれ、これを実現するための車載用半導体が求められています。本製品は、当社グループのRH850ファミリの中で最もハイエンドに位置づけられるマイクロコントローラで、高い性能、スケーラビリティ、仮想化対応、セキュリティ機能など、優れた特長を備えています。そのため、自動車システムに要求される厳しい要件に応えることができるほか、パワートレイン制御やインバータ制御など、次世代E/Eアーキテクチャの要となるゾーン・ドメインコントロール、コネクテッドゲートウェイなどに最適です。当社グループは、今後も、安心・安全なクルマ社会の実現に向けて、業界をリードしていきます。(注)ナノメートル:1ナノメートルは、10億分の1メートルです。 ② 次世代の車載中央コンピュータ向けに、新開発のゲートウェイ用SoC「R-Car S4」とPMICを組み合わせた車載ゲートウェイソリューションを発表当社グループは、次世代車載中央コンピュータ向けに、新たなゲートウェイ用SoC「R-Car S4」とパワーマネジメントIC(PMIC)を開発し、これらを組み合わせた車載ゲートウェイソリューションを発表しました。本ソリューションは、自動車のE/Eアーキテクチャが今後進化することにより求められる高い要件を満たすとともに、性能も高く、複数の多様な高速ネットワークに対応し、高いセキュリティ機能と機能安全レベルを備えています。本ソリューションを構成するR-Car S4は、既存のソフトウェアを再利用することを重視して設計されており、シームレスに動作するPMICとあわせて使用することで、ユーザの開発効率の向上を実現することができます。また、PMICは、超低消費電力による動作を実現し、12ボルトという自動車バッテリの電源入力に対応するとともに、周辺機器などが必要とする電源電圧を降圧し、最大で11チャネルを出力することができます。両製品のサンプル出荷は、既に開始しており、本ソリューションの評価ボードの提供も開始しました。本ボードには、R-Car S4とPMICのほか、当社グループ製タイミングIC「Autoclock RC2121x」が搭載されており、ウィニング・コンビネーションのひとつとなります。当社グループは、本ソリューションを提供することにより、ユーザによる製品設計の開発効率化や開発期間の短縮などに貢献します。 ③ 基地局・データセンタにおける通信インフラソリューションを発表 当社グループは、5GビームフォーミングICのポートフォリオを拡充し、5Gおよび広帯域無線向けに最適化したミリ波デバイス2製品を発売しました。本製品は、送受信可能な8チャネル高集積トランスミッタ・レシーバで、n257周波数帯(26.5GHz~29.5GHz)対応の「F5288」と、n258/261周波数帯(24.25GHz~27.5GHz)対応の「F5268」が含まれます。ユーザは、本製品を使うことで、各種基地局だけでなく、固定無線アクセスポイントやユーザ構内設備、その他様々な無線インフラ向けに、広帯域の信号に対応することができ、コスト効率の高いフェーズドアレイシステムを設計することが可能となります。また、当社グループは、本製品を用いたウィニング・コンビネーションとして、アップダウンコンバータ「F5728」や広帯域ミリ波シンセサイザ「8V97003」、PMICと組み合わせた「基地局アンテナ・フロントエンドソリューション」の提供を開始しました。本ソリューションにより、通信業界の顧客は、長距離無線用に費用対効果の高い基地局などを設計することが可能になります。 ④ 屋外空気質センサプラットフォーム「ZMOD4510」向けに、新たに超低消費電力を実現するオゾン検知特化型ファームウェアをリリース当社グループは、屋外空気質(Outdoor Air Quality : OAQ)センサプラットフォーム「ZMOD4510」を拡充し、超低消費電力を実現するオゾン検知特化型ファームウェアをリリースしました。高濃度のオゾンガスは、空気環境を悪化させ、健康リスクをもたらす重大な原因となっており、米国環境保護庁(EPA)のAir Quality Index (AQI)をはじめ、各国や地域で様々な空気質指標に用いられています。本ファームウェアは、AIを活用したアルゴリズムの採用により、オゾンガスのみを選択的に測定することができます。また、本ファームウェアとZMOD4510を組み合わせることにより、200µW以下という超低消費電力で動作することが可能となるため、バッテリ駆動の機器での使用にも適しています。これらにより、スマートウォッチやスマートフォン、ガス探知機などの小型モバイル機器で、手軽に空気質を測定することができます。当社グループは、本プラットフォームをビルディングオートメーション照明に付加するためのウィニング・コンビネーションを提供し、ユーザによる製品設計を支援し、市場への投入を早めることを支援します。 (3) 研究開発費当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、1,563億円となり、前連結会計年度の1,351億円と比べ212億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。なお、当社グループの研究開発は、大半が自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業の双方に係るものであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
FY2020|3,904 文字
