事業の内容
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズは、慶應義塾大学発のベンチャー企業で、最先端のメタボローム解析技術とバイオ技術を活用し、人々の健康で豊かな暮らしに貢献するヘルスケア・ソリューション・プロバイダーを目指しています。主にCE-MS法という独自の技術を用いて、生体内の代謝物質を網羅的に分析し、顧客のライフサイエンス研究、機能性素材開発、バイオものづくりを支援しています。顧客から提供された試料の解析を行い、その結果を報告書として提供するほか、専門家によるコンサルテーションも実施しており、これが主な収益源となっています。
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FY2025|5,451 文字|出典 docID: S100WPSX
3【事業の内容】 当社グループは、当社および先端研究開発支援事業の欧米市場における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)の2社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術とバイオ技術を活用した研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念とし、ヘルスケア研究開発に携わる人々のベストパートナーとして、画期的なヘルスケア製品・サービスの創造に貢献する[ヘルスケア・ソリューション・プロバイダー]を目指して事業を展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。 2025年6月期までは先端研究開発支援事業とヘルスケア・ソリューション事業の2事業セグメントに分けておりましたが、ビジネスモデルがほぼ同一であることから、2026年6月期より事業セグメントを統合して1事業として運営しております。 顧客のライフサイエンス研究支援、機能性素材開発支援、バイオものづくり支援のニーズに対し当社のメタボローム解析技術・ノウハウにより、ソリューションを提供してまいります。 <事業系統図> (1)メタボローム解析 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。 メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、主に以下のようなニーズ分野で代謝を理解する手法として活用されています。① ライフサイエンス研究支援 主にバイオマーカー探索や作用機序解明などの基礎研究分野で利用されています。 生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。 バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。・疾患を予測するバイオマーカー・治療の予後を予測するバイオマーカー・投薬による副作用を予測するバイオマーカー・投薬の効果を予測するバイオマーカー 作用機序解明とは、ある成分を摂取した場合にどの代謝経路に作用しているのかを判断するために代謝物の変動の比較分析から情報を提供するものです。摂取した成分が特定の酵素などに働くことにより、活性化あるいは抑制された結果、その後に生成される代謝物の量に変化が生じます。この群比較を行うことにより、対象成分がどの酵素などに働きかけたのかなどを推定するのに活用されています。 ② 機能性素材開発支援 2015年に機能性表示食品制度が開始されました。これは機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者の皆さんがそうした商品の正しい情報を得て選択できることを目的としています。国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。この制度により機能性表示食品に関する認知度も向上し、届け出数も増加するともに、その市場規模も大きく増加して今日に至っています。 この制度は、企業などにより高機能な素材開発の推進を促進することにつながったのみならず、良い素材・商材を生産されている中堅中小企業の幅広い利用にもつながっています。さらに効率的な機能性素材・製品の開発を進めるために、メタボローム解析による網羅的な機能性成分の発見と機能検証への活用が進んでいます。 ③ バイオものづくり支援 「バイオものづくり」とは、生物由来の素材を用いてものづくりを行うこと、さらには微生物などの生物の能力を活用して有用化合物などを作り出すことをいいます。化石燃料を原料としないで物質の生産を行うことができることから、カーボンニュートラル実現のキーテクノロジーとして大きな期待が寄せられています。これにより環境負荷低減に貢献できるのみならず、資源自律経済の推進や、食料安全保障の点からも重要視されています。2024年6月に政府が発表したバイオエコノミー戦略では、2030年までに100兆円の市場規模を目標としているとされています。 バイオものづくりによる物質生産の拡大を促進していくためには、生産コストを大幅に引き下げることが求められます。微生物の反応が化学的な手法と比べて長い時間を要することや、製造に成功するまで技術的に困難なことが多いため、コストが高くなりがちです。この課題を解消するために、微生物や菌株のゲノム編集などによる生産性の向上への取組みが行われてきましたが、それを効率化するためにメタボローム解析が極めて有用です。また培養プロセスにおける生産性向上にもメタボローム解析が大きく貢献しています。 (2) 当社グループ設立の経緯 生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授(当時)は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)を網羅的に測定する方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。 曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬品開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。 こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。 (3) ビジネスモデル 当社グループは、主にCE-MS法を用いたメタボローム解析法をコア技術として、代謝物質の網羅的解析技術を用いて顧客の研究開発を支援し、その解析結果に基づくソリューション提案を行うことで、顧客の成功に貢献すべく活動しております。 当社は顧客から提供された試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析などを行い、解析結果を報告書として納品します。また顧客のご要望に応じて解析結果に基づき、専門家によるソリューションを提案するコンサルテーションも実施しております。 (4) 事業内容 当社グループでは主に以下の3分野のニーズにお応えするサービスを提供しております。① ライフサイエンス研究支援サービス(略称 LSS:Life Science analysis Support service) 主に顧客のバイオマーカー探索並びに作用機序解明などのニーズに応えるために、当社が独自には開発した高感度網羅解析技術を活用した受託解析サービスを提供しています。当社グループの解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、顧客の研究開発進展に貢献しております。 ② 機能性素材開発支援サービス(略称 FDS:Functional material Development Support services) 主に機能性素材開発におけるワンストップソリューションサービスを提供しております。機能性成分探索パッケージでは、当社のメタボローム解析技術により製品に含まれる機能性関与成分を網羅的に測定することができます。また小規模でのヒト試験「目利き臨床試験」や当社グループ独自のアルゴリズムを用いたヘルスクレーム予測パッケージにより、素材のもつ機能を推定いたします。これにより迅速かつ効果的にヘルスクレームを予測することが可能なため、素材の新たな機能を見出すとともに、本臨床試験のアウトカム未達のリスクを軽減します。その後の大規模臨床試験などでも対象素材摂取と非摂取の比較をメタボローム解析にて行うことにより、科学的な効果検証を支援いたします。 ③ バイオものづくり支援サービス(略称 BMS:Bio-Manufacturing Support services) 主にバイオものづくりにおける生産性向上を支援するサービスを提供しています。 バイオものづくりの研究開発に取り組む企業は、宿主となる微生物や動物細胞を用いてバイオエタノールや機能性成分、抗体医薬などを生産しておりますが、このプロセスの生産効率化が、バイオものづくりに関わる企業の方々の共通の課題となっております。 