事業の内容
シンバイオ製薬は、元アムジェン社副社長が2005年に設立した医薬品企業です。がん・血液疾患、ウイルス感染症といった、既存薬が少なく医療ニーズが高い希少疾病分野に特化し、新薬の研究開発と製造販売を行っています。特に、欧米で既に有効性・安全性が確認された開発品を導入することで、開発期間とコストを削減し、成功確率を高めるビジネスモデルを採用しています。大型新薬ではなく、希少疾病分野で高付加価値な医薬品を数多く提供することで収益を上げています。2020年12月からは自社販売体制に移行し、専門性の高いMRが全国で営業活動を行っています。
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FY2025|9,474 文字|出典 docID: S100XNE5
3 【事業の内容】1.当社グループの事業概要について(1) 当社グループの概要当社グループ(当社及び当社の子会社)は、当社とグローバルスペシャリティファーマの戦略拠点として設立された連結子会社1社(SymBio Pharma USA, Inc. )と非連結子会社1社(SymBio Pharma Ireland Limited)で構成されております。 SymBio Pharma USA, Inc.は本年度も引き続き経営体制の再構築・経営基盤の充実を行い、その戦略拠点としての役割がより従来に比べ重要性を増しております。 当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。 (注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(Applied Molecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月にアムジェン株式会社として業務を開始しました。 (注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。 (2) 当社グループの事業の特徴がん・血液及びウイルス感染症領域における希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとして、世界各国において手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社グループは、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん・血液及びウイルス感染症領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社グループは、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。当社グループは、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。 (注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る研究開発力を有する新薬開発企業をいいます(2007年「新医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。 (3) 当社グループの事業モデルについて創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社グループは、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。当社グループでは、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社グループ独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、当社グループ内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。当社グループ内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社グループはがん・血液及びウイルス感染症領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらには欧米を含むグローバルの開発・製造・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん・血液及びウイルス感染症という開発の難度が高い治療領域における当社グループの開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん・血液及びウイルス感染症分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社グループの開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社グループが主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。販売につきましては、2020年12月に自社販売体制へ移行しました。がん・血液及びウイルス感染症領域に精通した自社MR(Medical Representative)(注9)を中核とした全国営業体制の構築と流通及び物流機能の整備を推進すると同時に営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の強化に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいります。 これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。 (注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。 (4) 当社グループの事業戦略当社グループは、中長期的な経営計画を実現すべく、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽減当社グループの導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。 (注11)導入候補品とは、当社グループの開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。 (注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。 (b) 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築当社グループの新薬サーチエンジンは、国内外の製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品はさらに、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。<当社グループの開発品導入プロセス>(注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。 (c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制当社グループは、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社グループはこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。研究開発費のうち主なものは業務委託料であり、その金額的・質的重要性は高く、当社グループにおいてはその進捗状況等について厳密な管理を行っております。 (d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。これらの問題は、当社グループの戦略的開発領域である難治性のがん・血液及びウイルス感染症領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。 (注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。 (e) アジアからグローバル展開へ当社グループはこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていく中、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月にはキメリックス社(本社:米国ノースカロライナ州)との間で抗ウイルス薬ブリンシドホビルに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社グループは天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しております。抗ウイルス薬ブリンシドホビルの事業展開については、dsDNAウイルスに対するその広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。 2.当社グループのパイプラインについて当社グループは現在開発中のパイプラインとして、SyB V-1901、SyB L-1701及びSyB L-1702を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインのより一層の拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。 <当社グループパイプラインの進捗状況> ① 抗ウイルス薬SyB V-1901(一般名:brincidofovir<ブリンシドホビル>「BCV」)2019年9月にキメリックス社との間でBCVに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、オルソポックスウイルスの疾患(天然痘・エムポックスを含む)を除いたすべての適応症を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しました。2022年9月、エマージェント・バイオソリューションズ社(本社:米国メリーランド州)がキメリックス社からのBCVに関する権利の譲渡を受けた後も、当社の取得したBCVに関する、天然痘・エムポックスを含むオルソポックスウイルスの疾患を除いたすべての適応症を対象とした、全世界での独占的開発・製造・販売権に対する影響はありません。本剤は、既に欧米における経口剤を用いた臨床試験において高活性の抗ウイルス効果を示し、また広域のスペクトラムを有することが確認されており、各種dsDNAウイルスに対する幅広い抗ウイルス活性は、IV BCV(注射剤BCV)に関しても造血幹細胞移植など免疫不全状態での各種ウイルス感染症の予防および治療に対する有効性と安全性が期待されます。開発については、「空白の治療領域」でアンメット・メディカル・ニーズの高い、造血幹細胞移植後アデノウイルス感染症を対象に、IV BCVの臨床試験を優先的に推進中です。今後は本試験により得られた有効性と安全性に関するPOCデータを活用し、抗マルチウイルス感染症へ対象領域を拡大、あるいは他の治療領域に対してもIV BCVの開発プラットフォームの構築を目指してまいります。BCVは抗がん活性をもつことが確認されており、2024年8月にIV BCVによる悪性リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅰb相臨床試験を開始しました。また、脳神経変性疾患領域においては、2026年に、進行性多巣性白質脳症を対象とした第Ⅱ相臨床試験を開始しました。なお、キメリックス社は、2020年12月、天然痘の医学的防衛策としてBCV経口剤のNDAの提出をFDAが受理したことを発表し、2021年6月にFDAから承認を取得しました。また、当社は疾患ごとの臨床使用実態(添付文書に記載される事項を含む)を見据えた用途特許の確保を進めることで、適応症ごとの排他的保護期間を延長・強化し、IV BCVの資産価値の最大化を図っており、アデノウイルス感染症の用途特許を日本で取得(有効期限:2043年)し、米国でも特許査定通知を米国特許商標庁より受領(有効期限:2044年見込み)しました。なお、エマージェント社はIV BCVの製剤特許を日本、欧州、米国で取得しており、当社はライセンス契約に基づき独占的使用権を得ております。 ② [抗がん剤SyB L-0501(FD製剤)/SyB L-1701(RTD製剤)/SyB L-1702(RI投与))(一般名:ベンダムスチン塩酸塩又はベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®)]ベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、日本においては、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)の承認を取得しております。また、イーグル社との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI投与)の日本における独占的ライセンス契約を締結しております。 (参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。 (医薬品研究開発のプロセス)(a) 基礎研究(b) 前臨床試験(非臨床試験)(c) 臨床試験(治験)(d) 申請及び承認(e) 薬価申請・収載(f) 上市販売(g) 製造販売後調査 (a) 基礎研究新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出したりするための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。 (b) 前臨床試験(非臨床試験)(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。 (c) 臨床試験(治験)前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。1) 第Ⅰ相臨床試験第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。2) 第Ⅱ相臨床試験第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。3) 第Ⅲ相臨床試験第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。 (d) 申請及び承認治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。 (e) 薬価申請・収載新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。 (f) 上市販売薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。 (g) 製造販売後調査販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。
FY2024|12,175 文字|出典 docID: S100VGDJ
3 【事業の内容】1.当社グループの事業概要について(1) 当社グループの概要当社グループ(当社及び当社の子会社)は、当社とグローバルスペシャリティファーマの戦略拠点として設立された連結子会社1社(SymBio Pharma USA, Inc. )と非連結子会社1社(SymBio Pharma Ireland Limited)で構成されております。 SymBio Pharma USA, Inc.は本年度も引き続き経営体制の再構築・経営基盤の充実を行い、その戦略拠点としての役割がより従来に比べ重要性を増しております。 当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。 (注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(Applied Molecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月にアムジェン株式会社として業務を開始しました。 (注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。 (2) 当社グループの事業の特徴がん・血液及びウイルス感染症領域における希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとして、世界各国において手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社グループは、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん・血液及びウイルス感染症領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社グループは、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。当社グループは、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。 (注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る研究開発力を有する新薬開発企業をいいます(2007年「新医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。 (3) 当社グループの事業モデルについて創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社グループは、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。当社グループでは、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社グループ独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、当社グループ内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。当社グループ内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社グループはがん・血液及びウイルス感染症領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらには欧米を含むグローバルの開発・製造・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん・血液及びウイルス感染症という開発の難度が高い治療領域における当社グループの開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん・血液及びウイルス感染症分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社グループの開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社グループが主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。販売につきましては、2008年8月に締結した事業提携契約に基づき、エーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じて国内販売を行ってまいりました。事業提携契約が2020年12月に満了となることから、2018年10月よりトレアキシン®の国内販売について自社による販売体制構築の準備を開始しました。2020年12月からの自社販売体制への移行に向けて、がん・血液及びウイルス感染症領域に精通した自社MR(Medical Representative)(注9)を中核とした全国営業体制の構築と流通及び物流機能の整備を推進すると同時に営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の強化に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいり、2020年12月の契約満了に伴い自社販売体制へ移行しました。これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。 (注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。 (4) 当社グループの事業戦略当社グループは、中長期的な経営計画を実現すべく、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽減当社グループの導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。 (注11)導入候補品とは、当社グループの開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。 (注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。 (b) 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築当社グループの新薬サーチエンジンは、国内外の製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品はさらに、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。<当社グループの開発品導入プロセス>(注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。 (c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制当社グループは、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社グループはこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。研究開発費のうち主なものは業務委託料であり、その金額的・質的重要性は高く、当社グループにおいてはその進捗状況等について厳密な管理を行っております。 (d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。これらの問題は、当社グループの戦略的開発領域である難治性のがん・血液及びウイルス感染症領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。 (注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。 (e) アジアからグローバル展開へ当社グループはこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていく中、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月にはキメリックス社(本社:米国ノースカロライナ州)との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビルに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社グループは天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しております。抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの事業展開については、dsDNAウイルスに対するその広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。 2.当社グループのパイプラインについて当社グループは現在開発中のパイプラインとして、SyB V-1901、SyB L-1701、SyB L-1702、SyB L-1101及びSyB C-1101、を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインのより一層の拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。 <当社グループパイプラインの進捗状況> ① 抗ウイルス薬SyBV-1901(一般名:brincidofovir<ブリンシドフォビル>「BCV」)移植後感染症領域グローバル展開を見据えキメリックス・インク社(Chimerix Inc.、本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」)から導入した抗ウイルス薬BCVの注射剤及び経口剤(SyB V-1901、以下各々「IV BCV」及び「Oral BCV」)の事業展開については、二本鎖DNAウイルス(dsDNAウイルス)に対し広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。