5 【研究開発活動】(1) 研究開発活動の体制および方針当社グループの研究開発活動は、現在から近い将来にかけて必要とされるデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発において、車載制御、車載情報に関する製品はオートモーティブソリューション事業本部が、産業、インフラストラクチャーおよびIoTに関する製品はIoT・インフラ事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、実装技術、設計基盤・テスト手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。 加えて、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。 家電製品や自動車などあらゆるモノがネットワークに繋がり、相互に情報交換しサービスが提供される超スマート社会では、これまで当社が強みとしてきたマイコンやシステムLSIといったデジタル製品が担う演算機能、アナログ製品が得意とする人の目・耳・鼻などに相当するセンシング機能、さらにパワー製品が得意とするモータ等を動かすためのアクチュエータ機能が有機的に繋がり連携する必要があります。当社グループは、センシングからアクチュエータ機能まで幅広くサポートするための製品ポートフォリオを拡充し、アナログ製品とデジタル製品を組み合わせたソリューション(ウィニングコンビネーションと呼称)を強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を行うことにより注力する市場での成長を実現してまいります。 (2) 主な研究開発の成果① 自動運転のメインプロセッシングを1チップで実現する車載用SoC「R-Car V3U」を発表 当社グループは、ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)や自動運転システムに向けて、車載用SoC「R-Car」の中で最も高い性能を誇る「R-Car V3U」を発表しました。本製品は、2020年12月からサンプル出荷を開始しており、2023年第2四半期から量産を開始する予定であります。 本製品は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)のディープラーニング(深層学習)を用いた車載カメラ画像の物体認知から、レーダやLiDAR(注1)とのセンサフュージョン、走行計画の立案・制御指示など、自動運転の核となる処理を1つのチップ上で実現することができます。 また、自動運転システムで求められている最も厳しい安全性レベル「ASIL D」(注2)にも対応しており、偶発的にハードウェアに生じた故障を高速で検出・制御する高度な安全機能を搭載しております。 さらに、本製品は、周囲の物体検知やセグメンテーションなど、最先端の各種ディープラーニングに柔軟に対応できるほか、そのアーキテクチャは低消費電力性を実現しているため、熱の発生を抑えられ、空冷環境下でも動作可能なECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を開発することができます。 本製品が含まれるR-Carの最大の特長は、そこで用いられる専用エンジンの共通化を図り、ソフトウェアの流用を可能にすることで、多様なニーズに応えられるスケーラブルなアーキテクチャを採用しているところにあります。本製品においても、既に市場投入している車載カメラ用SoC(R-Car V3M、R-Car V3H)との間で専用エンジンの共通化を図っており、顧客は、短期間でスムーズに自分の次世代製品に展開することができます。 当社グループは、引き続き、顧客の開発負荷の軽減に向けて、様々な開発環境を提供し、顧客がより楽(ラク)にソフトウェアの開発を行うことができるように取り組みます。 ② 産業用モータ制御に革新をもたらす角度センサとして、高精度なインダクティブポジションセンサ用IC「IPS2200」を発表 当社グループは、産業用モータを軽量化し、低コストで高精度かつ高効率に制御したいという顧客のニーズが高まる中、モータの回転角度を高精度に検出できる新たな位置センサとして、インダクティブポジションセンサ用IC「IPS2200」を発表しました。 本製品は、磁石を使っておらず、薄型軽量の設計も可能なため、周辺磁場に対する高い耐性を持ち、産業、医療、ロボットをはじめとする幅広い応用分野に向けて、コストパフォーマンスの高い角度センサ付きモータを実現することができます。また、センシング素子として、プリント配線板にコイルパターンを配置したものを使用しており、設計の柔軟性にも優れ、精度の高いパフォーマンスを実現することができます。 本製品の発売にあわせて、面倒な設定が不要で、すぐにセンシング素子を設計できるコイル設計ツールや、わずか30分程度でコイルの最適化を完了できるコイル最適化ツール、評価キットの提供も行っております。これらを通じて、顧客は、薄型軽量化に加え、その製造部材として標準品を用いることができるため、BOM(Bills of Materials:部品表)コストの削減にも役立ちます。 当社グループは、本製品を積極的に展開し、顧客がより楽(ラク)に、産業・ロボット・コンシューマ・医療用向けなどのモータを実現できるよう貢献します。 ③ DDR5メモリモジュール用の温度センサ「TS5111」およびデータバッファ「5DB0148」を発表 当社グループは、米国半導体技術標準化機関「JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)」が策定した最新メモリ標準規格「DDR5(Double Data Rate 5)」に準拠したメモリモジュール用温度センサ「TS5111」を発表しました。 本製品は、ピーク効率(ピークに対する計数効率)やリアルタイムでの信頼性に優れており、温度監視アルゴリズムの動作によるメモリモジュールや温度に敏感なシステム構築に最適であります。また、DDR5メモリモジュールに限らず、SSD(Solid State Disk)やコンピュータのマザーボードなど、リアルタイムでの正確な温度監視が求められる通信機器をはじめとした多様な用途に適しております。 また、当社グループは、DDR5メモリモジュール用として、高速性と低消費電力性を実現したデータバッファ「5DB0148」を、限定ユーザを対象にサンプル出荷を開始しました。 近年、リアルタイム解析、機械学習、HPC(High Performance Computing:高性能計算)、AIをはじめとして、とても多くのメモリや帯域幅を必要とするアプリケーションが増加しており、メモリの帯域幅の要件も飛躍的に拡大しております。 