事業の内容
キッズウェル・バイオは、主に2つの事業で収益を上げています。一つは「バイオシミラー事業」で、特許が切れたバイオ医薬品のジェネリック版(バイオシミラー)を開発し、その原薬などを製薬会社に供給することで安定的な収益を得ています。もう一つは「細胞治療事業(再生医療)」で、乳歯の幹細胞を使った再生医療製品の実用化を目指しており、将来的な高い成長が期待されています。かつてのバイオ新薬事業は、現在は外部機関との連携による事業開発に専念しています。
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FY2025|9,688 文字|出典 docID: S100W8G2
3【事業の内容】(1) 事業環境 医薬品産業の成長を支える新薬創出は、従来の化学合成による低分子医薬品から、抗体医薬品を中心とするバイオ医薬品、更には細胞医薬・遺伝子治療薬等の新規創薬モダリティへと大きく移行しています。この技術革新により、従来治療が困難であった疾患に対する新たな治療薬が次々と開発され、グローバルな医薬品売上高における上位半数以上をバイオ医薬品等が占めるようになりました。また、創薬モダリティの多様化に伴い、現在では新薬創出の80%をバイオベンチャーが担う等、医薬品産業におけるバイオベンチャーの重要性は世界的に増しております。 このようにして生み出された治療薬が多くの患者様の健康に寄与している一方で、技術の高度化や医薬品開発の複雑化等により、研究開発期間の長期化や開発費・製造費の増加が進んでいることが課題となっています。これに伴い、新たに開発された医薬品の薬価が上昇し、医薬費全体の増加を招いている状況があり、このような医薬費抑制への対応策として、日本を含む多くの国々においては、低分子医薬品の後発品であるジェネリック医薬品の使用が広く普及しています。また、バイオ医薬品についても、先行品の特許期間・再審査期間の満了時期を今後順次迎えることから、その後続品であるバイオ後続品(バイオシミラー)の普及が進むことが期待されております。 (2) 当社グループの事業モデル 当社グループは、当社において、バイオシミラーの開発及び開発品上市後の原薬・製剤(以下、「バイオシミラー原薬等」)の供給を行う「バイオシミラー事業」、当社100%子会社の株式会社S-Quatre(以下、「エスカトル」)において、エスカトルが独自開発した乳歯歯髄幹細胞(以下、「SQ-SHED」。SHED(シェド)はStem cells from Human Exfoliated Deciduous teethの略)を活用した再生医療等製品の実用化を目指す「細胞治療事業(再生医療)」の2事業に取り組んでおります。なお、有限な経営資源を戦略的かつ集中的に投下するという経営方針に基づき協議した結果、創業来の事業であったバイオ新薬事業については、2023年度以降、既に取得済みの研究成果を基に外部機関における研究活動を更に進めるための事業開発活動に専念しております。 なお、当社グループは、以下の2点を特長とした事業活動を行っております。 ① ハイブリッド事業体制 当社グループは、バイオシミラー事業と細胞治療事業(再生医療)の組み合わせによるハイブリッド事業体制を採用しています。 バイオシミラー事業においては、2012年以降パートナー製薬企業と共に4製品を上市し、既にバイオシミラー原薬等の供給による持続的な収益を生み出しています。なお、バイオシミラーの開発においては、先行バイオ医薬品と同等の品質、安全性及び有効性を有する医薬品を、既存の科学的知見を基盤として開発することが可能であり、革新的技術への依存度が相対的に低いために、計画に沿った予見性のある開発推進が容易です。このため、外部機関との連携により限られた経営資源でも効率的かつ確実性の高い開発が可能であり、今後先行バイオ医薬品の特許切れに合わせて新規バイオシミラーの上市を重ね、パートナー製薬企業にバイオシミラー原薬等を安定的に供給することによって、更に強固な安定収益基盤の実現が見込まれます。 一方で、2019年に本格的に参入した細胞治療事業(再生医療)においては、従来の医薬品では治療が困難な疾患に対して革新的な医薬品を創出することを目的としており、技術的な不確実性等による開発リスクは大きいものの、将来的には高い収益成長が期待される事業です。 この両事業を組み合わせたハイブリッド事業体制においては、バイオシミラー事業において生み出される持続的な収益と長年の取り組みを通じて蓄積したバイオ医薬品の研究開発ノウハウ・知見・経験等(以下、「ノウハウ等」)を、高い成長性が期待される細胞治療事業の研究開発に再投資・活用することで、事業間シナジーを最大化し、「安定と成長の両立」を目指しています。なお、「安定と成長の両立」の実現に向けては、事業の進捗に応じて、柔軟かつ迅速に財務的健全性と成長性のバランスを再調整することが求められ、パートナー企業や外部機関との連携強化、各事業の特性に応じた多様な資金調達手段の活用、研究開発品の優先順位付けの見直し等にも継続的に取り組んでいます。 ② バーチャル型研究開発及びプロジェクトマネジメント 医薬品の開発には、薬効・薬理研究、製造プロセス開発、GMP製造、臨床開発等、多岐にわたる専門的な知見と高度な設備が必要とされるため、すべての工程を単独で遂行することは困難です。そこで当社グループは、バイオシミラー及び細胞治療事業において、アカデミア、開発・製造受託機関(CDMO)、製薬企業等との連携による「バーチャル型」の研究開発体制を構築しています。 バイオシミラー事業では、これまでの豊富な開発実績に基づくプロジェクトマネジメント力を活かし、パートナー企業や外部機関と連携しながら、各開発工程を着実に推進しています。開発早期から外部機関と連携し、開発から製造まで一気通貫して取り組みことで、有限な経営資源を効率的に活用し、連続的な新規バイオシミラーの開発と上市後のバイオシミラー原薬等の製造を両立し、事業単独での営業黒字の確保と更なる収益成長を実現します。 細胞治療事業においては、革新的治療法の創出を目指し、自社独自の発明技術を軸としながらも、外部機関との連携を通じて最先端の知見や技術を積極的に取り入れることで、高い専門性の確保と柔軟な研究開発体制を構築しています。 このように、当社グループ主導でプロジェクトごとに最適な研究開発体制を構築することで、研究開発力の強化とスピードの向上を実現しつつ、複数の研究開発プロジェクトを同時並行で推進可能な柔軟性と効率性を確保しています。結果として、開発リスクの分散と経営資源の最適配分が可能となり、ハイブリッド事業体制で目指す「安定と成長の両立」の実現に寄与しています。 (3) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針① バイオシミラー事業 バイオシミラーの開発は、CDMO等との連携による産生細胞株の構築、またはCDMO等により構築済の細胞株の導入から開始され、続いて原薬製造プロセスの開発・最適化が進められます。バイオ医薬品の原薬製造は、化学合成による低分子医薬品と比べて工程が極めて複雑です。加えてバイオシミラー原薬の製造プロセス開発においては、製造販売承認の取得に向けて先行バイオ医薬品と同等の品質(物性、工程由来不純物、活性等)を維持するだけでなく、薬価制度上、新たな製造プロセスによる高い生産性を達成し、より安価な原薬製造を実現する必要があります。また、承認取得後の上市に向けては、安定供給の実現に向けた製造プロセスの高い安定性や、先行バイオ医薬品メーカーによる特許権侵害訴訟等を避けるために、先行特許に抵触しないように開発を進めることも不可避です。このような多面的な要件を満たすためには、バイオシミラー開発の諸段階における精緻な検討と状況に応じた柔軟な調整が必要であり、豊富な開発経験に裏打ちされた高度な技術力と課題解決力が求められます。 また、迅速かつ確実な開発の推進と上市後の事業価値最大化に向けては、上記以外のプロセス、すなわち臨床開発や製造販売承認申請等の重要な役割を担うパートナー製薬企業との早期連携が開発成功の鍵となります。このため、当社では産生細胞株の構築・導入等の開発初期段階からパートナー製薬企業候補と協議を開始し、上市後の安定供給までを見据えた連携体制の構築を進めています。これにより、バイオシミラー原薬製造プロセス開発後速やかに、パートナー製薬企業と連携して、製剤プロセス開発、非臨床試験、臨床開発へ移行することが可能です。 なお、臨床開発では、当社がCDMOに製造委託した原薬等をパートナー製薬企業に提供します。また、臨床試験において先行バイオ医薬品との安全性及び有効性の同等性が確認された後の、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への製造販売承認申請に際しては、製造・品質に関する申請資料の整備や当局からの照会対応について、当社の専門的知見を活かした技術支援を行っています。なお、上市後は、パートナー製薬企業への安定的な原薬等の供給を通じて、当該バイオシミラーの持続的な供給に貢献しています。 現在の事業モデルにおけるバイオシミラー事業の収益構造は、臨床試験開始、製造販売承認の申請、上市等、各開発段階における進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる一時金収益と、バイオシミラー原薬等をパートナー製薬企業に供給することによる販売収益の二本柱で構成されています。また、契約の内容によっては、パートナー製薬企業の販売実績に応じたロイヤリティ収益を得る場合もあります。なお、これらの収益の一部は、持続的な収益を生み出すバイオシミラー原薬等の製造運転資金として、また、更なる成長のための新規バイオシミラー開発や細胞治療事業における研究開発にも活用されます。 図表1 開発の流れと収益モデル(バイオシミラー事業)(注)開発開始から上市に至るまでの一般的なバイオシミラーの開発所要年数は約7~8年であります。 図表2 事業系統図(バイオシミラー事業) なお、バイオシミラーの事業化においては、上市の順番に応じて市場シェアが大きく左右される可能性が高いことから、一番手での上市を目指して開発に取り組みます。そのためには、先行品の特許期間・再審査期間の満了時期を見据え、当該時期から逆算して計画を立て、開発を進める必要があります。また、先行バイオ医薬品の市場規模や開発対象品の競合となるバイオシミラーの有無は、当該開発対象品の採算性に大きな影響を与えます。そのため当社では、特許期間・再審査期間の満了時期、市場規模、競合他社による開発状況等を総合的に勘案し、開発対象品を選定しています。なお、市場規模の算定にあたっては、先行品の薬価を基に推定される当該バイオシミラーの薬価、処方量、及びバイオシミラーへの置換率等の要素を掛け合わせて推計します。更に、この推計市場規模に当社開発品の想定シェア、原価率等を加味することで当社の売上及び利益を予測し、想定される開発費等と併せて正味現在価値を評価した上で、最終的な開発判断を行っております。 ② 細胞治療事業(再生医療) 細胞治療事業の研究開発においては、SHEDに関するサイエンスの探求と科学基盤の構築が最も重要な要素です。当社グループはエスカトルにおける独自研究を中核に据えつつ、アカデミアやパートナー製薬企業等との共同研究も並行して進めています。また、研究の加速や研究データの信頼性・再現性の確保を目的に、試験受託機関への研究委託も積極的に活用しています。こうした基礎研究活動から得られた科学情報に基づき、SQ-SHEDを活用した再生医療等製品等の対象疾患を選定し、有効性と安全性に関する非臨床試験を進めています。製品製造においては、独自の製法を確立した上で、製造受託機関への技術移管を実施し、現在、初期治験製品の試製造が順調に進捗しております。更に、後期治験及び上市後の安定供給を見据え、独自の大量培養製法の確立にも成功しており、現在、製造受託機関及び培養機器メーカーと協力して、本格的な製造プロセス開発の段階に移行しております。 なお、細胞治療事業においては、自社開発品の知的財産を保護するための特許戦略も極めて重要です。当社グループは、基礎研究及び製造プロセス開発から得られたデータを基に、他社特許の調査結果を踏まえながら、積極的に特許出願を進めています。 また、上述の取り組みと並行して、パートナー候補となる製薬企業等との協議も進めています。臨床開発段階以降は、原則としてパートナー製薬企業と協働し、臨床試験において安全性及び有効性が確認された後、厚生労働省に対して再生医療等製品等の製造販売承認の申請を行います。当段階においては、エスカトルが製造受託機関に治験製品の製造を委託し、それをパートナー製薬企業に有償で提供するほか、非臨床試験及び製造・品質に関する治験申請並びに承認申請資料の作成も担います。更に、再生医療等製品等の上市後においても、原薬となる細胞等の供給、もしくはその製造ライセンスの提供を通じて、当該再生医療等製品等の安定供給に貢献していきます。 細胞治療事業の収益としては、パートナー製薬企業との提携時に得られる契約一時金収益と、臨床試験開始や製造販売承認の申請、上市等、各開発段階における進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる一時金収益、更には、開発段階及び上市後において、再生医療等製品等の原料となる細胞等をパートナー製薬企業に供給することによって得られる販売収益があります。また、契約内容によっては、開発段階において、当社グループのノウハウ等をパートナー製薬企業に提供することで得られる役務収益や、パートナー製薬企業の販売実績に応じたロイヤリティ収益を得る場合もあります。図表3 開発の流れと収益モデル(細胞治療事業) 図表4 事業系統図(細胞治療事業) なお、細胞治療事業の対象疾患の選定に際しては、その科学的妥当性が最も重要であるものの、加えて、治療ニーズ、市場規模、収益性、競合状況等も重要な要素と位置づけております。更に、研究開発の進捗や規制等含む外部環境の変化を捉え、対象疾患の優先順位の見直しや、場合によっては開発中止の判断を行う等、開発パイプラインの最適化に努めています。 (4) 主力上市品・開発品① バイオシミラー事業・フィルグラスチムバイオシミラー(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん) フィルグラスチムは、白血球の一種である好中球の分化・増殖促進、及び骨髄からの好中球放出促進や好中球機能の亢進を目的とした製品です。当社は、2007年10月より富士製薬工業株式会社(以下、「富士製薬」)と共同で当該バイオシミラーの開発を推進し、2012年11月に富士製薬と持田製薬株式会社(以下、「持田製薬」)が国内での製造販売承認を取得し、2013年5月に上市されました。現在、当社は富士製薬に当該バイオシミラー原薬等を提供しており、富士製薬が販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオシミラーの産生細胞株は韓国のDong-ASTCo.,Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。なお、他社によるバイオシミラーを含めて、先行品からの置き換え率は80%を超えています。 ・ダルベポエチンアルファバイオシミラー(開発番号:GBS-011、対象疾患領域:腎疾患) ダルべポエチンアルファは、腎性貧血治療薬であるエポエチンアルファの効果の持続性を高めた製品です。当社は、2014年1月より日本市場に向けて株式会社三和化学研究所(以下、「三和化学」)と当該バイオシミラーの共同開発を開始し、2019年9月に三和化学が国内での製造販売承認を取得し、2019年11月に上市されました。以後、製造販売については三和化学が単独で行い、当社は販売売上に応じた利益の分配を受けております。なお、他社によるバイオシミラー等を含めて、先行品からの置き換え率は80%を超えています。 ・ラニビズマブバイオシミラー(開発番号:GBS-007、対象疾患領域:眼疾患) ラニビズマブは、世界的な高齢化社会の進展や生活習慣の変化に伴い患者数が増加している黄斑変性症等の眼疾患に対する治療を目的とした製品です。当社は、2015年11月より千寿製薬株式会社(以下、「千寿製薬」)と共同で開発を推進し、2021年9月には同社が厚生労働省より国内での製造販売承認を取得、同12月に上市されました。現在、当社は千寿製薬に当該バイオシミラー原料等を提供しており、千寿製薬が販売を行っております。販売開始後には当初想定を大幅に上回る受注があり、2023年9月には適応症の追加も承認され、今後も更なる需要拡大が見込まれております。当社は、今後の需要拡大に対応し収益性の一層の向上を図るため、千寿製薬及びCDMOと連携し、安定供給体制の更なる強化及び原価低減策に向けた取り組みを継続してまいります。 ・ペグフィルグラスチムバイオシミラー(開発番号:GBS-010、対象疾患領域:がん) ペグフィルグラスチムは、がん化学療法に伴う発熱性好中球減少の抑制を目的とした次世代型フィルグラスチム(ペグフィルグラスチム)製品です。本製剤は、フィルグラスチムにPEG(ポリエチレングリコール)を修飾することで投与回数を減らし、効果の持続性を向上させた高付加価値製剤です。当社は、2016年12月より持田製薬と共同で当該バイオシミラーの開発を推進し、2023年9月に同社が国内での製造販売承認を取得、同11月に上市されました。現在、当社は持田製薬に当該バイオシミラー原薬等を提供しており、持田製薬及びニプロ株式会社(以下、「ニプロ」)が販売を行っております。販売開始後には当初想定を上回る受注があり、今後も更なる需要拡大が見込まれております。これに対応するため、安定供給体制の強化及び収益性の一層の向上を図り、引き続き持田製薬及びCDMO等と連携しながら、供給量の拡大や原価低減策に取り組んでまいります。 ・新規バイオシミラー製品の開発等に向けた取り組み 日本においては、医療財政逼迫や高額な医薬品への患者アクセスの課題がある中で、バイオシミラーへの社会的な需要がますます高まっています。こうした環境下において、当社は持続可能な医療体制の構築に貢献するとともに、バイオシミラー事業の安定的かつ持続的な収益基盤を更に強化すべく、新規バイオシミラーの開発に向けた取り組みを積極的に推進しております。2024年6月には、抗体医薬品の新薬開発に強みを持つカイオム・バイオサイエンス株式会社(以下、「カイオム」)との間でバイオシミラー開発に関する業務提携契約を締結し、2005年5月には、カイオム、Mycenax Biotech Inc.(以下、「MBI」)との間で、新規バイオシミラー開発に関するMaster Service Agreementを締結しました。なお、この契約下で開発される新規バイオシミラーについては、既に、パートナー企業候補である複数の国内外製薬企業等と秘密保持契約下での協議を進めております。 更に2025年5月には、厚生労働省「医療施設等施設整備費補助金(バイオ後続品国内製造施設整備支援事業)」に採択されたことを受け、今後は、アルフレッサホールディングス株式会社(以下、「アルフレッサホールディングス」)、カイオム、MBIとの協働により当該事業の目的であるバイオシミラーの原薬・製剤製造施設の国内候補地での整備を推進してまいります。 ② 細胞治療事業(再生医療)・開発番号:GCT-103(対象疾患:脳性麻痺) 脳性麻痺は、出産前後の周産期において酸素欠乏や感染症等が原因となって脳が損傷を受けた結果、成長の過程で運動障害等の症状が現れる疾患です。出産直後の急性期には症状が明確でないことが多く、将来的な症状の予測も困難です。しかしながら、急性期を過ぎて病状が固定した後の遠隔期(慢性期)からでは治療は難しいと一般的に考えられており、有効な治療法が求められているにも関わらず、その開発はほとんど行われてきませんでした。エスカトルはこの遠隔期に対する治療法開発に取り組んでおり、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学(以下、「名古屋大学」)医学部附属病院小児科と共同で、自家SQ-SHED(患者自身の細胞)の臨床研究を実施中です。これまでに2例の患者様への投与が完了済みでしたが、2025年6月に最終3例目の患者様への投与も完了しました。今後、2025年12月頃に名古屋大学による当該臨床研究に関する中間解析結果が公表される見込みです。健常児ドナーから提供された乳歯を用いて構築したマスターセルバンク(MCB)を原料とする同種SQ-SHEDについては、2025年3月に持田製薬と共同事業化契約を締結し、同社と共同で、国内治験実施に向けた準備を進めております。海外市場についてはエスカトルとして独自に展開を進めており、海外の開発受託機関等との契約の下、治験責任医師や治験実施施設の選定含む開発体制の構築等に取り組む一方で、海外でのパートナー企業候補との協議も進めております。 ・開発番号:GCT-102(対象疾患:腸管神経節細胞僅少症) 腸管神経節細胞僅少症は、腸管の蠕動運動を制御する神経細胞の不足により腸閉塞症状を示す難病で、治療法が確立されていません。SQ-SHEDは腸管神経節細胞と同じ神経堤由来の細胞であるため、投与されたSQ-SHEDが不足している腸管神経節細胞を補う働きをすることにより、腸管蠕動運動を回復させる可能性が期待されています。本疾患の研究開発については、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)が公募する「令和7年度 成育疾患克服等総合研究事業:先制医療実現に向けた周産期・小児期臨床研究開発等の推進」に九州大学と共同で申請し、2025年4月に採択されました。エスカトルは今後も当該疾患に対する新規治療法の創出に向けて研究開発を推進してまいります。 ・SQ-SHEDを活用した再生医療等製品の開発(対象疾患:虚血性骨疾患) 虚血性骨疾患は、血流の減少(虚血)によって骨が壊死する病態であり、特に股関節を形成する大腿骨頭は虚血に陥るリスクが高い部位とされています。そのため、骨折後に治癒せず壊死に至るケースや、骨折がなくても特発性大腿骨頭壊死症と呼ばれる疾患を発症することがあります。この疾患は、骨頭が虚血性壊死を起こし、圧潰により股関節の機能が失われる指定難病で、現在圧潰を防ぐ治療法は確立されていません。エスカトルは当該疾患に対する新規治療法の創出を目指し、2024年9月以降、骨疾患に対する診療実績が豊富な獨協医大、及び骨充填剤の開発実績を有するHOYA Technosurgical株式会社(以下、「HOTS」)と共同研究を進めております。 ・SQ-SHEDの次世代大量製造技術開発 SQ-SHEDを用いた再生医療等製品の次世代製造技術開発にも独自に取り組みを進めており、その一環として、世界的な培養機器メーカーである米国のコーニング社の協力の下、新規の大量培養製法の開発に成功しました。更に、後期臨床試験及び商用製造への適用を見据えた本格的なプロセス開発に向け、製造受託事業を展開するニプロと共同開発契約を締結し、エスカトルからの技術移管を完了しております。今後も引き続き、各社と協働の下、次世代製造体制の構築に向けた開発を進めてまいります。 ・次世代SQ-SHEDの研究 エスカトルでは、より高い治療目標の達成や新たな疾患領域への展開を目指し、遺伝子導入や培養法改変により機能強化を図った次世代SQ-SHEDの研究開発にも取り組んでいます。これまでに、名古屋大学医学部附属病院脳神経外科との脊髄損傷を対象とした共同研究、浜松医科大学との脳腫瘍と対象とした共同研究を実施しており、これらの成果を踏まえ、現在、臨床試験を見据えた製法開発等を進めております。
FY2024|9,929 文字|出典 docID: S100TVRN
