事業の内容
メドレックスは、独自の経皮吸収型製剤技術(ILTS®、NCTS®など)を基盤に、新しい医薬品を開発する創薬企業です。皮膚から薬を吸収させる技術で、薬の効果を最大化し、副作用を減らし、飲み忘れを防ぐなどの付加価値を持つ医薬品を目指しています。収益は、開発中の医薬品候補を製薬会社にライセンス供与する際の契約一時金や開発進捗に応じたマイルストン報酬、そして上市後の製品売上やロイヤルティが中心です。特に、帯状疱疹後の神経疼痛治療薬「Bondlido」は米国で販売承認を取得し、2026年下半期の上市を目指しています。
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FY2025|9,651 文字|出典 docID: S100XS7V
3 【事業の内容】当社グループは、当社独自の経皮吸収*型製剤技術を基に新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL*の向上に資することを企業理念としています。イオン液体の特徴を利用した独自の経皮吸収型製剤技術ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)、薬物のナノコロイド*化技術を利用した独自の経皮吸収型製剤技術NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術により、薬効の極大化、副作用の低減、飲み忘れ防止や経口投与が困難な患者への投与を可能にして、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しております。 当社グループは、当社、連結子会社MEDRX USA INC.及びMEDRX AUSTRALIA PTY LTDの3社で構成されています。 当社グループの現在のビジネスモデルは、当社製剤技術により新たに創出(製剤開発*)した医薬品候補製剤を、医薬品としての製造販売承認を取得するために開発(非臨床試験*、臨床試験*)する過程で、製薬会社等との間で開発・販売・製造に関する適切な提携関係を築いて事業を推進していくものです。当社は、提携先の製薬会社等から、「契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンフィー」及び「上市*後の製品売上、ロイヤルティ」の形で収入を得ます。 医薬品候補製剤(開発パイプライン)の特性(市場性、開発費用)や、提携候補先製薬会社の当該パイプラインに対する取組姿勢を考慮した上で、開発パイプライン毎に当社の収益モデルを設計し、当社全体としてのリスクとリターンのバランスを取るためのポートフォリオを構築しながら成長していくことを目指しています。 当連結会計年度において、当社グループでは独自の経皮製剤技術であるILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術を用いて、低分子から高分子に至る様々な有効成分の経皮吸収性を飛躍的に向上させることにより新しい付加価値を持った医薬品を開発することを事業の中核に据え、製品化に向けた開発を推し進めるとともに提携候補先との契約交渉を行うなど事業の拡大を図ってきました。開発が最も進んでいる「Bondlido (MRX-5LBT:リドカインテープ剤)」について、2025年9月に米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)から成人の帯状疱疹後の神経疼痛を適応として販売承認を取得しました。現在、販売パートナー候補と提携交渉中であり、2026年下半期の上市を計画しています。続いて「MRX-4TZT:痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)」「MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)」の2つのパイプラインが臨床開発ステージにあります。また、米国の創薬ベンチャーAlto Neuroscience, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー、以下「Alto」)との提携下で開発が進められている「Alto-101:統合失調症治療薬(PDE4阻害貼付剤)」について、統合失調症患者に対する臨床第2相試験が進行中です。当社グループではこれらの貼付剤パイプラインとは別に、無痛での自己接種が可能で従来の接種方法と比べて高い免疫応答が期待できる、ワクチン等の投与デバイスであるマイクロニードルの研究開発に取り組んでいます。世界でまだ数ヶ所しかない医療用医薬品/ワクチン用途のマイクロニードル治験薬工場を稼働させており、モデル動物を用いたフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。 当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。 <開発コード MRX-4TZT:痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。米国における筋弛緩薬市場は、2024年において約2,300億円(1,546 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、チザニジンを経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。2025年12月に臨床第2相/POC試験を開始しました。この試験では、多発性硬化症による痙縮患者を対象に高用量域におけるMRX-4TZTの安全性・忍容性および有効性をチザニジン経口剤と比較することにより、MRX-4TZTのProof of Concept「薬効を維持したまま、経口薬と比較して安全性・忍容性が向上することにより、患者負担が軽減される」を確立することを目的としており、2026年第4四半期に結果速報を得ることを見込んでいます。試験デザイン詳細については、以下の当社ウェブサイトをご参照下さい。https://www.medrx.co.jp/business/iltspipeline/mrx-4tzt/index.html患者さんを対象としたこのPOC試験で、MRX-4TZTのコンセプト、即ち「薬効を維持したまま、経口薬と比較して安全性・忍容性が向上することにより、患者負担が軽減される」を示すことができれば、MRX-4TZTのアセットとしての価値が格段に向上し、ライセンスアウトによる収益化も見えてきます。MRX-4TZTはブロックバスターになり得るポテンシャルを持ったパイプラインであり、開発の要所である臨床第2相/POC試験結果は、当社の企業価値に大きなインパクトを与えると期待しています。 <Bondlido (MRX-5LBT):帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)>ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidodermの市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めてきた製品です。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2024年において約240億円(162 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。2020年4月に株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(愛知県名古屋市、D. Western Therapeutics Institute、以下「DWTI」)と米国における共同開発契約を締結して以降、DWTIと共同で開発を進めてきました。Bondlidoは、これまでの臨床試験結果より、先行指標品であるLidodermより「皮膚刺激性が少なく」「貼付力に優れ」「運動時においても貼付力を保持できる」より良い製品として市場浸透することが期待されます。2024年1月に新薬承認申請しましたが、2024年7月にFDAより審査完了報告通知(CRL)を受領しました。2025年3月にCRLにおいて求められていたデータを追加して再申請し、2025年9月に成人の帯状疱疹後の神経疼痛を適応として販売承認を取得しました。現在、販売パートナー候補と提携交渉中であり、2026年下半期の上市を計画しています。先行競合品ZTlidoのnet salesは2024年において約80億円(52 million USドル)です(出所:Scilex Holding Company, FORM 10-K)。この数字を一つの目安として、ZTlidoに追い付け追い越せとの期待を持って、販売提携候補先との交渉を行っています。 <開発コード MRX-9FLT:中枢性鎮痛薬(フェンタニルテープ剤)>フェンタニルは、オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に貼付剤としても広く使用されています。フェンタニル貼付剤においては、患者の使用後の貼付剤を幼児・小児が誤って噛んだり貼付したりすることで死亡する誤用事故が報告されており、米国で社会的な問題となっています。当社グループでは、オピオイド貼付剤における誤用事故の抑制・防止を目的とした独自技術を開発しており、その技術を適用したフェンタニルテープ剤についてFDAと面談会議を実施し、幼児・小児に対する誤用事故防止機能を持った貼付剤は重要で価値のあるゴールであることを確認した上で、本格的な開発に取り掛かりました。予備的な臨床薬物動態(pilot PK:Pharmacokinetics)試験により、MRX-9FLTが参照製品と同様の血中濃度推移を示すことが確認できました。また、in vitro(実験室レベル)や動物実験で確認してきた誤用事故防止機能についても、ヒトでの有用性を予備的に確認することができました。2021年7月には、MRX-9FLTが持つ誤用事故防止機能が評価され、FDAからファスト・トラック指定されました。新薬承認取得に向けて、参照製品との生物学的同等性を示すための検証的な比較臨床試験、及び、誤用事故防止機能を検証するための試験を計画しています。 米国におけるフェンタニル貼付剤市場は、2024年において約240億円(158 million USドル)と推計されており(出所:IQVIA)、誤用事故防止という高付加価値化により、現市場の置き換えと更なる市場拡大を企図しています。 <開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。2025年5月にP1a試験(臨床第1相単回PK試験)結果が判明しました。P1a試験においてMRX-7MLLが示した経皮浸透量は、臨床上有用と考えられるパッチサイズで経口剤と同等の血中濃度を実現できる水準に達しませんでした。その後、経皮浸透性に関して製剤改良を多面的に試みましたが、経皮浸透性と皮膚安全性を両立させる目途が立たず、開発を断念することとしました。 <開発コード MRX-6LDT:慢性疼痛治療薬(ジクロフェナック・リドカインテープ剤)>米国における疼痛管理薬市場は2024年において約6,400億円(4,251 million USドル)であり、その50%超をジェネリック医薬品が占めています(出所:IQVIA)。慢性疼痛市場にはジェネリック医薬品を含め多数の薬剤が存在し、新たなブランド薬が確固たる地位を築くことは容易ではありませんが、一方で、米国での慢性疼痛治療の基盤ともいえるオピオイド鎮痛薬の乱用リスクに対して米国社会全体から厳しい視線が集まっており、乱用リスクがなく有効性と安全性・忍容性に優れた慢性疼痛治療薬には大きな事業機会/潜在市場があると考えています。MRX-6LDTは、当社独自の経皮製剤技術ILTS®を用いて、消炎鎮痛作用を有するジクロフェナックと局所麻酔作用を有するリドカインの両薬物ともに高い経皮浸透を実現させるべく製剤開発したテープ型貼付剤であり、両薬物の相加的或いは相乗的な疼痛治療効果を最大限に発揮させることを企図しています。米国における大きな事業機会/潜在市場に向けて、まずは非臨床試験とそれに続く臨床第1相試験を実施して、MRX-6LDTの高い経皮浸透性及び製品ポテンシャルをヒトでのデータをもって確認することを計画しています。 <開発コード Alto-101:統合失調症治療薬(PDE4阻害貼付剤)>2023年9月に、Alto Neuroscience, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー、以下「Alto」)と、当社独自の経皮吸収技術を適用した中枢神経領域の新規医薬品候補(Alto-101, PDE4阻害剤)に関する提携契約を締結しました。Altoは、個別化された高効果の治療選択肢を開発するために神経生物学を活用して精神医学を再定義することをミッションとした、ニューヨーク証券市場に上場している臨床開発ステージの創薬ベンチャーです。AltoのPrecision Psychiatry PlatformTMは、脳波記録、神経認知評価、ウェアラブルデータなどを解析することにより脳のバイオマーカーを計測して、それぞれの患者に合うAltoの薬を提供することを目指しています。新規のPDE4阻害剤であるAlto-101の経口剤を用いて健常人に対して実施された臨床第1相試験(P1a)において、認識機能向上効果と認識機能に関連した脳波(electroencephalography: EEG)マーカーが示されています。また、当社とAltoとの提携下で製剤開発された新規のAlto-101経皮製剤を用いて健常人に対して実施されたもう一つの臨床第1相試験(P1b)において、Alto-101経皮製剤の好ましい薬物動態と忍容性、即ち、Alto-101経皮製剤は十分な量の薬物を体内に到達させた上でPDE4阻害剤を経口投与した際によく見られる副作用を低減させることが示されています。2024年6月にAltoが統合失調症患者に対する臨床第2相試験を開始しており、2026年第1四半期に結果速報を得ることが計画されています。また、2025年10月には、FDAからファスト・トラック指定されました。進行中の臨床第2相試験は、Alto-101経皮製剤を用いたプラセボ対照交差二重盲検の用量増加試験であり、21~55歳の統合失調症患者約70名への投与が計画されています。本試験における最も重要な評価項目は、各投与期間終了時にEEGを用いて測定されるシータ帯域(脳波はalpha, beta, delta, thetaの4種類に分類される。そのうち4~7ヘルツの周波数帯域)活性へのAlto-101経皮製剤の影響です。Altoでは、EEGを用いて測定されるシータ帯域活性が統合失調症患者の認識機能とよく相関することを見出しており、本試験においてAlto-101経皮製剤の統合失調症治療薬としての堅固なPOC(Proof of Concept)を実証するのに適した指標であると考えています。 <マイクロニードルアレイ>マイクロニードルアレイ(Micro Needle array、以下「MN」という)とは、生体分解性樹脂等から成る数百μmの微小針の集合体で、当社開発品は生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。MNは、注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の「無痛経皮自己投与」を可能にし、またワクチンや免疫性疾患においては「従来の注射剤と比べて高い免疫効果」が期待される、有望な投与デバイスとして注目されています。当社のMN技術は、鋭い針先と工夫された応力制御機構を持つアプリケータ(挿入器具)による「簡便で確実な投与」を特徴としています。臨床試験等においてヒトに投与できるGMP(Good Manufacturing Practice)規格品を製造するMN治験薬工場が、ワクチンに用いられる病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にするためのバイオセーフティ対策を整備した上で稼働しています。現在、量産化に向けた技術開発と並行して、モデル動物を用いたフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら事業提携を模索しています。当社グループでは、自己投与可能なワクチンMN製剤が、パンデミック発生時の医療体制堅持や医療インフラ未整備地域での公衆衛生向上に貢献できるものと確信しており、実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。 上述した開発候補品以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自で医薬品等の製剤開発を進めています。 当社の経皮製剤技術について 経皮吸収型医薬品には、嚥下障害等で経口投与が困難な患者にも投与可能、ファーストパスエフェクトを受けない、薬物の血液中の濃度を一定に保ち効果を持続させ易い、注射剤と異なり投与時に痛みを感じない等の様々な利点があります。疾患別に見ると、昨今の潮流として、疼痛治療用薬剤に加え、アルツハイマー病やうつ病のような精神疾患系薬剤においても、QOL及び服薬アドヒアランスの向上(飲み忘れ等の防止)に寄与する経皮吸収型製剤が、アンメット・メディカルニーズに応える形で開発及び市場投入されています。一方、皮膚は人体にとって外界からの異物の侵入に対する第一バリアであり、分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い等の、皮膚から浸透し易い特定の物理化学的性質を持つ薬物以外の薬物を経皮吸収させることは極めて困難です。当社では、イオン液体の特徴を利用した独自の経皮製剤技術ILTS®や薬物のナノコロイド化技術を利用した独自の経皮製剤技術NCTS®により、従来の技術では経皮吸収させることが困難であった難溶性薬物や核酸・ペプチドといった高分子に至る様々な薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることに成功しています。さらに、ILTS®やNCTS®をもってしても経皮吸収させることが困難な高分子のワクチン等については、マイクロニードルアレイによる投与方法の研究開発を行っております。 ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System) イオン液体とは、融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれています。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されています。当社では、薬物をイオン液体化する、或いは、イオン液体に薬物を溶解することにより、当該薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることができることを世界に先駆けて見出しました。現在までに、①人体への使用実績がある化合物の組み合わせによる安全性が高いと考えられるイオン液体ライブラリー、②対象薬物の経皮浸透性向上に適したイオン液体の選択に関するノウハウ、③薬物を含有するイオン液体をその特性を保持したまま使い勝手のよい形(貼り薬、塗り薬等)に製剤化するノウハウ等を蓄積しています。これらのノウハウ等も含めた独自の経皮吸収型製剤作製技術を総称して、ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)と呼んでいます。 NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System) 当社は、薬物をナノサイズのコロイドにすることで経皮吸収性が高まることを発見し、それによる製剤化技術をNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)と名付けました。アルツハイマー治療薬等をターゲットとした製剤開発を進めております。 *用語解説CRO(Contract Research Organization)医薬品開発業務受託機関。経皮吸収皮膚から(薬物を)体内に吸収・浸透させること。チザニジン 中枢性筋弛緩剤(脳や脊髄にある中枢神経に作用して筋肉の緊張を緩和する薬)の一種で、痛みを伴う肩こりや腰痛、五十肩、緊張性頭痛等の治療及び痙性麻痺等の筋肉がこわばる症状の治療に使用されている。リドカイン神経末端において痛みの信号を遮断して痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種。フェンタニルオピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に主に貼付剤として使用されている。ファスト・トラック指定重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメット・メディカルニーズの高い疾患に対して治療効果が期待される新薬を優先的に審査する制度。開発から審査までの迅速化を目的としている。ファスト・トラック指定により、臨床試験に関する相談などFDAと協議する機会がより多く与えられる。メマンチン 脳内での過剰なグルタミン酸作用を抑えて神経細胞を保護するNMDA受容体拮抗薬で、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。製剤開発 飲み薬を貼り薬に、錠剤をゼリー剤にする等して、医薬品の剤型/投与方法を変えることにより、医薬品の有用性や安全性を高めるための研究開発。臨床試験 薬剤候補について、有効性と安全性を実証するために、ヒトを対象として実施する試験の総称。少数健常人を対象として安全性及び薬物動態を確認する第I相試験、少数患者を対象として有効性及び安全性を探索的に確認する第Ⅱ相試験、多数患者を対象として有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験に区分される。オピオイド ケシから採取されるアルカロイドやその関連の合成化合物及び内因性物質のうち麻薬性作用を持つ物質の総称。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどに代表されるオピオイド鎮痛薬は、強い鎮痛効果を有する一方で、薬物依存性が高く中毒症を引き起こしやすく、過剰容量摂取した場合には呼吸抑制や昏睡を引き起こして死に至る恐れがあることが知られている。コロイド コロイドとは、液体、固体あるいは気体にある粒子が均一に分散している状態をいい、ナノコロイドは、粒子がナノサイズのコロイド。非臨床試験 薬剤候補について、ヒトにおける試験を実施する上で十分な安全性と有効性があることの確認を目的として、主に動物を用いて行われる試験。上市各国の規制当局により新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)こと。PDE4阻害剤 ホスホジエステラーゼ4という酵素の働きを阻害する物質の総称。様々な炎症性疾患において、免疫細胞にPDE4が過剰に存在することにより、免疫バランスの異常が生じて炎症が起こっていると考えられている。ファーストパスエフェクト 初回通過効果ともいう。経口摂取した薬物は、腸管から吸収され肝臓に入る。多くの薬物は、その一部が肝臓で代謝されてしまうので、飲んだ薬の効果全てが全身(または患部)に届くわけではない。この肝臓通過による薬効減退効果のこと。QOL(Quality of Life)不快に感じることを最大限に軽減し、できるだけ当人(患者)がこれでいいと思えるような生活が送れるようにすることを目指した、医療上の概念。アンメット・メディカルニーズまだ満たされていない医療上の必要性、未充足の医療ニーズ。イオン液体 融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれる。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されている。難溶性薬物水やその他の各種溶媒に対して溶けにくい性質を持つ薬物。核酸 遺伝子の構成成分である生体高分子。核酸には、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)がある。ペプチド 数個~数百個のアミノ酸がつながってできた物質の総称。医薬品としては、GLP-1等の糖尿病治療薬や抗肥満薬として使用されているものや、PTH等の骨粗鬆治療薬として使用されているものなどがある。生体分解性樹脂ヒトの体内で分解され得るプラスチック素材。手術時の縫合糸等に使われている。
FY2024|10,053 文字|出典 docID: S100VJ6C