本製品は、こうした新しい世代のアプリケーションの要となるDDR5用のメモリモジュールLRDIMM(Load-Reduced Dual Inline Memory Modules:負荷軽減メモリモジュール)に向けて、大幅な高速化を実現することができます。 ④ 4G/5Gインフラシステム向けRFアンプ「F1490」を発売 当社グループは、RFアンプのポートフォリオを強化し、4G/5G基地局用装置などの用途に向けて、自己消費電流が75mAと小さいRFアンプ「F1490」の量産を開始しました。 本製品は、1.8GHzから5.0GHzの周波数範囲内で動作するなど、5Gの周波数帯域(サブ6GHz)をカバーしております。また、2種類のゲインモードを選択することにより、システム設計の柔軟性を高めることができます。顧客は、本製品を使うことにより、Massive MIMO(注3)の5Gプリドライバに求められるシステムレベルの要件をすべて満たすことができます。 当社グループは、アクティブアンテナシステムや4G/5G基地局、その他無線通信機器向けのRFアンプソリューションを積極的に展開し、LTEと5Gのイノベーションを推進し続けます。 (注)1 LiDAR:「Light Detection and Ranging」の略称で、レーザー光を対象物に照射し、反射光を受光すること で、自動車と対象物との距離を測定する技術であります。 2 ASIL:「Automotive Safety Integrity Level」の略称で、自動車向け機能安全規格ISO 26262における機 能安全レベルであります。 3 Massive MIMO:多数のアンテナを用いて通信を多重化し、大容量化・高速化する無線通信技術でありま す。 (3) 研究開発費当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、1,351億円となり、前連結会計年度の1,348億円と比べ3億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。なお、当社グループの研究開発は、大半が自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業の双方に係るものであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
FY2019|3,933 文字
5 【研究開発活動】(1) 研究開発活動の体制および方針当社グループの研究開発活動は、現在必要な、または近い将来に必要となるであろうデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発につき、車載制御、車載情報に関する製品はオートモーティブソリューション事業本部が、産業、インフラストラクチャーおよびIoTに関する製品はIoT・インフラ事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、新規実装技術、設計手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。また、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。電子機器や社会インフラの急速なネットワーク化により訪れるスマート社会では、これまでマイコンが主に使われてきた制御機器と、システムLSIが主に使われてきたIT機器が急速に融合しており、マイコンを軸にした新たな制御機器市場の拡大が期待されます。当社グループは、こうした市場変化に対応するため、マイコンとアナログ&パワー半導体などを組み合わせたセットを提供するキットソリューションを強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を通じて、新市場での成長を実現してまいります。 (2) 主な研究開発の成果① 次世代IoT機器向け32ビットマイコンのラインアップ強化の一環として、Arm® Cortex® -M搭載の新ファミリ「RAファミリ」を発表 近年、次世代のIoT機器を迅速かつ簡単に市場に投入したいというユーザのニーズが増えています。当社グループは、こうしたニーズに応えて、32ビットマイコンのラインアップを強化し、Arm® Cortex® -Mを搭載した新ファミリ「RAファミリ」の出荷を開始しました。 本製品は、次世代の組み込み機器の開発に必要な各種機能の充実・強化を図るとともに、セキュリティやコネクティビティをはじめとして当社グループが組み込みシステムについて長年培った経験とノウハウが詰まった周辺機能IPと、様々なユースケースに対応したFSP(Flexible Software Package:フレキシブルソフトウェアパッケージ)の究極の組み合わせを追求した製品になります。 本製品では、高い性能を有するArm社の先端CPUコア「Arm® Cortex® -M」を採用しており、当社グループとArm社が持つIoT分野のエコシステムを活用しながら、IA(Industrial Automation:産業自動化)、BA(Building Automation:ビル自動化)、メータ、ヘルスケア、家電をはじめとする様々なIoT機器の分野において、セキュリティ、セーフティ、コネクティビティ、HMI(Human Machine Interface:人と機械のインターフェース)などの最新技術を提供し、その開発を支援します。 また、本製品は、当社グループ独自のSCE(Secure Crypto Engine:セキュア暗号化エンジン)を搭載し、高度な暗号鍵を設定できるほか、シンプルな構成の機器から複雑なセキュリティ機能を備えた機器に至るまで広く使用することができます。 さらに、IoT機器の開発においてソフトウェアの開発負荷が課題となる中、本製品のFSPは、当社グループのエコシステムとの併用を可能にするフレキシブルなオープンアーキテクチャを採用しています。これにより、ユーザは、既存のソフトウェア資産を再利用したり、当社グループやパートナのソフトウェアと組み合わせて、複雑な機能を速やかに実装することができ、IoT機器の早期開発が可能となります。 