研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-03 | - | 594 |
| 2024-03 | - | 669 |
| 2023-03 | - | 625 |
| 2022-03 | - | 2,008 |
| 2021-03 | - | 603 |
研究開発活動(本文)
FY2025|5,494 文字
6【研究開発活動】(1) 研究開発活動帝人グループは、持続可能な社会の実現に向けて、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。具体的には、モビリティ、インフラ&インダストリアル領域において「地球の健康を優先し、環境を守り、循環型社会を支える会社」となること、ヘルスケア領域において、希少疾患・難病などの疾病領域を中心として「より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社」となることを目指して社会に価値を提供していきます。 帝人グループ内の研究開発体制については、海外13ヵ所、国内12ヵ所の研究開発拠点からなるグローバルなネットワークを活かし、グループ各社の連携を強化して組織を活性化するとともに、2023年4月からは、将来投資の領域となる新規事業関連、事業間の共創によるイノベーションの創出を全社横断的に実施するために、各事業統轄下で育成してきた新事業及びコーポレートビジネスインキュベーション部門をコーポレート新事業本部として統合し、多様な人財が能力を発揮してイノベーション創出を加速する仕組みを取り入れています。また、経営戦略に基づく技術戦略の立案、実行推進に加え、帝人グループ全体の研究開発に関する基本方針・戦略の立案、実行推進を目的に、2024年10月に技術戦略管掌(CTO)を設置し、事業間の共創によるシナジー創出強化を目指し、技術戦略を実現するプロジェクトに取り組んでいます。 さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)についても、IoTモニタリング技術、機械学習やAI技術、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)による研究開発力の強化を図ると同時に、スマートプラントの推進などによる製造現場の生産性向上など、多様な事業、分野において積極的に取り組んでいます。こうしたDX活動を加速するために、2023年4月にDX推進体制を強化し、デジタル技術やデータ活用の全社戦略策定の他、社内外との連携支援や情報発信、さらには“自律的DX”実現のための人財育成を実施しています。また、2025年4月にはデジタル・情報システム管掌(CDO)を新たに設置し、グループとしてのDXの基盤整備・強化をさらに進めていきます。 このような研究開発活動を通じ、帝人グループは既存事業の垣根を越えた重要産業セクター(モビリティ、インフラ&インダストリアル及びヘルスケア領域)を中心とした成長を目指すとともに、社会課題の解決に取り組んでいきます。 なお、当連結会計年度の研究開発費は309億円(前期比18億円減)でした。報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。<マテリアル事業領域>アラミド事業では、その高い機能性を活かして自動車、防弾・防護衣料、航空用コンテナ、ロープやケーブル補強など幅広い分野にアラミド繊維が使用されており、オートモーティブ、ライフプロテクション、プロテクティブアパレル、エアロスペース、リニューアブルエナジーの5つを主力テーマとして、アラミド繊維製造技術及び新商品の開発に取り組んでいます。パラ系アラミド繊維である「トワロン」「テクノーラ」の海洋ロープ用途開発では、蘭FibreMax B.V.社とともにJust Transition Fund Groningen-Emmen(JTF)から4百万ユーロの助成金を得て浮体式洋上風力発電を推進しています。リサイクル原料を用いた生産機でのリサイクルトワロンの試作に成功し、2024年3月にはタイヤ業界における国際展示会「Tire Technology Expo 2024」において、「Materials Innovation of the Year」を受賞するなど、その活動は広く認知されてきています。2030年までにトワロンリサイクル率25%を目指し長期的な取り組みを継続しています。 樹脂事業では、今後成長が見込まれる次世代情報端末、自動車先進化、カーボンニュートラルに対応した高機能材料の研究開発を行っています。ポリカーボネート樹脂では、高度な分子設計技術と重合制御技術を活かして、多様な屈折率要求に対応するスマートフォンカメラレンズ向け樹脂の開発を進めました。コンパウンド製品では、持続可能な社会の実現に向けてリサイクル技術を活用した環境対応材料の開発を進めています。加工製品では多様な用途に適用可能な成形加工用加飾シート、車載ディスプレイ大型化に対応する高機能シート・フィルムの開発を行っています。また、これらの樹脂材料開発全般において、マテリアルズ・インフォマティクスを活用することで研究の加速に役立っています。 炭素繊維事業では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるとともに、環境規制の高まりに伴う低燃費化の要請に応え、「軽くて強い」高機能素材の拡大を図っています。特に未来の最新鋭航空機に向けたソリューションとして、炭素繊維原糸から織物基材、熱可塑性及び熱硬化性樹脂を使用した中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでいます。また、今後の需要拡大が期待される圧力容器用途に高い適性を有する炭素繊維を上市し、航空機用途だけでなく幅広い潜在ニーズに応える製品の開発を行っています。環境負荷低減へのニーズに対しては、環境配慮型の炭素繊維製品ブランド「Tenax Next(テナックス ネクスト)」を立ち上げ、持続可能な国際的認証の一つである ISCC PLUS 認証に基づき環境配慮型の原料を用いた「テナックス」等の生産と販売を行っています。そのほか、炭素繊維リサイクル技術の開発、リサイクル炭素繊維を使用した製品の生産・供給体制の構築に向けた取り組みを進めており、革新的な高性能材料とソリューションを提供していきます。 複合成形材料事業では、サステナブルな社会の実現に貢献すべく、素材から加工、成形、リサイクルに至るバリューチェーン全体のライフサイクルにおけるCO₂排出量削減に寄与する技術開発や様々な取り組みを続けています。具体的な例として、リサイクル可能な複合成形材料の開発、複合成形材料を用いた製品の性能向上、耐久性向上や長寿命化に取り組んでおり、自動車業界を中心に幅広い分野で、サステナビリティに貢献するソリューションを提供していきます。更にはこれらの生産に際し、自動化及びICT技術の導入を進めることで、複合成形材料や製品の性能安定性、品質を向上させ、従来は金属などの既存材料でしか製造出来ないと考えられていた構造部材や機能製品での採用実績を増やし、同時に生産効率やコスト効率を高めることで、顧客への提案力を強化していきます。 当セグメントに係る研究開発費は113億円です。 <繊維・製品事業>繊維・製品事業では、環境配慮型の素材開発や事業活動を推進しました。一部にリサイクルポリエステルを使用し、「すだれ」の構造を再現することで高い通気性と紫外線遮蔽性を両立する高機能快適素材「爽多(そうた)」や、PFAS(有機フッ素化合物)フリーの撥水機能を付与したリサイクルポリエステル100%からなり、接触冷感機能と汗のべたつき防止機能を両立する次世代型快適素材「COOLSHELL CARAT」など、環境に配慮した機能性テキスタイルを開発しました。さらに、「繊維 to 繊維」の社会実装を目指し、東京都庁や国立競技場で古着回収の実証試験を実施しました。循環型社会の実現に向けた事業戦略をさらに強化し、取り組みを拡大していきます。 当セグメントに係る研究開発費は22億円です。 <ヘルスケア事業>「より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社」となるという帝人グループの長期ビジョンに基づき、ヘルスケア事業においては、希少疾患や難病領域に注力して、新たな治療選択肢の提供につながる医薬品、医療機器、そして付加価値サービスを生み出すための積極的な研究開発を行っています。今後は、在宅医療で培った事業基盤と医薬品、医療機器を組み合わせて、誰もが住み慣れた自宅で安心して治療を継続できる新しい価値提供を推進し、患者さんが必要とする治療(医薬品・医療機器)の普及に貢献することを目指します。 医薬品分野では、2023年11月にAscendis Pharma, A/S.から日本国内での製造販売ライセンスを取得した「パロペグテリパラチド(開発コード:ACP-014)」について、2024年12月に「副甲状腺機能低下症」を効能・効果として製造販売承認を申請しました。また、「ゼオマイン 筋注用50単位、100単位、200単位」(*)の適応拡大として、2024年7月に「慢性流涎症」を効能・効果として製造販売承認を申請しました。加えて、「ゼオマイン」の適応拡大に向けて、現在痙性斜頸患者及び眼瞼痙攣患者を対象とする国内第Ⅲ相臨床試験を実施中であり、2024年12月には小児の痙縮患者を対象とする国内第Ⅲ相臨床試験に着手しました。また、ナルコレプシー治療を対象とした自社創生候補化合物について、2024年3月に全世界における独占的開発・製造・販売権をフランスの製薬企業であるBioprojet社に供与するライセンス契約を締結しました。帝人ファーマ(株)は当該契約に基づいて必要な技術移管・支援等に対応し、ライセンシーにおいて臨床試験開始に向けた活動が進捗しております。さらに、2024年4月、当社はアクセリード(株)との共同出資により、Axcelead Tokyo West Partners(株)(以下、「ATWP」)を設立しました。この新会社は、帝人ファーマ(株)から移管した創薬研究の一部機能と経営資源、アクセリード(株)の創薬支援事業の専門知識を活かして、創薬研究支援サービスを提供する事業を展開します。帝人ファーマ(株)は、ATWPとの連携によって、創薬研究の効率化と、より幅広い研究分野の強化を目指すとともに、国内外の創薬プレイヤーとの協働による創薬研究の強化を図ります。これまで欧米の大手製薬企業等に研究成果を導出してきた能力や実績を活かし、研究開発機能が独自に収益を生む、製薬企業としての新たなビジネスモデルの確立を図っていきます。* 上肢・下肢痙縮治療剤 ゼオマイン®/Xeomin®は、Merz Pharma GmbH &Co, KGaA(独)の登録商標です。 在宅医療機器分野では、呼吸検知のための呼吸センサを追加した酸素濃縮装置「ハイサンソi」の一変認証を2024年7月に取得しました。引き続き、モニタリング機能向上のための研究を進めるとともに「HOT見守り番Web」などのシステムとのデータ連携を強化し、質の高いサービス提供を可能とするよう研究開発を進めていきます。なお、2020年4月に出資した米国ヘルスケアベンチャーキャピタルファンドであるMedtech Convergence Fundでは米国を中心に医療機器のスタートアップ企業に対する投資を通じて画期的なヘルスケア領域の新規製品・サービスの獲得を目指します。 当セグメントに係る研究開発費は114億円です。 上記セグメントに属さない研究開発活動として、再生医療・埋込医療機器分野では、医療・健康サポートを通じた、人々の健康維持・健康寿命の延伸に貢献する素材の開発に取り組んでおり、先天性心疾患への外科治療における新たな選択肢のために、大阪医科薬科大学、福井経編興業(株)とともに共同開発を進めてきた心・血管修復パッチ「シンフォリウム」について、2024年3月の保険適用を経て2024年6月から帝人メディカルテクノロジー(株)が販売を開始しています。また、再生医療CDMO(開発製造受託機関)需要拡大を見据え、帝人リジェネット(株)は2024年2月に稼働開始した「柏の葉ファシリティ(所在地:千葉県柏市)」で、2024年7月に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づく細胞培養加工施設として許可を取得しました。さらに、2023年8月に稼働開始した「岩国ファクトリー(所在地:山口県岩国市)」では、2024年11月に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」に基づく再生医療等製品製造業(一般)の許可を取得しました。「岩国ファクトリー」と「柏の葉ファシリティ」はシームレスに連携し、治験製品の製法開発からスケールアップ、商用生産までの一貫した製造体制を目指します。電池部材・メンブレン分野では、高機能素材の活用で、安全性・強靭性を備えた社会の構築に貢献する素材として、リチウムイオン二次電池(LIB)の性能を飛躍的に向上させることのできる革新的セパレータの製造販売及び新製品の開発に取り組んでいます。エンドユーザーや基材メーカーとの連携による次世代製品の開発を進めるとともに、取得した知的財産権のライセンスビジネスも実現しています。環境ソリューション分野では注力領域をエネルギー転換・サーキュラーエコノミー・自然再生と特定し、新たな研究・開発を推進します。サーキュラーエコノミーに関するプロジェクトでは社内外との連携を通じ、将来に向けた社会課題の解決にあたります。 この他、事業間の協創によるイノベーションの創出に取り組んでいるほか、エンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。 これに係る研究開発費は60億円です。
FY2024|5,305 文字