本サービスを活用して細胞内や培養上清中のメタボローム解析を実施する事で、宿主となる細胞が、目的の物質を生成するのに必要な、あるいは不必要な一連の栄養素を明らかにする事が可能となります。具体的には、培養上清中の代謝物質を網羅的にかつ経時的に分析する事で、培養途中で枯渇している成分、培養液中に蓄積する成分、並びに細胞内の代謝物の経時変化を調べる事ができ、生産性向上に向けた様々な施策につなげることができます。 本サービスに含まれるフラックス解析により、ある物質が別の物質に変換される反応の速度を推定する事ができます。これにより、基質となる物質がどの程度効率的に目的の物質に変換されているか、その流れを可視化する事ができます。加えて理論的に最大量の目的物質が生産される場合の代謝の流れを可視化する事により、理論的にはどの程度のさらなる生産効率化が可能であるかという目標を把握し、基質となる物質をより効率的に目的物質に変換させるためのヒントを得ることができ、バイオものづくりの飛躍的な生産性向上に貢献することが期待されています。 (注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。 (注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。 (注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。 (注4)疾患バイオマーカーとは、ある病気の有無、進行状況、重症度、あるいは治療効果などを客観的に示す生体内の指標(マーカー)のことです。血液や尿、唾液、組織などから測定できる分子や物質などの情報がバイオマーカーとなります。代謝物質の疾患バイオマーカーとして広く知られているものに、糖尿病の可能性を示唆する血糖や痛風の発症リスクと関連する尿酸などがあります。
FY2024|3,310 文字|出典 docID: S100UE9D
3【事業の内容】 当社グループは、当社、先端研究開発支援事業の欧米市場における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)の2社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術とバイオ技術を活用した研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念とし、ヘルスケア研究開発に携わる人々のベストパートナーとして、画期的なヘルスケア製品・サービスの創造に貢献する[ヘルスケア・ソリューション・プロバイダー]を目指して事業を展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。 <事業系統図> (1) メタボロームとバイオマーカー 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。 メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認 生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。 バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。・疾患を予測するバイオマーカー・治療の予後を予測するバイオマーカー・投薬による副作用を予測するバイオマーカー・投薬の効果を予測するバイオマーカー (2) 当社グループ設立の経緯 生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。 曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。 こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。 (3) ビジネスモデル 当社グループは、主にCE-MSを用いたメタボローム解析法をコア技術として代謝物質の網羅的解析技術を用いて顧客の研究開発を支援する「先端研究開発支援事業」と、機能性素材にかかる研究開発の課題をワンストップで解消するソリューションを提供するヘルスケア・ソリューション開発サービスからなる「ヘルスケア・ソリューション事業」の2事業セグメントで構成されます。 (4) 事業内容① 先端研究開発支援事業 本事業では、主に食品・化学・製薬等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析を受託しております。顧客は試料を当社グループへ送付し、当社は試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。 当社グループは、メタボローム解析受託サービスを海外で展開するため、2012年10月に医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州に、販売子会社HMT-Aを設立して営業活動を行っております。 また今後は新たな分子種・他のオミクスの解析受託サービスなどを拡充していく予定です。 ② ヘルスケア・ソリューション事業 機能性素材開発における革新的なワンストップソリューションサービス(機能性素材開発包括支援サービス)の開発を進めています。また、皮膚ガス測定等のサービスをはじめ、ヘルスケア関連企業にソリューションを提供しています。 (注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。 (注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。 (注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。 (注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。
FY2023|3,439 文字|出典 docID: S100RW1Z
3【事業の内容】 当社グループは、当社、先端研究開発支援事業の欧米市場における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)の2社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術とバイオ技術を活用した研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念とし、ヘルスケア研究開発に携わる人々のベストパートナーとして、画期的なヘルスケア製品・サービスの創造に貢献する[ヘルスケア・ソリューション・プロバイダー]を目指して事業を展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。 <事業系統図> (1) メタボロームとバイオマーカー 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。 メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認 生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。 バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。・疾患を予測するバイオマーカー・治療の予後を予測するバイオマーカー・投薬による副作用を予測するバイオマーカー・投薬の効果を予測するバイオマーカー (2) 当社グループ設立の経緯 生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。 曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。 こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。 (3) ビジネスモデル 当社グループは、主にCE-MSを用いたメタボローム解析法をコア技術として代謝物質の網羅的解析技術を用いて顧客の研究開発を支援する「先端研究開発支援事業」と、リキッドバイオプシー(注5)における、未病、予防、疾病の早期発見等に寄与するバイオマーカーを探索するサービス(バイオマーカー探索サービス)と、機能性素材にかかる研究開発の課題をワンストップで解消するソリューションを提供するヘルスケア・ソリューション開発サービスからなる「ヘルスケア・ソリューション事業」の2事業セグメントで構成されます。 (4) 事業内容① 先端研究開発支援事業 本事業では、主に食品・化学・製薬等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析を受託しております。顧客は試料を当社グループへ送付し、当社は試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。 当社グループは、メタボローム解析受託サービスを海外で展開するため、2012年10月に医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州に、販売子会社HMT-Aを設立して営業活動を行っております。 また今後は新たな分子種・他のオミクスの解析受託サービスなどを拡充していく予定です。 ② ヘルスケア・ソリューション事業 機能性素材開発における革新的なワンストップソリューションサービス(機能性素材開発包括支援サービス)の開発やメンタルヘルスバイオマーカー等の共同開発を進めています。また、皮膚ガス測定等のサービスをはじめ、ヘルスケア関連企業にソリューションを提供しています。 (注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。 (注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。 (注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。 (注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。 (注5)侵襲性の少ない液性検体(血液、尿等)を用いた検査・解析技術です。