3【事業の内容】(1) 事業環境 バイオ関連技術の発明と発達とともに、医薬品産業における成長の源泉である新薬の創出は、化学合成による低分子医薬品から、抗体医薬品を中心とするバイオ医薬品をはじめ、細胞医薬・遺伝子治療等の新規創薬モダリティ(治療手段)を含むバイオロジクスへと大きく移行しています 。新たな技術によって、今まで治療が困難であった様々な疾患に対する画期的な治療薬が開発され、グローバル医薬品売上高上位の半数以上をバイオロジクスが占めるようになりました。また、創薬モダリティの多様化に伴って、新薬創出の80%はバイオベンチャーが担うなど、医薬品産業においてバイオベンチャーの存在感が世界的に高まっています。 このように、新たな技術が多くの患者の健康に寄与する一方で、技術の高度化・複雑化等に伴う研究開発期間の延伸や開発費・製造費の高騰等を反映し 、新たに開発された医薬品の薬価が上昇するとともに、医薬費の増大が進んでいます。医薬費の削減に向けた取り組みとして、日本を含む多くの国々においては、 既に低分子医薬品の後発品であるジェネリック医薬品の使用が一般化しています。また、多くの大型品を含むバイオ医薬品についても、今後次々と先行品の特許期間・再審査期間の満了を迎える時期を迎えていることから、その後続品であるバイオシミラーについても、普及が進んでいくことが見込まれております。 (2) 当社のビジネスモデル 当社は、創業事業であり先行バイオ医薬品の研究開発を行うバイオ新薬事業、先行バイオ医薬品の後続品であるバイオシミラーの開発及び開発品の上市達成後における原薬等の供給を行うバイオシミラー事業、乳歯歯髄幹細胞(SHED: Stem cells from Human Exfoliated Deciduous teeth,シェド)を活用した再生医療等製品の実用化を目指す細胞治療事業(再生医療)の3つを主要事業としてまいりました。しかし、当事業年度において、新たな経営体制での協議、検討の結果、企業価値の最大化と株価の回復・成長の早期実現を目的として、3事業に分散していた経営資源を、安定的な収益基盤であるバイオシミラー事業と成長基盤である細胞治療事業に戦略的かつ集中的に投下することを決定いたしました。なお、バイオ新薬事業につきましては、既に取得済みの研究成果の外部機関での活用に向けた事業開発活動に専念いたします。経営資源の戦略的な投下に加え、構造改革等を通じて事業間の連携を強化し、事業ごとに蓄積してきた研究開発ノウハウ、経験、知見を組み合わせることで、バイオシミラー事業と細胞治療事業における研究開発活動を更に効率的かつ強力に推進してまいります。 (3) 当社のビジネスモデルの特長 当社は、市場ニーズを勘案した医薬品開発を重視し、以下の2点を特長とした研究開発活動を行っております。① ハイブリッド事業体制 バイオシミラー事業においては、既に長年に渡る治療実績を 有する先行バイオ医薬品と同等の品質、安全性及び有効性を有する医薬品を開発しており、新たなサイエンスや技術に過度に依存しないために、先行品の開発と比べ、開発リスクが限定的で開発計画が立てやすく、より少ない経営資源で開発が可能です。一方で、バイオシミラーの薬価は原則先行品の70%と定められているために、高い収益性を確保するためには製造費用を引き下げる必要があります。 一方、多くのバイオベンチャーも取り組む細胞治療事業においては、従来の医薬品で治療の難しい疾患に対して革新的な医薬品開発の可能性があり、大きな収益成長が期待できる反面、新たなサイエンスと技術に大きく依存しているために、バイオシミラー事業と比較して開発リスクは大きく、研究開発には多くの経営資源を投入する必要があります。 そこで当社は、安定性の高いバイオシミラー事業で安定的な収益基盤を築きながら、細胞治療事業に取り組むことで高い成長性を目指す、ハイブリッド型の事業モデルを構築しております。。 ② バーチャル型研究開発及びプロジェクトマネージメント 医薬品開発には、薬効・薬理研究、製造プロセス開発、GMP製造、臨床開発等、多岐にわたる人財や施設が必要な一方、当社の経営資源には限りがあるため、全てを当社単独で担うことできません。そこで当社は、社外の受託機関の積極的な活用を前提に、バイオロジクスの研究と製造プロセス開発等に当社の人的資源を集中し、専門性の向上に努めています。また、当社が主体となって製造受託機関等との連携を強化することで、当社人的資源の効率的な活用と設備投資の大幅な削減に取り組み、プロジェクトごとに最適な製造プロセス開発体制を構築することで、それぞれの得意分野を融合し、開発力強化・開発スピード向上を図っております。 また、当社は、パートナー製薬企業との早期連携による開発費用の分担を進めるとともに、上述の人的資源の効率的な活用と合わせて、同時並行で複数の開発プロジェクトに取り組む体制を整え、開発リスクの分散を進めています。 (4) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針① バイオシミラー事業 バイオシミラー事業においては、患者の経済的負担の軽減による治療継続や、医療費削減による健康保険制度の維持に向け、先行バイオ医薬品と同等の品質・安全性・有効性を有するバイオシミラーの事業化に取り組んでいます。今後も国内外の大手製薬企業等により多くの先行バイオ医薬品が開発され、上市後に特許期間・再審査期間が満了を迎えることで、新たなバイオシミラーの参入機会が提供されることに加え、2029年までに先行品からの置き換え率が80%超の成分を全体の6割以上に引き上げるとす る厚生労働省によるバイオシミラーの普及目標の設定、バイオシミラーの使用促進に向けた診療報酬の新設等を受け、バイオシミラー市場は継続的に拡大することが予測されています。 当該事業では、現在日本国内において承認されているバイオシミラー18製品 の内4製品の開発に携わり、当該4製品全てが市場に1番手で上市した結果、上市済み製品による販売収益等が、研究開発費を除いた一般管理費、すなわち固定費を上回る利益を生み出す規模に成長し、今後中期的に安定的かつ継続的な収益を生み出すことが想定されることから、バイオベンチャーとしては特長的な戦略である「安定と成長の両立」による企業価値最大化を支える重要事業と位置付けております。イ 開発の流れ(図表1、図表2) バイオシミラー事業において求められるのは、先行バイオ医薬品と同等の品質、安全性及び有効性を有する医薬品を開発することですが、そのための取り組みは、バイオシミラー原薬製造の根幹である産生細胞株の構築、あるいは既に研究機関等が構築を終えた産生細胞株の導入から始まります。産生細胞株の構築または又は導入後に、製造受託企業と協業して、当該産生細胞株を用いて原薬製造プロセスの開発・最適化に取り組みますが、バイオ医薬品の原薬製造プロセスは、化学合成による原薬製造プロセスと比べて複雑であり、経験の蓄積に裏付けされた様々な問題解決能力が求められます。そして、原薬製造プロセスの開発が進んだところで、物性、工程由来不純物、活性が先行バイオ医薬品と同等であることを確認するための品質特性比較試験を実施します。なお、産生細胞株の構築・導入段階からパートナー候補製薬企業との提携協議を開始し、原薬製造プロセス開発や品質特性比較試験と同時並行で提携交渉を進めることで、より早期にパートナー製薬企業との提携を実現し、製剤製造プロセス開発、安全性及び有効性評価の為の非臨床試験、臨床開発については、遅延なく当該パートナー製薬企業が実施できる開発体制を構築します。 製剤製造プロセス開発後は、原則パートナー製薬企業が臨床開発を主導し、臨床試験において先行バイオ医薬品との安全性及び有効性の同等性が確認された後に、厚生労働省にバイオシミラーの製造販売承認の申請を行います。パートナー製薬企業が主導する臨床開発段階において、当社は、製造受託企業に原薬等の製造を委託し、当該原薬等をパートナー製薬企業に提供するとともに、パートナー製薬企業に対して開発推進及び製造・品質に関する承認申請資料作成支援を行います。さらに、バイオシミラーの上市後にも、パートナー製薬企業に対する原薬等の提供を通じて、当該バイオシミラーの安定供給に貢献しております。 図表1 開発の流れと収益モデル(バイオシミラー事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオシミラー開発における所要年数であります。 図表2 事業系統図(バイオシミラー事業) ロ 収益モデル(図表1) 現在の事業モデルにおける、バイオシミラー事業の収益としては、臨床試験開始や製造販売承認の申請、上市等、開発の進捗によって得られる開発マイルストンペイメントによる収益と、開発段階及び上市後において、バイオシミラー原薬等をパートナー製薬企業に供給することによって得られる販売収益があります。また、契約体系によっては、パートナー製薬企業の販売実績に応じたロイヤリティ収益を得ることもあります。ハ 開発品目の選定方針 バイオシミラー事業において求められるのは、既に長年に渡る患者の治療実績を有する先行バイオ医薬品と同等の品質、安全性及び有効性を有する医薬品の開発であり、新たなサイエンスや技術に過度に依存しないために、先行品の開発と比べ、開発リスクが限定的で開発計画が立てやすく、より少ない資金で開発が可能です。一方で、バイオシミラーの薬価は原則先行品の70%と定められているために、先行品と比べて製造コストを大きく引き下げることが、プロジェクトの収益性には重要です。また、バイオシミラーの市場シェアは上市の順番で大きく変動する可能性が高いことから、先行品の特許期間・再審査期間の満了に合わせて一番手で上市できるように開発を進める必要があります。そのために、数多く上市している先行バイオ医薬品の中から、市場 規模、特許期間・再審査期間の満了時期、競合他社の存在等に基づいて、開発品の選定を進めます。 なお、開発品であるバイオシミラーの市場規模については、先行バイオ医薬品の薬価 を基に算出される当該バイオシミラーの薬価、先行品の数量ベースの市場規模、バイオシミラーへの置換率の3つを乗じて求めることができます。このようにして求めたバイオシミラーの市場規模に、当社開発品の想定シェア、原価率等を乗じることで当社の売上や利益予測を行い、想定開発費等と合わせて正味現在価値を求め、開発品の最終的な選定を行います。 ② 細胞治療事業(再生医療) 細胞治療事業においては、2019年3月に買収した株式会社セルテクノロジーの技術を基に、健常小児ドナーの乳歯から採取できるSHEDを活用し、革新的な再生医療等製品等の研究開発に取り組んでおり、当社の飛躍的な事業価値向上を支える成長事業と位置付けております。細胞治療(再生医療)は、これまで有効な治療法のなかった難病や希少疾患等の治療ができるようになることが期待され、2012年にiPS細胞の発見に対して京都大学山中伸弥教授らがノーベル医学・生理学賞を受賞したことも受け、応用研究や産業化に向けた取り組みが大きく進捗しています。 当社が事業化に取り組むSHEDは、すでに一部の疾患で実用化され安全性が確認されている間葉系幹細胞(MSC)の一種ですが、これまで広く研究されてきた骨髄や脂肪組織由来のMSCと異なり、小児の組織由来であることから細胞の年齢が若く、増殖能が高いため、わずか1本の乳歯から大量の再生医療等製品等の製造が可能です。また、原料となる乳歯は日本国内で安定的・持続的に入手可能であることから、海外ドナー由来の再生医療等製品等と比べて、安定的な医療の提供が可能になる点も、再生医療等製品の原料として重要な要素です。2019年以降、自社及びパートナー企業・アカデミアとの連携・共同研究を通じて、SHEDのサイエンスを追求するとともに、SHEDを原料とする再生医療等製品の製造法の開発に取り組んでまいりました。2020年3月には、経済産業省から、再生医療等製品の製造を目的としたヒト細胞原料の供給における法的・倫理的・社会的課題を整理した「ヒト(同種)細胞原料供給に係るガイダンス(初版)」(2021年3月に第2版を公表)が取りまとめられるなど等、事業環境の整備も進んだ結果、当社は2022年8月に国内において臨床応用可能なSHEDマスターセルバンク(MCB)構築を完了させ、さらには2024年3月に米国FDA基準に準拠したMCBの製造も完了しており、MCBを用いた再生医療等製品の臨床開発に向けた取り組みを着実に進めています。また、この過程で構築した、乳歯ドナーの募集から、提携する医療機関での抜歯、GMP施設におけるMCB製造に至る一連のシステム(S-Quatre®、エスカトル)を活用し、自社パイプラインだけでなく、再生医療等製品やエクソソーム等の細胞関連医薬品を開発する他企業に向けて、MCBを提供するプラットフォームビジネスとしての展開にも取り組んでおります。なお、当社独自の製造法によるSHED(SQ-SHED:2024年4月1日付で当社100%子会社として株式会社S-Quatre設立によりKWB-SHEDから呼称変更)は、他の組織由来のMSCや、同じSHEDでも一般的な方法で製造したSHEDとは異なる遺伝子発現パターンを示し、特に神経成長、血管新生、細胞遊走に関する遺伝子発現が高く、関連するタンパク栄養因子の産生量も高いことを見出しております。また、実際に、SQ-SHEDがこれらの生物活性を強力に促進することを、細胞機能試験及び動物モデル試験において確認し、2022年10月に特許出願いたしました。イ 開発の流れ(図表3、図表4) 細胞治療事業の研究開発において、再生医療等製品等の原料となるSHEDについてサイエンスの追求が重要であることは当然ですが、将来的な安定供給に向けたSHEDの製造プロセス開発についても優先的に取り組んできました。なお、これらの基礎研究活動については、自社研究及びパートナー企業・アカデミアとの連携・共同研究の実施に加え、研究の加速や研究データの信頼性の保証と 再現性の確認のために、試験受託機関への研究委託も積極的に活用しています。また、これらの基礎研究活動から得られたデータを基に、SHEDを活用した再生医療等製品等の対象疾患を選定し、当該疾患に対する有効性と安全性の予備的試験を実施するとともに、製造受託機関と協業して、臨床開発に向けた製造プロセスの確立を進めています。 なお、バイオシミラー事業と異なり、細胞治療事業においては、自社開発品を守るための特許戦略も欠かせない重要な取り組みです。基礎研究や製造プロセス開発から得たデータ、そして他社特許の調査を基に、積極的に特許出願を進めています。 基礎研究や製造プロセス開発、特許出願等の取り組みと同時並行で、パートナー候補製薬企業との協議を継続しています。臨床開発以降は、原則パートナー製薬企業が主導し、臨床開発において安全性及び有効性が確認された後に、厚生労働省に再生医療等製品等の製造販売承認の申請を行います。パートナー製薬企業が主導する臨床開発段階において、当社は、製造受託企業に原薬たる細 胞等の製造を委託し、当該原薬等をパートナー製薬企業に有償で提供するとともに、パートナー製薬企業に対して開発推進及び製造・品質に関する承認申請資料作成支援を行います。さらに、再生医療等製品等の上市後にも、パートナー製薬企業に対する原薬たる細胞等の提供を通じて、当該再生医療等製品等の安定供給に貢献することを想定しています。 図表3 開発の流れと収益モデル(細胞治療事業) 図表4 事業系統図(細胞治療事業) ロ 収益モデル(図表3) 細胞治療事業の収益としては、パートナー製薬企業との提携時に得られる契約一時金収益、臨床試験開始や製造販売承認の申請、上市等、開発の進捗によって得られる開発マイルストンペイメントによる収益と、開発段階及び上市後において、再生医療等製品等の原料となる 細胞等をパートナー製薬企業に供給することによって得られる販売収益があります。また、契約体系によっては、開発段階において、当社のノウハウなど等をパートナー製薬企業に提供することで得られる役務収益や、パートナー製薬企業の販売実績に応じたロイヤリティ収益を得ることもあります。ハ 開発品目の選定方針 細胞治療事業の開発品目の選定においても、バイオシミラー事業と同様に、想定される市場規模、収益性等を考慮します。一方で、革新的な医薬品に対するニーズ、既存の医薬品とSHEDを活用して開発する再生医療等製品等との経済性評価についても、開発品の選定に欠かせない視点です。なお、研究開発活動の進捗や競合環境、規制等を踏まえた開発品の優先順位の変更に加え、研究開発活動の中断・中止判断も適切に行うことで、開発可能性を高め、開発パイプラインの最適化に努めています。 (5) 主力上市品・開発品 バイオシミラー事業においては、パートナー製薬企業と協業して、既に4製品を上市させた実績を有しています。また、今後多くの大型品を含む先行バイオ医薬品の特許期間・再審査期間が満了を迎える時期を迎えていることから、その後続品であるバイオシミラーの参入機会が次々と訪れることが予想され、当社も新規バイオシミラーの開発について、複数のパートナー候補製薬企業等との協議を継続しております。継続的な新規バイオシミラーの上市を可能とするパイプラインの構築により、安定的な収益基盤の強化に取り組んでいます。 また、細胞治療事業(再生医療)においては、共同研究成果を基に、脳性麻痺を対象とした臨床研究が名古屋大学において実施されています。自社研究に加え、他のバイオベンチャーや大学等との共同研究にも積極的に取り組むことで、開発パイプラインの強化を図っています。 ① バイオシミラー事業・フィルグラスチムバイオシミラー(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん) 顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)は、白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進させるほか、骨髄からの好中球の放出を促進したり好中球機能を亢進する作用があります。当社は、2007年10月より富士製薬工業㈱と共同で当該バイオシミラーの開発を推進し、2012年11月21日に富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が国内での製造販売承認を取得し、2013年5月31日に上市しました。現在、当社は富士製薬工業㈱に対する当該医薬品原薬の安定供給を担っており、富士製薬工業㈱が当該バイオシミラーの販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオシミラーの産生細胞株は韓国のDong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。なお、他社によるバイオシミラーを含めて、先行品からの置き換え率は80%を超えています。 ・ダルベポエチンアルファバイオシミラー(開発番号:GBS-011、対象疾患領域:腎疾患) 当該先行品は、腎性貧血治療薬であるエポエチンアルファの効果の持続性を高めた製品です。当社は、日本市場に向けて㈱三和化学研究所と当該バイオシミラーの共同開発を推進し、2019年9月20日に㈱三和化学研究所が国内での製造販売承認を取得し、2019年11月27日に上市しました。以後、製造販売については㈱三和化学研究所が単独で行い、当社は販売売上に応じた利益の分配を受けております。なお、他社によるバイオシミラー等を 含めて、先行品からの置き換え率は80%を超えています。 ・ラニビズマブバイオシミラー(開発番号:GBS-007、対象疾患領域:眼疾患) 当該先行品は、血管内皮増殖因子の働きを抑えることにより、新生血管の成長を抑える作用があります。当社は、千寿製薬㈱と当該バイオシミラーの共同開発を行ってきましたが、2021年9月27日付で同社が国内での製造販売承認を厚生労働省より取得し、同12月9日に上市しました。現在、当社は千寿製薬㈱に対する当該医薬品製剤の安定供給を担っており、製品化された当該バイオシミラーを同社が販売しております。当該バイオシミラーの競合となる先行品メーカーによるバイオセイム(バイオ医薬品におけるジェネリック)や他社によるバイオシミラーは上市されておらず、千寿製薬㈱の販売は上市直後から当初予想を上回る勢いで推移しており、さらに2023年9月に追加適応症が承認された影響を受け、先行品からの置き換えペースが加速しています。 ・ペグフィルグラスチムバイオシミラー(開発番号:GBS-010、対象疾患領域:がん) 当該先行品は、フィルグラスチムにPEG(ポリエチレングリコール)を修飾することで、投与回数を減らし効果の持続性を増す等、高付加価値を付与した次世代型フィルグラスチムです。当社は、2016年12月に持田製薬㈱と当該バイオシミラーの共同事業化契約を締結し、共同での開発を推進してまいりましたが、2023年9月25日付で同社が国内での製造販売承認を厚生労働省より取得し、同11月22日に上市しました。現在、当社は持田製薬㈱に対する当該医薬品原薬の安定供給を担っており、製品化された当該バイオシミラーを同社及びニプロ㈱が 販売しております。当該バイオシミラーの競合となる先行品メーカーによるバイオセイムや他社によるバイオシミラーは上市されておらず、持田製薬㈱とニプロ㈱の販売は上市直後から当初予想を上回る勢いで推移し、先行品からの置き換えは順調に進捗しています。 ・新たなバイオシミラー製品の開発向けた取組み 当社は、バイオシミラーの社会的役割を認識しつつ、安定的かつ継続的な収益基盤の更なる強化を目的として、新たなバイオシミラーの開発に向けた取り組みを推進しており、既に、多面的な評価に基づく新たな開発候補品の選定を実施し、開発パートナー候補企業等との協議を進めています。 ② 細胞治療事業(再生医療)・SQ-SHEDを活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-102、対象疾患:腸管神経節細胞僅少症) 腸管神経節細胞僅少症は、腸管の蠕動運動を司る神経細胞の不足により腸閉塞症状を示す難病(指定難病 101)で、効果的な治療方法がいまだ確立されていません。SHEDは腸管神経節細胞と同じ神経堤由来の細胞であるため、投与されたSHEDが不足している腸管神経節細胞の機能を補う働きをすることにより、腸管蠕動運動が回復することが期待できます。当社は、当該疾患を対象とした再生医療等製品を開発するべく、持田製薬㈱と共同事業化契約を締結し、当社が保有するSQ-SHEDと持田製薬㈱の消化器領域における知見と実績を組み合わせることで、新たな治療法の創出を目指しています。 ・SQ-SHEDを活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-103、対象疾患:脳性麻痺) 脳性麻痺は、周産期と呼ばれる出産前後の期間に起きた酸素欠乏や感染症など等が原因となり、運動障害など等の神経症状が現れる疾患です。出産直後、すなわち急性期においては症状が明確でないことも多く、症状の予測も困難なため、急性期を過ぎて病状が固まった後の遠隔期(慢性期)から治療を開始しても効果をもたらす新規治療法の開発が望まれています。現在、共同研究先の名古屋大学附属病院総合周産期母子医療センターにて、脳性麻痺(遠隔期)を対象とした自家SHEDの臨床研究が進められていますが、並行して、構築済みのMCB を用いた同種(他家) SHEDの企業治験実施に向けた準備を進めております。 ・第二世代SHEDの研究 名古屋大学医学部脳神経外科との共同研究においては脊髄損傷を、浜松医科大学との共同研究においては脳腫瘍を対象として、それぞれ異なる遺伝子改変SHEDの研究を進めております。
FY2023|8,789 文字|出典 docID: S100R99R
3【事業の内容】(1) 事業環境 製薬企業における永続的成長の源泉は継続的な新薬の創出ですが、化学合成による低分子医薬品は既に多くの基本構造骨格が探索し尽くされ、有望な開発候補品が減少しております。その一方で現在は、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源としたバイオ医薬品が世界の医療業界を牽引しております。 また、既に先進国では、医療費増大による財政圧迫を抑制するために、特許が満了した新薬との同等性を示すだけで承認される安価なジェネリック医薬品の普及が進んでおります。さらに、ブロックバスターとなっているバイオ医薬品が続々と特許満了を迎える時期に至っており、バイオ医薬品のジェネリック医薬品であるバイオ後続品(バイオシミラー)市場は今後競争が激化しながらも伸長していくことが見込まれております。 一方で罹患者数の多い疾患に対する治療方法は、大手製薬企業を中心にあらゆる観点から研究開発が進められ、既に多様な医療が提供されております。このような環境であるため、近年の企業における創薬活動は次世代医療と呼ばれる再生医療技術を活用して、大衆疾患から希少疾患、難病といった分野に移行しております。特に、再生医療は、これまで根治が難しかった疾患に対して新たな医療を提供できる可能性を秘めるものとして期待され、国内外において、創薬活動の主流となっております。 (2) 当社のビジネスモデル 当社は、市場の拡大が見込まれるバイオ医薬品及び再生医療等製品に着目し、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)の3事業を柱として、医薬品開発に取り組んでおります。開発リスクの少ないバイオ後続品事業で着実な収益を得て安定性を重視する一方、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)で革新的な技術や医療を創出し、経営の安定と成長を目指したビジネスモデルを展開していきます。 (3) 当社のビジネスモデルの特長 当社は、市場ニーズを勘案した医薬品開発を重視し、以下の2点を特長とした研究開発活動を行っております。① ハイブリッド事業体制 バイオ後続品は、有効性及び安全性が確認されていることから、比較的少ない経営資源で開発が可能である反面、市場規模などの点で制約を受けます。 一方、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)では、従来の医薬品で治療の難しい疾患に対して新たな治療の可能性が期待できる反面、従来の新薬開発と同様に多くの経営資源を投入する必要があります。 そこで、当社は、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)の長所・短所を考慮したパイプラインを機動的にマネジメントし、安定性の高いバイオ後続品事業で経営の安定を築きながら、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)に取り組むことで高い成長性を目指すハイブリッド型の事業モデルを構築しております。 ② バーチャル型事業開発及びプロジェクトマネージメント 医薬品開発に必要な要件は多岐にわたる一方、当社の経営資源には限りがあるため、全てを当社単独で担うことは難しく、開発のスピードにも限界が生じます。そこで、当社は、社外の受託機関を積極的に活用することにより、最適な開発体制を組み立て、各々の得意分野(原薬製造、非臨床試験など)を融合することで、開発力の強化と開発スピードの向上を図っております。また、当社は、研究開発段階早期から事業化を強く意識しており、相互にメリットが得られる提携先の探索を念頭に開発投資を行っております。 また、医薬品の研究開発活動を進めるには巨額の先行投資資金が必要になりますが、社外との提携関係を構築することで、各々が担当領域の開発費用を分担することとなり、開発リスクを分散することができます。 さらに、医薬品開発においては、ブランド力や信用も重視されることから、製薬企業や大学を含む公的研究機関などとの提携関係を積極的に構築しております。 (4) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針① バイオ後続品事業イ 開発の流れ(図表1、図表2) 当社は、開発研究の初期段階から、既存バイオ医薬品と同等又はそれを上回る品質の原薬の製造方法構築を目標とし、その原薬を用いた非臨床試験を実施いたします。具体的には、まず、バイオ医薬品の原薬製造の根幹である産生細胞株を自社で構築あるいは社外から導入いたします。その産生細胞株を用いて、製造受託企業において最適な原薬の製造方法及び原薬製造体制を構築します。その後、原薬製造方法の最適化、既存バイオ医薬品との品質的な比較、製剤における最適処方の検討、薬効及び安全性評価の非臨床試験を行い、臨床試験につなげてまいります。並行して、バイオ後続品を販売する製薬企業と共同開発の提携関係を構築いたします。 臨床開発は、主に製薬企業が担当し、厚生労働省にバイオ後続品の製造販売承認の申請を行います。