当社グループは、市場のニーズを的確に捉え、タイムリーに新しいArmコア搭載マイコンのラインアップの強化を図ることにより、次世代IoT機器の普及・拡大に貢献します。 ② ADASや自動運転に向けて複雑化する自動車の電子化に対応し、電子制御システムの統合に向けた仮想化を世界で初めて実現する車載制御用クロスドメインマイコン「RH850/U2A」を発表 近年、ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)や自動運転の実現に向け、自動車のE/E(Electrical/Electronic:電気/電子)アーキテクチャの変化に伴うECU(Electronic Control Unit:電子制御システム)の統合を早期に進めるため、複数の役割を1つのチップで実現するニーズが高まっています。 当社グループは、このニーズに対応するため、28ナノメートル(注1)プロセス技術を採用したフラッシュメモ リ内蔵の車載制御用マイコン「RH850/U2A」を開発しました。本製品は、フラッシュメモリ内蔵のシングルチップマイコンとしては世界で初めて、仮想化を実現することに成功した製品になります。 本製品の仮想化技術は、当社グループのRH850ファミリが従来備えているリアルタイム処理機能を確保しながら、自動車のシャシー用などで求められる最も高い機能安全レベル「ASIL D」(注2)の実現をサポートし、1つのマイコン上で、機能安全レベルの異なる複数のソフトウェアを同時に独立して動作させることができるため、ユーザは、既存のソフトウェア資産を効率的に活用して機能安全レベルの異なるECUの統合を図ることが可能になります。 また、本製品は、16メガバイトのフラッシュメモリと3.6メガバイトのSRAMを内蔵するとともに、強固なセキュリティ機能を搭載しているため、OTA(Over The Air)(注3)を使用して、自動車の運転中でも安全にソフトウェアを更新することができます。 本製品は、当社グループのシャシー制御用マイコンとボディ制御用マイコンの双方の機能を統合した後継モデルであり、自動車のシャシーやボディの制御だけでなく、ドメイン制御や、ローエンドからミッドレンジまでのゲートウェイ用ECUの用途にも最適です。当社グループは、様々な用途に使用できる新世代の車載制御用マイコン「クロスドメインマイコン」の第1弾として本製品を位置づけ、ソフトウェアや開発環境を整備していく計画です。 当社グループは、この「クロスドメインマイコン」を車載制御用マイコンの主力製品として、パフォーマンスの向上、セキュリティの強化、ネットワーク対応、スケーラビリティ(拡張性)の拡充を積極的に推進し、今後も、安心・安全なクルマ社会の実現に向けて業界をリードしていきます。 ③ ハイブリッド車や電気自動車のバッテリ寿命と航続距離を最大化するリチウムイオンバッテリマネジメントICを発表 ハイブリッド車や電気自動車では、そこに搭載するリチウムイオン二次電池の電池寿命や航続距離の最大化が性能向上のための大きなカギを握ります。当社グループは、このニーズに応えるため、極めて高い電圧測定精度を長期にわたって保つことができるリチウムイオンバッテリマネジメントIC「ISL78714」を開発しました。 本製品は、最大14の電池セルの電圧と温度を高精度に測定し、セル電圧を調整することができます。具体的には、自動車用途で求められる温度の範囲内で±2mVの精度で電圧監視と調整を行うことができ、これにより正確な電圧レベルに基づいた判定を行うBMS(Battery Management System:バッテリ管理システム)を実現できます。さらに、BMSに求められる厳しい信頼性や性能要件を満たしており、自動車用機能安全レベル「ASIL D」に対する対応をサポートします。 また、本製品は、当社グループの車載制御用マイコンRH850ファミリと組み合わせることにより、多数のセル監視を行うBMSを構築することができます。リファレンスデザインキットとして、本製品5個と、70セルまで監視できるRH850/P1M搭載の評価プラットフォームも提供しています。このリファレンスデザインキットを使用することで、RH850マイコンファミリへのソフトウェア移植や、バッテリパックのサイズに応じたスケール変更が容易になり、BMSの開発期間の短縮に貢献します。 (注)1 ナノメートル:1ナノメートルとは、10億分の1メートルであります。 2 ASIL:「Automotive Safety Integrity Level」の略称で、自動車向け機能安全規格ISO 26262における機能安全レベルです。 3 OTA:ドライバが無線ネットワークを介して、自動車用のソフトウェアのアップデートやアップグレードが可能となる仕組みです。 (3) 研究開発費当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、1,287億円となり、前連結会計年度の1,279億円と比べ9億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。なお、当社グループの研究開発は、大半が自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業の双方に係るものであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
FY2018|4,225 文字
