事業の内容
リボミックは、次世代新薬として注目される「アプタマー」(核酸医薬の一種)の研究開発に特化したバイオベンチャーです。独自の創薬技術「RiboART System®」を使い、未だ治療法が確立されていない疾患(Unmet Medical Needs)の治療薬開発を目指しています。特に、軟骨無形成症治療薬「umedaptanib pegol」の臨床開発に注力しており、低用量での良好な身長伸展速度の増加が確認され、希少疾病用医薬品の指定も取得しました。収益は、開発品のライセンス契約による一時金、開発進捗に応じたマイルストーン収入、製品上市後のロイヤルティー収入が中心となります。
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FY2025|27,678 文字|出典 docID: S100W0YJ
3【事業の内容】 当社は、抗体に継ぐ次世代新薬として期待されているアプタマー(核酸医薬の一種)に特化して医薬品の研究開発を行うバイオベンチャーです。当社は、アプタマー創製に関する総合的な技術や知識、経験、ノウハウ等からなる創薬プラットフォームである当社独自の「RiboART SystemⓇ」を活用して、革新的なアプタマー医薬の研究開発(「アプタマー創薬」)を行っております。 当社の企業理念は「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応える」ことであり、その実現のための最重点経営目標を、「自社での臨床Proof of Concept※1の獲得に向けた開発」として、当事業年度においても様々な取り組みを進めてまいりました。 ※1:臨床Proof of Concept(臨床POC):新薬の開発段階において、投与薬剤がヒトでの臨床試験において意図した薬効を有することが示されること。 (1)当事業年度の主要なトピックス①umedaptanib pegol(抗FGF2アプタマー、RBM-007の国際一般名)による臨床開発の狙い 当社では、自社で創製したumedaptanib pegol(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、「軟骨無形成症(Achondroplasia、ACH)」と「滲出型加齢黄斑変性(wet Age-related Macular Degeneration、wet AMD)」の治療薬としての開発を進めております。 ②開発状況、及び既存治療法との比較(ⅰ)軟骨無形成症(ACH)・臨床試験 ACHに関するプロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成(2015年度から合計6年間)を受け、2020年7月~2021年5月にかけて、国内の1施設において第Ⅰ相臨床試験を実施いたしました。さらに、2021年度から3年間は、AMEDの希少疾患用医薬品指定前実用化支援事業として助成を受け、ACHの小児患者(5~14歳)における、慎重の伸びを含む臨床的基礎データの取得と前期第2相臨床試験の被験者選定を目的とした前期第2相観察試験、及びACHの小児患者(5~14歳)でのumedaptanib pegolの有効性と安全性を調べる前期第2相臨床試験と、これに引き続き実施する前期第2相長期投与試験の3つの臨床試験を実施しております。 ACHの小児患者を対象とする前期第2相観察試験(26週)については、東京、岡山及び関西地区の8施設で13名の患者を組み入れ、2024年12月に最終症例の観察期間が完了しました。さらに、前期第2相臨床試験の低用量群(コホート1、6名、週1回の0.3mg/kg皮下投与、26週)の投与も完了いたしましたが、その結果、途中休薬の1名を除いた5名のうち、3名で身長の伸展速度が確認され、うち2名で、被験薬投与前(観察試験)に比較して、+4.6cm、+3.3cm/年と極めて顕著に増加しました。低用量にも関わらず、5名の身長平均伸展速度(+1.5cm/年, Mean AHV)は、現在ACH治療薬として承認されているボックスゾゴⓇ(ボソリチド、BioMarin社製)の身長平均伸展速度+1.7cm/年※2に相当する結果でした。 コホート1を完了した6名のうち、5名の被験者は低用量(0.3mg/kg)の前期第2相長期投与試験に移行しており、継続して被験薬の有効性及び安全性を評価いたします。また、高用量群(コホート2、7名、1回/2週の0.6mg/kg皮下投与、26週)については、前期第2相臨床試験の同意が得られた6名すべての患者が試験を開始しており、現在3例目までの投与が完了し、前期第2相長期投与試験に移行しております。全員の投与は2025年10月に完了する予定です。 また、コホート1での好成績を受け、本邦における希少疾病用医薬品の指定を目的として、厚生労働省との相談を進めておりましたが、2025年4月、希少疾病用医薬品の指定(ODD)を取得いたしました。 なお、これまでにumedaptanib pegolを投与したACH小児患者において、安全性に関する懸念は発生しておりません。 ※2:https://clinicaltrials.gov/study/NCT03197766?tab=results ・ACHの既存治療法と課題 ACHは四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、厚生労働省から難病指定を受けております。umedaptanib pegolは疾患モデルマウスを利用した実験で、体長の短縮を約50%回復する効果を示しました。さらに、軟骨細胞への分化誘導が欠損していることが知られているACH患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)について、umedaptanib pegol存在下で、その分化誘導が回復することも確認いたしました(非臨床POC獲得)※3。本邦ではこれまで治療薬として成長ホルモンが使用されてきましたが、その効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、効果の高い新薬が待ち望まれていました。 ようやく、2022年6月にACH治療薬としてBioMarin社のボックスゾゴⓇの製造販売が承認されました。しかし、その効果は十分とは言えず、毎日の投与が必要となっているため、小児のACH患者にとって、もっと効果が強く、皮下注射の間隔が長く取れる新薬の開発が望まれています。 今般、当社のumedaptanib pegolの臨床試験において、5名中2名の患者において、低用量の1週間1回の皮下投与でボックスゾゴⓇを上回る顕著な成長速度の増加が確認されたことは、ACHの小児患者にとっては朗報となるものです。今後、umedaptanib pegolの用量をさらに増やし投与間隔も伸ばすことで、一段と優れた治療方法を確立していくことを検討しております。 ※3:Kimura T, Bosakova M, Nonaka Y, et al.: RNA aptamer restores defective bone growth in FGFR3-related skeletal dysplasia. Sci. Transl. Med., 13, eaba4226 (2021) (ⅱ)滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)・臨床試験 umedaptanib pegolの複数回投与による臨床POC獲得を目的とした第2相臨床試験(試験略称名:TOFU試験)を米国で実施いたしました(被験者86名)。TOFU試験は、標準治療の抗VEGF治療歴のあるwet AMD患者を対象に、Ⓐumedaptanib pegolの硝子体内注射による単剤投与群、Ⓑ既存の抗VEGF薬であるaflibercept(商品名アイリーアⓇ)とumedaptanib pegolの硝子体内注射による併用投与群、及びⒸafliberceptの硝子体内注射による単剤投与群の3群間で、umedaptanib pegolの有効性及び安全性をafliberceptと比較評価する、無作為化二重盲検試験でした。 また、TOFU試験の進捗に基づき、長期投与に伴う本薬剤の有効性と安全性、及び瘢痕形成を含む網膜の構造異常に対する効果を評価する目的で、umedaptanib pegolを単剤で投与するオープン試験としてのTOFU試験の延長試験(試験略称名:RAMEN試験)を行いました。RAMEN試験では、TOFU試験を完了した22名の被験者に対して、追加のumedaptanib pegolの硝子体内投与を1ヶ月間隔で計4回行いました。さらに、治療歴のないwet AMD患者を対象にumedaptanib pegolの単独投与の有効性及び安全性を評価することを目的に、米国で医師主導治験(試験略称名:TEMPURA試験)を実施いたしました(被験者5名)。 これらの結果は、英国王立眼科学会誌Eyeに2報の論文として掲載されました※4,5。 その要約は以下のとおりです。 [論文要点]・いずれの試験においても、umedaptanib pegolによる安全性に関する問題は発生しなかった。・治療歴のないwet AMD患者においては、umedaptanib pegolの投与により、劇的な治癒例を含め、視力や網膜厚の改善が確認された(TEMPURA試験)。・抗VEGF標準治療歴のあるwet AMD患者においては、umedaptanib pegol単剤投与、及びumedaptanib pegolとafliberceptの併用投与において、aflibercept単剤投与を上回る臨床有効性は観察されなかったものの、umedaptanib pegolの効果はafliberceptに対して非劣勢であり、症状の進行抑制が確認された(TOFU試験)。・すべての試験を通じ、umedaptanib pegolはすでに形成された瘢痕(線維化)を除去する作用はなかったものの、瘢痕形成を抑制する効果が確認された。 [今後の開発方針] 今般、umedaptanib pegolの臨床POCが獲得されたと同時に、umedaptanib pegolは抗VEGF薬に先立つ処方が推奨される“first-line”治療薬となる可能性が示唆されました。現在標準治療となっている抗VEGF薬には、瘢痕化抑制作用がないため、既存療法の大きな Unmet Medical Needs になっています。そのため、今後、umedaptanib pegolを用いた未治療のwet AMD患者に対する臨床試験において瘢痕化抑制効果を証明することができれば、既存療法との重要な差別化ポイントとなり、“first-line”の新薬の実現に近づくものと考えます。そのため、他企業との提携・ファンド等からの資金調達を含めて検討してまいります。 ※4:Pereira DS, Akita K, et al: Safety and tolerability of intravitreal umedaptanib pegol (anti-FGF2) for neovascular age-related macular degeneration (nAMD): a phase 1, open label study. Eye, 2024 Apr;38(6):1149-1154. ※5:Pereira DS, Maturi RK, et al.: Clinical proof of concept for anti-FGF2 therapy in exudative age-related macular degeneration (nAMD): phase 2 trials in treatment-naïve and anti-VEGF pretreated patients.Eye, 2024 Apr;38(6):1140-1148. (ⅲ)増殖性硝子体網膜症(PVR) PVRの疾患内容や当社の取り組みについては、後述「umedaptanib pegol以外の臨床開発優先度の高い自社パイプライン」RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患)にて記述の通りですが、umedaptanib pegolの適応疾患拡大を目指して、日本大学とPVRの薬物療法の開発に関する共同研究も実施しておりましたが、臨床病態に近い有効な動物モデル構築の確立に至る事が出来ず、2025年5月31日付にて共同研究を終了しております。 ③umedaptanib pegol以外の臨床開発優先度の高い自社パイプライン 当社は、既存パイプラインを継続的、重層的に拡大し、中長期的に成長するために、特に優れた薬効が確認されているRBM-006及びRBM-011を、umedaptanib pegolに次ぐ臨床開発優先度の高いパイプラインと位置づけております。 (ⅰ)RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患) RBM-006が対象とする増殖性硝子体網膜症は、網膜剥離や糖尿病網膜症の放置、網膜剥離の手術によって併発する網膜疾患です。多種の細胞が網膜表面や網膜内、硝子体腔内で増殖膜を形成し、当該増殖膜が収縮することによって網膜に皺壁(しゅうへき)形成や牽引性網膜剥離が生じ、重篤な視力障害や失明に至ります。硝子体手術などの治療によっても重篤な視力障害や失明に至る事が多く、また現在のところ有効な医薬品は存在しません。 当社は、日本大学医学部視覚科学分野・長岡泰司教授(現 旭川医科大学教授)との共同研究において、ブタPVRモデルにおける抗オートタキシンアプタマーの効果を検討した結果、当該アプタマーが網膜細胞の増殖を抑制すること、及び当該モデルにおける増殖膜の形成を抑制し網膜剥離を抑制する効果があることが明らかになり、その成果が学術誌International Journal of Molecular SciencesにONLINE掲載されました※6。 Autotaxinは脂質メディエーターであるLPA(リゾホスファチジン酸)の合成酵素であり、緑内障や特発性肺線維症等の複数の疾患においてLPAやAutotaxinの亢進が見られることから、新規治療薬の標的として注目されております。 また、当社は2024年7月に東京大学医学部眼科学教室と眼科疾患に関する2年間の共同研究契約を締結いたしました。本共同研究では、主要な眼科疾患である緑内障や糖尿病網膜症などをターゲットに治療薬の開発を目指します。これらの共同研究の成果が眼科疾患に対して新たな薬物治療の道を切り開くことを期待しております。 ※6:Hanazaki H, Yokota H, et al.: The effect of anti-autotaxin aptamers on the development of proliferative vitreoretinopathy. Int. J. Mol. Sci. 24, 15926 (2023). (ロ)RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー、肺動脈性肺高血圧症) RBM-011が対象とする肺動脈性肺高血圧症は、難病に指定されている病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、高血圧をきたして全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。プロスタグランジンI2誘導体製剤などの既存治療薬が十分な効果を発揮しない患者の予後は依然として極めて悪い状態です。これらの既存治療薬は、いずれも血管を拡張させる作用を持つものであり、血管壁の肥厚を改善する作用を持つ薬はなく、その開発が強く望まれています。 2017年度から3年間は、AMEDの難治性疾患実用化研究事業の一環として、また2020年度からの3年間は、AMEDの治験準備(ステップ1)研究として助成を受け、肺動脈性肺高血圧症の国内での専門医療機関である国立研究開発法人国立循環器病研究センター(国循)との共同研究を進めてまいりました。当該共同研究において、抗IL-21アプタマーが肺動脈性肺高血圧症モデル動物において、肺動脈壁の肥厚を顕著に抑制することが明らかにされました。 また、国循との共同研究と並行して、原薬合成を完了し、PMDAと協議の上、第1相試験のための毒性試験を実施し2023年6月に完了しております。 ④その他のプロジェクト並びに自社創薬に付随する事業(ⅰ)自己免疫疾患に対する治療薬の創製 多くの自己免疫疾患において自己抗体の関与が示唆されており、当社は自己抗体の産生に重要な役割を果たす生体シグナル分子を阻害するアプタマーを非臨床開発ステージのパイプラインに所有しております。 これらを活用することにより自己抗体が原因となる自己免疫疾患に対する効果的な治療薬を創製することが出来ると考えており、国立大学法人北海道大学大学院保健科学研究院とANCA関連血管炎に対する薬理作用を検討するための共同研究契約を2023年10月に締結し、検討を進めて参りました。 本共同研究において、自己抗体の産生と炎症の増強に関与することが予想されるIL-21に着目し、抗IL-21アプタマーの薬理効果を検証した結果、肝臓で観察される死細胞の抑制を含む複数の病態指標を改善する効果が確認されました。本成果は、抗IL-21アプタマーの新しい用途の開発とANCA関連血管炎におけるIL-21の役割の一端の解明に繋がることが期待されるため、肝臓の病態改善が必要となる自己免疫疾患やその他疾患などの新たな適応疾患の検討を進めて参ります。 なお、本共同研究は2025年3月31日の契約満了をもって終了しております。 (ⅱ)AIアプタマープロジェクト アプタマー医薬品の汎用性をさらに活かすため、国立研究開発法人科学技術振興機構から委託されているコンピューター科学を応用した技術開発(JST委託事業)等を継続して進めております。2018年度から開始されたJST委託事業において、当社は早稲田大学と共同し、バイオインフォマティクスを駆使したアプタマー探索技術RaptRankerを開発いたしました※7。さらに、2021年4月から3年間の事業として、「AIアプタマー創薬プロジェクト」がJST委託事業に採択され、当社は早稲田大学と共同で、RNAアプタマーの創薬プロセスを、深層学習などの人工知能技術を活用することで、創薬期間の短縮及び創薬成功確率の向上を実現させることを目指し、研究を進めて参りました。この研究において、変分オートエンコーダを応用した革新的な配列生成技術であるRaptGenを新たに開発いたしました。SELEXで得られた特定の標的に対する多数の標的結合アプタマーの配列を、RaptGenを用いて解析することにより、もともとのSELEXデータに含まれていない、前記標的に強く結合する新規のアプタマー配列の生成も可能となりました。RaptGenについては、2022年6月3日にNature Computational Scienceに掲載されております※8。また、JST委託事業では課題事後評価結果に基づき、研究期間延長及び研究費の追加によって戦略目標達成に大きく貢献する研究成果が期待できる課題に対し1年間の追加支援を実施しており、「AIアプタマー創薬プロジェクト」は、これまでAI(人工知能)を用いたRaptGenの開発等、革新的な成果を挙げていることから、他領域も含む課題の中から追加支援に採択されました。 共同研究を推進した結果、大規模言語モデルを用いたアプタマーの結合活性予測手法の開発に成功し、日本国特許庁に対して、2025年3月に共同で特許出願いたしました。本手法では、従来手法では困難であった任意の配列に対してもアプタマーの活性を予測することが可能であり、SELEX実験には出現しなかった配列も含め、短鎖化や最適化などを実現することが可能となります。 また、本開発技術を当社の「RiboART SystemⓇ」に活用することで、迅速かつ正確に高活性アプタマーの取得が可能となり、研究開発スピードの向上に繋がります。 さらに、2023年度から2025年度の予定で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「量子・AIハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」において、当社と産業技術総合研究所及び早稲田大学を実施予定先とする研究課題「量子・AI次世代創薬」が採択されました。本研究課題では、RNAアプタマーの最適化を題材として、量子計算技術と人工知能を組み合わせた“量子・AIハイブリッド技術”の活用により、従来技術では達成困難な医薬品創生プラットフォームの確立を目指します。 本事業は初期仮説検証フェーズと本格研究フェーズから構成されており、中間時点において約半数のプロジェクトを打切りとするステージゲート審査が設けられておりますが、2024年9月にステージゲート審査を通過し、本格研究フェーズへ移行しております。 また、本事業の取り組みにおいて、イジングマシンを活用により、SELEX実験データに基づいて、核酸配列を最適化するための定式化手法を提案し、実際に配列探索によってアプタマーを取得することに成功しており、この核酸配列を最適化するための定式化手法を日本国特許庁に対して、2024年11月に共同で特許出願いたしました。 ※7:Ishida R, Adachi T, et al.: RaptRanker: in silico RNA aptamer selection from HT-SELEX experiment based on local sequence and structure information. Nucl. Acids. Res., 48, e82 (2020). ※8:Iwano N, Adachi T, et al.: Generative aptamer discovery using RaptGen. Nat. Comput. Sci., 2, 378–386 (2022). (ⅲ)DDSアプタマープロジェクト 当社では、RaptRanker及びRaptGenを含む「RiboART SystemⓇ」をさらに発展させると共に、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用のアプタマー開発に取り組んでおります。DDSとは、体内における薬剤の分布を制御することで、薬剤の効果を最大に高める一方で、薬剤の投与回数及び副作用を軽減するための、薬剤の体内動態を制御する技術です。近年の医薬品開発を取り巻く環境は著しい変化を遂げており、ブロックバスター創出のための疾患発症の標的分子の枯渇や、Unmet Medical Needsの高まりなどを理由に、多数のモダリティ(治療手段)が生まれてきております。特に核酸医薬を中心として、さまざまな生体内バリアを突破させ、標的部位(臓器、組織、細胞等)へと効率的に送り込むにはDDSが必要不可欠となります。 アプタマーは化学合成品であり、抗体、低分子化合物、及びASO、siRNA、mRNAなどの核酸医薬等に化学的に結合させることが可能です。DDSとして利用可能なアプタマーを取得するための期間は1年から2年単位と短いため、アプタマー取得後は、大手製薬企業を含む様々な企業に提供することで、基礎段階より早期に収益をあげていきたいと考えております。 Ⓐ細胞表面受容体アプタマーの光免疫療法への応用 当社の所有するアプタマーの光免疫療法への応用可能性を検討するために学校法人慈恵大学との共同研究契約を2023年9月に締結いたしました。光免疫療法は、標的特異的な薬剤送達と腫瘍に限局した光照射を組み合わせることで、正常組織へのダメージを最小限に抑えた、患者負担の少ない治療法として、がん領域を中心に注目を集めております。共同研究先である学校法人慈恵大学・光永眞人講師らのグループは光免疫療法に関する高い研究実績があり、細胞試験系、動物実験系のノウハウを保有しております。 当社では、膜タンパク質を認識する複数のアプタマーを開発しており、本共同研究においてこれらアプタマーの光免疫療法への応用可能性を検討しております。 Ⓑデングウイルス膜タンパク質アプタマーの核酸デリバリーへの応用 ウイルス感染症の1つであるデングウイルス(以下、「DENV」といいます。)に対して増殖を抑制する核酸分子の開発を東京大学医科学研究所(RNA医科学社会連携研究部門・高橋理貴特任准教授(開発当時)、アジア感染症研究拠点・山本瑞生特任講師)、東京大学医学系研究科(Moi Meng Ling教授)、早稲田大学(浜田道昭教授)と共同で進めてきました。デングウイルス感染症はワクチン開発が進んでいる一方で、未だ有効な予防薬、治療薬がないウイルス感染症です。 DENVは大きく分けて4つの種類(DENV1~DENV4の血清型)が存在しますが、全ての血清型に対して、DENV膜タンパク質に構造相補性で結合するRNAアプタマーを、人工的なウイルス様粒子(VLP,virus-like particle)を標的にした分取方法(VLP-SELEX※9)で作成し、さらにDENV由来のRNAを塩基配列相補性で分解に導くsiRNAを開発いたしました。 これらの核酸分子を1分子として結合させることで、DENVに結合し、DENV感染と共に細胞内に侵入することでウイルス由来のRNAを感染した細胞内で分解する多機能核酸分子「キメラ核酸(siRNA-aptamer複合体)」を開発し、その有効性を疑似的な感染評価系及び実際のウイルス感染評価系を用いて評価してまいりましたが、その結果、キメラ核酸はDENVの増殖を強く抑制できることが分かりました。 また、複数存在する血清型に対しても有効であることを示唆する結果も得られております。本分子の開発戦略は、DENV以外のウイルスにも適応できるものであり、幅広いウイルス感染症の予防及び治療分子の迅速な開発に新たな選択肢を提供することが期待できると考えており、開発を進めております。 これらの結果は、2024年12月25日にNucleic Acids Research Molecular Medicineに掲載されております※10。 ※9:Takahashi M, Amano R, et al.: Nucleic acid ligands act as a PAM and agonist depending on the intrinsic ligand binding state of P2RY2. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 118 No. 18 e2019497118 (2021). ※10:Amano R, Takahashi M, et al.: A chimeric RNA consisting of siRNA and aptamer for inhibiting dengue virus replication. NAR Molecular Medicine. 1(4):ugae025 (2024). (ⅳ)製剤化技術開発 次世代型アプタマー医薬品に関する技術開発を目的として、ポリエチレングリコール(PEG)の代替技術を研究開発しております。PEGは粘性が高く、過酸化物を生成する等、化学的性質に課題があることがわかっており、この課題を解決するため、味の素株式会社との共同研究契約を2023年10月に締結いたしました。 本共同研究では、当社独自の核酸アプタマー化合物作製及び測定技術と、味の素株式会社が有する抗体-薬物複合体製造技術AJICAPⓇを組み合わせ、アプタマーの血中半減期延長技術の開発目指してまいりました。 本共同研究により、免疫グロプリンの部分タンパク質であるFc領域に対して核酸アプタマーを共有結合させたコンジュゲート体を作成したところ、血中半減期を飛躍的に延長させることが出来ることを見出しました。本成果は日本国特許庁に対して2025年3月に特許出願いたしました。 本技術により、核酸アプタマーが抗体医薬と同等の血中滞留性を獲得できれば、アプタマー医薬品の開発が飛躍的に発展するものと考えております。なお、味の素株式会社との共同研究契約は2025年3月31日に終了しております。 さらに、当社は、アプタマーとポリエチルオキサゾリン(PEOZ)とのコンジュゲートが優れた体内動態を示し、PEGの代替化合物となることを見出しました。PEOZはPEGに比べて低粘性で、過酸化物等が生じず、化合物の品質管理が容易であることが知られております。またPEOZは、市販の材料から容易に合成可能であり、将来的に低コストで供給できることが期待されます。当社の検討において、アプタマーとPEOZとのコンジュゲートを作成することにより、現在汎用しているPEGを上回る血中半減期延長効果を示すことが明らかになったため、特許出願をいたしました。 ⑤共同研究事業(ⅰ)化粧品アプタマー事業 三菱商事ライフサイエンス株式会社(旧:ビタミンC60バイオリサーチ株式会社)との共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究を実施してまいりました。 紫外線やストレスなどが引き金となり過剰分泌されることでシワ形成やたるみを引き起こす原因となる可能性がある、免疫系の重要な細胞である好中球から分泌されるエラスターゼ(タンパク質分解酵素)を阻害するアプタマー(抗好中球エラスターゼアプタマー)の創製・開発に成功しており、日本国特許庁に対して、2025年1月に共同で特許出願をいたしました。先方とは引き続き実用化に向けた検討を進めております。 (ⅱ)サウジアラビア事業 サウジアラビア政府の招聘により、当社代表取締役社長中村義一は2024年11月に首都リヤドで開催されたRiyadh Global Medical Biotechnology Summit(RGMBS)2024で講演を行いました。このRGMBS2024サミットは、同国ムハンマド王太子によって牽引されるVISION 2030(2030年までにサウジアラビアを中東でのヘルスケアー産業のNo.1を目指す国家プロジェクト)のプログラムで、この期間中に、キング・アブドラ国際医療研究センター(KAIMRC:King abdullah International Medical Research Center)とアプタマーを使った基礎研究や臨床試験等に関するMOUを締結いたしました(2024年11月)。現在、当社とKAIMRCとの間で、協議を進めております。 (2)当社のビジネスモデルと収益計上の時期①当社のビジネスモデル 当社の事業は、以下の自社創薬と共同研究の2事業より構成されております。創薬探索から臨床開発までをビジネスとして進めております。 (ⅰ)自社開発又は大学等研究機関との共同研究開発(自社創薬事業) 自社又は大学等研究機関と共同研究で医薬候補となるアプタマーを開発し、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、ライセンス対価(基本的に、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。 (ⅱ)製薬企業との共同研究(共同研究事業) 製薬企業とのアプタマー医薬の共同研究開発を実施し、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに、共同研究では、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。上記二つの事業をバランスよく実施することで、以下の成果あるいは効果が期待できます。 1)共同研究を実施することにより、自社創薬のビジネスモデルに伴うライセンス・アウトの不確実性による収益の不安定化というリスクを低減できる2)共同研究先の新薬開発のノウハウ、経験を知得できる3)共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い4)POCを取得した自社開発品のライセンス・アウトにより大きな収益を期待できる5)事業を全体として拡大できる 当社の事業の系統図は以下のとおりです。 <事業の系統図> ※:対価収入のうちライセンス・アウトの対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。 当社は、上記の自社創薬事業に付随する事業として、アプタマー創薬をより効率的に行う為のプラットフォーム技術開発も並行して行っております。 ②事業活動に伴う収益計上の時期 当社のビジネスモデルにおいて、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計上のタイミングを示しています。 <自社創薬及び共同研究における一般的な収益計上のタイミング>※:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。 個別の契約により受取回数等が異なる場合があります。 (3)事業戦略 当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。①自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充と進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。②共同研究を積極的に展開し、早期の収益確保及びライセンス・アウトを目指す。③アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品や疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から臨床POC取得のための臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。④アプタマー創薬における当社の「RiboART SystemⓇ」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製にチャレンジする。1)アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)2)細胞内への取り込み可能な(DDS作用を有する)アプタマー3)細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー4)次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発5)脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用6)ポリエチレングリコール(PEG)の代替となる(体内動態制御技術)アプタマー7)DDS技術を応用した眼科疾患治療薬の開発 ⑤大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチを推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。 (4)医薬品市場におけるアプタマー医薬①アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場 医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞、6)遺伝子に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、並びに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。 そのような中、アプタマーを含む核酸医薬は、作用メカニズム及び投与方法が類似していることから、現在巨大な市場を形成している抗体医薬に続く次世代の医薬品として注目されており、2024年の核酸医薬の全世界の市場規模は129億USDと予想されております。2024年の抗体医薬の全世界の市場規模は2,426億USDとなっており、抗体医薬と比較し、まだまだ小さな市場ですが、抗体医薬との比較優位性から2030年には160億6,000万USDに成長すると予測されております。 ②世界におけるアプタマー医薬品の臨床開発動向 MacugenⓇは世界初のwet AMD治療薬として承認されましたが、その後VEGFを標的とする抗体や可溶性のデコイ(おとり)受容体を利用した、さらに有効な医薬(LucentisⓇ、EyleaⓇ、AvastinⓇ等)が開発され、現在、MacugenⓇはほとんど使用されなくなりました。2004年のMacugenⓇの成功は、アプタマー医薬の開発を鼓舞する意味も大きく、その後、複数のアプタマー医薬候補品が臨床試験に進みました。その中でも注目された二つのアプタマー(REG1、FovistaⓇ)の治験が最終の第3相試験で成功せず、アプタマー創薬に関してネガティブな印象を残し、その後、アプタマー医薬品の開発は世界的に停滞しているようにもみえました。しかし、ようやく最近、補体C5に対するアプタマー(ARC1905: IZERVAYTM)が萎縮型加齢黄斑変性(dry AMD)に有効であることが、第3相試験で証明され、2023年8月米国FDAは製造を承認しました。IZERVAYTMを開発したIVERIC Bio社は、アステラス製薬に総額約8,000億円で買収されております。 現在、当社のumedaptanib pegolを含めて9種類のアプタマーが臨床試験の過程にあり、アプタマー医薬品開発の機運が再び盛り上がっております。これらの動向において、MacugenⓇやIZERVAYTM、そしてumedaptanib pegolがいずれも眼科疾患に対して奏功したことから、アプタマーは眼科疾患にフィットするモダリティ(治療手段)であることが強く示唆されました(下表参照)。眼は閉鎖系の小さな器官であるため硝子体内投与に必要な薬剤量が少なく、全身への薬剤の暴露が少なく安全性にも優れているため、眼科疾患に対する新薬の開発はアプタマーに最適な疾患だと考えております。 眼科疾患には様々な免疫系や炎症系サイトカインや増殖因子が複雑に絡みあい発症することがこれまでの薬理研究によって明らかになってきました。当社保有のアプタマーのパイプラインには、これらの炎症や免疫に関与する因子(FGF2、autotaxin、IL-21、ST2等)に対する阻害剤が多数含まれているため、今後アカデミアや企業との共同研究や自社開発によって、各種の眼科疾患モデル動物でこれらの薬理効果を調べていく予定です。同時に、世界におけるアプタマー医薬品の臨床開発動向を注視してまいります。 アプタマー臨床開発パイプライン:眼科疾患を対象とするアプタマー 核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があり、現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS及び製造と品質管理)が指摘されています。 今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で、通常、抗体と同様に細胞外で機能するため、DDS技術が不要なアプタマー医薬であり、そのアプタマー医薬の中でも、当社のumedaptanib pegolプログラムが世界の最先端に位置していると当社は考えております。アプタマーは、標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体医薬と比較して、その結合活性が非常に高いことや、様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善するという優位点があります。なお、抗体医薬との比較は、次の項を参照下さい。 ③アプタマー医薬と抗体医薬の比較 アプタマー医薬は分子標的薬として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。 以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。 <アプタマー医薬と抗体医薬の比較>(当社作成)項目アプタマー医薬抗体医薬標的タンパク質に対する結合力抗体の1,000倍は可能強い創薬ターゲットの種類極めて多様抗原タンパクに限定製造方法化学合成法細胞培養法コスト(製造コスト低減の容易さ)比較的高価(製造コスト低減の可能性あり)比較的高価(製造コストの低減は難しい)抗原性/免疫排除起きにくい起きる製剤の可逆性・安定性高い低い体内動態(長時間作用)苦手、限界あり良い中和可能(アンチセンスの利用)不可能短期作用性得意困難加工・化学修飾容易困難 (5)知財戦略 創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品及びプラットフォーム技術を適切な方法により保護されていることが、自社開発のみならず他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。 当社の知財戦略は、事業開発(製品パイプライン)に関するものと、研究開発(基本及びプラットフォーム技術)に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。 ①事業開発(自社創薬品目及び共同研究品目)に対する知財戦略 RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)についても、既存特許に対して抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。よってプロジェクトごとの開発品を含む物質特許の取得を前提としています。当社は標的分子との結合力が強くかつ当該標的分子の生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物もカバーする特許権の成立を目指します。具体的には、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する構造や配列を探索し、その共通構造・共通配列を特許化(オープン知財化)することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。さらに非臨床試験・臨床試験の経過により得られるデータに基づき、製剤特許や用途特許の出願を実施し、実質的な特許期間を延ばす戦略を採っています。 一方共同研究品目については、まずは提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。 なお特許出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド等の医薬品市場の規模が大きく、又は将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。 ②研究開発技術(基本及び「RiboART SystemⓇ」)に対する知財戦略 「RiboART SystemⓇ」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化)の中には、特許化が可能な技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化は技術公開という代償を伴い、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難です。 従って、当社では、原則としてアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboART SystemⓇ」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密として秘匿し、クローズ(秘匿化)知財と位置付けて優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。 ③主要な特許の状況 当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。 <自社創薬品目に関する特許>対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-003キマーゼに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/044132(特許第7264487号)当社日米中で特許・維持RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2009/066457 当社・藤本製薬株式会社メキシコのみ特許を維持RBM-006オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/062561(特許第6586669号)当社日本のみ特許を維持 RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992(特許第6634554号)当社日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポール・カナダ・インド・韓国にて特許・維持アプタマー製剤PCT/JP2019/025766(特許第7340264号)当社日本・欧州各国・香港・シンガポール・台湾・中国・メキシコで特許・維持網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤PCT/JP2021/004215当社台湾で特許・維持RBM-010ADAMTS5に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/041746 当社米国・中国・イスラエル・シンガポールにて特許・維持 <ライセンス・アウト品目に関する主要な特許>対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992(特許第6634554号)当社日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポール・カナダ・インド・韓国にて特許・維持アプタマー製剤PCT/JP2019/025766(特許第7340264号)当社日本・欧州各国・香港・シンガポール・台湾・中国・メキシコで特許・維持網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤PCT/JP2021/004215当社台湾で特許・維持 <その他プロジェクトに関する主要な特許>対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-101免疫グロブリンGに結合する核酸とその利用法PCT/JP2006/313811(特許第4910195号)当社日本、米国にて特許維持 <その他>対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況 TGFβ1に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2020/026755当社日本で特許査定 (6)創薬体制①アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究 当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチを継続的に実施してきました。 東京大学との共同研究の他、日本大学、早稲田大学、慈恵大学、北海道大学などのアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、新規アプタマー技術の開発や分析等における連携を図っております。 ②的確な研究開発マネジメント 当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。 ③人的ネットワーク アプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握や国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。 ④アプタマー創製のスペシャリスト 当社では、社員の約3分の2が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣を敷いております。 さらに、製薬及び関連企業で研究開発、臨床開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。 (7)ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み 昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。 ①E(環境) 当社は、医薬品事業に携わる企業として研究資源の管理、並びに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、IT整備によるペーパーレス等の省資源や社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。 ②S(社会) 当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えています。希少疾患である軟骨無形成症治療薬の開発はその一例です。 また、企業として働きやすい環境づくりやダイバーシティを尊重するとともに、学会参加や論文発表を通してイノベーション創出にも貢献したいと考えております。 ③G(企業統治)・コーポレート・ガバナンスの強化 当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しており、コーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。 また、研修やe-learningを積極的に受講する事を通して法令や社内規程を遵守するコンプライアンスを重視するとともに、個別面談や説明会を通して様々なステークホルダーとのコミュニケーションも図ってまいります。 (8)参考資料(技術紹介)①アプタマー医薬について 核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています(RNAの造形力)。この造形力を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。 アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。 ②「RiboART SystemⓇ」 当社の「RiboART SystemⓇ」は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。「RiboART SystemⓇ」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。 「RiboART SystemⓇ」においてコアとなる技術は、1)目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、2)取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。 本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強するとともに、この技術を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。 当社は、他の会社に先んじてSELEX法を利用した研究を開始したことによる現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。 <RiboART SystemⓇの概念図>選抜:目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜分析:選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析加工:アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾を実施試験:細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価評価:動物を用いてアプタマーの毒性を評価 ③当社の新薬開発プロセス新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。 1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニングする基礎・探索研究の段階 2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う非臨床試験の段階 当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)非臨床試験の段階において、「RiboART SystemⓇ」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboART SystemⓇ」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び非臨床試験の期間(1年前後のGLP試験の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。 (9)参考資料(用語解説) アルファベット、50音順DDS薬剤の副作用の原因のひとつに、薬剤が標的臓器以外に作用することがあげられます。DDS(Drug Delivery System)とは、この問題を解決するために、薬剤が標的臓器に、適切な濃度で到達、作用できるように、剤形を工夫したシステムをいいます。 GLP試験GLP(Good Laboratory Practice)とは、医薬品の安全性に関する非臨床試験(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、その他の毒性試験)の実施に関する試験の質を担保する基準のことをいいます。この基準は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」で定められています。なお、日本のGLPと同様な規制は欧米等でも実施されています。このGLPに準拠して行う試験をGLP試験といいます。 POC POC(Proof of Concept)とは、新薬の開発段階において、ある化合物がヒトでの臨床試験(通常は少数の患者を対象としたPhase 2a試験)において意図した薬効を有することが示されることをいいます。 RNA遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミン(T)の代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。そのため、分子生物学の黎明期から、RNAは単なる遺伝情報のコピーに過ぎないという思い込みが、世界的にも支配的でした。しかし、10数年前から、この考えは誤りであることが様々な研究によって明らかになってきました。特に立体構造を作って働く機能性RNAの生体内での役割が注目を集めています。 RNAの造形力当社は、アプタマーとIgGとの結合体の結晶構造をX線解析法によって明らかにしてNucleic Acids Res誌に発表いたしました(2010年、図参照)。その結果、既存のアプタマーではRNAのリン酸の負電荷と、標的タンパク質の正電荷のアミノ酸領域とが電気的な相互作用によって結合するものしか知られていませんでしたが(図の右の事例)、IgGアプタマーはこれまでの常識を覆して、アプタマーが標的にフィットするしなやかな形状を作って、電気的な相互作用を使わずに、水素結合やファンデルワールス力のような多様な結合を利用して強く標的に結合することが明らかにされました。つまり、RNAには、これまで予想もされなかった「しなやかな造形力」が備わっていることの証しです。このような基礎的な研究は、応用という点からも重要です。特に、医薬品の標的となるタンパク質は、必ずしもRNAと結合しやすい正電荷のアミノ酸が表面に多いとは限らないため、これらの基礎研究の成果は、非常に多くのタンパク質がRNAアプタマーの創薬ターゲットとなりうるということを示唆するものです。また標的タンパクの捕捉方法について抗体医薬と比較した場合、アプタマーの特徴は、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」にあります。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。 化学修飾品質や薬効向上のために、化合物の一部の分子や原子を他の分子や原子に置換したり、新たな分子や原子を結合させることをいいます。 核酸医薬1970年代以降、ヒトの遺伝子の研究が進展し、核酸が医薬品になるかもしれないという期待は1980年代に生まれました。しかし、当時は核酸、特にRNAを医薬に応用するための基礎的な技術が整備されておらず、しかもRNAという核酸の特性や立体構造等の学術的な理解も浅かったために、長期にわたる膨大な資金や人材の投入とは裏腹に核酸医薬の開発は実を結びませんでした。しかし、その苦い教訓の中でも、RNAの加工技術の開発という地味な仕事がアカデミアや少数のベンチャー企業で継続されました。その結果、1998年に世界初となるアンチセンス医薬(VitraveneⓇ[一般名 ホミビルセン],エイズ患者のサイトメガロウイルス性網膜炎用の局所投与剤)が承認され、その後、2004年にアプタマー医薬であるマクジェンⓇ、2013年に2番目となるアンチセンス医薬(KynamroⓇ[一般名 ミポメルセン])が家族性高脂血症薬として承認されました。2016年にはデュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象としたEXONDYS51TM[一般名 エテプリルセン]、脊椎性筋萎縮症を対象としたスピンラザⓇ[一般名 ヌシネルセン]が相次いで承認され、さらに、2018年には家族性トランスサイレチン (TTR) アミロイドーシスを対象とした世界初となるsiRNA医薬(オンパットロⓇ [一般名 パチシラン])が承認され、アンチセンスやsiRNAを用いた核酸医薬品の開発が活発に進められています。現在、研究開発中の核酸医薬には下記の表に示すものがあり、その中で主要な核酸医薬品の作用機序について下記の図に示しています。分類基本構造標的作用機序アプタマー一本鎖RNA/DNAタンパク質タンパク質に結合して生理作用を阻害アンチセンス一本鎖DNAmRNAmRNAに結合して翻訳を阻害デコイ核酸二本鎖DNA転写因子転写因子をトラップして転写を阻害リボザイム一本鎖RNAmRNA酵素として働きmRNAを切断し、発現抑制siRNA二本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化による発現抑制miRNA一本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化や翻訳阻害による発現抑制antimiRNA一本鎖RNA/DNAmiRNAmiRNAに結合してその活性を阻害mRNA一本鎖RNAリボゾーム(鋳型作用)タンパク質合成の鋳型として働き、目的とするタンパク質を合成エキソンスキッピング一本鎖RNA/DNAmRNA前駆体遺伝子異常部位をスキップするようにスプライシングを調整CpGオリゴ一本鎖DNATLR自然免疫の活性化 抗体、抗体医薬抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合してその物質を体内から排除するように働くタンパク質をいいます。この排除システムを抗原抗体反応といい、我々の体内に自然に備わっている防御システムです。抗体医薬とはこの仕組を医薬品として応用するもので、具体的には、疾患の原因となっているサイトカインなどのタンパク質を抗原として認識する抗体を産生する細胞(主に動物の)を造り出し、その後、この細胞を培養して該当する抗体を取り出し、精製加工します。但し、ヒト以外の動物、例えばマウスの細胞が産生する抗体(マウス抗体)をそのままヒトに使用できない場合があるため、動物からとれた抗体をヒト型に組み替える技術が発達しています。現在、臨床開発されている抗体医薬の多くは、このヒト化抗体、若しくはヒト抗体です。さらに、複数の抗原を狙ったものや持続時間の長期化のためにPEGと結合させたコンジュゲート抗体なども開発の俎上にのっています。なお、抗体類似の構造を持ち作用・機能面においても抗体と類似するFc融合タンパク質は、広い意味で抗体医薬の一種に含むこともあります。この抗体医薬は、難治疾患に対する確かな効果と安全性、高薬価、さらに技術開発があいまって市場が急伸しており、近年、世界的な開発競争が激化しています。 最適化医薬品の開発過程において、in vitro# 試験等によって薬効のある化合物が得られたとしても、より効果が優れ、安全性の高い化合物を得るための様々な工夫がなされます。このプロセスは最適化と呼ばれます。アプタマー医薬に関しては、長大な核酸配列の中から効果や安全性に関係のない部分をカットする短鎖化、核酸分解酵素の作用を阻止するための化学修飾、腎臓からの早期の排出を抑えるための化合物(ポリエチレングルコールなど)との結合などがその例です。#「in vitro」は「試験管内で」を意味する技術用語 スクリーニング新薬の開発過程において、多数の化合物の中から目的とする化合物(薬効を示し安全性が高いもの)を選び出す作業のことです。 トランスレーショナル・リサーチ大学や研究機関による基礎的な医学・薬学研究の成果を疾患の治療や新薬の開発に応用するための研究をいいます。生命科学やバイオテクノロジーの飛躍的な発展に伴い、世界的に大学での研究成果を早期に実現化に向ける動きが加速しています。薬の場合、例えば新薬の候補となる物質が大学の研究室で発見されたとしても、それをヒトでの臨床試験に繋げるには化合物の最適化(より効果があり、安全性の高いモノに改良すること)、様々な動物実験、各種試験用のサンプルの製造等、多くの課題、ハードルがあります。この基礎から臨床試験に至る一連の橋渡しのための研究がトランスレーショナル・リサーチです。ノウハウ、営業秘密ノウハウ(Know-How)とは「単独で又は結合して、工業目的に役立つある種の技術を完成し、又はそれを実際に応用するために必要な秘密の技術的知識と経験、又はそれらの集積」(国際商業会議所の定義)をいい、営業秘密とは①秘密に管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないこと、の3要件を満たす技術上、営業上の情報(不正競争防止法第2条第6項の定義に基づく)のことです。 非臨床試験臨床試験開始前に行われる試験を非臨床試験と言い、例えば予備毒性試験やGLP試験が含まれます。 分子標的薬生体内で疾患に関連する遺伝子やそれが係わるタンパク質等(サイトカイン、成長因子等)を標的としてその活動を阻害したり活性化することを狙った医薬品をいいます。抗体医薬もアプタマー医薬も分子標的薬の一種といえます。 マイルストーン収入医薬品の開発は、非臨床試験→第1相臨床試験(Phase 1)→第2相臨床試験a(Phase 2a)→第2相臨床試験b(Phase 2b)→第3相臨床試験(Phase 3)→申請→承認→発売というステップを踏んで進行します。開発途上の医薬品のライセンスにおいては、この開発の節目を「マイルストーン」といい、それに到達したとき、あるいはその段階に入るときにライセンスの対価の一部がライセンサーに対し支払われる取引が普及しています。これによる収入を、「マイルストーン収入」といい、開発ステージが進むにつれて、商品化への確率が高まるため、マイルストーンの収入が増加するのが一般的です。 予備毒性試験 GLP試験に入る前に、的確なGLP試験を実施するためのデータ入手を目的として行う試験です。本試験で薬剤の毒性の概略を把握し、GLP試験での投与用量の設定根拠の情報を得ることができます。 ライセンス・アウト特許や開発中の製品に関する権利を他の会社に供与したり、譲渡したりすることを意味し、「導出」ともいいます。供与する権利の内容としては特許の実施権や使用権、さらにかかる特許によって保護されている製品の開発、及び製造・販売する権利などがあります。 臨床試験新薬についての製造販売承認を取得するには、ヒトでの有効性及び安全性を確認する臨床試験が不可欠です。この場合、通常、以下の3段階があります。第一段階は、少数の健常人を対象として、動物実験等により安全性の確認を終えた化合物について、その安全性や体内での動態等を確認する試験であり、第1相臨床試験(Phase 1試験)と呼ばれています。第一段階をクリアすると、次の段階は少数の患者(被験者)を対象として、薬効と安全性を確認する第2相臨床試験(Phase 2試験)に入ります。この試験のステージは、通常、2ステップがとられ、最初のステップは、少数の被験者について主に薬効を確認する段階です。この試験はPhase 2a試験と呼ばれます。さらに被験者数を増やし、有効性と安全性のバランスを取るために最適な用量を確認するための複数の用量を設定して行うPhase 2b試験があります。最後の段階は、多くの被験者を対象として行う第3相臨床試験(Phase 3試験)です。なお、臨床試験は、承認取得の前だけでなく、承認の取得後も当局から承認の条件として実施が求められる場合があります。この時の試験は市販後臨床試験と呼ばれています。
FY2024|27,377 文字|出典 docID: S100TTV4
