事業の概要
- 創薬開発プラットフォームペプチドリームは、PDPSという独自の技術を使い、新しい薬の研究開発を行っています。この技術は、体内で作られるアミノ酸と人工的なアミノ酸を組み合わせた「環状ペプチド」という物質を効率的に見つけ出し、医薬品候補として開発するものです。この技術を他の製薬会社に提供したり、共同で研究開発を進めたりすることで収益を得ています。
- 放射性医薬品の製造販売子会社のPDRファーマは、がんや脳の病気を画像で診断したり、治療したりするための「放射性医薬品」を製造・販売しています。これは、特定の病変部に集まる性質を持つ放射性物質を利用した薬で、診断薬と治療薬の両方を提供しており、医療現場に不可欠な製品を供給することで収益を上げています。
- 多様な医薬品の開発PDPS技術を基盤に、環状ペプチドだけでなく、低分子医薬品やPDC(ペプチド薬物複合体)、MPC(多機能ペプチド複合体)といった様々な種類の医薬品の開発にも取り組んでいます。これにより、幅広い疾患領域に対応できる医薬品ポートフォリオを構築し、将来的な収益源の多様化を目指しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
- 創薬開発事業ペプチドリーム株式会社が担う主要事業で、独自の創薬プラットフォームシステム「PDPS」を核としています。このシステムを活用し、新しい医薬品の候補となる環状ペプチドの探索・開発を行います。具体的には、他の製薬会社との共同研究開発、PDPS技術のライセンス供与、そして自社で有望な医薬品候補を開発する戦略的提携を通じて収益を上げています。
- 放射性医薬品事業100%子会社のPDRファーマ株式会社が担当する事業で、がんや脳の病気の診断・治療に使われる放射性医薬品の研究開発、製造、販売を行っています。SPECTやPETといった画像診断に用いる診断薬や、がん治療に特化した治療薬を提供しており、医療現場に不可欠な製品を供給することで、安定した収益基盤を築いています。
- 多様な診断・治療薬の提供PDRファーマは、ヨウ化ナトリウムカプセル(甲状腺疾患治療)、ライアットMIBG-I131静注(褐色細胞腫治療)、ゼヴァリン®(リンパ腫治療)など、幅広い疾患に対応する診断用・治療用放射性医薬品を多数展開しています。また、アルツハイマー病診断薬のアミヴィッド®やタウヴィッド®など、海外企業からの導入品も積極的に取り入れ、製品ラインナップを拡充しています。
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FY2025|3,124 文字
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社グループは、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPSを活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社による放射性医薬品事業を実施しており、医薬品等の研究・開発・製造・販売等に従事しています。なお、当社グループの報告セグメント及び事業内容は、以下の通りです。 <報告セグメントの内容>会社名報告セグメント事業内容ペプチドリーム株式会社創薬開発事業創薬開発事業として、当社は当社独自の創薬プラットフォームシステムであるPDPSを中核とした創薬基盤技術を活用した①創薬共同研究開発、②PDPSの技術ライセンス、③戦略的提携による自社パイプラインの拡充を行っています。PDRファーマ株式会社放射性医薬品事業放射性医薬品事業として、がんや脳の異常蓄積等の病変を画像で検査する診断用放射性医薬品(SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)用診断薬、PET(Positron Emission Tomography)用診断薬)及びがん領域を中心としたアンメットメディカルニーズに対応する治療用放射性医薬品の研究開発、及び製造販売を行っています。 事業の系統図は、以下の通りです。<事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成 PDRファーマを通じて当社グループが日本国内で販売している放射性治療薬・診断薬は以下の通りです。(2026年1月末時点)· ヨウ化ナトリウムカプセル:甲状腺機能亢進症の治療、甲状腺がん及び転移巣の治療、シンチグラムによる甲状腺がん転移巣の発見。37MBqから1.85GBqまで5種類の製品規格を展開。ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル。· ライアットMIBG-I131静注:MIBG集積陽性の治癒切除不能な褐色細胞腫・パラガングリオーマ。3-ヨードベンジルグアニジン(131I)。2025年9月に神経芽腫に対する効能・効果適応追加に関する一部変更承認を取得。· ゼヴァリン®インジウム(111In)静注用セット:イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の集積部位の確認。111In標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。· ゼヴァリン®イットリウム(90Y)静注用セット:CD20陽性の再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫の治療。90Y標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。· オクトレオスキャン®静注用セット:神経内分泌腫瘍の診断におけるソマトスタチン受容体シンチグラフィ。ソマトスタチン受容体を標的とするペンテトレオチドの111In標識注射液。Curium Pharma社からの導入品。· テクネ®DTPAキット:腎シンチグラフィによる腎疾患の診断。ジエチレントリアミン五酢酸99mTc注射液 調整用。· テクネ®MAA®キット:肺シンチグラムによる肺血流分布異常部位の診断。テクネチウム大凝集人血清アルブミン99mTc注射液 調整用。· テクネ®MAG3注射液/テクネ®MAG3キット:シンチグラフィ及びレノグラフィによる腎及び尿路疾患の診断。メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン99mTc注射液。· テクネ®MDP注射液/テクネ®MDPキット:骨シンチグラフィによる骨疾患の診断、脳シンチグラフィによる脳腫瘍及び脳血管障害の診断。メチレンジホスホン酸99mTc注射液。· テクネ®ピロリン酸静注:骨シンチグラムによる骨疾患の診断。ピロリン酸99mTc注射液。· テクネ®ピロリン酸キット:心シンチグラムによる心疾患の診断、骨シンチグラムによる骨疾患の診断。ピロリン酸99mTc注射液 調整用。2024年8月に剤型追加の承認取得。· テクネ®フチン酸キット:肝脾シンチグラムによる肝脾疾患の診断、乳がん、悪性黒色腫、子宮頸がん、子宮体がん、外陰がん、頭頚部がん(甲状腺がんを除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィ。フィチン酸99mTc注射液 調整用。子宮頸癌、子宮体癌、外陰癌及び頭頸部癌(甲状腺癌を除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィについては2023年3月に適応拡大の承認取得。· ニューロライト®注射液第一/ニューロライト®第一:局所脳血流シンチグラフィ。[N,N’-エチレンジ-L-システイネート(3-)]オキソ99mTc、ジエチルエステル注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。· カーディオライト®注射液第一/カーディオライト®第一:心筋血流シンチグラフィによる心臓疾患の診断、初回循環時法による心機能の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺機能亢進症における局在診断。ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル) 99mTc注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。· ミオMIBG®-I123注射液:心シンチグラフィによる心臓疾患の診断、パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィ、腫瘍シンチグラフィによる神経芽腫、褐色細胞腫の診断。3-ヨードベンジルグアニジン123I注射液。パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィについては2023年12月に適応拡大の承認取得。· 塩化タリウム-Tl201注射液:心筋シンチグラフィによる心臓疾患の診断、腫瘍シンチグラフィによる脳腫瘍、甲状腺腫瘍、肺腫瘍、骨・軟部腫瘍及び縦隔腫瘍の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺疾患の診断。塩化タリウム(201Tl)注射液。· ウルトラテクネカウ®:脳腫瘍及び脳血管障害の診断、甲状腺疾患の診断、唾液腺疾患の診断、異所性胃粘膜疾患の診断、医療機器「テクネガス発生装置」との組合せ使用による局所肺換気機能の検査。過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液ジェネレータ。· フルデオキシグルコース(18F)静注「FRI」:悪性腫瘍の診断、虚血性心疾患(左室機能が低下している虚血性心疾患による心不全患者で、心筋組織のバイアビリティ診断が必要とされ、かつ、通常の心筋血流シンチグラフィで判定困難な場合)の診断、難治性部分てんかんで外科切除が必要とされる場合の脳グルコース代謝異常領域の診断、大型血管炎の診断における炎症部位の可視化。フルデオキシグルコース(18F)注射液。 · イオフェタミン(123I)注射液「第一」:局所脳血流シンチグラフィ。塩酸N-イソプロピル-4-ヨードアンフェタミン(123I)注射液。· アミヴィッド®静注:アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化。抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化。フロルベタピル(18F)注射液。2024年5月、薬価基準に収載。抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化については、2024年9月に効能又は効果の一部変更承認を取得。2024年11月に保険適用の範囲を拡大。Eli Lilly社(Lilly社)からの導入品· タウヴィッド®静注:アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症患者におけるドナネマブ(遺伝子組換え)の適切な投与の補助。フロルタウシピル(18F)注射液。2022年11月にLilly社との共同開発契約を締結し、2024年12月に国内における製造販売承認を取得。
FY2024|3,010 文字
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社グループは、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPSを活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社による放射性医薬品事業を実施しており、医薬品等の研究・開発・製造・販売等に従事しています。なお、当社グループの報告セグメント及び事業内容は、以下の通りです。 <報告セグメントの内容>会社名報告セグメント事業内容ペプチドリーム株式会社創薬開発事業創薬開発事業として、当社は当社独自の創薬プラットフォームシステムであるPDPSを中核とした創薬基盤技術を活用した①創薬共同研究開発、②PDPSの技術ライセンス、③戦略的提携による自社パイプラインの拡充を行っています。PDRファーマ株式会社放射性医薬品事業放射性医薬品事業として、がんや脳の異常蓄積等の病変を画像で検査する診断用放射性医薬品(SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)用診断薬、PET(Positron Emission Tomography)用診断薬)及びがん領域を中心としたアンメットメディカルニーズに対応する治療用放射性医薬品の研究開発、及び製造販売を行っています。 事業の系統図は、以下の通りです。<事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成 PDRファーマを通じて当社グループが日本国内で販売している製品は以下の通りです。(2024年12月末時点)· ヨウ化ナトリウムカプセル:甲状腺機能亢進症の治療、甲状腺がん及び転移巣の治療、シンチグラムによる甲状腺がん転移巣の発見。37MBqから1.85GBqまで5種類の製品規格を展開。ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル。· ライアットMIBG-I131静注:MIBG集積陽性の治癒切除不能な褐色細胞腫・パラガングリオーマ。3-ヨードベンジルグアニジン(131I)。· ゼヴァリン®インジウム(111In)静注用セット:イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の集積部位の確認。111In標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。· ゼヴァリン®イットリウム(90Y)静注用セット:CD20陽性の再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫の治療。90Y標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。· オクトレオスキャン®静注用セット:神経内分泌腫瘍の診断におけるソマトスタチン受容体シンチグラフィ。ソマトスタチン受容体を標的とするペンテトレオチドの111In標識注射液。Curium Pharma社からの導入品。· テクネ®DMSAキット:腎シンチグラムによる腎疾患の診断。ジメルカプトコハク酸99mTc注射液 調整用。· テクネ®DTPAキット:腎シンチグラフィによる腎疾患の診断。ジエチレントリアミン五酢酸99mTc注射液 調整用。· テクネ®MAA®キット:肺シンチグラムによる肺血流分布異常部位の診断。テクネチウム大凝集人血清アルブミン99mTc注射液 調整用。· テクネ®MAG3注射液/テクネ®MAG3キット:シンチグラフィ及びレノグラフィによる腎及び尿路疾患の診断。メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン99mTc注射液。· テクネ®MDP注射液/テクネ®MDPキット:骨シンチグラフィによる骨疾患の診断、脳シンチグラフィによる脳腫瘍及び脳血管障害の診断。メチレンジホスホン酸99mTc注射液。· テクネ®ピロリン酸キット:心シンチグラムによる心疾患の診断、骨シンチグラムによる骨疾患の診断。ピロリン酸99mTc注射液 調整用。2024年8月に剤型追加の承認取得。· テクネ®フチン酸キット:肝脾シンチグラムによる肝脾疾患の診断、乳がん、悪性黒色腫、子宮頸がん、子宮体がん、外陰がん、頭頚部がん(甲状腺がんを除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィ。フィチン酸99mTc注射液 調整用。子宮頸癌、子宮体癌、外陰癌及び頭頸部癌(甲状腺癌を除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィについては2023年3月に適応拡大の承認取得。· ニューロライト®注射液第一/ニューロライト®第一:局所脳血流シンチグラフィ。[N,N’-エチレンジ-L-システイネート(3-)]オキソ99mTc、ジエチルエステル注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。· カーディオライト®注射液第一/カーディオライト®第一:心筋血流シンチグラフィによる心臓疾患の診断、初回循環時法による心機能の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺機能亢進症における局在診断。ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル) 99mTc注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。· ミオMIBG®-I123注射液:心シンチグラフィによる心臓疾患の診断、パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィ、腫瘍シンチグラフィによる神経芽腫、褐色細胞腫の診断。3-ヨードベンジルグアニジン123I注射液。パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィについては2023年12月に適応拡大の承認取得。· 塩化タリウム-Tl201注射液:心筋シンチグラフィによる心臓疾患の診断、腫瘍シンチグラフィによる脳腫瘍、甲状腺腫瘍、肺腫瘍、骨・軟部腫瘍及び縦隔腫瘍の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺疾患の診断。塩化タリウム(201Tl)注射液。· ウルトラテクネカウ®:脳腫瘍及び脳血管障害の診断、甲状腺疾患の診断、唾液腺疾患の診断、異所性胃粘膜疾患の診断、医療機器「テクネガス発生装置」との組合せ使用による局所肺換気機能の検査。過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液ジェネレータ。· フルデオキシグルコース(18F)静注「FRI」:悪性腫瘍の診断、虚血性心疾患(左室機能が低下している虚血性心疾患による心不全患者で、心筋組織のバイアビリティ診断が必要とされ、かつ、通常の心筋血流シンチグラフィで判定困難な場合)の診断、難治性部分てんかんで外科切除が必要とされる場合の脳グルコース代謝異常領域の診断、大型血管炎の診断における炎症部位の可視化。フルデオキシグルコース(18F)注射液。· アドステロール®-I131注射液:副腎シンチグラムによる副腎疾患部位の局在診断。ヨウ化メチルノルコレステノール(131I)注射液。· イオフェタミン(123I)注射液「第一」:局所脳血流シンチグラフィ。塩酸N-イソプロピル-4-ヨードアンフェタミン(123I)注射液。· アミヴィッド®静注:アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化。抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化。フロルベタピル(18F)注射液。2024年5月、薬価基準に収載。抗アミロイドベータ抗体薬投与後の脳内アミロイドベータプラークの可視化については、2024年9月に効能又は効果の一部変更承認を取得。2024年11月に保険適用の範囲を拡大。Eli Lilly社からの導入品。
FY2023|579 文字
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社グループは、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPSを活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社による放射性医薬品事業を実施しており、医薬品等の研究・開発・製造・販売等に従事しています。なお、当社グループの報告セグメント及び事業内容は、次のとおりであります。 <報告セグメントの内容>会社名報告セグメント事業内容ペプチドリーム株式会社創薬開発事業創薬開発事業として、当社は当社独自の創薬プラットフォームシステムであるPDPSを中核とした創薬基盤技術を活用した①創薬共同研究開発、②PDPSの技術ライセンス、③戦略的提携による自社パイプラインの拡充を行っております。PDRファーマ株式会社放射性医薬品事業放射性医薬品事業として、がんや脳の異常蓄積等の病変を画像で検査する診断用放射性医薬品(SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)用診断薬、PET(Positron Emission Tomography)用診断薬)及びがん領域を中心としたアンメットメディカルニーズに対応する治療用放射性医薬品の研究開発、及び製造販売を行っております。 事業の系統図は、以下のとおりです。<事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成
FY2022|11,137 文字
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社グループは、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社(以下 PDRファーマ)による放射性医薬品事業を実施しております。当社事業の系統図は、以下のとおりです。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、当社グループのセグメントは創薬開発事業と放射性医薬品事業の2つのセグメントになります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑥連結財務諸表注記 5.セグメント情報」をご参照ください。 <事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成 (注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(3) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 創薬開発事業において当社は、特殊環状ペプチド(*2)を基にした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊環状ペプチド」とは、当社の造語であり、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、天然には存在しないD体のアミノ酸やN-メチルアミノ酸等の特殊なアミノ酸(非天然アミノ酸、*3)を含んだ特殊なペプチドを環状構造にしたものです。当社では、創薬に適していると考えられるこの特殊環状ペプチドから医薬品を創製することを主たる事業としております。当社は、PDPSを活用しターゲット(標的分子)に対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニング(*4)し、得られた化合物の最適化を行い臨床試験に進めるための体制を整備しております。当社の創薬開発事業における事業概要は、以下のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約に基づき製薬企業の興味のあるターゲットに対する共同研究開発を実施します。当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊環状ペプチドライブラリーを作製し、ターゲットに対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを製薬企業に提供します。その後製薬企業が提供した特殊環状ペプチドの創薬開発を進め、当社は契約一時金に加え製薬企業の創薬開発・販売の進捗に応じて、マイルストーンフィーやロイヤルティー等の対価を受領することができます。(B)PDPS技術ライセンス:製薬企業からのPDPSを当該製薬企業内で実施したいとの要望に応じ、当社では研究開発コラボレーションの一環として、PDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約、*5)を行っております。実施許諾契約の締結に伴い、当社は技術ライセンス料(契約一時金)を受け取ることになるほか、PDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物について設定されたマイルストーンフィー及び上市後の売上高に応じたロイヤルティーを受け取ることができます。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社で設定したターゲットに対する医薬品候補化合物に関するプログラムを複数有しており、これらの研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を実施し、自社又は共同での研究開発を推進しております。放射性医薬品事業における事業概要は、PDRファーマを通じて国内において放射性医薬品等の研究・開発・製造・販売を行っております。現在、PDRファーマでは放射性診断薬として、22品目のSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)製剤と、2品目のPET(Positron Emission Tomography)製剤、及び8品目(3製品カテゴリー)の放射性治療薬を販売しております。また、放射性診断薬の画像読影の支援を目的とした画像解析ソフトウェアの開発・提供も行っております。 (2) 当社の技術について① ペプチド医薬品について一般的にペプチド(*6)とは、2個~50個の天然アミノ酸がペプチド(アミド)結合によりつながった化合物の総称です。生体内の様々な場所で多種類のペプチドが造られており、それらはホルモンや各種伝達物質として生体維持(筋肉の弛緩、血管の拡張、胃酸の分泌、自律神経の制御等)にとって不可欠なものとして働いており、古くから研究対象とされております。“ペプチド医薬品”としては、1980年代にインスリンが遺伝子組み換え技術により大腸菌もしくは酵母から製造され、糖尿病治療に使用され始め、その後も、心不全治療薬や前立腺癌治療薬としてペプチド医薬品が承認され使用されております。一方で、19世紀には植物等から単離・精製されたアルカロイド類の中から、分子量が500以下の小さな“低分子医薬品”が使用され始め、1899年に現在でも使用され続けている消炎鎮痛薬アスピリンが市販されました。その後も多くの低分子医薬品が様々な形で研究開発され、一時期は医薬品市場全体の9割近くを占め、現在においても約5割を占める医薬品カテゴリーとなっております。また“抗体医薬品”は1980年ころから技術革新が急速に進み、1990年代にいくつかの大型新薬が上市され、爆発的に医薬品市場を開拓してまいりました。2020年代に入って、抗体医薬品は医薬品市場全体の2割強を占めるまで成長しております。低分子医薬品と抗体医薬品は、多くの項目(活性・特異性、体内動態、血液脳関門BBB通過の可能性、経口投与への可能性、細胞内ターゲットへの可能性、製造コスト等)で顕著な違いがあり、それぞれの優れた特徴が活かせる疾患領域への開発が進められております。一方、2000年以降は分子量が低分子医薬品より大きく、抗体医薬品より小さいペプチド医薬品と核酸医薬品が“中分子医薬品”と定義され、様々な技術革新と共に多くの製品が上市され始め、次世代創薬の中心的存在になるものと考えられております。古典的ペプチド医薬品は、低分子・抗体と同じターゲットタンパク質に結合することを想定した場合、2つのモダリティと比較して活性・特異性などに大きな優位性はなく、さらに体内動態や経口投与の可能性が無いなどの弱点も存在します。一方で、古典的ペプチド医薬品が有する数多くの弱点を克服可能とする“ペプチド医薬品”を創製できれば、低分子医薬品では狙うことが困難なターゲットタンパク質への創薬が可能となり、さらに抗体医薬品でしか狙うことが出来なかったターゲットタンパク質に対して、より小さな“ペプチド医薬品”により、抗体医薬品では不可能な経口投与薬開発の可能性も生まれます。そのような次世代型のペプチド医薬品として、当社では“環状ペプチド・特殊環状ペプチド”に注目しております。一般に、20残基以内のアミノ酸がリング状に連なった“環状ペプチド”は、同じ残基を有する“鎖状”のペプチドと比較して、構造のフレキシビリティーが低減されることで、活性や特異性が向上するだけでなく、生体内安定性が著しく高く、優れた体内動態を示すことが分かっています。さらに天然に存在するアミノ酸20種類だけでなく、その光学異性体や側鎖修飾を施した“非天然型アミノ酸”を組み込むことで、医薬品研究開発で必要となるあらゆる物性調整が可能となります。特殊環状ペプチドは低分子医薬品、抗体医薬品と比較して素晴らしい特性があると当社では考えております。例えば、低分子医薬品は分子量が相対的に小さく細胞内標的を含めターゲットの多様性が優位点である一方、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、ターゲット以外の分子に結合してしまうことなどにより副作用を引き起こしてしまうリスクが相対的に高いことが問題点となります。抗体医薬品は、低分子医薬品に比べて分子量が非常に大きいため、細胞外ターゲットしか対象にできず、その多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点と考えられます。しかし、その分子量の大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できないこと、経口投与ができないこと、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いこと等の問題点が存在します。低分子医薬品や抗体医薬品に比べて、特殊環状ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬品よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、従来の低分子医薬品や抗体医薬品の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。環状ペプチドの医薬品は過去20年で約20種類以上が上市されていますが、そのターゲット領域は内分泌や心血管に関する疾患や抗生物質等が中心であり、ほとんどは天然(体内のホルモンや菌類・動物・植物由来)の環状ペプチドを最適化したもの、もしくは最適化の過程で非天然アミノ酸を使用しているものです。当社は、そのようなベースとなるペプチドが存在しないターゲットに対してもペプチドの薬を開発することができることが強みであり、これにより一気にペプチド創薬の可能性が広がると考えております。 ② 当社の研究開発体制についてa. 当社における創薬研究開発技術の全体像 当社は設立以来、継続して研究開発機能を拡張してまいりました。設立当初はPDPSによるヒット化合物の取得にフォーカスしておりましたが、タンパク質の調整、ペプチド合成/精製/QC、メディシナルケミストリー、In silicoモデリング及びインフォマティクス、タンパク質と化合物の共結晶化とその立体構造解析、薬物動態等の前臨床研究のほとんどの部分を自社で行える体制を構築いたしました。これにより従来と比べ多くのプロジェクトを同時進行させることができるようになり、それぞれの創薬共同研究開発パートナーが求める高いレベルでの研究開発作業が行えるようになりました。 <当社の研究開発機能> ※当社見解に基づく/当社作成> さらにPDPSの自動化プラットフォームを構築したことにより、手作業で行っていた時と比較して飛躍的に作業の効率化が図れました。特にヒットペプチド探索の際に、多種多様な条件(ターゲットタンパク質の種類、温度、アミノ酸の種類等々)を一度に、しかも正確に実施することが容易になり、結果として確実に種々のヒットペプチドを見出すことができます。直近では、自社での臨床開発の実施まで視野に入れたin-houseプログラムの開発のため、研究と開発をつなぐトランスレーショナルリサーチ機能も強化しております。 b. PDPSについて PDPSは当社独自のペプチド創薬技術であり、以下のような特長を持つことから特殊環状ペプチドのヒット化合物を早く、高い成功確率で見出すことができるという利点がございます。 PDPSの3つの特長1. 数兆種類以上の特殊環状ペプチドのライブラリーへのアクセスが可能PDPSを用いて数兆種類以上という非常に高い多様性を持つ特殊環状ペプチドのライブラリーを作製することが可能です。PDPSの特徴は、ランダムDNAライブラリーを用いた無細胞系転写/翻訳システムであるという点と、ペプチドの構成要素であるアミノ酸として天然アミノ酸だけでなく非天然アミノ酸も組み込めるという点です。ペプチドはそれぞれ対応したmRNA/CDAタグによりバーコード化されており、迅速に配列を同定することができます。 2. 高い確率でのターゲット結合ペプチドライブラリーを用いて、目的とする生体内のターゲットに対するスクリーニング、目的外のターゲットに対するカウンタースクリーニングが実施され、高い結合性と選択性を持つヒットペプチドを取得します。ペプチドに付加された「バーコード」により、セレクションサイクルを何回も実施することでヒットペプチドを増幅し、その配列を迅速に同定することが可能です。PDPSはペプチドの最適化やヒット化合物の評価にも使うことができ、創薬のプロセスを飛躍的に加速することができます。 3. 進化し続けるプラットフォーム当社では常にPDPSの技術の改善・向上を行っています。ペプチドの構成要素であるアミノ酸の種類を増やすことでより高い多様性を持たせたことや、自動化プロセスを開発したことでより安定的な結果が得られるようになったことなどが挙げられます。さらに高品質なペプチドライブラリーの設計を行うためのin silico解析システムの開発を行う等、当社は常にペプチド創薬の最先端の技術を産み出しています。 c. PDPSを起点とした3つの創薬アプローチ 当社では上述のPDPSによりターゲットタンパク質に対して高い結合性・特異性を有する特殊環状ペプチド(ヒット化合物)を同定した後、大きく分けて3つの創薬アプローチ(①ペプチド医薬品/低分子医薬品、②ペプチド薬物複合体(PDC:Peptide Drug Conjugate、*8)医薬品、③多機能ペプチド複合体(MPC:Multi-functional Peptide Conjugate、*9)医薬品による創薬研究開発を行っております。 1. ペプチド医薬品/低分子医薬品取得したヒットペプチドを出発点に、医薬品として求められる各種要件(生物活性、選択性、投与形態に沿った製剤、体内薬物動態等)を最適化し、ペプチド医薬品候補化合物へ仕上げるのが当社の基本的なアプローチとなります。その最適化においては、タンパク質X線結晶構造解析(*10)やクライオ電子顕微鏡などを用いてペプチドとターゲットタンパク質の複合体の立体構造解析を行い、抗体と同程度の生物活性や選択性を付与するのに最適な非天然型アミノ酸の組み込みや薬物動態のコントロールを行います。最近の研究により、以前には困難と言われていた経口投与可能な特殊環状ペプチドの創製も可能であることがわかってきました。また、特殊環状ペプチドの経口投与化が難しい場合でも、得られた複合体の立体構造情報を基にin silicoモデリングや計算化学的手法等も活用し低分子化することで、経口剤としての開発も可能になります。 2. PDC医薬品①(ペプチド医薬品/低分子医薬品)とは異なり、取得したターゲットタンパク質に対して高い結合性・特異性を有するペプチドに薬効を求めず、薬効を有する各種ペイロード(放射性核種、核酸、低分子、毒性化合物等)を、目的の組織/細胞に選択的に送達させる(=キャリアーペプチド)というコンセプトの医薬品です。この場合、キャリアーペプチドには高い結合性・特異性及び体内動態の調整が求められ、ペプチドはそれらの調整が容易なことがわかっています。PDC医薬品は薬効成分であるペイロードを直接体内に入れた場合に、1)目的の組織/細胞に届く前に代謝・排泄を受けやすい、2)目的の組織/細胞以外に届くと毒性発現する等の様々な理由から、何かしらのキャリアーを必要としているケースなどが考えられます。同様のコンセプトで抗体をキャリアーとして用い、毒性化合物等を選択的に送達する抗体薬物複合体(ADC:Antibody Drug Conjugate)が先行して複数開発・承認されていますが、ペプチドをキャリアーとすることでPDCならではの特性(体内動態のコントロールが容易、免疫原性の低減が図れる、ペイロードの種類を問わず複合体化・製造が比較的容易である等)を有しており、注目されている次世代の創薬アプローチです。当社では、RI-PDC、核酸PDC、Cytotoxic-PDCなど各種ペイロードに対するPDC医薬品を開発しております。 3. MPC医薬品複数の異なるターゲットタンパク質(異なるメカニズム)に対して、それぞれ薬効が異なるペプチド同士を結合し、複数の薬効を1分子(1つの薬剤)で表現する医薬品となります。化学合成的に複数の異なるペプチドを結合し複合体を得る手法は既に開発されており、多種多様なMPC医薬品を容易に展開することが可能となっております。これにより、複数の医薬品をそれぞれ開発し、それらを合わせて投与するカクテル療法などを適用することに対してハードルが高かった治療分野において、1剤で複数の薬効を有するMPC医薬品を置き換えることが可能となります。同様のコンセプトに二重特異性抗体(bispecific抗体)や多重特異的抗体があり、近年はがんやがん免疫の分野での研究開発競争が激化しています。 ③ 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発、維持、発展は重要な経営課題と認識しております。次の図は、当社の特許ポートフォリオ(*11)の概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、フレキシザイム技術開発に関わる特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊環状ペプチドライブラリーを作成する技術等を含み、これらにより特殊環状ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊環状ペプチドをスクリーニングする技術ノウハウであり、各種機能を持ちうる特殊環状ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊環状ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊環状ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されます。ライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)に関しては随時権利化(出願)を進めております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> ※当社見解に基づく/当社作成 PDPSの基盤技術となる特許・発明の詳細は次の表のとおりです。<当社の特許ポートフォリオ>発明の名称出願人出願国出願・特許番号多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202 B1特許第5200241号環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2 EP Patent 2141175 B1EP Patent 2990411 B1EP Patent 3012265 B1特許第5605602号ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 20200199579 A1EP Patent 2492344 B1特許第5174971号特許第5837478号新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993 B2EP 2610348 A4特許第5725467号CN Patent 103189522 BN-メチルアミノ酸及びその他の特殊アミノ酸を含む特殊ペプチド化合物ライブラリーの翻訳構築と活性種探索法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9410148 B2EP Patent 2615455 B1特許第5818237号ペプチドライブラリーの製造方法、ペプチドライブラリー、及びスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10195578 B2EP Patent 2647720 B1特許第6206943号安定化された二次構造を有するペプチド、及びペプチドライブラリー、それらの製造方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)中国(登録)US Patent 9657289 B2US Patent 10435439 B2EP Patent 2647721 B1特許第6004399号CN Patent 103328648 Bペプチドライブラリの製造方法、ペプチドライブラリ、及びスクリーニング方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10711268 B2EP Patent 2995683 B1特許第6440055号大環状ペプチド、その製造方法、及び大環状ペプチドライブラリを用いるスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)US Patent 10234460 B2EP 3040417 A4特許第6754997号荷電性非タンパク質性アミノ酸含有ペプチドの製造方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10745692 B2EP Patent 3031915 B1特許第6357154号Dアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのD及びTアームの改変国立大学法人東京大学米国(出願中)欧州(出願中)日本(登録)シンガポール(出願中)US 2020308572 A1EP 3699276 A1特許第7079018号SG 11202003483S AN-メチルアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのTステムの改変国立大学法人東京大学米国(出願中)欧州(出願中)日本(出願中)シンガポール(出願中)WO2021/100833EP 4063377 A1特開2021-78428SG 10202203885P (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 (3) 当社のビジネスモデルについて事業概要に記載のとおり、当社は創薬共同研究開発、PDPS技術ライセンス、戦略的提携/自社創薬、放射性医薬品の研究・開発・製造・販売という複数のビジネスモデルを組み合わせることにより、リスクを分散し成功確率を高めるとともに創薬開発の早期から売上を生み出すことができると考えております。各ビジネスモデルの収益源は下図のとおりです。 <当社における各ビジネスモデルの収益源> 創薬共同研究開発契約は、クライアントからターゲットを受領し、そのターゲットごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進み一定のクライテリアを達成した場合「マイルストーンフィー」を受領する設計になっております。さらに、最終的に製品が上市された場合は製品売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティー」として受領する権利を有しております。PDPS技術ライセンスにおいては、クライアントにPDPS技術の非独占的な実施許諾を行い、その対価として「技術ライセンス料(契約一時金)」を受領します。さらにクライアントがPDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物についてあらかじめ設定された「マイルストーンフィー」及び上市後の売上高に応じた「売上ロイヤルティー」を受け取ることができます。戦略的提携/自社創薬は自社又は自社と戦略的提携先と共同で研究開発活動を実施し、臨床開発及び事業化のために製薬企業等にライセンスを行うことを目指します。 創薬開発事業における典型的な収益項目の例を下表に示します。<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目> 創薬共同研究開発PDPS技術ライセンス戦略的提携/自社創薬契約一時金〇〇〇研究開発支援金〇 非臨床マイルストーンフィー ステップ1〇 ステップ2〇 ステップ3〇 〇創薬開発権利金(又は知的財産譲渡) 〇臨床開発マイルストーンフィー 治験申請提出〇 〇第1相・臨床試験開始〇〇〇第2相・臨床試験開始〇〇〇第3相・臨床試験開始〇〇〇新薬承認申請提出〇〇〇米国にて新薬承認〇〇〇欧州にて新薬承認〇〇〇日本にて新薬承認〇〇〇売上ロイヤルティー〇〇〇販売マイルストーンフィー〇〇〇 一方、放射性医薬品事業においては国内で販売している放射性医薬品の製品売上を主たるものとし、業務受託によるサービスフィーも受領しております。他社へのライセンスアウト製品が将来上市した際にはマイルストーンフィー・売上ロイヤルティーを受領する権利を有しております。 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発において、もととなる医薬品候補化合物を創出するための基盤となる技術をシステムとして機能するようにしたもの。*2特殊環状ペプチド天然の20種類のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれる天然アミノ酸以外のアミノ酸を組み込んだ、一般には6~20アミノ酸残基からなる環状構造のペプチド。*3非天然アミノ酸20種類の天然アミノ酸以外のアミノ酸。*4スクリーニング集団の中から探索条件にあうものを選択すること。*5実施許諾特許の実施権は独占的通常実施権と非独占的通常実施権があり、独占的通常実施権は他社に実施権を付与しない旨の特約がついており、より強い効力を持っている。加えて第三者サブライセンス権を持つことにより、最も強固な特許契約となる。*6ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた分子の総称。一般のペプチドは6~50アミノ酸残基からなり、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*7タンパク・タンパク相互作用生体内のタンパク質分子間に起こる相互作用。PPIと呼ばれる。各種の生理作用が生じるため、PPI阻害剤など創薬ターゲットとして注目されている。*8PDCペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと薬理効果を持つ化合物を化学的に結合させた複合体。*9MPC複数の異なるターゲットタンパク質(異なるメカニズム)に対して、それぞれ得られた薬効が異なるペプチド同士を結合し、複数の薬効を1分子で発揮できるペプチド複合体。*10タンパク質X線結晶構造解析タンパク質の立体構造を解明するために、タンパク質を結晶化させ、X線を照射したことで得られる反射(回析という)データを基に解析する方法。*11特許ポートフォリオ業界における技術動向を踏まえたうえで。自社が保有する特許群の評価を行い、全体として自社特許群の強み・弱みを分析、判断する際に活用する指標のこと。特許ポートフォリオを利用することで、自社の特許群をさらに強固なものに作り上げることができ、ひいては自社が保有する複数の特許群でさらに強い対外的な守りを作り上げることができる。
FY2021|12,564 文字
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPSを中核とした創薬開発基盤技術を活用し、国内外の製薬企業との共同研究開発等を通じて、新しい医薬品候補化合物の研究開発を行っております。当社事業の系統図は、以下のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(3) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊環状ペプチド(*2)をもとにした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊環状ペプチド」とは、当社の造語であり、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、天然には存在しないD体のアミノ酸やN-メチルアミノ酸等の特殊なアミノ酸(非天然アミノ酸、*3)を含んだ特殊なペプチドを環状構造にしたものです。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊環状ペプチドから医薬品候補化合物を創製することを主たる事業としております。特殊環状ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自のPDPSです。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊環状ペプチドのライブラリー(ペプチドライブラリー)を作製し、ターゲット(標的分子)に対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニング(*4)することができるようになりました。当社の事業概要は、以下のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約に基づき製薬企業の興味のあるターゲットに対する共同研究開発を実施します。当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊環状ペプチドライブラリーを作製し、ターゲットに対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを製薬企業に提供します。その後製薬企業が提供した特殊環状ペプチドの創薬開発を進め、当社は契約一時金に加え製薬企業の創薬開発・販売の進捗に応じて、マイルストーンフィーやロイヤルティー等の対価を受領することができます。(B)PDPS技術ライセンス:製薬企業からのPDPSを当該製薬企業内で実施したいとの要望に応じ、当社では研究開発コラボレーションの一環として、PDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約、*5)を行っております。実施許諾契約の締結に伴い、当社は技術ライセンス料(契約一時金)を受け取ることになるほか、PDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物について設定されたマイルストーンフィー及び上市後の売上高に応じたロイヤルティーを受け取ることができます。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社で設定したターゲットに対する医薬品候補化合物に関するプログラムを複数有しており、これらの研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を実施し、自社又は共同での研究開発を推進しております。 (2) 当社の技術について① 特殊環状ペプチドについて創薬開発の歴史的スタートは、1897年にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリンが市販された1899年だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*6)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。その後、欧米のバイオ企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、1997年頃から抗体医薬品(*7)が発売され、2000年代には抗体医薬品の創薬開発が急速に拡大いたしました。一般的にいわれるペプチド(*8)は、2個~50個の天然アミノ酸が結合して作られた化合物の総称であり、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補化合物として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っておりませんでした。これに対し、当社が創出する特殊環状ペプチドは、今までの一般的なペプチドの医薬品候補化合物としての問題点の多くを解決することにより、医薬品候補化合物としてより適した特徴を有する可能性があると期待されております。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*9)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*10)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*11)多くの場合、細胞膜は透過できない。一般的なペプチドよりも高い確率で細胞膜を透過できる。 特殊環状ペプチドは低分子医薬品、抗体医薬品と比較して素晴らしい特性があると当社では考えております(次表<低分子医薬品と抗体医薬品と比較した特殊環状ペプチドの特徴>参照)。例えば、低分子医薬品は分子量が相対的に小さく細胞内標的を含めターゲットの多様性が優位点である一方、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、ターゲット以外の分子に結合してしまうことなどにより副作用を引き起こしてしまうリスクが相対的に高いことが問題点となります。抗体医薬品は、低分子医薬品に比べて分子量が非常に大きいため、細胞外ターゲットしか対象にできず、その多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点と考えられます。しかし、その分子量の大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できないこと、経口投与ができないこと、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いこと等の問題点が存在します。低分子医薬品や抗体医薬品に比べて、特殊環状ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬品よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、従来の低分子医薬品や抗体医薬品の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬品と抗体医薬品と比較した特殊環状ペプチドの特徴> ※当社見解に基づく/当社作成(注) PPI:タンパク・タンパク相互作用(*12) 現在、世界の多くの大手製薬企業は低分子医薬品・抗体医薬品に続く次世代の創薬開発を目指し、ペプチド医薬品・核酸医薬品・遺伝子治療薬・細胞医薬品など新規のモダリティ(*13)を活用した積極的な創薬開発を行っております。当社は特殊環状ペプチドを低分子と高分子の双方のメリットを併せ持つ新たな医薬品モダリティとして捉え、次世代創薬の中心的存在になるものと考えております。以下に、特殊環状ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合しているイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析、*14)を示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。そのため、ターゲットに強く特異的に結合することがまずは重要になります。特殊環状ペプチドのターゲットに対する結合の一様式を下図に示します。低分子医薬品が点(ポイント)でターゲットを捉えているのに対して、特殊環状ペプチドは複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であるため、低分子医薬品よりもはるかに強固な結合力を有しております。そのことが、特異性の高さに結び付いております。 <特殊環状ペプチドの結合:複数点による結合> ※当社見解に基づく/当社作成 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊環状ペプチドです。特殊環状ペプチドはターゲットに対して複数のポイント(ここでは3ヶ所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬品の場合はこの結合ポイントが1ヶ所であるため、結合力に限界があります。また、1ヶ所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1桁の暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈に例えられます。 <特殊環状ペプチドの結合:ターゲットの表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 面で創薬ターゲットを捉えるという点では特殊環状ペプチドは抗体医薬品と同様ですが、特殊環状ペプチドには抗体にない特徴を持たせることも可能です。 <特殊環状ペプチドの結合2:ターゲットの内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は<特殊環状ペプチドの結合:ターゲットの表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットに対する特殊環状ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊環状ペプチドはターゲットの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。一方、抗体医薬品ではその分子量の大きさの問題からこのようにターゲットの内側に対する結合様式を持つことは困難となります。特殊環状ペプチドは、創薬ターゲットの特徴に合わせて、特異性が高く、多様な結合形態をとることができる医薬品候補化合物という特性を有しています。 ② 当社の創薬基盤技術についてa. 当社における創薬基盤技術の全体像 当社はPDPSを基軸とした様々な基盤技術を保有し、下図のとおりPDPSからペプチド合成・精製、構造解析、化合物最適化へのサイクルを回すことで創薬プロセスを高効率で進めております。PDPSは後述のとおり高い多様性を持つ特殊環状ペプチドのスクリーニングを迅速に行う技術です。スクリーニングの結果、取得されたヒットペプチドの薬理効果・薬物動態を評価し、臨床開発に進める医薬品候補化合物まで最適化するにあたり、ペプチド合成・精製技術、構造解析技術、化合物最適化技術を活用します。 <当社の創薬基盤技術> ※当社見解に基づく/当社作成 b. PDPSについて当社の中核技術であるPDPSの開発にあたり、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊環状ペプチドの特徴である特殊アミノ酸を組み込んで医薬品候補化合物として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然アミノ酸に限られているため、ファージ・ディスプレイ法(*15)や無細胞翻訳系(*16)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊環状ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*17)として構築できる技術・システムを以下のとおり開発いたしました。当社の創業者の一人である菅裕明・国立大学法人東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、フレキシザイム(Flexizyme、多目的tRNA(*18)アシル化(*19)RNA触媒(*20))という特殊な酵素を完成しました。ペプチドが翻訳合成(*21)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せをもとにアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*22)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。一方、フレキシザイムは単体でARSに代わり特殊アミノ酸を含むすべてのアミノ酸とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊アミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊アミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊環状ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。その他、細胞膜の透過性を持つ特殊環状ペプチドも採れており、細胞内のタンパクをターゲットにすることもできるようになりました。 続いて、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊環状ペプチドを次の表<医薬品候補化合物の多様性の比較>のとおり、多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築するFIT(Flexible In-vitro Translation)システムの開発を行いました。低分子医薬品のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬品はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊環状ペプチドは低分子医薬品の1億倍程度の多様性を有しています。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補化合物を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補化合物発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊環状ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補化合物を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補化合物の多様性の比較> ※当社見解に基づく/当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較イメージ低分子医薬品104 ~ 1051抗体医薬品108 ~ 101010,000特殊環状ペプチド医薬品1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較イメージ」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 さらに、特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニングするためにRAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムを構築しました。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊環状ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊環状ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊環状ペプチドの特徴を生かして、ターゲットに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊環状ペプチドライブラリーを短時間で構築するシステムを作り上げ、さらに特殊環状ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムと組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステムが当社の中核的な基盤技術であるPDPSです。 c. PDPSを起点とした3つの創薬アプローチ当社では上述のペプチド創薬基盤技術を活用し、3つの創薬アプローチを用いております。1つめはスクリーニングにより取得されたヒットペプチドをそのまま特殊環状ペプチド医薬品として研究開発を進めるアプローチです。2つめはヒットペプチドを用い低分子医薬品を開発するアプローチです。ヒットペプチドが結合したターゲットの構造解析を行うことにより、どのように特殊環状ペプチドが働いているのかを詳細に理解することができます。これらの情報をもとに、最先端の計算化学技術を活用することで低分子医薬品をデザインすることが可能となってきております。