研究開発活動(本文)
FY2025|7,256 文字
6【研究開発活動】(1)研究の目的及び主要課題当グループ(当社及び連結子会社)は、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」を成長ドライバーとして掲げ、社会イノベーション事業のさらなる進化をめざしています。この目標を実現するため、研究開発においては「グローバル事業成長に向けて、デジタル、グリーンによるイノベーション創生」をミッションとし、研究開発資源を、顧客体験を革新するイノベーションや社会の本質課題を捉えたイノベーションの創生に重点的に配分しています。また、事業活動の競争力強化及び将来の成長に向けた取組として、各地域における先進顧客の価値を起点としたDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)をOne Hitachiで推進し、Lumada事業を拡大しています。さらに、コーポレートR&Dでは、将来の成長を実現するためのイノベーションの先行投資として、2050年の社会課題からのバックキャストに基づく破壊的イノベーションを強化しています。 (2)研究開発体制当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、グローバルな視点で研究開発効率の向上に努めています。また、国内外の大学や研究機関との連携に加え、2019年4月には研究開発グループ国分寺サイトに研究開発拠点「協創の森」を開設し、顧客やパートナーとのオープンな協創を加速しています。さらにコーポレートベンチャリングを活用したオープンイノベーションを推進することで、社外パートナーとの技術基盤構築、事業創生につなげています。技術及び社会の転換点を先取りし、将来にわたって持続的な成長を実現していきます。社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、2022年4月に、研究開発グループの組織を再編しました。これまで、当グループのフロントとともに価値起点でのイノベーション創生を担ってきた「社会イノベーション協創センタ」と、価値創生を支える世界No.1技術の開発を担ってきた「テクノロジーイノベーションセンタ」を一体化して、「デジタルサービス研究統括本部」、「サステナビリティ研究統括本部」に再編し、DX及びGXによる価値創生を強化しました。さらに「基礎研究センタ」は、将来を見据えた基盤技術の創出を担い、北米、欧州、中国、アジア及びインドに展開する「海外研究開発拠点」では、地域特性や市場ニーズに応じた研究を推進しています。 (3)イノベーション投資当グループのさらなる成長に向けて、グループ全体のイノベーション投資を拡大します。2025年4月に、コーポレートベンチャリング投資として最大規模となる400百万米ドルの第4号ファンドを組成し、当社のスタートアップへの投資資金残高は累計10億米ドルに達しました。グローバルトップクラスの運用規模によりオープンイノベーションをさらに加速させ、スタートアップのイノベーションエコシステムに貢献します。データセンター、分散型エネルギーシステム、未来の働き方、産業AI、バイオ、量子、核融合、宇宙等の先端技術や新領域を開拓するスタートアップとの協創を通じて、持続的成長を支える新たな事業機会の獲得とOne Hitachiの成長事業の創出をめざします。 (4)研究開発費 当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の2.7%にあたる2,594億円であり、セグメントごとの研究開発費及び研究開発費の推移は次のとおりです。 セグメントの名称研究開発費(億円) デジタルシステム&サービス516 グリーンエナジー&モビリティ855 コネクティブインダストリーズ961 その他16 全社及び消去245 合 計2,594 (注)1.赤色は当グループの研究開発費の合計です。オレンジ色はそのうち、デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ及びコネクティブインダストリーズの3セグメントにおける研究開発費の合計です。 2.( )内の数値は、当グループの研究開発費の売上収益合計に占める割合です。 (5)研究成果 当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。①AI/生成AIを活用したデジタルイノベーションの取組(デジタルシステム&サービスセグメント、全社)AI/生成AIを活用して次世代技術を創生するとともに、これらの技術を事業に応用することで、社会課題の解決に取り組みました。 (イ)生成AIを活用し、システム開発のトランスフォーメーションを加速ミッションクリティカルなシステムの開発領域に生成AIを適用するための新たな開発フレームワークを整備しました。本フレームワークは、当グループがこれまで培ってきた基幹システムや社会インフラシステムのナレッジと生成AIを組み合わせた開発環境であり、プロジェクトのニーズ・要件に応じた柔軟なカスタイマイズが可能です。自動修正・コメント生成機能等が搭載されており、生成AIが生成したソースコードの70~90%が適切であることを社内検証で確認しました。高い品質を確保しながら、システム開発の効率を大幅に向上することで、ソフトウェアエンジニア不足の解消といった社会課題の解決をめざします。 (ロ)カスタマーサポート業務を支える生成AIエージェント技術を開発カスタマーサポート(以下、「CS」といいます。)業務特有の問題解法や要件に基づき強化した「ReAct for CS(リアクト・フォー・シーエス)」を開発し、当グループのサポートサービス「日立サポート360」の社内実証により、その有用性を確認しました。汎用LLM(大規模言語モデル)にない専門知識を持つ「ReAct」と呼ばれるより強力なLLMエージェント技法の活用により、複雑な問合せに対応します。CS業務の効率化や担当者の負担軽減が期待されるだけでなく、迅速かつ正確な対応を通じて顧客満足度の向上にも寄与します。今後は、さらに高度な問合せ対応や業務全般への適用を進め、活用範囲を拡大していきます。 (ハ)異常時の機械から発生する稼働音の変化を説明するテキスト生成技術を開発製造ラインでの品質検査やインフラ設備の点検を効率化するため、生成AIを活用した異音検知技術を開発しました。本技術は、機械の稼働音データを解析し、異常検知の根拠を具体的なテキストとして生成することで、異常の内容や対応策を明確化します。従来は熟練者の主観に依存していた聴音点検を客観的に可視化することで、熟練者不足の課題を解決するとともに、点検作業の精度向上を実現します。また、保守作業の迅速化や適切な対応を支援することで、製造業やインフラ分野全体の効率化に貢献します。 故障の予防策や修復作業まで提案可能なAIアシスタント(イメージ) (ニ)現場作業の自律動作能力を拡張するAIロボット技術を開発インフラ、交通、製造分野におけるDX推進とフロントラインワーカーのウェルビーイング向上をめざし、視覚や力覚等のマルチモーダル情報とロボット動作情報を統合的に学習するAI技術を開発しました。本技術を活用し、人の動作を模倣学習させる「ロボット教示」が可能な双腕ロボットを開発することで、作業負荷の軽減や時間・場所の制約緩和、新たな働き方を提案します。また、これらの研究成果に関連し、当社の研究者がMITテクノロジーレビュー[日本版]主催「Innovators Under 35 Japan 2024」に選出されました。(注)深層学習を用いたロボットの動作学習・動作生成技術に関する成果の一部は、学校法人早稲田大学の尾形哲也教授との共同研究の結果得られたものです。 人の動作を模倣学習させるロボット教示が可能な双腕ロボット (ホ)生成AIの論理的思考能力を強化する学習データ自動生成技術を開発自然言語での思考能力を高め、高度な意思決定を支援可能な生成AIの実現をめざし、生成AIの論理的な思考能力を高めるための学習データを自動的に生成する技術を開発しました。本技術は、例えば、「○○○地域での×××事業への投資は適切か?」といった問いに対応するため、多段階の思考ステップや数理論理学に基づく幅広い学習データを自動生成します。オープン方式を採用していることから任意の生成AIに適用することが可能であり、追加学習を通じた論理的思考の強化が可能です。最先端の生成AIで検証した結果、論理推論能力が平均約9%、最大で30%向上(注)しました。今後、顧客と連携することで本技術を進化させ、社会全般の複雑な課題解決を支援する生成AIの実現をめざします。(注)2024年11月時点の当社調査によります。検証では、一例として、「LLaMa-3.1-70B」を使用しています。 (ヘ)製造業サプライチェーンを強靭化するディープインサイト推定技術を開発自然災害やパンデミック等のリスクに対し、製造業のサプライチェーンを強靭化するために、「ディープインサイト推定技術」を開発しました。本技術は、部品供給情報と企業情報等を生成AIに入力し、従来は明らかにすることが困難だった製造拠点の情報を高精度に推定するものです。当グループ内での検証により、85%を超える精度でサプライヤーの製造拠点情報を推定できることを実証しました。また、本研究の詳細について、2025年3月に、共同研究先である国立大学法人東京大学(以下、「東京大学」といいます。)「デジタルオブザーバトリ研究推進機構」が主催した第2回フォーラムで発表しました。本フォーラムでは、有識者によるパネル討論やポスターセッションを通して課題やユースケースの抽出、社会実装に向けた議論を行うとともに、連携企業・機関の探索を目的としたネットワーキングの強化にも取り組みました。 製造業サプライチェーン強靭化技術によるグローバル事象におけるリスク予兆把握(イメージ) ②将来の社会課題解決に向けた取組の深化(全社)先端技術の研究開発や持続可能な社会の構築をめざし、技術基盤の強化を通じて、将来の社会課題解決や新たな価値創造に取り組みました。 (イ)量子コンピュータの実用化に向けて量子ビットの寿命を100倍以上長く安定化させる操作技術を開発当社は、日立ケンブリッジラボでの30年以上に渡る量子物理基礎研究に加え、2020年からは国立研究開発法人科学技術振興機構のムーンショット型研究開発事業(グラント番号JPMJMS2065)を通してアカデミアと連携し、大規模化に優位なシリコン量子コンピュータの研究を推進しています。これまで、効率的な制御方式や大規模化を可能にするアレイ構成を提案しました。2024年6月には、半導体中のノイズを一部無効化することにより量子ビットの寿命を100倍以上延伸する操作技術を開発しました。今後も本研究を加速させ、量子コンピュータの誤り訂正技術の実現や大規模な量子計算の精度向上を通じて、量子コンピュータの早期実用化をめざします。(注)本結果の一部は、国立大学法人東京科学大学、東京大学、国立研究開発法人理化学研究所、日立ケンブリッジラボとの共同研究の結果得られたものです。 (ロ)脱炭素社会実現に貢献する水素製造システムの開発再生可能エネルギーを活用した水素製造とそれに伴う電力運用の両方を最適に計画制御する新たな水素製造システムを開発しました。