研究開発活動(本文)
FY2025|3,068 文字
6 【研究開発活動】当社グループにおきましては、4つのマテリアリティ(重要課題)を掲げて、研究開発を推進しております。●4つのマテリアリティ(重要課題) Blue・Green(ブルー・グリーン)‐地球温暖化対策・低炭素社会の構築、自然環境保全・再生・創出 Life-cycle(ライフサイクル) ‐維持・長寿命化、3Rの実践 Digital・Smart(デジタル・スマート)‐品質・安全・生産性の向上、ウエルネスの向上 Resilience(レジリエンス) ‐防災・減災、強靱化、安心・安全の提供当連結会計年度における研究開発費は1,414百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。 (国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)(1)減揺タンク工法を開発〈Digital・Smart〉港湾の防波堤や岸壁の構築には、「ケーソン」と呼ばれる大型のコンクリート製躯体が多く用いられます。ケーソンは、陸上や船舶のドックで製作された後、大型の起重機船で吊り下げる形や海上に浮かべる形で設置場所まで運搬されます。このうち、海上に浮かべた状態のケーソンは「浮遊ケーソン」と呼ばれ、タグボート(曳船)で曳航されます。曳航中は波浪の影響を強く受け、特に外洋では波の周期によっては、ケーソン動揺と波浪の共振が起こり、「ロール(Roll)」および「ピッチ(Pitch)」の回転運動が増大します。その結果、施工時に人の身長を超えるほどの端部動揺が発生することもあります。これにより、作業員の転落リスクやワイヤーの破断による事故、さらにはケーソン下端の接触による捨石基礎や構造物自体の損傷リスクが生じます。これらの問題は、据付精度や施工可否(稼働率)にも影響を与えるため、効果的な動揺低減策の導入が求められていました。そこで、ケーソンの動揺を低減することを目的に「減揺タンク工法」を開発しました。「減揺タンク工法」は、ケーソン上に直方体のタンク(減揺タンク)を設置し、タンク内の水の動きを利用して浮遊ケーソンのロールおよびピッチを抑制する技術です。ケーソンの動揺と減揺タンク内の水の動きの位相差により、動揺を減衰させるモーメントを発生させます。特に波浪の周期とケーソンの動揺が共振する際に大きな効果を持ち、動揺の半減が見込まれます。減揺タンクの設計に必要な数値解析技術を開発し、効果の定量予測も可能となりました。本工法の導入により、施工の安全性向上、生産性の向上が期待されます。 (2)船舶航行監視システム「COS-NAVI」を開発〈Digital・Smart〉多くの一般船舶が行き交う海上で工事を行う際には、工事用船舶の運航状況や周辺を航行する一般船舶の動静を注視し、安全航行に努めることが重要です。当社は、GNSS、船舶自動識別装置(AIS)、船舶レーダー等を使用し、周辺海域に存在する船舶の位置および動静情報を自動入手し、工事関係者に展開することで、海上工事の安全確保に寄与してきました。しかしながら、船舶情報を入手する上で、船舶レーダーは航行安全上、特に必要な500m以内の近距離における船舶の検知には不向きであることが課題でした。そこで、AI画像認識技術を用いて船舶を自動検知する機能を取り入れた船舶運航監視システム「COS-NAVI:Construction On the Sea NAVIgation system」を開発しました。「COS-NAVI」は、AI画像認識技術を利用し、カメラで撮影した映像内の船舶をAIで検知するとともに、検知した船舶の位置情報を取得します。また、検知した船舶を自動追尾し、継続的に位置情報を取得することで、画面上に船舶の位置を表示するシステムです。本技術の活用により、操船者による船舶の見落としを予防し、海上作業時の運航管理の安全性と生産性の向上を図ることが可能となります。 なお、本技術は、国土交通省が提供する新技術情報提供システム(NETIS)に登録されました。 (3)広域通信型 落水者救援支援システムを開発〈Digital・Smart〉港湾工事においては、作業員が水中に転落する事故が起こることがあります。水中転落(落水)は、その瞬間を目撃する以外は、現場を巡回する職員の目視や作業員の不在によって発生を把握していました。港湾工事に従事する作業員は、万が一の水中転落に備えてライフジャケットを着用していますが、事故の発生から救助までに要する時間により、生存確率は大きく変化するため、救命のためには早期の発見と救助が必要不可欠です。そのため、誰がいつ、どこで水中転落したのかを早期に把握し、迅速な救助活動に繋げることを目的に「広域通信型 落水者救援支援システム」を開発しました。「広域通信型 落水者救援支援システム」は、水上(港湾、河川等)作業において、作業員の落水を検知し、関係者へ通知するとともに、落水者の位置を追跡する安全管理システムです。落水を検知すると信号を発信するセンサーと、位置情報を取得するGNSS端末を作業員に携帯させることで、落水事故の発生を瞬時に検知するとともに、作業員の位置がシステム画面上に常時表示されるため、早期発見と迅速な救助活動を支援することができます。また、LPWA(Low-Power Wide Area Network:省電力広域ネットワーク)規格のGNSSを採用することにより、携帯電話が圏外となる場所でも作業員の位置を把握することが可能です。なお、本技術は、国土交通省が提供する新技術情報提供システム(NETIS)に登録されました。 (4)人工排水材を用いたボイリング被害抑止(SBDS)工法の開発〈Resilience〉南海トラフ地震や首都圏直下型地震の発生リスクが逼迫する中、優先事業の継続自体を目的とした防災対策(=BCP防災)の必要性が提唱されておりますが、対策コストや施設の利用制限等の課題から民間企業を中心に対策の遅れが目立っております。実際に、臨海部の港湾施設・工場・商業施設など広大な用地を有する施設全域に液状化対策を実施することは、上記課題に照らして現実的ではなく、BCP防災対策を推進する観点からも、安価でコンパクトな資機材を用いて短期間に施工可能な対策工法が選択肢として望まれています。そこで当社を含めたDEPP工法研究会の会員6社と(国研)海上・港湾・航空技術研究所と共同で、人工排水材を用いて表層地盤のボイリング(噴砂)現象を抑制し、地震被害を最小限に防ぐ新たな耐震対策工法である「ボイリング被害抑止工法(SBDS工法:Sand Boil Damage Suppression Method)」を開発しました。SBDS工法は、対象地盤に有効打設長3~5mの短尺の人工排水材を打設することにより表層地盤部の排水性を高め、中・深層の液状化を許容しつつも、表層に伝播する過剰間隙水圧を速やかに吸収し、地盤の不均質性などで局所的に強まる上向き浸透流を防ぐことでボイリングの発生を抑止します。対策範囲以深では液状化を許容するため、一定の地表面沈下は生じますが、交通荷重や上載荷重に対する地盤支持力を確保し、施設機能の健全性を維持することができます。従来の液状化対策とは異なる発想による地震時のボイリング発生を抑止できる低コストの地震対策工法として、BCP防災の推進を後押していきます。 (その他)研究開発活動は特段行っておりません。
FY2024|3,614 文字
