6【研究開発活動】当社グループは、製品開発型のバイオ医薬品企業として、経営資源を医薬品の研究開発活動に集中しています。研究開発費は、当社グループが保有する開発品の開発費、次期開発候補品の探索及び創薬基盤技術の研究に係る費用で構成されています。当連結会計年度における、IFRSに基づく当社グループの研究開発費は10,075百万円となりました。研究開発活動の具体的な内容は、以下のとおりです。 (1)世界をリードするStaR®及びSBDD創薬力の拡大・強化 世界をリードするStaR®/SBDDの強化については、これまで行った提携を通じた取り組みを進めるとともに、新たな提携についても模索しています。当社グループは、GPCRに関する技術的優位性を強化することにより、複数のプログラムを創出し、自社開発パイプラインの強化と同時に、大手バイオ医薬品企業の創薬・開発パートナーとして選ばれ続けることを目指します。 2023年10月5日、当社グループとVerily Life Sciences LLC(以下「Verily社」)は、炎症性腸疾患(IBD)を適応症とした最初のGPCRターゲットの検証と選定に成功したことを発表しました。これはVerily社の持つ免疫プロファイリング能力と、当社グループの持つGPCR構造ベース創薬(SBDD)技術を集約した、2022年に発表した研究開発提携の成果です。両社は、遺伝子及び機能ゲノミクスのデータを用い、コンピュータ上での高度な解析と研究所での実験による実証を経て創薬ターゲットを選定することで、ターゲットと疾患との関連性を高い信頼性をもって検証し、臨床試験成功の可能性を大幅に向上させます。 2023年10月10日、当社グループは、PharmEnable Therapeutics(以下「PharmEnable社」)との間で、両社の優れたプラットフォーム技術を融合し、神経疾患をターゲットとした二番目の新規リード化合物創出に向けて提携を拡大したことを発表しました。本提携により、当社グループのSBDDプラットフォームと、人工知能(AI)・医薬品化学に基づくPharmEnable社独自の先進テクノロジー(chemUNIVERSE)を融合し、非常に特異性の高い新規リード化合物を特定し、開発を進めることが可能となります。両社は2021年の最初の技術提携契約を拡大し、創薬とその後の開発を共同で実施・費用負担します。すでに最初のターゲットに対する技術提携において、互いの技術を補完することで、新規の結合様式とケモタイプを持つ有望な低分子化合物を同定することに成功しています。 2023年11月10日、当社グループとKallyope Inc.(以下「Kallyope社」)は、消化器疾患領域における創薬プログラム創出のための、最初のGPCRターゲットの同定、検証及び選定に成功したことを発表しました。これは、両社が2022年に締結した戦略的研究開発提携による最初の科学的成果です。本提携では、当社グループのGPCRに特化した化合物ライブラリー及び専門知識と、シングルセル解析、回路マッピングに関する計算生物学、及びエンテロイド表現型スクリーニングを組み合わせたKallyope社の革新的なKlarity™プラットフォームを活用します。当社グループとKallyope社の共同研究チームは、今回選定されたターゲットを完全に裏付けがなされたSBDDプログラムに進展させるとともに、将来のプログラムのために消化器疾患に対するさらなるターゲットの同定を目指します。 (2)生産性と付加価値、そして成功確率を高めるために、研究開発体制をプログラム重視型モデルに転換 当社グループは、研究開発体制の強化に注力しており、2023年に2つ以上の自社開発プログラムの臨床試験を開始するという目標を達成しました。 2023年7月3日、当社グループは、統合失調症及び関連神経疾患の治療薬として、ファーストインクラスの治療薬候補であるGPR52受容体作動薬(HTL0048149)の第Ⅰ相臨床試験で、最初の被験者への投与を行ったことを発表しました。HTL0048149は、抗精神病及び認知機能改善作用を持ち、既存の抗精神病薬に見られる副作用がない1日1回の経口低分子治療薬として生み出されました。HTL0048149は、脳内のオーファン受容体であるGPR52受容体を標的とすることで、統合失調症に伴う陽性症状(精神病、妄想、幻覚など)、陰性症状(引きこもりなど)及び認知機能障害(注意力、作業記憶、実行機能など)の改善を目指します。このような新規の作用機序により、HTL0048149は、既存の抗精神病薬で効果がない、あるいは副作用のために服薬が継続できない多くの統合失調症の患者さまのお役に立つことを目指しています。なお、既存の医薬品は、陰性症状や認知症状において十分な治療効果を得ることができていません。本第Ⅰ相臨床試験は2つのパートから構成される、18~55歳の健常人を対象とした、HTL0048149の安全性、薬物動態、薬力学的作用を検討する、無作為化二重盲検プラセボ対照、単回及び反復投与用量漸増試験です。本試験は、英国で実施されており、最初のデータリードアウトは開始から12~18ヵ月後になる予定です。 2023年8月10日、当社グループは、Cancer Research UK(英国王立がん研究基金)との提携において、当社グループが見出した、進行性固形がんに効果が期待される経口がん免疫療法候補薬HTL0039732の第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験で、最初の被験者への投与を行ったことを発表しました。HTL0039732は、プロスタグランジンE2(PGE2)に対する受容体の一種である、EP4受容体を介したシグナル伝達を阻害することで効果を発揮します。PGE2はがん微小環境でがん細胞の免疫回避を活性化させており、EP4受容体を標的としてPGE2の作用を阻害し、免疫系が、がん細胞を識別・抑制する機能を高めることで、マイクロサテライト安定性(MSS)大腸がん、胃食道がん、頭頸部がん、去勢抵抗性前立腺がんなど、既存の免疫療法では治療効果が十分でないがん種への効果が期待されます。本第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験は、Cancer Research UKのCentre for Drug Developmentが資金拠出・デザイン・実施を担い、HTL0039732の毒性・忍容性・薬物動態の検討、第Ⅱ相臨床試験推奨用量の決定、単剤及びPD-L1阻害剤アテゾリズマブとの併用での抗腫瘍活性の評価、の三点を主な目的としています。