水電解装置の物理特性に基づいた運用計画とリアルタイム制御により、実際の運用との誤差を減らし、製造コストを削減することができます。また、本技術は、水素製造以外にも、蓄電池や燃料電池を含め、複数の場所で同時に最適運用することにも適用が可能です。本技術が、持続可能な社会のさらなる実現に貢献することをめざしています。 ③オープンイノベーションによる価値協創 (全社)国内外の大学・研究機関との協創を強化し、エコシステムの構築を推進しました。 (イ)東京大学との共同研究活動2023年11月のエネルギーシステムの将来及び国際的協力の在り方に関する議論に続き、2024年10月には東京大学、インペリアルカレッジロンドン及び日立の三者により、グリーン経済におけるイノベーションと機会に関する共同イベントが開催されました。本イベントでは、脱炭素化、炭素循環、気候変動対策技術の社会的受容性等の幅広いテーマが議論され、特にカーボンニュートラルへの移行における挑戦的課題として、サプライチェーン全体のカーボンフットプリント削減、AIを活用したエネルギー効率化、生物多様性保護を含む統合的トランジションの実現等が挙げられました。また、日立東大ラボでは、日本政府が提唱する「超スマート社会」の実現(Society 5.0)に向け、ビジョンの創生と実現に向けた研究開発を推進しています。これまでに、「Society 5.0を支えるエネルギーシステムの実現に向けて」と題した提言を第6版まで発刊し、カーボンニュートラル実現に向けた具体的な道筋を示してきました。2025年1月に開催した第7回産学協創フォーラムでは、電力システムをはじめとする社会システムへの推進に向け、「統合的トランジション」の具体的事例や配慮を紹介しました。さらに、パネルディスカッションを通じてエネルギー協調や国際連携の重要性を議論することで、持続可能な社会の実現に向けた取組を深めました。 パネルディスカッションの様子 (ロ)日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ 第2回オープンフォーラムを開催当社と国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、「産総研」といいます。)は、2022年10月、産総研内に「日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立して以来、「循環経済社会のグランドデザインの策定」をはじめとした3つのテーマで研究を推進してきました。2024年2月の第1回オープンフォーラムでは、従来の「線形経済」から「循環経済」への移行に向けた国内外の情勢を踏まえ、サーキュラーエコノミー社会(以下、「CE社会」といいます。)の将来像や技術的・制度的課題を抽出し、関係者と問題意識を共有しました。2025年2月の第2回オープンフォーラムでは、CE社会における「ありたき将来」実現に向けた具体的な技術やルール、行動変容を促す仕組みに関する検討結果を紹介し、外部有識者とのパネルディスカッションを通じて議論を深めました。 ④著名な社外表彰やデザイン賞の獲得当社の製品や技術、デザインが社外で高く評価され、著名な表彰を受賞しました。 (イ)熟練者ノウハウを反映可能な生産計画最適化技術の開発と実用化で「大河内記念生産賞」を受賞(コネクティブインダストリーズセグメント)公益財団法人大河内記念会が主催する「第71回(令和6年度)大河内賞」において、熟練者ノウハウを反映可能な生産計画最適化技術の開発と実用化で「大河内記念生産賞」を受賞しました。本技術は、過去に熟練者が立案した計画履歴データの分析により熟練者のノウハウをデジタル化し、機械学習技術を組み込むことで熟練者の計画を再現できる計画最適化技術です。当グループのLumadaソリューションである「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」に本技術が活用されています。今回、高齢化が進む熟練者からのノウハウの伝承や、働き方改革に向けた労働時間低減等の社会課題の解決に大きく寄与する取組が評価され、受賞に至りました。 (ロ)LABOSPECT® 006 α 自動分析装置が「十大新製品賞 日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞(コネクティブインダストリーズセグメント)㈱日刊工業新聞社が主催する第67回「十大新製品賞」において、㈱日立ハイテクが販売する「LABOSPECT® 006 α 自動分析装置」が「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞しました。本装置は、特定機能病院をはじめ、衛生検査所やクリニック等の臨床検査の現場で活用されている血液の生化学分析を自動で行う装置です。今回、測定前の作業やメンテナンスの大幅な省力化により検査技師の負担を軽減し、検査室での新しい働き方を支える製品として評価され、受賞に至りました(㈱日立ハイテクとの共同受賞)。 LABOSPECT 006® α 自動分析装置 (ハ)阪急電鉄2300系座席指定サービス『PRiVACE』用車両及び仙台市営地下鉄南北線の新型車両3000系が公益財団法人日本デザイン振興会主催の「2024年度グッドデザイン賞」を受賞(グリーンエナジー&モビリティセグメント)阪急電鉄㈱と当社が共同で製造した「阪急電鉄2300系座席指定サービス『PRiVACE』用車両」は「日常の“移動時間”を、プライベートな空間で過ごす“自分時間”へ」をコンセプトとしています。今回、上質感を高めながら快適性とプライベート感の両立を実現したことが評価され、受賞に至りました(阪急電鉄㈱との共同受賞)。また、当社が製造し、仙台市交通局が運行する地下鉄南北線の新型車両3000系は、「杜の都」仙台のケヤキ並木をイメージしたシート・ファブリックと爽やかな木目調の仕切り板により、明るさの中にも静謐さが漂う内装デザインとなっていることや、ホームと車両の段差が小さくなったこと、ペアガラスの採用による静音性の向上によって、乗客の安全性と快適性の向上にも寄与していることが評価され、受賞に至りました(仙台市交通局との共同受賞)。 阪急電鉄2300系座席指定サービス『PRiVACE』用車両の外観(左)及び内観(右) 仙台市営地下鉄南北線の新型車両3000系の外観(左)及び内観(右)
FY2024|5,695 文字
6【研究開発活動】(1)研究の目的及び主要課題当グループ(当社及び連結子会社)は、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」を成長ドライバーとして、社会イノベーション事業のさらなる進化をめざしています。「グローバル事業成長に向けて、デジタル、グリーンによるイノベーション創生」を研究開発のミッションとして掲げ、研究開発資源を、顧客体験を革新するイノベーションや社会の本質課題を捉えたイノベーションの創生に重点的に配分し、顧客と社会の課題解決に努めることで、プラネタリーバウンダリーを越えない社会の維持と一人ひとりのウェルビーイングの実現の両立、そして将来にわたる継続的な事業成長をめざします。事業活動の競争力強化及び将来の成長に向けた取組として、Lumada成長サイクルの具体化により顧客の成長シナリオを策定し、顧客価値を起点としたDX(デジタルトランスフォーメーション)/GX(グリーントランスフォーメーション)をOne Hitachiで実現するとともに、さらに先を見据えたバックキャスト型のコーポレートR&Dを通じた次のLumadaソリューション創生を、グローバル体制で推進しています。そのために、デジタル技術基盤の拡大と、海外の研究リソースの強化を図っています。また、グループ横断で成長戦略をリードする日立デジタル社、グローバル環境事業本部、環境戦略企画本部、イノベーション成長戦略本部と連携し、当グループ一丸となって社会イノベーション事業のさらなる進化を加速します。 (2)研究開発体制当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めています。また、国内外の大学や研究機関との連携に加え、2019年4月には研究開発グループ国分寺サイトに研究開発拠点「協創の森」を開設し、顧客やパートナーとのオープンな協創を加速しています。さらに、コーポレートベンチャリング室を設立し、これまで組成した3つのファンドを通じて、合計30社以上のスタートアップ企業に出資し、当グループの事業とのコラボレーションを通じて各企業の成長を支援しつつ、顧客に価値を提供することで、DX、脱炭素、ウェルビーイングなどに貢献しています。社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、2022年4月に、研究開発グループの組織を再編しました。これまで、当グループのフロントとともに価値起点でのイノベーション創生を担ってきた「社会イノベーション協創センタ」と、価値創生を支える世界No.1技術の開発を担ってきた「テクノロジーイノベーションセンタ」を一体化して、「デジタルサービス研究統括本部」、「サステナビリティ研究統括本部」に再編し、DX及びGXによる価値創生を強化しました。将来への布石を担う「基礎研究センタ」、北米、欧州、中国、アジア及びインドの海外研究開発拠点とともにグローバル一体となってイノベーション創生を推進しています。 (3)イノベーション投資当グループのさらなる成長に向けて、グループ全体のイノベーション投資を拡大します。2023年4月に、コーポレートベンチャリング投資として新たに第3号ファンドを、これまでに設立した第1号、第2号ファンドの2倍に相当する300百万米ドルで組成し、Web3、生成AIをはじめとする最新のデジタルトレンドを牽引するスタートアップ企業への戦略的な投資を行います。また、先端研究については、2024中期経営計画の3年間累積で約1,000億円投資する予定です。これらの投資を通じて、将来の社会課題の解決に向けた破壊的イノベーションの創出、Lumada成長サイクルの実現による当グループの成長への貢献をめざしていきます。 (4)研究開発費 当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.0%にあたる2,901億円であり、セグメントごとの研究開発費及び研究開発費の推移は次のとおりです。 セグメントの名称研究開発費(億円) デジタルシステム&サービス541 グリーンエナジー&モビリティ652 コネクティブインダストリーズ910 オートモティブシステム506 その他30 全社及び消去259 合 計2,901 (5)研究成果 当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。