研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-03 | - | 24 |
| 2024-03 | - | 33 |
| 2023-03 | - | 11 |
| 2022-03 | - | 12 |
| 2021-03 | - | 55 |
研究開発活動(本文)
FY2025|4,294 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度における研究開発費は1,312百万円であります。当社は、技術開発センター「TAIKISHA INNOVATION SITE AIkawa」(神奈川県)、テクニカルセンター(神奈川県)の2研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました。 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。 (1) 環境システム事業当連結会計年度における研究開発費の金額は620百万円であります。 ① 技術開発センター「TAIKISHA INNOVATION SITE AIkawa」開設当社では「技術の大気社の強化」のため、さらなる顧客との接点の増加、ニーズや課題などの把握、開発促進などを目指し、技術開発センター「TAIKISHA INNOVATION SITE AIkawa」を開設いたしました。旧技術開発センター内の、研究棟をADVANCED PLAZA(以下AP棟)として建て替えを行い、旧音響棟、生産技術棟をTECHICAL LAB(以下TL棟)、SOLUTION LAB(以下SL棟)としてリニューアルいたしました。エリア全体をTAIKISHA INNOVATION SITE AIkawa(以下TISA)と命名し、AP棟、TL棟、SL棟を活用しながら、顧客との協創、共同により、社会のニーズを先取りした付加価値創造の実現を目指し、今まで以上に技術開発に取り組んでまいります。TISAには昨年度開設した「TAIKISHA INNOVATION GATE Shinjuku(以下TIGS)」や今後設置を検討している「(国内外)拠点INNOVATION GATE」につながる会議室や、検証設備、顧客との議論をするスペースなどを設け、技術開発を促進するとともに、エリア全体を研究検証の場として活用していきます。AP棟は大きなガラスファサードを採用し、眺望と外光を有効活用するとともに、コミュニケーションが活発となるようなレイアウトを採用いたしました。省エネ性能においてもZEBの認証をうけており、CASBEEスマートウェルネスオフィスのSランク認定も合わせて受けました。AP棟自体を実験の場として活用し、運用ZEB検証、開発品である直膨式輻射空調設備の快適性検証や設備チューニングを行い、その検証結果を社会に発信し、当社の技術PRを行うとともに、社会に対して脱炭素社会へ向けた技術の発信を行っていきます。当連結会計年度は、TISAとTIGS、顧客事業所訪問での開発技術の紹介など、顧客との協創関係構築へ向けての活動を強化し、延べ117件の技術提案を実施し、24件の顧客との協創(技術導入、評価、フィールドテストなど)に向けて協議を始めております。今後もこの活動をさらに活発化させ、カーボンニュートラルや快適で安全な環境構築など社会が求める課題への対応を実施いたします。 ② CO2分離回収当社では、カーボンニュートラル(以下C/N)への取り組みとして、自然エネルギー活用や省エネルギーでは対応しきれない部分の対策としてCO2吸脱着技術の開発に取り組んでおります。当連結会計年度は、かねてより開発を進めてきたCO2吸脱着システムの検証用装置を作成し、お客様の協力を得て、実際の会議室で性能検証を行いました。検証結果については取りまとめ中ですが、実環境での計測は同装置の性能や課題を明確にすることができ、実用化へ向けて大きく進むことができると考えております。CO2吸脱着装置と空調換気設備を組み合わせることで、換気を補助するシステムとして顧客C/Nへ貢献できると考えております。現在は室内空気や外気のような常温、低濃度の空気を対象にしていますが、この技術は吸着剤を変えることで様々な条件のCO2吸脱着に活用できる技術と考えております。また、近年の外気CO2濃度の高まりに対しても、有効に活用できる技術と考えております。今後は今回の計測結果をもとに、エネルギー効率の改善、濃縮CO2の濃度向上、運転方法最適化などの改良を実施していき、早期実用化を目指して取り組んでまいります。合わせて、回収CO2の活用先についても検討してまいります。 ③ DXの活用(現場巡回ロボット、試運転支援)当社では、DXを活用した働き方改革へ向けた取り組みとして、ロボットによる試運転計測、現場巡回記録技術の開発を行っております。当連結会計年度は、現場巡回記録技術の実用化に向け、昨年度実施した内容(4足ロボットに360度カメラを搭載し位置情報と合わせて画像を記録)を基に、取得した情報の処理及び活用について開発・検証を実施いたしました。360度カメラに加え、3Dスキャン情報から取得した情報を、BIM(Building Information Modeling)と比較、連携することで工事進捗の把握などの開発・検証を行いました。また、画像情報より機器や弁類などの位置を把握し、それが何の設備であるか、正しい位置にあるかの判断手法についても開発・検証も合わせて行いました。認識率はまだ低く実用化には多くの開発が必要ですが、これらの技術は施工品質/工程管理などへ展開が可能であり、将来的には発注や請求システムなどとも連携が可能であることがわかりました。早期実用化を目指して今後も開発に取り組んでまいります。また、試運転計測においても一昨年度実施した自動性能検証ロボット(電子デバイス工場などのクリーンルームの温湿度やクリーン度を自動で計測、記録する装置)の性能向上を実施し、BIMとの連携による準備作業の簡略化や計測位置精度の向上をすることができ、実用化の段階まで到達いたしました。今後は実際のプロジェクトにて数件の検証(従来方式との比較)を実施したのち、自動性能検証ロボットによる検証作業の標準化に向けて取り組んでまいります。同時に、すでに開発が完了している、フィルターリーク試験ソフト(VA-M及びVA-M改)の活用と合わせて、性能検証作業の効率化・DX化をはかり、働き方改革を実現してまいります。 (2) 塗装システム事業当連結会計年度における研究開発費の金額は691百万円であります。 ① フィルム加飾(ドライ加飾)システムの開発世界規模でのカーボンニュートラル社会の実現が加速し、かつEVの登場に伴う生産プロセスの変化を背景に、自動車業界は100年に1度といわれる大変革期を迎えています。当社では、カーボンニュートラルの実現に向け、自動車メーカー各社と連携し、CO2排出量をゼロとするような塗装プロセスの開発・提供に取り組んでいます。その一例が、ウェット塗装からドライ加飾への生産技術革新です。ドライ加飾とは、従来のスプレー塗装(ウェット塗装)に代わり、フィルムを真空吸引・加熱・圧空によって貼付けることで、自動車の外装をフィルム加飾(ドライ加飾)する技術です。重ね塗りの過程で塗装と乾燥を繰り返すウェット塗装に対して、フィルム加飾(ドライ加飾)では、従来の塗料を使用した塗装に比べて省エネを実現し、50%以上の大幅なCO2削減を達成しています。またフィルムの多機能化によりウェット塗装では出し得ない色彩や質感を表現することも可能です。当社のドライ加飾システムは、従来システムでは高さ200mm以下の被塗物にしかフィルムを加飾(貼付け)することができませんでしたが、3次元真空圧空成形(TOM)工法を採用することで、高さ700mm以上の曲率が大きい被塗物に対しても、フィルムを加飾することができ、幅広いお客さまへのご提案が可能なシステムとなっております。当連結会計年度は、当社の研究開発施設であるテクニカルセンター(神奈川県座間市)へのドライ加飾デモライン設置が完了し、クリーンでコンパクトなドライ加飾システムの革新性をお客様に体感頂くことが可能となりました。除塵・検査、フィルム加飾、UV照射硬化、トリミング、端材回収工程から成るデモラインは、実生産ラインへの導入に向けた実証の場として既にお客様とのテストを開始しており、実ライン導入に向けた運用・品質面の検証を進めております。今後顧客との活動を活発化し、生産技術革新への対応技術の提供を推進してまいります。 ② 汎用性段ボールフィルタの開発自動車塗装の分野において、塗装ブース内で自動車ボディに塗着しなかった塗料ミストを系外に排出しないように集塵する技術は極めて重要になります。当社では、1980年代から湿式スクラバー方式を主力商品として拡販して参りましたが、省エネルギー効果およびCO2排出削減効果が得られる乾式方式へと市場のニーズが変わってきております。当社では、この乾式方式に応えるべく、2012年にプレコート剤と高性能フィルタを併用したプレコート式システムを商品化しており、数多くの採用をいただいております。近年では、乾式方式の中でも導入費用が削減できメンテナンスも容易なフィルタで集塵する段ボールフィルタ式システムへの変革が進んでおり、当社でも段ボールフィルタ式システムの開発に注力しております。特にシステム集塵部の段ボールフィルタについては消耗品であることからランニングコストを削減するためにも、捕集能力向上とコスト低減が求められています。そのために当社では自社製段ボールフィルタ「i-TCF v01」を開発しました。「i-TCF v01」は、従来推奨していたフィルタと比較して約15%の長寿命化を実現しており、特に処理風量が増加するとその性能差はより顕著になります。フィルタの長寿命化により、ランニングコスト削減およびCO2低減にも寄与する商品となっております。段ボールフィルタには、塗料種類と段ボールフィルタの相性の良し悪しがあり、一つの課題となりますが、「i-TCF v01」の開発により、顧客が採用できるフィルタの選択肢を広げました。また、当社は従来、設備導入後の継続的な物納にはあまり注力してきませんでしたが、今後はこの分野にも力を入れ、当社のポートフォリオを拡充してまいります。今後の継続利用や販路拡大のため、さらなる自社設計フィルタのラインナップ拡充活動を行い、顧客の利益に繋がる開発活動を進めてまいります。以上の取り組みにより、当社は自動車塗装分野における集塵技術の向上と市場ニーズへの対応を図り、持続可能な成長を目指してまいります。
