研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-03 | - | 4,484 |
| 2024-03 | - | 3,472 |
| 2023-03 | - | 2,197 |
| 2022-03 | - | 1,039 |
| 2021-03 | - | 72 |
研究開発活動(本文)
FY2025|6,614 文字
6 【研究開発活動】 当社グループは、写真事業等で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、様々な分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。 バイオ医薬品の開発・製造受託会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesはデンマーク拠点の20,000リットルタンク6基の第1次設備増強工事を完了し、稼働を開始しました。同拠点で進行中の第2次投資ではさらに8基の増強を行い、2026年の稼働を予定しています。これにより同拠点は、既存設備を含め抗体医薬品の原薬製造能力は合計20基、欧州最大のCDMO拠点となる見込み※1です。さらに米国ノースカロライナでは、20,000リットルの動物細胞培養タンク16基を有する新拠点の建設を進めています。第1次投資の8基は2025年、第2次の8基は2028年に稼働予定です。また、デンマーク・ノースカロライナの両拠点には、製剤設備も新たに導入し、バイオ医薬品の原薬製造から充填・最終製剤化まで一貫して受託できる体制を構築します。 また、当社は2027年3月までの3年間で、半導体材料事業の成長投資として設備投資及びR&Dに合計1,700億円を投じる予定です。この投資により、グローバルなサプライチェーンをさらに強化し、拡大する先端半導体材料の需要に応えてまいります。その取組みとして、半導体材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ㈱が、静岡と大分にある2つの開発・生産拠点において、先端半導体材料の開発・生産・品質評価の設備を増強します。静岡拠点では、極端紫外線(EUV)向けフォトレジスト※2をはじめとする先端レジストや、Wave Control Mosaic(ウエイブ コントロール モザイク)™※3の開発・生産・品質評価機能を強化するために約130億円を投資し、新棟を建設します。新棟内にクリーンルームを設置するとともに、最新鋭の検査装置等を導入し、開発のスピードアップとともに生産能力の拡大、品質評価体制の拡充をさらに進めていきます。また、大分拠点では約70億円を投資し、半導体製造プロセスの基幹材料であるポストCMPクリーナー※4の生産設備や検査装置を導入することで、生産能力を約4割拡大します。このほか、熊本拠点では約20億円を投じ、銅配線用を含めたCMPスラリーの生産能力を約3割拡大します。当社は、半導体製造の研磨工程で使われる材料として、CMPスラリーのほか、ポストCMPクリーナーを提供しています。連続する工程で使用される2つの材料を組み合わせて提案できる強みを生かして顧客が抱える課題を解決していきます。上記のほか、当社はエレクトロニクス製造業界大手のTata Electronics Private Limitedとインドでの半導体材料の生産体制及びサプライチェーンの構築に向けた提携に関する基本合意書を締結しました。今後大きな成長が見込まれるインド半導体関連市場の需要を取り込むことで半導体材料事業の成長をさらに加速させるとともに、同国における強固な半導体材料エコシステムの構築に寄与していきます。 当社グループでは、富士フイルム㈱、富士フイルムビジネスイノベーション㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。 当連結会計年度における研究開発費の総額は163,399百万円(前年度比4.0%増)、売上高比5.1%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は9,105百万円です。 当連結会計年度の研究開発の主な成果は次のとおりであります。※1 2024年11月5日現在。当社調べ。※2 半導体製造の工程で、回路パターンの描画を行う際にウエハー上に塗布する材料。※3 広範囲な波長の電磁波(光)をコントロールする機能性材料群の総称。デジタルカメラやスマートフォンに用いられる CMOSセンサー等のイメージセンサーのカラーフィルターを製造するための着色感光材料を含む。※4 CMPスラリー(硬さの異なる配線や絶縁膜が混在する半導体表面を均一に平坦化する研磨剤)による研磨後に、金属表面を保護しながら、粒子、微量金属及び有機残留物を洗浄するクリーナー。(1)ヘルスケア セグメント メディカルシステム事業では、CTやMRI等で撮影された医用画像に対して放射線科医が作成する読影レポートを構造化する、富士フイルム独自の自然言語処理※5技術「読影レポート構造化AI」を開発しました。今回、放射線科医の専門知識に基づき書かれた読影レポートを構造化することで、医師特有の言い回しや医学専門用語を含む読影レポートを効率的にデータベース化し活用することが可能になります。今後、当社は、この「読影レポート構造化AI」を用いて、より高度な画像診断支援機能の開発を加速させます。また、装置開口部70cmの大口径で液体ヘリウムを全く使わない完全ゼロヘリウムを実現したワイドボア1.5テスラ超電導MRIシステム「ECHELON Synergy ZeroHelium(エシェロン シナジー ゼロヘリウム)」※6を2025年6月に発売しました。安定稼働に貢献する高い可用性や自由度の高い設置性といったゼロヘリウムによる特長に加え、AI技術※7を活用して開発した機能により検査ワークフローの効率化を実現し、病院経営をサポートします。このほか、当社とアストラゼネカ㈱は、切除不能なステージIII非小細胞肺がんに対する化学放射線療法の過去症例を検索できる医療情報システムを共同で開発しました。本システムは、医師がCT画像を入力し腫瘍の位置や検索条件を指定すると、データベースから腫瘍の中心の相対位置が近い過去症例を検索し、医師が参照したい症例の放射線治療計画の情報を表示して、医師による放射線治療計画の作成をサポートします。 コンシューマーヘルスケア事業では、紫外線の中で最も長い波長をもつ最長波UVAがシミ・くすみを引き起こす一因であることを解明しました。また、血糖値のコントロールに効果があるとされる生薬成分「オオバナサルスベリ葉エキス」に、最長波UVAが皮膚に当たることにより皮膚中で増加するシミ・くすみ関連因子「GDF-15」の発現を有意に抑制する効果を発見しました。今後、これらの研究成果を化粧品の開発に応用していきます。 ライフサイエンス事業では、富士フイルム和光純薬㈱にて、in vitro※8で発熱性物質を検出するMAT法※9用試薬キット「LumiMAT™(ルミマット) Pyrogen(パイロジェン) Detection(ディテクション)Kit(キット)(以下、「LumiMAT™」と記載します。)」及び、カブトガニ血液抽出成分を使用しないエンドトキシン測定用組換えLAL試薬※10「PYROSTAR™(パイロスター) Neo+(ネオプラス)」を2024年7月に発売しました。欧州では、ウサギ発熱性物質試験が2026年までに欧州薬局方から削除されることが決まっており、LumiMAT™は、その代替試験法として開発されたMAT法用の試薬キットになります。また、PYROSTAR™ Neo+は汎用のエンドトキシン測定装置に対応し、医薬品や医療機器の承認申請における安全性評価のみならず、医薬品の原材料検査や医薬品製造用水の水質管理等、幅広い品質管理の用途で使用できます。 本部門の研究開発費は、60,698百万円となりました。※5 人間がコミュニケーションで使う自然言語を、コンピュータが人と同じように利用するための技術。※6 「ECHELON Synergy」にZeroHelium磁石を搭載した液体ヘリウムを一切使わないMRIシステムの呼称。※7 AI技術のひとつであるDeep Learningを用いて開発した。導入後に自動的に装置の性能・精度が変化することはない。※8 培養容器等の中でヒトや動物の細胞や組織を用いて行う試験。※9 Monocyte Activation Test(単球活性化試験)の略。ヒト単球系細胞が発熱性物質により活性化され、炎症性サイトカイン等を産生することを利用して、発熱性物質を検出する試験法。※10 Limulus Amebocyte Lysateの略。カブトガニ血球抽出物から調製したエンドトキシン測定用試薬。 (2)エレクトロニクス セグメント 半導体材料事業では、先端半導体の製造プロセスに用いられるネガ型の極端紫外線(EUV)※11向けフォトレジスト(以下、「EUVレジスト」と記載します。)及び現像液(以下、「EUV現像液」と記載します。)を発売しました。当社は、現在広く普及しているネガ型レジストの現像工程であるNTIプロセス※12を世界で初めて開発・実用化し、ArF露光※13を用いた半導体の微細化をリードしてきました。今回、EUV向けに進化させたNTIプロセスに対応するEUVレジストとEUV現像液を組み合わせて提供することで、回路パターンの形成プロセスを最適化し、さらなる微細化に貢献します。 AF事業では、富士フイルム和光純薬㈱にて、機能性ポリマーに分解性能を付与することで、紙おむつの再生・再利用における課題に貢献する酸化分解性架橋剤「WOD-001」を開発しました。「WOD-001」は、独自の分子設計技術により、機能性ポリマーに分解性能を付与する架橋剤※14です。次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の一般的な酸化剤で高吸収性ポリマーを低粘度の溶液へと迅速に分解し、高吸収性ポリマーの分解スピードを従来比3倍以上※15に高めます。さらに、水のみならず、有機溶剤にも溶けることから、アクリル系ポリマー等の機能性ポリマーに分解性能を付与することも可能です。建材用アクリル系接着剤等の材料として用いられることで、建築物の解体や、金属とプラスチック等の異種材料でつくられた建材の分別・回収を容易にすることが期待できます。 本部門の研究開発費は、25,760百万円となりました。※11 極端紫外線を用い、10ナノメートルより微細な世代に必要とされる最先端リソグラフィ技術。※12 Negative Tone Imaging プロセス。露光後に感光しなかった部分を現像液で除去して回路を作るネガ型の現像工程。※13 ArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザー光(波長193ナノメートル)を用いる露光手法で、現在最も普及している先端リソグラフィ技術。※14 ポリマー鎖間に架橋(化学結合)を形成する機能性材料。紙おむつの原料である高吸水性ポリマー等の機能性ポリマーの材料として使用されている。※15 当社品との比較において。 (3)ビジネスイノベーション セグメント ビジネスソリューション事業では、AI技術を活用したクラウド型マーケティングプラットフォームである「Revoria Cloud Marketing」や、企業が保有するデータを利用し、自社の業務に最適化されたAIモデルを自動で作成するクラウド型データ分析サービスである「FUJIFILM IWpro Intelligent Assistantオプション」の提供を開始しました。 オフィスソリューション事業では、リユース率最大84%※16の再生機「ApeosPort-VII C R」シリーズを2024年7月より、新しいA3デジタルカラー複合機「Apeos」シリーズ3機種※17、10商品を2024年10月より発売しています。当社は、これらの新製品やサービスによる、幅広いビジネスの場面での効率化や持続可能性への貢献を通じ、DX推進と環境保全への取組みを行っています。 グラフィックコミュニケーション事業では、ミドルレンジモデルのプロダクションプリンターとして「Revoria Press EC2100S」「Revoria Press SC285S」を2025年1月より国内外で発売しています。特徴としては、CMYK(一般的なカラー)に加え、特殊トナー(クリア、ピンク、カスタムレッド、ゴールド、シルバー、ホワイト)を用い、一度の作業で5色の印刷が可能です。また、高速ロール紙カラーインクジェットプリンター「Jet Press 2160CFG」の受注も2025年1月より開始しました。水性顔料インクと高精細な画質を両立しているのが特徴です。今後も、ビジネスイノベーションパートナーとしてお客様のビジネス変革をリードしていきます。 本部門の研究開発費は、54,507百万円となりました。※16 重量比。設計上の最大値。※17 「Apeos C7071」シリーズ:フラッグシップモデル。「Apeos C3067」「Apeos C3061」シリーズ:中小企業向けコンパクトモデル。「Super EA-Ecoトナー」から約15℃低い定着温度を実現した新トナーを採用。 (4)イメージング セグメント コンシューマーイメージング事業では、instax™“チェキ”シリーズに4モデルを追加しました。「instax mini LiPlay(インスタックス ミニ リプレイ)™」をリニューアルし、USB Type-C充電用端子を採用し、専用アプリでファームウェアバージョンアップを可能とする等、使いやすさを向上させて2024年7月に発売しました。また、レバー操作のセルフタイマーでグループショットを手軽に撮影できる「instax WIDE 400(インスタックス ワイド フォーハンドレッド)™」を2024年7月に、立体的なARエフェクトやコラージュプリントで撮影・プリント体験を盛り上げるスマホプリンター“チェキ”「instax mini Link 3(インスタックス ミニ リンク スリー)™」を2024年9月に、instax™ “チェキ”シリーズ最多のエフェクトを搭載し「想像を超える一枚」を生み出すハイブリッドインスタントカメラの最上位モデル「instax WIDE Evo(インスタックスワイドエヴォ)™」を2025年2月に発売しました。当社は今後も、“撮ったその場で、すぐにプリントが楽しめる”インスタントフォトシステムinstax™の世界を広げていきます。 プロフェッショナルイメージング事業では、独自の色再現技術による卓越した画質と小型軽量を実現する「Xシリーズ」の最新モデルとして、ミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-T50」を2024年6月に、また同月に35mm判の約1.7倍となるラージフォーマットセンサー※18を搭載した「GFXシリーズ」で最軽量の「FUJIFILM GFX100SⅡ」を、シリーズ初のレンズ一体型の「FUJIFILM GFX100RF」を2025年4月に発売しました。このほか、シネマライクな映像表現と放送用レンズの操作性を両立した放送用ズームレンズ「Duvoシリーズ」から、初の広角ズームレンズとなる「FUJINON HZK14-100mm」を2024年9月に発売しました。上記社初の映像制作用カメラ「FUJIFILM GFX ETERNA(エテルナ)」を開発しており、2025年中の発売を目指します。ラージフォーマットセンサーを生かした階調豊かで立体的な映像表現や、大量の撮影データの高速処理、自由度の高いポストプロダクションで、映像制作に新たな価値を提供していきます。 本部門の研究開発費は、13,329百万円となりました。※18 対角線の長さが55mm(横43.8mm×縦32.9mm)で、35mm判の約1.7倍の面積を持つイメージセンサー。
FY2024|5,921 文字
6 【研究開発活動】 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、様々な分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。バイオ医薬品の開発・製造受託事業の成長を一段と加速させるため、バイオ医薬品CDMOの中核会社FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下、「FDB」と記載します。)の北米拠点に約1,800億円の大規模投資を行います。今回、当社は、現在増強中の生産能力を上回る、抗体医薬品の旺盛な製造委託ニーズを受け、現在8基のタンクを建設中のノースカロライナ新拠点に、新たに20,000リットルの動物細胞培養タンク8基を導入し、抗体医薬品の原薬の生産能力を大幅に増強させます。ノースカロライナ新拠点は、原薬製造から製剤化・包装までを一貫して受託できる拠点とするために、現在設備の導入を進めており、原薬の大量製造に限らず幅広い顧客ニーズに応えていきます。また、ノースカロライナ新拠点で使用する全てのエネルギーを、再生可能天然ガスや敷地内の太陽光発電の利用、バーチャルPPA導入による12.5万MWh/年の再エネ電力証書の購入で相殺し、実質的にCO2排出ゼロを実現していきます。当社CSR計画「Sustainable Value Plan2030」で定めた目標の下で、水使用量・廃棄物の削減に対する取組みを推進していきます。 また、米国の半導体材料メーカーEntegris, Inc.の半導体用プロセスケミカル事業を買収しました。これにより、幅広い半導体用プロセスケミカルを獲得しました。今後、半導体製造プロセスを広くカバーする製品ラインアップで総合提案力を高め、顧客の製造プロセスの課題解決を図っていきます。本買収によって、欧米で製造拠点を拡充したほか、当社の電子材料分野では初めてとなる東南アジアでの製造拠点を取得しました。2024年から稼働する熊本拠点、韓国拠点を加えた計20拠点からなる、より強固でグローバルな製造体制で、サプライチェーンの強靭化に貢献していきます。当社が持つ、幅広い半導体材料を開発・製造できる高度な研究開発力・品質保証力と今回獲得した高い精製技術等を組み合わせて、より高純度化した半導体用プロセスケミカル等最先端ニーズに対応した半導体材料を開発・提供することで、半導体のさらなる高性能化に寄与していきます。 当社グループでは、富士フイルム㈱、富士フイルムビジネスイノベーション㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。 当連結会計年度における研究開発費の総額は157,108百万円(前年度比1.9%増)、売上高比5.3%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は10,022百万円です。 当連結会計年度の研究開発の主な成果は次のとおりであります。(1)ヘルスケア セグメント メディカルシステム事業では、国立がん研究センターと共同で開発したAI技術開発の研究基盤システムを用いて、プログラミング等の専門知識がなくても医師や研究者が自身で画像診断支援AI技術を開発することが可能な「SYNAPSE Creative Space」の提供を2024年4月より開始しました。MRI画像から神経膠腫(グリオーマ)の疑いのある領域を精密に抽出するAI技術を国立がん研究センターと共同で開発しました。本技術により、希少がんである神経膠腫の治療前の画像評価の精度向上が期待できます。また、富士フイルム㈱と国立大学法人神戸大学は、AI技術を活用して腹部の非造影CT画像※1から膵臓がんが疑われる所見の検出を支援する技術を開発しました。