研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-03 | - | 101 |
| 2024-03 | - | 106 |
| 2023-03 | - | 69 |
| 2022-03 | - | 59 |
| 2021-03 | - | 74 |
研究開発活動(本文)
FY2025|7,863 文字
6【研究開発活動】富士電機は、「2026年度中期経営計画」の研究開発戦略に基づき、現行製品の競争力強化や次世代機の開発、成長戦略をけん引するGX、DXやグローバル商材の新製品開発、及び2030年以降の市場拡大を見据えた、水素・アンモニア・CO2関連などの新技術獲得に取り組んでいます。これらに向けて、パートナー企業やアカデミアとの協業・共創も進めています。当連結会計年度における富士電機の研究開発費は37,822百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。また、当連結会計年度において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,373件です。 ■エネルギー部門●発電プラント分野将来の水素社会の到来に備え、自動車用の固体高分子形燃料電池モジュールを適用した工場・施設向け水素燃料電池システムの開発を進めています。当社独自の運転技術により10年を超える耐久性を実現するとともに、急峻な電力需要への追従運転や自立運転(BCP対応)も可能です。今後、発電容量360kWの実証機を用いてフィールドテストを行う予定です。●エネルギーマネジメント分野再生可能エネルギー(再エネ)の普及にともない伸長する蓄電池市場向けに、大容量蓄電池PCSを開発しました。出力容量2,750kVA品をラインアップに追加するとともに、自立運転機能(BCP対応)や低騒音オプションを備えることでさまざまな顧客のニーズに対応します。●施設・電源システム分野設備投資が活発な国内・海外の半導体工場やデータセンター向けに、22kVモールド変圧器を開発しました。当社がこれまで培ってきた熱流体解析や電界解析などの技術を活用し、放熱及び絶縁構造を最適化することにより、従来器よりも小型化しました。工場や交通施設の受配電設備向けに、最新の国内規格「JIS C 62271-200」に準拠したスイッチギヤ「VCM-CLAD(3.6/7.2kV、400~3,000A)」を開発し発売しました。インターロックの強化などに対応することで、顧客設備への安定した電力供給を実現します。●器具分野国内トップシェアの電磁開閉器を35年ぶりにフルモデルチェンジした「SC-NEXTシリーズ」の定格電流40~65A品の開発を完了し発売しました。本シリーズは、従来品の長寿命・高信頼性の特徴を継承しつつ、外形の更なる小型化を実現し、制御盤の小型化や高機能化に貢献します。2023年度に発売した11~38A品に加えて、今回の開発で定格電流11A~65A(定格電圧200V)の小型・中型容量のラインアップが完成し、幅広い顧客の用途に応えることが可能となりました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は9,809百万円です。 ■インダストリー部門●低圧インバータ分野国内・海外のエレベータメーカー向けに、乗用エレベータ用に制御性能を最適化したインバータ「FRENIC-Lift(LM3)」を開発し発売しました。モータ軸回転角度の検出分解能を向上し、エレベータ始動時のかごの落下量を従来機種に比べて約47%改善したことにより、良好な乗り心地を実現します。●FAコンポーネント分野製造ラインやプラントの生産性向上に貢献する新たな機能を搭載したプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」SPHのCPUモジュールとして、「SPH2200」(監視・シーケンス制御用)、「SPH3300」(モーション制御用)を開発し発売しました。演算エンジンを刷新したことで従来に比べて制御速度を6.5倍向上するとともに、これまで上位機種に搭載していた計測・制御データを定周期で記録する当社独自のデータロギング機能を標準搭載し、自動化・省人化に必要な生産設備のデータを可視化し、製造現場のDXに貢献します。ロボット、機械装置向けサーボシステム「ALPHA7」シリーズの容量11kW、15kWを開発しました。2023年度に発売した容量2.9kW~7.5kWに加えて、今回の開発でシリーズのラインアップが完成しました。これにより、顧客の幅広いニーズに対応します。●小容量電源分野情報通信機器や産業機器向けに小容量UPS「GX100シリーズリニューアル版(2kVA,3kVA)」を開発しました。電源投入時の突入電流に対応し、常時安定した電力供給をするため過負荷耐量を向上しました。●計測機器・センサ分野鉄道事業者向けに河川橋梁の健全性を高精度に評価する業界初の橋梁モニタリングシステムを開発し発売しました。従来は、台風や豪雨による増水後、作業員を派遣して目視確認や衝撃振動試験により橋梁の健全性を確認していました。本システムは、橋梁に高分解能加速度センサとセンサデータの伝送機能を搭載したモニタリングシステムを設置して橋梁の固有振動数を自動で取得し、取得したデータを独自のアルゴリズムにより解析することで、橋脚の異常兆候の有無を判定します。これにより現地作業を省力化しつつ、交通インフラの安全性向上に貢献します。発電プラントやガス設備など高耐圧性能が求められる環境向けに、ピエゾ式抵抗型高圧測定圧力計を開発しました。本製品は、従来の静電容量式圧力センサに比べて、高圧領域で誤差が少ない構造のピエゾ式圧力センサを採用したことで、業界トップクラスの耐圧150MPaを実現しました。これにより、年々掘削深度が深くなり高耐圧化する海底油田設備などに対応します。半導体製造装置や空調設備向けに、超音波流量計「S-Flow(口径40A,50A)」を開発しました。配管に前面から取り付け可能な構造とし、取り扱いやすさを向上しました。●駆動制御システム分野発電や鉄鋼・化学プラント向けに、中型誘導電動機「低圧三相モータMLU2形シリーズ(定格電圧200V、400V)」及び「高圧三相モータMLA6形シリーズ(3,000V、3,300V、6,000V、6,600V)」のモデルチェンジ品を開発し発売しました。本シリーズは、従来機に比べて始動トルクを大きく向上し、始動電流の増加を抑制しました。これにより、搭載したシステムの安定運転に貢献します。●計測制御システム分野産業プラント向けに、監視制御システム「MICREX-VieW FOCUS Evolution」ver.2.2を開発しました。複数のエンジニアが同時にプログラムの編集作業を行えるマルチユーザーエンジニアリング機能やエンジニアリングデータの検索性を向上させる統合クロスリファレンス機能を新たに搭載し、エンジニアリング効率を大幅に向上しました。●原子力・放射線分野原子力発電所の廃止措置による解体・撤去で発生する廃棄物を分別して適切に処理するため、試料の前処理を含めた分析技術の開発を進めています。これまでに、放射性元素塩素36に対して、誘導結合プラズマ質量分析法を用い、かつ、試料の前処理工程を簡素化し、計測時間を従来の1/30に短縮する技術を確立しています。現在は、分析可能な放射性元素種類の拡充に向けた開発に取り組んでいます。これにより、廃棄物処理の効率化に貢献します。●情報ソリューション分野業種・業態を問わず、情報の検索や分析を容易にし、様々な管理業務の効率化を支援するBI(ビジネスインテリジェンス:Business Intelligence)ツール「軽技Web V8.0」を開発し発売しました。本製品は、専門知識が無くとも、簡単な操作でデータを検索・活用できます。今回新たにユニバーサルデザインを取り入れ、より操作性を向上することで、レポート作成などの業務の効率化に貢献します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,446百万円です。 ■半導体部門●産業モジュール分野太陽光発電システム向けに最適化した第7世代IGBTモジュール1,200V/800A(M276パッケージ)を開発し量産を開始しました。内部レイアウトの改善により、パッケージは従来と同じ外形寸法を維持しながら、従来の1200V/600Aから定格電流を拡大したことで、装置の小型化に貢献します。鉄道や再エネ発電システム向けに、1,200V系列のAll-SiCモジュール(M295パッケージ)を開発し、量産を開始しました。第2世代SiCトレンチゲート型MOSFET(第2世代SiCチップ)の適用により、従来のSi-IGBTチップに比べて総損失を約70%低減しました。さらに、M295パッケージは、従来の標準パッケージ(M276)に比べて配線インダクタンスを24%削減し、SiC-MOSFETの高速スイッチング時において、ノイズや故障の原因となるサージ電圧を抑制しました。これらにより、インバータなどの顧客装置の効率向上や信頼性向上に貢献します。再エネ発電システム向けに、「HPnC」(High Power next Core)パッケージに第3世代SiCトレンチゲート型MOSFET(第3世代SiCチップ)を搭載した2,300V/1,200Aの大容量モジュールを開発しサンプル展開を開始しました。第2世代SiCチップに比べ低損失・小型化した第3世代SiCチップを用いることにより、更なる大容量化が求められる再エネ市場の拡大に貢献します。●車載モジュール分野軽・小型車用インバータ向けに、750V/600Aの直接水冷型パワーモジュール(M682パッケージ)を開発し量産を開始しました。低損失の第7世代RC-IGBTチップを搭載し、冷却性能を改善することで電力密度をさらに高めました。引き続き、さまざまな出力の電動車に対応するため容量系列の拡大を進めます。2026年以降のxEV(電動車)モデル向けに、第3世代SiCチップを搭載して発生損失を大幅に低減しつつ、パッケージの薄型と低インダクタンス化を実現した次世代SiCパワーモジュールの開発を進めています。これらの製品を通じて、電動車の更なる高効率化と小型・軽量化に貢献します。●電源制御用IC分野電源システム向けに、第4世代臨界モードインターリーブPFC-ICを開発しました。力率向上とTHD(全高調波歪率)の改善により、国際標準規格IEC61000-3-2で定められた高調波電流規制ClassCに準拠しました。また、負荷状態に応じてICの制御方法を自動的に切り替える機能を新たに搭載しました。軽負荷時の効率向上、待機電力の低減に貢献します。●感光体分野小規模オフィス向けに、最大A4サイズの印刷に特化した小型カラープリンタ用の有機感光体を開発し量産を開始しました。高感度の電荷輸送材を採用することで画質を向上しました。また、添加剤の配合比率を最適化することにより感光体表面の残留電位の上昇を抑制し、長期間にわたり安定した画像品質を実現しました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は13,439百万円です。 ■食品流通部門●自動販売機(自販機)分野販売できる商品の選択肢を広げ、小売業・アグリ分野などのこれまで自販機が活用されていなかった市場へ訴求し、店舗の省人・省力化に貢献する業界初の「冷蔵ロッカー型自販機」を開発し発売しました。本自販機では、商品の大きさに合わせて、顧客自身が商品の収納室の間仕切りを着脱できるため、飲料や食品のような定形品に限らず、これまで販売できなかった野菜や生花などの不定形品に加えて、ホールケーキや寿司折詰めなど大型の冷蔵食品も販売できます。また、収納室の背面から冷気を送り込むダクト循環方式を新たに開発し、収納室容量変更の影響を受けず、温度ムラの無い保冷構造を実現しました。●店舗流通分野外食産業やオフィス向けに、業務用全自動コーヒーマシン「Cafe Mania」に外付け可能なミルクユニットを開発しました。ミルクを水蒸気で加熱しながら空気と混合して泡立てる方式を採用することで、口当たりの良い泡質を実現しました。これにより、提供飲料のバリエーションが広がり、ユーザのさまざまな嗜好に対応可能になりました。店舗のさらなる省エネルギー(省エネ)化やCO2排出量削減のニーズに応えるため、太陽光パネルや蓄電池を併設したコンビニエンスストアのエネルギーを制御する店舗コントローラの次世代機を開発しています。運転環境に対応してショーケースを最適に制御して省エネを実現するとともに、太陽光パネルの発電量や店舗の電力需要の予測制御機能との組み合わせにより、発電した電力を余すことなく活用することで、CO2排出量の削減と購入電力量の低減に貢献します。●通貨機器分野2024年7月3日に発行された新紙幣を識別する技術を開発し、釣銭機や自販機のビルバリデータへ搭載しました。なお、既に市場で稼働している釣銭機などに対しては、ソフトウエアの更新のみで新紙幣対応が可能です。これにより、顧客の負担を軽減できます。当連結会計年度における当部門の研究開発費は4,116百万円です。 ■新技術・基盤技術分野●パワーエレクトロニクス技術カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光や風力など再エネの利用拡大が求められています。一方、郊外など大きな電力を流すことのできない系統に再エネを接続する場合、電圧振動が増加する懸念があります。これに対応するために、再エネ用PCSの出力電圧・電流を安定させる新たな制御アルゴリズムを開発しました。本制御アルゴリズムを搭載したPCSの実機検証により、従来は接続困難であった電力系統においても安定して運転が可能であることを確認しました。リニアモータのさらなる小型化を目指し、位置検出をセンサレスで行う駆動制御技術を開発しました。本技術は、磁石配置から生じる磁束変化を利用して動作位置を検出する方式を採用し、モータ構造の最適化により隣接する磁石からの磁束干渉を低減することで高精度な位置検出を実現しました。これにより、省スペースが求められるアプリケーションへの適用が可能となり、幅広いニーズに対応します。●AI活用技術電力取引市場において、再エネで発電した電力を売買するビジネスが拡大しています。そこで、市場取引を行うEMS(Energy Management System)向けに、AIを活用した価格予測技術と取引計画の最適化技術を開発しました。複数の取引市場(卸電力市場、需給調整市場)の中から最適な市場を選択し、売買するタイミングと取引量を自動的に計画します。これにより、独立系発電事業者や特定卸供給事業者など顧客の電力取引における収益最大化が可能となります。近年増加している洪水への対策として、ダム流入量をAIにより長期かつ高精度に予測する技術を開発しました。本技術は、雨がダムに流れる時間遅れを学習し、3日先までの計画作成を支援します。また、AIの学習モデルや学習手順の最適化により流入量予測の精度を向上させ、発電用ダムの過剰放流を抑制し、発電ロスを低減します。これにより、国土交通省のガイドラインに基づく計画的な事前放流が可能となり、洪水対策と発電効率の両立を実現します。研究開発における生産性・品質向上や開発リードタイムの短縮に向けて、構造設計やソフトウエア開発における生成AIの活用を進めています。構造設計においては、シミュレーション技術と生成AI技術を融合したジェネレーティブデザインの実用化に取り組んでいます。この技術は、要求仕様や制約条件の範囲で3次元形状の自動生成が可能です。ソフトウエア開発においては、生成AIによるプログラムの自動生成技術を開発しました。引き続き、生成AIを用いたプログラムの試験条件の自動生成技術の開発に取り組む予定です。●セキュリティ技術工場など製造現場ではエネルギー利用効率や生産性向上を目的として、設備の消費電力、装置の稼働率や良品率など、様々なデータの活用が進んでいます。一方で、設備や装置のデータ活用には外部サーバとの接続が必要不可欠でありサイバー攻撃による情報流出や生産停止などのリスクが増大することから、セキュリティ対策が重要となります。制御システムにおけるセキュリティ対策に関する標準は、国際標準IEC62443に定められており、この認証取得に向けた技術開発を進めています。今回、メモリ領域へのアクセスを制御する技術を確立し、不正なプログラムの実行/書換えの防止を実現しました。引き続き、不正アクセス防止技術などのセキュリティ対策技術の開発を進める予定です。●水素・アンモニア・CO2関連技術水素社会の到来に向けて、水素製造コストの低減が見込めるAEM(Anion Exchange Membrane)型水電解水素生成技術の開発に取り組んでいます。2024年度は、小型セルの試作と耐久性を評価し、セルを大面積化した場合の課題抽出と耐久性向上のための対策検討を実施しました。本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「アニオン膜型アルカリ水電解セルの要素研究と実用化技術の確立」として実施しました。水素と同様に次世代燃料として期待され、水素キャリアとしても利用可能なアンモニアの社会実装に向けた周辺技術の開発も進めています。アンモニア燃料供給船やバンカリング装置に適用する高感度アンモニア漏えい検知技術や配管内に残留するアンモニアの回収技術などの安全対策技術の開発を行っています。本研究はNEDOのグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」プロジェクトの「アンモニア燃料船サプライチェーン構築における周辺機器開発」として実施しています。工場用コージェネレーションシステムや船舶のディーゼルエンジンの脱炭素化に向けてCO2分離回収装置の開発に取り組んでいます。これらの比較的小規模なシステムにおいて低コスト化が可能な膜方式を適用したCO2分離技術の開発とともに、膜性能を維持するための排ガスの前処理技術(排ガスの除熱、除湿、集塵)の開発を並行して進めています。2024年度は、前処理装置の機能試作及び評価を実施し、排ガスの流量・圧力変動に追従して前処理プロセスを制御する技術を確立しました。今後、CO2回収装置の実証機の試作と評価を進めます。●次世代半導体技術SiCよりさらに低損失な次世代半導体材料として期待されている窒化ガリウム(GaN)を用いた、縦型GaNパワーデバイスを開発しています。量産性に優れる「イオン注入プロセス」を用いたデバイスとして縦型GaNでは世界初の耐圧1,400V、電流10Aの大面積素子を実現しました。本研究の一部は文部科学省「革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業(パワーデバイス領域)」として実施しています。●材料技術サーキュラーエコノミーの実現に向けて、リサイクル可能な樹脂材料の実用化に向けた技術開発に取り組んでいます。熱可塑性材料の耐加水分解性や機械強度などの性能を維持するため、材料添加による加水分解抑制や加工条件の最適化を完了しました。今後、リサイクルが困難とされている耐熱性や難燃性が高い熱硬化性樹脂材料を対象に、環境負荷低減樹脂への代替を進める予定です。 ■その他部門当連結会計年度における当部門の研究開発費は8百万円です。
FY2024|10,165 文字