3【事業の内容】 当社は、抗体に継ぐ次世代新薬として期待されているアプタマー(核酸医薬の一種)に特化して医薬品の研究開発を行うバイオベンチャーです。当社は、アプタマー創製に関する総合的な技術や知識、経験、ノウハウ等からなる創薬プラットフォームである当社独自の「RiboARTシステム」を活用して、革新的なアプタマー医薬の研究開発(「アプタマー創薬」)を行っております。 当社の企業理念は「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応える」ことであり、その実現のための最重点経営目標を、「自社での臨床Proof of Concept※1の獲得に向けた開発」として、当事業年度においても様々な取り組みを進めてまいりました。 ※1:臨床Proof of Concept(臨床POC):新薬の開発段階において、投与薬剤がヒトでの臨床試験において意図した薬効と安全性を有することが示されること。 (1)当事業年度の主要なトピックス①umedaptanib pegol(抗FGF2アプタマー、RBM-007の国際一般名)による臨床開発の狙い 当社では、自社で創製したumedaptanib pegol(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、「滲出型加齢黄斑変性(wet Age-related Macular Degeneration、wet AMD)」と「軟骨無形成症(Achondroplasia、ACH)」の治療薬としての開発を進めております。 ②開発状況、及び既存治療法との比較(i)滲出型加齢黄斑変性(wet AMD) umedaptanib pegolの複数回投与による臨床POC確認を目的とした第2相臨床試験(試験略称名:TOFU試験)を2019年12月~2021年12月にかけて米国で実施いたしました(被験者86名)。TOFU試験は、標準治療の抗VEGF治療歴のあるwet AMD患者を対象に、ⓐumedaptanib pegolの硝子体内注射の単剤投与群、ⓑ既存の抗VEGF薬であるaflibercept(商品名アイリーアⓇ)とumedaptanib pegolの硝子体内注射による併用投与群、及びaflibercept硝子体内注射の単剤投与群の3群間で、umedaptanib pegolの有効性及び安全性をafliberceptと比較評価する、無作為化二重盲検試験でした。 また、TOFU試験の進捗に基づき、長期投与に伴う本薬剤の有効性と安全性、及び瘢痕形成を含む網膜の構造異常に対する効果を評価する目的で、umedaptanib pegolを単剤で投与するオープン試験としてのTOFU試験の延長試験(試験略称名:RAMEN試験)を行いました。RAMEN試験では、TOFU試験を完了した被験者に対して、追加のumedaptanib pegolの硝子体内注射を1ヶ月間隔で計4回行いました(被験者22名)。 さらに、治療歴のないwet AMD患者でのumedaptanib pegol単独治療の有効性及び安全性を評価することを目的に、米国で医師主導治験(試験略称名:TEMPURA試験)を実施いたしました(被験者5名)。 これらの結果は、2023年11月及び12月に英国王立眼科学会誌Eyeに2報の論文として掲載されました※2,3。 その要約は以下のとおりです。 [論文要点]・いずれの試験においても、umedaptanib pegolによる安全性に関する問題は発生しなかった。・治療歴のないwet AMD患者においては、umedaptanib pegolの投与により、劇的な治癒例を含め、視力の網膜厚の改善が確認された(TEMPURA試験)。・抗VEGF治療歴が長いwet AMD患者に対しては、umedaptanib pegol単剤投与、及びumedaptanib pegolとafliberceptの併用投与において、aflibercept単剤投与を上回る臨床有効性は観察されなかったものの、病気の進行抑制が確認された(TOFU試験)。・抗VEGF治療歴が短いwet AMD患者に対しては、umedaptanib pegolの効果はafliberceptに対して非劣勢であった(TOFU試験)。・抗VEGF薬による標準治療を受けた患者を作用機序の異なるumedaptanib pegol治療に切り替えると、若干の視力低下が確認された(RAMEN試験)。・すべての試験を通じ、umedaptanib pegolはすでに形成された瘢痕(線維化)を除去する作用はなかったものの、瘢痕形成を抑制する効果が確認された。 [今後の開発方針] 今般、umedaptanib pegolの臨床POC獲得が確認されたと同時に、umedaptanib pegolは抗VEGF薬に先立つ処方が推奨される”first-line”治療薬となる可能性が示唆されました。現在標準治療となっている抗VEGF薬には、瘢痕化抑制作用がないため、既存療法の大きなUnmetニーズになっています。そのため、今後、umedaptanib pegolを用いた未治療のwet AMD患者に対する臨床試験において瘢痕化抑制効果を証明することができれば、既存療法との重要な差別化ポイントとなり、”first-line”の新薬の実現に近づくものと考えます。そのため、他企業との提携等を含めて検討してまいります。 ※2:Pereira, DS, Akita, K, Bhisitkul, RB, Nishihata T, Ali Y, Nakamura E, Nakamura Y: Safety and tolerability of intravitreal umedaptanib pegol (anti-FGF2) for neovascular age-related macular degeneration (nAMD): a phase 1, open label study. Eye, 2024 Apr;38(6):1149-1154. DOI: 10.1038/s41433-023-02849-6. Epub 2023 Dec 1. ※3:Pereira, DS, Maturi, RK, Akita K, Mahesh V, Bhisitkul RB, Nishihata T, Sakota E, Ali Y, Nakamura E, Bezwada P, Nakamura Y: Clinical proof of concept for anti-FGF2 therapy in exudative age-related macular degeneration (nAMD): phase 2 trials in treatment-naïve and anti-VEGF pretreated patients.Eye, 2024 Apr;38(6):1140-1148. doi: 10.1038/s41433-023-02848-7.Epub 2023 Nov 30. (ⅱ)軟骨無形成症(ACH)・臨床試験 ACHに関するプロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成(2015年度から合計6年間)を受け、2020年7月~2021年5月にかけて、国内の1治験施設において第1相臨床試験を実施いたしました。この結果を受け、2021年度から3年間は、AMEDの希少疾患用医薬品指定前実用化支援事業として、ACHの小児患者における、身長の伸びを含む臨床的基礎データの取得と前期第2相臨床試験の被験者選定を目的とした前期第2相観察試験、及びACHの小児患者でのumedaptanib pegolの有効性と安全性を調べる前期第2相臨床試験と、これに引き続き実施する前期第2相長期投与試験の3つの治験計画を進めております。現在、東京、岡山及び関西地区の8施設において前期第2相観察試験が開始され、さらにそれに続く前期第2相臨床試験、前期第2相長期投与試験に移行しております。 ・ACHの既存治療法と課題 ACHは四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、厚生労働省から難病指定を受けています。umedaptanib pegolは疾患モデルマウスを利用した実験で、体長の短縮を約50%回復する効果を示しました。さらに、軟骨細胞への分化誘導が欠損していることが知られているACH患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)について、umedaptanib pegol存在下で、その分化誘導が回復することも確認しました(非臨床POC獲得)。本邦ではこれまで治療薬として成長ホルモンが使用されてきましたが、その効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、効果の高い新薬が待ち望まれていました。また、2022年6月に本邦でもACH治療薬としてBIOMARIN社のボックスゾゴⓇの製造販売が承認されましたが、ボックスゾゴⓇは毎日の投与が必要となっております。そのため、患者への投与間隔を1,2週間と長くとれる、当社のumedaptanib pegolへの期待は引き続き高いものと考えております。 なお、umedaptanib pegolを用いた上記動物モデル実験や、iPS細胞を用いた試験の結果については、2021年5月に、米国科学誌Science Translational Medicine電子版に論文として掲載されました※4。 ※4:Kimura T, Bosakova M, Nonaka Y, Hruba E, Yasuda K, Futakawa S, Kubota T, Fafilek B, Gregor T, Abraham SP, Gomoklova R, Belaskova S, Pesl M, Csukasi F, Duran I, Fujiwara M, Kavkova M, Zikmund T, Kaiser J, Buchtova M, Krakow D, Nakamura Y, Ozono K, Krejci P. RNA aptamer restores defective bone growth in FGFR3-related skeletal dysplasia. Sci. Transl. Med., 13, eaba4226 (2021) 自社での第2相試験の実施により臨床POCが獲得されれば、ACHに対する新規治療剤の提供に至る第一歩になるとともに、新薬候補品としてのumedaptanib pegolの価値が高まり、ライセンス収益の拡大及び将来に向けた発展に寄与するものと考えております。同時に、wet AMDのような硝子体という局所投与のみならず、アプタマー医薬品として、全身投与による疾患治療の世界初の事例となることで、今後のアプタマー医薬品の開発に大きく弾みがつくことが期待されます。なお、これまでACHの小児患者へのumedaptanib pegolの投与において安全性等の問題は発生しておりません。 (ⅲ)増殖性硝子体網膜症(PVR) PVRの疾患内容や当社の取り組みについては、後述「umedaptanib pegol以外の臨床開発優先度の高いパイプライン」RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患)にて記述の通りですが、umedaptanib pegolの適応疾患拡大を目指して、日本大学とPVRの薬物療法の開発に関する共同研究も2023年2月より実施しております。 ③umedaptanib pegol以外の臨床開発優先度の高い自社パイプライン 当社は、既存パイプラインを継続的、重層的に拡大し、中長期的に成長するために、特に優れた薬効が確認されているRBM-011及びRBM-006を、umedaptanib pegolに次ぐ重点開発プログラムと位置づけております。 また、アプタマーに適した疾患領域である網膜疾患に注力するため、RBM-003、RBM-010及びRBM-009に関しては、優先順位を変更し、以下にパイプラインの優先順位順に概要をまとめております。 (i)RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー、肺動脈性肺高血圧症) RBM-011が対象とする肺動脈性肺高血圧症は、難病に指定されている病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、高血圧をきたして全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。プロスタグランジンI2誘導体製剤などの既存治療薬が十分な効果を発揮しない患者の予後は依然として極めて悪い状態です。これらの既存治療薬は、いずれも血管を拡張させる作用を持つものであり、血管壁の肥厚を改善する作用を持つ薬はなく、その開発が強く望まれております。 2017年度から3年間は、AMEDの難治性疾患実用化研究事業の一環として、また2020年度からの3年間は、AMEDの治験準備(ステップ1)研究として助成を受け、肺動脈性肺高血圧症の国内での専門医療機関である国立研究開発法人国立循環器病研究センター(国循)との共同研究を進めてまいりました。当該共同研究において、抗IL-21アプタマーが肺動脈性肺高血圧症動物モデルにおいて、肺動脈壁の肥厚を顕著に抑制することが明らかにされました。 また、国循との共同研究と並行して、原薬合成を完了し、PMDAと協議の上、第1相試験のための毒性試験を2023年6月に完了しております。 (ⅱ)RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患) RBM-006が対象とする増殖性硝子体網膜症は、網膜剥離や糖尿病網膜症の放置、網膜剥離の手術によって併発する網膜疾患です。多種の細胞が網膜表面や網膜内、硝子体腔内で増殖膜を形成し、当該増殖膜が収縮することによって網膜に皺壁(しゅうへき)形成や牽引性網膜剥離が生じ、重篤な視力障害や失明に至ります。硝子体手術などの治療によっても重篤な視力障害や失明に至る事が多く、また現在のところ有効な医薬品は存在しません。 当社は、日本大学医学部視覚科学分野・長岡泰司教授(現 旭川医科大学教授)との共同研究において、ブタPVR モデルにおけるRBM-006の効果を検討した結果、当該アプタマーが網膜細胞の増殖を抑制すること、及び当該モデ ルにおける増殖膜の形成を抑制し網膜剥離を抑制する効果があることが明らかになり、その成果が学術誌 International Journal of Molecular SciencesにONLINE掲載されました※5。 Autotaxinは脂質メディエーターであるLPA(リゾホスファチジン酸)の合成酵素であり、緑内障等の網膜疾患や特発性肺線維症を始めとする線維化や炎症に由来する複数の疾患においてLPAやAutotaxinの亢進が見られ、新規治療薬の標的として注目されております。 本研究成果が網膜疾患に対して新たな薬物治療の道を切り開くことを期待しております。 ※5:Hanazaki H, Yokota H, Yamagami S, Nakamura Y, Nagaoka T: The effect of anti-autotaxin aptamers on the development of proliferative vitreoretinopathy. Int. J. Mol. Sci. 24, 15926 (2023). ④その他のプロジェクト並びに自社創薬に付随する事業(i)RBM-003(抗(Chymase)キマーゼアプタマー、心不全等) 心筋梗塞直後に、Chymase(キマーゼ)は肥満細胞と心筋細胞等の組織損傷部位から分泌され、アンジオテンシンⅡ等の活性化をとおして、心筋に悪影響を及ぼすことが知られております。ハムスターを用いた冠動脈結紮による心筋梗塞急性期モデルにおいて、抗キマーゼアプタマーであるRBM-003の投与は、梗塞後のキマーゼ陽性肥満細胞の集積及びキマーゼ活性を抑制し、顕著な心機能改善効果を示しました。※6さらに、RBM-003は、冠動脈結紮の前投与のみならず、後投与においても顕著な心機能改善効果を示し、冠動脈結紮を行った実験動物(ハムスター)の生存率を著しく改善いたしました。RBM-003は他のキマーゼ阻害剤と比べて非常に強い酵素阻害活性を持つことが確認されており、急性心不全に対する注射薬の開発を目指しております。 ※6:Jin D, Takai S, Nonaka Y, Yamazaki S, Fujiwara M, Nakamura Y. A chymase inhibitory RNA aptamer improves cardiac function and survival after myocardial infarction. Mol. Ther. Nucl. Acids,14,41-51(2019) (ⅱ)RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー、変形性関節症等) RBM-010は、当社と大正製薬株式会社との共同研究で創製されたアプタマー製品で、変形性関節症の増悪因子の一つであるADAMTS5(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 5)の働きを抑制する作用があります。変形性関節症は、種々の原因により、膝や足の付け根、肘、肩等の関節に痛みや腫れ等の症状が生じ、その後関節の変形をきたす病気です。現在、治療法としては痛みや腫れを和らげる薬の服用や関節置換術などの手術しかなく、寛解させる薬はありません。本邦には、変形性関節症を有している人が、2,500万人以上、また、世界では、変形性関節症の患者が約2億4,000万人以上と推定されており、今後高齢化に伴いさらに増加が予測されております。 RBM-010は、関節での軟骨成分の分解を促進しているADAMTS5を抑制することにより、変形性関節症の症状進行を遅らせることが期待でき、現在、局所投与による徐放性製剤の開発を目指しております。 (ⅲ)RBM-009(抗ST2(IL-33 receptor)アプタマー、重症喘息) RBM-009が対象とする重症喘息は、頻繁な息切れや呼吸困難によって日常生活や睡眠が妨害され、生活の質の低下を余儀なくされる疾患です。喘息の治療には、吸入ステロイドや気管支拡張薬に加え、抗体医薬品(抗IgE抗体、抗IL-5/5R抗体、抗IL-4/13R抗体)や経口ステロイド薬が使用されますが、重症喘息患者の中にはこれらの薬剤でもコントロールできない患者が一定数存在しております。 ST2の刺激分子であるIL-33は炎症カスケードの上流因子であり、様々な免疫細胞に発現するST2を刺激して炎症を惹起します。最近では免疫細胞の一つであるILC2が、コントロール不良の一つの要因であるステロイド抵抗性に寄与しており、その抵抗制メカニズムにST2が関与することが示唆されております。当社ではST2をブロックすることにより複数の機序により惹起される炎症を抑え、既存薬が良好な反応を示さない喘息も治療できる可能性があると考えております。 (ⅳ)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬アプタマーの開発 COVID-19の克服のためには、既に使用されているワクチンに加えて、治療薬の開発が不可欠であると考え、当社はCOVID-19に対するアプタマー創薬研究を継続してきましたが、ワクチンや治療薬を用いた対処法が充足しつつある状況に鑑み、現時点で治療薬開発のためにさらなるリソースを投入することはリスクを伴うと判断し、開発の優先度を変更いたしました。 当社では、AI(人工知能)を用いたアプタマー探索ツールRaptGenを活用することにより、新規の抗SARS-Cov-2アプタマーの創出に成功いたしました。生化学的な統合解析により、野生型ウイルスのスパイクタンパク質のみではなく、Omicron株を始めとする様々なバリアントや、SARS-CovやMERS-Cov等のコロナウイルスに対しても結合活性を有することが明らかになりました。 その結果をとりまとめた論文が2024年3月専門学術誌Biochemistryの電子版に掲載されました。※7 また、現在当社で進めておりますドラッグデリバリーシステム(DDS)の一環として、当アプタマーに殺傷性薬剤を統合し、スパイクタンパク質を標的とした直接あるいは間接的に無力化する技術開発が可能ではないかと考えており、今後、新たなコロナウイルス感染症によるパンデミックが生じた際には、本研究成果を生かしてより迅速な医薬品開発につなげることができると考えております。 ※7:Adachi T,Nakamura S,Michishita A,Kawahara D,Yamamoto M,Hamada M,Nakamura Y:RaptGen-Assisted Generation of an RNA/DNA Hybrid Aptamer against SARS-Cov-2 Spike Protein. Biochemistry 63:906-912 (2024). (ⅴ)自己免疫疾患に対する治療薬の創製 多くの自己免疫疾患において自己抗体の関与が示唆されており、当社は自己抗体の産生に重要な役割を果たす生体シグナル分子を阻害するアプタマーを非臨床開発ステージのパイプラインに所有しております。 これらを活用することにより自己抗体が原因となる自己免疫疾患に対する効果的な治療薬を創製することが出来ると考えており、国立大学法人北海道大学大学院保健科学研究院とANCA関連血管炎に対する薬理作用を検討するための共同研究契約を締結いたしました。 本共同研究において、自己抗体産生やそれに伴う炎症反応を抑制することを示すことができれば、ANCA関連血管炎のUnmet Medical Needsを満たす薬剤の開発につながるとともに、他の自己免疫疾患に対する適応拡大も期待されます。 (ⅵ)AIアプタマープロジェクト: アプタマー医薬品の汎用性をさらに活かすため、国立研究開発法人科学技術振興機構から委託されているコンピューター科学を応用した技術開発(以下、「JST委託事業」といいます。)等を継続して進めております。2018年度から開始されたJST委託事業において、当社は早稲田大学と共同し、バイオインフォマティクスを駆使したアプタマー探索技術(RaptRanker)を開発いたしました※8。さらに、2021年4月から3年間の事業として、「AIアプタマー創薬プロジェクト」がJSTに採択され、当社は早稲田大学と共同で、RNAアプタマーの創薬のプロセスを、深層学習などの人工知能技術を活用することで、創薬期間の短縮及び創薬成功確率の向上を実現させることを目指し、研究を進めております。この研究におきまして、変分オートエンコーダを応用した革新的な配列生成技術であるRaptGenを新たに開発いたしました。SELEXで得られた特定の標的に対する多数の標的結合アプタマーの配列を、RaptGenを用いて解析することにより、もともとのSELEXデータに含まれていない、前記標的に強く結合する新規のアプタマー配列の生成も可能となりました。RaptGenについては、2022年6月3日にNature Computational Scienceに掲載されております※9。また、JST委託事業では課題事後評価結果に基づき、研究機関延長及び研究費の追加によって戦略目標達成に大きく貢献する研究成果が期待できる課題に対し1年間の追加支援を実施しており、「AIアプタマー創薬プロジェクト」は、これまでAI(人工知能)を用いたアプタマー探索ツールRaptGenの開発等、革新的な成果を挙げていることから、他領域も含む課題の中から追加支援に採択されました。 さらに、2023年度から2025年度の予定で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「量子・AIハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」において、当社と産業技術総合研究所及び早稲田大学を実施予定先とする研究課題「量子・AI次世代創薬」が採択されました。本研究課題では、RNAアプタマーの最適化を題材として、量子計算技術と人工知能を組み合わせた”量子・AIハイブリッド技術”の活用により、従来技術では達成困難な医薬品創製プラットフォームの確立を目指します。 ※8:Ishida R, Adachi T, Yokota A, Yoshihara H, Aoki K, Nakamura Y, Hamada M. RaptRanker: in silico RNA aptamer selection from HT-SELEX experiment based on local sequence and structure information. Nucl. Acids. Res., 48, e82 (2020) ※9:Iwano N, Adachi T, Aoki K, Nakamura Y, Hamada M. : Generative aptamer discovery using RaptGen. Nat. Comput. Sci., 2, 378–386 (2022) (ⅶ)DDSアプタマープロジェクト: 当社では、RaptRanker及びRaptGenを含むRiboARTシステムをさらに発展させると共に、現在、RiboARTシステムを用いて、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用のアプタマー開発に取り組んでおります。DDSとは、体内における薬剤の分布を制御することで、薬剤の効果を最大に高める一方で、薬剤の投与回数及び副作用を軽減するための、薬剤の体内動態を制御する技術です。近年の医薬品開発を取り巻く環境は著しい変化を遂げており、ブロックバスター創出のための疾患発症の標的分子の枯渇や、Unmet Medical Needsの高まりなどを理由に、多数のモダリティ(治療手段)が生まれてきております。特に核酸医薬を中心として、さまざまな生体内バリアを突破させ、標的部位(臓器、組織、細胞等)へと効率的に送り込むにはDDSが必要不可欠となります。 アプタマーは化学合成品であり、抗体、低分子化合物、及びASO、siRNA、mRNAなどの核酸医薬等に化学的に結合させることが可能です。DDSとして利用可能なアプタマーを取得するための期間は1年から2年単位と短いため、アプタマー取得後は、迅速に特許出願を行うと共に、大手製薬企業を含む様々な企業に提供することで、基礎段階より早期に収益をあげていきたいと考えております。 DDSアプタマープロジェクトの一環として、当社の所有するアプタマーの光免疫療法への応用可能性を検討するために学校法人慈恵大学との共同研究契約を2023年9月に締結いたしました。光免疫療法は、標的特異的な薬剤送達と腫瘍に限局した光照射を組み合わせることで、正常組織へのダメージを最小限に抑えた、患者負担の少ない治療法として、がん領域を中心に注目を集めております。共同研究先である学校法人慈恵大学 光永眞人講師らのグループは光免疫療法に関する高い研究実績があり、細胞試験系、動物実験系のノウハウを保有しております。 当社では、膜タンパク質を認識する複数のアプタマーを開発しており、本共同研究においてこれらアプタマーの光免疫療法への応用可能性を検討しております。 (ⅷ)製剤化技術開発 次世代型アプタマー医薬品に関する技術開発を目的として、ポリエチレングリコール(以下「PEG」といいます。)の代替技術を研究開発しております。PEGは粘性が高く、過酸化物を生成する等、科学的性質に課題があることがわかっており、この課題を解決するため、味の素株式会社との共同研究契約を2023年10月に締結いたしました。 本共同研究では、当社独自の核酸アプタマー化合物作製及び測定技術と味の素株式会社が有する抗体-薬物複合体製造技術AJICAPⓇを組み合わせ、アプタマーの体内動態制御技術の確立を目指します。 さらに、当社は、アプタマーとポリエチルオキサゾリン(以下、「PEOZ」といいます。)とのコンジュゲートが優れた体内動態を示し、PEGの代替化合物となることを見出しました。PEOZはPEGに比べて低粘性で、過酸化物等が生じず、化合物の品質管理が容易であることが知られております。またPEOZは、市販の材料から容易に合成可能であり、将来的に低コストで供給できることが期待されます。当社の検討において、アプタマーとPEOZとのコンジュゲートを作成することにより、現在汎用しているPEGを上回る血中半減期延長効果を示すことが明らかになったため、特許出願するに至りました。 ⑤共同研究事業 三菱商事ライフサイエンス株式会社(旧:ビタミンC60バイオリサーチ株式会社)との共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究を実施し、有望なアプタマーの創製に成功しており、先方にてアプタマー評価を継続して行っております。(2)当社のビジネスモデルと収益計上の時期①当社のビジネスモデル 当社の事業は、以下の自社創薬と共同研究の2事業より構成されております。創薬探索から臨床開発までをビジネスとして進めております。 (i)自社開発又は大学等研究機関との共同研究開発(自社創薬事業) 自社又は大学等研究機関と共同研究で医薬候補となるアプタマーを開発し、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、ライセンス対価(基本的に、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。 (ii)製薬企業との共同研究(共同研究事業) 製薬企業とのアプタマー医薬の共同研究開発を実施し、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに、共同研究では、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。上記二つの事業をバランスよく実施することで、以下の成果あるいは効果が期待できます。 1) 共同研究を実施することにより、自社創薬のビジネスモデルに伴うライセンス・アウトの不確実性による収益の不安定化というリスクを低減できる2) 共同研究先の新薬開発のノウハウ、経験を知得できる3) 共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い4) POCを取得した自社開発品のライセンス・アウトにより大きな収益を期待できる5) 事業を全体として拡大できる 当社の事業の系統図は以下のとおりです。 ※:対価収入のうちライセンス・アウトの対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。 当社は、上記の自社創薬事業に付随する事業として、アプタマー創薬をより効率的に行う為のプラットフォーム技術開発も並行して行っております。 ②事業活動に伴う収益計上の時期 当社のビジネスモデルにおいて、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計上のタイミングを示しています。 注:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。 個別の契約により受取回数等が異なる場合があります。 (3)事業戦略 当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。① 自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充と進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。② 共同研究を積極的に展開し、早期の収益確保及びライセンス・アウトを目指す。③ アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品や疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から臨床POC取得のための臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。④ アプタマー創薬における当社の「RiboARTシステム」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製にチャレンジする。1) アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)2) 細胞内への取り込み可能な(DDS作用を有する)アプタマー3) 細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー4) 次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発5) 脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用⑤ 大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチを推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。 (4)医薬品市場におけるアプタマー医薬①アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場 医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞、6)遺伝子に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、並びに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。 そのような中、アプタマーを含む核酸医薬は、作用メカニズム及び投与方法が類似していることから、現在巨大な市場を形成している抗体医薬に続く次世代の医薬品として注目されており、2023年の核酸医薬の全世界の市場規模は124億8,673万USDと予想されており、抗体医薬の全世界の市場規模は1,279億9,000万USD(2022年推定)に比べてまだまだ小さな額ですが、抗体医薬との比較優位性から2029年には、155億3,836万USD規模に成長すると想定されています。②世界におけるアプタマー医薬品の臨床開発動向 MacugenⓇは世界初のwet AMD治療薬として承認されましたが、その後VEGFを標的とする抗体や可溶性のデコイ(おとり)受容体を利用した、さらに有効な医薬品(LucentisⓇ、EyleaⓇ、AvastinⓇ等)が開発され、現在、MacugenⓇはほとんど使用されなくなりました。2004年のMacugenⓇの成功は、アプタマー医薬の開発を鼓舞する意味も大きく、その後、複数のアプタマー医薬候補品が臨床試験に進みました。その中でも注目された二つのアプタマー(REG1、FovistaⓇ)の治験が最終の第3相試験で成功せず、アプタマー創薬に関してネガティブな印象を残し、その後、アプタマー医薬品の開発は世界的に停滞しているようにもみえました。しかし、ようやく最近、補体C5に対するアプタマー(ARC1905: IZERVAYTM)が萎縮型加齢黄斑変性(dry AMD)に有効であることが、第3相試験で証明され、2023年8月米国FDAは製造を承認しました。IZERVAYTMを開発したIVERIC Bio社は、アステラス製薬に総額約8,000億円で買収されております。 現在、当社のumedaptanib pegolを含めて9種類のアプタマーが臨床試験の過程にあり、アプタマー医薬品開発の機運が再び盛り上がっております。これらの動向において、MacugenⓇやIZERVAYTM、そしてumedaptanib pegolがいずれも網膜疾患に対して奏功したことから、アプタマーは網膜疾患にフィットするモダリティ(治療手段)であることが示唆されました※10(下表参照)。※10:中村義一.アプタマー:加齢黄斑変性への適応. Clinical Neuroscience Vol. 41 (No.5) 630-634 (2023) アプタマー臨床開発パイプライン:網膜疾患を対象とするアプタマー 核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があり、現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS及び製造と品質管理)が指摘されています。 今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で、通常、抗体と同様に細胞外で機能するため、DDS技術が不要なアプタマー医薬であり、そのアプタマー医薬の中でも、当社のumedaptanib pegolプログラムが世界の最先端に位置していると当社は考えております。アプタマーは、標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体医薬と比較して、その結合活性が非常に高いことや、様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善するという優位点があります。なお、抗体医薬との比較は、次の項を参照下さい。 ③アプタマー医薬と抗体医薬の比較 アプタマー医薬は分子標的薬として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。 以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。 (当社作成)項目アプタマー医薬抗体医薬標的タンパク質に対する結合力抗体の1,000倍は可能強い創薬ターゲットの種類極めて多様抗原タンパクに限定製造方法化学合成法細胞培養法コスト(製造コスト低減の容易さ)比較的高価(製造コスト低減の可能性あり)比較的高価(製造コストの低減は難しい)抗原性/免疫排除起きにくい起きる製剤の可逆性・安定性高い低い体内動態(長時間作用)苦手、限界あり良い中和可能(アンチセンスの利用)不可能短期作用性得意困難加工・化学修飾容易困難 (5)知財戦略創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品が特許により保護されていることが、自社開発のみならず他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。当社の知財戦略は、開発する製品に関するものと、開発技術に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。 ①自社創薬品目及び共同研究品目に対する知財戦略RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)についても、既存特許に対して抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。よってプロジェクトごとの開発品を含む物質特許の取得を前提としています。当社は標的分子との結合力が強くかつ当該標的分子の生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物もカバーする特許権の成立を目指します。具体的には、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する構造や配列を探索し、その共通構造・共通配列を特許化することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。さらに非臨床試験・臨床試験の経過により得られるデータに基づき、製剤特許や用途特許の出願を実施し、実質的な特許期間を延ばす戦略を採っています。一方共同研究品目については、まずは提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。なお特許出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド等の医薬品市場の規模が大きく、又は将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。 ②「RiboARTシステム」に対する知財戦略「RiboARTシステム」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化)の中には、特許化が可能な技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化は技術公開という代償を伴い、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難です。従って、当社では、原則としてアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboARTシステム」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密として秘匿し、優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。 ③主要な特許の状況当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。 対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-003キマーゼに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/044132(特許第7264487号)当社欧中韓等に移行済、日米で特許・維持RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2012/75252 当社・藤本製薬株式会社米国のみ維持RBM-006オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/062561(特許第6586669号)当社日本のみ特許を維持オートタキシンアプタマーを含む増殖性硝子体網膜症の予防用医薬組成物PCT/JP2024/000339当社・日本大学2024年1月11日 国際出願RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992(特許第6634554号)当社日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポール・カナダ・インド・韓国にて特許・維持アプタマー製剤PCT/JP2019/025766(特許第7340264号)当社日本・シンガポールで特許・維持、台湾で特許査定、米欧中韓等に移行済網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤PCT/JP2021/004215当社日米欧中韓に移行済RBM-010ADAMTS5に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/041746 当社日欧中韓等に移行済み、米国・シンガポールにて特許・維持、イスラエルで特許査定RBM-011IL-21に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2021/023023当社日米欧中韓等に移行済 対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2012/75252当社・藤本製薬株式会社米国のみ維持RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992(特許第6634554号)当社日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポール・カナダ・インド・韓国にて特許・維持アプタマー製剤PCT/JP2019/025766(特許第7340264号)当社日本・シンガポールで特許・維持、台湾で特許査定、米欧中韓等に移行済網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤PCT/JP2021/004215当社日米欧中韓に移行済 対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-101免疫グロブリンGに結合する核酸とその利用法PCT/JP2006/313811(特許第4910195号)当社日本、米国にて特許維持 対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況 アプタマー及びポリエチルオキサゾリンのコンジュゲート2024-012285当社2024年1月30日出願 アデノ随伴ウイルスセロタイプ9に対するアプタマー及びその利用2024-040542当社・東京大学2024年3月14日出願 TGFβ1に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2020/026755当社日米で係属中 (6)創薬体制①アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチを継続的に実施してきました。東京大学との共同研究は現在も継続し、同医科学研究所内に「RNA医科学」社会連携研究部門を設置して、同研究所内の動物試験施設や、その他の高度試験装置を使用できる恵まれた環境を維持してきました。これにより技術、信頼性の観点から、高レベルの研究体制を整備しております。当社は、東京大学以外にも、国立循環器病研究センター、チェコ共和国のMasaryk大学、日本大学、早稲田大学、慈恵大学、北海道大学などのアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、新規アプタマー技術の開発や分析等における連携を図っております。 ②的確な研究開発マネジメント当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。 ③人的ネットワークアプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握や国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。 ④アプタマー創製のスペシャリスト当社では、社員の約三分の二が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣を敷いております。さらに、大手製薬企業で研究開発、臨床開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。 (7)ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。 ①E(環境)当社は、医薬品事業に携わる企業として研究資源の管理、並びに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、IT整備によるペーパーレス等の省資源や社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。 ②S(社会)当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えています。希少疾患である軟骨無形成症治療薬の開発はその一例です。また、企業として働きやすい環境づくりやダイバーシティを尊重するとともに、学会参加や論文発表を通してイノベーション創出にも貢献したいと考えております。 ③G(企業統治)・コーポレート・ガバナンスの強化当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しており、コーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。また、研修やe-learningを積極的に受講する事を通して法令や社内規程を遵守するコンプライアンスを重視するとともに、個別面談や説明会を通して様々なステークホルダーとのコミュニケーションも図ってまいります。 (8)参考資料(技術紹介)①アプタマー医薬について核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています(RNAの造形力)。この造形力を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。 ②「RiboARTシステム」当社の「RiboARTシステム」は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。「RiboARTシステム」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。「RiboARTシステム」においてコアとなる技術は、1)目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、2)取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強するとともに、この技術を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。当社は、他の会社に先んじてSELEX法を利用した研究を開始したことによる現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。 選抜:目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜分析:選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析加工:アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾を実施試験:細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価評価:動物を用いてアプタマーの毒性を評価 ③当社の新薬開発プロセス新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。 1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニングする基礎・探索研究の段階 2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う非臨床試験の段階 当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)非臨床試験の段階において、「RiboARTシステム」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboARTシステム」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び非臨床試験の期間(1年前後のGLP試験の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。 (9)参考資料(用語解説) アルファベット、50音順DDS薬剤の副作用の原因のひとつに、薬剤が標的臓器以外に作用することがあげられます。DDS(Drug Delivery System)とは、この問題を解決するために、薬剤が標的臓器に、適切な濃度で到達、作用できるように、剤形を工夫したシステムをいいます。 GLP試験GLP(Good Laboratory Practice)とは、医薬品の安全性に関する非臨床試験(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、その他の毒性試験)の実施に関する試験の質を担保する基準のことをいいます。この基準は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」で定められています。なお、日本のGLPと同様な規制は欧米等でも実施されています。このGLPに準拠して行う試験をGLP試験といいます。 POC POC(Proof of Concept)とは、新薬の開発段階において、ある化合物がヒトでの臨床試験(通常は少数の患者を対象としたPhase 2a試験)において意図した薬効と安全性の基準をクリアすることをいいます。 RNA遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミン(T)の代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。そのため、分子生物学の黎明期から、RNAは単なる遺伝情報のコピーに過ぎないという思い込みが、世界的にも支配的でした。しかし、10数年前から、この考えは誤りであることが様々な研究によって明らかになってきました。特に立体構造を作って働く機能性RNAの生体内での役割が注目を集めています。 RNAの造形力当社は、アプタマーとIgGとの結合体の結晶構造をX線解析法によって明らかにしてNucleic Acids Res誌に発表いたしました(2010年、図参照)。その結果、既存のアプタマーではRNAのリン酸の負電荷と、標的タンパク質の正電荷のアミノ酸領域とが電気的な相互作用によって結合するものしか知られていませんでしたが(図の右の事例)、IgGアプタマーはこれまでの常識を覆して、アプタマーが標的にフィットするしなやかな形状を作って、電気的な相互作用を使わずに、水素結合やファンデルワールス力のような多様な結合を利用して強く標的に結合することが明らかにされました。つまり、RNAには、これまで予想もされなかった「しなやかな造形力」が備わっていることの証しです。このような基礎的な研究は、応用という点からも重要です。特に、医薬品の標的となるタンパク質は、必ずしもRNAと結合しやすい正電荷のアミノ酸が表面に多いとは限らないため、これらの基礎研究の成果は、非常に多くのタンパク質がRNAアプタマーの創薬ターゲットとなりうるということを示唆するものです。また標的タンパクの捕捉方法について抗体医薬と比較した場合、アプタマーの特徴は、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」にあります。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。 化学修飾品質や薬効向上のために、化合物の一部の分子や原子を他の分子や原子に置換したり、新たな分子や原子を結合させることをいいます。 核酸医薬1970年代以降、ヒトの遺伝子の研究が進展し、核酸が医薬品になるかもしれないという期待は1980年代に生まれました。しかし、当時は核酸、特にRNAを医薬に応用するための基礎的な技術が整備されておらず、しかもRNAという核酸の特性や立体構造等の学術的な理解も浅かったために、長期にわたる膨大な資金や人材の投入とは裏腹に核酸医薬の開発は実を結びませんでした。しかし、その苦い教訓の中でも、RNAの加工技術の開発という地味な仕事がアカデミアや少数のベンチャー企業で継続されました。その結果、1998年に世界初となるアンチセンス医薬(VitraveneⓇ[一般名 ホミビルセン],エイズ患者のサイトメガロウイルス性網膜炎用の局所投与剤)が承認され、その後、2004年にアプタマー医薬であるマクジェンⓇ、2013年に2番目となるアンチセンス医薬(KynamroⓇ[一般名 ミポメルセン])が家族性高脂血症薬として承認されました。2016年にはデュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象としたEXONDYS51TM[一般名 エテプリルセン]、脊椎性筋萎縮症を対象としたスピンラザⓇ[一般名 ヌシネルセン]が相次いで承認され、さらに、2018年には家族性トランスサイレチン (TTR) アミロイドーシスを対象とした世界初となるsiRNA医薬(オンパットロⓇ [一般名 パチシラン])が承認され、アンチセンスやsiRNAを用いた核酸医薬品の開発が活発に進められています。現在、研究開発中の核酸医薬には下記の表に示すものがあり、その中で主要な核酸医薬品の作用機序について下記の図に示しています。分類基本構造標的作用機序アプタマー一本鎖RNA/DNAタンパク質タンパク質に結合して生理作用を阻害アンチセンス一本鎖DNAmRNAmRNAに結合して翻訳を阻害デコイ核酸二本鎖DNA転写因子転写因子をトラップして転写を阻害リボザイム一本鎖RNAmRNA酵素として働きmRNAを切断し、発現抑制siRNA二本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化による発現抑制miRNA一本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化や翻訳阻害による発現抑制antimiRNA一本鎖RNA/DNAmiRNAmiRNAに結合してその活性を阻害mRNA一本鎖RNAリボゾーム(鋳型作用)タンパク質合成の鋳型として働き、目的とするタンパク質を合成エキソンスキッピング一本鎖RNA/DNAmRNA前駆体遺伝子異常部位をスキップするようにスプライシングを調整CpGオリゴ一本鎖DNATLR自然免疫の活性化 抗体、抗体医薬抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合してその物質を体内から排除するように働くタンパク質をいいます。この排除システムを抗原抗体反応といい、我々の体内に自然に備わっている防御システムです。抗体医薬とはこの仕組を医薬品として応用するもので、具体的には、疾患の原因となっているサイトカインなどのタンパク質を抗原として認識する抗体を産生する細胞(主に動物の)を造り出し、その後、この細胞を培養して該当する抗体を取り出し、精製加工します。但し、ヒト以外の動物、例えばマウスの細胞が産生する抗体(マウス抗体)をそのままヒトに使用できない場合があるため、動物からとれた抗体をヒト型に組み替える技術が発達しています。現在、臨床開発されている抗体医薬の多くは、このヒト化抗体、若しくはヒト抗体です。さらに、複数の抗原を狙ったものや持続時間の長期化のためにPEGと結合させたコンジュゲート抗体なども開発の俎上にのっています。なお、抗体類似の構造を持ち作用・機能面においても抗体と類似するFc融合タンパク質は、広い意味で抗体医薬の一種に含むこともあります。この抗体医薬は、難治疾患に対する確かな効果と安全性、高薬価、さらに技術開発があいまって市場が急伸しており、近年、世界的な開発競争が激化しています。 最適化医薬品の開発過程において、in vitro# 試験等によって薬効のある化合物が得られたとしても、より効果が優れ、安全性の高い化合物を得るための様々な工夫がなされます。このプロセスは最適化と呼ばれます。アプタマー医薬に関しては、長大な核酸配列の中から効果や安全性に関係のない部分をカットする短鎖化、核酸分解酵素の作用を阻止するための化学修飾、腎臓からの早期の排出を抑えるための化合物(ポリエチレングルコールなど)との結合などがその例です。#「in vitro」は「試験管内で」を意味する技術用語 スクリーニング新薬の開発過程において、多数の化合物の中から目的とする化合物(薬効を示し安全性が高いもの)を選び出す作業のことです。 トランスレーショナル・リサーチ大学や研究機関による基礎的な医学・薬学研究の成果を疾患の治療や新薬の開発に応用するための研究をいいます。生命科学やバイオテクノロジーの飛躍的な発展に伴い、世界的に大学での研究成果を早期に実現化に向ける動きが加速しています。薬の場合、例えば新薬の候補となる物質が大学の研究室で発見されたとしても、それをヒトでの臨床試験に繋げるには化合物の最適化(より効果があり、安全性の高いモノに改良すること)、様々な動物実験、各種試験用のサンプルの製造等、多くの課題、ハードルがあります。この基礎から臨床試験に至る一連の橋渡しのための研究がトランスレーショナル・リサーチです。ノウハウ、営業秘密ノウハウ(Know-How)とは「単独で又は結合して、工業目的に役立つある種の技術を完成し、又はそれを実際に応用するために必要な秘密の技術的知識と経験、又はそれらの集積」(国際商業会議所の定義)をいい、営業秘密とは①秘密に管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないこと、の3要件を満たす技術上、営業上の情報(不正競争防止法第2条第6項の定義に基づく)のことです。 非臨床試験臨床試験開始前に行われる試験を非臨床試験と言い、例えば予備毒性試験やGLP試験が含まれます。 分子標的薬生体内で疾患に関連する遺伝子やそれが係わるタンパク質等(サイトカイン、成長因子等)を標的としてその活動を阻害したり活性化することを狙った医薬品をいいます。抗体医薬もアプタマー医薬も分子標的薬の一種といえます。 マイルストーン収入医薬品の開発は、非臨床試験→第1相臨床試験(Phase 1)→第2相臨床試験a(Phase 2a)→第2相臨床試験b(Phase 2b)→第3相臨床試験(Phase 3)→申請→承認→発売というステップを踏んで進行します。開発途上の医薬品のライセンスにおいては、この開発の節目を「マイルストーン」といい、それに到達したとき、あるいはその段階に入るときにライセンスの対価の一部がライセンサーに対し支払われる取引が普及しています。これによる収入を、「マイルストーン収入」といい、開発ステージが進むにつれて、商品化への確率が高まるため、マイルストーンの収入が増加するのが一般的です。 予備毒性試験 GLP試験に入る前に、的確なGLP試験を実施するためのデータ入手を目的として行う試験です。本試験で薬剤の毒性の概略を把握し、GLP試験での投与用量の設定根拠の情報を得ることができます。 ライセンス・アウト特許や開発中の製品に関する権利を他の会社に供与したり、譲渡したりすることを意味し、「導出」ともいいます。供与する権利の内容としては特許の実施権や使用権、さらにかかる特許によって保護されている製品の開発、及び製造・販売する権利などがあります。 臨床試験新薬についての製造販売承認を取得するには、ヒトでの有効性及び安全性を確認する臨床試験が不可欠です。この場合、通常、以下の3段階があります。第一段階は、少数の健常人を対象として、動物実験等により安全性の確認を終えた化合物について、その安全性や体内での動態等を確認する試験であり、第1相臨床試験(Phase 1試験)と呼ばれています。第一段階をクリアすると、次の段階は少数の患者(被験者)を対象として、薬効と安全性を確認する第2相臨床試験(Phase 2試験)に入ります。この試験のステージは、通常、2ステップがとられ、最初のステップは、少数の被験者について主に薬効を確認する段階です。この試験はPhase 2a試験と呼ばれます。さらに被験者数を増やし、有効性と安全性のバランスを取るために最適な用量を確認するための複数の用量を設定して行うPhase 2b試験があります。最後の段階は、多くの被験者を対象として行う第3相臨床試験(Phase 3試験)です。なお、臨床試験は、承認取得の前だけでなく、承認の取得後も当局から承認の条件として実施が求められる場合があります。この時の試験は市販後臨床試験と呼ばれています。
FY2023|23,984 文字|出典 docID: S100R7M4
3【事業の内容】 当社は、抗体に継ぐ次世代新薬として期待されているアプタマー(核酸医薬の一種)に特化して医薬品の研究開発を行うバイオベンチャーです。当社は、アプタマー創製に関する総合的な技術や知識、経験、ノウハウ等からなる創薬プラットフォームである当社独自の「RiboARTシステム」を活用して、革新的なアプタマー医薬の研究開発(「アプタマー創薬」)を行っております。 当社の企業理念は「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応える」ことであり、その実現のための最重点経営目標を、「自社での臨床Proof of Concept※1の獲得に向けた開発」として、当事業年度においても様々な取り組みを進めてまいりました。 ※1:臨床Proof of Concept(臨床POC):新薬の開発段階において、投与薬剤がヒトでの臨床試験において意図した薬効と安全性を有することが示されること。 (1)当事業年度の主要なトピックス①RBM-007(抗FGF2アプタマー)の臨床開発について 自社で創製したRBM-007(抗FGF2アプタマー)の臨床試験の推進に積極的に取り組みました。RBM-007は高齢者の失明の原因ともなりうる滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)と難治性の希少疾患として知られる軟骨無形成症(四肢短縮による低身長を伴う)を対象疾患としております。さらに、RBM-007の適応症拡大を目指し、日本大学医学部のグループと、増殖性硝子体網膜症(PVR)に関する共同研究を開始しました。 (i)滲出型加齢黄斑変性(wet AMD) wet AMDを対象にした臨床試験として、RBM-007の複数回投与による臨床POC確認を目的とした第2相臨床試験(試験略称名:TOFU試験)を米国で実施いたしました(被験者86名)。TOFU試験は、標準治療の抗VEGF治療歴のあるwet AMD患者を対象に、①RBM-007硝子体内注射の単剤投与群、②既存の抗VEGF薬であるアイリーアⓇとRBM-007の硝子体内注射による併用投与群、及び③アイリーアⓇ硝子体内注射の単剤投与群の3群間で、RBM-007の有効性及び安全性をアイリーアⓇと比較評価する、無作為化二重盲検試験でした。 また、TOFU試験の進捗に基づき、長期投与に伴う本薬剤の有効性と安全性、及び瘢痕形成を含む網膜の構造異常に対する効果を評価する目的で、RBM-007を単剤で投与するオープン試験としてのTOFU試験の延長試験(試験略称名:RAMEN試験)を行いました。RAMEN試験では、TOFU試験を完了した22名の被験者に対して、追加のRBM-007の硝子体内投与を1ヶ月間隔で計4回行いました。 さらに、治療歴のないwet AMD患者でのRBM-007単独治療の有効性及び安全性を評価することを目的に、米国で医師主導治験(試験略称名:TEMPURA試験)が実施されました(被験者5名)。 その結果、事後解析の結果も含めて、以下の知見が明らかになりました(これらの詳細な解析結果は論文として公開する予定です)。・治療歴のない半数以上のwet AMD患者において臨床薬効(視力の改善 and/or 網膜厚の減少)が確認された(TEMPURA試験)・抗VEGF治療歴のあるwet AMD患者に対しては、RBM-007単剤投与、及びRBM-007とアイリーアⓇの併用投与において、アイリーアⓇ単剤投与を上回る臨床有効性は観察されなかったものの、主要評価項目である視力及び網膜構造の変化は、3つの治療グループともわずかであり、RBM-007による病気の進行抑制効果が確認された(TOFU試験とRAMEN試験)・これら3試験により、当初目的であるRBM-007の臨床POCに準ずる有効性が確認された 以上の結果から、RBM-007は、今後、抗VEGF薬にはない瘢痕化抑制作用を明らかにすることができれば、治療歴のないwet AMD患者に対する新規治療剤となり得ると考えています。 ・現状について: TOFU/RAMEN/TEMPURA の3本の第2相臨床試験の結果から、治療歴のないwet AMD患者を対象とする臨床試験の実施が望まれます。当社としては、そのためのライセンス・アウト、もしくはパートナリングの実現に注力してまいりました。この結果、2022年12月に、Rico International (Beijing) Medicine Technology Co., Ltd.及びShanghai Huirui Medical Co., Ltd.との間で、中国地域における wet AMD等を適応疾患とする臨床開発を担う合弁会社設立に関して基本合意に至りました。今後、合弁会社設立契約の締結後に、当社は、合弁会社での資金調達や臨床開発の進展により、マイルストーンと上市後のロイヤルティーを合わせて、最大で1億US$を受け取る見込みです。注:今回の基本合意書は法的拘束力があるものではないことが明記されており、本契約締結の過程で変更等がなされる可能性があります。(ii)軟骨無形成症(ACH)・臨床試験 軟骨無形成症に関するプロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成(2015年度から合計6年間)を受け、当該助成の下、2020年7月~2021年5月にかけて、国内の1治験施設において第1相臨床試験を実施いたしました。この結果を受け、ACHの小児患者における、身長の伸びを含む臨床的基礎データの取得と前期第2相臨床試験の被験者選定を目的とした前期第2相観察試験、及びACHの小児患者でのRBM-007の有効性と安全性を調べる前期第2相臨床試験と、これに引き続き実施する前期第2相長期投与試験の3つの治験計画届書を、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA: Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)に提出しました。現在、東京及び関西地区の5施設において前期第2相観察試験が開始され、さらにそれに続く前期第2相臨床試験での最初の小児患者にRBM-007の皮下投与が行われました。今後も治験実施施設を増やしつつ臨床試験を進めてまいります。 なお、本プロジェクトは2021年度から3年間は、AMEDの希少疾患用医薬品指定前実用化支援事業として実施しております。 ・ACHの既存治療法と課題 ACHは四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、厚生労働省から難病指定を受けています。RBM-007は疾患モデルマウスを利用した実験で、体長の短縮を約50%回復する効果を示しました。さらに、軟骨細胞への分化誘導が欠損していることが知られているACH患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)について、RBM-007存在下で、その分化誘導が回復することも確認しました(非臨床POC獲得)。本邦ではこれまで治療薬として成長ホルモンが使用されてきましたが、その効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、効果の高い新薬が待ち望まれていました。また、2022年6月にACH治療薬としてBIOMARIN社のボックスゾゴⓇが本邦でも製造販売が承認されましたが、ボックスゾゴⓇは毎日の投与(皮下注射)が必要となっております。そのため、患者への投与間隔を1,2週間と長くとれる、当社のRBM-007への期待は引き続き高いものと考えております。 なお、RBM-007を用いた上記モデル動物実験や、iPS細胞を用いた試験の結果については、2021年5月に、米国科学誌Science Translational Medicine電子版に論文として掲載されました※2。 ※2:Kimura T, Bosakova M, Nonaka Y, Hruba E, Yasuda K, Futakawa S, Kubota T, Fafilek B, Gregor T, Abraham SP, Gomoklova R, Belaskova S, Pesl M, Csukasi F, Duran I, Fujiwara M, Kavkova M, Zikmund T, Kaiser J, Buchtova M, Krakow D, Nakamura Y, Ozono K, Krejci P. RNA aptamer restores defective bone growth in FGFR3-related skeletal dysplasia. Sci. Transl. Med., 13, eaba4226 (2021) 自社での第2相試験の実施により臨床POCが獲得されれば、ACHに対する新規治療剤の提供に至る第一歩になるとともに、新薬候補品としてのRBM-007の価値が高まり、ライセンス収益の拡大及び将来に向けた発展に寄与するものと考えております。同時に、wet AMDのような硝子体という局所投与のみならず、アプタマー医薬品として、全身投与による疾患治療の世界初の事例となることで、今後のアプタマー医薬品の開発に大きく弾みがつくことが期待されます。 (iii)増殖性硝子体網膜症(PVR) PVRは網膜剥離や糖尿病網膜症の放置、網膜剥離の手術によって起こる網膜疾患です。多種の細胞が網膜表面、網膜内、硝子体腔内で増殖膜を形成し、当該増殖膜が収縮することによって網膜に皺襞(すうへき)形成や牽引性網膜剥離が生じ、失明に至ります。硝子体手術などの治療によっても重篤な視力障害や失明に至る事が多く、また現在のところ有効な予防法は存在しません。 ・非臨床試験 RBM-007の適応症拡大を目指して、当社は日本大学医学部視覚科学系眼科学分野の長岡泰司教授らのグループとRBM-007を用いたPVRの予防に関する共同研究を開始しました。長岡泰司教授らのグループは網膜疾患治療に高い実績があると同時に、PVRの動物(豚眼)モデルを保有しており、すでに当社開発のアプタマーのひとつについて、顕著なPVR予防効果が示唆されています(特許出願済み)。本共同研究によってRBM-007にPVR予防効果が確認された場合は、速やかに第2相臨床試験を開始することが可能となるため、当社にとって重要な適応拡大になることが期待されます。 ②RBM-007以外の臨床開発優先度の高い自社パイプライン 当社は、既存パイプラインを継続的、重層的に拡大し、中長期的に成長するために、特に優れた薬効が確認されているRBM-011、RBM-003、RBM-010及びRBM-009を、RBM-007に次ぐ重点開発プログラムと位置づけております。 (i)RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー、肺動脈性肺高血圧症) RBM-011が対象とする肺動脈性肺高血圧症は、難病に指定されている病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、高血圧をきたして全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。プロスタグランジンI2誘導体製剤などの既存治療薬が十分な効果を発揮しない患者の予後は依然として極めて悪い状態です。これらの既存治療薬は、いずれも血管を拡張させる作用を持つものであり、血管壁の肥厚を改善する作用を持つ上市薬はなく、その開発が強く望まれています。 2017年度から3年間は、AMEDの難治性疾患実用化研究事業の一環として、また2020年度からの3年間は、AMEDの前記事業の治験準備(ステップ1)研究として助成を受け、肺動脈性肺高血圧症の国内での専門医療機関である国立研究開発法人国立循環器病研究センター(国循)との共同研究を進めてきました。当該共同研究において、抗IL-21アプタマーが肺動脈性肺高血圧症モデル動物において、肺動脈壁の肥厚を顕著に抑制することが明らかにされました。 また、国循との共同研究と並行して、原薬の合成を完了し、PMDAと協議の上、当事業年度において第1相試験のための毒性試験を開始して、2023年6月に終了いたしました。 (ii)RBM-003(抗キマーゼアプタマー、心不全) 心筋梗塞直後に、Chymase(キマーゼ)は肥満細胞と心筋細胞等の組織損傷部位から分泌され、アンジオテンシンⅡ等の活性化をとおして、心筋に悪影響を及ぼすことが知られています。ハムスターを用いた冠動脈結紮による心筋梗塞急性期モデル(ハムスターモデル)において、抗キマーゼアプタマーであるRBM-003の投与は、梗塞後のキマーゼ陽性肥満細胞の集積及びキマーゼ活性を抑制し、顕著な心機能改善効果を示しました※3。さらに、RBM-003は、冠動脈結紮の前投与のみならず、後投与においても顕著な心機能改善効果を示し、前記ハムスターモデルにおける生存率を著しく改善いたしました。現在、急性心不全に対する医薬品は存在せず、Unmet Medical Needsのある疾患となっています。RBM-003は他のキマーゼ阻害剤と比べて非常に強い酵素阻害活性を持つことが確認されており、急性心不全に対する即効性の注射薬の開発に取り組んでおります。 ※3:Jin D, Takai S, Nonaka Y, Yamazaki S, Fujiwara M, Nakamura Y. A chymase inhibitory RNA aptamer improves cardiac function and survival after myocardial infarction. Mol. Ther. Nucl. Acids, 14, 41-51 (2019) (iii)RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー、変形性関節症) RBM-010は、当社と大正製薬株式会社との共同研究で創薬された製品で、変形性関節症の増悪因子の一つであるADAMTS5(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 5)の働きを抑制する作用があります。変形性関節症は、種々の原因により、膝や足の付け根、肘、肩等の関節に痛みや腫れ等の症状が生じ、その後関節の変形をきたす病気です。現在、治療法としては、痛みや腫れを和らげる薬の服用や関節置換術などの手術しかなく、寛解させる薬はありません。本邦には、変形性関節症を有している人が、2,500万人以上、また、世界では、変形性関節症の患者が約2億4,000万人以上と推定されており、今後高齢化に伴いさらに増加が予測されています。 RBM-010は、関節での軟骨成分の分解を促進しているADAMTS5を抑制することにより、変形性関節症の症状進行を遅らせることが期待でき、現在、局所投与による徐放性製剤の開発に取り組んでおります。 (iv)RBM-009(抗ST2 (IL-33 receptor) アプタマー、重症喘息) RBM-009が対象とする重症喘息は、頻繁な息切れや呼吸困難によって日常生活や睡眠が妨害され、生活の質の低下を余儀なくされる疾患です。喘息の治療には、吸入ステロイドや気管支拡張薬に加え、抗体医薬品(抗IgE抗体、抗IL-5/5R抗体、抗IL-4/13R抗体)や経口ステロイド薬が使用されますが、重症喘息患者の中にはこれらの薬剤でもコントロールできない患者が一定数存在しています。 ST2の刺激分子であるIL-33は炎症カスケードの上流因子であり,様々な免疫細胞に発現するST2を刺激して炎症を惹起します。最近では免疫細胞の一つであるILC2が、コントロール不良の一つの要因であるステロイド抵抗性に寄与しており、その抵抗性メカニズムにST2が関与することが示唆されております。当社ではST2をブロックすることにより複数の機序で惹起される炎症を抑え、既存薬が良好な反応を示さない喘息も治療できる可能性があると考えており、開発に取り組んでおります。 ③その他のプロジェクト(i)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬アプタマーの開発 COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質(Sタンパク質)と、ヒトの細胞表面にある受容体(ACE2タンパク質)との結合を阻害し、細胞への侵入を阻止するアプタマーの創製を試みております。 現在までに、多数の候補配列情報を取得、表面プラズモン共鳴法を用いたスクリーニングによって、抗Sタンパク質アプタマーの候補(Sタンパク質に対する結合活性、及び宿主受容体ACE2への結合阻害活性を持つアプタマー)を複数特定することに成功しておりますが(ヒット化合物の取得)、動物モデルを用いた感染阻害試験において、SARS-CoV-2ウイルスの感染を阻害するのに十分な効果をもったアプタマーは未だ確認されていません。近年世界的に進展したSARS-CoV-2研究によれば、ヒト細胞表面へのウイルスの結合には複数の作用機序があることが明らかになっているため、取得したアプタマーを用いた新たな抗ウイルス戦略を検討しております。 (ii)共同研究契約 ビタミンC60バイオリサーチ株式会社との共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究を実施し、現在までに有望なアプタマーの創製に成功しており、実用化へ一歩進んでおります。 2021年2月、あすか製薬株式会社と、産婦人科領域で重要な役割を担う特定のホルモン受容体を標的とした創薬研究開発に関する複数年間の共同研究開発契約を締結し、共同研究を進めてまいりましたが、2023年9月、共同研究開発契約に定めた研究ステップの期間が満了したことに伴い、両社協議の上、本共同研究開発を終了することを決定いたしました。 (iii)継続中の自社創薬プロジェクト・AIアプタマープロジェクト: アプタマー医薬品の汎用性をさらに活かすため、国立研究開発法人科学技術振興機構から委託されているコンピューター科学を応用した技術開発(以下、「JST委託事業」)等を継続して進めております。2018年度から開始されたJST委託事業において、当社は早稲田大学と共同し、バイオインフォマティクスを駆使したアプタマー探索技術(RaptRanker)を開発いたしました※4。RaptRankerを用いることにより、当社のアプタマー創薬プロセスを効率化し、創薬期間の短縮及び成功率の向上が期待されます。さらに、2021年4月から3年間の事業として、「AIアプタマー創薬プロジェクト」がJSTに採択され、当社は早稲田大学と共同で、RNAアプタマーの創薬のプロセスを、深層学習などの人工知能技術を活用することで自動化し、創薬期間の短縮及び創薬成功確率の向上を実現させることを目指し、研究を進めております。この研究におきまして、変分オートエンコーダを応用した革新的な配列生成技術であるRaptGenを開発いたしました。SELEXで得られた特定の標的に対する多数の標的結合アプタマーの配列を、RaptGenを用いて解析することにより、もともとのSELEXデータに含まれていない、前記標的に強く結合する新規のアプタマー配列の生成も可能となりました。RaptGenについては、2022年6月3日にNature Computational Scienceのオンライン版に掲載されております※5。 ※4:Ishida R, Adachi T, Yokota A, Yoshihara H, Aoki K, Nakamura Y, Hamada M. RaptRanker: in silico RNA aptamer selection from HT-SELEX experiment based on local sequence and structure information. Nucl. Acids. Res., 48, e82 (2020) ※5:Iwano N, Adachi T, Aoki K, Nakamura Y, Hamada M. : Generative aptamer discovery using RaptGen. Nat. Comput. Sci., 2, 378–386 (2022) ・DDSアプタマープロジェクト: 当社では、RaptRanker及びRaptGenを含むRiboARTシステムをさらに発展させると共に、現在、RiboARTシステムを用いて、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用のアプタマー開発に取り組んでいます。