研究開発活動(本文)
FY2025|5,921 文字
6 【研究開発活動】当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。具体的には、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、国土強靭化に資する防災・減災に関する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は2,362百万円で、主な成果は以下のとおりです。 (建設事業(土木・建築・国際))(1) 生産性向上技術①板ジャッキを活用した床版切断撤去施工技術を開発~合成桁形式の床版撤去時間の短縮化を実現~ コンクリートコーリング株式会社と共同で、板ジャッキを用いて合成桁床版を短時間で効率的に撤去することができる技術を開発しました。本技術は、既設床版のハンチ部や上面にカッター等で切断したスリット内へ板ジャッキ(厚さ2.4mm)を挿入し、専用ポンプで水圧を作用させてスリットを拡張・延伸させることで、床版コンクリートを合成桁から簡単に分離でき、撤去することが可能です。桁上に残るコンクリートは極めて少ないため、その後のはつり作業が大幅に低減され、施工時間は一般的なブレーカによる撤去方法に比べて20%~50%短縮できます。 ②「NFJコアビット」の開発 ~トンネル現場における品質管理業務の生産性向上に貢献~フジモリ産業株式会社と共同で、ドリルジャンボを使って、吹付けコンクリートの品質管理に必要な供試体を短時間で採取できる「NFJコアビット」を開発しました。本技術は、山岳トンネル工事で使用するドリルジャンボにNFJコアビットを取り付けるだけで、トンネル壁面に施工した吹付けコンクリートのあらゆる箇所から供試体を直接採取することができます。従来は専用型枠を用いて供試体を採取するのに約70分を要していましたが、本技術では作業時間を約10分と大幅に短縮でき、現場での品質管理業務の生産性が向上します。 (2) 省人化・省力化技術①ホイールローダ遠隔操作システムを山岳トンネル工事の実施工へ試験導入~山岳トンネル無人化・自動化施工システム「Tunnel RemOS」の実現に向けた大きな一歩~ジオマシンエンジニアリング株式会社、株式会社カナモトと共同開発した、ホイールローダ遠隔操作システム「Tunnel RemOS-WL(トンネルリモス-ホイールローダ)」を山岳トンネル工事に試験導入し、遠隔でのずり出し作業(掘削岩塊の運搬作業のこと)の施工性を確認しました。本システムは、過年度に開発した試作機を改良した実用機であり、高速かつ繊細な動作が要求されるホイールローダを遠隔操作でも実機搭乗に近い操作感覚で正確に制御することが可能です。今回の試験導入では、ずり出し作業にかかるサイクルタイムの検証とともに、システム機器の操作性向上と耐久性向上も確認できました。今後、実施工への本格的な導入や、自動化システムの開発に取り組む計画です。 ②濁水処理設備の自動管理システム「FlocTrack」を開発~AIを活用して大幅に時間と手間を短縮~山岳トンネル工事などに設置される濁水処理設備における処理剤の添加量をAIで自動管理できるシステム「FlocTrack」を開発しました。濁水処理設備内で計測したpHや濁度、土粒子の凝集状況(フロックの形成状況)の映像をもとに、汚濁水の水質に合わせて各種処理剤の添加量をAIが最適に調整し添加します。本システムの活用により、濁水担当者の管理時間が約36%短縮され、省力化できます。なお、本システムは「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」の予算を活用した国土交通省の令和4年度「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」の試行技術として採用されました。 ③地中連続壁工法における安定液の品質管理自動計測システムの開発 ~現場で安定液(泥水)の粘性及び比重を自動で連続的に精度よく測定~ 株式会社三央と共同で、鋼製連壁やRC連壁といった地中連続壁工法で使用する安定液の1つである泥水の品質管理に着目し、ファンネル粘度及び比重を現場にて自動で連続計測できる「品質管理自動計測システム」を開発しました。本システムの活用により、安定液の品質管理作業の省力化・省人化に加え、掘削時のトラブル防止や再生薬剤等の使用量及び廃棄泥水量の削減に寄与できます。また、泥水式シールドや場所打ち杭の工事などにも活用が可能です。 ④場所打ちコンクリート杭の孔壁形状確認システムを開発 ~孔壁測定結果をデジタル化、現場作業の省力化を実現~ 場所打ちコンクリート杭の築造時における孔壁形状確認システムを開発しました。本システムは、孔壁の測定結果をデジタルデータとして自動で取り込み、サーバー上でデジタル帳票を自動的に作成することができます。また、デジタル帳票は、現場職員だけでなく社内の関係部署と簡単に共有可能です。本システムの利用により、孔壁測定結果をワンストップで作成・管理することが可能となり、現場職員の負担軽減、業務時間の短縮・効率化を実現します。 (3) 品質向上技術①場所打ちコンクリート杭工事の支持層到達管理システムを開発~支持層への到達を見える化し、精度向上を目指す~ 場所打ちコンクリート杭工事における支持層への到達確認を精度よくリアルタイムに行うことができる、アースドリル工法に特化した支持層到達管理システムを開発しました。本システムは、掘削機に取り付けた加速度センサーで測定したデータをもとに新たな加速度指標を定義し、深度計の表示から画像処理(OCR)で取得した深度情報を用いて、当該指標にもとづく深度分布をリアルタイムに作成・表示することができます。従来のような掘削土と地盤調査時のサンプル試料を目視で比較する確認方法だけでなく、掘削機の振動データといった新たな判断材料と併せることで、支持層への到達確認がより高い精度で行うことができ、支持層到達管理の信頼性向上を実現します。 ②場所打ちコンクリート杭への高強度鉄筋の適用手法を確立 ~設計手法に関して評定を取得~ 株式会社安藤・間、株式会社奥村組、佐藤工業株式会社、鉄建建設株式会社、東急建設株式会社、戸田建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、三井住友建設株式会社と共同で、高強度鉄筋を主筋に使用した場所打ちコンクリート杭の構造性能を確認し、その設計手法に関して、一般財団法人ベターリビングにて一般評定を取得しました。従来よりも強度の高い鉄筋を主筋に用いることで、杭の合理的な設計を可能とするとともに、施工性や施工品質の向上を実現します。 ③構造ヘルスモニタリングシステムを開発 ~地震リスク評価の精度向上を目的に、再現性の高い解析モデルを自動推定~ 地震リスク評価の精度向上を目的に、地震時の計測データから建物の挙動再現解析モデルを自動推定できる構造ヘルスモニタリングシステムを開発し、当社が保有する東京都港区内の事務所ビルでの運用を開始しました。本システムにより、地震発生時に実際の建物から得られた計測データをもとに、将来予想される地震に対して、高い精度でのリスク評価を可能としました。なお、本システムは当社が検証実験などの開発全般を担当し、株式会社構造計画研究所がシステム設計を担当しました。 (4) 環境関連技術①アサヒ飲料株式会社と協業したカーボンネガティブコンクリートを開発 ~大気中よりCO2を吸収した材料からコンクリートを製造~ アサヒ飲料株式会社と共同で、製造過程でのCO2排出量がマイナスとなるカーボンネガティブコンクリートの開発に着手しました。本開発では、アサヒ飲料株式会社の「CO2を食べる自販機」で大気中のCO2を吸収した特殊材を活用します。本材料をコンクリート1m3あたり約200kg以上混和し、さらに製鉄所の副産物である高炉スラグ微粉末をセメントの代替材料として多量に使用することで、一般のコンクリートと同等の強度を有しつつ、環境に優しいカーボンネガティブなコンクリートが作れることを確認しています。今後は、長期的な耐久性の確認や社会実装に向けた試験を行っていく予定です。 ②火山ガラス微粉末を用いた環境配慮型コンクリートの共同研究に着手~国内産出での天然資源を用いた環境配慮技術~ 戸田建設株式会社と共同で、コンクリート用火山ガラス微粉末を用いた環境配慮型コンクリートについて、将来の発展性を考慮し、基本性状を確認する研究開発に着手しました。火山ガラスとは火山性堆積物を主原料とする天然ポゾランであり、これを一定の粒度に調整したものが火山ガラス微粉末です。火山ガラス微粉末は、国内で調達可能な天然資源であり、コンクリート用材料として注目されています。これまでに鹿児島県産の火山ガラス微粉末を用いたコンクリートの基本物性を確認しており、今後は実構造部への適用を目標に、レディーミクストコンクリート工場からの出荷を想定した試し練りや、模擬試験体による強度、耐久性、施工性等の確認を行う予定です。 (5) DX関連技術①補助工法等の注入データの3D可視化・分析が可能な「GroutViz」を開発 ~トンネル周辺地山を多面的に評価~ ジオマシンエンジニアリング株式会社、株式会社カテックスと共同で、山岳トンネル工事における地山への薬液注入データの三次元可視化やそれを基にした地山性状の定量評価を可能とするシステム「GroutViz(グラウトビズ)」を開発しました。本システムは、注入装置で記録した注入率、注入圧、注入量といったデータを専用の解析ソフトで読み込むことで、注入データの三次元可視化や、逆距離加重法等の空間データ補間機能を用いた分布傾向の分析を行うことができます。本システムを当社施工中のトンネルへ適用した結果、注入データは実際の地質構造と概ね同じ傾向を示しており、本システムが地山評価に有用であることが確認できました。 ②XRを活用した空撮映像への3Dモデル重畳技術を開発 ~BIM/CIMとリアルを融合、XR施工管理プラットフォーム実現に向けた要素技術を検証~ 株式会社ホロラボと共同で、ドローンの空撮映像に3Dモデルをリアルタイムで重畳し、ヘッドマウントディスプレイと連携して現場全景を俯瞰した施工イメージの可視化、ドローンの操縦支援を行う技術を開発しました。本技術は、XRを活用した複数のデジタル情報を確認しながら直感的なドローン操作が可能となります。また、現場全景の施工イメージを可視化・共有化することが可能なため、現場状況に応じた、より的確で妥当性の高い施工計画の立案や高度な施工管理の実現に役立ちます。