6 【研究開発活動】(EPC事業)当連結会計年度において、当社グループは研究開発費3,093百万円を投入し、技術力強化方針として「新たなビジネス・商品開拓」「各事業分野のビジネス戦略強化」「EPC事業の基盤強化」につき、以下の研究開発活動を当社グループ内および産官学連携により実施いたしました。 《新たなビジネス・商品開拓》(DX利用のスマート保安) スマート保安分野では、デジタル基盤を介したプラント運営支援を目指し、DX-PLANTTMのソリューション深化と拡販を進めております。そのためにシステム基盤を構築し、工場オーナーにとって導入しやすく、且つオーナー各位からの要求に柔軟に対応できる体制を整えております。2024年10月よりボリビア国営石油ガス会社が操業する尿素プラント向けの導入により、現在計10件の導入実績となりました。例えば、尿素プラント向け性能監視・最適化システム(PMOSTM)や、エチレンプラント向けエチレン分解炉の運転状態予測・最適化支援システム(RL-TrackerTM)、分解ガス圧縮機性能監視など、当社の知見を活かした高付加価値ソリューションの運用を行っております。分解ガス圧縮機性能監視では、実運転条件によるリアルタイム動力計算を行うことで、従来の設計条件による動力計算に改善余地を確認するという成果を得ております。今後は尿素・エチレン等の化学工場に加え、カーボンニュートラル関連施設にも適用を拡げるとともに、更に技術支援サービスにおけるDX技術の活用により、プラント運転に関する課題解決の領域を拡げ、顧客のプラント運営の収益改善に貢献してまいります。 (環境・省エネ)① クリーン水素・アンモニア分野 水素燃料キャリアとしてのアンモニア利用技術・体制開発の一環として、一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会(CFAA)に理事会員として参画しており、CO2フリーアンモニアサプライチェーン実証を目的として、石炭火力発電所等でのアンモニアヘの燃料転換によるCO2排出低減や海外でのアンモニアバリューチェーンの事業化について検討を継続しております。 また、正確な燃料アンモニア関連情報の発信や、安全性などの社会受容性の向上等に向けた広報活動の検討・推進を目的として2022年度にCFAA企画運営委員会に新設された広報ワーキンググループのリーダーとして燃料アンモニアの早期社会実装に向けた活動も推進しております。 大規模な水素利用の可能性を検討する活動にも取り組んでおり、その一環として「中部圏水素利用協議会」に正会員として2025年2月に加入しました。また、中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議との「水素やアンモニア等のサプライチェーン構築に向けた相互協力に関する基本合意書」も締結し、アンモニア製造からその分解による水素製造にわたる幅広い分野で貢献してまいります。 2024年11月にPupuk Indonesia Holding Companyおよび伊藤忠商事株式会社と3社でスマトラ島アチェ地区の既設アンモニアプラントに水電解装置を併設し、再生可能エネルギー由来のグリーン水素を供給してグリーンアンモニアを製造する事業の合弁会社設立に向けた株主間契約書を締結しました。 本プロジェクトを通じて再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニアの製造・事業創出に取り組み、EPC事業のみならず共同出資によって得られる非EPC事業の収益の獲得も追求し、更なる持続可能な社会の実現に貢献してまいります。 国立大学法人東京科学大学(科学大)、Ammon Fields株式会社、株式会社エフ・シー・シーと連携し、科学大の原亨和教授らが開発した高性能な鉄‐ヒドリド触媒を燃料用アンモニア製造システムに適用することを目指し、触媒の商業化および実証に向けた開発に共同で取り組む覚書を2023年6月に締結いたしました。触媒性能実証試験設備を計画中で、2030年に新規アンモニア製造設備への納入を目指しております。中・大型設備において適切な運転条件と鉄‐ヒドリド触媒を組み合わせることで、低コストで省エネルギーな燃料用アンモニアの製造技術の確立と社会実装に取り組んでまいります。 アンモニア分解による水素製造技術に関してKBR(KELLOGG BROWN & ROOT LLC)との覚書を2023年7月にEPCパートナーとして初めて締結いたしました。低炭素社会の実現には水素エネルギーの役割が重要であり、CO2フリー水素バリューチェーンの構築が必須となります。水素エネルギーキャリアであるアンモニアの利点として、運搬や貯蔵の容易さに加えて、アンモニア火力発電などでの直接利用と共に、アンモニアを分解して水素を取り出し水素発電や燃料電池自動車(FCV)へ適用するなど用途の広さが挙げられます。当該技術による設備を主にアンモニアの受入基地に併設し、アンモニアを分解して水素を取り出すことで、将来の水素エネルギー社会の実現を推進してまいります。 小規模の水素需要にも対応するために、小型アンモニア分解装置の開発にも取り組んでおります。日本精線株式会社、中部電力株式会社、中部電力ミライズ株式会社と共同で、本装置の実用化検討に取り組む覚書を2024年4月に締結いたしました。水素の更なる利活用に向けた課題の解決を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。 アンモニア利用による化石燃料代替技術として、三井化学株式会社、丸善石油化学株式会社、双日マシナリー株式会社と共同で、エチレン分解炉におけるアンモニア燃料実用化研究開発に取り組んでおります。本開発は、燃料アンモニア利用を促進するとともに、エチレン分解炉のカーボンニュートラル化によって石化セクターのCO2排出量の大幅削減を目指すものであり、グリーンイノベーション基金による国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)実証事業として採択されました。2022年4月より共同実施者の双日マシナリー株式会社が分解炉に装着されるアンモニア燃焼バーナーの開発に取り組んでおります。同時に当社は小型の分解炉(試験炉)のFEEDに着手し、2023年度に完了いたしました。このFEEDをもとに詳細設計を進め、2024年11月から三井化学株式会社大阪工場で試験炉建設工事を開始いたしました。2025年度中には、アンモニア100%燃焼の分解炉の運転が開始される予定です。当該技術開発を通じて、化学産業のカーボンニュートラル化の実現に貢献してまいります。 FPSOで生産されるガスからアンモニアを製造するブルーアンモニアFPSOについて、MODECと共同でAiP(Approval in Principle: 基本設計承認)を米国船級協会(ABS)より取得いたしました。このブルーアンモニアFPSOは、貯留層に圧入されていた随伴ガスからブルーアンモニアを製造し、貯蔵および積出まで行うものです。またアンモニア製造過程で生じるCO2については大部分を回収し、その排出量を最小化しております。当社がこれまで培ってきたKBRのアンモニアプロセスの設計技術やFPSO向け装置設計の知見とMODECのFPSOプロジェクトで培った浮体式ソリューションにおける全体配置、船体設計、係留技術等の知見を融合させることで、このコンセプトの改良・深化に努め、安全で価格競争力のあるエネルギー供給ソリューションの提供を目指しております。 ② e-メタノール(自社技術 g-MethanolTMプロセス)分野 回収CO2の利活用については、CO2とグリーン水素から環境循環型メタノールを合成する自社技術であるg-MethanolTMを用いて、国内外での具体的な案件に取り組んでおります。お問い合わせが多い10t/日から数100t/日までのFS用の情報パッケージを提供するとともに、再生可能エネルギーによる発電量の変動(再エネ変動)に対応する設備計画最適化ツール「MethaMasterTM」を開発いたしました。このツールにより、プロジェクト毎の再エネ変動プロファイルに基づき、水電解設備や水素ホルダー、蓄電池やガスタービン等のシステム全体の迅速かつ効果的な計画提案が可能となり、顧客の初期計画段階からプラント建設プロジェクト実現をサポートしております。