事業の内容
ブライトパス・バイオは、がん免疫治療薬の開発に特化した創薬ベンチャーです。自社で創製または導入した新規がん免疫治療薬を、探索研究から早期臨床試験まで手掛け、その後、国内外の製薬会社に開発・製造・販売権をライセンスアウトすることで収益を得ています。主な収益源は、ライセンス契約時の一時金、開発の進捗に応じたマイルストン収入、そして上市後の製品売上高に応じたロイヤリティ収入です。複数のパイプラインを同時並行で進め、早期の投資回収と継続的な収入を目指しています。特に、iPS細胞由来のNKT細胞療法やCAR-T細胞療法といった、がん免疫を活性化させる革新的な治療薬の開発に注力しています。
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FY2025|5,769 文字|出典 docID: S100VZBU
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫治療薬の開発では、動かなくなってしまったがん免疫を再び動くようにすること、いったん動いたがん免疫が、任務を終えた後に「元に戻る」仕組みによってブレーキをかけられるのを防ぎ、持続させることが、創薬のターゲットとなります。これに成功すればがんを治療できることは、2018年にノーベル賞を受賞したPD-1という免疫チェックポイント(免疫のブレーキ)を阻害する抗体が、がん治療に革新をもたらしたことによって、立証されてきました。今を生きる私たちは、この治療の革新の恩恵を受ける途上にあり、がんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、未解明の領域がたくさん残されていると考えています。がん免疫にがんの目印を与えるがんワクチン、T細胞というがん免疫そのものを大量に外から投入する細胞医薬、PD-1以外にもいくつもある「免疫が元に戻る仕組み」を一定期間止める抗体医薬、これらが当社の開発している薬です。がんの克服を目指す人に、新たな治療選択肢を提供するために、これからも研究活動を推進してまいります。 (3) 開発パイプライン 当社の開発パイプラインは以下のとおりです。このほか、次世代パイプラインの構築を目的として複数の探索・非臨床試験研究を実施しております。 細胞医薬〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕BP2201(iPS-NKT)は、iPS細胞から分化誘導したナチュラル・キラーT(NKT)細胞*1をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬品候補です。NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化することにより、間接的にも抗腫瘍効果を発揮する免疫細胞です。しかし、ヒト末梢血中にわずか0.01~0.1%程度しか存在しないとされ、NKT細胞を体外に取り出し、がん治療に必要な細胞数まで培養・増殖させることが非常に難しいという課題がありました。 そこで国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)では、生命医科学研究センター副センター長の古関明彦氏を中心に、この課題を解決する方法として、iPS細胞技術を用いることが計画されました。具体的には、NKT細胞を初期化して樹立したiPS細胞(NKT-iPS細胞)から再度NKT細胞(iPS-NKT細胞)に分化・誘導可能なことが示され、2010年、iPS細胞から抗腫瘍活性を備えたNKT細胞だけを大量に作り出すことに成功しました。 当社は、本細胞療法の研究開発に、開発元の理研とともに取り組んでまいりましたが、2022年11月に導入オプション権を行使し、全世界で独占的に開発・製造・販売するライセンスを取得しました。本ライセンスにより、1)iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する「特許」(日米欧で登録済み)、2)現在進行中の治験によって臨床上の安全性と一定の有効性の示唆が期待される「マスターiPSセルバンク」、3)マスターiPSセルバンクからNKT細胞へ高純度で大量に分化誘導させる「製造法」の3つで構成されるプラットフォームを有することになりました。このプラットフォームは、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台/プラットフォームとなり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。また、2020年6月より国立大学法人千葉大学において、世界初のiPS-NKTを用いた頭頸部がんを対象とする臨床第Ⅰ相医師主導治験(以下「本治験」)が実施され、2024年1月に無事終了しました。本治験について、2024年2月に学会で発表されたトップライン・データでは、主要評価項目である忍容性および安全性に問題ないこと、並びに初期的な臨床活性の確認が示されました。 〔CAR-iPSNKT細胞療法:BP2202〕BP2202(CAR-iPSNKT)は、非遺伝子改変iPS-NKT細胞にがんの目印(抗原)を認識するキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を付加し、がん細胞殺傷能を高めた新規のCAR-T細胞療法*2です。CAR-T細胞療法とは、がん細胞が細胞表面上に発現する抗原(がんの目印)を認識するキメラ抗原受容体(CAR:Chimeric Antigen Receptor)を、体外でT細胞に遺伝子導入し、CARを導入したCAR-T細胞を培養で増殖させて投与する治療法です。当社が試作したHER2を標的抗原とする CAR iPS-NKTは、非遺伝子改変iPS-NKTと比較して抗腫瘍効果が高まることをマウスモデルで確認しています。また、当社は2023年5月にSTAR-CRISPRTM遺伝子編集技術をライセンス導入し、固形がんを含む様々な適応症に対して高度な遺伝子組換型CAR-iPSNKT細胞療法プログラムを創出することが可能となりました。BP2202はその最初の製品として位置づけられた、多発性骨髄腫を標的とするBCMA CAR-iPSNKTです。現在、米国での第Ⅰ相臨床試験に向けての準備を進めています。 〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法です。これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、グローバルで承認されてきました。しかし、より多くの方が罹患される固形がんへの展開においては、投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないという課題が明らかになってきました。この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が行われています。 抗体医薬 抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子*3もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。がん免疫を抑制するアデノシン産生に介入するCD73とCD39をそれぞれ標的とするBP1200とBP1202、免疫細胞に発現し、その抑制に関わるTIM-3を標的とするBP1210、CD39分子とTIM-3分子を双方発現する免疫細胞においてこれらを同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212に加えて、がん細胞上に発現するCD39分子とT細胞上に発現するCD3分子双方を標的とするT細胞エンゲージャー*4BP1223を開発パイプラインとして有します。 がんワクチン 〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン:BP1209〕 BP1209は、がん細胞由来の遺伝子変異に由来しヒトの免疫システムが高い反応性を示すネオアンチゲンを標的とするがん免疫を、患者1人ひとりに対応して誘導するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*5・プラットフォームです。ワクチンとなるネオアンチゲン・ペプチドを、T細胞へ標的情報を伝える樹状細胞へ送達するのに免疫チェックポイント抗体を用います。同抗体への結合が可能となるよう当社オリジナルのリンカー技術が組み込まれています。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、ネオアンチゲンを標的とするT細胞をペプチド単体よりもはるかに強力に惹起させることを、担がんマウスモデルで証明しました。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況当社は、2022年11月に理研からiPS由来NKT細胞を全世界で独占的に開発・製造・販売する権利を導入するオプション権を行使し、iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許の独占実施権を得ました。<主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社がんペプチドワクチン5706895日本当社5980303日本NKT細胞由来iPS細胞およびそれ由来のNKT細胞5652783日本理研8945922米国2336303欧州アロNKT細胞を用いた免疫療法およびそのためのT細胞抗原受容体(TCR)遺伝子のα鎖領域が均一なVα-Jαに再構成されている細胞および該細胞由来NKT細胞のバンキング6320473日本理研10813950米国264738欧州CAR発現免疫細胞を含む細胞集団の製造方法7576547日本当社国立大学法人信州大学京都府公立大学法人 (注)欧州については、欧州特許条約に則った特許出願(EPC出願)によっております。 [用語解説]*1(NKT細胞)ナチュラル・キラー(NK)細胞とT細胞の特徴を併せもち、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割をもつ免疫細胞。がん細胞をT細胞受容体やNK細胞受容体を通して直接殺傷する能力をもつと同時に、T細胞や樹状細胞など他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。 *2(CAR-T細胞療法) Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて投与する治療法。 *3(免疫チェックポイント分子) 免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群のこと。がん免疫においては、過剰な活性化によって自己を攻撃するのを防ぐために存在しているが、発がん過程では、がん細胞が免疫系からの攻撃を回避し増殖するために利用される。 *4(T細胞エンゲージャー)T細胞に結合して活性化させるとともに、T細胞を疾患の原因となるがん細胞等にも結合し、T細胞をがん細胞等に接近させることによって、T細胞にがん細胞等を排除させるように設計された抗体。 *5(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン) 個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われており、その中にはネオアンチゲンをコードするmRNAを脂質ナノパーティクル(LNP)に格納したmRNAワクチンも含まれる。
FY2024|5,563 文字|出典 docID: S100TP5I
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫治療薬の開発では、動かなくなってしまったがん免疫を再び動くようにすること、いったん動いたがん免疫が、任務を終えた後に「元に戻る」仕組みによってブレーキをかけられるのを防ぎ、持続させることが、創薬のターゲットとなります。これに成功すればがんを治療できることは、2018年にノーベル賞を受賞したPD-1という免疫チェックポイント(免疫のブレーキ)を阻害する抗体が、がん治療に革新をもたらしたことによって、立証されてきました。今を生きる私たちは、この治療の革新の恩恵を受ける途上にあり、がんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、未解明の領域がたくさん残されていると考えています。がん免疫にがんの目印を与えるがんワクチン、T細胞というがん免疫そのものを大量に外から投入する細胞医薬、PD-1以外にもいくつもある「免疫が元に戻る仕組み」を一定期間止める抗体医薬、これらが当社の開発している薬です。がんの克服を目指す人に、新たな治療選択肢を提供するために、これからも研究活動を推進してまいります。 (3) 開発パイプライン 当社の開発パイプラインは以下のとおりです。このほか、次世代パイプラインの構築を目的として複数の探索・非臨床試験研究を実施しております。 細胞医薬〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕BP2201(iPS-NKT)は、iPS細胞から分化誘導したナチュラル・キラーT(NKT)細胞*1をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬品候補です。NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化することにより、間接的にも抗腫瘍効果を発揮する免疫細胞です。しかし、ヒト末梢血中にわずか0.01~0.1%程度しか存在しないとされ、NKT細胞を体外に取り出し、がん治療に必要な細胞数まで培養・増殖させることが非常に難しいという課題がありました。 そこで国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)では、生命医科学研究センター副センター長の古関明彦氏を中心に、この課題を解決する方法として、iPS細胞技術を用いることが計画されました。具体的には、NKT細胞を初期化して樹立したiPS細胞(NKT-iPS細胞)から再度NKT細胞(iPS-NKT細胞)に分化・誘導可能なことが示され、2010年、iPS細胞から抗腫瘍活性を備えたNKT細胞だけを大量に作り出すことに成功しました。 当社は、本細胞療法の研究開発に、開発元の理研とともに取り組んでまいりましたが、2022年11月に導入オプション権を行使し、全世界で独占的に開発・製造・販売するライセンスを取得しました。 本ライセンスにより、1)iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する「特許」(日米欧で登録済み)、2)現在進行中の治験によって臨床上の安全性と一定の有効性の示唆が期待される「マスターiPSセルバンク」、3)マスターiPSセルバンクからNKT細胞へ高純度で大量に分化誘導させる「製造法」の3つで構成されるプラットフォームを有することになりました。このプラットフォームは、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台/プラットフォームとなり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。また、2020年6月より国立大学法人千葉大学において、世界初のiPS-NKTを用いた頭頸部がんを対象とする臨床第Ⅰ相医師主導治験(以下「本治験」)が実施され、2024年1月に無事終了しました。本治験について、2024年2月に学会で発表されたトップライン・データでは、主要評価項目である忍容性および安全性に問題ないこと、並びに初期的な臨床活性の確認が示されました。 〔CAR-iPSNKT細胞療法:BP2202〕BP2202(CAR-iPSNKT)は、非遺伝子改変iPS-NKT細胞にがんの目印(抗原)を認識するキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を付加し、がん細胞殺傷能を高めた新規のCAR-T細胞療法*2です。CAR-T細胞療法とは、がん細胞が細胞表面上に発現する抗原(がんの目印)を認識するキメラ抗原受容体(CAR:Chimeric Antigen Receptor)を、体外でT細胞に遺伝子導入し、CARを導入したCAR-T細胞を培養で増殖させて投与する治療法です。当社が試作したHER2を標的抗原とする CAR iPS-NKTは、非遺伝子改変iPS-NKTと比較して抗腫瘍効果が高まることをマウスモデルで確認しています。また、当社は2023年5月にSTAR-CRISPRTM遺伝子編集技術をライセンス導入し、固形がんを含む様々な適応症に対して高度な遺伝子組換型CAR-iPSNKT細胞療法プログラムを創出することが可能となり、現在そのプロトタイプ製品の研究開発を進めています。 〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法です。これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、グローバルで承認されてきました。しかし、より多くの方が罹患される固形がんへの展開においては、投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないという課題が明らかになってきました。この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。 2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が行われています。 抗体医薬 抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子*3もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。がん免疫を抑制するアデノシン産生に介入するCD73とCD39をそれぞれ標的とするBP1200とBP1202、免疫細胞に発現し、その抑制に関わるTIM-3を標的とするBP1210のほかに、CD39分子とTIM-3分子を双方発現する免疫細胞においてこれらを同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212を開発パイプラインとして有します。 がんワクチン 〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン:BP1209〕 BP1209は、がん細胞由来の遺伝子変異に由来しヒトの免疫システムが高い反応性を示すネオアンチゲンを標的とするがん免疫を、患者1人ひとりに対応して誘導するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*4・プラットフォームです。ワクチンとなるネオアンチゲン・ペプチドを、T細胞へ標的情報を伝える樹状細胞へ送達するのに免疫チェックポイント抗体を用います。同抗体への結合が可能となるよう当社オリジナルのリンカー技術が組み込まれています。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、ネオアンチゲンを標的とするT細胞をペプチド単体よりもはるかに強力に惹起させることを、担がんマウスモデルで証明しました。今後、個別化ネオアンチゲン・ワクチン開発は、BP1209のフォーマットに絞って、臨床応用に向けて準備を進めていきます。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況当社は、2022年11月に理研からiPS由来NKT細胞を全世界で独占的に開発・製造・販売する権利を導入するオプション権を行使し、iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許の独占実施権を得ました。<主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国がんペプチドワクチン5706895日本当社5980303日本NKT細胞由来iPS細胞およびそれ由来のNKT細胞5652783日本理研8945922米国2336303欧州アロNKT細胞を用いた免疫療法およびそのためのT細胞抗原受容体(TCR)遺伝子のα鎖領域が均一なVα-Jαに再構成されている細胞および該細胞由来NKT細胞のバンキング6320473日本理研10813950米国264738欧州 (注)欧州については、欧州特許条約に則った特許出願(EPC出願)によっております。 [用語解説]*1(NKT細胞)ナチュラル・キラー(NK)細胞とT細胞の特徴を併せもち、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割をもつ免疫細胞。がん細胞をT細胞受容体やNK細胞受容体を通して直接殺傷する能力をもつと同時に、T細胞や樹状細胞など他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。 *2(CAR-T細胞療法) Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて投与する治療法。 *3(免疫チェックポイント分子) 免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群のこと。がん免疫においては、過剰な活性化によって自己を攻撃するのを防ぐために存在しているが、発がん過程では、がん細胞が免疫系からの攻撃を回避し増殖するために利用される。 *4(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン) 個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われており、その中にはネオアンチゲンをコードするmRNAを脂質ナノパーティクル(LNP)に格納したmRNAワクチンも含まれる。
