研究開発活動(本文)
FY2025|5,022 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、ヘルスケア分野において、世界中の健康を願うすべての人々の豊かな社会づくりに貢献するため、技術の革新と融合を通じて新たな価値を創造することを目指し、研究開発に取り組んでいます。 2024年11月に公表した中期経営計画では、2030年の目指すべき姿として「精緻な技術でヘルスケアの未来を切り拓くリーダーとなる」ことを掲げました。高品質な医療を誰もが身近に享受できる未来の実現に向けて、強みである精緻な技術を基盤に、ヘルスケアの未来を切り開いていきます。 目指すべき姿を実現するため、各事業の位置付けを明確化し、特に診断・ライフサイエンス領域を高成長が期待される重点分野として位置づけ経営資源を集中させる取り組みを行っています。研究開発の方針として、ドメインにおけるコア製品・技術を活用したソリューションの創出に加え、他社やパートナーと積極的な協業を通じて、スピード感をもった技術・製品開発を推進しています。また、デジタルヘルスや遺伝子細胞治療分野等の新領域にも積極的に取り組み、医療の質の向上、コスト削減、医療資源の効率的な利用を追求しています。 当社グループでは、グループの成長戦略に基づき、本社部門の事業開発部と事業部の研究開発チームが連携して研究開発に取り組んでいます。事業開発部は、グループ横断的なR&D戦略の立案や中長期的な視点でのコア技術の開発推進等を担い、事業部の研究開発チームは、各事業に関連した研究開発や既存製品・サービスの継続的な開発に注力しています。 当社グループの研究開発費は、10,727百万円となっております。 (1) 糖尿病マネジメントドメイン 糖尿病マネジメントドメインでは高精度な血糖値測定システム(BGM)や持続血糖測定システム(CGM)、シームレスなデータ連携、デジタル糖尿病管理ソリューションにより、糖尿病患者様のQOL(生活の質)向上に貢献しています。当連結会計年度には、資本業務提携をしているSenseonics Holdings, Inc.社(以下、「Senseonics社」)が研究開発を行い当社グループが独占販売するEversense365 CGMシステムについて、FDAより認可を取得し米国での販売を開始しました。Eversense365は18歳以上の1型及び2型の糖尿病を持つ患者様向けに開発された365日型CGMシステムで、糖尿病管理を向上させる次世代製品です。センサの耐用期間が1年となり、年1回のセンサ交換、故障やセンサの無駄削減、信頼のおけるアラート表示等の特徴があり、患者様はご自身の測定機器に煩わされることなく日常生活を送ることができます。Senseonics社は、CGMの成長における重要パートナーとして今後も共に取り組んでまいります。 当連結会計年度の糖尿病マネジメントドメインにおける研究開発費は、519百万円となりました。 (2) ヘルスケアソリューションドメイン ヘルスケアソリューションドメインは医療ITから臨床検査、創薬支援サービスまで、幅広くサービス・ソリューションを提供することで、患者様や医療従事者の皆様を支援するヘルスケアサービスの充実を目指しています。 ヘルスケアITソリューション事業では、診療所用医事一体型電子カルテシステム、保険薬局用電子薬歴システムを基軸とした次世代に繋がるクラウド関連の商品や特定保健指導支援ツール、遠隔医療システム等商品開発を進めています。当連結会計年度では、完全クラウド型・診療所向け医事一体型電子カルテシステム「Medicomクラウドカルテ」を開発し先行受注を開始しました。高い操作性を意識した画面設計、診療情報提供書(紹介状)や健康診断結果報告書等文書作成の支援機能や、算定・会計時のAI自動算定機能、各種帳票(領収書・医療費明細書・処方箋)発行機能を標準搭載しており、医師、事務員の方の業務の効率化に貢献します。 また、薬局向けクラウド型薬歴共有サービス「Pharnes Link Ⅱ」の提供を開始しました。薬剤師の人数と薬歴端末数の不均衡による業務効率の低下や、急伸する在宅医療市場への薬局の進出等、薬局内外での運用ニーズに対応した新サービスであり、薬歴端末の追加を低コスト・簡易に実現し、薬剤師の作業効率向上に貢献します。 