研究開発活動(本文)
FY2025|4,015 文字
6【研究開発活動】当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で294名であります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は6,596百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。 (1) 特殊鋼鋼材主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および溶製から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,614百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・溶解・鍛造プロセス一貫評価による工具鋼のザク圧着予測特殊鋼の製造プロセスでは、鋳造中に溶鋼の凝固収縮によって空隙状の欠陥(以下、ザク)が鋼塊内に生成されます。ザクの残留は製品特性へ影響を及ぼすため、後の鍛造・圧延工程で完全に圧着される必要がありますが、その最適条件は、最終製品形状や鋼塊寸法によって制限されるため、鋳込み条件や鋳型形状など鋳造の工程設計からザク圧着の鍛造条件までプロセス一貫で決定することが求められます。当社は、溶解から鍛造工程まで工程全体を通じてプロセスを最適化するシミュレーション技術を開発いたしました。本技術は、第74回塑性加工連合講演会で「優秀論文講演奨励賞」、第159回圧延理論部会で「優秀賞」を受賞するなど、学会関係者からも高く評価されています。今後は、開発した技術を実機製造ラインへ適用し、工具鋼の高品質化に繋げてまいります。・自動車部品向け構造用鋼の熱処理異常組織予測技術の開発歯車を始めとする自動車部品製造時のCO2排出抑制として、熱間鍛造から冷間鍛造への変更、表面硬化処理時間短縮を狙った熱処理温度高温化が志向されています。その際の課題として、寸法精度悪化や疲労強度低下を引き起こす異常組織形成(オーステナイト異常粒成長)が課題として挙げられます。当社では、その予測精度および計算時間の面でバランスが良いシミュレーション手法(セルラーオートマトン法)を活用した予測技術を名古屋大学と共同で開発いたしました。今後は、工業的な活用に向け、引き続き精度向上を図ってまいります。・水素脆化を活用した特殊鋼鋼材清浄度評価方法の開発特殊鋼鋼材には極僅かな非金属介在物が不可避で存在し、部品に必要な疲労寿命に悪影響を及ぼす場合があるため、非金属介在物の存在状態を正確に把握する必要があります。その把握手法について、種々の手法が開発されておりますが、評価可能な領域が限られることや、評価対象となる部位が限定されることから、正確な評価が困難であるという課題がありました。そこで当社では、この課題を解決するため、一般的な製品使用において悪影響とされる水素脆化現象を有効活用することで、特殊鋼鋼材中の非金属介在物を従来の手法よりも高精度かつ効率的に評価する方法を開発いたしました。本評価手法を活用した鋼材製造技術開発を通じて、お客様の最適部品設計に貢献してまいります。 (2) 機能材料・磁性材料主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は3,498百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・耐水素環境材料の開発近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、自動車や発電等のさまざまな分野で水素エネルギー利用が検討されています。水素はしばしば金属材料の特性を劣化させてしまうため、水素雰囲気に曝露される部品には水素に強い耐水素材料が必要であり、当社の高Ni当量SUS316やSUH660は耐水素脆化鋼として利用されていますが、普及拡大に向けて、耐水素脆化鋼にはコスト低減や強度等の特性向上が求められています。当社では、導入した高圧水素ガス雰囲気材料試験機を活用して耐水素脆化特性に優れる材料を開発しユーザー様にて高圧水素環境部品への適用評価中です。また、当社の規格標準化活動の中で、耐水素脆化特性に優れるDSN9と呼ぶ当社ブランド鋼(ニッケル添加系ステンレス鋼)を、世界的に幅広い分野で使用されるASTM規格*へ登録いたしました。幅広いお客様にご使用いただけることが期待されます。*ASTM規格:世界最大級の民間規格制定機関である米国試験材料協会が策定している規格・電磁鋼板を上回る飽和磁束密度をもつモータコア用軟磁性材近年、電気自動車やドローンをはじめとした新しい形態の移動装置の普及に伴い、従来よりも出力が大きく、また小型化されたモータの需要が高まっています。これらを達成するために、コア材として、従来の電磁鋼板よりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料が求められています。一方、最も飽和磁束密度が高い軟磁性材料であるパーメンジュールは加工性が悪く、高価であることが課題でした。そこで当社は、電磁鋼板に比べて高い飽和磁束密度を保有し、かつ加工性に優れる材料を開発いたしました。この材料をモータコアに適用することで、モータの小型化・高出力化と加工コスト低減に貢献します。また一部のモータメーカーで、この材料を適用したモータコアの実機試作が進んでおります。・半導体製造装置向け材料の開発AIやIoTの発展とともに半導体市場は成長を続けており、半導体製造装置市場も堅調な成長が見込まれます。半導体製造工程における電子回路のエッチングや化学蒸着(CVD)工程では塩素やフッ素などを含む腐食性ガスが使用され、また、材料の不純物はコンタミとなり半導体の歩留を悪化させますが、当社の高清浄SUS316L鋼「クリーンスター」は特殊な製造プロセスで不純物を低減させているため、半導体製造装置で多く使用されています。今後も半導体市場の成長に伴い、回路の精細化や腐食条件の一層の過酷化が予想され、より耐食性に優れる材料の需要が拡大すると見込まれます。こうした市場の動向を踏まえ、当社は半導体製造装置向け材料の耐ガス腐食特性を評価するため、高温ガス腐食試験装置を導入いたしました。本装置により、エッチング装置やCVD装置における腐食ガス環境を再現し、実環境に近い環境下で材料の耐ガス腐食特性を評価することが可能です。当社は本装置を活用し、耐食性に優れる新しい材料の開発を通じて、半導体市場の拡大に貢献してまいります。・極異方性磁石を用いた自動車駆動用高速・大出力モータに関する研究当社では、熱間加工磁石のネットシェイプ技術を活用し、磁石を構成する結晶粒の配向を制御することで効率的に磁力を活用できる極異方性磁石の開発を推進しております。その極異方性磁石の付加価値を創出するため、自動車駆動用モータの次世代ニーズ、具体的には高速・大出力モータに対応するべく、大学との共同研究において極異方性磁石を用いたモータ設計を検討いたしました。