FY2023|5,725 文字|出典 docID: S100QKJ2
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫治療薬の開発では、動かなくなってしまったがん免疫を再び動くようにすること、いったん動いたがん免疫が、任務を終えた後に「元に戻る」仕組みによってブレーキをかけられるのを防ぎ、持続させることが、創薬のターゲットとなります。これに成功すればがんを治療できることは、2018年にノーベル賞を受賞したPD-1という免疫チェックポイント(免疫のブレーキ)を阻害する抗体が、がん治療に革新をもたらしたことによって、立証されてきました。今を生きる私たちは、この治療の革新の恩恵を受ける途上にあり、がんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、未解明の領域がたくさん残されていると考えています。がん免疫にがんの目印を与えるがんワクチン、T細胞というがん免疫そのものを大量に外から投入する細胞医薬、PD-1以外にもいくつもある「免疫が元に戻る仕組み」を一定期間止める抗体医薬、これらが当社の開発している薬です。がんの克服を目指す人に、新たな治療選択肢を提供するために、これからも研究活動を推進してまいります。 (3) 開発パイプライン 当社の開発パイプラインは以下のとおりです。このほか、次世代パイプラインの構築を目的として複数の探索・非臨床試験研究を実施しております。 細胞医薬〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕BP2201(iPS-NKT)は、iPS細胞から分化誘導したナチュラル・キラーT(NKT)細胞*1をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬です。NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化することにより、間接的にも抗腫瘍効果を発揮する免疫細胞です。しかし、ヒト末梢血中にわずか0.01~0.1%程度しか存在しないとされ、NKT細胞を体外に取り出し、がん治療に必要な細胞数まで培養・増殖させることが非常に難しいという課題がありました。 そこで国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)では、生命医科学研究センター副センター長の古関明彦氏を中心に、この課題を解決する方法として、iPS細胞技術を用いることが計画されました。具体的には、NKT細胞を初期化して樹立したiPS細胞(NKT-iPS細胞)から再度NKT細胞(iPS-NKT細胞)に分化・誘導可能なことが示され、2010年、iPS細胞から抗腫瘍活性を備えたNKT細胞だけを大量に作り出すことに成功しました。 当社は、本細胞療法の研究開発に、開発元の理研とともに取り組んでまいりましたが、2022年11月に導入オプション権を行使し、全世界で独占的に開発・製造・販売するライセンスを取得しました。 本ライセンスにより、1)iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する「特許」(日米欧で登録済み)、2)現在進行中の治験によって臨床上の安全性と一定の有効性の示唆が期待される「マスターiPSセルバンク」、3)マスターiPSセルバンクからNKT細胞へ高純度で大量に分化誘導させる「製造法」の3つで構成されるプラットフォームを有することになりました。このプラットフォームは、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台となり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。 また、2020年6月より国立大学法人千葉大学において頭頸部がんを対象とするiPS-NKTの臨床第Ⅰ相医師主導治験(以下「本治験」)が行われています。 〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法*2です。CAR-T細胞療法とは、がん細胞が細胞表面上に発現する抗原(がんの目印)を認識するキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を、体外でT細胞に遺伝子導入し、CARを導入したCAR-T細胞を培養で増殖させて投与する治療法です。これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、グローバルで承認されてきました。しかし、より多くの方が罹患される固形がんへの展開においては、投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないという課題が明らかになってきました。 この課題を解決するために、BP2301 では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。 2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が行われています。 抗体医薬 抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子*3もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。がん免疫を抑制するアデノシン産生に介入するCD73とCD39をそれぞれ標的とするBP1200とBP1202、免疫細胞に発現し、その抑制に関わるTIM-3を標的とするBP1210のほかに、CD39とTIM-3を共発現する免疫細胞において同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212を開発パイプラインとして有します。 がんワクチン 〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン:BP1209〕 BP1209は、がん細胞由来の遺伝子変異に由来しヒトの免疫システムが高い反応性を示すネオアンチゲンを標的とするがん免疫を、患者1人ひとりに対応して誘導するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*4・プラットフォームです。ワクチンとなるネオアンチゲン・ペプチドを、T細胞へ標的情報を伝える樹状細胞へ送達するのに免疫チェックポイント抗体を用います。同抗体への結合が可能となるよう当社オリジナルのリンカー技術が組み込まれています。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、ネオアンチゲンを標的とするT細胞をペプチド単体よりもはるかに強力に惹起させることを、担がんマウスモデルで証明しました。今後、個別化ネオアンチゲン・ワクチン開発は、BP1209のフォーマットに絞って、臨床応用に向けて準備を進めていきます。 〔がんペプチドワクチンGRN-1201〕GRN-1201は、欧米人に多いHLA*5-A2型の共通抗原ペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。2022年5月に米国で実施してきたGRN-1201の非小細胞肺がんを対象とする免疫チェックポイント抗PD-1抗体併用第Ⅱ相臨床試験の早期中止を決定し、現在は当初の治験対象と試験プロトコルを見直し、開発パートナーと新しく臨床試験を開始する道を模索しています。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況当社は、2022年11月に理研からiPS由来NKT細胞を全世界で独占的に開発・製造・販売する権利を導入するオプション権を行使し、iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許の独占実施権を得ました。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社がんペプチドワクチン5706895日本当社5980303日本NKT細胞由来iPS細胞およびそれ由来のNKT細胞5652783日本理研8945922米国2336303欧州アロNKT細胞を用いた免疫療法およびそのためのT細胞抗原受容体(TCR)遺伝子のα鎖領域が均一なVα-Jαに再構成されている細胞および該細胞由来NKT細胞のバンキング6320473日本理研10813950米国264738欧州 (注)欧州については、欧州特許条約に則った特許出願(EPC出願)によっております。 [用語解説] *1(NKT細胞) ナチュラル・キラー(NK)細胞とT細胞の特徴を併せもち、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割をもつ免疫細胞。がん細胞をT細胞受容体やNK細胞受容体を通して直接殺傷する能力をもつと同時に、T細胞や樹状細胞など他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。 *2(CAR-T細胞療法) Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて投与する治療法。 *3(免疫チェックポイント分子) 免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群のこと。がん免疫においては、過剰な活性化によって自己を攻撃するのを防ぐために存在しているが、発がん過程では、がん細胞が免疫系からの攻撃を回避し増殖するために利用される。 *4(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン) 個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われており、その中にはネオアンチゲンをコードするmRNAを脂質ナノパーティクル(LNP)に格納したmRNAワクチンも含まれる。 *5(HLA) Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれている。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能する。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型がある。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しない。
FY2022|8,325 文字|出典 docID: S100ODEX
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫治療薬の開発では、動かなくなってしまったがん免疫を再び動くようにすること、いったん動いたがん免疫が、任務を終えた後に「元に戻る」仕組みによってブレーキをかけられるのを防ぎ、持続させることが、創薬のターゲットとなります。これに成功すればがんを治療できることは、2018年にノーベル賞を受賞したPD-1という免疫チェックポイント(免疫のブレーキ)を阻害する抗体が、がん治療に革新をもたらしたことによって、立証されてきました。今を生きる私たちは、この治療の革新の恩恵を受ける途上にあり、がんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、未解明の領域がたくさん残されていると考えています。がん免疫にがんの目印を与えるがんワクチン、T細胞というがん免疫そのものを大量に外から投入する細胞医薬、PD-1以外にもいくつもある「免疫が元に戻る仕組み」を一定期間止める抗体医薬、これらが当社の開発している薬です。がんの克服を目指す人に、新たな治療選択肢を提供するために、これからも研究活動を推進してまいります。 (3) 開発パイプライン 当社が優先して進めることを決めたパイプラインは以下のとおりです。このほか、次世代パイプラインの構築を目的として複数の探索・非臨床試験研究を実施しております。 細胞医薬iPS細胞由来再生NKT細胞療法(iPS-NKT)iPS-NKTは、iPS細胞から分化誘導したNKT細胞*1をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬です。多面的な抗腫瘍効果を持つものの血中に僅かしか存在しないため細胞医薬へは適用困難と考えられていたNKT細胞が、iPS細胞技術によって、ドナー健常人の血液由来のiPSマスターセルバンクから大量かつ均質に製造可能になりました。 2020年6月より、世界でも初となるiPS細胞由来再生NKT細胞療法の医師主導治験が、頭頸部がんを対象として国立大学法人千葉大学医学部附属病院で進められています。当社は2018年に、理化学研究所が進める本開発プロジェクトに参画し、共同研究を進めており、iPS-NKTの独占的開発製造販売ライセンスの導入オプション権を有しています。本治験は順調に進んでおり、当社は本治験を支援するとともに、次相企業治験を見据えた製造工程改良を進めています。 iPS-NKTを幅広いがん種・地域へ展開するためのプラットフォームの構築を目指しており、その構成要素となるのが、iPS由来NKT細胞の活動領域を広範かつ排他的に保護する「特許」(日米欧で登録済み)、本治験によって臨床上の安全性と一定の有効性の示唆が期待される「iPSマスターセルバンク」及び現在工程改良に取り組んでいるマスターセルバンクからNKT細胞への「分化誘導法」の3つです。このプラットフォームにキメラ抗原受容体(CAR)導入等の遺伝子改変技術を組み合わせることによって、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬への展開も可能になります。 HER2 CAR-T細胞療法(BP2301)BP2301は、さまざまな固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)療法*2であり、2023年3月期の第1四半期にHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象に、第Ⅰ相医師主導治験が開始されます。数年間を予定する本治験で臨床上の安全性及び薬効が示唆された後は、企業治験となる第Ⅱ相臨床試験へ進みます。 これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は70-90%の奏効率に至ることもあり、優れた臨床効果をもってグローバルで承認されてきました。HER2を標的とするBP2301は、より多くの患者がいる固形がんへとCAR-T細胞療法の適用を拡げる可能性をもっています。しかし、固形がんへの展開には、がん免疫に抑制がかかる腫瘍微小環境においてCAR-T細胞が疲弊し十分に機能を発揮できないという課題がありました。この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、国立大学法人信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。 抗体医薬 抗CD73抗体(BP1200)、抗CD39抗体(BP1202)、抗TIM-3抗体(BP1210)について、「先行開発品と機能的に差別化された抗体の取得」を目指して開発を進めてきました。現在では複数のターゲットに対して先行品と差別化されたリード抗体を有し、担がんマウスモデルでの有効性を確認し、非臨床コンセプト証明に至っています。今後はこれらの非臨床試験を進めるとともに、まだ非臨床コンセプト証明に至っていない抗体をその段階へ到達させます。 また、これらの1つの標的抗原に対する抗体を基に、免疫抑制性の腫瘍微小環境でより高い抗腫瘍免疫を発揮させることを目的として、2つの標的抗原に対する二重特異性を付与したバイスペシフィック抗体を作製し、付加価値を高めていく展開を想定しています。他社先行抗体とスペックにおいて差別化されたシングル標的抗体の抗CD39抗体(BP1202)、抗TIM-3抗体(BP1210)に、BP1210 開発過程において樹立した二重特異性抗体化技術を掛け合わせることにより、抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体(BP1212)を創出しました。 がんワクチン 免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン(BP1209)BP1209 は、腫瘍特異的で高い免疫原性を持つネオアンチゲンを標的にした抗腫瘍免疫を、患者一人ひとりに対応して惹起するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*3・プラットフォームです。これまで開発を進めてきたBP1101のモダリティ(医薬品形態)はペプチドワクチンであるのに対し、BP1209 は免疫チェックポイント抗体とネオアンチゲン・ペプチドの複合体ワクチンです。BP1101に免疫チェックポイント抗体への結合が可能となる当社オリジナルのリンカー技術を付加し、免疫チェックポイント抗体がワクチン抗原を樹状細胞へ送達するとともに、ワクチンによる腫瘍特異的T細胞誘導を促進する、新規の薬効メカニズムを織り込みました。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、腫瘍抗原を標的とする細胞性免疫をBP1101よりもはるかに強力に惹起させることを、担癌マウスモデルで証明しました。 今後、個別化ネオアンチゲン・ワクチン開発は、BP1209のフォーマットに絞って、臨床応用に向けて準備を進めていきます。 がんペプチドワクチン(GRN-1201) GRN-1201は、欧米人に多いHLA-A2型の共通抗原ペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。米国で、非小細胞肺がんの一次治療患者を対象に、免疫チェックポイント阻害抗体ペムブロリズマブとの併用による第Ⅱ相臨床試験を実施してきました。一定の症例数で中間評価を行い、併用療法の安全性とペムブロリズマブ単剤を上回ることが期待される臨床効果が示唆されたら、そのままライセンスアウトに移行する計画でした。 しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、米国で実施する臨床試験は、特に当事業年度後半から症例登録において影響を受けており、想定よりも長い試験期間がかかりました。この間に、同対象疾患における標準治療も免疫チェックポイント抗体と化学療法剤の併用療法が大いにシェアを占めるように変遷し、症例登録競争はますます激しくなる見通しです。 一方で、オープンラベル*4の臨床試験で、かつこれまで長期間かかっていることにより、本試験の主要評価項目であるORR*5(Objective Response Rate: 奏効率)の妥当性や、より長期的な指標となるPFS*6(Progression Free Survival: 無増悪生存期間)やOS*7(Overall Survival: 全生存期間)といった本来がんワクチンが存在感を示すことができる臨床データも見えてきました。 1.GRN-1201の米国第Ⅱ相臨床試験の早期中止の決定当社は、2022年5月12日開催の取締役会で、米国で実施してきたGRN-1201の非小細胞肺がんを対象とする免疫チェックポイント抗PD-1抗体併用第Ⅱ相臨床試験(以下、「本試験」)を計画より早く切り上げることを決議しました。 本試験は64例の症例登録を計画しておりました。しかし、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が深刻化すると、医療機関における急性期医療・感染症外来への医療資源のシフト、患者側の受診抑制等が起こり、多くの臨床試験が滞りました。加えて、時間の経過とともに、試験開始当初は現在の治験対象(非小細胞肺がんで、50%以上のがん細胞でPD-L1が発現する患者: 約2割と推定される)では抗PD-1抗体のぺムブロリズマブ単剤投与が標準療法であったのに対し、現時点ではぺムブロリズマブと化学療法剤の併用が標準療法に加わり、むしろ主流を占めるようになりました。その結果、患者登録が当初計画に比べてかなりの遅れが生じており、2022年5月時点で、本試験の累計登録症例数は20例にとどまり、当初計画の約3割に過ぎない状況となっております。 一方で、本試験が長期に渡ったことから、オープンラベル試験として臨床成績がタイムリーに得られる中で、当初設計した試験プロトコルでは、本剤の適切な評価が難しいことが徐々に明らかになってきました。 ・主要評価項目であるORRでは、ペムブロリズマブ単剤と同程度であるが、臨床効果を見るのにより適切なPFSやOSではペムブロリズマブ単剤を上回ることが示唆されること ・奏功例*8以外でも、総合効果*9で安定(SD: Stable Disease) *10と評価された3例はいずれも生存期間が70 週以上に達しており、臨床効果の持続傾向が示唆されること 以上より、主要評価項目としては、ORRではなく、OSまたはPFSが適切と考えられます。 