6【研究開発活動】(1) 研究開発活動帝人グループは、持続可能な社会の実現に向けて、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。具体的には、モビリティ、インフラ&インダストリアル領域において「地球の健康を優先し、環境を守り、循環型社会を支える会社」となること、ヘルスケア領域において、希少疾患・難病などの疾病領域を中心として「より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社」となることを目指して社会に価値を提供していきます。 帝人グループは未来を想像し、未来の社会を支える製品・サービスの創造に挑戦し続けています。テクノロジーの進化により、社会がこれまでにない速さで変容していく中、イノベーション創出に向け、研究開発においては、技術の連携・活用と融合・複合化により、グループとしての総合力・機動力を発揮することを推進しています。加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)についても、IoTモニタリング技術、機械学習やAI技術、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)による研究開発力の強化を図ると同時に、スマートプラントの推進などによる製造現場の生産性向上など、多様な事業、分野において積極的に取り組んでいます。こうしたDX活動を加速するために、2023年4月にDX推進体制を強化し、デジタル技術やデータ活用の全社戦略策定の他、社内外との連携支援や情報発信、さらには”自律的DX”実現のための人財育成を実施しています。 研究開発体制については、国内12ヵ所、海外13ヵ所の拠点からなるグローバルなネットワークを有しており、グループ各社の連携を強化して組織を活性化するとともに、2023年4月からは、将来投資の領域となる新規事業関連、事業間の協創によるイノベーションの創出を全社横断的に実施するために、各事業統轄下で育成してきた新事業及びコーポレートビジネスインキュベーション部門をコーポレート新事業本部として統合し、多様な人財が能力を発揮してイノベーション創出を加速する仕組みを取り入れています。 なお、当連結会計年度の研究開発費は426億円(前期比106億円増)でした。報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。<マテリアル事業領域>アラミド事業分野では、その高い機能性を活かして自動車、航空用コンテナ、消防服、ロープやケーブル補強など幅広い分野に使用されており、ライフプロテクション、プロテクティブアパレル、オートモーティブ、エアロスペース、インダストリーの5つを主力テーマとして、アラミド繊維製造技術及び新商品の開発に取り組んでいます。パラ系アラミド繊維である「トワロン」「テクノーラ」の海洋ロープ用途開発では、蘭FibreMax B.V.社とともにJust Transition Fund Groningen-Emmen(JTF)から4百万ユーロの助成金を得て浮体式洋上風力発電を推進しています。2023年度はリサイクル原料を用いた生産機でのリサイクルトワロンの試作に成功しており、2030年までにトワロンリサイクル率25%を目指し長期的な取り組みを継続しています。また、メタ系アラミド繊維である「コーネックス」においては、最新技術への投資により、現在ではパントンカラーの約75%を再現できるようになりました。 樹脂事業分野では、今後成長が見込まれる次世代情報端末、自動車先進化、カーボンニュートラルに対応した高機能材料の研究開発を行っています。ポリカーボネート樹脂では、高度な分子設計技術と重合制御技術を活かして、多様な屈折率要求に対応するスマートフォンカメラレンズ向け樹脂の開発を進めました。コンパウンド製品では、持続可能な社会の実現に向けてリサイクル技術を活用した環境対応材料の開発を進めています。加工製品では多様な用途に適用可能な成形加工用加飾シート、車載ディスプレイ大型化に対応する高機能シート・フィルムの開発を行っています。また、これらの樹脂材料開発全般において、マテリアルズ・インフォマティクスを活用することで研究の加速に役立っています。 炭素繊維事業分野では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるとともに、環境規制の高まりに伴う低燃費化の要請に応え、「軽くて強い」高機能素材の拡大を図っています。特に未来の最新鋭航空機に向けたソリューションとして、炭素繊維原糸から織物基材、熱可塑性及び熱硬化性樹脂を使用した中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでいます。環境負荷低減へのニーズに対しては、炭素繊維製品に関わる LCA(ライフサイクルアセスメント)評価の確立などを実施しており、持続可能な国際的認証の一つである ISCC PLUS 認証を取得し、同認証に基づいたマスバランス方式を適用し、環境配慮型の原料を用いた「テナックス」の生産と販売を開始しました。また、炭素繊維リサイクル技術の開発、リサイクル炭素繊維を使用した製品の生産・供給体制の構築に向けた取り組みを進めており、幅広い潜在ニーズに応える製品の開発をより一層強化し、革新的な高性能材料とソリューションを提供していきます。 複合成形材料事業分野では、自動車分野におけるカーボンニュートラルの実現に貢献すべく、特に次世代自動車向けに、環境配慮型の材料やソリューション技術の開発に注力しています。素材から加工、成形、リサイクルに至るバリューチェーン全体のライフサイクルにおけるCO₂排出量削減に向けた技術開発や様々な取り組みの強化を続けており、自動車業界が求める軽量化、安全性と耐久性を実現しながら、素材及び製品の開発・設計の段階から環境負荷低減を組み込んでいくことができる世界にも類をみないTier1サプライヤーとしてのポジションの確立を進めています。また、積極的に自動化及びICT技術の導入を進めることで、製品の性能安定性と品質を向上させると同時に、生産効率やコスト効率を高め、顧客が要求する、より軽く、より複雑な形状の自動車パーツを、安定して量産供給することを可能にしています。今後は過酷な環境でも長く使えるパーツや、リユース・リサイクルが可能なパーツの開発と量産供給を通して、地域ごとに異なるサステナブル要求に応え、自動車の製造段階から使用段階の脱炭素化に貢献していきます。 当セグメントに係る研究開発費は110億円です。 <繊維・製品事業>繊維・製品事業では、環境戦略「THINK ECO」のもと、独自に開発したポリエステル繊維製造時のCO2排出量算出システム「TLC3(テレックサン)」について、第三者認証機関からの認証を取得し、信頼性の高いライフサイクルアセスメント対応を可能としました。さらに、ポリウレタン弾性繊維を含むポリエステル衣料品から、ポリウレタンを除去する技術を開発するなど、衣料品を回収・分別し、再び繊維にリサイクルする循環型社会の実現に向けた事業戦略を推進しました。また、ICタグをピンポイントで的確に読み取ることで、物流・医療現場におけるピッキングや仕分け作業を効率化するハンズフリータイプのウエアラブル型 RFIDリーダー「RecoHand(レコハンド)」を開発するとともに、フェムテックブランド「itoomof.」を上市し、高機能繊維を活用することで技術的な視点から女性をサポートする製品を開発するなど、暮らしを豊かにするソリューションを提供しました。 当セグメントに係る研究開発費は19億円です。 <ヘルスケア事業領域>骨・関節、呼吸器、代謝・循環器の領域を中心に、医薬品と在宅医療をキーワードに、患者さんのQuality of Life 向上、新たな治療選択肢の提供につながる医薬品、医療機器、そして付加価値サービスを生み出すために、積極的な研究開発を行っています。今後は、当社の在宅医療分野で培ってきたサービス基盤を活用し、より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する製品やサービスのパイプラインを提供していきます。 医薬品分野では、「フェブリク錠 10mg、20mg、40mg」について、2023年6月に小児の痛風・高尿酸血症患者に対する用法・用量の追加承認を取得しました。また、希少内分泌疾患のホルモン治療薬として開発中の3剤「TransCon hGH」、「TransCon PTH」、及び「TransCon CNP」の日本における研究、開発、製造、販売に関する独占的ライセンス契約を、2023年11月にAscendis Pharma, A/S.と締結しました。日本での販売に向け、国内臨床開発及び製造販売承認申請を実施します。医薬品研究では、ナルコレプシー治療を対象とした自社創生候補化合物について、2024年3月に全世界における独占的開発・製造・販売権をフランスの製薬企業であるBioprojet社に供与するライセンス契約を締結しました。また、アクセリード株式会社との創薬研究に関する合弁会社を2024年4月1日に設立及び事業開始する契約を、2023年6月30日に同社と締結し、その会社名を「Axcelead Tokyo West Partners株式会社」とすることを2024年2月に公表しました。設立する合弁会社との連携によって、創薬研究の効率化と、より幅広い研究分野の強化を目指すとともに、国内外の創薬プレイヤーとの協働による創薬研究の強化を図ります。これまで欧米の大手製薬企業等に研究成果を早期導出してきた能力や実績を活かし、研究開発機能が独自に収益を生む、製薬企業としての新たなビジネスモデル確立を図ります。 在宅医療分野では、小型・軽量の携帯型酸素濃縮装置「ハイサンソポータブルαⅢ」を2023年7月に上市しました。本装置は通信端末を搭載しており、当社の携帯型酸素濃縮装置で初めて「HOT 見守り番Web」と連携できるようになりました。これにより医療関係者が携帯型酸素濃縮装置使用においても運転状況や、患者さんの日々の SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)や脈拍数の状態をWeb 上で閲覧し、治療状況を把握することができるようになりました。なお、2020年4月に出資した米国ヘルスケアベンチャーキャピタルファンドであるMedtech Convergence Fundでは米国を中心に医療機器のスタートアップ企業に対する投資やインキュベーション活動を継続しており、これらを通じて画期的なヘルスケア領域の新規製品・サービスの獲得を目指します。 当セグメントに係る研究開発費は229億円です。 <IT事業>ネットビジネス分野において、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」へのAIの活用について、またITサービス分野において、ヘルスケア領域等でのクラウドサービス開発等に加え、生成系AIの業務適用に関する調査・研究を行いました。 当セグメントに係る研究開発費は2億円です。 上記セグメントに属さない研究開発活動として、再生医療・埋込医療機器分野では、医療・健康サポートを通じて、人々の健康維持・健康寿命の延伸に貢献する素材の開発に取り組んでおり、大阪医科薬科大学、福井経編興業(株)と共同で開発を進めていた「心・血管修復パッチOFT-G1(開発コード)」が、2023年7月11日付で厚生労働省より製造販売承認を取得しました。今後、製造販売を担う帝人メディカルテクノロジー株式会社が中心となり、販売名「シンフォリウム」として、国内にて上市するとともに、海外での事業化も検討していきます。また、再生医療CDMO(開発製造受託機関)需要の拡大を見据え、2022 年には、日本におけるライフサイエンスの新たな拠点を目指す「柏の葉スマートシティ(千葉県柏市)」に、再生医療等製品の 研究・開発から、事業計画策定、商用生産までの過程をワンストップで実現する 柏の葉「再生医療プラットフォーム」の構築を開始しました。さらに2023 年 8 月には、 再生医療CDMOを専業とする帝人リジェネット(株)を設立し、2024年2月14日より「柏の葉ファシリティ」の稼働を開始しました。本施設は、再生医療 CDMO 事業のうち CDO(製法開発受託機関)事業の拠点として運用していきます。電池部材・メンブレン事業分野では、高機能素材の活用で、安全性・強靭性を備えた社会の構築に貢献する素材として、リチウムイオン二次電池(LIB)の性能を飛躍的に向上させることのできる革新的セパレータの製造販売及び新製品の開発に取り組んでいます。エンドユーザーや基材メーカーとの連携による次世代製品の開発を進めるとともに、取得した知的財産権のライセンスビジネスも実現しています。 この他、事業間の協創によるイノベーションの創出に取り組んでいるほか、エンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。これに係る研究開発費は65億円です。
FY2023|5,785 文字
6【研究開発活動】(1) 研究開発活動帝人グループは、人を中心に考え、Quality of Lifeを向上させる企業理念のもと、「たゆまぬ変革と挑戦」によって新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現に向けてソリューションを提供することで「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」「人と地域社会の安心・安全の確保」「人々の健康で快適な暮らしの実現」を重要社会課題として設定し、環境貢献に資する自動車・航空機、エネルギー領域におけるソリューション提供を通して「地球環境を守る会社」を、また、希少疾患・難病などのケアが必要な未充足ニーズが高い疾病領域を中心としたソリューション提供を通して「より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社」を目指します。また、事業活動に伴う環境、社会への負の影響を最小限とする取り組みも続けています。 イノベーション創出に向け、研究開発においては、マテリアル、ヘルスケア、繊維・製品及びIT事業を併せ持つ帝人グループの特徴を生かした技術の連携・活用と融合・複合化により、グループとしての総合力・機動力を発揮することを推進しています。加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)についても IoTモニタリング技術、機械学習やAI技術、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)による研究開発力の強化を図ると同時に、スマートプラントの推進などによる製造現場の生産性向上など、多様な事業、分野において積極的に取り組んでいます。さらに、専門領域でのビッグデータやデジタル技術利活用についてアカデミアとの共同研究や企業連携を進めることと並行して、それらの成果に基づくマテリアル領域・ヘルスケア領域・IT領域での新たなサービスやビジネスの創出を目指してDX推進部を設置し、AIやIT等の最先端技術の獲得と活用を進めています。 研究開発体制については、国内12カ所、海外13カ所の拠点からなるグローバルなネットワークを有しており、グループ各社の連携を強化して組織を活性化するとともに、本年4月からは、将来投資の領域となる新規事業関連、事業間の協創によるイノベーションの創出を全社横断的に実施するために、各事業統轄下で育成してきた新事業及びコーポレートビジネスインキュベーション部門をコーポレート新事業本部として統合し、多様な人財が能力を発揮してイノベーション創出を加速する仕組みを取り入れています。 なお、当連結会計年度の研究開発費は319億円(前期比14億円減)でした。報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。<マテリアル事業領域>カーボンニュートラルの社会実現に資する技術開発・研究開発並びに社会実装に向けた検討を行っています。マテリアリティとして取り組む「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」については、マルチマテリアル化による製品の軽量化や長寿命化を図るとともに、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルの技術課題に取り組んでいます。環境対応分野に注力した開発拠点である欧州サステナブル先端技術開発センター(ESTIC)では、サーキュラーエコノミーやバイオマテリアルの開発、水素燃料電池に関する研究などをグローバルに推進しています。「人と地域社会の安心・安全の確保」に向けた取り組みとして、震災対策の一環で構造物の耐震補強材に用いられる高強度と柔軟性を兼ね備えたアラミド繊維や炭素繊維の開発を進めています。「人々の健康で快適な暮らしの実現」に向けた取り組みでは、ヘルスケア事業との融合領域として骨や再生医療などの分野での研究開発を推進しています。さらに、新事業創出に向けて、マテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics/MI)を積極的に活用し、研究開発力の強化を図るとともに、帝人グループ内の連携のみならず社外を含めた幅広いネットワークを形成し、共同研究や情報交換・人財交流などを進めてイノベーションのスピードアップを図っています。 