6【研究開発活動】富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛けています。当連結会計年度における富士電機の研究開発費は36,059百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。また、当連結会計年度において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,268件です。 ■エネルギー部門 発電プラント分野では、地熱発電プラントの発電効率や稼働率の向上に向けて、タービンの汚損抑制や高腐食性蒸気に対する耐久性向上などの要素技術を開発しました。タービン翼の汚損抑制のためDLC(Diamond-Like Carbon:非晶質炭素膜)コーティングによるスケールの付着量の低減技術を開発し、実機への適用を進めています。高腐食性蒸気対策では、腐食速度のシミュレーション技術を確立し、発電用蒸気中の腐食成分や温度圧力条件に適したタービン材料の選定が可能となり、タービンの耐久性向上を実現しました。また、地熱発電所向けメンテナンスサービスとして、発電機内に侵入する硫化水素ガスを測定し、金属ボルトやパッキンなど周辺部品の劣化状態を推定する技術を開発しました。運転中の発電機から、劣化要因となる腐食性ガスを測定して固定子巻線の劣化状態を推定する実用化済の技術と合わせることで、地熱発電プラントの寿命推定精度を向上し、保守・保全プランを提案します。また、工場・施設などの電源向けに、自動車用の固体高分子形燃料電池モジュールを適用した定置型の水素発電システムの開発を進めています。日本産業規格(JIS)に準拠した安全性試験(JIS C 62282-3-100)と性能試験(JIS C 62282-3-200)を完了し、加えて、連続運転試験を実施し、10年の耐久性が得られる見通しを得ました。 エネルギーマネジメント分野では、富士電機インド社において、業界最高レベルの変換効率98.8%を実現した太陽光発電向けのセントラル型PCS(Power Conditioning System)「PVI1500CI」(DC1,500V、1,000~4,000kVA)を開発し発売しました。インド政府は2030年までに二酸化炭素排出の50%削減を目指しており、インドの太陽光発電市場は年間8~10GW規模で拡大すると予想されています。PVI1500CIは、日本で販売実績のあるPVI1500CJをベースとし、1,000kVAの電力変換モジュールを4台組み合わせることにより、最大4,000kVAの大容量に対応します。国内では、再生可能エネルギーの普及拡大に向けた電力需給調整力の一つとして、定置用蓄電池の導入が期待されています。蓄電池システム向けに、重耐塩仕様の屋外設置型・2,600kVA蓄電池用PCS (PVI1400CJ-3)を開発し発売しました。また、蓄電池の高電圧化に対応し、最大入力電圧をDC1,500Vとした2,750kVA蓄電池用PCS「PVI1500CJ-3/2750B」を開発し発売しました。高電圧化により同一容量での電流値が下がることで接続配線を削減できます。さらに、電力市場で取引する事業者に対し、蓄電池の充放電計画の策定など運用を支援することにより、収益拡大に貢献する蓄電池運用システムの開発を進めています。蓄電池の充放電計画の策定機能を開発し、シミュレーションにより収益改善への有効性を確認しました。 変電分野では、設置面積を大幅に削減した154kV,200MVAの特別三相変圧器を開発しました。特別三相変圧器は、三相変圧器を3個の単相変圧器に分割して輸送し、現地で再組立てが可能な構造の変圧器です。今回、単相変圧器の構造を改良し、負荷時タップ切換器を単相変圧器内に収納することで、当社同仕様の三相変圧器に対して、本体部分の設置面積を20%削減しました。 施設・電源システム分野では、工場設備や医療設備、放送・通信設備向けに200V系の中容量無停電電源装置「UPS6600FX」(20~50kVA)に加えて、「UPS7600FX」(50~100kVA)を開発し発売しました。中容量UPSシリーズは、インバータやコンバータなどの電力変換部をユニット構造として交換を容易にし、冷却ファンや制御電源などの部品を長寿命化したことにより、メンテナンスコストの削減に貢献します。また、データセンターの大容量化のニーズに対応するため、業界最大クラスとなる単機容量2,400kVAの大容量モジュール型無停電電源装置「UPS7500WX」を開発し発売しました。商用電源が正常な際に、電力損失が少ない商用電源から給電する「高効率運転モード(HEモード)」を搭載し、電力交換効率98.5%を実現しました。また、周辺盤を組み合わせた一体設計とすることで、設置面積を従来比25%削減し、業界最小クラスを実現しました。 器具分野では、これまで業界を牽引してきた国内トップシェアの電磁開閉器を35年ぶりにフルモデルチェンジした「SC-NEXTシリーズ」の定格通電電流値11~18Aと20~38Aを開発し発売しました。内部構造の見直しにより横幅寸法を従来比で28%削減し、制御盤の小型化や高性能化に貢献します。また、コイルの改良により消費電力を従来比で最大73%削減し、業界トップの低消費電力を実現しました。さらに、プラスチック材料の98%にリサイクル可能な材料を採用し、環境に配慮した製品としました。 当連結会計年度における当部門の研究開発費は9,116百万円です。 ■インダストリー部門 ファクトリーオートメーション分野では、工作機械やファン・ポンプ、搬送ライン向けの汎用インバータ「FRENIC-Ace シリーズ」を刷新し、発売を開始しました。海外で広く普及し、高速通信が可能な通信規格であるEthernetを標準搭載したタイプや、省スペース化が可能なフィンレスタイプなどの機種をそろえ、インバータのメンテナンスに有効な予兆保全機能を強化しました。本製品は、日本、東南アジア、欧米などにグローバルに展開していきます。FAコンポーネント分野では、製造現場の装置・機械の監視・操作に用いられ、IoTシステムのゲートウェイ機器としても活用されるプログラマブル表示器「MONITOUCH V10シリーズ」を開発し発売しました。クアッドコアCPUの搭載とアプリケーションの最適化により、業界トップの操作性と視認性、通信処理の高速化を実現しました。また、ロボット・印刷機・金属加工機・搬送装置向けに中容量(2.9kW~7.5kW)対応のサーボシステム「ALPHA7」シリーズを開発し発売しました。国際標準規格IEC 61800-5-2などで定義された各種安全機能にも対応し、安全操業に貢献します。さらに、「ALPHA7」用の診断オプションを開発し発売しました。当社独自のアナリティクス・AI(MSPC)を適用した異常診断機能により、加工装置など設備の正常時のデータ(診断モデル)と稼働中のデータの差異を解析することで異常の検知や原因分析ができます。これにより、装置の安定稼働に貢献します。また、加工機械・包装機械向けのサーボシステム「ALPHA5 Smart」シリーズの後継品として、容量0.2kW~4.4kWの「ALPHA7S」シリーズを開発し、発売しました。「ALPHA5 Smart」シリーズに比べて周波数応答を2倍以上の3.2kHzに高速化し、モータの位置や速度を検出するセンサー(エンコーダ)の分解能を従来の20bitから24bitに高精度化したことで、機械のタクトタイム短縮と加工精度の向上に貢献します。駆動制御システム分野では、鉄鋼、クレーン、自動車、石油化学など国内外の様々な産業向けに出力電圧400V及び690Vのプラント用インバータ「FRENIC-GS」を開発し発売しました。本製品は国際規格(IEC、CE、ULなど)に対応するとともに、冷却構造とスタック収納構造の刷新により、業界最高レベルの小型・高出力化、省配線化を実現しています。さらに、制御LANと情報LANを分離することで高速・高精度な制御を行いながら、詳細な設備の監視が可能となりました。これらにより、顧客の生産性向上、安定操業、保全作業の省力化に貢献します。また、国内鉄鋼圧延プラント設備を中心に1970年代に多数納入された直流電動機(日本電機工業会規格 JEM1109に準拠)の互換型として「800番/600番互換型鉄鋼圧延補機用誘導電動機」を開発し発売しました。本誘導電動機は既設の直流電動機に外形寸法を合わせたとともに、出力や回転速度及び過負荷耐量を含めた電気仕様、耐震強化構造や冷却方式についても既設の直流電動機と同等仕様としたことにより、短期間でのシステムの置き換えを可能としました。 計測制御システム分野では、ソフトセンサを構築するためのツールとして、業界で初めて自動機械学習を適用した「推算用モデル式構築/演算ツール」を開発し発売しました。ソフトセンサは、リアルタイムで測定することが難しい濃度や強度などの値を、温度や圧力、流量などの容易に収集できるデータを使って推算する技術で、化学や鉄鋼、製薬などのプラント・工場で用いられます。このソフトセンサを監視制御システムに実装することで、製造過程の製品状態をリアルタイムで推算でき、原料やエネルギーのムダを抑えることが可能となりますが、一方でソフトセンサを構築するためには多くの作業が必要で、構築に時間がかかっていました。今回開発した「推算用モデル式構築/演算ツール」は、ソフトセンサを構築する工程を自動化したことで作業の大幅な時間短縮を実現し、顧客の作業効率を改善します。 原子力分野では、原子力発電所の廃止措置で発生する廃棄物の円滑な処理に向けて、迅速に放射性元素濃度を分析するため、試料の前処理を含めた分析システムの開発を進めています。また、原子力発電所で発生する廃液や焼却灰を固化して処分するため、一般的に使用されているセメントに比べてセシウムの閉じ込め効果が高いジオポリマーを用いた安定固化技術の開発を進めています。 放射線機器・システム分野では、任意の場所で中性子線の線量率の測定が可能な可搬型モニタリングポストを開発し発売しました。内部機器の改良などにより小型軽量にしたことで、移動式架台に機器類を実装して容易に運搬できます。また、内蔵したGPSによって取得した位置情報と線量率データと合わせて保存することで、自然災害時などにおける安全管理を支援します。 情報制御システム分野では、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献するため、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)を提供しています。MESは、複数の「MainGATE」のパッケージで構成されています。従来は分かれていた製造の実行指示、製造管理、統合マスタ管理を一つに統合したパッケージを開発し発売しました。新たに搭載した製造実績データの連携機能により、操業の効率化・品質管理・設備保全などに活用できます。さらに、国際標準の通信規格OPC UAに準拠したことで、連携可能な監視制御システムや基幹業務システムが拡大しました。また、製造実績分析パッケージ「MainGATE/PPA」の機能を拡張した「MainGATE/MPA」を開発し発売しました。生産管理の国際標準規格ISO22400-2に準拠し、そこで定められた製造現場の主要な4つのオペレーション領域毎(品質/生産性/保全/在庫)に分析テンプレートを準備し、KPI(重要業績評価指標)からプロセスデータまでのドリルダウン分析を可能とすることで、データ活用による製造工程のDXを支援します。さらに、製造現場に設置される様々な機器のデータを収集するエッジコントローラ「FiTSAΣ B5」を開発し発売しました。メモリ容量を拡大したことで従来製品比2倍のデータを収集・蓄積することが可能となり、詳細な生産設備の監視や収集データの分析を支援し、生産性向上に貢献します。また、オフィス業務のDX実現に向けて、これまでオンプレミスのWEBシステムとして多数の導入実績のある、民間企業向けのワークフロー「ExchangeUSE」と行政向けの文書管理システム「e-自治体」について、クラウドを利用するSaaSサービスの製品として新たに開発し発売しました。オンプレミス製品として提供してきた豊富な機能から、顧客の業務に合わせて最適な機能を選択して利用できるため、短期間かつ低コストで導入可能です。 フィールドサービス分野では、回転機故障予兆監視システム「Wiserot」において、無線周波数帯域に315MHzに加えて912MHzを追加して無線式振動センサの無線通信距離を従来の20mから150mに延長した長距離版を開発し発売しました。これにより、高所を含め屋内外の様々な場所に設置された回転機に対応でき、予兆監視システムを容易に構築できます。 当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,788百万円です。 ■半導体部門 産業モジュール分野では、低損失で高温動作が可能な第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。鉄道や再生可能エネルギー分野における高耐圧化の要求に応えるため、大容量モジュール「HPnC」(High Power next Core)パッケージに、最新の第7世代IGBT/FWD「Xシリーズ」チップを搭載した1,700V耐圧品、2,300V耐圧品を開発し発売しました。3,300V耐圧品のサンプル展開もあわせて進めています。風力発電システム向けには、電力安定化回路に対して最適化した第7世代IGBTモジュール1,700V/600A DualXTを開発し、量産を開始しました。このモジュールの適用により、電力変換装置の信頼性向上に貢献します。また、太陽光発電システム向けに最適化したIGBTモジュール1,200V/800A(M276パッケージ)を新たに開発し、サンプル展開を開始しました。従来の1200V/600Aから定格電流を拡大したことにより、装置の小型化に貢献します。エアコンやサーボシステム向けには、第7世代IGBT/FWDチップを搭載したモールドタイプの小容量IPM(Intelligent Power Module)650V/10~30Aを開発し発売しました。モールド構造の採用により高密度実装化することでモジュールの外形寸法を大幅に小型化(従来ケース構造比40%)しました。また、最新のチップを適用することで、従来製品に対して、電力損失を10%低減し、電磁ノイズも約1/3に低減しました。これらにより、機器の小型化と省エネに貢献します。さらに、鉄道や再生可能エネルギー分野向けのパワエレ機器の小型・軽量化、高効率化のため、第2世代SiCトレンチゲートMOSFETを搭載した1,700V/200,300,400A(M295パッケージ)のAll-SiCモジュールを開発し、量産を開始しました。また1,200V耐圧製品の開発も完了し、量産化の準備を進めています。第2世代SiCチップの適用により、従来のSi-IGBTチップに比べて総損失を約70%低減しました。また、今回新たに開発したM295パッケージは、従来の標準パッケージ(M276)に比べて配線インダクタンスを24%削減したことで、ノイズや故障の原因となるサージ電圧を低減できます。これらにより、インバータなどの顧客装置の効率向上や信頼性向上に貢献します。 車載モジュール分野では、中国の電動車市場向けに、RC-IGBTチップと冷却性能の改善により、電力密度をさらに高めた直接水冷型パワーモジュール750V/820A(M675パッケージ)を開発し、量産を開始しました。また、2026年以降のxEV(電動車)モデル向けに、損失を低減し信頼性を高めた次世代IGBT及びSiCの開発を進めています。これらの製品を通じて、電動車の高効率化と小型軽量化に貢献します。 IC分野では、LED照明用第4世代臨界PFC-ICを開発し、量産を開始しました。力率向上とTHD(全高調波歪率)改善機能により、国際標準規格IEC61000-3-2で定められた高調波電流規制Class Cに準拠しました。また、当第2四半期から量産を開始した第4.5世代LLC電流共振ICと組み合わせて適用することで、電源システムにおける軽負荷時の効率向上、待機電力の低減、電源部品の削減によるコストダウンに貢献します。また、スイッチング電源向けに、第7世代PWM制御ICの量産を開始しました。ICの間欠動作機能を追加することにより、電源待機時の消費電力を低減し、省エネルギーに貢献します。さらに高電圧入力端子の耐圧を従来の500Vから業界最高の710Vに高耐圧化したことで、海外の電力供給が不安定な地域でも適用可能になります。 感光体分野では、耐久性と画質を向上させたオフィス向けカラー複写機用感光体を開発し、量産を開始しました。高耐摩耗性の樹脂と高感度特性を備えた電荷輸送材を採用し、それらの配合比率を最適化することで、従来品よりも長期間にわたり安定した画像品質を実現しました。また、オフィス向け中速カラープリンタ用の有機感光体を開発し、量産を開始しました。添加剤の種類と量を最適化する事で感度を向上させるとともに、温湿度変化に対して特性変動が少ない電荷発生材を採用することで、従来品よりも色ムラの無い画像品質を実現しました。 当連結会計年度における当部門の研究開発費は12,452百万円です。 ■食品流通部門 自動販売機(自販機)分野では、省エネルギー(省エネ)性能を向上させた「サステナ自販機」の機種拡大を進めました。2023年度は小型機を中心とした15機種を追加し、合計24機種に拡大しました。この自販機は、インバータ制御によるコンプレッサの高効率化、庫内構造と断熱材の最適化による侵入熱量の低減などを進めることにより、従来機と比べて年間消費電力量を最大20%削減しました。業界最高レベルの省エネを実現し、“2023年度省エネ大賞”の製品・ビジネスモデル部門において、経済産業大臣賞を受賞しました。 店舗分野では、外食産業やオフィス向けに、ドリップタイプの業務用全自動コーヒーマシン「Cafe Mania」を開発し発売しました。新規に開発した超微細ファインメッシュフィルタでコーヒーを抽出することで、豆本来の香りや風味を残しながら、雑味を極限までなくしました。また、レストランやオフィスでの使いやすさに配慮し、清掃やメンテナンスの際に取り外して洗浄する部品を減らすとともに、簡単に脱着できる構造としました。また、平型冷凍ショーケースの消費電力量削減のため、ショーケースの上部に取り付け可能な「省エネフード」を開発し発売しました。商品の取出しやすさを維持しながら、天井からの輻射熱による熱負荷の侵入を低減し、冷凍機の負荷を削減することで省エネを実現しました。 当連結会計年度における当部門の研究開発費は3,666百万円です。 ■新技術・基盤技術分野 太陽光発電や風力発電で発電し、貯蔵した電力を電力取引市場で売買するビジネスが拡大しています。そこで、電力取引における独立系発電事業者(IPP)や特定卸供給事業者(アグリゲーター)などの収益最大化に向けて、EMS(Energy Management System)に搭載する、電力取引市場の価格予測技術を開発しています。主な電力取引市場には、取引当日の発電機不調や気温変化による発電量の需給を調整するための「時間前市場」や電力需給のバランスを調整するため、蓄電池の充放電量などを取引する「需給調整市場」があります。これらの市場向けに各々価格予測技術を開発し、高精度に予測できることを確認しました。また、卸電力や需給調整などの新たな電力取引市場での収益向上のため、充放電を計画的に行う蓄電池システムの制御技術を開発しました。その中で当社は、蓄電池に水素製造装置を組み合わせて、これらを最適に制御するハイブリッド制御技術を開発しました。水を電気分解して水素を生成する水素製造装置により、蓄電池に貯蔵できない余剰な電力を無駄なく水素として貯蔵し、これを活用することで、収益の最大化に貢献します。 エネルギー利用効率向上や生産性向上のため、デジタル技術を活用した製造現場のスマート化が進展しています。これに伴いネットワーク化が進んでいますが、外部からのサイバー攻撃による情報流出や生産停止のリスクは増大しており、サイバーセキュリティ対策の重要性が増しています。そこで、制御システムにおけるセキュリティの国際標準規格であるIEC62443への対応に向けたセキュリティ検証技術の開発を進めています。現在、当社コントローラ製品を対象として、規格に準拠するために必要な暗号化や電子証明書を用いたセキュアなプログラム起動技術などの要素技術を抽出し、認証取得に向けた機能を開発しました。今後は順次、当社製品への適用を進める予定です。 当社の半導体事業は、需要の拡大により多くの案件に対応するため、開発リードタイムの短縮が課題となっています。この課題を解決するため、シミュレーション技術の高度化を進めています。この中で、パワー半導体の電気回路と熱の連成解析において、従来の3Dモデルと同等の解析精度を維持し、かつ、1/1000の短時間で計算できる1Dモデルの技術を確立しました。今後、本技術をパワー半導体モジュールの設計ツールへ展開することで、開発リードタイムの短縮に貢献していきます。 近年、分散型電源の利用が拡大する中、太陽光発電や燃料電池、蓄電池など、直流で動作する電源設備が増えています。これらを直流バスで接続する直流配電システムの高効率化に向け、低損失かつ広範囲な電圧変動に対応可能なDC/DCコンバータを開発しています。現在、小型化・高効率化に向けて、当社SiCモジュールを適用して検証を進めています。試作機の性能評価の結果、変換効率は、定格電圧条件(入力600V/出力750V)で業界トップクラスの98%を達成しました。 SiCデバイスの性能を向上させるため、計算科学を用いて、デバイス特性の変動要因となる結晶欠陥の発生や抑制メカニズムの解明に取り組んでいます。今回、機械学習を活用した大規模な分子動力学計算(2千~1万原子規模)の技術を確立し、製造条件の違いによる結晶欠陥の発生メカニズムを明らかにしました。この技術を活用して製造プロセスの最適化を行い、デバイスの性能向上に貢献します。 カーボンニュートラルの実現に向けて、工場排熱を有効利用する産業向けのヒートポンプがこれまで以上に注目されています。これに対応すべく、工場の生産工程で廃棄されていた60℃から100℃の排熱を活用し、自動販売機で培ったヒートポンプ技術を適用して高効率に蒸気を生成する排熱回収型150℃蒸気発生ヒートポンプ技術を開発し、製品化に向けた取組を進めています。これにより、工場の省エネルギー化やCO2排出量の削減に貢献します。 将来の水素社会実現に向けて、水素製造装置のコスト低減が見込めるAEM(Anion Exchange Membrane)型水電解水素生成技術の開発に取り組んでいます。性能向上や長期信頼性などの技術課題の抽出と対策を検討するため、水電解セルの開発を進めており、現在、単セルの試作と耐久性の検証を行っています。本開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」において、「アニオン膜型アルカリ水電解セルの要素研究と実用化技術の確立」として採択され、2024年度末までにAEM型水電解スタックでの性能及び耐久性の検証を実施します。 水素と同様に次世代燃料として期待されているアンモニアの社会実装に向けた取り組みとしては、NEDOがグリーンイノベーション基金事業として公募した「次世代船舶の開発」プロジェクトへ「アンモニア燃料船サプライチェーン構築における周辺機器開発」を提案し、採択されました。本事業では、2024年度から2027年度にかけて、アンモニアの高感度漏えい検知などの安全対策技術の開発を実施します。 ■その他部門 当連結会計年度における当部門の研究開発費は34百万円です。
FY2023|7,437 文字
