研究開発活動(本文)
FY2025|7,673 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、植物性の油脂とたん白を基盤とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んできました。長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、不二製油グループ憲法のビジョン「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」に向けて、新技術・新素材の開発による事業シナジーの最大化や新たなビジネスモデルの創出を目指した研究開発活動を実施しています。世界中の方々の食べることの歓びと健康に貢献することをモットーに、「社会になくてはならない会社」になるための研究開発活動に努めています。 日本国内の「不二サイエンスイノベーションセンター」と「つくば研究開発センター」を研究開発の中核拠点とし、主に中国・東南アジア地域に設置した顧客との共創の場である「フジサニープラザ」、オランダのフードバレーの中心となるワーヘニンゲン大学キャンパス内に2021年度に開設した「フジグローバルイノベーションセンターヨーロッパ」、そして各グループ会社の研究開発部門が連携し、事業戦略と一体となったグローバルな研究開発を推進しています。また、イノベーションを推進するため、国内外の大学や研究機関とのオープンイノベーションや顧客との共創活動を強化しています。 知的財産部では、創業当初より植物性の原料を基礎原料にして植物性の油脂とたん白の加工技術を深掘しながら、磨き上げてきた成果を特許ポートフォリオとして構築しています。市場優位性や価格決定力に影響し得る重要特許シェア率(注1)では国内トップレベルに位置しております。今後は、将来の重要特許を生み出すための人材投資(≒新規発明者数(注2)に注力することで、グローバルでの市場優位性をさらに高めてまいります。 技術開発部では、「安全、品質、環境」にこだわり、コア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。 当連結会計年度の研究開発費の総額は6,457百万円です。 (注3) (注)1.油脂、チョコレート関連特許は、2015年以降における油脂、チョコレート等に関する特許分類に基づいて抽出された母集団を定義。母集団の被引用数上位5%に該当するものを重要特許として定義。2.2015年以降に新たに出願した発明者のみを集計して算出。3.重要特許シェア率が1%を超えている企業をグラフに表示。 研究開発活動の概要は次のとおりです。 (植物性油脂事業) 安全・安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品、及びその最適な応用法に関する研究開発を通して、顧客の要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。 当連結会計年度の主な成果としては、価格が高騰している国内外のココアバターの代替需要への対応策として、低価格仕様のCBE(注1)の市場導入、多様な代用脂の利用方法等を顧客へ提案し、チョコレート菓子市場の安定化及び活性化に対応しました。エシカル消費の緩やかな拡大と動物性油脂の供給不安定化という環境において、プラントベースフード(植物性食品)向けとして開発した動物代用油脂では、当社独自技術の分散技術であるDTR技術(注2)を利用し、植物性油脂に不足しがちな風味の満足感の付与に加えて、加工適性の継続的な改良により冷凍食品や加工食品用途での実績化が進んでいます。 従来の油脂結晶制御技術や酵素応用技術の深掘も継続して技術革新を進めております。酵素技術を活用した新規改良法の導入によるココアバター代用脂の機能改良を図る等、日々改善取組の実現に向けた基盤技術開発にも取り組んでいます。欧州を中心に規制が強化されているプロセスコンタミナント(グリシドール脂肪酸エステル等)除去につながる製造技術開発に一層注力し、国内及びグローバルの市場環境にも対応可能な油脂素材として提案を継続しております。 また、栄養健康分野においては、風味劣化抑制技術を用いたDHA・EPA油素材やアマニ油素材の市場導入を進めており、DHA・EPA油では機能性表示制度対応の健康志向チョコレートに新たに採用されました。消費者への認知をさらに拡大するために、健康関連油脂の摂り方を伝える動画配信やウェブ配信記事を活用した製品案内を新たな市場展開ツールとして拡充させました。 当事業の研究開発費は1,147百万円です。(注)1.CBE:Cocoa Butter Equivalentの略。ココアバターと同等の物性を持ったチョコレート用油脂。2.DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味等)や保存安定性を付与増強する技術。 (業務用チョコレート事業) チョコレートを通して社会課題解決を行うべく、新技術開発・原料選定を行い、具現化したアプリケーションと共にソリューション提案を行っております。 未曽有のカカオ不足と価格高騰に苦慮するチョコレート業界を支えるべく、国内ではカカオ原料の使用削減と風味の維持を両立させたコンパウンドチョコレート(注1)製品の「CPチョコレート」シリーズ2品(ビター、ホワイト)をいち早く導入し(2024年6月に上市)、供給不安が広がりつつあった市場の混乱を未然に防ぐことができました。この「CPチョコレート」は、ココアバターを極力使わずに植物性代替油脂(CBE)の機能を最大限に活用したその品質に加えて、魅力的な価格や供給安定性を兼ね備えたことから、これまで海外ブランドを使用していたパティシエの方々が当社のチョコレートに目を向けるきっかけとなりました。本製品は、想定以上の販売数量で推移しており、急遽3品目のミルクタイプも上市(2025年2月)するに至る等、これまでクーベルチュールの独壇場であったパティシエの世界においてもコンパウンドチョコレートの定着が確実視されております。一方、海外のブラジル市場においてもチョコレートの価格上昇に対するソリューションの提案が必要でした。南米の子会社であるHARALD INDÚSTRIA E COMÉRCIO DE ALIMENTOS LTDAでは、従来から強みとするコンパウンドチョコレート製品を使ったアプリケーション紹介を増やすことに加えて、CBEコンパウンドチョコレート製品である「Inovare」をリニューアル発売してお客様の選択肢を増やす提案を行いました。これまでブラジル市場ではCBEコンパウンドチョコレートはあまり馴染みがないという課題がありましたが、チョコレートと同様に使えて美味しく、価格的にも求めやすい製品であることを直接消費者に説明して実感していただくために、店頭での試食キャンペーンの取組を行いました。その効果もあり「Inovare」は計画以上にお客様にご購入いただいています。米国の子会社のBlommer Chocolate Company, LLCは、CBEを活用したプレミアムコンパウンドチョコレートブランド「Elevate」を立ち上げました。従来のチョコレートよりも低価格で、風味や物性面ではココアバターを用いたチョコレートとそん色ない品質を有する「Elevate」シリーズは、発売と同時期に行われた北米最大の食品原料と食品技術の展示会IFTで大々的に紹介され、話題となりました。 カカオ非生産国である日本でカカオ輸入が全く困難になる状況を想定して、カカオ原料を一切使用しないミルクチョコレートタイプの「アノザM」を導入いたしました。国内外の顧客からの問い合わせもさることながら、メディアからの取材依頼も多く、当社のチョコレート市場における地位向上に寄与しております。 当事業の研究開発費は1,488百万円です。(注)1.コンパウンドチョコレート:チョコレートの規格は国によって異なり、北米ではココアバター以外の油脂を配合すると「コンパウンドチョコレート」と分類される。 (乳化・発酵素材事業) ホイップクリーム、調理用クリーム、ドリンクベース、マーガリン、フィリング、チーズ風味素材等の乳製品代替素材の開発、弊社独自のUSS製法による豆乳を活用した新技術・新製品開発、及びアプリケーション開発を通し、美味しさにこだわりながら社会課題のソリューションの提供を目指して活動しております。 当連結会計年度は、乳原料をはじめとする原料価格の高騰や供給の不安定化、急激な物価の上昇等、原料事情や市場の変化に迅速に対応した新製品開発を行い、大きく利益貢献を果たしました。マーガリン関連ではバターの濃厚な風味の強化に取り組み、従来に比べてバターの使用量を低減しながらも良好なバター風味を実現し、商品価値を向上させつつ原料コストを抑えるソリューションとして製菓製パン市場を中心に高い評価を得ております。ドリンクベース、フィリング類等の製品開発では、インバウンド等による外食市場での需要増加に対応し、乳化技術をベースとした機能性や風味づくりで顧客からの厚い支持をいただき採用が進みました。 また、新しい発酵技術開発に取り組み、本格的な熟成チーズ風味を実現する技術を開発しました。輸入中心で高価かつ物性面でも制約の多い熟成チーズに依存しなくとも、本発酵技術によって従来品とは異なるなめらかな物性と本格的な風味等を表現でき、高まるチーズ需要にリーズナブルに応える製品開発が可能となりました。すでに、製菓製パン、外食、加工食品等幅広い市場で高く評価いただき、実績化に大きく貢献しております。 植物性素材では、特においしさにフォーカスした製品開発に注力し市場で高く評価されております。豆乳クリームバター「ソイレブール®」はバターのようなクリーミーさ、ジューシーさを持ちながらも、バターとは異なる他素材との相性の良さという特徴で顧客の商品の幅を広げ、高い評価をいただくとともに年々実績を伸ばしています。さらに、USS製法による新しい価値として、独特のなめらかな食感と口当たりの「やみつき新食感スイーツ」を上市、外食市場等で簡便にスイーツを提供できるとして高い評価を受けております(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「多様な植物性素材の創造」)。 日本のパンや洋菓子のトレンドは、中国や東南アジア地域で非常に注目されています。当連結会計年度では数回にわたり中国の大手ベーカリーや洋菓子チェーン向けに日本のトレンドを紹介するツアーを行い、中国と日本の市場開発メンバーが協業して日本で人気のパンや洋菓子の紹介を実施しました。このような活動が功を奏し、マーガリンやクリームの採用につながっております。 当事業の研究開発費は1,065百万円です。 (大豆加工素材事業) 大豆たん白質や大豆たん白食品、大豆ペプチド、大豆多糖類等による、お客様の課題解決を目指した製品の開発・上市や改善に取り組んでいます。 粉末状大豆たん白素材では従来からの主要市場である畜肉、水産、総菜加工用途向けの「サンラバー®SY2000」を上市しました。これは粉体の分散性と物性に優れ、従来製品では対応できなかったミキサー攪拌機での乳化生地生産が可能となり、生産現場の作業効率化や省人化を可能とする点が高く評価され、市場での採用が進みました。栄養健康市場用途では、2023年に開発した「プロリーナ®HD505」や「プロリーナ®23LG」のプロテイン飲料市場での採用が順調に伸長しました。「プロリーナ®1400H」は東南アジア向けとしてHALAL認証に対応し、栄養健康市場での海外採用が進みました。高騰する卵素材への対応としては、スポンジケーキ等の洋菓子利用に特化した大豆たん白製剤の「ウフリー®」を上市し、全卵の一部置き換え利用や卵を使わないプラントベースのスポンジケーキに採用されました。大豆多糖類素材では、高pH設計の酸性乳飲料用途向けに「ソヤファイブ®HP100」を開発し、競合となるペクチンにはない低粘度特性も高く評価されております。 粒状大豆たん白素材では、従来からの主要市場である総菜加工用途向けで肉を置き換えられ、噛み応えのある食感の新製品として「アペックス®TMR10」を上市し、採用が進んでいます。肉質感に優れた大豆ミート素材として「プライムソイ®」を提案し、「プライムソイ®国産大豆」はホテルメニューや流通PBのワンハンドスナック等に、海外では「プライムソイミート」がシンガポールの外食店に採用されました。また、焼き肉にも使えるスライス肉タイプや、外食・中食のお客様向けに小袋タイプを発売しました(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「多様な植物性素材の創造」)。 栄養スナック、バー市場では、プロテインのコンセプトをうたう商品の多様化が進んでいます。「ソヤパフ®10」は大豆の美味しさを活かした製品として発売し、たん白質訴求スナックで採用されました。新たにペットフード市場向けにも新製品を開発しており、大豆の栄養価に着目した市販商品に採用されました。 副産物のオカラから機能性食物繊維素材の「ソヤセル®」を開発・上市しました。小麦粉加工製品や畜肉総菜生地等での食感改良や保存性の向上、スープやソース類等での耐熱、耐冷性があり、粘度安定性に優れた特性を有しながらも食品添加物扱いではなく食品としての表示が可能です。加えて、呈味の増強効果があり、調味料低減にも対応できます。同じく大豆加工時の副産物から農業向け肥料「ソヤウェイ®」を上市し、大阪公立大学や各企業様との圃場試験において作物栽培への有効性データ取得を進めました(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「フードロスの削減とアップサイクル」)。 当事業の研究開発費は1,290百万円です。 (中長期視点での研究活動) 中長期視点の研究開発活動としては、大きくは、社会課題に対する研究開発及び新規事業につながる技術開発を行っています。 昨今、気候変動対策や世界的な人口増加、人権侵害等の多くの社会課題に対して、将来を見据えた取組が企業に求められています。未来創造研究所では、人口・経済・環境・食糧・ヘルスケアに関する定量情報を用いて2050年までの未来年表を作成することで将来起こりうる社会課題を把握し、これらの課題解決につながる研究テーマに取り組んでいます。中でも、社会・環境に対応したサステナブルな固体脂源等の創出と利用を掲げて、パーム・カカオ・大豆等による環境負荷の低減、安定調達に寄与する技術開発を推進しております。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」に参画し、新潟薬科大学との共同研究により、産業用スマートセルを用いたパーム油代替油脂の生産技術における開発成果も着実に出ていることから、さらに研究体制を強化し、油脂生産酵母による地球環境に優しいパーム油代替技術の社会実装を確実なものといたします。また、佐賀市・国立大学法人佐賀大学・伊藤忠エネクス株式会社と共同で推進する、ごみ焼却施設の排熱及びCO2を利用した大豆育成研究プロジェクトでは小型植物工場での栽培実験を継続しています。