経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 Ⅰ.当社グループのMissionと中期経営計画「H.U.2030 2.0」当社グループにおけるMissionは、「ヘルスケアにおける新しい価値の創造を通じて、人々の健康と医療の未来に貢献する」であり、このMissionの下、検査・手術を中心とした医療を止めないという医療インフラとしての当社の役割に対するコミットメントを遵守するだけでなく、医療領域にとどまることなく広くヘルスケア領域へと事業を展開しております。一方、当社グループを取り巻く事業環境は目まぐるしく変化しており、この変化に対応し、当社が持つ技術的な優位性を軸としたイノベーションによって臨床的価値の高いONLY ONE、No.1の製品を開発し、日本をはじめグローバルに迅速に届けていくことで持続的な成長を遂げ、社会に価値を提供していくことも求められています。この社会的責任を果たすとともにさらなる成長を実現すべく、2026年3月期~2030年3月期の5か年の中期経営計画「H.U.2030」を策定いたしましたが、当社グループが営む事業自体が患者ニーズ、すなわちPatient Journeyを支える医療インフラであることをより一層強く認識するとともに、「世界のH.U.グループ」を目指すべく、「H.U.2030 2.0」(以下、本中計)として注力すべき成長戦略を明確にいたしました。その概要について以下にてご説明いたします。 Ⅱ.本中計の概要①当社グループを取り巻く事業環境高齢化は世界的な課題となっております。特に日本では、医療費が年々増加し、政府が医療費の抑制策を推し進めている影響で検体検査実施料も抑制され、国内の臨床検査市場は厳しい状況が続いております。加えて、原材料価格の上昇なども含めた地政学リスクも加味し、医療やヘルスケア領域のみならず、様々な事業環境への注視が必要となっております。一方、病院・病床の再編に伴い在宅医療・予防医療へのニーズが高まるとともに、個別化医療や再生医療などの先進的な医療技術も発展していることから、早期診断/早期治療への社会的要請が高まっております。すなわち、病気と長く付き合う社会へと変容するに従い、当社グループが果たすべき役割は、単に収益を生み出すことだけでなく、より一層重要となってきていると考えています。 ②本中計の内容当社グループは、検査・関連サービス事業(以下、「LTS」)と臨床検査薬事業(以下、「IVD」)を傘下に有する数少ない企業グループであり、そこにヘルスケア関連サービス事業(以下、「HS」)を加え、独自の強みを生かして顕在的・潜在的な医療ニーズの高い疾患や希少疾患などの社会課題に対応することで、上述した事業環境の変化に柔軟かつ迅速に対応するとともに事業を成長させ企業価値の最大化を実現してまいります。具体的には、日本の病院市場における圧倒的な顧客基盤を持つLTS事業・HS事業がグローバルヘルスケア業界における新しい技術・製品・サービスを日本に導入する際のリーダーとなり、日本市場を先導していくことを目指します。そして実用化された技術・製品・サービスをIVD事業の技術力をベースにCDMOやパートナーシップを通じてグローバル市場へ提供できる唯一の企業グループです。各事業においては、これまでの投資によって確立した基盤を活用して高収益体質へと変革していくほか、事業環境の変化に対応することで、日本を代表するヘルスケア企業を目指します。本中計の主要な施策として、まず、人々の健康と医療の未来に貢献すべく、主要な疾患別戦略に基づく成長シナリオを明確化いたしました。特に、日本に限らずグローバルで、潜在的な患者数も含めて市場が拡大しているオンコロジーおよびNEURO領域を成長領域と特定し、これらの分野に注力することで、社会的責任を果たすとともに成長を追求し、企業価値の向上を目指します。すでに掲げていた高収益体質への転換については、昨年度に成果が出始めた施策を加速させ、投資の回収による収益性の改善をさらに推進いたします。これにより創出したキャッシュアロケーションの考え方は維持し、株主還元方針は変更せず、累進配当および5年間で200億円以上の自己株買いを実施することで、資本効率の向上に努めてまいります。さらに、グループ戦略を確実に遂行する人財を確保するため、人的資本戦略を強化してまいります。加えて、企業の成長の根幹はガバナンスであることを再度認識し、執行と監督の分離を明確にしたうえでお互いがONE TEAMとなり本中計の達成に向けてガバナンスを強化してまいります。 ③本中計におけるグループの重要施策ア 患者ニーズPatient Journeyを支える医療インフラとしての疾患別の成長戦略当社グループは上述の通り、オンコロジーおよびNEURO領域を成長領域、また感染症とそれ以外の項目を重点領域と特定いたしました。それぞれについての施策および考え方について説明します。a オンコロジー(がん)領域がんは、世界的に高齢化が進んでいることや日本における死亡原因の第1位であることを背景に、早期発見、個別化医療および治療後のモニタリングの重要性が高まっている疾患領域です。当社グループは、IVD事業において腫瘍マーカー関連の試薬・原料をグローバルに供給し、高い市場ポジションを占めております。また、LTS事業では、がん遺伝子パネル検査をはじめとする先進的な検査を国内の多くの医療機関から受託しており、さらに滅菌・手術支援業務を通じて治療領域も支えております。このように、当社グループはがんのスクリーニング、診断、治療、予後モニタリングに至るPatient Journey全体に関与しており、がん関連売上高はグループ全体の3割以上を占める重要な成長領域です。今後は、IVD事業において、当社保有の抗体がグローバルCDMOパートナーに採用されている強みを活かし、パートナー数の拡大、提供項目の開発、アジアを中心とした市場展開を進めてまいります。LTS事業では、高い大病院カバレッジを活かし、がん遺伝子パネルなどの特殊検査における受託拡大を目指すとともに、一部検査項目における試薬内製化を通じて収益性の向上を目指します。加えて、2026年2月に体外診断用医薬品として製造販売承認を取得した核酸増幅検査向け試薬「ナデテクト(NADETECT)」シリーズをはじめ、グループ内の試薬開発・製造・効果検証機能を活用し、独自試薬の開発・導入を推進してまいります。特に、がんゲノム検査領域では、主要な医療機関との取引実績を基盤に、新たな検査項目の導入を率先して担い、市場拡大と社会課題の解決に貢献してまいります。 b NEURO(認知症)領域認知症は高齢化に伴い増加の一途をたどる疾患の一つであり、その潜在的患者数は非常に多く、人類にとって大きな脅威となっている疾患です。そのため、この疾患領域での検査を通した貢献は、罹患した患者様のみならず、その家族や周辺への影響も含めた社会的損失の回避という点で、社会課題の解決に直結いたします。当社は認知症領域において、血液を用いた検査として米国FDAより世界で初めて承認を取得しており、すでに本領域における高い技術力は証明されております。FDA承認を背景に、米国ではその使用が拡大しており、日本でも薬事申請を行うとともに、承認取得に先んじて株式会社エスアールエル(LTSにおいて受託臨床検査を行う当社連結子会社、以下、「SRL」)でリン酸化タウ217およびニューロフィラメント軽鎖の受託を開始し、新しい国内市場の開拓に着手しております。また、欧州において、すでに血液用のリン酸化タウ217およびニューロフィラメント軽鎖測定試薬についてCEマークを取得しております。