6 【研究開発活動】当社グループにおきましては、4つのマテリアリティ(重要課題)を掲げて、研究開発を推進しております。●4つのマテリアリティ(重要課題) Blue・Green(ブルー・グリーン)‐地球温暖化対策・低炭素社会の構築、自然環境保全・再生・創出 Life-cycle(ライフサイクル) ‐維持・長寿命化、3Rの実践 Digital・Smart(デシタル・スマート)‐品質・安全・生産性の向上、ウエルネスの向上 Resilience(レジリエンス) ‐防災・減災、強靱化、安心・安全の提供当連結会計年度における研究開発費は1,298百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。 (国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)1.Blue・Green(ブルー・グリーン)(1)「着床式基礎における洗掘防止工の低コスト構造及び施工方法の技術開発」の研究着手国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が公募した助成事業「洋上風力発電低コスト施工技術開発(施工技術検証)」に応募し、正式に採択されました。2019年4月の「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」の施行を契機に促進区域指定に向けた案件形成が進みつつある中、2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、再生可能エネルギーを最大限導入することが急務であります。特に洋上風力発電は、大量導入の可能性、コスト低減効果や経済波及効果の大きさの観点から、再生可能エネルギーの主力電源化の柱と考えられています。しかし、洋上風力発電が先行している欧州と比較して、気象・海象条件や船舶等のインフラ整備の状況が異なり、結果的に我が国の洋上風力発電コストが高くなっています。今後、固定価格買取制度から自立した形での導入を目指していく中で、洋上風力発電の低コスト化が急務となっているため、助成事業が開始されました。当社は、着床式基礎(主にモノパイル基礎)の洗掘防止工に照準を当て課題を整理するとともに、先進的工法を確立し、工程短縮を図り低コスト化に寄与する「着床式基礎における洗掘防止工の低コスト構造及び施工方法の技術開発」で採択を受けましたので、順次、研究開発に取り組んでまいります。 (2)消臭シートの開発近年、台風の大型化や集中豪雨の増加による被害が頻発しています。これらの水害に伴って発生する汚泥等の災害廃棄物は、悪臭を生じさせて周辺環境へ多大な影響を及ぼすためその対策が必要とされています。これまでの悪臭対策は、消臭作用のある薬剤を悪臭発生物に散布もしくは混ぜ込むことや土木シートで悪臭発生物を被覆することにより行われてきましたが、均一な薬剤の混ぜ込みが困難なことやシートの隙間から悪臭が拡散するなどの課題がありました。そこで、薬剤による消臭効果とシートによる悪臭封じ込め効果を併せ持った消臭シートを倉敷紡績加工(株)及び無臭元工業(株)と共同で開発しました。消臭シートは、不織布と不織布の間に粉末消臭剤を挟み込んだ製品です。悪臭発生物に本シートを隙間なく敷設することで悪臭の拡散を防ぐとともに本シートに水をかけることで消臭剤が悪臭発生物に浸透し悪臭の発生を抑えることができます。消臭効果がある悪臭物質はアンモニア・アミン類、硫化水素、メルカプタン類であることから、建設工事のみならず下水処理施設や畜産業における悪臭対策としても活用できます。 2.Life-cycle(ライフサイクル)(1)カルシア改質土の「バッチ式原位置混合工法」の技術評価証を取得カルシア改質土は、港湾等の粘土・シルト分の多い軟弱な浚渫土砂にカルシア改質材(製鉄過程で発生する転炉系製鋼スラグを原料として成分管理と粒度調整したリサイクル材料)を混合したものです。このカルシア改質土を利用して軟弱な海底地盤の表層改良を可能とする「バッチ式原位置混合工法」の開発を5社共同で進めてまいりました。このたび、2022年に実施した実海域での施工試験で得られたデータをもとに、一般財団法人沿岸技術研究センターの「港湾関連民間技術の確認審査・評価事業」における審査の結果、評価証(第22006号)を取得いたしました。これまでは、土運船の土槽内であらかじめ製造したカルシア改質土を所定の施工エリアへ運搬して、海中投入する方法が主流でした。「バッチ式原位置混合工法」は、既存の海上地盤改良工法であるサンドコンパクションパイル工法専用船のケーシング先端に取り付けた密閉式バケットを用いて海底地盤の粘性土を掘削し、バケット内でカルシア改質材と混合してカルシア改質土を製造する事により、浚渫することなく原位置で軟弱地盤を改質する工法です。審査においては、一連の施工を海底近傍で実施できる事から、良好な品質や出来形を確保できる点に加え、周辺海域の水質への悪影響が生じない工法としても評価されました。今後は、本工法の実事業化を進め、カルシア改質土の普及拡大を推進してまいります。 3.Digital・Smart(デジタル・スマート)(1)AIを活用した土の粒度分布判定システム「ASYST」を開発建設発生土の有効利用判定や受入れ土の利用計画など、特に土工事や地盤改良工事では、土砂の粒度情報に基づく施工の技術的判断を迅速かつ的確に下さなくてはならない場面が多く発生します。しかしながら、この粒度情報を知るうえで基礎データを得るための粒度試験は、習熟した技術者が1日~数日をかけて実施するため、その結果を施工管理に反映させることに時間的課題が残ります。そこで、土の粒度試験をその都度実施することなく粒度情報を把握し、施工管理に直ちに反映させることを目的に、現場レベルの簡単な操作のみで実用上十分な精度を有する粒径加積曲線をAIによって推定するシステム「ASYST」を開発しました。本システムによる土の粒度判定手順は、まず対象土を現場で採取し、所定量を専用容器に封入した試料を作製します。その後、試料を専用の撮影BOX内で複数枚の画像撮影を行います。一連の画像データは、インターネット経由でオンラインサーバーに転送され、「ASYST」により対象土の粒径加積曲線の推定結果を直ちに得ることができます。本システムにより、対象土の採取・調整から粒径加積曲線の推定までを1時間以内で実施することが可能となります。 (2)港湾工事における建設用3Dプリンター活用の取組み護岸上部工のコンクリート打設における底型枠は、本体工に鋼矢板や鋼管矢板などを用いた場合、打設時の施工誤差が生じるため、潜水士が水中で護岸形状に合うように加工と位置調整を行うことが一般的でした。この作業は熟練した技術を伴い、かつ安全面・工程面においても負担になることから、底型枠作製の効率化と潜水士による水中作業軽減を目的として、3Dプリンター造形物の構造物への適用性に関する研究開発に取り組んでいます。本研究開発おいて、千葉県の護岸工事で建設用3Dプリンターにて作製した底型枠を用いた上部工コンクリート打設に成功しました。底型枠は、3DスキャナやUAV等により取得した護岸形状の3Dデータをもとに、(株)Polyuse製の建設用3Dプリンターで作製しました。これにより、護岸形状にフィットする底型枠を作業者の技量によらず簡易かつ効率的に作製できることを確認しました。また、作製した底型枠は、吊鋼材を天端に取り付けた状態でクレーン付き台船にて水上から据え付けることにより、潜水士の水中での作業を大幅に削減できることを確認しました。