また、現在の治験対象患者の標準治療において、投与適格者をPD-L1発現率50%以上に限定しない化学療法剤併用が主流になってきている中で、もはやGRN-1201においてもこれに限定する必要はなくなってきています。 以上より、開発方針としては、このまま現在の治験対象と試験プロトコルで継続するよりも、評価項目、適格要件を再検討して、仕切り直す方が適切と判断しました。 2.その他、見直しを行ったパイプライン群 新型コロナウイルス感染症の世界的流行の長期化による臨床試験の停滞はその後の開発に爪跡を残しています。開発領域によっては、その間に発表された先行開発品の臨床試験成績がどれも振るわず、その特定の標的や作用メカニズムに依拠する創薬の可能性そのものに疑義が生じるようになったものもあります。さらに、開発投資が先行する創薬バイオベンチャーにとって重要な意味をなす資金調達環境が、特に2021年後半からグローバルで悪化しています。当社は、かかる環境に適合するために、優先して資金を投入し開発を進めるパイプラインの順位付けを見直し、整理を行いました。 ・TLR9アゴニストLNP製剤(BP1401) 強い免疫抑制下にある腫瘍(腫瘍微小環境)を、多くの免疫細胞が浸潤し抗腫瘍免疫が活性化している環境へと変えること、いわゆる“Cold Tumor”を“Hot Tumor”へと変えることをコンセプトとするTLR9アゴニスト製剤は、臨床開発段階にある先行品が数多くありました。それらはすべて、腫瘍にいるTLR9発現樹状細胞(pDC)に送達されるよう、腫瘍に直接投与する腫瘍局所投与を投与経路としています。BP1401は「薬効が示され承認へと向かう先行開発品を、腫瘍への集積の問題があるため少し薬効は落ちるかもしれないものの利便性が高い全身投与(静脈投与経路)が可能なLNP(脂質ナノパーティクル) 製剤をもって置き換える」ことを開発コンセプトとして、2019年末から国立大学法人大阪大学の青枝大貴特任准教授らのもつ技術を導入して開発に取り組んできました。これまでの大阪大学との共同研究で、担がんマウスモデルにおいて腫瘍局所投与に遜色ない腫瘍縮小効果を確認し、LNP製剤の安定性においても確認に成功しております。 しかし、2020年から2021年にかけて発表された腫瘍局所投与の先行臨床開発品の臨床試験成績が総じて不振で、有望な早期臨床試験結果をもって次相臨床試験へと進んでいるものがなくなってしまい、もはや当初想定した開発コンセプトが成立しなくなりました。 TLR9アゴニストを用いた創薬の難しさが浮き彫りとなった現在、パイプラインに開発資金投入の優先順位を付けるのであれば、BP1401については下げざるを得ないと判断し、パイプライン表からは外すことに致しました。 ・抗HLA-DR抗体(BP1206)、抗PVR抗体(BP1211) 標的分子の作用機序の複雑さから、抗体による阻害効果が他の免疫調整機構と免疫細胞へ影響が出ることと、その解決に時間を要することが開発を進めるにしたがって分かってきました。よって、CD73 (BP1200)、CD39 (BP1202) や TIM-3 (BP1210) といった臨床上の有用性の解明が進んでいる標的分子に対する抗体開発を優先し、BP1206とBP1211に関してもパイプライン表から外すことに致しました。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況知的財産は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。なお、GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原4035845日本当社4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社がんペプチドワクチン2591799欧州(注)当社5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] *1(NKT細胞) がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないHLA陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。 *2(CAR-T細胞療法) Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて投与する治療法。 *3(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン) 個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われている。 *4(オープンラベル) 臨床試験を行う際に、患者がどのような治療を受けているか、医師、患者、スタッフがわかっている試験法。 *5(ORR Objective Response Rate:奏効率)あるがん治療法を患者に用いた際、その治療を実施した後に腫瘍が縮小もしくは消滅した患者の割合を示したもの。 *6(PFS Progression Free Survival: 無増悪生存期間)治療中あるいは治療後にがんが進行せず安定した状態である期間。 *7(0S Overall Survival: 全生存期間)致死的疾患の臨床試験において、患者の登録から死亡前の最終生存確認日までの期間。療中あるいは治療後にがんが進行せず安定した状態である期間。 *8(奏功例)腫瘍が縮小もしくは消滅した患者。 *9(総合評価)腫瘍縮小効果の判定法。 *10(安定)腫瘍縮小効果の判定: 完全寛解(PR: Complete Response)、 部分奏功(PR: Partial Response)、 安定(SD: Stable Disease)、進行(PD: Progressive Disease、評価不能(NE : Not Evaluable)のうちの1つで、腫瘍縮小や腫瘍増大を認めない場合をいう。
FY2021|6,757 文字|出典 docID: S100LQ6N
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 当社は「一人ひとりが、自らの力で、がんを克服する世界を実現する」ことを目指し、新規のがん免疫治療薬の開発を行っています。 がん免疫療法は、がん細胞に対する免疫反応(がん免疫)を惹起または増強させ、がん免疫によりがん細胞を殺傷し、腫瘍縮小、がんの進行・転移抑制、再発予防を図るものです。これまでも、がん治療には約50年に一度生存率を大きく改善する治療法の革新が起こってきましたが、がん免疫治療は、近年において、外科手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療」としての地位を確立しました。特に、免疫チェックポイント阻害抗体※1は、多様ながん種、がんのステージにおいて標準療法に組み込まれ、がん治療を大きく変えました。一方で、今ある免疫チェックポイント阻害抗体単剤で治療効果が出せる領域にも限りがあることも分かってきており、他の新しいがん免疫治療薬を組み合わせる複合的がん免疫療法や、欧米に続き本邦でも承認されたCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)療法※2に代表される細胞医薬という新しいモダリティ(医薬品形態)も出て来ています。 がん免疫治療薬は、人がもともと備え持つ、がんを排除する免疫システム=がん免疫を適正に「成立」させることによってがんの治療を図るものです。 がん免疫の成立を妨げる要因(がん免疫サイクルが滞る箇所)は、がん種、がんのステージ、個人差等によって、異なります。当社はパイプラインにおいて、複数のメカニズム/モダリティを有することによって、その滞りの解消に適した方法を選択することを可能にしています。 ■当社の事業領域 (3) 開発パイプライン当社が開発を手掛ける新規がん免疫治療薬のモダリティ(医薬品形態)は、がんワクチン、細胞、抗体に及んでいます。がんペプチド※3ワクチンGRN-1201が最も開発ステージにおいて進んでおり、現在、非小細胞肺がんを対象に本邦初の免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を米国で進めています。それに、頭頸部がんを対象とする臨床試験が始まったiPS細胞由来再生NKT細胞※4療法(導入オプションを保有)が続き、その他各種固形がんを対象とする複数の探索・非臨床試験ステージのパイプラインを有します。 GRN-1201(がんペプチドワクチン)GRN-1201は、欧米人に多いHLA※5-A2型の腫瘍関連抗原ペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。より多くの抗腫瘍効果をもつT細胞(リンパ球の一種で、抗腫瘍活性や抗腫瘍免疫促進機能をもつ)を誘導できるよう複数抗原をワクチンとして投与するところに特徴があります。米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象に第一相臨床試験を実施し、安全性と免疫誘導が示され、現在は同じく米国で、非小細胞肺がんの、免疫細胞にダメージを与える化学療法をいくつも経た患者でなく一次治療(ファースト・ライン)の患者を対象に、免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施しています。これまでのがんワクチンの開発では、ワクチンで誘導された活性化T細胞が、免疫抑制がかかる腫瘍局所に浸潤したとき「疲弊」(無機能化)してしまうことが、技術課題として挙げられてきました。そこで、本第二相臨床試験では、ペンブロリズマブをワクチンと併用することで免疫抑制を一部解除し、T細胞が本来の抗腫瘍効果を発揮できるようになることを想定しています。一定の累積症例数に至ったところで、中間評価を行い、目標とする奏効率をクリアしていれば、さらに症例数を積み重ねていきます。米国における新型コロナウイルス感染状況を受けて、臨床試験は停止や中止をすることなく継続できていますが、症例登録には時間がかかっています。 BP1101・BP1209(完全個別化ネオアンチゲンワクチン)一人一人で全く異なるがん特有の遺伝子変異由来の抗原(ネオアンチゲン※6)に対するがん免疫を誘導する完全個別化ネオアンチゲンワクチン※7です。がん遺伝子変異量(ネオアンチゲンの量)と免疫チェックポイント抗体療法の奏効が相関することから、同抗体によりネオアンチゲンをがんの目印として認識するT細胞の抗腫瘍効果が高まると考えられています。このネオアンチゲンは患者一人ひとりで全く異なるため、一人ひとりに個別のネオアンチゲンワクチンを製造し投与する完全個別化治療となり、一定の患者層に共通した薬剤を大量製造することを前提とする従来の医薬品とは異なる開発法が求められます。BP1209は、BP1101の次世代型で、投与されたネオアンチゲンワクチンが体内で効果的にT細胞を活性化できるように、樹状細胞※8とT細胞が会合するリンパ節へのネオアンチゲンワクチン送達能を高めた、樹状細胞マーカー抗体結合ワクチンです。現在探索研究を進めています。 BP1401(TLR9アゴニスト)BP1401は、免疫抑制が強くかかる腫瘍微小環境において抗腫瘍効果を持つT細胞が能動的に賦活化される環境を整えるために、樹状細胞の受容体TLR9を刺激するTLR9アゴニストです。がん細胞を攻撃するT細胞が腫瘍局所に存在しない“Cold Tumor”を、それらが多く存在する“Hot Tumor”へと転換することを図るものです。BP1401は、このTLR9アゴニストの有効成分である核酸を脂質に織り込む脂質製剤とすることで安定性を高め、標的とするTLR9発現樹状細胞への核酸のデリバリーを高めています。 iPS-NKT(iPS細胞由来再生NKT細胞療法)iPS-NKTは、iPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用い、固形がんを対象とする新規の他家細胞医薬です。NKT細胞は、多面的な抗腫瘍効果(直接傷害/自然免疫の活性化/獲得免疫の誘導/免疫抑制環境の改善)を持つものの血中に僅かしか存在しないため、従来の培養法では細胞療法として機能を保った細胞を十分量確保できないという課題がありました。そこで、NKT細胞を一旦iPS細胞化することによってiPS細胞ならではの高い増殖能を付与し、そこからNKT細胞に再び分化誘導する技術の開発に成功し、これをがん免疫細胞療法に用いられるようになりました。iPS細胞技術は、現在の患者さん自身の血液から製造開始する自家中心の細胞療法の世界に、ドナー健常人の血液からマスターiPSセルバンクを作製し、このマスターセルバンクから均質な細胞を大量製造する他家細胞療法を可能にしました。 2020年6月から頭頸部がんを対象として、世界でも初となるiPS細胞由来再生NKT細胞療法の医師主導治験が開始されました。固形がんを対象とするマスターセルバンク型の免疫細胞療法には大手製薬企業も参入を表明していますが、臨床試験に進むに当たって先行組の一つとなっております。当社は2018年に、理化学研究所が進める本開発プロジェクトに参画し、共同研究を進めており、iPS-NKTの独占的開発製造販売ライセンスの導入オプション権を有しています。当社は医師主導治験を後押しするとともに、医師主導治験に続く企業治験を見据えた製造工程改良を進めています。 BP2301(HER2 CAR-T)BP2301は、様々な固形がんで高発現しているHER2抗原を認識するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(HER2 CAR-T細胞)療法です。血液がんで70-90%の奏効率に至ることもあり、優れた臨床効果を示し承認されたCAR-T療法を、より多くの患者がいる固形がんへと適応を拡げることを目指しています。固形がんへの展開には、がん免疫に抑制がかかる腫瘍微小環境においてCAR-T細胞が疲弊し十分に機能を発揮できないという課題があります。この課題を解決するために、当社は信州大学の中沢洋三教授及び京都府立医科大学の柳生茂希助教らと新規CAR-T細胞培養法を共同開発し、これを中沢教授の非ウイルス遺伝子導入法と組み合わせることにより、若いメモリーフェノタイプの、体内で長期生存可能で、したがって持続的な抗腫瘍効果発現が期待されるCAR-T細胞の製造に成功しました。最初の治験対象がん種として小児がんの一つである骨・軟部肉腫を対象とする臨床試験開始に向けて準備を進めています。 抗体医薬BP1200(抗CD73抗体)、BP1210(抗TIM-3抗体)等がん免疫を成立させることを目指した抗体を複数開発しています。T細胞ががん細胞を殺傷する「がん免疫」の成立を妨げる様々な要因が腫瘍局所には存在しますが、その要因のトリガーとなる免疫調整因子の代表的なものがPD-1/PD-L1です。ニボルマブやペンブロリズマブといった抗PD-1抗体は、T細胞疲弊を促す免疫チェックポイントPD-1を抗体で阻害することによってがん免疫の成立が可能となることを、科学的に証明しました。抗PD-1抗体はがん治療の革新をもたらしましたが、それでも奏効率はがん種により10-40%であり、残りの抗PD-1抗体で効果が得られない60-90%の患者においても効果が得られる次世代免疫調整因子抗体となることを目指して開発を進めています。現在複数候補の探索研究を進めています。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況知的財産は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。なお、GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原4097178日本当社4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社がんペプチドワクチン2591799欧州(注)当社5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] ※1(免疫チェックポイント阻害抗体)がん細胞がもつ、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を介して免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイント分子を阻害してブレーキを解除し、がん細胞に対する免疫反応を高める抗体医薬品。 ※2(CAR-T療法)Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法がん細胞が発現する抗原に対する抗体を改変したキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、がん細胞を抗原を目印として認識するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞を培養で増やして投与する治療法。 ※3(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※4(NKT細胞)がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないHLA陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。 ※5(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれている。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能する。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型がある。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しない。 ※6(ネオアンチゲン)がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原のこと。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しない。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されている。 ※7(完全個別化ネオアンチゲンワクチン)個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外で臨床試験が行われている。 ※8(樹状細胞)枝状、樹状の形態をした突起を有する細胞であり、抗原提示細胞としての機能を有する免疫細胞の一種。体内に侵入した細菌やウイルスなどの抗原を細胞内に取り込み消化し、免疫情報をリンパ球に伝える。がんにおいては、細胞傷害性T細胞にがん抗原の情報を伝達して、がん細胞への攻撃などの免疫反応を開始させる。
FY2020|7,957 文字|出典 docID: S100J2Q6