欧米以外の海外に関しては、今後高齢化が一層進み、認知症が社会課題になっていく地域へ向けて、CDMO事業やアライアンスを通じて製品の展開を行っていきます。加えて、複雑な本疾患については、多様な認知症の原因鑑別や診断精度の向上に資する新たな検査項目の開発も続けております。合わせて、HS事業では、当社グループの訪問看護サービス利用者の約40%が認知症を含めた精神疾患を患っていることから、検査だけでなく、予後の面でもサービス提供を拡大してまいります。このように今後も引き続きグループの持つ資産を活用し、早期の開発と市場導入を軸にPatient Journeyを支えていきます。 c 感染症領域感染症への対策は人類にとって不可欠であり、その対応如何によっては経済へ多大な影響を及ぼします。世界で初めて梅毒の検査試薬の製造販売を開始し、B型肝炎、C型肝炎ウイルスの検査試薬などにおいても市場を先導するなど、感染症の検査試薬を契機として臨床検査領域での成長を加速させてきた当社グループとしては、感染症への対策は医療インフラとしてのアイデンティティに関わる分野であり、最も注力すべき且つ最も貢献できる領域であると考えております。例えば、呼吸器感染症は、歴史的にみてもその流行が繰り返されている感染症であり、また、デング熱といった熱帯感染症については温暖化等の気候変動によって、これまでにない地域での新興・再興感染症としてのアウトブレイクの可能性もあることから、注視が必要な感染症です。このような事業環境の変化を見据え、過去から蓄積された知見と当社グループならではの強みを活かし、感染症の脅威への対策を続けてまいります。 d その他の領域(代謝、自己免疫、希少疾患等)上述した領域以外にも疾患は多岐にわたります。当社グループはそれぞれの事業がそれぞれの市場においてトップランナーであるという認識のもと、幅広い疾患領域においても価値を提供することで治療薬の開発などに貢献し、ひいては患者様一人ひとりへ貢献できるように取り組んでいきます。イ 高収益体質への変革a LTSセグメントについて完全稼働したH.U. Bioness Complexを中心としたラボ戦略および独自の商品戦略を実行し、高収益体質へと変革いたします。まず、あきる野ラボは2026年3月期第1四半期より完全稼働が開始し、1階の自動化検査ラインでは自動化・省人化によって効率的に利益を生む構造が確立されており、今後はより一層利益を生み出すために、SRLへのルミパルス項目導入をさらに加速していきます。また、1階で生み出された利益・キャッシュを2階・3階の特殊検査・遺伝子関連検査の強化へ投下することで、検査ラインアップの拡充やAI活用など業務プロセスの改善を実現し、競争力の強化/差別化を実現してまいります。一方、開業医事業を中心としたラボ戦略の一環として、SRL傘下の株式会社日本医学臨床検査研究所、株式会社北信臨床、株式会社エスアールエル北関東検査センターの3社の統合が完了し、一部の地域ラボについても再編や閉鎖を行いました。今後もこうした再編や地域ラボについては他センターなどアライアンス先の検討も進めることで理想的な検査体制の構築を目指します。 b IVDセグメントについて前中計から引き続き、本中計においてもIVDの強みを活かすとともに、生産体制の拡充と社内リソースの再配置等によりCDMO事業の強化・拡大に取り組んでまいります。グローバル戦略の一環として、継続的な研究開発活動を通じ、他社が保有しないユニークな検査項目の開発・製品化を進めてまいります。開発した項目・製品についてはインドパートナーなどをはじめとしたCDMO事業を通じて世界に広げてまいります。NEURO製品については、販売パートナーとの提携も含め、展開国を増やすとともに、アルツハイマー病以外の神経疾患領域に向けた項目開発を継続してまいります。国内ルミパルス事業については、SRL顧客への拡販を強化してまいります。一方、収益性の観点からは、マニュアル製品の選択と集中による固定費の最適化やグループ内(日欧米)での最適製造配置による原価改善やインドパートナーへの製造移管によるコスト改善等を検討してまいります。 c HSセグメントについて滅菌・手術関連事業においては、医療機関の経営環境が厳しさを増し、医療従事者を含めた人員不足が大きな課題となっていく中、医療現場のニーズに応えるとともに、手術関連を中心とした医療現場の効率化やコスト削減に資するサービスを積極的に提案してまいります。重点施策としては、一次洗浄規制緩和を契機とした滅菌事業モデルの変革と手術関連サービスの強化となります。具体的には、役務サービスについては、手術関連の高付加価値/高難易度業務へフォーカスし、病棟外来滅菌は標準化の推進および院外化へシフトすることで、総工数を管理・厳選し、手術関連サービス強化による顧客の収益性改善への寄与とサステナブルなサービス提供の両輪での成長を目指してまいります。また、訪問看護事業においては、サービス利用者の40%が認知症を含む精神疾患領域であることを鑑み、注力領域であるNEURO領域ケアの専門性を高めるべく、教育や資格取得をサポートし、ケアの質の向上を目指します。加えて、労働集約型である当事業においてもより一層IT/DX化を進めていきます。 ウ キャピタルアロケーション最適化と資本効率向上前中計では、LTSにおける効率的なオペレーション確立を目的としたH.U. Bioness Complex、IVDにおけるさらなる成長を実現するためのCDMO事業等、事業基盤の確立・強化に向けた積極的な設備投資を実施してまいりましたが、本中計では、株主の皆様への還元を強化してまいります。そのため、本中計におけるキャピタルアロケーションについては、事業にて創出した営業キャッシュ・フローに加えて資産売却などで得られたキャッシュを、各事業におけるメンテナンス投資、累進配当、自己株式取得も含めた戦略投資(M&A/成長投資)および一定の有利子負債(リース債務含む)の返済に充当してまいります。なお、株主還元についてはDOE(株主資本配当率)6%を目指し、累進配当を実施してまいります。また、機動的な自己株式取得の方針のもと、自己株式の取得を実施し、株主還元を強化いたします。なお、2025年10月にはすでに50億円の自己株式を取得しておりますが、2026年5月にはさらに50億円の自己株式の取得を決議いたしました。一方、M&Aを含む成長分野への投資については、CDMO戦略のさらなる強化を目的とし、2025年6月にPlasma Services Group, Inc.の買収を完了しております。このような成長投資については、今後も投資リターンを十分に精査したうえで実行してまいります。また事業ポートフォリオ戦略およびROICに基づいたキャピタルアロケーションの最適化を実践するとともに、選択と集中の考えの下、資本効率のさらなる向上を目指してまいります。なお、ROEおよび連結ROICをKPIとしてモニタリングしてまいります。また、投資案件については、事業リスクやカントリーリスクを考慮したハードルレート(8-24%)を設定し、投資管理を強化していくことで、ROEおよびROICの向上を目指してまいります。 エ 人的資本の強化当社は「新たな価値を創造する人財の育成」をマテリアリティとして設定しているように、社会インフラとしての機能を発揮するための根幹は人であるとの考えのもと、人的資本の強化に取り組んでおります。