FY2024|4,464 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度における研究開発費は1,166百万円であります。当社は、技術開発センター(神奈川県)、テクニカルセンター(神奈川県)の2研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました。 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。 (1) 環境システム事業当連結会計年度における研究開発費の金額は613百万円であります。 ① TAIKISHA INNOVATION GATE Shinjuku開設当社では「技術の大気社の強化」のため、顧客との接点の増加、課題の把握、開発促進などを目指し、本社の一部に技術開発センター直結のサテライト設備「TAIKISHA INNOVATION GATE Shinjuku(以下TIGS)」を開設いたしました。交通の便の良い新宿に設けることで、新規顧客や、既存顧客の新規部門の方への開発技術を含めた技術紹介を通じ、顧客ニーズの把握と技術開発へ展開、及び顧客との協創による新たな関係構築を目指し活動を開始いたしました。当連結会計年度は、TIGSと技術開発センター、顧客事業所訪問での開発技術の紹介など、顧客との新たな関係構築へ向けての活動を強化し、延べ90件の技術提案を実施し、10件の顧客との協創(技術導入、評価、フィールドテストなど)に繋げました。今後もこの活動をさらに活発化させ、カーボンニュートラルや快適で安全な環境構築など社会が求める課題への対応を実施いたします。 ② CO2分離回収当社では、カーボンニュートラル(以下C/N)への取組として、自然エネルギー活用や省エネルギーでは対応しきれない部分の対策としてCO2吸脱着技術の開発に取り組んでおります。当連結会計年度は、昨年来より実施していた回収したCO2利活用に加え、同技術の空調設備への展開を検討いたしました。これにより、近年の外気CO2濃度の高まりに対して既存建物では容易に換気量を増加させることが難しいことへの対応や、外気量削減による省エネ効果が期待できると考えております。また、回収時のエネルギー消費によるCO2発生量を回収量より少なくし、回収したCO2を利活用することで、室内環境を維持しながら、C/Nが実現可能となります。その実現を目指し、システム効率、エネルギー評価などを行いました。同時に検証結果をもとに、CO2吸着剤へ求められる性能を明確化し、その開発技術を持つ企業と共同で吸着剤の改良及び性能評価を実施いたしました。性能面での評価を終了し、次ステップでは、吸脱着装置の構築、フィールド試験などを行い、装置としての提供や、回収したCO2の新たな活用先の開拓を実施してまいります。 ③ 除菌装置当社では、COVID-19や将来の新たなパンデミックに備え、快適で安全な空間の提供を目指し、空調用除菌装置(エアライザー)の開発を行いました。当連結会計年度は、空調設備に付加する除菌装置の開発を実施いたしました。近年、深紫外線(UVC)LED開発が進みその効率も向上し、コストの低下も進みました。同時に光触媒技術も進化しておりこれらを活用することで高機能、高性能の空調用除菌装置を開発いたしました。テナントビル等で多く利用されている空冷パッケージエアコンのフィルターセクションを、除菌機能を合わせ持つエアライザーに置き換えることにより、ウィルス、菌やカビを不活化させ、安全な空気の提供が可能となります。また、当装置は、紫外線と光触媒の利用により空気中の揮発性有機化合物、臭気の分解機能も有しております。これらの安全な空間を作る機能と、当社の従来からの快適な環境を構築する技術を組み合わせて、全ての働く人へ安全で快適な環境を提供することを目指します。 ④ DXの活用(現場巡回ロボット、試運転支援)当社では、DXを活用した働き方改革へ向けた取組として、ロボットによる現場巡回技術の開発を行っております。以前より取り組んでいるロボット制御技術に加え、施工時の活用にフォーカスした現場巡回、現場画像の取得、活用にも取り組んでおります。当連結会計年度は、当社技術開発センター新研究棟工事の際に、4足ロボットに360度カメラを搭載し工事現場内を巡回させ記録を行い、位置情報と画像の紐づけや画像の活用方法について検証を実施いたしました。また、日々工事現場特有の状況変化があり、非GPS環境の中で、正確な位置情報の取得方法などについて検証をいたしました。取得位置情報の精度などには課題がありますが、位置情報に紐づけされた日々の記録画像を活用することで、施工進捗管理などへ活用が可能になります。同時に、外部事務所からインターネットを経由した巡回ロボットの操作や画像送信なども併せて行い、遠隔事務所から制御する際の課題や必要機能などの把握も完了いたしました。今後はこれらの取得情報をBIM(Building Information Modeling)と連携することで、記録画像をもとにした工程管理手法などの開発、検証を計画しています。今まで人が主体で行ってきた作業を、ロボットへ置き換えることで、作業効率改善を通じた働き方改革の実現を目指します。また、製薬医薬向けバリデーション技術の一つである、フィルターリーク試験システム(バリデーション・エース(以下VA-m))の電子デバイス工場への展開と検証を実施いたしました。クリーンルームを施工時に、その品質検証として、最終フィルター(HEPAやULPAフィルター)のリークがないことを検証します。これまでは、計測器から出力させる試験結果を紙で管理し、試験結果報告書へ作業員が転記しておりました。VA-mの改良版を利用することで、計測から試験結果のまとめまでを一括で処理をすることが可能となり、これらにかかる手間の大きな削減をすることが可能となりました。さらに、フィルターリーク試験では手順に従って作業員が主導で吸い込みプローブを走査させていましたが、これらを自動化する装置の開発に着手いたしました。協力業者様と共同で実現場での検証を実施し、課題や開発の方向性などの把握いたしました。現在のところデーター処理部分の自動化まで到達いたしました。今後はフィルターリーク試験全体の自動化を行い、さらなる作業効率低減、働き方改革を目指します。 (2) 塗装システム事業当連結会計年度における研究開発費の金額は552百万円であります。 ① フィルム加飾(ドライ加飾)システムの開発自動車メーカー各社は、気候変動のリスクを踏まえて経営戦略にCO2排出量削減目標を織り込んでいます。各社とも主要な排出源は同じで、加工工場の上流側排出(Scope3)、加工工場の直接排出(Scope1,2)、加工工場の下流側排出(Scope3)の3つがあり、これらの排出源への対策は自動車産業における共通の課題です。なかでも、加工工場の直接排出に関しては、自動車製造工程において最大のエネルギーを使用する塗装プロセスの変革が大きなカギを握っています。当社では、塗装プロセスでのカーボンニュートラルの実現に向け、自動車メーカー各社と連携し、CO2排出量をゼロとするような塗装設備の開発・提供に取り組んでいます。その一例が、ウェット塗装からドライ加飾への生産技術革新です。ドライ加飾とは、従来のスプレー塗装(ウェット塗装)に代わり、フィルムを真空吸引・加熱によって貼り付けることで、自動車の外装をフィルム加飾(ドライ加飾)する技術です。重ね塗りの過程で塗装と乾燥を繰り返すウェット塗装に対して、フィルム加飾(ドライ加飾)では、従来の塗料を使用した塗装に比べて加工工場での直接排出部分で大幅に使用エネルギーを抑えることができ、50%以上の削減を達成しています。低炭素化が実現する上に、排水・排気処理装置も不要となるメリットもあります。また、加飾フィルムならではの模様・柄・照光などの意匠性の拡大や、遮熱等の機能性の付加も可能です。今後、加工工場の上流・下流部分で、被塗物基材やフィルム基材のリサイクルなどの工程革新が実現することにより、さらなるCO2排出量の削減効果が期待できます。当社では、従来のドライ加飾技術の課題であった、凹凸がある複雑な立体形状に対しても、3次元真空圧空成形(TOM)工法を採用することで、フィルムを加飾(貼付け)することを実現。乗用車の一体型バンパーのような大きく凹凸のある複雑な立体形状へも、フィルム貼合ができるようになっています。ドライ加飾プロセスの確立に向けて、近く自社研究施設内に、量産ラインを想定したドライ加飾システムのデモラインの構築を計画しています。当社では今後も脱炭素社会の実現に貢献するため、自動車をはじめ、様々な生産ラインにさらなる付加価値提供技術となるドライ加飾の技術開発を推進していきます。 ② カーボンニュートラル乾燥炉の開発世界中にて地球温暖化における環境問題が表面化してきている中、CO2排出量の削減への早急な取組が急務となっています。自動車製造工場においては、塗装工程からのCO2排出量が大きな割合を占めており、当社では塗装設備に対しての様々な対策を提案しております。当社技術となるドライブース、少風量ブース(i-LAVB)などのCO2削減提案により、2021年には自動車塗装1台あたりのCO2排出量64.9kg-CO2/台(2005年度比で59%削減)を実現し、今後2025年度に50kg-CO2/台、2030年度には40kg-CO2/台に削減することを目標に掲げております。この目標達成のためには再生可能エネルギー、水素燃料などのエネルギー供給側の転換、及び塗装工程の進化を含めた対策が必要であり、当社はオール電化の検討や水素燃料設備の導入に伴う機器能力の把握・制御方法・安全対策等の技術確立など幅広く、より早く対応を進めております。塗装工程において、品質が良く、耐候性の高い塗膜を形成するために、塗装ブース内の温湿度調整や塗膜乾燥に十分な熱源が必要となり、多くは天然ガスに依存しております。この天然ガスの代替エネルギーを活用すべく、当社では座間テクニカルセンターの乾燥炉設備に、数種類の電気ヒーター、水素バーナーを導入し、NOx、CO、水分発生の基礎技術を比較検証するとともに、塗装設備に対する技術、制御、安全などのシステム検証も実施しており、顧客が安心して使用できる設備の提供準備を進めております。顧客もCO2削減への取組を推進する中、電気ヒーター、水素バーナーへの関心は非常に高く、具体的な検討やテスト的な導入も実施いただいております。引き続きカーボンニュートラル実現へ向けてエネルギー変革や塗装工程の進化に対応し、顧客の要求に応えられるシステムを開発推進してまいります。