これまでの研究から、令和5年産の日本における大豆の平均収量169kg/反(農林水産省作物統計)と比較し、1作あたり約3倍(注1)に増加する結果を得ることができました。将来的にはCCU(注2)による温室効果ガスの低減を訴求できる大豆植物工場の完成と、栽培大豆を用いたプラントベースフードの開発を目指します(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「環境に配慮したものづくり」)。 「ヘルスケア」領域では、認知症やメンタルヘルス、フレイル(注3)等を重要な健康課題と設定し、当社独自の風味劣化抑制技術を用いたDHA・EPA油脂素材による研究により、脳機能に加え、骨代謝に関わる新たな知見を見出しており、「真価を発揮するドコサヘキサエン酸~“酸化していない”からこその可能性」と題して、第24回日本抗加齢医学会総会シンポジウムにて発表いたしました(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「高齢者の心身の健康課題の解消」)。 新規事業につながる技術開発として、当連結会計年度は植物性素材で動物性特有の満足感を表現するMIRACORE®技術により開発された新製品、貝出汁タイプ「MIRA-Dashi®C500」を上市しています。また、MIRA-Dashiシリーズを用いた植物性の業務用ラーメンスープも3種(製品名『MIRACORE®RAMEN T3(豚骨風)』、『味噌ラーメンスープ M1』及び『塩ラーメンスープ S1』)発売いたしました。これらのラーメンスープは、世界中の誰もが楽しめる地域色豊かなラーメンをつくるプロジェクト:Minna no Ramen. project(通称:みんラー)での中心的食材として活用が進められています。 未来創造研究所は、不二製油グループの将来の事業を創造する研究所として、積極的に国内外の大学を含む公的研究機関や企業とのコラボレーション、及び研究員の派遣に取り組んでいます。オーフス大学との共同研究では、水溶性エンドウ多糖類に関する内容が論文「Food Chemistry, 477, 143588 (2025)」として、ワーヘニンゲン大学との共同研究では、プラントベース肉代替組織における乳化物の挙動と影響に関する内容が論文「Journal of Food Engineering, 387, 112353 (2025)」及び「Current Research in Food Science, 10, 100989 (2025)」としてそれぞれの学術誌(査読有り)に受理されました。茨城大学に設置している「食の創造」講座での当社研究員による学生指導の成果としては、新規多糖類の開発に関する研究結果が論文「International Journal of Biological Macromolecules, 278, 134664 (2024)」及び「International Journal of Biological Macromolecules, 304, 140880 (2025)」として学術誌(査読有り)に受理されました。 当事業の研究開発費は1,466百万円です。 (注)1.1作あたり約3倍:実験面積を一反あたりに換算した上で全量収穫が前提。2.CCU(Carbon dioxide Capture, Utilization):排出されたCO2を他の気体から分離して集め、新たな製品の製造に利用する技術3.フレイル:健康な状態と要介護状態の中間に位置し、加齢とともに身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと。
FY2024|6,689 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、植物性油脂とたん白を基盤とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んできました。長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、不二製油グループ憲法のビジョン「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」に向けて、新技術・新素材の開発による事業シナジーの最大化や新たなビジネスモデルの創出を目指した研究開発活動を実施しています。世界中の人々の食べることの歓びと健康に貢献することをモットーに、社会になくてはならない会社になるための研究開発活動に努めています。 日本国内の「不二サイエンスイノベーションセンター」、「つくば研究開発センター」を研究開発の中核拠点とし、主に中国・アジア地域に設置した、顧客との共創の場である「フジサニープラザ」、オランダのフードバレーの中心となるワーヘニンゲン大学キャンパス内に2021年度に開設した「フジグローバルイノベーションセンターヨーロッパ」、そして各グループ会社の研究開発部門が連携し、事業戦略と一体となったグローバルな研究開発を目指しています。また、イノベーションを推進するため、国内外の大学や研究機関とのオープンイノベーションや顧客との共創活動を強化しています。 知財戦略室及び知的財産グループでは、コア技術をベースに磨き上げてきた成果を特許ポートフォリオとして構築し、差別化された製品の市場優位性や価格決定力を確保しています。各主要事業においての市場優位性や価格決定力に影響し得る重要特許シェア率(注1)では国内トップレベルに、将来の重要特許を生み出すための人材投資(≒新規発明者数)(注2)では国内外の競合と比較しても上位に位置しています。 技術開発部では、「安全、品質、環境」にこだわり、コア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。 当連結会計年度の研究開発費の総額は5,878百万円です。 (注)1.油脂、チョコレート関連特許は、2013年以降における油脂、チョコレート等に関する特許分類に基づいて抽出された母集団を定義。母集団の被引用数上位5%に該当するものを重要特許として定義。2.2013年以降に新たに出願した発明者のみを集計して算出。3.重要特許シェア率が1%を超えている企業をグラフに表示。 研究開発活動の概要は次のとおりです。 (植物性油脂事業) 安全・安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品、及びその最適な応用法に関する研究開発を通して、顧客の要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。 当連結会計年度の主な成果としては、国内外のココアバターの価格高騰によるチョコレート菓子市場への価格変動対応策として、コストと品質のバランスを重視した、低価格仕様のCBE(注1)を開発、顧客への品質選択肢を広げる製品拡充を図り、市場需要に対応しました。 また、引き続き国内外で市場拡大が進んでいるプラントベースフード(植物性食品)向けや、冷凍食品向けに広く利用されている動物代用油脂については、動物性油脂不足に対応して実績化が進んでいます。植物性油脂に不足しがちな風味の満足感についても、当社独自技術の分散技術であるDTR技術(注2)を組み合わせることで、動物性油脂の味覚満足感に近づける開発を行い、需要拡大を進めております。 栄養健康分野においては、当社の風味劣化抑制技術を用いた安定化DHA・EPA素材が、新たに子供向けチーズに採用されました。また、製品形態についても、粉末、乳化製剤の開発を進め、加工利用し易い製品の拡充を図り需要喚起を進めております。 DTR技術を応用した粉末油脂機能剤や、エステル交換技術の応用によって呈味改質機能を付与した油脂素材についても、その風味向上効果が高く評価され、完全栄養食分野や、高たん白製品分野での市場導入が進んでおります。 従来の油脂結晶制御技術、酵素応用技術の深掘も継続して技術革新を進めております。工程効率化や環境負荷低減、及び欧州を中心に規制が強化されている危害物質(3-MCPDやGE、MOH)除去につながる製造技術開発に一層注力し、国内及びグローバル市場環境にも対応可能な油脂素材として、提案を継続しております。 当事業の研究開発費は940百万円です。(注)1.CBE:Cocoa Butter Equivalentの略。ココアバターと同等の物性を持ったチョコレート用油脂。2.DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味等)や保存安定性を付与増強する技術。 (業務用チョコレート事業) チョコレートの新技術開発、社会課題解決のための原料選定、商品開発、及び消費者の新たな価値を具現化したアプリケーションと共にソリューション提案を行っております。 近年のプラントベースフードへの関心の高まりを受けて開発した動物性原料不使用の「プラントベースチョコレートMB」は、クセのないニュートラルな風味、色合いが、組合せ素材の特徴を活かすことを見出し、採用の拡大につなげました。このミルクタイプ、ホワイトタイプの2品は、植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来共創の実現を目指し立ち上げたGOODNOONブランドの製品として、益々の拡販が見込まれます。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」)また、洋菓子のデコレーション用として開発したチョコソースは、その風味もさることながら、従来品の課題であったクリームへの滲みが起こらず、メリハリのある見た目を演出できることからも高い評価を得ております。 日本人の繊細な味覚を満足させるJapan Qualityを掲げて開発したクーベルチュール「カカオクオリー®」は、その品質の高さと、サステナブルカカオを使用していることが、多くのパティシエより高く評価されております。当連結会計年度は新たにホワイトタイプを上市しました。各種素材との相性を考え抜き作り上げた品質で、クオリーシリーズの更なる拡販に貢献しております。 当社グループ会社の中でも最大規模のBlommer Chocolate Companyは、健康訴求性の高い無糖・低糖チョコレート分野において米国内でトップシェアを誇ります。昨年度に引き続き、低糖でもナチュラルなおいしさを有する「Discovery」シリーズが、冷菓・ベーカリー・栄養バー等多くの市場で高評価を得て、採用を順調に伸ばしております。また、HARALD INDÚSTRIA E COMÉRCIO DE ALIMENTOS LTDAでは、新工場稼働に合わせ、新製品開発を加速しております。「Harald Top®」シリーズは、豊かな風味と優れた作業適性を併せ持つコンパウンド製品の大人気シリーズです。当連結会計年度はヘーゼルナッツ味、エクストラミルク味に続いて、キャラメル味の「Top Caramelo」を上市し、顧客から好評を博しております。 コロナ禍が落ち着いた当連結会計年度は、一部対面にて各グループ会社の中長期のイノベーション戦略や新製品開発情報の共有、及び技術議論を行いました。今後一層連携を強化し、戦略的な技術情報交換や新製品共創を行うことで、カカオ豆の価格高騰やインフレ等の急速な環境変化に迅速に対応してまいります。 当事業の研究開発費は1,292百万円です。 (乳化・発酵素材事業) ホイップクリーム、調理用クリーム、ドリンクベース、マーガリン、フィリング、チーズ風味素材、パイ製品等の乳製品代替素材、弊社独自のUSS製法による豆乳を活用した植物性素材の新技術・新製品開発、及びアプリケーション開発を行っております。 当連結会計年度は、原料事情や市場の変化に迅速に対応した新製品開発を行い、大きく利益貢献を果たしました。カスタードフィリング、ホイップクリームでは、昨年度からの鳥インフルエンザの影響や乳価高騰による原料供給不足に対応した新製品を多く上市しました。また、人流回復、インバウンド需要の回復等に伴う外食市場での需要増加に対応したドリンクベース、チーズ風味素材の製品開発に取り組みました。さらに、人手不足の課題に向けた、手炊き風のカスタードフィリング「フローマリッシュ®」上市等、顧客の課題に寄り添った製品の開発、提案を進めました。チルドデザートの計画生産や賞味期限延長に貢献できる、冷解凍してもおいしさを損なわないホイップクリームの採用は、昨年度に引き続き順調に伸長しております。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「フードロスの削減とアップサイクル」)植物性素材では、特においしさにフォーカスした製品開発に注力し、差別化した製品として市場で高く評価されております。豆乳クリームバター「ソイレブール®」は昨年度の農林水産技術会議会長賞に続き、第53回食品産業新聞社主催の産業技術功労賞を受賞いたしました。また、当連結会計年度は新たにシートタイプ「ソイレブール®シート」を投入し、高い評価を受けております。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」) 一方、海外では中国広東省肇慶市に竣工したクリーム新工場の稼働がスタートし、リーズナブルな低乳脂タイプ「淡奶油」及び生クリームを配合した本格風味の中乳脂タイプ「含乳脂奶油」を上市しました。10月には、不二(中国)投資有限公司の市場開発メンバーが来日し、日本の市場開発メンバーと共に、クリームを中心とした不二(中国)投資有限公司の製品を用いた洋菓子やパン等のアプリケーション開発に取り組みました。帰国後は習得した技術を顧客提案に活用し、採用に向けて活動しています。 当事業の研究開発費は1,017百万円です。 (大豆加工素材事業) 大豆たん白、大豆たん白食品、大豆ペプチド、大豆多糖類等の開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、粉末状大豆たん白素材は、一層の製品風味向上と粉末溶解性を高める技術を開発し、粉末飲料向けの「プロリーナ®HD505」、液体飲料(中性タイプ)向けの「プロリーナ®23LG」、液体飲料(酸性タイプ)向けの「プロリーナ®BUJ」の3製品を上市、市場の広がりを見せるプロテイン飲料市場向けの製品ラインナップの充実を図り、市場での採用が順調に伸長しております。大豆ペプチドについては、生産拠点である天津不二蛋白有限公司の開発と共創し、製品風味を高めた飲料用途向けの「ハイニュート®DC8」を上市しました。日本国内のみならず、中国・台湾・東南アジアでの市場拡大に向け、提案を進めており、特に栄養健康市場において採用が伸長しております。 粒状大豆たん白素材では、新しい大豆ミート素材として開発した「プライムソイミート」が、インバウンド需要が高まる中、プラントベースコンセプトのラーメン店や大手外食チェーンに採用されました。加えて、国産大豆の甘味や旨味、口溶けの良い食感にこだわった新しい大豆加工素材「プライムソイ国産大豆」を上市しました。シリアルやスナックとしても、料理用の食材としても利用できる素材として、スナック菓子メーカーやホテルレストラン等で採用に向けて検討されています。また、昨年度に引き続き、粒状大豆たん白を白米等の一部と置き換えた米飯製品が、大手コンビニエンスストアで採用されております。