IV BCVについては、造血幹細胞移植後や臓器移植後などの免疫不全状態にある患者のアデノウイルス(AdV)感染及び感染症の治療を対象に、IV BCVのグローバル開発を優先的に進めることを決定し、2021年3月に、主に小児対象(成人も含む)のアデノウイルス感染及び感染症を対象とする第IIa相臨床試験を開始するため、米国食品医薬品局(FDA)に治験許可申請(Investigational New Drug (IND) Application)を行いました。本開発プログラムについては、2021年4月に、FDAからファストトラック指定を受けています。2023年5月、本試験において、IV BCVの抗アデノウイルス活性を認め、ヒトPOC(Proof of Concept)を確立し、2024年上半期に第IIa相臨床試験は完了しました。現在関係各国の規制当局との間で国際第III相臨床試験の開始に向けて協議中で、同時に、国際共同治験実施のための当社体制の構築を進めてまいります。なお、本試験に関しては、当試験の有効性を示すポジティブ・データが欧米の各学会において口頭発表されました。また、本試験の結果に基づき出願したアデノウイルス感染及び感染症の治療に関するBCVの用途特許が2024年1月に日本において成立し登録されました。造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス感染症患者を対象とした米国における第IIa相臨床試験は、2024年5月に開始し、同年6月に第1例目の登録が行われ、現在試験が進行中です。腎移植後のBKウイルス(BKV)感染症に対する開発は、現在プロトコルの修正の検討を行っております。ポリオーマウイルス、特にJCウイルス(JCV)は、dsDNAウイルスの中でも、その感染によって脳に重篤な疾患を引き起こすことが知られており、既存の抗ウイルス薬ではほとんど効果が見られないため、有効な治療薬の開発が待ち望まれています。2022年11月に米国ペンシルベニア州立大学医学部との間で試料提供契約(MTA:Material Transfer Agreement)を締結し、ポリオーマウイルス感染マウスモデルにおけるBCVの抗ウイルス活性を検証する非臨床試験を実施しています。また、2024年7月には、その研究成果の第一報として、新たな知見がmBio誌に公表されました。血液腫瘍領域BCVは高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も確認されており、シンガポール国立がんセンター(NCCS:National Cancer Centre Singapore)やカリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターとの共同研究等を通じて、EBウイルス陽性リンパ腫、難治性脳腫瘍等、がん領域における新規適応症の探索も行っています。また、2022年12月、米国ニューオーリンズで開催された第64回米国血液学会年次総会(The 64th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting)において現在有効な治療方法が確立していない進行の早いNK/T細胞リンパ腫に対するBCVの治療効果に関するNCCSとの共同研究成果について口頭発表されました。さらに、2023年6月にはスイス・ルガーノで開催された第17回国際悪性リンパ腫会議(17th International Conference on Malignant Lymphoma: ICML)でBCVの抗腫瘍効果を予測するバイオマーカーに関する研究成果について発表、2024年4月には、米国サンディエゴで開催された米国がん学会(AACR Annual Meeting 2024)においてB細胞リンパ腫に対するBCVの抗腫瘍効果について発表、さらに2024年6月スペイン・マドリードで開催された欧州血液学会(EHA2024 Hybrid Congress)において、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)に対するBCVの抗腫瘍効果について発表されました。2024年8月には、がん領域におけるIV BCVのFIH(First in Human)試験として、悪性リンパ腫患者を対象とした国際共同第Ib相臨床試験を開始しました。本試験はBCVのがん領域におけるヒトPOCを確立することを目的としています。その他の領域EBウイルス(EBV)の関連疾患であることが近年証明された難病の多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)について、2022年8月に、米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)に所属する国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS:National Institute of Neurological Disorders and Stroke)との間で、共同研究試料提供契約(Collaboration Agreement for The Transfer of Human Materials)を締結しました。2023年3月には、多発性硬化症の治療におけるBCVのEBウイルスに対する効果を検証し、今後の臨床試験の実施に向けて必要とされる情報を得ることを目的として共同研究開発契約(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)を締結し、2023年10月にはその研究成果が、イタリア・ミラノで開催された第9回 ECTRIMS-ACTRIMS 合同学会(The 9th Joint ECTRIMS-ACTRIMS Meeting)において発表されました。現在、本共同研究ではマーモセット(非ヒト霊長類)を用いた試験を実施しております。米国国立衛生研究所に所属する国立アレルギー・感染症研究所(NIAID :National Institute of Allergy and Infectious Diseases)との間で、EBウイルス関連リンパ増殖性疾患に対するBCVの有効性を評価する共同研究開発契約(CRADA)を2023年4月に締結しました。dsDNAウイルスの中には単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)をはじめ水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)など、脳神経組織への指向性を有するものがあり、アルツハイマー型認知症を含めた様々な脳神経領域の重篤性疾患に、それらが潜伏しているウイルスの再活性化が関与している可能性についての研究がこの数年進み、知見が増えています。2022年12月に米国タフツ大学により確立されたヒト神経幹細胞を培養した脳組織を3次元に模倣したHSV感染・再活性化モデルを用いて、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染に対するBCVの効果を検証するための委託研究契約(Sponsored Research Agreement)を締結し、共同研究を実施しています。 ② [抗がん剤SyBL-0501(FD製剤)/SyBL-1701(RTD製剤)/SyBL-1702(RI投与))(一般名:ベンダムスチン塩酸塩又はベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®)]ベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、ドイツにおいて非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および慢性リンパ性白血病の治療薬(製品名「リボムスチン®」)として長年使用されている抗がん剤です。この分野には優れた薬剤がなく、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫の患者さんにとって、この製品はまさしく当社グループの企業使命である、空白の治療領域を対象とした薬剤であるが導入の決め手となりました。日本においては、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)の承認を取得しております。また、イーグル社との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI投与)の日本における独占的ライセンス契約を締結しております。トレアキシン®に関しては、東京大学や京都大学との共同研究等に積極的に取り組み、新たな開発の可能性を探索しております。 ③ [抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:リゴセルチブナトリウム)]リゴセルチブは、ユニークなマルチキナーゼ阻害作用を有する、骨髄異形成症候群(MDS)等を目標効能とする抗がん剤です。オンコノバ社との間で、本剤の日本及び韓国における独占的開発権および独占的販売権を取得するライセンス契約を2011年7月に締結しました。リゴセルチブ及びトレアキシン®に関しては、東京大学との共同研究等を通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行っています。 (参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。 (医薬品研究開発のプロセス)(a) 基礎研究(b) 前臨床試験(非臨床試験)(c) 臨床試験(治験)(d) 申請及び承認(e) 薬価申請・収載(f) 上市販売(g) 製造販売後調査 (a) 基礎研究新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出したりするための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。 (b) 前臨床試験(非臨床試験)(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。 (c) 臨床試験(治験)前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。1) 第Ⅰ相臨床試験第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。2) 第Ⅱ相臨床試験第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。3) 第Ⅲ相臨床試験第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。 (d) 申請及び承認治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。 (e) 薬価申請・収載新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。 (f) 上市販売薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。 (g) 製造販売後調査販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。
FY2023|10,679 文字|出典 docID: S100T3FG
3 【事業の内容】1.当社グループの事業概要について(1) 当社グループの概要当社グループ(当社及び当社の子会社)は、当社とグローバル・スペシャリティファーマの戦略拠点として設立された連結子会社1社(SymBio Pharma USA, Inc. )で構成されております。 SymBio Pharma USA, Inc.は本年度において経営体制の再構築・経営基盤の充実を行い、その戦略拠点としての役割がより従来に比べ重要性を増しました。 当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。 (注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(Applied Molecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月にアムジェン株式会社として業務を開始しました。 (注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。 (2) 当社グループの事業の特徴がん・血液及びウイルス感染症領域における希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとして、世界各国において手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社グループは、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん・血液及びウイルス感染症領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社グループは、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。当社グループは、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。 (注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る研究開発力を有する新薬開発企業をいいます(2007年「新医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。 (3) 当社グループの事業モデルについて創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社グループは、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。当社グループでは、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社グループ独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、当社グループ内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。当社グループ内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社グループはがん・血液及びウイルス感染症領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらには欧米を含むグローバルの開発・製造・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん・血液及びウイルス感染症という開発の難度が高い治療領域における当社グループの開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん・血液及びウイルス感染症分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社グループの開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社グループが主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。販売につきましては、2008年8月に締結した事業提携契約に基づき、エーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じて国内販売を行ってまいりました。事業提携契約が2020年12月に満了となることから、2018年10月よりトレアキシン®の国内販売について自社による販売体制構築の準備を開始しました。2020年12月からの自社販売体制への移行に向けて、がん・血液及びウイルス感染症領域に精通した自社MR(Medical Representative)(注9)を中核とした全国営業体制の構築と流通及び物流機能の整備を推進すると同時に営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の強化に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいり、2020年12月の契約満了に伴い自社販売体制へ移行しました。これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。 (注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。 (4) 当社グループの事業戦略当社グループは、中長期的な経営計画を実現すべく、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽減当社グループの導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。 (注11)導入候補品とは、当社グループの開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。 (注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。 (b) 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築当社グループの新薬サーチエンジンは、国内外の製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品はさらに、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。<当社グループの開発品導入プロセス>(注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。 (c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制当社グループは、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社グループはこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。研究開発費のうち主なものは業務委託料であり、その金額的・質的重要性は高く、当社グループにおいてはその進捗状況等について厳密な管理を行っております。 (d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。これらの問題は、当社グループの戦略的開発領域である難治性のがん・血液及びウイルス感染症領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。 (注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。 (e) アジアからグローバル展開へ当社グループはこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていく中、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月にはキメリックス社(本社:米国ノースカロライナ州)との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビルに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社グループは天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しております。抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの事業展開については、dsDNAウイルスに対するその広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。 2.当社グループのパイプラインについて当社グループは現在開発中のパイプラインとして、SyB L-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702、SyB V-1901を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインのより一層の拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。 <当社グループパイプラインの進捗状況> ① [抗がん剤 SyB L-0501(FD製剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI投与))(一般名:ベンダムスチン塩酸塩又はベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®)]SyB L-0501の主成分であるベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、ドイツにおいて非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫及び慢性リンパ性白血病の治療薬(製品名「リボムスチン®」)として長年使用されている抗がん剤です。この製品の導入の背景としては、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者さんには、この分野には優れた薬剤がなく、まさしく当社グループの企業使命である、空白の治療領域を対象とした薬剤であること、また当社グループの強みである分野(血液がん)であることが導入の決め手となりました。日本においては、2010年10月に再発・難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認され、同年12月に発売されました(製品名はトレアキシン®)。また、その追加適応として、未治療(初回治療)の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病を目標効能とした一変承認申請を2015年12月に行い、慢性リンパ性白血病については2016年8月に、未治療(初回治療)の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫については同年12月に一変承認を取得しております。再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)については2020年5月に一変承認申請を行い、2021年3月に一変承認を取得しております。さらに製品ライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシン®の事業価値の最大化を図るべく、2017年9月にイーグル社との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI投与)の日本における独占的ライセンス契約を締結しました。RTD製剤は2020年9月に製造販売承認を取得し、2021年1月より販売を開始しました。また、RI投与については、2022年2月に一変承認を取得しました。トレアキシン®に関しては、東京大学や京都大学との共同研究等に積極的に取り組み、新たな開発の可能性を探索してまいります。 ② [抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:リゴセルチブナトリウム)]リゴセルチブは、ユニークなマルチキナーゼ阻害作用を有する抗がん剤で、現在、オンコノバ社により米国及び欧州等において骨髄異形成症候群(MDS)を目標効能として開発が進められています。MDSは、近年患者数が増加している血液細胞の悪性腫瘍化の前病態であり、高齢者に多く発病し、白血病に移行する可能性が高い難治性疾患です。 特に再発・難治性のMDSに有効な薬剤はないため、未充足の治療領域となっています。オンコノバ社との間で、本剤の日本及び韓国における独占的開発権及び独占的販売権を取得するライセンス契約を2011年7月に締結し、注射剤で再発・難治性の高リスクMDSを目標効能として、さらに、経口剤で初回治療の高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能としています。リゴセルチブ及びトレアキシン®に関しては、東京大学との共同研究等を通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行っています。 ③ [抗ウイルス薬 SyB V-1901(一般名:brincidofovir<ブリンシドフォビル>「BCV」)]2019年9月にキメリックス社との間で抗ウイルス薬BCVに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、オルソポックスウイルスの疾患(天然痘・サル痘を含む)を除いたすべての適応症を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しました。開発については、「空白の治療領域」でアンメット・メディカル・ニーズの高い、造血幹細胞移植後や臓器移植後などの免疫不全状態にある患者のアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、IV BCVの前期第Ⅱ相臨床試験を優先的に推進中です。本試験により得られた有効性と安全性に関する知見に基づき、免疫不全状態における各種dsDNAウイルス感染症に対する効果を検討し、抗マルチウイルス感染症へ対象領域を拡大する方針です。2023年5月、本試験においてIV BCVの抗AdV効果について、ヒトPOC(Proof of Concept)を確立しました。2023年12月には、第65回米国血液学会年次総会において当試験の安全性有効性を示すポジティブ・データが口頭発表されました。腎移植後のBKウイルス(BKV)感染症は、腎機能低下や移植腎の喪失(グラフトロス)など深刻な経過を辿る疾患ですが、腎移植後のBKウイルス感染症患者を対象とした国際共同第Ⅱ相臨床試験の治験を開始し、2022年12月にはオーストラリアにおける第1例目の投与(FPD:First Patient Dosing)を実施しました。一方、同試験は 2025 年の終了を計画しておりましたが、計画に対して症例集積に遅れが生じたことから、 再度研究者の方々とプロトコルの修正の検討を行います。本剤は、既に欧米における経口剤による臨床試験において高活性の抗ウイルス効果を示し、また広域のスペクトラムを有することが確認されており、各種dsDNAウイルスに対する幅広い抗ウイルス活性は、IV BCVに関しても造血幹細胞移植など免疫不全状態での各種ウイルス感染症の予防及び治療に対する有効性と安全性が期待されます。なお、キメリックス社は、2020年12月、天然痘の医学的防衛策としてBCV経口剤のNDAの提出をFDAが受理したことを発表しておりましたが、2021年6月にFDAから承認を取得しました。 (参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。 (医薬品研究開発のプロセス)(a) 基礎研究(b) 前臨床試験(非臨床試験)(c) 臨床試験(治験)(d) 申請及び承認(e) 薬価申請・収載(f) 上市販売(g) 製造販売後調査 (a) 基礎研究新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出したりするための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。 (b) 前臨床試験(非臨床試験)(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。 (c) 臨床試験(治験)前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。1) 第Ⅰ相臨床試験第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。2) 第Ⅱ相臨床試験第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。3) 第Ⅲ相臨床試験第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。 (d) 申請及び承認治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。 (e) 薬価申請・収載新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。 (f) 上市販売薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。 (g) 製造販売後調査販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。