更に、プラント建設後の運用をサポートするシステム「MethaDynamicsTM」も開発しており、発電量の予測や出荷計画に基づいてプラントの運転ロードを検討し、再エネ変動下での運転計画の策定や意思決定を支援いたします。再エネで稼働するプラントの初期計画から、EPC、更にO&M(Operation & Maintenance)までのプラントライフサイクルを包括的にサポートするソリューションの提供を目指しております。 ③ SAF分野 SAF分野では、NEDOの委託を受け、三菱重工業株式会社、株式会社JERA、および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、木質系バイオマス等を原料としたバイオジェット燃料を合成する一貫製造実証プロジェクトを成功裏に完了させた後、引き続きNEDOの助成を受け、三菱重工業株式会社と共同で、将来のSAF供給の一端を担うべく、商業規模での製造技術確立とサプライチェーン構築検討を進めております。 ④ 地熱エネルギー分野 地熱エネルギーは大きな可能性を秘めており、カーボンニュートラル社会の実現のためベースロードとなり得る再生可能エネルギーとして期待されております。当社は、この地熱エネルギーの可能性を最大限に活用する「カーボンニュートラルパーク」(地下・地上の様々な関連技術を組み合わせた地熱フィールドの全体開発・最適化を進める構想)実現のための取り組みを推進しております。グループ会社で地熱発電設備のEPC実績が豊富なインドネシア・IKPT(PT. Inti Karya Persada Tehnik)とも連携しております。具体的には、2023年9月にインドネシアの地熱事業者であるPT Geo Dipa Energi、2024年2月にインドネシアの地熱事業者であるPT Medco Power Indonesia、2024年8月にインドネシアのエネルギー鉱物資源省とそれぞれ覚書を締結し、今後技術導入を検討してまいります。当社は、地熱分野でインドネシアの持続可能な社会の実現と経済発展に貢献し、将来的には日本の地熱開発にも技術を展開してまいります。 ⑤ 資源循環分野 資源循環分野では、世界的なプラスチック廃棄物の問題解決と循環型社会の実現に貢献するために、当社は、廃プラスチックリサイクル技術の開発を進めております。特に、熱分解油化を中心としたケミカルリサイクルの開発に取り組んでおり、2024年6月にタイのSCGケミカルズが60%出資するCirPlas(Circular Plas Company Limited)との間で、同社が保有する使用済み混合廃プラスチックの油化技術による石油化学原料化プロセスに関し、スケールアップおよび事業機会拡大のための協業に関するJDA(Joint Development Agreement: 共同開発契約書)を締結しました。これにより、両社のパートナーシップを更に強化し、商業化や第三者へのライセンス供与を見据えた技術・ビジネス両面での開発を加速させてまいります。現在、CirPlasおよびSCGケミカルズと共同で、実証プラントのスケールアップや技術実証を進めるとともに、外販のためのライセンス供与の準備など、ビジネス面での展開も進めております。 「都市鉱山」(使用済みの家電、携帯電話その他の製品から金属材料を回収し、再利用すること)や未利用資源の有効活用を実現するため、環境負荷の少ない微生物由来の吸着材を用いた有価金属回収技術の開発を進めております。都市鉱山分野では、高付加価値原料の多い自動車廃触媒中に含まれる貴金属の更なる回収、ヒ素等の毒性金属が含まれており廃棄物としていたスラッジ等からヒ素等を取り除き有価物に変える方法、今後廃棄物問題に直面するであろうリチウムイオンバッテリー(LIB)のリサイクル手法の開発を行っております。未利用資源の有効活用としては、地熱水に含まれる金・銀の回収プロセスの開発に取り組んでおります。 ⑥ SUPERHIDICTM・HERO(Hybrid Energy system Re-Optimization) 環境・省エネ分野では、脱炭素社会に貢献すべく、革新的省エネルギー蒸留システム「SUPERHIDICTM」に加え、プラントを構成するプロセス系・用役系を省エネ・GHG排出削減の観点から数学的に同時最適化するコンサルタントサービス「HERO」のビジネスを積極的に展開しております。「SUPERHIDICTM」は、CO2コストが高い欧州にて2023年度に実施した複数のFSについて、ライセンス契約の受注を目指して協議を進めております。更に、カーボンインテンシティの制約を守るために当該技術導入が効果的なことから、米州域において新規にライセンス契約を受注いたしました。また、経済産業省「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金制度」における先進設備・システムに認定され、国内の製造者により導入頂き易くなりました。「HERO」は国内外の顧客から複数の案件を受注し、特にタイ石油化学最大手であるGC(PTT Global Chemical Public Company Limited)社向けには、2つの案件を通して5.5万t/年のCO2排出量削減案を創出する改造プロジェクトが動き出しております。更に、この2案件を通してGC社より高い評価を頂き、同社と「主要プラントに対する包括的なHERO検討」および「その結果に基づく脱炭素化戦略策定のロードマップの作成」に関する覚書に調印し、2025年度から包括的な検討を開始しております。 《各事業分野のビジネス戦略強化》① 尿素分野 尿素プロセス「ACES21TM」は、当社が開発した保有プロセスであり、大型化と省エネを図るためのプロセス改良に取り組んでおります。2024年度はアンゴラ共和国の4,000t/日の尿素プラント向けの尿素ライセンス供与プロジェクトを受注いたしました。 尿素プロセスの開発の観点では、革新的次世代尿素プロセス「ACES21-LPTM」を2022年に発表いたしました。ACES21-LPTMは、従来のACES21TMの特徴を維持しながら、競合プロセスを含め最も低い合成圧力と最も高いCO2転化率を同時に実現する先進的プロセスです。ACES21-LPTMは、ACES21TMの優れたプロセスコンセプトと最先端の低圧合成技術を組み合わせることで現ACES21TMから更なる原料昇圧動力削減・プロセス効率向上によるエネルギー消費減と、合成機器軽量化によるプラントコスト削減を実現し、低コスト尿素製造と地球環境保全に貢献する技術です。2023年度にACES21TMを適用するインドネシア肥料プラント向け尿素ライセンス供与プロジェクトを受注いたしました。本設備はACES21-LPTMの設計を初めて適用する予定です。今後も一層のプロセス改良に取り組むとともに、DX-PLANTTMのソリューション深化と展開を図ることによる設備の運転および保全の最適化やカーボンニュートラルに向けた尿素プロセスの開発も推進してまいります。 ② 海洋資源開発分野 海洋資源開発の分野では、近年急速に需要が高まっているデジタル機器、再生可能エネルギー設備、ハイブリッド車や電気自動車等の電池材料、磁気材料等に欠かせないレアメタル・レアアース等の鉱物資源を深海から回収する国策技術開発の支援を行ってまいりました。内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のもと、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が率いる日本勢は、大水深6,000mからレアアースを回収するプログラムを進めております。ここでは、当社はこれまで培ってきた資源開発技術やサブシー技術を活用してレアアース泥回収システムの技術開発に携わっております。具体的には、2019年度の概念設計、2020年度の基本設計に引き続き、2021年度には「レアアース泥回収用解泥・揚泥機の製作」業務をJAMSTECから受託し、2022年度に実証試験の実施をサポートいたしました。2023年度、2024年度はレアアース分離・精製・製錬分野の支援を実施いたしました。従来のメタンハイドレート開発への取り組みも継続するとともに、統合的な海洋資源開発に向けたビジネス強化を進めております。また、日本CCS調査株式会社への出資・派遣などの対外的な活動も引き続き実施いたします。 ③ 医薬品分野 医薬品分野では、テックプロジェクトサービス株式会社(100%出資子会社)が、医薬品製造企業の多様なニーズに応えるエンジニアリングサービスを提供するとともに、将来を見据えた革新的な技術開発を行っております。低分子医薬品向けの原薬連続生産技術開発ではNEDO戦略的省エネルギー技術革新プログラムにて開発した「iFactory」のビジネス展開を開始し、中分子・バイオ医薬品向けには、シングルユース技術を活用した自動化装置開発を行うことで2024年度までに4件の特許を取得し、精製工程連続化の設備開発や不活化、清澄化および無菌ろ過、充填等の各工程省力化システムを納入いたしました。 ④ O&M 当社は、長年培ってきたEPC事業の知見と技術を活かし、顧客の経年プラントの安全・安定操業に貢献するため、2021年度より「プラントの継続操業支援」サービスを開始しております。本サービスは、総合的なエンジニアリング力と様々な専門要素技術力を融合し、経年プラントが抱える安全性や安定操業上の課題に対し、最適な解を提供するものです。 この取り組みは、プラントライフサイクルを通じて顧客の課題を解決する課題解決型企業への進化を具体化するものであり、わが国の製造業の維持や持続的発展にも寄与する社会的意義を有しております。 今後も、経年プラントの安全性向上および安定操業の実現に向けたニーズに応え、支援を必要とする企業に本サービスを積極的に展開してまいります。 《EPC事業の基盤強化》① DX/ICT分野 当社では、ドキュメント中心からデータ中心へと業務を変革する取り組みが加速しており、プロジェクト・エンジニアリング・サプライチェーン・工事など各部門が保有する膨大な情報を統合的に活用することで、EPCプロジェクト全体のDX化を推進しております。この一環として、エンジニアリングから調達・建設に至る一連のプロセスを俯瞰・管理する「Enterprise Data Platform」を構築し、データ収集・管理・分析基盤を高度化いたしました。これにより、設計や施工など各フェーズで生じる3Dおよびエンジニアリングデータと、経営・財務・リソース関連のビジネスデータを連携させることが可能となり、プロジェクト遂行時のリスク可視化やスケジュール・コストの最適化が飛躍的に向上しております。 具体的な成果としては、2022年に開始した地下工事のスケジュール遅延リスクを3D CADモデルから検知するシステムの実案件での適用(HEROZ株式会社との共同開発)に関して、2023年には効果が明確になり、プロジェクト全体の業績向上に寄与しております。更に、当社が重視するAWP(Advanced Work Packaging)のプロジェクトでの実装を2024年に推進した結果、EPC分野においては12件の案件に適用が拡大し、DXを通じた工程可視化・効率化が収益性の向上に大きく貢献しております。 また、コーポレートマネジメントの変革にも注力しており、重要意思決定機関である各委員会での支援ツールとして「CMC(Corporate Management Cockpit)」を構築いたしました。CMCは、リソース計画、DX投資、リスク管理などを相互に連動させるデータモデルに基づく高度な意思決定基盤として運用されており、当社が取り組む多岐にわたるプロジェクトを総合的に可視化・管理することで、迅速かつ的確な経営判断を実現しております。 上記のように、当社のDX推進は、プロジェクトのライフサイクル全体のデジタル化のみならず、経営レベルの意思決定プロセス全体を革新する段階へと発展しております。今後も「Enterprise Data Platform」やCMCを通じた高度なデータ活用を更に深化させることで、ビジネス改革と提供価値の向上を継続的に追求し、社会への貢献を拡大してまいります。 ② 技術研究所 当社では1990年代初めに千葉県習志野市のエンジニアリングセンター敷地内に技術研究所を同県茂原市から移転し、継続して自社商品技術やEPC遂行技術の開発および強化に努めてまいりましたが、新規事業領域での研究開発活動強化も勘案し、規模を拡張した技術研究所(T-Labo!)を千葉土気緑の森工業団地内(千葉市緑区)に2024年3月に新設開所いたしました。T-Labo!の名称は、Technology、TOYO、土気のそれぞれ3つのTを由来としています。開発拠点のみならず、リモートオフィスとしての機能も持ち、ABWに対応する新しい働き方に即した拠点として、新たに運用を開始しております。また、新建屋屋上には太陽光発電設備も設置し、T-Labo!の運営におけるカーボンニュートラル化とサステナビリティ推進も図ってまいります。
5 【研究開発活動】(EPC事業)当連結会計年度において、当社グループは研究開発費2,661百万円を投入し、技術力強化方針として「新たなビジネス・商品開拓」、「基幹ビジネスの基盤強化」、「各事業部のビジネス戦略強化」につき、以下の研究開発活動を当社グループ内および産官学連携により実施いたしました。 《新たなビジネス・商品開拓》 IoT分野では、デジタル基盤を介したプラント運営支援を目指し、DX-PLANT®のソリューション深化と拡販を進めております。そのためにシステム基盤を構築し、工場オーナーにとって導入しやすく、その要求に柔軟に対応できる体制を整えました。2021年度は新たに、海外の1件の肥料工場、1件の地下資源生産設備に加え、国内エチレン工場においても導入を行い、計8件の導入実績となります。また、尿素プラント向け運転監視・最適化システム(PMOS®)や、エチレン分解炉の運転状態予測・最適化支援システム(RL-Tracker®)など、当社の知見を活かした高付加価値ソリューションの運用を行っております。今後は尿素・エチレン以外の化学工場やCN関連設備など様々な産業設備へ適用のアプローチを進め、更に技術支援サービスにおけるDX技術の活用など新しい顧客支援領域を拡張し、顧客のプラント運営の収益改善に貢献してまいります。 環境・省エネ分野では、低炭素社会に貢献すべく、革新的省エネルギー蒸留システム“SUPERHIDIC®”に加え、プラントを構成するプロセス系・用役系を省エネ・GHG排出削減の観点から数学的に同時最適化するコンサルタントサービス“HERO(Hybrid Energy system Re-Optimization)”のビジネスを積極的に展開しております。“SUPERHIDIC®”ではライセンス契約を受注し基本設計図書を納入、“HERO”では国内顧客に続き、海外顧客からも受注し検討実施中です。両技術とも、これらの案件で大規模な温室効果ガス削減に繋がる提案が創出されております。 世界的に急速に加速している温室効果ガスのゼロエミッション実現に向け、エネルギーシフトも促進される現在、CCSは二酸化炭素排出削減の不可欠な技術となっております。当社は、二酸化炭素の分離回収・貯留に関する技術分野において、Baker Hughes社などの協業パートナーと連携を行い、CCUS案件の実現を図っております。当社が推し進めているアンモニアバリューチェーン事業においては、CCS/CO2-EORを組み合わせることにより、CO2排出ゼロのアンモニア燃料の実現を目指しております。2022年度より東証市場再編後のプライム市場上場会社に気候変動によるリスク情報の開示(TCFD提言)が実質的に義務付され、今後益々、企業のCO2削減努力が求められていきます。そのような顧客を支援すべく、CCUSの分野では後述するようにCO2利活用の分野にも取り組んでおります。また、日本CCS調査株式会社への出資・派遣などの対外的な活動も引き続き実施しております。 次世代環境技術分野では、バイオマス燃料製造において、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受け、三菱パワー株式会社、株式会社JERA、およびJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と共同で、木質系バイオマス等を原料としたバイオジェット燃料を合成する一貫製造実証プロジェクトに参画しております。バイオジェット燃料合成装置では、パートナー企業との共同開発による小型FT(Fischer-Tropsch)合成技術(一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成する)を採用しております。