5 【研究開発活動】 当社グループは、強みである皮膚科学技術や処方開発技術、感性科学、情報科学に加えて、デジタル技術や機器開発技術などの新しい科学技術を国や業界を超えて融合し、資生堂の企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に取り組みます。 資生堂グローバルイノベーションセンター(呼称「S/PARK エスパーク」)をはじめ、米国、フランス、中国、シンガポールの各海外研究開発拠点においては、現地のマーケティング部門と連携しながら、各地域のお客さまの肌や化粧習慣の研究、その特性にあった製品開発に取り組んでおり、世界中のお客さまに対して安全・安心、高品質な商品・サービスの創出に向け、資生堂グループ全体の成長に貢献するとともに世界の化粧品業界をリードします。 当社グループが生み出した研究開発成果は外部より高い評価を受けています。日本の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究開発を行った者に贈られる、令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「科学技術賞(研究部門)」を受賞、そして米国画像科学技術学会が発行する論文誌「Journal of Imaging Science and Technology」において年間一報のみに贈られる「Charles E. Ives Journal Award」を受賞、さらに第22回日本抗加齢医学会総会において「最優秀演題賞」を受賞しました。 社外に向けた研究開発成果の発信にも力を入れています。「知と体験の融合」をコンセプトとしたイノベーションカンファレンスを実施し、当社グループの研究開発戦略とともに、最新の研究開発成果を社会に向けて発信しました。また、戦略実現を加速するアプローチとして、外部企業・研究機関等との連携および海外研究開発拠点でのイノベーション創出を積極的に進めることを示しました。 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は267億円(売上高比2.5%)であり、商品カテゴリー別の研究成果は、以下のとおりです。なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っていません。 (1)スキンケア 環境とポジティブに調和・共生し、美を生み出すことを目指した、「環境調和・共生技術」の開発に取り組んでいます。これまで肌に悪影響を及ぼすとされてきた紫外線について、“光合成”から着想を得て、肌に良い作用をもたらす可視光(美肌光)へと変換し、環境と共生しながら美へ導く革新的な技術を開発しました。本研究は、藻類由来のSpirulinaエキスと天然鉱物由来の蛍光酸化亜鉛に、効率よく紫外線を可視光(美肌光)に変換する効果を見出しただけではなく、紫外線による肌ダメージを回復させるとともにコラーゲンやヒアルロン酸の産生を高める作用があることを発見しました。本研究成果を「アネッサ」および「SHISEIDO」の商品開発に応用しました。 コラーゲンは、シワ・たるみなどの皮膚形態特性を決める重要な因子だと考えられています。また、紫外線などの影響で進む光老化では、線維芽細胞によるコラーゲンの産生が減ることや過剰な分解が起こることが知られています。当社グループは、光老化した皮膚において、本来体内で免疫機能を担うことが知られる2種類のマクロファージのバランスが、コラーゲンの産生、分解、除去など一連のコラーゲン代謝にも関与していることを明らかにしました。マクロファージバランスを健全に保つことにより、これまでのコラーゲン産生の維持・促進の効果に加えて、分解後のコラーゲン除去を含めた肌本来のコラーゲン代謝を適切に維持できることが期待されます。本研究成果を「エリクシール」の商品開発に応用しました。 肌の保湿や様々な生理活性を示すことが知られているヒアルロン酸 (HA) は、分子量が極めて大きいことから肌に浸透しにくく、その保湿効果は皮膚表面に限定されていました。そこで、HAを収縮させ、肌への浸透を劇的に高めることに成功し、さらに、収縮したHAを再膨潤させ、HAの保水力を最大限発揮させる技術を開発しました。本技術により、HA本来の性質を発揮し、角層水分量を高めることを可能としました。本研究成果は「SHISIEIDO」の商品開発に応用しました。 (2)メイクアップ 化粧品に求められる高い機能性や有効性、心地よさや塗布のしやすさ、高い安定性や安全性を満たすために、重要な成分である水と油を混合・安定化するのが乳化技術です。しかしながら、安定性と使用感触の両立には制約があり、特に粉末が含まれるメイクアップ製品においては難易度の高い課題となっていました。