Cancer Research UKのCentre for Drug Developmentが実施する本第Ⅱa相臨床試験では、特定のがん種での併用療法を対象に、最大4つのコホートで用量拡大を検討予定です。また当社グループは、その後の臨床開発・商業化に向け、HTL0039732に対する本試験の結果のライセンスを保有します。 (3)大手グローバル製薬企業との既存の提携の推進及び継続的な収益確保への取り組み 当社グループは、大手グローバル製薬企業との広範な提携を通じて、特に代謝性疾患や精神神経疾患など、世界の医薬品市場において最も有望で急成長している治療領域におけるプログラムの開発に関わっています。 2023年1月5日、当社グループは、提携先のTempero Bio Inc.(以下「Tempero Bio社」)がFDAに対して、アルコールとその他の物質使用障害(Substance Use Disorder:SUD)を対象としたTMP-301の新薬臨床試験開始申請(IND)を行い、承認されたことを発表しました。TMP-301(旧開発コード:HTL0014242)は、当社グループが創出しTempero Bio社に導出した、新規の選択的mGluR5 NAM候補化合物です。Tempero Bio社は、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)から交付された530万米ドルの助成金を活用し、2023年にTMP-301の健常人を対象とする第Ⅰ相臨床試験を開始しています。 2023年3月30日、Centessa Pharmaceuticals Limited(以下「Centessa社」)は、2022年12月期の事業進捗及び業績の報告において、当社グループのSBDDプラットフォームを利用して開発中の経口投与が可能なオレキシン受容体2(OX2R)の選択的作動薬であるORX750について、ナルコレプシー及びその他の睡眠障害に対するベストインクラスとなる可能性がある新薬開発候補品として選定したことを発表しました。また、Centessa社は、ORX750がNT1モデルマウスと野生型マウスにおいて覚醒時間の増加を示したことを発表しました。ORX750は、現在、前臨床開発及びINDに向けた研究開発活動を実施中です。 2023年6月27日、当社グループは、提携先であるPfizer Inc.(以下「ファイザー社」)が、糖尿病・肥満症の治療薬として臨床開発中のGLP-1受容体作動薬候補Danuglipronの開発を優先し、その結果、Lotiglipronの開発を継続しないことを決定したと発表しました。これらの新規の経口投与可能な新薬開発候補品は、いずれもファイザー社により第Ⅱ相臨床試験が行われていました。Lotiglipronは、当社グループ独自のStaR®技術を利用し、複数のターゲットを対象とした研究開発提携においてファイザー社が見出したものです。当社グループは、過去に類似の状況で他のプログラムで行ってきたのと同様に、ファイザー社とLotiglipronの今後の開発計画を含めた検討を行います。 2023年9月12日、当社グループは、Neurocrine Biosciences Inc.(以下「ニューロクライン社」)が、NBI-1117570の健常成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験を開始したことを発表しました。NBI-1117570は、経口のムスカリンM1/M4デュアル受容体作動薬であり、神経疾患及び精神神経疾患の治療薬となることが期待されています。 2023年10月31日、当社グループは、Genentech Inc.(以下「ジェネンテック社」)より、2019年に契約を締結した複数ターゲットを対象にした創薬提携において、3.75百万米ドルのマイルストンを受領することになったと発表しました。創薬に関する本支払いは、非公開のGPCRをターゲットとした、ファーストインクラスとなり得る医薬品の開発進展によるものです。ジェネンテック社が選定した複数のGPCRに対して、当社グループのGPCR構造ベース創薬技術と、ジェネンテック社の創薬、開発及び疾患における専門知識を融合した進行中の提携において、一定のマイルストンを達成しました。 2023年11月6日、当社グループはファイザー社より、新規の経口低分子GLP-1受動体作動薬の第Ⅰ相臨床試験を開始したと通知されたことを発表しました。PF-06954522は、当社グループのStaR®技術を用いた、現在進行中の研究開発提携においてファイザー社が見出したものです。 2023年11月24日、当社グループは、GlaxoSmithKline plc.(以下「GSK社」)との研究開発提携及びライセンス契約に基づいて開発中の、ファーストインクラスの治療薬となる可能性のある選択的経口GPR35受容体作動薬(GSK4381406)の全権利の再取得に向け、GSK社と協議を開始したことを発表しました。GPR35受容体はIBDと遺伝学的な関連性が検証済みのオーファンGPCRの一つです。 GSK4381406は当社グループが設計し、2020年にGSK社にライセンスされました。以来、当社グループとGSK社による共同開発プログラムを通じて得られた基礎研究や前臨床試験及び安全性試験の結果により、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群(IBS)などの消化器疾患において、GPR35受容体作動薬はバリア機能を改善し内臓痛の改善に効果がある可能性が示唆され、これらのデータに基づき、2023年半ばに英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)より第Ⅰ相臨床試験実施の承認を取得しました(NCT05999708)。 GSK社によるGSK4381406の優先順位の引き下げと現開発の打ち切り決定は、GSK社の免疫疾患領域の戦略変更、及び幹部交代に伴うものです。また、本決定は前臨床試験や安全性試験などの科学的データに基づくものではありません。2020年の契約に基づき、当社グループは、一時金を支払うことなく、GSK4381406の所有権を再取得する権利を有しています。GSK社は、GSK4381406が上市されれば、当社グループから純売上高に応じて、1桁台前半のロイヤリティを受領する権利を有しています。 当社グループは、GSK4381406の所有権の再取得後、英国で計画されていた第Ⅰ相臨床試験を単独で実施するとともに、本品目のさらなる臨床開発及び再提携に向けた最善の戦略を決定する予定です。 