事業の内容
ペプチドリームグループは、独自の創薬開発プラットフォームシステム「PDPS」を活用した創薬開発事業と、子会社のPDRファーマによる放射性医薬品事業を展開しています。PDPSは、多様なペプチド医薬品候補を効率的に見つけ出す技術で、共同研究開発や技術ライセンスを通じて収益を得ています。PDRファーマは、がんや脳疾患の診断・治療に使う放射性医薬品の研究開発、製造、販売を手掛けており、これがグループの主な収益源の一つです。
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FY2025|3,124 文字|出典 docID: S100XRP4
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社グループは、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPSを活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社による放射性医薬品事業を実施しており、医薬品等の研究・開発・製造・販売等に従事しています。なお、当社グループの報告セグメント及び事業内容は、以下の通りです。 <報告セグメントの内容>会社名報告セグメント事業内容ペプチドリーム株式会社創薬開発事業創薬開発事業として、当社は当社独自の創薬プラットフォームシステムであるPDPSを中核とした創薬基盤技術を活用した①創薬共同研究開発、②PDPSの技術ライセンス、③戦略的提携による自社パイプラインの拡充を行っています。PDRファーマ株式会社放射性医薬品事業放射性医薬品事業として、がんや脳の異常蓄積等の病変を画像で検査する診断用放射性医薬品(SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)用診断薬、PET(Positron Emission Tomography)用診断薬)及びがん領域を中心としたアンメットメディカルニーズに対応する治療用放射性医薬品の研究開発、及び製造販売を行っています。 事業の系統図は、以下の通りです。<事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成 PDRファーマを通じて当社グループが日本国内で販売している放射性治療薬・診断薬は以下の通りです。(2026年1月末時点)· ヨウ化ナトリウムカプセル:甲状腺機能亢進症の治療、甲状腺がん及び転移巣の治療、シンチグラムによる甲状腺がん転移巣の発見。37MBqから1.85GBqまで5種類の製品規格を展開。ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル。· ライアットMIBG-I131静注:MIBG集積陽性の治癒切除不能な褐色細胞腫・パラガングリオーマ。3-ヨードベンジルグアニジン(131I)。2025年9月に神経芽腫に対する効能・効果適応追加に関する一部変更承認を取得。· ゼヴァリン®インジウム(111In)静注用セット:イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の集積部位の確認。111In標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。· ゼヴァリン®イットリウム(90Y)静注用セット:CD20陽性の再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫の治療。90Y標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。· オクトレオスキャン®静注用セット:神経内分泌腫瘍の診断におけるソマトスタチン受容体シンチグラフィ。ソマトスタチン受容体を標的とするペンテトレオチドの111In標識注射液。Curium Pharma社からの導入品。· テクネ®DTPAキット:腎シンチグラフィによる腎疾患の診断。ジエチレントリアミン五酢酸99mTc注射液 調整用。· テクネ®MAA®キット:肺シンチグラムによる肺血流分布異常部位の診断。テクネチウム大凝集人血清アルブミン99mTc注射液 調整用。· テクネ®MAG3注射液/テクネ®MAG3キット:シンチグラフィ及びレノグラフィによる腎及び尿路疾患の診断。メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン99mTc注射液。· テクネ®MDP注射液/テクネ®MDPキット:骨シンチグラフィによる骨疾患の診断、脳シンチグラフィによる脳腫瘍及び脳血管障害の診断。メチレンジホスホン酸99mTc注射液。· テクネ®ピロリン酸静注:骨シンチグラムによる骨疾患の診断。ピロリン酸99mTc注射液。· テクネ®ピロリン酸キット:心シンチグラムによる心疾患の診断、骨シンチグラムによる骨疾患の診断。ピロリン酸99mTc注射液 調整用。2024年8月に剤型追加の承認取得。· テクネ®フチン酸キット:肝脾シンチグラムによる肝脾疾患の診断、乳がん、悪性黒色腫、子宮頸がん、子宮体がん、外陰がん、頭頚部がん(甲状腺がんを除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィ。フィチン酸99mTc注射液 調整用。子宮頸癌、子宮体癌、外陰癌及び頭頸部癌(甲状腺癌を除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィについては2023年3月に適応拡大の承認取得。· ニューロライト®注射液第一/ニューロライト®第一:局所脳血流シンチグラフィ。[N,N’-エチレンジ-L-システイネート(3-)]オキソ99mTc、ジエチルエステル注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。· カーディオライト®注射液第一/カーディオライト®第一:心筋血流シンチグラフィによる心臓疾患の診断、初回循環時法による心機能の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺機能亢進症における局在診断。ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル) 99mTc注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。· ミオMIBG®-I123注射液:心シンチグラフィによる心臓疾患の診断、パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィ、腫瘍シンチグラフィによる神経芽腫、褐色細胞腫の診断。3-ヨードベンジルグアニジン123I注射液。パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィについては2023年12月に適応拡大の承認取得。· 塩化タリウム-Tl201注射液:心筋シンチグラフィによる心臓疾患の診断、腫瘍シンチグラフィによる脳腫瘍、甲状腺腫瘍、肺腫瘍、骨・軟部腫瘍及び縦隔腫瘍の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺疾患の診断。塩化タリウム(201Tl)注射液。· ウルトラテクネカウ®:脳腫瘍及び脳血管障害の診断、甲状腺疾患の診断、唾液腺疾患の診断、異所性胃粘膜疾患の診断、医療機器「テクネガス発生装置」との組合せ使用による局所肺換気機能の検査。過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液ジェネレータ。· フルデオキシグルコース(18F)静注「FRI」:悪性腫瘍の診断、虚血性心疾患(左室機能が低下している虚血性心疾患による心不全患者で、心筋組織のバイアビリティ診断が必要とされ、かつ、通常の心筋血流シンチグラフィで判定困難な場合)の診断、難治性部分てんかんで外科切除が必要とされる場合の脳グルコース代謝異常領域の診断、大型血管炎の診断における炎症部位の可視化。フルデオキシグルコース(18F)注射液。 · イオフェタミン(123I)注射液「第一」:局所脳血流シンチグラフィ。塩酸N-イソプロピル-4-ヨードアンフェタミン(123I)注射液。· アミヴィッド®静注:アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化。抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化。フロルベタピル(18F)注射液。2024年5月、薬価基準に収載。抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化については、2024年9月に効能又は効果の一部変更承認を取得。2024年11月に保険適用の範囲を拡大。Eli Lilly社(Lilly社)からの導入品· タウヴィッド®静注:アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症患者におけるドナネマブ(遺伝子組換え)の適切な投与の補助。フロルタウシピル(18F)注射液。2022年11月にLilly社との共同開発契約を締結し、2024年12月に国内における製造販売承認を取得。
FY2024|3,010 文字|出典 docID: S100VITV
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社グループは、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPSを活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社による放射性医薬品事業を実施しており、医薬品等の研究・開発・製造・販売等に従事しています。なお、当社グループの報告セグメント及び事業内容は、以下の通りです。 <報告セグメントの内容>会社名報告セグメント事業内容ペプチドリーム株式会社創薬開発事業創薬開発事業として、当社は当社独自の創薬プラットフォームシステムであるPDPSを中核とした創薬基盤技術を活用した①創薬共同研究開発、②PDPSの技術ライセンス、③戦略的提携による自社パイプラインの拡充を行っています。PDRファーマ株式会社放射性医薬品事業放射性医薬品事業として、がんや脳の異常蓄積等の病変を画像で検査する診断用放射性医薬品(SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)用診断薬、PET(Positron Emission Tomography)用診断薬)及びがん領域を中心としたアンメットメディカルニーズに対応する治療用放射性医薬品の研究開発、及び製造販売を行っています。 事業の系統図は、以下の通りです。<事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成 PDRファーマを通じて当社グループが日本国内で販売している製品は以下の通りです。(2024年12月末時点)· ヨウ化ナトリウムカプセル:甲状腺機能亢進症の治療、甲状腺がん及び転移巣の治療、シンチグラムによる甲状腺がん転移巣の発見。37MBqから1.85GBqまで5種類の製品規格を展開。ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル。· ライアットMIBG-I131静注:MIBG集積陽性の治癒切除不能な褐色細胞腫・パラガングリオーマ。3-ヨードベンジルグアニジン(131I)。· ゼヴァリン®インジウム(111In)静注用セット:イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の集積部位の確認。111In標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。· ゼヴァリン®イットリウム(90Y)静注用セット:CD20陽性の再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫の治療。90Y標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。· オクトレオスキャン®静注用セット:神経内分泌腫瘍の診断におけるソマトスタチン受容体シンチグラフィ。ソマトスタチン受容体を標的とするペンテトレオチドの111In標識注射液。Curium Pharma社からの導入品。· テクネ®DMSAキット:腎シンチグラムによる腎疾患の診断。ジメルカプトコハク酸99mTc注射液 調整用。· テクネ®DTPAキット:腎シンチグラフィによる腎疾患の診断。ジエチレントリアミン五酢酸99mTc注射液 調整用。· テクネ®MAA®キット:肺シンチグラムによる肺血流分布異常部位の診断。テクネチウム大凝集人血清アルブミン99mTc注射液 調整用。· テクネ®MAG3注射液/テクネ®MAG3キット:シンチグラフィ及びレノグラフィによる腎及び尿路疾患の診断。メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン99mTc注射液。· テクネ®MDP注射液/テクネ®MDPキット:骨シンチグラフィによる骨疾患の診断、脳シンチグラフィによる脳腫瘍及び脳血管障害の診断。メチレンジホスホン酸99mTc注射液。· テクネ®ピロリン酸キット:心シンチグラムによる心疾患の診断、骨シンチグラムによる骨疾患の診断。ピロリン酸99mTc注射液 調整用。2024年8月に剤型追加の承認取得。· テクネ®フチン酸キット:肝脾シンチグラムによる肝脾疾患の診断、乳がん、悪性黒色腫、子宮頸がん、子宮体がん、外陰がん、頭頚部がん(甲状腺がんを除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィ。フィチン酸99mTc注射液 調整用。子宮頸癌、子宮体癌、外陰癌及び頭頸部癌(甲状腺癌を除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィについては2023年3月に適応拡大の承認取得。· ニューロライト®注射液第一/ニューロライト®第一:局所脳血流シンチグラフィ。[N,N’-エチレンジ-L-システイネート(3-)]オキソ99mTc、ジエチルエステル注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。· カーディオライト®注射液第一/カーディオライト®第一:心筋血流シンチグラフィによる心臓疾患の診断、初回循環時法による心機能の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺機能亢進症における局在診断。ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル) 99mTc注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。· ミオMIBG®-I123注射液:心シンチグラフィによる心臓疾患の診断、パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィ、腫瘍シンチグラフィによる神経芽腫、褐色細胞腫の診断。3-ヨードベンジルグアニジン123I注射液。パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィについては2023年12月に適応拡大の承認取得。· 塩化タリウム-Tl201注射液:心筋シンチグラフィによる心臓疾患の診断、腫瘍シンチグラフィによる脳腫瘍、甲状腺腫瘍、肺腫瘍、骨・軟部腫瘍及び縦隔腫瘍の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺疾患の診断。塩化タリウム(201Tl)注射液。· ウルトラテクネカウ®:脳腫瘍及び脳血管障害の診断、甲状腺疾患の診断、唾液腺疾患の診断、異所性胃粘膜疾患の診断、医療機器「テクネガス発生装置」との組合せ使用による局所肺換気機能の検査。過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液ジェネレータ。· フルデオキシグルコース(18F)静注「FRI」:悪性腫瘍の診断、虚血性心疾患(左室機能が低下している虚血性心疾患による心不全患者で、心筋組織のバイアビリティ診断が必要とされ、かつ、通常の心筋血流シンチグラフィで判定困難な場合)の診断、難治性部分てんかんで外科切除が必要とされる場合の脳グルコース代謝異常領域の診断、大型血管炎の診断における炎症部位の可視化。フルデオキシグルコース(18F)注射液。· アドステロール®-I131注射液:副腎シンチグラムによる副腎疾患部位の局在診断。ヨウ化メチルノルコレステノール(131I)注射液。· イオフェタミン(123I)注射液「第一」:局所脳血流シンチグラフィ。塩酸N-イソプロピル-4-ヨードアンフェタミン(123I)注射液。· アミヴィッド®静注:アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化。抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化。フロルベタピル(18F)注射液。2024年5月、薬価基準に収載。抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化については、2024年9月に効能又は効果の一部変更承認を取得。2024年11月に保険適用の範囲を拡大。Eli Lilly社からの導入品。
FY2023|579 文字|出典 docID: S100T61M
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社グループは、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPSを活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社による放射性医薬品事業を実施しており、医薬品等の研究・開発・製造・販売等に従事しています。なお、当社グループの報告セグメント及び事業内容は、次のとおりであります。 <報告セグメントの内容>会社名報告セグメント事業内容ペプチドリーム株式会社創薬開発事業創薬開発事業として、当社は当社独自の創薬プラットフォームシステムであるPDPSを中核とした創薬基盤技術を活用した①創薬共同研究開発、②PDPSの技術ライセンス、③戦略的提携による自社パイプラインの拡充を行っております。PDRファーマ株式会社放射性医薬品事業放射性医薬品事業として、がんや脳の異常蓄積等の病変を画像で検査する診断用放射性医薬品(SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)用診断薬、PET(Positron Emission Tomography)用診断薬)及びがん領域を中心としたアンメットメディカルニーズに対応する治療用放射性医薬品の研究開発、及び製造販売を行っております。 事業の系統図は、以下のとおりです。<事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成
FY2022|11,137 文字|出典 docID: S100QIHD
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社グループは、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社(以下 PDRファーマ)による放射性医薬品事業を実施しております。当社事業の系統図は、以下のとおりです。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、当社グループのセグメントは創薬開発事業と放射性医薬品事業の2つのセグメントになります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑥連結財務諸表注記 5.セグメント情報」をご参照ください。 <事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成 (注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(3) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 創薬開発事業において当社は、特殊環状ペプチド(*2)を基にした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊環状ペプチド」とは、当社の造語であり、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、天然には存在しないD体のアミノ酸やN-メチルアミノ酸等の特殊なアミノ酸(非天然アミノ酸、*3)を含んだ特殊なペプチドを環状構造にしたものです。当社では、創薬に適していると考えられるこの特殊環状ペプチドから医薬品を創製することを主たる事業としております。当社は、PDPSを活用しターゲット(標的分子)に対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニング(*4)し、得られた化合物の最適化を行い臨床試験に進めるための体制を整備しております。当社の創薬開発事業における事業概要は、以下のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約に基づき製薬企業の興味のあるターゲットに対する共同研究開発を実施します。当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊環状ペプチドライブラリーを作製し、ターゲットに対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを製薬企業に提供します。その後製薬企業が提供した特殊環状ペプチドの創薬開発を進め、当社は契約一時金に加え製薬企業の創薬開発・販売の進捗に応じて、マイルストーンフィーやロイヤルティー等の対価を受領することができます。(B)PDPS技術ライセンス:製薬企業からのPDPSを当該製薬企業内で実施したいとの要望に応じ、当社では研究開発コラボレーションの一環として、PDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約、*5)を行っております。実施許諾契約の締結に伴い、当社は技術ライセンス料(契約一時金)を受け取ることになるほか、PDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物について設定されたマイルストーンフィー及び上市後の売上高に応じたロイヤルティーを受け取ることができます。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社で設定したターゲットに対する医薬品候補化合物に関するプログラムを複数有しており、これらの研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を実施し、自社又は共同での研究開発を推進しております。放射性医薬品事業における事業概要は、PDRファーマを通じて国内において放射性医薬品等の研究・開発・製造・販売を行っております。現在、PDRファーマでは放射性診断薬として、22品目のSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)製剤と、2品目のPET(Positron Emission Tomography)製剤、及び8品目(3製品カテゴリー)の放射性治療薬を販売しております。また、放射性診断薬の画像読影の支援を目的とした画像解析ソフトウェアの開発・提供も行っております。 (2) 当社の技術について① ペプチド医薬品について一般的にペプチド(*6)とは、2個~50個の天然アミノ酸がペプチド(アミド)結合によりつながった化合物の総称です。生体内の様々な場所で多種類のペプチドが造られており、それらはホルモンや各種伝達物質として生体維持(筋肉の弛緩、血管の拡張、胃酸の分泌、自律神経の制御等)にとって不可欠なものとして働いており、古くから研究対象とされております。“ペプチド医薬品”としては、1980年代にインスリンが遺伝子組み換え技術により大腸菌もしくは酵母から製造され、糖尿病治療に使用され始め、その後も、心不全治療薬や前立腺癌治療薬としてペプチド医薬品が承認され使用されております。一方で、19世紀には植物等から単離・精製されたアルカロイド類の中から、分子量が500以下の小さな“低分子医薬品”が使用され始め、1899年に現在でも使用され続けている消炎鎮痛薬アスピリンが市販されました。その後も多くの低分子医薬品が様々な形で研究開発され、一時期は医薬品市場全体の9割近くを占め、現在においても約5割を占める医薬品カテゴリーとなっております。また“抗体医薬品”は1980年ころから技術革新が急速に進み、1990年代にいくつかの大型新薬が上市され、爆発的に医薬品市場を開拓してまいりました。2020年代に入って、抗体医薬品は医薬品市場全体の2割強を占めるまで成長しております。低分子医薬品と抗体医薬品は、多くの項目(活性・特異性、体内動態、血液脳関門BBB通過の可能性、経口投与への可能性、細胞内ターゲットへの可能性、製造コスト等)で顕著な違いがあり、それぞれの優れた特徴が活かせる疾患領域への開発が進められております。一方、2000年以降は分子量が低分子医薬品より大きく、抗体医薬品より小さいペプチド医薬品と核酸医薬品が“中分子医薬品”と定義され、様々な技術革新と共に多くの製品が上市され始め、次世代創薬の中心的存在になるものと考えられております。古典的ペプチド医薬品は、低分子・抗体と同じターゲットタンパク質に結合することを想定した場合、2つのモダリティと比較して活性・特異性などに大きな優位性はなく、さらに体内動態や経口投与の可能性が無いなどの弱点も存在します。一方で、古典的ペプチド医薬品が有する数多くの弱点を克服可能とする“ペプチド医薬品”を創製できれば、低分子医薬品では狙うことが困難なターゲットタンパク質への創薬が可能となり、さらに抗体医薬品でしか狙うことが出来なかったターゲットタンパク質に対して、より小さな“ペプチド医薬品”により、抗体医薬品では不可能な経口投与薬開発の可能性も生まれます。そのような次世代型のペプチド医薬品として、当社では“環状ペプチド・特殊環状ペプチド”に注目しております。一般に、20残基以内のアミノ酸がリング状に連なった“環状ペプチド”は、同じ残基を有する“鎖状”のペプチドと比較して、構造のフレキシビリティーが低減されることで、活性や特異性が向上するだけでなく、生体内安定性が著しく高く、優れた体内動態を示すことが分かっています。さらに天然に存在するアミノ酸20種類だけでなく、その光学異性体や側鎖修飾を施した“非天然型アミノ酸”を組み込むことで、医薬品研究開発で必要となるあらゆる物性調整が可能となります。特殊環状ペプチドは低分子医薬品、抗体医薬品と比較して素晴らしい特性があると当社では考えております。例えば、低分子医薬品は分子量が相対的に小さく細胞内標的を含めターゲットの多様性が優位点である一方、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、ターゲット以外の分子に結合してしまうことなどにより副作用を引き起こしてしまうリスクが相対的に高いことが問題点となります。抗体医薬品は、低分子医薬品に比べて分子量が非常に大きいため、細胞外ターゲットしか対象にできず、その多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点と考えられます。しかし、その分子量の大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できないこと、経口投与ができないこと、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いこと等の問題点が存在します。低分子医薬品や抗体医薬品に比べて、特殊環状ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬品よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、従来の低分子医薬品や抗体医薬品の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。環状ペプチドの医薬品は過去20年で約20種類以上が上市されていますが、そのターゲット領域は内分泌や心血管に関する疾患や抗生物質等が中心であり、ほとんどは天然(体内のホルモンや菌類・動物・植物由来)の環状ペプチドを最適化したもの、もしくは最適化の過程で非天然アミノ酸を使用しているものです。当社は、そのようなベースとなるペプチドが存在しないターゲットに対してもペプチドの薬を開発することができることが強みであり、これにより一気にペプチド創薬の可能性が広がると考えております。 ② 当社の研究開発体制についてa. 当社における創薬研究開発技術の全体像 当社は設立以来、継続して研究開発機能を拡張してまいりました。設立当初はPDPSによるヒット化合物の取得にフォーカスしておりましたが、タンパク質の調整、ペプチド合成/精製/QC、メディシナルケミストリー、In silicoモデリング及びインフォマティクス、タンパク質と化合物の共結晶化とその立体構造解析、薬物動態等の前臨床研究のほとんどの部分を自社で行える体制を構築いたしました。これにより従来と比べ多くのプロジェクトを同時進行させることができるようになり、それぞれの創薬共同研究開発パートナーが求める高いレベルでの研究開発作業が行えるようになりました。 <当社の研究開発機能> ※当社見解に基づく/当社作成> さらにPDPSの自動化プラットフォームを構築したことにより、手作業で行っていた時と比較して飛躍的に作業の効率化が図れました。特にヒットペプチド探索の際に、多種多様な条件(ターゲットタンパク質の種類、温度、アミノ酸の種類等々)を一度に、しかも正確に実施することが容易になり、結果として確実に種々のヒットペプチドを見出すことができます。直近では、自社での臨床開発の実施まで視野に入れたin-houseプログラムの開発のため、研究と開発をつなぐトランスレーショナルリサーチ機能も強化しております。 b. PDPSについて PDPSは当社独自のペプチド創薬技術であり、以下のような特長を持つことから特殊環状ペプチドのヒット化合物を早く、高い成功確率で見出すことができるという利点がございます。 PDPSの3つの特長1. 