有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2025|10,110 文字
3【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクや不確実性は、次のとおりです。ただし、これらは当社グループに係るすべてのリスクや不確実性を網羅したものではなく、現時点において予見できない、あるいは重要とみなされていない他の要因の影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループを取り巻くリスクや不確実性に関して、当社グループではGrowth & Operating Comitteeなどの意思決定機関において定期的に議論し、これらのリスクや不確実性を機会として活かす、あるいは低減するための対応を検討しています。その検討結果は取締役会へ報告・議論されており、以下に記載したリスクや不確実性には執行側だけでなく取締役会における議論も反映しています。なお、これらは当連結会計年度末現在において判断したものであり、文中の将来に関する事項はその発生あるいは達成を保証するものではありません。 (1)企業理念企業理念にもとづく経営 当社は、企業理念であるヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念の主役を「日常と医療の領域で生活する人々」ととらえ直し、従来の「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」へと貢献すべき主役を拡大しました。2022年6月に定款の一部を変更し、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念として定款に規定しステークホルダーズと共有しており、これらを「パーパス」としてとらえています。また、その実現の結果として得られる患者様と生活者の皆様のベネフィット向上が、長期的に当社グループの業績および企業価値の向上につながると考えています。2021年4月からスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の戦略意思ならびに2022年5月に発出したhhceco(hhc理念+エコシステム)宣言における他産業との連携を推進するビジネスモデル構築についても企業理念であるhhcに依拠したものであり、人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正という社会善を効率的に実現する企業として患者様の真のニーズを理解することによって生まれる強い動機付けが当社グループのイノベーションの源泉となっています。また、患者様価値を創出するための新薬の研究・開発の更なる推進、高品質な製品の生産・販売、医薬品の安全な使用を実現するための情報の管理・提供等を統制のもとで推進する重要性を「インテグリティ」としてとらえています。リンパ系フィラリア症の治療薬の無償提供をはじめとする医薬品アクセス向上や、認知症と共生する「まちづくり」への取り組みなど、ESGへの取り組みもこの理念を根幹として展開しています。 従って、企業理念の当社グループへの浸透の不徹底と理念実現に向けた経営の実践の停滞など、患者様と生活者の皆様がベネフィット向上を十分に得るうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (2)事業戦略レケンビと次世代AD治療剤の価値最大化 当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においても、アルツハイマー病(AD)治療剤「レケンビ」(一般名:レカネマブ)をはじめとする次世代AD治療剤の価値最大化を最重要戦略の一つと定めています。その中で、患者様の受診開始から診断、治療およびモニタリングまでの診断・治療パスウェイの構築を進めています。また、「レケンビ」については血液バイオマーカーの進展や維持療法及び皮下注製剤の開発なども併せ、このパスウェイの利便性を向上させていくことをめざしています。これらが遂行できない場合、患者様に次世代AD治療剤を十分にお届けできない可能性があり、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。 また、当社グループは、「レケンビ」について、米国においてValue-based Pricingのコンセプトに基づき透明性の高い説明を伴った価格を設定するなど、より幅広い当事者様アクセスの促進、経済的負担の軽減および医療システムの持続可能性への貢献をめざしていますが、様々な要因により患者様の「レケンビ」へのアクセスが制限される場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。レンビマの価値最大化 当社グループと米メルク社は、抗がん剤「レンビマ」と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(一般名)を含む他の治療薬との併用療法に関して複数のがん種を対象とする複数の臨床試験を実施中です。 しかしながら、本併用療法の臨床試験において期待した結果が得られなかった場合、競合品の予期せぬ試験結果や承認タイミングによってポジショニングが変化した場合、並びに当初想定した時期に「レンビマ」が追加の適応症に関する承認を取得できないことで製品の競争力が減弱した場合などに、「レンビマ」の売上計画を達成できない可能性があります。 パートナーシップモデル 当社グループは、ビジネスの効率性・生産性を向上させるうえで、パートナーシップは有効な手段と考えており、最先端のサイエンスやテクノロジーの活用による新薬開発の加速を目的としたパートナーシップや、各リージョンでのリソースの効率的活用と事業価値最大化、協業先との新しいソリューションの共同開発を目的としたパートナーシップを活用しています。 パートナーシップを活用した医薬品および「日常と医療の領域で生活する人々」を対象とした新しいソリューションの研究開発、生産、販売活動において、パートナーとの意見の相違が生じた場合や事業環境の変化等に伴いパートナーの事業継続が困難となった場合、もしくは協業が困難になった場合には、上記活動に遅延や非効率が生じるほか、為替変動の影響などにより予測外のパートナー費用負担が発生することで計画された利益が想定外に減少するなど、事業価値最大化に支障をきたす可能性があります。 また、契約の解釈の相違などが生じた場合には、パートナーとの間で訴訟や仲裁に発展し、最終的にはパートナーシップの解消をもたらす可能性もあります。この場合、将来に期待されていた新薬の創出や売上収益が実現できないなど、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。デジタルトランスフォーメーション 当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」において、全ステークホルダーの想いをつなげ、解決スピードを加速させ、データに基づく強固な経営を効率的に実行するため、あらゆる活動でデジタルトランスフォーメーションに取り組むことを大きなテーマとして掲げています。新技術の活用により創薬のスピードと成功確率を飛躍的に向上させるとともに、「日常と医療の領域で生活する人々」に薬剤を含めたソリューションをお届けするまでの全局面におけるパラダイムシフトの実現を企図し、他産業と得意技を持ち寄り協業するエコシステム(hhceco)の構築によりデジタルトランスフォーメーションを実現させることが重要課題です。当社ではCOO & チーフグロースオフィサーとチーフインフォメーションオフィサーを中心に、全社デジタル戦略を加速します。 ITの進化に伴う経営環境の変化を見据えれば、デジタルトランスフォーメーションの必要性は明白であり、その実現に向けた取り組みの停滞や、実現するうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (3)医薬品の研究開発、生産および販売活動新薬開発 当社グループは、神経領域やがん領域をはじめとして、多くの新薬開発を行っています。新薬の研究開発には長い期間と多額の投資を必要とします。加えて、有効性や安全性の観点から医薬品候補化合物の開発を中止あるいは中断する可能性があります。例えば、米メルク社と当社グループが共同開発を行っている「レンビマ」とペムブロリズマブの併用療法では、転移性非小細胞肺がんに係るフェーズⅢ試験において主要評価項目を達成しませんでした。 また、臨床試験で期待された結果が得られた場合であっても、各国の厳格な承認審査の結果、承認が得られないもしくは追加データの提出を要求され承認が遅延する可能性があります。あるいは、承認が得られた場合でも承認条件として求められた追加臨床試験で安全性・有用性が検証できなかった場合には承認を取り消される可能性があります。 このような新薬開発の不確実性に伴い、当初想定していた開発計画が中止あるいは遅延した場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。副作用 医薬品は承認・販売された場合でも、その後のデータ・事象により、医薬品としてのベネフィットとリスクのプロファイルが承認時とは異なってくる場合があります。重大な副作用の発現・集積により、製品の添付文書の変更、販売停止、回収等の措置を実施する場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。 当社は、製品に関するすべての有害事象や安全性に関する情報を科学的・医学的に評価し、規制当局に報告する体制としてすべての地域の安全管理責任者等で編成するセーフティ・エグゼクティブ・コミッティ、および製品毎の安全性医学評価責任者等で編成するグローバル・セーフティ・ボードを設置しています。これらの体制を中心として、新薬も含め製品のグローバルな安全性監視体制を確立し、継続的に製品の適正使用の徹底に努めています。 製品品質および安定供給 高品質な医薬品を患者様へ確実にお届けする必要がありますが、使用する原材料、自社工場あるいは製造委託先での製造プロセス等、何らかの原因により製品品質に問題が生じた場合や、使用原材料の供給停止や製造工程における技術上の問題、パンデミック、国家間の紛争などによる地政学的問題、重大な災害あるいは経済安全保障上の問題等により工場の操業停止やサプライチェーンに問題が生じた場合には、製品の欠品、回収、販売停止などにより患者様の健康に支障をきたす可能性があるほか、業績へ影響を及ぼす可能性があります。また、何らかの原因による急な需要変動により製品の安定供給に影響が及ぶ可能性があります。加えて、現在日本政府や米国政府が取り組んでいる経済安全保障の対応において、法令上の義務を課され、当社グループ製品の安定供給体制をより強化する対応が求められる、あるいはサプライチェーンの変更が求められる可能性があります。さらに、米国に端を発する各国の関税政策変更により製造原価が上昇するリスクがあり、その影響を抑制するため、サプライチェーンを変更する可能性があります。 当社グループは、安心してご使用いただける高品質な医薬品の供給を可能とする安定供給体制ならびに品質保証体制を構築しており、グローバル基準のGMP(製造管理および品質管理に関する基準)に準拠した製造および品質管理を行っています。製造委託先に対しても、製造委託先における安定供給体制ならびに品質保証体制の確認、定期的なGMP監査に加え技術者派遣による製造現場の確認などを実施しています。あわせて、製造委託先と原材料の取引先に対してサステナビリティ評価を実施するとともに「ビジネス・パートナーのための行動指針」の遵守をお願いすることで、当社グループと同様の人権尊重・腐敗防止への取り組みを求めています。さらに、流通段階での品質確保にも取り組んでいます。また、当社グループは、世界の主要地域に自社工場を保有し、各工場から安定的に製品供給を行っています。加えて、事業継続計画(BCP)に定めた重要原材料や完成品の適正在庫を確保するとともに、地政学的なリスクを考慮した原材料の複数購買体制および複数工場での製品の製造体制を構築することで、パンデミック、重大な災害、紛争や急な需要変動が発生した場合においても安定供給を確保する体制の整備に取り組んでいます。知的財産 先発医薬品の特許期間およびデータ保護期間が切れると、通常同一成分のジェネリック医薬品の販売が可能となり、先発医薬品の売上収益が大きく減少する可能性があります。また、特許の不成立や特許成立後の無効審判の結果等により取得した特許権を適切に保護できない場合、想定より早くジェネリック医薬品やバイオシミラー品の市場参入を招き、同様に売上収益が減少する可能性があります。 加えて、特許期間内であっても、米国のようにジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請が可能な国もあり、そのような国では、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請を行った企業との間で特許侵害訴訟が起こる可能性があります。それら特許訴訟の結果によっては、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品が当該特許期間満了より早期に参入し、当該国内の市場シェアが大幅かつ急速に低下する可能性があります。例えば、米国において「レンビマ」に関する後発品申請に関する訴訟が係属しており、その結果によっては当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの医薬品を保護する物質特許が無効と判断された場合、当該国内における当該医薬品の市場価値が失われ、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。 一方、当社グループでは、第三者の知的財産権を侵害することのないように常に注意を払っていますが、万が一当社グループの事業活動が第三者の知的財産権を侵害した場合、第三者から当該事業活動を中止することを求められたり、損害賠償を請求されたりする可能性があります。訴訟 当社グループは、その事業運営に関し、製造物責任その他の人身被害等の製品に関する事項、消費者保護、商業規制、証券法、データ保護、契約違反、法令違反、環境規制など様々な事由に関連して、政府を含む第三者の提訴や調査等に起因する訴訟、仲裁その他の法令上や行政上の手続きに関与し、または関与する可能性があります。訴訟等の法的手続きは、その性質上、不確実性を伴います。当社グループはこれらの手続きに適切に対応し、正当な主張を行って参りますが、将来的に当社グループに賠償金支払いを命じる判決や、和解による支払いなどが生じる可能性があり、この結果、当社グループの経営状況、業績、社会的評価に重要な影響を及ぼす可能性があります。 データの信頼性 製薬企業にとって、研究データ、生産データ、市販後調査や医薬品安全性監視等に関するデータのインテグリティ(完全性、一貫性、正確性)の確保は、製品の安全性や信頼性の根拠となるため極めて重要であり、これら重要データのインテグリティが確保できないことにより、新薬開発の遅延・中止や、製品の回収、販売の停止など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、データの記録・検証・承認・保管のシステム化を推進しています。さらに、適切な内部統制の構築・整備、運用等により、製品品質を裏付けるデータ、臨床試験データおよび市販後調査を含む医薬品安全性監視に関するデータのインテグリティの強化をはかるとともに、重要データに携わる社員を対象とした研修を継続して実施しています。また、データのインテグリティ確保にあたり、取引開始前に新規委託候補先におけるデータ管理体制を確認しています。医療費抑制策 各国政府は、増大する医療費を抑えるため、様々な薬剤費抑制策を導入・検討しています。日本では医療用医薬品の薬価引き下げや、ジェネリック医薬品の使用促進などの施策がとられています。中国においても、国家医薬品償還リスト収載に伴う大幅な価格引き下げや集中購買制度においてより安価なジェネリック医薬品の使用が促進されており、例えば、「レンビマ」を国家医療保険償還医薬品リストに収載する際、販売価格を引き下げました。また、末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は政府集中購買の対象となったことから販売価格を引き下げました。欧州では、新薬承認が得られた製品であっても、期待した価格による保険償還がなされない場合があります。これらの施策の推進ならびに新たな施策の導入により、当初に見込んでいた売上収益が得られない可能性があります。 当社グループでは、各国の制度や政策動向を把握しつつ、有効性や安全性に加え、介護の軽減や対象疾患の重篤度など、薬剤のもつ社会的価値を算出し、イノベーションに対する適切な評価の推進をはかっています。 (4)その他サクセッション 当社グループは、30年以上にわたり、現代表執行役CEOが強いリーダーシップを発揮してグローバルに事業を展開し成長を遂げてきました。代表執行役CEOがサクセッションプランを策定して、将来の代表執行役CEOを育成することに加え、突発的事態に対しても万全な備えを行うこと、および代表執行役CEOの選定においては、取締役会がその客観性や公正性を確保することが重要です。これらができない場合、当社グループの企業理念の実現や経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。 このため、当社取締役会は代表執行役CEOの選定を取締役会の最も枢要な意思決定事項のひとつと位置付けるとともに、サクセッションプランに関するルール、手続きを定め、独立社外取締役が将来の代表執行役CEOの育成等のプロセスに関与することで、CEO選定の客観性と公正性を合理的に確保できると考えています。hhcガバナンス委員会では、年2回、代表執行役CEOから提案されるサクセッションプランを全取締役と情報共有するとともに突発的事態に対する備えについても上記の検討の中で確認がなされています。 また、当社執行役およびグローバル重要ポジションにおいて、最適の人財を配することができない場合、当社グループの経営へ大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、CEOのサクセッションへの取り組みに加え、執行役を含むグローバルでの重要ポジションにおける計画的なリーダーシップの継承を企図して、後継候補者の選定と育成、リテンション施策などの進捗状況を確認するサクセッションプランニングを年1回実施しています。人財の確保と育成 当社の強みは「企業理念の深い浸透」です。当社は企業理念(hhc理念)への深い理解と共感を根幹とし、全社員が主体的に取り組む自律したプロフェッショナルとして活躍することをめざしています。また当社は、定款において、社員をhhc理念の実現に向けた社の重要なステークホルダーと定め、「安定的な雇用の確保」、「人権および多様性の尊重」、「自己実現を支える成長機会の充実」、「働きやすい環境の整備」を掲げています。 hhc理念に共感する多様な人財を獲得し、社員一人ひとりがhhc理念実現に向け、様々な環境下において個性や強みを発揮し、中長期的に取り組むことができない場合、イノベーションの創出と企業理念の実現に大きな影響を及ぼす可能性があります。 当社の人財育成の基本は、社員一人ひとりが患者様とともに時間を過ごす共同化によって患者様の真のニーズを理解することであり、この共同化が社員一人ひとりの動機付けとなります。グローバルリーダー育成プログラム等、様々な社内研修プログラムに患者様との共同化のセッションを盛り込み、hhc理念の浸透をはかることで人財育成を強化しています。また、社員のWork in Life(ワーク・イン・ライフ)をコンセプトに、社員の健康管理、タイムマネジメント、長時間労働の是正を進めるとともに、多様な社員が様々な環境下でも生産性高く、健康的に、自分らしく仕事へ取り組むことができる就業環境を整備しています。社員の健康と多様な働き方を支援する各種制度の導入や職場環境の整備を進めており、より魅力ある企業となることで、人財の確保を図っています。情報セキュリティ IT・デジタルの活用が進展する一方で、年々、高度化・巧妙化するサイバー攻撃によって、操業停止等、事業活動への影響が生じる可能性が高まっています。 当社グループは、個人情報や未公開情報を含めた多くの重要情報を保有していますが、そのような重要情報が社外に流出した場合、信頼や競争優位性を大きく失うこととなります。特に、近年は個人情報保護に関するグローバルな要請に的確に対応することが求められてきています。また、創薬段階の未公開構造式などの流出は特許の申請・取得に対して影響を及ぼします。当社グループの信頼あるいは競争優位性の低下が生じた場合には、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは事業活動への影響を防止するため、Global IT体制を発足し、システムインフラのセキュリティ強化に加え、情報管理に関する規程等を整備し、役員・従業員へ日常業務における情報管理教育、サイバーセキュリティ訓練など、グローバルな情報セキュリティに関して更なるガバナンス強化と施策の実行に取り組んでいます。 気候変動 気候変動は、企業活動に影響を与える重要な課題であると認識しています。当社グループは、2019年6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、当提言が推奨する気候シナリオ分析を行い、2020年度に結果を開示しました。その後、気候変動に関連するリスク・機会の当社グループに及ぼしうる影響を再評価するため、複数の気候シナリオを考慮した分析を再度実施し、結果を2023年度に開示しました。 分析の結果、物理的リスクとして、気候変動に伴う感染症リスク増加により医薬品アクセス維持・向上のために必要な投資・コストが増加する可能性があるほか、自然災害により生産活動の停滞や資産・従業員への被害が生じる可能性を再認識しました。これらのリスクに対して、熱帯感染症に対する医薬品の開発や蔓延地域への医薬品供給による医薬品アクセスの維持・向上に努めているほか、生産拠点のバックアップ体制導入や製品・原料の在庫確保、生産拠点・倉庫における自然災害リスクの確認と予防策の実施といった対策を講じています。移行リスクでは、温室効果ガス排出削減ならびにその開示が不十分な場合のステークホルダーズからの信頼性低下や、炭素税価格上昇に伴うエネルギーコスト・調達品価格上昇のリスクを再確認しました。また、温室効果ガス排出削減のための追加的な設備投資や、包装材等を温室効果ガス排出量の少ない製品に切り替えるために追加的なコストが発生する可能性をリスクとして認識しました。これらのリスクに対しては、ネットゼロ達成に向けたロードマップに則り、2030年を目標年とするRE100の達成を視野に入れた再生可能エネルギー電力の積極的導入、インターナル・カーボンプライシングの導入による温室効果ガス削減投資の推進、一部製品の包装容器でのバイオプラスチック採用やその他製品での低環境負荷包材導入検討といった対策を講じています。 また、当社グループは、2023年11月にSBT2℃目標からSBT1.5℃目標への変更が承認され、かつ12月には「気候変動イニシアティブ(JCI)」より2050年までのネットゼロ達成にコミットするJCI Race to Zero Circleへの参加承認を取得し、各目標達成に向けた取り組みを進めています。 これらのリスクに関する当社グループへの財務影響と対策状況は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取り組み (2)サステナビリティに関する「戦略」と「指標と目標」④ 気候変動に関する取り組み」に記載しています。のれんや無形資産の減損 当社グループは、企業買収や製品・開発品の導入を通じて獲得したのれんおよび無形資産を計上しています。これらの資産については、計画と実績の乖離や市場の変化等により回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には減損処理をする必要があり、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 例えば、当社グループにおけるのれん(2024年度末残高:2,334億円)の多くはアメリカス医薬品事業に配分しています。その回収可能価額は、経営者により承認された事業計画を基礎としたアメリカス医薬品事業の将来キャッシュ・フローや成長率等の仮定を用いて算定しており、それらの仮定は、将来における新薬の承認取得・適応追加の有無および時期、上市後の薬価および販売数量、競合品の状況や金利の変化等の影響を受けます。