2023年12月6日、当社グループは、ニューロクライン社が、新たなムスカリン作動薬候補2品目であるNBI-1117569(M4-preferring agonist)及びNBI-1117567(M1-preferring agonist)の第Ⅰ相臨床試験について決定を行ったことを発表しました。いずれも神経・精神疾患の経口治療薬となることが期待されており、当社グループにより見出されたものです。ニューロクライン社はNBI-1117569の第Ⅰ相臨床試験を既に開始しており、加えてNBI-1117567の第Ⅰ相臨床試験を2024年に開始すると発表しました。 (4)日本における有数の販売プラットフォームの構築 2023年4月1日、当社グループは、当社社長CEOのクリストファー・カーギルが同日付で株式会社そーせいの代表取締役社長に就任することを決定し、当社グループの戦略目標達成のための日本事業の強化を見据え、当社CEOが直轄で同社の事業運営を行っていく体制に変更しました。 日本事業の確立については、臨床開発~販売体制をアジャイルかつ拡大可能な形で構築し、日本の患者さまに人生を変える医薬品を届け、この大きく魅力的な市場で、見逃されている市場の発掘に取り組むことを柱のひとつに掲げています。 2023年7月20日、当社グループは、Idorsia Ltd.及びIdorsia Pharmaceutical Ltd.(以下総称して、「イドルシア社」)より、IPJ及びIPKの全株式を取得し子会社化すること(以下「本取引」)を発表しました。 IPJとIPKの子会社化は日本における有数の販売プラットフォームを構築するという目的達成のための最良の手段であり、グローバルでの徹底的なリサーチの結果です。本取引は手元現金と低利の新規長期借入金により資金手当て済みであり、通期での初年度から、キャッシュ・フローを創出する予定です。本取引の戦略的意義は以下の通りです。 ・ 日本における卓越した臨床開発機能と収益力の高い販売体制、従来にない販売・マーケティングモデル、規模拡大とさらなる価値創出力が加わることによって、当社グループのミッションを加速する。 ・ 主要製品であるピヴラッツ®とダリドレキサントの獲得、及び第Ⅲ相臨床段階にあるCenerimodとLucerastatに対する独占的オプション権、そしてイドルシア社のグローバルパイプラインから最大5品目の臨床段階にある追加的プログラムに対する特定の権利により、将来のパイプラインを確保・拡大する。 ・ 過去20年にわたり、日本と韓国で多くの承認取得と上市を成功させてきた田中諭氏が率いる、経験豊富で卓越した実績とサービス提供力を有するチームを獲得する。 ・ 日本の高品質な臨床環境を活用し、見逃されている専門疾患領域をターゲットにするとともに、より広域なAPACへの拡大と製品上市を可能とするプラットフォームを獲得する。 また本取引によって、日本及びAPAC(中国を除く)地域において、(1)当社グループが100%保有している従来からの自社開発品、(2)イドルシア社のパイプラインから選定され当社がオプション権あるいは特定の権利を獲得した臨床候補化合物、及び(3)他社の有望な製品/開発品の導入、の3つの方法で、有望なパイプラインを獲得し開発及び販売を行うことができるようになります。 加えて、当社グループは、日本及びAPAC地域以外においては、従来通り、当社の強固な創薬プラットフォームから生まれた新規候補化合物やプログラムについて、大手製薬企業との提携を行う一方、これらの提携契約では、日本及びAPACでの権利保持を目指します。 2023年10月31日、当社グループは、IPJが、不眠症患者に対する治療薬として持田製薬株式会社(以下「持田製薬」)と共同開発してきたデュアルオレキシン受容体拮抗薬であるダリドレキサントの製造販売承認申請(NDA)を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出したと発表しました。本申請及び持田製薬と塩野義製薬株式会社の販売提携契約に関連して、当社グループは1,500百万円のマイルストンを受領しました。本申請は、本邦におけるダリドレキサントの安全性及び有効性を検討した無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験の良好な試験結果に裏付けられています。ダリドレキサントは2022年1月に米国で、4月に欧州でそれぞれ承認されており、その他の承認済み地域を含めイドルシア社がQUVIVIQ™のブランド名で販売しています。 2023年12月7日、当社グループは、脳動脈瘤によるくも膜下出血(aSAH)術後の脳血管攣縮、及びこれに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制薬であるピヴラッツ®点滴静注液150mg(一般名:クラゾセンタンナトリウム)について、韓国食品医薬品安全処(MFDS)、より製造販売承認を取得したことを発表しました。今回の製造販売承認は、IPKが提出した、日本における第Ⅲ相臨床試験結果に基づいています。韓国では、2025年前半に販売が開始される予定です。日本では、IPJが2022年1月にピヴラッツ®の製造販売承認を取得し、2022年4月に発売しています。日本では、ピヴラッツ®は2023年11月時点で約8,900人の患者さまに使用されています。
FY2022|6,275 文字
5【研究開発活動】当社グループは、製品開発型のバイオ医薬品企業として、経営資源を医薬品の研究開発活動に集中しています。研究開発費は、当社グループが保有する開発品の開発費、次期開発候補品の探索及び創薬基盤技術の研究に係る費用で構成されています。当連結会計年度における、IFRSに基づく当社グループの研究開発費は7,454百万円となりました。研究開発活動の具体的な内容は、以下のとおりです。 (1) 世界をリードするStaR®及びSBDD創薬力の拡大・強化 ① Verily Life Sciences LLC-免疫疾患関連の新規ターゲット同定と新薬候補創出2022年1月6日、当社グループは、Alphabet傘下のプレシジョン・ヘルス企業であるVerily Life Sciences LLC(以下「Verily社」)と戦略的研究開発提携を締結したことを発表しました。本研究開発提携では、Verily社の持つ免疫プロファイリング能力と、当社グループの持つGPCR構造ベース創薬技術を集約します。本提携の目的は以下の通りです。 ・特に免疫疾患、消化器疾患、がん免疫疾患、及びその他の免疫防御性あるいは免疫病原性疾患における、免疫細胞内でのGPCRの機能解明・創薬ターゲットとして有望なGPCRの抽出、優先順位付け及び検証・これらのGPCRに作用する新薬候補の創出と開発 Verily社独自のImmune Profilerは、Verily社の研究所で行われる免疫細胞の精密な表現型の分析と、それらの膨大なデータを処理する高度なコンピュータ技術を組み合わせた、未だ十分に解明されていない免疫機能の全体像を解き明かす、次世代の免疫解析プラットフォームです。本プラットフォームは、免疫機能を調節し、疾患を改善する可能性のある創薬ターゲットとして有望なGPCRの特定に利用されます。今後本提携では、当社グループが有する世界最先端のStaR®技術とSBDDに関する専門知識を活用して、創薬ターゲットとして有望なGPCRの優先順位を明確化し、さらなる開発または導出のためのリード化合物の創出を目指します。本提携開始から半年でターゲットの特定と優先順位付けという最初のマイルストンを達成し、ヒットの検証・生成、リード選定に入りました。 ② Kallyope Inc.-消化器疾患関連の複数のGPCRの同定と検証2022年5月17日、当社グループは、腸脳軸に着目した創薬のパイオニアであるKallyope Inc.(以下「Kallyope社」)と、消化器疾患領域における創薬プログラム創出に向け、新規GPCRターゲットの同定と検証を目的とした戦略的研究開発提携を締結したことを発表しました。本提携により、当社グループのGPCRに特化した化合物ライブラリー及び専門知識と、シングルセル解析、回路マッピングに関する計算生物学、及び表現型スクリーニングを組み合わせたKallyope社の革新的な脳腸軸におけるプラットフォームを活用します。これにより両社は、新規の消化器疾患治療薬ターゲットとなるGPCRの優先順位付けと検証を行い、これらのターゲットに作用する新規低分子化合物の開発を進めます。 ③ オックスフォード大学及びルーヴェン大学-消化器疾患と免疫疾患に関わるGPCR発掘のための共同研究契約2022年12月8日、当社グループは、英国オックスフォード大学のMRCウェザーオール分子医学研究所及びベルギーのルーヴェン・カトリック大学とトランスレーショナルメディシン及び共同研究に関する契約を締結したことを発表しました。本共同研究では、それぞれの学術グループの革新的なテクノロジーと研究力を応用し、炎症性腸疾患を含む消化器疾患及び免疫疾患を引き起こす主要なGPCRの同定、バリデーション及びSBDDのターゲットとしての優先順位付けに注力します。 (2) 大手グローバル製薬企業との既存の提携の推進及び継続的な収益確保への取り組み ① AbbVie Inc.との提携2022年8月1日(英国時間)、当社グループは、研究開発型のバイオ医薬品企業であるアッヴィ社と新規創薬提携及びライセンスのオプション契約を締結したことを発表しました。この契約により両社は、神経疾患を対象に、GPCRに作用する低分子の研究開発と商品化を目指します。本提携は、当社グループのStaR®技術及びSBDDプラットフォームと、アッヴィ社の神経科学及び治療領域に関する広範な専門知識を活用するものです。本契約は、2020年6月に両社が締結した炎症性疾患及び自己免疫疾患を標的とした最初の複数ターゲットを対象とする創薬提携契約の範囲を、さらに拡大するものです。 本契約に基づき、当社グループは、新薬臨床試験開始申請(以下「IND」)までの研究開発活動を行い、研究開発資金を負担します。アッヴィ社は、現段階で最大3つのプログラムについて独占的なライセンスオプションを有し、その後の臨床試験、申請・承認、商業化を担います。当社グループは、契約締結時に40百万米ドルを受領し、今後3年間で最大40百万米ドルの初期開発マイルストンを受領する権利を有しており、さらにオプション、開発・販売の達成に応じた、最大12億米ドルのマイルストンに加えて、グローバルでの販売高に応じた段階的ロイヤリティを受領する権利を有しています。本契約一時金は2022年第3四半期に一括で受領しましたが、IFRSの収益認識に関する会計基準に基づき、当社の履行義務の充足に応じ認識した収益計上額につき、2022年第3四半期、第4四半期に計上され、またそれ以降の一定期間にわたり計上される予定です。 2022年12月13日、当社グループは、アッヴィ社との炎症性疾患及び自己免疫疾患を対象とした創薬提携において、研究段階における重要なマイルストンを達成したことを発表しました。この成果により、当社グループは10百万米ドルを受領しました。 ② Neurocrine Biosciences, Inc.との提携2022年8月4日(英国時間)、当社グループは、提携先であるニューロクライン社から、統合失調症の成人を対象としたNBI-1117568の第Ⅱ相臨床試験のINDが米国食品医薬品局(以下「FDA」)に受理され、試験開始可能になったことが通知されたと発表しました。この臨床開発におけるマイルストンの達成により、当社グループはニューロクライン社から30百万米ドルを受領しました。NBI-1117568は、統合失調症及びその他の精神神経疾患治療薬として開発中の経口の選択的ムスカリンM4受容体作動薬です。本候補化合物は、選択的なM4オルソステリック作動薬であることから、非選択的なムスカリン作動薬では必要とされる、副作用を最小限に抑えるための併用療法を用いることなく治療効果を発揮する可能性があり、また、ポジティブ・アロステリック・モジュレーターと比較してアセチルコリン(ACh)の協同作用を必要としない点が特徴です。これまでの臨床試験で、NBI-1117568は一般的に良好な忍容性を示すことが確認されています。NBI-1117568は、当社グループが見出し、ニューロクライン社が主要な神経疾患の治療のために開発中であり、臨床及び前臨床段階にある新規サブタイプ選択的ムスカリンM4、M1及びM1/M4デュアル受容体作動薬の広範なポートフォリオの中で最も開発段階が進んだ候補化合物です。また、ニューロクライン社は、前臨床試験が完了次第、M1/M4デュアル及び選択的M1受容体作動薬の第Ⅰ相臨床試験を開始する予定です。これらの化合物の臨床試験開始に伴い、当社グループはニューロクライン社から、さらなるマイルストンを受領する権利を有しています。 2022年10月28日、当社グループは、提携先であるニューロクライン社が、統合失調症の成人を対象としたNBI-1117568の有効性、安全性、忍容性及び薬物動態を評価する、無作為化、プラセボ対照第Ⅱ相臨床試験を開始したことを発表しました。