数兆種類以上の特殊環状ペプチドのライブラリーへのアクセスが可能PDPSを用いて数兆種類以上という非常に高い多様性を持つ特殊環状ペプチドのライブラリーを作製することが可能です。PDPSの特徴は、ランダムDNAライブラリーを用いた無細胞系転写/翻訳システムであるという点と、ペプチドの構成要素であるアミノ酸として天然アミノ酸だけでなく非天然アミノ酸も組み込めるという点です。ペプチドはそれぞれ対応したmRNA/CDAタグによりバーコード化されており、迅速に配列を同定することができます。 2. 高い確率でのターゲット結合ペプチドライブラリーを用いて、目的とする生体内のターゲットに対するスクリーニング、目的外のターゲットに対するカウンタースクリーニングが実施され、高い結合性と選択性を持つヒットペプチドを取得します。ペプチドに付加された「バーコード」により、セレクションサイクルを何回も実施することでヒットペプチドを増幅し、その配列を迅速に同定することが可能です。PDPSはペプチドの最適化やヒット化合物の評価にも使うことができ、創薬のプロセスを飛躍的に加速することができます。 3. 進化し続けるプラットフォーム当社では常にPDPSの技術の改善・向上を行っています。ペプチドの構成要素であるアミノ酸の種類を増やすことでより高い多様性を持たせたことや、自動化プロセスを開発したことでより安定的な結果が得られるようになったことなどが挙げられます。さらに高品質なペプチドライブラリーの設計を行うためのin silico解析システムの開発を行う等、当社は常にペプチド創薬の最先端の技術を産み出しています。 c. PDPSを起点とした3つの創薬アプローチ 当社では上述のPDPSによりターゲットタンパク質に対して高い結合性・特異性を有する特殊環状ペプチド(ヒット化合物)を同定した後、大きく分けて3つの創薬アプローチ(①ペプチド医薬品/低分子医薬品、②ペプチド薬物複合体(PDC:Peptide Drug Conjugate、*8)医薬品、③多機能ペプチド複合体(MPC:Multi-functional Peptide Conjugate、*9)医薬品による創薬研究開発を行っております。 1. ペプチド医薬品/低分子医薬品取得したヒットペプチドを出発点に、医薬品として求められる各種要件(生物活性、選択性、投与形態に沿った製剤、体内薬物動態等)を最適化し、ペプチド医薬品候補化合物へ仕上げるのが当社の基本的なアプローチとなります。その最適化においては、タンパク質X線結晶構造解析(*10)やクライオ電子顕微鏡などを用いてペプチドとターゲットタンパク質の複合体の立体構造解析を行い、抗体と同程度の生物活性や選択性を付与するのに最適な非天然型アミノ酸の組み込みや薬物動態のコントロールを行います。最近の研究により、以前には困難と言われていた経口投与可能な特殊環状ペプチドの創製も可能であることがわかってきました。また、特殊環状ペプチドの経口投与化が難しい場合でも、得られた複合体の立体構造情報を基にin silicoモデリングや計算化学的手法等も活用し低分子化することで、経口剤としての開発も可能になります。 2. PDC医薬品①(ペプチド医薬品/低分子医薬品)とは異なり、取得したターゲットタンパク質に対して高い結合性・特異性を有するペプチドに薬効を求めず、薬効を有する各種ペイロード(放射性核種、核酸、低分子、毒性化合物等)を、目的の組織/細胞に選択的に送達させる(=キャリアーペプチド)というコンセプトの医薬品です。この場合、キャリアーペプチドには高い結合性・特異性及び体内動態の調整が求められ、ペプチドはそれらの調整が容易なことがわかっています。PDC医薬品は薬効成分であるペイロードを直接体内に入れた場合に、1)目的の組織/細胞に届く前に代謝・排泄を受けやすい、2)目的の組織/細胞以外に届くと毒性発現する等の様々な理由から、何かしらのキャリアーを必要としているケースなどが考えられます。同様のコンセプトで抗体をキャリアーとして用い、毒性化合物等を選択的に送達する抗体薬物複合体(ADC:Antibody Drug Conjugate)が先行して複数開発・承認されていますが、ペプチドをキャリアーとすることでPDCならではの特性(体内動態のコントロールが容易、免疫原性の低減が図れる、ペイロードの種類を問わず複合体化・製造が比較的容易である等)を有しており、注目されている次世代の創薬アプローチです。当社では、RI-PDC、核酸PDC、Cytotoxic-PDCなど各種ペイロードに対するPDC医薬品を開発しております。 3. MPC医薬品複数の異なるターゲットタンパク質(異なるメカニズム)に対して、それぞれ薬効が異なるペプチド同士を結合し、複数の薬効を1分子(1つの薬剤)で表現する医薬品となります。化学合成的に複数の異なるペプチドを結合し複合体を得る手法は既に開発されており、多種多様なMPC医薬品を容易に展開することが可能となっております。これにより、複数の医薬品をそれぞれ開発し、それらを合わせて投与するカクテル療法などを適用することに対してハードルが高かった治療分野において、1剤で複数の薬効を有するMPC医薬品を置き換えることが可能となります。同様のコンセプトに二重特異性抗体(bispecific抗体)や多重特異的抗体があり、近年はがんやがん免疫の分野での研究開発競争が激化しています。 ③ 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発、維持、発展は重要な経営課題と認識しております。次の図は、当社の特許ポートフォリオ(*11)の概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、フレキシザイム技術開発に関わる特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊環状ペプチドライブラリーを作成する技術等を含み、これらにより特殊環状ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊環状ペプチドをスクリーニングする技術ノウハウであり、各種機能を持ちうる特殊環状ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊環状ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊環状ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されます。ライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)に関しては随時権利化(出願)を進めております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> ※当社見解に基づく/当社作成 PDPSの基盤技術となる特許・発明の詳細は次の表のとおりです。<当社の特許ポートフォリオ>発明の名称出願人出願国出願・特許番号多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202 B1特許第5200241号環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2 EP Patent 2141175 B1EP Patent 2990411 B1EP Patent 3012265 B1特許第5605602号ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 20200199579 A1EP Patent 2492344 B1特許第5174971号特許第5837478号新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993 B2EP 2610348 A4特許第5725467号CN Patent 103189522 BN-メチルアミノ酸及びその他の特殊アミノ酸を含む特殊ペプチド化合物ライブラリーの翻訳構築と活性種探索法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9410148 B2EP Patent 2615455 B1特許第5818237号ペプチドライブラリーの製造方法、ペプチドライブラリー、及びスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10195578 B2EP Patent 2647720 B1特許第6206943号安定化された二次構造を有するペプチド、及びペプチドライブラリー、それらの製造方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)中国(登録)US Patent 9657289 B2US Patent 10435439 B2EP Patent 2647721 B1特許第6004399号CN Patent 103328648 Bペプチドライブラリの製造方法、ペプチドライブラリ、及びスクリーニング方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10711268 B2EP Patent 2995683 B1特許第6440055号大環状ペプチド、その製造方法、及び大環状ペプチドライブラリを用いるスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)US Patent 10234460 B2EP 3040417 A4特許第6754997号荷電性非タンパク質性アミノ酸含有ペプチドの製造方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10745692 B2EP Patent 3031915 B1特許第6357154号Dアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのD及びTアームの改変国立大学法人東京大学米国(出願中)欧州(出願中)日本(登録)シンガポール(出願中)US 2020308572 A1EP 3699276 A1特許第7079018号SG 11202003483S AN-メチルアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのTステムの改変国立大学法人東京大学米国(出願中)欧州(出願中)日本(出願中)シンガポール(出願中)WO2021/100833EP 4063377 A1特開2021-78428SG 10202203885P (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 (3) 当社のビジネスモデルについて事業概要に記載のとおり、当社は創薬共同研究開発、PDPS技術ライセンス、戦略的提携/自社創薬、放射性医薬品の研究・開発・製造・販売という複数のビジネスモデルを組み合わせることにより、リスクを分散し成功確率を高めるとともに創薬開発の早期から売上を生み出すことができると考えております。各ビジネスモデルの収益源は下図のとおりです。 <当社における各ビジネスモデルの収益源> 創薬共同研究開発契約は、クライアントからターゲットを受領し、そのターゲットごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進み一定のクライテリアを達成した場合「マイルストーンフィー」を受領する設計になっております。さらに、最終的に製品が上市された場合は製品売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティー」として受領する権利を有しております。PDPS技術ライセンスにおいては、クライアントにPDPS技術の非独占的な実施許諾を行い、その対価として「技術ライセンス料(契約一時金)」を受領します。さらにクライアントがPDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物についてあらかじめ設定された「マイルストーンフィー」及び上市後の売上高に応じた「売上ロイヤルティー」を受け取ることができます。戦略的提携/自社創薬は自社又は自社と戦略的提携先と共同で研究開発活動を実施し、臨床開発及び事業化のために製薬企業等にライセンスを行うことを目指します。 創薬開発事業における典型的な収益項目の例を下表に示します。<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目> 創薬共同研究開発PDPS技術ライセンス戦略的提携/自社創薬契約一時金〇〇〇研究開発支援金〇 非臨床マイルストーンフィー ステップ1〇 ステップ2〇 ステップ3〇 〇創薬開発権利金(又は知的財産譲渡) 〇臨床開発マイルストーンフィー 治験申請提出〇 〇第1相・臨床試験開始〇〇〇第2相・臨床試験開始〇〇〇第3相・臨床試験開始〇〇〇新薬承認申請提出〇〇〇米国にて新薬承認〇〇〇欧州にて新薬承認〇〇〇日本にて新薬承認〇〇〇売上ロイヤルティー〇〇〇販売マイルストーンフィー〇〇〇 一方、放射性医薬品事業においては国内で販売している放射性医薬品の製品売上を主たるものとし、業務受託によるサービスフィーも受領しております。他社へのライセンスアウト製品が将来上市した際にはマイルストーンフィー・売上ロイヤルティーを受領する権利を有しております。 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発において、もととなる医薬品候補化合物を創出するための基盤となる技術をシステムとして機能するようにしたもの。*2特殊環状ペプチド天然の20種類のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれる天然アミノ酸以外のアミノ酸を組み込んだ、一般には6~20アミノ酸残基からなる環状構造のペプチド。*3非天然アミノ酸20種類の天然アミノ酸以外のアミノ酸。*4スクリーニング集団の中から探索条件にあうものを選択すること。*5実施許諾特許の実施権は独占的通常実施権と非独占的通常実施権があり、独占的通常実施権は他社に実施権を付与しない旨の特約がついており、より強い効力を持っている。加えて第三者サブライセンス権を持つことにより、最も強固な特許契約となる。*6ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた分子の総称。一般のペプチドは6~50アミノ酸残基からなり、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*7タンパク・タンパク相互作用生体内のタンパク質分子間に起こる相互作用。PPIと呼ばれる。各種の生理作用が生じるため、PPI阻害剤など創薬ターゲットとして注目されている。*8PDCペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと薬理効果を持つ化合物を化学的に結合させた複合体。*9MPC複数の異なるターゲットタンパク質(異なるメカニズム)に対して、それぞれ得られた薬効が異なるペプチド同士を結合し、複数の薬効を1分子で発揮できるペプチド複合体。*10タンパク質X線結晶構造解析タンパク質の立体構造を解明するために、タンパク質を結晶化させ、X線を照射したことで得られる反射(回析という)データを基に解析する方法。*11特許ポートフォリオ業界における技術動向を踏まえたうえで。自社が保有する特許群の評価を行い、全体として自社特許群の強み・弱みを分析、判断する際に活用する指標のこと。特許ポートフォリオを利用することで、自社の特許群をさらに強固なものに作り上げることができ、ひいては自社が保有する複数の特許群でさらに強い対外的な守りを作り上げることができる。
FY2021|12,564 文字|出典 docID: S100NQLE
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPSを中核とした創薬開発基盤技術を活用し、国内外の製薬企業との共同研究開発等を通じて、新しい医薬品候補化合物の研究開発を行っております。当社事業の系統図は、以下のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(3) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊環状ペプチド(*2)をもとにした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊環状ペプチド」とは、当社の造語であり、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、天然には存在しないD体のアミノ酸やN-メチルアミノ酸等の特殊なアミノ酸(非天然アミノ酸、*3)を含んだ特殊なペプチドを環状構造にしたものです。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊環状ペプチドから医薬品候補化合物を創製することを主たる事業としております。特殊環状ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自のPDPSです。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊環状ペプチドのライブラリー(ペプチドライブラリー)を作製し、ターゲット(標的分子)に対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニング(*4)することができるようになりました。当社の事業概要は、以下のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約に基づき製薬企業の興味のあるターゲットに対する共同研究開発を実施します。当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊環状ペプチドライブラリーを作製し、ターゲットに対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを製薬企業に提供します。その後製薬企業が提供した特殊環状ペプチドの創薬開発を進め、当社は契約一時金に加え製薬企業の創薬開発・販売の進捗に応じて、マイルストーンフィーやロイヤルティー等の対価を受領することができます。(B)PDPS技術ライセンス:製薬企業からのPDPSを当該製薬企業内で実施したいとの要望に応じ、当社では研究開発コラボレーションの一環として、PDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約、*5)を行っております。実施許諾契約の締結に伴い、当社は技術ライセンス料(契約一時金)を受け取ることになるほか、PDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物について設定されたマイルストーンフィー及び上市後の売上高に応じたロイヤルティーを受け取ることができます。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社で設定したターゲットに対する医薬品候補化合物に関するプログラムを複数有しており、これらの研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を実施し、自社又は共同での研究開発を推進しております。 (2) 当社の技術について① 特殊環状ペプチドについて創薬開発の歴史的スタートは、1897年にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリンが市販された1899年だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*6)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。その後、欧米のバイオ企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、1997年頃から抗体医薬品(*7)が発売され、2000年代には抗体医薬品の創薬開発が急速に拡大いたしました。一般的にいわれるペプチド(*8)は、2個~50個の天然アミノ酸が結合して作られた化合物の総称であり、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補化合物として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っておりませんでした。これに対し、当社が創出する特殊環状ペプチドは、今までの一般的なペプチドの医薬品候補化合物としての問題点の多くを解決することにより、医薬品候補化合物としてより適した特徴を有する可能性があると期待されております。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*9)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*10)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*11)多くの場合、細胞膜は透過できない。一般的なペプチドよりも高い確率で細胞膜を透過できる。 特殊環状ペプチドは低分子医薬品、抗体医薬品と比較して素晴らしい特性があると当社では考えております(次表<低分子医薬品と抗体医薬品と比較した特殊環状ペプチドの特徴>参照)。例えば、低分子医薬品は分子量が相対的に小さく細胞内標的を含めターゲットの多様性が優位点である一方、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、ターゲット以外の分子に結合してしまうことなどにより副作用を引き起こしてしまうリスクが相対的に高いことが問題点となります。抗体医薬品は、低分子医薬品に比べて分子量が非常に大きいため、細胞外ターゲットしか対象にできず、その多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点と考えられます。しかし、その分子量の大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できないこと、経口投与ができないこと、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いこと等の問題点が存在します。低分子医薬品や抗体医薬品に比べて、特殊環状ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬品よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、従来の低分子医薬品や抗体医薬品の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬品と抗体医薬品と比較した特殊環状ペプチドの特徴> ※当社見解に基づく/当社作成(注) PPI:タンパク・タンパク相互作用(*12) 現在、世界の多くの大手製薬企業は低分子医薬品・抗体医薬品に続く次世代の創薬開発を目指し、ペプチド医薬品・核酸医薬品・遺伝子治療薬・細胞医薬品など新規のモダリティ(*13)を活用した積極的な創薬開発を行っております。当社は特殊環状ペプチドを低分子と高分子の双方のメリットを併せ持つ新たな医薬品モダリティとして捉え、次世代創薬の中心的存在になるものと考えております。以下に、特殊環状ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合しているイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析、*14)を示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。そのため、ターゲットに強く特異的に結合することがまずは重要になります。特殊環状ペプチドのターゲットに対する結合の一様式を下図に示します。低分子医薬品が点(ポイント)でターゲットを捉えているのに対して、特殊環状ペプチドは複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であるため、低分子医薬品よりもはるかに強固な結合力を有しております。そのことが、特異性の高さに結び付いております。 <特殊環状ペプチドの結合:複数点による結合> ※当社見解に基づく/当社作成 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊環状ペプチドです。特殊環状ペプチドはターゲットに対して複数のポイント(ここでは3ヶ所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬品の場合はこの結合ポイントが1ヶ所であるため、結合力に限界があります。また、1ヶ所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1桁の暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈に例えられます。 <特殊環状ペプチドの結合:ターゲットの表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 面で創薬ターゲットを捉えるという点では特殊環状ペプチドは抗体医薬品と同様ですが、特殊環状ペプチドには抗体にない特徴を持たせることも可能です。 <特殊環状ペプチドの結合2:ターゲットの内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は<特殊環状ペプチドの結合:ターゲットの表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットに対する特殊環状ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊環状ペプチドはターゲットの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。一方、抗体医薬品ではその分子量の大きさの問題からこのようにターゲットの内側に対する結合様式を持つことは困難となります。特殊環状ペプチドは、創薬ターゲットの特徴に合わせて、特異性が高く、多様な結合形態をとることができる医薬品候補化合物という特性を有しています。 ② 当社の創薬基盤技術についてa. 当社における創薬基盤技術の全体像 当社はPDPSを基軸とした様々な基盤技術を保有し、下図のとおりPDPSからペプチド合成・精製、構造解析、化合物最適化へのサイクルを回すことで創薬プロセスを高効率で進めております。PDPSは後述のとおり高い多様性を持つ特殊環状ペプチドのスクリーニングを迅速に行う技術です。スクリーニングの結果、取得されたヒットペプチドの薬理効果・薬物動態を評価し、臨床開発に進める医薬品候補化合物まで最適化するにあたり、ペプチド合成・精製技術、構造解析技術、化合物最適化技術を活用します。 <当社の創薬基盤技術> ※当社見解に基づく/当社作成 b. PDPSについて当社の中核技術であるPDPSの開発にあたり、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊環状ペプチドの特徴である特殊アミノ酸を組み込んで医薬品候補化合物として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然アミノ酸に限られているため、ファージ・ディスプレイ法(*15)や無細胞翻訳系(*16)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊環状ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*17)として構築できる技術・システムを以下のとおり開発いたしました。当社の創業者の一人である菅裕明・国立大学法人東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、フレキシザイム(Flexizyme、多目的tRNA(*18)アシル化(*19)RNA触媒(*20))という特殊な酵素を完成しました。ペプチドが翻訳合成(*21)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せをもとにアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*22)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。一方、フレキシザイムは単体でARSに代わり特殊アミノ酸を含むすべてのアミノ酸とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊アミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊アミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊環状ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。その他、細胞膜の透過性を持つ特殊環状ペプチドも採れており、細胞内のタンパクをターゲットにすることもできるようになりました。 続いて、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊環状ペプチドを次の表<医薬品候補化合物の多様性の比較>のとおり、多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築するFIT(Flexible In-vitro Translation)システムの開発を行いました。低分子医薬品のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬品はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊環状ペプチドは低分子医薬品の1億倍程度の多様性を有しています。