2021年度は、JERAの新名古屋火力発電所構内に設置の実証プラントで、木くずから一貫製造した持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)を、世界で初めて商業フライトに供給、成功裏にプロジェクトを終了いたしました。本プロジェクトに引き続き、NEDOの助成を受け、株式会社JERA、三菱重工業株式会社、伊藤忠商事株式会社と共同で、国内における将来のSAF供給の一端を担うべく、商業規模での製造技術確立とサプライチェーン構築検討を進めております。水素燃料キャリアとしてのアンモニア利用技術開発の一環として、CFAA(一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会)に理事会員として参画しており、CO2フリーアンモニアサプライチェーン実証を目的として、石炭火力発電所等でのNH3混焼によるCO2排出低減や海外でのアンモニアバリューチェーンの事業化について検討を継続しております。アンモニア利用による化石燃料代替技術として、三井化学株式会社、丸善石油化学株式会社、双日マシナリー株式会社と共同で、エチレン分解炉におけるアンモニア燃料実用化研究開発に取り組み始めております。本開発は、燃料アンモニア利用を促進するとともに、エチレン分解炉のCN化によって石化セクタのCO2排出量の大幅削減を目指すものであり、グリーンイノベーション基金によるNEDO実証事業として採択されました。また、もう一つのエチレン分解炉のCO2排出技術として、当社独自の分解炉の電化技術(e-FurnaceTM)の研究開発も進めております。こちらもNEDOの国際実証事業の第一段階調査事業として採択されました。いずれも社会実装実現に向けて開発を進めてまいります。2020年度からは、早期水素社会を構築することを目的とした水素バリューチェーン推進協議会に参画し、水素利用の社会実装に向けてプロジェクトの提案、需要創出、規制整備等の政策提言などについて検討しております。また、NEDOの委託を受けて、海外の水素製造技術の調査を行い、2021年度は中間調査報告書を提出いたしました。2022年度は海外水素ベンチャーの水素製造装置を用いた実証試験を実施の上報告いたします。更に、人工光合成水素を活用するプロセス開発においても、光触媒技術を有する富山大学と当社の分離技術を組み合わせる共同研究契約を締結し、早期の社会実装に向けて開発を進めております。回収CO2の有効利用については、CO2とH2を原料とする新型メタノール合成やメタネーションを中心としたCO2固定化の検討を続けております。例えば、CO2とH2を原料とするメタノール関連では、g-Methanol®として国内外での具体的な案件創出を目指しております。また、東芝エネルギーシステムズ株式会社、株式会社東芝、出光興産株式会社、全日本空輸株式会社、日本CCS調査株式会社と共同でCO2電解技術とFT合成技術を組み合わせてSAFを製造する炭素循環ビジネスモデルを検討しております。本取り組みは、環境省の2021年度委託事業として採択されており、同事業の後押しを受けて、脱炭素化の促進と地域振興を両立させる検討を進めております。廃プラスチックリサイクルについては、廃プラのガス化および油化のケミカルリサイクルを中心に検討を進めております。その一環として、タイのSCGケミカルズが60%出資しているCircular Plas Company Limited (CirPlas)と同社が保有する混合廃プラスチックの油化技術の商業化に向けた共同検討に関する基本合意書を締結いたしました。現在、当社はSCGケミカルズ、CirPlasとともに早期の商業化に向けたスケールアップの検討を実施しております。 原子力分野では、廃炉先進国ドイツで使用済燃料や廃棄物の貯蔵技術、同施設運営の実績を有するGNS(ゲゼルシャフト原子力サービス)社との協力関係を継続強化するとともに、新たに英国で同じく廃炉関連実績を有するJacobs社との協力関係を進め、国内の廃炉分野で主にプロジェクト・マネージメント、エンジニアリングサービスに関する共同提案を行うなどの取り組みを継続実施しております。また、廃止措置業務支援の一環として、業務の効率化、廃棄物管理の最適化のための管理システムツールの構築支援も視野に入れて、社内DX(Digital Transformation)技術の活用や社外最新技術情報を入手し、廃止措置の計画、実行管理に有用となるシステム検討を行っております。具体的な事例としては、放射線量が高く人のアクセスが限定される場所(格納容器等)での解体と放射性廃棄物の管理の生産性および品質向上を目指した現場スキャンによる3D-CAD化(見える化)と管理システムへの統合、廃止措置工程管理システムの構築等に注力しております。 《基幹ビジネスの基盤強化》 ICT分野では、当社の基幹ビジネスであるEPC遂行力強化や競争力強化を加速するため、2019年7月にDXoT(Digital Transformation of Toyo)推進部を立上げ、2025年に向けたビジョンとロードマップ、それを実現させるためのICT中期戦略を策定いたしました。本ロードマップに基づき、Engineering, Procurement, Construction, Projectのそれぞれの分野において、デジタル技術を活用したデジタルツインを構築することによるマネジメント強化、設計品質の向上、納期遵守、工期短縮を図っております。デジタル技術を活用したデータセントリックなプロジェクト実行手法が海外拠点展開を含め徐々に定着してきており、引き続き、プロジェクトへのAWP(Advanced Work Packaging)実装を深化させ、プロジェクト遂行における一気通貫のデジタリゼーションを目指します。また、開発・検証が完了した工事性に関する異常予兆検知支援AIを活用したリスクマネジメント強化と合わせることで更に生産性と業務スピードの向上を目指します。また、全社的ICT化推進活動を通じて、高い変化への対応力、イノベーションを生み出せる文化の醸成を図ってまいります。 工事技術分野では、上記のAWPや4D(3次元および時間軸)計画情報を使った施工性検討の実用化推進の他、AIを活用する事によって、地下構造物の危険検知、設計変更による対応、工事シーケンスの見直し等の工事リスクの早期対策を図っております。また、現場業務のDX(Digital Transformation)化の一環として、溶接管理システム、および品質管理システムを深化させて、高圧ガス配管関連の検査図書整備の効率化を進めております。更に、工程管理システムを深化させることで、各種工事の進捗に関するKPI(Key Performance Indicator)を自動更新できるようにいたしました。この機能を活用することで問題点の分析作業性の向上や見える化を進化させ、現場管理業務の生産性を向上させることに取り組んでおります。なお、建設ICTの具体的な手段としては、3次元レーザー測量技術を中心とした新技術の調査と実用化を進めております。 調達分野では、品質管理業務の確実性の向上とそれに伴う損失コスト極小化を目的に、各種の新規技術を検証実施中および活用中です。例えば、レーザー測定技術活用に関しては塔槽類内部品の測定精度向上の検証を行っており、スマートグラス利用に関しては実用化に移行することで遠隔検査技術の利便性向上に寄与しております。 《各事業部のビジネス戦略強化》尿素プロセス“ACES21®”は、当社が開発した保有プロセスであり、大型化と省エネを図るためのプロセス改良に日々取り組んでおります。またカーボンニュートラルに向けた尿素プロセスの開発も進めております。世界最大生産量となるナイジェリア向け尿素製造設備(4,000 t/日)の2号機は無事引渡しを完了し商業運転を開始いたしました。試運転では原料の初投入から尿素の安定生産までを短期間で到達し、円滑な設備立上げを達成いたしました。当社の技術力とリーダーシップに対しお客様から高い評価をいただいております。また、インド向け尿素製造設備(3,850 t/日)は2022年3月に引き渡しに向けた試運転を開始いたしました。今後も一層のプロセス改良に取り組み、IoT技術との連携を推進することにより設備の運転および保全の最適化にも貢献してまいります。 鉄道分野では、鉄道システムインテグレーター(鉄道SI)を目指して約15年前から本格的に取り組みを開始し、当社初の鉄道EPCプロジェクトであるジャカルタMRTが2019年に完工しました。