NBI-1117568の第Ⅱ相臨床試験は、約200名の成人を対象とし、米国内の15施設で実施されます。この試験では、NBI-1117568の複数の投与量を評価します。主要評価項目は、6週目までの陽性・陰性症状評価尺度(PANSS:Positive and Negative Syndrome Scale)の総スコアの、ベースラインからの変化です。なお、本件によるマイルストンの支払いは発生しません。 ③ Eli Lilly and Companyとの提携2022年12月16日、当社グループは、グローバルなバイオ医薬品企業であるイーライリリー社と新規創薬提携契約を締結したことを発表しました。本契約により両社は、糖尿病及び代謝性疾患を対象に、GPCRに作用する低分子の研究、開発及び商業化を目指します。本提携は、当社グループのStaR®技術及びSBDDプラットフォームと、イーライリリー社の医薬品開発、商業化、加えて糖尿病・代謝性疾患における専門知識を活用するものです。当社グループは、イーライリリー社が選定する複数のGPCRターゲットに対して、研究開発・商業化に向けた、選択性の高い新規の低分子化合物の創出に注力します。本契約に基づき、当社グループは、契約一時金37百万米ドルを受領し、さらに開発・販売に応じた最大694百万米ドルのマイルストンに加えて、段階的ロイヤリティを受領する権利を有しています。本契約一時金は2022年第4四半期に一括で受領しましたが、IFRSの収益認識に関する会計基準に基づき、2022年第4四半期、またそれ以降の一定期間にわたり計上される予定であり、収益計上額は当社の履行義務の充足に応じ認識してまいります。 ④ Pfizer Inc.との提携2022年12月21日、当社グループは、ファイザー社から、ファイザー社の新薬開発候補品であるPF-07081532の第Ⅱ相臨床試験において最初の被験者への投与が行われたことが通知されたと発表しました。このマイルストンの達成により、当社グループはファイザー社から10百万米ドルを受領しました。PF-07081532は、2型糖尿病及び肥満症の治療薬として開発中で、1日1回の経口投与を可能とする次世代の低分子GLP-1受容体作動薬です。PF-07081532 は、ファイザー社が当社グループ独自のStaR®技術を利用し、複数のターゲットを対象とした研究開発提携においてファイザー社の研究者が見出したものです。ファイザー社が実施したPF-07081532の第Ⅰ相臨床試験は、成功裏に完了しています。PF-07081532は、当社グループとの複数のターゲットを対象とした研究開発提携においてファイザー社が選定した3品目の新薬開発候補品のうちの1つであり、現在、以下に示す他の2品目についても、第Ⅰ相臨床試験が進行中です。 ・PF-07054894(炎症性腸疾患におけるCCR6受容体拮抗薬)・PF-07258669(拒食症におけるMC4受容体拮抗薬) (3) 生産性と付加価値、そして成功確率を高めるために、研究開発体制をプログラム重視型モデルに転換 ① Weatherden Limited-アジャイル開発の導入とトランスレーショナルメディシン機能の強化のための戦略的提携2022年4月26日、当社グループは、研究開発及び臨床開発を専門とするコンサルティンググループであるWeatherden Limited(以下「Weatherden社」)と戦略的提携を締結したことを発表しました。本提携により、当社グループの世界最先端のGPCR構造ベース創薬プラットフォーム及び専門知識と、Weatherden社のトランスレーショナルメディシン及び医薬品開発の専門知識を活用し、業界最高レベルの創薬・開発チームに支えられたアジャイル開発モデルの構築を目指します。その目的は、複数のプログラムの優先順位付けと開発の加速により、迅速に第Ⅰb/Ⅱa相臨床試験での臨床コンセプトを実証(POCの取得)することにあります。臨床コンセプトの実証は、価値の高いグローバルでのライセンス及び研究開発契約の締結を推進し、大きな利益を上げ、当社グループの成長を長期的に加速させるための重要な転換点です。当社グループは、Weatherden社の豊富な経験、科学的専門知識、データに基づくアプローチに加え、医薬品アセットの評価・開発の商業化についての重点的な取り組みを活かし、パイプライン強化のために、より明確に選択と集中を進める体制と技術的専門知識を融合します。当社グループは以下により、意思決定と価値創出の最適化を目指します。 ・新しい効率的な創薬・開発方法を創出すること・世界をリードする科学技術の、患者さまの生活を一変させる治療薬への変換を加速すること・厳選した自社開発プログラムを臨床試験段階に進めることにより、提携の機会を最大化すること ② 英国ケンブリッジの研究開発拠点の拡大2022年5月26日、当社グループは、ケンブリッジのグランタ・パーク内にある研究開発拠点を、同パーク内の2つ目の施設に拡大したことを発表しました。この研究開発機能の拡大は、当社グループが複数プログラムの自社開発を実施し、加えて大手企業の研究開発パートナーとしてのポジションをより強固にするものです。 ③ 自社開発品3品目を臨床試験に進めるための取り組みプログラム重視型モデルへの転換、ターゲットの機能への深い理解、トランスレーショナルメディシンへの注力という新たな方針に基づき、以下の3つの候補品を筆頭に、迅速な臨床POC確立を目指していきます。 ・経口EP4受容体拮抗薬(HTL0039732) - 固形がんに対するがん免疫療法薬候補であり、2022年7月22日、世界最大の民間がん研究基金であるCancer Research UK(英国王立がん研究基金)と、初の臨床試験(FIH試験)の実施契約の締結を発表。・経口GPR52受容体作動薬 - 統合失調症及び精神疾患における陽性症状、陰性症状、認知機能障害を、既存の抗精神疾患薬に見られるような副作用なしに治療できる可能性を持つ。・経口EP4受容体作動薬 - 炎症性腸疾患治療薬候補であり、消化管に限定的に作用し、抗炎症作用と粘膜治癒を促進することによる腸管バリアー保護作用を併せ持つ。様々な前臨床モデルにおいて良好な有効性を示す。 (4) 日本における有数の商業化ビジネスの構築2022年、当社グループは、日本での臨床開発~販売体制をアジャイルかつ拡大可能な形で構築し、日本という大きく魅力的な市場で、見逃されている市場の発掘に取り組むことを発表しました。今後、数年間でこれらのビジネス構築に取り組んでまいります。この背景としては、日本が米国、中国に次ぐ第3位の医薬品市場であり、高齢化が進み、国民皆保険制度を備えているためです。当社グループは、まずは、開発リスクの低い、海外で承認済あるいは後期臨床開発段階の開発品の導入を行い、中長期的には自社品の開発により、さらなるパイプラインの拡充を図ります。