今後は、本技術の適用現場を増やしながら構造のスリム化や据付方法の合理化といった施工の効率化を図るとともに、3Dプリンター作製物の適用範囲拡大を図ってまいります。 4.Resilience(レジリエンス)(1)低騒音・低振動・低粉塵型目荒らし「ブラストキー工法」がNETISに登録コンクリートの接合面に用いるチッピングに代わる目荒らし工法として飛島建設(株)と共同開発した「ブラストキー工法」は、国土交通省の公共工事などにおける新技術情報提供システム「NETIS」に、①工程短縮、②品質・安全性の向上、③施工性・周辺環境への影響の向上に期待できる技術「低騒音・低振動・低粉塵型目荒らし『ブラストキー工法』」として登録されました。本工法は、目荒らし工事におけるコンクリートガラの排出量を抑制でき、コンクリートガラ収集運搬時のCO2削減が期待できます。また、騒音・振動・粉塵の発生を抑制できる周辺環境に配慮した目荒らし工法として増改築や改修工事に適用できることから、特に学校、病院、集合住宅等のストック建築の活用促進に繋がることを期待しています。 (その他)研究開発活動は特段行っておりません。
FY2023|2,801 文字
6 【研究開発活動】当社グループにおきましては、4つのマテリアリティ(重要課題)を掲げて、研究開発を推進しております。●4つのマテリアリティ(重要課題) Blue・Green(ブルー・グリーン)‐地球温暖化対策・低炭素社会の構築、自然環境保全・再生・創出 Life-cycle(ライフサイクル) ‐維持・長寿命化、3Rの実践 Digital・Smart(デシタル・スマート)‐品質・安全・生産性の向上、ウエルネスの向上 Resilience(レジリエンス) ‐防災・減災、強靱化、安心・安全の提供当連結会計年度における研究開発費は1,209百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。 (国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)(1)桟橋調査用軽量ユニット足場「SPIDER WEB STAGE」を開発〈Digital・Smart、Life-cycle〉桟橋下で調査等の作業を行うには、海上に足場を設置する必要があります。作業足場には、上部工に設置した吊り治具等に支持をとる吊り足場と、鋼管杭の水中部に支持をとるブラケット足場があります。これらの足場の構築には、海上作業の経験者や潜水士といった熟練工が必要となるため、担い手不足が深刻化する今後は、熟練工の確保が難しくなることが予想されます。そこで、調査等の短期間で完了する作業を主たる対象にして、同じ作業日に設置・撤去ができる桟橋調査用軽量ユニット足場「SPIDER WEB STAGE」を開発いたしました。本足場では、軽量かつユニット化された部材を用いるため、作業員2名で30分以内に設置(または撤去)を行うことができます。これにより、足場の設置・撤去作業の生産性向上及び急激な気象・海象変化による足場損壊リスクの低減を図ってまいります。 (2)ブルーカーボン生態系の拡大に向けた取組み〈Blue・Green〉国土交通省港湾局では、脱炭素社会の実現に向け、物流や人流の拠点となる港湾においてカーボンニュートラルポートの形成に関する検討を進めており、港湾・沿岸域におけるブルーカーボン生態系を拡大させる取組みを推進しております。当社では、ブルーカーボンに関する技術のひとつとして、直立港湾構造物に海藻を繁茂させ、CO2吸収機能を持たせる技術を検討しております。そこで、関東地方整備局の実海域実験場提供システムを活用し、横浜港南本牧ふ頭の直立港湾構造物に海藻の着生及び生育を促す着生基盤を設置してその効果を検証しております。当社の考案した海藻の着生及び生育を促す角部を有する突起形状の着生基盤を横浜港南本牧ふ頭の直立港湾構造物に設置し、設置約1年後に海藻の着生状況を確認いたしました。その結果、突起形状の角部を起点として海藻であるアオサ属等の緑藻類の着生が認められ、海藻着生の有効性が確認されました。今後は、海藻の生育状況と着生基盤への生物の着生状況のモニタリングを継続し、多様な海藻がより効果的・効率的に着生・生育しやすい形状や方策を検討するとともに、カーボンニュートラルポートの形成に資する技術として全国の港湾への展開も検討してまいります。 (3)浮遊ケーソンの動揺低減技術の研究開発を推進〈Digital・Smart〉国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所の革新的社会資本整備研究開発推進事業に採択された防波堤整備等における生産性向上に資する「浮遊ケーソンの動揺低減技術の研究開発」について、茨城港常陸那珂港区で実物のケーソンを使用した実海域実験を実施いたしました。当社が考案した浮遊ケーソンの動揺低減方法は、ケーソン上に減揺タンクと呼ぶ「内部に水を薄く張った長方形の容器」を上下2段で格子状に複数配置して、減揺タンク内の自由水が波浪によるケーソンの傾きによって移動することで、揺れを抑える力が発生しケーソンの動揺を低減させるものです。実海域実験では、浮遊ケーソンの長手方向に傾斜するPitchと呼ばれる動揺が卓越するように、ケーソンの長手方向を波向に一致させ計測を行い、今回の条件ではおよそ30%の動揺低減効果を確認することができました。これにより、実海域において実物のケーソンでも減揺タンクを利用することによって動揺を低減することが可能であることが実証されました。本実験結果を取りまとめ、減揺タンクの製作コスト削減や減揺タンク設置・撤去の工程の短縮等を行い現場に導入し得る技術へとブラッシュアップを続けてまいります。将来的にはケーソンの自動据付等のICTとの連携によるケーソン据付のDXを推進し、防波堤整備等における生産性向上を通じてインフラ整備に貢献できるよう鋭意努力してまいります。 (4)水中ドローンを利用した岸壁の3Dモデル化を検証〈Digital・Smart〉港湾構造物の維持管理は潜水士による潜水調査が主流ではありますが、コストや時間を要する一方で劣化箇所の局所的な写真しか撮影できず全体の把握が難しいという課題があります。近年、ドローンを用いた陸上の写真測量は大規模な造成現場などで用いられる例が見られますが、当社は本技術を応用して水中で撮影した写真から構造物の形状を3次元モデル化する試みを行っております。検証では、多少濁りのある海域でもオルソ画像を生成でき、対象物の寸法等が計測できることを確認いたしました。本技術を用いることで、広範囲の水中構造物等の調査を容易に、高精度かつ低コストで行うことができます。本技術により、港湾構造物の破損・変形・亀裂の有無、水生生物の付着状況などをより正確に把握でき、更には定期的な調査に用いることで、構造物の経時変化を把握できることから、港湾構造物の維持管理に非常に有効な方法であると考えております。 (5)THJ耐震補強工法の建築技術性能証明を取得〈Resilience〉稼働中の冷蔵倉庫内をマイナス温度に保ったまま(-25℃まで対応可能)で、常温での施工と同等の耐震性能を確保できる耐震補強工法として2021年に開発した「THJ耐震補強工法」について、建築技術性能証明をビューローベリタスジャパン株式会社より取得いたしました。建築技術性能証明の取得により、「THJ耐震補強工法」の耐震性能に対する信頼性が更に高まると共に、今後、本工法を採用する施主にとっては耐震改修工事に関する自治体などからの補助金を得られやすくなるメリットが生じます。また、「THJ耐震補強工法」により、旧耐震基準の冷蔵倉庫の建物寿命を延命できることになるため、当社は「冷蔵倉庫の相談室」を窓口として、更に本工法の普及・促進を図ることで、スクラップアンドビルドによる環境負荷の低減によって、SDGsの実現に貢献してまいります。 (その他)研究開発活動は特段行っておりません。