アラミド事業分野では、その高い機能性を活かして自動車、航空用コンテナ、消防服、ロープやケーブル補強など幅広い分野に使用されており、ライフプロテクション、プロテクティブアパレル、オートモーティブ、エアロスペース、インダストリーの5つを主力テーマとして、アラミド繊維製造技術及び新商品の開発に取り組んでいます。パラ系アラミド繊維である「トワロン」「テクノーラ」の海洋ロープ用途開発では、浮体式洋上風力発電の実証機として、英Marine Power System(MPS)社向け緊張係留式プラットフォーム(Tension Leg Platform : TLP)方式基礎の緊張係留部に、「トワロン」を使用した蘭FibreMax B.V.社の繊維ケーブルが世界初導入されました。また、メタ系アラミド繊維である「コーネックス」においては、その耐久性、難燃性を生かし、帝人グループがMultiyear Partnershipを締結したEnvision Racing Formula EにTeijinconex® neoを用いた軽量レーシングスーツが採用されています。なお、「トワロン」はグローバル市場における需要の拡大に対応するため、生産能力を25%以上増強する工事を完了いたしました。また、社会と企業の持続的な発展を目指すため、リサイクル技術開発により、2030年までにトワロンリサイクル率25%を目指し、長期的な取り組みを継続しています。 樹脂事業分野では、今後成長が見込まれる次世代情報端末、自動車先進化、カーボンニュートラルに対応した高機能材料の研究開発を行っています。ポリカーボネート樹脂では、高度な分子設計技術と重合制御技術を活かして、多様な屈折率要求に対応するスマートフォンカメラレンズ向け樹脂の開発を進めました。コンパウンド製品では、持続可能な社会の実現に向けてリサイクル技術を活用した環境対応材料の開発を進めています。加工製品では多様な用途に適用可能な成形加工用加飾シート、車載ディスプレイ大型化に対応する高機能シート・フィルムの開発を行っています。また、これらの樹脂材料開発全般において、マテリアルズ・インフォマティクスを活用することで研究の加速に役立っています。 炭素繊維事業分野では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるとともに、環境規制の高まりに伴う低燃費化の要請に応え、「軽くて強い」高機能素材の拡大を図っています。特に未来の最新鋭航空機に向けたソリューションとして、炭素繊維原糸から織物基材、熱可塑性及び熱硬化性樹脂を使用した中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでいます。また、CO₂排出量削減に向けて製品のライフサイクル全体でのCO₂排出量を可視化するため、炭素繊維フィラメントの製造工程に加え、ショートファイバー、プリプレグ製品におけるCO₂排出量の算出方法を確立し、当社が展開する製品のライフサイクルアセスメント(LCA)への対応を可能としました。また、炭素繊維リサイクル技術の開発、社外との業務提携によるリサイクル炭素繊維を使用した製品の生産・供給体制の構築に向けた取り組みを進めており、幅広い潜在ニーズに応える製品の開発をより一層強化し、革新的な高性能材料とソリューションを提供していきます。 複合成形材料事業分野では、自動車分野におけるカーボンニュートラルの実現に貢献すべく、特に次世代自動車向けに、環境配慮型の材料やソリューション技術の開発に注力しています。素材から加工、成形、リサイクルに至るバリューチェーン全体のライフサイクルにおけるCO₂排出量削減に向けた技術開発や様々な取り組みの強化を続けており、自動車業界が求める軽量化、安全性と耐久性を実現しながら、素材及び製品の開発・設計の段階から環境負荷低減を組み込んでいくことができる世界にも類をみないTier1サプライヤーとしてのポジションの確立を進めています。また、積極的に自動化及びICT技術の導入を進めることで、製品の性能安定性と品質を向上させると同時に、生産効率やコスト効率を高め、顧客が要求する、より軽く、より複雑な形状の高外観製品を、安定して量産供給することを可能にしています。今後は過酷な環境でも長く使えるパーツや、リユース・リサイクルが可能なパーツの供給を通して、地域ごとに異なるサステナブル要求に応え、自動車の製造段階から使用段階の脱炭素化に貢献していきます。 新事業分野では、リチウムイオン二次電池(LIB)に使用される溶剤系コーティングセパレータの製造に関して、エンドユーザーや基材メーカーとの連携による次世代新製品の開発を進めるとともに、ライセンスビジネスの極大化を図っています。また、メンブレン事業については、液体フィルターの最先端用途向けに小孔径かつ高流量を実現する膜の開発を継続しています。 当セグメントに係る研究開発費は132億円です。 <ヘルスケア事業領域>骨・関節、リハビリ・脳神経、呼吸器、代謝・循環器の領域を中心に、医薬品と在宅医療のシナジーも生かしながら、患者さんのQuality of Life 向上、新たな治療選択肢の提供につながる医薬品、医療機器、そして付加価値サービスを生み出すために、積極的な研究開発を行っています。また、デジタルヘルスケア、機能性食品素材などの分野で、未病~疾病~介護の全てに対応するヘルスケア事業基盤の構築、情報プラットフォームを活用した新規事業の創出に注力しています。今後は、当社の在宅医療分野で培ってきた事業基盤を活用し、より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する製品やサービスのパイプラインを提供していきます。 医薬品分野では、骨折の危険性の高い骨粗鬆症を効能・効果とした「オスタバロ皮下注カートリッジ 1.5mg」について2022年8月に製造販売承認を取得し、PHC株式会社と共同開発した専用の電動注入器「オスタバロⓇインジェクター」とともに2023年1月に販売を開始しました。また、2023年2月に、アクセリード株式会社と創薬研究に関する合弁会社設立の基本合意書を締結しました。設立する合弁会社との提携によって、創薬研究の効率化と、より幅広い研究分野の強化を目指すとともに、国内外の創薬プレイヤーとの協働による創薬研究の強化を図ります。さらに、腎疾患を対象とした自社創製低分子化合物について、2023年3月に全世界における独占的開発・製造・販売権をNovartis AGに供与するライセンス契約を締結しました。なお、2022年4月に共同研究契約締結を公表したIktos社とは、医薬品の候補となる化合物の探索プロセスを人工知能(AI)で効率化する技術についての共同研究開発を継続しています。 在宅医療分野では、高流量でありながら小型軽量な酸素濃縮装置「ハイサンソi7」を2022年11月に上市しました。既に展開中の統合型濃縮器「ハイサンソi」、低濃度処方にお使いいただける「マイルドサンソ 40i」と同様の見やすい液晶表示や通信機能の搭載によって、よりきめ細やかにアドヒアランスの確認をサポートできる製品です。中国では中国国内販売向け医療機器の生産許可証を取得し、携帯型の酸素濃縮装置「silentair」の製品登録を完了、2022年12月に上市しました。引続き、周辺機器を含めた製品ラインナップの充実のため研究開発を進めます。なお、2020年4月に出資した米国ヘルスケアベンチャーキャピタルファンドであるMedtech Convergence Fundでは米国を中心に医療機器のスタートアップ企業に対する投資やインキュベーション活動を継続しており、これらを通じて画期的なヘルスケア領域の新規製品・サービスの獲得を目指します。 当セグメントに係る研究開発費は139億円です。 <繊維・製品事業>繊維・製品事業では、環境戦略「THINK ECO®」を掲げ、環境配慮型のタイヤコードや、優れた生分解性によりマイクロプラスチックの削減に貢献するPLA(ポリ乳酸)樹脂を開発するなど、衣料繊維から産業資材までの幅広い用途で環境負荷低減に貢献するソリューションを提供しています。また、自社工場におけるポリエステル繊維製造時のCO2排出量算出システムを確立するとともに、新たな解重合触媒を使用することで、着色されたポリエステル繊維を石油由来の原料と同等品質に再生可能で、再生工程の環境負荷も低減する新リサイクル技術を開発しました。さらに、回収した廃棄衣料品からポリエステル素材を選別して効率的に再生原料を作り出すリサイクルシステム構築の取り組みを開始するなど、サーキュラーエコノミーの実現に向けた事業戦略をさらに強化しています。 当セグメントに係る研究開発費は19億円です。 <IT事業>ネットビジネス分野において、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」へのAIの適用について、またITサービス分野において、ヘルスケア領域等でのデータ活用・AI活用に加え、中小企業向けのクラウドサービス開発技術について、調査・研究を行いました。 当セグメントに係る研究開発費は1億円です。 上記セグメントに属さない研究開発活動として、再生医療事業領域において、当社の子会社である(株)ジャパン・ティッシュエンジニアリングが厚生労働省からメラノサイト含有自家培養表皮「ジャスミン」の製造販売承認を取得しました。また、大阪医科薬科大学、福井経編興業(株)との3者で共同開発を進めている心・血管修復パッチ「OFT-G1(仮称)」の臨床試験において、主要評価項目の達成を確認し、国内において製造承認申請しました。2023年度内での上市を目指すとともに、海外での事業化も検討していきます。 この他、グループ共通の基盤技術の向上やエンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。これに係る研究開発費は28億円です。
FY2022|5,656 文字
5【研究開発活動】(1) 研究開発活動 帝人グループは、「たゆまぬ変革と挑戦」によって新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現に向けてソリューションを提供することで「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。重要社会課題として取り組む「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」「人と地域社会の安心・安全の確保」「人々の健康で快適な暮らしの実現」に対して、人を中心に考え、Quality of Lifeを向上させる「環境価値」、「安全・安心・防災」、「少子高齢化・健康志向」の3つのソリューション領域を通して価値を社会に提供することを目指しています。また、事業活動に伴う環境、社会への負の影響を最小限とする取り組みも続けています。 中期経営計画2020‐2022「ALWAYS EVOLVING」では、イノベーションの創出基盤を強化し、事業機会の創出を加速することを経営基盤強化の基本方針の1つに掲げています。 イノベーション創出に向け、研究開発においては、マテリアル、ヘルスケア、繊維・製品およびIT事業を併せ持つ帝人グループの特徴を生かした技術の連携・活用と融合・複合化により、グループとしての総合力・機動力を発揮することを推進しています。また、帝人グループ内の技術や人財だけではなく、外部技術の積極的な活用により開発のスピードアップを推進し、IoTモニタリング技術、機械学習やAI技術、またマテリアルズインフォマティックスの利活用による研究開発力の強化にも取り組んでいます。 研究開発体制については、国内12カ所、海外13カ所の拠点からなるグローバルなネットワークを有しており、グループ各社の連携を強化して組織を活性化するとともに、コーポレート組織に新規事業の探索・立ち上げおよびイノベーション創出のための環境整備を実行する組織体制を作り、多様な人財が能力を発揮してイノベーション創出を加速する仕組みを取り入れています。 なお、当連結会計年度の研究開発費は333億円(前期比6億円増)でした。報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。 <マテリアル事業領域> 「環境価値ソリューション」に関わる取り組みとして、高機能素材とマルチマテリアル化により高付加価値用途へ展開し、製品の長寿命化を図るとともに、ケミカルリサイクル技術の応用や複合材料リサイクルの技術課題にも取り組み、カーボンニュートラルの社会実現に資する技術開発・研究開発を行っています。環境対応分野に注力した開発拠点として「European Sustainable Technology Innovation Center」(ESTIC)を設置し、バイオマテリアルの開発、サーキュラーエコノミーの実現や、風力や水素などの代替エネルギーに関する研究開発を推進しています。「安心・安全・防災ソリューション」に向けた取り組みとして、震災対策の一環で構造物の耐震補強材として高強度と柔軟性を兼ね備えたアラミド繊維や炭素繊維の開発を進めています。また、「少子高齢化・健康志向ソリューション」に向けた取り組みでは、ヘルスケア事業との融合領域として骨や再生医療などの分野での研究開発を推進しています。さらに、研究開発のみならず生産工場へのマテリアルインフォマテックス活用やICTの導入を積極的に行い、デジタルトランスフォーメーションを推進しています。 アラミド事業分野では、その高い機能性を活かして自動車、航空用コンテナ、消防服、ロープやケーブル補強など幅広い分野に使用されており、ライフプロテクション、プロテクティブアパレル、オートモーティブ、エアロスペース、インダストリーの5つを主力テーマとして、アラミド繊維製造技術および新商品の開発に取り組んでいます。パラ系アラミド繊維である「トワロン」「テクノーラ」を用いて、海洋ロープ用途開発では、安全性が高く、かつリサイクル可能な海洋ロープの開発を進め、防護衣料用途では製品寿命の延長による環境負荷低減技術の開発に着手するなど、環境に配慮した製品づくりに取り組んでいます。また、メタ系アラミド繊維である「コーネックス」においては、その耐久性、難燃性を生かし、フォーミュラE参戦のEnvision Virgin Racing向け軽量レーシングスーツに採用されました。なお、「トワロン」はグローバル市場における需要の拡大に対応するため、2022年度までに生産能力を25%以上増強する計画を進めています。当該生産能力増強において、CO₂排出量削減技術の導入を予定しており、これにより社会と企業の持続的な発展を目指すとともに、独自のCUSTOMER BENEFIT MODELによりサプライチェーン上での環境負荷低減の見える化の取り組みも開始しています。 樹脂事業分野では、今後成長が見込まれる高速通信、自動車先進化、カーボンニュートラルに対応した高機能材料の研究開発を行っています。ポリカーボネート樹脂では、高度な分子設計技術と重合制御技術を活かして、世界最高水準の屈折率を有するスマートフォンカメラレンズ向け樹脂の開発を進めました。コンパウンド製品では、耐薬品性・耐熱性・硬度・摺動性などの機能を持つ製品群の開発と、持続可能な社会の実現に向けてリサイクル技術を活用した環境対応材料の開発を進めています。加工製品では車載ディスプレイ大型化に対応する高機能シート・フィルムの開発を行っています。また、これらの樹脂材料開発全般において、マテリアルズインフォマティックスを活用することで研究の高速化、高度化に役立っています。 炭素繊維事業分野では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるとともに、環境規制の高まりに伴う低燃費化の要請に応え、環境価値ソリューションとして「軽くて強い」高機能素材の拡大を図っています。