FY2021|9,164 文字
5【研究開発活動】当社グループは、製品開発型のバイオ医薬品企業として、経営資源を医薬品の研究開発活動に集中しています。研究開発費は、当社グループが保有する開発品の開発費、次期開発候補品の探索及び創薬基盤技術の研究に係る費用で構成されています。当連結会計年度における、IFRSに基づく当社グループの研究開発費は5,931百万円となりました。研究開発活動の具体的な内容は、以下のとおりです。 (1) 大手グローバル製薬企業との新規及び既存の提携の推進大手グローバル製薬企業との提携については、順調に進捗しました。研究開発の継続性を確保するため、英国政府が2021年7月に行った規制緩和にもかかわらず、当社グループは、COVID-19に関する感染予防措置を継続しています。全ての研究開発活動は効率良く進められています。 ① ムスカリン作動薬プログラムのグローバルな研究開発権・販売権が返還2021年1月5日、当社グループは、ムスカリン作動薬プログラムのグローバルな研究開発権・販売権が当社グループに返還されることとなったことを発表しました。これには、本提携プログラムの下で開発中の全ての候補薬、当社グループからAllergan Pharmaceuticals International Limited(以下「アラガン社」)に許諾した関連する全ての知的財産、及び提携において収集した全ての臨床・前臨床データの権利が含まれます。本プログラムに関する権利は、2016年4月にアラガン社が取得していましたが、2020年5月、アラガン社はAbbVie Inc.(以下「アッヴィ社」)によって買収されています。このグローバルでの権利を返還するという決定は、アッヴィ社のパイプラインに関するビジネス上の判断に基づくものであり、本提携プログラムに関連したいかなる有効性、安全性、またはその他のデータに基づき行われたものではありません。本ムスカリンプログラムは、2021年11月にNeurocrine Biosciences Inc.(以下「ニューロクライン社」)に再導出しました。詳細は後述の項目をご参照ください。 ② Pfizer Inc.との提携2021年5月19日、当社グループは、Pfizer Inc.(以下「ファイザー社」)との複数のGタンパク質共役受容体(以下「GPCR」)をターゲットとした創薬に関する戦略的提携により選定された新薬開発候補品であるPF-07258669を、初めてヒトへ投与する臨床試験が開始されたことが同社より通知されたと発表しました。この成果により、当社グループは5百万米ドルのマイルストンを受領しました。PF-07258669は、2019年12月にファイザー社により選定され、その時点で3百万米ドルのマイルストンを受領しました。ファイザー社は、当社グループとの提携により2019年に3品目の異なる新薬開発候補品を選定しましたが、その全てが第Ⅰ相臨床試験を開始したことになります。これらの開発候補品については、ファイザー社より以下の通り公表されています: ・ PF-07081532(2型糖尿病及び肥満における経口GLP1受容体作動薬)・ PF-07054894(炎症性腸疾患におけるCCR6拮抗薬)・ PF-07258669(拒食症におけるMC4受容体拮抗薬) ③ Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.との提携2021年6月23日、当社グループは、Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.(以下「バイオヘイブン社」)と提携中のHTL0022562(BHV3100)の第Ⅰ相臨床試験において、最初の被験者への投与を実施したと発表しました。HTL0022562は当社グループが見出した、新規低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であり、CGRPが関与して発症する疾患の新規治療薬開発のために2020年12月にバイオヘイブン社にライセンスされたCGRP拮抗薬ポートフォリオの中で、最も開発の進む化合物です。 ④ AstraZeneca UK Limitedとの提携2021年11月12日、当社グループは、AstraZeneca UK Limited(以下「アストラゼネカ社」)の2021年第3四半期Clinical trials appendix(臨床試験付属説明資料)において、経口低分子アデノシンA2a受容体拮抗薬imaradenant(AZD4635)が、継続的なパイプラインの優先順位付けの一環として、臨床パイプラインから外れたと発表しました。Imarademantは、当社グループが創出し、2015年にアストラゼネカ社に導出されています。アストラゼネカ社は、imaradenantを固形がんにおける単剤療法及びイミフィンジ(デュルバルマブ)との併用療法として、第Ⅰ相及び第Ⅱ相臨床試験で評価してきました。これらの試験において、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の一部の免疫チェックポイント阻害療法未実施の患者における、imaradenantのイミフィンジとの併用または単剤での良好な安全性と忍容性、及び臨床的有用性が認められました。Imaradenantは、様々ながん腫の固形がん患者を対象に広範な試験が行われており、投与量を増量した場合において良好な安全性と忍容性が示されています。アデノシンの産生と作用をターゲットとすることは、腫瘍微小環境における免疫抑制を克服するための有望な戦略であり、現在、いくつかの企業が初期臨床試験の良好な結果を公表しています。アストラゼネカ社は、多様ながん領域のパイプラインを有しており、ポートフォリオ内のプロジェクトに関して戦略上の優先順位を定期的に見直す必要があります。アストラゼネカ社の臨床パイプラインからimarademantが外れたことを受け、当社グループはimarademantのグローバルでの権利を当社が再取得する可能性も含めて、アストラゼネカ社との間で今後の開発計画を協議します。 ⑤ Neurocrine Biosciences, Inc.との提携2021年11月22日、当社グループは、ニューロクライン社と、ニューロクライン社が統合失調症、認知症及びその他の精神神経疾患治療薬の開発を行うことを目的とした、新規ムスカリン受容体作動薬に関する戦略的研究開発提携及びライセンス契約を締結したと発表しました。