これにより、両者が開発した、膵臓がんの検出を支援する技術の適用対象を、造影CT画像※2から非造影CT画像へ拡大します。今後、一般的な検診や人間ドックで撮影される非造影CT画像からより多くの潜在的膵臓がん患者を拾い上げ、早期治療につながることが期待できます。そのほか、富士フイルム㈱と公立大学法人名古屋市立大学は、MRI画像から脳脊髄液腔の各領域を抽出するAI技術を共同で開発しました。本技術により、「治療で改善できる認知症」と言われ早期発見が重要なハキム病(特発性正常圧水頭症:iNPH)※3の診断精度向上が期待できます。 バイオCDMO事業では、FDB拠点にて500L培養タンクを用いた連続生産システムの開発を進めており、抗体薬の培養工程で連続40日間の高密度細胞培養を達成致しました。また、遺伝子治療薬でボトルネックとなっている大量生産技術の確立に向け、抗体薬で培った連続生産技術を展開することにより、新たな高生産プロセスである連続エレクトロポレーション技術※4を開発致しました。今後、これら技術を用いた受託サービスを通じて顧客をサポートし、アンメットメディカルニーズへの対応等の社会課題の解決、さらにはヘルスケア産業のさらなる発展に貢献していきます。 ライフサイエンス事業では、米国子会社のFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.(以下、「FCDI」と記載します。)とOpsis Therapeutics,LLC(以下、「オプシス社」と記載します。)が、大手製薬企業Bayer(バイエル) AGの子会社であるBlueRock Therapeutics LP(以下、「ブルーロック社」と記載します。)に、iPS細胞を用いた網膜疾患治療法の開発・商業化に関するライセンスを供与することに合意しました。本ライセンスの供与は、2021年にFCDI・オプシス社・ブルーロック社で行った、iPS細胞を用いた眼疾患治療法の研究開発における戦略的提携にて取り決めたオプション権をブルーロック社が行使したことに基づくものです。今後も、FCDIは、効果的なパートナーシップを継続し、iPS細胞技術の可能性を最大限に生かすことで、眼疾患を対象としたベスト・イン・クラスの細胞治療法の創出を目指します。 コンシューマーヘルスケア事業では、皮膚への浸透性と保水効果を高めた「ナノ化ワセリン」を開発しました。「ナノ化ワセリン」は、独自のナノ分散技術を活用し、保湿剤として広く使われているワセリンの粒子をナノサイズに微細化したものです。当社は、「ナノ化ワセリン」の皮膚への浸透性向上と、高い保水効果を確認し、「ナノ化ワセリン」により、角層の厚みが増すことを実証しました。また、スギ花粉に含まれる抗原タンパク質「Cryj2(クリジェイツー)」が、皮膚バリア機能低下とシミ・くすみ等の肌トラブルを引き起こす一因であることを解明し、消炎作用をもつ生薬成分として知られる「マグワ根皮エキス」に、「Cryj2」による肌への悪影響を改善する効果を発見しました。今後、これらの研究成果を化粧品の開発に応用していきます。このほか、紫外線や熱で酸化した皮脂である過酸化脂質が、皮膚のバリア機能※5を低下させる一因を解明しました。当社は、今回の研究成果を、皮膚のバリア機能低下を予防する成分の処方設計に応用する等、化粧品の開発に生かしていきます。 本部門の研究開発費は、55,709百万円となりました。※1 造影剤を使用せずに撮影したCT画像。※2 臓器や血管にコントラストをつけて、画像を見やすくするために造影剤を使用したCT画像。※3 ハキム病(特発性正常圧水頭症:iNPH):歩行障害や認知障害、切迫性尿失禁等をもたらす疾患で、くも膜下出 血や髄膜炎等に続発する二次性正常圧水頭症と異なり、先行する原因疾患はなく、緩徐に発症して徐々に進行す る。iNPHはidiopathic Normal Pressure Hydrocephalusの略。※4 細胞液を送液しながら連続で電圧を付与し、高効率に目的遺伝子を挿入する技術。※5 肌の水分の蒸散、外部因子(細菌やアレルギー物質、花粉、大気汚染物質)の侵入等を防ぐ機能。 (2)マテリアルズ セグメント 産業機材事業では、富士フイルム㈱とIBM Corporation(以下、「IBM」と記載します。)が、世界最大の記録容量※6となる50TB(非圧縮時)のテープ・ストレージ・システムを開発しました。本システムは、「微粒子ハイブリッド磁性体」を採用した富士フイルム㈱開発の磁気テープ「IBM 3592 JFテープ・カートリッジ」と、IBMの最新世代の「TS1170ドライブ」を組み合わせたエンタープライズ向けのテープ・ストレージ・システムです。 グラフィックコミュニケーション事業のデジタル印刷分野では、世界初※7となる接着機能を持つ「圧着トナー」を発売しました。プロダクションカラープリンター「Revoria Press PC1120」に特殊トナーとして搭載し、用紙への印字と糊付けをワンパスで完結します。インクジェット分野では、ワイドフォーマットインクジェットプリンター向けに、水性顔料インクジェットインク中に光硬化性樹脂※8を安定的に分散させる独自技術「AQUAFUZE(アクアフューズ)技術」を新たに開発しました。「AQUAFUZE技術」は、当社グループが有する、水性インク技術とUV硬化性インク技術の融合により開発したものです。本技術を用いた新インクジェットインクとなるUV硬化性水性インクは、これまで水性インク・溶剤インク・UV硬化性インクといった単一インクでは難しかった、印刷時に生じるインクの臭気等を抑える安全性に加え、高い耐擦性や延伸性を実現する膜質を有するため、多彩な印刷基材に対応します。 本部門の研究開発費は、49,050百万円となりました。※6 2023年8月30日発表時点。「Linear Tape Open (LTO)」最新世代LTO-9に対応する磁気テープ の記録容量最大 18TB(非圧縮時)と、IBM 「エンタープライズ」現行品「IBM 3592 JE テープ・カートリッジ」に対応する磁気 テープの記録容量最大20TB(非圧縮時)との比較において。「LTO」は、記録容量等の仕様が統一された規格。 「エンタープライズ」は、IBMが独自に仕様を定めた規格。※7 2023年4月25日発表時点。接着機能を持つ実用化されたトナー及びその技術は世界初。当社調べ。※8 UV光の照射によって硬化反応が起こる樹脂。 (3)ビジネスイノベーション セグメント オフィスソリューション事業では、デジタル複合機・プリンター「Apeos」シリーズが、一般社団法人日本セキュリティ格付機構(略称:JaSRO)が付与する米国国立標準技術研究所(NIST)のセキュリティ基準「NIST SP800-171」及び「NIST SP800-172」への準拠性を示す情報セキュリティ格付けで、最高評価となる「AAAis」を2年連続で取得しました。 ビジネスソリューション事業では、企業のDX活動を通じて、お客様の成功体験の具現化を目指すCHX(カストマー・ハッピー・エクスペリエンス)を実現するソリューション・サービスの第1弾として、IT資産の可視化や運用/管理から環境改善支援まで、お客様のニーズに合わせてワンストップで提供するITサポートサービス「IT Expert Services」の提供を2023年6月より開始しました。また、CHXを実現するソリューション・サービスの第2弾として、お客様が現在利用しているシステムを最大限生かした業務プロセス変革を支援し、DXを加速する新たなクラウドサービス「FUJIFILM IWpro」の提供を2023年11月より日本及びアジアパシフィック地域で開始しました。 本部門の研究開発費は、31,232百万円となりました。 (4)イメージング セグメント コンシューマーイメージング事業では、スクエアフォーマットに対応した「INSTAX SQUARE SQ40」を2023年6月に、いつでもどこでも気軽に撮影できる“手のひらサイズカメラ”「INSTAX Pal」を2023年9月に発売しました。また、カメラ内部にLEDを搭載し、ダイヤルの設定値に応じて異なる色の光をフィルムに直接照射することで6種類の色表現ができる「カラーエフェクトコントロール」や、周辺光量を抑え中心部をフォーカスする「ビネットモード」等、アナログ技術でプリント表現の幅をさらに広げる新機能を搭載した「INSTAX mini 99」を2024年4月に発売しました。 プロフェッショナルイメージング事業では、小型軽量ボディに大容量バッテリー・高性能 AF・動画撮影機能を搭載したオールインワンモデル「FUJIFILM X-S20」を2023年6月に、「GFX シリーズ」の最新モデルとして、シリーズ最高の高速連写・AF・動画性能を実現したフラッグシップモデル「FUJIFILM GFX100 II」を2023年9月に発売しました。また、高級コンパクトデジタルカメラ「X100 シリーズ」の最新モデルとなる「FUJIFILM X100VI」を2024年3月に発売しました。約4020万画素センサーと最新プロセッサーを採用するとともに、シリーズ初のボディ内手振れ補正機能も搭載し、さらなる高画質・高性能を追求しています。このほか、最先端の光学技術・画像処理技術・AIによってトンネル点検業務の効率化を実現する「トンネル点検 DXソリューション」の提供を2023年10月に開始しました。本ソリューションは、トンネル撮像システムの貸与から画像データの保管・活用までワンストップで提供し、トンネル点検業務を刷新します。画像データをもとに高精細なトンネルの画像展開図を生成できるため、従来トンネル内で行っていたひび割れの進行度合い等の点検作業をオフィスにいながら実施可能とします。 本部門の研究開発費は、11,095百万円となりました。
FY2023|6,858 文字
6 【研究開発活動】 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、様々な分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。バイオ医薬品の開発・製造受託事業の成長を一段と加速させるため、バイオCDMO事業の中核会社FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下、「FDB」と記載します。)の欧米拠点に、総額約2,000億円の大規模投資を行います。本投資は、バイオ医薬品市場で高いウエイトを占める抗体医薬品の生産能力増強を目的に、FDBのデンマーク拠点と米国テキサス拠点に対して実施するものです。今回、当社は、抗体医薬品の旺盛な製造受託ニーズを受け、最短で生産設備の立ち上げが可能なデンマーク拠点に、20,000リットル培養タンク8基を追加導入する第二弾大型設備投資を行います。本投資により、2026年までに、同サイズのタンク保有数を、デンマーク拠点で20基、全世界で合計28基に拡大させます。また、世界最大のバイオ医薬品市場である米国にも戦略的投資を行い、欧米両市場で連続生産システムによる原薬製造体制を確立します。今回、英国拠点に続き、米国テキサス拠点に連続生産システムによるGMP製造が可能な設備を導入します。新薬開発を行う顧客との協働のみならず規制当局との連携で早期商用化を目指し、連続生産システムを用いた製造受託のグローバルな市場形成を図ります。 また、細胞培養に必要な培地の事業成長を加速させるため、米国子会社のFUJIFILM Irvine Scientific, Inc.(以下、「FISI」と記載します。)に約260億円の設備投資を行い、培地の生産拠点を米国ノースカロライナ州に新設します。今回の設備投資により、当社グループとして世界5拠点を有する、培地のグローバル生産体制を構築し、バイオ医薬品の研究開発・製造を強力にサポートしていきます。なお、新設する拠点は、2025年に稼働を開始する予定です。 このほか、デジタル病理診断用ソフトウェア等の開発・販売を行っている、Inspirata, Inc.のデジタル病理部門を買収しました。これにより、当社グループはデジタル病理事業に本格参入し、メディカルシステム事業の成長をさらに加速させます。世界トップシェアを誇る当社グループの医療用画像情報システム(PACS)と本デジタル病理診断用ソフトウェアを組み合わせて院内検査画像の一元化を実現し、病理診断ワークフローの効率化を支援していきます。 当社グループでは、富士フイルム㈱、富士フイルムビジネスイノベーション㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。 当連結会計年度における研究開発費の総額は154,147百万円(前年度比2.4%増)、売上高比5.4%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は16,065百万円です。 当連結会計年度の研究開発の主な成果は次のとおりであります。(1)ヘルスケア セグメント メディカルシステム事業では、国立がん研究センターと共同で開発したAI技術開発の研究基盤システムを用いて、プログラミング等の専門知識がなくても医師や研究者が自身で画像診断支援AI技術を開発することが可能な「SYNAPSE Creative Space」を開発しました。上部消化管の内視鏡検査時に胃腫瘍性病変や食道扁平上皮癌が疑われる領域をリアルタイムに検出し、胃がん・食道がんの早期発見をサポートする内視鏡診断支援ソフトウェア「EW10-EG01」について、薬機法に基づく医療機器製造販売承認(薬事承認)を取得しました。また、乳房の断層画像を生成し内部構造の3次元的な観察を可能にするトモシンセシス機能を搭載し、低線量・高画質とAI技術によるワークフロー向上を実現したデジタルマンモグラフィシステム「AMULET SOPHINITY」を発売しました。富士フイルム㈱と地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターは、AI技術を活用した新たな認知症スクリーニング検査手法の共同研究を開始しました。本研究では、高精度センサーを搭載した眼鏡型ウェアラブルデバイスを用いて患者の視線移動、まばたきの回数、頭部の傾き、歩行時の左右バランス等のデータを、AI技術を用いて解析することで、認知症疑いの判定に有効なデータ指標を見出すことを目指します。また、富士フイルムヘルスケア㈱と国立大学法人千葉大学は、次世代CT装置「フォトンカウンティングCT」(以下、「PCCT」と記載します。)の臨床有用性を評価する共同研究を開始しました。本研究は、富士フイルムヘルスケア㈱が開発したPCCTを用いて撮影した組織のデータを収集・検証し、組織内出血やがんの早期発見の可能性等を検討するものです。 バイオCDMO事業では、当社グループ国内初のバイオCDMO拠点を富山県富山市に新設します。新拠点は、富士フイルム富山化学㈱による設備投資を通じて設立するもので、2026年度の稼働を予定しています。本拠点には、海外で培ってきた高度なバイオ関連技術やデュアルユース設備等を導入します。バイオ医薬品のプロセス開発・製造受託サービスを製薬企業に提供し、事業成長を加速させていきます。また、パンデミック時には、受託サービスを通じて、製薬企業による国産ワクチンの迅速開発・供給をサポートします。 ライフサイエンス事業では、米国子会社のFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.(以下、「FCDI」と記載します。)が、グローバルに事業展開するヘルスケア企業Novo Nordisk社と、治療用iPS細胞を利用できる権利を同社に供与する契約を締結しました。本契約は、FCDIがNovo Nordisk社に対して、細胞治療薬の研究開発や治験薬製造・商業生産を対象にFCDIの治療用iPS細胞を利用できる権利を供与するものです。今後も、FCDIは、製薬企業等パートナーとの連携強化を図り、iPS細胞を用いた細胞治療薬の創出に貢献していきます。 コンシューマーヘルスケア事業では、皮膚の正常なターンオーバー※2を維持する表皮幹細胞の情報伝達物質であるcAMPが、加齢に伴い減少することを発見しました。また、カフェインに、cAMPを増加させ“若々しい肌”へ導く効果があることを見出しました。さらにカフェインを、独自開発した単層リポソーム※3に含有することで、その作用が高まることを確認しました。当社は、本研究により「cAMPを増加させることで皮膚のターンオーバーを正常化し、“若々しい肌”へ導く」という新しいアプローチを見出しました。今後、本研究成果を化粧品開発に生かしていきます。 本部門の研究開発費は、48,882百万円となりました。※1 患者自身の滑膜組織から採取した間葉系幹細胞。間葉系幹細胞は、生体内に存在し、一定の分化能・増殖能を有する細胞。※2 表皮の最も下に位置する表皮幹細胞が、分裂を繰り返しながら最上層の角層へ達し、垢となって剥がれ落ちるサイクル。※3 細胞膜の構成成分であるリン脂質を用いて、ナノサイズ(1mの10億分の1サイズ)に微細化されたカプセル状の微粒子。 当社グループにおける新薬開発状況は次のとおりであります。(2023年6月現在)開発番号薬効・適応症剤形地域開発段階T-705重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬経口日本PhⅢT-817MAアルツハイマー型認知症治療薬経口米国日本欧州PhⅡPhⅡPhⅡ脳卒中後のリハビリテーション効果促進薬経口日本PhⅡT-4288新規フルオロケトライド系抗菌薬経口日本承認申請中FF-10502進行・再発固形がん治療薬注射米国PhⅡFF-10832進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム)注射米国PhⅠFF-10850進行性固形がん治療薬(トポテカンリポソーム)注射米国PhⅠ (2)マテリアルズ セグメント 電子材料事業では、生産子会社の富士フイルム九州㈱に、約20億円の設備投資を行い、半導体製造プロセスの基幹材料であるCMP※4スラリーを生産する最新鋭設備を導入します。当社は、米国・台湾・韓国にCMPスラリーの生産拠点を有し、安定供給と品質に対する高い顧客要求に応え続けることで、同製品の市場伸長を大きく上回る売上成長を達成しています。今後、世界4拠点の生産体制の下、CMPスラリーの安定・迅速供給を実現することで、さらなるビジネス拡大を図っていきます。また、FUJIFILM Electronic Materials Korea Co., Ltd.は韓国平澤市にイメージセンサー用カラーフィルター材料を生産する新工場を建設します。今後、日本・台湾・韓国の3拠点の生産体制の下、高い品質基準のイメージセンサー用カラーフィルター材料を安定的に生産・提供しトップメーカーとしての供給責任を果たすとともに、顧客ニーズにあった新規製品の市場導入を加速させることで、「Wave Control Mosaic」※5の売上拡大を目指します。 産業機材事業では、圧力測定フィルム「プレスケール」の専用アプリとして、圧力画像解析アプリ「プレスケールモバイル」を発売しました。「プレスケール」での目視判定によるばらつきを低減し、圧力検査の品質をさらに向上させます。今後、「プレスケールモバイル」で集約した圧力検査データを管理・保存するクラウドシステムや新たな分析機能を導入する等、本アプリをさらに進化させて、新たな価値を提供していきます。 ファインケミカル事業では、化粧品用増粘剤「ソルトレラ®Neo」を新たに開発しました。