また、本中計の目標を達成するためには、上述のように患者ニーズ(Patient Journey)を支える医療インフラであることを従業員一人ひとりが認識し、「長く働きたい」と思える会社であることが重要であると考え、自身の業務および自社グループの製品・サービスが、自分自身や家族の生活に直結していることを認識し、また、日本および世界の社会・医療に影響を与えることによる達成感と責任感を持てるように、学術面も含めた様々な教育や知識取得の機会を設けていきます。今後、個々人のライフスタイルに合わせて勤務可能な柔軟な人事制度の整備など、様々な施策の導入を検討するとともに、経営から積極的に発信/コミュニケーションをとることで従業員エンゲージメントを一層向上させ、本中計目標の達成、ひいては企業価値の向上を目指します。 オ ガバナンスの強化当社は2005年より指名委員会設置会社(現・指名委員会等設置会社)として強固なガバナンス体制を維持してまいりましたが、より一層ガバナンスを強化し、執行と監督の機能は明確に分離したうえで、同じゴールへ向かえるようにONE TEAMとなって持続的な価値創造と稼ぐ力を強化することを企図し、2026年6月から新たな社外取締役を選任予定です。このように、取締役会が経営を監督することに加え、経営を共に強くすることができるよう、現場理解の機会を創出するなど、社外取締役への能動的かつ積極的な情報提供やコミュニケーションの機会を増やしてまいります。 ④2030年3月期の経営数値目標本中計においては、売上高の着実な成長と利益率の向上のみならず、資本効率の向上を目指し、下記のとおり経営数値目標を掲げます。指標2026年3月期2027年3月期2030年3月期ROE5.0%3.7%13%以上営業キャッシュ・フロー216億円230億円※1,500億円以上連結EBITDA(マージン)265億円(10.7%)290億円(11.3%)16%以上 LTS137億円(8.7%)155億円(9.5%)13%以上 IVD147億円(24.2%)163億円(25.1%)30%以上 HS31億円(10.5%)25億円(9.1%)10%以上連結営業利益(利益率)48億円(1.9%)90億円(3.5%)11%以上 LTS0億円(0.0%)27億円(1.6%)10%以上 IVD91億円(14.9%)110億円(16.9%)25%以上 HS18億円(6.0%)17億円(6.3%)8%以上ROIC1.5%3.0%10%以上 ※5年累計の経営目標値 ⑤持分法適用関連会社(Baylor Genetics Holdings, Inc.およびBaylor Miraca Genetics Laboratories, LLC)2025年3月末にBaylor Miraca Genetics Laboratories, LLCの全持分を保有する会社としてBaylor Genetics Holdings, Inc.が設立され、同時に外部からの優先株式による資金調達を実施しております。2026年3月期につきましては、昨年度に引き続き、がんや先天性疾患に関わる遺伝学的検査の受託数が増加し、増収となりました。引き続き営業強化等による売上拡大を含めた市場シェア拡大を図ると共に、株式公開に向けて事業を推進してまいります。(株式会社札幌ミライラボラトリーおよび株式会社札幌メディ・キャリー)2021年6月10日付で、札幌臨床検査センター株式会社との間で、北海道札幌地域において共同で検体検査ラボ事業を行うための合弁会社および同地域において共同で臨床検査関連の集荷・物流事業を行うための合弁会社を設立し、2022年3月期より事業を開始しております。(株式会社メディスケット)2022年4月1日付で、株式会社メディパルホールディングスとの間で、医療・ヘルスケア領域における物流プラットフォームの構築に取り組むための物流合弁会社を設立し、自社の集荷・物流効率の向上のみならず、他社への集荷サービス提供の拡張を目指しています。具体的には、集荷コスト、両社のルート共通化により温室効果ガス、保有車両等の削減を目標としております。(ケアレックス株式会社)2025年12月1日付で、株式会社ワキタへ発行済株式の80%を譲渡したことにより、持分法適用関連会社となりました。福祉用具レンタル市場は、高齢者人口増加による需要の高まりとともに拡大しており、今後もさらなる拡大が予想されます。一方で競争も激化しつつあり、さらに、仕入価格、物流費、人件費等が高騰する中、業界のビジネス構造上、コスト増加分をレンタル価格に転嫁することは難しく、厳しさも増しています。このような環境下、業界上位企業は資本力を背景に事業の基盤強化や規模拡大を図ることで市場変化に対応し成長しています。株式会社ワキタは福祉用具レンタルを含む介護市場の拡大を見据え、近年、福祉用具レンタル卸事業を営む企業を買収し、介護関連事業の強化を図っています。ワキタの戦略的投資の下、ケアレックスは今後一層変化する市場環境においても持続的成長を実現していくものとしています。 ⑥財務戦略と財務規律本中計においては、安定的なキャッシュ・フローの創出と健全な財務規律の維持を重要なテーマとして掲げ、下記のとおり財務戦略を実行してまいります。1)キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善等による営業キャッシュ・フローの最大化2)ファイナンスリースの機動的な活用3)資産売却の実践(財務規律) 2026年3月期(実績)2030年3月期(目標)(リース債務を除く)純有利子負債/EBITDA倍率(倍)0.46倍1.3倍以下自己資本比率(%)51.3%40%以上 Ⅲ.2027年3月期の計画2027年3月期につきましては、ベース事業の成長および検査・関連サービス事業における収益性の改善、臨床検査薬事業におけるNEURO関連およびCDMO事業の伸長等により、下記のとおりとなる見込みです。単位:億円(四捨五入)2026年3月期実績2027年3月期予想売上高2,4742,560EBITDA※1265290営業利益4890経常利益2880親会社株主に帰属する当期純利益6850ROE5.0%3.7%ROIC※21.5%3.0%※1 EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費※2 ROIC=NOPAT(営業利益-みなし法人税)/ 投下資本 [(純資産+有利子負債(リース債務含む)+ その他の固定負債)の期首・期末残高の平均] なお、業績の見通しにつきましては、本資料の発表日現在において入手可能な情報および将来の業績に影響を与える不確実な要因に係る本資料発表日現在における仮定を前提としております。実際の業績等は、今後様々な要因によってこれと大きく異なる結果となる可能性があります。 Ⅳ.株主還元と成長への投資各事業から生み出される利益および資金につきましては、主たる配当のKPIとして連結自己資本配当率(DOE)6%を目指し、その上でキャッシュ・フロー、中長期的に健全な財務基盤の維持などを総合的に勘案した累進配当を実施してまいります。また、自己株式の取得を「自社への戦略投資」と位置づけ、積極的かつ機動的に実施してまいります。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 Ⅰ.当社グループのMissionと中期経営計画「H.U.2030 2.0」当社グループにおけるMissionは、「ヘルスケアにおける新しい価値の創造を通じて、人々の健康と医療の未来に貢献する」であり、このMissionの下、検査・手術を中心とした医療を止めないという医療インフラとしての当社の役割に対するコミットメントを遵守するだけでなく、医療領域にとどまることなく広くヘルスケア領域へと事業を展開しております。