3つめのアプローチは、特殊環状ペプチドそのものを医薬品として利用するのではなく、結合力や特異性などの特徴を利用し、生体内の特定の部位や臓器に別の薬剤を送達するキャリア(運び屋)として利用するというもので、PDC(*23)と当社では呼んでおります。複数の抗体薬物複合体(ADC)がすでに上市されていますが、特殊環状ペプチドは抗体と同様の特異性の高さを持つ一方、サイズが小さく化学的に合成できるという利点を持つことから、当社ではPDCについて高いポテンシャルを有するものと認識しております。 <当社の創薬アプローチ> ※当社見解に基づく/当社作成 <PDC医薬品とは> ※当社見解に基づく/当社作成 ③ 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発、維持、発展は重要な経営課題と認識しております。次の図は、当社の特許ポートフォリオ(*24)の概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、フレキシザイム技術開発に関わる特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊環状ペプチドライブラリーを作成する技術等を含み、これらにより特殊環状ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊環状ペプチドをスクリーニングする技術ノウハウであり、各種機能を持ちうる特殊環状ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊環状ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊環状ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されます。ライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)に関しては随時権利化(出願)を進めております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> ※当社見解に基づく/当社作成 PDPSの基盤技術となる特許・発明の詳細は次の表のとおりです。<当社の特許ポートフォリオ>発明の名称出願人出願国出願・特許番号多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202 B1特許第5200241号環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2 EP Patent 2141175 B1EP Patent 2990411 B1EP Patent 3012265 B1特許第5605602号ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 2012208720 A1US 2020199579 A1EP Patent 2492344 B1特許第5174971号特許第5837478号新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993 B2EP 2610348 A4特許第5725467号CN Patent 103189522 BN-メチルアミノ酸およびその他の特殊アミノ酸を含む特殊ペプチド化合物ライブラリーの翻訳構築と活性種探索法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9410148 B2EP Patent 2615455 B1特許第5818237号ペプチドライブラリーの製造方法、ペプチドライブラリー、及びスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10195578 B2EP Patent 2647720 B1特許第6206943号安定化された二次構造を有するペプチド、及びペプチドライブラリー、それらの製造方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)中国(登録)US Patent 9657289 B2US Patent 10435439 B2EP Patent 2647721 B1特許第6004399号CN Patent 103328648 Bペプチドライブラリの製造方法、ペプチドライブラリ、及びスクリーニング方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10711268 B2EP Patent 2995683 B1特許第6440055号大環状ペプチド、その製造方法、及び大環状ペプチドライブラリを用いるスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)US Patent 10234460 B2EP 3040417 A4特許第6754997号荷電性非タンパク質性アミノ酸含有ペプチドの製造方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10745692 B2EP Patent 3031915 B1特許第6357154号Dアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのD及びTアームの改変国立大学法人東京大学米国(出願中)欧州(出願中)日本(出願中)シンガポール(出願中)US 2020308572 A1EP 3699276 A1JP WO2019077887 A1SG 11202003483S AN-メチルアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのTステムの改変国立大学法人東京大学日本(出願中)PCT(出願中)特開2021-78428WO2021/100833 (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 (3) 当社のビジネスモデルについて 事業概要に記載のとおり、当社は創薬共同研究開発、PDPS技術ライセンス、戦略的提携/自社創薬という複数のビジネスモデルを組み合わせることにより、リスクを分散し成功確率を高めるとともに製薬企業からの様々な要望に対応できるものとなっております。当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントからターゲットを受領し、そのターゲットごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目>は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価としてターゲットごとに「研究開発支援金」を原則として前受にて受領しております。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊環状ペプチドを提供した後は、医薬品候補化合物に係る開発の主体はクライアントに移行します。また、当社は研究・開発・販売の過程においてあらかじめ決められた一定のクライテリアを達成した場合「マイルストーンフィー」を受領することになります。さらに、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティー」として受領します。PDPS技術ライセンスにおいては、クライアントにPDPS技術の非独占的な実施許諾を行い、その対価として「技術ライセンス料(契約一時金)」を受領します。さらにクライアントがPDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物についてあらかじめ設定された「マイルストーンフィー」及び上市後の売上高に応じた「売上ロイヤルティー」を受け取ることができます。戦略的提携/自社創薬は自社又は自社と戦略的提携先と共同で研究開発活動を実施し、臨床開発及び事業化のために製薬企業等にライセンスを行うことを目指します。 当社のビジネスモデルの典型的な例を下図に示します。<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目> 創薬共同研究開発PDPS技術ライセンス戦略的提携/自社創薬契約一時金〇〇〇研究開発支援金〇 非臨床マイルストーンフィー ステップ1〇 ステップ2〇 ステップ3〇 〇創薬開発権利金(又は知的財産譲渡) 〇臨床開発マイルストーンフィー 治験申請提出〇 〇第1相・臨床試験開始〇〇〇第2相・臨床試験開始〇〇〇第3相・臨床試験開始〇〇〇新薬承認申請提出〇〇〇米国にて新薬承認〇〇〇欧州にて新薬承認〇〇〇日本にて新薬承認〇〇〇売上ロイヤルティー〇〇〇販売マイルストーンフィー〇〇〇 当社は、多くの研究開発プログラムを3つのビジネスモデルを組み合わせて実施することで、リスクを分散し成功確率を高めることができると考えております。自社創薬においては戦略的に有望なターゲットを選定し、それに対する特殊環状ペプチド医薬品やPDCキャリアを生み出すことでより将来の価値の拡大につながるものと考えております。 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発において、もととなる医薬品候補化合物を創出するための基盤となる技術をシステムとして機能するようにしたもの。*2特殊環状ペプチド天然の20種類のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれる天然アミノ酸以外のアミノ酸を組み込んだ、一般には6~20アミノ酸残基からなる環状構造のペプチド。*3非天然アミノ酸20種類の天然アミノ酸以外のアミノ酸。*4スクリーニング集団の中から探索条件にあうものを選択すること。*5実施許諾特許の実施権は独占的通常実施権と非独占的通常実施権があり、独占的通常実施権は他社に実施権を付与しない旨の特約がついており、より強い効力を持っている。加えて第三者サブライセンス権を持つことにより、最も強固な特許契約となる。*6低分子医薬品分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された低分子化合物による創薬の総称。*7抗体医薬品医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*8ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた分子の総称。一般のペプチドは6~50アミノ酸残基からなり、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*9構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*10生体内安定性生体内にはペプチド結合を加水分解するタンパク質分解酵素(ペプチダーゼ)があり、通常のペプチドは容易に分解されてしまう。*11細胞膜透過性細胞内部の分子をターゲットとする場合、細胞の外側構造である細胞膜を透過して内部へと浸透する必要がある。*12タンパク・タンパク相互作用生体内のタンパク質分子間に起こる相互作用。PPIと呼ばれる。各種の生理作用が生じるため、PPI阻害剤など創薬ターゲットとして注目されている。*13モダリティ医療分野では、医薬品の種類やタイプ、治療手段を表す言葉として使用される。特殊環状ペプチドを用いた医薬品のほか、核酸医薬品、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などが新しい創薬モダリティとして注目されている。*14タンパク質X線結晶構造解析タンパク質の立体構造を解明するために、タンパク質を結晶化させ、X線を照射したことで得られる反射(回析という)データをもとに解析する方法。*15ファージ・ディスプレイ法バクテリオファージ(ウイルス)の表面に抗体やペプチドを発現させたライブラリーを作製し、特定のターゲットに対して結合する分子をスクリーニングする手法。*16無細胞翻訳系遺伝情報から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(翻訳合成)と呼ばれている。このメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*17創薬ライブラリー創薬ターゲットに対して結合する医薬品候補化合物(低分子や抗体や特殊環状ペプチド等)をスクリーニングするときに利用する化合物の集団。*18tRNA運搬RNAと呼ばれており、遺伝子情報からペプチドやタンパク質がリボソームで合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(リボ核酸)。*19アシル化アミノアシル結合を実行するために、アミノ酸のアミノ基等の水素原子をアシル基で置換する働き。*20触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*21翻訳合成mRNAの情報に基づいて、タンパク質を合成する反応のこと。*22酵素生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子のこと。*23PDCペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと薬理効果を持つ化合物を化学的に結合させた複合体。*24特許ポートフォリオ業界における技術動向を踏まえたうえで。自社が保有する特許群の評価を行い、全体として自社特許群の強み・弱みを分析、判断する際に活用する指標のこと。特許ポートフォリオを利用することで、自社の特許群をさらに強固なものに作り上げることができ、ひいては自社が保有する複数の特許群でさらに強い対外的な守りを作り上げることができる。
FY2020|12,588 文字
3 【事業の内容】(1) 事業概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPSを中核とした創薬開発基盤技術を活用し、国内外の製薬企業との共同研究開発等を通じて、新しい医薬品候補化合物の研究開発を行っております。当社事業の系統図は、以下のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(3) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊環状ペプチド(*2)をもとにした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊環状ペプチド」とは、当社の造語であり、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、天然には存在しないD体のアミノ酸やN-メチルアミノ酸等の特殊アミノ酸(非天然型アミノ酸、*3)を含んだ特殊なペプチドを環状構造にしたものです。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊環状ペプチドから医薬品候補化合物を創製することを主たる事業としております。特殊環状ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自のPDPSです。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊環状ペプチドのライブラリーを作製し、ターゲット(標的分子)に対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニング(探索、*4)することができるようになりました。当社の事業概要は、以下のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約に基づき製薬企業の興味のあるターゲットに対する共同研究開発を実施します。当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊環状ペプチドのライブラリーを作製し、ターゲットに対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを製薬企業に提供します。その後製薬企業が提供した特殊環状ペプチドの創薬開発を進め、当社は契約一時金に加え製薬企業の創薬開発・販売の進捗に応じて、マイルストーンフィーやロイヤルティー等の対価を受領することができます。(B)PDPS技術ライセンス:製薬企業からのPDPSを当該製薬企業内で実施したいとの要望に応じ、当社では研究開発コラボレーションの一環として、PDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約、*5)を行っております。実施許諾契約の締結に伴い、当社は技術ライセンス料(契約一時金)を受け取ることになるほか、PDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物について設定されたマイルストーンフィー及び上市後の売上高に応じたロイヤルティーを受け取ることができます。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社で設定したターゲットに対する医薬品候補化合物をスクリーニング・最適化するプログラムを複数有しており、これらの医薬品候補化合物の研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を実施し、自社又は共同での研究開発を推進しております。 (2) 当社の技術について① 特殊環状ペプチドについて創薬開発の歴史的スタートは、1897年にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリンが市販された1899年だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*6)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。1980年代には抗体(*7)を医薬品に利用するべく研究が進められましたが抗原性の問題(*8)等により、実用には至りませんでした。その後も、欧米の製薬企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、1997年頃から抗体医薬品(*9)が発売され、2000年代には抗体医薬品の創薬開発が急速に拡大いたしました。一般的にいわれるペプチド(*10)は、2個以上の天然アミノ酸が結合して作られた化合物の総称であり、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補化合物として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っておりませんでした。これに対し、当社が創出する特殊環状ペプチドは、今までの一般的なペプチドの医薬品候補化合物としての問題点の多くを解決することにより、医薬品候補化合物としてより適した特徴を有する可能性があると期待されております。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*11)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*12)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*13)多くの場合、細胞膜は透過できない。一般的なペプチドよりも高い確率で細胞膜を透過できる。 特殊環状ペプチドは低分子医薬品、抗体医薬品と比較して素晴らしい特性があると当社では考えております(次表<低分子医薬品と抗体医薬品と比較した特殊環状ペプチドの特徴>参照)。例えば、低分子医薬品は分子量が相対的に小さく細胞内標的を含めターゲットの多様性が優位点である一方、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、ターゲット以外の分子に結合してしまうことなどにより副作用を引き起こしてしまうリスクが相対的に高いことが問題点となります。抗体医薬品は、低分子医薬品に比べて分子量が非常に大きいため、ターゲットの多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点と考えられます。しかし、その分子量の大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できないこと、経口投与ができないこと、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いこと等の問題点も数多く存在します。低分子医薬品や抗体医薬品に比べて、特殊環状ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬品よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、従来の低分子医薬品や抗体医薬品の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬品と抗体医薬品と比較した特殊環状ペプチドの特徴> ※当社見解に基づく/当社作成(注) PPI:タンパク・タンパク相互作用(*14) 現在、世界の多くの大手製薬企業は低分子医薬品・抗体医薬品に続く次世代の創薬開発を目指し、ペプチド医薬品・核酸医薬品・遺伝子治療薬・細胞医薬品など新規のモダリティ(*15)を活用した積極的な創薬開発を行っております。当社は特殊環状ペプチドを低分子と高分子の双方のメリットを併せ持つ新たな医薬品モダリティとして捉え、次世代創薬の中心的存在になるものと考えております。以下に、特殊環状ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合しているイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析、*16)を示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。そのため、ターゲットに強く特異的に結合することがまずは重要になります。特殊環状ペプチドのターゲットに対する結合の一様式を下図に示します。低分子医薬品が点(ポイント)でターゲットを捉えているのに対して、特殊環状ペプチドは複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であるため、低分子医薬品よりもはるかに強固な結合力を有しております。そのことが、特異性の高さに結び付いております。 <特殊環状ペプチドの結合:複数点による結合> ※当社見解に基づく/当社作成 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊環状ペプチドです。特殊環状ペプチドはターゲットに対して複数のポイント(ここでは3ヶ所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬品の場合はこの結合ポイントが1ヶ所であるため、結合力に限界があります。また、1ヶ所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1桁の暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈に例えられます。 <特殊環状ペプチドの結合:ターゲットの表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 面で創薬ターゲットを捉えるという点では特殊環状ペプチドは抗体医薬品と同様ですが、特殊環状ペプチドには抗体にない特徴を持たせることも可能です。 <特殊環状ペプチドの結合2:ターゲットの内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は<特殊環状ペプチドの結合:ターゲットの表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットに対する特殊環状ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊環状ペプチドはターゲットの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。一方、抗体医薬品ではその分子量の大きさの問題からこのようにターゲットの内側に対する結合様式を持つことは困難となります。特殊環状ペプチドは、創薬ターゲットの特徴に合わせて、特異性が高く、多様な結合形態をとることができる医薬品候補化合物という特性を有しています。 ② 当社の創薬基盤技術についてa. 当社における創薬基盤技術の全体像 当社はPDPSを基軸とした様々な基盤技術を保有し、下図のとおりPDPSからペプチド合成・精製、構造解析、化合物最適化へのサイクルを回すことで創薬プロセスを高効率で進めております。PDPSは後述のとおり高い多様性を持つ特殊環状ペプチドのスクリーニングを迅速に行う技術です。スクリーニングの結果、取得されたヒットペプチドの薬理効果・薬物動態を評価し、臨床開発に進める医薬品候補化合物まで最適化するにあたり、ペプチド合成・精製技術、構造解析技術、化合物最適化技術を活用します。 <当社の創薬基盤技術> ※当社見解に基づく/当社作成 b. PDPSについて当社の中核技術であるPDPSの開発にあたり、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊環状ペプチドの特徴である特殊アミノ酸を組み込んで医薬品候補化合物として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然アミノ酸に限られているため、無細胞翻訳系(*17)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊環状ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*18)として構築できる技術・システムを以下のとおり開発いたしました。当社の創業者の一人である菅裕明・国立大学法人東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、フレキシザイム(Flexizyme、多目的tRNA(*19)アシル化(*20)RNA触媒(*21))という特殊な酵素を完成しました。ペプチドが翻訳合成(*22)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せをもとにアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*23)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。一方、フレキシザイムは単体でARSに代わり特殊アミノ酸を含むすべてのアミノ酸とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊アミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊アミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊環状ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。その他、細胞膜の透過性を持つ特殊環状ペプチドも採れており、細胞内のタンパクをターゲットにすることもできるようになりました。 続いて、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊環状ペプチドを次の表<医薬品候補化合物の多様性の比較>のとおり、多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築するFIT(Flexible In-vitro Translation)システムの開発を行いました。低分子医薬品のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬品はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊環状ペプチドは低分子医薬品の1億倍程度の多様性を有しています。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補化合物を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補化合物発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊環状ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補化合物を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補化合物の多様性の比較> ※当社見解に基づく/当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較イメージ低分子医薬品104 ~ 1051抗体医薬品108 ~ 101010,000特殊環状ペプチド医薬品1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較イメージ」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 さらに、特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニングするためにRAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムを構築しました。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊環状ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊環状ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊環状ペプチドの特徴を生かして、ターゲットに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊環状ペプチドライブラリーを短時間で構築するシステムを作り上げ、さらに特殊環状ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムと組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステムが当社の中核的な基盤技術であるPDPSです。 c. PDPSを起点とした3つの創薬アプローチ当社では上述のペプチド創薬基盤技術を活用し、3つの創薬アプローチを用いております。1つめはスクリーニングにより取得されたヒットペプチドをそのまま特殊環状ペプチド医薬品として研究開発を進めるアプローチです。2つめはヒットペプチドを用い低分子医薬品を開発するアプローチです。ヒットペプチドが結合したターゲットの構造解析を行うことにより、どのように特殊環状ペプチドが働いているのかを詳細に理解することができます。これらの情報をもとに、最先端の計算化学技術を活用することで低分子医薬品をデザインすることが可能となってきております。3つめのアプローチは、特殊環状ペプチドそのものを医薬品として利用するのではなく、結合力や特異性などの特徴を利用し、生体内の特定の部位や臓器に別の薬剤を送達するキャリア(運び屋)として利用するというもので、PDC(*24)と当社では呼んでおります。複数の抗体薬物複合体(ADC)がすでに上市されていますが、特殊環状ペプチドは抗体と同様の特異性の高さを持つ一方、サイズが小さく化学的に合成できるという利点を持つことから、当社ではPDCについて高いポテンシャルを有するものと認識しております。 <当社の創薬アプローチ> ※当社見解に基づく/当社作成 <PDC医薬品とは> ※当社見解に基づく/当社作成 ③ 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発、維持、発展は重要な経営課題と認識しております。次の図は、当社の特許ポートフォリオ(*25)の概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、フレキシザイム技術開発に関わる特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊環状ペプチドライブラリーを作成する技術等を含み、これらにより特殊環状ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊環状ペプチドをスクリーニングする技術ノウハウであり、各種機能を持ちうる特殊環状ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊環状ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊環状ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されます。ライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)に関しては随時権利化(出願)を進めております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> ※当社見解に基づく/当社作成 PDPSの基盤技術となる特許・発明の詳細は次の表のとおりです。<当社の特許ポートフォリオ>発明の名称出願人出願国出願・特許番号多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202 B1特許第5200241号環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2 EP Patent 2141175 B1EP Patent 2990411 B1EP Patent 3012265 B1特許第5605602号ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 2012208720 A1US 2020199579 A1EP Patent 2492344 B1特許第5174971号特許第5837478号新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993 B2EP 2610348 A4特許第5725467号CN Patent 103189522 BN-メチルアミノ酸およびその他の特殊アミノ酸を含む特殊ペプチド化合物ライブラリーの翻訳構築と活性種探索法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9410148 B2EP Patent 2615455 B1特許第5818237号ペプチドライブラリーの製造方法、ペプチドライブラリー、及びスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10195578 B2EP Patent 2647720 B1特許第6206943号安定化された二次構造を有するペプチド、及びペプチドライブラリー、それらの製造方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)中国(登録)US Patent 9657289 B2US Patent 10435439 B2EP Patent 2647721 B1特許第6004399号CN Patent 103328648 Bペプチドライブラリの製造方法、ペプチドライブラリ、及びスクリーニング方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10711268 B2EP Patent 2995683 B1特許第6440055号大環状ペプチド、その製造方法、及び大環状ペプチドライブラリを用いるスクリーニング方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)US Patent 10234460 B2EP 3040417 A4特許第6754997号荷電性非タンパク質性アミノ酸含有ペプチドの製造方法当社国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 10745692 B2EP Patent 3031915 B1特許第6357154号Dアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのD及びTアームの改変国立大学法人東京大学米国(出願中)欧州(出願中)日本(出願中)シンガポール(出願中)US 2020308572 A1EP 3699276 A1JP WO2019077887 A1SG 11202003483S A (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 (3) 当社のビジネスモデルについて 事業概要に記載のとおり、当社は創薬共同研究開発、PDPS技術ライセンス、戦略的提携/自社創薬という複数のビジネスモデルを組み合わせることにより、リスクを分散し成功確率を高めるとともに製薬企業からの様々な要望に対応できるものとなっております。当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントからターゲットを受領し、そのターゲットごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目>は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価としてターゲットごとに「研究開発支援金」を原則として前受にて受領しております。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊環状ペプチドを提供した後は、医薬品候補化合物に係る開発の主体はクライアントに移行します。また、当社は研究・開発・販売の過程においてあらかじめ決められた一定のクライテリアを達成した場合「マイルストーンフィー」を受領することになります。さらに、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティー」として受領します。PDPS技術ライセンスにおいては、クライアントにPDPS技術の非独占的な実施許諾を行い、その対価として「技術ライセンス料(契約一時金)」を受領します。さらにクライアントがPDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物についてあらかじめ設定された「マイルストーンフィー」及び上市後の売上高に応じた「売上ロイヤルティー」を受け取ることができます。戦略的提携/自社創薬は自社又は自社と戦略的提携先と共同で研究開発活動を実施し、臨床開発及び事業化のために製薬企業等にライセンスを行うことを目指します。 当社のビジネスモデルの典型的な例を下図に示します。<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目> 創薬共同研究開発PDPS技術ライセンス戦略的提携/自社創薬契約一時金〇〇〇研究開発支援金〇 非臨床マイルストーンフィー ステップ1〇 ステップ2〇 ステップ3〇 〇創薬開発権利金(又は知的財産譲渡) 〇臨床開発マイルストーンフィー 治験申請提出〇 〇第1相・臨床試験開始〇〇〇第2相・臨床試験開始〇〇〇第3相・臨床試験開始〇〇〇新薬承認申請提出〇〇〇米国にて新薬承認〇〇〇欧州にて新薬承認〇〇〇日本にて新薬承認〇〇〇売上ロイヤルティー〇〇〇販売マイルストーンフィー〇〇〇 当社は、多くの研究開発プログラムを3つのビジネスモデルを組み合わせて実施することで、リスクを分散し成功確率を高めることができると考えております。自社創薬においては戦略的に有望なターゲットを選定し、それに対する特殊環状ペプチド医薬品やPDCキャリアを生み出すことでより将来の価値の拡大につながるものと考えております。 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発において、もととなる医薬品候補化合物を創出するための基盤となる技術をシステムとして機能するようにしたもの。*2特殊環状ペプチド天然の20種類のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれる天然アミノ酸以外のアミノ酸を組み込んだ、一般には6~20アミノ酸残基からなる環状構造のペプチド。*3特殊アミノ酸20種類の天然アミノ酸以外のアミノ酸。非天然型アミノ酸とも呼ばれる。*4スクリーニング集団の中から探索条件にあうものを選択すること。*5実施許諾特許の実施権は独占的通常実施権と非独占的通常実施権があり、独占的通常実施権は他社に実施権を付与しない旨の特約がついており、より強い効力を持っている。加えて第三者サブライセンス権を持つことにより、最も強固な特許契約となる。*6低分子医薬品分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された低分子化合物による創薬の総称。*7抗体体内に侵入した異物に対して免疫細胞が作り出すタンパク質。異物にある目印(抗原)に特異的に結合して、その異物を排除するように働く。*8抗原性の問題本来、薬として利用されるべき抗体を生体が異物としてとらえてしまうことで副作用が生じたり、排除されてしまう問題。*9抗体医薬品医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*10ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた分子の総称。一般のペプチドは6~50アミノ酸残基からなり、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*11構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*12生体内安定性生体内にはペプチド結合を加水分解するタンパク質分解酵素(ペプチダーゼ)があり、通常のペプチドは容易に分解されてしまう。*13細胞膜透過性細胞内部の分子をターゲットとする場合、細胞の外側構造である細胞膜を透過して内部へと浸透する必要がある。*14タンパク・タンパク相互作用生体内のタンパク質分子間に起こる相互作用。PPIと呼ばれる。各種の生理作用が生じるため、PPI阻害剤など創薬ターゲットとして注目されている。*15モダリティ医療分野では、医薬品の種類やタイプ、治療手段を表す言葉として使用される。特殊環状ペプチドを用いた医薬品のほか、核酸医薬品、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などが新しい創薬モダリティとして注目されている。*16タンパク質X線結晶構造解析タンパク質の立体構造を解明するために、タンパク質を結晶化させ、X線を照射したことで得られる反射(回析という)データをもとに解析する方法。*17無細胞翻訳系遺伝情報から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(翻訳合成)と呼ばれている。このメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*18創薬ライブラリー創薬ターゲットに対して結合する医薬品候補化合物(低分子や抗体や特殊環状ペプチド等)をスクリーニングするときに利用する化合物の集団。*19tRNA運搬RNAと呼ばれており、遺伝子情報からペプチドやタンパク質がリボソームで合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(リボ核酸)。*20アシル化アミノアシル結合を実行するために、アミノ酸のアミノ基等の水素原子をアシル基で置換する働き。*21触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*22翻訳合成mRNAの情報に基づいて、タンパク質を合成する反応のこと。*23酵素生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子のこと。*24PDCペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと薬理効果を持つ化合物を化学的に結合させた複合体。*25特許ポートフォリオ業界における技術動向を踏まえたうえで。自社が保有する特許群の評価を行い、全体として自社特許群の強み・弱みを分析、判断する際に活用する指標のこと。特許ポートフォリオを利用することで、自社の特許群をさらに強固なものに作り上げることができ、ひいては自社が保有する複数の特許群でさらに強い対外的な守りを作り上げることができる。
FY2019|14,251 文字
3 【事業の内容】(1) 事業の概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用して、国内外の製薬企業との共同研究開発のもと、新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。当社の事業の系統図は、次のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図>(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(4) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊ペプチドを基にした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊ペプチド」とは、当社窪田(現当社取締役会長)の造語ですが、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んだ特殊なペプチドをいいます。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊ペプチドから医薬品候補物質を創製することを主たる事業としております。特殊ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)です。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子(ターゲットタンパク)に対して適した特殊ペプチドを短期間でスクリーニングすることができるようになりました。当社の事業の概要は、次のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約を締結すると、当社は、製薬企業から契約一時金、研究開発支援金等の売上金及び標的分子(ターゲットタンパク)を受領します。その後、当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子に対してアフィニティ(他の分子との特異的な親和性)のある特殊ペプチドをPDPSにより高速でスクリーニングして製薬企業に提供します。提供された特殊ペプチドは、その後、製薬企業において創薬開発が進められることになりますが、製薬企業の創薬開発が成功裡に進めば、当社は創薬開発の進捗段階に応じて、当該特殊ペプチドに係る製品の上市に至るまで及び上市後においても契約に基づき種々の対価を受領することができます。(B)PDPS技術貸与(PDPS技術ライセンス):当社との創薬共同研究開発を通じて、製薬企業は当社のPDPSが持つ能力に関心を抱くようになり、製薬企業からPDPSを当該製薬企業内で使いたいとの要望が出てくるようになりました。これを受けて、当社では研究開発コラボレーションの一環として、共同研究開発先に対してPDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約 、技術貸与)を行っています。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)を複数本有しており、これらの医薬品候補物質を医薬品にするため、自社内で研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を組むことで、自社のパイプラインの拡充を図っています。 (2) 創薬の歴史と(特殊)ペプチドの位置付け 創薬開発の歴史的スタートは、1897年にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリン(*2)が市販された1899年だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*3)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。1980年代には抗体(*4)を医薬品に利用するべく研究がすすめられましたが抗原性の問題(*5)等により、実用には至りませんでした。その後も、欧米の製薬企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、1997年頃から抗体医薬(*6)が発売され、2000年代は抗体医薬が創薬開発の中心になっております。しかし、低分子医薬、抗体医薬とも医薬品として素晴らしい特性はあるものの、一方でそれぞれいくつかのウイークポイントも持っております。(下表<低分子医薬と抗体医薬の特徴>参照)そのため現在、世界の多くの大手製薬企業は低分子医薬・抗体医薬に続く次世代の創薬開発を目指し、積極的な活動を行っております。 <低分子医薬と抗体医薬の特徴> ※当社見解に基づく/当社作成 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発においてもととなる医薬品候補物質(プレリード化合物)を創出するための基盤となる技術。なお、リード化合物とは、医薬品の原料となりうる生理活性を持つ化合物のことであり、新薬の開発は、リード化合物を創製することから始まる。*2アスピリン代表的な消炎鎮痛剤。消炎・解熱・鎮痛作用を持つ。*3低分子医薬分子と分子の結びつきが短い、分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された化合物による創薬の総称。*4抗体体内に侵入した異物に対して生体が作り出すタンパク質の総称。*5抗原性の問題本来、薬として利用されるべき抗体を生体が異物としてとらえてしまい副作用が生じたり、排除されてしまう問題。*6抗体医薬医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*7免疫排除生体内において異物ととらえられてしまうことにより排除されてしまう機能。抗体医薬の場合、薬効が低下したり、効かなくなる現象。*8生体内毒性本来反応すべきでない分子に対して反応してしまうことによって起きる毒性(弊害)。*9蛋白・蛋白相互作用複数の異なるタンパク質分子が特異的結合する現象。それにより、生体内において各種の生理作用が生じる。 一般的にいわれるペプチド(*10)は、2個以上の天然型アミノ酸(*11)が結合して作られた化合物の総称であり、生体内においては、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補物質として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っていませんでした。これに対し、当社が創出する新しい医薬品候補物質、すなわち特殊ペプチド(*12)は、下表<一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い>(当社作成)のとおり、今までの一般的なペプチドの(医薬品候補物質としての)問題点の多くを解決することにより、医薬品候補物質としてよりふさわしい特徴を持つことができる可能性があると期待されています。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*13)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*14)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*15)多くの場合、細胞膜は透過できない。高い確率で細胞膜を透過できる。 これまでの医薬品の中心である低分子医薬と抗体医薬は、医薬品としての優位点と共に問題点も併せ持っております。たとえば、低分子医薬は、下表<低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較>(当社作成)のとおり、分子量(*16)が相対的に小さく様々な種類のターゲット(標的分子)に対応できること(ターゲットの多様性)が優位点です。その一方で、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、標的とするターゲットに結合せずに結合すべきでない分子に結合してしまうことなどにより、多くの副作用を引き起こしてしまう(生体内毒性が低くない)リスクが相対的に高いことが問題点となります。一方、抗体医薬は、低分子医薬に比べてその分子量が非常に大きいため、ターゲットの多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点になります。しかし、その大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できず経口投与ができないことや、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いことなどの問題点も数多く存在します。低分子医薬や抗体医薬に比べて、特殊ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、下表<低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較>(当社作成)のとおり、従来の低分子医薬や抗体医薬の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較> ※当社作成 低分子医薬特殊ペプチド医薬抗体医薬分子量(Da)50 ~ 1,000500 ~ 2,00050,000 ~ 150,000 <低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較> ※当社見解に基づく/当社作成相対的な特徴低分子医薬抗体医薬特殊ペプチド医薬迅速な研究開発が可能×○○ターゲットに対する強い結合力×○○ターゲットに対する強い特異性×○○生体内毒性が低い×○○タンパク・タンパク阻害反応×○○高い生体内安定性×○○ターゲットの多様性の多さ○×○細胞内のターゲットに対応○×○経口投与が可能○×○大量製造の容易さ○×△低い生体内免疫反応性○×○ (注) 「○」は備える又は優れると思われる能力 / 「△」は備えると期待される能力「×」は備えていない又は劣ると思われる能力 次に、このような特殊ペプチドのターゲットに対する強い結合力を視覚的に説明するために特殊ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合している状況を分析したデータに基づくイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析(*17))を掲示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。つまり、創薬のターゲットタンパクに強く特異的に結合することが重要になります。次の図は、その特殊ペプチドの特徴をよく表しております。 <特殊ペプチドの結合:複数点による結合> ※共同研究開発に伴う当社データ 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊ペプチドです。特殊ペプチドはターゲットタンパクに対して複数のポイント(ここでは3か所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬の場合はこの結合ポイントが1か所であるため、結合力に限界があります。また、1か所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1ケタの暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈にたとえられます。 特殊ペプチドのターゲットタンパクに対する結合の一様式は複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であり、低分子医薬のようにターゲットに対して多くの多様性を持っているうえ、低分子医薬よりもはるかに強固な結合力を保持しております。そのことが、特異性の高さにも結び付いております。<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 抗体医薬は、創薬のターゲットとなるタンパクの表面にしっかりと張り付く形で結合しております。低分子医薬が点(ポイント)で創薬ターゲットタンパクを捉えているのに対して、抗体医薬は面で創薬ターゲットタンパクを捉えていることになります。前頁の図<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>は特殊ペプチド(六角形の集まり)がターゲットタンパク(らせん状のリボン)に結合しているX線結晶構造解析結果です。抗体医薬と同じようにターゲットタンパクの表面にしっかりと絡みついて結合しています。このことから、特殊ペプチドはまさにサイズの小さい抗体医薬といえます。小さいサイズながら抗体医薬とそん色のない特性を持っている理由はこのような結合の形によるものです。 <特殊ペプチドの結合:標的分子の内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は先ほどの<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットタンパクに対する特殊ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊ペプチドはターゲットタンパクの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。抗体医薬ではその大きさの問題からこのようにターゲットタンパクの内側に対する結合様式を持つことはできません。特殊ペプチドは、創薬ターゲットタンパクの特徴に合わせて、特異性の高い強固な複数の結合形態をとることができる多様性を持った医薬品候補物質と言うことができます。これまで説明してきたように、特殊ペプチドが結合したターゲットタンパクのX線結晶構造解析により、どのように特殊ペプチドが働いているのかを詳細に理解することができます。これらの情報をもとに、最先端の創薬技術を活用することで、近年では特殊ペプチドとターゲットタンパクとの結合のしかたを再現するような低分子医薬をデザインすることが可能となってきました。現在当社では特殊ペプチドのような結合力や特異性を有した低分子医薬の開発を進めております。また、特殊ペプチドそのものを医薬品として利用するのではなく、結合力や特異性などの特徴を利用し、生体内の特定の部位や臓器に別の薬剤を送達するキャリアー(運び屋)として利用するPDC(*18)の開発をすることも可能であり、当社では自社パイプライン(*19)の一環としてPDCの研究開発を進めております。 <用語解説>*10ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた化合物。大きさによりペプチド⇒ポリペプチドと呼ばれ、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*11天然型アミノ酸タンパク質・ペプチドを作っている最小の成分。 地球上のあらゆる生命、植物も動物もアミノ酸により作り出される(合成される)タンパク質からできており、アミノ酸はすべての生命の源(素)。通常、合成に利用されるアミノ酸は20種類であり、天然型アミノ酸と呼ばれている。*12特殊ペプチド20種類の天然型アミノ酸から合成された通常の(一般的な)ペプチドに対して非天然型アミノ酸と呼ばれる20種類以外のアミノ酸が組込まれたペプチドの総称。古くからその存在は知られていたが、人工的に合成することが困難であった。*13構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*14生体内安定性生体内にはペプチダーゼという酵素が有り、通常のペプチドはペプチダーゼにより容易に分解されてしまう。*15細胞膜透過性通常のペプチドの多くは細胞の外側構造、細胞膜を透過することができない。細胞内には多くの創薬ターゲットが存在する。*16分子量各原子(水素や酸素など)の原子量(水素は1、酸素は16)の和のこと。たとえば、水分子(H2O)は水素2つと酸素1つで合計18となる。*17タンパク質X線結晶構造解析X線の特徴を利用してタンパク質の三次元構造を立体的に解析する分析方法。タンパク質の実態構造の解析に不可欠な技術。*18PDCペプチド薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと他の薬剤を化学的に結合させた複合体。*19パイプライン医薬品の開発に当たり、その初期の段階から開発・販売に至るまでの一連の計画のこと。 (3) 事業の特徴について① 創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)について特殊ペプチドを医薬品候補物質として活用するためには、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊ペプチドの特徴である特殊アミノ酸(*20)を組み込んで医薬品候補物質として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然型アミノ酸に限られているため、無細胞翻訳系(*21)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*22)として構築できる技術・システムを開発しました。それが、フレキシザイム(Flexizyme)技術であり、FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)であります。 ア. フレキシザイム(Flexizyme)についてフレキシザイムは、当社の創立者の一人である菅裕明・東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、完成させた「多目的tRNA(*23)アシル化(*24)RNA触媒(*25)」です。ペプチドが翻訳合成(*26)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せを基にアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*27)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然型アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。ところが、フレキシザイムは単体でARSに代わりすべてのアミノ酸(非天然型アミノ酸を含む)とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊なアミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊なアミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。そのほか、細胞膜の透過性を持つ特殊ペプチドも採れており、細胞内の標的をターゲットにすることもできるようになりました。イ. FIT(Flexible In-vitro Translation)システムについて次にFITシステムですが、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊ペプチドを下表<医薬品候補物質の多様性の比較>(当社作成)のとおり、FITシステムにより多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築することができるようになりました。低分子医薬のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊ペプチドは低分子医薬の1億倍程度の多様性を持っております。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補物質を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補物質発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補物質を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補物質の多様性の比較> ※当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較低分子医薬104 ~ 1051抗体医薬108 ~ 101010,000特殊ペプチド医薬1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 ウ. RAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムについてRAPIDディスプレイシステムは、特殊ペプチドを短期間でスクリーニング(*28)できる高速のスクリーニングシステムです。