3 【事業の内容】当社グループは、当社独自の経皮吸収*型製剤技術を基に新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL*の向上に資することを企業理念としています。イオン液体の特徴を利用した独自の経皮吸収型製剤技術ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)、薬物のナノコロイド*化技術を利用した独自の経皮吸収型製剤技術NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術により、薬効の極大化、副作用の低減、飲み忘れ防止や経口投与が困難な患者への投与を可能にして、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しております。 当社グループは、当社、連結子会社MEDRX USA INC.及びMEDRX AUSTRALIA PTY LTDの3社で構成されています。 当社グループの現在のビジネスモデルは、当社製剤技術により新たに創出(製剤開発*)した医薬品候補製剤を、医薬品としての製造販売承認を取得するために開発(非臨床試験*、臨床試験*)する過程で、製薬会社等との間で開発・販売・製造に関する適切な提携関係を築いて事業を推進していくものです。当社は、提携先の製薬会社等から、「契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンフィー」及び「上市*後の製品売上、ロイヤルティ」の形で収入を得ます。 医薬品候補製剤(開発パイプライン)の特性(市場性、開発費用)や、提携候補先製薬会社の当該パイプラインに対する取組姿勢を考慮した上で、開発パイプライン毎に当社の収益モデルを設計し、当社全体としてのリスクとリターンのバランスを取るためのポートフォリオを構築しながら成長していくことを目指しています。 当連結会計年度において、当社グループでは独自の経皮製剤技術であるILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)やNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術を用いて、低分子から高分子に至る様々な有効成分の経皮吸収性を飛躍的に向上させることにより新しい付加価値を持った医薬品を開発することを事業の中核に据え、製品化に向けた開発を推し進めるとともに提携候補先との契約交渉を行うなど事業の拡大を図ってきました。開発が最も進んでいる「MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)、商標名Lydolyte」について、米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)から指摘を受けた非臨床データに関しFDAの指示に従う形で再解析して、2024年1月に再度新薬承認申請しましたが、2024年7月にFDAより審査完了報告通知(Complete Response Letter, CRL)を受領しました。追加解析を実施し、CRLにおいて求められていたデータを追加して、2025年3月に再申請しました。「MRX-4TZT:痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)」「MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)」の2つのパイプラインについて米国での臨床開発を実施中であり、「MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)」についても2024年10月から臨床試験を開始しています。また、米国の創薬ベンチャーAlto Neuroscience, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー、以下「Alto」)との提携下で開発が進められている「Alto-101:統合失調症治療薬(PDE4阻害貼付剤)」について、臨床第1相試験で好結果が示され、Altoから開発マイルストン収入を受領しました。2024年6月に統合失調症患者に対する臨床第2相試験が開始されています。当社グループではこれらの貼付剤パイプラインとは別に、無痛での自己接種が可能で従来の接種方法と比べて高い免疫応答が期待できる、ワクチン等の投与デバイスであるマイクロニードルの研究開発に取り組んでいます。世界でまだ数ヶ所しかない医療用医薬品/ワクチン用途のマイクロニードル治験薬工場を稼働させており、モデル動物を用いたフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。 当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。 <開発コード MRX-4TZT:痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。米国における筋弛緩薬市場は、2023年において約2,100億円(1,519 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、チザニジンを経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。2017年4月からインドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、以下「Cipla」)の100%子会社であるCipla Technologies, LLC(以下「Cipla Tech」)との間で世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結していました。しかし、2020年2月のCiplaの全社戦略変更(中枢神経関連の開発候補品については、資金投入を抑制してアウトライセンスする方針)を受けてCipla Techと協議を続けた結果、1日でも早く開発再開することで本パイプラインの価値向上を図りたい当社グループとして、2023年4月に「ライセンス終了合意契約」を締結し、MRX-4TZTに関する全ての権利が当社に返還されました。臨床第1相反復PK(Pharmacokinetics)試験(P1b)が成功裡に完了しており、臨床第2相試験(痙性麻痺患者を対象とした最長4週間の用量増加試験)の準備を進めています。 <開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤、商標名Lydolyte)> ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidoderm®の市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めている製品です。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2023年において約270億円(193 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。2020年4月に株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(愛知県名古屋市、D. Western Therapeutics Institute、以下「DWTI」)と米国における共同開発契約を締結して以降、DWTIと共同で開発を進めています。MRX-5LBTは、これまでの臨床試験結果より、先行指標品であるLidoderm®より「皮膚刺激性が少なく」「貼付力に優れ」「運動時においても貼付力を保持できる」より良い製品として市場浸透することが期待されます。 FDAから指摘を受けた非臨床データについてFDAの指示に従う形で再解析して、2024年1月に再度新薬承認申請しましたが、2024年7月にFDAより審査完了報告通知(CRL)を受領しました。追加解析を実施し、CRLにおいて求められていたデータを追加して、2025年3月に再申請しました。 <開発コード MRX-9FLT:中枢性鎮痛薬(フェンタニルテープ剤)> フェンタニルは、オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に貼付剤としても広く使用されています。フェンタニル貼付剤においては、患者の使用後の貼付剤を幼児・小児が誤って噛んだり貼付したりすることで死亡する誤用事故が報告されており、米国で社会的な問題となっています。 当社グループでは、オピオイド貼付剤における誤用事故の抑制・防止を目的とした独自技術を開発しており、その技術を適用したフェンタニルテープ剤についてFDAと面談会議を実施し、幼児・小児に対する誤用事故防止機能を持った貼付剤は重要で価値のあるゴールであることを確認した上で、本格的な開発に取り掛かりました。予備的な臨床薬物動態(pilot PK:Pharmacokinetics)試験により、MRX-9FLTが参照製品と同様の血中濃度推移を示すことが確認できました。また、in vitro(実験室レベル)や動物実験で確認してきた誤用事故防止機能についても、ヒトでの有用性を予備的に確認することができました。2021年7月には、MRX-9FLTが持つ誤用事故防止機能が評価され、FDAからファスト・トラック指定(重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメット・メディカルニーズの高い疾患に対して治療効果が期待される新薬を優先的に審査する制度。開発から審査までの迅速化を目的としている。ファスト・トラック指定により、臨床試験に関する相談などFDAと協議する機会がより多く与えられる)を受けています。新薬承認取得に向けて、参照製品との生物学的同等性を示すための検証的な比較臨床試験、及び、誤用事故防止機能を検証するための試験を計画しています。 米国におけるフェンタニル貼付剤市場は、2023年において約250億円(179 million USドル)と推計されており(出所:IQVIA)、誤用事故防止という高付加価値化により、現市場の置き換えと更なる市場拡大を企図しています。 <開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。FDAに対して治験前相談を実施し、新薬承認取得に向けて、メマンチン経口剤との生物学的同等性を示すことができればMRX-7MLLの有効性を示す臨床試験(臨床第2相試験、臨床第3相試験)は必要ないことを確認しています。2024年10月に豪州にて臨床試験(P1a:臨床第1相単回PK試験)を開始しました。本試験では、MRX-7MLLの経皮吸収性と安全性(特に皮膚における安全性)を確認することを目的としています。2023年において米国アルツハイマー治療薬市場は約365億円(261 million USドル)であり、そのうちメマンチン経口剤が約73億円(52 million USドル)を占めています(出所:IQVIA)。1日1回の経口剤に対して、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者が投薬状況を目視確認できる、1週間に1回の貼付剤という選択肢を提供することにより、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者のQOL(quality of life)及び服薬アドヒアランスの向上(飲み忘れ等の防止)に貢献したいと考えています。 <開発コード MRX-6LDT:慢性疼痛治療薬(ジクロフェナック・リドカインテープ剤)>米国における疼痛管理薬市場は2023年において約6,400億円(4,582 million USドル)であり、その50%超をジェネリック医薬品が占めています(出所:IQVIA)。慢性疼痛市場にはジェネリック医薬品を含め多数の薬剤が存在し、新たなブランド薬が確固たる地位を築くことは容易ではありませんが、一方で、米国での慢性疼痛治療の基盤ともいえるオピオイド鎮痛薬の乱用リスクに対して米国社会全体から厳しい視線が集まっており、乱用リスクがなく有効性と安全性・忍容性に優れた慢性疼痛治療薬には大きな事業機会/潜在市場があると考えています。MRX-6LDTは、当社独自の経皮製剤技術ILTS®を用いて、消炎鎮痛作用を有するジクロフェナックと局所麻酔作用を有するリドカインの両薬物ともに高い経皮浸透を実現させるべく製剤開発したテープ型貼付剤であり、両薬物の相加的或いは相乗的な疼痛治療効果を最大限に発揮させることを企図しています。米国における大きな事業機会/潜在市場に向けて、まずは非臨床試験とそれに続く臨床第1相試験を実施して、MRX-6LDTの高い経皮浸透性及び製品ポテンシャルをヒトでのデータをもって確認することを計画しています。 <開発コード Alto-101:統合失調症治療薬(PDE4阻害貼付剤)>2023年9月に、Alto Neuroscience, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー、以下「Alto」)と、当社独自の経皮吸収技術を適用した中枢神経領域の新規医薬品候補(Alto-101, PDE4阻害剤)に関する提携契約を締結しました。Altoは、個別化された高効果の治療選択肢を開発するために神経生物学を活用して精神医学を再定義することをミッションとした、ニューヨーク証券市場に上場している臨床開発ステージの創薬ベンチャーです。AltoのPrecision Psychiatry PlatformTMは、脳波記録、神経認知評価、ウェアラブルデータなどを解析することにより脳のバイオマーカーを計測して、それぞれの患者に合うAltoの薬を提供することを目指しています。新規のPDE4阻害剤であるAlto-101の経口剤を用いて健常人に対して実施された臨床第1相試験(P1a)において、認識機能向上効果と認識機能に関連した脳波(electroencephalography: EEG)マーカーが示されています。また、当社とAltoとの提携下で製剤開発された新規のAlto-101経皮製剤を用いて健常人に対して実施されたもう一つの臨床第1相試験(P1b)において、Alto-101経皮製剤の好ましい薬物動態と忍容性、即ち、Alto-101経皮製剤は十分な量の薬物を体内に到達させた上でPDE4阻害剤を経口投与した際によく見られる副作用を低減させることが示されています。この臨床第1相試験(P1b)結果に基づいて、当社はAltoより開発マイルストン金を受領しました。2024年6月に、Altoが統合失調症患者に対する臨床第2相試験を開始しており、2025年下半期に結果速報を得ることが計画されています。この臨床第2相試験は、Alto-101経皮製剤を用いたプラセボ対照交差二重盲検の用量増加試験であり、21~55歳の統合失調症患者約70名への投与が計画されています。本試験における最も重要な評価項目は、各投与期間終了時にEEGを用いて測定されるシータ帯域(脳波はalpha, beta, delta, thetaの4種類に分類される。そのうち4~7ヘルツの周波数帯域)活性へのAlto-101経皮製剤の影響です。Altoでは、EEGを用いて測定されるシータ帯域活性が統合失調症患者の認識機能とよく相関することを見出しており、本試験においてAlto-101経皮製剤の統合失調症治療薬としての堅固なPOC(Proof of Concept)を実証するのに適した指標であると考えています。 <マイクロニードルアレイ>マイクロニードルアレイ(Micro Needle array、以下「MN」という)とは、生体分解性樹脂等から成る数百μmの微小針の集合体で、当社開発品は生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。MNは、注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の「無痛経皮自己投与」を可能にし、またワクチンや免疫性疾患においては「従来の注射剤と比べて高い免疫効果」が期待される、有望な投与デバイスとして注目されています。当社のMN技術は、鋭い針先と工夫された応力制御機構を持つアプリケータ(挿入器具)による「簡便で確実な投与」を特徴としています。臨床試験等においてヒトに投与できるGMP(Good Manufacturing Practice)規格品を製造するMN治験薬工場が、ワクチンに用いられる病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にするためのバイオセーフティ対策を整備した上で稼働しています。現在、量産化に向けた技術開発と並行して、モデル動物を用いたフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら事業提携を模索しています。当社グループでは、自己投与可能なワクチンMN製剤が、パンデミック発生時の医療体制堅持や医療インフラ未整備地域での公衆衛生向上に貢献できるものと確信しており、実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。 上述した開発候補品以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自で医薬品等の製剤開発を進めています。 当社の経皮製剤技術について 経皮吸収型医薬品には、嚥下障害等で経口投与が困難な患者にも投与可能、ファーストパスエフェクトを受けない、薬物の血液中の濃度を一定に保ち効果を持続させ易い、注射剤と異なり投与時に痛みを感じない等の様々な利点があります。疾患別に見ると、昨今の潮流として、疼痛治療用薬剤に加え、アルツハイマー病やうつ病のような精神疾患系薬剤においても、QOL及び服薬アドヒアランスの向上(飲み忘れ等の防止)に寄与する経皮吸収型製剤が、アンメット・メディカルニーズに応える形で開発及び市場投入されています。一方、皮膚は人体にとって外界からの異物の侵入に対する第一バリアであり、分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い等の、皮膚から浸透し易い特定の物理化学的性質を持つ薬物以外の薬物を経皮吸収させることは極めて困難です。当社では、イオン液体の特徴を利用した独自の経皮製剤技術ILTS®や薬物のナノコロイド化技術を利用した独自の経皮製剤技術NCTS®により、従来の技術では経皮吸収させることが困難であった難溶性薬物や核酸・ペプチドといった高分子に至る様々な薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることに成功しています。さらに、ILTS®やNCTS®をもってしても経皮吸収させることが困難な高分子のワクチン等については、マイクロニードルアレイによる投与方法の研究開発を行っております。 ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System) イオン液体とは、融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれています。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されています。当社では、薬物をイオン液体化する、或いは、イオン液体に薬物を溶解することにより、当該薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることができることを世界に先駆けて見出しました。現在までに、①人体への使用実績がある化合物の組み合わせによる安全性が高いと考えられるイオン液体ライブラリー、②対象薬物の経皮浸透性向上に適したイオン液体の選択に関するノウハウ、③薬物を含有するイオン液体をその特性を保持したまま使い勝手のよい形(貼り薬、塗り薬等)に製剤化するノウハウ等を蓄積しています。これらのノウハウ等も含めた独自の経皮吸収型製剤作製技術を総称して、ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)と呼んでいます。 NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System) 当社は、薬物をナノサイズのコロイドにすることで経皮吸収性が高まることを発見し、それによる製剤化技術をNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)と名付けました。アルツハイマー治療薬等をターゲットとした製剤開発を進めております。 AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System) 貼付剤における薬物の乱用及び誤用事故を抑制・防止するための、メドレックス独自の新たな製剤技術です。「低抽出性」「強い苦み」「再吸収抑制」「再貼付防止」の4つの技術から成っています。 *用語解説CRO(Contract Research Organization)医薬品開発業務受託機関。経皮吸収皮膚から(薬物を)体内に吸収・浸透させること。チザニジン 中枢性筋弛緩剤(脳や脊髄にある中枢神経に作用して筋肉の緊張を緩和する薬)の一種で、痛みを伴う肩こりや腰痛、五十肩、緊張性頭痛等の治療及び痙性麻痺等の筋肉がこわばる症状の治療に使用されている。リドカイン神経末端において痛みの信号を遮断して痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種。フェンタニルオピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に主に貼付剤として使用されている。メマンチン 脳内での過剰なグルタミン酸作用を抑えて神経細胞を保護するNMDA受容体拮抗薬で、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。製剤開発 飲み薬を貼り薬に、錠剤をゼリー剤にする等して、医薬品の剤型/投与方法を変えることにより、医薬品の有用性や安全性を高めるための研究開発。臨床試験 薬剤候補について、有効性と安全性を実証するために、ヒトを対象として実施する試験の総称。少数健常人を対象として安全性及び薬物動態を確認する第I相試験、少数患者を対象として有効性及び安全性を探索的に確認する第Ⅱ相試験、多数患者を対象として有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験に区分される。オピオイド ケシから採取されるアルカロイドやその関連の合成化合物及び内因性物質のうち麻薬性作用を持つ物質の総称。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどに代表されるオピオイド鎮痛薬は、強い鎮痛効果を有する一方で、薬物依存性が高く中毒症を引き起こしやすく、過剰容量摂取した場合には呼吸抑制や昏睡を引き起こして死に至る恐れがあることが知られている。コロイド コロイドとは、液体、固体あるいは気体にある粒子が均一に分散している状態をいい、ナノコロイドは、粒子がナノサイズのコロイド。非臨床試験 薬剤候補について、ヒトにおける試験を実施する上で十分な安全性と有効性があることの確認を目的として、主に動物を用いて行われる試験。上市各国の規制当局により新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)こと。PDE4阻害剤 ホスホジエステラーゼ4という酵素の働きを阻害する物質の総称。様々な炎症性疾患において、免疫細胞にPDE4が過剰に存在することにより、免疫バランスの異常が生じて炎症が起こっていると考えられている。ファーストパスエフェクト 初回通過効果ともいう。経口摂取した薬物は、腸管から吸収され肝臓に入る。多くの薬物は、その一部が肝臓で代謝されてしまうので、飲んだ薬の効果全てが全身(または患部)に届くわけではない。この肝臓通過による薬効減退効果のこと。QOL(Quality of Life)不快に感じることを最大限に軽減し、できるだけ当人(患者)がこれでいいと思えるような生活が送れるようにすることを目指した、医療上の概念。アンメット・メディカルニーズまだ満たされていない医療上の必要性、未充足の医療ニーズ。イオン液体 融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれる。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されている。難溶性薬物水やその他の各種溶媒に対して溶けにくい性質を持つ薬物。核酸 遺伝子の構成成分である生体高分子。核酸には、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)がある。ペプチド 数個~数百個のアミノ酸がつながってできた物質の総称。医薬品としては、GLP-1等の糖尿病治療薬や抗肥満薬として使用されているものや、PTH等の骨粗鬆治療薬として使用されているものなどがある。生体分解性樹脂ヒトの体内で分解され得るプラスチック素材。手術時の縫合糸等に使われている。
FY2023|10,205 文字|出典 docID: S100T6BL
3 【事業の内容】当社グループは、当社独自の経皮吸収*型製剤技術を基に新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL*の向上に資することを企業理念としています。イオン液体の特徴を利用した独自の経皮吸収型製剤技術ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)、薬物のナノコロイド*化技術を利用した独自の経皮吸収型製剤技術NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術により、薬効の極大化、副作用の低減、飲み忘れ防止や経口投与が困難な患者への投与を可能にして、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しております。 当社グループは、当社、連結子会社MEDRx USA INC.の2社で構成されています。 当社グループの現在のビジネスモデルは、当社製剤技術により新たに創出(製剤開発*)した医薬品候補製剤を、医薬品としての製造販売承認を取得するために開発(非臨床試験*、臨床試験*)する過程で、製薬会社等との間で開発・販売・製造に関する適切な提携関係を築いて事業を推進していくものです。当社は、提携先の製薬会社等から、「契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンフィー」及び「上市*後の製品売上、ロイヤルティ」の形で収入を得ます。 医薬品候補製剤(開発パイプライン)の特性(市場性、開発費用)や、提携候補先製薬会社の当該パイプラインに対する取組姿勢を考慮した上で、開発パイプライン毎に当社の収益モデルを設計し、当社全体としてのリスクとリターンのバランスを取るためのポートフォリオを構築しながら成長していくことを目指しています。 当連結会計年度において、当社グループでは独自の経皮製剤技術であるILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)やNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術を用いて、低分子から高分子に至る様々な有効成分の経皮吸収性を飛躍的に向上させることにより新しい付加価値を持った医薬品を開発することを事業の中核に据え、製品化に向けた開発を推し進めるとともに提携候補先との契約交渉を行うなど事業の拡大を図ってきました。開発が最も進んでいる「MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)、商標名Lydolyte」について、2023年3月に米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局 (FDA: Food and Drug Administration) に新薬承認申請書 (NDA: New Drug Application) を提出し、9月にFDAから審査完了報告通知(CRL: Complete Response Letter)を受領しました。CRLにおいて非臨床の一部のデータをFDAの指示に従って再提出するよう求められ、データ再解析を進めて2024年1月にNDAを再提出し、同月に申請受理されました。審査終了目標日は、2024年7月11日に設定されています。承認取得後、2024年内の上市を計画しています。「MRX-4TZT:痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)」「MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)」の2つのパイプラインについて米国での臨床開発を実施中であり、「MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン含有貼付剤)」についても治験許可申請をFDAに提出して、臨床試験開始の許可を得ています。また、2023年9月に米国の創薬ベンチャーである Alto Neuroscience, Inc.(米国カリフォルニア州ロスアルトス、以下「Alto」)と、当社独自の経皮吸収技術を適用した中枢神経領域の新規医薬品候補「Alto-101」に関する提携契約を締結しました。Alto-101について、現在臨床第Ⅰ相試験を実施中であり、2024年に様々な精神疾患を対象とした臨床第Ⅱ相試験の開始が計画されています。当社グループではこれらの貼付剤パイプラインとは別に、無痛での自己接種が可能で従来の接種方法と比べて高い免疫応答が期待できる、ワクチン等の投与デバイスであるマイクロニードルの研究開発に取り組んでいます。世界でまだ数ヶ所しかない医療用医薬品/ワクチン用途のマイクロニードル治験薬工場を2020年4月より稼働させており、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。 当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。 <開発コード MRX-4TZT:痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。米国における筋弛緩薬市場は、2022年において約1,700億円(1,272 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、チザニジンを経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。2017年4月からインドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、以下「Cipla」)の100%子会社であるCipla Technologies, LLC(以下「Cipla Tech」)との間で世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結していました。しかし、2020年2月のCiplaの全社戦略変更(中枢神経関連の開発候補品については、資金投入を抑制してアウトライセンスする方針)を受けてCipla Techと協議を続けた結果、1日でも早く開発再開することで本パイプラインの価値向上を図りたい当社グループとして、2023年4月に「ライセンス終了合意契約」を締結し、MRX-4TZTに関する全ての権利が当社に返還されました。2019年9月に臨床第Ⅰ相反復PK(Pharmacokinetics)試験(P1b)が成功裡に完了しており、臨床第Ⅱ相試験(痙性麻痺患者を対象とした最長4週間の用量増加試験)の準備を進めています。 <開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤、商標名Lydolyte)>ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidoderm®の市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めている製品です。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2022年において約340億円(264 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。2020年4月に株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(愛知県名古屋市、D. Western Therapeutics Institute、以下「DWTI」)と米国における共同開発契約を締結して以降、DWTIと共同で開発を進めています。MRX-5LBTは、これまでの臨床試験結果より、先行指標品であるLidoderm®より「皮膚刺激性が少なく」「貼付力に優れ」「運動時においても貼付力を保持できる」より良い製品として市場浸透することが期待されます。