当社グループは、画期的な乳化技術の開発に成功し、高い乳化安定性によって配合可能な成分の幅も広がり、安定性と使用性・効果感を高次元で両立することができました。本技術は、「マキアージュ」の商品開発に応用しており、今後は使用感や効果感に対する多様なお客さまのニーズを満たすべく、サンケア製品、スキンケア製品など幅広い製品にも活用していきます。 Spiber株式会社が開発した「Brewed Protein™️繊維(※)」は、植物由来のバイオマスを原材料とした生分解性を有する繊維です。当社グループが目指す循環型モノづくりに資すると考え、マスカラファイバーとして活用するために、化粧品用途として共同開発を行いました。環境へ配慮しながら、しなやかで美しいまつ毛を演出するマスカラファイバーとして、今後も広く活用を検討していきます。本素材は「マキアージュ」の商品開発に応用しました。※ Brewed Protein™️は、日本およびその他の国におけるSpiber株式会社の商標または登録商標です。 また、海外研究開発拠点のネットワークを活かし、新たな価値づくりも加速させています。米国を拠点とするメイクアップブランド「NARS」においては、国内開発拠点の資生堂グローバルイノベーションセンターが開発した技術をもとに、米国研究開発拠点のアメリカイノベーションセンターが処方を完成し、成分の70%以上をスキンケア成分で構成するファンデーションの開発に成功しました。商品はグローバルで非常に高い評価を得ています。 (3)ヘルスケア当社グループは身体の内側から美を支えるビューティーウェルネス分野に早くから着目し、サプリメントや食品などの研究に取り組んできました。ワサビノキ葉および鳳梨(ほうり)抽出物などを配合した経口剤と、自社開発成分である4-メトキシサリチル酸カリウム塩やトラネキサム酸を配合した塗布剤を併用することにより、単独使用時と比べ全身の抗酸化力や肌の明るさおよび透明度がより一層高まることを確認しました。本研究は「HAKU」の商品開発に応用しました。 腸管バリア機能のうち「タイトジャンクション」は、腸細胞同士の隙間を閉じて異物の侵入を防ぐ働きをします。ストレスや加齢、肥満などさまざまな原因によりタイトジャンクションが壊れると、異物の侵入を防ぎきれず、体や肌の不調を引き起こします。黒ショウガエキスの摂取により、タイトジャンクションの働きが強化され腸管バリア機能が高まることを明らかにしました。本研究は「ベネフィーク」の商品開発に応用しました。 (4)サステナビリティ 製品の効果、容器の上質なデザインや感触などから感じる満足感と、人や社会や地球環境への尊重・共生を両立させる、資生堂ならではのアプローチで、サステナブルな製品の開発に取り組んでいます。 容器包装においては、プラスチック製容器について、2025年までに100%サステナブルな容器を実現するという目標を開示し、取り組みを加速しています。多種多様なプラスチックから作られる化粧品容器においては、分別が難しく循環利用が困難である点が課題となっていましたが、容器を回収し、分別することなく資源化、原料化を経て、容器として再生する一連の循環モデルの構築と活用にむけて、積水化学工業株式会社、住友化学株式会社と連携を開始しました。 安全性と品質に優れた原料の「責任ある調達」にも取り組んでいます。ヨーロッパイノベーションセンター主導で、フランスのスタートアップ企業Tower Farmとのパートナーシップにより、垂直農場(※)をパリ郊外に建設し、植物原料のうち主要な3品をフランス国内で、無農薬で栽培・収穫することに成功しました。得られた原料は、植物由来成分で、体の内外からすこやかな美しさを目指すスキンケアブランド「Ulé」に活用しました。※ 垂直農場(または垂直農法)は高さのある建築物の階層や、傾斜面の高さを利用し、垂直的に農作物を生産すること です。室内で光・温度・室温をコントロールし、安定供給および品質管理が可能となります。資生堂の垂直農場 では19の要素をコントロールしています。 以下、その他の活動について記載します。外部の様々な知との融合によるイノベーションを目指すオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」の活動を、2021年の韓国に続き、中国にも展開しました。メディカルビューティー技術、ホリスティックビューティー技術をテーマに設定し、中国国内のスタートアップ企業を募集しました。当社のグローバルな研究開発体制の元、海外においても早期のイノベーション創出を目指します。 高いパーソナライズ性のあるこれまでにないビューティーケアの提案に繋がる研究にも力を入れています。長年にわたる皮膚科学研究とAIなどの新たな技術を組み合わせ、DNAの個人差と肌状態の関連性について明らかにし、DNA検査法の開発に成功しました。