FY2022|10,684 文字|出典 docID: S100QFOG
3 【事業の内容】1.当社グループの事業概要について(1) 当社グループの概要当社グループ(当社及び当社の子会社)は、当社とグローバル・スペシャリティファーマの戦略拠点として設立された連結子会社1社(SymBio Pharma USA, Inc. )で構成されております。当社グループは、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。 (注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(Applied Molecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月にアムジェン株式会社として業務を開始しました。 (注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。 (2) 当社グループの事業の特徴がん・血液及びウイルス感染症領域における希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとして、世界各国において手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社グループは、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん・血液及びウイルス感染症領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社グループは、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。当社グループは、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。 (注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る研究開発力を有する新薬開発企業をいいます(2007年「新医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。 (3) 当社グループの事業モデルについて創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社グループは、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。当社グループでは、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、当社グループ内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。当社グループ内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社グループはがん・血液及びウイルス感染症領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらには欧米を含むグローバルの開発・製造・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん・血液及びウイルス感染症という開発の難度が高い治療領域における当社の開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん・血液及びウイルス感染症分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社グループの開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社グループが主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。販売につきましては、2008年8月に締結した事業提携契約に基づき、エーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じて国内販売を行ってまいりました。事業提携契約が2020年12月に満了となることから、2018年10月よりトレアキシン®の国内販売について自社による販売体制構築の準備を開始しました。2020年12月からの自社販売体制への移行に向けて、がん・血液及びウイルス感染症領域に精通した自社MR(Medical Representative)(注9)を中核とした全国営業体制の構築と流通及び物流機能の整備を推進すると同時に営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の強化に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいり、2020年12月の契約満了に伴い自社販売体制へ移行しました。これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。 (注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。 (4) 当社グループの事業戦略当社グループは、中長期的な経営計画を実現すべく、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽減当社グループの導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。 (注11)導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。 (注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。 (b) 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築当社グループの新薬サーチエンジンは、国内外の製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品はさらに、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。 <当社グループの開発品導入プロセス>(注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。 (c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制当社グループは、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社グループはこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。これにより低コストの医薬品開発を実現するとともに、財務戦略の機動性を確保しています。 (d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。これらの問題は、当社グループの戦略的開発領域である難治性のがん・血液及びウイルス感染症領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。 (注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。 (e) アジアからグローバル展開へ当社グループはこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていく中、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月にはキメリックス社(本社:米国ノースカロライナ州)との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビルに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社グループは天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しております。抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの事業展開については、dsDNAウイルスに対するその広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。 2.当社グループのパイプラインについて当社グループは現在開発中のパイプラインとして、SyB L-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702、SyB V-1901を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインのより一層の拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。 <当社グループパイプラインの進捗状況> ① [抗がん剤 SyB L-0501(FD製剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI投与))(一般名:ベンダムスチン塩酸塩又はベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®)]SyB L-0501の主成分であるベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、ドイツにおいて非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫及び慢性リンパ性白血病の治療薬(商品名「リボムスチン®」)として長年使用されている抗がん剤です。この製品の導入の背景としては、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者さんには、この分野には優れた薬剤がなく、まさしく当社グループの企業使命である、空白の治療領域を対象とした薬剤であること、また当社グループの強みである分野(血液がん)であることが導入の決め手となりました。この製品の世界のライセンスの供給元はアステラス製薬株式会社のドイツ子会社であるアステラス ドイッチランド GmbH社であり、アステラス ドイッチランド GmbH社より日本、中国、韓国、シンガポール及び台湾における独占的開発及び独占的販売権の供与を受け、日本においては、2010年10月に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認され、同年12月に発売されました(製品名はトレアキシン®)。また、その追加適応として、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病を目標効能とした一変承認申請を2015年12月に行い、慢性リンパ性白血病については2016年8月に、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫については同年12月に一変承認を取得しております。再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)については2020年5月に一変承認申請を行い、2021年3月に一変承認を取得しております。今後、さらに製品ライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシン®の事業価値の最大化を図るべく、2017年9月にイーグル社との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI投与)の日本における独占的ライセンス契約を締結しました。RTD製剤は2020年9月に製造販売承認を取得し、2021年1月より販売を開始しました。また、RI投与については、2021年5月に一変承認申請を完了しました。なお、アステラス・ドイッチランド GmbH社と締結した抗がん剤ベンダムスチン凍結乾燥剤ライセンス契約(日本及びアジア諸国)は終了しております。 ② [抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:リゴセルチブナトリウム)]リゴセルチブは、ユニークなマルチキナーゼ阻害作用を有する抗がん剤で、現在、オンコノバ社により米国及び欧州等において骨髄異形成症候群(MDS)を目標効能として開発が進められています。MDSは、近年患者数が増加している血液細胞の悪性腫瘍化の前病態であり、高齢者に多く発病し、白血病に移行する可能性が高い難治性疾患です。 特に再発・難治性のMDSに有効な薬剤はないため、未充足の治療領域となっています。オンコノバ社との間で、本剤の日本及び韓国における独占的開発権及び独占的販売権を取得するライセンス契約を2011年7月に締結し、注射剤で再発・難治性の高リスクMDSを目標効能として、さらに、経口剤で初回治療の高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能としていました。リゴセルチブ経口剤については、オンコノバ社が米国にて実施の、初回治療の高リスクMDSを目標効能とする第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(アザシチジン併用)において、リゴセルチブ経口剤とアザシチジンを併用した際の有効性及び安全性が示唆されています。単剤により高用量の安全性及び日本人での忍容性を確認するために2017年6月に国内第Ⅰ相臨床試験を開始し、2019年6月に症例登録を完了しております。また、リゴセルチブ及びトレアキシン®に関しては、東京大学との共同研究等を通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行っています。 ③ [抗ウイルス薬 SyB V-1901(一般名:brincidofovir<ブリンシドフォビル>「BCV」)]2019年9月にキメリックス社との間で抗ウイルス薬BCVに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除いたすべての適応症を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利をキメリックス社から取得しました。開発については、「空白の治療領域」でアンメット・メディカル・ニーズの高い造血幹細胞移植後のアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、BCV IVの第Ⅱ相臨床試験を優先的に推進中であり、アデノウイルス(AdV)感染症を対象とする試験により得られた有効性と安全性に関する知見に基づき、造血幹細胞移植後の各種dsDNAウイルス感染症に対する効果を検討し、抗マルチウイルス感染症へ対象領域を拡大する方針です。腎移植後のBKウイルス(BKV)感染症は、腎機能低下や移植腎の喪失(グラフトロス)など深刻な経過を辿る疾患ですが、腎移植後のBKウイルス感染症患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験の治験を開始し、2022年12月にはオーストラリアにおける第1例目の投与(FPD:First Patient Dosing)を実施しました。本剤は既にキメリックス社による欧米における臨床試験においてBCV Oralが高活性の抗ウイルス効果を示し、また広域のスペクトラムを有することが確認されており、各種dsDNAウイルスに対する幅広い抗ウイルス活性は、BCV IVに関しても造血幹細胞移植後の各種ウイルス感染症の予防及び治療に対する有効性と安全性が期待されます。なお、キメリックス社は、2020年12月、FDAが天然痘の医学的防衛策としてBCV OralのNDAの提出を受理したことを発表しておりましたが、2021年6月にFDAから承認を取得しました。 (参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。 (医薬品研究開発のプロセス)(a) 基礎研究(b) 前臨床試験(非臨床試験)(c) 臨床試験(治験)(d) 申請及び承認(e) 薬価申請・収載(f) 上市販売(g) 製造販売後調査 (a) 基礎研究新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出したりするための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。 (b) 前臨床試験(非臨床試験)(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。 (c) 臨床試験(治験)前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。1) 第Ⅰ相臨床試験第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。2) 第Ⅱ相臨床試験第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。3) 第Ⅲ相臨床試験第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。 (d) 申請及び承認治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。 (e) 薬価申請・収載新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。 (f) 上市販売薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。 (g) 製造販売後調査販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。
FY2021|11,977 文字|出典 docID: S100NPZC