FY2024|10,202 文字
3【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクや不確実性は、次のとおりです。ただし、これらは当社グループに係るすべてのリスクや不確実性を網羅したものではなく、現時点において予見できない、あるいは重要とみなされていない他の要因の影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループを取り巻くリスクや不確実性に関して、当社グループでは執行役会などの意思決定機関において定期的に議論し、これらのリスクや不確実性を機会として活かす、あるいは低減するための対応を検討しています。その検討結果は取締役会へ報告・議論されており、以下に記載したリスクや不確実性には執行側だけでなく取締役会における議論も反映しています。なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大してから約4年が経過し、ワクチン接種の普及や治療薬の上市および、ウイルスの弱毒化により、当該感染症が当社グループの事業に与える影響・リスクは重要ではないと判断し、前事業年度の有価証券報告書に記載していた「(4)その他 新型コロナウイルス感染症」を削除しています。また、これらは当連結会計年度末現在において判断したものであり、文中の将来に関する事項はその発生あるいは達成を保証するものではありません。 (1)企業理念企業理念にもとづく経営 当社は、企業理念であるヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念の主役を「日常と医療の領域で生活する人々」ととらえ直し、従来の「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」へと貢献すべき主役を拡大しました。2022年6月に定款の一部を変更し、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念として定款に規定しステークホルダーズと共有しており、これらを「パーパス」としてとらえています。また、その実現の結果として得られる患者様と生活者の皆様のベネフィット向上が、長期的に当社グループの業績および企業価値の向上につながると考えています。2021年4月からスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の戦略意思ならびに2022年5月に発出したhhceco(hhc理念+エコシステム)宣言における他産業との連携を推進するビジネスモデル構築についても企業理念であるhhcに依拠したものであり、人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正という社会善を効率的に実現する企業として患者様の真のニーズを理解することによって生まれる強い動機付けが当社グループのイノベーションの源泉となっています。また、患者様価値を創出するための新薬の研究・開発の更なる推進、高品質な製品の生産・販売、医薬品の安全な使用を実現するための情報の管理・提供等を統制のもとで推進する重要性を「インテグリティ」としてとらえています。リンパ系フィラリア症の治療薬の無償提供をはじめとする医薬品アクセス向上や、認知症と共生する「まちづくり」への取り組みなど、ESGへの取り組みもこの理念を根幹として展開しています。 従って、企業理念の当社グループへの浸透の不徹底と理念実現に向けた経営の実践の停滞など、患者様と生活者の皆様がベネフィット向上を十分に得るうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (2)事業戦略レカネマブと次世代AD治療剤の価値最大化 当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においても、抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブ(一般名)をはじめとする次世代アルツハイマー病(AD)治療剤の価値最大化を最重要戦略の一つと定めています。その中で、患者様の受診開始から診断、治療およびモニタリングまでの診断・治療パスウェイの構築を進めています。また、血液バイオマーカーの進展や維持療法や皮下注製剤の開発なども併せ、このパスウェイを簡素化していくことをめざしています。これらが遂行できない場合、患者様に次世代AD治療剤を十分にお届けできない可能性があり、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。 また、当社グループは、米国においてValue-based Pricingのコンセプトに基づき透明性の高い説明を伴った価格を設定するなど、より幅広い当事者様アクセスの促進、経済的負担の軽減および医療システムの持続可能性への貢献をめざしていますが、様々な要因により患者様の「レケンビ」へのアクセスが制限される場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。 レンビマの価値最大化 当社グループと米メルク社は、抗がん剤「レンビマ」と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(一般名)の併用療法に関して複数のがん種を対象とする複数の臨床試験を実施中です。しかしながら、本併用療法の臨床試験において期待した結果が得られなかった場合、並びに競合品の予期せぬ試験結果や承認タイミングによってポジショニングが変化し、当初想定した時期に「レンビマ」が追加の適応症に関する承認を取得できないことで製品の競争力が減弱し、「レンビマ」の売上計画を達成できない可能性があります。「レンビマ」のパートナーシップモデルによって得られる収益には販売マイルストンが設定されており、販売目標が未達成となることで実現されない場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。パートナーシップモデル 当社グループは、ビジネスの効率性・生産性を向上させるうえで、パートナーシップは有効な手段と考えており、最先端のサイエンスやテクノロジーの活用による新薬開発の加速を目的としたパートナーシップや、各リージョンでのリソースの効率的活用と事業価値最大化、協業先との新しいソリューションの共同開発を目的としたパートナーシップを活用しています。 パートナーシップを活用した医薬品および「日常と医療の領域で生活する人々」を対象とした新しいソリューションの研究開発、生産、販売活動において、パートナーとの意見の相違が生じた場合や事業環境の変化等に伴いパートナーの事業継続が困難となった場合、もしくは協業が困難になった場合には、上記活動に遅延や非効率が生じるほか、為替変動の影響などにより予測外のパートナー費用負担が発生することで計画された利益が想定外に減少するなど、事業価値最大化に支障をきたす可能性があります。また、契約の解釈の相違などが生じた場合には、パートナーとの間で訴訟や仲裁に発展し、最終的にはパートナーシップの解消をもたらす可能性もあります。この場合、将来に期待されていた新薬の創出や売上収益が実現できないなど、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。デジタルトランスフォーメーション 当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」において、全ステークホルダーの想いをつなげ、解決スピードを加速させ、データに基づく強固な経営を効率的に実行するため、あらゆる活動でデジタルトランスフォーメーションに取り組むことを大きなテーマとして掲げています。新技術の活用により創薬のスピードと成功確率を飛躍的に向上させるとともに、「日常と医療の領域で生活する人々」に薬剤を含めたソリューションをお届けするまでの全局面におけるパラダイムシフトの実現を企図し、他産業と得意技を持ち寄り協業するエコシステム(hhceco)の構築によりデジタルトランスフォーメーションを実現させることが重要課題です。当社ではチーフエコシステムオフィサーとチーフインフォメーションオフィサーを中心に、全社デジタル戦略を加速します。 ITの進化に伴う経営環境の変化を見据えれば、デジタルトランスフォーメーションの必要性は明白であり、その実現に向けた取り組みの停滞や、実現するうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (3)医薬品の研究開発、生産および販売活動新薬開発 当社グループは、神経領域やがん領域をはじめとして、多くの新薬開発を行っています。 新薬の研究開発には長い期間と多額の投資を必要とします。加えて、有効性や安全性の観点から医薬品候補化合物の開発を中止あるいは中断する可能性があります。例えば、米メルク社と当社グループが共同開発を行っている「レンビマ」とペムブロリズマブの併用療法では、転移性非小細胞肺がんに係るフェーズⅢ試験において主要評価項目を達成しませんでした。 また、臨床試験で期待された結果が得られた場合であっても、各国の厳格な承認審査の結果、承認が得られないもしくは追加データの提出を要求され承認が遅延する可能性があります。あるいは、承認が得られた場合でも承認条件として求められた追加臨床試験で安全性・有用性が検証できなかった場合には承認を取り消される可能性があります。 このような新薬開発の不確実性に伴い、当初想定していた開発計画が中止あるいは遅延した場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。 副作用 医薬品は承認・販売された場合でも、その後のデータ・事象により、医薬品としてのベネフィットとリスクのプロファイルが承認時とは異なってくる場合があります。重大な副作用の発現・集積により、製品の添付文書の変更、販売停止、回収等の措置を実施する場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。 当社は、製品に関するすべての有害事象や安全性に関する情報を科学的・医学的に評価し、規制当局に報告する体制としてすべての地域の安全管理責任者等で編成するセーフティ・エグゼクティブ・コミッティ、および製品毎の安全性医学評価責任者等で編成するグローバル・セーフティ・ボードを設置しています。これらの体制を中心として、製品のグローバルな安全性監視体制を確立し、製品の適正使用の徹底に努めています。製品品質および安定供給 高品質な医薬品を患者様へ確実にお届けする必要がありますが、使用する原材料、自社工場あるいは製造委託先での製造プロセス等、何らかの原因により製品品質に問題が生じた場合や、使用原材料の供給停止や製造工程における技術上の問題、パンデミック、国家間の紛争などによる地政学的問題、重大な災害あるいは経済安全保障上の問題等により工場の操業停止やサプライチェーンに問題が生じた場合には、製品の欠品、回収、販売停止などにより患者様の健康に支障をきたす可能性があるほか、業績へ影響を及ぼす可能性があります。また、何らかの原因による急な需要変動により製品の安定供給に影響が及ぶ可能性があります。さらに、現在日本政府や米国政府が取り組んでいる経済安全保障の対応において、法令上の義務を課され、当社グループ製品の安定供給体制をより強化する対応が求められる、あるいはサプライチェーンの変更が求められる可能性があります。 当社グループは、安心してご使用いただける高品質な医薬品の供給を可能とする安定供給体制ならびに品質保証体制の構築に取り組んでおり、グローバル基準のGMP(製造管理および品質管理に関する基準)に準拠した製造および品質管理を行っています。製造委託先に対しても、製造委託先における安定供給体制ならびに品質保証体制の確認、定期的なGMP監査に加え技術者派遣による製造現場の確認などを実施しています。あわせて、製造委託先と原材料の取引先に対してサステナビリティ評価を実施するとともに「ビジネス・パートナーのための行動指針」の遵守をお願いすることで、当社グループと同様の人権尊重・腐敗防止への取り組みを求めています。さらに、流通段階での品質確保にも取り組んでいます。また、当社グループは、世界の主要地域に自社工場を保有し、各工場から安定的に製品供給を行っています。加えて、事業継続計画(BCP)に定めた重要原材料や完成品の適正在庫を確保するとともに、地政学的なリスクを考慮した原材料の複数購買体制および製品の複数工場での製造体制を構築することで、パンデミック、重大な災害、紛争や急な需要変動が発生した場合においても安定供給を確保する体制の整備に取り組んでいます。知的財産 通常、先発医薬品の特許期間およびデータ保護期間が切れると同一成分のジェネリック医薬品の販売が可能となります。しかし、特許の不成立や特許成立後の無効審判の結果等により取得した特許権を適切に保護できない場合、想定より早くジェネリック医薬品やバイオシミラー品の市場参入を招き、売上収益が減少する可能性があります。例えば、「レンビマ」の中国の特許について、現在、無効審判が請求されています。 また、特許期間内であっても、米国のようにジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請が可能な国もあり、そのような国では、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請を行った企業との間で特許侵害訴訟が起こる可能性があります。それら特許訴訟の結果によっては、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品が当該特許期間満了より早期に参入し、当該国内の市場シェアが大幅かつ急速に低下する可能性があります。また、当社グループの医薬品を保護する物質特許が無効と判断された場合、当該国内における当該医薬品の市場価値が失われ、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。 一方、当社グループでは、第三者の知的財産権を侵害することのないように常に注意を払っていますが、万が一当社グループの事業活動が第三者の知的財産権を侵害した場合、第三者から当該事業活動を中止することを求められたり、損害賠償を請求されたりする可能性があります。 訴訟 当社グループは、その事業運営に関し、製造物責任その他の人身被害等の製品に関する事項、消費者保護、商業規制、証券法、データ保護、契約違反、法令違反、環境規制など様々な事由に関連して、政府を含む第三者の提訴や調査等に起因する訴訟、仲裁その他の法令上や行政上の手続きに関与し、または関与する可能性があります。訴訟等の法的手続きは、その性質上、不確実性を伴います。当社グループはこれらの手続きに適切に対応し、正当な主張を行って参りますが、将来的に当社グループに賠償金支払いを命じる判決や、和解による支払いなどが生じる可能性があり、この結果、当社グループの経営状況、業績、社会的評価に重要な影響を及ぼす可能性があります。データの信頼性 製薬企業にとって、研究データ、生産データ、市販後調査や医薬品安全性監視等に関するデータのインテグリティ(完全性、一貫性、正確性)の確保は、製品の安全性や信頼性の根拠となるため極めて重要であり、これら重要データのインテグリティが確保できないことにより、新薬開発の遅延・中止や、製品の回収、販売の停止など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、データインテグリティ推進委員会を設置し、データの記録・検証・承認・保管のシステム化を推進しています。さらに、適切な内部統制の構築・整備、運用等により、製品品質を裏付けるデータ、臨床試験データおよび市販後調査を含む医薬品安全性監視に関するデータのインテグリティの強化を図るとともに、重要データに携わる社員を対象とした研修を継続して実施しています。また、データのインテグリティ確保にあたり、取引開始前に新規委託候補先におけるデータ管理体制を確認しています。医療費抑制策 各国政府は、増大する医療費を抑えるため、様々な薬剤費抑制策を導入・検討しています。日本では医療用医薬品の薬価引き下げや、ジェネリック医薬品の使用促進などの施策がとられています。中国においても、国家医薬品償還リスト収載に伴う大幅な価格引き下げや集中購買制度においてより安価なジェネリック医薬品の使用が促進されており、例えば、「レンビマ」を国家医療保険償還医薬品リストに収載する際、販売価格を引き下げました。また、末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は政府集中購買の対象となったことから販売価格を引き下げました。欧州では、新薬承認が得られた製品であっても、期待した価格による保険償還がなされない場合があります。これらの施策の推進ならびに新たな施策の導入により、当初に見込んでいた売上収益が得られない可能性があります。 当社グループでは、各国の制度や政策動向を把握しつつ、有効性や安全性に加え、介護の軽減や対象疾患の重篤度など、薬剤のもつ社会的価値を算出し、イノベーションに対する適切な評価の推進を図っています。 (4)その他サクセッション 当社グループは、30年以上にわたり、現代表執行役CEOが強いリーダーシップを発揮してグローバルに事業を展開し成長を遂げてきました。 代表執行役CEOがサクセッションプランを策定して、将来の代表執行役CEOを育成することに加え、突発的事態に対しても万全な備えを行うこと、および代表執行役CEOの選定においては、取締役会がその客観性や公正性を確保することが重要です。これらができない場合、当社グループの企業理念の実現や経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。 このため、当社取締役会は代表執行役CEOの選定を取締役会の最も枢要な意思決定事項のひとつと位置付けるとともに、サクセッションプランに関するルール、手続きを定め、独立社外取締役が将来の代表執行役CEOの育成等のプロセスに関与することで、CEO選定の客観性と公正性を合理的に確保できると考えています。hhcガバナンス委員会では、年2回、代表執行役CEOから提案されるサクセッションプランを全取締役と情報共有するとともに突発的事態に対する備えについても上記の検討の中で確認がなされています。 また、当社執行役およびグローバル重要ポジションにおいて、最適の人財を配することができない場合、当社グループの経営へ大きな影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、CEOのサクセッションへの取り組みに加え、執行役を含むグローバルでの重要ポジションにおける計画的なリーダーシップの継承を企図して、後継候補者の選定と育成、リテンション施策などの進捗状況を確認するサクセッションプランニングを年1回実施しています。人財の確保と育成 当社の強みは「企業理念の深い浸透」です。当社は企業理念(hhc理念)への深い理解と共感を根幹とし、全社員が主体的に取り組む自律したプロフェッショナルとして活躍することを目指しています。また当社は、定款において、社員をhhc理念の実現に向けた社の重要なステークホルダーと定め、「安定的な雇用の確保」、「人権および多様性の尊重」、「自己実現を支える成長機会の充実」、「働きやすい環境の整備」を掲げています。hhc理念に共感する多様な人財を獲得し、社員一人ひとりがhhc実現に向け、様々な環境下において個性や強みを発揮し、中長期的に取り組むことができない場合、イノベーションの創出と企業理念の実現に大きな影響を及ぼす可能性があります。 当社の人財育成の基本は、社員一人ひとりが患者様とともに時間を過ごす共同化によって患者様の真のニーズを理解することであり、この共同化が社員一人ひとりの動機付けとなります。