本プロジェクトの経験を活かし、現在もSIとしての構成要素技術のレベル向上に取り組んでおります。今後も当社として差別化できる案件を選別の上、海外鉄道プロジェクトのEPCに一括で対応する鉄道SIビジネスに注力してまいります。 バイオマス発電分野では、完工済みもしくは現在進行中の複数の50MW/75MW案件の知見・ノウハウを生かし、50MW/75MW案件と同じCFBボイラ(Circulating Fluidized Bed:Andritz社製)とSTG(Steam Turbine Generator:Siemens社製)の組み合わせで112MW案件へのスケールアップへの取り組みを開始しております。また、EPC請負のみならず、発電事業参画やアフターサービス事業、更には燃料供給等への展開も検討し、バイオマスバリューチェーン構築に取り組んでまいります。更に、国内での実績・知見を活かし、当社の海外EPC拠点やローカルパートナーとも連携して、海外でのバイオマス発電案件にも積極的に取り組んでまいります。 海洋資源開発の分野では、近年急速に需要が高まるデジタル機器、再生可能エネルギー設備、ハイブリッド車や電気自動車等の電池材料、磁気材料等に欠かせないレアメタル・レアアース等の鉱物資源を深海から回収する国策技術開発の支援を行ってまいりました。内閣府SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)のもと、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が率いる日本勢は、大水深6,000mからレアアースを回収するプログラムを進めております。当社がこれまで培ってきた資源開発技術やサブシー技術を活用してレアアース泥回収システムの技術開発に携わっております。具体的には、2019年度の概念設計、2020年の基本設計に引き続き、2021年度には「レアアース泥回収用解泥・揚泥機の製作」業務をJAMSTECから受託し、2022年度に予定されている実証試験に向けたシステムの実現に取り組んでおります。更に、2021年度から新たに「海洋鉱物資源調査に係るコバルトリッチクラスト用採鉱試験機の設計に向けた技術開発等調査」をJOGMECから受託し、深海でのレアメタル採取技術についても取り組みを開始いたしました。従来のメタンハイドレート開発への取り組みも継続するとともに、統合的な海洋資源開発に向けたビジネス強化を進めております。 医薬品分野では、テックプロジェクトサービス株式会社(100%出資子会社)が、医薬品製造企業の多様なニーズに応えるエンジニアリングサービスを提供すべく、将来を見据えた革新的な技術開発を行っております。低分子医薬品向けの原薬連続生産技術開発では、省エネ・省人型革新的連続生産システムとして関係各社と取り組んでいるiFactoryが2022年1月に第4回日本オープンイノベーション大賞「経済産業大臣賞」を受賞いたしました。中分子・バイオ医薬品向けには、シングルユース技術を活用した自動化装置開発を行っており、2020年度の精製工程連続化の運転設備納入に続き、不活化システム、清澄化システム、無菌ろ過システムの省力化システムを2021年度に納入いたしました。また、2020年12月に実施した大成建設株式会社との先端医薬・ファイケミカル分野のエンジニアリング事業での業務提携により、2021年度にバイオ医薬系プラントを受注し、プロジェクトを遂行しております。
FY2021|5,414 文字
5 【研究開発活動】(EPC事業)当連結会計年度において、当社グループは研究開発費2,346百万円を投入し、技術力強化方針として「新たなビジネス・商品開拓」、「基幹ビジネスの基盤強化」、「各事業部のビジネス戦略強化」につき、以下の研究開発活動を当社グループ内および産官学連携により実施いたしました。 《新たなビジネス・商品開拓》 IoT分野では、デジタル基盤を介したプラント運営支援を目指し、DX-PLANT®のソリューション深化と拡販を進めています。そのためにシステム基盤を構築し、工場オーナーにとって導入しやすくその要求に柔軟に対応できる体制を整え、海外の5件の肥料工場と接続し運用中です。また、尿素プラント向け運転監視・最適化システム(PMOS®)や、エチレン分解炉の運転状態予測・最適化支援システム(RL-Tracker®)など、当社の知見を活かした高付加価値ソリューションの開発・実装を行いました。肥料のほかに石油化学プラントなど様々な産業設備へ適用のアプローチも進めており、更に技術支援サービスにおけるDX技術の活用など新しい顧客支援領域を拡張し、顧客のプラント運営の収益改善に貢献していきます。 環境・省エネ分野では、低炭素社会に貢献すべく、革新的省エネルギー蒸留システム“SUPERHIDIC®”の販売促進を国内外で本格化させています。また、2019年度に開発した、プラントを構成するプロセス系・用役系を、省エネ・GHG排出削減の観点から数学的に同時最適化する手法“HERO(Hybrid Energy system Re-Optimization)”についても商業化し、既に国内で数件受注しています。これにより、ヒトの発想だけでは困難な革新的な省エネ案を創出し、当社保有技術のSUPERHIDIC®と合わせて提案することにより、お客様の期待以上の価値を提供できるようになりつつあります。 電力分野では、当社敷地内に設置した産業用蓄電池を用いて、平成31年度に引き続き経済産業省の令和2年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業にリソースアグリゲーターとして参画し、各種の知見を得ることができました。 世界的に急速に加速している温室効果ガスのゼロエミッション実現に向け、エネルギーシフトも加速する今、CCSは二酸化炭素削減の不可欠な技術となっています。当社は、二酸化炭素の分離回収・貯留に関する技術分野において、日鉄エンジニアリング株式会社などの協業パートナーと連携を行い、CCUS案件の実現を図っています。当社が推し進めているアンモニアバリューチェーン事業においては、CCS/CO2-EORを組み合わせることにより、CO2排出ゼロのアンモニア燃料の実現を目指しております。CCUSの分野では、カーボンリサイクルを目指し、後述するようにCO2利活用の分野にも取り組んでおります。加えて、日本CCS調査株式会社への出資・派遣などの対外的な活動も引き続き実施しております。 次世代環境技術分野では、バイオマス燃料製造において、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受け、三菱パワー株式会社、株式会社JERA、およびJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と共同で、木質系バイオマス等を原料としたバイオジェット燃料を合成する一貫製造実証プロジェクトに参画しております。バイオジェット燃料合成装置では、パートナー企業との共同開発による小型FT(Fischer-Tropsch)合成技術(一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成する)を採用しております。2020年度は、JERAの新名古屋火力発電所構内で、世界でも注目されている木質バイオマスからバイオジェット燃料留分までの一貫製造を実証しました。また、ここで得られた全てのバイオジェット燃料は、標準規格である米国ASTM D7566を満たすことを確認しました。今後は社会実装に向けて更なる開発を進めてまいります。水素燃料キャリアとしてのアンモニア利用技術開発の一環として、CFAA(一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会)に理事会員として参画しており、CO2フリーアンモニアサプライチェーン実証を目的として、石炭火力発電所等でのNH3混焼によるCO2排出低減について検討を継続して実施しております。当社独自案件としては、東シベリア-日本間のブルーアンモニアバリューチェーン事業化調査をイルクーツク石油会社(IOC)、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (JOGMEC)、伊藤忠商事株式会社の3者と共同で実施しております。