①現場データの収集技術や生成AIを活用した「現場拡張メタバース」を開発(デジタルシステム&サービスセグメント、グリーンエナジー&モビリティセグメント、コネクティブインダストリーズセグメント)エネルギーや交通分野の建設・製造・保全などの現場で、施工・製造などの現場関係者と設計・品証・管理部門などの現場外関係者の情報共有や合意形成を促進し、現場業務を迅速に進めるためのメタバース技術として、産業分野での活用を想定した「現場拡張メタバース」を発表しました。これまでに蓄積した多様な産業分野でのデジタルソリューション開発の知見に基づき、簡便な3Dスキャン技術などによりメタバース空間上に現場を迅速に再現し、これを現場データの蓄積や可視化のためのプラットフォームと位置づけて、デジタル技術に不慣れな顧客でも生成AIを含むAI技術によって、容易にデータを利活用することができます。当グループは、現場作業を効率化することでグローバルな社会インフラの持続可能な運用や管理に貢献していきます。 メタバースで再現された鉄道車両の内部 ②気候変動に伴う浸水リスクを高速にシミュレーションする環境省の開発途上国向けWebサービス「FloodS」を構築(デジタルシステム&サービスセグメント)環境省の請負事業のもと、アジア太平洋地域をはじめとする開発途上国での利用を想定した、浸水予測Webサービス「FloodS」を構築し、2023年11月30日から環境省が無償で提供を開始しました。本サービスは、河川氾濫、降雨、高潮による浸水状況の時間変化を高速にシミュレーションし、Webブラウザーの地図上に予測結果を表示するもので、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)のジャパン・パビリオン(日立ブース)にて紹介されました。今後も当グループは、デジタル技術を活用した官民連携での国際協力の取組などを通じ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成や、気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化に対する適応力強化など社会インフラの強靭化を支援していきます。 ③新型特急車両N100系SPACIA Xが「iF DESIGN AWARD 2024」及び「2023年度グッドデザイン賞」を受賞(グリーンエナジー&モビリティセグメント)鉄道車両N100系 SPACIA X(以下、「スペーシアX」といいます。)が「iF International Forum Design GmbH」が主催する「iF DESIGN AWARD 2024」及び公益財団法人 日本デザイン振興会主催の「2023年度グッドデザイン賞」を受賞しました。浅草と日光・鬼怒川エリアをつなぐ新型特急車両として2023年7月15日より運行を開始したスペーシアXは、「Connect & Updatable」をコンセプトに、従来の100系「スペーシア」が築き上げてきた伝統やブランド・イメージを維持・継承しながら、より進化した上質なフラッグシップ特急をめざし製作した車両です。車体色・車内照明に沿線観光地の文化的な色彩や造形を取り入れたデザインを採用しているほか、多様なニーズにお応えするため、コックピットラウンジ・コックピットスイートをはじめ、6種類のシートバリエーションを設えております。今回、こうしたデザインが評価され、受賞に至りました(東武鉄道㈱との共同受賞)。 スペーシアX 外観コックピットスイート コックピットラウンジスペーシアX ロゴ ④脱炭素社会の実現に向けた充電インフラ拡充及びEV普及に貢献する大容量マルチポートEVチャージャを製品化(コネクティブインダストリーズセグメント)㈱日立インダストリアルプロダクツでは、電気自動車(EV)の急速充電を可能にする大容量マルチポートEVチャージャを、2023年10月に製品化しました。このマルチポートEVチャージャには、当グループが開発したEV充電技術が搭載されています。大容量かつマルチポート化により同時に充電できる台数を増加させることで、充電時間の短縮と充電渋滞の解消を実現、充放電制御技術により系統増強工事を必要としない系統混雑の緩和や、再生可能エネルギー電源接続量の増加、電圧制御の安定化が可能となります。加えて高効率電力変換技術によりEVが持つ分散型エネルギーリソースの価値を最大化させるものです。当グループは、グループ全体で連携することで脱炭素社会の実現に貢献していきます。 マルチポートEVチャージャ ⑤High-NA EUV世代のデバイス開発と量産におけるニーズに応えた高精度電子線計測システム「GT2000」を発売(コネクティブインダストリーズセグメント)㈱日立ハイテクでは、2023年12月12日に高精度電子線計測システム「GT2000」を発売することを発表しました。本製品は、同社がトップシェアをもつCD-SEM(注1)の技術やノウハウを適用しながら、High-NA EUV露光(注2)向けに低ダメージ高精度計測及び超高速多点計測機能を、また先端半導体デバイスで適用が進む3Dデバイス構造向けに新規検出系を搭載したほか、量産段階で要求される測長値差のさらなる改善を実現しました。当グループの研究開発では、「GT2000」の最先端の加工ノードに対応した世界トップクラスの計測精度の実現に貢献しました。当グループは、顧客の多様なニーズに応え、最先端のモノづくりに貢献していきます。(注)1.CD-SEM:ウェーハ上に形成された半導体の微細な回路パターンの線幅や穴径等の寸法を高精度に計測する装置2.High-NA (Numerical Aperture) EUV (Extreme ultraviolet)リソグラフィー:波長が13.5nmの極端紫外線(extreme ultraviolet)で、従来よりもNA(開口数)を向上させたリソグラフィー用露光装置 高精度電子線計測システム「GT2000」 ⑥オープンイノベーションによる社会課題解決とエコシステム構築に向けた取組(全社)将来の社会課題解決に向けて、オープンイノベーションによる最先端技術開発とエコシステム構築に取り組みました。(i) シリコン量子コンピューティング量子コンピュータは,従来のコンピュータでは解けない問題を解くことができる新概念コンピューティング技術として期待されています。当社では、30年以上の歴史がある「日立ケンブリッジラボ」での量子物理基礎研究に加え、2020年からは国立研究開発法人科学技術振興機構のムーンショット型研究開発事業(グラント番号JPMJMS2065)を通してアカデミアと連携し、量子コンピュータの課題である大規模化に優位なシリコン量子コンピュータの研究を推進しています。2023年度は量子ビットを効率良く制御可能な「シャトリング量子ビット方式」を提案し、その効果を確認するとともに、大学共同利用機関法人自然科学研究機構分子科学研究所と量子オペレーティングシステムの共同研究を開始、大規模集積化に向けた研究を加速し、量子コンピュータの早期実用化をめざしています。 (ii) 日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボにてオープンフォーラムを開催リサイクル・リユースの推進や再生可能エネルギーの導入拡大など、限りある資源の有効活用を通じて持続可能な世界を実現する取組が世界的に広がっているなか、当社と国立研究開発法人産業技術総合研究所は、2022年10月に「日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立して以来、循環経済社会の実現に向けた研究を推進してきました。2024年2月に開催された第1回オープンフォーラムでは、循環経済へのトランジションに向けた国内外の情勢や同ラボにおける研究の成果を踏まえ、2050年の循環経済社会の姿とその実現に向けた技術的・制度的課題について議論しました。 (iii) デジタルオブザーバトリ研究推進機構のオープンフォーラムを共同開催多様な社会・経済活動のデータ観測とその利活用による社会リスクの把握・予兆発見・回避、及びレジリエントな社会の実現を目的として、国立大学法人東京大学(以下、「東京大学」といいます。)に設立された「デジタルオブザーバトリ研究推進機構」では、2023年10月10日に設立記念フォーラムを共同開催しました。本機構において、当社は2つの研究グループを東京大学と共同推進しています。フォーラムでは、2050年を見据えレジリエントな社会の実現に向けて産学官がどのように連携すべきかについて、対談により課題解決に向けた方策などを議論しました。 (iv) 日立東大ラボがインペリアルカレッジロンドンとの合同ワークショップを実施2023年11月2日に日立東大ラボ及びインペリアルカレッジロンドン(以下、「ICL」といいます。)の代表者がエネルギーシステムの将来及び国際的協力の在り方について議論しました。東京大学とICLは、2023年5月に当社立会いのもとで脱炭素技術やクリーンテック技術の創出に関する戦略的関係の構築に合意する趣意書を締結しており、本ワークショップは、こうした連携強化に関する具体的な取組の第一歩です。パネルディスカッションでは、今後の再生可能エネルギーの導入に対する日英それぞれの立場をもとに制度面や技術面での喫緊の課題、及びカーボンニュートラルへの移行に関する国際的な課題や協力の在り方について議論しました。
FY2023|5,291 文字
6【研究開発活動】(1)研究の目的及び主要課題当グループ(当社及び連結子会社)は、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」を成長ドライバーとして、社会イノベーション事業のさらなる進化をめざしています。「グローバル事業成長に向けたデジタルによるイノベーション創生の加速」を研究開発のミッションとして掲げ、研究開発資源を、顧客体験を革新するイノベーションや社会の本質課題を捉えたイノベーションの創生に重点的に配分することで、事業の継続と将来の成長及びお客さまと社会の課題解決に努め、プラネタリーバウンダリーを越えない社会の維持と、一人ひとりのウェルビーイングの実現の両立をめざします。事業活動の競争力強化及び将来の成長に向けた取り組みとして、Lumada成長サイクルの具体化によりお客さまの成長シナリオを策定し、顧客体験起点のDX(デジタルトランスフォーメーション)をOne Hitachiで実現するとともに、2050年からのバックキャストに基づく破壊的イノベーションの創生をグローバル体制で推進しています。そのために、デジタル技術基盤の拡大と、海外の研究リソースの強化を図っています。さらに、グループ横断で成長戦略をリードする日立デジタル社、グローバル環境事業統括本部、イノベーション成長戦略本部と連携し、関連するGlobalLogic社、日立エナジー社等とともに社会イノベーション事業のさらなる進化を加速します。 (2)研究開発体制当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めています。また、国内外の大学や研究機関との連携に加え、2019年4月には研究開発グループ国分寺サイトに研究開発拠点「協創の森」を開設し、お客さまやパートナーとのオープンな協創を加速しています。