グローバルリーダー育成プログラム等、様々な社内研修プログラムに患者様との共同化のセッションを盛り込み、hhc理念の浸透を図ることで人財育成を強化しています。また、社員のWork in Life(ワーク・イン・ライフ)をコンセプトに、社員の健康管理、タイムマネジメント、長時間労働の是正を進めるとともに、多様な社員が様々な環境下でも生産性高く、健康的に、自分らしく仕事へ取り組むことができる就業環境を整備しています。社員の健康と多様な働き方を支援する各種制度の導入や職場環境の整備を進めており、より魅力ある企業となることで、人財の確保を図っています。情報セキュリティ IT・デジタルの活用が進展する一方で、年々、高度化・巧妙化するサイバー攻撃によって、操業停止等、事業活動への影響が生じる可能性が高まっています。 当社グループは、個人情報や未公開情報を含めた多くの重要情報を保有していますが、そのような重要情報が社外に流出した場合、信頼や競争優位性を大きく失うこととなります。特に、近年は個人情報保護に関するグローバルな要請に的確に対応することが求められてきています。また、創薬段階の未公開構造式などの流出は特許の申請・取得に対して影響を及ぼします。当社グループの信頼あるいは競争優位性の低下が生じた場合には、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。 サイバー攻撃等による重要業務の中断や個人情報・秘密情報等の漏えいを防止するため、チーフインフォメーションオフィサーを新たに任命し、IT機能の強化とグローバル体制の整備を加速させています。また、システムインフラのセキュリティ強化に加え、情報管理に関する規程等を整備し、役員・従業員へ日常業務における情報管理教育、サイバーセキュリティ訓練などを実施し、グローバルな情報セキュリティに関して更なるガバナンス強化と施策の実行に取り組んでいます。 気候変動 気候変動は、企業活動に影響を与える重要な課題であると認識しています。 当社グループは、2019年6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、当提言が推奨する気候シナリオ分析を行い、結果を2020年度に開示しました。2022年度には、気候変動に関連するリスク・機会が当社グループに及ぼしうる影響の再評価のため、複数の気候シナリオを考慮した分析を再度実施しました。 その結果、物理的リスクとして、気候変動に伴う感染症リスク増加により医薬品アクセス維持・向上のために必要な投資・コストが増加する可能性があるほか、自然災害により生産活動の停滞や資産・従業員への被害が生じる可能性を再認識しました。これらのリスクに対して、熱帯感染症に対する医薬品の開発や蔓延地域への医薬品供給による医薬品アクセスの維持・向上に努めているほか、生産拠点のバックアップ体制導入や製品・原料の在庫確保、生産拠点・倉庫における自然災害リスクの確認と予防策の実施といった対策を講じています。 移行リスクでは、温室効果ガス排出削減ならびにその開示が不十分な場合のステークホルダーズからの信頼性低下や、炭素税価格上昇に伴うエネルギーコスト・調達品価格上昇のリスクを再確認しました。また、温室効果ガス排出削減のための追加的な設備投資や、包装材等を温室効果ガス排出量の少ない製品に切り替えるために追加的なコストが発生する可能性をリスクとして認識しました。これらのリスクに対しては、カーボンニュートラル達成に向けたロードマップに則り、2030年を目標年とするRE100の前倒し達成を視野に入れた再生可能エネルギー電力の積極的導入、インターナル・カーボンプライシングの導入による温室効果ガス削減投資の推進、一部製品の包装容器でのバイオプラスチック採用やその他製品での低環境負荷包材導入検討といった対策を講じています。また、2023年11月にSBT2℃目標からSBT1.5℃目標への変更が承認され、かつ12月には「気候変動イニシアティブ(JCI)」より2050年までのネットゼロ達成にコミットするJCI Race to Zero Circleへの参加承認を取得しました。 これらのリスクに関する当社グループへの財務影響と対策状況は、「第2 サステナビリティに関する考え方及び取り組み (2)サステナビリティに関する「戦略」と「指標と目標」③ 気候変動に関する取り組み」に記載しています。のれんや無形資産の減損 当社グループは、企業買収や製品・開発品の導入を通じて獲得したのれんおよび無形資産を計上しています。これらの資産については、計画と実績の乖離や市場の変化等により回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には減損処理をする必要があり、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 例えば、当社グループにおけるのれん(2023年度末残高:2,364億円)の多くはアメリカス医薬品事業に配分しています。その回収可能価額は、経営者により承認された事業計画を基礎としたアメリカス医薬品事業の将来キャッシュ・フローや成長率等の仮定を用いて算定しており、それらの仮定は、将来における新薬の承認取得・適応追加の有無および時期、上市後の薬価および販売数量、競合品の状況や金利の変化等の影響を受けます。
FY2023|10,970 文字
3【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクや不確実性は、次のとおりです。ただし、これらは当社グループに係るすべてのリスクや不確実性を網羅したものではなく、現時点において予見できない、あるいは重要とみなされていない他の要因の影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループを取り巻くリスクや不確実性に関して、当社グループでは執行役会などの意思決定機関において定期的に議論し、これらのリスクや不確実性を機会として活かす、あるいは低減するための対応を検討しています。その検討結果は取締役会へ報告・議論されており、以下に記載したリスクや不確実性には執行側だけでなく取締役会における議論も反映しています。なお、これらは当連結会計年度末現在において判断したものであり、文中の将来に関する事項はその発生あるいは達成を保証するものではありません。 (1)企業理念企業理念にもとづく経営 当社は、企業理念であるヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念の主役を「日常と医療の領域で生活する人々」ととらえ直し、従来の「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」へと貢献すべき主役を拡大しました。2022年6月に定款の一部を変更し、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念として定款に規定しステークホルダーズと共有しており、これらを「Purpose」としてとらえています。また、その実現の結果として得られる患者様と生活者の皆様のベネフィット向上が、長期的に当社グループの業績および企業価値の向上につながると考えています。2021年4月からスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の戦略意思ならびに2022年5月に発出したhhceco(hhc理念+エコシステム)宣言における他産業との連携を推進するビジネスモデル構築についても企業理念であるhhcに依拠したものであり、人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正という社会善を効率的に実現する企業として患者様の真のニーズを理解することによって生まれる強い動機付けが当社グループのイノベーションの源泉となっています。また、患者様価値を創出するための新薬の研究・開発の更なる推進、高品質な製品の生産・販売、医薬品の安全な使用を実現するための情報の管理・提供等を統制のもとで推進する重要性を「インテグリティ」としてとらえています。リンパ系フィラリア症の治療薬の無償提供をはじめとする医薬品アクセス向上や、認知症と共生する「まちづくり」への取り組みなど、ESGへの取り組みもこの理念を根幹として展開しています。 従って、企業理念の当社グループへの浸透の不徹底と理念実現に向けた経営の実践の停滞など、患者様と生活者の皆様がベネフィット向上を十分に得るうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (2)事業戦略レカネマブと次世代AD治療剤の価値最大化 当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においても、抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブ(一般名)をはじめとする次世代アルツハイマー病(AD)治療剤の価値最大化を最重要戦略の一つと定めています。その過程において、新たに疾患を認識してから診断、治療、その後の生活に至るまでに患者様がたどる道のり(ペイシェント・ジャーニー)に則った疾患啓発と浸透、認知機能検査・アミロイドβ検査(PET(陽電子放射断層診断)・CSF(脳脊髄液)・血液バイオマーカー等)による診断法の確立、安全性確保のためのフォローアップ体制の整備を通じたシンプルなペイシェント・ジャーニーの構築を目指しています。これらが遂行できない場合、患者様に次世代AD治療剤を十分にお届けできない可能性があり、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。 また、当社グループは、米国において社会的価値のコンセプトに基づき透明性の高い説明を伴った価格を設定するなど、より幅広い当事者様アクセスの促進、経済的負担の軽減および医療システムの持続可能性への貢献を目指していますが、様々な要因により患者様のレカネマブへのアクセスが制限される場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。例えば、2022年4月に米国メディケア・メディケイドセンターにより、抗アミロイドβ抗体について米国における保険の適用範囲を限られた臨床試験の参加者とする決定がなされました。レカネマブについても、Clarity AD試験(フェーズⅢ試験)の結果をもってNational Coverage Determinationの要件を満たせない場合、同様に保険の適用範囲が制限され患者様のアクセスが制限される可能性があります。 レンビマの価値最大化 当社グループと米メルク社は、抗がん剤「レンビマ」と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(一般名)の併用療法に関して複数のがん種を対象とする複数の臨床試験を実施中です。しかしながら、競合品の予期せぬ試験結果や承認タイミングによってポジショニングが変化し、当初想定した時期に「レンビマ」が追加の適応症に関する承認を取得できないことで製品の競争力が減弱し、「レンビマ」の売上計画を達成できない可能性があります。「レンビマ」のパートナーシップモデルによって得られる収益には販売マイルストンが設定されており、販売目標が未達成となることで実現されない場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。パートナーシップモデル 当社グループは、ビジネスの効率性・生産性を向上させるうえで、パートナーシップは有効な手段と考えており、最先端のサイエンスやテクノロジーの活用による新薬開発の加速を目的としたパートナーシップや、各リージョンでのリソースの効率的活用と事業価値最大化、協業先との新しいソリューションの共同開発を目的としたパートナーシップを活用しています。 パートナーシップを活用した医薬品および「日常と医療の領域で生活する人々」を対象とした新しいソリューションの研究開発、生産、販売活動において、パートナーとの意見の相違が生じた場合や事業環境の変化等に伴いパートナーの事業継続が困難となった場合、もしくは協業が困難になった場合には、上記活動に遅延や非効率が生じるほか、為替変動の影響などにより予測外のパートナー費用負担が発生することで計画された利益が想定外に減少するなど、事業価値最大化に支障をきたす可能性があります。また、契約の解釈の相違などが生じた場合には、パートナーとの間で訴訟や仲裁に発展し、最終的にはパートナーシップの解消をもたらす可能性もあります。この場合、将来に期待されていた新薬の創出や売上収益が実現できないなど、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。デジタルトランスフォーメーション 当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」において、全ステークホルダーの想いをつなげ、解決スピードを加速させ、データに基づく強固な経営を効率的に実行するため、あらゆる活動でデジタルトランスフォーメーションに取り組むことを大きなテーマとして掲げています。新技術の活用により創薬のスピードと成功確率を飛躍的に向上させるとともに、「日常と医療の領域で生活する人々」に薬剤を含めたソリューションをお届けするまでの全局面におけるパラダイムシフトの実現を企図し、他産業と得意技を持ち寄り協業するエコシステム(hhceco)の構築によりデジタルトランスフォーメーションを実現させることが重要課題です。当社ではチーフエコシステムオフィサーを中心に、全社デジタル戦略を加速します。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした経営環境の変化を見据えれば、デジタルトランスフォーメーションの必要性は明白であり、その実現に向けた取り組みの停滞や、実現するうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (3)医薬品の研究開発、生産および販売活動新薬開発 当社グループは、神経領域やがん領域をはじめとして、多くの新薬開発を行っています。 新薬の研究開発には長い期間と多額の投資を必要とします。加えて、有効性や安全性の観点から医薬品候補化合物の開発を中止あるいは中断する可能性があります。例えば、2022年、米メルク社と当社グループが共同開発を行っている「レンビマ」とペムブロリズマブの、切除不能な肝細胞がんに係る併用療法の有効性、安全性をフェーズⅢ試験で検証しましたが、事前に設定した有効性に関する統計学的有意性の基準を満たしませんでした。 また、臨床試験で期待された結果が得られた場合であっても、各国の厳格な承認審査の結果、承認が得られないもしくは追加データの提出を要求され承認が遅延する可能性があります。あるいは、承認が得られた場合でも承認条件として求められた追加臨床試験で安全性・有用性が検証できなかった場合には承認を取り消される可能性があります。 このような新薬開発の不確実性に伴い、当初想定していた開発計画が中止あるいは遅延した場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。 副作用 医薬品は承認・販売された場合でも、その後のデータ・事象により、医薬品としてのベネフィットとリスクのプロファイルが承認時とは異なってくる場合があります。重大な副作用の発現・集積により、製品の添付文書の変更、販売停止、回収等の措置を実施する場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。 当社は、製品に関するすべての有害事象や安全性に関する情報を科学的・医学的に評価し、規制当局に報告する体制としてすべての地域の安全管理責任者等で編成するセーフティ・エグゼクティブ・コミッティ、および製品毎の安全性医学評価責任者等で編成するグローバル・セーフティ・ボードを設置しています。これらの体制を中心として、製品のグローバルな安全性監視体制を確立し、製品の適正使用の徹底に努めています。製品品質および安定供給 高品質な医薬品を患者様へ確実にお届けする必要がありますが、使用する原材料、自社工場あるいは製造委託先での製造プロセス等、何らかの原因により製品品質に問題が生じた場合や、使用原材料の供給停止や製造工程における技術上の問題、パンデミック、国家間の紛争などによる地政学的問題、重大な災害あるいは経済安全保障上の問題等により工場の操業停止やサプライチェーンに問題が生じた場合には、製品の欠品、回収、販売停止などにより患者様の健康に支障をきたす可能性があるほか、業績へ影響を及ぼす可能性があります。また、何らかの原因による急な需要変動により製品の安定供給に影響が及ぶ可能性があります。さらに、現在日本政府が取り組んでいる経済安全保障の対応において、法令上の義務を課され、当社グループ製品の安定供給体制をより強化する対応が求められる可能性があります。 当社グループは、安心してご使用いただける高品質な医薬品の供給を可能とする安定供給体制ならびに品質保証体制の構築に取り組んでおり、グローバル基準のGMP(製造管理および品質管理に関する基準)に準拠した製造および品質管理を行っています。製造委託先に対しても、製造委託先における安定供給体制ならびに品質保証体制の確認、定期的なGMP監査に加え技術者派遣による製造現場の確認などの活動を実施しています。あわせて、原材料の取引先に対してサステナビリティ評価を実施するとともに「ビジネス・パートナーのための行動指針」の遵守をお願いすることで、当社グループと同様の人権尊重・腐敗防止への取り組みを求めています。さらに、流通段階での品質確保にも取り組んでいます。また、当社グループは、世界の主要地域に自社工場を保有し、各工場から安定的に製品供給を行っています。加えて、事業継続計画(BCP)に定めた重要原材料や完成品の適正在庫を確保するとともに、地政学的なリスクを考慮した原材料の複数購買体制および製品の複数工場での製造体制を構築することで、パンデミック、重大な災害、紛争や急な需要変動が発生した場合においても安定供給を確保する体制の整備に取り組んでいます。知的財産 通常、先発医薬品の特許期間およびデータ保護期間が切れると同一成分のジェネリック医薬品の販売が可能となります。しかし、特許の不成立や特許成立後の無効審判の結果等により取得した特許権を適切に保護できない場合、想定より早くジェネリック医薬品やバイオシミラー品の市場参入を招き、売上収益が減少する可能性があります。例えば、「レンビマ」の中国の特許について、現在、無効審判が請求されています。 また、特許期間内であっても、米国のようにジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請が可能な国もあり、そのような国では、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請を行った企業との間で特許侵害訴訟が起こる可能性があります。それら特許訴訟の結果によっては、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品が当該特許期間満了より早期に参入し、当該国内の市場シェアが大幅かつ急速に低下する可能性があります。また、当社グループの医薬品を保護する物質特許が無効と判断された場合、当該国内における当該医薬品の市場価値が失われ、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。 一方、当社グループでは、第三者の知的財産権を侵害することのないように常に注意を払っていますが、万が一当社グループの事業活動が第三者の知的財産権を侵害した場合、第三者から当該事業活動を中止することを求められたり、損害賠償を請求されたりする可能性があります。 訴訟 当社グループは、その事業運営に関し、製造物責任その他の人身被害等の製品に関する事項、消費者保護、商業規制、証券法、データ保護、契約違反、法令違反、環境規制など様々な事由に関連して、政府を含む第三者の提訴や調査等に起因する訴訟、仲裁その他の法令上や行政上の手続きに関与し、または関与する可能性があります。訴訟等の法的手続きは、その性質上、不確実性を伴います。当社グループはこれらの手続きに適切に対応し、正当な主張を行って参りますが、将来的に当社グループに賠償金支払いを命じる判決や、和解による支払いなどが生じる可能性があり、この結果、当社グループの経営状況、業績、社会的評価に重要な影響を及ぼす可能性があります。 例えば、プロトンポンプ阻害剤「パリエット」(米国名「AcipHex」)について、当社は、他のプロトンポンプ阻害剤に係る他の製造業者とともに、米国において製造物責任訴訟が係属中です。 また、肥満症治療剤「BELVIQ」(日本では未承認、未販売)について、米国において健康被害等を主張する訴訟が係属中です。 「AcipHex」および「BELVIQ」に係る訴訟に関して生じうる負債を算定することはできないのが現状です。データの信頼性 製薬企業にとって、研究データ、生産データ、市販後調査や医薬品安全性監視等に関するデータのインテグリティ(完全性、一貫性、正確性)の確保は、製品の安全性や信頼性の根拠となるため極めて重要であり、これら重要データのインテグリティが確保できないことにより、新薬開発の遅延・中止や、製品の回収、販売の停止など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。 当社グループでは、データインテグリティ推進委員会やデータインテグリティ推進室を設置し、データの記録・検証・承認・保管のシステム化を推進しています。さらに、適切な内部統制の構築・整備、運用等により、製品品質を裏付けるデータ、臨床試験データおよび市販後調査を含む医薬品安全性監視に関するデータのインテグリティの強化を図るとともに、重要データに携わる社員を対象とした研修を継続して実施しています。また、データのインテグリティ確保にあたり、取引開始前に新規委託候補先におけるデータ管理体制を確認しています。医療費抑制策 各国政府は、増大する医療費を抑えるため、様々な薬剤費抑制策を導入・検討しています。日本では医療用医薬品の薬価引き下げや、ジェネリック医薬品の使用促進などの施策がとられています。中国においても、国家医薬品償還リスト収載に伴う大幅な価格引き下げや集中購買制度においてより安価なジェネリック医薬品の使用が促進されており、例えば、「レンビマ」を国家医療保険償還医薬品リストに収載する際、販売価格を引き下げました。