2023年3月に新薬承認申請書(NDA)を提出し、9月にFDAから審査完了報告通知(CRL)を受領しました。CRLにおいて非臨床の一部のデータをFDAの指示に従って再提出するよう求められ、データ再解析を進めて2024年1月にNDAを再提出し、同月に申請受理されました。審査終了目標日は、2024年7月11日に設定されています。承認取得後、2024年内の上市を計画しています。 <開発コード MRX-9FLT:中枢性鎮痛薬(フェンタニルテープ剤)>フェンタニルは、オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に貼付剤としても広く使用されています。フェンタニル貼付剤においては、患者の使用後の貼付剤を幼児・小児が誤って噛んだり貼付したりすることで死亡する誤用事故が報告されており、米国で社会的な問題となっています。当社グループでは、オピオイド貼付剤における誤用事故の抑制・防止を目的とした独自技術を開発しており、その技術を適用したフェンタニルテープ剤について2019年5月にFDAと面談会議を実施し、幼児・小児に対する誤用事故防止機能を持った貼付剤は重要で価値のあるゴールであることを確認した上で、本格的な開発に取り掛かりました。2020年3月にFDAに治験許可申請(IND:Investigational New Drug application)を提出し、2020年9月に最初の臨床試験結果を得ました。予備的な臨床薬物動態(pilot PK:Pharmacokinetics)試験により、MRX-9FLTが参照製品と同様の血中濃度推移を示すことが確認できました。また、in vitro(実験室レベル)や動物実験で確認してきた誤用事故防止機能についても、ヒトでの有用性を予備的に確認することができました。2021年7月には、MRX-9FLTが持つ誤用事故防止機能が評価され、FDAからファスト・トラック指定(重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメットメディカルニーズの高い疾患に対して治療効果が期待される新薬を優先的に審査する制度。開発から審査までの迅速化を目的としている。ファスト・トラック指定により、臨床試験に関する相談などFDAと協議する機会がより多く与えられる)を受けています。現在、参照製品との生物学的同等性を示すための検証的な比較臨床試験、及び、誤用事故防止機能を検証するための試験に関して、FDAとも協議しながら開発を進めています。米国におけるフェンタニル貼付剤市場は、2022年において約190億円(143 million USドル)と推計されており(出所:IQVIA)、誤用事故防止という高付加価値化により、現市場の置き換えと更なる市場拡大を企図しています。 <開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。FDAに対して治験前相談(pre IND meeting)を実施し、新薬承認取得に向けて、メマンチン経口剤との生物学的同等性を示すことができればMRX-7MLLの有効性を示す臨床試験(臨床第Ⅱ相試験、臨床第Ⅲ相試験)は必要ないことを確認しています。2021年11月に治験許可申請(IND)をFDAに提出して、臨床試験開始の許可を得ました。一方で、INDの申請過程におけるFDAとのやりとりの中で製剤改良に関する示唆・助言を得たため、FDAからの示唆・助言を反映する形での製剤改良を行ってきました。製剤改良は完了し、一部の非臨床試験を追加実施中です。2024年第2四半期にP1a(臨床第Ⅰ相単回PK(Pharmacokinetics))試験を開始することを計画しています。 2022年において米国アルツハイマー治療薬市場は約380億円(294 million USドル)であり、そのうちメマンチン経口剤が約90億円(66 million USドル)を占めています(出所:IQVIA)。1日1回の経口剤に対して、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者が投薬状況を目視確認できる、3日に1回あるいは1週間に1回の貼付剤という選択肢を提供することにより、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者のQOL(quality of life)及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に貢献したいと考えています。 <開発コード MRX-6LDT:慢性疼痛治療薬(ジクロフェナック・リドカインテープ剤)>米国における疼痛管理薬市場は2022年において約6,400億円(4,948 million USドル)であり、その50%超をジェネリック医薬品が占めています(出所:IQVIA)。慢性疼痛市場にはジェネリック医薬品を含め多数の薬剤が存在し、新たなブランド薬が確固たる地位を築くことは容易ではありませんが、一方で、米国での慢性疼痛治療の基盤ともいえるオピオイド鎮痛薬の乱用リスクに対して米国社会全体から厳しい視線が集まっており、乱用リスクがなく有効性と安全性・忍容性に優れた慢性疼痛治療薬には大きな事業機会/潜在市場があると考えています。MRX-6LDTは、当社独自の経皮製剤技術ILTS®を用いて、消炎鎮痛作用を有するジクロフェナックと局所麻酔作用を有するリドカインの両薬物ともに高い経皮浸透を実現させるべく製剤開発したテープ型貼付剤であり、両薬物の相加的或いは相乗的な疼痛治療効果を最大限に発揮させることを企図しています。米国における大きな事業機会/潜在市場に向けて、まずは非臨床試験とそれに続く臨床第1相試験を実施して、MRX-6LDTの高い経皮浸透性及び製品ポテンシャルをヒトでのデータをもって確認することを計画しています。 <開発コード Alto-101:中枢神経疾患治療薬(PDE4阻害剤)>2023年9月に米国の創薬ベンチャーである Alto Neuroscience, Inc.(米国カリフォルニア州ロスアルトス、以下「Alto」)と、当社独自の経皮吸収技術を適用した中枢神経領域の新規医薬品候補(Alto-101, PDE4阻害剤)に関する提携契約を締結しました。Altoは、患者をより良くより早く治療するために、ターゲットを絞った医薬品の開発を通じてPrecision Psychiatry(精度の高い精神医学)を開拓しています。個々人の生物学的差異は治療効果に影響を及ぼしますが、Altoの Precision Psychiatry PlatformTMは、脳波記録、行動タスクパフォーマンス、ウェアラブルデータ、遺伝的特徴などを解析することにより脳のバイオマーカーを計測して、それぞれの患者に合うAltoの薬を提供することを目指しています。Alto-101について、現在臨床第Ⅰ相試験を実施中であり、2024年に様々な精神疾患を対象とした臨床第Ⅱ相試験の開始が計画されています。 <マイクロニードルアレイ>マイクロニードルアレイ(Micro Needle array、以下「MN」という)とは、生体分解性樹脂等から成る数百μmの微小針の集合体で、当社開発品は生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。MNは、注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の無痛経皮自己投与を可能にし、またワクチンや免疫性疾患においては「従来の注射剤と比べて高い免疫効果」が期待される、有望な投与デバイスとして注目されています。当社のMN技術は、鋭い針先と工夫された応力制御機構を持つアプリケータ(挿入器具)による「簡便で確実な投与」を特徴としています。臨床試験等においてヒトに投与できるGMP(Good Manufacturing Practice)規格品を製造するMN治験薬工場について、2020年4月から稼働開始し、2021年1月にはワクチンに用いられる病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にするためのバイオセーフティ対策を中心とした設備増強も完了しました。現在、量産化に向けた技術開発と並行して、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。フィージビリティスタディの一つとして、株式会社ファンペップ(大阪府茨木市)と抗体誘導ペプチドMN製剤についての共同研究を、コロンビア大学(米国ニューヨークシティ)と免疫賦活剤および抗がんペプチドとMNを組み合わせた乳がん治療のための共同研究を実施中です。一方で、VaxSyna Inc.(米国ニューハンプシャー州フランクリン)と実施していた子宮頸がんMNワクチンに関する共同研究は、VaxSyna社の事情により研究中止となりました。当社グループでは、自己投与可能なワクチンMN製剤が、パンデミック発生時の医療体制堅持や医療インフラ未整備地域での公衆衛生向上に貢献できるものと確信しており、実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。 上述した開発候補品以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自で医薬品等の製剤開発を進めています。 <上市製品>当社グループでは、PCL等の製品を提携先の販売会社を通じて販売しており、当連結累計期間の製品売上として7百万円を計上しました。 当社の経皮製剤技術について 経皮吸収型医薬品には、嚥下障害等で経口投与が困難な患者にも投与可能、ファーストパスエフェクトを受けない、薬物の血液中の濃度を一定に保ち効果を持続させ易い、注射剤と異なり投与時に痛みを感じない等の様々な利点があります。疾患別に見ると、昨今の潮流として、疼痛治療用薬剤に加え、アルツハイマー病やうつ病のような精神疾患系薬剤においても、QOL及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に寄与する経皮吸収型製剤が、アンメット・メディカルニーズに応える形で開発及び市場投入されています。一方、皮膚は人体にとって外界からの異物の侵入に対する第一バリアであり、分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い等の、皮膚から浸透し易い特定の物理化学的性質を持つ薬物以外の薬物を経皮吸収させることは極めて困難です。当社では、イオン液体の特徴を利用した独自の経皮製剤技術ILTS®や薬物のナノコロイド化技術を利用した独自の経皮製剤技術NCTS®により、従来の技術では経皮吸収させることが困難であった難溶性薬物や核酸・ペプチドといった高分子に至る様々な薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることに成功しています。さらに、ILTS®やNCTS®をもってしても経皮吸収させることが困難な高分子のワクチン等については、マイクロニードルアレイによる投与方法の研究開発を行っております。 ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System) イオン液体とは、融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれています。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されています。当社では、薬物をイオン液体化する、或いは、イオン液体に薬物を溶解することにより、当該薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることができることを世界に先駆けて見出しました。現在までに、①人体への使用実績がある化合物の組み合わせによる安全性が高いと考えられるイオン液体ライブラリー、②対象薬物の経皮浸透性向上に適したイオン液体の選択に関するノウハウ、③薬物を含有するイオン液体をその特性を保持したまま使い勝手のよい形(貼り薬、塗り薬等)に製剤化するノウハウ等を蓄積しています。これらのノウハウ等も含めた独自の経皮吸収型製剤作製技術を総称して、ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)と呼んでいます。 NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System) 当社は、薬物をナノサイズのコロイドにすることで経皮吸収性が高まることを発見し、それによる製剤化技術をNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)と名付けました。アルツハイマー治療薬等をターゲットとした製剤開発を進めております。 AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System) 貼付剤における薬物の乱用及び誤用事故を抑制・防止するための、メドレックス独自の新たな製剤技術です。「低抽出性」「強い苦み」「再吸収抑制」「再貼付防止」の4つの技術から成っています。 *用語解説CRO(Contract Research Organization)医薬品開発業務受託機関。経皮吸収皮膚から(薬物を)体内に吸収・浸透させること。チザニジン 中枢性筋弛緩剤(脳や脊髄にある中枢神経に作用して筋肉の緊張を緩和する薬)の一種で、痛みを伴う肩こりや腰痛、五十肩、緊張性頭痛等の治療及び痙性麻痺等の筋肉がこわばる症状の治療に使用されている。オキシコドン 中枢性鎮痛薬(脳や脊髄にある中枢神経に作用して痛みを抑制する薬)の一種で、医療用麻薬に指定されており、重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に使用されている。リドカイン神経末端において痛みの信号を遮断して痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種。フェンタニルオピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に主に貼付剤として使用されている。メマンチン 脳内での過剰なグルタミン酸作用を抑えて神経細胞を保護するNMDA受容体拮抗薬で、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。製剤開発 飲み薬を貼り薬に、錠剤をゼリー剤にする等して、医薬品の剤型/投与方法を変えることにより、医薬品の有用性や安全性を高めるための研究開発。臨床試験 薬剤候補について、有効性と安全性を実証するために、ヒトを対象として実施する試験の総称。少数健常人を対象として安全性及び薬物動態を確認する第I相試験、少数患者を対象として有効性及び安全性を探索的に確認する第Ⅱ相試験、多数患者を対象として有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験に区分される。オピオイド ケシから採取されるアルカロイドやその関連の合成化合物及び内因性物質のうち麻薬性作用を持つ物質の総称。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどに代表されるオピオイド鎮痛薬は、強い鎮痛効果を有する一方で、薬物依存性が高く中毒症を引き起こしやすく、過剰容量摂取した場合には呼吸抑制や昏睡を引き起こして死に至る恐れがあることが知られている。コロイド コロイドとは、液体、固体あるいは気体にある粒子が均一に分散している状態をいい、ナノコロイドは、粒子がナノサイズのコロイド。非臨床試験 薬剤候補について、ヒトにおける試験を実施する上で十分な安全性と有効性があることの確認を目的として、主に動物を用いて行われる試験。上市各国の規制当局により新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)こと。PDE4阻害剤 ホスホジエステラーゼ4という酵素の働きを阻害する物質の総称。様々な炎症性疾患において、免疫細胞にPDE4が過剰に存在することにより、免疫バランスの異常が生じて炎症が起こっていると考えられている。ファーストパスエフェクト 初回通過効果ともいう。経口摂取した薬物は、腸管から吸収され肝臓に入る。多くの薬物は、その一部が肝臓で代謝されてしまうので、飲んだ薬の効果全てが全身(または患部)に届くわけではない。この肝臓通過による薬効減退効果のこと。QOL(Quality of Life)不快に感じることを最大限に軽減し、できるだけ当人(患者)がこれでいいと思えるような生活が送れるようにすることを目指した、医療上の概念。アンメット・メディカルニーズまだ満たされていない医療上の必要性、未充足の医療ニーズ。イオン液体 融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれる。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されている。難溶性薬物水やその他の各種溶媒に対して溶けにくい性質を持つ薬物。核酸 遺伝子の構成成分である生体高分子。核酸には、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)がある。ペプチド 数個~数百個のアミノ酸がつながってできた物質の総称。医薬品としては、GLP-1等の糖尿病治療薬や抗肥満薬として使用されているものや、PTH等の骨粗鬆治療薬として使用されているものなどがある。生体分解性樹脂ヒトの体内で分解され得るプラスチック素材。手術時の縫合糸等に使われている。
FY2022|9,772 文字|出典 docID: S100QGPL
3 【事業の内容】当社グループは、当社独自の経皮吸収*型製剤技術を基に新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL*の向上に資することを企業理念としています。イオン液体の特徴を利用した独自の経皮吸収型製剤技術ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)、薬物のナノコロイド*化技術を利用した独自の経皮吸収型製剤技術NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術により、薬効の極大化、副作用の低減、飲み忘れ防止や経口投与が困難な患者への投与を可能にして、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しております。 当社グループは、当社、連結子会社MEDRx USA INC.の2社で構成されています。 当社グループの現在のビジネスモデルは、当社製剤技術により新たに創出(製剤開発*)した医薬品候補製剤を、医薬品としての製造販売承認を取得するために開発(非臨床試験*、臨床試験*)する過程で、製薬会社等との間で開発・販売・製造に関する適切な提携関係を築いて事業を推進していくものです。当社は、提携先の製薬会社等から、「契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンフィー」及び「上市*後の製品売上、ロイヤルティ」の形で収入を得ます。 医薬品候補製剤(開発パイプライン)の特性(市場性、開発費用)や、提携候補先製薬会社の当該パイプラインに対する取組姿勢を考慮した上で、開発パイプライン毎に当社の収益モデルを設計し、当社全体としてのリスクとリターンのバランスを取るためのポートフォリオを構築しながら成長していくことを目指しています。 当連結会計年度において、当社グループでは独自の経皮製剤技術であるILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)やNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術を用いて、低分子から高分子に至る様々な有効成分の経皮吸収性を飛躍的に向上させることにより新しい付加価値を持った医薬品を開発することを事業の中核に据え、製品化に向けた開発を推し進めるとともに提携候補先との契約交渉を行うなど事業の拡大を図ってきました。開発が最も進んでいる「MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)、商標名Lydolyte」については、米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA : Food and Drug Administration)から承認取得のために必要であると指摘を受けた試験を実施し良好な結果を得ました。2023年前半に再申請、2023年後半の承認取得を見込んでいます。「CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)」「MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)」の2つのパイプラインについて米国での臨床開発を実施中であり、「MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン含有貼付剤)」についても治験許可申請をFDAに提出して、臨床試験開始の許可を得ています。また、当社グループではこれらの貼付剤パイプラインとは別に、無痛での自己接種が可能で従来の接種方法と比べて高い免疫応答が期待できる、ワクチン等の投与デバイスであるマイクロニードルの研究開発に取り組んでいます。世界でまだ数ヶ所しかない医療用医薬品/ワクチン用途のマイクロニードル治験薬工場を2020年4月より稼働させており、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。 当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。 <開発コード CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。米国における筋弛緩薬市場は、2021年において約1,400億円(1,285 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。2017年4月に、インドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、以下「Cipla」)の米国100%子会社であるCipla USA Inc.(米国デラウエア州ウィルミントン)との間で、CPN-101(MRX-4TZT)に関する世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結しました。その後、Ciplaグループ内の再編により、契約相手先はCipla Technologies, LLC(米国カリフォルニア州サンディエゴ、以下「Cipla Tech」)に変更となっております。筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。2019年9月に臨床第Ⅰ相反復PK(Pharmacokinetics)試験(P1b)が成功裡に完了し、臨床第Ⅱ相試験の準備を進めています。臨床第Ⅱ相試験は、米国にて痙性麻痺患者を対象とした最長4週間の用量増加試験を計画しています。臨床第Ⅱ相以降の開発及び事業化はCipla Techが実施することを開発・販売ライセンス契約において定めていますが、2020年2月にCiplaの全社戦略変更(中枢神経関連の開発候補品については、資金投入を抑制してアウトライセンスする方針)を受けてCipla Techから今後の開発の進め方について申し入れがあり協議を続けています。現時点において、今後の開発の進め方について当社とCipla Techとの間で新たに決定した事実はありませんが(新たな事項が決定された場合は速やかに適時開示します。)、1日でも早く開発再開することで本パイプラインの価値向上を図りたい当社グループとして、当社グループが臨床第Ⅱ相試験費用の一部又は全部を負担することを本線として協議を進めています。 <開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤、商標名Lydolyte)> ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidoderm®の市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めている製品です。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2021年において約270億円(246 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。2020年4月に株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(愛知県名古屋市、D. Western Therapeutics Institute、以下「DWTI」)と米国における共同開発契約を締結して以降、DWTIと共同で開発を進めています。MRX-5LBTは、これまでの臨床試験結果より、先行指標品であるLidoderm®より「皮膚刺激性が少なく」「貼付力に優れ」「運動時においても貼付力を保持できる」より良い製品として市場浸透することが期待されます。米国規制当局であるFDAから承認取得のために必要であると指摘を受けた試験に関して、試験内容詳細についてFDAと合意した上で追加実施し良好な結果を得て、再申請に向けた準備を進めています。2023年前半に承認申請を行い、6ヵ月間の審査期間を経て2023年後半に承認取得することを見込んでいます。 <開発コード MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)> フェンタニルは、オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に貼付剤としても広く使用されています。フェンタニル貼付剤においては、患者の使用後の貼付剤を幼児・小児が誤って噛んだり貼付したりすることで死亡する誤用事故が報告されており、米国で社会的な問題となっています。当社グループでは、オピオイド貼付剤における誤用事故の抑制・防止を目的とした独自技術を開発しており、その技術を適用したフェンタニルテープ剤について2019年5月にFDAと面談会議を実施し、幼児・小児に対する誤用事故防止機能を持った貼付剤は重要で価値のあるゴールであることを確認した上で、本格的な開発に取り掛かりました。2020年3月にFDAに治験許可申請(IND:Investigational New Drug application)を提出し、2020年9月に最初の臨床試験結果を得ました。予備的な臨床薬物動態(pilot PK:Pharmacokinetics)試験により、MRX-9FLTが参照製品と同様の血中濃度推移を示すことが確認できました。また、in vitro(実験室レベル)や動物実験で確認してきた誤用事故防止機能についても、ヒトでの有用性を予備的に確認することができました。2021年7月には、MRX-9FLTが持つ誤用事故防止機能が評価され、FDAからファスト・トラック指定(重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメットメディカルニーズの高い疾患に対して治療効果が期待される新薬を優先的に審査する制度。開発から審査までの迅速化を目的としている。ファスト・トラック指定により、臨床試験に関する相談などFDAと協議する機会がより多く与えられる)を受けています。現在、参照製品との生物学的同等性を示すための検証的な比較臨床試験、及び、誤用事故防止機能を検証するための試験に関して、FDAとも協議しながら開発を進めています。米国におけるフェンタニル貼付剤市場は、2021年において約170億円(154 million USドル)と推計されており(出所:IQVIA)、誤用事故防止という高付加価値化により、現市場の置き換えと更なる市場拡大を企図しています。 <開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。2018年12月に、治験前相談(pre IND meeting)に対する回答を米国規制当局であるFDAより入手し、当社グループが示した非臨床試験内容で臨床第Ⅰ相試験を開始するのに十分であることが確認されました。また、新薬承認取得に向けて、メマンチン経口剤との生物学的同等性を示すことができれば、MRX-7MLLの有効性を示す臨床試験(臨床第Ⅱ相試験、臨床第Ⅲ相試験)は必要ではないことも確認されました。これにより、早期の新薬承認申請(NDA)が可能になったと考えています。米国での臨床試験を実施するための非臨床試験、及び、製造委託先における治験薬製造が完了し、2021年11月に治験許可申請(IND)をFDAに提出して、臨床試験開始の許可を得ました。一方で、INDにおけるFDAとのやりとりの中で製剤改良に関する示唆・助言を得ました。FDAからの示唆・助言を反映する形で製剤を改良し一部の非臨床試験を追加実施した上で、臨床試験を開始する計画です。