有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2025|11,437 文字
3 【事業等のリスク】1.当社グループにおけるリスクマネジメント(1)ERM導入によるリスク管理の高度化当社グループでは、企業価値の最大化を図るため、事業活動に係るあらゆるリスクを可視化し、統合的に管理を行うERM(Enterprise Risk Management=全社的リスクマネジメント)のフレームワークを導入しています。具体的には、リスク選好に係る方針を「リスクアペタイト ステートメント」として明示し、全社的に対処すべきリスクを「戦略リスク(=戦略の意思決定に内在するリスクや戦略の遂行を阻害するリスク)」と「オペレーショナルリスク(=事業の円滑な運営を阻害するリスク)」に分け、一元的に把握・整理・可視化することで、効果的・効率的な運用によるリスク管理の高度化を図っています。また、適切な情報開示により、社外のステークホルダーへの説明責任を強化していきます。 (2)ITシステム活用によるリスク管理の効率化全社的なリスク情報の把握・分析・フィードバックを効率的に推進するため、独自のリスクマネジメントシステムを開発し、グローバルで運用しています。このシステムには、各部門がリスクマップや年間リスク対応計画、インシデント報告、BCPマニュアル等を登録し、データベース化して一元管理することで、グループ全体のリスク分析や各部門での対策の状況をモニタリングしています。 2.中外製薬リスクアペタイト ステートメント当社グループでは、社会との共有価値を創造し、企業価値を高める企業活動の根幹となるミッションステートメント(=企業理念)を基点とした事業経営において、経営目標の達成や戦略遂行に影響を与える事象を「リスク」と捉えています。戦略の意思決定や事業の円滑な運営を適切に行うために、リスクへの対応方針である「リスクアペタイト ステートメント」を定め、健全なリスクカルチャーの醸成を図るとともに、従業員の一人ひとりがこれに基づいて判断・行動することを徹底します。 ●イノベーションの追求に伴うリスク・私たちの存在価値と成長の源泉は「イノベーションの追求」です。最先端のサイエンスと技術、デジタルによる革新を追求することで世界のアンメットメディカルニーズに対する新たなソリューションを生み出し、高度で持続可能な医療の実現を通じて社会との共有価値を創造する「ヘルスケア産業のトップイノベーター」を目指します。そのために、自社を取り巻く経営環境や自社の強み、患者ニーズやサイエンス・技術の見通し等を分析し、社会の期待や要請を適時・適切に捉えるとともに、経営戦略や各々のプロジェクトに潜在するリスクを特定し、経営資源の選択と集中、外部パートナーとの協働・連携の強化、デジタル技術の活用など然るべき対策を講じながら、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出の機会を追求します。・また、イノベーション創出には、従業員の多様性や人権を尊重することで、すべての従業員の能力が最大限発揮できる働きやすい環境の実現と、戦略目標達成・イノベーションを牽引するリーダー人財・高度専門人財の早期発掘・育成・獲得及び活躍促進が不可欠です。そのため、私たちは、挑戦を奨励する組織文化・制度設計・意思決定を大切にしながら、高度かつ多様な人財が活躍し、イノベーションが創出されることを妨げるあらゆるリスクを低減することに努めます。 ●製品の有効性・安全性/品質保証/安定供給を阻害するリスク・私たちが患者さんに価値を安定的にお届けするにあたっては、何よりも製品の有効性や安全性、そしてそれらを担保する品質が重要であると考えます。・そのため、私たちの製品やイノベーションの追求には、予期せぬ副作用が生じるリスクが潜んでいることを意識しながら、有効性と安全性を十分に検証し、経済性も考慮のうえで高い品質を保証しなければなりません。・私たちは、デジタル技術を活用しながら、自社のビジネスプロセス(研究、開発、製薬、マーケティング、メディカルアフェアーズ、医薬安全性、知的財産・信頼性保証)における適正な分業・協業や、グローバルサプライチェーンマネジメントの強化、グローバル品質システムの維持・向上を図るとともに、生産性向上や在庫管理の最適化など、経済性の側面での対策も進めながら、有効性・安全性が確保され、品質が保証された製品の安定供給を阻害するリスクを回避・低減することに努めます。 ●コンプライアンスに反するリスク・私たちは、「企業倫理は業績に優先する」という考えのもと、法規制の遵守にとどまらず、社会的価値観や倫理観、公正さに基づく判断・行動を徹底します。そのために、ミッションステートメント(=企業理念)やグループ コード・オブ・コンダクト、その他社内規程/ガイドラインを制定しており、これに反する判断・行動を認めず、コンプライアンスに反するリスクは一切受け入れません。また、サプライチェーン全体におけるコンプライアンスを徹底するため、自グループ内のみならず、ビジネスパートナーに対しても、高い倫理観に基づく誠実な活動を求めます。 ●企業市民としての社会的責任に関するリスク・私たち企業は、地球環境や社会システムのうえで成り立っており、これらを維持・発展させることは、企業市民としての私たちの責任であると考えます。・私たちは、地域社会や国際社会が抱える課題に向き合い、中外製薬としてどのように貢献すべきかを考え、様々なステークホルダーと連携・協働しながら、事業活動のあらゆる場面において、環境保全や人権の尊重に努めることで、地球環境問題や社会的な差別・人権侵害の解消に貢献するとともに、医療・福祉を中心とした社会貢献活動に積極的に取り組むことで、企業市民としての役割・責任を果たせず、社会からの信頼を損なうリスクを低減することに努めます。 3.主要なリスク当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により重大な影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しています。当社グループはこれらリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針です。なお、これらは当社グループにかかるあらゆるリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。また、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1)経営戦略に関連する潜在リスク(戦略リスク)① 技術・イノベーションについて当社グループは、ロシュとの戦略的アライアンスのもと、自社の強みである独自のサイエンス力と技術力をさらに強化することで、革新的な医薬品の創出に努めています。そして、成長戦略「TOP I 2030」においては、RED機能(研究・早期開発)への経営資源の集中を推進しています。特にこれまでの低分子・抗体医薬では解決できなかったアンメットメディカルニーズ(有効な治療方法が見つかっていない疾病に対する治療薬への要望)を満たすことが期待される中分子技術の開発に注力するとともに、生成AIを含むデジタル技術を活用し研究開発プロセスの効率化に積極的に取り組んでいます。しかしながら、医薬品の研究開発には、常に不確実性(自社創薬・技術開発の遅れや失敗)が存在します。このため、当社が目指す価値の創出や戦略の実行が遅延する影響が想定されます。さらにサイエンス、医薬品開発、デジタルという日進月歩の分野では、破壊的な新技術・ソリューションや競争優位性の高い革新的な製品などの出現により、自社技術・プロジェクトの価値低下や開発計画の見直しが生じるリスクがあります。また、当社グループは業務活動において、当社グループ所有、あるいは適法に使用許諾を受けたものであるとの認識の下で様々な知的財産権を使用していますが、当社グループの認識の範囲外で第三者による侵害や第三者の知的財産権を侵害する可能性があり、当社技術・製品の価値や競争力の低下、さらには特許係争や特許権侵害訴訟に至るケースも考えられ、他社特許による技術の実施不能、製造・販売の差し止めや高額な損害賠償金の請求や実施料の支払いの発生など戦略遂行に重大な影響を与える可能性があり、他企業への委託・共同研究、他者との共創等の増加に伴い知的財産にかかわる情報の流出や漏洩が生じるリスクもあります。こうしたリスクに対しては、最先端のサイエンス・技術の探求を怠らず、経営資源の選択と集中により自社技術の優位性を高めるとともに、マルチモダリティ戦略の追求や中外ベンチャー・ファンド・エルエルシーによる投資を含む外部連携の強化により多様性を高めることに努めています。中分子医薬の開発にあたっては関連する社内組織(創薬・開発・製薬)の連携強化、知的財産権については、外部の専門家やライセンス先との連携強化を含む、万一の特許訴訟に備えた知財戦略のさらなる強化、関連法規等の動向の継続的な注視、分析や、ノウハウを含めた営業秘密にかかわる情報管理の強化を行うことで、影響を最小化する積極的な知財対応を図ってまいります。当社グループはリスクアペタイトに基づき、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出を追求するとともに、職場環境や組織文化、人財育成などの面からもイノベーションを奨励する仕組みを強化し、イノベーション創出を妨げるリスクの低減に努めます。 ② 制度・規制・政策ⅰ.医療制度・薬事規制・政策の変化国内外において高齢化の進展や医療費高騰などによる財政逼迫を背景とした薬剤費引き下げ政策の強化が進められています。加えて、米国による医薬品関税や医薬品最恵国価格等の政策変更は、業界全体でサプライチェーンの大幅な見直しや米国と主要国との相対的な医薬品価格差の縮小につながりうる動きであり、日本におけるドラッグラグ・ドラッグロスの悪化をもたらすことが危惧されます。 社会保障関係費については、高齢化による自然増に加え足元の経済・物価動向等を踏まえた増加分を反映する方針が示され、医療費抑制の取り組みが一層強化されることが予想されます。日本においては昨今の安全保障政策やこども・子育て政策の強化に伴う費用増大が進む一方、減税や社会保険料負担の軽減の議論も生じる環境において、社会保障財政への影響も一層大きくなることが懸念されます。2026年度薬価制度改革では、新薬の薬価算定方法や薬価維持制度等は先送りとなり、2021年度に導入された中間年改定も含めて毎年薬価改定が実施される中、薬価引き下げ政策やバイオシミラー(バイオ後続品)等の振興政策が拡大すると、これまで以上に収益の低下等を招き、研究開発への投資を妨げるリスクがあります。さらに、度重なる薬価制度や運用の変更は市場の予見性を低下させ、企業の経営計画に大きな影響を与えるリスクがあります。また、海外においても、医療制度・薬事規制改革の内容や環境動向を適時適切に把握し、開発・薬事計画などの対応を進めているものの、規制対応等についての国内外の複雑な調整により、計画の修正や開発が遅延することが懸念されます。一方、こうした政策により今後ますます「Value Based Healthcare(価値に基づく医療)」が進展し、真に価値のあるソリューションだけが選ばれる傾向がより一層強まると考えられます。当社グループは、引き続き患者さんを含むビジネスパートナーへの高い価値の証明に注力し、継続的な次世代品の開発・知財対応、製品ポートフォリオ管理の強化、導出先とのグローバルな価格戦略や市場展開戦略の整合性確保を図ります。そして、日本のみならずグローバルインテリジェンス機能の強化等に取り組んでまいります。 ⅱ.環境規制の更なる厳格化環境保全活動はすべての事業活動を支える重要な基盤であり、長期的視点で環境リスクを低減するだけでなく将来コストの低減、イノベーションを生み出す施設・設備体制構築にもつながるため、企業価値向上に大きく影響するものと考えています。一方で、企業を取り巻く環境規制の更なる厳格化により、規制対応のために設備投資計画の見直し・遅延や、追加的な費用計上など環境投資の増大やサプライチェーンの見直しが生じる可能性があります。規制動向のタイムリーな把握に加え、最新技術の動向把握と的確な取り入れを行っていくとともに、世界的な環境コンセンサスを踏まえた挑戦的な「中期環境目標2030」を掲げ、ロシュや外部パートナーとの連携による革新的な地球環境保全活動とエビデンスに基づく能動的な情報開示により、環境課題の解決をリードする世界のロールモデルを目指していきます。 ③ 市場・顧客についてⅰ.市場・顧客の価値変化近年、競合品やバイオシミラー(バイオ後続品)の浸透加速による競争激化に加え、再生医療、細胞/遺伝子治療、核酸医薬など新たな治療手段(モダリティ)の進展や、予防・診断・治療・予後まで一貫した価値提供が求められるようになり、「治療」の価値が変化してきています。さらに、近年、製薬企業における医薬品の情報提供体制、すなわち顧客タッチポイントのあり方も大きく変容しています。このような状況において、市場での地位や製品競争力が低下し収益が悪化するリスク、あるいは顧客が期待するニーズやそれに伴う顧客タッチポイントの急速な変化等により、医薬品の情報提供体制の抜本的な見直しを迫られる可能性があります。こうしたリスクに対応するべく、当社グループでは連続的な新薬の創出と製品ラインアップの多様化に努めるとともに、営業資源を適切に配分し、顧客が必要とするデータや情報提供を加速し、顧客エンゲージメントを強化してまいります。そのためにもDXの推進による効率化と環境変化に迅速に対応できるフレキシブルな組織体制の構築を目指します。 ⅱ.経済安全保障・地政学リスクの高まりによる事業制限各国間の緊張の高まりによる先端技術、機微データ、戦略物資、人権への規制強化をはじめとした各国の経済安全保障政策の変化や、国際紛争等による物流への影響など、近年、経済安全保障・地政学リスクの高まりに端を発した企業活動への影響が高まっています。 これら国際情勢の急激な変化や武力衝突の発生によって、関連地域における事業制限・撤退(生産・R&D・販売拠点の喪失、利益減少、将来の機会損失)、関連地域におけるサプライチェーン停滞・供給遅延、経済安全保障規制の強化による研究開発活動や調達への制約などのリスクが生じる可能性があります。これらの経済安全保障・地政学リスクに対して、当社グループでは、各国法制や政策の動向など外部情報をタイムリーに入手し、事業影響分析を行う社内体制の強化に取り組んでいます。有事に備えた従業員安全管理体制の再整備、事業継続計画(BCP)の策定、研究開発活動への影響の分析やサプライチェーン全体の可視化に努めるとともに、安全在庫の確保や供給バックアップ体制(デュアルサイト化)の強化などを行っています。 ④ 事業基盤についてⅰ.ロシュとの戦略的提携当社グループはロシュとの戦略的提携により、日本市場におけるロシュ・グループの唯一の医薬品事業会社となり、また日本以外の世界市場(韓国・台湾除く)ではロシュに当社製品の第一選択権を付与し、多数の製品及びプロジェクトを同社との間で導入・導出しています。独自のビジネスモデルによって安定的な収益基盤を確立し、飛躍的な成長を遂げてまいりました。これまでの戦略的提携における合意内容が変更となった場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、ロシュの創薬・グローバルネットワークが不調に陥り、ロシュからの導入品による安定的な収益源が低下するリスクやロシュに導出した自社品のグローバル市場浸透の遅延や収益低下などのリスクがあります。当社グループとしてはイノベーションを追求し、革新的な医薬品を連続的に創出するとともに、ロシュとの連携によりグローバル開発・マーケティング計画の策定及び実行の支援を強化するとともに、ロシュ・グループ全体の価値最大化に資する導出戦略の実行と、ロシュ戦略を踏まえた最適な導入戦略の実行と第三者からの導入の探索に努めてまいります。 ⅱ.人財獲得の遅れ、人財のミスマッチや不足・余剰、イノベーションの創出阻害当社は2025年に新たな人事制度を導入し、ジョブ型人事制度の全社展開により、適所適材に基づく人財配置の加速、タレントマネジメントの高度化を進めています。本制度では、会社主導による異動から手挙げによる異動(ジョブポスティング)へのシフトにより、社員が年齢や属性に関係なく自らのキャリアをデザインし、その実現に向けて成長する人財を適切に処遇し、「挑戦・成長」を推奨する組織文化の醸成を図っています。また、サイエンス人財やデジタル人財など戦略遂行上の要となる高度専門ポジションを大幅に拡充し獲得・定着・育成に注力しています。一方、人財獲得ニーズの競合等による獲得の遅れや社内育成に要する時間、環境変化により求められる業務・質の変化による人財のミスマッチや不足、余剰等が発生するリスク、あるいは期待される組織文化が醸成されず、イノベーションの創出が阻害されるリスクなどが想定されます。こうしたリスクに対応するべく、戦略遂行上の要となる人財要件を明確に定義・更新し、社外にも積極的に開示することで、計画的に獲得を目指す一方、社内では人財育成・スキル獲得に向けて、人財ポートフォリオの可視化やスキルマネジメントの強化などに努めています。今後も、組織・人財への投資を強化し、環境動向を見極めた組織体制と戦略的な採用計画を実施するとともに、イノベーション創出を促進する人事戦略・組織風土改革の実行に努めてまいります。 ⅲ.デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進阻害すべてのバリューチェーンで生産性の飛躍的向上を図るべくデジタル投資を加速する一方、デジタル技術の導入や社内進展が遅れ、戦略実行が遅延するリスク、社内のデジタルケイパビリティ不足、デジタル活用に伴うリスクの理解不足等によりDXの停滞やトラブルが発生するリスクがあります。例えば、生成AIの活用が遅れることによる競争力低下のリスクや生成AIのアウトプットの過信リスクが想定されます。技術動向把握のアンテナ機能を拡充するとともに、専門部署強化と外部専門人財の積極活用によるケイパビリティの強化、生成AIの全社的活用推進とコンプライアンスリスク評価体制の強化に取り組みます。 (2)事業遂行におけるリスク(オペレーショナルリスク)① 品質・副作用についてⅰ.製品品質に関するリスク当社グループは、患者さんに価値の高い製品・サービスを安定的に提供することを重要課題と認識しております。この目標を達成するため、製品や情報の質、業務プロセスの質、そしてそれらを支える人財の質を通じて事業の信頼性確保に努めております。また、社外パートナー企業との定期的な品質・風土に関する議論の場を設けるなど、サプライチェーン全体での品質向上に取り組んでおります。しかしながら、何らかの理由により製品品質に懸念が生じた場合には、患者さんへの影響はもちろんのこと、販売中止・製品回収、訴訟や損害賠償、社会的信頼の低下などを招く可能性があり、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。このリスクに対処するため、パートナー企業のリスク評価及び連携を含めた品質保証活動の一層の強化・徹底を図ってまいります。 ⅱ.副作用に関するリスク医薬品・医療機器は各国規制当局の厳しい審査を受けて承認されます。当社グループでは、承認後も医薬品の安全性監視活動を継続的に強化・徹底しております。具体的には、「調査・副作用・治験データベースツール」を活用した患者さんの特性に応じた迅速な情報提供や、「治療支援アプリ」の運用、医療関係者向けの安全性コンサルテーション・ネットワーク体制の構築など、適正使用に向けた安全性情報提供活動の拡充に努めております。しかしながら、万全の安全対策を講じたとしても、副作用等の健康被害を完全に防止することは困難です。特に新たな重篤な副作用が発現した場合、「使用上の注意」への記載、販売中止、製品回収等の措置を講じる可能性があり、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。当社グループは、これらのリスクに対して継続的に監視・評価を行い、適切な対策を講じることで、リスクの最小化と患者さんの安全確保に最大限努めてまいります。 ② ITセキュリティ及び情報管理について業務上、各種ITシステムの利用において、従業員・アウトソーシング企業の不注意または故意による行為や、サイバー攻撃等の外部要因によりシステム障害や社外提供サービスの停止、提供情報の改ざん等が生じた場合、事業活動の停止・遅延・計画の見直しや、突発的な対応・対策費用などが発生する可能性があります。また、万が一、研究開発等にかかる営業秘密や個人情報等が社外に流出した場合、競争優位性の喪失、社会的信頼の喪失、損害賠償などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループはこれらのリスクに備え、情報管理及びサイバーセキュリティに関する社内ルールの策定、従業員への教育・訓練、システムの堅牢性・可用性の強化、サイバー攻撃・マルウェア感染などの監視(SOC)及びインシデントレスポンス(CSIRT)体制の構築、インシデントの早期対応策の策定(サイバーBCPの策定)を実施しています。特に機密情報管理では、ITシステム面からも強化を図り、業務ファイルごとのアクセス管理、不注意または故意による情報流出の阻止及び流出後の拡散防止などの機能の運用を開始しております。個人情報管理においては、ますます活発になる越境データ移転に対応するために、グローバルプライバシーガバナンス体制の構築を進めています。「中外製薬グループプライバシー宣言」を定め、グローバル基準での適法対応を推進するとともに、データの利活用をコンプライアンス面からも支援しています。