FY2023|3,668 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度における研究開発費は1,149百万円であります。当社は、技術開発センター(神奈川県)、テクニカルセンター(神奈川県)の2研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました。また、株式会社ベジ・ファクトリー(埼玉県)において、植物事業の分野における技術開発と改良を精力的に実施し、多くの技術開発としての成果を得ました。 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。 (1) 環境システム事業当連結会計年度における研究開発費の金額は515百万円であります。 ① 直膨空調システムの拡充当社では、冷凍機の冷媒で空気を直接冷却する直膨空調システムの開発を進め、主に環境試験室用途に導入してまいりました。当連結会計年度は、昨年度実施した直膨輻射空調システムの拡販へ向け、より低コストで既存システムへ容易に導入できる方式を検討し、技術開発センター新研究棟へ検証設備が導入できるよう、計画を進めております。本システムは小型熱源とセットで導入できるため、竣工後のテナント工事として室単位で容易に直膨輻射システムが導入可能となります。これにより、多くの顧客へ快適性と経済性を両立させたウェルネス空調を提供することができます。当社では、この直膨空調システム拡販のため、技術開発センターに快適性や省エネ性を体感・検証できる設備を導入し、引き続き顧客へのPRを行ってまいります。 ② ロボット制御技術当社では、将来へ向けた取り組みの一つとしてロボット制御技術に取り組んでおります。この取り組みは、当社の施工現場での活用のみならず、DX要素技術の集合体であるロボット開発を通じ、専門技術を持つ顧客との協働関係の構築・強化なども目指しております。また、この開発で得た技術や知見を他の開発へ展開することも視野に入れ、活動に取り組んでおります。当連結会計年度は、昨年度実施した自走式温湿度計測ロボットを改良し、産業空調の現場で利用するために、大空間での自己位置特定、指定ポイントへの高精度の移動、計測器との連携技術の開発を実施しました。実際の現場での試運転も完了し、工事進捗に合わせ室内環境の計測を実施いたしました。これらの活用を通じての生産性を検証することで、作業効率改善の評価も実施してまいります。また、電子部品工場や製薬工場等で利用する超高性能フィルターのリーク試験の自動化にも着手いたしました。今までは作業員による計測、結果の評価を行っておりましたが、対象のフィルター枚数が非常に多く設置されるため大きな作業負荷が発生していました。同作業の自動化を行うことにより、大きな作業効率改善が期待できると考えております。あわせて同装置を実現場で活用し、その効果の評価とさらなる改良を計画しております。これらIT技術を積極的に導入することで、作業効率改善のみならず、働き方改革を実現することができると考えております。 ③ 人追従空調(FOLLOAS)当社では、工場などの作業場での環境改善と省エネルギーを両立させる技術として、可動式ノズルを利用した人追従空調技術の開発を実施しています。従来のスポット空調は空調空気を一定の方向に、作業員の有無にかかわらず給気し続けていました。本技術はセンサーカメラで空調ターゲット(人)の位置を特定し、可動式ノズルによりそれを追従し空調気流を供給し続けます。これにより、作業場所毎に設置していた吹出ノズルを集約し、快適性を確保したうえで大幅な省エネルギーを実現することができます。この技術は、倉庫や搬出入ヤードなど、作業員の移動が多い空間や、作業の特性上囲いができない場所でのスポット空調技術として広く活用できます。当連結会計年度は、試作機を製作し、顧客環境でフィールド試験を行い、基本動作、快適性、実用にあたっての要望事項などの確認を実施いたしました。その改良版による再試験も行ったことにより、実用化に向けての要求性能の評価が完了いたしました。今後、早期の量産化に向けて取り組みを進めてまいります。 ④ 室圧制御技術当社では製薬工場などで必要とされる室圧制御技術の開発を実施し、これまで統合室圧制御装置タイコム、外風圧除去装置等の技術を提供してまいりました。これらの技術により、製造環境の安定化は大幅に向上いたしました。しかしながら、台風時などの強風や風向の変動が大きい場合、製造環境が所定の条件から逸脱する場合があります。当社は、これらの気象条件においても製造環境が維持できるシステムの開発を行っております。当連結会計年度は、室圧制御のカギとなる設備である、圧力制御ダンパー、変動の物理的な抑制技術に着目し、室圧変動の改善効果について検証いたしました。圧力変動を周波数分析したところ、圧力制御ダンパーは周波数の低い領域では変動抑制効果を発揮していましたが、比較的高い周波数領域では、変動に追従できておらず、制御ができていませんでした。この部分を改善するために、単純適応制御(当社の環境試験室等でも利用している制御技術)を導入した結果、低い周波数から高い周波数まで圧力制御ができていることが確認できました。同様に、高い周期の変動を物理的に吸収するために、変動に合わせて可動する部分を設けた圧力変動抑制チャンバーを導入し、高い周波数領域の変動の影響を低減できることが確認できました。これらの技術検証のため、技術開発センター内に専用検証室(Nicomac Taikisha Clean Rooms Private Limited社製パネル利用)を設け、その効果を確認いたしました。検証結果をもとに、顧客環境でのフィールド試験を実施する計画です。今後は外乱に強い室圧制御技術をPRしながら多くの顧客への導入を目指すとともに、いかなる状況でも製造環境を維持できるシステムを目指して開発に取り組んでまいります。 (2) 塗装システム事業当連結会計年度における研究開発費の金額は633百万円であります。 ① 水素バーナー乾燥炉開発自動車製造工場において塗装工程からのCO2排出量は非常に高い割合を占めており、当社では塗装設備からのCO2排出量削減に対し、様々な取組みを行っております。2021年には自動車塗装工程における1台あたりCO2排出量を65kg-CO2/台まで削減し、2030年以降には50kg-CO2/台を達成することを目標としております。これは2050年温室効果ガス実質ゼロを見据えた再生可能エネルギーや水素燃料など、エネルギー供給側の転換や塗装工程の進化を加味した目標値であり、水素燃料の塗装工程への導入や、塗装設備のオール電化の取組みも進めております。自動車塗装工程で排出されるCO2のうち約37%が塗装ブース、約24%が塗装乾燥炉から発生しておりますが、これは自動車の塗装品質を確保するために塗装ブース内温湿度の熱源や塗膜乾燥に必要な乾燥炉の熱源に、多量の天然ガスを消費するためです。昨今、CO2を排出しないエネルギーとして水素燃料が注目されており、水素燃料の活用技術の革新も進んでおります。当社では2022年度に水素用バーナーを用いた設備をテクニカルセンターに導入し、水素燃料による塗装設備の商品化のためのNOx、水分などの発生影響への対処、安全性の検証などを進めており、顧客への導入準備も始めております。引き続きカーボンニュートラル実現へ向けてエネルギー変革や塗装工程の進化に対応し、顧客の要求に応えられるシステムを開発推進してまいります。 ② 少風量ブース「i-LAVB」の開発当社の主力設備である塗装ブース設備の稼働によるCO2排出量は、前述のとおり、自動車塗装工場全体の約37%を占めております。そこで近年ニーズが高まっている環境負荷低減技術として、この度ブース給気量を削減し、同時にCO2排出量の削減が可能な少風量ブース「i-LAVB」を開発しました。少風量ブース「i-LAVB」は、ブース天井部に配置した半円ダクトからのコントロールされた局所給気によって、より少ない風量で従来の塗装ブースと同等の塗装環境を作り出すことができます。現在、多くの顧客から問い合わせがあり、すでに一部では導入も始まっております。さらに現在、従来の少風量ブース「i-LAVB」の半円ダクトで培った技術を発展させ、様々な部品ラインに適応可能な小型の少風量ブースの開発も進めております。シンプルな形状とすることで、局所気流のコントロール性の向上及びメンテナンス性の向上を実現しております。同技術を導入することで、より幅広い分野で温湿度制御に必要な空調エネルギー及びCO2削減が可能となります。今後も継続して省エネルギー・環境負荷低減技術での社会への貢献を目標に「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた開発を推進してまいります。
FY2022|3,424 文字
5 【研究開発活動】当連結会計年度における研究開発費は1,106百万円であります。当社は、技術開発センター(神奈川県)、テクニカルセンター(神奈川県)の2研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました。 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。 (1) 環境システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は474百万円であります。 ① 直膨空調システムの拡充当社では、冷凍機の冷媒で空気を直接冷却する直膨空調システムの開発を進め、主に環境試験室用途に導入してまいりました。当連結会計年度は、この技術を近年のウェルネスオフィスへ適用するために、直膨式輻射空調設備の開発を実施致しました。天井面設置のアンビエント空調用輻射パネル、机上設置を想定したタスク空調用輻射パネルに加え、足元部分に冷却時の廃熱利用タスク加熱用輻射パネルを追加することで、省エネ性と快適性を向上させたシステムとなっております。これらの直膨式輻射空調システムと、室全体に空気のよどみのない環境を提供する「ゆらぎ換気システム」を組み合わせることでニューノーマル時代に適応するウェルネス空調を提供いたします。技術開発センターやR&Dサテライトへ導入し、その快適性、省エネ性を体感していただくことで顧客へ技術PRを行い、拡販を進めてまいります。 ② ロボット制御技術当社では、将来へ向けた取り組みの一つとしてロボット制御技術に取り組んでおります。この取り組みは、当社の施工現場での活用のみならず、DX要素技術の集合体であるロボット開発を通じ、専門技術を持つ企業様との協働関係の構築・強化なども目指しております。また、この開発で得た技術や知見を他の開発へ展開することも目的とし取り組んでおります。当連結会計年度は、試運転計測の自動化を目指し、自走式温湿度計測ロボットの開発に着手いたしました。技術開発センター内での試験や、実際の現場での活用を想定した本社事務所での計測試験を実施致しました。今後は、無人計測である特徴を最大限活用するため、低露点室やクリーンルームなどの室内環境で活用するための改善や温湿度以外の計測器への対応などを進めてまいります。これらの技術は働き方改革への対応につながるものと考えております。既開発済みの複合現実(mixed reality)技術や画像認識技術などと組み合わせ、施工現場において多くの場面で活用することを目指し開発を続けてまいります。 ③ 低露点室変風量制御当社では、二次電池製造工程などで必要とされる低露点室向け省エネルギー技術として、変風量除湿システムの開発に取り組んでおります。これは、従来の技術では常に最大能力で運転されていた除湿装置を、室内負荷(主に人による除湿負荷)により送風量・除湿能力を可変させながら、室内負荷変動に追従する技術です。これにより消費エネルギーの大幅な削減が可能となります。当連結会計年度は、この空調システムの開発・実証を行いました。この技術は、室内負荷減少時には装置供給風量・除湿量を低負荷運転状態へ移行し、負荷増加時にはそれらを定格運転へ移行させることで、負荷に合わせた運転状態を作るものです。運転容量の変更に際してシステムの応答性を考慮して制御することで、室内露点条件(給気露点温度条件)を保ったまま消費エネルギーの削減を実現いたします。技術開発センター内に設けた検証室を活用し、室内負荷の変動に対する除湿装置の応答性を考慮した運転状態の変更、その変更タイミングなどの検証を完了いたしました。現在実用化へ向けての最終段階に入っております。今後はこの技術のPRを実施し、多くのお客様への導入を目指すと同時に、低露点室設備の受注拡大を図ってまいります。 ④ 人追従空調システム当社では、工場や倉庫における作業員向けスポット空調技術として、人追従空調システムの開発を実施いたしました。この技術は当社の開発技術のPRを通じて顧客ニーズを把握し、開発技術を発展させたものとなります。当連結会計年度は、試作機の作成、検証を実施致しました。