特に未来の最新鋭航空機に向けたソリューションとして、炭素繊維原糸から織物基材、熱可塑性及び熱硬化性樹脂を使用した中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでおります。炭素繊維については、製造に際してのCO₂排出量の算出方法を確立し、当社が展開する炭素繊維についてライフサイクルアセスメント(LCA)への対応を可能としました。今後は短繊維や中間材料へと、LCA対象範囲の拡大を進めます。また、CO₂排出量低減を目標に、炭素繊維リサイクル技術の開発、社外との業務提携によるリサイクル炭素繊維を使用した製品の生産・供給体制の構築に向けた取り組みを進めており、幅広い潜在ニーズに応える製品の開発をより一層強化し、革新的な高性能材料とソリューションを提供していきます。 複合成形材料事業分野では、成長を続ける電気自動車をはじめとする次世代自動車向けに、環境配慮型の材料やソリューション技術の開発に注力しています。素材から加工、成形、リサイクルに至るバリューチェーン全体のライフサイクルにおけるCO₂排出量削減に向けた技術開発や様々な取り組みの強化を続けており、自動車業界が求める軽量化、安全性と耐久性を実現しながら、素材および製品の開発・設計の段階から環境負荷低減を組み込んでいくことができる世界にも類をみないTier-1サプライヤーとしてのポジションを確立していきます。また、複合材料と金属材料を組み合わせたマルチマテリアル技術を駆使した自動車パーツの製造段階において、積極的に自動化およびICT技術の導入を進めています。この効果により、製品の性能安定性と品質を向上させると同時に生産効率やコスト効率を高めることで、顧客が要求する、より軽く、より複雑な形状の高外観製品を、安定して量産供給することを可能にしています。 新事業分野では、リチウムイオン二次電池(LIB)に使用される溶剤系コーティングセパレータの製造に関して、エンドユーザーや基材メーカーとの連携による次世代新製品の開発を進めるとともに、ライセンスビジネスの極大化を図っています。また、メンブレン事業については、液体フィルターの最先端用途向けに小孔径かつ高流量を実現する膜の開発を継続しています。 当セグメントに係る研究開発費は131億円です。 <ヘルスケア事業領域> 骨・関節、リハビリ・脳神経、呼吸器、代謝・循環器を重点領域に定め、医薬品と在宅医療のシナジーも生かしながら、患者さんのQuality of Life 向上、新たな治療選択肢の提供につながる医薬品、医療機器、そして付加価値サービスを生み出すために、積極的な研究開発を行っています。また、デジタルヘルスケア、機能性食品素材などの分野で、未病~疾病~介護の全てに対応するヘルスケア事業基盤の構築、情報プラットフォームを活用した新規事業の創出に注力しています。 医薬品分野では、「ゼオマイン」の適応拡大として、2021年6月に「下肢痙縮」の効能・効果の追加承認を取得しました。加えて、2021年7月に「ゼオマイン」の流涎症への適応拡大に向けた第III相試験に着手しました。また、2017年にMerck & Co., Inc. にライセンス供与したアルツハイマー病治療薬候補「抗リン酸化タウ抗体」の臨床試験開始に伴い、マイルストーン(一時金)を2021年12月に受領しました。Iktos SASと、医薬品候補化合物の探索プロセスを人工知能(AI)で効率化する技術について共同で研究開発を行う契約を締結しました。2022年1月に医療技術研究所を生物医学総合研究所に移管し、医薬品と医療機器の人財・技術の共創によるユニークなヘルスケアソリューションの創出を目指します。 在宅医療分野では、当社独自技術により40%酸素の制御を可能とした酸素濃縮装置「マイルドサンソ 40i」を上市しました。既に展開中の統合型濃縮器「ハイサンソi」と同様の見やすい液晶表示や通信機能の搭載によって、よりきめ細やかにアドヒアランスの確認をサポートできる製品です。引続き、周辺機器を含めた製品ラインナップの充実のため研究開発を進めます。2020年4月に出資した米国ヘルスケアベンチャーキャピタルファンドであるMedtech Convergence Fundでは米国を中心に医療機器のスタートアップ企業に対する投資やインキュベーション活動を進めており、これらを通じて画期的なヘルスケア領域の新規製品・サービスの獲得を目指します。また、米医療機器メーカーのelectroCoreから、群発頭痛や片頭痛など慢性頭痛を和らげる効果が期待できる機器を日本で独占的に開発・販売する権利を獲得しました。これから日本国内で医療機器としての承認・発売を目指します。 新事業分野では、医療機器分野において、大阪医科大学、福井経編興業㈱との3社で共同開発を進めている心・血管修復パッチ「 OFT-G1(仮称)」について、その臨床試験で目標としていた症例数の被験者登録を完了しており、承認申請および上市を目指して開発を継続して進めています。また、人工関節事業を展開する帝人ナカシマメディカル㈱は、2012年より日本医療研究開発機構(AMED)において東京医科歯科大学を代表機関とするプロジェクトの成果として、自家骨を粉砕して充填することのない脊椎固定用デバイス「UNIOS PLスペーサー」を開発し、2021年6月に上市しました。 当セグメントに係る研究開発費は171億円です。 <繊維・製品事業> 繊維・製品事業では、衣料製品や産業資材を中心とする様々な用途で付加価値の高い繊維製品を開発し、人々の暮らしを進化させていくとともに、環境問題をはじめとする様々な社会課題に対するソリューションを提供しています。未来を見据えた、豊かな暮らしの実現と、サステナブルな社会を支えていくことが重要な課題です。コロナ禍における巣ごもり需要に対応する機能性原綿として、抗菌・抗ウイルス性能を有する「ウイルサラバ」と、抗菌・防ダニ性能を有する「ダニスト」を開発するとともに、医療従事者向けに、高い安全性と快適性を兼ね備えた着脱しやすい形状の医療用ガウンを開発しました。また、環境戦略「THINK ECO」のもと、リサイクルポリエステル原料を使用した超極細ポリエステルナノファイバー「ナノフロント」の量産化技術を確立しました。これにより、当社が展開する衣料用のポリエステル繊維は、全てリサイクル原料を使用することが可能となりました。 当セグメントに係る研究開発費は19億円です。 <IT事業> ネットビジネス分野において、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」へのAIの適用について、 またITサービス分野において、ヘルスケア領域等でのデータ活用・AI活用について研究開発を行いました。 当セグメントに係る研究開発費は2億円です。 上記セグメントに属さない研究開発活動として、再生医療事業領域において、当社の子会社である㈱ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングが自家培養口腔粘膜上皮「オキュラル」の製造販売承認を取得し、また、他家(同種)培養表皮「Allo-JaCE03」の治験を開始しました。また同社は、2022年1月に、第 10 回 技術経営・イノベーション大賞において、日本初の再生医療等製品 自家培養表皮「ジェイス」の普及に関する功績で「経済産業大臣賞」を受賞しました。同社はヒト培養表皮モデル、ヒト培養角膜上皮モデルである「ラボサイト」シリーズを製造販売していますが、帝人の技術も組み合わせて「ラボサイト」後継品の開発を推進し、高い成長率が想定される動物実験代替製品事業の拡大を目指します。 この他、グループ共通の基盤技術の向上やエンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。 これに係る研究開発費は11億円です。
FY2021|5,793 文字
5【研究開発活動】 帝人グループは、「たゆまぬ変革と挑戦」によって新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現に向けてソリューションを提供することで「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。研究開発活動においても、重要社会課題として取り組む「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」「人と地域社会の安心・安全の確保」「人々の健康で快適な暮らしの実現」に対して、人を中心に考え、Quality of Lifeを向上させる「環境価値」、「安全・安心・防災」、「少子高齢化・健康志向」の3つのソリューションを中心に価値を社会に提供することを目指しています。また、事業活動に伴う環境、社会への負の影響を最小限とする取り組みも続けています。 中期経営計画2020‐2022「ALWAYS EVOLVING」では、イノベーションの創出基盤を強化し、事業機会の創出を加速することを経営基盤強化の基本方針の1つに掲げています。 イノベーション創出に向け、研究開発においては、マテリアル、ヘルスケア、繊維・製品およびIT事業を併せ持つ帝人グループの特徴を生かしたグローバル視点での技術の連携・活用と融合・複合化により、グループとしての総合力・機動力を発揮することを推進しています。また、帝人グループ内の技術や人財だけではなく、外部技術の積極的な活用により開発のスピードアップを推進し、IoTモニタリング技術、機械学習やAI技術、またマテリアルズインフォマティックスの利活用による研究開発力の強化にも取り組んでいます。 研究開発体制については、国内12カ所、海外12カ所の拠点からなるグローバルなネットワークを有しており、グループ各社の連携を強化して組織を活性化するとともに、コーポレート組織に新規事業の探索・立ち上げおよびイノベーション創出のための環境整備を実行する組織体制を作り、多様な人財が能力を発揮してイノベーション創出を加速する仕組みを取り入れています。 帝人グループの知的財産活動においては、経営戦略、事業戦略に対応した適切な知財戦略の提案と実行支援を最重点項目として掲げています。また、経営・事業に資する知的財産の解析、評価と見える化を実施するために、IPランドスケープ等の手法も取り入れ、ICTツールを駆使し特許情報のみならず非特許情報を基に技術動向や競争優位性を解析しています。さらに、詳細な事業環境分析の結果に基づいて、事業のコンピテンシーとなり得るコア技術を中心に知的財産権を戦略的に確保し、競合他社の市場参入を阻止して競争優位性を確保するとともに、それを活用するための強固な知財ポートフォリオを構築しています。 なお、当連結会計年度の研究開発費は327億円(前期比18億円減)でした。 また、報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。 <マテリアル事業領域> 持続可能な社会の実現に向け、LCA(Life Cycle Assessment)による環境負荷の評価、Well to WheelでのEmission削減を目指します。具体的には航空機や自動車向けに高性能な軽量化素材や部材を開発し、燃費を向上させることで、CO2排出量削減に貢献する研究開発に取り組んでいます。次世代自動車に係る軽量化に対しては、環境先進地域である欧州において、自動車向け複合成形材料のデザイン、マルチマテリアル設計・プロトタイピングの機能を担う拠点として「TACE」(Teijin Automotive Center Europe GmbH)を立ち上げ、開発を推進しています。また、クリーンエネルギー化に向けて、水素ガス用軽量高圧容器や水素用パイプライン、次世代電池用部材の開発や、ケミカルリサイクル、複合材料のリサイクル技術に取り組んでおり、環境対応分野に注力した「European Sustainable Technology Innovation Center」(欧州サステナブル先端技術開発センター)を2021年1月に開設しました。これによりサーキュラーエコノミーに貢献する研究開発を推進しています。 アラミド事業分野では、ライフプロテクション、プロテクティブアパレル、オートモーティブ、エアロスペース、インダストリーの5つを主力テーマとして、アラミド繊維製造技術および新商品の開発に取り組んでいます。高強度、かつ軽量で高い耐久性を有するパラ系アラミド繊維「トワロン」はグローバル市場における需要の拡大に対応するため、2022年度までに生産能力を25%以上増強する計画を進めています。また今回の増強において、CO2排出量削減技術の導入を予定しており、これにより社会と企業の持続的な発展を目指します。またアラミド繊維は、その高い機能性を活かして自動車、航空用コンテナ、消防服、ロープやケーブル補強など幅広い分野に使用されています。その中で海洋ロープ用途開発では、パラ系アラミド繊維である「トワロン」や「テクノーラ」を用い、安全性が高く、かつリサイクル可能なロープ開発を進め、また防護衣料用途でも製品寿命の延長による環境負荷低減技術の開発に着手するなど、環境に配慮した製品づくりに取り組んでいます。 樹脂事業分野では、今後成長が見込まれる第5世代移動通信システム(5G)および自動車の先進化に対応する高機能材料の研究開発を行っています。高度な分子設計技術、組成品設計技術、加工技術を活かして、高屈折率化・低複屈折化が要求されているスマートフォンカメラレンズ向け樹脂、高耐薬・高耐熱・高硬度・摺動性・低臭・低VOC(揮発性有機化合物)などの機能を持つ組成品、車載ディスプレイ大型化に対応するシート・フィルムの開発を行っています。また、これらの樹脂材料開発においては、マテリアルズインフォマティックスを導入し研究の高速化、高度化を進めております。さらに、持続可能な社会の実現に向けてはリサイクル技術を活用した環境対応材料の開発を進めています。 炭素繊維事業分野では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるとともに、環境規制の高まりに伴う低燃費化の要請に応え、環境ソリューションとして「軽くて強い」高機能素材の拡大を図っています。特に未来の最新鋭航空機に向けたソリューションとして、炭素繊維原糸から織物基材、熱可塑性及び熱硬化性樹脂を使用した中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでおり、幅広い潜在ニーズに応える製品のグローバル展開をより一層強化しています。また、航空機や人工衛星などの用途に使用する技術を用いた炭素繊維中間材料を、スポーツ用途に向けて展開する新たなブランドを立ち上げました。パワーやスピードを求めるユーザーに向けたブランド「TENAX PW」(テナックス パワーシリーズ)、及び、コントロールを求めるユーザーに向けたブランド「TENAX BM」(テナックス ビームシリーズ)の両ブランドの展開を進めるとともに、炭素繊維製品の開発をさらに強化し、革新的な高性能材料とソリューションを提供していきます。 複合成形材料事業分野では、顧客要求に沿ったコンポジット製造技術を他社に先駆けて構築することにより、自動車部品の軽量化、高強度化を中心とした社会に必要とされる環境、安全ソリューションの提供に向け、グループ内外の素材や技術を結集し、提案力の強化を推進しています。2020年に開発したバッテリーボックスは、これまで帝人が培ってきたマルチマテリアル技術を駆使し、複合材料と金属材料を最適条件で組み合わせて設計したもので、トレイやカバーを複合材料の一体成形とすることでシール性確保による安全性や製造コスト最適化を、フレームに金属を用いることにより剛性、耐衝撃性を実現します。