6【研究開発活動】富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛けています。当連結会計年度における富士電機の研究開発費は36,216百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,178件です。 ■パワエレ エネルギー部門受配電設備の保全計画立案から設備の監視、さらに設備更新計画の立案までを支援する「まるごとスマート保安サービス」の機能拡充に向けて、高圧配電盤、GIS、変圧器などの絶縁不良や局部過熱などの劣化状態を常時監視するデータ収集装置を開発しました。長期稼働に伴う絶縁性能劣化により発生する部分放電を監視するTEV(Transient Earth Voltage:過渡接地電圧)センサと、ブスバーやケーブルの接合部の接触抵抗増加によって発生する局部過熱を監視する温度センサにより、機器の劣化状況の変化をデジタルデータで見える化し、電気設備の点検作業の効率化に貢献します。変電分野では、冷却用に大豆由来の天然エステル絶縁油(FR3®:Fire Resistance 3rd generation、Cargill,Incorporatedの登録商標)を採用した導油式のFR3®適用変圧器を開発し発売しました。FR3®は、従来の鉱油系絶縁油に比べて生分解性が高く毒性がないことから万が一流出しても環境への影響を低減できます。また、引火点が高く燃えにくいことから防火設備への投資費用及び火災保険費用の削減に貢献します。電機盤分野では、東南アジアを中心としたグローバル市場向けに、省スペースを実現したスイッチギヤ「VC-V20A-1」を開発し発売しました。電界計算に基づく独自の耐電圧予測技術により絶縁構造を最適化し設置面積を当社従来機種に比べて20%縮小するとともに、短絡事故時に発生する高温・高圧のホットガスを瞬時に冷却する構造を排気部に採用することで建屋外への放出を不要とし、設置場所の自由度が向上しました。器具分野では、スタイリッシュなデザインに一新した操作表示機器「Φ16コマンドスイッチ」及び「Φ22コマンドスイッチ」シリーズを開発し発売しました。取付面からの突出量の少ないフラッシュマウント品のラインナップを充実させることで、市場のニーズに応えます。当連結会計年度における当部門の研究開発費は7,516百万円です。 ■パワエレ インダストリー部門スマートファクトリーの実現に向け、システム製品のマザー工場である東京工場で自営の第5世代移動通信システム(以下、ローカル5G)の実証実験を2021年5月に開始し、遮蔽物やノイズの多い機械加工ラインにおける電波の伝搬状況の調査や、工作機械の稼働データの見える化などの実証に取り組んできました。この結果を踏まえ、無線局商用免許(使用周波数:4.8GHz)を2022年1月に取得し、機械加工ラインでの生産活動にローカル5Gの適用を開始し、継続して運用しています。今後は、無線機の設置環境などの実績・知見を活かしながら、異常による工作機械の稼働停止時間の短縮や次工程への不良品流出の防止を目指します。自社工場での適用範囲を広げるとともに、ローカル5Gの特長を活かした製品やエンジニアリング、サービス等のソリューションを創出します。計測機器・センサ分野では、従来よりも小型で簡単に設置できるクランプオン式の「インテグラル超音波流量計(S-Flow)」を開発し発売しました。検出器と変換器を一体化することによりコンパクトな外形寸法を実現しました。半導体や空調などの分野において、これまで取りつけることが難しかった小口径配管(8A~32A)の流量計測が可能となり、適切な流量管理による半導体製造の歩留まり向上や、空調設備の省エネルギー化に貢献します。FAコンポーネント分野では、アナリティクス・AI(MSPC)による異常診断機能を搭載した「SPH5000EC系 診断機能付きCPUモジュール」を開発し発売しました。設備の正常時のデータ(診断モデル)と稼動中のデータの差異を解析することで異常の検知や原因分析ができます。また、モーション制御と異常診断は1台のCPUモジュール上で個別に実行するので、モーション制御の速度や精度などに影響を与えることなく機械・装置の異常診断が可能です。FAシステム分野では、電動車の開発効率向上に貢献する「EV駆動部品性能試験機」を開発しました。EVモータは従来のエンジンと比べて回転数が高いため、高速回転時に振動の小さい試験機が必要となります。新たに開発した試験機は、20,000min-1の高速回転に対応した自社製ダイナモメータの採用と、振動シミュレーションに基づく構造設計により、高速回転時でも振動の小さい安定した試験が可能です。計測制御システム分野では、国内・海外の中小規模の産業プラント向けに、顧客課題に応じた柔軟なシステム構築と高い信頼性を実現したオートメーション監視制御システム「MICREX-VieW FOCUS Evolution」を開発し発売しました。産業プラントにおける幅広い運用ノウハウを活かしたライブラリを準備し、専門的な知識がなくても簡単・スピーディにシステムが構築できます。また、プラント設備のデータを複数台のオペレータマシンが保持する冗長構成により、万一いずれかが故障してもプラント設備の継続運転とデータの自動復旧ができるため、プラントの安定運転に貢献します。さらに、セキュリティを強化した国際標準の通信規格であるOPC UAを採用しており、お客様の持つ上位系システムとの連携が容易になります。情報制御システム分野では、AIを活用した先進的な地域エネルギーマネジメントシステム(CEMS:Community Energy Management System)を開発しました。本システムでは、地域内にある医療施設、商業施設、ホテル、マンションなどの各施設のエネルギー需要を統計的機械学習手法を用いて高精度に予測し、その予測に基づいてエネルギー供給側と需要側の両方を自動調整することにより、地域全体のエネルギー利用効率の最大化を実現します。また、EMSパッケージとして販売しているEnergyGATEの省エネ最適化支援機能を拡張しました。AIを用いてエネルギーロスの真因を探索する新機能により最適制御パラメータや改善案の事例を提示することで、顧客のエネルギーコスト削減を支援します。船舶・港湾分野では、船舶の燃料油に含まれる硫黄分を排気ガスから除去するSOxスクラバの大容量XLサイズを開発し、ラインアップしました。24MWまでのエンジン出力に対応し、大型原油タンカー等の大型船舶の環境規制対応に貢献します。また、SOxスクラバの排水を浄化してスクラバの給水に再利用する排水再生循環システムを開発しました。これを従来の船舶排ガス浄化システムと組み合わせることにより、スクラバからの排水が規制されている一部の沿岸海域でもスクラバによる排ガス浄化を行いながら航行することが可能になります。放射線機器・システム分野では、環境放射線量を測定する新型モニタリングポストを開発し発売しました。放射線測定器及び計測部の一体化により、従来に比べ部品点数を削減して信頼性を向上することで住民の安全・安心に貢献します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,581百万円です。 ■半導体部門産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。電鉄や再生可能エネルギー分野における市場要求に対応するために、第7世代「Xシリーズ」チップを搭載した大容量モジュール「HPnC」(High Power next Core)の系列として1,700Vに加えて、2,300V耐圧品を開発し、サンプル展開を開始しました。さらに、HPnCパッケージに第2世代「SiCトレンチゲートMOSFET」チップを搭載して低損失・高効率化を実現した2,300V、3,300V耐圧品を開発し、サンプル展開を開始しました。高速スイッチングの妨げとなる内部インダクタンスを低減したパッケージの開発により、従来に比べて低損失化と小型・軽量化を実現します。駆動機能や保護機能を備えた第7世代IGBT-IPM(Intelligent Power Module)の系列化を完了しました。これまでにFA、工作機械、空調機器用途向け650V、1,200V耐圧の中容量製品に加えて、大容量製品として650V/200~450A、1,200V/100~300Aを製品化しました。また、エアコン向けに開発したモールドタイプのIPM製品を産業向け用途に最適化した小容量IPM 650V/10~30Aを新たに系列化しました。モールド構造により高密度実装が可能となり外形寸法が小さくできるため、機器の小型化に貢献します。車載モジュールでは、xEV(電動車)向け製品の系列拡大として、従来に比べて低損失化した新RC-IGBTチップ及び第4世代冷却器を搭載し小型化を実現した直接水冷型パワーモジュール750V/800A品を開発し量産を開始しました。車載向け製品として600A、800A、1,200A品をラインアップしたことで、様々なモータ出力の電動車に幅広く対応できます。さらに2024年以降のxEVモデル向けに、次世代IGBT及びSiC技術を開発しています。これらの製品を通じて、xEVのさらなる小型軽量化や高効率化に貢献します。産業用ディスクリート製品では、小型UPS、太陽光PCS、EV充電器などの電源のさらなる省エネに向けて最新の第7世代IGBT技術を適用したディスクリートIGBT「XSシリーズ」としてサブエミッタ端子を有するTO-247-4パッケージの1,200V/75A品を開発し系列に加えました。エミッタの配線インダクタンスにより生じる逆起電力を抑制し、ゲート電圧への影響を抑えることでスイッチング損失が低減し、電源機器の損失低減、高効率化を実現します。サーバや通信基地局などの電源向けに、第2世代SiC-SBDの系列化を図り、650V/6A、8A、10Aに加え、1,200V/20A、40Aの量産を開始しました。従来に比べて順方向電圧VFを低減し、サージ電流耐量の指標であるIFSMを高めたことで、電源機器の高効率化と信頼性向上に貢献します。IC製品では、75W以上の機器に内蔵される電源向けにLLC電流共振ICを開発しました。位相補償及びレギュレータを内蔵したことにより電源出力電圧のリップル電圧の低減や周辺部品点数の削減による電源の小型化、トータルコストダウンを実現します。感光体分野では、プロダクションプリンタ用のワイドフォーマット(A0サイズ)有機感光体を開発し、量産を開始しました。アルミニウム基体の高精度加工技術によりワイドフォーマットに対応すると同時に、摩耗耐性に優れた樹脂を採用し膜厚を最適化することで、色ムラの無い画像品質を達成しました。また、オフィス向け高速モノクロプリンタ用の有機感光体を開発し、量産を開始しました。感光ドラムの表面に傷つきにくく汚染耐性に優れた材料を採用するとともに、感光ドラムの形状を最適化して周辺部材との接触圧を均一化することにより、安定した画像品質を実現しました。さらに、家庭や小規模オフィス向け小型カラープリンタ用の有機感光体を開発し、量産を開始しました。感光層の空間を埋める添加剤の量を増やすことで耐ガス性を向上するとともに、電荷発生材料を増量することで少ない光量で感光体の表面電位を下げることができ、長期間にわたり、点状欠陥や色ムラの無い画像品質を実現します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は11,839百万円です。 ■発電プラント部門再生可能エネルギー分野では、地熱発電プラントの発電効率や稼働率の向上に向けて、復水器の高効率化、タービンの汚損抑制や高腐食性蒸気への対策などの技術を開発しています。また、マイクログリッドや風力発電サイト向けの蓄電池システムで要求される停電時の自立運転機能を付加した、大容量の蓄電池型PCS(Power Conditioning System)を開発しています。ソリューションサービス分野では、既設のプラント向けメンテナンスサービスとして、発電機の部品を取り外さずに、内部の簡易点検ができる発電機検査ロボットを開発しました。これにより点検による稼働停止時間を短縮できます。当連結会計年度における当部門の研究開発費は2,812百万円です。 ■食品流通部門自販機分野では、省エネ性能を向上させた「サステナ自販機シリーズ」を開発し発売しました。インバータ制御によるコンプレッサの高効率化、庫内構造と断熱材の最適化による侵入熱量の低減などを進めることにより、当社前年度機と比べて年間消費電力量を最大20%削減し、業界最高レベルの省エネを実現しました。また、自社開発のMCU(双方向通信端末)を活用し、売上げや在庫などのデータを遠隔地からリアルタイムで確認することにより、オペレータの作業効率を向上させ、省人・省力化にも貢献します。また、冷凍自販機「FROZEN STATION Ⅱ」を開発しました。従来機種より商品収容部容積を30%拡大したことで大型商品の販売が可能になりました。また、商品展示のためのディスプレーを明るくし視認性が向上しました。中国・東南アジア向けに、国内で流通していない長身のペットボトル商品を販売するため、新たな販売機構を搭載した自販機を開発し発売しました。この販売機構は、商品の補充しやすさの向上、収容数の増加などの顧客の要望にも対応しています。また、東南アジアの特定顧客向けに、21インチ液晶ディスプレーを搭載し、スマートフォンによりキャッシュレスでQRコード決済ができる大型グラスフロント自販機を開発し発売しました。利便性だけでなく、国内で販売している自動販売機の技術を活用し、商品温度の均一性や自動販売機本体の信頼性も向上させています。店舗分野では、地球温暖化係数の低い冷媒の採用により環境負荷を低減しながら、省エネルギー性を向上した冷凍機を開発しました。この冷凍機を内蔵した冷凍・冷蔵ショーケースのラインアップを拡大しています。また、冷凍・冷蔵ショーケースの遠隔監視システムを新たに開発しました。クラウドサーバに蓄積した稼働データの分析により故障の予兆を検知できます。該当箇所を事前にメンテナンスすることで、故障による商品販売機会の損失を削減します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は3,411百万円です。 ■新技術・基盤技術部門製造現場から様々なデータを収集し、クラウドシステムで製品の品質診断や設備の異常兆候検知などを行うIoT(Internet of Things)の活用が進展しています。IoT活用の更なる拡大を図るため、現場に設置するエッジデバイスとクラウドシステム間の通信量の削減や応答の高速化を狙い、エッジデバイス側で最適制御やAIなどの複雑なデータ処理を実行するための要素技術を開発し、新たなエッジデバイスの製品化に移行しました。自動販売機や、店舗内機器の消費エネルギー管理用コントローラへの実装に向けた検討を進めています。脱炭素化に向けて、太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの導入が拡大しています。再生可能エネルギーのように、出力が変動する発電システムが大量導入されると、電力系統の電圧や周波数が不安定になる恐れがあります。この問題を解消するため、再生可能エネルギー用PCSに付加して系統を安定化させるための電圧・周波数調整などのスマートインバータ機能、及びPCSが多数台接続された電力系統を高速に監視制御する技術を開発しています。模擬系統によるスマートインバータ機能の検証を完了し、製品化に向けて開発を進めています。環境負荷を低減するため、地球温暖化係数が大きいSF6ガスを使用しないガス絶縁開閉装置(GIS)の実現に向けた開発に取り組んでいます。絶縁性能が優れたSF6ガスを使用せずに代替ガスで同一の遮断性能を得るためには装置寸法が大きくなります。そこで、絶縁上重要な絶縁スペーサの誘電率分布を最適に制御して系全体の絶縁性能を高めることで装置を小型化する誘電率傾斜技術を開発し、製品化を進めています。SiCデバイスの性能を向上させるため、デバイス特性を劣化させる欠陥の発生や抑制メカニズム解明に取り組んでいます。文部科学省の「スーパーコンピュータ「富岳」成果創出プログラム」に参画し、これまで困難だった窒化ガスプロセスで発生する結晶界面の欠陥の解析を、原子数が従来比30倍規模の第一原理計算により実現し、プロセスの改善提案が可能となりました。今後、更に計算で扱うガスの種類を増やして、結晶の深さ方向の欠陥解析を進めます。カーボンニュートラルの実現に向けて、工場のコージェネレーションシステムや船舶エンジンなどに適用できる小規模なCO2分離回収が求められており、膜分離方式によるCO2分離回収技術とともに、CO2を効率良く分離するために排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)などの介在物を除去する前処理技術の開発に取り組んでいます。また、将来の水素社会実現へ貢献する技術として、AEM(Anion Exchange Membrane)型水電解水素生成技術の研究開発を開始しました。AEM型は主流となっているPEM(Polymer Electrolyte Membrane)型と比較して、水素製造コストの大幅な削減が期待されており、性能向上などの技術課題に対する取り組みを進めています。 ■その他部門当連結会計年度における当部門の研究開発費は54百万円です。
FY2022|7,176 文字
5【研究開発活動】富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛けています。当連結会計年度における富士電機の研究開発費は33,756百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,353件です。 ■パワエレ エネルギー部門IoT・AI技術を活用して、受配電設備の保全計画立案から設備の監視、設備更新計画の立案までを支援する「まるごとスマート保安サービス」を開発し発売しました。エッジコントローラで収集した稼動データをクラウド上のサーバに蓄積して一元管理し、設備の稼働監視と劣化診断を行うことで予防保全を可能にし、設備保全業務の効率化を支援します。産業変電分野では、冷却用に大豆由来の天然エステル絶縁油(FR3)を採用した導油式のFR3適用変圧器を開発しました。FR3は、従来の鉱油系絶縁油に比べて生分解性や引火点が高いため、環境負荷の低減や防火設備への投資費用及び火災保険費用の削減を可能にします。器具分野では、配線用遮断器・漏電遮断器「G-TWⅠN及びG-TWⅠNラムダ 母線プラグイン」シリーズにおいて、半導体装置やデータセンター、低圧受電盤、分電盤向けに標準の30mmピッチ品と、北米・アジア・EUの規格を取得したグローバル対応の30mm・70mmピッチ品を開発し発売しました。プラグイン方式により、省スペース化と施工作業性が向上し、容量変更や増設が容易になります。また、ユーザーのグローバルな展開に貢献します。さらに、配線用遮断器・漏電遮断器「G-TWⅠN」シリーズ32~100AF用の「IP54対応N形外部操作ハンドル」及び「IP20対応端子カバー」を開発し発売しました。外部操作ハンドルは、防塵・防水性能に関する保護等級IP54に対応するとともに、盤面フラット形の化粧板をオプションとして準備し、ハンドル操作部を盤面の内側に埋め込むことで、誤操作や盤輸送時の破損などのリスクを低減できます。端子カバーは、保護等級IP20に対応することで、盤内機器のメンテナンス時の安全性を向上し、機械制御盤の電気安全規格(IEC60204-1、NFPA79)を満足できます。当連結会計年度における当部門の研究開発費は7,233百万円です。 ■パワエレ インダストリー部門システム事業拡大に向けて、データセンターや半導体工場、鉄鋼、鋳造、セメント、ごみ処理、化学、ガス、医薬・食品、電力、発電プラントなどのプラントシステムの開発・生産体制を強化するために東京工場(東京都日野市)に「プラントシステム棟」を新設し稼働を開始しました。現地のプラントを高い再現性で模擬する検証システムにより、工場出荷時のシステムの完成度を高め、実プラントの早期立ち上げ・稼働に貢献します。また、長年培った技術や経験を基に、さまざまなプラントに幅広く適用可能なプラントシステムの標準プラットフォームを構築しました。要求仕様に応じて、機器やソフトウェアを組み合わせて提供することで、リードタイムの短縮やシステムの品質・信頼性向上に貢献します。さらに、プラントシステムを構成する製品、ソフトウェアやソリューションをお客様に知っていただくために、実際の製品や大画面モニタを用いて紹介するコミュニケーションエリアを設けています。スマートファクトリーを実現するため、パワエレ事業におけるシステム製品のマザー工場である東京工場で、自営の第5世代移動通信システム(ローカル5G)の実証実験を開始しました。工作機械や加工中の金属部品などの遮蔽物が多い環境下で電波の伝搬を調査し、生産管理システムなどの工場全体の情報を管理する基幹システムと、機械加工現場にある設備や機器との間における大容量データ通信の有効性を実証しています。本実証実験で得られた知見を当社の生産活動に活用するとともに、ローカル5Gの特長を生かしたソリューションを創出します。低圧インバータ分野では、「FRENIC-MEGA G2シリーズ」として「零相リアクトル内蔵タイプ」を開発し発売しました。主にオフィスビル・工場などの熱源・空調・給排水システムをターゲットとし、そこで求められる国土交通省監修の公共建築工事標準仕様書への対応が容易となります。計測・センサ分野では、圧力発信器「FCX-AⅣシリーズ」を開発し発売しました。機能安全規格「IEC61508(SIL2)」を取得し、高い信頼性が要求される石油化学プラントの緊急停止システムなどでも使用できます。また、水素の利用拡大が予想される中、測定媒体中に水素が存在しても測定精度を保つことができる当社独自の表面処理技術を適用した製品もラインアップしました。FAコンポーネント分野では、プログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」を活用して生産工程における製品加工の異常を検知・分析する「異常診断ソリューション」を開発し発売しました。アナリティクス・AIの一つである多変量統計的プロセス管理(MSPC:Multivariate Statistical Process Control)を用いた異常検出技術により、設備の正常時のデータ(診断モデル)と稼働中のデータをリアルタイムで比較し、それらの乖離を検知して異常を知らせます。これにより、次工程への不良品の流出を抑制します。また、高速性とリアルタイム性を備えたオープンネットワークであるEtherCATに対応したプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」の新CPUモジュール「SPH5000EC」を開発し発売しました。本CPUモジュールに、EtherCATを使って「サーボシステムALPHA7」や他社のスレーブ機器を接続して、高速・高精度なモーションシステムを構築できます。さらに、当社が用意したファンクションブロックを組み合わせて、お客様にとって最適なモーションシステムを短期間で構築できます。PCS分野では、カーボンニュートラルの実現に向けて、今後拡大する需給調整市場向けに需要の増加が見込まれる大容量の蓄電池用PCS「PVI1400CJ-3/2600」(2,600kVA)を開発し発売しました。本PCSは、自社製パワー半導体の採用により、高い電力効率98.2%を実現しました。さらに、外部からの指令で瞬時に起動する制御方式の採用により、待機時の電力消費量を97%削減しています。また、既に発売中の太陽光発電用ストリング形PCS(50kWと21kW)においては、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)による高圧系統連系認証を業界で初めて取得しました。太陽光発電設備を送電線につなぐには発電設備設置者と送配電事業者との間での協議が必要ですが、この認証を得ることで、申請から許可までの期間を通常の3~4週間から1週間以内に短縮できます。これらにより、再生可能エネルギーの普及拡大に貢献します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は9,397百万円です。 ■半導体部門産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。産業用RC-IGBTモジュール1,700V/800A DualXTを開発し製品系列に加え、量産を開始しました。さらに大容量系列では、定格1,200V/2,400A、1,700V/2,400Aのサンプル展開を開始しました。RC-IGBT(逆導通IGBT)技術の採用によりパワー密度が更に向上し、同じパッケージのままで電流定格を拡大しました。パワーエレクトロニクス機器の大容量・小型・軽量化に貢献します。第7世代IGBTモジュールは、標準品の系列化が完了し、駆動機能や保護機能を備えたIPM(Intelligent Power Module)の開発を進めています。第7世代IGBT-IPMは、FA、工作機械、空調機器向けに650V/20~250A、1,200V/10~150Aの系列化が完了し量産を開始しました。さらに大容量の650V/300~450A、1,200V/200~300Aはサンプル展開を開始しました。また、ルームエアコンやモータードライブ向けには650V/15~30Aの第3世代小容量IPMを開発しました。これらのIPM製品は、デバイスのプロセス条件を最適化することにより、インバータの発生損失と放射ノイズのトレードオフ特性を改善しました。これにより、省エネルギーとEMC規格対応を実現します。さらに、Si(シリコン)に代わる半導体材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)を使ったSiCモジュール製品の系列化を進めています。第2世代トレンチMOSFETチップを搭載した1,200V/300~600A、1,700V/200~400AのAll-SiCモジュールのサンプル展開を開始しました。SiCチップにより、電力変換装置の更なる電力効率の向上や小型化に貢献します。車載モジュールでは、電気自動車やハイブリッド車の2022年モデル向けに、さらなる低損失を実現したRC-IGBTチップと電力密度をさらに高めた直接水冷型パワーモジュール、及び小型モータ駆動用の小容量インテリジェントパワーモジュール(IPM)を開発し量産を開始しました。これらの製品を通じて、電動車の高効率化と小型軽量化に貢献します。産業用ディスクリート製品では、従来に比べて順方向電圧VFを低減し、サージ電流耐量の指標であるIFSMを高めた第2世代SiC-SBDを開発し系列化を図りました。サーバや通信基地局などの電源向けに、650V/10Aに加え、650V/6A、650V/8Aの量産を開始しました。電源機器の高効率化と信頼性向上に貢献します。車載用ディスクリート製品では、第2世代ワンチップイグナイタを開発しました。従来製品と比べて、基本性能・機能を維持しつつ、車載用途に要求される耐ノイズ性能であるBCI(Bulk Current Injection)耐性を向上させ、より過酷な環境でも使用できるようにしました。IC製品では、LED照明などの電源向けに低THD(全高調波ひずみ)制御回路と起動回路を内蔵した臨界モードPFC(力率改善)制御ICを開発しました。THD制御回路によりPFC回路部の入力電流が低ひずみ化され高調波規格への対応が容易になります。また、起動回路により電源投入時のLED照明の高速起動と待機時のPFC回路の低待機電力化による電源の省エネルギーの両立が可能となります。感光体製品では、オフィス向けA4モノクロプリンタ用有機感光体を開発しました。複数の機能材を組み合わせることで温湿度などの環境変化に対して良好な印字品質を保つとともに、摩耗耐性に優れた樹脂を採用して長寿命化を達成しました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,953百万円です。 ■発電プラント部門再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損を抑制する技術や寿命を拡大する技術を開発しています。また、風力発電の高度な系統連系条件でも安定した電力供給ができる高効率な出力安定化装置や太陽光パネルの出力が変動しても安定した無駄のない電力供給ができるコンパクトな蓄電池併用PCSを開発しています。火力発電分野では、二酸化炭素の排出量を削減するため、蒸気タービンの高効率化の技術を開発しています。また、メンテナンスサービスとして、コロナ禍においてもお客様への対応を可能とするリモート技術や診断時間を短縮する技術を開発しています。当連結会計年度における当部門の研究開発費は2,855百万円です。 ■食品流通部門自販機分野では、スマートフォンで決済可能なキャッシュレス装置を開発しました。当社が開発した自販機用通信端末「MCU」と自販機表面に貼り付けたステッカーなどの二次元コード(QRコード)だけで構成されています。利用者は、スマートフォンの決済アプリケーションを立ち上げて自販機前面のQRコードを読み取り、決済アプリケーション上で商品を選択すると自動的に決済され商品が購入できます。缶・ボトル用自販機から適用を開始し、食品用自販機や物品用自販機に拡大していく予定です。従来に比べて安価に導入できるため、キャッシュレス決済に対応した自販機台数の拡大に貢献します。また、限られたスペースで多くの冷凍食品を販売できる大容量の冷凍自動販売機「FROZEN STATION」を開発し発売しました。標準仕様で7種類、70個の商品を収容できます。さらに、オプション部品を追加すると最大84個の商品を収容できます。また、高断熱機密構造を採用することで、当社類似機種に比べて消費電力量を約20%削減しました。本機に標準搭載する通信端末を用いて、売上や在庫などの販売データを遠隔地からリアルタイムに確認できる「オペレーションシステム」が利用できます。商品補充の頻度を減らし、輸送時のCO2排出量削減に貢献します。通貨機器分野では、釣銭機及びコインメカニズム(硬貨処理装置)が11月1日に発行された新500円硬貨に対応しました。既に市場に設置されている機器も順次適用を進めています。店舗分野では、地球温暖化係数の低い冷媒の採用により環境負荷を低減しながら、省エネルギー性を向上した冷凍機を開発しました。この冷凍機を内蔵したショーケースを発売し、ラインアップを拡大しました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は3,265百万円です。 ■新技術・基盤技術部門カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光発電が電力系統に大量導入されると需給バランスを保つために火力発電が減少します。それに伴い、火力発電の発電機の回転体が持つ慣性の作用が低下し、事故などで需給バランスが崩れたときに系統周波数の維持が困難になります。そこで、本来、慣性の作用を持たない太陽光発電用PCSの制御を工夫して慣性の作用を疑似的に持たせることで系統周波数を維持する機能を開発しています。電流制御型と電圧制御型の2方式の周波数維持機能(疑似慣性制御)をPCSに実装して模擬系統につなげることで系統事故による周波数変動を再現し、各方式の系統周波数を維持する効果を確認できました。さらに、疑似慣性機能のPCSへの搭載に向けて、PCSが持つ電圧安定化などの他の制御機能との両立に向けた検討を完了しました。製鋼プロセスの省エネルギー化のために、電気炉による原料の溶解プロセスにおける電力注入電極の昇降制御の最適化を実現する「ロバスト外乱フィードバック制御技術」を開発しました。この制御技術により溶解時間をこれまでより15%程度短縮して省エネルギーに貢献します。アナリティクス・AIでは、お客様や自社のDXの推進に寄与するAIエンジンを開発しています。AIによる異常診断では、通常、診断結果に至った主な原因が分かりません。そこで、AIに入力されたデータと診断結果の関係を自動で分析することにより、主な原因を抽出する技術を開発し、工場における製造管理・運転管理システム「MainGATE」へ実装を進めています。これらの技術により異常の原因究明のスピードアップに貢献します。北極海航路を利用した船舶の航行が増加する中、国際海事機関(IMO)を中心に国際的な排出規制の検討が始まっています。そこで、道路用集塵機で培った集塵技術を応用して、船舶向けにディーゼルエンジンの排ガスに含まれる微粒子(PM)を効果的に捕集する技術を開発しています。国立研究開発法人 海上技術安全研究所の設備を利用した性能評価により、高い集塵特性が得られることを検証しました。SOxを削減するスクラバー技術や排熱回収技術と組み合わせることで、船舶の排ガスをよりクリーンにするだけでなく、エネルギー利用の効率化と耐用寿命の延伸も期待できます。コンビニエンスストアなどの店内に設置されるショーケースの排水管の詰まりによる漏水や臭いの発生を防止するため、ドレイン水を電気的にアルカリ化して排水することで、排水管の詰まりや臭いの原因となるバイオフィルムの発生を抑制する技術を開発しました。現在、実店舗での検証を進めています。カーボンニュートラルの実現に向けて、工場廃熱の有効利用がこれまで以上に注目されています。自動販売機で培ったヒートポンプ技術を発展させ、工場の生産工程で生じる未利用の低温排熱を活用して高効率で冷水を生成する業界初のエジェクタ式コンプレッサーレス冷却技術の開発に取り組んでいます。また、ウィズコロナ時代の感染症対策とその省エネルギー化に向けて、室内空間の浮遊ウイルス不活化装置を開発しています。トンネル用で実績のある電気集塵の技術を活用したウイルス除去と、深紫外線照射によるウイルスの不活化を組み合わせる方式により、浮遊ウイルス除去性能の規格に基づいた評価で99.99%のウイルス不活化を確認しました。本方式は、一般的な換気による通常のウイルス対策と比べて空調の電気代を大幅に削減できます。本開発の一部は、環境省“革新的な省CO2型感染症対策技術等の実用化加速のための実証事業”により実施しています。 ■その他部門当連結会計年度における当部門の研究開発費は50百万円です。
FY2021|8,132 文字
5【研究開発活動】パワーエレクトロニクス技術やパワー半導体技術のシナジーを生かした強いコンポーネントとシステム並びに要素技術を複合して顧客価値を創出するソリューションを生み出す研究開発に注力しています。メーカーとしてリアルの技術を磨くとともに、最新のデジタル技術を深化させ、アナリティクス・AIの応用拡大を加速しています。クリーンな創エネルギーからエネルギーの安定供給、需要家サイドに至る自動化、省エネ・省力化などに貢献します。当連結会計年度における富士電機の研究開発費は33,562百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,398件です。 ■パワエレシステム エネルギー部門電力流通分野では、経済産業省の「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」の関西電力グループに参加しています。今年度は従来の機能に加え、1分予測値の算出機能追加による予測/実績誤差低減、サイバーセキュリティガイドラインV2.0対応などの機能を増強し、実証事業参加各社との実証において、目標機能、性能が得られることを確認しました。施設・電源システム分野では、大型データセンター向けに、大容量無停電電源装置(UPS)「7500WX」を開発し発売しました。モジュール型構造を採用しており、600kVAのUPSユニットを4台組み合わせて単機容量で最大2,400kVAまで対応します。さらに、業界最小レベルの設置面積により、サーバなどのIT機器の設置面積を最大化します。また、UPS各機の負荷率をもとに自動で給電調整する最適負荷運転モードによりシステム全体の効率が向上し、データセンターの省エネに貢献します。器具分野では、スプリング端子機器「F-QuiQ」シリーズとして「AR22・DR22、AR30・DR30押しボタンスイッチ」に続き「AM22・DM22、AG28・DG28押しボタンスイッチ」と「AR22/AR30非常停止押しボタンスイッチ」を開発し発売しました。端子ねじを使わずに、より線の先端に取り付けた棒状のフェルール端子を差し込むだけで固定できる「プッシュイン方式」を採用しているので、配線用の工具を使わずに誰でも簡単にばらつきなく確実に配線できます。振動や長期使用によって緩むおそれがある固定ねじがないので、信頼性が向上します。配線工数の削減と作業品質の安定化により、装置や制御盤などの生産効率の向上に大きく貢献します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は6,812百万円です。 ■パワエレシステム インダストリー部門低圧インバータ分野では、汎用インバータ「FRENIC-MEGA(G2)シリーズ」を開発し発売しました。業界最高クラスとなる電流応答1,000Hzと速度応答200Hz(当社従来比約2倍)の実現により、工作機械などの加工品質や速度の向上に貢献します。内蔵するIGBTモジュールの異常兆候をとらえて警報を出す寿命予測機能と、冷却能力の低下兆候を検知する冷却能力低下警報機能を追加しました。装置の停止を未然に防ぐことが可能です。制動エネルギーを電源側に回生するPWMコンバータ「FRENIC-RHCシリーズ」を開発し発売しました。様々な通信プロトコルに対応したオプションカードを揃えています。標準装備したトレースバック機能によりアラーム発生時に保持したデータを使って容易に故障解析ができます。また、最大4台まで並列接続することにより2,800kWまで容量を拡大できます。プラント設備や大容量クレーン、サーボプレスなどの省エネルギー化に貢献します。小容量電源分野では、制御盤用のAC/DC電源を開発しています。AC100V~240Vの入力電圧に対応し、出力電圧24Vで出力電流10A、20A、40Aの3タイプに対してそれぞれ標準モデルとメンテナンスフリーモデルをラインアップしました。ラックマウントや低背構造、コネクタ接続により制御盤内の電源や配線を従来よりも最大50%省スペース化したことで、より多くの制御機器が設置できます。また、電源の信頼性が要求されるシステムに対応できるよう二重化機能を内蔵しています。2台の電源を並列接続するだけで簡単に冗長運転が可能になり、1台の電源が故障しても制御盤の稼働が継続できます。伸長する半導体製造装置向けに3相入出力の常時商用型UPSを開発しました。出力容量は200V、7.9kVAで、IP22に準拠した筐体により半導体製造装置内で発生する水の飛散に対して追加の対策なしで設置できます。装置寿命は10年で交換が必要な部品はバッテリーだけであるためメンテナンスの手間を低減します。また、ログ機能や停電発生時の入力電源の波形記録機能などに加え、強化した通信機能によりUPSの状態を監視できます。FAコンポーネント分野では、高速・高精度な制御が求められる包装機や印刷機、半導体製造装置などのモーションコントロールシステム向けに、多軸同期制御を実現するプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」の新CPUモジュール「SPH5000M」を開発し発売しました。マルチコアアーキテクチャを採用し、演算処理能力を高めることにより、同一制御周期で同期できる軸(サーボモータ)数を当社従来機種に対して倍増させました。お客様の設備の性能向上に貢献します。さらに、お客様の基幹システムやサーバなどと接続するEthernetポートの伝送速度を1Gbpsに高めることで設備のIoT化を支援し、設備の稼働データ分析や、遠隔地からのリモート監視・制御などを実現します。近年の生産設備におけるエッジコンピューティングに対する強いニーズに応えることができる新しいプログラマブル表示器「MONITOUCH X Series」を開発し発売しました。Windowsを搭載することにより、プログラマブル表示器の機能に加えて、情報処理端末で行っていた多くの作業をこのプログラマブル表示器1台で行えます。また、日本国内ならびに欧州、中国、東南アジアなどの生産現場で使用されている通信規格に幅広く対応しています。FAシステム分野では、組立加工装置向けのデータ収集システム「OnePackEdge」の追加機能を開発しリリースしました。収集したデータを基にして、装置の異常兆候を検知するための検出モデルを自動的に作成する機能によって、装置の運転パターンが変更されても随時異常兆候を検知できるようになりました。生産ラインの安定稼働に貢献します。高圧インバータやパワーコンディショナ(PCS)分野では、既存製品の部分更新用高圧インバータ「FRENIC4600FM4RF」を開発し発売しました。既存機種「FRENIC4600FM4」のインバータユニットや制御装置などの一部電気部品の部分更新が可能なため、設備の停止期間が短縮できます。大容量(2,500kVA)太陽光発電用PCS「PVI1500CJ-3/2500」を開発し発売しました。日照の少ない時間帯でも発電量を確保するため、PCSの出力容量を超えた太陽光パネルを設置する過積載が一般的になってきています。PCSの定格出力容量に対して設置する太陽光パネル容量の比として定義される過積載率の限度を従来の150%から200%に増やし、さらに低出力時の変換効率を最大3.5ポイント改善することで、さらなる発電量の向上に貢献します。ストリング形太陽光発電用PCS(21kVA)「PIS-21/210-J」を開発し発売しました。従来品は出力電圧が500Vであるため、新たに設けた変圧器を介して高圧系統に接続する必要がありましたが、本製品の出力電圧は200Vであるため、構内の200V電源系統に直接接続できます。また、BCP対策として、自立運転機能(3kVA―AC105V出力)を追加しました。駆動制御システム分野では、鉄鋼プラントをはじめとする素材産業向けに、高い安全性を規定した新JISに準拠し、保護機能や運転時の監視機能を充実させた低圧インバータ「FRENIC4000VM6」を開発し発売しました。本機種と従来機種「FRENIC4000VM5R」のユニットに互換性を持たせたため、従来機種の部分更新が可能です。高速大容量の専用通信「E-SXバス」を新たに搭載したことで、コントローラと接続できるインバータの台数が従来の8倍に増加し、大規模プラントのシステム構築を容易にします。さらに、「XCS3000TypeE」コントローラと組み合わせることで、ループバック制御により通信線の1か所が断線しても運転継続ができるため、設備の信頼性が向上し、安定稼働を実現します。計測制御システム分野では、産業プラント向け監視制御システムの構成機器であるI/O装置(高信頼I/O)を開発し発売しました。高信頼I/Oは、高密度実装により盤1面あたりのI/Oモジュールの最大搭載数を従来より56%増やしました。これにより、盤の設置面数が3面必要な場合には2面に削減(33%削減)でき、盤の省スペース化に貢献します。また、二重化の対象となるペアのI/Oモジュールを別々のベースボード(ノード)に実装するノード単位二重化を行いました。この構成にすると、I/Oモジュールが故障した場合はノードの電源を切断してI/Oモジュールを交換できるので、システム運用の安全性と保守性が向上します。鉄道車両分野では、2020年7月に営業運転を開始した東海旅客鉄道株式会社のN700S系新幹線電車向けに、主回路システムとフルアクティブダンパ駆動装置を開発し納入しています。主回路システムは、当社製SiCパワー半導体モジュールを搭載した主変換装置、主電動機と主変圧器からなり、小型・軽量化により“さまざまな編成構成に対応できる標準車両”の実現と省エネに貢献しています。また、フルアクティブダンパ駆動装置は、インバータと小型モータからなり、フルアクティブ制振制御システムに組み込まれて乗り心地の向上に貢献しています。船舶交通システム分野では、排ガス浄化システム(EGCS)のサービス向上のため衛星通信を利用した「船舶IoTシステム」を開発し発売しました。稼働データ(計測値、状態・アラーム情報)を24時間365日、30分周期で自動収集し、クラウドサーバーに蓄積することで、常時監視・情報共有ができます。また、アラームが発生するとガイダンスを自動配信してEGCSに関する経験・知識が少ない船員によるトラブルシューティングに貢献します。放射線機器・システム分野では、海外の原子力関連施設における個人線量管理に用いる電子式個人線量計として、従来のγ線測定用のNRF50に中性子線測定機能を加えたNRF51とβ線測定機能を加えたNRF54を開発し発売しました。大型ドットディスプレイにより視認性が向上しました。標準装備の無線モジュールと汎用通信モジュールにより900MHz無線やWi‐Fi、赤外線通信、USB、Bluetoothなどの多くの通信手段が利用できます。当連結会計年度における当部門の研究開発費は8,941百万円です。 ■電子デバイス部門半導体デバイス分野の産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。電鉄向けに大容量IGBTモジュール1,700V/1,000Aの「HPnC」を開発し量産を開始しました。内部構造を最適化することで、高速スイッチングの妨げとなる内部インダクタンスを低減した新たなパッケージを開発し、さらなる低損失化と小型・軽量化を実現しました。これにより、車両機器のエネルギー消費量の低減と小型・軽量化に貢献します。FA、工作機械、空調機器向けに第7世代「Xシリーズ」素子を搭載した650V/20A~250A、1,200V/10A~150Aの「XシリーズIGBT-IPM」を開発し、量産を開始しました。第7世代チップとパッケージ技術に加え、制御回路の改良により、さらなる低損失化と小型化を実現しました。また、従来の保護機能に加え、インバータをはじめとする電力変換装置がIPMの過熱異常により突然停止する前に、出力を抑制するなどの対応ができるようにアラーム信号を出力する予防保全機能を世界で初めて搭載しました。これらの技術や機能により、電力変換装置の小型化や高効率化、高信頼性化を可能にします。さらに、Si(シリコン)に代わる半導体材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)を使ったSiCモジュール製品の系列化を進めています。電鉄向けに低損失のSiC-SBDと第7世代IGBTチップを組み合わせた3,300V/1,800Aハイブリットモジュールを開発し量産を開始しました。