「ソルトレラ®Neo」は、高い耐塩性と滑らかなチキソトロピー性※6を両立した化粧品用増粘剤「ソルトレラ®」シリーズの新製品で、現行品の約1.5倍の増粘性を実現し、医薬部外品原料規格※7にも適合したもので医薬部外品への配合が可能。塩系成分のビタミンC誘導体※8を高濃度で配合した美容ジェル、汗で有効成分が流されずに効果が持続する日焼け止めや制汗剤等、高機能・高付加価値製品の開発の応用が期待できます。 グラフィックコミュニケーション事業では、業界トップクラスの印刷速度と高濃度印字を両立したトランザクション市場向け高速ロール紙カラーインクジェットプリンター「Jet Press 1160CF」を発売しました。また、印刷物の検品を自動化し、生産性向上と品質維持を支援する「検査マネジメントシステム」の提供を開始しました。 インクジェット事業では、水性顔料インクジェットインク用色材である顔料分散液の新色として、オレンジ(PO71)・グリーン(PG7)・バイオレット(PV23)の3色を発売しました。顔料分散液には、当社独自の「Reactive Dispersant」技術を用いており、インク製造時に溶剤や機能性材料等が加わっても、その影響を受けずに顔料分散の安定性が維持されるため、インクに使用する材料の選択肢の幅が広がり、様々な分野のインク製造が可能です。 本部門の研究開発費は、46,671百万円となりました。※4 Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略。※5 広範囲な波長の電磁波(光)をコントロールする機能性材料群の総称。デジタルカメラやスマートフォンに用いられるCMOSセンサー等のイメージセンサーのカラーフィルターを製造するための着色感光材料を含む。※6 かき混ぜる等一定の力を加えると粘度が下がって液体のようになる一方で、放置すると粘度が上がり元の固体のように戻る性質。※7 医薬部外品、化粧品の原料として配合することが認められている成分のうち、日本薬局方、食品添加物公定書及び日本産業規格に収載されている成分規格以外のもの。※8 ビタミンCを肌に吸収しやすくするために、ビタミンCの一部構造を改良した化合物。 (3)ビジネスイノベーション セグメント オフィスソリューション事業では、最小クラス・最軽量の容積※9と高速プリントを実現したA3モノクロプリンター「ApeosPrint 4560 S/3960 S/3360 S」を発売しました。中速機では、最大75枚/分の高速出力に加え、セキュリティの強化と環境負荷を低減したA3モノクロ複合機「Apeos 7580/6580/5580」を発売しました。 ビジネスソリューション事業では、社内申請業務のさらなる効率化を支援する「DocuWorks Cloud Connector for X-point Cloud」を提供開始しました。また、中堅・中小企業向けDXを加速するソリューション「Bridge DX Library」のラインアップを146種類に拡大し、業種別・業務別にお客様のDX課題解決を強力に支援します。このほか、経理業務のDXとインボイス制度・電子帳簿保存法への対応を支援する請求書受領クラウドサービス「TOKIUMインボイス」を提供開始しました。 今後も、当社グループのシナジーを加速し、革新的な製品やサービスをさらに多くのお客様にお届けします。 本部門の研究開発費は、33,056百万円となりました。※9 2022年11月2日発表時点。モノクロ毎分連続プリント速度30枚以上(A4片面)のA3モノクロプリンター ApeosPrint 3960 S/3360 Sの容積において。当社調べ。 (4)イメージング セグメント フォトイメージング事業では、スマホの画像をカードサイズのチェキフィルムにプリントできる“チェキ”「INSTAX mini Link 2」や、スクエアフォーマットのチェキフィルムに出力できる“チェキ”「INSTAX SQUARE Link」を発売しました。また、任天堂㈱の「Nintendo Switch」の全てのゲームから、お気に入りのシーンやキャラクターのベストショットを、スマホプリンター“チェキ”「INSTAX mini Link」シリーズでプリントできる専用アプリ「INSTAX mini Link for Nintendo Switch」のバージョンアップ版をリリースしました。ゲーム画面をプリントできることに加え、スマホで友人や自分を撮影する際に「スプラトゥーン3」のエフェクトを重ね合わせてデコレーションしたり、撮影した後の画像にお気に入りのキャラクターデザインのステッカーを追加できる等、楽しい機能を充実させました。このほか、撮ったその場ですぐにプリントが楽しめるインスタントカメラINSTAXシリーズの最新エントリーモデルとして、“チェキ”「INSTAX mini 12」を発売しました。 光学・電子映像事業の電子映像分野では、独自の色再現技術による卓越した画質と小型軽量を実現する「Xシリーズ」のフラッグシップモデルとして、高剛性ボディに強力な手ブレ補正機構を採用し、豊富なインターフェースも備えプロの幅広いニーズに応えるミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H2S」や、約4020万画素センサーを搭載し、高画素を生かした写真撮影と8K/30Pの映像撮影が可能なミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H2」を発売しました。また、「Xシリーズ」の最新モデルとして、質量約557gの小型軽量ボディに約4020万画素センサー、天面部3ダイヤル、3方向チルト液晶モニターを装備したミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-T5」を発売しました。光学デバイス分野では、世界初の「屈曲型二軸回転機構レンズ」を搭載した超短焦点プロジェクター「Zシリーズ」の新たなラインアップとして、高輝度6000ルーメンの明るい映像投写とクラス最小・最軽量※10を実現した「FUJIFILM PROJECTOR Z6000」を発売しました。 本部門の研究開発費は、9,473百万円となりました。※10 2022年5月9日発表時点。レーザー光源を搭載し6000ルーメン以上の明るさの映像を投写できる、超短焦点プロジェクター(TR値0.4以下)として。当社調べ。
FY2022|6,398 文字
5 【研究開発活動】 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、様々な分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。富士フイルム㈱では、半導体材料やディスプレイ材料等の高機能材料の領域で事業成長をさらに加速させるため、2021年10月1日に「高機能材料戦略本部」を新設しました。同本部は、高機能材料領域における事業横断的な戦略機能を担う組織で、事業間のさらなる連携強化や、技術開発の共通テーマの策定、経営資源の最適化、M&A・提携等を推進し、中長期を見据えた、新規事業の開発と強固な事業ポートフォリオの構築を目指します。 需要が増加するCOVID-19のワクチンや最先端医療分野である遺伝子治療薬等のバイオ医薬品の原薬生産能力を大幅に向上させるため、バイオCDMO事業の中核会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下、「FDB」と記載します。)の欧米拠点に総額約900億円の大型設備投資を行います。遺伝子治療薬にも対応した設備とすることで、需要が増加しているCOVID-19ワクチンのみならず、最先端医療分野である遺伝子治療薬等の受託ニーズに応えていきます。 また、富士フイルム㈱は米国バイオベンチャーAtara Biotherapeutics, Inc.(以下、「Atara社」と記載します。)の細胞治療薬製造拠点を約100百万米ドルで買収しました。今回の買収完了に伴い、本製造拠点を、バイオCDMO事業の中核会社であるFDBのカリフォルニア拠点として始動させました。今後、遺伝子改変細胞治療薬※をはじめとする細胞治療薬の受託ビジネスを本格的に展開し、バイオ医薬品の開発・製造受託事業のさらなる拡大を図っていきます。このほか、細胞の増殖・分化・機能発現を促進するサイトカインの開発・製造・販売を行う米国バイオテック企業Shenandoah Biotechnology, Inc.(以下、「シェナンドーア社」と記載します。)を買収しました。今回の買収完了に伴い、富士フイルム㈱の米国子会社で培地のリーディングカンパニーであるFUJIFILM Irvine Scientific, Inc.(以下、「FISI」と記載します。)の子会社としてシェナンドーア社を始動させました。今後、FISIの培地技術とシェナンドーア社が有する、サイトカインの開発ノウハウを組み合わせて、目的の機能を発現する細胞を効率的に培養できる細胞治療用培地を開発していきます。培地・iPS細胞・研究用試薬にサイトカインを加えた製品ポートフォリオで顧客への総合提案力を高め、幅広いニーズに応えることで、市場が急伸する細胞治療薬の研究開発・製造支援ビジネスを拡大していきます。※体外に取り出した細胞に治療用遺伝子を導入し作製した細胞を用いる細胞治療薬。 このように当社グループでは、富士フイルム㈱、富士フイルムビジネスイノベーション㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。 当連結会計年度における研究開発費の総額は150,527百万円(前年度比1.1%減)、売上高比6.0%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は23,638百万円です。 当連結会計年度の研究開発の主な成果は次のとおりであります。(1)ヘルスケア セグメント メディカルシステム事業では、心臓の拍動によって生じる画像のブレを低減する技術Cardio StillShotと画像処理速度を向上させるFOCUS Engineを新たに搭載し、さらなる高画質画像の提供、心臓検査の効率化に貢献するマルチスライスCTシステム「SCENARIA View Plus」を発売しました。富士フイルム㈱と名古屋大学医学部附属病院は共同で、院内の様々な部門システムで管理している診療データを基に、AI技術を用いて、肺炎入院患者の経過を高精度に予測する技術を開発しました。今後、本技術を実用化することで、個別化医療の推進と病院経営の効率化を支援していきます。また、当社は、外科手術用内視鏡システム等に応用して組織の酸素飽和度を画像化できる、酸素飽和度イメージング技術を開発しました。加えて、胸部CT画像に新型コロナウイルス肺炎(以下、「COVID-19肺炎」と記載します。)の特徴的な画像初見が含まれている可能性(以下、「確信度」と記載します。)の表示及び確信度の判定に寄与した領域のマーキング表示により、医師の診断を支援するソフトウェア「COVID-19肺炎画像解析プログラム」(以下、「本ソフトウェア」と記載します。)をAI技術を活用して開発し、薬機法における製造販売承認を取得しました。本ソフトウェアを、当社の3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT(シナプス ヴィンセント)」向けのアプリケーションとして発売しました。また、新型コロナウイルスに対する抗体の有無を調べる抗体測定用試薬「アキュラシード COVID-19 抗体」(研究用試薬)、及び、新型コロナウイルス抗原を定量的に測定する「アキュラシード SARS-CoV-2 抗原」(体外診断用医薬品)を発売しました。 バイオCDMO事業では、FDBの新拠点である米国ボストン拠点にて、遺伝子治療薬のプロセス開発の受託サービスを開始しました。FDBの米国テキサス・英国拠点に続き、米国ボストン拠点でも遺伝子治療薬の受託ビジネスを展開することで、最先端治療分野の顧客ニーズに応え、バイオCDMO事業の成長を加速させるとともに、高品質なバイオ医薬品の安定供給を通じて顧客をサポートすることで、アンメットメディカルニーズへの対応等の社会課題の解決、ヘルスケア産業のさらなる発展に貢献していきます。 ライフサイエンス事業では、バイオ医薬品の需要増等に対応するため、細胞培養に必要な培地の新工場を2021年12月8日より稼働させました。新工場は、当社欧州拠点のFUJIFILM Manufacturing Europe B.V.に投資して建設したもので、cGMPに準拠した最新鋭工場です。新工場稼働を通じて、培地の生産能力を増強するとともに、日米欧3拠点のグローバル生産体制を確立し、顧客の創薬・医薬品製造をより強力にサポートしていきます。また、バイオ医薬品等の研究開発・製造を行う製薬企業が集積する中国・蘇州高新区に、培地のカスタマイズサービス拠点「Innovation & Collaboration Center」を新設し、日本・米国に続き、中国における営業・技術サポート体制を一層強化することで、顧客満足度のさらなる向上を図ります。 医薬品事業では、進行性固形がんを対象とし、リポソーム製剤「FF-10832」とMerck & Co., Inc., Rahway, N.J., U.S.A.(米国とカナダ以外ではMSD)の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))の併用療法を評価する臨床第Ⅱa相試験を開始しました。引き続き、独自技術を活用して、リポソームや脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle)等のドラッグ・デリバリー・システム(以下、「DDS」と記載します。)技術の研究開発、DDS技術を用いた新薬開発に取り組んでいきます。 コンシューマーヘルスケア事業では、湿度の低下による刺激で角層水分量とバリア機能が低下することを実証し、肌荒れが生じる一因を解明しました。また、本研究では、肌チャ葉エキスに角層中の重要なバリア関連因子であるアシルセラミド産生酵素の発現促進効果と肌のバリア機能に重要なアシルセラミドの産生を補うことで「刺激にゆるがない肌」へ導く新しいスキンケアの可能性を見出しました。当社は、今回の研究成果を化粧品の開発に応用し、乾燥肌や敏感肌をケアする若年層向けのスキンケアブランド「cresc. by ASTALIFT」を新たに展開し、独自のナノ分散技術で微粒子化した「Wヒト型ナノセラミド」と「チャ葉エキス」を配合したジェリー状化粧液「ジェリーコンディショナー」とクリーム状乳液「モイスチュア リッチミルク」を発売しました。 本部門の研究開発費は、45,289百万円となりました。 当社グループにおける新薬開発状況は次のとおりであります。(2022年6月現在)開発番号薬効・適応症剤形地域開発段階T-705抗新型コロナウイルス(COVID-19)薬経口日本承認申請中重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬経口日本PhⅢT-817MAアルツハイマー型認知症治療薬経口米国日本欧州PhⅡPhⅡPhⅡ脳卒中後のリハビリテーション効果促進薬経口日本PhⅡT-4288新規フルオロケトライド系抗菌薬(耳鼻咽喉科感染症)経口日本承認申請中新規フルオロケトライド系抗菌薬(呼吸器感染症)経口日本PhⅢFF-10501骨髄異形成症候群治療薬経口日本米国PhⅠPhⅡFF-10502進行・再発固形がん治療薬注射米国PhⅡFF-10832進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム)注射米国PhⅠFF-10850進行性固形がん治療薬(トポテカンリポソーム)注射米国PhⅠ (2)マテリアルズ セグメント 記録メディア事業では、大容量データのバックアップやアーカイブに最適な「FUJIFILM LTO Ultrium9 データカートリッジ」(以下、「LTO9」と記載します。)を発売しました。当社独自の「NANOCUBIC技術」によって微粒子化したバリウムフェライト磁性体を均一に分散し、テープ表面のうねりや厚みムラのない平滑な薄層磁性層を塗布し、従来のLTO8の1.5倍となる最大記録容量45TB(非圧縮時18TB)を実現するとともに、最大1,000MB/秒(非圧縮時400MB/秒)の高速データ転送も可能で、高い利便性を発揮します。また、LTO9で実現した高容量は、IoT・DXの進展に伴い急増するデータストレージ需要に応えるとともに、世界的に対応が急務となっているCO2排出削減に貢献します。 グラフィックシステム事業では、軟包装印刷の最終段階で必要なクライアント立ち会いによる印刷品質確認をモニター上で高精度に行える「遠隔色校正システム」を発売しました。当システムはモニター上での高精度の色調確認が可能であり、軟包装印刷における品質合意のための新たな手段を提供するソリューションとして、立ち合いに関わる業務負荷の軽減、時間・コストの削減に貢献します。当社は、今後も軟包装をはじめとするパッケージ分野の課題解決に貢献するため、さらなるソリューションの拡充に取り組んでいきます。 インクジェット事業では、色素を用いず、光の反射によって生じる発色現象である構造色を発現させ、意匠性の高い加飾印刷を可能にする「構造色インクジェット技術」を新たに開発しました。本技術は当社の分子制御技術を応用し、フィルム基材上に吐出したインク内に微細な構造を形成して発色させるものです。色味の異なる構造色を発現するインクを複数種用意し、その組み合わせやインクの濃度を調整しながら、構造色のパターンやグラデーション等を自在に描画することで、高い意匠性を実現します。当社は、産業用インクジェット市場における多様な用途やお客さまのニーズに応じて、今後も画期的な製品を開発・提供し、様々な産業の発展に貢献していきます。 本部門の研究開発費は、39,912百万円となりました。 (3)ビジネスイノベーション セグメント オフィスソリューション事業では、デザインを一新、セキュリティ機能を強化した「FUJIFILM」ブランドのデジタルカラー複合機及びプリンター「ApeosPro/Apeos C/ApeosPrint」シリーズの新製品を発売しました。グラフィックコミュニケーション事業領域では、プロダクションプリンターの新ブランド「Revoria」シリーズ2機種をワールドワイドで販売開始しました。富士フイルム㈱の海外拠点や有望な代理店を活用した販路の拡大により、新規のOEM供給を含め、グローバル展開をさらに加速していきます。 ビジネスソリューション事業では、2022年1月に買収が完了したHOYAデジタルソリューションズ㈱が「富士フイルムデジタルソリューションズ㈱」として、新たに事業活動を開始しました。今後、Microsoft Dynamics 365を主力とした基幹システムの販売及び導入支援サービスを進めます。また、請求書支払業務デジタル化ソリューション「Esker on Demand AP」がJIIMA「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証、電子取引ソフト法的要件認証」を取得しました。さらに、Withコロナ時代の働き方改革に向け、場所の制約なくリアルタイムに文書の「作成」「閲覧」「共有」が行える新クラウドサービス「DocuWorks Cloud」を提供開始しました。個室型ワークスペース「CocoDesk」は、ショッピングモールや関西圏にも設置場所を拡大し、総設置台数100台となりました。 今後も、富士フイルムグループのシナジーを加速し、革新的な商品やサービスをさらに多くのお客様にお届けします。 本部門の研究開発費は、33,226百万円となりました。 (4)イメージング セグメント フォトイメージング事業では、スマホで撮影した画像を、通常のカードサイズのチェキプリントの2倍の大きさとなるワイドフォーマットフィルムにプリントできるスマートフォン用プリンター“チェキ”「instax Link WIDE」やインスタントカメラinstax(インスタックス)シリーズの最上位機種として、カードサイズのミニフォーマットフィルムに対応したハイブリッドインスタントカメラ“チェキ”「instax mini Evo」を発売しました。 光学・電子映像事業の電子映像分野では、35mm判の約1.7倍となるラージフォーマットセンサーを採用したミラーレスデジタルカメラ「GFXシリーズ」の最新モデルとして、質量約900gの小型軽量ボディに、約5,140万画素センサーや強力な手ブレ補正機構を搭載し高速画像処理エンジン等による高性能AFも備えた「FUJIFILM GFX50S II」を発売しました。また、独自の色再現技術による卓越した画質と小型軽量を実現する「Xシリーズ」の最新モデルとして、ミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-T30 II」を発売しました。光学デバイス分野では、新開発デジタル・ドライブユニット「S10」を搭載したポータブルタイプの「FUJINON」放送用ズームレンズ(18機種)を販売しました。また、新たな防振機構と超高倍率107倍ズームを備え、撮影機能の高いカスタマイズ性も実現した4K対応放送用レンズ「FUJINON UA107x8.4BESM」を発売しました。 本部門の研究開発費は、8,462百万円となりました。