3 【事業の内容】1.当社の事業概要について(1) 当社の概要当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。 (注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(AppliedMolecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月にアムジェン株式会社として業務を開始しました。なお、2008年2月に武田薬品工業株式会社がアムジェン株式会社の株式を100%取得後、現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受しています。(注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。 (2) 当社の事業の特徴がん及び血液領域における希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとして、世界各国において手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社は、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん及び血液領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社は、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。当社は、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。 (注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る研究開発力を有する新薬開発企業をいいます(2007年「新医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。 (3) 当社の事業モデルについて創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社は、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。当社では、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、社内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。社内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社はがん及び血液領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらには欧米を含むグローバルの開発・製造・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん及び血液という開発の難度が高い治療領域における当社の開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん及び血液分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社の開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社が主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。販売につきましては、2008年8月に締結した事業提携契約に基づき、エーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じて国内販売を行ってまいりました。事業提携契約が2020年12月に満了となることから、2018年10月よりトレアキシン®の国内販売について自社による販売体制構築の準備を開始しました。2020年12月からの自社販売体制への移行に向けて、がん及び血液領域に精通した自社MR(Medical Representative)(注9)を中核とした全国営業体制の構築と流通及び物流機能の整備を推進すると同時に営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の強化に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいり、2020年12月の契約満了に伴い自社販売体制へ移行しました。 これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。 (注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。 (4) 当社の事業戦略当社は、上記の事業を成功させるために、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽減当社の導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより日本を含め世界各国における開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。 (注11)導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。 (注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。 (b) 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築当社の新薬サーチエンジンは、製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品は更に、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。 <当社の開発品導入プロセス> (注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。 (c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制当社は、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社はこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。これにより低コストの医薬品開発を実現するとともに、財務戦略の機動性を確保しています。 (d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。このドラッグ・ラグは、当社の戦略的開発領域である難治性のがん及び血液疾患領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数が多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。 (注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。 (e) アジアからグローバル展開へ当社はこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていくなか、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月30日にはキメリックス・インク社(本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」という)との間で抗ウイルス感染症治療薬ブリンシドフォビルに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社は天然痘疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しました。2021年3月に、主に小児対象(成人も含む)の造血幹細胞移植後の播種性アデノウイルス(AdV)感染症を対象とする第Ⅱ相臨床試験を開始するため、米国食品医薬品局(FDA)にInvestigational New Drug(IND)Application(治験許可申請)を行いました。本開発プログラムについては、2021年4月に、FDAからファスト・トラック(Fast track)指定を受けており、2021年8月には第1例目(FPI: First Patient In)の投与を開始しました。さらに、2022年1月に英国医薬品庁(Medicines and Healthcare products Regulatory Agency:MHRA)に治験申請(Clinical Trial Application:CTA)を提出しました。アデノウイルス(AdV)感染症を対象とする試験により得られた有効性と安全性に関する知見に基づき、造血幹細胞移植後の各種dsDNAウイルス感染症に対する効果を検討し、抗マルチウイルス感染症へ対象領域を拡大し、更には腎臓移植を含む臓器移植分野、がん領域等の対象領域拡大の可能性を追求することで、市場の拡大とBCVの事業価値の最大化を目指してまいります。 2.当社のパイプラインについて当社は現在開発中のパイプラインとして、SyB L-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702、SyB V-1901を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインのより一層の拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。 <当社パイプラインの進捗状況>(1) [抗がん剤 SyB L-0501(FD製剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI投与))(一般名:ベンダムスチン塩酸塩またはベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®)]SyB L-0501の主成分であるベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、ドイツにおいて非ホジキンリンパ腫(注15)、多発性骨髄腫及び慢性リンパ性白血病の治療薬(商品名「リボムスチン®」)として長年使用されている抗がん剤です。この製品の導入の背景としては、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者さんには、この分野には優れた薬剤がなく、まさしく当社の企業使命である、空白の治療領域を対象とした薬剤であること、また当社の強みである分野(血液がん)であることが導入の決め手となりました。2018年7月には日本血液学会が発行した造血器腫瘍診療ガイドラインにトレアキシン®とリツキシマブの併用療法(BR療法)が新たに収載され、既承認(再発・難治性の非ホジキンリンパ腫(低悪性度NHL)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)、未治療(初回治療)の低悪性度NHL及びMCL並びに慢性リンパ性白血病(CLL))のすべての適応症において、標準的治療の選択肢として推奨されることになりました。これにより名実ともにトレアキシン®が悪性リンパ腫における標準療法として位置づけられています。既に承認を取得した適応症に続き、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)を対象とするBR療法による第Ⅲ相臨床試験については、試験成績の主要評価項目である奏効率において期待奏効率を上回る良好な結果が得られたことを基に、2020年5月に製造販売承認事項一部変更承認申請し、2021年3月に承認を取得しました。2017年9月にイーグル社との間で日本における独占的ライセンス契約を締結したトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI投与(注16))については、RTD製剤は2020年9月に製造販売承認を取得し、2021年1月より販売を開始しました。RI投与につきましては、安全性に関する臨床試験が終了し、2021年5月に一変承認申請を完了し、2022年2月に承認を取得しました。RTD製剤は、従来の凍結乾燥注射剤に比べて、手動による煩雑な溶解作業が不要で、そのために要する時間を短縮することができ、医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となります。また、RI投与は、投与時間が、従来のFD製剤及びRTD製剤の1時間に対して大幅に短縮されるため患者さんと医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となることから大きな付加価値を提供することができます。トレアキシン®に関しては、共同臨床契約を埼玉医科大学と締結し、リツキシマブ併用による自家造血幹細胞移植適応のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に関する第Ⅱ相臨床試験を2022年1月から開始し、BR療法の臨床応用の可能性を追求しております。 (注15) 非ホジキンリンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍である悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫以外の総称です。日本人の悪性リンパ腫では、大半を非ホジキンリンパ腫が占めています。(注16) RTD製剤及びRI投与は、従来のFD製剤(凍結乾燥注射剤)とは異なり既に液化された製剤です。RTD製剤(Ready To Dilute)は調剤作業を大幅に低減し、さらに急速静注であるRI投与(Rapid Infusion)により点滴時間を従来の1時間から大幅に短縮することにより、FD製剤に比べ患者さんの負担を大幅に軽減し、さらには医療従事者に大きな付加価値を提供することが可能になります。 (2) [抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:Rigosertib Sodium<リゴセルチブナトリウム>)]リゴセルチブ注射剤については、導入元であるオンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」という)が、現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない、治療後に再発した、または低メチル化剤に不耐容性を示した高リスク骨髄異形成症候群(高リスクMDS)における全生存期間を主要評価項目として、国際共同第Ⅲ相臨床試験(INSPIRE試験)を実施しておりますが、2020年8月に医師選択療法との比較において主要評価項目を達成しなかったことを発表しました。当社は日本における臨床開発を担当しており、INSPIRE試験の追加解析から得られた知見を今後のリゴセルチブの開発に活用するための検討を進めてまいります。リゴセルチブ及びトレアキシンに関して、東京大学や群馬大学との共同研究等を通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行い、事業価値の最大化に努めます。 (3) [抗ウイルス薬 SyB V-1901(一般名:Brincidofovir<ブリンシドフォビル>)]当社は2019年9月にキメリックス社との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの注射剤及び経口剤(SyB V-1901、以下各々「BCV IV」及び「BCV Oral」という)(注17)に関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、天然痘疾患を除くすべての疾患を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利をキメリックス社から取得しております。「空白の治療領域」でアンメット・メディカル・ニーズの高い造血幹細胞移植後のアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、日本・アメリカ・ヨーロッパを中心としたBCV IVのグローバル開発を優先的に進めることを決定し、2021年3月に、主に小児対象(成人も含む)のアデノウイルス(AdV)感染症を対象とする第Ⅱ相臨床試験を開始するため、FDAにIND申請を行いました。本開発プログラムについては、2021年4月に、FDAからFast track指定を受けており、2021年8月には第1例目(FPI: First Patient In)の投与を開始しました。さらに、2022年1月にMHRAにCTAを提出しました。アデノウイルス(AdV)感染症を対象とする試験により得られた有効性と安全性に関する知見に基づき、造血幹細胞移植後の各種dsDNAウイルス(注18)感染症に対する効果を検討し、抗マルチウイルス感染症へ対象領域を拡大し、更には腎臓移植を含む臓器移植分野等の対象領域拡大の可能性を追求することで、市場の拡大とBCVの事業価値の最大化を目指してまいります。本剤は既にキメリックス社による欧米における臨床試験においてBCV Oralが高活性の抗ウイルス効果を示し、また広域のスペクトラムを有することが確認されており、各種dsDNAウイルスに対する幅広い抗ウイルス活性は、BCV IVに関しても造血幹細胞移植後の各種ウイルス感染症の予防及び治療に対する有効性と安全性が期待されます。また、ブリンシドフォビルは高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も期待されています。シンガポール国立がんセンターやカリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターに続き、2022年3月から米国ブラウン大学との共同研究等を通じて、難治性脳腫瘍、EBウイルス陽性リンパ腫等、がん領域における新規適応症の探索も行っています。なお、キメリックス社は、2020年12月、米国食品医薬品局(FDA)が天然痘の医学的防衛策としてBCVの新薬申請(NDA)の提出を受理したことを発表しておりましたが、2021年6月にFDAから承認を取得しました。 (注17)ブリンシドフォビル(BCV)は、シドフォビル(CDV、欧米では既承認・販売の抗ウイルス薬、本邦は未承認)に脂肪鎖(ヘキサデシルオキシプロピル:HDP)が結合した構造となっており、速やかに脂質二重膜へ取り込まれ効率よく細胞内へ移行した後、細胞内ホスフォリパーゼによる代謝によって脂肪鎖が切り離され、生成された活性化体(CDV-PP:CDV diphosphate)が細胞内で長時間保持される結果、抗ウイルス活性が飛躍的に向上した化合物です。また、HDP結合により、OAT-1トランスポーターによる腎尿細管上皮細胞への蓄積が生じないことに加え、CDVが血中に遊離するレベルは低いため、CDVの根本的問題であった腎毒性を回避できます。(注18) dsDNAウイルス:CMV、AdV、HHV-6、BKウイルス、HSV1/2、VZV、HPV、JCV、天然痘ウイルスなど、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマウイルス科、ポックスウイルス科を含む。 (参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。 (医薬品研究開発のプロセス)(a) 基礎研究(b) 前臨床試験(非臨床試験)(c) 臨床試験(治験)(d) 申請及び承認(e) 薬価申請・収載(f) 上市販売(g) 製造販売後調査 (a) 基礎研究新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出したりするための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。 (b) 前臨床試験(非臨床試験)(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。 (c) 臨床試験(治験)前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。① 第Ⅰ相臨床試験第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。② 第Ⅱ相臨床試験第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。③ 第Ⅲ相臨床試験第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。 (d) 申請及び承認治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。 (e) 薬価申請・収載新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。 (f) 上市販売薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。 (g) 製造販売後調査販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。
FY2020|11,469 文字|出典 docID: S100L0KX
3 【事業の内容】1.当社の事業概要について(1) 当社の概要当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。 (注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(AppliedMolecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月1日にアムジェン株式会社として業務を開始しました。なお、2008年2月に武田薬品工業株式会社がアムジェン株式会社の株式を100%取得後、現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受しています。(注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。 (2) 当社の事業の特徴がん及び血液領域における希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとするアジア諸国においては手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社は、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん及び血液領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社は、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。当社は、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。 (注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る研究開発力を有する新薬開発企業をいいます(2007年「新医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。 (3) 当社の事業モデルについて創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社は、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。当社では、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、社内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。社内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社はがん及び血液領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらには欧米を含むグローバルの開発・製造・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん及び血液という開発の難度が高い治療領域における当社の開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん及び血液分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社の開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社が主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。販売につきましては、2008年8月に締結した事業提携契約に基づき、エーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じて国内販売を行ってまいりました。事業提携契約が2020年12月に満了となることから、2018年10月よりトレアキシン®の国内販売について自社による販売体制構築の準備を開始しました。2020年12月からの自社販売体制への移行に向けて、がん及び血液領域に精通した自社MR(Medical Representative)(注9)を中核とした全国営業体制の構築と流通及び物流機能の整備を推進すると同時に営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の強化に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいり、2020年12月の契約満了に伴い自社販売体制へ移行しました。 これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。 (注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。 (4) 当社の事業戦略当社は、上記の事業を成功させるために、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽当社の導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより日本を含めアジアにおける開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。 (注11)導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。 (注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。 (b) 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築当社の新薬サーチエンジンは、製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品は更に、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。 <当社の開発品導入プロセス> (注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。 (c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制当社は、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社はこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。これにより低コストの医薬品開発を実現するとともに、財務戦略の機動性を確保しています。 (d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。このドラッグ・ラグは、当社の戦略的開発領域である難治性のがん及び血液疾患領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。 (注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。 (e) アジアからグローバル展開へ当社はこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていくなか、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月30日にはキメリックス・インク社(本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」という)との間で抗ウイルス感染症治療薬ブリンシドフォビルに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社は天然痘疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しました。