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊ペプチドの特徴を生かして、ターゲットタンパクに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)エ. PDPS(Peptide Discovery Platform System)について当社は、フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊ペプチドライブラリーを構築することができるシステム:PDTS(Peptide Discovery Translation System)を作り上げ、さらに特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムをPDDS(Peptide Discovery Display System)と位置付け、この3つの独自技術・システムを組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)を構築しました。 <用語解説>*20特殊アミノ酸20種類の天然型アミノ酸以外のアミノ酸。非天然型アミノ酸とか異常アミノ酸等とも呼ばれる。*21無細胞翻訳系遺伝情報(遺伝子情報)から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(合成)と呼ばれている。この細胞内でペプチド・タンパクが合成されるメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*22創薬ライブラリー創薬ターゲットタンパクに対して結合する医薬品候補物質(低分子や抗体や特殊ペプチド等)を検索するときに利用する医薬品候補物質が大量に集められた母集団。*23tRNA運搬RNAと呼ばれており、遺伝情報(遺伝子情報)からペプチドやタンパクがリボソームで合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(リボ核酸)。*24アシル化アミノアシル結合を実行するためにアミノ酸のアミノ基等の水素を置換する働き。*25触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*26翻訳合成mRNAの情報に基づいてタンパク質を合成する反応のこと。*27酵素生体でおこる化学反応に対して触媒として機能する分子。*28スクリーニング設定された基準に対して達成されているか否かを判断するために実施される検査。 ② 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発・維持・発展は重要な経営ポイントになります。次の図は、当社の特許ポートフォリオの概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、③(及び①・②)の特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明(④・⑤・⑥・⑦)で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が「システム」として機能するように設計しております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 さらに、この創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)の特許・発明群を各種ライブラリーの発明が取り囲む形にすることにより、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。コアとなる7つの特許・発明の詳細は次の表のとおりです。①と②はニューヨーク州立大学が出願人であり、③・④・⑤・⑦は国立大学法人東京大学が出願人であり、⑥は当社が出願人であります。その他にライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)があり、それらについても随時権利化(出願)を進めております。なお、当社は、ニューヨーク州立大学及び国立大学法人東京大学の上記特許について、第三者サブライセンス権(*29)付き独占実施・許諾権(*30)を取得しております。 <当社の特許ポートフォリオ(*31)>発明の名称出願人出願国出願・特許番号①Catalytic RNAs with Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,001,723 B1CA Patent 2391433EP Patent 1232285 B1特許第4745577号②Ribozymes with Broad tRNA Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,622,248 B2CA Patent 2476425EP Patent 1483282 B1特許第4464684号③多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号④N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202 B1特許第5200241号⑤環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2 EP Patent 2141175 B1EP Patent 2990411 B1EP Patent 3012265 B1特許第5605602号⑥ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 2012208720 A1EP Patent 2492344 B1特許第5174971号⑦新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993 B2EP 2610348 A4特許第5725467号CN Patent 103189522 B ①と②はフレキシザイム(Flexizyme)技術開発に関わる基本特許です。③はフレキシザイムそのものに関する特許であり、PDTS(Peptide Discovery Translation System)の中心となる特許であります。⑥は特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることができるRAPIDディスプレイシステムの特許であり、PDDS(Peptide Discovery Display System)の中心となる特許であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)⑦は翻訳合成系にて特殊ペプチドをライブラリー化するFITシステムの発明であり、PDTSの中心となる発明であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。)④はペプチド、タンパクが翻訳合成されるとき、Met(メチオニン)というアミノ酸から合成が開始されるという生命の基本的なルールを書き換えることを可能にした技術特許です。この技術特許によりMet(メチオニン)以外のあらゆるアミノ酸から合成を開始することができるようになりました。当社は、この技術により、合成するペプチドの形状を自由に変えることができるようになり、特殊ペプチドに対し従来では考えられなかった多様性を持たせることが可能になりました。⑤はペプチドを特殊な環状化構造(*32)にする発明です。この技術により特殊ペプチドが生体内での安定性や構造の安定性を確保することができるようになりました。以上、①から⑦までの特許によって当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)が構成されております。さらに、概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊ペプチドライブラリーを作成する技術であり、これらにより特殊ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊ペプチドをスクリーニングする技術であり、各種機能を持ちうる特殊ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されますが、この発明はクライアントとは関係なく発生したものであります。 <用語解説>*29第三者サブライセンス権特許をライセンスするときには、特許権者(ライセンサー)と実施権者(ライセンシー)の関係が生じます。ライセンシーは自己の特許権を強化するために第三者に対する再実施権(サブライセンス)を獲得することが好まれます。*30独占実施・許諾権特許の実施権は独占と非独占があり、独占実施権はより強い効力を持っており、加えて第三者に対する許諾権(再実施権=サブライセンス権)を持つことにより、最も強固な特許契約となります。*31特許ポートフォリオ特許権侵害などの危険性を回避し、自社の特許権を強固なものにするために自社特許権の強み弱点を分析し、複数の特許群で対外的な守りを作り上げること。*32特殊な環状化構造生体内で壊れやすいペプチドの特徴を改善するために開発された環状化構造。通常の環状化構造がジスフィルド環状化結合と呼ばれるのに対して、この構造はチオエーテル環状化構造と呼ばれる。 (4) 当社のビジネスモデルについて当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントから標的分子(ターゲットタンパク)を受領し、その標的分子ごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図(<当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ>)は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金(A)」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価として標的分子ごとに「研究開発支援金(B)」を原則として前受にて受領しております。また、追加業務が発生する場合の対価として「追加研究開発支援金(C)」を標的分子ごとに設定しており、プロジェクトによっては(C)の売上が発生します。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。その後、クライアントでの評価により医薬品候補物質が特定され、クライアントが前臨床試験、臨床試験の段階に進む場合には、当該特殊ペプチドを当社がクライアントにライセンスアウトすることの対価として「創薬開発権利金(D)」が発生します。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊ペプチドを提供した後(すなわち(B)・(C)より後のフェーズ)は、医薬品候補物質に係る開発の進捗はクライアントに委ねられており、当社でのコントロール及び売上予測は極めて困難になるという特徴があります。 <当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ> (D)以降も引き続き開発が進みクライアントでの評価ステップを経て、臨床試験等の段階に移行すれば、その段階に応じて、各「目標達成報奨金(E)」「売上ロイヤルティ(E)」を当社は受領することになります。「売上ロイヤルティ」では、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティ」として当社が受領します。加えて、上市された医薬品の売上高が所定の金額に達した場合には「売上達成報奨金(E)」も受領します。 当社の共同研究開発契約の特徴としては、このように初期のディスカバリーステップから、売上が発生する取り決めとなっていることのほかに、最初の契約締結時において契約一時金から売上ロイヤルティまでのすべての売上カテゴリー(P)に関して、それらの金額又は金額の計算方法が原則として確定的に規定されていることが挙げられます。これまでのビジネスモデルでは、初期のディスカバリーステップは「フィージビリティースタディ」(*33)と評価され、売上が発生しないケースが多かったと認識しておりますが、当社のビジネスモデルでは、早期に売上を生み出すために上記の契約内容で契約を締結することに注力しております。当社の事業セグメントは、上記のとおり製薬企業との共同研究開発契約をもとにした「アライアンス事業」1本です。共同研究開発の取り組みを通じて、共同研究開発先からの要望により、共同研究開発先との間で当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS技術を貸与する(技術ライセンス契約の締結)ことがあります。当該契約を締結した場合、当社はその契約内容に応じて種々のライセンスフィーを共同研究開発先から受領します。 <用語解説>*33フィージビリティースタディ計画された事業やプロジェクト、技術等が実現可能か否か、利用することに意義や妥当性があるかを多角的に検討すること。
FY2018|14,339 文字
3 【事業の内容】(1) 事業の概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用して、国内外の製薬企業との共同研究開発のもと、新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。当社の事業の系統図は、次のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図>(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(4) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊ペプチドを基にした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊ペプチド」とは、当社窪田(現当社代表取締役)の造語ですが、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んだ特殊なペプチドをいいます。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊ペプチドから医薬品候補物質を創製することを主たる事業としております。特殊ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)です。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子(ターゲットタンパク)に対して適した特殊ペプチドを短期間でスクリーニングすることができるようになりました。当社の事業の概要は、次のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約を締結すると、当社は、製薬企業から契約一時金、研究開発支援金等の売上金及び標的分子(ターゲットタンパク)を受領します。その後、当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子に対してアフィニティ(他の分子との特異的な親和性)のある特殊ペプチドをPDPSにより高速でスクリーニングして製薬企業に提供します。提供された特殊ペプチドは、その後、製薬企業において創薬開発が進められることになりますが、製薬企業の創薬開発が成功裡に進めば、当社は創薬開発の進捗段階に応じて、当該特殊ペプチドに係る製品の上市に至るまで及び上市後においても契約に基づき種々の対価を受領することができます。(B)PDPS技術貸与(PDPS技術ライセンス):当社との創薬共同研究開発を通じて、製薬企業は当社のPDPSが持つ能力に関心を抱くようになり、製薬企業からPDPSを当該製薬企業内で使いたいとの要望が出てくるようになりました。これを受けて、当社では研究開発コラボレーションの一環として、共同研究開発先に対してPDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約 、技術貸与)を行っています。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)を複数本有しており、これらの医薬品候補物質を医薬品にするため、自社内で研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を組むことで、自社のパイプラインの拡充を図っています。 (2) 創薬の歴史と(特殊)ペプチドの位置付け 創薬開発の歴史的スタートは、明治30年(1897年)にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリン(*2)が市販された明治32年(1899年)だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*3)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。1980年代には抗体(*4)を医薬品に利用するべく研究がすすめられましたが抗原性の問題(*5)等により、実用には至りませんでした。その後も、欧米の製薬企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、平成9年(1997年)頃から抗体医薬(*6)が発売され、2000年代は抗体医薬が創薬開発の中心になっております。しかし、低分子医薬、抗体医薬とも医薬品として素晴らしい特性はあるものの、一方でそれぞれいくつかのウイークポイントも持っております。(下表<低分子医薬と抗体医薬の特徴>参照)そのため現在、世界の多くの大手製薬企業は低分子医薬・抗体医薬に続く次世代の創薬開発を目指し、積極的な活動を行っております。 <低分子医薬と抗体医薬の特徴> ※当社見解に基づく/当社作成 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発においてもととなる医薬品候補物質(プレリード化合物)を創出するための基盤となる技術。なお、リード化合物とは、医薬品の原料となりうる生理活性を持つ化合物のことであり、新薬の開発は、リード化合物を創製することから始まる。*2アスピリン代表的な消炎鎮痛剤。消炎・解熱・鎮痛作用を持つ。*3低分子医薬分子と分子の結びつきが短い、分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された化合物による創薬の総称。*4抗体体内に侵入した異物に対して生体が作り出すタンパク質の総称。*5抗原性の問題本来、薬として利用されるべき抗体を生体が異物としてとらえてしまい副作用が生じたり、排除されてしまう問題。*6抗体医薬医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*7免疫排除生体内において異物ととらえられてしまうことにより排除されてしまう機能。抗体医薬の場合、薬効が低下したり、効かなくなる現象。*8生体内毒性本来反応すべきでない分子に対して反応してしまうことによって起きる毒性(弊害)。*9蛋白・蛋白相互作用複数の異なるタンパク質分子が特異的結合する現象。それにより、生体内において各種の生理作用が生じる。 一般的にいわれるペプチド(*10)は、2個以上の天然型アミノ酸(*11)が結合して作られた化合物の総称であり、生体内においては、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補物質として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っていませんでした。これに対し、当社が創出する新しい医薬品候補物質、すなわち特殊ペプチド(*12)は、下表<一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い>(当社作成)のとおり、今までの一般的なペプチドの(医薬品候補物質としての)問題点の多くを解決することにより、医薬品候補物質としてよりふさわしい特徴を持つことができる可能性があると期待されています。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*13)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*14)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*15)多くの場合、細胞膜は透過できない。高い確率で細胞膜を透過できる。 これまでの医薬品の中心である低分子医薬と抗体医薬は、医薬品としての優位点と共に問題点も併せ持っております。たとえば、低分子医薬は、下表<低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較>(当社作成)のとおり、分子量(*16)が相対的に小さく様々な種類のターゲット(標的分子)に対応できること(ターゲットの多様性)が優位点です。その一方で、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、標的とするターゲットに結合せずに結合すべきでない分子に結合してしまうことなどにより、多くの副作用を引き起こしてしまう(生体内毒性が低くない)リスクが相対的に高いことが問題点となります。一方、抗体医薬は、低分子医薬に比べてその分子量が非常に大きいため、ターゲットの多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点になります。しかし、その大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できず経口投与ができないことや、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いことなどの問題点も数多く存在します。低分子医薬や抗体医薬に比べて、特殊ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、下表<低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較>(当社作成)のとおり、従来の低分子医薬や抗体医薬の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較> ※当社作成 低分子医薬特殊ペプチド医薬抗体医薬分子量(Da)50 ~ 1,000500 ~ 2,00050,000 ~ 150,000 <低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較> ※当社見解に基づく/当社作成相対的な特徴低分子医薬抗体医薬特殊ペプチド医薬迅速な研究開発が可能×○○ターゲットに対する強い結合力×○○ターゲットに対する強い特異性×○○生体内毒性が低い×○○タンパク・タンパク阻害反応×○○高い生体内安定性×○○ターゲットの多様性の多さ○×○細胞内のターゲットに対応○×○経口投与が可能○×○大量製造の容易さ○×△低い生体内免疫反応性○×○ (注) 「○」は備える又は優れると思われる能力 / 「△」は備えると期待される能力「×」は備えていない又は劣ると思われる能力 次に、このような特殊ペプチドのターゲットに対する強い結合力を視覚的に説明するために特殊ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合している状況を分析したデータに基づくイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析(*17))を掲示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。つまり、創薬のターゲットタンパクに強く特異的に結合することが重要になります。次の図は、その特殊ペプチドの特徴をよく表しております。 <特殊ペプチドの結合:複数点による結合> ※共同研究開発に伴う当社データ 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊ペプチドです。特殊ペプチドはターゲットタンパクに対して複数のポイント(ここでは3か所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬の場合はこの結合ポイントが1か所であるため、結合力に限界があります。また、1か所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1ケタの暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈にたとえられます。 特殊ペプチドのターゲットタンパクに対する結合の一様式は複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であり、低分子医薬のようにターゲットに対して多くの多様性を持っているうえ、低分子医薬よりもはるかに強固な結合力を保持しております。そのことが、特異性の高さにも結び付いております。<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 抗体医薬は、創薬のターゲットとなるタンパクの表面にしっかりと張り付く形で結合しております。低分子医薬が点(ポイント)で創薬ターゲットタンパクを捉えているのに対して、抗体医薬は面で創薬ターゲットタンパクを捉えていることになります。前頁の図<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>は特殊ペプチド(六角形の集まり)がターゲットタンパク(らせん状のリボン)に結合しているX線結晶構造解析結果です。抗体医薬と同じようにターゲットタンパクの表面にしっかりと絡みついて結合しています。このことから、特殊ペプチドはまさにサイズの小さい抗体医薬といえます。小さいサイズながら抗体医薬とそん色のない特性を持っている理由はこのような結合の形によるものです。 <特殊ペプチドの結合:標的分子の内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は先ほどの<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットタンパクに対する特殊ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊ペプチドはターゲットタンパクの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。抗体医薬ではその大きさの問題からこのようにターゲットタンパクの内側に対する結合様式を持つことはできません。特殊ペプチドは、創薬ターゲットタンパクの特徴に合わせて、特異性の高い強固な複数の結合形態をとることができる多様性を持った医薬品候補物質と言うことができます。これまで説明してきたように、特殊ペプチドが結合したターゲットタンパクのX線結晶構造解析により、どのように特殊ペプチドが働いているのかを詳細に理解することができます。これらの情報をもとに、最先端の創薬技術を活用することで、近年では特殊ペプチドとターゲットタンパクとの結合のしかたを再現するような低分子医薬をデザインすることが可能となってきました。現在当社では特殊ペプチドのような結合力や特異性を有した低分子医薬の開発を進めております。また、特殊ペプチドそのものを医薬品として利用するのではなく、結合力や特異性などの特徴を利用し、生体内の特定の部位や臓器に別の薬剤を送達するキャリアー(運び屋)として利用するPDC(*18)の開発をすることも可能であり、当社では自社パイプライン(*19)の一環としてPDCの研究開発を進めております。 <用語解説>*10ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた化合物。大きさによりペプチド⇒ポリペプチドと呼ばれ、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*11天然型アミノ酸タンパク質・ペプチドを作っている最小の成分。 地球上のあらゆる生命、植物も動物もアミノ酸により作り出される(合成される)タンパク質からできており、アミノ酸はすべての生命の源(素)。通常、合成に利用されるアミノ酸は20種類であり、天然型アミノ酸と呼ばれている。*12特殊ペプチド20種類の天然型アミノ酸から合成された通常の(一般的な)ペプチドに対して非天然型アミノ酸と呼ばれる20種類以外のアミノ酸が組込まれたペプチドの総称。古くからその存在は知られていたが、人工的に合成することが困難であった。*13構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*14生体内安定性生体内にはペプチダーゼという酵素が有り、通常のペプチドはペプチダーゼにより容易に分解されてしまう。*15細胞膜透過性通常のペプチドの多くは細胞の外側構造、細胞膜を透過することができない。細胞内には多くの創薬ターゲットが存在する。*16分子量各原子(水素や酸素など)の原子量(水素は1、酸素は16)の和のこと。たとえば、水分子(H2O)は水素2つと酸素1つで合計18となる。*17タンパク質X線結晶構造解析X線の特徴を利用してタンパク質の三次元構造を立体的に解析する分析方法。タンパク質の実態構造の解析に不可欠な技術。*18PDCペプチド薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと他の薬剤を化学的に結合させた複合体。*19パイプライン医薬品の開発に当たり、その初期の段階から開発・販売に至るまでの一連の計画のこと。 (3) 事業の特徴について① 創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)について特殊ペプチドを医薬品候補物質として活用するためには、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊ペプチドの特徴である特殊アミノ酸(*20)を組み込んで医薬品候補物質として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然型アミノ酸に限られているため、無細胞翻訳系(*21)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*22)として構築できる技術・システムを開発しました。それが、フレキシザイム(Flexizyme)技術であり、FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)であります。 ア. フレキシザイム(Flexizyme)についてフレキシザイムは、当社の創立者の一人である菅裕明・東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、完成させた「多目的tRNA(*23)アシル化(*24)RNA触媒(*25)」です。ペプチドが翻訳合成(*26)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せを基にアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*27)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然型アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。ところが、フレキシザイムは単体でARSに代わりすべてのアミノ酸(非天然型アミノ酸を含む)とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊なアミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊なアミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。そのほか、細胞膜の透過性を持つ特殊ペプチドも採れており、細胞内の標的をターゲットにすることもできるようになりました。イ. FIT(Flexible In-vitro Translation)システムについて次にFITシステムですが、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊ペプチドを下表<医薬品候補物質の多様性の比較>(当社作成)のとおり、FITシステムにより多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築することができるようになりました。低分子医薬のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊ペプチドは低分子医薬の1億倍程度の多様性を持っております。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補物質を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補物質発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補物質を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補物質の多様性の比較> ※当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較低分子医薬104 ~ 1051抗体医薬108 ~ 101010,000特殊ペプチド医薬1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 ウ. RAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムについてRAPIDディスプレイシステムは、特殊ペプチドを短期間でスクリーニング(*28)できる高速のスクリーニングシステムです。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊ペプチドの特徴を生かして、ターゲットタンパクに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)エ. PDPS(Peptide Discovery Platform System)について当社は、フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊ペプチドライブラリーを構築することができるシステム:PDTS(Peptide Discovery Translation System)を作り上げ、さらに特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムをPDDS(Peptide Discovery Display System)と位置付け、この3つの独自技術・システムを組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)を構築しました。 <当社の創薬開発プラットフォームシステムの概念図>(注) なおFITシステムについては、当社においてさらに改良を加え、フレキシザイム技術と組み合わせることによって「PDTS」という独自の翻訳合成系を構築しております。 <用語解説>*20特殊アミノ酸20種類の天然型アミノ酸以外のアミノ酸。非天然型アミノ酸とか異常アミノ酸等とも呼ばれる。*21無細胞翻訳系遺伝情報(遺伝子情報)から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(合成)と呼ばれている。この細胞内でペプチド・タンパクが合成されるメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*22創薬ライブラリー創薬ターゲットタンパクに対して結合する医薬品候補物質(低分子や抗体や特殊ペプチド等)を検索するときに利用する医薬品候補物質が大量に集められた母集団。*23tRNA運搬RNAと呼ばれており、遺伝情報(遺伝子情報)からペプチドやタンパクがリボソームで合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(リボ核酸)。*24アシル化アミノアシル結合を実行するためにアミノ酸のアミノ基等の水素を置換する働き。*25触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*26翻訳合成mRNAの情報に基づいてタンパク質を合成する反応のこと。*27酵素生体でおこる化学反応に対して触媒として機能する分子。*28スクリーニング設定された基準に対して達成されているか否かを判断するために実施される検査。 ② 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発・維持・発展は重要な経営ポイントになります。次の図は、当社の特許ポートフォリオの概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、③(及び①・②)の特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明(④・⑤・⑥・⑦)で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が「システム」として機能するように設計しております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 さらに、この創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)の特許・発明群を各種ライブラリーの発明が取り囲む形にすることにより、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。コアとなる7つの特許・発明の詳細は次の表のとおりです。①と②はニューヨーク州立大学が出願人であり、③・④・⑤・⑦は国立大学法人東京大学が出願人であり、⑥は当社が出願人であります。その他にライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)があり、それらについても随時権利化(出願)を進めております。なお、当社は、ニューヨーク州立大学及び国立大学法人東京大学の上記特許について、第三者サブライセンス権(*29)付き独占実施・許諾権(*30)を取得しております。 <当社の特許ポートフォリオ(*31)>発明の名称出願人出願国出願・特許番号①Catalytic RNAs with Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,001,723 B1CA Patent 2391433EP Patent 1232285 B1特許第4745577号②Ribozymes with Broad tRNA Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,622,248 B2CA Patent 2476425EP Patent 1483282 B1特許第4464684号③多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号④N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202 B1特許第5200241号⑤環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2EP Patent 2990411 B1特許第5605602号⑥ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 2012208720 A1EP Patent 2492344 B1特許第5174971号⑦新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993 B2EP 2610348 A4特許第5725467号CN Patent 103189522 B ①と②はフレキシザイム(Flexizyme)技術開発に関わる基本特許です。③はフレキシザイムそのものに関する特許であり、PDTS(Peptide Discovery Translation System)の中心となる特許であります。⑥は特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることができるRAPIDディスプレイシステムの特許であり、PDDS(Peptide Discovery Display System)の中心となる特許であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)⑦は翻訳合成系にて特殊ペプチドをライブラリー化するFITシステムの発明であり、PDTSの中心となる発明であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。)④はペプチド、タンパクが翻訳合成されるとき、Met(メチオニン)というアミノ酸から合成が開始されるという生命の基本的なルールを書き換えることを可能にした技術特許です。この技術特許によりMet(メチオニン)以外のあらゆるアミノ酸から合成を開始することができるようになりました。当社は、この技術により、合成するペプチドの形状を自由に変えることができるようになり、特殊ペプチドに対し従来では考えられなかった多様性を持たせることが可能になりました。⑤はペプチドを特殊な環状化構造(*32)にする発明です。この技術により特殊ペプチドが生体内での安定性や構造の安定性を確保することができるようになりました。以上、①から⑦までの特許によって当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)が構成されております。さらに、概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊ペプチドライブラリーを作成する技術であり、これらにより特殊ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊ペプチドをスクリーニングする技術であり、各種機能を持ちうる特殊ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されますが、この発明はクライアントとは関係なく発生したものであります。 <用語解説>*29第三者サブライセンス権特許をライセンスするときには、特許権者(ライセンサー)と実施権者(ライセンシー)の関係が生じます。ライセンシーは自己の特許権を強化するために第三者に対する再実施権(サブライセンス)を獲得することが好まれます。*30独占実施・許諾権特許の実施権は独占と非独占があり、独占実施権はより強い効力を持っており、加えて第三者に対する許諾権(再実施権=サブライセンス権)を持つことにより、最も強固な特許契約となります。*31特許ポートフォリオ特許権侵害などの危険性を回避し、自社の特許権を強固なものにするために自社特許権の強み弱点を分析し、複数の特許群で対外的な守りを作り上げること。*32特殊な環状化構造生体内で壊れやすいペプチドの特徴を改善するために開発された環状化構造。通常の環状化構造がジスフィルド環状化結合と呼ばれるのに対して、この構造はチオエーテル環状化構造と呼ばれる。 (4) 当社のビジネスモデルについて当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントから標的分子(ターゲットタンパク)を受領し、その標的分子ごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図(<当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ>)は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金(A)」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価として標的分子ごとに「研究開発支援金(B)」を原則として前受にて受領しております。また、追加業務が発生する場合の対価として「追加研究開発支援金(C)」を標的分子ごとに設定しており、プロジェクトによっては(C)の売上が発生します。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。その後、クライアントでの評価により医薬品候補物質が特定され、クライアントが前臨床試験、臨床試験の段階に進む場合には、当該特殊ペプチドを当社がクライアントにライセンスアウトすることの対価として「創薬開発権利金(D)」が発生します。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊ペプチドを提供した後(すなわち(B)・(C)より後のフェーズ)は、医薬品候補物質に係る開発の進捗はクライアントに委ねられており、当社でのコントロール及び売上予測は極めて困難になるという特徴があります。 <当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ> (D)以降も引き続き開発が進みクライアントでの評価ステップを経て、臨床試験等の段階に移行すれば、その段階に応じて、各「目標達成報奨金(E)」「売上ロイヤルティ(E)」を当社は受領することになります。「売上ロイヤルティ」では、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティ」として当社が受領します。加えて、上市された医薬品の売上高が所定の金額に達した場合には「売上達成報奨金(E)」も受領します。 当社の共同研究開発契約の特徴としては、このように初期のディスカバリーステップから、売上が発生する取り決めとなっていることのほかに、最初の契約締結時において契約一時金から売上ロイヤルティまでのすべての売上カテゴリー(P)に関して、それらの金額又は金額の計算方法が原則として確定的に規定されていることが挙げられます。これまでのビジネスモデルでは、初期のディスカバリーステップは「フィージビリティースタディ」(*33)と評価され、売上が発生しないケースが多かったと認識しておりますが、当社のビジネスモデルでは、早期に売上を生み出すために上記の契約内容で契約を締結することに注力しております。当社の事業セグメントは、上記のとおり製薬企業との共同研究開発契約をもとにした「アライアンス事業」1本です。共同研究開発の取り組みを通じて、共同研究開発先からの要望により、共同研究開発先との間で当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS技術を貸与する(技術ライセンス契約の締結)ことがあります。当該契約を締結した場合、当社はその契約内容に応じて種々のライセンスフィーを共同研究開発先から受領します。 <用語解説>*33フィージビリティースタディ計画された事業やプロジェクト、技術等が実現可能か否か、利用することに意義や妥当性があるかを多角的に検討すること。
FY2017|14,282 文字
3 【事業の内容】(1) 事業の概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用して、国内外の製薬企業との共同研究開発のもと、新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。当社の事業の系統図は、次のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図>(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(4) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊ペプチド医薬に特化した事業を展開しております。「特殊ペプチド」とは、当社窪田(現当社代表取締役)の造語ですが、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んだ特殊なペプチドをいいます。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊ペプチドから医薬品候補物質を創製することを主たる事業としております。特殊ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)です。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子(ターゲットタンパク)に対して適した特殊ペプチドを短期間でスクリーニングすることができるようになりました。当社の事業の概要は、次のとおりであります。(A)共同研究開発:当社と製薬企業との間で共同研究開発契約を締結すると、当社は、製薬企業から契約一時金、研究開発支援金等の売上金及び標的分子(ターゲットタンパク)を受領します。その後、当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子に対してアフィニティ(他の分子との特異的な親和性)のある特殊ペプチドをPDPSにより高速でスクリーニングして製薬企業に提供します。提供された特殊ペプチドは、その後、製薬企業において創薬開発が進められることになりますが、製薬企業の創薬開発が成功裡に進めば、当社は創薬開発の進捗段階に応じて、当該特殊ペプチドに係る製品の上市に至るまで及び上市後においても契約に基づき種々の対価を受領することができます。(B)PDPS技術貸与(PDPS技術ライセンス):当社との共同研究開発を通じて、製薬企業は当社のPDPSが持つ能力に関心を抱くようになり、製薬企業からPDPSを当該製薬企業内で使いたいとの要望が出てくるようになりました。これを受けて、当社では研究開発コラボレーションの一環として、共同研究開発先に対してPDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約 、技術貸与)を行っています。(C)戦略的提携/自社創薬:当社は、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)を複数本有しており、これらの医薬品候補物質を医薬品にするため、自社内で研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を組むことで、自社のパイプラインの拡充を図っています。 (2) 創薬の歴史と(特殊)ペプチドの位置付け 創薬開発の歴史的スタートは、明治30年(1897年)にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリン(*2)が市販された明治32年(1899年)だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*3)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。1980年代には抗体(*4)を医薬品に利用するべく研究がすすめられましたが抗原性の問題(*5)等により、実用には至りませんでした。その後も、欧米の製薬企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、平成9年(1997年)頃から抗体医薬品(*6)が発売され、2000年代は抗体医薬品が創薬開発の中心になっております。しかし、低分子医薬、抗体医薬とも医薬品として素晴らしい特性はあるものの、一方でそれぞれいくつかのウイークポイントも持っております。(下表<低分子医薬と抗体医薬の特徴>参照)そのため現在、世界の多くの大手製薬企業はおよそ10年後を目処にした低分子医薬・抗体医薬に続く次世代の創薬開発を目指し、積極的な活動を行っております。 <低分子医薬と抗体医薬の特徴> ※当社見解に基づく/当社作成 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発においてもととなる医薬品候補物質(プレリード化合物)を創出するための基盤となる技術。なお、リード化合物とは、医薬品の原料となりうる生理活性を持つ化合物のことであり、新薬の開発は、リード化合物を創製することから始まる。*2アスピリン代表的な消炎鎮痛剤。消炎・解熱・鎮痛作用を持つ。*3低分子医薬分子と分子の結びつきが短い、分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された化合物による創薬の総称。*4抗体体内に侵入した異物に対して生体が作り出すタンパク質の総称。*5抗原性の問題本来、薬として利用されるべき抗体を生体が異物としてとらえてしまい副作用が生じたり、排除されてしまう問題。*6抗体医薬品医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*7免疫排除生体内において異物ととらえられてしまうことにより排除されてしまう機能。抗体医薬の場合、薬効が低下したり、効かなくなる現象。*8生体内毒性本来反応すべきでない分子に対して反応してしまうことによって起きる毒性(弊害)。*9蛋白・蛋白相互作用複数の異なるタンパク質分子が特異的結合する現象。それにより、生体内において各種の生理作用が生じる。 一般的にいわれるペプチド(*10)は、2個以上の天然型アミノ酸(*11)が結合して作られた化合物の総称であり、生体内においては、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補物質として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っていませんでした。これに対し、当社が創出する新しい医薬品候補物質、すなわち特殊ペプチド(*12)は、下表<一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い>(当社作成)のとおり、今までの一般的なペプチドの(医薬品候補物質としての)問題点の多くを解決することにより、医薬品候補物質としてよりふさわしい特徴を持つことができる可能性があると期待されています。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*13)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*14)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*15)多くの場合、細胞膜は透過できない。高い確率で細胞膜を透過できる。 これまでの医薬品の中心である低分子医薬と抗体医薬は、医薬品としての優位点と共に問題点も併せ持っております。たとえば、低分子医薬は、下表<低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較>(当社作成)のとおり、分子量(*16)が相対的に小さく様々な種類のターゲット(標的分子)に対応できること(ターゲットの多様性)が優位点です。その一方で、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、標的とするターゲットに結合せずに結合すべきでない分子に結合してしまうことなどにより、多くの副作用を引き起こしてしまう(生体内毒性が低くない)リスクが相対的に高いことが問題点となります。一方、抗体医薬は、低分子医薬に比べてその分子量が非常に大きいため、ターゲットの多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点になります。しかし、その大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できず経口投与ができないことや、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いことなどの問題点も数多く存在します。低分子医薬や抗体医薬に比べて、特殊ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、下表<低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較>(当社作成)のとおり、従来の低分子医薬や抗体医薬の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較> ※当社作成 低分子医薬特殊ペプチド医薬抗体医薬分子量(Da)50 ~ 1,000500 ~ 2,00050,000 ~ 150,000 <低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較> ※当社見解に基づく/当社作成相対的な特徴低分子医薬抗体医薬特殊ペプチド医薬迅速な研究開発が可能×○○ターゲットに対する強い結合力×○○ターゲットに対する強い特異性×○○生体内毒性が低い×○○タンパク・タンパク阻害反応×○○高い生体内安定性×○○ターゲットの多様性の多さ○×○細胞内のターゲットに対応○×○経口投与が可能○×○大量製造の容易さ○×△低い生体内免疫反応性○×○ (注) 「○」は備える又は優れると思われる能力 / 「△」は備えると期待される能力「×」は備えていない又は劣ると思われる能力 次に、このような特殊ペプチドのターゲットに対する強い結合力を視覚的に説明するために特殊ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合している状況を分析したデータに基づくイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析(*17))を掲示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。つまり、創薬のターゲットタンパクに強く特異的に結合することが重要になります。次の図は、その特殊ペプチドの特徴をよく表しております。 <特殊ペプチドの結合:複数点による結合> ※共同研究開発に伴う当社データ 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊ペプチドです。特殊ペプチドはターゲットタンパクに対して複数のポイント(ここでは3か所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬の場合はこの結合ポイントが1か所であるため、結合力に限界があります。また、1か所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1ケタの暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈にたとえられます。 特殊ペプチドのターゲットタンパクに対する結合の一様式は複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であり、低分子医薬のようにターゲットに対して多くの多様性を持っているうえ、低分子医薬よりもはるかに強固な結合力を保持しております。そのことが、特異性の高さにも結び付いております。<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 抗体医薬は、創薬のターゲットとなるタンパクの表面にしっかりと張り付く形で結合しております。低分子医薬が点(ポイント)で創薬ターゲットタンパクを捉えているのに対して、抗体医薬は面で創薬ターゲットタンパクを捉えていることになります。前頁の図<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>は特殊ペプチド(六角形の集まり)がターゲットタンパク(らせん状のリボン)に結合しているX線結晶構造解析結果です。抗体医薬と同じようにターゲットタンパクの表面にしっかりと絡みついて結合しています。このことから、特殊ペプチドはまさにサイズの小さい抗体医薬といえます。小さいサイズながら抗体医薬とそん色のない特性を持っている理由はこのような結合の形によるものです。 <特殊ペプチドの結合:標的分子の内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は先ほどの<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットタンパクに対する特殊ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊ペプチドはターゲットタンパクの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。抗体医薬ではその大きさの問題からこのようにターゲットタンパクの内側に対する結合様式を持つことはできません。特殊ペプチドは、創薬ターゲットタンパクの特徴に合わせて、特異性の高い強固な複数の結合形態をとることができる多様性を持った医薬品候補物質と言うことができます。これまで説明してきたように、特殊ペプチドが結合したターゲットタンパクのX線結晶構造解析により、どのように特殊ペプチドが働いているのかを詳細に理解することができます。これらの情報をもとに、最先端の創薬技術を活用することで、近年では特殊ペプチドとターゲットタンパクとの結合のしかたを再現するような低分子医薬をデザインすることが可能となってきました。現在当社では特殊ペプチドのような結合力や特異性を有した低分子医薬の開発を進めております。また、特殊ペプチドそのものを医薬品として利用するのではなく、結合力や特異性などの特徴を利用し、生体内の特定の部位や臓器に別の薬剤を送達するキャリアー(運び屋)として利用するPDC(*18)の開発をすることも可能であり、当社では自社パイプライン(*19)の一環としてPDCの研究開発を進めております。 <用語解説>*10ペプチドアミノ酸が2つ以上結合してできた化合物。大きさによりペプチド⇒ポリペプチドと呼ばれ、さらに大きくなったものがタンパク質と呼称される。*11天然型アミノ酸タンパク質・ペプチドを作っている最小の成分。 地球上のあらゆる生命、植物も動物もアミノ酸により作り出される(合成される)タンパク質からできており、アミノ酸はすべての生命の源(素)。通常、合成に利用されるアミノ酸は20種類であり、天然型アミノ酸と呼ばれている。*12特殊ペプチド20種類の天然型アミノ酸から合成された通常の(一般的な)ペプチドに対して非天然型アミノ酸と呼ばれる20種類以外のアミノ酸が組込まれたペプチドの総称。古くからその存在は知られていたが、人工的に合成することが困難であった。*13構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*14生体内安定性生体内にはペプチダーゼという酵素が有り、通常のペプチドはペプチダーゼにより容易に分解されてしまう。*15細胞膜透過性通常のペプチドの多くは細胞の外側構造、細胞膜を透過することができない。細胞内には多くの創薬ターゲットが存在する。*16分子量各原子(水素や酸素など)の原子量(水素は1、酸素は16)の和のこと。たとえば、水分子(H2O)は水素2つと酸素1つで合計18となる。*17タンパク質X線結晶構造解析X線の特徴を利用してタンパク質の三次元構造を立体的に解析する分析方法。タンパク質の実態構造の解析に不可欠な技術。*18PDCペプチド薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)のことであり、ペプチドと他の薬剤を化学的に結合させた複合体。*19パイプライン医薬品の開発に当たり、その初期の段階から開発・販売に至るまでの一連の計画のこと。 (3) 事業の特徴について① 創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)について特殊ペプチドを医薬品候補物質として活用するためには、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊ペプチドの特徴である特殊アミノ酸(*20)を組み込んで医薬品候補物質として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然型アミノ酸に限られているため、無細胞翻訳系(*21)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*22)として構築できる技術・システムを開発しました。それが、フレキシザイム(Flexizyme)技術であり、FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)であります。 