一方、当社グループを取り巻く事業環境は目まぐるしく変化しており、この変化に対応し、当社が持つ技術的な優位性を軸としたイノベーションによって臨床的価値の高いONLY ONE、No.1の製品を開発し、日本をはじめグローバルに迅速に届けていくことで持続的な成長を遂げ、社会に価値を提供していくことも求められています。この社会的責任を果たすとともにさらなる成長を実現すべく、2026年3月期~2030年3月期の5か年の中期経営計画「H.U.2030」を策定いたしましたが、当社グループが営む事業自体が患者ニーズ、すなわちPatient Journeyを支える医療インフラであることをより一層強く認識するとともに、「世界のH.U.グループ」を目指すべく、「H.U.2030 2.0」(以下、本中計)として注力すべき成長戦略を明確にいたしました。その概要について以下にてご説明いたします。 Ⅱ.本中計の概要①当社グループを取り巻く事業環境高齢化は世界的な課題となっております。特に日本では、医療費が年々増加し、政府が医療費の抑制策を推し進めている影響で検体検査実施料も抑制され、国内の臨床検査市場は厳しい状況が続いております。加えて、原材料価格の上昇なども含めた地政学リスクも加味し、医療やヘルスケア領域のみならず、様々な事業環境への注視が必要となっております。一方、病院・病床の再編に伴い在宅医療・予防医療へのニーズが高まるとともに、個別化医療や再生医療などの先進的な医療技術も発展していることから、早期診断/早期治療への社会的要請が高まっております。すなわち、病気と長く付き合う社会へと変容するに従い、当社グループが果たすべき役割は、単に収益を生み出すことだけでなく、より一層重要となってきていると考えています。 ②本中計の内容当社グループは、検査・関連サービス事業(以下、「LTS」)と臨床検査薬事業(以下、「IVD」)を傘下に有する数少ない企業グループであり、そこにヘルスケア関連サービス事業(以下、「HS」)を加え、独自の強みを生かして顕在的・潜在的な医療ニーズの高い疾患や希少疾患などの社会課題に対応することで、上述した事業環境の変化に柔軟かつ迅速に対応するとともに事業を成長させ企業価値の最大化を実現してまいります。具体的には、日本の病院市場における圧倒的な顧客基盤を持つLTS事業・HS事業がグローバルヘルスケア業界における新しい技術・製品・サービスを日本に導入する際のリーダーとなり、日本市場を先導していくことを目指します。そして実用化された技術・製品・サービスをIVD事業の技術力をベースにCDMOやパートナーシップを通じてグローバル市場へ提供できる唯一の企業グループです。各事業においては、これまでの投資によって確立した基盤を活用して高収益体質へと変革していくほか、事業環境の変化に対応することで、日本を代表するヘルスケア企業を目指します。本中計の主要な施策として、まず、人々の健康と医療の未来に貢献すべく、主要な疾患別戦略に基づく成長シナリオを明確化いたしました。特に、日本に限らずグローバルで、潜在的な患者数も含めて市場が拡大しているオンコロジーおよびNEURO領域を成長領域と特定し、これらの分野に注力することで、社会的責任を果たすとともに成長を追求し、企業価値の向上を目指します。すでに掲げていた高収益体質への転換については、昨年度に成果が出始めた施策を加速させ、投資の回収による収益性の改善をさらに推進いたします。これにより創出したキャッシュアロケーションの考え方は維持し、株主還元方針は変更せず、累進配当および5年間で200億円以上の自己株買いを実施することで、資本効率の向上に努めてまいります。さらに、グループ戦略を確実に遂行する人財を確保するため、人的資本戦略を強化してまいります。加えて、企業の成長の根幹はガバナンスであることを再度認識し、執行と監督の分離を明確にしたうえでお互いがONE TEAMとなり本中計の達成に向けてガバナンスを強化してまいります。 ③本中計におけるグループの重要施策ア 患者ニーズPatient Journeyを支える医療インフラとしての疾患別の成長戦略当社グループは上述の通り、オンコロジーおよびNEURO領域を成長領域、また感染症とそれ以外の項目を重点領域と特定いたしました。それぞれについての施策および考え方について説明します。a オンコロジー(がん)領域がんは、世界的に高齢化が進んでいることや日本における死亡原因の第1位であることを背景に、早期発見、個別化医療および治療後のモニタリングの重要性が高まっている疾患領域です。当社グループは、IVD事業において腫瘍マーカー関連の試薬・原料をグローバルに供給し、高い市場ポジションを占めております。また、LTS事業では、がん遺伝子パネル検査をはじめとする先進的な検査を国内の多くの医療機関から受託しており、さらに滅菌・手術支援業務を通じて治療領域も支えております。このように、当社グループはがんのスクリーニング、診断、治療、予後モニタリングに至るPatient Journey全体に関与しており、がん関連売上高はグループ全体の3割以上を占める重要な成長領域です。今後は、IVD事業において、当社保有の抗体がグローバルCDMOパートナーに採用されている強みを活かし、パートナー数の拡大、提供項目の開発、アジアを中心とした市場展開を進めてまいります。LTS事業では、高い大病院カバレッジを活かし、がん遺伝子パネルなどの特殊検査における受託拡大を目指すとともに、一部検査項目における試薬内製化を通じて収益性の向上を目指します。加えて、2026年2月に体外診断用医薬品として製造販売承認を取得した核酸増幅検査向け試薬「ナデテクト(NADETECT)」シリーズをはじめ、グループ内の試薬開発・製造・効果検証機能を活用し、独自試薬の開発・導入を推進してまいります。特に、がんゲノム検査領域では、主要な医療機関との取引実績を基盤に、新たな検査項目の導入を率先して担い、市場拡大と社会課題の解決に貢献してまいります。 b NEURO(認知症)領域認知症は高齢化に伴い増加の一途をたどる疾患の一つであり、その潜在的患者数は非常に多く、人類にとって大きな脅威となっている疾患です。そのため、この疾患領域での検査を通した貢献は、罹患した患者様のみならず、その家族や周辺への影響も含めた社会的損失の回避という点で、社会課題の解決に直結いたします。当社は認知症領域において、血液を用いた検査として米国FDAより世界で初めて承認を取得しており、すでに本領域における高い技術力は証明されております。FDA承認を背景に、米国ではその使用が拡大しており、日本でも薬事申請を行うとともに、承認取得に先んじて株式会社エスアールエル(LTSにおいて受託臨床検査を行う当社連結子会社、以下、「SRL」)でリン酸化タウ217およびニューロフィラメント軽鎖の受託を開始し、新しい国内市場の開拓に着手しております。また、欧州において、すでに血液用のリン酸化タウ217およびニューロフィラメント軽鎖測定試薬についてCEマークを取得しております。欧米以外の海外に関しては、今後高齢化が一層進み、認知症が社会課題になっていく地域へ向けて、CDMO事業やアライアンスを通じて製品の展開を行っていきます。加えて、複雑な本疾患については、多様な認知症の原因鑑別や診断精度の向上に資する新たな検査項目の開発も続けております。