研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
| 2025-03 |
- |
419 |
| 2024-03 |
- |
450 |
| 2023-03 |
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184 |
| 2022-03 |
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217 |
研究開発活動(本文)
FY2025|5,207 文字
6 【研究開発活動】 当連結会計年度は、建築事業、土木事業、舗装事業、機械事業及びインフラ運営事業を中心に研究開発を行い、その総額は5,705百万円です。 (建築事業、土木事業及びインフラ運営事業) 連結子会社である前田建設工業(株)においては、「総合インフラサービス企業」に変革するため、生産性や品質の向上に加え、多様化する社会課題に対し、ビジネスを通じて解決することで社会的価値と事業価値の向上を同時に実現する研究開発を推進しています。 当期の具体的な取り組み方針として、現場作業の生産性向上に向けた自動化・省力化・DX分野、脱請負のさらなる加速を目的とした維持更新・マネジメント分野、また中長期にわたり取り組むべき社会課題として考えられるカーボンニュートラル分野などに重点を置きました。 また、技術開発の推進にあたっては、当期も定期的に審査会を開催し、進捗状況の共有と新たに発生した課題への即時対応を進めるとともに、開発技術の活用展開に注力し既存技術による価値向上に努めました。これにより、昨今の事業環境の急激な変化に即応すべく、取組課題の絞り込み、経営資源の選択と集中を図っています。 当連結会計年度における研究開発費は3,579百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。 ①LCA評価支援システム「CO2-Scope」~BIMデータ活用により迅速な建築物LCA評価及び比較検討を可能に~ 2050年カーボンニュートラル実現に向け、BIMとLCAツールの連携を自動化し、建築物のライフサイクルを通じた環境負荷を短時間で評価できるLCA評価支援システム「CO2-Scope」を開発しました。同システムにより、従来1か月程度を要していたデータ作成と算出プロセスを最短1日で完了させることが可能となり、建物の新築・解体時等に発生するEC(エンボディドカーボン)の早期見える化や効率的な削減提案、設計変更時の迅速な環境評価を実現します。前田建設工業(株)は本システムを活用することで、建築物の環境性能向上に取り組んでいます。 ②権利許諾済の画像生成AIによる著作権者の新収益源創出を試行~来場者へ「秘密結社 鷹の爪」吉田くん風のAI生成似顔絵を配布~ (株)タジクと共同で、(株)光邦の技術支援と(株)ディー・エル・イーの協力のもと、画像生成AIにおける著作権利用対価を教師データ提供者へ支払う試行を開始しました。同試行では、(株)ディー・エル・イーのコンテンツ「秘密結社 鷹の爪」の画像を教師データとして活用し、生成された似顔絵の配布枚数に応じた対価を支払う仕組みを導入しています。これにより、著作権者への正しい利益還元や画像生成AIの権利許諾の新たなモデルを提案します。将来的には建設分野への展開も視野に入れ、エコシステム構築を目指します。 ③高速道路リニューアル時の工期短縮と疲労耐久性向上を実現する新床版継手技術「ESCON TPジョイント」を開発 飛島建設(株)、佐藤工業(株)及び(株)エスイーと共同で、高速道路床版取替工事の工期短縮と耐久性向上を実現する新技術「ESCON TPジョイント」を開発しました。本工法は機械式鉄筋定着工法と超高強度合成繊維補強コンクリートの組合せにより継手構造を簡略化することで作業効率を向上させるとともに、高い疲労耐久性を発揮します。これにより工期短縮、コスト削減、品質向上を実現し、インフラの長寿命化と効率化に貢献します。 ④3Dプリンティングを用いた建設部材構築技術「WAV3D」の開発・国内初適用 3Dプリンティング技術を用いた、運搬・組み立てが容易な積層ブロックの組み合わせによる建設部材の構築技術「WAV3D」を開発しました。本技術は、複雑な自由形状が造形可能といった3Dプリンティングの特徴を活かすことで、現場での活用しやすさやデザイン性を両立しています。波形状やシアーキを持つ積層ブロックは安定性と耐久性を高めるとともに、リユースが可能でサステナブルな建設を実現します。また、自然に調和するデザインや照明・植栽の設置も可能で、多様な利用シーンに対応します。前田建設工業(株)ICI総合センター(茨城県取手市)内で実用化され、今後は耐久性や色調変化のデータ収集を通じ、活用領域の拡大を目指します。本技術を通じ、建築物や土木構造物のデザイン・構造の自由度を向上させるとともに、インフラ分野の担い手不足や作業の安全性向上など、社会課題の解決に取り組んでいきます。 ⑤木材の柱と梁を強力に接合する工法が(一財)日本建築センターの特別工法評定を取得 帝人(株)と共同で、鉄筋コンクリート造のプレストレス技術を木造ラーメン構造に応用した新工法を開発し、(一財)日本建築センターから特別工法評定を取得しました。本工法により柱梁接合部に接合金物を配置し、プレストレス技術で柱・梁を一体化することで、従来の接合技術よりも接合部の耐力が向上します。これにより、従来難しいとされていた木造での大空間確保を可能にしました。本技術を用いることで、従来の木造ラーメン構造と比較して木材断面積を35%削減し、鉄骨造と同等の靭性能を実現しました。ICI総合センターでの実験で構造性能を確認し、大規模建築への適性も証明しました。今後、木材利用拡大や鉄骨造への部分的適用を進めてまいります。 ⑥全設計施工物件でホールライフカーボン排出量算出を開始 カーボンニュートラル達成を目指して、2025年4月から設計施工の全物件でホールライフカーボン排出量の算出を開始します。部材ごとのCO2排出量を算出し、削減効果を明確化するため、自社開発の「CO2-Scope」やクラウドツール「OCL」を活用します。さらに、建築物運用時のCO2削減には「ZEB-Scope」を用い最適なZEB設計を推進します。環境性能を含む総合的な最適設計を通じて設計品質向上に取り組みます。 ⑦「地域に着目した市民参画型インフラサービスの具体像」をテーマに「ICI DAYS 2024」を開催 ICI総合センター内に設置しているICI未来共創センターは、2024年11月6日に「ICI DAYS 2024」を開催しました。今回のテーマは「地域に着目した市民参画型インフラサービスの具体像」と題して、同センターの描く未来のインフラビジョンを示すとともに、第一部「地域社会の持続と分散型サービスの可能性」と第二部「市民参画型インフラサービス実現への第一歩」に分けて、社内外の方からの先行事例発表とパネルディスカッションを行いました。また基調講演として、東京大学の岡田猛教授から「地域内の触発と創造的思考」と題してご講演をいただきました。当センターでは、共創パートナーとの連携を通じて、革新的なテクノロジーやサービスの開発を継続的に進め、これらの取り組みを通じて、持続可能な社会の構築と次世代インフラの実現に寄与してまいります。 (舗装事業) 連結子会社である前田道路(株)においては、「新たな収益基盤と未来への投資を確立すること」を研究開発部門の使命と捉え、競争力の促進を図るため、「カーボンニュートラル(CN)に貢献する技術」と「ICTやデジタル技術を活用した建設現場の生産性向上」を重点テーマにあげるとともに、「既存技術の深化による付加価値の向上」にも注力しながら研究開発に取り組んでいます。 当連結会計年度における研究開発費は1,750百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。 ①「カーボンニュートラル(CN)に貢献する技術」に関する研究開発 Ⅰ.舗装用材料へのCO2固定化技術の開発アスファルトプラントの排ガス中のCO2を舗装用材料に固定化するシステムとして、「コンクリート再生路盤材へのCO2鉱物固定技術」の開発を進めてきました。