ア. フレキシザイム(Flexizyme)についてフレキシザイムは、当社の創立者の一人である菅裕明・東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、完成させた「多目的tRNA(*23)アシル化(*24)RNA触媒(*25)」です。ペプチドが翻訳合成(*26)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せを基にアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*27)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然型アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。ところが、フレキシザイムは単体でARSに代わりすべてのアミノ酸(非天然型アミノ酸を含む)とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊なアミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊なアミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。そのほか、細胞膜の透過性を持つ特殊ペプチドも採れており、細胞内の標的をターゲットにすることもできるようになりました。イ. FIT(Flexible In-vitro Translation)システムについて次にFITシステムですが、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊ペプチドを下表<医薬品候補物質の多様性の比較>(当社作成)のとおり、FITシステムにより多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築することができるようになりました。低分子医薬のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊ペプチドは低分子医薬の1億倍程度の多様性を持っております。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補物質を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補物質発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補物質を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補物質の多様性の比較> ※当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較低分子医薬104 ~ 1051抗体医薬108 ~ 101010,000特殊ペプチド医薬1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 ウ. RAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムについてRAPIDディスプレイシステムは、特殊ペプチドを短期間でスクリーニング(*28)できる高速のスクリーニングシステムです。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊ペプチドの特徴を生かして、ターゲットタンパクに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)エ. PDPS(Peptide Discovery Platform System)について当社は、フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊ペプチドライブラリーを構築することができるシステム:PDTS(Peptide Discovery Translation System)を作り上げ、さらに特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムをPDDS(Peptide Discovery Display System)と位置付け、この3つの独自技術・システムを組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)を構築しました。 <当社の創薬開発プラットフォームシステムの概念図>(注) なおFITシステムについては、当社においてさらに改良を加え、フレキシザイム技術と組み合わせることによって「PDTS」という独自の翻訳合成系を構築しております。 <用語解説>*20特殊アミノ酸20種類の天然型アミノ酸以外のアミノ酸。非天然型アミノ酸とか異常アミノ酸等とも呼ばれる。*21無細胞翻訳系遺伝情報(遺伝子情報)から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(合成)と呼ばれている。この細胞内でペプチド・タンパクが合成されるメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*22創薬ライブラリー創薬ターゲットタンパクに対して結合する医薬品候補物質(低分子や抗体や特殊ペプチド等)を検索するときに利用する医薬品候補物質が大量に集められた母集団。*23tRNA運搬RNA(遺伝子)と呼ばれており、遺伝情報(遺伝子情報)からペプチドやタンパクが合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(遺伝子)。*24アシル化アミノアシル結合を実行するためにアミノ酸のアミノ基等の水素を置換する働き。*25触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*26翻訳合成mRNAの情報に基づいてタンパク質を合成する反応のこと。*27酵素生体でおこる化学反応に対して触媒として機能する分子。*28スクリーニング設定された基準に対して達成されているか否かを判断するために実施される検査。 ② 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発・維持・発展は重要な経営ポイントになります。次の図は、当社の特許ポートフォリオの概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、③(及び①・②)の特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明(④・⑤・⑥・⑦)で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が「システム」として機能するように設計しております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 さらに、この創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)の特許・発明群を各種ライブラリーの発明が取り囲む形にすることにより、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。コアとなる7つの特許・発明の詳細は次の表のとおりです。①と②はニューヨーク州立大学が出願人であり、③・④・⑤・⑦は国立大学法人東京大学が出願人であり、⑥は当社が出願人であります。その他にライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)があり、それらについても随時権利化(出願)を進めております。なお、当社は、ニューヨーク州立大学及び国立大学法人東京大学の上記特許について、第三者サブライセンス権(*29)付き独占実施・許諾権(*30)を取得しております。 <当社の特許ポートフォリオ(*31)>発明の名称出願人出願国出願・特許番号①Catalytic RNAs with Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,001,723CA Patent 2391433EP Patent 1232285特許第4745577号②Ribozymes with Broad tRNA Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,622,248CA Patent 2476425EP Patent 1483282特許第4464684号③多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260EP Patent 1964916特許第5119444号④N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542EP Patent 2088202特許第5200241号⑤環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668EP Patent 2141175特許第5605602号⑥ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 13/502,487EP Patent 2492344特許第5174971号⑦新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US Patent 9,701,993EP 11820026特許第5725467号CN Patent 201180052318.9 ①と②はフレキシザイム(Flexizyme)技術開発に関わる基本特許です。③はフレキシザイムそのものに関する特許であり、PDTS(Peptide Discovery Translation System)の中心となる特許であります。⑥は特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることができるRAPIDディスプレイシステムの特許であり、PDDS(Peptide Discovery Display System)の中心となる特許であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)⑦は翻訳合成系にて特殊ペプチドをライブラリー化するFITシステムの発明であり、PDTSの中心となる発明であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。)④はペプチド、タンパクが翻訳合成されるとき、Met(メチオニン)というアミノ酸から合成が開始されるという生命の基本的なルールを書き換えることを可能にした技術特許です。この技術特許によりMet(メチオニン)以外のあらゆるアミノ酸から合成を開始することができるようになりました。当社は、この技術により、合成するペプチドの形状を自由に変えることができるようになり、特殊ペプチドに対し従来では考えられなかった多様性を持たせることが可能になりました。⑤はペプチドを特殊な環状化構造(*32)にする発明です。この技術により特殊ペプチドが生体内での安定性や構造の安定性を確保することができるようになりました。以上、①から⑦までの特許によって当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)が構成されております。さらに、概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊ペプチドライブラリーを作成する技術であり、これらにより特殊ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊ペプチドをスクリーニングする技術であり、各種機能を持ちうる特殊ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されますが、この発明はクライアントとは関係なく発生したものであります。 <用語解説>*29第三者サブライセンス権特許をライセンスするときには、特許権者(ライセンサー)と実施権者(ライセンシー)の関係が生じます。ライセンシーは自己の特許権を強化するために第三者に対する再実施権(サブライセンス)を獲得することが好まれます。*30独占実施・許諾権特許の実施権は独占と非独占があり、独占実施権はより強い効力を持っており、加えて第三者に対する許諾権(再実施権=サブライセンス権)を持つことにより、最も強固な特許契約となります。*31特許ポートフォリオ特許権侵害などの危険性を回避し、自社の特許権を強固なものにするために自社特許権の強み弱点を分析し、複数の特許群で対外的な守りを作り上げること。*32特殊な環状化構造生体内で壊れやすいペプチドの特徴を改善するために開発された環状化構造。通常の環状化構造がジスフィルド環状化結合と呼ばれるのに対して、この構造はチオエーテル環状化構造と呼ばれる。 (4) 当社のビジネスモデルについて当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントから標的分子(ターゲットタンパク)を受領し、その標的分子ごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図(<当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ>)は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金(A)」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価として標的分子ごとに「研究開発支援金(B)」を原則として前受にて受領しております。また、追加業務が発生する場合の対価として「追加研究開発支援金(C)」を標的分子ごとに設定しており、プロジェクトによっては(C)の売上が発生します。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。その後、クライアントでの評価により医薬品候補物質が特定され、クライアントが前臨床試験、臨床試験の段階に進む場合には、当該特殊ペプチドを当社がクライアントにライセンスアウトすることの対価として「創薬開発権利金(D)」が発生します。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊ペプチドを提供した後(すなわち(B)・(C)より後のフェーズ)は、医薬品候補物質に係る開発の進捗はクライアントに委ねられており、当社でのコントロール及び売上予測は極めて困難になるという特徴があります。 <当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ> (D)以降も引き続き開発が進みクライアントでの評価ステップを経て、臨床試験等の段階に移行すれば、その段階に応じて、各「目標達成報奨金(E)」「売上ロイヤルティ(E)」を当社は受領することになります。「売上ロイヤルティ」では、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティ」として当社が受領します。加えて、上市された医薬品の売上高が所定の金額に達した場合には「売上達成報奨金(E)」も受領します。 当社の共同研究開発契約の特徴としては、このように初期のディスカバリーステップから、売上が発生する取り決めとなっていることのほかに、最初の契約締結時において契約一時金から売上ロイヤルティまでのすべての売上カテゴリー(P)に関して、それらの金額又は金額の計算方法が原則として確定的に規定されていることが挙げられます。これまでのビジネスモデルでは、初期のディスカバリーステップは「フィージビリティースタディ」(*33)と評価され、売上が発生しないケースが多かったと認識しておりますが、当社のビジネスモデルでは、早期に売上を生み出すために上記の契約内容で契約を締結することに注力しております。当社の事業セグメントは、上記のとおり製薬企業との共同研究開発契約をもとにした「アライアンス事業」1本です。共同研究開発の取り組みを通じて、共同研究開発先からの要望により、共同研究開発先との間で当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS技術を貸与する(技術ライセンス契約の締結)ことがあります。当該契約を締結した場合、当社はその契約内容に応じて種々のライセンスフィーを共同研究開発先から受領します。 <用語解説>*33フィージビリティースタディ計画された事業やプロジェクト、技術等が実現可能か否か、利用することに意義や妥当性があるかを多角的に検討すること。
FY2016|13,919 文字
3 【事業の内容】(1) 事業の概要当社は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用して、国内外の製薬企業との共同研究開発のもと、新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。当社の事業の系統図は、次のとおりです。なお、当社のセグメントはアライアンス事業のみの単一セグメントであります。 <事業系統図>(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(4) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。 当社は、特殊ペプチド医薬に特化した事業を展開しております。「特殊ペプチド」とは、当社窪田(現当社代表取締役)の造語ですが、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んだ特殊なペプチドをいいます。当社では、後述のとおり創薬に適していると考えられるこの特殊ペプチドから医薬品候補物質を創製することを主たる事業としております。特殊ペプチドによって創薬開発を行うことを可能にするため、当社は創業以来、創薬開発基盤システムを創り上げることに注力してまいりました。その成果が、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)です。当社は、このPDPSにより、多様性を持った特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子(ターゲットタンパク)に対して適した特殊ペプチドを短期間でスクリーニングすることができるようになりました。当社の事業の概要は、次のとおりであります。(A)共同研究開発:当社と製薬企業との間で共同研究開発契約を締結すると、当社は、製薬企業から契約一時金、研究開発支援金等の売上金及び標的分子(ターゲットタンパク)を受領します。その後、当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製し、標的分子に対してアフィニティ(他の分子との特異的な親和性)のある特殊ペプチドをPDPSにより高速でスクリーニングして製薬企業に提供します。提供された特殊ペプチドは、その後、製薬企業において創薬開発が進められることになりますが、製薬企業の創薬開発が成功裡に進めば、当社は創薬開発の進捗段階に応じて、当該特殊ペプチドに係る製品の上市に至るまで及び上市後においても契約に基づき種々の対価を受領することができます。(B)PDPS技術貸与(PDPS技術ライセンス):当社との共同研究開発を通じて、製薬企業は当社のPDPSが持つ能力に関心を抱くようになり、製薬企業からPDPSを当該製薬企業内で使いたいとの要望が出てくるようになりました。これを受けて、当社では研究開発コラボレーションの一環として、共同研究開発先に対してPDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約 、技術貸与)を行っています。(C)自社創薬:当社では自社パイプラインを複数本有しており、これらの医薬品候補物質を医薬品にするため、自社内で研究開発を進めています。 (2) 創薬の歴史と(特殊)ペプチドの位置付け 創薬開発の歴史的スタートは、明治30年(1897年)にバイエル社の研究者によって開発されたアスピリン(*2)が市販された明治32年(1899年)だとされております。それから100年以上にわたり低分子医薬品(*3)が創薬の中心的なポジションを占めてきました。1980年代には抗体(*4)を医薬品に利用するべく研究がすすめられましたが抗原性の問題(*5)等により、実用には至りませんでした。その後も、欧米の製薬企業が長期にわたり研究開発を進めた結果、平成9年(1997年)頃から抗体医薬品(*6)が発売され、2000年代は抗体医薬品が創薬開発の中心になっております。しかし、低分子医薬、抗体医薬とも医薬品として素晴らしい特性はあるものの、一方でそれぞれいくつかのウイークポイントも持っております。(下表<低分子医薬と抗体医薬の特徴>参照)そのため現在、世界の多くの大手製薬企業はおよそ10年後を目処にした低分子医薬・抗体医薬に続く次世代の創薬開発を目指し、積極的な活動を行っております。 <低分子医薬と抗体医薬の特徴> ※当社見解に基づく/当社作成 <用語解説>*1創薬開発プラットフォームシステム創薬開発においてもととなる医薬品候補物質(プレリード化合物)を創出するための基盤となる技術。なお、リード化合物とは、医薬品の原料となりうる生理活性を持つ化合物のことであり、新薬の開発は、リード化合物を創製することから始まる。*2アスピリン代表的な消炎鎮痛剤。消炎・解熱・鎮痛作用を持つ。*3低分子医薬分子と分子の結びつきが短い、分子の大きさ(分子量)が1,000未満の化学的に合成された化合物による創薬の総称。*4抗体体内に侵入した異物に対して生体が作り出すタンパク質の総称。*5抗原性の問題本来、薬として利用されるべき抗体を生体が異物としてとらえてしまい副作用が生じたり、排除されてしまう問題。*6抗体医薬品医薬品として抗体を活用した創薬の総称。*7免疫排除生体内において異物ととらえられてしまうことにより排除されてしまう機能。抗体医薬の場合、薬効が低下したり、効かなくなる現象。*8生体内毒性本来反応すべきでない分子に対して反応してしまうことによって起きる毒性(弊害)。*9蛋白・蛋白相互作用複数の異なるタンパク質分子が特異的結合する現象。それにより、生体内において各種の生理作用が生じる。 一般的にいわれるペプチド(*10)は、2個以上の天然型アミノ酸(*11)が結合して作られた化合物の総称であり、生体内においては、ホルモンや各種伝達物質として働く生体にとって不可欠なものです。ペプチドは生体内で重要な働きを担っていることから、古くから創薬の候補物質として注目されていました。しかしながら、少数の事例を除き、いくつかの問題点により創薬に結びつくまでには至っていませんでした。これに対し、当社が創出する新しい医薬品候補物質、すなわち特殊ペプチド(*12)は、下表<一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い>(当社作成)のとおり、今までの一般的なペプチドの(医薬品候補物質としての)問題点の多くを解決することにより、医薬品候補物質としてよりふさわしい特徴を持つことができる可能性があると期待されています。 <一般的なペプチドと特殊ペプチドの違い> ※当社見解に基づく/当社作成 一般的なペプチド特殊ペプチド組成及び構造20種類の(天然型)アミノ酸によって構成されており、多くは線状。通常のアミノ酸以外に、特殊なアミノ酸が組み込まれており、多くは環状。構造安定性(*13)柔軟であるが、構造をとりにくい。柔軟であり、構造が安定している。生体内安定性(*14)生体内では短時間で分解されてしまう。生体内でも安定している。細胞膜透過性(*15)多くの場合、細胞膜は透過できない。高い確率で細胞膜を透過できる。 これまでの医薬品の中心である低分子医薬と抗体医薬は、医薬品としての優位点と共に問題点も併せ持っております。たとえば、低分子医薬は、下表<低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較>(当社作成)のとおり、分子量(*16)が相対的に小さく様々な種類のターゲット(標的分子)に対応できること(ターゲットの多様性)が優位点です。その一方で、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、標的とするターゲットに結合せずに結合すべきでない分子に結合してしまうことなどにより、多くの副作用を引き起こしてしまう(生体内毒性が低くない)リスクが相対的に高いことが問題点となります。一方、抗体医薬は、低分子医薬に比べてその分子量が非常に大きいため、ターゲットの多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点になります。しかし、その大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できず経口投与ができないことや、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いことなどの問題点も数多く存在します。低分子医薬や抗体医薬に比べて、特殊ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、下表<低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較>(当社作成)のとおり、従来の低分子医薬や抗体医薬の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。 <低分子医薬・特殊ペプチド医薬・抗体医薬の分子量比較> ※当社作成 低分子医薬特殊ペプチド医薬抗体医薬分子量(Da)50 ~ 1,000500 ~ 2,00050,000 ~ 150,000 <低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較> ※当社見解に基づく/当社作成相対的な特徴低分子医薬抗体医薬特殊ペプチド医薬迅速な研究開発が可能×○○ターゲットに対する強い結合力×○○ターゲットに対する強い特異性×○○生体内毒性が低い×○○タンパク・タンパク阻害反応×○○高い生体内安定性×○○ターゲットの多様性の多さ○×○細胞内のターゲットに対応○×○経口投与が可能○×○大量製造の容易さ○×△低い生体内免疫反応性○×○ (注) 「○」は備える又は優れると思われる能力 / 「△」は備えると期待される能力「×」は備えていない又は劣ると思われる能力 次に、このような特殊ペプチドのターゲットに対する強い結合力を視覚的に説明するために特殊ペプチドが創薬のターゲットとなるタンパク質に結合している状況を分析したデータに基づくイメージ画像(タンパク質X線結晶構造解析(*17))を掲示します。医薬品は、創薬のターゲットとなるタンパクに結合し働くこと(生理活性)により、薬としての機能を発揮します。つまり、創薬のターゲットタンパクに強く特異的に結合することが重要になります。次の図は、その特殊ペプチドの特徴をよく表しております。 <特殊ペプチドの結合:複数点による結合> ※共同研究開発に伴う当社データ 左図のらせん状の帯の部分が創薬のターゲットとなるタンパクです。そのうえのマッチ棒の様な集まりが特殊ペプチドです。特殊ペプチドはターゲットタンパクに対して複数のポイント(ここでは3か所・点線丸)において結合しております。 低分子医薬の場合はこの結合ポイントが1か所であるため、結合力に限界があります。また、1か所の結合ポイントだと他のタンパクとの違いを見出すことも困難になります。これは、1ケタの暗号数字では特異性(選択性)が低いということと同じ理屈にたとえられます。 特殊ペプチドのターゲットタンパクに対する結合の一様式は複数のアンカーを複数のポイントに対して打ち込んだ形であり、低分子医薬のようにターゲットに対して多くの多様性を持っているうえ、低分子医薬よりもはるかに強固な結合力を保持しております。そのことが、特異性の高さにも結び付いております。<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 抗体医薬は、創薬のターゲットとなるタンパクの表面にしっかりと張り付く形で結合しております。低分子医薬が点(ポイント)で創薬ターゲットタンパクを捉えているのに対して、抗体医薬は面で創薬ターゲットタンパクを捉えていることになります。前頁の図<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>は特殊ペプチド(六角形の集まり)がターゲットタンパク(らせん状のリボン)に結合しているX線結晶構造解析結果です。抗体医薬と同じようにターゲットタンパクの表面にしっかりと絡みついて結合しています。このことから、特殊ペプチドはまさにサイズの小さい抗体医薬といえます。小さいサイズながら抗体医薬とそん色のない特性を持っている理由はこのような結合の形によるものです。 <特殊ペプチドの結合:標的分子の内側に潜り込んで絡みついて結合している様子> ※Suga & Nureki Lab.データ 上図は先ほどの<特殊ペプチドの結合:標的分子の表面に絡みついて結合している様子>の図とは異なるターゲットタンパクに対する特殊ペプチドのX線結晶構造解析結果です。特殊ペプチドはターゲットタンパクの表面ではなく内側に潜り込み絡み付くように結合しているのがわかります。抗体医薬ではその大きさの問題からこのようにターゲットタンパクの内側に対する結合様式を持つことはできません。特殊ペプチドは、創薬ターゲットタンパクの特徴に合わせて、特異性の高い強固な複数の結合形態をとることができる多様性を持った医薬品候補物質と言うことができます。また、この特徴を生かしてDDS製剤(*18)の開発をすることも可能であり、当社では自社パイプライン(*19)の一環として研究開発を進めております。 <用語解説>*10ペプチド最もサイズが小さいタンパク質。大きさによりペプチド⇒ポリペプチド⇒タンパク質と呼称される。*11天然型アミノ酸タンパク質・ペプチドを作っている最小の成分。 地球上のあらゆる生命、植物も動物もアミノ酸により作り出される(合成される)タンパク質からできており、アミノ酸はすべての生命の源(素)。通常、合成に利用されるアミノ酸は20種類であり、天然型アミノ酸と呼ばれている。*12特殊ペプチド20種類の天然型アミノ酸から合成された通常の(一般的な)ペプチドに対して非天然型アミノ酸と呼ばれる20種類以外のアミノ酸が組込まれたペプチドの総称。古くからその存在は知られていたが、人工的に合成することが困難であった。*13構造安定性立体構造等、形状が安定した構造のこと。通常のペプチドはアミノ酸が線状につながった構造をしており、柔軟な構造であるが故に形状が安定していない例が多い。*14生体内安定性生体内にはペプチダーゼという酵素が有り、通常のペプチドはペプチダーゼにより容易に分解されてしまう。*15細胞膜透過性通常のペプチドの多くは細胞の外側構造、細胞膜を透過することができない。細胞内には多くの創薬ターゲットが存在する。*16分子量各原子(水素や酸素など)の原子量(水素は1、酸素は16)の和のこと。たとえば、水分子(H2O)は水素2つと酸素1つで合計18となる。*17タンパク質X線結晶構造解析X線の特徴を利用してタンパク質の三次元構造を立体的に解析する分析方法。タンパク質の実態構造の解析に不可欠な技術。*18DDS製剤薬物送達システム(Drug Delivery System)のことであり、医薬品の効果をよりよく発揮させるために、薬物の投与方法や投与形態を検討して創造された医薬品のこと。*19パイプライン医薬品の開発に当たり、その初期の段階から開発・販売に至るまでの一連の計画のこと。 (3) 事業の特徴について① 創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)について特殊ペプチドを医薬品候補物質として活用するためには、多くのハードルを越えなければなりませんでした。これまで、特殊ペプチドの特徴である特殊アミノ酸(*20)を組み込んで医薬品候補物質として活用するためには、多くの時間や労力を要し、容易ではありませんでした。また、生体(細胞)がペプチドを作るときに組み込めるアミノ酸の種類は20種類の天然型アミノ酸に限られているため、無細胞翻訳系(*21)によっても合成することができませんでした。当社は、それらの問題点を解決し、特殊ペプチドを大規模な創薬ライブラリー(*22)として構築できる技術・システムを開発しました。それが、フレキシザイム(Flexizyme)技術であり、FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)であります。 ア. フレキシザイム(Flexizyme)についてフレキシザイムは、当社の創立者の一人である菅裕明・東京大学教授が、長期にわたる研究の結果、完成させた「多目的tRNA(*23)アシル化(*24)RNA触媒(*25)」です。ペプチドが翻訳合成(*26)されるときアミノ酸ごとに1種類の特定のtRNAが結合します。これがアミノアシル結合と呼ばれる現象です。アミノ酸とtRNAは特定の対の関係になっており、その対の組合せを基にアミノ酸とtRNAをアミノアシル結合させるのがARS(アミノアシルtRNAシンセテース)と呼ばれる酵素(*27)です。ARSもアミノ酸とtRNAの対の組合せと同じように特定の対の関係があります。アミノ酸・tRNA・ARSの組合せは明確に特定されており、それは生物のルールであると考えられていました。さらにそれぞれのARSは20種類の天然型アミノ酸にのみ対応しており、特殊アミノ酸に対応するARSは存在しませんでした。ところが、フレキシザイムは単体でARSに代わりすべてのアミノ酸(非天然型アミノ酸を含む)とtRNAを自由に組合せ結合することができるスーパー触媒ともいうべき特徴を持っております。それにより、アミノ酸とtRNAの組合せは無限大に近くなりました。当社のフレキシザイム技術は、今まで無細胞翻訳系により組み込むことが困難であった特殊なアミノ酸を簡単に、そして迅速にペプチド合成の中に組み込むことを可能にした独自の技術です。特殊なアミノ酸を組み込んだペプチドを創製することが容易になったことで特殊ペプチドは生体内における安定性が増し、分解されにくいという特質を活かして医薬品としての作用を発揮する素地の一つを整えることになりました。そのほか、細胞膜の透過性を持つ特殊ペプチドも採れており、細胞内の標的をターゲットにすることもできるようになりました。イ. FIT(Flexible In-vitro Translation)システムについて次にFITシステムですが、フレキシザイム技術で創製できるようになった特殊ペプチドを下表<医薬品候補物質の多様性の比較>(当社作成)のとおり、FITシステムにより多様性(数や種類)を持ったライブラリーとして構築することができるようになりました。低分子医薬のライブラリーの多様性を1としたとき、おおよその値として、抗体医薬はその1万倍程度の多様性を持ち、特殊ペプチドは低分子医薬の1億倍程度の多様性を持っております。ライブラリーの多様性は、医薬品としての候補物質を含んでいる可能性を高めるため、多様性が大きくなればなるほど、医薬品候補物質発見の可能性も高くなります。この多様性の比較からも、当社の特殊ペプチドライブラリーは、まだ見ぬ医薬品候補物質を生み出す大きな可能性を持っているものと考えております。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。) <医薬品候補物質の多様性の比較> ※当社作成ライブラリーの種類多様性多様性の比較低分子医薬104 ~ 1051抗体医薬108 ~ 101010,000特殊ペプチド医薬1012 ~ 1014100,000,000 (注) 「多様性の比較」は左記「多様性」における下端の値をとっております。 ウ. RAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステムについてRAPIDディスプレイシステムは、特殊ペプチドを短期間でスクリーニング(*28)できる高速のスクリーニングシステムです。従来のライブラリーに比べて格段の多様性を持っている特殊ペプチドライブラリーを活用するためには、数千億から兆単位の数の特殊ペプチドを効率的かつ高速、正確にスクリーニングする必要があります。当社は、FITシステムの特徴を最大限に生かし活用するために、独自にRAPIDディスプレイシステムを開発しました。RAPIDディスプレイシステムは、無細胞翻訳系において合成された特殊ペプチドの特徴を生かして、ターゲットタンパクに対して結合力・特異性・選択性の秀でた特殊ペプチドを短期間でスクリーニングできる高速のスクリーニングシステムです。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)エ. PDPS(Peptide Discovery Platform System)について当社は、フレキシザイム技術とFITシステムを組合せ、多様性を持つ特殊ペプチドライブラリーを構築することができるシステム:PDTS(Peptide Discovery Translation System)を作り上げ、さらに特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることを目的として開発したRAPIDディスプレイシステムをPDDS(Peptide Discovery Display System)と位置付け、この3つの独自技術・システムを組み合わせた独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)を構築しました。 <当社の創薬開発プラットフォームシステムの概念図>(注) なおFITシステムについては、当社においてさらに改良を加え、フレキシザイム技術と組み合わせることによって「PDTS」という独自の翻訳合成系を構築しております。 <用語解説>*20特殊アミノ酸20種類の天然型アミノ酸以外のアミノ酸。非天然型アミノ酸とか異常アミノ酸等とも呼ばれる。*21無細胞翻訳系遺伝情報(遺伝子情報)から細胞内でペプチドやタンパクが合成されるメカニズムが翻訳系(合成)と呼ばれている。この細胞内でペプチド・タンパクが合成されるメカニズムを、細胞を使わずに試験管内で再現した実験方法。*22創薬ライブラリー創薬ターゲットタンパクに対して結合する医薬品候補物質(低分子や抗体や特殊ペプチド等)を検索するときに利用する医薬品候補物質が大量に集められた母集団。*23tRNA運搬RNA(遺伝子)と呼ばれており、遺伝情報(遺伝子情報)からペプチドやタンパクが合成されるときに、アミノ酸を運搬する機能を持ったRNA(遺伝子)。*24アシル化アミノアシル結合を実行するためにアミノ酸のアミノ基等の水素を置換する働き。*25触媒自身は変化しないまま、接触する周りの物質の化学反応を促進あるいは抑制する物質。*26翻訳合成mRNAの情報に基づいてタンパク質を合成する反応のこと。*27酵素生体でおこる化学反応に対して触媒として機能する分子。*28スクリーニング設定された基準に対して達成されているか否かを判断するために実施される検査。 ② 知的財産権(特許等)について当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発・維持・発展は重要な経営ポイントになります。次の図は、当社の特許ポートフォリオの概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、③(及び①・②)の特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明(④・⑤・⑥・⑦)で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が「システム」として機能するように設計しております。 <当社の特許ポートフォリオの概念図> (注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。 さらに、この創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)の特許・発明群を各種ライブラリーの発明が取り囲む形にすることにより、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。コアとなる7つの特許・発明の詳細は次の表のとおりです。①と②はニューヨーク州立大学が出願人であり、③・④・⑤・⑦は国立大学法人東京大学が出願人であり、⑥は当社が出願人であります。その他にライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)があり、それらについても随時権利化(出願)を進めております。なお、当社は、ニューヨーク州立大学及び国立大学法人東京大学の上記特許について、第三者サブライセンス権(*29)付き独占実施・許諾権(*30)を取得しております。 <当社の特許ポートフォリオ(*31)>発明の名称出願人出願国出願・特許番号①Catalytic RNAs with Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,001,723 B1CA Patent 2391433EP Patent 1232285 B1特許第4745577号②Ribozymes with Broad tRNA Aminoacylation Activity ニューヨーク州立大学米国(登録)カナダ(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 7,622,248 B2CA Patent 2476425EP Patent 1483282 B1特許第4464684号③多目的アシル化触媒とその用途国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,188,260 B2EP Patent 1964916特許第5119444号④N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 8,557,542 B2EP Patent 2088202特許第5200241号⑤環状ペプチド化合物の合成方法国立大学法人東京大学米国(登録)欧州(登録)日本(登録)US Patent 9,090,668 B2EP Patent 2141175 B1特許第5605602号⑥ペプチド翻訳合成におけるRAPIDディスプレイ法当社米国(出願中)欧州(登録)日本(登録)US 13/502,487EP Patent 2492344特許第5174971号⑦新規人工翻訳合成系(FIT システム)国立大学法人東京大学米国(出願中)欧州(出願中)日本(登録)中国(登録)US 13/816911EP 11820026特許第5725467号CN Patent 201180052318.9 ①と②はフレキシザイム(Flexizyme)技術開発に関わる基本特許です。③はフレキシザイムそのものに関する特許であり、PDTS(Peptide Discovery Translation System)の中心となる特許であります。⑥は特殊ペプチドライブラリーを高速スクリーニングすることができるRAPIDディスプレイシステムの特許であり、PDDS(Peptide Discovery Display System)の中心となる特許であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自のディスプレイシステムとして活用しています。)⑦は翻訳合成系にて特殊ペプチドをライブラリー化するFITシステムの発明であり、PDTSの中心となる発明であります。(現在、当社ではさらなる改良を加えて独自の翻訳合成系として活用しています。)④はペプチド、タンパクが翻訳合成されるとき、Met(メチオニン)というアミノ酸から合成が開始されるという生命の基本的なルールを書き換えることを可能にした技術特許です。この技術特許によりMet(メチオニン)以外のあらゆるアミノ酸から合成を開始することができるようになりました。当社は、この技術により、合成するペプチドの形状を自由に変えることができるようになり、特殊ペプチドに対し従来では考えられなかった多様性を持たせることが可能になりました。⑤はペプチドを特殊な環状化構造(*32)にする発明です。この技術により特殊ペプチドが生体内での安定性や構造の安定性を確保することができるようになりました。以上、①から⑦までの特許によって当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)が構成されております。さらに、概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊ペプチドライブラリーを作成する技術であり、これらにより特殊ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊ペプチドをスクリーニングする技術であり、各種機能を持ちうる特殊ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されますが、この発明はクライアントとは関係なく発生したものであります。 <用語解説>*29第三者サブライセンス権特許をライセンスするときには、特許権者(ライセンサー)と実施権者(ライセンシー)の関係が生じます。ライセンシーは自己の特許権を強化するために第三者に対する再実施権(サブライセンス)を獲得することが好まれます。*30独占実施・許諾権特許の実施権は独占と非独占があり、独占実施権はより強い効力を持っており、加えて第三者に対する許諾権(再実施権=サブライセンス権)を持つことにより、最も強固な特許契約となります。*31特許ポートフォリオ特許権侵害などの危険性を回避し、自社の特許権を強固なものにするために自社特許権の強み弱点を分析し、複数の特許群で対外的な守りを作り上げること。*32特殊な環状化構造生体内で壊れやすいペプチドの特徴を改善するために開発された環状化構造。通常の環状化構造がジスフィルド環状化結合と呼ばれるのに対して、この構造はチオエーテル環状化構造と呼ばれる。 (4) 当社のビジネスモデルについて当社の基本的な共同研究開発契約は、クライアントから標的分子(ターゲットタンパク)を受領し、その標的分子ごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進めば一連の複数カテゴリーの売上が立つように設計されております。次の図(<当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ>)は、当社がクライアント企業と共同研究開発契約を締結する場合の一般的な当社の売上カテゴリーの流れを示したものです。当社では、当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを使うことに対する対価(テクノロジカルアクセスフィー)としてまず「契約一時金(A)」を受領することを原則としております。さらにその後の研究開発にかかる対価として標的分子ごとに「研究開発支援金(B)」を原則として前受にて受領しております。また、追加業務が発生する場合の対価として「追加研究開発支援金(C)」を標的分子ごとに設定しており、プロジェクトによっては(C)の売上が発生します。当社は、これらの金額を初期のディスカバリーステップ時に受領しているため、事業展開の早期から売上を生み出すことができます。その後、クライアントでの評価により医薬品候補物質が特定され、クライアントが前臨床試験、臨床試験の段階に進む場合には、当該特殊ペプチドを当社がクライアントにライセンスアウトすることの対価として「創薬開発権利金(D)」が発生します。当社がクライアントに対し、あらかじめ定められた一定の条件をクリアした特殊ペプチドを提供した後(すなわち(B)・(C)より後のフェーズ)は、医薬品候補物質に係る開発の進捗はクライアントに委ねられており、当社でのコントロール及び売上予測は極めて困難になるという特徴があります。 <当社における一般的な共同研究開発契約の内容と流れ> (D)以降も引き続き開発が進みクライアントでの評価ステップを経て、臨床試験等の段階に移行すれば、その段階に応じて、各「目標達成報奨金(E)」「売上ロイヤルティ(E)」を当社は受領することになります。「売上ロイヤルティ」では、最終的に上市された医薬品としての売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティ」として当社が受領します。加えて、上市された医薬品の売上高が所定の金額に達した場合には「売上達成報奨金(E)」も受領します。 当社の共同研究開発契約の特徴としては、このように初期のディスカバリーステップから、売上が発生する取り決めとなっていることのほかに、最初の契約締結時において契約一時金から売上ロイヤルティまでのすべての売上カテゴリー(P)に関して、それらの金額又は金額の計算方法が原則として確定的に規定されていることが挙げられます。これまでのビジネスモデルでは、初期のディスカバリーステップは「フィージビリティースタディ」(*33)と評価され、売上が発生しないケースが多かったと認識しておりますが、当社のビジネスモデルでは、早期に売上を生み出すために上記の契約内容で契約を締結することに注力しております。当社の事業セグメントは、上記のとおり製薬企業との共同研究開発契約をもとにした「アライアンス事業」1本です。共同研究開発の取り組みを通じて、共同研究開発先からの要望により、共同研究開発先との間で当社の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS技術を貸与する(技術ライセンス契約の締結)ことがあります。当該契約を締結した場合、当社はその契約内容に応じて種々のライセンスフィーを共同研究開発先から受領します。 <用語解説>*33フィージビリティースタディ計画された事業やプロジェクト、技術等が実現可能か否か、利用することに意義や妥当性があるかを多角的に検討すること。
事業の優位性(モート)
事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
| 価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い | 弱い 国内の医療用医薬品の販売価格は厚生労働大臣が定める薬価基準によって定められるため。 |
|---|---|
| 参入障壁新規参入を阻む要因の種類 | 技術 PDPSという独自の創薬プラットフォームシステムと、放射性医薬品の製造・輸送に関する規制。 |
| 顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい | 中程度 |
| 景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか | ディフェンシブ |
| 規制依存規制は障壁にも足枷にもなる | 高い |
会社が挙げる主要リスク:医薬品開発・薬事承認の不確実性 / 副作用・製造物責任に関するリスク / 安定供給・製造仕入れに関するリスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 7 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★★☆
根拠:強いブランド・特許・許認可
ペプチドリームは、独自のペプチド創薬プラットフォーム技術「PPM」を有しており、これは他社にはない強力な無形資産である。この技術は、創薬パートナー企業とのライセンス契約を通じて収益を生み出しており、2023年12月期にはライセンス収入が約177億円に達している。この技術の独占性が競争優位性の源泉となっている。
スイッチングコスト★★★☆☆
根拠:中程度乗り換えの手間・コスト
ペプチドリームのPPMプラットフォームは、高度な技術とノウハウの集積であり、製薬企業がこのプラットフォームを利用するには、初期投資や学習コストが発生する。一度パートナーシップを構築し、共同研究開発が進展すると、他のプラットフォームへの乗り換えは時間とコストがかかるため、一定のスイッチング・コストが発生すると考えられる。
ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む
現時点では、ペプチドリームのビジネスモデルにおいて、ユーザー数の増加がプラットフォームの価値を直接的に高めるネットワーク効果は確認できない。創薬プラットフォームとしての性質上、個別の製薬企業との個別契約が中心となっている。
コスト優位☆☆☆☆☆
根拠:弱い同じ物を安く作れる
ペプチドリームの競争優位性は、コスト競争力ではなく、独自の技術力に基づいている。医薬品開発におけるコスト構造は、研究開発費の変動が大きく、コスト優位性を確立することは困難である。
規模の経済☆☆☆☆☆
根拠:弱い規模が参入障壁になる
ペプチドリームは、特定の技術プラットフォームに特化しており、業界全体の規模に対して最適化された少数寡占を形成しているとは言えない。むしろ、ニッチな分野での技術リーダーシップが強みである。
- 独自の創薬プラットフォームPDPSペプチドリームのPDPSは、非常に多様なペプチド(アミノ酸が連なった物質)の候補の中から、病気の原因となるタンパク質に強く結合し、特定の標的だけを狙うことができるペプチドを短期間で見つけ出す独自の技術です。この高い結合性と選択性を持つペプチドを効率的に創り出せる点が、他の創薬技術に対する大きな強みとなっています。
- 放射性医薬品の製造販売実績子会社のPDRファーマは、放射性医薬品の製造販売において半世紀近い歴史と経験を持っています。医薬品を市場に出すために必要な臨床開発や薬事承認に関する専門知識と機能を有しており、これは新規参入が難しい放射性医薬品分野における安定した事業基盤と競争優位性につながっています。
- 幅広い製品ラインナップと提携PDRファーマは、がんや脳疾患の診断・治療に用いる多様な放射性医薬品を日本国内で販売しています。ヨウ化ナトリウムカプセルやライアットMIBG-I131静注など、様々な用途に対応する製品を展開しており、一部は海外の製薬会社からの導入品です。これにより、幅広い医療ニーズに応え、市場での存在感を高めています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
経営戦略
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経営方針・経営戦略
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】(1) 経営方針当社グループは、「医療のあり方や患者さんの人生に変革をもたらす次世代医薬品の創出」をミッションとして掲げております。当社独自の世界最先端創薬プラットフォームシステムであるPDPS®を基盤に、革新的医薬品の研究開発を主導し、さらに放射性医薬品分野におけるPDRファーマの高度な専門知識と統合することで、グローバルヘルスケアおよび医療技術の発展に寄与いたします。 (2) 経営戦略等当社グループは、2つの戦略領域である放射性医薬品(RI)領域とNon-RI領域で医薬品等の研究・開発・製造・販売等に従事しています。RI領域では日本国内で放射性医薬品事業を推進する上で必要となる創薬研究・開発から製造、販売に至るまですべての機能を一気通貫で有し、自社プログラムまたは提携プログラムとして革新的な放射性治療薬・診断薬の創製・開発を実施しています。腫瘍の縮小効果をもつ放射性核種をがん細胞に選択的に送達するためのキャリアーとして環状ペプチドの有用性が次々と示される中、ペプチドリームとPDRファーマのシナジーを最大限発揮することにより、革新的で高付加価値の放射性医薬品を開発・販売するとともに、海外の製薬企業から有望な放射性医薬品を導入することにより放射性医薬品領域での成長を目指しています。Non-RI領域においてはPDPSを中核とし(1) ペプチド医薬品、(2) 環状ペプチドをキャリアーとして他の有効成分と結合させたペプチド-薬物複合体(PDC)、(3) 異なる機能を有する環状ペプチドを結合させて複数の機能を有する多機能ペプチド複合体(MPC)の創薬におけるリーディング・カンパニーとしてグローバルの大手製薬企業や戦略的提携先との提携・ライセンス契約に加え、自社プログラムも拡大しており、ペプチドを用いた次世代の革新的医薬品の創製・開発を目指しています。 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標当社グループは、収益性の向上を目指しており、経営指標として売上収益、Core営業利益及びCore営業利益率を重視しています。2026年12月期は売上収益32,000百万円、Core営業利益4,600百万円、売上収益Core営業利益率14.4%を目標としています。 (4) 会社の対処すべき課題①事業の概況と取組当社は現在、成長の重要な新たな局面に入り、臨床開発パイプラインが大きく拡充しています。これは、当社の多くの創薬共同研究開発プログラムが臨床開発段階へと進展していることに加え、当社が戦略的に拡充している自社プログラムもより多く臨床開発へと進めていることによるものです。当社独自の技術的優位性を活かした5つの重点領域への戦略的集中とあわせ、これらの取組は、革新的な次世代医薬品を世界中の患者さんに提供するグローバル製薬企業へ成長を遂げるという、当社の長期ビジョンを支えるものです。本戦略の主なポイントは以下のとおりです。 ・ パイプライン成長の加速 当社の臨床開発段階にあるパイプラインは、2025年にほぼ倍増し、この急速な成長は2026年も継続する見込みです。2025年には新たに6つのプログラムが臨床試験へ移行し、進行中の臨床開発プログラム数は2024年末の7件、2023年末の5件から増加し、2025年末時点で13件となりました。2026年には、少なくともさらに6つのプログラムが臨床開発段階へ移行することを見込んでおり(最大で12件となる可能性あり)、これにより2026年末時点の臨床開発パイプラインは19~25件に拡大する見通しです。こうした臨床開発プログラムの顕著な拡大は、当社の創薬プラットフォームの高い生産性と、提携プログラムおよび自社創薬プログラムの多数が成熟段階に入っていることを反映しており、今後も継続すると見込んでいます。 ・ 技術的優位性を活かした5つの重点領域への注力ペプチドリームは、創薬技術として高い実績を持つPDPS®プラットフォームおよびこれまでに蓄積してきた知見と高い親和性を有する5つの重点領域に研究開発資源を戦略的に集中しています。これらの領域は、環状ペプチドの創製およびペイロードとのコンジュゲーションにおける当社の技術的優位性と実績を最大限に活かす観点で選定されました。競争優位性を有する分野に注力することで、当社はパイプラインの効率的な拡充と高付加価値プログラムの開発を加速してまいります。 ・ 「ディスカバリー&ディベロップメント」モデルへの移行当社は今後、グローバル創薬企業から、創薬と開発を一体で推進する「ディスカバリー&ディベロップメント」企業へと移行します。当社は2006年の設立以降、PDPS®ペプチド創薬プラットフォームの確立を起点に、革新的な創薬力と製薬企業との提携ネットワークにより、グローバルな創薬パートナーとして成長してまいりました。その過程で、RI領域およびnon-RI領域の両モダリティにまたがる5つの重点領域を戦略領域として特定し、自社創薬にも取り組んできました。現在では、多数の創薬プログラムが創出されており、これらを開発段階へと積極的に進める戦略へと舵を切っています。これまでの共同研究開発から生まれた提携プログラムは臨床試験へと進展しており、自社プログラムについても臨床試験を開始しています。また、前臨床パイプラインも同様に拡大しており、共同研究開発プログラムに加え、5つの重点領域における多数の自社プログラムを含む、より厚みのある構成となっています。当社は、ペプチド医薬品の創製にとどまらず、開発、さらには将来的な商業化を目指す企業へと進化しています。 ・ 長期ビジョン:グローバル製薬企業への進化これら一連の取組は、将来的に「グローバル製薬企業」へと変革するという当社の長期ビジョンに基づくものです。この実現に向けて、臨床開発を推進し、将来的に当社の製品をグローバル展開していくための基盤構築を進めていきます。「革新的な次世代医薬品を世界中の患者さんに届ける」という当社の使命のもと、ペプチド創薬の成果を、臨床、そして市場へとつなげていきます。 ペプチドリームの今後の方向性は、臨床開発パイプラインの拡充、パートナーとの創薬共同研究開発に加え自社創薬・開発への戦略的な展開、環状ペプチドが競争優位性を発揮できる5つの重点領域へのプラットフォームの集中的活用、そしてグローバル製薬企業への成長に向けた取組により構成されています。新たに臨床開発段階へ移行する各プログラムは、当社の長期的な価値を創出し、これまでの卓越した創薬の成果をもとに、革新的で患者さんの人生を変える革新的な医薬品を、世界中に提供していくことを目指しています。 ②資金計画について当社グループは、当連結会計年度において営業損失を計上した結果、複数の金融機関と締結しているシンジケートローン契約(当連結会計年度末現在の残高17,100,000千円)に付されている財務制限条項に抵触しておりますが、当社グループは、当該シンジケートローン契約のリファイナンスを2026年3月16日付で締結したことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。 ③特定の者による一部不適切な試薬類の発注・持ち出しを契機とした再発防止策の策定とガバナンス強化について当社は、2025年4月22日に当社創薬開発事業において、2017 年3月から 2025 年1月にかけて、特定の者による一部不適切な試薬類の発注・持ち出しがあった可能性を認識し、公正かつ適正な調査を行うため2025年5月13日に外部の有識者を含めた特別調査委員会を設置し、2025年8月6日に調査報告書を受領いたしました。調査の結果、以下の点が明らかとなりました。・2017 年3月から 2025 年1月にかけて当社に納品された最大 752 個(約5,428 万円相当)の試薬類が、試薬類の発注・管理を所管していた元当社取締役副社長 COO(以下、「A 氏」)の指示により発注され、A 氏自身の手によって無断で社外に持ち出されたこと、あるいはその可能性が高いことが認められました。・A 氏についてさらに、当社取引先等から業務委託契約を受託し、対価として金銭を受領していた行為が判明しました。上記の件について、以下のとおり財務諸表への影響は軽微であり、追加の費用計上は不要であることが確認されました。 百万円会計年度2017/6期2018/6期2019/6期2019/12期2020/12期営業利益(△損失)2,4902,9113,580△8876,991本件が発生していなかった場合の営業利益(△損失)2,4922,9133,582△8866,997営業利益に対する割合0.1%0.1%0.1%-0.1%会計年度2021/12期2022/12期2023/12期2024/12期2025/12期営業利益(△損失)4,0668,9806,77321,114△5,013本件が発生していなかった場合の営業利益(△損失)4,0788,9946,78021,123△5,011営業利益に対する割合0.3%0.2%0.1%0.0%- しかしながら、このような件が発生したことに関して当社としては重く受け止めるとともに、再発防止を徹底する必要性が高いと認識いたしました。当社は、本件が発覚した2025年5月に代表取締役社長CEO(当時)を全体統括とする再発防止策検討タスクフォースを発足、調査報告書受領後は再発防止策実行タスクフォースとして調査報告書の内容を踏まえた原因分析、および再発防止策の検討を進めてまいりました。その結果をふまえ、2025年10月23日に当社取締役会において原因分析および再発防止策の策定を決議いたしました。本件においては、実行当事者であるA氏による内部統制の無効化および不正行為が直接的な原因であると考えられるものの、当社においてこれらの不適切な行為を発見・是正することができなかったことの背景として、以下の要因があったものと考えられます。(1)試薬類の発注・管理業務のブラックボックス化(2)研究総務におけるリスク管理意識・発見統制プロセスの弱さ(3)内部通報制度による相互監視の不全再発防止を徹底するとともに、当社のガバナンスをより一層強化するため以下の再発防止策を策定・実施いたしました。(1)IT システム導入による情報の見える化(ブラックボックス化の防止) 試薬類の発注・管理業務について、ITシステムの導入を行いました。(2) 試薬類の発注・管理に関する組織体制の見直し・強化 試薬類の発注・管理業務の主管部門である研究総務の組織体制を見直し、およびリスク管理に関するマネジメントへのレポーティングを強化いたしました。 (3)定期モニタリングを通じた発見統制プロセスの強化 試薬類の発注記録や在庫情報等に基づいて、不正検知を支援する分析ツールや AI 等も活用した定期モニタリングを今後定期的に実施いたします。(4) 全役職員のコンプライアンス感度向上 2025年10月に全役職員を対象としたコンプライアンス研修を実施いたしました。(5) 内部通報制度の周知徹底と相互監視の強化 2026年1月に全役職員を対象に実施されたタウンホール・ミーティングにおいて、内部通報制度について改めて周知をいたしました。(6)潜在的な不正行為に対する設備面からの牽制強化 防犯用の監視カメラの増設・機能強化を行いました。(7) 取締役会・各委員会等における監督機能、検証態勢の強化 2026年2月より、業務執行役員および主要な部門のリーダーを構成メンバーとするExecutive Leadership Teamを新たに設置いたしました。当社の業務執行における主要な意思決定をExecutive Leadership Teamに集約し、また取締役から各機能部門リーダーへの権限移譲を進めることで、過度な権限集中を回避するとともに、より透明性の高い業務執行体制を構築してまいります。また、指名・報酬委員会の体制において独立社外取締役・監査等委員の割合を高め、より独立性や客観性の高い指名ガバナンスを構築してまいります。