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」及び「糖質低減」) ECチャネル活用の取組として、国内最大級のお菓子・パン作りのための総合サイト運営会社である株式会社cottaとのコラボレーションにより、最終消費者との接点を強化しています。“カラダにやさしい”をテーマとした新 EC メディア「cotta tomorrow」では、cottaブランドにて、大豆ミート素材商品2品が発売されました。 また、大豆加工時の副生成物である大豆ホエーの有効利用に取り組んでいます。汚染土壌対策の分野において、資源循環型のバイオレメディエーション(注)用浄化促進剤「ソイビオ®MA」の採用が伸長しております。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「フードロスの削減とアップサイクル」)。 当事業の研究開発費は1,155百万円です。(注)バイオレメディエーション:微生物の作用で環境汚染を修復する技術 (中長期視点での研究活動) 昨今、気候変動対策や世界的な人口増加、人権侵害等の多くの社会課題に対して、将来を見据えた取組が企業に求められています。未来創造研究所では、2050年までの未来年表を作成し、将来の解決すべき社会課題を「高齢化社会」と「サステナブルな食資源」に定め、これらの課題解決につながる研究テーマに取り組んでいます。「高齢化社会」に関しては「高齢者の健康課題の予防」に注目し、認知症やメンタルヘルス、フレイル(注1)等を重要な健康課題と設定し、当社独自の酸化しにくい安定化DHA・EPA油脂素材を用いた研究により、脳機能に加え、骨代謝に関わる新たな知見を見出しました。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「高齢者の心身の健康課題の解消」) 「サステナブルな食資源」に関しては「基幹原料の持続可能性」に注目し、パーム・カカオ・大豆等の環境負荷低減、安定調達に寄与する技術開発をオープンイノベーションにより取り組んでいます。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」に参画し、新潟薬科大学との共同研究により、産業用スマートセルを用いたパーム油代替油脂の生産技術の開発を継続しています。生産効率はさらに高まっており、研究体制を強化し、油脂生産酵母による地球環境に優しいパーム油代替技術の実用化を目指してまいります。また、佐賀市・国立大学法人佐賀大学・伊藤忠エネクス株式会社と共同で推進する、ごみ焼却施設の排熱及びCO2を利用した大豆育成研究プロジェクトでは小型植物工場での栽培実験を継続しております。将来的にはCCU(注2)による温室効果ガスの低減を訴求できる大豆植物工場の完成と、栽培大豆を用いたプラントベースフードの開発を目指します。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「環境に配慮したものづくり」) また、未来創造研究所では、「おいしさと健康」にこだわった食素材の創造と新規事業につながる技術開発にも取り組んでおります。MIRACORE®は、当研究所が開発した動物性食品ならではのおいしさを植物性素材で実現する技術です。当連結会計年度は、カツオ風魚介ダシタイプ「MIRA-Dashi® C400」を開発し、上市しています。今後も動物系調味素材に代わる植物調味素材の創出を加速させていきます。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」) また、当研究所は、当社グループの将来の事業を創造する研究所として、積極的に国内外の大学等の公的研究機関や企業とのコラボレーション、及び研究員の派遣に取り組んでいます。ワーヘニンゲン大学との共同研究の成果として、植物性たん白による乳化安定性に関する論文が学術誌「Food Hydrocolloids, volume 146, 109248, 2024」に掲載されました。2021年度に茨城大学に設置した「食の創造」講座では、当社研究員による学生の指導に加え、新たな大豆たん白質の組織化技術の開発、未利用食資源からの多糖類機能剤の創出に取り組み、得られた知見を特許出願すると共に論文が学術誌「Food Hydrocolloids, volume 147, 109423, 2024」及び「Food Research International, volume 165, 112390, 2023」に掲載されました。 当事業の研究開発費は1,472百万円です。(注)1.フレイル:健康な状態と要介護状態の中間に位置し、加齢とともに身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと。2.CCU(Carbon dioxide Capture, Utilization):排出されたCO2を他の気体から分離して集め、新たな製品の製造に利用する技術。
FY2023|6,003 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、植物性油脂とたん白を基礎とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んできました。長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、不二製油グループ憲法のビジョン「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」に向けて、新技術・新素材の開発による事業シナジーの最大化や新たなビジネスモデルの創出を目指した研究開発活動を実施しています。世界中の人々の食べることの歓びと健康に貢献することをモットーに、社会になくてはならない会社になるための研究開発活動に努めています。 日本国内の「不二サイエンスイノベーションセンター」、「つくば研究開発センター」を研究開発の中核拠点とし、主に中国・アジア地域に設置した、顧客との共創の場である「フジサニープラザ」、オランダのフードバレーの中心となるワーヘニンゲン大学キャンパス内に2021年度に開設した「フジグローバルイノベーションセンターヨーロッパ」、そして各グループ会社の研究開発部門が連携し、事業戦略と一体となったグローバルな研究開発を目指しています。また、イノベーションを推進するため、国内外の大学や研究機関とのオープンイノベーションや顧客との共創活動を強化しています。 知財戦略室及び知的財産グループでは、コア技術をベースに磨き上げてきた成果を特許ポートフォリオとして構築し、差別化された製品の市場優位性や価格決定力を確保しています。各主要事業においての市場優位性や価格決定力に影響し得る重要特許シェア率(注1)では国内トップレベルに、将来の重要特許を生み出すための人材投資(≒新規発明者数)(注2)では国内外の競合と比較しても上位に位置しています。 技術開発部では、「安全、品質、環境」にこだわり、コア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。 当連結会計年度の研究開発費の総額は5,744百万円です。(注)1.油脂、チョコレート関連特許は、2011年以降における油脂、チョコレート等に関する特許分類に基づいて抽出された母集団を定義。プラントベースフード(植物性食品)関連特許は、プラントベースフードに関する特許分類及びキーワードに基づいて母集団を定義。母集団の被引用数上位5%に該当するものを重要特許として定義。2.2011年以降に新たに出願した発明者のみを集計して算出。3.重要特許シェア率が1%を超えている企業をグラフに表示。 研究開発活動の概要は次のとおりです。 (植物性油脂事業) 安全・安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品、及びその最適な応用法に関する研究開発を通して、顧客の要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。 当連結会計年度の主な成果としては、国内外で高まるプラントベースフード(植物性食品)需要及び動物性油脂不足へ対応可能な、植物性代用油脂の開発に重点を置くことで、製品拡充を図り、実績化が進んでおります。市場導入を継続している、劣化風味発生を抑制した安定化DHA・EPA油脂素材については、新たに、伸長するグミ市場や、健康訴求補助食品としての焼き菓子市場にて採用されました。健康寿命を支える栄養健康素材として、更なる市場拡大を図るべく、各種専門誌を通じた情報発信も継続的に行っております。当連結会計年度は、日本農芸化学会、化学と生物(Vol.61 No.4 Page.196–201)への寄稿を通じて、広く製品特徴の認知を図っております。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「高齢者の心身の健康課題の解消」)健康訴求型機能素材として、継続的に市場拡大を図っている、当社独自の分散技術、DTR技術(注)を応用した粉末素材は、少量添加での呈味改質機能が評価され、新たにシニア向けレトルト食品への実績化を達成しております。同技術を用い油脂の酸化劣化を抑制したω3油脂製品(亜麻仁油等)は、市場拡大が期待される完全栄養食分野での実績化が進展しております。 従来の油脂結晶制御技術、エステル交換、分別技術についても深堀を進め、直近の原材料高騰に対応する、コスト低減を図る技術及び、環境負荷低減製造技術開発に一層注力し、国内及びグローバル市場環境にも対応可能な油脂素材として、提案を継続しております。 当事業の研究開発費は920百万円です。(注)DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味など)や保存安定性を付与増強する技術。 (業務用チョコレート事業) チョコレートの新技術・新製品開発、及び想定した社会的課題や消費者への価値を具現化したアプリケーションを組み合わせたソリューション提案を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、地球環境、人、社会に配慮した乳原料不使用チョコレートを発売いたしました。当社グループの独自技術で開発した粉末状大豆たん白や豆乳粉末を使用した、ミルクタイプチョコレート、ホワイトタイプチョコレートの2品の製品構成となっております。様々な素材との組み合わせを可能にするために、大豆のもつ独特の風味を低減し、乳のコクを再現しています。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」) 当社グループ会社の中でも最大規模のBlommer Chocolate Company(米国)では、健康訴求性の高い無糖・低糖チョコレート分野において世界でもトップシェアを誇りますが、イスラエルのスタートアップ企業DouxMatok社(現Incredo社)とコラボレーションし、低糖でもナチュラルなおいしさを有する「Discoveryシリーズ」を上市しました。ラインナップの一つである「Armstrong Gold」は米国のNational Confectioners AssociationによるRuby Award for Supplier InnovationでFinalistに選出されました。 グローバル研究開発強化の取組としては、Blommer Chocolate Company(米国)、HARALD INDÚSTRIA E COMÉRCIO DE ALIMENTOS LTDA(ブラジル)、INDUSTRIAL FOOD SERVICES PTY LIMITED(オーストラリア)からR&Dスタッフを不二サイエンスイノベーションセンターに招き、各国で伸長している健康チョコや乳原料不使用チョコ市場の情報交換、技術議論を行いました。また日本特有の技術を活用し、各国での新規市場開拓につなげるべく技術研修を行い、グループ全体のレベルアップを図りました。 当事業の研究開発費は1,228百万円です。 (乳化・発酵素材事業) ホイップクリーム、調理用クリーム、ドリンクベース、マーガリン、チーズ風味素材、パイ製品等、乳製品代替素材を中心とした新技術・新製品開発、及びアプリケーション開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、おいしさと機能性を両立した製品の市場導入により大きく利益貢献を果たしました。なかでも、チルドデザートの計画生産や賞味期限延長に貢献できる、冷解凍してもおいしさを損なわないホイップクリームは順調に売上を伸ばしました。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「フードロスの削減とアップサイクル」)また、大豆のうま味・コク、圧倒的な口溶けの良さを表現した豆乳クリームバター「ソイレブール」は、プラントベースフードの先駆的な開発と市場への貢献が評価され、2022年度農林水産技術会議会長賞民間企業部門を受賞いたしました。 乳化・発酵分野の研究の一環として、デンマークのコペンハーゲン大学から日本企業としては初めてインターン生2名の受け入れを行いました。Dairy(乳)分野で世界最先端のコペンハーゲン大学との継続的な取組により、全く新しい知見や交流が生まれ、地球温暖化や人口増加による食糧不足などグローバルな社会課題の解決に貢献できると考えております。 当事業の研究開発費は928百万円です。 (大豆加工素材事業) 大豆たん白、粒状大豆たん白、大豆たん白食品、大豆ペプチド、大豆多糖類等の開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、粉末状大豆たん白素材は、利用領域の広がりを見せる栄養健康市場向け素材として顧客における作業性や物性機能の向上、一層の風味の向上等の改善に努め、近年市場が伸びているプロテイン飲料向けに新製品を開発しました。本製品は、液体飲料(中性タイプ)に求められる高い溶液安定性と良好な風味が特徴です。また、プロテインパウダーの分野では、顧客先の海外商品に対応した製品を開発、採用され東南アジア地域での販売に寄与いたしました。翌連結会計年度も現行製品のリニューアルによる品質向上を進めてまいります。 粒状大豆たん白素材では、新しい大豆ミート素材として開発した「プライムソイミート」が、日本経済新聞社が主催する「2022年日経優秀製品・サービス賞」において、最優秀賞を受賞いたしました。「独自の加工技術を活用し、より肉のような食感を実現した点や、ホテルニューオータニのビュッフェメニューに採用される等、市場でも評価されている点」が理由となり、今回の受賞につながりました。また、食のバリューチェーンのステークホルダーとの共創を進めました。当社の技術を元に、大手流通との共同開発にて「謎唐」を発売、あえて大豆ミートとは表現しない、新しいアプローチを進めました。さらに、から揚げの普及、ブランディング発信に注力している一般社団法人の監修により、から揚げ有名店とのコラボイベントが開催されました。