当社は、製薬企業との共同研究開発において、臨床試験に使用する原薬などを製薬企業に販売するとともに、製薬企業に対して開発推進及び申請のための助言や支援を行います。さらに、上市後には、原薬などの製造を継続的に信頼できる製造受託企業に委託し、製薬企業に原薬を安定的に供給してまいります。 図表1 開発の流れと収益モデル(バイオ後続品事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ後続品開発における所要年数であります。 図表2 事業系統図(バイオ後続品事業) ロ 収益モデル(図表1) バイオ後続品事業の収益モデルとしては、研究開発段階及び上市後において、医薬品の主原料である原薬などを製薬企業に供給することによって得られる販売収益や開発の進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる収益と、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益があります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ後続品は、新薬の開発に比して経営資源が少なくて済み、また、有効性及び安全性が確認されているため、研究開発リスクは低いと言えます。このため、バイオ後続品については、想定される市場規模、収益性及び競合状況に重点を置いて開発品目の選定を行っております。 バイオ後続品の市場規模は、既存バイオ医薬品の市場規模にバイオ後続品の薬価比とバイオ後続品への置換率を乗じて求めることができます。このようにして求めたバイオ後続品の市場規模に、当社開発品の想定シェアを乗じることで、当社開発品の売上予測を行うことができます。 一方で、収益性については、バイオ後続品の想定薬価と製造原価をもとに、利益率を計算しております。 さらに、魅力あるバイオ後続品にはグローバルな競争の激化が見込まれることから、競合他社の数や質を把握し、それらも開発品目の選定における判断材料の要件としております。 ② バイオ新薬事業イ 開発の流れ(図表3、図表4) バイオ新薬の研究開発は、まず、医薬品シーズの探索を行う基礎研究から着手いたします。医薬品シーズを効率的に探索するため、自社での研究のみならず、大学や研究機関などとの共同研究を行っております。 次に、開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表3 開発の流れと収益モデル(バイオ新薬事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ新薬開発における所要年数であります。 図表4 事業系統図(バイオ新薬事業) ロ 収益モデル(図表3) バイオ新薬事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ新薬の開発品目の選定においても、バイオ後続品と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新薬の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、新薬の研究開発リスクは非常に高いことから、作用メカニズムなどから判断して対象疾患における現行治療法に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。医薬品としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 ③ 細胞治療事業(再生医療)イ 開発の流れ(図表5、図表6) 細胞治療事業(再生医療)の研究開発は、再生医療分野を中心として大学・研究機関などで研究されている最先端の医療技術、バイオベンチャー等の国内企業が所有するバイオ技術又は当社の抗体技術を状況に応じて有機的に組み合わせて、主に難治性疾患、希少疾患及び小児疾患に対する新しい治療法を創出するための業務提携や共同研究活動を行い、速やかな開発研究のため厚生労働省の先駆け審査指定制度等の制度利用も検討しつつ取り組んでおります。 開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業等へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業等が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業等への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表5 開発の流れと収益モデル(細胞治療事業(再生医療)) 図表6 事業系統図(細胞治療事業(再生医療)) ロ 収益モデル(図表5) 細胞治療事業(再生医療)における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 細胞治療事業(再生医療)の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新しい治療法の創出に係る技術や再生医療等製品の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、バイオ新薬事業と同様に研究開発リスクは非常に高いことから、対象疾患における現行治療法あるいは治療方法が存在しない疾患に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。治療方法としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 (5) 主力上市品・開発品 当社の事業基盤はバイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)の3事業です。その中で最も早く事業化可能で収益が望めるのはバイオ後続品です。バイオ後続品の申請・承認は、これまでの低分子化合物のジェネリック医薬品と大きく異なり、製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験を必要とし、新薬に近い要件が求められています。バイオ医薬品の開発経験を有する製薬企業でないと開発が非常に難しく、参入障壁が高いと言えます。一方、既存バイオ医薬品の薬価が高いことから、バイオ後続品では、低分子化合物のジェネリック医薬品よりも高い収益性が期待できます。そこで、当社は、バイオ新薬研究で培った技術、知識及びノウハウを最大限に活用し、科学的かつ論理的にバイオ後続品の開発を進めております。さらに、当社はバイオ後続品事業において複数の開発品目を開発することで、早期に収益の源泉を構築し、事業基盤を安定化する方針です。 また、バイオ新薬の分野では、有効性と安全性が期待できる抗体医薬品を主力開発品とし、さらに、既存の抗体医薬品と異なる分子を標的とすることで、特に希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品の開発を目指します。加えて細胞治療事業(再生医療)の分野では、最先端の技術を所有する企業との共同開発や、大学等の研究成果を活用して革新的な治療法又は医療技術を創出するべく、主に再生医療分野を中心として事業展開を図ってまいります。 ① バイオ後続品事業・フィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん) 顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)は、白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進させるほか、骨髄からの好中球の放出を促進したり好中球機能を亢進する作用があります。 当社は、2007年10月より富士製薬工業㈱と共同開発の下、2012年11月21日に富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が国内での製造販売承認を取得し、2013年5月31日に上市されました。 現在、当社は富士製薬工業㈱に対して当該医薬品の原薬を安定的に供給し、富士製薬工業㈱が販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオ後続品の産生細胞株は韓国のDong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。 ・ダルベポエチンアルファバイオ後続品(開発番号:GBS-011、対象疾患領域:腎疾患) 当該医薬品は、腎性貧血治療薬であるエポエチンアルファの効果の持続性を高めた製品であり、当社は日本市場に向けて㈱三和化学研究所との共同開発の下、2019年9月20日に㈱三和化学研究所が国内での製造販売承認を取得し、2019年11月27日に上市されました。以後、製造販売については㈱三和化学研究所が単独で行い、当社は販売売上に応じて利益の分配を受けております。 ・ペグフィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-010、対象疾患領域:がん) 当該先行品は、フィルグラスチムにPEG(ポリエチレングリコール)を修飾することで、投与回数を減らし効果の持続性を増すなど、高付加価値を付与した次世代型フィルグラスチムであります。当該医薬品の原料が既に日本で上市しているフィルグラスチムであることから、フィルグラスチムバイオ後続品を有する点で当社は他社に比してペグフィルグラスチムバイオ後続品の開発を進める上で優位性があります。また、当社は当該医薬品の原薬製造プロセスを既に確立し、先行品との同等性・同質性に関する良好なデータを得ておりますので、これを訴求データとして国内外の製薬企業との早期の提携を実現すべく、今後も引き続き上市に向けて鋭意取り組んでまいります。 ・ラニビズマブバイオ後続品(開発番号:GBS-007、対象疾患領域:眼疾患) 世界的な高齢化社会の進展や生活習慣の変化に伴い、黄斑変性症等の眼疾患の患者が増加しております。これらの治療薬としてバイオ医薬品が注目されておりますが、当該領域のバイオ医薬品は高額であり、様々な患者様にご使用頂くためにもバイオ後続品の開発の社会的必要性を感じております。当社が千寿製薬㈱と共同開発を行ってきたラニビズマブバイオ後続品について、2021年9月27日付で同社が国内での製造販売承認を取得し、2021年12月9日に上市されました。一方で、今後の事業拡大を目指して国内における本開発品の適応症追加、より市場規模の大きい海外展開を検討・推進しております。・アフリベルセプトバイオ後続品(開発番号:GBS-012、対象疾患:眼疾患) 当該医薬品は、加齢黄斑変性症等の視力喪失の治療に向けた血管新生阻害剤であり、当社は、2019年12月に癸巳化成㈱とアフリベルセプトバイオ後続品に関する事業化を目的とした共同開発契約を締結しました。今後は、当該医薬品の高産生株を用いて原薬の製造プロセスを確立しつつ、この原薬を基に製剤開発、非臨床試験、臨床試験、製造販売承認取得、販売等で必要となる第三者提携先を探索し、当該医薬品の事業化に向けた体制構築を進めてまいります。 ② バイオ新薬事業・抗RAMP2抗体(開発番号:GND-004、対象疾患領域:眼疾患、がん) 当社は、新規メカニズムに基づく新生血管形成を阻害する画期的な新規抗体医薬品の候補抗体の創出に成功し、国内及び国際特許出願を行いました。今後は、知的財産権の確保を図りながら当該医薬品候補抗体の研究開発を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。・新規抗体 2020年1月には、がん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約を、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約を、それぞれ締結いたしました。今後は共同研究を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。 ③ 細胞治療事業(再生医療)・心臓内幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:JRM-001、対象疾患:小児先天性心疾患) 当社の子会社である㈱日本再生医療は、小児先天性心疾患を軸とした重篤な心疾患に対する新たな治療法を提供するため、心臓内幹細胞(以下、「CSC」といいます。)と呼ばれる心臓内に存在する多能性のある体性幹細胞を用いた世界初となる再生医療等製品の実用化を目指し研究開発を推進しております。生まれながらに心臓に何らかの異常をもつ小児先天性疾患は新生児100人に1人の割合で発症するとされ、当該開発品はこれらの症状を改善するために、手術で得られた心臓の切片から、高い自己複製能力を持ち、心臓にまつわる心筋細胞へ分化することができるCSCを培養し、これらを患者様本人へ投与することで心機能の改善を図るものであります。なお、本開発品は、同じ心疾患領域における研究開発経験・ノウハウを保有する㈱メトセラに当該事業を譲渡し、同社が主体となって開発を行っていただくことが最善と判断したため、JRM-001の開発を行う当社の子会社である㈱日本再生医療の株式譲渡を2022年4月4日付で決議し、実行いたしました。今後、当社は開発活動の支援という形で開発に関与いたします。・歯髄幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-101、対象疾患:口唇口蓋裂) 口唇口蓋裂は、口腔の先天的な発生異常によって生じる疾患で、発生時に口蓋の片側が閉鎖しないことで裂が残る先天性疾患の一つです。歯髄幹細胞(以下、「SHED」といいます。)は、発生学的に神経堤細胞由来であり、優れた骨再生能力を有していることから、唇顎裂の再生医療には最適な細胞ソースであるため、当社はORTHOREBIRTH㈱が保有する綿状の人工骨充填材レボシスをSHEDと組み合わせることで新たな治療法を創出できると考え、同社と共同研究契約を締結し、開発活動を行っております。・SHEDを活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-102、対象疾患:腸管神経節細胞僅少症) 腸管神経節細胞僅少症は、腸管の蠕動運動を司る神経細胞の不足により腸閉塞症状を示す難病で、効果的な治療方法がいまだ確立されていません。SHEDは腸管神経節細胞と同じ神経堤由来の細胞であるため、投与されたSHEDが不足している腸管神経節細胞を補う働きをすることにより、腸管蠕動運動が回復することが期待できます。当社は、当該疾患を対象とした再生医療等製品を開発するべく、持田製薬㈱と共同事業化契約を締結し、当社が保有するSHEDと持田製薬㈱の消化器領域における知見と実績を組み合わせることで、新たな治療法の創出を目指してまいります。・SHEDを活用した再生医療等製品開発のための大学との共同研究 当社は、SHEDが神経堤由来の細胞であることに着目し、この特性に適性のある疾患を選定し、様々な大学と当該疾患に対する新たな治療法を創出するべく、共同研究契約を締結し、基礎研究を進めております。具体的には、昭和大学と骨関連疾患、岐阜薬科大学と眼関連疾患、名古屋大学医学部附属病院・東京医科歯科大学と脳性麻痺、大分大学と末梢神経麻痺、名古屋大学と脊髄損傷、北海道大学・総合せき損センターと難治性骨折に関する共同研究を進めております。
FY2022|8,807 文字|出典 docID: S100OITB
3【事業の内容】(1) 事業環境 製薬企業における永続的成長の源泉は継続的な新薬の創出ですが、化学合成による低分子医薬品は既に多くの基本構造骨格が探索し尽くされ、有望な開発候補品が減少しております。その一方で現在は、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源としたバイオ医薬品が世界の医療業界を牽引しております。 また、既に先進国では、医療費増大による財政圧迫を抑制するために、特許が満了した新薬との同等性を示すだけで承認される安価なジェネリック医薬品の普及が進んでおります。さらに、ブロックバスターとなっているバイオ医薬品が続々と特許満了を迎える時期に至っており、バイオ医薬品のジェネリック医薬品であるバイオ後続品(バイオシミラー)市場は今後競争が激化しながらも伸長していくことが見込まれております。 一方で罹患者数の多い疾患に対する治療方法は、大手製薬企業を中心にあらゆる観点から研究開発が進められ、既に多様な医療が提供されております。このような環境であるため、近年の企業における創薬活動は次世代医療と呼ばれる再生医療技術を活用して、大衆疾患から希少疾患、難病といった分野に移行しております。特に、再生医療は、これまで根治が難しかった疾患に対して新たな医療を提供できる可能性を秘めるものとして期待され、国内外において、創薬活動の主流となっております。 (2) 当社のビジネスモデル 当社は、市場の拡大が見込まれるバイオ医薬品及び再生医療等製品に着目し、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)の3事業を柱として、医薬品開発に取り組んでおります。開発リスクの少ないバイオ後続品事業で着実な収益を得て安定性を重視する一方、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)で革新的な技術や医療を創出し、経営の安定と成長を目指したビジネスモデルを展開していきます。 (3) 当社のビジネスモデルの特長 当社は、市場ニーズを勘案した医薬品開発を重視し、以下の2点を特長とした研究開発活動を行っております。① ハイブリッド事業体制 バイオ後続品は、有効性及び安全性が確認されていることから、比較的少ない経営資源で開発が可能である反面、市場規模などの点で制約を受けます。 一方、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)では、従来の医薬品で治療の難しい疾患に対して新たな治療の可能性が期待できる反面、従来の新薬開発と同様に多くの経営資源を投入する必要があります。 そこで、当社は、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)の長所・短所を考慮したパイプラインを機動的にマネジメントし、安定性の高いバイオ後続品事業で経営の安定を築きながら、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)に取り組むことで高い成長性を目指すハイブリッド型の事業モデルを構築しております。 ② バーチャル型事業開発及びプロジェクトマネージメント 医薬品開発に必要な要件は多岐にわたる一方、当社の経営資源には限りがあるため、全てを当社単独で担うことは難しく、開発のスピードにも限界が生じます。そこで、当社は、社外の受託機関を積極的に活用することにより、最適な開発体制を組み立て、各々の得意分野(原薬製造、非臨床試験など)を融合することで、開発力の強化と開発スピードの向上を図っております。また、当社は、研究開発段階早期から事業化を強く意識しており、相互にメリットが得られる提携先の探索を念頭に開発投資を行っております。 また、医薬品の研究開発活動を進めるには巨額の先行投資資金が必要になりますが、社外との提携関係を構築することで、各々が担当領域の開発費用を分担することとなり、開発リスクを分散することができます。 さらに、医薬品開発においては、ブランド力や信用も重視されることから、製薬企業や大学を含む公的研究機関などとの提携関係を積極的に構築しております。 (4) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針① バイオ後続品事業イ 開発の流れ(図表1、図表2) 当社は、開発研究の初期段階から、既存バイオ医薬品と同等又はそれを上回る品質の原薬の製造方法構築を目標とし、その原薬を用いた非臨床試験を実施いたします。具体的には、まず、バイオ医薬品の原薬製造の根幹である産生細胞株を自社で構築あるいは社外から導入いたします。その産生細胞株を用いて、製造受託企業において最適な原薬の製造方法及び原薬製造体制を構築します。その後、原薬製造方法の最適化、既存バイオ医薬品との品質的な比較、製剤における最適処方の検討、薬効及び安全性評価の非臨床試験を行い、臨床試験につなげてまいります。並行して、バイオ後続品を販売する製薬企業と共同開発の提携関係を構築いたします。 臨床開発は、主に製薬企業が担当し、厚生労働省にバイオ後続品の製造販売承認の申請を行います。当社は、製薬企業との共同研究開発において、臨床試験に使用する原薬などを製薬企業に販売するとともに、製薬企業に対して開発推進及び申請のための助言や支援を行います。さらに、上市後には、原薬などの製造を継続的に信頼できる製造受託企業に委託し、製薬企業に原薬を安定的に供給してまいります。 図表1 開発の流れと収益モデル(バイオ後続品事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ後続品開発における所要年数であります。 図表2 事業系統図(バイオ後続品事業) ロ 収益モデル(図表1) バイオ後続品事業の収益モデルとしては、研究開発段階及び上市後において、医薬品の主原料である原薬などを製薬企業に供給することによって得られる販売収益や開発の進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる収益と、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益があります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ後続品は、新薬の開発に比して経営資源が少なくて済み、また、有効性及び安全性が確認されているため、研究開発リスクは低いと言えます。このため、バイオ後続品については、想定される市場規模、収益性及び競合状況に重点を置いて開発品目の選定を行っております。 バイオ後続品の市場規模は、既存バイオ医薬品の市場規模にバイオ後続品の薬価比とバイオ後続品への置換率を乗じて求めることができます。このようにして求めたバイオ後続品の市場規模に、当社開発品の想定シェアを乗じることで、当社開発品の売上予測を行うことができます。 一方で、収益性については、バイオ後続品の想定薬価と製造原価をもとに、利益率を計算しております。 さらに、魅力あるバイオ後続品にはグローバルな競争の激化が見込まれることから、競合他社の数や質を把握し、それらも開発品目の選定における判断材料の要件としております。 ② バイオ新薬事業イ 開発の流れ(図表3、図表4) バイオ新薬の研究開発は、まず、医薬品シーズの探索を行う基礎研究から着手いたします。医薬品シーズを効率的に探索するため、自社での研究のみならず、大学や研究機関などとの共同研究を行っております。 次に、開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表3 開発の流れと収益モデル(バイオ新薬事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ新薬開発における所要年数であります。 図表4 事業系統図(バイオ新薬事業) ロ 収益モデル(図表3) バイオ新薬事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ新薬の開発品目の選定においても、バイオ後続品と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新薬の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、新薬の研究開発リスクは非常に高いことから、作用メカニズムなどから判断して対象疾患における現行治療法に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。医薬品としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 ③ 細胞治療事業(再生医療)イ 開発の流れ(図表5、図表6) 細胞治療事業(再生医療)の研究開発は、再生医療分野を中心として大学・研究機関などで研究されている最先端の医療技術、バイオベンチャー等の国内企業が所有するバイオ技術又は当社の抗体技術を状況に応じて有機的に組み合わせて、主に難治性疾患、希少疾患及び小児疾患に対する新しい治療法を創出するための業務提携や共同研究活動を行い、速やかな開発研究のため厚生労働省の先駆け審査指定制度等の制度利用も検討しつつ取り組んでおります。 開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業等へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業等が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業等への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表5 開発の流れと収益モデル(細胞治療事業(再生医療)) 図表6 事業系統図(細胞治療事業(再生医療)) ロ 収益モデル(図表5) 細胞治療事業(再生医療)における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 細胞治療事業(再生医療)の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新しい治療法の創出に係る技術や再生医療等製品の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、バイオ新薬事業と同様に研究開発リスクは非常に高いことから、対象疾患における現行治療法あるいは治療方法が存在しない疾患に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。