基礎実験は完了し、得られた成果については、2025年4月~10月に開催される大阪・関西万博(未来社会ショーケース「グリーン万博」、RITE未来の森)において展示を行います。今後はプラント実装に向けた取り組みを進めていきます。また、アサヒ飲料(株)と共同で、自動販売機で回収したCO2を活用する技術の開発も行っています。この技術では、「CO2を食べる自販機」内に設置された特殊材がCO2を吸収し、化学反応により合成炭酸カルシウムが形成されます。これをアスファルト合材に混合することで舗装内にCO2を固定化することができます。一連の室内実験により実現可能性が確認されたことを踏まえ、アサヒ飲料(株)の施設敷地内や茨城県土浦市道において試験舗装を行い、供用性の確認を行っています。 Ⅱ.アンモニアを燃料として使用した合材製造の実証実験脱炭素化に向けた次世代燃料として水素が注目されていますが、輸送や価格の面で実用化には課題が多く存在します。そこで、これらの課題の解決が期待される「アンモニア」に着目し、アンモニア変換水素ガスを燃料としたアスファルト合材製造の実証実験を行いました。技術研究所内の実験プラントにおいて燃焼実験、排ガス測定、混合物性状の確認試験等を行った結果、従来の化石燃料と比較して遜色なく合材製造が可能であることを確認し、業界に先駆けてアンモニアを燃料として活用できる準備を整えることができました。 ②「ICTやデジタル技術を活用した建設現場の生産性向上」に関する研究開発生産性向上については、各種デジタル技術を活用して、建設現場の省力化・省人化に貢献できるよう開発を継続しています。舗装の施工現場や合材の製造現場における重機関連作業はもちろんのこと、舗装工事に付随した出来形管理や品質管理の業務にも着目しています。個々の省力化・省人化技術を確立することで、舗装工事全体の生産性を向上させることを目標としています。 ③「既存技術の深化による付加価値の向上」に関する研究開発当期は、「マイルドパッチ」の改良を行いました。マイルドパッチは、「水分硬化型の全天候型高耐久常温アスファルト混合物」に分類される製品であり、前田道路(株)が業界に先駆けて開拓した技術です。現在、同業他社の製品が多く市場に出回る状況にあることから、これらと差別化を図り、ユーザーの満足度をさらに向上させるため改良を行った結果、低温時(冬期施工時)の作業性改善と保存期間の延長を実現することができました。 (機械事業) 連結子会社である(株)前田製作所においては、カーボンニュートラルによる持続可能な社会の実現に向けた電動仕様クレーンの開発、海外マーケットの更なる拡大のための米国向け製品の開発を推進しています。また、要素技術開発として今後の労働力不足に対応するべく自動化・遠隔制御技術等の開発を推進しています。 当連結会計年度における研究開発費は375百万円であり、主な研究開発結果は次のとおりです。 ①かにクレーンMC305C-5・MC405C-5の開発かにクレーンMC305C・MC405C 2機種のモデルチェンジを行い、2025年4月に日本・欧州・米国で発売予定です。2機種ともに狭所でのクレーン能力を最大限に発揮するためのマルチアウトリガーモードを標準装備し、また、欧州・米国向けについても日本同様ラジコンを標準装備しています。なお、MC305C-5についてはカーボンニュートラルに向けた取り組みとしてリチウムバッテリー仕様もラインナップしています。 ②クローラクレーンCC985S-3・CC1485S-3の開発クローラクレーンの主力製品CC985S・CC1485Sのモデルチェンジを行い、日本、欧州で発売しました。このモデルチェンジでは運転席にオートエアコンを装備する等作業者の居住性向上、天窓の大型化による吊り荷の視認性向上を図っています。 ③林業用フォワーダFC560S用ラジコンの開発林業用フォワーダFC560S用のラジコン装置を開発・発売しました。このラジコン装置を使用することで、木材の積み込みを行う重機の運転席からフォワーダの遠隔操作が可能となり、現場作業の効率化を実現することができます。 ④建設機械用足回り洗浄機の開発建設機械用足回り洗浄機を開発・発売しました。冬場の作業等、厳しい環境下も多い建設機械の洗車作業を機械化・自動化することで、整備現場の効率化・省人化に繋がる製品となっています。 ⑤自動化技術の開発建設ニーズや大型機械に対応した自動運搬システムの研究・開発を進めており、実証試験による検証を行っています。今後は施工現場の省人化実現のため、前田建設工業(株)と共同で取り組んでいる自動運搬台車等、様々な装置や建設現場への実装に向けた活動を推進してまいります。
FY2024|6,275 文字
6 【研究開発活動】 当連結会計年度は、建築事業、土木事業、舗装事業、機械事業及びインフラ運営事業を中心に研究開発を行い、その総額は5,104百万円です。 (建築事業、土木事業及びインフラ運営事業) 連結子会社である前田建設工業(株)においては、「総合インフラサービス企業」に変革するため、生産性や品質の向上に加え、多様化する社会課題に対し、ビジネスを通じて解決することで社会的価値と事業価値の向上を同時に実現する研究開発を推進しています。 当期の具体的な取り組み方針として、現場作業の自動化・省力化・DX分野、脱請負のさらなる加速を目的としたマネジメント分野、また中長期にわたり取り組むべき社会課題として考えられるカーボンニュートラル分野などに重点を置きました。 また、技術開発の推進にあたっては、当期も定期的に審査会を開催し、進捗状況の共有と新たに発生した課題への即時対応を進めました。これにより、昨今の事業環境の急激な変化に即応すべく、取組課題の絞り込み、経営資源の選択と集中を図っています。 当連結会計年度における研究開発費は3,175百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。 ①シールド工事へのMAIOSS-Ⅱ導入~シールドDXに向けた基盤を整備~ シールドトンネル工事の施工データを収集するデータプラットフォームとして、「MAIOSS-Ⅱ」を開発したことを3月29日にプレスリリースしました。本開発システムを社内の統一規格として導入を始めました。工事中の機械類の動作や応答値、資材や掘削土の物流、人の動きなどの様々なデータを本システムにより取得・蓄積し、今後のシールド自動化に向けてシールドDXを推進してまいります。 ②油圧ショベルの自律運転を可能にする「自動施工計画・管理システム」を開発、実用性を確認 数台の油圧ショベルを自律運転可能な「自動施工計画・管理システム(特許出願中)」を開発したことを3月25日にプレスリリースしました。前田建設工業(株)のICI総合センター(茨城県取手市)にて、日立建機(株)、(株)イクシスとの共同実証試験により、本システムの実用性を確認しました。本システムは、BIM/CIMにおいて施工計画モデルから詳細な作業計画モデルを自動生成し、その計画に基づいて複数台の油圧ショベルを自律制御可能なシステムです。近年、建設業界では、少子高齢化や技能労働者不足といった問題に対応するため、安全性と生産性の向上が求められています。現在開発が進められている遠隔操作技術などにより構成される無人化施工技術は、安全性向上は期待できるものの生産性向上への寄与は限定的です。そのため、1人で複数台の油圧ショベルをオペレーション可能な本システムの実証試験を行いました。今後、本システムは、山留掘削、トンネル・シールドなどのズリ・土砂搬出、ダム・道路などの造成といった様々な建設現場への適用に加え、人が行きにくい危険個所である災害現場や放射性廃棄物の処理・処分といった現場における活用が可能と考えています。 ③鉄筋工事の新たな管理システムとして「配筋360」を全国の作業所へ展開 アクセンチュア(株)、ピクシーダストテクノロジーズ(株)と共同で、360度撮影可能なデジタルカメラを使い、建設中の現場を動画撮影した後、その動画とBIMを重ね合わせたデータ上で対象物を測距した静止画を切り出す技術を開発しました。現在、配筋写真管理を対象に現場試験までを完了し、通常の撮影時間に比べて80%の削減効果を確認しました。配筋検査では、360度動画とBIMを重ね合わせることで、鉄筋の本数や位置が適切か、かぶり厚さが確保されているかなどを確認することができます。従来、施工管理において、現場の「工事記録」は静止画を何枚も撮影し、事務所で選定する必要があるなど大きな業務負荷となっておりました。