FY2021|7,386 文字
5 【研究開発活動】 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、様々な分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。2021年3月31日には㈱日立製作所の画像診断関連事業の買収が完了し、当該事業を継承した富士フイルムヘルスケア㈱が新しいグループ会社としてスタートしました。今後、当社は、ヘルスケア領域の成長を牽引するメディカルシステム事業のさらなる拡大に取り組むとともに、当社グループの持つ技術、製品、サービスを結集して、これまで以上に質の高い豊富なソリューションを提供し、医療の質の向上と人々の健康の維持増進に貢献していきます。 2021年4月には当社の成長ドライバーであるヘルスケアの事業拡大を一段と加速させるため、ヘルスケアを医療機器等のメディカルシステムとバイオCDMO・創薬支援等からなるライフサイエンス※1に大別し、ライフサイエンス領域をリードする「ライフサイエンス戦略本部」を新設しました。「ライフサイエンス戦略本部」は、同領域におけるさらなるシナジーや新規ビジネスを創出するため、事業横断的な全体戦略(事業ポートフォリオ、M&A・提携、技術・R&D等)を立案・推進します。 また、富士フイルム㈱では、バイオ医薬品CDMOの中核会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下、「FDB」と記載します。)のバイオ医薬品の開発・製造受託の事業成長を加速させるため、FDBのデンマーク拠点へ約1,000億円の大型設備投資を行います。さらに、2,000億円を超える大規模投資を米国で行い、バイオ医薬品の大型製造拠点を米国ノースカロライナに新設します。これにより、FDBはバイオ医薬品市場で大きなシェアを占める米国・欧州で、「ワンサイト・ワンストップ」の受託体制を備えた大型製造拠点を構築し、さらなる事業成長を図っていきます。また、FDBでは米国バイオテクノロジー企業Novavax, Inc.より、同社が開発しているCOVID-19のワクチン候補「NVX-CoV2373」の原薬製造を受託しました。FDBは、COVID-19のワクチンや治療薬の開発が進展する中、顧客ニーズに合った高品質なバイオ医薬品を迅速かつグローバルに供給し、COVID-19の感染拡大の抑止や流行の終息に貢献していきます。 このように当社グループでは、富士フイルム㈱、富士ゼロックス㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。 当連結会計年度における研究開発費の総額は152,150百万円(前年度比3.6%減)、売上高比6.9%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は23,890百万円です。 ※1 ライフサイエンス領域は、バイオCDMO事業、ライフサイエンス事業(再生医療、培地・試薬等の創薬支援を含む)、 医薬品事業、コンシューマーヘルスケア事業(化粧品・サプリメント)で構成される。 当連結会計年度の研究開発の主な成果は次のとおりであります。(1)イメージング ソリューション部門 フォトイメージング事業では、インスタントカメラinstaxシリーズの新たなラインアップとして、世界中で特に人気の高いエントリーモデルの新製品「instax mini 11」やスクエアフォーマットのフィルムに対応した「instax SQUARE SQ1」、カードサイズのミニフォーマットフィルムに対応した「instax mini 40」を発売しました。 光学・電子映像事業の電子映像分野では、35mm判の約1.7倍となるラージフォーマットセンサーを搭載したミラーレスデジタルカメラ「GFXシリーズ」の最新モデルとして、「FUJIFILM GFX100S」や465gの小型軽量ボディに、5軸・最大6.0段の手ブレ補正機能を備えるミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-S10」を発売しました。また、独自の色再現技術による卓越した画質と小型軽量を実現する「Xシリーズ」の最新モデルとして、ミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-E4」を発売しました。光学デバイス分野では、世界初の2軸方向で回転するレンズを搭載した超短焦点プロジェクター「Zシリーズ」の新たなラインナップとして、明るさを従来機1.6倍の8000ルーメンに高めた「FP-Z8000」を発売しました。本体を動かさずに様々な方向へ映像を投写できるため、商業施設や美術館・博物館等での空間演出の可能性を広げます。また、最先端の光学技術により超高精細8K映像の撮影が可能な放送用レンズ2機種、世界最高※266倍ズームのボックスタイプ「FUJINON HP66×15.2-ESM」と世界最広角※27.6mmのポータブルタイプ「FUJINON HP12×7.6ERD-S9」を発売しました。 本部門の研究開発費は、8,669百万円となりました。 ※2 8K対応の放送用レンズとして。2021年1月21日時点。当社調べ。 (2)ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門 メディカルシステム事業ではがん検診を中心とした健診センター「NURA」を、インドのベンガルールでオープンしました。「NURA」では、高精細な診断画像を提供する当社の医療機器やAI技術を活用したITシステム等で医師の診断をサポートし、がん検診をはじめ生活習慣病検査サービスを提供します。また、富士フイルム㈱と国立がん研究センターは共同で、医師がAI技術を開発できる研究基盤システム「AI開発支援プラットフォーム」(以下、「本プラットフォーム」と記載します。)を開発しました。今後、国立がん研究センター内の複数の研究テーマで、本プラットフォームの研究活用と有用性の検証を進め、当社が製品化を目指します。加えて、当社の感染症検査装置「富士ドライケム IMMUNO AG」シリーズ用の体外診断用医薬品として、写真の現像プロセスで用いる銀塩増幅反応による高感度検出技術を応用した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原検査キット「富士ドライケム IMMUNO AGカートリッジ COVID-19 Ag」を発売しました。内視鏡診断の分野では、AI技術を用いて大腸内視鏡検査時におけるポリープ等の病変の検出腫瘍性もしくは非腫瘍性の鑑別を支援する内視鏡診断支援機能「CAD EYE™」を搭載したソフトウェア「EW10-EC02」を発売しました。 医薬品事業では、バイオテクノロジー企業のVLP Therapeutics Japan合同会社(以下、「VLP Therapeutics社」と記載します。)と、同社が開発するCOVID-19ワクチンの製剤の製造受託契約を締結しました。今後、当社は、保有する脂質ナノ粒子製剤の製造設備・インフラを活用して、VLP Therapeutics社が開発するCOVID-19ワクチンの製剤のプロセス開発から治験薬製造まで受託していきます。また、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠」(一般名:ファビピラビル)について、COVID-19の患者を対象とした新たな臨床第Ⅲ相試験を国内で開始しました。加えて、放射性医薬品「ルタテラ®静注」(一般名:ルテチウムオキソドトレオチド(177Lu))は、ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍の新たな治療選択肢となる「ペプチド受容体放射性核種療法剤」として、国内で初めて製造販売承認を取得しました。 バイオCDMO事業では、FDBに約40億円の設備投資を行い、遺伝子治療薬のプロセス開発・原薬製造拠点を米国ボストンエリアに新設します。今後、当社は、テキサスとボストンの米国2拠点、英国拠点を活用して、遺伝子治療薬のプロセス開発・製造受託ビジネスをさらに拡大していきます。また、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学等とともに、最先端治療分野の産学共同研究開発コンソーシアム「The Massachusetts Center for Advanced Biological Innovation and Manufacturing, PBLLC」(以下、「CABIM」と記載します。)に参画します。今後、CABIMが研究開発を進める遺伝子改変細胞治療薬※3等の最先端治療薬のプロセス開発及び製造の受託を行います。 再生医療事業では、米国子会社であるFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.(以下、「FCDI」と記載します。)、Opsis Therapeutics, LLCと、大手製薬企業Bayer AGの子会社であるBlueRock Therapeutics LPは、iPS細胞を用いた眼疾患治療法の研究開発における戦略的提携に合意しました。3社は、今回の戦略的提携により、互いの技術や知見を結集させて、iPS細胞を用いた眼疾患治療法の研究開発を推進していきます。また、FCDI並びにGMPグレードのiPS細胞製造において世界的なリーディングカンパニーであるLonza Walkersville, Inc. は、全世界を対象としたiPS細胞関連技術の利用拡大に関する契約を締結しました。本契約により、医薬品開発企業は、両社が有する専門知識と技術をiPS細胞の製造に活用することが可能となります。 ライフサイエンス事業では、肌の弾力性を改善する新成分として、黒胡椒に由来し、血行促進効果で知られる成分「テトラヒドロピペリン」をナノ乳化した「ナノテトラヒドロピペリン」を開発しました。本研究では、毛穴の収縮を担う立毛筋をケアすることで、毛穴が目立たないハリのある肌へ導く新しいスキンケアの可能性を示すことができました。当社は、本研究成果を、機能性化粧品に応用する予定です。また、皮膚の最上層である角層にメラニンが滞留するメカニズムを解明しました。さらに、血行促進効果で知られるマロニエエキスに、肌が生まれ変わるターンオーバーの一環である角層剥離※4を促進し、角層に滞留したメラニンの排出を促す効果があることを発見しました。本研究では、角層に滞留したメラニンを排出するという、これまでの美白ケアとは異なる全く新しいアプローチで、透明感のある肌へ導くことができる可能性を見出しました。今後当社は、今回の研究成果を美白化粧品に応用する予定です。また、エイジングケアを目的とした「ASTALIFT(アスタリフト)」ブランドから、最高峰のジェリー状美白先行美容液「アスタリフト ホワイト ジェリー アクアリスタ」(医薬部外品)を新発売しました。本製品には、肌の角層のうるおいを保ち健やかに整える「Wヒト型ナノセラミド」や、肌にハリとうるおいを与える「ナノアスタキサンチン」に加えて、美白有効成分「アルブチン」や独自成分の「ナノAMA+」、「マロニエエキス」、「ビルベリー葉エキス」等の美容成分も配合されています。 産業機材事業では、AIを活用した画像解析により橋梁やトンネル等の損傷を自動で検出し、点検業務を大幅に効率化する社会インフラ画像診断サービス「ひびみっけ」の機能をさらに拡張し、従来の「ひびわれ」に加え、新たに「剥離・鉄筋露出」「漏水・遊離石灰※5」を自動で検出できる機能を搭載しました。 ファインケミカル事業では、インド型・カリフォルニア型ウイルスに共通する「L452R」変異を高感度に検出する「L452R 変異検出キット」や、南アフリカ型やブラジル型の変異型ウイルスに共通する遺伝子を検出する「E484K変異検出キット」等、新型コロナウイルス変異株に対応する検出キットを発売しました。当社は、新型コロナウイルス変異株の検出試薬のラインアップを強化し、新型コロナウイルス感染症の実態調査や感染拡大の抑制に貢献していきます。 記録メディア事業では、新たな磁性体として「ストロンチウムフェライト磁性体」を採用した磁気テープの実走行試験をIBM Researchと共同で行い、塗布型磁気テープにおいて世界最高※6の面記録密度317Gbpsi(ギガビット毎平方インチ)でのデータ記録・再生を実証しました。これは、1巻あたりの記録容量が世界最大※7容量580TB(テラバイト)データカートリッジの実現を可能とする画期的な技術です。 グラフィックシステム事業では、「新聞用完全無処理型印刷版の開発」で、公益社団法人新化学技術推進協会が主催する第19回「グリーン・サスティナブル ケミストリー(GSC)賞 経済産業大臣賞」を受賞しました。今回の受賞は、新聞用完全無処理型印刷版の開発により、従来現像工程で使用していた化学薬品、水、電気、廃液をゼロ化したことに加え、包装材料の大幅な削減を実現し、新聞印刷業界の課題である環境負荷低減に貢献したことが高く評価されたものです。当社は、これまで培ってきた独自技術を活かして、社会課題解決に繋がる製品・サービスの提供により一層取り組むことで、社会の持続可能な発展に貢献していきます。 インクジェット事業では、水性インクジェットインク製品を製造、開発する米国子会社であるFUJIFILM Imaging Colorants Inc.に、約20億円の投資を行い、水性顔料インクジェットインク用色材である顔料分散液の製造設備を新設することを発表しました。当社は、インクジェットの市場ニーズに合わせたグローバル生産体制を構築し、事業成長を一段と加速させていきます。 本部門の研究開発費は、72,066百万円となりました。※3 低分子医薬品では実現できない作用を持つ、たんぱく質等の生体分子を活用した医薬品。インスリンや成長ホルモンの他に、ワクチン、抗体医薬品、遺伝子治療薬等を含む。※4 古い角層が剥がれること。※5 コンクリート内部の水分等とうまく結合できず、単体で残った酸化カルシウム等の成分。ひびわれにより、コンクリート表面に滲み出す。※6 2020年12月16日発表時点。塗布型磁気テープとして。当社調べ。 ※7 2020年12月16日発表時点。非圧縮容量。当社調べ。 当社グループにおける新薬開発状況は次のとおりです。(2021年6月現在)開発番号薬効・適応症剤形地域開発段階T-705抗新型コロナウイルス(COVID-19)薬経口日本米国PhⅢPhⅡ重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬経口日本PhⅢT-817MAアルツハイマー型認知症治療薬経口米国日本欧州PhⅡPhⅡPhⅡ脳卒中後のリハビリテーション効果促進薬経口日本PhⅡT-4288新規フルオロケトライド系抗菌薬経口日本承認申請中FF-10501骨髄異形成症候群治療薬経口日本米国PhⅠPhⅡFF-10502進行・再発固形がん治療薬注射米国PhⅡFF-21101進行・再発固形がん治療薬(Armed抗体)注射米国日本PhⅠ/ⅡaPhⅠF-1311前立腺がん診断薬(放射性医薬品)注射日本PhⅡFF-10101急性骨髄性白血病治療薬経口米国PhⅠFF-10832進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム)注射米国PhⅠFF-10850進行性固形がん治療薬(トポテカンリポソーム)注射米国PhⅠF-1614難治性褐色細胞腫治療薬(放射性医薬品)注射日本承認申請中 (3)ドキュメント ソリューション部門 ドキュメント事業領域では、大容量トナー採用による低ランニングコストでセキュアなプリント環境構築可能なA3カラーレーザープリンター「DocuPrint C2550 d」及び「DocuPrint C3550 d」の2機種を販売開始しました。また、日本初、米国セキュリティ基準「NIST SP800-171」準拠の格付けにて最高評価「AAAis」を取得したデジタルカラー複合機及びプリンター「ApeosPort /ApeosPort-VII /ApeosPort Print」シリーズの9商品・22機種を販売開始しました。 印刷業務向けには、様々な用紙に対応し、多種多様な印刷物の制作を可能とする「エアーサクション給紙トレイ」を採用した「Versant 3100i Press」と「Versant 180i Press」を販売開始しました。 ソリューション・サービスについては、米リップコード社と「富士フイルムRIPCORD合同会社」を設立しました。「富士フイルムRIPCORD合同会社」は、当社が国内外で紙文書を電子化し、業務プロセス全般を効率化するビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)サービスにより培ったノウハウと、米リップコード社が持つロボティクス技術とAI(人工知能)を使い、書類を高速で電子化する技術を融合します。これにより、企業の業務プロセスを変革し、デジタルトランスフォーメーションを加速していきます。 加えて、働き方改革推進に向け、ドキュメント・ハンドリングソフトウェア「DocuWorks®」と電子サインサービス「Adobe Sign」を連携し契約業務プロセスの効率化を実現する「オフィスあんしん クラウドコネクター for Adobe Sign」を販売開始しました。 富士ゼロックス㈱は、2021年4月1日より社名を「富士フイルムビジネスイノベーション㈱」に変更し、富士フイルムグループのシナジーを加速し、革新的な商品やサービスをさらに多くのお客様にお届けします。 本部門の研究開発費は、47,525百万円となりました。
FY2020|7,351 文字