さらに、コーポレートベンチャリング室を設立し、これまで組成した2つのファンドを通じて、合計21社のスタートアップ企業に出資し、日立の事業とのコラボレーションを通じて各企業の成長を支援しつつ、お客さまに価値を提供することで、DX、脱炭素、ウェルビーイングなどに貢献しています。 社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、2022年4月に、研究開発グループの組織を再編しました。これまで、日立のフロントとともに価値起点でのイノベーション創生を担ってきた社会イノベーション協創センタと、価値創生を支える世界No.1技術の開発を担ってきたテクノロジーイノベーションセンタを一体化して、「デジタルサービス研究統括本部」、「サステナビリティ研究統括本部」に再編し、DX及びGX(グリーントランスフォーメーション)による価値創生を強化しました。将来への布石を担う「基礎研究センタ」、北米、欧州、中国、アジア及びインドの海外研究開発拠点とともにグローバル一体となってイノベーション創生を推進しています。 (3)イノベーション投資 当グループのさらなる成長に向けて、グループ全体のイノベーション投資を拡大します。 2023年4月に、コーポレートベンチャリングリング投資として新たに第3号ファンドを、これまでに設立した第1号、第2号ファンドの2倍に相当する300百万米ドルで組成し、Web3、生成AIをはじめとする最新のデジタルトレンドを牽引するスタートアップ企業への戦略的な投資を行います。また、先端研究については、2024中期経営計画の3年間累積で約1,000億円投資する予定です。これらの投資を通じて、将来の社会課題の解決に向けた破壊的イノベーションの創出、Lumada成長サイクルの実現による当グループの成長への貢献をめざしていきます。 (4)研究開発費 当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の2.9%にあたる3,162億円であり、セグメントごとの研究開発費及び研究開発費の推移は次のとおりです。 セグメントの名称研究開発費(億円) デジタルシステム&サービス527 グリーンエナジー&モビリティ533 コネクティブインダストリーズ846 オートモティブシステム764 日立建機95 日立金属91 その他35 全社及び消去267 合 計3,162 (注)( )内の数値は、研究開発費の売上収益合計に占める割合です。 (5)研究成果 当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。①材料開発におけるMI推進に向け、先進デジタル技術を用いた協創を開始(デジタルシステム&サービスセグメント) 新材料開発の加速や研究開発の効率化・高度化をめざして、材料に関するデータとAIなどのデジタル技術を駆使することにより、短期間で効率的に材料特性や知見を見出すことが可能なマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の推進に取り組みました。材料の性能予測モデルの構築に量子コンピュータを疑似的に再現する「CMOSアニーリング」を適用することで、機械学習モデルの予測精度を向上させ、材料開発の期間を約20%短縮できる見通しを得ました。今後、Lumadaの「材料開発ソリューション」として、本技術の実用化をめざします(積水化学工業㈱との協創活動における成果)。 ②国内初のデジタルな仕組みを用いた環境債「ホールセール向けグリーン・デジタル・トラック・ボンド」の発行に関する協業を開始(デジタルシステム&サービスセグメント) ㈱BOOSTRYが提供するブロックチェーン基盤を活用した社債型セキュリティ・トークンのスキームを利用し、国内初となる公募ホールセール向けグリーン・デジタル・トラック・ボンドの発行に向けて協業を開始しました。本協業では、日立が開発した「サステナブルファイナンスプラットフォーム」の一部が各種環境データを記録・管理する基盤として活用されています。本取組みから得られた学びや洗い出された課題を共有していくことで、社会全体のカーボンニュートラルへの貢献をめざします(㈱日本取引所グループ、野村證券㈱、㈱BOOSTRYとの協業)。 ③AI映像解析ソリューションの開発で「第52回 日本産業技術大賞 文部科学大臣賞」を受賞(デジタルシステム&サービスセグメント) 「安心・安全な社会構築を支えるAI映像解析ソリューションの開発」で㈱日刊工業新聞社が主催する「第52回 日本産業技術大賞 文部科学大臣賞」を受賞しました。「AI映像解析ソリューション」は、日立のAI映像解析技術を活用し、数万人規模の映像データから、外見や行動などの特徴を高速に判別して、約1秒で対象人物や物体を見つける「高速検索」と、多数の防犯カメラから位置情報や撮影時刻を使って移動経路を追跡できる「リアルタイム追跡」を特長とするソリューションです。大規模な公共空間における高効率なセキュリティ業務を支援します。昨年、映像中の人物の姿勢の変化や人と物の所有関係を捉える新たなAI技術を開発し、不審行動や荷物の置き去りを早期発見するための機能を拡充したソリューションの提供を開始しました(㈱日立産業制御ソリューションズとの共同受賞)。 ④日立が、電力事業者をはじめとした企業向けに、設備の点検・監視・最適化を支援する「Lumada Inspection Insights」を発売(グリーンエナジー&モビリティセグメント、デジタルシステム&サービスセグメント) 電力事業者をはじめとした企業向けに、送電網などの重要設備の点検、監視、最適化のためのデジタルソリューション「Lumada Inspection Insights」を発売しました。「Lumada Inspection Insights」は、日立エナジー社と日立ヴァンタラ社が共同で開発したもので、日立が開発したAI技術が搭載されています。衛星画像や、リモートセンシング技術の一つであるLiDAR、温度分布などの写真や動画をAIで解析することで、お客さまの設備点検の自動化と、安全性の向上、天候に関連するリスクや山火事による環境影響の低減、サステナビリティ目標の達成に貢献します。 ⑤半導体測長SEM「CG7300」の開発と高精度化で「第69回大河内記念生産賞」及び「第9回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞」を受賞(コネクティブインダストリーズセグメント) 極端紫外線露光世代の半導体測長SEM「CG7300」の開発と高精度化で、公益財団法人大河内記念会が主催する「第69回大河内記念生産賞」及び経済産業省が主催する「第9回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞」を受賞しました。「CG7300」の製品化に当たり、ナノメートルレベルの極めて小さな回路パターンの寸法を計測するため、高精度なフォーカス合わせを実現する対物レンズ、電子ビーム揺れ抑制技術及び電子ビーム形状補正デジタル処理技術を開発しました。これにより、個別装置間のパターン寸法計測値差(機差)を従来機種比で約10%精度向上(機差:0.10nm以下レベル)に成功し、世界最高水準の半導体パターン検査技術を確立しました。今後も最先端のモノづくり及びデジタル社会を支える産業の持続的発展に貢献していきます(㈱日立ハイテクとの共同受賞)。 半導体測長SEM「CG7300」 ⑥日立ブランド 家電5製品が「2022年度グッドデザイン賞」を受賞、さらに上位の「グッドデザイン金賞」に日立グループ初の2製品同時選出(コネクティブインダストリーズセグメント) 日立ブランド 家電5製品が、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2022年度グッドデザイン賞」を受賞し、そのうち2製品が「グッドデザイン金賞」に選出されました。「グッドデザイン金賞」を受賞したのは、再生プラスチックの使用率を40%以上としたコードレス スティッククリーナー「パワーブーストサイクロン」PV-BH900SKと、生活スタイルや好みに合わせて使える新コンセプト冷蔵庫「Chiiil(チール)」です。「グッドデザイン金賞」のダブル受賞は、日立グループとして初めてとなります。日立の家電は「実用品としての使い勝手」と「生活の邪魔にならない美しさ」の両立を提供すべきデザイン価値の核としています。今後も人々の生活に寄り添い、生活者一人ひとりのQoL(Quality of Life)向上に貢献していきます(日立グローバルライフソリューションズ㈱との共同受賞)。 ⑦小型・省エネルギーを両立するEV向け薄型インバーター技術を開発(オートモティブシステムセグメント) EV向けの電力変換器(以下、「インバーター」といいます。)として、省エネルギーと小型化を両立した薄型インバーターの基本技術を開発しました。電力供給を制御するパワー半導体をプリント配線基板と一体化して集積することで電力配線を簡素化し、パワー半導体がスイッチ動作する際に発生するエネルギー損失を、従来比で30%低減するとともに、約50%の小型化を実現しました。また、新構造によりパワー半導体や電力配線の溶接工程を不要とするなど、部品数や組み立てに必要な工程を削減し、インバーターの生産工程を含めたライフサイクルでのCO2排出量削減が可能です。今後、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進するグリーンイノベーション基金事業なども活用し、本技術の実用化に向けた取り組みを進め、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます(日立Astemo㈱との共同開発)。 ⑧脱炭素社会及び循環経済社会の実現に向けて、アカデミアとの連携を加速(全社) インペリアル・カレッジ・ロンドンと脱炭素・自然気候ソリューションのための共同研究センターを設立しました。気候変動による影響を抑えるには速やかな脱炭素化が不可欠であり、そのためには産業やライフスタイルの変革が必要です。さらに、食料や水を生み、大気中のCO2を除去するなどの不可欠な役割を果たしてくれる自然環境を保護する必要もあります。そこで、本センターでは脱炭素化と気候変動修復の二つに焦点を当て、DAC(Direct Air Capture)や自然の最適化などによるCO2排出量削減に向けた道筋を評価し、必要な社会トランジションを特定していきます。 また、国立研究開発法人産業技術総合研究所と循環経済社会の実現をめざす共同研究拠点「日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立しました。ライフサイクルアセスメント、資源回収、モノづくりやサービス工学をはじめとした両者の専門家が集結し、業種を横断したバリューチェーン全体で資源を高効率に利用し合う循環経済社会のあるべき社会像や必要なルール、課題解決策などの共同研究を推進します。 日立は、国内外の大学や研究機関との連携を加速し、サステナブルな社会の実現や脱炭素への貢献をめざします。
FY2022|4,152 文字