外食、中食、流通で取り組めるコンテンツとして、メニューは大手コンビニエンスストアのお弁当にも採用され、好評を博しました。加えて、「糖質低減、タンパク質強化」は近年の潮流であり、白米等の一部を粒状大豆たん白に置き換えた米飯製品への採用が順調に伸長しております。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」及び「糖質低減」) 大豆多糖類においては、酢飯向け米飯ほぐれ剤用途の新製品を開発しました。本製品は、調理酢に対して従来品よりも高濃度溶液の調整が可能であり、保存安定性とほぐれやすさの向上に寄与しております。 また、欧米市場に向けて進めているエンドウ多糖類の新製品は、2023年度の上市を予定、欧州及び国内市場の開拓にも取組を開始しました。 当事業の研究開発費は1,240百万円です。 (中長期視点での研究活動) 未来創造研究所では、「おいしさと健康」にこだわった食の市場を創造するための研究や、新規事業に繋がる技術開発に取り組んでおります。昨今、気候変動対策や世界的な人口増加、人権侵害等の多くの社会課題に対して、将来を見据えた取組が企業に求められています。当研究所では、将来の解決すべき社会課題として「高齢化社会」に関しては「高齢者の健康課題の予防」に、「サステナブルな食資源」に関しては「基幹原料の持続可能性」にフォーカスし、課題解決に繋がる研究テーマを推進しています。「高齢者の健康課題の予防」においては、認知症やメンタルヘルス、フレイル(注1)等を重要な健康課題と設定し、当社独自の酸化しにくい安定化DHA・EPA油脂素材による予防を目指し、更なる付加価値化に関する研究を推進しました。また、不二製油グループ本社に、研究対象者の人権擁護の目的(注2)で、研究の倫理的妥当性と科学的合理性が確保されるよう倫理審査委員会を設置しました。(厚生労働省:研究倫理審査委員会報告システム IRB番号22000245)人権と安全に配慮しつつ、健康機能素材の開発のスピードアップに努めてまいります。 「基幹原料の持続可能性」においては、特にパーム・カカオ・大豆等の環境負荷低減、安定調達に寄与する技術開発をオープンイノベーションにより取り組んでいます。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」に参画し、新潟薬科大学との共同研究により、産業用スマートセルの発酵培養により得られた油脂生産酵母を用いて、パーム油代替油脂の世界トップレベルの高効率生産を実現しました。これらの成果について2022年10月開催の「Bio Japan 2022」で発表し、国内外から大きな反響がありました。今後も研究体制を強化し、油脂生産酵母による地球環境に優しいパーム油代替技術の実用化を目指してまいります。また、佐賀市・国立大学法人佐賀大学・伊藤忠エネクス株式会社と共同で、CO2を利用した大豆育成研究プロジェクトを開始しました。CO2を吸収することにより成長が早まる大豆の特性を活かした効率的な大豆生産に関する研究に取り組み、将来的にはCO2を利用した植物工場による国産大豆の生産及びプラントベースフード原料としての利用を目指します。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「環境に配慮したものづくり」) MIRACORE®は、当研究所が開発した動物性食品ならではのおいしさを植物性素材で実現する技術であり、長年培ってきた植物性油脂と植物性たん白の技術を融合することで可能になった新技術です。当連結会計年度は、清湯・ブイヨンタイプ、フォンタイプを開発し、製品化しています。今後も世界のあらゆる料理に対応できる未来の調味素材として取組を加速させていきます。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」) また、当研究所は、当社グループの将来の事業を創造する研究所としての位置付けのもと、積極的に国内外の大学等の公的研究機関や企業との共同研究やコラボレーション、及び研究員の派遣に取り組んでいます。2021年度に茨城大学に設置した「食の創造」講座では、次世代食素材の創出を目指し、当社研究員による学生の指導や、当連結会計年度に欧州で販売を始めたエンドウ多糖類の構造と物性機能に関する共同研究などを実施し、新たな知見を特許出願すると共に科学論文として投稿しております。 当事業の研究開発費は1,427百万円です。(注)1.フレイル:健康な状態と要介護状態の中間に位置し、加齢とともに身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと。2.人権擁護:ヒトを対象とする実験を伴う研究の場合、「ヘルシンキ宣言」及び厚生労働省等が定めた「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に準拠しているかどうかの判断が必要。
FY2022|5,378 文字
5【研究開発活動】 当社グループは長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、植物性油脂とたん白を基礎とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んできました。特に近年はESG経営の推進のもと、短期視点、長期視点の両軸で社会課題へアプローチし、Plant-Based Food(PBF)の拡大を実現する新製品・新技術・新ビジネス創出を目指した研究開発活動を実施しています。また、イノベーションを推進するため、国内外の大学や研究機関とのオープンイノベーションや顧客との共創活動を強化しています。世界中の人々の食べることの歓びと健康に貢献することをモットーに、社会になくてはならない会社になるための研究開発活動に努めています。当社グループの中核研究開発施設である日本国内の「不二サイエンスイノベーションセンター」、「つくば研究開発センター」、及びシンガポールの「アジアR&Dセンター」、そして全世界10箇所の「フジサニープラザ」では、基礎研究や素材開発、及び多数のお客様、企業・研究機関の方をお迎えしての「共創」による研究開発を行っております。また、2022年1月に当社グループのBlommer Chocolate Company(米国)は、シカゴ市内に新しいアプリケーションラボを開設しました。これにより、研究開発を強化し、事業と連携する新たな施策を進めます。 日本国内を統括する不二製油(株)は、各素材別の開発部と、これら素材を用いたアプリケーションを開発する「市場ソリューション開発部」を併せた研究開発部門として運営しています。この体制により、各素材の融合による新規複合素材の開発を効率良く行うと共に、開発された新素材をすぐさまお客様へ提案し、お客様と共創による価値づくりを実現します。また、技術開発部では、「安全、品質、環境」にこだわり、コア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。 未来創造研究所は、当社グループの将来の事業を創造する研究所としての位置付けのもと、積極的に国内外の大学等の公的研究機関や企業との共同研究やコラボレーション、及び研究員の派遣に取り組んでいます。2021年度に茨城大学に設置した「食の創造」講座では、次世代食素材の創出を目指し、当社研究員による学生の指導や、2022年度に生産を始めるエンドウ多糖類の構造と物性機能に関する共同研究などを実施しています。海外では、シンガポールの研究機関ICESとの共同研究、オランダのワーヘニンゲン大学への研究員の派遣等を行っております。 2021年度には、オランダのフードバレーの中心となるワーヘニンゲン大学キャンパス内に「フジグローバルイノベーションセンターヨーロッパ」を開設し、研究開発のより一層のグローバル化とイノベーションエコシステムの発展の推進を目指しています。日本と海外の各拠点R&Dとの定期的な会合や人的交流を実施することで世界的課題の共有とその解決に取り組むと共に、新たなテーマの発掘や、製品開発と課題解決のスピードアップに努めています。 当連結会計年度の研究開発費の総額は5,280百万円です。 研究開発活動の概要は次のとおりです。(植物性油脂事業) 安全・安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品、及びその最適な応用法に関する研究開発を通して、お客様のご要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。 当連結会計年度の主な成果としては、劣化風味発生を抑制した安定化DHA・EPA油脂素材については、乳製品関連にくわえ、液状濃厚流動食、直食用のかけるオイルへの採用実績化を新たに達成しております。また、認知機能へのDHA素材の有効性を実証した研究論文を活かし、当社グループのオーム乳業株式会社にて、『オボエトクDHA』を機能性表示食品(脳機能)として届出受理されています(届出No.G793)。さらに、安定化DHA油脂素材の開発及びこれを用いたヒト臨床試験の実施について高く評価いただき、公益社団法人 日本農芸化学会の農芸化学技術賞を受賞しました。今後も幅広いカテゴリーへの応用開発を継続し、健康寿命を支える素材として実績化を進めて参ります。市場拡大を図っている、当社独自の分散技術である、DTR技術(*)は、昨年度開発の少量添加での機能発現を実現する粉末製品が、作業性向上と特異的な呈味改質機能が評価され、健康訴求型の焼き菓子にて実績化を達成しております。さらに、同技術及び物性機能加工技術を組み合わせ、各種調理加工食品用の風味発現向上と作業性を両立させた油脂の開発を行い、国内外のPBF需要に対応すべく、植物性素材でのお客様への選択肢の多様化を推進しております。従来の油脂結晶制御技術、エステル交換、分別技術についても深堀を進め、より一層環境負荷を低減する製造技術へと発展させ、グローバル市場要望にも対応可能な油脂素材の開発を行い、今後海外展開を拡大されるお客様へのご提案が可能な製品の開発を継続しております。 当事業の研究開発費は772百万円です。*DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味など)や保存安定性を付与増強する技術。 (業務用チョコレート事業) チョコレートの新技術・新製品開発、及び想定した社会的課題や消費者への価値を具現化したアプリケーションを組み合わせたソリューション提案を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、カカオ豆を厳選し、それらの特長を活かした風味づくりに拘った製菓・製パン用新ブランド「カカオクオリー」ピュアチョコレートを発売しました。シングルビーンズの「カカオクオリーエクアドル70」と「カカオクオリーガーナ66」の2品と、ブレンドによる良質なカカオの風味と作業性の良さを両立した「カカオクオリーブレンドビター65」、ブレンドによるカカオの香りと濃厚な乳味が特長の「カカオクオリーブレンドミルク40」の4品が第1弾の製品構成です。 グローバルでの取り組みとしては、当社グループ会社の各拠点R&Dとの市場・技術情報交換を中心とした定期的なミーティングである「チョコレート開発分科会」をWEBにて開催しました。2021年度はコロナ禍から生活者の健康への意識が一層高まり、海外・国内で需要が伸びている糖類・糖質低減チョコレートに関する技術議論や各エリアでの市場情報の交換を行いました。当社グループ全体でのチョコレート開発組織がグローバルに機能するよう、各拠点間でのシナジー創出を目指し、引き続き取り組んでまいります。 当事業の研究開発費は1,057百万円です。 (乳化・発酵素材事業) ホイップクリーム、調理用クリーム、ドリンクベース、マーガリン、チーズ風味素材、パイ製品等、乳製品代替素材を中心とした新技術・新製品開発、及びアプリケーション開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、美味しさと機能性を両立した製品開発に取り組む一方、植物性素材の価値追求を行いました。サステナビリティの観点から日本においてもPBFの拡がりが確実なものとなり、当社豆乳ホイップ「濃久里夢(コクリーム)ほいっぷくれーる」、豆乳クリームを使用したバター「ソイレブール」の販売数量も増加しました。また、乳代替素材として注目されているアーモンドミルクのドリンクベースやホイップクリームもラインナップに加わり販売拡大を牽引しました。さらに、株式会社ぐるなびと共同で、乳酸菌と麹菌で発酵させた豆乳チーズ「ソイデリス麹(こうじ)」を開発し、発売しました。これは、国立大学法人東京工業大学・株式会社ぐるなび・当社の3者共同研究の成果により誕生しました。「ソイデリス麹」は、低脂肪豆乳を原料に乳酸菌と日本古来の麹菌にてダブル発酵させた第二世代(*1)の豆乳チーズです。一方、参画中のオランダの研究機関NIZO(*2)が主管するコンソーシアム(共同事業体)での成果も取り入れながら第三世代のPlant-based Cheeseの開発に取り組みます。 当事業の研究開発費は961百万円です。(*1)2015年発売の豆乳チーズ「マメマージュ」が第一世代(*2)NIZO:食品と健康における受託研究の世界的大手企業 (大豆加工素材事業) 大豆たん白、大豆たん白食品、大豆多糖類等の開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、コロナ禍の社会環境において市場が伸びているプロテインパウダー用途向けに粉末状大豆たん白「ニューフジプロKE01」を開発しました。また、同時に市場が伸びているフードバー等の焼き菓子用途向けには粉末飲料にも対応可能な汎用タイプ「ニューフジプロPB」を開発し、順調に市場での採用が進みました。栄養健康市場への新たな大豆たん白素材の提案としては、健康油脂の中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を大豆たん白で乳化し、粉末状とした風味の良いたん白栄養粉末「プロリーナMCT20」を開発しました。 粒状大豆たん白素材は、商品開発が加速する大豆ミート市場への対応として、肉様食感に更に近づけた品質改善に取り組み、チキン様の繊維感と風味を高めたブロックタイプの「アペックス1300」、フレークタイプの「アペックス365」の2品を開発し、市場から高評価を頂いております。栄養健康市場で市場が拡大している大豆パフの開発では、新たに高たん白フレークタイプの「ソヤパフ20」を開発しシリアル用途での提案を実施中です。社会の関心の高まるPBF商品への対応として、コンビニエンスストアやファーストフード店向けに大豆ミートのパティ、ベジバーグ、ソイナゲット等の製品の品質向上を進め、製品採用の拡大に努めました。外食産業向けには、半調理済みの素材型商品として「Plant Based」シリーズ5品をラインアップしました。大豆多糖類においては、飲料用安定剤「ソヤファイブシリーズ」の安定性能をさらに高めた製品開発などを進めました。 