研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-03 | - | 43 |
| 2024-03 | - | 23 |
| 2023-03 | - | 40 |
| 2022-03 | - | 37 |
| 2021-03 | - | 23 |
研究開発活動(本文)
FY2025|9,272 文字
6【研究開発活動】 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として3,137百万円投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。(1) 土木事業 ① トンネル補修におけるサポートライニング工法用ダクタル板把持装置の開発 当社では、既設トンネルの覆工内巻補強工としてサポートライニング工法を展開している。当工法は、鋼製支保工と埋設型枠兼用UFCパネルを配置し、既設覆工との隙間に無収縮モルタル等を充填することで両者を一体化して補強構造を構築するものである。これらの設置作業は人力主体で行っているため、パネル1枚の大きさや重量にも自ずと制限が設けられ、工期短縮策における課題の一因となっていた。また、トンネル上部の施工では高い難易度や作業者の体力的負担といった施工環境への対策も求められていた。今回、株式会社アクティオと共同開発した機械は、汎用クレーンとバキューム式吸着器によるパネル把持機構を組み合わせたもので、従来よりも大きなパネルの採用やトンネル全周への対応といった施工の効率化が可能である。把持装置はサクションカップ4個を備え最大300kgの定格能力を有する。作業者は相番の高所作業車からリモコンで機械操作するため、安全で特段の熟練も要しない。実用化に向けた一連の検証では、サクションカップの吸着性能など要素技術の他、技術研究所施設内での実物大施工実験を重ねて施工性に問題ないことも確認してきた。今年度中には実際の施工現場への導入を予定しており、作業者の習熟など作業性の向上や必要な改良検討をさらに進め、安全で効率的な施工の実現と普及展開を図る計画である。 ② 高精度水中測位システムとマシンガイダンスを統合した水中遠隔操作システム「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」が完成 水中の無人化施工を目指し、音速自動補正機能を備えた高精度水中測位システムとマシンガイダンスを統合した水中バックホウの遠隔操作システム「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」を開発した。このシステムは、狭隘な屋外実験水槽においても精度数cmの高精度な水中遠隔制御を実証した。近年、老朽化したインフラの更新や災害復旧のため、河川や海洋などでの精密な水中施工が求められている。しかし、高水圧や視界不良の条件下での作業は通常避けられるため、水中施工の効率化に特化した機械が必要である。そのため、水中遠隔操作が可能な制御系のハードウェア開発、施工機械の姿勢情報を提供するマシンガイダンスシステム、そして高精度に機械の位置を測定する水中測位システムが不可欠である。実証試験では、高精度水中測位システムから得られたデータとバックホウに装備されたセンサーによる姿勢データを統合した。3tクラスの小型水中バックホウを水深4.5mの屋外水槽の目視できない条件下で遠隔操作し、システムの優れた性能を確認した。この実証により、厳しい条件下でも高精度な水中遠隔施工が可能であり、通常の水域でも十分な施工能力を持つことが確認された。水中バックホウの遠隔操作化は、極東建設株式会社の協力で実現した。今後、「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」は高水圧や視界不良の条件下においても潜水士なしでの施工が実現でき、河川・海洋・港湾・ダムなどでの高精度水中施工システムとしての活用が期待される。このシステムは水中施工の効率性や安全性を向上させ、新たなプロジェクトへの可能性を広げることを目指している。 ③ 覆工コンクリート油圧式流量調整バルブの開発 覆工コンクリートは、トンネル中心を境に左右に配置した配管から、打設口を切り替えながら(段取り替え)コンクリートを交互に打設するのが一般的である。従来の打設方法では、段取り替えごとにコンクリートの供給を一時中断する。段取り替えは作業員が狭隘なセントルを移動するため、転倒や配管落下等の被災リスクに晒されるとともに、段取り替えに時間を要する場合、コールドジョイント等の品質低下を引き起こす。そこで、当社は岐阜工業株式会社と共同で、コンクリートの左右供給量を制御しながら、連続して同時打設が可能な油圧式流量調整バルブを開発した(特許出願中)。 流量調整バルブをセントルの主配管と副配管の間に配置したY字管先端にそれぞれ配置し、側壁からアーチまでの覆工コンクリートを同時連続で打設することが可能である。油圧式流量調整バルブは、シャッターバルブの開度でコンクリート供給量を制御するため、巻厚がばらつく左右のコンクリートを均等な打ち上り高さで管理することが可能である。シャッターバルブ開度をパラメータとした基礎実験では、開度ごとの実測値と理論値のばらつきが少なく、高い精度でコンクリート供給量を制御できることを実証した。今後は、基礎実験の知見を基にして、油圧式流量調整バルブと自動締固めシステム等の各種技術を組み合わせ、災害防止と作業効率向上を両立した、覆工コンクリート連続水平自動打設システムを確立し生産性向上を図る。 ④ 半断面施工に適用可能な新型コッター式継手を開発~小型・軽量化により継手重量50%削減に成功~ 当社と株式会社ガイアート、オリエンタル白石株式会社、ジオスター株式会社(以下、「開発4社」という)は、橋梁用「コッター床版工法」に従来用いてきたコッター式継手を改良した新型コッター式継手を開発した。この新型継手は、高速道路の床版取替工事における半断面施工にも適用が可能である。コッター床版工法は、プレキャスト床版同士の接合にコッター式継手を用いることで迅速な施工を実現する。従来工法で必要であった現場打ちコンクリートが不要となり、これに伴う作業を削減することで作業日数を約50%短縮し、作業人員を約60%削減することができる。また、床版面積の99%をプレキャスト化できるため、施工効率のみならず床版の耐久性も向上する。床版の接合作業は、ボルトを締め付けるだけの単純な作業となり、鉄筋工や型枠工等の熟練工を必要としない。さらに部分的な取り替えも容易であるため、メンテナンス性や災害時の復旧性にも優れている。新型継手は、従来継手の過剰な部位を特定し最適化することで、同等の性能を保ちながら全長を半分にし、重量を50%削減した。これにより、施工現場での作業性が向上し、継手製造費も大幅に低減され、コスト競争力が強化された。新型継手は、すでにNEXCO試験法442-2019により要求性能を満足することを確認しており、今後は量産体制を整え、本年度中の市場投入を予定している。開発4社は、今後も高速道路のリニューアルプロジェクトを中心に実績を積み重ね、全国の道路リニューアル工事における技術の進化に取り組む方針である。 ⑤ Geo-MG®(ジオマシンガイダンス®)の開発 Geo-MG®(ジオマシンガイダンス®)は、3次元地質・土質モデルをマシンガイダンスシステムに組み込むことで、地質分布に応じた適切な地山掘削を可能にし、正確かつ合理的な掘削作業を実現するシステムである。開発の背景には、建設工事で副次的に発生する建設発生土の有効活用が求められるなかで、地質境界に沿って正確に掘削・分別し、適合材料と不適合材料の混入を防ぐ必要性がある。しかし、地中の状態は目視できずオペレータの経験に頼る部分が大きかったため、掘削中に地質境界へ重機を誘導し、効率的な分別を可能にするシステムを開発した。このシステムを活用して、熊本県農林水産部発注の大切畑ダム災害復旧工事において、その有効性を確認した。今後、このシステムを活用することで、掘削地山の地質ごとの分別が容易になり、盛土材料の質の向上や建設発生土の有効利用率の向上を図る。 ⑥ 軌道装置接近警報システムの開発 当社は、株式会社アクティオと共同で、トンネル施工時における軌道装置内の安全性向上を目指し、人物検知による「軌道装置接近警報システム」を開発した。このシステムは、脱着可能なカメラと警報出力機構をユニット化し、AIを用いて軌道内の人物検知を行うものであり、軌道装置の編成長に影響を受けることなく利用できる。当システムは、無線カメラユニットと監視モニターユニット間で映像を無線伝送し、人物検知処理は監視ユニット側のメインPCで行う。カメラユニットの映像データを基にAIによる人物検知を行い、検知結果に応じて警報器を作動させるものである。また、軌道装置の後押し運転時には、オペレータの視界確保にも貢献する。開発に先立ち2つの要素実験を行いシステムの確認を行った。1つ目は、シールド坑内におけるカメラ映像伝送の適合性について、内径2.55mのシールド坑内で伝送実験を行った。結果は、障害物のない直線では290mまで伝送が可能であり、見通しの無い急曲線を挟んだ場合でも186mの伝送距離が確認され適用可能と判断した。2つ目は、AIによる人物検知の検証で、画像フレームにタグ付けした教師データを作成し、軌条内にいる人のみを検知できるように学習させ、実運用を想定した試行試験を行った。結果は、シールド坑内での走行時における画像が乱れることはなく、人物検知が手摺の内外で識別されており、システムの有効性が確認された。今後は、現場開始時からシステムを導入して安全性の向上を図る。特にバッテリー機関車の後押し走行時におけるオペレータへの安全運転サポートが期待される。また、バッテリー機関車との連携により、坑内自動走行が可能となるよう開発を進める。 (2) 建築事業 ① CADデータからBIMモデルを生成するシステム「CABTrans」を開発 CADデータからBIMモデルを生成するシステム「CABTrans」を燈株式会社と共同開発した。近年、日建連発行のロードマップや国土交通省のガイドラインなどで、施工BIMやフロントローディングの重要性が示されている。当社は2021年から施工請負金額500百万円以上の新築工事で施工BIMを活用しており、簡易的なBIMモデルを作成し、施工検討を行っているが、多くは設計図を参照し人力で入力している。この作業を自動化し、作業時間短縮によるコストダウンや鉄筋情報などのモデル品質の向上、作成時期の前倒しによるフロントローディングの加速などを期待して本システムを開発した。 「CABTrans」は大きく2つのモジュールに分かれており、燈株式会社が開発した、CADデータから情報を取得し、構造化されたCSVデータを出力するモジュール「D-CSV」と、当社が担当した、CSVを読み込み、CSVからRhino-Grasshopper(注1)を経由してArchicad(注2)上にBIMモデルを生成するモジュールである。この2つのモジュールにより、従来のモデル全体の作成時間と比べて、20~30%程度の削減をすることが期待できる。また、リードタイム短縮により早期のBIM対応が可能となる。 今後は、実際の案件に適用することで効果測定を行うとともに、意匠図も含めた対応図面種類の拡充、読み取り精度の向上を行っていく予定である。また、Grasshopper部分をDynamo(注3)による処理に置き換えることで、Revit(注4)への対応も検討を行っている。 (注)1 Rhino-Grasshopper:Robert McNeel & Associates社製3Dソフトウェア「Rhinoceros」上で動作するビジュアルプログラミングツール 2 Archicad:Graphisoft社製BIMモデリングツール 3 Dynamo:Revit上で動作するビジュアルプログラミングツール 4 Revit:Autodesk社製BIMモデリングツール ② 木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ®」が3時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得 木材と被覆材の分別廃棄を可能とした木質耐火部材の、環境配慮型λ-WOODⅡ®(ラムダウッド・ツー)について、柱・梁・床・壁の1~3時間の耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。新たに柱・梁3時間及び床・壁1,2時間の耐火認定を取得したことにより、耐火要件上は15階以上の全ての耐火建築物の主要構造部に木造を適用することが可能となった。なお、今回大臣認定を取得した1,2時間耐火のCLT(注)床及び1.5時間耐火の集成材梁は、地上9階建てオフィスビル「(仮称)秋葉原木造オフィスビル計画」にて初採用予定である。 環境配慮型λ-WOODⅡ®の構造は、芯材の木材を石膏ボードの耐火被覆層で被覆した木質耐火部材である。1つ目の特徴は、芯材(木材)とその周囲を耐火被覆する石膏ボードの解体分離が可能な仕様であり、接着剤を一切使用しない留付材のみで固定し、解体時には容易に木材と石膏ボードを分離することを可能にした。これは木材と石膏ボードの再資源化を可能にするとともに、廃棄コストの低減にも寄与する。2つ目の特徴は、表面材の自由性であり、耐火被覆材(石膏ボード)の外周部に張る表面材は、木材のほか、様々な仕様を選択できる。3つ目の特徴は、耐火被覆層の構成を簡素化したことであり、λ-WOODⅡ®では、被覆材を21mmの強化石膏ボードに統一し、現場管理の手間を低減した。一例として、3時間耐火の梁の耐火被覆層は、従来のλ-WOODでは8層だが、λ-WOODⅡは4層に簡素化した。 今後は、主要構造部に木材を適用した15階以上の耐火建築物に積極的に取り組み、普及に向けたさらなる技術開発を進める。 (注)直交集成板(Cross Laminated Timberの略) ③ 品確法に適応した環境配慮型ハーフプレキャスト床板を開発 住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)の劣化等級3(注1)を満足する環境配慮型ハーフプレキャスト床板を、株式会社旭ダンケと共同開発した。中・高層マンションの床への適用を目的に、実際の生産ラインでの試験施工を行い、現行製品と同等の品質が確保されることを確認した。 建築業界で最も広く使われる建材の一つはコンクリートである。このコンクリートの原材料の一つであるセメントの製造過程では、多くの二酸化炭素が排出されることから、環境負荷低減と持続可能性を目指したコンクリート技術が多く開発されている。ハーフプレキャスト床板の低炭素化は、使用するコンクリートを構成するセメントの一部を高炉スラグ微粉末(注2)に置換する環境配慮コンクリート(CELBIC(注3))の製造技術を参考にしている。 本開発製品の特長は、①JASS10(プレキャスト鉄筋コンクリート工事)の基準を満足し、品確法劣化等級3に適応した製品である。②現行製品と同等の品質性能を確保している。③CO₂排出量を現行製品(コンクリート材料のみ)と比較して、約19%削減できる。④本開発製品は、N認定(注4)を取得した工場で製造している。 環境配慮型ハーフプレキャスト床板は、直近では自社物件への適用を積極的に行う予定であるが、他社案件についても積極的に展開・適用し、販売することを検討している。今後は、適用対象の範囲を拡大するため、様々なプレキャスト部材を開発し、さらなるCO₂削減に向けた検討や社会ニーズに応えるべく環境ラベルの取得などの技術開発を進めていく。 (注)1 品確法は、住宅性能表示制度や新築住宅の10年保証などについてまとめた法律である。住宅性能表示制度によって定められた劣化対策等級のランクは3等級で表され、等級が高いほど建物の耐久性が上がる。等級3は通常想定されている条件のもと、約75~90年間大規模な改修工事をせずに使えるように対策されている。 2 高炉スラグ微粉末は、製鉄所で発生する副産物で、製造における二酸化炭素の排出量がセメントの1/20以下となる。 3 CELBICは、青木あすなろ建設株式会社、株式会社淺沼組、株式会社安藤・間、株式会社奥村組、株式会社鴻池組、五洋建設株式会社、株式会社錢高組、鉄建建設株式会社、東急建設株式会社、東洋建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、矢作建設工業株式会社と当社の13社で開発した。 4 一般社団法人プレハブ建築協会におけるPC部材品質認定制度。 ④ 20℃封緘養生で材齢28日圧縮強度150N/mm²以上が得られるプレミックス製常温硬化型超高強度グラウト材を開発 20℃封緘養生(注1)において材齢(注2)28日圧縮強度が150N/mm²以上となる常温硬化型の超高強度プレミックスグラウト材を株式会社フローリックと共同開発した。 近年、建設材料は機能向上が求められており、特に自然災害増大や長寿命化に対応する高強度化や高耐久化への要求は高く、超高強度コンクリート等の開発が行われている。セメント系の材料の高強度化に必要な水結合材比の極小化は、十分な流動性確保に相反し、また、高強度の確保には高温給熱養生(注3)の必要な場合もあり、汎用性のある製品は少ない。 今般、流動性確保により充填性を担保し、常温硬化において高強度を確保する配合を検討し、さらにプレミックス化を行い、汎用的かつ安定的に品質を確保できるグラウト材を開発した。これはセメントにシリカフューム、膨張材などの混和材料及び細骨材をプレミックスしたもので、普通セメント又は早強セメントを使用する2配合を用意した。水結合材比はそれぞれ16.0%及び17.0%とし、特殊高性能減水剤を使用して練り混ぜ、剥落防止材にポリプロピレン繊維を添加している。用途としては、高強度コンクリートの接合部や、高強度を要する狭い間隙の充填等であり、給熱養生を行わずに確実な充填と高強度の品質を得ることができる。開発したグラウト材の特徴は、①フロー値(JHS 313)は350mm程度、②空気量は消泡剤を使用して3.5%以下に調整、③圧縮強度は20℃封緘養生で、普通セメント配合では材齢7日120N/mm²、材齢28日160N/mm²。早強セメント配合では材齢7日150N/mm²、材齢28日180N/mm²である。 今後は適用箇所に応じた性能配合や効率的な練混ぜ方法の検討を行う。また、土木学会の設計・施工指針(案)を参考にした材料特性及び耐久性評価を実施し、第三者試験機関から最終的な配合の試験結果を得て外販を検討する。 (注)1 コンクリート表面からの水分の出入りがない状態に保って行う供試体の養生 2 コンクリートを打ち込んでからの経過日数 3 コンクリート周囲表面又は、コンクリート内部から熱量を補給して一定の温度(高温)に保温して養生する方法 ⑤ 木材を耐火被覆として利用した鉄骨部材「ドレスウッド」で柱の1.5時間耐火大臣認定を取得~木材利用の拡大に寄与できる新たな耐火技術を開発~ 木材と生体溶解性繊維(AESウール)の断熱材で耐火被覆を施した鉄骨部材「ドレスウッド」を株式会社ホルツストラと共同開発し、柱の1.5時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。 近年、脱炭素社会に向けた建築物での木材利用が注目され、鉄骨造やRC造においても木材の積極的活用が期待されている。今回開発した「ドレスウッド」は、鉄骨部材にAESウールの断熱材と木材で耐火被覆を施した。木材部分は火災時には炭化しながらゆっくり燃えるため、鉄骨部材への熱伝達を遅らせる効果を持つ。また、軽量で高断熱のAESウールを組み合わせることで耐火被覆全体の厚みを抑えた。木材厚は最小30mm、断熱材を合わせた正味被覆厚は最小60mmとなり、スリムな部材寸法を実現した。さらに、木材は多様な樹種を選択できるため、顧客や設計者のニーズに応じた材料選択が可能なほか、木材あらわしにより室内空間に木質感をもたらし、ぬくもりや親しみやすさを演出する仕上げ材として機能する。 本部材は大臣認定の取得により、建物の最上階から数えて9層までの範囲に使用することが可能となった。現在、地上9階建てオフィスビルにて初採用される予定である。今後も実物件への積極的な採用に取り組むほか、梁の耐火構造の開発や、より長時間の耐火部材の開発を計画している。 当社は、建築物の木造化や木質化を通じた持続可能な社会の実現のために、さらなる取り組みを進める予定である。 (3) 子会社 株式会社ガイアート ① 多機能型縦溝粗面舗装工法(フル・ファンクション・ペーブ)の高耐久化の検討 アスファルトメーカーと共同で、すべり止め効果や凍結抑制効果の高い多機能型粗面舗装用の高耐久化改質アスファルトを開発し、2024年12月に、軽井沢町の同社が管理運営を行っている有料道路“白糸ハイランドウェイ”にて試験施工を実施した。現在、その効果や耐久性についての検証を行っており、優位性が確認でき次第、国土交通省や地方公共団体等への技術提案をしていく。 ② 速硬型樹脂モルタル補修材(ダッシュペーブE)の空港補修用への改良 速硬型樹脂モルタル補修材(ダッシュペーブE)は、最適な粒度に調整された5mmトップの骨材と特殊樹脂バインダーを3リッター容量分手練り混合し補修箇所に充填するキット化した同社製品であり、混合から約2分で車両の通行に耐える強度となる。今般、空港における補修材として大量に使用したいとの要望があり、遅延剤添加により30分間施工が可能なワーカビリティを確保できるものに改良した。今後、空港メンテナンス維持への展開を図っていく。 ③ モバブルー「カーボンニュートラルタイプ」の開発 モバブルーは、藻類の活着促進や多様な海洋生物の生息場形成を目的とした生物育成ブロックであり、福井県敦賀湾において藻場形成や多種の海洋生物の繁殖実績を有している。今般、さらなる自然共生型ブルーインフラ(ネイチャーポジティブ)を目指し、モバブルーの材料にスラグ等を用いた新たな「カーボンニュートラルタイプ」を開発した。今後、沖縄県で試験施工を行い、沖縄固有のサンゴ類やリュウキュウスガモなどの着床基盤としての有効性及びブルーカーボン生態系としての機能性を検証していく。また、港湾空港技術研究所や民間研究機関と連携した効果検証を継続し、全国展開に向けた提案活動を行っていく。