また、これらの対策状況をグループ横断的に評価し強化するためのセキュリティガバナンス体制を構築し、継続的なリスクの低減に努めています。 ③ 大規模災害等による影響について地震、台風、洪水等の自然災害、火災等の事故により、当社グループの事業所・営業所及び取引先の建物・設備等が深刻な被害を受けた場合、医薬品の供給停止や設備修復などの費用計上の発生、事業活動の制限による収益の低下など、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループは、これらのリスクに備え、事業継続計画(BCP)の策定・訓練実施、安全在庫確保、耐震対策など、従業員の安全と医薬品の安定供給のための体制を整備し、リスクの低減に努めています。 ④ 人権について企業活動における人権侵害の発生は、企業イメージの低下、不買運動、訴訟提起や損害賠償の支払、人財の流出などに繋がり得るもので、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、職場におけるハラスメント等により、従業員の健康やメンタルヘルス、人財力の低下を招くリスクが高まります。当社グループでは、「人権」を経営に重要な影響を及ぼすリスクの一つとして捉え、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権尊重のグループガバナンス体制を構築するとともに、重要な人権課題の特定、リスク評価と改善計画の策定・実行、ステークホルダーへの情報開示を含むデューデリジェンスの強化に取り組んでいます。また、健康経営の推進、社内研修の継続実施、相談窓口の設置など職場環境の改善にも努めています。 ⑤ サプライチェーンについて自然災害、事故、上記(1)③(ii)の経済安全保障・地政学リスクの発生等により当社の原材料調達先や外部製造委託先などのサプライヤーに被害や事業活動の制限が生じた場合、また、サプライチェーンにおけるコンプライアンス違反や環境問題などへの対応が遅延した場合、原材料の確保や生産の継続が困難となる可能性があり、社会的信頼の喪失や売上・シェアの低下により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらサプライチェーンに係るリスクに備え、上記(1)③(ii)に記載の対策など、医薬品の安定供給のための体制を整備しています。また、サプライヤーのみならず、重要なサードパーティ(取引先)を対象に包括的なリスク評価システムを導入し、リスクの一元的管理に取り組んでいます。取引先におけるコンプライアンスや環境問題など当社グループだけでは解決できない課題に関し、連携・情報共有体制を構築し、取引先と協力して課題解決に努める方針です。 ⑥ 地球環境問題について中長期の環境分析からマテリアリティとして特定した気候変動・エネルギー対策、資源の循環促進・適切な水管理、生物多様性保全に基づき、気候変動対策、循環型資源利用、生物多様性保全の3つの課題を重点分野として定め、2030年を最終年とした中期環境目標を推進しています。環境関連法規等の遵守はもとより、さらに高い自主基準を設定してその達成に向けて努めていますが、万が一、有害物質による予期せぬ汚染やそれに伴う危害が顕在化した場合、対策費用や損害賠償責任を負うなどにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、将来における環境関連法規制の強化により、対策費用の増加や当社グループの研究、開発、製造、その他の事業活動が制限される可能性があります。気候関連リスクについては、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」のフレームワークに基づき、気候変動が当社へもたらすリスクと機会を織り込んだ定性評価及びシナリオ分析を実施し、全社リスクマネジメントの中で管理しています。現時点では、長期的に大規模な事業転換を必要とする重大な気候関連リスクは特定されていません。加えて、2021年には、弊社の温室効果ガス削減目標に対してScience Based Target(SBT)事務局よりSBT認定を取得しています。自然関連リスクについては、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言」のフレームワークに基づき、当社の事業活動における自然への依存と影響の分析を行うとともに、分析結果を踏まえたリスク・機会の特定と対応策を整理し、全社リスクマネジメントの中で管理を開始しました。引き続き、バリューチェーンの上流および下流の分析を実施していきます。TCFD・TNFD提言に基づく分析結果は下記ページで開示しています。今後も継続的に分析・評価を行い、プロアクティブな環境課題の解決に取り組んでいきます。なお、当社グループは、透明性・信頼性の高い環境情報を開示するため、毎年、環境パフォーマンスデータの第三者保証を取得しております。2024年度のデータの詳細は、当社ホームページの「サステナビリティに関するデータ集」を参照下さい。2025年度の実績は、下記ページにて2026年5月頃公開を予定しています。 ・TCFD提言に基づく情報開示https://www.chugai-pharm.co.jp/sustainability/environment/tcfd.html・TNFD提言に基づく情報開示https://www.chugai-pharm.co.jp/sustainability/environment/biodiversity/docs/TNFD_disclosures_report.pdf・サステナビリティに関するデータ集https://www.chugai-pharm.co.jp/sustainability/data/policy.html
FY2024|10,728 文字
3 【事業等のリスク】1.当社グループにおけるリスクマネジメント(1)ERM導入によるリスク管理の高度化当社グループでは、企業価値の最大化を図るため、事業活動に係るあらゆるリスクを可視化し、統合的に管理を行うERM(Enterprise Risk Management=全社的リスクマネジメント)のフレームワークを導入しています。具体的には、リスク選好に係る方針を「リスクアペタイト ステートメント」として明示し、全社的に対処すべきリスクを「戦略リスク(=戦略の意思決定に内在するリスクや戦略の遂行を阻害するリスク)」と「オペレーショナルリスク(=事業の円滑な運営を阻害するリスク)」に分け、一元的に把握・整理・可視化することで、効果的・効率的な運用によるリスク管理の高度化を図っています。また、適切な情報開示により、社外のステークホルダーへの説明責任を強化していきます。 (2)ITシステム活用によるリスク管理の効率化全社的なリスク情報の把握・分析・フィードバックを効率的に推進するため、独自のリスクマネジメントシステムを開発し、グローバルで運用しています。このシステムには、各部門がリスクマップや年間リスク対応計画、インシデント報告、BCPマニュアル等を登録し、データベース化して一元管理することで、グループ全体のリスク分析や各部門での対策の状況をモニタリングしています。 2.中外製薬リスクアペタイト ステートメント当社グループでは、社会との共有価値を創造し、企業価値を高める企業活動の根幹となるミッションステートメント(=企業理念)を基点とした事業経営において、経営目標の達成や戦略遂行を阻害する事象を「リスク」と捉えています。戦略の意思決定や事業の円滑な運営を適切に行うために、リスクへの対応方針である「リスクアペタイト ステートメント」を定め、健全なリスクカルチャーの醸成を図るとともに、従業員の一人ひとりがこれに基づいて判断・行動することを徹底します。 ●イノベーションの追求に伴うリスク・私たちの存在価値と成長の源泉は「イノベーションの追求」です。最先端のサイエンスと技術、デジタルによる革新を追求することで世界のアンメットメディカルニーズに対する新たなソリューションを生み出し、高度で持続可能な医療の実現を通じて社会との共有価値を創造する「ヘルスケア産業のトップイノベーター」を目指します。そのために、自社を取り巻く経営環境や自社の強み、患者ニーズやサイエンス・技術の見通し等を分析し、社会の期待や要請を適時・適切に捉えるとともに、経営戦略や各々のプロジェクトに潜在するリスクを特定し、経営資源の選択と集中、外部パートナーとの協働・連携の強化、デジタル技術の活用など然るべき対策を講じながら、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出の機会を追求します。・また、イノベーション創出には、従業員の多様性や人権を尊重することで、すべての従業員の能力が最大限発揮できる働きやすい環境の実現と、戦略目標達成・イノベーションを牽引するリーダー人財・高度専門人財の早期発掘・育成・獲得及び活躍促進が不可欠です。そのため、私たちは、チャレンジを奨励する組織文化・制度設計・意思決定を大切にしながら、高度かつ多様な人財が活躍し、イノベーションが創出されることを妨げるあらゆるリスクを低減することに努めます。 ●製品の有効性・安全性/品質保証/安定供給を阻害するリスク・私たちが患者さんに価値を安定的にお届けするにあたっては、何よりも製品の有効性や安全性、そしてそれらを担保する品質が重要であると考えます。・そのため、私たちの製品やイノベーションの追求には、予期せぬ副作用が生じるリスクが潜んでいることを意識しながら、有効性と安全性を十分に検証し、経済性も考慮のうえで高い品質を保証しなければなりません。・私たちは、デジタル技術を活用しながら、自社のビジネスプロセス(研究、開発、製薬、マーケティング、メディカルアフェアーズ、医薬安全性、知的財産・信頼性保証)における適正な分業・協業や、グローバルサプライチェーンマネジメントの強化、グローバル品質システムの維持・向上を図るとともに、生産性向上や在庫管理の最適化など、経済性の側面での対策も進めながら、有効性・安全性が確保され、品質が保証された製品の安定供給を阻害するリスクを回避・低減することに努めます。 ●コンプライアンスに反するリスク・私たちは、「企業倫理は業績に優先する」という考えのもと、法規制の遵守にとどまらず、社会的価値観や倫理観、公正さに基づく判断・行動を徹底します。そのために、ミッションステートメント(=企業理念)やグループ コード・オブ・コンダクト、その他社内規程/ガイドラインを制定しており、これに反する判断・行動を認めず、コンプライアンスに反するリスクは一切受け入れません。また、サプライチェーン全体におけるコンプライアンスを徹底するため、自グループ内のみならず、ビジネスパートナーに対しても、高い倫理観に基づく誠実な活動を求めます。 ●企業市民としての社会的責任に関するリスク・私たち企業は、地球環境や社会システムのうえで成り立っており、これらを維持・発展させることは、企業市民としての私たちの責任であると考えます。・私たちは、地域社会や国際社会が抱える課題に向き合い、中外製薬としてどのように貢献すべきかを考え、様々なステークホルダーと連携・協働しながら、事業活動のあらゆる場面において、環境保全や人権の尊重に努めることで、地球環境問題や社会的な差別・人権侵害の解消に貢献するとともに、医療・福祉を中心とした社会貢献活動に積極的に取り組むことで、企業市民としての役割・責任を果たせず、社会からの信頼を損なうリスクを低減することに努めます。 3.主要なリスク当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により重大な影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しています。当社グループはこれらリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針です。なお、これらは当社グループにかかるあらゆるリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。また、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1)経営戦略に関連する潜在リスク(戦略リスク)① 技術・イノベーションについて当社グループは、ロシュとの戦略的アライアンスのもと、自社の強みである独自のサイエンス力と技術力をさらに強化することで、革新的な医薬品の創出に努めています。そして、成長戦略「TOP I 2030」においては、RED機能(研究・早期開発)への経営資源の集中を推進しています。特にこれまでの低分子・抗体医薬では解決できなかったアンメットメディカルニーズ(有効な治療方法が見つかっていない疾病に対する治療薬への要望)を満たすことが期待される中分子技術の開発に注力するとともに、生成AIを含むデジタル技術を活用し研究開発プロセスの効率化に積極的に取り組んでいます。しかしながら、医薬品の研究開発には、常に不確実性(自社創薬・技術開発の遅れや失敗)が存在します。このため、当社が目指す価値の創出や戦略の実行が遅延する影響が想定されます。さらにサイエンス、医薬品開発、デジタルという日進月歩の分野では、破壊的な新技術・ソリューションや競争優位性の高い革新的な製品などの出現により、自社技術・プロジェクトの価値低下や開発計画の見直しが生じるリスクがあります。また、当社グループは業務活動において、当社グループ所有、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識の下で様々な知的財産権を使用していますが、当社グループの認識の範囲外で第三者による侵害や三者の知的財産権を侵害する可能性があり、当社技術・製品の価値や競争力の低下、さらには特許係争や特許権侵害訴訟に至るケースも考えられ、他社特許による技術の実施不能、製造・販売の差し止めや高額な損害賠償金の請求や実施料の支払いの発生など戦略遂行に重大な影響を与える可能性があります。こうしたリスクに対しては、最先端のサイエンス・技術の探求を怠らず、経営資源の選択と集中により自社技術の優位性を高めるとともに、マルチモダリティ戦略の追求や中外ベンチャー・ファンド・エルエルシーによる投資を含む外部連携の強化により多様性を高めることに努めています。中分子医薬の開発にあたっては関連する社内組織(創薬・開発・製薬)の連携強化、知的財産権については、外部の専門家やライセンス先との連携強化を含む、万一の特許訴訟に備えた知財戦略のさらなる強化、関連法規等の動向の継続的な注視、分析を行うことで、影響を最小化する積極的な知財対応を図ってまいります。当社グループはリスクアペタイトに基づき、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出を追求するとともに、職場環境や組織文化、人財育成などの面からもイノベーションを奨励する仕組みを強化し、イノベーション創出を妨げるリスクの低減に努めます。 ② 制度・規制・政策ⅰ.医療制度・薬事規制について国内外において高齢化の進展や医療費高騰などによる財政逼迫を背景とした薬剤費引き下げ政策の強化が進められています。加えて、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加分におさめる方針が示されており、医療費抑制の取り組みが一層強化されることが予想されます。日本においては昨今の安全保障政策やこども・子育て政策の強化に伴う費用の増大により、医療等の社会保障財政への影響も懸念されます。2024年の薬価制度改革で医薬品のイノベーションに対する評価が行われることになったものの、既に2年に一回行われている薬価改定に加え、2021年度に導入された中間年改定が2025年度も実施される中、こうした薬価引き下げ政策やバイオシミラー(バイオ後続品)等の振興政策が拡大すると、これまで以上に収益の低下等を招き、研究開発への投資を妨げるリスクがあります。さらに、度重なる薬価制度や運用の変更は市場の予見性を低下させ、企業の経営計画に大きな影響を与えるリスクがあります。また、海外においても、医療制度・薬事規制改革の内容や環境動向を適時適切に把握し、開発・薬事計画などの対応を進めているものの、規制動向の把握が遅れることにより計画の修正や開発が遅延することが懸念されます。 一方、こうした政策により今後ますます「Value Based Healthcare(価値に基づく医療)」が進展し、患者さんにとって真に価値のあるソリューションだけが選ばれる傾向がより一層強まると考えられます。当社グループは、引き続き患者さんへの高い価値の証明に注力し、継続的な次世代品の開発・知財対応、製品ポートフォリオ管理の強化を図ります。そして、日本のみならず海外インテリジェンス機能の強化等に取り組んでまいります。 ⅱ.環境規制について環境保全活動はすべての事業活動を支える重要な基盤であり、長期的視点で環境リスクを低減するだけでなく将来コストの低減、イノベーションを生み出す施設・設備体制構築にもつながるため、企業価値向上に大きく影響するものと考えています。一方で、企業を取り巻く環境規制の更なる厳格化により、規制対応のために設備投資計画の見直し・遅延や、追加的な費用計上など環境投資の増大が生じる可能性があります。規制動向のタイムリーな把握に加え、最新技術の動向把握と的確な取り入れを行っていくとともに、世界的な環境コンセンサスを踏まえた挑戦的な「中期環境目標2030」を掲げ、ロシュや外部パートナーとの連携による革新的な地球環境保全活動とエビデンスに基づく能動的な情報開示により、環境課題の解決をリードする世界のロールモデルを目指していきます。 ③ 市場・顧客についてⅰ.市場・顧客の変化近年、競合品やバイオシミラー(バイオ後続品)の浸透加速による競争激化に加え、再生医療、細胞/遺伝子治療、核酸医薬など新たな治療手段(モダリティ)の進展や、予防・診断・治療・予後まで一貫した価値提供が求められるようになり、「治療」の価値が変化してきています。さらに、近年、製薬企業における医薬品の情報提供体制、すなわち顧客タッチポイントのあり方も大きく変容しています。このような状況において、市場での地位や製品競争力が低下し収益が悪化するリスク、あるいは顧客タッチポイントの急速な変化等により、医薬品の情報提供体制の抜本的な見直しを迫られる可能性があります。こうしたリスクに対応するべく、当社グループでは連続的な新薬の創出と製品ラインアップの多様化に努めるとともに、営業資源を適切に配分し、顧客エンゲージメントを強化してまいります。そのためにもDXの推進による効率化と環境変化に迅速に対応できるフレキシブルな組織体制の構築を目指します。 ⅱ.地政学リスクの高まりによる事業制限ウクライナ紛争や台湾情勢などの各国間の緊張の高まりによる人権、ハイテク、データ、戦略物資への規制強化をはじめとした各国の経済安全保障法制の強化や、国際紛争による物流への影響など、近年、地政学リスクの高まりに端を発した企業活動への影響が出てきています。これら国際情勢の急激な変化や武力衝突の発生によって、関連地域における事業制限・撤退(生産・R&D・販売拠点の喪失、利益減少、将来の機会損失)、関連地域におけるサプライチェーン停滞・供給遅延などのリスクが生じる可能性があります。これら地政学・経済安全保障リスクに対して、当社グループでは、各国法制や政策の動向など外部情報をタイムリーに入手し、事業影響分析を行う社内体制の強化に取り組んでいます。一部主要製品を対象としたサプライチェーン可視化ツールの導入をはじめサプライチェーン全体の可視化に努めるとともに、有事に備えた安全管理体制の再整備、事業継続計画(BCP)・供給バックアップ体制(デュアルサイト化)の強化などを行っています。 ④ 事業基盤についてⅰ.ロシュとの戦略的提携当社グループはロシュとの戦略的提携により、日本市場におけるロシュ・グループの唯一の医薬品事業会社となり、また日本以外の世界市場(韓国・台湾除く)ではロシュに当社製品の第一選択権を付与し、多数の製品及びプロジェクトを同社との間で導入・導出しています。独自のビジネスモデルによって安定的な収益基盤を確立し、飛躍的な成長を遂げてまいりました。 これまでの戦略的提携における合意内容が変更となった場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、ロシュの創薬・グローバルネットワークが不調に陥り、ロシュからの導入品による安定的な収益源が低下するリスクやロシュに導出した自社品のグローバル市場浸透の遅延や収益低下などのリスクがあります。当社グループとしてはイノベーションを追求し、革新的な医薬品を連続的に創出するとともに、ロシュとの連携によりグローバル開発・マーケティング計画の策定及び実行の支援を強化するとともに、ロシュ・グループ全体の価値最大化に資する導出戦略の実行と、ロシュ戦略を踏まえた最適な導入戦略の実行と第三者からの導入の探索に努めてまいります。 ⅱ.人事・組織当社は2020年に新たな人事制度を導入し、適所適財に基づく人財配置の徹底、タレントマネジメントの高度化を進めてきています。また2025年からはジョブ型人事制度を全社展開し適所適財の加速と、会社主導による異動から手挙げによる異動(ジョブポスティング)へのシフトにより、社員が年齢や属性に関係なく自らのキャリアをデザインし、その実現に向けて成長する人財を適切に処遇し、「挑戦・成長」を推奨する組織文化の醸成を図っています。また、サイエンス人財やデジタル人財など、戦略遂行上の要となる高度専門人財の獲得・定着・育成に注力しています。一方、人財獲得ニーズの競合等による獲得の遅れや社内育成に要する時間、環境変化により求められる業務・質の変化による人財のミスマッチや不足、余剰等が発生するリスク、あるいは期待される組織文化が醸成されず、イノベーションの創出が阻害されるリスクなどが想定されます。