また、末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は政府集中購買の対象となったことから販売価格を引き下げました。欧州では、新薬承認が得られた製品であっても、期待した価格による保険償還がなされない場合があります。これらの施策の推進ならびに新たな施策の導入により、当初に見込んでいた売上収益が得られない可能性があります。 当社グループでは、各国の制度や政策動向を把握しつつ、有効性や安全性に加え、介護の軽減や対象疾患の重篤度など、薬剤のもつ社会的価値を算出し、イノベーションに対する適切な評価の推進を図っています。 (4)その他サクセッション 当社グループは、30年以上にわたり、現代表執行役CEOが強いリーダーシップを発揮してグローバルに事業を展開し成長を遂げてきました。 代表執行役CEOがサクセッションプランを策定して、将来の代表執行役CEOを育成することに加え、突発的事態に対しても万全な備えを行うこと、および代表執行役CEOの選定においては、取締役会がその客観性や公正性を確保することが重要です。これらができない場合、当社グループの企業理念の実現や経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。 このため、当社取締役会は代表執行役CEOの選定を取締役会の最も枢要な意思決定事項のひとつと位置付けるとともに、サクセッションプランに関するルール、手続きを定め、独立社外取締役が将来の代表執行役CEOの育成等のプロセスに関与することで、CEO選定の客観性と公正性を合理的に確保できると考えています。hhcガバナンス委員会では、年2回、代表執行役CEOから提案されるサクセッションプランを全取締役と情報共有するとともに突発的事態に対する備えについても上記の検討の中で確認がなされています。 また、当社執行役およびグローバル重要ポジションにおいて、最適の人財を配することができない場合、当社グループの経営へ大きな影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、CEOのサクセッションへの取り組みに加え、執行役を含むグローバルでの重要ポジションにおける計画的なリーダーシップの継承を企図して、後継候補者の選定と育成、リテンション施策などの進捗状況を確認するサクセッションプランニングを年1回実施しています。人財の確保と育成 当社の強みは「企業理念の深い浸透」です。当社は企業理念(hhc理念)への深い理解と共感を根幹とし、全社員が主体的に取り組む自律したプロフェッショナルとして活躍することを目指しています。また当社は、定款において、社員をhhc理念の実現に向けた社の重要なステークホルダーと定め、「安定的な雇用の確保」、「人権および多様性の尊重」、「自己実現を支える成長機会の充実」、「働きやすい環境の整備」を掲げています。hhc理念に共感する多様な人財を獲得し、社員一人ひとりがhhc実現に向け、様々な環境下において個性や強みを発揮し、中長期的に取り組むことができない場合、イノベーションの創出と企業理念の実現に大きな影響を及ぼす可能性があります。 当社の人財育成の基本は、社員一人ひとりが患者様とともに時間を過ごす共同化によって患者様の真のニーズを理解することであり、この共同化が社員一人ひとりの動機付けとなります。グローバルリーダー育成プログラム等、様々な社内研修プログラムに患者様との共同化のセッションを盛り込み、hhc理念の浸透を図ることで人財育成を強化しています。また、社員のWork Life Best(ワーク・ライフ・ベスト)をコンセプトに、社員の健康管理、タイムマネジメント、長時間労働の是正を進めるとともに、多様な社員が様々な環境下でも生産性高く、健康的に、自分らしく仕事へ取り組むことができる就業環境を整備しています。社員の健康と多様な働き方を支援する各種制度の導入や職場環境の整備を進めており、より魅力ある企業となることで、人財の確保を図っています。情報セキュリティ IT・デジタルの活用が進展する一方で、年々、高度化・巧妙化するサイバー攻撃によって、操業停止等、事業活動への影響が生じる可能性が高まっています。その結果、以前にも増して情報セキュリティ体制の強化が必要となっています。 また、当社グループは、個人情報や未公開情報を含めた多くの重要情報を保有していますが、そのような重要情報が社外に流出した場合、信頼や競争優位性を大きく失うこととなります。特に、近年は個人情報保護に関するグローバルな要請に的確に対応することが求められてきています。また、創薬段階の未公開構造式などの流出は特許の申請・取得に対して影響を及ぼします。当社グループの信頼あるいは競争優位性の低下が生じた場合には、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。 サイバー攻撃等による重要業務の中断や個人情報・秘密情報等の漏えいを防止するため、チーフインフォメーションセキュリティオフィサーのリーダーシップの下、システムインフラのセキュリティ強化に加え、情報管理に関する規程等を整備し、役員・従業員へ日常業務における情報管理教育、サイバーセキュリティ訓練などを実施し、グローバルな情報セキュリティに関する継続的なガバナンス強化と施策の実行に取り組んでいます。 新型コロナウイルス感染症 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大してから約3年が経過し、ワクチン接種の普及や治療薬の上市および、ウイルスの弱毒化により、現時点での重症化リスクは大きく低減されています。一方、新たな変異ウイルスの発生により感染が拡大した場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性は少なからずあります。例えば、研究開発活動においては臨床試験での治験参加者の登録や試験の進行が遅延する可能性、生産活動においては仕入先を含めた工場の操業停止や物流遅延などサプライチェーンに影響が生じて製品の安定供給に支障をきたす可能性、販売活動においてはMRが医療関係者に適時適切な情報収集・提供ができなくなる可能性などがあります。 当社ではCOVID-19感染拡大に関する対処法を本社、各地域・事業所で構築しており、各国の子会社と連携しながら正確な情報を収集し、従業員の安全確保に努めるとともに、事業活動に対する影響を最小限に留めて参ります。また、当社グループの各工場においては、日頃より製品の安定供給を図るために必要な在庫量を確保しており、あらかじめ定められた事業継続計画(BCP)に基づく体制整備・運用を実施しています。気候変動 気候変動は、企業活動に影響を与える重要な課題であると認識しています。 当社グループは、2019年6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、当提言が推奨する気候シナリオ分析を行い、結果を2020年度に開示しました。2022年度には、気候変動に関連するリスク・機会が当社グループに及ぼしうる影響の再評価のため、複数の気候シナリオを考慮した分析を再度実施しました。 その結果、物理的リスクとして、気候変動に伴う感染症リスク増加により医薬品アクセス維持・向上のために必要な投資・コストが増加する可能性があるほか、自然災害により生産活動の停滞や資産・従業員への被害が生じる可能性を再認識しました。これらのリスクに対して、熱帯感染症に対する医薬品の開発や蔓延地域への医薬品供給による医薬品アクセスの維持・向上に努めているほか、生産拠点のバックアップ体制導入や製品・原料の在庫確保、生産拠点・倉庫における自然災害リスクの確認と予防策の実施といった対策を講じています。 移行リスクでは、温室効果ガス排出削減ならびにその開示が不十分な場合のステークホルダーズからの信頼性低下や、炭素税価格上昇に伴うエネルギーコスト・調達品価格上昇のリスクを再確認しました。また、温室効果ガス排出削減のための追加的な設備投資や、包装材等を温室効果ガス排出量の少ない製品に切り替えるために追加的なコストが発生する可能性をリスクとして認識しました。これらのリスクに対しては、カーボンニュートラル達成に向けたロードマップに則り、2030年を目標年とするRE100の前倒し達成を視野に入れた再生可能エネルギー電力の積極的導入、インターナル・カーボンプライシングの導入による温室効果ガス削減投資の推進、一部製品の包装容器でのバイオプラスチック採用やその他製品での低環境負荷包材導入検討といった対策を講じています。また、2022年度末には現在のSBT2℃目標からSBT1.5℃目標への変更申請を完了しています。 これらのリスクに関する当社グループへの財務影響と対策状況は、「第2 サステナビリティに関する考え方及び取り組み (2)サステナビリティに関する「戦略」と「指標と目標」③ 気候変動に関する取り組み」に記載しています。のれんや無形資産の減損 当社グループは、企業買収や製品・開発品の導入を通じて獲得したのれんおよび無形資産を計上しています。これらの資産については、計画と実績の乖離や市場の変化等により回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には減損処理をする必要があり、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 例えば、当社グループにおけるのれん(2022年度末残高:2,088億円)の多くはアメリカス医薬品事業に配分しています。その回収可能価額は、経営者により承認された事業計画を基礎としたアメリカス医薬品事業の将来キャッシュ・フローや成長率等の仮定を用いて算定しており、それらの仮定は、将来における新薬の承認取得・適応追加の有無および時期、上市後の薬価および販売数量、競合品の状況や金利の変化等の影響を受けます。
FY2022|10,616 文字
2【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクや不確実性は、次のとおりです。ただし、これらは当社グループに係るすべてのリスクや不確実性を網羅したものではなく、現時点において予見できない、あるいは重要とみなされていない他の要因の影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループを取り巻くリスクや不確実性に関して、当社グループでは執行役会などの意思決定機関において定期的に議論し、これらのリスクや不確実性を機会として活かす、あるいは低減するための対応を検討しています。その検討結果は取締役会へ報告・議論されており、以下に記載したリスクや不確実性には執行側だけでなく取締役会における議論も反映しています。なお、これらは当連結会計年度末現在において判断したものであり、文中の将来に関する事項はその発生あるいは達成を保証するものではありません。 (1)企業理念企業理念にもとづく経営当社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念として、定款にも規定しステークホルダーズと共有しており、さらには生活者の皆様に視点を広げ、これらを「Purpose」としてとらえています。その実現の結果として得られる患者様と生活者の皆様のベネフィット向上が、長期的に当社グループの業績および企業価値の向上につながると考えています。2021年4月からスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の戦略意思ならびに2022年5月に発出したhhceco(hhc理念+エコシステム)宣言におけるビジネスモデルについても企業理念であるhhcに依拠したものであり、人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正という社会善を効率的に実現する企業として患者様の真のニーズを理解することによって生まれる強い動機付けが当社グループのイノベーションの源泉となっています。また、患者様価値を創出するための新薬の研究・開発の更なる推進、高品質な製品の生産・販売、医薬品の安全な使用を実現するための情報の管理・提供等を統制のもとで推進する重要性を「インテグリティ」としてとらえています。リンパ系フィラリア症の治療薬の無償提供をはじめとする医薬品アクセス向上や、認知症と共生する「まちづくり」への取り組みなど、ESGへの取り組みもこの理念を根幹として展開しています。従って、企業理念の当社グループへの浸透の不徹底と理念実現に向けた経営の実践の停滞など、患者様と生活者の皆様がベネフィット向上を十分に得るうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (2)事業戦略次世代AD治療剤の価値最大化当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においても、次世代アルツハイマー病(AD)治療剤の価値最大化を最重要戦略の一つと定めています。その過程において、新たに疾患を認識してから診断、治療、その後の生活に至るまでに患者様がたどる道のり(ペイシェント・ジャーニー)に則った疾患啓発と浸透、認知機能検査・PET(陽電子放射断層診断)・CSF(脳脊髄液)等による診断法の確立、安全性確保のためのフォローアップ体制の整備を通じたプラットフォーム(エーザイユニバーサルプラットフォーム:EUP)の構築を目指しています。これらが遂行できない場合、患者様に次世代AD治療剤を十分にお届けできない可能性があり、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。また、様々な外部要因により患者様の次世代AD治療剤へのアクセスが制限される場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。例えば、バイオジェン社と提携しているAD治療剤「Aduhelm」(一般名:アデュカヌマブ)については、2022年4月に米国メディケア・メディケイドセンターにより、米国における保険の適用範囲を限られた臨床試験の参加者とする決定がなされました。当社グループが開発を主導する抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブ(一般名)についても、質の高いエビデンスをもってNational Coverage Determinationの要件を満たせない場合、同様に保険の適用範囲が制限され患者様のアクセスが制限される可能性があります。 レンビマの価値最大化当社グループと米メルク社は、抗がん剤「レンビマ」と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(一般名)の併用療法に関して10種類以上のがんにおいて20を超える臨床試験を実施中です。しかしながら、競合品の予期せぬ試験結果や承認タイミングによってポジショニングが変化し、当初想定した時期に「レンビマ」が追加の適応症に関する承認を取得できないことで製品の競争力が減弱し、「レンビマ」の売上計画を達成できない可能性があります。「レンビマ」のパートナーシップモデルによって得られる収益には開発マイルストン、販売マイルストンなどが設定されており、販売目標や承認が未達成となることで実現されない場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。パートナーシップモデル当社グループは、ビジネスの効率性・生産性を向上させるうえで、パートナーシップは有効な手段と考えており、最先端のサイエンスやテクノロジーの活用による新薬開発の加速を目的としたパートナーシップや、各リージョンでのリソースの効率的活用と事業価値最大化、協業先との新しいソリューションの共同開発を目的としたパートナーシップを活用しています。パートナーシップを活用した医薬品および「日常と医療の領域で生活する人々」を対象とした新しいソリューションの研究開発、生産、販売活動において、パートナーとの意見の相違が生じた場合には、上記活動に遅延や非効率が生じるほか、予測外のパートナー費用負担が発生することで計画された利益が想定外に減少するなど、事業価値最大化に支障をきたす可能性があります。また、契約の解釈の相違などが生じた場合には、パートナーとの間で訴訟や仲裁に発展し、最終的にはパートナーシップの解消をもたらす可能性もあります。この場合、将来に期待されていた新薬の創出や売上収益が実現できないなど、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。デジタルトランスフォーメーション当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」において、全ステークホルダーの想いをつなげ、解決スピードを加速させ、データに基づく強固な経営を効率的に実行するため、あらゆる活動でデジタルトランスフォーメーションに取り組むことを大きなテーマとして掲げています。第4次産業革命が着実に進行する中、新技術の活用により創薬のスピードと成功確率を飛躍的に向上させるとともに、「日常と医療の領域で生活する人々」に薬剤を含めたソリューションをお届けするまでの全局面におけるパラダイムシフトの実現を企図し、他産業と得意技を持ち寄り協業するエコシステム(hhceco)の構築によりデジタルトランスフォーメーションを実現させることが重要課題です。当社ではチーフエコシステムオフィサーを中心に、全社デジタル戦略を加速します。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした経営環境の変化を見据えれば、デジタルトランスフォーメーションの必要性は明白であり、その実現に向けた取り組みの停滞や、実現するうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (3)医薬品の研究開発、生産および販売活動新薬開発当社グループは、次世代AD治療剤候補をはじめとして、多くの新薬開発を行っています。次世代AD治療剤候補においては、当社グループがレカネマブについてフェーズⅢ試験を主導して実施しています。また、当社グループの提携相手であるバイオジェン社が「Aduhelm」について、フェーズⅢ試験を主導して実施してきました。新薬の研究開発には長い期間と多額の投資を必要とします。加えて、有効性や安全性の観点から医薬品候補化合物の開発を中止あるいは中断する可能性があります。例えば、2019年、バイオジェン社と当社は、早期ADを対象に開発を進めていたβサイト切断酵素阻害剤エレンベセスタット(一般名)の有効性、安全性を検証するフェーズⅢ試験の中止を発表しました。また、臨床試験で期待された結果が得られた場合であっても、各国の厳格な承認審査の結果、承認が得られないもしくは追加データの提出を要求され承認が遅延する可能性があります。あるいは、承認が得られた場合でも承認条件として求められた追加臨床試験で安全性・有用性が検証できなかった場合には承認を取り消される可能性があります。このような新薬開発の不確実性に伴い、当初想定していた開発計画が中止あるいは遅延した場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。 副作用医薬品は承認・販売された場合でも、その後のデータ・事象により、医薬品としてのベネフィットとリスクのプロファイルが承認時とは異なってくる場合があります。重大な副作用の発現・集積により、製品の添付文書の変更、販売停止、回収等の措置を実施する場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、製品に関するすべての有害事象や安全性に関する情報を科学的・医学的に評価し、規制当局に報告する体制としてすべての地域の安全管理責任者等で編成するセーフティ・エグゼクティブ・コミッティ、および製品毎の安全性医学評価責任者等で編成するグローバル・セーフティ・ボードを設置しています。これらの体制を中心として、製品のグローバルな安全性監視体制を確立し、製品の適正使用の徹底に努めています。製品品質および安定供給高品質な医薬品を患者様へ確実にお届けする必要がありますが、使用する原材料、自社工場あるいは製造委託先での製造プロセス等、何らかの原因により製品品質に問題が生じた場合や、使用原材料の供給停止や製造工程における技術上の問題、パンデミック、国家間の紛争、重大な災害あるいは経済安全保障上の問題等により工場の操業停止やサプライチェーンに問題が生じた場合には、製品の欠品、回収、販売停止などにより患者様の健康に支障をきたす可能性があるほか、業績へ影響を及ぼす可能性があります。また、何らかの原因による急な需要変動により製品の安定供給に影響が及ぶ可能性があります。さらに、現在日本政府が取り組んでいる経済安全保障の対応において、法令上の義務を課され、当社製品の安定供給体制をより強化する対応が求められる可能性があります。当社グループは、安心してご使用いただける高品質な医薬品の供給を可能とする安定供給体制ならびに品質保証体制の構築に取り組んでおり、グローバル基準のGMP(製造管理および品質管理に関する基準)に準拠した製造および品質管理を行っています。製造委託先に対しても、製造委託先における安定供給体制ならびに品質保証体制の確認、定期的なGMP監査に加え技術者派遣による製造現場の確認などの活動を実施しています。あわせて、原材料の取引先に「ビジネス・パートナーのための行動指針」の遵守をお願いすることで、当社グループと同様の人権尊重への取り組みを求めています。さらに、流通段階での品質確保にも取り組んでいます。また、当社グループは、世界の主要地域に自社工場を保有し、各工場から安定的に製品供給を行っています。加えて、事業継続計画(BCP)を定めており、パンデミック、重大な災害や急な需要変動が発生した場合においても安定供給を確保する体制の整備に取り組んでいます。知的財産通常、先発医薬品の特許期間およびデータ保護期間が切れると同一成分のジェネリック医薬品の販売が可能となります。しかし、特許の不成立や特許成立後の無効審判の結果等により取得した特許権を適切に保護できない場合、想定より早くジェネリック医薬品やバイオシミラー品の市場参入を招き、売上収益が減少する可能性があります。