モータの高速回転時に課題となるロータの機械強度確保と渦電流損の低減に取り組み、高速回転に適したモータ構造を提案しております。今後は、開発中の極異方性磁石およびモータの試作と性能評価を進めるとともに、モータメーカーに対して極異方性磁石と本検討モータの提案を進めてまいります。 (3) 自動車部品・産業機械部品主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,214百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・Ni基超合金における結晶粒径予測の高度化近年、オイル&ガス、航空機向けのNi基超合金の需要は旺盛で、今後も増加が見込まれています。Ni基超合金は製品の特性上、厳しい耐熱・耐食環境下で使用されますが、材料特性を発揮するためには結晶粒径をはじめとした組織制御技術が重要となります。そのため、当社では塑性加工シミュレーションを用いた結晶粒径の予測技術を開発し、品質向上に取り組んでまいりました。直近では、更なる予測手法の高度化を目指し、結晶粒径分布を考慮した予測技術の開発を進めております。また、データベースを取得するための粒径分布の定量化には、効率的に結果が得られるよう機械学習と画像処理技術を組み合わせた独自の計測システムも開発いたしました。今後は、開発中のシミュレーション技術適用により、Ni基超合金の品質およびコスト競争力の強化が期待されます。 (4) エンジニアリング主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は267百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・電化と真空によるカーボンニュートラル熱処理が可能な連続式真空焼鈍炉の開発当社は自動車部品の熱処理が可能な連続式真空焼鈍炉を独自に開発し、その初号機を受注しました。従来の焼鈍炉はバーナ燃焼を用いて処理部品を加熱していましたが、本設備はカーボンフリー電力が使用可能な電気ヒータ加熱式を採用することで、化石燃料を使用せず、お客様のCO2排出量ゼロを実現します。また、炉内を真空状態にして焼鈍処理することで、化石燃料を原料とする炉内雰囲気ガスは使用せず、処理部品表面の品質においても従来と同等以上であることを確認しております。当社は本技術を通じて、お客様が使用する設備のCO2排出量削減に貢献してまいります。
FY2024|2,899 文字
6【研究開発活動】当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で290名であります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は6,567百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。 (1) 特殊鋼鋼材主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および溶製から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,512百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・大型アルミダイカスト(ギガキャスト)金型に適した高靭性鋼の開発カーボンニュートラルに向けた自動車の電動化や軽量化の動きにより、バッテリーケースや車体部品などの大型ダイカスト製品の実用化が進んでいます。大きな金型では、焼入れ熱処理時に内部の冷却速度不足により、中心部近傍の靭性が低くなり金型が割れるリスクが高くなります。そこで当社は、ギガキャスト用の金型のような、焼入れ時の冷却速度をあまり速くできない場合においても、内部靭性の低下を抑制する高靭性鋼を開発いたしました。開発鋼には従来の熱処理を必要とする金型製造工程に対応する鋼種(焼入焼戻しタイプ)と、当社にて指定硬度に熱処理済みでご提供してお客様での熱処理工程短縮に貢献する鋼種(プリハードンタイプ)があります。今後、日本および海外のお客様に提案し、金型でのトライアルを実施してまいります。 (2) 機能材料・磁性材料主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は3,823百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・大型品の3D造形を可能とするプラスチック金型用ステンレス系粉末「LTXTM420」プラスチック射出成形金型において、サイクルタイムの短縮や成形品の品質改善を目的に、水冷孔を自由に配置できる3D造形金型が実用化されています。耐食性や耐摩耗性が要求される金型では、SUS420J2系粉末の使用が望まれますが、造形が非常に難しいという課題がありました。当社は、造形時の割れメカニズムを解明し、材料成分調整によって連続的に大型品の造形が可能なステンレス系粉末を開発いたしました。一部の3Dプリンタメーカーで造形テストを実施し、良好な結果が得られております。・高圧水素ガス雰囲気材料試験機の導入近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、自動車や発電等のさまざまな分野で水素エネルギー利用に関する技術開発が進められています。水素はしばしば金属材料の特性を劣化させてしまうため、水素雰囲気に曝露される部品には水素に強い耐水素材料が必要とされ、耐水素材料を研究開発し部品に適用するには、高圧水素ガス雰囲気において、材料の各種機械特性を評価する必要があります。当社では、耐水素材料の研究開発を加速すべく、材料評価を自社で管理しながら実施するため、(公財)水素エネルギー製品研究試験センター[HyTReC(ハイトレック)]内に高圧水素ガス雰囲気材料試験機を設置いたしました。水素利用機器の普及拡大に向けて、耐水素材料のコスト低減や強度等の特性向上を引き続き進めてまいります。・生体用低弾性率Ti合金Ti-15Mo(ASTMF2066)の量産製造実現Ti-15Mo(ASTMF2066)は骨に近いしなやかさを持つチタン(Ti)合金です。モリブデン(Mo)は高融点の特性を有するため溶解時に溶け残りやすいという課題がありましたが、当社では特徴的な浮遊(レビテーション)溶解法であるLIF炉を活用し、ラボでの溶解挙動予測技術を組み合わせることでその課題を解決し、国内で初めて量産製造を実現いたしました。また、当社がこれまでに販売してまいりましたチタン合金とは異なり、モリブデンを多く含有するTi-15Moは材料特性が大きく異なるため同等の検査を実現することは困難でしたが、超音波を送受信するためのアレイプローブを新設計し、Ti-15Moにおいても超音波の内質検査規格であるAMS2631に準拠した超音波探傷を可能といたしました。当社星崎工場に導入しております。 (3) 自動車部品・産業機械部品主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,061百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・クラウド型材料開発プラットフォーム「ICMD®」の導入当社はこれまでNi基合金におけるプロセスから組織の予測に取り組み、「Ni基超合金の自由鍛造ディスク製造技術に関する研究」で(一社)日本塑性加工学会の新進賞を受賞しております。さらに一歩進んでプロセスから特性までを一貫予測する先進的なモデルとして、材料開発の分野で高度な技術を有するQuesTek International LLC(以下QuesTek社)が開発したクラウド型材料開発プラットフォームであるICMD®(Integrated Computational Materials Design)を導入いたしました。ICMD®はQuesTek社がSpaceX社やマサチューセッツ工科大学などの初期評価ユーザーによる広範なテストを経て提供され、当社が世界初の導入となります。ICMD®の導入により、高性能な特殊鋼の開発期間の短縮や効率化だけでなく、生産時における品質の安定性向上への貢献が期待されます。 (4) エンジニアリング主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は169百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・浸窒処理技術を開発し真空浸炭炉「ModulTherm」に浸窒機能を追加自動車の電動化進展に伴い、駆動系に使用されるギア部品は高強度化や低歪み化といった特性の向上が求められています。当社はこれら要求に応えるために、独自の浸窒処理技術を確立し、ギア部品の表面硬化用途に使用される真空浸炭炉「ModulTherm」に浸窒処理機能を付加して販売を開始いたしました。本機能により、強度の40%向上と歪み量の40%低減が期待できます(当社測定値)。また、当社独自のシミュレーションソフト「浸窒くん」により、お客様は容易に熱処理条件の設定が可能となります。当社は本技術を通じて自動車の電動化技術を支え、自動車産業のカーボンニュートラル実現に貢献してまいります。
FY2023|2,574 文字
6 【研究開発活動】当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で300名であります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は6,255百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。 (1) 特殊鋼鋼材主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および溶製から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,521百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・ホットスタンプ金型への鋼板めっき凝着抑制技術の確立自動車部品の軽量化のため、超ハイテン部品の適用が増加しております。超ハイテン成形に適したホットスタンプ工法では、金型への鋼板めっきの凝着が品質や生産性に悪影響を及ぼします。当社で鋼板めっき凝着のメカニズム解明と対策の検討を進めた結果、金型に高熱伝導率材料DHATM-HS1と大同DMソリューション㈱製特殊窒化を適用することで、汎用鋼SKD61を使用した場合に比べ、めっき凝着量を90%低減※できる技術を確立しました。本技術は、ホットスタンプ部品メーカーで採用され高い評価を得ております。(※当社で比較) (2) 機能材料・磁性材料主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は3,604百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・リアクトル用金属磁性粉末が「新型プリウス」に採用ハイブリッド自動車のバッテリー電圧を上げる部品(リアクトル)をトヨタ自動車㈱、㈱豊田中央研究所、㈱デンソー、㈱ファインシンターと共同開発し、当社の粉末が最新のハイブリッドシステムにも採用されております。使用される金属磁性粉末は、当社が持つアトマイズ技術と粉末加工技術を応用し、独自開発技術を取り入れることで実用化に至りました。目標とする材料特性と部品性能を達成したことで、リアクトル部品の小型化が可能となり、部品コスト削減に貢献しております。適用車種の拡大に伴う増産対応を推進しております。・大型の金型造形に対応するダイス鋼系3Dプリンタ用金属粉末「LTXTM」DAPTM-AMシリーズの第二弾として、ダイカスト金型やプラスチック射出成形金型に適したダイス鋼系粉末LTXを開発、販売を開始いたしました。LTXは金型に広く用いられているSKD61(JIS鋼)をSLM方式の造形に適した組成に調整し、従来のダイス鋼系粉末では困難であった150mm角以上の造形を可能にいたしました。SKD61の鋼材で製造した金型と同等の金型性能が得られる他、特定化学物質のコバルトを含有しておりません。また、一部の3Dプリンタメーカーで造形テストを実施し、良好な結果が得られております。・日産自動車㈱より2022年「Nissan Global Supplier Award - Global Innovation Award」を受賞本賞は、商品力向上やブランド力向上に繋がる、サプライヤー企業の革新的な取り組みを表彰するもので、「VC-Turboエンジン溶射シリンダーボア用ステンレス鋼の開発」が日産自動車の業績に顕著な貢献をしたことが評価されました。当社の溶射ワイヤは、溶射被膜特性の向上を目的に、成分組成を適正化しワイヤ表面に”銅めっき”を施すことで、高耐食シリンダーボア溶射膜を実現、VC-Turboエンジンの大幅な燃費向上に貢献しております。 (3) 自動車部品・産業機械部品主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は964百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・超臨界型EGSで使用可能な熱安定性に優れる耐食合金の開発より高効率の次世代型地熱発電方式である超臨界型EGSに用いられる高強度-超高耐食合金の開発を開始いたしました。本開発は(米)Damorphe社の地熱井シール技術開発とのジョイントプログラムとして日本財団 - DeepStar 連携技術開発助成プログラムに採択され、当社開発の超高耐食合金を用いたEGS型地熱発電用部材の開発・評価を進めております。2022年度はラボスケールにて合金開発を完了し、次年度以降は本合金を用いた地熱発電部材試作品を製造し、Damorphe社と共同で耐久性評価を実施してまいります。 (4) エンジニアリング主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は163百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・汚泥の高付加価値化と低炭素社会に貢献する超高温炭化技術に関する実証事業当社と、㈱テツゲン、㈱グリーンテック、学校法人中央大学、および宮城県気仙沼市が共同で提案した表題の技術が、国土交通省の令和5年度下水汚泥革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)に採択されました。本事業では、下水汚泥の活性炭利用等による高付加価値化の実現に向け、熱効率を高めた省エネ型超高温炭化システムによる活性炭代替材等の製造、および温室効果ガス排出量の削減効果、ならびにコスト削減効果の実証を行い、提案技術の普及拡大を図っていきます。・ラジアントチューブ式水素燃焼バーナの開発当社は、工業炉の脱炭素化に向け、水素を燃料とするラジアントチューブバーナを独自に開発し、水素混焼および専焼テストに成功いたしました。本バーナは、当社主力製品であるSTC炉などの熱処理炉への適用を目指して開発しております。今後、製品化に向けて実機相当レベルでの実証評価を推進してまいります。
FY2022|2,101 文字
5 【研究開発活動】当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で319名であります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は5,785百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。 (1) 特殊鋼鋼材主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,437百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・耐高圧用途向け超高強度非調質鋼の開発コモンレールなどディーゼルエンジン用の耐高圧部品では、燃費、環境性からさらなる高圧化が指向されています。また最近では、カーボンニュートラルに向けた、製造時の熱処理省略も求められています。当社では、鋼材成分を最適化することで、熱処理を省略しつつ、かつディーゼルエンジンとしては最高クラスの高圧にも耐えうる高強度非調質鋼を開発いたしました。本開発鋼は、一部の耐高圧部品に採用され、2021年から量産を開始しております。 (2) 機能材料・磁性材料主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は3,226百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・DAT®57MのASTM登録当社が開発した、最も幅広く使用されているTi-6Al―4V合金と同等の機械的特性を有しつつ、レアメタル(希少金属)のV(バナジウム)を含まないチタン合金DAT57Mが世界最大規模の標準化団体である米国試験材料協会ASTM Internationalの規格ASTMB348/B348M(チタン・チタン合金の棒およびビレットの規格)にGrade41として登録されました。今後、レアメタルフリー化などを通じて、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献してまいります。・高信頼性のメタルメッシュ黒化膜用ターゲット材「STARMESH®-β1」タッチパネルの表面電極、メタルメッシュ用黒化膜を成膜出来るターゲット材料を開発いたしました。従来の黒化膜よりも信頼性(長期変色耐性)が高いため、ITOに代わりタッチパネルのメタルメッシュ化が進むとされる車載ディスプレイや電子黒板などの用途に最適です。今後これらの用途への採用に向けてマーケティングを継続してまいります。 (3) 自動車部品・産業機械部品主に当社が中心となり、エンジンバルブやガスタービンディスク等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は930百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・航空機エンジン向け新Ni基合金「M647」と製造プロセス開発(国際会議で発表)航空機エンジン用タービンディスクの次世代新材料として新Ni基合金を㈱IHIと共同で開発いたしました。既存の類似合金より高温強度等の特性を向上し、実製品規模の製造プロセス技術も同時に開発いたしました。これらの成果は、世界的に権威のある国際会議Superalloys2020(2021年9月開催)にて発表しております。今後実用化へ向けた取り組みを継続してまいります。・AIを活用した切削加工データの解析手法近年発展しているIoT、AI技術を使用し、切削工程をリアルタイムで監視、そのセンシングデータを機械学習で解析することにより工具の異常検知や寿命予知をする基盤技術を開発いたしました。今後この成果を応用し、実操業ラインでの生産能率の向上、製造コストダウンへの貢献が期待されます。 (4) エンジニアリング主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は191百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・ラジアントチューブ式水素燃焼バーナの開発日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラル実現に向け、温室効果ガスの排出量削減に対するニーズは年々高まっており、工業炉についてもその対策が求められています。水素はその燃焼においてCO2を全く排出しない、脱炭素化の実現に有効なエネルギーであることから、当社では2021年に水素を燃料とするラジアントチューブバーナの開発に着手し、自社内の実験装置を用いて燃焼テストを重ねることで、環境性能の確認に取り組んでまいりました。本開発は、今後さらなる検証を重ね、来たる水素社会へ向け製品展開することで、地球環境の保護とお客様の永続的な発展に寄与してまいります。
FY2021|1,987 文字