本契約に基づき、ニューロクライン社は、当社グループが見出し、主要な神経疾患の治療のために開発中であり、臨床及び前臨床段階にある新規サブタイプ選択的ムスカリンM4、M1及びM1/M4デュアル受容体作動薬の広範なポートフォリオの研究開発及び商業化の権利を取得します。最も進捗しているプログラムであるHTL-0016878は、選択的M4受容体作動薬であり、ニューロクライン社は2022年に統合失調症を対象にしたHTL-0016878の新薬臨床試験開始申請(IND)を行い、プラセボ対照第Ⅱ相臨床試験を開始する予定です。当社グループは、日本でのすべての適応症を対象にしたムスカリンM1受容体作動薬の開発販売権を保持し、ニューロクライン社は、日本でのムスカリンM1受容体作動薬に対する共同開発及び共同販売のオプション権を保有します。ムスカリン受容体は、脳機能の中心的な役割を担っており、精神病や認知障害の創薬ターゲットとして評価されています。当社グループは、治療効果を発揮する一方、非選択的作動薬による有害な副作用や、減少するアセチルコリンの協同作用を必要とするポジティブ・アロステリック・モジュレーター(PAM)による一部の高齢の患者様における有効性の問題を回避できる可能性のある選択的なM4、M1及びM1/M4デュアル受容体作動薬を創製しました。当社グループは、世界をリードするGPCRを安定化するStaR®技術とトランスレーショナル研究を応用することによりこの成果を上げました。 本契約に基づき、ニューロクライン社は、日本で開発中のM1受容体作動薬を除き、本プログラムに関連するグローバルでの開発費を負担します。本契約は以下の条件に従うものとします:・ライセンス契約一時金:当社グループへ一時金として現金で100百万米ドルを支払い。・開発、申請・承認マイルストン:当社グループは、ライセンス許諾された候補品の規制当局による承認までの進捗に応じ、最大約15億米ドルを受領する権利を有する。・販売マイルストン:当社グループは、本提携の下で開発されたあらゆる製品のグローバル販売に関する特定のマイルストンの達成に応じ、最大で11億米ドルを受領する権利を有する。・販売ロイヤリティ:当社グループは、本提携の下で開発されたいかなる製品の将来の純売上高に対して、一桁後半から10%台半ばの範囲で段階的ロイヤリティを受領する権利を有する。・共同研究開発:ニューロクライン社と当社グループは、前臨床開発候補品を第Ⅰ相臨床試験に進めるため共同で研究開発を実施する。本共同研究開発にかかる資金はニューロクライン社が提供することとする。・当社グループの日本でのM1作動薬に関する権利:当社グループは、日本でのあらゆる適応症を対象にしたM1受容体作動薬の権利を保持し、ニューロクライン社は共同開発及び共同販売のオプション権を保有する。・契約期間:契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②法令上の独占期間の終了日または③市販開始から10年経過後のいずれか遅い日まで 2021年12月24日、当社グループは、2021年11月22日に公表したニューロクライン社との研究開発提携およびライセンス契約(以下、「本ライセンス契約」)に関して、米国ハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法(以下、「HSR法」)に基づく待機期間が2021年12月22日に満了したことを発表しました。その結果、本ライセンス契約は、2021年12月22日付で効力が発生しました。HSR法に基づく待機期間満了により、本ライセンス契約に基づき、ニューロクライン社は100百万米ドルの契約一時金を当社グループに支払い、当社グループの2021年12月期第4四半期の売上として計上されました。 ⑥ GlaxoSmithKline plc.との提携2021年12月20日、当社グループは、GlaxoSmithKline plc.(以下「GSK社」)と2020年に締結したグローバルの研究開発提携及びライセンス契約に基づき、消化器免疫疾患の治療薬候補であるGPR35受容体の経口低分子作動薬について、マイルストンが達成されたと発表しました。本マイルストン5百万ポンドは、2021年12月期第4四半期の売上収益として計上されました。GPR35受容体は、世界中の何百万人もの患者様の深刻なアンメットニーズが存在する炎症性腸疾患(IBD)及びその他の消化器免疫疾患に遺伝学的に関連するオーファンGPCRです。 (2) 革新的なテクノロジーを有する企業及びベンチャーファンドとの提携における進展革新的なテクノロジーを有する企業及びベンチャーファンドとの共同投資でも引き続き大きな進展がありました。 ① PharmEnable Limited2021年1月12日、当社グループは、英国の創薬企業であるPharmEnable Limited(以下「PharmEnable社」)と、両社のテクノロジーを応用し、神経疾患でこれまで創薬困難だったGPCRに対する、新薬創出を目的とした技術提携契約を締結したことを発表しました。本提携により、GPCRの完全な構造解析を可能にし、詳細な構造的知見を見いだせる能力及び技術的な扱いやすさで定評のある当社グループのGPCR構造ベース創薬プラットフォームと、人工知能(AI)・医薬品化学に基づくPharmEnable社独自の先進テクノロジー(ChemUniverse及びChemSeek)を融合することができます。これにより、非常に特異性の高い新規リード化合物を特定し、さらなる開発を進めることが可能となります。PharmEnable社のアプローチとの融合により、従来のスクリーニング方法と比較してより特異性が高い三次元(3D)構造の医薬品候補化合物を見出すことができ、これまでのアプローチでは創薬困難だったペプチド作動性GPCRなどをターゲットとすることが可能になります。ペプチド作動性GPCRの天然アゴニストリガンドは大きく複雑なペプチドであり、特に神経疾患の治療薬開発に適した特性を持つ低分子で阻害することは、多くの場合これまで非常に困難でした。本契約に基づき、両社は創薬及び開発プログラムの実施と費用負担を共同で行い、その結果得られる全ての製品を共同所有します。 ② Metrion Biosciences Limited2021年2月1日、当社グループは、イオンチャネルを専門とするCRO及び創薬企業である英国のMetrion Biosciences Limited(以下「Metrion社」)と、当社グループの世界有数のSBDD技術とプラットフォームを、イオンチャネルに初めて応用するための新規技術提携契約を締結したことを発表しました。