治療方法としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 (5) 主力上市品・開発品 当社の事業基盤はバイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)の3事業です。その中で最も早く事業化可能で収益が望めるのはバイオ後続品です。バイオ後続品の申請・承認は、これまでの低分子化合物のジェネリック医薬品と大きく異なり、製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験を必要とし、新薬に近い要件が求められています。バイオ医薬品の開発経験を有する製薬企業でないと開発が非常に難しく、参入障壁が高いと言えます。一方、既存バイオ医薬品の薬価が高いことから、バイオ後続品では、低分子化合物のジェネリック医薬品よりも高い収益性が期待できます。そこで、当社は、バイオ新薬研究で培った技術、知識及びノウハウを最大限に活用し、科学的かつ論理的にバイオ後続品の開発を進めております。さらに、当社はバイオ後続品事業において複数の開発品目を開発することで、早期に収益の源泉を構築し、事業基盤を安定化する方針です。 また、バイオ新薬の分野では、有効性と安全性が期待できる抗体医薬品を主力開発品とし、さらに、既存の抗体医薬品と異なる分子を標的とすることで、特に希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品の開発を目指します。加えて細胞治療事業(再生医療)の分野では、最先端の技術を所有する企業との共同開発や、大学等の研究成果を活用して革新的な治療法又は医療技術を創出するべく、主に再生医療分野を中心として事業展開を図ってまいります。 ① バイオ後続品事業・フィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん) 顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)は、白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進させるほか、骨髄からの好中球の放出を促進したり好中球機能を亢進する作用があります。 当社は、2007年10月より富士製薬工業㈱と共同開発の下、2012年11月21日に富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が国内での製造販売承認を取得し、2013年5月31日に上市されました。 現在、当社は富士製薬工業㈱に対して当該医薬品の原薬を安定的に供給し、富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が2ブランド2チャンネルで販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオ後続品の産生細胞株は韓国のDong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。 ・ダルベポエチンアルファバイオ後続品(開発番号:GBS-011、対象疾患領域:腎疾患) 当該医薬品は、腎性貧血治療薬であるエポエチンアルファの効果の持続性を高めた製品であり、当社は日本市場に向けて㈱三和化学研究所との共同開発の下、2019年9月20日に㈱三和化学研究所が国内での製造販売承認を取得し、2019年11月27日に上市されました。以後、製造販売については㈱三和化学研究所が単独で行い、当社は販売売上に応じて利益の分配を受けております。 ・ペグフィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-010、対象疾患領域:がん) 当該先行品は、フィルグラスチムにPEG(ポリエチレングリコール)を修飾することで、投与回数を減らし効果の持続性を増すなど、高付加価値を付与した次世代型フィルグラスチムであります。当該医薬品の原料が既に日本で上市しているフィルグラスチムであることから、フィルグラスチムバイオ後続品を有する点で当社は他社に比してペグフィルグラスチムバイオ後続品の開発を進める上で優位性があります。また、当社は当該医薬品の原薬製造プロセスを既に確立し、先行品との同等性・同質性に関する良好なデータを得ておりますので、これを訴求データとして国内外の製薬企業との早期の提携を実現すべく、今後も引き続き上市に向けて鋭意取り組んでまいります。 ・ラニビズマブバイオ後続品(開発番号:GBS-007、対象疾患領域:眼疾患) 世界的な高齢化社会の進展や生活習慣の変化に伴い、黄斑変性症等の眼疾患の患者が増加しております。これらの治療薬としてバイオ医薬品が注目されておりますが、当該領域のバイオ医薬品は高額であり、様々な患者様にご使用頂くためにもバイオ後続品の開発の社会的必要性を感じております。当社が千寿製薬㈱と共同開発を行ってきたラニビズマブバイオ後続品について、2021年9月27日付で同社が国内での製造販売承認を取得し、2021年12月9日に上市されました。一方で、今後の事業拡大を目指して国内における本開発品の適応症追加、より市場規模の大きい海外展開を検討・推進しております。・アフリベルセプトバイオ後続品(開発番号:GBS-012、対象疾患:眼疾患) 当該医薬品は、加齢黄斑変性症等の視力喪失の治療に向けた血管新生阻害剤であり、当社は、2019年12月に癸巳化成㈱とアフリベルセプトバイオ後続品に関する事業化を目的とした共同開発契約を締結しました。今後は、当該医薬品の高産生株を用いて原薬の製造プロセスを確立しつつ、この原薬を基に製剤開発、非臨床試験、臨床試験、製造販売承認取得、販売等で必要となる第三者提携先を探索し、当該医薬品の事業化に向けた体制構築を進めてまいります。 ② バイオ新薬事業・抗RAMP2抗体(開発番号:GND-004、対象疾患領域:眼疾患、がん) 当社は、新規メカニズムに基づく新生血管形成を阻害する画期的な新規抗体医薬品の候補抗体の創出に成功し、国内及び国際特許出願を行いました。今後は、知的財産権の確保を図りながら当該医薬品候補抗体の研究開発を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。・新規抗体 2020年1月には、がん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約を、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約を、それぞれ締結いたしました。今後は共同研究を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。 ③ 細胞治療事業(再生医療)・心臓内幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:JRM-001、対象疾患:小児先天性心疾患) 当社の子会社である㈱日本再生医療は、小児先天性心疾患を軸とした重篤な心疾患に対する新たな治療法を提供するため、心臓内幹細胞(以下、「CSC」といいます。)と呼ばれる心臓内に存在する多能性のある体性幹細胞を用いた世界初となる再生医療等製品の実用化を目指し研究開発を推進しております。生まれながらに心臓に何らかの異常をもつ小児先天性疾患は新生児100人に1人の割合で発症するとされ、当該開発品はこれらの症状を改善するために、手術で得られた心臓の切片から、高い自己複製能力を持ち、心臓にまつわる心筋細胞へ分化することができるCSCを培養し、これらを患者様本人へ投与することで心機能の改善を図るものであります。なお、本開発品は、同じ心疾患領域における研究開発経験・ノウハウを保有する㈱メトセラに当該事業を譲渡し、同社が主体となって開発を行っていただくことが最善と判断したため、JRM-001の開発を行う当社の子会社である㈱日本再生医療の株式譲渡を2022年4月4日付で決議し、実行いたしました。今後、当社は開発活動の支援という形で開発に関与いたします。・歯髄幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-101、対象疾患:口唇口蓋裂) 口唇口蓋裂は、口腔の先天的な発生異常によって生じる疾患で、発生時に口蓋の片側が閉鎖しないことで裂が残る先天性疾患の一つです。歯髄幹細胞(以下、「SHED」といいます。)は、発生学的に神経堤細胞由来であり、優れた骨再生能力を有していることから、唇顎裂の再生医療には最適な細胞ソースであるため、当社はORTHOREBIRTH㈱が保有する綿状の人工骨充填材レボシスをSHEDと組み合わせることで新たな治療法を創出できると考え、同社と共同研究契約を締結し、開発活動を行っております。・SHEDを活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-102、対象疾患:腸管神経節細胞僅少症) 腸管神経節細胞僅少症は、腸管の蠕動運動を司る神経細胞の不足により腸閉塞症状を示す難病で、効果的な治療方法がいまだ確立されていません。SHEDは腸管神経節細胞と同じ神経堤由来の細胞であるため、投与されたSHEDが不足している腸管神経節細胞を補う働きをすることにより、腸管蠕動運動が回復することが期待できます。当社は、当該疾患を対象とした再生医療等製品を開発するべく、持田製薬㈱と共同事業化契約を締結し、当社が保有するSHEDと持田製薬㈱の消化器領域における知見と実績を組み合わせることで、新たな治療法の創出を目指してまいります。・SHEDを活用した再生医療等製品開発のための大学との共同研究 当社は、SHEDが神経堤由来の細胞であることに着目し、この特性に適性のある疾患を選定し、様々な大学と当該疾患に対する新たな治療法を創出するべく、共同研究契約を締結し、基礎研究を進めております。具体的には、昭和大学と骨関連疾患、岐阜薬科大学と眼関連疾患、名古屋大学医学部附属病院・東京医科歯科大学と脳性麻痺、大分大学と末梢神経麻痺、名古屋大学と脊髄損傷、北海道大学・総合せき損センターと難治性骨折に関する共同研究を進めております。
FY2021|8,820 文字|出典 docID: S100LVK5
3【事業の内容】(1) 事業環境 製薬企業における永続的成長の源泉は継続的な新薬の創出ですが、化学合成による低分子医薬品は既に多くの基本構造骨格が探索し尽くされ、有望な開発候補品が減少しております。その一方で、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源としたバイオ医薬品、特に抗体医薬品は、有効性や安全性などからも注目され、ブロックバスターとなるバイオ新薬がここ十年で急増しております。 また、既に先進国では、医療費増大による財政圧迫を抑制するために、特許が満了した新薬との同等性を示すだけで承認される安価なジェネリック医薬品の普及が進んでおります。さらに、ブロックバスターとなっているバイオ医薬品が続々と特許満了を迎える時期に至っており、バイオ医薬品のジェネリック医薬品であるバイオ後続品(バイオシミラー)は、今後世界的に大きな市場を形成することが見込まれております。しかしながら、バイオ後続品は、従来のジェネリック医薬品と異なり、新薬開発に近い要件が求められるため、従来のジェネリック医薬品の開発企業やバイオ医薬品開発経験がない製薬企業では、バイオ後続品の開発は非常に高い障壁となります。 一方で罹患者数の多い疾患に対する治療方法は、大手製薬企業を中心にあらゆる観点から研究開発が進められ、既に多様な医療が提供されております。このような環境であるため、近年の企業における創薬活動は次世代医療と呼ばれる再生医療技術を活用して、大衆疾患から希少疾患、難病といった分野に移行しております。 当社は、バイオ医薬品の研究開発に関する技術、知識及び経験を有しており、この優位性を活かし、バイオ後続品の研究開発を積極的に推進してまいりました。さらに、当社は2018年度より「バイオで価値を創造するエンジニアリングカンパニー」を目標に掲げ、従来より手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的なターゲットと定め、これらの疾患に悩む患者様、そのご家族や介護者の方を含めた包括的なケアを目指して、新薬のみならず新たな医療の開発・提供に取り組んでおります。 (2) 当社のビジネスモデル 当社は、市場の拡大が見込まれるバイオ医薬品に着目し、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業の3事業を柱として、医薬品開発に取り組んでおります。開発リスクの少ないバイオ後続品事業で着実な収益を得て安定性を重視する一方、バイオ新薬並びに新規バイオ事業(再生医療/細胞治療)で革新的な技術や医療を創出し、経営の安定と成長を目指したビジネスモデルを展開していきます。 (3) 当社のビジネスモデルの特長 当社は、市場ニーズを勘案した医薬品開発を重視し、以下の2点を特長とした研究開発活動を行っております。① ハイブリッド事業体制 バイオ後続品は、有効性及び安全性が確認されていることから、比較的少ない経営資源で開発が可能である反面、市場規模などの点で制約を受けます。 一方、バイオ新薬及び新規バイオ事業では、従来の医薬品で治療の難しい疾患に対して新たな治療の可能性が期待できる反面、従来の新薬開発と同様に多くの経営資源を投入する必要があります。 そこで、当社は、バイオ後続品とバイオ新薬及び新規バイオ事業の長所・短所を考慮したパイプラインを機動的にマネジメントし、安定性の高いバイオ後続品事業で経営の安定を築きながら、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業に取り組むことで高い成長性を目指すハイブリッド型の事業モデルを構築しております。 ② バーチャル型事業開発及びプロジェクトマネージメント 医薬品開発に必要な要件は多岐にわたる一方、当社の経営資源には限りがあるため、全てを当社単独で担うことは難しく、開発のスピードにも限界が生じます。そこで、当社は、社外の受託機関を積極的に活用することにより、最適な開発体制を組み立て、各々の得意分野(原薬製造、非臨床試験など)を融合することで、開発力の強化と開発スピードの向上を図っております。また、当社は、研究開発段階早期から事業化を強く意識しており、相互にメリットが得られる提携先の探索を念頭に開発投資を行っております。 また、医薬品の研究開発活動を進めるには巨額の先行投資資金が必要になりますが、社外との提携関係を構築することで、各々が担当領域の開発費用を分担することとなり、開発リスクを分散することができます。 さらに、医薬品開発においては、ブランド力や信用も重視されることから、製薬企業や大学を含む公的研究機関などとの提携関係を積極的に構築しております。 (4) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針① バイオ後続品事業イ 開発の流れ(図表1、図表2) 当社は、開発研究の初期段階から、既存バイオ医薬品と同等又はそれを上回る品質の原薬の製造方法構築を目標とし、その原薬を用いた非臨床試験を実施いたします。具体的には、まず、バイオ医薬品の原薬製造の根幹である産生細胞株を自社で構築あるいは社外から導入いたします。その産生細胞株を用いて、製造受託企業において最適な原薬の製造方法及び原薬製造体制を構築します。その後、原薬製造方法の最適化、既存バイオ医薬品との品質的な比較、製剤における最適処方の検討、薬効及び安全性評価の非臨床試験を行い、臨床試験につなげてまいります。並行して、バイオ後続品を販売する製薬企業と共同開発の提携関係を構築いたします。 臨床開発は、主に製薬企業が担当し、厚生労働省にバイオ後続品の製造販売承認の申請を行います。当社は、製薬企業との共同研究開発において、臨床試験に使用する原薬などを製薬企業に販売するとともに、製薬企業に対して開発推進及び申請のための助言や支援を行います。さらに、上市後には、原薬などの製造を継続的に信頼できる製造受託企業に委託し、製薬企業に原薬を安定的に供給してまいります。 図表1 開発の流れと収益モデル(バイオ後続品事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ後続品開発における所要年数であります。 図表2 事業系統図(バイオ後続品事業) ロ 収益モデル(図表1) バイオ後続品事業の収益モデルとしては、研究開発段階及び上市後において、医薬品の主原料である原薬などを製薬企業に供給することによって得られる販売収益や開発の進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる収益と、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益があります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ後続品は、新薬の開発に比して経営資源が少なくて済み、また、有効性及び安全性が確認されているため、研究開発リスクは低いと言えます。このため、バイオ後続品については、想定される市場規模、収益性及び競合状況に重点を置いて開発品目の選定を行っております。 バイオ後続品の市場規模は、既存バイオ医薬品の市場規模にバイオ後続品の薬価比とバイオ後続品への置換率を乗じて求めることができます。このようにして求めたバイオ後続品の市場規模に、当社開発品の想定シェアを乗じることで、当社開発品の売上予測を行うことができます。 一方で、収益性については、バイオ後続品の想定薬価と製造原価をもとに、利益率を計算しております。 さらに、魅力あるバイオ後続品にはグローバルな競争の激化が見込まれることから、競合他社の数や質を把握し、それらも開発品目の選定における判断材料の要件としております。 ② バイオ新薬事業イ 開発の流れ(図表3、図表4) バイオ新薬の研究開発は、まず、医薬品シーズの探索を行う基礎研究から着手いたします。医薬品シーズを効率的に探索するため、自社での研究のみならず、大学や研究機関などとの共同研究を行っております。 次に、開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表3 開発の流れと収益モデル(バイオ新薬事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ新薬開発における所要年数であります。 図表4 事業系統図(バイオ新薬事業) ロ 収益モデル(図表3) バイオ新薬事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ新薬の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新薬の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、新薬の研究開発リスクは非常に高いことから、作用メカニズムなどから判断して対象疾患における現行治療法に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。医薬品としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 ③ 新規バイオ事業イ 開発の流れ(図表5、図表6) 新規バイオ事業の研究開発は、再生医療分野を中心として大学・研究機関などで研究されている最先端の医療技術、バイオベンチャー等の国内企業が所有するバイオ技術又は当社の抗体技術を状況に応じて有機的に組み合わせて、主に難治性疾患、希少疾患及び小児疾患に対する新しい治療法を創出するための業務提携や共同研究活動を行い、速やかな開発研究のため厚生労働省の先駆け審査指定制度等の制度利用も検討しつつ取り組んでおります。 開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業等へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業等が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業等への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表5 開発の流れと収益モデル(新規バイオ事業) 図表6 事業系統図(新規バイオ事業) ロ 収益モデル(図表5) 新規バイオ事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 新規バイオ事業の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新しい治療法の創出に係る技術や再生医療等製品の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、バイオ新薬事業と同様に研究開発リスクは非常に高いことから、対象疾患における現行治療法あるいは治療方法が存在しない疾患に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。治療方法としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 (5) 主力上市品・開発品 当社の事業基盤はバイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業の3事業です。その中で最も早く事業化可能で収益が望めるのはバイオ後続品です。バイオ後続品の申請・承認は、これまでの低分子化合物のジェネリック医薬品と大きく異なり、製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験を必要とし、新薬に近い要件が求められています。バイオ医薬品の開発経験を有する製薬企業でないと開発が非常に難しく、参入障壁が高いと言えます。一方、既存バイオ医薬品の薬価が高いことから、バイオ後続品では、低分子化合物のジェネリック医薬品よりも高い収益性が期待できます。そこで、当社は、バイオ新薬研究で培った技術、知識及びノウハウを最大限に活用し、科学的かつ論理的にバイオ後続品の開発を進めております。さらに、当社はバイオ後続品事業において複数の開発品目を開発することで、早期に収益の源泉を構築し、事業基盤を安定化する方針です。 また、バイオ新薬の分野では、有効性と安全性が期待できる抗体医薬品を主力開発品とし、さらに、既存の抗体医薬品と異なる分子を標的とすることで、特に希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品の開発を目指します。加えて新規バイオ事業の分野では、最先端の技術を所有する企業との共同開発や、大学等の研究成果を活用して革新的な治療法又は医療技術を創出するべく、主に再生医療分野を中心として事業展開を図ってまいります。 ① バイオ後続品事業・フィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん) 顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)は、白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進させるほか、骨髄からの好中球の放出を促進したり好中球機能を亢進する作用があります。 当社は、2007年10月より富士製薬工業㈱と共同開発の下、2012年11月21日に富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が国内での製造販売承認を取得し、2013年5月31日に上市されました。 現在、当社は富士製薬工業㈱に対して当該医薬品の原薬を安定的に供給し、富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が2ブランド2チャンネルで販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオ後続品の産生細胞株は韓国のDong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。 ・ダルベポエチンアルファバイオ後続品(開発番号:GBS-011、対象疾患領域:腎疾患) 当該医薬品は、腎性貧血治療薬であるエポエチンアルファの効果の持続性を高めた製品であり、当社は日本市場に向けて㈱三和化学研究所との共同開発の下、2019年9月20日に㈱三和化学研究所が国内での製造販売承認を取得し、2019年11月27日に上市されました。以後、製造販売については㈱三和化学研究所が単独で行い、当社は販売売上に応じて利益の配分を受けております。 ・ペグフィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-010、対象疾患領域:がん) 当該先行品は、フィルグラスチムにPEG(ポリエチレングリコール)を修飾することで、投与回数を減らし効果の持続性を増すなど、高付加価値を付与した次世代型フィルグラスチムであります。当該医薬品の原料が既に日本で上市しているフィルグラスチムであることから、フィルグラスチムバイオ後続品を有する点で当社は他社に比してペグフィルグラスチムの開発を進める上で優位性があります。また、当社は当該バイオ後続品の原薬製造プロセスを既に確立し、先行品との同等性・同質性に関する良好なデータを得ておりますので、これを訴求データとして国内外の製薬企業との早期の提携を実現すべく、今後も引き続き上市に向けて鋭意取り組んでまいります。 ・ラニビズマブバイオ後続品(開発番号:GBS-007、対象疾患領域:眼疾患) 当該医薬品は、加齢黄斑変性症等の視力喪失の治療に向けた血管新生阻害剤であり、当社は、2015年11月に眼科領域に専門性の高い千寿製薬㈱と資本業務提携にかかる基本合意契約を締結し、2016年5月には当該バイオ後続品の上市を確実に達成させるべく共同事業化契約の締結に至りました。