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補化合物を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補化合物発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊環状ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補化合物を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補化合物の多様性の比較> ※当社見解に基づく/当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較イメージ低分子医薬品104 ~ 1051抗体医薬品108 ~ 101010,000特殊環状ペプチド医薬品1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較イメージ」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 さらに、特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニングするためにRAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムを構築しました。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊環状ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊環状ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊環状ペプチドの特徴を生かして、ターゲットに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊環状ペプチドライブラリーを短時間で構築するシステムを作り上げ、さらに特殊環状ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムと組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステムが当社の中核的な基盤技術であるPDPSです。 c. PDPSを起点とした3つの創薬アプローチ当社では上述のペプチド創薬基盤技術を活用し、3つの創薬アプローチを用いております。1つめはスクリーニングにより取得されたヒットペプチドをそのまま特殊環状ペプチド医薬品として研究開発を進めるアプローチです。2つめはヒットペプチドを用い低分子医薬品を開発するアプローチです。ヒットペプチドが結合したターゲットの構造解析を行うことにより、どのように特殊環状ペプチドが働いているのかを詳細に理解することができます。これらの情報をもとに、最先端の計算化学技術を活用することで低分子医薬品をデザインすることが可能となってきております。3つめのアプローチは、特殊環状ペプチドそのものを医薬品として利用するのではなく、結合力や特異性などの特徴を利用し、生体内の特定の部位や臓器に別の薬剤を送達するキャリア(運び屋)として利用するというもので、PDC(*23)と当社では呼んでおります。複数の抗体薬物複合体(ADC)がすでに上市されていますが、特殊環状ペプチドは抗体と同様の特異性の高さを持つ一方、サイズが小さく化学的に合成できるという利点を持つことから、当社ではPDCについて高いポテンシャルを有するものと認識しております。 <当社の創薬アプローチ> ※当社見解に基づく/当社作成 <PDC医薬品とは> ※当社見解に基づく/当社作成 ③ 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発、維持、発展は重要な経営課題と認識しております。次の図は、当社の特許ポートフォリオ(*24)の概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、フレキシザイム技術開発に関わる特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊環状ペプチドライブラリーを作成する技術等を含み、これらにより特殊環状ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊環状ペプチドをスクリーニングする技術ノウハウであり、各種機能を持ちうる特殊環状ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊環状ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊環状ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されます。ライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)に関しては随時権利化(出願)を進めております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> ※当社見解に基づく/当社作成 PDPSの基盤技術となる特許・発明の詳細は次の表のとおりです。<当社の特許ポートフォリオ>発明の名称出願人出願国出願・特許番号多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202 B1特許第5200241号環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2 EP Patent 2141175 B1EP Patent 2990411 B1EP Patent 3012265 B1特許第5605602号ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 2012208720 A1US 2020199579 A1EP Patent 2492344 B1特許第5174971号特許第5837478号新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993 B2EP 2610348 A4特許第5725467号CN Patent 103189522 BN-メチルアミノ酸およびその他の特殊アミノ酸を含む特殊ペプチド化合物ライブラリーの翻訳構築と活性種探索法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9410148 B2EP Patent 2615455 B1特許第5818237号ペプチドライブラリーの製造方法、ペプチドライブラリー、及びスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10195578 B2EP Patent 2647720 B1特許第6206943号安定化された二次構造を有するペプチド、及びペプチドライブラリー、それらの製造方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)中国(登録)US Patent 9657289 B2US Patent 10435439 B2EP Patent 2647721 B1特許第6004399号CN Patent 103328648 Bペプチドライブラリの製造方法、ペプチドライブラリ、及びスクリーニング方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10711268 B2EP Patent 2995683 B1特許第6440055号大環状ペプチド、その製造方法、及び大環状ペプチドライブラリを用いるスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)US Patent 10234460 B2EP 3040417 A4特許第6754997号荷電性非タンパク質性アミノ酸含有ペプチドの製造方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10745692 B2EP Patent 3031915 B1特許第6357154号Dアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのD及びTアームの改変国立大学法人東京大学米国(出願中)欧州(出願中)日本(出願中)シンガポール(出願中)US 2020308572 A1EP 3699276 A1JP WO2019077887 A1SG 11202003483S AN-メチルアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのTステムの改変国立大学法人東京大学日本(出願中)PCT(出願中)特開2021-78428WO2021/100833 (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 (3) 当社のビジネスモデルについて 事業概要に記載のとおり、当社は創薬共同研究開発、PDPS技術ライセンス、戦略的提携/自社創薬という複数のビジネスモデルを組み合わせることにより、リスクを分散し成功確率を高めるとともに製薬企業からの様々な要望に対応できるものとなっております。当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントからターゲットを受領し、そのターゲットごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目>は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価としてターゲットごとに「研究開発支援金」を原則として前受にて受領しております。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊環状ペプチドを提供した後は、医薬品候補化合物に係る開発の主体はクライアントに移行します。また、当社は研究・開発・販売の過程においてあらかじめ決められた一定のクライテリアを達成した場合「マイルストーンフィー」を受領することになります。さらに、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティー」として受領します。PDPS技術ライセンスにおいては、クライアントにPDPS技術の非独占的な実施許諾を行い、その対価として「技術ライセンス料(契約一時金)」を受領します。さらにクライアントがPDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物についてあらかじめ設定された「マイルストーンフィー」及び上市後の売上高に応じた「売上ロイヤルティー」を受け取ることができます。戦略的提携/自社創薬は自社又は自社と戦略的提携先と共同で研究開発活動を実施し、臨床開発及び事業化のために製薬企業等にライセンスを行うことを目指します。 当社のビジネスモデルの典型的な例を下図に示します。<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目> 創薬共同研究開発PDPS技術ライセンス戦略的提携/自社創薬契約一時金〇〇〇研究開発支援金〇 非臨床マイルストーンフィー ステップ1〇 ステップ2〇 ステップ3〇 〇創薬開発権利金(又は知的財産譲渡) 〇臨床開発マイルストーンフィー 治験申請提出〇 〇第1相・臨床試験開始〇〇〇第2相・臨床試験開始〇〇〇第3相・臨床試験開始〇〇〇新薬承認申請提出〇〇〇米国にて新薬承認〇〇〇欧州にて新薬承認〇〇〇日本にて新薬承認〇〇〇売上ロイヤルティー〇〇〇販売マイルストーンフィー〇〇〇 当社は、多くの研究開発プログラムを3つのビジネスモデルを組み合わせて実施することで、リスクを分散し成功確率を高めることができると考えております。自社創薬においては戦略的に有望なターゲットを選定し、それに対する特殊環状ペプチド医薬品やPDCキャリアを生み出すことでより将来の価値の拡大につながるものと考えております。 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発において、もととなる医薬品候補化合物を創出するための基盤となる技術をシステムとして機能するようにしたもの。*2特殊環状ペプチド天然の20種類のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれる天然アミノ酸以外のアミノ酸を組み込んだ、一般には6~20アミノ酸残基からなる環状構造のペプチド。*3非天然アミノ酸20種類の天然アミノ酸以外のアミノ酸。*4スクリーニング集団の中から探索条件にあうものを選択すること。*5実施許諾特許の実施権は独占的通常実施権と非独占的通常実施権があり、独占的通常実施権は他社に実施権を付与しない旨の特約がついており、より強い効力を持っている。加えて第三者サブライセンス権を持つことにより、最も強固な特許契約となる。*6低分子医薬品分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された低分子化合物による創薬の総称。*7抗体医薬品医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*8ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた分子の総称。一般のペプチドは6~50アミノ酸残基からなり、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*9構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*10生体内安定性生体内にはペプチド結合を加水分解するタンパク質分解酵素(ペプチダーゼ)があり、通常のペプチドは容易に分解されてしまう。*11細胞膜透過性細胞内部の分子をターゲットとする場合、細胞の外側構造である細胞膜を透過して内部へと浸透する必要がある。*12タンパク・タンパク相互作用生体内のタンパク質分子間に起こる相互作用。PPIと呼ばれる。各種の生理作用が生じるため、PPI阻害剤など創薬ターゲットとして注目されている。*13モダリティ医療分野では、医薬品の種類やタイプ、治療手段を表す言葉として使用される。特殊環状ペプチドを用いた医薬品のほか、核酸医薬品、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などが新しい創薬モダリティとして注目されている。*14タンパク質X線結晶構造解析タンパク質の立体構造を解明するために、タンパク質を結晶化させ、X線を照射したことで得られる反射(回析という)データをもとに解析する方法。*15ファージ・ディスプレイ法バクテリオファージ(ウイルス)の表面に抗体やペプチドを発現させたライブラリーを作製し、特定のターゲットに対して結合する分子をスクリーニングする手法。*16無細胞翻訳系遺伝情報から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(翻訳合成)と呼ばれている。このメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*17創薬ライブラリー創薬ターゲットに対して結合する医薬品候補化合物(低分子や抗体や特殊環状ペプチド等)をスクリーニングするときに利用する化合物の集団。*18tRNA運搬RNAと呼ばれており、遺伝子情報からペプチドやタンパク質がリボソームで合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(リボ核酸)。*19アシル化アミノアシル結合を実行するために、アミノ酸のアミノ基等の水素原子をアシル基で置換する働き。*20触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*21翻訳合成mRNAの情報に基づいて、タンパク質を合成する反応のこと。*22酵素生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子のこと。*23PDCペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと薬理効果を持つ化合物を化学的に結合させた複合体。*24特許ポートフォリオ業界における技術動向を踏まえたうえで。自社が保有する特許群の評価を行い、全体として自社特許群の強み・弱みを分析、判断する際に活用する指標のこと。特許ポートフォリオを利用することで、自社の特許群をさらに強固なものに作り上げることができ、ひいては自社が保有する複数の特許群でさらに強い対外的な守りを作り上げることができる。
FY2020|12,588 文字|出典 docID: S100L1B0
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPSを中核とした創薬開発基盤技術を活用し、国内外の製薬企業との共同研究開発等を通じて、新しい医薬品候補化合物の研究開発を行っております。当社事業の系統図は、以下のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(3) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊環状ペプチド(*2)をもとにした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊環状ペプチド」とは、当社の造語であり、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、天然には存在しないD体のアミノ酸やN-メチルアミノ酸等の特殊アミノ酸(非天然型アミノ酸、*3)を含んだ特殊なペプチドを環状構造にしたものです。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊環状ペプチドから医薬品候補化合物を創製することを主たる事業としております。特殊環状ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自のPDPSです。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊環状ペプチドのライブラリーを作製し、ターゲット(標的分子)に対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニング(探索、*4)することができるようになりました。当社の事業概要は、以下のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約に基づき製薬企業の興味のあるターゲットに対する共同研究開発を実施します。当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊環状ペプチドのライブラリーを作製し、ターゲットに対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを製薬企業に提供します。その後製薬企業が提供した特殊環状ペプチドの創薬開発を進め、当社は契約一時金に加え製薬企業の創薬開発・販売の進捗に応じて、マイルストーンフィーやロイヤルティー等の対価を受領することができます。(B)PDPS技術ライセンス:製薬企業からのPDPSを当該製薬企業内で実施したいとの要望に応じ、当社では研究開発コラボレーションの一環として、PDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約、*5)を行っております。実施許諾契約の締結に伴い、当社は技術ライセンス料(契約一時金)を受け取ることになるほか、PDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物について設定されたマイルストーンフィー及び上市後の売上高に応じたロイヤルティーを受け取ることができます。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社で設定したターゲットに対する医薬品候補化合物をスクリーニング・最適化するプログラムを複数有しており、これらの医薬品候補化合物の研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を実施し、自社又は共同での研究開発を推進しております。 (2) 当社の技術について① 特殊環状ペプチドについて創薬開発の歴史的スタートは、1897年にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリンが市販された1899年だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*6)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。1980年代には抗体(*7)を医薬品に利用するべく研究が進められましたが抗原性の問題(*8)等により、実用には至りませんでした。その後も、欧米の製薬企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、1997年頃から抗体医薬品(*9)が発売され、2000年代には抗体医薬品の創薬開発が急速に拡大いたしました。一般的にいわれるペプチド(*10)は、2個以上の天然アミノ酸が結合して作られた化合物の総称であり、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補化合物として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っておりませんでした。これに対し、当社が創出する特殊環状ペプチドは、今までの一般的なペプチドの医薬品候補化合物としての問題点の多くを解決することにより、医薬品候補化合物としてより適した特徴を有する可能性があると期待されております。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*11)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*12)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*13)多くの場合、細胞膜は透過できない。一般的なペプチドよりも高い確率で細胞膜を透過できる。 特殊環状ペプチドは低分子医薬品、抗体医薬品と比較して素晴らしい特性があると当社では考えております(次表<低分子医薬品と抗体医薬品と比較した特殊環状ペプチドの特徴>参照)。例えば、低分子医薬品は分子量が相対的に小さく細胞内標的を含めターゲットの多様性が優位点である一方、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、ターゲット以外の分子に結合してしまうことなどにより副作用を引き起こしてしまうリスクが相対的に高いことが問題点となります。抗体医薬品は、低分子医薬品に比べて分子量が非常に大きいため、ターゲットの多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点と考えられます。しかし、その分子量の大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できないこと、経口投与ができないこと、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いこと等の問題点も数多く存在します。低分子医薬品や抗体医薬品に比べて、特殊環状ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬品よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、従来の低分子医薬品や抗体医薬品の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬品と抗体医薬品と比較した特殊環状ペプチドの特徴> ※当社見解に基づく/当社作成(注) PPI:タンパク・タンパク相互作用(*14) 現在、世界の多くの大手製薬企業は低分子医薬品・抗体医薬品に続く次世代の創薬開発を目指し、ペプチド医薬品・核酸医薬品・遺伝子治療薬・細胞医薬品など新規のモダリティ(*15)を活用した積極的な創薬開発を行っております。当社は特殊環状ペプチドを低分子と高分子の双方のメリットを併せ持つ新たな医薬品モダリティとして捉え、次世代創薬の中心的存在になるものと考えております。以下に、特殊環状ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合しているイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析、*16)を示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。そのため、ターゲットに強く特異的に結合することがまずは重要になります。特殊環状ペプチドのターゲットに対する結合の一様式を下図に示します。低分子医薬品が点(ポイント)でターゲットを捉えているのに対して、特殊環状ペプチドは複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であるため、低分子医薬品よりもはるかに強固な結合力を有しております。そのことが、特異性の高さに結び付いております。 <特殊環状ペプチドの結合:複数点による結合> ※当社見解に基づく/当社作成 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊環状ペプチドです。特殊環状ペプチドはターゲットに対して複数のポイント(ここでは3ヶ所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬品の場合はこの結合ポイントが1ヶ所であるため、結合力に限界があります。また、1ヶ所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1桁の暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈に例えられます。 <特殊環状ペプチドの結合:ターゲットの表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 面で創薬ターゲットを捉えるという点では特殊環状ペプチドは抗体医薬品と同様ですが、特殊環状ペプチドには抗体にない特徴を持たせることも可能です。 <特殊環状ペプチドの結合2:ターゲットの内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は<特殊環状ペプチドの結合:ターゲットの表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットに対する特殊環状ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊環状ペプチドはターゲットの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。一方、抗体医薬品ではその分子量の大きさの問題からこのようにターゲットの内側に対する結合様式を持つことは困難となります。特殊環状ペプチドは、創薬ターゲットの特徴に合わせて、特異性が高く、多様な結合形態をとることができる医薬品候補化合物という特性を有しています。 ② 当社の創薬基盤技術についてa. 当社における創薬基盤技術の全体像 当社はPDPSを基軸とした様々な基盤技術を保有し、下図のとおりPDPSからペプチド合成・精製、構造解析、化合物最適化へのサイクルを回すことで創薬プロセスを高効率で進めております。PDPSは後述のとおり高い多様性を持つ特殊環状ペプチドのスクリーニングを迅速に行う技術です。スクリーニングの結果、取得されたヒットペプチドの薬理効果・薬物動態を評価し、臨床開発に進める医薬品候補化合物まで最適化するにあたり、ペプチド合成・精製技術、構造解析技術、化合物最適化技術を活用します。 <当社の創薬基盤技術> ※当社見解に基づく/当社作成 b. PDPSについて当社の中核技術であるPDPSの開発にあたり、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊環状ペプチドの特徴である特殊アミノ酸を組み込んで医薬品候補化合物として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然アミノ酸に限られているため、無細胞翻訳系(*17)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊環状ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*18)として構築できる技術・システムを以下のとおり開発いたしました。当社の創業者の一人である菅裕明・国立大学法人東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、フレキシザイム(Flexizyme、多目的tRNA(*19)アシル化(*20)RNA触媒(*21))という特殊な酵素を完成しました。ペプチドが翻訳合成(*22)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せをもとにアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*23)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。一方、フレキシザイムは単体でARSに代わり特殊アミノ酸を含むすべてのアミノ酸とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊アミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊アミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊環状ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。その他、細胞膜の透過性を持つ特殊環状ペプチドも採れており、細胞内のタンパクをターゲットにすることもできるようになりました。 続いて、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊環状ペプチドを次の表<医薬品候補化合物の多様性の比較>のとおり、多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築するFIT(Flexible In-vitro Translation)システムの開発を行いました。