これは、対象エリア内(おおむね5m×5m程度)の人の動きをセンサー(色識別カメラ)でとらえ、可動式ノズル(X,Yの2軸)で対象者へスポット気流を供給し続けるシステムとなっております。これにより、大空間において局所空調を効果的に行うことが可能となり、空調エネルギーを削減することができます。同システムは、1) センサーカメラと吹出口が一体となっており、ユニットして単体で設置可能2) 100V電源があれば設置可能3) 低消費電力・低圧損により省エネ等の特徴を有しております。この特徴を生かし、工場組立工程、倉庫、搬出入ヤード、厩舎など空間面積に対して人が少ない場所、作業場所が移動する場所、空間を囲うことが難しい場所等への局所空調設備として導入を目指しております。現在量産化に向け、長期動作試験や先行導入による機能確認などを実施しております。これら省エネルギー技術を社会に提供することで脱炭素社会の実現へ貢献してまいります。 (2) 塗装システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は632百万円であります。 ① IoT・AIを活用した塗装工場の監視解析システム「i-Navistar」の開発最近のIT技術の流れの中において、当社はIoT・AIを活用した塗装工場全体における監視解析システム「i-Navistar」を主として自動車塗装ライン向けに展開しております。「i-Navistar」は、主に稼働解析システムと品質解析システムの2つより構成されています。稼働解析システムは、設備の運転状態を各種センサーにより常時監視し、測定値の傾向より故障予測をすることができるので、効率のよい保全作業を可能にし、設備稼働率の向上に繋がります。品質解析システムは、品質不良の要因を、収集された稼働・品質データをもとに解析することにより、要因特定までの時間を大幅に短縮する事ができます。また同時に熟練技術者への依存度を軽減することも可能になります。本システムの積極的なPR活動により、既に自動車塗装ラインへの納入実績に加え、更に新たな受注も決定しております。また「i-Navistar」は3つ目の機能として、『無駄なエネルギーの見える化、シミュレーター機能を使った最適エネルギー管理』を目的とした塗装工場のエネルギーマネージメントシステム(EMS)を加えるべく開発を進めています。世界各地でのカーボンニュートラルへの取り組みが活発になるほど、EMSへの要求もさらに高まっていくものと予想しております。今後も、お客様の要求に応えられるシステムを提供し続ける事ができるように、「i-Navistar」の継続的な進化を続けて、受注拡大を図ってまいります。 ② 少風量ブース「i-LAVB」の開発当社の主力設備である塗装ブース設備稼働によるCO₂排出量は、自動車塗装工場全体で排出されるCO₂のおよそ50%を占めております。近年高まっている地球環境負荷低減へ貢献できる技術としてブース給気量を削減し、同時にCO₂排出量削減可能な少風量ブース「i-LAVB」を開発しました。従来のブースでは、上部の天井全面から均一なダウンフローを給気することによりブース内のクリーンな環境と安定した塗装品質を確保しています。少風量ブース「i-LAVB」は、ブース天井部に配置した半円ダクトからのコントロールされた局所給気によってより少ない風量で従来塗装ブースと同等の塗装環境を作り出すことを可能としました。ブース各部位の気流を機能別に再考し、必要な機能に絞り込んだ気流(車体廻りの塗料ミストを速やかに除去するブースセンター気流と壁汚れを防止するブースサイド気流)に最適化することで、給気風量を削減しながら車体の塗装品質を確保する事ができました。この技術を導入することにより、温湿度制御に必要な空調エネルギー及びCO₂削減が可能となります。現在、多くのお客様に導入の検討を進めていただいております。今後も継続して省エネルギー・環境負荷低減技術での社会への貢献を目標に「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた開発を推進してまいります。
FY2021|4,849 文字
5 【研究開発活動】当連結会計年度における研究開発費は1,122百万円であります。当社は、技術開発センター(神奈川県)、テクニカルセンター(神奈川県)、植物工場実証開発センター(東京都)の3研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました。また、Geico S.p.A.(イタリア・ミラノ都市圏・チニゼッロ・バルサモ)は、パルディスイノベーションセンターにおいて、塗装設備の分野における技術開発と改良を精力的に実施し、多くの成果を得ました。 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。 (1) 環境システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は433百万円であります。 ① ベジファクトリーの拡充当社では、完全人工光型・水耕栽培植物工場「ベジファクトリー」を展開しており、これまで照明や空調など栽培設備の最適化や植物工場の自動化装置の開発により栽培コストの低減のみならず植体の品質向上に取り組んでまいりました。当連結会計年度は、自社で開発しました栽培パネルを自動で出し入れする移載機に合わせ、栽培パネルおよび栽培ベッドの材質、形状を刷新して植物工場の自動栽培システムを開発し、栽培室の無人化による低生菌数化が可能となりました。また栽培品種、栽培日数及び栽培密度の研究や気流の改良による生理障害抑制の取り組みにより、植体の品質向上と収量増加の両立が可能となりました。今後は、育成状況監視システム、外気からのCO2供給装置、さらなる空調設備の最適化、省エネ化など、「ベジファクトリー」事業の拡大を支える技術開発に取り組んでまいります。 ② 直膨空調システムの拡充当社では、冷凍機の冷媒で空気を直接冷却する直膨空調システムの開発を進め、主に環境試験室用途に導入してまいりました。当連結会計年度は、環境試験室の実機検証ルーム構築に着手いたしました。近年、試験内容の高精度化に伴い、試験室の負荷変動に対する室内条件の安定性や試験条件変更に伴う追従性など試験環境に対する要求も高くなってきております。また、省エネルギー性能に対しても一段と高いレベルでの実現が要望されております。空調システムに新たな制御方法を組み込み、これらの実現に向けた技術開発及び実機検証を行ってまいります。これら実証試験を通じて得た技術は環境試験室用途のみでなく、オフィスビルや工場などへ展開してまいります。試験室空調設備の運転状況可視化として複合現実(mixed reality)技術を導入し性能の差を分かりやすく表現することで、お客様へ技術PRを行い、更なる販売拡大を進めてまいります。 ③ RTO(蓄熱式直接燃焼脱臭装置)予兆保全システム当社では、VOC(揮発性有機化合物)の排気処理装置の主力商品としてRTOを販売しております。RTOは燃焼排熱を蓄熱材に蓄熱し、これを処理ガスの予熱に再利用し、燃料消費量の低減を図る省エネルギー性の高い装置であります。当連結会計年度は、運転状態見える化と運用改善提案、異常発生時のトラブル早期解決、予兆検知から保全提案が行えるようRTO予兆保全システムを開発しました。このシステムは、エネルギー使用量の見える化による効率改善に寄与し、お客様の事業(製造)機会損失を抑制し生産性向上に貢献します。さらに、装置の予期せぬ故障・停止を未然に防ぎ、環境負荷物質の流出リスクを低減し、地球環境保全に貢献します。今後は、システムの導入拡大を図り、遠隔サポートサービスと高精度な予兆/異常診断サービスを展開し、RTOの受注拡大を図ってまいります。 ④ 移動式高性能エアバリアユニット「Air Infection Block Plus」の開発当社では、新型コロナウイルス感染症対策として、これまで培ってきた気流制御技術を活用して、社会貢献ができないかという観点から、医療従事者向け感染防止装置の開発に着手いたしました。当連結会計年度は、移動式高性能エアバリアユニット「Air Infection Block Plus(通称AIB⊕ )」を開発し、販売を開始いたしました。これは、中央部に開口部を有する可動式パーティション構造とすることで、医療従事者と患者が対面となる診察時やPCR検査などの検体採取時に、医療行為の自由度を確保しつつ、開口部にプッシュプル式エアカーテンを設けることで、新型コロナウイルス感染者から医療従事者への飛沫感染リスクを低減させます。補助噴流と吸気口への積極誘引を行うなどの気流制御技術を駆使し、小粒径飛沫・飛沫核による汚染濃度を大幅に低減させ、医療従事者を守ります。また、殺菌効果をプラスしたHEPAフィルターの採用で2次感染を抑制します。模擬呼気、咳・くしゃみ発生装置を試作し、呼気が効果的に遮断されていることを気流可視化技術により検証しております。今後もさまざまな技術を活用し、新型コロナウイルス感染症対策など社会貢献を進めてまいります。 (2) 塗装システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は689百万円であります。 ① 塗着効率100%を実現する静電霧化塗装システム「i-ESTA100TE」の開発自動車塗装工場における塗装ブース設備のCO2排出量は、工場全体で使用するエネルギーのおよそ46%となっております。これは塗装品質を安定させるためにブース内の温湿度の調整や、被塗物に塗着しなかった塗料ミストを捕集する際に大量のエネルギーを消費するためです。当社はこの課題を解決すべく、静電気の力で塗料を微粒化する静電霧化塗装システム「i-ESTA100TE」をトヨタ車体株式会社と共同で開発しました。従来の塗装機は圧縮エアーを用いて塗装しており、塗料粒子を圧縮エアーの気流に乗せて車体に塗着させます。そのため、車体表面に沿って流れる気流によって塗料粒子が吹き飛ばされてしまい、塗着効率は70%程度に留まっておりました。これに対し新型の静電霧化塗装システムは、圧縮エアーを使わず、静電気の力だけで塗料の微粒化と塗料粒子の車体への塗着を行います。これにより塗着効率100%を実現することができ、ブース関連設備の簡略化・エネルギー削減に加え、環境負荷の低減が可能となりました。2021年6月にはお客様の生産ラインへの納入が計画されており、また多くのお客様に導入の検討をいただいております。今後とも省エネルギー・環境負荷低減技術での社会への貢献を目標に「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた開発を推進してまいります。 ② 自動ティーチングシステム「i-ART」の開発自動車製造工場では塗装研磨工程において「労務コストの削減」や「品質の安定化」の観点で産業用ロボットによる作業の自動化が一般的になっておりますが、自動車以外の製造現場では、現在自動化が進んでいない状況となっております。その大きな理由としてはロボットのティーチングを行える専門技術者が少ないこと、ワークの種類が非常に多いため膨大なティーチング時間が必要となってしまうことの2点が挙げられます。このような背景から当社では上記専門技術者を必要とせず、自動でティーチング作業を行うことができる強力な支援ツールである「i-ART」を開発いたしました。