5【研究開発活動】(1)研究の目的及び主要課題 当グループ(当社及び連結子会社)は、デジタルとグリーンを軸とした社会イノベーション事業に対して重点的に研究開発資源を配分して、DX及びグリーントランスフォーメーション(GX)による価値創成を強化し、事業の継続と将来の成長及びお客さまと社会の課題解決に努めるとともに、人々のQoLを高めることをめざしています。 事業活動のグローバル競争力強化に加え、将来の成長に向けた中長期的な取り組みとして、顧客課題・社会課題解決に向けた協創活動、世界No.1技術及び破壊的技術の創生に投資するとともに、成長エンジンであるLumada事業拡大やグローバル展開を推進するために、デジタル技術基盤の拡大と、海外の研究リソースの強化を図っています。関連するGlobalLogic、日立エナジーや日立Astemo㈱等の各研究開発部門とともに社会イノベーション事業のさらなる進化を加速します。 (2)研究開発体制 当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めています。さらに、国内外の大学やその他の研究機関との連携に加え、2019年4月にコーポレートベンチャリング室を新設し、2021年10月には第2号ファンドを設立するなど、スタートアップ企業との連携強化にも積極的に取り組んでいます。 当社は、社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、北米、欧州、中国、アジア及びインドの研究開発拠点・人員の拡充及び現地主導型研究の拡大により、現地のニーズに迅速に対応できる研究開発の推進を図っています。また、2015年には、国内外の研究開発拠点を再編し、お客さまとともに課題を見出し、新たなソリューションを協創する「社会イノベーション協創センタ」、注力分野の技術基盤を応用・融合することにより革新的な製品やサービスを創出し、新たなソリューション開発を支援する「テクノロジーイノベーションセンタ」、オープンイノベーションを活用し、独創的なビジョンに基づく探索型基礎研究で新領域を開拓する「基礎研究センタ」とする体制としています。2019年には、お客さまやパートナーとのオープンな協創を加速するための研究開発拠点として「協創の森」を開設し、2020年4月には、データサイエンティストのトップクラスの人材を集結させてデジタルソリューションによるさらなる価値向上を図るため、「Lumada Data Science Lab.」を協創の森内に開設しました。 協創の森(中央研究所) (3)研究開発費 当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.1%にあたる3,173億円であり、セグメントごとの研究開発費は、次のとおりです。 セグメントの名称研究開発費(億円) IT515 エネルギー383 インダストリー106 モビリティ306 ライフ505 オートモティブシステム758 日立建機254 日立金属124 その他18 全社(本社他)200 合 計3,173 研究開発費の推移(注)( )内の数値は、研究開発費の売上収益合計に占める割合です。 (4)研究成果 当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。①企業内の「ダークデータ」に着目した「データ抽出ソリューション」を提供開始(ITセグメント) 「ダークデータ」と呼ばれる、日々の企業活動で生成・蓄積されるものの有効活用できていない膨大なデータに光をあて、新たな価値を見出す「データ抽出ソリューション」を開発し、提供を開始しました。本ソリューションは、日立が参画する米国スタンフォード大学の企業参画プログラムで開発されたAIを中核としたダークデータ分析エンジンを活用し、請求書や診療明細書といった発行元によって様式や表記が異なる非定型ドキュメントの利活用において、取得したいデータの抽出作業を自動化・高度化するものです。日々蓄積する膨大なダークデータの中から、価値あるデータを導き出し、データ利活用による経営判断の迅速化やビジネスの変革に貢献します。 ②「協創の森」で、日立の脱炭素関連技術を活用したエネルギーマネジメントシステム実証環境の運用を開始(エネルギーセグメント) 研究開発拠点「協創の森」に、日立の発電・蓄電・設備保守などの技術を結集させたエネルギーマネジメントシステムの実証環境を構築し、運用を開始しました。本エネルギーマネジメントシステムの効果を国分寺サイトで2020年度に検証した結果、2018年度との比較で、CO2排出量を20%削減しながら、エネルギーコストを30%削減できることを確認しました。今後、日立は本環境を活用し、日立とお客さまのゼロエミッション化を推進するとともに、環境分野での顧客協創を推進し、新たなエネルギーソリューションの創出をめざします。 ③製造業・社会インフラ分野のDX推進に向け5G SAとARを活用した組み立て作業支援を実証(ITセグメント、インダストリーセグメント) 製造業や社会インフラ分野でのDX推進に向けたユースケース創出のため、SA(注1)方式の5G環境下で、AR(注2)技術を活用した組み立て作業支援のアプリケーションが安定稼働できるかを確認する実証実験を実施しました。本アプリケーションは、作業現場の映像データをAIでリアルタイムに分析・判断し、作業台上にプロジェクターから作業者がとるべき行動をプロジェクションマッピングで表示することで、的確な作業支援を行うものです。今回、NTTドコモが提供する5Gサービスを用いて実証を行った結果、4G LTEでは満たせなかったアプリケーションの安定稼働のための許容条件をクリアできることを確認しました(㈱NTTドコモとの共同実証)。(注)1.SA:5G専用の基地局と5G専用のコアネットワークを用いる方式。2.AR:プロジェクターなどの端末を通して実環境にデジタル情報を重ね合わせる技術。 ④標準型エレベーター「アーバンエース HF」が「グッドデザイン賞」「iF DESIGN AWARD」及び「十大新製品賞」を受賞(モビリティセグメント) 標準型エレベーターの新モデル「アーバンエース HF」が、(公財)日本デザイン振興会が主催する「2021年度グッドデザイン賞」、iF International Forum Design GmbHが主催する「iF DESIGN AWARD 2022」及び㈱日刊工業新聞社が主催する第64回(2021年)「十大新製品賞 日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞しました。「アーバンエース HF」は、「かご内クリーン運転」や「密集回避運転」、「非接触登録装置」などの最新の感染症リスク軽減ソリューション、ビルオーナー・管理者向けダッシュボード「BUILLINK」をはじめとするLumadaのソリューションの適用などによって、ニューノーマル時代のスタンダードとなる安全・安心・快適を提供し、新たなエレベーター利用体験を実現します(㈱日立ビルシステムとの共同受賞)。「アーバンエース HF」 ⑤体内で放射線がん治療を行う「アルファ線内用療法」に必要な材料、アクチニウム225の高効率・高品質な製造技術を世界で初めて確立(ライフセグメント) 放射線がん治療法の一つであるアルファ線内用療法に必要な、アクチニウム225を、高効率・高品質に製造可能な技術を世界で初めて確立しました。アルファ線内用療法は、がん細胞を破壊するアルファ線を放出する物質と、がん細胞に選択的に集積する薬剤を組み合わせた治療薬を患者に投与し、体内からがん細胞を攻撃する新しい治療法です。体内に広く分散したがん細胞など、既存の方法では治療困難ながんにも効果があることが知られ、早期実用化が期待されています(国立大学法人東北大学及び国立大学法人京都大学との共同開発)。 ⑥インホイール式EVの実現に向けて小型・軽量のダイレクト駆動システム「Direct Electrified Wheel」を開発(オートモティブシステムセグメント) 脱炭素社会の実現に向けて普及が進むEV向けに、ホイール内部にモーターとインバーター、ブレーキを一体で搭載可能な小型・軽量のダイレクト駆動システム「Direct Electrified Wheel」を開発しました。開発したモーターは、EVの走行に必要となる高い駆動力をホイールに直接伝えるとともに、モーターを軽量化することで、従来のインホイール式で課題だったホイール内の重量増加を大幅に抑制しました。また、小型化したモーターにインバーターとブレーキを一体化することで、サスペンションなどの既存構造を大きく変更せずにホイール内部への搭載を可能としました。本技術の実用化に向けた研究を進め、車内空間やバッテリー設置スペースの拡大が容易なインホイール式のEVの実現に貢献していきます(日立Astemo㈱との共同開発)。 ダイレクト駆動システム「Direct Electrified Wheel」(赤色部分をホイール内部に搭載)「Direct Electrified Wheel」をホイール内部に搭載したEV(モックアップ) ⑦サイバー攻撃を受けた際に、機密性を保ちながら対策情報を他組織と迅速に共有可能な技術を開発(ITセグメント、全社(本社他)) サイバー攻撃を受けた際に、機密性を保ちながら、対策情報を他組織の専門家と迅速に共有可能な技術を開発しました。本技術では、攻撃を受けた組織は対策状況を記載したインシデントチケットを作成し、協調防衛に参加する組織ごとの機密管理の信頼度や、チケットを送付することで自組織が得られる利益の期待値に基づき、チケットの記載内容を加工します。攻撃への対処実績がある相手組織にチケットを共有して有用なフィードバックを得ることで、自組織の攻撃対処を円滑に進めることを可能とし、安心・安全なデジタル社会の実現に貢献していきます(慶應義塾大学及び中部電力㈱と共同開発)。
FY2021|3,969 文字