遠隔医療システムについては、医療現場の多様なニーズにこたえる、コンパクトで持ち運び可能なリアルタイム遠隔医療システム「Teladoc HEALTH TV Pro300(以下、TV Pro300)」を発売しました。「TV Pro300」は、「Teladoc HEALTH」シリーズの新機種で、持ち運べるコンパクトさと高性能なカメラを兼ね備え、「医療MaaS車両への搭載」や「訪問診療」「手術支援」等、シーンを選ばずオールマイティに活用できる新製品です。また「Teladoc HEALTH」は、へき地医療や周産期・新生児医療、感染症対策での活用に加えて、透析医療、臓器提供体制構築支援、妊婦検診、災害・緊急対応、次世代を担う医療従事者の育成現場でも活用され、医療従事者の負担軽減や患者様の医療アクセス向上等に貢献しています。 その他、「オンライン資格確認」と連携する医療機関・薬局向け医事コンピュータ用の導入数が50,000件を超え、また、「電子処方箋」と連携する医療機関・薬局向け電子処方箋管理ソフトウェアの導入数が10,000件を超えました。このように国の進める多様な医療・健康データとの接続に関する施策との積極的な連携を通じ、当社グループによるデジタルプラットフォームを実現していきます。 CRO事業では新しいモダリティと革新的な治療概念の普及に対応すべく、がん、認知症含む神経変性疾患、感染症等の各種疾患への治療薬開発に貢献する薬効薬理モデルの拡充や新たな分析技術の開発等に取り組みました。当連結会計年度では、薬物分析及びバイオマーカ―分析業務にペプチド吸着制御LC技術を導入した新たな受託サービスを開始しました。Future Peak株式会社とのコンサルティング契約を通じてこの新たなサービスを実現し、医薬品開発の分野において最先端の分析結果を提供します。 LSIM事業では多様な検査領域で長きにわたり培ってきた分析力をコアに、検査結果の解析力を加え、新しいソリューション創出に取り組みました。 当連結会計年度のヘルスケアソリューションドメインにおける研究開発費は2,130百万円となりました。 (3) 診断・ライフサイエンスドメイン 診断・ライフサイエンスドメインでは独自の電気化学センサ技術を活用したIn-Lineモニタリングの開発や、パートナー企業との協業を通じたデジタル病理及び免疫組織化学技術の開発を推進し、先端治療開発ソリューションの拡充を図っています。 バイオメディカ事業では、医療、ライフサイエンス分野の研究で用いられる保存機器、培養機器、実験環境機器、及び病院や薬局等の調剤室で用いられる調剤機器、フードソリューション機器の商品開発を行っています。 当連結会計年度では、培養中の細胞の代謝変化をリアルタイムに可視化する研究用ライブセル代謝分析装置「LiCellMo(リセルモ)」を、国内向けには9月より、海外向けには10月より販売を開始しました。本製品は、診断薬事業部の主力商品である血糖値センサの技術を活用した高精度In-Lineモニタリング技術をコアとしており、当社グループの事業間シナジーを活かした製品開発により実現したものです。本製品により、がん免疫研究や幹細胞研究、さらにそれらの製剤化に向けた製造プロセス検討において、これまでの代謝研究では得られなかった新しい知見を獲得する機会を研究者の皆様に提供するとともに、細胞医薬品製造プロセスにおけるQCD(品質、コスト、納期)課題に応える革新的なソリューション創出をさらに加速し、モダリティの進化への貢献を目指しています。また、本製品はThe Analytical Scientist誌の「2024年イノベーションアワード(2024 Innovation Award)」を受賞しました。The Analytical Scientist誌は、計測科学分野に関わる人々や技術、イノベーションに焦点を当て、分析科学の領域で新たな可能性を切り拓く革新的な技術を表彰するイノベーションアワードを毎年発表しています。 10月にパシフィコ横浜で開催された「再生医療JAPAN 2024」で、In-Lineモニタリング技術を活用した自動培養装置「LiCellGrow」のプロトタイプを出展しました。