2020年度よりは、早期水素社会を構築することを目的とした水素バリューチェーン推進協議会に参画し、水素の社会実装に向けてプロジェクトの提案、需要創出、規制緩和等の政策提言などについて検討しています。回収CO2の有効利用については、CO2とH2を原料とする新型メタノール合成やメタネーションを中心としたCO2固定化の検討を続けています。CO2とH2を原料とするメタノールは、g-MethanolTMとして国内外での具体的な案件創出を目指しています。SAF (Sustainable Aviation Fuel:原材料の生産から燃焼までの過程でCO2の排出量が少ない持続可能な供給源から製造されるジェット燃料)を供給するサプライチェーンにおける課題抽出や将来のビジネスモデルの検討を東芝エネルギーシステムズ株式会社、株式会社東芝、出光興産株式会社、全日本空輸株式会社、日本CCS調査株式会社と共同で実施しています。低炭素化に向けた選択肢の1つとしての天然ガス利用に関して、技術的難易度が高いことから活用されていなかった酸性ガスについて低コスト処理可能で、分離CO2の貯留・利用への活用優位性のあるタート(TarT)プロセスに関しての包括協定書を米国8 RIVERS社と締結しました。廃プラスチックリサイクルについては、廃プラのガス化および油化のケミカルリサイクルを中心に継続して検討を進めています。現在、数多くのガス化および油化プロセスが各社により開発、実証、導入が進められていますが、当社は当該プロセスについてテクノロジーホルダーとともに社会実装化を目指した検討を行っています。 原子力分野では廃炉先進国ドイツで使用済燃料や廃棄物の貯蔵技術、同施設運営の実績を有するGNS(ゲセルシャフト原子力サービス)社との協力関係を継続強化するとともに、新たに英国で同じく廃炉関連実績を有するJacobs社との協力関係を進め国内の廃炉分野で主にプロジェクト・マネージメント、エンジニアリングサービスに関する共同提案を行うなどの取組みを継続実施しています。 《基幹ビジネスの基盤強化》 ICT分野では、当社の基幹ビジネスであるEPC遂行力強化や競争力強化を加速するため、2019年7月にDXoT(Digital Transformation of Toyo)推進部を立上げ、2025年に向けたビジョンとロードマップ、それを実現させるためのICT中期戦略を策定しました。本ロードマップに基づき、Engineering, Procurement, Construction, Projectのそれぞれの分野において、デジタル技術を活用したデジタルツインを構築することによるマネジメント強化、設計品質の向上、納期遵守、工期短縮を図っています。具体的には、プロジェクトステータスのリアルタイムモニタリングを10プロジェクト(海外7 (内3つは海外拠点独自案件), 国内3)に適用、多大な工数をかけて人力で実施していた3D設計の品質チェックをシステム化、設計業務の自動化、建設現場のデジタル化、また工事/試運転からバックキャスティングしたエンジニアリングを実現する新たなEPCワークプロセスであるAWP(Advanced Work Package)を実プロジェクトに適用する体制が整備され、AWP実現に欠かせない材料の発注から現場での払出までの集中管理するサプライチェーンマネジメント導入も進めています。引き続き、パートナー企業、大学等と協力し、AIを利用した業務システムの構築や先端デジタル技術の業務への利用の検証を行い、海外拠点を含めた当社グループ全体のEPC業務・本社部門業務へ適用することで更に生産性と業務スピードの向上を目指します。また、全社的ICT化推進活動を通じて、高い変化への対応力、イノベーションを生み出せる文化の醸成を図っていきます。 工事技術分野では、上記のAWPや4D(3次元および時間軸)計画情報を使った施工性検討の実用化推進、工事材料管理手法の強化、半自動溶接の手法の実証検証、現場業務のDX(Digital Transformation)化、3次元レーザー測量技術を中心とした新技術の調査と実用化を進めています。 調達分野の技術では、品質管理機能において、検査業務の効率化ならびに高度化の観点から、最新検査技術の実用化研究を行っています。具体的には、レーザー測定技術を活用した塔槽類内部品の測定精度向上やスマートグラスを活用した遠隔検査技術の利便性向上などで進捗がありました。 《各事業部のビジネス戦略強化》尿素プロセス“ACES21®”は、当社が開発した保有プロセスであり、大型化と省エネを図るためのプロセス改良に日々取り組んでいます。世界最大生産量となるナイジェリア向け尿素製造設備(4,000 t/日)の2号機は、2021年4月に引渡しに向けた試運転を開始しました。また、インド向け尿素製造設備(3,850 t/日)も2021年度内に稼働開始すべく工事が進んでいます。今後も一層のプロセス改良に取り組み、IoT技術との連携を推進することで設備の運転および保全の最適化にも貢献していきます。 鉄道分野では、鉄道システムインテグレーター(鉄道SI)としての技術・知見の獲得および市場調査を目的としたタスクチームを約10年前に立ち上げ、交通ビジネスへの取組みを本格的に開始しました。その成果として、当社初の鉄道EPCプロジェクトであるジャカルタMRTが2019年に完工し、同鉄道の延伸計画に係るプロポーザルにも引き続き取り組んでおります。更にはその他国内外の案件への取組みも開始し、着実に鉄道分野での取組みを拡大しています。今後も本プロジェクトの経験を活かし、海外鉄道プロジェクトのEPCに一括で対応できる鉄道SIビジネスに注力します。 バイオマス発電分野では、現在進行中の複数の50MW/75MW案件の知見・ノウハウを生かし、50MW/75MW案件と同じCFB(Circulating Fluidized Bed:Andritz社製)ボイラーとSTG(Steam Turbine Generator:Siemens社製)の組み合わせで112MW案件へのスケールアップへの取組みを開始しました。50MW/75MW同様に、まずはCFBボイラーの基本計画有償業務を実施し、その結果をもとにSTGおよびBOP(Balance of Plant:付帯設備)のスケールアップ検討を経て、112MWクラスバイオマス発電所の技術仕様として取り纏めていく予定であります。 海洋資源開発の分野では、近年急速に需要が高まるデジタル機器、再生可能エネルギー設備、ハイブリッドカーや電気自動車等の電池材料、磁気材料等に欠かせない、レアメタル、レアアース等の鉱物資源を、深海から回収しようとする国策技術開発の支援を行ってまいりました。内閣府SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)のもと、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)率いる日本勢は、大水深6,000mからレアアースを回収するというプログラムを進めています。当社は、これまで培ってきた、資源開発技術、サブシー技術、および協業パートナー(日鉄エンジニアリング株式会社・米国のベーカーヒューズ社・ノルウェーのアーカーソリューションズ社など)と取り組んできた海洋資源開発手法を活用してレアアース泥回収システムの技術開発に携わっています。具体的には、2019年度に引き続き、「レアアース泥回収システムの基本設計」業務をJAMSTECから受託し、2022年度に予定されている実証試験に向けたシステムの実現に取り組んでいます。加えて、従来のメタンハイドレート開発への取組みも継続すると共に、海洋資源開発に向けたビジネス強化を進めています。 医薬品分野では、テックプロジェクトサービス株式会社(100%出資子会社)が、医薬品製造企業の多様なニーズに応えるエンジニアリングサービスを提供すべく、将来を見据えた革新的な技術開発を行っています。低分子医薬品向けの原薬連続生産技術開発の進展に伴い、モジュール化装置および高薬理活性物質用移動式集塵装置を開発し、2020年度の実機納入に至りました。中分子・バイオ医薬品向けにシングルユース技術を活用した自動化装置開発を行い、精製工程連続化の運転設備を2020年度納入しました。
FY2020|4,210 文字