5【研究開発活動】(1)研究の目的及び主要課題 当グループ(当社及び連結子会社)は、社会イノベーション事業に対して重点的に研究開発資源を配分して、環境、レジリエンス、安心・安全の3つの事業領域における価値創生に取り組んでおり、事業の継続と将来の成長及びお客さまの社会価値・環境価値・経済価値の向上に努めるとともに、人々のQoLを高めることをめざしています。 事業活動のグローバル競争力強化のため、お客さまと接するフロントとともに価値起点でのイノベーション創生を進めています。また、再編したHitachi ABB Power Grids Ltdや日立Astemo㈱等のリソースを活用しつつ、事業のグローバル化やLumada事業の拡大に貢献するため、価値創生を支える強いプロダクト・サービスや世界No.1の技術の開発等に取り組んでいます。加えて、将来の社会課題解決に向けた布石としての、先端研究にも取り組んでいます。また、2021年2月には、Lumadaをエンジンに推進する社会イノベーション事業において、人間中心のAIを開発・社会実装するために「AI倫理原則」を策定するなど、お客さまの課題解決に資する研究開発のさらなる推進を図っています。 (2)研究開発体制 当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めています。さらに、国内外の大学やその他の研究機関との連携に加え、2019年4月にコーポレートベンチャリング室を新設するなど、スタートアップ企業との連携強化にも積極的に取り組んでいます。 当社は、社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、北米、欧州、中国、アジア及びインドの研究開発拠点・人員の拡充及び現地主導型研究の拡大により、現地のニーズに迅速に対応できる研究開発の推進を図っています。また、2015年には、国内外の研究開発拠点を再編し、お客さまとともに課題を見出し、新たなソリューションを協創する「社会イノベーション協創センタ」、注力分野の技術基盤を応用・融合することにより革新的な製品やサービスを創出し、新たなソリューション開発を支援する「テクノロジーイノベーションセンタ」、オープンイノベーションを活用し、独創的なビジョンに基づく探索型基礎研究で新領域を開拓する「基礎研究センタ」とする体制としています。2019年には、お客さまやパートナーとのオープンな協創を加速するための研究開発拠点として「協創の森」を開設し、2020年4月には、データサイエンティストのトップクラスの人材を集結させてデジタルソリューションによるさらなる価値向上を図るため、「Lumada Data Science Lab.」を協創の森内に開設しました。 協創の森(中央研究所) (3)研究開発費 当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.4%にあたる2,935億円であり、セグメントごとの研究開発費は、次のとおりです。 セグメントの名称研究開発費(億円) IT548 エネルギー314 インダストリー105 モビリティ286 ライフ1,059 日立建機247 日立金属144 その他46 全社(本社他)182 合 計2,935 (4)研究成果 当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。①安全な生体認証を実現するクラウドサービス「生体認証統合基盤サービス」を提供開始(ITセグメント) 指静脈や顔、虹彩などの生体情報を暗号化して登録し、照合することで、安全かつ確実に本人を特定する日立独自の「公開型生体認証基盤(PBI(注))」に、決済連携機能や商業施設での入退場管理機能などを付加したクラウドサービス「生体認証統合基盤サービス」の提供を開始しました。PBIを活用し、生体情報を復元できない形式にしてクラウド上に登録することで、安全な本人認証やキャッシュレス決済を実現します。なお、本サービスは、日刊工業新聞社による第63回(2020年)十大新製品賞 増田賞を受賞しました。(注) PBI: Public Biometric Infrastructure ②日立独自の計算技術CMOSアニーリングにより、数十人・数百人規模の最適な勤務シフトを作成するソリューションを提供開始(ITセグメント) 数十人・数百人規模の勤務シフトを作成する「勤務シフト最適化ソリューション」の提供を開始しました。本ソリューションの中核技術であるCMOSアニーリングは、「組合せ最適化問題」と呼ばれる極めて複雑で大規模な計算課題を短時間で解くことができる技術です。ニューノーマルの社会では、リモート勤務と出社しての勤務の双方の良さを生かしたフレキシブルな働き方にシフトしていくことが予想されるため、本ソリューションを、デジタルイノベーションを加速する日立のLumadaソリューションの一つとして幅広い業種業態に展開し、ワークライフバランスの向上や多様な働き方への対応を支援していきます。 ③耐久性と低消費電力特性を両立した新構造SiCパワーデバイス「TED-MOS®」を製品化(エネルギーセグメント) 次世代材料の炭化ケイ素(SiC)を用い、電力システムや鉄道、EV、データセンタなどの重要な社会インフラを構成する各種機器・設備の高効率化や省エネ化を実現するパワーデバイスの新製品である「TED-MOS®」のサンプル出荷を2021年3月から開始しました。「TED-MOS®」の提供を通して、さまざまな社会インフラの電力消費量・CO2排出量削減を支援し、脱炭素社会の実現に貢献します(㈱日立パワーデバイスとの共同成果)。 ④5Gソリューション開発の加速に向け、北米のシリコンバレーサイトと協創の森に5G実証環境を整備(インダストリーセグメント) 5GとLumadaを組み合わせ、社会インフラ分野におけるお客さまのニーズに沿ったソリューションの開発加速に向けて、北米のシリコンバレーサイトと協創の森に5G実証環境を整備しました。また、5Gを活用する際の基盤となる、5Gソリューションの導入と運用を容易にする技術を開発、実証しました。これらの環境・技術を活用し、大容量の映像解析による組み立て作業支援や遠隔作業支援などのインダストリー分野をはじめ、モビリティ・エネルギー分野での協創を展開していきます。 ⑤つくばエクスプレス(TX)の新型車両TX-3000系で「2020年度グッドデザイン賞」を受賞(モビリティセグメント) TXの新型車両TX-3000系が、2020年度グッドデザイン賞を受賞しました。全車両に優先席・フリースペースを配置するとともに、列車内を見通しが良く明るい開放的な客室空間とし、さらにシートには、座面が高く、浅く腰掛ける形状で立ち座りしやすいユニバーサルデザイン(UD)シートを採用するなど、車内の快適性を向上させることで、これまでのTXのイメージを継承しながら、更なる飛躍を感じさせるデザインとしました(首都圏新都市鉄道㈱との共同受賞)。TX-3000系 ユニバーサルシートフリースペース車内 ⑥正確で高感度な血液検査を実現する画像処理モジュールで「“超”モノづくり部品大賞」の大賞を受賞(ライフセグメント) 正確で高感度な血液検査を実現する画像処理モジュールが、2020年“超”モノづくり部品大賞の大賞を受賞しました。本モジュールは、CMOSカメラ、LED照明及び画像処理マイコンなどから構成され、血液検査装置の採血管から検体の吸引を行う検体分取部に設置することで、血液検査を行う必要がある検体だけを画像自動判定機能により判定するものです。これまで臨床検査技師が目視確認により判定していた作業の一部を、独自の機械学習を用いたAI技術で自動化したことにより、検査業務の効率を向上させたことが高く評価されました(㈱日立ハイテクとの共同開発)。 血液検査装置 正確で高感度な血液検査を実現する画像処理モジュール ⑦EV普及を加速する800V小型高出力インバータの開発で「市村地球環境産業賞」を受賞(ライフセグメント) カーボンニュートラルに向けて普及が急がれるEVにおいて、充電時間の半減と快適な加速を両立する800V小型高出力インバータを開発し、本インバータが、「市村地球環境産業賞」を受賞しました。これは、高い絶縁耐圧性能と冷却性能を両立する絶縁放熱性に優れた直接水冷型の両面冷却パワーモジュールを開発し、インバータの高耐圧化と小型高出力化を両立したことで得られた成果です。これにより、EVのシステム電圧を従来の約400V程度から800Vへと向上させました(日立Astemo㈱との共同受賞)。 800V小型高出力インバータ直接水冷型両面冷却パワーモジュール ⑧脱炭素社会の実現に向けて設備やサービスごとの再生可能エネルギーの使用状況を見える化するシステムを開発(全社(本社他)) 建物や設備、さらにはサービスごとに再生可能エネルギーで稼働していることをデジタル技術を用いて見える化するシステムを開発しました。2021年2月1日からは、日立の中央研究所内において本システムを導入し、研究所内の「協創棟」における使用電力が100%再生可能エネルギーであることを「Powered by Renewable Energy」として証明するシステムの運用を開始しました。今後、さまざまな業界のパートナー企業と協力することで、本システム及び証明コンセプトを活用したサービスの提供に向けた検討を進め、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
FY2020|2,428 文字
5【研究開発活動】 当グループ(当社及び連結子会社)は、情報・通信システムからオートモティブシステム等に至る幅広い分野で事業活動を展開しており、注力事業である社会イノベーション事業に対して重点的に研究開発資源を配分し、事業の継続と発展、社会価値・環境価値・経済価値向上に努めています。 事業活動のグローバル競争力強化のため、顧客の課題を発掘・共有し、解決する研究開発に取り組むとともに、事業のグローバル化を先導する強いプロダクト・サービスの開発や、Lumada事業拡大に向けたコア技術の強化等に取り組んでいます。加えて、将来の中核事業を開拓するための先端研究にも取り組んでいます。 当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めています。また、大学その他の研究機関との連携に加え、2019年4月にコーポレートベンチャリング室を新設するなど、スタートアップ企業との連携強化にも積極的に取り組んでいます。 当社は、社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、北米、欧州、中国、アジア、及びインド研究開発拠点・人員の拡充及び現地主導型研究の拡大により、現地のニーズに迅速に対応できる研究開発の推進を図っています。また、2015年には国内外の研究開発拠点を再編し、顧客とともに課題を見出し、新たなソリューションを協創する「社会イノベーション協創センタ」、注力分野の技術基盤を応用・融合することにより革新的な製品やサービスを創出し、新たなソリューション開発を支援する「テクノロジーイノベーションセンタ」、オープンイノベーションを活用し、独創的なビジョンに基づく探索型基礎研究で新領域を開拓する「基礎研究センタ」とする体制としています。さらに、2019年4月に、顧客やパートナーとのオープンな協創を加速するための研究開発拠点として「協創の森」を開設しました。かかる体制によって、顧客の課題解決に資する研究開発のさらなる推進を図っています。 当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.4%にあたる2,937億円であり、セグメントごとの研究開発費は、次のとおりです。 セグメントの名称研究開発費(億円) IT532 エネルギー77 インダストリー116 モビリティ294 ライフ618 日立ハイテク329 日立建機237 日立金属159 日立化成322 その他38 全社(本社他)213 合 計2,937 なお、当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。・人工知能を活用し、個人向けローンの与信分析精度向上を実現(ITセグメント) 金融機関が保有する内部データ(カードローン、住宅ローンなど)及び外部データ(経済指標、GIS(地理情報システム)情報など)から精度の高いローン審査を行う人工知能「Hitachi AI Technology/Prediction Rare Case」を開発し、その業務ノウハウをLumadaのユースケースとして蓄積しました。