2021年において米国アルツハイマー治療薬市場は約400億円(366 million USドル)であり、そのうちメマンチン経口剤が約90億円(82 million USドル)を占めています(出所:IQVIA)。1日1回の経口剤に対して、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者が投薬状況を目視確認できる、3日に1回あるいは1週間に1回の貼付剤という選択肢を提供することにより、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者のQOL(quality of life)及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に貢献したいと考えています。 <開発コード MRX-6LDT:慢性疼痛治療薬(ジクロフェナック・リドカインテープ剤)>米国における慢性疼痛市場は2019年時点で約3.5兆円(31.5 billion USドル)であり、変形性関節症疼痛、慢性腰痛等の患者人口の増加等により2027年まで年平均成長率3.4%を記録すると予測されています(出所: Reportocean.com)。慢性疼痛市場にはジェネリック医薬品を含め多数の薬剤が存在し、新たなブランド薬が確固たる地位を築くことは容易ではありませんが、一方で、米国での慢性疼痛治療の基盤ともいえるオピオイド鎮痛薬の乱用リスクに対して米国社会全体から厳しい視線が集まっており、乱用リスクがなく有効性と安全性・忍容性に優れた慢性疼痛治療薬には大きな事業機会/潜在市場があると考えています。MRX-6LDTは、当社独自の経皮製剤技術ILTS®を用いて、消炎鎮痛作用を有するジクロフェナックと局所麻酔作用を有するリドカインの両薬物ともに高い経皮浸透を実現させるべく製剤開発したテープ型貼付剤であり、両薬物の相加的或いは相乗的な疼痛治療効果を最大限に発揮させることを企図しています。米国における大きな事業機会/潜在市場に向けて、まずは非臨床試験とそれに続く臨床第1相試験を実施して、MRX-6LDTの高い経皮浸透性及び製品ポテンシャルをヒトでのデータをもって確認することを計画しています。 <マイクロニードルアレイ>マイクロニードルアレイ(Micro Needle array、以下「MN」という)とは、生体分解性樹脂等から成る数百μmの微小針の集合体で、当社開発品は生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。MNは、注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の無痛経皮自己投与を可能にし、またワクチンや免疫性疾患においては「従来の注射剤と比べて高い免疫効果」が期待される、有望な投与デバイスとして注目されています。当社のMN技術は、鋭い針先と工夫された応力制御機構を持つアプリケータ(挿入器具)による「簡便で確実な投与」を特徴としています。臨床試験等においてヒトに投与できるGMP(Good Manufacturing Practice)規格品を製造するMN治験薬工場について、2020年4月から稼働開始し、2021年1月にはワクチンに用いられる病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にするためのバイオセーフティ対策を中心とした設備増強も完了しました。現在、量産化に向けた技術開発と並行して、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。フィージビリティスタディの一つとして、2021年8月に株式会社ファンペップ(大阪府茨木市)と抗体誘導ペプチドMN製剤についての共同研究を、2022年3月にコロンビア大学(米国ニューヨークシティ)と免疫賦活剤および抗がんペプチドとMNを組み合わせた乳がん治療のための共同研究を、2022年10月にVaxSyna Inc.(米国ニューハンプシャー州フランクリン)とヒトパピローマウイルスに対するワクチンとMNを組み合わせた子宮頸がんワクチンに関する共同研究を開始しています。当社グループでは、自己投与可能なワクチンMN製剤が、パンデミック発生時の医療体制堅持や医療インフラ未整備地域での公衆衛生向上に貢献できるものと確信しており、実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。 上述した開発候補品以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自で医薬品等の製剤開発を進めています。 <上市製品>当社グループでは、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「ヨードコート軟膏」等の製品を提携先の製薬会社を通じて販売しており、当連結累計期間の製品売上として9百万円を計上しました。なお、「ヨードコート軟膏」については、医療現場での安定供給責任を果たしつつ当社経営資源の有効活用を図るため、製造販売権を2022年12月に帝國製薬株式会社に譲渡しております。 当社の経皮製剤技術について 経皮吸収型医薬品には、嚥下障害等で経口投与が困難な患者にも投与可能、ファーストパスエフェクトを受けない、薬物の血液中の濃度を一定に保ち効果を持続させ易い、注射剤と異なり投与時に痛みを感じない等の様々な利点があります。疾患別に見ると、昨今の潮流として、疼痛治療用薬剤に加え、アルツハイマー病やうつ病のような精神疾患系薬剤においても、QOL及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に寄与する経皮吸収型製剤が、アンメット・メディカルニーズに応える形で開発及び市場投入されています。一方、皮膚は人体にとって外界からの異物の侵入に対する第一バリアであり、分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い等の、皮膚から浸透し易い特定の物理化学的性質を持つ薬物以外の薬物を経皮吸収させることは極めて困難です。当社では、イオン液体の特徴を利用した独自の経皮製剤技術ILTS®や薬物のナノコロイド化技術を利用した独自の経皮製剤技術NCTS®により、従来の技術では経皮吸収させることが困難であった難溶性薬物や核酸・ペプチドといった高分子に至る様々な薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることに成功しています。さらに、ILTS®やNCTS®をもってしても経皮吸収させることが困難な高分子のワクチン等については、マイクロニードルアレイによる投与方法の研究開発を行っております。 ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System) イオン液体とは、融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれています。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されています。当社では、薬物をイオン液体化する、或いは、イオン液体に薬物を溶解することにより、当該薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることができることを世界に先駆けて見出しました。現在までに、①人体への使用実績がある化合物の組み合わせによる安全性が高いと考えられるイオン液体ライブラリー、②対象薬物の経皮浸透性向上に適したイオン液体の選択に関するノウハウ、③薬物を含有するイオン液体をその特性を保持したまま使い勝手のよい形(貼り薬、塗り薬等)に製剤化するノウハウ等を蓄積しています。これらのノウハウ等も含めた独自の経皮吸収型製剤作製技術を総称して、ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)と呼んでいます。 NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System) 当社は、薬物をナノサイズのコロイドにすることで経皮吸収性が高まることを発見し、それによる製剤化技術をNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)と名付けました。アルツハイマー治療薬等をターゲットとした製剤開発を進めております。 AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System) 貼付剤における薬物の乱用及び誤用事故を抑制・防止するための、メドレックス独自の新たな製剤技術です。「低抽出性」「強い苦み」「再吸収抑制」「再貼付防止」の4つの技術から成っています。 *用語解説経皮吸収皮膚から(薬物を)体内に吸収・浸透させること。CRO(Contract Research Organization)医薬品開発業務受託機関。チザニジン 中枢性筋弛緩剤(脳や脊髄にある中枢神経に作用して筋肉の緊張を緩和する薬)の一種で、痛みを伴う肩こりや腰痛、五十肩、緊張性頭痛等の治療及び痙性麻痺等の筋肉がこわばる症状の治療に使用されている。リドカイン 神経末端において痛みの信号を遮断することにより痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種。フェンタニル オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に主に貼付剤として使用されている。メマンチン 脳内での過剰なグルタミン酸作用を抑えて神経細胞を保護するNMDA受容体拮抗薬で、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。製剤開発 飲み薬を貼り薬に、錠剤をゼリー剤にする等して、医薬品の剤型/投与方法を変えることにより、医薬品の有用性や安全性を高めるための研究開発。臨床試験 薬剤候補について、有効性と安全性を実証するために、ヒトを対象として実施する試験の総称。少数健常人を対象として安全性及び薬物動態を確認する第I相試験、少数患者を対象として有効性及び安全性を探索的に確認する第Ⅱ相試験、多数患者を対象として有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験に区分される。オピオイド ケシから採取されるアルカロイドやその関連の合成化合物及び内因性物質のうち麻薬性作用を持つ物質の総称。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどに代表されるオピオイド鎮痛薬は、強い鎮痛効果を有する一方で、薬物依存性が高く中毒症を引き起こしやすく、過剰容量摂取した場合には呼吸抑制や昏睡を引き起こして死に至る恐れがあることが知られている。コロイド コロイドとは、液体、固体あるいは気体にある粒子が均一に分散している状態をいい、ナノコロイドは、粒子がナノサイズのコロイド。非臨床試験 薬剤候補について、ヒトにおける試験を実施する上で十分な安全性と有効性があることの確認を目的として、主に動物を用いて行われる試験。上市 各国の規制当局により新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)こと。ヨードコート軟膏 商品名、褥瘡治療薬。褥瘡とは、患者が長期にわたり同じ体勢で寝たきり等になった場合、体と支持面(多くはベッド・布団)との接触局所で血行が不全となって、周辺組織に壊死を起こすものをいう。ファーストパスエフェクト 初回通過効果ともいう。経口摂取した薬物は、腸管から吸収され肝臓に入る。多くの薬物は、その一部が肝臓で代謝されてしまう(異なる化合物になる)ので、飲んだ薬の効果全てが全身(または患部)に届くわけではない。この肝臓通過による薬効減退効果のこと。QOL(Quality of Life) 不快に感じることを最大限に軽減し、できるだけ当人(患者)がこれでいいと思えるような生活が送れるようにすることを目指した、医療上の概念。アンメット・メディカルニーズまだ満たされていない医療上の必要性、未充足の医療ニーズ。イオン液体 融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれる。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されている。難溶性薬物水やその他の各種溶媒に対して溶けにくい性質を持つ薬物。核酸 遺伝子の構成成分である生体高分子。核酸には、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)がある。ペプチド 数個~数百個のアミノ酸がつながってできた物質の総称。インスリン等の糖尿病治療薬として使用されているものや、最近ではがんワクチンとして開発中のものも多い。生体分解性樹脂 ヒトの体内で分解され得るプラスチック素材。手術時の縫合糸等に使われているものもある。
FY2021|10,443 文字|出典 docID: S100NT3I
3 【事業の内容】当社グループは、当社独自の経皮吸収*型製剤技術を基に新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL*の向上に資することを企業理念としています。イオン液体の特徴を利用した独自の経皮吸収型製剤技術ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)、薬物のナノコロイド*化技術を利用した独自の経皮吸収型製剤技術NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術により、薬効の極大化、副作用の低減、飲み忘れ防止や経口投与が困難な患者への投与を可能にして、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しております。 当社グループは、当社、連結子会社MEDRx USA INC.の2社で構成されています。 当社グループの現在のビジネスモデルは、当社製剤技術により新たに創出(製剤開発*)した医薬品候補製剤を、医薬品としての製造販売承認を取得するために開発(非臨床試験*、臨床試験*)する過程で、製薬会社等との間で開発・販売・製造に関する適切な提携関係を築いて事業を推進していくものです。当社は、提携先の製薬会社等から、「契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンフィー」及び「上市*後の製品売上、ロイヤルティ」の形で収入を得ます。 医薬品候補製剤(開発パイプライン)の特性(市場性、開発費用)や、提携候補先製薬会社の当該パイプラインに対する取組姿勢を考慮した上で、開発パイプライン毎に当社の収益モデルを設計し、当社全体としてのリスクとリターンのバランスを取るためのポートフォリオを構築しながら成長していくことを目指しています。 当連結会計年度において、当社グループでは独自の経皮製剤技術であるILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)やNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術を用いて、低分子から高分子に至る様々な有効成分の経皮吸収性を飛躍的に向上させることにより新しい付加価値を持った医薬品を開発することを事業の中核に据え、製品化に向けた開発を推し進めるとともに提携候補先との契約交渉を行うなど事業の拡大を図ってきました。開発が最も進んでいる「MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)、商標名Lydolyte」については、米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA : Food and Drug Administration)から新薬承認申請(NDA:New Drug Application)についての審査完了報告通知を受領した後、指摘事項に応答してFDAと協議を行ってきました。FDAから承認取得のために必要であると指摘を受けた試験について追加実施した上で再申請する方針であり、2023年の承認取得を見込んでいます。「CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)」「MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)」の2つのパイプラインについて米国での臨床開発を実施中であり、「MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン含有貼付剤)」についても2022年に米国での臨床開発を開始することを計画しています。また、当社グループではこれらの貼付剤パイプラインとは別に、無痛での自己接種が可能で従来の接種方法と比べて高い免疫応答が期待できる、ワクチン等の投与デバイスであるマイクロニードルの研究開発に取り組んでいます。世界でまだ数ヶ所しかない医療用医薬品/ワクチン用途のマイクロニードル治験薬工場を2020年4月より稼働させており、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。 当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。 <開発コード CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。2017年4月に、インドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、以下「Cipla」)の米国100%子会社であるCipla USA Inc.(米国デラウエア州ウィルミントン)との間で、CPN-101(MRX-4TZT)に関する世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結しました。その後、Ciplaグループ内の再編により、契約相手先はCipla Technologies, LLC(米国カリフォルニア州サンディエゴ、以下「Cipla Tech」)に変更となっております。筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。2019年9月に臨床第Ⅰ相反復PK(Pharmacokinetics)試験(P1b)が成功裡に完了しています。臨床第Ⅱ相以降の開発及び事業化はCipla Techが実施することを開発・販売ライセンス契約において定めていますが、2020年2月にCiplaの全社戦略変更(中枢神経関連の開発候補品についてはアウトライセンスする方針)を受けてCipla Techから今後の開発の進め方について申し入れがあり、現在、臨床第Ⅱ相試験の準備を進めるのと並行して、Cipla Techと協議を続けています。 <開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤、商標名Lydolyte)>ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidoderm®の市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めている製品です。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2020年において約270億円(241 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。2020年4月に株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(愛知県名古屋市、D. Western Therapeutics Institute、以下「DWTI」)と米国における共同開発契約を締結して以降、DWTIと共同で開発を進めています。MRX-5LBTは、これまでの臨床試験結果より、先行指標品であるLidoderm®より「皮膚刺激性が少なく」「貼付力に優れ」「運動時においても貼付力を保持できる」より良い製品として市場浸透することが期待されます。米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA)に提出した新薬承認申請書(NDA)についての審査完了報告通知を受領した後、指摘事項に応答してFDAと協議を行ってきました。承認取得のために必要であると指摘を受けた試験について追加実施した上で再申請する方針であり、追加実施する試験内容についてFDAと協議を続けながら、承認取得に向けて開発を進めてまいります。2023年の承認取得を見込んでいます。 <開発コード MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)>フェンタニルは、オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に貼付剤としても広く使用されています。フェンタニル貼付剤においては、患者の使用後の貼付剤を幼児・小児が誤って噛んだり貼付したりすることで死亡する誤用事故が報告されており、米国で社会的な問題となっています。当社グループでは、オピオイド貼付剤における誤用事故の抑制・防止を目的とした独自技術を開発しており、その技術を適用したフェンタニルテープ剤について2019年5月にFDAと面談会議を実施し、幼児・小児に対する誤用事故防止機能を持った貼付剤は重要で価値のあるゴールであることを確認した上で、本格的な開発に取り掛かりました。2020年3月にFDAに治験許可申請(IND:Investigational New Drug application)を提出し、2020年9月に最初の臨床試験結果を得ました。予備的な臨床薬物動態(pilot PK:Pharmacokinetics)試験により、MRX-9FLTが参照製品と同様の血中濃度推移を示すことが確認できました。また、in vitro(実験室レベル)や動物実験で確認してきた誤用事故防止機能についても、ヒトでの有用性を予備的に確認することができました。2021年7月には、MRX-9FLTが持つ誤用事故防止機能が評価され、FDAからファスト・トラック指定(重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメットメディカルニーズの高い疾患に対して治療効果が期待される新薬を優先的に審査する制度。開発から審査までの迅速化を目的としている。ファスト・トラック指定により、臨床試験に関する相談などFDAと協議する機会がより多く与えられる)を受けています。現在、参照製品との生物学的同等性を示すための検証的な比較臨床試験、及び、誤用事故防止機能を検証するための試験に関して、FDAとも協議しながら開発を進めています。米国におけるフェンタニル貼付剤市場は、2020年において約210億円(193 million USドル)と推計されており(出所:IQVIA)、誤用事故防止という高付加価値化により、現市場の置き換えと更なる市場拡大を企図しています。 <開発コード MRX-1OXT:中枢性鎮痛貼付剤(オキシコドンテープ剤)>ILTS®によって、経皮難吸収性の中枢性鎮痛薬であるオキシコドンの経皮浸透度を飛躍的に高めたテープ型貼付剤です。オピオイド貼付剤における乱用及び誤用の抑制・防止を目的として開発した当社独自の新たな経皮吸収型製剤技術AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System)を用いたMRX-1OXTについて、2018年2月に、単回PK試験(P1a)においてMRX-1OXTは疼痛治療に十分な血中薬物濃度を実現できる可能性が高いことが示されました。P1a終了後は、製剤の粘着性等の改良を進めてきました。米国では、オキシコドンを始めとする強い鎮痛作用を有するオピオイド鎮痛剤が大きな市場(2016年 約7,500億円、出所:FDA 2018年3月1日付“FDA Analysis of Long-Term Trends in Prescription Opioid Analgesic Products: Quantity, Sales, and Price Trends”より推計)を形成しています。その一方で、オピオイド鎮痛剤の乱用から2014年には200万人が薬物依存に陥り、オピオイド鎮痛剤の過量摂取により1999年から2015年にかけて18万人以上が死亡する等、オピオイドの乱用及び誤用事故が大きな社会問題となっており、トランプ米大統領(当時)がオピオイド乱用の蔓延について「公衆衛生の非常事態」を宣言するなど、米国政府・規制当局は重点的にその対策に取り組んでいます。そういった状況の下、オピオイド乱用について製薬会社に対する巨額訴訟が相次ぎ、2019年9月にはオキシコドン経口剤の最大手の製造販売元であったパーデュー・ファーマ社が補償負担に耐えかねて経営破綻に追い込まれる事態となる等、オピオイド系新薬についての製薬会社の開発・導入意欲は大きく減退しています。当社では、AMRTS®を用いたMRX-1OXTはより安全で安定した疼痛管理をもたらすものと期待していますが、上記の導出環境の悪化を踏まえ、MRX-1OXTについては新薬承認取得しないと提携・事業化することは困難であるとの判断に至りました。そして、同じオピオイド貼付剤として、MRX-1OXTと比べて市場ポテンシャルは劣るものの、新薬承認取得可能性が高く、新薬承認取得までの開発費も少額と見込まれる、MRX-9FLTの開発を優先する方針としています。 <開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。2018年12月に、治験前相談(pre IND meeting)に対する回答を米国規制当局であるFDAより入手し、当社グループが示した非臨床試験内容で臨床第Ⅰ相試験を開始するのに十分であることが確認されました。また、新薬承認取得に向けて、メマンチン経口剤との生物学的同等性を示すことができれば、MRX-7MLLの有効性を示す臨床試験(臨床第Ⅱ相試験、臨床第Ⅲ相試験)は必要ではないことも確認されました。これにより、早期の新薬承認申請(NDA)が可能になったと考えています。米国での臨床試験を実施するための非臨床試験、及び、製造委託先における治験薬製造が完了し、2021年11月に治験許可申請(IND)をFDAに提出しました。2022年の臨床試験開始に向けて準備を進めています。 2020年において米国アルツハイマー治療薬市場は約520億円(475 million USドル)であり、そのうちメマンチン経口剤が約120億円(106 million USドル)を占めています(出所:IQVIA)。1日1回の経口剤に対して、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者が投薬状況を目視確認できる、3日に1回あるいは1週間に1回の貼付剤という選択肢を提供することにより、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者のQOL(quality of life)及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に貢献したいと考えています。 <開発コード MRX-6LDT:慢性疼痛治療薬(ジクロフェナック・リドカインテープ剤)>米国における慢性疼痛市場は2019年時点で約3.5兆円(31.5 billion USドル)であり、変形性関節症疼痛、慢性腰痛等の患者人口の増加等により2027年まで年平均成長率3.4%を記録すると予測されています(出所: Reportocean.com)。慢性疼痛市場にはジェネリック医薬品を含め多数の薬剤が存在し、新たなブランド薬が確固たる地位を築くことは容易ではありませんが、一方で、米国での慢性疼痛治療の基盤ともいえるオピオイド鎮痛薬の乱用リスクに対して米国社会全体から厳しい視線が集まっており、乱用リスクがなく有効性と安全性・忍容性に優れた慢性疼痛治療薬には大きな事業機会/潜在市場があると考えています。MRX-6LDTは、当社独自の経皮製剤技術ILTS®を用いて、消炎鎮痛作用を有するジクロフェナックと局所麻酔作用を有するリドカインの両薬物ともに高い経皮浸透を実現させるべく製剤開発したテープ型貼付剤であり、両薬物の相加的或いは相乗的な疼痛治療効果を最大限に発揮させることを企図しています。米国における大きな事業機会/潜在市場に向けて、まずは非臨床試験とそれに続く臨床第1相試験を実施して、MRX-6LDTの高い経皮浸透性及び製品ポテンシャルをヒトでのデータをもって確認することを計画しています。<マイクロニードルアレイ>マイクロニードルアレイ(Micro Needle array、以下「MN」という)とは、生体分解性樹脂等から成る数百μmの微小針の集合体で、当社開発品は生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。