本製品は細胞培養中の代謝データをリアルタイムで取得し、測定結果に基づいて自動的に培地を交換する機能を備えており、再生医療・細胞治療における製造プロセスの効率化と品質向上に貢献します。 また、カナダの再生医療商業化センター CCRM(Centre for Commercialization of Regenerative Medicine)と初代T細胞の拡大培養プロセスを開発するための共同研究契約も締結し、CCRMが有する再生医療分野とバイオ医薬品製造の専門知識を組み合わせることにより、細胞・遺伝子治療(CGT)の早期普及に向けた細胞培養の効率化と品質向上を実現する新たな培養プロセスの構築を目指します。 また、2023年に再生・細胞医療分野において業務提携している株式会社サイフューズとの共同研究に基づき、同センサ技術を用いて、3D細胞製品の品質向上と安定製造に繋がる新生産技術を開発しました。 CO2インキュベーターについては、製薬企業及び研究施設・医療機関向けに、器内の汚染制御性能とユーザビリティの向上を追求した180℃器内乾熱滅菌型CO2インキュベーター「MCO-171AICUVD」の販売を開始しました。 病理事業では、Enhancing Precision cancer diagnosticsを推進するための新製品の開発を行っています。当連結会計年度ではE1000 Dx デジタルパソロジーソリューション「E1000 Dx」が、米国FDAより510(K)認可を取得しました。E1000 Dxは自動化された高速ホールスライドイメージングデジタルスキャナーと医療用モニター、高度な画像管理及び画像表示ソフトウェアを備えており、一日最大1,500枚の組織サンプルの高解像度デジタル画像を作成することができます。E1000 Dxにより、検査室における処理能力が大幅に向上し、がん診断の効率化を図ります。 また、グローバルで販売しているSlideMateレーザープリンターが、検査室の業務効率と検体のトレーサビリティ機能を向上させるイノベーションとして、米国のVizient社からイノベーティブ・テクノロジー認定を受けました。 診断薬事業は、2023年の当社グループの事業再編により、PHC株式会社診断薬事業部と株式会社LSIメディエンスの診断薬事業本部を統合し、2024年4月に診断・ライフサイエンスドメインに移管しました。診断薬事業部の強みであるモノづくりの風土に、体外診断薬及び医療機器の開発・製造の新たな技術・知見・ノウハウが融合醸成することにより、高性能且つ高品質な製品を国内外に広く提供することが可能となりました。現在主に電動式医薬品注入器と移動式免疫発光測定装置及び体外検査試薬に注力して研究開発を行っています。 当連結会計年度では血小板活性化に伴い血中濃度が上昇する可溶性C型レクチン様受容体(C-type lectin-like receptor2 : sCLEC-2)を測定する「sCLEC-2測定キット」を認定検査試薬(研究用試薬)として発売しました。本試薬は、山梨大学 井上克枝教授の研究グループが発見したsCLEC-2を測定するために、PHC株式会社が共同で開発し、同社が製造販売する「全自動臨床検査システム STACIA」の専用試薬として製品化されたものです。 当連結会計年度の診断・ライフサイエンスドメインにおける研究開発費は7,998百万円となりました。
FY2024|4,672 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、ヘルスケア分野において、世界中の健康を願うすべての人々の豊かな社会づくりに貢献するため、技術の革新・融合により新たな価値を創造することを目指し、研究開発に取り組んでいます。2022年11月に公表した中期経営計画Value Creation Planでは今後のグループの成長を牽引する成長領域事業を定めており、研究開発活動において成長領域を支えるテーマに優先的に資源配分を行い、重点的に取り組んでいます。研究開発の方針として、自社で全てを行うのではなく我々の強みを増強できる社外パートナーと積極的に協業しスピード感をもって技術・製品開発を行うこと、また従来のやり方にとらわれず、組織や文化のもと研究開発を行うことを掲げ、イノベーションを推進しています。 