5 【研究開発活動】(1) 研究開発活動の体制および方針当社グループの研究開発活動は、現在必要な、または近い将来に必要となるであろうデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発につき、車載制御、車載情報に関する製品はオートモーティブソリューション事業本部が、スマートファクトリー、スマートホームおよびスマートインフラに関する産業関連製品はインダストリアルソリューション事業本部が、分野を問わない幅広い用途を対象とした製品はブロードベースドソリューション事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、新規実装技術、設計手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。また、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。電子機器や社会インフラの急速なネットワーク化により訪れるスマート社会では、これまでマイコンが主に使われてきた制御機器と、システムLSIが主に使われてきたIT機器が急速に融合しており、マイコンを軸にした新たな制御機器市場の拡大が期待されます。当社グループは、こうした市場変化に対応するため、マイコンとアナログ&パワー半導体などを組み合わせたセットを提供するキットソリューションを強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を通じて、新市場での成長を実現してまいります。 (2) 主な研究開発の成果① 新市場を創出するSOTB™技術とDRP技術で進化するe-AIソリューションによりエンドポイントインテリジェンスを推進し、IoTの普及拡大に貢献 昨今、普及が加速するIoT(Internet of Things)機器において、電池の交換や充電といった電力の供給問題を解決することが課題の一つとなっております。これに対し、当社グループは、製品の低消費電力化を進める一方、電池が完全に不要になるエナジーハーベスト(環境発電)専用の組み込みコントローラを開発しました。 本コントローラは、当社グループ独自のSOTB™(Silicon On Thin Buried Oxide)(注1)プロセス技術を採用し、従来トレードオフの関係にあった、動作している時の電力と動作していない時の電力の両方を極限まで減らすことに成功しました。極めて低電流で動作しつつ動作中の電力も低いため、電源を供給するための電池を全く使用せず、光や振動、水流など、微量の環境発電を使用してIoT機器を動かすことが可能になります。これにより、例えば、フィットネスウエアや靴などから生体情報を取得したり、農場に土壌を監視するセンサを設置したり、構造物の振動センシング(感知)で公共インフラを管理するなど、幅広い応用分野で電池のメンテナンスが不要になるという新たな市場を創出することができます。 また、近年、IoT機器にもAIを活用する動きが活発となっていますが、その課題として、情報量が多くクラウドへデータを送信することが困難である点や、クラウド上でのAI判定に時間を要するという点が挙げられます。当社グループは、こうした課題を解決するため、IoTのネットワークの末端の装置にAI技術を実装する「e-AI(イーエーアイ)(embedded-Artificial Intelligence)」を注力技術の一つと位置づけ、組み込み機器の進化を実現するe-AIソリューションを提供しております。今般、これまでのデータ量の比較的少ない電流や振動波形を用いたe-AIソリューションに加えて、情報量が多い画像データのAI処理もクラウドに上げずに組み込み機器側でリアルタイムに処理できるマイクロプロセッサ「RZ/A2M」を開発しました。 本製品は、当社グループ独自のDRP(Dynamically Reconfigurable Processor)(注2)を搭載しております。本DRPは、半導体のハードウェアでありながら、ソフトウェアで演算回路の構成を瞬時に変更できるため、ハードウェアの高性能性とソフトウェアの柔軟性を兼ね備えております。これにより、指紋や虹彩といった生体認証、ハンディバーコードスキャナでの高速スキャニングなどが可能となり、クラウド上のAIでは実現が困難なリアルタイム性やプライバシー、セキュリティといった課題を解決します。 当社グループは、こうした革新的技術であるSOTBに加え、DRPによりe-AIソリューションを進化させ、IoTのネットワークの末端の装置(エンドポイント)を賢くする「エンドポイントインテリジェンス」を推進し、IoTの普及拡大に貢献します。(注)1 SOTB™:ウエハ基板上の薄いシリコン層の下に極めて薄い絶縁層(BOX: Buried Oxide)を形成した当社グループ独自のプロセス技術であります。シリコン層に不純物を混入しないことにより低電圧で安定した動作が可能となるため、電力効率の高い演算性能を発揮でき、また、スタンバイ時はBOX層下のシリコン基板電位を制御することにより、リーク電流を削減し、待機電力を抑えることができます。 2 DRP:1クロックごとに演算回路の構成を動的に変更することができる当社グループ独自のハードウェアIPであります。 ② 28ナノメートルプロセス技術採用の最先端の車載制御向けマイコンや画像認識向けSoCなど、エンドツーエンドソリューションを提供することにより、自動運転の実用化を加速 近年、自動運転に向けた技術開発が急速に進展する中、自動運転を実現するためには、自動車の「走る・曲がる・止まる」という根幹を担う制御機能に加え、人やモノのセンシング機能や通信機能などが必要となります。当社グループは、ADAS(エーダス)(Advanced Driver Assistance System)や自動運転に向けて、センシング機能から制御機能に至るまで、エンドツーエンドのソリューションを提供していますが、車載制御用マイコンとして世界に先駆けて、28ナノメートル(注1)プロセス技術を採用した「RH850/E2xシリーズ」を発表し、サンプル出荷を開始しました。 本製品の最大の特長は、40ナノメートルプロセス技術の採用製品と比較し、同一電力で約3倍もの高い演算処理性を備えていることであります。これにより、次世代の低燃費エンジンの開発が可能になるほか、電気自動車(EV : Electric Vehicle)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV : Plug-in Hybrid Electric Vehicle)に搭載するモータやインバータの高効率化と小型化を実現します。