合わせて、HS事業では、当社グループの訪問看護サービス利用者の約40%が認知症を含めた精神疾患を患っていることから、検査だけでなく、予後の面でもサービス提供を拡大してまいります。このように今後も引き続きグループの持つ資産を活用し、早期の開発と市場導入を軸にPatient Journeyを支えていきます。 c 感染症領域感染症への対策は人類にとって不可欠であり、その対応如何によっては経済へ多大な影響を及ぼします。世界で初めて梅毒の検査試薬の製造販売を開始し、B型肝炎、C型肝炎ウイルスの検査試薬などにおいても市場を先導するなど、感染症の検査試薬を契機として臨床検査領域での成長を加速させてきた当社グループとしては、感染症への対策は医療インフラとしてのアイデンティティに関わる分野であり、最も注力すべき且つ最も貢献できる領域であると考えております。例えば、呼吸器感染症は、歴史的にみてもその流行が繰り返されている感染症であり、また、デング熱といった熱帯感染症については温暖化等の気候変動によって、これまでにない地域での新興・再興感染症としてのアウトブレイクの可能性もあることから、注視が必要な感染症です。このような事業環境の変化を見据え、過去から蓄積された知見と当社グループならではの強みを活かし、感染症の脅威への対策を続けてまいります。 d その他の領域(代謝、自己免疫、希少疾患等)上述した領域以外にも疾患は多岐にわたります。当社グループはそれぞれの事業がそれぞれの市場においてトップランナーであるという認識のもと、幅広い疾患領域においても価値を提供することで治療薬の開発などに貢献し、ひいては患者様一人ひとりへ貢献できるように取り組んでいきます。イ 高収益体質への変革a LTSセグメントについて完全稼働したH.U. Bioness Complexを中心としたラボ戦略および独自の商品戦略を実行し、高収益体質へと変革いたします。まず、あきる野ラボは2026年3月期第1四半期より完全稼働が開始し、1階の自動化検査ラインでは自動化・省人化によって効率的に利益を生む構造が確立されており、今後はより一層利益を生み出すために、SRLへのルミパルス項目導入をさらに加速していきます。また、1階で生み出された利益・キャッシュを2階・3階の特殊検査・遺伝子関連検査の強化へ投下することで、検査ラインアップの拡充やAI活用など業務プロセスの改善を実現し、競争力の強化/差別化を実現してまいります。一方、開業医事業を中心としたラボ戦略の一環として、SRL傘下の株式会社日本医学臨床検査研究所、株式会社北信臨床、株式会社エスアールエル北関東検査センターの3社の統合が完了し、一部の地域ラボについても再編や閉鎖を行いました。今後もこうした再編や地域ラボについては他センターなどアライアンス先の検討も進めることで理想的な検査体制の構築を目指します。 b IVDセグメントについて前中計から引き続き、本中計においてもIVDの強みを活かすとともに、生産体制の拡充と社内リソースの再配置等によりCDMO事業の強化・拡大に取り組んでまいります。グローバル戦略の一環として、継続的な研究開発活動を通じ、他社が保有しないユニークな検査項目の開発・製品化を進めてまいります。開発した項目・製品についてはインドパートナーなどをはじめとしたCDMO事業を通じて世界に広げてまいります。NEURO製品については、販売パートナーとの提携も含め、展開国を増やすとともに、アルツハイマー病以外の神経疾患領域に向けた項目開発を継続してまいります。国内ルミパルス事業については、SRL顧客への拡販を強化してまいります。一方、収益性の観点からは、マニュアル製品の選択と集中による固定費の最適化やグループ内(日欧米)での最適製造配置による原価改善やインドパートナーへの製造移管によるコスト改善等を検討してまいります。 c HSセグメントについて滅菌・手術関連事業においては、医療機関の経営環境が厳しさを増し、医療従事者を含めた人員不足が大きな課題となっていく中、医療現場のニーズに応えるとともに、手術関連を中心とした医療現場の効率化やコスト削減に資するサービスを積極的に提案してまいります。重点施策としては、一次洗浄規制緩和を契機とした滅菌事業モデルの変革と手術関連サービスの強化となります。具体的には、役務サービスについては、手術関連の高付加価値/高難易度業務へフォーカスし、病棟外来滅菌は標準化の推進および院外化へシフトすることで、総工数を管理・厳選し、手術関連サービス強化による顧客の収益性改善への寄与とサステナブルなサービス提供の両輪での成長を目指してまいります。また、訪問看護事業においては、サービス利用者の40%が認知症を含む精神疾患領域であることを鑑み、注力領域であるNEURO領域ケアの専門性を高めるべく、教育や資格取得をサポートし、ケアの質の向上を目指します。加えて、労働集約型である当事業においてもより一層IT/DX化を進めていきます。 ウ キャピタルアロケーション最適化と資本効率向上前中計では、LTSにおける効率的なオペレーション確立を目的としたH.U. Bioness Complex、IVDにおけるさらなる成長を実現するためのCDMO事業等、事業基盤の確立・強化に向けた積極的な設備投資を実施してまいりましたが、本中計では、株主の皆様への還元を強化してまいります。そのため、本中計におけるキャピタルアロケーションについては、事業にて創出した営業キャッシュ・フローに加えて資産売却などで得られたキャッシュを、各事業におけるメンテナンス投資、累進配当、自己株式取得も含めた戦略投資(M&A/成長投資)および一定の有利子負債(リース債務含む)の返済に充当してまいります。なお、株主還元についてはDOE(株主資本配当率)6%を目指し、累進配当を実施してまいります。また、機動的な自己株式取得の方針のもと、自己株式の取得を実施し、株主還元を強化いたします。なお、2025年10月にはすでに50億円の自己株式を取得しておりますが、2026年5月にはさらに50億円の自己株式の取得を決議いたしました。一方、M&Aを含む成長分野への投資については、CDMO戦略のさらなる強化を目的とし、2025年6月にPlasma Services Group, Inc.の買収を完了しております。このような成長投資については、今後も投資リターンを十分に精査したうえで実行してまいります。また事業ポートフォリオ戦略およびROICに基づいたキャピタルアロケーションの最適化を実践するとともに、選択と集中の考えの下、資本効率のさらなる向上を目指してまいります。なお、ROEおよび連結ROICをKPIとしてモニタリングしてまいります。また、投資案件については、事業リスクやカントリーリスクを考慮したハードルレート(8-24%)を設定し、投資管理を強化していくことで、ROEおよびROICの向上を目指してまいります。 エ 人的資本の強化当社は「新たな価値を創造する人財の育成」をマテリアリティとして設定しているように、社会インフラとしての機能を発揮するための根幹は人であるとの考えのもと、人的資本の強化に取り組んでおります。また、本中計の目標を達成するためには、上述のように患者ニーズ(Patient Journey)を支える医療インフラであることを従業員一人ひとりが認識し、「長く働きたい」と思える会社であることが重要であると考え、自身の業務および自社グループの製品・サービスが、自分自身や家族の生活に直結していることを認識し、また、日本および世界の社会・医療に影響を与えることによる達成感と責任感を持てるように、学術面も含めた様々な教育や知識取得の機会を設けていきます。