こうしたリスクに対応するべく、戦略遂行上の要となる人財要件を明確に定義・更新し、社外にも積極的に開示することで、計画的に獲得を目指す一方、社内では定着・育成に向けた施策の強化に努めています。今後も、組織・人財への投資を強化し、環境動向を見極めた組織体制と戦略的な採用計画を実施するとともに、イノベーション創出を促進する人事戦略・組織風土改革の実行に努めてまいります。 ⅲ.デジタル基盤すべてのバリューチェーンで生産性の飛躍的向上を図るべくデジタル投資を加速する一方、デジタル技術の導入や社内進展が遅れ、戦略実行が遅延するリスク、社内のデジタルケイパビリティ不足、デジタルコンプライアンスの理解不足等によりデジタルトランスフォーメーション(DX)の停滞やトラブルが発生するリスクがあります。また、生成AIの活用が遅れることによる競争力低下のリスクも想定されます。技術動向把握のアンテナ機能を拡充するとともに、専門部署強化と外部専門人財の積極活用によるケイパビリティの強化、生成AIの全社的活用推進とコンプライアンスリスク評価体制の強化に取り組みます。 (2)事業遂行におけるリスク(オペレーショナルリスク)① 品質・副作用についてⅰ.製品品質に関するリスク当社グループは、患者さんに価値の高い製品・サービスを安定的に提供することを重要課題と認識しております。この目標を達成するため、製品や情報の質、業務プロセスの質、そしてそれらを支える人財の質を通じて事業の信頼性確保に努めております。また、社外パートナー企業との定期的な品質・風土に関する議論の場を設けるなど、サプライチェーン全体での品質向上に取り組んでおります。しかしながら、何らかの理由により製品品質に懸念が生じた場合には、患者さんへの影響はもちろんのこと、販売中止・製品回収、訴訟や損害賠償、社会的信頼の低下などを招く可能性があり、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。このリスクに対処するため、パートナー企業のリスク評価及び連携を含めた品質保証活動の一層の強化・徹底を図ってまいります。 ⅱ.副作用に関するリスク医薬品・医療機器は各国規制当局の厳しい審査を受けて承認されます。当社グループでは、承認後も医薬品の安全性監視活動を継続的に強化・徹底しております。具体的には、「調査・副作用・治験データベースツール」を活用した患者さんの特性に応じた迅速な情報提供や、「治療支援アプリ」の運用、医療関係者向けの安全性コンサルテーション・ネットワーク体制の構築など、適正使用に向けた安全性情報提供活動の拡充に努めております。しかしながら、万全の安全対策を講じたとしても、副作用等の健康被害を完全に防止することは困難です。特に新たな重篤な副作用が発現した場合、「使用上の注意」への記載、販売中止、製品回収等の措置を講じる可能性があり、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。当社グループは、これらのリスクに対して継続的に監視・評価を行い、適切な対策を講じることで、リスクの最小化と患者さんの安全確保に最大限努めてまいります。 ② ITセキュリティ及び情報管理について業務上、各種ITシステムの利用において、従業員・アウトソーシング企業の不注意または故意による行為や、サイバー攻撃等の外部要因によりシステム障害や社外提供サービスの停止、提供情報の改ざん等が生じた場合、事業活動の停止・遅延・計画の見直しや、突発的な対応・対策費用などが発生する可能性があります。また、万が一、研究開発等にかかる営業秘密や個人情報等が社外に流出した場合、競争優位性の喪失、社会的信頼の喪失、損害賠償などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループはこれらのリスクに備え、情報管理及びサイバーセキュリティに関する社内ルールの策定、従業員への教育・訓練、システムの堅牢性・可用性の強化、サイバー攻撃・マルウェア感染などの監視(SOC)及びインシデントレスポンス(CSIRT)体制の構築、インシデントの早期対応策の策定(サイバーBCPの策定)を実施しています。特に機密情報管理では、ITシステム面からも強化を図り、業務ファイルごとのアクセス管理、不注意または故意による情報流出の阻止及び流出後の拡散防止などの機能の運用を開始しております。個人情報管理においては、ますます活発になる越境データ移転に対応するためにグローバルプライバシーガバナンス体制の構築を進めています。「中外製薬グループプライバシー宣言」を定め、グローバル基準での適法対応を推進するとともに、データの利活用をコンプライアンス面からも支援しています。また、これらの対策状況をグループ横断的に評価し強化するためのセキュリティガバナンス体制を構築し、継続的なリスクの低減に努めています。 ③ 大規模災害等による影響について地震、台風、洪水等の自然災害、火災等の事故により、当社グループの事業所・営業所及び取引先の建物・設備等が深刻な被害を受けた場合、医薬品の供給停止や設備修復などの費用計上の発生、事業活動の制限や新製品の浸透遅延、それらによる収益の低下など、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループは、これらのリスクに備え、事業継続計画(BCP)の策定・訓練実施、安全在庫確保、耐震対策、損害保険加入など、従業員の安全と医薬品の安定供給のための体制を整備し、リスクの低減に努めています。 ④ 人権について企業活動における人権侵害の発生は、企業イメージの低下、不買運動、訴訟提起や損害賠償の支払、人財の流出などに繋がり得るもので、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、職場におけるハラスメント等により、従業員の健康やメンタルヘルス、人財力の低下を招くリスクが高まります。当社グループでは、「人権」を経営に重要な影響を及ぼすリスクの一つとして捉え、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権尊重のグループガバナンス体制を構築するとともに、重要な人権課題の特定、リスク評価と改善計画の策定・実行、ステークホルダーへの情報開示を含むデューデリジェンスの強化に取り組んでいます。また、健康経営の推進、社内研修の継続実施、相談窓口の設置など職場環境の改善にも努めています。 ⑤ サプライチェーンについて自然災害、国際紛争などの地政学リスク、事故、パンデミックの発生等により当社の原材料調達先や外部製造委託先などのサプライヤーに被害や事業活動の制限が生じた場合、また、サプライチェーンにおけるコンプライアンス違反や環境問題などへの対応が遅延した場合、原材料の確保や生産の継続が困難となる可能性があり、社会的信頼の喪失や売上・シェアの低下により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらサプライチェーンに係るリスクに備え、サプライチェーン全体の可視化、事業継続計画(BCP)の策定、安全在庫確保、代替先の確保など、医薬品の安定供給のための体制を整備しています。また、サプライヤーのみならず、重要なサードパーティ(取引先)を対象に包括的なリスク評価システムを導入し、リスクの一元的管理に取り組んでいます。取引先におけるコンプライアンスや環境問題など当社グループだけでは解決できない課題に関し、連携・情報共有体制を構築し、取引先と協力して課題解決に努める方針です。 ⑥ 地球環境問題について地球環境保全のための重大な課題の一つとして、気候変動リスクをとらえており、マテリアリティとして特定した気候変動対策、循環型資源利用、生物多様性保全の3つの課題について、2030年を最終年とした中期環境目標を推進しています。環境関連法規等の遵守はもとより、さらに高い自主基準を設定してその達成に向けて努めていますが、万が一、有害物質による予期せぬ汚染やそれに伴う危害が顕在化した場合、対策費用や損害賠償責任を負うなどにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、将来における環境関連法規制の強化により、対策費用の増加や当社グループの研究、開発、製造、その他の事業活動が制限される可能性があります。なお、当社グループは、透明性・信頼性の高い環境情報を開示するため、毎年、環境パフォーマンスデータの第三者保証を取得しております。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」のフレームワークに基づき、気候変動が当社へもたらすリスクと機会を織り込んだ定性評価及びシナリオ分析を実施し、長期的に大規模な事業転換や投資を必要とする重大な気候関連リスクは特定されていません。加えて、2021年には、弊社の温室効果ガス削減目標に対してScience Based Target(SBT)事務局よりSBT認定を取得しています。今後も継続的に分析・評価を行い、プロアクティブな環境課題の解決に取り組んでいきます。 ⑦ パンデミックによる影響について今後、新たな感染症の全国的・世界的な大流行等により事業活動が制限された場合、サプライチェーンの停止・遅延により製品供給に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、研究・臨床試験の進行や、MR活動の制限による新製品等の浸透に遅延が生じる可能性があります。当社グループとしては、これらのリスクに対し、患者さんに対する医薬品の安定供給という社会的責務を果たすべく、感染症拡大時においても、必要な医薬品の提供体制を維持することを基本方針としてBCPを策定するとともに、テレワークなど柔軟性の高い働き方と生産性の維持・向上を実現する「新しい働き方」を活用していきます。
FY2023|10,360 文字
3 【事業等のリスク】1.当社グループにおけるリスクマネジメント(1)ERM導入によるリスク管理の高度化当社グループでは、企業価値の最大化を図るため、事業活動に係るあらゆるリスクを可視化し、統合的に管理を行うERM(Enterprise Risk Management=全社的リスクマネジメント)のフレームワークを導入しています。具体的には、リスク選好に係る方針を「リスクアペタイト ステートメント」として明示し、全社的に対処すべきリスクを「戦略リスク(=戦略の意思決定に内在するリスクや戦略の遂行を阻害するリスク)」と「オペレーショナルリスク(=事業の円滑な運営を阻害するリスク)」に分け、一元的に把握・整理・可視化することで、効果的・効率的な運用によるリスク管理の高度化を図っています。また、適切な情報開示により、社外のステークホルダーへの説明責任を強化していきます。 (2)ITシステム活用によるリスク管理の効率化全社的なリスク情報の把握・分析・フィードバックを効率的に推進するため、独自のリスクマネジメントシステムを開発し、グローバルで運用しています。このシステムには、各部門がリスクマップや年間リスク対応計画、インシデント報告、BCPマニュアル等を登録し、データベース化して一元管理することで、グループ全体のリスク分析や各部門での対策の状況をモニタリングしています。 2.中外製薬リスクアペタイト ステートメント当社グループでは、社会との共有価値を創造し、企業価値を高める企業活動の根幹となるミッションステートメント(=企業理念)を基点とした事業経営において、経営目標の達成や戦略遂行を阻害する事象を「リスク」と捉えています。戦略の意思決定や事業の円滑な運営を適切に行うために、リスクへの対応方針である「リスクアペタイト ステートメント」を定め、健全なリスクカルチャーの醸成を図るとともに、従業員の一人ひとりがこれに基づいて判断・行動することを徹底します。 ●イノベーションの追求に伴うリスク・私たちの存在価値と成長の源泉は「イノベーションの追求」です。最先端のサイエンスと技術、デジタルによる革新を追求することで世界のアンメットメディカルニーズに対する新たなソリューションを生み出し、高度で持続可能な医療の実現を通じて社会との共有価値を創造する「ヘルスケア産業のトップイノベーター」を目指します。そのために、自社を取り巻く経営環境や自社の強み、患者ニーズやサイエンス・技術の見通し等を分析し、社会の期待や要請を適時・適切に捉えるとともに、経営戦略や各々のプロジェクトに潜在するリスクを特定し、経営資源の選択と集中、外部パートナーとの協働・連携の強化、デジタル技術の活用など然るべき対策を講じながら、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出の機会を追求します。・また、イノベーション創出には、従業員の多様性や人権を尊重することで、すべての従業員の能力が最大限発揮できる働きやすい環境の実現と、戦略目標達成・イノベーションを牽引するリーダー人財・高度専門人財の早期発掘・育成・獲得及び活躍促進が不可欠です。そのため、私たちは、チャレンジを奨励する組織文化・制度設計・意思決定を大切にしながら、高度かつ多様な人財が活躍し、イノベーションが創出されることを妨げるあらゆるリスクを低減することに努めます。 ●製品の有効性・安全性/品質保証/安定供給を阻害するリスク・私たちが患者さんに価値を安定的にお届けするにあたっては、何よりも製品の有効性や安全性、そしてそれらを担保する品質が重要であると考えます。・そのため、私たちの製品やイノベーションの追求には、予期せぬ副作用が生じるリスクが潜んでいることを意識しながら、有効性と安全性を十分に検証し、経済性も考慮のうえで高い品質を保証しなければなりません。・私たちは、デジタル技術を活用しながら、自社のビジネスプロセス(研究、開発、製薬、マーケティング、メディカルアフェアーズ、医薬安全性、知的財産・信頼性保証)における適正な分業・協業や、グローバルサプライチェーンマネジメントの強化、グローバル品質システムの維持・向上を図るとともに、生産性向上や在庫管理の最適化など、経済性の側面での対策も進めながら、有効性・安全性が確保され、品質が保証された製品の安定供給を阻害するリスクを回避・低減することに努めます。 ●コンプライアンスに反するリスク・私たちは、「企業倫理は業績に優先する」という考えのもと、法規制の遵守にとどまらず、社会的価値観や倫理観、公正さに基づく判断・行動を徹底します。そのために、ミッションステートメント(=企業理念)やグループ コード・オブ・コンダクト、その他社内規程/ガイドラインを制定しており、これに反する判断・行動を認めず、コンプライアンスに反するリスクは一切受け入れません。また、サプライチェーン全体におけるコンプライアンスを徹底するため、自グループ内のみならず、ビジネスパートナーに対しても、高い倫理観に基づく誠実な活動を求めます。 ●企業市民としての社会的責任に関するリスク・私たち企業は、地球環境や社会システムのうえで成り立っており、これらを維持・発展させることは、企業市民としての私たちの責任であると考えます。・私たちは、地域社会や国際社会が抱える課題に向き合い、中外製薬としてどのように貢献すべきかを考え、様々なステークホルダーと連携・協働しながら、事業活動のあらゆる場面において、環境保全や人権の尊重に努めることで、地球環境問題や社会的な差別・人権侵害の解消に貢献するとともに、医療・福祉を中心とした社会貢献活動に積極的に取り組むことで、企業市民としての役割・責任を果たせず、社会からの信頼を損なうリスクを低減することに努めます。 3.主要なリスク当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により重大な影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しています。当社グループはこれらリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針です。なお、これらは当社グループにかかるあらゆるリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。また、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1)経営戦略に関連する潜在リスク(戦略リスク)① 技術・イノベーションについて当社グループは、ロシュとの戦略的アライアンスのもと、自社の強みであるサイエンス力と技術力をさらに強化することで、革新的な医薬品の創出に努めています。そして、成長戦略「TOP I 2030」においては、RED機能(研究・早期開発)への経営資源の集中を推進しています。特にこれまでの低分子・抗体医薬では解決できなかったアンメットメディカルニーズ(有効な治療方法が見つかっていない疾病に対する治療薬への要望)を満たすことが期待される中分子技術の開発に注力するとともに、生成AIを含むデジタル技術を活用し研究開発プロセスの効率化に積極的に取り組んでいます。しかしながら、医薬品の研究開発には、常に不確実性(自社創薬・技術開発の遅れや失敗)が存在します。このため、当社が目指す価値の創出や戦略の実行が遅延する影響が想定されます。さらにサイエンス、医薬品開発、デジタルという日進月歩の分野では、破壊的な新技術・ソリューションや競争優位性の高い革新的な製品などの出現により、自社技術・プロジェクトの価値低下や開発計画の見直しが生じるリスクがあります。また、当社グループは業務活動において、当社グループ所有、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識の下で様々な知的財産権を使用していますが、当社グループの認識の範囲外で第三者による侵害や三者の知的財産権を侵害する可能性があり、当社技術・製品の価値低下や係争に至るケースも考えられ、他社特許による技術使用不能や使用料発生など戦略遂行に重大な影響を与える可能性があります。こうしたリスクに対しては、最先端のサイエンス・技術の探求を怠らず、経営資源の選択と集中により自社技術の優位性を高めるとともに、マルチモダリティ戦略の追求やCVF(Chugai Venture Fund)投資を含む外部連携の強化により多様性を高めることに努めています。中分子医薬の開発にあたっては関連する社内組織(創薬・開発・製薬)の連携強化、知的財産権についてはライセンス先との連携強化を含む知財戦略のさらなる強化、積極的な知財対応を図ってまいります。当社グループはリスクアペタイトに基づき、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出を追求するとともに、職場環境や組織文化、人財育成などの面からもイノベーションを奨励する仕組みを強化し、イノベーション創出を妨げるリスクの低減に努めます。 ② 制度・規制・政策ⅰ.医療制度・薬事規制について国内外において高齢化の進展や医療費高騰などによる財政逼迫を背景とした薬剤費引き下げ政策の強化が進められています。加えて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う多額の財政出動の結果、各国が進める医療費抑制はさらに加速することが予想されます。日本においては昨今の安全保障政策の強化に伴う防衛費の増大等により、医療等の社会保障財政への影響も懸念されます。2024年の薬価制度改革で医薬品のイノベーションに対する評価が行われることになったものの、既に2年に一回行われている薬価改定に加え、2021年度に導入された中間年改定が実施される中、こうした薬価引き下げ政策やバイオシミラー(バイオ後続品)等の振興政策が拡大すると、これまで以上に収益の低下等を招き、研究開発への投資を妨げるリスクがあります。また、海外においても、医療制度・薬事規制改革の内容や環境動向を適時適切に把握し、開発・薬事計画などの対応を進めているものの、規制動向の把握が遅れることにより計画の修正や開発が遅延することが懸念されます。 一方、こうした政策により今後ますます「Value Based Healthcare(価値に基づく医療)」が進展し、患者さんにとって真に価値のあるソリューションだけが選ばれる傾向がより一層強まると考えられます。当社グループは、引き続き患者さんへの高い価値の証明に注力し、継続的な次世代品の開発・知財対応、製品ポートフォリオ管理の強化を図ります。そして、日本のみならず海外インテリジェンス機能の強化等に取り組んでまいります。 ⅱ.環境規制について環境保全活動はすべての事業活動を支える重要な基盤であり、長期的視点で環境リスクを低減するだけでなく将来コストの低減、イノベーションを生み出す施設・設備体制構築にもつながるため、企業価値向上に大きく影響するものと考えています。一方で、企業を取り巻く環境規制の更なる厳格化により、規制対応のために設備投資計画の見直し・遅延や、追加的な費用計上など環境投資の増大が生じる可能性があります。規制動向のタイムリーな把握に加え、最新技術の動向把握と的確な取り入れを行っていくとともに、世界的な環境コンセンサスを踏まえた挑戦的な「中期環境目標2030」を掲げ、ロシュや外部パートナーとの連携による革新的な地球環境保全活動とエビデンスに基づく能動的な情報開示により、環境課題の解決をリードする世界のロールモデルを目指していきます。 ③ 市場・顧客についてⅰ.市場・顧客の変化近年、競合品やバイオシミラー(バイオ後続品)の浸透加速による競争激化に加え、再生医療、細胞/遺伝子治療、核酸医薬など新たな治療手段(モダリティ)の進展や、予防・診断・治療・予後まで一貫した価値提供が求められるようになり、「治療」の価値が変化してきています。さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響を背景に、製薬企業における医薬品の情報提供体制、すなわち顧客タッチポイントのあり方も大きく変容しています。