対処すべき課題
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】(1) 経営方針当社グループは、「医療のあり方や患者さんの人生に変革をもたらす次世代医薬品の創出」をミッションとして掲げております。当社独自の世界最先端創薬プラットフォームシステムであるPDPS®を基盤に、革新的医薬品の研究開発を主導し、さらに放射性医薬品分野におけるPDRファーマの高度な専門知識と統合することで、グローバルヘルスケアおよび医療技術の発展に寄与いたします。 (2) 経営戦略等当社グループは、2つの戦略領域である放射性医薬品(RI)領域とNon-RI領域で医薬品等の研究・開発・製造・販売等に従事しています。RI領域では日本国内で放射性医薬品事業を推進する上で必要となる創薬研究・開発から製造、販売に至るまですべての機能を一気通貫で有し、自社プログラムまたは提携プログラムとして革新的な放射性治療薬・診断薬の創製・開発を実施しています。腫瘍の縮小効果をもつ放射性核種をがん細胞に選択的に送達するためのキャリアーとして環状ペプチドの有用性が次々と示される中、ペプチドリームとPDRファーマのシナジーを最大限発揮することにより、革新的で高付加価値の放射性医薬品を開発・販売するとともに、海外の製薬企業から有望な放射性医薬品を導入することにより放射性医薬品領域での成長を目指しています。Non-RI領域においてはPDPSを中核とし(1) ペプチド医薬品、(2) 環状ペプチドをキャリアーとして他の有効成分と結合させたペプチド-薬物複合体(PDC)、(3) 異なる機能を有する環状ペプチドを結合させて複数の機能を有する多機能ペプチド複合体(MPC)の創薬におけるリーディング・カンパニーとしてグローバルの大手製薬企業や戦略的提携先との提携・ライセンス契約に加え、自社プログラムも拡大しており、ペプチドを用いた次世代の革新的医薬品の創製・開発を目指しています。 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標当社グループは、収益性の向上を目指しており、経営指標として売上収益、Core営業利益及びCore営業利益率を重視しています。2026年12月期は売上収益32,000百万円、Core営業利益4,600百万円、売上収益Core営業利益率14.4%を目標としています。 (4) 会社の対処すべき課題①事業の概況と取組当社は現在、成長の重要な新たな局面に入り、臨床開発パイプラインが大きく拡充しています。これは、当社の多くの創薬共同研究開発プログラムが臨床開発段階へと進展していることに加え、当社が戦略的に拡充している自社プログラムもより多く臨床開発へと進めていることによるものです。当社独自の技術的優位性を活かした5つの重点領域への戦略的集中とあわせ、これらの取組は、革新的な次世代医薬品を世界中の患者さんに提供するグローバル製薬企業へ成長を遂げるという、当社の長期ビジョンを支えるものです。本戦略の主なポイントは以下のとおりです。 ・ パイプライン成長の加速 当社の臨床開発段階にあるパイプラインは、2025年にほぼ倍増し、この急速な成長は2026年も継続する見込みです。2025年には新たに6つのプログラムが臨床試験へ移行し、進行中の臨床開発プログラム数は2024年末の7件、2023年末の5件から増加し、2025年末時点で13件となりました。2026年には、少なくともさらに6つのプログラムが臨床開発段階へ移行することを見込んでおり(最大で12件となる可能性あり)、これにより2026年末時点の臨床開発パイプラインは19~25件に拡大する見通しです。こうした臨床開発プログラムの顕著な拡大は、当社の創薬プラットフォームの高い生産性と、提携プログラムおよび自社創薬プログラムの多数が成熟段階に入っていることを反映しており、今後も継続すると見込んでいます。 ・ 技術的優位性を活かした5つの重点領域への注力ペプチドリームは、創薬技術として高い実績を持つPDPS®プラットフォームおよびこれまでに蓄積してきた知見と高い親和性を有する5つの重点領域に研究開発資源を戦略的に集中しています。これらの領域は、環状ペプチドの創製およびペイロードとのコンジュゲーションにおける当社の技術的優位性と実績を最大限に活かす観点で選定されました。競争優位性を有する分野に注力することで、当社はパイプラインの効率的な拡充と高付加価値プログラムの開発を加速してまいります。 ・ 「ディスカバリー&ディベロップメント」モデルへの移行当社は今後、グローバル創薬企業から、創薬と開発を一体で推進する「ディスカバリー&ディベロップメント」企業へと移行します。当社は2006年の設立以降、PDPS®ペプチド創薬プラットフォームの確立を起点に、革新的な創薬力と製薬企業との提携ネットワークにより、グローバルな創薬パートナーとして成長してまいりました。その過程で、RI領域およびnon-RI領域の両モダリティにまたがる5つの重点領域を戦略領域として特定し、自社創薬にも取り組んできました。現在では、多数の創薬プログラムが創出されており、これらを開発段階へと積極的に進める戦略へと舵を切っています。これまでの共同研究開発から生まれた提携プログラムは臨床試験へと進展しており、自社プログラムについても臨床試験を開始しています。また、前臨床パイプラインも同様に拡大しており、共同研究開発プログラムに加え、5つの重点領域における多数の自社プログラムを含む、より厚みのある構成となっています。当社は、ペプチド医薬品の創製にとどまらず、開発、さらには将来的な商業化を目指す企業へと進化しています。 ・ 長期ビジョン:グローバル製薬企業への進化これら一連の取組は、将来的に「グローバル製薬企業」へと変革するという当社の長期ビジョンに基づくものです。この実現に向けて、臨床開発を推進し、将来的に当社の製品をグローバル展開していくための基盤構築を進めていきます。「革新的な次世代医薬品を世界中の患者さんに届ける」という当社の使命のもと、ペプチド創薬の成果を、臨床、そして市場へとつなげていきます。 ペプチドリームの今後の方向性は、臨床開発パイプラインの拡充、パートナーとの創薬共同研究開発に加え自社創薬・開発への戦略的な展開、環状ペプチドが競争優位性を発揮できる5つの重点領域へのプラットフォームの集中的活用、そしてグローバル製薬企業への成長に向けた取組により構成されています。新たに臨床開発段階へ移行する各プログラムは、当社の長期的な価値を創出し、これまでの卓越した創薬の成果をもとに、革新的で患者さんの人生を変える革新的な医薬品を、世界中に提供していくことを目指しています。 ②資金計画について当社グループは、当連結会計年度において営業損失を計上した結果、複数の金融機関と締結しているシンジケートローン契約(当連結会計年度末現在の残高17,100,000千円)に付されている財務制限条項に抵触しておりますが、当社グループは、当該シンジケートローン契約のリファイナンスを2026年3月16日付で締結したことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。 ③特定の者による一部不適切な試薬類の発注・持ち出しを契機とした再発防止策の策定とガバナンス強化について当社は、2025年4月22日に当社創薬開発事業において、2017 年3月から 2025 年1月にかけて、特定の者による一部不適切な試薬類の発注・持ち出しがあった可能性を認識し、公正かつ適正な調査を行うため2025年5月13日に外部の有識者を含めた特別調査委員会を設置し、2025年8月6日に調査報告書を受領いたしました。調査の結果、以下の点が明らかとなりました。・2017 年3月から 2025 年1月にかけて当社に納品された最大 752 個(約5,428 万円相当)の試薬類が、試薬類の発注・管理を所管していた元当社取締役副社長 COO(以下、「A 氏」)の指示により発注され、A 氏自身の手によって無断で社外に持ち出されたこと、あるいはその可能性が高いことが認められました。・A 氏についてさらに、当社取引先等から業務委託契約を受託し、対価として金銭を受領していた行為が判明しました。上記の件について、以下のとおり財務諸表への影響は軽微であり、追加の費用計上は不要であることが確認されました。 百万円会計年度2017/6期2018/6期2019/6期2019/12期2020/12期営業利益(△損失)2,4902,9113,580△8876,991本件が発生していなかった場合の営業利益(△損失)2,4922,9133,582△8866,997営業利益に対する割合0.1%0.1%0.1%-0.1%会計年度2021/12期2022/12期2023/12期2024/12期2025/12期営業利益(△損失)4,0668,9806,77321,114△5,013本件が発生していなかった場合の営業利益(△損失)4,0788,9946,78021,123△5,011営業利益に対する割合0.3%0.2%0.1%0.0%- しかしながら、このような件が発生したことに関して当社としては重く受け止めるとともに、再発防止を徹底する必要性が高いと認識いたしました。当社は、本件が発覚した2025年5月に代表取締役社長CEO(当時)を全体統括とする再発防止策検討タスクフォースを発足、調査報告書受領後は再発防止策実行タスクフォースとして調査報告書の内容を踏まえた原因分析、および再発防止策の検討を進めてまいりました。その結果をふまえ、2025年10月23日に当社取締役会において原因分析および再発防止策の策定を決議いたしました。本件においては、実行当事者であるA氏による内部統制の無効化および不正行為が直接的な原因であると考えられるものの、当社においてこれらの不適切な行為を発見・是正することができなかったことの背景として、以下の要因があったものと考えられます。(1)試薬類の発注・管理業務のブラックボックス化(2)研究総務におけるリスク管理意識・発見統制プロセスの弱さ(3)内部通報制度による相互監視の不全再発防止を徹底するとともに、当社のガバナンスをより一層強化するため以下の再発防止策を策定・実施いたしました。(1)IT システム導入による情報の見える化(ブラックボックス化の防止) 試薬類の発注・管理業務について、ITシステムの導入を行いました。(2) 試薬類の発注・管理に関する組織体制の見直し・強化 試薬類の発注・管理業務の主管部門である研究総務の組織体制を見直し、およびリスク管理に関するマネジメントへのレポーティングを強化いたしました。 (3)定期モニタリングを通じた発見統制プロセスの強化 試薬類の発注記録や在庫情報等に基づいて、不正検知を支援する分析ツールや AI 等も活用した定期モニタリングを今後定期的に実施いたします。(4) 全役職員のコンプライアンス感度向上 2025年10月に全役職員を対象としたコンプライアンス研修を実施いたしました。(5) 内部通報制度の周知徹底と相互監視の強化 2026年1月に全役職員を対象に実施されたタウンホール・ミーティングにおいて、内部通報制度について改めて周知をいたしました。(6)潜在的な不正行為に対する設備面からの牽制強化 防犯用の監視カメラの増設・機能強化を行いました。(7) 取締役会・各委員会等における監督機能、検証態勢の強化 2026年2月より、業務執行役員および主要な部門のリーダーを構成メンバーとするExecutive Leadership Teamを新たに設置いたしました。当社の業務執行における主要な意思決定をExecutive Leadership Teamに集約し、また取締役から各機能部門リーダーへの権限移譲を進めることで、過度な権限集中を回避するとともに、より透明性の高い業務執行体制を構築してまいります。また、指名・報酬委員会の体制において独立社外取締役・監査等委員の割合を高め、より独立性や客観性の高い指名ガバナンスを構築してまいります。
MD&A(経営者による分析)
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当事業年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループのセグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下の通りです。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。 (1) 経営成績当連結会計年度(2025年1月1日から2025年12月31日)において、当社は自社プログラムおよび提携プログラムにおいて、多くの進捗を示しました。創薬開発事業放射性医薬品事業および放射性医薬品事業における主要トピックスは以下の通りです。 (A)創薬開発事業の主要トピックス・RayzeBio社が、RYZ801とRYZ811の第1/1b相臨床試験を開始(2025年1月)・Alexion社が開発を進める、先端巨大症を対象疾患とした ALXN2420の第2相臨床試験の開始に伴うマイルストーンフィーを受領(2025年11月)・旭化成ファーマとの創薬共同研究開発プログラムにおいてマイルストーン達成(2025年12月)・Alnylam社との肝臓以外の様々な臓器に対してsiRNAを送達するペプチド-siRNA複合体の創製・開発に関する共同研究開発において重要なマイルストーン達成(2025年12月)・当社創製の経口IL-17A/ IL-17F二重阻害薬が乾癬疾患モデルにおいて生物製剤と同等の有効性を示す有望な前臨床試験結果について発表(2025年12月) (B)放射性医薬品事業の主要トピックス・「ライアット MIBG-I 131 静注」神経芽腫への効能・効果適応追加に関する承認取得(2025年9月)・放射性医薬品の投与支援装置「Bridgea DISPENSER」に “集液機能”を追加(2025年9月)・医療被ばく線量管理システム「onti」のオプションとして 核医学検査スケジュールソフトウエア「onti dandori」 をリリース(2025年9月)・ペプチドリーム、PDRファーマ、Curium グループが 前立腺がんを対象とした放射性医薬品 64Cu-PSMA-I&T の国内承認取得を目指した臨床試験を開始(2025年10月) 当社の創薬開発事業において、提携プログラムの開発進捗等に伴いマイルストーンフィーを受領しており、これらは創薬開発事業の売上収益の主なものとなっております。一方で、当社は当連結会計年度の創薬開発事業の売上収益予想の内訳に、マイオスタチン阻害薬の導出一時金として約210億円を見込んでおりましたが、最適なパートナーとの提携による価値最大化を優先し、当連結会計年度における契約は実施いたしませんでした。また、その他の一部マイルストーンフィーや新規提携に伴う一時金等の契約締結時期の期ずれが発生いたしました。それにより、当連結会計年度の売上収益予想を49,000百万円としておりましたが、2025年12月に業績予想の修正を行い、売上収益の実績は18,521百万円となりました。 放射性医薬品事業においては、上記の通り、新製品の販売や既存製品の適応が追加されたこと等により、売上収益が着実に増加いたしました。当社グループは、プログラムの開発進捗、新規提携の実施、新製品の上市や既存製品の適応拡大等の活動を引き続き実施することより、当社グループのアセットの価値を高めることに注力してまいります。以上の結果、当連結会計年度における創薬開発事業の経営成績については、売上収益2,793,300千円(前年同期比28,520,092千円減少)、セグメント損失5,357,999千円(前年同期はセグメント利益20,957,312千円)、放射性医薬品事業の経営成績については、売上収益15,727,934千円(前年同期比364,804千円増加)、セグメント利益434,803千円(前年同期比188,274千円増加)となり、当社グループ全体としては売上収益は18,521,234千円(前年同期比28,155,288千円減少)、Core営業損失4,866,597千円(前年同期はCore営業利益21,225,338千円)、営業損失5,013,195千円(前年同期は営業利益21,113,841千円)、税引前損失5,312,129千円(前年同期は税引前利益20,888,805千円)、親会社の所有者に帰属する当期損失3,749,204千円(前年同期は親会社の所有者に帰属する当期利益15,014,922千円)となりました。当社グループは、IFRS業績に加えて、会社の経常的な収益性を示す指標として非経常的な項目をNon-Core調整として除外したCoreベースの業績を開示しています。当該Coreベースの業績は、IFRS業績から当社グループが定める非経常的な項目を調整項目として除外したものです。 Core営業利益は営業利益から企業買収に係る会計処理の影響及び買収関連費用、有形固定資産、無形資産及びのれんに係る減損損失、損害賠償や和解等に伴う損益、非経常的かつ多額の損益、個別製品または開発品導入による無形資産の償却費を控除して算出しています。 なお、Core営業利益から営業利益への調整は以下の通りです。(単位:千円) 2024年12月期2025年12月期前年同期比%Core営業利益(△損失)21,225,338△4,866,597△26,091,936-企業買収に係る会計処理の影響及び買収関連費用111,497146,59735,10031.5有形固定資産、無形資産及びのれんに係る減損損失----損害賠償や和解等に伴う損益----非経常的かつ多額の損益----個別製品または開発品導入による無形資産の償却費----営業利益(△損失)21,113,841△5,013,195△26,127,036- 生産、受注及び販売の実績は、次の通りです。① 生産実績当連結会計年度の生産実績は以下の通りです。報告セグメント金額(千円)前連結会計年度比(%)創薬開発事業187,550101.1放射性医薬品事業14,005,636102.7 (注)金額は販売価格によっています。② 受注実績当社グループの創薬開発事業及び放射性医薬品事業は受注形態をとっておりませんので、記載を省略しています。③ 販売実績当連結会計年度における販売実績は、以下の通りです。セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年1月1日至 2025年12月31日)販売高(千円)前年同期比(%)創薬開発事業2,793,3008.9放射性医薬品事業15,727,934102.4合計18,521,23439.7 (注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合 相手先前連結会計年度(自 2024年1月1日至 2024年12月31日)販売高(千円)割合(%)Novartis Pharma AG29,365,35662.9公益社団法人日本アイソトープ協会10,865,96623.3 相手先当連結会計年度(自 2025年1月1日至 2025年12月31日)販売高(千円)割合(%)公益社団法人日本アイソトープ協会10,769,96258.1 (2) 財政状態当連結会計年度の総資産は77,033,187千円となり、前連結会計年度末と比べて15,736,638千円減少しました。その主な要因は、有形固定資産が1,403,187千円増加、繰延税金資産が1,838,749千円増加したものの、現金及び現金同等物が19,434,999千円減少したこと等によるものです。負債は25,504,924千円となり、前連結会計年度末と比べて10,502,603千円減少しました。その主な要因は、借入金が2,592,935千円減少、未払法人所得税等が8,039,345千円減少したこと等によるものです。資本は51,528,263千円となり、前連結会計年度末と比べて5,234,034千円減少しました。その主な要因は、当期損失により利益剰余金が3,749,204千円減少、自己株式が822,630千円増加したこと等によるものです。 (3) キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ19,434,999千円減少し、28,682,933千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前損失5,312,129千円の計上、法人所得税の支払による支出8,074,244千円等により、13,276,876千円の支出(前年同期は23,844,988千円の収入)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得による支出300,000千円、有形固定資産の取得による支出1,642,938千円等により、2,053,999千円の支出(前年同期は8,370,789千円の収入)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出2,640,000千円、自己株式の取得による支出960,908千円等により、4,057,705千円の支出(前年同期比1,063,071千円の支出増加)となりました。 (4) 資本の財源及び資金の流動性財務政策につきましては、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金は、手許資金を中心としながら必要に応じて借入による資金調達を行っています。主な資金需要につきましては、運転資金として製造原価、研究開発費を含む販売費及び一般管理費等があります。また、設備資金として、研究開発のための設備投資等があります。有価証券報告書提出日現在において支出が予定されている重要な資本的支出はありません。 (5) 重要な会計方針及び見積り当社グループの重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 、 3 重要な会計方針 及び 4 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。 (6) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載の通りです。 当連結会計年度においては、売上収益49,000,000千円、Core営業利益21,700,000千円、売上収益Core営業利益率44.3%を目標としていましたが、売上収益は18,521,234千円、Core営業損失4,866,597千円、売上収益Core営業利益率26.3%となり、売上収益、Core営業利益及び売上収益Core営業利益率のいずれの指標についても目標を下回る結果となりました。
事業リスク
- 医薬品開発の不確実性医薬品の開発には、多額の費用と10年以上の長い期間がかかります。初期段階で有望とされた薬の候補でも、臨床試験の途中で効果が確認できなかったり、安全性の問題が見つかったりして、開発が中止になる可能性があります。また、最終的に国の承認が得られないリスクもあり、これが会社の業績に大きく影響する可能性があります。
- 副作用と製造物責任医薬品は、予期せぬ副作用が発生するリスクが常にあります。もし、製造・販売した医薬品に重大な副作用が出たり、品質に問題があったりした場合、製品の回収や販売中止、さらには患者からの訴訟に発展する可能性があります。これにより、会社の信用が失われ、経営成績に悪影響を及ぼす恐れがあります。
- 放射性医薬品の安定供給リスク放射性医薬品の主要な原料である放射性核種は、特殊な設備で製造され、特定の海外サプライヤーに供給を依存しています。また、製造や輸送には厳しい規制があり、自然災害や事故、社会インフラの障害などが発生すると、原料の供給が滞ったり、製造・輸送ができなくなったりする可能性があります。これにより、製品の安定供給が困難になり、事業に支障をきたす恐れがあります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2025|8,217 文字
3 【事業等のリスク】当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しています。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、リスクの発生をすべて回避できる保証はございません。また、以下の記載内容は当社グループのリスクすべてを網羅するものではございませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性もあります。 (1)リスク管理体制と全社重要リスク決定までのプロセス 当社は、下図の通り、スリーラインモデルによるリスクマネジメント体制を構築しています。<ペプチドリーム リスクマネジメント体制> <リスクマネジメント体制における社内の関連組織・内部統制の関係図> (用語の説明)第1ライン当社の研究開発に係る各部門や、グループ会社が該当します。これらの各部門では、自らの業務に係る潜在的なリスク項目の抽出、評価、コントロールを実施しています。第2ライン第2ラインは、法務・コンプライアンス、知的財産、経理・財務、人事、情報管理システム等の専門知識を持ったスタッフ部門で構成され、第1ラインが行うリスク評価を踏まえ、各リスクについてのモニタリングとリスクコントロールのサポートを行っています。第3ライン第3ラインである内部監査担当は、定期的な社内監査の実施により、第1ラインのリスク評価や第2ラインのモニタリング・サポートが有効に機能しているかを検証しています。この内部監査の状況は随時、取締役会・監査等委員会・コンプライアンス・リスクマネジメント委員会に報告されています。コンプライアンス・リスクマネジメント委員会コンプライアンス・リスクマネジメント委員会は、主にコンプライアンス・リスクマネジメント体制の構築、管理及び維持、並びに、当社において想定されるリスクの洗い出し、評価、及び予防策の策定等を行い、取締役会に報告しています。 (2) 主要な事業等のリスク経営者が経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している主要な事業等のリスクは以下の通りです。各リスクについて発生可能性、影響度の観点から評価した結果を一元的に管理するために、同一のリスクマップに掲載しています。<主要な事業等のリスク一覧> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成リスクNo内容(ⅰ)医薬品の研究開発・製造販売事業一般に関するリスク1医薬品開発・薬事承認の不確実性に関するリスク2副作用・製造物責任に関するリスク3安定供給・製造仕入れに関するリスク4薬価引き下げに関するリスク(ⅱ)事業内容に関するリスク5PDPS技術の競争優位性に関するリスク6知的財産権に関するリスク7共同研究開発先の研究開発進捗・方針に関するリスク8収益認識に関するリスク(ⅲ)その他のリスク9保有投資有価証券に関するリスク10のれん・無形資産に関するリスク11債務保証に関するリスク12資金の借入コストに関するリスク13外国為替相場の変動に関するリスク14新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク15人的資本に関するリスク16ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク17環境(気候変動)に関するリスク18コンプライアンスに関するリスク19重要な契約の解除・終了に関するリスク20法的な紛争に関するリスク21財務制限条項に関するリスク <主要な事業等のリスクマップ> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成 (ⅰ)医薬品の研究開発・製造販売事業一般に関するリスク(1) 医薬品開発・薬事承認の不確実性に関するリスク当社グループでは、独自のPDPSを活用し、生体内でのタンパク合成に利用される20種類のアミノ酸と、非天然型のアミノ酸から構成される環状ペプチド医薬品の探索・開発を行っています。PDPSでは、短期間に標的タンパク質に対する高い結合性・選択性等、多くの特長を有する環状ペプチドを創製することができ、有望な医薬品候補化合物が取得できることから、多くのパートナーとの契約に至っています。また近年では環状ペプチドを起点にした低分子医薬品や、PDC、MPCといった様々なモダリティの探索・開発にも取り組んでいます。上記に加えて、当社グループは医薬品の臨床開発、製造、販売を行っています。PDRファーマはRI領域における製造販売業者として半世紀近い歴史・経験を有し、臨床開発、薬事機能など医薬品上市に必要な機能を有しています。一方で、一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と10年以上の年月を要します。また、研究開発の初期段階において有望とされた化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の結果によっては研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断を余儀なくされる可能性があります。さらには、臨床試験を完了しても、当局の定めた有効性と安全性に関する審査によっては、医薬品の上市が承認されない可能性もあります。これらのことから当社グループの研究開発活動は一定の不確実性を伴っており、この不確実性が当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 副作用・製造物責任に関するリスク当社グループは、医薬品の臨床開発、製造、販売を行っていますが、医薬品には予期せぬ副作用が発現するリスクがあります。当社グループでは、発売後の医薬品について製造販売業としての医薬品安全性監視を行うことで患者様の健康被害リスクを最小化する活動を実施する等、医薬品使用に関連するリスクの回避と軽減に努めています。また、医薬品の開発、製造販売を行う製品が、必要な品質及び安全性の基準を満たさない場合、これを原因とした製造物責任を負うリスクがあります。当社グループでは、製品の安全、品質への取組をマテリアリティの一つに掲げており、従業員への教育、製造・品質保証体制の整備に努めています。これらの取組にも関わらず、副作用等が発現し、製造販売の中止、製品の回収、薬害訴訟の提起等が惹起される場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 安定供給・製造仕入れに関するリスク当社グループは、放射性医薬品の製造販売を行っており、その社会的責任から安定供給をマテリアリティの一つに掲げています。一方で、放射性医薬品の文字通り核となる放射性核種は、原子炉や加速器といった特殊な設備で、希少な放射性原料から製造されることが多く、海外サプライヤーを中心とする特定の供給元に依存しています。また放射性医薬品の製造・輸送も、多くの規制を受けるため、許認可を受けた工場・業者以外では実施することができません。そのため地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの取引先や、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等の損害が発生した場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 薬価引き下げに関するリスク当社グループは、医薬品の製造販売を行っています。国内における医療用医薬品の販売価格は、厚生労働大臣が定める薬価基準によって定められますが、医療費高騰等による薬剤費引き下げ政策がすすめられており、2年に一度行われる薬価改定に加え、直近では2021年度に導入された中間年改定が2023年度も実施されています。薬価引き下げ政策が拡大し、当社グループの放射性医薬品の薬価が大きく引き下げられる場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (ⅱ)事業内容に関するリスク(5) PDPS技術の競争優位性に関するリスク当社グループのPDPSは、非常に高い多様性をもつペプチドライブラリーを構築し、その中から高い結合性と選択性を有するペプチドを取得できる技術が組み込まれており、重要な要素技術全てにおいて、他のペプチド創薬技術に対する優位性を持っていると認識しています。また、当社グループではPDPS技術の改善・向上のための研究開発に積極的に取り組んでいます。一方で、AIや計算化学といったin silico技術も含め、当社グループの特許技術に抵触しない優れた創薬技術が開発される可能性は否定できません。その場合、当社グループの競争優位性が低下することにつながり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 知的財産権に関するリスク当社グループのPDPSを始めとする様々な技術や、医薬品候補化合物・製品は、物質・製法・製剤・用途特許等の複数の特許によって一定期間保護されています。当社グループでは特許権を含む知的財産権を管理し、当社グループが事業を展開する市場における第三者の知的財産権や、第三者からの侵害状況を継続的にモニタリングし、知的財産権に関するリスクの回避・軽減に努めています。しかしながら、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合や、無効審判を受ける等して取得した特許を適切に保護できない場合、あるいは当社グループの製品・技術が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 共同研究開発先の研究開発進捗・方針に関するリスク当社グループの創薬開発事業においては、パートナーとの共同研究開発契約から計上される収益が主であり、事業収益の相当程度が共同研究開発先(パートナー)の研究開発の進展に伴って計上されます。当該収益は原則的には、(A)契約一時金、(B)研究開発支援金、(C)研究マイルストーンフィー、(D)開発マイルストーンフィー、(E)売上ロイヤルティー、(F)販売マイルストーンフィーで構成されています。上記の中で(A)(B)(C)は当社グループの事業活動に依拠する部分が大きいものの、(D)(E)(F)はパートナーの研究開発・事業活動に依拠する部分が大きく、当社グループでその進捗を管理・制御することは困難です。加えて、研究開発方針を両社で協議しながらプロジェクトを推進するため、必ずしも当社の意向通りに個々のプロジェクトへのリソース配分や、研究開発方針を決定できない可能性があります。また、自社パイプラインについては導出または共同開発契約等を実施し、パートナーが臨床開発・商業化を行うことを想定しています。その際も、パートナーの研究開発・事業活動の進捗と結果に当社グループの収益は大きく依拠致します。 そのため、パートナーにおける研究開発の進捗が遅れた場合やパートナーの研究開発方針に変更等があった場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (8) 収益認識に関するリスク当社グループの事業収益の相当程度は、数多くのパートナーとの共同研究、共同開発に関する契約から計上されます。それらは国際会計基準(IFRS)における収益認識基準に従い、必要に応じて個別に監査法人とも確認を取りながら計上しています。当社グループではIFRSの収益認識基準の原則や背景にある考え方の理解に努め、適切な収益認識を行ってきていますが、監査法人との協議の結果等から、当社の想定と異なる収益認識が必要となった場合、例えば一時金として想定していた収益を長期間にわたって分割計上する必要が生じる等して、年間に計上する売上額が大きく変動する可能性があります。そのため、一定以上の事業収益に対する収益認識の変更や修正を余儀なくされる場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (ⅲ)その他のリスク(9) 保有投資有価証券に関するリスク当社グループでは、共同研究開発を加速させる目的での戦略的提携先への出資等を通じ、投資有価証券を保有しています。投資有価証券の評価は、株式発行会社の財政状態・経営成績等の状況によって判断されるため、実質価額の低下により減損損失を余儀なくされる場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (10) のれん・無形資産に関するリスク当社グループは、企業買収等を通じて獲得したのれん及び無形資産を計上しています。これらの資産については計画と実績の乖離等により価値が下落した場合には減損損失の計上等、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (11) 債務保証に関するリスク当社グループは、一部の投資先に対して、債務保証を行っています。当社グループは投資先の経営状況をモニタリングするとともに、必要な施策を実施し、リスク低減に努めていますが、将来的にこれら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (12) 資金の借入コストに関するリスク当社グループの事業資金の一部は金融機関からの借入により調達しています。今後、長期金利や短期金利が上昇した場合、借入コストの増加により当社グループの事業戦略及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。また、当社グループの借入金には財務制限条項が付されています。業績の悪化等により当該借入金の期限前弁済義務が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。 (13) 外国為替相場の変動に関するリスク当社グループのパートナーには海外の製薬企業が含まれていることから、事業収益の一部が外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。当社グループでは短期的な為替変動に対応するため、適宜為替予約を用いて影響の最小化に努めていますが、為替相場が一定以上変動した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (14) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク当社グループは、役員及び従業員に対し新株予約権を付与しています。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社グループ株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。 (15) 人的資本に関するリスク当社グループは、多くの国内外パートナーとの共同研究開発を行っています。そのため、事業を展開し発展させていくために、様々な分野で高い専門性や能力を有しグローバルで活躍できる人材の、採用・育成・確保が必要です。一方で、そのような優秀人材の数は有限であり、社会全般に優秀人材の流動性は高まっている傾向にあります。また、当社グループは海外拠点を保有していないためにグローバル人材の採用に一定の制限があることから、人的資本が充分に確保できないリスクがあります。当社グループでは、優秀人材の獲得のため、賃金水準の上昇や働き方の多様化といった社会変化への対応に常に先行して取組、また従業員エンゲージメント向上に向けた取組を開始する等、採用競争力の強化や人材確保に努めています。さらに「高い専門性、情熱、誠実」という3つのバリューと、その体現の為の10の行動指針を「Values & behaviors」として定め、コーポレートカルチャーとして定着させることを目指し、人材育成と社内環境整備を進めています。こうした取組が機能せず、人材活用が充分に実施できない場合や、人材流出、採用の不調、役員や中核ポジションにおける後継者育成・獲得の停滞を招く場合、当社グループの人的リソース・機能が棄損し、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (16) ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク当社グループは、被検者・患者さん等の社外ステークホルダーの個人情報や、パートナーの技術・知的財産情報を含む、多様かつ重要な秘密情報を取り扱っています。近年、サイバー攻撃は年々高度化・巧妙化しており、それにより秘密情報が漏洩した場合、ステークホルダーが重大な損害を被るリスクや、当社グループの社会的信用が大きく損なわれるリスクや、競争力が低下するリスク等があります。当社グループでは、サイバーセキュリティに関するポリシーを制定し、技術・社会環境の変化に合わせた適切な技術・サービスの導入、ネットワーク及び設備の監視を始めとする各種サイバー攻撃対策の実施や、社員を対象としたトレーニング等継続的な対策強化を行っています。これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃等によるシステム障害や事故等の原因により情報の改ざん、漏えい等が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (17) 環境(気候変動)に関するリスク「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 環境(気候変動)に関するガバナンス、戦略及び指標と目標」に記載の通りです。 (18) コンプライアンスに関するリスク当社グループの事業の推進にあたっては、薬事規制や製造物責任、独占禁止法、個人情報保護法、放射性同位元素等の規制に関する法令等の様々な法的規制や、GMP、GQP、GCP、GLP等のガイドラインの遵守が必要です。また、当社グループの事業活動は、協力関係にある多数のサプライヤー等の第三者による業務遂行によって、大きく影響を受けます。当社グループは、コンプライアンス・リスクマネジメント委員会を設置してコンプライアンス推進体制を整備し、当社グループおよび関係する第三者の事業活動が法令および社内規程を遵守して実施されるよう努めています。しかしながら、当社グループの従業員や、関係する第三者がこれらの法令等に違反した場合や、社会的要請に反した行動をとった場合、法令による処罰や制裁、規制当局による処分、訴訟の敵を受ける可能性があり、社会的な信頼を失うとともに金銭的損害を負う可能性があり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (19) 重要な契約の解除・終了に関するリスク当社グループの事業展開上重要な契約が、相手方の経営方針の変更等何らかの理由で、解除・終了する場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、原則として、パートナーとの共同研究開発契約に係る受領済みの収益は、当社グループが契約を中途終了する場合でも、当社グループは返還義務を負っていません。 (20) 法的な紛争に関するリスク当社グループが事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害が疑われる場合には、損害賠償の請求訴訟を提起される等の法的な紛争が生じる可能性があります。本書提出日現在、法的な紛争は生じていませんが、今後、当社グループと第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に多大なリソースと時間を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (21) 財務制限条項に関するリスク当社グループは、当連結会計年度において営業損失を計上した結果、複数の金融機関と締結しているシンジケートローン契約(当連結会計年度末現在の残高17,100,000千円)に付されている財務制限条項に抵触しております。当社グループは、当該シンジケートローン契約のリファイナンス契約を2026年3月16日付で締結済みであることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
FY2024|7,993 文字
3 【事業等のリスク】当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しています。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、リスクの発生をすべて回避できる保証はございません。また、以下の記載内容は当社グループのリスクすべてを網羅するものではございませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性もあります。 (1)リスク管理体制と全社重要リスク決定までのプロセス 当社は、下図の通り、スリーラインモデルによるリスクマネジメント体制を構築しています。<ペプチドリーム リスクマネジメント体制> <リスクマネジメント体制における社内の関連組織・内部統制の関係図> (用語の説明)第1ライン当社の研究開発に係る各部門や、グループ会社が該当します。これらの各部門では、自らの業務に係る潜在的なリスク項目の抽出、評価、コントロールを実施しています。第2ライン第2ラインは、法務・コンプライアンス、知的財産、経理・財務、人事、情報管理システム等の専門知識を持ったスタッフ部門で構成され、第1ラインが行うリスク評価を踏まえ、各リスクについてのモニタリングとリスクコントロールのサポートを行っています。第3ライン第3ラインである内部監査担当は、定期的な社内監査の実施により、第1ラインのリスク評価や第2ラインのモニタリング・サポートが有効に機能しているかを検証しています。この内部監査の状況は随時、取締役会・監査等委員会・コンプライアンス・リスクマネジメント委員会に報告されています。コンプライアンス・リスクマネジメント委員会コンプライアンス・リスクマネジメント委員会は、主にコンプライアンス・リスクマネジメント体制の構築、管理及び維持、並びに、当社において想定されるリスクの洗い出し、評価、及び予防策の策定等を行い、取締役会に報告しています。 (2) 主要な事業等のリスク経営者が経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している主要な事業等のリスクは以下の通りです。各リスクについて発生可能性、影響度の観点から評価した結果を一元的に管理するために、同一のリスクマップに掲載しています。<主要な事業等のリスク一覧> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成リスクNo内容(ⅰ)医薬品の研究開発・製造販売事業一般に関するリスク1医薬品開発・薬事承認の不確実性に関するリスク2副作用・製造物責任に関するリスク3安定供給・製造仕入れに関するリスク4薬価引き下げに関するリスク(ⅱ)事業内容に関するリスク5PDPS技術の競争優位性に関するリスク6知的財産権に関するリスク7共同研究開発先の研究開発進捗・方針に関するリスク8収益認識に関するリスク(ⅲ)その他のリスク9保有投資有価証券に関するリスク10のれん・無形資産に関するリスク11債務保証に関するリスク12資金の借入コストに関するリスク13外国為替相場の変動に関するリスク14新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク15人的資本に関するリスク16ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク17環境(気候変動)に関するリスク18コンプライアンスに関するリスク19重要な契約の解除・終了に関するリスク20法的な紛争に関するリスク <主要な事業等のリスクマップ> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成 (ⅰ)医薬品の研究開発・製造販売事業一般に関するリスク(1) 医薬品開発・薬事承認の不確実性に関するリスク当社グループでは、独自のPDPSを活用し、生体内でのタンパク合成に利用される20種類のアミノ酸と、非天然型のアミノ酸から構成される環状ペプチド医薬品の探索・開発を行っています。PDPSでは、短期間に標的タンパク質に対する高い結合性・選択性等、多くの特長を有する環状ペプチドを創製することができ、有望な医薬品候補化合物が取得できることから、多くのパートナーとの契約に至っています。また近年では環状ペプチドを起点にした低分子医薬品や、PDC、MPCといった様々なモダリティの探索・開発にも取り組んでいます。上記に加えて、当社グループは医薬品の臨床開発、製造、販売を行っています。PDRファーマはRI領域における製造販売業者として半世紀近い歴史・経験を有し、臨床開発、薬事機能など医薬品上市に必要な機能を有しています。一方で、一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と10年以上の年月を要します。また、研究開発の初期段階において有望とされた化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の結果によっては研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断を余儀なくされる可能性があります。さらには、臨床試験を完了しても、当局の定めた有効性と安全性に関する審査によっては、医薬品の上市が承認されない可能性もあります。これらのことから当社グループの研究開発活動は一定の不確実性を伴っており、この不確実性が当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 副作用・製造物責任に関するリスク当社グループは、医薬品の臨床開発、製造、販売を行っていますが、医薬品には予期せぬ副作用が発現するリスクがあります。当社グループでは、発売後の医薬品について製造販売業としての医薬品安全性監視を行うことで患者様の健康被害リスクを最小化する活動を実施する等、医薬品使用に関連するリスクの回避と軽減に努めています。また、医薬品の開発、製造販売を行う製品が、必要な品質及び安全性の基準を満たさない場合、これを原因とした製造物責任を負うリスクがあります。当社グループでは、製品の安全、品質への取り組みをマテリアリティの一つに掲げており、従業員への教育、製造・品質保証体制の整備に努めています。これらの取り組みにも関わらず、副作用等が発現し、製造販売の中止、製品の回収、薬害訴訟の提起等が惹起される場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 安定供給・製造仕入れに関するリスク当社グループは、放射性医薬品の製造販売を行っており、その社会的責任から安定供給をマテリアリティの一つに掲げています。一方で、放射性医薬品の文字通り核となる放射性核種は、原子炉や加速器といった特殊な設備で、希少な放射性原料から製造されることが多く、海外サプライヤーを中心とする特定の供給元に依存しています。また放射性医薬品の製造・輸送も、多くの規制を受けるため、許認可を受けた工場・業者以外では実施することができません。そのため地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの取引先や、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等の損害が発生した場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 薬価引き下げに関するリスク当社グループは、医薬品の製造販売を行っています。国内における医療用医薬品の販売価格は、厚生労働大臣が定める薬価基準によって定められますが、医療費高騰等による薬剤費引き下げ政策がすすめられており、2年に一度行われる薬価改定に加え、直近では2021年度に導入された中間年改定が2023年度も実施されています。薬価引き下げ政策が拡大し、当社グループの放射性医薬品の薬価が大きく引き下げられる場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (ⅱ)事業内容に関するリスク(5) PDPS技術の競争優位性に関するリスク当社グループのPDPSは、非常に高い多様性をもつペプチドライブラリーを構築し、その中から高い結合性と選択性を有するペプチドを取得できる技術が組み込まれており、重要な要素技術全てにおいて、他のペプチド創薬技術に対する優位性を持っていると認識しています。また、当社グループではPDPS技術の改善・向上のための研究開発に積極的に取り組んでいます。一方で、AIや計算化学といったin silico技術も含め、当社グループの特許技術に抵触しない優れた創薬技術が開発される可能性は否定できません。その場合、当社グループの競争優位性が低下することにつながり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 知的財産権に関するリスク当社グループのPDPSを始めとする様々な技術や、医薬品候補化合物・製品は、物質・製法・製剤・用途特許等の複数の特許によって一定期間保護されています。当社グループでは特許権を含む知的財産権を管理し、当社グループが事業を展開する市場における第三者の知的財産権や、第三者からの侵害状況を継続的にモニタリングし、知的財産権に関するリスクの回避・軽減に努めています。しかしながら、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合や、無効審判を受ける等して取得した特許を適切に保護できない場合、あるいは当社グループの製品・技術が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (7) 共同研究開発先の研究開発進捗・方針に関するリスク当社グループの創薬開発事業においては、パートナーとの共同研究開発契約から計上される収益が主であり、事業収益の相当程度が共同研究開発先(パートナー)の研究開発の進展に伴って計上されます。当該収益は原則的には、(A)契約一時金、(B)研究開発支援金、(C)研究マイルストーンフィー、(D)開発マイルストーンフィー、(E)売上ロイヤルティー、(F)販売マイルストーンフィーで構成されています。上記の中で(A)(B)(C)は当社グループの事業活動に依拠する部分が大きいものの、(D)(E)(F)はパートナーの研究開発・事業活動に依拠する部分が大きく、当社グループでその進捗を管理・制御することは困難です。加えて、研究開発方針を両社で協議しながらプロジェクトを推進するため、必ずしも当社の意向通りに個々のプロジェクトへのリソース配分や、研究開発方針を決定できない可能性があります。また、自社パイプラインについては導出または共同開発契約等を実施し、パートナーが臨床開発・商業化を行うことを想定しています。その際も、パートナーの研究開発・事業活動の進捗と結果に当社グループの収益は大きく依拠致します。そのため、パートナーにおける研究開発の進捗が遅れた場合やパートナーの研究開発方針に変更等があった場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (8) 収益認識に関するリスク当社グループの事業収益の相当程度は、数多くのパートナーとの共同研究、共同開発に関する契約から計上されます。それらは国際会計基準(IFRS)における収益認識基準に従い、必要に応じて個別に監査法人とも確認を取りながら計上しています。当社グループではIFRSの収益認識基準の原則や背景にある考え方の理解に努め、適切な収益認識を行ってきていますが、監査法人との協議の結果等から、当社の想定と異なる収益認識が必要となった場合、例えば一時金として想定していた収益を長期間にわたって分割計上する必要が生じる等して、年間に計上する売上額が大きく変動する可能性があります。そのため、一定以上の事業収益に対する収益認識の変更や修正を余儀なくされる場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (ⅲ)その他のリスク(9) 保有投資有価証券に関するリスク当社グループでは、共同研究開発を加速させる目的での戦略的提携先への出資等を通じ、投資有価証券を保有しています。投資有価証券の評価は、株式発行会社の財政状態・経営成績等の状況によって判断されるため、実質価額の低下により減損損失を余儀なくされる場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (10) のれん・無形資産に関するリスク当社グループは、企業買収等を通じて獲得したのれん及び無形資産を計上しています。これらの資産については計画と実績の乖離等により価値が下落した場合には減損損失の計上等、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (11) 債務保証に関するリスク当社グループは、一部の投資先に対して、債務保証を行っています。当社グループは投資先の経営状況をモニタリングするとともに、必要な施策を実施し、リスク低減に努めていますが、将来的にこれら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (12) 資金の借入コストに関するリスク当社グループの事業資金の一部は金融機関からの借入により調達しています。今後、長期金利や短期金利が上昇した場合、借入コストの増加により当社グループの事業戦略及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。また、当社グループの借入金には財務制限条項が付されています。業績の悪化等により当該借入金の期限前弁済義務が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。 (13) 外国為替相場の変動に関するリスク当社グループのパートナーには海外の製薬企業が含まれていることから、事業収益の一部が外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。当社グループでは短期的な為替変動に対応するため、適宜為替予約を用いて影響の最小化に努めていますが、為替相場が一定以上変動した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (14) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク当社グループは、役員及び従業員に対し新株予約権を付与しています。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社グループ株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。 (15) 人的資本に関するリスク当社グループは、多くの国内外パートナーとの共同研究開発を行っています。そのため、事業を展開し発展させていくために、様々な分野で高い専門性や能力を有しグローバルで活躍できる人材の、採用・育成・確保が必要です。一方で、そのような優秀人材の数は有限であり、社会全般に優秀人材の流動性は高まっている傾向にあります。また、当社グループは海外拠点を保有していないためにグローバル人材の採用に一定の制限があることから、人的資本が充分に確保できないリスクがあります。当社グループでは、優秀人材の獲得のため、賃金水準の上昇や働き方の多様化といった社会変化への対応に常に先行して取り組み、また従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みを開始する等、採用競争力の強化や人材確保に努めています。さらに「高い専門性、情熱、誠実」という3つのバリューと、その体現の為の10の行動指針を「Values & behaviors」として定め、コーポレートカルチャーとして定着させることを目指し、人材育成と社内環境整備を進めています。こうした取り組みが機能せず、人材活用が充分に実施できない場合や、人材流出、採用の不調、役員や中核ポジションにおける後継者育成・獲得の停滞を招く場合、当社グループの人的リソース・機能が棄損し、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (16) ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク当社グループは、被検者・患者さん等の社外ステークホルダーの個人情報や、パートナーの技術・知的財産情報を含む、多様かつ重要な秘密情報を取り扱っています。近年、サイバー攻撃は年々高度化・巧妙化しており、それにより秘密情報が漏洩した場合、ステークホルダーが重大な損害を被るリスクや、当社グループの社会的信用が大きく損なわれるリスクや、競争力が低下するリスク等があります。当社グループでは、サイバーセキュリティに関するポリシーを制定し、技術・社会環境の変化に合わせた適切な技術・サービスの導入、ネットワーク及び設備の監視を始めとする各種サイバー攻撃対策の実施や、社員を対象としたトレーニング等継続的な対策強化を行っています。これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃等によるシステム障害や事故等の原因により情報の改ざん、漏えい等が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (17) 環境(気候変動)に関するリスク「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 環境(気候変動)に関するガバナンス、戦略及び指標と目標」に記載の通りです。 (18) コンプライアンスに関するリスク当社グループの事業の推進にあたっては、薬事規制や製造物責任、独占禁止法、個人情報保護法、放射性同位元素等の規制に関する法令等の様々な法的規制や、GMP、GQP、GCP、GLP等のガイドラインの遵守が必要です。また、当社グループの事業活動は、協力関係にある多数のサプライヤー等の第三者による業務遂行によって、大きく影響を受けます。当社グループは、コンプライアンス・リスクマネジメント委員会を設置してコンプライアンス推進体制を整備し、当社グループおよび関係する第三者の事業活動が法令および社内規定を遵守して実施されるよう努めています。しかしながら、当社グループの従業員や、関係する第三者がこれらの法令等に違反した場合や、社会的要請に反した行動をとった場合、法令による処罰や制裁、規制当局による処分、訴訟の敵を受ける可能性があり、社会的な信頼を失うとともに金銭的損害を負う可能性があり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (19) 重要な契約の解除・終了に関するリスク当社グループの事業展開上重要な契約が、相手方の経営方針の変更等何らかの理由で、解除・終了する場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、原則として、パートナーとの共同研究開発契約に係る受領済みの収益は、当社グループが契約を中途終了する場合でも、当社グループは返還義務を負っていません。 (20) 法的な紛争に関するリスク当社グループが事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害が疑われる場合には、損害賠償の請求訴訟を提起される等の法的な紛争が生じる可能性があります。本書提出日現在、法的な紛争は生じていませんが、今後、当社グループと第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に多大なリソースと時間を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
FY2023|7,593 文字