時間外労働の上限規制への対応、働き方改革などの社会的要請も高まる中、本技術により、特に記録写真の撮影方法の変革が期待でき、業務方法の抜本的な見直しにより、業務負荷軽減にもつながると考えています。2024年4月より、社内においてモデル現場を選定し、全国展開を開始する予定としています。 ④外側耐震補強「マスターフレーム構法」のトルコ国での普及を推進 ICI総合センター内に設置しているICIテクノロジーセンターは、トルコ国において自社保有技術である外側耐震補強「マスターフレーム構法」の普及を建築事業本部海外部と協力して推進しています。現地で使用する専用アンカーの外径を2/3に縮小した場合のコンクリートとの一体性能に関する構造実験を、イスタンブール工科大学にて実施しました。この結果、日本より細い柱及び梁が多いトルコの建物に使いやすくなります。当センターでは、昨年2月の大震災により既存建物の耐震補強が喫緊の課題であるトルコ国の復興に寄与できるようさらに尽力してまいります。 ⑤ICI総合センターにおいて、「JHEP(ジェイヘップ)」のAAA認証を更新 ICI総合センターは、継続的な生物多様性保全への貢献度を客観的・定量的に評価・可視化できる認証制度である公益財団法人日本生態系協会の「JHEP(ジェイヘップ)」認証で、2018年度に最高ランクのAAA認証を取得しています。2023年度、同協会による更新審査を受け、AAA認証を更新することができました。引き続き生物多様性の保全活動を継続するとともに、当センターを検証フィールドとしたネイチャーポジティブに寄与する研究開発についても尽力してまいります。 ⑥ICI総合センターに移築した「旧渡辺甚吉邸」(登録有形文化財)を一般公開 ICI総合センター(茨城県取手市)において、2022年度に移築し、2023年度に国登録有形文化財に登録された旧渡辺甚吉邸に関して、事前予約制の一般公開(3日間)を実施しました。2023年度は、合計4回の一般公開を通じて、多数の方々に見学頂きました。今後も、定期的な公開を行い、建築技術と地域住民をはじめとする一般の方々との交流の場としての価値向上に努めてまいります。 ⑦鉄骨建方精度管理システム「建方ナビ」を鉄骨造の作業所で活用 鉄骨建方の精度を立体に可視化し直観的に把握することができる、鉄骨建方精度管理システム「建方ナビ」を6月14日にプレスリリースしました。鉄骨建方精度の品質確保及び不具合の未然防止手段の確立は、安全・安心な建築物の提供に不可欠であり、本システムの可視化機能を活用することで、作業者の熟練度に依存せずに精度よく鉄骨建方の管理が行えるため、建設業界における重要課題の一つである「高齢化、担い手不足」と技術承継に貢献できると考えています。現在、全国の鉄骨造の作業所にて活用中です。 ⑧「自動装薬システム」を山岳トンネル工事現場に適用して実証試験を実施 開発を進めている 「自動装薬システム」を山岳トンネル工事現場に適用して実証試験を行い、基本性能を確認したことを、9月11日にプレスリリースしました。切羽とドリルジャンボ操縦席間を無人にした実現場での装薬作業は業界初となります。本システムの導入により、切羽とドリルジャンボ操縦席間を完全に無人化し、作業員が切羽に立ち入ることなく装薬作業を自動化することが可能となり、約9割が切羽で発生している山岳トンネルの労働災害を最小限に抑えることができます。引き続き、本システムの完成度向上と実用化に向けて技術開発を推進してまいります。 ⑨生成AIの画像・動画制作分野で(株)タジク及び(株)光邦と共創することを合意 ICI総合センター内に設置しているICI未来共創センターは 、生成AIの画像・動画制作分野で、(株)タジク及び(株)光邦と共創することで合意しました。具体的には、まちづくりやインフラサービス、印刷分野における生成AI画像・動画制作活用をリードすることで、建設及び印刷業界全体の効率性や有効性の向上を目指します。 ⑩ZEB設計支援システム「ZEB-Scope」を開発 BIMと相互連携可能なデータベースと各種ツールの自動連携により 多様なZEB仕様を迅速かつ高精度に評価可能なZEB設計支援システム「ZEB-Scope」を開発したことを、10月25日にプレスリリースしました。本開発システムを活用しZEBの普及に努めながら、ZEB評価に留まらず、建築物のLCAも考慮した最適設計を実現するシステムの実現を目指し、取り組みを進めてまいります。 ⑪周辺地盤への影響を抑制した施工が可能な「泥土の回収試験装置」の現場適用開始 大深度圧力下におけるシールドマシンのチャンバ内泥土の性状確認を可能とする「泥土の回収試験装置」を、大規模シールド工事現場に適用して運用を開始したことを11月15日にプレスリリースしました。本装置は回収した泥土を大気圧下に解放することなく、チャンバ内の圧力状態を保持したまま試験を行うことができる業界初の構造であり、チャンバ内泥土の性状をより正確に把握することが可能となります。これにより、大深度、高水圧下のシールド工事で安全な掘進が可能となり、周辺地盤への影響を抑制した施工が可能になります。 ⑫「市民がより能動的にインフラサービスに参画する未来へ」をテーマに「ICI DAYS 2023」を開催 ICI総合センター内に設置しているICI未来共創センターは、11月15日に「ICI DAYS 2023」を開催しました。今回のテーマ「市民がより能動的にインフラサービスに参画する未来へ」と題して、同センターの描く未来のインフラビジョンを示すとともに、先行事例紹介やパネルディスカッションを行いました。今後、共創パートナーの皆様と未来のインフラサービスの実現に向けて、社会にインパクトをもたらすテクノロジー・サービスの開発を進めてまいります。 (舗装事業) 連結子会社である前田道路(株)においては、「新たな収益基盤と未来への投資を確立すること」を研究開発部門の使命と捉えており、競争力の促進を図るため、「カーボンニュートラル(CN)に貢献する技術」、「次世代道路包括管理システムの開発」、「ICTやデジタル技術を活用した建設現場の生産性向上」を重点テーマにあげて研究開発に取り組んでいます。 当連結会計年度における研究開発費は1,372百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。 ①「カーボンニュートラル(CN)に貢献する技術」に関する研究開発Ⅰ.バイオ重油製造施設の稼働開始前田道路(株)では、2030年度に2013年度比でCO2排出量を50%削減、2050年度にはカーボンニュートラルの達成を目指しています。その一環として、運営子会社である日本バイオフューエル(株)は2023年12月より、バイオ重油の製造を開始しました。この施設では、動植物由来の油滓等を原料に、バイオ重油製造技術を活用した環境負荷低減エネルギーを自社精製・製造することにより、自社のエネルギー由来のCO2排出量削減に取り組んでおり、2026年度以降には約3万5千トン/年のCO2排出量削減を見込んでいます。 Ⅱ.再生路盤材へのCO2固定化技術の開発アスファルトプラントの排気ガスに含まれるCO2をコンクリート再生路盤材に炭酸塩化(固定化)するシステムの開発を進めています。2023年度は、つくばテクノセンター内に併設した実験用アスファルトプラントを利用し、固定化用の反応槽をパイロットスケールに大型化させて検証を始めました。2024年度は,アスファルトプラントへの実装を図るべく,最適な反応条件に関する検証を進めるとともに、仕様決定、場所選定、行政協議等を並行して進めていきます。 ②「次世代道路包括システムの開発」に関する研究開発道路の包括的民間委託を受託している複数自治体の道路をテストフィールドとして、各種デバイスから得られるデータを活用した道路維持管理システムの開発を進めています。データドリブンによる道路管理の効率化・高度化を図るべく、社会実装を目標としてプロトタイプ検証を行っています。 ③「ICTやデジタル技術を活用した建設現場の生産性向上」に関する研究開発アスファルト舗装工の品質管理の効率化高度化技術として非破壊で舗装密度をリアルタイムに推定するシステムを開発しています。国土交通省の「舗装工事の品質管理の高度化に資する技術」に関する技術公募では、当社中国支店受注の舗装新設工事を検証現場に選定し、共同で応募した前田建設工業株式会社他との「次世代αシステム」ともにこのシステムの検証を行いました。