DDSとは、体内で薬物の分布を制御することで、薬物の効果を最大に高める一方で、薬の投与回数及び副作用を軽減するための、理想的な体内動態を制御する技術です。近年の医薬品開発を取り巻く環境は著しい変化を遂げており、ブロックバスター創出のための疾患発症の標的分子の枯渇や、Unmet Medical Needsの高まりなどを理由に、多数のモダリティ(治療手段)が生まれてきています。特に核酸医薬を中心として、さまざまな生体内バリアを突破させ、標的部位(臓器、組織、細胞等)へと効率的に送り込むにはDDSが必要不可欠となります。 アプタマーは化学合成品であり、抗体、低分子化合物、及びASO、siRNA、mRNAなどの核酸等に化学的に結合させることが可能です。DDSとして利用可能なアプタマーを取得するための期間は1年から2年単位と短いため、アプタマーを取得後は、迅速に特許出願を行うと共に、大手製薬企業を含む様々な企業に提供することで、基礎段階より早期に収益をあげていきたいと考えております。 (2)当社のビジネスモデルと収益計上の時期①当社のビジネスモデル 当社の事業は、以下の自社創薬と共同研究の2事業より構成されております。創薬探索から臨床開発までをビジネスとして進めております。 (i)自社創薬(自社創薬事業) 一定の開発段階まで自社独自、又は、大学等研究機関と共同で医薬候補となるアプタマーを開発し、その後、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、ライセンス対価(基本的に、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。 (ii)製薬企業との共同研究(共同研究事業) アプタマー医薬の研究を提携製薬企業と共同で行い、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに、共同研究では、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。上記二つの事業をバランスよく実施することで、以下の成果あるいは効果が期待できます。 1) 共同研究を実施することにより、自社創薬のビジネスモデルに伴うライセンス・アウトの不確実性による収益の不安定化というリスクを低減できる2) 共同研究先の新薬開発のノウハウ、経験を知得できる3) 共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い4) POCを取得した自社開発品のライセンス・アウトにより大きな収益を期待できる5) 事業を全体として拡大できる 当社の事業の系統図は以下のとおりです。 ※:対価収入のうちライセンス・アウトの対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。 当社は、上記の自社創薬事業に付随する事業として、医薬品以外への応用可能性を秘めたアプタマーの実用化検討も行っております。その一環として、抗体であるIgGに特異的に結合する性質を有したアプタマーを、工業用資材(抗体医薬の精製剤等)として開発する事業や、アプタマーを利用した化粧品原料の開発を進めています。 ②事業活動に伴う収益計上の時期 当社のビジネスモデルにおいて、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計上のタイミングを示しています。 注:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。 個別の契約により受取回数等が異なる場合があります。 (3)事業戦略 当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。① 自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充と進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。② 共同研究を積極的に展開し、早期の収益確保及びライセンス・アウトを目指す。③ アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品や疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から臨床POC取得のための臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。④ アプタマー創薬における当社の「RiboARTシステム」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製にチャレンジする。1) アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)2) 細胞内への取り込み可能な(DDS作用を有する)アプタマー3) 細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー4) 次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発5) 脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用⑤ 大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチを推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。 (4)医薬品市場におけるアプタマー医薬①アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場 医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞、6)遺伝子に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、並びに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。 そのような中、アプタマーを含む核酸医薬は、作用メカニズム及び投与方法が類似していることから、現在巨大な市場を形成している抗体医薬に続く次世代の医薬品として注目されており、核酸医薬の世界の売上高は、2019年が約3,000億円であり、抗体医薬の2019年の売上高約16兆円に比べてまだまだ小さな額ですが、抗体医薬との比較優位性から2030年には、約2兆円に拡大する(SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンを除く)と想定されています。②世界におけるアプタマー医薬品の臨床開発動向 MacugenⓇは世界初のwet AMD治療薬として承認されましたが、その後VEGFを標的とする抗体や可溶性のデコイ(おとり)受容体を利用した、さらに有効な医薬(LucentisⓇ、EyleaⓇ、AvastinⓇ等)が開発されて、現在、MacugenⓇはほとんど使用されなくなりました。2004年のMacugenⓇの成功は、アプタマー医薬の開発を鼓舞する意味も大きく、その後、複数のアプタマー医薬候補品が臨床試験に進みました。その中でも注目された二つのアプタマー(REG1、FovistaⓇ)の治験が最終の第3相試験で成功せず、アプタマー創薬に関してネガティブな印象を残し、その後、アプタマー医薬品の開発は世界的に停滞しているようにもみえました。しかし、ようやく最近、補体C5に対するアプタマー(ARC1905: ZimuraⓇ)が萎縮型加齢黄斑変性(dry AMD)に有効であることが、第3相試験で証明され、米国FDAに対して製造承認申請が提出されました(下表参照)。さらに、最近、アステラス製薬がZimuraⓇを開発したIveric Bio社を総額8,000億円で買収する契約を締結しました。 現在、当社のRBM-007を含めて9種類のアプタマーが臨床試験の過程にあり、アプタマー医薬品開発の機運が再び盛り上がっております。これらの動向の中において、MacugenⓇやZimuraⓇ、そしてRBM-007がいずれも網膜疾患に対して奏功したことから、アプタマーは網膜疾患にフィットするモダリティ(治療手段)であることが示唆されました※6(下表参照)。※6:中村義一.アプタマー:加齢黄斑変性への適応. Clinical Neuroscience Vol. 41 (No.5) 630-634 (2023) アプタマー臨床開発パイプライン:網膜疾患を対象とするアプタマー 核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があり、現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS及び製造と品質管理)が指摘されています。 今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で、通常、抗体と同様に細胞外で機能するため、DDS技術が不要なアプタマー医薬であり、そのアプタマー医薬の中でも、当社のRBM-007プログラムが世界の最先端に位置していると当社は考えております。アプタマーは、標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体医薬と比較して、その結合活性が非常に高いことや、様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善するという優位点があります。なお、抗体医薬との比較は、次の項を参照下さい。 ③アプタマー医薬と抗体医薬の比較 アプタマー医薬は分子標的薬として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。 以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。 (当社作成)項目アプタマー医薬抗体医薬標的タンパク質に対する結合力抗体の1,000倍は可能強い創薬ターゲットの種類極めて多様抗原タンパクに限定製造方法化学合成法細胞培養法コスト(製造コスト低減の容易さ)比較的高価(製造コスト低減の可能性あり)比較的高価(製造コストの低減は難しい)抗原性/免疫排除起きにくい起きる製剤の可逆性・安定性高い低い体内動態(長時間作用)苦手、限界あり良い中和可能(アンチセンスの利用)不可能短期作用性得意困難加工・化学修飾容易困難 (5)知財戦略創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品が特許により保護されていることが、自社開発のみならず他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。当社の知財戦略は、開発する製品に関するものと、開発技術に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。 ①自社創薬品目及び共同研究品目に対する知財戦略RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)についても、既存特許に対して抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。よってプロジェクトごとの開発品を含む物質特許の取得を前提としています。当社は標的分子との結合力が強くかつ当該標的分子の生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物もカバーする特許権の成立を目指します。具体的には、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する構造や配列を探索し、その共通構造・共通配列を特許化することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。さらに非臨床試験・臨床試験の経過により得られるデータに基づき、製剤特許や用途特許の出願を実施し、実質的な特許期間を延ばす戦略を採っています。一方共同研究品目については、まずは提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。なお特許出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド、ブラジル等の医薬品市場の規模が大きく、又は将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。 ②「RiboARTシステム」に対する知財戦略「RiboARTシステム」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化)の中には、特許化が可能な技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化は技術公開という代償を伴い、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難です。従って、当社では、原則としてアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboARTシステム」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密として秘匿し、優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。 ③主要な特許の状況当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。 対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-003キマーゼに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/044132(特許第7264487号)当社日米欧中韓等に移行済、日米で特許成立RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105 当社・藤本製薬株式会社台湾にて特許・維持RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992(特許第6634554号)当社日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポールにて特許・維持、カナダで特許成立・維持、インド、韓国は係属中アプタマー製剤PCT/JP2019/025766当社日米欧中韓等に移行済網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤PCT/JP2021/004215当社日米欧中韓に移行済RBM-006オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/062561(特許第6586669号)当社日本のみ特許を維持RBM-010ADAMTS5に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/041746 当社日米欧中韓等に移行済み、米国にて特許成立RBM-011IL-21に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2021/023023当社日米欧中韓等に移行済 TGFβ1に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2020/026755当社日米に移行済み 対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105当社・藤本製薬株式会社台湾にて特許・維持RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992(特許第6634554号)当社日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポールにて特許・維持、カナダで特許成立、インド、韓国は係属中アプタマー製剤PCT/JP2019/025766当社日米欧中韓等に移行済網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤PCT/JP2021/004215当社日米欧中韓に移行済 対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-101免疫グロブリンGに結合する核酸とその利用法PCT/JP2006/313811(特許第4910195号)当社日本、米国にて特許成立・維持 (6)創薬体制①アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチを継続的に実施してきました。東京大学との共同研究は現在も継続し、同医科学研究所内に「RNA医科学」社会連携研究部門を設置して、同研究所内の動物試験施設や、その他の高度試験装置を使用できる恵まれた環境を維持してきました。これにより技術、信頼性の観点から、高レベルの研究体制を整備しております。当社は、東京大学以外にも、順天堂大学、大阪医科大学、国立循環器病研究センター、チェコ共和国のMasaryk大学、日本大学医学部、早稲田大学などのアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、新規アプタマー技術の開発や分析等における連携を図っております。 ②的確な研究開発マネジメント当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。 ③人的ネットワークアプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握や国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。 ④アプタマー創製のスペシャリスト当社では、社員の約7割が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣を敷いております。さらに、大手製薬企業で研究開発、臨床開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。 (7)ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。 ①E(環境)当社は、医薬品事業に携わる企業として研究資源の管理、並びに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、IT整備によるペーパーレス等の省資源や社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。 ②S(社会)当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えています。希少疾患である軟骨無形成症治療薬の開発はその一例です。また、企業として働きやすい環境づくりやダイバーシティを尊重するとともに、学会参加や論文発表を通してイノベーション創出にも貢献したいと考えております。 ③G(企業統治)・コーポレート・ガバナンスの強化当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しており、コーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。また、研修やe-learningを積極的に受講する事を通して法令や社内規程を遵守するコンプライアンスを重視するとともに、個別面談や説明会を通して様々なステークホルダーとのコミュニケーションも図ってまいります。 (8)参考資料(技術紹介)①アプタマー医薬について核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています(RNAの造形力)。この造形力を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。アプタマー医薬としてこれまでに上市された製品は、2004年12 月に米国食品医薬品局(米国FDA)が承認した「マクジェンⓇ」(加齢黄斑変性に対する治療薬)のみで、アプタマー医薬の市場は未開拓の領域といえます。 ②「RiboARTシステム」当社の「RiboARTシステム」は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。「RiboARTシステム」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。「RiboARTシステム」においてコアとなる技術は、1)目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、2)取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強するとともに、この技術を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。当社は、他の会社に先んじてSELEX法を利用した研究を開始したことによる現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。 選抜:目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜分析:選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析加工:アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾を実施試験:細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価評価:動物を用いてアプタマーの毒性を評価 ③当社の新薬開発プロセス新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。 1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニングする基礎・探索研究の段階 2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う非臨床試験の段階 当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)非臨床試験の段階において、「RiboARTシステム」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboARTシステム」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び非臨床試験の期間(1年前後のGLP試験の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。 (9)参考資料(用語解説) アルファベット、50音順DDS薬剤の副作用の原因のひとつに、薬剤が標的臓器以外に作用することがあげられます。DDS(Drug Delivery System)とは、この問題を解決するために、薬剤が標的臓器に、適切な濃度で到達、作用できるように、剤形を工夫したシステムをいいます。 GLP試験GLP(Good Laboratory Practice)とは、医薬品の安全性に関する非臨床試験(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、その他の毒性試験)の実施に関する試験の質を担保する基準のことをいいます。この基準は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」で定められています。なお、日本のGLPと同様な規制は欧米等でも実施されています。このGLPに準拠して行う試験をGLP試験といいます。 POC POC(Proof of Concept)とは、新薬の開発段階において、ある化合物がヒトでの臨床試験(通常は少数の患者を対象としたPhase 2a試験)において意図した薬効と安全性の基準をクリアすることをいいます。 RNA遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミン(T)の代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。そのため、分子生物学の黎明期から、RNAは単なる遺伝情報のコピーに過ぎないという思い込みが、世界的にも支配的でした。しかし、10数年前から、この考えは誤りであることが様々な研究によって明らかになってきました。特に立体構造を作って働く機能性RNAの生体内での役割が注目を集めています。 RNAの造形力当社は、アプタマーとIgGとの結合体の結晶構造をX線解析法によって明らかにしてNucleic Acids Res誌に発表いたしました(2010年、図参照)。その結果、既存のアプタマーではRNAのリン酸の負電荷と、標的タンパク質の正電荷のアミノ酸領域とが電気的な相互作用によって結合するものしか知られていませんでしたが(図の右の事例)、IgGアプタマーはこれまでの常識を覆して、アプタマーが標的にフィットするしなやかな形状を作って、電気的な相互作用を使わずに、水素結合やファンデルワールス力のような多様な結合を利用して強く標的に結合することが明らかにされました。つまり、RNAには、これまで予想もされなかった「しなやかな造形力」が備わっていることの証しです。このような基礎的な研究は、応用という点からも重要です。特に、医薬品の標的となるタンパク質は、必ずしもRNAと結合しやすい正電荷のアミノ酸が表面に多いとは限らないため、これらの基礎研究の成果は、非常に多くのタンパク質がRNAアプタマーの創薬ターゲットとなりうるということを示唆するものです。また標的タンパクの捕捉方法について抗体医薬と比較した場合、アプタマーの特徴は、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」にあります。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。 化学修飾品質や薬効向上のために、化合物の一部の分子や原子を他の分子や原子に置換したり、新たな分子や原子を結合させることをいいます。 核酸医薬1970年代以降、ヒトの遺伝子の研究が進展し、核酸が医薬品になるかもしれないという期待は1980年代に生まれました。しかし、当時は核酸、特にRNAを医薬に応用するための基礎的な技術が整備されておらず、しかもRNAという核酸の特性や立体構造等の学術的な理解も浅かったために、長期にわたる膨大な資金や人材の投入とは裏腹に核酸医薬の開発は実を結びませんでした。しかし、その苦い教訓の中でも、RNAの加工技術の開発という地味な仕事がアカデミアや少数のベンチャー企業で継続されました。その結果、1998年に世界初となるアンチセンス医薬(VitraveneⓇ[一般名 ホミビルセン],エイズ患者のサイトメガロウイルス性網膜炎用の局所投与剤)が承認され、その後、2004年にアプタマー医薬であるマクジェンⓇ、2013年に2番目となるアンチセンス医薬(KynamroⓇ[一般名 ミポメルセン])が家族性高脂血症薬として承認されました。2016年にはデュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象としたEXONDYS51TM[一般名 エテプリルセン]、脊椎性筋萎縮症を対象としたスピンラザⓇ[一般名 ヌシネルセン]が相次いで承認され、さらに、2018年には家族性トランスサイレチン (TTR) アミロイドーシスを対象とした世界初となるsiRNA医薬(オンパットロⓇ [一般名 パチシラン])が承認され、アンチセンスやsiRNAを用いた核酸医薬品の開発が活発に進められています。現在、研究開発中の核酸医薬には下記の表に示すものがあり、その中で主要な核酸医薬品の作用機序について下記の図に示しています。分類基本構造標的作用機序アプタマー一本鎖RNA/DNAタンパク質タンパク質に結合して生理作用を阻害アンチセンス一本鎖DNAmRNAmRNAに結合して翻訳を阻害デコイ核酸二本鎖DNA転写因子転写因子をトラップして転写を阻害リボザイム一本鎖RNAmRNA酵素として働きmRNAを切断し、発現抑制siRNA二本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化による発現抑制miRNA一本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化や翻訳阻害による発現抑制antimiRNA一本鎖RNA/DNAmiRNAmiRNAに結合してその活性を阻害mRNA一本鎖RNAリボゾーム(鋳型作用)タンパク質合成の鋳型として働き、目的とするタンパク質を合成エキソンスキッピング一本鎖RNA/DNAmRNA前駆体遺伝子異常部位をスキップするようにスプライシングを調整CpGオリゴ一本鎖DNATLR自然免疫の活性化 抗体、抗体医薬抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合してその物質を体内から排除するように働くタンパク質をいいます。この排除システムを抗原抗体反応といい、我々の体内に自然に備わっている防御システムです。抗体医薬とはこの仕組を医薬品として応用するもので、具体的には、疾患の原因となっているサイトカインなどのタンパク質を抗原として認識する抗体を産生する細胞(主に動物の)を造り出し、その後、この細胞を培養して該当する抗体を取り出し、精製加工します。但し、ヒト以外の動物、例えばマウスの細胞が産生する抗体(マウス抗体)をそのままヒトに使用できない場合があるため、動物からとれた抗体をヒト型に組み替える技術が発達しています。現在、臨床開発されている抗体医薬の多くは、このヒト化抗体、若しくはヒト抗体です。さらに、複数の抗原を狙ったものや持続時間の長期化のためにPEGと結合させたコンジュゲート抗体なども開発の俎上にのっています。なお、抗体類似の構造を持ち作用・機能面においても抗体と類似するFc融合タンパク質は、広い意味で抗体医薬の一種に含むこともあります。この抗体医薬は、難治疾患に対する確かな効果と安全性、高薬価、さらに技術開発があいまって市場が急伸しており、近年、世界的な開発競争が激化しています。 最適化医薬品の開発過程において、in vitro# 試験等によって薬効のある化合物が得られたとしても、より効果が優れ、安全性の高い化合物を得るための様々な工夫がなされます。このプロセスは最適化と呼ばれます。アプタマー医薬に関しては、長大な核酸配列の中から効果や安全性に関係のない部分をカットする短鎖化、核酸分解酵素の作用を阻止するための化学修飾、腎臓からの早期の排出を抑えるための化合物(ポリエチレングルコールなど)との結合などがその例です。#「in vitro」は「試験管内で」を意味する技術用語 スクリーニング新薬の開発過程において、多数の化合物の中から目的とする化合物(薬効を示し安全性が高いもの)を選び出す作業のことです。 トランスレーショナル・リサーチ大学や研究機関による基礎的な医学・薬学研究の成果を疾患の治療や新薬の開発に応用するための研究をいいます。生命科学やバイオテクノロジーの飛躍的な発展に伴い、世界的に大学での研究成果を早期に実現化に向ける動きが加速しています。薬の場合、例えば新薬の候補となる物質が大学の研究室で発見されたとしても、それをヒトでの臨床試験に繋げるには化合物の最適化(より効果があり、安全性の高いモノに改良すること)、様々な動物実験、各種試験用のサンプルの製造等、多くの課題、ハードルがあります。この基礎から臨床試験に至る一連の橋渡しのための研究がトランスレーショナル・リサーチです。ノウハウ、営業秘密ノウハウ(Know-How)とは「単独で又は結合して、工業目的に役立つある種の技術を完成し、又はそれを実際に応用するために必要な秘密の技術的知識と経験、又はそれらの集積」(国際商業会議所の定義)をいい、営業秘密とは①秘密に管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないこと、の3要件を満たす技術上、営業上の情報(不正競争防止法第2条第6項の定義に基づく)のことです。 非臨床試験臨床試験開始前に行われる試験を非臨床試験と言い、例えば予備毒性試験やGLP試験が含まれます。 分子標的薬生体内で疾患に関連する遺伝子やそれが係わるタンパク質等(サイトカイン、成長因子等)を標的としてその活動を阻害したり活性化することを狙った医薬品をいいます。抗体医薬もアプタマー医薬も分子標的薬の一種といえます。 マイルストーン収入医薬品の開発は、非臨床試験→第1相臨床試験(Phase 1)→第2相臨床試験a(Phase 2a)→第2相臨床試験b(Phase 2b)→第3相臨床試験(Phase 3)→申請→承認→発売というステップを踏んで進行します。開発途上の医薬品のライセンスにおいては、この開発の節目を「マイルストーン」といい、それに到達したとき、あるいはその段階に入るときにライセンスの対価の一部がライセンサーに対し支払われる取引が普及しています。これによる収入を、「マイルストーン収入」といい、開発ステージが進むにつれて、商品化への確率が高まるため、マイルストーンの収入が増加するのが一般的です。 予備毒性試験 GLP試験に入る前に、的確なGLP試験を実施するためのデータ入手を目的として行う試験です。本試験で薬剤の毒性の概略を把握し、GLP試験での投与用量の設定根拠の情報を得ることができます。 ライセンス・アウト特許や開発中の製品に関する権利を他の会社に供与したり、譲渡したりすることを意味し、「導出」ともいいます。供与する権利の内容としては特許の実施権や使用権、さらにかかる特許によって保護されている製品の開発、及び製造・販売する権利などがあります。 臨床試験新薬についての製造販売承認を取得するには、ヒトでの有効性及び安全性を確認する臨床試験が不可欠です。この場合、通常、以下の3段階があります。第一段階は、少数の健常人を対象として、動物実験等により安全性の確認を終えた化合物について、その安全性や体内での動態等を確認する試験であり、第1相臨床試験(Phase 1試験)と呼ばれています。第一段階をクリアすると、次の段階は少数の患者(被験者)を対象として、薬効と安全性を確認する第2相臨床試験(Phase 2試験)に入ります。この試験のステージは、通常、2ステップがとられ、最初のステップは、少数の被験者について主に薬効を確認する段階です。この試験はPhase 2a試験と呼ばれます。さらに被験者数を増やし、有効性と安全性のバランスを取るために最適な用量を確認するための複数の用量を設定して行うPhase 2b試験があります。最後の段階は、多くの被験者を対象として行う第3相臨床試験(Phase 3試験)です。なお、臨床試験は、承認取得の前だけでなく、承認の取得後も当局から承認の条件として実施が求められる場合があります。この時の試験は市販後臨床試験と呼ばれています。
FY2022|27,737 文字|出典 docID: S100OKV2
3【事業の内容】当社は、アプタマー創薬技術に関するプラットフォームである「RiboARTシステム(Ribomic Aptamer Refined Therapeutics System)」をベースとした創薬事業を展開している創薬プラットフォーム系バイオベンチャーです。 (1)当事業年度の主要なトピックス①RBM-007(抗FGF2アプタマー)の臨床開発について 当社では、自社で創製したRBM-007(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、「滲出型加齢黄斑変性症(Wet Age-related Macular Degeneration、wet AMD)」と「軟骨無形成症(Achondroplasia、ACH)」の治療薬としての臨床開発を進めております。 (i)滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD) wet AMDを対象にした臨床試験として、第1/2a相臨床試験(試験略称名:SUSHI試験、非盲検、被験者数:9名、3用量)を2018年10月から2019年7月にかけて米国で実施し、その結果を受けて、2019年12月より、RBM-007の複数回投与による臨床POC確認を目的とした第2相臨床試験(試験略称名:TOFU試験)を米国で開始し、2021年12月までに試験を完了いたしました(被験者86名)。この試験は、標準治療の抗VEGF治療歴のあるwet AMD患者を対象に、①RBM-007硝子体内注射の単剤投与群、②既存薬としてアイリーア(アフリベルセプト)硝子体内注射との併用投与群、及び③アイリーア硝子体内注射の単剤投与群との間で、有効性と安全性を比較評価する無作為化二重盲検試験でした。 また、TOFU試験の進捗に基づき、長期投与に伴う本薬剤の有効性と安全性と、瘢痕形成を含む網膜の構造異常に対する変化を評価する目的で、延長試験(RAMEN試験)として、2020年11月より被験者への投与を行い、2021年12月に完了しました。RAMEN試験はオープン試験で、TOFU試験を完了した22名の被験者に対して、追加のRBM-007の硝子体内投与を一ヶ月間隔で計4回行いました。 更に、治療歴のないwet AMD患者でのRBM-007単独治療の有効性及び安全性を評価することを目的に、2021年6月より米国インディアナ州インディアナポリスにあるMidwest Eye InstituteのRaj K. Maturi医師により医師主導治験(TEMPURA試験)を実施しました。TEMPURA試験は比較薬を設定しない小規模のオープン試験(登録患者数5名)で、被検者は3ヶ月間、2mgのRBM-007の硝子体内注射を月1回受けました。主要評価項目及び副次的評価項目は、それぞれ網膜組織構造及び最高矯正視力(BCVA)のベースラインからの3ヵ月後の変化です。網膜組織構造の評価では、光干渉断層撮影(OCT)を用いた中心窩網膜厚(CST)の変化値が測定されました。 2021年12月にはTOFU試験のトップラインデータに関する暫定的報告を行い、更に、2022年3月には、これら3つの試験の総合報告をしました。 TOFU試験における主要評価項目の解析の結果では、RBM-007単独治療群とアイリーアとの併用治療群において、アイリーア単独治療群を上まわる視力の改善効果は認められませんでした。また副次的評価項目(網膜厚の減少又は網膜下高反射物質/線維化の消失を含む各解剖学的評価)についても、RBM-007単独治療、及びアイリーアとの併用治療のいずれにおいても、アイリーアを上回る改善は観察されませんでした。また、TOFU試験の延長として実施されたRAMEN試験においても、RBM-007による改善効果は確認されませんでした。 一方、TEMPURA試験の結果、臨床的に重要な上記の二つの評価項目でポジティブな効果が確認され、RBM-007が治療歴のないwet AMD患者に対して、視力及び網膜組織構造を改善する可能性が明らかになりました。本試験では半数以上の被検者において視力及び/又は中心窩網膜厚の改善が認められました。特筆すべきは、視力及び網膜組織構造の両方で顕著な改善を示した一人の被験者で、3ヵ月時点で視力が12文字改善し、その後も追加投与なしで改善を続けて、4ヵ月時点(試験終了時)において、視力はベースラインと比較して15文字改善しました。この被験者では、中心窩網膜厚も約200ミクロン減少とほぼ正常値に改善しました。本試験では病態が悪化した場合のレスキュー治療には標準治療である抗VEGF薬が用いられましたが、1例を除く4例は、4カ月間の試験期間中、レスキュー治療を必要としませんでした。本被検者1名はアイリーアを用いたレスキュー後も視力は改善しませんでした。 TOFU/RAMEN/TEMPURAの3本の第2相試験の結果から、未治療のwet AMD患者を対象とする臨床試験の実施が望まれ、当社としては、そのためのライセンス・アウト、もしくはパートナリングの実現に注力してまいります。 (ii)軟骨無形成症(ACH) 軟骨無形成症に関するプロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援(2015年度からの6年間)を受け、2020年7月より国内の1治験施設において、RBM-007の安全性・忍容性及び薬物動態の解析を目的とする第1相臨床試験(被験者:24名の健康成人男性)を開始し、2021年5月まで実施いたしました。2022年4月には軟骨無形成症の小児患者における、身長の伸びを含む臨床的基礎データの取得と前期第2相試験の被験者選定を目的とした観察試験の治験計画届書を、審査当局である独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)に提出し、治験実施の許可を得ております。本観察試験の開始は本年夏以降の予定です。なお、本プロジェクトは、2021年度から3年間AMEDの希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業として採択されています。 (iii)推進体制 当社の臨床開発については、新薬開発の経験が豊富な責任者が臨床開発を陣頭指揮し、臨床医や製品開発のエキスパートを含む外部の協力も得て進めております。 今後もRBM-007の開発推進に向け、一層の体制整備を図ってまいります。 ②共同研究契約(ⅰ)ビタミンC60バイオリサーチ株式会社との間の共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究を実施し、現在までに有望なアプタマーの創製に成功しており、引き続き実用化へと進めております。 (ii)あすか製薬株式会社と産婦人科領域で重要な役割を担う特定のホルモン受容体を標的とした創薬研究開発に関する複数年間の共同研究開発契約を締結し、当該ホルモン受容体に対する阻害効果をもったアプタマーのスクリーニングを行っています。 (2)当社のビジネスモデルと収益計上の時期①当社のビジネスモデル 当社の事業は、以下の自社創薬と共同研究の2事業より構成されております。創薬探索から臨床開発までをビジネスとして進めております。 (i)自社創薬(自社創薬事業) 一定の開発段階まで自社独自、又は、大学等研究機関と共同で医薬候補となるアプタマーを開発し、その後、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、ライセンス対価(基本的に、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。 (ii)製薬企業との共同研究(共同研究事業) アプタマー医薬の研究を提携製薬企業と共同で行い、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに、共同研究では、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。上記二つの事業をバランスよく実施することで、以下の成果あるいは効果が期待できます。 1) 共同研究を実施することにより、自社創薬のビジネスモデルに伴うライセンス・アウトの不確実性による収益の不安定化というリスクを低減できる2) 共同研究先の新薬開発のノウハウ、経験を知得できる3) 共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い4) POCを取得した自社開発品のライセンス・アウトにより大きな収益を期待できる5) 事業を全体として拡大できる 当社の事業の系統図は以下のとおりです。 ※:対価収入のうちライセンス・アウトの対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。 当社は、上記の自社創薬事業に付随する事業として、医薬品以外への応用可能性を秘めたアプタマーの実用化検討も行っております。その一環として、抗体であるIgGに特異的に結合する性質を有したアプタマーを、工業用資材(抗体医薬の精製剤等)として開発する事業や、アプタマーを利用した化粧品原料の開発を進めています。 ②事業活動に伴う収益計上の時期 当社のビジネスモデルにおいて、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計上のタイミングを示しています。 注:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。 個別の契約により受取回数等が異なる場合があります。 (3)事業戦略 当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。① 自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充と進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。② 共同研究を積極的に展開し、早期の収益確保及びライセンス・アウトを目指す。③ アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品や疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から臨床POC取得のための臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。④ アプタマー創薬における当社の「RiboARTシステム」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製にチャレンジする。1) アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)2) 細胞内への取り込み可能な(DDS作用を有する)アプタマー3) 細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー4) 次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発5) 脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用⑤ 大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチを推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。(4)医薬品市場におけるアプタマー医薬①アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場 医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞、6)遺伝子に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、並びに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。 そのような中、アプタマーを含む核酸医薬は、作用メカニズム及び投与方法が類似していることから、現在巨大な市場を形成している抗体医薬に続く次世代の医薬品として注目されており、核酸医薬の世界の売上高は、2019年が約3,000億円であり、抗体医薬の2019年の売上高約16兆円に比べてまだまだ小さな額ですが、抗体医薬との比較優位性から2030年には、約2兆円に拡大する(SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンを除く)と想定されています。因みに日米欧で承認された主な核酸医薬は以下の通りです(SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンを除く)。 日米欧で承認された主な核酸医薬品 アプタマーについては、2004年12月に世界初のアプタマー医薬で、眼科領域の疾患である加齢黄斑変性症(AMD)を適応症とする「マクジェンⓇ」が米国FDAに承認され、逐次世界各国で承認を得て、世界的な製薬企業であるファイザー社から(日本では2008年10月)発売されています。しかし、現在、全世界で「マクジェンⓇ」以外のアプタマー医薬は市販されていません。また、第2相臨床試験(Phase2試験)以降の後期臨床ステージにある開発中のアプタマー医薬品目数も抗体医薬品に比較すると些少です。「マクジェンⓇ」につぐ第2のアプタマー医薬の実現こそがアプタマーという医薬モダリティーの将来に最も重要です。現在アプタマー医薬を第2相臨床試験にまで進めている企業は当社のみであり、その責任は極めて重いと考えています。 核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があり、現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS及び製造と品質管理)が指摘されています。 今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で、通常、抗体と同様に細胞外で機能するため、DDS技術が不要なアプタマー医薬であり、そのアプタマー医薬の中でも、当社のRBM-007プログラムが世界の最先端に位置していると当社は考えております。アプタマーは、標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体医薬と比較して、その結合活性が非常に高いことや、様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善するという優位点があります。なお、抗体医薬との比較は、次の項を参照下さい。 ②アプタマー医薬と抗体医薬の比較 アプタマー医薬は分子標的薬として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。 以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。 (当社作成)項目アプタマー医薬抗体医薬標的タンパク質に対する結合力抗体の1,000倍は可能強い創薬ターゲットの種類極めて多様抗原タンパクに限定製造方法化学合成法細胞培養法コスト(製造コスト低減の容易さ)比較的高価(製造コスト低減の可能性あり)比較的高価(製造コストの低減は難しい)抗原性/免疫排除起きにくい起きる製剤の可逆性・安定性高い低い体内動態(長時間作用)苦手、限界あり良い中和可能(アンチセンスの利用)不可能短期作用性得意困難加工・化学修飾容易困難 (5)パイプラインについて創薬事業(自社創薬及び共同研究)のパイプラインの最優先プロジェクトは下記のとおりです。当社は創薬探索から臨床開発へと事業の中心をシフトしつつあり、臨床開発を前提とした次の5プログラムが当社の最重点パイプラインと位置付けております。 〈臨床開発優先度の高い自社パイプライン>①自社創薬パイプライン(ⅰ) RBM-007(抗FGF2アプタマー):線維芽細胞増殖因子2を阻害する多用途治療薬の開発a) 開発の背景 線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast Growth Factor 2、FGF2)は、様々な臓器や器官の形成や再生、及びそれらの正常な機能を維持する上で大切な役目を果たす因子だと長らく考えられてきました。また、FGF2が過剰に産生されたり、その作用が増強したりすると、骨の正常な維持に不都合が生じる可能性が学術論文で示唆されていました。 FGF2の発見から40年余の歴史があるにも拘わらず、長い期間、抗体や低分子を含めてFGF2に対する優れた阻害剤が開発できませんでした。1つの理由として、FGF2はヒトでは22種類の類縁タンパク質からなる線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーの一員で、且つ、ヒトと動物で高度に保存されているため、抗体を含めFGF2に特異的な阻害剤の創製が極めて困難であったことが挙げられます。そのため、FGF2阻害剤を用いた、病気の発症予防や治療効果に関する研究は進展せず、FGF2阻害剤の新薬候補品としての価値は不明でした。 当社は、骨疾患におけるFGF2の役割を明らかにする目的で、FGF2に対して高い特異性と強力な阻害活性を有するアプタマーを創製することに成功し(化合物番号「RBM-007」を付与)、RBM-007を用いることで、これまで未解明だったFGF2の生理的な機能を解明するとともに、FGF2阻害剤の多面的な用途を明らかにすることに成功しました(米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy」誌2016年11月号と「Molecular Therapy Nucleic Acids」誌2019年9月号に掲載、又、物質特許1件と関連特許2件を出願済)。これら研究により、RBM-007が骨粗鬆症やリウマチなどの「骨疾患」や癌の骨転移に伴う「癌性疼痛」に対する治療薬となりうる可能性が明らかになりました。さらに、RBM-007が、下記のように「加齢黄斑変性症」及び「軟骨無形成症」に対する新規治療薬となりうることも明らかとなりました。 b-1) 滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)の病理と既存治療薬の問題点 wet AMDは加齢によって網膜の中心部にある黄斑に障害が起き、見ようとするところが見えにくくなる疾患で、進行すると失明することがあり、欧米では失明原因の第1位で、日本でも第3位の失明原因となっています。wet AMDは、次の図に示されるように、加齢や紫外線・タバコの紫煙等が原因となって、網膜に炎症がおき、黄斑部に血管新生が誘導されて、視神経の膜構造が損傷されるために発症します。 wet AMDの市場では、「ルセンティスⓇ」や「アイリーアⓇ」等の血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬が第一選択薬としての地位を確立(既存薬の全世界市場規模は約1.2兆円)しておりますが、wet AMD患者の約1/3はVEGF阻害薬が奏功せず、奏功した患者も長期治療の過程で、その薬効が次第に減弱し、やがて失明に向かう多くの患者がいることが臨床的に明らかにされています。また、患者への負担が大きい硝子体(眼球)内注射の間隔を延ばすことが可能な治療薬の開発も求められています。 既存の加齢黄斑変性症治療薬である抗VEGF薬では効果が十分に得られていない要因の一つとして瘢痕化が挙げられています。上図に示すように、FGF2はwet AMDにおける瘢痕形成にも関与しており、RBM-007は血管新生の抑制作用のみならず、瘢痕化の抑制という作用を合わせ持つことが動物モデルの試験で明らかになっております(非臨床POC確認)。RBM-007の、既存薬にはない新規作用機序が治験によって証明された場合、既存の治療薬(VEGF阻害薬)が奏功しない(又は奏功しなくなった)患者にも奏功する、他の薬剤に対して競争力のある新薬となるものと考えられます。RBM-007によるwet AMDの治療においては、薬剤を眼球内(硝子体)に注射するため、投与薬剤量が少なくてすみ、また大半の薬剤が眼球内に留まるため、コスト的にも安全性においても、当社による開発に適していると考えております。 b-2) RBM-007を用いた滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)に対する臨床試験 3(1)RBM-007(抗FGF2アプタマー)の臨床開発の状況 ⅰ)滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)をご参照ください。 c-1) RBM-007を用いた軟骨無形成症(ACH)の病理と治療法ACHは、新生児約25,000人に対して1人の割合で発生する先天性の希少疾患で、有効な治療薬が存在せず、Unmet Medical Needsが高く、ACHに対する新規な薬剤の開発が求められております。この疾患は、FGF受容体のひとつであるFGFR3におきた突然変異によって発症する、四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患です。本邦では、治療には成長ホルモンが使用されていますが、効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、新薬が待ち望まれています。 c-2)RBM-007を用いた軟骨無形成症(ACH)に関する薬理試験これまでに、当社は、ACHモデルマウス(FGFR3の遺伝子を疾患変異型に人為的に改変したマウス)を用いた薬理試験において、RBM-007は低身長改善効果を示し、ACHに対する本薬剤の非臨床POCを確認することに成功しております。また、ACH患者由来のiPSC(人工多能性幹細胞)は軟骨細胞への分化が不全になっていることが知られていますが、当該iPS細胞を試験管内で培養する際に、RBM-007を添加することで、軟骨細胞への分化が可能となり、さらには、免疫不全マウスにこの分化した軟骨細胞を移植すると、マウスの体内で軟骨組織が形成されることを証明しております(大阪大学医学部との共同研究)。これらの結果から、RBM-007が、ACHに対する新薬となりうることが強く示唆されました。 c-3)RBM-007を用いたACHを適応症とする臨床試験3(1)RBM-007(抗FGF2アプタマー)の臨床開発の状況 (ii)軟骨無形成症(ACH)をご参照ください。 以上のRBM-007に加えて、当社は、既存パイプラインを継続的、重層的に拡大し中長期的に成長するために、特に優れた薬効が確認されているRBM-011、RBM-003、及びRBM-010を、RBM-007に次ぐ重点開発プログラムと位置づけております。以下にプロジェクトの優先度順に概要をまとめます。 (ii)RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー):肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する新薬の開発RBM-011が治療対象とするPAHは、難治性呼吸器疾患に認定されている原因不明の病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。プロスタグランジンI2製剤などの既存治療薬が十分な効果を発揮しない患者の予後は依然として極めて悪い状態です。これらの既存治療薬は、いずれも血管を拡張させる作用を持つものであり、血管壁の肥厚を抑制、さらには血管壁の肥厚を改善する作用を持つ薬はなく、その開発が強く望まれています。AMEDの難治性疾患実用化研究事業の一環として助成を受けて(2017年度から3年間)、当社が創製したRBM-011に関する共同研究を、PAHの国内での専門医療機関である国立研究開発法人国立循環器病研究センター(国循)と進めました。その結果、RBM-011がPAHの動物モデルにおいて、肺動脈壁の肥厚に対して顕著な抑制効果を持つことが明らかになりました。そこで、AMEDから2020年度から3年間の治験準備(ステップ1)研究として助成を受け、国循と密に連携して、本剤を臨床試験に進めるべく開発を進めております。 抗IL-21アプタマーによる肺動脈壁の肥厚抑制効果を確認 (左:通常マウスの肺の血管。中央:モデルマウスの血管。右:RBM-011投与後のモデルマウスの血管) (iii)RBM-003(抗キマーゼアプタマー):心不全に対する新薬の開発心筋梗塞直後、Chymase(キマーゼ)が組織損傷部位の肥満細胞や心筋細胞等から分泌され、アンジオテンシンII等の活性化をとおして、心筋に悪影響を及ぼすことが知られています。国循との共同研究において、ハムスターを用いた冠動脈結紮による心筋梗塞急性期モデルに対して抗キマーゼアプタマーであるRBM-003を投与することで、RBM-003は梗塞後のキマーゼ陽性肥満細胞の集積並びにキマーゼ活性を抑制し、顕著な心機能改善効果を示しました(非臨床POC確認、米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy Nucleic Acids」誌2019年1月号に掲載)。上記心筋梗塞急性期モデルを用いた試験において、RBM-003は冠動脈結紮の前投与のみならず、後投与においても顕著な心機能改善効果を示し、心筋梗塞急性期モデルハムスターの生存率を著しく改善いたしました。現在、心筋梗塞を改善するような医薬品は存在しません。RBM-003は既存のキマーゼ阻害剤と比べて非常に強い酵素阻害活性を持つことが確認されております。急性心不全に対する即効性の注射薬の開発を目指して、今後の研究開発を加速してまいります。 (iv) RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー):変形性関節症に対する新薬の開発RBM-010は、当社と大正製薬株式会社との共同研究で創製された製品で、変形性関節症の増悪因子の一つであるADAMTS5(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 5)の働きを抑制する作用があります。変形性関節症は、種々の原因により、膝や足の付け根、肘、肩等の関節に痛みや腫れ等の症状が生じ、その後関節の変形をきたす病気です。現在、治療法としては痛みや腫れを和らげる薬の服用や関節置換術などの手術しかなく、根治する薬はありません。日本には、変形性関節症を有している人が、2,500万人以上、また、世界では、変形性関節症の患者が約2億4,000万人以上と推定されており、今後高齢化に伴いさらに増加が予測されています。RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー)はその根治療法に道を開く可能性があり、現在、局所投与による徐放性製剤の開発に取り組んでおります。 (v) その他のパイプラインa) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療用アプタマーの開発COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質(Sタンパク質)と、ヒトの細胞表面にある受容体(ACE2タンパク質)との結合を阻害し、細胞への侵入を阻止するようなアプタマーの創製を試みました。多数の候補配列情報を取得、表面プラズモン共鳴法を用いたスクリーニングによって、抗Sタンパク質アプタマーの候補(Sタンパク質に対する結合並びに宿主受容体ACE2への結合阻害活性を持つアプタマー)を複数特定することに成功しました(ヒット化合物の取得)。しかしながら、2022年5月現在、動物モデルを用いた感染阻害試験において、SARS-CoV-2ウイルスの感染を阻害するのに十分な効果をもったアプタマーは得られておりません。 ②その他の研究アプタマー医薬品の汎用性をさらに活かすため、コンピューター科学を応用した技術開発(以下「国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)委託事業」)等を継続して進めております。2018年度から開始されたJST委託事業においては、早稲田大学と共同し、バイオインフォマティクスを駆使したアプタマー探索技術(RaptRanker)を開発いたしました。RaptRankerを用いることにより、当社のアプタマー創薬プロセスを効率化し、創薬期間の短縮及び成功率の向上につなげることができます。さらに、2021年3月、本事業が「AI アプタマー創薬プロジェクト」としてJSTに採択され、2021年4月から3年間、早稲田大学と共同で、当社が手掛ける RNA アプタマーの創薬のプロセスを、深層学習などの人工知能技術を活用することで自動化し、創薬期間の短縮及び創薬成功率の向上を実現させることを目指し、研究を進めております。こちらの研究におきましては、変分オートエンコーダを応用した革新的な配列生成技術であるRaptGenを新たに開発しました。RaptGenを用いてSELEXで得られた多数の標的結合アプタマーの配列を解析することにより、もともとのSELEXデータに含まれていない、前記標的に強く結合する新規のアプタマー配列の生成も可能となりました。RaptGenについては、2022年6月3日にNature Computational Scienceのオンライン版に掲載されております。また、難しい創薬標的である膜受容体GPCRに対する汎用的なアプタマー創製法の開発を、AMEDの支援のもと、東京大学医科学研究所と共同して進めてきましたが、その研究成果が米国科学アカデミー紀要(2021年4月)に掲載されました。今後のGPCR創薬にあらたな道を拓くものと期待しております。 (6)アライアンスの状況について ① アライアンスの状況現在の当社のアライアンス状況は、以下の通りです。(i) ライセンス・アウト済みのもの区分パイプラインターゲット導出先権利地域適応症自社創薬RBM-004NGF(神経成長因子)藤本製薬株式会社全世界疼痛自社創薬RBM-007FGF2(線維芽細胞増殖因子2)韓国AJU薬品株式会社韓国及び東南アジア滲出型加齢黄斑変性 (ii)アプタマー創薬に関する主たる共同研究パートナー名称共同研究概要ビタミンC60バイオリサーチ株式会社2019年1月に締結した共同研究契約に基づく、アプタマー技術を活用した化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究。あすか製薬株式会社2021年2月に締結した共同研究開発契約に基づく、「RiboART システム」を用いた産婦人科領域で重要な役割を担う特定のホルモン受容体に作用するアプタマー医薬品の研究開発に関する共同研究 ②アライアンス戦略当社は、自社創薬製品については、製品の特性や、自社での臨床開発の実施可能性、市場性等に鑑みて、もっとも効果的なライセンス・アウト時期を見定め、非臨床段階、若しくは自社で臨床試験を実施しPOCを取得した後にライセンス・アウトすることを事業スキームとしております。また、当社はこれまで共同研究やライセンス・アウトに連動して、複数の共同研究先及びライセンス先と資本提携も実施し、より強固で統合的な事業推進を図ってまいりました。今後は、アプタマー創薬に取り組む企業の拡大が見込まれ、それに伴う事業チャンスを活かすために、事業開発部を中心に営業活動の地域を海外にも積極的に広げ、共同研究やライセンス・アウトの機会の拡大を図ってまいります。 ③アライアンスの推進体制ライセンス・アウトを目標とした共同研究の実現や、自社パイプラインのライセンス・アウトを図るべく、国内外の製薬企業への営業活動、学会での発表や学術雑誌への論文掲載等を通じて、当社の技術と製品を国内外にアピールする活動を継続してまいります。当社のライセンス活動については、事業提携の経験が豊富な責任者を配置し、必要に応じて外部のコンサルタントの協力を得て進めております。 (7)知財戦略創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品が特許により保護されていることが、自社開発のみならず他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。当社の知財戦略は、開発する製品に関するものと、開発技術に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。 ①自社創薬品目及び共同研究品目に対する知財戦略RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)についても、既存特許に対して抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。よってプロジェクトごとの開発品を含む物質特許の取得を前提としています。当社は標的分子との結合力が強くかつ当該標的分子の生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物もカバーする特許権の成立を目指します。具体的には、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する構造や配列を探索し、その共通構造・共通配列を特許化することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。さらに非臨床試験・臨床試験の経過により得られるデータに基づき、製剤特許や用途特許の出願を実施し、実質的な特許期間を延ばす戦略を採っています。一方共同研究品目については、まずは提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。なお特許出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド、ブラジル等の医薬品市場の規模が大きく、又は将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。 ②「RiboARTシステム」に対する知財戦略「RiboARTシステム」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化)の中には、特許化が可能な技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化は技術公開という代償を伴い、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難です。従って、当社では、原則としてアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboARTシステム」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密として秘匿し、優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。 ③主要な特許の状況当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。 対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-003キマーゼに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/044132 当社日米欧中韓等に移行済RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105(特許第5027956号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・英国・ドイツ・フランス・中国・台湾・韓国にて特許・維持RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992(特許第6634554号)当社日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポールにて特許・維持、カナダで特許査定済、インド、韓国は係属中アプタマー製剤PCT/JP2019/025766当社日米欧中韓等に移行済網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤PCT/JP2021/004215当社各国移行期限:2022年8,9月RBM-006オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/062561(特許第6586669号)当社日本のみ特許を維持RBM-010ADAMTS5に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/041746当社日米欧中韓等に移行済みRBM-001骨形成や骨代謝の異常に関連する疾患の治療薬PCT/JP2020/020294当社日本のみに移行RBM-011IL-21に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2021/023023当社各国移行期限:2022年12月、2023年1月 対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105(特許第5027956号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・英国・ドイツ・フランス・中国・台湾・韓国にて特許・維持RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992(特許第6634554号)当社日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポールにて特許・維持、カナダで特許査定済、インド、韓国は係属中アプタマー製剤PCT/JP2019/025766当社日米欧中韓等に移行済網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤PCT/JP2021/004215当社各国移行期限:2022年8,9月 対象パイプライン発明の名称国際出願番号(国内特許番号)保有者登録状況RBM-101免疫グロブリンGに結合する核酸とその利用法PCT/JP2006/313811(特許第4910195号)当社日本、米国にて特許・維持 (8)創薬体制①アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチを継続的に実施してきました。東京大学との共同研究は現在も継続し、同医科学研究所内に「RNA医科学」社会連携研究部門を設置して、同研究所内の動物試験施設や、その他の高度試験装置を使用できる恵まれた環境を維持してきました。これにより技術、信頼性の観点から、高レベルの研究体制を整備しております。当社は、東京大学以外にも、大阪大学、順天堂大学、大阪医科大学、国立循環器病研究センター、チェコ共和国のMasaryk大学、早稲田大学などのアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、アプタマーの分析等における連携を図っております。 ②的確な研究開発マネジメント当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。 ③人的ネットワークアプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握や国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。 ④アプタマー創製のスペシャリスト当社では、社員の約7割が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣を敷いております。さらに、大手製薬企業で研究開発、臨床開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。 (9)ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。 ①E(環境)当社は、医薬品事業に携わる企業として研究資源の管理、並びに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、IT整備によるペーパーレス等の省資源や社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。 ②S(社会)当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えています。希少疾患である軟骨無形成症治療薬の開発はその一例です。また、企業として働きやすい環境づくりやダイバーシティを尊重するとともに、学会参加や論文発表を通してイノベーション創出にも貢献したいと考えております。そのような中で、当事業年度において、日頃の安全衛生面の取組等が評価され、三田労働基準監督署長賞を受賞することができました。 ③G(企業統治)・コーポレート・ガバナンスの強化当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しており、コーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。また、研修やe-learningを積極的に受講する事を通して法令や社内規程を遵守するコンプライアンスを重視するとともに、個別面談や説明会を通して様々なステークホルダーとのコミュニケーションも図ってまいります。 ・組織体制の整備と人材の育成・登用当社は、上記の課題に対応し、当社事業の継続的な発展を実現するためには、それに対応する組織体制の整備と、人材の育成・登用を図ることが重要と考えており、必要に応じて組織体制の強化を図ってまいりました。その一環として、2021年10月1日付で、管理本部内に知財戦略や研究開発戦略を担当する「知財学術部」を新設しました。今後も事業構造や事業展開等を勘案したうえで必要な人材を育成し必要なポジションに登用する他、豊富な経験を有する人材の採用、外部ノウハウの活用などにも積極的に取り組んでまいります。 (10)参考資料(技術紹介)①アプタマー医薬について核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています(RNAの造形力)。この造形力を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。アプタマー医薬としてこれまでに上市された製品は、2004年12 月に米国食品医薬品局(米国FDA)が承認した「マクジェンⓇ」(加齢黄斑変性症に対する治療薬)のみで、アプタマー医薬の市場は未開拓の領域といえます。 ②「RiboARTシステム」当社の「RiboARTシステム」は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。「RiboARTシステム」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。「RiboARTシステム」においてコアとなる技術は、1)目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、2)取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強するとともに、この技術を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。当社は、他の会社に先んじてSELEX法を利用した研究を開始したことによる現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。 選抜:目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜分析:選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析加工:アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾を実施試験:細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価評価:動物を用いてアプタマーの毒性を評価 (ⅰ)アプタマーの取得技術(SELEX法運用技術)アプタマー創薬のコアとなる技術の一つは、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するアプタマーを取得するSELEX法に関する技術です。この方法は日欧では2011年6月まで、米国では2014年9月まで特許で守られ、権利者(アルケミックス社)からライセンスを取得しない限り、SELEX法を実施して自由にアプタマーを取得することはできませんでした。当社は、この特許が国内で有効であった2006年10月より、権利者から実施ライセンスを受け、様々なSELEX法を駆使してアプタマーを取得する経験を積んでまいりました。日米欧での上記特許失効後は、誰でもアプタマーの取得にSELEX法を実施することが可能となりました。しかし、目標とするタンパク質に結合し、意図した薬効を示すポテンシーのあるアプタマーを取得するには、標的タンパク質の特性分析、最適な核酸プールの構築に始まり、様々な条件下でのSELEX法の実施経験やノウハウが必要となります。当社の「RiboARTシステム」はこれらを集大成した創薬技術です。SELEX法とはRNAの造形力を利用して、目的とするアプタマーを探し出すための技術で、様々なタンパク質を標的に使用できる汎用性が特徴です。具体的には、様々なタイプのRNA分子を標的のタンパク質と何度も結合→解離→増幅→再結合を繰り返すことで、より強く結合するRNA分子のみを“進化”させる技術です。この方法は、以下に示す魚釣りに似ています。 a)4種類の塩基(A・U・G・C)がランダムに配列されたRNA(様々なタイプの魚)の入ったプール(釣り堀)に標的となるタンパク質を「餌」にして、結合する(食いつく)特定のRNA(数十万種の魚)を釣り上げます。b)釣ったRNA(魚)からタンパク質(餌)を外し、増幅して(養殖して数を増やす)、再度プールの中に放し、同じタンパク質(餌)で釣りを繰り返します。早く食いついた数十から数十万種のRNA(魚)を増幅(養殖)し、再度、釣りを行います。c)このサイクルを10数回行うことによって、標的タンパク質に強く特異的に結合するアプタマー(最も早く餌に食いつく魚)を数種類選択することができます(右図参照)。 SELEX法を利用したアプタマーの創製(取得)には、最初にプールに放つ魚群の選定(核酸ライブラリーの構築)や釣り方(試験方法等)について、長年の経験・実績によるところが多く、当社はSELEX法に関して、世界でも有数の高度かつ広汎な技術を有しております。特に、核酸ライブラリーを作る際に、多様な修飾が施された修飾塩基を、4種類あるいはその一部に使用して、ライブラリーの多様性を拡充することが重要かつ効果的です。また、近年、核酸配列の分析技術(シークエンス解析法)が格段に進歩した結果、次世代型のシークエンス装置を使えば、短時間に少量のサンプルから、百万程度の配列を読むことが可能です。当社は、この次世代型シークエンス装置とコンピューター処理を用いて、数百万の配列情報からアプタマー候補を抽出するHT-SELEX(high-throughput SELEX)法を開発し、運用しております。 (ⅱ)アプタマーの最適化技術アプタマーの最適化技術は、in vitroやin vivo5試験でのスクリーニングから、より効果が高い(標的タンパク質に強く結合し、そのタンパク質の生理作用を高度に阻害する)アプタマーを創製し、アプタマーの改良技術を駆使して、臨床開発品として完成させるものです。これには、アプタマーに特化したスクリーニング手法だけでなく、取得したアプタマーの特質と用途に応じた個別の最適化(短鎖化、化学修飾、doped SELEX(部分的に配列をランダム化して行うSELEX)等)技術が必要で、当社の最大の強みは、この分野での豊富な知識と経験並びに技能が蓄積していることであります。また、的確な最適化には、標的タンパク質の特性(分子量、立体構造、電気化学的性質、類縁タンパク質(サブタイプ)の有無等)に応じた最適化のデザイン力が必須です。当社では、このデザイン力に関しても研究実績を蓄積してまいりました。これに加えて、アプタマーと標的タンパク質の複合体での立体構造を基にしてより強力なアプタマーのデザインも行うなど、アプタマーの最適化技術に関し常に技術力の向上を図っております。このような、短鎖化や化学修飾等による最適化作業を、in vitroやin vivo試験で効果を確認しつつ繰り返し、より優れた臨床開発品へとアプタマーを磨き上げていきます。 (ⅲ)アプタマーの最適化(改変・改良等)の問題点核酸を成分とするアプタマーは体内に投与されると生体内の核酸分解酵素により速やかに分解されます。そのため、薬効を得るために体内での作用時間を延ばす必要があり、様々な改良を加えて酵素耐性の向上を図り、また、体外への排出の抑制を図ります。このアプタマーを医薬品として最適な化合物に仕上げる技術を欠くと、開発の中断や終了を余儀なくされます。アプタマーは、最適化を図っても抗体のように1~2ケ月間も作用させることは困難で、基本的には急性期、あるいは短期間を挟む間欠投与が適した疾患、あるいは治療法が皆無の疾患が、その本領を最も発揮できる対象だといえます。このため、同一のタンパク質を標的とする抗体と競合する場合、アプタマーを抗体が適していない疾患に対して開発することや、アプタマーの投与方法をデザインすることが肝要です。 (ⅳ)アプタマーの製造法、品質規格の設定、品質管理等のノウハウ核酸医薬、特にアプタマー医薬は、これまで「マクジェンⓇ」が承認、販売されていますが、アプタマー医薬自体の歴史が比較的浅く、薬事規制面でも、原薬アプタマーや完成品の品質規格に関する規制内容は標準化されていません。特にCMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び治験薬の製造管理)の分野では、個々のアプタマーごとに薬事承認や臨床試験の開始までに必要な試験やその方法、分析方法等を企画し、場合によっては薬事当局との協議が必要になります。当社は、そのために必要な、以下の分野の知識、経験も有しております。・アプタマーを医薬品化するために不可欠な製造方法、品質規格の設定、品質管理・核酸やアプタマーのような高分子化合物の分析、核酸の塩基配列の解析法 (ⅴ)アプタマーの安全性・毒性の評価・検討に関するノウハウアプタマーを動物に投与した時の毒性は、核酸が本来持っている毒性とターゲットタンパク質を阻害したことによる毒性に分けられます。核酸が本来持っている毒性の代表例は、大量に投与した場合に、血液凝固の阻害が起こることです。当社はこのような核酸特有の毒性を考慮しながらアプタマー作りを行っており、以下の経験を有しております。・アプタマーの血中や臓器中での濃度測定・ラットを用いた毒性試験・サルを用いた毒性試験 ③当社の新薬開発プロセス新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。 1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニングする基礎・探索研究の段階 2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う非臨床試験の段階 当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)非臨床試験の段階において、「RiboARTシステム」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboARTシステム」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び非臨床試験の期間(1年前後のGLP試験の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。 (11)参考資料(用語解説) アルファベット、50音順DDS薬剤の副作用の原因のひとつに、薬剤が標的臓器以外に作用することがあげられます。DDS(Drug Delivery System)とは、この問題を解決するために、薬剤が標的臓器に、適切な濃度で到達、作用できるように、剤形を工夫したシステムをいいます。 GLP試験GLP(Good Laboratory Practice)とは、医薬品の安全性に関する非臨床試験(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、その他の毒性試験)の実施に関する試験の質を担保する基準のことをいいます。この基準は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」で定められています。なお、日本のGLPと同様な規制は欧米等でも実施されています。このGLPに準拠して行う試験をGLP試験といいます。 in vitro 、in vivoin vitro (イン・ビトロ)とは、技術用語で「試験管内で」という意味です。In vitro 試験は、試験管内で、ヒトや動物のタンパク質、細胞や組織を用いて、薬物の効果や作用等を調べる試験をいいます。当社では、得られたアプタマーのタンパク質との相互作用の確認試験や細胞・組織を用いた薬効確認試験がこれに該当します。in vivo (イン・ビボ)とは、「生体内で」という意味です。In vivo 試験とは、マウスやラット等の実験動物を用いて、生体内での薬物の作用や効果、安全性・毒性等を調べる試験をいいます。当社では、得られたアプタマーの薬効確認試験や安全性・毒性の評価試験がこれに該当します。 POC POC(Proof of Concept)とは、新薬の開発段階において、ある化合物がヒトでの臨床試験(通常は少数の患者を対象としたPhase 2a試験)において意図した薬効と安全性の基準をクリアすることをいいます。 RNA遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミン(T)の代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。そのため、分子生物学の黎明期から、RNAは単なる遺伝情報のコピーに過ぎないという思い込みが、世界的にも支配的でした。しかし、10数年前から、この考えは誤りであることが様々な研究によって明らかになってきました。特に立体構造を作って働く機能性RNAの生体内での役割が注目を集めています。 RNAの造形力当社は、アプタマーとIgGとの結合体の結晶構造をX線解析法によって明らかにしてNucleic Acids Res誌に発表いたしました(2010年、図参照)。その結果、既存のアプタマーではRNAのリン酸の負電荷と、標的タンパク質の正電荷のアミノ酸領域とが電気的な相互作用によって結合するものしか知られていませんでしたが(図の右の事例)、IgGアプタマーはこれまでの常識を覆して、アプタマーが標的にフィットするしなやかな形状を作って、電気的な相互作用を使わずに、水素結合やファンデルワールス力のような多様な結合を利用して強く標的に結合することが明らかにされました。つまり、RNAには、これまで予想もされなかった「しなやかな造形力」が備わっていることの証しです。このような基礎的な研究は、応用という点からも重要です。特に、医薬品の標的となるタンパク質は、必ずしもRNAと結合しやすい正電荷のアミノ酸が表面に多いとは限らないため、これらの基礎研究の成果は、非常に多くのタンパク質がRNAアプタマーの創薬ターゲットとなりうるということを示唆するものです。また標的タンパクの捕捉方法について抗体医薬と比較した場合、アプタマーの特徴は、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」にあります。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。 化学修飾品質や薬効向上のために、化合物の一部の分子や原子を他の分子や原子に置換したり、新たな分子や原子を結合させることをいいます。 核酸医薬1970年代以降、ヒトの遺伝子の研究が進展し、核酸が医薬品になるかもしれないという期待は1980年代に生まれました。しかし、当時は核酸、特にRNAを医薬に応用するための基礎的な技術が整備されておらず、しかもRNAという核酸の特性や立体構造等の学術的な理解も浅かったために、長期にわたる膨大な資金や人材の投入とは裏腹に核酸医薬の開発は実を結びませんでした。しかし、その苦い教訓の中でも、RNAの加工技術の開発という地味な仕事がアカデミアや少数のベンチャー企業で継続されました。その結果、1998年に世界初となるアンチセンス医薬(VitraveneⓇ[一般名 ホミビルセン],エイズ患者のサイトメガロウイルス性網膜炎用の局所投与剤)が承認され、その後、2004年にアプタマー医薬であるマクジェンⓇ、2013年に2番目となるアンチセンス医薬(KynamroⓇ[一般名 ミポメルセン])が家族性高脂血症薬として承認されました。2016年にはデュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象としたEXONDYS51TM[一般名 エテプリルセン]、脊椎性筋萎縮症を対象としたスピンラザⓇ[一般名 ヌシネルセン]が相次いで承認され、さらに、2018年には家族性トランスサイレチン (TTR) アミロイドーシスを対象とした世界初となるsiRNA医薬(オンパットロⓇ [一般名 パチシラン])が承認され、アンチセンスやsiRNAを用いた核酸医薬品の開発が活発に進められています。現在、研究開発中の核酸医薬には下記の表に示すものがあり、その中で主要な核酸医薬品の作用機序について下記の図に示しています。分類基本構造標的作用機序アプタマー一本鎖RNA/DNAタンパク質タンパク質に結合して生理作用を阻害アンチセンス一本鎖DNAmRNAmRNAに結合して翻訳を阻害デコイ核酸二本鎖DNA転写因子転写因子をトラップして転写を阻害リボザイム一本鎖RNAmRNA酵素として働きmRNAを切断し、発現抑制siRNA二本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化による発現抑制miRNA一本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化や翻訳阻害による発現抑制antimiRNA一本鎖RNA/DNAmiRNAmiRNAに結合してその活性を阻害mRNA一本鎖RNAリボゾーム(鋳型作用)タンパク質合成の鋳型として働き、目的とするタンパク質を合成エキソンスキッピング一本鎖RNA/DNAmRNA前駆体遺伝子異常部位をスキップするようにスプライシングを調整CpGオリゴ一本鎖DNATLR自然免疫の活性化 抗体、抗体医薬抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合してその物質を体内から排除するように働くタンパク質をいいます。この排除システムを抗原抗体反応といい、我々の体内に自然に備わっている防御システムです。抗体医薬とはこの仕組を医薬品として応用するもので、具体的には、疾患の原因となっているサイトカインなどのタンパク質を抗原として認識する抗体を産生する細胞(主に動物の)を造り出し、その後、この細胞を培養して該当する抗体を取り出し、精製加工します。但し、ヒト以外の動物、例えばマウスの細胞が産生する抗体(マウス抗体)をそのままヒトに使用できない場合があるため、動物からとれた抗体をヒト型に組み替える技術が発達しています。現在、臨床開発されている抗体医薬の多くは、このヒト化抗体、若しくはヒト抗体です。さらに、複数の抗原を狙ったものや持続時間の長期化のためにPEGと結合させたコンジュゲート抗体なども開発の俎上にのっています。なお、抗体類似の構造を持ち作用・機能面においても抗体と類似するFc融合タンパク質は、広い意味で抗体医薬の一種に含むこともあります。この抗体医薬は、難治疾患に対する確かな効果と安全性、高薬価、さらに技術開発があいまって市場が急伸しており、近年、世界的な開発競争が激化しています。 最適化医薬品の開発過程において、in vitro 試験等によって薬効のある化合物が得られたとしても、より効果が優れ、安全性の高い化合物を得るための様々な工夫がなされます。このプロセスは最適化と呼ばれます。アプタマー医薬に関しては、長大な核酸配列の中から効果や安全性に関係のない部分をカットする短鎖化、核酸分解酵素の作用を阻止するための化学修飾、腎臓からの早期の排出を抑えるための化合物(ポリエチレングルコールなど)との結合などがその例です。 スクリーニング新薬の開発過程において、多数の化合物の中から目的とする化合物(薬効を示し安全性が高いもの)を選び出す作業のことです。 トランスレーショナル・リサーチ大学や研究機関による基礎的な医学・薬学研究の成果を疾患の治療や新薬の開発に応用するための研究をいいます。生命科学やバイオテクノロジーの飛躍的な発展に伴い、世界的に大学での研究成果を早期に実現化に向ける動きが加速しています。薬の場合、例えば新薬の候補となる物質が大学の研究室で発見されたとしても、それをヒトでの臨床試験に繋げるには化合物の最適化(より効果があり、安全性の高いモノに改良すること)、様々な動物実験、各種試験用のサンプルの製造等、多くの課題、ハードルがあります。この基礎から臨床試験に至る一連の橋渡しのための研究がトランスレーショナル・リサーチです。 ノウハウ、営業秘密ノウハウ(Know-How)とは「単独で又は結合して、工業目的に役立つある種の技術を完成し、又はそれを実際に応用するために必要な秘密の技術的知識と経験、又はそれらの集積」(国際商業会議所の定義)をいい、営業秘密とは①秘密に管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないこと、の3要件を満たす技術上、営業上の情報(不正競争防止法第2条第6項の定義に基づく)のことです。 非臨床試験臨床試験開始前に行われる試験を非臨床試験と言い、例えば予備毒性試験やGLP試験が含まれます。 分子標的薬生体内で疾患に関連する遺伝子やそれが係わるタンパク質等(サイトカイン、成長因子等)を標的としてその活動を阻害したり活性化することを狙った医薬品をいいます。抗体医薬もアプタマー医薬も分子標的薬の一種といえます。 マイルストーン収入医薬品の開発は、非臨床試験→第1相臨床試験(Phase 1)→第2相臨床試験a(Phase 2a)→第2相臨床試験b(Phase 2b)→第3相臨床試験(Phase 3)→申請→承認→発売というステップを踏んで進行します。開発途上の医薬品のライセンスにおいては、この開発の節目を「マイルストーン」といい、それに到達したとき、あるいはその段階に入るときにライセンスの対価の一部がライセンサーに対し支払われる取引が普及しています。これによる収入を、「マイルストーン収入」といい、開発ステージが進むにつれて、商品化への確率が高まるため、マイルストーンの収入が増加するのが一般的です。 予備毒性試験 GLP試験に入る前に、的確なGLP試験を実施するためのデータ入手を目的として行う試験です。本試験で薬剤の毒性の概略を把握し、GLP試験での投与用量の設定根拠の情報を得ることができます。 ライセンス・アウト特許や開発中の製品に関する権利を他の会社に供与したり、譲渡したりすることを意味し、「導出」ともいいます。供与する権利の内容としては特許の実施権や使用権、さらにかかる特許によって保護されている製品の開発、及び製造・販売する権利などがあります。 臨床試験新薬についての製造販売承認を取得するには、ヒトでの有効性及び安全性を確認する臨床試験が不可欠です。この場合、通常、以下の3段階があります。第一段階は、少数の健常人を対象として、動物実験等により安全性の確認を終えた化合物について、その安全性や体内での動態等を確認する試験であり、第1相臨床試験(Phase 1試験)と呼ばれています。第一段階をクリアすると、次の段階は少数の患者(被験者)を対象として、薬効と安全性を確認する第2相臨床試験(Phase 2試験)に入ります。この試験のステージは、通常、2ステップがとられ、最初のステップは、少数の被験者について主に薬効を確認する段階です。この試験はPhase 2a試験と呼ばれます。さらに被験者数を増やし、有効性と安全性のバランスを取るために最適な用量を確認するための複数の用量を設定して行うPhase 2b試験があります。最後の段階は、多くの被験者を対象として行う第3相臨床試験(Phase 3試験)です。なお、臨床試験は、承認取得の前だけでなく、承認の取得後も当局から承認の条件として実施が求められる場合があります。この時の試験は市販後臨床試験と呼ばれています。
FY2021|29,922 文字|出典 docID: S100LVP4
3【事業の内容】当社は、アプタマー創薬技術に関するプラットフォームである「RiboARTシステム(Ribomic Aptamer Refined Therapeutics System)」をベースとした創薬事業を展開している創薬プラットフォーム系バイオベンチャーです。 (1)当事業年度の主要なトピックス①RBM-007について(i)RBM-007 (抗FGF2アプタマー)の臨床開発 当社では、自社で創製したRBM-007(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、「滲出型加齢黄斑変性症(Wet Age-related Macular Degeneration、wet AMD)」と「軟骨無形成症(Achondroplasia、ACH)」の治療薬としての臨床開発を進めております。 (ii)RBM-007の臨床開発の状況a)滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)1)第2相臨床試験※1(試験略称名:TOFU試験) 過年度に実施した第1/2a相臨床試験(試験略称名:SUSHI試験)の結果を受けて、2019年12月より、RBM-007の複数回投与による臨床POC※2確認を目的としたTOFU試験が米国で開始され、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて2020年3月後半から5月上旬にかけて一時的に新規患者登録を中断いたしましたが、現在では予定患者登録数(81名)のうち68名(84%)の患者登録が完了しており(2021年6月26日現在)、計画通り2021年12月までに試験を完了する予定です。この試験は、wet AMD患者を対象に、①RBM-007硝子体内注射の単剤投与群、②既存薬としてアイリーアⓇアフリベルセプト硝子体内注射との併用投与群と、③アイリーアⓇ硝子体内注射の単剤投与群との間で、有効性と安全性を比較評価する無作為化二重盲検試験です。本試験は、比較薬であるアイリーアⓇの単剤投与③に対して、RBM-007の単剤投与①やRBM-007とアイリーアⓇの併用投与②による視力の改善効果を検証することが目的ですが、TOFU試験が完了する12月以降に結果が明らかになる予定です。 2)TOFU Extension試験(試験略称名:RAMEN試験) TOFU試験の進捗に基づき、長期的な薬理作用に関する知見を得る目的で、追加試験(RAMEN試験)の被験者への投与を2020年10月より開始いたしました。RAMEN試験はオープン試験で、TOFU試験を完了した約40名の被験者に対して、追加のRBM-007の硝子体内投与を一ヶ月間隔で計4回行います。本試験の目的は、追加投与に伴う安全性と有効性、とりわけRBM-007の瘢痕形成抑制効果に関する知見を収集することです。 現在wet AMDの治療に使用されている既存薬(VEGF阻害剤)には、失明の原因となる網膜の瘢痕形成を抑制する作用がありません。瘢痕形成の評価には長期間の観察が必要なため、試験期間を延長したRAMEN試験によってRBM-007の瘢痕抑制に関する示唆が得られれば、臨床的に重要な結果となります。本試験は、TOFU試験と同様に、2021年12月までに完了することを目標としております。 b)軟骨無形成症(ACH)1)第1相臨床試験 本プロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成(2015年度から合計6年間)を受け、2020年4月、新薬の治験計画届出書をPMDAに提出し、2020年7月、RBM-007の安全性、忍容性及び薬物動態を調べることを目的として、国内の1治験施設において、合計24名の健康成人男性を対象とする第1相臨床試験を開始し、2021年5月に投与完了いたしました。なお、本プロジェクトは2021年度から3年間、AMEDの希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業として実施されます。 c)推進体制 当社の臨床開発については、30年以上の豊富な臨床開発経験を有する池上直隆氏(執行役員臨床開発部長、2020年10月より研究開発本部長に就任)が日本での臨床開発を、2021年3月から新薬開発と事業提携の経験が豊富なPadma Bezwada博士(RIBOMIC USA Inc. CEO)が米国での臨床開発を陣頭指揮し、臨床医や製品開発のエキスパートを含む外部の協力も得て進めております。 今後もRBM-007の開発推進に向け、一層の体制整備を図ってまいります。 ②共同研究契約(i)ビタミンC60バイオリサーチ株式会社との間の共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究を実施し、現在までに有望なアプタマーの創製に成功しており、実用化へ一歩進んでおります。 (ii)2021年2月、あすか製薬株式会社と、産婦人科領域で重要な役割を担う特定のホルモン受容体を標的とした創薬研究開発に関する複数年間の共同研究開発契約を締結し、共同研究を進めております。③資金調達 2020年1月に発行したSMBC日興証券株式会社を割当先とする第15回新株予約権の行使は、2020年7月に完了し、総額約55億円(当事業年度では約50億円)を調達いたしました。本調達資金は、①RBM-007のwet AMD及びACHを対象とした臨床開発費用(臨床開発のための薬剤合成費用を含む)、②RBM-003の心不全を対象とした非臨床試験※3費用、③RBM-010の変形性関節症を対象とした非臨床試験費用、④新規技術開発費用(製剤化技術開発・導入他)等に充当する計画で、現在その計画に従い研究開発を進めております。 (2)当社のビジネスモデルと収益計上の時期①当社のビジネスモデル 当社の事業は、以下の自社創薬と共同研究の2事業より構成されており、創薬探索のビジネスから臨床開発のビジネスまでの事業展開を進めております。(i)自社創薬(自社創薬事業) 一定の開発段階まで自社独自、または、大学等研究機関と共同で医薬候補となるアプタマーを開発し、その後、その成果を製薬企業にライセンス・アウト※4し、ライセンス対価(基本的に、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入※5、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。 (ii)製薬企業との共同研究(共同研究事業) アプタマー医薬の研究を提携製薬企業と共同で行い、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに、共同研究では、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。上記二つの事業をバランスよく実施することで、以下の成果あるいは効果が期待できます。 1) 共同研究を実施することにより、自社創薬のビジネスモデルに伴うライセンス・アウトの不確実性による収益の不安定化というリスクを低減できる2) 共同研究先の新薬開発のノウハウ※6、経験を知得できる3) 共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い4) POCを取得した自社開発品のライセンス・アウトにより大きな収益を期待できる5) 事業を全体として拡大できる 当社の事業の系統図は以下のとおりです。 ※:対価収入のうちライセンス・アウトの対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。 当社は、上記の自社創薬事業に付随する事業として、医薬品以外への応用可能性を秘めたアプタマーの実用化検討も行っております。その一環として、抗体※7であるIgGに特異的に結合する性質を有したアプタマーを、工業用資材(抗体医薬※7の精製剤等)として開発する事業や、アプタマーを利用した化粧品原料の開発を進めています。 ②事業活動に伴う収益計上の時期 当社のビジネスモデルにおいて、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計上のタイミングを示しています。 注:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。 個別の契約により受取回数等が異なる場合があります。 (3)事業戦略 当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。① 自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充と進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。② 共同研究を積極的に展開し、早期での収益の確保及びライセンス・アウトを目指す。③ アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品や疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から臨床POC取得のための臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。④ アプタマー創薬における当社の「RiboARTシステム」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製にチャレンジする。1)アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)2)細胞内への取り込み可能な(DDS※8作用を有する)アプタマー3)細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー4)次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発5)脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用⑤ 大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチ※9を推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。 (4)医薬品市場におけるアプタマー医薬①アプタマー医薬を含む核酸医薬※10の市場 医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞、6)遺伝子に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、並びに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。 そのような中、アプタマーを含む核酸医薬は、作用メカニズム及び投与方法が類似していることから、現在巨大な市場を形成しつつある抗体医薬に続く次世代の医薬品として注目されており、核酸医薬の世界の売上高は、2019年が約3000億円であり、抗体医薬の2019年の売上高約16兆円に比べてまだまだ小さな額ですが、抗体医薬と の比較優位性から2030年には、約2兆円に拡大する(mRNAコロナウイルスワクチンを除く)と想定されています。因みに2021年3月現在の上市済核酸医薬品は以下の通りです。 上市済核酸医薬品 上市済mRNAコロナウイルスワクチン アプタマーについては、2004年12月に世界初のアプタマー医薬で、眼科領域の疾患である加齢黄斑変性症(AMD)を適応症とする「マクジェンⓇ」が米国FDAに承認され、逐次世界各国で承認を得て、世界的な製薬企業であるファイザー社から(日本では2008年10月)発売されています。しかし、現在、全世界で「マクジェンⓇ」以外のアプタマー医薬は市販されていません。また、第2相臨床試験(Phase2試験)~第3相臨床試験(Phase3試験)の後期臨床ステージにある開発中のアプタマー医薬品目数も抗体医薬品に比較すると些少です。この背景には、アプタマーの創製に不可欠な技術であるSELEX法に関する基本特許が日欧では2011年6月まで、米国では2014年9月まで存続し、製薬会社がアプタマー創薬に向けた研究が自由にできなかったことが挙げられます。 核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があり、現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾※11、DDS及び製造と品質管理)が指摘されています。 今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で細胞内へのDDS技術が不要で、抗体と類似した作用メカニズムを持つことから応用範囲の広いアプタマー医薬であり、そのアプタマー医薬の中で、当社のRBM-007プログラムが世界の最先端に位置していると当社は考えております。アプタマーを創薬のシーズとするのは、標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体医薬と比較しても、その結合活性が非常に高いことや、様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善することが可能だからです。なお、抗体医薬との比較は、次の項を参照下さい。 ②アプタマー医薬と抗体医薬の比較 アプタマー医薬は分子標的薬※12として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNA※13を化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。 以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。 (当社作成)項目アプタマー医薬抗体医薬標的タンパク質に対する結合力抗体の1,000倍は可能強い創薬ターゲットの種類極めて多様抗原タンパクに限定製造化学合成法細胞培養法コスト(製造コスト低減の容易さ)比較的高価(製造コスト低減の可能性あり)比較的高価(製造コストの低減は難しい)抗原性/免疫排除起きにくい起きる製剤の可逆性・安定性強い弱い体内動態(長時間作用)苦手、限界あり良い、得意中和剤可能(アンチセンスの利用)不可能短期作用性得意困難加工・化学修飾容易困難 (5)パイプラインについて創薬事業(自社創薬及び共同研究)のパイプラインの最優先プロジェクトは下記のとおりです。 〈パイプライン : 優先度の高い自社開発品> ①自社創薬パイプライン(ⅰ) RBM-007(抗FGF2アプタマー):線維芽細胞増殖因子2を阻害する多用途治療薬の開発a) 開発の背景 線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast Growth Factor 2、FGF2)は、様々な臓器や器官の形成や再生、並びにそれらの正常な機能を維持する上で大切な役目を果たす「善玉タンパク質」だと長く考えられてきました。その一方で、FGF2が過剰に産生されたり、その作用が増強したりすると、骨の正常な維持に不都合が生じる可能性が学術論文で示唆されていました。 しかし、FGF2に関する研究は、その発見から40年余の歴史があるにも拘わらず、抗体や低分子を含めてFGF2に対する優れた阻害剤が開発できませんでした。その理由は、FGF2はヒトでは22種類の類縁タンパク質からなるFGFファミリーの一員で、ヒトと動物で高度に保存されているため、抗体を含め特異的な阻害剤の創製は極めて困難だったからです。この結果、FGF2を阻害した場合の病気の発症や悪化に関する研究は進展せず、FGF2阻害剤の新薬候補品としての価値は見出されていませんでした。 当社は、骨疾患におけるFGF2の役割を明らかにする目的で、FGF2に対する阻害性アプタマーの創製と解析を実施しました。その結果、FGF2に対して高い特異性と強力な阻害活性を有するアプタマーを創製することに成功し(化合物番号「RBM-007」を付与)、これまで未解明だったFGF2の生理的な機能を解明するとともに、FGF2阻害剤の多面的な用途を明らかにすることに成功しました(米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy」誌2016年11月号と「Molecular Therapy Nucleic Acids」誌2019年9月号に掲載、並びに一つの物質特許と二つの関連特許を出願しております)。これにより、本アプタマーは、骨粗鬆症やリウマチなどの「骨疾患」や癌の骨転移に伴う「癌性疼痛」に対する治療薬となりうる可能性が明らかになりました。同時に、「加齢黄斑変性症」及び「軟骨無形成症」に対する新規治療薬となりうることも明らかとなりました。 b-1) 滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)の病理と既存治療薬の問題点 加齢によって網膜の中心部にある黄斑に障害が起き、見ようとするところが見えにくくなる疾患で、進行すると失明することがあり、欧米では失明原因の第1位で、日本でも第3位の失明原因となっています。その病理は、次の図に示されるように、加齢や紫外線・タバコの紫煙等が原因となって、網膜に炎症がおき、黄斑部に血管新生が誘導されて、視神経の膜構造が損傷されるために発症します。 wet AMDの市場では、「ルセンティスⓇ」や「アイリーアⓇ」等の血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬が第一選択薬としての地位を確立(既存薬の全世界市場規模は約1.2兆円)しておりますが、wet AMD患者の約1/3はVEGF阻害薬が奏功せず、奏功した患者も長期治療の過程で、その薬効が次第に減弱し、やがて失明に向かう多くの患者がいることが臨床的に明らかにされています。また、患者への負担が大きい硝子体(眼球)内注射の間隔を延ばすことが可能な治療薬の開発も求められています。 既存の加齢黄斑変性症治療薬である抗VEGF薬では効果が十分に得られていない原因の一つとして瘢痕化が挙げられています。上図に示すように、RBM-007は血管新生の抑制作用のみならず、瘢痕化の抑制という作用を合わせ持つことが動物モデルの試験で明らかになっているため(非臨床POC確認)、既存薬にはない新規作用機序が治験によって証明された場合、既存の治療薬(VEGF阻害薬)が奏功しない(又は奏功しなくなった)患者にも奏功する、他の薬剤に対して競争力のある新薬となるものと期待しております。RBM-007によるwet AMDの治療においては、薬剤を眼球内(硝子体)に注射するため、投与薬剤量が少なくてすみ、また大半の薬剤が眼球内に留まるため、コスト的にも安全性においても、当社による開発に適していると考えております。 b-2) RBM-007を用いた滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)に対する臨床試験 米国における臨床試験の実施を目的として、当社100%子会社 RIBOMIC USA Inc.を米国Berkeleyに設立し(2017年8月)、複数の網膜疾患専門医を構成員とする当社科学諮問委員会での議論を経て、実施に向けた準備を進めました。・第1/2a 相臨床試験(試験略称名:SUSHI試験): wet AMDを対象にした臨床試験として、SUSHI試験を2018年10月から2019年7月にかけて米国で実施しました。本試験は、RBM-007の3用量(3コホート)を、計9人の難治性wet AMDの被験者に対して、単回投与(硝子体内注射)し、安全性、忍容性を確認することを主な目的として、米国西海岸の複数の治験施設において実施いたしました。 その結果、全ての用量において、主要評価項目(安全性と忍容性の確認)を達成し、あわせて副次的評価項目において薬効を示唆する結果も認められました。 ・第2相臨床試験(試験略称名:TOFU試験):この結果を受けて、2019年12月より、RBM-007の複数回投与による臨床POC確認を目的としたTOFU試験を米国で開始し、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて2020年3月後半から5月上旬にかけて一時的に新規患者登録を中断いたしましたが、現在では予定患者登録数(81名)のうち68名(84%)の患者登録が完了しており(2021年6月26日現在)、計画通り2021年12月までに試験を完了する予定です。この試験は、wet AMD患者を対象に、①RBM-007硝子体内注射の単剤投与群、②既存薬としてアイリーアⓇ(アフリベルセプト)硝子体内注射との併用投与群と、③アイリーアⓇ硝子体内注射の単剤投与群との間で、有効性と安全性を比較評価する無作為化二重盲検試験です。合計81名の被験者に対して、米国の複数の治験サイトで実施するもので、既存薬に対するRBM-007の優位性が証明されることを期待しています。 ・TOFU Extension試験(試験略称名:RAMEN試験)TOFU試験の進捗に基づき、長期的な薬理作用に関する知見を得る目的で、追加試験(RAMEN試験)の被験者への投与を開始いたしました。RAMEN試験はオープン試験で、TOFU試験を完了した約40名の被験者に対して、追加のRBM-007の硝子体内投与を一ヶ月間隔で計4回行います。本試験の目的は、追加投与に伴う安全性と有効性、とりわけRBM-007の瘢痕形成抑制効果に関する知見を収集することです。現在wet AMDの治療に使用されている既存薬(VEGF阻害剤)には、失明の原因となる網膜の瘢痕形成を抑制する作用がありません。瘢痕形成の評価には長期間の観察が必要なため、試験期間を延長したRAMEN試験によってRBM-007の瘢痕抑制に関する示唆が得られれば、臨床的に重要な結果となります。本試験は、TOFU試験と同様に、2021年12月までに完了することを目標としております。 また、これと並行して進めてきた国内外の製薬企業との提携協議の結果、2020年3月、韓国AJU薬品株式会社との間で、韓国・東南アジア地域におけるRBM-007のwet AMDを適応疾患とするライセンス契約を締結いたしました。今後、臨床開発と並行して、国内外の製薬企業との提携協議をさらに進めてまいります。 c-1) RBM-007を用いた軟骨無形成症(ACH)の病理と治療法軟骨無形成症は、新生児約25,000人に対して1人の発生率の希少疾患で、有効な治療薬が存在せず、Unmet Medical Needsの疾患となっており、新規な薬剤の開発が求められております。この疾患は、FGF受容体のひとつであるFGFR3におきた突然変異によって発症する、四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、現在まで有効な治療薬が開発されておらず、本邦では、治療には成長ホルモンが使用されていますが、効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、新薬が待ち望まれています。 c-2)RBM-007を用いた軟骨無形成症(ACH)に関する薬理試験これまでに、当社は、軟骨無形成症モデルマウス(FGFR3の遺伝子を疾患変異型に人為的に改変したマウス)を用いた薬理試験において、RBM-007は低身長改善効果を示し、軟骨無形成症に対する本薬剤の非臨床POCを確認することに成功しております。また、軟骨無形成症患者由来のiPSC(人工多能性幹細胞)は軟骨細胞への分化が不全になっていることが知られていますが、iPS細胞を試験管内で培養する際に、RBM-007を添加することで、軟骨細胞への分化が可能となり、さらには、免疫不全マウスにこの分化細胞を移植すると、マウスの体内で軟骨組織が形成されることを証明しております(大阪大学医学部との共同研究)。これらの結果から、RBM-007が、軟骨無形成症に対する新薬となりうることが強く示唆されました。 c-3)RBM-007を用いた軟骨無形成症(ACH)を適応症とする臨床試験軟骨無形成症に関するプロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援(2015年度からの6年間)を受け、2020年4月、新薬の治験計画届出書をPMDAに提出し、2020年7月、第1相臨床試験を開始いたしました。第1相臨床試験は、RBM-007の安全性、忍容性及び薬物動態を調べることを目的として、国内の1治験施設において、合計24名の健康成人男性を対象に実施し、2021年5月に投与を完了いたしました。なお、本プロジェクトは2021年度から3年間AMEDの希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業として実施されます。また、RBM-007を用いた細胞試験や動物試験でのACH治療薬としての効果については、2021年5月米国科学誌 Science Translational Medicine電子版に論文が掲載されました。 以上のRBM-007に加えて、当社は、既存パイプラインを継続的、重層的に拡大し中長期的に成長するために、特に優れた薬効が確認されているRBM-003、RBM-010、並びにRBM-011を、RBM-007に次ぐ重点開発プログラムと位置づけております。以下にプロジェクトの優先度順に概要をまとめます。 (ii)RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー):肺動脈性肺高血圧症に対する新薬の開発RBM-011が対象とする肺動脈性肺高血圧症は、難治性呼吸器疾患に認定されている原因不明の病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。プロスタグランジンI2製剤などの既存治療薬が十分な効果を発揮しない患者の予後は依然として極めて悪い状態です。これらの既存治療薬は、いずれも血管を拡張させる作用を持つものであり、血管壁の肥厚を抑制する作用を持つ薬はなく、その開発が強く望まれています。AMEDの難治性疾患実用化研究事業の一環として助成を受けて(2017年度から3年間)、当社が創製したRBM-011の共同研究を肺動脈性肺高血圧症の国内での専門医療機関である国立研究開発法人国立循環器病研究センター(国循)と進め、動物実験において、肺動脈壁の肥厚に対して、顕著な抑制効果を持つことが明らかになり、2020年度から3年間のAMEDの治験準備(ステップ1)研究として助成を受け、国循と密に連携して、本剤を臨床試験に進めるべく開発を進めております。 抗IL-21アプタマーによる肺動脈壁の肥厚抑制効果を確認 (左:通常マウスの肺の血管。中央:モデルマウスの血管。右:RBM-011投与後のモデルマウスの血管) (iii) RBM-003(抗キマーゼアプタマー):心不全に対する新薬の開発心筋梗塞直後、Chymase(キマーゼ)は肥満細胞と心筋細胞等の組織損傷部位から分泌され、アンジオテンシンII等の活性化をとおして、心筋に悪影響を及ぼすことが知られています。ハムスターを用いた冠動脈結紮による心筋梗塞急性期モデルにおいて、RBM-003の投与は梗塞後のキマーゼ陽性肥満細胞の集積並びにキマーゼ活性を抑制し、顕著な心機能改善効果を示しました(非臨床POC確認、米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy Nucleic Acids」誌2019年1月号に掲載)。RBM-003は、冠動脈結紮の前投与のみならず、後投与においても顕著な心機能改善効果を示し、冠動脈結紮を行った実験動物(ハムスター)の生存率を著しく改善いたしました。現在、急性心不全に対する医薬品は存在せず、Unmet Medical Needsの疾患となっています。RBM-003は他のキマーゼ阻害剤と比べて非常に強い酵素阻害活性を持つことが確認されており、急性心不全に対する即効性の注射薬の開発を目指して、今後の研究開発を加速してまいります。 (iv) RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー):変形性関節症に対する新薬の開発RBM-010は、当社と大正製薬株式会社との共同研究で創製された製品で、変形性関節症の増悪因子の一つであるADAMTS5(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 5)の働きを抑制する作用があります。変形性関節症は、種々の原因により、膝や足の付け根、肘、肩等の関節に痛みや腫れ等の症状が生じ、その後関節の変形をきたす病気です。現在、治療法としては痛みや腫れを和らげる薬の服用や関節置換術などの手術しかなく、根治する薬はありません。日本には、変形性関節症を有している人が、2,500万人以上、また、世界では、変形性関節症の患者が約2億4,000万人以上と推定されており、今後高齢化に伴いさらに増加が予測されています。RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー)はその根治療法に道を開く可能性があり、現在、局所投与による徐放性製剤の開発に取り組んでおります。 (v) その他のパイプラインa) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療用アプタマーの開発世界的なパンデミックとなっているCOVID-19に対して、多くの企業や研究機関が精力的にワクチンの開発を進めた結果、欧米が先行するかたちでワクチンの接種が急ピッチで進んでおります。しかしながら、変異ウイルス等の出現や供給不足を含む様々な障害が解決されないために、未だその終息の見通しが立つには至っておりません。一刻も早い感染症克服のためには、当社は、ワクチン開発と並行して治療薬の開発が不可欠であると考えており、COVID-19に対するアプタマー創薬研究を精力的に継続しております。COVID-19の原因ウイルスSARS-CoV-2は、ウイルス表面のスパイクタンパク質(Sタンパク質)がヒトの細胞表面にある受容体(ACE2タンパク質)に結合することによって感染が開始され、その後細胞内に侵入し増殖することが明らかになっていますが、当社は、Sタンパク質やACE2タンパク質に結合することによって、Sタンパク質とACE2タンパク質の結合を阻害し、ウイルスの細胞内への侵入を阻止するような活性を持つアプタマーに、治療薬としての効果が期待出来るものと考えております。現在までに、多数の候補配列情報を取得、表面プラズモン共鳴法を用いたスクリーニング※14によって、抗Sタンパク質アプタマーの候補(Sタンパク質に対する結合、並びに宿主受容体ACE2への結合阻害活性を持つアプタマー)を複数特定することに成功しております(ヒット化合物の取得)。また、東京大学医科学研究所・アジア感染症研究拠点(研究代表者:合田仁特任准教授)との共同研究により、培養細胞を用いたin vitro※15試験において、取得された抗Sタンパク質アプタマーの中に、シュードタイプウイルス(水疱性口内炎ウイルスの粒子表面にSARS-CoV-2のSタンパク質を作らせた偽型ウイルス)の感染を抑制する活性を確認いたしました。今後は、取得されたヒットアプタマーから最適候補を選別して動物モデルでの感染阻害効果を検証する予定です。 ②自社創薬に付随するパイプライン当社は、創薬以外へのアプタマーの応用も行っております。その一つに、IgGアプタマーがあります。IgGはヒト血清中に最も多く存在(70~75%)する免疫グロブリンで、抗体医薬として実用化されています。当社は、IgGの特定の部分(定常部)に結合するアプタマーを取得し、これが抗体医薬の分離精製に利用できることを証明いたしました。これに伴い、過年度においてIgGアプタマー樹脂及びカラムの試作品を作成し、製薬企業や大学等にモニター用としてサンプル提供を行っております。また、本アプタマーに関する事業の進展に伴い、新規の製品コード「RBM-101」を付して、今後、国内外の大手製薬企業へのライセンス・アウトを含めた事業化を目指してまいります。 上記のほかに、アプタマー医薬品の汎用性をさらに活かすため、コンピューター科学を応用した技術開発(以下「国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)委託事業」)等を継続して進めております。2018年度から開始されたJST委託事業においては、早稲田大学と共同し、バイオインフォマティクスを駆使したアプタマー探索技術(RaptRanker)を開発いたしました。RaptRankerを用いることにより、当社のアプタマー創薬プロセスを効率化し、創薬期間の短縮及び成功率の向上につなげることができます。さらに、2021年3月、本事業が「AI アプタマー創薬プロジェクト」としてJSTに採択され、2021年4月から3年間、早稲田大学と共同で、当社が手掛ける RNA アプタマーの創薬のプロセスを、深層学習などの人工知能技術を活用することで自動化し、創薬期間の短縮及び創薬成功率の向上を実現させることを目指し、研究を進めてまいります。また、難しい創薬標的である膜受容体GPCRに対する汎用的なアプタマー創製法の開発を、AMEDの支援のもと、東京大学医科学研究所と共同して進めてきましたが、その研究成果が米国科学アカデミー紀要(2021年4月)に掲載されました。今後のGPCR創薬にあらたな道を拓くものと期待しております。 (6)アライアンスの状況について ① アライアンスの状況現在の当社のアライアンス状況は、以下の通りです。(i) ライセンス・アウト済みのもの区分パイプラインターゲット導出先権利地域適応症自社創薬RBM-004NGF(神経成長因子)藤本製薬株式会社全世界疼痛自社創薬RBM-007FGF2(線維芽細胞増殖因子2)韓国AJU薬品株式会社韓国及び東南アジア滲出型加齢黄斑変性 (ii)アプタマー創薬に関する主たる共同研究パートナー名称共同研究概要ビタミンC60バイオリサーチ株式会社2019年1月に締結した共同研究契約に基づく、アプタマー技術を活用した化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究。あすか製薬株式会社2021年2月に締結した共同研究開発契約に基づく、「RiboART システム」を用いた産婦人科領域で重要な役割を担う特定のホルモン受容体に作用するアプタマー医薬品の研究開発に関する共同研究 ②アライアンス戦略当社は、自社創薬製品については、製品の特性や、自社での臨床開発の実施可能性、市場性等に鑑みて、もっとも効果的なライセンス・アウト時期を見定め、非臨床段階、若しくは自社で臨床試験を実施しPOCを取得した後にライセンス・アウトすることを事業スキームとしております。また、当社はこれまで共同研究やライセンス・アウトに連動して、複数の共同研究先及びライセンス先と資本提携も実施し、より強固で統合的な事業推進を図ってまいりました。今後は、アプタマー創薬に取り組む企業の拡大が見込まれ、それに伴う事業チャンスを活かすために、事業開発部を中心に営業活動の地域を海外にも積極的に広げ、共同研究やライセンス・アウトの機会の拡大を図ってまいります。 ③アライアンスの推進体制自社創薬品目のライセンス・アウト実現のためには、可能性の高い提携候補先の選定、候補先での導入決定を促す試験成績・データ(製品差別化のポイント、製品売上高の予測、競合品に対する優位性等)の創出、製薬企業側のニーズの把握など、専門的な能力、経験が必要です。このため、当社では医薬品業界での新薬の開発及びライセンスの経験と実績のある人材を社内に擁し、また研究開発や知財に関する社外専門家も活用できる体制を構築しており、アライアンスの実現に向けた体制を整えております。また、2021年3月からRIBOMIC USA Inc.の新CEOに就任したPadma Bezwada氏は前職のXOMA社BD副社長として多くの事業提携を成功させた実績を有しており、当社のアライアンス実現に対する大きな貢献を期待しています。 (7)知財戦略創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品が特許により保護されていることが、自社開発のみならず他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。当社の知財戦略は、開発する製品に関するものと、開発技術に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。 ①自社創薬品目及び共同研究品目に対する知財戦略RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)について権利範囲の抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。よってプロジェクトごとの物質特許の取得を前提としています。標的分子との結合力が強くかつ当該標的分子の生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物もカバーする特許権の成立を目指します。具体的には、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する構造や配列を探索し、その共通構造・共通配列を特許化することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。さらに非臨床試験・臨床試験の経過により得られるデータに基づき、製剤特許や用途特許の出願を実施し、実質的な特許期間を延ばす戦略を採っています。一方共同研究品目については提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。なお特許出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド、ブラジル等の医薬品市場の規模が大きく、または将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。 ②「RiboARTシステム」に対する知財戦略「RiboARTシステム」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化※16)の中には、特許化が可能な技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化は技術公開という代償を伴い、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難です。従って、当社では、原則としてアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboARTシステム」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密※6として秘匿し、優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。 ③主要な特許の状況当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。 対象パイプライン発明の名称出願または特許番号保有者登録状況RBM-003キマーゼに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/044132 当社-RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2009/066457(特許第5602020号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105(特許第5027956号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済NGFに対するアプタマー及びその用途PCT/JP2012/75252(特許第6118724号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992当社日本・米国・欧州・中国・香港(中国経由)・ロシア・南アフリカにて成立済アプタマー製剤PCT/JP2019/025766当社-THERAPEUTIC AGENT FOR SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL OR RETINAL DISEASE WITH SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL (FGF2に結合するアプタマー又はその塩基を含む、網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤)Provisional Application in US Application Number: 62970842当社-RBM-006オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/062561当社-RBM-010ADAMTS5に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/041746当社-RBM-001骨形成や骨代謝の異常に関連する疾患の治療薬PCT/JP2020/020294当社-RBM-011IL-21に対するアプタマー及びその使用特願2020-104831当社- 対象パイプライン発明の名称出願または特許番号保有者登録状況RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2009/066457(特許第5602020号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105(特許第5027956号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済NGFに対するアプタマー及びその用途PCT/JP2012/75252(特許第6118724号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992 当社日本・米国・欧州・中国・香港(中国経由)・ロシア・南アフリカにて成立済アプタマー製剤PCT/JP2019/025766当社-THERAPEUTIC AGENT FOR SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL OR RETINAL DISEASE WITH SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL (FGF2に結合するアプタマー又はその塩基を含む、網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤)Provisional Application in US Application Number: 62970842 当社- 対象パイプライン発明の名称出願または特許番号保有者登録状況RBM-101免疫グロブリンGに結合する核酸とその利用法PCT/JP2006/313811(特許第4910195号)当社日本、米国にて成立済 (8)創薬体制①アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチを継続的に実施してきました。東京大学との共同研究は現在も継続し、同医科学研究所内に「RNA医科学」社会連携研究部門を設置して、同研究所内の動物試験施設や、その他の高度試験装置を使用できる恵まれた環境を維持してきました。これにより技術、信頼性の観点から、高レベルの研究体制を整備しております。当社は、東京大学以外にも、大阪大学、順天堂大学、大阪医科大学等、あるいはチェコ共和国のMasaryk大学のアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、アプタマーの分析等における連携を図っております。 ②的確な研究開発マネジメント当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。 ③人的ネットワークアプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握や国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。 ④アプタマー創製のスペシャリスト当社では、社員の約7割が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣を敷いております。さらに、大手製薬企業で研究開発、臨床開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。 (9)ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。①E(環境)当社は、IT整備によるペーパーレス等の省資源や研究資源の管理、並びに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。 ②S(社会)当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えております。その中で、特に、現在世界的なパンデミックとなっている新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に対するアプタマー治療薬の開発は、アプタマーの卓越した優位性を発揮すべき当社の使命であると考えており、1日も早く候補アプタマーの創製を実現するために努力してまいります。また、主に東京大学の学部生で構成されるBIOMOD Team Tokyoを支援し、次世代の研究者育成に関しても貢献をしております。 ③G(企業統治)・コーポレート・ガバナンスの強化当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しております。このような企業として社会的責任を果たしていくために、今般社外取締役を1名増員し3名体制にしている他、コーポレートガバナンス・コードへの対応も継続して進めてまいりましたが、今後もコーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。・組織体制の整備と人材の育成・登用当社は、上記の課題に対応し、当社事業の継続的な発展を実現するためには、それに対応する組織体制の整備と、人材の育成・登用を図ることが重要と考えており、必要に応じて組織体制の強化を図ってまいりました。その一環として、2021年5月1日付で、研究開発本部内に治験薬の合成や管理を専門とする「CMC開発部」を新設し、管理本部内の「管理部」と「経営企画部」を新たに「財務経理部」と「人事総務部」に改組して、機動的な組織体制を整えました。今後も事業構造や事業展開等を勘案したうえで必要な人材を育成し必要なポジションに登用する他、豊富な経験を有する人材の採用、外部ノウハウの活用などにも積極的に取り組んでまいります。 (10)参考資料(技術紹介)①アプタマー医薬について核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています(RNAの造形力※17)。この造形力を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。アプタマー医薬としてこれまでに上市された製品は、2004年12 月に米国食品医薬品局(米国FDA)が承認した「マクジェンⓇ」(加齢黄斑変性症に対する治療薬)のみで、アプタマー医薬の市場は未開拓の領域といえます。 ②「RiboARTシステム」当社の「RiboARTシステム」は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。「RiboARTシステム」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。「RiboARTシステム」においてコアとなる技術は、1)目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、2)取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強するとともに、この技術を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。当社は、他の会社に先んじてSELEX法を利用した研究を開始したことによる現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。 