FY2022|3,878 文字|出典 docID: S100P815
3【事業の内容】 当社グループは、当社、先端研究開発支援事業の欧米市場における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)の2社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術とバイオ技術を活用した研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念とし、ヘルスケア研究開発に携わる人々のベストパートナーとして、画期的なヘルスケア製品・サービスの創造に貢献する[ヘルスケア・ソリューション・プロバイダー]を目指して事業を展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。 <事業系統図> (1) メタボロームとバイオマーカー 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。 メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認 生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。 バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。・疾患を予測するバイオマーカー・治療の予後を予測するバイオマーカー・投薬による副作用を予測するバイオマーカー・投薬の効果を予測するバイオマーカー (2) 当社グループ設立の経緯 生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。 曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。 こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。 (3) ビジネスモデル 当社グループは、主にCE-MSを用いたメタボローム解析法をコア技術として代謝物質の網羅的解析技術を用いて顧客の研究開発を支援する「先端研究開発支援事業」と、リキッドバイオプシー(注5)における、未病、予防、疾病の早期発見等に寄与するバイオマーカーを探索するサービス(バイオマーカー探索サービス)と、機能性素材にかかる研究開発の課題をワンストップで解消するソリューションを提供するヘルスケア・ソリューション開発サービスからなる「ヘルスケア・ソリューション事業」の2事業セグメントで構成されます。 (4) 事業内容① 先端研究開発支援事業 本事業では、主に食品・化学・製薬等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析を受託しております。顧客は試料を当社グループへ送付し、当社は試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。 当社グループは、メタボローム解析受託サービスを海外で展開するため、2012年10月に医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州に、販売子会社HMT-Aを設立して営業活動を行っております。 また今後は新たな分子種・他のオミクスの解析受託サービスなどを拡充していく予定です。 ② ヘルスケア・ソリューション事業 血液などに含まれる代謝物質等は、疾患の早期発見や治療効果をモニタリングするためのバイオマーカー候補となります。当社グループはリキッドバイオプシーにおける未病、予防、疾病の早期発見等に寄与するバイオマーカーを探索するサービス(バイオマーカー探索サービス)を提供します。また、バイオインフォマティクス(注6)を活用してマルチマーカー開発サービスを進めます。その他、バイオマーカーの自社開発や、測定の受託等を行います。現在、大学等との共同研究開発を通じて、メタボロミクスやその他オミクスを用いて主にメンタルヘルスや軽度認知障害に関するバイオマーカー探索及び社会実装に向けた研究開発を進めております。 ヘルスケア・ソリューション開発サービスでは、機能性素材にかかる研究開発の課題をワンストップで解消するソリューションを提供する他、機能性素材の自社開発等を行います。当社グループとしては新たに取り組むビジネスであり、現時点では開発ステージにあります。 (注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。 (注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。 (注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。 (注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。 (注5)侵襲性の少ない液性検体(血液、尿等)を用いた検査・解析技術です。 (注6)生命科学と情報科学の融合分野のひとつであり、DNAやRNA、タンパク質、代謝物をはじめとする、生命が持つ様々な「情報」を対象に、情報科学や統計学などのアルゴリズムを用いた方法論やソフトウエアを開発し、またそれらを用いた分析から生命現象を解き明かしていくことを目的とした学問分野です。
FY2021|4,063 文字|出典 docID: S100MHKD
3【事業の内容】 当社グループは、当社、メタボロミクス事業(2022年6月期以降は「先端研究開発支援事業」と称します。)の北米市場における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)及びメタボロミクス事業の欧州市場における販売子会社であるHuman Metanolome Technologies Europe B.V. (以下「HMT-E」といいます。)の3社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術とバイオ技術を活用した研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念とし、ヘルスケア研究開発に携わる人々のベストパートナーとして、画期的なヘルスケア製品・サービスの創造に貢献する[ヘルスケア・ソリューション・プロバイダー]を目指して事業を展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。 <事業系統図> (1) メタボロームとバイオマーカー 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。 メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認 生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。 バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。・疾患を予測するバイオマーカー・治療の予後を予測するバイオマーカー・投薬による副作用を予測するバイオマーカー・投薬の効果を予測するバイオマーカー (2) 当社グループ設立の経緯 生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。 曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。 こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。 (3) ビジネスモデル 当社グループは、主にCE-MSを用いたメタボローム解析法をコア技術として代謝物質の網羅的解析技術を用いて顧客の研究開発を支援する「先端研究開発支援事業」(2021年6月期までのメタボロミクス事業及び新規解析受託サービスを含む)と、リキッドバイオプシー(注5)における、未病、予防、疾病の早期発見等に寄与するバイオマーカーを探索するサービス(バイオマーカー探索サービス)と、機能性素材にかかる研究開発の課題をワンストップで解消するソリューションを提供するヘルスケア・ソリューション開発サービスからなる「ヘルスケア・ソリューション事業」(2021年6月期までのバイオマーカー事業及び新規事業を含む)の2事業セグメントで構成されます。 (4) 事業内容① 先端研究開発支援事業 本事業では、主に食品・化学・製薬等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析を受託しております。顧客は試料を当社グループへ送付し、当社は試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。 当社グループは、メタボローム解析受託サービスを海外で展開するため、2012年10月に医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州に、販売子会社HMT-Aを設立して営業活動を行っております。 また今後は新たな分子種・他のオミクスの解析受託サービスなどを拡充していく予定です。 ② ヘルスケア・ソリューション事業 血液などに含まれる代謝物質等は、疾患の早期発見や治療効果をモニタリングするためのバイオマーカー候補となります。当社グループはリキッドバイオプシーにおける未病、予防、疾病の早期発見等に寄与するバイオマーカーを探索するサービス(バイオマーカー探索サービス)を提供します。また、バイオインフォマティクス(注6)を活用してマルチマーカー開発サービスを進めます。その他、バイオマーカーの自社開発や、測定の受託等を行います。現在、大学等との共同研究開発を通じて、メタボロミクスやその他オミクスを用いて主にメンタルヘルスや軽度認知障害に関するバイオマーカー探索及び社会実装に向けた研究開発を進めております。 ヘルスケア・ソリューション開発サービスでは、機能性素材にかかる研究開発の課題をワンストップで解消するソリューションを提供する他、機能性素材の自社開発等を行います。当社グループとしては新たに取り組むビジネスであり、現時点では開発ステージにあります。 (注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。 (注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。 (注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。 (注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。 (注5)侵襲性の少ない液性検体(血液、尿等)を用いた検査・解析技術です。 (注6)生命科学と情報科学の融合分野のひとつであり、DNAやRNA、タンパク質、代謝物をはじめとする、生命が持つ様々な「情報」を対象に、情報科学や統計学などのアルゴリズムを用いた方法論やソフトウエアを開発し、またそれらを用いた分析から生命現象を解き明かしていくことを目的とした学問分野です。
FY2020|4,137 文字|出典 docID: S100JRPN
3【事業の内容】 当社グループは、当社、メタボロミクス事業の北米市場における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)及びメタボロミクス事業の欧州市場における販売子会社であるHuman Metanolome Technologies Europe B.V. (以下「HMT-E」といいます。)並びにバイオマーカーを用いた検査薬等の開発・製造・販売を行うHMTバイオメディカル株式会社(以下「HMT-B」といいます。)の4社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術をコアとした研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念として、研究機関や企業のメタボローム解析サービス及びバイオマーカー開発を主たる事業として展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。 <事業系統図> (1) メタボロームとバイオマーカー 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。 メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認 生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。 バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。・疾患を予測するバイオマーカー・治療の予後を予測するバイオマーカー・投薬による副作用を予測するバイオマーカー・投薬の効果を予測するバイオマーカー (2) 当社グループ設立の経緯 生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。 曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。 こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。 (3) ビジネスモデル 当社グループは、CE-MSを用いたメタボローム解析法をコア技術として、メタボロミクス事業で短中期的な収益を確保しつつ、そこで得られた資金をバイオマーカー事業に投下することで、より大きな収益の獲得を図ることを、中長期的な経営戦略と位置付けております。 (4) 事業内容① メタボロミクス事業 本事業では、主に食品・化学・製薬等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析を受託しております。顧客は試料を当社へ送付し、当社は試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。 当社は、メタボローム解析受託サービスをアジアにて展開するため、2011年6月に、韓国Young In Frontier Co., Ltd.と、韓国内におけるメタボローム解析サービスの独占的販売権供与契約を締結しました。また、北米市場への展開のため、2012年10月に医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に、販売子会社HMT-Aを、欧州市場への展開のため2017年5月にオランダ南ホラント州ライデンに販売子会社HMT-Eを設立し、がん研究向け解析サービスC-SCOPEを始めとするメタボローム解析サービスの販売活動を展開しております。 ② バイオマーカー事業 血液などに含まれる代謝物質バイオマーカーは、疾患の早期発見や治療効果をモニタリングするための検査薬開発等のシーズとなります。当社は、バイオマーカー事業を将来の成長事業と位置づけ、大学や検査薬企業との共同研究開発を通じて、主にメタボローム解析技術を用いたバイオマーカー探索及び検査キットの研究開発等を進めております。 現在バイオマーカー及び検査薬の開発を進めている主な疾患は、大うつ病性障害(注5)、糖尿病性腎症(注6)です。 当社は、自社の研究開発を通じて得られたバイオマーカーや、外部より導入したバイオマーカーを用いて疾患の新たな検査方法の開発に取り組み、実用化・事業化を推進するとともに、メンタルヘルス分野を中心に自由診療分野での新たなパイプラインの創出に取り組んでおります。また開発過程において、共同研究先である製薬企業等から研究開発協力金やマイルストン収入を受領する他、上市後の販売に応じたロイヤリティを獲得することもあります。 なお、バイオマーカー事業は、2016年1月に設立したHMT-Bを中心に展開しております。 (注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。 (注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。 (注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。 (注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。 (注5)大うつ病性障害は、精神障害の一つであり、睡眠障害、焦燥感、不安、食欲低下、抑うつ症状を特徴とします。アメリカ精神医学会や世界保健機関(WHO)から診断基準が示されていますが、基本的に医師の問診により診断されます。 (注6)糖尿病性腎症は、糖尿病を背景疾患とした細小血管障害です。高血糖による糸球体糖化や糸球体高血圧を原因として腎機能が障害を受け、腎症に進行します。糖尿病患者の尿中ミクロアルブミンをモニターし、陽性となった場合はACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬などの降圧剤による治療を行いますが、寛解率は低く、多くの患者がいずれ人工血液透析療法へ導入されます。