当社は、従来の日本への候補品の導入に限定せず、グローバルな市場への展開を目指して、開発に着手しております。抗ウイルス感染症治療薬ブリンシドフォビルにつき、播種性アデノウイルス(AdV)感染症及び免疫不全状態でのアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、2021年3月10日、米国及び英国を中心とした国際共同第Ⅱ相臨床試験(フェーズ2a)を開始するため、米国についてFDAにINDの申請を行いました。 2.当社のパイプラインについて当社は現在開発中のパイプラインとして、SyB L-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702、SyB V-1901を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインのより一層の拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。 <当社パイプラインの進捗状況>(1) [抗がん剤 SyB L-0501(凍結乾燥注射剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤))(一般名:ベンダムスチン塩酸塩またはベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®)]SyB L-0501の主成分であるベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、ドイツにおいて非ホジキンリンパ腫(注15)、多発性骨髄腫及び慢性リンパ性白血病の治療薬(商品名「リボムスチン®」)として長年使用されている抗がん剤です。この製品の導入の背景としては、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者さんには、この分野には優れた薬剤がなく、まさしく当社の企業使命である、空白の治療領域を対象とした薬剤であること、また当社の強みである分野(血液がん)であることが導入の決め手となりました。2018年7月には日本血液学会が発行した造血器腫瘍診療ガイドラインにトレアキシン®とリツキシマブの併用療法(BR療法)が新たに収載され、既承認(再発・難治性の非ホジキンリンパ腫(低悪性度NHL)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)、未治療(初回治療)の低悪性度NHL及びMCL並びに慢性リンパ性白血病(CLL))のすべての適応症において、標準的治療の選択肢として推奨されることになりました。これにより名実ともにトレアキシン®が悪性リンパ腫における標準療法として位置づけられています。既に承認を取得した適応症に続き、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)を対象とするBR療法による第Ⅲ相臨床試験については、試験成績の主要評価項目である奏効率において期待奏効率を上回る良好な結果が得られたことを基に、2020年5月に製造販売承認事項一部変更承認申請し、2021年3月に承認を取得しました。2017年9月にイーグル社との間で日本における独占的ライセンス契約を締結したトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤(注16))については、RTD製剤は2020年9月18日に製造販売承認を取得し、2021年1月より販売を開始しました。RI製剤につきましては現在、安全性に関する臨床試験を実施中で、今年度中に承認申請の予定です。RTD製剤は、従来の凍結乾燥注射剤に比べて、手動による煩雑な溶解作業が不要で、そのために要する時間を短縮することができ、医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となります。また、RI製剤は、投与時間が、従来の凍結乾燥注射剤及びRTD製剤の60分に対して10分間と大幅に短縮されるため患者さんと医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となることから大きな付加価値を提供することができます。更には、液剤の製剤ライセンスによる複数の特許保護を通じてトレアキシン®の製品寿命を2031年まで延長し、当社事業の成長基盤をより強固なものとすることが可能となります。 (注15) 非ホジキンリンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍である悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫以外の総称です。日本人の悪性リンパ腫では、大半を非ホジキンリンパ腫が占めています。(注16) RTD製剤及びRI製剤は、従来の凍結乾燥注射剤(FD)とは異なり既に液化された製剤です。RTD製剤(Ready To Dilute)は調剤作業を大幅に低減し、さらに急速静注であるRI製剤(Rapid Infusion)により点滴時間を従来の60分間から10分間に短縮することにより、FD製剤に比べ患者さんの負担を大幅に軽減し、さらには医療従事者に大きな付加価値を提供することが可能になります。 (2) [抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:Rigosertib Sodium<リゴセルチブナトリウム>)]リゴセルチブ注射剤については、導入元であるオンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」という)が、現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない、治療後に再発した、または低メチル化剤に不耐容性を示した高リスク骨髄異形成症候群(高リスクMDS)における全生存期間を主要評価項目として、国際共同第Ⅲ相臨床試験(INSPIRE試験)を実施しておりますが、2020年8月に医師選択療法との比較において主要評価項目を達成しなかったことを発表しました。当社は日本における臨床開発を担当しており、INSPIRE試験の追加解析から得られた知見を今後のリゴセルチブの開発に活用するための検討を進めてまいります。トレアキシン及びリゴセルチブに関して、東京大学医科学研究所との共同研究等を通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行い、事業価値の最大化に努めます。 (3) [抗ウイルス薬 SyB V-1901(一般名:Brincidofovir<ブリンシドフォビル>)]当社は2019年9月30日にキメリックス社との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの注射剤及び経口剤(SyB V-1901、以下各々「BCV IV」及び「BCV Oral」という)(注17)に関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、天然痘疾患を除くすべての疾患を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利をキメリックス社から取得しております。当社は、2020年2月に開催したグローバルアドバイザリーボードでの検討の結果、「空白の治療領域」でアンメット・メディカル・ニーズの高い造血幹細胞移植後のアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、日本/アメリカ/ヨーロッパを中心としたBCV IVのグローバル開発を優先的に進めることを決定しております。そして、当該試験により得られた有効性と安全性に関する知見に基づき、造血幹細胞移植後の各種dsDNAウイルス(注18)感染症に対する効果を検討し、抗マルチウイルス感染症へ対象領域を拡大し、更には腎臓移植を含む臓器移植分野等の対象領域拡大の可能性を追求することで、市場の拡大とBCVの事業価値の最大化を目指してまいります。BCV液剤の小児のアデノウイルス感染症を対象とした試験開始に向けて、播種性アデノウイルス(AdV)感染症及び免疫不全状態でのアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、2021年3月10日、米国及び英国を中心とした国際共同第Ⅱ相臨床試験(フェーズ2a)を開始するため、米国についてFDAにINDの申請を行いました。本剤は既にキメリックス社による欧米における臨床試験においてBCV Oralが高活性の抗ウイルス効果を示し、また広域のスペクトラムを有することが確認されており、各種dsDNAウイルスに対する幅広い抗ウイルス活性は、BCV IVに関しても造血幹細胞移植後の各種ウイルス感染症の予防及び治療に対する有効性と安全性が期待されます。キメリックス社は、2020年12月、米国食品医薬品局(FDA)が天然痘の医学的防衛策としてBCVの新薬申請(NDA)の提出を受理したことを発表しました。FDAは優先審査を認め、処方薬ユーザー・フィー法(PDUFA)に基づき、審査終了目標日(PDUFA Date)を2021年月7日に設定しました。 (注17)ブリンシドフォビル(BCV)は、シドフォビル(CDV、欧米では既承認・販売の抗ウイルス薬、本邦は未承認)に脂肪鎖(ヘキサデシルオキシプロピル:HDP)が結合した構造となっており、速やかに脂質二重膜へ取り込まれ効率よく細胞内へ移行した後、細胞内ホスフォリパーゼによる代謝によって脂肪鎖が切り離され、生成された活性化体(CDV-PP:CDV diphosphate)が細胞内で長時間保持される結果、抗ウイルス活性が飛躍的に向上した化合物です。また、HDP結合により、OAT-1トランスポーターによる腎尿細管上皮細胞への蓄積が生じないことに加え、CDVが血中に遊離するレベルは低いため、CDVの根本的問題であった腎毒性を回避できます。(注18) dsDNAウイルス:CMV、AdV、HHV-6、BKウイルス、HSV1/2、VZV、HPV、JCV、天然痘ウイルスなど、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマウイルス科、ポックスウイルス科を含む。 (参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。 (医薬品研究開発のプロセス)(a) 基礎研究(b) 前臨床試験(非臨床試験)(c) 臨床試験(治験)(d) 申請及び承認(e) 薬価申請・収載(f) 上市販売(g) 製造販売後調査 (a) 基礎研究新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出したりするための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。 (b) 前臨床試験(非臨床試験)(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。 (c) 臨床試験(治験)前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。① 第Ⅰ相臨床試験第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。② 第Ⅱ相臨床試験第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。③ 第Ⅲ相臨床試験第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。 (d) 申請及び承認治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。 (e) 薬価申請・収載新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。 (f) 上市販売薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。 (g) 製造販売後調査販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。
FY2019|11,535 文字|出典 docID: S100IB4B
3 【事業の内容】1.当社の事業概要について(1) 当社の概要当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。 (注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(AppliedMolecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月1日にアムジェン株式会社として業務を開始しました。なお、2008年2月に武田薬品工業株式会社がアムジェン株式会社の株式を100%取得後、現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受しています。(注2)アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。 (2) 当社の事業の特徴がん及び血液領域における希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとするアジア諸国においては手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社は、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん及び血液領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社は、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。当社は、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。 (注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る研究開発力を有する新薬開発企業をいいます(2007年「新医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。 (3) 当社の事業モデルについて創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社は、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。 当社では、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、社内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。社内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社はがん及び血液領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらには欧米を含むグローバルの開発・製造・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん及び血液という開発の難度が高い治療領域における当社の開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん及び血液分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社の開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社が主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。販売につきましては、2008年8月に締結した事業提携契約に基づき、エーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じて国内販売を行っておりますが、2020年12月の契約満了以降は自社販売体制へ移行することを決定しております。2021年からの自社販売体制への移行に向けて、がん及び血液領域に精通した自社MR(Medical Representative)(注9)を中核とした全国営業体制の構築と流通及び物流機能の整備を推進すると同時に営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の強化に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいります。 これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。 (注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。 (4) 当社の事業戦略当社は、上記の事業を成功させるために、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽減当社の導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより日本を含めアジアにおける開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。 (注11)導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。 (注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。 (b) 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築当社の新薬サーチエンジンは、製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品は更に、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。 <当社の開発品導入プロセス> (注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。 (c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制当社は、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社はこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。これにより低コストの医薬品開発を実現するとともに、財務戦略の機動性を確保しています。 (d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。このドラッグ・ラグは、当社の戦略的開発領域である難治性のがん及び血液疾患領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。 (注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。 (e) アジアからグローバル展開へ当社はこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていくなか、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月30日にはキメリックス・インク社(本社:米国ノースカロライナ州)との間で抗ウイルス感染症治療薬ブリンシドフォビルに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社は天然痘疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しました。 2.当社のパイプラインについて当社は現在開発中のパイプラインとして、SyB L-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702、SyB V-1901を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインのより一層の拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。 <当社パイプラインの進捗状況>(1) [抗がん剤 SyB L-0501(凍結乾燥注射剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤))(一般名:ベンダムスチン塩酸塩、製品名:トレアキシン®)]SyB L-0501の主成分であるベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、ドイツにおいて非ホジキンリンパ腫(注15)、多発性骨髄腫及び慢性リンパ性白血病の治療薬(商品名「リボムスチン®」)として長年使用されている抗がん剤です。この製品の導入の背景としては、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者さんには、この分野には優れた薬剤がなく、まさしく当社の企業使命である、空白の治療領域を対象とした薬剤であること、また当社の強みである分野(血液がん)であることが導入の決め手となりました。この製品の世界のライセンスの供給元はアステラス製薬株式会社のドイツ子会社であるアステラス ドイッチランド GmbH社であり、北米においてはテバ社(イスラエル)の米国子会社であるセファロン社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「セファロン社」)が同社よりライセンス供与を受け、2008年3月に慢性リンパ性白血病の治療薬として、同年10月には再発性B細胞性非ホジキンリンパ腫の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)より承認を受けています。更に欧州においてはムンディファーマ社(英国)が、その他の地域においてはヤンセン・シラグ社(英国)が、それぞれライセンス供与を受け、独占的開発及び独占的販売権を保有しています。一方、当社はアステラス ドイッチランド GmbH社より日本、中国、韓国、シンガポール及び台湾における独占的開発及び独占的販売権の供与を受けています。日本においては、2010年10月27日に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認され、同年12月10日に発売されました(製品名はトレアキシン®)。また、その追加適応として、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病を目標効能とした国内製造販売承認申請を2015年12月に行い、慢性リンパ性白血病については2016年8月に、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫については同年12月に製造販売承認を取得しております。再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)については第Ⅲ相臨床試験において主要評価項目を達成し、現在承認申請に向けた準備を行っています。今後、更に製品ライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシン®の事業価値の最大化を図るべく、2017年9月にイーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州)との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)の日本における独占的ライセンス契約を締結しました。RTD製剤は2019年9月に承認申請を行い、RI製剤については安全性の確認を主目的とした治験を進めております。 なお、日本市場においては、トレアキシン®についてエーザイと共同開発権・独占的販売権を供与する契約を締結しており、エーザイが本薬剤を販売しています。次に、当社が権利を有するアジア諸国においては、2009年12月に香港において、低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認されました。香港においては、独占的開発権・独占的販売権を供与しているセファロン社が販売しています。また、シンガポールにおいては、2010年1月に低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認されました。韓国においては、2011年5月に慢性リンパ性白血病及び多発性骨髄腫の適応症、2014年6月に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫の適応症、そして2017年8月に未治療(初回治療)のCD20陽性の濾胞性リンパ腫の適応症で、それぞれ承認されました。