選抜:目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜分析:選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析加工:アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾を実施試験:細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価評価:動物を用いてアプタマーの毒性を評価 (ⅰ)アプタマーの取得技術(SELEX法運用技術)アプタマー創薬のコアとなる技術の一つは、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するアプタマーを取得するSELEX法に関する技術です。この方法は日欧では2011年6月まで、米国では2014年9月まで特許で守られ、権利者(アルケミックス社)からライセンスを取得しない限り、SELEX法を実施して自由にアプタマーを取得することはできませんでした。当社は、この特許が国内で有効であった2006年10月より、権利者から実施ライセンスを受け、様々なSELEX法を駆使してアプタマーを取得する経験を積んでまいりました。日米欧での上記特許失効後は、誰でもアプタマーの取得にSELEX法を実施することが可能となりました。しかし、目標とするタンパク質に結合し、意図した薬効を示すポテンシーのあるアプタマーを取得するには、標的タンパク質の特性分析、最適な核酸プールの構築に始まり、様々な条件下でのSELEX法の実施経験やノウハウが必要となります。当社の「RiboARTシステム」はこれらを集大成した創薬技術です。SELEX法とはRNAの造形力を利用して、目的とするアプタマーを探し出すための技術で、様々なタンパク質を標的に使用できる汎用性が特徴です。具体的には、様々なタイプのRNA分子を標的のタンパク質と何度も結合→解離→増幅→再結合を繰り返すことで、より強く結合するRNA分子のみを“進化”させる技術です。この方法は、以下に示す魚釣りに似ています。 a)4種類の塩基(A・U・G・C)がランダムに配列されたRNA(様々なタイプの魚)の入ったプール(釣り堀)に標的となるタンパク質を「餌」にして、結合する(食いつく)特定のRNA(数十万種の魚)を釣り上げます。b)釣ったRNA(魚)からタンパク質(餌)を外し、増幅して(養殖して数を増やす)、再度プールの中に放し、同じタンパク質(餌)で釣りを繰り返します。早く食いついた数十から数十万種のRNA(魚)を増幅(養殖)し、再度、釣りを行います。c)このサイクルを10数回行うことによって、標的タンパク質に強く特異的に結合するアプタマー(最も早く餌に食いつく魚)を数種類選択することができます(右図参照)。 SELEX法を利用したアプタマーの創製(取得)には、最初にプールに放つ魚群の選定(核酸ライブラリーの構築)や釣り方(試験方法等)について、長年の経験・実績によるところが多く、当社はSELEX法に関して、世界でも有数の高度かつ広汎な技術を有しております。特に、核酸ライブラリーを作る際に、多様な修飾が施された修飾塩基を、4種類あるいはその一部に使用して、ライブラリーの多様性を拡充することが重要かつ効果的です。また、近年、核酸配列の分析技術(シークエンス解析法)が格段に進歩した結果、次世代型のシークエンス装置を使えば、短時間に少量のサンプルから、百万程度の配列を読むことが可能です。当社は、この次世代型シークエンス装置とコンピューター処理を用いて、数百万の配列情報からアプタマー候補を抽出するHT-SELEX(high-throughput SELEX)法を開発し、運用しております。 (ⅱ)アプタマーの最適化技術アプタマーの最適化技術は、in vitro や in vivo ※15試験でのスクリーニングから、より効果が高い(標的タンパク質に強く結合し、そのタンパク質の生理作用を高度に阻害する)アプタマーを創製し、アプタマーの改良技術を駆使して、臨床開発品として完成させるものです。これには、アプタマーに特化したスクリーニング手法だけでなく、取得したアプタマーの特質と用途に応じた個別の最適化(短鎖化、化学修飾、doped SELEX(部分的に配列をランダム化して行うSELEX)等)技術が必要で、当社の最大の強みは、この分野での豊富な知識と経験並びに技能が蓄積していることであります。また、的確な最適化には、標的タンパク質の特性(分子量、立体構造、電気化学的性質、類縁タンパク質(サブタイプ)の有無等)に応じた最適化のデザイン力が必須です。当社では、このデザイン力に関しても研究実績を蓄積してまいりました。これに加えて、アプタマーと標的タンパク質の複合体での立体構造を基にしてより強力なアプタマーのデザインも行うなど、アプタマーの最適化技術に関し常に技術力の向上を図っております。このような、短鎖化や化学修飾等による最適化作業を、in vitro や in vivo 試験で効果を確認しつつ繰り返し、より優れた臨床開発品へとアプタマーを磨き上げていきます。 (ⅲ)アプタマーの最適化(改変・改良等)の問題点核酸を成分とするアプタマーは体内に投与されると生体内の核酸分解酵素により速やかに分解されます。そのため、薬効を得るために体内での作用時間を延ばす必要があり、様々な改良を加えて酵素耐性の向上を図り、また、体外への排出の抑制を図ります。このアプタマーを医薬品として最適な化合物に仕上げる技術を欠くと、開発の中断や終了を余儀なくされます。アプタマーは、最適化を図っても抗体のように1~2ケ月間も作用させることは困難で、基本的には急性期、あるいは短期間を挟む間欠投与の適した疾患、あるいは治療法が皆無の疾患が、その本領を最も発揮できる対象だといえます。このため、同一のタンパク質を標的とする抗体と競合する場合、アプタマーは抗体が適していない疾患や投与方法をデザインすることが肝要です。 (ⅳ)アプタマーの製造法、品質規格の設定、品質管理等のノウハウ核酸医薬、特にアプタマー医薬は、これまで「マクジェンⓇ」が承認、販売されていますが、アプタマー医薬自体の歴史が比較的浅く、薬事規制面でも、原薬アプタマーや完成品の品質規格に関する規制内容は標準化されていません。特にCMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び治験薬の製造管理)の分野では、個々のアプタマーごとに薬事承認や臨床試験の開始までに必要な試験やその方法、分析方法等を企画し、場合によっては薬事当局との協議が必要になります。当社は、そのために必要な、以下の分野の知識、経験も有しております。・アプタマーを医薬品化するために不可欠な製造方法、品質規格の設定、品質管理・核酸やアプタマーのような高分子化合物の分析、核酸の塩基配列の解析法 (ⅴ)アプタマーの安全性・毒性の評価・検討に関するノウハウアプタマーを動物に投与した時の毒性は、核酸が本来持っている毒性とターゲットタンパク質を阻害したことによる毒性に分けられます。核酸が本来持っている毒性の代表例は、大量に投与した場合に、血液凝固の阻害が起こることです。当社はこのような核酸特有の毒性を考慮しながらアプタマー作りを行っており、以下の経験を有しております。・アプタマーの血中や臓器中での濃度測定・ラットを用いた毒性試験・サルを用いた毒性試験 ③当社の新薬開発プロセス新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。 1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニ ングする基礎・探索研究の段階 2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う非臨床試験の段階 当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)非臨床試験の段階において、「RiboARTシステム」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboARTシステム」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び非臨床試験の期間(1年前後のGLP試験※18の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験※19ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。 (11)参考資料(用語解説)※1 : 臨床試験新薬についての製造販売承認を取得するには、ヒトでの有効性及び安全性を確認する臨床試験が不可欠です。この場合、通常、以下の3段階があります。第一段階は、少数の健常人を対象として、動物実験等により安全性の確認を終えた化合物について、その安全性や体内での動態等を確認する試験であり、第1相臨床試験(Phase 1試験)と呼ばれています。第一段階をクリアすると、次の段階は少数の患者(被験者)を対象として、薬効と安全性を確認する第2相臨床試験(Phase 2試験)に入ります。この試験のステージは、通常、2ステップがとられ、最初のステップは、少数の被験者について主に薬効を確認する段階です。この試験はPhase 2a試験と呼ばれます。さらに被験者数を増やし、有効性と安全性のバランスを取るために最適な用量を確認するための複数の用量を設定して行うPhase 2b試験があります。最後の段階は、多くの被験者を対象として行う第3相臨床試験(Phase 3試験)です。なお、臨床試験は、承認取得の前だけでなく、承認の取得後も当局から承認の条件として実施が求められる場合があります。この時の試験は市販後臨床試験と呼ばれています。 ※2 : POC POC(Proof of Concept)とは、新薬の開発段階において、ある化合物がヒトでの臨床試験(通常は少数の患者を対象としたPhase 2a試験)において意図した薬効と安全性の基準をクリアすることをいいます。 ※3 : 非臨床試験臨床試験開始前に行われる試験を非臨床試験と言い、例えば予備毒性試験やGLP試験が含まれます。 ※4 : ライセンス・アウト特許や開発中の製品に関する権利を他の会社に供与したり、譲渡したりすることを意味し、「導出」ともいいます。供与する権利の内容としては特許の実施権や使用権、さらにかかる特許によって保護されている製品の開発、及び製造・販売する権利などがあります。 ※5 : マイルストーン収入医薬品の開発は、非臨床試験→第1相臨床試験(Phase 1)→第2相臨床試験a(Phase 2a)→第2相臨床試験b(Phase 2b)→第3相臨床試験(Phase 3)→申請→承認→発売というステップを踏んで進行します。開発途上の医薬品のライセンスにおいては、この開発の節目を「マイルストーン」といい、それに到達したとき、あるいはその段階に入るときにライセンスの対価の一部がライセンサーに対し支払われる取引が普及しています。これによる収入を、「マイルストーン収入」といい、開発ステージが進むにつれて、商品化への確率が高まるため、マイルストーンの収入が増加するのが一般的です。 ※6 : ノウハウ、営業秘密ノウハウ(Know-How)とは「単独でまたは結合して、工業目的に役立つある種の技術を完成し、またはそれを実際に応用するために必要な秘密の技術的知識と経験、またはそれらの集積」(国際商業会議所の定義)をいい、営業秘密とは①秘密に管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないこと、の3要件を満たす技術上、営業上の情報(不正競争防止法第2条第6項の定義に基づく)のことです。 ※7 : 抗体、抗体医薬抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合してその物質を体内から排除するように働くタンパク質をいいます。この排除システムを抗原抗体反応といい、我々の体内に自然に備わっている防御システムです。抗体医薬とはこの仕組を医薬品として応用するもので、具体的には、疾患の原因となっているサイトカインなどのタンパク質を抗原として認識する抗体を産生する細胞(主に動物の)を造り出し、その後、この細胞を培養して該当する抗体を取り出し、精製加工します。但し、ヒト以外の動物、例えばマウスの細胞が産生する抗体(マウス抗体)をそのままヒトに使用できない場合があるため、動物からとれた抗体をヒト型に組み替える技術が発達しています。現在、臨床開発されている抗体医薬の多くは、このヒト化抗体、若しくはヒト抗体です。さらに、複数の抗原を狙ったものや持続時間の長期化のためにPEGと結合させたコンジュゲート抗体なども開発の俎上にのっています。なお、抗体類似の構造を持ち作用・機能面においても抗体と類似するFc融合タンパク質は、広い意味で抗体医薬の一種に含むこともあります。この抗体医薬は、難治疾患に対する確かな効果と安全性、高薬価、さらに技術開発があいまって市場が急伸しており、近年、世界的な開発競争が激化しています。 ※8 : DDS薬剤の副作用の原因のひとつに、薬剤が標的臓器以外に作用することがあげられます。DDS(Drug Delivery System)とは、この問題を解決するために、薬剤が標的臓器に、適切な濃度で到達、作用できるように、剤形を工夫したシステムをいいます。 ※9 : トランスレーショナル・リサーチ大学や研究機関による基礎的な医学・薬学研究の成果を疾患の治療や新薬の開発に応用するための研究をいいます。生命科学やバイオテクノロジーの飛躍的な発展に伴い、世界的に大学での研究成果を早期に実現化に向ける動きが加速しています。薬の場合、例えば新薬の候補となる物質が大学の研究室で発見されたとしても、それをヒトでの臨床試験に繋げるには化合物の最適化(より効果があり、安全性の高いモノに改良すること)、様々な動物実験、各種試験用のサンプルの製造等、多くの課題、ハードルがあります。この基礎から臨床試験に至る一連の橋渡しのための研究がトランスレーショナル・リサーチです。 ※10 : 核酸医薬1970年代以降、ヒトの遺伝子の研究が進展し、核酸が医薬品になるかもしれないという期待は1980年代に生まれました。しかし、当時は核酸、特にRNAを医薬に応用するための基礎的な技術が整備されておらず、しかもRNAという核酸の特性や立体構造等の学術的な理解も浅かったために、長期にわたる膨大な資金や人材の投入とは裏腹に核酸医薬の開発は実を結びませんでした。しかし、その苦い教訓の中でも、RNAの加工技術の開発という地味な仕事がアカデミアや少数のベンチャー企業で継続されました。その結果、1998年に世界初となるアンチセンス医薬(VitraveneⓇ[一般名 ホミビルセン],エイズ患者のサイトメガロウイルス性網膜炎用の局所投与剤)が承認され、その後、2004年にアプタマー医薬であるマクジェンⓇ、2013年に2番目となるアンチセンス医薬(KynamroⓇ[一般名 ミポメルセン])が家族性高脂血症薬として承認されました。2016年にはデュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象としたEXONDYS51TM[一般名 エテプリルセン]、脊椎性筋萎縮症を対象としたスピンラザⓇ[一般名 ヌシネルセン]が相次いで承認され、さらに、2018年には家族性トランスサイレチン (TTR) アミロイドーシスを対象とした世界初となるsiRNA医薬(オンパットロⓇ [一般名 パチシラン])が承認され、アンチセンスやsiRNAを用いた核酸医薬品の開発が活発に進められています。現在、研究開発中の核酸医薬には下記の表に示すものがあり、その中で主要な核酸医薬品の作用機序について下記の図に示しています。分類基本構造標的作用機序アプタマー一本鎖RNA/DNAタンパク質タンパク質に結合して生理作用を阻害アンチセンス一本鎖DNAmRNAmRNAに結合して翻訳を阻害デコイ核酸二本鎖DNA転写因子転写因子をトラップして転写を阻害リボザイム一本鎖RNAmRNA酵素として働きmRNAを切断し、発現抑制siRNA二本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化による発現抑制miRNA一本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化や翻訳阻害による発現抑制antimiRNA一本鎖RNA/DNAmiRNAmiRNAに結合してその活性を阻害mRNA一本鎖RNAリボゾーム(鋳型作用)タンパク質合成の鋳型として働き、目的とするタンパク質を合成エキソンスキッピング一本鎖RNA/DNAmRNA前駆体遺伝子異常部位をスキップするようにスプライシングを調整CpGオリゴ一本鎖DNATLR自然免疫の活性化 ※11 : 化学修飾品質や薬効向上のために、化合物の一部の分子や原子を他の分子や原子に置換したり、新たな分子や原子を結合させることをいいます。 ※12 : 分子標的薬生体内で疾患に関連する遺伝子やそれが係わるタンパク質等(サイトカイン、成長因子等)を標的としてその活動を阻害したり活性化することを狙った医薬品をいいます。抗体医薬もアプタマー医薬も分子標的薬の一種といえます。 ※13 : RNA遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミン(T)の代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。そのため、分子生物学の黎明期から、RNAは単なる遺伝情報のコピーに過ぎないという思い込みが、世界的にも支配的でした。しかし、10数年前から、この考えは誤りであることが様々な研究によって明らかになってきました。特に立体構造を作って働く機能性RNAの生体内での役割が注目を集めています。 ※14 : スクリーニング新薬の開発過程において、多数の化合物の中から目的とする化合物(薬効を示し安全性が高いもの)を選び出す作業のことです。 ※15 : in vitro 、invivoin vitro (イン・ビトロ)とは、技術用語で「試験管内で」という意味です。In vitro 試験は、試験管内で、ヒトや動物のタンパク質、細胞や組織を用いて、薬物の効果や作用等を調べる試験をいいます。当社では、得られたアプタマーのタンパク質との相互作用の確認試験や細胞・組織を用いた薬効確認試験がこれに該当します。in vivo (イン・ビボ)とは、「生体内で」という意味です。In vivo 試験とは、マウスやラット等の実験動物を用いて、生体内での薬物の作用や効果、安全性・毒性等を調べる試験をいいます。当社では、得られたアプタマーの薬効確認試験や安全性・毒性の評価試験がこれに該当します。 ※16 : 最適化医薬品の開発過程において、in vitro 試験等によって薬効のある化合物が得られたとしても、より効果が優れ、安全性の高い化合物を得るための様々な工夫がなされます。このプロセスは最適化と呼ばれます。アプタマー医薬に関しては、長大な核酸配列の中から効果や安全性に関係のない部分をカットする短鎖化、核酸分解酵素の作用を阻止するための化学修飾、腎臓からの早期の排出を抑えるための化合物(ポリエチレングルコールなど)との結合などがその例です。※17 : RNAの造形力当社は、アプタマーとIgGとの結合体の結晶構造をX線解析法によって明らかにしてNucleic Acids Res誌に発表いたしました(2010年、図参照)。その結果、既存のアプタマーではRNAのリン酸の負電荷と、標的タンパク質の正電荷のアミノ酸領域とが電気的な相互作用によって結合するものしか知られていませんでしたが(図の右の事例)、IgGアプタマーはこれまでの常識を覆して、アプタマーが標的にフィットするしなやかな形状を作って、電気的な相互作用を使わずに、水素結合やファンデルワールス力のような多様な結合を利用して強く標的に結合することが明らかにされました。つまり、RNAには、これまで予想もされなかった「しなやかな造形力」が備わっていることの証しです。このような基礎的な研究は、応用という点からも重要です。特に、医薬品の標的となるタンパク質は、必ずしもRNAと結合しやすい正電荷のアミノ酸が表面に多いとは限らないため、これらの基礎研究の成果は、非常に多くのタンパク質がRNAアプタマーの創薬ターゲットとなりうるということを示唆するものです。また標的タンパクの捕捉方法について抗体医薬と比較した場合、アプタマーの特徴は、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」にあります。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。 ※18 : GLP試験GLP(Good Laboratory Practice)とは、医薬品の安全性に関する非臨床試験(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、その他の毒性試験)の実施に関する試験の質を担保する基準のことをいいます。この基準は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」で定められています。なお、日本のGLPと同様な規制は欧米等でも実施されています。このGLPに準拠して行う試験をGLP試験といいます。 ※19 : 予備毒性試験 GLP
FY2020|29,949 文字|出典 docID: S100JC39
3【事業の内容】当社は、アプタマー創薬技術に関するプラットフォームである「RiboARTシステム(Ribomic Aptamer Refined Therapeutics System)」をベースとした創薬事業を展開している創薬プラットフォーム系バイオベンチャーです。 「RiboARTシステム」は様々なアプタマー医薬の開発に応用できるものですが、当社は、特に「Unmet Medical Needs」疾患領域に的を絞り、医療機関や患者様から求められている新薬の提供を目指しております。アプタマーとは核酸であるRNA※1を素材とした分子で、多様な立体構造を形成できるという1本鎖のRNAの特性を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節します。その名称については、標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。当社は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力※2の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする「RiboARTシステム」をアプタマー創薬の基盤技術として確立しております。この「RiboARTシステム」は、様々な疾患分野や創薬ターゲットに対して応用可能な汎用性を有する創薬基盤技術です。自社で特定の新薬開発を行うのみならず、他の製薬会社の要請に応じて新薬のシーズ(タネ)を供与できるバイオベンチャーであることから、当社自身のことを「創薬プラットフォーム系バイオベンチャー」であると定義しております。当社は、これまで、この「RiboARTシステム」を利用した創薬探索をビジネスの柱としてきましたが、これに加え、適切な自社創薬製品については、自社で臨床試験※3を実施することを視野に事業を展開し、創薬プラットフォーム系バイオベンチャーとしての価値を高めてまいります。 「RiboARTシステム」の概念図は以下のとおりです。選抜:目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜分析:選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析加工:アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾※4を実施試験:細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価評価:動物を用いてアプタマーの毒性を評価 このような「RiboARTシステム」をベースとして、当社は、早期ライセンス・アウト※5を前提とした「自社創薬」と、製薬会社との「共同研究」の二つをバランス良く組合せて実行することを、事業展開の基本方針としてきましたが、適切な自社製品については、前述のように自社で臨床試験を実施し、POC※6を取得した後に、ライセンス・アウトすることを、当社の主要な事業スキームに加え、事業展開を進めております。具体的には、以下に述べます自社製品RBM-007を用いた滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)に対する臨床試験を米国で実施しており、さらに軟骨無形成症(ACH)に対する臨床試験を日本において開始しました。その結果、当社は、従来の創薬探索のビジネスから、臨床開発のビジネスへとステップ・アップいたします。 当社の事業の系統図は以下のとおりです。 ※:対価収入のうちライセンス・アウトの対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入※7、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。 創薬事業における共同研究では、アドバイザリー契約の下、アプタマー医薬開発に関する試験研究の受託、技術指導も実施しております。 また、当社は、上記の創薬事業に付随する事業として、医薬品以外への応用可能性を秘めたアプタマーの実用化検討も行っております。その一環として、抗体※8であるIgGに特異的に結合する性質を有したアプタマーを、工業用資材(抗体医薬※8の精製剤等)として開発する事業や、アプタマーを利用した化粧品材料の開発、膜タンパク質を標的としたアプタマーの創製技術の開発、あるいは次世代型シークエンス法並びにコンピュータ科学を利用したアプタマー創製の新しい基盤技術の開発も行っております。(1)アプタマー医薬①アプタマー医薬について核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています。この造形力を利用して、標的とするタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。アプタマーの特徴は、右図に例示するように、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」です。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬※9の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。アプタマー医薬としてこれまでに上市された製品は、2004年12月に米国食品医薬品局(米国FDA)が承認した「MacugenⓇ」(加齢黄斑変性症に対する治療薬)のみで、アプタマー医薬の市場は未開拓の領域といえます。 ②医薬品市場におけるアプタマー医薬(i)アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場アプタマーを含む核酸医薬の市場は、現在開発中の核酸医薬の開発の進捗状況、製品上市の時期、当該品目の市場性等により大きく変動する可能性がありますが、大きく拡大しつつあります。核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があります。現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS※10及び製造と品質管理)が指摘されています。今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で細胞内へのDDS技術が不要であり、抗体と類似した作用メカニズムを持ち、応用範囲の広いアプタマー医薬だと、当社は考えております。 (ⅱ)アプタマー医薬の現状と課題2004年12月に世界初のアプタマー医薬で、眼科領域の疾患である加齢黄斑変性症(AMD)を適応症とする「MacugenⓇ」が米国FDAに承認され、逐次世界各国で承認を得て、世界的な製薬企業であるファイザー社から(日本では2008年10月)発売されています。なお、現在、全世界で「MacugenⓇ」以外のアプタマー医薬は市販されておらず、現在の「MacugenⓇ」の売上は、類似薬効品の抗体医薬「LucentisⓇ」とタンパク質医薬「EyleaⓇ」に押され、最盛期の1/20以下で、全世界で10数億円程度と思われます。しかし、「LucentisⓇ」と「EyleaⓇ」に代表される血管内皮増殖因子(VEGF)に対する阻害剤は広く世界で使用され、AMD治療薬の世界市場は1兆円に近づいています。アプタマー医薬については、P2(Phase2試験)~P3(Phase3試験)の後期臨床ステージにある開発中の品目数も抗体に比較すると些少です。この背景には、アプタマーの創製に不可欠な技術であるSELEX法に関する基本特許が日欧では2011年6月まで、米国では2014年9月まで存続し、製薬会社がアプタマー創薬に向けた研究が自由にできなかったことが挙げられますが、現在は特許障壁は全て解除されています。「MacugenⓇ」が類似薬効の抗体医薬に対して優位に立てなかった事例は、アプタマー医薬の開発(アプタマー創薬)に次のような貴重な教訓を与えました。 アプタマーに限らず、分子標的医薬の開発においては、創薬ターゲットとする疾患関連タンパク質の選択が重要です。「MacugenⓇ」の開発において、AMDは血管内皮増殖因子(VEGF)が関与しているとの知見から、VEGFの様々なサブタイプ(基本的な役割は似ているがタンパク質を構成するアミノ酸の長さや配列に違いがある)の中から、AMDの主因と考えたVEGF-165のみを阻害するアプタマー(Pegaptanib)を有効成分として選択しました。世界初のアプタマー医薬として、安全性を考慮したこの選択自体は決して誤ったものではなかったと当社では考えております。これに対し、後続の「LucentisⓇ」や「EyleaⓇ」は、VEGF-165だけでなく他のサブタイプも阻害することによって、効果(進行の停止のみならず視力も回復する)の点で、「MacugenⓇ」を上回り、AMDに対する第一選択薬としての地位を確立しました。標的に対するシャープな特異性がアプタマーの真骨頂ですが、この場合は、アプタマーのシャープさが裏目に出てしまったといえます。創薬ターゲットの選択においては、このような事例に十分注意することが必要です。 一般的にアプタマー創薬において留意すべき点として、アプタマーの最適化※11(改変・改良等)の問題があります。核酸を成分とするアプタマーは体内に投与されると生体内の核酸分解酵素により速やかに分解されます。そのため、薬効を得るために体内での作用時間を延ばす必要があり、様々な改良を加えて酵素耐性の向上を図り、また、体外への排出の抑制を図ります。このアプタマーを医薬品として最適な化合物に仕上げる技術を欠くと、開発の中断や終了を余儀なくされます。 抗体医薬との差別化をどう図るかという問題もアプタマー創薬においては重要です。後述するように、アプタマーは抗体と比べて優れた点が多々あり、新薬のシーズとして大きな可能性を秘めています。しかし、抗体にはその作用が長時間持続するという、長所とも短所ともなりうる特徴があります。反面、アプタマーは、最適化を図っても抗体のように1~2ケ月間も作用させることは困難で、基本的には急性期、あるいは短期間を挟む間欠投与の適した疾患、あるいは治療法が皆無の疾患が、その本領を最も発揮できる対象だといえます。このため、同一のタンパク質を標的とする抗体と競合する場合、アプタマーは抗体が適していない疾患や投与方法をデザインすることが肝要です。 (ⅲ)アプタマー医薬と抗体医薬の比較アプタマー医薬は分子標的薬※12として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。 抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。 以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。 (当社作成)項目アプタマー医薬抗体医薬標的タンパク質に対する結合力抗体の1,000倍は可能強い創薬ターゲットの種類極めて多様抗原タンパクに限定製造化学合成法細胞培養法コスト(製造コスト低減の容易さ)比較的高価(製造コスト低減の可能性あり)比較的高価(製造コストの低減は難しい)抗原性/免疫排除 起きにくい起きる製剤の可逆性・安定性強い弱い体内動態(長時間作用) 苦手、限界あり良い、得意中和剤可能(アンチセンスの利用)不可能短期作用性得意困難加工・化学修飾容易困難 (2)創薬プラットフォーム①創薬の戦略とアプタマー 医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞、6)遺伝子に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、ならびに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。このなかで、低分子を対象とした日本の創薬力は欧米と同等のレベルまで達していますが、抗体やワクチンについては遅れています。核酸医薬については、日本で創製されたHGF遺伝子治療製品(重症虚血肢を対象)が2019年3月に国内条件付承認をうけ上市されました。その他、日本発の核酸医薬としてヒトでの臨床試験のステージに入っているものには、AMG-0103(NF-κBデコイオリゴ、アンジェス)、NS-089/NCNP-02(エキソンスキッピング・アンチセンス、日本新薬)、DS-5141b(エキソンスキッピング・アンチセンス、第一三共)、ND-L02-s0201/BMS-986263(siRNA、日東電工)、NBF-006(siRNA、日東電工)、WVE-120101(アンチセンス、武田薬品)、GRN-163(アンチテロメラーゼ、協和キリン)と、当社のRBM-007(抗FGF2アプタマー)があります。しかし、既にP2試験やP3試験に入っている多くの開発品や上市品を有する欧米と比べて、遅れていることは確かです。その中で、唯一、アプタマー医薬については、当社のRBM-007プログラムが世界の最先端に位置し、世界を牽引しております。今後、アプタマー医薬は、核酸医薬の中核となる可能性を秘めております。また、近年ペプチドを利用する創薬の研究開発が始まっています。核酸やペプチドは分子量が、高分子の抗体医薬と低分子医薬の中間に位置するため、これらは中分子医薬と総称されて、抗体や低分子にはない特徴を発揮する医薬品としても注目されています。その特徴のひとつとして、タンパク質・タンパク質相互作用(PPI、protein-protein interaction)に対する阻害剤の開発があげられます。当社は、増殖因子等のリガンドや受容体に対するアプタマーを多数創製してきましたが、これらは、中分子医薬の議論が始まる以前から、PPI阻害剤の開発を実践してきたものです。 ②新薬開発プロセス新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。 1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニ ング※13する基礎・探索研究の段階 2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う前臨床試験※14の段階 当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)前臨床試験の段階において、「RiboARTシステム」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboARTシステム」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び前臨床試験の期間(1年前後のGLP試験※15の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験※16ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。 ※:前臨床試験(3~5年)にはGLP試験の期間1年前後が含まれています。 ③「RiboARTシステム」を用いたアプタマー創薬当社の「RiboARTシステム」は、シーズ・アプタマー(疾患に関連するタンパク質に結合する候補アプタマー)の取得から最終的な臨床開発品の創出までのプロセスをカバーする、当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。東京大学医科学研究所における研究成果や技術をベースに、当社の研究成果や創意工夫、ノウハウ※17あるいは営業秘密※17を含んでいます。「RiboARTシステム」においてコアとなる技術は、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強し、pM(ピコモラー、10-12モラー)未満のKd値の達成を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。 「RiboARTシステム」の詳細は以下のとおりです。(ⅰ)アプタマーの取得技術(SELEX法運用技術)アプタマー創薬のコアとなる技術の一つは、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するアプタマーを取得するSELEX法に関する技術です。この方法は日欧では2011年6月まで、米国では2014年9月まで特許で守られ、権利者(アルケミックス社)からライセンスを取得しない限り、SELEX法を実施して自由にアプタマーを取得することはできませんでした。当社は、この特許が国内で有効であった2006年10月より、権利者から実施ライセンスを受け、様々なSELEX法を駆使してアプタマーを取得する経験を積んでまいりました。日米欧での上記特許失効後は、誰でもアプタマーの取得にSELEX法を実施することが可能となりました。しかし、目標とするタンパク質に結合し、意図した薬効を示すポテンシーのあるアプタマーを取得するには、標的タンパク質の特性分析、最適な核酸プールの構築に始まり、様々な条件下でのSELEX法の実施経験やノウハウが必要となります。当社の「RiboARTシステム」はこれらを集大成した創薬技術です。 SELEX法とはRNAの造形力を利用して、目的とするアプタマーを探し出すための技術で、様々なタンパク質を標的に使用できる汎用性が特徴です。具体的には、様々なタイプのRNA分子を標的のタンパク質と何度も結合→解離→増幅→再結合を繰り返すことで、より強く結合するRNA分子のみを“進化”させる技術です。この方法は、以下に示す魚釣りに似ています。 1)4種類の塩基(A・U・G・C)がランダムに配列されたRNA(様々なタイプの魚)の入ったプール(釣り堀)に標的となるタンパク質を「餌」にして、結合する(食いつく)特定のRNA(数十万種の魚)を釣り上げます。2)釣ったRNA(魚)からタンパク質(餌)を外し、増幅して(養殖して数を増やす)、再度プールの中に放し、同じタンパク質(餌)で釣りを繰り返します。早く食いついた数十から数十万種のRNA(魚)を増幅(養殖)し、再度、釣りを行います。3)このサイクルを10数回行うことによって、標的タンパク質に強く特異的に結合するアプタマー(最も早く餌に食いつく魚)を数種類選択することができます(右図参照)。 SELEX法を利用したアプタマーの創製(取得)には、最初にプールに放つ魚群の選定(核酸ライブラリーの構築)や釣り方(試験方法等)について、長年の経験・実績によるところが多く、当社はSELEX法に関して、世界でも有数の高度かつ広汎な技術を有しております。特に、核酸ライブラリーを作る際に、多様な修飾が施された修飾塩基を、4種類あるいはその一部に使用して、ライブラリーの多様性を拡充することが重要かつ効果的です。 また、近年、核酸配列の分析技術(シークエンス解析法)が格段に進歩した結果、次世代型のシークエンス装置を使えば、短時間に少量のサンプルから、百万程度の配列を読むことが可能です。当社は、この次世代型シークエンス装置とコンピュータ処理を用いて、数百万の配列情報からアプタマー候補を抽出するHT-SELEX(high-throughput SELEX)法を開発し、運用しております。 (ⅱ)アプタマーの最適化技術アプタマーの最適化技術は、in vitro※18 や in vivo※18試験でのスクリーニングから、より効果が高い(標的タンパク質に強く結合し、そのタンパク質の生理作用を高度に阻害する)アプタマーを創製し、アプタマーの改良技術を駆使して、臨床開発品として完成させるものです。 これには、アプタマーに特化したスクリーニング手法だけでなく、取得したアプタマーの特質と用途に応じた個別の最適化(短鎖化、化学修飾、doped SELEX(部分的に配列をランダム化して行うSELEX)等)技術が必要で、当社の最大の強みは、この分野での豊富な知識と経験並びに技能が蓄積していることであります。 また、的確な最適化には、標的タンパク質の特性(分子量、立体構造、電気化学的性質、類縁タンパク質(サブタイプ)の有無等)に応じた最適化のデザイン力が必須です。当社では、このデザイン力に関しても研究実績を蓄積してまいりました。これに加えて、アプタマーと標的タンパク質の複合体での立体構造を基にしてより強力なアプタマーのデザインも行うなど、アプタマーの最適化技術に関し常に技術力の向上を図っております。 このような、短鎖化や化学修飾等による最適化作業を、in vitro や in vivo 試験で効果を確認しつつ繰り返し、より優れた臨床開発品へとアプタマーを磨き上げていきます。 (ⅲ)アプタマーの製造法、品質規格の設定、品質管理等のノウハウ 核酸医薬、特にアプタマー医薬は、これまで「MacugenⓇ」が承認、販売されていますが、アプタマー医薬自体の歴史が比較的浅く、薬事規制面でも、原薬アプタマーや完成品の品質規格に関する規制内容は標準化されていません。 特にCMC(医薬品成分の化学的属性や製造管理)の分野では、個々のアプタマーごとに薬事承認や臨床試験の開始までに必要な試験やその方法、分析方法等を企画し、場合によっては薬事当局との協議が必要になります。当社は、そのために必要な、以下の分野の知識、経験も有しております。・アプタマーを医薬品化するために不可欠な製造方法、品質規格の設定、品質管理・核酸やアプタマーのような高分子化合物の分析、核酸の塩基配列の解析法 (ⅳ)アプタマーの安全性・毒性の評価・検討に関するノウハウアプタマーを動物に投与した時の毒性は、核酸が本来持っている毒性とターゲットタンパク質を阻害したことによる毒性に分けられます。核酸が本来持っている毒性の代表例は、大量に投与した場合に、血液凝固の阻害が起こることです。当社はこのような核酸特有の毒性を考慮しながらアプタマー作りを行っており、以下の経験を有しております。・アプタマーの血中や臓器中での濃度測定・ラットを用いた毒性試験・サルを用いた毒性試験 ④その他の創薬体制当社はさらに、アプタマー医薬の開発のために、以下の体制を整えております。(ⅰ)アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチ※19を継続的に実施してきました。東京大学との共同研究は現在も継続し、同医科学研究所内に「RNA医科学」社会連携研究部門を設置して、同研究所内の動物試験施設や、その他の高度試験装置を使用できる恵まれた環境を維持してきました。これにより技術、信頼性の観点から、高レベルの研究体制を整備しております。当社は、東京大学以外にも、大阪大学、順天堂大学、大阪医科大学等、あるいはチェコ共和国のMasaryk大学や米国プリツカー精神神経疾患研究コンソーシアムのアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、アプタマーの分析等における連携を図っております。 (ⅱ)的確な研究開発マネジメント 当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。 (ⅲ)人的ネットワーク アプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握に努めております。また、今後、自社での臨床試験を進めるにあたり、国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めてまいります。 (ⅳ)アプタマー創製のスペシャリスト 当社では、役職員の3/4が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣をしいております。 さらに、大手製薬企業で研究開発、臨床開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。 (3)創薬事業①当社のビジネスモデルについて(ⅰ)当社の創薬事業は、以下の3事業より構成されています。 ・自社創薬 ・製薬企業との共同研究 ・自社臨床開発 自社創薬とは、一定の開発段階まで自社独自で医薬候補となるアプタマーを開発し、その後、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、ライセンス対価(基本的に、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。 これに対し、共同研究とは、アプタマー医薬の研究を提携製薬企業と共同で行い、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに、共同研究では、アドバイザリー契約を除いて、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。 (ⅱ)三つの事業のバランス化 自社創薬によるライセンス・アウトに依存しすぎると、ライセンスの成否やその成約の遅れ等により事業計画が大きく影響を受けます。他方、共同研究は安定的な共同研究収入を一定期間期待できます。また、自社創薬による収益を最大化するためには、適切な製品について、自社で臨床試験を実施し、POCを取得した後に、ライセンス・アウトすることが効果的です。 従って、自社創薬に共同研究の特徴をうまく組み合わせ、さらに自社臨床開発を加えることで、以下の成果あるいは効果が期待できます。 1) 自社創薬のビジネスモデルに伴う収益の不安定化というリスクを低減できる 2) 共同研究先の新薬開発のノウハウ、経験を知得できる 3) 共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い 4) POCを取得した自社開発品のライセンス・アウトにより大きな収益を期待できる 5) 事業を全体として拡大できる ②事業活動に伴う収益計上の時期 当社のビジネスモデルからは、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計のタイミングを示しています。 注:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。 個別の契約によりそれぞれの金額や受取回数等が異なる場合があります。 しかし、自社創薬に関しては、以下のような場合、正式なライセンス契約の締結前でも、何らかの収益を得る機会があります。当社としては、相手方の意向にもよりますが、可能な限り、その機会を追求してまいります。 ・相手方に独占的な評価・交渉権を与える場合 ・相手方との間で提携に関する基本条件が合意され、基本合意書などを締結する場合 ・相手方の評価用に該当品目のサンプルを提供する場合 ③自社創薬及び共同研究の特長と、事業展開における基本方針(ⅰ)自社創薬について 新薬の開発において、基礎・探索研究、前臨床試験、臨床試験へと開発のステージが進捗するに従い、その経費は大幅に増加します。 また、臨床試験ステージになると、自社で開発を推進する場合には臨床試験用の社内体制を備える必要が生じ、さらにPOC確認後の臨床試験では、適応症にもよりますが、被験者数が飛躍的に増え、費用が莫大になります。上市後のマーケティング戦略を視野に入れた対応も必要となります。従って、POC確認後の臨床開発は、資金、経験やノウハウを有する製薬企業にて実施することが、アプタマー医薬の成功確率を高め、かつ早期の上市につながると考えております。 これらの事情に鑑みて、当社としては、自社での研究開発の目標は、ヒトでの臨床試験に入る前か、臨床試験の初期でヒトでの薬効が確認された時点(POC確認時点)での、製薬企業へのライセンス・アウトとしております。但し、早期事業化の品目として選定したテーマである場合や、ライセンス先の製薬企業との間で合意が成立した場合は、それ以前であってもライセンス・アウトを実施いたします。 なお、ライセンス・アウト後は、当該品目の開発や製造、販売などはライセンス先がその責任で行うことになります。しかし、当社のアプタマー医薬に関する知見が必要な場合、一定期間、共同研究を行うことがあります。 (ⅱ)共同研究について 共同研究は、製薬企業(提携先)とともにアプタマー創薬を実現することを目指す共同研究契約と、アプタマー創薬を行っている製薬企業に対するアドバイザリー契約があります。具体的には、共同研究契約では、創薬のターゲットとなる疾患関連タンパク質は提携先の領域戦略などに従って選択され、当社はかかるタンパク質の生理作用を阻害・抑制し、提携先が求める基準を満たすアプタマーを創製いたします。提携先はそのアプタマーについて薬効等の確認・評価(スクリーニング)、安全性試験等を行い、早期に臨床試験の対象となる臨床開発品を特定し、以降は提携先のイニシアティブで臨床開発を推進します。アドバイザリー契約では、アプタマー創薬を行っている製薬企業に対し、アプタマー医薬開発に関する試験研究の受託、技術指導を行っております。 共同研究では、製薬企業との間で作業分担を定めますが、当社が分担するアプタマーの創製に関する研究活動に対しては、適切な対価を得ることとしております。この役割分担に関しては、双方の有する技術や知識、経験をベースとして協議により決定しますが、当社の主な役割はアプタマーの創製やその改良となります。なお、当社では、共同研究の対価として受取る収入は共同研究収入として事業収益に計上し、試薬等の実費補填として受取る収入が生じた場合には受取研究開発費として営業外収益に計上しております。 また、共同研究では、大手製薬企業の技術を活用することで開発をより迅速に進めることが可能となります。 現在、当社が推進している、あるいは2020年3月期において終了した、アプタマー創薬に関する主たる共同研究は以下のとおりであります。 パートナー名称共同研究概要大正製薬株式会社2014年3月に締結し、2017年3月に延長した共同研究契約に基づく、同社が選定した創薬領域に関する共同研究。2019年4月にその共同研究成果(特許を含む)の取扱いに関する覚書締結。(覚書の締結により、共同研究契約は終了した)アステラス製薬株式会社2017年3月に締結した共同研究契約に基づく、同社が開発を目指す創薬ターゲットに関する共同研究。2019年9月に契約を満了。ビタミンC60バイオリサーチ株式会社2019年1月に締結した共同研究契約に基づく、アプタマー技術を活用した化粧品材料の開発に関する共同研究。 ④パイプラインについて創薬事業(自社創薬及び共同研究)のパイプラインの主要なプロジェクトは下記のとおりです。 〈主要パイプラインの進捗>(ⅰ)自社創薬パイプライン自社創薬テーマに関する当社のビジネス・モデルは、前臨床段階まで開発が進んだ段階で、製薬企業にライセンス・アウトすることを優先してきました。この基本方針は堅持しつつも、研究開発型の製薬企業へと発展するためには、可能な範囲で自社での臨床試験を実施することが不可欠だと考えております。自社で臨床POCを確保した製品については、前臨床段階でのライセンス・アウトに比較して、格段に有利な経済条件で製薬企業にライセンス・アウトすることが可能となり、当社の経営基盤の安定化に大きく役立ちます。 このため、その一環として、RBM-007(抗FGF2アプタマー)の臨床試験の推進に積極的に取り組んでおります。RBM-007は高齢者の失明の原因ともなりうる滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)と難治性の希少疾患として知られる軟骨無形成症(四肢短縮による低身長を伴う)を対象疾患としております。以下に、RBM-007の臨床試験の現状と今後の予定、並びに当社のパイプラインについて、それらの概要をまとめます。 a) RBM-007:線維芽細胞増殖因子2を阻害する多用途治療薬の開発 線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast Growth Factor 2、FGF2)は、様々な臓器や器官の形成や再生、並びにそれらの正常な機能を維持する上で大切な役目を果たす「善玉タンパク質」だと長く考えられてきました。その一方で、FGF2が過剰に産生されたり、その作用が増強したりすると、骨の正常な維持に不都合が生じる可能性が学術論文で示唆されていました。しかし、FGF2に関する研究は、その発見から40年余の歴史があるにも拘わらず、抗体や低分子を含めてFGF2に対する優れた阻害剤が開発できませんでした。その理由は、FGF2はヒトでは22種類の類縁タンパク質からなるFGFファミリーの一員で、ヒトと動物で高度に保存されているため、抗体を含め特異的な阻害剤の創製は極めて困難だったからです。この結果、FGF2を阻害した場合の病気の発症や悪化に関する研究は進展せず、FGF2阻害剤の新薬候補品としての価値は見出されていませんでした。当社は、骨疾患におけるFGF2の役割を明らかにする目的で、FGF2に対する阻害性アプタマーの創製と解析を実施しました。その結果、FGF2に対して高い特異性と強力な阻害活性を有するアプタマーを創製することに成功し(化合物番号「RBM-007」を付与)、これまで未解明だったFGF2の生理的な機能を解明するとともに、FGF2阻害剤の多面的な用途を明らかにすることに成功しました(米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy」誌2016年11月号と「Molecular Therapy Nucleic Acids」誌2019年9月号に掲載、並びに一つの物質特許と二つの関連特許を出願しております)。これにより、本アプタマーは、骨粗鬆症やリウマチなどの「骨疾患」や癌の骨転移に伴う「癌性疼痛」に対する治療薬となりうる可能性が明らかになりました。同時に、「加齢黄斑変性症」及び「軟骨無形成症」に対する新規治療薬となりうることも明らかとなりました。 a-1) 滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)の病理と既存治療薬の問題点加齢によって網膜の中心部にある黄斑に障害が起き、見ようとするところが見えにくくなる疾患で、進行すると失明することがあり、欧米では失明原因の第1位で、日本でも第3位の失明原因となっています。その病理は、次の図に示されるように、加齢や紫外線・タバコの紫煙等が原因となって、網膜に炎症がおき、黄斑部に血管新生が誘導されて、視神経の膜構造が損傷されるために発症します。 滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)の市場では、「LucentisⓇ」や「EyleaⓇ」等の血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬が第一選択薬としての地位を確立しておりますが、wet AMD患者の約1/3はVEGF阻害薬が奏功せず、奏効した患者も長期治療の過程で、その薬効が次第に減弱し、やがて失明に向かうことが臨床的に明らかにされています。また、患者への負担が大きい硝子体(眼球)内注射の間隔を延ばすことが可能な治療薬の開発も求められています。 そのため、新しい作用機序をもつ新薬として、VEGFとは異なるAMD発症の要因として血小板由来成長因子(PDGF)に対するアプタマー阻害剤が開発され、その薬効に世界的な関心が集まりました。しかし、第3相試験で目標とする薬効を達成することができませんでした。このような状況下で、加齢黄斑変性症は、未だに既存薬では病気の進行が最終的に抑制できないUnmet Medical Needsの疾患の一つであり、新規作用機序の薬剤の開発が求められています。これまで開発されてきた既存の加齢黄斑変性症治療薬である抗VEGF薬では効果が十分に得られていない原因の一つとして瘢痕化が挙げられています。下図に示すように、RBM-007は血管新生の抑制作用のみならず、瘢痕化の抑制という作用を合わせ持つことが動物モデルの試験で明らかになっているため(非臨床POC確認)、既存薬にはない新規作用機序によって、競争力のある新薬となりうるものと考えております。RBM-007によるwet AMDの治療においては、薬剤を眼球内(硝子体)に注射するため、投与薬剤量が少なくてすみ、また大半の薬剤が眼球内に留まるため、コスト的にも安全性においても、当社による開発に適していると考えております。 a-2) RBM-007を用いた滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)に対する臨床試験米国における臨床試験の実施を目的として、当社100%子会社 RIBOMIC USA Inc.を米国Berkeleyに設立し(2017年8月)、複数の網膜疾患専門医を構成員とする当社科学諮問委員会での議論を経て、実施に向けた準備を進めました。wet AMDを対象にした臨床試験として、第1/2a 相試験(試験略称名:SUSHI試験)を2018年10月から2019年7月にかけて米国で実施しました。本試験は、RBM-007の3用量(3コホート)を、計9人の難治性wet AMDの被験者に対して、単回投与(硝子体内注射)し、安全性、忍容性を確認することを主な目的として、米国西海岸の複数の治験施設において実施いたしました。その結果、全ての用量において、主要評価項目(安全性と忍容性の確認)を達成し、あわせて副次的評価項目において薬効を示唆する結果も認められました。この結果を受けて、2019年12月より、RBM-007の複数回投与による臨床POC確認を目的とした第2相試験(試験略称名:TOFU試験)を米国で開始しました。この試験は、wet AMD患者を対象に、①RBM-007硝子体内注射の単剤投与群、②既存薬としてアイリーア(アフリベルセプト)硝子体内注射との併用投与群と、③アイリーア硝子体内注射の単剤投与群との間で、有効性と安全性を比較評価する無作為化二重盲検試験です。合計81名の被験者に対して、米国の10数カ所の治験サイトで実施するものです。2021年末までに本試験は完了する予定で、既存薬に対するRBM-007の優位性が証明されることを期待しています。これと並行して進めてきた国内外の製薬企業との提携協議の結果、2020年3月、韓国AJU薬品株式会社との間で、韓国・東南アジア地域におけるRBM-007のwet AMDを適応疾患とするライセンス契約を締結いたしました(後述⑤参照)。 a-3) RBM-007を用いた軟骨無形成症の臨床試験計画軟骨無形成症は、新生児約25,000人に対して1人の発生率の希少疾患で、有効な治療薬が存在せず、Unmet Medical Needsの疾患となっており、新規な薬剤の開発が求められております。この疾患は、FGF受容体のひとつであるFGFR3におきた突然変異によって発症する、四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、現在まで有効な治療薬が開発されていません。これまでに、当社は、軟骨無形成症モデルマウス(FGFR3の遺伝子を疾患変異型に人為的に改変したマウス)を用いた薬理試験において、RBM-007は低身長改善効果を示し、軟骨無形成症に対する本薬剤の非臨床POCを確認することに成功しております。また、軟骨無形成症患者由来のiPSC(人工多能性幹細胞)は軟骨細胞への分化が不全になっていることが知られていますが、iPS細胞を試験管内で培養する際に、RBM-007を添加することで、軟骨細胞への分化が可能となり、さらには、免疫不全マウスにこの分化細胞を移植すると、マウスの体内で軟骨組織が形成されることを証明しております(大阪大学医学部との共同研究)。これらの結果から、RBM-007が、軟骨無形成症に対する新薬となりうることが強く示唆されました。軟骨無形成症に関するプロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援(2015年度からの3年間ならびに2018年度からの3年間)を受け、治験開始に必要な準備をすべて完了し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との対面助言を実施後、2020年4月、新薬の治験計画届出書をPMDAに提出し、同年5月に第1相試験の実施が許可され、同年7月より、国内の1治験施設において、RBM-007の安全性、忍容性及び薬物動態を調べることを目的とする、第1相試験を開始しております。 a-4) RBM-007を用いた癌性疼痛に対する新薬の開発 疼痛(癌性疼痛)は、進行癌患者で高頻度に発生する骨転移を伴う骨病変の進行による強い疼痛を引き起こし、骨転移による疼痛にはオピオイドが効きにくいことが知られています。これまでの当社における研究によって、FGF2には骨疾患を増悪させる働きがあり、FGF2を阻害するアプタマーのRBM-007は骨疾患や骨疾患に伴う痛みを治癒する作用が動物実験で確認されております。この鎮痛効果は、モルヒネ(オピオイド)とほぼ同等の強さですが、モルヒネのような依存性や常習性等の副作用はなく、皮下投与により薬効の長期持続が期待されるという特徴があります。そのため、RBM-007はモルヒネ(オピオイド)を代替する安全な鎮痛薬になりうると期待しております。 b) RBM-003:心不全に対する新薬の開発 RBM-003は「キマーゼ(Chymase)」に対する阻害性アプタマーです。キマーゼは、肥満細胞が産生分泌するキモトリプシン様のタンパク質分解酵素で、血圧調節を始め、多様な生理活性に関与することが知られています。手術や炎症に伴う傷害を受けた部位では、肥満細胞からキマーゼが放出され、活性化されると、TGFβ(トランスフォーミング増殖因子β)前駆体やアンジオテンシン前駆体の活性化が誘起され、組織の線維化や心機能の障害が始まると考えられています。そのため、キマーゼ阻害剤は、臓器線維症や心不全に対する医薬品となる可能性を有しています。 ハムスターを用いた冠動脈結紮による心筋梗塞急性期モデルにおいて、本アプタマーの投与は梗塞後のキマーゼ陽性肥満細胞の集積並びにキマーゼ活性を抑制し、顕著な心機能改善効果を示しました(非臨床POC確認、米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy Nucleic Acids」誌2019年1月号に掲載)。アプタマー投与は、冠動脈結紮の前投与のみならず、後投与においても顕著な心機能改善効果を示し、冠動脈結紮を行った実験動物(ハムスター)の生存率を著しく改善いたしました。 RBM-003の競合品として、バイエル社(独)が開発した低分子のキマーゼ阻害剤を用いた、慢性心不全に対する臨床試験が、Phase2まで実施されていました。しかし、最近開発の中止が報告されました。その理由は明確ではありませんが、特許公知情報から、当社のRBM-003はバイエル社のキマーゼ阻害剤に比較して、2桁強い酵素阻害活性をもつと推測されます。そのため、強い薬理作用をもつアプタマーの特徴を生かして、「急性」の心筋梗塞に対する「救命効果」をもつ即効性の注射薬の開発を目指すことが適切ではないかと考えています。その基本方針のもとで、今後の研究開発を加速するとともに、早期のアライアンスを実現したいと考えております。 c) RBM-011:肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する新薬の開発 抗IL-21アプタマーを用いたPAHに対する新薬の開発研究を、国立循環器病研究センターと共同で進めてきました。本研究は、AMEDの難治性疾患実用化研究事業の一環として助成を受け(2017〜2019年度)、治療薬候補としての抗IL-21アプタマーの創製に成功いたしました。今般、その継続研究がAMEDの治験準備(ステップ1)研究として採択されました(2020〜2022年度)。 PAHは、難治性呼吸器疾患に認定されている原因不明の病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、全身への血液や酸素の供給が障害され、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。これまでの共同研究によって、当社が創製した抗IL-21アプタマーは、動物実験において、肺動脈壁の肥厚に対して、顕著な抑制効果をもつことが明らかになっています。今後は、PAHに対する国内での専門医療機関である国立循環器病研究センターと密に連携して、本剤を臨床試験に進めるべく注力したいと考えております。 d) RBM-010:変形性関節症に対する新薬の開発 RBM-010は、当社と大正製薬株式会社との共同研究で創製された製品で、変形性関節症の増悪因子の一つであるADAMTS5(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 5)の働きを抑制する作用があります。変形性関節症は、種々の原因により、膝や足の付け根、肘、肩等の関節に痛みや腫れ等の症状が生じ、その後関節の変形をきたす病気です。現在、治療法としては痛みや腫れを和らげる薬の服用や関節置換術などの手術しかなく、根治する薬はありません。RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー)はその根治療法に道を開く可能性があります。日本には、変形性関節症を有している人が、2,500万人以上、また、世界では、変形性関節症の患者が約2億4,000万人以上と推定されており、今後高齢化にともない更に増加が予測されています。 e) RBM-001:骨硬化性疾患に対する新規治療薬の開発 RBM-001(抗Midkineアプタマー)は、大塚製薬株式会社との共同研究の後、2017年5月にライセンス契約を締結したものです。その後の研究よって、RBM-001が骨代謝に関与する細胞に対し特有の作用(骨芽細胞死)を有することを発見し、2019年5月に発明「骨形成や骨代謝の異常に関連する疾患の治療薬」の特許出願を実施いたしました。これと並行して、当社は大塚製薬株式会社と協議の上、2019年5月付でライセンス契約を終了すると同時に、本品の当社による事業化(事業化後の大塚製薬株式会社へのロイヤルティー支払いを含む)に関する覚書を締結しました。 骨硬化性疾患等の骨系統疾患には、進行性骨化性線維異形成症(筋肉や腱、靱帯が骨組織に変化して硬化する病気であり、子供のころから発症し死に至る可能性があるとして、難病に指定されています。)や後縦靱帯骨化症(背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨になった結果、脊髄等が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気で、難病に指定されています。)等が含まれます。今後、当社は本品のグローバル展開を推進するためのパートナーを選定し、RBM-001の事業化を進めていく予定です。 f) その他のパイプラインf-1) COVID-19治療用アプタマーの開発当社の使命に鑑み、現在世界的なパンデミックとなっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬の開発を目的としたアプタマー創薬研究を開始いたしました。 COVID-19の原因ウイルスSARS-CoV-2は、ウイルス表面のスパイクタンパク質(Sタンパク質)がヒトの細胞表面にある受容体(ACE2タンパク質)に結合することによって感染が開始され、その後細胞内に侵入し増殖することが明らかになっています。当社は、Sタンパク質やACE2タンパク質に結合することで、Sタンパク質とACE2タンパク質の結合を阻害し、あるいは細胞への侵入を阻止するようなアプタマーの創製を進めております。今後、社外の専門研究グループと共同で、得られたアプタマーのウイルス増殖阻害効果を、細胞ならびに動物モデルを用いて検証する予定です。 f-2) 抗ST2アプタマー:重症喘息やアトピー性皮膚炎に対する新規治療薬の開発 ST2は細胞の表面に発現しているタンパク質で、当初どのような機能があるのかわかっていませんでした。その後、2005年にペアとなって働くサイトカイン(免疫応答に機能する分子)IL-33が発見され、免疫細胞の活性化による感染防御に働いていることがわかりました。さらに、2010年に2型自然リンパ球(ILC2)という新しい免疫細胞が発見され、この細胞が異常に活性化してしまうことが喘息やアトピー性皮膚炎等の疾患の原因となっていること、この細胞の活性化にIL-33/ST2が重要な役割を担っていることが報告されています。 当社が創製した抗ST2アプタマーのST2に対する結合力は、一般的な抗体医薬品と比較しても、極めて高い親和性を有しており、気道吸入や薬剤塗布による薬剤送達が可能な新薬の開発を目指しています。 f-3) 抗FGF9アプタマー:精神疾患に対する新薬の開発 米国プリツカー精神神経疾患研究コンソーシアムと、大うつ病性障害、双極性障害、統合失調症等の精神疾患に対する新薬の開発を目標に共同研究を開始しました。プリツカー・コンソーシアムは、プリツカー財団の寄付により運営される、ミシガン大学やスタンフォード大学等、米国を代表する5カ所の精神疾患研究施設からなる研究連合で、線維芽細胞増殖因子9(FGF9)の異常亢進が重篤な精神疾患の原因になることを明らかにしています。 当社はFGF9に対する阻害性アプタマーを創製し、プリツカー・コンソーシアムにおいて動物実験で抗FGF9アプタマーの薬理作用を検証し、革新的な精神疾患治療薬の開発につなげたいと考えています。このプロジェクトは、血液脳関門を通過して、薬剤を脳内に送達することが必要となるため、当社にとって魅力的かつチャレンジングなテーマです。この問題を解決することによって、神経精神疾患に対する新薬の開発という新たなアプタマー創薬の地平が拓けるものと期待しています。 (ⅱ)共同研究パイプライン共同研究パイプラインの概要は、(3)③(ⅱ)で示したとおりです。 ⑤ライセンス・アウト済みプロジェクト 当社の創薬事業のパイプラインのうちライセンス・アウト済みのものは、以下のとおりであります。区分パイプラインターゲット導出先権利地域適応症自社創薬RBM-004NGF(神経成長因子)藤本製薬株式会社全世界疼痛共同研究RBM-001Midkine大塚製薬株式会社(2019年5月契約終了)全世界非開示自社創薬RBM-007FGF2(線維芽細胞増殖因子2)AJU薬品株式会社(韓国)韓国及び東南アジア滲出型加齢黄斑変性 (ⅰ)藤本製薬株式会社とのライセンス契約 当社は2014年4月、NGFに対するRNAアプタマーを含有する医薬品の開発、製造、販売に関して、全世界での独占的実施権を許諾するライセンス契約を藤本製薬株式会社と締結しております。 (ⅱ)大塚製薬株式会社とのライセンス契約 当社は、大塚製薬株式会社と、2008年8月から2016年12月まで実施した抗Midkineアプタマー(当社製品コードRBM-001)及び関連核酸に関する共同研究での成果につき、大塚製薬株式会社においてこれを開発・商業化することを目的としたライセンス契約を2017年5月に締結いたしました。その後の研究によって、本品が希少疾患である骨硬化性疾患等の骨系統疾患に効果を示すことが明らかになり、2019年5月にそれに基づく発明「骨形成や骨代謝の異常に関連する疾患の治療薬」の特許出願を実施いたしました。これと並行して、当社は大塚製薬株式会社と協議の上、2019年5月付でライセンス契約を終了すると同時に、本品の当社による事業化(事業化後の大塚製薬株式会社へのロイヤルティー支払いを含む)に関する覚書を締結しました。今後、当社は本品のグローバル展開を推進するためのパートナーの選定を進めていく予定です。 (ⅲ)韓国AJU薬品とのライセンス契約当社は2020年3月、韓国AJU薬品株式会社との間で、韓国・東南アジア地域におけるRBM-007のwet AMDを適応疾患とするライセンス契約を締結いたしました。これにより、当社は、契約一時金として1百万USドルを受領、今後、RBM-007の開発段階に応じて、開発マイルストーンとして最大5百万USドル、合計最大6百万USドルを受け取る権利を取得しております。 ⑥その他当社は、創薬以外へのアプタマーの応用も行っております。その一つに、IgGアプタマーがあります。IgGはヒト血清中に最も多く存在(70~75%)する免疫グロブリンで、抗体医薬として実用化されています。当社は、アプタマー創薬に関する技術開発の過程において、IgGの特定の部分(定常部)に結合するアプタマーを取得し、このアプタマーの機能解析を進めた結果、抗体医薬の分離精製に利用できることを証明いたしました。本プロジェクトに関し、2015年10月に中小企業庁からの東京都受託事業である2014年度補正「ものづくり・商業・サービス革新補助金」の助成事業として採択されました。これを受けてIgGアプタマー樹脂及びカラムの試作品を作成し、製薬企業や大学等にモニター用としてサンプル提供を行っております。また、本アプタマーに関する事業の進展に伴い、新規の製品コード「RBM-101」を付して、商品化に向けた活動を推進しております。本アプタマーに関し、抗体医薬品開発のプロフェッショナルである株式会社イーベックとの間で、2016年12月に革新的な抗体精製技術の実用化に向けた共同研究契約を締結いたしました。その結果、2019年1月に共同研究の目的を達成し契約を満了いたしました。当社は、今後、本共同研究において得られた知見も含め、国内外の大手製薬企業へのライセンス・アウトを含めた事業化を目指してまいります。 上記の他に、アプタマーを利用した次世代の基盤技術の開発も進めております。その一つとして、膜タンパクを標的としたアプタマーの創製技術の開発、あるいは次世代型シークエンス法並びにコンピュータ科学を利用したアプタマー創製の新しい基盤技術の開発も行っております。