5 【研究開発活動】 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、さまざまな分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。2019年11月には富士ゼロックス㈱を100%子会社化しました。この取引により、富士フイルムグループ内での連携を強化し、これまで以上にシナジー創出を加速させます。例えば、富士フイルムグループが保有する画像処理技術と、富士ゼロックス㈱の言語処理技術を組み合わせてメディカル分野の診断レポート生成に活かす等革新的製品・サービスを展開し、成長領域で事業を拡大していきます。 富士フイルム富山化学㈱では2020年3月よりCOVID-19の患者を対象とした抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠」(一般名:ファビピラビル)(以下、「アビガン」と記載します。)の国内臨床第Ⅲ相試験を開始しました。米国では2020年4月より臨床第Ⅱ相試験を開始しています。本臨床試験でCOVID-19に対するアビガンの有効性と安全性を確認することで、治療薬としての承認取得を進めていきます。また、国内外からの提供要請に応えるべく、既にアビガンの増産を開始しております。加えて、富士フイルム和光純薬㈱では2020年4月よりPCR検査時間の大幅な短縮を実現する遺伝子検出キットの開発・販売も行っております。当社グループはヘルスケア事業を幅広く展開する企業として、政府とも連携しながらCOVID-19の感染拡大防止・流行終息に貢献すべく、取り組んでいます。 また、富士フイルム㈱では再生医療や遺伝子治療等バイオ医療分野の研究基盤をさらに強化するため、米国に「バイオサイエンス&エンジニアリング研究所(アメリカ)」(以下、「米バイオ研」と記載します。)を設立し、2019年12月より米バイオ研での研究を本格的に開始しました。米バイオ研は、バイオ医療の基礎研究から生産プロセス開発までを一貫して行うとともに、細胞を用いた新たな創薬支援の基盤研究を担う研究所です。今後、当社は、日本・米国の2拠点体制でバイオ医療の研究を強力に推進し、グループの研究開発力をさらに高めていきます。 このように当社グループでは、富士フイルム㈱、富士ゼロックス㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。 当連結会計年度における研究開発費の総額は157,880百万円(前年度比1.1%増)、売上高比6.8%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は27,540百万円です。 当連結会計年度の主な研究開発の成果は次のとおりであります。(1)イメージング ソリューション部門 フォトイメージング事業では、インスタントカメラinstax“チェキ”シリーズの新たなラインアップとして、伝えたいメッセージ等の音声をQRコード化して写真とともにプリントできる「サウンド機能」や、スマートフォンの画像もチェキフィルムにプリントできる便利な「ダイレクトプリント機能」等の新機能を搭載した「instax mini LiPlay(リプレイ)」を発売しました。また、世界最高水準の粒状性と立体的な階調再現で超高画質を実現し、幅広い分野の撮影に適した、黒白フィルム「ネオパン100 ACROSII」を新たに開発しました。イメージング分野におけるリーディングカンパニーとして今後も“アナログからデジタルまで”幅広い分野において多様化するニーズにお応えし、より良い製品・サービスを提供し続けることで、「一枚の写真の持つ力、素晴らしさ」を伝え続けます。 光学・電子映像事業の電子映像分野では、世界最高※11億2百万画素のラージフォーマットセンサーや独自の色再現技術等により、世界最高峰の写真画質を実現するミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM GFX100」を発売しました。また、独自の色再現技術で卓越した写真画質を実現するデジタルカメラ「Xシリーズ」用交換レンズのラインアップとして、世界最高※26.0段手ブレ補正機能と5倍ズームを備えた「フジノンレンズ XF16-80mmF4 R OIS WR」を発売しました。光学デバイス分野では、ラージフォーマットセンサーに対応し、圧倒的な解像力、自然で美しいボケ味、ハイダイナミックレンジを活かした豊かな階調を実現するシネマカメラ用ズームレンズ「Premista(プレミスタ)」シリーズを発売しました。また、世界最高※3の125倍ズームを実現した4K対応放送用レンズ「FUJINON UA125×8BESM」を発売しました。今後も当社は、長年培ってきた光学技術や精密加工・組立技術等により最先端の製品を開発・提供し、多様化する映像制作現場のニーズに応えていきます。 本部門の研究開発費は、10,085百万円となりました。 ※1 民生用ミラーレスデジタルカメラとして。2020年5月18日時点。富士フイルム調べ。※2 デジタルカメラ用交換レンズとして。2019年7月18日時点。当社調べ。※3 2019年11月13日時点。当社調べ。 (2)ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門 メディカルシステム事業では、手の「うるおい」と「清潔」の両方を実現する「薬用ハンドジェルHA(医薬部外品)」を、全国の医療施設向けに発売しました。本製品は、化粧品の開発で培った技術や、アルコールと銀系材料を組み合わせた「Hydro Ag+(ハイドロエージープラス)」技術を生かして開発した製品で、水溶性ポリマーによる高い保湿性を持つとともに、殺菌有効成分及び抗炎症有効成分配合によって手荒れを防ぎ、手の「うるおい」と「清潔」の両方を実現します。超音波画像診断の分野では、携帯性に優れた軽量・コンパクトなワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air (アイビズ エアー)」を開発しました。本製品は5.5インチ画面のスマートフォン型の本体と、ワイヤレスのプローブで構成され、在宅医療や救急、院内回診等での高画質な超音波画像診断を可能にします。また、2019年12月には㈱日立製作所の画像診断関連事業(以下、「対象事業」と記載します。)を買収する契約を締結しました。今後、当社の画像処理技術・AI技術を対象事業の幅広い製品ラインアップに搭載し、新たな付加価値を創出することにより、医療の質の向上に貢献していきます。加えて、当社は日本マイクロソフト㈱と革新的な医療現場支援の実現に向けた協業を開始しました。具体的には、内視鏡予知保全サービスのクラウド基盤に、マイクロソフトのパブリッククラウドプラットフォーム Microsoft Azureを採用します。当社のIoT及びデータ分析AI技術と、Microsoft Azureのリアルタイムでの大容量情報処理能力を組み合わせ、医療機関で稼働している内視鏡の予知保全サービスを実現し、メンテナンス作業の効率を大幅に向上させ、革新的な医療現場支援を推進します。 医薬品事業では、米国において、進行性の固形がんを対象とする抗がん剤「FF-10850」の臨床第I相試験を開始しました。「FF-10850」は、既存の抗がん剤「トポテカン」を新規開発のリポソームに内包したリポソーム製剤です。リポソームは、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質等をカプセル状にした微粒子のことで、体内で必要な量の薬剤を必要な部位に必要なタイミングで送達する技術であるドラッグ・デリバリー・システム技術の一種です。抗がん剤には、がん組織以外の正常組織に対しても作用し、強い副作用を引き起こすケースがありますが、薬剤をリポソームに内包することで、がん組織にのみ薬剤を選択的に送達し、副作用を抑制して、薬効を高めることができると期待されています。また、2020年3月には、リポソーム製剤の開発・製造受託サービスを開始し、核酸を内包するリポソーム製造装置の開発・製造・販売のリーディングカンパニーであるカナダのPrecision NanoSystems Inc.とパートナーシップ契約も締結しました。今後、当社は、低分子医薬品や核酸医薬品をターゲットに、リポソーム製剤の生産プロセス開発や製造の受託を行っていきます。 バイオCDMO事業では、バイオ医薬品の開発・製造受託業界で初めて※4、培養から精製までの高性能・高効率な全工程連続生産システムを開発しました。本システムはバイオ医薬品の開発・製造受託業界で初めて、バイオ医薬品の原薬の製造工程である培養から精製までをシームレスに繋ぎ一貫生産を可能とする画期的なシステムで、連続的かつ効率的に高品質な原薬を製造することができます。 再生医療事業では、2019年9月に薬物の吸収性の評価に最適なヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞「F-hiSIEC™」を、発売しました。本製品は、ヒトiPS細胞を小腸の腸管上皮細胞に分化誘導した創薬支援用細胞です。ヒト生体に近い機能を有し、薬物の吸収性を高精度に評価できる画期的な細胞であるため、経口剤開発の効率化に大きく貢献します。また、2020年3月には米国子会社で、iPS細胞の開発・製造・販売のリーディングカンパニーであるFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.(フジフイルム・セルラー・ダイナミクス)は、cGM1に対応した、治療用iPS細胞の新生産施設を稼働させます。今後、生産したiPS細胞を用いて自社再生医療製品の開発を加速させるとともに、本施設を活用したiPS細胞及びiPS細胞由来分化細胞の開発・製造受託も展開していきます。 ライフサイエンス事業では、「ASTALIFT(アスタリフト)」ブランドのインナーケアシリーズの新ラインアップとして、「紫外線刺激から肌を保護するのを助ける」機能を持つ、機能性表示食品「アスタリフト サプリメント ホワイトシールド」と「アスタリフト ドリンク ホワイトシールド」を2020年4月に発売いたしました。これら2製品に配合されている機能性関与成分「アスタキサンチン」は、当社の研究によりヒトが経口摂取することで、一定量の紫外線を照射した際に生じる肌の赤身が低減されること、また、紫外線照射部位の皮膚の水分量の低下が抑制されることが確認されております。さらに、異物の侵入を防ぎ、対外への水分城塞を抑制する、肌のバリア機能を維持するうえで重要な役割を担うセラミドが、ストレスによって減少するメカニズムを解明しました。加えて、生薬として広く使われている「アセンヤクエキス」に肌のバリア機能を改善する作用を見出しました。本研究成果を応用し、当社独自のナノ分散技術により世界最小※520nmに微粒子化し、浸透力を高めた保湿成分「ヒト型ナノセラミド」及び「ヒト型ナノアシルセラミド」を従来に比べて増量配合し、また、植物由来成分「アセンヤクエキス」を新たに配合することで保湿機能を強化した、ジェリー状先行美容液「ASTALIFT JELLY AQUARYSTA (アスタリフト ジェリー アクアリスタ)」をリニューアル発売いたしました。 ファインケミカル事業では、当社が開発した実験動物を用いず化学物質の皮膚へのアレルギー反応の有無を評価する皮膚感作性試験代替法「Amino acid Derivative Reactivity Assay」(以下、「ADRA」と記載します。)がOECD(経済協力開発機構)テストガイドラインに収載されました。ADRAは、当社が持つ化学合成力・分子設計力により開発した検出感度が高い試薬を用いることで、従来より幅広い化学物質の皮膚感作性を試験できる評価法です。標準的な評価法として国際的に認められたことを機に、実験動物を用いずに化学物質の安全性を評価する試験法の普及に貢献していきます。 記録メディア事業では、大容量データのバックアップやアーカイブに最適な「FUJIFILM LTO Ultirum8データカートリッジ」(以下、「LTO8」と記載します。)を発売いたしました。当社は、磁気特性・長期保存性に優れる微粒子「BaFe(バリウムフェライト)磁性体」を開発し、2011年に世界で初めて「BaFe磁性体」を用いた磁気テープを実用化しております。LTO8においては、当社独自の「NANOCUBIC技術」を進化させ、従来のLTO7に対してさらに微粒子化した「BaFe磁性体」を均一に分散し、テープ表面のうねりや厚みムラのない平滑な薄層磁性層を塗布しています。LTO7の2倍となる最大記録容量30TB(非圧縮時12TB)を実現するとともに、最大750MB/秒(非圧縮時360MB/秒)の高速データ転送も可能で、高い利便性を発揮します。今後は、LTO8をデータアーカイブストレージシステムと組み合わせて活用し、省エネルギーで大容量データを保管したいというニーズに応えます。 グラフィックシステム事業では、新聞用完全無処理サーマルCTPプレート「SUPERIA ZN-Ⅱ」が、第2回「エコプロアワード」において同アワードの最高位賞となる「大臣賞」のひとつである「経済産業大臣賞」を受賞しました。本受賞は、新聞用完全無処理CTPプレート「SUPERIA ZN-Ⅱ」が、省材料、省エネルギー、省排出、省ウォーターにおいていずれも優れた効果をもたらしていること、また、製品のライフサイクル全体のCO2排出量を製品に表示する仕組みであるカーボンフットプリントにより、主原材料であるアルミニウムのリサイクルシステムやライフサイクルにおけるCO2排出量を把握できる体制を整えている点が高く評価されたものです。当社は、印刷市場において、今後も省資源・省エネ型製品の開発を積極的に推進し、社会の持続可能な発展に貢献していきます。 本部門の研究開発費は、69,536百万円となりました。 ※4 当社調べ。※5 国内外論文、国内特許の自社調査結果。2019年7月2日時点。 当社グループにおける新薬開発状況は以下のとおりです。(2020年6月現在)開発番号薬効・適応症剤形地域開発段階T-705抗インフルエンザウィルス薬経口米国PhⅢ抗新型コロナウイルス(COVID-19)薬経口日本米国PhⅢPhⅡ重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬経口日本PhⅢT-817MAアルツハイマー型認知症治療薬経口米国日本欧州PhⅡPhⅡPhⅡ脳卒中後のリハビリテーション効果促進薬経口日本PhⅡT-4288新規フルオロケトライド系抗菌薬経口日本承認申請中FF-10501骨髄異形成症候群治療薬経口日本米国PhⅠPhⅡFF-10502進行・再発固形がん治療薬注射米国PhⅡFF-21101進行・再発固形がん治療薬(Armed抗体)注射米国日本PhⅠ/ⅡaPhⅠF-1311前立腺がん診断薬(放射性医薬品)注射日本PhⅡFF-10101急性骨髄性白血病治療薬経口米国PhⅠF-1515神経内分泌腫瘍治療薬(放射性医薬品)注射日本PhⅠ/ⅡFF-10832進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム)注射米国PhⅠFF-10850進行性固形がん治療薬(トポテカンリポソーム)注射米国PhⅠF-1614難治性褐色細胞腫治療薬(放射性医薬品)注射日本PhⅡ (3)ドキュメント ソリューション部門 ドキュメント事業領域ではデジタルフルカラー複合機「ApeosPort-VII C 3372/DocuCentre-VII C 3372」を発売しました。シリーズの低速機ラインアップを拡充する連続複写速度30枚/分の新モデルで、一度のログインでクラウドストレージサービスや移動先での複合機プリントを可能にする認証連携機能を搭載、クラウド連携機能を強化しました。 オフィス向け小サイズプリンタ「DocuPrint」シリーズでは、ゴールド、シルバー、ホワイトを使った印刷物を出力できる業界初の特殊色専用A4プリンタ「DocuPrint CP310 st」を発売しました。デザインオフィスや小売、サービス業の店舗等、スペースが限られる場所でも、特殊色を使った印刷物の出力を可能とします。 印刷業務向けには、業務効率化に貢献するソフトウェア商品「Production Cockpit 2.0」を発売しました。他社の機器を含めたワークフロー全体の生産性を向上します。 働き方改革に向けた取り組みとしては、駅構内やオフィスビルのロビー等に設置する個室型ワークスペース「CocoDesk」によるシェアオフィスサービス事業を開始しました。また、オフィスのセキュアなネットワーク環境を提供する閉域網サービス「Smart Cyber Security」にモバイル機器や海外拠点から接続できる「Smart Cyber Security Mobile SIM」「Smart Cyber Security 海外拠点接続サービス」の提供を開始し、次世代セキュリティサービスを強化しました。 富士ゼロックス㈱は、2021年に米ゼロックスとの技術契約を終了し、富士フイルムブランドのもとでグループ内の連携を強化して、革新的な価値の提供を目指します。また、米ゼロックスへの商品供給の継続に加え、2021年4月以降、従来の販売テリトリーを超えたワールドワイドなビジネス展開を進めます。 本部門の研究開発費は、50,719百万円となりました。
