6 【研究開発活動】当連結会計年度では、当社の研究開発部門である開発本部基礎研究所を中心に「おいしさ、安全・安心、健康、環境負荷低減、細胞工学」の5つの分野において、食肉加工あるいは食肉生産に関する先端的な基礎研究、それらを活用した商品開発と一部の生産技術開発に至るまで、精力的な研究開発活動を行いました。独自の研究技術成果等の社内への導入及び社外への発信も積極的に行っております。また、研究開発体制の構築や研究開発のレベルアップ及び効率化のため、大学等の各種研究機関との共同研究を通して連携強化を行い、研究を推進しています。 (1) おいしさに関する研究おいしさに関する研究では、商品のおいしさを客観的かつ具体的に評価することによる、おいしさの見える化(数値化)の検討を継続しました。当期においては、これまでに導入した技術による評価を継続しながら、静・動摩擦測定機によるロースハムの食感評価及び電子嗅覚システムを用いたロースハムやウインナーソーセージの風味評価と官能評価の間に高い相関性が得られ、各商品の特徴を明らかにしました。また、2023年度から実施しているジューシー感の評価は、当期においては商品のジューシー感が嗜好性と強く関連することが明らかとなり、結果を関連する学会にて報告しました。さらに、研究成果を自社商品の企画開発や品質改善に応用し、自社商品の強みや弱みを詳細に解析することで、より高品位な商品の開発につなげています。「恵味の黒豚」をはじめとする当社ブランドの豚肉の特性評価も継続して実施し、食肉事業本部等の他部門への情報提供を行い、商品開発、品質改善、販売促進活動のサポートに繋がっています。今後もより精度の高いおいしさの見える化を行い、各事業本部の活動に貢献できるよう、新たな検査装置の導入、手法に関する情報収集を継続してまいります。 (2) 安全・安心に関する研究安全・安心に関する研究では、食物アレルゲン検査キットのAOAC(海外の精度認証)取得に関する取り組み、微生物制御及び微生物利用に係る研究開発を行いました。 ① 食物アレルゲン検査キットの開発国内初となるAOAC認証済みのイムノクロマトキットを目指し、認証取得に向けた取り組みを継続しました。当期では、2023年度までに実施した試験結果をまとめAOACにレポートを提出、最終段階の調整を行っています。なお、試験結果より食品中に含まれるアレルゲン濃度が低濃度であっても検出が可能であることが示され、競合他社に対し性能での優位性を示し、今後の拡販につながることが期待されます。 ② 微生物制御に係る研究開発「おいしさと安全・安心」の両立を目指し、工程管理基準の見直し及び保存性向上に関する技術開発を進めています。工程管理基準の見直しは、ハンバーグ類等の真空調理食品製造条件の基準化、セミレトルト処理を行う際のpHや加熱処理の条件および条件に応じた賞味期限の基準設定を行いました。これらの基準は、今後の新商品開発に活かしていきます。また、細菌検査の精度向上や効率化を目的とした、加熱損傷と保存性に係る研究、保存性の予測技術に関する研究、自家蛍光を利用した微生物検査装置の開発を外部研究機関と連携しながら継続しております。今後も新基準の水平展開、新規商品の基準策定、工場の衛生改善や検査方法及び装置の開発を進め、安全性を担保しつつ、おいしい商品の提供に繋げてまいります。 ③ 微生物利用に係る研究開発2023年度より、麹菌による次世代たんぱく質食品の開発を開始しています。当期では麹菌を培養する際に使用する培養条件の検討から、機能性成分の富化につながる培地条件を確立し、特許出願を行いました。また、麹菌の菌体を利用した加工食品の開発を検討し、麹菌の処理工程や加工条件により食感や風味が異なることも分かりました。今後も最適な培養条件や加工食品開発の検討を進め、新たなたんぱく質の供給源としての可能性を明らかにしてまいります。 (3) 健康に関する研究健康に関する研究では、健康で豊かな食生活を創造するために、短期課題として健康に配慮した商品の開発、中長期課題として食肉中からの新規健康成分の探索を進め、当社商品へ活用するための基礎および応用研究を行っています。 ① 健康に配慮した商品の開発2023年度の検討開始から、アミノ酸等の利用による減塩商品の風味改善効果について特許出願を行うとともに、当社減塩商品のリニューアルに応用された技術について、当期では、苦味のマスキング効果に対する詳細な検討を進め、得られた結果をもとに国内優先権主張出願を行いました。市場で多く見られるようになった減塩商品ですが、食感や風味等は改善すべき点が多く、品位の改善に向けた研究を継続してまいります。 ② 食肉中からの健康機能性成分の検索外部研究機関との共同研究により、畜肉副産物中からの機能性成分の探索と健康機能性の解明を進めております。当期では、2023年度に血中のコレステロール値や脂肪細胞に影響を与え、健康機能性として有効な結果が得られた副産物について、有効性を確認するための試験を継続しました。また、確認試験と並行し、副産物の素材化、機能性を高めるための副産物前処理条件の検討、その他の副産物からの機能性成分に関する調査を行いました。