また、欧米市場に向けて、エンドウ多糖類の新製品を2022年度に立上げ、欧州市場開拓にも取り組む予定です。 当事業の研究開発費は1,077百万円です。 (中長期視点での研究活動) 未来創造研究所では、「おいしさと健康」に拘った食の市場を創造するための研究や、新規事業に繋がる技術開発に取り組んでおります。また、気候変動対策や世界的な人口増加、人権などの多くの社会課題に対して、将来を見据えた取り組みが企業に求められています。未来創造研究所では、将来の解決すべき社会課題として「高齢化社会」に関しては「高齢者の健康課題の予防」を、「サスティナブルな食資源」に関しては「カカオの持続可能性」にフォーカスし、課題解決に繋がる研究テーマを推進しています。「高齢化社会」においては、認知症やメンタルヘルス、フレイル(*1)等を重要な健康課題と設定し、当社独自の酸化しにくい安定化DHA・EPAや機能性ペプチド等の食による予防を目指し、更なる付加価値化、新素材創出の研究を推進しました。島根大学医学部との共同研究により安定化DHA・EPAを含む乳飲料を摂取することで高齢者の加齢に伴う認知機能の低下が抑制されることに加え、骨の健康維持にも効果があることを明らかにしました。この研究成果は日本油化学会の英文誌に掲載されました。安定化DHA・EPAのこれら機能を活用した新素材の開発も継続して進めて参ります。 昨年度立ち上げた技術ブランド“MIRACORE(ミラコア)™”は、Animal-based Food(動物性食品)が持つおいしさと満足感を植物ベースで実現する全く新しい技術です。本年は動物エキス代替品の開発に成功し、和食・洋食・アジア料理などPlant-based(植物性)調味素材の開発に継続して取り組んで参ります。また、新たな油脂生産技術の獲得に向けた取り組みも進めています。昨年度に続き、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」に参画し、酵母の油脂生産性向上に関与している新規遺伝子を発見し、生産性を大きく向上させることに成功しました。実用化に向けて研究体制を強化し、油脂生産酵母による地球環境に優しいパーム油代替技術の実用化を目指して参ります。また、2020年に参画したFood Tech Studio Bites! (*2)では、国内外の複数のスタートアップ企業との協業に向けた検討を経て、環境負荷の低い油脂生産技術を持つ企業と共同して低利用食資源を原料とした油脂生産の実証実験を開始しました。 当事業の研究開発費は1,411百万円です。(*1)フレイル:健康な状態と要介護状態の中間に位置し、加齢とともに身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと(*2)Food Tech Studio Bites!:日本の食品メーカーと世界中のスタートアップが共に、「食」を通じた持続可能な社会を実現する「新“食”産業」を創出するグローバル・オープンイノベーション・プログラム
FY2021|5,014 文字
5【研究開発活動】 当社グループは長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、植物性油脂とたん白を基礎とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んできました。特に近年はESG経営の推進のもと、短期視点、長期視点の両軸で社会課題へアプローチし、Plant-Based Food Solutionsを実現する新製品・新技術・新ビジネス創出を目指した研究開発活動を実施しています。また、イノベーションを推進するため、国内外の大学や研究機関とのオープンイノベーションや顧客との共創活動を強化しています。世界中の人々の食べることの歓びと健康に貢献することをモットーに、社会になくてはならない会社になるための研究開発活動に努めています。当社グループの中核研究開発施設である日本国内の「不二サイエンスイノベーションセンター」、「つくば研究開発センター」、及びシンガポールの「アジアR&Dセンター」、そして全世界9箇所の「フジサニープラザ」では、基礎研究や素材開発、及び多数のお客様、企業・研究機関の方をお迎えしての「共創」による研究開発を行っております。 日本国内を統括する不二製油(株)は、各素材別の研究開発室と、これら素材を用いたアプリケーションを開発する「価値づくり市場開発室」を併せた研究開発部門として運営しています。この体制により、各素材の融合による新規複合素材の開発を効率良く行うと共に、開発された新素材をすぐさまお客様へ提案し、お客様と共創による価値づくりを実現します。また、生産技術開発部門では、「安全、品質、環境」にこだわり、コア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。 未来創造研究所は、当社グループの将来を支えるための新規事業を創造する研究所としての位置付けのもと、積極的に国内外の大学等の公的研究機関や企業との共同研究やコラボレーション、及び研究員の派遣に取り組んでいます。国内では、茨城大学とは、クロスアポイントメント制度により大学教員を招聘していますが、2021年度には新たな取組みとして「食の創造」講座を設置します。当社研究員が教員として学生を指導し、共同研究を通して次世代のPlant-based Food Ingredientsの創出を目指します。海外では、シンガポールの研究機関ICESとの共同研究、オランダのワーゲニンゲン大学への研究員の派遣等を行っております。 「アジアR&Dセンター」は、東南アジア地域のニーズに合わせた製品研究・開発、並びに、国際食品企業との連携、及び現地大学機関、関連省庁との共同研究による社会課題の解決において重要な拠点になっております。日本とシンガポールのR&Dセンター、及び海外の各拠点R&Dとの定期的な会合や人的交流を実施することで世界的課題の共有とその解決に取り組むと共に、新たなテーマの発掘や、製品開発と課題解決のスピードアップに努めています。 当連結会計年度の研究開発費の総額は4,994百万円です。 研究開発活動の概要は次のとおりです。(植物性油脂事業) 安全・安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品、及びその最適な応用法に関する研究開発を通して、お客様のご要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。 当連結会計年度の主な成果としては、劣化風味発生を抑制した安定化DHA・EPA油脂素材については、市販プロセスチーズ、乳飲料用途への採用実績化を達成しております。また、島根大学との共同研究により、認知機能へのDHA素材の有効性を実証し、研究論文を発表するに至りました。今後も幅広いカテゴリーの食品用途への素材開発を継続し、健康寿命を支える素材として実績化を進めて参ります。また、弊社独自の分散技術である、DTR技術(*)は、収斂味低減、甘味増強等の新機能性に加え、利用時の作業性の向上にも役立ち、少量添加での機能発現を実現する、粉末製品への応用展開も行いました。形態多様化により、幅広い市場への販売も期待されます。また、同技術及び物性機能加工技術を併用して、油脂の風味発現の向上に加え、可塑性付与により、作業性を向上させた油脂の開発を行い、弊社の掲げる植物性素材でのお客様への価値提供(PBFS)を推進しております。更に油脂結晶制御技術、エステル交換、分別技術を利用し、部分硬化油不使用の機能性チョコレート用油脂等、グローバル市場要望にも対応可能な油脂素材の開発を行い、今後海外展開を拡大されるお客様へのご提案が可能な製品の開発を継続しております。 また、食品安全のグローバル対応のため、油脂の精製技術の向上について弊社グループ間での技術情報交換会を実施致しました。健康への貢献と共に、安全・安心な油脂素材の提供維持に向けた取り組みを継続して参ります。 当事業の研究開発費は782百万円です。*DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味など)や保存安定性を付与増強する技術。 (業務用チョコレート事業) チョコレートの新技術・新製品開発、及び想定した社会的課題や消費者への価値を具現化したアプリケーションを組み合わせたソリューション提案を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、コロナ禍から消費者の健康意識が高まり、健康訴求製品が期待されている中、美味しさと健康を両立した弊社通販ソヤファームクラブ「ヘルシーカカオ ハイカカオ」を発売しました。また不二製油グループはWHO(世界保健機関)の指針に沿って、2023年度にトランス脂肪酸を2g-TFA/100g-oil以下に低減していくことを目指しています。その一環として、パンや洋菓子に使用するコーティング用チョコレート製品中の部分硬化油の低減に取り組んでおります。 グローバルでの取り組みとしましては、当社グループ会社の各拠点R&Dとの市場・技術情報交換を中心とした定期的なミーティングを実施する「チョコレート開発分科会」を2020年度はコロナ禍からWEBで開催しました。当社グループ全体でのチョコレート開発組織がグローバルに機能する様、各拠点間でのシナジー創出を目指し、引き続き取り組んでまいります。 当事業の研究開発費は980百万円です。 (乳化・発酵素材事業) ホイップクリーム、調理用クリーム、ドリンクベース、マーガリン、チーズ風味素材、パイ製品等、乳製品代替素材を中心にした新技術・新製品開発、及びアプリケーション開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、美味しさと機能性を両立した製品開発に取り組む一方、植物性素材の価値追求を行いました。コロナ禍において、サステナビリティの観点からも植物性食への期待が高まり、「植物性ホイップクリーム」、「豆乳チーズ」、「豆乳クリームのバター」の市場導入が加速されると共に、顧客とのコラボレーションで「とんこつ風スープベース」も新たに発売しました。また、コペンハーゲン大学との共同研究の成果として、乳酸菌の大豆たん白分解活性に関する論文が「Food Chemistry」に掲載されました。参画中のオランダの研究機関NIZO(*)が主管するコンソーシアム(共同事業体)での成果も取り入れながら植物性素材のさらなる革新を図ります。 当事業の研究開発費は835百万円です。*NIZO:食品と健康における受託研究の世界的大手企業 (大豆加工素材事業)大豆たん白、大豆たん白食品、大豆多糖類等の開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、拡大するたん白摂取を目的とした市場の商品開発に対して焼き菓子用途向けに作業性と風味食感を両立させた粉末状大豆たん白「ニューフジプロPTS」を開発し、製パン市場向け用途としては高たん白配合に対応した「プロリーナCP01」を開発し採用拡大に努めました。また、プロテインパウダー、プロテインバー等の栄養健康市場向け「プロリーナ」シリーズも引き続き好調です。粒状大豆たん白素材は、商品開発が加速する大豆ミート市場に対してより肉様の食感に近づけた品質改善に取り組むとともに製造現場作業で手間となっている水戻し作業の大幅時間短縮可能な「アペックス2000SP」を開発し、顧客の現場課題解決の提案にも取り組みました。PBF(プラントベースドフード)商品の展開としては、昨年に引き続き大丸心斎橋店にて「UPGRADE Plant based kitchen」での大豆ミート、USS素材を使った新メニュー料理を提案販売、PBF啓蒙活動を行うと共にコンビニエンスストアやファーストフード店向けには日本人の好みに合った大豆ミートのパティ、ベジバーグ、ソイナゲット等の製品開発を進め、PBF商品の採用拡大に努めました。冷凍豆腐関連では、従来品よりたん白を高配合した豆腐、厚揚げを開発し、市場の高たん白化要望に対応するとともに自然解凍により喫食可能な冷凍厚揚げを開発し利便性の向上にも対応しました。大豆多糖類においては、飲料用安定剤「ソヤファイブシリーズ」の性能をさらに高める製品開発に取り組むとともに、新たな生産設備の本格稼働による生産能力の増強とコストダウンに取り組みました。また、欧米市場に向けて、新規素材エンドウ多糖類の海外製造拠点の立ち上げ準備と、市場開拓に取り組んでおります。 当事業の研究開発費は1,108百万円です。 (中長期視点での研究活動) 未来創造研究所では、経営課題である「おいしさと健康」に拘った食の市場を創造するための研究や、新規事業に繋がる新技術開発に取り組んでおります。また、産学連携によるオープンイノベーションにも引き続き取り組んでおります。 近年、気候変動対策や世界的な人口増加などの社会課題に対して、将来を見据えた地球との共生への取り組みが企業にも求められています。未来創造研究所では2050年のありたい社会像を創造し、バックキャスティングにより取り組むべき社会課題として「高齢化社会」と「サステナブルな食資源」にフォーカスし、課題解決に繋がる研究テーマを設定、検討を開始しました。 その他の取り組みとしましては、Plant-based Food(植物性食品)をよりおいしくする技術ブランド“MIRACORE(ミラコア)™”を立ち上げました。本技術はAnimal-based Food(動物性食品)が持つおいしさと満足感を植物ベースで実現する技術であり、植物性に拘って油脂とたん白の研究を続けてきた当社の技術を集結した画期的な新技術です。和食・洋食・中華・アジア料理等の世界の食をターゲットに展開する計画です。また、当社独自の酸化劣化しにくい安定化DHA・EPAに関する臨床試験でも研究成果を得ています。島根大学医学部と共同研究を実施し、1日297 mgの安定化DHA・EPAを含む乳飲料の摂取が高齢者の加齢に伴う認知機能の低下を抑制することを明らかにしました。本研究結果は国際学術誌「Journal of Functional Foods」に掲載されました。今後は食による高齢者の健康課題解消に向けた研究を加速する計画です。また、新たな油脂生産技術の獲得に向けた取り組みも進めています。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のスマートセルプロジェクトの成果(油脂生産性を向上させた油脂酵母の開発に成功)を受け、今年度より新プロジェクトの「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」に参画しています。開発した油脂酵母による地球環境に優しいパーム油代替油脂生産技術の実用化を目指して参ります。また、米国のScrum Venturesが運営するFood Tech Studio Bites! (*)に参画し、スタートアップベンチャー企業との協業について検討を開始し、技術シナジーや研究へのAIの導入などを検討して参ります。 当事業の研究開発費は1,286百万円です。*Food Tech Studio Bites!:日本の食品メーカーと世界中のスタートアップが共に、「食」を通じた持続可能な社会を実現する「新“食”産業」を創出するグローバル・オープンイノベーション・プログラム