さらに、地震や水害等の災害復旧工事で人が近づけない危険な現場でも、ドローンを使った遠隔での広域を見渡した施工計画立案や施工管理支援ツールとしての活用も期待できます。 ③AI による配筋検査サービス(AI カメラと専用アプリ)を2024年4月から導入開始 ~配筋を立体検知する技術を活用し、プライム ライフ テクノロジーズとの継続的改善スキームを構築~ 配筋検査システム協議会の会員会社(当社を含むゼネコン21社)とプライム ライフ テクノロジーズ株式会社は共同で、建設DXサービス「CONSAIT(コンサイト)」として、配筋検査における品質向上と業務効率化をサポートする配筋検査システムを開発し、2024年4月より本システムの先行導入を開始しました。本システムは、パナソニック株式会社の技術を活用して開発したAI カメラ「CONSAIT Eye」を使用します。本カメラで配筋状態を立体的に検知することで、鉄筋径や本数、ピッチ、鉄筋の配置を計測でき、登録した設計データと自動照合し、その結果をもとに帳票を自動作成します。配筋検査の事前準備となる検査用データの入力や各帳票の作成は、「CONSAIT Pro 配筋検査」で効率化されます。本システムにより、検査や記録の正確性、検査品質が向上し、配筋検査の繁雑な作業が効率化されることで作業時間の大幅な短縮を実現します。 (6) 新しい取り組み ①生物多様性保全を目的とするビオトープ「中津クロスポイント」を整備 ~技術研究所内に地域性植栽を取り入れた生物多様性フィールドを整備~ 箱根植木株式会社及びあいかわ自然ネットワークのご協力の下、技術研究所(神奈川県愛甲郡愛川町)の敷地内に地域性植栽を導入したビオトープ「中津クロスポイント」を新たに整備しました。本名称には、町内に流れる中津川と相模川の二つの一級河川流域に生息する生態系が交差する拠点になってほしいという願いが込められています。今後は、希少な地域性植栽の維持管理を図り、継続的な生物モニタリングを通して生物多様性の保全状況を定量的に評価することで、環境に配慮した緑地整備や地域に根差したまちづくりに貢献していきます。また、地元の小学生などが自然について学べる環境教育の場としての活用も計画しています。 ②粗骨材に回収骨材を100%使用したコンクリートを施工中の建設現場に適用 ~生コン工場の廃骨材を粗骨材としてフル活用~ 生コン工場で発生する回収骨材を粗骨材として100%使用したコンクリートを、当社施工中の建設現場に適用しました。回収骨材とは、建設現場で使用されずに生コン工場に戻ってくるコンクリート(残コン・戻りコン)を洗浄して得られた骨材のことで、回収骨材を標準化している生コン工場は日本全国に少なく、あまり普及しておりません。今回、回収骨材を粗骨材に用いたコンクリートをレベルコンクリートとして現場で約300m3打設し、廃棄予定の回収骨材を約270t再利用することができました。今後、資源循環の観点から、回収骨材が広く認知されて普及するように取り組んでまいります。なお、ここでの活動は、一般社団法人生コン・残コンソリューション技術研究会(RRCS)の残コン・戻りコンの有効活用の一策として行ったものです。
FY2024|4,451 文字
6 【研究開発活動】当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。具体的には、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、国土強靭化に資する防災・減災に関する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は2,229百万円で、主な成果は以下のとおりです。 (建設事業(土木・建築・国際))(1) 生産性向上技術①道路トンネルリニューアル工事における全断面スライドフォームの長距離・高速移動システムを開発~供用下でのリニューアル工事に対応可能な多軸台車によるセントルの安全高速運搬を実現~ 道路供用下での山岳トンネルの覆工リニューアル工事に伴う通行止め期間の最小限化を目的に、「多軸台車を用いた全断面スライドフォーム移動システム」を開発しました。本システムにより、セントルはトンネル坑口から離れたヤードで組立て、ヤードから1km程度内の距離であれば、一夜間の通行規制時間内に坑内の施工箇所までの運搬が可能となりました。また、セントル四方に取り付けたレーザー距離計にて既設構造物の離隔をリアルタイムに連続計測し、タブレット端末上で管理することで、既設構造物との接触を回避でき、運送時の安全性を確保したシステムを構築しています。なお、セントルとは山岳トンネルの覆工コンクリートを打設する際の内型枠、全断面スライドフォームの通称です。 ②データ利活用型ICT土工管理システムによる現場の生産性向上を実証戸田建設株式会社、株式会社奥村組と2021年に3社で共同開発した「データ利活用型ICT土工管理システム」を複数の実現場に適用し、盛土現場の生産性向上を実証しました。本土量管理システムは、データ利活用にかかわるデータ処理、クラウドへのアップロード作業を自動化し、職員の手間なくクラウド上で施工管理(土量算出・進捗把握)を行うことができます。汎用性が高く、建機メーカー各社の転圧データに対応可能であり、多様な施工条件でも施工管理の省力化・効率化が可能です。 ③フォークリフトによる床版取替工事用の専用治具を開発~クレーン作業ができない作業環境でも新設床版設置作業の効率化を実現~オックスジャッキ株式会社と共同で、クレーン作業ができない条件の床版取替工事に対して、フォークリフトに装備するリモコン操作が可能な床版作業用の専用装置を開発しました。開発した装置は、フォークリフトのフォーク部分に簡単に装着でき、鉛直・水平ジャッキを装備して床版位置を回転方向、前後方向に微修正可能です。床版作業用装置の性能を検証するため、実工事で設置する新設床版と同程度の大きさの模擬床版を用いて、運搬及び設置試験を実施して、大型フォークリフトによる新設床版の運搬・設置作業が安全・容易に精度よく実施できることを確認しました。 (2) 省人化・省力化技術①タブレット端末による「CFT柱コンクリート施工管理システム」を開発~現場技術者によるコンクリート施工管理作業の省力化・省人化を推進~CFT柱(コンクリートを充填した鋼管柱)へのコンクリート充填中に計測したデータを無線でクラウド上に伝送・処理し、タブレット端末上の画面で施工状況を確認できる「CFT柱コンクリート施工管理システム」を開発しました。本システムでは、タブレット端末上で施工状況を可視化できるので、現場技術者が現場内や現場事務所のどこにいてもCFT柱へのコンクリートの施工状況を確認することが可能となり、CFT柱におけるコンクリートの施工管理の省力化・省人化を実現できます。 ②吹付厚さのリアルタイム計測管理技術「吹付ナビゲーションシステム」を確立~ミリ波レーダ、モーションキャプチャカメラを搭載した新型吹付機の開発~清水建設株式会社、戸田建設株式会社、前田建設工業株式会社、エフティーエス株式会社と共同で、山岳トンネルの「吹付ナビゲーションシステム(ヘラクレス-Navigator)」を開発しました。近年の社会的ニーズを踏まえて2018年より山岳トンネル工事におけるコンクリートの吹付作業を遠隔化・自動化する技術を探索し、試作・検証を進めてきました。従来の吹付作業の効率を損なわず、定量的にリアルタイムに遠隔で吹付出来形状況を確認できる技術を追求した結果、本システムが完成しました。 ③現場巡回中に必要な安全看板を選び作成できるアプリを開発 クェスタ株式会社と共同で、建設現場に設置する安全看板を作成し、携帯端末から直接印刷できる安全看板アプリ「ぱっと看板ナビ」を開発しました。本アプリは、現場内を巡回中に携帯端末から必要な安全看板とその設置場所を簡単に選択指示でき、パソコンを使わず直接印刷できるため、現場技術者の安全看板設置に係る業務の省力化を実現できます。また、作製した安全看板はアプリ内の指示書に表示されるため、設置忘れを防ぐことができ安全な現場運営に貢献できます。 (3) 品質向上技術①人力による杭の簡易載荷試験の管理団体を設立~基礎杭の品質・性能の更なる向上に貢献~ 株式会社淺沼組、株式会社奥村組、株式会社熊谷組、五洋建設株式会社、佐藤工業株式会社、西武建設株式会社、東亜建設工業株式会社、株式会社東京ソイルリサーチ、戸田建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、一般財団法人ベターリビング、株式会社松村組(50音順)と、共同研究の成果である杭の簡易載荷試験について、その管理団体「杭の簡易載荷試験協会」を設立しました。対象となる杭の簡易載荷試験は、杭頭に人力で打撃を加えるだけで杭の荷重変位関係を評価できる新しい試験方法です。本試験方法に係る知的財産について、同協会は共同研究メンバー13法人の代理として活動し、第三者からの問合せ対応や特許の実施許諾をワンストップでスムーズに行います。 ②コンクリートの初期強度発現性を改善したポンプ圧送助剤を開発 戸田建設株式会社、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、株式会社北斗工業と共同で、コンクリートの長距離圧送工事に使用する新しいポンプ圧送助剤を開発しました。本圧送助剤は、アジテータ車に直接投入し、撹拌して使用することができるため作業性に優れています。また、従来のポンプ圧送助剤の課題であった初期強度発現性を改善できます。さらに、真夏の暑中環境下でコンクリートを長距離圧送しても、所要品質を満足していることを実機で確認しました。 (4) 環境関連技術①技術研究所の一部をリニューアル、ZEB設計に資する要素技術の実証を開始 技術研究所(神奈川県愛甲郡愛川町)の一部を改修し、ZEB設計に資する要素技術の実証ができる空間としてリニューアルしました。今回のリニューアルでは、ワークスペースや会議室など使い方が異なるいくつかのオフィス空間を設け、それぞれの空間に適した省エネ技術を導入し、省エネかつ快適性が向上する空間を目指しました。今後は、技術研究所のオフィスとして継続使用しながら、省エネ性能や快適性について検証し、性能向上を行っていく予定です。 ②環境配慮型コンクリート「スラグリート®」の建設技術審査証明(建築技術)を取得~確認申請時の運用マニュアルを整備し建築物への適用を促進~ 戸田建設株式会社と共同で、環境配慮型コンクリート「スラグリート®」について、一般社団法人日本建築センターの建設技術審査証明(建築技術)を取得しました。一般的に、環境配慮型コンクリートは主に地下躯体等の中性化の影響の少ない部位に使用されていましたが、中性化の影響を受けにくい「スラグリート®」は、地上構造物へ使用されることが期待されます。