当社グループでは組織体制として、先行技術開発センターと、事業部の研究開発チームとが研究開発に取り組んでいます。先行技術開発センターでは、事業を横断するようなテーマや、基礎研究をベースとする要素技術開発等グループ全体の研究開発に取り組んでいます。事業部の研究開発チームでは、より製品化に近いテーマの研究開発や既存製品・サービスの継続的な開発を行っています。 当社グループの研究開発費は、11,971百万円となっております。先行技術開発センターを含む本社その他における研究開発費は1,253百万円となっております。 (1) 糖尿病マネジメントドメイン 糖尿病マネジメントドメインでは血糖値測定システム(BGM)、HbA1cや脂質等を測定できる簡易迅速検査器(POCT)、及び薬剤注射のために通院せず薬剤が自宅で自己注射できる電動医薬品注入器に関する開発を行っております。当連結会計年度には、「グロウジェクターDuo」をJCRファーマ株式会社と共同開発しました。成長ホルモン治療に用いられるヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト」専用の電動式医薬品注入器で、従来製品による治療状況や市場のニーズを踏まえ、より簡便な操作を好まれるユーザー向けに開発を行い、PHC株式会社が製造販売し、JCRファーマが発売しました。 電動式注入器では処方量を簡単・正確に自身で自宅で注射できる一方で服薬管理も重要であることから、スマートフォン等で使える服薬管理アプリの開発にも力をいれています。JCRファーマと共同で電動式成長ホルモン注入器「グロウジェクターDuo」並びに「グロウジェクターL」に対応する、成長ホルモン治療服薬管理アプリケーションソフトウェア「めろん日記」の機能を更新し、公開しました。この度の更新によりスマートなメイン画面表示で治療サポート機能に特化した「シンプルモード」が追加され、従来のメイン画面表示である「通常モード」との切替えを可能とし、幅広い年代の患者さんのライフスタイルに寄り添い、長期にわたる治療のサポートと服薬アドヒアランス向上に貢献していきます。 持続血糖測定システム(CGM)については、資本業務提携をしているSenseonics Holdings, Inc.社(以下、「Senseonics社」)が研究開発に取り組んでいます。PHCグループが独占販売するEversenseは、超小型センサを皮下に埋め込み、利用シーンに応じて取り外し可能な送信機を通じてスマートフォン等でグルコース値がモニタリングできる画期的な製品です。2022年に6か月装着が可能なEversense E3を米国及び欧州で発売して以来、ユーザー数は大幅に増加しており、同システムは大きな成長の基盤として確立されました。現在Senseonics社において、患者様からのフィードバックを活かした次世代モデルの開発を行っており、糖尿病の患者様が抱える様々な悩みに対し、独自の解決策と快適さを提供していきます。Senseonics社とは、CGMの成長における重要パートナーとして今後も共に取り組んでまいります。 また、再生・細胞医療分野において、株式会社サイフューズと戦略的パートナーシップの強化を目的とした業務提携に関する基本合意を締結しました。PHCの血糖値測定システムの開発と生産工程で蓄積したオリジナルトレーサビリティシステムを活用し、サイフューズの革新的な再生医療等製品の商業化に向けた生産体制の構築に取り組みます。両社による提携関係の強化を通じて様々な研究開発・技術開発の促進、及び新たな製品の創出等、本分野の成長発展への貢献を目指しています。 当連結会計年度の糖尿病マネジメントドメインにおける研究開発費は、2,460百万円となりました。 (2) ヘルスケアソリューションドメイン ヘルスケアIT事業では、診療所用医事一体型電子カルテシステム、保険薬局用電子薬歴システムを基軸とした次世代に繋がるクラウド関連の商品や特定保健指導支援ツール、遠隔医療システム等商品開発を進めております。