また、ヤマトエスロン株式会社、株式会社オルコアと共同で、皮膚の美しさや健康に重要な役割を果たしている皮膚常在菌の量とバランスを短時間で簡便に測定する新たな検査法を開発しました。 また、新たなビジネス基盤の創出を目指し、肌、身体、こころの関係性の科学的な解明にも取り組んでいます。資生堂と国立大学法人弘前大学は、共同研究講座「ビューティーウェルネス学研究講座」を開設し、互いの持つ研究データ、知見、手法を融合させ、肌・身体・こころの関係性を解き明かす研究を推進するための連携を開始しました。また、株式会社DeNAライフサイエンスとデータ解析に関する包括連携協定を締結し、よりスピーディーで精度の高いデータ解析を目指して連携を開始しました。 人材育成においても、新たな取り組みを始めています。最先端のバイオ研究を行いながら、果敢にチャレンジする研究者の育成にも積極的に取り組む慶応義塾大学先端生命科学研究所と、イノベーションの創出や未来型イノベーションをリードする人材育成を目的に連携を開始しました。
FY2021|3,710 文字
5 【研究開発活動】 当社グループは、強みである皮膚科学技術や処方開発技術、人間科学、情報科学に加えて、デジタル技術や機器開発技術などの新しい科学技術を国や業界を超えて融合し、日本発のイノベーションを創出することで、資生堂の企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に取り組みます。 資生堂グローバルイノベーションセンター(呼称「S/PARK エスパーク」)をはじめ、米国、フランス、中国、シンガポールの各海外研究開発拠点においては、現地のマーケティング部門と連携しながら、各地域のお客さまの肌や化粧習慣の研究、その特性にあった製品開発に取り組んでいます。新たに2021年には、美容・健康産業特区「東方美谷」の中国イノベーションセンター新拠点での本格的な活動を開始しました。同地区内で展開する様々な企業・機関と協働し、中国の化粧品業界をリードするとともに、資生堂グループ全体の成長に貢献します。当社グループのイノベーションへの取り組みは外部から高い評価を受けています。化粧品技術を競う世界最大の研究発表会「国際化粧品技術者会連盟カンクン中間大会2021」(IFSCC Conference 2021 in Cancún)において、口頭発表部門の「最優秀賞」を受賞しました。総受賞回数は通算29回(うち最優秀賞は25回)となり、世界の化粧品メーカーの中では最多の受賞回数となります。さらなる研究開発活動強化を目的に、独自の研究開発理念として「DYNAMIC HARMONY」を制定しました。「DYNAMIC HARMONY」は、明治期に日本初の民間洋風調剤薬局として創業以来取り組んできた、西洋の科学と東洋の叡智を融合した成り立ちに端を発するものです。一見相反する価値や両立が難しい価値を融合し、唯一無二の新たな価値を生み出すという独自の研究開発の考え方を当社の強みとして再定義し、明文化しました。この理念のもと、5つの研究アプローチを柱に据え、多様なバックグラウンドをもつ世界中の研究員が能力を最大限発揮することを狙います。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は256億円(売上高比2.5%)であり、商品カテゴリー別の研究成果は、以下のとおりです。なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っていません。 (1)スキンケアシワができる本質には皮膚のかたさが大きく関わると考えられますが、皮膚は性状の異なる複数の層から形成されるため、シワの本質を理解するためには層ごとのかたさを評価する技術開発が必要とされていました。最先端の3D弾性イメージング技術を独自に開発して、幅広いお客さまの皮膚の層毎のかたさとシワの関係を調査した結果、加齢にともなって生じる「角層と真皮層の間で生じるかたさのバランスの崩れ」がシワの本質であることを発見しました。今回の研究成果は、まだ見えないシワの予防から刻まれたシワの改善までが可能になる、画期的なスキンケアへ繋がる知見です。本研究成果を「SHISEIDO」の商品開発にて応用しました。シミと異常な毛細血管ネットワークの関係性について明らかにしてきましたが、更なる研究によりシミ部位での血管生成に関わる因子の機能の高まりとその抑制成分を見出しました。加えて、独自の肌内部の血管観察技術を用いて、シミ部位の血管状態がシミの形成だけでなく改善プロセスにおいても密接に関係していることを解明し、美白ケアにおける血管の重要性が改めて示されました。本技術を「HAKU」へ応用しました。 