低分子医薬品のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬品はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊環状ペプチドは低分子医薬品の1億倍程度の多様性を有しています。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補化合物を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補化合物発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊環状ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補化合物を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補化合物の多様性の比較> ※当社見解に基づく/当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較イメージ低分子医薬品104 ~ 1051抗体医薬品108 ~ 101010,000特殊環状ペプチド医薬品1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較イメージ」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 さらに、特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニングするためにRAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムを構築しました。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊環状ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊環状ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊環状ペプチドの特徴を生かして、ターゲットに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊環状ペプチドライブラリーを短時間で構築するシステムを作り上げ、さらに特殊環状ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムと組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステムが当社の中核的な基盤技術であるPDPSです。 c. PDPSを起点とした3つの創薬アプローチ当社では上述のペプチド創薬基盤技術を活用し、3つの創薬アプローチを用いております。1つめはスクリーニングにより取得されたヒットペプチドをそのまま特殊環状ペプチド医薬品として研究開発を進めるアプローチです。2つめはヒットペプチドを用い低分子医薬品を開発するアプローチです。ヒットペプチドが結合したターゲットの構造解析を行うことにより、どのように特殊環状ペプチドが働いているのかを詳細に理解することができます。これらの情報をもとに、最先端の計算化学技術を活用することで低分子医薬品をデザインすることが可能となってきております。3つめのアプローチは、特殊環状ペプチドそのものを医薬品として利用するのではなく、結合力や特異性などの特徴を利用し、生体内の特定の部位や臓器に別の薬剤を送達するキャリア(運び屋)として利用するというもので、PDC(*24)と当社では呼んでおります。複数の抗体薬物複合体(ADC)がすでに上市されていますが、特殊環状ペプチドは抗体と同様の特異性の高さを持つ一方、サイズが小さく化学的に合成できるという利点を持つことから、当社ではPDCについて高いポテンシャルを有するものと認識しております。 <当社の創薬アプローチ> ※当社見解に基づく/当社作成 <PDC医薬品とは> ※当社見解に基づく/当社作成 ③ 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発、維持、発展は重要な経営課題と認識しております。次の図は、当社の特許ポートフォリオ(*25)の概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、フレキシザイム技術開発に関わる特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊環状ペプチドライブラリーを作成する技術等を含み、これらにより特殊環状ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊環状ペプチドをスクリーニングする技術ノウハウであり、各種機能を持ちうる特殊環状ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊環状ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊環状ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されます。ライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)に関しては随時権利化(出願)を進めております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> ※当社見解に基づく/当社作成 PDPSの基盤技術となる特許・発明の詳細は次の表のとおりです。<当社の特許ポートフォリオ>発明の名称出願人出願国出願・特許番号多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202 B1特許第5200241号環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2 EP Patent 2141175 B1EP Patent 2990411 B1EP Patent 3012265 B1特許第5605602号ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 2012208720 A1US 2020199579 A1EP Patent 2492344 B1特許第5174971号特許第5837478号新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993 B2EP 2610348 A4特許第5725467号CN Patent 103189522 BN-メチルアミノ酸およびその他の特殊アミノ酸を含む特殊ペプチド化合物ライブラリーの翻訳構築と活性種探索法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9410148 B2EP Patent 2615455 B1特許第5818237号ペプチドライブラリーの製造方法、ペプチドライブラリー、及びスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10195578 B2EP Patent 2647720 B1特許第6206943号安定化された二次構造を有するペプチド、及びペプチドライブラリー、それらの製造方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)中国(登録)US Patent 9657289 B2US Patent 10435439 B2EP Patent 2647721 B1特許第6004399号CN Patent 103328648 Bペプチドライブラリの製造方法、ペプチドライブラリ、及びスクリーニング方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10711268 B2EP Patent 2995683 B1特許第6440055号大環状ペプチド、その製造方法、及び大環状ペプチドライブラリを用いるスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)US Patent 10234460 B2EP 3040417 A4特許第6754997号荷電性非タンパク質性アミノ酸含有ペプチドの製造方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10745692 B2EP Patent 3031915 B1特許第6357154号Dアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのD及びTアームの改変国立大学法人東京大学米国(出願中)欧州(出願中)日本(出願中)シンガポール(出願中)US 2020308572 A1EP 3699276 A1JP WO2019077887 A1SG 11202003483S A (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 (3) 当社のビジネスモデルについて 事業概要に記載のとおり、当社は創薬共同研究開発、PDPS技術ライセンス、戦略的提携/自社創薬という複数のビジネスモデルを組み合わせることにより、リスクを分散し成功確率を高めるとともに製薬企業からの様々な要望に対応できるものとなっております。当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントからターゲットを受領し、そのターゲットごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目>は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価としてターゲットごとに「研究開発支援金」を原則として前受にて受領しております。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊環状ペプチドを提供した後は、医薬品候補化合物に係る開発の主体はクライアントに移行します。また、当社は研究・開発・販売の過程においてあらかじめ決められた一定のクライテリアを達成した場合「マイルストーンフィー」を受領することになります。さらに、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティー」として受領します。PDPS技術ライセンスにおいては、クライアントにPDPS技術の非独占的な実施許諾を行い、その対価として「技術ライセンス料(契約一時金)」を受領します。さらにクライアントがPDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物についてあらかじめ設定された「マイルストーンフィー」及び上市後の売上高に応じた「売上ロイヤルティー」を受け取ることができます。戦略的提携/自社創薬は自社又は自社と戦略的提携先と共同で研究開発活動を実施し、臨床開発及び事業化のために製薬企業等にライセンスを行うことを目指します。 当社のビジネスモデルの典型的な例を下図に示します。<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目> 創薬共同研究開発PDPS技術ライセンス戦略的提携/自社創薬契約一時金〇〇〇研究開発支援金〇 非臨床マイルストーンフィー ステップ1〇 ステップ2〇 ステップ3〇 〇創薬開発権利金(又は知的財産譲渡) 〇臨床開発マイルストーンフィー 治験申請提出〇 〇第1相・臨床試験開始〇〇〇第2相・臨床試験開始〇〇〇第3相・臨床試験開始〇〇〇新薬承認申請提出〇〇〇米国にて新薬承認〇〇〇欧州にて新薬承認〇〇〇日本にて新薬承認〇〇〇売上ロイヤルティー〇〇〇販売マイルストーンフィー〇〇〇 当社は、多くの研究開発プログラムを3つのビジネスモデルを組み合わせて実施することで、リスクを分散し成功確率を高めることができると考えております。自社創薬においては戦略的に有望なターゲットを選定し、それに対する特殊環状ペプチド医薬品やPDCキャリアを生み出すことでより将来の価値の拡大につながるものと考えております。 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発において、もととなる医薬品候補化合物を創出するための基盤となる技術をシステムとして機能するようにしたもの。*2特殊環状ペプチド天然の20種類のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれる天然アミノ酸以外のアミノ酸を組み込んだ、一般には6~20アミノ酸残基からなる環状構造のペプチド。*3特殊アミノ酸20種類の天然アミノ酸以外のアミノ酸。非天然型アミノ酸とも呼ばれる。*4スクリーニング集団の中から探索条件にあうものを選択すること。*5実施許諾特許の実施権は独占的通常実施権と非独占的通常実施権があり、独占的通常実施権は他社に実施権を付与しない旨の特約がついており、より強い効力を持っている。加えて第三者サブライセンス権を持つことにより、最も強固な特許契約となる。*6低分子医薬品分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された低分子化合物による創薬の総称。*7抗体体内に侵入した異物に対して免疫細胞が作り出すタンパク質。異物にある目印(抗原)に特異的に結合して、その異物を排除するように働く。*8抗原性の問題本来、薬として利用されるべき抗体を生体が異物としてとらえてしまうことで副作用が生じたり、排除されてしまう問題。*9抗体医薬品医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*10ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた分子の総称。一般のペプチドは6~50アミノ酸残基からなり、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*11構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*12生体内安定性生体内にはペプチド結合を加水分解するタンパク質分解酵素(ペプチダーゼ)があり、通常のペプチドは容易に分解されてしまう。*13細胞膜透過性細胞内部の分子をターゲットとする場合、細胞の外側構造である細胞膜を透過して内部へと浸透する必要がある。*14タンパク・タンパク相互作用生体内のタンパク質分子間に起こる相互作用。PPIと呼ばれる。各種の生理作用が生じるため、PPI阻害剤など創薬ターゲットとして注目されている。*15モダリティ医療分野では、医薬品の種類やタイプ、治療手段を表す言葉として使用される。特殊環状ペプチドを用いた医薬品のほか、核酸医薬品、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などが新しい創薬モダリティとして注目されている。*16タンパク質X線結晶構造解析タンパク質の立体構造を解明するために、タンパク質を結晶化させ、X線を照射したことで得られる反射(回析という)データをもとに解析する方法。*17無細胞翻訳系遺伝情報から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(翻訳合成)と呼ばれている。このメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*18創薬ライブラリー創薬ターゲットに対して結合する医薬品候補化合物(低分子や抗体や特殊環状ペプチド等)をスクリーニングするときに利用する化合物の集団。*19tRNA運搬RNAと呼ばれており、遺伝子情報からペプチドやタンパク質がリボソームで合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(リボ核酸)。*20アシル化アミノアシル結合を実行するために、アミノ酸のアミノ基等の水素原子をアシル基で置換する働き。*21触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*22翻訳合成mRNAの情報に基づいて、タンパク質を合成する反応のこと。*23酵素生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子のこと。*24PDCペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと薬理効果を持つ化合物を化学的に結合させた複合体。*25特許ポートフォリオ業界における技術動向を踏まえたうえで。自社が保有する特許群の評価を行い、全体として自社特許群の強み・弱みを分析、判断する際に活用する指標のこと。特許ポートフォリオを利用することで、自社の特許群をさらに強固なものに作り上げることができ、ひいては自社が保有する複数の特許群でさらに強い対外的な守りを作り上げることができる。
FY2019|14,251 文字|出典 docID: S100IBYM
3 【事業の内容】(1) 事業の概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用して、国内外の製薬企業との共同研究開発のもと、新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。当社の事業の系統図は、次のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図>(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(4) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊ペプチドを基にした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊ペプチド」とは、当社窪田(現当社取締役会長)の造語ですが、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んだ特殊なペプチドをいいます。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊ペプチドから医薬品候補物質を創製することを主たる事業としております。特殊ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)です。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子(ターゲットタンパク)に対して適した特殊ペプチドを短期間でスクリーニングすることができるようになりました。当社の事業の概要は、次のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約を締結すると、当社は、製薬企業から契約一時金、研究開発支援金等の売上金及び標的分子(ターゲットタンパク)を受領します。その後、当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子に対してアフィニティ(他の分子との特異的な親和性)のある特殊ペプチドをPDPSにより高速でスクリーニングして製薬企業に提供します。提供された特殊ペプチドは、その後、製薬企業において創薬開発が進められることになりますが、製薬企業の創薬開発が成功裡に進めば、当社は創薬開発の進捗段階に応じて、当該特殊ペプチドに係る製品の上市に至るまで及び上市後においても契約に基づき種々の対価を受領することができます。(B)PDPS技術貸与(PDPS技術ライセンス):当社との創薬共同研究開発を通じて、製薬企業は当社のPDPSが持つ能力に関心を抱くようになり、製薬企業からPDPSを当該製薬企業内で使いたいとの要望が出てくるようになりました。これを受けて、当社では研究開発コラボレーションの一環として、共同研究開発先に対してPDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約 、技術貸与)を行っています。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)を複数本有しており、これらの医薬品候補物質を医薬品にするため、自社内で研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を組むことで、自社のパイプラインの拡充を図っています。 (2) 創薬の歴史と(特殊)ペプチドの位置付け 創薬開発の歴史的スタートは、1897年にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリン(*2)が市販された1899年だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*3)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。1980年代には抗体(*4)を医薬品に利用するべく研究がすすめられましたが抗原性の問題(*5)等により、実用には至りませんでした。その後も、欧米の製薬企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、1997年頃から抗体医薬(*6)が発売され、2000年代は抗体医薬が創薬開発の中心になっております。しかし、低分子医薬、抗体医薬とも医薬品として素晴らしい特性はあるものの、一方でそれぞれいくつかのウイークポイントも持っております。(下表<低分子医薬と抗体医薬の特徴>参照)そのため現在、世界の多くの大手製薬企業は低分子医薬・抗体医薬に続く次世代の創薬開発を目指し、積極的な活動を行っております。 <低分子医薬と抗体医薬の特徴> ※当社見解に基づく/当社作成 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発においてもととなる医薬品候補物質(プレリード化合物)を創出するための基盤となる技術。なお、リード化合物とは、医薬品の原料となりうる生理活性を持つ化合物のことであり、新薬の開発は、リード化合物を創製することから始まる。*2アスピリン代表的な消炎鎮痛剤。消炎・解熱・鎮痛作用を持つ。*3低分子医薬分子と分子の結びつきが短い、分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された化合物による創薬の総称。*4抗体体内に侵入した異物に対して生体が作り出すタンパク質の総称。*5抗原性の問題本来、薬として利用されるべき抗体を生体が異物としてとらえてしまい副作用が生じたり、排除されてしまう問題。*6抗体医薬医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*7免疫排除生体内において異物ととらえられてしまうことにより排除されてしまう機能。抗体医薬の場合、薬効が低下したり、効かなくなる現象。*8生体内毒性本来反応すべきでない分子に対して反応してしまうことによって起きる毒性(弊害)。*9蛋白・蛋白相互作用複数の異なるタンパク質分子が特異的結合する現象。それにより、生体内において各種の生理作用が生じる。 一般的にいわれるペプチド(*10)は、2個以上の天然型アミノ酸(*11)が結合して作られた化合物の総称であり、生体内においては、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補物質として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っていませんでした。これに対し、当社が創出する新しい医薬品候補物質、すなわち特殊ペプチド(*12)は、下表<一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い>(当社作成)のとおり、今までの一般的なペプチドの(医薬品候補物質としての)問題点の多くを解決することにより、医薬品候補物質としてよりふさわしい特徴を持つことができる可能性があると期待されています。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*13)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*14)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*15)多くの場合、細胞膜は透過できない。高い確率で細胞膜を透過できる。 これまでの医薬品の中心である低分子医薬と抗体医薬は、医薬品としての優位点と共に問題点も併せ持っております。たとえば、低分子医薬は、下表<低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較>(当社作成)のとおり、分子量(*16)が相対的に小さく様々な種類のターゲット(標的分子)に対応できること(ターゲットの多様性)が優位点です。その一方で、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、標的とするターゲットに結合せずに結合すべきでない分子に結合してしまうことなどにより、多くの副作用を引き起こしてしまう(生体内毒性が低くない)リスクが相対的に高いことが問題点となります。一方、抗体医薬は、低分子医薬に比べてその分子量が非常に大きいため、ターゲットの多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点になります。しかし、その大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できず経口投与ができないことや、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いことなどの問題点も数多く存在します。低分子医薬や抗体医薬に比べて、特殊ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、下表<低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較>(当社作成)のとおり、従来の低分子医薬や抗体医薬の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較> ※当社作成 低分子医薬特殊ペプチド医薬抗体医薬分子量(Da)50 ~ 1,000500 ~ 2,00050,000 ~ 150,000 <低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較> ※当社見解に基づく/当社作成相対的な特徴低分子医薬抗体医薬特殊ペプチド医薬迅速な研究開発が可能×○○ターゲットに対する強い結合力×○○ターゲットに対する強い特異性×○○生体内毒性が低い×○○タンパク・タンパク阻害反応×○○高い生体内安定性×○○ターゲットの多様性の多さ○×○細胞内のターゲットに対応○×○経口投与が可能○×○大量製造の容易さ○×△低い生体内免疫反応性○×○ (注) 「○」は備える又は優れると思われる能力 / 「△」は備えると期待される能力「×」は備えていない又は劣ると思われる能力 次に、このような特殊ペプチドのターゲットに対する強い結合力を視覚的に説明するために特殊ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合している状況を分析したデータに基づくイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析(*17))を掲示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。つまり、創薬のターゲットタンパクに強く特異的に結合することが重要になります。次の図は、その特殊ペプチドの特徴をよく表しております。 <特殊ペプチドの結合:複数点による結合> ※共同研究開発に伴う当社データ 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊ペプチドです。特殊ペプチドはターゲットタンパクに対して複数のポイント(ここでは3か所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬の場合はこの結合ポイントが1か所であるため、結合力に限界があります。また、1か所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1ケタの暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈にたとえられます。 特殊ペプチドのターゲットタンパクに対する結合の一様式は複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であり、低分子医薬のようにターゲットに対して多くの多様性を持っているうえ、低分子医薬よりもはるかに強固な結合力を保持しております。そのことが、特異性の高さにも結び付いております。<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 抗体医薬は、創薬のターゲットとなるタンパクの表面にしっかりと張り付く形で結合しております。低分子医薬が点(ポイント)で創薬ターゲットタンパクを捉えているのに対して、抗体医薬は面で創薬ターゲットタンパクを捉えていることになります。前頁の図<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>は特殊ペプチド(六角形の集まり)がターゲットタンパク(らせん状のリボン)に結合しているX線結晶構造解析結果です。抗体医薬と同じようにターゲットタンパクの表面にしっかりと絡みついて結合しています。このことから、特殊ペプチドはまさにサイズの小さい抗体医薬といえます。小さいサイズながら抗体医薬とそん色のない特性を持っている理由はこのような結合の形によるものです。 <特殊ペプチドの結合:標的分子の内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は先ほどの<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットタンパクに対する特殊ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊ペプチドはターゲットタンパクの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。