韓国とシンガポールにおいては、エーザイと独占的開発権・独占的販売権を供与する契約を締結しています。シンガポールにおいては2010年9月より、韓国においては2011年10月より、それぞれエーザイ子会社が本薬剤を販売しています。その他、中国においては、提携先であるセファロン社が2018年12月にリツキシマブ治療後の再発性B細胞性非ホジキンリンパ腫を適応症の適応症で承認を取得しました。台湾では、提携先であるイノファーマックス社(台湾)が2011年10月に低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認を取得して2012年2月より販売を開始し、2017年11月に初回治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の承認を取得しています。 (注15)非ホジキンリンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍である悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫以外の総称です。日本人の悪性リンパ腫では、大半を非ホジキンリンパ腫が占めています。 (2) [抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:Rigosertib Sodium<リゴセルチブナトリウム>)]リゴセルチブは、ユニークなマルチキナーゼ阻害作用(注16)を有する抗がん剤で、現在、オンコノバ社により米国及び欧州等において骨髄異形成症候群(MDS)を目標効能として開発が進められています。MDSは、近年患者数が増加している血液細胞の悪性腫瘍化の前病態であり、高齢者に多く発病し、白血病に移行する可能性が高い難治性疾患です。 特に再発・難治性のMDSに有効な薬剤はないため、未充足の治療領域となっています。当社は、オンコノバ社との間で、本剤の日本及び韓国における独占的開発権及び独占的販売権を取得するライセンス契約を2011年7月に締結し、現在、注射剤で再発・難治性の高リスクMDSを目標効能として、更に、経口剤で初回治療の高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能として、それぞれ開発を進めています。リゴセルチブ注射剤については現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない、治療後に再発した、または低メチル化剤に不耐容性を示した高リスク骨髄異形成症候群(高リスクMDS)を対象とし、全世界から20ヶ国以上が参加する国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。当社は、本国際共同第Ⅲ相臨床試験に日本から参加し、臨床試験を実施しています。また、リゴセルチブ経口剤については、オンコノバ社が輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とする第Ⅱ相臨床試験、及び初回治療の高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能とした臨床試験を進めています。当社は、リゴセルチブ経口剤単剤による低リスクMDSを目標効能とした国内第Ⅰ相臨床試験を既に終了しており、引き続き初回治療の高リスクMDSを目標効能として、単剤により高用量の安全性を確認するための国内第Ⅰ相臨床試験を実施しています。第Ⅰ相臨床試験終了後は国際共同臨床試験への参加を検討しています。なお、輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とした開発についてはオンコノバ社の開発状況を見据えながら検討してまいります。今後当社はMDS以外の適応についても、オンコノバ社における開発の進捗を見据えながら開発を検討してまいります。本剤の注射剤、経口剤の開発を適応に応じて使い分けることにより、患者さんにより使いやすい、そしてコンプライアンスを考えた治療方法の開発を進めてまいります。 (注16)マルチキナーゼ阻害作用とは、がん細胞の増殖、浸潤及び転移に関与する複数のキナーゼを阻害することによりがん細胞を死に至らしめる作用をいいます。 (3) [抗ウイルス薬 SyB V-1901(一般名:Brincidofovir<ブリンシドフォビル>)]当社は2019年9月30日にキメリックス社との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(BCV)に関しての独占的グローバルライセンス契約を締結しました。当社は天然痘疾患を除くすべての疾患を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利をキメリックス社から取得したことにより、高品質の医薬品供給のための一貫体制を備えたグローバル市場を対象として事業展開をするスペシャリティファーマへの転換を進めてまいります。開発については、「空白の治療領域」となっている医療ニーズの高い造血幹細胞移植後のウイルス性出血性膀胱炎(vHC)を最初の疾患ターゲットとし、本剤を必要とする患者さんに一日も早く提供できるよう、世界に先駆けてまず国内で臨床開発を進め承認を得ると同時に、欧米を含めた国際共同臨床試験を実施しグローバル展開を図ってまいります。また、腎臓移植後のウイルス感染症に対する臨床開発も計画しており、臓器移植の市場規模が大きい欧米市場及び中国市場を含めたアジア地域での事業展開を睨み、対象疾患の地域特性を生かしたパートナーシップも視野に入れて検討中です。2016年5月に設立した100%出資の米国子会社 SymBio Pharma USA, Inc.の戦略的活用も含めて事業価値最大化の可能性を追求してまいります。 (参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。 (医薬品研究開発のプロセス)(a) 基礎研究(b) 前臨床試験(非臨床試験)(c) 臨床試験(治験)(d) 申請及び承認(e) 薬価申請・収載(f) 上市販売(g) 製造販売後調査 (a) 基礎研究新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出したりするための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。 (b) 前臨床試験(非臨床試験)(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。 (c) 臨床試験(治験)前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。① 第Ⅰ相臨床試験第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。② 第Ⅱ相臨床試験第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。③ 第Ⅲ相臨床試験第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。 (d) 申請及び承認治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。 (e) 薬価申請・収載新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。 (f) 上市販売薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。 (g) 製造販売後調査販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。
FY2018|12,104 文字|出典 docID: S100FI8O
3 【事業の内容】1.当社の事業概要について(1) 当社の概要当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。 (注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(AppliedMolecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月1日にアムジェン株式会社として業務を開始しました。なお、2008年2月に武田薬品工業株式会社がアムジェン株式会社の株式を100%取得後、現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受しています。(注2)アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。 (2) 当社の事業の特徴がん及び血液領域における希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとするアジア諸国においては手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社は、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん及び血液領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社は、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。当社は、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。 (注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る研究開発力を有する新薬開発企業をいいます(2007年「新医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。 (3) 当社の事業モデルについて創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社は、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。 当社では、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、社内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。社内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社はがん及び血液領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらにはグローバルの開発・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん及び血液という開発の難度が高い治療領域における当社の開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん及び血液分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社の開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社が主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。販売につきましては、2008年8月に締結した事業提携契約に基づき、エーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じて国内販売を行っておりますが、2020年12月の契約満了以降は自社販売体制へ移行することを決定しております。将来の自社販売体制への移行に向けて、がん及び血液領域に精通した自社MR(Medical Representative)(注9) の採用と育成を通じた営業体制の確立と営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の確立に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいります。 これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。 (注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。 (4) 当社の事業戦略当社は、上記の事業を成功させるために、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽減当社の導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより日本を含めアジアにおける開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。 (注11)導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。 (注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。 (b) 高度な探索・評価能力による、優れたパイプラインの構築当社の新薬サーチエンジンは、製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品は更に、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。 <当社の開発品導入プロセス> (注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。 (c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制当社は、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社はこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。これにより低コストの医薬品開発を実現するとともに、財務戦略の機動性を確保しています。 (d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。このドラッグ・ラグは、当社の戦略的開発領域である難治性のがん及び血液疾患領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。 (注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。 (e) アジアからグローバル展開へ当社はこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていくなか、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。 2.当社のパイプラインについて当社は現在開発中のパイプラインとして、SyB L-0501、SyB C-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインのより一層の拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。 <当社パイプラインの進捗状況と提携先一覧>開発番号薬効分類権利地域適応症開発状況提携先SyB L-0501抗がん剤(FD凍結乾燥剤)日本再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫 *承認取得(2010年10月27日)エーザイ株式会社(共同開発権・独占的販売権供与) * 当社自社開発 再発・難治性マントル細胞リンパ腫 *承認取得(2010年10月27日)再発・難治性中高悪性度非ホジキンリンパ腫第Ⅲ相臨床試験実施中未治療(初回治療)低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(2016年12月19日)未治療(初回治療)マントル細胞リンパ腫慢性リンパ性白血病承認取得(2016年8月26日)シンガポール低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(2010年1月20日)エーザイ株式会社(独占的開発権・独占的販売権供与)慢性リンパ性白血病韓国慢性リンパ性白血病承認取得(2011年5月31日)エーザイ株式会社(独占的開発権・独占的販売権供与)多発性骨髄腫再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(2014年6月16日)未治療(初回治療)のCD20陽性の濾胞性リンパ腫承認取得(2017年8月8日)中国リツキシマブ治療後の再発性B細胞性非ホジキンリンパ腫承認取得(2018年12月17日)セファロン社(米国)(独占的開発権・独占的販売権供与)香港低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(2009年12月30日)慢性リンパ性白血病台湾低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(2011年10月18日)イノファーマックス社(台湾)(独占的開発権・独占的販売権供与)慢性リンパ性白血病未治療(初回治療)低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(2017年11月15日)未治療(初回治療)マントル細胞リンパ腫SyB L-1701抗がん剤(RTD液剤)日本SyB L-0501の日本における全適応症申請準備中―SyB L-1702抗がん剤(RI液剤)日本SyB L-0501の日本における全適応症臨床試験実施中―SyB C-0501抗がん剤(経口剤)日本進行性固形がん第Ⅰ相臨床試験実施中―全身性エリテマトーデス(SLE)前臨床試験実施中―SyB L-1101抗がん剤(注射剤)日本再発・難治性高リスク骨髄異形成症候群国際共同第Ⅲ相臨床試験実施中―SyB C-1101抗がん剤(経口剤)日本再発・難治性高リスク骨髄異形成症候群(単剤試験)第Ⅰ相臨床試験実施中―未治療(初回治療)高リスク骨髄異形成症候群(アザシチジン併用)臨床試験準備中―輸血依存性低リスク骨髄異形成症候群(単剤試験)臨床試験準備中― (1) [抗がん剤SyB L-0501(凍結乾燥注射剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤) / SyB C-0501(経口剤)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩、製品名:トレアキシン®)]SyB L-0501の主成分であるベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、ドイツにおいて非ホジキンリンパ腫(注15)、多発性骨髄腫及び慢性リンパ性白血病の治療薬(商品名「リボムスチン®」)として長年使用されている抗がん剤です。この製品の導入の背景としては、現在、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者さんには、この分野には優れた薬剤がなく、まさしく当社の企業使命である、空白の治療領域を対象とした薬剤であること、また当社の強みである分野(血液がん)であることが導入の決め手となりました。この製品の世界のライセンスの供給元はアステラス製薬株式会社のドイツ子会社であるアステラスドイッチランドGmbH社であり、北米においてはテバ社(イスラエル)の米国子会社であるセファロン社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「セファロン社」)が同社よりライセンス供与を受け、既に2008年3月に慢性リンパ性白血病の治療薬として、同年10月には再発性B細胞性非ホジキンリンパ腫の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)より承認を受けています。更に欧州においてはムンディファーマ社(英国)が、その他の地域においてはヤンセン・シラグ社(英国)が、それぞれライセンス供与を受け、独占的開発及び独占的販売権を保有しています。一方、当社はアステラスドイッチランドGmbH社より日本、中国、韓国、シンガポール及び台湾における独占的開発及び独占的販売権の供与を受けています。日本においては、2010年10月27日に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認され、同年12月10日に発売されました(製品名はトレアキシン®)。また、その追加適応として、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病を目標効能とした国内製造販売承認申請を2015年12月に行い、慢性リンパ性白血病については2016年8月に、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫については同年12月に製造販売承認を取得しております。再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/rDLBCL)については第Ⅱ相臨床試験を終了し、現在第Ⅲ相臨床試験を行っています。今後、更に製品ライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシン®の事業価値の最大化を図るべく、2017年9月にイーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州)との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)の日本における独占的ライセンス契約を締結しました。現在RTD製剤は承認申請の準備中、RI製剤については安全性の確認を主目的とした治験を開始しております。これらの注射剤の適応症に加えて経口剤の開発を推進することにより、固形がんや自己免疫疾患に取り組みさらなる事業拡大の可能性を検討すべく、進行性固形がんを対象としてトレアキシン®経口剤の推奨投与量・スケジュール及び忍容性・安全性の検討を行い、がん腫を絞り込むことを目的として第Ⅰ相臨床試験を開始しています。また、トレアキシン®の経口投与による免疫系への作用を評価すべく、自己免疫疾患の一種である全身性エリテマトーデス(SLE)に対する治療効果の確認を目的とする前臨床試験を実施するため、慶應義塾大学との間で共同研究契約を締結し試験に着手しています。なお、日本市場においては、トレアキシン®についてエーザイと共同開発権・独占的販売権を供与する契約を締結しており、エーザイが本薬剤を販売しています。次に、当社が権利を有するアジア諸国においては、2009年12月に香港において、低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認されました。香港においては、独占的開発権・独占的販売権を供与しているセファロン社が販売しています。また、シンガポールにおいては、2010年1月に低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認されました。韓国においては、2011年5月に慢性リンパ性白血病及び多発性骨髄腫の適応症、2014年6月に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫の適応症、そして2017年8月に未治療(初回治療)のCD20陽性の濾胞性リンパ腫の適応症で、それぞれ承認されました。 韓国とシンガポールにおいては、エーザイと独占的開発権・独占的販売権を供与する契約を締結しています。シンガポールにおいては2010年9月より、韓国においては2011年10月より、それぞれエーザイ子会社が本薬剤を販売しています。 その他、中国においては、提携先であるセファロン社が2018年12月にリツキシマブ治療後の再発性B細胞性非ホジキンリンパ腫の適応症で承認を取得しました。台湾では、提携先であるイノファーマックス社(台湾)が2011年10月に低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認を取得して2012年2月より販売を開始し、2017年11月に初回治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の承認を取得しています。 (注15)非ホジキンリンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍である悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫以外の総称です。日本人の悪性リンパ腫では、大半を非ホジキンリンパ腫が占めています。 (2) [抗がん剤SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:Rigosertib Sodium<リゴセルチブナトリウム>)]リゴセルチブは、ユニークなマルチキナーゼ阻害作用(注16)を有する抗がん剤で、現在、オンコノバ社により米国及び欧州において骨髄異形成症候群(MDS)を目標効能として開発が進められています。MDSは、近年患者数が増加している血液細胞の悪性腫瘍化の前病態であり、高齢者に多く発病し、白血病に移行する可能性が高い難治性疾患です。 