今後、個々人のライフスタイルに合わせて勤務可能な柔軟な人事制度の整備など、様々な施策の導入を検討するとともに、経営から積極的に発信/コミュニケーションをとることで従業員エンゲージメントを一層向上させ、本中計目標の達成、ひいては企業価値の向上を目指します。 オ ガバナンスの強化当社は2005年より指名委員会設置会社(現・指名委員会等設置会社)として強固なガバナンス体制を維持してまいりましたが、より一層ガバナンスを強化し、執行と監督の機能は明確に分離したうえで、同じゴールへ向かえるようにONE TEAMとなって持続的な価値創造と稼ぐ力を強化することを企図し、2026年6月から新たな社外取締役を選任予定です。このように、取締役会が経営を監督することに加え、経営を共に強くすることができるよう、現場理解の機会を創出するなど、社外取締役への能動的かつ積極的な情報提供やコミュニケーションの機会を増やしてまいります。 ④2030年3月期の経営数値目標本中計においては、売上高の着実な成長と利益率の向上のみならず、資本効率の向上を目指し、下記のとおり経営数値目標を掲げます。指標2026年3月期2027年3月期2030年3月期ROE5.0%3.7%13%以上営業キャッシュ・フロー216億円230億円※1,500億円以上連結EBITDA(マージン)265億円(10.7%)290億円(11.3%)16%以上 LTS137億円(8.7%)155億円(9.5%)13%以上 IVD147億円(24.2%)163億円(25.1%)30%以上 HS31億円(10.5%)25億円(9.1%)10%以上連結営業利益(利益率)48億円(1.9%)90億円(3.5%)11%以上 LTS0億円(0.0%)27億円(1.6%)10%以上 IVD91億円(14.9%)110億円(16.9%)25%以上 HS18億円(6.0%)17億円(6.3%)8%以上ROIC1.5%3.0%10%以上 ※5年累計の経営目標値 ⑤持分法適用関連会社(Baylor Genetics Holdings, Inc.およびBaylor Miraca Genetics Laboratories, LLC)2025年3月末にBaylor Miraca Genetics Laboratories, LLCの全持分を保有する会社としてBaylor Genetics Holdings, Inc.が設立され、同時に外部からの優先株式による資金調達を実施しております。2026年3月期につきましては、昨年度に引き続き、がんや先天性疾患に関わる遺伝学的検査の受託数が増加し、増収となりました。引き続き営業強化等による売上拡大を含めた市場シェア拡大を図ると共に、株式公開に向けて事業を推進してまいります。(株式会社札幌ミライラボラトリーおよび株式会社札幌メディ・キャリー)2021年6月10日付で、札幌臨床検査センター株式会社との間で、北海道札幌地域において共同で検体検査ラボ事業を行うための合弁会社および同地域において共同で臨床検査関連の集荷・物流事業を行うための合弁会社を設立し、2022年3月期より事業を開始しております。(株式会社メディスケット)2022年4月1日付で、株式会社メディパルホールディングスとの間で、医療・ヘルスケア領域における物流プラットフォームの構築に取り組むための物流合弁会社を設立し、自社の集荷・物流効率の向上のみならず、他社への集荷サービス提供の拡張を目指しています。具体的には、集荷コスト、両社のルート共通化により温室効果ガス、保有車両等の削減を目標としております。(ケアレックス株式会社)2025年12月1日付で、株式会社ワキタへ発行済株式の80%を譲渡したことにより、持分法適用関連会社となりました。福祉用具レンタル市場は、高齢者人口増加による需要の高まりとともに拡大しており、今後もさらなる拡大が予想されます。一方で競争も激化しつつあり、さらに、仕入価格、物流費、人件費等が高騰する中、業界のビジネス構造上、コスト増加分をレンタル価格に転嫁することは難しく、厳しさも増しています。このような環境下、業界上位企業は資本力を背景に事業の基盤強化や規模拡大を図ることで市場変化に対応し成長しています。株式会社ワキタは福祉用具レンタルを含む介護市場の拡大を見据え、近年、福祉用具レンタル卸事業を営む企業を買収し、介護関連事業の強化を図っています。ワキタの戦略的投資の下、ケアレックスは今後一層変化する市場環境においても持続的成長を実現していくものとしています。 ⑥財務戦略と財務規律本中計においては、安定的なキャッシュ・フローの創出と健全な財務規律の維持を重要なテーマとして掲げ、下記のとおり財務戦略を実行してまいります。1)キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善等による営業キャッシュ・フローの最大化2)ファイナンスリースの機動的な活用3)資産売却の実践(財務規律) 2026年3月期(実績)2030年3月期(目標)(リース債務を除く)純有利子負債/EBITDA倍率(倍)0.46倍1.3倍以下自己資本比率(%)51.3%40%以上 Ⅲ.2027年3月期の計画2027年3月期につきましては、ベース事業の成長および検査・関連サービス事業における収益性の改善、臨床検査薬事業におけるNEURO関連およびCDMO事業の伸長等により、下記のとおりとなる見込みです。単位:億円(四捨五入)2026年3月期実績2027年3月期予想売上高2,4742,560EBITDA※1265290営業利益4890経常利益2880親会社株主に帰属する当期純利益6850ROE5.0%3.7%ROIC※21.5%3.0%※1 EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費※2 ROIC=NOPAT(営業利益-みなし法人税)/ 投下資本 [(純資産+有利子負債(リース債務含む)+ その他の固定負債)の期首・期末残高の平均] なお、業績の見通しにつきましては、本資料の発表日現在において入手可能な情報および将来の業績に影響を与える不確実な要因に係る本資料発表日現在における仮定を前提としております。実際の業績等は、今後様々な要因によってこれと大きく異なる結果となる可能性があります。 Ⅳ.株主還元と成長への投資各事業から生み出される利益および資金につきましては、主たる配当のKPIとして連結自己資本配当率(DOE)6%を目指し、その上でキャッシュ・フロー、中長期的に健全な財務基盤の維持などを総合的に勘案した累進配当を実施してまいります。また、自己株式の取得を「自社への戦略投資」と位置づけ、積極的かつ機動的に実施してまいります。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 (1)経営成績の分析当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善等により、経済活動は緩やかな回復基調となりました。しかしながら、米国の通商政策、イラン情勢をはじめとする中東地域の緊迫化を背景とした資源価格や物流費高騰への懸念等により、先行き不透明な状況が続きました。当社グループを取り巻く事業環境につきましては、医療機関の経営状況の悪化や医療費の削減要請に伴う検体検査実施料の抑制等、厳しい事業環境が継続しております。このような環境の中、当社グループといたしましては、これまでの投資の刈り取りフェーズと位置付けた5か年の中期経営計画「H.U. 2030」を策定し、一体化経営のさらなる深化等を通して収益性を向上すべく各種施策に取り組んでおります。