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、臨床試験段階にあるパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかります。よって、開発投資が先行し、後期段階になるほど要する資金が大きくなります。投資を早期に回収する仕組みを作らなければベンチャーで創薬を行うことは難しいですが、現在は承認薬に至ったシードのうち、直近ではベンチャーが創製するシードの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっていることからもわかるように、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャー創製シーズを導入する仕組みが成立しています。 この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々なバリエーションがあります。 当社は、様々な開発ステージにあるパイプラインの開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 当社は「一人ひとりが、自らの力で、がんを克服する世界を実現する」ことを目指し、新規のがん免疫治療薬の開発を行っています。 がん免疫療法は、がん細胞に対する免疫反応(がん免疫)を惹起または増強させ、がん免疫によりがん細胞を殺傷し、腫瘍縮小、がんの進行・転移抑制、再発予防を図るものです。がん治療には約50年に一度生存率を大きく改善する治療法の革新が起こってきましたが、がん免疫治療は、近年において、外科手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療」としての地位を確立しました。特に、免疫チェックポイント阻害抗体※1は、多様ながん種、がんのステージにおいて標準療法に組み込まれ、がん治療を大きく変えました。一方で、今ある免疫チェックポイント阻害抗体単剤で治療効果が出せる領域にも限りがあることも分かってきており、他の新しいがん免疫治療薬を組み合わせる複合的がん免疫療法や、欧米に続き本邦でも承認されたCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)療法※2に代表される細胞医薬という新しいモダリティ(医薬品形態)も出て来ています。 がん免疫治療薬は、人がもともと備え持つ、がんを排除する免疫システム=がん免疫を適正に「成立」させることによってがんの治療を図るものです。 がん免疫の成立を妨げる要因(がん免疫サイクルが滞る箇所)は、がん種、がんのステージ、個人差等によって、異なります。当社はパイプラインにおいて、複数のメカニズム/モダリティを有することによって、その滞りの解消に適した法を選択することを可能にしています。 ■当社の事業領域 (3) 開発パイプライン当社が開発を手掛ける新規がん免疫治療薬のモダリティ(医薬品形態)は、がんワクチン、細胞、抗体に及んでいます。4種抗原ペプチド※3で構成されるGRN-1201が最も開発ステージが進んでおり、現在、非小細胞肺がんを対象に本邦初の免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を米国で進めています。それに、まもなく頭頸部がんを対象とする臨床試験が始まるiPS細胞由来再生NKT細胞※4療法(導入オプションを取得済み)が続き、その他各種固形がんを対象とする複数の探索・非臨床試験ステージのパイプラインを有します。 GRN-1201(がんペプチドワクチン)・米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする単剤第一相臨床試験及び非小細胞肺がんを対象とした免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施中 GRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA※5(HLA-A2)に結合するペプチド4種で構成される米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象に第一相臨床試験を実施し、安全性と免疫誘導が示され、現在は同じく米国で非小細胞肺がんを対象に免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施しています。 がん細胞では、がん細胞特有のペプチドがHLAと結合して表出しており、それを認識する細胞傷害性T細胞(CTL※6)はがん細胞を特異的に直接攻撃します。このため、CTLはがん免疫において最も重要な免疫細胞の一つとされています。GRN-1201を構成するペプチドは、このCTLに認識される生体内のペプチドと同じアミノ酸配列をもつ化学合成ペプチドであり、このペプチドを投与することにより、これをがんの目印として認識するCTLを誘導・活性化し、活性化したCTLが生体内で同じペプチドを表出させているがん細胞を攻撃・傷害します。元来、患者がん細胞由来のcDNAライブラリ(がん細胞内のmRNA※7から逆転写酵素※8を用いて合成された相補的DNAのライブラリ)と、がん細胞に特異的に反応する患者T細胞株とを使ってスクリーニングされたもので、非臨床試験と久留米大学における臨床研究を通して、免疫原性と安全性を示唆するデータが得られています。ペプチドが結合するHLAには型があり、個人差・人種差があります。日本人に最も多いのはHLA-A24型で全体の60%を占めますが、欧米ではHLA-A2型が最も多く全体の50%を占めており、日本人ではHLA-A2型は40%といわれています。GRN-1201はグローバルで患者数の多いHLA-A2型に結合するペプチドで構成され、欧米での開発を先行させています。がんペプチドワクチンは、T細胞にがんの目印を与えてがん細胞を排除するよう誘導するものですが、腫瘍局所はそのようなT細胞の機能を抑え込む免疫抑制が働く環境にあります。一方で、現在米国の第二相臨床試験で併用している免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブは、腫瘍局所においてT細胞の活性化を抑制するがん細胞側からの攻撃抑制シグナルをブロックします。すなわち、免疫チェックポイント阻害抗体は腫瘍局所に既に存在するT細胞を活性化する機能を有します。免疫チェックポイント阻害抗体はがん治療に革新をもたらし、様々ながん種で治療効果を示しており、がん種によりますが、単剤での奏効率は10-40%程度と言われております。現在は、治療効果の得られない患者が治療効果を得られるように、既存の化学療法や分子標的薬との併用に加えて、互いの作用メカニズムを補完して免疫サイクル(免疫機構によりがん細胞が認識され殺傷されるまでの一連の流れ)の複数のステップに働きかける作用を持つがん免疫治療薬同士を併用したいわゆる複合的がん免疫療法が盛んに検討されております。当社のがんペプチドワクチンGRN-1201と免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブの併用も、このがん免疫療法の次のテーマである複合的がん免疫療法の一つなることを期待して臨床開発を進めています。 iPS-NKT(iPS細胞由来再生NKT細胞療法)・多面的な抗腫瘍効果を有する免疫細胞(直接傷害/自然免疫の活性化/獲得免疫の誘導/免疫抑制環境の改善)・理化学研究所との導入オプション付共同研究を実施中早期の免疫応答に関与しがん細胞を直接殺傷するとともに、自然免疫を増強するのみならず、自然免疫から獲得免疫への橋渡し役も担い、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもちながら、体内には微量(末梢血リンパ球のうち0.1%以下)にしか存在しない免疫細胞であるNKT細胞を、iPS細胞の高い増殖性を活かして必要量を確保し、がん免疫治療として用います。 欧米に続き本邦でも昨年承認されたCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)に代表される細胞医薬の次のテーマと言える、血液がん対象から固形がん対象への拡張、ならびにエフェクター細胞の自家(都度特注となり製造原価が高い)から他家(健常人由来で作り置きと診断後即時投与を可能にする)への移行を、iPS細胞技術のがん免疫療法に応用することによって実現しようとするものです。 当社は、2018年3月に、国立研究開発法人理化学研究所統合生命医科学研究センターが進める細胞医薬の技術開発と臨床応用に向けたプロジェクトに参画しました。本プロジェクトは、理化学研究所が中心となって日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラム疾患・組織別実用化研究拠点(拠点B)に採択された「NKT細胞再生によるがん免疫治療技術開発拠点」プロジェクト及び理研創薬・医療技術基盤プログラムのプロジェクトとして進められているもので、頭頸部がんを対象とする医師主導治験を予定しています。当社は、理化学研究所からiPS-NKT細胞療法の独占的開発製造販売ライセンスのオプション権を取得しており、世界でも初となるiPS-NKT細胞療法の臨床応用実現にむけ、本医師主導治験を全面的に後押しいたします。 BP1101(ネオアンチゲン※9)一人一人で全く異なるがん特有の遺伝子変異由来の抗原(ネオアンチゲン)に対するがん免疫を誘導する完全個別化ネオアンチゲンワクチン※10です。がん遺伝子変異量(ネオアンチゲンの量)と免疫チェックポイント抗体療法の奏効が相関することから、ネオアンチゲンががん免疫の標的であると考えられています。 BP2301(HER2 CAR-T)BP2301は、様々な固形がんで高発現しているHER2抗原を認識するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(HER2 CAR-T細胞)療法です。血液がんで優れた臨床効果を示し承認されたCAR-T療法は、より多くの患者がいる固形がんへと適応を拡げるにあたって、がん免疫に抑制がかかる腫瘍微小環境において疲弊し十分に機能を発揮できないという課題がありました。この課題を乗り越えるために、当社は中沢教授らと新規CAR-T細胞培養法を共同開発し、これを中沢教授の非ウイルス遺伝子導入法と組み合わせることにより、疲弊していない若いメモリーフェノタイプのまま体内で長期生存可能なCAR-T細胞の製造に成功しました。これにより、CAR-T細胞移入後の持続的な抗腫瘍効果発現が期待されます。 BP1401(TLR9アゴニスト)BP1401は、抗腫瘍効果を持つT細胞が能動的に賦活化される環境を整えるために樹状細胞の受容体TLR9を刺激するTLR9アゴニストです。BP1401による刺激はサイトカインシグナルを介して、賦活化されたT細胞をはじめとする免疫細胞が腫瘍局所に存在していない、いわゆる“Cold tumor”の状態を、それらが多く存在する“Hot tumor”へと転換することを図るものです。これにより、抗腫瘍免疫が効果的に働くことが期待されます。BP1401は、このTLR9アゴニストの有効成分である核酸を脂質に織り込む脂質製剤とすることで安定性を高め、標的とするTLR9発現樹状細胞への核酸のデリバリーを高めています。 BP1200(抗CD73抗体)CD73を標的とする新規腫瘍環境改善・免疫活性化抗体です。腫瘍内でのアデノシン産生は、T細胞の疲弊と抑制を引き起こし、抗腫瘍免疫活性を低下させます。CD73は多くの腫瘍で高発現し、予後不良を引き起こすことも報告されています。BP1200はアデノシン産生酵素の機能を阻害します。 BP1210(抗TIM-3抗体)世界各国の多様ながん種、ステージで医薬品承認が進む免疫チェックポイントPD-1/PD-L1阻害抗体に続く、免疫チェックポイントTIM-3を阻害する新規抗体です。BP1210は、細胞傷害性T細胞に発現するTIM-3を阻害することにより、TIM-3がもたらす細胞疲弊を抑制し、抗腫瘍免疫活性を亢進します。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況知的財産は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。なお、GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原7465452米国当社1207199欧州(注)2381348カナダ4051602日本4097178日本4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社がんペプチドワクチン2591799欧州(注)当社5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。[用語解説] ※1(免疫チェックポイント阻害抗体)がん細胞がもつ、免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を阻害してブレーキを解除する抗体医薬品を指す。 ※2(CAR-T)Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法ある特定のがんに対する、キメラ抗原受容体の遺伝子を患者のT細胞という免疫細胞に導入し、その遺伝子導入されたT細胞を体外で増やして患者に戻すという治療法。ヒト白血球抗原(HLA)の型に依存せず、多くの患者に適用することができるといった特徴がある。 ※3(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※4(NKT細胞)NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインといわれる物質を産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するCTLを増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないMHC陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。 ※5(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。 ※6(CTL:細胞傷害性T細胞)CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出することで殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。 ※7(RNA)リボ核酸(Ribonucleic Acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。 ※8(逆転写酵素)RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。 ※9(ネオアンチゲン)がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原を指します。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しません。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されています。 ※10(完全個別化ワクチン)個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外で臨床試験が行われている。
FY2019|6,935 文字|出典 docID: S100G377
3 【事業の内容】 当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、臨床試験段階にあるパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬候補品を自社創製、もしくは外部から開発初期の段階で導入し原則として探索研究から早期臨床試験までを手掛け、後期臨床試験以降は国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかりますが、この事業モデルでは、各国の当局の製造販売承認を得て上市される前の開発段階から、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合となる販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。製薬会社へライセンス後も開発協力金を得て開発を継続することもあります。 このような開発プロジェクトを段階的に複数並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫療法は、がん細胞に対する免疫反応(がん免疫)を惹起または増強させ、がん免疫によりがん細胞を殺傷し、腫瘍縮小、がんの進行・転移抑制、再発予防を図るものです。近年において、外科手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4のがん治療法」としての地位が確立されました。 特に、免疫チェックポイント阻害抗体※1は、標準療法に組み込まれ、がん治療を大きく変えつつあります。一方で、今ある免疫チェックポイント阻害抗体単剤で治療効果が出せる領域にも限りがあることも分かってきており、他の新しいがん免疫治療薬を組み合わせる複合的がん免疫療法や、欧米に続き本邦でも承認されたCAR-T※2(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法)に代表される細胞医薬という新しいモダリティ(医薬品形態)も出て来ています。 ■当社の事業領域 免疫サイクル(免疫機構ががん細胞を殺傷する仕組み)と各プロセスで働きかける当社のがん免疫治療薬パイプライン (3) 開発パイプライン当社が現在開発を手掛ける新規がん免疫治療薬候補のモダリティ(医薬品形態)は、がんペプチド※3ワクチン、細胞医薬、抗体医薬に及び、それぞれHLA※4-A2拘束性がんペプチドワクチンGRN-1201とネオアンチゲン※5をターゲットとする完全個別化ネオアンチゲンワクチン、iPS細胞由来再生NKT細胞※6療法(導入オプションを取得済み)、各種固形がんを対象とする複数の免疫調整因子に対する抗体を開発パイプラインとして有します。 GRN-1201 (メラノーマ/非小細胞肺がん)・ グローバル向けがんペプチドワクチン・ 米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする単剤第一相臨床試験及び非小細胞肺がんを対象とした免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施中 GRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA(HLA-A2)に結合するペプチド4種で構成される米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象に第一相臨床試験を実施し、安全性と免疫誘導が示され、現在は同じく米国で非小細胞肺がんを対象に免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施しています。 がん細胞では、がん細胞特有のペプチドがHLAと結合して表出しており、それを認識する細胞傷害性T細胞(CTL※7)はがん細胞を特異的に直接攻撃します。このため、CTLはがん免疫において最も重要な免疫細胞の一つとされています。GRN-1201を構成するペプチドは、このCTLに認識される生体内のペプチドと同じアミノ酸配列をもつ化学合成ペプチドであり、このペプチドを投与することにより、これをがんの目印として認識するCTLを誘導・活性化し、活性化したCTLが生体内で同じペプチドを表出させているがん細胞を攻撃・傷害します。元来、患者がん細胞由来のcDNAライブラリ(がん細胞内のmRNA※8から逆転写酵素※9を用いて合成された相補的DNAのライブラリ)と、がん細胞に特異的に反応する患者T細胞株とを使ってスクリーニングされたもので、非臨床試験と久留米大学における臨床研究を通して、免疫原性と安全性を示唆するデータが得られています。 ペプチドが結合するHLAには型があり、個人差・人種差があります。日本人に最も多いのはHLA-A24型で全体の60%を占めますが、欧米ではHLA-A2型が最も多く全体の50%を占めており、日本人ではHLA-A2型は40%といわれています。GRN-1201はグローバルで患者数の多いHLA-A2型に結合するペプチドで構成され、欧米での開発を先行させています。 がんペプチドワクチンは、T細胞にがんの目印を与えてがん細胞を排除するよう誘導するものですが、腫瘍局所はそのようなT細胞の機能を抑え込む免疫抑制が働く環境にあります。一方で、現在米国の第二相臨床試験で併用している免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブは、腫瘍局所においてT細胞の活性化を抑制するがん細胞側からの攻撃抑制シグナルをブロックします。すなわち、免疫チェックポイント阻害抗体は腫瘍局所に既に存在するT細胞を活性化する機能を有します。免疫チェックポイント阻害抗体はがん治療に革新をもたらし、様々ながん種で治療効果を示しており、がん種によりますが、単剤での奏効率は10-40%程度と言われております。現在は、治療効果の得られない患者が治療効果を得られるように、既存の化学療法や分子標的薬との併用に加えて、互いの作用メカニズムを補完して免疫サイクル(免疫機構によりがん細胞が認識され殺傷されるまでの一連の流れ)の複数のステップに働きかける作用を持つがん免疫治療薬同士を併用したいわゆる複合的がん免疫療法が盛んに検討されております。当社のがんペプチドワクチンGRN-1201と免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブの併用も、このがん免疫療法の次のテーマである複合的がん免疫療法の一つなることを期待して臨床開発を進めています。 ■GRN-1201と免疫チェックポイント阻害抗体の併用メカニズムiPS-NKT (頭頸部がん)・iPS細胞由来再生NKT細胞療法・多面的な抗腫瘍効果を有する免疫細胞(直接傷害/自然免疫の活性化/獲得免疫の誘導/免疫抑制環境の改善)・理化学研究所との導入オプション付共同研究を実施中 欧米に続き本邦でも直近承認されたCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)に代表される細胞医薬の次のテーマと言える、血液がん対象から固形がん対象への拡張、ならびにエフェクター細胞の自家(都度特注となり製造原価が高い)から他家(健常人由来で作り置きと診断後即時投与を可能にする)への移行を、iPS細胞技術のがん免疫療法に応用することによって実現しようとするものです。早期の免疫応答に関与しがん細胞を直接殺傷するとともに、自然免疫を増強するのみならず、自然免疫から獲得免疫への橋渡し役も担い、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもちながら、体内には微量(末梢血リンパ球のうち0.1%以下)にしか存在しない免疫細胞であるNKT細胞を、iPS細胞の高い増殖性を活かして必要量を確保し、がん免疫治療として用います。 当社は、2018年3月に、国立研究開発法人理化学研究所統合生命医科学研究センターが進める細胞医薬の技術開発と臨床応用に向けたプロジェクトに参画しました。本プロジェクトは、理化学研究所が中心となって日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラム疾患・組織別実用化研究拠点(拠点B)に採択された「NKT細胞再生によるがん免疫治療技術開発拠点」プロジェクト及び理研創薬・医療技術基盤プログラムのプロジェクトとして進められているもので、頭頸部がんを対象とする医師主導治験が2019年度中をめどに開始される計画です。