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5 【研究開発活動】 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、さまざまな分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。2018年11月に、富士フイルム㈱において、「ビジネス開発・創出部」を設立し、方向性の見えてきた新規ビジネステーマの事業化を加速しています。同社では、独自開発の電気音響変換フィルムをスピーカーの振動板に採用し、クリアな音質と自然な音場感を生み出す画期的なスピーカー技術「Φ(ファイ)」を新開発しました。また、2019年4月には、「バイオサイエンス&エンジニアリング研究所」を設立し、バイオ・ヘルスケア領域全体のエンジニアリング力の強化、最先端の遺伝子治療研究開発機能の強化、臨床開発の一元化による対応力強化と効率化を進めていきます。 当社グループは、理化学研究所革新知能統合研究センター(理研AIPセンター)内への「理研AIP-富士フイルム連携センター」の開設や、東京大学大学院情報理工学系研究科内への「社会連携講座」の開設など、アカデミアとも連携し、次世代AI技術を開発してきました。2018年10月にはアカデミアとの共創により次世代AI技術を開発する拠点FUJIFILM Creative AI Center「Brain(s)」(ブレインズ)を東京・丸の内に開設し、ディープラーニング用スーパーコンピュータを導入、2019年3月には長崎県長崎市に「Brain(s)九州」を開設しました。今後、幅広い分野において活用できるAI技術の開発をより強力に推進し、社会課題を解決する革新的な製品・ソリューションを提供していきます。 富士フイルム㈱は、2019年3月に、バイオ医薬品の開発・製造受託事業をさらに拡大するため、米バイオ医薬品大手Biogen Inc.の製造子会社であるBiogen (Denmark) Manufacturing ApSの発行済全株式を取得する株式売買契約を締結しました。今後、写真フィルムで培った高度な生産及び品質管理技術、当社グループ子会社の培地や細胞関連技術を活用し、グループシナジーを最大化させて、バイオ医療分野の事業をさらに拡大させていきます。 このように当社グループでは、富士フイルム㈱、富士ゼロックス㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。 当連結会計年度における研究開発費の総額は156,132百万円(前年度比7.0%減)、売上高比6.4%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は25,173百万円です。 当連結会計年度の主な研究開発の成果は次のとおりであります。(1)イメージング ソリューション部門 フォトイメージング事業では、AIを活用し、ユーザーが撮りためた画像の撮影傾向を分析し、その分析結果にもとづいて個人の好みに合った画像を自動選択する技術「Personalized Select」及びフォトブックなどの過去の注文情報をもとに、そのユーザーの好みに合ったレイアウトのフォトブックに仕上げる技術「Personalized Layout」を開発しました。また、ユーザーが保有するあらゆる写真を一元的に管理・整理して、それらの写真からAIがユーザーの嗜好性を推測し、ユーザーの嗜好に合わせたさまざまな製品・サービスを提案する写真クラウドサービス「FUJIFILM PhotoBank」を開始しました。 光学・電子映像事業の電子映像分野では、高速・高精度のオートフォーカス機能と高い動画性能を搭載した「FUJIFILM X-T3」や、小型軽量ボディに最新のイメージセンサー・高速画像処理エンジンを搭載した「FUJIFILM X-T30」を発売しました。また、中判ミラーレスデジタルカメラ「GFXシリーズ」の最新モデルとして、大型イメージセンサーによる高画質と、レンジファインダースタイルを採用した「FUJIFILM GFX 50R」を2018年11月に発売しました。光学デバイス分野では、「屈曲型二軸回転機構レンズ」を搭載し、本体を動かさずにレンズの回転だけでさまざまな方向へ投写できる超短焦点プロジェクター「FUJIFILM PROJECTOR Z5000」を発売し、プロジェクター市場に新規参入しました。また、長年培ってきた光学技術と最先端の画像処理技術を結集して、焦点距離20mm~800mmをカバーする高性能「FUJINON レンズ」を搭載した、レンズ一体型の遠望監視用カメラ「FUJIFILM SX800」を新たに開発し、監視カメラ市場に新規参入します。 本部門の研究開発費は、9,861百万円となりました。 (2)ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門 メディカルシステム事業では、総重量3.5kgの軽量・小型で携帯性に優れており、在宅医療での撮影など、スペースが限られた場所での簡便なX線検査と画像確認が可能な携帯型X線撮影装置「CALNEO Xair(カルネオ エックスエアー)」を発売しました。本製品は、撮影時に、当社の画像読取技術であるISS方式とノイズ低減回路を搭載したX線画像診断装置を利用することで、低線量でも高画質な画像が得られます。また、LED光源搭載内視鏡システム「6000システム」などに対応したスコープのラインアップとして、気管支内視鏡「EB-580S」を発売しました。本製品では、臓器の粘膜表層の微細な血管や構造などを強調して表示する機能「BLI(Blue Light Imaging)」や、画像の赤色領域のわずかな色の違いを強調して表示する機能「LCI(Linked Color Imaging)」などの画像強調機能を用いた観察が可能です。医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE(シナプス)」の分野では、CT画像からの臓器自動抽出や骨の経時変化表示など、AI技術を活用した画像診断ワークフロー支援を実現するAIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer(シナプス サイ ビューワ)」を開発しました。また、米インディアナ大学医学部とのAI技術を活用した医療画像診断支援システムの開発に関する共同研究契約の締結や、京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学と間質性肺炎の病変を高精度に自動で分類および定量化する技術の共同開発に成功するなど、産学連携も進めております。今後もAI技術を活用することで、画像診断における医師の診断支援やワークフローの改善に取り組んでいきます。 医薬品事業では、診断薬・治療薬の新薬開発を加速させるため、低分子医薬品の研究・開発・製造・販売を行う富山化学工業㈱と、放射性医薬品の研究・開発・製造・販売を行う富士フイルムRIファーマ㈱を統合し、富士フイルム富山化学㈱へ社名変更いたしました。今後、診断薬と組み合わせた、治療薬の効率的な臨床開発を進め、新薬上市の確度とスピードの向上を図ります。また、服用するタイミングごとにまとめて一包化された薬剤の名称と数量を自動的に判定し、調剤薬局などでの薬剤師の監査業務をサポートする一包化監査支援システム「PROOFIT 1D(プルーフィット ワンドース)」を発売しました。医薬品の開発においては、米国で臨床第I相試験を実施している抗がん剤「FF-10832」について、患部で薬剤が放出され、がん細胞に持続的に作用するメカニズムを解明し、免疫チェックポイント阻害剤との併用投与では、単剤投与の場合と比べて生存期間が延びるなど、さらに高い薬効を発揮することをマウス実験で確認しました。また、新規抗菌薬「T-4288」(一般名:ソリスロマイシン)について、国内の臨床第Ⅲ相試験にて、耳鼻咽喉科領域の感染症患者に対する有効性および安全性を確認できたことから、中耳炎や副鼻腔炎など耳鼻咽喉科感染症の治療薬として厚生労働省に製造販売承認申請を行いました。 CDMO事業では、抗体の次世代高生産性技術を開発し、医薬品開発の初期段階から臨床試験、商用生産に至るすべての段階に使用できる高品質な動物細胞株の作製期間を大幅に短縮することが可能となりました。 再生医療事業では、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.において、創薬支援用iPS細胞由来分化細胞「iCell® Microglia(アイセル ミクログリア)」を発売しました。「iCell® Microglia」は、ヒトiPS細胞を、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経疾患の発症に関与することが知られているミクログリア細胞に分化誘導した創薬支援用iPS細胞由来分化細胞です。この細胞を用いることで、ヒト生体における中枢神経系に近い環境で新たな評価方法を構築できるため、新薬の研究開発の効率化に大きく貢献します。また、㈱ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングでは、角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした、自家培養角膜上皮(開発名:EYE-01M)の製造販売承認申請を厚生労働省に行いました。「EYE-01M」は、患者自身の角膜組織の輪部から角膜上皮幹細胞を採取してシート状に培養したもので、本品を移植することにより角膜上皮を再建させ、視力、その他臨床症状(眼痛、異物感、流涙、乾燥感など)を改善させることを目的としています。 ライフサイエンス事業では、「ASTALIFT」ブランドで最も高い紫外線カット効果を持つ「アスタリフト D-UVクリア ホワイトソリューション」を発売しました。「アスタリフト D-UVクリア ホワイトソリューション」は最新の紫外線研究を活かして開発した紫外線防御剤「D-UVガード+」を新たに配合しており、顔の動きに合わせて伸縮する新処方を採用したことで、肌に塗った日焼け止めに亀裂が生じるのを防ぎ、肌の奥まで入り込む最長波紫外線「Deep紫外線」までしっかりカットします。また、米ぬか脂質に含有される成分「オリザノール」が、シミの原因となるメラノソームの形成に関わる酵素「BACE2」の働きを阻害することを発見しました。さらに、当社の独自技術により、「オリザノール」を安定的にナノ乳化し、高い浸透性を実現した「ナノオリザノール乳化物」を新たに開発しました。加えて、機能性表示食品の分野では「糖の吸収を抑える」、「腸内環境を整える」、「高めのBMIを改善する」の3つの機能を持つ機能性表示食品「メタバリアEX(イーエックス)」を発売しました。今回、機能性関与成分として「サラシノール」、「難消化性デキストリン(食物繊維)」、「エピガロカテキンガレート」、「モノグルコシルルチン」について「継続摂取によりBMIが高めの方のおなかの脂肪(体脂肪・内臓脂肪)・体重を減らすことで高めのBMIを改善する」機能があることを新たに明らかにしており、当社は、今後も科学的根拠に基づいた製品の開発を進め、機能性表示食品のラインアップを拡充していきます。 記録メディア事業では、「ビッグデータ・IoT時代を支えるバリウムフェライト磁性体を用いた大容量データテープの開発」で、第7回技術経営・イノベーション賞「経済産業大臣賞」を受賞しました。「技術経営・イノベーション賞」は、世の中を変革する優れたイノベーション事例を表彰しており、磁気特性・長期保存性に優れる「バリウムフェライト磁性体」を世界で初めてデータ記録用磁気テープの材料に採用し、データを保管する際のトータルコストを削減することで、「活用が進むビッグデータを安全・安価に長期保管したい」という社会のニーズに応えた点や、データ破損・消失のリスクが低く、HDDと比べて消費電力が少なく環境負荷が小さい磁気テープの、さらなる大容量化の道を切り拓いた点が高く評価されました。 グラフィックシステム事業では、インクジェットデジタルプレス「Jet Press」シリーズの新ラインアップとして「Jet Press 750S」を発売しました。「Jet Press 750S」は、商業印刷分野および紙器パッケージ印刷分野向けに、オフセット印刷を凌駕する高画質を実現し、国内外で高い評価を得ている「Jet Press 720S」の特長はそのままに、最新のプリントヘッドやインクの採用により毎時3,600枚という高速出力を可能としました。また、従来比1.5倍の高い耐刷性・UV印刷適性を実現した、SUPERIA完全無処理サーマルCTPプレート『SUPERIA ZD-II』を発売しました。本製品は、2017年に発売した高耐刷タイプの完全無処理サーマルCTPプレート『SUPERIA ZD』をさらに進化させ、耐刷性・品質安定性・視認性を高めているのが特長です。これにより、昨今導入が増えているUV印刷や、オフセット輪転機でのロングラン印刷などにおいてもより安定した印刷が可能になります。 本部門の研究開発費は、69,804百万円となりました。 当社グループにおける新薬開発状況は以下のとおりです。(2019年6月現在)開発番号薬効・適応症剤形地域開発段階T-705抗インフルエンザウィルス薬経口米国PhⅢ重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬経口日本PhⅢT-3811キノロン系合成抗菌薬経口中国承認申請中T-2307抗真菌薬注射米国PhⅠ 開発番号薬効・適応症剤形地域開発段階T-817MAアルツハイマー型認知症治療薬経口米国日本PhⅡPhⅡT-4288新規フルオロケトライド系抗菌薬経口日本承認申請中FF-10501骨髄異形成症候群治療薬経口日本米国PhⅠPhⅡFF-10502進行・再発固形がん治療薬注射米国PhⅡFF-21101進行・再発固形がん治療薬(Armed抗体)注射米国PhⅡF-1311前立腺がん診断薬(放射性医薬品)注射日本PhⅡFF-10101急性骨髄性白血病治療薬経口米国PhⅠF-1515神経内分泌腫瘍治療薬(放射性医薬品)注射日本PhⅠ/ⅡFF-10832進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム)注射米国PhⅠF-1614難治性褐色細胞腫治療薬(放射性医薬品)注射日本PhⅡ (3)ドキュメント ソリューション部門 ドキュメント事業領域では新たな価値提供戦略「Smart Work Innovation(スマートワーク・イノベーション)」を具現化する商品・サービスを提供しました。 データ・プライバシー・デバイス保護の国際基準に準拠するようセキュリティー機能を強化し、「やさしい、かんたん・あんしん、つながる」をコンセプトに基本機能とデザインを刷新したデジタルカラー複合機「ApeosPort-Ⅶ C / DocuCentre-Ⅶ C」シリーズ16機種を、日本およびアジア・パシフィック地域で発売しました。またA3デスクトップモノクロプリンターの商品ラインアップを8年ぶりに一新、クラス最小サイズでデスクサイドや窓口業務の生産性を支える「DocuPrint 3200 d」、「DocuPrint 3500 d」と、高速・高耐久で、基幹業務向け「DocuPrint 4400 d」の3機種を発売しました。 ソリューション・サービスについては、富士ゼロックス独自の人工知能技術である「Document AI」を活用し、大量の帳票データ処理を効率化・人手によるミスを低減する「高精度データエントリーサービス」、図面の検図業務などのプロセスを改善して設計者の作業負荷を軽減する「図面情報抽出サービス」、知識や経験に基づいて実施する問い合わせ対応や申請書の作成などの専門的な業務を支援する「専門知識体系化サービス」の提供を開始しました。また、オフィスとクラウドを統合したセキュアなネットワーク環境を実現する閉域網サービス「Smart Cyber Security」の提供を開始しました。さらに、買掛金管理業務領域ではEsker社(仏)と提携し、買掛金管理の業務プロセスを効率化する「買掛金管理自動化支援ソリューション」の提供を開始しました。 印刷領域では、印刷業務における生産性向上や働き方変革を実証するオープンイノベーション拠点「Future Edge(フューチャー・エッジ)」を、神奈川県の海老名事業所内に開設しました。また、富士ゼロックスの高画質データ生成技術や高速ロール紙印刷技術と、富士フイルムの枚葉型インクジェットデジタルプレスの技術を結集させ、オフセット印刷に匹敵する高品位プリントと高速印刷を両立する自社初の商業印刷向け高速ロール紙カラーインクジェットプリンター「11000 Inkjet Press」を開発し、国内で発売しました。 さらに「働き方改革」の推進で東京メトロ(東京地下鉄株式会社)と協業、駅構内でビジネスパーソンが情報漏えいの心配をせずに電話や資料作成の仕事に集中できるオフィス空間を提供する「サテライトオフィスサービス」の実証実験を開始しました。 本部門の研究開発費は、51,294百万円となりました。
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5 【研究開発活動】 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、さまざまな分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。2018年3月には、富士フイルム㈱において、「バイオサイエンス&テクノロジー開発センター」と「精密プロセス技術センター」を設立しました。生産プロセス技術の応用展開の強化によるバイオ医療の研究開発の加速、革新的なモノづくり基盤技術や新規事業創出を支える生産プロセス技術の開発を目指します。 富士フイルム㈱は、2018年3月に、細胞培養に必要な培地のリーディングカンパニーであるISUSおよびISJの発行済全株式を取得する株式売買契約を締結し、2018年6月に買収手続きを完了しました。今後、写真フィルムで培った高度な化学合成力・設計力、富士フイルムグループの細胞の作製・培養技術などを活かして、培地事業のさらなる成長を図り、なおかつ培地事業以外でもシナジーを最大化させていきます。 また、富士フイルム㈱は、写真フィルムで培った粒子形成技術やナノフォトニクス技術などを活かし、非標識・無染色で組織の代謝物を大面積で高精度に分析できるSERSイメージング技術を開発し、2018年4月に研究成果を発表しました。本技術を応用した慶應義塾大学との共同研究において、マウス生体切片中のがん組織の分布を、自動的に可視化することに世界で初めて成功しており、これはがんの自動病理診断に繋がる画期的な成果です。 当社グループでは、これまで開発してきた優れた材料・製品を支える基盤技術やコア技術、開発中の新しい技術・材料・製品を直接触れていただきながら、ビジネスパートナーにソリューションを提案する施設「Open Innovation Hub」を日・米・欧3拠点で展開しています。「Open Innovation Hub」では、ビジネスパートナーが持つ課題やアイデア、潜在的なニーズと自社の技術を結びつけ、画期的な新しい製品・技術・サービスを生み出す「共創」活動が日々活発に行なわれており、花王㈱との共同研究により非反応型染毛染料「レインボー染料」の開発に成功するなど、「共創」活動が新しい技術へ結実しています。 このように、富士フイルム㈱、富士ゼロックス㈱及び富山化学工業㈱等のグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。 当連結会計年度における研究開発費の総額は166,331百万円(前年度比3.8%増)、売上高比6.8%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は25,267百万円です。 当連結会計年度の主な研究開発の成果は次のとおりであります。(1)イメージング ソリューション部門 フォトイメージング事業では、新開発した当社独自の4色インク「ViViDiA D-photo」や1200×1200dpiの高解像度を実現するインクジェットヘッド、専用インクジェットペーパー、画像処理技術「Image Intelligence™」の組み合わせにより、4色インクながら従来のコンパクトタイプのインクジェットプリンターを凌駕する高画質を実現した小型インクジェットプリンター「Frontier DE100」を発売しました。 光学・電子映像事業では、新開発の高剛性・高耐久ボディ、究極の高画質、快適な操作性を実現したミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H1」と、「Xシリーズ」用交換レンズとして高い光学性能を実現したシネマレンズ2本を発売し、静止画のみならず動画撮影にも最適なミラーレスデジタルカメラのラインアップを拡大しました。「FUJIFILM X-H1」は、新開発の高剛性・高耐久ボディに、ボディ内5軸・最大5.5段手ブレ補正機能を「Xシリーズ」で初めて搭載しており、また不安定な光源下でも安定した露出を実現する「フリッカー低減撮影機能」も搭載しています。さらに、多彩な色調を実現する「フィルムシミュレーション」には当社映画用フィルムの色・階調を再現した「ETERNA(エテルナ)」モードを新たに備えました。「Xシリーズ」用交換レンズである「フジノンレンズ MKX18-55mmT2.9」と「フジノンレンズ MKX50-135mmT2.9」は、約1kgの軽量設計ながら、世界中の映画制作などで採用されている「FUJINON シネレンズ」の高い描写力を実現しています。