5 【研究開発活動】当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で330名であります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は4,722百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。 (1) 特殊鋼鋼材主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は958百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・破断分割型コンロッド用高強度非調質鋼自動車エンジンに用いられる破断分離型コンロッドでは、強度と破断分離の容易性が必要ですが、特に最近は、燃費改善を目的とした高強度化が強く求められています。当社では、鋼材成分を最適化することで、破断分離性を確保しつつ、自動車用としては最高クラスの強度が得られる新たな非調質鋼を開発いたしました。本開発鋼は自動車用コンロッドに採用され、2020年から量産を開始しております。・ホットスタンプトリム金型用鋼近年、生産性改善のため、従来のレーザ加工に代わり、ホットスタンプの熱間成形中にプレス機内で穴あけ、トリム加工を実施するプレスメーカーが増えています。今回、硬さと熱伝導率に優れたホットスタンプトリム金型用の材料を開発し、一部のユーザー様で採用されました。今後、さらなる採用拡大を目指してまいります。・高耐食高靭性プラ型用鋼「NAK86K,PAT868S」 自動車のヘッドライト製造に使われる金型用鋼として、NAK80と同じ硬さで、割れ難く錆び難いNAK86Kを、また、ガラスフィラー含有樹脂や腐食性樹脂など金型への高負荷化に対応できる金型用鋼として海外で多く使用されるH13と同じ硬さと割れ難さで、錆び難いPAT868Sを開発いたしました。両鋼種共にプラスチック成形技術の変化とユーザーの動向にいち早く応えた商品で、順調に売り上げを伸ばしております。 (2) 機能材料・磁性材料主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は2,838百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・パ-マロイ箔「STARPAS」 自動車の電動化や自動運転、IoT機器で課題となる磁気ノイズの抑制用にパ-マロイ箔を開発し、販売を開始しました。当社の軟磁性材料を、kHz~MHzの帯域でもっとも効果が高まるように箔化し、さらに熱処理条件の適性化を図りました。また、打ち抜きなどの加工も可能であり、ラミネ-トによる積層品の提供も行ってまいります。・赤色点光源LEDのフラットタイプ表面実装部品(SMD)「MED7P14-SMF-1」 お客様からの光出力向上や生産性向上、高密度実装化への高い要求から、世界最高レベルの光出力を有する赤色点光源LEDの表面実装部品を開発、リリースいたしました。今後の需要拡大が見込まれる工場自動化、ロボット、3Dセンシング等への用途拡大を目指してまいります。・AI(機械学習)を用いた丸棒外観検査 星崎工場で製造される耐食・耐熱丸棒鋼は、表面の酸化スケールを除去するためピーリング加工をして出荷しております。表面疵のない高品質な製品を提供するため、外観検査技術開発を進めております。特に近年注目されているAI技術を使った検査技術の実用化を目指しております。 (3) 自動車部品・産業機械部品主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は801百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・Ni基超合金組織制御技術の確立 鍛造プロセスにおける組織変化をモデル化したシミュレーション技術を活用し、渋川工場の自由鍛造7000トン油圧プレスでは未経験領域であった大型で難加工な産業用ガスタービンディスクの製造技術を開発しました。従来の型鍛造品対比で安価かつ短いリードタイムで提供することが可能になり市場の期待に貢献しております。 (4) エンジニアリング主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は123百万円であります。
FY2020|2,360 文字
5 【研究開発活動】当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で329名であります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は6,002百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。 (1) 特殊鋼鋼材主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,622百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・微粒子ショットピーニング(SP)を廃止可能とした浸炭用肌焼鋼 微粒子SPは浸炭部品の摩耗特性を大きく向上させる反面、SP粒残留による品質不具合や工場内環境悪化の原因となっていました。浸炭のままでも非常に高い耐摩耗特性が得られる肌焼鋼を開発し、2019年より自動車のCVTプーリーに採用され、お客様の微粒子SP工程廃止に貢献いたしました。現在は適用拡大を推進しております。・強度と製造性(矯正性と被削性)を高いレベルで両立可能なクランクシャフト用鋼 自動車のエンジン用クランクシャフトは高い強度とともに、真直性を確保するための曲げ矯正性および高能率で製造するための被削性が必要とされます。鋼材成分を最適化することによって、各必要特性を高いレベルで両立可能なクランクシャフト用鋼を開発いたしました。2020年中に量産開始予定です。・ホットスタンピング金型の評価技術開発(専用の実機試験設備導入) 自動車軽量化や衝突安全性向上の要求が高まり、ホットスタンピング工法による超ハイテン部品の採用が増加しています。しかし、金型の損傷形態には未解明の部分があり、金型性能評価用の設備を導入、活用して評価技術を開発いたしました。損傷形態を再現できるようになったことで、今後は現象解明により、お客様のニーズに合致した鋼種開発を進め、さらなる採用拡大を目指してまいります。 (2) 機能材料・磁性材料主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は3,092百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・金属3Dプリンターに適した積層造形用粉末「DAPSKD-MOD(HTC)」 ダイカストでは金型に対して冷却能力強化の要求が高まっており、積層造形技術を組み合わせ、複雑な冷却配管構造が検討されています。強度と靭性を備えながら、熱伝導性に優れた積層造形用粉末を開発いたしました。積層造形機を保有するユーザーを中心に評価頂いており、採用拡大を目指してまいります。・中津川先進磁性材料開発センター設立 2019年10月25日付で、岐阜県中津川市にある市所有地を譲り受けるべく立地協定を締結し、2020年5月25日に中津川先進磁性材料開発センターを開所しています。当社グループの㈱ダイドー電子と協同して、次世代モータ技術とそれにふさわしい搭載磁石に関する産学連携の研究開発を推進し、体制強化を図ることで、産業発展へ寄与するとともに、地元への貢献も進めてまいります。 (3) 自動車部品・産業機械部品主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,138百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・排気センサー用耐熱フェライトステンレス鋼 自動車には多くのセンシング技術が搭載されていますが、エンジンの燃焼効率向上にも精密な制御が不可欠になっており、排気センサーの使用環境が高温化しています。開発材は冷鍛性を維持しつつ耐熱性を高めたことで、高耐熱用排気センサーのハウジング材に適用され、センシング技術の向上に貢献しております。 ・軽量・高耐熱Ni基タービンホイール 「Licaloy」 高温延性と高温強度の高いバランスに加え、低密度でありながら高温特性に優れる合金を開発いたしました。 従来の高耐熱材と比べ、軽量で低慣性なタービンホイールが製造可能で、アクセルのオン/オフに対する応答性が良く、加速中の燃費向上も期待されます。当社グループの㈱大同キャスティングスで製品化を進めております。 (4) エンジニアリング主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は148百万円であります。・「汚泥の高付加価値化と省エネ・創エネを組み合わせた事業採算性の高い炭化システムに関する調査事業」 の実施 当社は中央大学・気仙沼市と産学官の共同研究体を設立し、国土交通省が実施した2019年度「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」において、標記調査事業を実施いたしました。本調査事業では、当社パイロットプラントを用いて、超高温炭化処理による下水汚泥の無害化・高付加価値化技術、および炭化プラントの燃費・運転コストを低減する技術を検証し、これらを組み合わせた炭化システムの事業採算性を確認しております。本調査事業は今後も継続する予定であり、中小規模の下水処理場が使われる地方都市での循環型社会の形成に貢献してまいります。
FY2019|1,783 文字
5 【研究開発活動】当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で303名であります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は5,638百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。 (1) 特殊鋼鋼材主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,593百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・ホットスタンピング金型用鋼「DHA-HS1」ホットスタンピング工法は高温に加熱した鋼板を金型内でプレス成型・急速冷却することで1GPaを超える引張り強さを持つ超ハイテン材の部品を製造することができます。自動車軽量化のため、超ハイテン材の採用が増加しており、同工法に適した冷却能と高温での耐摩耗性を有する金型が求められていました。鋼材成分を最適化することで熱伝導率と軟化抵抗性を向上することができ、金型の冷却能と耐摩耗性を改善することが期待できます。プレス部品メーカーでの採用拡大を目指してまいります。 (2) 機能材料・磁性材料主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は2,660百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・耐食性に優れる高強度非磁性ドリルカラー用ステンレス鋼「DNM140-HCR」近年の石油掘削は、陸上から洋上へのシフトや掘削深度の増加などから材料の使用環境が過酷となり、より高耐食な非磁性ドリルカラーが求められています。当社が開発した石油掘削用ステンレス鋼は高い強度を維持しながらすぐれた耐食性を有することから、北米石油サービスカンパニーで高い評価を受けており、過酷な環境で使用されるドリルカラー用高強度高耐食材料として販売を開始いたしました。・車載向けタッチパネルに適した配線保護用スパッタリングターゲット材「NCT」自動車のカーナビやセンターコンソールで使用が拡大しているタッチパネル付きディスプレイ向けに、車載用途で要求が高い耐環境性に優れた配線保護膜用の合金ターゲット材を開発いたしました。耐食性に優れ、ウェットエッチングが可能で、非磁性であるため、お客様の成膜プロセスの適合性、生産性が高い材料です。・重希土類完全フリーネオジム磁石が、高出力、高トルクの中型ハイブリッド車用駆動モーターにも採用当社グループの㈱ダイドー電子が製造する、独自の熱間加工工法を用いた板磁石が、日系自動車メーカーの新型ハイブリッド車の2モーターハイブリッドシステムに採用されました。同タイプの磁石は、小型ハイブリッド車に2016年から既に採用されていますが、製造プロセスの改良により、さらに高トルク、高出力が求められる、中型ハイブリッド車の駆動モーターにも採用されました。 (3) 自動車部品・産業機械部品主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,253百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・DSA760が世界最大手メーカーの舶用排気弁の実用化認定2ストローク舶用ディーゼルエンジンで70%強のシェアを有する世界最大手のメーカーから、2018年7月、船舶用エンジン排気弁棒素材としての実用化認定を取得いたしました。2016年4月に舶用エンジンの国内最大手メーカーから実用化認定を受けておりましたが、2社目となります。 (4) エンジニアリング主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は130百万円であります。
FY2018|1,865 文字
5 【研究開発活動】当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で286名であります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は54億19百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。 (1) 特殊鋼鋼材主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は13億円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・1600MPa級高強度調質ボルト自動車用分野では初となる1600MPa級塑性域締結調質ボルト鋼を開発し、日系自動車メーカーのエンジン部品に採用され量産を開始いたしました。高強度化の課題である水素起因の耐遅れ破壊性を、適量の合金添加とプロセス条件の適正化により有害となる炭化物を球状分散させることで克服いたしました。