今後、米欧中の各拠点及び国内の設備や人財を活用し、顧客ニーズに沿った最適な設計や改良を行うことにより2025年からの量産開始を目指します。 また、新事業分野では、上海恩捷新材料科技股份有限公司との間で、リチウムイオン二次電池(LIB)に使用される溶剤系コーティングセパレータの製造に関し、昨年12月に包括的な技術ライセンス契約を締結しました。従来のフッ素系化合物に加え、耐熱性に優れるアラミドのコーティングセパレータを対象として追加し、またこれまで取り組んできた車載用に加えて、スマートフォンなどの電子機器用や、電力貯蔵システム用も含む幅広い用途への展開を企図しています。 当セグメントに係る研究開発費は130億円です。 <ヘルスケア事業領域> 骨・関節、呼吸器、代謝・循環器の3領域に特化し、医薬品と在宅医療のシナジーも生かしながら、患者さんのQuality of Life 向上、新たな治療選択肢の提供につながる医薬品、医療機器、そして付加価値サービスを生み出すために、積極的な研究開発を行っています。また、デジタルヘルスケア、機能性食品素材などの分野で、未病~疾病~介護の全てに対応するヘルスケア事業基盤の構築、情報プラットフォームを活用した新規事業の創出に注力していきます。 医薬品分野では、「オスタバロ皮下注カートリッジ3mg」(一般名:アバロパラチド酢酸塩、開発コード:ITM-058)について、2020年5月に「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」を効能・効果として製造販売承認を申請し、2021年3月に承認を取得しました。なお、本剤は、新医薬品の処方日数制限に対応する製剤を開発中であるため、上市時期は未定です。独メルツ社から導入し開発を進めている「ゼオマイン®筋注用50単位、100単位、200単位」(一般名:インコボツリヌストキシンA、開発コード:NT 201)について、2020年6月に「上肢痙縮」を効能・効果とした製造販売承認を取得し、同年12月に販売を開始しました。また、本剤は同年8月に「下肢痙縮」の適応追加に対する一部変更承認を申請しました。加えて、「ソマチュリン*」の適応拡大として、2020年12月に「甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍」の効能・効果の追加承認を取得しました。また、2020年12月に、TransThera Biosciences社と新薬開発のための共同研究及びライセンスの契約を締結しました。 * ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。 在宅医療分野では、当社独自技術により40%酸素の制御を可能とした酸素濃縮装置「マイルドサンソ 40i」の開発を進め、薬事承認を申請しました。既に展開中の統合型濃縮器「ハイサンソi」と同様の見やすい液晶表示や通信機能の搭載によって、よりきめ細やかにアドヒアランスの確認をサポートできる製品であり、「マイルドサンソTO-40S」の後継機種として上市準備を進めています。引続き、周辺機器を含めた製品ラインナップの充実のため研究開発を進めます。また、2020年4月より米国ヘルスケアベンチャーキャピタルファンドであるMedtech Convergence Fundと本格的に活動を開始しました。投資活動及びインキュベーション活動とも順調に進んでおり、医療機器・サービスに関連した帝人グループの研究開発機能の活性化を目指します。また、オープンイノベーションの一環として、2020年度も帝人ファーマ×アドライト アクセラレータープログラムを開催しました。本プログラムにおいてHome Healthcare Awardを受賞したジョリーグッド社とは共同開発契約を締結しました。今後、VRを利用したうつ病の治療補助システムの共同開発を目指します。 新事業分野では、医療機器分野において、大阪医科大学、福井経編興業㈱との3社で共同開発を進めている心・血管修復パッチ「 OFT-G1(仮称)」について、その臨床試験で目標としていた症例数の被験者登録を完了しました。承認申請および上市を目指して開発を継続して進めます。 当セグメントに係る研究開発費は172億円です。 <繊維・製品事業> 衣料製品や産業資材をはじめとする様々な用途で付加価値の高い繊維製品を開発し、人々の暮らしを進化させていくとともに、環境問題をはじめとする様々な社会課題に対するソリューションを提供していきます。未来に向かって、豊かな暮らしと、サステナブルな社会を支えていくことが重要な課題です。 ヘルスケア分野では、医療従事者の声を反映した医療用ガウンを大学と共同開発し、抗菌防臭機能や、清涼性、フィルター性能をあわせ持ち、洗濯して繰り返して使用できるマスクを開発しました。 新事業分野では、電気の力で抗菌性能を発揮する圧電繊維「PIECLEX」を㈱村田製作所と共同で開発し、ウエアラブルモーションセンシング技術を用いたデジタルゴルフレッスン「MATOUS GOLF」を上市するとともに、センシングデバイスで睡眠の質を評価・アドバイスする睡眠サービス「Sleep Concierge」を㈱FiNC Technologiesと共同開発しました。 また、新たに環境戦略「THINK ECO」を掲げ、植物由来ポリエステルとリサイクルポリエステルを使用した複合繊維「SOLOTEX ECO-Hybrid」や、マイクロプラスチックの発生を抑制する衣料用保温素材「Thermo Fly」、燃料電池自動車向けの立体成型吸音材など、環境価値向上に貢献する素材・部材を開発しました。 当セグメントに係る研究開発費は16億円です。 <IT事業> ネットビジネス分野において、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」へのAIの適用について、またITサービス分野において、ヘルスケア領域等でのデータ活用・AI活用について研究開発を行いました。さらに、AR/VRを活用した新規ビジネスの創出・事業化に向けた調査・研究を行いました。 当セグメントに係る研究開発費は3億円です。 上記セグメントに属さない研究開発活動として、グループ共通の基盤技術の向上やエンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。これに係る研究開発費6億円です。
FY2020|4,214 文字
5【研究開発活動】 帝人グループは、「たゆまぬ変革と挑戦」によって新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現に向けてソリューションを提供することで「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。研究開発活動においても、人を中心に考え、Quality of Lifeを向上させる「環境価値」、「安全・安心・防災」、「少子高齢化・健康志向」の3つのソリューションを中心とした価値を社会に提供するとともに、事業活動に伴う環境、社会への負の影響が最小減となるよう取り組みを続けています。また、中期経営計画2020‐2022『ALWAYS EVOLVING』では、イノベーションの創出基盤を強化し、事業機会の創出を加速することを経営基盤強化の基本方針の1つに掲げています。 研究開発の基本方針としては、素材、ヘルスケア、IT事業を併せ持つ帝人グループの特徴を生かしたグローバル視点での技術の連携・活用と融合・複合化により、グループとしての総合力・機動力を発揮することを推進しています。また、帝人グループ内の技術や人財だけではなく、外部技術の積極的な活用により開発のスピードアップを推進し、IoTモニタリング技術、機械学習やAI技術、またMI(マテリアル・インフォマティクス)の利活用による研究開発力の強化にも取り組んでいます。 研究開発体制については、国内12カ所、海外12カ所の拠点からなるグローバルなネットワークを有しており、グループ各社の連携を強化して組織を活性化するとともに、多様な人財が能力を発揮してイノベーション創出を加速する仕組みを取り入れています。 帝人グループの知的財産戦略では、詳細な事業環境分析の結果に基づいて、事業のコンピテンシーとなり得るコア技術を中心に知的財産権を戦略的に取得し、競合他社の市場参入を阻止して競争優位性を確保するための強固な知財ポートフォリオを構築しています。事業戦略の立案に係る知財情報の解析においては、IPランドスケープ等の手法も取り入れ、ICTツールを駆使して特許情報のみならず非特許情報を基に技術動向や競争優位性を解析し、その結果を事業上の意思決定に役立てる取り組みを実施しています。 なお、当連結会計年度の研究開発費は345億円(前期比19億円減)でした。 また、報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。 <マテリアルセグメント> ◆マテリアル事業 アラミド分野では、セーフティ、オートモーティブ、エアロスペース、インダストリーの4つを主力テーマとして、アラミド繊維製造技術及び新商品の開発を推進しています。高強度、軽量で高い耐久性を有するパラ系アラミド繊維「トワロン」は、グローバル市場における需要の拡大に対応するため、生産能力を2022年までに25%以上増強することとしました。今回の増強においては、CO2排出量の削減技術の導入を組み込んでおり、これにより社会と企業の持続的な発展を目指します。またアラミド繊維は、その高い機能性を活かして自動車、航空用コンテナ、防護、ロープやケーブルなど幅広い分野に使用されています。その中で海洋ロープ用途開発では、パラ系アラミド繊維である「トワロン」や「テクノーラ」を用いた、より安全性が高く、またリサイクル可能なロープ開発を進めるなど、環境に配慮した製品作りを進めています。 炭素繊維分野では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるとともに、環境規制の高まりに伴う低燃費化の要請に応え、環境ソリューションとして軽くて強い高機能素材の拡大を図り、特に未来の最新鋭航空機に向けたソリューションとして、炭素繊維原糸から織物基材、熱可塑性及び熱硬化性樹脂を使用した中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでいます。昨年8月には、米国Renegade Materials Corporation(RM社)を完全子会社化しました。RM社は、他社に先駆けて低毒性原料を用いたポリイミド樹脂を用いた熱硬化性プレプリグ技術を展開し、耐熱性と熱サイクル耐性を両立する優れた製品を有しています。RM社の技術と当社が蓄積してきた、炭素繊維や熱硬化性・熱可塑性の中間材料のノウハウやラインナップ等のシナジーを追求し、幅広い潜在ニーズに応える製品のグローバル展開をより一層強化しています。 樹脂分野では、今後成長が見込まれる第5世代移動通信システム(5G)や、自動車電動化・自動運転化に対応する高機能樹脂の提供を拡大すべく研究開発を行っています。ポリカーボネート樹脂では、高度な分子設計技術と重合制御技術を活かして、高画質化・複眼カメラ化・小型化などが要求されるスマートフォン向けカメラレンズや、耐熱性・耐候性が要求される車載用カメラレンズに使用する光学特性に優れた製品の開発を進めました。コンパウンド製品では、長年培ってきた樹脂コンパウンドの技術を活かして、高耐薬・高耐熱・低比重・高強度・摺動性などの機能を持つ高付加価値コンパウンド材の技術を更に向上させました。また、ASEAN地域における樹脂製品への多様なニーズに迅速に応えるため、タイにコンパウンド工場とテクニカルセンターを新設し、2019年9月に稼働を開始しました。 ◆繊維・製品事業 衣料繊維分野では、コットン調のポリエステル長繊維「アスティ」や、高い引き裂き強度に加えフラットな外観とソフトな風合いを兼ね備えた「シャドウリップ」など、リサイクル原料を使用した多様な素材を上市しました。産業資材分野では、レゾルシン・ホルムアルデヒドなどの有害物質を含まない環境にやさしいゴム補強繊維用接着剤を開発しました。新事業分野では、ヘルスケアなどの用途に向けて、各種センサーやソフトウエアの開発を推進しました。また、環境活動指針「THINK ECO」を掲げ、マイクロプラスチック問題に対応した海洋分解性ポリマーの開発を開始するなど、環境負荷低減につながる繊維素材や加工技術の開発を実施しました。 ◆複合成形材料事業ほか 複合成形材料分野では、自動車部品の軽量化、高強度化を中心とした社会に必要とされる環境、安全ソリューションの提供に向け、顧客要求に沿ったコンポジット製造技術を他社に先駆けて開発しています。その一環として、グループ内外の素材や技術を結集し、マルチマテリアルコンポジットによる提案力の強化を推進しています。2020年2月に、欧州において自動車向け複合成形材料のデザイン・設計やプロトタイピング等の機能を担うテクニカルセンターとして、ドイツ・ブッパタール市にTeijin Automotive Center Europe GmbHを設立しました。同社では、次世代自動車に向けたマルチマテリアルでのソリューション提案を行っていきます。 また、新事業分野では、上海恩捷新材料科技股份有限公司との間で、車載用リチウムイオン二次電池(LIB)に使用される溶剤系コーティングセパレータの製造に関する技術ライセンス契約を締結しました。今後は、両社で提携の幅を広げ、LIBの高性能化、安全性の向上に向け開発を進めて参ります。 当セグメントに係る研究開発費は154億円です。 <ヘルスケアセグメント> 医薬品分野では、英国の製薬企業であるリーディアント社と日本における独占開発・販売契約を締結しているアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症治療剤「レブコビ筋注2.4mg」について、2019年5月に販売を開始しました。また、関節リウマチ及び多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎治療薬のバイオ後続品「エタネルセプトBS皮下注「TY」の販売を2019年11月より開始しました。「献血ベニロン-I」の適応拡大として、2019年8月に「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の筋力低下の改善」、2019年12月に「視神経炎の急性期(ステロイド剤が効果不十分な場合)」の効能・効果の追加承認を取得しました。また、独メルツ社から導入し開発を進めている医薬品(開発コード:NT 201)について、2019年8月に「上肢痙縮」に対する製造販売承認申請を実施しました。加えて、「ソマチュリン」の適応拡大として、2020年3月に「甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍」の適応追加に対する一部変更承認申請を実施しました。また、自社開発品のTCK-276について、2020年2月に関節リウマチの適応取得に向けた第I相試験に着手しました。 在宅医療分野では、見やすい液晶表示や通信端末の搭載によってモニタリング機能を高めた酸素濃縮装置『ハイサンソi』を2019年4月に上市しました。機器のモニタリングデータを「HOT見守り番Web」と連携させることで、よりきめ細やかにアドヒアランスの確認をサポートします。引続き、周辺機器の開発やデータ活用に関する研究を進めています。また、ヘルスケア領域の新規製品・サービスの獲得を目指し、米国のヘルスケアベンチャーキャピタルファンドであるMedtech Convergence Fundに、最大で約90百万米ドル(約100億円)の出資を行うことを決定しました。同ファンドと共同でインキュベーション活動も推進し、医療機器・サービスに関連した帝人グループの研究開発機能の活性化を目指します。また、オープンイノベーションの一環として、2019年7月よりアクセラレータープログラムを開催し、スタートアップとの共創による新たな製品・サービスの開発を目指しています。 新規ヘルスケア分野では、医療機器分野において、大阪医科大学、福井経編興業株式会社との3社で共同開発を進めている「心・血管修復パッチ OFT-G1(仮称)」について、2019年6月、臨床試験を開始しました。「心・血管修復パッチ OFT-G1」は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医工連携事業化推進事業「術後のQOLを改善させる心・血管修復シートの事業化」の支援を受けて開発を進めています。 当セグメントに係る研究開発費は183億円です。 上記セグメントに属さない研究開発活動として、グループ共通の基盤技術の向上やエンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。これに係る研究開発費は8億円です。