日焼け止めには、高い紫外線防御力や耐水性などの観点から酸化チタンなどに代表される粉末が一般的に用いられています。高い機能性を持つ一方で、肌への負担感や塗布後の被膜感、白さなど使用感触の面では課題もありました。そこで紫外線防御粉末を微細化する技術 “スムースプロテクトテクノロジー”を新たに開発し、自社従来品よりも少ない紫外線防御粉末で効果的に日焼け止め効果を引き出すことに成功しました。本技術を「アネッサ」へ応用しました。 (2)メイクアップ シワ、たるみなどの形状の悩みは加齢とともに加速し、改善したいというニーズは広く存在しています。しかし、目袋のような大きな形状変化の改善は困難でした。そこで、米国ベンチャー企業 Olivo Laboratories より取得した「Second Skin」の基本技術に当社の強みである処方開発技術を組み合わせ、たるんだ目もとを自然な見え方でカバーするだけでなく長時間持続させる、効果と剥がれにくさを両立させた製剤の開発に成功しました。本技術を「SHISEIDO」へ応用しました。つやのある仕上がりをもち色移りしにくい口紅類を開発してきましたが、マスクによるこすれ対応には課題がありました。そこで、ジェル中へ独自成分とティント成分、密着油分・コート油分の2種の油分を配合する技術を開発しました。ジェルを唇に塗布すると、ティント成分は唇に染めつき、2種の油分は独自成分のサポートを受け「コート層」、「密着層」の二層に分かれ、つやのある滑らかな膜を形成します。このオイルコントロール技術により、マスクへの色移りのしにくさと、つやのある仕上がりの両立に成功しました。本技術を「マキアージュ」へ応用しました。 (3)ヘルスケア美と健康をつなぐ食品の研究開発を進めています。「コケモモ」と「アムラ果実」の美容成分がコラーゲンを生み出す力を相乗的に高めるという研究成果を「ザ・コラーゲン」へ応用しました。 (4)ヘアケア「ナチュラルやサステナブルなヘアケアアイテムには興味はあるが、仕上がりや使用感には満足できない」と感じている方が多い点に着目し、厳選された天然由来の野菜や果物のエキスやエシカル・サステナブルな香料を一部に使用しながら髪および頭皮に優しくなめらかな使い心地を実現した処方を開発し、「HAIR KITCHEN」へ応用しました。 (5)デジタル・機器非接触かつメイクを落とさなくても、サーモカメラ計測による皮膚表面温度から肌内部の血流状態を判定する機器を開発しました。透明感、ハリ・弾力、なめらかさなどの肌要素も同時に判定することで、肌の内外の判定結果から、パーソナライズされたビューティーアドバイスが可能となりました。本技術を「SHISEIDO」へ応用しました。高周波・低周波を含む複合的な物理刺激(STエネルギー)を肌組織に作用させることで、毛細血管密度を高め、新しい肌を生みだす真皮幹細胞の数を増やすことを発見しました。さらに、顔に4週間、物理刺激とそれを肌に伝えるために最適化した化粧品基剤を毎日1回組合せて使用連用した結果、ハリの改善などの効果を見出しました。本技術を「EFFECTIM」へ応用しました。 以下、その他の活動について記載します。サステナブルな製品開発(パッケージ、処方)を推進しています。パッケージにおいては、リユースの取り組みとして、洗浄・製品の再充填および再販売ステップへの耐久性と高級感を兼ね備えたガラス容器を独自開発して「AQL」へ応用し、循環型ショッピングプラットフォーム“Loop”サイトでE-コマースにて発売しました。オープンイノベーションもさらに強化すべく、オープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」の活動を推進しています。活動の1つの目的である「スタートアップ企業のアイデアを商品やサービスへスピーディーに活用」への取り組みでは、株式会社ORPHEと共同で歩行の美しさに関する新評価法の実証実験を開始しました。「美しい歩行動作」を定量化する独自評価法と株式会社ORPHEが保有する小型センサー内蔵のスマートシューズとアプリを用いた動作分析システムの融合により、歩行動作の分析・評価サービスの提供、さらには美しい動きと肌や心身の健康との関連解明を目指します。また、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の事業共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFEプラットフォーム」が新たに立ち上げた「THINK SPACE LIFE アクセラレータプログラム2021」に参画し、「生活リズム/体内リズムの見える化と適正化による美の実現」について事業提案を募りました。今後、選定企業と共同開発を進め、新事業価値創出、さらには宇宙における暮らしへの応用を目指します。 社外に向けてR&D戦略発表会を開催しました。紫外線を肌に有益な光に変え,環境と共生してその恵みから美を生み出す「紫外線変換技術」、加齢や重力による顔の変化を肌の外側と内側の双方向から最先端解析技術で解き明かした「たるみ研究」、目袋やほうれい線など圧倒的な顔の形状補正効果と、使いやすさの両立を追求し叶える「『Second Skin』技術」の発表を行いました。これらの研究や技術の進化をすすめ、商品へのさらなる活用を目指していきます。