現在、このシステムの安定性向上や精度向上に向けて取り組んでいます。 (機械事業) 連結子会社である(株)前田製作所においては、カーボンニュートラルによる持続可能な社会の実現に向け電動仕様クレーン、林業用機械の開発及び海外マーケットの更なる拡大のため米国向け製品の開発を推進しています。また、要素技術開発として今後の労働力不足に対応するべく自動化・遠隔制御技術等の開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は555百万円であり、主な研究開発結果は次のとおりです。 ①巻上ワイヤー破断防止装置の開発お客様にクレーンをより安全に使用して頂くためクローラクレーンのオプションとして巻上ワイヤー破断防止装置を開発し、特許出願を行うとともに量産先行品を出荷しました。 ②林業用フォワーダ(走行集材機械)FC560Sの開発カーボンニュートラルによる持続可能な社会の実現に向け、5.6t積載林業用フォワーダ(走行集材機械)FC560Sを新規開発し、発売しました。また、当該機種では走行安全機能及び積載量計測において特許出願をしています。 ③米国向け8.1t吊りクローラクレーンCC1908S-1USの開発海外マーケットの更なる拡大のため、米国向けに現地排ガス規制に適合した8.1t吊りクローラクレーンCC1908S-1USを開発、発売しました。 ④ブーム屈折式かにクレーンMK3053Cの開発国内、欧州向けにブーム屈折式かにクレーンMK3053Cを新規開発し、発売しました。当該機種は、エンジン仕様、エンジン・電動併用仕様、バッテリー仕様の3仕様を同時に市場投入しました。また、ブーム伸縮機構の補助機能において特許出願も行いました。 ⑤合金微粉末事業の推進脱炭素社会実現に向け必要とされる省電力機器で使用される接合材は、高温度耐用が要求されることから、高価な金、銀が使用されており、これらに代わる合金粉末の接合材が求められています。(株)前田製作所では、合金微粉末の製造特許取得業者と連携し、均一組成、低酸化の品質を確保した上で大量生産可能な装置を導入し、合金微粉末製造事業を推進しています。 ⑥自動化・遠隔制御技術の開発(株)前田製作所のコア技術であるクレーン制御技術とオープンイノベーションにより習得したIoT技術を応用展開し、建設ニーズや大型機械に対応した自動運搬システムの研究・開発を進めています。今後は、現場施工の省人化へ向けて前田建設工業(株)と共同で取り組んでいる自動運搬システム等様々な装置への応用、また、データ解析による新たな付加価値創出を進めてまいります。
FY2023|7,669 文字
6 【研究開発活動】 当連結会計年度は、建築事業、土木事業、舗装事業、機械事業及びインフラ運営事業を中心に研究開発を行い、その総額は4,917百万円です。 (建築事業、土木事業及びインフラ運営事業)当社グループは、「総合インフラサービス」の実現に向けて、また、多様化・高度化する社会ニーズに対応するため、生産性や品質の向上など社会的価値と事業価値の向上を同時に実現する研究開発を推進しています。特に最新のICTや自動化技術、AIを駆使した革新的な生産性向上技術、環境・エネルギー関連技術、脱炭素社会に向けた木材資源活用技術、都市インフラ施設の維持管理に関する高度化技術、ICT社会への対応技術などを注力して取り組むべき重要な技術分野として設定しています。また、技術開発の推進にあたっては、社会環境の激しい変化に対応できる多様性と迅速性が求められる中で、大学や公的研究機関・異業種企業との技術協力や共同開発などのオープンイノベーションを積極的に推進しています。当連結会計年度における研究開発費は3,309百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。 ①自然言語処理AIを活用した「危険予知システム」をSOLIZEと共同開発 ~建設現場の安全管理業務における危険予知の高度化及び業務改善を実現~前田建設工業(株)はSOLIZE(株)と、同社の自然言語処理AI(アスペクトエンジン)を活用し、安全管理業務における危険予知の高度化及び業務改善を目的とした「危険予知システム(SpectA KY-Tool)」を新たに共同開発しました。建設現場の安全管理業務は熟練者の過去の経験や知識に偏ることで、安全指示事項がマンネリ化してしまうことがあります。さらに、生産性向上が急務となっており、作業の手戻りの回避や工事関係者の円滑な意思疎通も課題になっています。そこで、当社施工現場において運用・検証を行い、「危険予知の高度化」及び「業務改善」を目的とした新たなシステムをSOLIZE(株)と共同開発しました。今回開発したシステムは、作業内容や現場環境に適した災害事例の選出が可能です。過去の災害データから適切な危険有害要因と対策の選定をAIが行うことで、危険予知の予測精度を向上させ、類似労働災害の再発防止に貢献します。 ②水中のPFOS・PFOA吸着処理システムを開発 ~車両搭載可能な装置を汚染サイトに持ち込んでピンポイントの浄化を実現~前田建設工業(株)はメタウォーター(株)と共同で、イオン交換樹脂を用いた水中のPFOS・PFOA吸着処理システム「De-POP’s ION™」を開発しました。本システムは、池や湖沼等の水に含まれる微細な砂やゴミなどの懸濁物を取り除く「除濁装置ユニット」と、PFOS・PFOA処理専用のイオン交換樹脂が充填された「イオン交換樹脂塔ユニット」から構成され、PFOS・PFOAを効率的に除去することが可能です。また、システムごと車両に積載が可能なため、PFOS・PFOAを含む池や湖沼の近くで使用できます。さらには、処理した水を外部に放流・破棄せずに水資源として循環利用することで、環境負荷の低減を実現しています。今後、日本各地で顕在化が予測される土壌や地下水浄化のニーズに対しても、前田建設工業(株)がこれまでに開発してきた地盤改良や揚水技術、土壌洗浄工法とともに提案、採用いただくことで、社会課題の解決に貢献してまいります。 ③鉄筋/配筋BIMシステム「アトアレ」を構築 ~仮想空間での自動配筋・自動配筋検査を実現~前田建設工業(株)は、建築分野の鉄筋工事を対象とした生産現場において、仮想空間上での配筋及び配筋検査の自動化システム(鉄筋/配筋BIMシステム「アトアレ」)を構築し、設計・施工一貫方式のプロジェクトを中心に適用しています。本技術により、図面作成や鉄筋加工、配筋・組立の生産プロセスにおいて使用する生産情報の不具合排除、元請会社と鉄筋専門工事会社間で正確な生産情報の連携が可能になります。その結果、生産現場における不具合の発生低減、作業効率の向上のみならず配筋検査における指摘事項の減少が期待されます。将来的には、さらなるBIMデータの構築手法やデータ連携のワークフローを改善することで、構造設計者における配筋検討作業の効率化や鉄筋専門工事会社における業務のデジタル化を推進し、デジタルデータを活用した働き方改革の実現に向けた開発・社会実装に取り組みます。 ※アトアレ:ATELIER FOR ASSEMBLING REBAR IN A VIRTUAL SPACE(仮想空間で鉄筋を組み立てるアトリエ) の略称。商標登録済(登録第6675424号) ④道路運営の経営管理モデル「Digital Twin Road Management」構想を策定し、実証実験を開始 ~将来の道路状況を予測し、道路運営・経営における意思決定の高度化をめざす~ データにより道路インフラの管理を最適化し、地方創生の取り組みにも寄与する新しい道路運営の経営管理モデル「Digital Twin Road Management」構想を、(株) NTT ドコモ及びエヌ・ティ・ティ・コムウェア(株)とともに策定しました。また、その実現に向け「更新費用の最適化」に関する技術検証の実証実験を開始しました。 日本の多くの道路は高度経済成長期に整備されており、これから老朽化が本格化します。しかし、道路の運営・維持管理を行う技術者や財源は不足しています。そのため、道路の管理者である多くの自治体にとって、現在から将来にわたる道路資産の状況や劣化を正確に把握し、最適な中長期の修繕計画に基づき運営コストを低減することは共通の経営課題です。