このような状況において、市場での地位や製品競争力が低下し収益が悪化するリスク、あるいは顧客タッチポイントの急速な変化等により、医薬品の情報提供体制の抜本的な見直しを迫られる可能性があります。こうしたリスクに対応するべく、当社グループでは連続的な新薬の創出と製品ラインアップの多様化に努めるとともに、営業資源を適切に配分し、顧客エンゲージメントを強化してまいります。そのためにもDXの推進による効率化と環境変化に迅速に対応できるフレキシブルな組織体制の構築を目指します。 ⅱ.地政学リスクの高まりによる事業制限ウクライナ紛争や台湾情勢などの各国間の緊張の高まりによる人権、ハイテク、データ、戦略物資への規制強化をはじめとした各国の経済安全保障法制の強化や、国際紛争による物流への影響など、近年、地政学リスクの高まりに端を発した企業活動への影響が出てきています。これら国際情勢の急激な変化や武力衝突の発生によって、関連地域における事業制限・撤退(生産・R&D・販売拠点の喪失、利益減少、将来の機会損失)、関連地域におけるサプライチェーン停滞・供給遅延などのリスクが生じる可能性があります。これら地政学・経済安全保障リスクに対して、当社グループでは、各国法制や政策の動向など外部情報をタイムリーに入手し、事業影響分析を行う社内体制の強化に取り組んでいます。そして、サプライチェーン全体の可視化に努めるとともに、有事に備えた安全管理体制の再整備、事業継続計画(BCP)・供給バックアップ体制(デュアルサイト化)の強化などを行っています。 ④ 事業基盤についてⅰ.ロシュとの戦略的提携当社グループはロシュとの戦略的提携により、日本市場におけるロシュの唯一の医薬品事業会社となり、また日本以外の世界市場(韓国・台湾除く)ではロシュに当社製品の第一選択権を付与し、多数の製品及びプロジェクトを同社との間で導入・導出しています。独自のビジネスモデルによって安定的な収益基盤を確立し、飛躍的な成長を遂げてまいりました。これまでの戦略的提携における合意内容が変更となった場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、ロシュの創薬・グローバルネットワークが不調に陥り、ロシュからの導入品による安定的な収益源が低下するリスクやロシュに導出した自社品のグローバル市場浸透の遅延や収益低下などのリスクがあります。当社グループとしてはイノベーションを追求し、革新的な医薬品を連続的に創出するとともに、ロシュとの連携によりグローバル開発・マーケティング計画の策定及び実行の支援を強化するとともに、ロシュグループ全体の価値最大化に資する導出戦略の実行と、ロシュ戦略を踏まえた最適な導入戦略の実行に努めてまいります。 ⅱ.人事・組織当社は2020年に新たな人事制度を導入し、適所適財に基づく人財配置の徹底、タレントマネジメントの高度化、そして「挑戦・成長」を推奨する組織文化の醸成を図っています。また、サイエンス人財やデジタル人財など、戦略遂行上の要となる高度専門人財の発掘・育成・獲得に注力しています。一方、人財獲得ニーズの競合等による獲得の遅れや社内育成に要する時間、環境変化により求められる業務・質の変化による人財のミスマッチや不足、余剰等が発生するリスク、あるいは期待される組織文化が醸成されず、イノベーションの創出が阻害されるリスクなどが想定されます。こうしたリスクに対応するべく、戦略遂行上の要となる人財要件を明確の定義・更新し、社外にも積極的に開示することで、計画的に獲得を目指す一方、社内では定着・育成に向けた施策の強化に努めています。今後も、組織・人財への投資を強化し、環境動向を見極めた組織体制と戦略的な採用計画を実施するとともに、イノベーション創出を促進する人事戦略・組織風土改革の実行に努めてまいります。 ⅲ.収益構造製薬産業における技術の進歩は顕著であり、国内外製薬企業等との厳しい競争に直面する中、想定を超えるR&D投資やオペレーションコストの増加が収益構造に影響を及ぼす可能性があります。このため、デジタルを活用したプロセス改善と生産性の向上によるオペレーションコストの最適化に取り組むとともに、投資プロジェクトの見極めによる適切な資源配分を行ってまいります。 ⅳ.デジタル基盤すべてのバリューチェーンで生産性の飛躍的向上を図るべくデジタル投資を加速する一方、デジタル技術が進展せず、戦略実行が遅延するリスク、社内のデジタルケイパビリティ不足、デジタルコンプライアンスの理解不足等によりデジタルトランスフォーメーション(DX)の停滞やトラブルが発生するリスクがあります。また、生成AIの活用が遅れることによる競争力低下のリスクも想定されます。技術動向把握のアンテナ機能を拡充するとともに、専門部署強化と外部専門人財の積極活用によるケイパビリティの強化、生成AIの全社的活用推進とコンプライアンスリスク評価体制の強化に取り組みます。 (2)事業遂行におけるリスク(オペレーショナルリスク)① 品質・副作用について患者さんに価値の高い製品・サービスを安定的にお届けするにあたっては、製品の有効性や安全性は勿論のこと、それらを担保する品質が重要であると考えます。当社グループでは、製品や情報の質に加えて、業務プロセスの質とそれを担う人財によって事業の信頼性を確保しています。また、高品質な製品や情報を提供するには社外パートナー企業との連携も重要なことから、パートナー企業とも品質や風土について議論する場を定期的に設けるなど、様々な取り組みを行っています。しかしながら、何らかの原因により製品品質に懸念が生じた場合には、販売中止・製品の回収、訴訟や損害賠償、社会的信頼の低下などにより、業績に重大な影響を与える可能性があるため、パートナー企業のリスク評価及び連携を含めた品質保証活動の強化・徹底を図ってまいります。医薬品・医療機器は各国規制当局の厳しい審査を受けて承認されます。当社グループでは、承認後も医薬品の安全性監視活動を強化・徹底するとともに、「調査・副作用・治験データベースツール」による患者さんの特性に応じた迅速な情報提供や、「治療支援アプリ」の運用、医療関係者への安全性コンサルテーション・ネットワーク体制の構築など、適正使用に向けた安全性情報提供活動の強化を図っています。しかしながら、万全の安全対策を講じたとしても副作用等の健康被害を完全に防止することは困難であり、副作用、特に新たな重篤な副作用が発現した場合には、「使用上の注意」への記載を行うほか、販売中止・製品の回収等に至ることもあり、業績に重大な影響を与える可能性があります。 ② ITセキュリティ及び情報管理について業務上、各種ITシステムの利用において、従業員・アウトソーシング企業の不注意または故意による行為や、サイバー攻撃等の外部要因によりシステム障害や社外提供サービスの停止、提供情報の改ざん等が生じた場合、事業活動の停止・遅延・計画の見直しや、突発的な対応・対策費用などが発生する可能性があります。また、万が一、研究開発等にかかる営業秘密や個人情報等が社外に流出した場合、競争優位性の喪失、社会的信頼の喪失、損害賠償などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループはこれらのリスクに備え、情報管理及びサイバーセキュリティに関する社内ルールの策定、従業員への教育・訓練、システムの堅牢性・可用性の強化、サイバー攻撃・マルウェア感染などの監視(SOC)及びインシデントレスポンス(CSIRT)体制の構築、インシデントの早期対応策の策定(サイバーBCPの策定)を実施しています。特に機密情報管理では、ITシステム面からも強化を図り、業務ファイルごとのアクセス管理、不注意または故意による情報流出の阻止及び流出後の拡散防止などの機能の導入を進めています。個人情報管理においては、ますます活発になる越境データ移転に対応するためにグローバルプライバシーガバナンス体制の構築を進めています。グローバル基準での適法対応を推進するとともに、データの利活用をコンプライアンス面からも支援しています。また、これらの対策状況をグループ横断的に評価し強化するためのセキュリティガバナンス体制を構築し、継続的なリスクの低減に努めています。 ③ 大規模災害等による影響について地震、台風、洪水等の自然災害、火災等の事故により、当社グループの事業所・営業所及び取引先の建物・設備等が深刻な被害を受けた場合、医薬品の供給停止や設備修復などの費用計上の発生、事業活動の制限や新製品の浸透遅延、それらによる収益の低下など、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループは、これらのリスクに備え、事業継続計画(BCP)の策定・訓練実施、安全在庫確保、耐震対策、損害保険加入など、従業員の安全と医薬品の安定供給のための体制を整備し、リスクの低減に努めています。 ④ 人権について企業活動における人権侵害の発生は、企業イメージの低下、不買運動、訴訟提起や損害賠償の支払、人財の流出などに繋がり得るもので、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、職場におけるハラスメント等により、従業員の健康やメンタルヘルス、人財力の低下を招くリスクが高まります。当社グループでは、「人権」を経営に重要な影響を及ぼすリスクの一つとして捉え、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権尊重のグループガバナンス体制を構築するとともに、サプライチェーン全体の可視化と取引先の人権リスク評価・対策を含むデューデリジェンスの強化に取り組んでいます。 ⑤ サプライチェーンについて自然災害、国際紛争、事故、パンデミックの発生等により当社の原材料調達先や外部製造委託先などのサプライヤーに被害や事業活動の制限が生じた場合、また、サプライチェーンにおけるコンプライアンス違反や環境問題などへの対応が遅延した場合、原材料の確保や生産の継続が困難となる可能性があり、社会的信頼の喪失や売上・シェアの低下により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらサプライチェーンに係るリスクに備え、サプライチェーン全体の可視化、事業継続計画(BCP)の策定、安全在庫確保、代替先の確保など、医薬品の安定供給のための体制を整備しています。また、サプライヤ―のみならず、広くサードパーティ(取引先)を対象に包括的なリスク評価システムを導入し、リスクの一元的管理に取り組んでいます。取引先におけるコンプライアンスや環境問題など当社グループだけでは解決できない課題に関し、連携・情報共有体制を構築し、取引先と協力して課題解決に努める方針です。 ⑥ 地球環境問題について地球環境保全のための重大な課題の一つとして、気候変動リスクをとらえており、マテリアリティとして特定した気候変動対策、循環型資源利用、生物多様性保全の3つの課題について、2030年を最終年とした中期環境目標を推進しています。環境関連法規等の遵守はもとより、さらに高い自主基準を設定してその達成に向けて努めていますが、万が一、有害物質による予期せぬ汚染やそれに伴う危害が顕在化した場合、対策費用や損害賠償責任を負うなどにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、将来における環境関連法規制の強化により、対策費用の増加や当社グループの研究、開発、製造、その他の事業活動が制限される可能性があります。なお、当社グループは、透明性・信頼性の高い環境情報を開示するため、毎年、環境パフォーマンスデータの第三者保証を取得しております。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」のフレームワークに基づき、気候変動が当社へもたらすリスクと機会を織り込んだ定性評価及びシナリオ分析を実施し、長期的に大規模な事業転換や投資を必要とする重大な気候関連リスクは特定されていません。加えて、2021年には、弊社の温室効果ガス削減目標に対してScience Based Target(SBT)事務局よりSBT認定を取得しています。今後も継続的に分析・評価を行い、プロアクティブな環境課題の解決に取り組んでいきます。 ⑦ パンデミックによる影響について今後、新たな感染症の全国的・世界的な大流行等により事業活動が制限された場合、サプライチェーンの停止・遅延により製品供給に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、研究・臨床試験の進行や、MR活動の制限による新製品等の浸透に遅延が生じる可能性があります。当社グループとしては、これらのリスクに対し、患者さんに対する医薬品の安定供給という社会的責務を果たすべく、感染症拡大時においても、必要な医薬品の提供体制を維持することを基本方針としてBCPを策定するとともに、テレワークなど柔軟性の高い働き方と生産性の維持・向上を実現する「新しい働き方」を活用していきます。
FY2022|9,877 文字
2【事業等のリスク】1.当社グループにおけるリスクマネジメント(1)ERM導入によるリスク管理の高度化ERM(Enterprise Risk Management=全社的リスクマネジメント)とは、企業価値の最大化を図るため、事業活動に係るあらゆるリスクを可視化し、統合された仕組みで管理を行うリスク管理手法のことを言います。当社グループでは、従来から部門ごとにリスクの抽出・評価、対策実施状況のモニタリングなどERMを行っておりましたが、リスク管理の高度化に向け、2021年からは、戦略に関するリスク管理を包含する新たなERMのフレームワークの導入・運用を行っております。具体的には、リスク選好に係る方針を「リスクアペタイト ステートメント」として明示し、健全なリスクカルチャーの醸成を目指します。そして、全社的に対処すべきリスクを「戦略リスク(=戦略の意思決定に内在するリスクや戦略の遂行を阻害するリスク)」と「オペレーショナルリスク(=事業の円滑な運営を阻害するリスク)」に分け、これらのリスクを一元的に把握・整理・可視化し、全社的に共有・議論を行うことで、効果的・効率的なリスク管理を図るとともに、社外のステークホルダーへの説明責任をさらに強化していきます。 (2)ITシステム活用によるリスク管理の効率化全社的なリスク情報の把握・分析・フィードバックを効率的に推進するため、独自のリスクマネジメントシステムを開発し、グローバルで運用しております。このシステムでは、各部門がリスクマップや年間リスク対応計画、インシデント報告、作成したBCPマニュアル等を登録し、それらの情報をデータベース化して一元管理することで、グループ全体のリスク分析や各部門での対策の状況をモニタリングしております。 2.中外製薬リスクアペタイト ステートメント当社グループでは、社会との共有価値を創造し、企業価値を高める企業活動の根幹となるミッションステートメント(=企業理念)を基点とした事業経営において、経営目標の達成や戦略遂行を阻害する事象を「リスク」と捉えております。戦略の意思決定や事業の円滑な運営を適切に行うために、リスクへの対応方針である「リスクアペタイト ステートメント」を定め、リスクカルチャーの醸成を図るとともに、従業員の一人ひとりがこれに基づいた判断・行動を徹底します。 ●イノベーションの追求に伴うリスク・私たちの存在価値と成長の源泉は「イノベーションの追求」です。最先端のサイエンスと技術、デジタルによる革新を追求することで世界のアンメット・メディカルニーズに対する新たなソリューションを生み出し、高度で持続可能な医療の実現を通じて社会との共有価値を創造する「ヘルスケア産業のトップイノベーター」を目指します。そのために、自社を取り巻く経営環境や自社の強み、患者ニーズやサイエンス・技術の見通し等を分析し、社会の期待や要請を適時・適切に捉えるとともに、経営戦略や各々のプロジェクトに潜在するリスクを特定し、経営資源の選択と集中、外部パートナーとの協働・連携の強化、デジタル技術の活用など然るべき対策を講じながら、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出の機会を追求します。・また、イノベーション創出には、従業員の多様性や人権を尊重することで、すべての従業員の能力が最大限発揮できる働きやすい環境の実現と、戦略目標達成・イノベーションを牽引するリーダー人財・高度専門人財の早期発掘・育成・獲得及び活躍促進が不可欠です。そのため、私たちは、チャレンジを奨励する組織文化・制度設計・意思決定を大切にしながら、高度かつ多様な人財が活躍し、イノベーションが創出されることを妨げるあらゆるリスクを低減することに努めます。 ●製品の有効性・安全性/品質保証/安定供給を阻害するリスク・私たちが患者さんに価値を安定的にお届けするにあたっては、何よりも製品の有効性や安全性、そしてそれらを担保する品質が重要であると考えます。・そのため、私たちの製品やイノベーションの追求には、予期せぬ副作用が生じるリスクが潜んでいることを意識しながら、有効性と安全性を十分に検証し、経済性も考慮のうえで高い品質を保証しなければなりません。・私たちは、デジタル技術を活用しながら、自社のビジネスプロセス(研究、開発、製薬、マーケティング、メディカルアフェアーズ、医薬安全性、知的財産・信頼性保証)における適正な分業・協業や、グローバルサプライチェーンマネジメントの強化、グローバル品質システムの維持・向上を図るとともに、生産性向上や在庫管理の最適化など、経済性の側面での対策も進めながら、有効性・安全性が確保され、品質が保証された製品の安定供給を阻害するリスクを回避・低減することに努めます。 ●コンプライアンスに反するリスク・私たちは、「企業倫理は業績に優先する」という考えのもと、法規制の遵守にとどまらず、社会的価値観や倫理観、公正さに基づく判断・行動を徹底します。そのために、ミッションステートメント(=企業理念)やグループ コード・オブ・コンダクト、その他社内規程/ガイドラインを制定しており、これに反する判断・行動を認めず、コンプライアンスに反するリスクは一切受け入れません。また、サプライチェーン全体におけるコンプライアンスを徹底するため、自グループ内のみならず、ビジネスパートナーに対しても、高い倫理観に基づく誠実な活動を求めます。 ●企業市民としての社会的責任に関するリスク・私たち企業は、地球環境や社会システムのうえで成り立っており、これらを維持・発展させることは、企業市民としての私たちの責任であると考えます。・私たちは、地域社会や国際社会が抱える課題に向き合い、中外製薬としてどのように貢献すべきかを考え、様々なステークホルダーと連携・協働しながら、事業活動のあらゆる場面において、環境保全や人権の尊重に努めることで、地球環境問題や社会的な差別・人権侵害の解消に貢献するとともに、医療・福祉を中心とした社会貢献活動に積極的に取り組むことで、企業市民としての役割・責任を果たせず、社会からの信頼を損なうリスクを低減することに努めます。 3.主要なリスク当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により重大な影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しております。当社グループはこれらリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針であります。なお、これらは当社グループにかかるあらゆるリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。また、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1)経営戦略に関連する潜在リスク(戦略リスク)① 技術・イノベーションについて当社グループは、ロシュとの戦略的アライアンスのもと、自社の強みであるサイエンス力と技術力をさらに強化することで、革新的な医薬品の創出に努めております。特にこれまでの低分子・抗体医薬では解決できなかったアンメットメディカルニーズ(有効な治療方法が見つかっていない疾病に対する治療薬への要望)を満たす中分子創薬技術の開発に注力するとともに、デジタル技術を活用し研究プロセスの効率化に積極的に取り組んでおります。しかしながら、医薬品には研究開発の不確実性(自社創薬・技術開発の遅れや失敗)が常に存在しており、さらにサイエンス、創薬技術、デジタルという日進月歩の分野では、競争優位性の高いソリューションの出現などにより、自社技術・製品の価値低下や開発計画の見直しなどのリスクがあります。また、当社グループは業務活動上様々な知的財産権を使用しており、それらは当社グループ所有のものであるか、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社グループの認識の範囲外で第三者から侵害を受けたり、第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。当社グループの業務に関連する重大な知的財産権を巡って係争が発生した場合、期待される収益の減少、製造販売・技術使用の停止や使用料の発生など戦略遂行に重大な影響を与える可能性があります。こうしたリスクに対しては、最先端のサイエンス・技術へのアクセスを怠らず、経営資源の選択と集中により自社技術の優位性を高めるとともに、外部連携の強化により多様性を高めることに努めております。さらに中分子医薬の開発にあたっては関連する社内組織(創薬・開発・製薬)の連携強化、知的財産権については知財戦略のさらなる強化を図ってまいります。当社グループはリスクアペタイトに基づき、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出の機会を追求するとともに、職場環境や組織文化、人財育成などの面からもイノベーションを奨励する仕組みを強化し、イノベーション創出を妨げるリスクの低減に努めております。 ② 医療制度・薬事規制について当社グループは、アンメットメディカルニーズに応えるべく、ファーストインクラス(新規性・有用性が高く、これまでの治療体系を大幅に変えうる独創的な医薬品)、ベストインクラス(同じ分子を標的にするなど、同一カテゴリーの既存薬に対して明確な優位性を持つ医薬品)となりうる革新的な新薬の連続的な創製に注力しております。一方、国内外において高齢化の進展や医療費高騰などによる財政逼迫を背景とした薬剤費引き下げ政策の強化が進められています。さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う多額の財政出動により、各国が進める医療費抑制は加速することが予想されます。日本においては昨今の安全保障政策の強化に伴う防衛費の増大等により、医療等の社会保障財政への影響も懸念されます。既に2年に一度行われる薬価改定に加え、2021年度に導入された中間年改定が2023年度も実施される中、こうした薬価引き下げ政策やバイオシミラー(バイオ後続品)等の振興政策が拡大すると、これまで以上に収益の低下を招き、研究開発への投資を妨げるリスクがあります。また、こうした政策により今後ますます「Value Based Healthcare(価値に基づく医療)」が進展し、患者さんにとって真に価値のあるソリューションだけが選ばれる傾向がより一層強まると考えております。日本のみならず、海外の制度・薬事規制改革の内容や環境動向を適時適切に把握する海外インテリジェンス機能の強化に取り組むとともに、引き続き、イノベーション追求により新たな価値の提供と収益構造の強化を図ってまいります。 ③ 市場・顧客についてⅰ.市場・顧客の変化近年、競合品や後発品/バイオシミラー(バイオ後続品)の浸透加速に加え、再生医療、細胞/遺伝子治療、核酸医薬など新たな治療手段(モダリティ)の進展や、予防・診断・治療・予後まで一貫した価値提供が求められるようになっております。ITプラットフォーマーのヘルスケア産業参入によるデータ寡占等、ライフサイエンスやデジタル分野での新たな技術・脅威が台頭しており、ヘルスケア産業における競争環境は急激に変化しています。さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響を背景に、製薬企業における医薬品の情報提供体制、すなわち顧客タッチポイントのあり方も大きく変容しています。このような状況におきまして、市場での地位や製品競争力が低下するリスク、あるいは顧客タッチポイントの急速な変化により、医薬品の情報提供体制の抜本的な見直しを迫られる可能性があります。こうしたリスクに対応するべく、当社グループでは連続的な新薬の創出と製品ラインアップの多様化に努めるとともに、常に高いコンプライアンス意識を持ちながら環境にあった情報提供のあり方を模索しています。また、新たな顧客エンゲージメントモデル、すなわち顧客のニーズに合わせて、リアル(対面)・リモート・デジタルを融合させたアプローチにより、迅速かつ的確に顧客に価値を提供する体制を強化しております。 ⅱ.地政学リスクの高まりによる事業制限2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴うヨーロッパにおけるエネルギー供給の懸念や、人権、ハイテク、台湾問題等をめぐる米中対立の高まり、そしてそれらに端を発した各国の経済安全保障法制の強化など、地政学リスクをめぐる企業活動への影響が注目されています。これら国際情勢の急激な変化や国家間紛争の発生によって、関連地域における事業制限・撤退(生産・R&D・販売拠点の喪失、利益減少、将来の機会損失)、関連地域におけるサプライチェーン停滞・供給遅延などのリスクが生じる可能性があります。これら地政学リスクに対して、当社グループでは、外部情報の入手や事業影響分析を行う社内体制を整備していくとともに、突発的な有事に備えた安全管理体制の再整備、事業継続計画(BCP)・供給バックアップ体制の強化などを行っていきます。 ④ 事業基盤についてⅰ.ロシュとの戦略的提携当社グループはロシュとの戦略的提携により、日本市場におけるロシュの唯一の医薬品事業会社となり、また日本以外の世界市場(韓国・台湾除く)ではロシュに当社製品の第一選択権を付与し、多数の製品及びプロジェクトを同社との間で導入・導出しております。独自のビジネスモデルによって安定的な収益基盤を確立できることが提携の大きなメリットです。一方、戦略的提携における合意内容が変更となった場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、ロシュの創薬・グローバルネットワークが不調に陥り、ロシュからの導入品による安定的な収益源が低下するリスクやロシュに導出した自社品のグローバル市場浸透の遅延や収益低下などのリスクがあります。当社グループとしてはイノベーションを追求し、革新的な医薬品を連続的に創出することにより、引き続き、ロシュグループ全体の価値創造に対し貢献できるよう努めてまいります。 ⅱ.人事・組織当社は2020年に新たな人事制度を導入し、適所適財に基づく人財配置の徹底、タレントマネジメントの高度化、そして果敢なチャレンジを推奨する組織風土の醸成を図っております。また、データサイエンティストをはじめとするデジタル人財やメディカルドクター(MD)など、戦略遂行上の要となる高度専門人財の発掘・育成・獲得に注力しております。一方、人財獲得ニーズの競合等による獲得の遅れや社内育成に要する時間、目まぐるしい環境変化により求められる業務の質の変化による人財のミスマッチや不足、余剰等が発生するリスク、あるいは期待される組織文化が醸成されず、イノベーションの創出が阻害されるリスクなどが想定されます。こうしたリスクに対応するべく、戦略遂行上の要となる人財の要件を明確に定義し、社外にも積極的に開示するとともに、社内では定着・育成に向けた施策の強化に努めております。組織・人財への投資を強化し、環境動向を見極めた組織体制と戦略的な採用計画を実施してまいります。 ⅲ.デジタル基盤すべてのバリューチェーンで生産性の飛躍的向上を図るべくデジタル投資を加速する一方、デジタル技術が進展しない可能性や社内のデジタルケイパビリティ不足、デジタルコンプライアンスの理解不足等によりデジタルトランスフォーメーション(DX)の停滞やトラブルが発生する可能性があります。タイムリーにDX戦略を見直し、ケイパビリティの強化に努めるとともに、外部専門人財を積極的に活用してまいります。 ⅳ.収益構造製薬産業における技術の進歩は顕著であり、国内外製薬企業等との厳しい競争に直面する中、R&D費などの投資・コスト増加が収益構造に影響を及ぼす可能性があります。このため、デジタルを活用したプロセス改善と生産性の向上によるオペレーションコストの最小化に取り組むとともに、投資プロジェクトの見極めが重要と考えております。 (2)事業遂行におけるリスク(オペレーショナルリスク)① 品質・副作用について患者さんに価値の高い製品・サービスを安定的にお届けするにあたっては、何よりも製品の有効性や安全性は勿論のこと、それらを担保する品質が重要であると考えます。当社グループでは、製品のライフサイクルにおける業務プロセスの妥当性を確認・評価し改善するとともに、グローバルITシステムの導入・運用によりデータの信頼性を確保しております。また、恒常的な品質確保に向けて、社内及び社外パートナーとの連携を重視し、品質について考え話し合う場を定期的に設けるなど、様々な取り組みにより連携を深化させています。しかしながら、何らかの原因により製品品質に懸念が生じた場合には、販売中止・製品の回収や社会的信頼の喪失などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。医薬品・医療機器は各国規制当局の厳しい審査を受けて承認されておりますが、当社グループでは、承認後も医薬品の安全監視活動を強化・徹底するとともに、「調査・副作用・治験データベースツール」による患者さんの特性に応じた迅速な情報提供や、患者さんと医療関係者とのコミュニケーションを円滑にし、患者さんにより安心して治療を受けていただくための「治療支援アプリ」の運用、安全性専属スタッフである「セイフティエキスパート」を中心とした、医療関係者への安全性コンサルテーション・ネットワーク体制の構築など、適正使用に向けた安全性情報提供活動の強化を図っております。しかしながら、その特殊性から、使用にあたり、万全の安全対策を講じたとしても副作用等の健康被害を完全に防止することは困難であり、副作用、特に新たな重篤な副作用が発現した場合には、「使用上の注意」への記載を行うほか、販売中止・製品の回収等に至ることもあり、業績に重大な影響を与える可能性があります。 ② ITセキュリティ及び情報管理について業務上、各種ITシステムを利用しており、従業員・アウトソーシング企業の不注意または故意による行為や、サイバー攻撃等の外部要因によりシステム障害や社外提供サービスの停止、提供情報の改ざん等が生じた場合、事業活動の停止・遅延・計画の見直しや、突発的な対応・対策費用などが発生する可能性があります。また、万が一、研究開発等にかかる営業秘密や個人情報等が社外に流出した場合、競争優位性の喪失、社会的信頼の喪失、損害賠償などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループはこれらのリスクに備え、関連規程を整備し、従業員に対する教育・訓練を定期的に実施するとともに、システムの堅牢性・可用性の強化、サイバー攻撃・ウイルス感染の検知機能・監視体制や情報セキュリティインシデント対応体制の強化を図っております。また、これらの対策状況をグループ横断的に評価し強化するためのセキュリティマネジメント体制を構築し、継続的なリスクの低減に努めております。 ③ 大規模災害等による影響について地震、台風、洪水等の自然災害、火災等の事故により、当社グループの事業所・営業所及び取引先の建物・設備等が深刻な被害を受けた場合、医薬品の供給停止や設備修復などの費用計上の発生、新製品の浸透遅延、それらによる収益の低下など、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループは、これらのリスクに備え、損害保険の加入や、事業継続計画(BCP)の策定・訓練の実施、耐震対策、安全在庫の確保など、従業員の安全と医薬品の安定供給のための体制を整備し、リスクの低減に努めております。 ④ 人権について職場におけるハラスメントや労働安全衛生を含む人権問題への対応遅延が生じた場合、従業員の健康やメンタルヘルスの悪化、離職率の増加など人財力の低下、社会的信頼の喪失により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これら人権問題に対し、役員、従業員に対する継続的な人権研修の実施や、ハラスメントに関する相談窓口の設置、また健康経営の一環として安全衛生活動に取り組んでいます。サプライヤーに対しても人権尊重に対する理解を求め、協力して人権問題に関する課題解決に努めております。 ⑤ サプライチェーンについて自然災害、事故、パンデミックの発生等により当社の原材料調達先や外部製造委託先などのサプライヤーに被害や事業活動の制限が生じた場合、また、サプライチェーンにおけるコンプライアンス違反や環境問題などへの対応が遅延した場合、原材料の確保や生産の継続が困難となる可能性があり、社会的信頼の喪失や売上・シェアの低下により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらサプライチェーンに係るリスクに備え、損害保険の加入や、事業継続計画(BCP)の策定、安全在庫の確保、サプライヤーとの情報共有体制の構築など、医薬品の安定供給のための体制を整備しております。また、サプライチェーンにおけるコンプライアンスや環境問題など当社グループだけでは解決できない課題に関し、サプライヤーと協力して課題解決に努めております。 ⑥ 地球環境問題について環境関連法規等の遵守はもとより、さらに高い自主基準を設定してその達成に向けて努めており、今後も強化と充実を図っていきます。しかしながら、万が一、有害物質による予期せぬ汚染やそれに伴う危害が顕在化した場合、対策費用や損害賠償責任を負うなどにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。気候変動については、地球環境保全のための重大な課題の一つと考え、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでおります。その一環として、エネルギー消費量削減に加え、2025年までに温室効果ガスを排出しないサステナブル電力比率100%、並びに2030年までにスコープ1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)及びスコープ2(他者から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出)の60~75%削減を目指しております。しかしながら、これら気候変動に対する技術・設備対応の遅れが発覚した場合、設備投資計画の見直し、追加的な費用計上が生じる可能性があります。また、将来における環境関連法規制の強化により、対策費用の増加や当社グループの研究、開発、製造、その他の事業活動が制限される可能性があります。なお、当社グループは、透明性・信頼性の高い環境情報を開示するため、毎年、環境パフォーマンスデータの第三者保証を取得しております。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」のフレームワークに基づき、気候変動が当社へもたらすリスクと機会を織り込んだ定性評価及びシナリオ分析を実施し、長期的に大規模な事業転換や投資を必要とする重大な気候関連リスクは特定されませんでした。加えて、2021年には、弊社の温室効果ガス削減目標に対してScience Based Target(SBT)事務局よりSBT認定を取得いたしました。今後も継続的に分析・評価を行い、プロアクティブな環境課題の解決に取り組んでいきます。 ⑦ パンデミックによる影響について当社グループは、2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降、テレワークなど柔軟性の高い働き方と生産性の維持・向上を実現する「新しい働き方」の定着に向けた取り組みを進めております。また、患者さんに対する医薬品の安定供給という社会的責務を担っており、感染症拡大時においても、必要な医薬品の提供体制を維持することを基本方針としております。引き続き、従業員及び事業関係者への感染防止策に取り組みながら、医薬品の安定供給に努めてまいりますが、今後、新たな感染症の全国的・世界的な大流行等により事業活動が制限された場合、サプライチェーンの停止・遅延により製品供給に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、研究・臨床試験の進行や、MR活動の制限による新製品等の浸透に遅延が生じる可能性があります。
FY2021|9,335 文字
2【事業等のリスク】1.当社グループにおけるリスクマネジメント(1)ERM導入によるリスク管理の高度化ERM(Enterprise Risk Management=全社的リスクマネジメント)とは、企業価値の最大化を図るため、事業活動に係るあらゆるリスクを可視化し、統合された仕組みで管理を行うリスク管理手法のことを言います。当社グループでは、従来から部門ごとにリスクの抽出・評価、対策実施状況のモニタリングなどERMを行っておりましたが、リスク管理の高度化に向け、2021年からは、戦略に関するリスク管理を包含する新たなERMのフレームワークの導入・運用を行っております。具体的には、リスク選好に係る方針を「リスクアペタイト ステートメント」として明示し、健全なリスクカルチャーの醸成を目指します。そして、全社的に対処すべきリスクを「戦略リスク(=戦略の意思決定に内在するリスクや戦略の遂行を阻害するリスク)」と「オペレーショナルリスク(=事業の円滑な運営を阻害するリスク)」に分け、これらのリスクを一元的に把握・整理・可視化し、全社的に共有・議論を行うことで、効果的・効率的なリスク管理を図るとともに、社外のステークホルダーへの説明責任をさらに強化していきます。 (2)ITシステム活用によるリスク管理の効率化全社的なリスク情報の把握・分析・フィードバックを効率的に推進するため、独自のリスクマネジメントシステムを開発し、グローバルで運用しております。このシステムでは、各部門がリスクマップや年間リスク対応計画、インシデント報告を登録し、それらの情報をデータベース化して一元管理することで、グループ全体のリスク分析や各部門での対策の状況をモニタリングしております。 2.中外製薬リスクアペタイト ステートメント当社グループでは、社会との共有価値を創造し、企業価値を高める企業活動の根幹となるミッションステートメント(=企業理念)を基点とした事業経営において、経営目標の達成や戦略遂行を阻害する事象を「リスク」と捉えております。戦略の意思決定や事業の円滑な運営を適切に行うために、リスクへの対応方針である「リスクアペタイト ステートメント」を定め、リスクカルチャーの醸成を図るとともに、従業員の一人ひとりがこれに基づいた判断・行動を徹底します。 ●イノベーションの追求に伴うリスク・私たちの存在価値と成長の源泉は「イノベーションの追求」です。最先端のサイエンスと技術、デジタルによる革新を追求することで世界のアンメット・メディカルニーズに対する新たなソリューションを生み出し、高度で持続可能な医療の実現を通じて社会との共有価値を創造する「ヘルスケア産業のトップイノベーター」を目指します。そのために、自社を取り巻く経営環境や自社の強み、患者ニーズやサイエンス・技術の見通し等を分析し、社会の期待や要請を適時・適切に捉えるとともに、経営戦略や各々のプロジェクトに潜在するリスクを特定し、経営資源の選択と集中、外部パートナーとの協働・連携の強化、デジタル技術の活用など然るべき対策を講じながら、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出の機会を追求します。・また、イノベーション創出には、従業員の多様性や人権を尊重することで、すべての従業員の能力が最大限発揮できる働きやすい環境の実現と、戦略目標達成・イノベーションを牽引するリーダー人財・高度専門人財の早期発掘・育成・獲得及び活躍促進が不可欠です。そのため、私たちは、チャレンジを奨励する組織文化・制度設計・意思決定を大切にしながら、高度かつ多様な人財が活躍し、イノベーションが創出されることを妨げるあらゆるリスクを低減することに努めます。 ●製品の有効性・安全性/品質保証/安定供給を阻害するリスク・私たちが患者さんに価値を安定的にお届けするにあたっては、何よりも製品の有効性や安全性、そしてそれらを担保する品質が重要であると考えます。・そのため、私たちの製品やイノベーションの追求には、予期せぬ副作用が生じるリスクが潜んでいることを意識しながら、有効性と安全性を十分に検証し、経済性も考慮のうえで高い品質を保証しなければなりません。・私たちは、デジタル技術を活用しながら、自社のビジネスプロセス(研究、開発、製薬、マーケティング、メディカルアフェアーズ、医薬安全性、知的財産・信頼性保証)における適正な分業・協業や、グローバルサプライチェーンマネジメントの強化、グローバル品質システムの維持・向上を図るとともに、生産性向上や在庫管理の最適化など、経済性の側面での対策も進めながら、有効性・安全性が確保され、品質が保証された製品の安定供給を阻害するリスクを回避・低減することに努めます。 ●コンプライアンスに反するリスク・私たちは、「企業倫理は業績に優先する」という考えのもと、法規制の遵守にとどまらず、社会的価値観や倫理観、公正さに基づく判断・行動を徹底します。そのために、ミッションステートメント(=企業理念)やグループ コード・オブ・コンダクト、その他社内規程/ガイドラインを制定しており、これに反する判断・行動を認めず、コンプライアンスに反するリスクは一切受け入れません。また、サプライチェーン全体におけるコンプライアンスを徹底するため、自グループ内のみならず、ビジネスパートナーに対しても、高い倫理観に基づく誠実な活動を求めます。 ●企業市民としての社会的責任に関するリスク・私たち企業は、地球環境や社会システムのうえで成り立っており、これらを維持・発展させることは、企業市民としての私たちの責任であると考えます。・私たちは、地域社会や国際社会が抱える課題に向き合い、中外製薬としてどのように貢献すべきかを考え、様々なステークホルダーと連携・協働しながら、事業活動のあらゆる場面において、環境保全や人権の尊重に努めることで、地球環境問題や社会的な差別・人権侵害の解消に貢献するとともに、医療・福祉を中心とした社会貢献活動に積極的に取り組むことで、企業市民としての役割・責任を果たせず、社会からの信頼を損なうリスクを低減することに努めます。 3.主要なリスク当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により重大な影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しております。当社グループはこれらリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針であります。