特に再発・難治性のMDSに有効な薬剤はないため、未充足の治療領域となっています。当社は、オンコノバ社との間で、本剤の日本及び韓国における独占的開発権及び独占的販売権を取得するライセンス契約を2011年7月に締結し、現在、注射剤で再発・難治性の高リスクMDSを目標効能として、更に、経口剤で初回治療の高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能として、それぞれ開発を進めています。リゴセルチブ注射剤については現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない、治療後に再発した、または低メチル化剤に不耐容性を示した高リスク骨髄異形成症候群(高リスクMDS)を対象とし、全世界から20ヶ国以上が参加する国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。当社は、本国際共同第Ⅲ相臨床試験に日本から参加し、臨床試験を実施しています。また、リゴセルチブ経口剤については、オンコノバ社が輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とする第Ⅱ相臨床試験、及び初回治療の高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能とする第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を進めています。当社は、リゴセルチブ経口剤単剤による低リスクMDSを目標効能とした国内第Ⅰ相臨床試験を既に終了しており、引き続き初回治療の高リスクMDSを目標効能としたアザシチジンとの併用による第Ⅰ相臨床試験を実施すべく、現在単剤により高用量の安全性を確認するための国内第Ⅰ相臨床試験を実施しています。第Ⅰ相臨床試験終了後は国際共同臨床試験への参加を検討しています。なお、輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とした開発についてはオンコノバ社の開発状況を見据えながら検討してまいります。今後当社はMDS以外の適応についても、オンコノバ社における開発の進捗を見据えながら開発を検討してまいります。本剤の注射剤、経口剤の開発を適応に応じて使い分けることにより、患者さんにより使いやすい、そしてコンプライアンスを考えた治療方法の開発を進めてまいります。 (注16)マルチキナーゼ阻害作用とは、がん細胞の増殖、浸潤及び転移に関与する複数のキナーゼを阻害することによりがん細胞を死に至らしめる作用をいいます。 (参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。 (医薬品研究開発のプロセス)(a) 基礎研究(b) 前臨床試験(非臨床試験)(c) 臨床試験(治験)(d) 申請及び承認(e) 薬価申請・収載(f) 上市販売(g) 製造販売後調査 (a) 基礎研究新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出したりするための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。 (b) 前臨床試験(非臨床試験)(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。 (c) 臨床試験(治験)前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。① 第Ⅰ相臨床試験第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。② 第Ⅱ相臨床試験第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。③ 第Ⅲ相臨床試験第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。 (d) 申請及び承認治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。 (e) 薬価申請・収載新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。 (f) 上市販売薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。 (g) 製造販売後調査販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。
FY2017|12,066 文字|出典 docID: S100COXH
3 【事業の内容】1.当社の事業概要について(1) 当社の概要当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、平成17年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。 (注1) バイオ医薬品業界最大手。昭和55年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(Applied Molecular Genetics)として設立。日本においては、平成5年5月1日にアムジェン株式会社として業務を開始しました。なお、平成20年2月に武田薬品工業株式会社がアムジェン株式会社の株式を100%取得後、現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受しています。(注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。 (2) 当社の事業の特徴がん・血液・ペインマネジメントにおける希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとするアジア諸国においては手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社は、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん・血液・ペインマネジメントの3治療領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社は、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い、がん・血液・ペインマネジメントを中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、持続性のある事業展開を行います。当社は、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。 (注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る新薬開発企業をいいます(平成14年「医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。 (3) 当社の事業モデルについて創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社は、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。 当社では、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、社内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。社内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社はがん・血液・ペインマネジメントを中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらにはグローバルの開発・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん・血液・ペインマネジメントという開発の難度が高い治療領域における当社の開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん・血液・ペインマネジメント分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社の開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社が主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。販売につきましては、将来的には自社販売までを一貫して行える体制の構築を目指してまいりますが、営業組織の構築については、採算が確保できるまでの期間は自社MR(Medical Representative)(注9)を置かず、当面は製薬企業との提携により行います。一方で、将来の自社販売体制構築に向けて、がん・血液・ペインマネジメント領域に精通した営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の確立に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいります。 これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。 (注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。 (4) 当社の事業戦略当社は、上記の事業を成功させるために、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽減当社の導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は、既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより日本を含めアジアにおける開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。 (注11)導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。 (注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。 (b) 高度な探索・評価能力による、優れたパイプラインの構築当社の新薬サーチエンジンは、製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品はさらに、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクと開発期間を軽減させることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。 <当社の開発品導入プロセス> (注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。 (c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制当社は、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備ともに固定費発生源の代表格ですが、当社はこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。これにより低コストの医薬品開発を実現するとともに、財務戦略の機動性を確保しています。 (d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。このドラッグ・ラグは、当社の戦略的開発領域である難治性のがん及び血液疾患、さらに中等度から重度のペインマネジメント領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。また、ペインマネジメント領域は、現在過少治療が目立っており、未充足の治療領域です。疼痛(ペイン)に苦しむ患者さんは高齢者に多く、今後市場の拡大が予想されます。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。 (注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。 (e) アジアからグローバル展開へ当社はこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていくなか、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。 2.当社のパイプラインについて当社は現在開発中のパイプラインとして、SyB L-0501、SyB C-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインの拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。 <当社パイプラインの進捗状況と提携先一覧>開発番号薬効分類権利地域適応症開発状況提携先SyB L-0501抗がん剤(FD凍結乾燥剤)日本再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫 *承認取得(平成22年10月27日)エーザイ株式会社(共同開発権・独占的販売権供与) * 当社自社開発 再発・難治性マントル細胞リンパ腫 *承認取得(平成22年10月27日)再発・難治性中高悪性度非ホジキンリンパ腫第Ⅲ相臨床試験実施中未治療(初回治療)低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成28年12月19日)未治療(初回治療)マントル細胞リンパ腫慢性リンパ性白血病承認取得(平成28年8月26日)シンガポール低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成22年1月20日)エーザイ株式会社(独占的開発権・独占的販売権供与)慢性リンパ性白血病韓国慢性リンパ性白血病承認取得(平成23年5月31日)エーザイ株式会社(独占的開発権・独占的販売権供与)多発性骨髄腫再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成26年6月16日)中国低悪性度非ホジキンリンパ腫承認申請中セファロン社(米国)(独占的開発権・独占的販売権供与)香港低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成21年12月30日)慢性リンパ性白血病台湾低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成23年10月18日)イノファーマックス社(台湾)(独占的開発権・独占的販売権供与)慢性リンパ性白血病未治療(初回治療)低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成29年11月15日)未治療(初回治療)マントル細胞リンパ腫SyB L-1701抗がん剤(RTD液剤)日本SyB L-0501の日本における全適応症申請準備中―SyB L-1702抗がん剤(RI液剤)日本SyB L-0501の日本における全適応症臨床試験準備中―SyB C-0501抗がん剤(経口剤)日本進行性固形がん第Ⅰ相臨床試験実施中―全身性エリマトーデス(SLE)前臨床試験準備中―SyB L-1101抗がん剤(注射剤)日本再発・難治性高リスク骨髄異形成症候群国際共同第Ⅲ相臨床試験実施中―SyB C-1101抗がん剤(経口剤)日本再発・難治性高リスク骨髄異形成症候群(単剤試験)第Ⅰ相臨床試験実施中―未治療(初回治療)高リスク骨髄異形成症候群(アザシチジン併用)臨床試験準備中―輸血依存性低リスク骨髄異形成症候群(単剤試験)臨床試験準備中― (1) [抗がん剤 SyB L-0501(凍結乾燥注射剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤) / SyB C-0501(経口剤)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩、製品名:トレアキシン®)]SyB L-0501の主成分であるベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、ドイツにおいて非ホジキンリンパ腫(注15)、多発性骨髄腫及び慢性リンパ性白血病の治療薬(商品名「リボムスチン®」)として長年使用されている抗がん剤です。この製品の導入の背景としては、現在、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者さんには、この分野には優れた薬剤がなく、まさしく当社の企業使命である、空白の治療領域を対象とした薬剤であること、また当社の強みである分野(血液がん)であることが導入の決め手となりました。この製品の世界のライセンスの供給元はアステラス製薬株式会社のドイツ子会社であるアステラス・ファーマ社であり、北米においてはセファロン社(米国)が同社よりライセンス供与を受け、既に平成20年3月に慢性リンパ性白血病の治療薬として、平成20年10月には再発性B細胞性非ホジキンリンパ腫の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)より承認を受けています。更に欧州においてはムンディファーマ社(英国)が、その他の地域においてはヤンセン・シラグ社(英国)が、それぞれライセンス供与を受け、独占的開発及び独占的販売権を保有しています。一方、当社はアステラス・ファーマ社より日本、中国、韓国、シンガポール及び台湾における独占的開発及び独占的販売権の供与を受けています。日本においては、平成22年10月27日に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認され、同年12月10日に発売されました(製品名はトレアキシン®)。また、その追加適応として、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病を目標効能とした国内製造販売承認申請を平成27年12月に行い、慢性リンパ性白血病については平成28年8月に、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫については同年12月に製造販売承認を取得しております。再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)については第Ⅱ相臨床試験まで終了し、現在第Ⅲ相臨床試験を行っています。今後、更に製品ライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシン®の事業価値の最大化を図るべく、平成29年9月にイーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州)との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)の日本における独占的ライセンス契約を締結しました。これらの注射剤の適応症に加えて経口剤の開発を推進することにより、固形がんや自己免疫疾患に取り組みさらなる事業拡大の可能性を検討すべく、進行性固形がんを対象としてトレアキシン®経口剤の推奨投与量・スケジュール及び忍容性・安全性の検討を行い、がん腫を絞り込むことを目的として第Ⅰ相臨床試験を開始しています。なお、日本市場においては、トレアキシン®についてエーザイと共同開発権・独占的販売権を供与する契約を締結しており、エーザイが本薬剤を販売しています。次に、当社が権利を有するアジア諸国においては、平成21年12月に香港において、低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認されました。香港においては、独占的開発権・独占的販売権を供与しているセファロン社が販売しています。また、シンガポールにおいては、平成22年1月に低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で、韓国においては、平成23年5月に慢性リンパ性白血病及び多発性骨髄腫の適応症で、平成26年6月に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫の適応症で、それぞれ承認されました。 韓国とシンガポールにおいては、エーザイと独占的開発権・独占的販売権を供与する契約を締結しています。シンガポールにおいては平成22年9月より、韓国においては平成23年10月より、それぞれエーザイ子会社が本薬剤を販売しています。 その他、中国においては、提携先であるセファロン社によって臨床試験を経て平成29年3月に承認申請されており、台湾では、提携先であるイノファーマックス社(台湾)が平成23年10月に低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認を取得して平成24年2月より販売を開始し、平成29年11月に初回治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の承認を取得しています。 (注15)非ホジキンリンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍である悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫以外の総称です。日本人の悪性リンパ腫では、大半を非ホジキンリンパ腫が占めています。 (2) [抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:rigosertib<リゴセルチブ>)]リゴセルチブは、ユニークなマルチキナーゼ阻害作用(注16)を有する抗がん剤で、現在、オンコノバ社により米国及び欧州において骨髄異形成症候群(MDS)を目標効能として開発が進められています。MDSは、近年患者数が増加している血液細胞の悪性腫瘍化の前病態であり、高齢者に多く発病し、白血病に移行する可能性が高い難治性疾患です。特に再発・難治性のMDSに有効な薬剤はないため、未充足の治療領域となっています。当社は、オンコノバ社との間で、本剤の日本及び韓国における独占的開発権及び独占的販売権を取得するライセンス契約を平成23年7月に締結し、現在、注射剤で再発・難治性の高リスクMDSを目標効能として、更に、経口剤で高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能として、それぞれ開発を進めています。リゴセルチブ注射剤については、平成26年2月にオンコノバ社が、再発・難治性の高リスクMDS患者を対象として、欧米で実施した第Ⅲ相臨床試験(ONTIME試験、注射剤)の結果を発表しました。その中で、主要評価項目の全生存期間においてはBSC(Best Supportive Care)に対し、統計学的に有意な差を示さなかったものの、部分集団解析の結果、低メチル化剤(HMA)による前治療中に病勢の進行した患者または不応であった患者群においては、統計学的に有意な差が認められたとの見解が示されました。オンコノバ社はこれを踏まえ、現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない(HMA不応)または治療後に再発した高リスクMDS患者を対象とし、全世界から20ヶ国以上が参加する国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。当社は、本国際共同第Ⅲ相臨床試験に日本から参加し、臨床試験を実施しています。また、リゴセルチブ経口剤については、オンコノバ社が輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とする第Ⅱ相臨床試験、及び初回治療の高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能とする第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を進めています。当社は、リゴセルチブ経口剤単剤による低リスクMDSを目標効能とした国内第Ⅰ相臨床試験を既に終了しており、引き続き初回治療の高リスクMDSを目標効能としたアザシチジンとの併用による第Ⅰ相臨床試験を実施すべく、現在単剤により高用量の安全性を確認するための国内第Ⅰ相臨床試験を実施しています。第Ⅰ相臨床試験終了後は、国際共同臨床試験への参加を検討しています。なお、輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とした開発については、オンコノバ社の開発状況を見据えながら検討してまいります。今後当社は、MDS以外の適応についても、オンコノバ社における開発の進捗を見据えながら開発を検討してまいります。本剤の注射剤、経口剤の開発を適応に応じて使い分けることにより、患者さんにより使いやすい、そしてコンプライアンスを考えた治療方法の開発を進めてまいります。 (注16)マルチキナーゼ阻害作用とは、がん細胞の増殖、浸潤及び転移に関与する複数のキナーゼを阻害することによりがん細胞を死に至らしめる作用をいいます。 (参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について 医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。 (医薬品研究開発のプロセス)(a) 基礎研究(b) 前臨床試験(非臨床試験)(c) 臨床試験(治験)(d) 申請及び承認(e) 薬価申請・収載(f) 上市販売(g) 製造販売後調査 (a) 基礎研究新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出すための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。 (b) 前臨床試験(非臨床試験)(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。 (c) 臨床試験(治験)前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。① 第Ⅰ相臨床試験第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。② 第Ⅱ相臨床試験第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。③ 第Ⅲ相臨床試験第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。 (d) 申請及び承認治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。 (e) 薬価申請・収載新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。 (f) 上市販売薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。 (g) 製造販売後調査販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。