前者については、2016年9月に、「GPCRを標的とするRNAアプタマー創薬基盤技術の開発」がAMEDによる創薬基盤推進研究事業に採択され、2018年度末まで、本助成事業を東京大学医科学研究所と共同で実施して、高い評価を獲得することができました。また、後者については、2018年9月に、「人工知能(AI)技術を用いた革新的アプタマー創薬システムの開発」が国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)による戦略的創造研究推進事業CREST研究に採択され、2020年度末までの期間、本助成事業を早稲田大学並びに東京大学医科学研究所と共同で進めてまいります。 これらの研究は、当社の基盤技術である「RiboARTシステム」の新たな発展を目指すものであります。 (4)アライアンスの推進①ライセンス戦略 当社は、自社創薬製品については、これまで、臨床試験に入る前にライセンス・アウトすることを事業スキームとしてきましたが、適切な自社製品については、自社で臨床試験を実施し、POCを取得した後にライセンス・アウトすることも、当社の主要な事業スキームに加え、事業展開を進めております。当社は東京大学医科学研究所の研究成果を事業化するために発足した大学発のベンチャー企業であったことや、研究実施のために公的資金の提供を受けたプロジェクトも複数例あることから、その成果については、できる限り国内企業へライセンス・アウトすることを意図し、アプローチしてまいりました。また、当社はこれまで共同研究やライセンス・アウトに連動して、複数の共同研究先及びライセンス先と資本提携も実施し、より強固で統合的な事業推進を図ってまいりました。今後は、アプタマー創薬に取り組む企業の拡大が見込まれ、それに伴う事業チャンスを活かすために、事業開発部を中心に営業活動の地域を海外にも積極的に広げ、共同研究やライセンス・アウトの機会の拡大を図ってまいります。 ②アライアンスの推進体制自社創薬品目のライセンス・アウト実現のためには、可能性の高い提携候補先の選定、候補先での導入決定を促す試験成績・データ(製品差別化のポイント、製品売上高の予測、競合品に対する優位性等)の創出、交渉の進展に応じたタイムリーな情報提供、さらには事業化や開発に関する的確な提案、粘り強い交渉などが必要です。また製薬企業側のニーズの把握と積極的なアプローチも必要です。これらの活動を行うためには、医薬品業界におけるライセンスや事業開発の経験、及び国の内外の製薬企業と広範なネットワークを有する人材が不可欠です。このため、当社では医薬品業界での新薬の開発及びライセンスの経験と実績のある人材を社内に擁し、また研究開発や知財に関する社外専門家も活用できる体制を構築しており、アライアンスの実現に向けた体制を整えております。 ③産学連携、トランスレーショナル・リサーチの推進当社のコアな技術である「RiboARTシステム」を構築する主要な知識、技術は、東京大学医科学研究所との提携によりもたらされたものであります。現在においても東京大学や大阪大学医学部、順天堂大学医学部、大阪医科大学医学部等との緊密な連携を図り、アカデミアでの研究成果を事業化するための開発に移行させ(トランスレーショナル・リサーチ)、その実用化を目指しております。特に東京大学医科学研究所とは2005年6月より共同研究による提携を開始し、2012年4月以降は社会連携講座(「RNA医科学」社会連携研究部門)の下での連携を図っております。 (5)知財戦略 創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品が特許により保護されていることが、他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。 当社の知財戦略は、開発する製品に関するものと、開発技術に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。 ①自社創薬品目及び共同研究品目に対する知財戦略 物質特許の取得を必須としております。なお、RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)について権利範囲の抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。 このため、標的分子との結合力が強く、かつ、その生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物も特許でカバーし、さらに、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する配列を探索し、その共通配列を特許化することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。 また、共同研究品目については、提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。 なお、特許の出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド、ブラジル等の医薬品市場の規模が大きく、または将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。 ②「RiboARTシステム」に対する知財戦略 「RiboARTシステム」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化)に関するものの中には、特許化して権利の独占を図れる可能性のある技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化にはその技術を公開するという代償を伴います。アプタマーは、その質さえ問わなければ、既に特許期間が失効したSELEX法を含む公知の方法で取得可能です。そのため、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難で、特許出願に伴う技術の公開は、敵に塩を送るに等しいものです。 従って、当社では、原則として「RiboARTシステム」により創製されたアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboARTシステム」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密として秘匿し、優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。 ③主要な特許の状況 当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。 対象パイプライン発明の名称出願または特許番号保有者登録状況RBM-003キマーゼに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/044132 当社-RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992当社日本・米国・欧州・中国・香港(中国経由)・ロシア・南アフリカにて成立済アプタマー製剤PCT/JP2019/025766当社-THERAPEUTIC AGENT FOR SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL OR RETINAL DISEASE WITH SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL (FGF2に結合するアプタマー又はその塩を含む、網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤)Provisional Application in US Application Number: 62970842当社-RBM-006オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/062561当社-RBM-010ADAMTS5に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2018/041746当社・大正製薬株式会社-RBM-001骨形成や骨代謝の異常に関連する疾患の治療薬PCT/JP2020/020294当社-RBM-011IL-21に対するアプタマー及びその使用特願2020-104831当社- 対象パイプライン発明の名称出願または特許番号保有者登録状況RBM-004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2009/066457(特許第5602020号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105(特許第5027956号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済NGFに対するアプタマー及びその用途PCT/JP2012/75252(特許第6118724号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済RBM-007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992 当社日本・米国・欧州・中国・香港(中国経由)・ロシア・南アフリカにて成立済アプタマー製剤PCT/JP2019/025766 当社 THERAPEUTIC AGENT FOR SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL OR RETINAL DISEASE WITH SUBRETINAL HYPERREFLECTIVE MATERIAL (FGF2に結合するアプタマー又はその塩を含む、網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤)Provisional Application in US Application Number: 62970842 当社 対象パイプライン発明の名称出願または特許番号保有者登録状況RBM-101免疫グロブリンGに結合する核酸とその利用法PCT/JP2006/313811(特許第4910195号)当社日本、米国にて成立済 (6)ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み 昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。 ①E(環境) 当社は、IT整備によるペーパーレス等の省資源や研究資源の管理、ならびに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。 ②S(社会) 当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えています。その中で、特に、現在世界的なパンデミックとなっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアプタマー治療薬の開発は、アプタマーの卓越した優位性を発揮すべき当社の使命であると考えており、1日も早く候補アプタマーの創製を実現するために努力してまいります。 ③G(企業統治)・コーポレート・ガバナンスの強化 当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しております。このような企業として社会的責任を果たしていくために、社外取締役を2名体制にしている他、コーポレートガバナンス・コードへの対応も継続して進めてまいりましたが、今後もコーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。・組織体制の整備と人材の育成・登用 当社は、上記の課題に対応し、当社事業の継続的な発展を実現するためには、それに対応する組織体制の整備と、人材の育成・登用を図ることが重要と考えており、必要に応じて組織体制の強化を図ってまいりました。今後も事業構造や事業展開等を勘案したうえで必要な人材を育成し必要なポジションに登用する他、豊富な経験を有する人材の採用、外部ノウハウの活用などにも積極的に取り組んでまいります。 ※1 : RNA 遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミン(T)の代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。 そのため、分子生物学の黎明期から、RNAは単なる遺伝情報のコピーに過ぎないという思い込みが、世界的にも支配的でした。しかし、10数年前から、この考えは誤りであることが様々な研究によって明らかになってきました。特に立体構造を作って働く機能性RNAの生体内での役割が注目を集めています。 ※2 : RNAの造形力当社は、アプタマーとIgGとの結合体の結晶構造をX線解析法によって明らかにしてNucleic Acids Res誌に発表いたしました(2010年、図参照)。 その結果、既存のアプタマーではRNAのリン酸の負電荷と、標的タンパク質の正電荷のアミノ酸領域とが電気的な相互作用によって結合するものしか知られていませんでしたが(図の右の事例)、IgGアプタマーはこ れまでの常識を覆して、アプタマーが標的にフィットするしなやかな形状を作って、電気的な相互作用を使わずに、水素結合やファンデルワールス力のような多様な結合を利用して強く標的に結合することが明らかにされました。つまり、RNAには、これまで予想もされなかった「しなやかな造形力」が備わっていることの証しです。このような基礎的な研究は、応用という点からも重要です。特に、医薬品の標的となるタンパク質は、必ずしもRNAと結合しやすい正電荷のアミノ酸が表面に多いとは限らないため、これらの基礎研究の成果は、非常に多くのタンパク質がRNAアプタマーの創薬ターゲットとなりうるということを示唆するものです。 ※3 : 臨床試験 新薬についての製造販売承認を取得するには、ヒトでの有効性及び安全性を確認する臨床試験が不可欠です。この場合、通常、以下の3段階があります。第一段階は、少数の健常人を対象として、動物実験等により安全性の確認を終えた化合物について、その安全性や体内での動態等を確認する試験であり、第1相試験(Phase 1試験)と呼ばれています。 第一段階をクリアすると、次の段階は少数の患者(被験者)を対象として、薬効と安全性を確認する第2相試験(Phase 2試験)に入ります。この試験のステージは、通常、2ステップがとられ、最初のステップは、少数の被験者について主に薬効を確認する段階です。この試験はPhase 2a試験と呼ばれます。さらに被験者数を増やし、有効性と安全性のバランスを取るために最適な用量を確認するための複数の用量を設定して行うPhase 2b試験があります。最後の段階は、多くの被験者を対象として行う第3相試験(Phase 3試験)です。 なお、臨床試験は、承認取得の前だけでなく、承認の取得後も当局から承認の条件として実施が求められる場合があります。この時の試験は市販後臨床試験と呼ばれています。 ※4 : 化学修飾 品質や薬効向上のために、化合物の一部の分子や原子を他の分子や原子に置換したり、新たな分子や原子を結合させることをいいます。 ※5 : ライセンス・アウト 特許や開発中の製品に関する権利を他の会社に供与したり、譲渡したりすることを意味し、「導出」ともいいます。供与する権利の内容としては特許の実施権や使用権、さらにかかる特許によって保護されている製品の開発、及び製造・販売する権利などがあります。 ※6 : POC POC(Proof of Concept)とは、新薬の開発段階において、ある化合物がヒトでの臨床試験(通常は少数の患者を対象としたPhase 2a試験)において意図した薬効と安全性の基準をクリアすることをいいます。 ※7 : マイルストーン収入 医薬品の開発は、前臨床試験→臨床第1相試験(Phase 1)→臨床第2相試験a(Phase 2a)→臨床第2相試験b(Phase 2b)→臨床第Ⅲ相試験(Phase 3)→申請→承認→発売というステップを踏んで進行します。開発途上の医薬品のライセンスにおいては、この開発の節目を「マイルストーン」といい、それに到達したとき、あるいはその段階に入るときにライセンスの対価の一部がライセンサーに対し支払われる取引が普及
FY2019|29,966 文字|出典 docID: S100GD5K
3【事業の内容】当社は、アプタマー創薬技術に関するプラットフォームである「RiboARTシステム(Ribomic Aptamer Refined Therapeutics System)」をベースとした創薬事業を展開している創薬プラットフォーム系バイオベンチャーであります。 「RiboARTシステム」は様々なアプタマー医薬の開発に応用できるものですが、当社は、特に「Unmet Medical Needs」疾患領域に的を絞り、医療機関や患者様から求められている新薬の提供を目指しております。アプタマーとは核酸であるRNA※1を素材とした分子で、多様な立体構造を形成できるという1本鎖のRNAの特性を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節します。その名称については、標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。当社は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力※2の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする「RiboARTシステム」をアプタマー創薬の基盤技術として確立しております。この「RiboARTシステム」は、様々な疾患分野や創薬ターゲットに対して応用可能な汎用性を有する創薬基盤技術です。自社で特定の新薬開発を行うのみならず、他の製薬会社の要請に応じて新薬のシーズ(タネ)を供与できるバイオベンチャーであることから、当社自身のことを「創薬プラットフォーム系バイオベンチャー」であると定義しております。当社は、これまで、この「RiboARTシステム」を利用した創薬探索をビジネスの柱としてきましたが、これに加え、適切な自社創薬製品については、自社で臨床試験※3を実施することを視野に事業を展開し、創薬プラットフォーム系バイオベンチャーとしての価値を高めてまいります。 「RiboARTシステム」の概念図は以下のとおりです。選抜:目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜分析:選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析加工:アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾※4を実施試験:細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価評価:動物を用いてアプタマーの毒性を評価 このような「RiboARTシステム」をベースとして、当社は、早期ライセンス・アウト※5を前提とした「自社創薬」と、製薬会社との「共同研究」の二つをバランス良く組合せて実行することを、事業展開の基本方針としてきましたが、適切な自社製品については、前述のように自社で臨床試験を実施し、POC※6を取得した後に、ライセンス・アウトすることを、当社の主要な事業スキームに加え、事業展開を進めております。具体的には、以下に述べます自社製品RBM-007を用いた滲出型加齢黄斑変性症(wetAMD)に対する臨床試験を米国で実施するための準備を完了し、現在、滞りなく臨床試験が進んでおります。その結果、当社は、従来の創薬探索のビジネスから、臨床開発のビジネスへとステップ・アップいたします。 当社の事業の系統図は以下のとおりです。 ※:対価収入のうちライセンス・アウトの対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入※7、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。 創薬事業における共同研究では、アドバイザリー契約の下、アプタマー医薬開発に関する試験研究の受託、技術指導も実施しております。 また、当社は、上記の創薬事業に付随する事業として、医薬品以外への応用可能性を秘めたアプタマーの実用化検討も行っております。その一環として、抗体※8であるIgGに特異的に結合する性質を有したアプタマーを、工業用資材(抗体医薬※8の精製剤等)として開発する事業や、アプタマーを利用した化粧品材料の開発、膜タンパク質を標的としたアプタマーの創製技術の開発、あるいは次世代型シークエンス法並びにコンピュータ科学を利用したアプタマー創製の新しい基盤技術の開発も行っております。(1)アプタマー医薬①アプタマー医薬について核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています。この造形力を利用して、標的とするタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。アプタマーの特徴は、右図に例示するように、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」です。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬※9の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。アプタマー医薬としてこれまでに上市された製品は、2004年12月に米国食品医薬品局(米国FDA)が承認した「MacugenⓇ」(加齢黄斑変性症に対する治療薬)のみで、アプタマー医薬の市場は未開拓の領域といえます。 ②医薬品市場におけるアプタマー医薬(i)アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場アプタマーを含む核酸医薬の市場は、現在開発中の核酸医薬の開発の進捗状況、製品上市の時期、当該品目の市場性等により大きく変動する可能性がありますが、大きく拡大することが予想されています。核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があります。現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS※10及び製造と品質管理)が指摘されています。今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で細胞内へのDDS技術が不要であり、抗体と類似した作用メカニズムを持ち、応用範囲の広いアプタマー医薬だと、当社は考えております。 (ⅱ)アプタマー医薬の現状と課題2004年12月に世界初のアプタマー医薬で、眼科領域の疾患である加齢黄斑変性症(AMD)を適応症とする「MacugenⓇ」が米国FDAに承認され、逐次世界各国で承認を得て、世界的な製薬企業であるファイザー社から(日本では2008年10月)発売されています。なお、現在、全世界で「MacugenⓇ」以外のアプタマー医薬は市販されておらず、現在の「MacugenⓇ」の売上は、類似薬効品の抗体医薬「LucentisⓇ」とタンパク質医薬「EyleaⓇ」に押され、最盛期の1/20以下で、全世界で10数億円程度と思われます。しかし、「LucentisⓇ」と「EyleaⓇ」に代表される血管内皮増殖因子VEGFに対する阻害剤は広く世界で使用され、AMD治療薬の世界市場は1兆円に近づいています。アプタマー医薬については、P 2(Phase 2試験)~P 3(Phase 3試験)の後期臨床ステージにある開発中の品目数も抗体に比較すると些少です。この背景には、アプタマーの創製に不可欠な技術であるSELEX法に関する基本特許が日欧では2011年6月まで、米国では2014年9月まで存続し、製薬会社がアプタマー創薬に向けた研究が自由にできなかったことが挙げられます。「MacugenⓇ」が類似薬効の抗体医薬に対して優位に立てなかった事例は、アプタマー医薬の開発(アプタマー創薬)に次のような貴重な教訓を与えました。 アプタマーに限らず、分子標的医薬の開発においては、創薬ターゲットとする疾患関連タンパク質の選択が重要です。「MacugenⓇ」の開発において、AMDは血管内皮増殖因子(VEGF)が関与しているとの知見から、VEGFの様々なサブタイプ(基本的な役割は似ているがタンパク質を構成するアミノ酸の長さや配列に違いがある)の中から、AMDの主因と考えたVEGF-165のみを阻害するアプタマー(Pegaptanib)を有効成分として選択しました。世界初のアプタマー医薬として、安全性を考慮したこの選択自体は決して誤ったものではなかったと当社では考えております。これに対し、後続の「LucentisⓇ」や「EyleaⓇ」は、VEGF-165だけでなく他のサブタイプも阻害することによって、効果(進行の停止のみならず視力も回復する)の点で、「MacugenⓇ」を上回り、AMDに対する第一選択薬としての地位を確立しました。標的に対するシャープな特異性がアプタマーの真骨頂ですが、この場合は、アプタマーのシャープさが裏目に出てしまったといえます。創薬ターゲットの選択においては、このような事例に十分注意することが必要です。米国のOphthotech社は、VEGFとは異なる血小板由来増殖因子(PDGF-BB)に対するアプタマー(FovistaⓇ)を用いて、AMDに対する薬剤開発を進め、P 3まで臨床試験を実施しましたが、既存薬に比較した優位性を示すことに失敗しました。これも、創薬ターゲットの選択における、作用機序の新規性や優位性の重要さを物語るものと考えます。 さらに、一般的にアプタマー創薬において留意すべき点として、アプタマーの最適化※11(改変・改良等)の問題があります。核酸を成分とするアプタマーは体内に投与されると生体内の核酸分解酵素により速やかに分解されます。そのため、薬効を得るために体内での作用時間を延ばす必要があり、様々な改良を加えて酵素耐性の向上を図り、また、体外への排出の抑制を図ります。このアプタマーを医薬品として最適な化合物に仕上げる技術を欠くと、開発の中断や終了を余儀なくされます。 抗体医薬との差別化をどう図るかという問題もアプタマー創薬においては重要です。後述するように、アプタマーは抗体と比べて優れた点が多々あり、新薬のシーズとして大きな可能性を秘めています。しかし、抗体にはその作用が長時間持続するという、長所とも短所ともなりうる特徴があります。反面、アプタマーは、最適化を図っても抗体のように1~2ケ月間も作用させることは困難で、基本的には急性期、あるいは短期間を挟む間欠投与の適した疾患や症状が、その本領を最も発揮できる対象だといえます。このため、同一のタンパク質を標的とする抗体と競合する場合、アプタマーは抗体が適していない疾患や投与方法をデザインすることが肝要です。 (ⅲ)アプタマー医薬と抗体医薬の比較アプタマー医薬は分子標的薬※12として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。 抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。 以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。 (当社作成)項目アプタマー医薬抗体医薬標的タンパク質に対する結合力抗体の1,000倍は可能強い創薬ターゲットの種類極めて多様抗原タンパクに限定製造化学合成法細胞培養法コスト(製造コスト低減の容易さ)比較的高価(製造コスト低減の可能性あり)比較的高価(製造コストの低減は難しい)抗原性/免疫排除 起きにくい起きる製剤の可逆性・安定性強い弱い体内動態(長時間作用) 苦手、限界あり良い、得意短期作用性得意困難加工・化学修飾容易困難 [標的タンパク質に対する結合力]薬効を及ぼす生体内の標的(疾患関連タンパク質など)に対してどの程度強く結合するかを示す指標としては、解離定数(Kd:dissociation constant)という専門的な用語が用いられます。この解離定数は数値が低いほど、結合力が強いことを意味します。平均的な抗体の結合力は、Kd値がnM(ナノモラー、10-9モラー)レベルで、それ以上強い抗体を作ることは容易ではありません。一方、平均的なアプタマーのKd値はnM以下で、pM(ピコモラー、10-12モラー)のアプタマー、つまり抗体の1,000倍強い結合力を持つアプタマーの作製が可能です。また、強い結合力は、標的タンパク質を速やかに捕捉し、結合したら離れにくいという性質となるため、アプタマーは高い阻害効果を持つと期待されます。 [創薬ターゲットの種類]抗体は、創薬ターゲット(抗原タンパク質)を動物に投与して作製します。そのため、精製が難しいタンパク質や、ヒトと動物とで違いが少ないタンパク質など、抗原の種類によっては取得が困難、あるいは、不可能なものもあります。一方、アプタマーは、動物は使わずに、試験管の中の操作のみで作製するので、細胞表面に提示された状態の創薬タンパク質を標的として利用したり、ヒトと動物とで違いが少ないタンパク質に対しても創製することが可能であり、創薬ターゲットの種類が非常に多様です。さらに、創薬ターゲットに結合してその作用を阻害するアプタマーだけでなく、将来的には、抗体では難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬品を運搬するためのDDSとして利用可能なアプタマー等を創製することが可能です。 [製造]抗体は製造規模の大小を問わず、現在の科学技術では化学合成による製造はできません。商品化された場合には、通常、大規模な細胞培養設備によって製造します。また、開発段階で数度にわたるスケールアップを要し、それに対応する設備のために多額の資金が必要となります。加えて、製造条件の変更に伴う品質の確認作業(比較試験)も複雑になります。一方でアプタマーは、商品化後も、比較的小規模な製造設備での化学合成による製造が可能で、しかも、同一の設備を他の核酸医薬品の合成のために使用できます。そのため、アプタマーでは設備投資も製造管理(スケールアップを含む)も容易であるといえます。 [コスト(製造コスト低減の容易さ)]抗体医薬は細胞培養による生物製剤のため、製造方法が一旦確立すると、細胞培養等の工程を含むために、製造方法の変更や製造コストの低減は容易ではありません。これに対して、アプタマーでは、今後、製造施設や原材料を共用できるアンチセンス、siRNAやmicroRNAなど他の核酸医薬の発展に伴い、核酸医薬全体での製造スケールの拡大が見込まれることから、そうしたスケールメリット、加えて合成機械や合成方法の技術革新による製造コストの低減が期待されます。 [抗原性/免疫排除]抗体は生物由来のものを成分とする生物製剤のため、ヒトに投与した場合、抗原性を示すことがあり、継続使用において免疫的な排除を受けるリスクがあります。つまり、抗体を排除するための中和抗体が生体内で作られた結果、効果が減弱するということになります。しかし、アプタマーは合成医薬品のため、ヒトで抗原性を示すことはほとんどなく、また、生物製剤でないため、中和抗体ができるというリスクが低くなっています。しかしながら、アプタマー医薬は体内での滞留性(動態)を良くするために、核酸配列の末端にポリエチレングリコール(PEG)を結合する場合が多く、稀にPEGに対する免疫応答が惹起される可能性が指摘されており、留意する必要があると考えています。 [製剤の可逆性・安定性]抗体の組成はタンパク質であるため、熱等の要因によって、不可逆的な(元に戻らない)変性を受けやすく品質確保には特別な注意が必要です。これに対し、アプタマーの組成はRNAであり、分解酵素のない環境下では安定しています。また熱等によって立体構造が変化しても、その変性は可逆的(元に戻る)で、加熱等を停止すれば速やかに元の形に復帰し、活性を回復します。そのため、アプタマー医薬は製剤化や流通、保管が抗体医薬に比べて容易です。 [体内動態(長時間作用)]抗体は、特別な加工を施さなくても、血中で分解されにくく、分子量が大きいため腎臓からの排泄も受けにくい性質があるため、血中に長く滞留することができます。一方アプタマーでは、未加工の状態では、血中で核酸分解酵素による消化を受けやすく、中サイズの分子量で水との親和性も高いため、腎臓からの排泄を受けやすい性質があります。そのため、アプタマーは、化学的な修飾を施して酵素による消化を防ぎ、PEGのような高分子化合物を結合するなどの加工が必要ですが、逆にこうした加工方法を工夫することで、血中滞留時間を調節できるという利点があります。 [短期作用性]医薬の中には、長時間体内に滞留することが副作用の原因となる場合がありますが、アプタマーでは、体内での滞留時間が比較的短いという特徴を生かして、短期に作用する医薬の開発が可能であり、さらに加工の方法により、目的と効果に応じた体内動態の医薬を開発することも可能です。特に、抗体は一旦ヒトに投与すれば、途中でその薬効を止める手だてがありませんが、アプタマーの場合は、その相補配列を持つ一本鎖核酸をアプタマーに対する中和剤として投与して、薬効を速やかに消失させることが可能です。 [加工・化学修飾]抗体は生物製剤であるため、品質や薬効を向上させるための化学的な加工・修飾が容易ではありません。しかし、アプタマーは化学合成によって製造するため、低分子医薬品と同じように様々な化学的な加工・修飾が可能で、品質や薬効の向上のみならず、作用時間の延長や副作用等の回避の手段を講じることができます。近年、複数の抗原タンパク質に作用するbi-specific(二重特異的)な抗体や、抗体に低分子の薬剤を結合されたantibody drug conjugate(ADC、抗体薬物複合体)開発のための技術開発が行われていますが、同様なことはアプタマーでも可能で、化学合成品という特徴を生かして、抗体に比較して比較的容易にbi-specificなアプタマー医薬やdrug conjugateアプタマー医薬を創製することができます。 (2)創薬プラットフォーム① 創薬の戦略とアプタマー 医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、ならびに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。このなかで、低分子を対象とした日本の創薬力は欧米と同等のレベルまで達していますが、抗体やワクチンについては大きく遅れています。再生医療については、山中伸弥教授のiPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見(2012年ノーベル生理学医学賞受賞)によって国の支援が強化され、世界的にも先端を進んでいます。核酸医薬については、日本で創製され、日本発の核酸医薬としてヒトでの臨床試験のステージに入っているものには、NF-κBデコイオリゴ、NS-065/NCNP-01(エクソンスキッピング・アンチセンス)、DS-5141b(エクソンスキッピング・アンチセンス)、ND-L02-s0201(siRNA)と、当社の RBM-007(抗FGF2アプタマー)があります。しかし、既にP 2試験やP 3試験に入っている多くの開発品を有する欧米と比べて、遅れていることは確かです。その中で、唯一、アプタマー医薬については、若干の遅れはあっても、大きな差はまだついていません。アプタマー医薬は、前述のように核酸医薬の中核となる可能性を秘めております。また、近年ペプチドを利用する創薬の研究開発が始まっています。核酸やペプチドは分子量が、高分子の抗体医薬と低分子医薬の中間に位置するため、これらは中分子医薬と総称されて、抗体や低分子にはない特徴を発揮する医薬品としても注目されています。その特徴のひとつとして、タンパク質・タンパク質相互作用(PPI、protein-protein interaction)に対する阻害剤の開発があげられます。当社は、増殖因子等のリガンドや受容体に対するアプタマーを多数創製してきましたが、これらは、中分子医薬の議論が始まる以前から、PPI阻害剤の開発を実践してきたものです。 ② 新薬開発プロセス新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。 1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニ ング※13する基礎・探索研究の段階 2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う前臨床試験※14の段階 当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)前臨床試験の段階において、「RiboARTシステム」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboARTシステム」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び前臨床試験の期間(1年前後のGLP試験※15の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験※16ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。 ※:前臨床試験(3~5年)にはGLP試験の期間1年前後が含まれています。 ③「RiboARTシステム」を用いたアプタマー創薬当社の「RiboARTシステム」は、シーズ・アプタマー(疾患に関連するタンパク質に結合する候補アプタマー)の取得から最終的な臨床開発品の創出までのプロセスをカバーする、当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。東京大学医科学研究所における研究成果や技術をベースに、当社の研究成果や創意工夫、ノウハウ※17あるいは営業秘密※17を含んでいます。「RiboARTシステム」においてコアとなる技術は、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強し、pM(ピコモラー、10-12モラー)未満のKd値の達成を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。 「RiboARTシステム」の詳細は以下のとおりです。(ⅰ) アプタマーの取得技術(SELEX法運用技術)アプタマー創薬のコアとなる技術の一つは、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するアプタマーを取得するSELEX法に関する技術です。この方法は日欧では2011年6月まで、米国では2014年9月まで特許で守られ、権利者(アルケミックス社)からライセンスを取得しない限り、SELEX法を実施して自由にアプタマーを取得することはできませんでした。当社は、この特許が国内で有効であった2006年10月より、権利者から実施ライセンスを受け、様々なSELEX法を駆使してアプタマーを取得する経験を積んでまいりました。日米欧での上記特許失効後は、誰でもアプタマーの取得にSELEX法を実施することが可能となりました。しかし、目標とするタンパク質に結合し、意図した薬効を示すポテンシーのあるアプタマーを取得するには、標的タンパク質の特性分析、最適な核酸プールの構築に始まり、様々な条件下でのSELEX法の実施経験やノウハウが必要となります。当社の「RiboARTシステム」はこれらを集大成した創薬技術です。 SELEX法とはRNAの造形力を利用して、目的とするアプタマーを探し出すための技術で、様々なタンパク質を標的に使用できる汎用性が特徴です。具体的には、様々なタイプのRNA分子を標的のタンパク質と何度も結合→解離→増幅→再結合を繰り返すことで、より強く結合するRNA分子のみを“進化”させる技術です。この方法は、以下に示す魚釣りに似ています。 1)4種類の塩基(A・U・G・C)がランダムに配列されたRNA(様々なタイプの魚)の入ったプール(釣り堀)に標的となるタンパク質を「餌」にして、結合する(食いつく)特定のRNA(数十万種の魚)を釣り上げます。2)釣ったRNA(魚)からタンパク質(餌)を外し、増幅して(養殖して数を増やす)、再度プールの中に放し、同じタンパク質(餌)で釣りを繰り返します。早く食いついた数十から数十万種のRNA(魚)を増幅(養殖)し、再度、釣りを行います。3)このサイクルを10数回行うことによって、標的タンパク質に強く特異的に結合するアプタマー(最も早く餌に食いつく魚)を数種類選択することができます(右図参照)。 SELEX法を利用したアプタマーの創製(取得)には、最初にプールに放つ魚群の選定(核酸ライブラリーの構築)や釣り方(試験方法等)について、長年の経験・実績によるところが多く、当社はSELEX法に関して、世界でも有数の高度かつ広汎な技術を有しております。特に、核酸ライブラリーを作る際に、多様な修飾が施された修飾塩基を、4種類あるいはその一部に使用して、ライブラリーの多様性を拡充することが重要かつ効果的です。 また、近年、核酸配列の分析技術(シークエンス解析法)が格段に進歩した結果、次世代型のシークエンス装置を使えば、短時間に少量のサンプルから、百万程度の配列を読むことが可能です。当社は、この次世代型シークエンス装置とコンピュータ処理を用いて、数百万の配列情報からアプタマー候補を抽出するHT-SELEX(high-throughput SELEX)法を開発し、運用しております。 (ⅱ)アプタマーの最適化技術アプタマーの最適化技術は、in vitro※18 や in vivo※18試験でのスクリーニングから、より効果が高い(標的タンパク質に強く結合し、そのタンパク質の生理作用を高度に阻害する)アプタマーを創製し、アプタマーの改良技術を駆使して、臨床開発品として完成させるものです。 これには、アプタマーに特化したスクリーニング手法だけでなく、取得したアプタマーの特質と用途に応じた個別の最適化(短鎖化、化学修飾、doped SELEX(部分的に配列をランダム化して行うSELEX)等)技術が必要で、当社の最大の強みは、この分野での豊富な知識と経験並びに技能が蓄積していることであります。 また、的確な最適化には、標的タンパク質の特性(分子量、立体構造、電気化学的性質、類縁タンパク質(サブタイプ)の有無等)に応じた最適化のデザイン力が必須です。当社では、このデザイン力に関しても研究実績を蓄積してまいりました。これに加えて、アプタマーと標的タンパク質の複合体での立体構造を基にしてより強力なアプタマーのデザインも行うなど、アプタマーの最適化技術に関し常に技術力の向上を図っております。 a) アプタマーの短鎖化アプタマーの短鎖化技術は目標とするタンパク質に結合するものとして選定、取得したアプタマーを、工業的、経済的に利用可能な限度にまで短くし、目的に応じた化合物に改変する技術・ノウハウです。 SELEX法で最初に取れる、塩基が長く連なるアプタマー(約80鎖長)を、タンパク質との結合力を維持しながら1/2程度にまで短くし(短鎖化)、次の化学修飾プロセスにまわします。 b) アプタマーの化学修飾アプタマーの修飾技術は、短鎖化したアプタマーを化学的に修飾することにより、アプタマーの持つ生理活性を増強するとともに、薬物体内動態(作用時間)を改善し、医薬品に適したアプタマーに改良する技術・ノウハウです。具体的には、体内の酵素によるアプタマーの分解を阻止するために、右図に示す一つ一つの塩基のR1部分に化学修飾を施したり、腎臓からの早期の排出を抑えるために、アプタマーの末端R4へ化合物(PEGなど)を結合させたりします。 化学修飾を駆使し最適化 このような、短鎖化や化学修飾等による最適化作業を、in vitro や in vivo 試験で効果を確認しつつ繰り返し、より優れた臨床開発品へとアプタマーを磨き上げていきます。 (ⅲ) アプタマーの製造法、品質規格の設定、品質管理等のノウハウ 核酸医薬、特にアプタマー医薬は、これまで「MacugenⓇ」が承認、販売されていますが、アプタマー医薬自体の歴史が比較的浅く、薬事規制面でも、原薬アプタマーや完成品の品質規格に関する規制内容は標準化されていません。 特にCMC(医薬品成分の化学的属性や製造管理)の分野では、個々のアプタマーごとに薬事承認や臨床試験の開始までに必要な試験やその方法、分析方法等を企画し、場合によっては薬事当局との協議が必要になります。当社は、そのために必要な、以下の分野の知識、経験も有しております。・アプタマーを医薬品化するために不可欠な製造方法、品質規格の設定、品質管理・核酸やアプタマーのような高分子化合物の分析、核酸の塩基配列の解析法 (ⅳ) アプタマーの安全性・毒性の評価・検討に関するノウハウアプタマーを動物に投与した時の毒性は、核酸が本来持っている毒性とターゲットタンパク質を阻害したことによる毒性に分けられます。核酸が本来持っている毒性の代表例は、大量に投与した場合に、血液凝固の阻害が起こることです。当社はこのような核酸特有の毒性を考慮しながらアプタマー作りを行っており、以下の経験を有しております。・アプタマーの血中や臓器中での濃度測定・ラットを用いた毒性試験・サルを用いた毒性試験 ④ その他の創薬体制当社はさらに、アプタマー医薬の開発のために、以下の体制を整えております。(ⅰ) アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチ※19を継続的に実施してきました。東京大学との共同研究は現在も継続し、同医科学研究所内に「RNA医科学」社会連携研究部門を設置して、同研究所内の動物試験施設や、その他の高度試験装置を使用できる恵まれた環境を維持してきました。これにより技術、信頼性の観点から、高レベルの研究体制を整備しております。当社は、東京大学以外にも、大阪大学、順天堂大学、大阪医科大学等、あるいはチェコ共和国のMasaryk大学や米国プリツカー精神神経疾患研究コンソーシアムのアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、アプタマーの分析等における連携を図っております。 (ⅱ) 的確な研究開発マネジメント 当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。 (ⅲ) 人的ネットワーク アプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との、世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握に努めております。また、今後、自社での臨床試験を進めるにあたり、国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めてまいります。 (ⅳ) アプタマー創製のスペシャリスト 当社では、役職員の3/4が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣をしいております。 さらに、大手製薬企業で研究開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。 (3)創薬事業①当社のビジネスモデルについて(ⅰ) 当社の創薬事業は、以下の3事業より構成されています。 ・自社創薬 ・製薬企業との共同研究 ・自社臨床開発 自社創薬とは、一定の開発段階まで自社独自で医薬候補となるアプタマーを開発し、その後、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、ライセンス対価(基本的に、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。 これに対し、共同研究とは、アプタマー医薬の研究を提携製薬企業と共同で行い、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに共同研究では、アドバイザリー契約を除いて、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。 さらに、自社創薬製品については、これまで、臨床試験に入る前にライセンス・アウトすることを事業スキームとしてきましたが、適切な自社製品については、自社で臨床試験を実施し、POCを取得した後にライセンス・アウトすることも、当社の主要な事業スキームに加え、事業展開を進めております。 (ⅱ)三つの事業のバランス化 自社創薬によるライセンス・アウトに依存しすぎると、ライセンスの成否やその成約の遅れ等により事業計画が大きく影響を受けます。他方、共同研究は安定的な共同研究収入を一定期間期待できます。また、自社創薬による収益を最大化するためには、適切な製品について、自社で臨床試験を実施し、POCを取得した後に、ライセンス・アウトすることが効果的です。 従って、自社創薬に共同研究の特徴をうまく組み合わせ、さらに自社臨床開発を加えることで、以下の成果あるいは効果が期待できます。 1) 自社創薬のビジネスモデルに伴う収益の不安定化というリスクを低減できる 2) 共同研究先の新薬開発のノウハウ、経験を知得できる 3) 共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い 4) POCを取得した自社開発品のライセンス・アウトにより大きな収益を期待できる 5) 事業を全体として拡大できる ②事業活動に伴う収益計上の時期 当社のビジネスモデルからは、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計のタイミングを示しています。 注:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。 個別の契約によりそれぞれの金額や受取回数等が異なる場合があります。 しかし、自社創薬に関しては、以下のような場合、正式なライセンス契約の締結前でも、何らかの収益を得る機会があります。当社としては、相手方の意向にもよりますが、可能な限り、その機会を追求してまいります。 ・相手方に独占的な評価・交渉権を与える場合 ・相手方との間で提携に関する基本条件が合意され、基本合意書などを締結する場合 ・相手方の評価用に該当品目のサンプルを提供する場合 ③自社創薬及び共同研究の特長と、事業展開における基本方針(ⅰ)自社創薬について 新薬の開発において、基礎・探索研究、前臨床試験、臨床試験へと開発のステージが進捗するに従い、その経費は大幅に増加します。 また、臨床試験ステージになると、自社で開発を推進する場合には臨床試験用の社内体制を備える必要が生じ、さらにPOC確認後の臨床試験では、適応症にもよりますが、被験者数が飛躍的に増え、費用が莫大になります。上市後のマーケティング戦略を視野に入れた対応も必要となります。従って、POC確認後の臨床開発は、資金、経験やノウハウを有する製薬企業にて実施することが、アプタマー医薬の成功確率を高め、かつ早期の上市につながると考えております。 これらの事情に鑑みて、当社としては、自社での研究開発の目標は、ヒトでの臨床試験に入る前か、臨床試験の初期でヒトでの薬効が確認された時点(POC確認時点)での、製薬企業へのライセンス・アウトとしております。但し、早期事業化の品目として選定したテーマである場合や、ライセンス先の製薬企業との間で合意が成立した場合は、それ以前であってもライセンス・アウトを実施いたします。 なお、ライセンス・アウト後は、当該品目の開発や製造、販売などはライセンス先がその責任で行うことになります。しかし、当社のアプタマー医薬に関する知見が必要な場合、一定期間、共同研究を行うことがあります。 (ⅱ)共同研究について 共同研究は、製薬企業(提携先)とともにアプタマー創薬を実現することを目指す共同研究契約と、アプタマー創薬を行っている製薬企業に対するアドバイザリー契約があります。具体的には、共同研究契約では、創薬のターゲットとなる疾患関連タンパク質は提携先の領域戦略などに従って選択され、当社はかかるタンパク質の生理作用を阻害・抑制し、提携先が求める基準を満たすアプタマーを創製いたします。提携先はそのアプタマーについて薬効等の確認・評価(スクリーニング)、安全性試験等を行い、早期に臨床試験の対象となる臨床開発品を特定し、以降は提携先のイニシアティブで臨床開発を推進します。アドバイザリー契約では、アプタマー創薬を行っている製薬企業に対し、アプタマー医薬開発に関する試験研究の受託、技術指導を行っております。 共同研究では、製薬企業との間で作業分担を定めますが、当社が分担するアプタマーの創製に関する研究活動に対しては、適切な対価を得ることとしております。この役割分担に関しては、双方の有する技術や知識、経験をベースとして協議により決定しますが、当社の主な役割はアプタマーの創製やその改良となります。なお、当社では、共同研究の対価として受取る収入は共同研究収入として事業収益に計上し、試薬等の実費補填として受取る収入が生じた場合には受取研究開発費として営業外収益に計上しております。 また、共同研究では、大手製薬企業の技術を活用することで開発をより迅速に進めることが可能となります。 現在、当社が推進している、あるいは2019年3月期において終了した、アプタマー創薬に関する主たる共同研究は以下のとおりであります。 パートナー名称共同研究概要大正製薬株式会社2014年3月に締結し、2017年3月に延長した共同研究契約に基づく、同社が選定した創薬領域に関する共同研究。2019年4月にその共同研究成果(特許を含む)の取扱いに関する覚書締結。(覚書の締結により、共同研究契約は終了した)アステラス製薬株式会社2017年3月に締結した共同研究契約に基づく、同社が開発を目指す創薬ターゲットに関する共同研究株式会社イーベック2016年12月に締結した共同研究契約に基づく、RBM-101(免疫グロブリンIgGのFc領域に結合するRNAアプタマー)に関する抗体精製技術の実用化に向けた共同研究。2019年1月に共同研究の目的を達成し契約を満了。ビタミンC60バイオリサーチ株式会社2019年1月に締結した共同研究契約に基づく、アプタマー技術を活用した化粧品材料の開発に関する共同研究。生化学工業株式会社2017年11月に締結した共同研究契約に基づく、糖質科学と核酸科学を融合した新規アプタマー創薬技術の開発に関する共同研究で、2019年4月に、当初目的を達成し契約を満了。 ④パイプラインについて創薬事業(自社創薬及び共同研究)のパイプラインのうち、基礎・探索研究段階を終え前臨床試験及び臨床試験に進んでいる主要なプロジェクトは下記のとおりです。 〈主要パイプラインの進捗> (ⅰ)自社創薬パイプライン自社創薬テーマに関する当社のビジネス・モデルは、前臨床段階まで開発が進んだ段階で、製薬企業にライセンス・アウトすることを優先してきました。この基本方針は堅持しつつも、研究開発型の製薬企業へと発展するためには、可能な範囲で自社での臨床試験を実施することが不可欠だと考えております。また、自社で臨床POCを確保した製品については、前臨床段階でのライセンス・アウトに比較して、格段に有利な経済条件で製薬企業にライセンス・アウトすることが可能となり、当社の経営基盤の安定化に大きく役立ちます。 従って、長期的な成長戦略の一環として、アプタマー医薬の将来性や開発の妥当性、並びに当社の経営資源(開発パイプライン、人材、資金等)を勘案し、自社創製品の中から、RBM-007(抗FGF2アプタマー)を用いた滲出型加齢黄斑変性症(wetAMD)の臨床試験を米国で実施することを決定し、2018年10月からPhase 1/2a試験(SUSHI Study)を開始し、2019年5月に最後の被験者への投与を完了しました。以下に、RBM-007の臨床試験の現状と今後の予定、並びに当社のパイプラインについて、それらの概要をまとめます。 a) RBM-007:線維芽細胞増殖因子2を阻害する多用途治療薬の開発 線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast Growth Factor 2、FGF2)は、様々な臓器や器官の形成や再生、並びにそれらの正常な機能を維持する上で大切な役目を果たす「善玉タンパク質」だと長く考えられてきました。その一方で、FGF2が過剰に産生されたり、その作用が増強したりすると、骨の正常な維持に不都合が生じる可能性が学術論文で示唆されていました。しかし、FGF2に関する研究は、その発見から40年余の歴史があるにも拘わらず、抗体や低分子を含めてFGF2に対する優れた阻害剤が開発できませんでした。その理由は、FGF2はヒトでは22種類の類縁タンパク質からなるFGFファミリーの一員で、ヒトと動物で高度に保存されているため、抗体を含め特異的な阻害剤の創製は極めて困難だったからです。この結果、FGF2を阻害した場合の病気の発症や悪化に関する研究は進展せず、FGF2阻害剤の新薬候補品としての価値は見出されていませんでした。当社は、骨疾患におけるFGF2の役割を明らかにする目的で、FGF2に対する阻害性アプタマーの創製と解析を実施しました。その結果、FGF2に対して高い特異性と強力な阻害活性を有するアプタマーを創製することに成功し(化合物番号「RBM-007」を付与)、これまで未解明だったFGF2の生理的な機能を解明するとともに、FGF2阻害剤の多面的な用途を明らかにすることに成功しました(米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy」誌2016年11月号に掲載、並びに二つの物質特許を出願しております)。これにより、本アプタマーは、骨粗鬆症やリウマチなどの「骨疾患」や癌の骨転移に伴う「癌性疼痛」に対する治療薬となりうる可能性が明らかになりました。同時に、「加齢黄斑変性症」及び「軟骨無形成症」に対する新規治療薬となりうることも明らかとなりました。なお、現在まで、臨床ステージにあるFGF2阻害剤の報告はありません。 a-1) 滲出型加齢黄斑変性症(wetAMD)の病理と既存治療薬の問題点加齢によって網膜の中心部にある黄斑に障害が起き、見ようとするところが見えにくくなる疾患で、進行すると失明することがあり、欧米では失明原因の第1位で、日本でも第3位の失明原因となっています。その病理は、次の図に示されるように、加齢や紫外線・タバコの紫煙等が原因となって、網膜に炎症がおき、黄斑部に血管新生が誘導されて、視神経の膜構造が損傷されるために発症します。 滲出型加齢黄斑変性症(wetAMD)の市場では、「LucentisⓇ」や「EyleaⓇ」等の血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬が第一選択薬としての地位を確立しておりますが、wetAMD患者の約1/3はVEGF阻害薬が奏功せず、奏効した患者も長期治療の過程で、その薬効が次第に減弱し、やがて失明に向かうことが臨床的に明らかにされています。また、患者への負担が大きい硝子体(眼球)内注射の間隔を延ばすことが可能な治療薬の開発も求められています。 そのため、新しい作用機序をもつ新薬として、VEGFとは異なるAMD発症の要因として血小板由来成長因子(PDGF)に対するアプタマー阻害剤が開発され、その薬効に世界的な関心が集まりました。しかし、第3相試験で目標とする薬効を達成することができませんでした。このような状況下で、加齢黄斑変性症は、未だに既存薬では病気の進行が最終的に抑制できないUnmet Medical Needsの疾患の一つであり、新規作用機序の薬剤の開発が求められています。これまで開発されてきた既存の加齢黄斑変性症治療薬である抗VEGF薬では効果が十分に得られていない原因の一つとして瘢痕化が挙げられています。下図に示すように、RBM-007は血管新生の抑制作用のみならず、瘢痕化の抑制という作用を合わせ持つことが動物モデルの試験で明らかになっているため(非臨床POC確認)、既存薬にはない新規作用機序によって、競争力のある新薬となりうるものと考えております。RBM-007によるwetAMDの治療においては、薬剤を眼球内(硝子体)に注射するため、投与薬剤量が少なくてすみ、また大半の薬剤が眼球内に留まるため、コスト的にも安全性においても、当社による開発に適していると考えております。 a-2) RBM-007を用いた滲出型加齢黄斑変性症(wetAMD)に対する臨床試験これまで、米国における臨床試験の実施を目的として、当社100%子会社 RIBOMIC USA Inc.を米国Berkeleyに設立し(2017年8月)、網膜疾患に関する臨床専門医であるRobert B. Bhisitkul教授(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)とメディカルエキスパートの委嘱に関する契約を締結(2017年5月)、Quan Dong Nguyen教授(スタンフォード大学医学部Byers Eye研究所)とKarl G. Csaky博士(Southwest網膜財団のManaging & Medical Director)に当社の科学諮問委員に就任していただき(2018年1月)、準備を進めました。加齢黄斑変性症の硝子体注射による臨床試験では、健常人に対するPhase 1試験(治験薬の安全性や体内動態を確認するための試験)は実施せずに、患者に対するPhase 1/2a試験(少数の被験者について治験薬の安全性・体内動態の確認とともに有効性の確認を並行して行う試験)を実施するために、既存の治療薬であるVEGF阻害剤の効果が不十分な患者9名を選定し、3用量(第1コホートから第3コホート)各3名で試験を実施しました。その結果、下記にまとめたように、米国FDA(食品医薬品局)へのIND申請(治験計画届出)から始めて、Phase 1/2a試験の開始、最後の患者への試験薬の投与まで、すべての行程を無事に完了することができました。現在まで、安全性について、特段の問題となる事象は発生しておりません。投与開始から最後の患者への投与完了まで6ヶ月のスピードで実施できたことは、RIBOMIC USAを中心とした当社の体制が十分に機能した結果であると自負するところです。 2019年6月に、Phase 1/2a試験の主要項目評価を完了して、試験結果(速報版)を公表いたしました。同時に、その結果に基づいて、次のPhase 2試験の準備を行い、2020年3月期第3四半期を目処に、Phase 2試験を開始する予定です。 a-3) RBM-007を用いた軟骨無形成症の臨床試験計画軟骨無形成症は、新生児約25,000人に対して1人の発生率の希少疾患で、有効な治療薬が存在せず、Unmet Medical Needsの疾患となっており、新規な薬剤の開発が求められております。この疾患は、FGF受容体のひとつであるFGFR3におきた突然変異によって発症する、四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、現在まで有効な治療薬が開発されていません。これまでに、当社は、軟骨無形成症モデルマウス(FGFR3の遺伝子を疾患変異型に人為的に改変したマウス)を用いた薬理試験において、RBM-007は低身長改善効果を示し、軟骨無形成症に対する本薬剤の非臨床POCを確認することに成功しております。また、軟骨無形成症患者由来のiPSC(人工多能性幹細胞)は軟骨細胞への分化が不全になっていることが知られていますが、iPS細胞を試験管内で培養する際に、RBM-007を添加することで、軟骨細胞への分化が可能となり、さらには、免疫不全マウスにこの分化細胞を移植すると、マウスの体内で軟骨組織が形成されることを証明しております(大阪大学医学部との共同研究)。これらの結果から、本薬剤が、Unmet Medical Needsに応える新薬となりうるものと期待しております。軟骨無形成症については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬支援推進事業として、2015年度から3年間、さらに、AMEDの難治性疾患実用化研究事業として、2018年度からの3年間、補助金を得て開発を進めてきております。RBM-007の軟骨無形成症を対象とした臨床試験では、成人の健常人に対する第1相試験を実施し、RBM-007の安全性や体内動態を確認したうえで、少数の小児患者を対象にRBM-007の有効性の確認を行う第2a相臨床試験を実施する計画です。2021年3月期中における独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)への治験計画届出を目標として、研究開発を進めております。 a-4) RBM-007を用いた癌性疼痛に対する新薬の開発 疼痛(癌性疼痛)は、進行癌患者で高頻度に発生する骨転移を伴う骨病変の進行による強い疼痛を引き起こし、骨転移による疼痛にはオピオイドが効きにくいことが知られています。これまでの当社における研究によって、FGF2には骨疾患を増悪させる働きがあり、FGF2を阻害するアプタマーのRBM-007は骨疾患や骨疾患に伴う痛みを治癒する作用が動物実験で確認されております。この鎮痛効果は、モルヒネ(オピオイド)とほぼ同等の強さですが、モルヒネのような依存性や常習性等の副作用はなく、皮下投与により薬効の長期持続が期待されるという特徴があります。そのため、RBM-007はモルヒネ(オピオイド)を代替する安全な鎮痛薬になりうると期待しております。 b) RBM-003:心不全に対する新薬の開発 RBM-003は「キマーゼ(Chymase)」に対する阻害性アプタマーです。キマーゼは、肥満細胞が産生分泌するキモトリプシン様のタンパク質分解酵素で、血圧調節を始め、多様な生理活性に関与することが知られています。手術や炎症に伴う傷害を受けた部位では、肥満細胞からキマーゼが放出され、活性化されると、TGFβ(トランスフォーミング増殖因子β)前駆体やアンジオテンシン前駆体の活性化が誘起され、組織の線維化や心機能の障害が始まると考えられています。そのため、キマーゼ阻害剤は、臓器線維症や心不全に対する医薬品となる可能性を有しています。 ハムスターを用いた冠動脈結紮による心筋梗塞急性期モデルにおいて、本アプタマーの投与は梗塞後のキマーゼ陽性肥満細胞の集積並びにキマーゼ活性を抑制し、顕著な心機能改善効果を示しました(非臨床POC確認、米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy Nucleic Acids」誌2019年1月号に掲載)。アプタマー投与は、冠動脈結紮の前投与のみならず、後投与においても顕著な心機能改善効果を示し、冠動脈結紮を行った実験動物(ハムスター)の生存率を著しく改善致しました。 RBM-003の競合品として、バイエル社(独)が開発した低分子のキマーゼ阻害剤を用いた、慢性心不全に対する臨床試験が、Phase 2まで実施されていました。しかし、最近開発の中止が報告されました。その理由は明確ではありませんが、特許公知情報から、当社のRBM-003はバイエル社のキマーゼ阻害剤に比較して、2桁強い酵素阻害活性をもつと推測されます。そのため、強い薬理作用をもつアプタマーの特徴を生かして、「急性」の心筋梗塞に対する「救命効果」をもつ即効性の注射薬の開発を目指すことが適切ではないかと考えています。その基本方針のもとで、今後の研究開発を加速するとともに、早期のアライアンスを実現したいと考えております。 c) RBM-004:神経成長因子NGFを阻害する新しい鎮痛剤の開発 疼痛(神経障害性疼痛)は、痛覚受容器への刺激ではなく、末梢または中枢神経系の損傷や機能障害によって引き起こされ、これらの痛みの伝達にはNGF(神経成長因子)が関与します。前述(a-4)と同様に、疼痛治療にはモルヒネ(オピオイド)等が用いられますが、副作用の依存性・常習性による乱用が米国で社会問題になっています。 RBM-004はNGFを阻害するアプタマーであり、脊髄及び脳へ伝達される疼痛シグナルを遮断します。RBM-004は疼痛治療に使用されるモルヒネ等の鎮痛剤とは異なる新しい作用機序のため、依存性や常習性の副作用がないと期待できます。RBM-004(抗NGFアプタマー)は、抗NGF抗体と同様にNGFの生理作用を阻害し、強い鎮痛効果を示します。抗NGF抗体は、長い体内滞留性(2ヶ月程度の持続性)のために、時として患者に関節破壊等の不利益を生じることが報告されています。これに対して、RBM-004は「1回の投与で2日~7日間(最大2週間)作用が持続する」という、抗NGF抗体に比較すれば短いが十分な薬効の持続が期待されます。この特徴を生かして、医師のコントロール下で安全性を確保できる鎮痛薬としての開発が期待されます。 2014年4月、RBM-004について藤本製薬株式会社との間で全世界を対象とした独占的ライセンス契約を締結いたしました。現在、藤本製薬において開発が進められています。 d) RBM-010:変形性関節炎に対する新薬の開発 RBM-010は、当社と大正製薬株式会社との共同研究で創製された製品で、変形性関節症の増悪因子の一つであるADAMTS5(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 5)の働きを抑制する作用があります。変形性関節症は、種々の原因により、膝や足の付け根、肘、肩等の関節に痛みや腫れ等の症状が生じ、その後関節の変形をきたす病気です。現在、治療法としては痛みや腫れを和らげる薬の服用や関節置換術などの手術しかなく、根治する薬はありません。RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー)はその根治療法に道を開く可能性があります。日本には、変形性関節症を有している人が、2,500万人以上、また、世界では、変形性関節症の患者が約2億4,000万人以上と推定されており、今後高齢化にともない更に増加が予測されています。 e) RBM-006: オートタキシンを阻害する新しい肺線維症治療薬の開発 オートタキシン(Autotaxin、ATX)は、血漿に存在するリゾホスホリパーゼD、リゾホスファチジルコリン(LPC)を加水分解してリゾホスファチジン酸(LPA)を産生し、LPAの過剰な産生によるLPA受容体の活性化は線維芽細胞の遊走を促進し組織の線維化をひき起こすことから、オートタキシンは特発性肺線維症を含む線維症の治療のための創薬ターゲットとして注目されています。 当社は、ATXに対し高い親和性で結合し、かつ、ATXの酵素活性を特異的に阻害するアプタマーを創製し、肺線維症のモデル動物を用いた試験での効果を確認しました(非臨床POCの確認)。現在、臨床試験の直前のステージ(GLP試験)を実施するために必要なデータや資料を蓄積しつつあり、あわせて、投与ルートの確認に関連する試験を実施しています。 さらに、これまでに創製したアプタマーの一つとATXタンパク質との複合体のX線結晶構造を2.0Åの解像度で明らかにし、アプタマーの阻害機序を解明するとともに、アプタマーがATXの働きを抑える立体的なメカニズムを世界で最初に解明することに成功し(東京大学大学院理学系研究科・濡木理教授らとの共同研究成果)、その研究成果が、2016年4月のNature Structural & Molecular Biology 誌の電子版に発表されました(図はX線結晶構造解析によって解明したアプタマーとATXタンパク質との複合体の構造です)。さらに、構造の情報をもとに、ATXの作用をより強力に抑えるアプタマーをデザインし、肺線維症のモデルマウス等でその治療効果や薬理作用を確認することに成功いたしました。本アプタマーは,既存の低分子阻害剤とはまったく異なる阻害機構をもつ新たなATX阻害剤として肺線維症の治療への応用が期待されます。また、本アプタマーに関し、線維症の一つで皮膚が硬化する強皮症においても開発を進め、モデル動物を用いた薬効試験で効果を確認し、特発性肺線維症と併せてGLP試験の実施への目途がたちました。本アプタマーの、早期のライセンス・アウトを実現したいと考えております。 f) RBM-001:骨硬化性疾患に対する新規治療薬の開発 RBM-001(抗Midkineアプタマー)は、大塚製薬株式会社との共同研究の後、2017年5月にライセンス契約を締結したものです。その後の研究よって、RBM-001が骨代謝に関与する細胞に対し特有の作用(骨芽細胞死)を有することを発見し、2019年5月に発明「骨形成や骨代謝の異常に関連する疾患の治療薬」の特許出願を実施いたしました。これと並行して、当社は大塚製薬株式会社と協議の上、2019年5月付でライセンス契約を終了すると同時に、本品の当社による事業化(事業化後の大塚製薬株式会社へのロイヤリティー支払いを含む)に関する覚書を締結しました。 骨硬化性疾患等の骨系統疾患には、進行性骨化性線維異形成症(筋肉や腱、靱帯が骨組織に変化して硬化する病気であり、子供のころから発症し死に至る可能性があるとして、難病に指定されています。)や後縦靱帯骨化症(背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨になった結果、脊髄等が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気で、難病に指定されています。)等が含まれます。今後、当社は本品のグローバル展開を推進するためのパートナーを選定し、RBM-001の事業化を進めていく予定です。 g) その他のパイプラインg-1) RBM-002:血小板減少に対する新規抑制剤の開発 RBM-002は「トロンボスポンジン1(TSP-1)」に対する阻害性アプタマーで、抗癌剤による血小板減少を抑制するための新薬の開発を目的としたものです。TSP-1は、血小板が分泌する顆粒の中に含まれる糖タンパク質で、血液凝固に関与する他、細胞間の相互作用や血管増殖の抑制など多様な機能を持っています。TSP-1の産生や機能の亢進は、血小板減少、敗血症、線維症等の病態に関与していることが報告されているため、TSP-1阻害剤はこれらの疾患に対する医薬品となる可能性があります。現在まで、TSP-1阻害剤に関する臨床試験の報告はなされていません。 RBM-002はTSP-1に対する特異的かつ強い阻害活性をもつアプタマーとして創製が完了し、抗癌剤投与の動物モデルにおいて血小板の減少を顕著に抑制できることが確認されています(非臨床POC確認)。患者への抗癌剤の投与は、一般的に血小板の減少を引き起こします。