FY2022|2,695 文字
5 【研究開発活動】当社グループにおきましては、4つのマテリアリティ(重要課題)を掲げて、研究開発を推進しております。●4つのマテリアリティ(重要課題) Blue・Green(ブルー・グリーン)‐地球温暖化対策・低炭素社会の構築、自然環境保全・再生・創出 Life-cycle(ライフサイクル) ‐維持・長寿命化、3Rの実践 Digital・Smart(デシタル・スマート)‐品質・安全・生産性の向上、ウエルネスの向上 Resilience(レジリエンス) ‐防災・減災、強靱化、安心・安全の提供当連結会計年度における研究開発費は1,224百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。 (国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)(1)鋼板接着併用型タフリードPJ工法の開発桟橋杭頭部付近の鋼管杭は、海水作用や地震・船舶接岸による荷重作用等の影響により劣化や損傷を生じやすく、この部位で鋼管杭が著しく腐食した場合には桟橋の安全性に大きく影響するため、桟橋の供用停止や大掛かりな対策工事が必要となります。当社は、このような桟橋の供用を停止することなく補修する技術として、2015年に国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所、國枝稔 岐阜大学教授及び岩波光保 東京工業大学教授と共同でタフリードPJ工法を開発しました。このタフリードPJ工法は、既存の鉄筋コンクリートを用いた補修技術を改良したもので、適用範囲として、既設鋼管杭の残存耐力を期待できること(鋼管杭の残存肉厚6mm以上)を前提とした工法でした。そのため、既設鋼管杭の残存耐力を期待できないような著しい腐食やあなが生じている条件では、適用することができませんでした。そこで、タフリードPJ工法では適用できなかった条件に対しても確実な補修効果が得られる工法として、既存の鋼板を用いた鋼管杭の補修技術を改良した「鋼板接着併用型タフリードPJ工法」を開発しました。本工法は、杭頭部付近の鋼管杭に著しい腐食が生じている場合に、既存の鋼板を用いた補修では補強鋼板上部の定着が確保できない(溶接長が確保できない)課題を、タフリード(高強度・高靭性・高耐久性を併せ持つ繊維補強モルタル)を用いることで解決した工法です。既存の鋼板を用いた鋼管杭の補修技術を改良し、杭頭部へのタフリードによる巻立てと補強鋼板の上端を杭頭プレート下面にすみ肉溶接を行うことにより、杭(補強鋼板)と上部工を接合します。タフリード巻立てと補強鋼板はシアキー(ずれ止め)により、タフリード巻立てと上部工はアンカーボルトにより、それぞれ定着させて一体化します。なお、タフリード巻立て部より下方の補強鋼板に対しては、既存技術と同様に、防食工を適用します。過酷な環境下に曝される桟橋のリニューアル工事に本工法を幅広く活用していただけるよう、また、潜水士等の熟練作業員の減少を見据えつつ、更なる施工性の向上を推進していきます。 (2)無線式ガット船施工支援システムの機能拡充海上土木の護岸基礎工事や埋立工事等において使用する作業船(ガット船)は、バケット付きクレーンを装備しており、順次移動しながら船倉に積込まれた土砂等をバケットで掴んで海中に放出する作業を繰り返して所定の位置へ土砂等を投入していきます。当社は、このクレーンのブーム先端に設置したマグネット着脱式GNSSアンテナの情報から投入位置(XY座標)および投入履歴を表示することでオペレータの投入支援を行う無線式ガット船施工支援システムを2009年に開発し、工事で活用してきました。しかしながら、本システムは、オペレータや職員が土砂等を投入したことを目視判断して、その都度手動でシステムを操作することで投入位置履歴を記録するため、手間がかかることやヒューマンエラーによる記録漏れが発生する等の課題もありました。そこで、本システムにAI画像認識技術を組み込み、カメラで撮影した映像内のバケット開閉をAIが識別して投入判別するとともにGNSSから取得した投入位置を自動記録する機能を付加しました。これにより、投入判別や投入履歴記録が自動化できたため、オペレータや職員の負担軽減と記録漏れの防止ができ、業務の効率化を実現しました。 (3)冷蔵倉庫を稼働しながらの耐震補強工法「THJ耐震補強工法」の開発旧耐震基準に基づいて建てられたF級(フリーザー級)冷蔵倉庫は、現在も多くが稼働していますが、それらの多くは耐震改修促進法における耐震性能の判断基準となる構造耐震指標(Is値)0.6を下回っているため、地震による倒壊または崩壊のおそれがあり、早急な対応が望まれます。しかしながら、冷蔵倉庫を建て替えるには、倉庫内の荷物を他の倉庫へ一時的に移動する必要があり、仮保管できる倉庫も限られるため、事業に多大な影響を及ぼします。また、冷蔵倉庫の耐震改修工事を実施する場合にも、冷凍機を一旦停止し、倉庫内を常温に戻してから施工する必要があるため、建て替えの場合と同様に一時的に荷物を移動する必要があります。これらの対応は事業上、非常に困難であるため、耐震改修が進まないといった現状があります。そこで当社は、稼働中の冷蔵倉庫内において常温環境下での施工と同等の耐震性能を確保できる耐震補強工法「THJ(Toa Heating Joint)耐震補強工法」を開発しました。本工法は、鉄筋コンクリート(RC)造および鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の冷蔵倉庫を対象とし、最上階が鉄骨(S)造の場合にも対応できます。適用可能な温度帯は、F1級(-30℃~-20℃)冷蔵倉庫の中で最も需要が高い-25℃以上の冷凍温度帯となります。RC造およびSRC造の部位には柱梁構面内に鉄骨枠付きブレースを増設し、S造の部位には既存鉄骨ブレースを交換・増設します。一般に鉄骨枠付きブレースを増設する場合、鉄骨枠付きブレースはグラウトを介して既存躯体に間接接合します。本工法では、間接接合部(Joint)の型枠に面状発熱体及び断熱材を設置し、鉄骨枠のウェブにも断熱材を設置した上で採暖しながら(Heating)グラウトを打込むことで、「-25℃冷凍」環境下でも常温環境下でのグラウト打込みと同等の品質確保が可能になりました。本工法により、旧耐震基準の冷蔵倉庫の建物寿命を延命できることになるため、スクラップアンドビルドによる環境負荷を削減することで持続可能な社会の実現に貢献します。 (その他)研究開発活動は特段行っておりません。
FY2021|2,058 文字