また、当社グループ独自のSG-MONOS(注2)技術を28ナノメートルプロセスにも採用することで、より大容量のメモリを搭載することができるようになりました。これにより、運転中でもOTA(Over The Air)(注3)によるプログラム更新が可能になるとともに、自動運転時代においても、状況に応じて、より安全性の高い制御プログラムを適用することが可能になります。 一方、自動運転システムの開発にあたっては、車両周辺の環境をリアルタイムに認識する高度なセンシング処理が求められており、その手法としてAIを取り入れたコンピュータビジョン処理が期待されています。 当社グループは、こうしたAI処理を高速にかつ低消費電力で実現する専用回路を搭載した画像認識(スマートカメラ)向けSoC「R-Car V3H」を開発しました。 当社グループは、自動車向け事業において、普及価格帯の量産車に搭載できる実用的かつ現実的な半導体ソリューションを提供することを目指しております。そのため、画像信号を高速で処理する性能を満たすだけでなく、直射日光を浴びて高温になりやすい車両筐体に設置できるよう、製品の性能と低消費電力の最適なバランスを追求しております。当社グループは、こうした市場のニーズに対応した専用回路の搭載により、これまでトレードオフの関係にあった高度なコンピュータビジョン処理と低消費電力の両立に成功しました。また、緊急自動ブレーキのような運転支援機能に適した一つ下のクラスの「R-Car V3M」とあわせて、スケーラビリティに長けた製品展開を実現できることから、お客様の車種展開や要望にも柔軟に対応できます。 当社グループは、こうした先端技術開発と量産車に搭載可能な高品質のソリューション提供を通じて、自動運転の実用化を加速し、より安全なクルマ社会の実現に貢献します。 (注)1 ナノメートル:1ナノメートルとは、10億分の1メートルであります。 2 SG-MONOS:MONOSは、「Metal(メタル)-Oxide(酸化膜)-Nitride(窒化膜)-Oxide(酸化膜)-Silicon(シリコン)」の略称であり、シリコンの上に構築する酸化膜/窒化膜/酸化膜の3層構造に、制御ゲート(メタル)を搭載した記憶用トランジスタ(メモリセル)の構造であります。この構造に、ゲート電極を二つに分けた「スプリットゲート(SG)」構造を採用した技術がSG-MONOS技術で、高信頼性・高速動作・低消費電力を実現する当社グループの独自技術であります。 3 OTA:ドライバが無線ネットワークを介して、自動車用のOSその他のソフトウェアのアップデートやアップグレードが可能となる仕組みであります。 (3) 研究開発費当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、1,279億円となり、前連結会計年度の1,295億円と比べ17億円減少しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。なお、当社グループは半導体事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
FY2017|3,246 文字
6 【研究開発活動】(1) 研究開発活動の体制および方針当社グループの研究開発活動は、現在必要な、または近い将来に必要となるであろうデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発につき、車載制御、車載情報に関する製品はオートモーティブソリューション事業本部が、スマートファクトリー、スマートホームおよびスマートインフラに関する産業関連製品はインダストリアルソリューション事業本部が、分野を問わない幅広い用途を対象とした製品はブロードベースドソリューション事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、新規実装技術、設計手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。また、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。電子機器や社会インフラの急速なネットワーク化により訪れるスマート社会では、これまでマイコンが主に使われてきた制御機器と、システムLSIが主に使われてきたIT機器が急速に融合しており、マイコンを軸にした新たな制御機器市場の拡大が期待されます。当社グループは、こうした市場変化に対応するため、マイコンとアナログ&パワー半導体などを組み合わせたセットを提供するキットソリューションを強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を通じて、新市場での成長を実現してまいります。 (2) 主な研究開発の成果① 自動運転向けのトータル・ソリューションのプラットフォームとして「Renesas autonomy™」を発表 自動運転時代において、自動車はセンシング(感知)機能や車両制御機能だけでなく、クラウドサービスと連動するものに進化しています。あらゆる機能が広範囲に連動し、より高い信頼性が求められる一方、個々の技術への要求もより高度となり、トータル・ソリューションの要求が高まっています。 当社グループは、自動車市場で長年培った経験と実績、技術力をもとに、これらの要求に対応した複雑かつ高度な技術をオープンなプラットフォームとして提供すべく、自動運転時代に向けた新たなトータル・ソリューションとして、「Renesas autonomy™」を発表しました。本ソリューションは、安全なクラウドへの接続や、センシングから判断・制御に至るまで、ADASや自動運転システムの全領域をカバーするソリューションです。 本ソリューションのラインナップには、車載情報・ADAS用SoC「R-Car」や車載制御用マイクロコントローラ「RH850」をはじめ、将来も広く活用できるソリューションが含まれており、車載システム開発者は、これらを用いることで、効率的でタイムリーなシステム開発が可能となります。また、本ソリューションは、その技術的な構成要素として、高性能と低消費電力性を両立する革新的なハードウェア・アクセラレータをはじめ、多様なIPコア(注)を含んでおり、高度な機能安全性にも対応しています。