MNは、注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の無痛経皮自己投与を可能にし、またワクチンや免疫性疾患においては「従来の注射剤と比べて高い免疫効果」が期待される、有望な投与デバイスとして注目されています。当社のMN技術は、鋭い針先と工夫された応力制御機構を持つアプリケータ(挿入器具)による「簡便で確実な投与」を特徴としています。臨床試験等においてヒトに投与できるGMP(Good Manufacturing Practice)規格品を製造するMN治験薬工場について、2020年4月から稼働開始し、2021年1月にはワクチンに用いられる病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にするためのバイオセーフティ対策を中心とした設備増強も完了しました。現在、量産化に向けた技術開発と並行して、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。フィージビリティスタディの一つとして、2021年8月に株式会社ファンペップ(大阪府茨木市)と抗体誘導ペプチドMN製剤についての共同研究を開始しています。当社グループでは、自己投与可能なワクチンMN製剤が、パンデミック発生時の医療体制堅持や医療インフラ未整備地域での公衆衛生向上に貢献できるものと確信しており、実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。 上述した開発候補品以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自で医薬品等の製剤開発を進めています。 <上市製品>当社グループでは、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「ヨードコート軟膏」等の製品を提携先の製薬会社を通じて販売しており、当連結会計年度の製品売上として8百万円を計上しました。 当社の経皮製剤技術について 経皮吸収型医薬品には、嚥下障害等で経口投与が困難な患者にも投与可能、ファーストパスエフェクトを受けない、薬物の血液中の濃度を一定に保ち効果を持続させ易い、注射剤と異なり投与時に痛みを感じない等の様々な利点があります。疾患別に見ると、昨今の潮流として、疼痛治療用薬剤に加え、アルツハイマー病やうつ病のような精神疾患系薬剤においても、QOL及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に寄与する経皮吸収型製剤が、アンメット・メディカルニーズに応える形で開発及び市場投入されています。一方、皮膚は人体にとって外界からの異物の侵入に対する第一バリアであり、分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い等の、皮膚から浸透し易い特定の物理化学的性質を持つ薬物以外の薬物を経皮吸収させることは極めて困難です。当社では、イオン液体の特徴を利用した独自の経皮製剤技術ILTS®や薬物のナノコロイド化技術を利用した独自の経皮製剤技術NCTS®により、従来の技術では経皮吸収させることが困難であった難溶性薬物や核酸・ペプチドといった高分子に至る様々な薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることに成功しています。さらに、ILTS®やNCTS®をもってしても経皮吸収させることが困難な高分子のワクチン等については、マイクロニードルアレイによる投与方法の研究開発を行っております。 ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System) イオン液体とは、融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれています。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されています。当社では、薬物をイオン液体化する、或いは、イオン液体に薬物を溶解することにより、当該薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることができることを世界に先駆けて見出しました。現在までに、①人体への使用実績がある化合物の組み合わせによる安全性が高いと考えられるイオン液体ライブラリー、②対象薬物の経皮浸透性向上に適したイオン液体の選択に関するノウハウ、③薬物を含有するイオン液体をその特性を保持したまま使い勝手のよい形(貼り薬、塗り薬等)に製剤化するノウハウ等を蓄積しています。これらのノウハウ等も含めた独自の経皮吸収型製剤作製技術を総称して、ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)と呼んでいます。 NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System) 当社は、薬物をナノサイズのコロイドにすることで経皮吸収性が高まることを発見し、それによる製剤化技術をNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)と名付けました。アルツハイマー治療薬等をターゲットとした製剤開発を進めております。 AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System) 貼付剤における薬物の乱用及び誤用事故を抑制・防止するための、メドレックス独自の新たな製剤技術です。「低抽出性」「強い苦み」「再吸収抑制」「再貼付防止」の4つの技術から成っています。 *用語解説経皮吸収皮膚から(薬物を)体内に吸収・浸透させること。CRO(Contract Research Organization)医薬品開発業務受託機関。チザニジン 中枢性筋弛緩剤(脳や脊髄にある中枢神経に作用して筋肉の緊張を緩和する薬)の一種で、痛みを伴う肩こりや腰痛、五十肩、緊張性頭痛等の治療及び痙性麻痺等の筋肉がこわばる症状の治療に使用されている。オキシコドン 中枢性鎮痛薬(脳や脊髄にある中枢神経に作用して痛みを抑制する薬)の一種で、医療用麻薬に指定されており、重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に使用されている。リドカイン 神経末端において痛みの信号を遮断することにより痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種。フェンタニル オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に主に貼付剤として使用されている。メマンチン 脳内での過剰なグルタミン酸作用を抑えて神経細胞を保護するNMDA受容体拮抗薬で、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。製剤開発 飲み薬を貼り薬に、錠剤をゼリー剤にする等して、医薬品の剤型/投与方法を変えることにより、医薬品の有用性や安全性を高めるための研究開発。臨床試験 薬剤候補について、有効性と安全性を実証するために、ヒトを対象として実施する試験の総称。少数健常人を対象として安全性及び薬物動態を確認する第I相試験、少数患者を対象として有効性及び安全性を探索的に確認する第Ⅱ相試験、多数患者を対象として有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験に区分される。オピオイド ケシから採取されるアルカロイドやその関連の合成化合物及び内因性物質のうち麻薬性作用を持つ物質の総称。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどに代表されるオピオイド鎮痛薬は、強い鎮痛効果を有する一方で、薬物依存性が高く中毒症を引き起こしやすく、過剰容量摂取した場合には呼吸抑制や昏睡を引き起こして死に至る恐れがあることが知られている。コロイド コロイドとは、液体、固体あるいは気体にある粒子が均一に分散している状態をいい、ナノコロイドは、粒子がナノサイズのコロイド。非臨床試験 薬剤候補について、ヒトにおける試験を実施する上で十分な安全性と有効性があることの確認を目的として、主に動物を用いて行われる試験。上市 各国の規制当局により新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)こと。ヨードコート軟膏 商品名、褥瘡治療薬。褥瘡とは、患者が長期にわたり同じ体勢で寝たきり等になった場合、体と支持面(多くはベッド・布団)との接触局所で血行が不全となって、周辺組織に壊死を起こすものをいう。ファーストパスエフェクト 初回通過効果ともいう。経口摂取した薬物は、腸管から吸収され肝臓に入る。多くの薬物は、その一部が肝臓で代謝されてしまう(異なる化合物になる)ので、飲んだ薬の効果全てが全身(または患部)に届くわけではない。この肝臓通過による薬効減退効果のこと。QOL(Quality of Life) 不快に感じることを最大限に軽減し、できるだけ当人(患者)がこれでいいと思えるような生活が送れるようにすることを目指した、医療上の概念。アンメット・メディカルニーズまだ満たされていない医療上の必要性、未充足の医療ニーズ。イオン液体 融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれる。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されている。難溶性薬物水やその他の各種溶媒に対して溶けにくい性質を持つ薬物。核酸 遺伝子の構成成分である生体高分子。核酸には、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)がある。ペプチド 数個~数百個のアミノ酸がつながってできた物質の総称。インスリン等の糖尿病治療薬として使用されているものや、最近ではがんワクチンとして開発中のものも多い。生体分解性樹脂 ヒトの体内で分解され得るプラスチック素材。手術時の縫合糸等に使われているものもある。
FY2020|9,627 文字|出典 docID: S100L25D
3 【事業の内容】当社グループは、当社独自の経皮吸収*型製剤技術を基に新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL*の向上に資することを企業理念としています。イオン液体の特徴を利用した独自の経皮吸収型製剤技術ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)、薬物のナノコロイド*化技術を利用した独自の経皮吸収型製剤技術NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術により、薬効の極大化、副作用の低減、飲み忘れ防止や経口投与が困難な患者への投与を可能にして、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しております。 当社グループは、当社、連結子会社MEDRx USA INC.の2社で構成されています。 当社グループの現在のビジネスモデルは、当社製剤技術により新たに創出(製剤開発*)した医薬品候補製剤を、医薬品としての製造販売承認を取得するために開発(非臨床試験*、臨床試験*)する過程で、製薬会社等との間で開発・販売・製造に関する適切な提携関係を築いて事業を推進していくものです。当社は、提携先の製薬会社等から、「契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンフィー」及び「上市*後の製品売上、ロイヤルティ」の形で収入を得ます。 医薬品候補製剤(開発パイプライン)の特性(市場性、開発費用)や、提携候補先製薬会社の当該パイプラインに対する取組姿勢を考慮した上で、開発パイプライン毎に当社の収益モデルを設計し、当社全体としてのリスクとリターンのバランスを取るためのポートフォリオを構築しながら成長していくことを目指しています。 当連結会計年度において、当社グループでは独自の経皮製剤技術であるILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)やNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術を用いて、低分子から高分子に至る様々な有効成分の経皮吸収性を飛躍的に向上させることにより新しい付加価値を持った医薬品を開発することを事業の中核に据え、製品化に向けた開発を推し進めるとともに提携候補先との契約交渉を行うなど事業の拡大を図ってきました。開発が最も進んでいる「MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)、商標名Lydolyte」については、米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA : Food and Drug Administration)に新薬承認申請(NDA:New Drug Application)を提出しています。「CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)」「MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)」の2つのパイプラインについて米国での臨床開発を実施中であり、「MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン含有貼付剤)」についても早期に米国での臨床開発を開始することを計画しています。また、当社グループではこれらの貼付剤パイプラインとは別に、無痛での自己接種が可能で従来の接種方法と比べて高い免疫応答が期待できる、ワクチン等の投与デバイスであるマイクロニードルの研究開発に取り組んでおり、世界でまだ数ヶ所しかない医療用医薬品/ワクチン用途のマイクロニードル治験薬工場を2020年4月より稼働させています。 当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。 <開発コード CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。2017年4月に、インドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、以下「Cipla」)の米国100%子会社であるCipla USA Inc.(米国デラウエア州ウィルミントン)との間で、CPN-101(MRX-4TZT)に関する世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結しました。その後、Ciplaグループ内の再編により、契約相手先はCipla Technologies, LLC(米国カリフォルニア州サンディエゴ、以下「Cipla Tech」)に変更となっております。筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。2019年9月に臨床第Ⅰ相反復PK(Pharmacokinetics)試験(P1b)において、事前に規定していた基準を満たした結果を得ました。しかし、COVID-19の全世界的な感染拡大の影響等により、2020年には第Ⅱ相臨床試験を開始するに至りませんでした。現在、第Ⅱ相臨床試験の準備を進めるのと並行して、Cipla Techとの間で今後の開発の進め方について協議中です。 <開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤、商標名Lydolyte)>ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidoderm®の市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めている製品です。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2019年において約500億円(460 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。MRX-5LBTは、これまでの臨床試験結果より、先行指標品であるLidoderm®より「皮膚刺激性が少なく」「貼付力に優れ」「運動時においても貼付力を保持できる」より良い製品として市場浸透することが期待されます。2020年8月に米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA)に新薬承認申請書(NDA)を提出し、10月に新薬承認申請要件を満たしていることがFDAにより確認されNDAが受理されました。標準的な事例からの推測として、2021年後半の審査完了・承認取得、2022年の上市を見込んでいます。また、2020年4月に株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(愛知県名古屋市、D. Western Therapeutics Institute、以下「DWTI」)と米国における共同開発契約を締結しました。DWTIとの契約に基づき、2020年11月に事業化進捗一時金(マイルストン収入)を受領しました。 <開発コード MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)>フェンタニルは、オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に貼付剤としても広く使用されています。フェンタニル貼付剤においては、患者の使用後の貼付剤を幼児・小児が誤って噛んだり貼付したりすることで死亡する誤用事故が報告されており、米国で社会的な問題となっています。当社グループでは、オピオイド貼付剤における誤用事故の抑制・防止を目的とした独自技術を開発しており、その技術を適用したフェンタニルテープ剤について2019年5月にFDAと面談会議を実施し、幼児・小児に対する誤用事故防止機能を持った貼付剤は重要で価値のあるゴールであることを確認しています。2020年3月にFDAに治験許可申請(IND:Investigational New Drug application)を提出し、2020年9月に最初の臨床試験結果を得ました。予備的な臨床薬物動態(pilot PK:Pharmacokinetics)試験により、MRX-9FLTが参照製品であるDuragesic®と同様の血中濃度推移を示すことが確認できました。また、in vitro(実験室レベル)や動物実験で確認してきた誤用事故防止機能についても、ヒトでの有用性を予備的に確認することができました。今後は、参照製品Duragesic®との生物学的同等性を示すための検証的な比較臨床試験、及び、誤用事故防止機能を検証するための試験の実施に向けて、FDAとも協議しながら開発を進めてまいります。米国におけるフェンタニル貼付剤市場は、2019年において約260億円(243 million USドル)と推計されており(出所:IQVIA)、誤用事故防止という高付加価値化により、現市場の置き換えと市場拡大を企図しています。 <開発コード MRX-1OXT:中枢性鎮痛貼付剤(オキシコドンテープ剤)>ILTS®によって、経皮難吸収性の中枢性鎮痛薬であるオキシコドンの経皮浸透度を飛躍的に高めたテープ型貼付剤です。オピオイド貼付剤における乱用及び誤用の抑制・防止を目的として開発した当社独自の新たな経皮吸収型製剤技術AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System)を用いたMRX-1OXTについて、2018年2月に、単回PK試験(P1a)においてMRX-1OXTは疼痛治療に十分な血中薬物濃度を実現できる可能性が高いことが示されました。P1a終了後は、製剤の粘着性等の改良を進めてきました。米国では、オキシコドンを始めとする強い鎮痛作用を有するオピオイド鎮痛剤が大きな市場(2016年 約7,500億円、出所:FDA 2018年3月1日付“FDA Analysis of Long-Term Trends in Prescription Opioid Analgesic Products: Quantity, Sales, and Price Trends”より推計)を形成しています。その一方で、オピオイド鎮痛剤の乱用から2014年には200万人が薬物依存に陥り、オピオイド鎮痛剤の過量摂取により1999年から2015年にかけて18万人以上が死亡する等、オピオイドの乱用及び誤用事故が大きな社会問題となっており、トランプ米大統領(当時)がオピオイド乱用の蔓延について「公衆衛生の非常事態」を宣言するなど、米国政府・規制当局は重点的にその対策に取り組んでいます。そういった状況の下、オピオイド乱用について製薬会社に対する巨額訴訟が相次ぎ、2019年9月にはオキシコドン経口剤の最大手の製造販売元であったパーデュー・ファーマ社が補償負担に耐えかねて経営破綻に追い込まれる事態となる等、オピオイド系新薬についての製薬会社の開発・導入意欲は大きく減退しています。当社では、AMRTS®を用いたMRX-1OXTはより安全で安定した疼痛管理をもたらすものと期待していますが、上記の導出環境の悪化を踏まえ、MRX-1OXTについては新薬承認取得しないと提携・事業化することは困難であるとの判断に至りました。そして、同じオピオイド貼付剤として、MRX-1OXTと比べて市場ポテンシャルは劣るものの、新薬承認取得可能性が高く、新薬承認取得までの開発費も少額と見込まれる、MRX-9FLTの開発を優先する方針としています。 <開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。2018年12月に、治験前相談(pre IND meeting)に対する回答を米国規制当局であるFDAより入手し、当社グループが示した非臨床試験内容で第Ⅰ相臨床試験を開始するのに十分であることが確認されました。また、新薬承認取得に向けて、メマンチン経口剤との生物学的同等性を示すことができれば、MRX-7MLLの有効性を示す臨床試験(第Ⅱ相臨床試験、第Ⅲ相臨床試験)は必要ではないことも確認されました。これにより、早期の新薬承認申請(NDA)が可能になったと考えています。米国での臨床試験を実施するための非臨床試験が完了し、現在、商業生産までを見越した製造委託先を選定中です。COVID-19の全世界的な感染拡大の影響等により、製造委託先の選定・技術移管に想定以上に時間を要しており、2020年中の臨床試験開始には至りませんでした。治験薬製造が完了次第、治験許可申請(IND)をFDAに提出予定です。2017年において米国アルツハイマー治療薬市場は約1,500億円であり、そのうちメマンチン経口剤が約750億円を占めています(出所:Datamonitor Healthcare by Informa PLC)。1日1回の経口剤に対して、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者が投薬状況を目視確認できる、3日に1回あるいは1週間に1回の貼付剤という選択肢を提供することにより、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者のQOL(quality of life)及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に貢献したいと考えています。 <マイクロニードルアレイ>マイクロニードルアレイ(Micro Needle array、以下「MN」という)とは、生体分解性樹脂等から成る数百μmの微小針の集合体で、当社開発品は生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。MNは、注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の無痛経皮自己投与を可能にし、またワクチンや免疫性疾患においては従来の注射剤と比べて高い免疫効果が期待される、有望な投与デバイスとして注目されています。資金不足のため計画を中断していたMN治験薬工場について、2019年度の売上収入を充当して整備を進め、2020年4月に稼働開始しました。臨床試験等においてヒトに投与できるGMP(Good Manufacturing Practice)規格品を製造できる体制が整っています。また、2021年1月には、ワクチンに用いられる病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にするためのバイオセーフティ対策を中心としたMN治験薬工場の設備増強も完了しました。現在、量産化に向けた技術開発と並行して、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。当社グループでは、自己投与可能なワクチンMN製剤が、パンデミック発生時の医療体制堅持や医療インフラ未整備地域での公衆衛生向上に貢献できるものと確信しており、実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。 上述した開発候補品以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自で医薬品等の製剤開発を進めています。 <上市製品>当社グループでは、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「ヨードコート軟膏」等の製品を提携先の製薬会社を通じて販売しており、当連結会計年度において製品売上として15百万円を計上しました。 当社の経皮製剤技術について 経皮吸収型医薬品には、嚥下障害等で経口投与が困難な患者にも投与可能、ファーストパスエフェクトを受けない、薬物の血液中の濃度を一定に保ち効果を持続させ易い、注射剤と異なり投与時に痛みを感じない等の様々な利点があります。疾患別に見ると、昨今の潮流として、疼痛治療用薬剤に加え、アルツハイマー病やうつ病のような精神疾患系薬剤においても、QOL及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に寄与する経皮吸収型製剤が、アンメット・メディカルニーズに応える形で開発及び市場投入されています。一方、皮膚は人体にとって外界からの異物の侵入に対する第一バリアであり、分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い等の、皮膚から浸透し易い特定の物理化学的性質を持つ薬物以外の薬物を経皮吸収させることは極めて困難です。当社では、イオン液体の特徴を利用した独自の経皮製剤技術ILTS®や薬物のナノコロイド化技術を利用した独自の経皮製剤技術NCTS®により、従来の技術では経皮吸収させることが困難であった難溶性薬物や核酸・ペプチドといった高分子に至る様々な薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることに成功しています。さらに、ILTS®やNCTS®をもってしても経皮吸収させることが困難な高分子のワクチン等については、マイクロニードルアレイによる投与方法の研究開発を行っております。 ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System) イオン液体とは、融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれています。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されています。当社では、薬物をイオン液体化する、或いは、イオン液体に薬物を溶解することにより、当該薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることができることを世界に先駆けて見出しました。現在までに、①人体への使用実績がある化合物の組み合わせによる安全性が高いと考えられるイオン液体ライブラリー、②対象薬物の経皮浸透性向上に適したイオン液体の選択に関するノウハウ、③薬物を含有するイオン液体をその特性を保持したまま使い勝手のよい形(貼り薬、塗り薬等)に製剤化するノウハウ等を蓄積しています。これらのノウハウ等も含めた独自の経皮吸収型製剤作製技術を総称して、ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)と呼んでいます。最近の研究成果として、当社と徳島大学が共同で実施した「イオン液体を用いた経皮吸収型がんペプチドワクチン開発に関する検討」について、第36回日本DDS学会(2020年8月)において発表しております。