強い抗癌剤ほど血小板数を大きく減少させ、生命に危険な状況となるため、十分量の抗癌剤が使えないというジレンマが生じます。このジレンマを解消できる医薬品は現在未だ開発されていません。当社は、RBM-002の投与によって血小板の減少を抑制し、本来必要とされる量の抗癌剤の使用を可能とする、新しい治療方法を実現したいと考えています。 g-2) 抗IL-21アプタマー:肺高血圧症に対する新規治療薬の開発 肺動脈性肺高血圧症は、難治性呼吸器疾患に認定されている原因不明の病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、全身への血液や酸素の供給が障害され、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。近年、プロスタグランジンI2製剤、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬などの開発で予後は改善しつつありますが、治療薬が十分な効果を発揮しない患者様の予後は依然として極めて悪い状態です。これらの既存治療薬は、いずれも血管を拡張させる作用を持つものであり、血管壁の肥厚を抑制する作用を持つ薬はなく、その開発が強く望まれています。 国立循環器病研究センターの中岡部長らの先行研究により、IL-21が肺高血圧症モデルマウスにおいて血管壁の肥厚を促進する作用を持つことが明らかになっており、同センターとの本共同研究によって、当社が開発を進める抗IL-21アプタマーが血管壁の肥厚を抑制する新規な作用を持つことが明らかになりました。 IL-21や肺高血圧症は、当社にとり新規な標的であり、Unmet Medical Needsの疾患であるため、この共同研究が画期的な新薬の誕生につながるように開発を進めてまいります。 g-3) 抗ST2アプタマー:重症喘息やアトピー性皮膚炎に対する新規治療薬の開発 ST2は細胞の表面に発現しているタンパク質で、当初どのような機能があるのかわかっていませんでした。その後、2005年にペアとなって働くサイトカイン(免疫応答に機能する分子)IL-33が発見され、免疫細胞の活性化による感染防御に働いていることがわかりました。更に、2010年に2型自然リンパ球(ILC2)という新しい免疫細胞が発見され、この細胞が異常に活性化してしまうことが喘息やアトピー性皮膚炎等の疾患の原因となっていること、この細胞の活性化にIL-33/ST2が重要な役割を担っていることが報告されています。 当社が創製した抗ST2アプタマーのST2に対する結合力は、一般的な抗体医薬品と比較しても、極めて高い親和性を有しており、気道吸入や薬剤塗布による薬剤送達が可能な新薬の開発を目指しています。 g-4) 抗FGF9アプタマー:精神疾患に対する新薬の開発 米国プリツカー精神神経疾患研究コンソーシアムと、大うつ病性障害、双極性障害、統合失調症等の精神疾患に対する新薬の開発を目標に共同研究を開始しました。プリツカー・コンソーシアムは、プリツカー財団の寄付により運営される、ミシガン大学やスタンフォード大学等、米国を代表する5カ所の精神疾患研究施設からなる研究連合で、線維芽細胞増殖因子9(FGF9)の異常亢進が重篤な精神疾患の原因になることを明らかにしています。 当社はFGF9に対する阻害性アプタマーを創製し、プリツカー・コンソーシアムにおいて動物実験で抗FGF9アプタマーの薬理作用を検証し、革新的な精神疾患治療薬の開発につなげたいと考えています。このプロジェクトは、血液脳関門を通過して、薬剤を脳内に送達することが必要となるため、当社にとって魅力的かつチャレンジングなテーマです。この問題を解決することによって、神経精神疾患に対する新薬の開発という新たなアプタマー創薬の地平が拓けるものと期待しています。 (ⅱ)共同研究パイプライン共同研究パイプラインの概要は、(3)③(ⅱ)で示したとおりです。 ⑤ライセンス・アウト済みプロジェクト 当社の創薬事業のパイプラインのうちライセンス・アウト済みのものは、以下のとおりであります。区分パイプラインターゲット導出先権利地域適応症自社創薬RBM-004NGF(神経成長因子)藤本製薬株式会社全世界疼痛共同研究RBM-001Midkine大塚製薬株式会社(2019年5月契約終了)全世界非開示 (ⅰ)藤本製薬株式会社とのライセンス契約 当社は2014年4月、NGFに対するRNAアプタマーを含有する医薬品の開発、製造、販売に関して、全世界での独占的実施権を許諾するライセンス契約を藤本製薬株式会社と締結しております。当社は、当該契約の締結に伴う契約一時金を受領しており、今後は開発の進捗等に応じたマイルストーン収入(第1相臨床試験開始時、前期第2相臨床試験開始時、後期第2相臨床試験開始時、第3相臨床試験開始時、製造販売承認申請時、製造販売承認取得時、純売上高が一定額超過時)、及び市販後の一定率のロイヤルティー並びに藤本製薬株式会社の得たサブライセンス収入の一定割合の受領を計画しております。 (ⅱ)大塚製薬株式会社とのライセンス契約 当社は、大塚製薬株式会社と、2008年8月から2016年12月まで実施したミッドカイン・アプタマー(当社製品コードRBM-001)及び関連核酸に関する共同研究での成果につき、大塚製薬株式会社においてこれを開発・商業化することを目的としたライセンス契約を2017年5月に締結いたしました。その後の研究によって、本品が希少疾患である骨硬化性疾患等の骨系統疾患に効果を示すことが明らかになり、2019年5月にそれに基づく発明「骨形成や骨代謝の異常に関連する疾患の治療薬」の特許出願を実施いたしました。これと並行して、当社は大塚製薬株式会社と協議の上、2019年5月付でライセンス契約を終了すると同時に、本品の当社による事業化(事業化後の大塚製薬株式会社へのロイヤリティー支払いを含む)に関する覚書を締結しました。今後、当社は本品のグローバル展開を推進するためのパートナーの選定を進めていく予定です。 ⑥ その他当社は、創薬以外へのアプタマーの応用も行っております。その一つに、IgGアプタマーがあります。IgGはヒト血清中に最も多く存在(70~75%)する免疫グロブリンで、抗体医薬として実用化されています。当社は、アプタマー創薬に関する技術開発の過程において、IgGの特定の部分(定常部)に結合するアプタマーを取得し、このアプタマーの機能解析を進めた結果、抗体医薬の分離精製に利用できることを証明いたしました。本プロジェクトに関し、2015年10月に中小企業庁からの東京都受託事業である2014年度補正「ものづくり・商業・サービス革新補助金」の助成事業として採択されました。これを受けてIgGアプタマー樹脂及びカラムの試作品を作成し、製薬企業や大学等にモニター用としてサンプル提供を行っております。本アプタマーに関する事業の進展に伴い、新規の製品コード「RBM-101」を付して、商品化に向けた活動を推進することといたしました。本アプタマーに関し、抗体医薬品開発のプロフェッショナルである株式会社イーベックとの間で、2016年12月に革新的な抗体精製技術の実用化に向けた共同研究契約を締結いたしました。その結果、2019年1月に共同研究の目的を達成し契約を満了いたしました。当社は、今後、本共同研究において得られた知見も含め、国内外の大手製薬企業へのライセンス・アウトを含めた事業化を目指してまいります。 上記の他に、アプタマーを利用した次世代の基盤技術の開発も進めております。その一つとして、膜タンパクを標的としたアプタマーの創製技術の開発、あるいは次世代型シークエンス法並びにコンピュータ科学を利用したアプタマー創製の新しい基盤技術の開発も行っております。前者については、2016年9月に、「GPCRを標的とするRNAアプタマー創薬基盤技術の開発」がAMEDによる創薬基盤推進研究事業に採択され、2018年度末まで、本助成事業を東京大学医科学研究所と共同で実施して、高い評価を獲得することができました。また、後者については、2018年9月に、「人工知能(AI)技術を用いた革新的アプタマー創薬システムの開発」が国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST研究に採択され、2020年度末までの期間、本助成事業を早稲田大学並びに東京大学医科学研究所と共同で進めてまいります。 これらの研究は、当社の基盤技術である「RiboARTシステム」の新たな発展を目指すものであります。 (4)アライアンスの推進① ライセンス戦略 当社は、様々な疾患領域のアプタマー医薬を開発できるという基盤技術を最大限に生かすため、一般的な創薬系バイオベンチャーに比べて、比較的早期の研究開発段階(前臨床試験段階からPOCの確認前後段階)においてライセンス・アウトを行うことを基本としております。当社は東京大学医科学研究所の研究成果を事業化するために発足した大学発のベンチャー企業であったことや、研究実施のために公的資金の提供を受けたプロジェクトも複数例あることから、その成果については、できる限り国内企業へライセンス・アウトすることを意図し、アプローチしてまいりました。また、当社はこれまで共同研究やライセンス・アウトに連動して、複数の共同研究先及びライセンス先と資本提携も実施し、より強固で統合的な事業推進を図ってまいりました。今後は、アプタマー創薬に取り組む企業の拡大が見込まれ、それに伴う事業チャンスを活かすために、事業開発部を中心に営業活動の地域を海外にも積極的に広げ、共同研究やライセンス・アウトの機会の拡大を図ってまいります。 ② アライアンスの推進体制自社創薬品目のライセンス・アウト実現のためには、可能性の高い提携候補先の選定、候補先での導入決定を促す試験成績・データ(製品差別化のポイント、製品売上高の予測、競合品に対する優位性等)の創出、交渉の進展に応じたタイムリーな情報提供、さらには事業化や開発に関する的確な提案、粘り強い交渉などが必要です。また製薬企業側のニーズの把握と積極的なアプローチも必要です。これらの活動を行うためには、医薬品業界におけるライセンスや事業開発の経験、及び国の内外の製薬企業と広範なネットワークを有する人材が不可欠です。このため、当社では医薬品業界での新薬の開発及びライセンスの経験と実績のある人材を社内に擁し、また研究開発や知財に関する社外専門家も活用できる体制を構築しており、アライアンスの実現に向けた体制を整えております。 ③ 産学連携、トランスレーショナル・リサーチの推進当社のコアな技術である「RiboARTシステム」を構築する主要な知識、技術は、東京大学医科学研究所との提携によりもたらされたものであります。現在においても東京大学や大阪大学医学部、順天堂大学医学部、大阪医科大学医学部等との緊密な連携を図り、アカデミアでの研究成果を事業化するための開発に移行させ(トランスレーショナル・リサーチ)、その実用化を目指しております。特に東京大学医科学研究所とは2005年6月より共同研究による提携を開始し、2012年4月以降は社会連携講座(「RNA医科学」社会連携研究部門)の下での連携を図っております。 (5)知財戦略 創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品が特許により保護されていることが、他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。 当社の知財戦略は、開発する製品に関するものと、開発技術
FY2018|29,958 文字|出典 docID: S100DIXZ
3【事業の内容】当社は、アプタマー創薬技術に関するプラットフォームである「RiboARTシステム(Ribomic Aptamer Refined Therapeutics System)」をベースとした創薬事業を展開している創薬プラットフォーム系バイオベンチャーであります。 「RiboARTシステム」は様々なアプタマー医薬の開発に応用できるものですが、当社は、特に「Unmet Medical Needs」疾患領域に的を絞り、医療機関や患者様から求められている新薬の提供を目指しております。アプタマーとは核酸であるRNA※1を素材とした分子で、多様な立体構造を形成できるという1本鎖のRNAの特性を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節します。その名称については、標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。当社は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力※2の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする「RiboARTシステム」をアプタマー創薬の基盤技術として確立しております。この「RiboARTシステム」は、様々な疾患分野や創薬ターゲットに対して応用可能な汎用性を有する創薬基盤技術です。自社で特定の新薬開発を行うのみならず、他の製薬会社の要請に応じて新薬のシーズ(タネ)を供与できるバイオベンチャーであることから、当社自身のことを「創薬プラットフォーム系バイオベンチャー」であると定義しております。当社は、これまで、この「RiboARTシステム」を利用した創薬探索をビジネスの柱としてきましたが、これに加え、適切な自社創薬製品については、自社で臨床試験※3を実施することを視野に事業を展開し、創薬プラットフォーム系バイオベンチャーとしての価値を高めてまいります。 「RiboARTシステム」の概念図は以下のとおりです。選抜:目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜分析:選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析加工:アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾※4を実施試験:細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価評価:動物を用いてアプタマーの毒性を評価 このような「RiboARTシステム」をベースとして、当社は、早期ライセンス・アウト※5を前提とした「自社創薬」と、製薬会社との「共同研究」の二つをバランス良く組合せて実行することを、事業展開の基本方針としてきましたが、当事業年度において、適切な自社製品については、前述のように自社で臨床試験を実施し、POC※6を取得した後に、ライセンス・アウトすることを、当社の主要な事業スキームに加えることといたしました。具体的には、以下に述べます自社製品RBM-007を用いた加齢黄斑変性症に対する臨床試験を米国で実施するための準備を進め、現在まで、滞りなく作業が進捗しております。その結果、当社は、従来の創薬探索のビジネスから、臨床開発のビジネスへとステップ・アップいたします。 当社の事業の系統図は以下のとおりです。 ※:ライセンス対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入※7、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。 創薬事業における共同研究では、アドバイザリー契約の下、アプタマー医薬開発に関する試験研究の受託、技術指導も実施しております。また、当社は、上記の創薬事業に付随する事業として、医薬品以外への応用可能性を秘めたアプタマーの実用化検討も行っております。その一環として、抗体※8であるIgGに特異的に結合する性質を有したアプタマーを、工業用資材(抗体医薬※8の精製剤等)として開発する事業や、膜タンパク質を標的としたアプタマーの創製技術の開発、あるいは核磁気共鳴分光法(NMR法)や次世代型シークエンス法並びにコンピュータ科学を利用したアプタマー創製の新しい基盤技術の開発も行っております。(1)アプタマー医薬①アプタマー医薬について核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています。この造形力を利用して、標的とするタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。アプタマーの特徴は、右図に例示するように、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」です。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬※9の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。アプタマー医薬としてこれまでに上市された製品は、2004年12月に米国食品医薬品局(米国FDA)が承認した「MacugenⓇ」(加齢黄斑変性症に対する治療薬)のみで、アプタマー医薬の市場は未開拓の領域といえます。 ②医薬品市場におけるアプタマー医薬(i)アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場アプタマーを含む核酸医薬の市場は、現在開発中の核酸医薬の開発の進捗状況、製品上市の時期、当該品目の市場性等により大きく変動する可能性がありますが、大きく拡大することが予想されています。核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があります。現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS※10及び製造と品質管理)が指摘されています。今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で細胞内へのDDS技術が不要であり、抗体と類似した作用メカニズムを持ち、応用範囲の広いアプタマー医薬だと、当社は考えております。 (ⅱ)アプタマー医薬の現状と課題2004年12月に世界初のアプタマー医薬で、眼科領域の疾患である加齢黄斑変性症(AMD)を適応症とする「MacugenⓇ」が米国FDAに承認され、逐次世界各国で承認を得て、世界的な製薬企業であるファイザー社から(日本では2008年10月)発売されています。なお、現在、全世界で「MacugenⓇ」以外のアプタマー医薬は市販されておらず、現在の「MacugenⓇ」の売上は、類似薬効品の抗体医薬「LucentisⓇ」とタンパク質医薬「EyleaⓇ」に押され、最盛期の1/20以下で、全世界で10数億円程度と思われます。しかし、「LucentisⓇ」と「EyleaⓇ」に代表される血管新生増殖因子VEGFに対する阻害剤は広く世界で使用され、AMD治療薬の世界市場は1兆円に近づいています。アプタマー医薬については、PⅡ(フェーズⅡ試験)~PⅢ(フェーズⅢ試験)の後期臨床ステージにある開発中の品目数も抗体に比較すると些少です。この背景には、アプタマーの創製に不可欠な技術であるSELEX法に関する基本特許が日欧では2011年6月まで、米国では2014年9月まで存続し、製薬会社がアプタマー創薬に向けた研究が自由にできなかったことが挙げられます。「MacugenⓇ」が類似薬効の抗体医薬に対して優位に立てなかった事例は、アプタマー医薬の開発(アプタマー創薬)に次のような貴重な教訓を与えました。 アプタマーに限らず、分子標的医薬の開発においては、創薬ターゲットとする疾患関連タンパク質の選択が重要です。「MacugenⓇ」の開発において、AMDは血管内皮増殖因子(VEGF)が関与しているとの知見から、VEGFの様々なサブタイプ(基本的な役割は似ているがタンパク質を構成するアミノ酸の長さや配列に違いがある)の中から、AMDの主因と考えたVEGF-165のみを阻害するアプタマー(Pegaptanib)を有効成分として選択しました。世界初のアプタマー医薬として、安全性を考慮したこの選択自体は決して誤ったものではなかったと当社では考えております。これに対し、後続の「LucentisⓇ」や「EyleaⓇ」は、VEGF-165だけでなく他のサブタイプも阻害することによって、効果(進行の停止のみならず視力も回復する)の点で、「MacugenⓇ」を上回り、AMDに対する第一選択薬としての地位を確保しました。標的に対するシャープな特異性がアプタマーの真骨頂ですが、この場合は、アプタマーのシャープさが裏目に出てしまったといえます。創薬ターゲットの選択においては、このような事例に十分注意することが必要です。米国のOphthotech社は、VEGFとは異なる血小板由来増殖因子(PDGF-BB)に対するアプタマー(FovistaⓇ)を用いて、AMDに対する薬剤開発を進め、PⅢまで臨床試験を実施しましたが、既存薬に比較した優位性を示すことに失敗しました。これも、創薬ターゲットの選択における、作用機序の新規性や優位性の重要さを物語るものと考えます。 さらに、一般的にアプタマー創薬において留意すべき点として、アプタマーの最適化※11(改変・改良等)の問題があります。核酸を成分とするアプタマーは体内に投与されると生体内の核酸分解酵素により速やかに分解されます。そのため、薬効を得るために体内での作用時間を延ばす必要があり、様々な改良を加えて酵素耐性の向上を図り、また、体外への排出の抑制を図ります。このアプタマーを医薬品として最適な化合物に仕上げる技術を欠くと、開発の中断や終了を余儀なくされます。 抗体医薬との差別化をどう図るかという問題もアプタマー創薬においては重要です。後述するように、アプタマーは抗体と比べて優れた点が多々あり、新薬のシーズとして大きな可能性を秘めています。しかし、抗体にはその作用が長時間持続するという、長所とも短所ともなりうる特徴があります。反面、アプタマーは、最適化を図っても抗体のように1~2ケ月間も作用させることは困難で、基本的には急性期、あるいは短期間を挟む間欠投与の適した疾患や症状が、その本領を最も発揮できる対象だといえます。このため、同一のタンパク質を標的とする抗体と競合する場合、アプタマーは抗体が適していない疾患や投与方法をデザインすることが肝要です。 (ⅲ)アプタマー医薬と抗体医薬の比較アプタマー医薬は分子標的薬※12として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。 抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。 以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。 (当社作成)項目アプタマー医薬抗体医薬標的タンパク質に対する結合力抗体の1,000倍は可能強い創薬ターゲットの種類極めて多様抗原タンパクに限定製造化学合成法細胞培養法コスト(製造コスト低減の容易さ)比較的高価(製造コスト低減の可能性あり)比較的高価(製造コストの低減は難しい)抗原性/免疫排除 起きにくい起きる製剤の可逆性・安定性強い弱い体内動態(長時間作用) 苦手、限界あり良い、得意短期作用性得意困難加工・化学修飾容易困難 [標的タンパク質に対する結合力]薬効を及ぼす生体内の標的(疾患関連タンパク質など)に対してどの程度強く結合するかを示す指標としては、解離定数(Kd:dissociation constant)という専門的な用語が用いられます。この解離定数は数値が低いほど、結合力が強いことを意味します。平均的な抗体の結合力は、Kd値がnM(ナノモラー、10-9モラー)レベルで、それ以上強い抗体を作ることは容易ではありません。一方、平均的なアプタマーのKd値はnM以下で、pM(ピコモラー、10-12モラー)のアプタマー、つまり抗体の1,000倍強い結合力を持つアプタマーの作製が可能です。また、強い結合力は、標的タンパク質を速やかに捕捉し、結合したら離れにくいという性質となるため、アプタマーは高い阻害効果を持つと期待されます。 [創薬ターゲットの種類]抗体は、創薬ターゲット(抗原タンパク質)を動物に投与して作製します。そのため、精製が難しいタンパク質や、ヒトと動物とで違いが少ないタンパク質など、抗原の種類によっては取得が困難、あるいは、不可能なものもあります。一方、アプタマーは、動物は使わずに、試験管の中の操作のみで作製するので、細胞表面に提示された状態の創薬タンパク質を標的として利用したり、ヒトと動物とで違いが少ないタンパク質に対しても創製することが可能であり、創薬ターゲットの種類が非常に多様です。さらに、創薬ターゲットに結合してその作用を阻害するアプタマーだけでなく、将来的には、抗体では難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬品を運搬するためのDDSとして利用可能なアプタマー等を創製することが可能です。 [製造]抗体は製造規模の大小を問わず、現在の科学技術では化学合成による製造はできません。商品化された場合には、通常、大規模な細胞培養設備によって製造します。また、開発段階で数度にわたるスケールアップを要し、それに対応する設備のために多額の資金が必要となります。加えて、製造条件の変更に伴う品質の確認作業(比較試験)も複雑になります。一方でアプタマーは、商品化後も、比較的小規模な製造設備での化学合成による製造が可能で、しかも、同一の設備を他の核酸医薬品の合成のために使用できます。そのため、アプタマーでは設備投資も製造管理(スケールアップを含む)も容易であるといえます。 [コスト(製造コスト低減の容易さ)]抗体医薬は細胞培養による生物製剤のため、製造方法が一旦確立すると、細胞培養等の工程を含むために、製造方法の変更や製造コストの低減は容易ではありません。これに対して、アプタマーでは、今後、製造施設や原材料を共用できるアンチセンス、siRNAやmicroRNAなど他の核酸医薬の発展に伴い、核酸医薬全体での製造スケールの拡大が見込まれることから、そうしたスケールメリット、加えて合成機械や合成方法の技術革新による製造コストの低減が期待されます。 [抗原性/免疫排除]抗体は生物由来のものを成分とする生物製剤のため、ヒトに投与した場合、抗原性を示すことがあり、継続使用において免疫的な排除を受けるリスクがあります。つまり、抗体を排除するための中和抗体が生体内で作られた結果、効果が減弱するということになります。しかし、アプタマーは合成医薬品のため、ヒトで抗原性を示すことはほとんどなく、また、生物製剤でないため、中和抗体ができるというリスクが低くなっています。 [製剤の可逆性・安定性]抗体の組成はタンパク質であるため、熱等の要因によって、不可逆的な(元に戻らない)変性を受けやすく品質確保には特別な注意が必要です。これに対し、アプタマーの組成はRNAであり、分解酵素のない環境下では安定しています。また熱等によって立体構造が変化しても、その変性は可逆的(元に戻る)で、100℃以下では速やかに元の形に復帰し、活性を回復します。そのため、アプタマー医薬は製剤化や流通、保管が抗体医薬に比べて容易です。 [体内動態(長時間作用)]抗体は、特別な加工を施さなくても、血中で分解されにくく、分子量が大きいため腎臓からの排泄も受けにくい性質があるため、血中に長く滞留することができます。一方アプタマーでは、未加工の状態では、血中で核酸分解酵素による消化を受けやすく、中サイズの分子量で水との親和性も高いため、腎臓からの排泄を受けやすい性質があります。そのため、アプタマーは、化学的な修飾を施して酵素による消化を防ぎ、ポリエチレングリコール(PEG)のような高分子化合物を結合するなどの加工が必要ですが、逆にこうした加工方法を工夫することで、血中滞留時間を調節できるという利点があります。 [短期作用性]医薬の中には、長時間体内に滞留することが副作用の原因となる場合がありますが、アプタマーでは、体内での滞留時間が比較的短いという特徴を生かして、短期に作用する医薬の開発が可能であり、さらに加工の方法により、目的と効果に応じた体内動態の医薬を開発することも可能です。特に、抗体は一旦ヒトに投与すれば、途中でその薬効を止める手だてがありませんが、アプタマーの場合は、その相補配列を持つ一本鎖核酸をアプタマーに対する中和剤として投与して、薬効を速やかに消失させることが可能です。 [加工・化学修飾]抗体は生物製剤であるため、品質や薬効を向上させるための化学的な加工・修飾が容易ではありません。しかし、アプタマーは化学合成によって製造するため、低分子医薬品と同じように様々な化学的な加工・修飾が可能で、品質や薬効の向上のみならず、作用時間の延長や副作用等の回避の手段を講じることができます。近年、複数の抗原タンパク質に作用するbi-specificな抗体や、抗体に低分子の薬剤を結合されたantibody drug conjugate 開発のための技術開発が行われていますが、同様なことはアプタマーでも可能で、化学合成品という特徴を生かして、抗体に比較して比較的容易にbi-specificなアプタマー医薬やdrug conjugateアプタマー医薬を創製することができます。 (2)創薬プラットフォーム① 創薬の戦略とアプタマー 製薬企業が新薬の素材として何を選択するか、という観点からみると、現在の医薬は、大きく以下の4本の柱から成ると当社では認識しております。この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする医薬であると考えております。 上記の4本の柱の内、低分子を対象とした日本の創薬力は欧米と同等のレベルまで達していますが、抗体やワクチンについては大きく遅れています。第4の柱である核酸医薬も、日本で創製され、日本発の核酸医薬としてヒトでの臨床試験のステージに入っているものには、NF-κBデコイオリゴ、NS-065/NCNP-01(エクソンスキッピング・アンチセンス)、DS-5141b(エクソンスキッピング・アンチセンス)、ND-L02-s0201(siRNA)があります。しかし、既にPⅡやPⅢに入っている多くの開発品を有する欧米と比べて、遅れていることは確かです。その中で、唯一、アプタマー医薬については、若干の遅れはあっても、大きな差はまだついていません。アプタマー医薬は、前述のように核酸医薬の中核となる可能性を秘めております。また、近年ペプチドを利用する創薬の研究開発が始まっています。核酸やペプチドは分子量が、高分子の抗体医薬と低分子医薬の中間に位置するため、これらは中分子医薬と総称されて、抗体や低分子にはない特徴を発揮する医薬品としても注目されています。その特徴のひとつとして、タンパク質・タンパク質相互作用(PPI、protein-protein interaction)に対する阻害剤の開発があげられます。当社は、増殖因子等のリガンドや受容体に対するアプタマーを多数創製してきましたが、これらは、中分子医薬の議論が始まる以前から、PPI阻害剤の開発を実践してきたものです。 ② 新薬開発プロセス新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。 1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニ ング※13する基礎・探索研究の段階 2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う前臨床試験※14の段階 当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)前臨床試験の段階において、「RiboARTシステム」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboARTシステム」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び前臨床試験の期間(1年前後のGLP試験※15の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験※16ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。 ※:前臨床試験(3~5年)にはGLP試験の期間1年前後が含まれています。 ③「RiboARTシステム」を用いたアプタマー創薬当社の「RiboARTシステム」は、シーズ・アプタマー(疾患に関連するタンパク質に結合する候補アプタマー)の取得から最終的な臨床開発品の創出までのプロセスをカバーする、当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。東京大学医科学研究所における研究成果や技術をベースに、当社の研究成果や創意工夫、ノウハウ※17あるいは営業秘密※17を含んでいます。「RiboARTシステム」においてコアとなる技術は、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強し、pM(ピコモラー、10-12モラー)未満のKd値の達成を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。 「RiboARTシステム」の詳細は以下のとおりです。(ⅰ) アプタマーの取得技術(SELEX法運用技術)アプタマー創薬のコアとなる技術の一つは、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するアプタマーを取得するSELEX法に関する技術です。この方法は日欧では平成23年6月まで、米国では平成26年9月まで特許で守られ、権利者(アルケミックス社)からライセンスを取得しない限り、SELEX法を実施して自由にアプタマーを取得することはできませんでした。当社は、この特許が国内で有効であった平成18年10月より、権利者から実施ライセンスを受け、様々なSELEX法を駆使してアプタマーを取得する経験を積んでまいりました。日米欧での上記特許失効後は、誰でもアプタマーの取得にSELEX法を実施することが可能となりました。しかし、目標とするタンパク質に結合し、意図した薬効を示すポテンシーのあるアプタマーを取得するには、標的タンパク質の特性分析、最適な核酸プールの構築に始まり、様々な条件下でのSELEX法の実施経験やノウハウが必要となります。当社の「RiboARTシステム」はこれらを集大成した創薬技術です。 SELEX法とはRNAの造形力を利用して、目的とするアプタマーを探し出すための技術で、様々なタンパク質を標的に使用できる汎用性が特徴です。具体的には、様々なタイプのRNA分子を標的のタンパク質と何度も結合→解離→増幅→再結合を繰り返すことで、より強く結合するRNA分子のみを“進化”させる技術です。この方法は、以下に示す魚釣りに似ています。 1)4種類の塩基(A・U・G・C)がランダムに配列されたRNA(様々なタイプの魚)の入ったプール(釣り堀)に標的となるタンパク質を「餌」にして、結合する(食いつく)特定のRNA(数十万種の魚)を釣り上げます。2)釣ったRNA(魚)からタンパク質(餌)を外し、増幅して(養殖して数を増やす)、再度プールの中に放し、同じタンパク質(餌)で釣りを繰り返します。早く食いついた数十から数十万種のRNA(魚)を増幅(養殖)し、再度、釣りを行います。3)このサイクルを10数回行うことによって、標的タンパク質に強く特異的に結合するアプタマー(最も早く餌に食いつく魚)を数種類選択することができます(右図参照)。 SELEX法を利用したアプタマーの創製(取得)には、最初にプールに放つ魚群の選定(核酸ライブラリーの構築)や釣り方(試験方法等)について、長年の経験・実績によるところが多く、当社はSELEX法に関して、世界でも有数の高度かつ広汎な技術を有しております。特に、核酸ライブラリーを作る際に、多様な修飾が施された修飾塩基を、4種類あるいはその一部に使用して、ライブラリーの多様性を拡充することが重要かつ効果的です。 また、近年、核酸配列の分析技術(シークエンス解析法)が格段に進歩した結果、次世代型のシークエンス装置を使えば、短時間に少量のサンプルから、百万程度の配列を読むことが可能です。当社は、この次世代型シークエンス装置とコンピュータ処理を用いて、数百万の配列情報からアプタマー候補を抽出するHT-SELEX(high-throughput SELEX)法を開発し、運用しております。 (ⅱ)アプタマーの最適化技術アプタマーの最適化技術は、in vitro※18 や in vivo※18試験でのスクリーニングから、より効果が高い(標的タンパク質に強く結合し、そのタンパク質の生理作用を高度に阻害する)アプタマーを創製し、アプタマーの改良技術を駆使して、臨床開発品として完成させるものです。 これには、アプタマーに特化したスクリーニング手法だけでなく、取得したアプタマーの特質と用途に応じた個別の最適化(短鎖化、化学修飾、doped SELEX(部分的に配列をランダム化して行うSELEX)等)技術が必要で、当社の最大の強みは、この分野での豊富な知識と経験並びに技能が蓄積していることであります。 また、的確な最適化には、標的タンパク質の特性(分子量、立体構造、電気化学的性質、類縁タンパク質(サブタイプ)の有無等)に応じた最適化のデザイン力が必須です。当社では、このデザイン力に関しても研究実績を蓄積してまいりました。これに加えて、アプタマーと標的タンパク質の複合体での立体構造を基にしてより強力なアプタマーのデザインも行うなど、アプタマーの最適化技術に関し常に技術力の向上を図っております。 a) アプタマーの短鎖化アプタマーの短鎖化技術は目標とするタンパク質に結合するものとして選定、取得したアプタマーを、工業的、経済的に利用可能な限度にまで短くし、目的に応じた化合物に改変する技術・ノウハウです。 SELEX法で最初に取れる、塩基が長く連なるアプタマー(約80鎖長)を、タンパク質との結合力を維持しながら1/2程度にまで短くし(短鎖化)、次の化学修飾プロセスにまわします。 b) アプタマーの化学修飾アプタマーの修飾技術は、短鎖化したアプタマーを化学的に修飾することにより、アプタマーの持つ生理活性を増強するとともに、薬物体内動態(作用時間)を改善し、医薬品に適したアプタマーに改良する技術・ノウハウです。具体的には、体内の酵素によるアプタマーの分解を阻止するために、一つ一つの塩基に化学修飾を施したり、腎臓からの早期の排出を抑えるために、アプタマーの末端へ化合物(PEGなど)を結合させたりします。化学修飾を駆使し最適化 このような、短鎖化や化学修飾等による最適化作業を、in vitro や in vivo 試験で効果を確認しつつ繰り返し、より優れた臨床開発品へとアプタマーを磨き上げていきます。 (ⅲ) アプタマーの製造法、品質規格の設定、品質管理等のノウハウ 核酸医薬、特にアプタマー医薬は、これまで「MacugenⓇ」が承認、販売されていますが、アプタマー医薬自体の歴史が比較的浅く、薬事規制面でも、原薬アプタマーや完成品の品質規格に関する規制内容は標準化されていません。 特にCMC(医薬品成分の化学的属性や製造管理)の分野では、個々のアプタマーごとに薬事承認や臨床試験の開始までに必要な試験やその方法、分析方法等を企画し、場合によっては薬事当局との協議が必要になります。当社は、そのために必要な、以下の分野の知識、経験も有しております。・アプタマーを医薬品化するために不可欠な製造方法、品質規格の設定、品質管理・核酸やアプタマーのような高分子化合物の分析、核酸の塩基配列の解析法 (ⅳ) アプタマーの安全性・毒性の評価・検討に関するノウハウアプタマーを動物に投与した時の毒性は、核酸が本来持っている毒性とターゲットタンパク質を阻害したことによる毒性に分けられます。核酸が本来持っている毒性の代表例は、大量に投与した場合に、血液凝固の阻害が起こることです。当社はこのような核酸特有の毒性を考慮しながらアプタマー作りを行っており、以下の経験を有しております。・アプタマーの血中や臓器中での濃度測定・ラットを用いた毒性試験・サルを用いた毒性試験 ④ その他の創薬体制当社はさらに、アプタマー医薬の開発のために、以下の体制を整えております。(ⅰ) アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチ※19を継続的に実施してきました。東京大学との共同研究は現在も継続し、同医科学研究所・クレストホール内にも自社の研究室を設置して、同研究所内の動物試験施設や、その他の高度試験装置を使用できる恵まれた環境を維持してきました。これにより技術、信頼性の観点から、高レベルの研究体制を整備しております。当社は、東京大学以外にも、大阪大学、順天堂大学、大阪医科大学等のアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、アプタマーの分析等における連携を図っております。 (ⅱ) 的確な研究開発マネジメント 当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。 (ⅲ) 人的ネットワーク アプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との、世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握に努めております。また、今後、自社での臨床試験を進めるにあたり、国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。 (ⅳ) アプタマー創製のスペシャリスト 当社では、役職員の3/4が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣をしいております。 さらに、大手製薬企業で研究開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。 (3)創薬事業①当社のビジネスモデルについて(ⅰ) 当社の創薬事業は、以下の3事業より構成されています。 ・自社創薬 ・製薬企業との共同研究 ・自社臨床開発 自社創薬とは、一定の開発段階まで自社独自で医薬候補となるアプタマーを開発し、その後、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、ライセンス対価(基本的に、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。 これに対し、共同研究とは、アプタマー医薬の研究を提携製薬企業と共同で行い、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに共同研究では、アドバイザリー契約を除いて、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。 さらに、自社創薬製品については、これまで、臨床試験に入る前にライセンス・アウトすることを事業スキームとしてきましたが、当事業年度において、適切な自社製品については、自社で臨床試験を実施し、POC※19を取得した後にライセンス・アウトすることも、当社の主要な事業スキームに加えることといたしました。 (ⅱ)三つの事業のバランス化 自社創薬によるライセンス・アウトに依存しすぎると、ライセンスの成否やその成約の遅れ等により事業計画が大きく影響を受けます。他方、共同研究は安定的な共同研究収入を一定期間期待できます。また、自社創薬による収益を最大化するためには、適切な製品について、自社で臨床試験を実施し、POCを取得した後に、ライセンス・アウトすることが効果的です。 従って、自社創薬に共同研究の特徴をうまく組み合わせ、さらに自社臨床開発を加えることで、以下の成果あるいは効果が期待できます。 1) 自社創薬のビジネスモデルに伴う収益の不安定化というリスクを低減できる 2) 共同研究先の新薬開発のノウハウ、経験を知得できる 3) 共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い 4) POCを取得した自社開発品のライセンス・アウトにより大きな収益を期待できる 5) 事業を全体として拡大できる ②事業活動に伴う収益計上の時期 当社のビジネスモデルからは、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計のタイミングを示しています。 注:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。 個別の契約によりそれぞれの金額や受取回数等が異なる場合があります。 しかし、自社創薬に関しては、以下のような場合、正式なライセンス契約の締結前でも、何らかの収益を得る機会があります。当社としては、相手方の意向にもよりますが、可能な限り、その機会を追求してまいります。 ・相手方に独占的な評価・交渉権を与える場合 ・相手方との間で提携に関する基本条件が合意され、基本合意書などを締結する場合 ・相手方の評価用に該当品目のサンプルを提供する場合 ③自社創薬及び共同研究の特長と、事業展開における基本方針(ⅰ)自社創薬について 新薬の開発において、基礎・探索研究、前臨床試験、臨床試験へと開発のステージが進捗するに従い、その経費は大幅に増加します。 また、臨床試験ステージになると、自社で開発を推進する場合には臨床試験用の社内体制を備える必要が生じ、さらにPOC確認後の臨床試験では、適応症にもよりますが、被験者数が飛躍的に増え、費用が莫大になります。上市後のマーケティング戦略を視野に入れた対応も必要となります。従って、POC確認後の臨床開発は、資金、経験やノウハウを有する製薬企業にて実施することが、アプタマー医薬の成功確率を高め、かつ早期の上市につながると考えております。 これらの事情に鑑みて、当社としては、自社での研究開発の目標は、ヒトでの臨床試験に入る前か、臨床試験の初期でヒトでの薬効が確認された時点(POC確認時点)での、製薬企業へのライセンス・アウトとしております。但し、早期事業化の品目として選定したテーマである場合や、ライセンス先の製薬企業との間で合意が成立した場合は、それ以前であってもライセンス・アウトを実施いたします。 なお、ライセンス・アウト後は、当該品目の開発や製造、販売などはライセンス先がその責任で行うことになります。しかし、当社のアプタマー医薬に関する知見が必要な場合、一定期間、共同研究を行うことがあります。 (ⅱ)共同研究について 共同研究は、製薬企業(提携先)とともにアプタマー創薬を実現することを目指す共同研究契約と、アプタマー創薬を行っている製薬企業に対するアドバイザリー契約があります。具体的には、共同研究契約では、創薬のターゲットとなる疾患関連タンパク質は提携先の領域戦略などに従って選択され、当社はかかるタンパク質の生理作用を阻害・抑制し、提携先が求める基準を満たすアプタマーを創製いたします。提携先はそのアプタマーについて薬効等の確認・評価(スクリーニング)、安全性試験等を行い、早期に臨床試験の対象となる臨床開発品を特定し、以降は提携先のイニシアティブで臨床開発を推進します。アドバイザリー契約では、アプタマー創薬を行っている製薬企業に対し、アプタマー医薬開発に関する試験研究の受託、技術指導を行っております。 共同研究では、製薬企業との間で作業分担を定めますが、当社が分担するアプタマーの創製に関する研究活動に対しては、適切な対価を得ることとしております。この役割分担に関しては、双方の有する技術や知識、経験をベースとして協議により決定しますが、当社の主な役割はアプタマーの創製やその改良となります。なお、当社では、共同研究の対価として受取る収入は共同研究収入として事業収益に計上し、試薬等の実費補填として受取る収入が生じた場合には受取研究開発費として営業外収益に計上しております。 また、共同研究では、大手製薬企業の技術を活用することで開発をより迅速に進めることが可能となり、さらに、アドバイザリー契約を除いて、一定の開発段階に至った場合、共同研究先へライセンス・アウトすることを前提としているため、ライセンス・アウト実現の可能性が高く、ライセンス先を探す必要もほとんどありません。 現在、当社が推進しているアプタマー創薬に関する主たる共同研究は以下のとおりであります。 パートナー名称共同研究概要大正製薬株式会社平成26年3月に締結し、平成29年3月に延長した共同研究契約に基づく、同社が選定した創薬領域に関する共同研究アステラス製薬株式会社平成29年3月に締結した共同研究契約に基づく、同社が開発を目指す創薬ターゲットに関する共同研究株式会社イーベック平成28年12月に締結した共同研究契約に基づく、RBM101(免疫グロブリンIgGのFc領域に結合するRNAアプタマー)に関する抗体精製技術の実用化に向けた共同研究 ④パイプラインについて創薬事業(自社創薬及び共同研究)のパイプラインのうち、基礎・探索研究段階を終え前臨床試験に進んでいる主要なプロジェクトは下記のとおりです。なお、下記図中の黒色で示した箇所は当事業年度における進捗を示しております。 〈各パイプラインの進捗>※:RBM001に関しては、平成29年5月に、大塚製薬株式会社との間でライセンス契約を締結いたしました。具体的な適応症については、大塚製薬株式会社での今後の開発方針によるため非開示としております。 (ⅰ)自社創薬パイプライン 当社と大塚製薬株式会社との間での実施してきたRBM002及びRBM003に関する共同研究契約は、平成27年12月末に契約期間の満了を迎え、これら2製品に関する知財と権利は全て大塚製薬株式会社から当社に譲渡されることとなりました。いずれも非臨床POCが確認され、当社の自社製品として、研究開発を進めてまいります。それらを含めた自社創薬の疾患領域と当該疾患領域における主要なパイプラインの概要は以下のとおりです。 a) RBM002: 血小板減少に対する新規抑制剤の開発 RBM002は「トロンボスポンジン1(TSP-1)」に対する阻害性アプタマーで、抗癌剤による血小板減少を抑制するための新薬の開発を目的としたものです。TSP-1は、血小板が分泌する顆粒の中に含まれる糖タンパク質で、血液凝固に関与する他、細胞間の相互作用や血管増殖の抑制など多様な機能を持っています。TSP-1の産生や機能の亢進は、血小板減少、敗血症、線維症等の病態に関与していることが報告されているため、TSP-1阻害剤はこれらの疾患に対する医薬品となる可能性があります。現在まで、TSP-1阻害剤に関する臨床試験の報告はなされていません。 本パイプラインはTSP-1に対する特異的かつ強い阻害活性をもつアプタマーとして創製が完了し、抗癌剤投与の動物モデルにおいて血小板の減少を顕著に抑制できることが確認されています(非臨床POC確認)。癌患者への抗癌剤の投与は、一般的に血小板の減少を引き起こします。強い抗癌剤ほど血小板数を大きく減少させ、生命に危険な状況となるため、十分量の抗癌剤が使えないというジレンマが生じます。このジレンマを解消できる医薬品は現在未だ開発されていません。当社は、RBM002の投与によって血小板の減少を抑制し、本来必要とされる量の抗癌剤の使用を可能とする、新しい治療方法を実現したいと考えています。 b) RBM003:心不全に対する新規医薬品の開発 RBM003は「キマーゼ(Chymase)」に対する阻害性アプタマーです。本製品は、当初、肺線維症治療薬としての開発を行っておりましたが、期待する薬効が確認されませんでした。その後、適応疾患を変更して、心不全の動物モデルで薬効試験を実施しました。その結果、ハムスターを用いた冠動脈結紮による心筋梗塞急性期モデルにおいて、本アプタマーの投与は梗塞後のキマーゼ陽性肥満細胞の集積並びにキマーゼ活性を抑制し、顕著な心機能改善効果を示しました(非臨床POC確認)。アプタマー投与は、冠動脈結紮の前投与のみならず、後投与においても顕著な新機能改善効果を示し、冠動脈結紮を行った実験動物(ハムスター)の生存率を著しく改善致しました。キマーゼは、肥満細胞が産生分泌するキモトリプシン様のタンパク質分解酵素で、血圧調節を始め、多様な生理活性に関与することが知られています。手術や炎症に伴う傷害を受けた部位では、肥満細胞からキマーゼが放出され、活性化されると、TGFβ(トランスフォーミング増殖因子β)前駆体やアンジオテンシン前駆体の活性化が誘起され、組織の線維化や心機能の障害が始まると考えられています。そのため、キマーゼ阻害剤は、臓器線維症や心不全に対する医薬品となる可能性を有しています。 現在、本アプタマーの競合品として、バイエル社(独)が開発した低分子のキマーゼ阻害剤が、臨床試験段階にあり、心不全(左心室機能不全)に対する第Ⅱ相臨床試験が実施されています。特許公知情報から、当社のRBM003はバイエル社のキマーゼ阻害剤に比較して、1〜2桁強い酵素阻害活性をもつと推測されます。当社にとっては、重要な自社製品となるものであり、今後の研究開発を加速するとともに、早期のアライアンスを実現したいと考えております。 c) RBM004: 神経成長因子NGFを阻害する新しい鎮痛剤の開発 市場には多くの鎮痛剤がありますが、最も強力な鎮痛効果のあるオピオイドと同程度の効果があり、長期間(1~2週間)その作用が持続し、かつ依存性や耽溺性がなく、中小病院や診療所でも安心して使用できる製品は無く、鎮痛剤の市場にも未だにUnmet Medical Needsの領域が残っています。 そのなかの一つに癌性疼痛があります。癌の激しい痛みにはオピオイドが用いられていますが、使い方が難しく、また、鎮痛作用の持続時間が短く、依存性や嘔吐等の副作用があり、保管や取扱にも、世界的に厳しい規制がなされています。癌性疼痛については、オピオイド系の医薬品があり、また次々と新製品が開発されています。しかし、1回の投与で1週間ないし2週間効果が持続し、オピオイドと同程度の鎮痛効果のある製品は抗NGF剤以外に見当たりません。 痛みの強さによる鎮痛剤の選択及び鎮痛剤の段階的な使用法を示した、癌性疼痛除痛ラダーがWHOより示されています。当社では、オピオイドに代替、又は併用によってQOL※20を高めるアプタマー医薬の開発を進めております。 さらに、この分野だけでなく、手術後や痛風、リウマチの急性期での疼痛など数日続く重度の痛みに対し、単回での投与でその痛みが寛解する医薬品にも大きな需要が見込まれます。 この鎮痛剤市場のUnmet Medical Needsを充たす新薬の創薬ターゲットとして、重点的に研究開発を進めてきたのがNGF(Nerve Growth Factor、「神経成長因子」)であります。NGFは世界で最初に発見された成長因子で、末梢における疼痛の原因物質として知られています。従って、生体内でのNGFの作用を抑えれば、様々な痛みに対する効果が期待されることから、ファイザー等の世界的な製薬企業が抗NGF抗体を疼痛治療薬として開発しています。 当社が創製した抗NGFアプタマーは、抗NGF抗体と同様にNGFの生理作用を阻害し、抗体医薬には無い「1回の投与で2日~7日間(最大2週間)作用が持続する」という優れた特性を示しております。このアプタマーは、抗体と異なり、作用時間が長すぎないため、医師のコントロールで安全性を確保でき、さらに、病態モデル動物※21を用いた試験で、オピオイドを代表するモルヒネや抗NGF抗体と同程度の鎮痛効果を示しています。平成26年4月、本プロジェクトについて藤本製薬株式会社との間で全世界を対象とした独占的ライセンス契約を締結いたしました。POCを確認するまでは当社も積極的に開発をサポートして新薬の実現に貢献すると同時に、臨床開発に関する経験や知識の蓄積に役立てる予定です。 d) RBM006: オートタキシンを阻害する新しい肺線維症治療薬の開発 オートタキシン(Autotaxin、ATX)は、血漿に存在するリゾホスホリパーゼD、リゾホスファチジルコリン(LPC)を加水分解してリゾホスファチジン酸(LPA)を産生する、LPAの過剰な産生によるLPA受容体の活性化は線維芽細胞の遊走を促進し組織の線維化をひき起こすことから、オートタキシンは特発性肺線維症を含む線維症の治療のための創薬ターゲットとして注目されています。 当社は、SELEX法を用いたスクリーニングにより,ATXに対し高い親和性で結合し、かつ、ATXの酵素活性を特異的に阻害するアプタマーを創製し、肺線維症のモデル動物を用いた試験での効果を確認しました(非臨床POCの確認)。現在、臨床試験の直前のステージ(GLP試験)を実施するために必要なデータや資料を蓄積しつつあり、あわせて、投与ルートの確認に関連する試験を実施しています。さらに、これまでに創製したアプタマーの一つとATXタンパク質との複合体のX線結晶構造を2.0Åの解像度で明らかにし、アプタマーの阻害機序を解明するとともに、アプタマーがATXの働きを抑える立体的なメカニズムを世界で最初に解明することに成功し(東京大学大学院理学系研究科・濡木理教授らとの共同研究成果)、その研究成果が、平成28年4月のNature Structural & Molecular Biology 誌の電子版に発表されました(図はX線結晶構造解析によって解明したアプタマーとATXタンパク質との複合体の構造です)。さらに、構造の情報をもとに、ATXの作用をより強力に抑えるアプタマーをデザインし、肺線維症のモデルマウス等でその治療効果や薬理作用を確認することに成功いたしました。本アプタマーは,既存の低分子阻害剤とはまったく異なる阻害機構をもつ新たなATX阻害剤として肺線維症の治療への応用が期待されます。また、本アプタマーに関し、線維症の一つで皮膚が硬化する強皮症においても開発を進め、モデル動物を用いた薬効試験で効果を確認し、特発性肺線維症と併せてGLP試験の実施への目途がたちました。本アプタマーの、早期のライセンス・アウトを実現したいと考えております。 e) RBM007: 線維芽細胞増殖因子2を阻害する多用途治療薬の開発 線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast Growth Factor 2、FGF2)は、様々な臓器や器官の形成や再生、並びにそれらの正常な機能を維持する上で大切な役目を果たす「善玉タンパク質」だと長く考えられてきました。その一方で、FGF2が過剰に産生されたり、その作用が増強したりすると、骨の正常な維持に不都合が生じる可能性が学術論文で示唆されていました。しかし、FGF2に関する研究は、その発見から40余年の歴史があるにも拘わらず、抗体や低分子を含めてFGF2に対する優れた阻害剤が開発できませんでした。その理由は、FGF2はヒトでは22種類の類縁タンパク質からなるFGFファミリーの一員で、ヒトと動物で高度に保存されているため、抗体を含め特異的な阻害剤の創製は極めて困難だったからです。この結果、FGF2を阻害した場合の病気の発症や悪化に関する研究は進展せず、FGF2阻害剤の新薬候補品としての価値は見出されていませんでした。当社は、骨疾患におけるFGF2の役割を明らかにする目的で、FGF2に対する阻害性アプタマーの創製と解析を実施しました。その結果、FGF2に対して高い特異性と強力な阻害活性を有するアプタマーを創製することに成功し(化合物番号「RBM-007」を付与)、これまで未解明だったFGF2の生理的な機能を解明するとともに、FGF2阻害剤の多面的な用途を明らかにすることに成功しました(米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy」誌、平成28年11月号に掲載、8月の電子版で速報、並びに二つの物質特許を出願しております)。これにより、本アプタマーは、骨粗鬆症やリウマチなどの「骨疾患」や癌の骨転移に伴う「癌性疼痛」に対する治療薬となりうる可能性が明らかになりました。同時に、「加齢黄斑変性症」及び「軟骨無形成症」に対する新規治療薬となりうることも明らかとなりました。なお、現在まで、臨床ステージにあるFGF2阻害剤の報告はありません。 自社創薬テーマに関する当社のビジネス・モデルは、前臨床段階まで開発が進んだ段階で、製薬企業にライセンス・アウトすることを優先してきました。この基本方針は堅持しつつも、研究開発型の製薬企業へと発展するためには、可能な範囲で自社での臨床試験を実施することが不可欠だと考えております。また、自社で臨床POCを確保した製品については、前臨床段階でのライセンス・アウトに比較して、格段に有利な経済条件で製薬企業にライセンス・アウトすることが可能となり、当社の経営基盤の安定化に大きく役立ちます。従って、長期的な成長戦略の一環として、現時点での当社の経営資源(開発パイプライン、人材、資金等)を勘案し、自社創製品の中から、自社での臨床試験に最適な疾患として、RBM-007による加齢黄斑変性症及び軟骨無形成症での開発を選定いたしました。現在、平成31年3月期に加齢黄斑変性症、平成32年3月期に軟骨無形成症の臨床試験を開始する計画で準備を進めており、以下にそれらの内容を要約します。 e-1)加齢黄斑変性症の臨床試験計画加齢によって網膜の中心部にある黄斑に障害が起き、見ようとするところが見えにくくなる疾患で、進行すると失明することがあり、欧米では失明原因の第1位で、日本でも第3位の失明原因となっています。 加齢黄斑変性症(AMD)の市場では、「LucentisⓇ」や「EyleaⓇ」等のVEGF阻害薬が第一選択薬としての地位を確保しておりますが、VEGF阻害薬が奏功しないか奏功しにくいAMDに対する治療薬や、患者への負担が大きい硝子体(眼球)内注射の間隔を延ばすことが可能な治療薬の開発も求められています。 そのため、新しい作用機序をもつ新薬として、VEGFとは異なるAMD発症の要因として血小板由来成長因子(PDGF)に対するアプタマー阻害剤が開発され、その薬効に世界的な関心が集まりました。しかし、第Ⅲ相試験で目標とする薬効を達成することができませんでした。このような状況下で、加齢黄斑変性症は、未だに既存薬では病気の進行が最終的に抑制できないUnmet Medical Needsの疾患の一つであり、新規作用機序の薬剤の開発が求められています。これまで開発されてきた既存の加齢黄斑変性症治療薬である抗VEGF薬では効果が十分に得られていない原因の一つとして瘢痕化が挙げられています。RBM-007は血管新生の抑制作用のみならず、瘢痕化の抑制という作用を合わせ持つことが動物モデルの試験で明らかになっているため(非臨床POC確認)、既存薬にはない新規作用機序によって、競争力のある新薬となりうるものと考えております。RBM-007による加齢黄斑変性症の治療においては、薬剤を眼球内(硝子体)に注射するため、投与薬剤量が少なくてすみ、また大半の薬剤が眼球内に留まるため、コスト的にも安全性においても、当社による開発に適していると考えております。これまで、平成31年3月期第一四半期中における米国FDAへの治験計画届出(IND申請)を目標として、GLP適合非臨床安全性・毒性試験の実施、及び治験用製剤(「治験薬」)の検討及びその製造に必要な原薬(核酸)合成を進め、いずれも平成30年5月までに完了いたしました。これと並行し、当社100%子会社としてRIBOMIC USA Inc.を米国Berkeleyに設立し、後述するメディカルエキスパートを選定して準備を進めてまいりました。これらの結果、平成30年6月に米国FDAに対してIND申請を完了いたしました。加齢黄斑変性症の臨床試験では、健常人に対する第I相試験(治験薬の安全性や体内動態を確認するための試験)は実施せずに、患者に対する第I/IIa相試験(少数の被験者について治験薬の安全性・体内動態の確認とともに有効性の確認を並行して行う試験)を実施するために、既存の治療薬であるVEGF阻害剤の効果が不十分な患者を選べば比較的少数の患者数で、治験開始後約1年程度で治験薬の効果が明らかになると想定されます。 e-2) 軟骨無形成症の臨床試験計画軟骨無形成症は、新生児約25,000人に対して1人の発生率の希少疾患で、有効な治療薬が存在せず、Unmet Medical Needsの疾患となっており、新規な薬剤の開発が求められております。この疾患は、FGF受容体のひとつであるFGFR3におきた突然変異によって発症する、四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、現在まで有効な治療薬が開発されていません。これまでに、当社は、軟骨無形成症モデルマウス(FGFR3の遺伝子を疾患変異型に人為的に改変したマウス)を用いた薬理試験において、RBM-007は低身長改善効果を示し、軟骨無形成症に対する本薬剤の非臨床POCを確認することに成功しており、本薬剤が、Unmet Medical Needsに応える新薬となりうるものと期待しております。軟骨無形成症については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬支援推進事業として、補助金を得て開発を進めました。当事業年度が補助金の最終年度でしたが、AMEDの難治性疾患実用化研究事業(平成30年度からの3年間)に新たに応募したところ、採択され、本支援の下で治験開始に向けた準備をさらに着実に進めてまいります。過年度中に軟骨無形成症のモデルマウスでRBM-007の効果を確認しておりますが、当事業年度中にはさらに、ヒトの軟骨無形成症患者由来のiPS細胞を用いた実験(大阪大学医学部附属病院との共同研究)において、RBM-007の効果を実証いたしました。平成32年3月期中における独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)への治験計画届出を目標として、研究開発を進めております。これまでにおいて、GLP適合非臨床安全性・毒性試験の一部、及び第Ⅰ相試験用製剤(「治験薬」)の製造を完了しており、現在、GLP適合非臨床安全性・毒性試験を継続するとともに、治験受託会社(CRO)の選定、及び関連する薬事規制に対応した体制の構築を精力的に進めております。RBM-007の軟骨無形成症を対象とした臨床試験では、成人の健常人に対する第I相試験を実施し、RBM-007の安全性や体内動態を確認したうえで、少数の小児患者を対象にRBM-007の有効性の確認を行う第IIa相臨床試験を実施する計画です。 e-3) 臨床試験に向けた推進体制の構築平成28年6月29日開催の定時株主総会において、製薬企業の取締役としての実務経験を持ち、臨床開発についての豊富な経験と見識を有する社外取締役を1名新たに選任いたしました。加えて、平成28年7月1日付で研究開発本部の下に臨床開発部を新設し、同部を中心に外部機関の協力も得て、治験実施に向けた研究開発の推進と、治験実施体制の構築を進めております。この一環として、平成29年5月に網膜及び硝子体の疾患に関するキー・オピニオン・リーダーであり、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)メディカルセンター眼科の医師であるRobert B. Bhisitkul教授と、メディカルエキスパートの委嘱に関する契約(Medical Expert Agreement)を締結し、加齢黄斑変性症に関する米国での臨床試験に関して、メディカルエキスパートの立場から、臨床試験計画の策定、試験実施に際しての各種調整、試験結果の評価等の業務を実施していただくこととなりました。さらに、スタンフォード大学医学部Byers Eye研究所の眼科学教授Quan Dong Nguyen博士ならびに、加齢黄斑変性症(AMD)専門病院のDirectorであり、Southwest網膜財団のManaging & Medical DirectorであるKarl G. Csaky博士が、当社の科学諮問委員に就任いたしました。 また、平成29年5月には、軟骨無形成症治療薬としての臨床試験の実施に向けて、大阪大学医学部附属病院小児科の臨床医である大薗恵一教授と、医学専門家の委嘱に関する契約を締結いたしました。大薗教授は、大阪大学医学部附属病院小児科を診療科長として主宰し、小児における骨系統疾患の専門医として、軟骨無形成症をはじめとする小児難病の治療法確立に情熱的に取り組んでおられます。大薗教授には、その専門的知見を活かし、RBM-007の臨床試験に関して、医学専門家の立場でメディカルモニタリング、文書の医学レビュー、各種助言等を行っていただく予定です。 (ⅱ)共同研究パイプライン共同研究パイプラインの概要は以下のとおりです。 a)大正製薬株式会社との提携同社が選択したアプタマー創薬テーマについて、3年間の共同研究を平成26年3月より開始し、平成29年3月に、本共同研究の1年間の延長契約が締結され、共同研究が進行し、現在は評価中であります。 b)アステラス株式会社との提携 同社が選択したアプタマー創薬テーマについての共同研究を平成29年3月より開始しております。 ⑤ ライセンス・アウト済みプロジェクト 当社の創薬事業のプロジェクトのうちライセンス・アウト済みのプロジェクトは、以下のとおりであります。区分プロジェクトターゲット導出先権利地域適応症自社創薬RBM004NGF(神経成長因子)藤本製薬株式会社全世界疼痛共同研究RBM001Midkine大塚製薬株式会社全世界非開示 (ⅰ)藤本製薬株式会社とのライセンス契約 当社は平成26年4月、NGFに対するRNAアプタマーを含有する医薬品の開発、製造、販売に関して、全世界での独占的実施権を許諾するライセンス契約を藤本製薬株式会社と締結しております。当社は、当該契約の締結に伴う契約一時金を受領しており、今後は開発の進捗等に応じたマイルストーン収入(第Ⅰ相臨床試験開始時、前期第Ⅱ相臨床試験開始時、後期第Ⅱ相臨床試験開始時、第Ⅲ相臨床試験開始時、製造販売承認申請時、製造販売承認取得時、純売上高が一定額超過時)、及び市販後の一定率のロイヤルティー並びに藤本製薬株式会社の得たサブライセンス収入の一定割合の受領を計画しております。 (ⅱ)大塚製薬株式会社とのライセンス契約当社は、大塚製薬株式会社と、平成20年8月から平成28年12月まで実施したミッドカイン・アプタマー(当社製品コードRBM001)及び関連核酸に関する共同研究での成果につき、大塚製薬株式会社においてこれを開発・商業化することを目的としたライセンス契約を平成29年5月に締結いたしました。本ライセンス契約により、開発途中でのマイルストーンは受け取りませんが、大塚製薬株式会社から契約一時金と、本製品発売後の売上に応じたロイヤルティー、大塚製薬株式会社が第三者にサブライセンスを行った場合のサブライセンス対価の分配金、及び大塚製薬株式会社が第三者に事業譲渡を行った場合の事業譲渡対価の分配金を受け取ることとなります。 ⑥ その他当社は、創薬以外へのアプタマーの応用も行っております。その一つに、IgGアプタマーがあります。IgGはヒト血清中に最も多く存在(70~75%)する免疫グロブリンで、抗体医薬として実用化されています。当社は、アプタマー創薬に関する技術開発の過程において、IgGの特定の部分(定常部)に結合するアプタマーを取得し、このアプタマーの機能解析を進めた結果、抗体医薬の分離精製に利用できることを証明いたしました。本プロジェクトに関し、平成27年10月に中小企業庁からの東京都受託事業である平成26年度補正「ものづくり・商業・サービス革新補助金」の助成事業として採択されました。これを受けてIgGアプタマー樹脂及びカラムの試作品を作成し、製薬企業や大学等にモニター用としてサンプル提供を行っております。本アプタマーに関する事業の進展に伴い、新規の製品コード「RBM101」を付して、商品化に向けた活動を推進することといたしました。本アプタマーに関し、抗体医薬品開発のプロフェッショナルである株式会社イーベックとの間で、平成28年12月に革新的な抗体精製技術の実用化に向けた共同研究契約を締結いたしました。当社は、今後、本共同研究において、実施例、データを蓄積し、国内外の大手製薬企業へのライセンス・アウトを含めた事業化を目指してまいります。 上記の他に、アプタマーを利用した次世代の基盤技術の開発も進めております。その一つとして、膜タンパクを標的としたアプタマーの創製技術の開発、あるいは核磁気共鳴分光法(NMR法)や次世代型シークエンス法並びにコンピュータ科学を利用したアプタマー創製の新しい基盤技術の開発も行っております。膜タンパク質を標的としたアプタマーの創製技術の開発については、平成28年9月に、「GPCRを標的とするRNAアプタマー創薬基盤技術の開発」がAMEDによる創薬基盤推進研究事業に採択され、本助成事業を東京大学医科学研究所と共同で進めております。 これらの研究は、当社の基盤技術である「RiboARTシステム」の新たな応用を目指すものであります。 (4)アライアンスの推進① ライセンス戦略 当社は、様々な疾患領域のアプタマー医薬を開発できるという基盤技術を最大限に生かすため、一般的な創薬系バイオベンチャーに比べて、比較的早期の研究開発段階(前臨床試験段階からPOCの確認前後段階)においてライセンス・アウトを行うことを基本としております。当社は東京大学医科学研究所の研究成果を事業化するために発足した大学発のベンチャー企業であったことや、研究実施のために公的資金の提供を受けたプロジェクトも複数例あることから、その成果については、できる限り国内企業へライセンス・アウトすることを意図し、アプローチしてまいりました。また、当社はこれまで共同研究やライセンス・アウトに連動して、複数の共同研究先及びライセンス先と資本提携も実施し、より強固で統合的な事業推進を図ってまいりました。今後は、アプタマー創薬に取り組む企業の拡大が見込まれ、それに伴う事業チャンスを活かすために、事業開発部を中心に営業活動の地域を海外にも積極的に広げ、共同研究やライセンス・アウトの機会の拡大を図ってまいります。 ② アライアンスの推進体制自社創薬品目のライセンス・アウト実現のためには、可能性の高い提携候補先の選定、候補先での導入決定を促す試験成績・データ(製品差別化のポイント、製品売上高の予測、競合品に対する優位性等)の創出、交渉の進展に応じたタイムリーな情報提供、さらには事業化や開発に関する的確な提案、粘り強い交渉などが必要です。また製薬企業側のニーズの把握と積極的なアプローチも必要です。これらの活動を行うためには、医薬品業界におけるライセンスや事業開発の経験、及び国の内外の製薬企業と広範なネットワークを有する人材が不可欠です。このため、当社では医薬品業界での新薬の開発及びライセンスの経験と実績のある人材を社内に擁し、また研究開発や知財に関する社外専門家も活用できる体制を構築しており、アライアンスの実現に向けた体制を整えております。 ③ 産学連携、トランスレーショナル・リサーチの推進当社のコアな技術である「RiboARTシステム」を構築する主要な知識、技術は、東京大学医科学研究所との提携によりもたらされたものであります。現在においても東京大学や大阪大学医学部、順天堂大学医学部、大阪医科大学医学部等との緊密な連携を図り、アカデミアでの研究成果を事業化するための開発に移行させ(トランスレーショナル・リサーチ)、その実用化を目指しております。特に東京大学医科学研究所とは平成17年6月より共同研究による提携を開始し、平成24年4月以降は社会連携講座(「RNA医科学」社会連携研究部門)の下での連携を図っております。 (5)知財戦略 創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品が特許により保護されていることが、他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。 当社の知財戦略は、開発する製品に関するものと、開発技術に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。 ① 自社創薬品目及び共同研究品目に対する知財戦略 物質特許の取得を必須としております。なお、RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)について権利範囲の抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。 このため、標的分子との結合力が強く、かつ、その生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物も特許でカバーし、さらに、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する配列を探索し、その共通配列を特許化することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。 また、共同研究品目については、提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。 なお、特許の出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド、ブラジル等の医薬品市場の規模が大きく、又は将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。 ②「RiboARTシステム」に対する知財戦略 「RiboARTシステム」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化)に関するものの中には、特許化して権利の独占を図れる可能性のある技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化にはその技術を公開するという代償を伴います。アプタマーは、その質さえ問わなければ、既に特許期間が失効したSELEX法を含む公知の方法で取得可能です。そのため、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難で、特許出願に伴う技術の公開は、敵に塩を送るに等しいものです。 従って、当社では、原則として「RiboARTシステム」により創製されたアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboARTシステム」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密として秘匿し、優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。 ③主要な特許の状況 当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。 対象パイプライン発明の名称出願又は特許番号保有者登録状況RBM003キマーゼに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2010/059953(特許第5810356号)当社日本、米国にて成立済キマーゼに対するアプタマー及びその使用特願2017-230503 当社-RBM007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/052925(特許第5899550号)当社日本にて成立済 FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992当社米国にて成立済RBM006オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/059732当社- オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/062561当社- 対象パイプライン発明の名称出願又は特許番号保有者登録状況RBM001ミッドカインに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2007/072099(特許第5190573号)当社日本・米国・欧州他にて成立済RBM004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2009/066457(特許第5602020号)当社・藤本製薬株式会社日本・欧州他にて成立済NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105(特許第5027956号)当社・藤本製薬株式会社日本・米国・欧州他にて成立済NGFに対するアプタマー及びその用途PCT/JP2012/75252(特許第6118724号)当社・藤本製薬株式会社日本、米国にて成立済 対象パイプライン発明の名称出願又は特許番号保有者登録状況RBM101免疫グロブリンGに結合する核酸とその利用法PCT/JP2006/313811(特許第4910195号)当社日本、米国にて成立済 ※1 : RNA 遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミンの代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。 そのため、分子生物学の黎明期から、RNA