FY2020|3,711 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、強みである皮膚科学技術や処方開発技術、人間科学、情報科学に加えて、デジタル技術や機器開発技術などの新しい科学技術を国や業界を超えて融合し、環境負荷を最小限に日本発のイノベーションを創出することで、資生堂の企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に取り組みます。 資生堂グローバルイノベーションセンター(呼称「S/PARK エスパーク」)をはじめ、米国、フランス、中国、シンガポールの各海外研究開発拠点においては、現地のマーケティング部門と連携しながら、各地域のお客さまの肌や化粧習慣の研究、その特性にあった製品開発に取り組んでいます。2021年は美容・健康産業特区「東方美谷」に設立した、中国イノベーションセンターの本格稼働を予定しており、同地区内で展開する様々な企業・機関と協働し、中国の化粧品業界をリードするとともに、グローバルでの持続的な成長を加速していきます。当社グループのイノベーションへの取り組みは外部から高い評価を受けており、化粧品技術を競う世界最大の研究発表会「第31回国際化粧品技術者会連盟横浜大会2020」(The 31th IFSCC Congress 2020 Yokohama)において、「口頭発表基礎部門」の最優秀賞を受賞しました。本大会における当社の最優秀賞の受賞は8大会連続、また総受賞回数は通算28回(うち最優秀賞は24回)となり、世界の化粧品メーカーの中では最多の受賞回数となりました。また、第13回中国化粧品学術研討会において、優秀論文として「1等賞」、「2等賞」、「3等賞」をトリプル受賞しました。当受賞は研究内容に加え、中国化粧品業界の技術進歩への貢献が評価されたものです。最も優秀な研究に贈られる「1等賞」については通算7回目の受賞になります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は270億円(売上高比2.9%)であり、商品カテゴリー別の研究成果は、以下のとおりです。なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っていません。 (1) スキンケア見た目の印象を左右する皮膚の状態を決める要因を解き明かすため、AIを活用し、皮膚を超高精細にコンピューター上に再現して解析する「デジタル3DスキンTM」技術を開発しました。これまで線維芽細胞は真皮中で単独で存在するとの考えが一般的でしたが、この新技術で顔面の皮膚を解析し、超微細な細胞突起まで立体的に観察することで、線維芽細胞は互いに結合してネットワーク構造を形成していることを明らかにしました。また、「線維芽細胞ネットワーク」が失われることで、細胞の状態が悪化し、皮膚の老化に繋がる可能性を示しました。これらの研究成果の一部は化粧品技術者の世界大会「国際化粧品技術者会連盟ミュンヘン大会2018)」(IFSCC Congress 2018)で口頭発表し、最優秀賞を受賞しました。皮膚の若返りが期待できる本研究成果を「エリクシール」へ応用しています。美容法の中から「圧力」の持つ力に着目し研究を進めた結果、肌に圧力を加えることは、幹細胞リザーバー(皮脂腺周囲)に貯蔵されている幹細胞の増殖を促し、これが細胞のネットワークを構築することで、コラーゲンを生み出し、肌を再生する可能性を明らかにしました。本研究成果の一部は、化粧品技術者の世界大会「国際化粧品技術者会連盟ミュンヘン大会2018(IFSCC Congress 2018)」で口頭発表し、最優秀賞を受賞しました。得られた技術を「クレ・ド・ポー ボーテ」へ採用しました。日常生活から過酷な紫外線条件下までのあらゆる環境下で、紫外線の悪影響から肌をしっかり守りたいというお客さまのニーズに向けて研究開発に取り組んできました。当社の調査では、天気の良い日に屋外で太陽に当たると、人の体表温度はわずか数分で約40℃にまで達することを確認しています。そこで、太陽の「熱エネルギー」を利用して紫外線防御効果を高める研究を進め、塗布した日焼け止めが太陽の熱などで温められると紫外線防御成分が膜内で均一に広がり、紫外線防御効果が高まる技術を世界で初めて開発しました。