そこで、現場からの様々なデータを取得・可視化し、そのデータを分析・予測することで道路インフラの合理的な管理を支援すると同時に、渋滞緩和による利便性向上やにぎわいの創出などの地域活性化の取り組みをデジタルツイン上で融合させることで、課題解決を実現します。 ⑤多成分の混和材を積極的に利用した低炭素型のコンクリートの社会実装前田建設工業(株)は、2011年度から2015年度まで、コンクリートの二酸化炭素排出量の削減を目的に国立研究開発法人土木研究所などと低炭素型のコンクリートの共同研究を実施してきました。その成果として、「スーパーグリーンコンクリート(SGコンクリート)」を開発し、前田建設工業(株)ではその後も継続的に長期耐久性データの取得や施工物件での活用を進めています。2020年10月に菅内閣総理大臣(当時)が所信表明演説にて、2050年までにカーボンニュートラル(CN)を目指すことを宣言して以降、各業界でカーボンニュートラルに向けた取り組みが加速しており、既に開発した技術の更なる社会実装が期待されています。低炭素型のコンクリートの社会実装に向けた課題として、セメントや混和材を混合した独自結合材の供給、特殊なコンクリートの製造などのサプライチェーン構築が挙げられており、スーパーグリーンコンクリートでもこれらを解決し社会に提供していくことを目指し活動しています。 ⑥第10回 日本ロボット大賞 国土交通大臣賞を受賞 山岳トンネル切羽作業の機械化技術「鋼製支保工建込みロ ボット」前田建設工業(株)が、古河ロックドリル(株)及びマック(株)と共同開発した「鋼製支保工建込みロボット」が、第10回日本ロボット大賞 国土交通大臣賞を受賞いたしました(2022年10月12日)。本技術は、切羽への立ち入りを伴う作業をロボットにより自動化することで生産性向上を実現するとともに、山岳トンネル特有の切羽肌落ちによる労働災害の発生を物理的に排除できます。これらがロボットの先進的な研究開発として高い評価を頂きました。本受賞を機として、「鋼製支保工建込みロボット」の販売を開始します。 ※「日本ロボット大賞」:わが国のロボット技術の発展や社会実装を促進することを目的として、ロボットの 先進的な活用や研究開発、人材育成といった様々な分野において、優れた取り組みを実施した企業等を表彰する制度 ⑦第20回建設ロボットシンポジウム優秀論文賞を受賞 自走式散乱型RIロボット(次世代αシステム)前田建設工業(株)が、(株)大林組と共同開発した自走式散乱型RIロボットが、2022年8月に開催された第20回建設ロボットシンポジウムにおいて優秀論文賞を受賞しました。全投稿論文の中から1件のみ厳選される賞であり、建設分野における自動化・ロボット化の推進に大きく貢献する技術として評価されました。次世代αシステム(仮称)は、この自走式RIロボットに加え、振動ローラの加速度応答から地盤剛性を自動取得するαシステム、転圧面の点群データを計測する3Dレーザスキャナなど複数のIoT機器により現場品質情報を取得、クラウドシステムに一元的に集約・格納する事で、現場土工品質管理の高度化と生産性向上、DX化を実現します。本システムは、2020年度から2022年度における3回に渡る国土交通省PRISM実証工事や、2022年度国土交通省「舗装工事の品質管理の高度化に資する技術」公募に連続して採択されるなど、社会実装に向けて鋭意開発を進めています。 ⑧ICI総合センターに移築した「旧渡辺甚吉邸」が登録有形文化財に登録 ~匠の技と最新技術で未来へ受け継ぐ~前田建設工業(株)は、ICI総合センター(茨城県取手市)において、2022年4月21日に「旧渡辺甚吉邸」を施設内に移築し、建築史家の藤森照信氏を名誉館長としてオープンしましたが、その後2月27日に、国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。旧渡辺甚吉邸は、建築当時(昭和初期)の日本における住宅建築の最高水準の経験・知見が凝縮された歴史的建造物です。港区白金台での解体の際には、3Dスキャンや360度カメラにより記録し、欠損や腐朽した部材は職人の伝統技法やロボットアーム型木材加工機により復原しました。オープン後、藤森名誉館長による講演会や英国AAスクールとのワークショップ、世界中から集まった異なる背景を持つ新時代のアーティストたちとのアートプロジェクト「Shutsugenプロジェクト」などを実施し、新たな価値創造に向け、さまざまな文化芸術関係者や地域の方々などとの多様なコミュニケーションの場として活用しています。 ◆旧渡辺甚吉邸とは旧渡辺甚吉邸は1934年(昭和9年)、港区白金台に岐阜の名家・渡辺家の14代当主、甚吉の私邸として建てられた洋館です。日本の住宅の発展に大きく寄与した住宅専門会社の技師として活躍した遠藤健三と山本拙郎、そして二人の恩師である今和次郎の3人の共作によって、建築当時の日本における住宅建築の最高水準の経験・知見が凝縮された歴史的建造物です。 (舗装事業)連結子会社である前田道路(株)においては、二酸化炭素等の温室効果ガスの放出による地球環境問題や沿道環境への対応、道路インフラの効率的な保全、ICTの活用等、社会及び国民の幅広いニーズに応えるべく、「人と環境に配慮した技術」、「維持修繕の効率化に貢献する技術」、「生産性の向上に寄与する技術」及び「持続可能な社会をつくる技術」を重点テーマにあげて研究開発に取り組んでいます。 当連結会計年度における研究開発費は1,195百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。 ①「人と環境に配慮した技術」に関する研究開発前田道路(株)では、2030年度に2013年度比でCO2排出量を50%減、2050年度にはカーボンニュートラルの達成を目指しています。その一環として2022年9月に、運営子会社である日本バイオフューエル(株)を設立し、バイオ重油製造施設の建設を開始しました。この施設では、動植物由来の油滓等を原料に、バイオ重油製造技術を活用した環境負荷低減エネルギーを自社精製・製造することにより自社のエネルギー由来のCO2排出量削減に取り組むことを目指します。2023年完成予定の当該プラントでのバイオ重油製造によって工場が本格稼働する3年目以降には約3万5千トン/年のCO2削減が見込まれます。また、副産物として精製される脱窒剤・付着防止剤・剥離剤の販売も検討しています。 ②「維持修繕の効率化に貢献する技術」に関する研究開発道路橋の鋼床版上の防水層には、一般的にグースアスファルト舗装が用いられています。この混合物は、高温時の流動性を利用した流し込みによる施工のため転圧の必要がなく、ボルトなどの凹凸部等の隅々まで充填することができます。しかし、施工時には混合物を240℃程度に加熱するため、特殊な加熱撹拌装置付運搬車が必要となり、さらに安定した加熱撹拌をするためには3t以上の混合物が必要となるため、小規模施工時には使い残りが生じて多くが廃棄されるなど、材料資源のロスを考慮すると不向きな点がありました。前田道路(株)で開発した「マイルドグース」は、単粒度砕石の間隙に特殊バインダを非加熱で流し込み、防水層をつくるものであり、加熱撹拌装置付運搬車が不要であり、少量からの製造及び施工が可能なため、小規模施工の際には廃棄合材の大幅な削減が期待できます。また、非加熱で使用できるため、アスファルト混合物を高温に加熱する際に発生するCO2排出量の削減にも寄与します。この製品は、これまで実用化に向けた実証実験を行い、2023年3月に販売を開始しました。 ③「生産性の向上に寄与する技術」に関する研究開発舗装工事における省人化は生産性向上のみならず安全性向上にも寄与する重要課題と捉え、作業の機械化など様々な技術開発を進めており実用化に向けた現場テストを重ねています。 Ⅰ.建設機械搭載型レーザスキャナを用いた出来形管理技術がインフラDX大賞優秀賞受賞 学校法人法政大学及び三菱電機エンジニアリング(株)と共同研究で開発を進めてきた「建設機械搭載型レーザスキャナを用いた出来形管理技術」は、国土交通省のi-Constructionを推進すべく舗装工事における3次元計測の効率化を図る技術であり、舗装工事で使用するタイヤローラに搭載したレーザスキャナで施工面の3次元形状を取得して施工管理で活用するものです。