FY2016|29,919 文字|出典 docID: S1007YIY
3【事業の内容】当社は、アプタマー創薬技術に関するプラットフォームである「RiboARTシステム(Ribomic Aptamer Refined Therapeutics System)」をベースとした創薬事業を展開している創薬プラットフォーム系バイオベンチャーであります。 「RiboARTシステム」は様々なアプタマー医薬の開発に応用できるものですが、当社は、特に「Unmet Medical Needs」疾患領域に的を絞り、医療機関や患者様から求められている新薬の提供を目指しております。アプタマーとは核酸であるRNA※1を素材とした分子で、多様な立体構造を形成できるというRNAの特性を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節します。その名称については、標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。当社は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力※2の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする「RiboARTシステム」をアプタマー創薬の基盤技術として確立しております。この「RiboARTシステム」は、様々な疾患分野や創薬ターゲットに対して応用可能な汎用性を有する創薬基盤技術です。自社で特定の新薬開発を行うのみならず、他の製薬会社の要請に応じて新薬のシーズ(タネ)を供与できるバイオベンチャーであることから、当社自身のことを「創薬プラットフォーム系バイオベンチャー」であると定義しております。 「RiboARTシステム」の概念図は以下のとおりです。選抜:目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜分析:選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析加工:アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾※3を実施試験:細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価評価:動物を用いてアプタマーの毒性を評価 このような「RiboARTシステム」をベースとして、当社は、早期ライセンス・アウト※4を前提とした「自社創薬」と、製薬会社との「共同研究」の二つをバランス良く組合せて実行することを、事業展開の基本方針としております。 当社の事業の系統図は以下のとおりです。 ※:ライセンス対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入※5、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。 創薬事業における共同研究では、アドバイザリー契約の下、アプタマー医薬開発に関する試験研究の受託、技術指導も実施しております。また、当社は、上記の創薬事業に付随する事業として、医薬品以外への応用可能性を秘めたアプタマーの実用化検討も行っております。その一環として、抗体※6であるIgGに特異的に結合する性質を有したアプタマーを、工業用資材(抗体医薬※6の精製剤等)として開発する事業や、iPS細胞(人工多能性幹細胞)やそれから分化した細胞の純化等の実用化に向けた基盤技術の開発も行っております。(1)アプタマー医薬①アプタマー医薬について核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています。この造形力を利用して、標的とするタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。アプタマーの特徴は、右図に例示するように、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」です。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬※7の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。アプタマー医薬としてこれまでに上市された製品は、2004年12月に米国食品医薬品局(FDA)が承認した「MacugenⓇ」(加齢黄斑変性症に対する治療薬)のみで、アプタマー医薬の市場は未開拓の領域といえます。 ②医薬品市場におけるアプタマー医薬(i)アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場アプタマーを含む核酸医薬の市場は、現在開発中の核酸医薬の開発の進捗状況、製品上市の時期、当該品目の市場性等により大きく変動する可能性がありますが、大きく拡大することが予想されています。核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNAなどの種類があります。現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS※8及び製造と品質管理)が指摘されています。今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で細胞内へのDDS技術が不要であり、抗体と類似した作用メカニズムを持ち、応用範囲の広いアプタマー医薬だと、当社は考えております。 米国 BCC Research社は、全世界のアプタマー医薬の市場が、2012年の13百万ドルから、2017年には17億ドルに拡大すると予想しています。この急激な成長を支える製品は米国ベンチャーのOphthotechが開発し、現在、PⅢ試験(フェーズⅢ試験)段階にある加齢黄斑変性症薬の「FovistaⓇ」です。本品は世界的な製薬企業であるノバルティス社に、臨床第Ⅲ相試験に入る前に、米国以外の全世界を対象として2億ドルの契約一時金(総額は10億ドルを超える)でライセンスされており、承認が得られれば数年内に大型の製品となることが予想されています。 (ⅱ)アプタマー医薬の現状と課題2004年12月に世界初のアプタマー医薬で、眼科領域の疾患である加齢黄斑変性症(AMD)を適応症とする「MacugenⓇ」が米国FDAに承認され、逐次世界各国で承認を得て、世界的な製薬企業であるファイザー社から(日本では2008年10月)発売されています。なお、現在、全世界で「MacugenⓇ」以外のアプタマー医薬は市販されておらず、現在の「MacugenⓇ」の売上は、類似薬効品の抗体医薬「LucentisⓇ」との競争に敗れ、最盛期の1/20以下で、全世界で10数億円程度と思われます。また、アプタマー医薬については、PⅡ(フェーズⅡ試験)~PⅢ(フェーズⅢ試験)の後期臨床ステージにある開発中の品目数も抗体に比較すると些少です。この背景には、アプタマーの創製に不可欠な技術であるSELEX法に関する基本特許が日欧で2011年6月、米国では2014年9月まで存続し、製薬会社がアプタマー創薬に向けた研究が自由にできなかったことが挙げられます。「MacugenⓇ」が類似薬効の抗体医薬との競争に敗れた事例は、アプタマー医薬の開発(アプタマー創薬)に次のような貴重な教訓を与えました。 アプタマーに限らず、分子標的医薬の開発においては、創薬ターゲットとする疾患関連タンパク質の選択が重要です。「MacugenⓇ」の開発において、AMDは血管内皮増殖因子(VEGF)が関与しているとの知見から、VEGFの様々なサブタイプ(基本的な役割は似ているがタンパク質を構成するアミノ酸の長さや配列に違いがある)の中から、AMDの主因と考えたVEGF-165のみを阻害するアプタマー(Pegaptanib)を有効成分として選択しました。世界初のアプタマー医薬として、安全性を考慮したこの選択自体は決して誤ったものではなかったと当社では考えております。これに対し、後続の抗体医薬「LucentisⓇ」は、VEGF-165だけでなく他のサブタイプも阻害することによって、効果(進行の停止のみならず視力も回復する)の点で、「MacugenⓇ」を上回り、AMDに対する第一選択薬としての地位を確保しました。標的に対するシャープな特異性がアプタマーの真骨頂ですが、この場合は、アプタマーのシャープさが裏目に出てしまったといえます。創薬ターゲットの選択においては、このような事例に十分注意することが必要です。 さらに、一般的にアプタマー創薬において留意すべき点として、アプタマーの最適化※9(改変・改良等)の問題があります。核酸を成分とするアプタマーは体内に投与されると生体内の核酸分解酵素により速やかに分解されます。そのため、薬効を得るために体内での作用時間を延ばす必要があり、様々な改良を加えて酵素耐性の向上を図り、また、体外への排出の抑制を図ります。このアプタマーを医薬品として最適な化合物に仕上げる技術を欠くと、開発の中断や終了を余儀なくされます。 抗体医薬との差別化をどう図るかという問題もアプタマー創薬においては重要です。後述するように、アプタマーは抗体と比べて優れた点が多々あり、新薬のシーズとして大きな可能性を秘めています。しかし、抗体にはその作用が長時間持続するという、長所とも短所ともなりうる特徴があります。反面、アプタマーは、最適化を図っても抗体のように1~2ケ月間も作用させることは困難で、基本的には急性期、あるいは短期間を挟む間欠投与の適した疾患や症状が、その本領を最も発揮できる対象だといえます。このため、同一のタンパク質を標的とする抗体と競合する場合、アプタマーは抗体が適していない疾患や投与方法をデザインすることが肝要です。 (ⅲ)アプタマー医薬と抗体医薬の比較アプタマー医薬は分子標的薬※10として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。 抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。 以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。 (当社作成)項目アプタマー医薬抗体医薬標的タンパク質に対する結合力抗体の1,000倍は可能強い創薬ターゲットの種類極めて多様抗原タンパクに限定製造化学合成法細胞培養法コスト(製造コスト低減の容易さ)比較的高価(製造コスト低減の可能性あり)比較的高価(製造コストの低減は難しい)抗原性/免疫排除 起きにくい起きる製剤の可逆性・安定性強い弱い体内動態(長時間作用) 苦手、限界あり良い、得意短期作用性得意困難加工・化学修飾容易困難 [標的タンパク質に対する結合力]薬効を及ぼす生体内の標的(疾患関連タンパク質など)に対してどの程度強く結合するかを示す指標としては、解離定数(Kd:dissociation constant)という専門的な用語が用いられます。この解離定数は数値が低いほど、結合力が強いことを意味します。平均的な抗体の結合力は、Kd値がnM(ナノモラー、10-9モラー)レベルで、それ以上強い抗体を作ることは容易ではありません。一方、平均的なアプタマーのKd値はnM以下で、pM(ピコモラー、10-12モラー)のアプタマー、つまり抗体の1,000倍強い結合力を持つアプタマーの作製が可能です。また、強い結合力は、標的タンパク質を速やかに捕捉し、結合したら離れにくいという性質となるため、アプタマーは高い阻害効果を持つと期待されます。 [創薬ターゲットの種類]抗体は、創薬ターゲット(抗原タンパク質)を動物に投与して作製します。そのため、精製が難しいタンパク質や、ヒトと動物とで違いが少ないタンパク質など、抗原の種類によっては取得が困難、あるいは、不可能なものもあります。一方、アプタマーは、動物は使わずに、試験管の中の操作のみで作製するので、細胞表面に提示された状態の創薬タンパク質を標的として利用したり、ヒトと動物とで違いが少ないタンパク質に対しても創製することが可能であり、創薬ターゲットの種類が非常に多様です。さらに、創薬ターゲットに結合してその作用を阻害するアプタマーだけでなく、将来的には、抗体では難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬品を運搬するためのDDSとして利用可能なアプタマー等を創製することが可能です。 [製造]抗体は製造規模の大小を問わず、現在の科学技術では化学合成による製造はできません。商品化された場合には、通常、大規模な細胞培養設備によって製造します。また、開発段階で数度にわたるスケールアップを要し、それに対応する設備のために多額の資金が必要となります。加えて、製造条件の変更に伴う品質の確認作業(比較試験)も複雑になります。一方でアプタマーは、商品化後も、比較的小規模な製造設備での化学合成による製造が可能で、しかも、同一の設備を他の核酸医薬品の合成のために使用できます。そのため、アプタマーでは設備投資も製造管理(スケールアップを含む)も容易であるといえます。 [コスト(製造コスト低減の容易さ)]抗体医薬は細胞培養による生物製剤のため、製造方法が一旦確立すると、細胞培養等の工程を含むために、製造方法の変更や製造コストの低減は容易ではありません。これに対して、アプタマーでは、今後、製造施設や原材料を共用できるアンチセンス、siRNAやmicroRNAなど他の核酸医薬の発展に伴い、核酸医薬全体での製造スケールの拡大が見込まれることから、そうしたスケールメリット、加えて合成機械や合成方法の技術革新による製造コストの低減が期待されます。 [抗原性/免疫排除]抗体は生物由来のものを成分とする生物製剤のため、ヒトに投与した場合、抗原性を示すことがあり、継続使用において免疫的な排除を受けるリスクがあります。つまり、抗体を排除するための中和抗体が生体内で作られた結果、効果が減弱するということになります。しかし、アプタマーは合成医薬品のため、ヒトで抗原性を示すことはほとんどなく、また、生物製剤でないため、中和抗体ができるというリスクが低くなっています。 [製剤の可逆性・安定性]抗体の組成はタンパク質であるため、熱等の要因によって、不可逆的な(元に戻らない)変性を受けやすく品質確保には特別な注意が必要です。これに対し、アプタマーの組成はRNAであり、分解酵素のない環境下では安定しています。また熱等によって立体構造が変化しても、その変性は可逆的(元に戻る)で、100℃以下では速やかに元の形に復帰し、活性を回復します。そのため、アプタマー医薬は製剤化や流通、保管が抗体医薬に比べて容易です。 [体内動態(長時間作用)]抗体は、特別な加工を施さなくても、血中で分解されにくく、分子量が大きいため腎臓からの排泄も受けにくい性質があるため、血中に長く滞留することができます。一方アプタマーでは、未加工の状態では、血中で核酸分解酵素による消化を受けやすく、中サイズの分子量で水との親和性も高いため、腎臓からの排泄を受けやすい性質があります。そのため、アプタマーは、化学的な修飾を施して酵素による消化を防ぎ、ポリエチレングリコール(PEG)のような高分子化合物を結合するなどの加工が必要ですが、逆にこうした加工方法を工夫することで、血中滞留時間を調節できるという利点があります。 [短期作用性]医薬の中には、長時間体内に滞留することが副作用の原因となる場合がありますが、アプタマーでは、体内での滞留時間が比較的短いという特徴を生かして、短期に作用する医薬の開発が可能であり、さらに加工の方法により、目的と効果に応じた体内動態の医薬を開発することも可能です。特に、抗体は一旦ヒトに投与すれば、途中でその薬効を止める手だてがありませんが、アプタマーの場合は、その相補配列を持つ一本鎖核酸をアプタマーに対する中和剤として投与して、薬効を速やかに消失させることが可能です。 [加工・化学修飾]抗体は生物製剤であるため、品質や薬効を向上させるための化学的な加工・修飾が容易ではありません。しかし、アプタマーは化学合成によって製造するため、低分子医薬品と同じように様々な化学的な加工・修飾が可能で、品質や薬効の向上のみならず、作用時間の延長や副作用等の回避の手段を講じることができます。近年、複数の抗原タンパク質に作用するbi-specificな抗体や、抗体に低分子の薬剤を結合されたantibody drug conjugate 開発のための技術開発が行われていますが、同様なことはアプタマーでも可能で、化学合成品という特徴を生かして、抗体に比較して比較的容易にbi-specificなアプタマー医薬やdrug conjugateアプタマー医薬を創製することができます。 (2)創薬プラットフォーム① 創薬の戦略とアプタマー 製薬企業が新薬の素材として何を選択するか、という観点からみると、現在の医薬は、大きく以下の4本の柱から成ると当社では認識しております。この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする医薬であると考えております。 上記の4本の柱の内、低分子を対象とした日本の創薬力は欧米と同等のレベルまで達していますが、抗体やワクチンについては大きく遅れています。第4の柱である核酸医薬も、日本で初めて創製され、日本発の核酸医薬としてヒトでの臨床試験※11のステージに入っているものには、NF-κβデコイオリゴ、NS-065/NCNP-01(エクソンスキッピング・アンチセンス)、DS-5141b(エクソンスキッピング・アンチセンス)、ND-L02-s0201(siRNA)があります。しかし、既にPⅡやPⅢに入っている多くの開発品を有する欧米と比べて、遅れていることは確かです。その中で、唯一、アプタマー医薬については、若干の遅れはあっても、大きな差はまだついていません。アプタマー医薬は、前述のように核酸医薬の中核となる可能性を秘めております。 ② 新薬開発プロセス新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。 1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニ ング※12する基礎・探索研究の段階 2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う前臨床試験※13の段階 当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)前臨床試験の段階において、「RiboARTシステム」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboARTシステム」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び前臨床試験の期間(1年前後のGLP試験※14の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験※15ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。 ※:前臨床試験(3~5年)にはGLP試験の期間1年前後が含まれています。 ③「RiboARTシステム」を用いたアプタマー創薬当社の「RiboARTシステム」は、シーズ・アプタマー(疾患に関連するタンパク質に結合する候補アプタマー)の取得から最終的な臨床開発品の創出までのプロセスをカバーする、当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。東京大学医科学研究所における研究成果や技術をベースに、当社の研究成果や創意工夫、ノウハウ※16等を含んでいます。「RiboARTシステム」においてコアとなる技術は、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強し、pM(ピコモラー、10-12モラー)未満のKd値の達成を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。 「RiboARTシステム」の詳細は以下のとおりです。(ⅰ) アプタマーの取得技術(SELEX法運用技術)アプタマー創薬のコアとなる技術の一つは、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するアプタマーを取得するSELEX法に関する技術です。この方法は日欧では平成23年6月まで、米国では平成26年9月まで特許で守られ、権利者(アルケミックス社)からライセンスを取得しない限り、SELEX法を実施して自由にアプタマーを取得することはできませんでした。当社は、この特許が国内で有効であった平成18年10月より、権利者から実施ライセンスを受け、様々なSELEX法を駆使してアプタマーを取得する経験を積んでまいりました。日米欧での上記特許失効後は、誰でもアプタマーの取得にSELEX法を実施することが可能となりました。しかし、目標とするタンパク質に結合し、意図した薬効を示すポテンシーのあるアプタマーを取得するには、標的タンパク質の特性分析、最適な核酸プールの構築に始まり、様々な条件下でのSELEX法の実施経験やノウハウが必要となります。当社の「RiboARTシステム」はこれらを集大成した創薬技術です。 SELEX法とはRNAの造形力を利用して、目的とするアプタマーを探し出すための技術で、様々なタンパク質を標的に使用できる汎用性が特徴です。具体的には、様々なタイプのRNA分子を標的のタンパク質と何度も結合→解離→増幅→再結合を繰り返すことで、より強く結合するRNA分子のみを“進化”させる技術です。この方法は、以下に示す魚釣りに似ています。 1)4種類の塩基(A・U・G・C)がランダムに配列されたRNA(様々なタイプの魚)の入ったプール(釣り堀)に標的となるタンパク質を「餌」にして、結合する(食いつく)特定のRNA(数百種の魚)を釣り上げます。2)釣ったRNA(魚)からタンパク質(餌)を外し、増幅して(養殖して数を増やす)、再度プールの中に放し、同じタンパク質(餌)で釣りを繰り返します。早く食いついた数十から数百種のRNA(魚)を増幅(養殖)し、再度、釣りを行います。3)このサイクルを10数回行うことによって、標的タンパク質に強く特異的に結合するアプタマー(最も早く餌に食いつく魚)を数種類選択することができます(右図参照)。 SELEX法を利用したアプタマーの創製(取得)には、最初にプールに放つ魚群の選定(核酸ライブラリーの構築)や釣り方(試験方法等)について、長年の経験・実績によるところが多く、当社はSELEX法に関して、世界でも有数の高度かつ広汎な技術を有しております。 (ⅱ)アプタマーの最適化技術アプタマーの最適化技術は、in vitro※17 や in vivo※17試験でのスクリーニングから、より効果が高い(標的タンパク質に強く結合し、そのタンパク質の生理作用を高度に阻害する)アプタマーを創製し、アプタマーの改良技術を駆使して、臨床開発品として完成させるものです。 これには、アプタマーに特化したスクリーニング手法だけでなく、取得したアプタマーの特質と用途に応じた個別の最適化(短鎖化、化学修飾、doped SELEX(部分的に配列をランダム化して行うSELEX)等)技術が必要で、当社の最大の強みは、この分野での豊富な知識と経験並びに技能が蓄積していることであります。 また、的確な最適化には、標的タンパク質の特性(分子量、立体構造、電気化学的性質、類縁タンパク質(サブタイプ)の有無等)に応じた最適化のデザイン力が必須です。当社では、このデザイン力に関しても研究実績を蓄積してまいりました。これに加えて、アプタマーと標的タンパク質の複合体での立体構造を基にしてより強力なアプタマーのデザインも行うなど、アプタマーの最適化技術に関し常に技術力の向上を図っております。 a) アプタマーの短鎖化アプタマーの短鎖化技術は目標とするタンパク質に結合するものとして選定、取得したアプタマーを、工業的、経済的に利用可能な限度にまで短くし、目的に応じた化合物に改変する技術・ノウハウです。 SELEX法で最初に取れる、塩基が長く連なるアプタマー(約80鎖長)を、タンパク質との結合力を維持しながら1/2程度にまで短くし(短鎖化)、次の化学修飾プロセスにまわします。 b) アプタマーの化学修飾アプタマーの修飾技術は、短鎖化したアプタマーを化学的に修飾することにより、アプタマーの持つ生理活性を増強するとともに、薬物体内動態(作用時間)を改善し、医薬品に適したアプタマーに改良する技術・ノウハウです。具体的には、体内の酵素によるアプタマーの分解を阻止するために、一つ一つの塩基に化学修飾を施したり、腎臓からの早期の排出を抑えるために、アプタマーの末端へ化合物(PEGなど)を結合させたりします。化学修飾を駆使し最適化 このような、短鎖化や化学修飾等による最適化作業を、in vitro や in vivo 試験で効果を確認しつつ繰り返し、より優れた臨床開発品へとアプタマーを磨き上げていきます。 (ⅲ) アプタマーの製造法、品質規格の設定、品質管理等のノウハウ 核酸医薬、特にアプタマー医薬は、これまで「MacugenⓇ」が承認、販売されていますが、アプタマー医薬自体の歴史が比較的浅く、薬事規制面でも、原薬アプタマーや完成品の品質規格に関する規制内容は標準化されていません。 特にCMCの分野では、個々のアプタマーごとに薬事承認や臨床試験の開始までに必要な試験やその方法、分析方法等を企画し、場合によっては薬事当局との協議が必要になります。当社は、そのために必要な、以下の分野の知識、経験も有しております。・アプタマーを医薬品化するために不可欠な製造方法、品質規格の設定、品質管理・核酸やアプタマーのような高分子化合物の分析、核酸の塩基配列の解析法 (ⅳ) アプタマーの安全性・毒性の評価・検討に関するノウハウアプタマーを動物に投与した時の毒性は、核酸が本来持っている毒性とターゲットタンパク質を阻害したことによる毒性に分けられます。核酸が本来持っている毒性の代表例は、大量に投与した場合に、血液凝固の阻害が起こることです。当社はこのような核酸特有の毒性を考慮しながらアプタマー作りを行っており、以下の経験を有しております。・アプタマーの血中や臓器中での濃度測定・ラットを用いた毒性試験・サルを用いた毒性試験 ④ その他の創薬体制当社はさらに、アプタマー医薬の開発のために、以下の体制を整えております。(ⅰ) アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチ※18を継続的に実施してきました。東京大学との共同研究は現在も継続し、同医科学研究所・クレストホール内にも自社の研究室を設置して、同研究所内の動物試験施設や、その他の高度試験装置を使用できる恵まれた環境を維持してきました。これにより技術、信頼性の観点から、高レベルの研究体制を整備しております。当社は、東京大学以外のアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると当時に、各種動物試験の実施、アプタマーの分析等における連携を図っております。 (ⅱ) 的確な研究開発マネジメント 当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。 (ⅲ) 人的ネットワーク アプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との、世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握に努めております。また、今後、自社での臨床試験を進めるにあたり、国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。 (ⅳ) アプタマー創製のスペシャリスト 当社では、役職員の3/4が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣をしいております。 さらに、大手製薬企業で研究開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。 (3)創薬事業①当社のビジネスモデルについて(ⅰ)当社の創薬事業は、以下の2事業より構成されています。 ・自社創薬 ・他の製薬企業との共同研究 自社創薬とは、一定の開発段階まで自社独自で医薬候補となるアプタマーを開発し、その後、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティーを得る事業です。これに対し、共同研究とは、アプタマー医薬の研究を提携製薬企業と共同で行い、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに共同研究では、アドバイザリー契約を除いて、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。 (ⅱ)二つの事業のバランス化自社創薬によるライセンス・アウトに依存しすぎると、ライセンスの成否やその成約の遅れ等により事業計画が大きく影響を受けます。他方、共同研究は安定的な共同研究収入を一定期間期待できます。従って、自社創薬に共同研究の特徴をうまく組み合わせることで、以下の成果あるいは効果が期待できます。 1) 自社創薬のビジネスモデルに伴う収益の不安定化というリスクを低減できる2) 共同研究先の新薬開発のノウハウ、経験を知得できる3) 共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い4) 事業を全体として拡大できる ②事業活動に伴う収益計上の時期 当社のビジネスモデルからは、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計のタイミングを示しています。 注:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している収益計上のタイミングを表すものです。個別の契約によりそれぞれの金額や受取回数等が異なる場合があります。 しかし、自社創薬に関しては、以下のような場合、正式なライセンス契約の締結前でも、何らかの収益を得る機会があります。当社としては、相手方の意向にもよりますが、可能な限り、その機会を追求してまいります。 ・相手方に独占的な評価・交渉権を与える場合 ・相手方との間で提携に関する基本条件が合意され、基本合意書などを締結する場合 ・相手方の評価用に該当品目のサンプルを提供する場合 ③自社創薬及び共同研究の特長と、事業展開における基本方針(ⅰ)自社創薬について新薬の開発において、基礎・探索研究、前臨床試験、臨床試験へと開発のステージが進捗するに従い、その経費は大幅に増加します。また、臨床試験ステージになると、自社で開発を推進する場合には臨床試験用の社内体制を備える必要が生じ、さらにPOC※19確認後の臨床試験では、適応症にもよりますが、被験者数が飛躍的に増え、費用が莫大になります。上市後のマーケティング戦略を視野に入れた対応も必要となります。従って、POC確認後の臨床開発は、資金、経験やノウハウを有する製薬企業にて実施することが、アプタマー医薬の成功確率を高め、かつ早期の上市につながると考えております。これらの事情に鑑みて、当社としては、自社での研究開発の将来目標はヒトでの薬効が確認された時点(POC確認時点)としております。但し、早期事業化の品目として選定したテーマである場合や、ライセンス先の製薬企業との間で合意が成立した場合は、それ以前であってもライセンス・アウトを実施いたします。なお、ライセンス・アウト後は、当該品目の開発や製造、販売などはライセンス先がその責任で行うことになります。しかし、当社のアプタマー医薬に関する知見が必要な場合、一定期間、共同研究を行うことがあります。 (ⅱ)共同研究について共同研究は、製薬企業(提携先)とともにアプタマー創薬を実現することを目指す共同研究契約と、アプタマー創薬を行っている製薬企業に対するアドバイザリー契約があります。具体的には、共同研究契約では、創薬のターゲットとなる疾患関連タンパク質は提携先の領域戦略などに従って選択され、当社はかかるタンパク質の生理作用を阻害・抑制し、提携先が求める基準を満たすアプタマーを創製いたします。提携先はそのアプタマーについて薬効等の確認・評価(スクリーニング)、安全性試験等を行い、早期に臨床試験の対象となる臨床開発品を特定し、以降は提携先のイニシアティブで臨床開発を推進します。アドバイザリー契約では、アプタマー創薬を行っている製薬企業に対し、アプタマー医薬開発に関する試験研究の受託、技術指導を行っております。共同研究では、製薬企業との間で作業分担を定めますが、当社が分担するアプタマーの創製に関する研究活動に対しては、適切な対価を得ることとしております。この役割分担に関しては、双方の有する技術や知識、経験をベースとして協議により決定しますが、当社の主な役割はアプタマーの創製やその改良となります。なお、当社では、共同研究の対価として受取る収入は共同研究収入として事業収益に計上し、試薬等の実費補填として受取る収入は受取研究開発費として営業外収益に計上しております。 また、共同研究では、大手製薬企業の技術を活用することで開発をより迅速に進めることが可能となり、さらに、アドバイザリー契約を除いて、一定の開発段階に至った場合、共同研究先へライセンス・アウトすることを前提としているため、ライセンス・アウト実現の可能性が高く、ライセンス先を探す必要もほとんどありません。 現在、当社が推進しているアプタマー創薬に関する主たる共同研究は以下のとおりであります。 パートナー名称共同研究概要大塚製薬株式会社平成28年1月14日付共同研究契約に基づく「RBM001」に関する共同研究大正製薬株式会社平成26年3月に締結した共同研究契約に基づく、同社が選定した創薬領域に関する共同研究 ④パイプラインについて創薬事業(自社創薬及び共同研究)のパイプラインのうち、基礎・探索研究段階を終え前臨床試験に進んでいるプロジェクトは下記のとおりです。なお、下記図中のオレンジ色で示した箇所は当事業年度における進捗を示しております。 〈各パイプラインの進捗>※:RBM002及びRBM003に関しては、共同研究期間満了後の扱いに関する詳細について大塚製薬株式会社との間で協議を進めております。(ⅰ)自社創薬パイプライン 自社創薬の疾患領域と当該疾患領域における主要なパイプラインの概要は以下のとおりです。 a)疼痛領域(RBM004、RBM006、RBM007) 市場には多くの鎮痛剤がありますが、最も強力な鎮痛効果のあるオピオイドと同程度の効果があり、長期間(1~2週間)その作用が持続し、かつ依存性や耽溺性がなく、中小病院や診療所でも安心して使用できる製品は無く、鎮痛剤の市場にも未だにUnmet Medical Needsの領域が残っています。 そのなかの一つに癌性疼痛があります。癌の激しい痛みにはオピオイドが用いられていますが、使い方が難しく、また、鎮痛作用の持続時間が短く、依存性や嘔吐等の副作用があり、保管や取扱にも、世界的に厳しい規制がなされています。癌性疼痛については、オピオイド系の医薬品があり、また次々と新製品が開発されています。しかし、1回の投与で1週間ないし2週間効果が持続し、オピオイドと同程度の鎮痛効果のある製品は抗NGF剤以外に見当たりません。 痛みの強さによる鎮痛剤の選択及び鎮痛剤の段階的な使用法を示した、癌性疼痛除痛ラダーがWHOより示されています。当社では、オピオイドに代替、又は併用によってQOL※20を高めるアプタマー医薬の開発を進めております。 さらに、この分野だけでなく、手術後や痛風、リウマチの急性期での疼痛など数日続く重度の痛みに対し、単回での投与でその痛みが寛解する医薬品にも大きな需要が見込まれます。 この鎮痛剤市場のUnmet Medical Needsを充たす新薬の創薬ターゲットとして、重点的に研究開発を進めてきたのがNGF(Nerve Growth Factor、「神経成長因子」)であります。NGFは世界で最初に発見された成長因子で、末梢における疼痛の原因物質として知られています。従って、生体内でのNGFの作用を抑えれば、様々な痛みに対する効果が期待されることから、ファイザー等の世界的な製薬企業が抗NGF抗体を疼痛治療薬として開発しています。 当社が研究開発中の抗NGFアプタマーは、抗NGF抗体と同様にNGFの生理作用を阻害し、抗体医薬には無い「1回の投与で2日~7日間(最大2週間)作用が持続する」という優れた特性を示しております。このアプタマーは、抗体と異なり、作用時間が長すぎないため、医師のコントロールで安全性を確保でき、さらに、病態モデル動物※21を用いた試験で、オピオイドを代表するモルヒネや抗NGF抗体と同程度の鎮痛効果を示しています。平成26年4月、本プロジェクトについて藤本製薬株式会社との間で全世界を対象とした独占的ライセンス契約を締結いたしました。POCを確認するまでは当社も積極的に開発をサポートして新薬の実現に貢献すると同時に、臨床開発に関する経験や知識の蓄積に役立てる予定です。 なお、後述の自社開発品の標的であるATX(Autotaxin)、FGF2(Fibroblast Growth Factor Ⅱ、「線維芽細胞増殖因子2」)も疼痛の起因に関与する可能性が学術文献で指摘されております。特にRBM007(抗FGF2アプタマー)について当社で行ったマウスを用いた癌性疼痛モデル動物試験において、モルヒネと同等の鎮痛効果を持つことを確認しております。これらのプロジェクトを合わせて、当社は疼痛分野における新規創薬ターゲットにおいて、可能性を秘めた複数の開発物質(アプタマー)を有しております。 b)肺線維症等の線維症領域(RBM005、RBM006、RBM007、RBM008 他)体の器官や臓器が線維化して本来の機能を発揮しなくなる疾患に線維症があります。線維症は、肺、眼、肝臓、腎臓、筋肉等に起きますが、現在、自社創薬品について、以下に示すような開発を行っています。 <標的タンパク質> <Project No.> <対象臓器> ① ATX RBM006 肺、他 ② FGF2 RBM007 肺、眼、他 ③ HMGB1 RBM005 肺、他 ④ Periostin RBM008 眼 その中で、当社が最優先に狙っているのは、難治性で癌に移行する可能性が高く、治療満足度の低い重篤な疾患である特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis, IPF)で、創薬ターゲットの中の重点品目はATXであります。ATXは悪性癌細胞から分泌され、自身の細胞運動性を促進する因子として発見されたタンパク質ですが、間質性肺炎・肺線維化を促進するメカニズムの研究等を精査した結果、ATX阻害のアプタマーが臓器線維症、特に肺線維症に対する有力な治療剤となる可能性を見出しました。臨床開発への移行候補品として創製した抗ATXアプタマー(本アプタマー)について、肺線維症のモデル動物での試験で、その予防効果だけでなく治療効果も確認し、臨床試験の直前のステージ(GLP試験)を実施するために必要なデータや資料を蓄積しつつあり、あわせて、投与ルートの確認に関連する試験を実施中であります。さらに、これまでに創製したアプタマーの一つとATXタンパク質との複合体のX線結晶構造を2.0Åの解像度で明らかにし、アプタマーの阻害機序を解明するとともに、アプタマーがATXの働きを抑える立体的なメカニズムを世界で最初に解明(東京大学大学院理学系研究科・濡木理教授らとの共同研究成果)し、その研究成果が、平成28年4月のNature Structural & Molecular Biology 誌の電子版に発表されました。さらにこの知見を基にして立体構造的にATXの作用をより強力に抑えるアプタマーをデザインし、肺線維症のモデルマウス等でその治療効果や薬理作用を確認することに成功いたしました。また、本アプタマーに関し、線維症の一つで皮膚が硬化する強皮症においても開発を進め、モデル動物を用いた薬効試験で効果を確認し、特発性肺線維症と併せてGLP試験の実施への目途がたちました。 線維症は複数の因子が異なるステージで関与する複雑な疾患であると考えられることから、当社では上記のATX、FGF2、Periostinをはじめとして、多角的な視点から線維症プロジェクトに取り組んでおります。 今後、開発の進んでいるテーマについては、臨床試験に移行するための各種データの獲得に向けた研究を進め、同時に、製薬企業との共同研究あるいはライセンス・アウトのための予備的折衝を開始しております。 c)骨疾患領域(RBM007)骨疾患領域には、遺伝子変異を原因とする軟骨無形成症、リウマチの進展による関節破壊、癌の骨転移など、十分な治療効果が得られず、また予防できないUnmet Medical Needsが残っています。当社は、その中で骨そしょう症の根本的な治療から四肢短縮に伴う低身長を主な症状とする軟骨無形成症、更に癌の骨転移の治療とその症状(特に激しい痛み)の緩和などを目的として開発しているテーマが抗FGF2アプタマー(本アプタマー)です。 FGF2は、様々な臓器や器官の形成や再生、並びにそれらの正常な機能を維持する上で大切な役目を果たす「善玉タンパク質」だと長く考えられてきました。その一方で、FGF2が過剰に産生されたり、その作用が増強したりすると、生体にとって様々な不都合が生じる可能性が学術論文で示唆されていました。しかし、FGF2に関する研究は、その発見から40余年の歴史があるにも関わらず、抗体や低分子を含めてFGF2に対する優れた阻害剤が開発できませんでした。その理由は、FGF2はヒトでは22種類の類縁タンパク質からなるFGFファミリーの一員で、ヒトと動物で高度に保存されているため、抗体を含め特異的な阻害剤の創製は極めて困難だったからです。この結果、FGF2を阻害した場合の病気の発症や悪化に関する研究は進展せず、FGF2阻害剤の新薬候補品としての価値は見出されていませんでした。 当社は、アプタマーの持つ標的タンパク質に対する優れた特異性を活用して、医薬品として開発可能な本アプタマーの創製に成功し、二つの物質特許を出願しております。他社がこの特許を超えるFGF2の阻害剤を開発することは極めて困難であると考えております。 本アプタマーは、FGF2に対する強力かつ特異的な阻害剤としては、他に類を見ない世界初の製品であり、その開発過程で軟骨を含む骨疾患の根本的な治療薬となる可能性を見出しました。その一つが軟骨無形成症に対する効果であり、平成28年2月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の研究助成品目に採択され、平成28年3月期より3年間にわたり開発費の助成を受けることとなりました。現在、臨床試験に移行するための各種データの獲得に向けた研究を進め、同時に、大手製薬企業との間でライセンス・アウトのための予備的交渉を行っております。 d)加齢黄斑変性症等の眼科領域(RBM007、RBM008)加齢によって網膜の中心部にある黄斑に障害が起き、見ようとするところが見えにくくなる疾患で、進行すると失明することがあり、欧米では失明原因の第1位で、日本でも第4位の失明原因となっています。 加齢黄斑変性症(AMD)の市場では、前述のように「LucentisⓇ」が第一選択薬としての地位を確保しておりますが、「LucentisⓇ」が効かないAMDに対する治療薬や患者への負担が大きい硝子体(眼球)内注射の間隔を延ばすことが可能な治療薬の開発も求められています。2011年にはAMDの原因とされる血管内皮増殖因子(VEGF)に対して、「MacugenⓇ」や「LucentisⓇ」とは異なる機序の阻害剤である「EyleaⓇ」が上市され、またVEGFの他にAMDの原因となる血小板由来成長因子(PDGF)に対する阻害剤などが新たに開発されています。当社では、本アプタマーの血管新生作用及び瘢痕化の原因ともなる線維芽細胞の増殖阻害に着目し、既存薬とは異なる機序に基づく治療薬として開発中です。本アプタマーは、AMDモデル動物試験で「LucentisⓇ」と同等以上の成績を示し、「LucentisⓇ」との併用療法においても顕著な薬効促進効果を確認しております。AMD適応の本アプタマーは、軟骨無形成症や骨そしょう症等の骨関連疾患に向けたものとは投与経路や投与量などが大きく異なり、また初期の臨床開発の費用も高額とはならないことから、少なくとも臨床POC(少人数の患者での薬効確認)の取得までは、自社での臨床試験の実施を視野にいれて、そのための各種データの獲得に向けた研究開発を進めており、平成30年3月期中には臨床試験に向けた治験申請を米国食品医薬品局に提出する計画です。 また、抗Periostinアプタマー(RBM008)は、線維症などを対象として探索してきたもので、平成28年3月期に、動物疾患モデルで顕著な薬効を確認することができました。近年、糖尿病性網膜症の原因物質との報告がなされて注目を浴び始めていることから、当該疾患への応用に向けた研究を行っております。 e)敗血症(RBM005)敗血症は細菌、ウイルス、菌類による感染がもたらす最も重篤な疾患で、病原菌に対する体の炎症反応が制御不能になり、体の免疫システムそのものが組織や臓器に損傷を与え、多臓器不全、ショックにより高い確率で死をもたらします。敗血症患者の血液中でHMGB1が検出され、特に死亡例では、生存例、健常人に比較し高値を示すため、HMGB1は敗血症ショックを引き起こす主要な因子と考えられています。本プロジェクトは、このHMGB1の生理作用を阻害するアプタマーを創製し、敗血症の治療薬として開発するものであります。なお、抗HMGB1アプタマーに関しては、敗血症以外に、HMGB1の亢進が関与する可能性が指摘されている他の疾患(脳梗塞や線維症あるいは疼痛)に対しても、今後、薬効の検証を進める予定です。 f)自社創薬の進捗から浮上した重点3疾患領域これまで研究開発を進めてきた自社創薬プロジェクト(RBM004~RBM008)において、同一のアプタマーが複数の疾患に対して薬効を示すことが、文献や自社での動物モデル試験によって明らかになりました。その結果、浮上した疾患領域は、疼痛、眼疾患、及び線維症の3領域であります。いずれも、RNAアプタマーの特徴を生かして医薬品を開発する上で、具体性と将来性のある重点疾患領域として期待されております。 (ⅱ)共同研究パイプライン共同研究パイプラインの概要は以下のとおりです。(A)大塚製薬株式会社との提携平成28年1月14日付の共同研究契約に基づき、Midkineを創薬ターゲットとし、免疫・炎症性疾患などを対象とするプロジェクト(RBM001)が進行中です。現在、大塚製薬株式会社において最終調査・研究が行われており、それがクリアされればライセンス・アウトに移行する予定となっております。なお、複数のターゲットを対象とした共同研究契約に基づくプロジェクトであったRBM002及びRBM003は、平成27年12月末で契約期間が終了し、自社製品として研究開発を継続する予定ですが、今後の取り扱いに関し大塚製薬株式会社と協議中であります。 (B)大正製薬株式会社との提携 同社が選択したアプタマー創薬テーマについて、3年間の共同研究を平成26年3月より開始しております。 ⑤ ライセンス・アウト済みプロジェクト 当社の創薬事業のプロジェクトのうちライセンス・アウト済みのプロジェクトは、以下のとおりであります。区分プロジェクトターゲット導出先権利地域適応症自社創薬RBM004NGF(神経成長因子)藤本製薬株式会社全世界疼痛 当社は平成26年4月、NGFに対するRNAアプタマーを含有する医薬品の開発、製造、販売に関して、全世界での独占的実施権を許諾するライセンス契約を藤本製薬株式会社と締結しております。当社は、当該契約の締結に伴う契約一時金を受領しており、今後は開発の進捗等に応じたマイルストーン収入(第Ⅰ相臨床試験開始時、前期第Ⅱ相臨床試験開始時、後期第Ⅱ相臨床試験開始時、第Ⅲ相臨床試験開始時、製造販売承認申請時、製造販売承認取得時、純売上高が一定額超過時)、及び市販後の一定率のロイヤルティー並びに藤本製薬株式会社の得たサブライセンス収入の一定割合の受領を計画しております。 ⑥ その他当社は、創薬以外へのアプタマーの応用も行っております。その一つに、IgGアプタマーがあります。IgGはヒト血清中に最も多く存在(70~75%)する免疫グロブリンで、抗体医薬として実用化されています。当社は、アプタマー創薬に関する技術開発の過程において、IgGの特定の部分(定常部)に結合するアプタマーを取得し、このアプタマーの機能解析を進めた結果、抗体医薬の分離精製に利用できることを証明いたしました。本プロジェクトに関し、平成27年10月に中小企業庁からの東京都受託事業である平成26年度補正「ものづくり・商業・サービス革新補助金」の助成事業として採択されました。これを受けてIgGアプタマー樹脂及びカラムの試作品を作成し、製薬企業や大学等にモニター用としてサンプル提供を行っております。本アプタマーに関する事業の進展に伴い、新規の製品コード「RBM101」を付して、商品化に向けた活動を推進することといたしました。また、本アプタマーの工業的な使用に関し、欧米の製薬企業との間でライセンス等の提携についての交渉を行っております。 上記の他に、アプタマーを利用した次世代の基盤技術の開発も進めております。その一つとして、平成26年11月にiPSプロジェクト室を設置し、iPS細胞(人工多能性幹細胞)やそれから分化した細胞の純化等の実用化に向けた基盤技術の開発を開始しております。本研究は、当社の基盤技術である「RiboARTシステム」の新たな応用を目指すものであります。 (4)アライアンスの推進① ライセンス戦略 当社は、様々な疾患領域のアプタマー医薬を開発できるという基盤技術を最大限に生かすため、一般的な創薬系バイオベンチャーに比べて、比較的早期の研究開発段階(前臨床試験段階からPOCの確認前後段階)においてライセンス・アウトを行うことを基本としております。当社は東京大学医科学研究所の研究成果を事業化するために発足した大学発のベンチャー企業であったことや、研究実施のために公的資金の提供を受けたプロジェクトも複数例あることから、その成果については、できる限り国内企業へライセンス・アウトすることを意図し、アプローチしてまいりました。また、当社はこれまで共同研究やライセンス・アウトに連動して、複数の共同研究先及びライセンス先と資本提携も実施し、より強固で統合的な事業推進を図ってまいりました。今後は、アプタマー創薬に取り組む企業の拡大が見込まれ、それに伴う事業チャンスを活かすために、事業開発部を中心に営業活動の地域を海外にも積極的に広げ、共同研究やライセンス・アウトの機会の拡大を図ってまいります。 ② アライアンスの推進体制当社におけるアライアンス活動(共同研究やライセンス・アウトの実現)は、代表取締役主導の下で、関連部門が連携して行なっております。自社創薬品目のライセンス・アウト実現のためには、可能性の高い提携候補先の選定、候補先での導入決定を促す試験成績・データ(製品差別化のポイント、製品売上高の予測、競合品に対する優位性等)の創出、交渉の進展に応じたタイムリーな情報提供、さらには事業化や開発に関する的確な提案、粘り強い交渉などが必要です。また製薬企業側のニーズの把握と積極的なアプローチも必要です。これらの活動を行うためには、医薬品業界におけるライセンスや事業開発の経験、及び国の内外の製薬企業と広範なネットワークを有する人材が不可欠です。このため、当社では医薬品業界での新薬の開発経験と実績のある人材、及び事業開発やライセンス部門での豊富な経験を持つ人材を社内に擁し、また研究開発や知財に関する社外専門家も活用できる体制を構築しており、アライアンスの実現に向けた体制を整えております。 ③ 産学連携、トランスレーショナル・リサーチの推進当社のコアな技術である「RiboARTシステム」を構築する主要な知識、技術は、東京大学医科学研究所との提携によりもたらされたものであります。現在においても東京大学や東北大学薬学部、名古屋大学医学部、大阪大学医学部等との緊密な連携を図り、アカデミアでの研究成果を事業化するための開発に移行させ(トランスレーショナル・リサーチ)、その実用化を目指しております。特に東京大学医科学研究所とは平成17年6月より共同研究による提携を開始し、平成24年4月以降は社会連携講座(「RNA医科学」社会連携研究部門)の下での連携を図っております。 (5)知財戦略 創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品が特許により保護されていることが、他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。 当社の知財戦略は、開発する製品に関するものと、開発技術に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。 ① 自社創薬品目及び共同研究品目に対する知財戦略 物質特許の取得を必須としております。なお、RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)について権利範囲の抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。 このため、標的分子との結合力が強く、かつ、その生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物も特許でカバーし、さらに、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する配列を探索し、その共通配列を特許化することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。 また、共同研究品目については、提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を堅持いたします。 なお、特許の出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド、ブラジル等の医薬品市場の規模が大きく、又は将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを狙っております。 ②「RiboARTシステム」に対する知財戦略 「RiboARTシステム」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化)に関するものの中には、特許化して権利の独占を図れる可能性のある技術も含まれているものと当社は考えておりますが、特許化にはその技術を公開するという代償を伴います。アプタマーは、その質さえ問わなければ、既に特許期間が失効したSELEX法を含む公知の方法で取得可能です。そのため、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難で、特許出願に伴う技術の公開は、敵に塩を送るに等しいものです。 従って、当社では、原則として「RiboARTシステム」により創製されたアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboARTシステム」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは「営業秘密※16」として秘匿し、優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。 ③主要な特許の状況 自社創薬品目としてライセンス・アウトしたRBM004(抗NGFアプタマー)をはじめとする、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。 対象パイプライン発明の名称出願又は特許番号保有者登録状況RBM004NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2009/066457(特許第5602020号)当社・藤本製薬株式会社日本を含む15カ国にて成立済。 NGFに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/057105(特許第5027956号)当社・藤本製薬株式会社日本を含む24カ国にて成立済 NGFに対するアプタマー及びその用途PCT/JP2012/75252当社・藤本製薬株式会社-RBM007FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2011/052925(特許第5899550号)当社日本、米国にて成立済 FGF2に対するアプタマー及びその使用PCT/JP2015/058992当社-RBM006オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/059732当社- オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用PCT/JP2015/062561当社- 対象パイプライン発明の名称出願又は特許番号保有者登録状況RBM001ミッドカインに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2007/072099(特許第5190573号)当社・大塚製薬株式会社日本を含む50カ国にて成立済ミッドカインに対するアプタマー及びその用途PCT/JP2013/81451当社・大塚製薬株式会社-RBM003キマーゼに対するアプタマー及びその使用PCT/JP2010/059953(特許第5810356号)当社・大塚製薬株式会社日本、米国にて成立済 対象パイプライン発明の名称出願又は特許番号保有者登録状況RBM101免疫グロブリンGに結合する核酸とその利用法PCT/JP2006/313811(特許第4910195号)当社日本、米国にて成立済 ※1 : RNA 遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミンの代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。 そのため、分子生物学の黎明期から、RNAは単なる遺伝情報のコピーに過ぎないという思い込みが、世界的にも支配的でした。しかし、10数年前から、この考えは誤りであることが様々な研究によって明らかになってきました。特に立体構造を作って働く機能性RNAの生体内での役割が注目を集めています。 ※2 : RNAの造形力当社は、アプタマーとIgGとの結合体の結晶構造をX線解析法によって明らかにしてNucleic Acids Res誌に発表いたしました(2010年、図参照)。 その結果、既存のアプタマーではRNAのリン酸の負電荷と、標的タンパク質の正電荷のアミノ酸領域とが電気的な相互作用によって結合するものしか知られていませんでしたが(図の右の事例)、IgGアプタマーはこ れまでの常識を覆して、アプタマーが標的にフィットするしなやかな形状を作って、電気的な相互作用を使わずに、水素結合やファンデルワールス力のような多様な結合を利用して強く標的に結合することが明らかにされました。つまり、RNAには、これまで予想もされなかった「しなやかな造形力」が備わっていることの証しです。このような基礎的な研究は、応用という点からも重要です。特に、医薬品の標的となるタンパク質は、必ずしもRNAと結合しやすい正電荷のアミノ酸が表面に多いとは限らないため、これらの基礎研究の成果は、非常に多くのタンパク質がRNAアプタマーの創薬ターゲットとなりうるということを示唆するものです。 ※3 : 化学修飾 品質や薬効向上のために、化合物の一部の分子や原子を他の分子や原子に置換したり、新たな分子や原子を結合させることをいいます。 ※4 : ライセンス・アウト 特許や開発中の製品に関する権利を他の会社に供与したり、譲渡したりすることを意味し、「導出」ともいいます。供与する権利の内容としては特許の実施権や使用権、さらにかかる特許によって保護されている製品の開発、及び製造・販売する権利などがあります。 ※5 : マイルストーン収入 医薬品の開発は、前臨床試験→臨床第I相試験(フェーズI)→臨床第Ⅱ相試験a(フェーズⅡa)→臨床第Ⅱ相試験b(フェーズⅡb)→臨床第Ⅲ相試験(フェーズⅢ)→申請→承認→発売というステップを踏んで進行します。開発途上の医薬品のライセンスにおいては、この開発の節目を「マイルストーン」といい、それに到達したとき、あるいはその段階に入るときにライセンスの対価の一部がライセンサーに対し支払われる取引が普及しています。これによる収入を、「マイルストーン収入」といい、開発ステージが進むにつれて、商品化への確率が高まるため、マイルストーンの収入が増加するのが一般的です。 ※6 : 抗体、抗体医薬 抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合してその物質を体内から排除するように働くタンパク質をいいます。この排除システムを抗原抗体反応といい、我々の体内に自然に備わっている防御システムです。 抗体医薬とはこの仕組を医薬品として応用するもので、具体的には、疾患の原因となっているサイトカインなどのタンパク質を抗原として認識する抗体を産生する細胞(主に動物の)を造り出し、その後、この細胞を培養して該当する抗体を取り出し、精製加工します。但し、ヒト以外の動物、例えばマウスの細胞が産生する抗体(マウス抗体)をそのままヒトに使用できない場合があるため、動物からとれた抗体をヒト型に組み替える技術が発達しています。現在、臨床開発されている抗体医薬の多くは、このヒト化抗体、若しくはヒト抗体です。さらに、複数の抗原を狙ったものや持続時間の長期化のためにPEGと結合させたコンジュゲート抗体なども開発の俎上にのっています。なお、抗体類似の構造を持ち作用・機能面においても抗体と類似するFc融合タンパク質は、広い意味で抗体医薬の一種に含むこともあります。 この抗体医薬は 難治疾患に対する確かな効果と安全性、高薬価、さらに技術開発があいまって市場が急伸しており、近年、世界的な開発競争が激化しています。 ※7 : 核酸医薬 1970年代以降、ヒトの遺伝子の研究が進展し、核酸が医薬品になるかもしれないという期待は1980年代に生まれました。しかし、当時は核酸、特にRNAを医薬に応用するための基礎的な技術が整備されておらず、しかもRNAという核酸の特性や立体構造等の学術的な理解も浅かったために、長期にわたる膨大な資金や人材の投入とは裏腹に核酸医薬の開発は実を結びませんでした。 しかし、その苦い教訓の中でも、RNAの加工技術の開発という地味な仕事がアカデミアや少数のベンチャー企業で継続されました。その結果、1998年に世界初となるアンチセンス医薬(VitraveneⓇ[一般名Fomivirsen],エイズ患者のサイトメガロウイルス性網膜炎用の局所投与剤)が承認され、その後、2004年にアプタマー医薬であるMacugenⓇ、2013年に2番目となるアンチセンス医薬(KynamroⓇ[一般名Mipomersen])が家族性高脂血症薬として承認されました。 現在、研究開発中の核酸医薬には下記の表に示すものがあり、その中で主要な核酸医薬品の作用機序について下記の図に示しています。分類基本構造標的作用機序アプタマー一本鎖RNA/DNAタンパク質タンパク質に結合して生理作用を阻害アンチセンス一本鎖DNAmRNAmRNAに結合して翻訳を阻害デコイ核酸二本鎖DNA転写因子転写因子をトラップして転写を阻害リボザイム一本鎖RNAmRNA酵素として働きmRNAを切断し、発現抑制siRNA二本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化による発現抑制miRNA一本鎖RNAmRNAmRNAに結合しmRNAの不安定化や翻訳阻害による発現抑制antimiRNA一本鎖RNA/DNAmiRNAmiRNAに結合してその活性を阻害エキソンスキッピング一本鎖RNA/DNAmRNA前駆体遺伝子異常部位をスキップするようにスプライシングを調整CpGオリゴ一本鎖DNATLR自然免疫の活性化 ※8 : DDS(Drug Delivery System) 薬剤の副作用の原因のひとつに、薬剤が標的臓器以外に作用することがあげられます。この問題を解決する為に、薬剤が標的臓器に、適切な濃度で到達、作用できるように、剤形を工夫したシステムを、Drug Delivery System(DDS)といいます。※9 : 最適化 医薬品の開発過程において、in vitro 試験等によって薬効のある化合物が得られたとしても、より効果が優れ、安全性の高い化合物を得るための様々な工夫がなされます。このプロセスは最適化と呼ばれます。アプタマー医薬に関しては、長大な核酸配列の中から効果や安全性に関係のない部分をカットする短鎖化、核酸分解酵素の作用を阻止する為の化学修飾、腎臓からの早期の排出を抑えるための化合物(ポリエチレングルコールなど)との結合などがその例です。 ※10 : 分子標的薬 生体内で疾患に関連する遺伝子やそれが係わるタンパク質等(サイトカイン、成長因子等)を標的としてその活動を阻害したり活性化することを狙った医薬品をいいます。抗体医薬もアプタマー医薬も分子標的薬の一種といえます。 ※11 : 臨床試験 新薬についての製造販売承認を取得するには、ヒトでの有効性及び安全性を確認する臨床試験が不可欠です。この場合、通常、以下の3段階があります。第一段階は、少数の健常人を対象として、動物実験等により安全性の確認を終えた化合物について、その安全性や体内での動態等を確認する試験であり、第Ⅰ相試験(フェーズⅠ試験)と呼ばれています。 第一段階をクリアすると、次の段階は少数の患者(被験者)を対象として、薬効と安全性を確認する第Ⅱ相試験(フェーズⅡ試験)に入ります。この試験のステージは、通常、2ステップがとられ、最初のステップは、少数の被験者について主に薬効を確認する段階です。この試験はフェーズⅡa試験と呼ばれます。さらに被験者数を増やし、有効性と安全性のバランスを取るために最適な用量を確認するための複数の用量を設定して行うフェーズⅡb試験があります。最後の段階は、多くの被験者を対象として行う第Ⅲ相試験(フェーズⅢ試験)です。 なお、臨床試験は、承認取得の前だけでなく、承認の取得後も当局から承認の条件として実施が求められる場合があります。この時の試験は市販後臨床試験と呼ばれています。 ※12 : スクリーニング 新薬の開発過程において、多数の化合物の中から目的とする化合物(薬効を示し安全性が高いもの)を選び出す作業のことです。 ※13 : 前臨床試験 臨床試験開始前に行われる試験を前臨床試験と言い、例えば予備毒性試験やGLP試験が含まれます。 ※14 : GLP試験 GLP(Good Laboratory Practice)とは、医薬品の安全性に関する非臨床試験(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、その他の毒性試験)の実施に関する試験の質を担保する基準のことをいいます。この基準は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」で定められています。なお、日本のGLPと同様な規制は欧米等でも実施されています。このGLPに準拠して行う試験をGLP試験といいます。 ※15 : 予備毒性試験 GLP試験に入る前に、的確なGLP試験を実施するためのデータ入手を目的として行う試験です。本試験で薬剤の毒性の概略を把握し、GLP試験での投与用量の設定根拠の情報を得ることができます。 ※16 : ノウハウ、営業秘密 ノウハウ(Know-How)とは「単独で又は結合して、工業目的に役立つある種の技術を完成し、又はそれを実際に応用するために必要な秘密の技術的知識と経験、又はそれらの集積」(国際商業会議所の定義)をいい、営業秘密とは①秘密に管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないこと、の3要件を満たす技術上、営業上の情報(不正競争防止法第2条第6項の定義に基づく)のことです。 ※17 : in vitro 、in vivo In vitro (イン・ビトロ)とは、技術用語で「試験管内で」という意味です。In vitro 試験は、試験管内で、ヒトや動物のタンパク質、細胞や組織を用いて、薬物の効果や作用等を調べる試験をいいます。当社では、得られたアプタマーのタンパク質との相互作用の確認試験や細胞・組織を用いた薬効確認試験がこれに該当します。 In vivo (イン・ビボ)とは、「生体内で」という意味です。In vivo 試験とは、マウスやラット等の実験動物を用いて、生体内での薬物の作用や効果、安全性・毒性等を調べる試験をいいます。当社では、得られたアプタマーの薬効確認試験や安全性・毒性の評価試験がこれに該当します。 ※18 : トランスレーショナル・リサーチ 大学や研究機関による基礎的な医学・薬学研究の成果を疾患の治療や新薬の開発に応用するための研究をいいます。 生命科学やバイオテクノロジーの飛躍的な発展に伴い、世界的に大学での研究成果を早期に実用化に向ける動きが加速しています。薬の場合、例えば新薬の候補となる物質が大学の研究室で発見されたとしても、それをヒトでの臨床試験に繋げるには化合物の最適化(より効果があり、安全性の