また、当社と東京医科歯科大学が共同で実施したILTS®を用いた「がん抑制型miRNA-634の経皮投与によるEGFR阻害剤の治療効果の増強」について、国際科学雑誌Molecular Therapy – Oncolytics オンライン版で発表しております(2020年11月)。 NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System) 当社は、薬物をナノサイズのコロイドにすることで経皮吸収性が高まることを発見し、それによる製剤化技術をNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)と名付けました。アルツハイマー治療薬等をターゲットとした製剤開発を進めております。 AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System) 貼付剤における薬物の乱用及び誤用事故を抑制・防止するための、メドレックス独自の新たな製剤技術です。「低抽出性」「強い苦み」「再吸収抑制」「再貼付防止」の4つの技術から成っています。 *用語解説経皮吸収皮膚から(薬物を)体内に吸収・浸透させること。CRO(Contract Research Organization)医薬品開発業務受託機関。チザニジン 中枢性筋弛緩剤(脳や脊髄にある中枢神経に作用して筋肉の緊張を緩和する薬)の一種で、痛みを伴う肩こりや腰痛、五十肩、緊張性頭痛等の治療及び痙性麻痺等の筋肉がこわばる症状の治療に使用されている。オキシコドン 中枢性鎮痛薬(脳や脊髄にある中枢神経に作用して痛みを抑制する薬)の一種で、医療用麻薬に指定されており、重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に使用されている。リドカイン 神経末端において痛みの信号を遮断することにより痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種。フェンタニル オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に主に貼付剤として使用されている。メマンチン 脳内での過剰なグルタミン酸作用を抑えて神経細胞を保護するNMDA受容体拮抗薬で、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。製剤開発 飲み薬を貼り薬に、錠剤をゼリー剤にする等して、医薬品の剤型/投与方法を変えることにより、医薬品の有用性や安全性を高めるための研究開発。臨床試験 薬剤候補について、有効性と安全性を実証するために、ヒトを対象として実施する試験の総称。少数健常人を対象として安全性及び薬物動態を確認する第I相試験、少数患者を対象として有効性及び安全性を探索的に確認する第Ⅱ相試験、多数患者を対象として有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験に区分される。オピオイド ケシから採取されるアルカロイドやその関連の合成化合物及び内因性物質のうち麻薬性作用を持つ物質の総称。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどに代表されるオピオイド鎮痛薬は、強い鎮痛効果を有する一方で、薬物依存性が高く中毒症を引き起こしやすく、過剰容量摂取した場合には呼吸抑制や昏睡を引き起こして死に至る恐れがあることが知られている。コロイド コロイドとは、液体、固体あるいは気体にある粒子が均一に分散している状態をいい、ナノコロイドは、粒子がナノサイズのコロイド。非臨床試験 薬剤候補について、ヒトにおける試験を実施する上で十分な安全性と有効性があることの確認を目的として、主に動物を用いて行われる試験。上市 各国の規制当局により新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)こと。ヨードコート軟膏 商品名、褥瘡治療薬。褥瘡とは、患者が長期にわたり同じ体勢で寝たきり等になった場合、体と支持面(多くはベッド・布団)との接触局所で血行が不全となって、周辺組織に壊死を起こすものをいう。ファーストパスエフェクト 初回通過効果ともいう。経口摂取した薬物は、腸管から吸収され肝臓に入る。多くの薬物は、その一部が肝臓で代謝されてしまう(異なる化合物になる)ので、飲んだ薬の効果全てが全身(または患部)に届くわけではない。この肝臓通過による薬効減退効果のこと。QOL(Quality of Life) 不快に感じることを最大限に軽減し、できるだけ当人(患者)がこれでいいと思えるような生活が送れるようにすることを目指した、医療上の概念。アンメット・メディカルニーズまだ満たされていない医療上の必要性、未充足の医療ニーズ。イオン液体 融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれる。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されている。難溶性薬物水やその他の各種溶媒に対して溶けにくい性質を持つ薬物。核酸 遺伝子の構成成分である生体高分子。核酸には、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)がある。ペプチド 数個~数百個のアミノ酸がつながってできた物質の総称。インスリン等の糖尿病治療薬として使用されているものや、最近ではがんワクチンとして開発中のものも多い。生体分解性樹脂 ヒトの体内で分解され得るプラスチック素材。手術時の縫合糸等に使われているものもある。
FY2019|10,221 文字|出典 docID: S100IC3U
3 【事業の内容】当社グループは、当社独自の経皮吸収*型製剤技術を基に新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL*の向上に資することを企業理念としています。イオン液体の特徴を利用した独自の経皮吸収型製剤技術ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)、薬物のナノコロイド*化技術を利用した独自の経皮吸収型製剤技術NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術により、薬効の極大化、副作用の低減、飲み忘れ防止や経口投与が困難な患者への投与を可能にして、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しております。 当社グループは、当社、連結子会社MEDRx USA INC.の2社で構成されています。 当社グループの現在のビジネスモデルは、当社製剤技術により新たに創出(製剤開発*)した医薬品候補製剤を、医薬品としての製造販売承認を取得するために開発(非臨床試験*、臨床試験*)する過程で、製薬会社等との間で開発・販売・製造に関する適切な提携関係を築いて事業を推進していくものです。当社は、提携先の製薬会社等から、「契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンフィー」及び「上市*後の製品売上、ロイヤルティ」の形で収入を得ます。 医薬品候補製剤(開発パイプライン)の特性(市場性、開発費用)や、提携候補先製薬会社の当該パイプラインに対する取組姿勢を考慮した上で、開発パイプライン毎に当社の収益モデルを設計し、当社全体としてのリスクとリターンのバランスを取るためのポートフォリオを構築しながら成長していくことを目指しています。 当連結会計年度において、当社グループでは独自の経皮製剤技術であるILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)やNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)、並びにマイクロニードルアレイ技術を用いて、低分子から高分子に至る様々な有効成分の経皮吸収性を飛躍的に向上させることにより、新しい付加価値を持った医薬品を開発することを事業の中核に据え、「CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)」「MRX-1OXT:中枢性鎮痛貼付剤(オキシコドンテープ剤)」「MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)」「MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン含有貼付剤)」の4つの自社起源パイプラインについて、製品化に向けた開発を推し進めてきました。また、当連結会計年度において共同開発契約あるいは技術ライセンス契約を製薬会社と締結した2つの協業パイプラインについても、提携先製薬会社と共同であるいは提携先製薬会社をサポートする形で製品化に向けた開発を推し進めてきました。加えて、後続パイプラインの研究開発及び提携候補先との契約交渉を行うなど、事業の拡大を図ってきました。 当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。 <開発コード CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。2017年4月に、インドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、CEO:Umang Vohra、以下「Cipla」という。)の米国100%子会社であるCipla USA Inc.(米国デラウエア州ウィルミントン、CEO:Nikhil Lalwani)との間で、CPN-101(MRX-4TZT)に関する世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結しました。その後、Ciplaグループ内の再編により、契約相手先はCipla Technologies, LLC(米国カリフォルニア州サンディエゴ、CEO:Chandru Chawla、以下「Cipla Tech」という。)に変更となっております。現在、筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。2019年9月に臨床第I相反復PK(Pharmacokinetics)試験(P1b)において、事前に規定していた基準を満たした結果を得ました。この試験成功により、Cipla Techと締結している開発・販売ライセンス契約に基づいて、開発マイルストン100万米ドルを受領しました。今後の開発については、Cipla Techが主体となり臨床第Ⅱ相試験を準備中です。 <開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)>ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidoderm®の市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めている製品です。2018年6月に先行指標品であるLidoderm®との検証的な比較臨床試験において、505b2開発過程の中で最も重要な指標であるLidoderm®との生物学的同等性を示す結果を得ました。その後、新薬承認申請(NDA:New Drug Application)に向けたデータパッケージについて米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA :Food and Drug Administration)と協議を行っておりましたが、2018年11月の面談会議の結果、MRX-5LBTが慢性疾患治療薬として長期に亘り連続使用される可能性が十分あることより、長期の安全性を確認する試験を中心に、当初想定していたよりも多くの試験が必要となりました。2019年3月から5月にかけて実施した第三者割当による新株発行、第14回新株予約権(行使価額修正条項付) の発行及び行使による新株発行により、FDAから要求された安全性等を確認するための臨床試験及び非臨床試験等を実施する資金を確保しました。2019年7月に、FDAから要求されている臨床試験の一つである貼付力評価試験において、NDAに必要な要件を満たし、先行指標品であるLidoderm®と比較して優れた貼付力を示す結果を得ました。 2019年12月に、FDAから要求されている臨床試験の一つである皮膚刺激性試験において、連続貼付時の皮膚安全性を確認し、統計学的有意差をもってMRX-5LBTがLidoderm®より皮膚刺激が少ないことも確認されました。2020年1月に、FDAから要求されている臨床試験の一つである、運動(12時間の貼付中にバイク運動を30分x4回実施)による影響を観察する臨床試験を実施し、MRX-5LBTは発汗を伴う運動時においても十分な貼付力を示し、運動時においてもLidoderm®と比べて優れた貼付力を保持することが示されました。 これらの結果を合わせて考えると、MRX-5LBTは、先行指標品であるLidoderm®より「皮膚刺激性が少なく」「貼付力に優れ」「運動時においても貼付力を保持できる」より良い製品として市場浸透することが期待されます。今後はFDAから要求されている試験を順次実施し、現行計画通り2020年に新薬承認申請(NDA)する計画です。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2018年において505億円(468 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。 <開発コード MRX-1OXT:中枢性鎮痛貼付剤(オキシコドンテープ剤)>ILTS®によって、経皮難吸収性の中枢性鎮痛薬であるオキシコドンの経皮浸透度を飛躍的に高めると同時に、皮膚に対する安全性も満たすテープ型貼付剤を製剤開発したものです。オピオイド貼付剤における乱用及び誤用の抑制・防止を目的として開発した当社独自の新たな経皮吸収型製剤技術AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System)を用いたMRX-1OXTについて、2017年4月に、米国規制当局であるFDAと、治験許可申請(IND:Investigational New Drug application)に先立って行う面談会議(pre IND meeting)を実施し、協議の結果、当社の開発方針がFDAによって確認されました。2018年2月に、単回PK試験(P1a)においてMRX-1OXTは疼痛治療に十分な血中薬物濃度を実現できる可能性が高いことが示されました。P1a終了後は、製剤の粘着性等の改良を進めてきました。米国では、オキシコドンを始めとする強い鎮痛作用を有するオピオイド鎮痛剤が大きな市場(2016年 約7,500億円、出所:FDA 2018年3月1日付“FDA Analysis of Long-Term Trends in Prescription Opioid Analgesic Products: Quantity, Sales, and Price Trends”より推計)を形成しています。その一方で、オピオイド鎮痛剤の乱用から2014年には200万人が薬物依存に陥り、オピオイド鎮痛剤の過量摂取により1999年から2015年にかけて18万人以上が死亡、また、幼児が使用後のオピオイド貼付剤を誤って咀嚼したり貼付することで死亡する等、オピオイドの乱用及び誤用事故が大きな社会問題となっており、トランプ米大統領がオピオイド乱用の蔓延について「公衆衛生の非常事態」を宣言する等、米国政府・規制当局は重点的にその対策に取り組んでいます。そういった状況の下、オピオイド乱用について製薬会社に対する巨額訴訟が相次ぎ、2019年9月にはオキシコドン経口剤の最大手の製造販売元であったパーデュー・ファーマ社が補償負担に耐えかねて経営破綻に追い込まれる事態となる等、オピオイド系新薬についての製薬会社の開発・導入意欲は大きく減退しています。当社では、AMRTS®を用いたMRX-1OXTはより安全で安定した疼痛管理をもたらすものと期待していますが、上記の導出環境の悪化を踏まえ、MRX-1OXTについては新薬承認取得しないと提携・事業化することは困難であるとの判断に至りました。そして、同じオピオイド貼付剤として、MRX-1OXTと比べて市場ポテンシャルは劣るものの、新薬承認取得可能性が高く、新薬承認取得までの開発費も少額と見込まれる、MRX-9FLT(後述)の開発を優先する方針としました。 <開発コード MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)>フェンタニルは、オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に主に貼付剤として使用されています。フェンタニル貼付剤においては、患者の使用後の貼付剤を幼児・小児が誤って噛んだり貼付したりすることで死亡する誤用事故が報告されています。当社グループでは、オピオイド貼付剤における誤用事故の抑制・防止を目的とした独自技術を開発しており、その技術を適用したフェンタニルテープ剤について2019年5月に米国規制当局であるFDAと面談会議を実施し、フェンタニル貼付剤における幼児・小児の誤用事故防止は重要で価値のあるゴールであることを確認することができました。2019年11月にMRX-9FLTの製剤開発が完了したことから、開発資金を早期に確保して、現在市販されているフェンタニル貼付剤によって引き起こされている誤用事故を減滅させることを目指して米国における開発を進めたいと考えています。現在、治験許可申請(IND)に向けた準備中であり、2021~22年に新薬承認申請(NDA)することを計画しています。米国におけるフェンタニル貼付剤市場は、2018年において340億円と推計されており(data source:IQVIA)、誤用事故防止という高付加価値化による市場拡大を企図しています。<開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン含有貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。2018年12月に、治験前相談(pre IND meeting)に対する回答を米国規制当局であるFDAより入手し、当社グループが示した非臨床試験内容で第Ⅰ相臨床試験を開始するのに十分であることが確認されました。また、新薬承認取得に向けて、メマンチン経口剤との生物学的同等性を示すことができれば、MRX-7MLLの有効性を示す臨床試験(第Ⅱ相臨床試験、第Ⅲ相臨床試験)は必要ではないことも確認されました。これにより、早期の新薬承認申請(NDA)が可能になったと考えています。米国での臨床試験を実施するための非臨床試験が完了し、現在、商業生産までを見越した製造委託先を選定中です。治験薬製造が完了次第、治験許可申請(IND)をFDAに提出予定です。2017年において米国アルツハイマー治療薬市場は約1,500億円であり、そのうちメマンチン経口剤が約750億円を占めています(出所:Datamonitor Healthcare by Informa PLC)。1日1回の経口剤に対して、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者が投薬状況を目視確認できる、3日に1回あるいは1週間に1回の貼付剤という選択肢を提供することにより、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者のQOL(quality of life)及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に貢献したいと考えています。 <第一三共との共同開発品>2018年2月にNCTS®を用いた或る開発候補品について第一三共株式会社(東京都中央区、代表取締役社長 真鍋淳、以下「第一三共」という。)と共同開発契約を締結し、国内製造販売承認取得を目指して第一三共と共同で開発を推進しておりましたが、非臨床試験において期待した結果を得られず、2019年8月に共同開発を中止することとなりました。 <武田薬品工業への技術ライセンス>2018年8月に武田薬品工業株式会社(東京都中央区、代表取締役社長CEO クリストフ・ウェバー、以下「武田薬品工業」)と、武田薬品工業の或る重点疾患領域におけるパイプラインに関して当社独自の経皮吸収技術を適用するための技術ライセンス契約を締結し、武田薬品工業が当社独自の経皮吸収技術を適用した新剤型を評価してきましたが、評価基準を満たすことができず、2019年10月に技術ライセンス契約を解消することとなりました。 上記パイプライン以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自でILTS®、NCTS®やマイクロニードルアレイを活用した製剤開発を進めています。 <上市製品>当社グループでは、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「ヨードコート軟膏」等の製品を提携先の製薬会社を通じて販売しており、当連結会計年度において製品売上として23百万円を計上しました。 当社の経皮製剤技術について 経皮吸収型医薬品には、嚥下障害等で経口投与が困難な患者にも投与可能、ファーストパスエフェクトを受けない、薬物の血液中の濃度を一定に保ち効果を持続させ易い、注射剤と異なり投与時に痛みを感じない等の様々な利点があります。疾患別に見ると、昨今の潮流として、疼痛治療用薬剤に加え、アルツハイマー病やうつ病のような精神疾患系薬剤においても、QOL及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に寄与する経皮吸収型製剤が、アンメット・メディカルニーズに応える形で開発及び市場投入されています。一方、皮膚は人体にとって外界からの異物の侵入に対する第一バリアであり、分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い等の、皮膚から浸透し易い特定の物理化学的性質を持つ薬物以外の薬物を経皮吸収させることは極めて困難です。当社では、イオン液体の特徴を利用した独自の経皮製剤技術ILTS®や薬物のナノコロイド化技術を利用した独自の経皮製剤技術NCTS®により、従来の技術では経皮吸収させることが困難であった難溶性薬物や核酸・ペプチドといった高分子に至る様々な薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることに成功しています。さらに、ILTS®やNCTS®をもってしても経皮吸収させることが困難な高分子のワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等については、マイクロニードルアレイによる投与方法の研究開発を行っております。 ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System) イオン液体とは、融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれています。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されています。当社では、薬物をイオン液体化する、或いは、イオン液体に薬物を溶解することにより、当該薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることができることを世界に先駆けて見出しました。現在までに、①人体への使用実績がある化合物の組み合わせによる安全性が高いと考えられるイオン液体ライブラリー、②対象薬物の経皮浸透性向上に適したイオン液体の選択に関するノウハウ、③薬物を含有するイオン液体をその特性を保持したまま使い勝手のよい形(貼り薬、塗り薬等)に製剤化するノウハウ等を蓄積しています。これらのノウハウ等も含めた独自の経皮吸収型製剤作製技術を総称して、ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)と呼んでいます。研究成果として、当社と東京医科歯科大学が共同で実施したILTS®を用いた「皮膚扁平上皮がんに対するmiR-634軟膏の経皮局所投与による治療可能性」「甲状腺未分化癌に対するmiR-634を用いた核酸抗癌薬の開発」「ランゲルハンス細胞上に発現するPD-1リガンドの一つであるPD-L2は皮膚T細胞免疫反応を増強させる」について、それぞれ米国癌学会年次総会2019(2019年3月)、第78回日本癌学会学術総会(2019年9月)、第48回日本免疫学会学術集会(2019年12月)において発表しております。また、当社と徳島大学が共同で実施した「イオン液体を用いた新規インスリン含有経皮吸収製剤は糖尿病治療薬になりうる」「siRNA含有イオン液体製剤の経皮送達による乾癬治療」について、それぞれ第28回DDSカンファランス(2019年9月)、第58回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会 中国四国支部学術大会(2019年11月)において発表しております。 NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System) 当社は、薬物をナノサイズのコロイドにすることで経皮吸収性が高まることを発見し、それによる製剤化技術をNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)と名付けました。アルツハイマー治療薬等をターゲットとした製剤開発を進めております。 マイクロニードルアレイ マイクロニードルアレイとは、生体分解性樹脂等から成る数百μmのマイクロニードル(微小針)の集合体で、当社開発品は、多数のマイクロニードルをシート状に並べ、生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。薬剤の皮膚透過性を上げるための方法の一つとして、マイクロニードルを使用し、角質層を局所的に破壊して薬剤を真皮層に強制的に投与するということが試みられています。当社は、マイクロニードルアレイを用いて、現在は注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の、無痛経皮投与システムを確立すべく、研究開発に取り組んでいます。 AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System) 貼付剤における薬物の乱用及び誤用事故を抑制・防止するための、メドレックス独自の新たな製剤技術です。「低抽出性」「強い苦み」「再吸収抑制」「再貼付防止」の4つの技術から成っています。 *用語解説経皮吸収皮膚から(薬物を)体内に吸収・浸透させること。CRO(Contract Research Organization)医薬品開発業務受託機関。チザニジン 中枢性筋弛緩剤(脳や脊髄にある中枢神経に作用して筋肉の緊張を緩和する薬)の一種で、痛みを伴う肩こりや腰痛、五十肩、緊張性頭痛等の治療及び痙性麻痺等の筋肉がこわばる症状の治療に使用されている。オキシコドン 中枢性鎮痛薬(脳や脊髄にある中枢神経に作用して痛みを抑制する薬)の一種で、医療用麻薬に指定されており、重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に使用されている。リドカイン 神経末端において痛みの信号を遮断することにより痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種。フェンタニル オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に主に貼付剤として使用されている。メマンチン 脳内での過剰なグルタミン酸作用を抑えて神経細胞を保護するNMDA受容体拮抗薬で、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。製剤開発 飲み薬を貼り薬に、錠剤をゼリー剤にする等して、医薬品の剤型/投与方法を変えることにより、医薬品の有用性や安全性を高めるための研究開発。臨床試験 薬剤候補について、有効性と安全性を実証するために、ヒトを対象として実施する試験の総称。少数健常人を対象として安全性及び薬物動態を確認する第I相試験、少数患者を対象として有効性及び安全性を探索的に確認する第Ⅱ相試験、多数患者を対象として有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験に区分される。オピオイド ケシから採取されるアルカロイドやその関連の合成化合物及び内因性物質のうち麻薬性作用を持つ物質の総称。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどに代表されるオピオイド鎮痛薬は、強い鎮痛効果を有する一方で、薬物依存性が高く中毒症を引き起こしやすく、過剰容量摂取した場合には呼吸抑制や昏睡を引き起こして死に至る恐れがあることが知られている。コロイド コロイドとは、液体、固体あるいは気体にある粒子が均一に分散している状態をいい、ナノコロイドは、粒子がナノサイズのコロイド。非臨床試験 薬剤候補について、ヒトにおける試験を実施する上で十分な安全性と有効性があることの確認を目的として、主に動物を用いて行われる試験。上市 各国の規制当局により新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)こと。ヨードコート軟膏 商品名、褥瘡治療薬。褥瘡とは、患者が長期にわたり同じ体勢で寝たきり等になった場合、体と支持面(多くはベッド・布団)との接触局所で血行が不全となって、周辺組織に壊死を起こすものをいう。ファーストパスエフェクト 初回通過効果ともいう。経口摂取した薬物は、腸管から吸収され肝臓に入る。多くの薬物は、その一部が肝臓で代謝されてしまう(異なる化合物になる)ので、飲んだ薬の効果全てが全身(または患部)に届くわけではない。この肝臓通過による薬効減退効果のこと。QOL(Quality of Life) 不快に感じることを最大限に軽減し、できるだけ当人(患者)がこれでいいと思えるような生活が送れるようにすることを目指した、医療上の概念。アンメット・メディカルニーズまだ満たされていない医療上の必要性、未充足の医療ニーズ。イオン液体 融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれる。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されている。難溶性薬物水やその他の各種溶媒に対して溶けにくい性質を持つ薬物。核酸 遺伝子の構成成分である生体高分子。核酸には、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)がある。ペプチド 数個~数百個のアミノ酸がつながってできた物質の総称。インスリン等の糖尿病治療薬として使用されているものや、最近ではがんワクチンとして開発中のものも多い。生体分解性樹脂 ヒトの体内で分解され得るプラスチック素材。手術時の縫合糸等に使われているものもある。