4K対応放送用レンズでは、コンパクトボディながら、広角7.8mmから187mmの焦点距離をカバーする24倍高倍率ズームを備え、高い機動力と運用性を発揮するポータブルズームレンズ「FUJINON UA24×7.8BERD」を発売しました。 本部門の研究開発費は、8,994百万円となりました。 (2)ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション部門 メディカルシステム事業では、特性の異なる2種類のX線検出部を積層した「デュアル構造」のデジタルX線画像診断装置「FUJIFILM DR CALNEO Dual」を新たに開発しました。「CALNEO Dual」は、一度のX線照射で、高精細な一般X線画像に加え骨密度測定用の骨強調画像を同時に取得できるため、撮影時間の短縮と被検者の身体的負荷軽減に貢献し、また一般X線画像の撮影とDXA法による骨密度測定が1台でできるため、省スペース化にも貢献します。さらに、当社のX線動画技術と、X線動画全体のコントラストを最適化する画像処理技術「Dynamic Visualization2」で構成されるX線動画処理エンジン「Dynamic Core Engine」を搭載した、外科用Cアーム型デジタル透視システム「COREVISION 3D」を新たに開発しました。「COREVISION 3D」は、2D動画だけでなく、術中に対象部位を180°相当スキャンして3D画像を描出することで、医師の正確な手技をサポートします。内視鏡分野では、臓器の粘膜表層の微細な血管や、粘膜の微細な構造などを強調して表示する機能「BLI」や、画像の赤色領域のわずかな色の違いを強調して表示する機能「LCI」などの画像強調機能により、微小な病変の発見をサポートするLED光源搭載内視鏡システム「6000システム」を発売しました。そして「6000システム」にも装着可能なキセノン光源搭載の内視鏡システム「Advancia(アドバンシア)」用スコープのラインアップとして、スコープ先端の軟性部に弾発性が高い素材を採用した「高追従挿入部」を搭載した十二指腸用処置スコープ「ED-580T」も発売しました。 医薬品事業では、米国において進行性の固形がんを対象とする抗がん剤「FF-10832」の臨床第Ⅰ相試験を開始しました。「FF-10832」は、高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術などを活かして、既存の水溶性薬剤である抗がん剤「ゲムシタビン」をリポソームに内包したリポソーム製剤です。リポソームとは、体内で必要な量の薬剤を必要な部位に必要なタイミングで送達する技術であるドラッグ・デリバリー・システム技術の一種で、薬剤をリポソーム製剤にすることで、がん組織に薬剤を選択的に送達し、副作用を抑制して薬効を高めることができると期待されています。さらに、抗がん剤「FF-10101」では、米国において、再発・難治性の急性骨髄性白血病の患者を対象とした臨床第Ⅰ相試験を開始しました。「FF-10101」は、富士フイルム㈱が写真フィルムなどで培った、化合物の高い合成力、設計力を活かして自社で創製したFLT3阻害剤で、FLT3に含まれるアミノ酸と不可逆的に結合してその働きを阻害し、白血病細胞の異常増殖を抑制します。細胞実験では、「FF-10101」が、他のFLT3阻害剤に耐性を示すTKD変異が発現している白血病細胞の増殖に対し強力な阻害作用を示しており、さらに白血病の患者細胞を用いたマウス実験でも高い効果を発揮していることから、ヒトでの有効性が期待されています。また、富山化学工業㈱は、横浜市立大学、産業技術総合研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所との共同研究により、富山化学工業㈱が創製した化合物「edonerpic maleate」が脳損傷後の機能回復のメカニズムである脳の可塑性を向上させることを明らかにし、脳損傷後の「edonerpic maleate」投与で、リハビリテーションによる運動機能回復効果が改善することをモデルで示すことに成功しました。富山化学工業㈱は承認取得に向けて脳卒中後の回復期リハビリテーションを行っている患者を対象とした治験を実施します。 再生医療事業では、武田薬品工業㈱に対して、iPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療製品の全世界での共同事業化に関する優先交渉権を付与する契約を締結しました。今後、複数のiPS細胞由来心筋細胞の薬効・安全性評価、実用化に向けたプロセス開発などについて共同研究を実施します。また、富士フイルム㈱の子会社であるセルトラスト・アニマル・セラピューティクス㈱では、犬の眼疾患である難治性の乾性角結膜炎を対象に細胞を用いた治療法の有効性を確認しました。本治療法は、動物医療分野では初めて、人の再生医療と同等の品質管理基準に基づき培養された他家細胞を用いる画期的なものです。 ライフサイエンス事業では、「ASTALIFT」のプレステージシリーズ「ASTALIFT IN-FOCUS」を新たに展開し、総合エイジングケア美容液「アスタリフト イン・フォーカス セルアクティブセラム」を発売しました。「アスタリフト イン・フォーカス セルアクティブセラム」は、「アスタキサンチン」と「ニコチン酸トコフェロール」を組み合わせて独自技術でナノ分散した美容成分「ナノアスタキサンチンCP+」のほかに、「ナノボスウェリン酸」を含む成分「ナノセルアクティブ」を配合しています。また、美容成分を含んだオイルを微細な粒子にして高密度に配合する処方技術「イオンセンシング技術」を開発し、肌に載せると、肌と一体化するように溶けて浸透します。さらに、近年の動物の健康に対する関心の高まりを受け、馬の腸内環境を整える作用を持つサプリメント「ピュア サラシア」を発売しました。馬に本製品を継続摂取させた結果、馬の腸内で善玉菌に分類される乳酸菌の比率が顕著に増加することが明らかになり、また、エネルギー吸収を向上させる腸内細菌の比率が増加する一方、エネルギー吸収の低下を招く腸内細菌の比率が減少することも分かっています。 産業機材事業では、ひび割れ点検業務を大幅に効率化する社会インフラ画像診断サービス「ひびみっけ」の提供を開始しました。「ひびみっけ」は、富士フイルム㈱が医療用画像診断システムで培った高精度な画像解析技術を用いて開発したサービスで、AIを活用した画像解析などにより、人手による従来の点検業務に比べて作業時間を半減することができます。 ファインケミカル事業では、原料を連続的に供給し混合・反応させる化学合成法である「フロー合成法」を活用した新たな化成品の製造受託サービスを開始しました。富士フイルムが持つ、合成処方設計から高精度な反応制御、生産プロセス開発を一貫して行える多様な技術と、富士フイルム和光純薬㈱が保有する生産設備を組み合わせて、多品種少量生産から大量生産まで対応可能な受託体制を構築しており、化成品の高純度化ニーズに応えます。 記録メディア事業では、「バリウムフェライト(BaFe)磁性体」を世界で初めて採用した大容量磁気テープの開発に携わった7名が、第7回ものづくり日本大賞「内閣総理大臣賞」(製品・技術開発部門)を受賞しました。「ものづくり日本大賞」は、ものづくりの現場で活躍し新たな付加価値を提供できる人材を顕彰する内閣総理大臣表彰であり、「活用が進むビッグデータを安全・安価・長期に保管したい」という社会のニーズに応えたこと、また、磁気テープの今後のさらなる大容量化の道を拓いた点が高く評価されました。 本部門の研究開発費は、69,737百万円となりました。 当社グループにおける新薬開発状況は以下のとおりです。(2018年6月現在)開発番号薬効・適応症剤形地域開発段階T-705抗インフルエンザウィルス薬経口米国PhⅢ重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬経口日本PhⅢT-3811キノロン系合成抗菌薬経口中国承認申請中T-2307抗真菌薬注射米国PhⅠT-817MAアルツハイマー型認知症治療薬経口米国日本PhⅡPhⅡT-4288新規フルオロケトライド系抗菌薬経口日本PhⅢITK-1去勢抵抗性前立腺がん治療薬注射日本PhⅢFF-10501骨髄異形成症候群治療薬経口日本米国PhⅠPhⅡFF-10502進行・再発固形がん治療薬注射米国PhⅡFF-21101進行・再発固形がん治療薬(Armed抗体)注射米国PhⅠF-1311前立腺がん診断薬(放射性医薬品)注射日本PhⅡFF-10101急性骨髄性白血病治療薬経口米国PhⅠF-1515神経内分泌腫瘍治療薬(放射性医薬品)注射日本PhⅠFF-10832進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム)注射米国PhⅠF-1614難治性褐色細胞腫治療薬(放射性医薬品)注射日本PhⅡ (3)ドキュメント ソリューション部門 ドキュメント事業領域では多様な働き方をサポートする商品・サービスを提供しており、クラウドサービス「Working Folder」と連携するなどモバイルワーク向け機能を強化したドキュメントハンドリング・ソフトウェアの新バージョン「DocuWorks 9」の発売を開始しました。DocuWorksシリーズは国内販売累計500万ライセンスを突破し有効なツールとして認知されています。また小規模企業向けには「直観的でシンプルな操作」「モバイル・クラウド連携」機能を強化し多様な働き方を支援するフルカラー複合機「DocuCentre C2000」を発売しました。その他、セブン-イレブン店舗の「マルチコピー機」で、ユーザー情報の登録無しで「ネットプリント」が利用可能なサービスを開始しました。 カラープロダクション市場向けには、業界初1パス6色のプリントエンジンで複数の特殊色を一度に印刷可能な「IridesseTM Production Press」を発売開始し、新たなデジタルプリンティング市場を創出していきます。また「Xerox iGen 5 150 Press」のオプショントナーとしてホワイトトナーを発売、濃色用紙や透明紙への印刷を可能とし訴求効果の高い印刷アプリケーションで印刷業のお客様のビジネス拡大に貢献していきます。 また複写技術を進化させた独自のアルゴリズムにより工業製品など物体表面に偶然生成された固有のランダムパターンを識別する「Yoctrace®」技術を開発しました。特に印刷業で有価証券の偽造防止などの目的に本技術をセキュリティー媒体として活用し、高い真贋判定や認証サービスの実現に向けて支援します。 さらに知的財産交流を通して、自社の特許を開放し新たな事業創出を支援する特許ライセンスビジネスを本格展開しました。この第1号案件として、自己修復性能を有する樹脂材料の特許技術に関する契約を神奈川県内の企業と締結しました。 2018年3月には、社会課題である働き方改革の実現に向けて、より創造的な働き方への変革を促す新たな価値提供戦略「Smart Work Innovation」を発表しました。この戦略実現に向けてAI(人工知能)およびIoT(Internet of Things)・IoH(Internet of Humans)技術を活用した新たなサービスを順次提供します。 本部門の研究開発費は、62,333百万円となりました。
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6 【研究開発活動】 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、さまざまな分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。 富士フイルム㈱は、平成29年4月に総合試薬メーカーである和光純薬工業㈱を連結子会社化しました。今後、和光純薬とのシナジー創出により、既存ビジネスの最大化、競争力の高い新規製品の開発・提供等を通じて、ヘルスケア、高機能材料のさらなる事業成長を図っていきます。また、富士フイルム㈱、富士ゼロックス㈱及び富山化学工業㈱等のグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。さらに、これまで富士フイルムグループが開発してきた優れた材料・製品を支える基盤技術やコア技術、開発中の新しい技術・材料・製品を直接触れていただきながら、ビジネスパートナーにソリューションを提案する施設「Open Innovation Hub」には、開設以来、日・米・欧3拠点合わせて延べ約1,500社・8,000名が来訪しました。ビジネスパートナーが持つ課題やアイデア、潜在的なニーズと自社の技術を結びつけ、画期的な新しい製品・技術・サービスを生み出す「共創」活動が活発に行なわれています。 当連結会計年度における研究開発費の総額は160,232百万円(前年度比1.7%減)、売上高比6.9%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は24,383百万円です。 当連結会計年度の主な研究開発の成果は次のとおりであります。(1)イメージング ソリューション部門 フォトイメージング事業では、インスタントカメラinstax“チェキ”シリーズで初めてデジタルイメージセンサーとデジタル画像処理技術を搭載し、写真画質の大幅な向上及びプリント出力前の画像編集・加工を実現したハイブリッドインスタントカメラ「instax SQUARE SQ10」を開発し、発売しました。 光学・電子映像事業では、35mmフルサイズイメージセンサーの約1.7倍となる大型サイズ(43.8×32.9mm)のイメージセンサーを搭載した中判ミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM GFX 50S」と、大口径の専用交換レンズ「フジノン GFレンズ」3種を開発し、発売しました。「FUJIFILM GFX 50S」は、有効画素数5140万画素の「FUJIFILM Gフォーマット」センサー、高速画像処理エンジン「X-Processor Pro」、独自の色再現技術、「フジノン GFレンズ」との組み合わせで、富士フイルム史上最高画質を実現するハイエンドミラーレスデジタルカメラです。また、独自の色再現技術で卓越した写真画質を実現した「Xシリーズ」の最新モデルとして、高い機動性と優れた操作性を発揮する小型軽量ボディに、2430万画素のAPS-Cサイズ「X-Trans™ CMOS Ⅲ」センサーと高速画像処理エンジン「X-Processor Pro」を搭載したミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-T20」を開発、発売しました。さらに、4K対応の放送用ズームレンズとして小型・軽量なポータブルズームレンズ「FUJINON UA18×5.5」と「FUJINON UA14×4.5」を開発し、発売しました。「FUJINON UA18×5.5」は、質量約2.04kgながら、広角5.5mmから望遠100mmまでの焦点距離を1本でカバーし、報道や、各種番組制作のロケ等の機動力が必要とされる撮影現場にも対応します。「FUJINON UA14×4.5」は、全長約238.5mmの小型ボディで、超広角4.5mmの焦点距離を活かし、スポーツ中継や、各種番組制作のロケ等で奥行きのある臨場感溢れる映像を撮影することが可能です。 本部門の研究開発費は、8,190百万円となりました。 (2)インフォメーション ソリューション部門 メディカルシステム事業では、携帯型超音波画像診断装置「SonoSite Edge II」とフルフラット型超音波画像診断装置「SonoSite SII」の2製品を開発し、発売しました。「SonoSite Edge II」は、圧電素子の周辺設計を工夫することで、高精細な画像を実現する独自のデバイス技術「DirectClear™」をプローブに搭載し、超音波が届きにくい体内深部も鮮明に観察することが可能です。「SonoSite SII」は、モニターと操作部を一体化し、さらにタッチパネルを採用することで、高い操作性を実現しています。また、小型化と従来機比約5分の1の軽量化を実現した画期的な超軽量移動型デジタルX線撮影装置「FUJIFILM DR CALNEO AQRO」を開発し、発売しました。本製品は、高画質なX線撮影が可能であることに加え、小型・軽量で機動性にも優れ、救急、集中治療室といったスペースが限られる医療現場でも素早い検査や画像確認といった最適なワークフローを提供します。さらに、光源に波長の異なる2種類のレーザーを用いた内視鏡システム「LASEREO」シリーズの新たなラインアップとして、「LASEREO 7000システム」、下部消化管用スコープ「EC-L600MP7」を開発し、発売しました。「LASEREO 7000システム」は、レーザー制御技術をさらに進化させることで、粘膜表層の血管や構造の観察に適したBLI機能を使用して中景・遠景を観察する際の視認性を高め、より精細な観察をサポートします。「EC-L600MP7」は、スクリーニング検査に適した先端部径11.1mmの細径スコープです。スコープ軟性部の硬さを任意に調整できる硬度調整機能を搭載し、スコープ先端部を大腸の深部までスムーズに挿入でき、大腸の内視鏡検査において、患者の身体的苦痛の軽減が期待されます。 医薬品事業では、バイオ医薬品のプロセス開発・製造受託事業をさらに拡大するために、米国においては、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies Texas, LLCが、生産能力増強のために、米国政府の助成を得て約100億円をかけて建設を進めてきた生産棟が完成し、今後、約30億円を投じてバイオ医薬品の生産に必要な設備を導入し、平成30年初めに稼動させる予定です。また英国では、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies UK Limited に、約10億円をかけてバイオ医薬品の生産プロセスの開発拠点を増設します。新拠点には、医薬品の成分等を高速で自動分析できる最先端機器や培養・精製の小スケール実験が全自動で行える最新鋭設備等を導入し、独自の高生産性細胞作製技術「Apollo™」と組み合せて、顧客ニーズに応じた高効率な生産プロセスをスピーディーに開発します。同拠点の開設は、平成29年夏を予定しています。また、富士フイルムRIファーマ㈱は、悪性腫瘍、虚血性心疾患及びてんかんの診断を目的としたPET検査用放射性医薬品「フルデオキシグルコース(18F)静注「FRI」」の製造販売承認を取得しました。「フルデオキシグルコース(18F)静注「FRI」」は、より柔軟に検査予定時刻を設定でき、また検査に必要な放射能を過不足なく適切に投与することが可能となるよう、製造時に1バイアル中の放射能を一定の範囲内で調整して提供する放射性医薬品です。これにより臨床現場での利便性の向上や不要な被ばくの低減に貢献することが期待されます。 再生医療事業では、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国Cellular Dynamics International, Inc.(以下、「CDI社」と記述します。)が、米国国立眼科研究所と、他家iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を用いた加齢黄斑変性の治療に関する共同研究開発契約を締結しました。