当社は、理化学研究所からiPS-NKT細胞療法の独占的開発製造販売ライセンスのオプション権を取得しており、世界でも初となるiPS-NKT細胞療法の臨床応用実現にむけ、本医師主導治験を全面的に後押しいたします。 ■iPS-NKTの特徴 その他 各研究機関(国立研究開発法人 国立がん研究センター、国立大学法人 東京大学、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター及び国立大学法人 三重大学)等との共同研究でネオアンチゲンをターゲットとする完全個別化ネオアンチゲンワクチン※10の創製を目指してまいります。本プロジェクトは、患者ごとに異なるネオアンチゲンを、一人ひとりに合わせてがん免疫療法として用いる完全個別対応型がん治療薬の創製を目指しております。個々の患者の免疫応答、がん細胞、がん組織の環境などの特性を解析したうえで、個々の患者に最適ながん免疫療法を提供する Personalized Medicine(個別化医療)の試みが始まっておりますが、本プロジェクトによって、できるだけ一つで多くの人に使える汎用品としての医薬“One-size-fits-all”から、個人差に対応する完全個別化を追求する次世代の医薬を目指してまいります。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況について① 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 ② 知的財産権の状況知的財産は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。なお、GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原 7465452米国当社 1207199欧州(注)2381348カナダ4051602日本4097178日本4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社新規な腫瘍抗原タンパク質SART-3及びその腫瘍抗原ペプチド4436977日本当社4904384日本7541428米国7968676米国8097697米国8563684米国1116791欧州(注)2340888カナダ99812596.2中国660367韓国がんペプチドワクチン(出願中)米国当社2591799欧州(注)5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] ※1(免疫チェックポイント阻害抗体)がん細胞がもつ、免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を阻害してブレーキを解除する抗体医薬品を指します。 ※2(CAR-T)Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法ある特定のがんに対する、キメラ抗原受容体の遺伝子を患者のT細胞という免疫細胞に導入し、その遺伝子導入されたT細胞を体外で増やして患者に戻すという治療法。ヒト白血球抗原(HLA)の型に依存せず、多くの患者に適用することができるといった特徴がある。 ※3(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※4(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。 ※5(ネオアンチゲン:Neoantigen)がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原を指します。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しません。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されています。 ※6(NKT細胞)NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインといわれる物質を産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するCTLを増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないMHC陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。 ※7(CTL:細胞傷害性T細胞)CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出することで殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。 ※8(RNA)リボ核酸(Ribonucleic Acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。 生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。 ※9(逆転写酵素)RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。 ※10(完全個別化ワクチン)個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外で臨床試験が行われている。
FY2018|9,881 文字|出典 docID: S100D9WP
3 【事業の内容】 当社グループは、新規の「がん免疫治療薬」の開発を行い、現在臨床試験段階にあるパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴などについては以下のとおりであります。 (1) 事業モデル 当社グループの基本的な事業モデルは、がん免疫治療薬候補品を自社創製するか、もしくは外部から開発初期の段階で導入し開発を進め、後期臨床試験からは国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスし開発を委ね、そのライセンス先製薬会社からライセンス収入を得るものです。 医薬品開発は一般的に10年以上かかりますが、この事業モデルでは、各国の当局の製造販売承認を得て上市される前の開発段階から、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合となる販売ロイヤリティ収入等)を得ることができます。製薬会社へライセンス後も開発協力金を得て開発を継続することもあります。 当社グループでは、がん免疫療治療薬を開発領域とし、がんペプチド※1ワクチン、T細胞※2療法をはじめとする細胞医薬品、免疫調整因子抗体など多様なモダリティ(医薬品形態)のパイプラインについて、原則として探索研究から早期臨床試験までを手掛け、後期臨床試験からは国内外の製薬会社へ導出し、契約一時金から始まるライセンス収入を得ていきます。このような開発プロジェクトを段階的に複数並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入実現を図ります。 (2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴 がん免疫療法は、がん免疫機構に関わる免疫細胞やペプチド・タンパク質分子を利用して、すべての人が備えもつ免疫活性を亢進することによって、がん細胞の死滅、再発・転移予防、進行抑制効果を発揮します。腫瘍を切除する外科的手術や、放射線でがん細胞を殺傷する放射線療法、低分子化合物による化学療法(いわゆる抗がん剤)とは作用機序が異なるため、これらの既存の治療法で効果が得られないがん患者を対象にすることが可能になり、手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療法」となることが期待されています。 近年免疫チェックポイント阻害剤※3に代表されるがん免疫療法は、がん治療に革新をもたらし、標準療法を大きく変えつつあります。一方で、今ある免疫チェックポイント阻害剤単剤で治療効果が出せる領域にも限りがあることもわかってきており、CAR-T※4(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)といった新しいコンセプトのがん免疫治療薬や、他の新しいがん免疫治療薬を組み合わせる複合的がん免疫療法に、更なる治療効果の期待が寄せられています。 ■当社の事業領域 免疫サイクル(免疫機構ががん細胞を殺傷する仕組み)と各プロセスで働きかける当社のがん免疫治療薬パイプライン (3) 開発パイプライン 当社グループにおける現在のパイプラインは、以下の通りです。・ HLA*A24※5拘束性ペプチドワクチンITK-1(前立腺がん※6)・ HLA*A2拘束性ペプチドワクチンGRN-1201(メラノーマ/非小細胞肺がん)・ ネオアンチゲン※7(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチンGRN-1301(非小細胞肺がん)・ iPS細胞由来の再生T細胞療法(EBウイルス※8由来リンパ腫)及び再生NKT※9細胞療法(導入オプション)(頭頸部がん)ITK-1 (前立腺がん)・ 患者の免疫応答に最適ながんペプチドワクチンを選択投与・ 富士フイルム株式会社へライセンスアウト・ 国内で進行性の去勢抵抗性前立腺がん※10を対象とする第Ⅲ相臨床試験は、平成30年5月の開鍵(キーオープン)の結果、主要評価項目を達成できず がんペプチドワクチンITK-1は、富士フイルム株式会社へ導出済みで、平成25年6月より日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験が実施されておりましたが、平成30年5月の開鍵(キーオープン)の結果、主要評価項目を達成することが出来ませんでした。今後のITK-1の方針については、導出先の富士フイルム株式会社が検討していく方針です。 GRN-1201 (メラノーマ/非小細胞肺がん)・ グローバル向けがんペプチドワクチン・ 米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする第Ⅰ相臨床試験、及び非小細胞がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を実施中 「複合的がん免疫療法」を創薬コンセプトとするGRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA(HLA*A02)に結合するペプチドで構成される、米国や欧州を始めグローバルに展開できるがんペプチドワクチンです。ワクチンに用いられている抗原ペプチドは、がん患者から得られた腫瘍組織からcDNA(腫瘍細胞に発現するタンパク質情報を持つメッセンジャーRNA(mRNA)※11)から逆転写酵素※12を用いて合成された相補的DNAライブラリを作製し、そのcDNAライブラリの中からCTL※13の細胞株(がん患者から樹立された実際にがん細胞を攻撃することができるCTLの細胞株)が認識する抗原タンパク質を同定し、さらにCTLにより認識される9-10個のアミノ酸からなるペプチド分子を同定することによって見つけられました。実際のがん患者のCTLからより高いがん細胞殺傷力を引き出すペプチド抗原が厳選され、さらに久留米大学における臨床研究で実際にがん患者に投与され、高い免疫原性と安全性を示唆するデータが得られているものです。 これらの生体由来のがん抗原※14タンパク質から見出されたペプチドは、そのアミノ酸配列のまま化学合成されたペプチド製剤となります。人の体内に存在するものと同じ物質であるため、従来の抗がん剤(化学療法剤)に比べて安全性が高く、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)※15を維持しながら、生存期間を延長させることが可能になると期待されています。また、これらのペプチドは化学合成で製造されることから、動物由来、血液由来のウイルス等の混入はありません。 CTLはHLAと抗原ペプチドとの結合を介して、ペプチドを攻撃対象の目印として記憶しますが、このHLAにも個人差、人種差があります。日本人に最も多いHLA-A24は日本人全体の60%、欧米ではHLA-A2が全体の50%を占めます。GRN-1201はHLA-A2に結合するペプチドで構成されているため、欧米においての展開を想定しています。 GRN-1201は、第1適応をメラノーマ(悪性黒色腫)として、米国FDA(米国食品医薬品局)へ平成27年10月に治験申請(IND)を行い、現在米国での第Ⅰ相臨床試験を実施中です。また、平成29年1月から、同じく米国で非小細胞肺がんを対象に、複合的がん免疫治療法としての展開を見据えて免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を実施しています。 免疫チェックポイント阻害剤は、がん治療の歴史に大きな変革をもたらし、様々ながん種で治療効果を示しましたが、単剤ではその奏効率は20-30%と言われております。現在治療効果の得られない症例を効くように変える方法も含めた、治療効果を改善する複合的がん免疫療法が期待されており、単純に既存の化学療法、分子標的薬、放射線療法などの標準治療との併用に加えて、抗腫瘍T細胞応答に関与する免疫ネットワークの重要な調節ポイントを複数制御する方法が検討されております。当社はT細胞の抗腫瘍効果を加速させるがんペプチドワクチンの開発に長年の経験を有しており、免疫抑制状態を解除することを作用機序とする免疫チェックポイント阻害剤との相乗効果を狙った創薬コンセプトのもと、グローバルに注目を集める複合的がん免疫療法の一つとして臨床開発を進めております。 ■GRN-1201と免疫チェックポイント阻害剤の併用メカニズム GRN-1301 (非小細胞肺がん)・ネオアンチゲン(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチン GRN-1301は、平成28年12月に、非小細胞肺がんを適応症とするネオアンチゲンペプチドワクチンを開発するべく、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構が有する特許「上皮成長因子受容体(EGFR)のT790M点突然変異に由来する抗原ペプチド」の譲渡を受けました(EGFRは、細胞の増殖や成長を制御する上皮成長因子 (Epidermal Growth Factor) と結合し、シグナル伝達を行う受容体(Receptor))。肺がんは、米国では年間約22万人、日本では年間約13万人が新たに罹患すると報告されていますが、その内一部の患者は、治療の過程で既存の治療薬であるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に対し耐性を生じている状態でした。しかし、これらの患者の約6割にEGFR-T790M点突然変異(EGFRの790番目のアミノ酸がスレオニンからメチオニンへ遺伝子変異すること)という遺伝子変異が生じていることが分かっており、当社グループは、このEGFR-TKI耐性遺伝子変異を抗原とするペプチドワクチンの開発を行っています。 iPS-T (EBウイルス※28由来リンパ腫)・iPS細胞再生T細胞療法・再生医療のがん免疫療法分野における世界初の臨床応用 平成28年12月に、株式会社アドバンスト・イミュノセラピーを子会社化し、中内啓光東京大学医科学研究所教授兼スタンフォード大学教授らの創製技術を用いたiPS細胞由来再生T細胞療法の研究開発を開始しました。同社は、iPS技術を用いてがん細胞を攻撃するT細胞を再生させる(若返らせる)ことにより、がん免疫療法においてこれまで課題とされてきたT細胞の疲弊と、様々な過程で起こりうる副作用を回避する独自の技術を保有しております。当初はコンセプトを示しやすいウイルス性血液がんの一種であるEBウイルス由来リンパ腫を適応症としております。 iPS-NKT (頭頸部がん)・iPS細胞由来再生NKT細胞療法・多面的な抗腫瘍効果を有する免疫細胞(自然免疫の活性/獲得免疫の誘導/免疫抑制環境の改善)・理化学研究所との導入オプション付共同研究 NKT細胞由来iPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用いた新規他家がん免疫療法です。がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつが、体内には微量にしか存在しない免疫細胞であるNKT細胞を、iPS細胞の高い増殖性を活かしてがん免疫療法へ応用することを試みるものです。当社は、平成30年3月に、国立研究開発法人理化学研究所統合生命医科学研究センターが進める細胞医薬の技術開発と臨床応用に向けたプロジェクトに参画しました。本プロジェクトは、理化学研究所が中心となって日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラム疾患・組織別実用化研究拠点(拠点B)に採択された「NKT細胞再生によるがん免疫治療技術開発拠点」プロジェクト及び理研創薬・医療技術基盤プログラムのプロジェクトとして進められているもので、頭頸部がんを対象とする医師主導治験が平成31年度中をめどに開始される計画です。理化学研究所からiPS-NKT細胞療法の独占的開発製造販売ライセンスのオプション権を取得し、世界でも初となるiPS-NKT細胞療法の臨床応用実現にむけ、本医師主導治験を全面的に後押しいたします。 ■iPS-NKTの特徴 その他各研究機関(国立研究開発法人 国立がん研究センター、国立大学法人 東京大学、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター及び国立大学法人 三重大学)等との共同研究でネオアンチゲンをターゲットとする完全個別化ワクチン※16の創製を目指してまいります。本プロジェクトは、患者ごとに異なるネオアンチゲンを、一人ひとりに合わせてがん免疫療法として用いる完全個別対応型がん治療薬の創製を目指しております。個々の患者の免疫応答、がん細胞、がん組織の環境などの特性を解析したうえで、個々の患者に最適ながん免疫療法を提供する Personalized Medicine(個別化医療)の試みが始まっておりますが、本プロジェクトによって、できるだけ一つで多くの人に使える汎用品としての医薬から、個人差に対応する完全個別化を追求する次世代の医薬を目指してまいります。 ▲免疫チェックポイント阻害剤は、これまで遺伝子変異の多いがん種で良い臨床成績を得ており、これは、ネオアンチゲンががん免疫療法において有効なターゲットとなっている可能性を示唆している (4) 許認可、免許及び登録等の状況についてa. 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品販売業許可(福岡県)を平成25年5月27日付で得ています。医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律;日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、平成26年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 b. 知的財産権の状況知財は、個別のペプチドの物質特許※17を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。ITK-1を構成するペプチド物質及び関連特許は、独占的に富士フイルム株式会社に使用許諾されています。GRN-1201については、物質特許を含め当社グループが特許を有しております。その他の特許につきましては、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構より、GRN-1301に係る上皮成長因子受容体(EGFR)の T790M 点突然変異に由来する抗原ペプチド及び当該ペプチドを含むがんを処置するための薬剤に関する特許の譲渡を受けております。また、国立大学法人 東京大学より、iPS-Tに係る抗原特異的T細胞の製造方法及び、多能性幹細胞を用いた免疫機能再建法に関する特許の実施許諾を得ております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原 7465452米国当社 1207199欧州(注)2381348カナダ4051602日本4097178日本4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24または-A2結合ペプチド4579581日本当社新規な腫瘍抗原タンパク質SART-3及びその腫瘍抗原ペプチド4436977日本当社4904384日本7541428米国7968676米国8097697米国8563684米国1116791欧州(注)2340888カナダ99812596.2中国660367韓国がんペプチドワクチン(出願中)米国当社カナダ2591799欧州(注)5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] ※1(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※2(T細胞)白血球のうち、リンパ球と称される細胞の一種で、骨髄で産生され胸腺でリンパ球へと分化される免疫細胞のこと。胸腺(Thymus)の頭文字をとってT細胞と呼ばれます。