また、医療用電源などの高周波用途向けに高速スイッチング特性を持つSi-IGBTを組み合わせた1,200V/300A、450A高速ハイブリッドモジュールを開発しました。SiCにより、電力変換装置の更なる電力効率の向上や小型化に貢献します。車載モジュールでは、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の2020年モデル向けに、第4世代直接水冷技術などを採用し、従来よりも電力密度を高めた直接水冷型パワーモジュールを開発し量産を開始しました。さらに、小型モータ駆動用の小容量IPM、DC/DCコンバータ用モジュールなど小容量モジュールの系列を拡大しました。これらの製品を通じて、EVやHEVシステム全体の小型軽量化や高効率化に貢献します。ディスクリート製品では、最新の低損失設計となる第7世代IGBT技術をディスクリート用に最適化した1,200Vの低損失ディスクリートIGBT「XSシリーズ」の75A品を開発し系列に加えました。オン電圧とスイッチング損失を同時に低減したことで、小型UPSや太陽光発電用PCS、サーバ、EV充電器など各種機器の損失低減、高効率化に貢献します。IC製品では、LED照明や液晶テレビなどの電源向けに高周波バースト制御、共振電流位相比制御などの機能を備えたLLC電流共振ICを開発しました。スイッチング周波数に下限を設けた高周波バースト制御の採用により、LLC電源の実際の使用において大半を占める軽負荷領域の変換効率が向上したので電源の省エネが図れます。また、出力電圧のリップルが抑制されるため、負荷の誤動作を防止します。さらに、新たに共振電流位相比制御機能を内蔵したことにより、安定動作のために従来必要であった位相補償用の外付け回路が不要になり、電源部品点数が削減できます。感光体製品では、A0図面に対応できる大判ワイドフォーマット有機感光体を開発し発売しました。周辺部材との表面摩擦力を低減する潤滑性樹脂の採用や機能材比率の最適化により、長期にわたり安定した印字濃度を実現しました。ディスク媒体分野では、データセンターなどで活用されているニアライン用ハードディスクドライブ18TB機種向け磁気記録媒体(3.5インチ、ガラス基板、2TB/枚)を開発し量産を開始しました。磁性設計およびHDI(ヘッドディスクインタフェース)に新規技術を採用することで、高記録密度と高信頼性を確保しました。これらによりビット単価低減に貢献します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,625百万円です。 ■食品流通部門自販機分野では、新型コロナウイルス感染症の拡大により店舗の時短営業が常態化し、営業時間外における商品販売のニーズが高まる中、設置面積を従来比で2割削減し、多様な形状の商品を自在にディスプレイできる汎用物品自販機「マルチ君」を開発し発売しました。気密・断熱性に優れる飲料自販機の筐体を適用し、温度管理が難しい加工食品やチルドなどを販売する自販機としては、業界で初めて屋外に設置できるようにしました。小規模店舗でも設置しやすく、営業時間外でも食品や飲料、衛生用品などを冷蔵または常温で販売できます。新型コロナウイルス感染症が拡大する中、マスクなどの衛生用品が手軽に入手できる自動販売機として「マスク自販機」も開発し販売しました。手が触れる部分に抗菌処理を施し衛生面に配慮しています。加えて、非接触で手指を消毒できる大容量自動手指消毒機を開発し発売しました。一回の消毒液の補充で手指の消毒が約2,000回可能です。東南アジア向けに、キャッシュレス決済サービスに対応し、スマートフォンによるQRコード決済ができる缶・ペットボトル自販機および大型グラスフロント自販機を開発し発売しました。大型グラスフロント自販機は、商品の収容数を15%増やしながら、消費電力量を20%削減しています。店舗流通分野では、ショーケースの系列を拡大し量産を開始しました。また、冷蔵ユニットを内蔵したドリンクケースを開発し発売しました。いずれも省エネ性を向上させるとともに地球温暖化係数が低いグリーン冷媒を採用し環境負荷を低減します。通貨機器分野では、小型店舗の省力化をサポートする小型釣銭機を開発しています。現行の釣銭機と比べて約1/5の占有面積で設置できます。参考出品した展示会では、好評を得ました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は4,150百万円です。 ■発電プラント部門火力・地熱などの発電プラント分野では、発電設備のメンテナンスサービスにおける診断技術の高度化と多様化、地熱発電向け蒸気タービンにおけるスケール抑制や腐食対策技術、高効率化の技術などを開発しています。再生可能エネルギー分野では、風力発電の系統連系でも安定した電力供給ができる高効率な出力安定化装置、太陽光パネルの出力が変動しても安定した電力供給ができるコンパクトな蓄電池併用PCSを開発しています。当連結会計年度における当部門の研究開発費は3,007百万円です。 ■新技術・基盤技術部門電力系統の安定化技術では、系統の周波数を維持する機能を開発しています。今後のCO2削減目標を達成するためには太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの導入拡大が必須です。火力発電などで従来から用いられている発電機は、電力の需給バランスが崩れても回転体のもつ慣性の作用により系統周波数の変動を緩和する機能を持っています。しかし、そのような機能がない太陽光発電設備が大量導入されると周波数の維持が困難になります。そこで、太陽光発電用PCSの制御を工夫し、周波数を維持する機能を開発しています。周波数維持機能(疑似慣性制御)を太陽光発電用PCSに実装して正常に動作することを検証しました。アナリティクス・AIの技術では、製造現場のデジタル化を進めるIoTプラットフォームの拡充に取り組んでいます。独自の構造化Deep Learningなどに注力して、説明できるAIを実現する技術を開発しています。AIに学習させる重要データを膨大なデータから選び出すことで、AIが最適なデータを学習していることを説明する技術や、外観検査用の画像AIにおいて画像の中で注目した箇所を可視化して異常の判断根拠を説明する技術を開発しました。生産現場の画像検査装置で検証を開始しました。また、エッジ機器へ搭載可能なアナリティクス・AIを開発し、実機による性能検証を開始しました。計算科学技術では、文部科学省の「スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム」に参加しています。SiCデバイスの特性を劣化させる欠陥がデバイスの製造工程でどのように発生するかを解析するために、酸化工程を模擬した大規模な分子動力学計算や富岳を用いた大規模な第一原理計算に取組んでいます。 ■その他部門当連結会計年度における当部門の研究開発費は24百万円です。
FY2020|7,145 文字
5【研究開発活動】持続的成長企業としての基盤を確立するため、パワーエレクトロニクス技術やパワー半導体技術のシナジーを生かした強いコンポーネントとシステム並びに要素技術を複合して顧客価値を創出するソリューションを生み出す研究開発に注力しています。事業戦略に沿った新製品の開発や海外向け商材開発の現地化、技術マーケティングを活用したテーマ探索の強化、開発の生産性向上に取り組んでいます。当連結会計年度における富士電機の研究開発費は34,457百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は12,956件です。 ■パワエレシステム エネルギー部門電力流通分野では、経済産業省の「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」(2016年度~2020年度)の関西VPPプロジェクトに参加しています。需要家向け蓄電池システムの実証では、リアルタイムのフィードバック制御機能追加、サイバーセキュリティガイドラインV1.2対応、および、周波数制御機能の実装を行い、実証事業参加各社と試験を行い、目標機能や性能が得られたことを確認し、成果報告書としてまとめました。また、変電所におけるプロセスバスの適用に向け、「変電所保護制御システムのフルデジタル化に向けた開発研究」(2018年度~2019年度)を中部電力株式会社と共同で実施しています。IEC61850準拠の保護制御ユニットIED(Intelligent Electronic Device)およびデータ収集ユニットMU(Merging Unit)の試作と評価を完了し、量産化に向けた変電所全体のシステム構成と機能実装を検討しています。変電分野では、海外向けに50MVAクラスの中容量変圧器を開発しました。絶縁設計の合理化、節油構造の徹底、巻線冷却の高効率化等を図り、世界最小クラスの体格を実現しました。施設・電源システム分野では、大手クラウドプロバイダーの多い北米やアジアを中心に建設が増大しているハイパースケールデータセンター(超大型)向けに、大容量無停電電源装置(UPS)「7400WX-T3U」を開発し発売しました。本製品はモジュール型構造を採用し、1台330kVAのUPSユニットを4台組み合わせて単機容量で最大1,000kVAまで対応することができ、さらに、8機の並列運転が可能であるため最大8,000kVAの大規模システムを構築できます。また、独自開発した逆阻止IGBT(RB-IGBT)に加え、SiCパワーデバイスをUPS内の回路に採用し、業界最高レベルの97.4%の装置変換効率を実現し、負荷率25%においても96%以上の装置変換効率を達成しました。さらに本製品の最適負荷運転モードは自動でUPS各機の負荷率を判別し給電調整を行い、システム全体の効率改善に寄与し、データセンターの大容量化と省エネのニーズに応えます。当連結会計年度における当部門の研究開発費は7,088百万円です。 ■パワエレシステム インダストリー部門低圧インバータ分野では、耐環境インバータ「FRENIC-eFIT」シリーズを開発し発売しました。本製品はSiCパワーデバイスを採用することにより全閉自冷構造を実現しています。腐食性ガスが発生する化学系プラント、塩害が懸念される沿岸部の工場、風雨に曝される屋外設備等にインバータ本体をそのまま設置して、10年間のメンテナンスフリーが可能です。本インバータは設置・運用コストの削減に貢献いたします。小容量電源分野では、GXシリーズ用ネットワークカード「Web/SNMPカードⅡ」を開発し発売しました。従来よりも通信セキュリティーを強化し、業界初となるネットワーク規格GbE(ギガビットイーサネット)にも対応し、仮想化システムのシャットダウン処理速度を従来比30倍に高速化しました。また、IPアドレス自動設定機能や瞬低検出機能、Auto-MDIX機能を追加し、利便性の更なる向上を図りました。また、産業機器向けAC/DC電源「FIP06シリーズ」を開発し発売しました。AC100V~240Vの入力電圧に対応します。12Vと24Vの出力ブロック基板を組み合わせて、お客様が希望する出力数と出力電圧を自由に選択できます。オプションの外付けバッテリによって、停電時に動作継続が必要な装置にも対応します。FAコンポーネント分野では、発売済のサーボシステムALPHA7シリーズの汎用タイプ(パルス/アナログ/位置決め/Modbus)、SXバスタイプ、EtherCAT通信タイプの容量を5kWまで拡大し、発売しました。印刷機械、巻取り装置、搬送装置などの大型の機械装置の更なる高精度化・高機能化・生産性向上に貢献します。また、主に国内のインフラ設備向けに、システムを二重化することで信頼性を高めたコントローラ「MICREX-SX SPH5000H」を開発し発売しました。CPUとCPUを上位システムにつなぐ制御ネットワークを二重化しました。さらに、CPUと入出力ユニットをつなぐI/Oネットワークは二重化かつループ化することで、インフラ設備の安定稼働に貢献します。計測機器・センサ分野では、クランプオン式で飽和蒸気の流量計測ができる蒸気用超音波流量計を世界で初めて開発し発売しました。この流量計は、配管工事が不要であるため蒸気ラインを止めずに設置でき、圧力損失もありません。飽和蒸気流量の見える化により、効率的な利用と省エネに貢献します。また、船舶スクラバ用レーザ方式ガス分析計を開発し発売しました。盤体への収納を不要にして世界最小サイズを実現しました。採取部、検出部と制御部の各ユニットは、個別に壁面や床に設置できるので、制約の多い既存船でも容易に設置できます。また、安定性に優れるレーザ方式を採用したことから、交換部品が少なく、さらに、校正頻度を下げることができるため、ランニングコストは従来に比べ50%以下になります。なお、船舶向けSOxスクラバは、より大容量の機種を開発し系列を拡大しました。独自のサイクロン技術によって、小型化と排ガス浄化(脱硫)性能を両立しています。この系列の拡大により、大型船(エンジン出力16~24MW)にも対応できるようになりました。FAシステム分野では、大連富士氷山スマート制御システム有限公司(DFBCS)と共同で、産業分野の冷却システム向けのインテリジェントコントローラを開発しました。高性能と低コストを同時に実現したエッジコントローラであり、エネルギー運用の最適化手法を適用してエネルギー消費効率を最大化します。中国向けに対応した物流センター実行管理システムWES(Warehouse Execution System)を、DFBCSのシステム事業における物流分野への参入を狙いとして開発しました。これにより現場作業の省人化と効率化が行えます。また、IoT(Internet of Things)による製造業のデジタル化を推進するため、現場型診断装置「SignAiEdge」を開発し発売しました。タッチオペレーションが可能な表示器一体型のこのエッジコントローラは、富士電機のアナリティクス・AI(MSPC)のほかに、現場情報の解析・診断に必要な機能を全て搭載しています。現場で誰にでも使いやすいこの診断装置を使って、これまで見えなかった問題点を可視化し、生産性の改善に貢献します。駆動制御システム分野では、主に駆動制御を行う電機高速コントローラ「MICREX-View XX XCS-3000 Type E」を開発し発売しました。伝送容量の増大と業界最速の高速データ更新(最速0.5ms)により、鉄鋼/非鉄プラントを始めとするプラント設備で性能を発揮します。また、コントローラ間ネットワークおよびI/O機器間ネットワークをそれぞれループ接続することで、ネットワークの高信頼化を図り、産業プラントの安定操業に貢献します。工業電熱分野では、国内外の輸送用機器や工作機械等の鋳物部品の生産向けに高効率高周波誘導炉「F-MELT100G」を開発し発売しました。本製品は3次元磁界解析シミュレーションを活用し、炉体及び電源構造を大幅に見直して電力原単位の削減や小型化を実現しています。環境対策が課題の鋳造工程の省エネに貢献します。社会ソリューション分野では、オフィスビル向けに建物の挙動の三次元計測とそのデータの収集を行う「建物構造ヘルスモニタリングシステム」を開発し発売しました。地震発生時に建物の被災度を判定する別のシステムと連携することで、建物の安全性や損傷状況が速やかに判定できます。避難指示や事業継続の判断を支援してオフィスビル利用者に安全安心を提供します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は8,712百万円です。 ■電子デバイス部門パワー半導体分野では、低損失及び高温動作保証を可能とした最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。第7世代IGBTモジュールは、1700V,1200V,650Vの標準製品の系列化を完了しました。また、大容量IGBTモジュールとしてPrimePACKTM製品の系列化を進め、風力発電や太陽光発電などの新エネルギー分野の装置への採用が進んでいます。注)PrimePACKTMはInfineon Technologies社の登録商標です。第7世代IGBT製品では、駆動機能や保護機能を備えたIPM(Intelligent Power Module)の系列化を進めています。最初の製品として定格650V/75A品を開発し、電力変換装置の小型化・高効率化・高信頼性化に貢献します。また、産業用途にRC−IGBT(逆導通IGBT)チップを開発し、産業用RC-IGBTモジュール1200V/50Aと1000Aを系列に加えました。RC−IGBTの採用によりパワー密度が向上し、チップ面積が大幅に縮小できます。これによりIGBTモジュールが小型化し、パワーエレクトロニクス装置の小型・軽量化に貢献します。さらに、シリコンに代わる半導体材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)を使った産業向けSiCモジュール製品の系列化を進めています。電鉄向けに低損失のSiC-SBDと第7世代IGBTを組み合わせた3300V/1200A,1800Aハイブリッドモジュールを開発しました。SiCチップの採用により、パワーエレクトロニクス装置の更なる電力効率の向上や小型化に貢献します。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)で使用される車載用直接水冷型パワーモジュールの供給先の拡大と新規のスペックインを継続しています。また、2020年モデル向けに、従来よりもオン電圧とスイッチング損失を低減したRC−IGBTを開発し量産を開始しました。EVやHEVシステム全体の小型軽量化や高効率化に貢献します。産業用ディスクリート製品では、最新の低損失設計となる第7世代IGBT技術をディスクリート用に最適化した1,200Vの低損失ディスクリートIGBT XSシリーズの75A品を開発し系列に加えました。オン電圧を下げつつ、定常損失とスイッチング損失を同時に低減したので、小型UPSやソーラPCS、サーバとEV充電器など各種機器の損失低減、高効率化に貢献します。また、従来30~40Aクラスを並列接続で使用していた部分を75A品に置き換えることでシステムが小型になります。車載向けディスクリート製品では、測定圧力レンジが350kPaの第6世代圧力センサを開発しました。これにより系列を拡大し、搭載可能な車種が増えました。エンジンの過給圧制御に使用して燃費の改善に貢献します。感光体分野では、最新のオフィス向けカラー複写機用感光体を開発し発売しました。高精度素管の採用により高い色再現性を確保すると共に、摩耗耐性を持つ樹脂の採用により周辺部材からの機械的ストレス影響を抑制し、長寿命を実現しました。これにより長期間にわたり高い印字品質の維持が可能となります。ディスク媒体部門では、データセンター等で活用されているニアライン用ハードディスクドライブ16TB機種用媒体(3.5インチ、ガラス基板、1.78TB/枚)を開発しました。磁性およびHDI(ヘッド・ディスクインタフェース)に新規技術を採用することで、高記録密度と高い信頼性を確保しています。本製品は第4四半期に生産を開始し、更なる改善を継続しています。当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,871百万円です。 ■食品流通部門自販機分野では、レギュラーコーヒーのニーズが高まる中、シロップレス・コンパクトカップ自販機「FXA2」を開発し発売しました。前面扉の一部をシースルー化し調理シーンが見える斬新なデザインを採用しました。また、利用者の操作性に配慮し、商品ラベルや選択ボタンをレイアウトしました。更に自販機用通信モジュールを搭載し、自販機のIoT化を推進しています。これによりマーケティングデータの収集やオペレーション効率が向上します。海外向けでは、東南アジアを中心に多く流通している背の高いスリーク缶や600mlペットボトルなどの大型商品に対応した缶・ペット自販機のシリーズ化を図りました。東南アジアでニーズの高い小容量のガラス瓶(ドリンク瓶)飲料を全コラムで販売できる販売機構を開発し、この機構を搭載したドリンク瓶販売機を発売しました。また、国内と同様に前面扉の一部をシースルー化し調理シーンが見える小型のコンパクトカップ機を開発し発売しました。フード機器分野では、病院や介護施設などで人手不足が進む中、嚥下(えんげ)障害のある人が安心して飲めるお茶を提供する「とろみ給茶機」を開発し、量産を開始しました。障害のレベルに応じて、とろみ濃度(薄い・中間・濃い)が選択できます。車椅子の利用者が操作しやすいようにユニバーサルデザインを採用しています。金銭分野では、検銭レベルを向上するとともに、保守作業時に2次元コードを読み取って簡単にオンラインマニュアルにアクセスできる新コインメックを開発し発売しました。また、2020年2月開催のスーパーマーケット・トレードショー(SMTショー)に、小型店舗の省力化をサポートする「小型釣銭機(ECS-Light)」を参考出品しました。現行の釣銭機と比べて約1/5の占有面積で設置できます。店舗分野では、SMTショーにおいてコンビニの24時間営業問題などを解決する提案として「2WAY販売機」を参考出品しました。自動化技術を活用し夜間は自動販売機として無人販売、昼間はショーケースとして有人販売を一台で実現します。また、人手不足に対しては、商品の陳列作業を軽減する電動可動棚や新スライド棚を提案しました。このように、小売業界の課題を解決する商品を開発しています。当連結会計年度における当部門の研究開発費は4,395百万円です。 ■発電プラント部門火力発電分野では、二酸化炭素の排出量を削減するため、蒸気タービンの高効率化の技術を継続的に開発しています。また、運転中の発電機から発生するオゾンとNOxガスを測定して絶縁劣化が手軽に診断できる技術を開発しました。これにより、メンテなどの適切な提案ができます。再生可能エネルギー分野では、地熱蒸気から析出したスケールの蒸気タービンへの付着を抑制するコーティング技術を開発しています。この技術が完成すると、地熱発電の発電能力が長期間維持できます。太陽光発電では、現状で世界最高レベルの制御品質が求められている北海道電力の連系要件(蓄電池を併設して太陽光発電所との合成出力の変動を1%/分以下に緩和すること)に対応した蓄電池併設型メガソーラー(すずらん釧路町太陽光発電所、59.4MW)のEPC(設計・調達・施工)を請け負い、商業運転を開始しました。また、風力発電における送電系統のシミュレーションを行う仕組みを構築しました。これにより、発電所と連系点間の長距離化に伴う送電問題を解決し、設備要件が検証できます。当連結会計年度における当部門の研究開発費は3,294百万円です。 ■新技術・基盤技術部門プラントモデルを用いて将来の挙動を予測しながら、高精度な制御ができるモデル予測制御(MPC)を当社のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に搭載できる技術を開発しました。以前は高速な計算機が必要でしたが、数式処理技術を応用して事前に解析することで、PLCで動作できるようにしました。これにより、PID制御では考慮が難しい外乱の影響を受けにくい安定した制御を実現できます。今後、化学プラントを初め様々な対象への適用を進めていく予定です。電力の安定供給に不可欠なガス絶縁開閉装置(GIS)などの高電圧装置の信頼性の向上や小型化を実現する高絶縁性の材料の開発をNEDOの助成を受けて行っています。絶縁電界にあわせて絶縁材料の誘電率を最適に制御する材料技術(誘電率傾斜技術)を開発し、実サイズのモデルを使い、従来よりも30%高い絶縁特性を持つことを実証しました。今後は、長期絶縁寿命特性の評価や量産技術の開発を行っていきます。 ■その他部門当連結会計年度における当部門の研究開発費は94百万円です。