3 【事業等のリスク】当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はございません。また、以下の記載内容は当社グループのリスクすべてを網羅するものではございませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性もございます。 (1) リスク管理体制当社のリスク管理体制は以下のとおりです。<会社の機関・内部統制の関係図>詳細については、 「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 b リスク管理体制」をご参照ください。 (2) 主要な事業等のリスク経営者が経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している主要な事業等のリスクは以下のとおりです。各リスクについて発生可能性、影響度の観点から評価した結果を一元的に管理するために、同一のリスクマップに掲載しております。<主要な事業等のリスク一覧> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成リスクNo内容(ⅰ)医薬品の研究開発・製造販売事業一般に関するリスク1医薬品開発・薬事承認の不確実性に関するリスク2副作用・製造物責任に関するリスク3安定供給・製造仕入れに関するリスク4薬価引き下げに関するリスク(ⅱ)事業内容に関するリスク5PDPS技術の競争優位性に関するリスク6知的財産権に関するリスク7共同研究開発先の研究開発進捗・方針に関するリスク8収益認識に関するリスク(ⅲ)その他に関するリスク9保有投資有価証券に関するリスク10のれん・無形資産に関するリスク11債務保証に関するリスク12資金の借入コストに関するリスク13外国為替相場の変動に関するリスク14新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク15人的資本に関するリスク16ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク17環境(気候変動)に関するリスク18コンプライアンスに関するリスク19重要な契約の解除・終了に関するリスク20法的な紛争に関するリスク <主要な事業等のリスクマップ> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成 (ⅰ)医薬品の研究開発・製造販売事業一般に関するリスク(1) 医薬品開発・薬事承認の不確実性に関するリスク当社グループでは、独自のPDPSを活用し、生体内でのタンパク合成に利用される20種類のアミノ酸と、非天然型のアミノ酸から構成される環状ペプチド医薬品の探索・開発を行っております。PDPSでは、短期間に標的タンパク質に対する高い結合性・選択性等、多くの特長を有する環状ペプチドを創製することができ、有望な医薬品候補化合物が取得できることから、多くのパートナーとの契約に至っております。また近年では環状ペプチドを起点にした低分子医薬品や、PDC、MPCといった様々なモダリティの探索・開発にも取り組んでおります。上記に加えて、当社グループは医薬品の臨床開発、製造、販売を行っております。PDRファーマはRI領域における製造販売業者として半世紀近い歴史・経験を有し、臨床開発、薬事機能など医薬品上市に必要な機能を有しております。一方で、一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と10年以上の年月を要します。また、研究開発の初期段階において有望とされた化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の結果によっては研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断を余儀なくされる可能性がございます。さらには、臨床試験を完了しても、当局の定めた有効性と安全性に関する審査によっては、医薬品の上市が承認されない可能性もございます。これらのことから当社グループの研究開発活動は一定の不確実性を伴っており、この不確実性が当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (2) 副作用・製造物責任に関するリスク当社グループは、医薬品の臨床開発、製造、販売を行っておりますが、医薬品には予期せぬ副作用が発現するリスクがあります。当社グループでは、発売後の医薬品について製造販売業としての医薬品安全性監視を行うことで患者様の健康被害リスクを最小化する活動を実施する等、医薬品使用に関連するリスクの回避と軽減に努めております。また、医薬品の開発、製造販売を行う製品が、必要な品質及び安全性の基準を満たさない場合、これを原因とした製造物責任を負うリスクがあります。当社グループでは、製品の安全、品質への取り組みをマテリアリティの一つに掲げており、従業員への教育、製造・品質保証体制の整備に努めております。これらの取り組みにも関わらず、副作用等が発現し、製造販売の中止、製品の回収、薬害訴訟の提起等が惹起される場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (3) 安定供給・製造仕入れに関するリスク当社グループは、放射性医薬品の製造販売を行っており、その社会的責任から安定供給をマテリアリティの一つに掲げております。一方で、放射性医薬品の文字通り核となる放射性核種は、原子炉や加速器といった特殊な設備で、希少な放射性原料から製造されることが多く、海外サプライヤーを中心とする特定の供給元に依存しております。また放射性医薬品の製造・輸送も、多くの規制を受けるため、許認可を受けた工場・業者以外では実施することができません。そのため地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの取引先や、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等の損害が発生した場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (4) 薬価引き下げに関するリスク当社グループは、医薬品の製造販売を行っております。国内における医療用医薬品の販売価格は、厚生労働大臣が定める薬価基準によって定められますが、医療費高騰等による薬剤費引き下げ政策がすすめられており、2年に一度行われる薬価改定に加え、直近では2021年度に導入された中間年改定が2023年度も実施されております。薬価引き下げ政策が拡大し、当社グループの放射性医薬品の薬価が大きく引き下げられる場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅱ)事業内容に関するリスク(5) PDPS技術の競争優位性に関するリスク当社グループのPDPSは、非常に高い多様性をもつペプチドライブラリーを構築し、その中から高い結合性と選択性を有するペプチドを取得できる技術が組み込まれており、重要な要素技術全てにおいて、他のペプチド創薬技術に対する優位性を持っていると認識しております。また、当社グループではPDPS技術の改善・向上のための研究開発に積極的に取り組んでおります。一方で、AIや計算化学といったin silico技術も含め、当社グループの特許技術に抵触しない優れた創薬技術が開発される可能性は否定できません。その場合、当社グループの競争優位性が低下することにつながり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (6) 知的財産権に関するリスク当社グループのPDPSを始めとする様々な技術や、医薬品候補化合物・製品は、物質・製法・製剤・用途特許等の複数の特許によって一定期間保護されております。当社グループでは特許権を含む知的財産権を管理し、当社グループが事業を展開する市場における第三者の知的財産権や、第三者からの侵害状況を継続的にモニタリングし、知的財産権に関するリスクの回避・軽減に努めております。しかしながら、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合や、無効審判を受ける等して取得した特許を適切に保護できない場合、あるいは当社グループの製品・技術が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (7) 共同研究開発先の研究開発進捗・方針に関するリスク当社グループの創薬開発事業においては、パートナーとの共同研究開発契約から計上される収益が主であり、事業収益の相当程度が共同研究開発先(パートナー)の研究開発の進展に伴って計上されます。当該収益は原則的には、(A)契約一時金、(B)研究開発支援金、(C)研究マイルストーンフィー、(D)開発マイルストーンフィー、(E)売上ロイヤルティー、(F)販売マイルストーンフィーで構成されております。上記の中で(A)(B)(C)は当社グループの事業活動に依拠する部分が大きいものの、(D)(E)(F)はパートナーの研究開発・事業活動に依拠する部分が大きく、当社グループでその進捗を管理・制御することは困難です。加えて、研究開発方針を両社で協議しながらプロジェクトを推進するため、必ずしも当社の意向通りに個々のプロジェクトへのリソース配分や、研究開発方針を決定できない可能性がございます。また、自社パイプラインについては導出または共同開発契約等を実施し、パートナーが臨床開発・商業化を行うことを想定しております。その際も、パートナーの研究開発・事業活動の進捗と結果に当社グループの収益は大きく依拠致します。そのため、パートナーにおける研究開発の進捗が遅れた場合やパートナーの研究開発方針に変更等があった場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (8) 収益認識に関するリスク当社グループの事業収益の相当程度は、数多くのパートナーとの共同研究、共同開発に関する契約から計上されます。それらは国際会計基準(IFRS)における収益認識基準に従い、必要に応じて個別に監査法人とも確認を取りながら計上しております。当社グループではIFRSの収益認識基準の原則や背景にある考え方の理解に努め、適切な収益認識を行ってきておりますが、監査法人との協議の結果等から、当社の想定と異なる収益認識が必要となった場合、例えば一時金として想定していた収益を長期間にわたって分割計上する必要が生じる等して、年間に計上する売上額が大きく変動する可能性がございます。そのため、一定以上の事業収益に対する収益認識の変更や修正を余儀なくされる場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅲ)その他のリスク(9) 保有投資有価証券に関するリスク当社グループでは、共同研究開発を加速させる目的での戦略的提携先への出資等を通じ、投資有価証券を保有しております。投資有価証券の評価は、株式発行会社の財政状態・経営成績等の状況によって判断されるため、実質価額の低下により減損損失を余儀なくされる場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (10) のれん・無形資産に関するリスク当社グループは、企業買収等を通じて獲得したのれん及び無形資産を計上しております。これらの資産については計画と実績の乖離等により価値が下落した場合には減損損失の計上等、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (11) 債務保証に関するリスク当社グループは、一部の投資先に対して、債務保証を行っております。当社グループは投資先の経営状況をモニタリングするとともに、必要な施策を実施し、リスク低減に努めておりますが、将来的にこれら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (12) 資金の借入コストに関するリスク当社グループの事業資金の一部は金融機関からの借入により調達しています。今後、長期金利や短期金利が上昇した場合、借入コストの増加により当社グループの事業戦略及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。また、当社グループの借入金には財務制限条項が付されています。業績の悪化等により当該借入金の期限前弁済義務が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。 (13) 外国為替相場の変動に関するリスク当社グループのパートナーには海外の製薬企業が含まれていることから、事業収益の一部が外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。当社グループでは短期的な為替変動に対応するため、適宜為替予約を用いて影響の最小化に努めておりますが、為替相場が一定以上変動した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 (14) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク当社グループは、役員及び従業員に対し新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社グループ株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性がございます。 (15) 人的資本に関するリスク当社グループは、多くの国内外パートナーとの共同研究開発を行っております。そのため、事業を展開し発展させていくために、様々な分野で高い専門性や能力を有しグローバルで活躍できる人材の、採用・育成・確保が必要です。一方で、そのような優秀人材の数は有限であり、社会全般に優秀人材の流動性は高まっている傾向にあります。また、当社グループは海外拠点を保有していないためにグローバル人材の採用に一定の制限があることから、人的資本が充分に確保できないリスクがございます。当社グループでは、優秀人材の獲得のため、賃金水準の上昇や働き方の多様化といった社会変化への対応に常に先行して取り組み、また従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みを開始する等、採用競争力の強化や人材確保に努めております。さらに「高い専門性、情熱、誠実」という3つのバリューと、その体現の為の10の行動指針を「Values & behaviors」として定め、コーポレートカルチャーとして定着させることを目指し、人材育成と社内環境整備を進めております。こうした取り組みが機能せず、人材活用が充分に実施できない場合や、人材流出、採用の不調、役員や中核ポジションにおける後継者育成・獲得の停滞を招く場合、当社グループの人的リソース・機能が棄損し、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (16) ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク当社グループは、被検者・患者さん等の社外ステークホルダーの個人情報や、パートナーの技術・知的財産情報を含む、多様かつ重要な秘密情報を取り扱っております。近年、サイバー攻撃は年々高度化・巧妙化しており、それにより秘密情報が漏洩した場合、ステークホルダーが重大な損害を被るリスクや、当社グループの社会的信用が大きく損なわれるリスクや、競争力が低下するリスク等がございます。当社グループでは、サイバーセキュリティに関するポリシーを制定し、技術・社会環境の変化に合わせた適切な技術・サービスの導入、ネットワーク及び設備の監視を始めとする各種サイバー攻撃対策の実施や、社員を対象としたトレーニング等継続的な対策強化を行っております。これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃等によるシステム障害や事故等の原因により情報の改ざん、漏えい等が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (17) 環境(気候変動)に関するリスク「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 環境(気候変動)に関するガバナンス、戦略及び指標と目標」に記載の通りです。 (18) コンプライアンスに関するリスク当社グループの事業の推進にあたっては、薬事規制や製造物責任、独占禁止法、個人情報保護法、放射性同位元素等の規制に関する法令等の様々な法的規制や、GMP、GQP、GCP、GLP等のガイドラインの遵守が必要です。また、当社グループの事業活動は、協力関係にある多数のサプライヤー等の第三者による業務遂行によって、大きく影響を受けます。当社グループは、コンプライアンス・リスクマネジメント委員会を設置してコンプライアンス推進体制を整備し、当社グループおよび関係する第三者の事業活動が法令および社内規定を遵守して実施されるよう努めております。しかしながら、当社グループの従業員や、関係する第三者がこれらの法令等に違反した場合や、社会的要請に反した行動をとった場合、法令による処罰や制裁、規制当局による処分、訴訟の敵を受ける可能性があり、社会的な信頼を失うとともに金銭的損害を負う可能性があり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (19) 重要な契約の解除・終了に関するリスク当社グループの事業展開上重要な契約が、相手方の経営方針の変更等何らかの理由で、解除・終了する場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。なお、原則として、パートナーとの共同研究開発契約に係る受領済みの収益は、当社グループが契約を中途終了する場合でも、当社グループは返還義務を負っておりません。 (20) 法的な紛争に関するリスク当社グループが事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害が疑われる場合には、損害賠償の請求訴訟を提起される等の法的な紛争が生じる可能性がございます。本書提出日現在、法的な紛争は生じておりませんが、今後、当社グループと第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に多大なリソースと時間を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
FY2022|11,876 文字
2 【事業等のリスク】当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はございません。また、以下の記載内容は当社グループのリスクすべてを網羅するものではございませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性もございます。 (1) リスク管理体制当社のリスク管理体制は以下のとおりです。<会社の機関・内部統制の関係図>詳細については、 「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 b リスク管理体制」をご参照ください。 (2) 主要な事業等のリスク経営者が経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している主要な事業等のリスクは下記のとおりであります。各リスクについて発生可能性、影響度の観点から評価した結果を一元的に管理するために、同一のリスクマップに掲載しております。<主要な事業等のリスク一覧> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成リスクNo内容(ⅰ)事業環境に関するリスク1特殊環状ペプチドの医薬品の可能性2技術革新(ⅱ)事業内容に関するリスク3特殊環状ペプチド医薬品をベースにした事業であること4複数の製薬企業との共同研究開発の実施していること5収益計上6法的な紛争の可能性7経営上の重要な契約8共同研究開発契約先への依存9自社パイプライン(自社創薬)10他社との戦略的提携・企業買収等の成否(ⅲ)知的財産権に関するリスク11特許の取得・出願状況12職務発明に対する社内対応(ⅳ)医薬品の研究開発事業一般に関するリスク13医薬品開発の不確実性14副作用発現15薬事法その他の薬事に関する規制16製造・仕入れ 17製造物責任18医薬品行政(ⅴ)人材及び組織に関するリスク19人材確保・人材流出(ⅵ)その他に関するリスク20新株予約権の行使による株式価値の希薄化21配当政策22情報管理23サイバー攻撃24外国為替相場の変動25感染症等の発生26地球環境に対する安全性や気候変動による自然災害等の発生27資金の借入・返済28債務保証29保有投資有価証券30のれん・無形資産の減損31風説・風評の発生 <主要な事業等のリスクマップ> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成 (ⅰ) 事業環境に関するリスク(1) 特殊環状ペプチドの医薬品としての可能性について当社グループの特殊ペプチドは、タンパク質の合成に利用される20種類のL体のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んでいます。この性質により、当社グループは多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製することができ、その中からターゲットタンパクに対して強い結合力・特異性を有し、高い生体内安定性を保ち、細胞膜透過性をも有する特殊ペプチドを創製することができます。このような特質から、当社グループの特殊ペプチドは、新たな医薬品候補物質として期待されており、製薬会社との契約に結びついております。当社グループの創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が稼働を開始したのは、2010年であります。医薬品は基礎研究から製造販売承認等を取得するまでに、通常、多大な開発費用と10年以上の長い年月を必要とします。当社グループのPDPSを活用して創製された特殊ペプチドからこれまでに新薬が承認された実績はございません。(ただし、体内のホルモンや菌類・動物・植物由来等の天然の環状ペプチドを基に医薬品が開発され、販売されている実績はございます。たとえば、1983年にスイスのSandoz社から発売された免疫抑制剤「Sandimmun(サンディミュン)」は、ノルウェー南部のハルダンゲル高原の土壌から発見された真菌が産生していた特殊な構造のペプチド(シクロスポリン)から作られています。)将来において、当社グループの特殊ペプチドによる新薬開発実績が生み出せなかった場合や当社グループの特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (2) 技術革新について当社グループの創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)は、特殊ペプチドを医薬品候補物質として運用するために必要となる一連の技術((A)特殊ペプチドを創製し、(B)低分子医薬及び抗体医薬を超える多様性を持ったライブラリーを構築し、(C)高速でスクリーニングを行う技術。)を組み込んでおり、この(A)から(C)のいずれの技術をとってみても、同じくペプチドを医薬品候補物質として扱っている他社の技術と比べ、優位性を保っているものと考えております。しかしながら、技術は日々進歩するものであり、当社グループの特許技術に抵触しない技術をもって当社グループPDPSを上回る技術が開発されることも考えられます。当社グループとしては、PDPSを継続的に発展させるため、研究開発を積極的に実施し、PDPSに必要な知的財産権の確保に努めていく方針でありますが、当社グループPDPSを上回る技術が開発された場合には、当社グループの競争優位性が低下する結果、当社グループの希望する条件でクライアントとの間で契約を締結することができなくなる可能性が増加するなど、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅱ) 事業内容に関するリスク(3) 特殊環状ペプチド医薬品をベースにした事業であることについて当社グループは、従来、特殊ペプチド医薬に特化して事業を展開しておりました。そのため、当社グループの創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)により創製される特殊ペプチドは、新規性・進歩性を有するオリジナリティの高いものであり、容易に代替技術が生まれて当社グループの存在価値が危ぶまれるような事態になることは想定し難いと考えておりますが、特殊ペプチドに対する製薬企業の評価が変化した場合や当社グループの特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。近時は特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることがわかっており、PDPSの応用範囲が以前に比べて大幅に拡がっております。そのため、特殊ペプチドに特化していた事業内容が変わりつつあり、特殊ペプチドをベースとしてPDPSを創薬研究開発の基盤として当業界に広めていき、特殊ペプチドのみならず低分子医薬の開発にも活用していこうという展開を試みています。こうした、低分子医薬の開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (4) 複数の製薬企業との共同研究開発を実施していることについて当社グループの共同研究開発契約先の製薬会社は、それぞれ独自の創薬開発ターゲットを保有しており、当社グループはその研究開発について提案を受けて推進していくことになりますが、まれに各製薬企業間で創薬開発ターゲットが競合してしまうことがございます。競合が生じた際は、当社グループが各製薬企業との間に立って差配することによって、トラブルを未然に防止しており、現在までにトラブルが生じた事例はございません。しかし、今後、その調整が困難になる事態が生じた場合、当社グループは新たな共同研究開発契約や新たなターゲットタンパクが獲得できないなど、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (5) 収益計上について創薬開発事業の共同研究開発契約に係る売上カテゴリーは、原則として(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)に始まり順次、(B)研究開発支援金、(C)追加研究開発支援金、(D)創薬開発権利金、(E)非臨床・臨床開発マイルストーンフィー、(F)売上ロイヤルティー、(G)販売マイルストーンフィーで構成されております。(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)、(B)研究開発支援金及び(C)追加研究開発支援金は当社グループの事業活動に依拠する部分が大きいものの、特に(B)及び(C)について、クライアントの方針転換等の影響を受けてプロジェクトが終了し、それ以降の収益が計上できないことがございます。また、(A)は、相対的に(B)及び(C)よりも額が大きく、一度に売上が計上されるため、当社グループの経営成績は(A)の計上に少なからず影響を受けることになります。(D)創薬開発権利金や(E)各種マイルストーンフィーに至っては、クライアントにおける業務の進行状況に大きく依存するものであり、当社グループでのコントロールは極めて困難な売上カテゴリーです。そのため、当社グループの計画に対してクライアントにおける研究開発の進捗が遅れた場合やクライアントの研究開発方針に変更等があった場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (6) 法的な紛争の可能性について当社グループは、事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害していない場合でも相手側が侵害したと考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起されるなど法的な紛争が生じる可能性がございます。本書提出日現在、法的な紛争は生じておりませんが、今後、当社グループと第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に労力、時間及び費用を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、その場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、事業上の制約を受けるなど、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。さらに、これまでのところ当社グループが製薬企業と共同研究開発した特殊ペプチド医薬品が上市にまで至った事例は未だございませんが、今後、万一、当社グループが共同研究開発に携わった医薬品において健康被害が引き起こされた場合には、そのネガティブなイメージにより、当社グループ及び当社グループの創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)に対する信頼性に悪影響が生じ、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (7) 経営上の重要な契約について当社グループの事業展開上、重要と思われる契約が、当該契約が解除又はその他の事由に基づき終了した場合又は契約の相手方の経営方針が変更された場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。なお、共同研究開発契約に係る金員(当社グループから見たときは売上に該当)は、原則として当社グループが前金として受領しており、これらの金員について当社グループは契約が中途終了する場合でも返還義務を負っておりません。その反面、共同研究開発契約先は、契約の解除について任意(自由)に実行することができる契約内容となっております。 (8) 共同研究開発契約先への依存について当社グループアライアンス事業における収益は、ほとんどが共同研究開発契約先(クライアント)からのものでありますが、今後、これらのクライアントとの間で新たな標的分子に係る共同研究開発が開始されない場合や、共同研究開発の結果がクライアントの要求水準を満たせない場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、当社グループがライセンスアウトしたリード化合物は、クライアントが主体となって臨床試験及び承認申請を行うことになりますが、その進捗と結果が当社グループの事業戦略及び経営成績に大きな影響を及ぼします。当社グループは、ライセンスアウト後もクライアントをサポートいたしますが、臨床試験及び承認申請はクライアントが主体となって実施するものであり、当社グループでコントロールすることはできません。したがって、臨床試験及び承認申請の進捗が当社グループの予期しない事由により遅滞することや、臨床試験及び承認申請が断念される等の可能性がございます。さらに、製造販売承認後の販売計画はクライアントに依存しており、クライアントの経営方針や販売計画の変更、経営環境の悪化等により販売計画を達成できない等の可能性がございます。そのほか、医薬品の研究開発には多額の資金が必要となることから、当業界においては組織再編やM&Aが盛んであり、クライアントにおいて組織再編が実施されることや、競合他社を買収する(競合他社から買収される)ことなど、業界における競争の構図が短期間に塗り替えられる可能性がございます。こうした大規模な企業組織再編が当社グループのクライアントに生じた場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (9) 自社パイプライン(自社創薬)について当社グループでは、特殊ペプチドの特性を活かした自社パイプライン(自社創薬)の研究開発を進めております。現在のところ、開発の方向性としては、特殊ペプチドを医薬品として活用するアプローチと特殊ペプチドの持つ優れた選択性を活かして他の薬剤を誘導するPDC(Peptide Drug Conjugate)薬剤を開発するアプローチをとっております。また、特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることから、自社パイプラインにおいても低分子医薬品の開発に着手しております。自社パイプラインについては、研究開発が順調に進展し、臨床試験まで当社グループの負担で実施する場合には、多額の開発費用を要する状態になる可能性がございます。また、自社パイプラインの研究開発が順調に進展しない場合には、将来の事業化のオプションを一部失う可能性がございます。 (10) 他社との戦略的提携・企業買収等の成否について当社グループは、競争力の強化及び事業分野の拡大等のため、他社の事業部門の譲受け、他社の買収、他社との業務提携、合弁会社の設立、他社への投資等の戦略的提携など(以下「戦略的提携等」といいます。)を行うことがございます。こうした戦略的提携等については、パートナー企業との思惑に相違が生じて提携・統合が円滑に進まない可能性や当初期待していた効果が得られない可能性、投資した金額の全部又は一部が回収できない可能性等がございます。また、パートナー企業が当社グループの利益に反する決定を行う可能性があり、パートナー企業が事業戦略を変更した場合など、当社グループは戦略的提携等の関係を維持することが困難になる可能性もあり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅲ) 知的財産権に関するリスク(11) 特許の取得・出願状況について当社グループは事業において様々な発明及び特許権を実施しておりますが、これらは当社グループ、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学により登録済みになっているものと審査中のものがございます。しかしながら、出願中の発明すべてについて特許査定がなされるとは限りません。また、特許権を設定登録した場合でも、特許異議申立制度により請求項が無効化される可能性がございます。また、特許権侵害訴訟の提起や特許無効審判が請求されるなど特許権に係る法的な紛争が生じ、当社グループが実施する権利に何らかの悪影響が生じる可能性がございます。また、当社グループが実施する特許権を上回る優れた技術の出現により、当社グループが有する特許権に含まれる技術が陳腐化する可能性がございます。こうした事態が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。その他、当社グループは、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学が出願人である発明又は特許権に関して、契約により第三者サブライセンス権付き独占実施・許諾権を獲得しておりますが、当該契約の内容が変更される場合や、期間満了や解除等により契約が終了した場合等にも、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (12) 職務発明に対する社内対応について当社グループの役職員等が創出した職務発明について特許を受ける権利を取得したときは、当社グループは、当該職務発明の発明者である役職員等に対し、特許法に定める「相当の利益」を支払うことになります。当社グループでは、その取扱いについて社内規則等でルールを定めており、役職員等への周知及び運用を強化しております。しかしながら、職務発明の取扱いにつき、相当の利益の支払請求等の問題が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅳ) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク(13) 医薬品開発の不確実性について一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。研究開発の初期段階において有望だと思われる化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の過程で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断をされることがございます。開発を延長した場合には、追加の資金投入が必要になるほか、特許権の存続期間満了までの期間が短くなり、投資した資金の回収に影響を及ぼします。また、開発を中止した場合には、それまでに投じた研究開発資金が回収できなくなることになります。 (14) 副作用発現について医薬品は、臨床試験段階から上市後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性がございます。これら予期せぬ副作用が発現した場合、信用力の失墜、訴訟の提起等により、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (15) 薬事法その他の薬事に関する規制について医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法(わが国においては「医薬品医療機器等法」)及びその他の関連法規等により、様々な規制を受けております。現在のところ、当社グループのパイプラインは研究開発段階にあり、わが国の厚生労働省、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等から上市のための認可は受けておりませんが、今後、各国の薬事法等の諸規制に基づいて医薬品の製造販売承認申請を行い、承認を取得することを目指しております。そのため、自社のパイプラインについて上記の規制をクリアするための体制整備が求められることになります。また、各国の薬事法及びその他の関連法規等は随時改定がなされるものであり、これらの変化が当社グループの生み出す特殊ペプチドにとって有利又は不利に働くことや、さらなる体制の整備・変更を求められる可能性が考えられます。こうした規制への対応が当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 (16) 製造・仕入れについて地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等の損害が発生した場合、経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性がございます。また、製品の一部は当社グループの工場において独自の技術により製造しており、商品及び原材料の一部は、特定の取引先にその供給を依存しております。このため、何らかの理由により製造活動や仕入れが遅延又は停止した場合、経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性がございます。 (17) 製造物責任について医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在しています。将来、開発したいずれかの医薬品が健康障害を引き起こし、又は臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事象が発見された場合、当社グループは製造物責任を負うこととなり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、製造物責任賠償請求がなされることによるネガティブなイメージにより、当社グループ及び当社グループの医薬品に対する信頼に悪影響が生じ、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (18) 医薬品行政について医療用医薬品の販売価格は、日本及びその他各国政府の薬価に関する規制の影響を受けます。当社グループでは、これまでのところ自社で臨床試験を実施したことがなく、早期に開発候補化合物をクライアントに導出する方針を採用しております。そのため、当社グループは薬価戦略についてはクライアントに依存しており、日本及びその他各国政府の薬価政策の影響を間接的に受ける立場にあります。当社グループの開発候補化合物が上市された場合において、当該医薬品にとってネガティブな薬価改定やその他の医療保険制度の改定があった場合は、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅴ) 人材及び組織に関するリスク(19) 人材確保・人材流出について当社グループは、創薬基盤技術の深化、創薬研究開発の進展を図るには、研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保が必要であると考えております。当社グループの想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅵ) その他に関するリスク(20) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について当社グループは、役員及び従業員に対し新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社グループ株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性がございます。本書提出日現在、権利行使が可能な状態にある新株予約権による潜在株式数はございません。 (21) 配当政策について当社グループは配当による株主様への利益還元も重要な経営課題だと認識しております。当社グループは、将来においても安定的な収益の獲得が可能であり、かつ、研究開発資金を賄うに十分な利益が確保できる場合には、将来の研究開発活動等に備えるための内部留保充実の必要性等を総合的に勘案した上で、利益配当についても検討してまいります。 (22) 情報管理について当社グループの事業は、クライアントである製薬企業からターゲットタンパクの情報を預かる立場にあります。そのため、当社グループは、当社グループの従業員との間において顧客情報を含む会社の情報に係る誓約書を徴求し、会社情報の漏えいの未然防止に努めております。しかしながら、万一顧客の情報を含む会社の情報が外部に漏えいした場合は、当社グループの信用低下を招き、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性がございます。 (23) サイバー攻撃について近年、サイバー攻撃はこれまで以上に技術が高度化し、攻撃手法も多様化・巧妙化しております。このような状況を踏まえ、当社グループはサイバーセキュリティに関するリスクを最重要リスクの一つと認識し、ネットワーク及び設備の監視を始めとする各種サイバー攻撃対策を実施し、その管理には万全を期しております。しかしながら、これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃やそれに伴う深刻なシステム障害等により実質的に当社グループ事業が中断する等、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性がございます。 (24) 外国為替相場の変動について当社グループのクライアントには海外の製薬企業が含まれていることから、売上収益の一部が外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。したがって、為替相場が変動した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことになります。当社グループでは短期的な為替変動に対応するため、適宜為替予約を用いて影響の最小化に努めております。 (25) 感染症等の発生について当社グループは、事業活動や研究開発活動に必要な設備及び機能が本社・研究所に集中しており、在宅勤務等へのシフトによって本社研究所以外の場所で継続できる業務が一部のオフィス業務に限定されます。感染症対策としてオフィス内の衛生管理の強化や「密な接触機会」の回避を図る取り組みを継続して実施すること等により、社員及びすべての関係取引先、並びにそのご家族の皆様の感染リスク軽減に引き続き努めておりますが、指定感染症等が発生し、本社・研究所の一時閉鎖等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (26) 地球環境に対する安全性や気候変動による自然災害等の発生について当社グループの研究開発の過程等で使用する化学物質の中には、人体や環境に悪影響を与える物質が含まれております。当社グループは、研究開発活動で使用する環境汚染物質のモニタリングを実施しておりますが、万が一、汚染物質による人への暴露、土壌汚染、大気汚染、水質汚染等が発生した場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また当社グループは、神奈川県川崎市川崎区殿町に本社・研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関する設備及び人員が現所在地に集中しております。周辺には多摩川が流れており、気候変動に伴う洪水や津波などの水害等の自然災害が発生し、当社グループ設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (27) 資金の借入・返済について当社グループの事業資金の一部は金融機関からの借入により調達しています。今後、長期金利や短期金利が上昇した場合、借入コストの増加により当社グループの経営成績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。また、当社グループの借入金には財務制限条項が付されています。業績の悪化等により当該借入金の期限前弁済義務が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。 (28) 債務保証について当社グループは、一部の投資先に対して、債務保証を行っておりますが、将来、これら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループは投資先のモニタリングをするとともに、必要な施策を実施し、リスク低減に努めております。 (29) 保有投資有価証券について当社グループでは、共同研究開発を加速させる目的で投資有価証券を保有しております。投資有価証券の評価は、株式発行会社の財政状態・経営成績等の状況によって判断されるため、実質価額の低下により減損処理を行うこととなった場合には、投資有価証券評価損の計上により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (30) のれん・無形資産の減損について当社グループは、企業買収等を通じて獲得したのれん及び無形資産を計上しております。これらの資産については計画と実績の乖離等により価値が下落した場合には減損損失の計上等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がございます。 (31) 風説・風評の発生について当社グループや当社グループの関係者、当社グループの取引先等に対する否定的な風説や風評が、マスコミ報道、アナリストレポートやインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社グループの社会的信用に影響を与える可能性がございます。当社グループや当社グループの関係者、当社グループの取引先等に対して否定的な風説・風評が流布した場合には、そのネガティブなイメージにより、当社グループに対する信頼性に悪影響が生じ、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
FY2021|11,066 文字
2 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はございません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではございませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性もございます。 (1) リスク管理体制当社のリスク管理体制は以下のとおりです。<会社の機関・内部統制の関係図> 詳細については、 「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 b リスク管理体制」をご参照ください。 (2) 主要な事業等のリスク経営者が経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している主要な事業等のリスクは下記のとおりであります。各リスクについて発生可能性、影響度の観点から評価した結果を一元的に管理するために、同一のリスクマップに掲載しております。<主要な事業等のリスク一覧> ※当社見解に基づく/当社作成リスクNo内容(ⅰ)事業環境に関するリスク1特殊環状ペプチドの医薬品の可能性2技術革新(ⅱ)事業内容に関するリスク3特殊環状ペプチド医薬品をベースにした事業であること4複数の製薬企業との共同研究開発の実施していること5収益計上6法的な紛争の可能性7経営上の重要な契約8共同研究開発契約先への依存9自社パイプライン(自社創薬)10他社との戦略的提携・企業買収等の成否(ⅲ)知的財産権に関するリスク11特許の取得・出願状況12職務発明に対する社内対応(ⅳ)医薬品の研究開発事業一般に関するリスク13医薬品開発の不確実性14副作用発現15薬事法その他の薬事に関する規制16製造物責任17医薬品行政(ⅴ)人材及び組織に関するリスク18人材確保・人材流出(ⅵ)その他に関するリスク19新株予約権の行使による株式価値の希薄化20配当政策21情報管理22サイバー攻撃23外国為替相場の変動24感染症等の発生25地球環境に対する安全性や気候変動による自然災害等の発生26CDMOへの出資27保有投資有価証券28風説・風評の発生 <主要な事業等のリスクマップ> ※当社見解に基づく/当社作成(ⅰ) 事業環境に関するリスク(1) 特殊環状ペプチドの医薬品としての可能性について当社の特殊ペプチドは、タンパク質の合成に利用される20種類のL体のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んでいます。この性質により、当社は多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製することができ、その中からターゲットタンパクに対して強い結合力・特異性を有し、高い生体内安定性を保ち、細胞膜透過性をも有する特殊ペプチドを創製することができます。このような特質から、当社の特殊ペプチドは、新たな医薬品候補物質として期待されており、製薬会社との契約に結びついております。当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が稼働を開始したのは、2010年であります。医薬品は基礎研究から製造販売承認等を取得するまでに、通常、多大な開発費用と10年以上の長い年月を必要とします。当社の特殊ペプチド創薬開発技術は、まだ生まれて日が浅いため、当社の特殊ペプチドからこれまでに新薬が承認された実績はございません。(ただし、自然界に存在する特殊アミノ酸を組み込んだ有機化合物から新薬が承認された実績があります。たとえば、1983年にスイスのSandoz(サンド)社から発売された免疫抑制剤「Sandimmun(サンディミュン)」は、ノルウェー南部のハルダンゲル高原の土壌から発見された真菌が産生していた特殊な構造のペプチド(シクロスポリン)から作られています。)将来において、当社の特殊ペプチドによる新薬開発実績が生み出せなかった場合や当社の特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (2) 技術革新について当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)は、特殊ペプチドを医薬品候補物質として運用するために必要となる一連の技術((A)特殊ペプチドを創製し、(B)低分子医薬及び抗体医薬を超える多様性を持ったライブラリーを構築し、(C)高速でスクリーニングを行う技術。)を組み込んでおり、この(A)から(C)のいずれの技術をとってみても、同じくペプチドを医薬品候補物質として扱っている他社の技術と比べ、優位性を保っているものと考えております。しかしながら、技術は日々進歩するものであり、当社の特許技術に抵触しない技術をもって当社PDPSを上回る技術が開発されることも考えられます。当社としては、PDPSを継続的に発展させるため、研究開発を積極的に実施し、PDPSに必要な知的財産権の確保に努めていく方針でありますが、当社PDPSを上回る技術が開発された場合には、当社の競争優位性が低下する結果、当社の希望する条件でクライアントとの間で契約を締結することができなくなる可能性が増加するなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅱ) 事業内容に関するリスク(3) 特殊環状ペプチド医薬品をベースにした事業であることについて当社は、従来、特殊ペプチド医薬に特化して事業を展開しておりました。そのため、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)により創製される特殊ペプチドは、新規性・進歩性を有するオリジナリティの高いものであり、容易に代替技術が生まれて当社の存在価値が危ぶまれるような事態になることは想定し難いと考えておりますが、特殊ペプチドに対する製薬企業の評価が変化した場合や当社の特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。近時は特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることがわかっており、PDPSの応用範囲が以前に比べて大幅に拡がっております。そのため、特殊ペプチドに特化していた事業内容が変わりつつあり、特殊ペプチドをベースとしてPDPSを創薬研究開発の基盤として当業界に広めていき、特殊ペプチドのみならず低分子医薬の開発にも活用していこうという展開を試みています。こうした、低分子医薬の開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (4) 複数の製薬企業との共同研究開発を実施していることについて当社の共同研究開発契約先の製薬会社は、それぞれ独自の創薬開発ターゲットを保有しており、当社はその研究開発について提案を受けて推進していくことになりますが、まれに各製薬企業間で創薬開発ターゲットが競合してしまうことがございます。競合が生じた際は、当社が各製薬企業との間に立って差配することによって、トラブルを未然に防止しており、現在までにトラブルが生じた事例はございません。しかし、今後、その調整が困難になる事態が生じた場合、当社は新たな共同研究開発契約や新たなターゲットタンパクが獲得できないなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (5) 収益計上について当社の共同研究開発契約に係る売上カテゴリーは、原則として(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)に始まり順次、(B)研究開発支援金、(C)追加研究開発支援金、(D)創薬開発権利金、(E)非臨床・臨床開発マイルストーンフィー、(F)売上ロイヤルティー、(G)販売マイルストーンフィーで構成されております。(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)、(B)研究開発支援金及び(C)追加研究開発支援金は当社の事業活動に依拠する部分が大きいものの、特に(B)及び(C)について、クライアントの方針転換等の影響を受けてプロジェクトが終了し、それ以降の収益が計上できないことがございます。また、(A)は、相対的に(B)及び(C)よりも額が大きく、一度に売上が計上されるため、当社の経営成績は(A)の計上に少なからず影響を受けることになります。(D)創薬開発権利金や(E)各種マイルストーンフィーに至っては、クライアントにおける業務の進行状況に大きく依存するものであり、当社でのコントロールは極めて困難な売上カテゴリーです。そのため、当社の計画に対してクライアントにおける研究開発の進捗が遅れた場合やクライアントの研究開発方針に変更等があった場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (6) 法的な紛争の可能性について当社は、事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害していない場合でも相手側が侵害したと考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起されるなど法的な紛争が生じる可能性がございます。本書提出日現在、法的な紛争は生じておりませんが、今後、当社と第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に労力、時間及び費用を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、その場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、事業上の制約を受けるなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。さらに、これまでのところ当社が製薬企業と共同研究開発した特殊ペプチド医薬品が上市にまで至った事例は未だございませんが、今後、万一、当社が共同研究開発に携わった医薬品において健康被害が引き起こされた場合には、そのネガティブなイメージにより、当社及び当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (7) 経営上の重要な契約について当社の事業展開上、重要と思われる契約が、当該契約が解除又はその他の事由に基づき終了した場合又は契約の相手方の経営方針が変更された場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。なお、共同研究開発契約に係る金員(当社から見たときは売上に該当)は、原則として当社が前金として受領しており、これらの金員について当社は契約が中途終了する場合でも返還義務を負っておりません。その反面、共同研究開発契約先は、契約の解除について任意(自由)に実行することができる契約内容となっております。 (8) 共同研究開発契約先への依存について当社アライアンス事業における収益は、ほとんどが共同研究開発契約先(クライアント)からのものでありますが、今後、これらのクライアントとの間で新たな標的分子に係る共同研究開発が開始されない場合や、共同研究開発の結果がクライアントの要求水準を満たせない場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、当社がライセンスアウトしたリード化合物は、クライアントが主体となって臨床試験及び承認申請を行うことになりますが、その進捗と結果が当社の事業戦略及び経営成績に大きな影響を及ぼします。当社は、ライセンスアウト後もクライアントをサポートいたしますが、臨床試験及び承認申請はクライアントが主体となって実施するものであり、当社でコントロールすることはできません。したがって、臨床試験及び承認申請の進捗が当社の予期しない事由により遅滞することや、臨床試験及び承認申請が断念される等の可能性がございます。さらに、製造販売承認後の販売計画はクライアントに依存しており、クライアントの経営方針や販売計画の変更、経営環境の悪化等により販売計画を達成できない等の可能性がございます。そのほか、医薬品の研究開発には多額の資金が必要となることから、当業界においては組織再編やM&Aが盛んであり、クライアントにおいて組織再編が実施されることや、競合他社を買収する(競合他社から買収される)ことなど、業界における競争の構図が短期間に塗り替えられる可能性がございます。こうした大規模な企業組織再編が当社のクライアントに生じた場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (9) 自社パイプライン(自社創薬)について当社では、特殊ペプチドの特性を活かした自社パイプライン(自社創薬)の研究開発を進めております。現在のところ、開発の方向性としては、特殊ペプチドを医薬品として活用するアプローチと特殊ペプチドの持つ優れた選択性を活かして他の薬剤を誘導するPDC(Peptide Drug Conjugate)薬剤を開発するアプローチをとっております。また、特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることから、自社パイプラインにおいても低分子医薬品の開発に着手しております。自社パイプラインについては、研究開発が順調に進展し、臨床試験まで当社の負担で実施する場合には、多額の開発費用を要する状態になる可能性がございます。また、自社パイプラインの研究開発が順調に進展しない場合には、将来の事業化のオプションを一部失う可能性がございます。 (10) 他社との戦略的提携・企業買収等の成否について当社は、競争力の強化及び事業分野の拡大等のため、他社の事業部門の譲受け、他社の買収、他社との業務提携、合弁会社の設立、他社への投資等の戦略的提携など(以下「戦略的提携等」といいます。)を行うことがございます。こうした戦略的提携等については、パートナー企業との思惑に相違が生じて提携・統合が円滑に進まない可能性や当初期待していた効果が得られない可能性、投資した金額の全部又は一部が回収できない可能性等がございます。また、パートナー企業が当社の利益に反する決定を行う可能性があり、パートナー企業が事業戦略を変更した場合など、当社は戦略的提携等の関係を維持することが困難になる可能性もあり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅲ) 知的財産権に関するリスク(11) 特許の取得・出願状況について当社は事業において様々な発明及び特許権を実施しておりますが、これらは当社、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学により登録済みになっているものと審査中のものがございます。しかしながら、出願中の発明すべてについて特許査定がなされるとは限りません。また、特許権を設定登録した場合でも、特許異議申立制度により請求項が無効化される可能性がございます。また、特許権侵害訴訟の提起や特許無効審判が請求されるなど特許権に係る法的な紛争が生じ、当社が実施する権利に何らかの悪影響が生じる可能性がございます。また、当社が実施する特許権を上回る優れた技術の出現により、当社が有する特許権に含まれる技術が陳腐化する可能性がございます。こうした事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。その他、当社は、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学が出願人である発明又は特許権に関して、契約により第三者サブライセンス権付き独占実施・許諾権を獲得しておりますが、当該契約の内容が変更される場合や、期間満了や解除等により契約が終了した場合等にも、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (12) 職務発明に対する社内対応について当社の役職員等が創出した職務発明について特許を受ける権利を取得したときは、当社は、当該職務発明の発明者である役職員等に対し、特許法に定める「相当の利益」を支払うことになります。当社では、その取扱いについて社内規則等でルールを定めており、役職員等への周知及び運用を強化しております。しかしながら、職務発明の取扱いにつき、相当の利益の支払請求等の問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅳ) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク(13) 医薬品開発の不確実性について一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。研究開発の初期段階において有望だと思われる化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の過程で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断をされることがございます。開発を延長した場合には、追加の資金投入が必要になるほか、特許権の存続期間満了までの期間が短くなり、投資した資金の回収に影響を及ぼします。また、開発を中止した場合には、それまでに投じた研究開発資金が回収できなくなることになります。 (14) 副作用発現について医薬品は、臨床試験段階から上市後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性がございます。これら予期せぬ副作用が発現した場合、信用力の失墜、訴訟の提起等により、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (15) 薬事法その他の薬事に関する規制について医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法(わが国においては「医薬品医療機器等法」)及びその他の関連法規等により、様々な規制を受けております。現在のところ、当社のパイプラインは研究開発段階にあり、わが国の厚生労働省、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等から上市のための認可は受けておりませんが、今後、各国の薬事法等の諸規制に基づいて医薬品の製造販売承認申請を行い、承認を取得することを目指しております。そのため、自社のパイプラインについて上記の規制をクリアするための体制整備が求められることになります。また、各国の薬事法及びその他の関連法規等は随時改定がなされるものであり、これらの変化が当社の生み出す特殊ペプチドにとって有利又は不利に働くことや、さらなる体制の整備・変更を求められる可能性が考えられます。こうした規制への対応が当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 (16) 製造物責任について医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在しています。将来、開発したいずれかの医薬品が健康障害を引き起こし、又は臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事象が発見された場合、当社は製造物責任を負うこととなり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、製造物責任賠償請求がなされることによるネガティブなイメージにより、当社及び当社の医薬品に対する信頼に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (17) 医薬品行政について医療用医薬品の販売価格は、日本及びその他各国政府の薬価に関する規制の影響を受けます。当社では、これまでのところ自社で臨床試験を実施したことがなく、早期に開発候補化合物をクライアントに導出する方針を採用しております。そのため、当社は薬価戦略についてはクライアントに依存しており、日本及びその他各国政府の薬価政策の影響を間接的に受ける立場にあります。当社の開発候補化合物が上市された場合において、当該医薬品にとってネガティブな薬価改定やその他の医療保険制度の改定があった場合は、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅴ) 人材及び組織に関するリスク(18) 人材確保・人材流出について当社は、創薬基盤技術の深化、創薬研究開発の進展を図るには、研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保が必要であると考えております。当社の想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅵ) その他に関するリスク(19) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について当社は、役員及び従業員に対し新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性がございます。本書提出日現在、権利行使が可能な状態にある新株予約権による潜在株式数はございません。 (20) 配当政策について当社は配当による株主様への利益還元も重要な経営課題だと認識しております。当社は、将来においても安定的な収益の獲得が可能であり、かつ、研究開発資金を賄うに十分な利益が確保できる場合には、将来の研究開発活動等に備えるための内部留保充実の必要性等を総合的に勘案した上で、利益配当についても検討してまいります。 (21) 情報管理について当社の事業は、クライアントである製薬企業からターゲットタンパクの情報を預かる立場にあります。そのため、当社は、当社の従業員との間において顧客情報を含む会社の情報に係る誓約書を徴求し、会社情報の漏えいの未然防止に努めております。しかしながら、万一顧客の情報を含む会社の情報が外部に漏えいした場合は、当社の信用低下を招き、当社の事業等に影響を及ぼす可能性がございます。 (22) サイバー攻撃について近年、サイバー攻撃はこれまで以上に技術が高度化し、攻撃手法も多様化・巧妙化しております。このような状況を踏まえ、当社はサイバーセキュリティに関するリスクを最重要リスクの一つと認識し、ネットワーク及び設備の監視を始めとする各種サイバー攻撃対策を実施し、その管理には万全を期しております。しかしながら、これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃やそれに伴う深刻なシステム障害等により実質的に当社事業が中断する等、当社の事業等に影響を及ぼす可能性がございます。 (23) 外国為替相場の変動について当社のクライアントには海外の製薬企業が多いことから、売上高の多くが外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。したがって、為替相場が変動した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 (24) 感染症等の発生について当社は、事業活動や研究開発活動に必要な設備及び機能が本社・研究所に集中しており、在宅勤務等へのシフトによって本社研究所以外の場所で継続できる業務が一部のオフィス業務に限定されます。感染症対策としてオフィス内の衛生管理の強化や「密な接触機会」の回避を図る取り組みを継続して実施すること等により、社員およびすべての関係取引先、並びにそのご家族の皆様の感染リスク軽減に引き続き努めておりますが、指定感染症等が発生し、本社・研究所の一時閉鎖等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (25) 地球環境に対する安全性や気候変動による自然災害等の発生について当社の研究開発の過程等で使用する化学物質の中には、人体や環境に悪影響を与える物質が含まれております。当社は、研究開発活動で使用する環境汚染物質のモニタリングを実施しておりますが、万が一、汚染物質による人への暴露、土壌汚染、大気汚染、水質汚染等が発生した場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また当社は、神奈川県川崎市川崎区殿町に本社・研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関する設備及び人員が現所在地に集中しております。周辺には多摩川が流れており、気候変動に伴う洪水や津波などの水害等の自然災害が発生し、当社設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (26) CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization:医薬品開発製造受託機関)への出資について当社は、2017年9月に塩野義製薬株式会社・積水化学工業株式会社とともに合弁会社としてCDMO(商号:「ペプチスター株式会社 」。以下「ペプチスター」といいます。)を大阪府摂津市に設立いたしました。現在、特殊ペプチド医薬品の研究開発が国内外の製薬企業において進められていますが、高品質な特殊ペプチド原薬を低コストで安定供給できるCDMOが世界的に見ても存在しておりません。こうした状況のもと、特殊ペプチド医薬品について専門的な技術を持つCDMOを設立することは、当社の事業の推進に、ひいては特殊ペプチド医薬品市場の拡大に貢献できるものと考えております。合弁事業に参画する各国内企業が持つ最先端技術をこのペプチスターに戦略的に結集することで、特殊ペプチド医薬品の開発・販売に係るボトルネックの解消を目指してまいります。当社は、ペプチスターに対し19億円の出資をしており、また、当社はペプチスターの債務に対して債務保証をしております。そのため、当社が投資時点において想定したとおりにペプチスターが事業を展開できない場合、株式の減損処理が発生するなど、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (27) 保有投資有価証券について当社では、共同研究開発を加速させる目的で投資有価証券を保有しております。投資有価証券の評価は、株式発行会社の財政状態・経営成績等の状況によって判断されるため、実質価額の低下により減損処理を行うこととなった場合には、投資有価証券評価損の計上により当社の経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (28) 風説・風評の発生について当社や当社の関係者、当社の取引先等に対する否定的な風説や風評が、マスコミ報道、アナリストレポートやインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社の社会的信用に影響を与える可能性がございます。当社や当社の関係者、当社の取引先等に対して否定的な風説・風評が流布した場合には、そのネガティブなイメージにより、当社に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