生体内に侵入した異物から人体を守る免疫応答システムの司令塔の働きを有し、マクロファージや細胞傷害性T細胞(CTL)などの免疫実働細胞に指示・命令を出します。 ※3(免疫チェックポイント阻害剤)がん細胞がもつ、免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を阻害してブレーキを解除する抗体医薬品を指します。 ※4(CAR-T)Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法ある特定のがんに対する、キメラ抗原受容体の遺伝子を患者のT細胞という免疫細胞に導入し、その遺伝子導入されたT細胞を体外で増やして患者に戻すという治療法。ヒト白血球抗原(HLA)の型に依存せず、多くの患者に適用することができるといった特徴がある。 ※5(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。 ※6(前立腺がん)前立腺がんとは、前立腺(外腺)に発生する病気、がんの一つです。前立腺は男性の臓器で、膀胱の下で尿道をとり囲むようにしてあります。前立腺がんは50歳代から急速に増え始め、発生の平均年齢が70歳といわれるくらい高齢の男性にみられるがんです。前立腺がんは加齢による男性ホルモンのバランスの崩れや、前立腺の慢性的炎症、食生活や生活習慣などの要因が加わって発生すると言われています。前立腺がんは高齢者で発症することから、高齢化が進む日本を含む先進国で罹患率が増加しており、平成23年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、平成25年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。 ※7(ネオアンチゲン:Neoantigen)がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原を指します。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しません。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されています。 ※8(EBウイルス)エプスタイン・バール・ウイルス。EBウイルスはヘルペスウイルスに属し、ほとんどの人が感染しており、その一部がヒトに腫瘍を発生させることで知られます。1964 年にEpsteinとBarrによって発見されたヒトの腫瘍から見つかった最初のウイルスです。 ※9(NKT細胞)NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインといわれる物質を産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないMHC陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。 ※10(去勢抵抗性前立腺がん)ホルモン療法及び去勢を行っても効かなくなった状態の前立腺がん。前立腺がんの増殖や進行には男性ホルモンであるアンドロゲンとその受容体であり、転写因子として機能するアンドロゲン受容体が重要な役割を果たすことがわかっています。初めは男性ホルモンを抑える内分泌療法(ホルモン療法)が奏功するものの、暫くして再燃を繰り返した末に奏功しなくなり、「去勢抵抗性」状態になります。 ※11(RNA)リボ核酸(ribonucleic acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。 生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。 ※12(逆転写酵素)RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。 ※13(細胞傷害性T細胞‐CTL)CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出することで殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。 ※14(がん抗原)細胞傷害性T細胞等の免疫細胞が、正常細胞とがん細胞を見分けるための目印になるタンパク質。 ※15(QOL=Quality of Life)医療現場で、病気を治療することだけでなく、患者の生活機能ができるだけ保たれ、人間らしい生活を続けられること。「生活の質」、人間らしい充実した生活、暮らしのレベル。医療分野においては、がん等の長期療養を要する疾患、ならびに消耗の激しい疾患や進行性の疾患において、患者の体へのダメージの大きい治療を継続することによって、患者が自らの理想とする生き方、もしくは社会的にみて「人間らしい生活」と考える生活が実現できない状況を「QOL (生活の質)が低下する」と呼びます。 ※16(完全個別化ワクチン)個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外で臨床試験が行われている。 ※17(物質特許)新規に生成された医薬品の成分など、一定の機能や効果を持った物質そのものに対して付与される特許権。その特許化された物質については、特許権者又は実施許諾者以外の実施(使用、生産、譲渡等)が制限されることにより、特許権者又は実施許諾者の実施が保護されることになります。
FY2017|14,452 文字|出典 docID: S100ASA1
3 【事業の内容】当社グループは、新規の「がん免疫治療薬」の開発(現在、臨床試験段階)を行う創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴などについては以下のとおりであります。 (1) 事業モデル当社グループの基本的な事業モデルは、がん免疫治療薬シーズの探索研究から初期臨床試験までを行い、後期臨床試験からは国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスし開発を委ね、そのライセンス先製薬会社からライセンス収入を得るものです。医薬品開発は一般的に10年以上かかりますが、各国の当局の製造販売承認を得て上市される前でも、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合となる販売ロイヤリティ収入等)を得ることができます。製薬会社へライセンス後も開発協力金を得て開発を継続することもあります。当社は本邦において長くがんペプチドワクチンの研究を行ってきた久留米大学発のベンチャーとして、久留米大学で平成4年に始まる基礎研究と平成10年に始まる臨床研究を終えたがんペプチドワクチン・シーズを、平成15年の当社設立とともに特許の譲渡を受けて承継し、企業治験に用いる治験薬の製剤化検討に始まり、早期臨床試験までを自社単独で行ってきました。リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、現在実施中である進行性の去勢抵抗性前立腺がん※1※2を対象とする国内第Ⅲ相臨床試験の開始前に富士フイルム株式会社へライセンス・アウトし、現在当社は同社から本臨床試験の実施を受託し開発協力金を得ながら、本臨床試験を遂行しています。また、海外戦略品として米国で開発を進めるがんペプチドワクチンGRN-1201は、平成27年に始まったメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする第Ⅰ相臨床試験、及び平成29年に非小細胞肺がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤※3との併用で第Ⅱ相臨床試験を開始しております。こちらにつきましては、第Ⅱ相臨床試験で有効性を示すことができれば、その臨床データをもってライセンスアウトし、契約一時金から始まるライセンス収入を得ていくことを想定しています。その他、これら既存パイプラインに重なるかたちで、導入および自社創製の新規パイプラインが収益化のタイミングを迎えるよう、多様な開発プロジェクトを進めております。 (2) 技術の特徴当社グループが開発しているがん免疫治療薬は、人間の体が本来持つ免疫機構にがん細胞を攻撃させるがん治療薬で、免疫機構を司る様々な免疫細胞や免疫に関与する物質を活用し、免疫応答(特定のペプチドを攻撃の目印としてがん細胞を攻撃した経験=免疫メモリー)をコントロールすることによって、がん細胞を死滅させたり、がんの再発・転移を防いだり、進行を遅らせたりする効果を有します。外科的に腫瘍を切除する手術とも、放射線でがん細胞を殺傷する放射線療法とも、化学合成物を直接がん細胞に作用させて殺傷する化学療法(いわゆる抗がん剤治療)とも作用メカニズムが異なるため、これらの既存の作用メカニズムによる治療が有効で無くなったがん患者にとって手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療法」となることが期待されています。当社グループは、がん免疫治療薬の中でも、免疫機構を司る細胞傷害性T細胞※4※5(CTL)を活性化させがん細胞を殺傷させることを作用メカニズムとするがんワクチンを開発しています。CTLはがん抗原※6を認識し、そのがん抗原を表面上に提示しているがん細胞を殺傷する機能を有します。 がん抗原は、がん細胞表面上にあって、CTLが正常細胞とがん細胞を見分けてがん細胞を攻撃するときの目印になるもので、現在の当社は、がん抗原としてペプチド※7(タンパク質の断片)を用いる「がんペプチドワクチン」を開発しています。 (TCR 用語解説※8、CD8 用語解説※9) ① がんペプチドワクチンの作用メカニズムがん細胞は正常細胞に比べ活発に増殖しているため、細胞の増殖に関連したタンパク質(アミノ酸が数百~数千個、長くつながったもの)が分解され断片化したペプチド(アミノ酸8~10個の短い鎖)が細胞表面に大量に存在しています。また、腫瘍マーカー※10として知られているがん特異的なペプチドも同様にがん細胞表面に存在しています。これらはがん抗原としてCTLの標的となります。そこで、がん細胞内で作り出され細胞表面上に存在しているペプチドと同じものを人工的に化学合成し、この合成ペプチドをがん患者に投与し、そのペプチドに反応するCTLを患者の体内で増やし、がん細胞を破壊しようというのが、がんペプチドワクチンです。投与されたがんペプチドワクチンは局所の樹状細胞※11やマクロファージ※12などの抗原提示細胞※13によって貪食※14され、細胞表面にHLA※15クラスⅠ分子(ヒト白血球抗原)と複合体を形成して細胞表面に表出(提示)されます。ペプチドを表面上に提示したこれらの抗原提示細胞は近傍のリンパ節へと移動し、そこで投与されたペプチドに特異的に反応するCTL前駆細胞※16に抗原提示を行い、この抗原提示を受けたCTL前駆細胞は活性化されて増殖します。増殖を遂げ成熟したCTLはリンパ流に乗ってがん局所へと移動します。がん細胞表面には投与されたがんペプチドワクチンと同じ配列のペプチドががん細胞内で作られHLA分子と複合体を形成して細胞表面に表出されており、CTLはこの複合体を認識してがん細胞をアポトーシス※17へと誘導します。 <ペプチドワクチンの作用メカニズム> ② 当社グループのペプチドの特徴平成3年にベルギーのThierry Boon博士らのグループによって、T細胞が認識する「抗原」の正体が、わずか9(±1)アミノ酸残基からなる短鎖ペプチドであることが突き止められ、分子生物学に基づいた科学的な腫瘍免疫が確立されました。抗原の実体が判明したことで、世界中の研究機関で、抗原の探索に始まるがんワクチンの開発が本格化しました。当社グループが久留米大学から承継しワクチンとして開発を進めているペプチドは、この抗原の正体が突き止められたすぐ後の平成4年から久留米大学の医学部免疫・免疫治療学講座において大規模に進められた抗原探索の成果物です。 ワクチンに用いられている抗原ペプチドは当時の久留米大学において、がん患者から得られた腫瘍組織からcDNA(腫瘍細胞に発現するタンパク質情報を持つメッセンジャーRNA(mRNA)※18)から逆転写酵素※19を用いて合成された相補的DNAライブラリを作製し、そのcDNAライブラリの中からCTLの細胞株(がん患者から樹立された実際にがん細胞を攻撃することができるCTLの細胞株)が認識する抗原タンパク質を同定し、さらにCTLにより認識される9-10個のアミノ酸からなるペプチド分子を同定することによって見つけられました。実際のがん患者のCTLからより高いがん細胞殺傷力を引き出すペプチド抗原が厳選され、さらに久留米大学における臨床研究で実際にがん患者に投与され、免疫応答の強度で絞り込まれたものとなっています。これらの生体由来のがん抗原タンパク質から見出されたペプチドは、そのアミノ酸配列のまま化学合成されたペプチド製剤となります。人の体内に存在するものと同じ物質であるため、従来の抗がん剤(化学療法剤)に比べて安全性が高く、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)※20を維持しながら、生存期間を延長させることが可能になると期待されています。また、これらのペプチドは化学合成で製造されることから、動物由来、血液由来のウイルス等の混入はありません。 ③ ペプチド投与方法の特徴当社グループのワクチンはペプチドを用いますが、患者個々人の免疫機構が以前にそれを目印としてがん細胞を攻撃したこと(免疫メモリー)があるかどうかを投与前にバイオマーカー※21で確認し、免疫メモリーのあるペプチドを投与します。それによって、より強い免疫をより早く誘導でき、より高い臨床効果へ結びつくという考え方に基づいています。がんワクチン開発の課題の1つは、免疫反応(CTLの活性化)から活性化されたCTLががん細胞を攻撃し、それが臨床効果として現れるまでにタイムラグがあることと言われています。タイムラグがあるとその間にがん細胞が増殖してしまうからです。当社グループは、免疫メモリーに着目する独自の投与方法によって、この課題を克服することを考えています。さらに、当社グループは複数のペプチドを同時に投与します。がん細胞は免疫系の攻撃を免れるために特定の遺伝子発現を変化させて攻撃の目印を消失させたりすることがあります。これは、エスケープ現象、あるいは免疫逃避と呼ばれています。1つのペプチド投与では、最初は効いても、がん細胞の遺伝子変異により、すぐに効かなくなる可能性があると考えられています。一方で、複数の抗原投与ならがん細胞の遺伝子変異が追いつかず、エスケープ現象を回避できる可能性が高くなります。 <複数種の抗原ペプチドを同時投与> (3) 開発パイプライン当社グループにおける現在のパイプラインは、以下の通りです。・ 臨床開発段階にあるHLA-A24拘束性ペプチドで構成されるがんペプチドワクチンITK-1(適応症:前立腺がん)・ 米国において開発中のHLA-A2拘束性ペプチドで構成されるグローバル向けがんペプチドワクチンGRN-1201(適応症:メラノーマ(悪性黒色腫)/非小細胞肺がん)・ ネオアンチゲン※22(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチンGRN-1301(適応症:非小細胞肺がん)・ 再生医療のがん免疫療法分野における世界初の臨床応用であるT-iPS(適応症:EBウイルス由来リンパ腫)ITK-1は第Ⅲ相臨床試験中であり、平成27年6月に中間解析を実施し、平成28年4月には症例の獲得活動を終了し、現在は最終解析実施までの観察期間となっております。GRN-1201は、平成27年10月に治験申請(IND)を行い、メラノーマを対象とする米国での第Ⅰ相臨床試験を開始し、平成29年1月には非小細胞肺がんを対象として米国で免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を開始いたしました。GRN-1301、T-iPSにつきましては、現在基礎研究段階となっており、早期の臨床入りを目指しております。 ITK-1 前立腺がん・ 患者の免疫応答に最適ながんペプチドワクチンを投与・ 国内で進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とする第Ⅲ相臨床試験を実施中(現在、観察期間)・ 富士フイルム株式会社へライセンス・アウト済み [開発とアライアンスの現状]リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、富士フイルム株式会社へ導出済みで、平成25年6月より日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験が実施されています。平成27年6月に中間解析を実施し、第三者機関である効果安全性評価委員会(臨床試験の進行、安全性データおよび有効性を適時に評価し、治験依頼者に試験の継続、変更または中止を提言することを目的に外部の医師などに依頼して設置することのできる委員会)より本臨床試験の継続が認められ、現在観察期間となっております。本臨床試験は、手術・放射線療法・ホルモン療法・化学療法剤の治療を経た進行性の去勢抵抗性前立腺がん患者を対象に、全国の施設で進められています。前立腺がんは中高年男性に多くみられるがんですが、日本においても近年の高齢化や生活環境・食生活の欧米化などにより患者数が増加しており、平成26年の患者数(有病者数)は約21万人と推定されています(出所:平成26年厚生労働省患者調査)。また平成28年の罹患者数(年間の新規診断数)は9万2,600人(予測)ともいわれ、男性では最も罹患者数の多いがん種となっています。前立腺がんによる死亡数は年々増加し、平成28年における死亡数は1万2,300人と推定され、この20年間で約3倍に増加しています(出所:国立研究開発法人 国立がん研究センターがん対策情報センター)。前立腺がんの標準的治療であるホルモン療法が無効になった去勢抵抗性前立腺がん患者数も増えています。本臨床試験において、当社は富士フイルム株式会社から治験実施を委託されており、開発協力金を得ております。この臨床試験において有意性が示されれば、本品は日本の当局に製造販売承認申請されます。当社は予め開発進捗に応じて設定したマイルストンが達成されることにより開発マイルストン収入を得て、更に本品の上市後は製品売上の一定割合を販売ロイヤリティ収入として得ます。 [開発品の特徴]ITK-1は、予め化学合成で製造された既製品の12種の抗原ペプチドの中から、投与前の患者の末梢血を用いたバイオマーカー検査によって、各患者に最適な抗原ペプチドを2~4種選択して投与する「テーラーメイド型」がんペプチドワクチンです。テーラーメイド型ワクチンは、バイオマーカーで免疫メモリーのあるペプチドを複数選択し、それらを同時投与することによって、患者個人の免疫反応を効率よく引き出すとともに、がんの免疫逃避を回避するので、臨床効果に結びつく可能性が高くなります。 [これまでの試験成績]久留米大学から基礎研究及び臨床研究を終えたがんペプチドワクチン・シーズ※23を承継し、ITK-1として製剤化及び非臨床試験を実施した後、平成17年度から i)去勢抵抗性エストラムスチン不応答再燃前立腺がん、及び ii)初期治療(術後放射線化学療法または放射線治療)抵抗性膠芽腫(脳腫瘍)※24患者を対象にITK-1の第Ⅰ相臨床試験及び継続投与試験を実施しました。その結果、前立腺がん患者15例と膠芽腫患者12例の計27例での主な副作用は、注射部位の反応で、「発熱」1例及び「注射部位の反応」2例がCTCAE Grade 3※25を認めた以外はCTCAE Grade 2以下であったことから、高い安全性が示唆されました。前立腺がん患者15例での全生存期間の中央値※26(Median Survival Time)は23.8ヶ月を示し(出所:Noguchi M, et al. The Prostate 2011; 71: 470-479)、これは久留米大学の臨床研究をよく再現する成績でした。臨床効果を生物学的に裏付けるワクチン投与患者の免疫応答、すなわちCTLの活性化と、抗体価の上昇も確認されております。また、膠芽腫患者12例の全生存期間中央値は10.6ヶ月で、うち2例で有効例(部分奏功※27;MRIによる画像診断で50%以上の腫瘍縮小)が認められました(出所:Terasaki M, et al. J Clin Oncol 2011; 29: 337-344) 。 GRN-1201 各種固形がん・ グローバル向けがんペプチドワクチン・ 米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする第Ⅰ相臨床試験、及び非小細胞がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験を実施中 ITK-1に続くパイプラインのGRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA(HLA-A2)に結合するペプチドで構成される、米国や欧州を始めグローバルに展開できるがんペプチドワクチンです。第1適応をメラノーマ(悪性黒色腫)として、米国FDA(米国食品医薬品局)へ平成27年10月に治験申請(IND)を行い、現在米国での第Ⅰ相臨床試験を実施中です。また、平成29年1月には、非小細胞肺がんへ適応拡大し、同じく米国で免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を開始いたしました。CTLはHLAと抗原ペプチドとの結合を介して、ペプチドを攻撃対象の目印として記憶しますが、このHLAにも個人差、人種差があります。日本人に最も多いHLA-A24は日本人全体の60%、欧米ではHLA-A2が全体の50%を占めます。