FY2016|12,268 文字|出典 docID: S100A097
3 【事業の内容】1.当社の事業概要について(1) 当社の概要当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、平成17年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。 (注1) バイオ医薬品業界最大手。昭和55年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(Applied Molecular Genetics)として設立。日本においては、平成5年5月1日にアムジェン株式会社として業務を開始しました。なお、平成20年2月に武田薬品工業株式会社がアムジェン株式会社の株式を100%取得後、現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受しています。(注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。 (2) 当社の事業の特徴がん・血液・ペインマネジメントにおける希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとするアジア諸国においては手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社は、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん・血液・ペインマネジメントの3治療領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社は、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い、がん・血液・ペインマネジメントを中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、持続性のある事業展開を行います。当社は、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。 (注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る新薬開発企業をいいます(平成14年「医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。 (3) 当社の事業モデルについて創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社は、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。 当社では、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、社内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。 社内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社はがん・血液・ペインマネジメントを中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらにはグローバルの開発・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん・血液・ペインマネジメントという開発の難度が高い治療領域における当社の開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん・血液・ペインマネジメント分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社の開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社が主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。販売につきましては、将来的には自社販売までを一貫して行える体制の構築を目指してまいりますが、営業組織の構築については、採算が確保できるまでの期間は自社MR(Medical Representative)(注9)を置かず、当面は製薬企業との提携により行います。一方で、将来の自社販売体制構築に向けて、がん・血液・ペインマネジメント領域に精通した営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の確立に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいります。 これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。 (注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。 (4) 当社の事業戦略当社は、上記の事業を成功させるために、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽減当社の導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は、既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより日本を含めアジアにおける開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。 (注11)導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。 (注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。 (b) 高度な探索・評価能力による、優れたパイプラインの構築当社の新薬サーチエンジンは、製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品はさらに、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクと開発期間を軽減させることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。 <当社の開発品導入プロセス> (注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。 (c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制当社は、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備ともに固定費発生源の代表格ですが、当社はこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。これにより低コストの医薬品開発を実現するとともに、財務戦略の機動性を確保しています。 (d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。このドラッグ・ラグは、当社の戦略的開発領域である難治性のがん及び血液疾患、さらに中等度から重度のペインマネジメント領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん種により細分化されているため、各々のがん種でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。また、ペインマネジメント領域は、現在過少治療が目立っており、未充足の治療領域です。疼痛(ペイン)に苦しむ患者さんは高齢者に多く、今後市場の拡大が予想されます。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。 (注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。 (e) アジアからグローバル展開へ当社はこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていくなか、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。 2.当社のパイプラインについて当社は現在開発中のパイプラインとして、SyB L-0501、SyB L-1101、SyB C-1101及びSyB P-1501を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインの拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。 <当社パイプラインの進捗状況と提携先一覧>平成28年12月31日現在開発番号薬効分類権利地域適応症開発状況提携先SyB L-0501抗がん剤日本再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫 *承認取得(平成22年10月27日)エーザイ株式会社(共同開発権・独占的販売権供与) * 当社自社開発 再発・難治性マントル細胞リンパ腫 *承認取得(平成22年10月27日)再発・難治性中高悪性度非ホジキンリンパ腫第Ⅱ相臨床試験終了未治療(初回治療)低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成28年12月19日)未治療(初回治療)マントル細胞リンパ腫慢性リンパ性白血病承認取得(平成28年8月26日)シンガポール低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成22年1月20日)エーザイ株式会社(独占的開発権・独占的販売権供与)慢性リンパ性白血病韓国慢性リンパ性白血病承認取得(平成23年5月31日)エーザイ株式会社(独占的開発権・独占的販売権供与)多発性骨髄腫再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成26年6月16日)中国低悪性度非ホジキンリンパ腫臨床試験実施中セファロン社(米国)(独占的開発権・独占的販売権供与)香港低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成21年12月30日)慢性リンパ性白血病台湾低悪性度非ホジキンリンパ腫承認取得(平成23年10月18日)イノファーマックス社(台湾)(独占的開発権・独占的販売権供与)慢性リンパ性白血病SyB L-1101抗がん剤(注射剤)日本再発・難治性高リスク骨髄異形成症候群国際共同第Ⅲ相臨床試験実施中―SyB C-1101抗がん剤(経口剤)日本高リスク骨髄異形成症候群(単剤試験)第Ⅰ相臨床試験終了―高リスク骨髄異形成症候群(アザシチジン併用)第Ⅰ相臨床試験実施中―SyB P-1501自己疼痛管理用医薬品日本急性術後疼痛管理第Ⅲ相臨床試験実施中― (1) 抗がん剤 SyB L-0501(一般名:ベンダムスチン塩酸塩、製品名:トレアキシン®)SyB L-0501の主成分であるベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、ドイツにおいて非ホジキンリンパ腫(注15) 、多発性骨髄腫及び慢性リンパ性白血病の治療薬(商品名「リボムスチン®」)として長年使用されている抗がん剤です。この製品の導入の背景としては、現在、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者さんには、この分野には優れた薬剤がなく、まさしく当社の企業使命である、空白の治療領域を対象とした薬剤であること、また当社の強みである分野(血液がん)であることが導入の決め手となりました。この製品の世界のライセンスの供給元はアステラス製薬株式会社のドイツ子会社であるアステラス・ファーマ社であり、北米においてはセファロン社(米国)が同社よりライセンス供与を受け、既に平成20年3月に慢性リンパ性白血病の治療薬として、平成20年10月には再発性B細胞性非ホジキンリンパ腫の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)より承認を受けています。さらに欧州においてはムンディファーマ社(英国)が、その他の地域においてはヤンセン・シラグ社(英国)が、それぞれライセンス供与を受け、独占的開発及び独占的販売権を保有しています。一方、当社はアステラス・ファーマ社より日本、中国、韓国、シンガポール及び台湾における独占的開発及び独占的販売権の供与を受けています。日本においては、平成22年10月27日に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認され、同年12月10日に発売されました(製品名はトレアキシン®)。また、その追加適応として、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病を目標効能とした国内製造販売承認申請を平成27年12月に行い、慢性リンパ性白血病については平成28年8月に、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫については同年12月に製造販売承認を取得しております。再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫については、第Ⅱ相臨床試験まで終了しています。今後、更にライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシンの事業価値の最大化を図ってまいります。なお、日本市場におきましては、エーザイと共同開発権・独占的販売権を供与する契約を締結しており、エーザイが本薬剤を販売しています。次に、当社が権利を有するアジア諸国においては、平成21年12月に香港において、低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認されました。香港においては、独占的開発権・独占的販売権を供与しているセファロン社が販売しています。また、シンガポールにおいては、平成22年1月に低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で、韓国においては、平成23年5月に慢性リンパ性白血病及び多発性骨髄腫の適応症で、平成26年6月に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫の適応症で、それぞれ承認されました。韓国とシンガポールにおいては、エーザイと独占的開発権・独占的販売権を供与する契約を締結しています。シンガポールにおいては平成22年9月より、韓国においては平成23年10月より、それぞれエーザイ子会社が本薬剤を販売しています。その他、中国においては、提携先であるセファロン社によって臨床試験が進められており、台湾では、提携先であるイノファーマックス社(台湾)が平成23年10月に低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認を取得し、平成24年2月より販売を開始しています。 (注15)非ホジキンリンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍である悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫以外の総称です。日本人の悪性リンパ腫では、大半を非ホジキンリンパ腫が占めています。 (2) 抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:rigosertib<リゴセルチブ>)リゴセルチブは、ユニークなマルチキナーゼ阻害作用(注16)を有する抗がん剤で、現在、オンコノバ社により米国及び欧州において骨髄異形成症候群(MDS)を目標効能として開発が進められています。MDSは、近年患者数が増加している血液細胞の悪性腫瘍化の前病態であり、高齢者に多く発病し、白血病に移行する可能性が高い難治性疾患です。特に再発・難治性のMDSに有効な薬剤はないため、未充足の治療領域となっています。当社は、オンコノバ社との間で、本剤の日本及び韓国における独占的開発権及び独占的販売権を取得するライセンス契約を平成23年7月に締結し、現在、注射剤で再発・難治性の高リスクMDSを目標効能として、さらに、経口剤で高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能として、それぞれ開発を進めています。リゴセルチブ(注射剤)については、平成26年2月にオンコノバ社が、再発・難治性の高リスクMDS患者を対象として、欧米で実施した第Ⅲ相臨床試験(ONTIME試験、注射剤)の結果を発表しました。その中で、主要評価項目の全生存期間においてはBSC(Best Supportive Care)に対し、統計学的に有意な差を示さなかったものの、部分集団解析の結果、低メチル化剤(HMA)による前治療中に病勢の進行した患者または不応であった患者群においては、統計学的に有意な差が認められたとの見解が示されました。オンコノバ社はこれを踏まえ、現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない(HMA不応)または治療後に再発した高リスクMDS患者を対象とし、全世界から10ヶ国以上が参加する国際共同第Ⅲ相試験を実施しています。当社は、本国際共同第Ⅲ相試験に日本から参加し、臨床試験を実施しています。また、リゴセルチブ(経口剤)については、オンコノバ社が輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とする第Ⅱ相臨床試験、及び初回治療の高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能とする第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を進めています。当社は、リゴセルチブ(経口剤)単剤による高リスクMDSを目標効能とした国内第Ⅰ相臨床試験を既に終了しており、引き続き高リスクMDSを目標効能としたアザシチジンとの併用による第Ⅰ相臨床試験を実施中です。第Ⅰ相臨床試験終了後は、国際共同試験への参加を検討しています。なお、輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とした開発については、オンコノバ社の開発状況を見据えながら検討してまいります。今後当社は、MDS以外の適応についても、オンコノバ社における開発の進捗を見据えながら開発を検討してまいります。本剤の注射剤、経口剤の開発を適応に応じて使い分けることにより、患者さんにより使いやすい、そしてコンプライアンスを考えた治療方法の開発を進めてまいります。 (注16)マルチキナーゼ阻害作用とは、がん細胞の増殖、浸潤及び転移に関与する複数のキナーゼを阻害することによりがん細胞を死に至らしめる作用をいいます。 (3) 自己疼痛管理用医薬品 SyB P-1501SyB P-1501は、患者さんが手術後に生じる痛みを自己管理するための医薬品です。患者さん自身が、腕や胸部に貼付されたカード大の製品上にあるボタンを押すことにより、イオン化された一定量の鎮痛薬が経皮的に移行し鎮痛効果が得られる、針を使用しない非侵襲性の自己調節鎮痛(Patient Controlled Analgesia, "PCA")法です。当社は、平成27年10月2日にザ・メディシンズ・カンパニー社から SyB P-1501の日本における独占的開発権・販売権を取得しました。現在のPCA法では、静脈内に留置した注射針、あるいは脊柱管内に留置したカテーテルとPCA用ポンプをチューブで接続して、鎮痛薬を投与しています(静脈内PCA、硬膜外PCA)。これらのPCA法による国内の手術後の疼痛管理件数は年間およそ70万件と推定されています。 SyB P-1501は、皮膚に貼って使用し、患者さんが術後の痛みを感じたときにコントローラーのボタンを押すことで、イオン化された鎮痛薬が経皮的に投与されます(イオントフォレーシスの原理)。このように投与された鎮痛薬は、針を使用せず無痛でありながら注射と同等の迅速な鎮痛効果があり、患者さんの身体的・精神的負担を大幅に軽減し、治療満足度を改善することが見込まれます。また、従来のPCA法に比べ安全性かつ簡便性に優れることから、医療機関の労力・費用を低減する効果も期待されます。本製品は、米国では平成27年4月30日に米国食品医薬品局(FDA)より医薬品の承認を受け販売が開始されています。また欧州でも、平成27年11月20日に欧州医薬品庁(EMA)より承認を受けています。国内では既に健康成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験において安全性が確認されており、当社は平成28年6月に第Ⅲ相臨床試験を開始しております。SyB P-1501を用いた画期的なPCA法の確立は、患者さんと医療従事者にとって大きな利便性をもたらし手術後の生活の質(Quality of Life: QOL)を高めることが期待されます。 (参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について 医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。 (医薬品研究開発のプロセス)(a) 基礎研究(b) 前臨床試験(非臨床試験)(c) 臨床試験(治験)(d) 申請及び承認(e) 薬価申請・収載(f) 上市販売(g) 製造販売後調査 (a) 基礎研究新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出すための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。 (b) 前臨床試験(非臨床試験)(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。 (c) 臨床試験(治験)前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。① 第Ⅰ相臨床試験第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。② 第Ⅱ相臨床試験第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。③ 第Ⅲ相臨床試験第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。 (d) 申請及び承認治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。 (e) 薬価申請・収載新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。 (f) 上市販売薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。 (g) 製造販売後調査販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。