FY2024|8,185 文字
6【研究開発活動】 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として3,148百万円投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。(1) 土木事業 ① コンクリート骨材AI入荷管理システムの開発 AI(Deep Learning)によって骨材の粒径や種別(岩種)を高精度に判別する「コンクリート骨材AI入荷管理システム」を開発した。このシステムでは従来のステレオカメラと3次元画像処理技術により骨材の粒径を判別する骨材粒径判別システムをさらに発展させ、AIによって骨材の粒径や種別(岩種)を高精度に判別するとともに入荷伝票を読み取り、これらを照合させてコンクリート骨材の入荷管理の判定を行い、誤投入・誤搬入などのヒューマンエラーを排除することができる。また、伝票の入荷量もOCRにより自動で読み取り、骨材毎の日々の入荷量の自動集計も行うことができるため、伝票処理の大幅な効率化が図られ、働き方改革にも寄与できる。さらに、事前の学習データに基づき骨材の粒度分布の推定も可能であり、骨材の品質変動もリアルタイムで把握できる。現場実証の結果、粗骨材のAIによる画像判定の正解率は、粗骨材で100%、伝票読取りOCR及びコンベア切替えについては全ての骨材で100%であった。このうち粗骨材G1(40-20mm)の搬入時では、伝票OCRにより宛先間違いの伝票を2枚、コンベアの切り待ちについてプラント操作側での確認不足を1回検出できた。このようにヒューマンエラーを荷卸し前に確認でき、誤投入・誤搬入を未然に防止することが可能となる。今後は、種々の現場条件や施工環境への対応など運用時のさらなる信頼性を図っていくとともに、他現場やプラントなどへの応用・展開などについても検討していく。 ② 機体に依存しない吹付けコンクリートの遠隔操作システムの開発 山岳トンネル工事では、機械化による作業の省力化と安全性が図られているものの、依然として切羽付近における事故の発生の可能性は高く、重大災害につながることが多い。当社では2015年より山岳トンネルの切羽作業に関して、効率化・安全性の向上を目的とし、施工サイクル一連の遠隔化・自動化を目指して技術開発に取り組んでいる。これまでに当社が培ってきた「無人化施工技術」を取り入れ、爆薬の遠隔装填や遠隔吹付け技術など、現場での継続した運用が可能となるよう技術開発を継続している。当連結会計年度は作業員が切羽から離れた安全でクリーンな環境下で吹付けコンクリートを施工することを目的に開発した「吹付けコンクリートの遠隔操作システム」をリニューアルし、汎用機械にも容易に実装可能な「機体に依存しない吹付けコンクリートの遠隔操作システム」を開発した。これまでは事前に遠隔操作システム専用PLC制御盤や比例電磁弁等を吹付け機に搭載した専用機を使用するため、高額な費用を要し汎用性が低く機体には映像や動力、センサー等の配線や配管を要しメンテナンスが必要であった。また200ms程度の映像遅延が吹付けオペレーターにストレスを与え、実用性に向けた課題であった。さらにON-TRAC式の操作室は坑内での機動性に欠けており、これらの課題を解決し新たに開発した技術を取り入れた。無線通信やバッテリー駆動を主体としたシステム構成で、汎用機械に容易に搭載できることから、稼働現場に適用しやすく、普及率を高めるとともに、より効率的なシステム改良を継続し、安全・衛生環境に加え、生産性向上を目指す。 ③ クレーン吊り荷直下の安全システムの開発 クレーン作業では、吊り荷の荷崩れ、ワイヤーロープや玉掛用具の不具合により人命に関わる重大災害につながる可能性が大きい。そこで、AIとGNSS(全球測位衛星システム)の技術を組み合わせてリアルタイムに吊り荷直下の周辺で作業を行う人に対し、リアルタイムに吊り荷直下の監視・吊り荷位置の可視化を同時に行えるシステムを開発した。 この安全システムでは、クレーンのブーム先端に取り付けたGNSSで吊り荷位置を世界座標に変換する。また、GNSSと座標系のアプリケーションを利用してカメラ画角内を世界座標に変換する。加えてカメラ画角内の人はAIを人物認証することで、平面座標上での人の移動を把握できるようにした。このことより、PC画面上でカーナビゲーションシステムのように人と吊り荷の位置関係をリアルタイムに鳥瞰図としてマッピングできる。 鳥瞰図内で吊り荷直下の危険領域に人が入った場合には、システムの警報装置が動作して注意喚起を行う。また、クレーンの吊り荷真下の床面をリアルタイムにLED投光器で自動追尾して照射することで危険領域を可視化した。実証実験では監視員を配置した場合と同等の監視効果を得ることができた。今後はクレーン吊り荷直下の安全システムを構成する要素である監視カメラの高性能化、AI画像判別のための学習量増加によるカメラ映像内の人検知の高精度化、さらには使用機器(電動雲台及び制御盤等)の小型化を行い、多くの工種の建設現場での採用を目指す。またAIによる認証を人だけでなく車両・重機等の物体でも認証出来る技術へと拡張すれば、人との接近・接触を監視するシステムに応用もできる。また、GNSSで座標管理をしているためクレーンの吊り荷の荷卸し場所もGNSSを利用して指定できる。クレーンのガイダンス運転や自動運転の可能性も検討しており、実証実験を継続し、作業の効率化と安全への取組みを加速する。 ④ BIM/CIMを身近なものにする自社内クラウドを活用したシステム「CIM-CRAFT®」を開発 BIM/CIMは2023年度から国土交通省が発注する工事では原則適用され、その他の機関が発注する工事や民間工事でも適用が進められており、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る取組みである。「CIM-CRAFT®」は自社内クラウドシステムに構築したWebアプリケーションを使用して、工事の完成モデルや進捗に合わせてモデル、属性情報、帳票類等の登録、参照ができる。現場職員が日々の施工管理に用いる帳票用データをExcel®等の表計算ソフトウェアに入力し、Web上の仮想空間内に構造物を構築することができるシステムであり、3次元モデルを作成する専門知識は必要とせずにデジタルツインを実現できる。また、モデリング、属性情報の入力操作が容易であり誰でも簡単に利用でき、視覚的に工事の進捗状況を伝えることができるため、施工時や検査時における業務の効率化が図れる。専用ソフトウェアが不要で円滑に導入が可能となり、導入費用・保守費用の軽減、インターネット環境があればいつでも接続でき、効率的な情報共有・連携を実現できる。今後、BIM/CIMの取組みの中核としていくことからトンネル工事やシールド工事等の様々な工事に適用することができるよう開発を進め、生産性の向上を図るためのアプリケーション改良、社内システムとの連携も進めていく。 ⑤ 高精度水中測位システム「AquaMarionette(アクアマリオネット)」の開発 河川・海洋・港湾・ダムでの施工は、安全性確保・効率化のため、高水圧・視界不良の水中作業を避けた施工を実施するのが一般的であるが、近年では老朽化インフラの更新や災害による被災施設の復旧など、水中での精密な施工が必要なケースが増加している。水中での無人化施工は、視認性が確保できない水中において、施工機械の絶対位置・姿勢の計測が不可欠であり、常時動揺している水上浮体から水中の移動体の絶対座標・姿勢をリアルタイムに計測・解析するシステムを開発した。屋外水槽を用いた基礎試験により5cm以内の精度を実証し、水中無人化施工への適用が可能であることを確認した。また、水中移動体の絶対座標及び姿勢をリアルタイムに計測でき、絶対座標の精度も良好であることを確認できた。今後は、小型水中バックホウの遠隔操作に関するハードウェア・ソフトウェアを充実させ、水中測位システムを連動させることにより、目視が困難な水中での建設機械の操作が潜水士無しで施工できる、水中バックホウの無人化施工を目指して開発を進めていく。それにより、河川・海洋・港湾・ダムでの水象条件によらずに利用可能な高精度の遠隔操作・自動化水中施工システムの実現が可能となる。 ⑥ MRを活用したコンクリート締固め管理システムを開発 コンクリートの品質は打込み時の締固め作業に大きく左右され、締固め不足や締固め忘れはジャンカや密度不足につながり、品質劣化の原因となる。ただし、締固め作業の管理は、現場監督者や現場作業者の経験によるところが大きく、コンクリートの品質に問題があった場合、客観的な締固め作業の記録を残していないため、原因を特定することができないのが現状である。このような背景により、MR技術を用いてコンクリート締固め作業を可視化し、締固め作業者に開始から終了までの判定を周知させ、データを保存する締固め管理システムを開発した。締固め作業者は、ヘッドマウントディスプレイ(ホロレンズ)を装着し作業を行う。ディスプレイの画面には、実際の打込み箇所に締固め作業用に区分けされたメッシュ(50cm×50cm程度)が反映され、ホロレンズのヘッドトラッキング機能により、締固め開始前から作業中、終了時と作業工程毎にメッシュ内の色が変わることにより、締固め作業の終了を自動的に周知する。また、工事関係者がモバイル端末やPC上でホロレンズと同じ画像をリアルタイムに確認でき、締固め作業の記録(位置や時間)をメッシュ毎に残すことにより、トレサビリティとして活用できる。締固め作業は同時に2人まで対応でき、下層との許容打重ね時間をあらかじめ設定しておくことにより、メッシュ外枠の色が変わり打込み時間を周知する機能も追加し、実際の工事において運用を開始している。 (2) 建築事業 ① 新熊谷式柱RC梁S構法 ―建物の高層化に対応できる新たな設計法を構築― 柱が鉄筋コンクリート(RC)造、梁が鉄骨(S)造からなる建築構法である従来の「柱RC梁S構法」について、高層建物のより合理的な設計が可能となる手法を構築し、設計施工指針を改訂した。当社では2012年に「新熊谷式柱RC梁S構法:Super-High-Brid60」を開発し、日本ERI株式会社の構造性能評価の取得と設計施工指針の適用範囲拡大を行っている。今般、建物の高層化ニーズに応えるために、より合理的な設計手法を確立し、「新熊谷式柱RC梁S構法(2023改訂)」として、2023年3月に構造性能評価(日本ERI株式会社)を再取得した。大規模物流施設は、通常の建物と比較して積載荷重が大きく、大スパンで高い階高が必要となるため本構法の適用メリットは大きい。負担する軸力が大きく、長い柱には圧縮力に強いRC造を用い、梁には軽量で地震に対して粘り強い性質を発揮するS造を採用することにより、経済的で合理的な構造躯体骨組が実現された。今般、高層の宿泊施設等に本構法を適用し、いくつかの設計指針の改訂を行った。最新の学術的知見を反映させるとともに、建物の「塔状比(とうじょうひ)」(注)が大きくなる高層建物に特有の地震時の変動軸力に対しても、新しい指針を導入することで断面の合理的設計が可能となった。また、S梁の柱への埋込み長さ等についても見直し、構造的な安全性を保ちつつ施工性が大幅に改善された。今後もより合理的な設計、施工を目指し、物流施設、商業施設、オフィス、生産施設等の建物に加え、高層の宿泊施設、病院等様々な建物への適用を積極的に行っていく。 (注)建物の高さ方向と幅方向の長さの比率 ② 木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ®」 建築基準法改正に対応した梁の90分耐火大臣認定取得 当社が重点分野として取り組む中大規模木造建築において、木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ®」梁の90分耐火大臣認定を取得した。「環境配慮型λ-WOODⅡ®」は、当社が独自に開発した木質耐火部材で、施工手間の軽減、工期短縮や環境配慮性などの特長があり、商標登録も行っている。2023年4月の建築基準法改正に伴い、建築物の耐火基準として新たに90分耐火構造が導入され、建築物の5階以上9階以下の主要構造部に要求される耐火性能が120分から90分に緩和された。従来の120分耐火構造と比較して、被覆材厚及び被覆枚数を減らすことが可能となるため、施工手間が軽減され、中大規模建築物の木造化推進が期待される。当社で開発済の断熱耐火部材「断熱耐火λ-WOOD®」は、柱・梁・床・壁の全ての主要構造部において1・2・3時間の耐火大臣認定を取得している。今回の「環境配慮型λ-WOODⅡ®」についても、2022度に認定を取得した柱・梁1・2時間に加えて、柱・梁の3時間、床・壁の1・2時間の耐火大臣認定取得を予定しており、これにより、全ての耐火建築物に木造が適用可能となる。今後も、中大規模木造建築の競争力強化を目指し、木造関連技術のさらなる技術開発を進めていく。 ③ 自律走行機能を有した床面ひび割れ撮影装置を開発 床面のひび割れ検出の省人化、省力化の実現を目的とした「自律走行機能を有した床面ひび割れ撮影装置」を開発した。建造物の床では床面にひび割れが発生することがある。従来は目視等による検査を行ってきたが、検出・計測・記録の手作業による手間や中腰姿勢の目視検査などの肉体的負担がかかり、特に大規模な建造物での負担が大きい。そのため、現場で行う準備作業と検査手順の双方の簡略化が実現できる、ロボットやAI等を活用した床面検査装置の開発を行ってきた。本装置は、施工図から作成した環境地図情報と本装置のセンサーから得た情報を照合して自己位置の推定を行う。さらに柱壁等の配置情報を専用ソフトウェアに入力することで、デスクワークで環境地図が作成できる。また、ひび割れ検出は、本装置に搭載された1,230万画素のカメラ2台により広範囲が撮影され、加えて位置情報の補正も可能である。なお、本装置では、床面撮影とひび割れ検出はそれぞれ独立して行うため、任意の手段でひび割れ検出が処理できる。検査面積が1,500㎡の場合では、現場オペレーターを2名配置とし、本装置を複数台同時運用することで、半日程度で作業を完了することができる。今後は検査実績を積みながら検証と改良を行い、運用方法の確立と省人・省力化に寄与できる体制を整えていく。 ④ 大量培養可能な独自微細藻類株を発見、数トン規模での屋外大量培養に成功 当社は、脱炭素社会の実現に向けて、資源循環・持続可能性の観点から、光合成により増殖しCO2を固定化することのできる微細藻類に着目し技術開発に取り組んできた。既に商業化している藻類株の応用研究ではなく、自然界から新たに独自株を採取(単離培養)する方針で研究を進めた結果、環境変化に強く、事業化に必要となる大規模生産も可能な新しい藻類株を発見した。この当社独自株は、既存の微細藻類を超える高いバイオマス生産性を有していることが数トン規模での屋外大量培養実験で実証された。一般に藻類の光合成による生成物は、医薬・健康、食、エネルギー・科学といった市場規模トップの産業分野において原料としての利用が可能なため、大規模市場に展開できるポテンシャルがあると考えられている。当社の独自株は機能性評価において、食に関するグリーンバイオ分野と、医薬・健康に関するレッドバイオ分野への展開が期待できる有用物質を含有することが明らかになった。現在実用化に向けた実証実験に鋭意取り組んでいる。当社は業界初の「エコ・ファースト企業」として、CO2削減による脱炭素社会への移行や、建設混合廃棄物削減による循環型社会の形成など、持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進している。今後は、CO2を固定した藻類を活用した有用物質生産や資源循環型ビジネスへの展開を進め、地球温暖化、食糧問題解決や地方雇用創成の一助となるよう、社会実装に向けて邁進していく。 ⑤ 「シリーズ 建築の音環境入門 15周年記念号」を刊行 当社は国立大学法人信州大学名誉教授山下恭弘監修のもと、泰成株式会社、フジモリ産業株式会社、野原産業株式会社、万協株式会社、有限会社音研と共同で、床衝撃音研究会として「シリーズ 建築の音環境入門 15周年記念号」を刊行した。同研究会では、2008年よりデベロッパーや設計事務所、建設会社等の技術者向けに建築の音環境に関する手引書である「シリーズ 建築の音環境入門」を刊行しており、2017年には100号記念号として「実務者のための建築音響設計法」を刊行した。この刊行から5年が経過し、読者から最新の知見を加えた改訂版を作成してほしいとの要望があり、このたび「シリーズ 建築の音環境入門 15周年記念号 実務者のための建築音響設計法(改訂)」として刊行した。本号は「第1章 建築音響の基礎」「第2章 室内静謐性能・空気音遮断性能」「第3章 床衝撃音遮断性能」「第4章 実務的な建築音響設計法」「第5章 騒音に係る環境基準」「第6章 航空機音(参考)」の6章で構成されており、第5章及び第6章は今回新たな章を設けて追加した。また第4章、第6章に対応したマイクロソフト®の表計算ソフトウェアExcel®による計算シートを用意し、同研究会を組織する各社のウェブサイトにて無償提供している。今後も共同住宅の音環境に関する重要なツールとして位置付け、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提供していく予定である。さらに、読者からの質問や評価・意見を踏まえ、より読みやすく有用な手引書として製作していく方針である。 (3) 子会社 株式会社ガイアート ① フォームドアスファルトによる中温化再生合材の開発 脱炭素社会の実現に向け、フォームドアスファルトによりアスファルト混合温度を低減することで使用燃料を減らす中温化化合物の実用化に続き、再生合材における実用化に向け、フォームドアスファルトに添加剤を加えた再生密粒合材について、室内試験及び試験施工を実施し、20℃温度低減効果の確認を行い、2024年3月に再生アスファルト混合物の認定を取得した。今後、さらに再生改質アスファルトについて検証し実用化を目指していく。 ② 全天候型常温合材(フォレストパッチ)の開発 常温アスファルト補修材は、常温施工が可能でポットホール等の補修材として使用される混合物であり、雨天時や水溜まりなど水が介在する現場において、その強度が発現するタイプ(水添加で固まる全天候型常温合材)が既に他社より多く発売されている。同社においても、ロジン誘導体、消石灰及び改質剤によるフォレストパッチが他社製品と同等以上の耐久性を得られたことにより、製品化を進め、2023年度までに累計250袋を販売した。なお、現在の製造拠点は岡山県のみであるが、関東圏への拡大に向けて準備をしている。 ③ 木質系アスファルト舗装の開発 通常廃棄焼却される杉の間伐材をアスファルト舗装に再利用する技術について、住友林業と共同で検討を続けている。白糸ハイランドウェイ内での試験施工により冬季における耐久性は確認されており、さらなる安定的製造・施工に向け配合の再検討を行った。茨城県内及び栃木県内の工場構内での試験施工により、夏季における耐久性が確認されており、今後、施工方法等の検討を行い、製品実用化を目指していく。
FY2023|8,278 文字