5 【研究開発活動】当社グループにおきましては、現在、i-Construction・環境・防災・リニューアル・海洋資源開発に関わる技術に重点をおいて研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発費は1,225百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。 (国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)(1)プレキャスト桟橋上部工の施工合理化工法の開発港湾構造物の海上コンクリート施工では、特殊技能を有する作業員が必要で多大な労力を要すること、工事進捗が海象条件等に大きく左右されることから、海上作業の省力化と安全性の向上が喫緊の課題となっております。また、桟橋上部工のような複合構造物では、部材間の接合が重要となります。しかし、海上での鋼管杭の打込みでは高い精度を要求することが難しいことから、桟橋の上部工築造においては、大掛かりな支保工を構築して現場打ちコンクリートによる施工が一般的でした。近年、杭頭部をプレキャスト化して施工する事例も増えていますが、施工誤差の吸収や海上作業の削減面で課題がありました。 そこで、海上桟橋の上部工を構成する杭頭部、梁、床版の部材をプレキャスト化し、鋼管杭と杭頭ブロックの相対的な位置のずれに対し柔軟な設計を可能とする「鉄骨差込み接合」を用いた「プレキャスト桟橋上部工の施工合理化工法」を開発しました。 本工法は、海上桟橋の上部工築造において、コンクリート工の大半の作業を海上ではなく陸上で行うものであります。この点においては、従来のプレキャスト施工と大きな相違はありませんが、港湾の海上桟橋では類のない「鉄骨差込み接合」の採用により、鋼管杭の施工誤差を吸収できるため、施工の合理化や安全性の向上を可能とします。 今後は杭頭部の構造のみならず梁や床版等も含めた一連のプレキャスト桟橋構築作業の合理化を目指し、ICT導入等により機械化・自動化技術に発展させることを想定しております。また、桟橋施工全体の合理化技術の完成に向けて、現場実証実験や試験施工等を経て実用化を進めていく予定であります。 (2)表・中層型原位置試験機「TOA-SID-MarkⅡ」の開発当社は1990年代に、埋立や盛土工事を対象として、軟弱な粘性土地盤に対する調査・設計から施工に至るまでの一連のプロセスを、一貫した手法に基づいて評価/管理する技術「ACCESS法」を開発しました。当技術は、電気式コーン貫入試験(CPT)をはじめとした原位置試験と、一面せん断試験(DST)などの室内土質試験を組み合わせた独自性の高い技術として評価されてきました。一方で、原位置試験機を地盤へ貫入させる手段として、ボーリング機械や大型地盤貫入機をプラットフォームとして利用することが前提となっているため、主にコスト面から、適用ケースが大型プロジェクトに限定される、という制約がありました。 そこで、このACCESS法を大型プロジェクトのみならず、比較的小規模な工事に至るまで幅広く活用していくことを目指し、工事現場での機動性と操作性に富んだ専用プラットフォームとして表・中層型原位置試験機「TOA-SID-MarkⅡ」を開発・導入しました。「TOA-SID-MarkⅡ」は、より多くの現場で手軽に適用できるように、機体の小型化を図り、運搬時に一般貨物自動車に積載できる仕様を採用しました。これにより、調査地点までスムーズに移動することができます。さらに、自走式キャタピラ構造を備えつつ、軽量化を図ることで、不陸やぬかるみなどの厳しい現場環境においても優れた機動性を発揮します。 (3)防熱耐火パネルの開発冷凍冷蔵倉庫の外壁には、建物の機能上、高い断熱性能を要求される一方で、建築基準法上の耐火性能も要求されます。そのため、従来の冷凍冷蔵倉庫では鉄筋コンクリート製の外壁に200mm程度の厚みの断熱層を設けて設計しています。 近年、現場での施工省力化に伴い、柱梁の躯体にプレキャスト化が採用され、外壁にはコンクリートパネル等を利用した乾式工法を採用し、耐火性能を確保することが多くなってきました。また、断熱性能を確保するために、現場で断熱材を200mm程度吹き付けますが、吹き付け作業は、飛散養生に手間が掛かる上に作業環境も悪く、さらに労務不足もあって現場施工の負担になっていました。 そこで当社は、耐火性能と断熱性能の両方を併せ持つ防熱耐火パネルを開発し、建築基準法で規定する1時間耐火構造壁および30分耐火構造壁の国土交通大臣の認定を取得しました。 防熱耐火パネルは、耐火性能と断熱性能が一体化したパネルであるため、現場における断熱材および耐火吹付材の吹き付け作業、更にはそれを覆う仕上げ材の工程が不要となり、現場作業の環境改善に加えて工期短縮にも有効であります。また、施工段階で断熱材が露出していない為、現場における火災リスク低減にも貢献します。 (その他)研究開発活動は特段行っておりません。
FY2020|2,073 文字
5 【研究開発活動】当社グループにおきましては、現在、i-Construction・環境・防災・リニューアル・海洋資源開発に関わる技術に重点をおいて研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発費は1,058百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。 (国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)(1)クレーン吊荷制御装置「GYCO」の導入風の影響を受けやすい海上等での吊作業では、吊荷が回転してしまう恐れがあり、吊荷と作業員が接触する危険性がありました。また、足場が不安定な水中や水際での人力による据付作業では吊荷の回転制御を十分に行うことができませんでした。この様な背景から、「人間の手を介さず、遠隔操作により自在に吊荷の回転を制御し、吊作業時の安全性を向上させる」ことを目的に、既に技術が確立されていた吊荷制御装置を購入し、現場実証および改良を経て「GYCO」として導入しました。「GYCO」はGyro Rotation Control Device の略で、「ジャイロ効果」を利用して、吊荷の姿勢を一定に保ち、「ジャイロモーメント」により、遠隔操作で自在に吊荷を水平旋回させることが可能であります。 (2)エコ基礎梁工法の改良中低層住宅や物流倉庫などの基礎梁では、人通用あるいは設備用として円形の開孔部が設けられます。このうち、建物のメンテナンスで使用する人通孔は、一般には梁スパン中央付近に設けられ、直径は600mm程度の大開孔となります。一方、開孔の直径は、慣用的に梁せいの1/3 以下に制限されており、基礎梁では、応力から決定される基礎梁せいが1500mm であったとしても、人通孔径の3倍である1800mmの断面を設定しなければならない実情がありました。この点を合理化するため、2011年に当社、株式会社安藤・間及び西武建設株式会社の3社共同による「RC 基礎梁人通孔の合理化」に着手し、2011年に「エコ基礎梁工法」として一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得しました。エコ基礎梁工法は、在来補強により梁せいの1/2.5 以下の開孔を設けることを可能とした補強方法です。これにより施工時に基礎梁根切り底が浅くなり、掘削量やコンクリートの削減についても可能となりました。さらに、技術の優位性を高め、かつコストダウンを図るために「孔直径の拡大」と、施工性を向上し省力化を図るために「既製金物の併用」を可能とする等、適用範囲の拡大を行いました。