FY2018|8,272 文字|出典 docID: S100FHLW
3 【事業の内容】当社グループは、当社独自の経皮吸収*型製剤技術を基に新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL*の向上に資することを企業理念としています。イオン液体の特徴を利用した独自の経皮吸収型製剤技術ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)、薬物のナノコロイド*化技術を利用した独自の経皮吸収型製剤技術NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術により、薬効の極大化、副作用の低減、飲み忘れ防止や経口投与が困難な患者への投与を可能にして、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しております。 当社グループは、当社、連結子会社MEDRx USA INC.の2社で構成されています。 当社グループの現在のビジネスモデルは、当社製剤技術により新たに創出(製剤開発*)した医薬品候補製剤を、医薬品としての製造販売承認を取得するために開発(非臨床試験*、臨床試験*)する過程で、製薬会社等との間で開発・販売・製造に関する適切な提携関係を築いて事業を推進していくものです。当社は、提携先の製薬会社等から、「契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンフィー」及び「上市*後の製品売上、ロイヤルティ」の形で収入を得ます。 医薬品候補製剤(開発パイプライン)の特性(市場性、開発費用)や、提携候補先製薬会社の当該パイプラインに対する取組姿勢を考慮した上で、開発パイプライン毎に当社の収益モデルを設計し、当社全体としてのリスクとリターンのバランスを取るためのポートフォリオを構築しながら成長していくことを目指しています。 当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。 <開発コード CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジン*テープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。2017年4月に、インドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、CEO:Umang Vohra、以下「Cipla」という。)の米国100%子会社であるCipla USA Inc.(米国デラウエア州ウィルミントン、CEO:Nikhil Lalwani)との間で、CPN-101(MRX-4TZT)に関する世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結しました。その後、Ciplaグループ内の再編により、契約相手先はCipla Technologies, LLC(米国カリフォルニア州サンディエゴ、CEO:Vikram Sudarsan、以下「Cipla Tech」という。)に変更となっております。現在、筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。2017年9月より、第Ⅲ相臨床試験及び新薬承認申請(NDA:New Drug Application)に向けた開発計画の一環として、CPN-101(MRX-4TZT)の薬剤特性に関する有用な情報を得ることを期待して第Ⅰ相臨床試験の追加試験(P1a')を実施してまいりました。2018年1月に当試験において事前に規定していた基準を満たした結果が得られております。今後は、提携先のCipla Techとともに、次ステップの臨床開発を進めてまいります。 <開発コード MRX-1OXT:中枢性鎮痛貼付剤(オキシコドン*テープ剤)>ILTS®によって、経皮難吸収性の中枢性鎮痛薬であるオキシコドンの経皮浸透度を飛躍的に高めると同時に、皮膚に対する安全性も満たすテープ型貼付剤を製剤開発したものです。オピオイド貼付剤における乱用及び誤用の抑制・防止を目的として開発した当社独自の新たな経皮吸収型製剤技術AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System)を用いたMRX-1OXTについて、2017年4月に、米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(FDA :Food and Drug Administration)と、治験許可申請(IND:Investigational New Drug application)に先立って行う面談会議(pre IND meeting)を実施し、協議の結果、当社の開発方針がFDAによって確認されました。2017年10月より第Ⅰ相臨床試験を実施し、2018年2月にMRX-1OXTは疼痛治療に十分な血中薬物濃度を実現できる可能性が高いことが示されました。現在、製剤の粘着性等の改良を進めており、2019年に第Ⅰ相臨床試験の追加試験(P1b:反復PK(Pharmacokinetics)試験)を実施する計画です。米国では、オキシコドンを始めとする強い鎮痛作用を有するオピオイド鎮痛剤が大きな市場(2016年 約7,500億円、出所:FDA 2018年3月1日付“FDA Analysis of Long-Term Trends in Prescription Opioid Analgesic Products: Quantity, Sales, and Price Trends”より推計)を形成しています。その一方で、オピオイド鎮痛剤の乱用から2014年には200万人が薬物依存に陥り、オピオイド鎮痛剤の過量摂取により1999年から2015年にかけて18万人以上が死亡、また、幼児が使用後のオピオイド貼付剤を誤って咀嚼したり貼付することで死亡する等、オピオイドの乱用及び誤用事故が大きな社会問題となっており、トランプ米大統領がオピオイド乱用の蔓延について「公衆衛生の非常事態」を宣言する等、米国政府・規制当局は重点的にその対策に取り組んでいます。当社は、オピオイド貼付剤における乱用及び誤用事故の抑制・防止を目的としてAMRTS®を開発しました。AMRTS®を用いたMRX-1OXTは、より安全で安定した疼痛管理をもたらすものと期待しています。 <開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカイン*テープ剤)>ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidoderm®の市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めている製品です。2018年6月に先行指標製品であるLidoderm®との検証的な比較臨床試験において、505b2開発過程の中で最も重要な指標であるLidoderm®との生物学的同等性を示す結果を得ました。その後、新薬承認申請(NDA)に向けたデータパッケージについて米国規制当局であるFDAと協議を行っておりましたが、2018年11月の面談会議の結果、MRX-5LBTが慢性疾患治療薬として長期に亘り連続使用される可能性が十分あることより、長期の安全性を確認する試験を中心に、当初想定していたよりも多くの試験が必要となりました。今後は、FDAから要求された安全性等を確認するための臨床試験及び非臨床試験等を実施する資金を早期に確保して、現行計画通り2020年に新薬承認申請(NDA)を実施したいと考えています。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2017年において555億円(509million USドル)、2020年には610億円(560million USドル)に増加すると推測(出所:Datamonitor Healthcare by Informa PLC)されています。MRX-5LBTは、Lidoderm®と比較して、高い経皮吸収効率ゆえに薬物搭載量が少なく、テープ剤ゆえに貼り易く粘着力に優れており、また臨床試験結果より皮膚安全性が高いことが期待されています。 <開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン*含有貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。2018年7月に米国での臨床試験を実施するための非臨床試験を開始しました。2018年12月には、治験前相談(pre IND meeting)に対する回答を米国規制当局であるFDAより入手し、現在実施中の非臨床試験内容で第Ⅰ相臨床試験を開始するのに十分であることが確認されました。また、新薬承認取得に向けて、メマンチン経口剤との生物学的同等性を示すことができれば、MRX-7MLLの有効性を示す臨床試験(第Ⅱ相臨床試験、第Ⅲ相臨床試験)は必要ではないことも確認されました。これにより、早期の新薬承認申請(NDA)が可能になったと考えています。2019年に、治験許可申請(IND)をFDAに提出予定です。2017年において米国アルツハイマー治療薬市場は約1,500億円であり、そのうちメマンチン経口剤が約750億円を占めています(出所:Datamonitor Healthcare by Informa PLC)。1日1回の経口剤に対して、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者が投薬状況を目視確認できる、3日に1回あるいは1週間に1回の貼付剤という選択肢を提供することにより、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者のQOL(quality of life)及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に貢献したいと考えています。 <第一三共との共同開発品>2018年2月に、NCTS®を用いた或る開発候補品について、第一三共株式会社(東京都中央区、代表取締役社長 真鍋淳、以下「第一三共」という。)との間で共同開発契約を締結しました。製造販売承認取得を目指して、第一三共と共同で開発を進めております。 <武田薬品工業への技術ライセンス>2018年8月に、武田薬品工業株式会社(東京都中央区、代表取締役社長CEO クリストフ・ウェバー、以下「武田薬品工業」)との間で、武田薬品工業の或る重点疾患領域におけるパイプラインに関して、当社独自の経皮吸収技術を適用する技術ライセンス契約を締結しました。本契約は、武田薬品工業の或る重点疾患領域におけるパイプラインを対象に、当社独自の経皮吸収製剤技術ILTS®およびNCTS®を用いて、新たな経皮吸収製剤を創製することを目指すものです。武田薬品工業は、この新たな経皮吸収製剤について全世界で開発および商業化する権利を有し、当社は技術移転等において武田薬品工業の開発をサポートしています。 上記パイプライン以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自でILTS®、NCTS®やマイクロニードルアレイを活用した製剤開発を進めています。 <上市製品>当社グループでは、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「ヨードコート軟膏*」等の製品を提携先の製薬会社を通じて販売しており、当連結会計年度の製品売上として8百万円を計上しました。 当社の経皮製剤技術について 経皮吸収型医薬品には、嚥下障害等で経口投与が困難な患者にも投与可能、ファーストパスエフェクト*を受けない、薬物の血液中の濃度を一定に保ち効果を持続させ易い、注射剤と異なり投与時に痛みを感じない等の様々な利点があります。疾患別に見ると、昨今の潮流として、疼痛治療用薬剤に加え、アルツハイマー病やうつ病のような精神疾患系薬剤においても、QOL及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に寄与する経皮吸収型製剤が、アンメット・メディカルニーズ*に応える形で開発及び市場投入されています。一方、皮膚は人体にとって外界からの異物の侵入に対する第一バリアであり、分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い等の、皮膚から浸透し易い特定の物理化学的性質を持つ薬物以外の薬物を経皮吸収させることは極めて困難です。当社では、イオン液体の特徴を利用した独自の経皮製剤技術ILTS®や薬物のナノコロイド化技術を利用した独自の経皮製剤技術NCTS®により、従来の技術では経皮吸収させることが困難であった難溶性薬物*や核酸*・ペプチド*といった高分子に至る様々な薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることに成功しています。さらに、ILTS®やNCTS®をもってしても経皮吸収させることが困難な高分子のワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等については、マイクロニードルアレイによる投与方法の研究開発を行っております。 ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System) イオン液体とは、融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれています。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されています。当社では、薬物をイオン液体化する、或いは、イオン液体に薬物を溶解することにより、当該薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることができることを世界に先駆けて見出しました。現在までに、①人体への使用実績がある化合物の組み合わせによる安全性が高いと考えられるイオン液体ライブラリー、②対象薬物の経皮浸透性向上に適したイオン液体の選択に関するノウハウ、③薬物を含有するイオン液体をその特性を保持したまま使い勝手のよい形(貼り薬、塗り薬等)に製剤化するノウハウ等を蓄積しています。これらのノウハウ等も含めた独自の経皮吸収型製剤作製技術を総称して、ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)と呼んでいます。研究成果として、当社と東京医科歯科大学が共同で実施したILTS®を用いた「皮膚がんに対するmiR-634軟膏の経皮局所投与による治療可能性」「アレルギー性皮膚疾患の皮膚樹状細胞に対するB7-DCのサイレンシング効果」について、それぞれ第77回日本癌学会学術総会(2018年9月)、第47回日本免疫学会学術集会(2018年12月)において発表しております。 NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System) 当社は、薬物をナノサイズのコロイドにすることで経皮吸収性が高まることを発見し、それによる製剤化技術をNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)と名付けました。アルツハイマー治療薬等をターゲットとした製剤開発を進めております。 マイクロニードルアレイ マイクロニードルアレイとは、生体分解性樹脂*等から成る数百μmのマイクロニードル(微小針)の集合体で、当社開発品は、多数のマイクロニードルをシート状に並べ、生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。薬剤の皮膚透過性を上げるための方法の一つとして、マイクロニードルを使用し、角質層を局所的に破壊して薬剤を真皮層に強制的に投与するということが試みられています。 当社は、マイクロニードルアレイを用いて、現在は注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の、無痛経皮投与システムを確立すべく、研究開発に取り組んでいます。研究成果として、第5回マイクロニードル国際学会(2018年5月)において「ディスポーザブル型マイクロニードル投与装置の開発」を発表しております。 AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System) 貼付剤における薬物の乱用及び誤用事故を抑制・防止するための、メドレックス独自の新たな製剤技術です。「低抽出性」「強い苦み」「再吸収抑制」「再貼付防止」の4つの技術から成っています。 *用語解説経皮吸収皮膚から(薬物を)体内に吸収・浸透させること。CRO(Contract Research Organization)医薬品開発業務受託機関。チザニジン 中枢性筋弛緩剤(脳や脊髄にある中枢神経に作用して筋肉の緊張を緩和する薬)の一種で、痛みを伴う肩こりや腰痛、五十肩、緊張性頭痛等の治療及び痙性麻痺等の筋肉がこわばる症状の治療に使用されている。オキシコドン 中枢性鎮痛薬(脳や脊髄にある中枢神経に作用して痛みを抑制する薬)の一種で、医療用麻薬に指定されており、重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に使用されている。リドカイン 神経末端において痛みの信号を遮断することにより痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種。メマンチン 脳内での過剰なグルタミン酸作用を抑えて神経細胞を保護するNMDA受容体拮抗薬で、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。製剤開発 飲み薬を貼り薬に、錠剤をゼリー剤にする等して、医薬品の剤型/投与方法を変えることにより、医薬品の有用性や安全性を高めるための研究開発。臨床試験 薬剤候補について、有効性と安全性を実証するために、ヒトを対象として実施する試験の総称。少数健常人を対象として安全性及び薬物動態を確認する第I相試験、少数患者を対象として有効性及び安全性を探索的に確認する第Ⅱ相試験、多数患者を対象として有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験に区分される。オピオイド ケシから採取されるアルカロイドやその関連の合成化合物及び内因性物質のうち麻薬性作用を持つ物質の総称。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどに代表されるオピオイド鎮痛薬は、強い鎮痛効果を有する一方で、薬物依存性が高く中毒症を引き起こしやすく、過剰容量摂取した場合には呼吸抑制や昏睡を引き起こして死に至る恐れがあることが知られている。コロイド コロイドとは、液体、固体あるいは気体にある粒子が均一に分散している状態をいい、ナノコロイドは、粒子がナノサイズのコロイド。非臨床試験 薬剤候補について、ヒトにおける試験を実施する上で十分な安全性と有効性があることの確認を目的として、主に動物を用いて行われる試験。上市 各国の規制当局により新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)こと。ヨードコート軟膏 商品名、褥瘡治療薬。褥瘡とは、患者が長期にわたり同じ体勢で寝たきり等になった場合、体と支持面(多くはベッド・布団)との接触局所で血行が不全となって、周辺組織に壊死を起こすものをいう。ファーストパスエフェクト 初回通過効果ともいう。経口摂取した薬物は、腸管から吸収され肝臓に入る。多くの薬物は、その一部が肝臓で代謝されてしまう(異なる化合物になる)ので、飲んだ薬の効果全てが全身(または患部)に届くわけではない。この肝臓通過による薬効減退効果のこと。QOL(Quality of Life) 不快に感じることを最大限に軽減し、できるだけ当人(患者)がこれでいいと思えるような生活が送れるようにすることを目指した、医療上の概念。アンメット・メディカルニーズまだ満たされていない医療上の必要性、未充足の医療ニーズ。イオン液体 融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれる。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されている。難溶性薬物水やその他の各種溶媒に対して溶けにくい性質を持つ薬物。核酸 遺伝子の構成成分である生体高分子。核酸には、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)がある。ペプチド 数個~数百個のアミノ酸がつながってできた物質の総称。インスリン等の糖尿病治療薬として使用されているものや、最近ではがんワクチンとして開発中のものも多い。生体分解性樹脂 ヒトの体内で分解され得るプラスチック素材。手術時の縫合糸等に使われているものもある。
FY2017|7,296 文字|出典 docID: S100CO5Y
3 【事業の内容】当社グループは、当社独自の経皮吸収*型製剤技術を基に新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL*の向上に資することを企業理念としています。イオン液体の特徴を利用した独自の経皮吸収型製剤技術ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)、薬物のナノコロイド*化技術を利用した独自の経皮吸収型製剤技術NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術により、薬効の極大化、副作用の低減、飲み忘れ防止や経口投与が困難な患者への投与を可能にして、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しております。 当社グループは、当社、連結子会社MEDRx USA INC.の2社で構成されています。平成29年9月に、持分法適用関連会社であった株式会社ケイ・エム トランスダームの全株式を売却いたしました。 当社グループの現在のビジネスモデルは、当社製剤技術により新たに創出(製剤開発*)した医薬品候補製剤を、医薬品としての製造販売承認を取得するために開発(非臨床試験*、臨床試験*)する過程で、製薬会社等との間で開発・販売・製造に関する適切な提携関係を築いて事業を推進していくものです。当社は、提携先の製薬会社等から、「契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンフィー」及び「上市*後の製品売上、ロイヤルティ」の形で収入を得ます。 医薬品候補製剤(開発パイプライン)の特性(市場性、開発費用)や、提携候補先製薬会社の当該パイプラインに対する取組姿勢を考慮した上で、開発パイプライン毎に当社の収益モデルを設計し、当社全体としてのリスクとリターンのバランスを取るためのポートフォリオを構築しながら成長していくことを目指しています。 当社の経皮製剤技術について 経皮吸収型医薬品には、嚥下障害等で経口投与が困難な患者にも投与可能、ファーストパスエフェクト*を受けない、薬物の血液中の濃度を一定に保ち効果を持続させ易い、注射剤と異なり投与時に痛みを感じない等の様々な利点があります。疾患別に見ると、昨今の潮流として、疼痛治療用薬剤に加え、アルツハイマー病やうつ病のような精神疾患系薬剤においても、QOL及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に寄与する経皮吸収型製剤が、アンメット・メディカルニーズ*に応える形で開発及び市場投入されています。 一方、皮膚は人体にとって外界からの異物の侵入に対する第一バリアであり、分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い等の、皮膚から浸透し易い特定の物理化学的性質を持つ薬物以外の薬物を経皮吸収させることは極めて困難です。当社では、イオン液体の特徴を利用した独自の経皮製剤技術ILTS®や薬物のナノコロイド化技術を利用した独自の経皮製剤技術NCTS®により、従来の技術では経皮吸収させることが困難であった難溶性薬物*や核酸*・ペプチド*といった高分子に至る様々な薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることに成功しています。さらに、ILTS®やNCTS®をもってしても経皮吸収させることが困難な高分子のワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等については、マイクロニードルアレイによる投与方法の研究開発を行っております。 ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System) イオン液体とは、融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれています。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されています。当社では、薬物をイオン液体化する、或いは、イオン液体に薬物を溶解することにより、当該薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることができることを世界に先駆けて見出しました。現在までに、①人体への使用実績がある化合物の組み合わせによる安全性が高いと考えられるイオン液体ライブラリー、②対象薬物の経皮浸透性向上に適したイオン液体の選択に関するノウハウ、③薬物を含有するイオン液体をその特性を保持したまま使い勝手のよい形(貼り薬、塗り薬等)に製剤化するノウハウ等を蓄積しています。これらのノウハウ等も含めた独自の経皮吸収型製剤作製技術を総称して、ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)と呼んでいます。研究成果の一つとして、当社と東京医科歯科大学が共同で実施したILTS®を用いた改良版Stat6デコイ核酸含有軟膏のマウス皮膚炎症反応における治療効果について、平成29年6月に第66回日本アレルギー学会学術大会、平成29年12月に第46回日本免疫学会学術集会においてそれぞれ発表しております。 NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System) 当社は、薬物をナノサイズのコロイドにすることで経皮吸収性が高まることを発見し、それによる製剤化技術をNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)と名付けました。