ITK-1はHLA-A24に結合するペプチドであるのに対し、GRN-1201はHLA-A2に結合するペプチドで構成されます。 GRN-1301 非小細胞肺がん・ネオアンチゲン(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチン・個別化医療の実現に向けた新規ターゲット 平成28年12月に、非小細胞肺がんを適応症とするネオアンチゲンペプチドワクチンを開発するべく、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構が有する特許「上皮成長因子受容体(EGFR)のT790M点突然変異に由来する抗原ペプチド」の譲渡を受けました(EGFRは、細胞の増殖や成長を制御する上皮成長因子 (Epidermal Growth Factor) と結合し、シグナル伝達を行う受容体(Receptor))。肺がんは、米国では年間約22万人、日本では年間約13万人が新たに罹患すると報告されていますが、その内一部の患者は、治療の過程で既存の治療薬であるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に対し耐性を生じている状態でした。しかし、これらの患者の約6割にEGFR-T790M点突然変異(EGFRの790番目のアミノ酸がスレオニンからメチオニンへ遺伝子変異すること)という遺伝子変異が生じていることが分かっており、当社グループは、このEGFR-TKI耐性遺伝子変異を抗原とするペプチドワクチンの開発を開始しました。 T-iPS EBウイルス※28由来リンパ腫・iPS細胞再生T細胞療法・再生医療のがん免疫療法分野における世界初の臨床応用 平成28年12月に、株式会社アドバンスト・イミュノセラピーを子会社化し、中内啓光東京大学医科学研究所教授兼スタンフォード大学教授らの創製技術を用いたiPS細胞由来再生T細胞療法の研究開発を開始しました。同社は、iPS技術を用いてがん細胞を攻撃するT細胞を再生させる(若返らせる)ことにより、がん免疫療法においてこれまで課題とされてきたT細胞の疲弊と、様々な過程で起こりうる副作用を回避する独自の技術を保有しております。当初はコンセプトを示しやすいウイルス性血液がんの一種であるEBウイルス由来リンパ腫を適応症としますが、将来的には固形がんへの展開を見込んでおります。世界初のiPS細胞のがん免疫療法への応用を試みるものであり、安全性が適正に担保されたところで臨床試験を進めるべく、準備を進めております。本開発品は、再生医療等製品として開発を進めており、早期承認制度に基づいた承認取得の可能性を想定しております。 その他当社グループの物質特許※29を有するがん抗原と免疫細胞を修飾して活性を高める技術との融合による治療薬または治療法を中心に、日本・海外を問わず、外部の研究機関との共同研究や導入も含め、引き続きがん免疫療法に焦点を当てたシーズを開発していきます。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況についてa. 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品販売業許可(福岡県)を平成25年5月27日付で得ています。医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律;日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、平成26年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 b. 知的財産権の状況知財は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。ITK-1を構成するペプチド物質及び関連特許は、独占的に富士フイルム株式会社に使用許諾されています。GRN-1201については、物質特許を含め当社グループが特許を有しております。その他の特許につきましては、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構より、GRN-1301に係る上皮成長因子受容体(EGFR)の T790M 点突然変異に由来する抗原ペプチド及び当該ペプチドを含むがんを処置するための薬剤に関する特許の譲渡を受けております。また、国立大学法人 東京大学より、T-iPSに係る抗原特異的T細胞の製造方法及び、多能性幹細胞を用いた免疫機能再建法に関する特許の実施許諾を得ております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原 7465452米国当社 1207199欧州(注)2381348カナダ4051602日本4097178日本4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24または-A2結合ペプチド4579581日本当社ヒト癌退縮抗原タンパク質4138073日本当社新規な腫瘍抗原タンパク質SART-3及びその腫瘍抗原ペプチド4436977日本当社4904384日本7541428米国7968676米国8097697米国8563684米国1116791欧州(注)2340888カナダ99812596.2中国660367韓国がんペプチドワクチン(出願中)米国当社カナダ2591799欧州5706895日本5980303日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] ※1(前立腺がん)前立腺がんとは、前立腺(外腺)に発生する病気、がんの一つです。前立腺は男性の臓器で、膀胱の下で尿道をとり囲むようにしてあります。前立腺がんは50歳代から急速に増え始め、発生の平均年齢が70歳といわれるくらい高齢の男性にみられるがんです。前立腺がんは加齢による男性ホルモンのバランスの崩れや、前立腺の慢性的炎症、食生活や生活習慣などの要因が加わって発生すると言われています。前立腺がんは高齢者で発症することから、高齢化が進む日本を含む先進国で罹患率が増加しており、平成23年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、平成25年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。 ※2(去勢抵抗性前立腺がん)ホルモン療法及び去勢を行っても効かなくなった状態の前立腺がん。前立腺がんの増殖や進行には男性ホルモンであるアンドロゲンとその受容体であり、転写因子として機能するアンドロゲン受容体が重要な役割を果たすことがわかっています。初めは男性ホルモンを抑える内分泌療法(ホルモン療法)が奏功するものの、暫くして再燃を繰り返した末に奏功しなくなり、「去勢抵抗性」状態になります。 ※3(免疫チェックポイント阻害剤)がん細胞がもつ、免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を阻害してブレーキを解除する抗体医薬品を指します。 ※4(T細胞)白血球のうち、リンパ球と称される細胞の一種で、骨髄で産生され胸腺でリンパ球へと分化される免疫細胞のこと。胸腺(Thymus)の頭文字をとってT細胞と呼ばれます。生体内に侵入した異物から人体を守る免疫応答システムの司令塔の働きを有し、マクロファージや細胞傷害性T細胞(CTL)などの免疫実働細胞に指示・命令を出します。 ※5(細胞傷害性T細胞‐CTL)CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出したりすることによって、殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。 ※6(がん抗原)細胞傷害性T細胞等の免疫細胞が、正常細胞とがん細胞を見分けるための目印になるタンパク質。 ※7(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※8(TCR)T細胞受容体(T-cell Receptor)。T細胞の細胞膜上に発現している抗原受容体分子。T細胞に活性化シグナルを伝達する機能を持ち、他の細胞表面上にあるHLA分子に結合した抗原ペプチドを認識します。がんワクチンの作用機序においては、T細胞ががん細胞を認識するときと、樹状細胞等の抗原提示細胞から攻撃の目印としてがん抗原ペプチドの提示を受ける(情報を受け取る)ときに、このT細胞受容体を通して相手の細胞に表出されたペプチドとHLAの複合体を認識します。 ※9(CD8)CTLの補助レセプターのこと。抗原認識において、CD8はT細胞表面のT細胞レセプターと会合し、HLA・ペプチド複合体におけるHLAの定常部分に結合します。この結合は、T細胞が機能的な応答を示す際において不可欠であるため、補助レセプターと呼ばれます。 ※10(腫瘍マーカー)がん細胞が作り出す生体因子で、がんの進行とともに増加するため、がんの進行度を評価する指標(マーカー)となるもの。血液中又は尿中における当該物質の濃度を測定し、がんの進行度を評価します。前立腺がんの腫瘍マーカーとしては、PSA(前立腺特異抗原 Prostate Specific Antigen)などがあります。 ※11(樹状細胞)枝状、樹状の形態をした突起を有する細胞であり、抗原提示細胞としての機能を有する免疫細胞の一種です。体内に侵入した細菌やウイルスなどの抗原を細胞内に取り込み消化し、免疫情報をリンパ球に伝えます。がんにおいては、CTLにがん抗原の情報を伝達して、がん細胞への攻撃などの免疫反応を開始させます。 ※12(マクロファージ)白血球の一種であり、動物の組織内に存在するアメーバ状の細胞。生体内に侵入した細菌や異物などを捕食し、消化するため、清掃屋としての役割を有します。また、それらの異物に抵抗するため、それらの異物の情報を免疫情報としてリンパ球に伝える役割も有しています。 ※13(抗原提示細胞)体内に侵入した細菌やウイルスに取り込まれた細胞の断片、がん細胞の断片などを細胞内に取り込み、それらが含む抗原を細胞表面に表出(提示)しながら、近くのリンパ節へ移動し、T細胞に抗原の情報を伝達し活性化させる役割を担う免疫細胞。抗原提示細胞には、樹状細胞やマクロファージなどがあります。 ※14(貪食)細菌や死んだ細胞などの大型の粒子を取り込み、分解や処理などの消化を行うこと。この能力を有する細胞を総称して貪食細胞といい、マクロファージや樹状細胞などがあります。 ※15(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。 ※16(CTL前駆細胞)がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)になる前のT細胞のこと。 ※17(アポトーシス)細胞に内在する、あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムにより自らが細胞死を誘導する機構。生体を良い状態に維持するために引き起こされる、生体を調整するための遺伝子によりプログラムされた細胞死のことです。細胞の発生や成長の過程で生じる不要となる細胞を排除する役割だけでなく、がん細胞やウイルスを排除するにあたっても重要な役割を果たします。 ※18(RNA)リボ核酸(ribonucleic acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。 生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。 ※19(逆転写酵素)RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。 ※20(QOL=Quality of Life)医療現場で、病気を治療することだけでなく、患者の生活機能ができるだけ保たれ、人間らしい生活を続けられること。「生活の質」、人間らしい充実した生活、暮らしのレベル。医療分野においては、がん等の長期療養を要する疾患、ならびに消耗の激しい疾患や進行性の疾患において、患者の体へのダメージの大きい治療を継続することによって、患者が自らの理想とする生き方、もしくは社会的にみて「人間らしい生活」と考える生活が実現できない状況を「QOL (生活の質)が低下する」と呼びます。 ※21(バイオマーカー)客観的に人体の状態を測定し評価するための指標であり、観察、診断及び治療の際に使用される。臨床検査値(血液検査、腫瘍マーカーなど)、CTやMRIなどの画像診断データや、臨床試験においてその効果を測定する代替マーカーや前立腺がんの状態を調べるPSA(前立腺特異抗原)は診断マーカーであるなど、また広い意味では体温や脈拍なども含まれます。 ※22(ネオアンチゲン:Neoantigen)がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原を指します。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しません。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されています。 ※23(シーズ)研究開発および事業化の対象となる医薬品候補物質。 ※24(膠芽腫)脳腫瘍の中でも最も悪性度の高い(WHO分類により星状細胞腫グレード4)腫瘍のこと。 ※25(CTCAE Grade) Common Terminology Criteria for Adverse Events(有害事象共通用語規準)の略で、臨床試験で発生する「有害事象」を世界共通の尺度で評価・集計するための規準。「有害事象(Adverse Event: AE)」とは、治療に際して観察される、あらゆる意図しないまたは好ましくない徴候や症状、疾患を指し、治療との因果関係は求めないため原疾患による合併症等の症状も治療に起因する副作用もすべてが含まれます。Gradeは、有害事象の重症度を示し、以下の原則に従いGrade1からGrade5まで5段階に分類され、各有害事象の重症度が定義されております。Grade 1 軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ; 治療を要さない Grade 2 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する; 年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限Grade 3 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない; 入院または入院期間の延長を要する; 活動不能/動作不能; 身の回りの日常生活動作の制限Grade 4 生命を脅かす; 緊急処置を要する Grade 5 有害事象による死亡 ※26(全生存期間の中央値)「全生存期間」は、試験に登録された日からあらゆる原因による死亡日までの期間を指します。「全生存期間の中央値(MST; Median Survival Time)」は、試験に登録された症例の生存率が50%になるまでの期間をいいます。全生存期間はがん治療薬の臨床試験の評価項目として、特に後期臨床試験において一般的に用いられています。 ※27(部分奏功)がん治療薬の臨床効果を示す一つの指標に「奏効率」があり、MRI等の画像診断において測定可能ながん組織の断面の長径とそれに直角に交わる最大径の積の総和が50%以下に縮小し、かつ腫瘍による二次病変の増悪がなく、新病変がない場合(2方向測定法)、もしくは断面の最長径の和が30%以上減少し、かつ測定不能病変の明らかな増悪がなく、新病変がない場合(RECIST)が有効(部分奏効)、全ての腫瘍が消失した場合が著効(完全奏効)と判定されます。 ※28(EBウイルス)エプスタイン・バール・ウイルス。EBウイルスはヘルペスウイルスに属し、ほとんどの人が感染しており、その一部がヒトに腫瘍を発生させることで知られます。1964 年にEpsteinとBarrによって発見されたヒトの腫瘍から見つかった最初のウイルスです。 ※29(物質特許)新規に生成された医薬品の成分など、一定の機能や効果を持った物質そのものに対して付与される特許権。その特許化された物質については、特許権者又は実施許諾者以外の実施(使用、生産、譲渡等)が制限されることにより、特許権者又は実施許諾者の実施が保護されることになります。
FY2016|12,193 文字|出典 docID: S1007V2L
3 【事業の内容】当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発(現在、臨床試験段階)を行う創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴などについては以下のとおりであります。 (1) 事業モデル当社の基本的な事業モデルは、がん免疫治療薬シーズの探索研究から初期臨床試験までを行い、後期臨床試験からは国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスし開発を委ね、そのライセンス先製薬会社からライセンス収入を得るものです。医薬品開発は一般的に10年以上かかりますが、各国の当局の製造販売承認を得て上市される前でも、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合となる販売ロイヤリティ収入等)を得ることができます。製薬会社へライセンス後も開発協力金を得て開発を継続することもあります。当社は本邦において長くがんペプチドワクチンの研究を行ってきた久留米大学発のベンチャーとして、久留米大学で平成4年に始まる基礎研究と平成10年に始まる臨床研究を終えたがんペプチドワクチン・シーズを、平成15年の当社設立とともに特許の譲渡を受けて承継し、企業治験に用いる治験薬の製剤化検討に始まり、早期臨床試験までを自社単独で行ってきました。リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、現在実施中である進行性の去勢抵抗性前立腺がん※1※2を対象とする国内第Ⅲ相臨床試験の開始前に富士フイルム株式会社へライセンス・アウトし、現在当社は同社から本臨床試験の実施を受託し開発協力金を得ながら、本臨床試験を遂行しています。 (2) 技術の特徴当社が開発しているがん免疫治療薬は、人間の体が本来持つ免疫機構にがん細胞を攻撃させるがん治療薬で、免疫機構を司る様々な免疫細胞や免疫に関与する物質を活用し、免疫応答(特定のペプチドを攻撃の目印としてがん細胞を攻撃した経験=免疫メモリー)をコントロールすることによって、がん細胞を死滅させたり、がんの再発・転移を防いだり、進行を遅らせたりする効果を有します。外科的に腫瘍を切除する手術とも、放射線でがん細胞を殺傷する放射線療法とも、化学合成物を直接がん細胞に作用させて殺傷する化学療法(いわゆる抗がん剤治療)とも作用メカニズムが異なるため、これらの既存の作用メカニズムによる治療が有効で無くなったがん患者にとって手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療法」となることが期待されています。 当社は、がん免疫治療薬の中でも、免疫機構を司る細胞傷害性T細胞※3※4(CTL)を活性化させがん細胞を殺傷させることを作用メカニズムとするがんワクチンを開発しています。CTLはがん抗原※5を認識し、そのがん抗原を表面上に提示しているがん細胞を殺傷する機能を有します。 がん抗原は、がん細胞表面上にあって、CTLが正常細胞とがん細胞を見分けてがん細胞を攻撃するときの目印になるもので、現在の当社は、がん抗原としてペプチド※6(タンパク質の断片)を用いる「がんペプチドワクチン」を開発しています。 (TCR 用語解説※7、CD8 用語解説※8) ① がんペプチドワクチンの作用メカニズムがん細胞は正常細胞に比べ活発に増殖しているため、細胞の増殖に関連したタンパク質(アミノ酸が数百~数千個、長くつながったもの)が分解され断片化したペプチド(アミノ酸8~10個の短い鎖)が細胞表面に大量に存在しています。また、腫瘍マーカー※9として知られているがん特異的なペプチドも同様にがん細胞表面に存在しています。これらはがん抗原としてCTLの標的となります。そこで、がん細胞内で作り出され細胞表面上に存在しているペプチドと同じものを人工的に化学合成し、この合成ペプチドをがん患者に投与し、そのペプチドに反応するCTLを患者の体内で増やし、がん細胞を破壊しようというのが、がんペプチドワクチンです。投与されたがんペプチドワクチンは局所の樹状細胞※10やマクロファージ※11などの抗原提示細胞※12によって貪食※13され、細胞表面にHLA※14クラスⅠ分子(ヒト白血球抗原)と複合体を形成して細胞表面に表出(提示)されます。ペプチドを表面上に提示したこれらの抗原提示細胞は近傍のリンパ節へと移動し、そこで投与されたペプチドに特異的に反応するCTL前駆細胞※15に抗原提示を行い、この抗原提示を受けたCTL前駆細胞は活性化されて増殖します。増殖を遂げ成熟したCTLはリンパ流に乗ってがん局所へと移動します。がん細胞表面には投与されたがんペプチドワクチンと同じ配列のペプチドががん細胞内で作られHLA分子と複合体を形成して細胞表面に表出されており、CTLはこの複合体を認識してがん細胞をアポトーシス※16へと誘導します。 <ペプチドワクチンの作用メカニズム> ② 当社のペプチドの特徴平成3年にベルギーのThierry Boon博士らのグループによって、T細胞が認識する「抗原」の正体が、わずか9(±1)アミノ酸残基からなる短鎖ペプチドであることが突き止められ、分子生物学に基づいた科学的な腫瘍免疫が確立されました。