検査・関連サービス事業は、販売価格の適正化も含めて堅調に推移しております。臨床検査薬事業は、NEURO領域においては、血漿中の217位リン酸化タウ蛋白(pTau217)とβ-アミロイド1-42の比率を測定する検査試薬が2025年5月にアルツハイマー病の診断補助を目的とした血液用体外診断用医薬品として初めて米国食品医薬局(FDA)より承認を取得し、本試薬を中心としたNEURO領域の製品が成長しております。加えて、国内では、2025年11月に厚生労働省に製造販売承認の申請を行い、また欧州では血液を用いたNfL測定用体外診断用医薬品の認証を取得するなど、さらなる成長に向けての準備を進めております。CDMO事業については、2025年6月23日に発表したPlasma Services Group, Inc.の買収も背景に、原料供給の強化を進めております。これらの結果といたしまして、当連結会計年度の売上高は247,362百万円(前期比1.8%増)となりました。利益では、ベース事業の増収による増益に加えて、検査・関連サービス事業における販売価格の適正化をはじめとした限界利益の増加および完全稼働したH.U. Bioness Complexを中心とした検査オペレーションの改善が寄与し、増益となりました。その結果、営業利益は4,780百万円(前期比81.0%増)となりました。経常利益は、営業利益の増加による増益はあったものの、前連結会計年度には出資金運用益を計上していたこと等により、結果として減益となり、2,834百万円(前期比40.2%減)となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、固定資産売却益および関係会社株式売却益の計上等により、6,823百万円(前期比147.1%増)となりました。 ① 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等当社グループでは、将来の飛躍的かつ持続的な成長と収益力向上の観点から、連結売上高、連結営業利益およびEBITDAを、株主資本の効率的な運用の観点からROE(株主資本利益率)を、投下資本に対する収益性向上の観点からROIC(投下資本利益率)を、それぞれ重要な経営指標と位置付けています。当連結会計年度の実績は、連結売上高が247,362百万円、連結営業利益が4,780百万円、EBITDAが26,538百万円、ROEが5.0%、ROICが1.5%となっております。なお、個別プロジェクトの投資判断については、社内の投資委員会が各案件の妥当性確認や論点整理をするなど、決裁前の事前審査機能の強化を図るとともに、投資後のモニタリングを実施しています。投資案件の評価においては、資本コストに一定の事業リスクを反映したハードルレートを用いた評価を実施し、各事業部門に資本コストを意識した投資を促すとともに、これを上回るリターンの創出による中長期的な企業価値向上への寄与を重視しております。 ② セグメントごとの経営成績イ.検査・関連サービス事業(LTS)売上では、がんゲノムを始めとした遺伝子関連検査および特殊検査が伸長したこと等により増収となりました。これらの結果、売上高は157,297百万円(前期比2.8%増)となりました。利益では、ベース事業の増収による増益に加えて販売価格の適正化や検査オペレーションの改善をはじめとした限界利益の増加等により、営業利益は31百万円(前期は営業損失4,638百万円)となりました。 ロ.臨床検査薬事業(IVD)売上では、新型コロナウイルス関連製品の売上高は減少したものの、NEURO関連売上が海外を中心に伸長したこと等により増収となりました。これらの結果、売上高は60,735百万円(前期比0.4%増)となりました。利益では、海外市場の環境変化を背景としてCDMO事業が軟調に推移し製品ミックスが変化したことに加えて、新型コロナウイルス関連製品の減収による減益およびPlasma Services Group, Inc.の買収費用の発生等により、営業利益は9,050百万円(前期比20.2%減)となりました。 ハ.ヘルスケア関連サービス事業(HS)売上では、2025年12月よりケアレックス株式会社を持分法適用関連会社としたことで売上高が減少したものの、滅菌・手術関連事業が伸長したことおよび在宅事業において2024年12月より株式会社ガイアメディケアを連結子会社化したこと等により、この影響をおおむね相殺しました。これらの結果、売上高は29,330百万円(前期比0.6%減)となりました。利益では、滅菌・手術関連事業の増収による増益があったものの、ケアレックス株式会社を持分法適用関連会社とした影響等により、営業利益は1,759百万円(前期比1.0%減)となりました。 ③ 生産、受注および販売の実績イ.生産実績当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)前年同期比(%)検査・関連サービス事業(百万円)155,229103.1臨床検査薬事業(百万円)82,56497.2ヘルスケア関連サービス事業(百万円)27,30299.5合計(百万円)265,097100.8(注)金額は、販売価格換算によっております。 ロ.受注実績当社グループは、役務又は商品等の受注から完了又は納品等までの所要時間が短いため、常に受注残高は僅少であり、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため記載を省略しております。 ハ.販売実績当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2025年4月1日至 2026年3月31日)前年同期比(%)検査・関連サービス事業(百万円)157,297102.8臨床検査薬事業(百万円)60,735100.4ヘルスケア関連サービス事業(百万円)29,33099.4合計(百万円)247,362101.8(注)主要な販売先については、総販売実績に対する割合が10%以上に該当する販売先がありませんので、記載を省略しております。 (2)財政状態の分析 前連結会計年度(2025年3月31日)当連結会計年度(2026年3月31日)増減資産合計(百万円)279,582267,466△12,115負債合計(百万円)142,287129,994△12,292純資産合計(百万円)137,295137,472177自己資本比率(%)49.051.32.3(資産)当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ12,115百万円減少し、267,466百万円となりました。その主な要因は、現金及び預金の増加7,219百万円、ソフトウエアの増加1,975百万円、商品及び製品の増加1,317百万円および仕掛品の増加1,219百万円があった一方、ソフトウエア仮勘定の減少8,578百万円、長期貸付金の減少4,860百万円、工具、器具及び備品(純額)の減少3,654百万円、流動資産その他の減少2,762百万円、リース資産(純額)の減少1,918百万円および土地の減少1,882百万円があったためであります。(負債)当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ12,292百万円減少し、129,994百万円となりました。