その後、2020年9月に千寿製薬㈱より国内での医薬品製造販売承認に関する申請が行われ、将来の同社に対する製品供給による収益確保は大きく前進いたしました。今後も引き続き同社と協働の下、本製品の製造販売承認取得を目指してまいります。・アフリベルセプトバイオ後続品(開発番号:GBS-012、対象疾患:眼疾患) 当該医薬品は、加齢黄斑変性症等の視力喪失の治療に向けた血管新生阻害剤であり、当社は、2019年12月に癸巳化成㈱とアフリベルセプトバイオ後続品に関する事業化を目的とした共同開発契約を締結しました。今後は、当該バイオ後続品の高産生株を用いて原薬の製造プロセスを確立しつつ、この原薬を基に製剤開発、非臨床試験、臨床試験、製造販売承認取得、販売等で必要となる第三者提携先を探索し、当該バイオ後続品の事業化に向けた体制構築を進めてまいります。 ② バイオ新薬事業・抗RAMP2抗体(開発番号:GND-004、対象疾患領域:眼疾患、がん) 当社は、新規メカニズムに基づく新生血管形成を阻害する画期的な新規抗体医薬品の候補抗体の創出に成功し、国内及び国際特許出願を行いました。今後は、知的財産権の確保を図りながら当該医薬品候補抗体の研究開発を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。・新規抗体 2020年1月には、がん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約をそれぞれ締結いたしました。今後は共同研究を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。 ③ 新規バイオ事業・心臓内幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:JRM-001、対象疾患:小児先天性心疾患) 当社の子会社である㈱日本再生医療は、小児先天性心疾患を軸とした重篤な心疾患に対する新たな治療法を提供するため、心臓内幹細胞と呼ばれる心臓内に存在する多能性のある体性幹細胞を用いた世界初となる再生医療等製品の実用化を目指し研究開発を推進しております。生まれながらに心臓に何らかの異常をもつ小児先天性疾患は新生児100人に1人の割合で発症するとされ、当該開発品はこれらの症状を改善するために、手術で得られた心臓の切片から、高い自己複製能力を持ち、心臓にまつわる心筋細胞へ分化することができる心臓内幹細胞を培養し、これらを患者様本人へ投与することで心機能の改善を図るものであります。・歯髄幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-101、対象疾患:口唇口蓋裂) 口唇口蓋裂は、口腔の先天的な発生異常によって生じる疾患で、発生時に口蓋の片側が閉鎖しないことで裂が残る先天性疾患の一つです。歯髄幹細胞は、発生学的に神経堤細胞由来であり、優れた骨再生能力を有していることから、唇顎裂の再生医療には最適な細胞ソースであるため、当社はORTHOREBIRTH㈱が保有する綿状の人工骨充填材レボシスが歯髄幹細胞と組み合わせることで新たな治療法を創出できると考え、同社と共同研究契約を締結し、開発活動を行っております。・歯髄幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-102、対象疾患:腸管神経節細胞僅少症) 腸管神経節細胞僅少症は、腸管の蠕動運動を司る神経細胞の不足により腸閉塞症状を示す難病で、効果的な治療方法がいまだ確立されていません。歯髄幹細胞は腸管神経節細胞と同じ神経堤由来の細胞であるため、投与された歯髄幹細胞が不足している腸管神経節細胞を補う働きをすることにより、腸管蠕動運動が回復することが期待できます。当社は、当該疾患を対象とした再生医療等製品を開発するべく、持田製薬㈱と共同事業化契約を締結し、当社が保有する歯髄幹細胞と持田製薬㈱の消化器領域における知見と実績を組み合わせることで、新たな治療法の創出を目指してまいります。・歯髄幹細胞を活用した再生医療等製品開発のための大学との共同研究 当社は、歯髄幹細胞が神経堤由来の細胞であることに着目し、この特性に適性のある疾患を選定し、様々な大学と当該疾患に対する新たな治療法を創出するべく、共同研究契約を締結し、基礎研究を進めております。具体的には、昭和大学と骨関連疾患、岐阜薬科大学と眼関連疾患、東京都医学総合研究所・名古屋大学医学部附属病院・東京医科歯科大学と脳性麻痺、大分大学と末梢神経麻痺、名古屋大学と脊髄損傷、北海道大学・総合せき損センターと難治性骨折に関する共同研究を進めております。
FY2020|8,782 文字|出典 docID: S100J9BJ
3【事業の内容】(1) 事業環境 製薬企業における永続的成長の源泉は継続的な新薬の創出ですが、化学合成による低分子医薬品は既に多くの基本構造骨格が探索し尽くされ、有望な開発候補品が減少しております。その一方で、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源としたバイオ医薬品、特に抗体医薬品は、有効性や安全性などからも注目され、ブロックバスターとなるバイオ新薬がここ十年で急増しております。 また、既に先進国では、医療費増大による財政圧迫を抑制するために、特許が満了した新薬との同等性を示すだけで承認される安価なジェネリック医薬品の普及が進んでおります。さらに、ブロックバスターとなっているバイオ医薬品が続々と特許満了を迎える時期に至っており、バイオ医薬品のジェネリック医薬品であるバイオ後続品(バイオシミラー)は、今後世界的に大きな市場を形成することが見込まれております。しかしながら、バイオ後続品は、従来のジェネリック医薬品と異なり、新薬開発に近い要件が求められるため、従来のジェネリック医薬品の開発企業やバイオ医薬品開発経験がない製薬企業では、バイオ後続品の開発は非常に高い障壁となります。 一方で罹患者数の多い疾患に対する治療方法は、大手製薬企業を中心にあらゆる観点から研究開発が進められ、既に多様な医療が提供されております。このような環境であるため、近年の企業における創薬活動は次世代医療と呼ばれる再生医療技術を活用して、大衆疾患から希少疾患、難病といった分野に移行しております。 当社は、バイオ医薬品の研究開発に関する技術、知識及び経験を有しており、この優位性を活かし、バイオ後続品の研究開発を積極的に推進してまいりました。さらに、当社は2018年度より新たな事業ステージを指すGTS3.0「バイオで価値を創造するエンジニアリングカンパニー」を目標に掲げ、従来より手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的なターゲットと定め、これらの疾患に悩む患者様、そのご家族や介護者の方を含めた包括的なケアを目指して、新薬のみならず新たな医療の開発・提供に取り組んでおります。 (2) 当社のビジネスモデル 当社は、市場の拡大が見込まれるバイオ医薬品に着目し、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業の3事業を柱として、医薬品開発に取り組んでおります。開発リスクの少ないバイオ後続品事業で着実な収益を得て安定性を重視する一方、バイオ新薬並びに新規バイオ事業(再生医療/細胞治療)で革新的な技術や医療を創出し、経営の安定と成長を目指したビジネスモデルを展開していきます。 (3) 当社のビジネスモデルの特長 当社は、市場ニーズを勘案した医薬品開発を重視し、以下の2点を特長とした研究開発活動を行っております。① ハイブリッド事業体制 バイオ後続品は、有効性及び安全性が確認されていることから、比較的少ない経営資源で開発が可能である反面、市場規模などの点で制約を受けます。 一方、バイオ新薬及び新規バイオ事業では、従来の医薬品で治療の難しい疾患に対して新たな治療の可能性が期待できる反面、従来の新薬開発と同様に多くの経営資源を投入する必要があります。 そこで、当社は、バイオ後続品とバイオ新薬及び新規バイオ事業の長所・短所を考慮したパイプラインを機動的にマネジメントし、安定性の高いバイオ後続品事業で経営の安定を築きながら、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業に取り組むことで高い成長性を目指すハイブリッド型の事業モデルを構築しております。 ② バーチャル型事業開発及びプロジェクトマネージメント 医薬品開発に必要な要件は多岐にわたる一方、当社の経営資源には限りがあるため、全てを当社単独で担うことは難しく、開発のスピードにも限界が生じます。そこで、当社は、社外の受託機関を積極的に活用することにより、最適な開発体制を組み立て、各々の得意分野(原薬製造、非臨床試験など)を融合することで、開発力の強化と開発スピードの向上を図っております。また、当社は、研究開発段階早期から事業化を強く意識しており、相互にメリットが得られる提携先の探索を念頭に開発投資を行っております。 また、医薬品の研究開発活動を進めるには巨額の先行投資資金が必要になりますが、社外との提携関係を構築することで、各々が担当領域の開発費用を分担することとなり、開発リスクを分散することができます。 さらに、医薬品開発においては、ブランド力や信用も重視されることから、製薬企業や大学を含む公的研究機関などとの提携関係を積極的に構築しております。 (4) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針① バイオ後続品事業イ 開発の流れ(図表1、図表2) 当社は、開発研究の初期段階から、既存バイオ医薬品と同等又はそれを上回る品質の原薬の製造方法構築を目標とし、その原薬を用いた非臨床試験を実施いたします。具体的には、まず、バイオ医薬品の原薬製造の根幹である産生細胞株を自社で構築あるいは社外から導入いたします。その産生細胞株を用いて、製造受託企業において最適な原薬の製造方法及び原薬製造体制を構築します。その後、原薬製造方法の最適化、既存バイオ医薬品との品質的な比較、製剤における最適処方の検討、薬効及び安全性評価の非臨床試験を行い、臨床試験につなげてまいります。並行して、バイオ後続品を販売する製薬企業と共同開発の提携関係を構築いたします。 臨床開発は、主に製薬企業が担当し、厚生労働省にバイオ後続品の製造販売承認の申請を行います。当社は、製薬企業との共同研究開発において、臨床試験に使用する原薬などを製薬企業に販売するとともに、製薬企業に対して開発推進及び申請のための助言や支援を行います。さらに、上市後には、原薬などの製造を継続的に信頼できる製造受託企業に委託し、製薬企業に原薬を安定的に供給してまいります。 図表1 開発の流れと収益モデル(バイオ後続品事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ後続品開発における所要年数であります。 図表2 事業系統図(バイオ後続品事業) ロ 収益モデル(図表1) バイオ後続品事業の収益モデルとしては、研究開発段階及び上市後において、医薬品の主原料である原薬などを製薬企業に供給することによって得られる販売収益や開発の進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる収益と、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益があります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ後続品は、新薬の開発に比して経営資源が少なくて済み、また、有効性及び安全性が確認されているため、研究開発リスクは低いと言えます。このため、バイオ後続品については、想定される市場規模、収益性及び競合状況に重点を置いて開発品目の選定を行っております。 バイオ後続品の市場規模は、既存バイオ医薬品の市場規模にバイオ後続品の薬価比とバイオ後続品への置換率を乗じて求めることができます。このようにして求めたバイオ後続品の市場規模に、当社開発品の想定シェアを乗じることで、当社開発品の売上予測を行うことができます。 一方で、収益性については、バイオ後続品の想定薬価と製造原価をもとに、利益率を計算しております。 さらに、魅力あるバイオ後続品にはグローバルな競争の激化が見込まれることから、競合他社の数や質を把握し、それらも開発品目の選定における判断材料の要件としております。 ② バイオ新薬事業イ 開発の流れ(図表3、図表4) バイオ新薬の研究開発は、まず、医薬品シーズの探索を行う基礎研究から着手いたします。医薬品シーズを効率的に探索するため、自社での研究のみならず、大学や研究機関などとの共同研究を行っております。 次に、開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表3 開発の流れと収益モデル(バイオ新薬事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ新薬開発における所要年数であります。 図表4 事業系統図(バイオ新薬事業) ロ 収益モデル(図表3) バイオ新薬事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ新薬の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新薬の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、新薬の研究開発リスクは非常に高いことから、作用メカニズムなどから判断して対象疾患における現行治療法に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。医薬品としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 ③ 新規バイオ事業イ 開発の流れ(図表5、図表6) 新規バイオ事業の研究開発は、再生医療分野を中心として大学・研究機関などで研究されている最先端の医療技術、バイオベンチャー等の国内企業が所有するバイオ技術又は当社の抗体技術を状況に応じて有機的に組み合わせて、主に難治性疾患、希少疾患及び小児疾患に対する新しい治療法を創出するための業務提携や共同研究活動を行い、速やかな開発研究のため厚生労働省の先駆け審査指定制度等の制度利用も検討しつつ取り組んでおります。 開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業等へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業等が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業等への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表5 開発の流れと収益モデル(新規バイオ事業) 図表6 事業系統図(新規バイオ事業) ロ 収益モデル(図表5) 新規バイオ事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 新規バイオ事業の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新しい治療法の創出に係る技術や再生医療等製品の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、バイオ新薬事業と同様に研究開発リスクは非常に高いことから、対象疾患における現行治療法あるいは治療方法が存在しない疾患に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。治療方法としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 (5) 主力上市品・開発品 当社の事業基盤はバイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業の3事業です。その中で最も早く事業化可能で収益が望めるのはバイオ後続品です。バイオ後続品の申請・承認は、これまでの低分子化合物のジェネリック医薬品と大きく異なり、製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験を必要とし、新薬に近い要件が求められています。バイオ医薬品の開発経験を有する製薬企業でないと開発が非常に難しく、参入障壁が高いと言えます。一方、既存バイオ医薬品の薬価が高いことから、バイオ後続品では、低分子化合物のジェネリック医薬品よりも高い収益性が期待できます。そこで、当社は、バイオ新薬研究で培った技術、知識及びノウハウを最大限に活用し、科学的かつ論理的にバイオ後続品の開発を進めております。さらに、当社はバイオ後続品事業において複数の開発品目を開発することで、早期に収益の源泉を構築し、事業基盤を安定化する方針です。 また、バイオ新薬の分野では、有効性と安全性が期待できる抗体医薬品を主力開発品とし、さらに、既存の抗体医薬品と異なる分子を標的とすることで、特に希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品の開発を目指します。加えて新規バイオ事業の分野では、最先端の技術を所有する企業との共同開発や、大学等の研究成果を活用して革新的な治療法又は医療技術を創出するべく、主に再生医療分野を中心として事業展開を図ってまいります。 ① バイオ後続品事業・フィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん) 顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)は、白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進させるほか、骨髄からの好中球の放出を促進したり好中球機能を亢進する作用があります。 当社は、2007年10月より富士製薬工業㈱と共同開発の下、2012年11月21日に富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が国内での製造販売承認を取得し、2013年5月31日に上市されました。 現在、当社は富士製薬工業㈱に対して当該医薬品の原薬を安定的に供給し、富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が2ブランド2チャンネルで販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオ後続品の産生細胞株は韓国のDong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。 ・ダルベポエチンアルファバイオ後続品(開発番号:GBS-011、対象疾患領域:腎疾患) 当該医薬品は、腎性貧血治療薬であるエポエチンアルファの効果の持続性を高めた製品であり、当社は日本市場に向けて㈱三和化学研究所との共同開発の下、2019年9月20日に㈱三和化学研究所が国内での製造販売承認を取得し、2019年11月27日に上市されました。以後、製造販売については㈱三和化学研究所が単独で行い、当社は販売売上に応じて利益を配分されることになっております。 ・ペグフィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-010、対象疾患領域:がん) 当該先行品は、フィルグラスチムにPEG(ポリエチレングリコール)を修飾することで、投与回数を減らし効果の持続性を増すなど、高付加価値を付与した次世代型フィルグラスチムであります。当該医薬品の原料が既に日本で上市しているフィルグラスチムであることから、フィルグラスチムバイオ後続品を有する点で当社は他社に比してペグフィルグラスチムの開発を進める上で優位性があります。また、当社は当該バイオ後続品の原薬製造プロセスを既に確立し、先行品との同等性・同質性に関する良好なデータを得ておりますので、これを訴求データとして国内外の製薬企業との早期の提携を実現すべく、今後も引き続き上市に向けて鋭意取り組んでまいります。 ・ラニビズマブバイオ後続品(開発番号:GBS-007、対象疾患領域:眼疾患) 当該医薬品は、加齢黄斑変性症等の視力喪失の治療に向けた血管新生阻害剤であり、当社は、2015年11月に眼科領域に専門性の高い千寿製薬㈱と資本業務提携にかかる基本合意契約を締結し、2016年5月には当該バイオ後続品の上市を確実に達成させるべく共同事業化契約の締結に至りました。その後、2020年2月に第Ⅲ相臨床試験における最終患者の観察期間が終了し、今後も引き続き同社と協働の下、本製品の製造販売承認取得を目指してまいります。・アフリベルセプトバイオ後続品(開発番号:GBS-012、対象疾患:眼疾患) 当該医薬品は、加齢黄斑変性症等の視力喪失の治療に向けた血管新生阻害剤であり、当社は、2019年12月に癸巳化成㈱とアフリベルセプトバイオ後続品に関する事業化を目的とした共同開発契約を締結しました。今後は、当該バイオ後続品の高産生株を用いて原薬の製造プロセスを確立しつつ、この原薬を基に製剤開発、非臨床試験、臨床試験、製造販売承認取得、販売等で必要となる第三者提携先を探索し、当該バイオ後続品の事業化に向けた体制構築を進めてまいります。 ② バイオ新薬事業・抗RAMP2抗体(開発番号:GND-004、対象疾患領域:眼疾患、がん) 当社は、新規メカニズムに基づく新生血管形成を阻害する画期的な新規抗体医薬品の候補抗体の創出に成功し、国内及び国際特許出願を行いました。今後は、知的財産権の確保を図りながら当該医薬品候補抗体の研究開発を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。・新規抗体 2020年1月には、がん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約をそれぞれ締結いたしました。今後は共同研究を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。 ③ 新規バイオ事業・心臓内幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:JRM-001、対象疾患:小児先天性心疾患) 当社の子会社である㈱日本再生医療は、小児先天性心疾患を軸とした重篤な心疾患に対する新たな治療法を提供するため、心臓内幹細胞と呼ばれる心臓内に存在する多能性のある体性幹細胞を用いた世界初となる再生医療等製品の実用化を目指し研究開発を推進しております。生まれながらに心臓に何らかの異常をもつ小児先天性疾患は新生児100人に1人の割合で発症するとされ、当該開発品はこれらの症状を改善するために、手術で得られた心臓の切片から、高い自己複製能力を持ち、心臓にまつわる心筋細胞へ分化することができる心臓内幹細胞を培養し、これらを患者様本人へ投与することで心機能の改善を図るものであります。・歯髄幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-101、対象疾患:口唇口蓋裂) 口唇口蓋裂は、口腔の先天的な発生異常によって生じる疾患で、発生時に口蓋の片側が閉鎖しないことで裂が残る先天性疾患の一つです。歯髄幹細胞は、発生学的に神経堤細胞由来であり、優れた骨再生能力を有していることから、唇顎裂の再生医療には最適な細胞ソースであるため、当社はORTHOREBIRTH㈱が保有する綿状の人工骨充填材レボシスが歯髄幹細胞と組み合わせることで新たな治療法を創出できると考え、同社と共同研究契約を締結し、開発活動を行っております。・歯髄幹細胞を活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-102、対象疾患:腸管神経節細胞僅少症) 腸管神経節細胞僅少症は、腸管の蠕動運動を司る神経細胞の不足により腸閉塞症状を示す難病で、効果的な治療方法がいまだ確立されていません。歯髄幹細胞は腸管神経節細胞と同じ神経堤由来の細胞であるため、投与された歯髄幹細胞が不足している腸管神経節細胞を補う働きをすることにより、腸管蠕動運動が回復することが期待できます。当社は、当該疾患を対象とした再生医療等製品を開発するべく、持田製薬㈱と共同事業化契約を締結し、当社が保有する歯髄幹細胞と持田製薬㈱の消化器領域における知見と実績を組み合わせることで、新たな治療法の創出を目指してまいります。・歯髄幹細胞を活用した再生医療等製品開発のための大学との共同研究 当社は、歯髄幹細胞が神経堤由来の細胞であることに着目し、この特性に適性のある疾患を選定し、様々な大学と当該疾患に対する新たな治療法を創出するべく、共同研究契約を締結し、基礎研究を進めております。具体的には、昭和大学と骨関連疾患、岐阜薬科大学と眼関連疾患、東京都医学総合研究所・名古屋大学医学部附属病院・東京医科歯科大学と脳性麻痺、大分大学と末梢神経麻痺、名古屋大学と脊髄損傷に関する共同研究を進めております。
FY2019|8,731 文字|出典 docID: S100GCOB