なお、これらは当社グループにかかるあらゆるリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。また、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1)経営戦略に関連する潜在リスク(戦略リスク)① 技術・イノベーションについて当社グループは、ロシュとの戦略的アライアンスのもと、自社の強みであるサイエンス力と技術力をさらに強化することで、革新的な医薬品の創出に努めております。特にこれまでの低分子・抗体医薬では解決できなかったアンメットメディカルニーズ(有効な治療方法が見つかっていない疾病に対する治療薬への要望)を満たす中分子創薬技術の開発に注力するとともに、デジタル技術を活用し研究プロセスの効率化に積極的に取り組んでおります。しかしながら、サイエンス、創薬技術、デジタルという日進月歩の分野では、自社創薬・技術開発の遅れや失敗、競争優位性の高いソリューションの出現などにより、自社技術・製品の価値低下や開発計画の見直しなどのリスクがあります。また、当社グループは業務活動上様々な知的財産権を使用しており、それらは当社グループ所有のものであるか、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社グループの認識の範囲外で第三者から侵害を受けたり、第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。当社グループの業務に関連する重大な知的財産権を巡って係争が発生した場合、期待される収益の減少、製造販売・技術使用の停止や使用料の発生など戦略遂行に重大な影響を与える可能性があります。こうしたリスクに対しては、最先端のサイエンス・技術へのアクセスを怠らず、経営資源の選択と集中により自社技術の優位性を高めるとともに、外部連携の強化により多様性を高めることに努めております。さらに中分子医薬の開発にあたっては関連する社内組織(創薬・開発・製薬)の連携強化、知的財産権については知財戦略のさらなる強化を図ってまいります。当社グループはリスクアペタイトに基づき、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出の機会を追求するとともに、職場環境や組織文化、人財育成などの面からもイノベーションを奨励する仕組みを強化し、イノベーション創出を妨げるリスクの低減に努めております。 ② 医療制度・薬事規制について当社グループは、アンメットメディカルニーズに応えるべく、ファーストインクラス(新規性・有用性が高く、これまでの治療体系を大幅に変えうる独創的な医薬品)、ベストインクラス(同じ分子を標的にするなど、同一カテゴリーの既存薬に対して明確な優位性を持つ医薬品)となりうる革新的な新薬の連続的な創製に注力しております。一方、国内外において高齢化の進展や医療費高騰などによる財政逼迫を背景とした薬剤費引き下げ政策の強化が進められています。さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う多額の財政出動により、各国が進める医療費抑制はさらに加速することが予想されます。特に日本においては2年に一度行われる薬価改定に加え、2021年から中間年改定がスタートしました。こうした薬価引き下げ政策や後発品振興政策が拡大すると、これまで以上に収益の低下を招き、研究開発への投資を妨げるリスクがあります。また、こうした政策により今後ますます「Value Based Healthcare(価値に基づく医療)」が進展し、患者さんにとって真に価値のあるソリューションだけが選ばれる傾向がより一層強まると考えております。日本のみならず、世界各国の制度・薬事規制改革の内容や環境動向を適時適切に把握する海外インテリジェンス機能の強化に取り組むとともに、引き続き、イノベーション追求により新たな価値の提供と収益構造の強化を図ってまいります。 ③ 市場・顧客について近年、競合品や後発品/バイオシミラー(バイオ後続品)の浸透加速に加え、再生医療、細胞/遺伝子治療、核酸医薬など新たな治療手段(モダリティ)の進展や、予防・診断・治療・予後まで一貫した価値提供が求められるようになっております。ITプラットフォーマーのヘルスケア産業参入によるデータ寡占等、ライフサイエンスやデジタル分野での新たな技術・脅威が台頭しており、ヘルスケア産業における競争環境は急激に変化しています。さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響を背景に、製薬企業における医薬品の情報提供体制、すなわち顧客タッチポイントのあり方も大きく変容しています。このような状況におきまして、市場での地位や製品競争力が低下するリスク、あるいは顧客タッチポイントの急速な変化により、医薬品の情報提供体制の抜本的な見直しを迫られる可能性があります。こうしたリスクに対応するべく、当社グループでは連続的な新薬の創出と製品ラインアップの多様化に努めるとともに、遺伝子パネル検査によって一人ひとりの患者さんに最適な診断を行う個別化医療の高度化に取り組んでおります。また、新たな顧客エンゲージメントモデル、すなわち顧客のニーズに合わせて、リアル(対面)・リモート・デジタルを融合させたアプローチにより、迅速かつ的確に顧客に価値を提供する体制を強化しております。 ④ 事業基盤についてⅰ.ロシュとの戦略的提携当社グループはロシュとの戦略的提携により、日本市場におけるロシュの唯一の医薬品事業会社となり、また日本以外の世界市場(韓国・台湾除く)ではロシュに当社製品の第一選択権を付与し、多数の製品及びプロジェクトを同社との間で導入・導出しております。独自のビジネスモデルによって安定的な収益基盤を確立できることが提携の大きなメリットです。一方、何らかの理由により戦略的提携における合意内容が変更された場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、ロシュの創薬・グローバルネットワークが不調に陥り、ロシュからの導入品による安定的な収益源が低下するリスクやロシュに導出した自社品のグローバル市場浸透の遅延や収益低下などのリスクがあります。当社グループとしてはイノベーションを追求し、革新的な医薬品を連続的に創出することにより、引き続き、ロシュグループ全体の価値創造に対し貢献できるよう努めてまいります。 ⅱ.人事・組織当社は2020年に新たな人事制度を導入し、適所適財に基づく人財配置の徹底、タレントマネジメントの高度化、そして果敢なチャレンジを推奨する組織風土の醸成を図っております。また、データサイエンティストをはじめとするデジタル人財やメディカルドクター(MD)など、戦略遂行上の要となる高度専門人財の獲得・育成・充足に注力しております。一方、人財獲得ニーズの競合等による獲得の遅れや社内育成に要する時間、目まぐるしい環境変化により求められる業務の質の変化による人財のミスマッチや不足、余剰等が発生するリスク、あるいは期待される組織文化が醸成されず、イノベーションの創出が阻害されるリスクなどが想定されます。こうしたリスクに対応するべく、戦略遂行上の要となる人財の要件を明確に定義し、社外にも積極的に開示するとともに、社内では定着・育成に向けた施策の強化に努めております。組織・人財への投資を強化し、環境動向を見極めた組織体制と戦略的な採用計画を実施してまいります。 ⅲ.デジタル基盤すべてのバリューチェーンで生産性の飛躍的向上を図るべくデジタル投資を加速する一方、デジタル技術が進展しない可能性や社内のデジタルケイパビリティ不足、デジタルコンプライアンスの理解不足等によりデジタルトランスフォーメーション(DX)の停滞やトラブルが発生する可能性があります。タイムリーにDX戦略を見直し、ケイパビリティの強化に努めるとともに、外部専門人財を積極的に活用してまいります。 ⅳ.収益構造製薬産業における技術の進歩は顕著であり、国内外製薬企業等との厳しい競争に直面する中、R&D費などの投資・コスト増加が収益構造に影響を及ぼす可能性があります。このため、デジタルを活用したプロセス改善と生産性の向上によるオペレーションコストの最小化に取り組むとともに、投資プロジェクトの見極めが重要と考えております。 (2)事業遂行におけるリスク(オペレーショナルリスク)① 品質・副作用について患者さんに価値の高い製品・サービスを安定的にお届けするにあたっては、何よりも製品の有効性や安全性、それらを担保する品質が重要であると考えます。当社グループでは、製品のライフサイクルにおける業務プロセスの妥当性の確認・評価を行い改善するとともに、グローバルITシステムの導入・運用によりデータの信頼性を確保しております。また、恒常的な品質確保に向けて、社内及び社外パートナーとの連携強化を重視し、品質について考え話し合う場を定期的に設けています。しかしながら、何らかの原因により製品品質に懸念が生じた場合には、販売中止・製品の回収や社会的信頼の喪失などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。医薬品・医療機器は各国規制当局の厳しい審査を受けて承認されておりますが、当社グループでは、承認後も医薬品の安全監視活動を強化・徹底するとともに、「調査・副作用データベースツール(DB)」による患者さんの特性に応じた迅速な情報提供や、患者さんと医療関係者とのコミュニケーションを円滑にし、患者さんにより安心して治療を受けていただくための「服薬適正化支援アプリ」の運用、安全性専属スタッフである「セイフティエキスパート」を中心とした、医療関係者への安全性コンサルテーション・ネットワーク体制の構築など、適正使用に向けた安全性情報提供活動の強化を図っております。しかしながら、その特殊性から、使用にあたり、万全の安全対策を講じたとしても副作用等の健康被害を完全に防止することは困難であり、副作用、特に新たな重篤な副作用が発現した場合には、「使用上の注意」への記載を行うほか、販売中止・製品の回収等に至ることもあり、業績に重大な影響を与える可能性があります。 ② ITセキュリティ及び情報管理について業務上、各種ITシステムを利用しており、従業員・アウトソーシング企業の不注意または故意による行為や、サイバー攻撃等の外部要因によりシステム障害や社外提供サービスの停止、提供情報の改ざん等が生じた場合、事業活動の停止・遅延・計画の見直しや、突発的な対応・対策費用などが発生する可能性があります。また、万が一、研究開発等にかかる営業秘密や個人情報等が社外に流出した場合、競争優位性の喪失、社会的信頼の喪失、損害賠償などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループはこれらのリスクに備え、関連規程を整備し、従業員に対する教育・訓練を定期的に実施するとともに、システムの堅牢性・可用性の強化、サイバー攻撃・ウイルス感染の検知機能・監視体制や情報セキュリティインシデント対応体制の強化を図っております。また、これらの対策状況をグループ横断的に評価し強化するためのセキュリティマネジメント体制を構築し、継続的なリスクの低減に努めております。 ③ 大規模災害等による影響について地震、台風、洪水等の自然災害、火災等の事故により、当社グループの事業所・営業所及び取引先の建物・設備等が深刻な被害を受けた場合、または新型インフルエンザ等のパンデミックの発生により、事業活動が制限された場合には、医薬品の供給停止や設備修復などの費用計上の発生、新製品の浸透遅延、それらによる収益の低下など、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループは、これらのリスクに備え、損害保険の加入や、事業継続計画(BCP)の策定・訓練の実施、耐震対策、安全在庫の確保など、従業員の安全と医薬品の安定供給のための体制を整備し、リスクの低減に努めております。 ④ 人権について職場におけるハラスメントや労働安全衛生を含む人権問題への対応遅延が生じた場合、従業員の健康やメンタルヘルスの悪化、離職率の増加など人財力の低下、社会的信頼の喪失により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これら人権問題に対し、役員、従業員に対する継続的な人権研修の実施や、ハラスメントに関する相談窓口の設置、また健康経営の一環として安全衛生活動に取り組んでいます。サプライヤーに対しても人権尊重に対する理解を求め、協力して人権問題に関する課題解決に努めております。 ⑤ サプライチェーンについて自然災害、事故、パンデミックの発生等により当社の原材料調達先や外部製造委託先などのサプライヤーに被害や事業活動の制限が生じた場合、また、サプライチェーンにおけるコンプライアンス違反や環境問題などへの対応が遅延した場合、原材料の確保や生産の継続が困難となる可能性があり、社会的信頼の喪失や売上・シェアの低下により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらサプライチェーンに係るリスクに備え、損害保険の加入や、事業継続計画(BCP)の策定、安全在庫の確保、サプライヤーとの情報共有体制の構築など、医薬品の安定供給のための体制を整備しております。また、サプライチェーンにおけるコンプライアンスや環境問題など当社グループだけでは解決できない課題に関し、サプライヤーと協力して課題解決に努めております。 ⑥ 地球環境問題について環境関連法規等の遵守はもとより、さらに高い自主基準を設定してその達成に向けて努めており、今後も強化と充実を図っていきます。しかしながら、万が一、有害物質による予期せぬ汚染やそれに伴う危害が顕在化した場合、対策費用や損害賠償責任を負うなどにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。気候変動については、地球環境保全のための重大な課題の一つと考え、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでおります。その一環として、エネルギー消費量削減に加え、2025年までに温室効果ガスを排出しないサステナブル電力比率100%、並びに2030年までにスコープ1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)及びスコープ2(他者から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出)の60~75%削減を目指しております。しかしながら、これら気候変動に対する技術・設備対応の遅れが発覚した場合、設備投資計画の見直し、追加的な費用計上が生じる可能性があります。また、将来における環境関連法規制の強化により、対策費用の増加や当社グループの研究、開発、製造、その他の事業活動が制限される可能性があります。 なお、当社グループは、透明性・信頼性の高い環境情報を開示するため、毎年、環境パフォーマンスデータの第三者保証を取得しております。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」のフレームワークに基づき、気候変動が当社へもたらすリスクと機会を織り込んだ定性評価及びシナリオ分析を実施し、長期的に大規模な事業転換や投資を必要とする重大な気候関連リスクは特定されませんでした。今後も継続的に分析・評価を行い、プロアクティブな環境課題の解決に取り組んでいきます。 ⑦ 新型コロナウイルス感染拡大の影響について当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大を受け、テレワークなど柔軟性の高い働き方と生産性の維持・向上を実現する「新しい働き方」の定着に向けた取り組みを進めております。また、患者さんに対する医薬品の安定供給という社会的責務を担っており、緊急事態宣言発令時においても、必要な医薬品の提供体制を維持することを基本方針としております。引き続き、従業員及び事業関係者への感染防止策に取り組みながら、医薬品の安定供給に努めてまいりますが、今後、さらなる感染拡大等により事業活動が制限された場合、サプライチェーンの停止・遅延により製品供給に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、研究・臨床試験の進行や、MR活動の制限による新製品等の浸透に遅延が生じる可能性があります。
FY2020|9,183 文字
2【事業等のリスク】1.当社グループにおけるリスクマネジメント(1)ERM導入によるリスク管理の高度化ERM(Enterprise Risk Management=全社的リスクマネジメント)とは、企業価値の最大化を図るため、事業活動に係るあらゆるリスクを可視化し、統合された仕組みで管理を行うリスク管理手法のことを言います。当社グループでは、従来から部門ごとにリスクの抽出・評価、対策実施状況のモニタリングなどERMを行っておりましたが、リスク管理の高度化に向け、2021年からは、戦略に関するリスク管理を包含する新たなERMのフレームワークの導入・運用を行っております。具体的には、リスク選好に係る方針を「リスクアペタイト ステートメント」として明示し、健全なリスクカルチャーの醸成を目指します。そして、全社的に対処すべきリスクを「戦略リスク(=戦略の意思決定に内在するリスクや戦略の遂行を阻害するリスク)」と「オペレーショナルリスク(=事業の円滑な運営を阻害するリスク)」に分け、これらのリスクを全社リスクマップとして一元的に把握・整理・可視化し、全社的に共有・議論を行うことで、効果的・効率的なリスク管理を図るとともに、社外のステークホルダーへの説明責任をさらに強化していきます。 (2)ITシステム活用によるリスク管理の効率化全社的なリスク情報の把握・分析・フィードバックを効率的に推進するため、独自のリスクマネジメントシステムを開発し、グローバルで運用しております。このシステムでは、各部門がリスクマップや年間リスク対応計画、インシデント報告を登録し、それらの情報をデータベース化して一元管理することで、グループ全体のリスク分析や各部門での対策の状況をモニタリングしております。 2.中外製薬リスクアペタイト ステートメント当社グループでは、社会との共有価値を創造し、企業価値を高める企業活動の根幹となるミッションステートメント(=企業理念)を基点とした事業経営において、経営目標の達成や戦略遂行を阻害する事象を「リスク」と捉えております。戦略の意思決定や事業の円滑な運営を適切に行うために、リスクへの対応方針である「リスクアペタイト ステートメント」を定め、リスクカルチャーの醸成を図るとともに、従業員の一人ひとりがこれに基づいた判断・行動を徹底します。 ●イノベーションの追求に伴うリスク・私たちの存在価値と成長の源泉は「イノベーションの追求」です。最先端のサイエンスと技術、デジタルによる革新を追求することで世界のアンメット・メディカルニーズに対する新たなソリューションを生み出し、高度で持続可能な医療の実現を通じて社会との共有価値を創造する「ヘルスケア産業のトップイノベーター」を目指します。そのために、自社を取り巻く経営環境や自社の強み、患者ニーズやサイエンス・技術の見通し等を分析し、社会の期待や要請を適時・適切に捉えるとともに、経営戦略や各々のプロジェクトに潜在するリスクを特定し、経営資源の選択と集中、外部パートナーとの協働・連携の強化、デジタル技術の活用など然るべき対策を講じながら、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出の機会を追求します。・また、イノベーション創出には、従業員の多様性や人権を尊重することで、すべての従業員の能力が最大限発揮できる働きやすい環境の実現と、戦略目標達成・イノベーションを牽引するリーダー人財・高度専門人財の早期発掘・育成・獲得及び活躍促進が不可欠です。そのため、私たちは、チャレンジを奨励する組織文化・制度設計・意思決定を大切にしながら、高度かつ多様な人財が活躍し、イノベーションが創出されることを妨げるあらゆるリスクを低減することに努めます。 ●製品の有効性・安全性/品質保証/安定供給を阻害するリスク・私たちが患者さんに価値を安定的にお届けするにあたっては、何よりも製品の有効性や安全性、そしてそれらを担保する品質が重要であると考えます。・そのため、私たちの製品やイノベーションの追求には、予期せぬ副作用が生じるリスクが潜んでいることを意識しながら、有効性と安全性を十分に検証し、経済性も考慮のうえで高い品質を保証しなければなりません。・私たちは、デジタル技術を活用しながら、自社のビジネスプロセス(研究、開発、製薬、マーケティング、メディカルアフェアーズ、医薬安全性、知的財産・信頼性保証)における適正な分業・協業や、グローバルサプライチェーンマネジメントの強化、グローバル品質システムの維持・向上を図るとともに、生産性向上や在庫管理の最適化など、経済性の側面での対策も進めながら、有効性・安全性が確保され、品質が保証された製品の安定供給を阻害するリスクを回避・低減することに努めます。 ●コンプライアンスに反するリスク・私たちは、「企業倫理は業績に優先する」という考えのもと、法規制の遵守にとどまらず、社会的価値観や倫理観、公正さに基づく判断・行動を徹底します。そのために、ミッションステートメント(=企業理念)やグループ コード・オブ・コンダクト、その他社内規程/ガイドラインを制定しており、これに反する判断・行動を認めず、コンプライアンスに反するリスクは一切受け入れません。また、サプライチェーン全体におけるコンプライアンスを徹底するため、自グループ内のみならず、ビジネスパートナーに対しても、高い倫理観に基づく誠実な活動を求めます。 ●企業市民としての社会的責任に関するリスク・私たち企業は、地球環境や社会システムのうえで成り立っており、これらを維持・発展させることは、企業市民としての私たちの責任であると考えます。・私たちは、地域社会や国際社会が抱える課題に向き合い、中外製薬としてどのように貢献すべきかを考え、様々なステークホルダーと連携・協働しながら、事業活動のあらゆる場面において、環境保全や人権の尊重に努めることで、地球環境問題や社会的な差別・人権侵害の解消に貢献するとともに、医療・福祉を中心とした社会貢献活動に積極的に取り組むことで、企業市民としての役割・責任を果たせず、社会からの信頼を損なうリスクを低減することに努めます。 3.主要なリスク当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により重大な影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しております。当社グループはこれらリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針であります。なお、これらは当社グループにかかるあらゆるリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。また、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1)経営戦略に関連する潜在リスク(戦略リスク)① 技術・イノベーションについて当社グループは、ロシュとの戦略的アライアンスのもと、自社の強みであるサイエンス力と技術力をさらに強化することで、革新的な医薬品の創出に努めております。特にこれまでの低分子・抗体医薬では解決できなかったアンメットメディカルニーズ(有効な治療方法が見つかっていない疾病に対する治療薬への要望)を満たす中分子創薬技術の開発に注力するとともに、デジタル技術を活用し研究プロセスの効率化に積極的に取り組んでおります。しかしながら、サイエンス、創薬技術、デジタルという日進月歩の分野では、自社技術開発の遅れや競争優位性の高いソリューションの出現などにより、自社技術・製品の価値低下や開発計画の見直しなどのリスクがあります。また、当社グループは業務活動上様々な知的財産権を使用しており、それらは当社グループ所有のものであるか、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社グループの認識の範囲外で第三者から侵害を受けたり、第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。当社グループの業務に関連する重大な知的財産権を巡って係争が発生した場合、期待される収益の減少、製造販売・技術使用の停止や使用料の発生など戦略遂行に重大な影響を与える可能性があります。こうしたリスクに対しては、最先端のサイエンス・技術へのアクセスを怠らず、経営資源の選択と集中により自社技術の優位性を高めるとともに、外部連携の強化により多様性を高めることに努めております。さらに中分子医薬の開発にあたっては関連する社内組織(創薬・開発・製薬)の連携強化、知的財産権については知財戦略のさらなる強化を図ってまいります。当社グループはリスクアペタイトに基づき、リスクをとって積極果敢にイノベーション創出の機会を追求するとともに、職場環境や組織文化、人財育成などの面からもイノベーションを奨励する仕組みを強化し、イノベーション創出を妨げるリスクの低減に努めております。 ② 医療制度・薬事規制について当社グループは、アンメットメディカルニーズに応えるべく、ファーストインクラス(新規性・有用性が高く、これまでの治療体系を大幅に変えうる独創的な医薬品)、ベストインクラス(同じ分子を標的にするなど、同一カテゴリーの既存薬に対して明確な優位性を持つ医薬品)となりうる革新的な新薬の連続的な創製に注力しております。一方、国内外において高齢化の進展や医療費高騰などによる財政逼迫を背景とした薬剤費引き下げ政策の強化が進められています。さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う多額の財政出動により、各国が進める医療費抑制はさらに加速することが予想されます。特に日本においては2年に一度行われる薬価改定に加え、2021年から中間年改定がスタートし、全品目の約70%に及ぶ品目が薬価引き下げの対象となりました。こうした薬価引き下げ政策や後発品振興政策が拡大すると、これまで以上に収益の低下を招き、研究開発への投資を妨げるリスクがあります。 また、こうした政策により今後ますます「Value Based Healthcare(価値に基づく医療)」が進展し、患者さんにとって真に価値のあるソリューションだけが選ばれる傾向がより一層強まると考えております。引き続き、イノベーション追求により新たな価値の提供に取り組むとともに、収益構造の強化を図ってまいります。また、各国の制度・薬事規制改革の内容や環境動向を把握する海外インテリジェンス機能の強化に努めます。 ③ 市場・顧客について近年、競合品や後発品/バイオシミラー(バイオ後続品)の浸透加速に加え、再生医療、細胞/遺伝子治療、核酸医薬など新たな治療手段(モダリティ)の進展や、予防・診断・治療・予後まで一貫した価値提供が求められるようになっております。ITプラットフォーマーのヘルスケア産業参入によるデータ寡占等、ライフサイエンスやデジタル分野での新たな技術・脅威が台頭しており、ヘルスケア産業における競争環境は急激に変化しています。さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響を背景に、製薬企業における医薬品の情報提供体制、すなわち顧客タッチポイントのあり方も大きく変容しつつあります。このような状況におきまして、市場での地位や製品競争力が低下するリスク、あるいは顧客タッチポイントの急速な変化により、医薬品の情報提供体制の抜本的な見直しを迫られる可能性があります。こうしたリスクに対応するべく、当社グループでは連続的な新薬の創出と製品ラインアップの多様化に努めるとともに、遺伝子パネル検査によって一人ひとりの患者さんに最適な診断を行う個別化医療の高度化に取り組んでおります。また、新たな顧客エンゲージメントモデル、すなわち顧客のニーズに合わせて、リアル(対面)・リモート・デジタルを融合させたアプローチにより、迅速かつ的確に顧客に価値を提供する体制の確立を進めております。 ④ 事業基盤についてⅰ.ロシュとの戦略的提携当社グループはロシュとの戦略的提携により、日本市場におけるロシュの唯一の医薬品事業会社となり、また日本以外の世界市場(韓国・台湾除く)ではロシュに当社製品の第一選択権を付与し、多数の製品及びプロジェクトを同社との間で導入・導出しております。何らかの理由により戦略的提携における合意内容が変更された場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、ロシュの創薬・グローバルネットワークが不調に陥り、ロシュからの導入品による安定的な収益源が低下するリスクやロシュに導出した自社品のグローバル市場浸透の遅延や収益低下などのリスクがあります。当社グループとしてはイノベーションを追求し、革新的な医薬品を連続的に創出することを目指しており、引き続き、ロシュグループ全体の価値創造に対し貢献できるよう努めてまいります。 ⅱ.人事・組織当社は2020年に新たな人事制度を導入し、適所適財に基づく人財配置の徹底、タレントマネジメントの高度化、そして果敢なチャレンジを推奨する組織風土の醸成を図っております。また、データサイエンティストをはじめとするデジタル人財など、戦略遂行上の要となる高度専門人財の獲得・育成・充足に注力しております。一方、人財の育成や獲得の遅れ、目まぐるしい環境変化により求められる業務の質の変化による人財のミスマッチや不足、余剰等が発生するリスク、あるいは期待される組織文化が醸成されず、イノベーションの創出が阻害されるリスクなどが想定されます。こうしたリスクに対応するべく、戦略遂行上の要となる人財の要件を明確に定義するとともに、計画的な人財獲得・育成施策の強化に努めております。組織・人財への投資を強化し、環境動向を見極めた組織体制と戦略的な採用計画を実施してまいります。 ⅲ.デジタル基盤すべてのバリューチェーンで生産性の飛躍的向上を図るべくデジタル投資を加速する一方、デジタル技術が進展しない可能性や社内のデジタルケイパビリティ不足、デジタルコンプライアンスの理解不足等によりデジタルトランスフォーメーション(DX)の停滞やトラブルが発生する可能性があります。タイムリーにDX戦略を見直し、ケイパビリティの強化に努めるとともに、外部専門人財を積極的に活用してまいります。 ⅳ.収益構造製薬産業における技術の進歩は顕著であり、国内外製薬企業等との厳しい競争に直面する中、R&D費などの投資・コスト増加が収益構造に影響を及ぼす可能性があります。このため、デジタルを活用したプロセス改善と生産性の向上によるオペレーションコストの最小化に取り組むとともに、投資プロジェクトの見極めが重要と考えております。 (2)事業遂行におけるリスク(オペレーショナルリスク)① 品質・副作用について患者さんに価値の高い製品・サービスを安定的にお届けするにあたっては、何よりも製品の有効性や安全性、それらを担保する品質が重要であると考えます。当社グループでは、製品のライフサイクルにおける業務プロセスの妥当性の確認・評価を行い改善するとともに、グローバルITシステムの導入・運用によりデータの信頼性を確保しております。また、恒常的な品質確保に向けて、社内及び社外パートナーとの連携強化を重視し、品質について考え話し合う場を定期的に設けています。しかしながら、何らかの原因により製品品質に懸念が生じた場合には、販売中止・製品の回収や社会的信頼の喪失などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。医薬品・医療機器は各国規制当局の厳しい審査を受けて承認されておりますが、承認後も、当社グループでは、医薬品の安全監視活動を強化・徹底するとともに、「調査・副作用データベースツール(DB)」による患者さんの特性に応じた迅速な情報提供や、患者さんと医療関係者とのコミュニケーションを円滑にし、患者さんにより安心して治療を受けていただくための「服薬適正化支援アプリ」の運用、安全性専属スタッフである「セイフティエキスパート」を中心とした、医療関係者への安全性コンサルテーション・ネットワーク体制の構築など、適正使用に向けた安全性情報提供活動の強化を図っております。しかしながら、その特殊性から、使用にあたり、万全の安全対策を講じたとしても副作用等の健康被害を完全に防止することは困難であり、副作用、特に新たな重篤な副作用が発現した場合には、「使用上の注意」への記載を行うほか、販売中止・製品の回収等に至ることもあり、業績に重大な影響を与える可能性があります。 ② ITセキュリティ及び情報管理について業務上、各種ITシステムを利用しており、従業員・アウトソーシング企業の不注意または故意による行為や、サイバー攻撃等の外部要因によりシステム障害や社外提供サービスの停止、提供情報の改ざん等が生じた場合、事業活動の停止・遅延・計画の見直しや、突発的な対応・対策費用などが発生する可能性があります。また、万が一、研究開発等にかかる営業秘密や個人情報等が社外に流出した場合、競争優位性の喪失、社会的信頼の喪失、損害賠償などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループはこれらのリスクに備え、関連規程を整備し、従業員に対する教育・訓練を定期的に実施するとともに、システムの堅牢性・可用性の強化、サイバー攻撃・ウイルス感染の検知機能・監視体制や情報セキュリティインシデント対応体制の強化を図っております。また、これらの対策状況をグループ横断的に評価し強化するためのセキュリティマネジメント体制を構築し、継続的なリスクの低減に努めております。 ③ 大規模災害等による影響について地震、台風、洪水等の自然災害、火災等の事故により、当社グループの事業所・営業所及び取引先の建物・設備等が深刻な被害を受けた場合、または新型インフルエンザ等のパンデミックの発生により、事業活動が制限された場合には、医薬品の供給停止や設備修復などの費用計上の発生、新製品の浸透遅延、それらによる収益の低下など、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループは、これらのリスクに備え、損害保険の加入や、事業継続計画(BCP)の策定・訓練の実施、耐震対策、安全在庫の確保など、従業員の安全と医薬品の安定供給のための体制を整備し、リスクの低減に努めております。 ④ 人権について職場におけるハラスメントや労働安全衛生を含む人権問題への対応遅延が生じた場合、従業員の健康やメンタルヘルスの悪化、離職率の増加など人財力の低下、社会的信頼の喪失により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これら人権問題に対し、役員、従業員に対する継続的な人権研修の実施や、ハラスメントに関する相談窓口の設置、また健康経営の一環として安全衛生活動に取り組んでいます。サプライヤーに対しても人権尊重に対する理解を求め、協力して人権問題に関する課題解決に努めております。 ⑤ サプライチェーンについて自然災害、事故、パンデミックの発生等により当社の原材料調達先や外部製造委託先などのサプライヤーに被害や事業活動の制限が生じた場合、また、サプライチェーンにおけるコンプライアンス違反や環境問題などへの対応が遅延した場合、原材料の確保や生産の継続が困難となる可能性があり、社会的信頼の喪失や売上・シェアの低下により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらサプライチェーンに係るリスクに備え、損害保険の加入や、事業継続計画(BCP)の策定、安全在庫の確保、サプライヤーとの情報共有体制の構築など、医薬品の安定供給のための体制を整備しております。また、サプライチェーンにおけるコンプライアンスや環境問題など当社グループだけでは解決できない課題に関し、サプライヤーと協力して課題解決に努めております。 ⑥ 地球環境問題について環境関連法規等の遵守はもとより、さらに高い自主基準を設定してその達成に向けて努めており、今後も強化と充実を図っていきます。しかしながら、万が一、有害物質による予期せぬ汚染やそれに伴う危害が顕在化した場合、対策費用や損害賠償責任を負うなどにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。気候変動については、地球環境保全のための重大な課題の一つと考え、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでおります。その一環として、エネルギー消費量削減に加え、2025年までに温室効果ガスを排出しないサステナブル電力比率100%を目指しております。しかしながら、これら気候変動に対する技術・設備対応の遅れが発覚した場合、設備投資計画の見直し、追加的な費用計上が生じる可能性があります。また、将来における環境関連法規制の強化により、対策費用の増加や当社グループの研究、開発、製造、その他の事業活動が制限される可能性があります。 なお、当社グループは、透明性・信頼性の高い環境情報を開示するため、毎年、環境パフォーマンスデータの第三者保証を取得しております。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」のフレームワークに基づき、気候変動が当社へもたらすリスクと機会を織り込んだ定性評価及びシナリオ分析を実施し、長期的に大規模な事業転換や投資を必要とする重大な気候関連リスクは特定されませんでした。今後も継続的に分析・評価を行い、プロアクティブな環境課題の解決に取り組んでいきます。 ⑦ 新型コロナウイルス感染拡大の影響について当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大を受け、テレワークなど柔軟性の高い働き方と生産性の維持・向上を実現する「新しい働き方」の定着に向けた取り組みを進めております。また、患者さんに対する医薬品の安定供給という社会的責務を担っており、緊急事態宣言発令後も、必要な医薬品の提供体制を維持することを基本方針としております。引き続き、従業員及び事業関係者への感染防止策に取り組みながら、医薬品の安定供給に努めてまいりますが、今後、さらなる感染拡大等により事業活動が制限された場合、サプライチェーンの停止・遅延により製品供給に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、研究・臨床試験の進行や、MR活動の制限による新製品等の浸透に遅延が生じる可能性があります。
FY2019|3,793 文字
2【事業等のリスク】当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により重大な影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループはこれらリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針であります。なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1)経営戦略に関連する潜在リスク① 新製品の研究開発について当社グループは、患者中心の高度で持続可能な医療を実現するヘルスケア産業のトップイノベーターとなることを目指し、国内外にわたって積極的な研究開発活動を展開しております。独自のサイエンス力と技術力という強みを活かし、がん領域を中心とする充実した開発パイプラインを有しておりますが、近年の研究開発競争の激化による新薬創出の難易度上昇や研究開発費の高騰等の理由により、そのすべてについて今後順調に開発が進み発売できるとは限らず、途中で開発を断念しなければならない事態も予想されます。そのような事態に陥った場合、開発品によっては業績に重大な影響を与える可能性があります。 ② 製品を取りまく環境の変化について近年の製薬産業における技術進歩は顕著であり、当社グループは国内外の製薬企業との厳しい競争に直面しております。また、競合品や後発品/バイオシミラー(バイオ後続品)の浸透加速に加え、再生医療、細胞/遺伝子治療、核酸医薬、デジタルセラピーなど、従来の医薬の範囲を超えた治療手段(モダリティ)の進展や、ITプラットフォーマーのヘルスケア産業参入によるデータ寡占等、ライフサイエンスやデジタル分野での新たな技術・脅威が台頭しており、ヘルスケア産業における競争環境は急激に変化しています。このような状況におきまして、当社医薬品や開発候補品が対象とする疾患等における治療に大きな変化をもたらす新たな技術や治療手段が登場するなど、当社グループ製品を取りまく環境が想定を超えて大きく変化した場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。 ③ 医療制度改革について国内外における高齢化の進展や医療費高騰などによる財政逼迫を背景とした薬剤費引き下げ政策の強化が進められています。特に、日本では「全世代型社会保障検討会議」で医療等の給付と負担についての議論が展開されるなど、医療費抑制の圧力は引き続き高まっております。また、今後は益々「Value Based Healthcare(価値に基づく医療)」が進展し、患者さんにとって真に価値あるソリューションだけが選ばれる傾向が一層強まると考えられます。各国の制度改革の内容や環境動向によっては、薬価引き下げや医薬品へのアクセス制限による収益の低下、医療経済性を含めた価値を証明するためのコストの増加など、業績に重大な影響を与える可能性があります。 ④ ロシュとの戦略的提携について当社グループはロシュとの戦略的提携により、日本市場におけるロシュの唯一の医薬品事業会社となり、また日本以外の世界市場(韓国・台湾除く)ではロシュに当社製品の第一選択権を付与し、多数の製品及びプロジェクトを同社との間で導入・導出しております。なんらかの理由により戦略的提携における合意内容が変更された場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。 (2)事業遂行におけるリスク① 副作用について医薬品・医療機器は各国規制当局の厳しい審査を受けて承認されていますが、その特殊性から、使用にあたり、万全の安全対策を講じたとしても副作用等の健康被害を完全に防止することは困難です。当社グループは医薬品の安全監視活動を行っておりますが、副作用、特に新たな重篤な副作用が発現した場合には、「使用上の注意」への記載を行うほか、販売中止・製品の回収等に至ることもあり、業績に重大な影響を与える可能性があります。 ② 知的財産権について当社グループは業務活動上様々な知的財産権を使用しており、それらは当社グループ所有のものであるか、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社グループの認識の範囲外で第三者の知的財産権を侵害する可能性があり、当社グループの業務に関連する重大な知的財産権を巡っての係争が発生した場合、製造販売の停止や対策費用の発生などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。 ③ 国際的な事業活動について当社グループは国外における医薬品の販売や研究開発活動、医薬品バルクの輸出入など国際的な事業を積極的に行っております。