5 【研究開発活動】(EPC事業)当連結会計年度において、当社グループは研究開発費1,925百万円を投入し、技術力強化方針として「新たなビジネス・商品開拓」、「基幹ビジネスの基盤強化」、「各事業部のビジネス戦略強化」につき、以下の研究開発活動を自社グループ内および産官学連携により実施いたしました。 《新たなビジネス・商品開拓》 IoT分野では、デジタル基盤を介したプラント運営支援を目指し、DX-PLANT®のソリューション深化と拡販を “IoT推進部”および、“DXエンジニアリング部”を中心に進めています。日鉄エンジニアリング株式会社との連携を基にシステム基盤を構築し、工場オーナーにとって導入しやすくその要求に柔軟に対応できる体制を整え、海外の5件の肥料工場と接続しその運用を開始しました。肥料のほかに石化工場への適用アプローチも進めており、さらに新しい顧客支援領域を拡張し、顧客のプラント運営の収益改善に貢献していきます。環境・省エネ分野では、低炭素社会に貢献すべく、革新的省エネルギー蒸留システム“SUPERHIDIC”の研究開発の継続的取組みとともに国内外で販売促進を本格化させています。また、プラントを構成するプロセス系・用役系を、省エネ・GHG排出削減の観点から数学的に同時最適化する手法“HERO(Hybrid Energy system Re-Optimization)”を、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成のもとで開発しました。これにより、包括的な観点からSUPERHIDICを提案できるようになっただけでなく、人間では発想が困難な革新的な省エネ案を創出できるようになりました。HEROは、既に複数の国内大手石油化学メーカーからご発注いただいています。新電力分野では、新規事業創出を目指して、当社敷地内に産業用蓄電池を設置し、経済産業省の平成31年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業に参画しました。この実証事業への参画により得た知見を蓄積・活用し、新電力分野での電力需給に参画するビジネス開発を進めていきます。CCS分野では、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」に基づいた温室効果ガス排出量削減目標達成に向けて、当連結会計年度も二酸化炭素の分離回収・貯留に関する技術分野で日鉄エンジニアリング株式会社などの協業パートナーと連携を行い、CCSを視野に入れたCO2-EOR案件での具体化を図っています。また、日本CCS調査株式会社への出資・派遣などの対外的な活動も引き続き実施しています。次世代環境技術分野では、バイオマス燃料製造において、NEDOの委託を受け、MHPS(三菱日立パワーシステムズ株式会社)、株式会社JERA、およびJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と共同で、木質系バイオマスを原料としたバイオジェット燃料を合成する一貫製造実証プロジェクトに参画しています。バイオジェット燃料合成装置では、パートナー企業との共同開発による小型FT(Fischer-Tropsch)合成技術(一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成する)を採用しています。実証プロジェクトでは、JERAの新名古屋火力発電所構内で翌連結会計年度(2020年度)の検証運転を目指し、当連結会計年度(2019年度)末から試運転を開始しました。水素燃料キャリアとしてのアンモニア利用技術開発の一環として、当連結会計年度より一般社団法人グリーンアンモニアコンソーシアムに加入し、CO2フリーアンモニアサプライチェーン実証を目的として、石炭火力発電所等でのNH3混焼によるCO2排出低減について検討を開始しました。回収CO2の有効利用については、CO2とH2を原料とする新型メタノール合成やメタネーションを中心としたCO2固定化の検討を続けています。当連結会計年度からは、CO2を資源として捉え再利用する研究助成や広報活動を推進しイノベーションの創出を図る一般社団法人カーボンリサイクルファンドにも加入しました。廃プラスチックリサイクルについて、廃プラのガス化および油化のケミカルリサイクルを中心に検討を進めています。これらのプロセスは、当社の既存のプロセス商品や開発した技術との関連性が高く、すでに開発パートナーとともに商業化検討を開始しました。原子力分野では廃炉先進国ドイツで使用済燃料や廃棄物の貯蔵技術、同施設運営の実績を有するGNS(ゲセルシャフト原子力サービス)社と協力関係を進め国内の廃炉分野で共同提案を行うなどの取組みを継続しています。 《基幹ビジネスの基盤強化》ICT分野では、昨今破壊的イノベーションが起きているデジタル化の流れを踏まえ、当社の基幹ビジネスであるEPC遂行力強化や競争力強化を加速するため、2019年7月にDXoT(Digital Transformation of TOYO)推進部を立上げ、2025年に向けたビジョンとロードマップを策定しました。本ロードマップに基づき、Engineering・Procurement・Construction・Projectのそれぞれの分野において、デジタル技術を活用することによるマネジメント強化、効率化、設計品質の向上を図っています。具体的には、プロジェクトステータスのリアルタイムモニタリングを5つのプロジェクトに適用、多大な工数をかけて人力で実施していた3D設計の品質チェックをシステム化、また工事/試運転からバックキャスティングしたエンジニアリングを実現する新たなEPCワークプロセスであるAWP(Advanced Work Package)を実プロジェクトに適用する体制が整備されました。引き続き、AI (Artificial Intelligence)、RPA(Robotic Process Automation)、BI(Business Intelligence)等のデジタル技術の業務への利用の検証を行い、順次業務へ適用することでさらに生産性と業務スピードの向上を目指します。また、全社的ICT化推進活動を通じて、イノベーションを生み出せる文化の醸成を図っていきます。工事技術分野では、上記のAWPや4D(3次元および時間軸)計画情報を使った施工性検討の実用化推進、工事施工期間中に有効な資材養生技術の研究、工事材料管理手法の強化、基礎的工事技術力強化、非破壊検査分野を中心とした新技術の調査と実用化を進めています。調達分野の技術では、品質管理機能があり、検査業務の効率化ならびに高度化の観点から、最新検査技術の実用化研究を行っています。具体的には、レーザー測定技術を活用した塔槽類内部品の測定精度向上やスマートグラスを活用した遠隔検査技術の利便性向上などがあります。 《各事業部のビジネス戦略強化》尿素プロセス“ACES21®”は、当社が開発した保有プロセスであり、大型化と省エネを図るためのプロセス改良に日々取り組んでいます。現在、インド向け尿素製造設備(3,850 t/日)とナイジェリア向け尿素製造設備(4,000 t/日、2017年度引渡しの1号機に続く2号機)は翌連結会計年度(2020年度)下期に稼働開始すべく工事が進んでいます。今後も一層のプロセス改良に取り組み、IoT技術との連携を推進することで設備の運転および保全の最適化に貢献していきます。鉄道分野では、鉄道システムインテグレーター(鉄道SI)としての技術・知見の獲得および市場調査を目的としたタスクチームを約10年前に立ち上げ、交通ビジネスへの取組みを本格的に開始しました。その成果として当社初の鉄道EPCプロジェクトであるジャカルタMRTを、2019年に完工し客先への引渡しを終えました。今後も本プロジェクトの経験を活かし、海外鉄道プロジェクトのEPCに一括で対応できる鉄道SIビジネスに注力します。バイオマス発電分野では、現在進行中の50MW案件の知見・ノウハウを生かし、50MW案件と同じCFB(Circulating Fluidized Bed:Andritz社製)ボイラーとSTG(Steam Turbine Generator:Siemens社製)の組み合わせで75MW案件へのスケールアップに取り組みました。まず、CFBボイラーの基本計画有償業務を実施し、その結果をもとにSTGおよびBOP(Balance of Plant:付帯設備)のスケールアップ検討を経て、75MWクラスバイオマス発電所の技術仕様として取纏めました。