3【事業の内容】(1) 事業環境 製薬企業における永続的成長の源泉は継続的な新薬の創出ですが、化学合成による低分子医薬品は既に多くの基本構造骨格が探索し尽くされ、有望な開発候補品が減少しております。その一方で、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源としたバイオ医薬品、特に抗体医薬品は、有効性や安全性などからも注目され、ブロックバスターとなるバイオ新薬がここ十年で急増しております。 また、既に先進国では、医療費増大による財政圧迫を抑制するために、特許が満了した新薬との同等性を示すだけで承認される安価なジェネリック医薬品の普及が進んでおります。さらに、ブロックバスターとなっているバイオ医薬品が続々と特許満了を迎える時期に至っており、バイオ医薬品のジェネリック医薬品であるバイオ後続品(バイオシミラー)は、今後世界的に大きな市場を形成することが見込まれております。しかしながら、バイオ後続品は、従来のジェネリック医薬品と異なり、新薬開発に近い要件が求められるため、従来のジェネリック医薬品の開発企業やバイオ医薬品開発経験がない製薬企業では、バイオ後続品の開発は非常に高い障壁となります。 一方で罹患者数の多い疾患に対する治療方法は、大手製薬企業を中心にあらゆる観点から研究開発が進められ、既に多様な医療が提供されております。このような環境であるため、近年の企業における創薬活動は次世代医療と呼ばれる再生医療技術を活用して、大衆疾患から希少疾患、難病といった分野に移行しております。 当社は、バイオ医薬品の研究開発に関する技術、知識及び経験を有しており、この優位性を活かし、バイオ後続品の研究開発を積極的に推進してまいりました。さらに、当社は2018年度より新たな事業ステージを指すGTS3.0「バイオで価値を創造するエンジニアリングカンパニー」を目標に掲げ、従来より手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的なターゲットと定め、これらの疾患に悩む患者様、そのご家族や介護者の方を含めた包括的なケアを目指して、新薬のみならず新たな医療の開発・提供に取り組んでおります。 (2) 当社のビジネスモデル 当社は、市場の拡大が見込まれるバイオ医薬品に着目し、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業の3事業を柱として、医薬品開発に取り組んでおります。開発リスクの少ないバイオ後続品事業で着実な収益を得て安定性を重視する一方、バイオ新薬並びに新規バイオ事業(再生医療/細胞治療)で革新的な技術や医療を創出し、経営の安定と成長を目指したビジネスモデルを展開してゆきます。 (3) 当社のビジネスモデルの特長 当社は、市場ニーズを勘案した医薬品開発を重視し、以下の2点を特長とした研究開発活動を行っております。① ハイブリット事業体制 バイオ後続品は、有効性及び安全性が確認されていることから、比較的少ない経営資源で開発が可能である反面、市場規模などの点で制約を受けます。 一方、バイオ新薬及び新規バイオ事業では、従来の医薬品で治療の難しい疾患に対して新たな治療の可能性が期待できる反面、従来の新薬開発と同様に多くの経営資源を投入する必要があります。 そこで、当社は、バイオ後続品とバイオ新薬及び新規バイオ事業の長所・短所を考慮したパイプラインを機動的にマネジメントし、安定性の高いバイオ後続品事業で経営の安定を築きながら、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業に取り組むことで高い成長性を目指すハイブリッド型の事業モデルを構築しております。 ② バーチャル型事業開発及びプロジェクトマネージメント 医薬品開発に必要な要件は多岐にわたる一方、当社の経営資源には限りがあるため、全てを当社単独で担うことは難しく、開発のスピードにも限界が生じます。そこで、当社は、社外の受託機関を積極的に活用することにより、最適な開発体制を組み立て、各々の得意分野(原薬製造、非臨床試験など)を融合することで、開発力の強化と開発スピードの向上を図っております。また、当社は、研究開発段階早期から事業化を強く意識しており、相互にメリットが得られる提携先の探索を念頭に開発投資を行っております。 また、医薬品の研究開発活動を進めるには巨額の先行投資資金が必要になりますが、社外との提携関係を構築することで、各々が担当領域の開発費用を分担することとなり、開発リスクを分散することができます。 さらに、医薬品開発においては、ブランド力や信用も重視されることから、製薬企業や大学を含む公的研究機関などとの提携関係を積極的に構築しております。 (4) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針① バイオ後続品事業イ 開発の流れ(図表1、図表2) 当社は、開発研究の初期段階から、既存バイオ医薬品と同等又はそれを上回る品質の原薬の製造方法構築を目標とし、その原薬を用いた非臨床試験を実施いたします。具体的には、まず、バイオ医薬品の原薬製造の根幹である産生細胞株を自社で構築あるいは社外から導入いたします。その産生細胞株を用いて、製造受託企業において最適な原薬の製造方法及び原薬製造体制を構築します。その後、原薬製造方法の最適化、既存バイオ医薬品との品質的な比較、製剤における最適処方の検討、薬効及び安全性評価の非臨床試験を行い、臨床試験につなげてまいります。並行して、バイオ後続品を販売する製薬企業と共同開発の提携関係を構築いたします。 臨床開発は、主に製薬企業が担当し、厚生労働省にバイオ後続品の製造販売承認の申請を行います。当社は、製薬企業との共同研究開発において、臨床試験に使用する原薬などを製薬企業に販売するとともに、製薬企業に対して開発推進及び申請のための助言や支援を行います。さらに、上市後には、原薬などの製造を継続的に信頼できる製造受託企業に委託し、製薬企業に原薬を安定的に供給してまいります。 図表1 開発の流れと収益モデル(バイオ後続品事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ後続品開発における所要年数であります。 図表2 事業系統図(バイオ後続品事業) ロ 収益モデル(図表1) バイオ後続品事業の収益モデルとしては、研究開発段階及び上市後において、医薬品の主原料である原薬などを製薬企業に供給することによって得られる販売収益や開発の進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる収益と、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益があります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ後続品は、新薬の開発に比して経営資源が少なくて済み、また、有効性及び安全性が確認されているため、研究開発リスクは低いと言えます。このため、バイオ後続品については、想定される市場規模、収益性及び競合状況に重点を置いて開発品目の選定を行っております。 バイオ後続品の市場規模は、既存バイオ医薬品の市場規模にバイオ後続品の薬価比とバイオ後続品への置換率を乗じて求めることができます。このようにして求めたバイオ後続品の市場規模に、当社開発品の想定シェアを乗じることで、当社開発品の売上予測を行うことができます。 一方で、収益性については、バイオ後続品の想定薬価と製造原価をもとに、利益率を計算しております。 さらに、魅力あるバイオ後続品にはグローバルな競争の激化が見込まれることから、競合他社の数や質を把握し、それらも開発品目の選定における判断材料の要件としております。 ② バイオ新薬事業イ 開発の流れ(図表3、図表4) バイオ新薬の研究開発は、まず、医薬品シーズの探索を行う基礎研究から着手いたします。医薬品シーズを効率的に探索するため、自社での研究のみならず、大学や研究機関などとの共同研究を行っております。 次に、開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表3 開発の流れと収益モデル(バイオ新薬事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ新薬開発における所要年数であります。 図表4 事業系統図(バイオ新薬事業) ロ 収益モデル(図表3) バイオ新薬事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ新薬の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新薬の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、新薬の研究開発リスクは非常に高いことから、作用メカニズムなどから判断して対象疾患における現行治療法に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。医薬品としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 ③ 新規バイオ事業イ 開発の流れ(図表5、図表6) 新規バイオ事業の研究開発は、再生医療分野を中心として大学・研究機関などで研究されている最先端の医療技術、バイオベンチャー等の国内企業が所有するバイオ技術又は当社の抗体技術を状況に応じて有機的に組み合わせて、主に難治性疾患、希少疾患及び小児疾患に対する新しい治療法を創出するための業務提携や共同研究活動を行い、速やかな開発研究のため厚生労働省の先駆け審査指定制度等の制度利用も検討しつつ取り組んでおります。 開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業等へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業等が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業等への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表5 開発の流れと収益モデル(新規バイオ事業) 図表6 事業系統図(新規バイオ事業) ロ 収益モデル(図表5) 新規バイオ事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 新規バイオ事業の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新しい治療法の創出に係る技術や再生医療等製品の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、バイオ新薬事業と同様に研究開発リスクは非常に高いことから、対象疾患における現行治療法あるいは治療方法が存在しない疾患に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。治療方法としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 (5) 主力上市品・開発品 当社の事業基盤はバイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業の3事業です。その中で最も早く事業化可能で収益が望めるのはバイオ後続品です。バイオ後続品の申請・承認は、これまでの低分子化合物のジェネリック医薬品と大きく異なり、製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験を必要とし、新薬に近い要件が求められています。バイオ医薬品の開発経験を有する製薬企業でないと開発が非常に難しく、参入障壁が高いと言えます。一方、既存バイオ医薬品の薬価が高いことから、バイオ後続品では、低分子化合物のジェネリック医薬品よりも高い収益性が期待できます。そこで、当社は、バイオ新薬研究で培った技術、知識及びノウハウを最大限に活用し、科学的かつ論理的にバイオ後続品の開発を進めております。さらに、当社はバイオ後続品事業において複数の開発品目を開発することで、早期に収益の源泉を構築し、事業基盤を安定化する方針です。 また、バイオ新薬の分野では、有効性と安全性が期待できる抗体医薬品を主力開発品とし、さらに、既存の抗体医薬品と異なる分子を標的とすることで、特に希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品の開発を目指します。加えて新規バイオ事業の分野では、最先端の技術を所有する企業との共同開発や、大学等の研究成果を活用して革新的な治療法又は医療技術を創出するべく、主に再生医療分野を中心として事業展開を図ってまいります。 ① バイオ後続品事業・フィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん) 顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)は、白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進させるほか、骨髄からの好中球の放出を促進したり好中球機能を亢進する作用があります。 当社は、2007年10月より富士製薬工業㈱と共同開発の下、2012年11月21日に富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が国内での製造販売承認を取得し、2013年5月31日に上市されました。 現在、当社は富士製薬工業㈱に対して当該医薬品の原薬を安定的に供給し、富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が2ブランド2チャンネルで販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオ後続品の産生細胞株は韓国のDong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。 ・ダルベポエチンアルファバイオ後続品(開発番号:GBS-011、対象疾患領域:腎疾患) 当該医薬品は、腎性貧血治療薬であるエポエチンアルファの効果の持続性を高めた製品であり、現在、当社は日本市場に向けて㈱三和化学研究所と共同開発を進めており、2018年9月に同社より厚生労働省へ当該医薬品の製造販売承認申請を行いました。 ・ラニビズマブバイオ後続品(開発番号:GBS-007、対象疾患領域:眼疾患) 当該医薬品は、加齢黄斑変性症等の視力喪失の治療に向けた血管新生阻害剤であり、当社は、2015年11月に眼科領域に専門性の高い千寿製薬㈱と資本業務提携にかかる基本合意契約を締結し、2016年5月には当該バイオ後続品の上市を確実に達成させるべく共同事業化契約の締結に至りました。その後、2019年2月には第Ⅲ相臨床試験における最終患者登録が完了し、製造販売承認申請に向けて着実に進捗しております。 ② バイオ新薬事業・抗RAMP2抗体(開発番号:GND-004、対象疾患領域:眼疾患、がん) 当社は、新規メカニズムに基づく新生血管形成を阻害する画期的な新規抗体医薬品の候補抗体の創出に成功し、国内及び国際特許出願を行いました。今後は、知的財産権の確保を図りながら当該医薬品候補抗体の研究開発を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指していきます。 ③ 新規バイオ事業・心臓内幹細胞(開発番号:JRM-001、対象疾患領域:小児の心機能改善) 心臓手術時に採取された自己心組織から分離・培養する事で得られる「心臓内幹細胞の細胞懸濁液製剤」を活用して、主に先天性心疾患を患う小児の心組織の再生及び心機能の改善を図るものであります。 当社は、2016年10月に当社と同じノーリツ鋼機グループの一員である㈱日本再生医療と資本業務提携を行い、同社が研究開発していた上記の心臓内幹細胞を用いた再生医療等製品の共同事業化を開始しております。当該品目は厚生労働省の先駆け審査指定制度の指定を受けているため、通常の承認審査よりも優先的な位置付けであり、この状況を活かしながら着実かつ速やかな上市に向けて研究開発に取り組んでまいります。 ・歯髄幹細胞 歯の内部に存在する歯髄と呼ばれる細胞を用いた幹細胞を利用して新しい医療技術や再生医療等製品の開発を行っている㈱セルテクノロジーを2019年4月より完全子会社化したことで、この歯髄幹細胞の特性と適性のある疾患を見極め、これまでにない画期的な医療技術や再生医療等製品の創出するべく研究開発に取り組んでおります。 ・顎裂治療薬(開発番号:GCT-101、対象疾患領域:口唇口蓋裂) 口唇口蓋裂は、口腔の先天的な発生異常によって生じる疾患で発生時に口蓋の片側が閉鎖しないことで裂が残る先天性疾患の一つです。この度、優れた骨再生能力を有し、唇顎裂の再生医療には最適な細胞ソースである歯髄幹細胞と、当社が資本業務提携を行っているORTHOREBIRTH㈱の保有する綿状の人工骨充填材レボシスを組み合わせて当該疾患の新しい治療法を創出するべく、2019年5月に同社と共同研究開発契約を締結し、両社協働の下、開発活動をスタートさせました。 《用語解説》 [GLP試験]厚生労働省令で定められた医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準がGLP(Good Laboratory Practiceの略)であり、これに従って行われる試験をGLP試験という。 [GMP]厚生労働省令で定められた医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準であり、Good Manufacturing Practiceの略。 [原薬]薬効成分の原料を原薬と呼び、原薬に添加剤を加え、製剤とすることにより、医薬品となる。 [抗体]体内に異物が侵入した際に、それを無毒化又は体外へ強制的に排出するために白血球細胞で作られるタンパク質であり、異物である抗原という特定の物質のみに結合する機能を持つ。 [好中球]白血球の一種で、炎症部に集合し、細菌、真菌などの異物を貪食、殺菌、分解し、生体を防御する。 [再生医療]ヒトの身体から細胞を取り出し、目的とする組織や臓器移植に活用する次世代の治療方法。患者本人の細胞(自家細胞)を活用する治療が中心であるが、本人以外から採取した細胞(他家細胞)を活用できれば、さらに多くの患者の治療が可能になるため、現在も広く研究が進められている。 [産生細胞]目的のタンパク質や抗体を大量に効率よく作り出す能力を持った(あるいは遺伝子工学によってそのような能力を持たせた)細胞のことを言い、それを大量に培養し、抽出・精製することを経て、バイオ医薬品が製造される。 [シーズ]医薬品の種(seeds)のこと。 [上市]医薬品として承認され、実際に市販されること。 [低分子医薬品]通常、化学合成で作製される分子量が数千以下の医薬品のこと。 [バイオ医薬品]バイオテクノロジーを応用した医薬品のこと。 [バイオ後続品]既に販売承認を与えられているバイオ医薬品と同等/同質の医薬品のこと。 [バイオ新薬]バイオ医薬品の新薬のこと。 [パイプライン]石油・天然ガスなどの流体を長距離にわたって輸送するためのパイプと同様に、絶え間なく医薬品の創出ができるように開発品が整っている様を指し、開発品のリストを研究開発パイプラインと呼ぶ。 [非臨床試験]ヒトで実施できない試験を動物で行うことを非臨床試験と言い、薬効を調べる薬理試験、薬の体内動態を調べる薬物動態試験及び毒性を調べる毒性試験からなる。[ファブレス型企業]自社で製造設備などを持たない企業のこと。 [ライセンスアウト]知的財産権の実施権や物品・技術の使用・販売権などを製薬企業等に許諾し、対価(契約金、開発マイルストンペイメントやロイヤリティなど)を得ること。 [ライセンスイン]知的財産権の実施権や物品・技術の使用・販売権などを譲り受け、対価(契約金、開発マイルストンペイメントやロイヤリティなど)を支払うこと。 [臨床試験]非臨床試験での有効性及び安全性の結果を踏まえ、ヒトでの医薬品の効果を調べる試験のこと。
FY2018|9,078 文字|出典 docID: S100DITI
3【事業の内容】(1) 事業環境 製薬企業における永続的成長の源泉は継続的な新薬の創出ですが、化学合成による低分子医薬品は既に多くの基本構造骨格が探索し尽くされ、有望な開発候補品が減少しております。その一方で、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源としたバイオ医薬品、特に抗体医薬品は、有効性や安全性などからも注目され、ブロックバスターとなるバイオ新薬がここ十年で急増しております。 また、既に先進国では、医療費増大による財政圧迫を抑制するために、特許が満了した新薬との同等性を示すだけで承認される安価なジェネリック医薬品の普及が進んでおります(図表1)。さらに、ブロックバスターとなっているバイオ医薬品が続々と特許満了を迎える時期に至っており、バイオ医薬品のジェネリック医薬品であるバイオ後続品(バイオシミラー)は、今後世界的に大きな市場を形成することが見込まれております。しかしながら、バイオ後続品は、従来のジェネリック医薬品と異なり、新薬開発に近い要件が求められるため、従来のジェネリック医薬品の開発企業やバイオ医薬品開発経験がない製薬企業では、バイオ後続品の開発は非常に高い障壁となります。 当社は、バイオ新薬の研究開発に関する技術、知識及び経験を有しており、この優位性を活かし、バイオ後続品の研究開発を積極的に推進することによって、有用な医薬品の普及と患者の経済的負担の軽減にも貢献してまいります。 また、当社は平成28年6月より、親会社であるノーリツ鋼機㈱を中心とする企業グループに属しており、同グループの創薬部門との共同研究開発を始めとして、大学等の研究機関に眠る有望な医療シーズの事業化を目指して、積極的に社外との共同研究開発を推進し、新たな将来の成長ドライバーとするべく主に再生医療分野における新規バイオ事業をスタートさせております。 図表1 医療先進国におけるジェネリック医薬品の使用状況 出典:平成28年度ロードマップ検証検討事業報告書概要(厚生労働省)© 2018 IQVIA.,MIDAS,Market Segmentation,MAT Sep 2016,RX only(PRESCRIPTION BOUND)他、無断転載禁止 (2) 当社のビジネスモデル(図表2) 当社は、市場の拡大が見込まれるバイオ医薬品に着目し、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業の3事業を柱として、医薬品開発に取り組んでおります。バイオ後続品事業は安定性を重視する一方、バイオ新薬並びに新規バイオ事業は成長性を重視し、経営の安定と成長を目指したビジネスモデルを展開してゆきます。 例えば、当社は大学などとのバイオ医薬品の共同研究などからターゲットを選定し、開発ノウハウを活かして開発計画を立案した上で、社外の最適な試験受託企業や製造受託企業を選定し積極的に活用することで、複数品目の開発を平行してスピーディーに進めており、これらの活動により得られた成果を、製薬企業にライセンスアウトあるいは製品販売を行うことで収益獲得につなげております。 図表2 当社のビジネスモデル (3) 当社のビジネスモデルの特長 当社は、市場ニーズを勘案した医薬品開発を重視し、以下の5点を特長とした研究開発活動を行っております。① バイオ医薬品に着目 バイオ医薬品は、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源とした医薬品であり、既存の低分子医薬品では達成できない薬理作用が注目されております。また、バイオ医薬品の市場規模は、2008年に1,000億ドルを超えて世界の医薬品市場の約15%を占めるに至っておりましたが、その後も市場は拡大し、2022年には3,300億ドルを超え、その比率は約30%まで成長するといわれております。 このように急速に拡大する市場ニーズに応えるため、当社は、バイオ医薬品に着目した研究開発活動を行っております。 ② バイオ後続品事業とバイオ新薬事業 バイオ後続品は、有効性及び安全性が確認されていることから、バイオ新薬と比較して少ない経営資源で開発が可能である反面、市場規模などの点で制約を受けます。 一方、バイオ新薬では、従来の医薬品で治療の難しい疾患に対して新たな治療の可能性が期待できる反面、従来の新薬開発と同様に多くの経営資源を投入する必要があります。 そこで、当社は、バイオ後続品とバイオ新薬の長所・短所を考慮したパイプラインを機動的にマネジメントし、安定性の高いバイオ後続品事業で経営の安定を築きながら、バイオ新薬事業に取り組むことで高い成長性を目指すハイブリッド型の事業モデルを構築しております。③ 新規バイオ事業の立ち上げ 当社は、バイオ医薬品(バイオ後続品及びバイオ新薬)事業に加えて、成長性の高い事業を拡充する目的で、新たに再生医療分野を中心とした新規バイオ事業の立ち上げにも注力しております。将来的には再生医療分野等含めた事業を展開してまいります。 ④ 複数の開発品のパイプライン 当社は、バイオ後続品とバイオ新薬それぞれの事業領域で複数の開発品を揃えたパイプラインを保有し、さらには、将来的に新規バイオ事業を追加することで、研究開発リスクを分散し、かつ収益機会の拡大を図っております。 ⑤ 社外との提携関係の構築 医薬品開発に必要な要件は多岐にわたる一方、当社の経営資源には限りがあるため、全てを当社単独で担うことは難しく、開発のスピードにも限界が生じます。そこで、当社は、社外の受託機関を積極的に活用することにより、最適な開発体制を組み立て、各々の得意分野(原薬製造、非臨床試験など)を融合することで、開発力の強化と開発スピードの向上を図っております。また、当社は、研究開発段階早期から事業化を強く意識しており、相互にメリットが得られる提携先の探索を念頭に開発投資を行っております。 また、医薬品の研究開発活動を進めるには巨額の先行投資資金が必要になりますが、社外との提携関係を構築することで、各々が担当領域の開発費用を分担することとなり、開発リスクを分散することができます。 さらに、医薬品開発においては、ブランド力や信用も重視されることから、製薬企業や大学を含む公的研究機関などとの提携関係を積極的に構築しております。 (4) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針① バイオ後続品事業イ 開発の流れ(図表3、図表4) 当社は、開発研究の初期段階から、既存バイオ医薬品と同等又はそれを上回る品質の原薬の製造方法構築を目標とし、その原薬を用いた非臨床試験を実施いたします。具体的には、まず、バイオ医薬品の原薬製造の根幹である産生細胞株を自社で構築あるいは社外から導入いたします。