スラグリート建設技術審査証明の取得及び確認申請マニュアルの整備により、本技術の建築分野での適用をさらに進め、脱炭素社会への実現に貢献してまいります。なお、「スラグリート®」は、技術研究所(神奈川県愛甲郡愛川町)の実験棟建屋の一部に適用しております。 ③二酸化炭素の回収・利用に適したバイオメタネーション技術の研究開発を推進 国立大学法人横浜国立大学、三機工業株式会社と共同で、二酸化炭素の回収及び利用を実現するため、気体透過膜を活用した新たなバイオメタネーション技術の研究開発に取り組んでいます。本技術の中心は、メタン生成の原料となる水素を気体透過膜から供給するとともに、気体透過膜の表面にメタン生成微生物を固定する仕組み(MBfR)です。水洗で吸収した溶存二酸化炭素をMBfRに供給することで、二酸化炭素の分離精製からメタンとしての回収までをコンパクトに一体化した点が特徴です。本技術の開発成果は、第60回環境工学研究フォーラム(主催:公益社団法人土木学会 環境工学委員会)の環境技術・プロジェクト賞を受賞しました。 (5) 新しい取り組み①山岳トンネル技術開発拠点「N-フィールド」始動 山岳トンネルの施工技術の向上、無人化・自動化施工システムをはじめとした技術開発のさらなる進展のため、栃木県那須塩原市に研究開発拠点「N-フィールド」を新たに整備し、運用を開始しました。コンクリート吹付機の遠隔操作や自動化技術の開発に向けた試行・検証、油圧ショベルによる自律運転等の技術開発や展示会における遠隔操作システムの体験デモを展開中です。今後は、社内研修会や当社開発技術を視察頂ける対外発信拠点としての活用のほか、遠隔操作重機の配備を拡充し、複数施工機械による遠隔操作での同時制御システムの構築、自動・自律制御システムの開発によるトンネル掘削作業の完全無人化に向けた取り組みを進めてまいります。 ②廃食用油の全量でHiBDの安定的な製造を実現 佐賀市と共同で、環境エネルギー株式会社の協力を得て、佐賀市内の家庭及び事業所で回収された廃食用油を原料として、第2世代バイオディーゼル燃料であるHiBDの安定的な製造を実現しました。今回の実証試験結果から、年間を通して市内で回収される廃食用油の全量をリサイクルすることが可能になりました。当社が策定している2050年カーボンニュートラルに向けたCO2削減計画「ZERO30ロードマップ2023」の達成に向け、HiBD等の第2世代バイオディーゼル燃料の現場導入の検討を進めてまいります。また、自治体との連携による地域の脱炭素化の促進に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
FY2023|4,550 文字
6 【研究開発活動】当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。 (土木事業・建築事業)当社では、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、国土強靭化に資する防災・減災に関する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は2,038百万円で、主な成果は以下のとおりです。 (1) 生産性向上技術①トンネル坑内における油圧ショベルの無線遠隔操作システム「Tunnel RemOS-Excavator」を開発~山岳トンネル無人化施工システム「Tunnel RemOS」の全要素技術の現場実証を開始~ジオマシンエンジニアリング株式会社と共同で、山岳トンネル施工に用いる油圧ショベルの一連の作業を無人化する「Tunnel RemOS-Excavator(トンネルリモスエクスカベータ)」の開発や実証確認を行いました。当社では、かねてより山岳トンネルの切羽作業の無人化に向けて、主要施工重機の遠隔操作技術・自動化技術を組み合わせた山岳トンネル無人化施工システム「Tunnel RemOS(トンネルリモス)」の開発を進めております。今回はその中の油圧ショベルに対する遠隔操作システムを開発し、現場にて油圧ブレーカの切羽への移動や切羽作業といった一連の作業の遠隔操作を実証確認しました。今後は油圧バックホウやホイールローダとの共同作業を遠隔・自動化させたトンネル掘削作業の完全無人化への取り組みを続け、更なる生産性及び安全性向上、省人化を目指してまいります。 ②AIモデルを活用したシールドマシンの掘進方向制御の支援システムを開発~熟練オペレータの技量を学習し掘進方向を推測、制御の自動化を目指す~シールドマシンの掘進方向制御をAIモデルで支援するシステムを開発し、国内のシールド工事現場への導入を始めました。本システムの導入により、施工の効率化(生産性向上)、掘削精度の向上(品質向上)を図るだけでなく、個人差があった熟練オペレータの操作技術を数値化し、AIモデルの学習を通じ踏襲することで、熟練者から細かい技術を学ばなくても操作が可能になります。 ③杭基礎の合理化・省コン化を実現する「杭頭部に後打ち部を有するパイルキャップ構法」を開発~パイルキャップの約30%の工期短縮とコンクリート使用量約15%削減を可能に~上部構造物の荷重を杭によって地盤に伝えるために設けるパイルキャップの施工の合理化、及び既製コンクリート杭の地震時の損傷を軽減できる「杭頭部に後打ち部を有するパイルキャップ構法」を開発しました。本構法により、パイルキャップの施工において安全性や生産性の向上が期待できるとともに、約30%の工期短縮とパイルキャップのコンクリート使用量を約15%削減することが可能になります。さらに杭頭部に作用する地震時曲げモーメントを低減し地震による損傷を軽減できます。 (2) 省人化・省力化技術①準天頂衛星システム「みちびき」測位技術のダム工事への適用性を実証~ケーブルクレーン自動運転制御での利活用に向けた測位精度、受信安定性を検証~準天頂衛星システム「みちびき」の高精度測位情報をダム工事に活用する実証実験を行いました。実証実験は、当社JVが熊本県で施工中の立野ダム(国土交通省九州地方整備局発注)で行い、「みちびき」から送信される高精度測位情報を用いて、高い安定性を保持しながら精度10cm以内(水平:約4cm、垂直:約9cm)で測位出来ることが検証できました。この実証実験の結果から、高精度測位情報をダム工事におけるケーブルクレーンの自動運転システムに適用できることを確認しました。 ②鍵管理システムの開発による現場作業の効率化を推進~現場における鍵の開閉情報の可視化、解錠・施錠操作を省力化~株式会社ファイバーゲートと共同で、鍵管理システムを開発しました。共同住宅の工事現場では、内装工事中、侵入者により室内の仕上げ等が損傷されることのないよう管理する必要があるため、現場技術者は毎日、膨大な戸数の玄関扉の鍵の解錠・施錠を行っています。本システムでは、各住戸の玄関扉にスマートロックを取り付けることにより、専用アプリケーションで鍵の開閉情報を可視化し、鍵の解錠・施錠の遠隔操作を行うことが可能になります。現場技術者が携帯端末から各住戸の鍵の開閉情報を確認、遠隔操作できるため、管理業務の省力化を実現できます。 (3) 品質向上技術①近赤外LED・カメラによる土の含水比測定装置の開発~一般土工事における品質管理の省力化~西華デジタルイメージ株式会社と共同で、一般土工事などに使用される土砂の含水比測定方法について、近赤外線LEDと近赤外線カメラを用いて現場で迅速かつ簡易に測定できる含水比測定装置を開発しました。本装置の開発により、土工事に使用する土砂の含水比を迅速かつ簡易に高精度で計測でき、一般土工事の品質管理業務の精度向上や省力化を図ることが可能になります。 ②生コンクリートの材料分離抵抗性を簡便に定量評価する手法を考案~材料分離によるトラブル発生を抑制し、コンクリートの品質向上に貢献~国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学との共同研究により、施工前に生コンクリートの材料分離抵抗性を簡便な方法で定量的に評価する手法を考案しました。現場に持ち込んで扱える小型の評価試験器を製作し、容器内に詰めたコンクリートに振動エネルギーを加えた時の電気伝導率の経時変化で材料分離抵抗性を評価します。現在、現場への実装に向けて、データの採取、判定精度等、生コンクリートの評価の妥当性の検証を行っております。 ③「中大規模木造建築物の実現」への取り組み強化~中高層木造建築構法で日本建築センターの個別評定を取得~「中大規模木造建築物の実現」へ向けた取り組みとして、10階建て共同住宅のモデルプランで一般財団法人日本建築センターの評定を2022年10月14日に取得しました。本評定は、株式会社市浦ハウジング&プランニングを代表とする「P&UA構法共同技術開発グループ」との共同研究開発により取得しました。認定された本構法は、一方向ラーメン構造と耐力壁を木造で架構するもので、新たに開発した接合技術である「GIUA」と「シアリングコッター耐力壁」を用いることで、高耐力・高剛性・高靭性を有する中高層木造構造物を実現できます。 (4) 環境関連技術①CO2削減に貢献する新素材コンクリート製品の試験製造に成功~アルカリ活性材料を用いた意匠性を有する低炭素型プレキャストコンクリート製品~JFEスチール株式会社、国立大学法人東北大学、学校法人日本大学及び共和コンクリート工業株式会社と共同で、通常のコンクリートに比べて、製造時のCO2排出量を約75%削減可能なアルカリ活性材料コンクリートを用いた、意匠性を有するコンクリート二次製品の試験製造に成功しました。本成果により、さまざまな形状の製品に利用展開が進むことで、コンクリート分野でのCO2排出量の削減が可能となります。試作したコンクリート二次製品は、自然条件が過酷な寒冷環境において試験を行い、早期実用化に向け耐久性の検証を行う予定です。 ②ZEB設計技術の検証・向上のための実証スペースを開設適用事例が少ない先進的な省エネ技術を用いた設計において、所期性能を担保するには実証や検証が必要となります。そのため、当社意匠設計部ZEB推進室の設計により技術研究所(神奈川県愛川町)の一部を改修し、ZEB設計技術の実証スペースを開設しました。ZEBは省エネ性能と同時に、施設利用者の知的生産性向上にも寄与することが求められております。この実証スペースでは、使い方が異なるいくつかのオフィス空間を設定し、それぞれの空間に適した先進的な省エネ技術を組み合わせることで、省エネ設計技術の試行と知的生産性向上を目指した空間としました。