このような国際的な事業活動においては、法令や規制の変更、政情不安、経済動向の不確実性、現地における労使関係、税制の変更や解釈の多様性、為替相場の変動、商習慣の相違等に直面する場合があり、これらに伴うコンプライアンスに関する問題の発生を含め、業績に重大な影響を与える可能性があります。 ④ ITセキュリティ及び情報管理について業務上、各種ITシステムを利用しており、従業員・アウトソーシング企業の不注意または故意による行為、サイバー攻撃等の外部要因によりシステム障害が生じた場合、業務が阻害される可能性があります。また、万が一、個人情報や知的財産権に関わる重大な機密情報が社外に流出した場合、損害賠償や信用の失墜、競争優位性の喪失などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループはこれらのリスクに備え、関連規程の整備と周知、従業員に対するセキュリティ教育、サイバー攻撃及びシステム障害に対する保全(予防・監視及び対処・復旧準備)等を講じるとともに、これら対策状況を当社グループ横断的に評価し強化する年次プロセスを継続し、リスクの低減に努めております。 ⑤ 大規模災害等による影響について地震、台風等の自然災害、火災等の事故により、当社グループの事業所・営業所及び取引先が深刻な被害を受けた場合や、新型インフルエンザ等のパンデミックの発生により、従業員の出社率が大幅に低下した場合、事業活動が停滞し、また損害を被った設備等の修復のため多額の費用が発生するなど、業績に重大な影響を与える可能性があります。当社グループは、これら災害等に係るリスクに備え、損害保険の加入や、事業継続計画(BCP)の策定・訓練の実施、耐震対策、安全在庫の確保など、従業員の安全と医薬品の安定供給のための体制を整備し、リスクの低減に努めております。 ⑥ 訴訟等について事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関して訴訟や規制当局による調査の対象となる場合があり、その動向によっては、製造販売の停止や対策費用の発生などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。 ⑦ 人権について職場におけるハラスメントや労働環境衛生を含む人権問題への対応遅延が生じた場合、従業員の健康やメンタルヘルスの悪化、離職率の増加など人財力の低下、社会的信頼の喪失により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これら人権問題に対し、役員、従業員に対する人権研修、ハラスメントに関する相談窓口を設置し、また健康経営の一環として安全衛生活動に取り組んでいます。サプライヤーに対しても人権尊重に対する理解を求め、協力して人権問題に関する課題解決に努めております。 ⑧ サプライチェーンについて大規模地震や気候変動に伴う台風・豪雨などの自然災害により当社の原材料調達先や外部製造委託先などのサプライヤーに被害が生じた場合、また、サプライチェーンにおけるコンプライアンスや環境問題などの対応が遅延した場合、原材料の確保や生産の継続が困難となる可能性があり、社会的信頼の喪失や売上・シェアの低下により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらサプライチェーンに係るリスクに備え、損害保険の加入や、事業継続計画(BCP)の策定、安全在庫の確保、サプライヤーとの情報共有体制の構築など、医薬品の安定供給のための体制を整備しています。また、サプライチェーンにおけるコンプライアンスや環境問題など当社グループだけでは解決できない課題に関し、サプライヤーと協力して課題解決に努めております。 ⑨ 環境汚染及び地球環境について関係法令等の遵守はもとより、さらに高い自主基準を設定してその達成に向けて努めており、今後も強化と充実を図っていきます。しかしながら、万が一、有害物質による予期せぬ汚染やそれに伴う危害が顕在化した場合、対策費用や損害賠償責任を負うなどにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。気候変動については地球環境保全のための重大な課題の一つと考え、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。しかしながら、地球温暖化の進行がもたらす気候変動による自然災害等で物流網や製造施設が被害を受けた場合、製品供給の休止もしくは著しい遅滞などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、将来における環境関連法規制の強化により、当社グループの研究、開発、製造、その他の事業活動が制限される可能性があります。
FY2018|2,239 文字
2【事業等のリスク】当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により重要な影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループはこれらリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針であります。なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1)新製品の研究開発について当社グループは、独自のサイエンス力と技術力を核として、患者中心の高度で持続可能な医療を実現する、ヘルスケア産業のトップイノベーターとなることを目指して、国内外にわたって積極的な研究開発活動を展開しております。がん領域を中心とする充実した開発パイプラインを有しておりますが、そのすべてについて今後順調に開発が進み発売できるとは限らず、途中で開発を断念しなければならない事態も予想されます。そのような事態に陥った場合、開発品によっては当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (2)製品を取りまく環境の変化について近年の製薬産業における技術進歩は顕著であり、当社グループは国内外の製薬企業との厳しい競争に直面しております。このような状況におきまして、競合品や後発品の発売及び当社グループが締結した販売・技術導出入に関わる契約の変更等により当社グループ製品を取りまく環境が変化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (3)副作用について医薬品は各国規制当局の厳しい審査を受けて承認されていますが、その特殊性から、使用にあたり、万全の安全対策を講じたとしても副作用を完全に防止することは困難です。当社グループの医薬品の使用に関し、副作用、特に新たな重篤な副作用が発現した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (4)医療制度改革について国内においては、急速な少子高齢化が進むなか医療保険制度改革が実行され、その一環として診療報酬体系の見直し、薬価制度改革などの医療費抑制策が実施されております。海外においても、先進国を中心として薬剤費の引き下げの圧力が高まっています。これら各国の薬剤費抑制策の内容によっては当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (5)知的財産権について当社グループは業務活動上様々な知的財産権を使用しており、それらは当社グループ所有のものであるか、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社グループの認識の範囲外で第三者の知的財産権を侵害する可能性があり、また当社グループの業務に関連する重大な知的財産権を巡っての係争が発生した場合には当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (6)ロシュとの戦略的提携について当社グループはロシュとの戦略的提携により、日本市場におけるロシュの唯一の医薬品事業会社となり、また日本以外の世界市場(韓国・台湾除く)ではロシュに当社製品の第一選択権を付与し、多数の製品及びプロジェクトを同社との間で導入・導出しております。なんらかの理由により戦略的提携における合意内容が変更された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (7)国際的な事業活動について当社グループは国外における医薬品の販売や研究開発活動、医薬品バルクの輸出入など国際的な事業を積極的に行っております。このような国際的な事業活動においては、法令や規制の変更、政情不安、経済動向の不確実性、現地における労使関係、税制の変更や解釈の多様性、為替相場の変動、商習慣の相違等に直面する場合があり、これらに伴うコンプライアンスに関する問題の発生を含め、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (8)ITセキュリティ及び情報管理について業務上、各種ITシステムを利用しており、従業員・アウトソーシング企業の不注意または故意による行為、システム障害やサイバー攻撃等の外部要因により、業務が阻害される可能性があります。また、万が一の事故等により機密情報が社外に流出した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (9)大規模災害等による影響について地震、台風などの自然災害、火災などの事故などが発生した場合、当社グループの事業所・営業所及び取引先が大規模な被害を受け事業活動が停滞し、また損害を被った設備などの修復のため多額の費用が発生するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (10)訴訟等について事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関して訴訟を提起される場合があり、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (11)環境問題について環境問題に関連して関係法令等の順守はもとより、さらに高い自主基準を設定してその達成に向けて努めております。事業活動を行う過程において万が一の事故等により関係法令等の違反が生じた場合、関連費用等のため当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
FY2017|2,210 文字
4【事業等のリスク】当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により重要な影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループはこれらリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針であります。なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1)新製品の研究開発について当社グループは革新的新薬を継続的に提供する、日本のトップ製薬企業を目指しており、国内外にわたって積極的な研究開発活動を展開しております。がん領域を中心とする充実した開発パイプラインを有しておりますが、そのすべてについて今後順調に開発が進み発売できるとは限らず、途中で開発を断念しなければならない事態も予想されます。そのような事態に陥った場合、開発品によっては当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (2)製品を取りまく環境の変化について近年の製薬産業における技術進歩は顕著であり、当社グループは国内外の製薬企業との厳しい競争に直面しております。このような状況におきまして、競合品や後発品の発売及び当社グループが締結した販売・技術導出入に関わる契約の変更等により当社グループ製品を取りまく環境が変化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (3)副作用について医薬品は各国規制当局の厳しい審査を受けて承認されていますが、その特殊性から、使用にあたり、万全の安全対策を講じたとしても副作用を完全に防止することは困難です。当社グループの医薬品の使用に関し、副作用、特に新たな重篤な副作用が発現した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (4)医療制度改革について国内においては、急速な少子高齢化が進むなか医療保険制度改革が実行され、その一環として診療報酬体系の見直し、薬価制度改革などの議論が続けられ医療費抑制策が実施されております。海外においても、先進国を中心として薬剤費の引き下げの圧力が高まっています。これら各国の薬剤費抑制策の方向によっては当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (5)知的財産権について当社グループは業務活動上様々な知的財産権を使用しており、それらは当社グループ所有のものであるか、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社グループの認識の範囲外で第三者の知的財産権を侵害する可能性があり、また当社グループの業務に関連する重大な知的財産権を巡っての係争が発生した場合には当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (6)ロシュとの戦略的提携について当社グループはロシュとの戦略的提携により、日本市場におけるロシュの唯一の医薬品事業会社となり、また日本以外の世界市場(韓国・台湾除く)ではロシュに当社製品の第一選択権を付与し、多数の製品及びプロジェクトを同社との間で導入・導出しております。なんらかの理由により戦略的提携における合意内容が変更された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (7)国際的な事業活動について当社グループは国外における医薬品の販売や研究開発活動、医薬品バルクの輸出入など国際的な事業を積極的に行っております。このような国際的な事業活動においては、法令や規制の変更、政情不安、経済動向の不確実性、現地における労使関係、税制の変更や解釈の多様性、為替相場の変動、商習慣の相違等に直面する場合があり、これらに伴うコンプライアンスに関する問題の発生を含め、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (8)ITセキュリティ及び情報管理について業務上、各種ITシステムを利用しており、従業員・アウトソーシング企業の不注意または故意による行為、システム障害やサイバー攻撃等の外部要因により、業務が阻害される可能性があります。また、万が一の事故等により機密情報が社外に流出した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (9)大規模災害等による影響について地震、台風などの自然災害、火災などの事故などが発生した場合、当社グループの事業所・営業所及び取引先が大規模な被害を受け事業活動が停滞し、また損害を被った設備などの修復のため多額の費用が発生するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (10)訴訟等について事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関して訴訟を提起される場合があり、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (11)環境問題について環境問題に関連して関係法令等の順守はもとより、さらに高い自主基準を設定してその達成に向けて努めております。事業活動を行う過程において万が一の事故等により関係法令等の違反が生じた場合、関連費用等のため当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
FY2016|2,189 文字
4【事業等のリスク】 当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により重要な影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループはこれらリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針であります。 なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。 (1)新製品の研究開発について当社グループは革新的新薬を継続的に提供する、日本のトップ製薬企業を目指しており、国内外にわたって積極的な研究開発活動を展開しております。がん領域を中心とする充実した開発パイプラインを有しておりますが、そのすべてについて今後順調に開発が進み発売できるとは限らず、途中で開発を断念しなければならない事態も予想されます。そのような事態に陥った場合、開発品によっては当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (2)製品を取りまく環境の変化について近年の製薬産業における技術進歩は顕著であり、当社グループは国内外の製薬企業との厳しい競争に直面しております。このような状況におきまして、競合品や後発品の発売及び当社グループが締結した販売・技術導出入に関わる契約の変更等により当社グループ製品を取りまく環境が変化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (3)副作用について医薬品は各国規制当局の厳しい審査を受けて承認されていますが、その特殊性から、使用にあたり、万全の安全対策を講じたとしても副作用を完全に防止することは困難です。当社グループの医薬品の使用に関し、副作用、特に新たな重篤な副作用が発現した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (4)医療制度改革について国内においては、急速な少子高齢化が進むなか医療保険制度改革が実行され、その一環として診療報酬体系の見直し、薬価制度改革などの議論が続けられ医療費抑制策が実施されております。海外においても、先進国を中心として薬剤費の引き下げの圧力が高まっています。これら各国の薬剤費抑制策の方向によっては当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (5)知的財産権について当社グループは業務活動上様々な知的財産権を使用しており、それらは当社グループ所有のものであるか、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社グループの認識の範囲外で第三者の知的財産権を侵害する可能性があり、また当社グループの業務に関連する重大な知的財産権を巡っての係争が発生した場合には当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (6)ロシュとの戦略的提携について当社グループはロシュとの戦略的提携により、日本市場におけるロシュの唯一の医薬品事業会社となり、また日本以外の世界市場(韓国・台湾除く)ではロシュに当社製品の第一選択権を付与し、多数の製品及びプロジェクトを同社との間で導入・導出しております。なんらかの理由により戦略的提携における合意内容が変更された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (7)国際的な事業活動について当社グループは国外における医薬品の販売や研究開発活動、医薬品バルクの輸出入など国際的な事業を積極的に行っております。このような国際的な事業活動においては、法令や規制の変更、政情不安、経済動向の不確実性、現地における労使関係、税制の変更や解釈の多様性、為替相場の変動、商習慣の相違等に直面する場合があり、これらに伴うコンプライアンスに関する問題の発生を含め、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (8)ITセキュリティ及び情報管理について業務上、各種ITシステムを駆使するため、システムの障害やコンピューターウイルス等の外部要因により、業務が阻害される可能性があります。また、万が一の事故等により機密情報が社外に流出した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (9)大規模災害等による影響について地震、台風などの自然災害、火災などの事故などが発生した場合、当社グループの事業所・営業所及び取引先が大規模な被害を受け事業活動が停滞し、また損害を被った設備などの修復のため多額の費用が発生するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (10)訴訟等について事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関して訴訟を提起される場合があり、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。 (11)環境問題について環境問題に関連して関係法令等の順守はもとより、さらに高い自主基準を設定してその達成に向けて努めております。事業活動を行う過程において万が一の事故等により関係法令等の違反が生じた場合、関連費用等のため当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。