国土交通省東北地方整備局発注の河辺地区道路改良舗装工事で舗装各層への適用や取得データのBIM/CIMへの活用について検証した結果、国土交通省のインフラDX大賞優秀賞を受賞することができました。現在、この技術の汎用化に向けて取り組んでいます。 Ⅱ.ダンプトラック誘導システムが内閣府の「官民研究開発投資拡大プログラム」(PRISM)のプロジェクトに採択(株)日立ソリューションズ・テクノロジーと進めている「ダンプトラック誘導システム」は、多人数で施工する舗装工事のうち誘導作業の省力化を図る技術であり、舗装材料を敷きならすアスファルトフィニッシャに設置した単眼カメラの画像をAIによるソフトでリアルタイムに解析し、ダンプトラックと作業員との接触やダンプトラックの車線逸脱を警告しながら、後進するダンプトラックを誘導するシステムです。国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定され、西日本高速道路(株)発注の高速道路修繕工事で現場への適用性について検証しました。現在、更なる検出精度向上に向けて取り組んでいます。 ④「持続可能な社会をつくる技術」に関する研究開発アスファルト舗装はほぼ100%リサイクル可能であり、その再生技術は持続可能な社会をつくるといえます。しかしながら、再生アスファルト混合物は1980年代より製造・施工が開始され、その間再生、再々生と繰り返し再生されている状況です。今現在の再生混合物の品質は一定の水準を確保していますが、今後さらに再生回数が増えると再生混合物の品質低下が予想されます。そのため前田道路(株)では様々な側面から再生混合物の品質向上への取り組みを行っており、その中の1つにWフォームド技術(フォームドアスファルトの性能向上、再生用添加剤へのフォームド技術の適用)があります。本技術は既に実用化に至っており、これにより再生混合物の品質向上が図れています。現在、フォームド発生装置の設置を全国の合材工場に順次進めています。 (機械事業) 連結子会社である(株)前田製作所においては、自社製品のカーボンニュートラル化に向けた電動仕様の開発及び、米国向け製品の開発を推進しています。また、要素技術開発として今後の労働力不足に対応するべく自動化・遠隔制御技術等の開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は412百万円であり、主な研究開発結果は次のとおりです。 ①バッテリー仕様かにクレーンMC285CB-3用増設バッテリーユニットの開発2020年度に発売したバッテリー仕様かにクレーンMC285CB-3用のオプション品として、使用現場からの稼働時間を「もう少し長くしたい」との声に応えるため、増設バッテリーユニットを開発し発売しました。 ②米国向け8t吊りかにクレーンMC815Cの開発米国向け機種のラインナップ拡充のため、現地法規制に適合した8t吊りかにクレーンMC815C米国仕様を開発し、発売しました。当該機種においては、欧州仕様同様フライジブ及びサーチャーフックをオプション設定しており本体と同時発売しています。 ③米国向け2.8t吊りかにクレーンMC285C-3USの開発米国排ガス規制適合エンジンを搭載した、2.8t吊りかにクレーンMC285C-3USを開発、発売しました。当該機種においては、アウトリガーマルチアングルのディスプレイ表示をよりユーザーフレンドリーなものに変更し特許出願も行っています。 ④合金微粉末事業の推進脱炭素社会実現に向け必要とされる省電力機器で使用される接合材は、高温度耐用が要求されることから、高価な金、銀が使用されており、これらに代わる合金粉末の接合材が求められています。(株)前田製作所では、合金微粉末の製造特許取得業者と連携し、均一組成、低酸化の品質を確保した上で大量生産可能な装置を導入し、合金微粉末製造事業を推進しています。 ⑤自動化・遠隔制御技術の開発(株)前田製作所のコア技術であるクレーン制御技術とオープンイノベーションにより習得したIoT技術を応用展開し、建設ニーズや大型機械に対応した自動運搬システムの研究・開発を進めています。今後は様々な装置への展開、データ解析による新たな付加価値創出を進めてまいります。
FY2022|8,833 文字
5 【研究開発活動】 当連結会計年度は、建築事業、土木事業、舗装事業、機械事業及びインフラ運営事業を中心に研究開発を行い、その総額は5,669百万円余です。 (建築事業、土木事業及びインフラ運営事業)当社グループは、「総合インフラサービス」の実現に向けて、また、多様化・高度化する社会ニーズに対応するため、生産性や品質の向上など、社会的価値と事業価値の向上を同時に実現する研究開発を推進しています。特に最新のICTや自動化技術、AIを駆使した革新的な生産性向上技術、環境・エネルギー関連技術、脱炭素社会に向けた木材資源活用技術、都市インフラ施設の維持管理に関する高度化技術、ICT社会への対応技術などを注力して取り組むべき重要な技術分野として設定しています。また、技術開発の推進にあたっては、社会環境の激しい変化に対応できる多様性と迅速性が求められる中で、大学や公的研究機関・異業種企業との技術協力や共同開発などのオープンイノベーションを積極的に推進しています。当連結会計年度における研究開発費は4,177百万円余であり、主な研究開発成果は次のとおりです。 ①ロボットアーム型木材加工機「WOODSTAR」の販売事業を前田建設工業株式会社(以下、「前田建設」という。)と株式会社前田製作所(以下、「前田製作所」という。)で共同開始 前田建設は、既存加工機では困難であった木造非住宅用の大型部材などの加工を可能とするロボットアーム型木材加工機を国立大学法人千葉大学の平沢岳人教授と共同開発しました。前田建設施工案件を中心とする加工実証を経て、このたび2021年10月、商品名「WOODSTAR(ウッドスター)※」として前田製作所と共同で全国のプレカット工場などに向けて販売事業を開始しています。WOODSTARの優位性は大型部材や複雑形状への対応のみならず、急速に普及するBIM(Building Information Modeling)と連携したDX化により、生産性の飛躍的向上を可能とします。前田建設の技術開発力及び木造建築に関する知見と前田製作所の機械製作・販売の豊富な経験という互いの強みを融合し、シナジー効果を発揮していきます。※ 「WOODSTAR」「ウッドスター」:前田建設、前田製作所が商標登録手続き中です。出願番号:商願2021-115750 ②集合住宅向け「床チャンバー空調システム」を超高層ZEH-M(※)の770戸に大規模実装 「床チャンバー空調システム」は集合住宅の多くに採用される二重床空間を冷暖房と換気の給気経路に利用する、前田建設が開発した住戸セントラル空調技術です。新しい集合住宅には「地球温暖化対策と良質な住宅ストック蓄積」が必須との思いのもと、約20年にわたり基礎研究~実大住宅実験~居住実験~施工実験の繰り返しと小規模実装を進め、確かな設計・施工・品質を経済的に提供できる技術・体制を整備しました。 2021年度には、当社設計施工のZEH-M Oriented超高層マンション「プラウドタワー亀戸クロス」(事業主:野村不動産株式会社)に同社商品名「床快full(ゆかいふる)」として770戸に当社開発技術が大規模実装されました。「床快full」は2020年度「グッドデザイン・ベスト100」に選定され、マンションの省エネ・省CO2化を目指す新しいシステムとしてますますの拡充が期待されています。引き続き省エネで良質な住宅ストック蓄積に向けた研究開発を推進します。※ ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略。省エネと創エネ技術を採用し年間のエネルギー収支を「ゼロ以下」にする住宅のこと。太陽光発電設置面積が限られる中高層の集合住宅では、省エネ性を20%以上高めた「ZEH-M(マンション) Oriented」が増えつつあります。 ③空調設備向け空間除菌消臭装置を日機装株式会社と共同開発 前田建設は、2020年12月に大手医療機器メーカーの日機装株式会社と、日機装の持つ深紫外線LED技術(※1)を用いた空間除菌消臭技術「Aeropure(エアロピュア)Technology」を活用する、空調設備向け空間除菌消臭装置の共同開発に関する業務提携契約を締結しています。 