FY2019|4,681 文字|出典 docID: S100H06L
3【事業の内容】 当社グループは、当社、メタボロミクス事業の北米市場における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)及びメタボロミクス事業の欧州市場における販売子会社であるHuman Metanolome Technologies Europe B.V. (以下「HMT-E」といいます。)並びにバイオマーカーを用いた診断薬・診断機器等の開発・製造・販売を行うHMTバイオメディカル株式会社(以下「HMT-B」といいます。)の4社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術をコアとした研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念として、研究機関や企業のメタボローム解析試験受託及びバイオマーカー開発を主たる事業として展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。 なお、文中の事業区分は報告セグメントの区分と同一であります。第3四半期連結会計期間より、従来の報告セグメントである「メタボローム解析事業」を「メタボロミクス事業」に名称を変更しております。 <事業系統図> (1) メタボロームとバイオマーカー 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。 メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認 生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。 バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。・疾患を予測するバイオマーカー・治療の予後を予測するバイオマーカー・投薬による副作用を予測するバイオマーカー・投薬の効果を予測するバイオマーカー (2) 当社グループ設立の経緯 生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。 曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。 こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。 (3) ビジネスモデル 当社グループは、CE-MSを用いたメタボローム解析法をコア技術として、メタボローム解析事業で短中期的な収益を確保しつつ、そこで得られた資金をバイオマーカー事業に投下することで、より大きな収益の獲得を図ることを、中長期的な経営戦略と位置付けております。 (4) 事業内容① メタボロミクス事業 本事業では、主に製薬や食品等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析試験を受託しております。顧客は試料を当社へ送付し、当社は試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。 当社は、メタボローム解析受託サービスをアジアにて展開するため、2011年6月に、韓国Young In Frontier Co., Ltd.と、韓国内におけるメタボローム解析サービス及びメタボロミクスキットの独占的販売権供与契約を締結しました。また、北米市場への展開のため、2012年10月に医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に、販売子会社HMT-Aを、欧州市場への展開のため2017年5月にオランダ南ホラント州ライデンに販売子会社HMT-Eを設立し、がん研究向け解析サービスC-SCOPEを主力商品として販売活動を展開しております。 ② バイオマーカー事業 血液などに含まれる代謝物質バイオマーカーは、疾患の早期診断や治療効果をモニタリングするための診断薬開発のシーズとなります。当社は、バイオマーカー事業を将来の成長事業と位置づけ、大学や診断薬企業との共同研究開発を通じて、主にメタボローム解析技術を用いたバイオマーカー探索及び診断キットの研究開発等を進めております。 当社では、客観的診断が難しい中枢神経系疾患(気分障害や精神障害等)(注5)、メタボリックシンドローム(MetS)(注6)等社会問題化している疾病とその関連疾患に焦点を当てております。現在バイオマーカー及び診断薬の開発を進めている主な疾患は、大うつ病性障害(注7)、糖尿病性腎症(注8)です。疾患バイオマーカーを探索する対象疾病の選定においては、国内外の診断薬企業や製薬企業の研究者、開発担当者との情報交換を通して、社会が求める疾患診断法や新薬開発に関する情報を得て判断しております。 当社は、自社の研究開発を通じて得られたバイオマーカーや、外部より導入したバイオマーカーを用いて疾患の新たな診断方法の開発に取り組み、実用化・事業化を推進するとともに、メンタルヘルス分野を中心に新たなパイプラインの創出に取り組み、バイオマーカー関連のビジネスを多面的に展開してまいります。また開発過程において、共同研究先である製薬企業等から研究開発協力金やマイルストン収入を受領する他、上市後の販売に応じたロイヤリティを獲得することもあります。 なお、バイオマーカー事業は、2016年1月に設立したHMT-Bを中心に展開しております。 (注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。 (注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。 (注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。 (注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。 (注5)中枢神経系疾患とは、末梢神経系に対して神経細胞が集中している脳と脊髄の機能に関連した症状を持つ疾病を指します。精神疾患や脳症、脳炎のような脳機能障害、疼痛など広い疾病領域を含んでいます。 (注6)メタボリックシンドローム(MetS)は、代謝性症候群とも呼ばれ、代謝機能の異常により生じる内臓脂肪型肥満と高血糖、高血圧、脂質異常のうち2つ以上を合併した場合を指します。動脈硬化性疾患やその他の血管性疾患(腎症など)、臓器障害のリスクが高くなるため、予防が重要とされています。 (注7)大うつ病性障害は、精神障害の一つであり、睡眠障害、焦燥感、不安、食欲低下、抑うつ症状を特徴とします。アメリカ精神医学会や世界保健機関(WHO)から診断基準が示されていますが、基本的に医師の問診により診断されます。 (注8)糖尿病性腎症は、糖尿病を背景疾患とした細小血管障害です。高血糖による糸球体糖化や糸球体高血圧を原因として腎機能が障害を受け、腎症に進行します。糖尿病患者の尿中ミクロアルブミンをモニターし、陽性となった場合はACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬などの降圧剤による治療を行いますが、寛解率は低く、多くの患者がいずれ人工血液透析療法へ導入されます。
FY2018|4,877 文字|出典 docID: S100DDL6
3【事業の内容】 当社グループは、当社、メタボローム解析事業の北米市場における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)及びメタボローム解析事業の欧州市場における販売子会社であるHuman Metanolome Technologies Europe B.V. (以下「HMT-E」といいます。)並びにバイオマーカーを用いた診断薬・診断機器等の開発・製造・販売を行うHMTバイオメディカル株式会社(以下「HMT-B」といいます。)の4社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術をコアとした研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念として、研究機関や企業のメタボローム解析試験受託及びバイオマーカー開発を主たる事業として展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。 なお、文中の事業区分は報告セグメントの区分と同一であります。 <事業系統図> (1) メタボロームとバイオマーカー 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。 メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認 生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。 バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。・疾患を予測するバイオマーカー・治療の予後を予測するバイオマーカー・投薬による副作用を予測するバイオマーカー・投薬の効果を予測するバイオマーカー (2) 当社グループ設立の経緯 生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。 曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。 こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。 (3) ビジネスモデル 当社グループは、CE-MSを用いたメタボローム解析法をコア技術として、メタボローム解析事業で短中期的な収益を確保しつつ、そこで得られた資金をバイオマーカー事業に投下することで、より大きな収益の獲得を図ることを、中長期的な経営戦略と位置付けております。 (4) 事業内容① メタボローム解析事業 本事業では、主に製薬や食品等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析試験を受託しております。顧客は試料を当社へ送付し、当社は試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。 当社は、メタボローム解析受託サービスをアジアにて展開するため、2011年6月に、韓国Young In Frontier Co., Ltd.と、韓国内におけるメタボローム解析サービス及びメタボロミクスキットの独占的販売権供与契約を締結しました。また、北米市場への展開のため、2012年10月に医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に、販売子会社HMT-Aを、欧州市場への展開のため2017年5月にオランダ南ホラント州ライデンに販売子会社HMT-Eを設立し、がん研究向け解析サービスC-SCOPEを主力商品として販売活動を展開しております。 ② バイオマーカー事業 血液などに含まれる代謝物質バイオマーカーは、疾患の早期診断や治療効果をモニタリングするための診断キット開発のシーズとなります。当社は、バイオマーカー事業を将来の成長事業と位置づけ、大学や診断薬企業との共同研究開発を通じて、メタボローム解析技術を用いたバイオマーカー探索及び診断キットの研究開発を進めております。 当社では、客観的診断が難しい中枢神経系疾患(気分障害や精神障害等)(注5)、メタボリックシンドローム(MetS)(注6)等社会問題化している疾病とその関連疾患に焦点を当てております。現在バイオマーカー及び診断キットの開発を進めている疾患は、大うつ病性障害(注7)、肝疾患、線維筋痛症(注8)、糖尿病性腎症(注9)です。疾患バイオマーカーを探索する対象疾病の選定においては、国内外の診断薬企業や製薬企業の研究者、開発担当者との情報交換を通して、社会が求める疾患診断法や新薬開発に関する情報を得て判断しております。 当社は、自社の研究開発を通じて得られたバイオマーカーや、外部より導入したバイオマーカーを用いて疾患の新たな診断方法を開発するとともに、製品開発・臨床開発等の過程を経て、体外診断用医薬品(注10)や診断機器の製造販売を行います。また開発過程において、共同研究先である製薬企業等から研究開発協力金やマイルストン収入を受領する他、上市後の販売に応じたロイヤリティを獲得することもあります。 なお、バイオマーカー事業は、2016年1月に設立したHMT-Bを中心に展開しております。 (注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。 (注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。 (注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。 (注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。 (注5)中枢神経系疾患とは、末梢神経系に対して神経細胞が集中している脳と脊髄の機能に関連した症状を持つ疾病を指します。精神疾患や脳症、脳炎のような脳機能障害、疼痛など広い疾病領域を含んでいます。 (注6)メタボリックシンドローム(MetS)は、代謝性症候群とも呼ばれ、代謝機能の異常により生じる内臓脂肪型肥満と高血糖、高血圧、脂質異常のうち2つ以上を合併した場合を指します。動脈硬化性疾患やその他の血管性疾患(腎症など)、臓器障害のリスクが高くなるため、予防が重要とされています。 (注7)大うつ病性障害は、精神障害の一つであり、睡眠障害、焦燥感、不安、食欲低下、抑うつ症状を特徴とします。アメリカ精神医学会や世界保健機関(WHO)から診断基準が示されていますが、基本的に医師の問診により診断されます。 (注8)線維筋痛症は、激しい全身疼痛を主訴とする原因不明の疾病で、疼痛部位における炎症等の病変は見られず、不眠、抑うつ症状等を伴うこともあります。発症の原因やメカニズムは不明ですが、外傷、感染、ストレスが引き金になることが多く、中枢神経系(下行性痛覚抑制経路)の障害によるものと考えられています。 (注9)糖尿病性腎症は、糖尿病を背景疾患とした細小血管障害です。高血糖による糸球体糖化や糸球体高血圧を原因として腎機能が障害を受け、腎症に進行します。糖尿病患者の尿中ミクロアルブミンをモニターし、陽性となった場合はACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬などの降圧剤による治療を行いますが、寛解率は低く、多くの患者がいずれ人工血液透析療法へ導入されます。 (注10)体外診断用医薬品とは、薬機法では「専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないものをいう」とされています。検査結果が医師の診断を補助できる点で、単なる研究用試薬とは区別されます。
FY2017|4,742 文字|出典 docID: S100ANJG
3【事業の内容】 当社グループは、当社及びメタボローム解析事業の米国における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)並びにバイオマーカーを用いた診断薬・診断機器等の開発・製造・販売を行うHMTバイオメディカル株式会社(以下「HMT-B」といいます。)の3社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術をコアとした研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念として、研究機関や企業のメタボローム解析試験受託及びバイオマーカー開発を主たる事業として展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。 なお、文中の事業区分は報告セグメントの区分と同一であります。 <事業系統図> (1) メタボロームとバイオマーカー 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。 メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認 生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。 バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。・疾患を予測するバイオマーカー・治療の予後を予測するバイオマーカー・投薬による副作用を予測するバイオマーカー・投薬の効果を予測するバイオマーカー (2) 当社グループ設立の経緯 生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。平成13年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。 曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。 こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、平成15年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。 (3) ビジネスモデル 当社グループは、CE-MSを用いたメタボローム解析法をコア技術として、メタボローム解析事業で短中期的な収益を確保しつつ、そこで得られた資金をバイオマーカー事業に投下することで、より大きな収益の獲得を図ることを、中長期的な経営戦略と位置付けております。 (4) 事業内容① メタボローム解析事業 本事業では、主に製薬や食品等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析試験を受託しております。