得られた技術を「SHISEIDO」、「アネッサ」へ採用しました。顔の皮膚の常在細菌叢を網羅的に解析し、健常な日本人女性の肌において、表皮ブドウ球菌の割合が高いほど肌の水分量は高く、肌の赤みは低いという相関を見出し、また、敏感肌における菌叢の解析を行い、敏感肌では非敏感肌に比べて有意に菌叢の多様性が低く、表皮ブドウ球菌も少ないことを確認しました。新たに開発したプレバイオティクス成分を含む基剤を連用した結果、全ての肌において水分量が改善し、特に菌叢の多様性が低い肌においてキメの改善が確認できました。得られた技術を敏感肌ブランド「dプログラム」へ採用しました。 (2) メイクアップ昨今、つややかな仕上がりのあるベースメイクアイテムが好まれる一方で、マスクや衣服に付着しやすいという課題がありました。水をはじく性質をもつ疎水化処理粉末を油や界面活性剤に頼らずに水に分散する技術を世界で初めて開発し、粉末が本来もつ特性を最大限に発揮させることに成功しました。今回の技術を用いることにより、瑞々しくうるおった艶やかな仕上がりを実現しながら、均一な塗布膜が肌に密着してマスクに付着しにくい効果の両立を実現することに成功しました。得られた技術を「マキアージュ」へ採用しました。ニューノーマルな生活のなかでも、お客さまが好みの使用感や仕上がりを自由に選択し、化粧を楽しむ生活をサポートします。また、当社の調査ではシルクのように「なめらか」で「やわらかい」肌触りが好まれていることが分かりました。そこで、心理物理学的手法を用いて人が肌の「やわらかさ」を感じる新しいメカニズムを発見しました。このメカニズムをもとに,なめらかで柔らかい感触を実現する成分や製法を選び出し、「インテグレートグレイシィ」へ採用しました。 (3) ヘアケアサロントリートメントの技術から発想を得た革新の浸透テクノロジーである①美容成分の通り道を広げる、②美容成分をダイレクトに注入、③美容成分を髪内部にとどめて密封という3ステップのアプローチをシャンプー・コンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアウォーターに搭載し、「TSUBAKI」へ採用しました。髪の内側へたっぷりと美容成分を浸透させ、うるおい・艶バランスのベストコンディションに導き、毎日の基本ケアでサロン帰りのような美しい髪を実現します。 (4) ヘルスケアヘルスケア領域では、美と健康をつなぐ食品の研究開発を進めています。肌に対するアンチエイジング効果を体の内側から実現するため肌のコラーゲンを生み出す力を高めることに注目しています。コラーゲン産生機能を活性化する力と肌の幹細胞を減らさない力をこれまで以上に強化し、お客さまが求めているハリのある立体的な美しい肌を実現させる美容サプリメント「新 ザ・コラーゲン」を開発しました。 (5) プロフェッショナル100年以上もの歴史を持つ資生堂の毛髪研究により、頭皮の最深層が育毛の原動力に影響を与えるメカニズムを解明しました。毛根の発毛・育毛の原動力に働きかけるとともに頭皮の深層にアプローチして、クオリティの高い髪の成長をサポートし、ハリ・コシ・ボリューム感のある髪へと育成します。その対応技術を「サブリミック」へ採用しました。 その他の活動としては、環境負荷の最小化を目指し、2019年4月より株式会社カネカと共同開発を進めていました高い生分解性を持つ独自素材「カネカ生分解性ポリマー PHBH®」を、世界に先駆けて化粧品容器に応用し、「SHISEIDO」のリップカラーパレットへ採用しました。ビューティー領域における新価値創造や化粧品だけにとどまらないイノベーションの創出を目的として、オープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」では、資生堂の研究員と外部の多様な知と人の融合から、新たな美のイノベーションを目指して活動しています。その一環として、株式会社マクアケと連携し、クラウドファンディングシステムを活用し、ユニークなフィルム型のサプリで、いきいきとした顔印象をサポートする「Lämmin」(ランミン)のβ版商品のローンチを行いました。生活者とのコミュニケーションを研究員自らが行うことで、今後、よりお客さまに向き合った価値づくりを実践していきます。また、当社が細胞培養加工を担当した毛髪再生に関する共同臨床研究で、安全性及び一定の有効性が確認され、米国皮膚科学会誌(Journal of American Academy of Dermatology)に掲載されました。現在実用化に向け、東京医科大学、東邦大学、杏林大学病院と共同で、より実用的な治療法の臨床研究を推進しています。