経皮製剤でありながら液体のまま貼付剤化することにより、速効性と持続性を併せ持つ画期的な製剤となることが期待できます。アルツハイマー治療薬や偏頭痛治療薬等をターゲットとした製剤開発を進めております。平成30年2月に、NCTS®を用いた或る開発候補品について、第一三共株式会社(東京都中央区、代表取締役社長 真鍋淳、以下「第一三共」という。)との間で共同開発契約を締結しました。製造販売承認取得を目指して、第一三共と共同で開発を進めてまいります。 マイクロニードルアレイ マイクロニードルアレイとは、生体分解性樹脂*等から成る数百μmのマイクロニードル(微小針)の集合体で、当社開発品は、多数のマイクロニードルをシート状並べ、生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。薬剤の皮膚透過性を上げるための方法の一つとして、マイクロニードルを使用し、角質層を局所的に破壊して薬剤を真皮層に強制的に投与するということが試みられています。当社は、マイクロニードルアレイを用いて、現在は注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の、無痛経皮投与システムを確立すべく、国内外のワクチンメーカーや製薬会社等と研究開発に取り組んでいます。 AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System) 貼付剤における薬物の乱用及び誤用事故を抑制・防止するための、メドレックス独自の新たな製剤技術です。「低抽出性」「強い苦み」「再吸収抑制」「再貼付防止」の4つの技術から成っています。 当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。 <開発コード CPN-101(MRX-4TZT):痙性麻痺治療薬(チザニジン*テープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。平成29年2月に第Ⅰ相臨床試験の結果が判明し、市販されているチザニジン経口剤と同水準の血中濃度を示すことができ、経口剤と同様の有効性を示す可能性が高いことを示唆する結果が得られました。また、経口剤投与群で観察された眠気等の副作用が、CPN-101(MRX-4TZT)投与群ではほとんど観察されないという期待通りの結果となりました。平成29年4月に、インドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、CEO:Umang Vohra、以下「Cipla」という。)の米国100%子会社であるCipla USA Inc.(米国デラウエア州ウィルミントン、CEO:Nikhil Lalwani、以下「Cipla USA」という。)との間で、CPN-101(MRX-4TZT)に関する世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結しました。その後、Ciplaグループ内の再編により、契約相手先はCipla Technologies, LLC(米国カリフォルニア州サンディエゴ、CEO:Vikram Sudarsan、以下「Cipla Tech」という。)に変更となっております。現在、筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。平成29年9月より、第Ⅲ相臨床試験及び新薬承認申請(NDA:New Drug Application)に向けた開発計画の一環として、CPN-101(MRX-4TZT)の薬剤特性に関する有用な情報を得ることを期待して第Ⅰ相臨床試験の追加試験(P1a')を実施してまいりました。平成30年1月に当試験において事前に規定していた基準を満たした結果が得られております。今後は、提携先のCipla Techとともに、次ステップの臨床開発を進めてまいります。平成29年12月には、契約一時金150万ドル(170百万円)の入金があり、研究開発等収入として売上高に計上いたしました。 <開発コード MRX-1OXT:中枢性鎮痛貼付剤(オキシコドン*テープ剤)>ILTS®によって、経皮難吸収性の中枢性鎮痛薬であるオキシコドンの経皮浸透度を飛躍的に高めると同時に、皮膚に対する安全性も満たすテープ型貼付剤の製剤開発を推し進めています。オピオイド*貼付剤における乱用及び誤用の抑制・防止を目的として開発した当社独自の新たな経皮吸収型製剤技術AMRTS®(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System)を用いたMRX-1OXTについて、平成29年4月に、米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)と、治験許可申請(Investigational New Drug application)に先立って行う面談会議(pre IND meeting)を実施し、協議の結果、当社の開発方針がFDAによって確認されました。平成29年10月より第Ⅰ相臨床試験を実施し、平成30年2月にMRX-1OXTは疼痛治療に十分な血中薬物濃度を実現できる可能性が高いことが示されました。米国では、オキシコドンを始めとする強い鎮痛作用を有するオピオイド鎮痛剤が大きな市場(2016年 約7,500億円、出所:FDA 2018年3月1日付“FDA Analysis of Long-Term Trends in Prescription Opioid Analgesic Products: Quantity, Sales, and Price Trends”より推計)を形成しています。その一方で、オピオイド鎮痛剤の乱用から2014年には200万人が薬物依存に陥り、オピオイド鎮痛剤の過量摂取により1999年から2015年にかけて18万人以上が死亡、また、幼児が使用後のオピオイド貼付剤を誤って咀嚼したり貼付することで死亡する等、オピオイドの乱用及び誤用事故が大きな社会問題となっており、2017年10月には、トランプ米大統領がオピオイド乱用の蔓延について「公衆衛生の非常事態」を宣言する等、米国政府・規制当局は重点的にその対策に取り組んでいます。当社は、オピオイド貼付剤における乱用及び誤用事故の抑制・防止を目的としてAMRTS®を開発しました。AMRTS®を用いたMRX-1OXTは、より安全で安定した疼痛管理をもたらすものと期待しています。 <開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカイン*テープ剤)>ILTS®を用いて局所麻酔剤であるリドカインのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。平成28年5月に第Ⅰ相臨床試験の結果が判明し、米国においてピーク時年商約1,200億円であったリドカインパップ剤Lidoderm®と比較して皮下組織により早くより多くのリドカインを浸透させることを示唆する結果を得ており、当社では、ILTS®技術の優位性を示す結果を得ることができたと考えています。早期の新薬承認申請(New Drug Application)を目指して開発に注力しております。 <開発コード MRX-5DML:アルツハイマー治療薬(ドネぺジル*・メマンチン*含有貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-5DMLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるドネぺジルとメマンチンを配合した貼付剤を製剤開発したものです。早期の臨床試験開始を目指して、非臨床試験を実施していく計画です。 <第一三共との共同開発品>平成30年2月に第一三共との間で、当社独自の経皮吸収技術NCTS®を用いた開発候補品についての共同開発契約を締結し、当社と第一三共は製造販売承認取得を目指して共同で開発を推進します。なお、開発候補品(薬物名、対象疾患)及び具体的な経済条件等については、非開示とします。 上記パイプライン以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自でILTS®、NCTS®やマイクロニードルアレイを活用した製剤開発を進めています。 上 市 製 品 当社グループでは、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「ヨードコート軟膏*」等の製品を提携先の製薬会社を通じて販売しており、当連結会計年度の製品売上として28百万円を計上しました。 *用語解説経皮吸収皮膚から(薬物を)体内に吸収・浸透させること。QOL(Quality of Life)不快に感じることを最大限に軽減し、できるだけ当人(患者)がこれでいいと思えるような生活が送れるようにすることを目指した、医療上の概念。コロイドコロイドとは、液体、固体あるいは気体にある粒子が均一に分散している状態をいい、ナノコロイドは、粒子がナノサイズのコロイド。CRO(Contract Research Organization)医薬品開発業務受託機関。 製剤開発飲み薬を貼り薬に、錠剤をゼリー剤にする等して、医薬品の剤型/投与方法を変えることにより、医薬品の有用性や安全性を高めるための研究開発。非臨床試験薬剤候補について、ヒトにおける試験を実施する上で十分な安全性と有効性があることの確認を目的として、主に動物を用いて行われる試験。臨床試験薬剤候補について、有効性と安全性を実証するために、ヒトを対象として実施する試験の総称。少数健常人を対象として安全性及び薬物動態を確認する第I相試験、少数患者を対象として有効性及び安全性を探索的に確認する第Ⅱ相試験、多数患者を対象として有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験に区分される。上市各国の規制当局により新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)こと。ファーストパスエフェクト初回通過効果ともいう。経口摂取した薬物は、腸管から吸収され肝臓に入る。多くの薬物は、その一部が肝臓で代謝されてしまう(異なる化合物になる)ので、飲んだ薬の効果全てが全身(または患部)に届くわけではない。この肝臓通過による薬効減退効果のこと。アンメット・メディカルニーズまだ満たされていない医療上の必要性、未充足の医療ニーズ。難溶性薬物水やその他の各種溶媒に対して溶けにくい性質を持つ薬物。核酸遺伝子の構成成分である生体高分子。核酸には、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)がある。ペプチド数個~数百個のアミノ酸がつながってできた物質の総称。インスリン等の糖尿病治療薬として使用されているものや、最近ではがんワクチンとして開発中のものも多い。生体分解性樹脂ヒトの体内で分解され得るプラスチック素材。手術時の縫合糸等に使われているものもある。チザニジン中枢性筋弛緩剤(脳や脊髄にある中枢神経に作用して筋肉の緊張を緩和する薬)の一種で、痛みを伴う肩こりや腰痛、五十肩、緊張性頭痛等の治療及び痙性麻痺等の筋肉がこわばる症状の治療に使用されている。オキシコドン中枢性鎮痛薬(脳や脊髄にある中枢神経に作用して痛みを抑制する薬)の一種で、医療用麻薬に指定されており、重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に使用されている。オピオイドケシから採取されるアルカロイドやその関連の合成化合物及び内因性物質のうち麻薬性作用を持つ物質の総称。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどに代表されるオピオイド鎮痛薬は、強い鎮痛効果を有する一方で、薬物依存性が高く中毒症を引き起こしやすく、過剰容量摂取した場合には呼吸抑制や昏睡を引き起こして死に至る恐れがあることが知られている。リドカイン神経末端において痛みの信号を遮断することにより痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種。ドネペジル神経伝達物資であるアセチルコリンの分解酵素を阻害し脳内アセチルコリンを増加させて、アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。メマンチン脳内での過剰なグルタミン酸作用を抑えて神経細胞を保護するNMDA受容体拮抗薬で、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。ヨードコート軟膏商品名、褥瘡治療薬。褥瘡とは、患者が長期にわたり同じ体勢で寝たきり等になった場合、体と支持面(多くはベッド・布団)との接触局所で血行が不全となって、周辺組織に壊死を起こすものをいう。
FY2016|6,404 文字|出典 docID: S1009Y57
3 【事業の内容】当社グループは、当社独自の経皮吸収*型製剤技術を基に新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。経皮吸収技術をはじめとする製剤技術をもって画期的新薬を開発し、全世界の人々の健康とQOL*の向上に資することを企業理念としています。イオン液体*の特徴を利用した独自の経皮吸収型製剤技術ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)、薬物のナノコロイド*化技術を利用した独自の経皮吸収型製剤技術NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術により、薬効の極大化、副作用の低減、飲み忘れ防止や経口投与が困難な患者への投与を可能にして、新たな付加価値を有する医薬品を生み出すことを目指しております。 当社グループは、当社、連結子会社MEDRx USA INC.、持分法適用会社の株式会社ケイ・エム トランスダームの3社で構成されています。 当社グループの現在のビジネスモデルは、当社製剤技術により新たに創出(製剤開発*)した医薬品候補製剤を、医薬品としての製造販売承認を取得するために開発(非臨床試験*、臨床試験*)する過程で、製薬会社等との間で開発・販売・製造に関する適切な提携関係を築いて事業を推進していくものです。当社は、提携先の製薬会社等から、「契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストンフィー」及び「上市*後の製品売上、ロイヤルティ」の形で収入を得ます。 医薬品候補製剤(開発パイプライン)の特性(市場性、開発費用)や、提携候補先製薬会社の当該パイプラインに対する取組姿勢を考慮した上で、開発パイプライン毎に当社の収益モデルを設計し、当社全体としてのリスクとリターンのバランスを取るためのポートフォリオを構築しながら成長していくことを目指しています。 当社の経皮製剤技術について 経皮吸収型医薬品には、嚥下障害等で経口投与が困難な患者にも投与可能、ファーストパスエフェクト*を受けない、薬物の血液中の濃度を一定に保ち効果を持続させ易い、注射剤と異なり投与時に痛みを感じない等の様々な利点があります。疾患別に見ると、昨今の潮流として、疼痛治療用薬剤に加え、アルツハイマー病やうつ病のような精神疾患系薬剤においても、QOL及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に寄与する経皮吸収型製剤が、アンメット・メディカルニーズ*に応える形で開発及び市場投入されています。 一方、皮膚は人体にとって外界からの異物の侵入に対する第一バリアであり、分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い等の、皮膚から浸透し易い特定の物理化学的性質を持つ薬物以外の薬物を経皮吸収させることは極めて困難です。当社では、イオン液体の特徴を利用した独自の経皮製剤技術ILTS®や薬物のナノコロイド化技術を利用した独自の経皮製剤技術NCTS®により、従来の技術では経皮吸収させることが困難であった難溶性薬物*や核酸*・ペプチド*といった高分子に至る様々な薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることに成功しています。さらに、ILTS®やNCTS®をもってしても経皮吸収させることが困難な高分子のワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等については、マイクロニードルアレイによる投与方法の研究開発を行っております。 ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System) イオン液体とは、融点が100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれています。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されています。当社では、薬物をイオン液体化する、或いは、イオン液体に薬物を溶解することにより、当該薬物の経皮浸透性を飛躍的に向上させることができることを世界に先駆けて見出しました。現在までに、①人体への使用実績がある化合物の組み合わせによる安全性が高いと考えられるイオン液体ライブラリー、②対象薬物の経皮浸透性向上に適したイオン液体の選択に関するノウハウ、③薬物を含有するイオン液体をその特性を保持したまま使い勝手のよい形(貼り薬、塗り薬等)に製剤化するノウハウ等を蓄積しています。これらのノウハウ等も含めた独自の経皮吸収型製剤作製技術を総称して、ILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)と呼んでいます。 NCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System) 当社は、薬物をナノサイズのコロイドにすることで経皮吸収性が高まることを発見し、それによる製剤化技術をNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)と名付けました。経皮製剤でありながら液体のまま貼付剤化することにより、速効性と持続性を併せ持つ画期的な製剤となることが期待できます。アルツハイマー治療薬や偏頭痛治療薬をターゲットとした製剤開発を進めております。 マイクロニードルアレイ マイクロニードルアレイとは、生体分解性樹脂*等から成る数百μmのマイクロニードル(微小針)の集合体で、当社開発品は、多数のマイクロニードルをシート状並べ、生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。薬剤の皮膚透過性を上げるための方法の一つとして、マイクロニードルを使用し、角質層を局所的に破壊して薬剤を真皮層に強制的に投与するということが試みられています。 当社は、マイクロニードルアレイを用いて、現在は注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の、無痛経皮投与システムを確立すべく、研究開発に取り組んでいます。研究成果の一つして、マイクロニードルを用いたワクチン経皮接種時のマウス免疫原性に関する北里第一三共ワクチン株式会社との共同研究成果を平成28年10月に開催された第20回日本ワクチン学会学術集会において発表しました。 当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。 <消炎鎮痛貼付剤 ETOREAT®>ILTS®を活用した最初の完成製剤である消炎鎮痛貼付剤ETOREAT®(エトドラク*テープ剤)を当社グループの最重要パイプラインと位置づけ、米国において軽度から中等度の急性疼痛を適応症とする医療用医薬品としての製造販売承認取得を目指してまいりました。急性疼痛の一種として米国の規制当局であるFDA(アメリカ食品医薬品局:Food and Drug Administration)と合意したDOMS(Delayed Onset Muscle Soreness、遅発性筋肉痛)に関する病態モデルでの臨床試験の結果、主要評価項目である累積痛みスコアにおいて、ETOREAT®投与群と対照薬(プラセボ*)投与群の間で統計学的な有意差*は示されなかったため、これまでのFDAとの協議内容を踏まえ、平成28年11月にETOREAT®の米国における医療用医薬品としての開発を中止することを決定いたしました。 <開発コード MRX-1OXT:中枢性鎮痛貼付剤(オキシコドン*テープ剤)>中枢性鎮痛薬であるオキシコドンのテープ型貼付剤の製剤開発を推し進めています。ILTS®によって、経皮難吸収性のオキシコドンの経皮浸透度を飛躍的に高めると同時に、皮膚に対する安全性も満たすテープ型貼付剤であり、米国において臨床試験を実施するための非臨床試験*を平成27年11月より開始し、米国における治験薬製造の委託先であるThe Tapemark Company(本社:米国ミネソタ州、以下「Tapemark社」という)に対して製造技術移転を進めており、平成29年に第Ⅰ相臨床試験を開始する予定です。 <開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカイン*テープ剤)>ILTS®を用いて局所麻酔剤であるリドカインのテープ型貼付剤を製剤開発したもので、既に米国での特許を取得しております。平成28年5月に第Ⅰ相臨床試験の結果が判明し、米国においてピーク時年商約1,200億円であったリドカインパップ剤Lidoderm®と比較して皮下組織により早くより多くのリドカインを浸透させることを示唆する結果を得ました。当社では、ILTS®技術の優位性を示す結果を得ることができたと考えています。今後、早期の新薬承認申請(New Drug Application)を目指してさらに開発に注力してまいります。 <開発コード MRX-4TZT:痙性麻痺治療薬(チザニジン*テープ剤)>ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。平成28年10月より米国において第Ⅰ相臨床試験を実施し、市販されているチザニジン経口剤と同水準の血中濃度を示すことができました。このことは、経口剤と同様の有効性を示す可能性が高いことを示唆しています。また、経口剤投与群で観察された眠気等の副作用が、MRX-4TZT投与群ではほとんど観察されませんでした。チザニジン等の筋弛緩薬の米国市場規模は2014年度において12億ドル※といわれており、現在、筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や肝障害等の副作用の低減等の利点が期待されます。早期のPOC*(Proof of Concept)取得を目指して臨床開発を進めるとともにライセンスアウトに向けた交渉を進めてまいります。※ Optio Biopharma Solutions, LLCによる推計 <開発コード MRX-5DML:アルツハイマー治療薬(ドネぺジル*・メマンチン*含有貼付剤)>当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-5DMLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるドネぺジルとメマンチンを配合した貼付剤を製剤開発したものです。現在、非臨床試験の実施準備中であり、早期の第Ⅰ相臨床試験開始を目指し、非臨床試験を実施してまいります。 上記パイプライン以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自でILTS®、NCTS®やマイクロニードルアレイを活用した製剤開発を進めています。 上 市 製 品 当社は、当社が保有する水溶性高分子に関する製剤ノウハウを生かして開発し、日本において医療用医薬品としての製造販売承認を取得した製品を、販売提携先を通じて上市しています。褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「ヨードコート軟膏*」は、マルホ株式会社(本社:大阪市北区)を通じて販売されています。 *用語解説経皮吸収皮膚から(薬物を)体内に吸収・浸透させること。QOL(Quality of Life)不快に感じることを最大限に軽減し、できるだけ当人(患者)がこれでいいと思えるような生活が送れるようにすることを目指した、医療上の概念。イオン液体融点が 100℃以下の塩(えん)のことで、常温溶融塩とも呼ばれる。低融点、高イオン伝導性、高極性、不揮発性、不燃性等の特徴を有しており、太陽電池や環境に優しい反応溶媒等、多方面における応用が検討されている。コロイドコロイドとは、液体、固体あるいは気体にある粒子が均一に分散している状態をいい、ナノコロイドは、粒子がナノサイズのコロイド。マイクロニードルアレイマイクロニードルとは、生体分解性樹脂等から成る長さ数百μmの微小針で、マイクロニードルアレイは、多数のマイクロニードルをシート状に並べた集合体。当社開発品は、生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状。CRO(Contract Research Organization)医薬品開発業務受託機関。 製剤開発飲み薬を貼り薬に、錠剤をゼリー剤にする等して、医薬品の剤型/投与方法を変えることにより、医薬品の有用性や安全性を高めるための研究開発。非臨床試験薬剤候補について、ヒトにおける試験を実施する上で十分な安全性と有効性があることの確認を目的として、主に動物を用いて行われる試験。臨床試験薬剤候補について、有効性と安全性を実証するために、ヒトを対象として実施する試験の総称。少数健常人を対象として安全性及び薬物動態を確認する第I相試験、少数患者を対象として有効性及び安全性を探索的に確認する第Ⅱ相試験、多数患者を対象として有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験に区分される。上市各国の規制当局により新薬が承認され、実際に市場に出る(市販される)こと。ファーストパスエフェクト初回通過効果ともいう。経口摂取した薬物は、腸管から吸収され肝臓に入る。多くの薬物は、その一部が肝臓で代謝されてしまう(異なる化合物になる)ので、飲んだ薬の効果全てが全身(または患部)に届くわけではない。この肝臓通過による薬効減退効果のこと。アンメット・メディカルニーズまだ満たされていない医療上の必要性、未充足の医療ニーズ。難溶性薬物水やその他の各種溶媒に対して溶けにくい性質を持つ薬物。核酸遺伝子の構成成分である生体高分子。核酸には、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)がある。ペプチド数個~数百個のアミノ酸がつながってできた物質の総称。インスリン等の糖尿病治療薬として使用されているものや、最近ではがんワクチンとして開発中のものも多い。生体分解性樹脂ヒトの体内で分解され得るプラスチック素材。手術時の縫合糸等に使われているものもある。エトドラク非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)に分類され、疼痛および炎症の経口治療薬として全世界で幅広く使用されている薬物。貼付剤としての開発は、当社ETOREAT®が世界最初の試み。プラセボ偽薬。本物の薬と同じ外観であるが、薬として効く成分は入っていない。統計学的な有意差確率的に偶然とは考えにくく、意味があると考えられる差。オキシコドン中枢性鎮痛薬(脳や脊髄にある中枢神経に作用して痛みを抑制する薬)の一種で、医療用麻薬に指定されており、重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に使用されている。リドカイン神経末端において痛みの信号を遮断することにより痛みを軽減させる、局所麻酔薬の一種。チザニジン中枢性筋弛緩剤(脳や脊髄にある中枢神経に作用して筋肉の緊張を緩和する薬)の一種で、痛みを伴う肩こりや腰痛、五十肩、緊張性頭痛等の治療及び痙性麻痺等の筋肉がこわばる症状の治療に使用されている。POC(Proof of Concept)POC(Proof of Concept)は、新薬の開発コンセプトが実証されることで、臨床試験においてその新薬に期待される有効性や安全性が確かめられることをいう。ドネペジル神経伝達物資であるアセチルコリンの分解酵素を阻害し脳内アセチルコリンを増加させて、アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。メマンチン脳内での過剰なグルタミン酸作用を抑えて神経細胞を保護するNMDA受容体拮抗薬で、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬。ヨードコート軟膏商品名、褥瘡治療薬。褥瘡とは、患者が長期にわたり同じ体勢で寝たきり等になった場合、体と支持面(多くはベッド・布団)との接触局所で血行が不全となって、周辺組織に壊死を起こすものをいう。