FY2019|3,999 文字
5【研究開発活動】 帝人グループは、"未来の社会を支える会社"を目指し、外部環境の変化を先取りして変革し続け、常に新しい価値を創出するよう取り組んでいます。中期経営計画2017‐2019『ALWAYS EVOLVING』では、成長戦略による基盤収益力の強化、発展戦略による新規コアビジネスの確立を推進するとともに、それを支える経営システム基盤の強化を図っています。研究開発活動については、積極的かつ効率的な投資を継続しており、マテリアル事業領域とヘルスケア事業領域を2本の柱として、既存事業の延長線だけではなく、新たな高収益事業を核とした事業ポートフォリオへの変革を目指しています。 研究開発体制については、国内9カ所、海外8カ所の拠点からなるグローバルなネットワークを有しており、技術革新が企業成長の基本であるとの認識のもと、グループ全体の研究開発戦略を設定し、グループ各社の連携を強化して、研究成果の早期実現を図っています。 帝人グループには、事業の持続的成長や事業構造の変革を可能とする基幹技術群と、それを支える高分子化学、創薬技術、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー等の基盤技術があります。これらの技術をベースに、「環境価値ソリューション」「安全・安心・防災ソリューション」「少子高齢化・健康志向ソリューション」を重点技術領域と定めて研究開発を進めています。 知的財産戦略では、ICTを活用したツールを駆使した知財情報解析を行い、グループ内外の技術動向、知財動向を把握し、自社開発のみでなくオープンイノベーションも含めた技術群、知財の獲得方策を策定し、ビジネスモデルを構築することを目指しています。 なお、当連結会計年度の研究開発費は364億円(前期比5億円増)でした。 また、報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。マテリアルセグメント: ◆マテリアル事業 アラミド繊維分野では、「セーフティ」「オートモーティブ」「エアロスペース」「インダストリー」の4つを主力テーマとして、アラミド繊維製造技術及び新商品の開発を推進しています。耐熱性防護服用織物メーカーである「ウェステックス バイ ミリケン」とパートナー契約を締結し、共同展開の第一弾として、快適性と防炎性能の両立を実現した防護衣料向け織物「ウェステックス・シナジー・プロ」を共同開発しました。これは両社が培ってきたアラミド繊維織物に関する知見を駆使し、当社が展開する防炎性能に優れたメタ系アラミド繊維「コーネックス」を使用して開発したもので、アジア太平洋地域にて販売を開始しました。 炭素繊維分野では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるとともに、環境規制の高まりに伴う低燃費化の要請に応え、環境ソリューションとして「軽くて強い」高機能素材の拡大を図り、航空機の構造部材用材料である中間基材の開発を強化しています。ボーイング社との間で共同開発を進め、同社が展開する航空機の一次構造材向けの認定を受けた熱可塑プリプレグ「テナックス TPUD」は、耐熱性や耐衝撃性、耐疲労特性等に優れているほか、成形時間の大幅な短縮が可能で、生産効率の向上による低コスト化を実現しています。また、航空機のエンジン関連部材をはじめ、高い耐熱性及び耐衝撃性が必要とされる航空・宇宙用途向けに、このたび日本国内で初めて、両性能を兼備したビスマレイミド(BMI)系プリプレグの開発に成功しました。 樹脂分野では、今後成長が見込まれる電気自動車(EV)や、第5世代移動通信システム(5G)関連用途への高機能樹脂の提供を拡大すべく研究開発を行っています。ポリカーボネート樹脂では、高度な分子設計技術と重合制御技術を活かして、高画質化・デュアルカメラ化・小型化等が求められるスマートフォンカメラレンズや、耐熱性や耐候性が要求される車載用カメラレンズに使用する光学特性に優れた製品を開発しました。コンパウンド製品では、自動車・エレクトロニクス分野向けに、SKケミカル(韓国)との協業で展開しているPPS樹脂と帝人グループの高機能素材を組み合わせることにより、優れた強度と摺動性(滑りやすさ)等独自の機能を持つコンパウンド等の開発を進めました。また、技術サポート・開発拠点としてタイにテクニカルセンターを設立し、中国からの生産シフトが進むアジア全域でローカルでの顧客ニーズに対して迅速な開発が出来る体制づくりの推進に取り組みました。 フィルム分野では、既に有している易成型フィルム技術の応用の一環として、樹脂及び金属部品と同時に成形できる加飾フィルムの開発を継続しており、将来はスプレー塗装を代替することを目指しています。また、独自に保有するPENフィルムの低誘電特性に加え、難燃性付与技術を生かし、5Gの実現を見据えた採用の拡大に注力しています。 ◆繊維・製品事業 暮らしの快適性向上を「ものづくり」の基点にして、研究開発活動を実施しています。衣料素材では、次世代快適スウェット素材「フリーモ プロ」、撥水性ストレッチファブリック「ミノテックST」、麻調合線素材「シャレールリュクス」、着用快適性を追求した新素材「デルタSLX」等のスポーツ、ファッション用テキスタイルを上市しました。産業資材用途では、ニトリと共同開発した機能カーテン「エコナチュレ」、超極細ファイバーのナノフロントを用いた主に中国セメント工場向けの高性能バグフィルター等を開発し、上市しました。更に、新事業分野では、高機能繊維とセンシング技術を融合させた新たなウェアラブルソリューションとして「MATOUS(マトウス)」ブランドを立ち上げ、スポーツ・トレーニング分野や労働分野をはじめとする幅広い分野で製品評価、テスト販売を開始しました。 ◆複合成形材料事業ほか 複合成形材料分野では、顧客要求に沿ったコンポジット製造技術を他社に先駆けて構築することにより、自動車部品の軽量化、高強度化を中心とした社会に必要とされる環境、安全ソリューションの提供に向け、グループ内外の素材や技術を結集し、マルチマテリアル(MM)コンポジットによる提案力の強化を推進しています。成果の1つとして、2019年3月に開催された「JECワールド2019」にてMMドアを展示しました。本製品は、自動車の軽量・高強度化、デザイン自由度の向上、及び製造工程の短縮等に貢献する、コンポジット製の座席ドアモジュールで、スチールを使用した従来のドア部品に比べて、強度を保ちながら約35%の軽量化に成功しました。 また、新事業分野では、発展戦略による新規コアビジネスの確立を目指しています。半導体液体フィルター用途向けの需要が拡大している高機能メンブレン「MIRAIM」について、松山事業所内に量産設備の設置が完了しました。2019年4月より操業を開始しました。 当セグメントに係る研究開発費は160億円です。 ヘルスケアセグメント : 骨・関節、呼吸器、代謝・循環器の3領域に特化し、医薬品と在宅医療のシナジーも生かしながら、患者さんの Quality of Life 向上、新たな治療選択肢の提供につながる医薬品、医療機器、そして付加価値サービスを生み出すために、積極的な研究開発を行っています。また、デジタルヘルスケア、機能性食品素材等の分野で、未病~疾病~介護の全てに対応するヘルスケア事業基盤の構築、情報プラットフォームを活用した新規事業の創出に注力していきます。 医薬品分野では、2018年8月に株式会社陽進堂及びYLバイオロジクス株式会社と、関節リウマチ治療薬エタネルセプトのバイオ後続品の販売提携契約を締結しました。同剤は2019年3月に製造販売承認を取得しています。また、英国の製薬企業であるリーディアント社と日本における独占開発・販売契約を締結しているアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症治療剤「レブコビ筋注2.4mg」は、2018年6月に承認申請を実施し、2019年3月に製造販売承認を取得しました。また、2018年7月よりフェブリク®の痛風、高尿酸血症の小児患者への適応拡大に向けた第II相試験に着手し、これに伴って2018年9月にフェブリク®の再審査期間が2021年1月20日まで延長される旨の通知が発出されました。加えて、2018年9月に、中国でフェブキソスタットの「痛風患者における高尿酸血症の長期治療」の適応が承認され、2019年3月より販売を開始しました。ベニロン®の適応拡大に関して、2018年9月に慢性炎症性脱髄性多発根神経炎、2019年3月に視神経炎について、それぞれ承認申請を実施いたしました。 在宅医療分野では、モニタリング機能を高めた次世代酸素濃縮装置や周辺機器の開発、データ活用に関する研究を進めており、2018年4月に酸素濃縮装置の使用データを医療従事者がウェブ上で閲覧可能とすることで患者治療状況を把握、外来指導等に活用できるHOTデータマネジメントシステム「HOT見守り番Web」をリリースしました。 新規ヘルスケア分野では、再生医療分野において、JCRファーマ株式会社と日本国内におけるヒト(同種)歯髄由来幹細胞を用いた急性期脳梗塞を適応症とする再生医療等製品「JTR-161」の共同開発を進めてきました。2019年2月、「JTR-161」の急性期脳梗塞患者を対象とした国内第I/II相臨床試験において、第1例目の被験者に治験製品が投与されました。 当セグメントに係る研究開発費は198億円です。 上記セグメントに属さない研究開発活動として、グループ共通の基盤技術の向上やエンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。これに係る研究開発費は7億円です。
FY2018|3,822 文字
5【研究開発活動】 帝人グループでは、「社員の多様性を活かし、社会が必要とする新たな価値を創造し続け、未来の社会を支える会社になる」という長期ビジョンを掲げ、10年後の「目指す姿」を実現するための研究開発をグローバルな視野で推進しています。研究開発活動への積極的かつ効率的な投資を継続して実施しており、国内10ケ所、海外9ケ所のグローバル研究開発ネットワークにおいて、研究開発者が基礎研究を含めたグループ全体の研究開発戦略に基づく研究開発活動を推進しています。 10年後には、マテリアル領域とヘルスケア領域を2本の柱とし、それぞれの領域で基礎収益力の更なる強化を目指す「成長戦略」と、既存事業の延長線だけでなく「今はまだ利益に貢献していない新しい事業」を収益の柱とすべく、新規コアビジネスの確立を目指す「発展戦略」を、着実に実行することにより、新たな高収益事業を核とした事業ポートフォリオへと変革を進めていきます。長期ビジョンの実現に向けた、次の3か年における実行計画を明確にするために、平成29年2月に中期経営計画2017-2019「ALWAYS EVOLVING」を定めました。この計画の実現に向け、必要な基盤技術を強化・活用するとともに、技術や機能の融合・複合によりイノベーションを実現する「発展戦略」と、既存事業の中でも“環境価値ソリューション”、“安心・安全・防災ソリューション”及び“少子高齢化・健康志向ソリューション”を重点領域として収益最大化を図る「成長戦略」の推進のため、研究開発を着実に進めていきます。 組織体に関しては、成長戦略・発展戦略の加速を促すべく、研究開発体制の再編を継続中です。当期は、素材関連事業を一つのマテリアル事業に統合し、事業間融合を図るとともに、新事業推進をマテリアルとヘルスケアに分割・吸収し、連携を強化しました。 また、産官学連携等のオープンイノベーションの推進、知財戦略や構造解析能力等、研究開発活動を支える機能・組織の見直しとインフラ機能の強化、技術系人財の育成を一層推進しています。 人財育成に関しては、複合材料・ヘルスケア関連分野を中心とした大学教授や研究者が集まるフォーラムの開催、学界・学術研究機関等の有識者による技術アドバイザリー会議の開催、国内外の最先端研究機関への若手研究員派遣等を積極的に推進しています。平成22年度ノーベル化学賞を受賞され、帝人グループの名誉フェローにご就任頂いている根岸英一米国パデュー大学特別教授には、国内研究員のコンサルテーションを継続してお願いしています。 なお、当連結会計年度の研究開発費は359億円(前期比5億円増)でした。 また、報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。 マテリアル領域: ◆マテリアル事業 アラミド分野では、昨年4月から、Teijin Aramid B.V.(オランダ)を中心とした開発一体運営を開始しました。同年5月には、Teijin Aramid B.V.が、高性能タイヤ向けの商品開発や原糸サプライヤーとしての活動が認められ、サプライチェーンのサスティナビリティの評価機関であるEcoVadisが実施した調査において、最高ランクであるゴールド評価を獲得しました。また、新規防護衣料ファブリックとして、熱防護性に優れながら吸汗速乾性にも優れた「Teijinconex」 Coolnex Super Wickingを開発しました。 炭素繊維分野では、Toho Tenax Europe GmbH(ドイツ)において、炭素繊維の加工工程で発生する端材の有効活用として、リサイクル素材を使用した熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)「テナックス」Eコンパウンド rPEEK CF30を開発しました。また、東邦テナックス㈱においては、カーボンナノチューブを添加した樹脂を炭素繊維に含侵させた高弾性・高耐衝撃性プリプレグを開発し、ミズノ㈱のゴルフシャフトに採用が決定しました。航空機をはじめとする高収益・高成長分野での事業拡大を進めるため、引き続き、プリプレグ等の中間材料の開発を強化しています。 樹脂分野では、高度な分子設計技術と重合制御技術を活かした特殊PC樹脂の開発を加速し、デュアルカメラ化・顏認証センサーへの採用により成長が続くスマートフォンカメラレンズ市場や、自動運転・ミラーレス化等で成長が見込まれる車載用カメラレンズ市場に向けて顧客のニーズを先取りした複数の新規光学樹脂を開発しました。また、自動車・エレクトロニクス分野における部品の軽量化や耐熱性の向上等の顧客ニーズに幅広いソリューションを提供するため、SK Chemicals Co., Ltd.