従来は専門技術者によるティーチングプログラム作成が一般的であり、非常に多くの時間と労力を必要としておりましたが、i-ARTを使うことで、ロボットによる塗装・研磨・シーリング作業を誰でも簡単に短時間でティーチングを行うことが可能となり、専門技術者が不在の状況でもティーチング作業工数の低減、品質の安定化といった大きな効果が得られます。現在、国内の鉄道車両、建設機械や住宅機器など様々な分野のお客様に対し、導入に向けた検証テストを実施中であります。今後も様々な分野のお客様のニーズに応えられるようにi-ARTの機能の拡張をさらに進め販売拡大を推進してまいります。 ③ 多目的簡易シェルター「バリアーキューブ」の開発近年、新型コロナウイルス感染症拡大により、災害時における避難所や人が密集するところでは、感染リスクを低減させる為の対策が求められるようになっております。当社ではこれら社会のニーズに応える為、感染の不安や避難時のストレスの低減に有効なシェルターの開発を2020年4月から開始し、避難所等での一時的な隔離の用途の他に簡易診察室としての利用も可能なシェルターである「バリアーキューブ」を商品化し同年7月に販売を開始いたしました。バリアーキューブは、組み立て式簡易シェルターとなっており、大人2人で簡単に組み立てることができ、天井および側パネルにより完全に仕切られた個室の形となるため、高いプライベート性を確保しながら感染リスクを有効に低減することができます。また、構造体には採光性が高いプラスチック段ボール(プラダン)を採用し、閉塞感を感じることのないよう配慮した設計としております。プラダンは耐久性,耐薬性,耐水性に優れ、除菌スプレーをかけるなどの除菌処理が可能であるため、長期間の使用においても感染リスクの低減効果を維持することができます。さらに大きな特長としては、ファン付HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air filters)を装備している点です。シェルター内外の空気をHEPAフィルターでろ過しクリーンな空気を供給または排気することができるため、ウイルス感染リスクを確実に低減させることができます。今後もこのバリアーキューブの普及を通じて、さらに社会に貢献できる活動を進めてまいります。 ④ 塗装ラインの仮想試運転テクノロジーの導入Geico S.p.A.は、当連結会計年度においてプラントでの試運転期間の短縮化を可能にするシステムの開発を開始しました。そしてこの開発の為に必要となるすべての制御ハードウェアを組み込んだ仮想試運転ルーム(Virtual Commissioning Room)をミラノ市内にあるパルディスイノベーションセンターに設置しました。この仮想試運転ルームでは実装置を使って実際に試運転やシステムの検証を行うのと同じように、仮想モデル上でPLC(Programmable Logic Controller)ソフトウェアを動作させ、プログラムバグの確認や制御ロジックの不具合の是正を行うことができます。この事前検証により実設備での試運転作業の大幅なスピードアップ化を図ることができます。現在Geico S.p.A.ではこの仮想試運転ルームを二つの目的で使用しております。一つは塗装工場の建設プロジェクトを実際に計画する際に用いる場合であり、もう一つは社内の研究開発の為のツールとして利用する場合です。当初は塗装工場建設プロジェクト向けとしての使用を想定しておりましたが、これに加えて現在はGeico S.p.A.が新しく開発する装置のプロトタイプを仮想モデル化し、実際に製作する前にそのロジックの動作や機能を評価するツールとしても使用しております。この時に作成した仮想モデルと設計情報は実際の塗装工場建設プロジェクトの際に用いることができます。翌連結会計年度では、この仮想試運転ルームを使った検証をヨーロッパの2つのプロジェクトで実施します。またこのテクノロジーを導入したことで、ユニット統合型の電気式オーブン、DryCar(段ボールフィルタ式塗料ミスト捕集装置)、LeanDip(前処理/電着工程向け回転式コンベア)などの開発品を含め、今まで以上にスピーディな開発が可能になっております。今後もお客様のさまざまなニーズに応えるため、この仮想試運転テクノロジーを活用し更なる受注拡大を図ってまいります。
FY2020|4,127 文字
5 【研究開発活動】当連結会計年度における研究開発費は1,105百万円であります。当社は、技術開発センター(神奈川県)、テクニカルセンター(神奈川県)、植物工場実証開発センター(東京都)の3研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました。また、Geico S.p.A.(イタリア・ミラノ都市圏・チニゼッロ・バルサモ)は、パルディスイノベーションセンターにおいて、塗装設備の分野における技術開発と改良を精力的に実施し、多くの成果を得ました。 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。 (1) 環境システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は411百万円であります。 ① ベジファクトリーの拡充当社では、完全人工光型・水耕栽培植物工場「ベジファクトリー」を展開しており、これまで照明や空調など栽培設備の最適化に加え、植物工場の自動化による栽培コストの低減に取り組んできました。当連結会計年度は、LED波長の研究により色温度の異なる白色LEDを使い分けることで、お客様の要望に沿った野菜の栽培が可能となりました。また、栽培パネルを自動で出し入れする移載機の開発により栽培において人間が介在する部分が減少し、栽培コストの低減と生菌数の大幅な低減が可能になりました。今後は、空調設備の最適化や栽培装置の更なる自動化などの開発を進め、栽培コスト低減とともに植体の品質向上にも取り組んでまいります。 ② 直膨空調システムの拡充当社では、冷凍機の冷媒で空気を直接冷却する直膨空調システムの開発を進め、主に環境試験室用途に導入してきました。当連結会計年度は、従来の制御システムに単純適応制御を組み込んだ新制御システムを構築しました。これにより、試験条件変更時の設定条件への追従性及び試験の負荷変動に対する温度安定性の更なる向上を実現しました。また、運転調整にかかる人的負荷低減も可能とし、運転調整時の時間短縮も期待できます。新たな制御を導入した直膨空調システムは、多種多様な環境試験室に加えて、オフィスビルや工場などへの展開も可能なことから、今後は更なる販売拡大を進めてまいります。 ③ RTO(蓄熱式直接燃焼脱臭装置)の省エネルギー性の向上当社では、VOC(揮発性有機化合物)の排気処理装置の主力商品としてRTOを販売しています。RTOは燃焼排熱を蓄熱材に蓄熱し、これを処理ガスの予熱に再利用し、燃料消費量の低減を図る省エネルギー性の高い装置であります。RTOの処理効率と省エネルギー性の両立とともに、省スペース・省コストを実現するためには、排気に含まれる溶剤の種類や濃度における燃焼速度を事前に把握することが必要です。当連結会計年度は、溶剤の種類ごとに燃焼速度を計測し、今まで困難であった希薄濃度域のデータ取得に成功しました。今後は、燃焼速度も考慮したRTO運転シミュレーターを作成して、競争力を向上させ、RTOの販売拡大を進めてまいります。 ④ 太陽光エネルギーの有効利用技術当社では、環境問題に貢献する自然エネルギー利用技術の獲得を目標とし、太陽エネルギーを高い変換効率で電気と熱に変換する追尾集光式太陽エネルギー回収システムを利用した技術開発に取り組んでいます。一般的には、集光時に高温になる発電素子は水で冷却しています。当連結会計年度は、水の代わりに冷媒を用いて発電素子を冷却し、熱回収するシステムを開発しました。蒸発式冷媒冷却方式は、水冷式と比べて放熱性能が優れており発電効率を維持するとともに、より高温での熱回収が可能です。さらに、相変化を利用するため搬送動力も削減できます。今後は、冷媒による熱回収システムを空調システムに適用して、その有効性を検証し、発電及び熱利用の総合的な効率の向上に取り組んでまいります。 (2) 塗装システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は693百万円であります。 ① 段ボールフィルタ式ドライ塗装ブース「ドライスクラバー」の開発当社の主力設備である塗装ブースには、湿式スクラバー方式とドライ方式があります。近年では、大幅な省エネルギー効果、CO₂発生量削減効果が得られるドライ方式への要望が大きく、様々なお客様に採用頂いております。ドライ方式には、従来のプレコート材を使用するドライ方式と段ボール製フィルタにより塗料ミストを捕集するドライブースがあります。この段ボールタイプは、当社の連結子会社であるGeico S.p.Aにて「Dry Car」として数年前より商品化されておりますが、スペースに限りがある日本市場や既設工場では低床タイプのニーズが高まってきております。当連結会計年度は、このニーズに応え、他社との差別化を図るべく、低床タイプの段ボール製フィルタ式ドライブース「ドライスクラバー」の開発を完了し、塗装ブースの商品に加える事に成功しました。ドライスクラバーの一番の特長は低床化になりますが、他にもフィルタ部分が自立で移動できるモジュール方式の採用によるメンテナンスの簡易化、モジュール毎の自動風量制御による大幅なエネルギーの削減などを実現しております。既にお客様からの受注も決定しており、導入計画を進めております。今後は、継続的なフォローを行っていくとともに、お客様に満足の頂ける商品を提供できる様に、より一層の努力を積み重ね、更なる改良・改善を進めていく予定であります。 ② 自動研磨システムの開発当社は、自動車塗装で培った自動塗装技術を基に、航空機、鉄道車両などの塗装ラインの自動化技術の開発にも取り組んでいます。これらの塗装ラインでは、塗装の前工程に被塗装面全面の研磨を行う事が一般的であり、この研磨工程にロボットを導入し自動化を図ります。さらにサンディングペーパーの自動交換装置や研磨粉塵の集塵装置などの付帯装置も組み込んだ全自動研磨システムとする事で、作業環境改善、研磨品質の安定化、研磨時間の短縮などの効果が得られます。当連結会計年度は、従来のエアー駆動のサンディング装置に加え、サーボモータ駆動のサンディング装置をラインナップに加えたことにより、さらに安定した品質と処理時間の短縮が可能となりました。現在、国内の鉄道車両、建設機械や住宅機器など様々な分野のお客様に対し、納入に向けた検証テストを実施中であります。今後もさらに様々な分野のお客様のニーズに応えられる自動研磨システムの開発を行い、拡販活動を推進していく予定であります。 ③ 新型ロータリー式RTO MarkⅢ(蓄熱型直接燃焼装置)の開発従来より、欧米を初めアジア諸国でも、大気汚染に対する厳しい環境規制が施行されてきており、当社でも1999年からVOC(揮発性有機溶剤)処理装置の主力商品としてRTO(蓄熱型直接燃焼装置)を自社開発し、既に海外を含め390台を超える納入実績を達成してきました。