今後は、技術研究所のオフィスとして使用しながら、性能検証及び性能向上を図っていく予定です。 ③LPWAの省エネルギー遠隔監視環境モニタリング技術を開発~水域の環境保全をIoT化へ、DOバイオセンサーでモニタリング実証確認~国立大学法人和歌山大学及び国立大学法人群馬大学との共同研究で、貧酸素化しやすいダムや湖沼等の連続計測値観測のために、免許不要で省電力であるLPWA無線装置と一体化した、外部電源不要なMFC式のDOバイオセンサーを開発しました。これにより、連続計測値を遠隔監視することが可能になり、閉鎖性水域での計測、メンテナンス作業の効率化及び省人化によるコストダウンが見込まれます。今後はシステム全体の自立電源化を進め、実際の運用においては規定の数値になったらPCやスマートフォンにアラートを送信するなどアプリケーションの改良を行なってまいります。 (5) 新しい取り組みジオポリマーによる実建物の建設に向けた研究会の発足~二酸化炭素排出削減と産業廃棄物の有効利用に貢献~公立大学法人北九州市立大学と共同で、ジオポリマーによる実建物建設に向けて研究会を発足しました。新しい建設材料であるジオポリマーを、建築物に構造材料として用いる場合には、品質や性能などの技術的課題を解決するとともに、建築基準にも適合する必要があります。そこで、福岡県リサイクル総合研究事業化センターの支援により「浮遊選鉱法によって改質した燃焼灰を使用したジオポリマーコンクリートによる実建物の実証研究会」を2022年5月に発足し、活動を開始しました。ジオポリマーを建築物へ適用するための法律上の課題を整理するとともに、その材料特性、製造・施工方法、費用などの検討を行い、2025年度の実建物建設に向けて活動を進める予定です。 (開発・不動産事業等)人工光型植物工場の環境下におけるホウレンソウの促成栽培方法を確立玉川大学との共同研究で、LED等の人工光源を使用した人工光型植物工場(以下「植物工場」といいます。)でホウレンソウの促成栽培方法を確立しました。これまでも植物工場でのホウレンソウの栽培は可能でしたが、収穫量を増加させるために日長を12時間以上に延長すると商品価値が失われる抽苔(花芽を形成し茎が急速に伸びる現象)が発生する課題がありました。今回、栽培時の栄養濃度、光の強さ、植え方等の環境条件について検討を重ね、促成栽培条件である20時間の日長及び20~25℃の栽培温度でも抽苔を発生させずに栽培できることを確認しました。将来的に生産性と高品質化を両立させた植物栽培の技術開発を目指してまいります。
FY2022|4,010 文字
5 【研究開発活動】当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。 (土木事業・建築事業)当社では、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、国土強靭化に資する防災・減災に関する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は1,748百万円で、主な成果は以下のとおりです。 (1) 生産性向上技術①リアルタイムな地山評価により山岳トンネルのさらなる安全性向上や合理的施工を実現~地山の3次元的な定量評価を自動で行う「DRISS-3D_Monitor」を開発~既に多くの現場で活用されている切羽前方探査システム「DRISS(Drilling Survey System)」による地山評価の作業を自動化し、施工重機の運転席に設置したモニターでリアルタイムにトンネル周辺地山の性状を確認できる「DRISS-3D_Monitor」を開発しました。作業員の「感覚知」や「経験知」であった詳細な地山性状を、穿孔したその場で3次元的に「見える化」することによって、現場、関連部署、客先等への情報共有がスムーズになるとともに、施工への迅速な反映が可能となり、生産性の向上が期待できます。 ②GNSS測位技術を活用した「ケーブルクレーン自動運転システム」を開発 ~ダム建設工事 堤体工での運用を開始~ダム建設工事におけるコンクリート打設のサイクルタイムの短縮を可能とする「ケーブルクレーン自動運転システム」を開発しました。本システムは、コンクリート打設作業の際に都度遷移する打設位置や、バケット積載重量の変化に応じて、運搬の軌道や速度を変化させ、最適化された自動運転を実現するものです。打設位置へ高精度に到達し、バケットの振れを自動で抑えることが可能であり、柱状打設へ適用した場合には、クレーン運転士が目視確認できない箇所においても安全かつ迅速にバケットを到達、開放できるため、サイクルタイムの短縮、堤体工の生産性向上を可能としました。本システムは、国土交通省九州地方整備局発注の立野ダム建設(一期)工事において、2021年3月より堤体工での運用を開始しております。 (2) 省人化・省力化技術①国内初トンネル坑内においてローカル5Gを使用したホイールローダの遠隔操縦を試行 ~28GHz帯のローカル5G通信を山岳トンネルへ国内初適用~株式会社カナモト、有限会社浅草ギ研、ジオマシンエンジニアリング株式会社と共同で、山岳トンネル掘削時のずり運搬に使用されるホイールローダをローカル5G通信により遠隔操縦させるシステムを開発し、トンネル坑内において遠隔施工実証実験を行いました。28GHz帯のローカル5G通信を山岳トンネル坑内へ適用したのは国内初となります。ローカル5G通信については、トンネル掘削に使用する複数重機の遠隔同時施工への応用も期待されており、今回の開発を足掛かりにトンネル工事の無人化施工の実現に向けて取り組みを加速させてまいります。なお、本技術は、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)予算を活用して国土交通省が実施する「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定されております。 ②コンクリート打設残量予測システム(アプリ版)を開発コンクリート打設工事の終了間際に、現場技術者が現場の状況から判断して実施するコンクリート調整数量の計算は高い精度が要求されます。調整して発注したコンクリートが不足した場合は、現場作業を止めることになり、長時間労働の原因となっていたことから、コンクリート打設残量予測システム(アプリ版)を開発しました。あらかじめシステムに読み込ませた躯体図を現場で携帯端末に表示し、その図面上でコンクリートの未打設範囲を囲み指示することでその範囲のコンクリート体積が自動で算出され、残り何㎥のコンクリートを追加発注すればよいか評価・提示するシステムです。本システムにより、現場技術者は追加発注量を正確に計算することができるため、産業廃棄物の増加や長時間労働といった問題の解決につながります。 (3) 品質向上技術①覆工コンクリートの表層品質をAIが自動評価する「A.E.s.SLiC」を開発~AI活用技術で山岳トンネル覆工コンクリートの品質向上~株式会社sMedioと共同で、山岳トンネル覆工コンクリートの表層品質評価を行うための AI(人工知能)活用技術「A.E.s.SLiC(イースリック)」を開発しました。本システムは、覆工コンクリートの写真を用いて、「表層目視評価シート」に則った、①はく離、②気泡、③水はしり・砂すじ、④色むら・打重ね線、⑤施工目地不良及び⑥検査窓枠段差の6項目をAIが自動評価するものです。本システムによって、評価及び評価結果とりまとめ作業の迅速化と、不具合発生時の改善対策の早期実施が可能となり、山岳トンネル覆工コンクリートの品質向上が期待できます。 ②ペーパースラッジを混合した流動化処理工法の開発・実証~流動化処理土の品質(材料分離抵抗性)の向上、適用範囲の拡大~公立大学法人宮城大学との共同研究のもと、産業廃棄物であるペーパースラッジを主原料とした混和材を採用し、資源循環を考慮した環境負荷低減型の流動化処理工法を開発しました。本工法では、ペーパースラッジの特性を利用することで、流動化処理土の流動性や材料分離抵抗性を向上させることが可能となります。そのため、施工現場で課題となっていた品質の安定した流動化処理土の現場での製造、打設が可能となります。 (4) 環境関連技術①二酸化炭素削減技術「スラグリート®」をNETISに登録~低炭素型コンクリートの適用促進へ~戸田建設株式会社と共同で開発した二酸化炭素排出量の少ない低炭素型のコンクリート「スラグリート®」を国土交通省が運用している「新技術情報提供システム(NETIS)」に登録しました。「スラグリート®」は、製鉄所の副産物である高炉スラグ微粉末に着目し、セメントの代替材料として積極的に活用した環境に優しいコンクリートです。すでに建設材料技術性能証明も取得しており、建築工事の一部にも採用できます。今後、土木・建築工事への利用を進め、二酸化炭素排出量の削減に貢献してまいります。 ②ヘドロを分解して発電する微生物燃料電池を応用した溶存酸素計測バイオセンサーの実証実験を実施群馬大学と共同開発した微生物燃料電池(以下「MFC」といいます。)式の溶存酸素(以下「DO」といいます。)計測バイオセンサーの実証実験を実施しました。MFCは、自然界に生息する発電菌を利用して有機物(ヘドロ等)を分解・浄化しながら発電することができる電池です。本バイオセンサーは、水中のDO濃度に応じてMFCの発電量が変化する性質を応用したもので、省エネルギーを実現しながらDO濃度を連続計測できます。本バイオセンサーを群馬県内のため池に設置し、運用した結果、実際のDO濃度に近い精度で計測できることが確認できました。本技術によって、貧酸素化しやすい水域等の連続計測が容易にできるようになります。 ③中大規模木造建築物の実現に向けた技術開発近年、脱炭素社会の実現に向けて、カーボンニュートラルな素材である「木造」が社会的にも注目を集めております。このような社会環境の変化に対応し、新しい建築技術分野への挑戦を目的として、中大規模木造建築物の実現に向けた技術開発に取り組むとともに、木造建築物の中大規模化に必要な耐火技術を保有する株式会社シェルターとOEM契約を締結しました。中大規模木造建築物の実現に向けた技術開発をより一層推進し、脱炭素社会に貢献してまいります。 (5) 新しい取り組み①西松建設×佐賀市 廃食用油等から製造した高品質バイオディーゼル燃料の実用化に関する共同研究を開始佐賀市清掃工場に設置した「次世代型バイオディーゼル燃料製造プラント」で製造される高品質バイオディーゼル燃料の実用化を目指し、佐賀市と共同研究を開始しました。高品質バイオディーゼル燃料とは、軽油と同等の品質を有する廃食用油等を原料とした炭化水素系のバイオディーゼル燃料であり、次世代の軽油代替燃料として期待されています。本研究では、高品質バイオディーゼル燃料の品質及び製造安定性を確認するとともに、現場実証実験により建設機械への適合性を評価し、施工現場への高品質バイオディーゼル燃料の導入を目指します。また、佐賀市と連携し、SDGsに紐づけた地域資源の循環や地産地消エネルギー活動による付加価値についての検討を進めることにより、新たな事業創出を目指してまいります。 ②IoTによる地震防災構造ヘルスモニタリングに関する技術開発を行うため、6層の鋼構造建物を再現した鋼構造模型による振動台実験を実施しました。試験体は実大サイズの事務所ビルを相似則により縮小しましたが、接合部などのディテールは再現可能な限り実大の一般的な鋼構造建物に倣い計画しました。今後は取得したデータを用いて、現状の構造ヘルスモニタリング技術の抱える課題点などを抽出し、防災減災のための技術開発や検証実験を進める予定です。 (開発・不動産事業等) 研究開発活動は特段行っておりません。