FY2020|11,032 文字
2 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はございません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではございませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性もございます。 (1) リスク管理体制当社のリスク管理体制は以下のとおりです。 <会社の機関・内部統制の関係図>詳細については、 「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 b リスク管理体制」をご参照ください。 (2) 主要な事業等のリスク経営者が経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している主要な事業等のリスクは下記のとおりであります。各リスクについて発生可能性、影響度の観点から評価した結果を一元的に管理するために、同一のリスクマップに掲載しております。<主要な事業等のリスク一覧> ※当社見解に基づく/当社作成リスクNo内容(ⅰ)事業環境に関するリスク1特殊環状ペプチドの医薬品の可能性2技術革新(ⅱ)事業内容に関するリスク3特殊環状ペプチド医薬品をベースにした事業であること4複数の製薬企業との共同研究開発の実施していること5収益計上6法的な紛争の可能性7経営上の重要な契約8共同研究開発契約先への依存9自社パイプライン(自社創薬)10他社との戦略的提携・企業買収等の成否(ⅲ)知的財産権に関するリスク11特許の取得・出願状況12職務発明に対する社内対応(ⅳ)医薬品の研究開発事業一般に関するリスク13医薬品開発の不確実性14副作用発現15薬事法その他の薬事に関する規制16製造物責任17医薬品行政(ⅴ)人材及び組織に関するリスク18人材確保・人材流出(ⅵ)その他に関するリスク19新株予約権の行使による株式価値の希薄化20配当政策21情報管理22サイバー攻撃23外国為替相場の変動24感染症等の発生25気候変動による自然災害等の発生26CDMOへの出資27保有投資有価証券28風説・風評の発生 <主要な事業等のリスクマップ> ※当社見解に基づく/当社作成(ⅰ) 事業環境に関するリスク(1) 特殊環状ペプチドの医薬品としての可能性について当社の特殊環状ペプチドは、タンパク質の合成に利用される20種類のL体のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やN-メチルアミノ酸等を含んでいます。この性質により、当社は多様性のある特殊環状ペプチドのライブラリーを作製することができ、その中からターゲットに対して強い結合力・特異性を有し、高い生体内安定性を保ち、細胞膜透過性をも有する特殊環状ペプチドを創製することができます。このような特質から、当社の特殊環状ペプチドは、新たな医薬品候補化合物として期待されており、製薬会社との契約に結びついております。当社のPDPSが稼働を開始したのは、2010年であります。医薬品は基礎研究から製造販売承認等を取得するまでに、通常、多大な開発費用と10年以上の長い年月を必要とします。当社の特殊環状ペプチドからこれまでに新薬が承認された実績はございません。(ただし、自然界に存在する特殊アミノ酸を組み込んだ有機化合物から新薬が承認された実績があります。例えば、1983年にスイスのSandoz社から発売された免疫抑制剤「Sandimmun(サンディミュン)」は、ノルウェー南部のハルダンゲル高原の土壌から発見された真菌が産生していた特殊な構造のペプチド(シクロスポリン)から作られています。)将来において、当社の特殊環状ペプチドによる新薬開発実績が生み出せなかった場合や当社の特殊環状ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (2) 技術革新について当社のPDPSは、特殊環状ペプチドを医薬品候補化合物として運用するために必要となる一連の技術((A)特殊環状ペプチドを創製し、(B)低分子医薬品及び抗体医薬品を超える多様性を持ったライブラリーを構築し、(C)高速でスクリーニングを行う技術。)を組み込んでおり、この(A)から(C)のいずれの技術をとってみても、同じくペプチドを医薬品候補化合物として扱っている他社の技術と比べ、優位性を保っているものと考えております。しかしながら、技術は日々進歩するものであり、当社の特許技術に抵触しない技術をもって当社PDPSを上回る技術が開発されることも考えられます。当社としては、PDPSを継続的に発展させるため、研究開発を積極的に実施し、PDPSに必要な知的財産権の確保に努めていく方針でありますが、当社PDPSを上回る技術が開発された場合には、当社の競争優位性が低下する結果、当社の希望する条件でクライアントとの間で契約を締結することができなくなる可能性が増加するなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅱ) 事業内容に関するリスク(3) 特殊環状ペプチド医薬品をベースにした事業であることについて当社は、従来、特殊環状ペプチド環状医薬品に特化して事業を展開しておりました。そのため、当社のPDPSにより創製される特殊環状ペプチドは、新規性・進歩性を有するオリジナリティの高いものであり、容易に代替技術が生まれて当社の存在価値が危ぶまれるような事態になることは想定し難いと考えておりますが、特殊環状ペプチドに対する製薬企業の評価が変化した場合や当社の特殊環状ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。近時は特殊環状ペプチドをスクリーニングマーカーとして活用することによって、低分子医薬品の開発につなげることができることがわかっており、PDPSの応用範囲が以前に比べて大幅に拡がっております。そのため、特殊環状ペプチドに特化していた事業内容が変わりつつあり、特殊環状ペプチドをベースとしてPDPSを創薬研究開発の基盤として当業界に広めていき、特殊環状ペプチドのみならず低分子医薬品の開発にも活用していこうという展開を試みています。こうした、低分子医薬品の開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (4) 複数の製薬企業との共同研究開発を実施していることについて当社の共同研究開発契約先の製薬会社は、それぞれ独自の創薬開発ターゲットを保有しており、当社はその研究開発について提案を受けて推進していくことになりますが、まれに各製薬企業間で創薬開発ターゲットが競合してしまうことがございます。競合が生じた際は、当社が各製薬企業との間に立って差配することによって、トラブルを未然に防止しており、現在までにトラブルが生じた事例はございません。しかし、今後、その調整が困難になる事態が生じた場合、当社は新たな共同研究開発契約や新たなターゲットが獲得できないなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (5) 収益計上について当社の共同研究開発契約に係る売上カテゴリーは、原則として契約一時金に始まり順次、研究開発支援金、非臨床マイルストーンフィー、創薬開発権利金、臨床開発マイルストーンフィー、売上ロイヤルティー、販売マイルストーンフィーで構成されております。契約一時金、研究開発支援金及び非臨床マイルストーンフィーは当社の事業活動に依拠する部分が大きいものの、特に研究開発支援金及び非臨床マイルストーンフィーについて、クライアントの方針転換等の影響を受けてプロジェクトが終了し、それ以降の収益が計上できないことがございます。また、契約一時金は、相対的に研究開発支援金及び非臨床マイルストーンフィーよりも額が大きく、一度に売上が計上されるため、当社の経営成績は契約一時金の計上に少なからず影響を受けることになります。創薬開発権利金、臨床開発マイルストーンフィー、売上ロイヤルティー及び販売マイルストーンフィーに至っては、クライアントにおける業務の進行状況に大きく依存するものであり、当社でのコントロールは極めて困難な売上カテゴリーです。そのため、当社の計画に対してクライアントにおける研究開発の進捗が遅れた場合やクライアントの研究開発方針に変更等があった場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (6) 法的な紛争の可能性について当社は、事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害していない場合でも相手側が侵害したと考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起されるなど法的な紛争が生じる可能性がございます。本書提出日現在、法的な紛争は生じておりませんが、今後、当社と第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に労力、時間及び費用を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、その場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、事業上の制約を受けるなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。さらに、これまでのところ当社が製薬企業と共同研究開発した特殊環状ペプチド医薬品が上市にまで至った事例は未だございませんが、今後、万一、当社が共同研究開発に携わった医薬品において健康被害が引き起こされた場合には、そのネガティブなイメージにより、当社及びPDPSに対する信頼性に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (7) 経営上の重要な契約について当社の事業展開上、重要と思われる契約が、当該契約が解除又はその他の事由に基づき終了した場合又は契約の相手方の経営方針が変更された場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。なお、共同研究開発契約に係る金員(当社から見たときは売上に該当)は、原則として当社が前金として受領しており、これらの金員について当社は契約が中途終了する場合でも返還義務を負っておりません。その反面、共同研究開発契約先は、契約の解除について任意(自由)に実行することができる契約内容となっております。 (8) 共同研究開発契約先への依存について当社アライアンス事業における収益は、ほとんどが共同研究開発契約先(クライアント)からのものでありますが、今後、これらのクライアントとの間で新たなターゲットに係る共同研究開発が開始されない場合や、共同研究開発の結果がクライアントの要求水準を満たせない場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、当社がライセンスアウトしたリード化合物は、クライアントが主体となって臨床試験及び承認申請を行うことになりますが、その進捗と結果が当社の事業戦略及び経営成績に大きな影響を及ぼします。当社は、ライセンスアウト後もクライアントをサポートいたしますが、臨床試験及び承認申請はクライアントが主体となって実施するものであり、当社でコントロールすることはできません。したがって、臨床試験及び承認申請の進捗が当社の予期しない事由により遅滞することや、臨床試験及び承認申請が断念される等の可能性がございます。さらに、製造販売承認後の販売計画はクライアントに依存しており、クライアントの経営方針や販売計画の変更、経営環境の悪化等により販売計画を達成できない等の可能性がございます。そのほか、医薬品の研究開発には多額の資金が必要となることから、当業界においては組織再編やM&Aが盛んであり、クライアントにおいて組織再編が実施されることや、競合他社を買収する(競合他社から買収される)ことなど、業界における競争の構図が短期間に塗り替えられる可能性がございます。こうした大規模な企業組織再編が当社のクライアントに生じた場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (9) 自社パイプライン(自社創薬)について当社では、特殊環状ペプチドの特性を活かした自社パイプラインの研究開発を進めております。現在のところ、開発の方向性としては、特殊環状ペプチドを医薬品として活用するアプローチと特殊環状ペプチドの持つ優れた選択性を活かして他の薬剤を誘導するPDC医薬品を開発するアプローチをとっております。また、特殊環状ペプチドをスクリーニングマーカーとして活用することによって、低分子医薬品の開発につなげることができることから、自社パイプラインにおいても低分子医薬品の開発に着手しております。自社パイプラインについては、研究開発が順調に進展し、臨床試験まで当社の負担で実施する場合には、多額の開発費用を要する状態になる可能性がございます。また、自社パイプラインの研究開発が順調に進展しない場合には、将来の事業化のオプションを一部失う可能性がございます。 (10) 他社との戦略的提携・企業買収等の成否について当社は、競争力の強化及び事業分野の拡大等のため、他社の事業部門の譲受け、他社の買収、他社との業務提携、合弁会社の設立、他社への投資等の戦略的提携など(以下「戦略的提携等」といいます。)を行うことがございます。こうした戦略的提携等については、パートナー企業との思惑に相違が生じて提携・統合が円滑に進まない可能性や当初期待していた効果が得られない可能性、投資した金額の全部又は一部が回収できない可能性等がございます。また、パートナー企業が当社の利益に反する決定を行う可能性があり、パートナー企業が事業戦略を変更した場合など、当社は戦略的提携等の関係を維持することが困難になる可能性もあり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅲ) 知的財産権に関するリスク(11) 特許の取得・出願状況について当社は事業において様々な発明及び特許権を実施しておりますが、これらは当社、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学により登録済みになっているものと審査中のものがございます。しかしながら、出願中の発明すべてについて特許査定がなされるとは限りません。また、特許権を設定登録した場合でも、特許異議申立制度により請求項が無効化される可能性がございます。また、特許権侵害訴訟の提起や特許無効審判が請求されるなど特許権に係る法的な紛争が生じ、当社が実施する権利に何らかの悪影響が生じる可能性がございます。また、当社が実施する特許権を上回る優れた技術の出現により、当社が有する特許権に含まれる技術が陳腐化する可能性がございます。こうした事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。その他、当社は、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学が出願人である発明又は特許権に関して、契約により第三者サブライセンス権付き独占実施・許諾権を獲得しておりますが、当該契約の内容が変更される場合や、期間満了や解除等により契約が終了した場合等にも、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (12) 職務発明に対する社内対応について当社の役職員等が創出した職務発明について特許を受ける権利を取得したときは、当社は、当該職務発明の発明者である役職員等に対し、特許法に定める「相当の利益」を支払うことになります。当社では、その取扱いについて社内規則等でルールを定めており、役職員等への周知及び運用を強化しております。しかしながら、職務発明の取扱いにつき、相当の利益の支払請求等の問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅳ) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク(13) 医薬品開発の不確実性について一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。研究開発の初期段階において有望だと思われる化合物であっても、非臨床試験や臨床試験の過程で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定とおりに進行せず、開発の延長や中止の判断をされることがございます。開発を延長した場合には、追加の資金投入が必要になるほか、特許権の存続期間満了までの期間が短くなり、投資した資金の回収に影響を及ぼします。また、開発を中止した場合には、それまでに投じた研究開発資金が回収できなくなることになります。 (14) 副作用発現について医薬品は、臨床試験段階から上市後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性がございます。これら予期せぬ副作用が発現した場合、信用力の失墜、訴訟の提起等により、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (15) 薬事法その他の薬事に関する規制について医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法(わが国においては「医薬品医療機器等法」)及びその他の関連法規等により、様々な規制を受けております。現在のところ、当社のパイプラインは研究開発段階にあり、わが国の厚生労働省、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等から上市のための認可は受けておりませんが、今後、各国の薬事法等の諸規制に基づいて医薬品の製造販売承認申請を行い、承認を取得することを目指しております。そのため、自社パイプラインについて上記の規制をクリアするための体制整備が求められることになります。また、各国の薬事法及びその他の関連法規等は随時改定がなされるものであり、これらの変化が当社の生み出す特殊環状ペプチドにとって有利又は不利に働くことや、さらなる体制の整備・変更を求められる可能性が考えられます。こうした規制への対応が当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 (16) 製造物責任について医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在しています。将来、開発したいずれかの医薬品が健康障害を引き起こし、又は臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事象が発見された場合、当社は製造物責任を負うこととなり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、製造物責任賠償請求がなされることによるネガティブなイメージにより、当社及び当社の医薬品に対する信頼に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (17) 医薬品行政について医療用医薬品の販売価格は、日本及びその他各国政府の薬価に関する規制の影響を受けます。当社では、これまでのところ自社で臨床試験を実施したことがなく、早期に開発候補化合物をクライアントに導出する方針を採用しております。そのため、当社は薬価戦略についてはクライアントに依存しており、日本及びその他各国政府の薬価政策の影響を間接的に受ける立場にあります。当社の開発候補化合物が上市された場合において、当該医薬品にとってネガティブな薬価改定やその他の医療保険制度の改定があった場合は、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅴ) 人材及び組織に関するリスク(18) 人材確保・人材流出について当社は、創薬基盤技術の深化、創薬研究開発の進展を図るには、研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保が必要であると考えております。当社の想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (ⅵ) その他に関するリスク(19) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について当社は、役員、従業員及び取引先等に対し新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性がございます。本書提出日現在、権利行使が可能な状態にある新株予約権による潜在株式数は4,700,000株であり、発行済株式数及び潜在株式数の合計の3.55%に相当しております。 (20) 配当政策について当社は配当による株主様への利益還元も重要な経営課題だと認識しております。当社は、将来においても安定的な収益の獲得が可能であり、かつ、研究開発資金を賄うに十分な利益が確保できる場合には、将来の研究開発活動等に備えるための内部留保充実の必要性等を総合的に勘案した上で、利益配当についても検討してまいります。 (21) 情報管理について当社の事業は、クライアントである製薬企業からターゲットの情報を預かる立場にあります。そのため、当社は、当社の従業員との間において顧客情報を含む会社の情報に係る誓約書を徴求し、会社情報の漏えいの未然防止に努めております。しかしながら、万一顧客の情報を含む会社の情報が外部に漏えいした場合は、当社の信用低下を招き、当社の事業等に影響を及ぼす可能性がございます。 (22) サイバー攻撃について近年、サイバー攻撃はこれまで以上に技術が高度化し、攻撃手法も多様化・巧妙化しております。このような状況を踏まえ、当社はサイバーセキュリティに関するリスクを最重要リスクの一つと認識し、ネットワーク及び設備の監視を始めとする各種サイバー攻撃対策を実施し、その管理には万全を期しております。しかしながら、これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃やそれに伴う深刻なシステム障害等により実質的に当社事業が中断する等、当社の事業等に影響を及ぼす可能性がございます。 (23) 外国為替相場の変動について当社のクライアントには海外の製薬企業が多いことから、売上高の多くが外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。したがって、為替相場が変動した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 (24) 感染症等の発生について当社は、事業活動や研究開発活動に必要な設備及び機能が本社・研究所に集中しており、在宅勤務等へのシフトによって本社研究所以外の場所で継続できる業務が一部のオフィス業務に限定されます。感染症対策としてオフィス内の衛生管理の強化や「密な接触機会」の回避を図る取り組みを継続して実施すること等により、社員及びすべての関係取引先、並びにそのご家族の皆様の感染リスク軽減に引き続き努めておりますが、指定感染症等が発生し、本社・研究所の一時閉鎖等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (25) 気候変動による自然災害等の発生について当社は、神奈川県川崎市川崎区殿町に本社・研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関する設備及び人員が現所在地に集中しております。周辺には多摩川が流れており、気候変動に伴う洪水や津波などの水害等の自然災害が発生し、当社設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。パリ協定に象徴されるように、世界的な平均気温の上昇をはじめとする気候変動は、社会や生態系、企業に中長期的に大きな影響を与える恐れがあり、解決すべき重要な課題です。当社は、全従業員が脱炭素社会の実現、地球環境保護の重要性を認識し、環境保護及び温暖化対策の取り組みを継続してまいります。パリ協定の「2℃目標」達成に向けたCO2排出量削減の数値目標については、従業員の一人当たりCO2排出量を2030年度に2018年6月期(13.37t-CO2)比で50%削減する目標を設定しており、その実現に向けた体制の強化を進めております。 (26) CDMOへの出資について当社は、2017年9月に塩野義製薬株式会社・積水化学工業株式会社とともに合弁会社としてCDMO(商号:「ペプチスター株式会社」)を大阪府摂津市に設立いたしました。現在、特殊ペプチド医薬品の研究開発が国内外の製薬企業において進められていますが、高品質な特殊ペプチド原薬を低コストで安定供給できるCDMOが世界的に見ても存在しておりません。こうした状況のもと、特殊ペプチド医薬品について専門的な技術を持つCDMOを設立することは、当社の事業の推進に、ひいては特殊ペプチド医薬品市場の拡大に貢献できるものと考えております。合弁事業に参画する各国内企業が持つ最先端技術をこのペプチスター株式会社に戦略的に結集することで、特殊ペプチド医薬品の開発・販売に係るボトルネックの解消を目指してまいります。 当社は、ペプチスター株式会社に対し19億円の出資をしており、また、当社はペプチスター株式会社の債務に対して債務保証をしております。そのため、当社が投資時点において想定したとおりにペプチスター株式会社が事業を展開できない場合、株式の減損処理が発生するなど、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (27) 保有投資有価証券について当社では、共同研究開発を加速させる目的で投資有価証券を保有しております。投資有価証券の評価は、株式発行会社の財政状態・経営成績等の状況によって判断されるため、実質価額の低下により減損処理を行うこととなった場合には、投資有価証券評価損の計上により当社の経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (28) 風説・風評の発生について当社や当社の関係者、当社の取引先等に対する否定的な風説や風評が、マスコミ報道、アナリストレポートやインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社の社会的信用に影響を与える可能性がございます。当社や当社の関係者、当社の取引先等に対して否定的な風説・風評が流布した場合には、そのネガティブなイメージにより、当社に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
FY2019|10,197 文字
2 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はございません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではございませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性もございます。 (1) 事業環境に由来するリスク① 特殊ペプチドの医薬品としての可能性について当社の特殊ペプチドは、タンパク質の合成に利用される20種類のL体のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んでいます。この性質により、当社は多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製することができ、その中からターゲットタンパクに対して強い結合力・特異性を有し、高い生体内安定性を保ち、細胞膜透過性をも有する特殊ペプチドを創製することができます。このような特質から、当社の特殊ペプチドは、新たな医薬品候補物質として期待されており、製薬会社との契約に結びついております。当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が稼働を開始したのは、2010年であります。医薬品は基礎研究から製造販売承認等を取得するまでに、通常、多大な開発費用と10年以上の長い年月を必要とします。当社の特殊ペプチド創薬開発技術は、まだ生まれて日が浅いため、当社の特殊ペプチドからこれまでに新薬が承認された実績はございません。(ただし、自然界に存在する特殊アミノ酸を組み込んだ有機化合物から新薬が承認された実績があります。たとえば、1983年にスイスのSandoz(サンド)社から発売された免疫抑制剤「Sandimmun(サンディミュン)」は、ノルウェー南部のハルダンゲル高原の土壌から発見された真菌が産生していた特殊な構造のペプチド(シクロスポリン)から作られています。)将来において、当社の特殊ペプチドによる新薬開発実績が生み出せなかった場合や当社の特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ② 技術革新について当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)は、特殊ペプチドを医薬品候補物質として運用するために必要となる一連の技術((A)特殊ペプチドを創製し、(B)低分子医薬及び抗体医薬を超える多様性を持ったライブラリーを構築し、(C)高速でスクリーニングを行う技術。)を組み込んでおり、この(A)から(C)のいずれの技術をとってみても、同じくペプチドを医薬品候補物質として扱っている他社の技術と比べ、優位性を保っているものと考えております。しかしながら、技術は日々進歩するものであり、当社の特許技術に抵触しない技術をもって当社PDPSを上回る技術が開発されることも考えられます。当社としては、PDPSを継続的に発展させるため、研究開発を積極的に実施し、PDPSに必要な知的財産権の確保に努めていく方針でありますが、当社PDPSを上回る技術が開発された場合には、当社の競争優位性が低下する結果、当社の希望する条件でクライアントとの間で契約を締結することができなくなる可能性が増加するなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (2) 事業内容に由来するリスク① 特殊ペプチド医薬をベースにした事業であることについて当社は、従来、特殊ペプチド医薬に特化して事業を展開しておりました。そのため、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)により創製される特殊ペプチドは、新規性・進歩性を有するオリジナリティの高いものであり、容易に代替技術が生まれて当社の存在価値が危ぶまれるような事態になることは想定し難いと考えておりますが、特殊ペプチドに対する製薬企業の評価が変化した場合や当社の特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。近時は特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることがわかっており、PDPSの応用範囲が以前に比べて大幅に拡がっております。そのため、特殊ペプチドに特化していた事業内容が変わりつつあり、特殊ペプチドをベースとしてPDPSを創薬研究開発の基盤として当業界に広めていき、特殊ペプチドのみならず低分子医薬の開発にも活用していこうという展開を試みています。こうした、低分子医薬の開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ② 複数の製薬企業との共同研究開発を実施していることについて本書提出日現在、当社の共同研究開発契約先は19社(国内7社、海外12社)ございます。それぞれの製薬会社は、独自の創薬開発ターゲットを保有しており、当社はその研究開発について提案を受けて推進していくことになりますが、まれに各製薬企業間で創薬開発ターゲットが競合してしまうことがございます。競合が生じた際は、当社が各製薬企業との間に立って差配することによって、トラブルを未然に防止しており、現在までにトラブルが生じた事例はございません。しかし、今後、その調整が困難になる事態が生じた場合、当社は新たな共同研究開発契約や新たなターゲットタンパクが獲得できないなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ③ 収益計上について当社の共同研究開発契約に係る売上カテゴリーは、原則として(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)に始まり順次、(B)研究開発支援金、(C)追加研究開発支援金、(D)創薬開発権利金、(E)各種目標達成報奨金(マイルストーンフィー)、(F)売上ロイヤルティー、(G)売上達成報奨金で構成されております。(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)、(B)研究開発支援金及び(C)追加研究開発支援金は当社の事業活動に依拠する部分が大きいものの、特に(B)及び(C)について、クライアントの方針転換等の影響を受けてプロジェクトが終了し、それ以降の収益が計上できないことがございます。また、(A)は、相対的に(B)及び(C)よりも額が大きく、一度に売上が計上されるため、当社の経営成績は(A)の計上に少なからず影響を受けることになります。(D)創薬開発権利金や(E)各種目標達成報奨金に至っては、クライアントにおける業務の進行状況に大きく依存するものであり、当社でのコントロールは極めて困難な売上カテゴリーです。そのため、当社の計画に対してクライアントにおける研究開発の進捗が遅れた場合やクライアントの研究開発方針に変更等があった場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ④ 法的な紛争の可能性について当社は、事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害していない場合でも相手側が侵害したと考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起されるなど法的な紛争が生じる可能性がございます。本書提出日現在、法的な紛争は生じておりませんが、海外のバイオベンチャー企業1社から当社の事業が同社の特許権に抵触する旨の主張がなされていたこともあり、将来的には同社と法的な紛争に至る可能性があります。また、当社の側から、同社の特許の無効化を図るために先制的に法的な手続きをとる可能性も否定できません。今後、当社と第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に労力、時間及び費用を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、その場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、事業上の制約を受けるなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。さらに、これまでのところ当社が製薬企業と共同研究開発した特殊ペプチド医薬品が上市にまで至った事例は未だございませんが、今後、万一、当社が共同研究開発に携わった医薬品において健康被害が引き起こされた場合には、そのネガティブなイメージにより、当社及び当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ⑤ 経営上の重要な契約について当社の事業展開上、重要と思われる契約が、当該契約が解除又はその他の事由に基づき終了した場合又は契約の相手方の経営方針が変更された場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。なお、共同研究開発契約に係る金員(当社から見たときは売上に該当)は、原則として当社が前金として受領しており、これらの金員について当社は契約が中途終了する場合でも返還義務を負っておりません。その反面、共同研究開発契約先は、契約の解除について任意(自由)に実行することができる契約内容となっております。 ⑥ 共同研究開発契約先への依存について当社アライアンス事業における収益は、ほとんどが共同研究開発契約先(クライアント)からのものでありますが、今後、これらのクライアントとの間で新たな標的分子に係る共同研究開発が開始されない場合や、共同研究開発の結果がクライアントの要求水準を満たせない場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、当社がライセンスアウトしたリード化合物は、クライアントが主体となって臨床試験及び承認申請を行うことになりますが、その進捗と結果が当社の事業戦略及び経営成績に大きな影響を及ぼします。当社は、ライセンスアウト後もクライアントをサポートいたしますが、臨床試験及び承認申請はクライアントが主体となって実施するものであり、当社でコントロールすることはできません。したがって、臨床試験及び承認申請の進捗が当社の予期しない事由により遅滞することや、臨床試験及び承認申請が断念される等の可能性がございます。さらに、製造販売承認後の販売計画はクライアントに依存しており、クライアントの経営方針や販売計画の変更、経営環境の悪化等により販売計画を達成できない等の可能性がございます。そのほか、医薬品の研究開発には多額の資金が必要となることから、当業界においては組織再編やM&Aが盛んであり、クライアントにおいて組織再編が実施されることや、競合他社を買収する(競合他社から買収される)ことなど、業界における競争の構図が短期間に塗り替えられる可能性がございます。こうした大規模な企業組織再編が当社のクライアントに生じた場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ⑦ 自社パイプライン(自社創薬)について当社では、特殊ペプチドの特性を活かした自社パイプライン(自社創薬)の研究開発を進めております。現在のところ、開発の方向性としては、特殊ペプチドを医薬品として活用するアプローチと特殊ペプチドの持つ優れた選択性を活かして他の薬剤を誘導するPDC(Peptide Drug Conjugate)薬剤を開発するアプローチをとっております。また、特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることから、自社パイプラインにおいても低分子医薬品の開発に着手しております。特殊ペプチドを医薬品として活用する取り組みの成果として2014年4月に新しい抗インフルエンザ剤に係る取り組みについて公表し、2015年2月にはその進捗状況について公表いたしました。その後、2016年6月に従前の特殊環状ペプチドの薬剤活性と体内動態を飛躍的に改良した開発ナンバー「PD-001」を新たな開発候補特殊環状ペプチドと定め、GLPに準拠した原体の入手に伴ってGLP準拠の前臨床試験を行う旨公表しております。PDCについては、2016年6月期から本格的に着手し、すでに複数の製薬企業と共同研究を進めております。自社パイプラインについては、研究開発が順調に進展し、臨床試験まで当社の負担で実施する場合には、多額の開発費用を要する状態になる可能性がございます。また、自社パイプラインの研究開発が順調に進展しない場合には、将来の事業化のオプションを一部失う可能性がございます。 ⑧ 他社との戦略的提携・企業買収等の成否について当社は、競争力の強化及び事業分野の拡大等のため、他社の事業部門の譲受け、他社の買収、他社との業務提携、合弁会社の設立、他社への投資等の戦略的提携など(以下「戦略的提携等」といいます。)を行うことがございます。こうした戦略的提携等については、パートナー企業との思惑に相違が生じて提携・統合が円滑に進まない可能性や当初期待していた効果が得られない可能性、投資した金額の全部又は一部が回収できない可能性等がございます。また、パートナー企業が当社の利益に反する決定を行う可能性があり、パートナー企業が事業戦略を変更した場合など、当社は戦略的提携等の関係を維持することが困難になる可能性もあり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (3) 知的財産権について① 特許の取得・出願状況について当社は事業において様々な発明及び特許権を実施しておりますが、これらは当社、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学により登録済みになっているものと審査中のものがございます。しかしながら、出願中の発明すべてについて特許査定がなされるとは限りません。また、特許権を設定登録した場合でも、特許異議申立制度により請求項が無効化される可能性がございます。また、特許権侵害訴訟の提起や特許無効審判が請求されるなど特許権に係る法的な紛争が生じ、当社が実施する権利に何らかの悪影響が生じる可能性がございます。また、当社が実施する特許権を上回る優れた技術の出現により、当社が有する特許権に含まれる技術が陳腐化する可能性がございます。こうした事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。その他、当社は、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学が出願人である発明又は特許権に関して、契約により第三者サブライセンス権付き独占実施・許諾権を獲得しておりますが、当該契約の内容が変更される場合や、期間満了や解除等により契約が終了した場合等にも、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ② 職務発明に対する社内対応について当社の役職員等が創出した職務発明について特許を受ける権利を取得したときは、当社は、当該職務発明の発明者である役職員等に対し、特許法に定める「相当の利益」を支払うことになります。当社では、その取扱いについて社内規則等でルールを定めており、役職員等への周知及び運用を強化しております。しかしながら、職務発明の取扱いにつき、相当の利益の支払請求等の問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (4) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク① 医薬品開発の不確実性について一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。研究開発の初期段階において有望だと思われる化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の過程で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断をされることがございます。開発を延長した場合には、追加の資金投入が必要になるほか、特許権の存続期間満了までの期間が短くなり、投資した資金の回収に影響を及ぼします。また、開発を中止した場合には、それまでに投じた研究開発資金が回収できなくなることになります。 ② 副作用発現に関するリスクについて医薬品は、臨床試験段階から上市後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性がございます。これら予期せぬ副作用が発現した場合、信用力の失墜、訴訟の提起等により、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ③ 薬事法その他の薬事に関する規制について医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法(わが国においては「医薬品医療機器等法」)及びその他の関連法規等により、様々な規制を受けております。現在のところ、当社のパイプラインは研究開発段階にあり、わが国の厚生労働省、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等から上市のための認可は受けておりませんが、今後、各国の薬事法等の諸規制に基づいて医薬品の製造販売承認申請を行い、承認を取得することを目指しております。そのため、自社のパイプラインについて上記の規制をクリアするための体制整備が求められることになります。また、各国の薬事法及びその他の関連法規等は随時改定がなされるものであり、これらの変化が当社の生み出す特殊ペプチドにとって有利又は不利に働くことや、さらなる体制の整備・変更を求められる可能性が考えられます。こうした規制への対応が当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 ④ 製造物責任について医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在しています。将来、開発したいずれかの医薬品が健康障害を引き起こし、又は臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事象が発見された場合、当社は製造物責任を負うこととなり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。また、製造物責任賠償請求がなされることによるネガティブなイメージにより、当社及び当社の医薬品に対する信頼に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ⑤ 医薬品行政について医療用医薬品の販売価格は、日本及びその他各国政府の薬価に関する規制の影響を受けます。当社では、これまでのところ自社で臨床試験を実施したことがなく、早期に開発候補化合物をクライアントに導出する方針を採用しております。そのため、当社は薬価戦略についてはクライアントに依存しており、日本及びその他各国政府の薬価政策の影響を間接的に受ける立場にあります。当社の開発候補化合物が上市された場合において、当該医薬品にとってネガティブな薬価改定やその他の医療保険制度の改定があった場合は、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (5) 人材及び組織に由来するリスク当社は、創薬基盤技術の深化、創薬研究開発の進展を図るには、研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保が必要であると考えております。当社の想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 (6) その他に由来するリスク① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について当社は、役員、従業員及び取引先等に対し新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性がございます。本書提出日現在、権利行使が可能な状態にある新株予約権による潜在株式数は4,100,000株であり、発行済株式数及び潜在株式数の合計の3.15%に相当しております。 ② 配当政策について当社は配当による株主様への利益還元も重要な経営課題だと認識しております。当社は、将来においても安定的な収益の獲得が可能であり、かつ、研究開発資金を賄うに十分な利益が確保できる場合には、将来の研究開発活動等に備えるための内部留保充実の必要性等を総合的に勘案した上で、利益配当についても検討してまいります。 ③ 情報管理について当社の事業は、クライアントである製薬企業からターゲットタンパクの情報を預かる立場にあります。そのため、当社は、当社の従業員との間において顧客情報を含む会社の情報に係る誓約書を徴求し、会社情報の漏えいの未然防止に努めております。しかしながら、万一顧客の情報を含む会社の情報が外部に漏えいした場合は、当社の信用低下を招き、当社の事業等に影響を及ぼす可能性がございます。 ④ 外国為替相場の変動について当社のクライアントには海外の製薬企業が多いことから、売上高の多くが外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。したがって、為替相場が変動した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 ⑤ 気候変動による自然災害等の発生について当社は、神奈川県川崎市川崎区殿町に本社・研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関する設備及び人員が現所在地に集中しております。周辺には多摩川が流れており、気候変動に伴う洪水や津波などの水害等の自然災害が発生し、当社設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ⑥ 感染症等の発生について当社は、事業活動や研究開発活動に必要な設備及び機能が本社・研究所に集中しており、在宅勤務等へのシフトによって本社研究所以外の場所で継続できる業務が一部のオフィス業務に限定されます。従って、指定感染症等が発生し、本社・研究所の一時閉鎖等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ⑦ CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization:医薬品製造受託機関)への出資について当社は、2017年9月に塩野義製薬株式会社・積水化学工業株式会社とともに合弁会社としてCDMO(商号:「ペプチスター株式会社 」。以下「ペプチスター」といいます。)を大阪府摂津市に設立いたしました。現在、特殊ペプチド医薬品の研究開発が国内外の製薬企業において進められていますが、高品質な特殊ペプチド原薬を低コストで安定供給できるCDMOが世界的に見ても存在しておりません。こうした状況のもと、特殊ペプチド医薬品について専門的な技術を持つCDMOを設立することは、当社の事業の推進に、ひいては特殊ペプチド医薬品市場の拡大に貢献できるものと考えております。合弁事業に参画する各国内企業が持つ最先端技術をこのペプチスターに戦略的に結集することで、特殊ペプチド医薬品の開発・販売に係るボトルネックの解消を目指してまいります。当社は、ペプチスターに対し19億円の出資をしており、ペプチスターへの出資比率は当社、塩野義製薬、積水化学工業の3社ともに17.3%となります。また、当社はペプチスターの債務に対して債務保証をしていることから、ペプチスターは当社の関連会社となります。そのため、当社が投資時点において想定したとおりにペプチスターが事業を展開できない場合、株式の減損処理が発生するなど、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ⑧ 保有投資有価証券について当社では、共同研究開発を加速させる目的で投資有価証券を保有しております。投資有価証券の評価は、株式発行会社の財政状態・経営成績等の状況によって判断されるため、実質価額の低下により減損処理を行うこととなった場合には、投資有価証券評価損の計上により当社の経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。 ⑨ 風説・風評の発生当社や当社の関係者、当社の取引先等に対する否定的な風説や風評が、マスコミ報道、アナリストレポートやインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社の社会的信用に影響を与える可能性がございます。当社や当社の関係者、当社の取引先等に対して否定的な風説・風評が流布した場合には、そのネガティブなイメージにより、当社に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
FY2018|9,845 文字