例えば、ファイザー社と共同販促を展開している疼痛治療剤「リリカ」は、日本の用法特許に対する特許無効審判において、一部無効との判断がなされ、2020年12月にジェネリック医薬品が上市されました。また、「レンビマ」の中国の特許について、現在、無効審判が請求されています。また、特許期間内であっても、米国のようにジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請が可能な国もあり、そのような国では、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請を行った企業との間で特許侵害訴訟が起こる可能性があります。それら特許訴訟の結果によっては、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品が当該特許期間満了より早期に参入し、当該国内の市場シェアが大幅かつ急速に低下する可能性があります。例えば2018年には、米国における制吐剤「Aloxi」について、連邦控訴裁判所で製剤特許無効の判決が確定し、ジェネリック医薬品が上市されました。また、当社グループの医薬品を保護する物質特許が無効と判断された場合、当該国内における当該医薬品の市場価値が失われ、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。一方、当社グループでは、第三者の知的財産権を侵害することのないように常に注意を払っていますが、万が一当社グループの事業活動が第三者の知的財産権を侵害した場合、第三者から当該事業活動を中止することを求められたり、損害賠償を請求されたりする可能性があります。 訴訟当社グループは、その事業運営に関し、製造物責任その他の人身被害等の製品に関する事項、消費者保護、商業規制、証券法、データ保護、契約違反、法令違反、環境規制など様々な事由に関連して、政府を含む第三者の提訴や調査等に起因する訴訟、仲裁その他の法令上や行政上の手続きに関与し、または関与する可能性があります。訴訟等の法的手続きは、その性質上、不確実性を伴います。当社グループはこれらの手続きに適切に対応し、正当な主張を行って参りますが、将来的に当社グループに賠償金支払いを命じる判決や、和解による支払いなどが生じる可能性があり、この結果、当社グループの経営状況、業績、社会的評価に重要な影響を及ぼす可能性があります。例えば、プロトンポンプ阻害剤「パリエット」(米国名「Aciphex」)について、当社は、他のプロトンポンプ阻害剤に係る他の製造業者とともに、人身被害を受けたとする訴訟を提起されています。米国連邦裁判所に提訴された訴訟は、ニュージャージー州の地方裁判所における広域係属訴訟として併合されています。ある訴訟は、様々な種類のプロトンポンプ阻害剤を用いた治療に伴い様々な被害の診断を受けたとする複数の原告から複数の製薬企業に対して米国の連邦裁判所および州裁判所へ提起されている他の訴訟と併合される可能性があり、また、ある訴訟は終了したり訴えが却下されたりし、さらに別の訴訟が提起される可能性があるため、係属中の訴訟の数は大きく変動する可能性があります。肥満症治療剤「BELVIQ」(日本では未承認、未販売)については、米国において、本年4月の時点で、健康被害を主張する40件を超える製造物責任訴訟が係属中です。「Aciphex」および「BELVIQ」に係る訴訟に関して生じうる負債を算定することはできないのが現状です。データの信頼性製薬企業にとって、研究データ、生産データ、市販後調査や医薬品安全性監視等に関するデータのインテグリティ(完全性、一貫性、正確性)の確保は、製品の安全性や信頼性の根拠となるため極めて重要であり、これら重要データのインテグリティが確保できないことにより、新薬開発の遅延・中止や、製品の回収、販売の停止など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、データインテグリティ推進委員会やデータインテグリティ推進室を設置し、データの記録・検証・承認・保管のシステム化を推進しています。さらに、適切な内部統制の構築・整備、運用等により、製品品質を裏付けるデータ、臨床試験データおよび市販後調査を含む医薬品安全性監視に関するデータのインテグリティの強化を図るとともに、国内外の重要データに携わる社員を対象とした研修を継続して実施しています。医療費抑制策各国政府は、増大する医療費を抑えるため、様々な薬剤費抑制策を導入・検討しています。日本では医療用医薬品の薬価引き下げや、ジェネリック医薬品の使用促進などの施策がとられています。中国においても、国家医薬品償還リスト収載に伴う大幅な価格引き下げや集中購買制度においてより安価なジェネリック医薬品の使用が促進されており、例えば、「レンビマ」を国家医療保険償還医薬品リストに収載する際、販売価格を引き下げました。また、末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は政府集中購買の対象となったことから販売価格を引き下げました。欧州では、新薬承認が得られた製品であっても、期待した価格による保険償還がなされない場合があります。これらの施策の推進ならびに新たな施策の導入により、当初に見込んでいた売上収益が得られない可能性があります。当社グループでは、各国の制度や政策動向を把握しつつ、有効性や安全性に加え、介護の軽減や対象疾患の重篤度など、新薬のもつ価値の立証を目指して検討を進めています。そして、それらが適切に価格に反映されるよう、製薬業界全体で行政等への働きかけを行っています。 (4)その他サクセッション当社グループは、30年超の長期にわたり、現代表執行役CEOが強いリーダーシップを発揮してグローバルに事業を展開し成長を遂げてきました。代表執行役CEOが計画を策定して、将来の代表執行役CEOを育成することに加え、突発的事態に対しても万全な備えを行うこと、および代表執行役CEOの選定においては、取締役会がその客観性や公正性を確保することが重要です。これらができない場合、当社グループの企業理念の実現や経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。このため、当社取締役会は代表執行役CEOの選定を取締役会の最も枢要な意思決定事項のひとつと位置付けるとともに、サクセッションプランに関するルール、手続きを定め、独立社外取締役が将来の代表執行役CEOの育成等のプロセスに関与することで、CEO選定の客観性と公正性を合理的に確保できると考えています。具体的には年に2回、hhcガバナンス委員会において代表執行役CEOから提案されるサクセッションプランを全取締役と情報共有するとともにその検討を行っています。上記の代表執行役CEOのサクセッションへの取り組みに加え、当社人事部門は執行役を含むグローバル全社ポジションにおける計画的なリーダーシップの継承を企図して、後継候補者の選定と育成、リテンション施策などの進捗状況を確認するサクセッションプランニングを年に1回実施しています。人財の確保と育成当社の強みは「企業理念の深い浸透」です。当社は企業理念への深い理解と共感を根幹とし、全社員が自立したプロフェッショナルとして活躍することを目指しています。hhc理念に共感する多様な人財を獲得し、社員一人ひとりがhhc実現に向け、中長期的に取り組むことができない場合、イノベーションの創出と企業理念の実現に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社の人財育成の基本は、社員一人ひとりが患者様とともに時間を過ごす共同化によって患者様の真のニーズを理解することであり、この共同化が社員一人ひとりの動機付けとなります。グローバルリーダー育成プログラム等、様々な社内研修プログラムに患者様との共同化のセッションを盛り込み、hhc理念の浸透を図ることで人財育成を強化しています。さらに、多様な働き方を支援する制度や職場環境の整備を進めており、より魅力ある企業となる取り組みを通じて人財の確保を図っています。情報セキュリティ当社グループにおけるデジタルプラットフォーム戦略、5D(Data Driven Drug Discovery & Development)戦略、エーザイデータレイク構想等の新たな事業展開に伴い、AIやビッグデータ、クラウドの活用など、ITインフラ活用の機会が高まっています。このようにサイバー空間を活用したビジネスが進展する一方、当社グループへのサイバー攻撃が高度化・巧妙化しており、セキュリティ上の脅威は深刻化し、攻撃による操業停止等、事業活動への影響が生じる可能性が高まっています。その結果、以前にも増して情報セキュリティ体制の強化が必要となっています。また、当社グループは、個人情報や未公開情報を含めた多くの重要情報を保有していますが、そのような重要情報が社外に流出した場合、信頼や競争優位性を大きく失うこととなります。特に、近年は個人情報保護に関するグローバルな要請に的確に対応することが求められてきています。また、創薬段階の未公開構造式などの流出は特許の申請・取得に対して影響を及ぼします。当社グループの信頼あるいは競争優位性の低下が生じた場合には、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。サイバー攻撃等による重要業務の中断や個人情報・秘密情報等の漏えいを防止するため、チーフインフォメーションセキュリティオフィサーのリーダーシップの下、当年度当社グループにおけるセキュリティ対策の実施状況を確認し、発見された各課題に対するセキュリティ対策を推進しています。また、システムインフラのセキュリティ強化に加え、情報管理に関する規程等を整備し、役員・従業員へ日常業務における情報管理教育、サイバーセキュリティ訓練などを実施し、グローバルな情報セキュリティに関する継続的なガバナンス強化と施策の実行に取り組んでいます。 新型コロナウイルス感染症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束に向けて、治療薬の上市や複数回にわたるワクチン接種がグローバルに実施されています。一方、新たな変異ウイルスの発生により感染が拡大した場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。例えば、研究開発活動においては臨床試験での治験参加者の登録や試験の進行が遅延する可能性、生産活動においては仕入先を含めた工場の操業停止や物流遅延などサプライチェーンに影響が生じて製品の安定供給に支障をきたす可能性、販売活動においてはMRが医療関係者に適時適切な情報収集・提供ができなくなる可能性などがあります。当社ではCOVID-19に関する危機対策本部を立ち上げ、各国の子会社と連携しながら正確な情報を収集し、従業員の安全確保に努めるとともに、ICT技術等の活用を積極的に推進して事業活動に対する影響を最小限に留めるための取り組みを継続しています。また、当社グループの各工場においては、日頃より製品の安定供給を図るために必要な在庫量を確保しており、あらかじめ定められた事業継続計画(BCP)に基づく体制整備・運用を実施しています。気候変動気候変動は、企業活動に影響を与える重要な課題であると認識しています。当社グループは、2019年6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、TCFDのフレームワークを活用した気候変動による長期的な影響についてのシナリオ分析を実施しました。その結果、物理的リスクとして、健康リスクの高まりとともに、特に発展途上国における医薬品アクセスの必要性が高まり、その改善に対する支出の影響が最大であると評価しました。また、自然災害による生産障害に起因する被害や固定資産の損失、生産バックアップ体制への継続的な投資などが大きく、さらに、生産や物流の停止により製品供給が停滞することに伴う売上収益の減少も大きいと評価しました。移行リスクでは、温室効果ガス排出削減ならびにその開示が不十分な場合のレピュテーションリスクが大きなインパクトとなること、カーボンプライシング(炭素の価格付け)における炭素税の上昇に伴う急激な原価上昇の影響も大きいと評価しました。これらの対応として、SBTi(Science Based Targets initiative)に基づいた温室効果ガス排出削減等の取り組み、国際的な環境イニシアティブ「RE100」への加盟を行い、2030年までに再生可能エネルギー使用率100%および2040年までのカーボンニュートラル達成を掲げた中長期目標であるカーボンニュートラル宣言とロードマップを設定しました。今後、カーボンニュートラル・ロードマップに沿って、中長期的な取り組みを加速していきます。のれんや無形資産の減損当社グループは、企業買収や製品・開発品の導入を通じて獲得したのれんおよび無形資産を計上しています。これらの資産については、計画と実績の乖離や市場の変化等により回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には減損処理をする必要があり、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、当社グループにおけるのれん(2021年度末残高:1,918億円)の多くはアメリカス医薬品事業に配分しています。その回収可能価額は、経営者により承認された事業計画を基礎としたアメリカス医薬品事業の将来キャッシュ・フローや成長率等の仮定を用いて算定しており、それらの仮定は、将来における新薬の承認取得・適応追加の有無および時期、上市後の薬価および販売数量、競合品の状況や金利の変化等の影響を受けます。
FY2021|9,724 文字
2【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクや不確実性は、次のとおりです。ただし、これらは当社グループに係るすべてのリスクや不確実性を網羅したものではなく、現時点において予見できない、あるいは重要とみなされていない他の要因の影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループを取り巻くリスクや不確実性に関して、当社グループでは執行役会などの意思決定機関において定期的に議論し、これらのリスクや不確実性を機会として活かす、あるいは低減するための対応を検討しています。その検討結果は取締役会へ報告・議論されており、以下に記載したリスクや不確実性には執行側だけでなく取締役会における議論も反映しています。なお、これらは有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、文中の将来に関する事項はその発生あるいは達成を保証するものではありません。 (1)企業理念企業理念にもとづく経営当社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念として、定款にも規定しステークホルダーズと共有しており、これらを「Purpose」として捉えています。その実現の結果として得られる患者様とそのご家族のベネフィット向上が、長期的に当社グループの業績および企業価値の向上につながると考えています。2021年4月からスタートした新中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の戦略意思も企業理念であるhhcに依拠したものであり、患者様の真のニーズを理解することによって生まれる強い動機付けが当社グループのイノベーションの源泉となっています。また、患者様価値を創出するための新薬の研究・開発の更なる推進、高品質な製品の生産・販売、医薬品の安全な使用を実現するための情報の管理・提供等を統制のもとで推進する重要性を「Integrity」としてとらえています。リンパ系フィラリア症の治療薬の無償提供をはじめとする医薬品アクセス向上や、認知症と共生する「まちづくり」への取り組みなど、ESGへの取り組みもこの理念を根幹として展開しています。従って、企業理念の当社グループへの浸透の不徹底と理念実現に向けた経営の実践の停滞など、患者様とそのご家族がベネフィット向上を十分に得るうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (2)事業戦略ADフランチャイズの構築当社グループは、新中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においても、次世代アルツハイマー病(AD)治療剤の価値最大化を最重要戦略の一つと定めています。しかしながら、治療対象となる患者様を鑑みると、従来の販売およびプロモーション戦略では、あまねく患者様に次世代AD治療剤をお届けできない可能性があります。すなわち、新たに疾患を認識してから診断、治療、その後の生活に至るまでに患者様がたどる道のり(ペイシェント・ジャーニー)に則った疾患啓発と浸透、認知機能検査・PET(陽電子放射断層診断)・CSF(脳脊髄液)等による診断法の確立、安全性確保のためのフォローアップ体制の整備や、社会一般における認知機能を計測する文化の醸成等を踏まえたプラットフォーム(Eisai Universal Platform:EUP)の整備を通じADフランチャイズの構築が実現されない場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。レンビマの価値最大化当社グループと米メルク社は、抗がん剤「レンビマ」と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(一般名)の併用療法に関して14種類のがんで20を超える適応を対象とした試験を実施しています。しかしながら、競合品の予期せぬ試験結果や承認タイミングによってポジショニングが変化し、当初想定した時期に「レンビマ」が追加の適応症に関する承認を取得できないことで製品の競争力が減弱し、「レンビマ」の売上計画を達成できない可能性があります。「レンビマ」のパートナーシップモデルによって得られる収益にはオプション権に対する一時金、開発マイルストン、販売マイルストンなどが設定されており、販売目標や承認が未達成となることで実現されない場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。 パートナーシップモデル当社グループは、ビジネスの効率性・生産性を向上させる上で、パートナーシップは有効な手段と考えており、最先端のサイエンスやテクノロジーの活用による新薬開発の加速を目的としたパートナーシップや、各リージョンでのリソースの効率的活用と事業価値最大化を目的としたパートナーシップを活用しています。パートナーシップを活用した医薬品研究開発、生産、販売活動において、パートナーとの意見の相違が生じた場合には、上記活動に遅延や非効率が生じるほか、予測外のパートナー費用負担が発生することで計画された利益が想定外に減少するなど、事業価値最大化に支障をきたす可能性があります。また、契約の解釈の相違などが生じた場合には、パートナーとの間で訴訟や仲裁に発展し、最終的にはパートナーシップの解消をもたらす可能性もあります。この場合、将来に期待されていた新薬の創出や売上収益が実現できないなど、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。デジタルトランスフォーメーション当社グループは、新中期経営計画「EWAY Future & Beyond」において、全ステークホルダーの想いをつなげ、解決スピードを加速させ、データに基づく強固な経営を実行するため、あらゆる活動でデジタルトランスフォーメーションに取り組むことを大きなテーマとして掲げています。第4次産業革命が着実に進行する中、新技術の活用により創薬のスピードと成功確率を飛躍的に向上させると共に、患者様のみならず生活者一人ひとりであるThe Peopleに薬剤を含めたソリューションをお届けするまでの全局面におけるパラダイムシフトの実現を企図し、デジタルトランスフォーメーションを実現させることが重要課題です。当社ではチーフデジタルオフィサーを中心に、全社デジタル戦略を加速します。今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした経営環境の変化を見据えれば、デジタルトランスフォーメーションの必要性は明白であり、その実現に向けた取り組みの停滞や、実現するうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (3)医薬品の研究開発、生産および販売活動新薬開発当社グループは、次世代AD治療剤候補をはじめとして、多くの新薬開発を行っています。次世代AD治療剤候補においては、当社グループが抗アミロイドβプロトフィブリル抗体lecanemab(一般名)についてフェーズⅢ試験を主導して実施しています。また、当社グループの提携相手であるバイオジェン社が抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブ(一般名)について、フェーズⅢ試験を主導して実施してきました。新薬の研究開発には長い期間と多額の投資を必要とします。加えて、有効性や安全性の観点から医薬品候補化合物の開発を中止あるいは中断する可能性があります。例えば、2019年、バイオジェン社と当社は、早期ADを対象に開発を進めていたβサイト切断酵素阻害剤エレンベセスタット(一般名)の有効性、安全性を検証するフェーズⅢ試験の中止を発表しました。また、臨床試験で期待された結果が得られた場合であっても、各国の厳格な承認審査の結果、承認が得られないもしくは追加データの提出を要求され承認が遅延する可能性があります。あるいは、承認が得られた場合でも承認条件として求められた追加臨床試験で安全性・有用性が検証できなかった場合には承認を取り消される可能性があります。バイオジェン社と共同開発しているアデュカヌマブについて、米国では追加臨床試験を前提とした迅速承認を取得しました。その後の追加臨床試験において当局から求められる条件が満たせない場合は、取り消される可能性があります。日本・欧州を含む各国においては現在承認審査中です。このような新薬開発の不確実性に伴い、当初想定していた開発計画が中止あるいは遅延した場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。副作用医薬品は承認・販売された場合でも、その後のデータ・事象により、医薬品としてのベネフィットとリスクのプロファイルが承認時とは異なってくる場合がありえます。