日立は、お客さまの課題に合ったユースケースを活用し、Lumadaを用いて、確かな価値を創出するデジタルソリューションを迅速に実現します。 ・ダークネット通信の分析技術によるサイバー攻撃の予兆検知の実証(ITセグメント及びエネルギーセグメント) 巧妙化するサイバー攻撃を防ぐため、複数組織において観測した不審な通信のうち、一般の通信では発生しないダークネット通信(特定のコンピュータが割り当てられていないアドレスに対する通信)を分析する技術を開発しました。この技術を用いて、これまでは検知することが困難であったサイバー攻撃の予兆を検知できることを実証しました(慶應義塾大学及び中部電力㈱との共同研究)。 ・新型コンピュータを活用した損害保険ポートフォリオ最適化に関する実証実験を開始(ITセグメント) 大規模自然災害の頻発や保険スキーム数などの拡大による、大規模で複雑な損害保険ポートフォリオを最適化するニーズに応えるため、従来型のコンピュータと比較して組合せ最適化問題を高速に解くことができる新型コンピュータ(CMOSアニーリング)を用いた実証実験を開始しました。保険とITの融合によるリスクコントロールの高度化をめざします(損害保険ジャパン日本興亜㈱(現損害保険ジャパン㈱)及びSOMPOリスクマネジメント㈱との共同実験)。 ・省エネ産業用モーターの開発と実用化で市村地球環境産業賞 功績賞を受賞(インダストリーセグメント) アモルファス磁性合金箔による省エネ産業用モータの開発と実用化が市村地球環境産業賞 功績賞を受賞しました。開発したモーターは国際効率規格の最高レベルであるIE5級を実現しています。エネルギー消費量を低減することで、大幅なCO2排出量削減に寄与し、SDGsの実現に貢献していきます。 ・英国向け高速鉄道車両(Class 800)の意匠で全国発明表彰「恩賜発明賞」を受賞(モビリティセグメント) 英国向け高速鉄道車両(Class 800)に関する意匠が、全国発明表彰において、意匠としては史上初となる恩賜発明賞を受賞しました。日本と走行環境の異なる英国で、規格の違いを乗り越えるとともに、運行会社にとっての使いやすさや現地利用者の生活・文化に溶け込む車両の美しさや快適性などをトータルにデザインしました。 ・再生医療の普及に向け、細胞の3次元培養法の自動化技術を開発(ライフセグメント) 日立のiPS細胞大量自動培養装置を用いて、従来の課題を解決できる3次元培養法の自動化技術を新たに開発しました。2次元培養法と3次元培養法をともに自動化したことで、ニーズに合わせて、心筋細胞などの様々な細胞を自動で大量に製造することができます(㈱マイオリッジとの共同研究)。
FY2019|1,925 文字
5【研究開発活動】 当グループ(当社及び連結子会社)は、情報・通信システムからオートモティブシステム等に至る幅広い分野で事業活動を展開しており、注力事業である社会イノベーション事業に対して重点的に研究開発資源を配分し、事業の継続と発展に努めている。 事業活動のグローバル競争力強化のため、顧客の課題を発掘・共有し、解決する研究開発に取り組むとともに、事業のグローバル化を先導する強いプロダクト・サービスの開発等を重点分野として研究開発強化に取り組んでいる。加えて、将来の中核事業を開拓するための先端研究にも取り組んでいる。 当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めている。また、大学その他の研究機関や外部企業との交流の拡大にも積極的に取り組んでいる。 当社は、社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、北米、欧州、中国、アジア、インド及び南米の研究開発拠点・人員の拡充及び現地主導型研究の拡大により、現地のニーズに迅速に対応できる研究開発の推進を図っている。また、国内外の研究開発拠点を再編し、顧客とともに課題を見出し、新たなソリューションを協創する「社会イノベーション協創センタ」、注力分野の技術基盤を応用・融合することにより革新的な製品やサービスを創出し、新たなソリューション開発を支援する「テクノロジーイノベーションセンタ」、オープンイノベーションを活用し、独創的なビジョンに基づく探索型基礎研究で新領域を開拓する「基礎研究センタ」とする体制としている。かかる体制によって、顧客の課題解決に資する研究開発の更なる推進を図っている。 当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.4%にあたる3,231億円であり、セグメントごとの研究開発費は、次のとおりである。 セグメントの名称研究開発費(億円) 情報・通信システム469 社会・産業システム557 電子装置・システム461 建設機械247 高機能材料511 オートモティブシステム641 生活・エコシステム79 その他37 全社(本社他)225 合 計3,231 なお、当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりである。・汎用カメラで安全・確実な本人認証を実現する生体認証基盤技術を開発(情報・通信システムセグメント) スマートフォンやタブレットに付属の汎用カメラで撮影した掌紋情報により公開鍵認証を実現する生体認証基盤技術を開発した。この技術と顔検索を組み合わせ、1台のカメラで複数の生体情報認証を行うことで、専用装置を用いない安全・確実な生体認証を実現した(㈱KDDI総合研究所との共同開発)。 ・問題の規模・複雑さに応じて性能の拡張が可能なCMOSアニーリングマシンを開発(情報・通信システムセグメント) 交通渋滞の解消などの実社会の複雑な問題を高速に解くために、半導体回路を用いて最適解を探索するCMOSアニーリングチップを複数接続することによって、解くべき問題の規模や複雑さに応じて性能の拡張が可能な新型コンピュータ(CMOSアニーリングマシン)を開発した。 ・ロボットアームと搬送台車を制御する複数のAIを統合管理し協調制御する技術を開発(社会・産業システムセグメント) 物流倉庫におけるピッキング作業の効率の最大化を図るため、カメラ画像から最適なピッキング方法を判断するAI(人工知能)のもと、ピッキング用ロボットと搬送台車を制御する複数のAIを協調させ、搬送台車の移動を止めずにロボットが商品を取り出すことを可能にする技術を開発した。 ・音で工場内設備の稼働状態を認識するAI技術を開発(社会・産業システムセグメント) 音に基づく工場内設備の自動診断サービス等への応用に向けて、複数のマイクロホンで録音した音を音源の方向や音色の違いなどの複数の観点で分解し、分解した音を複数のニューラル・ネットワーク(脳神経回路を模擬した数理モデル)を用いて総合的に判断することによって、周囲の雑音に影響されずに高精度な状況認識が可能となるAI技術を開発した。 ・革新的なアイデアの創出をAIにより促進するシステムを開発(情報・通信システムセグメント) サービスや事業のアイデアを創出するワークショップにおいて、参加者の議論から音声認識技術を用いてキーワードを自動抽出し、抽出されたキーワードに応じて、AIがLumadaに蓄積された多様な事業領域の課題解決事例から知見を推奨することで、事業領域の枠を超えた革新的なアイデアの創出を促進するシステムを開発した。
FY2018|1,951 文字
5【研究開発活動】 当グループ(当社及び連結子会社)は、情報・通信システムからオートモティブシステム等に至る幅広い分野で事業活動を展開しており、注力事業である社会イノベーション事業に対して重点的に研究開発資源を配分し、事業の継続と発展に努めている。 事業活動のグローバル競争力強化のため、顧客の課題を発掘・共有し、解決する研究開発に取り組むとともに、事業のグローバル化を先導する強いプロダクト・サービスの開発等を重点分野として研究開発強化に取り組んでいる。加えて、将来の中核事業を開拓するための先端研究にも取り組んでいる。 当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めている。また、大学その他の研究機関や外部企業との交流の拡大にも積極的に取り組んでいる。 当社は、社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、北米、欧州、中国、アジア、インド及び南米の研究開発拠点・人員の拡充及び現地主導型研究の拡大により、現地のニーズに迅速に対応できる研究開発の推進を図っている。また、国内外の研究開発拠点を再編し、顧客とともに課題を見出し、新たなソリューションを協創する「社会イノベーション協創センタ」、注力分野の技術基盤を応用・融合することにより革新的な製品やサービスを創出し、新たなソリューション開発を支援する「テクノロジーイノベーションセンタ」、オープンイノベーションを活用し、独創的なビジョンに基づく探索型基礎研究で新領域を開拓する「基礎研究センタ」とする体制としている。かかる体制によって、顧客の課題解決に資する研究開発の更なる推進を図っている。 当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.6%にあたる3,329億円であり、セグメントごとの研究開発費は、次のとおりである。 セグメントの名称研究開発費(億円) 情報・通信システム480 社会・産業システム561 電子装置・システム521 建設機械240 高機能材料485 オートモティブシステム692 生活・エコシステム72 その他44 全社(本社他)229 合 計3,329 なお、当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりである。・AIによる働き方アドバイスが組織活性度の向上に寄与することを実証(情報・通信システムセグメント) 名札型ウエアラブルセンサーから収集した行動データを時間帯・会話相手などの項目で細分化し、人工知能(AI)に入力することで各個人にカスタマイズされた組織活性度向上に有効なアドバイスをAIにより日々自動的に作成、配信する技術を開発した。この技術を用いて、AIによる従業員への働き方アドバイスが組織活性度の向上に寄与することや組織活性度の変化量と受注達成率との相関性を実証した。 ・自己競争により学習を行うビジネス向けAI技術を開発(情報・通信システムセグメント) 複数のAIを相互接続したAI群で不確定要素の多いビジネス環境を表現し、人が用意した実績データに頼らず、AI群同士がコンピューター上で自己競争によって、より良い結果を求めて学習するビジネス向けのAI技術を開発した。 ・世界最高分解能での磁場観察を実現する技術を開発(電子装置・システムセグメント) 原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡で世界最高分解能(材料(磁性多層膜)内部の磁場分布を0.67nm)で磁場観察を実現する、材料に高強度パルス磁場を加えて材料の磁場を反転させることで電場情報を高精度に除去し、高精度パルス磁場の影響を自動補正する技術を開発した。(国立研究開発法人理化学研究所との開発による成果。本研究の一部は、内閣府 最先端研究開発支援プログラム及び国立研究開発法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業(CREST)プログラムの支援による。) ・安心・安全な品質管理に貢献する温度管理の異常が色でわかるインクを開発(社会・産業システムセグメント) 生鮮食品、医薬品等を生産から消費まで個別商品単位で一貫して温度管理するIoTサービスの実現・適用に向けて、商品ごとに定められた管理温度帯からの逸脱により色が変わり、再び管理温度帯内に戻しても元の色に戻らない不可逆性を備えたインクを開発した。 ・簡便・無痛・高精度な乳がん検診を実現する超音波計測技術を開発(電子装置・システムセグメント) 放射線被ばくや痛みを伴わない超音波を360度の方向から照射し、反射する音波を取得・解析し、容器が超音波の伝搬に与える影響を計測結果に反映することによって、検査者の熟練度に依存せずに微小な腫瘍を検出できる超音波計測技術を開発した。