当連結会計年度では、クラウド技術を応用したロケーションフリー及びデバイスフリーを実現した診療所向け医事一体型電子カルテシステム「Medicom HRf Hybrid Cloud」を発売しました。高いカスタマイズ性、及び「Medicom Cloud Connect API」を通じた他社サービスとのAPI連携も可能であり、医療従事者の多様な働き方を支援します。 一般・療養型向け電子カルテシステムとしては「Medicom-CKII」を発売しました。オンプレミス型・クラウド型双方の機能が選択できるだけでなく、シンプルな操作性と充実したサポート体制を通じて、療養型病院における医療DXを支援します。 また、情報処理能力が向上しスムーズな操作性を実現した、保険薬局向けシステム「PharnesX」シリーズを発売し、薬局従業員の負荷軽減に貢献しました。 遠隔医療システムについては、日本国内における医療現場のニーズに対応した小型カートタイプの「Doctor Cart」を発売しました。十分な診察スペースの確保が困難な日本の医療現場でも扱いやすいコンパクトな設計となっており、患者さんや医療スタッフの空間を確保しながら適切な診療のサポートを可能としています。またリアルタイム遠隔医療システム「Teladoc HEALTH」は、次世代の医師教育プログラムへの採用や透析、周産期支援システムの実証実験、施設間連携の実証事業、医療MaaS車両への搭載、離島における診療所への導入等様々に活用され、地域医療に貢献しています。 その他、「オンライン資格確認」と連携する医療機関・薬局向け医事コンピュータ用ソフトウェア導入を進め、累計導入数で50,000件を超えました。 このように国の進める多様な医療・健康データとの接続に関する施策との積極的な連携を通じ、PHCグループによるデジタルプラットフォームを実現していきます。 LSIM事業では、臨床検査事業、診断薬事業、創薬支援事業における、新たな商品、技術の開発を行っております。 当該事業年度、臨床検査事業では、新規マーカーの導入(上市)や検査手法の改良を、診断薬事業では、全自動血液凝固システム『STACIA CN10』や移動式免疫発光測定装置『PATHFAST』の装置、試薬の改良や新規検査項目の開発及び海外薬事への対応、創薬支援事業では新しいモダリティと革新的な治療概念の普及に対応すべく、がん、認知症含む神経変性疾患、感染症等の各種疾患への治療薬開発に貢献する薬効薬理モデルの拡充や新たな分析技術の開発等に取り組みました。 当連結会計年度のヘルスケアソリューションドメインにおける研究開発費は2,908百万円となりました。 (3) 診断・ライフサイエンスドメイン バイオメディカ事業では、医療、ライフサイエンス分野の研究で用いられる保存機器、培養機器、実験環境機器、及び病院や薬局等の調剤室で用いられる調剤機器、フードソリューション機器の商品開発を行っております。 -85℃ノンフロン超低温フリーザーについては、米国シアトルで開催されたバイオバンクの国際学会、International Society for Biological and Environmental Repositories(環境及び生物学的リポジトリ国際学会「ISBER」)2023年度年次総会において、2023年3月期に発売した「VIP ECO SMART」シリーズ(品番:MDF-DU703VH/VHA)が、技術の革新性と独自性、バイオバンク業界への影響力、製品の価値を裏付ける客観的データ、市場ニーズの観点から優れていると評価され、「Outstanding New Product Award(優秀新製品賞)」を受賞しました。 当連結会計年度では製薬企業及び研究施設・医療機関向けに、内扉への着霜の大幅低減を実現した-85℃ノンフロン超低温フリーザー「FrostLess(フロスト・レス)」(品番:MDF-DU700ZH)を発売しました。高い省エネルギー性能を継承しつつ、霜の発生を限りなく抑制する事により、貴重な研究サンプルを守るだけでなく、研究現場における作業負担の軽減と、より効率的な研究活動の遂行に貢献します。また、地球環境への負荷軽減と省エネルギー性能の向上を追求した-85℃小型ノンフロン超低温フリーザー(品番:MDF-DC102VH/DC202VH)を発売しました。