FY2021|4,158 文字
5 【研究開発活動】当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。 (土木事業・建築事業)当社では、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、防災・減災に資する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は1,533百万円で、主な成果は以下のとおりです。 (1) 生産性向上技術①高速3Dスキャナを用いた「切羽掘削形状モニタリングシステム」を現場検証山岳トンネル切羽掘削面の整形作業の安全性向上と効率化を目的として、高速3Dスキャナを用いた「切羽掘削形状モニタリングシステム」を開発し、株式会社ビュープラス及びジオマシンエンジニアリング株式会社と共同で、当社施工中のトンネル工事において現場検証を行いました。開発した「切羽掘削形状モニタリングシステム」により、トンネル掘削の余掘り・余吹きを20%低減でき、トンネル掘削の生産性向上に寄与できることを検証しました。なお、当技術は国土交通省の令和元年度建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト試行技術に採用されました。 ②パイルキャップをプレキャスト化し、杭と一体化を図る工法を開発杭基礎に使用するパイルキャップをプレキャスト化し、杭と一体化する工法を開発しました。本工法は、パイルキャップを予め製作し、杭施工後に杭頭上に設置するもので、杭の性能確保にも重要なパイルキャップと杭の接合部分の構造性能を実験により確認しました。基礎工事の工期短縮や杭頭部で複雑な鉄筋の組立・設置等の省力化に繋がることが期待できます。 ③ダム下流面はつりシステムの開発ダムの嵩上げ等において、主に人力によって行われていたダム下流面のはつり作業を機械化・効率化するため、株式会社れんたま、タグチ工業株式会社と共同ではつりシステムの基本設計を行いました。本システムは、コンクリートを均一な深さで切削できる機能を有した装置をダム下流面に配備し、遠隔操作により上昇させることで、安全かつ効率的にはつり作業を行うことが可能となり、生産性の向上が期待できます。 (2) 省人化・省力化技術 ①山岳トンネル工事におけるホイールローダー遠隔操作システムを開発山岳トンネル掘削時に切羽近傍のずり運搬に使用される、ホイールローダーの遠隔操作システム「Tunnel RemOS - WL」を開発し、株式会社カナモト、ジオマシンエンジニアリング株式会社と共同で、実際のずり運搬を模擬した遠隔操作実験により、無人運転時の動作や操作性・安全性に問題がないことを確認しました。本システムでは、ホイールローダーの走行やバケット操作といった坑内のずり運搬作業に必要な運転動作を、車体に設置した複数のカメラ映像を見ながら、ほぼ遅れなく無線で遠隔操作することができます。このような遠隔操作技術はトンネル掘削に使用する他の重機にも応用が可能であり、今回の開発を足掛かりにトンネル工事の省人化・省力化が期待できます。②チャットボットを活用したコンクリート発注管理システムを開発株式会社LisB、日本ディクス株式会社と共同で、チャットボットを活用したコンクリート発注管理システムを開発しました。コンクリート工事においては関係者が多く、連絡・確認業務や集計業務が多数発生し変更も多いため、現場職員や協力会社の大きな負担となっていました。そこで、より迅速に情報共有できるビジネスチャット「direct」と、確認および集計を自動化できるチャットボットを活用した発注管理システムを開発しました。チャットボットにより発注情報をデータベース化し、見せたい人に必要な情報を必要なタイミングで提供できます。これにより、現場監督の手配業務の効率化、社内関係者および協力会社の連絡・確認・集計業務の効率化が図られ、業務時間の短縮が期待できます。③コンクリート工事の施工管理業務支援システム「NCHyper」を開発株式会社ハイパーエンジニアリングと共同で、コンクリート施工管理業務支援システム「NCHyper(エヌ・シー・ハイパー)」を開発しました。本システムは、コンクリートの配合情報、受入検査結果、圧縮強度試験結果などの情報をクラウド上で一元管理し、施工管理の各種書類(コンクリート工事全般の施工計画書、打設計画書・実施報告書、品質管理記録など)へ情報を自動転記することで書類作成時間を短縮できます。また、電子印の活用により、工事監理者による確認作業を効率化し、現場管理業務の省力化を実現します。 (3) 品質向上技術 ①信頼性の高い既製コンクリート杭用パイルキャップ工法「HSSパイルキャップ工法」を開発パイルキャップのせん断耐力の信頼性を向上させたHSS(High Shear Strength)パイルキャップ工法を開発しました。本工法は、コンクリートのせん断耐力に加え、パイルキャップ内に配置された鉄筋の耐力や、軸力による摩擦抵抗力を組み合わせることで、パイルキャップの大きさを変えることなく、従来よりも大きなせん断耐力を確保することができます。この効果により、より大きな地震力に対しても設計が可能となり、構造物の品質向上に寄与します。 ②ボーリング孔壁画像から岩盤不連続面を効率的に判別できる画像評価支援システム「N-IESS」を開発株式会社ボア、ジーエスアイ株式会社、東京理科大学の協力のもと、ダム現場等における地盤調査で用いるボアホールカメラの画像を鮮明化できる画像評価支援システム「N-IESS(エヌイース)」を開発しました。本システムを用いることにより、濁り等で不鮮明な画像を鮮明化処理することで、撮影手戻りや評価時間の削減、地盤の割れ目や破砕箇所などの判定精度の向上を図ることが期待できます。 (4) 環境関連技術 ①微生物燃料電池方式を応用したCO2変換セルによるメタン生成に成功群馬大学大学院と共同で、微生物燃料電池(Microbial Fuel Cells、以下「MFC」といいます。)を応用したCO2変換セルによるメタン生成に成功しました。本技術は,有機物質を分解(浄化)しながら発電できるMFCを応用したCO2変換技術であり、これは排出CO2を有用な炭素資源と捉えて、CO2から有用化学物質に変換する技術(CCU)に分類されます。今回、このMFC方式を応用したCO2変換セルを試作し、微生物燃料電池で有機物を分解しながら発電した電気を利用して、CO2の一部をメタンに変換できたことを確認しました。本技術の実用化により、例えば工場等で発生した有機性排水をMFCで浄化・発電しながらCO2をメタン等に変換し、燃料や有用物質の合成原料として再利用することが可能なカーボンリサイクル技術として活用できます。 ②低炭素型コンクリート「スラグリート®」が建設材料技術性能証明を取得戸田建設株式会社と共同開発した低炭素型のコンクリート「スラグリート®」が、一般財団法人日本建築総合試験所にて建設材料技術性能証明を取得しました。コンクリートに使用するセメントの70%を産業副産物である高炉スラグ微粉末に置き換えることで、製造時のCO2排出量を約65%低減でき、またセメントの反応熱に起因したひび割れの発生を抑制します。第三者機関での性能証明の取得により、特に建築分野への普及に弾みをつける狙いです。 ③低品位フライアッシュのジオポリマー用の処理方法に目途北九州市立大学と共同で、工場などの石炭火力発電施設から排出される低品位フライアッシュをジオポリマー用に処理して、その処理したフライアッシュを用いたジオポリマーの実機ミキサでの製造に成功しました。低品位フライアッシュは未燃カーボンを多く含み、ジオポリマーの材料としては不適合でしたが、浮遊選鉱法を用いた処理によりジオポリマーへの使用が可能となりました。低品位フライアッシュを使用したジオポリマーが、実機ミキサで製造できたことで、より環境に優しいジオポリマーの普及に貢献できます。 (5) 新しい取り組み ①飛行船型水路トンネル調査ロボット「トンネルマンボウ」を開発長崎大学海洋未来イノベーション機構と共同で、飛行船型水路トンネル調査ロボット「トンネルマンボウ」を開発しました。水路トンネルの延長は数kmと長く、ドローンでは飛行時間の制限で調査が困難でしたが、飛行船型にすることにより、長い水路トンネルでも調査可能になりました。また、自律飛行制御を組み込んだことで、例えば震災後の崩落の危険があるトンネルでも無人で安全に調査することが可能であり、水路トンネルの維持管理に貢献できます。 ②無給電・無線電力センサーを用いた水中ポンプ監視システム「Newt」を開発無給電・無線電力センサーを活用し、水中ポンプの稼働状況を無人で監視するシステム「Newt(ニュート)」を開発しました。本システムは、トンネル坑内の複数個所に設置・稼働中の水中ポンプの分電盤に無給電・無線電力センサーを取り付けるだけで、水中ポンプの稼働状況を現場の閉所・休み期間中も含め、「いつでも・どこでも」リアルタイムに確認することができます。本システムにより、クラウド上へアップロードされるデータが一定時間確認されない時は水中ポンプの稼働停止と自動で判断し、坑内に設置した警報パトライトが点灯するとともに関係者への警報メールが送信されます。これにより関係者へ異常・危険を知らせ、トンネル坑内の湧水による水没事故等、トラブルを未然に防ぎ、働き方改革にも貢献が期待できます。 (開発・不動産事業等) 研究開発活動は特段行っておりません。
FY2020|3,438 文字