FY2020|4,722 文字
5【研究開発活動】 当社グループは長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、植物性油脂と大豆を基礎とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んできました。特に近年はESG経営の推進のもと、持続可能性(Sustainability)の観点から各事業分野で「PBFS(Plant-Based Food Solutions)」を掲げ様々な社会課題の解決に取り組んでいます。世界中の人々の食べることの歓びと健康に貢献することをモットーに、社会になくてはならない会社になるための研究開発活動に努めています。当社グループの中核研究開発施設である日本国内の「不二サイエンスイノベーションセンター」、「つくば研究開発センター」、及びシンガポールの「アジアR&Dセンター」、そして全世界9箇所の「フジサニープラザ」では、基礎研究や素材開発、及び多数のお客様、企業・研究機関の方をお迎えしての「共創」による研究開発を行っております。 日本国内を統括する不二製油(株)は、各素材別の研究開発室と、これら素材を用いたアプリケーションを開発(応用開発)する「価値づくり市場開発室」を併せた研究開発部門として運営しています。この体制により、各素材の融合による新規複合素材の開発を効率良く行うと共に、開発された新素材をすぐさまお客様へ提案し、お客様と共創による価値づくりを実現します。また、生産技術開発部門では、コア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。 未来創造研究所は、当社グループの将来を支えるための新規事業を創造する研究所としての位置付けのもと、積極的に国内外の大学等の公的研究機関との共同研究、及び研究員の派遣に取り組んでいます。国内では、京都大学と産学共同講座<「不二製油」大豆ルネサンス講座>に取り組み、茨城大学とは、クロスアポイントメント制度により、大学教員を当社研究員としても採用しています。大阪河崎リハビリテーション大学(貝塚市)との認知症予防に関する共同プロジェクトは、当連結会計年度において「第4回大阪府健康づくりアワード」地域部門の最優秀賞(知事賞)を受賞しました。海外では、シンガポール大学との共同研究、オランダのワーゲニンゲン大学への研究員の派遣等を行っております。 「アジアR&Dセンター」は、東南アジア地域のニーズに合わせた製品研究・開発、並びに、国際食品企業との連携、及び現地大学機関、関連省庁との共同研究による社会課題の解決において重要な拠点になっております。日本とシンガポールのR&Dセンター、及び海外の各拠点R&Dとの定期的な会合や人的交流を実施することでの新たなテーマの発掘や、製品開発と課題解決のスピードアップに努めています。 当連結会計年度の研究開発費の総額は5,231百万円です。 研究開発活動の概要は次のとおりです。(植物性油脂事業) 安全・安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品、及びその最適な応用法に関する研究開発を通して、お客様のご要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。 当連結会計年度の主な成果としては、健康志向素材として提案を継続中の魚臭の発生を抑制した安定化DHA・EPA油脂素材は、各種生活習慣に纏わる問題解決への選択肢として、幅広いカテゴリーの食品用途への応用開発が進んでおります。その他、育児粉乳等のニュートリション用途の厳しい品質規格にも対応できる健康油脂素材の開発にも注力しました。また、従来より検討していますDTR技術(*)を進化させて有効成分の高濃度化を達成し、より少量の添加で効果を示す製品を開発しました。この製品により、これまで参入できなかった市場への販売も期待されます。また、同技術を応用しての油脂の風味発現の向上や口溶けの向上などの従来製品の高機能化に加えて、動物性油脂の代替となる物性、風味を兼ね備えた可塑性油脂の開発を行い、弊社の掲げる植物性素材でのお客様への価値提供(PBFS)を推進しております。更に油脂結晶制御技術、エステル交換、分別技術を利用し、品質、作業性を両立するアイスコーチング用油脂、部分硬化油不使用の機能性チョコレート用油脂等、グローバル市場からの要望にも対応可能な油脂素材の開発に取り組み、海外展開を拡大されるお客様へのご提案が可能な製品の開発を継続しております。 海外での取り組みとしましては、持続可能なパーム油製品を製造するために設立しましたUNIFUJI SDN. BHD.と、アジアR&Dセンターが共同で高品質な製品の開発と製造を実施し、アジア・欧州への販売を開始しております。 当事業の研究開発費は805百万円です。*DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味など)や保存安定性を付与増強する技術。 (業務用チョコレート事業) チョコレートの新技術・新製品開発、及び想定した社会的課題や消費者への価値を具現化したアプリケーションを組み合わせたソリューション提案を行っております。 本年度の主な成果としては、最近の健康志向の流れから、美味しさと健康を両立した「タンパク質含量を強化したチョコレート」を販売しました。当社最高級品質のピュアチョコレートブランドのフロルデカカオシリーズからは「アリバ ナシオナル」を販売しました。同品には厳選したカカオ豆を使用し、カカオ豆の風味を活かした風味作りを行っております。また、近年のインバウンド需要の高まりから土産物市場における「焼菓子用フィリング素材2品」を販売しました。同品は油脂技術を駆使することで実現した焼成後もなめらかな食感を維持できるのが特長で、大変好評をいただき売上を伸ばすことができました。同品はなめらかな食感を維持しながら包餡機など量産化可能な品質設計を行っており、社会的課題であります人手不足にもお応えできる製品です。 グローバルでの取り組みとしましては、当社グループ会社の各拠点R&Dとの市場・技術情報交換を中心とした定期的なミーティングを実施する「チョコレート開発分科会」を当連結会計年度から発足しました。当社グループ全体でのチョコレート開発組織がグローバルに機能する様、各拠点間でのシナジー創出を目指し、引き続き取り組んでまいります。 当事業の研究開発費は1,097百万円です。 (乳化・発酵素材事業) ホイップクリーム、調理用クリーム、ドリンクベース、マーガリン、チーズ風味素材、パイ製品等、乳製品代替素材を中心にした新技術・新製品開発、及びアプリケーション開発を行っております。 本年度の主な成果としては、乳の美味しさと機能向上を目指した製品開発に取り組む一方、健康志向や消費者ニーズの変化に対応し、新しい植物性の素材価値を追求、提案しております。USS(ウルトラソイセパレーション)豆乳の美味しさを活かした「豆乳チーズ」や「豆乳クリームのバター」など、植物性原料主体のサステナブルな製品群の拡充を図りながら、これら製品の特長を活かしたアプリケーション開発と、様々な社会課題の中に消費者価値を想定したソリューション提案を実施しております。さらに、「植物性チーズ」のさらなるイノベーションを目指して、オランダの研究機関NIZO(*)が主管するコンソーシアム(共同事業体)に参画いたしました。世界最先端の技術を取り入れながらPBFSを強力に推進して参ります。 当事業の研究開発費は760百万円です。*NIZO:食品と健康における受託研究の世界的大手企業 (大豆加工素材事業)大豆たん白、大豆たん白食品、大豆多糖類等の開発を行っております。 本年度の主な成果としては、粒状大豆たん白素材は、注目される大豆ミート市場向けに食感と風味を改良した新製品を開発し、幅広い食事メニューへの採用拡大に努めました。好調が続くシリアル素材向けには高たん白・低糖質を訴求した大豆パフの新製品を開発し、一層の市場拡大に繋がりました。また、粉末状大豆たん白素材は、たん白摂取の重要性が広く認知されたことで、風味、分散性に優れた「プロリーナ」シリーズ製品を中心にプロテインパウダー、プロテインバー等の栄養健康市場が引き続き好調を維持する他、たん白飲料分野にも採用が進みました。更に、PBF(プラントベースドフード)商品の展開としては、大丸心斎橋店に「UPGRADE Plant based kitchen」を出店し大豆ミート、USS素材を使ったPBFメニュー料理を提案販売、PBF啓蒙活動を行うと共にコンビニエンスストアやファーストフード店向けには日本人の好みに合ったベジバーグ、ソイナゲット等の製品開発を進め、PBF商品の採用拡大に努めました。市場の省人化要望に対しては、半調理済の「大豆ミートのすき焼き丼」、水戻し済冷凍大豆ミート、味付け済大豆ビッツ等の使い勝手の良い製品を開発、新たな顧客獲得に努めました。大豆多糖類においては、製品コストダウンに取り組み、引き続き国内及び中国や東南アジア市場における飲料用安定剤「ソヤファイブシリーズ」、国内市場での麺用品質改良剤「ソヤアップシリーズ」の使用が好調です。 当事業の研究開発費は1,031百万円です。 (基盤研究その他) 未来創造研究所では、経営課題である「おいしさと健康」に拘った食の市場を創造するための研究や、新規事業に繋がる新技術開発に取り組んでおります。また、産学連携による研究開発にも引き続き取り組んでおります。 本年度の主な成果としては、ドリンクヨーグルトの安定剤として利用される「水溶性大豆多糖類」に続く新素材として、アレルゲン表示が不要な「水溶性えんどう多糖類」の開発に成功し、その生産拠点としてFuji Brandenburg GmbHをドイツに設立致しました。本素材の構造解析を大阪府立大学と共同研究で取り組み、国際学術誌「Carbohydrate Polymers」に掲載されました。低脂肪豆乳摂取が糖尿病性腎症を予防する可能性について駒沢女子大学と共同研究を行い、尿中アルブミン排泄が有意に改善することを見出し、日本臨床栄養学会雑誌に掲載されました。大豆の加工と味、機能と成分の関連性について京都大学との産学共同講座に引き続き取り組み、これまで困難であった大豆種子に含まれるタンパク質分子種の構成比を正確に測定する技術を確立しました。この成果は大豆の品質を評価する新たな技術として期待されています。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のスマートセルプロジェクト「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発/高生産性微生物創製に資する情報解析システムの開発」において新潟薬科大学等と連携し、油脂酵母の新規油脂蓄積制御因子の同定とその機能解析により生産性を5倍以上向上させることに成功しました。本成果は日本農芸化学会2020年大会のトピックス賞として選出されました。科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)採択課題である「肝臓脂肪量減少作用をもつ緑豆タンパクの新規な抗生活習慣病機能性食材としての実用化への取り組み」では、米国でのInstitute of Food Technologists(IFT)において緑豆タンパクの紹介をするとともに、特定のジペプチド・トリペプチドによる「肝臓脂肪合成抑制用食品組成物」として金沢大学と共同で米国に特許出願を行いました。 当事業の研究開発費は1,537百万円です。
FY2019|3,718 文字
5【研究開発活動】 当社グループは長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、植物性油脂と大豆および大豆たん白を基礎とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んでおります。特に近年は、持続可能性(Sustainability)の観点から、これら素材を主原料に用いた、様々な動物代替食品素材の開発を「PBFS(Plant-Based Food Solutions)」として注力しています。2016年8月に不二製油株式会社・阪南事業所内に開所いたしました「不二サイエンスイノベーションセンター」には、通算5,000名を越える国内外のお客様、および企業・研究機関の方をお迎えし、「共創」をテーマにした研究開発の拠点として、グローバル展開に向けた独創性のある製品の開発を行っております。 日本国内を統括する不二製油株式会社は、各素材別の研究開発室と、これら素材を用いたアプリケーションを開発(応用開発)する「価値づくり市場開発室」を併せた、研究開発部門として運営しています。これにより、各素材間の共創による新規複合素材の開発を効率良く行うと共に、開発された新素材をすぐさまお客様へ提案し、お客様と共創による価値づくりを実現できる体制にしています。また、生産技術開発部門では引き続きコア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。 未来創造研究所は、当社グループの将来を支えるための研究部門として不二製油グループ本社株式会社に移管を行い、新規事業を創造する研究所としての位置付けのもと、積極的に国内外の大学等の公的研究機関との共同研究、及び研究員の派遣に取り組んでいます。国内では、国立大学法人京都大学と産学共同講座<「不二製油」大豆ルネサンス講座>を当初の計画を延長して取り組んでおり、国立大学法人茨城大学とは、クロスアポイントメント制度により、大学教員を当社研究員としても採用しています。海外では、シンガポール大学との共同研究、コペンハーゲン大学への研究員の派遣等を行っております。 東南アジア圏を統括するFUJI OIL ASIA PTE. LTD.(シンガポール)の「アジアR&Dセンター」では、東南アジア地域のニーズに合わせた製品研究・開発、並びに、国際食品企業との連携において、重要な拠点になっております。日本国内にある「不二サイエンス・イノベーションセンター」および「つくば研究開発センター」との定期的な会合や人的交流を通じて、不二製油グループの更なる研究開発のレベルアップに努めてまいります。また、他のグループ各社においても、相互の交流を通じた素材開発・応用開発を行っております。 当連結会計年度の研究開発費の総額は4,758百万円であります。 研究開発活動の概要は次のとおりであります。(油脂部門) 安全・安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品およびその最適な応用法に関する研究開発を通して、お客様のご要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。 当連結会計年度の主な成果としては、健康志向素材として、難溶性抗酸化成分を油の中で細かく分散させる新技術で、酸化と魚臭の発生を抑えた安定化DHA・EPAの開発に成功し、これまで出来なかった幅広いカテゴリーの食品に展開できる健康志向製品として提案を開始しております。