本技術の特徴となる深紫外線LEDと光触媒技術の独自の組み合わせにより、世界規模での社会課題となる新型コロナウイルス感染症の抑制・除菌をはじめ、スギ花粉やダニ等のアレル物質除去、料理臭やペット臭等の生活臭の消臭効果が期待できます。2050年には耐薬剤菌による死者数がガンを超える(※2)と言われている中で、深紫外線LEDは未曾有の耐薬剤菌にも有効な感染症対策技術です。また省電力・長寿命・水銀不使用など、環境に優しい技術として、SDGsの面でも注目されています。 現在、空間除菌消臭装置は実装段階に入っており、オフィスビル、技術研究施設や工場の厚生棟及び集合住宅に採用が決定しています。※1 青色LEDの発明で2014年にノーベル物理学賞を受賞した名城大学の赤﨑教授・名古屋大学の天野教授の指導の下、日機装が2006年から研究開発に取り組み、高出力かつ長寿命の「深紫外線LED」の量産化に成功。 https://www.nikkiso.co.jp/products/duv-led/features.html※2 「厚生労働省におけるAMRの取組」(オニールレポート) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000189799.pdf ④ICI総合センターの風洞実験模型自動製作装置が日本風工学会技術開発賞を受賞 2019年2月に開所したICI総合センターにおいては風環境実験施設として「大型乱流境界層風洞」を導入しました。風洞実験模型自動製作装置は、大型乱流境界層風洞のターンテーブル部分に設置され、ターンテーブル上に市街地や地形といった模型をGISデータに基づいて自動的に製作する装置となっています。風洞実験模型を簡易に短時間で製作できる画期的な装置として、2021年に日本風工学会技術開発賞を受賞(※1.2.3)しました。また、2022年3月には特許として登録(特許第7033986号)されました。 この装置の活用により、模型製作期間を大幅に短縮することができるようになり、模型を何度も作り替えることが容易にできるので、周辺の変化に対するパラスタが簡単にできるようにもなりました。また、模型が使い捨てでないので、環境負荷を少なく実験が可能になったともいえます。この装置を有効に活用することで、風洞実験の効率化を図り、風工学の発展に寄与できるような研究成果を多く世に出していきたいと考えています。※1 日本風工学会誌 2021 年 46 巻 4号 p. 400-401 https://doi.org/10.5359/jawe.46.400※2 日本風工学会誌 2021 年 46 巻 4号 p. 414 https://doi.org/10.5359/jawe.46.414※3 日本風工学会誌 2021 年 46 巻 2号 p. 209-213 https://doi.org/10.5359/jawe.46.209 ⑤振動ローラの加速度応答を利用した現場締固め管理システム(次世代αシステム) 前田建設は、株式会社大林組と共同で開発したICT土工現場締固め管理システム「αシステム」の適用性拡大を図るために、国立研究開発法人土木研究所や株式会社高速道路総合技術研究所など発注者側研究機関との共同研究を進めてきました。国土交通省が推進するi-constructionでは盛土転圧用重機に搭載したICT機器を駆使し盛土施工の効率化と生産性向上を目指していますが、これらの共同研究は転圧回数や撒き出し厚といった施工仕様に限定した現状の管理手法から一歩前進し、盛土の締固め品質(土の密度や剛性、含水状態など)を包括したICT品質管理システムの具現化と本格的なDX化を目指すものです。2020年度~2021年度の2回に渡り国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)実証事業にも採択されるなど、新システムの本格的な構築と現場実証を進めています。 ⑥環境残留性の高い有機フッ素化合物の熱分解処理技術の開発 前田建設では、これまでに培った環境技術をベースにPFAS類を99.999%分解可能な「可搬型無害化処理装置『De-POP’s』TM」を開発しました。 有機フッ化化合物(PFAS)は、水と油を弾く性質を有する化学物質であり、撥水剤、表面処理剤、消火剤といった日常生活上の多様な用途で用いられてきました。一方、昨今では、PFAS類の生体への有害性が指摘されはじめ、また自然環境中に放出されたPFAS類がその安定性ゆえに、難分解性物質として蓄積し、広範囲に汚染が存在することも顕在化しています。米国バイデン政権も規制強化の方針を公約として掲げており、PFAS類を安全かつ確実に分解する技術が求められています。 前田建設では、当該装置を用いた実証試験を実施し、PFAS類を99.999%分解することに成功しました。今後、PFAS類の課題を抱える国内外への技術投入により、地球環境、地域社会の保全に引き続き貢献していきます。 ⑦「建設用3Dプリンタ」の社会実装に向けた共同実証実験を実施 労働力不足が深刻な建設業界における省人化技術として建設用3Dプリンタが注目されており、前田建設は、2020年10月より、建設用3Dプリンティング技術を有するベンチャー企業である株式会社Polyuse(ポリウス)と共同研究を行ってきました。これまでの研究により、造形材料の配合、室内での造形に関する技術やノウハウを蓄積してきましたが、さらに、2021年6月に、屋外での造形が可能であることを検証するために、ICI総合センター敷地内のICI Campにて経年劣化した既設集水桝の更新工事を行い、建設用3Dプリンタにより、雰囲気温度の変動が大きい屋外における新設集水桝の造形に成功し、その出来形や機能に問題がないことを確認しました。 今後は、建設用3Dプリンタの普及に向けた活動にも取り組み、施工の省人化・無人化の実現に向けて貢献していきます。 ⑧愛知アクセラレートフィールドにおけるインフラ運営・維持管理技術の実証 2018年8月より開始した愛知アクセラレートフィールド(※)は4年目の活動に入り、引き続きコンセッション事業の運営・維持管理における様々なニーズを募集テーマとして、運営している有料道路をリビングラボと位置づけて新技術実証実験フィールドとして提供し、数多くの実証実験を実施しています。昨年10月には逆走車・誤侵入歩行者防止システムの社会実装を、今年1月には橋梁のUAV点検の社会実装についてHP上で公表したほか、各種の構造物モニタリング技術の実証実験の成果をプロジェクトレポートとしてHP上に公開し、広く社会のために役立ててもらうべく、活動を続けています。 また、それらの成果の活動報告展示会を、2022年1月にオンラインで実施いたしました。これまでの成果を広く周知するとともに、社会的な新技術導入拡大の一助となればと考えています。 ※詳細は愛知アクセラレートフィールドのホームページをご確認ください。(https://www.acceleratefield.com/) (舗装事業) 連結子会社である前田道路株式会社(以下。「前田道路」という。)においては、二酸化炭素等の温室効果ガスの放出による地球環境問題や道路交通騒音・振動等の沿道環境問題への対応、道路インフラの効率的な保全、デジタル技術の活用等、社会及び国民の幅広いニーズに応えるべく、「人と環境に配慮した技術」、「維持修繕の効率化に貢献する技術」、「生産性の向上に寄与する技術」及び「持続可能な社会をつくる技術」を重点テーマにあげて研究開発に取り組んでいます。 当連結会計年度における研究開発費は1,121百万円余であり、主な研究開発成果は次のとおりです。 ①「人と環境に配慮した技術」に関する研究開発 前田道路ではCO2排出量削減目標を2030年度に2013年度比50%削減、2050年度にカーボンニュートラルを目指しており、その一環として2022年1月より広島合材工場においてアスファルト混合物製造時に排出されるCO2を50%削減した低炭素合材の製造販売を開始しました。アスファルト混合物製造における骨材等の加熱乾燥に用いる燃料を、重油からCO2排出原単位の小さい都市ガスとバイオマス由来のカーボンニュートラルなバイオ重油に変更しました。