との合弁会社で生産するPPS樹脂と、帝人グループの高機能素材群を組み合わせた特殊コンパウンドを開発し本格的な展開を開始しました。更に、ASEANにおける樹脂コンパウンド製品の技術サポート・開発拠点をタイに新設することを決定し、建設を開始しました。 フィルム分野では、独自のポリマー改質技術と製膜技術を駆使することにより耐ガソリン性と成形性を両立した、植物由来のバイオポリカーボネート樹脂「PLANEXT」製のフィルムを開発しました。このフィルムは、クロムメッキに代わる意匠性の付与が可能であり、スマートエントリーシステム用のドアハンドルに採用されました。今後、特に自動車部材のマルチマテリアル化を見据えて、塗装代替フィルムの開発に取り組んでいきます。 ◆繊維・製品事業 タイにおけるポリエステルを中心とした繊維の研究開発拠点として、帝人フロンティア・タイ・イノベーション研究室(タイランド)(Teijin Frontier Thai Innovation Laboratory)を本年1月に開設しました。これにより、原料の研究開発から生産・加工まで一貫での対応が可能になります。今後は、同研究室での研究開発を通じ、グローバル需要への対応力を更に強化していきます。 一方、産業資材用途には、超極細のポリエステルナノファイバー「ナノフロント」のショートカットファイバーと、高度な不織布製造技術から成る、粉塵・粉体の捕集効率に優れ、省エネルギーや長寿命化が期待できる「ナノフロント」バグフィルターを開発しました。今後の中国における排塵規制強化に対応可能な商品として販売活動を強化しています。また、関西大学と共同し、昨年開発した組紐状のウェアラブルセンサー「圧電組紐」を活用し、使用する生地や刺繍する位置によらず簡単にセンシングでき、ファッション性も表現可能な世界初のセンシング技術「圧電刺繍」の開発に成功しました。 ◆複合成形材料事業ほか 複合成形材料分野では、北米で自動車向け量産部品を製造販売するContinental Structural Plastics Holdings Corporationが、シボレー「コルベット」平成28年モデルに採用された自動車外板部材用の超軽量成形部材「TCA Ultra Lite」により、自動車産業における革新的な技術に贈られる「PACEアワード」を受賞しました。また、樹脂グレージングにおいて、京都大学発の電気自動車メーカーであるGLM㈱が製造・販売するスポーツEV「トミーカイラZZ」向けにポリカーボネート樹脂製のピラーレスフロントウィンドウを開発し、世界で初めて市販車に採用されました。更に、東邦テナックス㈱及び㈱ジーエイチクラフトにおいて、外観性が高く形状が複雑な大型一体部品であるルーフカバーの製造技術を確立し、量産バスとして世界で初めて販売予定のトヨタ自動車㈱の燃料電池バスに採用されました。 また、その他の分野では、消防活動の安全性向上への取り組みの一環で、ウェアラブルデバイスを内蔵したスマート消防服を開発しました。 新事業分野では、高機能メンブレン「MIRAIM」について、半導体液体フィルター用途向けの需要が拡大していることから、松山事業所内に量産設備を新設することとしました。 当セグメントに係る研究開発費は156億円です。 ヘルスケア領域 : 医薬品分野では、昨年5月に新規アルツハイマー病治療薬の候補化合物について、Merck & Co., Inc.に全世界における独占的開発・製造・販売権を供与するライセンス契約を締結しました。同年7月には、厚生労働省から、「ソマチュリン」について効能・効果への「膵・消化管神経内分泌腫瘍」の追加承認を取得しました。同年10月には、Merz Pharma GmbH & Co.KGaAが創製したA型ボツリヌス毒素製剤「Xeomin」について、医療用医薬品として期待される全ての適応症につき、日本における共同開発・独占販売権を取得しました。 新規ヘルスケア分野では、再生医療分野において、昨年7月にJCRファーマ㈱と日本国内における他家(同種)歯髄由来幹細胞を用いた急性期脳梗塞を適応症とする再生医療等製品の共同開発契約及び実施許諾契約を締結しました。 当セグメントに係る研究開発費は195億円です。 上記セグメントに属さない研究開発活動として、グループ共通の基礎研究やエンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。これに係る研究開発費は8億円です。
FY2017|4,996 文字
6【研究開発活動】 帝人グループでは、「社員の多様性を活かし、社会が必要とする新たな価値を創造し続け、未来の社会を支える会社になる」という長期ビジョンを掲げ、10年後の「目指す姿」を実現するための研究開発をグローバルな視野で推進しています。研究開発活動への積極的かつ効率的な投資を継続して実施しており、国内8ケ所、海外8ケ所のグローバル研究開発ネットワークにおいて、研究開発者が基礎研究を含めたグループ全体の研究開発戦略に基づく研究開発活動を推進しています。 10年後には、マテリアル事業領域とヘルスケア事業領域を2本の柱とし、それぞれの事業領域で基礎収益力の更なる強化を目指す「成長戦略」と、既存事業の延長線だけでなく「今はまだ利益に貢献していない新しい事業」を収益の柱とすべく、新規コアビジネスの確立を目指す「発展戦略」を、着実に実行することにより、新たな高収益事業を核とした事業ポートフォリオへと変革を進めていきます。長期ビジョンの実現に向けた、次の3か年における実行計画を明確にするために、平成29年2月に中期経営計画「ALWAYS EVOLVING 2017-2019」を定めました。この計画の実現に向け、必要な基盤技術を強化・活用するとともに、技術や機能の融合・複合によりイノベーションを実現する「発展戦略」と、既存事業の中でも“環境価値ソリューション”、“安心・安全・防災ソリューション”及び“少子高齢化・健康志向ソリューション”を重点領域として収益最大化を図る「成長戦略」の推進のため、研究開発を着実に進めていきます。 組織体に関しては、成長戦略・発展戦略の加速を促すべく、研究開発体制を再編します。具体的には、素材関連事業を一つのマテリアル事業に統合し、事業間融合を図るとともに、新事業推進をマテリアルとヘルスケアに分割・吸収することにより連携を深めます。 また、産官学連携等のオープンイノベーションの推進、知財戦略や構造解析能力等、研究開発活動を支える機能・組織の見直しとインフラ機能の強化、技術系人財の育成を一層推進しています。 人財育成に関しては、複合材料・ヘルスケア関連分野を中心とした大学教授や研究者が集まるフォーラムの開催、学界・学術研究機関等の有識者による技術アドバイザリー会議の開催、国内外の最先端研究機関への若手研究員派遣等を積極的に推進しています。平成22年度ノーベル化学賞を受賞され、帝人グループの名誉フェローにご就任頂いている根岸英一米国パデュー大学特別教授には、国内研究員のコンサルテーションを継続してお願いしています。 なお、当連結会計期間の研究開発費は354億円(前期比21億円増)でした。 また、報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。 高機能繊維・複合材料事業: アラミド繊維分野では、危険作業に従事する方々の安全確保に向けたソリューションとして、高視認性衣服の国際規格である「ISO 20471」に準拠する、視認性の高い新しいアラミド繊維織物を開発しました。この新しいアラミド繊維織物は、防護衣料の難燃性や耐久性を保ちながら、遠距離でも着用者を目視で確認できるだけの高視認性を付与することを可能とするものです。 また消防団員が着用する防火服向けに、新たにデニム調のアラミド繊維織物「Xfire DENIM」(エクスファイア・デニム)を開発しました。これにより、耐熱性や強度、快適性、高いデザイン性を兼ね備えた防火服の提供が可能となり、火災現場等での消防職員と消防団員の識別にも役立ちます。 ポリエステル繊維分野では、ポリエステル製タテ型不織布「V-Lap」を基材とする天井材「かるてん」を使用した、超軽量天井システムにおける新たな耐震工法「かるてんTB工法」を開発しました。この工法は、平成27年6月に一般評定を取得した「かるてんTA工法」の軽量性や耐震性を保ちながら施工性を向上させたものです。また、「かるてん」は、昨年4月にオープンした「イオンモール今治新都市」の天井材として採用されています。 また、自社の高機能素材や技術を活かした快適性に優れる製品群を、新たに「Tcomfort(ティーコンフォート)」シリーズとして展開することとしました。そのブランドの第一弾として、高機能ポリエステルクッション材「エルク」、ポリエステル製タテ型不織布「V-Lap」を積層し、真空高温スチームでセットすることで密度調整、薄型軽量化、耐久性アップを実現する加工技術等、帝人独自の素材、技術を組み合わせることにより、優れたクッション性と快適な寝心地を実現した「Tcomfort」マットレスを開発し、発売しました。一方、帝人グループで人工皮革事業を展開する帝人コードレ㈱は、この度、自社が展開する人工皮革ブランド「コードレ」の新たなラインナップとして、仔牛の革であるカーフやキップ等の上質な天然皮革のような質感、重厚感、ならびに高い機能性を持つ新製品「MAESTLEY(マエストレ)」を開発しました。上質な天然皮革の代替製品として今春上市し、今後、自社が保有する最先端の複合技術を活かしてバリエーションの拡充を進め、シリーズ展開していきます。 炭素繊維・複合材料分野では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるため、ダウンストリームビジネスへの展開を引き続き加速しており、特に自動車用途においては、量産部品への適用を見据え熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)「Sereebo」の開発や、国内外の複数企業との共同開発を進めています。 更にこの度、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)を用いた自動車部品でのグローバル最大手である米国Continental Structural Plastics Holdings Corporationの全株式を取得し、完全子会社といたしました。自動車向け複合材料製品事業のTier1サプライヤーとして、優れた自動車部品設計・生産技術、 品質管理、ノウハウを持つ同社の獲得により、自動車メーカーのニーズを的確に把握するとともに、同社が有するガラス繊維複合材料(GFRP)や、当社が有するCFRTPといった高機能複合材料の特長を活かした部品提案を通じて、従来部品を超える付加価値の提供を目指していきます。 そのほか、昨年5月には欧米の自動車メーカーがTier1メーカーに対して認証取得を必須としている品質マネジメントシステム規格「ISO/TS 16949」の認証を取得する等、グローバル水準の自動車部品メーカーになるための体制構築を進めています。また北米を中心とした炭素繊維の需要増への対応として、新工場建設に向けた検討を推進しており、米国内での土地取得を完了しました。 またこの度、Continental Structural Plastics Holdings Corporationが、米国の自動車専門媒体「Automotive News」が主催し自動車産業における革新的な技術に贈られる賞で20年以上の歴史がある「PACE (Premier Automotive Suppliers' Contribution to Excellence) アワード」を受賞しました。受賞対象はシボレー「コルベット」2016年モデルの外板部材に採用された超軽量成形部材「TCA Ultra Lite」で、車体全体の軽量化を実現しています。素材の低比重化とアルミ等の金属と同等の表面平滑性の両立を実現しただけでなく、自動車の量産ラインにおいて必須である電着塗装にも適応可能となり、外板部材の塗装に要求される「クラスA」品質を実現しています。 当セグメントに係る研究開発費は44億円です。 電子材料・化成品事業: 樹脂分野では、コンパウンド樹脂の高機能化技術開発に注力しています。その一つとして、長年の課題であった成形品での外観不良や表層剥離を解決することで耐薬品性や軽量性の向上が期待できるポリカーボネート樹脂とポリプロピレン樹脂のアロイ化に成功しました。既に、本技術を用いたアロイ樹脂の外観部品用途での評価が進んでおり、住宅設備関係の水回り用途への採用を皮切りに、他の分野でも量産採用を目指しています。 また、透明性・耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂の特性を活かしつつ自動車樹脂グレージング用途で要求される耐擦傷性と耐久性を向上させる技術として、ラボレベルでのプラズマCVD(化学気相成長)法によるコーティング技術の開発を行ってきました。この度、実車サイズの成形品へのコーティング技術に目途が立ったことから、実車サイズのサンプル試作や限定車向けの少量生産等が行える設備を松山事業所に導入し、昨年末に稼動を開始しました。今後、用途や生産数を限定した製品提供体制を段階的に整備し、量産化を見据えた生産技術の確立に取り組み、早期の事業化を図ります。 フィルム分野では、関西大学と共同で世界初となる、ポリ乳酸の積層フィルムをロール状にした圧電体を開発しました。この圧電ロールは、数μmのポリ乳酸フィルムを数百~数千の間で巻回したもので、持続的に荷重をかけることで最大電圧の90%以上が最大2分程度持続するという特性を有する圧電体です。今後、顧客ニーズに応じた圧電性能や加工ノウハウを集積し、センサー用途や起電エネルギー用途を中心に、顧客との共同開発に取り組んでいきます。 当セグメントに係る研究開発費は34億円です。 ヘルスケア事業: 医薬品分野では、昨年7月に「ソマチュリン*1」について、「神経内分泌腫瘍」への効能・効果追加申請を行うとともに、2型糖尿病における新規の糖尿病性腎症治療薬として「TMX-049DN」の臨床開発(英国、第Ⅰ相)に着手しました。昨年8月には、小児における成長ホルモン分泌不全性低身長症を最初の予定適応症として、米国Versartis Inc.が創製した新規長期作用型成長ホルモン剤「VRS-317」の日本における独占的開発・販売契約を締結しました。昨年11月には、厚生労働省から「ソマチュリン*1」の甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍への適応拡大に向けた開発要請を受け、治験の1年以内の着手に向けて対応を開始しました。昨年12月には米国Amgen Inc.との間で新規腎疾患治療薬に関する共同研究・ライセンス契約を締結しました。本年2月には新規骨粗鬆症治療薬「ITM-058」の第Ⅲ相試験に、本年3月に新規高尿酸血症・痛風治療薬「TMX-049」の第Ⅱ相試験及び新規2型糖尿病治療薬「TMG-123」の第Ⅱ相試験に着手しました。 在宅医療事業分野においては、大阪大学等との産学連携で開発した磁気刺激装置について、医師主導による難治性神経障害性疼痛の治験を多施設において実施しています。昨年11月には上肢用ロボット型運動訓練装置「ReoGo-J」を上市しました。 当セグメントに係る研究開発費は183億円です。 *1 ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。 製品事業: 帝人フロンティア㈱の「新事業開発室」において、現在ウェアラブル電極布技術を応用した用途開発や、纏う化粧品「ラフィナン」の商品強化に向けた技術開発・製品企画のほか、帝人グループ間の融合による環境・防災減災・介護ヘルスケア関連のビジネス案件についての商品開発を進めています。 当セグメントに係る研究開発費は7億円です。 帝人㈱で行うコーポレート研究(グループ共通の基礎研究及び新事業・新製品創出)では、帝人グループの発展戦略を実現すべく、素材技術・ヘルスケア技術・IT技術の融合により、新事業の創出を目指して研究開発に取り組んでいます。また新たに機能性食品素材の分野として、スーパー大麦「バーリーマックス」の開発を推進しており、食物繊維、難消化性でんぷんを多く含むことによる整腸作用を臨床試験にて確認し、自社商品の試験販売も開始しました。これらに係る研究開発費は86億円です。これらの費用については、各セグメントへの配賦は行わずに「消去又は全社」に表示しています。