FY2019|6,378 文字
5【研究開発活動】パワーエレクトロニクス技術やパワー半導体技術を中心に強いコンポーネントとシステムを創出する研究開発及び、要素技術の複合により顧客価値を生むソリューションの研究開発に注力しています。研究開発を加速するため研究開発体制を整備し、製品開発に係わる機能は各事業部門が担い、全社の研究開発部門は技術マーケティング・先端研究・基盤研究に取り組んでいます。当連結会計年度における富士電機の研究開発費は33,669百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は12,574件です。 ■パワエレシステム・エネルギーソリューション部門電力流通分野では、経済産業省の「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」(2016年度~2020年度)に参加しています。株式会社日本ベネックス、住友商事株式会社と電気自動車(EV)のリユース蓄電池を用いたVPP対応需要家向蓄電池システムを共同開発し発売しました。本システムの蓄電制御は、当社の充放電制御技術をベースにVPP実証事業に対応した標準システムをパッケージ化し、ピークカット、自立運転、VPP連携機能などを備えています。新しい高信頼性プロセスバスの実現とケーブル布設工事の省力化、さらに、ディジタル化により得られる多くの情報を活用できるようにするため、中部電力株式会社との共同研究「変電所保護制御システムのフルディジタル化に向けた開発研究」(2018年度~2019年度)を行っています。プロセスバスを使った変電所内の電力用設備の接続について、国際規格IEC 61850によって規定されています。2018年度は、新たなプロセスバス構成手法を検討し、IEC 61850準拠の保護制御ユニットIED(Intelligent Electronic Device)と主回路機器近傍に設置してデータを収集するMU(Merging Unit)を試作し評価しました。器具分野では、配線用遮断器・漏電遮断器、サーキットプロテクタ、電磁接触器・電磁開閉器、リレー・タイマ用ソケット、マニュアルモータスタータ(MMS)のスプリング端子機器「F-QuiQ」シリーズを開発し発売しました。配線工程からねじ締めをなくし、フェルール端子付きの電線を挿入するだけで、誰でもスピーディに均質な配線が可能となります。配線工数の削減と作業品質の安定化により、装置や制御盤等の生産効率の向上に大きく寄与します。低圧遮断器では、電子式漏電遮断器「EXシリーズ」を開発し発売しました。基本機能タイプは、定格電流及び過負荷・短絡時の動作電流値や時間の設定が可能で予備回路や保護協調が必要な回路に最適です。高機能タイプは、基本機能に加えて計測や通信、プレアラーム機能を持っているため、給電を優先して設備を継続的に運転したい回路に最適です。また、エネルギー監視システムでは、高圧受配電用ディジタル多機能リレー「F-MPC60B」をフルモデルチェンジした「F-MPC60G」シリーズを開発し発売しました。従来品との完全互換性はもちろん、操作・機能・視認性をさらに向上し、最新のJEC/IEC規格に対応しています。当連結会計年度における当部門の研究開発費は5,560百万円です。 ■パワエレシステム・インダストリーソリューション部門FAコンポーネント分野では、中国・アジア市場で最も需要の高い7型ワイドと10.2型ワイドのHMI(Human Machine Interface)「MONITOUCH TS1000 Smart series」を開発し発売しました。本製品は、国際規格などであるCE、KC、UL、cULを取得すると共に、VNC(Virtual Network Computing)サーバの機能を実装しました。これにより、パソコンやタブレット端末、スマートフォンからの遠隔監視・操作ができるようになりました。また、中国・アジア市場向けに、プログラマブルコントローラの小型機種である「MICREX-SX SPF Plus」を開発し発売しました。本製品は、高度なモーション制御によって機械装置の高機能化・省力化に貢献します。サーボシステム「ALPHA7シリーズ」において、産業用オープンネットワークであるEtherCATに対応した製品を開発しラインアップに加えました。工作機や印刷機、電子機器組立装置、半導体製造装置などのさまざまな機械装置の高速かつ高度なモーション制御を行い、高機能化・省力化・コスト削減に貢献します。FAシステム分野では、データ収集から解析までを可能にするシステムソリューション「OnePackEdge」を開発し発売しました。本製品は、ワンパッケージで、生産現場における品質向上や業務効率の改善を支援します。日本国内で実績を積んだエネルギー分析システム「EnergyGATE」を基に、エンジニアリング機能を強化したエネルギー需給最適制御の中国向け対応版を開発しました。このシステムを適用したモデル工場と位置付けた大連冷凍機股份有限公司の大連新工場に納入しました。中国のお客様に富士電機のEMSを訴求し、ビジネスの拡大を図ります。小容量電源分野では、仮想化サーバーシステムシャットダウンソフトウェア「Netshut VM Appliance」を開発し発売しました。このソフトウェアを当社のミニUPSに適用すると、サーバ仮想化ソフトウェアVMware ESXiを使って構築した仮想化システムが複雑な動作をしていても簡単・安全にシャットダウンと再起動ができ、システムの信頼性が向上します。船舶の排ガス中の硫黄酸化物(SOx)を低減するスクラバを搭載した「船舶用排ガス浄化システム」を開発し出荷しました。船舶からのSOx排出量について国際海事機関(IMO)が定める基準の2020年からの規制強化に対応します。太陽光発電向けのパワーコンディショナ、「PIS-50/500」と「PVI1000MJ-3/1000」を開発しました。PIS-50/500は、山岳地帯や工場建屋の屋根に配置された太陽光発電システムにおいて太陽光パネルを12kW分の約30枚ごとに個別に制御できる50kW機です。一方、PVI1000MJ-3/1000は、太陽光発電の変動補償やピークシフトに必要な蓄電池を併設する太陽光発電所に適したマルチソースタイプ(太陽電池と蓄電池を直流で接続可能)の1MW機です。この2機種により、今まで太陽光発電の導入が困難であった事案にも対応が可能になります。計測制御システム分野では、情報・プロセス制御システム「MICREX-NX/V9.0」を開発し発売しました。本製品は従来機能に加え、最新インタフェースへの対応(Windows 10)およびIoTに対応するためWeb機能を強化しました。これにより、システムのセキュリティが強化され、オペレーターの操作性が大幅に改善します。鉄道車両分野では、東日本旅客鉄道株式会社の山手線E235系通勤型車両向けに開発したラック・アンド・ピニオン方式のドア駆動装置を継続して納入しています。2017年5月の量産車の営業運転開始から順調に営業運転に投入され、2020年春頃にかけて順次投入される予定です。さらに同ドア駆動装置を、東京急行電鉄株式会社の新型車両2020系と6020系、東京都交通局浅草線の新型車両5500形にも納入を進めており、営業運転車両が増えています。また、山陽電鉄5000系リニューアル車両向けにSiCハイブリッドモジュールを搭載したVVVFインバータ駆動装置を納入し、営業運転が開始されました。放射線機器・システム分野では、シンチレーション式中性子モニタを世界で初めて開発し発売しました。既存の3Heガス方式や有機混合ガス方式に比べ、軽量で持ち運びが容易です。サービス分野では、設備管理用クラウドサービスのアプリケーションの一つとして工場やゴミ焼却設備の排ガス分析装置の遠隔監視システムを開発しました。今後、排ガス分析装置の安定稼働を支援する「ガス分析装置遠隔監視サービス」を提供する予定です。当連結会計年度における当部門の研究開発費は9,298百万円です。 ■発電部門火力発電分野では、二酸化炭素の排出量を削減するため、蒸気タービンの高効率化の技術を継続的に開発しています。また、発電機の稼働率を向上できるようにメンテナンスサービスの劣化診断を短時間で行える技術を継続的に開発しています。再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損抑制や寿命拡大、風力発電では高度の系統連系でも安定した電力供給ができる高効率な出力安定化装置、太陽光発電では安定して電力供給できるコンパクトな蓄電池併用パワーコンディショナを継続的に開発しています。当連結会計年度における当部門の研究開発費は3,278百万円です。 ■電子デバイス部門パワー半導体分野では、低損失および高温動作保証を可能とした最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。第7世代IGBTモジュール1700V,1200V,650Vの標準製品の系列化を完了しました。また、産業用途に逆導通IGBT(RC−IGBT)チップを開発するとともに、このチップを採用した産業用RC-IGBTモジュール1200V/50Aを開発し、量産を開始しました。RC-IGBTの採用により、パワー密度が向上し、チップ面積が大幅に縮小します。これによりIGBTモジュールが小型化し、パワーエレクトロニクス装置の小型・軽量化に貢献します。電気自動車、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車で使用される車載用直接水冷型パワーモジュールを開発し、供給先を拡げました。車載用パワーモジュールでは初めて逆導通IGBT(RC−IGBT)の採用を実現したので、電力密度が大幅に向上しシステム全体の小型軽量化に貢献します。ディスクリート製品として、最新の低損失設計となる第7世代IGBT技術をディスクリート用に最適化した650Vの低損失ディスクリートIGBT XSシリーズの50A、75A品を開発し系列に加えました。オン電圧とスイッチング損失を同時に低減したことで、小型UPSやソーラPCS、サーバとEV充電器など各種機器の損失低減、高効率化に貢献します。IC製品では、IEC61347-1に対応するLED照明用の調光ICを開発し発売しました。このICは、従来より少ない外付け部品でコンバータから絶縁した調光回路が構成でき装置の小型化に貢献します。車載向けディスクリート製品では、第2世代スーパージャンクションMOSFETの600V/190mΩ品を開発し系列を拡大しました。電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車で使用される車載DC-DCコンバータや充電器の小型軽量化に貢献します。また、エンジンの過給圧制御に用いられる6.5世代圧力センサを開発しました。150℃までの高温動作が可能で、測定圧力レンジは300kPaでありエンジンの過給圧制御に用いられ、燃費の改善に貢献します。自動車のソレノイドバルブやリレーを駆動する4.5世代IPSを開発し発売しました。50V/120mΩのハイサイドスイッチをSOP-8サイズに2チャネル搭載することで、従来品に比べ搭載面積が半分となり、電子制御ユニット(ECU)の小型化を実現します。各チップがリードフレームにより分離されているため独立した動作が可能です。これにより、片方のチャネルが異常でも、他方のチャネルの動作を阻害しません。感光体分野では、周辺部材との機械的ストレスの抑制と高い細線再現性を確保したオフィス向け中速モノクロA3対応プリンタ用有機感光体を開発し発売しました。また、高い色再現性と環境及び耐刷に伴う電気特性変動を抑制したオフィス向け中速カラーA4対応プリンタ用有機感光体を開発し発売しました。いずれの製品も長期間にわたり安定した印字品質を提供します。ディスク媒体分野では、ヘリウムガスを充てんした3.5インチ14TB/HDD向けの媒体を開発し量産を開始しました。このHDDに対応した媒体の開発は当社にとって初となり、非常に高い品質が要求されます。安定したHDD特性を得るため、超平滑表面によるヘッドの超低浮上量(1nm以下)を実現するとともに多層膜磁性層によって信号特性を改善し、顧客の要求品質を満足しました。今後もHDDの品質向上のためディスク媒体の改善を継続し、情報化社会を牽引するデータセンターの発展に貢献します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は11,053百万円です。■食品流通部門自販機分野では、ネットワーク化とインタラクティブ化を進めています。自販機用通信モジュールと屋外対応が可能な自販機用7インチLCDを活用したGUIプラットフォームを開発しました。今後、現金の代わりに使われる2次元コード決済や、プロモーション機能としての利用が見込まれます。飲料商品の売上向上に繋がる機能ならびに自販機を開発しています。屋内のマイクロマーケット市場をターゲットにし、従来の缶・ペット自販機に物品・食品専用コラムを搭載した物品併売機を開発し発売しました。飲料、菓子、食品などを一つの自販機で販売できるようにしました。また、狭いスペースに設置できる小型のコンパクトカップ機を開発し発売しました。海外分野では、東南アジア向けに自販機を開発し、インドネシアにおいて生産を開始しました。東南アジアを中心に多く流通している600mlペットボトルやスリーク缶(通常よりも胴径が小さく背の高い細径缶)など大型商品に対応した缶・ペット自販機を開発し発売しました。また、7インチLCDを標準搭載し、QR決済にも対応することで海外における拡販を図ります。店舗流通分野では、人手不足に対応するため、無人決済用の機器やシステム、さらにIoTを用いた在庫管理の見える化や作業支援システムを開発しています。ノンフロン冷媒を採用した内蔵型壁面オープンショーケース「ノンリークショーケース」が、日刊工業新聞社主催「第21回 オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」において、冷媒漏れの削減や、新エアカーテンの開発などが評価され、優秀賞(HFO冷媒を用いた内蔵型ショーケース)を受賞しました。従来の別置型では設置が難しかった立地を中心に導入が広がっており、環境対応とともに店舗設置の機会拡大に貢献いたします。また、スーパーマーケットで導入が進んでいるセルフ精算機向けに新型釣銭機ECS-777を開発し発売しました。この釣銭器は、レジのセルフ化に合わせて従来機よりも使いやすさが向上しています。さらに、どんな空間にも溶け込むデザインにしました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は4,355百万円です。 ■新技術・基盤技術部門製品の機種・系列拡大への短納期化や複雑化する顧客ニーズに対応するために、モデルベース開発技術を構築しています。搬送機構等を対象として、電気系、機械系等の分野の商用ソフトウェアやOSS(Open Source Software)を複数連成させた1次元(1D)モデルを構築しました。今後は3Dモデルでの連成技術を確立して、初期設計の精度を格段に上げることにより、試作レス化を達成します。 ■その他部門当連結会計年度における当部門の研究開発費は123百万円です。
FY2018|6,499 文字
5【研究開発活動】パワー半導体技術やパワーエレクトロニクス技術を中心に強いコンポーネントとシステムを創出する研究開発及び、要素技術の複合により顧客価値を生むソリューションの研究開発に注力しています。研究開発を加速するため研究開発体制を整備しました。製品開発に関わる機能は各事業部門が担い、技術マーケティング・先端研究・基礎研究は、全社の研究開発部門が担うようにしました。当連結会計年度における富士電機の研究開発費は356億20百万円であり、各部門別の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は12,134件です。 ■パワエレシステム・エネルギーソリューション部門エネルギーマネジメント分野では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業である「環境調和型冷媒を用いた未利用排熱回収型蒸気出力ヒートポンプの研究開発」(2015年度~2018年度)により、蒸気利用プロセスにおいて蒸気を再生し約50%の省エネが可能な150℃蒸気出力ヒートポンプを開発しています。環境負荷が低く高温動作に適した新冷媒を採用した2段圧縮2段膨張サイクルを一台の圧縮機で高効率運転する制御手法を開発しました。今後は、実フィールドでの負荷変動対応性能の検証を継続する予定です。変電システム分野では、低損失鉄心材料を採用し巻線導体を最適化した「スーパーエコモルトラⅡ」を開発し発売しました。トップランナー方式における省エネルギー基準達成率が第二次判断基準を上回る130%を達成しました。電源システム分野では、国内の大規模設備向け無停電電源装置「UPS7000HX-T3シリーズ」において、従来の500kVA機と同一寸法で出力容量が20%増の600kVA機を開発し発売しました。大規模化するデータセンターにおける電源設備の省スペース化に貢献します。さらに、リチウムイオン電池と組合せると鉛蓄電池の場合と比べて大幅な小型・軽量化と蓄電池の長寿命化が図れ、ランニングコストを抑えます。サーバ電源「F-DC POWER15kWタイプ」を開発し発売しました。データセンターのハードウエアの設計図や仕様のオープンソース化を推進するOpen Compute Project(OCP)に対応しています。年々増大するサーバ消費電力への対応力を強化させ、北米および日本での販売を加速させるものです。また、データセンター向け間接外気空調ユニット「F-COOL NEO」において、大容量タイプ(冷房能力56kW)を開発し製品系列に加えました。系列の拡大により、お客さま設備の規模に応じて柔軟に対応できるようになりました。電機盤分野では、主に海外の日系企業向けのモータコントロールセンタ(MCC)「FE-Cube」を開発し発売しました。この低圧スイッチギアはIEC61439-1,2に準拠しています。海外拠点(FSMBE)で生産しますが、ユーザーにとって使い慣れた日本製の機器を搭載しています。器具分野では、電気自動車、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車などの環境対応車や二次電池を搭載する輸送機器、受配電装置に最適な「密閉型高電圧コンタクタ(High Voltage Contactor)135A/DC450V品」を開発し発売しました。この製品は自動車メーカに採用されています。業界最高の過電流耐量を持ち車両の安全性向上に貢献します。高圧真空遮断器(VCB)では新形のAUTO.Vを開発し発売しました。標準形のマルチVCBに変流器(CT)と電子式過電流継電器(OCR)を組み合わせたオールインタイプのコンパクトな遮断器です。動作特性を細かく設定して保護協調が容易に行えるとともに、高耐久油の採用や防塵性を向上したので、使いやすく、ライフサイクルコストが低減します。低圧受配電機器では、「G-TWINシリーズ(50AF~250AF)」ブレーカにおいてUL規格の認証を取得し、50mA~500mAの範囲で定格感度電流が切り替えられる中感度仕様の漏電遮断器を開発し発売しました。上位設備との地絡保護協調が必要な半導体製造装置などに必要なきめ細かな感度電流の設定が可能です。エネルギー監視システムでは、電力使用量などの計測データを一元管理する「F-MPC Web (省エネ・制御コントローラ)ユニット」の海外向け品として、CEマーキング対応品を開発し発売しました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は80億53百万円です。 ■パワエレシステム・インダストリーソリューション部門ファクトリーオートメーション分野では、コンパクト形PWMコンバータ「FRENIC-eRHCシリーズ」を開発し発売しました。現行のRHC-Cシリーズに比べ体積を約50%縮小し、昇降機や上下搬送装置などの電源回生による省エネの他、高調波対策、電源設備低減、省スペース化に貢献します。高圧インバータ「FRENIC4600FM6e」を開発し発売しました。従来機種のFRENIC4600FM5シリーズに比べ体積を約30%縮小したので、省スペース化による建設工事費などの導入コストの削減につながります。また、従来機種と同様にファン・ポンプの設備などへの省エネにも貢献します。さらに運転中にインバータセルが故障しても自動切替えにより運転が継続できるセルバイパス機能を国内メーカで初めて(当社調べ)オプション搭載しています。WLTP(クルマなどの国際調和排出ガス・燃費試験法)の世界統一技術規則に対応したタイヤ試験装置を開発しました。電気慣性制御により総慣性250kg(軽自動車相当)から1000kg(4tトラック相当)までの負荷制御が可能です。 