当社グループは、これらの複合的な技術から構成される本ソリューションをオープンな開発プラットフォームとして、230社を超えた当社グループの「R-Carコンソーシアム」のパートナ企業各社とともに、その拡充に努めています。 本ソリューションについては、R-CarやRH850がトヨタ自動車㈱と㈱デンソーにおいて開発中の自動運転車に採用されたことに加え、日産自動車㈱の電気自動車「リーフ」にも採用されるなど、世界的な広がりを見せています。また、2018年1月にアメリカ・ラスベガスで開催されたCES 2018では、自動運転化・コネクテッド化されたデモカーとともに、パートナ企業との先端ソリューションを出展しました。世界中の自動車メーカーやその部品メーカーの経営幹部が数多く訪れ、今後一層グローバルに普及することが期待されます。 当社グループは、オープンで革新性と高い信頼性を備えた自動運転車向けプラットフォームであるRenesas autonomy™を今後さらに拡充し、自動運転システムの開発スピードを格段に加速させ、これからの自動運転時代を牽引します。(注)IPコア:LSI(大規模論理回路)を構成する部分的な回路情報です。 ② AIによる深層学習結果を組み込み機器に搭載可能とする「e-AIソリューション」を開発し、その一環として提供を開始した「AIユニットソリューション」により、AIを活用したスマートファクトリーを実現 近年、機械学習や深層学習(ディープラーニング)といったAIを構成する技術の進化は著しく、その応用範囲は、これまでのIT領域を中心としたクラウド市場から、組み込みシステム市場へ急速に拡大しています。そのため、今後は、AIに関連したソフトウェアだけでなく、サービスロボットなど、AIを搭載した組み込み機器の開発が加速すると予想されています。 そこで、当社グループは、スマート社会の実現に向けて、IoTのネットワークの末端の装置(エンドポイント)にAIを実装する「e-AI」を注力技術の一つと位置づけ、マイクロコントローラやマイクロプロセッサにAIを搭載する技術の開発に取り組んできましたが、このたび、深層学習結果をエンドポイントの組み込み機器に実装するための開発ツールを業界で初めて開発し、「e-AIソリューション」の第一弾として無償提供を開始しました。 本ソリューションは、深層学習結果をマイクロコントローラやマイクロプロセッサの開発環境で使用可能な形式に変換する「e-AIトランスレータ」など、これらの開発環境にAI学習環境を繋ぐことを可能としました。これにより、当社製マイクロコントローラやマイクロプロセッサ上に様々な学習結果を搭載してAIを実行でき、エンドポイントの装置に新たな機能、性能を導入できます。 また、当社グループは、AIを活用したスマートファクトリーの実現を目指し、e-AIソリューションの一環として、「AIユニットソリューション」の提供も開始しました。本ソリューションは、「AIユニット」というハードウェア開発のためのリファレンスデザイン(参照設計図)とAI処理を実現したソフトウェアで構成されています。本ソリューションを生産設備・機械に用いることにより、ユーザーは生産工程におけるデータの収集から加工、分析、評価・判定までの一連のプロセスを容易に実現し、精度の高い異常検知や予知保全が可能となり、生産性を大幅に向上できます。 本ソリューションは、当社グループの生産工場である那珂工場での2年間にわたる実証実験の経験とノウハウに基づき開発しました。この実証実験では、AIユニットの試作機をエンドポイントにあたる半導体製造装置に取り付け、従来と比較して約20倍の高速サンプリング速度でデータを取得し、AIによる分析を行うことによって、異常検知の精度を6倍以上に高めることができました。 当社グループは、今後も引き続きe-AIソリューションの提供・強化を通じて、スマート社会の実現を目指すとともに、エンドポイントの設備・機械を容易に効率化できる新ソリューションを提案し、工場の生産性や品質向上に貢献してまいります。 (3) 研究開発費当連結会計年度の研究開発費は、1,270億円となり、前年同一期間の1,053億円と比べ216億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。なお、当社グループは半導体事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
FY2016|3,380 文字
6 【研究開発活動】(1) 研究開発活動の体制および方針当社グループの研究開発活動は、現在必要な、または近い将来に必要となるであろうソフトウェアおよびシステム開発などを、車載制御、車載情報に関する製品は第一ソリューション事業本部が、産業・家電、OA・ICTおよび汎用製品に関する製品は第二ソリューション事業本部が担当し、デバイス開発やデバイス応用技術などのデバイスソリューション開発を担うルネサスシステムデザイン㈱と協力しながら取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、新規実装技術、設計手法などの部門横断的な共通技術については、主に第一ソリューション事業本部と生産本部とが協力しながら担当するという体制で取り組んでおります。また、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。電子機器や社会インフラの急速なネットワーク化により訪れるスマート社会では、これまでマイコンが主に使われてきた制御機器と、システムLSIが主に使われてきたIT機器が急速に融合しており、マイコンを軸にした新たな制御機器市場の拡大が期待されます。当社グループは、こうした市場変化に対応するため、マイコンとアナログ&パワー半導体などを組み合わせたセットを提供するキットソリューションを強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を通じて、新市場での成長を実現してまいります。 (2) 主な研究開発の成果① 自動運転に向けコンピューティング性能向上と自動車用機能安全規格に対応した世界最先端の車載SoCの製品化 当社グループは、車載情報システムや安全運転支援システムに幅広く適用できる新たな半導体ソリューションとして、車載SoC「R-Car」の第3世代製品「R-Car H3」を製品化し、平成27年12月からサンプル出荷を開始しました。 近年、衝突防止や自動運転の実現に向けて、安全運転支援システムの高度化が急速に進んでいます。安全性向上のためには、自動車に数多くのカメラやセンサを搭載し、その情報を正確かつ迅速に処理して、即時に衝突回避などの判断を行う必要があり、従来の何倍ものコンピューティング性能が求められます。また、こうした自動車の状態をドライバーに適切に負荷なく伝え、安全性と快適性を両立するディスプレイ表示が必要になるため、高度なグラフィック性能も要求されます。 そこで、本製品では、高いコンピューティング性能を実現するために、ARM Limitedの高性能な64ビットCPUコア「ARM® Cortex®-A57/53」(※)を各4個搭載しました。また、ドライバーにとって必要な情報を適切に表示する表現力強化のために、グラフィックスの演算処理性能が極めて高い専用の最先端GPU(注1)を採用しました。さらに、衝突回避などを実現するための技術として、カメラが撮影した映像を高速でメモリ部分に読み書きできる内蔵SRAM技術(注2)や、映像の歪みの補正を超高速で行えるカメラ画像処理回路(注3)等を独自に開発し、本製品に搭載しました。これらの高い性能を1チップで実現するために、車載SoCとして、世界で初めて(平成27年12月時点)16ナノメートル(注4)の最先端の微細プロセスを採用しました。 これらにより、本製品は、当社グループの従来製品「R-Car H2」の車載情報システムを中心にした利用から用途を広げ、安全運転支援システムにも利用できる、自動運転時代に向けた新たな車載コンピューティング・プラットフォームとなりました。 こうした当社グループ製品の性能向上により、自動車が自動的に、障害物の検知やドライバーの状態の認識、さらには危険予測や危険回避判断等の複雑な処理を行い、ドライバーはより安心・安全な運転を行うことが可能になり、より高度で快適な自動車とのインタフェースを体験できるようになります。また、本製品は、世界的な自動車用機能安全規格「ISO 26262(ASIL-B)」にも対応しており、半導体自身の故障リスクを最小化し、高度化するシステムにおいても安全性を担保しています。 当社グループは、車載向け半導体ソリューションの提供力の強化に向けて「R-Carコンソーシアム」を主宰していますが、170社を超えるパートナー企業と連携し、車載情報システムや安全運転支援システムのソリューションを拡充し、安心・安全・快適なクルマ社会の実現に貢献してまいります。 ② IoT製品など組込み機器の開発スピードに革新を促す「Renesas SynergyTMプラットフォーム」の提供開始当社グループは、成長を続けるIoTや組込み機器市場に向けて、「Renesas SynergyTMプラットフォーム」の提供を平成27年10月から北米にて、同年12月から欧州および日本にて開始しました。 あらゆるモノがインターネットに繋がるIoT機器の開発では、現在、通信やセキュリティなどの新規技術の導入が必要になり、システムの複雑化が進んでいます。この複雑化により、特にIoT市場で多い新規市場参入者を中心に、機器の開発期間や総費用の増大が大きな課題となっています。そこで、当社グループは、Renesas SynergyTMプラットフォームとして、動作保証されたソフトウェアパッケージ、マイクロコントローラ、開発環境、開発例などのソリューション、ソフトウェアをクラウドで公開するギャラリーの提供を開始しました。 これまでも半導体用のソフトウェアは、当社またはパートナー企業から提供していましたが、お客様の量産製品に対して動作保証をするものではありませんでした。今回提供するソフトウェアパッケージは、組込みシステムに必須となる標準的なマイクロコントローラ用ソフトウェアを一式取り揃え、さらに、必要に応じてお客様が追加的に機能を拡張できるよう、当社パートナー企業が提供するソフトウェアも用意し、当社が動作保証を行います。これらにより、お客様は独自のアプリケーションの開発やサービス提供に集中できるため、お客様の機器開発の優位化を図ることができるとともに、大幅な開発スピードアップにより短期での市場参入が期待できます。 当社グループは、本製品の提供に際して、ソフトウェアのアップデートにも継続的に対応し、一元的にお客様をサポートすることで、お客様側での開発着手の際のイニシャルコストの極小化だけでなく、メンテナンスにかかる総費用の低減、時間や労力の削減にも貢献してまいります。当社グループは、本製品などを通じて、様々な企業のIoT市場での成功を支援し、IoT・組込み機器市場を活性化させてまいります。(注)1 GPU:Graphics Processing Unitの略で、3Dグラフィックス表示など、画像処理専用の計算処理を行う半導体のことです。 2 内蔵SRAM技術:平成27年12月に「電子デバイス国際会議IEDM 2015(International Electron Device Meeting 2015)」で同技術を発表しました。 3 カメラ画像処理回路:平成28年2月に「国際固体素子回路会議ISSCC 2016(International Solid-State Circuit Conference 2016)」で同回路を発表しました。 4 ナノメートル:1ナノメートルは、10億分の1メートルです。※ARM、Cortexは、ARM Limitedの登録商標または商標です。その他、文中の製品名やサービス名は、すべてそれぞれの権利者に属する商標または登録商標です。 (3) 研究開発費当連結会計年度の研究開発費の実績は、974億円であり、主に製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。なお、当社グループは半導体事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。