抗原の実体が判明したことで、世界中の研究機関で、抗原の探索に始まるがんワクチンの開発が本格化しました。当社が久留米大学から承継しワクチンとして開発を進めているペプチドは、この抗原の正体が突き止められたすぐ後の平成4年から久留米大学の医学部免疫・免疫治療学講座において大規模に進められた抗原探索の成果物です。 ワクチンに用いられている抗原ペプチドは当時の久留米大学において、がん患者から得られた腫瘍組織からcDNA(腫瘍細胞に発現するタンパク質情報を持つメッセンジャーRNA(mRNA)※17)から逆転写酵素※18を用いて合成された相補的DNAライブラリを作製し、そのcDNAライブラリの中からCTLの細胞株(がん患者から樹立された実際にがん細胞を攻撃することができるCTLの細胞株)が認識する抗原タンパク質を同定し、さらにCTLにより認識される9-10個のアミノ酸からなるペプチド分子を同定することによって見つけられました。実際のがん患者のCTLからより高いがん細胞殺傷力を引き出すペプチド抗原が厳選され、さらに久留米大学における臨床研究で実際にがん患者に投与され、免疫応答の強度で絞り込まれたものとなっています。 これらの生体由来のがん抗原タンパク質から見出されたペプチドは、そのアミノ酸配列のまま化学合成されたペプチド製剤となります。人の体内に存在するものと同じ物質であるため、従来の抗がん剤(化学療法剤)に比べて安全性が高く、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)※19を維持しながら、生存期間を延長させることが可能になると期待されています。また、これらのペプチドは化学合成で製造されることから、動物由来、血液由来のウイルス等の混入はありません。 ③ ペプチド投与方法の特徴当社のワクチンはペプチドを用いますが、患者個々人の免疫機構が以前にそれを目印としてがん細胞を攻撃したこと(免疫メモリー)があるかどうかを投与前にバイオマーカー※20で確認し、免疫メモリーのあるペプチドを投与します。それによって、より強い免疫をより早く誘導でき、より高い臨床効果へ結びつくという考え方に基づいています。がんワクチン開発の課題の1つは、免疫反応(CTLの活性化)から活性化されたCTLががん細胞を攻撃し、それが臨床効果として現れるまでにタイムラグがあることと言われています。タイムラグがあるとその間にがん細胞が増殖してしまうからです。当社は、免疫メモリーに着目する独自の投与方法によって、この課題を克服することを考えています。さらに、当社は複数のペプチドを同時に投与します。がん細胞は免疫系の攻撃を免れるために特定の遺伝子発現を変化させて攻撃の目印を消失させたりすることがあります。これは、エスケープ現象、あるいは免疫逃避と呼ばれています。1つのペプチド投与では、最初は効いても、がん細胞の遺伝子変異により、すぐに効かなくなる可能性があると考えられています。一方で、複数の抗原投与ならがん細胞の遺伝子変異が追いつかず、エスケープ現象を回避できる可能性が高くなります。 <複数種の抗原ペプチドを同時投与> (3) 開発パイプライン当社における現在のパイプラインは、臨床開発段階にあるHLA-A24拘束性ペプチドで構成されるがんペプチドワクチンITK-1と、米国において開発中のHLA-A2拘束性ペプチドで構成されるグローバル向けがんペプチドワクチンGRN-1201の2本があります。ITK-1は第Ⅲ相臨床試験中であり、平成27年6月に中間解析を実施し、平成28年4月には症例の獲得活動を終了し、最終解析実施までの観察期間となっております。GRN-1201は、平成27年10月に治験申請(IND)を行い、メラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする米国での第Ⅰ相臨床試験を開始しております。 ITK-1 前立腺がん・ 患者の免疫応答に最適ながんペプチドワクチンを投与・ 国内で進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とする第Ⅲ相臨床試験を実施中(中間解析を実施済み及び症例登録獲得活動終了)・ 富士フイルム株式会社へライセンス・アウト済み [開発とアライアンスの現状]リード開発品のがんペプチドワクチンITK-1は、富士フイルム株式会社へ導出済みで、平成25年6月より日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験が実施されています。平成27年6月に中間解析を実施し、第三者機関である効果安全性評価委員会(臨床試験の進行、安全性データおよび有効性を適時に評価し、治験依頼者に試験の継続、変更または中止を提言することを目的に外部の医師などに依頼して設置することのできる委員会)より本臨床試験の継続が認められ、引き続き試験を進めております。 本臨床試験は、手術・放射線療法・ホルモン療法・化学療法剤の治療を経た進行性の去勢抵抗性前立腺がん患者を対象に、全国の施設で進められています。前立腺がんは中高年男性に多くみられるがんですが、日本においても近年の高齢化や生活環境・食生活の欧米化などにより患者数が増加しており、現在の患者数(有病者数)は約18万人と推定されます(出所:平成23年厚生労働省患者数調査)。平成23年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、平成25年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。前立腺がんの標準的治療であるホルモン療法が無効になった去勢抵抗性前立腺がん患者数も増えています。本臨床試験において、当社は富士フイルム株式会社から治験実施を委託されており、開発協力金を得ております。この臨床試験において有意性が示されれば、本品は日本の当局に製造販売承認申請されます。当社は予め開発進捗に応じて設定したマイルストンが達成されることにより開発マイルストン収入を得て、更に本品の上市後は製品売上の一定割合を販売ロイヤリティ収入として得ます。 [開発品の特徴]ITK-1は、予め化学合成で製造された既製品の12種の抗原ペプチドの中から、投与前の患者の末梢血を用いたバイオマーカー検査によって、各患者に最適な抗原ペプチドを2~4種選択して投与する「テーラーメイド型」がんペプチドワクチンです。テーラーメイド型ワクチンは、バイオマーカーで免疫メモリーのあるペプチドを複数選択し、それらを同時投与することによって、患者個人の免疫反応を効率よく引き出すとともに、がんの免疫逃避を回避するので、臨床効果に結びつく可能性が高くなります。 [これまでの試験成績]久留米大学から基礎研究及び臨床研究を終えたがんペプチドワクチン・シーズ※21を承継し、ITK-1として製剤化及び非臨床試験を実施した後、平成17年度から i)去勢抵抗性エストラムスチン不応答再燃前立腺がん、及び ii)初期治療(術後放射線化学療法または放射線治療)抵抗性膠芽腫(脳腫瘍)※22患者を対象にITK-1の第Ⅰ相臨床試験及び継続投与試験を実施しました。その結果、前立腺がん患者15例と膠芽腫患者12例の計27例での主な副作用は、注射部位の反応で、「発熱」1例及び「注射部位の反応」2例がCTCAE Grade 3※23を認めた以外はCTCAE Grade 2以下であったことから、高い安全性が示唆されました。前立腺がん患者15例での全生存期間の中央値※24(Median Survival Time)は23.8ヶ月を示し(出所:Noguchi M, et al. The Prostate 2011; 71: 470-479)、これは久留米大学の臨床研究をよく再現する成績でした。臨床効果を生物学的に裏付けるワクチン投与患者の免疫応答、すなわちCTLの活性化と、抗体価の上昇も確認されております。また、膠芽腫患者12例の全生存期間中央値は10.6ヶ月で、うち2例で有効例(部分奏功※25;MRIによる画像診断で50%以上の腫瘍縮小)が認められました(出所:Terasaki M, et al. J Clin Oncol 2011; 29: 337-344) 。 GRN-1201 各種固形がん・ グローバル向けがんペプチドワクチン・ 米国で第Ⅰ相臨床試験実施中 ITK-1に続くパイプラインのGRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA(HLA-A2)に結合するペプチドで構成される、米国や欧州を始めグローバルに展開できるがんペプチドワクチンです。米国FDA(米国食品医薬品局)に平成27年10月に治験申請(IND)を行い、現在米国での第Ⅰ相臨床試験を実施中です。第1適応として、メラノーマ(悪性黒色腫)患者を対象としております。CTLはHLAと抗原ペプチドとの結合を介して、ペプチドを攻撃対象の目印として記憶しますが、このHLAにも個人差、人種差があります。日本人に最も多いHLA-A24は日本人全体の60%、欧米ではHLA-A2が全体の50%を占めます。ITK-1はHLA-A24に結合するペプチドであるのに対し、GRN-1201はHLA-A2に結合するペプチドで構成されます。 新規パイプライン久留米大学から継承したITK-1及びGRN-1201に用いているもの以外のがん抗原(治療薬シード)をペプチドワクチンの形態以外に展開することも含めた、新しいがん免疫治療薬の探索研究も進めています。当社の物質特許※26を有するがん抗原と免疫細胞を修飾して活性を高める技術との融合による治療薬または治療法を中心に、日本・海外を問わず、外部の研究機関との共同研究や導入も含め、引き続きがん免疫療法に焦点を当てたシーズを開発していきます。 (4) 許認可、免許及び登録等の状況についてa. 許認可、免許及び登録、行政指導等医薬品販売業許可(福岡県)を平成25年5月27日付で得ています。医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律;日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、平成26年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。 b. 知的財産権の状況知財は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。ITK-1を構成するペプチド物質及び関連特許は、独占的に富士フイルム株式会社に使用許諾されています。GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。 <主要な特許の状況>発明の名称特許登録番号出願国(登録国)権利者上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社7655751米国2554195カナダ腫瘍抗原 7465452米国当社 1207199欧州(注)2381348カナダ4051602日本4097178日本4035845日本4624377日本CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24または-A2結合ペプチド4579581日本当社ヒト癌退縮抗原タンパク質4138073日本当社新規な腫瘍抗原タンパク質SART-3及びその腫瘍抗原ペプチド4436977日本当社4904384日本7541428米国8097697米国8563684米国1116791欧州(注)2340888カナダ99812596.2中国660367韓国がんペプチドワクチン(出願中)米国当社欧州カナダ5706895日本 (注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。 [用語解説] ※1(前立腺がん)前立腺がんとは、前立腺(外腺)に発生する病気、がんの一つです。前立腺は男性の臓器で、膀胱の下で尿道をとり囲むようにしてあります。前立腺がんは50歳代から急速に増え始め、発生の平均年齢が70歳といわれるくらい高齢の男性にみられるがんです。前立腺がんは加齢による男性ホルモンのバランスの崩れや、前立腺の慢性的炎症、食生活や生活習慣などの要因が加わって発生すると言われています。前立腺がんは高齢者で発症することから、高齢化が進む日本を含む先進国で罹患率が増加しており、平成23年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、平成25年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。 ※2(去勢抵抗性前立腺がん)ホルモン療法及び去勢を行っても効かなくなった状態の前立腺がん。前立腺がんの増殖や進行には男性ホルモンであるアンドロゲンとその受容体であり、転写因子として機能するアンドロゲン受容体が重要な役割を果たすことがわかっています。初めは男性ホルモンを抑える内分泌療法(ホルモン療法)が奏功するものの、暫くして再燃を繰り返した末に奏功しなくなり、「去勢抵抗性」状態になります。 ※3(T細胞)白血球のうち、リンパ球と称される細胞の一種で、骨髄で産生され胸腺でリンパ球へと分化される免疫細胞のこと。胸腺(Thymus)の頭文字をとってT細胞と呼ばれます。生体内に侵入した異物から人体を守る免疫応答システムの司令塔の働きを有し、マクロファージや細胞傷害性T細胞(CTL)などの免疫実働細胞に指示・命令を出します。 ※4(細胞傷害性T細胞‐CTL)CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出したりすることによって、殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。 ※5(がん抗原)細胞傷害性T細胞等の免疫細胞が、正常細胞とがん細胞を見分けるための目印になるタンパク質。 ※6(ペプチド)アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。 ※7(TCR)T細胞受容体(T-cell Receptor)。T細胞の細胞膜上に発現している抗原受容体分子。T細胞に活性化シグナルを伝達する機能を持ち、他の細胞表面上にあるHLA分子に結合した抗原ペプチドを認識します。がんワクチンの作用機序においては、T細胞ががん細胞を認識するときと、樹状細胞等の抗原提示細胞から攻撃の目印としてがん抗原ペプチドの提示を受ける(情報を受け取る)ときに、このT細胞受容体を通して相手の細胞に表出されたペプチドとHLAの複合体を認識します。 ※8(CD8)CTLの補助レセプターのこと。抗原認識において、CD8はT細胞表面のT細胞レセプターと会合し、HLA・ペプチド複合体におけるHLAの定常部分に結合します。この結合は、T細胞が機能的な応答を示す際において不可欠であるため、補助レセプターと呼ばれます。 ※9(腫瘍マーカー)がん細胞が作り出す生体因子で、がんの進行とともに増加するため、がんの進行度を評価する指標(マーカー)となるもの。血液中又は尿中における当該物質の濃度を測定し、がんの進行度を評価します。前立腺がんの腫瘍マーカーとしては、PSA(前立腺特異抗原 Prostate Specific Antigen)などがあります。 ※10(樹状細胞)枝状、樹状の形態をした突起を有する細胞であり、抗原提示細胞としての機能を有する免疫細胞の一種です。体内に侵入した細菌やウイルスなどの抗原を細胞内に取り込み消化し、免疫情報をリンパ球に伝えます。がんにおいては、CTLにがん抗原の情報を伝達して、がん細胞への攻撃などの免疫反応を開始させます。 ※11(マクロファージ)白血球の一種であり、動物の組織内に存在するアメーバ状の細胞。生体内に侵入した細菌や異物などを捕食し、消化するため、清掃屋としての役割を有します。また、それらの異物に抵抗するため、それらの異物の情報を免疫情報としてリンパ球に伝える役割も有しています。 ※12(抗原提示細胞)体内に侵入した細菌やウイルスに取り込まれた細胞の断片、がん細胞の断片などを細胞内に取り込み、それらが含む抗原を細胞表面に表出(提示)しながら、近くのリンパ節へ移動し、T細胞に抗原の情報を伝達し活性化させる役割を担う免疫細胞。抗原提示細胞には、樹状細胞やマクロファージなどがあります。 ※13(貪食)細菌や死んだ細胞などの大型の粒子を取り込み、分解や処理などの消化を行うこと。この能力を有する細胞を総称して貪食細胞といい、マクロファージや樹状細胞などがあります。 ※14(HLA)HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。 ※15(CTL前駆細胞)がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)になる前のT細胞のこと。 ※16(アポトーシス)細胞に内在する、あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムにより自らが細胞死を誘導する機構。生体を良い状態に維持するために引き起こされる、生体を調整するための遺伝子によりプログラムされた細胞死のことです。細胞の発生や成長の過程で生じる不要となる細胞を排除する役割だけでなく、がん細胞やウイルスを排除するにあたっても重要な役割を果たします。 ※17(RNA)リボ核酸(ribonucleic acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。 生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。 ※18(逆転写酵素)RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。 ※19(QOL=Quality of Life)医療現場で、病気を治療することだけでなく、患者の生活機能ができるだけ保たれ、人間らしい生活を続けられること。「生活の質」、人間らしい充実した生活、暮らしのレベル。医療分野においては、がん等の長期療養を要する疾患、ならびに消耗の激しい疾患や進行性の疾患において、患者の体へのダメージの大きい治療を継続することによって、患者が自らの理想とする生き方、もしくは社会的にみて「人間らしい生活」と考える生活が実現できない状況を「QOL (生活の質)が低下する」と呼びます。 ※20(バイオマーカー)客観的に人体の状態を測定し評価するための指標であり、観察、診断及び治療の際に使用される。臨床検査値(血液検査、腫瘍マーカーなど)、CTやMRIなどの画像診断データや、臨床試験においてその効果を測定する代替マーカーや前立腺がんの状態を調べるPSA(前立腺特異抗原)は診断マーカーであるなど、また広い意味では体温や脈拍なども含まれます。 ※21(シーズ)研究開発および事業化の対象となる医薬品候補物質。 ※22(膠芽腫)脳腫瘍の中でも最も悪性度の高い(WHO分類により星状細胞腫グレード4)腫瘍のこと。 ※23(CTCAE Grade) Common Terminology Criteria for Adverse Events(有害事象共通用語規準)の略で、臨床試験で発生する「有害事象」を世界共通の尺度で評価・集計するための規準。「有害事象(Adverse Event: AE)」とは、治療に際して観察される、あらゆる意図しないまたは好ましくない徴候や症状、疾患を指し、治療との因果関係は求めないため原疾患による合併症等の症状も治療に起因する副作用もすべてが含まれます。Gradeは、有害事象の重症度を示し、以下の原則に従いGrade1からGrade5まで5段階に分類され、各有害事象の重症度が定義されております。Grade 1 軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ; 治療を要さない Grade 2 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する; 年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限Grade 3 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない; 入院または入院期間の延長を要する; 活動不能/動作不能; 身の回りの日常生活動作の制限Grade 4 生命を脅かす; 緊急処置を要する Grade 5 有害事象による死亡 ※24(全生存期間の中央値)「全生存期間」は、試験に登録された日からあらゆる原因による死亡日までの期間を指します。「全生存期間の中央値(MST; Median Survival Time)」は、試験に登録された症例の生存率が50%になるまでの期間をいいます。全生存期間はがん治療薬の臨床試験の評価項目として、特に後期臨床試験において一般的に用いられています。 ※25(部分奏功)がん治療薬の臨床効果を示す一つの指標に「奏効率」があり、MRI等の画像診断において測定可能ながん組織の断面の長径とそれに直角に交わる最大径の積の総和が50%以下に縮小し、かつ腫瘍による二次病変の増悪がなく、新病変がない場合(2方向測定法)、もしくは断面の最長径の和が30%以上減少し、かつ測定不能病変の明らかな増悪がなく、新病変がない場合(RECIST)が有効(部分奏効)、全ての腫瘍が消失した場合が著効(完全奏効)と判定されます。 ※26(物質特許)新規に生成された医薬品の成分など、一定の機能や効果を持った物質そのものに対して付与される特許権。その特許化された物質については、特許権者又は実施許諾者以外の実施(使用、生産、譲渡等)が制限されることにより、特許権者又は実施許諾者の実施が保護されることになります。