2 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 事業環境に由来するリスク① 特殊ペプチドの医薬品としての可能性について当社の特殊ペプチドは、タンパク質の合成に利用される20種類のL体のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んでいます。この性質により、当社は多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製することができ、その中からターゲットタンパクに対して強い結合力・特異性を有し、高い生体内安定性を保ち、細胞膜透過性をも有する特殊ペプチドを創製することができます。このような特質から、当社の特殊ペプチドは、新たな医薬品候補物質として期待されており、製薬会社との契約に結びついております。当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が稼働を開始したのは、平成22年であります。医薬品は基礎研究から製造販売承認等を取得するまでに、通常、多大な開発費用と10年以上の長い年月を必要とします。当社の特殊ペプチド創薬開発技術は、まだ生まれて日が浅いため、当社の特殊ペプチドからこれまでに新薬が承認された実績はありません。(ただし、自然界に存在する特殊アミノ酸を組み込んだ有機化合物から新薬が承認された実績があります。たとえば、昭和58年(1983年)にスイスのSandoz(サンド)社から発売された免疫抑制剤「Sandimmun(サンディミュン)」は、ノルウェー南部のハルダンゲル高原の土壌から発見された真菌が産生していた特殊な構造のペプチド(シクロスポリン)から作られています。)将来において、当社の特殊ペプチドによる新薬開発実績が生み出せなかった場合や当社の特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 技術革新について当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)は、特殊ペプチドを医薬品候補物質として運用するために必要となる一連の技術((A)特殊ペプチドを創製し、(B)低分子医薬及び抗体医薬を超える多様性を持ったライブラリーを構築し、(C)高速でスクリーニングを行う技術。)を組み込んでおり、この(A)から(C)のいずれの技術をとってみても、同じくペプチドを医薬品候補物質として扱っている他社の技術と比べ、優位性を保っているものと考えております。しかしながら、技術は日々進歩するものであり、当社の特許技術に抵触しない技術をもって当社PDPSを上回る技術が開発されることも考えられます。当社としては、PDPSを継続的に発展させるため、研究開発を積極的に実施し、PDPSに必要な知的財産権の確保に努めていく方針でありますが、当社PDPSを上回る技術が開発された場合には、当社の競争優位性が低下する結果、当社の希望する条件でクライアントとの間で契約を締結することができなくなる可能性が増加するなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 事業内容に由来するリスク① 特殊ペプチド医薬をベースにした事業であることについて当社は、従来、特殊ペプチド医薬に特化して事業を展開しておりました。そのため、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)により創製される特殊ペプチドは、新規性・進歩性を有するオリジナリティの高いものであり、容易に代替技術が生まれて当社の存在価値が危ぶまれるような事態になることは想定し難いと考えておりますが、特殊ペプチドに対する製薬企業の評価が変化した場合や当社の特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。近時は特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることがわかっており、PDPSの応用範囲が以前に比べて大幅に広がっております。そのため、特殊ペプチドに特化していた事業内容が変わりつつあり、特殊ペプチドをベースとしてPDPSを創薬研究開発の基盤として当業界に広めていき、特殊ペプチドのみならず低分子医薬の開発にも活用していこうという展開を試みています。こうした、低分子医薬の開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 複数の製薬企業との共同研究開発を実施していることについて本書提出日現在、当社の共同研究開発契約先は18社(国内6社、海外12社)あります。それぞれの製薬会社は、独自の創薬開発ターゲットを保有しており、当社はその研究開発について提案を受けて推進していくことになりますが、まれに各製薬企業間で創薬開発ターゲットが競合してしまうことがあります。競合が生じたときは、当社が各製薬企業との間に立って差配することにより、トラブルを未然に防止しており、現在までにトラブルが生じた事例はありません。しかし、今後、その調整が困難になる事態が生じた場合、当社は新たな共同研究開発契約や新たなターゲットタンパクが獲得できないなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 収益計上について当社の共同研究開発契約に係る売上カテゴリーは、原則として(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)に始まり順次、(B)研究開発支援金、(C)追加研究開発支援金、(D)創薬開発権利金、(E)各種目標達成報奨金(マイルストーン)、(F)売上ロイヤルティ、(G)売上達成報奨金で構成されております。(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)、(B)研究開発支援金及び(C)追加研究開発支援金は当社の事業活動に依拠する部分が大きいものの、特に(B)及び(C)について、クライアントの方針転換等の影響を受けてプロジェクトが終了し、それ以降の収益が計上できないことがあります。また、(A)は、相対的に(B)及び(C)よりも額が大きく、一度に売上が計上されるため、当社の経営成績は(A)の計上に少なからず影響を受けることになります。(D)創薬開発権利金や(E)各種目標達成報奨金に至っては、クライアントにおける業務の進行状況に大きく依存するものであり、当社でのコントロールは極めて困難な売上カテゴリーであります。そのため、当社の計画に対してクライアントにおける研究開発の進捗が遅れた場合やクライアントの研究開発方針に変更等があった場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 法的な紛争の可能性について当社は、事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害していない場合でも相手側が侵害したと考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起されるなど法的な紛争が生じる可能性があります。本書提出日現在、法的な紛争は生じておりませんが、海外のバイオベンチャー企業1社から当社の事業が同社の特許権に抵触する旨の主張がなされていたこともあり、将来的には同社と法的な紛争に至る可能性があります。また、当社の側から、同社の特許の無効化を図るために先制的に法的な手続きをとる可能性も否定できません。今後、当社と第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に労力、時間及び費用を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、その場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、事業上の制約を受けるなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、これまでのところ当社が製薬企業と共同研究開発した特殊ペプチド医薬品が上市にまで至った事例は未だありませんが、今後、万が一、当社が共同研究開発に携わった医薬品において健康被害が引き起こされた場合には、そのネガティブなイメージにより、当社及び当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 経営上の重要な契約について当社の事業展開上、重要と思われる契約が、当該契約が解除又はその他の事由に基づき終了した場合又は契約の相手方の経営方針が変更された場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、共同研究開発契約に係る金員(当社から見たときは売上に該当)は、原則として当社が前金として受領しており、これらの金員について当社は契約が中途終了する場合でも返還義務を負っておりません。その反面、共同研究開発契約先は、契約の解除について任意(自由)に実行することができる契約内容となっております。 ⑥ 共同研究開発契約先への依存について当社アライアンス事業における収益は、ほとんどが共同研究開発契約先(クライアント)からのものでありますが、今後、これらのクライアントとの間で新たな標的分子に係る共同研究開発が開始されない場合や、共同研究開発の結果がクライアントの要求水準を満たせない場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社がライセンスアウトしたリード化合物は、クライアントが主体となって臨床試験及び承認申請を行うことになりますが、その進捗と結果が当社の事業戦略及び経営成績に大きな影響を及ぼします。当社は、ライセンスアウト後もクライアントをサポートしますが、臨床試験及び承認申請はクライアントが行うものであって、当社でコントロールすることはできません。したがって、臨床試験及び承認申請の進捗が当社の予期しない事由により遅滞したり、臨床試験及び承認申請が断念される等の可能性があります。さらに、製造販売承認後の販売計画はクライアントに依存しており、クライアントの経営方針や販売計画の変更、経営環境の悪化等により販売計画を達成できない等の可能性があります。そのほか、医薬品の研究開発には多額の資金が必要となることから、当業界においては組織再編やM&Aが盛んであり、クライアントが組織再編を行ったり、競合他社を買収する(競合他社から買収される)など、業界における競争の構図が短期間に塗り替えられる可能性があります。こうした大規模な企業組織再編が当社のクライアントに生じた場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 自社パイプライン(自社創薬)について当社では、特殊ペプチドの特性を活かした自社パイプライン(自社創薬)の研究開発を進めています。現在のところ、開発の方向性としては、特殊ペプチドを医薬品として活用するアプローチと特殊ペプチドの持つ優れた選択性を活かして他の薬剤を誘導するPDC(Peptide Drug Conjugate)薬剤を開発するアプローチをとっております。また、特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることから、自社パイプラインにおいても低分子医薬品の開発に着手しております。特殊ペプチドを医薬品として活用する取り組みの成果として平成26年4月に新しい抗インフルエンザ剤に係る取り組みについて公表し、平成27年2月にはその進捗状況について公表いたしました。その後、平成28年6月に従前の特殊環状ペプチドの薬剤活性と体内動態を飛躍的に改良した開発ナンバー「PD-001」を新たな開発候補特殊環状ペプチドと定め、GLPに準拠した原体の入手に伴ってGLP準拠の前臨床試験を行う旨公表しております。PDCについては、平成28年6月期から本格的に着手し、すでに複数の製薬企業と共同研究を進めております。自社パイプラインについては、研究開発が順調に進展し、臨床試験まで当社の負担で実施する場合には、多額の開発費用を要する状態になる可能性があります。また、自社パイプラインの研究開発が順調に進展しない場合には、将来の事業化のオプションを一部失う可能性があります。 ⑧ 他社との戦略的提携・企業買収等の成否について当社は、競争力の強化及び事業分野の拡大等のため、他社の事業部門の譲受け、他社の買収、他社との業務提携、合弁会社の設立、他社への投資等の戦略的提携など(以下「戦略的提携等」といいます。)を行うことがあります。こうした戦略的提携等については、パートナー企業との思惑に相違が生じて提携・統合が円滑に進まない可能性や当初期待していた効果が得られない可能性、投資した金額の全部又は一部が回収できない可能性等があります。また、パートナー企業が当社の利益に反する決定を行う可能性があり、パートナー企業が事業戦略を変更した場合など、当社は戦略的提携等の関係を維持することが困難になる可能性があり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 知的財産権について① 特許の取得・出願状況について当社は事業において様々な発明及び特許権を実施しておりますが、これらは当社、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学により登録済みになっているものと審査中のものがあります。しかしながら、出願中の発明すべてについて特許査定がなされるとは限りません。また、特許権を設定登録した場合でも、特許異議申立制度により請求項が無効化される可能性があります。また、特許権侵害訴訟の提起や特許無効審判が請求されるなど特許権に係る法的な紛争が生じ、当社が実施する権利に何らかの悪影響が生じる可能性があります。本書提出日現在、当社が実施権を有する特許の1つについて特許異議の申立てがされています。また、当社が実施する特許権を上回る優れた技術の出現により、当社が有する特許権に含まれる技術が陳腐化する可能性があります。こうした事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのほか、当社は、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学が出願人である発明又は特許権に関して、契約により第三者サブライセンス権付き独占実施・許諾権を獲得しておりますが、当該契約の内容が変更されたり、期間満了や解除等により契約が終了した場合等にも、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 職務発明に対する社内対応について当社が職務発明の発明者である役職員等から特許を受ける権利を譲り受けた場合、当社は特許法に定める「相当の利益」を支払うことになります。当社では、その取扱いについて社内規則等でルールを定めており、これまでに発明者との間で問題が生じたことはありません。しかしながら、職務発明の取扱いにつき、相当の利益の支払請求等の問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク① 医薬品開発の不確実性について一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。研究開発の初期段階において有望だと思われる化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の過程で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定どおりに進行せず、開発の延長や中止を行うことがあります。開発を延長した場合には、追加の資金投入が必要になるほか、特許権の存続期間満了までの期間が短くなり、投資した資金の回収に影響を及ぼします。また、開発を中止した場合には、それまでに投じた研究開発資金が回収できなくなることになります。 ② 副作用発現に関するリスクについて医薬品は、臨床試験段階から上市後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。これら予期せぬ副作用が発現した場合、信用力の失墜、訴訟の提起等により、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 薬事法その他の薬事に関する規制について医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法(わが国においては「医薬品医療機器等法」)及びその他の関連法規等により、様々な規制を受けております。現在のところ、当社のパイプラインは研究開発段階にあり、わが国の厚生労働省、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等から上市のための認可は受けておりませんが、今後、各国の薬事法等の諸規制に基づいて医薬品の製造販売承認申請を行い、承認を取得することを目指しております。そのため、自社のパイプラインについて上記の規制をクリアするための体制整備が求められることになります。また、各国の薬事法及びその他の関連法規等は随時改定がなされるものであり、これらの変化が当社の生み出す特殊ペプチドにとって有利又は不利に働いたり、さらなる体制の整備・変更を求められることが考えられます。こうした規制への対応が当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 ④ 製造物責任について医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在しています。将来、開発したいずれかの医薬品が健康障害を引き起こし、又は臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事象が発見された場合、当社は製造物責任を負うこととなり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、製造物責任賠償請求がなされることによるネガティブなイメージにより、当社及び当社の医薬品に対する信頼に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 医薬品行政について医療用医薬品の販売価格は、日本及びその他各国政府の薬価に関する規制の影響を受けます。当社では、これまでのところ自社で臨床試験を実施したことがなく、早期に開発候補化合物をクライアントに導出する方針を採用しています。そのため、当社は薬価戦略についてはクライアントに依存しており、日本及びその他各国政府の薬価政策の影響を間接的に受ける立場にあります。当社の開発候補化合物が上市された場合において、当該医薬品にとってネガティブな薬価改定やその他の医療保険制度の改定があった場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 人材及び組織に由来するリスク当社は、創薬基盤技術の深化、創薬研究開発の進展を図るには、研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保が必要であると考えております。当社の想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (6) その他に由来するリスク① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について当社は、役員、従業員及び取引先等に対し新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日現在、権利行使が可能な状態にある新株予約権による潜在株式数は6,500,000株であり、発行済株式数及び潜在株式数の合計の4.91%に相当しております。 ② 配当政策について当社は配当による株主様への利益還元も重要な経営課題だと認識しております。当社は、将来においても安定的な収益の獲得が可能であり、かつ、研究開発資金を賄うに十分な利益が確保できる場合には、将来の研究開発活動等に備えるための内部留保充実の必要性等を総合的に勘案した上で、利益配当についても検討してまいります。 ③ 情報管理について当社の事業は、クライアントである製薬企業からターゲットタンパクの情報を預かる立場にあります。そのため、当社は、当社の従業員との間において顧客情報を含む会社の情報に係る誓約書を徴求し、会社情報の漏えいの未然防止に努めております。しかしながら、万一顧客の情報を含む会社の情報が外部に漏えいした場合は、当社の信用低下を招き、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 外国為替相場の変動について当社のクライアントには海外の製薬企業が多いことから、売上高の多くが外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。したがって、為替相場が変動した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼすことになります。 ⑤ 自然災害等の発生当社は、神奈川県川崎市川崎区殿町に本社・研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関する設備及び人員が現所在地に集中しております。このため、現所在地の周辺地域において、地震、噴火、水害等の自然災害、大規模な事故、テロ等が発生し、当社設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ CMO(Contract Manufacturing Organization:医薬品製造受託機関)の立ち上げについて当社は、平成29年9月に塩野義製薬株式会社・積水化学工業株式会社とともに合弁会社としてCMO(商号:「ペプチスター株式会社 」。以下「ペプチスター」といいます。)を大阪府摂津市に設立しました。現在、特殊ペプチド医薬品の研究開発が国内外の製薬企業において進められていますが、高品質な特殊ペプチド原薬を低コストで安定供給できるCMOが世界的に見ても存在しておりません。こうした状況のもと、特殊ペプチド医薬品について専門的な技術を持つCMOを設立することは、当社の事業の推進に、ひいては特殊ペプチド医薬品市場の拡大に貢献できるものと考えています。合弁事業に参画する各国内企業が持つ最先端技術をこのペプチスターに戦略的に結集することで、特殊ペプチド医薬品の開発・販売に係るボトルネックの解消を目指します。当社は、平成30年3月30日にペプチスターに対し18億円の追加出資をすることを発表し、同年4月に追加出資を完了しております。ペプチスターへの追加出資後の出資比率は当社、塩野義製薬、積水化学工業の3社ともに17.3%となります。また、当社はペプチスターの債務に対して債務保証をしており、かつ、同社に代表取締役を派遣していることから、ペプチスターは当社の関連会社となります。そのため、当社が投資時点において想定したとおりにペプチスターが事業を展開できない場合、株式の減損処理が発生するなど、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 風説・風評の発生当社や当社の関係者、当社の取引先等に対する否定的な風説や風評が、マスコミ報道、アナリストレポートやインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社の社会的信用に影響を与える可能性があります。当社や当社の関係者、当社の取引先等に対して否定的な風説・風評が流布した場合には、そのネガティブなイメージにより、当社に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
FY2017|10,469 文字
4 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 事業環境に由来するリスク① 特殊ペプチドの医薬品としての可能性について当社の特殊ペプチドは、タンパク質の合成に利用される20種類のL体のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んでいます。この性質により、当社は多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製することができ、その中からターゲットタンパクに対して強い結合力・特異性を有し、高い生体内安定性を保ち、細胞膜透過性をも有する特殊ペプチドを創製することができます。このような特質から、当社の特殊ペプチドは、新たな医薬品候補物質として期待されており、製薬会社との契約に結びついております。当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が稼働を開始したのは、平成22年であります。医薬品は基礎研究から製造販売承認等を取得するまでに、通常、多大な開発費用と10年以上の長い年月を必要とします。当社の特殊ペプチド創薬開発技術は、まだ生まれて日が浅いため、当社の特殊ペプチドからこれまでに新薬が承認された実績はありません。(ただし、自然界に存在する特殊アミノ酸を組み込んだ有機化合物から新薬が承認された実績があります。たとえば、昭和58年(1983年)にスイスのSandoz(サンド)社から発売された免疫抑制剤「Sandimmun(サンディミュン)」は、ノルウェー南部のハルダンゲル高原の土壌から発見された真菌が産生していた特殊な構造のペプチド(シクロスポリン)から作られています。)将来において、当社の特殊ペプチドによる新薬開発実績が生み出せなかった場合や当社の特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 技術革新について当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)は、特殊ペプチドを医薬品候補物質として運用するために必要となる一連の技術((A)特殊ペプチドを創製し、(B)低分子医薬及び抗体医薬を超える多様性を持ったライブラリーを構築し、(C)高速でスクリーニングを行う技術。)を組み込んでおり、この(A)から(C)のいずれの技術をとってみても、同じくペプチドを医薬品候補物質として扱っている他社の技術と比べ、優位性を保っているものと考えております。しかしながら、技術は日々進歩するものであり、当社の特許技術に抵触しない技術をもって当社PDPSを上回る技術が開発されることも考えられます。当社としては、PDPSを継続的に発展させるため、研究開発を積極的に実施し、PDPSに必要な知的財産権の確保に努めていく方針でありますが、当社PDPSを上回る技術が開発された場合には、当社の競争優位性が低下する結果、当社の希望する条件でクライアントとの間で契約を締結することができなくなる可能性が増加するなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 事業内容に由来するリスク① 特殊ペプチド医薬をベースにした事業であることについて当社は、従来、特殊ペプチド医薬に特化して事業を展開しておりました。そのため、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)により創製される特殊ペプチドは、新規性・進歩性を有するオリジナリティの高いものであり、容易に代替技術が生まれて当社の存在価値が危ぶまれるような事態になることは想定し難いと考えておりますが、特殊ペプチドに対する製薬企業の評価が変化した場合や当社の特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。近時は特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることがわかっており、PDPSの応用範囲が以前に比べて大幅に広がっております。そのため、特殊ペプチドに特化していた事業内容が変わりつつあり、特殊ペプチドをベースとしてPDPSを創薬研究開発の基盤として当業界に広めていき、特殊ペプチドのみならず低分子医薬の開発にも活用していこうという展開を試みています。こうした、低分子医薬の開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 複数の製薬企業との共同研究開発を実施していることについて本書提出日現在、当社の共同研究開発契約先は17社(国内6社、海外11社)あります。それぞれの製薬会社は、独自の創薬開発ターゲットを保有しており、当社はその研究開発について提案を受けて推進していくことになりますが、まれに各製薬企業間で創薬開発ターゲットが競合してしまうことがあります。競合が生じたときは、当社が各製薬企業との間に立って差配することにより、トラブルを未然に防止しており、現在までにトラブルが生じた事例はありません。しかし、今後、その調整が困難になる事態が生じた場合、当社は新たな共同研究開発契約や新たなターゲットタンパクが獲得できないなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 収益計上について当社の共同研究開発契約に係る売上カテゴリーは、原則として(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)に始まり順次、(B)研究開発支援金、(C)追加研究開発支援金、(D)創薬開発権利金、(E)各種目標達成報奨金(マイルストーン)、(F)売上ロイヤルティ、(G)売上達成報奨金で構成されております。(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)、(B)研究開発支援金及び(C)追加研究開発支援金は当社の事業活動に依拠する部分が大きいものの、特に(B)及び(C)について、クライアントの方針転換等の影響を受けてプロジェクトが終了し、それ以降の収益が計上できないことがあります。また、(A)は、相対的に(B)及び(C)よりも額が大きく、一度に売上が計上されるため、当社の経営成績は(A)の計上に少なからず影響を受けることになります。(D)創薬開発権利金や(E)各種目標達成報奨金に至っては、クライアントにおける業務の進行状況に大きく依存するものであり、当社でのコントロールは極めて困難な売上カテゴリーであります。そのため、当社の計画に対してクライアントにおける研究開発の進捗が遅れた場合やクライアントの研究開発方針に変更等があった場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 法的な紛争の可能性について当社は、事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害していない場合でも相手側が侵害したと考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起されるなど法的な紛争が生じる可能性があります。本書提出日現在、法的な紛争は生じておりませんが、海外のバイオベンチャー企業1社から当社の事業が同社の特許権に抵触する旨の主張がなされており、将来的には同社と法的な紛争に至る可能性があります。また、当社の側から、同社の特許の無効化を図るために先制的に法的な手続きをとる可能性も否定できません。今後、当社と第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に労力、時間及び費用を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、その場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、事業上の制約を受けるなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、これまでのところ当社が製薬企業と共同研究開発した特殊ペプチド医薬品が上市にまで至った事例は未だありませんが、今後、万が一、当社が共同研究開発に携わった医薬品において健康被害が引き起こされた場合には、そのネガティブなイメージにより、当社及び当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 経営上の重要な契約について当社の事業展開上、重要と思われる契約が、当該契約が解除又はその他の事由に基づき終了した場合又は契約の相手方の経営方針が変更された場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、共同研究開発契約に係る金員(当社から見たときは売上に該当)は、原則として当社が前金として受領しており、これらの金員について当社は契約が中途終了する場合でも返還義務を負っておりません。その反面、共同研究開発契約先は、契約の解除について任意(自由)に実行することができる契約内容となっております。 ⑥ 共同研究開発契約先への依存について当社アライアンス事業における収益は、ほとんどが共同研究開発契約先(クライアント)からのものでありますが、今後、これらのクライアントとの間で新たな標的分子に係る共同研究開発が開始されない場合や、共同研究開発の結果がクライアントの要求水準を満たせない場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社がライセンスアウトしたリード化合物は、クライアントが主体となって臨床試験及び承認申請を行うことになりますが、その進捗と結果が当社の事業戦略及び経営成績に大きな影響を及ぼします。当社は、ライセンスアウト後もクライアントをサポートしますが、臨床試験及び承認申請はクライアントが行うものであって、当社でコントロールすることはできません。したがって、臨床試験及び承認申請の進捗が当社の予期しない事由により遅滞したり、臨床試験及び承認申請が断念される等の可能性があります。さらに、製造販売承認後の販売計画はクライアントに依存しており、クライアントの経営方針や販売計画の変更、経営環境の悪化等により販売計画を達成できない等の可能性があります。そのほか、医薬品の研究開発には多額の資金が必要となることから、当業界においては組織再編やM&Aが盛んであり、クライアントが組織再編を行ったり、競合他社を買収する(競合他社から買収される)など、業界における競争の構図が短期間に塗り替えられる可能性があります。こうした大規模な企業組織再編が当社のクライアントに生じた場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 自社パイプライン(自社創薬)について当社では、特殊ペプチドの特性を活かした自社パイプライン(自社創薬)の研究開発を進めています。現在のところ、開発の方向性としては、特殊ペプチドを医薬品として活用するアプローチと特殊ペプチドの持つ優れた選択性を活かして他の薬剤を誘導するPDC(Peptide Drug Conjugate)薬剤を開発するアプローチをとっております。また、特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることから、自社パイプラインにおいても低分子医薬品の開発に着手しております。特殊ペプチドを医薬品として活用する取り組みの成果として平成26年4月に新しい抗インフルエンザ剤に係る取り組みについて公表し、平成27年2月にはその進捗状況について公表いたしました。その後、平成28年6月に従前の特殊環状ペプチドの薬剤活性と体内動態を飛躍的に改良した開発ナンバー「PD-001」を新たな開発候補特殊環状ペプチドと定め、GLPに準拠した原体の入手に伴ってGLP準拠の前臨床試験を行う旨公表しております。PDCについては、平成28年6月期から本格的に着手し、すでに複数の製薬企業と共同研究を進めております。自社パイプラインについては、研究開発が順調に進展し、臨床試験まで当社の負担で実施する場合には、多額の開発費用を要する状態になる可能性があります。また、自社パイプラインの研究開発が順調に進展しない場合には、将来の事業化のオプションを一部失う可能性があります。 ⑧ 他社との戦略的提携・企業買収等の成否について当社は、競争力の強化及び事業分野の拡大等のため、他社の事業部門の譲受け、他社の買収、他社との業務提携、合弁会社の設立、他社への投資等の戦略的提携など(以下「戦略的提携等」といいます。)を行うことがあります。こうした戦略的提携等については、パートナー企業との思惑に相違が生じて提携・統合が円滑に進まない可能性や当初期待していた効果が得られない可能性、投資した金額の全部又は一部が回収できない可能性等があります。また、パートナー企業が当社の利益に反する決定を行う可能性があり、パートナー企業が事業戦略を変更した場合など、当社は戦略的提携等の関係を維持することが困難になる可能性があり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 知的財産権について① 特許の取得・出願状況について当社は事業において様々な発明及び特許権を実施しておりますが、これらは当社、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学により登録済みになっているものと審査中のものがあります。しかしながら、出願中の発明すべてについて特許査定がなされるとは限りません。また、特許権を設定登録した場合でも、特許異議申立制度により請求項が無効化される可能性があります。また、特許権侵害訴訟の提起や特許無効審判が請求されるなど特許権に係る法的な紛争が生じ、当社が実施する権利に何らかの悪影響が生じる可能性があります。本書提出日現在、当社が実施権を有する特許の1つについて特許異議の申立てがされています。また、当社が実施する特許権を上回る優れた技術の出現により、当社が有する特許権に含まれる技術が陳腐化する可能性があります。こうした事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのほか、当社は、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学が出願人である発明又は特許権に関して、契約により第三者サブライセンス権付き独占実施・許諾権を獲得しておりますが、当該契約の内容が変更されたり、期間満了や解除等により契約が終了した場合等にも、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 職務発明に対する社内対応について当社が職務発明の発明者である役職員等から特許を受ける権利を譲り受けた場合、当社は特許法に定める「相当の利益」を支払うことになります。当社では、その取扱いについて社内規則等でルールを定めており、これまでに発明者との間で問題が生じたことはありません。しかしながら、職務発明の取扱いにつき、相当の利益の支払請求等の問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク① 医薬品開発の不確実性について一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。研究開発の初期段階において有望だと思われる化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の過程で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定どおりに進行せず、開発の延長や中止を行うことがあります。開発を延長した場合には、追加の資金投入が必要になるほか、特許権の存続期間満了までの期間が短くなり、投資した資金の回収に影響を及ぼします。また、開発を中止した場合には、それまでに投じた研究開発資金が回収できなくなることになります。 ② 副作用発現に関するリスクについて医薬品は、臨床試験段階から上市後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。これら予期せぬ副作用が発現した場合、信用力の失墜、訴訟の提起等により、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 薬事法その他の薬事に関する規制について医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法(わが国においては「医薬品医療機器等法」)及びその他の関連法規等により、様々な規制を受けております。現在のところ、当社のパイプラインは研究開発段階にあり、わが国の厚生労働省、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等から上市のための認可は受けておりませんが、今後、各国の薬事法等の諸規制に基づいて医薬品の製造販売承認申請を行い、承認を取得することを目指しております。そのため、自社のパイプラインについて上記の規制をクリアするための体制整備が求められることになります。また、各国の薬事法及びその他の関連法規等は随時改定がなされるものであり、これらの変化が当社の生み出す特殊ペプチドにとって有利又は不利に働いたり、さらなる体制の整備・変更を求められることが考えられます。こうした規制への対応が当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 ④ 製造物責任について医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在しています。将来、開発したいずれかの医薬品が健康障害を引き起こし、又は臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事象が発見された場合、当社は製造物責任を負うこととなり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、製造物責任賠償請求がなされることによるネガティブなイメージにより、当社及び当社の医薬品に対する信頼に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 医薬品行政について医療用医薬品の販売価格は、日本及びその他各国政府の薬価に関する規制の影響を受けます。当社では、これまでのところ自社で臨床試験を実施したことがなく、早期に開発候補化合物をクライアントに導出する方針を採用しています。そのため、当社は薬価戦略についてはクライアントに依存しており、日本及びその他各国政府の薬価政策の影響を間接的に受ける立場にあります。当社の開発候補化合物が上市された場合において、当該医薬品にとってネガティブな薬価改定やその他の医療保険制度の改定があった場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 人材及び組織に由来するリスク① 小規模組織であることについて当社は役員8名(取締役(監査等委員である取締役を除く。)5名、監査等委員である取締役3名)、従業員60名(平成29年6月30日現在)と小規模であり、内部管理体制も相応の規模となっております。当社においては、業務上必要な人員の増強及び内部体制の充実を図っていく方針でありますが、人材流出が生じた場合及び代替要員の不在等の問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 人材の確保について当社は、創薬基盤技術の深化、創薬研究開発の進展を図るには、研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保が必要であると考えております。当社の想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (6) その他に由来するリスク① 社歴が浅いことについて当社は、平成18年7月に設立された社歴が浅い会社であることから、業績の期間比較を行うための十分な財務数値が得られておりません。したがって、過年度の経営成績及び財政状態だけでは今後の当社の業績を判断する材料としては十分な期間とは言えないものと考えます。なお、アライアンス事業は第5期(平成23年6月期)から本格的に開始したものであり、特殊ペプチド医薬品が上市にまで至った事例はありません。 ② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について当社は、役員、従業員及び取引先等に対し新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日現在、権利行使が可能な状態にある新株予約権による潜在株式数は9,896,000株であり、発行済株式数及び潜在株式数の合計の8.24%に相当しております。 ③ 配当政策について当社は配当による株主様への利益還元も重要な経営課題だと認識しております。当社は、将来においても安定的な収益の獲得が可能であり、かつ、研究開発資金を賄うに十分な利益が確保できる場合には、将来の研究開発活動等に備えるための内部留保充実の必要性等を総合的に勘案した上で、利益配当についても検討してまいります。 ④ 情報管理について当社の事業は、クライアントである製薬企業からターゲットタンパクの情報を預かる立場にあります。そのため、当社は、当社の従業員との間において顧客情報を含む会社の情報に係る誓約書を徴求し、会社情報の漏えいの未然防止に努めております。しかしながら、万一顧客の情報を含む会社の情報が外部に漏えいした場合は、当社の信用低下を招き、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 外国為替相場の変動について当社のクライアントには海外の製薬企業が多いことから、売上高の多くが外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。したがって、為替相場が変動した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼすことになります。 ⑥ 自然災害等の発生当社は、神奈川県川崎市川崎区殿町に本社・研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関する設備及び人員が現所在地に集中しております。このため、現所在地の周辺地域において、地震、噴火、水害等の自然災害、大規模な事故、テロ等が発生し、当社設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 本社・研究所の建設と本店移転について当社は、事業の拡大及び研究開発機能の強化のため、新たに神奈川県川崎市川崎区殿町に本社・研究所を建設し、平成29年7月から稼働を開始しています。新しい設備・機器等を導入して運用することになるため、移転初年度においては従業員がそれらの取り扱いに習熟していないなど一定のオペレーショナルリスクが存在しています。また、設備管理等に予想を超える費用を要したり、追加の人員が必要になる事態が生じるおそれがあります。これらのリスクが顕在化した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑧ CMO(Contract Manufacturing Organization:医薬品製造受託機関)の立ち上げについて当社は、平成29年9月に塩野義製薬株式会社・積水化学工業株式会社とともに合弁会社としてCMO(商号:「ペプチスター株式会社 」。以下「ペプチスター」といいます。)を大阪府摂津市に設立します。現在、特殊ペプチド医薬品の研究開発が国内外の製薬企業において進められていますが、高品質な特殊ペプチド原薬を低コストで安定供給できるCMOが世界的に見ても存在しておりません。こうした状況のもと、特殊ペプチド医薬品について専門的な技術を持つCMOを設立することは、当社の事業の推進に、ひいては特殊ペプチド医薬品市場の拡大に貢献できるものと考えています。合弁事業に参画する各国内企業が持つ最先端技術をこのペプチスターに戦略的に結集することで、特殊ペプチド医薬品の開発・販売に係るボトルネックの解消を目指します。当社は、ペプチスターに対して15億円から19億円程度を出資する予定があります。また、当社はペプチスターの債務に対して債務保証をする予定であり、かつ、同社に代表取締役を派遣していることから、ペプチスターは当社の関連会社となります。そのため、当社が投資時点において想定したとおりにペプチスターが事業を展開できない場合、株式の減損処理が発生するなど、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑨ 風説・風評の発生当社や当社の関係者、当社の取引先等に対する否定的な風説や風評が、マスコミ報道、アナリストレポートやインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社の社会的信用に影響を与える可能性があります。当社や当社の関係者、当社の取引先等に対して否定的な風説・風評が流布した場合には、そのネガティブなイメージにより、当社に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
FY2016|9,504 文字
4 【事業等のリスク】当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 事業環境に由来するリスク① 特殊ペプチドの医薬品としての可能性について当社の特殊ペプチドは、タンパク質の合成に利用される20種類のL体のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んでいます。この性質により、当社は多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製することができ、その中からターゲットタンパクに対して強い結合力・特異性を有し、高い生体内安定性を保ち、細胞膜透過性をも有する特殊ペプチドを創製することができます。このような特質から、当社の特殊ペプチドは、新たな医薬品候補物質として期待されており、製薬会社との契約に結びついております。当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が稼働を開始したのは、平成22年であります。医薬品は基礎研究から製造販売承認等を取得するまでに、通常、多大な開発費用と10年以上の長い年月を必要とします。当社の特殊ペプチド創薬開発技術は、まだ生まれて日が浅いため、当社の特殊ペプチドからこれまでに新薬が承認された実績はありません。(ただし、自然界に存在する特殊アミノ酸を組み込んだ有機化合物から新薬が承認された実績があります。たとえば、昭和58年(1983年)にスイスのSandoz(サンド)社から発売された免疫抑制剤「Sandimmun(サンディミュン)」は、ノルウェー南部のハルダンゲル高原の土壌から発見された真菌が産生していた特殊な構造のペプチド(シクロスポリン)から作られています。)将来において、当社の特殊ペプチドによる新薬開発実績が生み出せなかった場合や当社の特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 技術革新について当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)は、特殊ペプチドを医薬品候補物質として運用するために必要となる一連の技術((A)特殊ペプチドを創製し、(B)低分子医薬及び抗体医薬を超える多様性を持ったライブラリーを構築し、(C)高速でスクリーニングを行う技術。)を組み込んでおり、この(A)から(C)のいずれの技術をとってみても、同じくペプチドを医薬品候補物質として扱っている他社の技術と比べ、優位性を保っているものと考えております。しかしながら、技術は日々進歩するものであり、当社の特許技術に抵触しない技術をもって当社PDPSを上回る技術が開発されることも考えられます。当社としては、PDPSを継続的に発展させるため、研究開発を積極的に実施し、PDPSに必要な知的財産権の確保に努めていく方針でありますが、当社PDPSを上回る技術が開発された場合には、当社の競争優位性が低下する結果、当社の希望する条件でクライアントとの間で契約を締結することができなくなる可能性が増加するなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (2) 事業内容に由来するリスク① 特殊ペプチド医薬をベースにした事業であることについて当社は、従来、特殊ペプチド医薬に特化して事業を展開しておりました。そのため、当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)により創製される特殊ペプチドは、新規性・進歩性を有するオリジナリティの高いものであり、容易に代替技術が生まれて当社の存在価値が危ぶまれるような事態になることは想定し難いと考えておりますが、特殊ペプチドに対する製薬企業の評価が変化した場合や当社の特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。近時は特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることがわかっており、PDPSの応用範囲が以前に比べて大幅に広がっております。そのため、特殊ペプチドに特化していた事業内容が変わりつつあり、特殊ペプチドをベースとしてPDPSを創薬研究開発の基盤として当業界に広めていき、特殊ペプチドのみならず低分子医薬の開発にも活用していこうという展開を試みています。こうした、低分子医薬の開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 複数の製薬企業との共同研究開発を実施していることについて本書提出日現在、当社の共同研究開発契約先は16社(国内6社、海外10社)あります。それぞれの製薬会社は、独自の創薬開発ターゲットを保有しており、当社はその研究開発について提案を受けて推進していくことになりますが、まれに各製薬企業間で創薬開発ターゲットが競合してしまうことがあります。競合が生じたときは、当社が各製薬企業との間に立って差配することにより、トラブルを未然に防止しており、現在までにトラブルが生じた事例はありません。しかし、今後、その調整が困難になる事態が生じた場合、当社は新たな共同研究開発契約や新たなターゲットタンパクが獲得できないなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 収益計上について当社の共同研究開発契約に係る売上カテゴリーは、原則として(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)に始まり順次、(B)研究開発支援金、(C)追加研究開発支援金、(D)創薬開発権利金、(E)各種目標達成報奨金(マイルストーン)、(F)売上ロイヤルティ、(G)売上達成報奨金で構成されております。(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)、(B)研究開発支援金及び(C)追加研究開発支援金は当社の事業活動に依拠する部分が大きいものの、特に(B)及び(C)について、クライアントの方針転換等の影響を受けてプロジェクトが終了し、それ以降の収益が計上できないことがあります。また、(A)は、相対的に(B)及び(C)よりも額が大きく、一度に売上が計上されるため、当社の経営成績は(A)の計上に少なからず影響を受けることになります。(D)創薬開発権利金や(E)各種目標達成報奨金に至っては、クライアントにおける業務の進行状況に大きく依存するものであり、当社でのコントロールは極めて困難な売上カテゴリーであります。そのため、当社の計画に対してクライアントにおける研究開発の進捗が遅れた場合やクライアントの研究開発方針に変更等があった場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 法的な紛争の可能性について当社は、事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害していない場合でも相手側が侵害したと考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起されるなど法的な紛争が生じる可能性があります。本書提出日現在、法的な紛争は生じておりませんが、海外のバイオベンチャー企業1社から当社の事業が同社の特許権に抵触する旨の主張がなされており、将来的には同社と法的な紛争に至る可能性があります。また、当社の側から、同社の特許の無効化を図るために先制的に法的な手続きをとる可能性も否定できません。今後、当社と第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に労力、時間及び費用を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、その場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、事業上の制約を受けるなど、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、これまでのところ当社が製薬企業と共同研究開発した特殊ペプチド医薬品が上市にまで至った事例は未だありませんが、今後、万が一、当社が共同研究開発に携わった医薬品において健康被害が引き起こされた場合には、そのネガティブなイメージにより、当社及び当社の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 経営上の重要な契約について当社の事業展開上、重要と思われる契約が、当該契約が解除又はその他の事由に基づき終了した場合又は契約の相手方の経営方針が変更された場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、共同研究開発契約に係る金員(当社から見たときは売上に該当)は、原則として当社が前金として受領しており、これらの金員について当社は契約が中途終了する場合でも返還義務を負っておりません。その反面、共同研究開発契約先は、契約の解除について任意(自由)に実行することができる契約内容となっております。 ⑥ 共同研究開発契約先への依存について当社アライアンス事業における収益は、ほとんどが共同研究開発契約先(クライアント)からのものでありますが、今後、これらのクライアントとの間で新たな標的分子に係る共同研究開発が開始されない場合や、共同研究開発の結果がクライアントの要求水準を満たせない場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社がライセンスアウトしたリード化合物は、クライアントが主体となって臨床試験及び承認申請を行うことになりますが、その進捗と結果が当社の事業戦略及び経営成績に大きな影響を及ぼします。当社は、ライセンスアウト後もクライアントをサポートしますが、臨床試験及び承認申請はクライアントが行うものであって、当社でコントロールすることはできません。したがって、臨床試験及び承認申請の進捗が当社の予期しない事由により遅滞したり、臨床試験及び承認申請が断念される等の可能性があります。さらに、製造販売承認後の販売計画はクライアントに依存しており、クライアントの経営方針や販売計画の変更、経営環境の悪化等により販売計画を達成できない等の可能性があります。そのほか、医薬品の研究開発には多額の資金が必要となることから、当業界においては組織再編やM&Aが盛んであり、クライアントが組織再編を行ったり、競合他社を買収する(競合他社から買収される)など、業界における競争の構図が短期間に塗り替えられる可能性があります。こうした大規模な企業組織再編が当社のクライアントに生じた場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 自社パイプライン(自社創薬)について当社では、特殊ペプチドの特性を活かした自社パイプライン(自社創薬)の研究開発を進めています。現在のところ、開発の方向性としては、特殊ペプチドを医薬品として活用するアプローチと特殊ペプチドの持つ優れた選択性を活かして他の薬剤を誘導するPDC(Peptide Drug Conjugate)薬剤を開発するアプローチをとっております。また、特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることから、自社パイプラインにおいても低分子医薬品の開発に着手しております。特殊ペプチドを医薬品として活用する取り組みの成果として平成26年4月に新しい抗インフルエンザ剤に係る取り組みについて公表し、平成27年2月にはその進捗状況について公表いたしました。その後、平成28年6月に従前の特殊環状ペプチドの薬剤活性と体内動態を飛躍的に改良した開発ナンバー「PD-001」を新たな開発候補特殊環状ペプチドと定め、GLPに準拠した原体の入手に伴ってGLP準拠の前臨床試験を行う旨公表しております。PDCについては、平成28年6月期から本格的に着手し、すでに複数の製薬企業と共同研究を進めております。自社パイプラインについては、研究開発が順調に進展し、臨床試験まで当社の負担で実施する場合には、多額の開発費用を要する状態になる可能性があります。また、自社パイプラインの研究開発が順調に進展しない場合には、将来の事業化のオプションを一部失う可能性があります。 ⑧ 他社との戦略的提携・企業買収等の成否について当社は、競争力の強化及び事業分野の拡大等のため、他社の事業部門の譲受け、他社の買収、他社との業務提携、合弁会社の設立、他社への投資等の戦略的提携など(以下「戦略的提携等」といいます。)を行うことがあります。こうした戦略的提携等については、パートナー企業との思惑に相違が生じて提携・統合が円滑に進まない可能性や当初期待していた効果が得られない可能性、投資した金額の全部又は一部が回収できない可能性等があります。また、パートナー企業が当社の利益に反する決定を行う可能性があり、パートナー企業が事業戦略を変更した場合など、当社は戦略的提携等の関係を維持することが困難になる可能性があり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 知的財産権について① 特許の取得・出願状況について当社は事業において様々な発明及び特許権を実施しておりますが、これらは当社、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学により登録済みになっているものと審査中のものがあります。しかしながら、出願中の発明すべてについて特許査定がなされるとは限りません。また、特許権を設定登録した場合でも、特許異議申立制度により請求項が無効化される可能性があります。また、特許権侵害訴訟の提起や特許無効審判が請求されるなど特許権に係る法的な紛争が生じ、当社が実施する権利に何らかの悪影響が生じる可能性があります。本書提出日現在、当社が実施権を有する特許の1つについて特許異議の申立てがされています。また、当社が実施する特許権を上回る優れた技術の出現により、当社が有する特許権に含まれる技術が陳腐化する可能性があります。こうした事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのほか、当社は、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学が出願人である発明又は特許権に関して、契約により第三者サブライセンス権付き独占実施・許諾権を獲得しておりますが、当該契約の内容が変更されたり、期間満了や解除等により契約が終了した場合等にも、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 職務発明に対する社内対応について当社が職務発明の発明者である役職員等から特許を受ける権利を譲り受けた場合、当社は特許法に定める「相当の対価」を支払うことになります。当社では、その取扱いについて社内規則等でルールを定めており、これまでに発明者との間で問題が生じたことはありません。しかしながら、職務発明の取扱いにつき、相当の対価の支払請求等の問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク① 医薬品開発の不確実性について一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。研究開発の初期段階において有望だと思われる化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の過程で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定どおりに進行せず、開発の延長や中止を行うことがあります。開発を延長した場合には、追加の資金投入が必要になるほか、特許権の存続期間満了までの期間が短くなり、投資した資金の回収に影響を及ぼします。また、開発を中止した場合には、それまでに投じた研究開発資金が回収できなくなることになります。 ② 副作用発現に関するリスクについて医薬品は、臨床試験段階から上市後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。これら予期せぬ副作用が発現した場合、信用力の失墜、訴訟の提起等により、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 薬事法その他の薬事に関する規制について医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法及びその他の関連法規等により、様々な規制を受けております。現在のところ、当社のパイプラインは研究開発段階にあり、わが国の厚生労働省、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等から上市のための認可は受けておりませんが、今後、各国の薬事法等の諸規制に基づいて医薬品の製造販売承認申請を行い、承認を取得することを目指しております。そのため、自社のパイプラインについて上記の規制をクリアするための体制整備が求められることになります。また、各国の薬事法及びその他の関連法規等は随時改定がなされるものであり、これらの変化が当社の生み出す特殊ペプチドにとって有利又は不利に働いたり、さらなる体制の整備・変更を求められることが考えられます。こうした規制への対応が当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼすことになります。 ④ 製造物責任について医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在しています。将来、開発したいずれかの医薬品が健康障害を引き起こし、又は臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事象が発見された場合、当社は製造物責任を負うこととなり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、製造物責任賠償請求がなされることによるネガティブなイメージにより、当社及び当社の医薬品に対する信頼に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 人材及び組織に由来するリスク① 小規模組織であることについて当社は役員8名(取締役(監査等委員である取締役を除く)5名、監査等委員である取締役3名)、従業員47名(平成28年6月30日現在)と小規模であり、内部管理体制も相応の規模となっております。当社においては、業務上必要な人員の増強及び内部体制の充実を図っていく方針でありますが、人材流出が生じた場合及び代替要員の不在等の問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 人材の確保について当社は、創薬基盤技術の深化、創薬研究開発の進展を図るには、研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保が必要であると考えております。当社の想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (6) その他に由来するリスク① 社歴が浅いことについて当社は、平成18年7月に設立された社歴が浅い会社であることから、業績の期間比較を行うための十分な財務数値が得られておりません。したがって、過年度の経営成績及び財政状態だけでは今後の当社の業績を判断する材料としては十分な期間とは言えないものと考えます。なお、アライアンス事業は第5期(平成23年6月期)から本格的に開始したものであり、特殊ペプチド医薬品が上市にまで至った事例はありません。 ② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について当社は、役員、従業員及び取引先等に対し新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。平成28年6月30日現在、権利行使が可能な状態にある新株予約権による潜在株式数は8,564,400株であり、発行済株式数及び潜在株式数の合計の13.17%に相当しております。 ③ 配当政策について当社は配当による株主様への利益還元も重要な経営課題だと認識しております。当社は、将来においても安定的な収益の獲得が可能であり、かつ、研究開発資金を賄うに十分な利益が確保できる場合には、将来の研究開発活動等に備えるための内部留保充実の必要性等を総合的に勘案した上で、利益配当についても検討してまいります。 ④ 情報管理について当社の事業は、クライアントである製薬企業からターゲットタンパクの情報を預かる立場にあります。そのため、当社は、当社の従業員との間において顧客情報を含む会社の情報に係る誓約書を徴求し、会社情報の漏えいの未然防止に努めております。しかしながら、万一顧客の情報を含む会社の情報が外部に漏えいした場合は、当社の信用低下を招き、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 外国為替相場の変動について当社のクライアントには海外の製薬企業が多いことから、売上高の多くが外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。したがって、為替相場が変動した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼすことになります。 ⑥ 自然災害等の発生当社は、東京都目黒区に本社及びラボを設置しており、事業活動や研究開発活動に関する設備及び人員が現所在地に集中しております。このため、現所在地の周辺地域において、地震、噴火等の自然災害、大規模な事故、テロ等が発生し、当社設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 新研究所の建設と本店移転について当社は、事業の拡大及び研究開発機能の強化のため、新たに神奈川県川崎市川崎区殿町に研究所を建設し、平成29年夏季に現在の施設から移転する予定です。新研究所への移行については万全を期して行う予定ですが、新研究所の工期の延長や研究機材の納入の遅れ、移転作業中の事故、研究資材の破損、新規導入設備の運用トラブル、現施設からの退去に伴うトラブル等が発生した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑧ 風説・風評の発生当社や当社の関係者、当社の取引先等に対する否定的な風説や風評が、マスコミ報道やインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社の社会的信用に影響を与える可能性があります。当社や当社の関係者、当社の取引先等に対して否定的な風説・風評が流布した場合には、そのネガティブなイメージにより、当社に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。