抗体医薬ではその大きさの問題からこのようにターゲットタンパクの内側に対する結合様式を持つことはできません。特殊ペプチドは、創薬ターゲットタンパクの特徴に合わせて、特異性の高い強固な複数の結合形態をとることができる多様性を持った医薬品候補物質と言うことができます。これまで説明してきたように、特殊ペプチドが結合したターゲットタンパクのX線結晶構造解析により、どのように特殊ペプチドが働いているのかを詳細に理解することができます。これらの情報をもとに、最先端の創薬技術を活用することで、近年では特殊ペプチドとターゲットタンパクとの結合のしかたを再現するような低分子医薬をデザインすることが可能となってきました。現在当社では特殊ペプチドのような結合力や特異性を有した低分子医薬の開発を進めております。また、特殊ペプチドそのものを医薬品として利用するのではなく、結合力や特異性などの特徴を利用し、生体内の特定の部位や臓器に別の薬剤を送達するキャリアー(運び屋)として利用するPDC(*18)の開発をすることも可能であり、当社では自社パイプライン(*19)の一環としてPDCの研究開発を進めております。 <用語解説>*10ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた化合物。大きさによりペプチド⇒ポリペプチドと呼ばれ、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*11天然型アミノ酸タンパク質・ペプチドを作っている最小の成分。 地球上のあらゆる生命、植物も動物もアミノ酸により作り出される(合成される)タンパク質からできており、アミノ酸はすべての生命の源(素)。通常、合成に利用されるアミノ酸は20種類であり、天然型アミノ酸と呼ばれている。*12特殊ペプチド20種類の天然型アミノ酸から合成された通常の(一般的な)ペプチドに対して非天然型アミノ酸と呼ばれる20種類以外のアミノ酸が組込まれたペプチドの総称。古くからその存在は知られていたが、人工的に合成することが困難であった。*13構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*14生体内安定性生体内にはペプチダーゼという酵素が有り、通常のペプチドはペプチダーゼにより容易に分解されてしまう。*15細胞膜透過性通常のペプチドの多くは細胞の外側構造、細胞膜を透過することができない。細胞内には多くの創薬ターゲットが存在する。*16分子量各原子(水素や酸素など)の原子量(水素は1、酸素は16)の和のこと。たとえば、水分子(H2O)は水素2つと酸素1つで合計18となる。*17タンパク質X線結晶構造解析X線の特徴を利用してタンパク質の三次元構造を立体的に解析する分析方法。タンパク質の実態構造の解析に不可欠な技術。*18PDCペプチド薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと他の薬剤を化学的に結合させた複合体。*19パイプライン医薬品の開発に当たり、その初期の段階から開発・販売に至るまでの一連の計画のこと。 (3) 事業の特徴について① 創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)について特殊ペプチドを医薬品候補物質として活用するためには、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊ペプチドの特徴である特殊アミノ酸(*20)を組み込んで医薬品候補物質として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然型アミノ酸に限られているため、無細胞翻訳系(*21)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*22)として構築できる技術・システムを開発しました。それが、フレキシザイム(Flexizyme)技術であり、FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)であります。 ア. フレキシザイム(Flexizyme)についてフレキシザイムは、当社の創立者の一人である菅裕明・東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、完成させた「多目的tRNA(*23)アシル化(*24)RNA触媒(*25)」です。ペプチドが翻訳合成(*26)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せを基にアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*27)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然型アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。ところが、フレキシザイムは単体でARSに代わりすべてのアミノ酸(非天然型アミノ酸を含む)とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊なアミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊なアミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。そのほか、細胞膜の透過性を持つ特殊ペプチドも採れており、細胞内の標的をターゲットにすることもできるようになりました。イ. FIT(Flexible In-vitro Translation)システムについて次にFITシステムですが、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊ペプチドを下表<医薬品候補物質の多様性の比較>(当社作成)のとおり、FITシステムにより多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築することができるようになりました。低分子医薬のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊ペプチドは低分子医薬の1億倍程度の多様性を持っております。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補物質を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補物質発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補物質を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補物質の多様性の比較> ※当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較低分子医薬104 ~ 1051抗体医薬108 ~ 101010,000特殊ペプチド医薬1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 ウ. RAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムについてRAPIDディスプレイシステムは、特殊ペプチドを短期間でスクリーニング(*28)できる高速のスクリーニングシステムです。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊ペプチドの特徴を生かして、ターゲットタンパクに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)エ. PDPS(Peptide Discovery Platform System)について当社は、フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊ペプチドライブラリーを構築することができるシステム:PDTS(Peptide Discovery Translation System)を作り上げ、さらに特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムをPDDS(Peptide Discovery Display System)と位置付け、この3つの独自技術・システムを組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)を構築しました。 <用語解説>*20特殊アミノ酸20種類の天然型アミノ酸以外のアミノ酸。非天然型アミノ酸とか異常アミノ酸等とも呼ばれる。*21無細胞翻訳系遺伝情報(遺伝子情報)から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(合成)と呼ばれている。この細胞内でペプチド・タンパクが合成されるメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*22創薬ライブラリー創薬ターゲットタンパクに対して結合する医薬品候補物質(低分子や抗体や特殊ペプチド等)を検索するときに利用する医薬品候補物質が大量に集められた母集団。*23tRNA運搬RNAと呼ばれており、遺伝情報(遺伝子情報)からペプチドやタンパクがリボソームで合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(リボ核酸)。*24アシル化アミノアシル結合を実行するためにアミノ酸のアミノ基等の水素を置換する働き。*25触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*26翻訳合成mRNAの情報に基づいてタンパク質を合成する反応のこと。*27酵素生体でおこる化学反応に対して触媒として機能する分子。*28スクリーニング設定された基準に対して達成されているか否かを判断するために実施される検査。 ② 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発・維持・発展は重要な経営ポイントになります。次の図は、当社の特許ポートフォリオの概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、③(及び①・②)の特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明(④・⑤・⑥・⑦)で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が「システム」として機能するように設計しております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 さらに、この創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)の特許・発明群を各種ライブラリーの発明が取り囲む形にすることにより、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。コアとなる7つの特許・発明の詳細は次の表のとおりです。①と②はニューヨーク州立大学が出願人であり、③・④・⑤・⑦は国立大学法人東京大学が出願人であり、⑥は当社が出願人であります。その他にライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)があり、それらについても随時権利化(出願)を進めております。なお、当社は、ニューヨーク州立大学及び国立大学法人東京大学の上記特許について、第三者サブライセンス権(*29)付き独占実施・許諾権(*30)を取得しております。 <当社の特許ポートフォリオ(*31)>発明の名称出願人出願国出願・特許番号①Catalytic RNAs with Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,001,723 B1CA Patent 2391433EP Patent 1232285 B1特許第4745577号②Ribozymes with Broad tRNA Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,622,248 B2CA Patent 2476425EP Patent 1483282 B1特許第4464684号③多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号④N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202 B1特許第5200241号⑤環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2 EP Patent 2141175 B1EP Patent 2990411 B1EP Patent 3012265 B1特許第5605602号⑥ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 2012208720 A1EP Patent 2492344 B1特許第5174971号⑦新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993 B2EP 2610348 A4特許第5725467号CN Patent 103189522 B ①と②はフレキシザイム(Flexizyme)技術開発に関わる基本特許です。③はフレキシザイムそのものに関する特許であり、PDTS(Peptide Discovery Translation System)の中心となる特許であります。⑥は特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることができるRAPIDディスプレイシステムの特許であり、PDDS(Peptide Discovery Display System)の中心となる特許であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)⑦は翻訳合成系にて特殊ペプチドをライブラリー化するFITシステムの発明であり、PDTSの中心となる発明であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。)④はペプチド、タンパクが翻訳合成されるとき、Met(メチオニン)というアミノ酸から合成が開始されるという生命の基本的なルールを書き換えることを可能にした技術特許です。この技術特許によりMet(メチオニン)以外のあらゆるアミノ酸から合成を開始することができるようになりました。当社は、この技術により、合成するペプチドの形状を自由に変えることができるようになり、特殊ペプチドに対し従来では考えられなかった多様性を持たせることが可能になりました。⑤はペプチドを特殊な環状化構造(*32)にする発明です。この技術により特殊ペプチドが生体内での安定性や構造の安定性を確保することができるようになりました。以上、①から⑦までの特許によって当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)が構成されております。さらに、概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊ペプチドライブラリーを作成する技術であり、これらにより特殊ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊ペプチドをスクリーニングする技術であり、各種機能を持ちうる特殊ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されますが、この発明はクライアントとは関係なく発生したものであります。 <用語解説>*29第三者サブライセンス権特許をライセンスするときには、特許権者(ライセンサー)と実施権者(ライセンシー)の関係が生じます。ライセンシーは自己の特許権を強化するために第三者に対する再実施権(サブライセンス)を獲得することが好まれます。*30独占実施・許諾権特許の実施権は独占と非独占があり、独占実施権はより強い効力を持っており、加えて第三者に対する許諾権(再実施権=サブライセンス権)を持つことにより、最も強固な特許契約となります。*31特許ポートフォリオ特許権侵害などの危険性を回避し、自社の特許権を強固なものにするために自社特許権の強み弱点を分析し、複数の特許群で対外的な守りを作り上げること。*32特殊な環状化構造生体内で壊れやすいペプチドの特徴を改善するために開発された環状化構造。通常の環状化構造がジスフィルド環状化結合と呼ばれるのに対して、この構造はチオエーテル環状化構造と呼ばれる。 (4) 当社のビジネスモデルについて当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントから標的分子(ターゲットタンパク)を受領し、その標的分子ごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図(<当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ>)は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金(A)」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価として標的分子ごとに「研究開発支援金(B)」を原則として前受にて受領しております。また、追加業務が発生する場合の対価として「追加研究開発支援金(C)」を標的分子ごとに設定しており、プロジェクトによっては(C)の売上が発生します。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。その後、クライアントでの評価により医薬品候補物質が特定され、クライアントが前臨床試験、臨床試験の段階に進む場合には、当該特殊ペプチドを当社がクライアントにライセンスアウトすることの対価として「創薬開発権利金(D)」が発生します。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊ペプチドを提供した後(すなわち(B)・(C)より後のフェーズ)は、医薬品候補物質に係る開発の進捗はクライアントに委ねられており、当社でのコントロール及び売上予測は極めて困難になるという特徴があります。 <当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ> (D)以降も引き続き開発が進みクライアントでの評価ステップを経て、臨床試験等の段階に移行すれば、その段階に応じて、各「目標達成報奨金(E)」「売上ロイヤルティ(E)」を当社は受領することになります。「売上ロイヤルティ」では、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティ」として当社が受領します。加えて、上市された医薬品の売上高が所定の金額に達した場合には「売上達成報奨金(E)」も受領します。 当社の共同研究開発契約の特徴としては、このように初期のディスカバリーステップから、売上が発生する取り決めとなっていることのほかに、最初の契約締結時において契約一時金から売上ロイヤルティまでのすべての売上カテゴリー(P)に関して、それらの金額又は金額の計算方法が原則として確定的に規定されていることが挙げられます。これまでのビジネスモデルでは、初期のディスカバリーステップは「フィージビリティースタディ」(*33)と評価され、売上が発生しないケースが多かったと認識しておりますが、当社のビジネスモデルでは、早期に売上を生み出すために上記の契約内容で契約を締結することに注力しております。当社の事業セグメントは、上記のとおり製薬企業との共同研究開発契約をもとにした「アライアンス事業」1本です。共同研究開発の取り組みを通じて、共同研究開発先からの要望により、共同研究開発先との間で当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS技術を貸与する(技術ライセンス契約の締結)ことがあります。当該契約を締結した場合、当社はその契約内容に応じて種々のライセンスフィーを共同研究開発先から受領します。 <用語解説>*33フィージビリティースタディ計画された事業やプロジェクト、技術等が実現可能か否か、利用することに意義や妥当性があるかを多角的に検討すること。
FY2018|14,339 文字|出典 docID: S100E75G
3 【事業の内容】(1) 事業の概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用して、国内外の製薬企業との共同研究開発のもと、新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。当社の事業の系統図は、次のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図>(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(4) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊ペプチドを基にした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊ペプチド」とは、当社窪田(現当社代表取締役)の造語ですが、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んだ特殊なペプチドをいいます。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊ペプチドから医薬品候補物質を創製することを主たる事業としております。特殊ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)です。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子(ターゲットタンパク)に対して適した特殊ペプチドを短期間でスクリーニングすることができるようになりました。当社の事業の概要は、次のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約を締結すると、当社は、製薬企業から契約一時金、研究開発支援金等の売上金及び標的分子(ターゲットタンパク)を受領します。その後、当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子に対してアフィニティ(他の分子との特異的な親和性)のある特殊ペプチドをPDPSにより高速でスクリーニングして製薬企業に提供します。提供された特殊ペプチドは、その後、製薬企業において創薬開発が進められることになりますが、製薬企業の創薬開発が成功裡に進めば、当社は創薬開発の進捗段階に応じて、当該特殊ペプチドに係る製品の上市に至るまで及び上市後においても契約に基づき種々の対価を受領することができます。(B)PDPS技術貸与(PDPS技術ライセンス):当社との創薬共同研究開発を通じて、製薬企業は当社のPDPSが持つ能力に関心を抱くようになり、製薬企業からPDPSを当該製薬企業内で使いたいとの要望が出てくるようになりました。これを受けて、当社では研究開発コラボレーションの一環として、共同研究開発先に対してPDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約 、技術貸与)を行っています。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)を複数本有しており、これらの医薬品候補物質を医薬品にするため、自社内で研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を組むことで、自社のパイプラインの拡充を図っています。 (2) 創薬の歴史と(特殊)ペプチドの位置付け 創薬開発の歴史的スタートは、明治30年(1897年)にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリン(*2)が市販された明治32年(1899年)だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*3)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。1980年代には抗体(*4)を医薬品に利用するべく研究がすすめられましたが抗原性の問題(*5)等により、実用には至りませんでした。その後も、欧米の製薬企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、平成9年(1997年)頃から抗体医薬(*6)が発売され、2000年代は抗体医薬が創薬開発の中心になっております。しかし、低分子医薬、抗体医薬とも医薬品として素晴らしい特性はあるものの、一方でそれぞれいくつかのウイークポイントも持っております。(下表<低分子医薬と抗体医薬の特徴>参照)そのため現在、世界の多くの大手製薬企業は低分子医薬・抗体医薬に続く次世代の創薬開発を目指し、積極的な活動を行っております。 <低分子医薬と抗体医薬の特徴> ※当社見解に基づく/当社作成 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発においてもととなる医薬品候補物質(プレリード化合物)を創出するための基盤となる技術。なお、リード化合物とは、医薬品の原料となりうる生理活性を持つ化合物のことであり、新薬の開発は、リード化合物を創製することから始まる。*2アスピリン代表的な消炎鎮痛剤。消炎・解熱・鎮痛作用を持つ。*3低分子医薬分子と分子の結びつきが短い、分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された化合物による創薬の総称。*4抗体体内に侵入した異物に対して生体が作り出すタンパク質の総称。*5抗原性の問題本来、薬として利用されるべき抗体を生体が異物としてとらえてしまい副作用が生じたり、排除されてしまう問題。*6抗体医薬医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*7免疫排除生体内において異物ととらえられてしまうことにより排除されてしまう機能。抗体医薬の場合、薬効が低下したり、効かなくなる現象。*8生体内毒性本来反応すべきでない分子に対して反応してしまうことによって起きる毒性(弊害)。*9蛋白・蛋白相互作用複数の異なるタンパク質分子が特異的結合する現象。それにより、生体内において各種の生理作用が生じる。 一般的にいわれるペプチド(*10)は、2個以上の天然型アミノ酸(*11)が結合して作られた化合物の総称であり、生体内においては、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補物質として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っていませんでした。これに対し、当社が創出する新しい医薬品候補物質、すなわち特殊ペプチド(*12)は、下表<一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い>(当社作成)のとおり、今までの一般的なペプチドの(医薬品候補物質としての)問題点の多くを解決することにより、医薬品候補物質としてよりふさわしい特徴を持つことができる可能性があると期待されています。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*13)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*14)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*15)多くの場合、細胞膜は透過できない。高い確率で細胞膜を透過できる。 これまでの医薬品の中心である低分子医薬と抗体医薬は、医薬品としての優位点と共に問題点も併せ持っております。たとえば、低分子医薬は、下表<低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較>(当社作成)のとおり、分子量(*16)が相対的に小さく様々な種類のターゲット(標的分子)に対応できること(ターゲットの多様性)が優位点です。その一方で、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、標的とするターゲットに結合せずに結合すべきでない分子に結合してしまうことなどにより、多くの副作用を引き起こしてしまう(生体内毒性が低くない)リスクが相対的に高いことが問題点となります。一方、抗体医薬は、低分子医薬に比べてその分子量が非常に大きいため、ターゲットの多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点になります。しかし、その大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できず経口投与ができないことや、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いことなどの問題点も数多く存在します。低分子医薬や抗体医薬に比べて、特殊ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、下表<低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較>(当社作成)のとおり、従来の低分子医薬や抗体医薬の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較> ※当社作成 低分子医薬特殊ペプチド医薬抗体医薬分子量(Da)50 ~ 1,000500 ~ 2,00050,000 ~ 150,000 <低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較> ※当社見解に基づく/当社作成相対的な特徴低分子医薬抗体医薬特殊ペプチド医薬迅速な研究開発が可能×○○ターゲットに対する強い結合力×○○ターゲットに対する強い特異性×○○生体内毒性が低い×○○タンパク・タンパク阻害反応×○○高い生体内安定性×○○ターゲットの多様性の多さ○×○細胞内のターゲットに対応○×○経口投与が可能○×○大量製造の容易さ○×△低い生体内免疫反応性○×○ (注) 「○」は備える又は優れると思われる能力 / 「△」は備えると期待される能力「×」は備えていない又は劣ると思われる能力 次に、このような特殊ペプチドのターゲットに対する強い結合力を視覚的に説明するために特殊ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合している状況を分析したデータに基づくイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析(*17))を掲示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。