5 【研究開発活動】当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。 (土木事業・建築事業)当社では、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、防災・減災に資する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は1,506百万円で、主な成果は以下のとおりです。 (1) 生産性向上技術① 高精度に地質・変位予測できる山岳トンネルCIM総合管理システムを開発山岳トンネルにおけるCIMの効率的な活用を目的として、山岳トンネルCIM総合管理システムを開発し、当社施工中のトンネル工事に適用しました。従来のCIMデータに加え、当社独自の前方探査及び予測解析技術と株式会社演算工房が保有する汎用的な3次元ソフト「E-G Modeling」を統合したもので、施工中に得られたデータを自動でインポートして、既掘削区間の変位や前方地山の地質状況等を3次元的に可視化できます。これにより高精度な地質・変位予測や情報共有が行えるため、施工中の生産性及び安全性向上に寄与します。② リアルタイムにトンネル断面形状管理と地山評価ができる掘削支援システムを開発山岳トンネル掘削時の効率化と安全性向上を目的とした「自由断面掘削機の掘削支援システム」を開発し、当社施工中のトンネル工事に適用しました。このシステムは株式会社ビュープラスとジオマシンエンジニアリング株式会社と共同で開発したものです。掘削機に設置された高速3Dスキャナによる機体位置・姿勢把握手法を利用して掘削位置情報(カッタ先端の位置情報)をリアルタイムで可視化すると同時に、掘削に要した電力量等から掘削地山の性状を定量評価することができます。これにより、トンネル掘削形状や地山の安定性を掘削作業時にリアルタイムで把握することが可能となり、掘削作業の効率性や安全性の向上が図れます。③ 梁端部で接合を可能とするプレキャスト構法を開発鉄筋コンクリート造建物のプレキャスト施工の更なる合理化を目的として、静岡理工科大学と共同研究を行い「ヒンジリロケーション構法」を開発しました。ヒンジリロケーション技術により、プレキャスト化した柱梁接合部から突き出す鉄筋の長さを短くすることが可能となります。これまで工場から運搬できなかった中柱の柱梁接合部もプレキャスト化が可能となり、生産性の向上に寄与します。 (2) 省人化・省力化技術① 覆工コンクリートの施工を完全機械化(自動化セントル)山岳トンネル工事の覆工コンクリート施工作業を完全機械化した「自動化セントル」を岐阜工業株式会社と共同開発しました。覆工コンクリートの施工をアシストする各種装置や機能を搭載しており、セントルを用いた覆工コンクリートの施工作業を完全機械化した自動化施工技術です。従来、人力で行っていた作業を機械化することで人員の削減や作業時間の短縮につながり、生産性の大幅な向上が期待できます。② コンクリートの打設残量を予測するシステムを開発コンクリートの打設数量管理の効率化を目的とした「コンクリート打設残量予測システム」を開発しました。コンクリートの工事状況をウェブカメラで撮影し、その画像と設計図を重ね合わせ、リアルタイムにコンクリートの未施工範囲の数量を計算・管理するシステムです。これまで人が行っていた数量管理を自動化することによる業務の効率化のほか、打設コンクリートが余ることによる無駄の削減や打設コンクリートの不足による作業遅延の防止が可能となります。③ RC床ひび割れマップの作成を自動化RC床ひび割れマップの作成を自動化するため、屋内で自律飛行できるUAVを自律制御システム研究所と共同開発しました。非GPS環境である屋内において、自己位置を検出するための特殊なセンサーを搭載したUAVによりRC床面を自動で撮影し、それを人工知能で解析して、ひび割れマップを自動作成する技術です。従来、人が床を目視観察してスケッチしていた作業を機械化・自動化することで、品質向上と省力化が期待できます。 (3) 品質向上技術① 高保水性シートによるコンクリート壁面の湿潤養生ボックスカルバートの側壁や橋脚の柱部など、コンクリートの壁面を均質に湿潤養生できる「モイスチャーウォール」を開発しました。保水性に優れた特殊素材と、柔軟性のある基材を一体成形した独自の養生シートにより、一度の給水で長時間ムラなく湿潤状態を保つことができます。また養生中のシートに水を再度補給する作業も、従来のマット状の養生材を用いた場合に比べて容易です。② 貼付け型養生シートによるコンクリート表層品質の向上と防汚対策宇部エクシモ株式会社と2017年に共同開発したコンクリート用保温・保湿養生シート「シンプルキュア」を、推進工法の函体養生に適用し、コンクリート表層品質の大幅な向上のほか、函体推進時における防汚対策としても有効であることを確認しました。従来の施工養生を行った箇所と比較して、表面吸水試験(水の通り易さを指標とした試験)による表面吸水速度が1/14程度まで低減し、また表面での超音波速度試験(超音波の伝わり易さを指標とした試験)による超音波伝播速度も約1.2倍となり、コンクリート表層がきわめて緻密化され、高い耐久性を有することが確認できました。 (4) 環境関連技術① 堆積物微生物燃料電池式バイオセンサーを用いた溶存酸素濃度連続計測技術群馬大学大学院と共同で、堆積物微生物燃料電池(以下「SMFC」といいます。)式バイオセンサーを用いた自立電源型システムによる溶存酸素濃度連続計測技術を確立しました。SMFCは、底質中の嫌気性発電細菌による有機物分(ヘドロ等)の分解(代謝)で生じた電子を底質中に設置したアノード(負極)を経由して、水中に設置したカソード(正極)上で溶存酸素と反応することで発電する技術です。この時、SMFCが水中の溶存酸素濃度に応じて発電量(電流/電圧値)が変化する性質に注目し、発電量の変化から任意の水深における溶存酸素濃度を連続計測できるSMFC式バイオセンサー計測システムを構築しました。② オンサイトで砒素を含有する掘削ずりを浄化する技術当社と金沢大学が2015年に共同開発したキレート剤による湿式洗浄(キレート洗浄)を基本原理とし、砒素や鉛といった重金属等の溶出量が基準を超える掘削ずりを対象とする浄化技術です。自然由来の重金属等を含有する掘削ずりを対象とし、洗浄液に生分解性のキレート剤等を用いた浸漬式の洗浄処理によって砒素を抽出除去し、溶出を低減する技術です。 (5) 新しい取り組み① 下水汚泥焼却灰から肥料用のリンを高効率で回収する技術を開発新潟大学と共同で、下水汚泥焼却灰から肥料に利用できるリンを高効率で回収する技術を開発しました。本技術は、酸とアルカリの二段階溶出を行うことにより重金属等を除去することができ、直接肥料として利用できる形態のリンを効率的に回収することができます。また、リン回収後の残渣からも重金属等が除去されるため、残渣を有価資源にできることも特長です。② 新たなLPWA規格を搭載した構造物モニタリングシステム東大発の無線通信ベンチャー企業であるソナス株式会社が独自に開発したマルチホップ型LPWA「UNISONet Leap(ユニゾネット リープ)」を搭載した構造物モニタリングシステムの有効性を確認しました。この新しいLPWA通信は省電力広域無線でありながら、主要なLPWAと比較して高速かつ安定した通信が可能で、高精度な振動計測データをロスなく収集することが可能です。設置が容易でコストも大幅に削減できるため、構造物の老朽化や点検技術者の不足に悩む建設業界において新たな防災・減災の手段として注目されております。 (開発・不動産事業等) 研究開発活動は特段行っておりません。
FY2019|2,937 文字
5 【研究開発活動】当社は、社会基盤整備の要請や顧客の要望に応えるべく、実践的な技術を中心に幅広く研究開発活動を行っております。 (土木事業・建築事業)当社では、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、防災・減災に資する技術、省エネ・低炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめ、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めております。当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は1,377百万円で、主な成果は以下のとおりです。 (1) 生産性向上技術① 地質・構造物の詳細モデルによるCIMをシールドトンネルに適用施工計画と施工管理の効率化・高度化を目指し、地質構造や周辺の地上・地下構造物を詳細に表現・統合した3次元モデルを構築して、シールド現場にCIM(Construction Information Modeling/Management)を適用しました。地質変化に的確に対応できるためシールド機と周辺構造物との位置関係が明確になりました。また、施工中の掘削・計測データ等をCIMモデルに取り込むことで、地盤変状等の総合的な評価が可能になりました。これらにより関係者間の合意形成が迅速になり、施工現場全体の生産性や安全性の向上に資すると考えております。② 切羽作業をAIで自動判定する「掘削サイクル判定システム」AIの画像分析技術を利用してライブ映像から切羽作業を判定することで、掘削サイクルを把握することが可能となりました。このシステムは、山岳トンネルの生産性向上を目的とする「西松建設の山岳トンネルAIソリューション」の要素技術のひとつであり、トンネル坑内のエネルギーマネジメントシステムの運用や、掘削サイクルの見直しによる施工パフォーマンスの向上等が可能となります。 (2) 省人化・省力化技術① マッシブウォール工法軽量鉄骨下地間仕切壁(LGS壁)において、「マッシブスタッド」(下地材)を新規考案するとともに、従来のLGS壁より面外方向の最大耐力を大きく向上させた「マッシブウォール工法」を八潮建材工業株式会社と共同で開発しました。大型物流施設等では最大高さ7.7mまで中間梁なしで倉庫業法2500N/m2に対応するLGS壁を実現しました。2019年2月までに8件の大型物流倉庫で適用しており、着実に実績を積み重ねております。② コンクリート工事の省力化と工期短縮を両立する「フュージョンビーム工法」プレキャストコンクリート梁の新たな耐力評価法を確立し、この評価法を設計に取り入れた施工法のフュージョンビーム工法を戸田建設株式会社と共同で開発しました。開発には「等価コンクリート強度」という考え方を採用し、上部と下部で異なるコンクリート強度を有する梁の耐力を断面の比率に応じて合理的に設計します。