臨床現場での小型超低温フリーザーの需要拡大が見込まれる中、貴重な医薬品や検体の長期保存のみならず、SDGsの実現も期待されています。 薬用保冷庫については省エネルギー性能の向上と、より精緻な温度制御を追求した大型ノンフロン薬用冷蔵ショーケース「Twin Guard ECO」(品番:MPR-S1201XH/RXH)を開発しました。 病理事業では、エプレディアのミッションであるEnhancing Precision cancer diagnosticsを推進するための新製品の開発を行っております。当連結会計年度ではがん診断における病理医の作業効率化を目指し、3Dhistech Ltd.(本社:ハンガリー ブダペスト、以下「3DHistech」)が開発したデジタルスライドスキャナ「PANNORAMIC 480」の日本での販売を開始しました。本製品は病理医が診断に使用するスライドガラス上の様々な標本を画像データ化するスライドスキャナであり、すでに展開しているフラッグシップ機の「PANNORAMIC P1000」を日本市場に合わせて開発したコンパクトモデルです。 また、病理のラボにおける検体のトレーサビリティを向上させる最新のスライドプリンター「SlideMate Laser」の米国での販売を開始しました。高解像度の600dpiレーザー印刷により、がん診断のワークフローで使用するスライドガラスにより多くの識別情報を含める事が可能となりました。 診断・ライフサイエンスドメインでは独自の電気化学センサ技術を活用した細胞代謝モニタリングの開発や、パートナー企業との協業を通じたデジタル病理、免疫組織化学技術の開発を進め、中期経営計画における先端治療開発ソリューションの拡大を推進します。 当連結会計年度の診断・ライフサイエンスドメインにおける研究開発費は5,349百万円となりました。
FY2023|4,555 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、ヘルスケア分野において、世界中の健康を願うすべての人々の豊かな社会づくりに貢献するため、技術の革新・融合により新たな価値を創造することを目指し、研究開発に取り組んでいます。2022年11月に公表した中期経営計画Value Creation Planでは今後のグループの成長を牽引する成長領域事業を定めました。研究開発活動においても成長領域を支えるテーマに優先的に資源配分を行い、重点的に取り組みます。研究開発の方針としては、自社で全てを行うのではなく我々の強みを増強できる社外パートナーとは積極的に協業しスピード感をもって技術・製品開発を行うこと、また従来のやり方にとらわれず、組織や文化のもと研究開発を行うことを掲げ、イノベーションを推進して参ります。 当社グループでは組織体制として、先行技術開発センターと、事業部の研究開発チームとが研究開発に取り組んでおります。先行技術開発センターでは、事業を横断するようなテーマや、基礎研究をベースとする要素技術開発等グループ全体の研究開発に取り組んでいます。事業部の研究開発チームでは、より製品化に近いテーマの研究開発や既存製品・サービスの継続的な開発を行っています。 当社グループの研究開発費は、9,931百万円となっております。先行技術開発センターを含む本社その他における研究開発費は1,151百万円となっております。 (1) 糖尿病マネジメントドメイン 糖尿病マネジメントドメインでは血糖値測定システム(BGM)、HbA1cや脂質等を測定できる簡易迅速検査器(POCT)、及び薬剤注射のために通院せず薬剤が自宅で自己注射できる電動医薬品注入器に関する開発を行っております。当連結会計年度には、「オスタバロ®インジェクター」を帝人ファーマ株式会社と共同開発しました。骨折の危険性の高い骨粗鬆症に対して効能・効果がある骨形成促進剤「オスタバロ®皮下注カートリッジ」専用の電動式注入器で、PHC株式会社が製造販売し、帝人ファーマが発売しました。また、TNF阻害薬治療を受ける関節リウマチ等の患者さん向けのTNF阻害薬用電動式医薬品注入器「APP-1000」について、欧州医療機器規則(EU-MDR)の認証を取得しました。 