また、製造時に問題となる焼割れも防止可能で安定した量産品質を確保しています。・プラスチック金型用鋼「RPD815」プラスチック光学製品の成形に適した金型用の材料を開発いたしました。成分の適正化により金型の錆発生を低減するとともに切削性を両立し、金型で発生した錆が光学製品に混入してしまう不良の低減を図りながらも微細な形状加工が可能なことが評価され、自動車のランプで採用が拡大しているLED導光体の成形金型に採用されました。・高減衰材向けフェーズドアレイ超音波検査技術特殊鋼製品の内部品質保証には超音波探傷技術を用いており、お客さまからの品質厳格化の要求にお応えするため、製造プロセス内でより高精度に検査する技術を開発しております。従来、粗大な結晶組織の影響で超音波検査が困難であった鋼片に対して、高精度な探傷技術を導入して品質保証能力を向上させております。 (2) 機能材料・磁性材料主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は26億53百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・世界最高レベルの高透磁率を実現した軟磁性材「MENPC2-S」,「MENPB-S」自動車の電動化、自動運転化への動きに伴いニーズが増大している、センサの高感度化に対応できる、世界最高水準の高透磁率の軟磁性材を開発いたしました。これを契機に、高透磁率の軟磁性材のラインアップを広げ、自動車用の各種センサ向けに販売してまいります。・重希土類元素フリーHEV向け磁石が「ものづくり日本大賞」を受賞当社グループの㈱ダイドー電子が製造する、独自の熱間加工工法を用いたネオジム磁石が、日系自動車メーカーと共同で、第7回「ものづくり日本大賞」の経済産業大臣賞を受賞いたしました。2016年9月の採用から順次採用車種が拡大しておりますが、一層の採用拡大に向け、さらなる高性能化を目指してまいります。 (3) 自動車部品・産業機械部品主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は13億34百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。・耐熱チタン合金「DAT54」がAMS規格を取得弊社が開発した耐熱チタン合金DAT54が米国のAMS(Aerospace Material Specifications)機関の審査を通過し、2018年3月4日にUNS №: R56443、AMS №: AMS6952 として発効いたしました。航空機エンジンの中でも特に重要な部材である回転体に使用できる優れた高温強度を有し、日本で開発された耐熱チタン合金として初めてのAMS認定取得となります。今後、航空機分野での採用拡大に向けて活動してまいります。 (4) エンジニアリング主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1億30百万円であります。
FY2017|1,764 文字
6 【研究開発活動】当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「21世紀社会に貢献する創造的、個性的な企業集団」を目指すことを基本理念としており、「新製品・新事業の拡大」および「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」内の「特殊鋼研究部」、「電磁材料研究部」、「プロセス研究部」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で281名であります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は62億5百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。 (1) 特殊鋼鋼材主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は15億24百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。・製造性に優れる高強度熱間鍛造用鋼自動車の部品軽量化のために高強度材料を適用する場合、機械加工などの製造性悪化が課題となっています。従来の非調質鋼に比べて低炭素のベイナイト組織に制御することで加工性に優れ、かつ、時効硬化現象を活用することで大幅に硬くできるため、加工コストの低減と高強度化の両立が可能となりました。今後、非調質鋼が適用されているクランクシャフトやコンロッド、燃料噴射部品などの小型軽量化に貢献すべく実用化を進めてまいります。・フェーズドアレイ超音波検査技術特殊鋼製品の内部品質保証には超音波探傷を用いており、お客さまからの品質厳格化の要求にお応えするため、製造プロセス内で全数を高精度に検査する技術を開発しております。鋼片や棒鋼製品での実用化を目指しており、すでに医療用チタン棒鋼向けには高精度な自動探傷装置を導入して品質保証能力を向上させております。 (2) 機能材料・磁性材料主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は30億86百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。・高窒素ステンレス鋼「DSR40N」窒素はステンレス鋼において強度・耐食性の両方を向上させる有効な元素であります。この窒素の効果を最大限に利用することで、58HRC以上の硬さとSUS630相当の耐食性を両立させました。従来鋼では適用が難しかった厳しい腐食環境下での利用が可能であり、すでに機械刃物や軸受などに採用されております。今後は、高耐食材ニーズが高まっている自動車部品など幅広い用途に採用されることが期待されております。・重希土類元素フリーHEV向け磁石弊社グループのダイドー電子では独自の熱間加工工法を用いてリング磁石を製造しておりますが、その技術を応用した板磁石を開発いたしました。組織制御により高い耐熱性を持ち、重希土類元素を全く使用せずにハイブリッド自動車の主機モータなどに使用できます。すでに日系自動車メーカーに採用されており、今後拡大を目指してまいります。 (3) 自動車部品・産業機械部品主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は14億49百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。・水冷壁パネル肉盛技術火力発電設備やゴミ焼却設備などで、高温に曝される炉内の炉壁に用いられる水冷壁パネルの耐食性、耐摩耗性を向上させるために、現地施工でパネル表面に高合金鋼を肉盛する技術を開発しております。溶接ワイヤを用いたMIG法よりも希釈率が低く、薄肉で施工することが可能なPPW(プラズマ粉体肉盛)法を用い、粉末供給を適切に制御することで、立てたままのパネル表面に肉盛層を滑らかに形成する技術を確立いたしました。 (4) エンジニアリング主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1億45百万円であります。