重大な副作用の発現・集積により、製品の添付文書の変更、販売停止、回収等の措置を実施する場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、製品に関するすべての有害事象や安全性に関する情報を科学的・医学的に評価し、規制当局に報告する体制としてすべての地域の安全管理責任者等で編成するセーフティ・エグゼクティブ・コミッティ、および製品毎の安全性医学評価責任者等で編成するグローバル・セーフティ・ボードを設置しています。これらの体制を中心として、製品のグローバルな安全性監視体制を確立し、製品の適正使用の徹底に努めています。 製品品質および安定供給医薬品は、患者様へ高品質な製品を確実にお届けする必要がありますが、使用する原材料、自社工場あるいは製造委託先での製造プロセス等、何らかの原因により製品品質に問題が生じた場合や、使用原材料の供給停止や製造工程における技術上の問題、パンデミックあるいは重大な災害等により工場の操業停止などサプライチェーンに断絶が生じた場合には、患者様の健康に支障をきたす可能性があるほか、製品の回収、販売停止などにより業績へ影響を及ぼす可能性があります。また、何らかの原因による急な需要変動により製品の安定供給が影響を受ける可能性があります。当社グループは、安心してご使用いただける高品質な医薬品の供給を可能とする品質保証活動を展開しており、グローバル基準のGMP(製造管理および品質管理に関する基準)に準拠した製造および品質管理を行っています。製造委託先についても、定期的なGMP監査に加え技術者を派遣して製造現場を確認するなどの活動を実施しています。さらに、流通段階での品質確保にも取り組んでいます。また、当社グループは、世界の主要地域に自社工場を保有し、各工場からタイムリーに製品供給を行っています。加えて、事業継続計画(BCP)を定めており、パンデミック等の重大な災害や急な需要変動が発生した場合においても安定供給を確保する体制の整備に取り組んでいます。知的財産通常、先発医薬品の特許期間およびデータ保護期間が切れると同一成分のジェネリック医薬品の販売が可能となります。しかし、特許の不成立や特許成立後の無効審判の結果等により取得した特許権を適切に保護できない場合、想定より早くジェネリック医薬品やバイオシミラー品の市場参入を招き、売上収益が減少する可能性があります。例えば、ファイザー社と共同販促を展開している疼痛治療剤「リリカ」は、日本の用法特許に対する特許無効審判において、一部無効との判断がなされ、2020年12月にジェネリック医薬品が上市されました。また、「レンビマ」の中国の特許について、現在、無効審判が請求されています。また、特許期間内であっても、米国のようにジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請が可能な国もあり、そのような国では、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請を行った企業との間で特許侵害訴訟が起こる可能性があります。それら特許訴訟の結果によっては、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品が当該特許期間満了より早期に参入し、当該国内の市場シェアが大幅かつ急速に低下する可能性があります。例えば2018年には、米国における制吐剤「Aloxi」について、連邦控訴裁判所で製剤特許無効の判決が確定し、ジェネリック医薬品が上市されました。また、当社グループの医薬品を保護する物質特許が無効と判断された場合、当該国内における当該医薬品の市場価値が失われ、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。一方、当社グループでは、第三者の知的財産権を侵害することのないように常に注意を払っていますが、万が一当社グループの事業活動が第三者の知的財産権を侵害した場合、第三者から当該事業活動を中止することを求められたり、損害賠償を請求されたりする可能性があります。訴訟当社グループは、その事業運営に関し、製造物責任その他の人身被害等の製品に関する事項、消費者保護、商業規制、証券法、データ保護、契約違反、法令違反、環境規制など様々な事由に関連して、政府を含む第三者の提訴や調査等に起因する訴訟、仲裁その他の法令上や行政上の手続きに関与し、または関与する可能性があります。訴訟等の法的手続きは、その性質上、不確実性を伴います。当社グループはこれらの手続きに適切に対応し、正当な主張を行って参りますが、将来的に当社グループに賠償金支払いを命じる判決や、和解による支払いなどが生じる可能性があり、この結果、当社グループの経営状況、業績、社会的評価に重要な影響を及ぼす可能性があります。例えば、プロトンポンプ阻害剤「パリエット」(米国名「Aciphex」)について、当社は、他のプロトンポンプ阻害剤に係る他の製造業者とともに、人身被害を受けたとする訴訟を提起されています。米国連邦裁判所に提訴された訴訟は、ニュージャージー州の地方裁判所における広域係属訴訟として併合されています。ある訴訟は、様々な種類のプロトンポンプ阻害剤を用いた治療に伴い様々な被害の診断を受けたとする複数の原告から複数の製薬企業に対して米国の連邦裁判所および州裁判所へ提起されている他の訴訟と併合される可能性があり、また、ある訴訟は終了したり訴えが却下されたりし、さらに別の訴訟が提起される可能性があるため、係属中の訴訟の数は大きく変動する可能性があります。肥満症治療剤「BELVIQ」(日本では未承認、未販売)については、1件の消費者集団訴訟が米国の連邦地方裁判所において係属中です。このほか、米国では、本年5月の時点で、健康被害を主張する20件を超える製造物責任訴訟が係属中です。また、1件の消費者集団訴訟がイスラエルの裁判所で係属中です。「Aciphex」および「BELVIQ」に係る訴訟に関して生じうる負債を算定することはできないのが現状です。データの信頼性製薬企業にとって、研究データ、生産データ、市販後調査や医薬品安全性監視等に関するデータのインテグリティ(完全性、一貫性、正確性)の確保は、製品の安全性や信頼性の根拠となるため極めて重要であり、これら重要データのインテグリティが確保できないことにより、新薬開発の遅延・中止や、製品の回収、販売の停止など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、データインテグリティ推進委員会やデータインテグリティ推進室を設置し、データの記録・検証・承認・保管のシステム化、適切な内部統制の構築・整備、運用等により、特に、製品品質を裏付けるデータ、臨床試験データおよび市販後調査を含む医薬品安全性監視に関するデータのインテグリティの強化を図るとともに、国内外の重要データに携わる社員を対象とした研修を継続して実施しています。医療費抑制策各国政府は、増大する医療費を抑えるため、様々な薬剤費抑制策を導入・検討しています。日本では医療用医薬品の薬価引き下げや、ジェネリック医薬品の使用促進などの施策がとられています。中国においても、国家医薬品償還リスト収載に伴う大幅な価格引き下げや集中購買制度においてより安価なジェネリック医薬品の使用が促進されており、例えば、当年度、「レンビマ」を国家医療保険償還医薬品リストに収載する際、販売価格を引き下げました。また、末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は政府集中購買の対象となったことから販売価格を引き下げました。欧州では、新薬承認が得られた製品であっても、期待した価格による保険償還がなされない場合があります。これらの施策の推進ならびに新たな施策の導入により、当初に見込んでいた売上収益が得られない可能性があります。当社グループでは、各国の制度や政策動向を把握しつつ、有効性や安全性に加え、介護の軽減や対象疾患の重篤度など、新薬のもつ価値の立証を目指して検討を進めています。そして、それらが適切に価格に反映されるよう、製薬業界全体で行政等への働きかけを行っています。 (4)その他サクセッション当社グループは、30年超の長期にわたり、現代表執行役CEOが強いリーダーシップを発揮してグローバルに事業を展開し成長を遂げてきました。今後、代表執行役CEO自らが計画的に将来の代表執行役CEOの育成を図ることに加え突発的事態に対しても万全な備えを行うこと、および取締役会が代表執行役CEOの選定における客観性や公正性を確保することが重要ですが、これらができない場合、当社グループの企業理念の実現や経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。このため、当社取締役会は代表執行役CEOの選定を取締役会の最も枢要な意思決定事項のひとつと位置づけるとともに、サクセッションプランに関するルール、手続きを定めて、将来の代表執行役CEOの育成等においても独立社外取締役がそのプロセスに関与してその監督機能を発揮しています。具体的には年に2回、hhcガバナンス委員会において代表執行役CEOから提案されるサクセッションプランを全取締役と情報共有するとともにその検討を行っています。上記の代表執行役CEOのサクセッションへの取り組みに加え、執行役を含む全社的重要ポジションにおける計画的なリーダーシップの継承を企図して、後継候補者の選定と育成、リテンション施策などの進捗状況を確認するサクセッションプランニングを年に1回実施しています。情報セキュリティ当社グループにおけるデジタルプラットフォーム戦略、5D(Data Driven Drug Discovery & Development)戦略、エーザイデータレイク構想等の新たな事業展開に伴い、AIやビッグデータ、クラウドの活用など、ITインフラ活用の機会が高まっています。このようにサイバー空間を活用したビジネスが進展する一方、当社グループへのサイバー攻撃が高度化・巧妙化しており、セキュリティ上の脅威は深刻化し、攻撃による操業停止等、事業活動への影響が生じる可能性が高まっています。その結果、以前にも増して情報セキュリティ体制の強化が必要となっています。また、当社グループは、個人情報や未公開情報を含めた多くの重要情報を保有していますが、そのような重要情報が社外に流出した場合、信頼や競争優位性を大きく失うこととなります。特に、近年は個人情報保護に関するグローバルな要請に的確に対応することが求められてきています。また、創薬段階の未公開構造式などの流出は特許の申請・取得に対して影響を及ぼします。当社グループの信頼あるいは競争優位性の低下が生じた場合には、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。サイバー攻撃等による重要業務の中断や個人情報・秘密情報等の漏えいを防止するため、チーフインフォメーションセキュリティオフィサーのリーダーシップの下、当年度当社グループにおけるセキュリティ対策の実施状況を確認し、発見された各課題に対するセキュリティ対策を推進しています。また、システムインフラのセキュリティ強化に加え、情報管理に関する規程等を整備し、役員・従業員へ日常業務における情報管理教育、サイバーセキュリティ訓練などを実施し、グローバルな情報セキュリティに関する継続的ガバナンス強化と施策の実行に取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束に向けて、一部の国においてワクチン接種が開始されましたが、変異ウイルスの感染拡大などにより、未だに当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。例えば、研究開発活動においては臨床試験での治験参加者の登録や試験の進行が遅延する可能性、生産活動においては仕入先を含めた工場の操業停止などサプライチェーンに影響が生じて製品の安定供給に支障をきたす可能性、販売活動においてはMRが医療従事者に適時適切な情報収集・提供ができなくなる可能性などがあります。当社ではCOVID-19に関する危機対策本部を立ち上げ、各国の子会社と連携しながら正確な情報を収集し、従業員の安全確保に努めるとともに、ICT技術等の活用を積極的に推進して事業活動に対する影響を最小限に留めるための取り組みを継続しています。また、当社グループの各工場においては、日頃より製品の安定供給を図るために必要な在庫量を確保しており、あらかじめ定められた事業継続計画(BCP)に基づく体制整備・運用を実施しています。気候変動気候変動は、企業活動に影響を与える重要な課題であると認識しています。当社グループは、2019年6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、組織横断型のプロジェクトを立ち上げTCFDのフレームワークを活用した気候変動による長期的な影響についてのシナリオ分析を実施しました。その結果、物理的リスクとして、健康リスクの高まりとともに、特に発展途上国における医薬品アクセスの必要性が高まり、その改善に対する支出の影響が最大であると評価しました。また、自然災害による生産障害に起因する被害や固定資産の損失、生産バックアップ体制への継続的な投資などが大きく、さらに、生産や物流の停止により製品供給が停滞することに伴う売上収益の減少も大きいと評価しました。移行リスクでは、温室効果ガス排出削減ならびにその開示が不十分な場合のレピュテーションリスクが大きなインパクトとなること、カーボンプライシング(炭素の価格付け)における炭素税の上昇に伴う急激な原価上昇の影響も大きいと評価しました。すでに開始しているSBTi(Science Based Targets initiative)に基づいた温室効果ガス排出削減等の取り組みの加速に加え、2030年までに再生可能エネルギー使用率100%および2040年までのカーボンニュートラル達成を掲げた中長期目標を設定しました。今後、カーボンニュートラルの実現に向けた中長期的な取り組みとその開示を推進します。のれんや無形資産の減損 当社グループは、企業買収や製品・開発品の導入を通じて獲得したのれんおよび無形資産を計上しています。これらの資産については、計画と実績の乖離や市場の変化等により公正価値が帳簿価額を下回る場合には減損処理をする必要があり、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、当社グループにおけるのれん(2020年度末残高:1,718億円)の多くはアメリカス医薬品事業に配分しています。その公正価値は、経営者により承認された事業計画を基礎としたアメリカス医薬品事業の将来キャッシュ・フローや成長率等の仮定を用いて算定しており、それらの仮定は、将来における新薬の承認取得・適応追加の有無および時期、上市後の薬価および販売数量、競合品の状況や金利の変化等の影響を受けます。
FY2020|8,616 文字
2【事業等のリスク】有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクや不確実性は、次のとおりです。ただし、これらは当社グループにかかるすべてのリスクや不確実性を網羅したものではなく、現時点において予見できない、あるいは重要とみなされていない他の要因の影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループを取り巻くリスクや不確実性に関して、当社グループでは執行役会などの意思決定機関において定期的に議論し、これらのリスクや不確実性を機会として活かす、あるいは低減するための対応を検討しています。その検討結果は取締役会へ報告・議論されており、以下に記載したリスクや不確実性には執行側だけでなく取締役会における議論も反映しています。なお、これらは有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、文中の将来に関する事項はその発生あるいは達成を保証するものではありません。 (1)企業理念企業理念にもとづく経営当社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念として、定款にも規定しステークホルダーズと共有しており、これらを「Purpose」として捉えています。その実現の結果として得られる患者様とそのご家族のベネフィット向上が、長期的に当社グループの業績および企業価値の向上につながると考えています。中期経営計画「EWAY 2025」の戦略意志も企業理念であるhhcに依拠したものであり、患者様の真のニーズを理解することによって生まれる強い動機付けが当社グループのイノベーションの源泉となっています。また、患者様価値を創出するための新薬の研究・開発の更なる推進、高品質な製品の生産・販売、医薬品の安全な使用を実現するための情報の管理・提供等を統制のもとで推進する重要性を「Integrity」としてとらえています。リンパ系フィラリア症の治療薬の無償提供をはじめとする医薬品アクセス向上や、認知症と共生する「まちづくり」への取り組みなど、ESGへの取り組みもこの理念を根幹として展開しています。従って、企業理念の当社グループへの浸透の不徹底と理念実現に向けた経営の実践の停滞など、患者様とそのご家族がベネフィット向上を十分に得るうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (2)事業戦略ADフランチャイズの構築当社グループは、中期経営計画「EWAY 2025」において、次世代アルツハイマー病(AD)治療剤の価値最大化を最重要戦略の一つと定めています。しかしながら、治療対象となる患者様を鑑みると、従来の販売およびプロモーション戦略では、あまねく患者様に次世代AD治療剤をお届けできない可能性があります。すなわち、新たに疾患を認識してから診断、治療、その後の生活に至るまでに患者様がたどる道のり(ペイシェント・ジャーニー)に則った疾患啓発と浸透、認知機能検査・PET(陽電子放射断層診断)・CSF(脳脊髄液)等による診断法の確立、安全性確保のためのフォローアップ体制の整備や、社会一般における認知機能を計測する文化の醸成等を踏まえたエコシステムの整備(ADフランチャイズの構築)が実現されない場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。レンビマの価値最大化当社グループと米メルク社は、抗がん剤「レンビマ」と抗PD-1抗体「キイトルーダ」の併用療法に関して7種類のがんの13適応を対象とした試験を実施または計画しており、このうち、肝細胞がん(ファーストライン)、腎細胞がん(ファーストライン)、子宮内膜がんについては米国食品医薬品局(FDA)からのブレイクスルーセラピー指定を受領しています。しかしながら、競合品の予期せぬ試験結果や承認タイミングによってポジショニングが変化し、当初想定した時期に「レンビマ」が追加の適応症に関する承認を取得できないことで製品の競争力が減弱し、「レンビマ」の売上計画を達成できない可能性があります。「レンビマ」のパートナーシップモデルによって得られる収益にはオプション権に対する一時金、開発マイルストン、販売マイルストンなどが設定されており、販売目標や承認が未達成となることで実現されない場合、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。 パートナーシップモデル当社グループは、ビジネスの効率性・生産性を向上させる上で、パートナーシップは有効な手段と考えており、最先端のサイエンスやテクノロジーの活用による新薬開発の加速を目的としたパートナーシップや、各リージョンでのリソースの効率的活用と事業価値最大化を目的としたパートナーシップを活用しています。パートナーシップを活用した医薬品研究開発、生産、販売活動において、パートナーとの意見の相違が生じた場合には、上記活動に遅延や非効率が生じるほか、予測外のパートナー費用負担が発生することで計画された利益が想定外に減少するなど、事業価値最大化に支障をきたす可能性があります。また、契約の解釈の相違などが生じた場合には、パートナーとの間で訴訟や仲裁に発展し、最終的にはパートナーシップの解消をもたらす可能性もあります。この場合、将来に期待されていた新薬の創出や売上収益が実現できないなど、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。デジタルトランスフォーメーション当社グループは、中期経営計画「EWAY 2025」において、バリューチェーンモデルからエコシステム プラットフォームモデルへの転換を図り、Medico Societal Innovatorとなることを大きなテーマとして掲げています。第4次産業革命が着実に進行する中、AIの活用により創薬から患者様に薬をお届けするまでの全局面におけるパラダイムシフトの実現を企図し、デジタルトランスフォーメーションを実現させることが重要課題です。当社ではチーフデジタルオフィサーを設置し、全社デジタル戦略を加速します。今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした経営環境の変化を見据えれば、デジタルトランスフォーメーションの必要性は明白であり、その実現に向けた取り組みの停滞や、実現するうえでの阻害要因が生じた場合には、当社グループの業績のみならず非財務価値を含めた企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (3)医薬品の研究開発、生産および販売活動新薬開発当社グループは、次世代AD治療剤候補をはじめとして、多くの新薬開発を行っています。次世代AD治療剤候補においては、当社グループが「BAN2401」についてフェーズⅢ試験を主導して実施しています。また、当社グループの提携相手であるバイオジェン社が「アデュカヌマブ」について、フェーズⅢ試験を主導して実施してきました。新薬の研究開発には長い期間と多額の投資を必要とします。医薬品候補化合物は、有効性や安全性の観点から開発を中止する可能性があります。例えば、2019年9月13日、バイオジェン社と当社は、早期ADを対象にした「エレンベセスタット」の有効性、安全性を検証するフェーズⅢ試験を中止することを発表しました。また、臨床試験で期待された結果が得られた場合であっても、各国の厳格な承認審査の結果、承認が得られない可能性があります。