FY2016|6,316 文字
6【研究開発活動】 帝人グループでは、ブランドステートメント"Human Chemistry, Human Solutions"のもと、人々の暮らしを豊かにし、社会の発展に貢献することで事業の持続的成長と収益性向上を実現するための研究開発をグローバルな視野で推進しています。研究開発活動への積極的かつ効率的な投資を継続して実施しており、国内8ケ所、海外7ケ所のグローバル研究開発ネットワークにおいて1,600名余りの研究者が、基礎研究を含めたグループ全体の研究開発戦略に基づく研究開発活動を推進しています。中長期経営ビジョン「CHANGE for 2016」で定めた帝人グループの成長戦略と、それを支える経営基盤の強化を基軸に据え、既存事業の深化、幅出しに加え、「グリーンケミストリー」「ヘルスケア」及びこれらの「融合領域」を研究開発の重点技術領域と定めて、基盤・基幹強化を進めています。更に平成26年11月公表の修正中期計画では、発展戦略の主要施策として「複合化」と「融合」による「ソリューション提供」の実現に向けた重点資源投入を行う事を発表しました。高機能素材、ヘルスケア、ITという3つの異なる事業の強みを複合化、融合し、競争力のある素材を用いたソリューション提供型ビジネスの構築による高収益事業創出に向け、研究開発を着実に進めています。サプライチェーンやビジネスモデルの変革を念頭におき、素材等の一次製品の提供だけではなく付加価値をつけた部材・デバイスまでを作り上げて納入する、またIT技術を活用しヘルスケア分野で新しいサービスを提供する等、従来型のビジネスの域を超えた価値創造、ポートフォリオ変革に積極的に取り組んでいきます。 平成26年度から継続して研究開発機能の強化と研究開発成果の早期事業化の推進を目的にいくつかの組織改編を進めています。まず平成26年4月には、従来の技術最高責任者、研究部門、エンジニアリング本部及び原料重合技術開発部を統合し、技術本部を設置しました。 平成27年4月からは、プラットフォーム構成技術(基盤・基幹技術)の強化・拡充と出口発想に基づくソリューション開発力の強化を目的に技術本部内に技術開発部門とその下部組織である「加工・ソリューションセンター」(松山拠点)を新設し、併せて、これまで技術本部直下組織であった「先端技術開発センター」を同部門へ編入しました。平成27年8月には高機能素材のソリューション開発拠点として、松山事業所(愛媛県松山市)内に「技術開発センター」を開設し、本格稼働しました。「技術開発センター」は、全社横断的なソリューション開発機能、及びエンジニアリング機能の融合の場として設立するもので、帝人グループの研究開発の中核拠点として、高機能素材分野におけるソリューション開発機能の強化を図るとともに、素材の複合化、モノとサービスの複合化によるソリューション開発の加速を目指しています。 なお、「加工・ソリューションセンター」は、発展戦略を加速的に推進する「ソリューション開発センター」に、また、「先端技術開発センター」は基盤技術の強化を担う「基盤技術開発センター」として平成28年4月にそれぞれ改組しました。 「技術開発センター」では、発展戦略における成長コンセプトとして掲げている「高機能複合材料による顧客価値の実現」「モニタリング・サービスの横展開」「在宅医療モデルの横展開・市場創造」及び「生体適合医療材料の実用化」に向けたソリューション開発に注力していくこととしており、既にスマートウェアラブルの実用化や、高機能素材とITの融合による高靱性軽量構造材の建築分野への展開等を重点テーマとして活動しています。 また、産官学連携等のオープンイノベーションの推進、知財戦略や構造解析能力等、研究開発活動を支える機能・組織の見直しとインフラ機能の強化、技術系人材の育成を一層推進しています。 人財育成に関しては、高分子・バイオ関連分野の大学教授や研究者が集まるフォーラムの開催、学界・学術研究機関等の有識者による技術アドバイザリー会議の開催、国内外の最先端研究機関への若手研究員派遣等を積極的に推進しています。平成22年度ノーベル化学賞を受賞され、帝人グループの名誉フェローにご就任いただいている根岸英一 米・パデュー大学特別教授には、国内研究員のコンサルテーションと「Teijin Limited Director of the Negishi-Brown Institute」としての派遣研究員への直接のご指導を継続してお願いしており、幾つかの新しい技術開発成果が生まれつつあります。なお、当連結会計期間の研究開発費は333億円(前期比9億円増)でした。また、報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。 高機能繊維・複合材料事業: アラミド繊維分野では、帝人グループでパラ系アラミド繊維「トワロン」を生産・販売しているテイジン・アラミドB.V.(オランダ・アーネム市)が、この度、貨物輸送関連製品を扱う米国のマクロ・インダストリー社(米国・アラバマ州)と、「トワロン」を使用した、耐久性・難燃性の高い航空貨物コンテナ(ULD)の共同開発、及び製造、商業化に向けて協力していくことで合意しました。「トワロン」を使用して製造されたULDは、軽量性や耐久性がアルミ製ULDよりも優れていることが評価されており、世界に約90万台あるとされるアルミ製ULDからの置き換えも容易で、設置後のメンテナンスも削減できるため、環境負荷低減にも貢献することが期待されます。 また、パラ系アラミド繊維「トワロン」は、㈱LIXILが開発した木造軸組工法住宅向けの耐震リフォーム工法「アラテクト」に採用されました。「アラテクト」は既存の壁を壊さずに耐震化が可能な、木造住宅向けの新たな耐震リフォーム工法で、薄いシート状に加工することが可能でかつ引張強度の高い材料が必要であることから「トワロン」が採用されたものです。 更に、新規メタ系アラミド繊維「Teijinconex neo」の生産工場をタイ国アユタヤ県に新設し、平成27年8月より生産・販売を開始しました。「Teijinconex neo」は世界最高レベルの優れた熱防護性を持ち、安定した染色性により従来の「コーネックス」では実現できなかった後染め(紡糸・製織後の染色)が可能で、かつ特殊な紡糸法により製造プロセスにおける化学物質排出やエネルギー消費を削減することができます。生産工場の本格稼働により、既存の「コーネックス」と合わせ、日本や欧米のほか、中東やアジア等グローバル市場に向けて事業展開を図っていきます。 ポリエステル繊維分野では、極細ポリエステル繊維を使用した面ファスナー「ファスナーノ」を開発しました。超極細ポリエステルナノファイバー「ナノフロント」のパイル地を用いた同製品は、その特性である高い摩擦力を最大限に活かし、僅かな力で容易に着脱することができます。今後は介護用や一般向けの寝装、雑貨用途等に向け、「ファスナーノ」を使用した商品を展開していきます。 炭素繊維・複合材料分野では、自動車向けの高付加価値CFRPビジネスを加速させるため、これまで複合材料開発センターが担ってきた熱可塑性CFRPのマーケティング機能と、グループ会社である東邦テナックス㈱が担ってきた熱硬化性CFRPのマーケティング機能を平成27年4月に統合し、炭素繊維・複合材料事業本部直轄の組織「オートモーティブ事業開発推進グループ」として再編しました。これに伴い複合材料開発センター(愛媛県松山市)は、個別テーマの技術開発機能に特化して取り組む組織として「複合材料技術開発センター」に改称しました。 また、複合材料技術開発センターでは、国際的な試験所認定規格である「ISO/IEC 17025」(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)を取得し、これにより同センターでは、熱可塑性CFRPの製造から評価までをワンストップで顧客に提供することが可能となりました。 更に、航空機や自動車用途において求められる高強度と高弾性率を両立した新しい炭素繊維「テナックスXMS32」の開発や、産業機器・航空機部材用途等幅広い用途への展開を目指す熱可塑性樹脂を使用した難燃かつ高強度・高剛性の織物プリプレグの開発を行いました。鉄道車両用途では、川崎重工業㈱が開発した新世代台車「efWING(イーエフ ウィング)」に搭載するCFRP製バネを同社と共同開発し、同社への供給を開始しています。加えて、高収益・高成長分野での事業拡大に向け、ダウンストリームビジネスへの展開の一環として、欧州において高機能成形機を導入し、プリフォームの自動製造プロセスと組み合わせてCFRPの一貫生産体制の構築を図りました。 また国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施している「革新的新構造材料等研究開発」の成果として、世界初の技術である「マイクロ波による炭素化技術」と「プラズマによる表面処理技術」の開発に成功しました。来るべき炭素繊維複合材料の量産化時代に向けて、これら製造エネルギーと二酸化炭素排出量を半減させ、生産性を飛躍的に向上させる革新的な炭素繊維製造量産プロセスの工業化を目指していきます。 当セグメントに係る研究開発費は48億円です。 電子材料・化成品事業: 樹脂分野では、自動車樹脂グレージング用途で要求される耐擦傷性と耐久性を向上させる技術として、ラボレベルでのプラズマCVD(化学気相成長)法によるコーティング技術の開発を推進しています。この度、自動車窓に求められる新たな保安基準への対応に目途をつけたことにより、今後は実車サイズに対応可能な開発設備を松山に導入し、スケールアップ技術・三次元形状対応技術の開発による積極的なソリューション提供を行っていきます。 カメラレンズ用途においては、最高レベルの屈折率と耐熱性を兼ね備えた特殊ポリカーボネート樹脂を開発し、市場での評価を開始しました。スマートフォンの薄型化や車載カメラ、防犯カメラ等厳しい条件下で使用される用途での今後の伸長に対応するため、更に高い屈折率と耐熱性を有する樹脂の研究開発を継続します。 更にノンハロゲンに対応した難燃剤「FCX-210」の用途拡大に向けて、予め対象とする樹脂へFCX-210(紛体)を練り込み、粒状としたマスターバッチを開発することで、繊維への同剤の応用を可能としました。難燃性を求められるカーテンやカーペット、壁紙等インテリア用途への市場拡大に向けて、顧客へのサンプル出荷を開始しています。 フィルム分野では、平成27年10月に高い汎用性と輝度や拡散性、傷つき防止等の機能の高さを併せ持つ液晶ディスプレイ用反射フィルムの新商品「テトロンUX K2シリーズ」「テトロンUX QTシリーズ」を開発し、上市しました。 また、平成28年1月に離型フィルム「Purex」の新グレードを開発、インドネシア工場での生産を開始しました。今後、「Purex」生産の国内外での拡大を図っていきます。 当セグメントに係る研究開発費は34億円です。 ヘルスケア事業: 医薬品分野では、平成27年4月に新規高尿酸血症・痛風治療薬として「TMX-049」の第1相臨床試験に着手しました。また「フェブリク錠」のがん化学療法に伴う高尿酸血症への適応拡大プロジェクトとして開発中の「TMX-67TLS」については、平成27年7月に厚生労働省に対し承認申請を行いました。平成27年9月には、ペプチドリーム㈱との共同研究開発契約を締結し、これまで創薬の対象から除外されてきた様々な創薬標的に対して特殊環状ペプチドの医薬品化に取り組み、医療ニーズの高い疾患に対する革新的医薬品の創製を目指しています。そのほか、中国でアステラス製薬(中国)有限公司と共同開発中の痛風・高尿酸血症治療剤「TMX-67」(一般名:フェブキソスタット)について、平成27年11月に中国国家食品薬品監督管理局に承認申請を行いました。また、平成28年1月には、英国シグマタウ社が創製したADA欠損症治療薬「EZN-2279」(国内開発コード;STM-279)の臨床開発に着手し、同年3月には厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を取得しました。 在宅医療事業分野においては、小型・軽量でありながら連続流1L/分を実現した携帯型酸素濃縮装置「ハイサンソポータブルαⅡ」を平成28年3月に上市しました。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療器であるCPAP装置についても、快適に治療を継続できる「スリープメイト10」を平成28年2月に上市しました。また超音波骨折治療法においては、患者の治療継続意識の向上を図った「セーフスexogen」を平成28年1月に上市しました。 これらに加え、発展戦略の一環として平成27年9月より患者情報共有システム「バイタルリンク」の販売を開始し、地域包括ケアの軸となる施設等を中心に営業活動を行い、事業展開を図っています。また、大阪大学等との産学連携で開発した反復経頭蓋磁気刺激装置の治験器を用いた医師主導による難治性神経障害性疼痛治験は、平成27年12月の大阪大学医学部附属病院の治験開始に続いて、その他複数の病院においても治験が開始されました。 当セグメントに係る研究開発費は152億円です。 製品事業: 帝人フロンティアでは、平成27年10月に社長直轄組織として技術専任スタッフ構成による「新事業開発室」を新設しました。各種商品展開が期待される「ウェアラブル電極布技術」、「身に纏う化粧品ラフィナン」関連から環境・介護・ヘルスケア分野等を中心に、製品事業グループ全般にわたる新領域開拓、新事業モデル構築を目的として、本格的な技術開発に向けた取り組みをスタートしています。 当セグメントに係る研究開発費は6億円です。帝人㈱で行うコーポレート研究(グループ共通の基礎研究及び新事業・新製品創出)では、帝人グループの発展戦略を実現すべく、素材技術・ヘルスケア技術・IT技術の融合により、新事業の創出を目指して研究開発に取り組んでいます。高変換効率太陽電池を製造するための材料となる「NanoGramシリコンペースト」については、太陽電池メーカーへのマーケティング活動、共同開発活動を本格的に推進しています。また、帝人の素材技術を活かした『電波を制御するシート』である「セルフォーム」の2次元通信技術をベースとした棚管理システム「レコピック」の販売を推進しています。「セルフォーム」とタグキャストのビーコン技術「TAGCAST」の組み合わせにより、スマートフォンやタブレットを置くことでネットワークへの接続を認証する世界初のシート型ビーコンである「PaperBeacon(ペーパービーコン)」を開発し、平成27年6月より販売を開始しました。ヘルスケアの分野においては、埋め込み型医療機器、再生医療製品等、新たな事業分野の創出を目指し、研究開発活動を推進しており、心臓修復パッチは経済産業省の医工連携事業化推進事業として継続して開発に取り組んでいます。これらに係る研究開発費は93億円です。これらの費用については、各セグメントへの配賦は行わずに「消去又は全社」に表示しています。