6【研究開発活動】 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として2,812百万円投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。(1) 土木事業 ① 小断面トンネル等の補強・改修工事用のモルタル吹付システム「FCライナー工法」 近年、老朽化した水力発電所の改修工事が全国で盛んに行われている。それらの導水施設は、山間部に位置する小断面トンネルであることが多く、各種の補修・補強工事には、立地や狭小空間といった特有の条件から生じる人力主体で行われる苦渋作業の軽減が喫緊の課題となっており、施工環境の改善が求められている。 当社では、小断面トンネル等の補強・改修工事のうち、覆工の施されていない素掘り区間での肌落ち対策をターゲットとしたモルタル吹付システム「FCライナー工法」の開発に取り組んできた。本工法では、新たに開発した超速硬セメント系プレミックス材「FCモルタル」を高性能小型ミキシングポンプに投入するだけで連続的に注水・練混ぜ・圧送することができ、これら全ての作業が坑内施工箇所で完結するシステムとしている。吹付の際には、液体急結剤を併用することで速硬性・早強性が付与され、補強箇所の早期安定性の確保が可能となる。現在、導水路トンネルの改修工事の他、災害復旧工事、緊急対策工事などの施工実績を積み上げながら工法の普及を図っている。また、この種の技術は機械設備の調整や材料供給操作が現場で行われることから、本工法の信頼性向上を目的として、品質管理手法の改善検討や耐久性を含めた材料特性のデータ蓄積を継続している。 本工法については、材料販売並びに機械リースを手掛けるグループ会社の株式会社ファテックが技術商品として外販するビジネスモデルも構築している。 ② 次世代トンネル施工システムの開発(ロックボルトの機械打設) 山岳トンネル工事では、機械化による作業の省力化と安全性が図られているものの、依然として切羽付近における事故の発生の可能性は高く、重大災害に繋がることが多い。当社では2015年より山岳トンネルの切羽作業に関して、効率化・安全性の向上を目的とし、施工サイクル一連の遠隔化・自動化を目指して技術開発に取り組んでいる。これまでに長崎県雲仙普賢岳や阿蘇斜面の災害復旧工事で当社が培ってきた「無人化施工技術」を取り入れ、爆薬の遠隔装填や遠隔吹付け技術など、現場での継続した運用が可能となるように技術開発を継続している。 これらに加えて当期は、ロックボルトの機械打設システムを新たに開発した。一般的にロックボルトの打設作業は、人力による苦渋作業かつ切羽近傍の高所での危険を伴う作業であり、改善すべき作業のひとつである。そこで、鋼管膨張型ロックボルトを対象に、打設作業の施工性、安全性の向上及び省力化を目指し、ボルトの挿入と高水圧ポンプによるロックボルトの拡張作業を専用治具により機械化し、人力作業を介さない一連の作業となるよう開発を行い、現場適用試験によりその効果を確認できた。 山岳トンネルの切羽作業に対し、特徴的な災害である落盤・土砂崩壊災害リスクを回避するため、当社で培ってきた無人化施工における遠隔操作技術を活用し、切羽作業の遠隔化・自動化を図るとともに、さらなる効率化・省力化を目指して、今後も技術開発を進めていく。 ③ 近赤外線水分計を用いたフィルダム遮水材の含水比管理システムの開発 フィルダム工事の遮水材料の含水比管理は、堤体の強度・安定性等の確保のために特に重要であり、その含水比は、概ね最適含水比よりも湿潤側になるように管理して湿潤密度や透水係数の基準値に適合する必要がある。 従来、遮水材料(土質材料)の含水比管理は、品質管理基準に従って、堤体と仮置きヤードで1~2回/日などの頻度で、電子レンジ法や炉乾燥法による含水比試験が行われている。特に炉乾燥法は、試料のサンプリングや乾燥時間など多大な労力や時間が必要で、施工に適応した効率的な含水比管理の方法が望まれていた。 本システムは、遮水材料を運搬したダンプトラックが材料仮置き場に設置したタイヤ洗浄設備でタイヤを洗浄している30秒間に、上部の門型クレーンに設置した近赤外線水分計をダンプトラック荷台の遮水材料の計測面まで自動で誘導して含水比を計測する。その計測結果が基準値内に入っていることをリアルタイムに判定してオペレータに伝達し、所定の盛土場へ向かうことを指示できる。遮水材料を運搬するダンプトラックの含水比を全て計測することで全量管理が可能となり、含水比管理の迅速化及び省力化だけでなく、安定した品質の材料供給が可能となる。 今後は、フィルダム工事だけでなく明かり工事などの幅広い土工事への適用を目指す。 ④ クレーンワイヤーロープ全周囲外観検査システムの開発 クレーン等安全規則にあるように、安全上クレーンワイヤーロープの損傷の有無について始業前に調べる必要があるが、人の目視による外観検査では時間と労力を必要とする。そこでワイヤーロープの外観目視検査を自動化させることにより、始業前点検の一端を担うことを目的とするシステムの開発を行った。基本的に現場で使用するクレーンには新品のワイヤーロープが具備されるため、検査では良品判定が定常であるという前提に立っている。 システムの概要は、大きく3種のユニットで形成され、撮影ユニットでワイヤーロープに対して4方向からエリアセンサーカメラで撮影してワイヤーの全周囲を網羅する。処理ユニットはクレーン揚重部に設置し、撮影ユニットから送られてきた画像データの検査判定処理を行い、処理結果を地上管理室にある閲覧ユニットへ無線伝送を行う。閲覧ユニットは検査結果の表示と検査データの保存を行い、さらにリモートアクセス機能で本社等遠隔地での検査結果の閲覧が可能となっている。外観検査処理の判定は、正常(良品)画像のみを用いた機械学習を行い、正常画像には見られない特徴が検出された場合は異常とみなすAI判定と、画像処理による合否判定の2種類の判定処理を行い検査精度の向上を図っている。 現在、本検査システムは、施工中の現場内天井クレーンでシステムの試行運用を開始しており、検査データの集積を続けサンプル数を増やしているところである。 今後は、今回集積したサンプルデータでのさらなる機械学習を行い検査精度のブラッシュアップを図る。また、検査対象も天井クレーンのみならずタワークレーンや移動式クレーンにも適用できるようにハード開発にも着手し、現場の安全かつ作業効率向上への寄与を目指す。 ⑤ 泥土圧シールドのチャンバー内可視化技術の開発 泥土圧シールド工法では、掘削土砂に掘削添加材を添加してチャンバー内土砂を塑性流動化(流動性を有する土砂状態)させて加圧することで、切羽の安定を確保しトンネルを掘削する。 施工管理においてはチャンバー内の性状を把握することが重要であるが、隔壁奥のチャンバー内にある掘削土砂は見えない。そのため土圧分布状態やシールドマシン作動状況及びスクリューコンベヤからの排土状況をもとにシールド技術者の経験によって判断することが一般的であり、個人の技量に依存せざるを得ない状況にある。また、高齢化や熟練工不足が進む昨今の状況において、チャンバー内の状況を客観的かつ定量的に把握できるような可視化が求められている。 本システムは、隔壁に設置した多数の土圧計の値に連動して、リアルタイムにグラデーション表示を行うことで土圧の分布を視覚的に捉え、適正な掘進管理の指標となるシステムの構築と実用化を目指すものである。 ⑥ 索道技術を利用した災害対応運搬技術の開発(月面での建設活動における索道技術の開発) 内閣府スターダストプログラム(宇宙開発利用加速化戦略プログラム)の「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」(国土交通省及び文部科学省連携)へ、「索道技術を利用した災害対応運搬技術の開発」として2021年度から参加している。 本技術開発では、我が国の独自技術として、月面での基地建設や資源採取にワイヤーロープとウインチを利用した索道技術を高度利用するための研究開発を行っている。空間の移動で活用が期待される急斜面や空洞内への調査、資材運搬が容易に実現できる。 月面での水資源探査は重要な課題であるが、太陽光の届かないクレータ内部や洞窟内への物資投入や採掘資源の運搬は、運搬路のリスクを軽減し、できるだけ簡単に自動化できる技術が必要となる。一方、地上の災害で発生する崩壊地などでの作業や調査は困難であり、安定して物資を運搬する技術が求められ、災害発生時に迅速に効率的な運搬を可能とする技術は、インフラ等の早期復旧など、社会的に必要性が高い技術といえる。 本技術開発では、JAXA宇宙探査イノベーションハブでの共同研究で開発した電動ウインチをベースに、架設資材を改良した簡易支柱と可搬性の高いウインチを開発し、遠隔化・自動化の制御により、インフラ等の早期復旧が可能となる技術の開発を目標としている。 (2) 建築事業 ① 『基礎SC化工法(KSCP工法)』の開発 ~杭基礎のパイルキャップをSC化し施工の合理化を図る~ 杭基礎のパイルキャップを鋼コンクリート造とすることにより、現場での煩雑な鉄筋、型枠工事を省略して施工性の向上を図ることを目的とした、基礎SC化工法『KSCP工法®』(注)を開発した(特許取得 特許第6890039号)。従来の鉄筋コンクリート造での基礎工事では、杭基礎のパイルキャップ(杭基礎と上部構造の接合部)を鉄筋コンクリート構造とすることが一般的であり、現場での鉄筋・型枠工事、コンクリート打設という工程を要していた。KSCP工法®では基礎梁を鉄骨造又は鉄骨鉄筋コンクリート造とした場合に、杭基礎のパイルキャップを鋼コンクリート造(以下、SC造)とすることにより、それらの工程を省略し、施工の合理化と生産性の向上を図ることができる。KSCP工法®は、SC造とするパイルキャップの鋼管を、外鋼管と内鋼管の2重鋼管とし、内鋼管は鉄骨基礎梁と溶接することで、柱RC梁S構法のようにパイルキャップのコンクリートを拘束し、パイルキャップの応力を鉄骨基礎梁へ伝達させる。さらには、外鋼管を杭頭の施工位置に追従する形で杭芯に合わせることで、杭の施工時偏心による付加応力についてもスムーズに基礎梁に伝達することが可能となる。本工法は、2018年11月に日本ERI株式会社の構造性能評価を取得しており、兵庫県加古川市の物流倉庫に採用された。今後は、就労人口の減少や高齢化、コスト軽減、工期短縮要請等多様な社会変化に対応するために、より合理的な設計、施工を目指し、様々な建物への適用を積極的に行っていく。 (注)KSCP:Kumagai Steel Concrete Pile cap ② 「アースドリル工法(場所打ちコンクリート杭)における掘削抵抗測定技術」を開発 ~現場でのリアルタイム計測による支持層確認技術を目指す~ アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭の施工において、支持層確認の信頼性向上を図る技術「熊谷式アースドリル工法掘削抵抗測定技術」を雄正工業株式会社と共同開発した。 従来のアースドリル工法における場所打ちコンクリート杭の支持層確認は、施工中に地中より直接掘削した土砂から採取した試料と事前に行った地盤調査のサンプル試料とを目視で比較し判定する方法で行っている。この方法による場合、支持層とその直上の土質変化が大きい地層構成(例:粘土と砂礫)では容易に確認することができる一方、地質変化が小さく類似した地層構成(例:泥岩塊からなる盛土と地山の泥岩)では支持層確認が困難であった。本技術では、軸部掘削時における掘削データ(掘削深度、回転トルク、回転数)を計測し、それらの計測データから掘削抵抗値として定義した値を随時算出しながら、標準貫入試験で得られたN値(注)との比較を定量的に行うことで支持層確認の判断材料とする。従来の支持層確認方法に加え、本技術を採用することにより支持層確認の信頼性向上を図ることができる。なお、本技術は2022年8月に一般財団法人日本建築センターの建設技術審査証明(建築技術)を取得している。 現在、本技術を実現場の施工時に施工管理者がパソコンによってリアルタイムで画面確認し、掘削土砂の目視確認と併用して行うことができるシステムの開発を行っている。今後は、同一敷地内の支持層に傾斜・不陸が予想される地盤などで本技術を採用することにより、場所打ちコンクリート杭の施工品質向上を目指していく。 (注)地盤の固さを示す値で、重さ63.5kgのおもりを76cmの高さから自由落下させ、標準貫入試験用サンプラーを地層に30cm貫入させるのに要する打撃回数のこと。 ③ CLTを用いた「木質耐震垂れ壁構法」を開発 ~ 鉄骨造とのハイブリッド構造に積極採用を目指す ~ 当社は、今後の需要増加が予測される中大規模の木造建築の実現に向けた技術開発を進めており、東京大学と銘建工業株式会社と共同で「木質耐震垂れ壁構法」を開発した。中高層のオフィスビルや商業施設への導入を想定している。本構法は、鉄骨造の柱にCLT(注1)の木質垂れ壁を接合し、鉄骨柱と木質垂れ壁のフレームがラーメン構造の働きをすることにより、地震に対して高い抵抗力を発揮する耐震性能を持つ。さらには、木質垂れ壁を耐震要素として組み込むことで、耐火建築物でも木材の「あらわし」(注2)での利用が可能となり、木材をふんだんに使った室内外から木質感を感じられる空間が実現できる特徴を有している。本構法の開発にあたっては、鉄骨柱と木質垂れ壁の接合部の性能が建物全体の性能に大きく関係するため、数多くの実験で接合部の性能を確認している。なお、本構法は2022年4月に一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得している。今後は、本構法の実物件採用に向けて取り組むとともに、都市の木質化を通じた持続可能な社会の実現のために、さらなる研究開発を進めていく。 (注)1 直交集成板(Cross Laminated Timber)の略。2 木材の構造部材を素材そのままの仕上げとすること ④ 「環境配慮型λ-WOODⅡ」 柱・梁の1~2時間耐火大臣認定を取得 木材と被覆材の分別廃棄を可能とした木質耐火部材である「環境配慮型λ-WOODⅡ」について、柱・梁の1~2時間の耐火大臣認定を取得した。当社が中大規模の木造建築の導入に向けて今回開発した「環境配慮型λ-WOODⅡ」は、既に開発している「断熱耐火λ-WOOD®」の施工手間・現場管理を低減させるとともに、環境配慮性を付与した木質耐火部材である。従来のλ-WOODの特長である薄い耐火被覆層(注1)と表面仕上げ材の選択自由度の高さ(注2)を踏襲しつつ、施工性の向上とコストダウンを実現した。また、数十年後を見据え、木材と被覆材の分別廃棄やリサイクルを可能とする環境に優しい仕様となっている。「環境配慮型λ-WOODⅡ」は従来のλ-WOODと比較した場合、以下の3つの特徴をもつ。 1.厚みの異なる2種類の被覆材を統一することで耐火被覆層の構成を簡素化し、現場管理の手間の低減や工期短縮を図れること。 2.被覆材を積層する際に、長い留付材を使用することで接着剤が不使用となり、木材と被覆材の分別廃棄とリサイクル促進による環境への配慮。 3.これまで基本としてきた柱・梁取り合い部の交互張りから、性能確認試験により耐火性能を確認し、柱先行から梁後追いでの施工を可能とした。これにより、耐火被覆の施工スピードが上がり工期短縮が期待できる。 本開発は現在施工中の地上13階建てオフィスビルの柱と梁に適用予定であり、今後は、さらなる物件適用や事業化を目指し、その他の部位・要求耐火時間についても大臣認定取得を進める計画である。また、梁貫通孔や異種構造との取り合い部等、中大規模木造建築の実現に向け必要とされる技術についても開発を進めていく。 (注)1 1時間耐火仕様の場合、耐火被覆層の総厚は42mmで、告示の仕様(46mm)と比べてスリム化を達成した。 (注)2 内装制限の基準の範囲内で様々な仕様の表面仕上げ材を選択できる。 ⑤ 「KMLAセンサー」の販売開始 当社が開発した「KMLA(Kumagai Magnet Light Alarm)センサー」を、グループ会社である株式会社ファテックから、2022年9月より販売を開始した(製造は東亞エルメス株式会社に委託)。本センサーは鋼製の部材に設置することで、部材に閾値以上にひずみが生じた時に光のアラームを発して危険の可視化を行うセンサーである。しかも、掘削工事などの際に土留め支保工の部材に磁石で設置できるため、特殊な技術を必要とせず、誰でも簡単に設置と取り外しが行える特徴をもっている。部材に変状が生じた時に発する光のアラームにより、作業者がリアルタイムで危険を察知でき、危険の見える化に貢献している。2020年に本センサーを開発・発表後、多くの問い合わせがあり、これまで社内2件、社外で3件の現場で基礎工事の安全管理や部材の軸力計測のため採用されている。また、普及展開活動の一環として、展示会への出展の実施、「構造体の損傷検知装置」の名称でのセンサーの基本特許の取得(2022年5月)や国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)への登録を完了(2022年10月)している。今般、これらの活動と並行して実施してきた現場での実証や研究開発による各種改良を経て、KMLAセンサーの正式販売に至った。今後は、さらなる現場の安全性と利便性の向上に向けて高性能化に取り組み、株式会社パトライト及びソナス株式会社の2社と協力し、本センサーと連携できる装置・システムの開発に取り組んでいく。 (3) 子会社 株式会社ガイアート ① フォームドアスファルトによる中温化混合物の実用化 脱炭素社会の実現に向け、フォームドアスファルトによりアスファルト混合温度を低減することで使用燃料を減らし、CO2削減に寄与する中温化混合物の開発に取り組んでいる。野田合材工場へ導入しているフォームドアスファルト装置について、20℃低減した場合のCO2削減効果の確認と品質の検証を行い、ストレートアスファルトと改質Ⅱ型アスファルトの新規合材については、東京都の事前審査認定合材の認証を取得でき、実用化することができた。今後は、他のプラントへの展開を視野に、再生合材についても実用化に向け検証していく。 ② 全天候型常温合材の開発 常温アスファルト補修材(以下、常温合材)は、常温施工が可能でポットホール等の補修材として使用される混合物であり、雨天時や水溜まりなど水が介在する現場において、その強度が発現するタイプ(水添加で固まる全天候型常温合材)が多く発売されている。新見合材工場で製造した常温合材の試作品について白糸ハイランドウェイにて約6か月にわたり耐久性の検証を行い、他社製品と同等以上の耐久性が得られたことから特許申請を行った。今後、技術資料等を整備し製品化を図っていく。 ③ 木質系アスファルト舗装の開発状況について 住友林業株式会社との共同研究として、杉の間伐で発生し廃棄焼却される間伐材を、木チップとして、アスファルト舗装に再利用する技術について検討を続けており、開発に成功したアスファルト乳剤を用いた常温式木質系アスファルトについてさらに改良を進め、白糸ハイランドウェイ内歩道通路において試験施工を行った。現在、冬季の耐久性については確認済みであり、今後、夏季の耐久性についても確認を行い、製品化を図っていく。
FY2022|7,967 文字
5【研究開発活動】 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として2,725百万円投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。(1) 土木事業 ① 高速道路リニューアルプロジェクトの主力商品 橋梁用「コッター床版工法」 NEXCO各社が進める高速道路リニューアルプロジェクト(総事業費約3兆円)は、2015年度から2030年度までの16ヵ年の長期計画であり、橋梁床版取替工事は、その50%強(事業費約1兆6,500億円)を占め、同プロジェクトの主要工事である。これまで7年余の工事発注は計画の約43%(橋梁床版取替工事、当社集計)となっており、事業開始当初は伸び悩んでいた発注も、直近2年間では年間2,000億円を超えるほどに増加している。今後も同プロジェクトをさらに加速させるために、積極的な工事発注が行われると考えられる。 当社は、この橋梁床版取替工事において、急速施工、省人化、取替性の改善など生産性の向上を目的に、コッター式継手を用いた橋梁用プレキャストPC床版(コッター床版)を開発した。本工法は、単純作業のため熟練工が不要であり、床版の99%がプレキャスト化されるため、品質向上にも大きく寄与するものである。 当連結会計年度はNEXCO東日本発注の東北自動車道十和田管内高速道路リニューアル工事を竣工、コッター床版の優れた施工性を実証するとともに、取り替える部材すべてをプレキャスト製品とするフルプレキャスト施工を完成させた。コッター床版工法の施工実績は2021年末には約8,000㎡となり、確実に施工実績を積み重ねている。 2022年度は新たにNEXCO中日本より受注した東名高速道路酒匂川橋他2橋床版取替工事を通してさらなる展開を行うとともに、他社にもコッター式継手を販売する新事業を軌道に乗せる予定である。 ② ローカル5Gを用いた無人化施工技術の高度化 自然災害現場での無人化施工は二次災害を防ぐために極めて有効な手段であり、施工の高度化を実現するためには、建機に取り付けられた4Kカメラの映像や、加速度センサーで取得された動きの情報を遠隔操作室へリアルタイムに伝送する必要がある。 この課題に対して、大容量かつ低遅延を可能とするローカル5G(第5世代移動通信)システムをつくば市にある技術研究所に構築し、自然災害現場におけるネットワーク対応型無人化施工の実証実験を想定した屋外実験を行った。遠隔操作が可能な不整地運搬車に対してローカル5G端末を取り付け、研究所内に設置されたローカル5G基地局に対する車載カメラや360度カメラの映像信号等の上りリンク通信、建設機械に対する制御信号の下りリンク通信を行った。基地局と有線で接続された操作室において車載カメラの高品質な映像を確認しつつ、建設機械の遠隔操作を実現できた。加えて、360度カメラの4K映像をVRヘッドマウントディスプレイに表示すると同時に、VRコクピット(仮想現実操縦席)で建設機械の傾きや振動などの動きを再現した。ローカル5Gを活用して高品質かつリアルタイムに大容量の情報を伝送することにより、傾斜地などで建設機械を運用する場合でも、実際の搭乗操作に近い感覚で遠隔操作が可能となる。 今後は経済発展と社会的課題の解決を両立するSociety5.0の実現に向け、ローカル5Gを活用した高度な無人化施工の実運用を目指す。 ③ 橋梁更新工法「KPYダブルユースガーダー工法Ⓡ」の開発 橋梁の架け替え工事は、河川内での施工となる場合が多く、通常、流量の少ない渇水期に行われ、流量の多い出水期は工事休止となる。また、既設橋梁の下部工撤去や新設橋梁構築には、河川内に仮桟橋を用いて行うのが一般的であるが、仮桟橋は計画高水位(以下「HWL」という)や河積阻害率を考慮して設置されないため、出水期には仮桟橋を撤去する必要があり、工期と工事費の増加要因となっている。 当社は株式会社横河ブリッジと共同で、河川内工事でのこれらの問題点を解決すべく、「KPYダブルユースガーダー工法Ⓡ」を開発した。本工法は、既設橋梁撤去に用いた架設桁(ガーダー)を、更新する橋梁の上部工や下部工に再利用する工法である。架設桁を桟橋のように渇水期と出水期ごとに設置と撤去を繰り返すのではなく、河積阻害率を考慮して新設橋もしくは既設橋と同様の支間割で、かつHWL以上の位置に設置する。これにより、架設桁を出水期に撤去する必要がなくなり、工期短縮や工事費縮減が可能となる。また、従来工法では仮桟橋の他にも流水域にて築島や瀬替えをすることで、橋梁の撤去や構築が行われることもある。この場合は河川に生息する動植物への影響が大きな課題となっていたが、本工法は流水域への影響を最小限に留めることで、周辺環境への影響を低減することができる。 今後は、橋梁更新工事に加え、豪雨等により流出した橋梁の早期復旧事業等への適用を目指す。 ④ トンネル切羽評価方法およびコンピュータドリルジャンボの開発 インフラの社会的効果を向上させる上で重要な役割を果たす山岳トンネル工事は、土木工事の中でも不確定要素が強く、施工が難しい工事である。その中心となる地山に対する適正な支保構造を決定するには、専門家の正確な判断が必要である。しかし、定性評価から数値化への対応、数少ない専門家の判断迅速化などの課題がある。 今般、トンネル掘削時の切羽写真や機械データ等をAIにより学習させ、切羽評価を行う「トンネル切羽AI診断システム」を開発し、日下川新規放水路(吐口側)工事、湯野上3号トンネル工事にて導入し検証を行った。 今後は、大学との共同開発でスペクトルカメラによる画像解析も取り入れ、正答率を向上させるとともに、他のトンネル工事でもデータ採取・分析を行い、本格的な実用化を目指す。 