電動式注入器では処方量を簡単・正確に自身で自宅で注射できる一方で服薬管理も重要であることから、スマートフォン等で使える服薬管理アプリの開発にも力を入れています。JCR株式会社と共同で電動式成長ホルモン製剤注入器「グロウジェクター®L」と組み合わせて使用する、成長ホルモン治療服薬管理アプリケーションソフトウェア「めろん日記®」の機能を更新し、公開しました。投薬履歴をスマートフォンで確認することができる他、患児の注射に対する緊張感の緩和等を目的とした「お楽しみ機能」を搭載し、服薬アドヒアランス改善を目指しています。 また、血糖値測定の際に使用する採血用穿刺器具として、優しいユーザビリティで高齢者から子供まで簡単に操作できる、セミディスポーザブルタイプの採血用穿刺器具「ソフレット®」を株式会社三和化学研究所と共同開発し、販売しました。 持続血糖測定システム(CGM)については、資本業務提携をしているSenseonics Holdings, Inc.社(以下、「Senseonics社」)が研究開発に取り組んでいます。PHCグループが独占販売するEversense®は、超小型センサを皮下に埋め込み、利用シーンに応じて取り外し可能な送信機を通じてスマートフォン等でグルコース値がモニタリングできる画期的な製品です。当連結会計年度では6か月装着が可能なEversense® E3を米国及び欧州で発売開始しました。現在Senseonics社においてセンサ寿命を1年に延長したモデル等の新製品開発を行っております。Senseonics社とは、新株予約権取得による1,500万米ドルの追加出資を行う等連携を強化しており、今後もCGMの成長における重要パートナーとして共に取り組んでまいります。 当連結会計年度の糖尿病マネジメントドメインにおける研究開発費は、2,547百万円となりました。 (2) ヘルスケアソリューションドメイン メディコム事業では、診療所用医事一体型電子カルテシステム、保険薬局用電子薬歴システムを基軸に、次世代に繋がるクラウド関連の商品開発を進めております。当連結会計年度では、院内サーバーとクラウドサーバーの切り替えによる障害時対策や、医療クラウドサービスとの連携により将来的な拡張性を実現する「Medicom Cloud Connect API」対応の病院向けの医事コンピュータ「Medicom-HSi f」を発売しました。 中期経営計画において成長領域として掲げたデジタルヘルスソリューションに関連する開発にも注力しました。 クラウド連携システム「Medicom Cloud Connect API」の技術を活用したクラウド連携を強化し、診療所用医事一体型電子カルテシステム「Medicom-HRf」と、株式会社リクルートが手掛ける受付管理アプリ「Airウェイト」とのAPI連携、SB C&S株式会社が手掛けるモバイル型オールインワン決済端末「PayCAS Mobile」とのAPI連携を開始しました。 また、SaaS形式でスピーディーに利用開始でき、調剤薬局における売上データの収集・集計を自動化し、日々の集計業務にかかる手作業を大幅に削減可能な「digicareアナリティクス」の利用サービスを開始しました。 その他、「オンライン資格確認」と連携する医療機関・薬局向け医事コンピュータ用ソフトウェア導入を進め、累計導入件数で25,000件を超えました。厚生労働省が進める電子処方箋の運用に合わせ、医療機関向けシステム「Medicom-HRf」シリーズ・「Medicom-HS」シリーズ、及び調剤薬局向けシステム「PharnesV」 シリーズについて電子処方箋対応版ソフトウェアの全国提供を開始しました。 このように国の進める多様な医療・健康データとの接続に関する施策との積極的な連携を通じ、PHCグループによるデジタルプラットフォーム構想を実現していきます。 LSIM事業では、臨床検査事業、診断薬事業、創薬支援事業における、新たな商品、技術の開発を行っております。 