FY2017|2,151 文字
6【研究開発活動】 当グループ(当社及び連結子会社)は、情報・通信システムから金融サービス等に至る幅広い分野で事業活動を展開しており、注力事業である社会イノベーション事業に対して重点的に研究開発資源を配分し、事業の継続と発展に努めている。 事業活動のグローバル競争力強化のため、顧客の課題を発掘・共有し、解決する研究開発に取り組むとともに、事業のグローバル化を先導する強いプロダクト・サービスの開発等を重点分野として研究開発強化に取り組んでいる。加えて、将来の中核事業を開拓するための先端研究にも取り組んでいる。 当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めている。また、大学その他の研究機関や外部企業との交流の拡大にも積極的に取り組んでいる。 当社は、社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、北米、欧州、中国、アジア、インド及び南米の研究開発拠点・人員の拡充及び現地主導型研究の拡大により、現地のニーズに迅速に対応できる研究開発の推進を図っている。また、国内外の研究開発拠点を再編し、顧客とともに課題を見出し、新たなソリューションを協創する「社会イノベーション協創センタ」、注力分野の技術基盤を応用・融合することにより革新的な製品やサービスを創出し、新たなソリューション開発を支援する「テクノロジーイノベーションセンタ」、オープンイノベーションを活用し、独創的なビジョンに基づく探索型基礎研究で新領域を開拓する「基礎研究センタ」とする体制としている。かかる体制によって、顧客の課題解決に資する研究開発の更なる推進を図っている。 当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.5%にあたる3,239億円であり、セグメントごとの研究開発費は、次のとおりである。 セグメントの名称研究開発費(億円) 情報・通信システム501 社会・産業システム487 電子装置・システム536 建設機械190 高機能材料461 オートモティブシステム706 生活・エコシステム69 その他54 金融サービス0 全社(本社他)230 合 計3,239 なお、当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりである。・日本語での論理的な対話を可能とする人工知能の基礎技術の開発(情報・通信システムセグメント) 人工知能の基礎技術の分野において、大量の記事等の分析に基づいて特定の議題に対し賛成・反対双方の意見を提示する機能について、ディープラーニング(多層構造のニューラル・ネットワークを用いた機械学習)を用いることによって、従来から可能であった英語のみならず、日本語を含む他の言語への展開を可能とする技術を開発した。 ・乳がん患者及び大腸がん患者の尿検体を識別する基礎技術の開発(その他セグメント) 尿中に含まれる糖や脂質等の代謝物の網羅的な解析により、特定の代謝物の含有量の違いから、健常者、乳がん患者及び大腸がん患者を識別する技術の開発に成功した(国立研究開発法人日本医療研究開発機構産学連携医療イノベーション創出プログラムの支援によって得られた成果)。 ・接客や案内を行うヒューマノイドロボットとロボットIT基盤の開発(社会・産業システムセグメント) ロボットによる接客・案内サービスを効果的に行うため、転倒しても自ら復帰する機能を新たに追加したヒューマノイドロボット(EMIEW3)を開発した。また、音声・画像・言語処理等の知能処理を遠隔で行い、多拠点に配置された複数ロボットを監視・制御し、サポートが必要な人の発見及び複数台のロボット間での情報共有・サービスの引継ぎを可能とするロボットIT基盤を開発した。 ・スマートフォンのカメラで指静脈認証を実現する技術を開発(情報・通信システムセグメント) スマートフォンに標準搭載されたカメラで撮影した指の色情報から、指静脈に特有の色合いを強調して静脈パターンを抽出する画像処理技術と、指の位置や向きを検出して各指の傾きや大きさを補正し、複数の指の静脈パターンを用いる認証の高精度化技術を開発することで、専用の赤外線センサを使用することなく、スマートフォンでの指静脈認証を実現する技術を開発した。 ・動画撮影後に容易にピント調整ができるレンズレスカメラ技術の開発(情報・通信システムセグメント) レンズの代わりに同心円パターンを印刷した薄いフィルムと、画像処理で良く利用される2次元の高速フーリエ変換を用いて、動画撮影後のピント調整を可能としつつ、カメラの低コスト化かつ薄型軽量化を実現し、モバイル機器や車、ロボットを始めとした幅広い用途への適用を可能とするカメラ技術を開発した。 ・人工知能(AI)を活用した映像解析による、リアルタイムな人物発見・追跡技術の開発(情報・通信システムセグメント) 監視カメラの映像解析にAIを活用し、人物の性別・年齢・所持品・服装等の12種類100項目以上の外見に関する特徴と10項目の動作に加え、全身の特徴をリアルタイムで把握することで、特定の人物の早期発見及び追跡性能の向上を実現した映像解析技術を開発した。
FY2016|2,081 文字
6【研究開発活動】 当グループ(当社及び連結子会社)は、情報・通信システムから金融サービス等に至る幅広い分野で事業活動を展開しており、注力事業である社会イノベーション事業に対して重点的に研究開発資源を配分し、事業の継続と発展に努めている。 事業活動のグローバル競争力強化のため、顧客の課題を発掘・共有し、解決する研究開発に取り組むとともに、事業のグローバル化を先導する強いプロダクト・サービスの開発等を重点分野として研究開発強化に取り組んでいる。加えて、将来の中核事業を開拓するための先端研究にも取り組んでいる。 当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めている。また、大学その他の研究機関や外部企業との交流の拡大にも積極的に取り組んでいる。 当社は、社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、北米、欧州、中国、アジア、インド及び南米の研究開発拠点・人員の拡充及び現地主導型研究の拡大により、現地のニーズに迅速に対応できる研究開発の推進を図っている。また、国内外の研究開発拠点を再編し、顧客とともに課題を見出し、新たなソリューションを協創する「社会イノベーション協創センタ」、注力分野の技術基盤を応用・融合することにより革新的な製品やサービスを創出し、新たなソリューション開発を支援する「テクノロジーイノベーションセンタ」、オープンイノベーションを活用し、独創的なビジョンに基づく探索型基礎研究で新領域を開拓する「基礎研究センタ」とする体制としている。かかる体制によって、顧客の課題解決に資する研究開発の更なる推進を図っている。当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.3%にあたる3,337億円であり、セグメントごとの研究開発費は、次のとおりである。 セグメントの名称研究開発費(億円)情報・通信システム596社会・産業システム474電子装置・システム493建設機械188高機能材料469オートモティブシステム699生活・エコシステム94その他(物流・サービス他)63金融サービス1全社(本社他)256合 計3,337 なお、当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりである。・需要変動や現場の改善活動を理解して業務指示を行う人口知能の開発(情報・通信システムセグメント) 業務システムに蓄積される業務内容や業務実績等のビッグデータから、需要変動や業務現場の改善活動を理解して、適切な業務指示を行う人工知能を開発した。 ・自律移動型双腕ロボットの制御技術の開発(その他(物流・サービス他)セグメント) 物流倉庫での集品作業の自動化のため、走行台車の上に、高さを調節する昇降台を載せ、さらに2本の市販の産業用アームとグリッパ(手に相当する部分)を搭載した自律移動型双腕ロボットを製作するとともに、各機構を少ない通信量で効率的に連携できるよう制御するロボット制御技術を開発した。 ・モノづくりの信頼性向上を実現するアナリティクス基盤の開発(情報・通信システムセグメント) 社会インフラ製品の現場での稼働状態や動作環境の計測データをもとに、製品の故障発生リスクや余寿命を分析し、分析結果を量産機や次期開発機の製品設計に反映することで、様々な環境において安定して稼働する信頼性の高いインフラ製品の開発を実現するアナリティクス基盤を開発した。 ・スマートキー対応のポータブル呼気アルコール検知器の試作(オートモティブシステムセグメント) 人間の呼気特有の飽和水蒸気を高感度で検知でき、かつ、小型化・省電力化を実現するセンサー技術を開発し、ドアの解錠やエンジン始動が可能なスマートキーに対応させるとともに、検出した結果を車内ディスプレイに表示するシステムも構築したポータブル呼気アルコール検知器を試作した(㈱本田技術研究所との共同開発)。 ・スマートデバイスに対応した音声処理技術の開発(情報・通信システムセグメント) 汎用のスマートデバイスにおいて、搭載された複数のマイクロホン間の時間差を使った高精度な雑音除去を可能とすることで、70デシベルの雑音環境での音声認識を可能とするとともに、発話と発話の区切りの明確な自動認識により、ボタンの押下げで発話区間を知らせることなく対話することが可能な音声処理技術を開発した。 ・社会インフラ製品の性能を高精度・短時間で予測する解析技術の開発(社会・産業システムセグメント) ビルの空調機など、複数のコンポーネントで構成された製品の性能解析技術において、性能予測に要求される精度に応じて解析モデルを任意に選択・調整して組み合わせることで、コンポーネント、サブシステム、製品全体を一括で解析するマルチフィデリティ解析技術を実現し、製品の稼働データを用いた解析の高精度化とビッグデータ分析手法や統計手法を活用した解析の高速化により、高精度かつ短時間での製品全体の性能解析を可能とする技術を開発した。