また、従来行われている発破等の穿孔作業は、熟練工によるマニュアル操作であるが、更なる省力化・効率化を目指し、穿孔作業を全自動で行えるコンピュータドリルジャンボを開発・製作し、山岳トンネル工事に投入する予定である。 これらは施工が特に困難な山岳トンネル工事における、Society5.0に基づいたi-Constructionを実現するための先進的かつ実現化した技術例となる。 ⑤ 泥土圧シールドのチャンバー内可視化技術の開発 泥土圧シールド工法では、掘削土砂に掘削添加材を添加してチャンバー内土砂を塑性流動化(流動性を有する土砂状態)させて加圧することで、切羽の安定を確保しトンネルを掘削する。 施工管理においてはチャンバー内の性状を把握することが重要であるが、隔壁奥のチャンバー内にある掘削土砂は目視できない。そのため土圧分布状態やシールドマシン作動状況、およびスクリュウコンベヤからの排土状況をもとにシールド技術者の経験によって判断することが一般的であり、個人の技量に依存せざるを得ない状況にある。また、高齢化や熟練工不足が進む昨今の状況において、チャンバー内の状況を客観的かつ定量的に把握できるような可視化が求められている。 本システムは、隔壁に設置した多数の土圧計の値に連動して、リアルタイムにグラデーション表示を行うことで土圧の分布を視覚的に捉え、適正な掘進管理の指標となるシステムの構築と実用化を目指すものである。 (2) 建築事業 ① 「断熱耐火λ-WOOD®」柱・梁・床・壁の耐火構造の国土交通大臣認定を取得 中大規模木造建築への導入に向けて、当社が開発した木質耐火部材「断熱耐火λ-WOOD(ラムダ・ウッド)」は、主要構造部(柱・梁・床・壁)における1~3時間の耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。これまでに床・壁(1~2時間)、柱(1~3時間)の耐火認定を取得しており、今回ですべての主要構造部の耐火認定を取得したことにより、15階以上の木造建築を純木造で建築できるようになった。 「断熱耐火λ-WOOD」の特徴として、荷重支持部(柱・梁・床・壁)の周囲に設置する「燃え止まり層(注)」を硬質せっこうボードと断熱耐火パネルの積層により薄くした。このことは、木質感を演出しつつ居室内の有効利用面積を広く取れる利点がある。更に表面仕上げ材を自由に選択することが可能となったため、お客様および設計者の多様なニーズに対応することができる。昨年完成した当社福井本店の建替え工事では、「断熱耐火λ-WOOD」が採用されている。 当社では、環境重視の観点から需要が高まると想定される、中大規模木造建築の実現に向けて技術開発を進めている。建築物に木造を適用するための課題として、建築基準法に規定される耐火性能があり、建築物の階数に応じた耐火性能を有する部材を使う必要がある。そのため主要構造部(柱・梁・床・壁)における耐火性能を満足するよう、「断熱耐火λ-WOOD」の開発を進めてきた。今回、1~3時間までの梁の耐火認定を取得したことにより、「断熱耐火λ-WOOD」は耐火要件上の階数による制限がなくなり、15階以上の高層建築物にも使用することができる。 今後は、「断熱耐火λ-WOOD」を広く採用いただけるよう、事業化を含め検討を進めていく。 (注) 燃え止まり層とは、荷重支持部材の外側にある燃焼を停止させる層である。 ② 解体分離を可能とする木質耐火部材「環境配慮型λ-WOOD」の開発~中大規模木造建築における持続可能な資源開発を視野~ 木造建築の解体に際して、主要構造部の分離を可能とする「環境配慮型λ-WOOD」を開発した。建築物への木材の活用は、ESGやSDGsの観点から注目されており、特に長期間にわたりCO2の固定化が可能となる中大規模木造建築は、脱炭素社会への大きな貢献が期待されている。 当社が開発の方向性を確認した「環境配慮型λ-WOOD」は、芯材である木材とその周囲を耐火被覆する石膏ボードとの間に接着剤を一切使用しない仕様とすることにより、建設時と同様の状況で木材と石膏ボードの解体分離を容易にする耐火部材である。本開発により、中大規模木造建築における持続可能な資源活用を視野に入れ、将来の解体・廃棄時に木材を再利用することが可能となる。 当社が既に開発し、耐火構造の国土交通大臣認定を取得している「断熱耐火λ-WOOD」は、芯材(木材)と耐火被覆材(石膏ボード)の接合に接着剤等を利用することから、木材と石膏ボードを再利用可能な状態で解体分離することが困難であった。近年建設が拡大傾向にある中大規模木造建築において、数十年後の建物解体時の木材活用方法は、これからの課題となる。他方、使用済みの石膏ボードは、国土交通省より再資源化が促進されている。これらのことから、当社では主要構造部を容易に再利用可能な状態で分離できる「環境配慮型λ-WOOD」の開発を進めてきた。今回の開発は、既に大臣認定を取得している「断熱耐火λ-WOOD(柱2時間仕様)」と比較して、①解体分離が可能な仕様②耐火被覆層のスリム化③耐火被覆層のコスト低減という特徴を有している。 今後は実用化に向けた更なる実験を進めるとともに、大臣認定取得を進めていく予定である。 ③ 優れた床衝撃音遮断性能を実現した波型中空合成スラブ「サイレントLFR」を開発 共同住宅において優れた床衝撃音遮断性能を実現する波型中空合成スラブ「サイレントLFR」をフジモリ産業株式会社と共同開発した。共同住宅における音環境は重要性の高い項目の一つであり、特に、上階での歩行音や物を床に落とした時の音に関連する床衝撃音遮断性能は、建物の内装材だけでなく、構造体である床スラブから十分に対策を行う必要がある。当社等がこれまでに開発したサイレントボイドスラブは、ボイド型枠を「波型」とすることでそれ以前に広く用いられていた矩形ボイド型枠を用いた中空合成スラブで発生するボイド型枠上面での共振現象を抑えることができ、優れた床衝撃音遮断性能を確保することに成功していた。一方で、より厚さの薄いスラブへの適用やスラブ重量をより軽減するなどの課題があった。 今回開発したサイレントLFRは波型を多重に組み合わせた、これまでにない独自の形状を持つボイド型枠を採用している。実物大の試験体を用いた実験により、サイレントボイドスラブ同様、矩形ボイド型枠を用いた中空合成スラブと比較して優れた床衝撃音遮断性能であることを確認している。加えて、ボイド型枠部分の体積がサイレントボイドスラブよりも増えたことによりコンクリート量が少なくなり、スラブ重量の軽減化にも成功した(等価重量スラブ厚に換算して約5mm減)。また、サイレントボイドスラブの適用範囲はスラブ厚さ250mm以上だったが、本スラブでは230mmから対応可能となり、適用範囲を広げた。 今後は、共同住宅における音環境の静謐性能を確保するための重要なツールとして位置付け、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提案していく予定である。 なお、本スラブは日本建築センター評定(注1)、2時間耐火認定(国土交通大臣認定)(注2)を取得している。 (注) 1 評定番号:RC0062/RC0130 2 認定番号:FP120FL-0025-1 ④ 耐震性の高い木質座屈拘束ブレースを共同開発 ~中大規模木造建築へも積極導入~ 当社は住友林業株式会社と共同で、木質材料によって座屈(注1)を拘束した鋼製ブレース「KS木質座屈拘束ブレース」を開発し、2022年3月に日本ERI株式会社の構造性能評価(注2)をブレースとしては最高のBAランクで取得した。今後はこの部材を、オフィス、商業施設、集合住宅、宿泊施設や生産・物流施設など様々な鉄骨造に加え、中大規模木造建築へも積極的に導入してゆく。 両社は脱炭素社会の実現に向けた建物の木造化・木質化に注力しており、特に中大規模木造建築の受注拡大のため、木質部材に関連する研究や技術開発に力を入れてきた。KS木質座屈拘束ブレースは、熊谷組の持つ中高層建物の耐震構造技術と住友林業の木質系材料に関する知見や技術を融合して開発した。建物に用いる鋼製の耐震ブレースは地震時に優れた性能を発揮するが、限度を超える圧縮力が作用すると座屈現象が起こり大きく変形する。この欠点を克服するため従来の技術ではコンクリート製や鋼製の座屈拘束材で座屈を抑止している。KS木質座屈拘束ブレースは、LVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)と合板を組み合わせた木質の座屈拘束材を用いて鋼製の芯材を補強している。このため圧縮時にも耐力を損なうことなく安定的な変形性能を発揮し、従来の座屈拘束ブレースと同等以上の耐震性能を実現することができた。 今後も集合住宅・事務所など「中大規模木造建築」建設の受注施工に向けた木質部材の技術開発を継続し、都市と森がつながる低炭素な街づくりに貢献してゆく。 (注) 1 座屈 :細長い部材が一定の圧縮力を受けた際に急に湾曲すること。 2 構造性能評価:建築確認申請を円滑に進めるための第三者機関による構造性能評価。 ⑤ 電子受容体を利用した油含有土壌の省力低コスト嫌気処理法の開発 微生物機能を利用した油含有土壌の浄化技術(バイオレメディエーション)について、酸素を必要としない嫌気処理技術の開発に取り組み、現在主流の好気処理と比較して省力・低コストで環境調和型となる技術を開発した。バイオレメディエーションは、汚染サイトの土壌を低環境負荷で浄化できる方法であり、好気処理と嫌気処理に大別される。好気処理は現在主流の技術であるが、土壌に酸素を供給するための機械損料や人件費などのコスト面に難点がある。 本開発工法は、好気処理と嫌気処理を組合せた方法であり、油分分解が活発である反応初期時に酸素を供給する好気処理を行い、続いて分解が停滞するタイミングで酸素供給をストップし、嫌気処理に切り替えるものである。また、嫌気処理以降の酸素供給回数の減少により、ランニングコストの削減が期待できる。 嫌気条件下での油分分解は、生物の嫌気呼吸の主要プロセスである硝酸還元および鉄還元反応を利用した。油を電子供与体と想定し、嫌気呼吸の基質である電子受容体として硝酸塩および第2鉄イオンを投与し、油分の酸化分解を促進させる。この処理工法について中規模土層による実験を実施し、嫌気条件下において汚染土壌中の油分分解が促進されることを実証した。 更にスケールアップした屋外実験を実施し効果を検証したところ、実験対象土壌中の微生物遺伝子解析により、硝酸還元微生物や鉄還元微生物の存在が確認され、これらの微生物群の反応によって油分の嫌気分解がなされていることが示された。 また、本工法の適用により、好気処理の酸素供給回数が減少し、酸素供給に必要な機械損料や人件費(例えば、ショベルによる土壌攪拌、配管埋設による酸素供給)などのランニングコストは、従来工法(好気処理のみ)と比較して約60%削減できる見通しである。 本工法は電子受容体の添加により、土壌中に生息する微生物群を活性化させて油分解を効率化する。すなわち自然が元来持つ浄化能力を引き出す技術であり、省力化による環境負荷低減や低コスト化だけでなく、環境調和型の浄化技術といえる。今後は本開発工法を実用化するために、実汚染現場での実証試験を行い、検証と改良を行っていく。 (3) 子会社 株式会社ガイアート ① フォームドアスファルトによる再生中温化混合物の検討 脱炭素技術の取り組みとして道路舗装業界においても、アスファルト混合温度を30℃程度低減することによって、使用燃料を減らしCO2削減に寄与する中温化技術が、大変注目されているが、この中温化技術としてフォームドアスファルトを用いる方法について検討を行い、60期には、フォームドアスファルト装置を野田合材工場へ導入し、その効果について検証を行った。今後、更に安定した製品化を図り、他プラントへの展開を行っていきたいと考えている。 ② 全天候型常温合材の開発 常温アスファルト補修材(以下,常温合材)は,常温施工が可能でポットホール等の補修材として使用される混合物であり、同社は、常温合材「ガイアートファルト」を新見合材工場で製造している。一方、他社においては、雨天時や水溜まり等水が介在する現場への適用についても、その強度が発現するタイプ(全天候型常温合材)が製品化されているが、同社においてもこれと同等以上の性能となるものの開発に成功し、新見合材工場で試験製造を行った。今後、さらに現場での実証試験を行い、検証と改良を行い製品化を図っていく。 ③ 木質系アスファルト舗装の開発状況について 住友林業㈱との共同研究として、杉の間伐で発生し廃棄焼却される間伐材を、木チップとして、アスファルト舗装に再利用する技術について検討を行い、アスファルト乳剤を用いた常温式木質系アスファルト舗装の開発に成功した。今後は、検証と改良を行い製品化を図っていく。
FY2021|9,916 文字
5【研究開発活動】 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として2,660百万円投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。(1) 土木事業 ① 高速道路リニューアルプロジェクトの主力商品「コッター床版工法」 NEXCO各社が進める高速道路リニューアルプロジェクト(総事業費約3兆円)は、2015年度から2030年度までの16ヵ年の長期計画であるが、これまで5年余で事業費の執行済みは約14%に留まっており、今後は同プロジェクトを加速させるために、さらに積極的な工事発注が行われる見込みである。橋梁床版取替工事は、その50%強(事業費約1兆6,500億円)を占め、同プロジェクトの主要工事である。 当社は、この橋梁床版取替工事において、急速施工、省人化、取替性の改善など生産性の向上を目的に、コッター式継手を用いた橋梁用プレキャストPC床版(コッター床版)を株式会社ガイアート、オリエンタル白石株式会社及びジオスター株式会社と共同で開発した。本工法は、単純作業のため熟練工が不要で、床版の99%がプレキャスト化されるため、品質向上にも大きく寄与するものである。 当連結会計年度はNEXCO東日本発注の東北自動車道十和田管内高速道路リニューアル工事において、高速道路で初採用となる小坂川橋上り線約118m及び新遠部沢橋下り線約284mの2橋梁の施工を完了し、その有効性を実証した。今後は、現在の継手をさらに軽量・小型化した新製品を投入する。 ② 小断面トンネル施工機械開発 ~KITプロジェクトⓇ~ 「次世代トンネル施工システムの開発」の一環として、トンネル断面積が10㎡程度の小断面NATMトンネルの施工時における生産性向上と作業環境の改善並びに安全性の確保を目的とした施工機械群の開発KITプロジェクトⓇ(Kumagai Innovative Tunnel Project)を進めている。 当連結会計年度は土砂掘削・積込機械、土砂搬送トレンローダー、同専用鋼車が完成し、技術研究所内模擬トンネルで確認実験を行った。また、並行して掘削・積込機械の新聞発表、「KITプロジェクトⓇ」の商標登録も行った。現在は吹付機械が先日工場完成し、1ブーム式削孔機械と爆薬遠隔装填装置の製作が佳境に入っている。これらが完成してKITプロジェクトⓇの第一段階が完了する。 今後は、完成した機械群を現場に導入し、実稼働させデータの蓄積、機械の改良・改善、遠隔化・自動化など実用化に向けたプロジェクトの第二段階が開始される。また、逐次新聞発表も行ない社外アピールも進めていく予定である。 ③ DX(デジタルトランスフォーメーション)の取組み 当社は、建設業就業者の高齢化が進行していく中で、どのようにして施工のノウハウや技術を伝承していくかを課題としていた。こうした課題に対し、多岐にわたる情報をデジタルデータとして収集・蓄積することから始め、デジタル技術を活用したWEBアプリケーションを構築した。 業務支援を行う「工事情報簡易参照システム」は竣工データ、工事中のデータを共有・参照できるシステムであり、「Knowledge Explorer」はAIを搭載した検索システムとなり膨大に蓄積させたデータから必要なデータを自動的に抽出することができる。施工支援を行う「トンネル切羽AI診断システム」は技術者の経験の有無にかかわらない客観的な評価ができ、若手技術者の判断支援を行い、「CV映像公開システム」は360度映像を用いて施工の効率化を図るアプリケーションである。 ④ ローカル5Gを用いた無人化施工技術の高度化 自然災害現場での無人化施工は二次災害を防ぐために極めて有効な手段であり、施工の高度化を実現するためには、建機に取り付けられた4Kカメラの映像や、加速度センサーで取得された動きの情報を遠隔操作室へリアルタイムに伝送する必要がある。 この課題に対して、大容量かつ低遅延を可能とするローカル5G(第5世代移動通信)を活用した自然災害現場におけるネットワーク対応型無人化施工を想定した屋内実証実験を行った。実験は株式会社日本電気と共同で行い、遠隔操作が可能な仮想現場環境を用意し、4K映像をVRヘッドマウントディスプレイに表示すると同時に、操縦席が取り付けられたモーションベースで建設機械の傾きや振動などの動きを再現した。ローカル5Gを活用して高品質かつリアルタイムに大容量の情報を伝送することにより、傾斜地などで建設機械を運用する場合でも、実際の搭乗操作に近い感覚で遠隔操作が可能となる。 ⑤ 切羽崩落監視システムの開発 切羽肌落ち災害は山岳トンネルの特有災害であり、2000年から10年間で肌落ちを起因とした災害の60%以上が休業4日以上の災害であり、その作業内容の70%以上が装薬・鋼製支保工建込み中に被災しており、切羽肌落ちは重篤災害につながりやすい。当社は、肌落ちの予兆を捉えるため、WEBカメラを用いた画像処理で礫塊(5~10cm程度)の落石を検出する「切羽崩落監視システム」を開発した。 本システムは、ドリルジャンボ等の機体に設置したカメラ画像(30fps)のフレーム間差分画像を連続的に検出処理することにより落石を認識する。さらに、機体や作業員の動きを起因とした誤検出を防止するため、マスキング処理で機体等の人工物を対象から除外する機能と照明条件変化や風等による揺らぎを起因とした微小変化(ノイズ)を除去する機能を付加している。実機実験では誤検出が激減し、90%近い落石検出率を確保しており、切羽崩落の予兆監視に効果的である結果を得ている。今後も稼働現場で実証実験を継続して行い、検出率をさらに向上させて実用化を目指す。⑥ 斜面対策工に特化したのり面CIMの実施 現在、建設生産システムの業務効率化や高度化を目指してCIM(Construction Information Modeling/ Management)の導入が活発化している。その中で、斜面対策工事においては、トンネル工事、ダム工事、道路工事や橋梁工事等と比較すると、CIMの導入事例が少ない傾向がみられる。このような状況から、斜面対策工に特化した「のり面CIM」を開発した。本システムは、グラウンドアンカーや鉄筋挿入工などの斜面対策工の施工データを集約・三次元モデル化(可視化)し、一元管理した情報を次ブロックの施工へフィードバックすることにより、施工の効率化を図るシステムである。本システムは、斜面安定計算ソフトウェアと連係できることから、地質状況が想定と異なることが判明した場合には、早急に適切な再検討を行うことが可能となっている。斜面対策工は、激甚化する自然災害に対する備えとして重要な位置づけを担っており、今後は、施工時だけでなく、調査・設計時から維持・管理までを見据えた運用を目指す。 (2) 建築事業 ① 「熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法」の開発 ―床スラブによる上フランジ拘束効果を考慮した横補剛― 床スラブ付き鉄骨梁を対象に、床スラブによるH形鋼梁上フランジの水平変位及び回転拘束効果を利用して鉄骨梁の横座屈補剛を行う工法「熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法」を開発した。本工法は、2020年3月に日本ERI株式会社の構造性能評価を取得しており、既に2件の新築工事に適用されている。 鋼構造建築物に使用されるH形断面梁は、大きな荷重が作用した際に水平方向(横方向)にはらみ出す横座屈現象が懸念されるため、横座屈補剛材を小梁や方杖として設置すること(保有耐力横補剛)が建築基準法で規定されている。一方で、大梁の上フランジは、床スラブなどにより連続的もしくは断続的な拘束を受けていることが多く、横座屈抑制効果として期待できることは広く知られている。これらのことから、床スラブの横座屈補剛効果を利用した設計及び施工の合理化工法の開発に至った。 本工法では、頭付きスタッド等のシアコネクタを用いて鉄骨梁と床スラブを一体化することにより、床スラブによる鉄骨梁上フランジの水平変位及び回転への拘束効果を考慮した横座屈補剛の設計を行う。これにより、鉄骨梁は横座屈せずに全塑性モーメントに達するとともに、塑性化後の早期耐力劣化を防ぐことができる。本工法により設計された鉄骨梁は、梁端部が全塑性モーメントに達するまで横座屈が生じないものとし、かつ、保有耐力横補剛を満たした梁部材として扱うことができ、H形鋼の大梁であれば、高炉材、電炉材によらず、適用することが可能な工法となっている。 今後もより合理的な設計、施工を目指し、物流施設、商業施設、オフィスなどの建物に加え、宿泊施設、生産施設などを含めた様々な鉄骨造の建物への適用を積極的に行っていく予定である。 ② 「異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法の設計法及び施工方法」の構造性能評価を取得 「異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法の設計法及び施工方法」を開発した。本工法は、断面の上部と下部で強度が異なるコンクリートを使用する梁の設計及び施工に関するものであり、現場打ちまたはハーフプレキャスト部材において、梁上部とスラブのコンクリートを同じ強度で打設することができる。また、異なる強度のコンクリートが同一梁断面内に存するため、「等価平均強度」(注)を用いて、許容応力度設計と終局強度設計を行う。今回この「等価平均強度」に基づき算定された梁のせん断終局強度に対し、既往実験データの安全率がより高いことが確認されたため、設計指針の取り纏めに至った。 