またCDI社は、世界で初めてiPS細胞から視細胞への分化誘導法を確立した網膜疾患治療の世界的権威であるDr. David Gammと、他家iPS細胞を用いた網膜疾患の治療法を開発する新会社Opsis Therapeutics, LLC.(以下、「Opsis Therapeutics」と記述します。)を米国に設立しました。今後Opsis Therapeuticsは、他家iPS細胞を用いた網膜疾患の治療法の開発を進め、本治療法に必要となる網膜色素上皮細胞と視細胞を組み合わせた再生医療製品を上市することで、再生医療の事業化を推進していきます。富士フイルム㈱は、他家iPS細胞由来の間葉系幹細胞を効率的に大量生産できる技術を確立しているオーストラリアの再生医療ベンチャーCynata Therapeutics Limited (以下、「Cynata社」と記述します。)への出資を行い、Cynata社は平成29年5月にCDI社が提供した他家iPS細胞由来の間葉系幹細胞を用いた再生医療製品の臨床試験を開始しました。 ライフサイエンス事業では、「ASTALIFT」、「ASTALIFT WHITE」両シリーズの化粧水をリニューアル発売しました。「ASTALIFT」の化粧水である「アスタリフト モイストローション」には、「アスタキサンチン」と「ビタミンA」を組み合わせ、粒子径を世界最小クラス(平成28年5月16日現在 富士フイルム㈱調べ)にナノ乳化した独自成分「ナノビタミンAx」と、その効果をサポートする「コラーゲンペプチド」で構成された複合成分「CLリフレッシャーⓇ」を配合しました。「ASTALIFT WHITE」の化粧水である「アスタリフト ホワイト ブライトローション」には、美白有効成分「アルブチン」に加え、シリーズ共通の美容成分「ナノAMA」と、くすみをケアする「フェルラ酸」を組み合わせた複合成分「ナノAMA+」を配合しました。また、「飲むアスタキサンチン」シリーズから、「飲むアスタキサンチン すっとねリッチ クロセチンプラス」を発売しました。「アスタキサンチン」に加えて、「クチナシ由来クロセチン」を配合し、健康な睡眠をサポートするだけでなく、肌の潤いも守る機能性表示食品です。 記録メディア事業では、一般財団法人 省エネルギーセンターが主催する平成28年度「省エネ大賞」において、大容量磁気テープを使った省エネルギー型ビジネスモデルである「テープアーカイブアプライアンス」が「製品・ビジネスモデル部門」で「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しました。このビジネスモデルをデータアーカイブストレージシステム「d:ternity(ディターニティ) オンサイト アーカイブ」として提供を開始しました。 グラフィックシステム事業では、完全無処理サーマルCTPプレート「SUPERIA ZD」を開発し、発売しました。「SUPERIA ZD」は、支持体表面処理技術「MGZ(Multi Grain Z)」やUVインクに対応するための「HDN(Hyper Dimension Networking)」技術の搭載により耐刷性が向上、「s-HDS(super Hydro Discrimination Surface)」技術により汚れにくさ、水幅の拡大を実現しました。また、超高速四六全サーマルデジタルプレートセッター「Luxel PLATESETTER T-9800HDN E/S/X」を開発し、発売しました。高感度サーマルCTPプレートとの組み合わせにより、「70版/時」の出力スピードを実現しました。 本部門の研究開発費は、66,194百万円となりました。 当社グループにおける新薬開発状況は以下のとおりです。(平成29年6月現在)開発番号薬効・適応症剤形地域状況T-705抗インフルエンザウィルス薬経口米国PhⅢ実施中T-3811キノロン系合成抗菌薬経口中国承認申請中T-2307抗真菌薬注射米国PhⅠ終了T-817MAアルツハイマー型認知症治療薬経口米国日本PhⅡ実施中PhⅡ実施中T-4288マクロライド系抗菌薬経口日本PhⅢ実施中ITK-1去勢抵抗性前立腺がん治療薬注射日本PhⅢ実施中FF-10501再発・難治性骨髄異形性症候群治療薬経口日本米国PhⅠ終了PhⅡ実施中FF-10502進行・再発膵がん/卵巣がん治療薬注射米国欧/日PhⅠ実施中PhⅠ準備中FF-21101進行・再発非小細胞肺がん/膵がん治療薬(Armed抗体)注射米国欧/日PhⅠ実施中PhⅠ準備中F-1311前立腺がん診断薬(放射性医薬品)注射日本PhⅡ実施中FF-10101再発・難治性急性骨髄性白血病治療薬経口米国PhⅠ準備中FF-10102自己免疫疾患治療薬経口米/欧/日非臨床試験実施中 (3)ドキュメント ソリューション部門 オフィス市場向けには、一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮できる多様な働き方を可能にする富士ゼロックス㈱の新コンセプト「Smart Work Gateway」を発表しました。コンセプト実現に向け、自社・他社クラウドサービスとの連携や、新たなユーザーエクスペリエンスを提供するデジタルカラー複合機「ApeosPort-VI C」8機種及び「DocuCentre-VI C」シリーズ8機種を、中国を含むアジア太平洋地域と日本で発売開始しました。中小規模事業所市場向けには、モバイル端末と連携し、窓口や店頭で便利に使えるA4カラープリンター複合機「DocuPrint CM310 z/DocuPrint CM210 z」及び、A4カラープリンター「DocuPrint CP310 dw/DocuPrint CP210 dw」を発売しました。エントリープロダクションカラー市場向けには、新開発「フィニッシャーD6」等、新たな後加工オプションをラインナップに追加し、オンデマンドプリントの多彩な製本ニーズと高まる製本品質へのニーズに応える「Versant 3100 Press」「Versant 180 Press」を発売しました。 ソリューション・サービス関連では、中小規模事業所の各種申請や報告業務を効率化するため、富士ゼロックス㈱のドキュメントハンドリングソフトウェア「DocuWorks」を活用した「申請・報告ソリューション」の提供を開始しました。また、人材開発システムの構築とコンテンツ制作を支援する中小企業向けクラウドサービス「SkyDesk Mixed Learning」の提供を開始しました。さらに、慶應義塾大学と内部構造・色・材料・接合強度情報を全て保持した世界初の3Dプリント用データフォーマット「FAV」を共同研究し、仕様を公開しました。「FAV」をデファクトスタンダードとすべく、3Dプリンターを活用した新しいものづくり環境をお客様と一緒に実現していきます。 本部門の研究開発費は、61,465百万円となりました。
FY2016|5,584 文字
6 【研究開発活動】 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、さまざまな分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。 加えて、富士フイルム㈱、富士ゼロックス㈱及び富山化学工業㈱等のグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。また、これまで富士フイルムグループが開発してきた優れた材料・製品を支える基盤技術やコア技術、開発中の新しい技術・材料・製品を直接触れていただきながら、ビジネスパートナーにソリューションを提案する施設として日・米・欧3拠点に「Open Innovation Hub」を開設しました。ビジネスパートナーが持つ課題やアイデア、潜在的なニーズと自社の技術を結びつけ、画期的な新しい製品・技術・サービスを生み出し、イノベーションを起こしていきます。さらに、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といった高度なICT化に対応した情報基盤技術の強化と応用拡大を図るために、新組織「インフォマティクス研究所」を設立しました。ビッグデータ解析等の情報科学の最先端技術やソフトウエアの基盤技術の研究開発を、新規材料や製品、IoT社会に適したソリューションサービスの創出に活用していきます。 当連結会計年度における研究開発費の総額は163,033百万円(前年度比1.2%増)、売上高比6.5%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は24,516百万円です。 当連結会計年度の主な研究開発の成果は次のとおりであります。(1)イメージング ソリューション部門 フォトイメージング事業では、スマートフォンやデジタルカメラ等で撮影した画像を、スマートフォン感覚の快適なタッチ操作で簡単にプリント注文できる次世代店頭プリント受付機「Wonder Print Station(ワンダープリントステーション)」を開発し、発売しました。 光学・電子映像事業では、卓越した写真画質と多彩な絵作りを実現する「Xシリーズ」のラインアップとして、ミラーレスカメラの「FUJIFILM X-Pro2」「FUJIFILM X-T10」を開発し、発売しました。「FUJIFILM X-Pro2」は、新開発の2430万画素「X-Trans™ CMOS Ⅲ」センサーと超高速の新型画像処理エンジン「X-Processor Pro」を搭載し、「Xシリーズ」史上最高の画質と機動性を実現しています。「FUJIFILM X-T10」は、小型軽量ボディに、動いている被写体の決定的瞬間をとらえる「新AFシステム」と、0.62倍大型表示倍率、世界最短表示タイムラグ0.005秒(平成27年4月現在 富士フイルム㈱調べ)を実現する「リアルタイム・ビューファインダー」を搭載しています。また、「Xシリーズ」の交換レンズラインアップとして、クラス最高となる5.0段分の手ブレ補正と小型・軽量設計により、超望遠領域でも手持ち撮影で「Xシリーズ」の高画質を楽しめる「フジノンレンズ XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR」を開発し、発売しました。また、4K対応の放送用ズームレンズとして世界最高107倍ズーム(平成28年4月14日現在 富士フイルム㈱調べ)を実現した「FUJINON UA107×8.4」を開発し、発売しました。さらに、製造ラインの製品検査や計測等で使用するマシンビジョンカメラ用レンズの最上位シリーズとして、多様な設置条件下で画像の中心部から周辺部まで均一な高い解像性能を実現する「FUJINON HF-12Mシリーズ」を開発し、発売しました。 本部門の研究開発費は、7,986百万円となりました。 (2)インフォメーション ソリューション部門 メディカルシステム事業では、軽量・コンパクトで携帯性に優れ、かつ、診断しやすい7インチ画面を装備したタブレット型超音波画像診断装置「SonoSite iViz(ソノサイト アイビズ)」を開発し、発売しました。本製品は、独自の小型化技術で開発した画像処理回路により、小型ながら鮮明で高精細な画像が得られる画期的な超音波画像診断装置です。また、病院内の各診療科が扱う多様な診療情報を一元的に管理・保管できる統合アーカイブシステム「SYNAPSE VNA(シナプス ブイエヌエー)」を開発し、発売しました。当社は平成27年5月にVNAの先駆者として市場をリードしてきた米国TeraMedica, Inc.を連結子会社化し、VNAの積極的なグローバル展開を推進しています。さらに、レーザー光源搭載の内視鏡システム「LASEREO(レザリオ)」用スコープの新ラインアップとして、高解像度CMOSセンサーを搭載し、低ノイズで高解像度な画像を実現した、下部消化管用拡大スコープ「EC-L600ZP」、上部消化管用拡大スコープ「EG-L600ZW」を、キセノン光源を用いた内視鏡システム「Advancia(アドバンシア)」シリーズ用スコープの新ラインアップとして下部消化管用拡大スコープ「EC-600ZW/M」を、それぞれ開発し、発売しました。 医薬品事業では、血液がん「再発・難治性の骨髄異形成症候群(MDS)及び急性骨髄性白血病(AML)」の患者に対する抗がん剤「FF-10501」の米国臨床第Ⅰ相試験において、高い忍容性が確認され、さらに一部の患者で部分寛解及び骨髄寛解が得られました。今後、富士フイルム㈱は、MDアンダーソンがんセンターでさらなる高用量での忍容性評価を継続していきます。また、この中でみられる有効性も評価して、前期第Ⅱ相の臨床試験へ移行する予定です。また、米国で平成28年1月に抗がん剤「FF-21101」の肺がん等の固形がんを対象とする臨床第Ⅰ相試験を開始、抗がん剤「FF-10502」の膵臓がん等の固形がんを対象とした臨床第Ⅰ相試験を開始する等、着実にパイプラインの臨床開発を進めています。「FF-21101」は、富士フイルム㈱がグループ会社の技術を結集させ、開発したものです。抗体の創出には創薬系バイオベンチャーのペルセウスプロテオミクス㈱、抗体の製造にはバイオ医薬品受託製造会社のFujifilm Diosynth Biotechnologies、抗体にRIを標識するプロセスの開発には放射性医薬品メーカーの富士フイルムRIファーマ㈱の技術を活用しています。また「FF-10502」は、合成に多くのプロセスが必要な独特の化学構造を有するため、生産コストが高く、実用化が困難でしたが、当社が写真フィルムの開発で培ってきた高い化学合成力・設計力を活かして、合成プロセスを効率化することで、コスト低減を成功させたものです。 再生医療事業では、iPS細胞の開発・製造の世界的なリーディングカンパニーである米国Cellular Dynamics International, Inc.を平成27年5月に連結子会社化するとともに、平成27年10月に国内でiPS細胞ビジネスを展開するセルラー・ダイナミクス・インターナショナル・ジャパン㈱を設立し、再生医療分野への取り組みを強化しています。また、再生医療のための細胞培養に必要な細胞外マトリックス「cellnest(セルネスト) ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド」を、ラットの頭蓋骨欠損部に移植することで、骨の再生能力を大幅に高めることに成功しました。今後、骨再生の中でも、特に医療ニーズの高い歯槽骨の再生等への活用が期待できます。 ライフサイエンス事業では、「ヒト型アシルセラミド」を世界最小20nmサイズ(平成27年6月末現在 富士フイルム㈱調べ)で安定分散した「ヒト型ナノアシルセラミド」を開発しました。「ヒト型ナノアシルセラミド」は、「ヒト型アシルセラミド」分散液に比べて、約6倍の角層浸透性を示すことを確認しました。この「ヒト型ナノアシルセラミド」を新たに配合し、肌をすみずみまで潤いで満たす保湿機能をさらに強化したジェリー状美容液「ASTALIFT JELLY AQUARYSTA(アスタリフト ジェリー アクアリスタ)」をリニューアル発売しました。また、美白有用成分「オリザノール」を世界最小クラス20nmサイズで安定にナノ分散した「ナノオリザノール」を開発しました。この「ナノオリザノール」を新たに配合し、美容効果をさらに強化した美白美容液「エッセンスインフィルト」をリニューアル発売しました。 高機能材料では、「環境負荷低減と高耐久性を実現する太陽電池用保護フィルム」で、新化学技術推進協会の「第14回(2014年度)グリーン・サスティナブル ケミストリー賞(GSC賞) 環境大臣賞」を受賞しました。また、「写真技術を応用した、タッチパネル用薄型両面センサーフィルムの開発」で、日本化学工業協会の「第48回(平成27年度)日化協技術賞 技術特別賞」を受賞しました。 電子材料事業では、半導体製造用ネガ型有機溶剤現像リソグラフィープロセス(NTIプロセス)の開発で、日本化学工業協会の第47回(平成26年度)日化協技術賞の最高賞である「総合賞」を受賞しました。 記録メディア事業では、大容量データのバックアップやアーカイブに使用される磁気テープメディア「LTO Ultrium規格」の第7世代に対応した「FUJIFILM LTO Ultrium7 データカートリッジ」(以下、「LTO7」と記述します。)を開発し、発売しました。LTO7は独自の「BaFe(バリウムフェライト)磁性体技術」と「NANOCUBIC技術」をさらに進化させ、前世代のLTO6に比べ記録容量を約2.4倍の15.0TBに拡大し、データ転送速度を約1.9倍の750MB/秒に高速化しました。また、企業や大学で生成されたデータを簡単かつ効率的に磁気テープに記録し、利用者の元で長期保管できるデータアーカイブストレージシステム「d:ternity(ディターニティ) オンサイト アーカイブ」を開発し、発売しました。 グラフィックシステム事業では、完全無処理サーマルCTPプレート「SUPERIA ZP」「SUPERIA ZN」を開発し、発売しました。「SUPERIA ZN」は、新聞印刷輪転機に適応した環境配慮型の新型刷版として初めて実用化に成功し、国内の新聞社に導入されたこと等から、今後の新聞界の主流となりうる技術として期待されています。また、枚葉インクジェット印刷機としてB1用紙サイズに対応した次世代インクジェットデジタル印刷機を、Heidelberger Druckmaschinen AGと共同で開発しました。 本部門の研究開発費は、67,301百万円となりました。 当社グループにおける新薬開発状況は以下のとおりです。(平成28年5月現在)開発番号薬効・適応症剤形地域状況T-705抗インフルエンザウィルス薬経口米国PhⅢ実施中T-3811キノロン系合成抗菌薬経口中国承認申請中T-2307抗真菌薬注射米国PhⅠ終了T-817MAアルツハイマー型認知症治療薬経口米国日本PhⅡ実施中PhⅡ実施中T-4288マクロライド系抗菌薬経口日本PhⅡ実施中ITK-1去勢抵抗性前立腺がん治療薬注射日本PhⅢ実施中FF-10501再発・難治性骨髄異形性症候群治療薬経口日本米国PhⅠ終了PhⅠ実施中FF-10502進行・再発膵がん/卵巣がん治療薬注射米国欧/日PhⅠ実施中PhⅠ準備中FF-21101進行・再発非小細胞肺がん/膵がん治療薬(Armed抗体)注射米国欧/日PhⅠ実施中PhⅠ準備中F-1311前立腺がん診断薬(放射性医薬品)注射日本PhⅡ実施中FF-10101再発・難治性急性骨髄性白血病治療薬経口米国非臨床試験実施中 (3)ドキュメント ソリューション部門 オフィス市場向けには、モバイル端末への対応とクラウドサービスとの連携を強化したフルカラーデジタル複合機「ApeosPort-V C」シリーズ及び「DocuCentre-V C」シリーズ18機種を発売しました。中小規模事業所市場向けには、エントリーモデルの「DocuCentre-V」シリーズを、中国を含むアジア・オセアニア地域市場と日本で発売しました。ライトプロダクションカラー市場向けには、100V電源で稼働するプリンターとしては世界最高速(平成27年10月8日現在 富士ゼロックス㈱調べ)の「DocuColor 7171 P」を開発し、発売しました。また、印刷会社やサービスビューロー、データセンターなどのプリントサービス提供企業向けに、色の再現性を高めたカラー・オンデマンド・パブリッシング・システム「Xerox iGen 5 150 Press」を発売しました。 ソリューション・サービス関連では、クラウドを活用して事業所、企業間等、移動先でのプリント業務を簡単に行えるプリントサービス「Cloud On-Demand Print」の提供を開始しました。 本部門の研究開発費は、63,230百万円となりました。