その他、育児粉乳等のニュートリション用途の厳しい品質規格にも対応できる健康油脂素材の開発にも注力しました。また、従来より検討してきたDTR技術(*)により、少ない調味料でも塩味や酸味、辛味が強く感じられる呈味増強油脂を開発し、減塩効果のある調味油として、病院や高齢者施設の給食用途で大きく期待されております。また同技術を応用し、油脂の風味発現向上、口解け向上など従来製品の高機能化に加えて、ラード等の代替となる、物性、風味を兼ね備えた可塑性油脂の開発を行い、弊社の掲げる植物性素材でのお客様への価値提供(PBFS)を推進しております。更に油脂結晶制御技術、エステル交換、分別技術を利用し、品質、作業性を両立するアイスコーチング用油脂、部分硬化油不使用の機能性チョコレート用油脂等、グローバル市場からの要望にも対応可能な油脂素材の開発に取り組み、海外展開を拡大されるお客様へのご提案が可能な製品の開発を継続しております。 当部門の研究開発費は732百万円であります。*DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味など)や保存安定性を付与増強する技術。 (製菓・製パン素材部門) チョコレートやホイップクリーム、マーガリン、チーズ風味素材、パイ製品等、製菓・製パン用素材を中心にした新技術・新製品開発、およびソフト開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、チョコレートにおいては、最近の健康志向の流れから、糖類を低減したシュガーレス規格のチョコレートを製品化し、美味しさと健康を両立した製品の開発に努めました。また、調理加工市場向けとして小型容器に充填したソース状のチョコレートやカカオ風味の濃さを訴求した調理用途の製品開発に取り組みました。乳化・発酵素材開発では、ホイップクリームやマーガリン、フィリング素材を中心に従来の乳の美味しさと機能向上を目指した製品開発に取り組む一方で、健康志向や消費者ニーズの変化に対応し、新しい植物性の素材価値を追求しております。USS(ウルトラソイセパレーション)豆乳の美味しさを活かした、チーズ様素材、ホイップクリーム、フィリング等によるサステナブルな製品群の拡充を図りながら、PBFSを推進しています。また、価値づくり開発においては、これら製品の特長を活かしたアプリケーション開発と様々な社会課題、ニーズの中に消費者価値を想定したソリューション提案活動を実施しております。 当部門の研究開発費は1,486百万円であります。 (大豆部門) 大豆たん白、大豆たん白食品、豆乳、大豆多糖類の開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、昨年に続き世界初の豆乳の分離分画技術、USS(ウルトラソイセパレーション)製法で加工された豆乳クリームおよび低脂肪豆乳は、風味の面から調理加工分野や飲料分野にて高い評価を得ました。植物性の組織状たん白素材は、シリアル素材向けの大豆パフの開発を進め、高たん白や低糖質の栄養面と良食感の両立化により市場の拡大に繋がりました。また、粉末状植物性たん白素材は、近年たん白摂取の重要性が一般消費者層まで浸透し、プロテインパウダー、プロテインバー等の健康食品への採用が好調を維持しています。更に、たん白補給、高齢化社会に対応すべく、大豆たん白粉末を応用されやすいよう改質するほか、高齢者が喫食しやすい食品、冷凍豆腐、がんもどきなどの大豆たん白食品を開発し、老健向けの豆腐パティーも展開いたしました。生協向け大豆たん白食品では、PBFS商品の展開としてミートレスハンバーグ、冷凍タイプ大豆ミートを上市し市場への定着を進める一方、具材の産地にこだわった商品としてハンバーグや和惣菜、あるいはチーズ様素材を包餡したとうふハンバーグも引き続き好調であります。大豆多糖類においては、引き続き国内外における飲料分野や国内市場での麺および米飯用品質改良剤分野での使用が好調であります。 当部門の研究開発費は1,186百万円であります。 (基盤研究その他) 未来創造研究所では、経営課題である「おいしさと健康」を両立させた食の市場を創造するための研究開発や、新規事業に繋がる新技術開発に取り組んでおります。また、産学連携による研究開発にも引き続き取り組んでおります。 当連結会計年度の主な成果としては、機能性表示食品制度への対応として、当社として3件目となる「ペプチドメンテ・チュアブル」の届出が受理されました。本品は、これまでの「記憶力(認識したことを正しく思い出す力)の維持」に続く商品として、大豆ペプチドである「大豆由来セリルチロシン」を関与成分に、新たに「健康な中高年の方の認知機能の一部である注意力(物事に一時的に集中する力)を維持する機能があることが報告されている」旨が、表示可能であります。大豆の加工と味や機能と成分の関連性について、国立大学法人京都大学との産学共同講座<「不二製油」大豆ルネサンス講座>において引き続き取り組んでおります。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)採択課題である「肝臓脂肪量減少作用をもつ緑豆タンパクの新規な抗生活習慣病機能性食材としての実用化への取り組み」において、参画している研究機関との連携を進め、その研究成果のうち、緑豆タンパク摂取と腸内細菌叢を介した脂質代謝調節機序について、国際学術専門誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に論文が掲載されました。 当部門の研究開発費は1,353百万円であります。
FY2018|3,691 文字
5【研究開発活動】 当社グループは長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、植物性油脂と大豆および大豆たん白を基礎とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んでおります。2017年度からはPBFS(Plant-Based Food Solutions)をテーマに、環境や資源等の社会課題を解決する手段として、植物性素材を用いた多くの提案を行っております。 2016年に開設した不二製油株式会社阪南事業所内の「不二サイエンスイノベーションセンター」は「第30回日経ニューオフィス賞近畿ブロック推進賞」を受賞しております。また、研究開発体制の強化を目的に併設するパイロット研究棟を全面改修し、従来から重視してきた「共創」に加え、生産も視野に入れた開発環境を整えました。「つくば研究開発センター」はコミュニケーションフロアを大規模に改修し、「共創」をテーマにした研究開発を更に進める環境を構築しております。両開発センターを通じて、引き続き「おいしさ」「健康」「環境」の方針を具現化する、グローバル展開に向けた独創性のある製品の開発に注力しております。 日本国内を統括する不二製油株式会社は、2016年より、不二製油グループの多岐にわたる新素材を扱う価値づくり市場開発室を設置しました。リテール、コンビニエンスストア、外食・カフェ等多様な市場、製菓・製パン、飲料、食肉加工等多様な食品加工業、官公庁・大学等産学連携、さらには最終の消費者まで含めた市場や社会の課題に対するソリューションを提供し、一層の価値の共創を目指しております。近年は、中国・東南アジアとも連携し、日本での長きにわたる協業の経験・知見を生かし、グローバルに活動の幅を広げております。 基盤研究部門である未来創造研究所は、不二製油グループ本社株式会社の組織として、当社グループの将来を支えるため、新規事業を創造する研究所として活動しております。また、生産技術開発部門では引き続きコア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。大学等の公的研究機関との共同研究も積極的に行っており、特に国立大学法人京都大学とは、2015年4月に開設した産学共同講座<「不二製油」大豆ルネサンス講座>を継続し、大豆の新たな可能性に向けた研究を進める中で、対外的にも多数の高い評価を得ております。 アジア圏を統括するFUJI OIL ASIA PTE.LTD.では、2015年3月にシンガポールに開設した「アジアR&Dセンター」と、日本国内にある「不二サイエンスイノベーションセンター」および「つくば研究開発センター」との連携を更に進め、現地のニーズに合わせた製品研究・開発を行っております。また、他のグループ各社においても、素材開発・応用開発を行っております。海外機関との取り組みも進めており、シンガポール国立大学やシンガポールの政府系研究機関であるICES(Institute of Chemical and Engineering Science)とも共同研究を行っております。タイの栄養士学会とは大豆たん白の栄養メリットの啓蒙活動を継続中であります。 当連結会計年度の研究開発費の総額は、46億13百万円であります。 研究開発活動の概要は次のとおりであります。(油脂部門) 安全・安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品およびその最適な応用法に関する研究開発を通して、お客様のご要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。 当連結会計年度の主な成果としては、昨年度開発した難溶性抗酸化成分を油の中で細かく分散させる新技術で、酸化と魚臭の発生を抑えた安定化DHA・EPA等の健康油脂の提案を引き続き進めております。また、これまで検討してきたDTR技術(*)の応用により、塩味、辛味という呈味の増強による減塩効果に加え、ポリフェノール類といった、健康訴求素材を含む食品の収斂性を大幅に軽減し、美味しく、食べやすくする機能を付与した健康訴求型食品用の機能性油脂の開発に取り組みました。一方、油脂結晶制御技術を利用し、東南アジアを中心に、耐熱安定性が求められる海外チョコレート市場を視野に入れたお客様の要望に応えることができる、ブルーム防止用耐熱性機能油脂の開発や油脂加工技術を応用したニュートリション用ミックスオイルを製品化しました。 当部門の研究開発費は7億37百万円であります。*DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味など)や保存安定性を付与増強する技術。 (製菓・製パン素材部門) チョコレートやホイップクリーム、マーガリン、チーズ風味素材、パイ製品等、製菓・製パン用素材を中心にした新技術・新製品開発、およびソフト開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、チョコレートにおいては、最近の健康志向の流れから、糖類を低減したシュガーレス規格のチョコレートを製品化し、採用事例を増やして参りました。また、調理加工市場向けとしてカカオ風味の濃さを訴求した、調理用カカオ素材を上市し、調理市場への認知度を上げるように努めました。これら新市場への提案活動を通じて、新たな着眼点も得られており、次の展開が期待されます。乳化・発酵素材開発では、ホイップクリームやマーガリン、フィリング素材を中心に機能向上を目指した製菓・製パン向け製品開発に取り組むと共に、新規市場として特に飲料市場向けクリーム素材の開発において成果が得られました。その一方で、健康志向や消費者ニーズの変化に対応し昨年度同様、新しい植物性の素材価値を継続的に追求しており、USS(ウルトラソイセパレーション)製法で加工された豆乳を原料に、独自の発酵技術を用いたチーズ様素材の各種ラインナップの拡充やホイップクリームでの展開も加速させ、さまざまな用途での採用が広がりました。 当部門の研究開発費は15億4百万円であります。 (大豆部門) 大豆たん白、大豆たん白食品、大豆多糖類、大豆イソフラボン他大豆関連製品の開発を行っております。 当連結会計年度の主な成果としては、植物性の組織状たん白素材は、肉に近い食感をもつ大豆ミートとしての高品質化、バラエティー化を進め、味と食感が評価され純植物性素材としての展開を進めました。一方、粉末状植物性たん白素材は、高騰する卵白やすり身の保水力を代替できるように物理特性を見直し、動物性資源の代替の可能性を高めました。また、大豆たん白食品では、高品質化した大豆ミートを加工し、肉を使用していないハンバーグやパティ、から揚げを製品化しました。生協向け大豆たん白食品では、具材の産地にこだわった商品が好調で、チーズ様素材や組織状大豆たん白でジューシー感を付与した内材を包餡したハンバーグ・豆腐つくねや冷凍絹厚揚げが引き続き好調であります。大豆多糖類においては、引き続き国内外における飲料分野や国内市場での麺および米飯用品質改良剤分野での使用が好調であります。 当部門の研究開発費は11億71百万円であります。 (基盤研究その他) 未来創造研究所では、経営課題である「おいしさと健康」を両立させた食の市場を創造するための研究開発や、新規事業に繋がる新技術開発に取り組んでおります。また、産学連携による研究開発にも引き続き取り組んでおります。 当連結会計年度の主な成果としては、機能性表示食品制度への対応として、当社として2件目となる「ペプチドメンテ」の届出が受理されました。本商品は大豆ペプチドである「大豆由来セリルチロシン」を関与成分とし、「大豆由来セリルチロシンは、健康な中高年の方の認知機能の一部である記憶力(認識したことを正しく思いだす力)を維持する機能があることが報告されている」旨が、表示可能であります。 国立大学法人京都大学との産学共同講座<「不二製油」大豆ルネサンス講座>においては、糖尿病および糖尿病性腎症を予防する効果の高い成分が大豆中に含まれることを発見しました。この研究成果は高い評価を受け、学術専門誌「Molecular Nutrition & Food Research」の表紙にも掲載されました。また、大豆中のコク味物質を新たに見出した研究について、公益社団法人日本農芸化学会より「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」誌の論文賞を受賞しております。 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)採択課題である「肝臓脂肪量減少作用をもつ緑豆タンパクの新規な抗生活習慣病機能性食材としての実用化への取り組み」について、国立大学法人金沢大学を中心に連携を進め、その研究成果は、学術専門誌「The Journal of Nutrition」にて高い評価を受け、同紙の表紙に掲載されました。 当部門の研究開発費は11億99百万円であります。
FY2017|3,417 文字