現在、バイオジェン社が「アデュカヌマブ」について、米国ではBLA(生物製剤ライセンス)申請における各モジュールの申請を既に開始しています。さらに、新薬開発の遅延、中止などの理由で、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。副作用医薬品は承認・販売された場合でも、その後のデータ・事象により、医薬品としてのベネフィットとリスクのプロファイルが承認時とは異なってくる場合がありえます。重大な副作用の発現・集積により、製品の添付文書の変更、販売停止、回収等の措置を実施する場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、製品に関するすべての有害事象や安全性に関する情報を科学的に評価し、規制当局へ報告する体制としてすべての地域の安全管理責任者等で編成するセーフティ・エグゼクティブ・コミッティ、および製品毎の安全性医学評価責任者等で編成するグローバル・セーフティ・ボードを設置しています。これらの体制を中心として、製品のグローバルな安全性監視体制を確立し、製品の適正使用の徹底に努めています。 製品品質および安定供給医薬品は、患者様へ高品質な製品を確実にお届けする必要がありますが、使用する原材料、製造プロセス等、何らかの原因により製品品質に懸念が生じた場合や、使用原材料の供給停止や製造工程における技術上の問題、あるいは重大な災害等により工場の操業停止などサプライチェーンに断絶が生じた場合には、患者様の健康に支障をきたす可能性があるほか、製品の回収、販売停止などにより業績へ影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、安心してご使用いただける高品質な医薬品の供給を可能とする品質保証活動を展開しており、グローバル基準のGMP(製造管理および品質管理に関する基準)に準拠した製造および品質管理を行っています。製造委託先についても、定期的なGMP監査に加え技術者を派遣して製造現場を確認するなどの活動を実施しています。さらに、流通段階での品質確保にも取り組んでいます。また、当社グループは、世界の主要地域に自社工場を保有し、各工場からタイムリーな製品供給を行える体制を整えています。加えて、事業継続計画(BCP)を定めており、重大な災害等が発生した場合においても安定供給を確保する体制の整備に取り組んでいます。知的財産通常、先発医薬品の特許期間およびデータ保護期間が切れると同一成分のジェネリック医薬品の販売が可能となります。しかし、特許の不成立や特許成立後の無効審判の結果等により取得した特許権を適切に保護できない場合、想定より早くジェネリック医薬品やバイオシミラー品の市場参入を招き、売上収益が減少する可能性があります。例えば、ファイザー社と共同販促を展開している疼痛治療剤「リリカ」は、2022年に特許満了を迎える日本の用法特許に対して無効審判が請求されています。また、特許期間内であっても、米国のようにジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請が可能な国もあり、そのような国では、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品の申請を行った企業との間で特許侵害訴訟が起こる可能性があります。それら特許訴訟の結果によっては、ジェネリック医薬品やバイオシミラー品が当該特許期間満了より早期に参入し、当該国内の市場シェアが大幅かつ急速に低下する可能性があります。例えば2018年には、米国における制吐剤「Aloxi」について、連邦控訴裁判所で製剤特許無効の判決が確定し、ジェネリック医薬品が上市されました。また、当社グループの医薬品を保護する物質特許が無効と判断された場合、当該国内における当該医薬品の市場価値が失われ、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。一方、当社グループでは、第三者の知的財産権を侵害することのないように常に注意を払っていますが、万が一当社グループの事業活動が第三者の知的財産権を侵害した場合、第三者から当該事業活動を中止することを求められたり、損害賠償を請求されたりする可能性があります。訴訟当社グループは、その事業運営に関し、製造物責任その他の人身被害等の製品に関する事項、消費者保護、商業規制、証券法、データ保護、契約違反、法令違反、環境規制など様々な事由に関連して、政府を含む第三者の提訴や調査等に起因する訴訟、仲裁その他の法令上や行政上の手続きに関与し、または関与する可能性があります。訴訟等の法的手続きは、その性質上、不確実性を伴います。当社グループはこれらの手続きに適切に対応し、正当な主張を行って参りますが、将来的に当社グループに賠償金支払いを命じる判決や、和解による支払いなどが生じる可能性があり、この結果、当社グループの経営状況、業績、社会的評価に重要な影響を及ぼす可能性があります。例えば、プロトンポンプ阻害剤「パリエット」(米国名「Aciphex」)について、当社は、他のプロトンポンプ阻害剤に係る他の製造業者とともに、人身被害を受けたとする訴訟を提起されています。米国連邦裁判所に提訴された訴訟は、ニュージャージー州の地方裁判所における広域係属訴訟として併合されています。ある訴訟は、様々な種類のプロトンポンプ阻害剤を用いた治療に伴い様々な被害の診断を受けたとする複数の原告から複数の製薬企業に対して米国の連邦裁判所および州裁判所へ提起されている他の訴訟と併合される可能性があり、また、ある訴訟は終了したり訴えが却下されたりし、さらに別の訴訟が提起される可能性があるため、係属中の訴訟の数は大きく変動する可能性があります。「パリエット/Aciphex」に係る訴訟に関して生じうる負債を算定することはできないのが現状です。データの信頼性製薬企業にとって、研究データや生産データ等のインテグリティ(完全性、一貫性、正確性)の確保は、製品の安全性や信頼性の根拠となるため極めて重要であり、これら重要データのインテグリティが確保できないことにより、新薬開発の遅延・中止や、製品の回収、販売の停止など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、データインテグリティ推進委員会やデータインテグリティ推進室を設置し、データの記録・検証・承認・保管のシステム化、適切な内部統制体制の確立と運用等により、特に、製品品質を裏付けるデータおよび臨床試験データのインテグリティの強化を図るとともに、国内外の重要データに携わる社員を対象とした研修を継続して実施しています。 医療費抑制策各国政府は、増大する医療費を抑えるため、さまざまな薬剤費抑制策を導入・検討しています。例えば、日本では医療用医薬品の薬価引き下げや、後発医薬品の使用促進などの施策がとられており、中国においても、価格談判制度による大幅な価格引き下げや集中購買制度による後発医薬品使用促進が行われています。欧州では、新薬承認が得られた製品であっても、期待した価格による保険償還がなされない場合があります。これらの施策の推進ならびに新たな施策の導入により、当初の見込んでいた売上収益が得られない可能性があります。当社グループでは、各国の制度や政策動向を把握しつつ、有効性や安全性に加え、介護の軽減や対象疾患の重篤度など、新薬のもつ価値の立証を目指して検討を進めています。そして、それらが適切に価格に反映されるよう、製薬業界全体で行政等への働きかけを行っています。 (4)その他サクセッション当社グループは、30年超の長期にわたり、現代表執行役CEOが強いリーダーシップを発揮してグローバルに事業を展開し成長を遂げてきました。今後、代表執行役CEO自らが計画的に将来の代表執行役CEOの育成を図ることに加え突発的事態に対しても万全な備えを行うこと、および取締役会が代表執行役CEOの選定における客観性や公正性を確保することが重要ですが、これらができない場合、当社グループの企業理念の実現や経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。このため、当社取締役会は代表執行役CEOの選定を取締役会の最も枢要な意思決定事項のひとつと位置づけるとともに、サクセッションプランに関するルール、手続きを定めて、将来の代表執行役CEOの育成等においても独立社外取締役がそのプロセスに関与してその監督機能を発揮しています。具体的には年に2回、社外取締役ミーティングにおいて代表執行役CEOから提案されるサクセッションプランを全取締役と情報共有するとともにその検討を行っています。上記の代表執行役CEOのサクセッションへの取り組みに加え、執行役を含む全社的重要ポジションにおける計画的なリーダーシップの継承を企図して、後継候補者の選定と育成、リテンション施策などの進捗状況を確認するサクセッションプランニングを年に1回実施しています。情報セキュリティ当社グループにおけるデジタルプラットフォーム戦略、5D(Data Driven Drug Discovery & Development)戦略、エーザイデータレイク構想等の新たな事業展開に伴い、AIやビッグデータ、クラウドの活用など、ITインフラ活用の機会が高まっています。このようにサイバー空間を活用したビジネスが進展する一方、当社グループへのサイバー攻撃が高度化・巧妙化しており、セキュリティ上の脅威は深刻化し、営業停止等による事業活動への影響が生じる可能性が高まっています。その結果、以前にも増して情報セキュリティ体制の強化が必要となっています。また、当社グループは、個人情報や未公開情報を含めた多くの重要情報を保有していますが、そのような重要情報が社外に流出した場合、信頼や競争優位性を大きく失うこととなります。特に、近年は個人情報保護に関するグローバルな要請に的確に対応することが求められてきています。また、創薬段階の未公開構造式などの流出は特許の申請・取得に対して影響を及ぼします。当社グループの信頼あるいは競争優位性の低下が生じた場合には、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。サイバー攻撃等による重要業務の中断や個人情報・秘密情報等の漏えいを防止するため、新たに設置したCISO(Chief Information Security Officer)がセキュリティ体制の強化を主導し、情報管理に関する規程等を整備して役員・従業員へ日常業務における情報管理の重要性を周知徹底するなどの対応により、グローバルな情報セキュリティに関する継続的なガバナンス強化と施策の実行に取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症2020年初頭より拡大し、数カ月で世界的流行となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、当社グループの事業活動にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。例えば、研究開発活動においては臨床試験での治験参加者の登録や試験の進行が遅延する可能性、生産活動においては仕入先を含めた工場の操業停止などサプライチェーンに影響が生じて製品の安定供給に支障をきたす可能性、販売活動においてはMRが医療従事者に適時適切な情報収集・提供ができなくなる可能性などがあります。当社ではCOVID-19に関する危機対策本部を立ち上げ、各国の子会社と連携しながら正確な情報を収集し、従業員の安全確保に努めるとともに、ICT技術等の活用を積極的に推進して事業活動に対する影響を最小限に留めるための取り組みを行っています。また、当社グループの各工場においては、日頃より製品の安定供給を図るために必要な在庫量を確保しており、あらかじめ定められた事業継続計画(BCP)にもとづく体制整備・運用を実施しています。 気候変動気候変動は、企業活動に影響を与える重要な課題であると認識しています。気候変動により大規模な台風、大雨、洪水等の自然災害が増加した場合、当社グループの製造拠点を含む国内外事業所の操業への障害や原料等の調達の遅延、および輸送に関する障害等が起こり、製品の安定供給に悪影響を及ぼす可能性があります(物理的リスク)。また、低炭素社会への移行のための炭素税の導入や環境規制の強化は、当社グループの国内外事業所および調達先におけるコスト増の可能性があります(移行リスク)。当社グループは、2019年6月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、組織横断型のプロジェクトを立ち上げTCFDのフレームワークを活用した気候変動による長期的な影響についてのシナリオ分析を実施中です。のれんや無形資産の減損当社グループは、企業買収や製品・開発品の導入を通じて獲得したのれんおよび無形資産を計上しています。これらの資産については、計画と実績の乖離や市場の変化等により回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には減損処理をする必要があり、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、当社グループにおけるのれん(2019年度末残高:1,687億円)の多くはアメリカス医薬品事業に配分しています。その公正価値は、経営者により承認された事業計画を基礎としたアメリカス医薬品事業の将来キャッシュ・フロー、割引率および成長率等の仮定を用いて算定しており、それらの仮定は、将来における新薬の承認取得・適応追加の有無および時期、上市後の薬価および販売数量、競合品の状況や金利の変化等の影響を受けます。
FY2019|3,136 文字
2【事業等のリスク】当社グループの連結業績を大幅に変動させる、あるいは投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、次のとおりです。なお、これらのリスクは、有価証券報告書提出日現在において判断、予想したものです。(1)製品の安全性および品質に関するリスク使用する原材料、製造プロセス等、何らかの原因で製品の安全性および品質に懸念が発生した場合、患者様の健康や製品の安定供給へ影響を及ぼす可能性のほか、製品の回収、販売の停止など業績へ影響を及ぼす可能性があります。(2)副作用発現のリスク製品に重大な副作用が発現した場合、販売の停止、製品の回収等の措置により、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(3)訴訟に関するリスク現在関与している訴訟または将来関与する訴訟の結果が、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(4)法規制に関するリスク医薬品事業は、薬事規制や製造物責任等の様々な法規制に関連しており、法規制の制定や改定により業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。法規制に適合しなくなった場合、製品の回収や製品の許認可の取り消し、または保険償還からの除外、さらには賠償請求を受ける等の可能性があります。(5)知的財産に関するリスク特許の不成立や特許成立後の無効審判、または取得した特許を適切に保護できない場合、想定より早く他社の市場参入を招き、売上収益が減少する可能性があります。また、当社グループの事業活動が第三者の知的財産権に抵触した場合、当該第三者から損害賠償請求などの権利行使を受ける可能性があります。(6)新薬開発の不確実性に関するリスク当社グループは、次世代アルツハイマー病治療剤候補をはじめとして、多くの新薬開発を行っています。次世代アルツハイマー病治療剤候補においては、当社グループがBAN2401 およびelenbecestat について、フェーズⅢ試験を主導して実施しています。また、当社の提携相手であるバイオジェン社がアデュカヌマブについて、フェーズⅢ試験を主導して実施していました。新薬の研究開発には長い期間と多額の投資を必要とします。医薬品候補化合物は、有効性や安全性の観点から開発を中止する可能性があります。例えば、2019年3月21日、バイオジェン社と当社は、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度アルツハイマー病患者様を対象にアデュカヌマブの有効性、安全性を評価するフェーズⅢ国際共同試験を中止することを発表しました。また、臨床試験で良い結果が得られた場合であっても、各国の厳格な承認審査の結果、承認が得られない可能性があります。さらに、新薬開発の遅延、中止などの理由で、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。(7)医療費抑制策に関するリスク日本では医療費抑制策の一環として、医療用医薬品の薬価引き下げや、ジェネリック医薬品使用促進などの施策がとられています。欧米、アジアの国々においても、医薬品の薬剤費低減への取り組みが行われており、売上収益を減少させる要因となります。特に欧州では、承認が得られた製品であっても、期待された薬価による医療保険償還がなされない場合があり、当初の見込んでいた収益が得られない可能性があります。(8)ジェネリック医薬品に関するリスク先発医薬品の特許やデータ保護には期限があります。通常、先発医薬品の特許およびデータ保護が切れると同成分のジェネリック医薬品が発売されます。また、特許期間内であっても、米国のようにジェネリック医薬品の申請が可能な国もあります。ジェネリック医薬品の低価格での販売により、当該国内の市場シェアが低下する可能性があります。米国における制吐剤「Aloxi」については、連邦控訴裁判所で製剤特許無効の判決が確定し、ジェネリック医薬品が上市されました。(9)海外展開におけるリスク当社グループは、グローバルに製品の生産・販売活動を展開しています。グローバルな事業活動を展開する上で、法的規制、政情不安や事業環境の不確実性などのリスクがあります。このようなリスクに直面した場合、当該国における収益が当初の見込みを達成できない可能性があります。(10)他社とのパートナーシップに関するリスク当社グループは、ビジネスの効率性・生産性を向上する上で、パートナーシップは有効な手段と考えており、最先端のサイエンスや技術の活用を目的としたパートナーシップや、各リージョンでのリソースの効率的活用と製品価値最大化を目的としたパートナーシップを活用しています。これらパートナーシップに変更等が生じた場合、新薬の創出や売上収益など、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(11)企業買収や製品買収等に関するリスク当社グループは、事業展開の手段として、企業買収や製品買収等を実施することがあります。しかし、事業環境や競合状況の変化等により、当初の事業計画に支障が生じたり、見込んだ相乗効果が実現できない可能性があります。(12)外部への業務委託に関するリスク当社グループでは研究や製造などの一部を外部へ業務委託しています。何らかの原因で業務委託先が操業を停止したり、提供される研究結果や製造物等に問題が発生した場合、当社グループの操業や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(13)ITセキュリティおよび情報管理に関するリスク当社グループでは業務上、各種ITシステムを駆使しているため、システムの不備やコンピューターウィルス等の外部要因により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの情報を保有していますが、事故等によりその情報が社外に流出した場合、信用を大きく失うことで業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(14)財務報告に係る内部統制の整備等に関するリスク当社グループは、金融商品取引法にもとづく財務報告に係る内部統制の評価および監査の基準ならびに実施基準に準拠し、財務報告に係る有効な内部統制システムを整備し、その適正な運用につとめています。しかし、内部統制が有効に機能せず、あるいは予期しない内部統制上の問題により、多大な損失が発生した場合には、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(15)金融市況および為替の動向に関するリスク輸出入等の外貨建取引および海外の連結子会社業績の円換算において、外国為替変動が業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、市場性のある株式等を保有しているため、株式市況の低迷によってはこれらの株式等の売却損や評価損が生じ、さらに、金利動向によって退職給付債務の増加など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(16)工場の閉鎖または操業停止のリスク技術上の問題、使用原材料の供給停止、インフルエンザ等のパンデミック、火災、地震、その他の災害等により工場が閉鎖または操業停止となる可能性があります。この場合、製品の供給が妨げられ、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(17)環境に関するリスク当社グループの事業所が環境汚染の原因となった場合、周辺地域や環境へ重大な影響を与えるとともに、事業所の閉鎖等の法的処置、環境改善および周辺地域への補償等により、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(18)災害等に関するリスク地震、台風等の自然災害および火災等の事故災害等、各種災害の発生により、事業所・営業所等が大規模な被害を受け、当社グループの活動に影響を及ぼす可能性があります。また、災害により損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
FY2018|2,917 文字