その主な要因は、1年内償還予定の社債の増加5,000百万円および支払手形及び買掛金の増加1,251百万円があった一方、長期借入金の減少10,027百万円、社債の減少5,000百万円およびリース債務(固定)の減少1,312百万円があったためであります。(純資産)当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ177百万円増加し、137,472百万円となりました。その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益6,823百万円、為替換算調整勘定の増加4,934百万円および株式給付信託に対する自己株式の処分による増加4,339百万円があった一方、配当金の支払7,151百万円、自己株式の取得による減少5,002百万円および株式給付信託による自己株式の取得による減少3,688百万円があったためであります。以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.3%増加し、51.3%となりました。 (3)キャッシュ・フローの状況の分析(連結キャッシュ・フローの状況) 前連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)当連結会計年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)増減(百万円)営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)21,96421,565△399投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△15,95811,33927,298フリー・キャッシュ・フロー(百万円)6,00632,90526,898財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△5,298△26,393△21,095現金及び現金同等物(百万円)40,88448,1047,219当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ7,219百万円増加し、48,104百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において営業活動により獲得した資金は、21,565百万円(前年同期21,964百万円の獲得)となりました。その主な要因は、減価償却費21,139百万円および税金等調整前当期純利益8,582百万円があった一方、関係会社株式売却損益3,928百万円、法人税等の支払額2,346百万円および固定資産売却損益2,288百万円があったためであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において投資活動により獲得した資金は、11,339百万円(前年同期15,958百万円の使用)となりました。その主な要因は、貸付金の回収による収入6,072百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入4,949百万円、有形固定資産の売却による収入4,480百万円および関係会社出資金の払戻による収入3,738百万円があった一方、子会社株式の取得による支出2,876百万円、無形固定資産の取得による支出2,507百万円および有形固定資産の取得による支出2,355百万円があったためであります。(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において財務活動により使用した資金は、26,393百万円(前年同期5,298百万円の使用)となりました。その主な要因は、長期借入金の返済による支出10,045百万円、配当金の支払額7,137百万円、自己株式の取得による支出5,002百万円およびファイナンス・リース債務の返済による支出4,476百万円があったためであります。 (4)資本の財源および資金の流動性についての分析当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、設備投資、研究開発、借入金の返済ならびにこれらに係る利息の支払い、配当の支払い、自己株式の取得、法人税の支払いおよびM&Aであります。当社グループは、引き続き財務の健全性を保ちつつ、営業活動により相応のキャッシュ・フローを生み出すことにより、当社グループの成長に必要な資金調達が可能であると考えております。短期運転資金は自己資本および金融機関からの短期借入金を基本としており、設備投資や長期運転資金につきましては、金融機関からの長期借入、社債又はその組み合わせによる調達を基本としております。なお、当連結会計年度末における有利子負債は74,332百万円であります。主なものは、社債26,100百万円、長期リース債務10,543百万円、1年内返済予定の長期借入金10,027百万円、短期借入金10,000百万円、長期借入金9,154百万円、1年内償還予定の社債5,000百万円および短期リース債務3,506百万円であります。また、当社は、緊急時の手元流動性を確保すること等を目的として、主要取引金融機関と総額20,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。当該契約に基づく当連結会計年度末における借入実行残高はありません。当社グループは、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)より格付A(ネガティブ)を取得しており、引き続き格付けの維持・向上に努めてまいります。 (5)重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを必要としており、経営者は、これらの見積りについて、当連結会計年度末時点において過去の実績、将来計画やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。また、連結財務諸表の作成に当たって用いた重要な会計上の見積りおよび見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。会計上の見積りおよび見積りに用いた仮定のうち、重要なものおよびその補足事項については以下のとおりであります。 固定資産の評価 有形固定資産・無形固定資産については、資産又は資産グループに減損の兆候がある場合には、減損損失を認識するかどうかの判定を行います。当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識すべきと判定し、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上します。回収可能価額は、正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額とし、正味売却価額は資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除しています。使用価値は資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引いて算定します。 翌連結会計年度の業績が予算を大きく下回る場合や、将来キャッシュ・フローに重要な影響を与える事象が発生した場合には、減損損失を計上する可能性があります。