この取組みがその後の御前崎港案件のEPC受注と、他の新規75MW案件の先行設計業務の受注に繋がっています。今後、マーケット状況を睨み110MWへのスケールアップの取組みも検討していきます。海洋資源開発の分野では、前連結会計年度に引き続き、協業パートナーである日鉄エンジニアリング株式会社・米国のベーカーヒューズ社・ノルウェーのアーカーソリューションズ社とともに、海洋資源開発手法の検討を行ってきました。原油価格の動向が不透明な中、今期は海底鉱物資源の開発にも取り組んでいます。内閣府SIP2(戦略的イノベーション創造プログラム、第二期)では、JAMSTEC(海洋研究開発機構)による深海レアアース開発に関する実証試験計画が進んでいます。当社はJAMSTECより「レアアース泥回収システムの概念設計」業務を受託し、深海からレアアース泥を揚泥する実験システムの概念設計を実施し、実証試験の実現に向けた支援に取り組んでいます。また、従来のメタンハイドレート開発への取組みも継続するとともに、海洋資源開発に向けたビジネスを強化していきます。医薬品分野では、当社の連結子会社であるテックプロジェクトサービス株式会社(100%出資子会社)が、医薬品製造企業の多様なニーズに応えるエンジニアリングサービスを提供すべく、低分子医薬品向けに原薬連続生産技術開発および高薬理活性物質用移動式集塵装置、バイオ医薬品向けにシングルユース技術の新規装置開発および精製工程連続化技術開発など、将来を見据えた革新的な技術開発を行っています。
FY2019|2,799 文字
5 【研究開発活動】(EPC事業)当連結会計年度において、当社グループは研究開発費798百万円を投入し、技術力強化方針として「新たなビジネス・商品開拓」、「基幹ビジネスの基盤強化」、「各事業部のビジネス戦略強化」につき、以下の研究開発活動を自社グループ内および産官学連携により実施いたしました。 《新たなビジネス・商品開拓》IoT分野では、デジタル基盤を介したプラント運営支援を目指し、DX-PLANT™のソリューション深化と拡販を昨年度に発足した“IoT推進部”および“DXエンジニアリング部”を中心に進めています。日鉄エンジニアリング株式会社との連携を基に、システム基盤の構築、運用も完了し、工場オーナーにとって導入しやすく、その要求に柔軟に対応できる体制を整えました。肥料のほかに石化工場への適用アプローチを開始しており、さらに新しい顧客支援領域を拡張し、工場オーナーの収益改善に貢献していきます。環境・省エネ分野では、低炭素社会に貢献すべく、革新的省エネルギー蒸留システム“SUPERHIDIC”の研究開発への継続的取り組みとともに国内外での販売促進を本格化させています。また、個別の蒸留塔に対する省エネ化だけでなく、プロセス系・用役系全体を対象としたエネルギーアセスメントについても、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの助成をいただき取り組んでいます。これにより、包括的な観点からSUPERHIDICを提案できるようになるだけでなく、これまでにない革新的なアイデアを創出できると期待しています。CCS分野では、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」に基づいた温室効果ガス排出量削減目標達成に向けて、当年度は二酸化炭素の分離回収・貯留に関する技術分野で日鉄エンジニアリング株式会社などの協業パートナーと連携を行い、CCSを視野に入れたCO2-EOR案件での具体化を図ってきました。また、日本CCS調査株式会社への出資・派遣などの対外的な活動も引き続き実施しています。バイオマス燃料分野では、NEDOの委託を受け、三菱日立パワーシステムズ株式会社、中部電力株式会社、およびJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と共同で、木質系バイオマスを原料としたバイオジェット燃料を合成する一貫製造実証プロジェクトに参画しています。原子力分野では廃炉先進国ドイツで使用済燃料や廃棄物の貯蔵技術、同施設運営の実績を有するドイツGNS(Gesellschaft für Nuklear-Service mbH)社と協力関係を進め国内の廃炉分野で共同提案を行うなど取り組みを推進しています。 《基幹ビジネスの基盤強化》急速な進歩を遂げているデジタル化の波を当社の基幹ビジネスであるEPC遂行力強化に迅速に取り込むためDXoT(Digital Transformation of TOYO)に取り組んでいます。当年度は、Hexagon社のSmart Plant Constructionを導入しAWP(Advanced Work Packaging)による工事管理を開始するとともに、経験に頼っていた3D設計の品質チェックをシステム化することで設計品質の向上ならびにチェック作業の効率化を図りました。また、RPA(Robotic Process Automation)、BI(Business Intelligence)、AI等のデジタル技術を検証し、順次業務へ適用することで生産性と業務スピードの向上を目指します。さらに、TOYO Digital Daysと呼ぶ社内啓蒙イベントを開催し、デジタル変革文化の醸成を図っています。工事技術分野ではAWPやConstructability Studyの実用化推進、工事施工期間中に有効な資材養生技術の研究、ドローンを活用した測量技術の評価などを行い、基礎技術力強化、新技術の調査と実用化を進めています。 《各事業部のビジネス戦略強化》尿素プロセス“ACES21®”は当社が開発した代表的保有プロセスであり、大型化と省エネを図るためのプロセス改良に日々取り組んでいます。2018年7月にはインドネシア向け尿素製造設備(1,725 t/日)を、2019年2月にはインド向け肥料製造設備(2,000 t/日 x 2系列)のプラントをお客様に引き渡しました。また、プロセスの優位性が評価され、2017年3月に引き渡しとなった世界最大生産量のナイジェリア向け尿素製造設備(4,000 t/日)は、引き続き2号機を受注しました。今後も継続して一層のプロセス改良に取り組みつつ、またIoT技術との連携を推進することで設備の運転および保全の最適化に貢献していきます。 医薬品分野では、当社の連結子会社であるテックプロジェクトサービス株式会社(100%出資子会社)が、医薬品製造企業の多様なニーズに応えるエンジニアリングサービスを提供すべく、主力の低分子医薬品向けに原薬連続生産技術開発および高薬理活性物質用移動式集塵装置、バイオ医薬品向けにシングルユース技術の新規装置開発および精製工程連続化技術開発等、将来を見据えた革新的な技術開発を行っています。また、今後の成長が期待される中分子医薬品向け製造技術開発も開始しました。鉄道システムインテグレーター(鉄道SI)としての技術・知見の獲得および市場調査を目的としたタスクチームを約10年前に立ち上げ、交通ビジネスへの取り組みを本格的に開始しました。その成果として2015年に当社初の鉄道EPCプロジェクトであるジャカルタMRTを受注し、2019年3月には完工して客先への引き渡しを終えました。本プロジェクトの経験を活かして、当社は日本では数少ない海外鉄道プロジェクトのEPCに一括で対応できる鉄道SIとなることを目指していきます。海洋資源開発の分野では、協業パートナーである日鉄エンジニアリング株式会社、米国Baker Hughes社, GE社、ノルウェーAker Solutions社、などの協力により、現在の油価状況における最適な海洋資源開発手法の検討を継続的に行っています。当年度は、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)より「東南アジア海域等でのサワーガス田開発に関するサブシー生産システムに係る事前検討スタディ」業務、および「洋上生産施設の省人化を目的としたプラント設計方法調査」業務を受託し、産油国向けに本邦シーズ技術を用いた海洋システムに関する事前スタディを実施しました。これらを基に具体的なプロジェクトへの移行に向け引き続き活動中です。また、メタンハイドレート開発への取り組みも継続するとともに、新たに海底鉱物資源開発への取り組みも開始しています。