2【事業等のリスク】当社グループの連結業績を大幅に変動させる、あるいは投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、次のとおりです。なお、これらのリスクは、有価証券報告書提出日現在において判断、予想したものです。(1) 製品の安全性および品質に関するリスク使用する原材料、製造プロセス等、何らかの原因で製品の安全性および品質に懸念が発生した場合、患者様の健康や製品の安定供給へ影響を及ぼす可能性のほか、製品の回収、販売の停止など業績へ影響を及ぼす可能性があります。(2) 副作用発現のリスク製品に重大な副作用が発現した場合、販売の停止、製品の回収等の措置により、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(3) 訴訟に関するリスク現在関与している訴訟または将来関与する訴訟の結果が、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(4) 法規制に関するリスク医薬品事業は、薬事規制や製造物責任等の様々な法規制に関連しており、法規制の制定や改定により業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。法規制に適合しなくなった場合、製品の回収や製品の許認可の取り消し、または保険償還からの除外、さらには賠償請求を受ける等の可能性があります。(5) 知的財産に関するリスク特許の不成立や特許成立後の無効審判、または取得した特許を適切に保護できない場合、想定より早く他社の市場参入を招き、売上収益が減少する可能性があります。また、当社グループの事業活動が第三者の知的財産権に抵触した場合、当該第三者から損害賠償請求などの権利行使を受ける可能性があります。(6) 新薬開発の不確実性に関するリスク当社グループは、次世代アルツハイマー病治療剤候補をはじめとして、多くの新薬開発を行っています。新薬の研究開発には長い期間と多額の投資を必要とします。医薬品候補化合物は、有効性や安全性の観点から開発を中止する可能性があります。また、臨床試験で良い結果が得られた場合であっても、各国の厳格な承認審査の結果、承認が得られない可能性があります。さらに、新薬開発の遅延、中止などの理由で、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。(7) 医療費抑制策に関するリスク日本では医療費抑制策の一環として、医療用医薬品の薬価引き下げや、ジェネリック医薬品使用促進などの施策がとられています。欧米、アジアの国々においても、医薬品の薬剤費低減への取り組みが行われており、売上収益を減少させる要因となります。特に欧州では、承認が得られた製品であっても、期待された薬価による医療保険償還がなされない場合があり、当初の見込んでいた収益が得られない可能性があります。(8) ジェネリック医薬品に関するリスク先発医薬品の特許やデータ保護には期限があります。通常、先発医薬品の特許およびデータ保護が切れると同成分のジェネリック医薬品が発売されます。また、特許期間内であっても、米国のようにジェネリック医薬品の申請が可能な国もあります。ジェネリック医薬品の低価格での販売により、当該国内の市場シェアが低下する可能性があります。米国における制吐剤「Aloxi」については、連邦控訴裁判所で製剤特許無効の判決が確定し、ジェネリック医薬品が上市されました。(9) 海外展開におけるリスク当社グループは、グローバルに製品の生産・販売活動を展開しています。グローバルな事業活動を展開する上で、法的規制、政情不安や事業環境の不確実性などのリスクがあります。このようなリスクに直面した場合、当該国における収益が当初の見込みを達成できない可能性があります。(10) 他社とのパートナーシップに関するリスク当社グループは、ビジネスの効率性・生産性を向上する上で、パートナーシップは有効な手段と考えており、最先端のサイエンスや技術の活用を目的としたパートナーシップや、各リージョンでのリソースの効率的活用と製品価値最大化を目的としたパートナーシップを活用しています。これらパートナーシップに変更等が生じた場合、新薬の創出や売上収益など、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(11) 企業買収や製品買収等に関するリスク当社グループは、事業展開の手段として、企業買収や製品買収等を実施することがあります。しかし、事業環境や競合状況の変化等により、当初の事業計画に支障が生じたり、見込んだ相乗効果が実現できない可能性があります。 (12) 外部への業務委託に関するリスク当社グループでは研究や製造などの一部を外部へ業務委託しています。何らかの原因で業務委託先が操業を停止したり、提供される研究結果や製造物等に問題が発生した場合、当社グループの操業や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(13) ITセキュリティおよび情報管理に関するリスク当社グループでは業務上、各種ITシステムを駆使しているため、システムの不備やコンピューターウィルス等の外部要因により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの情報を保有していますが、万が一の事故等によりその情報が社外に流出した場合、信用を大きく失うことで業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(14) 財務報告に係る内部統制の整備等に関するリスク当社グループは、金融商品取引法にもとづく財務報告に係る内部統制の評価および監査の基準ならびに実施基準に準拠し、財務報告に係る有効な内部統制システムを整備し、その適正な運用につとめています。しかし、内部統制が有効に機能せず、あるいは予期しない内部統制上の問題により、多大な損失が発生した場合には、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(15) 金融市況および為替の動向に関するリスク輸出入等の外貨建取引および海外の連結子会社業績の円換算において、外国為替変動が業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、市場性のある株式等を保有しているため、株式市況の低迷によってはこれらの株式等の売却損や評価損が生じ、さらに、金利動向によって退職給付債務の増加など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(16) 工場の閉鎖または操業停止のリスク技術上の問題、使用原材料の供給停止、インフルエンザ等のパンデミック、火災、地震、その他の災害等により工場が閉鎖または操業停止となる可能性があります。この場合、製品の供給が妨げられ、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(17) 環境に関するリスク当社グループの事業所が環境汚染の原因となった場合、周辺地域や環境へ重大な影響を与えるとともに、事業所の閉鎖等の法的処置、環境改善および周辺地域への補償等により、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(18) 災害等に関するリスク地震、台風等の自然災害および火災等の事故災害等、各種災害の発生により、事業所・営業所等が大規模な被害を受け、当社グループの活動に影響を及ぼす可能性があります。また、災害により損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
FY2017|2,935 文字
4【事業等のリスク】当社グループの連結業績を大幅に変動させる、あるいは投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、次のとおりです。なお、これらのリスクは、有価証券報告書提出日現在において判断、予想したものです。(1) 製品の安全性および品質に関するリスク当社グループでは、GMP(製造管理および品質管理に関する基準)による製造段階での品質管理を行うと同時に、流通段階での品質確保にも注力しています。使用する原材料、製造プロセス等、何らかの原因で製品の安全性および品質に懸念が発生した場合、販売の停止、製品の回収等を実施するなど、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(2) 副作用発現のリスク製品に重大な副作用が発現した場合、販売の停止、製品の回収等の措置により、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(3) 訴訟に関するリスク現在関与している訴訟または将来関与する訴訟の結果が、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(4) 法規制に関するリスク医薬品事業は、薬事規制や製造物責任等の様々な法規制に関連しており、法規制の制定や改定により業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。法規制に適合しなくなった場合、製品の回収や製品の許認可の取り消し、または保険償還からの除外、さらには損害賠償請求を受ける等の可能性があります。(5) 知的財産に関するリスク特許の不成立や特許成立後の無効審判、または取得した特許を適切に保護できない場合、想定より早く他社の市場参入を招き、売上収益が減少する可能性があります。また、当社グループの事業活動が第三者の知的財産権に抵触した場合、当該第三者から損害賠償請求などの権利行使を受ける可能性があります。(6) 新薬開発の不確実性に関するリスク新薬の研究開発には長い期間と多額の投資を必要としますが、医薬品候補化合物は、有効性や安全性の観点から開発が遅延・中止される可能性があります。また、臨床試験で良い結果が得られた場合であっても、各国の承認審査の結果、承認が得られない可能性があります。これらの要因により、当初に見込んでいた収益が得られない可能性があります。(7) 医療費抑制策に関するリスク日本では医療費抑制策の一環として、医療用医薬品の薬価引き下げや、ジェネリック医薬品使用促進などの施策がとられています。欧米、アジアの国々においても、医薬品の薬剤費低減への取り組みが行われており、売上収益を減少させる要因となります。特に欧州では、承認が得られた製品であっても、期待された薬価による医療保険償還がなされない場合があり、当初に見込んでいた収益が得られない可能性があります。(8) ジェネリック医薬品に関するリスク先発医薬品の特許やデータ保護には期限があります。通常、先発医薬品の特許およびデータ保護が切れると同成分のジェネリック医薬品が発売されます。また、特許期間内であっても、米国のようにジェネリック医薬品の申請が可能な国もあります。ジェネリック医薬品の低価格での販売により、当該国内の市場シェアが低下する可能性があります。現在、「Aloxi」などについて、ジェネリック医薬品の申請が米国Hatch-Waxman法に基づきなされており、特許侵害訴訟が係属しています。(9) 海外展開におけるリスク当社グループは、米州、欧州、中国、アジア等において製品の生産・販売活動を展開しています。グローバルな事業活動を展開する上で、法的規制、政情不安や事業環境の不確実性などのリスクを完全に回避できる保証はありません。このようなリスクに直面した場合、当該国において当初に見込んでいた収益が得られない可能性があります。(10) 他社とのパートナーシップに関するリスク当社グループは、ビジネスの効率性・生産性を向上する上で、パートナーシップは有効な手段と考えており、最先端のサイエンスや技術の活用を目的としたパートナーシップや、各リージョンでのリソースの効率的活用と製品価値最大化を目的としたパートナーシップを活用しています。これらパートナーシップに変更等が生じた場合、新薬の創出や売上収益など、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(11) 企業買収や製品買収等に関するリスク当社グループは、事業展開の手段として、企業買収や製品買収等を実施することがあります。しかし、事業環境や競合状況の変化等により、当初の事業計画に支障が生じたり、見込んだ相乗効果が実現できない可能性があります。(12) 外部への業務委託に関するリスク当社グループでは研究や製造などの一部を外部へ業務委託しています。業務委託先の操業停止や製品・サービスの提供が滞るようなことがあると、当社グループの事業活動や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(13) ITセキュリティおよび情報管理に関するリスク当社グループでは業務上、各種ITシステムを駆使しているため、システムの不備やコンピューターウィルス等の外部要因により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの情報を保有していますが、万が一の事故等によりその情報が社外に流出した場合、信用を大きく失うことで業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(14) 財務報告に係る内部統制の整備等に関するリスク当社グループは、金融商品取引法にもとづく財務報告に係る内部統制の評価および監査の基準ならびに実施基準に準拠し、財務報告に係る有効な内部統制システムを整備し、その適正な運用につとめています。しかし、内部統制が有効に機能せず、あるいは予期しない内部統制上の問題により、多大な損失が発生した場合には、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(15) 金融市況および為替の動向に関するリスク輸出入取引および海外の連結子会社業績の円換算において、外国為替変動が業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、市場性のある株式等を保有しているため、株式市況の低迷によってはこれらの株式等の売却損や評価損が生じ、さらに、金利動向によって退職給付債務の増加など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(16) 工場の閉鎖または操業停止のリスク技術上の問題、使用原材料の供給停止、インフルエンザ等のパンデミック、火災、地震、その他の災害等により工場が閉鎖または操業停止となる可能性があります。この場合、製品の供給が妨げられ、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(17) 環境に関するリスク当社グループ所有の事業所が環境汚染の原因と判断された場合、事業所の閉鎖等の法的処置が講じられる可能性があります。また、周辺地域への補償責任や環境改善に要する費用は、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(18) 災害等に関するリスク地震、台風等の自然災害および火災等の事故災害等、各種災害の発生により、事業所・営業所等が大規模な被害を受け、当社グループの活動に影響を及ぼす可能性があります。また、災害により損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
FY2016|2,640 文字
4【事業等のリスク】当社グループの連結業績を大幅に変動させる、あるいは投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、次のとおりです。なお、これらのリスクは、有価証券報告書提出日現在において判断、予想したものです。(1) 海外展開におけるリスク 当社グループは、米州、欧州、アジア等において製品の生産・販売活動を展開しています。グローバルな事業活動を展開するうえで、法的規制、政情不安や事業環境の不確実性などのリスクを完全に回避できる保証はありません。このようなリスクに直面した場合、当該国における収益が当初の見込みを達成できない可能性があります。(2) 新薬開発の不確実性 医薬品候補化合物は、有効性や安全性の観点から開発を中止する可能性があります。また、臨床試験で良い結果が得られた場合であっても、製品開発中に施行される承認審査基準の変更により、承認が得られない可能性があります。開発の不確実性による新薬開発の遅延、中止などの理由で、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。(3) 他社とのアライアンスにおけるリスク 当社グループには、販売促進活動において、他社との業務提携を行っている製品があります。これら提携企業との良好な協力関係が保たれなくなった場合、売上収益が減少し業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、製品買収や製品・開発品の導入などに伴う不確実性により、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。(4) 医療費抑制策 日本では医療費抑制策の一環として、通常2年ごとの医療用医薬品の薬価引き下げや、ジェネリック医薬品使用促進などの施策がとられています。欧米、アジアの国々などにおいても、医薬品の薬剤費低減への圧力は年々高まっており、売上収益を減少させる要因となります。特に欧州においては、承認が得られた製品であっても、期待された薬価による医療保険償還がなされない場合があり、当初の見込んでいた収益が得られない可能性があります。(5) ジェネリック医薬品に関するリスク 先発医薬品の特許やデータ保護には期限があります。通常、先発医薬品の特許及びデータ保護の期限が切れると同成分のジェネリック医薬品が発売されます。また、特許期間内であっても、米国のようにジェネリック医薬品の申請が可能な国もあります。ジェネリック医薬品の低価格での販売により、当該国内の市場シェアが低下する可能性があります。(6) 知的財産に関するリスク 特許の不成立や特許成立後の無効審判、または取得した特許を適切に保護できない場合、想定より早く他社の市場参入を招き、売上収益が減少する可能性があります。また、当社グループの事業活動が第三者の知的財産権に抵触した場合、当該第三者から権利行使を受け、これにより収益性の悪化、事業計画の変更等が生じ、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(7) 副作用発現のリスク 製品に重大な副作用が発現した場合、販売の停止、製品の回収等の措置により、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(8) 法規制に関するリスク 医薬品事業は、薬事規制や製造物責任等の様々な法規制に関連しており、法規制の制定や改定により業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。法規制に適合しなくなった場合、製品の回収さらには製品の許認可の取り消し、あるいは賠償請求を受ける等の可能性があります。(9) 訴訟に関するリスク 現在関与している訴訟または将来関与する訴訟の結果が、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(10) 工場の閉鎖または操業停止 技術上の問題、使用原材料の供給停止、インフルエンザ等のパンデミック、火災、地震、その他の災害等により工場が閉鎖または操業停止となる可能性があります。この場合、製品の供給が妨げられ、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(11) 使用原材料の安全性及び品質に関するリスク 使用する原材料の安全性及び品質に懸念が発生した場合、使用原材料の変更はもちろんのこと製品の回収、販売停止等を実施し、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(12) 外部への業務委託に関するリスク 当社グループでは研究や製造などの一部を外部へ業務委託しています。何らかの原因で業務委託先が操業停止し、当社グループへの業務の提供が妨げられることがあった場合、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(13) 環境に関するリスク 当社グループ所有の事業所が環境汚染の原因と判断された場合、事業所の閉鎖等の法的処置が講じられる可能性があります。また、周辺地域への補償責任や環境改善に要する費用は、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(14) ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク 当社グループでは業務上、各種ITシステムを駆使しているため、システムの不備やコンピューターウィルス等の外部要因により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの情報を保有していますが、万が一の事故等によりその情報が社外に流出した場合、信用を大きく失うことで業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(15) 金融市況及び為替の動向に関するリスク 市場性のある株式等を保有しているため、株式市況の低迷によってはこれらの株式等の売却損や評価損が生じ、また、金利動向によって退職給付債務の増加など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらに、輸出入取引及び海外の連結子会社業績の円換算において、外国為替変動が業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(16) 内部統制の整備等に関するリスク 当社グループは、金融商品取引法にもとづく財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準ならびに実施基準に準拠し、財務報告に係る有効な内部統制システムを整備し、その適正な運用につとめます。しかし、内部統制が有効に機能せず、あるいは予期しない内部統制上の問題により、多大な損失が発生した場合には、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(17) 災害等に関するリスク 地震、台風等の自然災害及び火災等の事故災害等、各種災害の発生により、事業所・営業所等が大規模な被害を受け、当社グループの活動に影響を及ぼす可能性があります。また、災害により損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。