その産生細胞株を用いて、製造受託企業において最適な原薬の製造方法及び原薬製造体制を構築します。その後、原薬製造方法の最適化、既存バイオ医薬品との品質的な比較、製剤における最適処方の検討、薬効及び安全性評価の非臨床試験を行い、臨床試験につなげてまいります。並行して、バイオ後続品を販売する製薬企業と共同開発の提携関係を構築いたします。 臨床開発は、主に製薬企業が担当し、厚生労働省にバイオ後続品の製造販売承認の申請を行います。当社は、製薬企業との共同研究開発において、臨床試験に使用する原薬などを製薬企業に販売するとともに、製薬企業に対して開発推進及び申請のための助言や支援を行います。さらに、上市後には、原薬などの製造を継続的に信頼できる製造受託企業に委託し、製薬企業に原薬を安定的に供給してまいります。 図表3 開発の流れと収益モデル(バイオ後続品事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ後続品開発における所要年数であります。図表4 事業系統図(バイオ後続品事業) ロ 収益モデル(図表3) バイオ後続品事業の収益モデルとしては、研究開発段階及び上市後において、医薬品の主原料である原薬などを製薬企業に供給することによって得られる販売収益や開発の進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる収益と、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益があります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ後続品は、新薬の開発に比して経営資源が少なくて済み、また、有効性及び安全性が確認されているため、研究開発リスクは低いと言えます。このため、バイオ後続品については、想定される市場規模、収益性及び競合状況に重点を置いて開発品目の選定を行っております。 バイオ後続品の市場規模は、既存バイオ医薬品の市場規模にバイオ後続品の薬価比とバイオ後続品への置換率を乗じて求めることができます。このようにして求めたバイオ後続品の市場規模に、当社開発品の想定シェアを乗じることで、当社開発品の売上予測を行うことができます。 一方で、収益性については、バイオ後続品の想定薬価と製造原価をもとに、利益率を計算しております。 さらに、魅力あるバイオ後続品にはグローバルな競争の激化が見込まれることから、競合他社の数や質を把握し、それらも開発品目の選定における判断材料の要件としております。 ② バイオ新薬事業イ 開発の流れ(図表5、図表6) バイオ新薬の研究開発は、まず、医薬品シーズの探索を行う基礎研究から着手いたします。医薬品シーズを効率的に探索するため、自社での研究のみならず、大学や研究機関などとの共同研究を行っております。 次に、開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表5 開発の流れと収益モデル(バイオ新薬事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ新薬開発における所要年数であります。 図表6 事業系統図(バイオ新薬事業) ロ 収益モデル(図表5) バイオ新薬事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ新薬の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新薬の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、新薬の研究開発リスクは非常に高いことから、作用メカニズムなどから判断して対象疾患における現行治療法に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。医薬品としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 ③ 新規バイオ事業イ 開発の流れ(図表7、図表8) 新規バイオ事業の研究開発は、再生医療分野を中心として大学・研究機関などで研究されている最先端の医療技術、バイオベンチャー等の国内企業が所有するバイオ技術又は当社の抗体技術を状況に応じて有機的に組み合わせて、主に難治性疾患や希少疾患に対する新しい治療法を創出するための業務提携や共同研究活動を行っております。 また、新規バイオ事業における開発品目は、革新的な医薬品等を創出するという目的上、厚生労働省の先駆け審査指定制度の方針と合致しており、当該制度の指定品目とされれば承認審査過程において優先的な取り扱いとなるため、当社においても常に制度利用を検討し、速やかな研究開発を心がけております。 開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業等へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業等が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業等への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表7 開発の流れと収益モデル(新規バイオ事業) 図表8 事業系統図(新規バイオ事業) (5) 主力上市品・開発品 当社の事業基盤はバイオ後続品事業、バイオ新薬事業及び新規バイオ事業の3事業です。その中で最も早く事業化可能で収益が望めるのはバイオ後続品です。バイオ後続品の申請・承認は、これまでの低分子化合物のジェネリック医薬品と大きく異なり、製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験を必要とし、新薬に近い要件が求められています。バイオ医薬品の開発経験を有する製薬企業でないと開発が非常に難しく、参入障壁が高いと言えます。一方、既存バイオ医薬品の薬価が高いことから、バイオ後続品では、低分子化合物のジェネリック医薬品よりも高い収益性が期待できます。そこで、当社は、バイオ新薬研究で培った技術、知識及びノウハウを最大限に活用し、科学的かつ論理的にバイオ後続品の開発を進めております。さらに、当社はバイオ後続品事業において複数の開発品目を開発することで、早期に収益の源泉を構築し、事業基盤を安定化する方針です。 また、バイオ新薬の分野では、有効性と安全性が期待できる抗体医薬品を主力開発品とし、さらに、既存の抗体医薬品と異なる分子を標的とすることで、特に希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品の開発を目指します。加えて新規バイオ事業の分野では、最先端の技術を所有する企業との共同開発や、大学等の研究成果を活用して革新的な治療法又は医療技術を創出するべく、主に再生医療分野を中心として事業展開を図ってまいります。 ① バイオ後続品事業・フィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん) 顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)は、白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進させるほか、骨髄からの好中球の放出を促進したり好中球機能を亢進する作用があります。 当社は、平成19年10月より富士製薬工業㈱と共同開発の下、日本のバイオ後続品のガイドラインに沿った、日本で最初のバイオ後続品の製造販売承認を取得すべくフィルグラスチムバイオ後続品の開発を進めました。平成24年11月21日に富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が国内での製造販売承認を取得し、平成25年5月31日に上市されました。 現在、当社は富士製薬工業㈱に対して当該医薬品の原薬を安定的に供給し、富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が2ブランド2チャンネルで販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオ後続品の産生細胞株は韓国のDong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。 ② バイオ新薬事業・抗α9インテグリン抗体(開発番号:GND-001、対象疾患領域:免疫疾患、がん) インテグリン分子群は、免疫疾患、骨疾患、がん転移などに関与しているタンパク質群であり、インテグリン分子群に属するα9インテグリンが骨のオステオポンチンと結合すると、様々な炎症が惹起されるなどの事実が明らかにされております。 これらの知見から、α9インテグリンとオステオポンチンとの結合を阻害することができれば、免疫疾患の治療に有効であると考えられます。さらに、がんは対象疾患として大きな目標であることから、引き続き研究を進める考えでおります。 当社は、当時北海道大学遺伝子病制御研究所の教授であり、現客員教授の上出利光氏との共同研究から、α9インテグリンとオステオポンチンとの結合を阻害するα9インテグリンに対する抗体を既に作製し、本抗体の独占的開発、製造及び販売権を科研製薬㈱に譲渡し、その対価として平成19年7月に契約一時金を受領しております。当社は今後、開発の進捗に応じてマイルストン契約金を、上市後にはロイヤリティを受領する予定であります。 ③ 新規バイオ事業・心臓内幹細胞(対象疾患領域:小児の心機能改善) 心臓手術時に採取された自己心組織から分離・培養する事で得られる「心臓内幹細胞の細胞懸濁液製剤」を活用して、主に先天性心疾患を患う小児の心組織の再生及び心機能の改善を図るものであります。 当社は、平成28年10月に当社と同じノーリツ鋼機グループの一員である㈱日本再生医療と資本業務提携を行い、同社が研究開発していた上記の心臓内幹細胞を用いた再生医療等製品の共同事業化を開始しております。当該品目は厚生労働省の先駆け審査指定制度の指定を受けているため、通常の承認審査よりも優先的な位置付けであり、この状況を活かしながら着実かつ速やかな上市に向けて研究開発に取り組んでまいります。 《用語解説》 [α9インテグリン]細胞接着分子であるインテグリン分子群の一つで、炎症細胞の働きに関わると言われている。 [GLP試験]厚生労働省令で定められた医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準がGLP(Good Laboratory Practiceの略)であり、これに従って行われる試験をGLP試験という。 [GMP]厚生労働省令で定められた医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準であり、Good Manufacturing Practiceの略。 [オステオポンチン]骨基質に存在するタンパク質で、インテグリンとの結合を介して、骨系細胞の分化誘導や機能発現に重要な役割を果たす。 [基礎研究]病気の要因を特定する研究やそれを治療できる医薬品の種を探し出す研究のこと。 [原薬]薬効成分の原料を原薬と呼び、原薬に添加剤を加え、製剤とすることにより、医薬品となる。 [亢進]生化学や薬学分野において、分子の機能などが「高まる」ことの意味で使われる。 [抗体]体内に異物が侵入した際に、それを無毒化又は体外へ強制的に排出するために白血球細胞で作られるタンパク質であり、異物である抗原という特定の物質のみに結合する機能を持つ。 [好中球]白血球の一種で、炎症部に集合し、細菌、真菌などの異物を貪食、殺菌、分解し、生体を防御する。 [再生医療]ヒトの身体から細胞を取り出し、目的とする組織や臓器移植に活用する次世代の治療方法。患者本人の細胞(自家細胞)を活用する治療が中心であるが、本人以外から採取した細胞(他家細胞)を活用できれば、さらに多くの患者の治療が可能になるため、現在も広く研究が進められている。 [産生細胞]目的のタンパク質や抗体を大量に効率よく作り出す能力を持った(あるいは遺伝子工学によってそのような能力を持たせた)細胞のことを言い、それを大量に培養し、抽出・精製することを経て、バイオ医薬品が製造される。 [シーズ]医薬品の種(seeds)のこと。 [ジェネリック医薬品]特許期間が満了になった医薬品と同じ成分の医薬品は、動物やヒトでの薬効や毒性はその成分で検証されているので、簡単な品質試験と血中濃度での同等性を証明することで承認される。このような医薬品をジェネリック医薬品と呼ぶ。 [上市]医薬品として承認され、実際に市販されること。 [ダルベポエチンアルファ]持続型赤血球造血刺激因子製剤であり、保存期慢性腎臓病から透析期までの腎性貧血患者に対して、腎性貧血の症状を改善する目的で使用されている。 [低分子医薬品]通常、化学合成で作製される分子量が数千以下の医薬品のこと。 [バイオ医薬品]バイオテクノロジーを応用した医薬品のこと。 [バイオ後続品]既に販売承認を与えられているバイオ医薬品と同等/同質の医薬品のこと。 [バイオ新薬]バイオ医薬品の新薬のこと。 [パイプライン]石油・天然ガスなどの流体を長距離にわたって輸送するためのパイプと同様に、絶え間なく医薬品の創出ができるように開発品が整っている様を指し、開発品のリストを研究開発パイプラインと呼ぶ。 [非臨床試験]ヒトで実施できない試験を動物で行うことを非臨床試験と言い、薬効を調べる薬理試験、薬の体内動態を調べる薬物動態試験及び毒性を調べる毒性試験からなる。 [ファブレス型企業]自社で製造設備などを持たない企業のこと。 [ブロックバスター]従来の治療体系を超える薬効を持ち、全世界での年間売上が10億ドルを超える新薬に対して用いられることが多い。 [ユーザビリティ]製品の最終ユーザー(医療現場や患者)における使い勝手のこと。 [ライセンスアウト]知的財産権の実施権や物品・技術の使用・販売権などを製薬企業等に許諾し、対価(契約金、開発マイルストンペイメントやロイヤリティなど)を得ること。 [ライセンスイン]知的財産権の実施権や物品・技術の使用・販売権などを譲り受け、対価(契約金、開発マイルストンペイメントやロイヤリティなど)を支払うこと。 [臨床試験]非臨床試験での有効性及び安全性の結果を踏まえ、ヒトでの医薬品の効果を調べる試験のこと。
FY2017|8,035 文字|出典 docID: S100AQSV
3【事業の内容】(1) 事業環境 製薬企業における永続的成長の源泉は継続的な新薬の創出ですが、化学合成による低分子医薬品は既に多くの基本構造骨格が探索し尽くされ、有望な開発候補品が減少しております。その一方で、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源としたバイオ医薬品、特に抗体医薬品は、有効性や安全性などからも注目され、ブロックバスターとなるバイオ新薬がここ十年で急増しております。 当社は、このような環境の下、「大学発ベンチャーであることの公共性に準じ、利益の追求に留まらず、希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品開発により、人々のクオリティ・オブ・ライフを向上させ、社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、バイオ新薬の開発を行っております。 また、既に先進国では、医療費増大による財政圧迫を抑制するために、特許が満了した新薬との同等性を示すだけで承認される安価なジェネリック医薬品の普及が進んでおります(図表1)。さらに、ブロックバスターとなっているバイオ医薬品が続々と特許満了を迎える時期に至っており、バイオ医薬品のジェネリック医薬品であるバイオ後続品(バイオシミラー)は、今後世界的に大きな市場を形成することが見込まれております。しかしながら、バイオ後続品は、従来のジェネリック医薬品と異なり、新薬開発に近い要件が求められるため、従来のジェネリック医薬品の開発企業やバイオ医薬品開発経験がない製薬企業では、バイオ後続品の開発は非常に高い障壁となります。 当社は、バイオ新薬の研究開発に関する技術、知識及び経験を有しており、この優位性を活かし、バイオ後続品の研究開発を積極的に推進することによって、有用な医薬品の普及と患者の経済的負担の軽減にも貢献してまいります。 また、当社は平成28年6月より、親会社であるノーリツ鋼機㈱を中心とする企業グループに属しており、同グループの医療事業を担う一員としてバイオ医薬品の研究開発活動を加速させるとともに、そのネットワークを生かして新たなバイオ事業分野への進出も開始しております。 図表1 医療先進国におけるジェネリック医薬品の使用状況 出典:平成27年度ロードマップ検証検討事業報告書概要(厚生労働省) (2) 当社のビジネスモデル(図表2) 当社は、市場の拡大が見込まれるバイオ医薬品に着目し、バイオ後続品事業及びバイオ新薬事業の2事業を柱として、医薬品開発に取り組んでおります。バイオ後続品事業は安定性を重視する一方、バイオ新薬事業は成長性を重視し、この両面から経営の安定と成長を目指すビジネスモデルであります。 さらに、当社は大学などとのバイオ医薬品の共同研究などからターゲットを選定し、開発ノウハウを活かして開発計画を立案した上で、社外の最適な試験受託企業や製造受託企業を選定し積極的に活用することで、複数品目の開発を平行してスピーディーに進めております。 当社は、これらの活動により得られた成果を、製薬企業にライセンスアウトあるいは製品販売を行うことで収益獲得につなげております。 図表2 当社のビジネスモデル (3) 当社のビジネスモデルの特長 当社は、市場ニーズを勘案した医薬品開発を重視し、以下の5点を特長とした研究開発活動を行っております。① バイオ医薬品に着目 バイオ医薬品は、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源とした医薬品であり、既存の低分子医薬品では達成できない薬理作用が注目されております。また、バイオ医薬品の市場規模は、2008年に1,000億ドルを超えて世界の医薬品市場の約15%を占めるに至っておりましたが、その後も市場は拡大し、2022年には3,300億ドルを超え、その比率は約30%まで成長するといわれております。 このように急速に拡大する市場ニーズに応えるため、当社は、バイオ医薬品に着目した研究開発活動を行っております。 ② バイオ後続品事業とバイオ新薬事業 バイオ後続品は、有効性及び安全性が確認されていることから、バイオ新薬と比較して少ない経営資源で開発が可能である反面、市場規模などの点で制約を受けます。 一方、バイオ新薬では、従来の医薬品で治療の難しい疾患に対して新たな治療の可能性が期待できる反面、従来の新薬開発と同様に多くの経営資源を投入する必要があります。 そこで、当社は、バイオ後続品とバイオ新薬の長所・短所を考慮したパイプラインを機動的にマネジメントし、安定性の高いバイオ後続品事業で経営の安定を築きながら、バイオ新薬事業に取り組むことで高い成長性を目指すハイブリッド型の事業モデルを構築しております。③ 新規バイオ事業の立ち上げ 当社は、バイオ医薬品(バイオ後続品及びバイオ新薬)事業に加えて、成長性の高い事業を拡充する目的で、新たに再生医療分野を中心とした新規バイオ事業の立ち上げにも注力しております。将来的には再生医療分野等含めたバイオ事業を当社のビジネスモデルの一つとして構築してまいります。 ④ 複数の開発品のパイプライン 当社は、バイオ後続品とバイオ新薬それぞれの事業領域で複数の開発品を揃えたパイプラインを保有し、さらには、将来的に新規バイオ事業を追加することで、研究開発リスクを分散し、かつ収益機会の拡大を図っております。 ⑤ 社外との提携関係の構築 医薬品開発に必要な要件は多岐にわたる一方、当社の経営資源には限りがあるため、全てを当社単独で担うことは難しく、開発のスピードにも限界が生じます。そこで、当社は、社外の受託機関を積極的に活用することにより、最適な開発体制を組み立て、各々の得意分野(原薬製造、非臨床試験など)を融合することで、開発力の強化と開発スピードの向上を図っております。また、当社は、研究開発段階早期から事業化を強く意識しており、闇雲に研究開発投資を行うのではなく、相互にメリットが得られる提携先の探索を念頭に進めております。 また、医薬品の研究開発活動を進めるには巨額の先行投資資金が必要になりますが、社外との提携関係を構築することで、各々が担当領域の開発費用を分担することとなり、開発リスクを分散することができます。 さらに、医薬品開発においては、ブランド力や信用も重視されることから、製薬企業や大学を含む公的研究機関などとの提携関係を積極的に構築しております。 (4) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針① バイオ後続品事業イ 開発の流れ(図表3、図表4) 当社は、開発研究の初期段階から、既存バイオ医薬品と同等又はそれを上回る品質の原薬の製造方法構築を目標とし、その原薬を用いた非臨床試験を実施いたします。具体的には、まず、バイオ医薬品の原薬製造の根幹である産生細胞株を自社で構築あるいは社外から導入いたします。その産生細胞株を用いて、製造受託企業において最適な原薬の製造方法及び原薬製造体制を構築します。その後、原薬製造方法の最適化、既存バイオ医薬品との品質的な比較、製剤における最適処方の検討、薬効及び安全性評価の非臨床試験を同時並行で進め、臨床試験につなげてまいります。なお、これらの開発過程における分析・評価については、試験受託企業において行います。並行して、バイオ後続品を販売する製薬企業と共同開発の提携関係を構築いたします。 臨床開発は、主に製薬企業が担当し、厚生労働省にバイオ後続品の製造販売承認の申請を行います。当社は、製薬企業との共同研究開発において、臨床試験に使用する原薬などを製薬企業に販売するとともに、製薬企業に対して開発推進及び申請のための助言や支援を行います。さらに、上市後には、原薬などの製造を継続的に信頼できる製造受託企業に委託し、製薬企業に原薬を安定的に販売してまいります。 図表3 開発の流れと収益モデル(バイオ後続品事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ後続品開発における所要年数であります。図表4 事業系統図(バイオ後続品事業) ロ 収益モデル(図表3) バイオ後続品事業の収益モデルとしては、研究開発段階及び上市後において、医薬品の主原料である原薬などを製薬企業に供給することによって得られる販売収益や開発の進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる収益と、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益があります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ後続品は、新薬の開発に比して経営資源が少なくて済み、また、有効性及び安全性が確認されているため、研究開発リスクは低いと言えます。このため、バイオ後続品については、想定される市場規模、収益性及び競合状況に重点を置いて開発品目の選定を行っております。 バイオ後続品の市場規模は、既存バイオ医薬品の市場規模にバイオ後続品の薬価比とバイオ後続品への置換率を乗じて求めることができます。このようにして求めたバイオ後続品の市場規模に、当社開発品の想定シェアを乗じることで、当社開発品の売上予測を行うことができます。 一方で、収益性については、バイオ後続品の想定薬価と製造原価をもとに、利益率を計算しております。 さらに、魅力あるバイオ後続品にはグローバルな競争の激化が見込まれることから、競合他社の数や質を把握し、それらも開発品目の選定における判断材料の要件としております。 ② バイオ新薬事業イ 開発の流れ(図表5、図表6) バイオ新薬の研究開発は、まず、医薬品シーズの探索を行う基礎研究から着手いたします。医薬品シーズを効率的に探索するため、自社での研究のみならず、大学や研究機関などとの共同研究を行っております。 次に、開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表5 開発の流れと収益モデル(バイオ新薬事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ新薬開発における所要年数であります。 図表6 事業系統図(バイオ新薬事業) ロ 収益モデル(図表5) バイオ新薬事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ新薬の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新薬の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、新薬の研究開発リスクは非常に高いことから、作用メカニズムなどから判断して対象疾患における現行治療法に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。医薬品としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 (5) 主力上市品・開発品 当社の事業基盤はバイオ医薬品(バイオ新薬及びバイオ後続品)の研究開発です。その中で最も早く事業化可能で収益が望めるのはバイオ後続品です。バイオ後続品の申請・承認は、これまでの低分子化合物のジェネリック医薬品と大きく異なり、製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験を必要とし、新薬に近い要件が求められています。バイオ医薬品の開発経験を有する製薬企業でないと開発が非常に難しく、参入障壁が高いと言えます。一方、既存バイオ医薬品の薬価が高いことから、バイオ後続品では、低分子化合物のジェネリック医薬品よりも高い収益性が期待できます。そこで、当社は、バイオ新薬研究で培った技術、知識及びノウハウを最大限に活用し、科学的かつ論理的にバイオ後続品の開発を進めております。