本研究は、未利用資源の有効活用にも繋がるため、検討を継続することとしております。 (4) 環境負荷低減に関する研究環境負荷低減に関する研究では、当社の養豚事業や食品製造時に発生する二酸化炭素を考慮し、環境に対する積極的な取り組みが責務となると考え、当期では以下の3課題に取り組みました。いずれの課題も外部研究機関等との共同研究を推進し、基礎的な研究から社会実装を行うための応用研究までを行っております。 ① カーボンニュートラルラン藻による大気中の二酸化炭素を固定化する技術の開発を継続しています。当期では、当社で分離したラン藻を食品として利用するための急性毒性試験、幅広い温度帯での生育特性の確認、生育温度に依存した栄養成分の蓄積およびコントロールできる特性の確認を行い、特許出願の準備を進めております。また、構築した技術は共同研究先が設立を準備しているコンソーシアム内での使用を計画しております。 ② 有機性廃棄物の資源化動植物性残さや家畜の糞尿等の有機性廃棄物を資源化するため、メタン発酵消化液による植物病害菌抑制を検討しています。当期では、2023年度までに確立した有用菌2株を使用してのフィールド試験を実施し、植物病害菌抑制に対する効果を確認しました。また、これまでに検討した内容を関連する学会にて報告を行いました。 ③ 生分解性プラスチック素材の微生物による分解堆肥中でのポリ乳酸(PLA)繊維の効果的な分解を目的として、検討を行っております。当期では、2023年度に分離した有用菌3株を用い、実用化に向けて試験系のスケールアップ及び微生物の大量培養委託先の選定を行いました。翌期では、共同研究先でのフィールド実証試験を計画しております。 (5) 細胞工学に関する研究将来的な世界人口の増加による食肉供給不足や環境保全の観点から、当社においてもゲノム編集技術を応用した食品の開発動向、培養肉のメーカー・技術動向・市場性などを把握するため、調査研究を継続しております。当期は、ゲノム編集応用食品及び培養肉に関する技術情報の収集を行いながら、培養肉開発に関する技術の検証をすすめ、畜肉副産物を原料とした培養肉を食品加工素材として使用することの可能性を確認しました。 当期の研究開発活動は、社内関連部署及び社外各種研究機関との連携を強化しながら、研究活動の中から得られた情報を全社に向けて発信することにより、研究開発部門と他事業部門が一体となって具体的施策を推進し、全社利益の最大化・企業価値向上に貢献することを目標に実施してまいりました。また、関連する学会での研究報告、新技術の特許化等などを通じて社外に対する情報発信も行っております。なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、365百万円です。
FY2024|3,109 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度では、当社の研究開発部門である開発本部基礎研究所を中心に「おいしさ、安全・安心、健康、環境負荷低減、細胞工学」の5つの分野において、食肉加工あるいは食肉生産に関する先端的な基礎研究、それらを活用した商品開発あるいは一部の生産技術開発に至るまで、精力的な研究開発活動を行いながら、独自の研究技術成果等の社内への導入を積極的に行っております。また、研究開発体制の構築や研究開発のレベルアップ及び効率化のため、大学等の各種研究機関との共同研究を通して連携の強化を行い、研究を推進しております。 (1) おいしさに関する研究おいしさに関する研究では、商品のおいしさを客観的かつ具体的に評価することによる、おいしさの見える化(数値化)の検討を継続しました。当期では、新規評価手法として噛み心地評価測定機、静・動摩擦測定機あるいは電子味覚システムを用い、食感や味覚の評価系を確立してウインナー、ロースハム等の特徴を明らかにしました。また、これまでに構築した手法も加え、当社及び他社の焼豚やドライ商品(サラミ)を対象とした嗜好型官能評価及び機器分析を行い、当社商品での改善すべきポイントの明確化を行いました。さらに、当社ブランドの豚肉や鶏肉の特性評価も実施し、得られた結果は当社食肉事業本部等の他部門に情報提供することにより、商品開発、品質改善、販売促進活動のサポートに繋がっております。また、当社「恵味の黒豚」の特徴に関しての研究成果は関連する学会で研究報告を行い、新規評価手法については特許出願を行いました。今後もより精度の高い見える化を行い、各事業本部の活動に貢献できるよう、新たな検査装置の導入、手法に関する情報収集を継続してまいります。 (2) 安全・安心に関する研究安全・安心に関する研究では、食物アレルゲン検査キットのAOAC(海外の精度認証)取得、微生物制御及び微生物利用に係る研究開発を行いました。 ① 食物アレルゲン検査キットの開発国内初となるAOAC認証済みのイムノクロマトキットを目指し、当期では第三者機関での性能評価が完了しました。今後は、得られた結果をもとに論文等の必要書類の準備を進め、当初の計画よりは遅れますが、2024年度での認証取得を予定しております。 ② 微生物制御に係る研究開発「おいしさと安全・安心」を両立させながら当社商品の品質を向上させるため、工程管理基準の見直し及び保存性向上に関する技術開発を進めております。工程管理基準の見直しは、昨年度策定した真空調理食品製造の新基準を、当社各工場やグループ各社に水平展開するための作業を継続しました。また、これまでに製造基準が設定されていなかった高pH食品でも基準策定を行いました。策定した基準は今後の新商品開発に活かしてまいります。保存性向上に関する技術開発では、当社の品質保証本部、生産本部と連携しながら当社各工場の製造工程の衛生改善に取り組み、衛生状況を向上させる提案を行いました。また、細菌検査の精度向上や効率化を目的とし、細菌検査用培地の改変や自家蛍光を利用した微生物検査装置の開発を継続しました。今後も新基準の水平展開、新規商品の基準策定、工場の衛生改善や検査装置の開発を進め、安全性を担保しつつ、おいしい商品の開発に繋げてまいります。 ③ 微生物利用に係る研究開発麹菌による次世代タンパク質食品の開発に着手し、当期では、菌体の回収量や風味、食感等の品位を指標として麹菌菌種の選択を行いました。また、麹菌を培養する際に使用する培養液組成の検討を行い、培養液組成を調整することにより菌体回収量、機能性成分含有量が増加し、風味等の品位が向上することを明らかにしました。得られた結果は特許出願を行う予定としております。 (3) 健康に関する研究健康に関する研究では、健康で豊かな食生活を創造するために、短期課題として健康に配慮した商品の開発、中長期課題として食肉中から新規健康成分を探索し、当社商品へ活用するための基礎研究を行っております。 ① 健康に配慮した商品の開発昨年度より検討を行ってきた減塩商品の風味改善に対し、当期ではアミノ酸等の利用による風味改善効果を明らかにし、本技術の特許出願を行うとともに、当社減塩商品のリニューアルに応用しました。また、機能性成分として鶏肉に含まれるイミダゾールジペプチドやGABAに着目して、当社商品中の含有量の測定を行い、一定量の機能性成分が含まれていることを確認しました。機能性表示食品の開発では、他の機能性成分の効果も検証しながら、健康を訴求する商品開発の中で機能性成分の研究を継続しております。 ② 食肉中からの健康機能性成分の検索外部研究機関との共同研究により機能性成分の探索を行い、畜肉副産物に含まれる軟骨やヘム鉄の機能性解明を進めております。当期では、豚あるいは鶏の軟骨摂取による血中のコレステロール値や脂肪細胞に対する影響を明らかにするための試験を行い、一部健康機能として有効な結果が得られ、翌期でも継続する予定としております。 (4) 環境負荷低減に関する研究環境負荷低減に関する研究では、当社の養豚事業や食品製造時に発生する二酸化炭素を考慮し、環境に対する積極的な取り組みが責務となると考え、当期では以下の3課題に取り組みました。いずれの課題も外部研究機関等との共同研究を推進し、基礎的な研究から社会実装を行うための応用研究までを行っております。 ① カーボンニュートラルラン藻による大気中の二酸化炭素を固定化する技術の開発を行っております。当期では、ラン藻大量培養法の確立、培養後のラン藻菌体を効率的に回収するための手法の検討、ラン藻を食品として利用するための急性毒性試験の実施、排水浄化作用の検討等を行いました。なお、得られた結果の一部は特許出願の準備を進めております。また、構築した技術は共同研究先が設立を準備しているコンソーシアム内での使用を計画しております。 ② 食品ロスの削減動植物性残さや家畜の糞尿等、有機性廃棄物の資源化の一環として、メタン発酵消化液によるイチゴ硫黄病菌抑制を検討し、菌の生育が抑制できる有用菌2株を見出しました。現在、共同研究先で有用菌の利用方法及び利用先について検討を行っております。 ③ 生分解性プラスチック素材分解方法の開発堆肥中でのポリ乳酸(PLA)繊維の効果的な分解を目的として、検討を開始しました。当期では、PLAを効果的に分解できる有用菌3株を分離し、生育特性や分解特性を明らかにしました。翌期では、得られた結果をもとに共同研究先でのフィールド実証試験を計画しております。 (5) 細胞工学に関する研究将来的な世界人口の増加による食肉供給不足や環境保全の観点から、当社においても培養肉のメーカー、技術動向、市場性等を把握するため、調査研究を継続しております。当期は、培養肉開発に関する技術の検証をすすめ、畜肉副産物が培養肉の原材料(細胞)となり得ることを確認しました。 当期の研究開発活動では、これまで以上に社内外の関連部門との連携を強化し、研究活動の中から得られた情報を全社に向けて発信することにより研究開発部門、他事業部門が一体となって具体的施策を推進、利益の最大化・企業価値向上に貢献することを目標に活動を実施してまいりました。また、関連する学会での研究報告や新技術の特許化等、社外に対する情報発信も行っております。なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、366百万円です。