これにより、梁せいの1/2 以下の開孔を設けることを可能とし、従来の1/2.5 以下において既製金物が併用できるなど自由度の高い工法に改良したものとして、一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得しました。 (3)ブラストキー工法の適用範囲拡大飛島建設株式会社と共同開発した「ブラストキー工法」は、「チッピング工法」に代わる低騒音・低振動・低粉塵型の目荒らし工法であり、「あと施工アンカー」と「ブラストキー」を併用することで接合面の定量化を構築した工法として、2014年に一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得しました。取得後、実施案件への採用および普及を目指しましたが、設計式が煩雑である等の課題がありました。そこで、適用範囲の拡大と更なる普及を目指し、「ブラストキーの構造性能確認」、「チッピングからの置き換えに関する構造性能確認」、「増し打ち壁への適用に関する構造性能確認」を行い、一般社団法人建築研究振興協会の技術(性能)評価を取得しました。 (4)AIの画像認識技術を利用した船舶監視システムの開発2019年に開発した航行支援システム「ARナビ」は、高性能カメラ、GNSS端末、AIS(自動船舶識別装置)、船舶レーダー等を利用して、操船者に対してカメラで撮影した映像上に航行経路や針路、危険エリアなどを拡張現実(AR)として重ねて表示し、視覚情報と音声情報で分かりやすくナビゲーションするシステムであり、様々な港湾工事で使用されています。当該システムで他船舶の動静監視は大型船をAIS、小型船を船舶レーダーで実施しています。しかし、AISは情報の更新間隔が不規則であり最新情報を入手できないことや、船舶レーダーは波と小型船の区別がつかないなどの課題もありました。そこで、富士通株式会社が開発したAI画像船舶認識技術を港湾工事へ試験的に導入し、4Kカメラで撮影した高画質な映像内の船舶(大型船・小型船)の船種を自動で識別して、操船者へ知らせることで船舶監視の負担軽減に寄与することを確認しました。今後、AI画像船舶認識技術を「ARナビ」に組み込むことで、土運船等の長距離航行や、一般航行船舶が多く行き交う現場において、航行監視の効率化・負担軽減が期待されます。さらに様々な現場で検証を重ねることで、港湾工事に特化したシステムとして機能拡張を図ってまいります。 (その他)研究開発活動は特段行っておりません。
FY2019|2,249 文字
5 【研究開発活動】当社グループにおきましては、現在、i-Construction・環境・防災・リニューアル・海洋資源開発に関わる技術に重点をおいて研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発費は1,013百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。 (国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)(1)航行(運行)支援システム「ARナビ」の開発港湾工事では、工事を円滑かつ安全に施工するため、工事用船舶の運航状況や一般船舶の動静を把握することが重要となります。当社が2003年に開発した船舶運航監視システム「COS-NET」は、位置情報発信端末、AIS(自動船舶識別装置)、船舶レーダー等を利用し、工事船舶や一般航行船舶の動静情報を監視するシステムであり、これまで多くの工事に導入され、施工上必要不可欠なツールとなっています。 この度、更なる船舶航行時の安全性の向上を目的として、新たに開発した航行支援システム「ARナビ」は、拡張現実(Augmented Reality : AR)の技術を応用して、船舶航行(車両運行)時にカメラで撮影している映像上に航行経路や進行方向、危険区域、他船舶の動静等をリアルタイムで仮想的に表示し、視覚情報と音声情報で分かり易くナビゲーションすることが可能となりました。今後もICTを利用した技術の開発を進め、工事の安全性向上、更には生産性向上に貢献してまいります。 (2)施工管理システムの見える化建設業界では、「ICTの全面的な活用」などの施策を建設現場に導入することにより、生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取組みである「i-Construction」が進められています。しかしながら、当社が保有する作業船においては、GNSS(全地球航法衛星システム)位置情報並びに各種センサー及び計測機器などの各種情報を利用して施工管理を行っていますが、これらの情報は作業船内の船橋操作室と機関監視室でしか確認できない状況にありました。 「施工管理システムの見える化」は、深層混合処理船「黄鶴」や「デコム7号」の施工上必要な情報(昇降速度、スラリー量など)を一元化して画像表示すると共に、施工状況や進捗、更には水中などの不可視部を3次元モデルによりリアルタイムに描画することができます。また、インターネットを介してこれらの情報を作業所や支店でもリアルタイムに確認でき、関係者間の情報共有が図れるようになりました。また、日々の施工記録や作業日報を3次元モデルに付与することで、施工後の改良杭データの可視化も可能としています。 今後は、ポンプ式浚渫船やケーソン据付の施工管理等にも同技術を応用し、更にBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling,Management)への展開に取り組むことで、生産性向上に努めてまいります。 (3)日本の海洋資源開発に資する技術の開発当社は、東京大学のレアアース泥開発推進コンソーシアムに2014年の設立当初から参画し、採泥・揚泥と残渣処理の部会に所属しております。また、内閣府が主導している第2期の戦略的イノベーション創造プログラムのうち「革新的深海資源調査技術」という開発課題にも取り組んでおります。今後の海洋資源の開発・実用化に向けた取組みにおいては、マリコンとして培ってきた次のような技術を応用していきたいと考えております。① 港湾等での浚渫技術、埋立造成技術、地盤改良技術、海底地盤評価技術② 遠隔無人化施工のための水中施工機械による水中作業技術(オペレーション技術)③ 浚渫土の処理や有効利用で蓄積した粘性土の処理技術・ハンドリング技術このように、我が国の建設業界にとって未開拓の分野である海洋資源開発に果敢に取り組むことで、国益に資する資源の安定供給に貢献し、社会的責任を果たしたいと考えております。 (4)省エネルギー設計支援ソフト「ZEB評価ツール」を共同開発 従来、建築物における設計段階での省エネルギー効果の評価は、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」において適合性判定・届出に使用されている「エネルギー消費性能計算プログラム」(公開:国土交通省)が広く使われてきました。しかしながら、ZEB(Net Zero Energy Building)を目指す設計を行う上でより高度な省エネルギー技術の導入を考えた際、評価できる省エネルギー技術の種類に制約がありました。そこで、高度かつ先進的な省エネルギー技術の設計段階での省エネルギー効果の評価が可能で、かつ、実務設計者が利用しやすいツールの必要性が今後高まることを想定して、「ZEB評価ツール」を青木あすなろ建設株式会社、五洋建設株式会社、株式会社錢高組、西松建設株式会社及び三井住友建設株式会社と共同で開発しました。 本ツールでは、「ダブルスキン」、「自然換気」、「地中熱利用」等の先進的技術に対応し、複数の設計案の評価をグラフで比較できるほか、 ZEBの達成度合いを評価できる「ZEBチャート」を自動描画することができます。 今後は、さらなる操作性の改善や評価できる省エネルギー技術数の充実を図るシステム開発を継続していく一方、顧客への提案に活用していくことで、ZEB化を積極的に推進してまいります。 (その他)研究開発活動は特段行っておりません。