本工法を採用することにより、梁の上部とスラブを同じコンクリート強度で一度に打設することが可能となるため、施工手順を省くことができ、「施工の合理化と生産性の向上」が期待できる。 本開発は、株式会社淺沼組、株式会社奥村組、五洋建設株式会社、鉄建建設株式会社及び矢作建設工業株式会社との共同開発で実施し、日本ERI株式会社の構造性能評価を取得した。 今後は、各社において設計施工物件を主としたRC建物に適用し、施工の合理化、生産性の向上を推進していく予定である。 (注)スラブが存することによる効果と異種強度コンクリートが混在する影響を同時に考慮した強度算出方法。 ③ 「断熱耐火λ-WOODⓇ(柱)」の1~3時間耐火の大臣認定取得 中大規模の木造建築への導入を念頭に、当社が開発した木質耐火部材「断熱耐火λ-WOOD(ラムダ-ウッド)」シリーズとして、柱の1~3時間における耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。同シリーズは、これまでにCLT(直交集成板)壁とCLT床の1時間と2時間の耐火構造で国土交通大臣認定を取得している。 今回大臣認定を取得した、1~3時間の集成材柱の特徴として、荷重支持部(柱)の周囲に設置する「燃え止まり層(注)」に、普通硬質せっこうボードと断熱耐火パネルを積層することにより、その部分の厚さを薄くした。このことは、木質感を演出しつつ居室内の有効利用面積を大きく取れる利点がある。さらに表面仕上げ材を自由に選択することが可能となったため、お客様及び設計者のニーズに対応することができる。また、今般実施工として、「断熱耐火λ-WOOD(柱)」を現在施工中の当社福井本店の建替工事に採用している。 当社では、今後さらに需要が高まると予測される中大規模の木造建築の実現に向けて技術開発を進めている。中大規模の建築物に木造を適用するための課題として、建築基準法に規定される防・耐火性能があり、建物の規模によりそれぞれの使用箇所に応じた耐火性能を有する部材を使う必要がある。これを踏まえて、すべての建築物において木質部材が使用できるように、「断熱耐火λ-WOOD」シリーズとして木質耐火部材の開発と大臣認定の取得を目指している。今回の柱における1~3時間までの耐火構造大臣認定を取得したことにより、「断熱耐火λ-WOOD」の柱については、耐火要件上の階数による制限がなくなり、高層建築物にも使用することができるようになった。 今後、優れた中大規模の木造建築を実現するために、様々な技術を組合せることにより、さらなる性能の向上やコストダウンに向けた技術開発を進めていく。 (注)燃え止まり層とは、荷重支持部材(集成材柱)の外側にある燃焼を停止させる層である。 ④ CELBIC(環境配慮型BFコンクリート)ゼネコン13社で建設材料技術性能証明を取得 当社とゼネコン12社(注1)で構成されている「CELBIC研究会」は、生コン工場において、予め建築物の部位・部材や所定の性能に合わせて、普通ポルトランドセメントの10~70%を高炉スラグ微粉末と置換したコンクリート「CELBIC-環境配慮型BFコンクリート-」を開発し、一般財団法人日本建築総合試験所より2021年2月22日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC 材料証明 第20-04号)を取得した(注2)。 CELBIC(注3)は、循環型社会形成と地球環境問題改善への寄与を目的とし、コンクリート建築物の所要品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減する環境配慮型コンクリートである。また、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に適合するコンクリートとして製造・出荷が可能であり、CELBIC研究会13社において責任施工する。 CELBICに使用される高炉スラグ微粉末は、製鉄所の高炉における製銑において副生されるスラグを微粉砕したものである。水硬性を有しており、製造時に排出される二酸化炭素はポルトランドセメントの1/20以下であることから環境負荷低減のために有効利用が望まれていたもので、JIS A 5308においては、セメントに置き換えて使用されるコンクリート混和材料の一つである。 今後は、建築物やそれ以外の鉄筋コンクリート構造物に対しても、環境配慮性を有したCELBICを適材適所へ有効活用し、普及展開を目指していく。 (注)1 株式会社熊谷組、株式会社長谷工コーポレーション(幹事)、青木あすなろ建設株式会社、株式会社淺沼組、株式会社安藤ハザマ、株式会社奥村組、株式会社鴻池組、五洋建設株式会社、株式会社錢高組、鉄建建設株式会社、東急建設株式会社、東洋建設株式会社、矢作建設工業株式会社2 一般財団法人日本建築総合試験所より2020年10月5日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC 材料証明 第20-02号)を取得し、その後データの一部を更新したため、2021年2月22日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC 材料証明 第20-04号)を再取得した。3 CELBIC(セルビック):Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete ⑤ 「KMLAセンサー」の開発 鋼製の部材に設置することで、部材に閾値以上のひずみが生じた時に光のアラームを発して危険を可視化する「KMLA(Kumagai Magnet Light Alarm)センサー」を開発した。 地盤の開削工事などで土留支保工に変状が発生した場合、仮設・本設構造物に影響を及ぼすだけでなく、作業中の人命に関わる危険性がある。特に土留支保工の変状が予測される場合は、部材に軸力計やひずみゲージなどを設置し、計測管理を行いながら施工するが、一般的には専門的な知識がある者が行うため、作業中の者へ変状の情報をリアルタイムに伝えることは容易ではない。 本センサーは、土留支保工などの鋼材に磁石によって手軽に設置することができ、取り外しも容易であるため、設置に専門的な技能を必要としない。また、工事の進捗に合わせて、より大きな負荷が想定される部材にセンサーを設置しなおすことも容易である。部材に変状が発生したとき、周囲に危険を知らせて避難を促す機能を有する本センサーの導入は、現場の安全性の向上に寄与するものである。 閾値は0μから900μの間において100μ刻みで設定でき、設定された閾値以上のひずみを感知した際にセンサー中央の警報LEDが点灯する仕組みとなっている。また、オプションでアラーム機能も追加することができる。 本センサーは既に商品化されているが、IoT化して計測工にも利用できるように改良を進めている。 ⑥ 共同住宅における重量床衝撃音の予測検討に関する手引書「インピーダンス法による重量床衝撃音レベル予測計算法(改訂3版)」を発刊 当社は、信州大学山下恭弘名誉教授監修のもと、泰成株式会社、フジモリ産業株式会社、野原産業株式会社、万協株式会社、有限会社音研と共同で研究した成果を、床衝撃音研究会として実務的な床衝撃音レベルの予測法に関する手引書である「インピーダンス法による重量床衝撃音レベル予測計算法(改訂3版)」を発刊した。 インピーダンス法は、床衝撃音遮断性能の予測計算法の一つであり、一般的な表計算ソフトを利用して計算ができることから、実務に広く利用されている。これまで、大脇(株式会社熊谷組)と山下名誉教授らによって1998年に提案されたインピーダンス法に基づき作成した解説書「インピーダンス法による床衝撃音レベル予測計算法の解説」を2006年2月に刊行し、併せて、表計算ソフトで簡単に床衝撃音レベルを予測計算できる「予測計算シート」を公開した。その後、2012年10月に、改訂版(大脇・山下式2012)の刊行及び予測計算シートの公開を行っているが、今般8年の経過をうけて、その後の知見を加えた全面的な見直しを行い、改訂3版として本解説書(大脇・山下式2021)を発刊した。また、この解説書に対応した予測計算シートは、床衝撃音研究会を組織する各社のウェブサイトから入手できる。 本書は、重量床衝撃音レベルの予測精度をさらに向上させ、多様な共同住宅の予測計算に幅広く対応しているほか、専門的な内容や細かな疑問点については、コラムを設けて丁寧に説明している。 今後も、共同住宅の重量床衝撃音レベルの予測検討を行う重要なツールとして位置付け、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提案していく予定である。 ⑦ 立ち上がり補助機能付き歩行車「フローラ・テンダー」のニューモデル発表 かねてから開発していた、立ち上がり補助機能付き歩行車「フローラ・テンダー」の販売を2020年11月よりグループ会社の株式会社ファテックを通じて開始した。「フローラ・テンダー」は、電動による立ち上がり補助機能のある歩行車である。使用者は専用のスリング・ベルトを着け、歩行車に連結することにより、電動で楽に立ち上がれ、歩行時は転倒の心配もない。立ち上がりや座り込み時の操作は、介助者がリモコンを操作することで、周囲の確認と使用者のサポートなどが可能となるため、安全に使用することができる。しかも、立ち上がり動作が電動で補助できるため、介護者の負担軽減も期待できる。また、車イスと同等のサイズで開発されているため、車イスが使える環境であれば、使用場所の改修は必要ない。 「フローラ・テンダー」は、立ち上がり補助と歩行補助という2つの機能を持ち、かつ、立ち上がりの補助を電動で行う製品として国内で初めて介護保険の適用対象になった。そのため、介護認定を受けた方は、1~3割の自己負担でのレンタルまたは購入が可能である。さらに、複数のJIS規格(注1)とリスクアセスメントに基づき、福祉用具として一般財団法人電気安全環境研究所(JET)のロボット安全認証(注2)を国内で初めて取得した。 今後は、福祉用具の開発・販売を進めるとともに、当社グループの新たな事業分野として福祉介護市場を開拓していくとともに、SDGsの17の目標の一つである「すべての人に健康と福祉を」の実現に取り組んでいく予定である。 (注)1 JIS T 9265 : 2019「福祉用具-歩行補助具-歩行車」とJIS T 9241-6 : 2015「移動・移乗支援用リフト-第6部:立ち上がり用リフト」及びその関連規程2 認証書番号 RT002-001、認証登録日 2020年11月10日 (3) 子会社 株式会社ガイアート ① FFP(フルファンクションペーブ:多機能型排水性舗装)のCAE路盤(セメント・アスファルト乳剤安定処理路盤)上への直接施工の可能性の確認 FFPは、混合物一層で排水機能と防水機能を持つ縦溝粗面型ハイブリッド舗装である。従来は、防水機能に対する懸念から、強度が低く不陸も多い路盤上への直接施工は実施せず、舗装版上への施工を行ってきた。しかし、コスト削減及び省資源化に向け、路盤上への直接施工のニーズが増えてきており、これにFFPが対応することが望まれていた。今回、同社の子会社が運営する白糸ハイランドウェイにおいて、CAE路盤上へのFFP直接施工の試験施工を実施した結果、既設舗装版上への施工と同等の路面性状と防水性が得られることが確認された。 ② G・Asシート(クラック抑制シート)の開発 既設舗装におけるクラックやコンクリート舗装の目地に起因するリフレクションクラックを抑制するため、従来からガラス繊維等を基材とするクラック抑制シートが使用されてきた。このクラック抑制シートは、基材の引張強度がリフレクションクラックの動きを抑制して効果を得るものであったが、その基材が要因となり、当該クラック抑制シートを使用した舗装が再利用できないケースが多かった。リサイクル性を向上させるため、クラック抑制工法として実績があるじょく層工法(応力の伝達を緩和する層)を応用し、再利用を阻害する基材を用いず、アスファルトシートを利用した新たなクラック抑制シートを開発した。 テクノス株式会社 ① 建方精度管理システム「建方キングE」の開発 本システムは、計測結果を計測者、建方調整者、工事管理者の全てが同時共有できることを可能にしたDX技術導入システム「建方キング」の発展版である。カメラ付自動追尾計測機器を用い画像認識技術を導入することで、計測機器側での測量管理担当者の常駐を不要とするリモート計測機能を実現した。計測機器近傍に設置したシステムPCを使用することにより、建方作業者や施工管理担当者自身による計測が実現し、工事事務所に居ながら監理技術者は修正・確定の判断をし、建方作業者に指示を出すことも可能としている。本システムを採用することにより、従来の建方作業(測量管理担当者2名・計測機器2台使用)との比較において、40%の工程短縮、50%のコスト低減が可能となった。 ② 橋梁床版取替工事における床版と桁の切離し・結合の急速化技術の開発 高速道路等の橋梁は、構築後50年以上経過したものが多く、老朽化した床版の取替工事は、交通規制等の社会的影響を少なくするため急速施工が求められている。工場製作のPC床版による急速取替工法は、コッター式床版等いくつかの工法が開発されているが、既存床版の急速解体工法は開発がほとんど進んでいない。この点に着目し開発した「切り方じょうず」は、交通規制前に、床版下部の水平切断と、切断した床版と桁との再結合を同時に行うことを目指した工法である。実際の道路床版と桁を再現した橋梁床版モデルによる実証実験を実施し、安全に高精度で切断が可能であることを実証済みである。桁に残置されるコンクリートも極めて少量で、撤去工事での課題であった残コンクリート撤去作業の省力化も確認できた。今後は、切り離された床版再結合化の安全性評価を行い、現場での試験施工をとおし、交通規制時間の大幅短縮を目指した橋梁床版解体工法として確立させていく予定である。
FY2020|8,554 文字
5【研究開発活動】 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として2,581百万円投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。(1) 土木事業 ① 高速道路リニューアルプロジェクトの主力商品「コッター床版工法」 NEXCO各社が進める高速道路リニューアルプロジェクト(総事業費約3兆円)において、橋梁床版取替工事は、その50%強(事業費約1兆6,500億円)を占める同プロジェクトの主要工事である。当社は、急速施工、省人化、取替性の改善など生産性の向上を目的に、コッター式継手を用いた橋梁用プレキャストPC床版であるコッター床版を開発した。本工法は、熟練工を不要とし、床版の99%プレキャスト化が品質向上に大きく寄与している。福島県広野町発注の灰作橋長寿命化工事に採用し、その有効性を実証した。今後は2019年1月に受注したNEXCO東日本発注の東北自動車道十和田管内高速道路リニューアル工事の4橋梁での採用を予定し準備を進めており、そのうち2橋梁については、継手の軽量・コンパクト化を進めた新製品投入を予定しており、現在開発を進めているところである。 ② 地震被害を受けたトンネルの補修に「T3パネル工法」を適用 T3パネル工法は、東日本旅客鉄道株式会社研究開発センターと共同で開発したトンネルはく落防止工法である。鉄道において、現在でも100年近く経過したトンネル(主にレンガトンネル)が供用されており、今後、はく落、ひび割れなどの変状の発生が予想される。本工法は、トンネル形状に加工した鋼製支保工に高じん性セメントボードを主材料とした薄型パネルを固定する構造により、トンネル覆工のはく落防止を図るものである。当工法の特徴は、内空をできるだけ侵さない薄型構造で耐荷力が高いことである。当工法専用に開発した機械であるTカッターを用いて施工した覆工面の溝にT形の鋼製支保工をはめ込む構造としており、内空への飛出量を抑えている。また薄型パネルは、セメントボードに曲率加工を行い、表面にアラミド繊維を接着させており、剛性及びじん性が高められている。このT型支保工と薄型パネルの組み合わせにより、無筋コンクリートあるいはレンガが厚さ40㎝程度はく落した場合にも耐える構造となっている。当社は、2016年の熊本地震でトンネル覆工にはく落・ひび割れが発生した、豊肥本線立野トンネル(立野~赤水駅間)において本工法を適用し、トンネル補修工法としての有効性を実証した。 ③ 山岳トンネルにおけるAI技術の活用 山岳トンネルでは、掘削の際に地山の観察結果をもとに岩判定を行い、実施する支保パターンを確定している。この方法は判定者の経験に負うところが多く、掘削を一旦止めることにもなるため、作業負担や工程遅延などが課題であった。こうした課題に対し、当社は、2017年より長崎大学、五大開発株式会社と共同で、AI技術を活用しトンネル掘削時に得られるビックデータの分析・関連付けを行い、切羽前方地山の予測精度を向上させる研究を継続してきた。予測結果に基づいて最適な支保パターンが選定可能なシステムが構築できれば、施工管理の効率化、技術の継承に寄与することが期待される。国土交通省は、新技術導入促進(Ⅱ)型の技術提案テーマとして、「AI等を活用したトンネル切羽等の地山判定手法」を求める工事を発注しており、当社はこれらのうち日下川新規放水路(吐口側)工事、湯野上3号トンネル工事を受注し、トンネル切羽画像を用いたAIによる地山判定を行った。具体的には、発破孔やロックボルト孔等の削孔データを採取し、切羽画像とともにAI分析を行い、発破掘削においては風化変質や割れ目の頻度の分析の正当性が高いこと、機械掘削においては素掘り面の状態の正当性が高いことが確認された。今後は、さらなるデータ採取・分析を継続し正答率を向上させるとともに、他のトンネルでもデータ採取・分析を行い、本格的な実用化を目指していく。 ④ 小断面トンネル施工機械の開発 トンネルの断面積が10㎡程度の小断面トンネルを新設掘削する際は、一般的にレール方式のNATM工法が採用されるが、汎用施工機械の老朽化と新規製作の敬遠により機械台数が逼迫しているのが現状である。当社ではトンネル施工時における生産性の向上と作業環境の改善並びに安全性の確保を目的とした「次世代トンネル施工システムの開発」を進めており、その一環として、小断面トンネルに特化した施工機械群を開発するKITプロジェクトを進めている。KITプロジェクトとは、Kumagai Innovative Tunnel Projectの略称で、従来には無い革新的な技術開発を目指すプロジェクトとして命名した。当プロジェクトは、一連のトンネル施工機械群をシステム的に構築することを目的とし、①1ブーム式削孔機械 ②遠隔爆薬装填装置 ③土砂掘削・積込機械 ④土砂搬送トレンローダー ⑤一体型吹付機械 の5機種をもって、小断面施工の欠点を補完すべく遠隔操作や自動運転並びにガイダンス機能等を採り入れる新規開発を行っている。2015年に開始した当プロジェクトは、いよいよ各機械が完成する予定である。完成した機械は、技術研究所内に設けた模擬トンネルにおいて実用化に向けた機能試験や検査を重ねた後、施工現場へ投入する予定である。 ⑤ 無人化施工VR技術の開発 自然災害現場での無人化施工は、二次災害を防ぐための有効な手段となっている。オペレーターは、運転席に搭載したオペレーター目線のカメラ映像と現場全体を把握するために設置した定点カメラの俯瞰映像を頼りに遠隔操作室で操作している。操作に利用するそれらの映像は、モニター上の2次元情報であり、オペレーターは実際の建設機械の傾きや振動などを把握することは困難である。そこで、遠隔操作室内にいるオペレーターに、建設機械内のオペレーター目線の映像と建設機械の傾きや振動、音をリアルタイムにオペレーターに提供することで、搭乗操作に近い感覚で遠隔操作が可能な安全かつ効率の高い無人化施工VR技術を開発した。この無人化施工VR技術は、東京工業高等専門学校で開発したスポーツ観戦システム「シンクロアスリートⓇ」を応用し、建設機械側に360度カメラと加速度センサーを設置し、運転席内からの映像と音に加え、建設機械の動きを遠隔操作室にリアルタイムに伝送する。遠隔操作室では、映像をVRヘッドマウントディスプレイ等に表示し、音を再生すると共に操縦席が取り付けられたモーションベースで動きを再現する。この技術により、遠隔操作でありながら、実際に搭乗した状態に近い環境をオペレーターに提供することが可能となった。今後は技術の改良に加え、遠隔操作における作業効率のさらなる向上を目指し、実際の運用に向け開発を進めていく。⑥ コンクリート温度ひび割れ抑制対策技術「注水併用エアクーリング工法」 コンクリート構造物の施工においては、水和熱の上昇による温度ひび割れ抑制対策を行うことが重要である。当工法は、従来のエアーによるクーリング工法をベースとし、送風時に少量の水を加えることによる気化熱冷却効果で、冷媒となるエアーの温度を低下させ、コンクリートの温度上昇抑制効果を高めるものである。通水によるクーリング工法と比較すると温度上昇抑制効果は若干劣るが、従来のエアーによるクーリング工法と比較して温度上昇抑制効果は高く、冷却設備が小規模で済み、コストが抑えられるのが長所である。2015年に開発して以来、函渠や橋脚など比較的中規模な構造物に対し試験施工を行っている。当工法の特長は、気化熱冷却効果を高めるため、注水をミスト(粒径100μm程度)化し、エアーの風速と注水流量を管理しながら噴霧することである。現在、稼働中も含めて当社で9現場、社外で1現場実績があり、発注者も国土交通省やNEXCOから民間工事までと幅広く使用されている。この期間に特許権取得と新技術情報提供システム(NETIS)の登録も完了した。今後は、コンクリートの温度ひび割れ抑制対策技術としてさらに普及させ、使用実績を増やしていく予定である。 (2) 建築事業 ① 地盤アンカー工法におけるアンカー定着層確認技術の開発 地盤アンカー施工時に削孔用ケーシングに与える給進力、回転力及び打撃力を計測して得られる総貫入エネルギーを算定し、総貫入エネルギーの値をもとに定着層への到達確認を行う技術を開発した。