また、プラントの稼働電力をすべて再生可能エネルギー率100%に変更することにより、アスファルト混合物製造に伴うCO2排出量を50%削減することが可能となり、低炭素合材として販売する運びとなりました。これにより施工会社は当工場のアスファルト混合物を使用することで、スコープ3を大幅に低減することができます。 また、当工場にはアスファルトに少量の水を添加することで通常のアスファルト混合物製造温度を最大30℃低減できるフォームドアスファルト装置(LEAB)があり、この技術を使用することによりCO2排出量をさらに削減可能となります。 ②「維持修繕の効率化に貢献する技術」に関する研究開発Ⅰ.都市部のヒートアイランド現象対策として路面温度上昇抑制効果を有する遮熱性舗装が開発され、2002年度から2020年度までで累計約2.9百万㎡が施工されました。施工は専用機械を必要とするため、施工面積が狭くなると1㎡当たりの単価が高くなる傾向があり、遮熱性舗装のポットホールの補修や占用工事など小規模施工においては遮熱塗料を塗布しない場合もあります。小規模施工において遮熱性舗装を遮熱性舗装で復旧するためには、安価で小面積塗布可能な補修材が必要となります。そのため、スプレー型遮熱塗料を開発しました。これにより、小規模施工に対応可能になったとともに、使いかけのスプレーは長期間保管可能であるためロスなく使い切ることが出来ます。この製品は、2022年4月に販売を開始しました。 Ⅱ.鋼床版舗装の防水層には、一般的にグースアスファルト舗装が用いられています。この混合物は、高温時の流動性を利用した流し込みによる施工のため転圧の必要がなく、ボルトなどの凹凸部や管の裏側等に隅々まで充填することができます。しかし施工には、混合物を240℃程度に加熱するため、特殊な加熱撹拌装置付運搬車が必要となり、さらに安定した加熱撹拌をするためには3t以上の混合物が必要となるため、小規模施工時には多くの材料が廃棄される場合が多く、コスト面を考慮すると不向きな点がありました。前田道路で開発した「マイルドグース」は、単粒度砕石の間隙に特殊バインダを非加熱での流し込み不透水層を形成するものであり、加熱撹拌装置付運搬車が不要となり、少量からの製造及び施工が可能で、余り合材がほとんど発生しないため、小規模施工の際にはコストの大幅な削減が期待できます。また、長期保管できるため、緊急を要する補修作業の際にも対応が可能です。この製品は、2022年上半期に販売を開始します。 ③「生産性の向上に寄与する技術」に関する研究開発Ⅰ.社会インフラとして人々の暮らしに欠かせない道路や建物は、解体後その大部分がリサイクルされていますが、現状、解体時に発生するがれき類の異物は一部(製品としてリサイクルできない金属や木材等)を破砕工場にて手作業で取り除いており、作業環境の改善が課題となっていましたが、前田道路はFUJIのロボット・画像処理技術を活用したAI画像認識による「リサイクル分別ロボット」を導入し、無人で異物除去を行うことにより、リサイクル製品の製造工程における作業環境の改善、労働力不足の解消、品質向上と環境改善を目的とした実証実験を行っています。 Ⅱ. i-Constructionに代表される情報通信技術(ICT)などを活用して建設現場の生産性向上技術の開発に取り組んでいます。 現場作業の効率化として、「建設機械搭載型レーザスキャナを用いた出来形管理技術」が国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に2年連続で選定され、アスファルト舗装への適用やBIM/CIMへ対応など更なる高度化について現場検証を行いました。今後は汎用化に向けて取り組んでいきます。 拡大が見込まれる舗装修繕工事への取り組みとして、古くなった舗装を撤去する路面切削機に対する情報化施工技術である前田道路独自工法「かんたんマシンガイダンス」が国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録されました。この技術は前田道路の工事へ積極的に導入するだけでなく、汎用化を図るために大手建機レンタル会社に技術協力を行いました。その結果、大手建機レンタル会社から商品化されて地元業者の方でも使えるようになりました。 舗装工事における省人化は生産性向上のみならず安全性向上にも寄与する重要課題と捉え、作業の機械化など様々な技術開発を進めており実用化に向けた現場テストを重ねています。 ④「持続可能な社会をつくる技術」に関する研究開発 アスファルト舗装はほぼ100%リサイクル可能であり、持続可能な社会をつくる技術と言えます。しかしながら、再生アスファルト混合物は1980年代より製造・施工が開始され、その間再生、再々生と繰り返し再生されている状況です。再生回数の増加に伴いアスファルトの劣化が進むため、今現在の再生混合物の品質は一定の水準を確保していますが、今後さらに再生回数が増えると再生混合物の品質低下が予想されます。そのため前田道路では様々な側面から再生混合物の品質向上への取り組みを行っており、その中の1つにWフォームド技術(フォームドアスファルトの性能向上、再生用添加剤へのフォームド技術の適用)があります。本技術は既に実用化に至っており、これにより再生混合物の品質向上が図れています。 アスファルト舗装は持続的再生利用が求められており、今後も更なる品質向上が求められるため、引き続き再生混合物の品質向上に関する様々な研究開発を行っていきます。 (機械事業) 連結子会社である(株)前田製作所においては、自社製品のカーボンニュートラル化に向けた電動仕様の開発及び、現場ニーズに対応した製品の開発を推進しています。また、要素技術開発として今後の労働力不足に対応するべく自動化・遠隔制御技術等の開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は360百万円余であり、主な研究開発結果は次のとおりです。 ①バッテリー仕様かにクレーンMC305CB-3の開発 弊社では2030年度までに主要自社製品のカーボンニュートラル化を目指しており、2021年度は、バッテリー仕様かにクレーンの第2弾として2.9t吊りのMC305CB-3を開発し発売しました。バッテリーにはリチウムイオン電池を採用することでCO2の排出を抑制するだけではなく、ライフサイクルの面からも環境負荷低減に努めています。 ②自走式スクリーンBM545M-3及び磁選機オプションの開発 自走式スクリーンBM545S-2のモデルチェンジ機として特定特殊自動車排出ガス2014年基準値適合エンジンを搭載したBM545M-3を開発し発売しました。また、資源の有効活用のためお客様よりご要望が多かった磁選機オプションを開発し発売しました。 ③クローラクレーン地下仕様CC1485G-1の開発 お客様より復刻のご要望が多かった、地下現場での使用に最適化されたクローラクレーンCC1485G-1を開発し発売しました。従来機では一部コンポーネントをパートナー企業より供給を受けていましたが、モデルチェンジ機ではエンジン、足回り、油圧部品ともに自社で設計・選定したものとなっています。 ④クローラクレーンCC985S-1・CC1485S-1用マルチアシストビューの開発 クローラクレーンの周囲の安全確認のため、CC985S-1・CC1485S-1用のオプション品としてマルチアシストビュー(全周囲カメラ)を開発し発売しました。 ⑤クローラクレーンCC985S-1・CC1485S-1用旋回規制装置の開発 地下、鉄道現場等周囲に制限がある現場での安全作業実現のため、クローラクレーン CC985S-1・CC1485S-1用のオプション品として旋回範囲規制装置を開発し発売しました。 ⑥合金微粉末事業の推進 脱炭素社会実現に向け必要とされる省電力機器で使用される接合材は高温度耐用が要求されることから、高額な金、銀が使用されており、これらに代わる合金粉末の接合材が求められています。 当社では、合金微粉末の製造特許取得業者と連携し、均一組成、低酸化の品質を確保した上で大量生産可能な装置を導入し、合金微粉末製造事業を推進しています。 ⑦自動化・遠隔制御技術の開発 当社コア技術であるクレーン制御技術とオープンイノベーションにより習得したIoT技術を応用展開し、農場における自動洗浄ロボット制御技術とロボット遠隔管理システムを開発しました。今後は様々な装置への展開、データ解析による新たな付加価値創出を進めていきます。