FY2018|1,604 文字
5 【研究開発活動】当社グループにおきましては、現在、環境・防災・リニューアル・海洋資源開発に関わる技術に重点をおいて研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発費は960百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。 (国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)(1)桟橋鋼管杭の巻立て補修技術「タフリードPJ工法」の現場適用港湾施設のひとつである桟橋においては、近年、鋼管杭と上部工の接合部付近が腐食し、鋼管杭の肉厚が局所的に減少した事例が散見されております。この場合、桟橋の安全性は低下するため、一般には鉄筋コンクリート巻立てによる補修が採用されてきました。しかしながら、鉄筋コンクリート巻立てと上部工の接合部は海水等が浸入しやすい部位であり、耐久性上の弱点となって鋼管杭の腐食が再び開始してしまう懸念があるとともに、巻立てに伴う重量等の大幅な増加が避けられませんでした。これらの課題を解決し、腐食により低下した鋼管杭の耐力を確実に回復することのできる巻立て補修技術「タフリードPJ工法」を開発し、平成29年度に民間が所有する桟橋鋼管杭に本工法を適用いたしました。今後もインフラの補修・補強技術を開発し、既存施設のリニューアル事業、長寿命化に貢献してまいります。 (2)日本の海洋資源開発に資する技術の開発当社は、東京大学工学系研究科 加藤泰浩教授らの研究チームの一員として、早稲田大学、千葉工業大学、(国研)海洋研究開発機構、太平洋セメント(株)、東京工業大学、神戸大学と共同で、南鳥島周辺海域レアアース泥の資源分布の可視化とそれに基づく資源量の把握によって莫大なレアアース資源の存在が明らかになったこと、ならびにレアアース濃集鉱物を選択的に回収する技術の確立に成功したことを公表いたしました。この成果は、英科学雑誌サイエンティフィック・リポーツに投稿し、平成30年4月10日付で掲載されております。今後のレアアース泥等の開発・実用化に向けた取組みにおいては、マリコンとして培ってきた次のような技術を応用していきたいと考えております。① 港湾等での浚渫技術、埋立造成技術、海底地盤評価技術② 遠隔無人化施工のための水中施工機械による水中作業技術(オペレーション技術)③ 浚渫土の処理や有効利用で蓄積した、粘性土の処理技術・ハンドリング技術このように、我が国の建設業界にとって未開拓の分野である海底資源開発に果敢に取り組むことで、国益に資する資源の安定供給に貢献し、社会的責任を果たしたいと考えております。 (3)「拡頭杭免震構法」の開発免震構造は、耐震構造に比べ、大地震時における建物の損傷や揺れを大幅に低減できることは、広く認識されております。しかし、免震構造の中で一般的な基礎免震構造は、免震部材の上下に基礎梁を配置した免震ピットを設けるため、耐震構造と比べ、建設コストも高く、工期が長くなるという課題がありました。 そこで当社は、同業他社5社により共同で、実大サイズの免震部材の傾斜実験や、地盤-杭-建物連成系一体解析モデルを用いた地震応答解析による検証を行い、上記の課題などを解決した「拡頭杭免震構法」を開発し、平成27年2月、日本ERI株式会社の構造性能評価を取得いたしました。また、平成29年度には、適用範囲拡大に向けた開発準備に着手いたしました。 「拡頭杭免震構法」は、杭頭部の径を拡げた拡頭杭の頭部に直接免震部材を設置し、免震部材の下部の基礎梁を従来工法の基礎免震構造より薄い扁平な「つなぎ梁」で杭頭部を連結して免震層を一体化した免震構法であり、杭頭部の径を拡げたことで、杭頭に生じる回転角を抑制することが可能となります。また、基礎梁を「つなぎ梁」とすることで、基礎工事の簡略化を図ることが可能となります。 (その他)研究開発活動は特段行っておりません。
FY2017|2,053 文字
6 【研究開発活動】当社グループにおきましては、現在、環境・防災・リニューアル技術に重点をおいて研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発費は896百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。 (国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)(1)鉛直面用湿潤養生マット「モイスマット」の海外工事への適用高品質かつ高耐久なコンクリート構造物の築造にあたっては、コンクリートが硬化してからの一定期間、コンクリートに水を供給し、表面を十分に湿った状態に保つことが重要であります。しかし、壁などの鉛直面においては、供給した水が流れ落ち、風や日射により乾燥してしまうため、従来の散水、養生マット等による方法では、全面を均一かつ確実に湿潤状態に保つことが困難であるという課題がありました。このような背景から、当社では施工性に優れ、上記の課題を解決できる養生マット「モイスマット」を開発しております。「モイスマット」の開発は、これまで国内工事への適用を通じて施工実績の積上げや品質向上効果の確認等を行いながら進めてまいりましたが、日本と異なる条件(気象海象、従事作業員の技術レベル、調達可能な資機材等)での適用性検討を目的に、ベトナム国の海外工事において現場実証試験を実施いたしました。その結果、ベトナム人作業員による資材準備から設置までの一連の作業は十分に行えること、ベトナム国で従来採用されてきた養生方法と比較して、「モイスマット」による品質向上が可能なことを確認いたしました。 (2)「法面均し装置」の開発東北地方太平洋沖地震による津波が甚大な被害をもたらしましたが、沖合の防波堤による人的被害の低減効果について多数の報告が上がっております。この防波堤築造工事において捨石基礎の天端を均す工法として、作業船のクレーンで吊上げた重錘を繰り返し落下させるマリンプレス工法があります。しかし、マリンプレス工法は、天端のような水平面を均すことはできますが、両端の法面においては、階段状にしか均すことができない工法でありました。「法面均し装置」は、この法面勾配に合わせた傾斜に均し面を調整することができるものです。当社保有の法面対応型グラブバケットに均しアタッチメントを取り付ける構造で、勾配はグラブバケット同様、1:2~1:6及び水平の6段階に調整が可能です。港外側、港内側法面及び水平面と傾斜角度の異なるすべての均しを1基の装置で施工することが可能です。また、施工管理は、当社保有の水中三次元位置検出を行えるPU-NAVI(民間技術評価第14001号)を使用することができます。