鉄筋コンクリート造プレキャスト梁の梁上部とスラブを同じコンクリート強度で一度に打設することが可能であり、従来の止め型枠を不要とすることで、躯体工事の省力化及び工期の短縮を実現しました。 (3) 品質向上技術① 覆工コンクリートのプレキャスト化で山岳トンネルの品質や施工性を画期的に改善狭隘な空間での作業を無くすことで、さまざまなメリットが期待できる覆工コンクリートのプレキャスト化を戸田建設株式会社及びジオスター株式会社と共同で進めております。プレキャスト製品の使用によって耐久性が向上し、ひび割れや剥離の発生が抑制できます。愛川技術研究所で大規模模擬試験を行い、考案した運搬・組立て方法の妥当性を確認しました。熟練工を必要とせず、両坑口からPCa覆工の運搬が可能であり施工速度が約1.5倍に早まることから、生産性向上・工期短縮も図ることができます。② コンクリートのひび割れを抑制できる「フィットクリート」の適用推進株式会社安藤・間、株式会社熊谷組、佐藤工業株式会社、戸田建設株式会社、株式会社フジタ及び前田建設工業株式会社との共同で開発したコンクリートの乾燥収縮ひずみを制御できる技術です。実大試験体の2年間の暴露試験を通して、乾燥収縮ひずみ低減対策に応じたひび割れ抑制効果を確認しました。今後、実物件への適用を開始しコンクリートの高品質化を目指して適用を推進してまいります。 (4) 環境関連技術① 微細気泡を用いた高効率ばっ気処理装置を現場で実証京都大学と共同で揮発性有機化合物を含有する地下水又は工場排水を対象とした微細気泡による高効率ばっ気処理装置を開発しております。2年間の実証を経て、地下水に特有の水質成分によるセラミックモジュールの目詰まりなど、処理性能に大きく影響を及ぼす原因を特定し、具体的なメンテナンス手法を確立しました。また、これまでの1,4-ジオキサン含有排水処理に使用していた促進酸化装置は非常に高価でしたが、本装置に酸化剤添加槽を追加設置することで、この処理が安価にできるようになりました。② 自社所有オフィスビルでZEB Readyを取得自社で設計施工を行い2018年11月30日に竣工した「NCOメトロ神谷町」で自社所有施設初の「ZEB Ready」を取得しました。高効率空調機システム等の導入により、年間一次エネルギー消費量を、標準的な仕様の建物と比べて53%削減します。ビル全体としてのエネルギー消費状況のモニタリングを継続し、経験を踏まえた改善による更なる省エネルギー化を図るとともに、ZEB設計技術の知見を蓄積し、省エネルギー化に向けた取り組みを推進してまいります。 (5) 新しい取り組み① 再生可能エネルギーを最大限に活かすための蓄電システムLEシステム株式会社と共同で太陽光発電等の再生可能エネルギーを最大限に活かすための蓄電システムを開発し、実証試験を開始しました。蓄電池には、安全性が高く再生可能エネルギーの変動吸収や大容量化に適し長期間安定稼動するバナジウムレドックスフロー電池を採用しております。今後は本システムの改良を重ね、再生可能エネルギーの電力需給に応じた蓄電システムを確立し、スマート・グリッド社会に対応した地域分散型エネルギーシステムを構築することで、低炭素社会の実現に貢献してまいります。② LPWAとIoT技術を活用し農業分野で計測監視システムの実証実験を開始LPWAとIoT技術を活用した、当社開発の傾斜監視クラウドシステムを農業分野に応用することで、自宅にいながら畑やハウスの状況が把握できるようになります。また、これまで営農者の経験によって収穫時期を決めていましたが、積算温度・日照時間を把握することによって、データに基づいた最適な収穫時期がわかるようになります。農作業の省力化を図るため“手軽”に開始できる環境監視クラウドシステムの構築によって、農業分野における新しいサービスの提供を目指します。今後も新たな社会貢献につながるサービスや技術開発を進めてまいります。 (開発・不動産事業等) 研究開発活動は特段行っておりません。
FY2018|2,305 文字
5 【研究開発活動】当社は、社会基盤整備の要請や顧客の要望に応えるべく、実践的な技術を中心に幅広く研究開発活動を行っております。 (建設事業(土木・建築))当社では、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、防災・減災に資する技術、省エネ・低炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめ、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めております。。当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は1,363百万円で、主な成果は以下のとおりです。 (1) 生産性向上技術① 山岳トンネル工事における「高速ずり搬出システム」発破時の飛石を防ぐ既開発の「移動式発破防護バルーン」とずりをベルトコンベアへ運ぶ「スライド式テールピース台車」を組み合わせた、高速ずり搬出システムをタグチ工業株式会社と共同で開発しました。連続ベルトコンベヤシステムの先端設備を切羽進行に追従するよう前進させ、ずり搬出時間を最大で30%以上削減することが可能になります。② 車載式トンネル3Dスキャニングシステムトンネルの変位を迅速かつ面的に計測可能な「車載式トンネル3Dスキャニングシステム」を、マック株式会社と共同で開発しました。3Dレーザースキャナ等の計測機器一式を計測車に載せており、車輌の移動・停止後速やかに自動計測を行うことが可能です。従来の三脚に設置して行う手法と比較すると、同等の計測精度を確保しつつ、計測時間を1/6程度に短縮することが可能となりました。 (2) 省人化・省力化技術① マッシブウォール工法軽量鉄骨下地間仕切壁(LGS壁)において、「マッシブスタッド」(下地材)を新規考案するとともに、従来のLGS壁より面外方向の最大耐力を大きく向上させた「マッシブウォール工法」を八潮建材工業株式会社と共同で開発しました。大型物流施設等において、「マッシブスタッド」を採用することにより、最大高さ7.7mまで中間梁なしで倉庫業法2500N/m2に対応するLGS壁を実現しました。② ウェアラブルグラスの活用による遠隔作業支援メガネ型端末であるウェアラブルグラスを用いて、各種検査・調査業務の省人化・効率化を促進する遠隔作業支援システムの現場実証を実施しています。工事現場におけるWi-Fi等の通信網の整備と合わせ広く普及させることで、将来の生産労働人口の減少や作業員の高齢化にも対応できると考えています。 (3) 品質向上技術① シンプルキュア粘着剤付きコンクリート用保温・保湿養生シート「シンプルキュア」を宇部エクシモ株式会社と共同で開発しました。型枠を取り外したコンクリート面に貼り付けるだけで保温性と保湿性が得られ、従来品と同等以上の品質を確保しつつ、生産性を高めることが可能です。② DRISS-3D山岳トンネルの掘削に使用されるドリルジャンボの施工データ(発破孔・ロックボルト孔の削孔データ)を使用して、切羽及びその近傍の地山性状を定量的かつ詳細に3次元評価可能な地山評価システム「DRISS-3D」をジオマシンエンジニアリング株式会社と共同で開発しました。施工サイクルに影響を与えることなく3次元地山評価を連続的に行うことが可能で、既開発のトンネル変形予測システム「PAS-Def」にも利用できるため、地山性状及び掘削時の変形挙動を一括したより高度な評価が可能です。 (4) 防災関連技術① 耐震安全性・経済性に優れた二重管式既製コンクリート杭工法「ヘッドギアパイル工法」既製コンクリート杭の耐震安全性を向上させるヘッドギアパイル工法(Headgear Pile)を共同で開発しました。建物を支える既製コンクリート杭の頭部に、直径の大きい鋼管を設置し、二重管式構造とすることで、地震力に対する抵抗性を高めることができます。この二重管部の構造安全性評価の妥当性について、一般財団法人日本建築センターから工法評定(BCJ評定-FD0565-01)を取得しました。② “手軽で安価”なインフラ監視システムインフラ施設管理者の維持管理の省力化・効率化を図るため、省電力広域無線通信ネットワーク(LPWA)とIoT技術を活用し、導入及び運用が手軽で安価なインフラ監視クラウドシステムを開発し、実証運用を開始しました。斜面、擁壁、護岸、柱状物などの既存インフラの目視点検に代えて、安価な設備投資で手軽に確認することができます。 (5) 環境関連技術① 高効率ばっ気処理装置を用いた1,4-ジオキサン除去技術微細気泡を用いた高効率ばっ気処理装置と、酸化剤による酸化分解処理を併用することにより、従来のばっ気処理では除去が困難であった1,4-ジオキサンの除去技術を京都大学と共同で確立しました。1,4-ジオキサンとVOCを含有する混合汚染に対して、1,4-ジオキサン処理で特有な促進酸化処理しなくても、土壌・地下水処理で一般的な処理法であるばっ気処理が適用可能となり、浄化コストの大幅な削減が期待できます。② キレート土壌原位置浄化生分解性キレート剤を用いた重金属等汚染土壌の原位置浄化技術(ソイルフラッシング)を金沢大学と共同で開発しました。ソイルフラッシングの洗浄液に生分解性の水溶性キレート剤を用いることで、環境へのキレート剤の残留といった二次的影響が無く、土壌溶出量を安定的に環境基準以下に処理することができます。 (開発・不動産事業等) 研究開発活動は特段行っておりません。
FY2017|2,375 文字