顧客は試料を当社へ送付し、当社は試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。 当社は、メタボローム解析受託サービスをアジアにて展開するため、平成23年6月に、韓国Young In Frontier Co., Ltd.と、韓国内におけるメタボローム解析サービス及びメタボロミクスキットの独占的販売権供与契約を締結しました。また、北米市場への展開のため、平成24年10月に医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に、販売子会社HMT-Aを設立し、がん研究向け解析サービスC-SCOPEを主力商品として販売活動を展開しております。 ② バイオマーカー事業 血液などに含まれる代謝物質バイオマーカーは、疾患の早期診断や治療効果をモニタリングするための診断キット開発のシーズとなります。当社は、バイオマーカー事業を将来の成長事業と位置づけ、大学や診断薬企業との共同研究開発を通じて、メタボローム解析技術を用いたバイオマーカー探索及び診断キットの研究開発を進めております。 当社では、客観的診断が難しい中枢神経系疾患(気分障害や精神障害等)(注5)、メタボリックシンドローム(MetS)(注6)等社会問題化している疾病とその関連疾患に焦点を当てております。現在バイオマーカー及び診断キットの開発を進めている疾患は、大うつ病性障害(注7)、肝疾患、線維筋痛症(注8)、糖尿病性腎症(注9)です。疾患バイオマーカーを探索する対象疾病の選定においては、国内外の診断薬企業や製薬企業の研究者、開発担当者との情報交換を通して、社会が求める疾患診断法や新薬開発に関する情報を得て判断しております。 当社は、自社の研究開発を通じて得られたバイオマーカーや、外部より導入したバイオマーカーを用いて疾患の新たな診断方法を開発するとともに、製品開発・臨床開発等の過程を経て、体外診断用医薬品(注10)や診断機器の製造販売を行います。また開発過程において、共同研究先である製薬企業等から研究開発協力金やマイルストン収入を受領する他、上市後の販売に応じたロイヤリティを獲得することもあります。 なお、バイオマーカー事業は、平成28年1月に設立したHMT-Bを中心に展開しております。 (注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。 (注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。 (注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。 (注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。 (注5)中枢神経系疾患とは、末梢神経系に対して神経細胞が集中している脳と脊髄の機能に関連した症状を持つ疾病を指します。精神疾患や脳症、脳炎のような脳機能障害、疼痛など広い疾病領域を含んでいます。 (注6)メタボリックシンドローム(MetS)は、代謝性症候群とも呼ばれ、代謝機能の異常により生じる内臓脂肪型肥満と高血糖、高血圧、脂質異常のうち2つ以上を合併した場合を指します。動脈硬化性疾患やその他の血管性疾患(腎症など)、臓器障害のリスクが高くなるため、予防が重要とされています。 (注7)大うつ病性障害は、精神障害の一つであり、睡眠障害、焦燥感、不安、食欲低下、抑うつ症状を特徴とします。アメリカ精神医学会や世界保健機関(WHO)から診断基準が示されていますが、基本的に医師の問診により診断されます。 (注8)線維筋痛症は、激しい全身疼痛を主訴とする原因不明の疾病で、疼痛部位における炎症等の病変は見られず、不眠、抑うつ症状等を伴うこともあります。発症の原因やメカニズムは不明ですが、外傷、感染、ストレスが引き金になることが多く、中枢神経系(下行性痛覚抑制経路)の障害によるものと考えられています。 (注9)糖尿病性腎症は、糖尿病を背景疾患とした細小血管障害です。高血糖による糸球体糖化や糸球体高血圧を原因として腎機能が障害を受け、腎症に進行します。糖尿病患者の尿中ミクロアルブミンをモニターし、陽性となった場合はACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬などの降圧剤による治療を行いますが、寛解率は低く、多くの患者がいずれ人工血液透析療法へ導入されます。 (注10)体外診断用医薬品とは、薬機法では「専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないものをいう」とされています。検査結果が医師の診断を補助できる点で、単なる研究用試薬とは区別されます。
FY2016|5,293 文字|出典 docID: S1007ZZD
3【事業の内容】 当社グループは、当社及びメタボローム解析事業の米国における販売子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc. (以下「HMT-A」といいます。)並びにバイオマーカーを用いた診断薬・診断機器等の開発・製造・販売を行うHMTバイオメディカル株式会社(以下「HMT-B」といいます。)の3社で構成され、「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術をコアとした研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念として、研究機関や企業のメタボローム解析試験受託及びバイオマーカー開発を主たる事業として展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。当社グループは、設立母体である慶應義塾大学先端生命科学研究所及び本社所在地である山形県や鶴岡市等地方自治体と産官学連携のもとに事業を展開しております。 なお、文中の事業区分は報告セグメントの区分と同一であります。 また、当連結会計年度より、報告セグメントとして記載する事業セグメントを変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。 <事業系統図> ※人材派遣事業は平成28年3月末日をもって事業を廃止しております。(1) メタボロームとバイオマーカー 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立ちますが、これらはアミノ酸や脂質、核酸などの代謝物質(メタボライト)を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っています。代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費されます。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていきます。このような化学反応のことを代謝(メタボリズム)と呼び、この物質変換は代謝経路という一定の規則により成り立っています。代謝の仕組みを理解することは、私たち自身をより深く知ることに繋がります。 メタボローム解析は幅広い分野で利用されていますが、以下のような分野で代謝を理解する手法として活用されています。・大学などの研究機関における疾患メカニズムの研究・製薬企業における探索・薬理研究や毒性研究・発酵を利用した物質生産を行っている企業における生産性の向上・食品企業における成分分析や機能性の探索・確認 生命活動を営むためには、様々な機能を精緻に制御して”恒常性”を維持する仕組み(内的/外的な影響を最小限にし、一定に保つ仕組み)が備わっています。体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻ることが、恒常性の身近な例と言えます。しかし、疾病に罹患することにより恒常性が破綻した場合、代謝物質などの構成要素にも影響が及び、健康の時とは異なる振る舞いを示すようになります。それがバイオマーカーです。バイオマーカーとして広く知られているものに、膵臓の機能指標となる血糖(糖尿病)や肝機能の指標となるγ-GTP(肝硬変等)、腫瘍マーカーとしてPSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん等)があります。バイオマーカーとは、特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標をいいます。 バイオマーカーは、疾患をモニターすることを目的に古くから研究されてきましたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法の出現により、新たなバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されています。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがあります。・疾患を予測するバイオマーカー・治療の予後を予測するバイオマーカー・投薬による副作用を予測するバイオマーカー・投薬の効果を予測するバイオマーカー (2) 当社グループ設立の経緯 生物学、医学分野において、オミクス(注1)は生体の網羅的情報を得る手法として重要です。平成13年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、生体内の低分子代謝物質(メタボローム)(注2)の測定方法を開発しました。このメタボローム測定法はキャピラリー電気泳動装置(Capillary Electrophoresis)と質量分析計(Mass Spectrometer)を組み合わせて測定するもので、頭文字をとってCE-MS法と呼ばれています。 曽我朋義教授の測定法は、生体内のイオン性代謝物質(注3)を、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術でした。メタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬開発、疾患バイオマーカー(注4)開発等に用いられるため、本技術の社会的ニーズが見込まれました。 こうした技術の確立を背景に、当社グループは、CE-MS法の開発者である曽我朋義教授、冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、平成15年7月に設立されました。当社グループは、慶應義塾大学のアントレプレナー資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となりました。 (3) ビジネスモデル 当社グループは、CE-MSを用いたメタボローム解析法をコア技術として、メタボローム解析事業で短中期的な収益を確保しつつ、そこで得られた資金をバイオマーカー事業に投下することで、より大きな収益の獲得を図ることを、中長期的な経営戦略と位置付けております。 (4) 事業内容① メタボローム解析事業 本事業では、主に製薬や食品等の民間企業、大学や公的研究機関からメタボローム解析試験を受託しております。顧客は試料を当社へ送付し、当社は試料から代謝物質を抽出し、CE-MS等によるメタボローム解析のうえ、試験結果を報告書として納品します。当社グループのメタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの律速段階解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発進展に貢献しております。 当社は、メタボローム解析受託サービスをアジアにて展開するため、平成23年6月に、韓国Young In Frontier Co., Ltd.と、韓国内におけるメタボローム解析サービス及びメタボロミクスキットの独占的販売権供与契約を締結しました。また、北米市場への展開のため、平成24年10月に医学研究の集積地ともいえるアメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に、販売子会社HMT-Aを設立し、がん研究向け解析サービスC-SCOPEを主力商品として販売活動を展開しております。 なお、メタボロミクスキット事業については、メタボロミクスキット本体の販売終了に伴い経営管理体制を見直し、当連結会計年度よりメタボローム解析事業に含めております。 ② バイオマーカー事業 血液などに含まれる代謝物質バイオマーカーは、疾患の早期診断や治療効果をモニタリングするための診断キット開発のシーズとなります。当社は、バイオマーカー事業を将来の成長事業と位置づけ、大学や診断薬企業との共同研究開発を通じて、メタボローム解析技術を用いたバイオマーカー探索及び診断キットの研究開発を進めております。 当社では、客観的診断が難しい中枢神経系疾患(気分障害や精神障害等)(注5)、メタボリックシンドローム(MetS)(注6)等社会問題化している疾病とその関連疾患に焦点を当てております。現在バイオマーカー及び診断キットの開発を進めている疾患は、大うつ病性障害(注7)、肝疾患、線維筋痛症(注8)、糖尿病性腎症(注9)です。疾患バイオマーカーを探索する対象疾病の選定においては、国内外の診断薬企業や製薬企業の研究者、開発担当者との情報交換を通して、社会が求める疾患診断法や新薬開発に関する情報を得て判断しております。 当社は、自社の研究開発を通じて得られたバイオマーカーや、外部より導入したバイオマーカーを用いて疾患の新たな診断方法を開発するとともに、製品開発・臨床開発等の過程を経て、体外診断用医薬品(注10)や診断機器の製造販売を行います。また開発過程において、共同研究先である製薬企業等から研究開発協力金やマイルストン収入を受領する他、上市後の販売に応じたロイヤリティを獲得することもあります。 なお、バイオマーカー事業は、平成28年1月に設立したHMT-Bを中心に展開しております。 ③ 人材派遣事業 当社は、平成18年2月より特定労働者派遣事業の届出を行い、顧客の研究活動を支援することを目的として技術員及び事務員を大学等の研究機関へ派遣しておりましたが、事業の選択と集中の観点から、平成28年3月末日をもって事業を廃止いたしました。 (注1)オミクス(omics)とは、生体内に存在する遺伝子及びその発現、タンパク質、代謝物質等を網羅的に解析し、生体内の挙動を理解しようとする研究アプローチです。遺伝子(gene)ではゲノミクス(genomics)、遺伝子発現(transcript)ではトランスクリプトミクス(transcriptomics)、タンパク質(protein)ではプロテオミクス(proteomics)、代謝物質(metabolite)ではメタボロミクス(metabolomics)と表現します。 (注2)ヒトや動植物の生体内には、生命活動の維持に必要なATP(アデノシン三リン酸)等の高エネルギー物質や有機酸、アミノ酸等、数多くの代謝物質が存在し、酵素による代謝物質の変換が活発に行われています。メタボロームとは、これら生体由来の代謝物質の総称です。個々の代謝物質を指す場合には、メタボライトと言うこともあります。 (注3)イオン性代謝物質とは、水溶液中で電荷を帯びる代謝物質を指します。例えば、食塩(NaCl)は水に溶けると、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれます。イオン性代謝物質は、このように分子が分かれて電荷的な性質を持ち、CE-MS法は、こうしたイオン性代謝物質が電荷を帯びている性質を利用し、キャピラリー電気泳動装置で測定試料に含まれる代謝物質を分離します。 (注4)血液や尿等に含まれる物質で、疾患等による生体内の変化を定量的に評価するための指標を指します。糖尿病における血糖値、痛風における血液尿酸値等はバイオマーカーの一例です。 (注5)中枢神経系疾患とは、末梢神経系に対して神経細胞が集中している脳と脊髄の機能に関連した症状を持つ疾病を指します。精神疾患や脳症、脳炎のような脳機能障害、疼痛など広い疾病領域を含んでいます。 (注6)メタボリックシンドローム(MetS)は、代謝性症候群とも呼ばれ、代謝機能の異常により生じる内臓脂肪型肥満と高血糖、高血圧、脂質異常のうち2つ以上を合併した場合を指します。動脈硬化性疾患やその他の血管性疾患(腎症など)、臓器障害のリスクが高くなるため、予防が重要とされています。 (注7)大うつ病性障害は、精神障害の一つであり、睡眠障害、焦燥感、不安、食欲低下、抑うつ症状を特徴とします。アメリカ精神医学会や世界保健機関(WHO)から診断基準が示されていますが、基本的に医師の問診により診断されます。 (注8)線維筋痛症は、激しい全身疼痛を主訴とする原因不明の疾病で、疼痛部位における炎症等の病変は見られず、不眠、抑うつ症状等を伴うこともあります。発症の原因やメカニズムは不明ですが、外傷、感染、ストレスが引き金になることが多く、中枢神経系(下行性痛覚抑制経路)の障害によるものと考えられています。日本では200万人の患者がいると推定されていますが、医師の間での認知度も低く、適切な治療を受けていない患者が多数を占めています。30代から40代の女性に多く発症し、長期間にわたる激しい痛みのため、生活の質は著しく低下し、労務、学業に支障をきたすだけでなく、日常生活を送ることも困難になります。 (注9)糖尿病性腎症は、糖尿病を背景疾患とした細小血管障害です。高血糖による糸球体糖化や糸球体高血圧を原因として腎機能が障害を受け、腎症に進行します。糖尿病患者の尿中ミクロアルブミンをモニターし、陽性となった場合はACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬などの降圧剤による治療を行いますが、寛解率は低く、多くの患者がいずれ人工血液透析療法へ導入されます。現在、新規人工透析導入者の1位は糖尿病性腎症であり、医療経済的に大きな負担(約500万円/年/人)となっています。 (注10)体外診断用医薬品とは、薬事法では「専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないものをいう」とされています。検査結果が医師の診断を補助できる点で、単なる研究用試薬とは区別されます。