この「法面均し装置」は、平成27年度鹿島港外港地区南防波堤基礎工事において適用いたしました。 (3) 日本の海洋資源開発に資する技術の開発日本は、諸外国から金属などの資源を輸入して付加価値の高いプロダクトを作り出すことで繁栄してきました。しかし、諸外国での採掘や製錬によって、その地の環境に負荷をかけながら日本の発展に欠かせない資源を獲得してきた側面もあります。近年、日本の領海・EEZ内に賦存する海洋資源に注目が集まっていますが、この「自国資源」を日本の高い環境技術と整備された法制度の下で開発していくことが期待されております。このような背景のもと、当社は海洋資源開発のための技術開発に取り組んでおります。その一例として、東京大学の「レアアース泥開発推進コンソーシアム」に参加し、海洋土木で培った技術を発展・応用すべく異業種との連携にも着手しております。例えば、遠隔操作型水中ロボットなどの保有技術を採泥分野に応用する検討や、開発で発生する残泥の有効利用(リサイクル)又は減容化(リデュース)といった分野の実験的検討を行っております。 (4)「拡頭杭免震構法」の開発免震構造は、耐震構造に比べ、大地震時における建物の損傷や揺れを大幅に低減できることは、広く認識されております。しかし、免震構造の中で一般的な基礎免震構造は、免震部材の上下に基礎梁を配置した免震ピットを設けるため、耐震構造と比べ、建設コストも高く、工期が長くなるという課題がありました。そこで当社は、同業他社5社により共同で、実大サイズの免震部材の傾斜実験や、地盤-杭-建物連成系一体解析モデルを用いた地震応答解析による検証を行い、上記の課題などを解決した「拡頭杭免震構法」を開発し、日本ERI株式会社の構造性能評価を取得いたしました。「拡頭杭免震構法」は、杭頭部の径を拡げた拡頭杭の頭部に直接免震部材を設置し、免震部材の下部の基礎梁を従来工法の基礎免震構造より薄い扁平な「つなぎ梁」で杭頭部を連結して免震層を一体化した免震構法であり、杭頭部の径を拡げたことで、杭頭に生じる回転角を抑制することが可能となります。また、基礎梁を「つなぎ梁」とすることで、基礎工事の簡略化を図ることが可能となります。 (その他)研究開発活動は特段行っておりません。
FY2016|2,153 文字
6 【研究開発活動】当社グループにおきましては、現在、環境・防災・リニューアル技術に重点をおいて研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発費は872百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。 (国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)(1)「かく乱・減容化工法(仮称)」の開発一般的に、自然粘性土地盤に乱れを与えると、地盤が軟弱になり容易に圧縮・変形しやすくなります。そのためバーチカルドレーン等の地盤改良では、地盤を乱さないように施工することが望ましいとされています。この「地盤を乱す」という行為を逆手にとって積極的に活用したのが、「かく乱・減容化工法(仮称)」です。自然地盤を機械的に撹拌して骨格構造を破壊し、潜在的な沈下量を増加させることで、地盤の減容化を行う工法です。近年、港湾施設の維持や建設工事で発生する土砂や各種廃棄物を埋め立てる、土砂処分場の容量が逼迫しています。新規に土砂処分場を建設することは環境問題や利害関係者との調整が必要で非常に困難であるとともに、可能な場合でも長い期間を要します。それに対し、「かく乱・減容化工法(仮称)」を既存の処分場に適用することで、処分容量を拡大することが可能であり、適用性が高い工法です。 (2)建設工事で発生する粉じんを自動的に低減する「粉じん見張り番」の開発建設工事の現場では、土砂の掘削や建築物の解体、工事車両の走行等により粉じんが発生して周辺の環境や作業環境に悪影響を及ぼすことがあります。とくに屋外で発生する粉じんは、風向きの変化によって多様な方向へ拡散するため、既存の粉じん対策装置では対象範囲が狭く、効果が限られていました。そこで、散水範囲を広くして多様な方向に拡散する粉じんに対応し、現地の粉じん拡散状況を常時監視して必要に応じて自動散水する「粉じん見張り番」を株式会社テクノコアと共同で開発いたしました。 「粉じん見張り番」は、水圧により左右に高速振動するノズルから水を散布することで水滴のカーテンを形成し、そのカーテンを通過する粉じんを低減します。室内実験により確認した粉じん低減効果が最大となる散水時の水滴径と水滴の放出角度によって、既存の技術よりも少ない散水量で広範囲に散水が可能であり、粉じん低減率が高いことが特長です。 (3)現地材料で製造可能な自己充填型コンクリート「SALSEC」の開発コンクリート構造物は人々の経済活動や生活を守る重要な社会基盤です。しかし、近年は、良質な骨材の入手や労働者の確保が難しくなっていること、さらには離島開発事業での工事など、従来とは異なる様々な条件・環境に対応できるコンクリートの製造・施工技術が求められてきています。 そこで当社では、早稲田大学、五洋建設株式会社、東洋建設株式会社と共同で、地産地消の考えに基づき、現地で調達可能な骨材や海水を用い、振動締固めが不要な自己充填型コンクリートとすることで、少ない労働者により耐久性に優れた構造物を築造できる「SALSEC」を開発し、現在実用化を目指した研究開発を進めています。離島開発事業などでは、現地材料を使用するため、コンクリート材料の運搬などに伴う二酸化炭素の排出を抑制でき、環境負荷の低減にも貢献できます。「SALSEC」の開発にあたっては、塩分が含まれたコンクリートに自己充填性を付与させるのが難しかった従来の課題に対して、特殊な混和剤を開発・使用することでその問題を解決いたしました。また、耐食性に優れた鉄筋(ステンレス鉄筋など)の使用により、鉄筋コンクリート構造物への適用も可能なことを確認いたしました。さらに、実機プラントを利用した「SALSEC」製造実験を行い、期待した自己充填性を発揮できることを確認いたしました。 (4)再生骨材コンクリートの実用化コンクリート構造物の解体に伴い発生するコンクリート塊は、都心部で多く発生し、行き場を失っています。天然骨材の枯渇により普通骨材のコストが上昇する中、このコンクリート塊を新たにコンクリート用の骨材として再利用する取り組みが期待されています。 再生骨材コンクリートはコンクリート構造物の解体コンクリートからコンクリートに使用されていた砕石や砂利を取り出し、新たなコンクリートの骨材として利用するものです。 技術研究開発センター新築工事では、これまでに開発してきた再生骨材コンクリートの技術要素を取り入れ、基礎躯体に700㎥使用いたしました。採用にあたり国土交通大臣認定が必要であり、普通骨材よりも厳しい管理が義務付けられますが、適用場所に応じたコンクリートの耐久性を確保するために試験を繰り返し、安定した品質で施工を行った結果、打込み後の仕上がりは通常の骨材使用時と変わらず良好なコンクリートとなりました。 コンクリート塊に使用されていた骨材を再び身近なコンクリート構造物に使用することでCASBEE横浜(2011年度版)の環境負荷低減材料としても認められ、資源循環に寄与いたしました。また、天然骨材の運搬に伴うCO2の削減に加えて骨材使用量の削減により、自然環境保護にも寄与いたしました。 (その他)研究開発活動は特段行っておりません。