6 【研究開発活動】当社グループは長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、植物性油脂と大豆および大豆たん白を基礎とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んでおります。2016年8月には、不二製油株式会社阪南事業所内に、新研究施設として「不二サイエンスイノベーションセンター」を開設しました。「共創」をテーマにした国内外の研究開発の中心拠点として、「おいしさ」「健康」「環境」の方針を具現化する、グローバル展開に向けた独創性のある製品の開発に注力しております。日本国内を統括する不二製油株式会社は、2016年4月より、応用開発研究所および各事業部ごとに設置されていた素材開発室を統合した研究開発部門としました。これにより、各研究室間のコミュニケーションの向上および各素材間の共創による新規複合素材の開発が出来る体制にいたしました。また、新たに価値づくり市場開発室を設置し、開発された新素材をすぐさまお客様へ提案し、お客様と共創できる体制にいたしました。基盤研究部門である未来創造研究所は、不二製油グループ本社株式会社へ移管し、当社グループの将来を支えるため、新規事業を創造する研究所としての位置付けを更に強化しました。また、生産技術開発部門では引き続きコア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。大学等の公的研究機関との共同研究も積極的に行っており、特に国立大学法人京都大学とは、2015年4月に開設した産学共同講座<「不二製油」大豆ルネサンス講座>を継続し、大豆の新たな可能性に向けた研究を進めております。アジア圏を統括するFUJI OIL ASIA PTE. LTD.では、2015年3月にシンガポールに開設した「アジアR&Dセンター」と、日本国内にある「不二サイエンスイノベーションセンター」および「つくば研究開発センター」との連携を更に進め、現地のニーズに合わせた製品研究・開発を行っております。また、他のグループ各社においても、素材開発・応用開発を行っております。当連結会計年度の研究開発費の総額は、44億59百万円であります。 研究開発活動の概要は次のとおりであります。(油脂部門)安全安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品およびその最適な応用法に関する研究開発を通して、お客様のご要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。当連結会計年度の主な成果としては、難溶性抗酸化成分を油の中で細かく分散させる新技術で、酸化と魚臭の発生を抑えた安定化DHA・EPAの開発に成功し、これまで出来なかった幅広いカテゴリーの食品に展開できる製品として提案を開始しております。また、これまで検討してきたDTR技術(*)により、少ない調味料でも塩味や酸味、辛味が強く感じられる呈味増強油脂を開発し、減塩効果のある調味油として、病院や高齢者施設の給食用途で大きく期待されております。また同技術を応用し、油脂の風味発現向上、口解け向上など従来製品の高機能化を達成し、より付加価値の高い製品をお客様に提供できるようになっております。また、油脂結晶を利用し、品質作業性が向上するマーガリン用油脂の発売、お客様のご要望にお応えできる新規ブルーム抑制脂の開発に取り組みました。その他、低トランスタイプ、低飽和タイプと昨今グローバル市場からも要望される健康志向素材を開発し、海外展開を拡大されるお客様にも、いち早くご提案できる製品の開発を継続しております。当部門の研究開発費は7億36百万円であります。*DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味など)や保存安定性を付与増強する技術。 (製菓・製パン素材部門)チョコレートやホイップクリーム、マーガリン、チーズ風味素材、パイ製品等、製菓・製パン用素材を中心にした新技術・新製品開発、およびソフト開発を行っております。当連結会計年度の主な成果としては、チョコレートにおいては、最近の健康志向の流れから、糖類を低減したシュガーレス規格のチョコレートを製品化し、美味しさと健康を両立した製品の開発に努めました。また、調理加工市場向けとして小型容器に充填したソース状のチョコレートやカカオ風味の濃さを訴求した調理用途の製品開発に取り組みました。乳化・発酵素材開発では、ホイップクリームやマーガリン、フィリング素材を中心に従来の乳の美味しさと機能向上を目指した製品開発に取り組む一方で、健康志向や消費者ニーズの変化に対応し新しい植物性の素材価値を追求しております。USS(ウルトラソイセパレーション)豆乳の美味しさを活かし動物性原料を使用しないシリーズとして独自の発酵技術を用いたチーズ様素材の各種ラインナップの拡充を図り、更にはホイップクリームでの展開も加速させ、さまざまな用途での採用が広がりました。また、価値づくり開発においては、これら製品の特長を活かしたアプリケーション開発と、反対に消費者からの多様な要望を実現できるアプリケーション開発を実施しております。当部門の研究開発費は14億26百万円であります。 (大豆たん白部門)大豆たん白、大豆たん白食品、豆乳、大豆多糖類、大豆イソフラボン他大豆関連製品の開発を行っております。当連結会計年度の主な成果としては、昨年に続き世界初の豆乳の分離分画技術、USS(ウルトラソイセパレーション)製法で加工された豆乳クリームおよび低脂肪豆乳は、風味の面から調理加工分野や飲料分野にて高い評価を得ました。また、これらUSS素材(豆乳クリームおよび低脂肪豆乳)の特性を活かし、これまでに無かった豆腐類、ドレッシング、ホイップクリーム、フィリング等が誕生し、大豆加工素材として新しい分野への展開が進んでおります。植物性の組織状たん白素材は、肉に近い食感をもつ大豆ミートとしての高品質化、バラエティー化を進め、味と食感が評価され純植物性素材としての展開を進めました。一方、粉末状植物性たん白素材は、高騰する卵白やすり身の保水力を代替できるように物理特性を見直し、動物性資源の代替の可能性を高めました。また、たん白補給、高齢化社会に対応すべく、大豆たん白粉末を応用されやすいよう改質するほか、高齢者が喫食しやすい食品、柔らかい食感の冷凍流通豆腐、がんもどきなどの大豆たん白食品を開発し、老健向けの豆腐パティーも展開いたしました。生協向け大豆たん白食品では、具材の産地にこだわった商品が好調で、チーズ様素材や粒状大豆たん白でジューシー感を付与した内材を包餡したハンバーグ・豆腐つくねも引き続き好調であります。大豆多糖類においては、引き続き国内外における飲料分野や国内市場での麺および米飯用品質改良剤分野での使用が好調であります。当部門の研究開発費は10億52百万円であります。 (基盤研究その他)未来創造研究所では、経営課題である「おいしさと健康」を両立させた食の市場を創造するための、新技術開発や研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度の主な成果としては、新規事業に繋がる新技術開発として、油脂に溶けにくい難溶性成分を安定的に混ぜる技術を開発し、この技術によって世界で初めて酸化安定性が極めて高い安定化DHA・EPAの開発が可能となりました。おいしさに関する研究としては、USS素材(豆乳クリームおよび低脂肪豆乳)がもつ大豆本来のおいしさの解明を、<「不二製油」大豆ルネサンス講座>で引き続き取り組んでおります。健康に関する研究開発の一つとして、大豆イソフラボン(アグリコンとして)を機能性成分に用いた機能性表示食品「イソフラサポート」の届け出を消費者庁に行いました。本品は丈夫な骨を維持したい女性に適した食品で、想定する主な対象者は健常な日本人中高年女性です。また、「ブレインフード(健脳素材)としての大豆ペプチドの研究開発」が、第三回健康科学ビジネスベストセレクションズ近畿経済産業局長賞を受賞し、大豆ペプチドの認知機能への寄与、作用に関する研究成果を高く評価いただきました。その一方で、農林水産省の食品産業科学研究推進事業における、油脂酵母を用いた高機能油脂生産の研究に参画し、産学連携による新技術開発に引き続き取り組んでおります。当部門の研究開発費は12億46百万円であります。
FY2016|2,960 文字
6 【研究開発活動】当社グループは長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、植物性油脂と大豆および大豆たん白を基礎とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んでおります。「おいしさ」「健康」「環境」を方針として、グローバル展開に向けた独創性のある製品の開発に注力しております。日本国内を統括する不二製油株式会社では、2015年4月より、製品別の各事業部の下に素材開発部門を編入し、製造・販売・開発を一体としました。併せて、応用開発部門を応用開発研究所に統合し、各事業部と密接に連携を取ることで、顧客対応スピードを重視した開発体制としました。基盤研究部門は、生産技術のイノベーションを担うグループを併合した上で、未来創造研究所と名称を変更することにより、不二グループの将来を支えるための、新規事業を創造する研究所として位置付けました。また、生産技術開発部門では引き続きコア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。大学等の公的研究機関との共同研究も積極的に行っており、特に国立大学法人京都大学とは、産学共同講座<「不二製油」大豆ルネサンス講座>を2015年4月より開設し、引き続き研究に取り組んでおります。アジア圏を統括するFUJI OIL ASIA PTE. LTD.では、2015年3月に「アジアR&Dセンター」をシンガポールに開設し、アジアにおける開発機能を同施設に集中させ、現地のニーズに合わせた製品研究・開発を行っております。また、他のグループ各社においても、素材開発・応用開発を行っております。当連結会計年度の研究開発費の総額は、41億7百万円であります。 研究開発活動の概要は次のとおりであります。(油脂部門)安全安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品およびその最適な応用法に関する研究開発を通して、お客様のご要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。当連結会計年度の主な成果としては、一昨年来より検討してきましたDTR技術(*)をチョコレート用油脂やサンドクリーム用油脂に応用し、風味発現の向上に取り組みました。昨年度は新風味を付与できるDTR新製品を発売し、より幅広くお客様のニーズにお応え出来るようになりました。一方、米国FDAより部分硬化油をGRASより除外するとの発表を受け、早急に代替品をお客様へご提案したり、昨今の米油供給量不足を補うべく、お客様と協業してパーム油への置換を検討し、ご要望にお応えしました。また、チョコレート用油脂のCBEのグローバルシェア拡大を目指し、海外グループ会社と協業で品質設計を行いました。当部門の研究開発費は7億47百万円であります。*DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味など)や保存安定性を付与、増強する技術。 (製菓・製パン素材部門)チョコレートやホイップクリーム、マーガリン、チーズ様素材、パイ製品等、製菓・製パン用素材を中心にした新技術・新製品開発、およびソフト開発を行っております。当連結会計年度の主な成果としては、チョコレートにおいては、新関東工場の稼動と連動し、栄養健康を志向したチョコ素材の開発に取り組みました。特に市場認知度の高い糖質・糖類を低減したチョコ素材の開発を行い市場開拓に努めました。また、調理加工市場向けのソフトチョコ、生チョコソースなどの素材を重点的に開発しチョコレート部門の数量拡大に寄与しました。乳化・発酵素材開発においては、従来からのホイップクリームやマーガリン等の製菓・製パン市場向け素材の継続的な開発に加え、消費者の健康志向が高まる中で植物性に拘った不二独自の素材開発に取り組みました。USS(ウルトラソイセパレーション)製法で加工された低脂肪豆乳を乳酸菌発酵させることで動物資源原料を一切使用しないチーズ様素材を開発し、豆乳の呈味と乳化技術を組み合わせたスープ様調味素材等の開発など新しい領域の製品開発に取り組んでまいりました。また、これら製品の特長を活かした新しいアプリケーション開発と消費者への価値作りを組み合わせた総合的な提案活動を実施しております。当部門の研究開発費は16億16百万円であります。 (大豆たん白部門)大豆たん白、大豆たん白食品、豆乳、大豆多糖類、大豆イソフラボン他大豆関連製品の開発を行っております。当連結会計年度の主な成果としては、昨年に続き世界初の豆乳の分離分画技術、USS(ウルトラソイセパレーション)製法で加工された豆乳クリームおよび低脂肪豆乳は、風味の面から調理加工分野や飲料分野にて高い評価をいただくことができました。また、これらUSS素材(豆乳クリームおよび低脂肪豆乳)の特性を生かし、これまでに無かった豆腐類、ドレッシング、ホイップクリーム、フィリング等が誕生し、大豆加工素材として新しい分野への展開が進んでおります。植物性の組織状たん白素材は、肉に近い食感をもつ大豆ミートとしての高品質化、バラエティー化を進め、味と食感が評価され純植物性素材としての展開が進みました。一方、粉末状植物性たん白素材は、高騰する卵白やすり身の保水力を代替できるように物理特性を見直し、動物性資源の代替の可能性を高めました。また、たん白補給、高齢化社会に対応すべく、大豆たん白粉末を応用されやすいよう改質するほか、高齢者が喫食しやすい食品、柔らかい食感の冷凍流通豆腐、がんもどきなどの大豆たん白食品を開発し、老健向けの豆腐パティーも展開しております。生協向け大豆たん白食品では具材の産地にこだわった商品が好調で、チーズ様素材や粒状大豆たん白でジューシー感を付与した内材を包餡したハンバーグ・豆腐つくねも引き続き好調であります。大豆多糖類においては、引き続き国内外における飲料分野や国内市場での麺および米飯用品質改良剤分野での使用が好調であります。当部門の研究開発費は11億30百万円であります。 (全社(共通))未来創造研究所では、経営課題である「おいしさと健康」に重点を置き、中長期で新しい事業に繋がる新素材開発や新技術開発に取り組んでおります。当連結会計年度の主な成果としては、健康に関する研究開発として、2015年度より始まった機能性表示食品制度に対応した製品開発を行いました。健康増進素材の開発においては、自社素材である大豆ペプチド「ハイニュート」に認知症予防効果がある事を明らかにしました。おいしさに関する素材開発としてはUSS素材(豆乳クリームおよび低脂肪豆乳)がもつ、大豆本来のおいしさの解明を<「不二製油」大豆ルネサンス講座>で取り組みました。新規事業に繋がる新技術開発としては、健康優位性は高いものの、著しく低い酸化安定性のために従来食品への使用が難しかったDHA・EPAを食品に使用可能なレベルまで安定化する技術を確立しました。また、新規プロセスによる油脂食品製造の工程改善にも取り組みました。その一方で、農林水産省の食品産業科学研究推進事業における、油脂酵母を用いた高機能油脂生産の研究に参画し、産学連携による新技術開発に取り組んでおります。当部門の研究開発費は6億13百万円であります。