プロセスオートメーション分野では、制御装置の処理性能を大きく向上させた産業用中大容量インバータ「FRENIC4400VM6」ならびに「FRENIC4800VM6」を開発し納入しました。従来に比べて処理性能や保守性が向上し、生産設備の最適運用に貢献します。また、中国の効率規制に対応したGB2級(効率クラスIE3)の認証を取得した高効率ブレーキモータを開発し発売しました。中国版RoHS指令への対応とともに、安全規格CCCの認証も取得しました。長時間駆動する用途ほど省エネ効果が大きく、経済性が向上します。各種プラント・工場の操業最適化、設備管理、エネルギーマネジメントシステムなど、顧客価値を創出するソリューションサービスを提供するため、IoTプラットフォーム(サーバシステム、エッジコントローラ、通信・セキュリティ・認証技術、アナリティクス・AI技術)を開発しました。鉄鋼やセメントの海外プラントの安定操業を実現するため、システムを標準パッケージ化し今までに培ったノウハウを織り込みました。システムの開発期間が大幅に短縮できます。環境ソリューション分野では、流速を±0.2%の高精度で計測する液体用スプール形超音波流量計「FST」に、新たにφ80mm、100mmの口径とDC電源仕様を追加し、併せて防爆認定を取得した製品をラインアップに加えました。口径の選択肢とともに防爆仕様や電源仕様が増えたことで、石油・化学分野を始め幅広い分野の需要に応えます。また、電磁流量計では測定が困難な油類や純水等の導電性が低い液体も超音波方式なので高精度に測定できます。放射線機器・システム分野では、IEC規格に準拠した個人線量計「NRF50」を開発し発売しました。Wi-Fiを使い遠隔監視がリアルタイムかつ容易に行えます。さらに、ヨウ化ストロンチウムシンチレータを採用した高分解能で安価なγ線スペクトロサーベイメータを開発し発売しました。輸送システム分野では、東日本旅客鉄道株式会社の山手線E235系通勤型車両向けにラック・アンド・ピニオン方式のドア駆動装置を納入し、2017年5月に量産車の営業運転が開始されました。539両分(4,312台)を納入し、2020年春頃までに順次、営業運転に投入される予定です。当連結会計年度における当部門の研究開発費は90億3百万円です。 ■発電部門発電分野では、放射線を使って火力発電設備の配管の肉厚を測定する新たな技術を東北電力株式会社と共同で開発しました。放射線が物質を透過する際の減衰特性を利用するので保温材が付いたままの状態で配管の肉厚が測定できるとともに、3方向から放射線を照射するスリービーム方式を採用し、高精度な測定が可能です。新エネルギー分野では、大規模太陽光設備向けに新型PCS「PVI1000BJ-3/1000」を開発し発売しました。DC1,000Vで単機容量が1,000kVAであり、高効率・屋外型・空調レスの従来機の特徴はそのままで大幅に小型・軽量化しました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は34億75百万円です。 ■電子デバイス部門パワー半導体分野では、トレンチゲート構造SiC-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を開発しました。しきい値電圧Vthが5Vで、単位面積当りのオン抵抗Ron・Aが3.5mΩc㎡と世界最高レベルの低抵抗を達成しました。この素子を搭載したオールSiCモジュールを今後製品化し、パワエレ機器の高性能化に貢献していきます。SiC-SBD(Schottky-Barrier-Diode)とSi-IGBT(Insulated-Gate-Bipolar-Transistor)を組み合わせたSiCハイブリッドモジュールの系列を拡大し、1,200V/200A,300Aおよび450A定格の2in1製品を開発し発売しました。エネルギー貯蔵システム(ESS:Energy-Storage-Systems)、高効率インバータなど、各種パワエレ機器の高性能化に貢献します。低損失および高温動作を保証する最新の第7世代IGBT技術を適用した10A~50A/650Vと10A~35A/1,200Vの産業用IGBTモジュールを開発し発売しました。本製品は整流回路、インバータ回路とブレーキ回路を1つのパッケージに構成したパワー集積モジュールであり、インバータ等の各種パワエレ装置の高効率化と小型化に貢献します。さらに、はんだ付け用端子とプレスフィット(圧入)端子の2種類の外部接続端子を用意することで、多様なプリント基板実装への対応や実装効率の向上に貢献します。また、1,200V/600A,800Aの産業用2in1IGBTモジュール「DualXT」を開発し発売しました。本製品は第7世代IGBTチップとFWD(Free-Wheeling-Diode)チップならびに新規のパッケージ技術を適用することによって、前シリーズ(第6世代IGBTモジュール)と同一形状のパッケージのまま最大定格電流をこれまでの600Aから800Aへと拡大しました。インバータ等の各種パワエレ装置の高効率化と小型化に貢献します。電気自動車、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車で使用される車載用直接水冷型パワーモジュールを開発し発売しました。車載用パワーモジュールでは逆導通IGBT(RC-IGBT)を初めて採用したのでチップ面積が大幅に縮小し、システム全体の小型軽量化に貢献します。ディスクリート製品として、第2世代スーパージャンクションMOSFETに薄型SMD(表面実装デバイス)となるDFN8×8パッケージを系列に追加し発売しました。電源の小型、薄型化と共に寄生インダクタンスの低減による更なる低損失化を実現します。自動車のエンジンの吸気圧や排気圧を測定する6.5世代圧力センサを開発し発売しました。CMOS制御回路とダイアフラム式センサをワンチップ化したセンサICをベースに、高温での動作保証と排ガスによる腐食防止機能や燃料による帯電防止機能を追加し、高い信頼性と精度を実現しました。自動車の排出ガスのクリーン化および燃費の改善に貢献します。IC製品では、PFC(力率改善)回路の入力電圧や負荷が急変したときの出力電圧変動を制御し従来製品より変動を抑制した臨界モードPFC制御ICを開発し発売しました。また併せて、LLC電流共振回路の入力電圧を従来の600Vから750Vに拡大したLLC電流共振ICも開発し発売しました。これら製品により、PFC出力部の出力コンデンサの容量が低減し装置の小型化を実現します。感光体製品では、小規模オフィス向け中速タンデムカラープリンタ用有機感光体を開発し発売しました。耐摩耗性とスクラッチ耐性に優れた高硬度樹脂に加え、周辺部材との表面摩擦力を低減する潤滑性樹脂を併用することで、機械的不具合を抑制し、高品位な画像品質を達成しています。また、オフィス向けA3対応高速カラー複写機用有機感光体を開発し発売しました。高帯電特性を持つ下引き層に加え、摩耗耐性及び汚染耐性に優れた樹脂を併用することで、高品質画像を長期間維持します。ディスク媒体分野では、モバイル向け2.5インチ 1TB/枚及び、データセンター向け3.5インチ 8TB/HDD向け媒体の性能を向上させました。2.5インチは、ノートPCやゲーム機に加え、大容量小型外付けHDDにも採用されました。3.5インチは、データセンターに加え、監視カメラ用のHDDへ用途を広げています。磁性層の多層化による高SNR特性の確保、また磁性層の硬度を上げ外部要因による損傷を防ぎ、データの安全性を向上させました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は104億36百万円です。■食品流通部門自販機分野では、省人化や売上向上を切り口に顧客と協業し、新しい機能を持つ自販機を開発しています。通貨機器分野では、新しい検銭・鑑別技術やセキュリティ技術、搬送技術を活用した開発中の釣銭機の試作品を2018年3月に開催されたリテールテックジャパン2018に参考出品しました。店舗システム分野では、新しい検銭・鑑別技術やセキュリティ技術、搬送技術を活用した新型釣銭機の開発を進めています。また、2016年度に開発したインバータ冷凍機内蔵タイプの平型アイスケースをプラットフォームとし、技術の水平展開により機種の拡大を図りました。当社の従来機種よりも30%の省エネを実現しました。環境に配慮したノンフロン冷媒を活用した内蔵型壁面オープンショーケース「Non Leakケース」を開発し発売しました。この製品は、高効率の冷凍機を内蔵しているため、従来の別置型で必要であった冷媒配管工事やドレン水配管工事が不要となり、設置工事の工数を大幅に削減しました。また、別置型では設置が難しかったロケーションでも、この内蔵型壁面オープンショーケースは、より容易に設定できます。設置条件を緩和し、設置工事の省力化、ノンフロン冷媒の採用による環境対応とともに店舗設置の機会拡大に貢献いたします。また、「環境対応」「食の安全・安心」「省力化」を目指した冷熱技術、メカトロ技術、IoT技術を活用した無人化店舗のソリューション等を開発しています。2018年2月に開催されたスーパーマーケットトレドショー2018に参考出品いたしました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は44億56百万円です。 ■新技術・基盤技術部門火力発電のタービンの耐食性向上設計のために熱力学に基づく腐食シミュレーション技術を開発しています。材料の熱処理条件と腐食成分濃度により粒界腐食が発生する条件を推定できる技術を構築しました。今後、タービン材の強度や耐食性を最適化する設計に適用する予定です。引き続き主要な基盤技術の強化を図ってまいります。 ■その他部門当連結会計年度における当部門の研究開発費は1億95百万円です。
FY2017|7,729 文字
6【研究開発活動】富士電機の研究開発では、最先端のエネルギー技術の追求により、安全・安心で持続可能な社会の実現に貢献する製品群を創出しています。また、研究開発の実行において全社のシナジーを発揮するとともにグローバル化と、大学や研究機関、他の企業とのオープンイノベーションを推進しています。当連結会計年度における富士電機全体の研究開発費は349億10百万円であり、各部門別の研究成果および研究開発費は次のとおりです。また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は11,480件です。 ■発電・社会インフラ部門太陽光発電システム向けの屋外自立型パワーコンディショナ(PCS)の系列にDC600V(555kVA)を加えました。当社のPCSの変換効率は98%と業界最高レベルにあり、空調レス構造により電力損失と設置工事費用を低減します。経済産業省資源エネルギー庁の補助事業である「バーチャルパワープラント構築実証事業」に対して関西電力株式会社を含む14社による申請が採択されました。当社は産業用蓄電池システムグループのリーダとして参画し、大型蓄電池を対象とした大型蓄電池サーバを構築すると共にサーバと蓄電池システムとの接続を行うゲートウェイ装置(GW)を開発しました。組合せ試験および総合試験において基本機能の確認と性能検証を行い良好な結果が得られました。この開発によりエネルギー利用の最適化や再生可能エネルギー電源のさらなる導入拡大に貢献します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は48億85百万円です。 ■産業インフラ部門変電システム分野では、アジア・中近東向けに、IEC規格 M2クラスに準拠した145kVガス絶縁開閉装置(GIS)「SDH714」を開発し発売しました。当社の従来製品と比較して据付面積を30%、質量を35%それぞれ減らし、業界最小で最軽量となっています。駆動制御システム分野では、産業プラント用ドライブ装置向けに新しい制御プラットフォームを開発し、中大容量ドライブ装置「FRENIC4800」や「FRENIC4400」に適用を開始しました。さまざまなプラントで実績を積み重ねてきた各種制御機能を搭載しています。さらに、新しいユーザインタフェースとしてタッチパネルやPCローダなどを採用し、操作性や保守性が向上しました。産業計測機器分野では、液体用スプール形超音波流量計「FST」を開発し発売しました。本製品は配管内に3測線のセンサを配置するマルチパス方式のスプール(配管挟み込み)形を採用し、独自のデジタル信号処理や演算処理アルゴリズムを駆使することで、流速を±0.2%の高精度で計測します。また、電磁流量計では測定が困難な油類や純水等の導電性が低い液体も高精度に測定します。中国におけるプラスチック成型機器向けにデジタル温度調節計 マイクロコントローラX「PXE5」を開発し発売しました。本製品は中国で生産と販売を行う“地産地消”型事業により、中国市場でのシェア拡大を目指します。監視・制御システム分野では、中小規模監視制御システム「MICREX-VieW XX」において多言語対応、オンライン障害解析機能、リモート監視機能、FA分野の通信規格に対応したOPC-UAサーバ機能を開発し、適用可能な分野を拡大しました。設備監視システム「MICREX-VieW PARTNER」を開発し発売しました。本製品は、MICREX-VieW XXが持つ操作性、堅牢性、継続性、柔軟性を継承したシステムで、フィールドにある設備・機器の小規模な監視から、エネルギー管理システムのサブシステムまで幅広く対応できます。情報・プロセス制御システム「MICREX-NX/V8.2」を開発し発売しました。本製品は従来機能に加え、IoTに対応するため、プラントシミュレーション機能およびモバイル監視機能を強化しました。これにより、エンジニアリング効率、オペレータトレーニング機能および保守・メンテナンス性が大幅に改善します。設備保全分野では、無線式回転機振動センサの防爆対応品を開発し発売しました。国内のTIISとEUのATEX指令の防爆認証を受けているので、国内外の化学系プラントの防爆エリアに設置できます。また、ウェアラブル型遠隔作業支援パッケージのバージョン1.1を開発し発売しました。ウェアラブル端末1台と本部にある3台までのPCとの同時通話、多言語対応、セキュリティなどの機能を強化・拡充しました。独自のアルゴリズムにより冷凍機の稼働を最適化する冷凍冷蔵倉庫向け省エネルギーシステムを開発し発売しました。このシステムにより、年間の電力消費量を12%以上削減できます。また、データセンター向け超高効率・外気利用空調「F-COOL NEO」56kW機を開発し発売しました。従来機とほぼ同じ設置面積のままで冷房能力を40%向上し、省エネルギーと敷地の有効利用が可能です。またスマートメータにおいて、電力会社ごとに異なるデータ収集方式や遠隔操作方式に対応する遠隔検針システムを開発しました。商業施設・オフィス・マンションなどが一体となった複合開発施設や高圧一括受電事業者が管理するビル・マンションにおいて電気やガスの検針データの収集やクラウド管理をすることで業務の効率化や異常時の迅速な対応に貢献します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は55億29百万円です。 ■パワエレ機器部門ドライブ分野では、高性能ベクトル制御型インバータの「FRENIC-VGスタックタイプシリーズ(690V)」のオプション品として、高力率電源回生PWMコンバータ「RHC-Dシリーズ(690V)」9機種、および専用のフィルタスタック「RHF-Dシリーズ(690V)」5機種を系列に加え発売しました。355~450kWの容量帯においてSiCハイブリッドモジュールを採用したことで、発生損失が34%低減し、Si素子のスタックに比べ容量が43%拡大しました。従来機種に比べ低コストでコンパクトな電源回生コンバータ「FRENIC-eRHRシリーズ」18機種を開発し発売しました。このコンバータをインバータに組み合わせると電源回生が可能になり、省エネルギーと制動能力が大幅に向上します。また、制動抵抗器や制動ユニットからこの製品に置き換えると約50%の省スペース化と約90%の発生損失の低減となります。連続的な回生制動が求められるエレベータや立体駐車場などにおいて、さらなる省エネルギーに貢献します。パワーサプライ分野では、北米向けにモジュール型バックアップ電源「F-DC POWER」を開発し発売しました。SiCデバイスと新回路方式を採用することで、総合効率は従来に比べ8ポイント向上し92%となります。ピークアシスト機能により配電系統を強化することなくサーバを追加することができ、データセンターの停電対策と省エネルギーに貢献します。また、北米市場向けにSiC半導体を用いた無停電電源装置「UPS7300WXT3Uシリーズ」を開発し発売しました。従来機より装置効率を0.5ポイント向上させ、重要設備の省エネルギーに貢献します。また、重量部である変換ユニットの質量を約50%低減するとともに装置の下部に配置したため保守性が向上しています。中国・アジア市場向けにUPS「UPS7000HX-T4シリーズ」を開発し発売しました。低負荷時(30%)の効率を従来機より約0.5ポイント改善しました。データセンターのUPSは多重化システムで運用するため、1台当りの負荷率が低く、低負荷時の効率向上は省エネルギーにつながります。FA部門では、高機能モデルのモニタッチV9シリーズと同等のヒューマンインターフェイスを持ちコストパフォーマンスに優れたプログラマブル表示器「TS2060」を開発し発売しました。モーション分野では、サーボ「FALDIC Smartシリーズ」の系列に5軸一体型アンプを追加し中国市場向けに発売しました。損失を従来に比べ12%低減するとともに、最大5つのアンプの電源を共通化することで入力配線作業が省力化できます。また、200W、400W、750Wの容量を自由に組み合わせることで複数軸を使用するロボットや半導体製造装置などの用途が広がります。業界最高レベルの高速・高精度な制御を実現する新サーボシステム「ALPHA7シリーズ」を開発し発売しました。速度周波数応答を従来の1.5kHzから3.2kHz、エンコーダ分解能も従来の20bitから24bitに高めました。さらに、機能安全規格に対応した安全トルク遮断機能を標準搭載し、他の安全機能もオプションで選べます。このサーボシステムを搭載することで、精密加工機などの位置決めが高速、高精度になるとともに、安全性が向上します。200kHz、4軸のパルス出力機能を持つ小規模な機械の制御に適した小型コントローラ「MICREX―SX SPF」を開発し発売しました。当社のサーボシステム「SMART PLUS」と組み合わせると位置決めシステムが経済的に構築できます。大中規模向けコントローラ「MICREX―SX SPH」と共通のプログラミング環境を持ち従来機種と互換性のあるラダー言語とIEC(国際電気標準化会議)規格に準拠したプログラミング言語の2種類が利用できます。コントローラ「MICREX-SXシリーズ」に従来のSPH3000よりも約2倍の速度(多軸制御性能:32軸/2ms)で実行できる「SPH3000D」を開発し発売しました。本製品はモーション命令群を内蔵することで処理を高速化しています。また、モーション制御とシーケンス制御を1台で実行でき、モーションシステムを最小の構成で構築できます。回転機分野では、中国の効率規制に対応したGB2級(効率クラスIE3)の高効率モータとアメリカの効率規制EISA(IE3)の認証を取得した高効率モータを開発し発売しました。一部対象機種は中国の安全規格CCCと米国のULも同時に取得しています。また、定常運転時などの低回転速度でも効率が高いインバータ一体型の空調用ファンモータを開発し発売しました。電機盤分野では、IEC規格に準拠した7.2kVスイッチギアに続き、24kVスイッチギアを開発し発売しました。なお、国内向け変電設備として、環境に配慮した標準高圧盤(RFC2.1)のJEM1425―2011年に準拠しています。開閉時の動作音を大幅に低減した静音形電磁接触器「SLシリーズ」をアジア・中国市場向けに開発し発売しました。エレベータや病院設備等に最適です。制御機器のコマンドスイッチでは、「AY22・DY22シリーズ」をアジア・中国市場向けに開発し発売しました。鉄道車両分野では、先期に東海道新幹線次期N700S系試験車両向けに東海旅客鉄道株式会社と共同開発した弊社SiCパワーモジュールを採用した主変換装置を車両に搭載し、量産に向けた耐久走行試験を継続しています。 器具分野の低圧受配電機器では、施工の省力化と省配線化を実現する母線プラグインブレーカ「BV、EVシリーズ70mmピッチ」を開発し発売しました。ブランクカバーの取り付けにはドライバーなどの工具が不要なプッシュクリップ構造を採用し、安全性と作業性を向上させています。高圧受配電機器では、RoHS指令へ対応した「マルチVCB引出形」を開発し発売しました。パネルカットは簡素化するとともに取り付け後のメンテが容易な形状としています。さらに、絶縁性能の向上とグリスアップ期間の延長などによってライフサイクルコストを低減しました。制御機器では、バッテリーレスで駆動するワイヤレスリミットスイッチ「XCKWシリーズ」を開発し発売しました。生産ラインや設備、機械装置等の配線の煩わしさから解放するだけでなく保守やメンテナンスも省力化します。エネルギー監視システムでは、波形計測、サグ/スウェル(瞬低/電圧上昇)探知判定、データログなどの機能がある電力品質監視システム「デジタルパワーメータPM8000シリーズ」を開発し発売しました。カラーディスプレイにより作業時の視認性が向上しました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は94億25百万円です。 ■電子デバイス部門パワー半導体分野では、汎用インバータや工作機械等の小型化や省エネルギー、トータルコスト削減に貢献する第7世代IGBTモジュールの1,200V耐圧において25Aから150Aまでのものを系列に加えました。最新のIGBTおよびFWD(Free Wheeling Diode)チップ技術と高温動作環境下においても優れた動作寿命を持つ最新パッケージ技術を適用し、連続動作時の保証温度を従来の150℃から175℃に拡大しました。UPS(無停電電源装置)や新エネルギー向けにTタイプの3レベル変換回路を持つAT-NPC(Advanced Type Neutral Point Clamped)IGBTモジュールの系列を追加しました。