地盤アンカーは山留め壁などの仮設構造物に加え、建築物などの本設構造物にも用いられているが、所定の引張抵抗力を確保するためには、アンカーの定着体(注)を良質な地盤である定着層に設置する必要がある。定着層はボーリング調査により設定しているが、施工時には地上に排出される削孔水及びスライムの目視確認と、削孔機の振動や削孔スピードなどによる確認を併せて行っている。しかし、施工時の確認は地層によっては困難な場合があることや、オペレータの感覚に頼ることが多く記録に残らないという欠点があった。そこで、削孔用ケーシングに与える給進力、回転力及び打撃力を計測し、それらの値から総貫入エネルギーEDの算定を行い、その深度分布をもとに定着層を確認する手法を用いた本技術を開発した。これにより、定着層に傾斜あるいは凹凸が予想される場合を含め、地盤アンカーの施工時に定着層の確認を1本毎に行うことが可能となった。今後は、当社の既開発工法であるSTK-Ⅱアンカー工法(大口径鉛直型本設地盤アンカー工法)や山留め壁などに用いる仮設地盤アンカー(定着層がN値20以上の砂質土地盤である斜め地盤アンカーなど)への適用も検討していく予定である。なお、今般、STK-Ⅱアンカー工法の設計施工指針に本技術を追加し、一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第11-08号 改定2)を取得している。 (注) 地盤アンカーを構成する部位のうち、地盤との摩擦抵抗力を期待する部分。 ② 「木造CLT床の2時間耐火構造」の大臣認定取得 中大規模の木造建築を念頭にCLT(注1)床の1時間及び2時間耐火構造の大臣認定を取得した。今回、認定を取得したCLT床は、荷重支持部(芯材)の木材(CLT)の周囲に「燃え止まり層(注2)」を設置し被覆した独自の木質耐火構造を考案しており、燃え止まり層は断熱耐火パネルを普通硬質せっこうボードの間に組み込んで積層している。その結果、燃え止まり層の厚さを、最も薄い場合、1時間耐火構造で41㎜、2時間耐火構造で63㎜と従来工法と比べてスリム化することができた。また、表面仕上げ材は室内における様々な仕様が選択可能であり、お客様及び設計者のニーズに対応することができる。当社は、今後需要が高まると予測される中大規模の木造建築の実現に向けて技術開発を進めており、全ての建築物において使用できる防・耐火性能を保持する木質耐火部材の開発及び大臣認定の取得を目指している。今般CLT床について1時間と2時間の耐火構造の大臣認定を取得したことにより、CLT床とCLT壁は、1時間耐火構造であれば最上階から4階層まで、2時間耐火構造であれば最上階から全ての階において使用することが可能となった。今後は、柱と梁の1~3時間耐火構造の大臣認定について1年以内の取得を目指しており、今回のCLT床を含む、柱、梁、床、壁の1時間から3時間の木質耐火構造を有した部材を「断熱耐火λ-WOOD(ラムダ-ウッド)」の名称で展開するとともに、さらなる研究開発を進めていく。 (注)1 CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)は、複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が直交するように積層させて作った木質構造パネル。2 燃え止まり層とは、荷重支持部材(CLT)の外側にある燃焼を停止させる層である。その基本性能の確認では、載荷加熱した際の構造安全性や、芯材表面が炭化しない(焦げていない)こと、非加熱側に燃え抜けないことなどが必要とされる。 ③ 「木造CLT複合壁の遮音性能」の大臣認定取得 当社は、今後需要が高まると予想される中大規模の木造建築の実現に向けて技術開発を進めているが、共同住宅などでは高い水準の空気音遮断性能が要求されており、これまで高い遮音性能を持つCLTを用いた複合壁や複合床の開発を行ってきた。今般、当社が開発した木質耐火部材「断熱耐火λ-WOOD」シリーズのCLT耐火壁(注1)にふかし壁を施したCLT複合壁が遮音性能の大臣認定を取得し、JISの評価上最高値である遮音等級Rr(注2)-60を達成した。本開発の特徴は、①ふかし壁による低音域共鳴透過(注3)の低減及び幅広い周波数の空気音遮断性能を高める仕様、②実際の木造建築における部材取り合い部分の納まりに起因する遮音性能低下を想定し、試験体には実際の取り合い部を再現した仕様、③床及び壁をともに乾式工法とし、湿式工法による養生期間の短縮、施工の合理化を図り、さらに全体の重量も軽減させる仕様である。上記仕様の試験体を用いて、一般財団法人建材試験センターにおいて性能評価試験を実施し、JIS規格の空気音遮断性能として遮音等級Rr-60を達成した。さらに、「界壁の遮音性能」に関する大臣認定についても同時に取得した。今後は一昨年開発したCLT複合床乾式工法による床衝撃音遮断性能(Lr-45相当(注4))と合わせて、高い遮音性能を有した中大規模の木造建築物への採用を目指す予定である。また、構造、耐火、遮音を含め、総合的に中大規模の木造建築物への適用に向けた研究開発を進めていく。 (注)1 CLTを荷重支持部材(芯材)とし、普通硬質せっこうボードと、断熱耐火パネルの積層構造の被覆により燃え止まり層を被覆した当社開発の木質耐火部材「断熱耐火λ-WOOD」を用いた仕様の壁。「1時間耐火構造」に関する大臣認定を取得済み。2 RrはJIS A 1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」及びJIS A 1419-1:2000「建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法-第1部:空気音遮断性能」の実験室で求めた遮音性能。JIS A 1419-1ではRr-30からRr-60まで規定されている。3 二重構造の場合に板同士が中空層の空気を介して共振し、低音域の遮音性能(透過損失)を低下させる現象のこと。4 Lr相当は、CLT床単体の測定がJISで規定されていないため、残響室で床単体の重量床衝撃音(標準重量衝撃源)の測定結果をJIS A 1419-2にプロットして数値化し、相当値として表現したものである。 ④ 微生物を利用したCO2変換技術の開発 CO2を原料に化成品原料であるエチレンを微生物反応によって生産する技術を開発した。エチレンは石油や石炭から生産されるのが主流であり、生産に伴い大量のCO2を排出するとされている。CO2からエチレンを生産することが可能になれば、CO2排出量の大きな削減効果が期待できる。さらに、CO2化学という産業分野の創出も期待され、持続可能な低炭素及び炭素循環型社会の実現に大きく貢献できると考えられる。今般、地球温暖化対策やSDGsの観点から「脱炭素」が世界的な潮流になっている。当社は、CO2排出量削減、低炭素及び炭素循環型社会実現に寄与し得る技術として、人工光合成・藻類利用などとは違う新しいバイオプロセスによるCCU技術開発に取り組み、鉄酸化細菌を利用してCO2を原料に主要化成品原料となるエチレンを生産する技術を開発した。CO2を炭素源として生育する鉄酸化細菌(Acidithiobacillus ferrooxidans: AF-WT)にエチレン生成酵素(EFE)遺伝子を導入し、CO2利用エチレン生産鉄酸化細菌組換え株(AF-rEF1)の構築に成功した。この組換え株(AF-rEF1)に高濃度CO2を封入し培養した結果、エチレン生産が認められた。また、鉄酸化細菌は電気培養技術(電力中央研究所特許技術)を適用することで、菌体密度を高密度化することが可能である。この電気培養技術を活用した通電型培養装置(エチレン製造装置)を製作した。通電型培養装置の電子供給による還元力の付与により、CO2の変換効率を高めることができると考えられる。電気培養には大きな電力は不要であり、CO2を原料として使用するだけでなく、生産プロセスにおいてもCO2排出量削減効果が期待できる。これら開発技術をもとに、CO2有効利用の基盤技術として特許「エチレン生産方法及びエチレン製造装置」(特開2019-154435)を出願した。現段階ではエチレンの生産性はまだ低く実用化には課題も多い。今後は高効率なエチレン生産システムの開発にさらに取り組む予定である。なお、茨城大学及び芝浦工業大学と共同研究契約を締結、さらに、一般財団法人電力中央研究所を加えた4機関で秘密保持契約を締結し、研究開発体制を強化した。 ⑤ 集合住宅に使用されている乾式二重床の音環境に関する手引書「集合住宅の音環境-乾式二重床のQ&A-」、「シリーズ建築の音環境入門 10周年記念号」を発刊 当社は信州大学名誉教授山下恭弘監修のもと、泰成株式会社、フジモリ産業株式会社、野原産業株式会社、万協株式会社及び有限会社音研の各社で組織する床衝撃音研究会として、集合住宅に使用されている乾式二重床の音環境に関する手引書「集合住宅の音環境-乾式二重床のQ&A-」及び技術者向けの小冊子「シリーズ建築の音環境入門 10周年記念号」を発刊した。「集合住宅の音環境-乾式二重床のQ&A-」は、2007年6月に音環境に対する乾式二重床の性能をQ&A形式で分かりやすく解説した手引書として初版を発刊している。今般6年ぶりに改訂を行った3版(電子データ提供)では、最新の乾式二重床に関する知見(特に環境に配慮し合板を用いない乾式二重床)、実建物における床衝撃音遮断性能のデータの追加、集合住宅の基本設計から竣工までの間に音環境上配慮すべき事項及び読者からの質問をもとに見直し等を行っている。また床衝撃音研究会では、デベロッパー、設計事務所、建設会社などの技術者向けの小冊子「シリーズ 建築の音環境入門」を2008年11月から発刊している。読者からの意見や要望を取り入れながら、「読みやすくわかりやすい内容」と「適度なボリューム」を編集方針に掲げて制作しており10周年を迎える。本シリーズでは、これまで乾式二重床についても多く取り上げてきたことから、今回の「シリーズ建築の音環境入門 10周年記念号」では、「集合住宅の音環境-乾式二重床のQ&A-」の改訂3版の概要を紹介する特集号とした。今後もこれらの発行物を集合住宅の乾式二重床に関する重要なツールとして位置付け、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提案していくと同時に、読者の評価・意見を参考にしながらより良い手引書としていくことを目指していく。 (3) 子会社 株式会社ガイアート ① 小粒径縦溝低騒音舗装(5mmTOP)の開発 大都市では低騒音舗装としてマップ工法が実施されていることが多いが、マップ工法は施工機械が大きく信号機等のある個所では施工が困難であることや、骨材飛散抵抗性が若干小さいことが懸念されている。これらのことをカバーできる低騒音舗装工法として、小粒径縦溝低騒音舗装の開発を行った。室内での検討を終了し、同社の子会社が運営する白糸ハイランドウエイで試験施工を実施して、路面騒音測定結果が目標の88dB以下となることを確認した。 ② 移動式たわみ測定装置(MWD)の実用化に関する共同研究 舗装の効率的な管理に向けて、定期的な点検・維持修繕が求められている。現在、構造的な舗装の健全度を調べるためには、FWDによるたわみ測定が一般的に用いられるが、交通規制が必要であり定期的な点検には適さない。そのため、2つの公的機関、1つの大学、同社を含む5つの民間企業で、走行しながらたわみを測定できる移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究に取り組んでいる。試作した移動式たわみ測定装置によるデータ収集、解析を白糸ハイランドウエイで実施したところ、FWDの測定結果と同様の結果が得られ、移動式たわみ測定装置が舗装の構造点検に使用できる可能性が高いことを確認した。
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5【研究開発活動】 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として2,348百万円投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。(1) 土木事業 ① 林業機械システムの自動化による省力化の研究 「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」の第4回研究提案募集で採択され、当社、住友林業株式会社、光洋機械産業株式会社及び株式会社加藤製作所は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と2年間(2018年12月~2020年3月)にわたり共同研究を行うこととしている。この共同研究では、当社の「無人化施工技術」と住友林業株式会社の「林業技術」、光洋機械産業株式会社の「プラント・仮設のエンジニアリング」並びに株式会社加藤製作所の「ホイールクレーン国内トップシェアのウインチ技術」を融合することで、架線集材システムの無人化・自動化を図り、林業分野での事業化を目指す。一方、この技術を応用して、月面での構造物や資材の運搬、設置等に有用な運搬システムを研究・開発する。本研究は、これまでの林業現場におけるエンジン駆動のウインチを使用した架線集材機の手動運転作業を、動力の電動駆動化によって精密な遠隔制御を可能にし、さらにこれを利用して架線集材の高度な自動運転の実現を目指すものである。また、これにより、集材作業の省力化・効率化を行い、作業環境の改善と生産性の向上を図る。集材機の概念設計が完了しており、今後は詳細設計、試作機の製作、林業現場での導入試験を行い、研究・開発を進めていく予定である。 ② AI制御による不整地運搬車(クローラキャリア)の自動走行技術の開発 一般的な土木工事において、土砂運搬作業は運搬経路の往復という単調な繰返し作業となる。そのため、運転者の疲労蓄積や集中力の低下による、走路逸脱や人・物への接触等の事故発生の危険性がある。当社では、運転者の労務負担の軽減を図るため、不整地運搬車の自動走行技術を開発した。当該技術は無人化施工をベースとしており、遠隔操作室からの遠隔操作による走行時の経路をGPSや傾斜計といったセンサーにより車載コンピュータに記憶させる「教示運転」を実施した後、教示運転で記憶した走行経路(教示経路)を追従しながら不整地運搬車を自動走行させる技術である。当該技術は、自動走行車両の管理者1名を配置し、複数台の車両を自動走行させることにより生産性向上に寄与するものである。当社は、さらなる効率化と安全性の向上を目指し、AIによる自動走行技術を開発した。本開発は、教示運転の実施までは先述の自動走行技術と同様であるが、その教示経路と複数車両の走行位置関係をAIが分析することによって運行計画パターンが生成され、操作盤のスタートスイッチを押すだけで、複数台の不整地運搬車は常時AIによって進行・停止の制御が行われる。これにより自動走行管理者が存在しなくとも、車両同士が衝突することなく安全かつ効率的に自動走行が実施されるようになった。今後は、AI制御技術をさらに向上させるとともに、安全面や運用方法の検討を十分に行い、本格的な実運用に向けていく。 ③ 高速道路リニューアルプロジェクトの主力商品「コッター床版工法」 NEXCO各社が進める高速道路リニューアルプロジェクト(総事業費約3兆円)において、橋梁床版取替工事は、その50%強(事業費約1兆6,500億円)を占める同プロジェクトの主要工事である。工事では、高耐久性に配慮した構造へ更新することはもちろん、通行規制に伴う社会的影響を軽減し、利用者の利便性をできる限り損なわない工法が求められている。これらを踏まえ、急速施工、省人化、高品質化、取替性の改善など生産性の向上を目的に、コッター式継手を用いた橋梁用プレキャストPC床版(コッター床版)を開発した。当該工法は、従来工法の約半分の工期と人員で作業が可能であるほか、現場作業が単純なため熟練工を必要とせず、さらに床版の99%をプレキャスト化することで品質向上にも寄与する、他に類を見ない床版取替工法である。また、床版の耐久性を審査する輪荷重走行疲労試験においては、100年相当の耐久性を確認済みで、当社の主力商品として今後の展開が期待されている。 ④ AIによるコンクリート骨材の粒径・岩種判別技術の研究 一般的に、コンクリートは細骨材と粗骨材を用いて作られるが、土木のコンクリート構造物、特にダムコンクリートでは、粒径の大きな粗骨材を使用するため骨材は多種に及ぶ。一方、コンクリートの製造設備では、搬入した骨材を混じることなく所定の貯蔵ビンに投入する方法が大きな課題であった。そこで、搬入時にダンプトラック上の骨材を人間の眼と同じようにステレオカメラで確認し、画像処理技術によって粒径を判別する骨材粒径判別システムを新たに開発した後、切目川ダム(和歌山県)に導入して良好な結果を得た(平成29年度ダム工学会技術開発賞を受賞)。切目川ダムで撮影した数千枚の骨材の写真画像を利用し、AIによる骨材判別技術について研究を行った。その結果、信頼性の高いDeep Learningによる学習モデルを構築することで、骨材の判別率をステレオカメラによる場合の98.6%から99.8%に向上することができた。また、カラー画像を用いて岩種の異なる細骨材、粗骨材の判別も試み、こちらも判別率99.6%の判別率を達成できた。今後は、当AI技術を実際のコンクリート製造プラントに設置し、実証実験を行う予定である。 ⑤ 斜面対策工事に特化したのり面CIMの開発 現在、建設生産システムの業務効率化や高度化を目指してCIMの導入が活発化している。その中で、斜面対策工事では他工種と比較するとCIMが適用されている事例が少なく、国土交通省によるCIM導入ガイドライン(案)においても斜面対策工は示されていない。しかしながら、斜面対策工においてもCIMの導入は重要であり、施工管理の情報を点検に用いるべく維持管理段階へ引き継ぐことが必要で、CIMを導入することにより、業務効率化や高度化が期待される。これまで斜面対策工でCIMの事例が少ない理由の1つとして、長大のり面の場合は、対策工の実施数量が多く、原位置の地形・地質条件等により仕様変更が生じるなど、データの入力作業が膨大かつ煩雑であることが挙げられる。そこで当社は、斜面対策工事に特化した「のり面CIM」を開発することにより、データ入力作業の効率化を図り、斜面対策工における専用システムを用いたCIMを初めて実施した。このシステムは、斜面対策工事で実施するグラウンドアンカー工や鉄筋挿入工などに対し、その設置場所や諸元、地質情報、施工日などの属性情報を付与し、3次元空間に配置させるものである。なお本システムでは、入力作業の負担を軽減させるため、表計算ソフトにて整理した施工実績のデータベースを読み取る仕様となっている。 (2) 建築事業 ① 木造CLT壁でJIS最高の遮音等級を達成 中大規模の木造建築を念頭に、CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)(注1)壁単体での遮音実験を行い、CLT90㎜とCLT150㎜をそれぞれ用いた2種類の複合壁において、ともにJIS最高の遮音等級となるRr(注2)-60を達成した。今後、需要が高まると考えられる中大規模の木造建築分野において、建物の主要構造部である壁に、木質系材料であるCLT壁を用いることが想定される。しかし、共同住宅などにこのCLT壁を使用する場合、遮音性能が低くなるなどの技術的に解決すべき課題があった。今回の開発では、CLT壁近傍に遮音効果を高める構成材料(石膏ボード、断熱耐火パネル、遮音シート等)を組み合わせて用い、壁全体としての遮音性能を高めた。同時に、ふかし壁で比重の異なる材料を積層させるなどして、低音域の共鳴透過を低減させた。また、木造建築における住戸間のCLT壁など主要構造部は耐火性能を確保する必要があるが、本開発では、「燃え止まり層(CLT90㎜)」と「燃え代層(CLT150㎜)」の両方の耐火仕様においても、壁単体として遮音等級Rr-60を達成した。木造であるCLT壁は、壁面以外からの音の伝搬経路も想定されるため、壁・床・梁全体での遮音性能が重要となる。今後、当社で開発を進めているCLT遮音床(乾式工法による重量床衝撃音等の対策床)と、主要構造部(床・梁・壁)の耐火構造に基づき、CLT壁をこの床と梁の上に設置し、壁の空気音遮断性能に関する大臣認定取得を目指す予定である。 (注)1 複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が直交するように積層させて作った木質構造パネル。2 住宅の品質確保の促進等に関する法律で規定されている壁単体の遮音性能値でJIS A 1419-1(空気音遮断性能)の等級値。 ② 木造CLT床で高い床衝撃音遮断性能を達成 中大規模の木造建築への採用を念頭に、CLT床及び付加材(注1)の組み合わせによる床材を開発し、遮音実験において、重量床衝撃音(標準重量衝撃源)でLr-45相当(注2)の高い遮音性能を達成した。当社では、すでにCLT壁単体でJIS最高の遮音等級Rr-60を達成し発表しているが、木造建築においては、壁面以外からの音の伝搬経路も想定されるため、壁単体だけでなく、壁・床・梁全体での遮音性能が重要であるとして、継続して開発を進めてきた。共同住宅などの床には、高い水準での重量床衝撃音の遮断性能が求められるが、比重の小さいCLT単体では十分な遮音性能が得られない。本開発では、重量床衝撃音の遮断性能の向上に重点を置きながら、施工性と軽量性にも優れた仕様にしており、1)210㎜CLT床の上に遮音シートを組み込んだALCを設置する、2)重量床衝撃音の対策として高剛性高密度(注3)の2重床(注4)を設置する、3)防振ゴムの形状を工夫した防振ハンガーによる防振天井を設置する、などの遮音対策を行っている。遮音性能の評価は、標準重量衝撃源による重量床衝撃音の測定結果をJIS A 1419-2(等級曲線)にプロットすることで、簡易的にLr相当として数値化した。今後は、CLT床を150㎜にした場合においても様々な付加材を組み合わせ、さらに高い遮音性能となる仕様の検討を予定している。