6 【研究開発活動】当社は、社会基盤整備の要請や顧客の要望に応えるべく、実践的な技術を中心に幅広く研究開発活動を行っております。 (建設事業(土木・建築))生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、建築物・社会資本のリニューアル技術、防災・減災に資する技術、省エネ・低炭素社会に寄与する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめ、大学などの研究機関、異業種・同業種企業や公共機関との共同研究も積極的に進めております。当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は1,298百万円で、主な成果は以下のとおりです。 (1) 生産性向上技術① BIM/CIM建築、土木工事の設計・施工に3次元モデルを利用したBIM/CIMを導入して、一連の業務の効率化や品質向上を目指して研究開発と現場への展開を進めております。事前に仕上がりや施工イメージを把握できることに加え、施工の進捗状況等を迅速に把握できることから、効率化と品質向上が期待されます。② 「コロコロチェッカー®」斜張橋の高所の点検調査のために斜材保護管を自走できる斜材保護管点検ロボット「コロコロチェッカー®」を開発し、実橋の調査に適用しております。これにより、従来よりも効率よく、精度の高い調査が可能となりました。本技術は、国土交通省のインフラメンテナンスに係るグッドプラクティスに採用されました。③ 「移動式発破防護バルーン」トンネル坑内の任意の場所で展開・収納が可能な「移動式発破防護バルーン」を開発しました。発破作業時に切羽付近に設置することで、飛び石の影響を最小限とするものです。その結果ずり処理時間を大幅に短縮できることから、工程短縮と生産性向上が期待されます。 (2) リニューアル技術① 「インフラモニタリングシステム」橋梁遠隔モニタリングシステム「インフラモニタリングシステム」を、当社、株式会社日立産業制御ソリューションズ、大日本コンサルタント株式会社、佐賀大学、長崎大学等で構成するコンソーシアムで開発し、供用中の道路橋梁で実証実験を開始しました。画像情報と振動等を同時に検知して、誰もが簡単に橋梁の経過状況を観察・評価できることから、維持管理業務の負担軽減とともに補修・更新業務の安全性向上が期待されます。② ダムチッピング処理技術「パッチプレーナー」コンクリートダム工事におけるコンクリート越冬面の水平打ち継ぎ面のチッピング処理に、国内で初めてフード付ドラムカッタータイプの切削機「パッチプレーナー」を採用し、実証しました。本実証は、レントリー多摩株式会社、新日本工業株式会社と共同で実施したもので、優れた施工効率、高精度な切削深さと高品質な切削面を確保することを確認しました。本技術はダム嵩上げ時の下流面チッピングにも適用可能です。また、本技術は粉塵低減にもつながることから、NETISに登録されました。 (3) 品質向上技術① 拡頭杭免震構法本構法は、拡頭杭の頭部に直接免震部材を設置し、基礎免震構造における下部の基礎梁より薄い扁平な「つなぎ梁」で杭頭部を連結して免震層の一体化を図った基礎免震構法です。杭頭に生じる回転角を抑制するとともに、基礎梁をつなぎ梁とすることで基礎工事の簡略化を図ることが可能となります。当社の所属する杭頭免震構造研究会で共同開発し、日本ERI株式会社の構造性能評価(ERI-K15015)を取得しました。② 大深度での非開削地中拡幅「3C先行覆工地中拡幅工法」縦断方向の小口径シールドトンネル同士を重複連結して、施工時に地山を露出させずに直径約40mの大断面外殻先行覆工を構築する技術を開発しました。この工法により、地下水位の高い未固結の一般土砂においても、大深度で安全・確実に大断面拡幅工事を行うことが可能となります。セグメントの切削性や小口径シールドラップ施工精度について、1/2スケールの大型実験を行い実証しました。 (4) 低炭素・環境技術① 低炭素型材料「ジオポリマーコンクリート」「ジオポリマーコンクリート」は、産業副産物であるフライアッシュ(石炭灰)を使用した次世代のコンクリートです。優れた耐酸性と耐熱性を有し、製造過程で排出するCO2量が少ないジオポリマーコンクリートを施工現場で打ち込む方法を株式会社大林組、大阪ガス株式会社と共同で確立し、実際の現場で施工することに成功しました。ジオポリマーコンクリートを採用することにより、通常のセメントコンクリートと比べて、製造過程で発生するCO2量を80%程度削減することが可能となります。② 都市ごみからのエネルギー回収システム「乾式メタン発酵技術」都市ごみのうち再利用率が低い食品残渣(生ごみ)を主体とし、紙、刈草、剪定枝など、他の都市ごみを利用した混合処理による研究を当社と北海道大学、株式会社ズコーシャと共同で進め、乾式で安定的なメタン発酵を維持するためのシステムを確立しました。本技術によるバイオガスの回収量は、環境省が定める基準の約2倍を超える高効率になることを確認しました。③ 「銀ナノ粒子」製法による銀ナノプレート水分散液の販売を開始当社は、低炭素社会実現に向けた新技術として「銀ナノ粒子」の応用技術の研究開発を株式会社伊都研究所と共同で進めております。銀ナノ粒子とは、銀をナノの大きさにしたものです。このたび、光の吸収や反射特性を高く制御するプレート板状の銀ナノ粒子の製造方法を確立しました。また、平成28年11月より、プレート状銀ナノ粒子の水分散液を試薬として販売開始しました。今後は、銀ナノ粒子を活用した技術開発の裾野を拡大してまいります。 (開発・不動産事業等)研究開発活動は特段行っておりません。
FY2016|2,496 文字
6 【研究開発活動】当社は、社会基盤整備の要請や顧客の要望に応えるべく、実践的な技術を中心に幅広く研究開発活動を行っております。(建設事業(土木・建築))当社においては、建築物・社会資本の防災・減災に資する技術、リニューアル技術をはじめ、生産性向上・高品質化に寄与する技術、省エネ・低炭素社会に寄与する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめ、大学などの研究機関、異業種・同業種企業や公共機関との共同研究も積極的に進めております。当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は1,254百万円で、主な成果は以下のとおりです。 (1) リニューアル技術① あと施工せん断補強工法「SNB工法」本工法は、供用中のRC部材表面からハンマードリル等で削孔を行い、その孔に専用のモルタルカプセルを挿入し、その後特殊ナット定着型鉄筋「サイトフィットネイリングバー(SNB)®」を打込むものです。カプセル硬化後に「SNB」とRC部材が一体化して、せん断補強を行います。構造実験、施工実験を重ね本工法の効果を確認検証し、平成27年12月に一般財団法人土木研究センターから建設技術審査証明を取得しました。② コンクリートの剥落防止工法「ネットキーパー工法®」老朽化した高架橋やボックスカルバート、トンネル覆工コンクリートなどのコンクリート構造物からのコンクリート片の剥落事故を防止する技術です。コンクリート表面に、ポリプロピレン製の繊維メッシュシートを、アオイ化学工業株式会社と共同開発した無溶剤型エポキシ樹脂系のプライマー及び接着剤を用いて貼り付け、強固に一体化します。東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社及び西日本高速道路株式会社の各社が規定する剥落対策工に適合しており、平成28年2月に跨道橋補修工事にも採用されました。 (2) 省エネ・低炭素技術① 再生可能エネルギーの有効利用技術「マイクログリッドシステム」太陽光発電等の分散型電源と系統電源を組み合わせ、供給と消費をネットワーク化した独自開発のマイクログリッドシステムについて、技術研究所内に設置した実証用システムで平成25年4月から検証を行い、系統電源の供給を最小限に抑え電力供給の安定化などを実現する制御システムを構築しております。システムを構成する監視計測技術が自社施設の建物にも採用されました。今後、この技術の普及をさらに図ってまいります。② 省エネ設計技術建築の省エネルギー化、CO2削減のニーズに応えるべく、省エネ設計技術力向上を推進します。自社施設を中心に実証を行いながら、エネルギー低減の方策を模索し、設計施工物件への展開を目指します。③ 低炭素型コンクリート「スラグリート®」低炭素型社会の実現に向けた取り組みとして、製鉄所の副産物である高炉スラグ微粉末をセメント代替材として積極的に活用した低炭素型コンクリート「スラグリート®」を戸田建設株式会社と共同で開発しました。セメントの使用量を大幅に低減したことで、マスコンクリート構造物における温度ひび割れの発生リスクを抑制することができます。国立研究開発法人土木研究所との共同研究の成果として、設計・施工マニュアル(案)を整備し公開しております。今後、低炭素型社会への取り組みの一つとして積極的に技術提案していく予定です。 (3) 品質向上、生産性向上技術① 低収縮コンクリート近年、コンクリートのひび割れ抑制の要求が高まっており、石灰石骨材の利用、収縮低減剤、膨張剤等の最適調合により乾燥収縮率100μ以下に大幅低減したコンクリートを民間7社の共同研究で開発しました。今後、実大実験でその効果を検証し、ひび割れを低減できるコンクリートとして提案していく予定です。② 強度打ち分けRC梁工法「NSビーム工法」プレキャストコンクリート梁の生産性と施工品質の向上に資する「NSビーム:Nishimatsu Saving Beam工法(強度打ち分けRC梁工法)」を開発し、一般財団法人日本建築総合試験所より建築技術性能証明を平成27年7月に取得しました。「NSビーム工法」は、梁のトップコンクリートに床スラブと同一強度のコンクリートを打設して構成される構造であり、これによりコンクリートの打ち分けに必要な止め型枠が不要となるなど、施工の合理化・省力化を図ることができます。③ 移動式発破防護装置山岳トンネルの施工において、ずり搬出装置を発破時に退避させることなく切羽近傍に常に配置させることで、掘削ずり出し時間の短縮を目指した技術です。発破前に発破防護バルーンを積載したトラックを切羽近傍に移動させて短時間でバルーンを膨らませ、発破完了後に直ちにバルーンを回収できる装置を開発しました。これにより、ずり出し時間の大幅な短縮が期待されますので、長距離の山岳トンネルでの高速施工に活用してまいります。 (4) 環境関連技術① 工事振動計測管理システム都市部や精密工場など工事振動の制約が厳しい場所での杭工事等の施工において、施工機オペレータが直接かつリアルタイムに施工の状態と発生振動の大きさを把握できるシステムを開発しました。観測地点の振動計測データを無線LANによりオペレータ運転席で受信するシステムを構築し、現場に採用しました。オペレータは管理値を超えないか常時確認しながら施工を行うことで環境条件を保ちながら施工スピードを確保することができるため、施工時間の短縮を図ることができます。② 簡易型土壌洗浄技術土壌汚染サイトにおいて、掘削土に含まれる鉛等の重金属類を特殊薬剤によって溶解・溶出を促進させることにより、大掛かりな装置が不要で簡易的に土壌洗浄処理を行うことを可能にする技術を開発し、ラボ実験及び小規模実証試験により抽出除去効果を確認しました。フレコン、水槽、濁水処理装置などシンプルな装置構成であるため、狭隘なサイトでもオンサイト浄化が可能となります。 (不動産事業等)研究開発活動は特段行っておりません。