つまり、創薬のターゲットタンパクに強く特異的に結合することが重要になります。次の図は、その特殊ペプチドの特徴をよく表しております。 <特殊ペプチドの結合:複数点による結合> ※共同研究開発に伴う当社データ 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊ペプチドです。特殊ペプチドはターゲットタンパクに対して複数のポイント(ここでは3か所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬の場合はこの結合ポイントが1か所であるため、結合力に限界があります。また、1か所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1ケタの暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈にたとえられます。 特殊ペプチドのターゲットタンパクに対する結合の一様式は複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であり、低分子医薬のようにターゲットに対して多くの多様性を持っているうえ、低分子医薬よりもはるかに強固な結合力を保持しております。そのことが、特異性の高さにも結び付いております。<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 抗体医薬は、創薬のターゲットとなるタンパクの表面にしっかりと張り付く形で結合しております。低分子医薬が点(ポイント)で創薬ターゲットタンパクを捉えているのに対して、抗体医薬は面で創薬ターゲットタンパクを捉えていることになります。前頁の図<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>は特殊ペプチド(六角形の集まり)がターゲットタンパク(らせん状のリボン)に結合しているX線結晶構造解析結果です。抗体医薬と同じようにターゲットタンパクの表面にしっかりと絡みついて結合しています。このことから、特殊ペプチドはまさにサイズの小さい抗体医薬といえます。小さいサイズながら抗体医薬とそん色のない特性を持っている理由はこのような結合の形によるものです。 <特殊ペプチドの結合:標的分子の内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は先ほどの<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットタンパクに対する特殊ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊ペプチドはターゲットタンパクの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。抗体医薬ではその大きさの問題からこのようにターゲットタンパクの内側に対する結合様式を持つことはできません。特殊ペプチドは、創薬ターゲットタンパクの特徴に合わせて、特異性の高い強固な複数の結合形態をとることができる多様性を持った医薬品候補物質と言うことができます。これまで説明してきたように、特殊ペプチドが結合したターゲットタンパクのX線結晶構造解析により、どのように特殊ペプチドが働いているのかを詳細に理解することができます。これらの情報をもとに、最先端の創薬技術を活用することで、近年では特殊ペプチドとターゲットタンパクとの結合のしかたを再現するような低分子医薬をデザインすることが可能となってきました。現在当社では特殊ペプチドのような結合力や特異性を有した低分子医薬の開発を進めております。また、特殊ペプチドそのものを医薬品として利用するのではなく、結合力や特異性などの特徴を利用し、生体内の特定の部位や臓器に別の薬剤を送達するキャリアー(運び屋)として利用するPDC(*18)の開発をすることも可能であり、当社では自社パイプライン(*19)の一環としてPDCの研究開発を進めております。 <用語解説>*10ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた化合物。大きさによりペプチド⇒ポリペプチドと呼ばれ、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*11天然型アミノ酸タンパク質・ペプチドを作っている最小の成分。 地球上のあらゆる生命、植物も動物もアミノ酸により作り出される(合成される)タンパク質からできており、アミノ酸はすべての生命の源(素)。通常、合成に利用されるアミノ酸は20種類であり、天然型アミノ酸と呼ばれている。*12特殊ペプチド20種類の天然型アミノ酸から合成された通常の(一般的な)ペプチドに対して非天然型アミノ酸と呼ばれる20種類以外のアミノ酸が組込まれたペプチドの総称。古くからその存在は知られていたが、人工的に合成することが困難であった。*13構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*14生体内安定性生体内にはペプチダーゼという酵素が有り、通常のペプチドはペプチダーゼにより容易に分解されてしまう。*15細胞膜透過性通常のペプチドの多くは細胞の外側構造、細胞膜を透過することができない。細胞内には多くの創薬ターゲットが存在する。*16分子量各原子(水素や酸素など)の原子量(水素は1、酸素は16)の和のこと。たとえば、水分子(H2O)は水素2つと酸素1つで合計18となる。*17タンパク質X線結晶構造解析X線の特徴を利用してタンパク質の三次元構造を立体的に解析する分析方法。タンパク質の実態構造の解析に不可欠な技術。*18PDCペプチド薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと他の薬剤を化学的に結合させた複合体。*19パイプライン医薬品の開発に当たり、その初期の段階から開発・販売に至るまでの一連の計画のこと。 (3) 事業の特徴について① 創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)について特殊ペプチドを医薬品候補物質として活用するためには、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊ペプチドの特徴である特殊アミノ酸(*20)を組み込んで医薬品候補物質として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然型アミノ酸に限られているため、無細胞翻訳系(*21)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*22)として構築できる技術・システムを開発しました。それが、フレキシザイム(Flexizyme)技術であり、FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)であります。 ア. フレキシザイム(Flexizyme)についてフレキシザイムは、当社の創立者の一人である菅裕明・東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、完成させた「多目的tRNA(*23)アシル化(*24)RNA触媒(*25)」です。ペプチドが翻訳合成(*26)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せを基にアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*27)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然型アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。ところが、フレキシザイムは単体でARSに代わりすべてのアミノ酸(非天然型アミノ酸を含む)とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊なアミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊なアミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。そのほか、細胞膜の透過性を持つ特殊ペプチドも採れており、細胞内の標的をターゲットにすることもできるようになりました。イ. FIT(Flexible In-vitro Translation)システムについて次にFITシステムですが、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊ペプチドを下表<医薬品候補物質の多様性の比較>(当社作成)のとおり、FITシステムにより多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築することができるようになりました。低分子医薬のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊ペプチドは低分子医薬の1億倍程度の多様性を持っております。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補物質を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補物質発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補物質を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補物質の多様性の比較> ※当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較低分子医薬104 ~ 1051抗体医薬108 ~ 101010,000特殊ペプチド医薬1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 ウ. RAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムについてRAPIDディスプレイシステムは、特殊ペプチドを短期間でスクリーニング(*28)できる高速のスクリーニングシステムです。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊ペプチドの特徴を生かして、ターゲットタンパクに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)エ. PDPS(Peptide Discovery Platform System)について当社は、フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊ペプチドライブラリーを構築することができるシステム:PDTS(Peptide Discovery Translation System)を作り上げ、さらに特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムをPDDS(Peptide Discovery Display System)と位置付け、この3つの独自技術・システムを組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)を構築しました。 <当社の創薬開発プラットフォームシステムの概念図>(注) なおFITシステムについては、当社においてさらに改良を加え、フレキシザイム技術と組み合わせることによって「PDTS」という独自の翻訳合成系を構築しております。 <用語解説>*20特殊アミノ酸20種類の天然型アミノ酸以外のアミノ酸。非天然型アミノ酸とか異常アミノ酸等とも呼ばれる。*21無細胞翻訳系遺伝情報(遺伝子情報)から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(合成)と呼ばれている。この細胞内でペプチド・タンパクが合成されるメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*22創薬ライブラリー創薬ターゲットタンパクに対して結合する医薬品候補物質(低分子や抗体や特殊ペプチド等)を検索するときに利用する医薬品候補物質が大量に集められた母集団。*23tRNA運搬RNAと呼ばれており、遺伝情報(遺伝子情報)からペプチドやタンパクがリボソームで合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(リボ核酸)。*24アシル化アミノアシル結合を実行するためにアミノ酸のアミノ基等の水素を置換する働き。*25触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*26翻訳合成mRNAの情報に基づいてタンパク質を合成する反応のこと。*27酵素生体でおこる化学反応に対して触媒として機能する分子。*28スクリーニング設定された基準に対して達成されているか否かを判断するために実施される検査。 ② 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発・維持・発展は重要な経営ポイントになります。次の図は、当社の特許ポートフォリオの概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、③(及び①・②)の特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明(④・⑤・⑥・⑦)で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が「システム」として機能するように設計しております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 さらに、この創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)の特許・発明群を各種ライブラリーの発明が取り囲む形にすることにより、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。コアとなる7つの特許・発明の詳細は次の表のとおりです。①と②はニューヨーク州立大学が出願人であり、③・④・⑤・⑦は国立大学法人東京大学が出願人であり、⑥は当社が出願人であります。その他にライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)があり、それらについても随時権利化(出願)を進めております。なお、当社は、ニューヨーク州立大学及び国立大学法人東京大学の上記特許について、第三者サブライセンス権(*29)付き独占実施・許諾権(*30)を取得しております。 <当社の特許ポートフォリオ(*31)>発明の名称出願人出願国出願・特許番号①Catalytic RNAs with Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,001,723 B1CA Patent 2391433EP Patent 1232285 B1特許第4745577号②Ribozymes with Broad tRNA Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,622,248 B2CA Patent 2476425EP Patent 1483282 B1特許第4464684号③多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号④N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202 B1特許第5200241号⑤環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2EP Patent 2990411 B1特許第5605602号⑥ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 2012208720 A1EP Patent 2492344 B1特許第5174971号⑦新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993 B2EP 2610348 A4特許第5725467号CN Patent 103189522 B ①と②はフレキシザイム(Flexizyme)技術開発に関わる基本特許です。③はフレキシザイムそのものに関する特許であり、PDTS(Peptide Discovery Translation System)の中心となる特許であります。⑥は特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることができるRAPIDディスプレイシステムの特許であり、PDDS(Peptide Discovery Display System)の中心となる特許であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)⑦は翻訳合成系にて特殊ペプチドをライブラリー化するFITシステムの発明であり、PDTSの中心となる発明であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。)④はペプチド、タンパクが翻訳合成されるとき、Met(メチオニン)というアミノ酸から合成が開始されるという生命の基本的なルールを書き換えることを可能にした技術特許です。この技術特許によりMet(メチオニン)以外のあらゆるアミノ酸から合成を開始することができるようになりました。当社は、この技術により、合成するペプチドの形状を自由に変えることができるようになり、特殊ペプチドに対し従来では考えられなかった多様性を持たせることが可能になりました。⑤はペプチドを特殊な環状化構造(*32)にする発明です。この技術により特殊ペプチドが生体内での安定性や構造の安定性を確保することができるようになりました。以上、①から⑦までの特許によって当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)が構成されております。さらに、概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊ペプチドライブラリーを作成する技術であり、これらにより特殊ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊ペプチドをスクリーニングする技術であり、各種機能を持ちうる特殊ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されますが、この発明はクライアントとは関係なく発生したものであります。 <用語解説>*29第三者サブライセンス権特許をライセンスするときには、特許権者(ライセンサー)と実施権者(ライセンシー)の関係が生じます。ライセンシーは自己の特許権を強化するために第三者に対する再実施権(サブライセンス)を獲得することが好まれます。*30独占実施・許諾権特許の実施権は独占と非独占があり、独占実施権はより強い効力を持っており、加えて第三者に対する許諾権(再実施権=サブライセンス権)を持つことにより、最も強固な特許契約となります。*31特許ポートフォリオ特許権侵害などの危険性を回避し、自社の特許権を強固なものにするために自社特許権の強み弱点を分析し、複数の特許群で対外的な守りを作り上げること。*32特殊な環状化構造生体内で壊れやすいペプチドの特徴を改善するために開発された環状化構造。通常の環状化構造がジスフィルド環状化結合と呼ばれるのに対して、この構造はチオエーテル環状化構造と呼ばれる。 (4) 当社のビジネスモデルについて当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントから標的分子(ターゲットタンパク)を受領し、その標的分子ごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図(<当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ>)は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金(A)」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価として標的分子ごとに「研究開発支援金(B)」を原則として前受にて受領しております。また、追加業務が発生する場合の対価として「追加研究開発支援金(C)」を標的分子ごとに設定しており、プロジェクトによっては(C)の売上が発生します。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。その後、クライアントでの評価により医薬品候補物質が特定され、クライアントが前臨床試験、臨床試験の段階に進む場合には、当該特殊ペプチドを当社がクライアントにライセンスアウトすることの対価として「創薬開発権利金(D)」が発生します。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊ペプチドを提供した後(すなわち(B)・(C)より後のフェーズ)は、医薬品候補物質に係る開発の進捗はクライアントに委ねられており、当社でのコントロール及び売上予測は極めて困難になるという特徴があります。 <当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ> (D)以降も引き続き開発が進みクライアントでの評価ステップを経て、臨床試験等の段階に移行すれば、その段階に応じて、各「目標達成報奨金(E)」「売上ロイヤルティ(E)」を当社は受領することになります。「売上ロイヤルティ」では、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティ」として当社が受領します。加えて、上市された医薬品の売上高が所定の金額に達した場合には「売上達成報奨金(E)」も受領します。 当社の共同研究開発契約の特徴としては、このように初期のディスカバリーステップから、売上が発生する取り決めとなっていることのほかに、最初の契約締結時において契約一時金から売上ロイヤルティまでのすべての売上カテゴリー(P)に関して、それらの金額又は金額の計算方法が原則として確定的に規定されていることが挙げられます。これまでのビジネスモデルでは、初期のディスカバリーステップは「フィージビリティースタディ」(*33)と評価され、売上が発生しないケースが多かったと認識しておりますが、当社のビジネスモデルでは、早期に売上を生み出すために上記の契約内容で契約を締結することに注力しております。当社の事業セグメントは、上記のとおり製薬企業との共同研究開発契約をもとにした「アライアンス事業」1本です。共同研究開発の取り組みを通じて、共同研究開発先からの要望により、共同研究開発先との間で当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS技術を貸与する(技術ライセンス契約の締結)ことがあります。当該契約を締結した場合、当社はその契約内容に応じて種々のライセンスフィーを共同研究開発先から受領します。 <用語解説>*33フィージビリティースタディ計画された事業やプロジェクト、技術等が実現可能か否か、利用することに意義や妥当性があるかを多角的に検討すること。
FY2017|14,282 文字|出典 docID: S100BF3T
3 【事業の内容】(1) 事業の概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用して、国内外の製薬企業との共同研究開発のもと、新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。当社の事業の系統図は、次のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図>(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(4) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊ペプチド医薬に特化した事業を展開しております。「特殊ペプチド」とは、当社窪田(現当社代表取締役)の造語ですが、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んだ特殊なペプチドをいいます。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊ペプチドから医薬品候補物質を創製することを主たる事業としております。特殊ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)です。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子(ターゲットタンパク)に対して適した特殊ペプチドを短期間でスクリーニングすることができるようになりました。当社の事業の概要は、次のとおりであります。(A)共同研究開発:当社と製薬企業との間で共同研究開発契約を締結すると、当社は、製薬企業から契約一時金、研究開発支援金等の売上金及び標的分子(ターゲットタンパク)を受領します。その後、当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子に対してアフィニティ(他の分子との特異的な親和性)のある特殊ペプチドをPDPSにより高速でスクリーニングして製薬企業に提供します。提供された特殊ペプチドは、その後、製薬企業において創薬開発が進められることになりますが、製薬企業の創薬開発が成功裡に進めば、当社は創薬開発の進捗段階に応じて、当該特殊ペプチドに係る製品の上市に至るまで及び上市後においても契約に基づき種々の対価を受領することができます。(B)PDPS技術貸与(PDPS技術ライセンス):当社との共同研究開発を通じて、製薬企業は当社のPDPSが持つ能力に関心を抱くようになり、製薬企業からPDPSを当該製薬企業内で使いたいとの要望が出てくるようになりました。これを受けて、当社では研究開発コラボレーションの一環として、共同研究開発先に対してPDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約 、技術貸与)を行っています。(C)戦略的提携/自社創薬:当社は、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)を複数本有しており、これらの医薬品候補物質を医薬品にするため、自社内で研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を組むことで、自社のパイプラインの拡充を図っています。 (2) 創薬の歴史と(特殊)ペプチドの位置付け 創薬開発の歴史的スタートは、明治30年(1897年)にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリン(*2)が市販された明治32年(1899年)だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*3)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。1980年代には抗体(*4)を医薬品に利用するべく研究がすすめられましたが抗原性の問題(*5)等により、実用には至りませんでした。その後も、欧米の製薬企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、平成9年(1997年)頃から抗体医薬品(*6)が発売され、2000年代は抗体医薬品が創薬開発の中心になっております。しかし、低分子医薬、抗体医薬とも医薬品として素晴らしい特性はあるものの、一方でそれぞれいくつかのウイークポイントも持っております。(下表<低分子医薬と抗体医薬の特徴>参照)そのため現在、世界の多くの大手製薬企業はおよそ10年後を目処にした低分子医薬・抗体医薬に続く次世代の創薬開発を目指し、積極的な活動を行っております。 <低分子医薬と抗体医薬の特徴> ※当社見解に基づく/当社作成 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発においてもととなる医薬品候補物質(プレリード化合物)を創出するための基盤となる技術。なお、リード化合物とは、医薬品の原料となりうる生理活性を持つ化合物のことであり、新薬の開発は、リード化合物を創製することから始まる。*2アスピリン代表的な消炎鎮痛剤。消炎・解熱・鎮痛作用を持つ。*3低分子医薬分子と分子の結びつきが短い、分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された化合物による創薬の総称。*4抗体体内に侵入した異物に対して生体が作り出すタンパク質の総称。*5抗原性の問題本来、薬として利用されるべき抗体を生体が異物としてとらえてしまい副作用が生じたり、排除されてしまう問題。*6抗体医薬品医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*7免疫排除生体内において異物ととらえられてしまうことにより排除されてしまう機能。抗体医薬の場合、薬効が低下したり、効かなくなる現象。*8生体内毒性本来反応すべきでない分子に対して反応してしまうことによって起きる毒性(弊害)。*9蛋白・蛋白相互作用複数の異なるタンパク質分子が特異的結合する現象。それにより、生体内において各種の生理作用が生じる。 