同時に、床の遮音性能は、床単体だけではなく壁や梁等の納まりを考慮する必要性があることから、先に発表したCLT壁の遮音性能(Rr-60)と、現在開発を進めている主要構造部(柱・梁・床・壁)の耐火性能を組み合わせ、実際の建物に適用可能な仕様を目指していく。 (注)1 CLT床の上に遮音シート付ALC、高剛性高密度となる2重床、CLTの下に断熱パネルと石膏ボードとの積層構造による燃え止まり層、防振天井を示す。2 CLT床単体の測定がJISで規定されていないため、残響室で床単体の重量床衝撃音(標準重量衝撃原)の測定結果をJIS A 1419-2にプロットして数値化し、相当値として表現したもの。3 2重床の構成としてパーティクルボードとフローリングの間の仕様を比重の高いアスファルトシートを合板で挟み込むサンドイッチ構成にすることで、高い剛性と高い密度の両方を確保したもの。4 支持脚と防振システム根太を採用し、側面壁と巾木下部は約3㎜の隙間を設けている。 ③ 床コンクリートのひび割れ自動計測ロボットを開発 自動走行して建物の床面を写真撮影し、床コンクリートのひび割れ等を自動検出する「ひび割れ自動計測ロボット」を開発した。このロボットの特徴として、1)計測作業の時間短縮、2)計測員の負担軽減とコスト低減、3)広範囲を一人で計測することが可能、4)自動計測中のモニター確認が可能、5)手動(手押し)計測も可能、6)計測精度が向上、などの点がある。従来の方法では非常に多くの手間と時間を必要としていた。老朽化が進む構造物の増加に伴い、検査技術の1つとして、ひび割れ等を計測する技術の開発並びに改良は、ますます重要なものとなってきている。今回の開発も、こうした課題を踏まえて開発したものである。「ひび割れ自動計測ロボット」は、自動走行台車にカメラを搭載し、床面を連続撮影するものであり、撮影した写真は走行時に自動取得した位置データと照合し、自動で配置・結合され合成された画像データから「ひび割れ自動検出・図化システム」がひび割れ幅やひび割れ長さを自動検出し、正確な位置データを持つひび割れ図のCADデータとして出力できる。これを当該位置の構造図のCADデータと重ね合わせることにより、「ひび割れ計測図」として検査報告書へ記載することができる。当面は、当社の現場に限定して活用し、実際の現場での運用を通じてさらなる改良改造を行い、将来的には商品化の可能性も視野に入れており、床面以外への応用も検討している。 ④ 「木造CLT壁の2時間耐火構造」の大臣認定取得 中大規模の木造建築を念頭に、薄い燃え止まり層と様々な表面材が選択可能となる仕様でCLT壁の1時間及び2時間耐火構造の大臣認定を取得した。芯材(CLT)の周囲に設置する「燃え止まり層(注)」を、石膏ボードと断熱耐火パネルを積層する当社独自の仕様で、一般工法である石膏ボードだけの仕様よりもその厚さを薄くした。またこのCLT壁は、耐火構造に加え、仕上げの表面材として様々な仕様の選択が可能である。CLT壁を木造共同住宅の主要構造部となる壁に使用するには、4階までの建物が1時間耐火構造、5階建て以上の建物が2時間耐火構造であることが必要となる。主要構造部(柱・梁・床・壁)の耐火構造は、芯材となる木材の周囲に「燃え止まり層」を設けて耐火性能を確保する。一般的にはこの燃え止まり層は「石膏ボード」が使用されるが、石膏ボードは、一度加熱され性質が変化すると耐火性能の低下とともに崩壊しやすい状況となる。そこで、本開発では石膏ボードに加え、熱遮断性能が高く、崩壊防止に寄与する断熱耐火パネルを石膏ボードの間に組込むことにより、耐火性能の確保と同時に壁の厚さを薄くすることに成功した。さらに、燃え止まり層の外側(室内側)に設置する表面材は、様々な仕様の選択が可能であり、例えば、20㎜以下の天然木、壁紙、塩ビシート、塗装並びにふかし壁を念頭にした表面材を設置しない仕様などを選べるため、お客様及び設計者のニーズに対応することができる。表面材を天然木とした場合の燃え止まり層と表面材との合計厚さは、最も薄い場合、1時間耐火構造で41㎜、2時間耐火構造で63㎜までスリム化が可能となり、室内の利用可能な空間の拡大に寄与している。今後、他の主要構造部(柱、梁、床)の1~3時間耐火構造の大臣認定について、2年以内の取得を目指しており、2018年7月に発表したCLT遮音壁(Rr-60)及びCLT遮音床(Lr-45相当)と併せて、耐火と遮音の両方に優れた中大規模の木造建築を実現するために、さらなる研究開発を進めてゆく。 (注) 燃え止まり層とは、表面材と芯材(CLT)との間にある燃焼を停止させる層。その基本性能の確認では、耐火加熱中の芯材(CLT)の表面温度が250℃未満であることや、芯材表面が炭化しない(焦げていない)ことなどが必要とされる。 (3) 子会社 株式会社ガイアート ① 縦溝粗面コンクリート舗装の開発 縦溝粗面アスファルトコンクリートである同社製品のFFPは、開発後、順調に施工量を増やしていることから、コンクリート舗装にも縦溝を設ける工法の開発を行ってきた。プレキャストコンクリートによる工法の研究については、縦溝の形状及び舗装厚の検討を実施した。現場打ちコンクリートによる工法の研究については、縦溝成型方法及びすべり抵抗確保の検討を実施した。 ② 移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究 舗装の効率的な管理に向けて、定期的な点検・維持修繕が求められている。現在、構造的な舗装の健全度を調べるためには、FWDによるたわみ測定が一般的に用いられるが、交通規制が必要であり定期的な点検には適さない。そのため、2つの公的機関、1つの大学、5つの民間企業で、移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究に取り組んでおり、現在、試作車によるデータ収集、解析を実施しているところである。 ③ FFPの小粒径化 東京都では、低騒音舗装としてマップ舗装が実施されている。しかし、施工機械が大きく信号機等のある箇所では施工が困難であることや、骨材飛散抵抗性が若干小さいことが懸念されている。そこで、これらの欠点をカバーできる低騒音舗装工法として、5mmTOPFFPの開発を開始した。室内試験での検討は終了し、今後は同社の子会社である株式会社白糸ハイランドウエイでの試験施工を予定している。 ④ 新GRDマットの開発 GRDマットはリフレクションクラック防止に有効で、これまでの販売は堅調であったが、芯材がありリサイクルが困難との理由から販売量が減少傾向にある。これを解消するために芯材のない新しい新GRDマットの研究開発に着手した。室内での検証はほぼ終了し、今後は株式会社白糸ハイランドウエイでの試験施工を予定している。
FY2018|5,504 文字
5【研究開発活動】 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として19億円を投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。(1) 土木事業 ① サンライズビット工法の開発 近年のシールド工事は長距離化傾向にあり、カッタービット交換のニーズも高まっている。掘削の途中でカッタービットを交換する場合、これまでは地盤改良を行い作業員が地中で交換作業を行っていたが、これは事故の危険を伴うと同時に膨大な日数と工事費を要する作業であった。これらの課題を解決するため、ビット交換箇所に作業員が入ることなく遠隔操作で交換作業を行うことが可能なサンライズビット工法を開発した。本工法は、シールド機のスポーク内に複数のカッタービットを有する回転体を装備しておき、油圧ジャッキで回転させることによりビット交換を行うものであり、安全かつ工程に影響を及ぼすことなくビット交換作業を行う事を可能とした。本工法は以下の条件に適用可能である。 1)延長10km程度の超長距離掘進 2)土砂地盤から岩盤までの複合地盤 3)巨礫地盤などビットの摩耗が激しい地盤 4)地盤改良が困難な大深度など。また、回転体に異なる種類のカッタービットを装備しておくことにより、発進時の仮壁切削や地中障害物の切削などに使い分ける事も可能である。今後、様々なシールド工事に提案し普及を図る予定である。 ② 山岳トンネルの大量湧水を減水する「RPG(Ring-Post-Grouting)工法」の開発 北薩トンネルは、“高濃度のヒ素”を含む大量湧水に見舞われ、この湧水を大幅に低減させる必要があることから、リング状の地山改良ゾーンを構築するポストグラウチング「RPG工法」を開発した。 トンネルの止水を目的としたポストグラウチングの設計手法は、これまでに確立されておらず、変形・応力と浸透流の連成解析を用いて、トンネルの安定性や水位挙動の予測、地山改良の仕様を決定する手法を確立した。地山の目標改良透水係数4μcm/sを確実に達成するため、従来のグラウチング材料よりも浸透性に優れた「極超微粒子セメント」を岩盤亀裂への注入に初めて採用した。また、地山の透水係数を三次元ルジオンマップによる見える化を図るとともに、ダムのグラウチング技術の応用により、岩盤の性状に応じた最適な注入量や方法を選定し、経済性を向上させた。今回湧水を減水制御できる技術が確立されたことにより、地下水問題を抱える山岳トンネルに対して、合理的な対策として活用できることとなった。 ③ 拡張型高機能遠隔操作室 人の立ち入りが危険な災害現場に導入される無人化施工技術は、難易度の高い現場であるほど設備が複雑化し、施工開始までの準備期間が長くなる。災害現場では時間の経過とともに状況が大きく変化するため、無人化設備構築の時間をいかに短縮して、迅速に工事に着手するかが課題となっていた。当社では、この問題を解決するために、IP化した遠隔操作機器類を活用するネットワーク対応型無人化施工システムを開発した(第7回ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞)。その中核として高機能遠隔操作室を導入し、阿蘇大橋地区斜面防災対策工事に導入、工事着手後3日目に無人化施工開始という効果を発揮した。当工事に代表されるような近年の災害は、規模の拡大化や複雑化する傾向にあり、遠隔操作で同時に稼働させる建設機械の台数の拡大に柔軟に対応できることが求められている。そこでこの課題を解決するために拡張型高機能遠隔操作室を開発した。当開発の特徴として、高機能遠隔操作室の機能に加え、ハウスの3棟連結と制御対象建設機械の増減を可能にする拡張性、カメラオペレータの操作卓を自在に配置可能とするなどの柔軟性、さらにはネットワークの安定化・ネットワーク管理機能の充実化による信頼性を組み込んだ。当開発は現場への実投入だけでなく、技術研究所(茨城県つくば市)に新設した屋外実験ヤードにおいて、遠隔操作式建設機械の操作訓練や、建設機械の自動走行などのICT建設技術の開発に活用する。 (2) 建築事業 ① 「木造建築の3時間耐火」にめど 中大規模の木造建築を念頭に3時間耐火構造の基礎実験を行い、基本性能の確認を行った。その結果、3時間耐火構造の基本性能を確保するとともに、従来よりも「燃え止まり層 (注1)」を薄くし、建物の主要構造部である柱(試験体)の断面を小さくすることに成功した。近年建築物の木造化ニーズは高まりをみせており、平成22年10月には、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されるなど、住宅以外の分野にも拡がっている。一方、法的規制においては、15階建て以上の木造建築物を建築するためには、柱と梁は3時間耐火構造が必要となる。こうした背景を踏まえて、当社では木造建築を新しい市場と捉え、3時間耐火構造の基本性能確保に向けた開発を行ってきた。その結果、燃え止まり層に「石膏ボード」と「断熱耐火パネル」を積層することで、一般に使用されている石膏ボードだけの積層と比較して、燃え止まり層を薄くすることを考案し、民間耐火炉の試験において、1時間耐火試験で3層(37.5㎜)、3時間耐火試験で6層(75.0㎜)の燃え止まり層により、柱芯(集成材)の表面温度が一般的に炭化しない(焦げない)とされる250℃未満となる結果を得た。また、試験後の断面確認でも柱芯(集成材)の表面が炭化していないことを確認した。柱断面を小さくできることは、建物重量の削減、建設費の低減、さらには室内空間の利用可能な床面積拡大にも寄与することができる。今後は、柱(集成材)の1時間耐火での大臣認定取得(柱の耐火構造)に向けて公的機関による試験を実施する。また、今回開発した積層方式は、柱のほか、梁、壁、床の耐火仕様としても利用できることから、主要構造部(梁、壁、床)の大臣認定を目指すとともに、併せて共同住宅向けの「CLT(注2)遮音壁」、「CLT遮音床」の開発も検討していく。 (注)1 仕上材と芯材(集成材等)との間にある燃焼を停止させる層。その基本性能の確認では、耐火加熱中の芯材表面温度が250℃未満であることや、芯材表面が炭化して(焦げて)いないことなどが必要とされる。2 CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)は、複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が直交するように積層させて作った木質構造パネル。 ② 二重管式既製コンクリート杭工法「ヘッドギアパイル工法」を開発 既製コンクリート杭の耐震安全性を向上させるヘッドギアパイル工法を開発した。本工法は、建物を支える既製コンクリート杭の頭部に直径の大きい鋼管を設置し、二重管式構造とすることで地震力に対する抵抗性を高めることができる。主として、表層地盤に軟弱な沖積粘性土が堆積する地盤条件で、物流施設、共同住宅、事務所ビルなどの中低層建物に対して効果的である。特に大きな鉛直支持力を確保できる既製コンクリート杭工法と組み合わせることにより合理的な設計が可能になり、場所打ちコンクリート杭や大径の外殻鋼管付きコンクリート杭(SC杭)を用いる場合に比べて杭のコストダウンを図ることができる。今般、実物大の杭を用いた水平載荷試験により、既製コンクリート杭と鋼管の水平荷重の分担を明らかにするとともに、従来の既製杭工事に用いられる施工機械で必要な精度を確保できることを確認した。なお、この二重管部の構造安全性評価の妥当性について、一般財団法人日本建築センターから工法評定(BCJ評定-FD0565-01)を取得している。本案件は、西松建設株式会社、株式会社安藤・間、株式会社トーヨーアサノ及び三谷セキサン株式会社との共同開発である。 ③ Virtual Reality(VR)を活用した風環境可視化技術の開発 Virtual Reality(VR)を活用した風環境可視化技術を開発した。本技術は、流体解析とVR技術を組み合わせ、本来は目に見えない3次元の風の流れをVR空間で可視化するものである。建物建設によって風環境が変化する、いわゆるビル風問題は、設計者や事業主、居住者にとって身近な問題となっている。一般に、状況評価や対策検討においては、実測や風洞実験、流体解析結果の一部を切り出した紙媒体(2次元情報)を用いるため、3次元の複雑な風の流れの全体像把握が困難なケースもあり、対策立案が容易ではない場合があった。今回の開発は、目に見えない複雑な風の流れをVR空間で可視化し、3次元でリアルに捉えることができるため、より優れたビル風対策の立案が可能となった。また、特に専門技術を持たない人でも視覚的に風の流れを把握できるため、設計者や顧客へのプレゼンテーション時に合意形成が容易となるほか、強風による注意喚起ツールとしても活用が期待できる。今後は観測データと組み合わせたリアルタイムな風環境の可視化、Augmented Reality(AR)やMixed Reality(MR)への拡張、オンライン(WAN)化等の機能追加を重ねてさまざまなケースで本技術を適用できるよう検討していく予定である。 ④ 新型「小型音カメラ」の開発 音を可視化して画像に表示する音カメラ(注)技術を使った小型リアルタイム音カメラをさらに小型軽量化し、操作性と可搬性を向上させた新型「小型音カメラ」を開発した。本体部分の大きさは体積比で半分以下となり、フルハイビジョン(FHD)に対応した高画質画像で音を視覚化できるようにした。また、電源装置の設計を見直し、既製品の小型バッテリを直接使用できるようになった。このためバッテリ駆動では概ね3時間の連続計測が可能となり、電源の確保が難しかった山間部や高所、狭い設備室や車両室内等の小さな空間でも使用できる。なお、計測時にデータ記録とリアルタイムの結果表示が同時に機能し、その場で音の情報確認ができる特性は保持している。今後は音を可視化するツールとして、地方自治体や設計事務所、コンサルティング会社などへの積極的な提案、また、建設物の音響調査だけでなく、大学との共同研究や音楽教育への応用など、幅広く活用していく。 (注)音の発生方向、音の大きさ(音圧レベル:dB)、音の高さ(周波数:Hz)を特定し、デジタルカメラから取り込んだ画像上にそれらを表示するもの。平成13年に当社、中部電力株式会社及び山下恭弘信州大学名誉教授と共同で開発している。 ⑤ 在宅自立歩行支援器「フローラ・テンダー」を開発 在宅介護等における自立生活支援型の歩行器「フローラ・テンダー」を開発した。本開発は、今後の高齢化社会の進展に伴う在宅医療や在宅介護の重要性を見据えて、在宅での、家族に頼らない、自立生活支援のための開発・環境整備が極めて重要であるとの認識から、以前に開発した「体重免荷式歩行支援機器フローラ(平成13年11月プレス発表)」を在宅介護・自立生活支援の観点から見直し、時代のニーズにマッチした新たな開発と改良を行ったものである。本歩行器は屋内専用であり、立ち上がり介助機能を有し、転倒の心配も無く、安心して歩くことができる。また、立ち上がり介助に必要なスリングには、「ジーンズタイプ(スリング・ジーンズ)」を新たに開発し、普通のズボンとして、日常生活でもまったく違和感なく着用できることも特徴である。さらに、本歩行器の効果を最大限に活かしていただくため、グループ会社のケーアンドイー株式会社及び株式会社ファテックが、お客様のご要望に応じて、使用される方の身体や生活の状況に応じたベストな住環境を提案していく。 (3) 子会社 株式会社ガイアート ① 縦溝粗面コンクリート舗装の開発 縦溝粗面アスファルトコンクリートである当社製品のFFPは、開発後、順調に施工量を増やしていることから、コンクリート舗装にも縦溝を設ける工法の開発に着手した。本年度はプレキャストコンクリートと現場打ちコンクリートの両工法について検討を開始した。 ② 橋舗装工法の開発 社会インフラの老朽化、とりわけ橋梁の掛け替えが急務となる情勢を受け、急速施工が可能なプレキャスト床版掛け替え工法が注目を集めている。その工法に適した新たな橋面舗装の開発を行った。成果を技術資料にとりまとめ、現場への展開を図った。 ③ 移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究 舗装の効率的な管理に向けて、定期的な点検・維持修繕が求められている。現在、構造的な舗装の健全度を調べるためには、FWDによるたわみ測定が一般的に用いられるが、交通規制が必要で、定期的な点検には適さない。そこで、移動しながらたわみを測定する移動式たわみ測定装置の開発を平成28年度~平成30年度にかけて、2つの公的機関、1つの大学、5つの民間企業で、移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究を実施している。本年度は装置の試作機が完成し、来年度にデータ収集と解析を進める予定である。
FY2017|5,373 文字