さらに、当社はバイオ後続品事業において複数の開発品目を開発することで、早期に収益の源泉を構築し、事業基盤を安定化する方針です。 また、バイオ新薬の分野では、有効性と安全性が期待できる抗体医薬品を主力開発品とし、さらに、既存の抗体医薬品と異なる分子を標的とすることで、特に希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品の開発を目指します。 ① バイオ後続品事業・フィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん) 顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)は、白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進させるほか、骨髄からの好中球の放出を促進したり好中球機能を亢進する作用があります。 当社は、平成19年10月より富士製薬工業㈱と共同開発の下、日本のバイオ後続品のガイドラインに沿った、日本で最初のバイオ後続品の製造販売承認を取得すべくフィルグラスチムバイオ後続品の開発を進めました。平成24年11月21日に富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が国内での製造販売承認を取得し、平成25年5月31日に上市されました。 現在、当社は富士製薬工業㈱に対して当該医薬品の原薬を安定的に供給し、富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が2ブランド2チャンネルで販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオ後続品の産生細胞株は韓国のDong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。 ② バイオ新薬事業・抗α9インテグリン抗体(開発番号:GND-001、対象疾患領域:免疫疾患、がん) インテグリン分子群は、免疫疾患、骨疾患、がん転移などに関与しているタンパク質群であり、インテグリン分子群に属するα9インテグリンが骨のオステオポンチンと結合すると、様々な炎症が惹起されるなどの事実が明らかにされております。 これらの知見から、α9インテグリンとオステオポンチンとの結合を阻害することができれば、免疫疾患の治療に有効であると考えられます。さらに、がんは対象疾患として大きな目標であることから、引き続き研究を進める考えでおります。 当社は、北海道大学遺伝子病制御研究所の上出利光教授との共同研究から、α9インテグリンとオステオポンチンとの結合を阻害するα9インテグリンに対する抗体を既に作製し、本抗体の独占的開発、製造及び販売権を科研製薬㈱に譲渡し、その対価として平成19年7月に契約一時金を受領しております。当社は今後、開発の進捗に応じてマイルストン契約金を、上市後にはロイヤリティを受領する予定であります。 《用語解説》 [α9インテグリン]細胞接着分子であるインテグリン分子群の一つで、炎症細胞の働きに関わると言われている。 [GLP試験]厚生労働省令で定められた医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準がGLP(Good Laboratory Practiceの略)であり、これに従って行われる試験をGLP試験という。 [GMP]厚生労働省令で定められた医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準であり、Good Manufacturing Practiceの略。 [オステオポンチン]骨基質に存在するタンパク質で、インテグリンとの結合を介して、骨系細胞の分化誘導や機能発現に重要な役割を果たす。 [基礎研究]病気の要因を特定する研究やそれを治療できる医薬品の種を探し出す研究のこと。 [原薬]薬効成分の原料を原薬と呼び、原薬に添加剤を加え、製剤とすることにより、医薬品となる。 [亢進]生化学や薬学分野において、分子の機能などが「高まる」ことの意味で使われる。 [抗体]体内に異物が侵入した際に、それを無毒化又は体外へ強制的に排出するために白血球細胞で作られるタンパク質であり、異物である抗原という特定の物質のみに結合する機能を持つ。 [好中球]白血球の一種で、炎症部に集合し、細菌、真菌などの異物を貪食、殺菌、分解し、生体を防御する。 [再生医療]ヒトの身体から細胞を取り出し、目的とする組織や臓器移植に活用する次世代の治療方法。患者本人の細胞(自家細胞)を活用する治療が中心であるが、本人以外から採取した細胞(他家細胞)を活用できれば、さらに多くの患者の治療が可能になるため、現在も広く研究が進められている。 [産生細胞]目的のタンパク質や抗体を大量に効率よく作り出す能力を持った(あるいは遺伝子工学によってそのような能力を持たせた)細胞のことを言い、それを大量に培養し、抽出・精製することを経て、バイオ医薬品が製造される。 [シーズ]医薬品の種(seeds)のこと。 [ジェネリック医薬品]特許期間が満了になった医薬品と同じ成分の医薬品は、動物やヒトでの薬効や毒性はその成分で検証されているので、簡単な品質試験と血中濃度での同等性を証明することで承認される。このような医薬品をジェネリック医薬品と呼ぶ。 [上市]医薬品として承認され、実際に市販されること。 [ダルベポエチンアルファ]持続型赤血球造血刺激因子製剤であり、保存期慢性腎臓病から透析期までの腎性貧血患者に対して、腎性貧血の症状を改善する目的で使用されている。 [低分子医薬品]通常、化学合成で作製される分子量が数千以下の医薬品のこと。 [バイオ医薬品]バイオテクノロジーを応用した医薬品のこと。 [バイオ後続品]既に販売承認を与えられているバイオ医薬品と同等/同質の医薬品のこと。 [バイオ新薬]バイオ医薬品の新薬のこと。 [パイプライン]石油・天然ガスなどの流体を長距離にわたって輸送するためのパイプと同様に、絶え間なく医薬品の創出ができるように開発品が整っている様を指し、開発品のリストを研究開発パイプラインと呼ぶ。 [非臨床試験]ヒトで実施できない試験を動物で行うことを非臨床試験と言い、薬効を調べる薬理試験、薬の体内動態を調べる薬物動態試験及び毒性を調べる毒性試験からなる。 [ファブレス型企業]自社で製造設備などを持たない企業のこと。 [ブロックバスター]従来の治療体系を超える薬効を持ち、全世界での年間売上が10億ドルを超える新薬に対して用いられることが多い。 [ユーザビリティ]製品の最終ユーザー(医療現場や患者)における使い勝手のこと。 [ライセンスアウト]知的財産権の実施権や物品・技術の使用・販売権などを製薬企業等に許諾し、対価(契約金、開発マイルストンペイメントやロイヤリティなど)を得ること。 [ライセンスイン]知的財産権の実施権や物品・技術の使用・販売権などを譲り受け、対価(契約金、開発マイルストンペイメントやロイヤリティなど)を支払うこと。 [臨床試験]非臨床試験での有効性及び安全性の結果を踏まえ、ヒトでの医薬品の効果を調べる試験のこと。
FY2016|7,781 文字|出典 docID: S10083T6
3【事業の内容】(1) 事業環境 製薬企業における永続的成長の源泉は継続的な新薬の創出ですが、化学合成による低分子医薬品は既に多くの基本構造骨格が探索し尽くされ、有望な開発候補品が減少しております。その一方で、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源としたバイオ医薬品、特に抗体医薬品は、有効性や安全性などからも注目され、ブロックバスターとなるバイオ新薬がここ十年で急増しております。 当社は、このような環境の下、「大学発ベンチャーであることの公共性に準じ、利益の追求に留まらず、希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品開発により、人々のクオリティ・オブ・ライフを向上させ、社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、バイオ新薬の開発を行っております。 また、既に先進国では、医療費増大による財政圧迫を抑制するために、特許が満了した新薬との同等性を示すだけで承認される安価なジェネリック医薬品の普及が進んでおります(図表1)。さらに、ブロックバスターとなっているバイオ医薬品が続々と特許満了を迎える時期に至っており、バイオ医薬品のジェネリック医薬品であるバイオ後続品(バイオシミラー)は、今後世界的に大きな市場を形成することが見込まれております。しかしながら、バイオ後続品は、従来のジェネリック医薬品と異なり、新薬開発に近い要件が求められるため、従来のジェネリック医薬品の開発企業やバイオ医薬品開発経験がない製薬企業では、バイオ後続品の開発は非常に高い障壁となります。 当社は、バイオ新薬の研究開発に関する技術、知識及び経験を有しており、この優位性を活かし、バイオ後続品の研究開発を積極的に推進することによって、有用な医薬品の普及と患者の経済的負担の軽減にも貢献してまいります。 図表1 医療先進国におけるジェネリック医薬品の使用状況 出典:平成26年度ロードマップ検証検討事業報告書概要(厚生労働省) (日本ジェネリック製薬協会 ウェブサイト引用) (2) 当社のビジネスモデル(図表2) 当社は、市場の拡大が見込まれるバイオ医薬品に着目し、バイオ後続品事業及びバイオ新薬事業の2事業を柱として、医薬品開発に取り組んでおります。バイオ後続品事業は安定性を重視する一方、バイオ新薬事業は成長性を重視し、この両面から経営の安定と成長を目指すビジネスモデルであります。 さらに、当社は大学などとのバイオ医薬品の共同研究などからターゲットを選定し、開発ノウハウを活かして開発計画を立案した上で、社外の最適な試験受託企業や製造受託企業を選定し積極的に活用することで、複数品目の開発を平行してスピーディーに進めております。 当社は、これらの活動により得られた成果を、製薬企業にライセンスアウトあるいは製品販売を行うことで収益獲得につなげております。 図表2 当社のビジネスモデル (3) 当社のビジネスモデルの特長 当社は、市場ニーズを勘案した医薬品開発を重視し、以下の4点を特長とした研究開発活動を行っております。① バイオ医薬品に着目 バイオ医薬品は、遺伝子工学をはじめとするバイオテクノロジーの革新技術によって製造される、生体の仕組みを起源とした医薬品であり、既存の低分子医薬品では達成できない薬理作用が注目されております。また、市場についてもバイオ医薬品市場として、2008年に1,000億ドルを超え、世界の医薬品市場の約15%を占めるに至っておりましたが、その後も市場は拡大し、2014年には1,790億ドル、世界の医薬品市場の23%までに急成長しております。大型医薬品世界売上ランキングをみても上位10製品の中でバイオ医薬品は2000年の1製品から、2014年には7製品に増加しており、バイオ医薬品のうち21製品が売上20億ドルを超えております。 このように急速に拡大する市場ニーズに応えるため、当社は、バイオ医薬品に着目した研究開発活動を行っております。 ② バイオ後続品事業とバイオ新薬事業 バイオ後続品は、有効性及び安全性が確認されていることから、バイオ新薬と比較して少ない経営資源で開発が可能である反面、市場規模などの点で制約を受けます。 一方、バイオ新薬では、従来の医薬品で治療の難しい疾患に対して新たな治療の可能性が期待できる反面、従来の新薬開発と同様に多くの経営資源を投入する必要があります。 そこで、当社は、バイオ後続品とバイオ新薬の長所・短所を考慮したパイプラインを機動的にマネジメントし、安定性の高いバイオ後続品事業で経営の安定を築きながら、バイオ新薬事業に取り組むことで高い成長性を目指すハイブリッド型の事業モデルを構築しております。 ③ 複数の開発品のパイプライン 当社は、バイオ後続品とバイオ新薬それぞれの事業領域で複数の開発品を揃えたパイプラインを保有することで、研究開発リスクの分散を図っております。 ④ 社外との提携関係の構築 医薬品開発に必要な要件は多岐にわたる一方、当社の経営資源には限りがあるため、全てを当社単独で担うことは難しく、開発のスピードにも限界が生じます。そこで、当社は、社外の受託機関を積極的に活用することにより、最適な開発体制を組み立て、各々の得意分野(原薬製造、非臨床試験など)を融合することで、開発力の強化と開発スピードの向上を図っております。また、当社は、研究開発段階早期から事業化を強く意識しており、闇雲に研究開発投資を行うのではなく、相互にメリットが得られる提携先の探索を念頭に進めております。 また、医薬品の研究開発活動を進めるには巨額の先行投資資金が必要になりますが、社外との提携関係を構築することで、各々が担当領域の開発費用を分担することとなり、開発リスクを分散することができます。 さらに、医薬品開発においては、ブランド力や信用も重視されることから、製薬企業や大学を含む公的研究機関などとの提携関係を積極的に構築しております。 (4) 開発の流れ、収益モデル及び開発品目の選定方針① バイオ後続品事業イ 開発の流れ(図表3、図表4) 当社は、開発研究の初期段階から、既存バイオ医薬品と同等又はそれを上回る品質の原薬の製造方法構築を目標とし、その原薬を用いた非臨床試験を実施いたします。具体的には、まず、バイオ医薬品の原薬製造の根幹である産生細胞株を自社で構築あるいは社外から導入いたします。その産生細胞株を用いて、製造受託企業において最適な原薬の製造方法及び原薬製造体制を構築します。その後、原薬製造方法の最適化、既存バイオ医薬品との品質的な比較、製剤における最適処方の検討、薬効及び安全性評価の非臨床試験を同時並行で進め、臨床試験につなげてまいります。なお、これらの開発過程における分析・評価については、試験受託企業において行います。並行して、バイオ後続品を販売する製薬企業と共同開発の提携関係を構築いたします。 臨床開発は、主に製薬企業が担当し、厚生労働省にバイオ後続品の製造販売承認の申請を行います。当社は、製薬企業との共同研究開発において、臨床試験に使用する原薬などを製薬企業に販売するとともに、製薬企業に対して開発推進及び申請のための助言や支援を行います。さらに、上市後には、原薬などの製造を継続的に信頼できる製造受託企業に委託し、製薬企業に原薬を安定的に販売してまいります。 図表3 開発の流れと収益モデル(バイオ後続品事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ後続品開発における所要年数であります。 図表4 事業系統図(バイオ後続品事業) ロ 収益モデル(図表3) バイオ後続品事業の収益モデルとしては、研究開発段階及び上市後において、医薬品の主原料である原薬などを製薬企業に供給することによって得られる販売収益や開発の進捗に応じた開発マイルストンペイメントによる収益と、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益があります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ後続品は、新薬の開発に比して経営資源が少なくて済み、また、有効性及び安全性が確認されているため、研究開発リスクは低いと言えます。このため、バイオ後続品については、想定される市場規模、収益性及び競合状況に重点を置いて開発品目の選定を行っております。 バイオ後続品の市場規模は、既存バイオ医薬品の市場規模にバイオ後続品の薬価比とバイオ後続品への置換率を乗じて求めることができます。このようにして求めたバイオ後続品の市場規模に、当社開発品の想定シェアを乗じることで、当社開発品の売上予測を行うことができます。 一方で、収益性については、バイオ後続品の想定薬価と製造原価をもとに、利益率を計算しております。 さらに、魅力あるバイオ後続品にはグローバルな競争の激化が見込まれることから、競合他社の数や質を把握し、それらも開発品目の選定における判断材料の要件としております。 ② バイオ新薬事業イ 開発の流れ(図表5、図表6) バイオ新薬の研究開発は、まず、医薬品シーズの探索を行う基礎研究から着手いたします。医薬品シーズを効率的に探索するため、自社での研究のみならず、大学や研究機関などとの共同研究を行っております。 次に、開発研究においては、候補品について薬効・安全性の基本データを得るための分析及び評価を行います。なお、これらの分析及び評価において、必要に応じて試験受託企業への委託を行います。 その後の臨床開発以降は、膨大な費用、要員及び期間を要し、さらに、開発リスクも伴うことから、原則として自社では行わず、製薬企業へのライセンスアウトを基本方針としております。なお、ライセンスアウト後は製薬企業が主体的に開発を進めることになるため、当社の関与は大きく減ることになりますが、ライセンスアウト先製薬企業への薬効試験や製法・品質データの補充など、当社の経験を活かせる開発推進及び申請のための助言や支援は、引き続き行ってまいります。 図表5 開発の流れと収益モデル(バイオ新薬事業) (注) 各開発ステージにおける年数は、一般的なバイオ新薬開発における所要年数であります。 図表6 事業系統図(バイオ新薬事業) ロ 収益モデル(図表5) バイオ新薬事業における収益モデルは、主に、研究開発段階において、共同研究開発契約を締結し、当社のノウハウなどを製薬企業に提供することで得られる役務収益と、特許実施権を製薬企業にライセンスアウトすることで得られる収益があります。ライセンスアウトによる収益は、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンペイメント及び上市後の売上高に対するロイヤリティからなります。ハ 開発品目の選定方針 バイオ新薬の開発品目の選定においても、バイオ後続品事業と同様に、想定される市場規模と収益性を考慮しますが、新薬の開発は原則として特許を確保して進めることから、競合などはバイオ後続品の開発品目の選定時ほど重要な要素ではありません。むしろ、新薬の研究開発リスクは非常に高いことから、作用メカニズムなどから判断して対象疾患における現行治療法に対して、臨床的意義がどの程度想定できるかが最も重要であると考えております。医薬品としてのニーズ、有効性及び安全性を示すことにより、有利な条件で製薬企業にライセンスアウトすることができます。 (5) 主力上市品・開発品 当社の事業基盤はバイオ医薬品(バイオ新薬及びバイオ後続品)の研究開発です。その中で最も早く事業化可能で収益が望めるのはバイオ後続品です。バイオ後続品の申請・承認は、これまでの低分子化合物のジェネリック医薬品と大きく異なり、製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験を必要とし、新薬に近い要件が求められています。バイオ医薬品の開発経験を有する製薬企業でないと開発が非常に難しく、参入障壁が高いと言えます。一方、既存バイオ医薬品の薬価が高いことから、バイオ後続品では、低分子化合物のジェネリック医薬品よりも高い収益性が期待できます。そこで、当社は、バイオ新薬研究で培った技術、知識及びノウハウを最大限に活用し、科学的かつ論理的にバイオ後続品の開発を進めております。さらに、当社はバイオ後続品事業において複数の開発品目を開発することで、早期に収益の源泉を構築し、事業基盤を安定化する方針です。 また、バイオ新薬の分野では、有効性と安全性が期待できる抗体医薬品を主力開発品とし、さらに、既存の抗体医薬品と異なる分子を標的とすることで、特に希少疾患や難治性疾患を対象とする医薬品の開発を目指します。 ① バイオ後続品事業・フィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-001、対象疾患領域:がん) 顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)は、白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進させるほか、骨髄からの好中球の放出を促進したり好中球機能を亢進する作用があります。 当社は、平成19年10月より富士製薬工業㈱と共同開発の下、日本のバイオ後続品のガイドラインに沿った、日本で最初のバイオ後続品の製造販売承認を取得すべくフィルグラスチムバイオ後続品の開発を進めました。平成24年11月21日に富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が国内での製造販売承認を取得し、平成25年5月31日に上市されました。 現在、当社は富士製薬工業㈱に対して当該医薬品の原薬を安定的に供給し、富士製薬工業㈱と持田製薬㈱が2ブランド2チャンネルで販売を行っております。当社のフィルグラスチムバイオ後続品の産生細胞株は韓国のDong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)から導入しており、同社にはロイヤリティを支払っております。 ② バイオ新薬事業・抗α9インテグリン抗体(開発番号:GND-001、対象疾患領域:免疫疾患、がん) インテグリン分子群は、免疫疾患、骨疾患、がん転移などに関与しているタンパク質群であり、インテグリン分子群に属するα9インテグリンが骨のオステオポンチンと結合すると、様々な炎症が惹起されるなどの事実が明らかにされております。 これらの知見から、α9インテグリンとオステオポンチンとの結合を阻害することができれば、免疫疾患の治療に有効であると考えられます。さらに、がんは対象疾患として大きな目標であることから、引き続き研究を進める考えでおります。 当社は、北海道大学遺伝子病制御研究所の上出利光教授との共同研究から、α9インテグリンとオステオポンチンとの結合を阻害するα9インテグリンに対する抗体を既に作製し、本抗体の独占的開発、製造及び販売権を科研製薬㈱に譲渡し、その対価として平成19年7月に契約一時金を受領しております。当社は今後、開発の進捗に応じてマイルストン契約金を、上市後にはロイヤリティを受領する予定であります。 《用語解説》 [α9インテグリン]細胞接着分子であるインテグリン分子群の一つで、炎症細胞の働きに関わると言われている。 [GLP試験]厚生労働省令で定められた医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準がGLP(Good Laboratory Practiceの略)であり、これに従って行われる試験をGLP試験という。 [GMP]厚生労働省令で定められた医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準であり、Good Manufacturing Practiceの略。 [オステオポンチン]骨基質に存在するタンパク質で、インテグリンとの結合を介して、骨系細胞の分化誘導や機能発現に重要な役割を果たす。 [POC]Proof Of Conceptの略で、新薬候補物質の有用性・効果が、動物での非臨床試験やヒトでの臨床試験において認められること。 [基礎研究]病気の要因を特定する研究やそれを治療できる医薬品の種を探し出す研究のこと。 [原薬]薬効成分の原料を原薬と呼び、原薬に添加剤を加え、製剤とすることにより、医薬品となる。 [亢進]生化学や薬学分野において、分子の機能などが「高まる」ことの意味で使われる。 [抗体]体内に異物が侵入した際に、それを無毒化又は体外へ強制的に排出するために白血球細胞で作られるタンパク質であり、異物である抗原という特定の物質のみに結合する機能を持つ。 [好中球]白血球の一種で、炎症部に集合し、細菌、真菌などの異物を貪食、殺菌、分解し、生体を防御する。 [産生細胞]目的のタンパク質や抗体を大量に効率よく作り出す能力を持った(あるいは遺伝子工学によってそのような能力を持たせた)細胞のことを言い、それを大量に培養し、抽出・精製することを経て、バイオ医薬品が製造される。 [シーズ]医薬品の種(seeds)のこと。 [ジェネリック医薬品]特許期間が満了になった医薬品と同じ成分の医薬品は、動物やヒトでの薬効や毒性はその成分で検証されているので、簡単な品質試験と血中濃度での同等性を証明することで承認される。このような医薬品をジェネリック医薬品と呼ぶ。 [上市]医薬品として承認され、実際に市販されること。 [ダルベポエチンアルファ]持続型赤血球造血刺激因子製剤であり、保存期慢性腎臓病から透析期までの腎性貧血患者に対して、腎性貧血の症状を改善する目的で使用されている。[低分子医薬品]通常、化学合成で作製される分子量が数千以下の医薬品のこと。 [バイオ医薬品]バイオテクノロジーを応用した医薬品のこと。 [バイオ後続品]既に販売承認を与えられているバイオ医薬品と同等/同質の医薬品のこと。 [バイオ新薬]バイオ医薬品の新薬のこと。 [パイプライン]石油・天然ガスなどの流体を長距離にわたって輸送するためのパイプと同様に、絶え間なく医薬品の創出ができるように開発品が整っている様を指し、開発品のリストを研究開発パイプラインと呼ぶ。 [非臨床試験]ヒトで実施できない試験を動物で行うことを非臨床試験と言い、薬効を調べる薬理試験、薬の体内動態を調べる薬物動態試験及び毒性を調べる毒性試験からなる。 [ファブレス型企業]自社で製造設備などを持たない企業のこと。 [ブロックバスター]従来の治療体系を超える薬効を持ち、全世界での年間売上が10億ドルを超える新薬に対して用いられることが多い。 [ユーザビリティー]製品の最終ユーザー(医療現場や患者)における使い勝手のこと。 [ライセンスアウト]知的財産権の実施権や物品・技術の使用・販売権などを製薬企業等に許諾し、対価(契約金、開発マイルストンペイメントやロイヤリティなど)を得ること。 [ライセンスイン]知的財産権の実施権や物品・技術の使用・販売権などを譲り受け、対価(契約金、開発マイルストンペイメントやロイヤリティなど)を支払うこと。 [臨床試験]非臨床試験での有効性及び安全性の結果を踏まえ、ヒトでの医薬品の効果を調べる試験のこと。