FY2016|2,814 文字
6 【研究開発活動】当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「21世紀社会に貢献する創造的、個性的な企業集団」を目指すことを基本理念としており、「新製品・新事業の拡大」および「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」内の「特殊鋼研究部」、「電磁材料研究部」、「プロセス研究部」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で275名であります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は57億66百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。 (1) 特殊鋼鋼材主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は14億59百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。・耐水素脆化軸受用鋼の開発自動車用エンジンの電装補機やCVT無段変速機用の軸受で、潤滑油から侵入する水素が起因と考えられる早期転動疲労剥離が問題となっておりました。この水素脆性型転動疲労の長寿命化には浸炭窒化が有効であることは知られており、微細窒化物による水素トラップの効果と考えられ、クロム量やマンガン量の増加で長寿命化することは報告されておりましたが、その詳細な機構は明らかになっておりませんでした。 表層窒化物、水素放出曲線、水素脆性型転動疲労寿命に及ぼす表層窒素量の影響と、窒化物水素トラップによる水素放出曲線の分離抽出により、長寿命化の機構を明らかにいたしました。 今後はこれらの知見をもとに、耐水素脆化軸受用鋼の実用化を目指してまいります。 (2) 機能材料・磁性材料主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は26億95百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。・省重希土類元素型高性能PLP磁石の量産技術の向上2013年に重希土類元素の使用量を大幅に削減しつつ高い磁力と超高耐熱性を両立させるPLP(Pressless Process)磁石の量産技術を開発し、三菱商事㈱、米国モリコープ・インクと共同で設立したインターメタリックス ジャパン㈱で生産を開始いたしました。2015年3月からインターメタリックス ジャパン㈱は当社の100%子会社とし、新しい経営体制の下、量産技術をさらに向上させ高歩留りの製造を行い、適用アイテムを増やしております。 ・メタルメッシュ用 銅合金ターゲット材「スターメッシュ」タッチパネルの配線用材料として、優れた導電性と低反射率を併せ持つメタルメッシュ用 銅合金ターゲット材「スターメッシュ」を開発いたしました。タッチパネルの透明導電膜には一般的にITO(酸化インジウムスズ)が使用されておりますが、パネルの大型化に伴い、より導電性の高い材料が求められております。タッチパネルの入力検出に用いる導電線の材料をITOから網目状の金属に置き換えるメタルメッシュ技術がありますが、金属膜に見られる特有のギラツキを抑える必要がありました。 本製品はITOと同じプロセス(スパッタリング法)に適用可能であり、ガラス、PET樹脂など各種基板との密着性に優れる2桁以上導電性の高い配線を、プロセスを大幅に変更することなく反射率を10%まで抑えることが可能で、さらに銅主体の金属でありエッチングによる細線化も容易であります。 また、本製品はインジウム等の希少金属を使用していないため、ITOと比べて低コストでタッチパネルの生産が可能であります。 (3) 自動車部品・産業機械部品主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は14億53百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。・高温耐食性・高温硬度に優れるニッケル基合金DSA760船舶用排気弁の開発当社では,高硬度高耐食ニッケル基合金としてDSA760を開発し、ディーゼルターボチャージャーの可変機構部材などで拡販しております。今回、大型製品でもDSA760の高い高温硬度と耐高温腐食特性が得られる製造技術および熱処理方法を確立いたしました。これらの開発により、船舶用排気弁として国内ディーゼルエンジンメーカーでの実船検証試験でも、従来使用されているニッケル基合金の排気弁よりも、高温腐食による損耗速度の低下が確認されております。このDSA760排気弁の適用により既存のニッケル基合金の排気弁対比で、寿命が約2.5倍延長できる見込みと評価され、舶用エンジン排気弁素材として実用化が決定いたしました。今後は、本年度、当社渋川工場で新大型真空誘導溶解炉(25tVIM)が稼働予定であり、生産能力拡大により、小型部材から大型部材まで幅広い需要量拡大に対応できる体制が整います。 (4) エンジニアリング主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1億57百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。・新型燃焼システム「DINCS」の完成、発売温室効果ガスの排出量削減に対するニーズは年を追うごとに高まっており、機械事業部の製品である工業炉についてもその対策が求められています。機械事業部では2012年より新型省エネ燃焼システム「DINCS:Daido Innovative Neo Combustion System」の開発に取り組み、主力製品の一つであるSTC炉に対しリジェネレイティブバーナと同等のラジアントチューブ式燃焼システムとして省燃費性能を得るべく、その製造ノウハウの蓄積と基礎性能の確認に取り組んでまいりました。 DINCSは炭化珪素製3Dプリンティング技術を用いた熱交換器を搭載しており、それにより燃焼排ガス中の顕熱を燃焼予熱空気へ効率的に回収し、STC炉の省燃費性能の飛躍的な向上と温室効果ガスの排出量削減を果たすシステムです。2015年度はDINCSの発売とそれに向けた総仕上げの年と位置付け、実炉において燃費実績の採取を行うとともに、リジェネレイティブバーナ対比でのメンテナンスの大幅な軽減と炉内温度分布向上への寄与を確認でき、DINCSが市場のニーズに十分に応えられることが分かりました。 今後はDINCSの普及をより一層推し進め、地球環境の保護とお客様の永続的な発展に寄与してまいります。