一般的にいわれるペプチド(*10)は、2個以上の天然型アミノ酸(*11)が結合して作られた化合物の総称であり、生体内においては、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補物質として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っていませんでした。これに対し、当社が創出する新しい医薬品候補物質、すなわち特殊ペプチド(*12)は、下表<一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い>(当社作成)のとおり、今までの一般的なペプチドの(医薬品候補物質としての)問題点の多くを解決することにより、医薬品候補物質としてよりふさわしい特徴を持つことができる可能性があると期待されています。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*13)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*14)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*15)多くの場合、細胞膜は透過できない。高い確率で細胞膜を透過できる。 これまでの医薬品の中心である低分子医薬と抗体医薬は、医薬品としての優位点と共に問題点も併せ持っております。たとえば、低分子医薬は、下表<低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較>(当社作成)のとおり、分子量(*16)が相対的に小さく様々な種類のターゲット(標的分子)に対応できること(ターゲットの多様性)が優位点です。その一方で、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、標的とするターゲットに結合せずに結合すべきでない分子に結合してしまうことなどにより、多くの副作用を引き起こしてしまう(生体内毒性が低くない)リスクが相対的に高いことが問題点となります。一方、抗体医薬は、低分子医薬に比べてその分子量が非常に大きいため、ターゲットの多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点になります。しかし、その大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できず経口投与ができないことや、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いことなどの問題点も数多く存在します。低分子医薬や抗体医薬に比べて、特殊ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、下表<低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較>(当社作成)のとおり、従来の低分子医薬や抗体医薬の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較> ※当社作成 低分子医薬特殊ペプチド医薬抗体医薬分子量(Da)50 ~ 1,000500 ~ 2,00050,000 ~ 150,000 <低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較> ※当社見解に基づく/当社作成相対的な特徴低分子医薬抗体医薬特殊ペプチド医薬迅速な研究開発が可能×○○ターゲットに対する強い結合力×○○ターゲットに対する強い特異性×○○生体内毒性が低い×○○タンパク・タンパク阻害反応×○○高い生体内安定性×○○ターゲットの多様性の多さ○×○細胞内のターゲットに対応○×○経口投与が可能○×○大量製造の容易さ○×△低い生体内免疫反応性○×○ (注) 「○」は備える又は優れると思われる能力 / 「△」は備えると期待される能力「×」は備えていない又は劣ると思われる能力 次に、このような特殊ペプチドのターゲットに対する強い結合力を視覚的に説明するために特殊ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合している状況を分析したデータに基づくイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析(*17))を掲示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。つまり、創薬のターゲットタンパクに強く特異的に結合することが重要になります。次の図は、その特殊ペプチドの特徴をよく表しております。 <特殊ペプチドの結合:複数点による結合> ※共同研究開発に伴う当社データ 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊ペプチドです。特殊ペプチドはターゲットタンパクに対して複数のポイント(ここでは3か所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬の場合はこの結合ポイントが1か所であるため、結合力に限界があります。また、1か所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1ケタの暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈にたとえられます。 特殊ペプチドのターゲットタンパクに対する結合の一様式は複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であり、低分子医薬のようにターゲットに対して多くの多様性を持っているうえ、低分子医薬よりもはるかに強固な結合力を保持しております。そのことが、特異性の高さにも結び付いております。<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 抗体医薬は、創薬のターゲットとなるタンパクの表面にしっかりと張り付く形で結合しております。低分子医薬が点(ポイント)で創薬ターゲットタンパクを捉えているのに対して、抗体医薬は面で創薬ターゲットタンパクを捉えていることになります。前頁の図<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>は特殊ペプチド(六角形の集まり)がターゲットタンパク(らせん状のリボン)に結合しているX線結晶構造解析結果です。抗体医薬と同じようにターゲットタンパクの表面にしっかりと絡みついて結合しています。このことから、特殊ペプチドはまさにサイズの小さい抗体医薬といえます。小さいサイズながら抗体医薬とそん色のない特性を持っている理由はこのような結合の形によるものです。 <特殊ペプチドの結合:標的分子の内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は先ほどの<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットタンパクに対する特殊ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊ペプチドはターゲットタンパクの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。抗体医薬ではその大きさの問題からこのようにターゲットタンパクの内側に対する結合様式を持つことはできません。特殊ペプチドは、創薬ターゲットタンパクの特徴に合わせて、特異性の高い強固な複数の結合形態をとることができる多様性を持った医薬品候補物質と言うことができます。これまで説明してきたように、特殊ペプチドが結合したターゲットタンパクのX線結晶構造解析により、どのように特殊ペプチドが働いているのかを詳細に理解することができます。これらの情報をもとに、最先端の創薬技術を活用することで、近年では特殊ペプチドとターゲットタンパクとの結合のしかたを再現するような低分子医薬をデザインすることが可能となってきました。現在当社では特殊ペプチドのような結合力や特異性を有した低分子医薬の開発を進めております。また、特殊ペプチドそのものを医薬品として利用するのではなく、結合力や特異性などの特徴を利用し、生体内の特定の部位や臓器に別の薬剤を送達するキャリアー(運び屋)として利用するPDC(*18)の開発をすることも可能であり、当社では自社パイプライン(*19)の一環としてPDCの研究開発を進めております。 <用語解説>*10ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた化合物。大きさによりペプチド⇒ポリペプチドと呼ばれ、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*11天然型アミノ酸タンパク質・ペプチドを作っている最小の成分。 地球上のあらゆる生命、植物も動物もアミノ酸により作り出される(合成される)タンパク質からできており、アミノ酸はすべての生命の源(素)。通常、合成に利用されるアミノ酸は20種類であり、天然型アミノ酸と呼ばれている。*12特殊ペプチド20種類の天然型アミノ酸から合成された通常の(一般的な)ペプチドに対して非天然型アミノ酸と呼ばれる20種類以外のアミノ酸が組込まれたペプチドの総称。古くからその存在は知られていたが、人工的に合成することが困難であった。*13構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*14生体内安定性生体内にはペプチダーゼという酵素が有り、通常のペプチドはペプチダーゼにより容易に分解されてしまう。*15細胞膜透過性通常のペプチドの多くは細胞の外側構造、細胞膜を透過することができない。細胞内には多くの創薬ターゲットが存在する。*16分子量各原子(水素や酸素など)の原子量(水素は1、酸素は16)の和のこと。たとえば、水分子(H2O)は水素2つと酸素1つで合計18となる。*17タンパク質X線結晶構造解析X線の特徴を利用してタンパク質の三次元構造を立体的に解析する分析方法。タンパク質の実態構造の解析に不可欠な技術。*18PDCペプチド薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと他の薬剤を化学的に結合させた複合体。*19パイプライン医薬品の開発に当たり、その初期の段階から開発・販売に至るまでの一連の計画のこと。 (3) 事業の特徴について① 創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)について特殊ペプチドを医薬品候補物質として活用するためには、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊ペプチドの特徴である特殊アミノ酸(*20)を組み込んで医薬品候補物質として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然型アミノ酸に限られているため、無細胞翻訳系(*21)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*22)として構築できる技術・システムを開発しました。それが、フレキシザイム(Flexizyme)技術であり、FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)であります。 ア. フレキシザイム(Flexizyme)についてフレキシザイムは、当社の創立者の一人である菅裕明・東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、完成させた「多目的tRNA(*23)アシル化(*24)RNA触媒(*25)」です。ペプチドが翻訳合成(*26)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せを基にアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*27)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然型アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。ところが、フレキシザイムは単体でARSに代わりすべてのアミノ酸(非天然型アミノ酸を含む)とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊なアミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊なアミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。そのほか、細胞膜の透過性を持つ特殊ペプチドも採れており、細胞内の標的をターゲットにすることもできるようになりました。イ. FIT(Flexible In-vitro Translation)システムについて次にFITシステムですが、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊ペプチドを下表<医薬品候補物質の多様性の比較>(当社作成)のとおり、FITシステムにより多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築することができるようになりました。低分子医薬のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊ペプチドは低分子医薬の1億倍程度の多様性を持っております。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補物質を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補物質発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補物質を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補物質の多様性の比較> ※当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較低分子医薬104 ~ 1051抗体医薬108 ~ 101010,000特殊ペプチド医薬1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 ウ. RAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムについてRAPIDディスプレイシステムは、特殊ペプチドを短期間でスクリーニング(*28)できる高速のスクリーニングシステムです。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊ペプチドの特徴を生かして、ターゲットタンパクに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)エ. PDPS(Peptide Discovery Platform System)について当社は、フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊ペプチドライブラリーを構築することができるシステム:PDTS(Peptide Discovery Translation System)を作り上げ、さらに特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムをPDDS(Peptide Discovery Display System)と位置付け、この3つの独自技術・システムを組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)を構築しました。 <当社の創薬開発プラットフォームシステムの概念図>(注) なおFITシステムについては、当社においてさらに改良を加え、フレキシザイム技術と組み合わせることによって「PDTS」という独自の翻訳合成系を構築しております。 <用語解説>*20特殊アミノ酸20種類の天然型アミノ酸以外のアミノ酸。非天然型アミノ酸とか異常アミノ酸等とも呼ばれる。*21無細胞翻訳系遺伝情報(遺伝子情報)から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(合成)と呼ばれている。この細胞内でペプチド・タンパクが合成されるメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*22創薬ライブラリー創薬ターゲットタンパクに対して結合する医薬品候補物質(低分子や抗体や特殊ペプチド等)を検索するときに利用する医薬品候補物質が大量に集められた母集団。*23tRNA運搬RNA(遺伝子)と呼ばれており、遺伝情報(遺伝子情報)からペプチドやタンパクが合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(遺伝子)。*24アシル化アミノアシル結合を実行するためにアミノ酸のアミノ基等の水素を置換する働き。*25触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*26翻訳合成mRNAの情報に基づいてタンパク質を合成する反応のこと。*27酵素生体でおこる化学反応に対して触媒として機能する分子。*28スクリーニング設定された基準に対して達成されているか否かを判断するために実施される検査。 ② 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発・維持・発展は重要な経営ポイントになります。次の図は、当社の特許ポートフォリオの概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、③(及び①・②)の特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明(④・⑤・⑥・⑦)で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が「システム」として機能するように設計しております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 さらに、この創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)の特許・発明群を各種ライブラリーの発明が取り囲む形にすることにより、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。コアとなる7つの特許・発明の詳細は次の表のとおりです。①と②はニューヨーク州立大学が出願人であり、③・④・⑤・⑦は国立大学法人東京大学が出願人であり、⑥は当社が出願人であります。その他にライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)があり、それらについても随時権利化(出願)を進めております。なお、当社は、ニューヨーク州立大学及び国立大学法人東京大学の上記特許について、第三者サブライセンス権(*29)付き独占実施・許諾権(*30)を取得しております。 <当社の特許ポートフォリオ(*31)>発明の名称出願人出願国出願・特許番号①Catalytic RNAs with Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,001,723CA Patent 2391433EP Patent 1232285特許第4745577号②Ribozymes with Broad tRNA Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,622,248CA Patent 2476425EP Patent 1483282特許第4464684号③多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260EP Patent 1964916特許第5119444号④N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542EP Patent 2088202特許第5200241号⑤環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668EP Patent 2141175特許第5605602号⑥ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 13/502,487EP Patent 2492344特許第5174971号⑦新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993EP 11820026特許第5725467号CN Patent 201180052318.9 ①と②はフレキシザイム(Flexizyme)技術開発に関わる基本特許です。③はフレキシザイムそのものに関する特許であり、PDTS(Peptide Discovery Translation System)の中心となる特許であります。⑥は特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることができるRAPIDディスプレイシステムの特許であり、PDDS(Peptide Discovery Display System)の中心となる特許であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)⑦は翻訳合成系にて特殊ペプチドをライブラリー化するFITシステムの発明であり、PDTSの中心となる発明であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。)④はペプチド、タンパクが翻訳合成されるとき、Met(メチオニン)というアミノ酸から合成が開始されるという生命の基本的なルールを書き換えることを可能にした技術特許です。この技術特許によりMet(メチオニン)以外のあらゆるアミノ酸から合成を開始することができるようになりました。当社は、この技術により、合成するペプチドの形状を自由に変えることができるようになり、特殊ペプチドに対し従来では考えられなかった多様性を持たせることが可能になりました。⑤はペプチドを特殊な環状化構造(*32)にする発明です。この技術により特殊ペプチドが生体内での安定性や構造の安定性を確保することができるようになりました。以上、①から⑦までの特許によって当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)が構成されております。さらに、概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊ペプチドライブラリーを作成する技術であり、これらにより特殊ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊ペプチドをスクリーニングする技術であり、各種機能を持ちうる特殊ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されますが、この発明はクライアントとは関係なく発生したものであります。 <用語解説>*29第三者サブライセンス権特許をライセンスするときには、特許権者(ライセンサー)と実施権者(ライセンシー)の関係が生じます。ライセンシーは自己の特許権を強化するために第三者に対する再実施権(サブライセンス)を獲得することが好まれます。*30独占実施・許諾権特許の実施権は独占と非独占があり、独占実施権はより強い効力を持っており、加えて第三者に対する許諾権(再実施権=サブライセンス権)を持つことにより、最も強固な特許契約となります。*31特許ポートフォリオ特許権侵害などの危険性を回避し、自社の特許権を強固なものにするために自社特許権の強み弱点を分析し、複数の特許群で対外的な守りを作り上げること。*32特殊な環状化構造生体内で壊れやすいペプチドの特徴を改善するために開発された環状化構造。通常の環状化構造がジスフィルド環状化結合と呼ばれるのに対して、この構造はチオエーテル環状化構造と呼ばれる。 (4) 当社のビジネスモデルについて当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントから標的分子(ターゲットタンパク)を受領し、その標的分子ごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図(<当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ>)は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金(A)」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価として標的分子ごとに「研究開発支援金(B)」を原則として前受にて受領しております。また、追加業務が発生する場合の対価として「追加研究開発支援金(C)」を標的分子ごとに設定しており、プロジェクトによっては(C)の売上が発生します。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。その後、クライアントでの評価により医薬品候補物質が特定され、クライアントが前臨床試験、臨床試験の段階に進む場合には、当該特殊ペプチドを当社がクライアントにライセンスアウトすることの対価として「創薬開発権利金(D)」が発生します。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊ペプチドを提供した後(すなわち(B)・(C)より後のフェーズ)は、医薬品候補物質に係る開発の進捗はクライアントに委ねられており、当社でのコントロール及び売上予測は極めて困難になるという特徴があります。 <当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ> (D)以降も引き続き開発が進みクライアントでの評価ステップを経て、臨床試験等の段階に移行すれば、その段階に応じて、各「目標達成報奨金(E)」「売上ロイヤルティ(E)」を当社は受領することになります。「売上ロイヤルティ」では、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティ」として当社が受領します。加えて、上市された医薬品の売上高が所定の金額に達した場合には「売上達成報奨金(E)」も受領します。 当社の共同研究開発契約の特徴としては、このように初期のディスカバリーステップから、売上が発生する取り決めとなっていることのほかに、最初の契約締結時において契約一時金から売上ロイヤルティまでのすべての売上カテゴリー(P)に関して、それらの金額又は金額の計算方法が原則として確定的に規定されていることが挙げられます。これまでのビジネスモデルでは、初期のディスカバリーステップは「フィージビリティースタディ」(*33)と評価され、売上が発生しないケースが多かったと認識しておりますが、当社のビジネスモデルでは、早期に売上を生み出すために上記の契約内容で契約を締結することに注力しております。当社の事業セグメントは、上記のとおり製薬企業との共同研究開発契約をもとにした「アライアンス事業」1本です。共同研究開発の取り組みを通じて、共同研究開発先からの要望により、共同研究開発先との間で当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS技術を貸与する(技術ライセンス契約の締結)ことがあります。当該契約を締結した場合、当社はその契約内容に応じて種々のライセンスフィーを共同研究開発先から受領します。 <用語解説>*33フィージビリティースタディ計画された事業やプロジェクト、技術等が実現可能か否か、利用することに意義や妥当性があるかを多角的に検討すること。
FY2016|13,919 文字|出典 docID: S1008QOH