当該事業年度、臨床検査事業では、新規マーカーの導入(上市)や検査手法の改良を、診断薬事業では、全自動血液凝固検査システム『STACIA CN10』や移動式免疫発光測定装置『PATHFAST』の装置、試薬の改良や新規検査項目の開発、海外薬事への対応、創薬支援事業では新しいモダリティと革新的な治療概念の普及に対応すべく、認知症の早期発見に関する研究、がん、神経疾患、感染症等各種疾患への治療薬開発に貢献する薬効薬理モデルの拡充(Patient-Derived Xenograftほか)や、イメージング質量分析法等、新たな分析技術の開発等に取り組みました。 当連結会計年度のヘルスケアソリューションドメインにおける研究開発費は1,773百万円となりました。 (3) 診断・ライフサイエンスドメイン バイオメディカ事業では、医療、ライフサイエンス分野の研究で用いられる保存機器、培養機器、実験環境機器、及び病院や薬局等の調剤室で用いられる調剤機器、フードソリューション機器の商品開発を行っております。 当連結会計年度ではユーザビリティのさらなる向上とセキュリティ強化を追求したノンフロン-85℃超低温フリーザー「VIP ECO SMART」シリーズ(品番:MDF-DU703VHS1-PJ/DU503VHS1-PJ)を発売しました。省エネ性能も一段と向上させ、オフィス機器の国際的省エネルギー認証制度である「国際エネルギースタープログラム」において、米国環境保護庁(United States Environment Protection Agency)が定めた消費電力の基準を満たすとして「ENERGY STAR」認証を取得しています。 また、細胞の連続的な代謝変化をリアルタイムで可視化する「ライブセル代謝分析装置」のプロトタイプを開発しました。高品質な細胞医薬品の製造工程においては、培養環境の制御の判断基準が研究者の技量や経験に依存する部分が多い状況です。培地をサンプリングして細胞の状態を評価する方法では、データ点数の少なさや培地サンプリングの際のコンタミネーション(汚染)リスクの課題があります。「ライブセル代謝分析装置」は、独自のIn-Lineセンサを用いて培地を連続的に測定することで、培地をサンプリングすることなく、培養中の細胞の代謝変化をリアルタイムに可視化することができます。本技術を用いることで、細胞の代謝研究や細胞治療等の基礎研究分野において、これまで得られなかった新たな知見の獲得や、細胞治療の実用化に向け、安定した細胞製造の実現に寄与する基盤技術としての展開が見込まれ、早期発売に向け研究開発活動を推進します。 病理事業では、エプレディアのミッションであるEnhancing precision cancer diagnosticsを推進するための新製品の開発を行っております。当連結会計年度では3DHistech Ltd.社(以下、「3DHistech社」)と「Pathology Innovation Incubator」をハンガリー ブダペストに設立しました。3DHistech社は病理検査室向けデジタルスライドスキャン技術におけるビジネスパートナーであり、Pathology Innovation Incubatorでは、がん診断の基礎となる免疫組織化学(IHC)検査の高度な複合型医療技術ソリューションを開発予定であり、科学的かつ理論的アイデアの実用化により、腫瘍の診断の発展を促進させ、より効果的ながん治療を実現するソリューションの開発と改善を目指します。 また、再生医療療法の発見と実用化を加速する組織RegenMed Development OrganizationのRegeneratOR “Innovation Accelerator” プログラムに参画しました。当プログラムは再生医療技術を有する企業に対して研究場所と支援を提供する目的で創設され、PHCグループは、このプログラムへの参画にあたりEprediaやAiforia Technologies Plcを含む傘下事業会社、及びパートナー企業の現地オフィスを設けています。 診断・ライフサイエンスドメインでは独自の電気化学センサ技術を活用した細胞代謝モニタリングの開発や、パートナー企業との協業を通じたデジタル病理、免疫組織化学技術の開発を進め、中期経営計画における先端治療開発ソリューションの拡大を推進します。 当連結会計年度の診断・ライフサイエンスドメインにおける研究開発費は4,458百万円となりました。