当連結会計年度は、特に中国におけるVOC規制がさらに強化される中で、競合他社製品との受注競争が活発になってきている背景を受け、自社製品のさらなる商品力向上を目指した新型RTO MarkⅢの開発を進めてまいりました。この新型ロータリー式RTO MarkⅢの特長は、旧型モデルの高いVOC処理性能や省エネ性能を継承しながらも、装置構造を大幅にシンプル化することで装置の信頼性を高めるのと同時にメンテナンス性の向上やメンテナンスコストも大幅に削減している点であります。具体的には、VOC処理性能はこの分野でトップクラスの99%を確保し、省エネ性においても温度効率95%と高い性能を誇っております。また、装置を構成している経年劣化の特性を持った素材や交換品を大幅に削減することで、メンテナンス性についても大幅に向上させています。昨年夏に製品開発が完了し、現在すでに大変多くの受注が決まっております。今後も当社はRTO製造メーカとして約20年間培ってきた多くの経験を生かしてより高品質なRTOを販売し,大気環境汚染の抑制をはじめとした世界の大気環境保全に貢献していく予定であります。 ④ 自動ゴミブツ検査装置「J-Detectシステム」の実用化と進化Geico S.p.A は、当連結会計年度においてメイン開発アイテムである「J-Detectシステム」の開発が完了しました。J-Detectシステムは、塗装の欠陥を完全に自動で検出するシステムで、専門家と自社開発したハードおよびソフトウェアのテクノロジーの組み合わせで成り立っています。ロボット制御技術とこのシステムを組み合わせることで、車体(またはパーツ)の全ての塗装部位の品質検査を実行し、2D及び3Dの欠陥画像によるレポート、データと画像のデジタル処理、見つかった欠陥を先に定義されたカテゴリーごとに自動分類し、結果をデータベースに記録します。従来の自動車塗装ラインの検査工程では、複数の熟練技術者による目視検査と不良部位へのマーキング作業を行っていますが、この新システムを導入することにより、人の感覚に頼ることなく品質不良の検出と精密分析を行うことが可能となり、検査結果の信頼性も大幅に向上します。J-Detectシステムは、作業者に依存せず、人による差やミスをとりのぞき、各車体に一貫した正確な分析を提供します。J-Detectシステムは、一般的な環境で動作できるように設計、開発されており、特殊環境における技術的なアプローチとは異なり、光の遮断や特別な光源などは必要ありません。J-Detectシステムの開発は完了し、市販を開始しました。現在、自動車会社と協力して複数のパイロットプログラムの検証がなされ、また、他の自動車会社への導入検討がなされています。この様に、このシステムは、お客様の最も重要なニーズを満たし、将来のスマートペイントショップの開発に重要な役割を果たすシステムとなります。今後もさらにお客様のさまざまなニーズに応えられる新商品の開発に注力し受注拡大を図ってまいります。
FY2019|3,104 文字
5 【研究開発活動】当連結会計年度における研究開発費は1,084百万円であります。当社は、技術開発センター(神奈川県)、テクニカルセンター(神奈川県)、植物工場実証開発センター(東京都)の3研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました。また、Geico S.p.A.(イタリア・ミラノ県・チニゼッロ・バルサモ)は、パルディスイノベーションセンターにおいて、塗装設備の分野における技術開発と改良を精力的に実施し、多くの成果を得ました。 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。 (1) 環境システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は488百万円であります。 ① ベジファクトリーの自動化への取り組み当社では、LED照明を用いた完全人工光型・水耕栽培植物工場における結球レタスの安定量産化や、空調技術の最適化などによる栽培コストの低減に成功し、「ベジファクトリー」として国内外において販売しております。当連結会計年度は、緑化工程から育苗工程への移行に自動移植機を導入しました。また、収穫工程の搬送を機械化するなど植物工場の自動化に取り組んでまいりました。その結果、効率的な栽培システムの設計が可能となり、栽培コストの低減に成功しました。今後は、空調設備の最適化やさらなる栽培装置の自動化に関する開発を進め、より一層の栽培コスト低減を進めてまいります。 ② 直膨放射空調システムの拡充当社では、冷凍機の冷媒で空気を直接に冷却する直膨空調システムの開発を進め、主に環境試験室用途に導入してまいりました。当連結会計年度は、環境試験室向けに低温度かつ高湿度の条件を連続的に維持する直膨システムである低温加湿条件制御システムを開発しました。従来の方式では、低温を維持する際に冷却コイルに霜が付き、連続運転を阻害する要因となります。そのため、湿度と温度の条件が異なる空気の混合方式を採用し、低温度かつ高湿度の条件下での連続運転を可能にしました。直膨空調システムは、自動車、建材、設備機器など多種多様な環境試験室への展開が期待できることから、今後はさらなる販売拡大を図ってまいります。 ③ RTO(蓄熱式直接燃焼脱臭装置)の省エネルギー性の向上当社では、VOC(揮発性有機化合物)の廃棄処理装置の主力商品としてRTOを販売しております。RTOは燃焼排熱を蓄熱材に蓄熱し、これを処理ガスの予熱に再利用し、燃料消費量の低減を図る省エネルギー性の高い装置です。当連結会計年度は燃焼室内における温度ムラの低減策に加え、バーナーによる昇温制御の精度向上などを図り、高い処理効率を維持したまま、燃焼室の制御温度を下げる改良開発を行いました。制御温度を下げることで、表面放熱やバーナー用燃焼空気加熱による熱ロスが減り、省エネルギー性の向上に成功いたしました。今後は、これまで以上に制御温度を下げられる新たな開発を進め、RTOの受注拡大を図ってまいります。 ④ 消音計算ソフトの開発空調騒音の発生源には送風機、ダンパ、吹出口などがあり、伝搬経路には主要なダクト流路のほか、ダクト壁から天井裏を介して天井板を透過し部屋に至る経路などがあります。このように空調騒音の発生源と伝搬経路は多様かつ複雑であり、騒音対策の検討には専門的な知識と多くの労力が必要となります。当社では、このような課題の解決のため、新たに独自の消音計算ソフトを開発しました。このソフトは全ての騒音源に対し全ての伝搬経路を自動探索し、音源から部屋に至る伝搬経路を騒音予測値とともにグラフィカルに表示するものであります。このソフトにより、騒音対策の検討の合理化、騒音対策の最適化などの効果が期待されます。今後は、国内連結子会社である日本ノイズコントロール㈱への導入を進めてまいります。 (2) 塗装システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は595百万円であります。 ① プレコート式ドライ塗装ブース「ドライサーキュラーMarkⅢ」の開発当社の主力設備の一つである塗装ブースには、現在、湿式スクラバー方式とプレコート材を使用したドライ方式があります。近年は、大幅な省エネルギー効果が得られるプレコート式ドライ塗装ブースのニーズが益々高まってきております。当社ではこのニーズに応えるため、以前よりドライサーキュラーの開発・商品化を行っております。当連結会計年度において、更なる商品の品質向上のため各種改良を重ねてきた結果、大幅な改良を加えたドライサーキュラーMarkⅢを開発することに成功しました。このMarkⅢでは、システム構成の基本要素となる設備モジュール自体の構造を大幅に変更する事により機器点数の削減も含めたシステムのシンプル化と、更なるメンテナンス性の向上を実現しています。現在、お客様からの複数の受注が決定しており、システムの導入に向けた対応を進めているところです。今後、さらにお客様に満足して頂ける商品開発、改良を継続し、より一層の受注拡大を図ってまいります。 ② IoT・AIを活用した塗装工場の監視解析システム「i-Navistar」の開発近年、IoT・AIの著しい発展を背景に、自動車塗装ラインにおいては従来の工場全体の稼働状況の監視に加え、生産ラインの停止を未然に防ぐための設備故障予測システムと品質不良を検知し、不具合原因の特定とフィードバック情報を発信する事ができる自動解析システムに対するニーズが急速に高まってきております。当社ではこれらのニーズに応えるため、以前よりシステムの開発を進めており、改良と改善を重ねております。当連結会計年度は、各種センシングデータをもとにIoT・AIを活用して稼働停止や品質不良発生時の要因解析を行うシステム「i-Navistar」の開発に成功しました。本システムの導入により、生産ライン全体を俯瞰した各種生産条件の最適化、品質の安定化を実現し、大幅な生産性向上と品質向上が可能となります。また同時に近年生産現場が抱えている熟練技術者不足に対する課題の解決にも大きく寄与することが可能となります。今後、自動車塗装ラインに加え、航空機や鉄道車両の塗装分野への展開も視野にいれたPR活動を積極的に進め、受注拡大を図ってまいります。 ③ 自動ゴミブツ検査装置「J-Detectシステム」の開発Geico S.p.A.は、当連結会計年度において「J-Detectシステム」の開発に注力いたしました。「J-Detectシステム」は、ロボット制御技術と自社開発のゴミブツ検出デバイスを用いたシステムであり、自動で塗膜品質検査を行い、その結果をデータベース化し、検出した不良部位を精密に分析することを可能にします。従来の自動車塗装ラインの検査工程では、複数の熟練技術者による目視検査と不良部位へのマーキング作業を行っておりますが、「J-Detectシステム」を導入することにより、人の感覚に頼ることなく品質不良の検出と精密分析を行う事が可能となり、検査結果の信頼性も大幅に向上します。特に強みを有するポイントは、独自の検出デバイスと検出用光源を使用することにより、外部の光の影響を受けにくい特殊な環境を必要とせず、一般的な環境の下で検査できることにあります。「J-Detectシステム」は、来期中に1号機を実ラインへ導入する予定です。今後もさらにお客様のさまざまなニーズに応えられる新商品の開発に注力し受注拡大を図ってまいります。
FY2018|3,521 文字