6【研究開発活動】 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として17億円を投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は、次のとおりである。(1) 土木事業 ① 遠隔吹付け機の開発 導入後30年を経た山岳工法(NATM)では、主要な支保部材である吹付けコンクリートの高強度化、低粉塵化の技術開発が行われ、坑内環境は改善してきている。しかし、圧縮空気を利用した吹付け作業では粉塵の発生をなくすことは困難であり、作業員の健康面や労働負担が大きな課題となっている。労働負荷を大幅に低減するため、無人化施工技術を活用し、危険な切羽側での吹付け作業位置を環境の良い操作室に移動することで、安定した吹付け作業を行うことができる遠隔吹付けシステムを開発した。遠隔吹付け機にはカメラを3台設置し、切羽から離れた場所に設置した操作室のモニタを見ながら、吹付け作業を行う。実際のトンネル現場において試験施工を行い、実現性を確認した。吹付け作業時に切羽から作業員がいなくなれば、粉塵発生量が問題とならないため、大容量吹付けが可能となり、施工効率の向上も可能となる。今後は積極的に遠隔吹付けシステムを実現場に投入する。なお、この技術は西尾レントオール株式会社との共同開発である。 ② 注水併用エアクーリング工法の開発 コンクリート構造物における品質確保として、ひび割れ抑制対策は重要である。特に、施工時の水和熱による温度ひび割れは、ひび割れ幅も大きく、構造物の耐久性に大きく影響を及ぼす。対策の一つとして、施工後のコンクリートのピーク温度を下げるクーリング工法があるが、今回、中規模の構造物(函渠や橋脚など)を対象として、従来のエアクーリング工法(冷却媒体として空気が主)に注水を併用した新しいクーリング工法(注水併用エアクーリング工法)を開発し、その適用性について確認した。本工法は、送風しているクーリング管中に水をミスト状にして少量滴下し、その気化熱を利用して冷媒となる空気温度を低下させ、送風による冷却効果を高めたものである。現在までに、函渠構造物や橋脚での施工事例やトンネル覆工での試験施工を実施し効果を確認済みである。今後も施工実績を増やして、データを増やすとともに実用化を図っていく予定である。 ③ 高難度災害適用へのネットワーク対応型無人化施工技術 雲仙普賢岳の災害対策以来、長年、無人化施工技術の開発、高度化に取り組んできた。その成果が阿蘇大橋地区での緊急防災対策で大いに効果を発揮した。昨年、熊本地震により阿蘇大橋地区では大規模な斜面崩壊が発生し、不安定土砂除去、土留盛土築堤等の緊急対策工事を行うこととしたが、余震や降雨等によりさらなる崩壊が懸念された。このため、全工程無人化とし、そのうえで最大限の効率を追求することとした。その中核として導入したのがネットワーク対応型無人化施工システムである。これは建設機械の操作、画像、施工データを一括してIP(インターネット・プロトコル)化し、光ファイバケーブルや無線LANを使用して伝送するシステムで、現場状況に適応させて開発した。また、その技術に対応した新技術開発を並行して行い、CAN-LAN変換器を適用したICT建設機械の導入、操作映像の向上に高精細画像伝送システムを導入するなどIoT、ICTを高度に活用したシステムを現場状況に合わせて組合せることができる。また、無人化施工システムの迅速な立上げを実現するために、予め遠隔操作室のシステム機器設置と設定が完了した高機能遠隔操作室を開発し、無人化施工の早期立上げを実現した。その災害対応における総合力はその成果とともに高く評価されている。 (2) 建築事業 ① コンクリートの乾燥収縮ひずみ制御を確立 コンクリートの乾燥収縮ひずみを低減することのできる材料をコンクリートに使用し、その量を調整することによって、乾燥収縮ひずみを通常より小さく(0~800μの範囲)制御できる技術を確立した。また、その効果検証のため、収縮ゼロから通常のコンクリートまでの5種類の調合を用い、壁及びデッキスラブの実大試験体実験を実施した。コンクリート打設後1年を経過しているが、対策を施した試験体については、乾燥収縮ひび割れは発生していない。コンクリートの乾燥による収縮ひび割れは、建築物の耐久性と美観に大きく影響するため、その制御については様々な取り組みが行われており、社会的要請も年々高まっている。最近では、日本建築学会からの仕様書・同解説及び指針等に従った材料・調合面での対策として、石灰石粗骨材の使用や収縮低減剤、膨張材を適用する事例が多くみられるが、収縮低減剤と膨張材の併用やセメント種類が異なる場合の影響など、不明な点が多く残されている。このような背景から、収縮低減剤と膨張材の調合見直しやセメント種類による影響の確認実験を実施することにより、「収縮ゼロコンクリート(乾燥収縮ひずみを0~100μまで低減)」の使用によるコンクリートの乾燥収縮ひずみを0~800μの範囲で制御できる技術を確立した。1㎥当たりの価格は、普通コンクリートと比較して約1.3倍から2.0倍となり、予算や要求性能レベルに応じた調合方法を選定できる。この技術により、要求性能とコストを考慮しつつ、長期にわたり性能や美観を維持した高品質のコンクリートの提供が可能であり、工場・倉庫などの床、打放し仕上げのRC造施設などの物件で展開していく。また、平成29年度まで、試験体の観察や解析を継続し、乾燥収縮ひび割れの制御技術を検証していく。なお、本案件は当社、株式会社安藤・間、佐藤工業株式会社、戸田建設株式会社、西松建設株式会社、株式会社フジタ及び前田建設工業株式会社の建設7社による共同開発である。 ② 風を効果的に低減するパネルを開発 防風パネルや建物の目隠しパネルなど、屋外の風の影響を受けやすい設置物に作用する風力を低減する技術を開発した。近年、大型台風や急速に発達した低気圧に伴う強風により、工作物や建物外装材の被害が増加している。これは、建物の屋上や隅角部付近に設置される目隠しパネル、広告塔や看板、マンションのバルコニー隔て板や手摺ガラスに作用する大きな風力が原因である。対策として、パネル部材や取り付けの強度を増す方法があるが、コストアップに繋がっていた。今般シミュレーションや風洞実験を繰り返してパネルに作用する風力を詳細に把握し、パネルの形状に工夫を重ねた結果、効果的に風力を低減できるパネルを考案した。パネルに作用する風力低減方法については、敢えて風がパネルを通り抜ける構造とし、さらに部材形状を風が各部材間を滑らかに流れて部材に作用する風力が小さくなる形状とした。また、パネルの機能維持に配慮し奥の景色が透けて見えない構造にし、同時にパネル表面に文字や絵などを描けるようにした。風力低減効果については、正面風の場合、風力低減パネルに作用する風力は、平板に作用する風力に比べてほぼ半減、風力低減パネルの背後ではさらに風速が半分以下に減少するため、パネル背後に設置する物体に作用する風力は、パネルを設置しない場合に比べて1/4程度に減少すると推測できる。この技術は土木・建築分野で採用される防風パネル、目隠しパネルのほか、広告塔や看板、バルコニー手摺や隔て板など、屋外の風の影響を受けやすい設置物に幅広く適用が可能である。今後、試作品による風騒音の検討も重ねていきながら、2年後の製品化を目指す。 ③ 国内メーカーでは初めて乾式浮床での「石貼り仕様」を開発 ―床衝撃音遮断性能に優れた「乾式浮床ベースケア」― 首都圏(特に東京都)や九州圏では、共同住宅は乾式二重床で設計されることが圧倒的に多い。しかしながら、京都市、川崎市及び横浜市エリアなどの高さ制限のある地域では、階高を抑えるために直貼り床で計画されることが多くなる。こうしたことを踏まえ、当社は床仕上げ高さを抑えても床衝撃音遮断性能が高く、転倒時衝撃力が小さい「乾式浮床ベースケア」を開発、商品化してきた。一般的に、共同住宅に用いられる直貼り床の厚みは13㎜程度であり、仕上げ材に天然大理石(無垢大理石)やタイルを用いると、その薄さがひび割れや欠けなどの破損の原因となる恐れがあり、直床貼りで「高級感のある石貼り仕上げ」という要望に応えられなかった。こうしたニーズに対応するため、当社は「乾式浮床ベースケア」の床衝撃音遮断性能や転倒時衝撃力性能を損なうことなく、直貼り床でも石やタイルを施工できる「乾式浮床ベースケア石貼り仕様」を開発した。乾式パネルの上に2枚の下地材(ガラス繊維不織布入りせっこう板と針葉樹合板)を用いることで、石のひび割れや欠けを防ぎながら床仕上げ高さも抑えて、優れた床衝撃音遮断性能を実現した。また、本仕様の転倒時衝撃力は、JIS規格の推奨値である100G以下を確保しており、居室内でも石貼り仕様で施工することができる。当社では、過去に発表した「乾式浮床ベースケア」の内装用・土足用に続き、新たに「石貼り仕様」を商品ラインナップに加えて発注者や設計事務所などに積極的に提案し、多様な要望に応えたいと考えている。なお、本案件は大建工業株式会社及び野原産業株式会社との共同開発である。 ④ 福島産土着藻類による燃料生産実証事業を開始 当社を含む会員8社(注)が参画する一般社団法人藻類産業創成コンソーシアムは、経済産業省資源エネルギー庁の平成28年度「微細藻類燃料生産実証事業費補助金」の採択を受け、福島県の土着藻類による燃料生産実証事業を開始した。同コンソーシアムは平成25年10月より福島県震災復興事業「福島県再生可能エネルギー次世代技術開発事業」を受託し、福島県の土着藻類の大量培養から燃料化までの一連の流れを確立し、福島県南相馬市に実証実験施設「藻類バイオマス生産開発拠点」を設置している。今後は約3年間で得られたノウハウや設備を活用し、排熱・排ガス(CO₂)、下水を利用した土着藻類バイオマスの高い生産量の実現を図る。また、脱水、濃縮・抽出過程の効率化や抽出後の残渣再資源化の検討・実施実験を行い、エネルギーや生産コスト(藻類燃料単価)の削減を目指し、燃料生産を実証していく。 (注)当社、株式会社相双環境整備センター、藻バイオテクノロジーズ株式会社、高砂熱学工業株式会社、国立大学法人筑波大学、株式会社富士通システムズ・ウエスト、ヴェオリア・ジェネッツ株式会社、三菱化工機株式会社 ⑤ 「シリーズ建築の音環境入門100号記念号」を刊行 当社らで構成する床衝撃音研究会(注)は、このたび山下恭弘信州大学名誉教授監修のもと「シリーズ建築の音環境入門100号記念号」を刊行した。床衝撃音研究会では、平成20年からデベロッパーや設計事務所、建設会社などの技術者向けに小冊子「建築の音環境入門」をシリーズ化して発刊してきた。本号では、これまで要望の多かった「実務者のための建築音響設計法」を取り上げた。建物の設計や施工に携わる技術者が、音環境についての疑問点のあるときに本号を見て、必要に応じてどのような音環境対策を行ったら良いかなどをわかりやすい構成で解説した。今後も引き続き共同住宅の音環境に関する重要なツールとして位置づけ、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提供していく予定である。 (注)共同住宅のより良い音環境の研究を目的として、平成18年に当社、有限会社泰成電機工業、フジモリ産業株式会社、野原産業株式会社、万協株式会社及び有限会社音研が設立した組織。 (3) 子会社 株式会社ガイアート ① 橋舗装工法の開発 社会インフラの老朽化、とりわけ橋梁の掛け替えが急務となる情勢を受け、急速施工が可能なプレキャスト床版掛け替え工法が注目を集めており、その工法に適した新たな橋面舗装の開発を行っている。室内試験でプレキャスト床版ジョイント部の動きに追従できるよう開発した特殊基層混合物が、現場で施工可能かを試験施工で確認した。また、ジョイント部の動きの影響を緩和できるシートの効果を室内試験で検証した。 ② 移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究 舗装の効率的な管理に向けて、定期的な点検・維持修繕が求められている。構造的な舗装の健全度の調査には、FWDによるたわみ測定が一般的に用いられるが、交通規制が必要であり、定期的な点検には適さない。移動しながらたわみを測定する移動式たわみ測定装置の開発が求められるなか、主に測定精度向上の検討を実施してきた。現在、2つの公的機関、1つの大学、5つの民間企業で移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究に着手している。
FY2016|5,218 文字
6【研究開発活動】 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として15億円を投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は、次のとおりである。(1) 土木事業 ① インフラ大更新市場に向けたコッター床版工法の開発 供用中の橋梁の架け替え工事を行うには交通規制や迂回路を用意することが必要となるため、工事による社会的な影響が少なく、利用者の利便性をできる限り損なわない工法が求められている。このため供用路線の橋梁床版の架け替え工事では、あらかじめ工場で製作されたプレキャスト版を敷設する急速施工が可能な工法が主流となっている。現在開発を進めているコッター床版工法は、プレキャスト製品の利点に加えさらなる急速施工が可能で、将来部分的な取り替えが容易等の利点を有し、現在までに静的破壊試験、曲げ疲労試験を経て、ひび割れ抵抗性、耐力・耐疲労性能を確認している。今期は輪荷重試験の実施を計画しており、実用化に向け大きく前進する予定である。 ② 無人化施工における高機能遠隔操作室の開発 人の立ち入りが危険な災害現場に導入される無人化施工技術は、高度な現場施工であるほど設備が複雑化し、施工開始までの準備期間が長くなる。災害現場では時間の経過とともに状況が大きく変化するため、この設備構築の時間をいかに短縮して迅速に工事に着手するかが課題となっていた。当社では、初期の無人化施工で導入していた移動式遠隔操作室を改良し、新たにICTを搭載した高機能型の移動式遠隔操作室を開発した。操作室にはデジタル伝送対応機器を搭載し、無線LANによる第4世代の無人化施工に対応している。災害現場に導入する場合、従来であれば準備に5~10日を要していたが、この移動式操作室であれば、屋上に無線基地局を設置して運用する場合は1日で、有線LANや光ファイバケーブルを使用して別途無線基地局の設置が必要となる場合でも3日程度で稼動させることが可能である。 ③ シールド線形3Dシミュレーションシステムの開発 シールドトンネルを高品質に施工するためには線形管理が重要である。特にシールド機とセグメントの位置関係を把握することが「出来形精度」や「トンネル品質」を確保するために重要であり、従来は測量結果を方眼紙に手書きでプロットして管理してきた。今回、施工の高品質化と業務の効率化を目的として、3次元モデルで線形を管理するシミュレーションシステムを開発した。このシステムは、機械設計用の3次元CADにシールド機とセグメントを再現し、両者の位置関係を立体的に把握してシールド機の方向制御やセグメントの損傷防止に活用する。表計算ソフトに数値を入力・変更するだけで3次元モデルを自在に動かせることが特徴である。また、この表計算との連動機能を用いてシールドトンネルのCIMモデルを作成し、維持管理に活かすことも可能である。 (2) 建築事業 ① 熊谷式基礎梁貫通孔補強工法を開発 当社は鉄筋コンクリート造基礎梁の開孔径について、従来の制限値である梁せい(梁の上端から下端までの寸法)に対する開孔径の比を1/3以下から1/2以下に緩和し、基礎梁せいの低減を可能とする「熊谷式基礎梁貫通孔補強工法」を開発し構造性能評価を取得した。鉄筋コンクリート造建築物において、設備配管等の設置や点検のために梁に貫通孔を設けることが一般的に行われている。梁に開孔を設けると構造性能が低下することから「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」において、開孔が円形の場合には、開孔の直径は梁せいの1/3以下とすることが望ましいとされている。建築物の基礎梁にも床下の設備配管の点検などのために人通孔が設けられることが多くあるが、この場合においても設計用応力から定まる必要梁せいにかかわらず上記の制限が適用されるため、土工事・躯体工事のコストアップにつながっていた。今回開発した工法を使用することにより、構造性能は従来工法と同等のままでコストダウンを図ることが可能となる。本補強工法は2015年11月5日付けで日本ERI株式会社より構造性能評価を取得した。建物の用途、上部構造の構造形式に関係なく、人通孔を有する鉄筋コンクリート造基礎梁に適用が可能である。今後は多くの物件に積極的に適用していく予定である。 ② 近接開孔基礎梁工法の建築技術性能証明を取得 当社が参加する近接開孔梁研究会(注)は、鉄筋コンクリート造の基礎梁に設ける開孔について、従来よりもこれを近接して設けることを可能とした「近接開孔基礎梁工法 -大開孔と中開孔が近接するRC基礎梁の補強工法-」を開発し、建築技術性能証明(GBRC性能証明第15-04号)を一般財団法人日本建築総合試験所より取得した。鉄筋コンクリート造梁に複数の開孔を設ける場合、従来は隣り合う開孔の中心間隔は、双方の開孔径平均の3倍以上を確保する必要があった。近接開孔基礎梁工法(以下、「本工法」という。)は、これを2倍の位置まで近づけることを可能とした工法であり、近接する開孔全てに開孔補強金物製品を1箇所あたり2枚以上(両側面)配筋し、近接した開孔間にあばら筋を集中的に配筋することで実現した。また、本工法は建物用途、上部構造の構造形式に関係なく鉄筋コンクリート造基礎梁に適用できることから、人通孔をはじめ電気配線、設備配管などの貫通孔を多数基礎梁に設けたい場合に有効であり、同じ範囲でも設けられる開孔数が増えるため、電気配線、設備配管などを迂回させずにほぼ最短距離で配置することが可能になるなど、開孔配置の自由度の向上が期待できる。本工法は汎用性の高い技術であることから、今後は多くの物件に積極的に採用していく予定である。 (注)近接開孔梁研究会:当社、株式会社錢高組、青木あすなろ建設株式会社、株式会社淺沼組、株式会社奥村組、株式会社鴻池組、東亜建設工業株式会社、飛島建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、株式会社ピーエス三菱、三井住友建設株式会社及びコーリョー建販株式会社(開孔補強金物製品作製メーカー)で構成されている。 ③ 品確法の音環境性能評価に対応した乾式遮音二重床「NSフロアー(NS-Qタイプ)」を開発 当社は乾式遮音二重床NSフロアー(NS-Qタイプ)を開発し、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、「品確法」という。)に基づく国土交通大臣の特別評価方法認定を取得した。品確法に定められた住宅性能表示制度において、重量床衝撃音対策や軽量床衝撃音対策の性能評価を受ける場合には、国土交通省が告示した技術基準(評価方法基準)に記載されている仕様を満たす必要がある。しかし、告示に記載されている仕様は、施工誤差等を考慮して定められたものであり、納期及びコスト面等でお客様の負担が増加していた。そこで当社は告示に記載されている仕様以外(独自の仕様)で、環境、納期及びコスト面に配慮した乾式遮音二重床NSフロアー(NS-Qタイプ)を開発し、事業主が品確法に基づく音環境性能の評価を取得できるように、国土交通大臣の特別評価方法認定を取得した。また、これに伴い、NS-Qタイプは品確法の軽量床衝撃音対策における「床仕上げ構造区分3」を等級表記することが可能となった。NS-Qタイプは床下地材にガラス繊維不織布入りせっこう板を用いており、市場への供給と市況価格の変動により価格が安定しにくい合板にかえて、価格・品質・供給が安定し、かつ、環境に配慮したものとなっている。今後は、復興住宅を始めとする公共建築物などにおいても品確法に基づく評価認定を受けた建材の需要が増加すると予想される。当社では、この製品を環境に配慮した共同住宅の乾式二重床に関する重要なツールとして位置付け、発注者や設計事務所などに対して積極的に提案していく予定である。なお本案件は、当社、野原産業株式会社及び有限会社泰成電機工業による共同開発である。 ④ 床衝撃音遮断性能が高く、転倒時衝撃力が小さい「乾式浮床ベースケア」を開発 当社は高い床衝撃音遮断性能を有し、転倒時衝撃力が小さい内装用、土足用2種類のグラスウール支持方法による乾式浮床ベースケアを開発した。首都圏(特に東京)、九州圏では、共同住宅は乾式二重床で設計されることが圧倒的に多い一方で、横浜、川崎、京都では建物の高さ制限対策として階高を抑えたるために直貼り床で計画されることも多い。共同住宅に用いられる直貼り床は、厚みは乾式二重床と比べて薄いが、軽量床衝撃音低減性能を確保するために歩行感が柔らかく感じられるという課題があった。また、今後の高齢化社会を見据えた際に、車いすによる長期の繰り返し走行に十分対応できていないことが指摘されている。さらには、乾式二重床に比べて転倒時の衝撃力が大きいため、状況によっては怪我をする可能性もある。こうした課題を解決するため今回開発した「乾式浮床ベースケア」は、内装用には乾式浮床パネルに下地材として環境に配慮したガラス繊維不織布入りせっこう板を用い、その上に化粧シート貼りフローリングを施工している。土足用には乾式浮床パネルに下地材として針葉樹合板を用い、その上に突板貼りフローリングを施工している。乾式浮床パネルの上に下地材を入れることで、転倒時衝撃力を小さくし、高い床衝撃音低減性能を実現し、同時に床板が柔らかく感じられる歩行感も解消した。また、床仕上げ高さを60mm程度としたことで、高さ制限のため直貼りフローリングで計画する建物やリニューアル等で乾式二重床とすることが難しい建物にも対応できる。当社ではこの製品を高齢者に配慮した施設や共同住宅のグラスウール支持方法による乾式浮床の重要なツールとして位置付け、発注者や設計事務所などに対して積極的に提案していく予定である。なお本案件は、当社、大建工業株式会社及び野原産業株式会社との共同開発である。 ⑤ 大山ダムホタルビオトープがJHEP認証を取得 当社が施工した大山ダム(大分県日田市)に設置した「ホタルの棲める環境づくり(ホタルビオトープ技術)」において、生物多様性の保全や向上への貢献を定量評価する認証制度(以下、「JHEP認証」という。)をダムの発注者である独立行政法人水資源機構と共同取得した。これはホタルを対象としたビオトープとしては国内初の認証取得となる。大山ダムホタルビオトープは、ダム建設地の日田市が昔からゲンジボタルの里として有名であることから、地域貢献や地元の子ども達への環境教育を目的にダム上流の赤石川右岸側に設置されたものである。大山ダムホタルビオトープが完成した2008年を基準年として、生物多様性の価値(ハビタット評価値)について、過去30年間の平均値と事業実施による50年後の予測値を比較、評価された結果、評価ランクA+が得られ、ホタルが生息する湿性環境を含むビオトープとしては、国内で初めてのJHEP認証取得となった。今回JHEP認証を取得したことにより、当社の取り組みが生物多様性に貢献している「社会的証明」になるとともに、当社のホタルビオトープ技術に対する信頼性が一層向上することが期待できる。今後は広くお客様などにアピールを行い、ダムやトンネルなどの土木工事案件や、都市部ビル屋上などへの技術提案・設計案件に広く展開していく予定である。 (3) 子会社 株式会社ガイアートT・K ① フルファンクションペーブ(FFP:多機能型排水性舗装)の改良・改善 FFPの施工実績の増加に伴い、施工時の施工管理結果や追跡調査結果から挙がった課題を絞り込み、室内試験及び試験施工により改良・改善の検討を行った。 その結果、施工性を保ちつつ所定の品質が得やすい配合、最適な転圧温度及び転圧回数を見出した。また、その結果を反映した技術資料改訂案を作成した。 ② 橋面舗装工法の開発 社会インフラの老朽化、とりわけ橋梁の掛け替えが急務となる情勢を受け、急速施工が可能なプレキャスト床版掛け替え工法が注目を集めている。その工法に適した新たな橋面舗装の開発を行った。 その結果、プレキャスト床版ジョイント部の動きに追従できるよう開発した特殊基層混合物の疲労抵抗性が通常の混合物に比べ著しく優れていることを再確認した。 また、ジョイント部の動きの影響を緩和できるシートの適用性についても検討を行った。