3 【事業の内容】(1) 事業の概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用して、国内外の製薬企業との共同研究開発のもと、新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。当社の事業の系統図は、次のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図>(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(4) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊ペプチド医薬に特化した事業を展開しております。「特殊ペプチド」とは、当社窪田(現当社代表取締役)の造語ですが、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んだ特殊なペプチドをいいます。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊ペプチドから医薬品候補物質を創製することを主たる事業としております。特殊ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)です。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子(ターゲットタンパク)に対して適した特殊ペプチドを短期間でスクリーニングすることができるようになりました。当社の事業の概要は、次のとおりであります。(A)共同研究開発:当社と製薬企業との間で共同研究開発契約を締結すると、当社は、製薬企業から契約一時金、研究開発支援金等の売上金及び標的分子(ターゲットタンパク)を受領します。その後、当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子に対してアフィニティ(他の分子との特異的な親和性)のある特殊ペプチドをPDPSにより高速でスクリーニングして製薬企業に提供します。提供された特殊ペプチドは、その後、製薬企業において創薬開発が進められることになりますが、製薬企業の創薬開発が成功裡に進めば、当社は創薬開発の進捗段階に応じて、当該特殊ペプチドに係る製品の上市に至るまで及び上市後においても契約に基づき種々の対価を受領することができます。(B)PDPS技術貸与(PDPS技術ライセンス):当社との共同研究開発を通じて、製薬企業は当社のPDPSが持つ能力に関心を抱くようになり、製薬企業からPDPSを当該製薬企業内で使いたいとの要望が出てくるようになりました。これを受けて、当社では研究開発コラボレーションの一環として、共同研究開発先に対してPDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約 、技術貸与)を行っています。(C)自社創薬:当社では自社パイプラインを複数本有しており、これらの医薬品候補物質を医薬品にするため、自社内で研究開発を進めています。 (2) 創薬の歴史と(特殊)ペプチドの位置付け 創薬開発の歴史的スタートは、明治30年(1897年)にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリン(*2)が市販された明治32年(1899年)だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*3)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。1980年代には抗体(*4)を医薬品に利用するべく研究がすすめられましたが抗原性の問題(*5)等により、実用には至りませんでした。その後も、欧米の製薬企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、平成9年(1997年)頃から抗体医薬品(*6)が発売され、2000年代は抗体医薬品が創薬開発の中心になっております。しかし、低分子医薬、抗体医薬とも医薬品として素晴らしい特性はあるものの、一方でそれぞれいくつかのウイークポイントも持っております。(下表<低分子医薬と抗体医薬の特徴>参照)そのため現在、世界の多くの大手製薬企業はおよそ10年後を目処にした低分子医薬・抗体医薬に続く次世代の創薬開発を目指し、積極的な活動を行っております。 <低分子医薬と抗体医薬の特徴> ※当社見解に基づく/当社作成 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発においてもととなる医薬品候補物質(プレリード化合物)を創出するための基盤となる技術。なお、リード化合物とは、医薬品の原料となりうる生理活性を持つ化合物のことであり、新薬の開発は、リード化合物を創製することから始まる。*2アスピリン代表的な消炎鎮痛剤。消炎・解熱・鎮痛作用を持つ。*3低分子医薬分子と分子の結びつきが短い、分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された化合物による創薬の総称。*4抗体体内に侵入した異物に対して生体が作り出すタンパク質の総称。*5抗原性の問題本来、薬として利用されるべき抗体を生体が異物としてとらえてしまい副作用が生じたり、排除されてしまう問題。*6抗体医薬品医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*7免疫排除生体内において異物ととらえられてしまうことにより排除されてしまう機能。抗体医薬の場合、薬効が低下したり、効かなくなる現象。*8生体内毒性本来反応すべきでない分子に対して反応してしまうことによって起きる毒性(弊害)。*9蛋白・蛋白相互作用複数の異なるタンパク質分子が特異的結合する現象。それにより、生体内において各種の生理作用が生じる。 一般的にいわれるペプチド(*10)は、2個以上の天然型アミノ酸(*11)が結合して作られた化合物の総称であり、生体内においては、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補物質として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っていませんでした。これに対し、当社が創出する新しい医薬品候補物質、すなわち特殊ペプチド(*12)は、下表<一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い>(当社作成)のとおり、今までの一般的なペプチドの(医薬品候補物質としての)問題点の多くを解決することにより、医薬品候補物質としてよりふさわしい特徴を持つことができる可能性があると期待されています。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*13)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*14)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*15)多くの場合、細胞膜は透過できない。高い確率で細胞膜を透過できる。 これまでの医薬品の中心である低分子医薬と抗体医薬は、医薬品としての優位点と共に問題点も併せ持っております。たとえば、低分子医薬は、下表<低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較>(当社作成)のとおり、分子量(*16)が相対的に小さく様々な種類のターゲット(標的分子)に対応できること(ターゲットの多様性)が優位点です。その一方で、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、標的とするターゲットに結合せずに結合すべきでない分子に結合してしまうことなどにより、多くの副作用を引き起こしてしまう(生体内毒性が低くない)リスクが相対的に高いことが問題点となります。一方、抗体医薬は、低分子医薬に比べてその分子量が非常に大きいため、ターゲットの多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点になります。しかし、その大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できず経口投与ができないことや、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いことなどの問題点も数多く存在します。低分子医薬や抗体医薬に比べて、特殊ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、下表<低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較>(当社作成)のとおり、従来の低分子医薬や抗体医薬の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較> ※当社作成 低分子医薬特殊ペプチド医薬抗体医薬分子量(Da)50 ~ 1,000500 ~ 2,00050,000 ~ 150,000 <低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較> ※当社見解に基づく/当社作成相対的な特徴低分子医薬抗体医薬特殊ペプチド医薬迅速な研究開発が可能×○○ターゲットに対する強い結合力×○○ターゲットに対する強い特異性×○○生体内毒性が低い×○○タンパク・タンパク阻害反応×○○高い生体内安定性×○○ターゲットの多様性の多さ○×○細胞内のターゲットに対応○×○経口投与が可能○×○大量製造の容易さ○×△低い生体内免疫反応性○×○ (注) 「○」は備える又は優れると思われる能力 / 「△」は備えると期待される能力「×」は備えていない又は劣ると思われる能力 次に、このような特殊ペプチドのターゲットに対する強い結合力を視覚的に説明するために特殊ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合している状況を分析したデータに基づくイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析(*17))を掲示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。つまり、創薬のターゲットタンパクに強く特異的に結合することが重要になります。次の図は、その特殊ペプチドの特徴をよく表しております。 <特殊ペプチドの結合:複数点による結合> ※共同研究開発に伴う当社データ 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊ペプチドです。特殊ペプチドはターゲットタンパクに対して複数のポイント(ここでは3か所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬の場合はこの結合ポイントが1か所であるため、結合力に限界があります。また、1か所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1ケタの暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈にたとえられます。 特殊ペプチドのターゲットタンパクに対する結合の一様式は複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であり、低分子医薬のようにターゲットに対して多くの多様性を持っているうえ、低分子医薬よりもはるかに強固な結合力を保持しております。そのことが、特異性の高さにも結び付いております。<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 抗体医薬は、創薬のターゲットとなるタンパクの表面にしっかりと張り付く形で結合しております。低分子医薬が点(ポイント)で創薬ターゲットタンパクを捉えているのに対して、抗体医薬は面で創薬ターゲットタンパクを捉えていることになります。前頁の図<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>は特殊ペプチド(六角形の集まり)がターゲットタンパク(らせん状のリボン)に結合しているX線結晶構造解析結果です。抗体医薬と同じようにターゲットタンパクの表面にしっかりと絡みついて結合しています。このことから、特殊ペプチドはまさにサイズの小さい抗体医薬といえます。小さいサイズながら抗体医薬とそん色のない特性を持っている理由はこのような結合の形によるものです。 <特殊ペプチドの結合:標的分子の内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は先ほどの<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットタンパクに対する特殊ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊ペプチドはターゲットタンパクの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。抗体医薬ではその大きさの問題からこのようにターゲットタンパクの内側に対する結合様式を持つことはできません。特殊ペプチドは、創薬ターゲットタンパクの特徴に合わせて、特異性の高い強固な複数の結合形態をとることができる多様性を持った医薬品候補物質と言うことができます。また、この特徴を生かしてDDS製剤(*18)の開発をすることも可能であり、当社では自社パイプライン(*19)の一環として研究開発を進めております。 <用語解説>*10ペプチド最もサイズが小さいタンパク質。大きさによりペプチド⇒ポリペプチド⇒タンパク質と呼称される。*11天然型アミノ酸タンパク質・ペプチドを作っている最小の成分。 地球上のあらゆる生命、植物も動物もアミノ酸により作り出される(合成される)タンパク質からできており、アミノ酸はすべての生命の源(素)。通常、合成に利用されるアミノ酸は20種類であり、天然型アミノ酸と呼ばれている。*12特殊ペプチド20種類の天然型アミノ酸から合成された通常の(一般的な)ペプチドに対して非天然型アミノ酸と呼ばれる20種類以外のアミノ酸が組込まれたペプチドの総称。古くからその存在は知られていたが、人工的に合成することが困難であった。*13構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*14生体内安定性生体内にはペプチダーゼという酵素が有り、通常のペプチドはペプチダーゼにより容易に分解されてしまう。*15細胞膜透過性通常のペプチドの多くは細胞の外側構造、細胞膜を透過することができない。細胞内には多くの創薬ターゲットが存在する。*16分子量各原子(水素や酸素など)の原子量(水素は1、酸素は16)の和のこと。たとえば、水分子(H2O)は水素2つと酸素1つで合計18となる。*17タンパク質X線結晶構造解析X線の特徴を利用してタンパク質の三次元構造を立体的に解析する分析方法。タンパク質の実態構造の解析に不可欠な技術。*18DDS製剤薬物送達システム(Drug Delivery System)のことであり、医薬品の効果をよりよく発揮させるために、薬物の投与方法や投与形態を検討して創造された医薬品のこと。*19パイプライン医薬品の開発に当たり、その初期の段階から開発・販売に至るまでの一連の計画のこと。 (3) 事業の特徴について① 創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)について特殊ペプチドを医薬品候補物質として活用するためには、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊ペプチドの特徴である特殊アミノ酸(*20)を組み込んで医薬品候補物質として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然型アミノ酸に限られているため、無細胞翻訳系(*21)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*22)として構築できる技術・システムを開発しました。それが、フレキシザイム(Flexizyme)技術であり、FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)であります。 ア. フレキシザイム(Flexizyme)についてフレキシザイムは、当社の創立者の一人である菅裕明・東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、完成させた「多目的tRNA(*23)アシル化(*24)RNA触媒(*25)」です。ペプチドが翻訳合成(*26)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せを基にアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*27)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然型アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。ところが、フレキシザイムは単体でARSに代わりすべてのアミノ酸(非天然型アミノ酸を含む)とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊なアミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊なアミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。そのほか、細胞膜の透過性を持つ特殊ペプチドも採れており、細胞内の標的をターゲットにすることもできるようになりました。イ. FIT(Flexible In-vitro Translation)システムについて次にFITシステムですが、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊ペプチドを下表<医薬品候補物質の多様性の比較>(当社作成)のとおり、FITシステムにより多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築することができるようになりました。低分子医薬のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊ペプチドは低分子医薬の1億倍程度の多様性を持っております。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補物質を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補物質発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補物質を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補物質の多様性の比較> ※当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較低分子医薬104 ~ 1051抗体医薬108 ~ 101010,000特殊ペプチド医薬1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 ウ. RAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムについてRAPIDディスプレイシステムは、特殊ペプチドを短期間でスクリーニング(*28)できる高速のスクリーニングシステムです。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊ペプチドの特徴を生かして、ターゲットタンパクに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)エ. PDPS(Peptide Discovery Platform System)について当社は、フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊ペプチドライブラリーを構築することができるシステム:PDTS(Peptide Discovery Translation System)を作り上げ、さらに特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムをPDDS(Peptide Discovery Display System)と位置付け、この3つの独自技術・システムを組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)を構築しました。 <当社の創薬開発プラットフォームシステムの概念図>(注) なおFITシステムについては、当社においてさらに改良を加え、フレキシザイム技術と組み合わせることによって「PDTS」という独自の翻訳合成系を構築しております。 <用語解説>*20特殊アミノ酸20種類の天然型アミノ酸以外のアミノ酸。非天然型アミノ酸とか異常アミノ酸等とも呼ばれる。*21無細胞翻訳系遺伝情報(遺伝子情報)から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(合成)と呼ばれている。この細胞内でペプチド・タンパクが合成されるメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*22創薬ライブラリー創薬ターゲットタンパクに対して結合する医薬品候補物質(低分子や抗体や特殊ペプチド等)を検索するときに利用する医薬品候補物質が大量に集められた母集団。*23tRNA運搬RNA(遺伝子)と呼ばれており、遺伝情報(遺伝子情報)からペプチドやタンパクが合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(遺伝子)。*24アシル化アミノアシル結合を実行するためにアミノ酸のアミノ基等の水素を置換する働き。*25触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*26翻訳合成mRNAの情報に基づいてタンパク質を合成する反応のこと。*27酵素生体でおこる化学反応に対して触媒として機能する分子。*28スクリーニング設定された基準に対して達成されているか否かを判断するために実施される検査。 ② 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発・維持・発展は重要な経営ポイントになります。次の図は、当社の特許ポートフォリオの概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、③(及び①・②)の特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明(④・⑤・⑥・⑦)で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が「システム」として機能するように設計しております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 さらに、この創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)の特許・発明群を各種ライブラリーの発明が取り囲む形にすることにより、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。コアとなる7つの特許・発明の詳細は次の表のとおりです。①と②はニューヨーク州立大学が出願人であり、③・④・⑤・⑦は国立大学法人東京大学が出願人であり、⑥は当社が出願人であります。その他にライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)があり、それらについても随時権利化(出願)を進めております。なお、当社は、ニューヨーク州立大学及び国立大学法人東京大学の上記特許について、第三者サブライセンス権(*29)付き独占実施・許諾権(*30)を取得しております。 <当社の特許ポートフォリオ(*31)>発明の名称出願人出願国出願・特許番号①Catalytic RNAs with Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,001,723 B1CA Patent 2391433EP Patent 1232285 B1特許第4745577号②Ribozymes with Broad tRNA Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,622,248 B2CA Patent 2476425EP Patent 1483282 B1特許第4464684号③多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号④N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202特許第5200241号⑤環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2EP Patent 2141175 B1特許第5605602号⑥ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 13/502,487EP Patent 2492344特許第5174971号⑦新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(出願中)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US 13/816911EP 11820026特許第5725467号CN Patent 201180052318.9 ①と②はフレキシザイム(Flexizyme)技術開発に関わる基本特許です。③はフレキシザイムそのものに関する特許であり、PDTS(Peptide Discovery Translation System)の中心となる特許であります。⑥は特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることができるRAPIDディスプレイシステムの特許であり、PDDS(Peptide Discovery Display System)の中心となる特許であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)⑦は翻訳合成系にて特殊ペプチドをライブラリー化するFITシステムの発明であり、PDTSの中心となる発明であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。)④はペプチド、タンパクが翻訳合成されるとき、Met(メチオニン)というアミノ酸から合成が開始されるという生命の基本的なルールを書き換えることを可能にした技術特許です。この技術特許によりMet(メチオニン)以外のあらゆるアミノ酸から合成を開始することができるようになりました。当社は、この技術により、合成するペプチドの形状を自由に変えることができるようになり、特殊ペプチドに対し従来では考えられなかった多様性を持たせることが可能になりました。⑤はペプチドを特殊な環状化構造(*32)にする発明です。この技術により特殊ペプチドが生体内での安定性や構造の安定性を確保することができるようになりました。以上、①から⑦までの特許によって当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)が構成されております。さらに、概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊ペプチドライブラリーを作成する技術であり、これらにより特殊ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊ペプチドをスクリーニングする技術であり、各種機能を持ちうる特殊ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されますが、この発明はクライアントとは関係なく発生したものであります。 <用語解説>*29第三者サブライセンス権特許をライセンスするときには、特許権者(ライセンサー)と実施権者(ライセンシー)の関係が生じます。ライセンシーは自己の特許権を強化するために第三者に対する再実施権(サブライセンス)を獲得することが好まれます。*30独占実施・許諾権特許の実施権は独占と非独占があり、独占実施権はより強い効力を持っており、加えて第三者に対する許諾権(再実施権=サブライセンス権)を持つことにより、最も強固な特許契約となります。*31特許ポートフォリオ特許権侵害などの危険性を回避し、自社の特許権を強固なものにするために自社特許権の強み弱点を分析し、複数の特許群で対外的な守りを作り上げること。*32特殊な環状化構造生体内で壊れやすいペプチドの特徴を改善するために開発された環状化構造。通常の環状化構造がジスフィルド環状化結合と呼ばれるのに対して、この構造はチオエーテル環状化構造と呼ばれる。 (4) 当社のビジネスモデルについて当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントから標的分子(ターゲットタンパク)を受領し、その標的分子ごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図(<当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ>)は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金(A)」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価として標的分子ごとに「研究開発支援金(B)」を原則として前受にて受領しております。また、追加業務が発生する場合の対価として「追加研究開発支援金(C)」を標的分子ごとに設定しており、プロジェクトによっては(C)の売上が発生します。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。その後、クライアントでの評価により医薬品候補物質が特定され、クライアントが前臨床試験、臨床試験の段階に進む場合には、当該特殊ペプチドを当社がクライアントにライセンスアウトすることの対価として「創薬開発権利金(D)」が発生します。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊ペプチドを提供した後(すなわち(B)・(C)より後のフェーズ)は、医薬品候補物質に係る開発の進捗はクライアントに委ねられており、当社でのコントロール及び売上予測は極めて困難になるという特徴があります。 <当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ> (D)以降も引き続き開発が進みクライアントでの評価ステップを経て、臨床試験等の段階に移行すれば、その段階に応じて、各「目標達成報奨金(E)」「売上ロイヤルティ(E)」を当社は受領することになります。「売上ロイヤルティ」では、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティ」として当社が受領します。加えて、上市された医薬品の売上高が所定の金額に達した場合には「売上達成報奨金(E)」も受領します。 当社の共同研究開発契約の特徴としては、このように初期のディスカバリーステップから、売上が発生する取り決めとなっていることのほかに、最初の契約締結時において契約一時金から売上ロイヤルティまでのすべての売上カテゴリー(P)に関して、それらの金額又は金額の計算方法が原則として確定的に規定されていることが挙げられます。これまでのビジネスモデルでは、初期のディスカバリーステップは「フィージビリティースタディ」(*33)と評価され、売上が発生しないケースが多かったと認識しておりますが、当社のビジネスモデルでは、早期に売上を生み出すために上記の契約内容で契約を締結することに注力しております。当社の事業セグメントは、上記のとおり製薬企業との共同研究開発契約をもとにした「アライアンス事業」1本です。共同研究開発の取り組みを通じて、共同研究開発先からの要望により、共同研究開発先との間で当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS技術を貸与する(技術ライセンス契約の締結)ことがあります。当該契約を締結した場合、当社はその契約内容に応じて種々のライセンスフィーを共同研究開発先から受領します。 <用語解説>*33フィージビリティースタディ計画された事業やプロジェクト、技術等が実現可能か否か、利用することに意義や妥当性があるかを多角的に検討すること。