5 【研究開発活動】当連結会計年度における研究開発費は10億24百万円であります。当社は、技術開発センター(神奈川県)、座間技術センター(神奈川県)、植物工場実証開発センター(東京都)、塗装システム事業部開発部門(大阪府)の4研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました。また、Geico S.p.A.(イタリア・ミラノ県・チニゼッロ・バルサモ)は、パルディスイノベーションセンターにおいて、塗装設備の分野における技術開発と改良を精力的に実施し、多くの成果を得ました。 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。 (1) 環境システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は5億27百万円であります。 ① ベジファクトリーにおける導入コストの低減当社では、LED照明を用いた完全人工光型・水耕栽培植物工場における結球レタスの安定量産化に成功し、「ベジファクトリー」として国内外において販売しております。当連結会計年度は、作物の生育段階ごとに照射するLED照明の強さを従来よりきめ細かく調整することにより、高品質な作物の栽培技術を確立しました。また、LED照明器具や反射板の性能評価を実施した結果、光量や発光効率の高いLED照明を使用することで灯数削減などが可能となり、導入コストの低減に成功しました。今後は,空調設備の最適化や栽培装置の自動化などを進め,栽培コスト低減を進めてまいります。 ② 直膨放射空調システムの開発当社では、冷凍機の冷媒で空気を直接冷却する直膨空調システムの開発を進め、主に環境試験室に導入してまいりました。当連結会計年度は、直膨方式による放射空調システムの開発を行いました。放射空調システムは、放射パネルの放射冷却により室内を冷房するシステムで、冷たい気流が人に直接当たらず、室内の温度ムラも少ないため、快適な空間の提供が可能になります。従来の方式では、放射パネル内の埋没配管に冷水を循環し、放射パネルの冷却を行います。このような水による従来の方式に対し、冷凍機の冷媒による直膨方式では、配管スペースの低減、漏水リスクの低減などの効果が期待できます。直膨放射空調システムは、オフィスビル、医療・福祉施設など、環境試験室以外への展開も期待できるため、今後はさらなる販売拡大を図ってまいります。 ③ RTO(蓄熱型直接燃焼装置)の省エネルギー性の向上当社では、VOC(揮発性有機化合物)の排気処理装置の主力商品としてRTOを販売しております。RTOは燃焼排熱を蓄熱材に蓄熱し、これを処理ガスの予熱に再利用し、燃料消費量の低減を図る省エネルギー性の高い装置です。当連結会計年度は、RTOについてこれまでに開発を行った、圧力変動を抑制するための新しい切替弁方式及び多塔化方式や、燃焼室の温度の均一化を図るための燃焼室内の構造最適化についての実証実験に注力してまいりました。これまでの開発成果を反映させた実大装置によるVOC処理の実証実験を行い、省エネルギー性能の向上を確認できました。今後は開発成果を反映させた実大装置を顧客の生産現場に導入し、長時間の実運転での検証を進め、受注拡大を図ってまいります。 ④ 消音チャンバの性能向上空調機によって温度調整された空気はダクトを通じて各部屋に送風されますが、空調機内に設置する送風機の騒音も各部屋に伝わります。この騒音を低減させるためにダクト経路内に消音チャンバと消音器を設置します。近年、オフィスビルでは空調機を設置する機械室のスペースが極端に狭くなっているため、消音器を機械室内に設置することが難しく、施工における課題となっております。当社では、消音器を設置せずに消音チャンバのみで十分な消音性能を発揮させるために、消音チャンバの高性能化に取り組んでおります。当連結会計年度は、音響解析により消音チャンバの構成や仕様を最適化する設計技術を確立し、従来と比較して10dB以上の消音量の向上に成功いたしました。今後は、国内連結子会社である日本ノイズコントロール㈱とともに試験導入などを行い、実用化を図ってまいります。 (2) 塗装システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は4億96百万円であります。 ① 「平型炉用新型エアシール」の開発当社の主力設備の1つである乾燥炉は、乾燥炉本体が出入口より高い位置にある梯形炉と、乾燥炉本体が出入口と同じ高さにある平型炉の2種類があり、国内外における多数の自動車メーカーに採用いただいております。従来は、乾燥炉本体が出入口より高いため、出入口熱損失の少ない梯形炉へのニーズが高い状況でした。しかし、近年では梯形炉と比較して短い工程長やイニシャルコストの削減において優位性がある、平型炉へのニーズが増加しております。従来の平型炉用エアシールは梯形炉と比較して出入口熱損失が多いという短所があります。そこで、当社では、当連結会計年度において、従来の平型炉と比べ大幅に出入口熱損失が少ない平型炉用新型エアシールを開発いたしました。この平型炉用新型エアシールの開発により、熱損失低減に優れた梯形炉と同等の性能の平型炉を提供することが可能になりました。国内外での受注がすでに複数決定しており、導入に向けて計画を進めております。今後も更なる改良・改善を継続し、顧客満足度の高い商品開発を進めてまいります。 ② 「塗膜研磨・拾い研ぎシステム」の開発当社は、自動車塗装で培った自動塗装技術をもとに、近年自動化が加速している航空機、鉄道車両の塗装ラインの自動化技術にも取り組んでおります。航空機および鉄道車両の塗装ラインは、自動車の塗装ラインと異なり、塗装の前工程において被塗装面の研磨を行うことが一般的であり、従来は主に手作業で行われておりました。しかし、近年は、作業環境の改善、研磨品質の安定化、研磨時間の短縮などへの対応のために、研磨作業の自動化へのニーズが高まっております。当連結会計年度は、このニーズに対応するため、ロボットによる効率的な自動研磨システムの開発を行いました。その結果、ロボットによる高い再現精度により塗膜面を短時間で均一に研磨する塗膜研磨システムの供給が可能となりました。また、鉄道車両のパテ塗膜研磨においては、凹凸のある塗膜の凸部を研磨し、パテ塗膜面を滑らかにすることが求められます。この作業は、同じ作業を繰り返す従来のロボットシステムでは対応することが困難です。そのため、ロボットシステムに視覚センサーを追加し、車両ごとに異なる塗膜凸部を検出し、塗膜凸部だけを研磨することが可能な拾い研ぎシステムを開発しました。現在、中国最大の輸送車両製造メーカーへの納入に向けた検証テストを実施し、早期の受注を目指しております。今後も、研磨システムの自動化への旺盛なニーズに対応するため、更に効率性と仕上り品質の高いシステムの開発に取り組んでまいります。 ③ 塗装ブース用搬送装置「Lean Dip HP」の改良Geico S.p.A.は、塗装ブース用搬送装置である「Lean Dip HP」の販売拡大を進めております。当連結会計年度は、「Lean Dip HP」の返送ラインの大幅な改良を行いました。「Lean Dip HP」は、前処理・電着ラインでの下地処理及び塗装をするための搬送装置であり、前処理電着塗装作業完了後、搬送用の台車は設備入口まで戻ります。従来、この返送ラインは作業を行う設備ラインと同規模のスペースが必要でした。そこで、必要スペースの低減を図るために、返送ラインの形状の大幅な改良を行い、従来より30%のスペース低減に成功しました。改良版「Lean Dip HP」は顧客から高い評価をいただき、大手自動車メーカーへの導入に向けた検討が進められております。今後もさらに顧客のニーズに応えられる新商品の開発を行い、受注拡大を進めてまいります。 ④ 「Industry4.0」への対応Geico S.p.A.は、「Industry4.0」の技術導入を視野に入れた顧客のニーズに対応するためのシステム開発を積極的に進めております。その開発コンセプトに対し、「SURCAR Cannes 2017」において、「The Award for Innovation」の栄誉ある賞を受賞いたしました。今後は、VR技術、AR技術などの新しい技術を取り入れたメンテナンスシステムの開発をはじめとし、実ラインへの導入に向けた検討を進めてまいります。
FY2017|2,789 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度における研究開発費は9億46百万円であります。当社は、技術開発センター(神奈川県)、座間技術センター(神奈川県)、塗装システム事業部開発部門(大阪府)の3研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き活発に実施し、多くの成果を得ました。また、Geico S.p.A.(イタリア・ミラノ市)は、パルディスイノベーションセンターにおいて、塗装設備の分野における技術開発と改良を精力的に実施し、多くの成果を得ました。 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。 (1) 環境システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は4億73百万円であります。 ① ベジファクトリーのLED照明化当社では、蛍光灯を用いた完全人工光型・水耕栽培植物工場における結球レタスの安定量産化に成功し、「ベジファクトリー」として販売しております。当連結会計年度は、近年のLEDの発光効率向上や価格の低下、製品の長寿命化などによりLED照明導入の条件が整ったことから、LED照明による栽培実験を行い、LED照明による最適な栽培技術を確立しました。このLED照明の導入は、約40%の消費電力低減の効果があり、平成29年竣工予定の植物工場にも採用されました。今後は,空調設備や栽培装置の開発などを進め,更なる栽培コスト低減を進めてまいります。 ② 直膨空調システムの拡充当社では、冷凍機の冷媒で空気を直接冷却する直膨空調システムの開発を進め、主に環境試験室に導入してまいりました。当連結会計年度は、これまでの冷房専用のシステムからヒートポンプ運転による暖房も可能にするため、冷房運転と暖房運転の切り替え時の温度変動が小さい高精度な直膨空調システムの開発を行いました。この直膨空調システムの拡充により、1年を通し24時間連続運転が要求される施設への直膨空調システムの展開が期待できることから、今後はさらなる販売拡大を図ってまいります。 ③ RTO(蓄熱型直接燃焼装置)の省エネルギー性の向上当社では、VOC(揮発性有機化合物)の排気処理装置の主力商品としてRTOを販売しております。RTOは燃焼排熱を蓄熱材に蓄熱し、これを処理ガスの予熱に再利用し、燃料消費量の低減を図る省エネルギー性の高い装置です。当連結会計年度は、燃焼室の構造の最適化による温度分布の均一化を進めることにより、省エネルギー性の向上を進めてまいりました。燃焼室の温度分布を改善することにより処理ガスの燃焼効率が上昇し、燃料消費量の低減を図ることができます。小型検証装置による実験では,従来の装置と比較して燃料消費量が20%減少いたしました。今後は実大装置による実証実験を行い、早期の市場投入を目指してまいります。 ④ 空調室外機用の消音装置近年、普及が著しいビル用マルチエアコンは大規模建物に適用されることが多く、多数の室外機による近隣騒音が問題になることがあります。そのため、近隣への騒音対策として室外機に消音装置を設置する場合がありますが、費用に見合った効果が明確でないという課題があります。当社では、ビル用マルチエアコンの室外機の消音装置に遮音壁に関する新たな技術を適用するための研究を進めてまいりました。当連結会計年度は、屋外での実大実験、無響室での模型実験、数値解析などを行い、従来の装置と比較して5dB程度の消音量向上に成功いたしました。今後は、国内連結子会社である日本ノイズコントロール㈱とともに実用化を図ってまいります。 (2) 塗装システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は4億73百万円であります。 ① 新型湿式スクラバー式塗装ブース「S-1型湿式サーキュラー」の開発当社は、自動車メーカー等に主力設備の一つである湿式スクラバー方式の塗装ブースを多数納入しております。当社では、1980年代初期から数々の改良を重ね、低騒音を特長とした湿式スクラバー(W型サーキュラー)を主力商品として販売拡大を進めてまいりました。当連結会計年度は、W型サーキュラーの後継機となる更に高性能な湿式スクラバー「S-1型湿式サーキュラー」の開発に成功いたしました。このS-1型サーキュラーは、洗浄部形状の刷新による大幅な省エネルギー化と、構造の簡素化による優れたメンテナンス性を備えている点が大きな特長です。今後も、更なる改良・改善を継続し、より高性能な商品開発を進めてまいります。 ② シリンジポンプユニットを搭載した「2液混合塗装システム」の開発当社の主要顧客である自動車メーカーはエネルギー効率の高い生産工場の建設や、低燃費自動車の開発による環境対応を最優先課題に挙げております。自動車業界では、低燃費実現のために外装パーツの複合材化による車体軽量化が進められています。複合材パーツの塗装工程では焼付温度の低下が必要となるため、2種類の材料を混ぜ、化学反応で塗膜を硬化させる2液混合塗装システムの採用が不可欠となります。当連結会計年度は、「2液混合塗装システム」の開発に注力いたしました。本システムは、シリンジポンプの駆動にサーボモーターを採用しているため、高精度の混合比率と塗料廃棄損失の減少を実現しております。当社が新規参入を進めております航空機及び鉄道車両の塗装市場における塗料も2液塗料であり、塗装作業の自動化と連動して本システムの採用が見込まれます。今後も、顧客のニーズに対応した製品の開発を進め、受注拡大を推進してまいります。 ③ 塗装ブース用「ドライスピン」の改良Geico S.p.Aは、自動車メーカー等に大幅な省エネルギー化を可能とする「ドライスピン」の販売拡大を進めております。当連結会計年度は、その心臓部である装置構造の変更を行うなどの細部にわたった改良を行う事で、システム全体の信頼性を高めました。改良版「ドライスピン」は、大手自動車メーカーからの受注を獲得し、平成30年初旬の生産開始に向けた計画を進めております。 ④ IoTをベースにした「Smart Paint Shop」の構築Geico S.p.Aは、「Industry4.0」を視野に入れた「Smart Paint Shop」プロジェクトを社内で立ち上げました。本プロジェクトにおいては「生産品の品質向上」、「設備の故障予知」、「作業者に対する安全性の向上」を実現できるシステム開発を進めてまいります。特に近年では、IoT技術の導入による製造工場のスマート化が進んでおり、世界的な潮流に対応するべく新システムの開発を現在積極的に進めております。今後は自動車生産工場を想定し、ビッグデータを用いたディープラーニング、AIツールの導入を含めた具現化を進めてまいります。
FY2016|3,517 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度における研究開発費は8億89百万円であります。当社は、技術開発センター(神奈川県)、座間技術センター(神奈川県)、塗装システム事業部開発部門(大阪府)の3研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き活発に実施し、多くの成果を得ました。また、Geico S.p.A.(イタリア・ミラノ市)は、パルディスイノベーションセンターにおいて、塗装設備の分野における技術開発と展示会を実施し、多くの成果を得ました。 セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。 (1) 環境システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は4億19百万円であります。 ① 直膨空調システムの温度制御の高精度化当社では、冷凍機の冷媒で空気を直接冷却する直膨空調システムの開発を進め、主に環境試験室に導入してまいりました。当連結会計年度は温度制御の高精度化に取り組み、膨張弁を独自のロジックで制御するシステムを開発しました。この技術は、負荷変動や設定温度の変更などによる室温の変動が安定するまでの整定時間を短縮できる効果があり、より高精度な温度制御が要求される用途に直膨空調システムを適用することが可能となります。この制御システムの導入により、直膨空調システムはこれまでの環境試験室以外への展開も期待できることから、今後はさらなる販売拡大を図ってまいります。 ② 吹雪発生装置の開発による環境試験室の拡充当社では、自社開発した大型直膨空調システムを用い、広範囲な温湿度環境(温度-40~+50℃、湿度30~80%)に対応する自動車向け環境試験室を販売してまいりました。自動車向け環境試験室では、温湿度以外に様々な試験環境の要求があり、平成26年3月期に開発した新雪を再現する結晶雪発生装置を応用し、当連結会計年度には吹雪を想定した吹雪発生装置を開発しました。当社は自動車の空力試験用の風洞設備を販売しており、風洞にこれら降雪装置を組み込んだ環境風洞設備への展開や、建材試験分野への販売拡大を図ってまいります。 ③ 大気グリーン ファーム当社では、完全人工光型水耕植物工場における結球レタスの安定量産化に成功し、この栽培プラントを「大気グリーン ファーム」として販売しております。当連結会計年度は、実際の生産ラインでの照明、温度、湿度、風速など栽培条件の最適化のための実験を行い、結球レタスの栽培コストの低減を図りました。今後は、栽培装置の開発、栽培品種の拡充などを進め、他社との差別化を実現してまいります。 ④ RTO(蓄熱型直接燃焼装置)の性能向上当社では、VOC(揮発性有機化合物)の排気処理装置の主力商品として、切替式及び回転式のRTOを販売しております。当連結会計年度は切替式RTOの圧力変動の低減に有効な多塔化を実現するため、三塔切替式を対象に、従来の二方弁に代わり新たに考案した四方弁を適用する新型RTOを開発し、回転式と同等の優れた圧力変動抑制効果を低コストで実現することができました。排気処理分野では、今後も既存商品の性能向上のための技術開発などを継続し、受注拡大を図ってまいります。 (2) 塗装システム事業 当連結会計年度における研究開発費の金額は4億69百万円であります。 ① プレコート式ドライ塗装ブース「ドライサーキュラーMarkⅡ」の開発当社では、自動車メーカー等に主力設備の一つである湿式スクラバー方式の塗装ブースを多数納入しております。省エネルギー化のニーズに応えるため、平成24年3月期に大幅な省エネ効果とCO2発生量削減効果が得られる画期的なプレコート式ドライ塗装ブースの開発を完了しました。また、当連結会計年度には、システムをシンプル化したドライサーキュラーの改良(ドライサーキュラーMarkⅡ)に成功しました。ドライサーキュラーMarkⅡの特徴は、プレコート剤の供給方式を変更することにより、プレコート剤の管理を容易にし、配管や機器点数を削減したシンプルなシステムにしている点です。この改良により、イニシャルコストの大幅な削減と、より安定した運用が可能となりました。現在、ドライサーキュラーMarkⅡの1号機を既に納入しており、2号機、3号機の受注も決まっております。今後は、継続的なフォローを実施していくとともに、更なる商品改良に努めてまいります。また同時に積極的な営業活動も展開し、更なる受注拡大を推進してまいります。 ② 外部印加式回転霧化塗装機当社では、自動車メーカー等に静電塗装システムを多数納入しております。静電塗装システムとは、噴霧した塗料粒子に静電気を与えることにより、塗料を被塗物に効果的に付着させるシステムです。近年の自動車塗装工程においては、環境保全の観点から水性塗料の採用が主流となっています。水性塗料を静電塗装する塗装機は、以下の2種類があります。1.内部印加式回転霧化塗装機:塗装機から直接塗料に静電気を与える塗装機2.外部印加式回転霧化塗装機:塗装機により液滴化された塗料粒子に静電気を与える塗装機当社の主力商品である内部印加式塗装機は、自動車ボディへの塗料の塗着効率の高さの特長を活かし、広く採用頂いておりますが、構造が複雑です。一方、外部印加式塗装機は、構造がシンプルで安価ですが、内部印加式塗装機に比べ塗料の塗着効率が低く、また、塗装機本体が塗料により汚れるため頻繁に清掃を行う必要がありました。当社は、上記外部印加式塗装機の課題である、塗料の塗着効率及び塗料による汚れに対する改良を行った塗装機の性能検証を完了し、新しく商品ラインアップに加えました。今後、この2種類の塗装機の特長を活かし、顧客のニーズに高い技術レベルで対応し、更なる受注拡大を推進してまいります。 ③ 新型回転式コンベヤシステム「Lean Dip」の開発近年、前処理・電着工程での塗装品質の向上、工程の短縮、ランニングコスト削減が可能な回転式コンベヤシステムの採用が増えています。Geico S.p.A.は、前期から開発を進めてきた新しい発想に基づく回転式コンベヤシステム「Lean Dip」の実用化開発を完了しました。また、同システムの1号機の受注も決定しております。今後も継続的な改良及び他社との差別化を進め、更なる拡販を目指してまいります。 ④ 新コンセプトの塗装ブース「J-Hive」の開発Geico S.p.A.は、ますます高まる塗装設備の省エネルギー・省スペースの要望に応えるべく、革新的なコンセプトの塗装ブース「J-Hive」を開発し、平成27年9月15日から16日に開催された自動車塗装に関する国際会議であるSurcar Shanghaiにて発表を行い、Innovation Awardを受賞しました。この「J-Hive」は、モジュール化された塗装ユニットを自在に配置する事が可能で、いかなるレイアウトにも対応できるという大きな特長があります。また、塗装ユニットの下部の構造によって、水で塗料ミストを捕集する従来型の湿式ブース及び、炭酸カルシウム粉末で塗料ミストを捕集する「Dry Spin」や、紙製フィルターで塗料ミストを捕集する「Dry Car」と組みあわせるドライブースのいずれにおいても運用が可能な、非常に高いフレキシブル性を持ち併せています。今後は顧客へのPR活動を精力的に行い、拡販展開を進めてまいります。 ⑤ 紙製フィルター式ドライブース「Dry Car」の開発Geico S.p.A.は、以前より開発を進めている、紙製フィルターにより塗料ミストを捕集するドライブース「Dry Car」に、フィルター交換作業を大幅に軽減する事ができる補助装置を付加したシステムを新たに開発しました。これにより、今まで人の手で行ってきたフィルター交換作業の大幅な効率化を実現できることとなり、実案件での採用も決定しました。この「Dry Car」は、従来のドライブースでは塗料ミストの捕集に必要であった炭酸カルシウム粉末を使用しません。従って、炭酸カルシウム粉末の運搬やタンクへの充填、塗料ミストを捕集した後の粉末の処理などの作業も不要となります。また、塗料ミストを捕集した紙製フィルターは容易に交換でき、交換後のフィルターの処分も非常に簡単になりました。Geico S.p.A.は、「Dry Car」の更なる採用拡大を目指して、高負荷条件下でも捕集効率が高く、かつ、長寿命なフィルターを、専業メーカーと共同で新たに開発中です。