DC(bus)電圧850V対応の1,200V/450,650,900Aの製品は、変換回路の中間ACスイッチ部に独自開発の900V耐圧RB-IGBTを採用、また、DC(bus)電圧1,200V対応の1,700V/450,600Aの製品は中間ACスイッチ部に1,200V耐圧のRB-IGBTを採用しました。また、DC(bus)電圧1,800-2,000Vクラスのアプリケーション向けに、標準の1,700V耐圧2in1モジュールとの組合せによりI-Type NPC回路が構成可能となるチョッパーモジュールを系列に追加しました。いずれの製品も低オン抵抗化を図り高い電力変換効率を実現します。電鉄向けに最新の第7世代IGBTおよびFWDチップを搭載した大容量モジュールHPnC(High Power Next Core)を開発し、電圧電流定格1,700V/1,000Aの2in1回路構成のモジュールのサンプル展開を開始しました。小型で低インダクタンスを特長とした新型パッケージを採用しています。また、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車で使用される車載用直接水冷型パワーモジュールのサンプル出荷を開始しました。車載用パワーモジュールでは初めて採用した逆導通IGBT(RC-IGBT)により、チップが大幅に小型化し、EVやHEVシステム全体の小型軽量化に貢献します。ディスクリート製品として、民生・通信・産業用途のスイッチング電源向けに高周波動作可能な連続モードPFC(力率改善)-ICを開発し発売しました。このICによりトランスが小型化し、力率改善機能を持つ電源の小型化に貢献します。また第2世代スーパージャンクションMOSFETの系列に、「Super J-MOS S2FDシリーズ」と「Super J-MOS S2Aシリーズ」を加えました。サーバや通信機器、UPS等の比較的大容量の電源向けの低損失で低ノイズの内蔵ダイオードの逆回復時間を50%低減したSuper J-MOS S2FDシリーズは、内蔵ダイオードの高速化により、より広い用途をカバーでき、各種搭載機器の高効率化、小型化を強力にサポートします。さらに、表面実装(SMD)TO-252パッケージ系列を追加しました。搭載機器の小型、薄型化と基板実装効率の向上に貢献します。車載DC-DCコンバータや充電器向けのSuper J-MOS S2Aシリーズは、低損失化、高信頼性で、HEV、P-HEV、EVの小型軽量化に貢献します。感光体分野では、プロダクションプリンタ向けの高精度大径(直径140mm)有機感光体を開発し発売しました。アルミ基体とフランジの高精度化により回転ムラを抑えるとともに、電位安定性に優れた機能材料の採用によって高品位な画像品質を達成しています。ディスク媒体分野では、モバイル用ハードディスクドライブで業界最高容量となる2TB機種用媒体(2.5インチ 1TB/枚・2枚搭載)を開発し量産を開始しました。磁性およびHDI(ヘッド・ディスクインタフェース)に新技術を採用することで、高記録密度を達成しています。また、データセンター等で広く活用されているニアラインサーバ用ハードディスクドライブ 8TB機種用媒体(3.5インチ 1.33TB/枚・6枚搭載)を開発し量産を開始しました。高記録密度化と表面欠陥の更なる低減により、高い信頼性を確保しています。当連結会計年度における当部門の研究開発費は104億81百万円です。 ■食品流通部門自販機分野では、デジタルサイネージ自販機を開発し発売しました。購買者のタッチ操作の検知に汎用の光学式センサを使った機構を採用しました。ディスプレイ上にタッチセンサがないので映像がクリアになり、直射日光の当る屋外への設置も可能で販売促進に貢献します。平成28年5月に三重県で開催されたG7伊勢志摩サミット2016のプレスセンターに設置し各国のメディア関係者に当社の技術力を紹介しました。小型シースルーカップ自動販売機を開発し発売いたしました。多岐にわたる嗜好に対応した飲料を提供します。シースルー部からコーヒーの抽出工程が直接見えて香りも楽しめるため、お客様に美味しさと安心だけでなく、カフェの雰囲気も提供します。通貨機器分野では、紙幣鑑別装置と硬貨識別装置を中国市場向けに開発し発売しました。他の国向けも順次開発し、グローバルに展開します。また、新しい検銭・鑑別技術やセキュリティ技術、搬送技術の製品化に向けた開発を行っています。また、これらの技術を活用した新型釣銭機の開発を開始し、2017年3月に開催されたリテールテックJAPANにデザインモデルを出品し好評をいただきました。冷凍冷蔵ショーケース分野では、外気を遮断するためのエアカーテン、並びに、棚下気流の改善・最適化を行い、更なる冷却性能の向上と省エネルギー化の開発を進めています。また、冷凍機を内蔵して設置工事が不要とした壁面ケースの開発や、オペレーションを改善する陳列方式、ディスプレイを使った訴求性の高いPOP広告機能等の新規提案を具現化したプロトタイプ機を2017年2月のスーパーマーケット・トレードショーに出品し好評をいただきました。また、店舗向け総合設備管理サービスにおいて、電力測定システムや稼働管理システムに加え、QRコードを用いて設備や設置場所の登録・変更が容易に行える店舗向けの設備管理システムを開発しました。店舗向け総合設備管理サービスにおける「見える化」により、「食の安全・安心」、「省人化」、「省エネルギー」に関する課題を解決します。当連結会計年度における当部門の研究開発費は45億88百万円です。
FY2016|7,221 文字
6【研究開発活動】富士電機の研究開発では、最先端のエネルギー技術の追求により、安全・安心で持続可能な社会の実現に貢献する製品群を創出しています。また、研究開発の実行において全社のシナジーを発揮するとともにグローバル化と、大学や研究機関、他の企業とのオープンイノベーションを推進しています。当連結会計年度における富士電機全体の研究開発費は359億49百万円であり、各部門別の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は11,026件です。 ■発電・社会インフラ部門発電部門では、細管に海水を流して蒸気タービンの排気を冷却する復水器の破損による海水リークを数分以内にオンライン診断して被害を最小限に抑える機能、並びに細管群からリーク管の発見を可能にした「細管リークバスター」を開発しました。検出方法を使い分けて数万本の細管群から数時間以内でリーク箇所を発見できます。太陽光発電部門では、PCSの単独運転検出方式としてステップ注入付周波数フィードバック方式を採用したPCSを開発し製品化しました。系統電圧の細かな変動を起こさずに、単独運転検出が可能です。電力流通部門では、㈱NTTデータ、㈱協和エクシオと「新電力事業者向け需給管理・CISサービス」提供に関する協業で基本合意しました。本サービスは、電力小売り全面自由化に伴い新規参入する新電力事業者向けに新電力事業で必要となる業務メニューをクラウドサービスで提供するものです。2016年4月からの提供に向け、電力市場取引支援技術及び発電計画・連系線利用計画の最適自動作成機能を開発しました。配電分野では、単柱式の電柱に設置する小型軽量の6.6kV配電系統用無効電力補償装置(300kVA)に搭載するSiC(炭化ケイ素)モジュールの試作・評価を完了しました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は56億93百万円です。 ■産業インフラ部門コントローラ「XCS-3000R」及びそのエンジニアリングツール「MICREX-VieW/R」を開発し、中小規模監視制御システム「MICREX-VieW XX」のマイグレーションシステムに追加し、発売しました。従来のMICREXシリーズとの継承性を強化したのでシステム更新時に、既存のハードウェアやソフトウェア資産を有効に活用しながら、高性能な最新システムに切り替えることができます。低圧ドライブ制御盤「FRENIC-VG盤」を開発し発売しました。システムとしてIEC(国際電気標準会議)規格並びにCEマーキング(EC指令告書)に準拠しており、初号機を欧州向けに出荷しました。鉄心にアモルファス磁性材を採用して低負荷時のエネルギー効率を大きく改善したモールド変圧器「アモルファスモルトラ」を開発し、発売しました。この機器は、トップランナー方式の第二次判断基準が適用され、年間電力料金の削減に大きく寄与します。また、IECの規格に準拠した24kVスイッチギヤを開発し発売しました。内部事故が外部へ影響しない構造に加え、扉を閉じたまま遮断器を運転位置と断路位置に移動することが可能な構造と金属シャッタによる充電部の露出を防止し安全性を高めています。雪氷利用型間接外気空調ユニットを採用した寒冷地向け超高効率データセンターを開発し納入しました。汎用空調機に比べ空調消費電力を60%低減できます。船舶エンジン用排ガス浄化装置を開発し、国内で初めてバルク船に搭載し、実運用稼働試験を開始しました。大気中のPM2.5(2.5マイクロメートル以下の粒子状物質)の主要成分であるブラックカーボン、硝酸塩、硫酸塩をリアルタイムで連続自動測定するエアロゾル複合分析計を製品化し発売しました。従来はサンプリングから手分析が終了するまで数時間を必要としていましたが、本分析計は15分周期で自動的に連続測定ができます。PM2.5の発生源や発生要因の解明によって、特に中国における大気環境の改善に効率的に貢献することが期待されています。排熱回収型の蒸気発生ヒートポンプを開発し、2015年12月から受注を開始しました。工場等で未利用であった60から80℃の低温排熱から利用価値の高い蒸気を高効率で再生します。独自のアルゴリズムにより冷凍機の稼働を最適化する冷凍冷蔵倉庫向け省エネルギーシステムを開発し発売しました。このシステムにより、年間の電力消費量を12%以上削減できます。遠隔地の支援者側拠点(本部)にいる熟練技術者がインターネットを介してウェアラブル端末を着用した現場の作業者に対しリアルタイムに画像と音声による指示や支援を行える「ウェアラブル型遠隔作業支援パッケージ」を開発し発売しました。遠隔支援はもとより点検作業手順の指示や作業実績が一元管理でき、作業の品質向上や効率化並びに技術伝承が行えます。当連結会計年度における当部門の研究開発費は63億83百万円です。 ■パワエレ機器部門欧州では、既存の建物にエレベータを導入する事例が多く、限られたスペースにインバータを設置する必要があります。そこで、今回のモデルチェンジにより“取り付け方向のフレキシブル化”と“スリム化”を実現した、欧州市場向けエレベータ用インバータ「FRENIC-Lift」を開発し発売しました。高度化した安全規格に準拠しながら、ドア開閉時の低騒音化を図りました。また、アジア市場向けに空調用途のインバータ「FRENICeHVACシリーズ」を開発し発売しました。従来機の省エネ機能や専用機能に加え、簡易PLC機能であるカスタマイズロジックを14ステップから200ステップに拡張しました。また、水洗いや蒸気減菌するような食品設備、切削粉やオイルミストのある各種加工設備で使用できる防水防塵タイプのインバータを開発しており、システムコントロールフェア2015に参考出品しました。盤外設置を想定し耐環境性を高めた外部冷却ファンレスで、SiCデバイスの特長である低損失を生かした全閉自冷構造としています。さらに、カスタマイズロジックを搭載しコントローラなどの外部機器なしで簡単なシーケンスが構築できます。回転機部門では、2015年4月から始まった“トップランナー基準”に対応した「プレミアム効率ギヤードモータ」を開発し発売しました。プレミアム効率(IE3)を達成し、搬送機器等の省エネに貢献します。また、CEマーキングに標準対応しています。中国市場向けにインバータ駆動専用モータ「New MVTシリーズ」を開発し発売しました。特に、印刷機械、伸線機械、押出機械の用途に適しています。また、車載部品用試験機に用いられる超高速回転機を開発し、納入しました。インバータで駆動することによりエンジン・ミッション・車体全体の駆動性能に合わせた特性を発揮します。自動車部品の性能向上に合わせ、系列を充実していきます。鉄道車両分野では、東海道新幹線向けにSiCパワー半導体モジュールを採用した主変換装置(コンバータインバータ)を東海旅客鉄道㈱と共同開発しました。N700系車両に搭載して走行試験による評価を行いました。高速鉄道へSiCパワー半導体モジュールを適用した走行試験は世界初になります。パワーサプライ分野では、アジア市場での社会インフラ・中規模データセンター向けに三相4線式無停電電源装置「UPS7700F シリーズ」を開発し発売しました。100kVA自立ユニットを組合せて単機容量300kVA出力までに対応し、さらに6台並列冗長した高信頼性システム構築が可能です。また、北米市場におけるデータセンターや医療用設備向けに三相480V対応の無停電電源装置「UPS7000 HX-T3Uシリーズ」を開発し発売しました。米国の安全規格「UL規格」を取得するとともに、業界最高レベルの装置変換効率を達成しエネルギースタープログラムの認証を取得しました。国内市場での金融システム・工場生産ラインの更新需要に向けて無停電電源装置「UPS6000DXシリーズ」に150kVA、250kVAをラインアップに加えました。従来機と同一寸法にて、容量(有効電力)が10%増加し、最高レベルの出力電力密度となっています。さらに、データセンターのサーバー用バックアップ電源システム「F-DC POWER」を開発し発売しました。バッテリによるピークアシスト機能による入力電力のピークカットや省エネ、導入コストの削減に貢献します。盤事業分野では,変電設備として、海外向けのIEC規格に準拠した7.2kVスイッチギヤを開発し納入を開始しました。器具分野では、省エネ法改正に伴うトップランナーモータ(IE3)の特性に最適な、「G-TWINシリーズ」ブレーカにおいて100AFから250AFのブレーカ並びに、新型サーマルリレーを組み合わせた「小形電磁開閉器(SW-N03~N5-1)」を開発し発売しました。開閉時の動作音を大幅に低減した静音形電磁接触器「SLシリーズ」をアジア・中国市場向けに開発し発売しました。エレベータや病院設備等に最適です。制御機器のコマンドスイッチでは、「AY22・DY22シリーズ」をアジア・中国市場向けに開発し発売しました。低圧受配電機器では、サーキットプロテクタ「CP30F」をフルモデルチェンジし発売しました。安全保護等級向上や配線作業合理化に貢献します。また、「漏電警報付き中性線欠相保護ブレーカ」を開発し発売しました。高圧真空遮断器では、東南アジア市場向けに単体でIEC62271-100に準拠し、小型化した「12kV電機VCB」を開発し発売しました。既に発売している手動形に加え、モータ駆動により投入や引外しを遠隔操作させることができる「新形マルチVCB固定形(電動)」を開発し、ラインアップを充実しました。次世代の中核機種となる制御コントローラ「F-MPC Web M/C」をモデルチェンジし発売しました。省エネ対策のサポート機能の充実やユーザインタフェースの簡易化などを図りました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は92億47百万円です。 ■電子デバイス部門パワー半導体分野では、汎用インバータ・工作機械・新エネルギー等、幅広いアプリケーション向けに第7世代IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュールを開発し、量産を開始しました。最新のIGBT及びFWD(Free Wheeling Diode)チップ技術と、高温動作環境下においても優れた動作寿命を持つ最新パッケージ技術を適用し、連続動作時の最大保証温度を従来の150℃から175℃にすることができました。その結果、搭載機器のサイズを維持しながら出力電流を最大35%増加させることができます。1,200V耐圧及び650V耐圧のモジュール製品を開発し、2016年3月に量産を開始しました。1,700V耐圧製品までをラインアップする予定で、搭載機器の小型化、トータルコスト削減、省エネに貢献します。また、工作機械向けに多軸サーボ向け小型IPM(600V/80A)を開発し、量産を開始しました。パッケージの小型化とパワーサイクル耐量の確保を両立し、サーボアンプの小型化に貢献します。鉄道車両向けに定格電圧3,300V、定格電流1,200AのSiCパワー半導体モジュールを開発しています。本モジュールは東海旅客鉄道㈱と共同開発した東海道新幹線車両向けの主変換装置に搭載され試験走行を行いました。従来のSi(シリコン)パワー半導体モジュールに比べて発熱量が少なく主変換装置の冷却機構が簡素になるため主変換装置を含む駆動システムの小型軽量化と省エネが実現します。また、宇宙線による誘起破壊に対する耐性を向上させた定格電圧1,200V、定格電流300Aの3レベル変換回路用IGBTモジュールを開発し発売しました。本モジュールは中間スイッチにRB-IGBT(逆阻止IGBT)を採用し、エネルギー変換効率の向上とUPSやPCSなどの装置の長期信頼性向上に貢献します。また、一般産業機器向けに、SiCを搭載したパワー半導体ハイブリッドモジュールの製品系列を拡大し、1,200V/200A、300A 2in1モジュールを開発し、量産を開始しました。従来のデバイスに比べ大幅な損失低減や、高出力化が可能となり、様々な産業機器の省エネや小型化に貢献します。また、エアコンや洗濯機などの白物家電や小容量の産業用インバータ及びサーボ向けに、定格電圧600Vで10Aから30Aの第2世代小容量IPMを開発し発売しました。最新のIGBTチップ技術と動作保証温度を従来の125℃から150℃とするモジュール技術によって、搭載機器の出力電流を25%増加し、搭載機器の小型化、トータルコスト削減と省エネに貢献します。ディスクリート製品として、車載用途向けに、第4世代IPS技術を適用した50V/120mΩのハイサイドスイッチと、オペアンプをSOP-8パッケージに搭載したリニア制御用IPSを開発し、量産を開始しました。ソレノイドバルブなどの負荷に流れる電流をリニアに制御するシステムに適用でき、自動車の快適性や燃費向上に貢献します。また、前述のハイサイドスイッチをSOP-8パッケージに搭載した製品の量産を開始しました。ソレノイドバルブやモータ、リレー、ランプなどの駆動に使用することができ、車両の安全性と快適性に貢献します。さらに最大消費電流を3mAから200μAに低減したハイサイドスイッチを開発し、量産を開始しました。特にリレー駆動などのバッテリに直結されたシステムに適用されることにより自動車の燃費改善に貢献します。民生用途のスイッチング電源向けに、電源起動回路用デバイスの耐圧を、従来の500Vから650Vに拡大した第6世代PWM電源制御ICの新製品を開発しました。このICにより、商用AC電圧が不安定な地域でも、安定で安全な電源が供給できます。また、新制御方式を採用して電源の部品サイズを変更することなく高いスイッチング周波数に対応したPWM電源制御ICを開発しました。民生・産業機器の高機能化に伴い高いピークパワーを必要とするモータなどの電源の小型化が可能になります。また、サーバー・通信電源・UPS・PCS用途に適した第2世代のスーパージャンクションMOSFET(Super J MOS S2シリーズ)を開発し、量産を開始しました。第1世代品に対し25%の低オン抵抗化を達成、さらに低スイッチング損失特性を維持しながらスイッチング時のサージ電圧を大幅に低減しました。また、UPSや小型溶接機などの小型化に対する要求に応えるため、当社従来品よりスイッチング損失を約40%低減し、高周波動作が可能な高速ディスクリートIGBT(High-Speed Wシリーズ)を開発し量産を開始しました。第1世代品と比べ低オン抵抗を25%低減し、さらに低スイッチング損失特性を維持しながらスイッチング時のサージ電圧を大幅に低減しました。ディスク媒体分野では、1枚当たりの記憶容量が500GB/2.5インチガラスディスク媒体の性能改善品の量産を開始しました。また、市場ニーズに対応し、ハードディスクドライブのデータ転送速度の向上に対応した同一容量のアルミ及びガラスディスク媒体の開発を完了し、2015年第2四半期より量産を開始しました。さらに、薄型ハードディスクドライブに搭載される同一容量のガラスディスク媒体新製品の開発を完了しました。1枚当たりの記憶容量が1TBの3.5インチアルミディスク媒体についても、ハードディスクドライブの低コスト化に対応した新製品の量産を開始し、機種系列を拡大しています。当連結会計年度における当部門の研究開発費は90億76百万円です。 ■食品流通部門自販機分野では、さらなる省エネを図るためエジェクタを使ったCO2冷媒システムを搭載した自販機を開発し発売しました。従来のCO2冷媒自販機に比べ、年間消費電力量が約25%低減します。また、一杯ごとに豆を挽き、本格的な淹れたてを提供するオフィス向けの小型コーヒー専用機を開発し発売しました。また、屋外の設置が可能なデジタルサイネージ自販機を開発し発売いたしました。購買者のタッチ操作を検知するため汎用型光学式機構を採用しました。ディスプレー上にタッチセンサがないので映像がクリアになり販売促進に貢献します。2015年9月に上海で開催された上海国際智能産業展にはデジタルサイネージを3台連動させる自販機群を出展し大きな注目を集めました。通貨機器分野では、紙幣鑑別装置と硬貨識別装置を中国市場向けに開発し発売しました。他の国向けにも順次開発し、グローバルに展開します。新しい検銭・鑑別技術、セキュリティ技術、搬送技術の製品化に向けた開発を行っています。冷凍冷蔵ショーケース分野では、駅ナカなどの店舗向けに冷凍機内蔵型扉付き2温度ケース(バックドア付)を開発し発売しました。混雑時にもバックドアから商品が補充できるため、作業効率が格段に向上しました。さらに、2温度運転時のケース内の風路構造を見直し、バックドア付でも2温度化を実現したため、陳列商品のバラエティ性が向上し店舗の売上向上に貢献しています。さらなる省エネ化をめざし、エアカーテンの改良やインバータを搭載したドリンクケースを開発し、単位容積当たり50%以上の省エネ(当社比)を達成しました。当連結会計年度における当部門の研究開発費は55億47百万円です。