本提携は、GPCRに対する創薬と同じく、イオンチャネルに対する創薬にも当社グループのSBDD技術が応用できる可能性を示し、この分野でのリーダーとしての地位を確立することを目的としています。最初のステップとして、当社グループとMetrion社はそれぞれの専門的知見を組み合わせ、神経疾患に関連する一つのイオンチャネルに対し、新規かつ特異性の高いリード化合物の特定を目指します。Metrion社は、選定されたイオンチャネルの知的財産、ノウハウ、及びスクリーニングモデルを提供します。当社グループは、選定されたイオンチャネルに対して特定された全ての分子に対して、独占的なグローバルでの権利を有します。 ③ Orexia Therapeutics Limited及びCentessa Pharmaceuticals Limited2021年2月16日、当社グループは、Centessa Pharmaceuticals Limited(以下「Centessa社」)が、複数の有望な新薬プログラムを集約させたバイオ医薬品企業として設立されたと公表したことを開示しました。設立に関連して、Centessa社は、未上場バイオ企業10社(以下「Centessa社子会社」)を統合し、Centessa社の経営陣の下、それぞれのプログラムの開発を引き続き進めます。Centessa社は、ライフサイエンス専門のベンチャーキャピタルであるMedicxi社によって設立され、バイオ業界における優良な投資家グループからの250百万米ドルのシリーズAの資金調達を、募集額を上回る申し込みをもって完了しました。Centessa社は、ベストインクラスまたはファーストインクラスとなる可能性があるプログラムを集約することで規模を獲得しつつも、個々のプログラムは専門チームが進めることで、従来の開発プロセスを再構築・加速化する研究開発モデルを採用しています。Centessa社は、この独自の運営体制により、既存の製薬企業が構造上抱えている、一部の非効率的な研究開発を改善することを目指しています。Centessa社子会社の各チームは、それぞれ一つのプログラムまたは一つの生物学的経路に特化した研究開発を、大きな裁量権をもつその領域の専門家の指揮の下、進めていきます。子会社の各チームが、構造ベース創薬などの独自の機能を用い、優れたサイエンスの推進に特化して注力することで、Centessa社はインパクトのある医薬品を開発し、患者様に提供することが可能になります。当社グループとMedicxi社によって2019年2月に設立されたOrexia Limited及びInexia Limitedからなる新会社Orexia Therapeutics Limited(以下「Orexia社」)は、Centessa社に統合されました。Orexia社は、構造ベース創薬を用いて、経口及び経鼻投与によるオレキシン受容体作動薬を開発しています。これらの作動薬はナルコレプシー1型の治療を目指しており、オレキシン産生ニューロンの脱落の基礎病理、及び日中の過剰な眠気を特徴とする他の神経障害に直接作用する可能性があります。当社グループは、引き続きOrexia社に研究開発受託サービスを提供しており、Orexia社に対する当社グループの保有株式は持分に見合ったCentessa社に対する保有株式に転換されています。 2021年4月21日、Centessa社は、Centessa Pharmaceuticals plc.の米国預託株式(以下「本件ADS」)の新規株式公開に関する登録届出書(Form S-1)を米国証券取引委員会「以下「SEC」」に提出しました。2021年6月4日、本件ADSの新規株式公開が完了し、時価総額は17億米ドル、資金調達額は379.5百万米ドルとなり、「CNTA」のティッカーシンボルでNASDAQ Global Marketに上場されました。2021年12月31日現在、当社グループはCentessa Pharmaceuticals plc.の929,353株(同社発行済株式数の約1%)を保有しています。 ④ InveniAI® LLC2021年7月6日、当社グループは、人工知能(以下「AI」)及び機械学習(以下、「ML」)を応用し、創薬と開発におけるイノベーションに革新をもたらす世界的リーダーであるInveniAI® LLC(以下「InveniAI社」)と、新規研究開発提携を開始したことを発表しました。本提携の目的は、新薬創出のためにAIとMLを用いることで、疾患に関与する免疫調節経路におけるGPCRの役割について論理的な根拠を見出し、免疫疾患領域における新規治療薬のコンセプトを特定することです。そして、これらのターゲットをSBDDの基礎として活用し、既に市販されている免疫治療薬より反応性が改善された新規化合物を創出することを目指します。今回の提携により、InveniAI社のAIを活用した標的探索プラットフォームと、当社グループの世界をリードするGPCR構造ベース創薬及び初期開発能力を組み合わせることで、アンメットメディカルニーズの高い疾患領域において、革新的な治療薬を生み出すことが可能になります。 ⑤ Twist Biosciences Corporation2021年12月16日、当社グループは、顧客事業の成功に向けてシリコンプラットフォームによる高品質な合成DNAを提供するTwist Bioscience Corporation(以下「ツイスト社」)と、当社グループが特定したGPCRターゲットに対する、抗体医薬品の創薬に向けた創薬共同研究契約を締結したことを発表しました。本共同研究では、当社2グループの独自のStaR®技術を用いて抽出・安定化され、構造情報が完全に利用可能な標的GPCRを使用します。ツイスト社は、GPCRに特化した2つの合成抗体ライブラリを含む独自の抗体ライブラリと、高度なバイオインフォマティクスの専門知識を活用します。当社グループは、本共同研究で特定されたリード抗体の開発・商業化に対する、グローバルでの独占的な権利を有します。ツイスト社は、契約一時金、研究開発費用、及びあらかじめ定められた開発マイルストンの達成に応じて将来の支払いを受領する権利を有します。 (3) 提携につながる新規候補物質創出のために当社グループ独自で行う創薬及び初期開発への投資当社グループは、パイプラインへの重要な投資を継続し、複数の創薬候補品の初期開発段階のプログラムで進捗がありました。 ① COVID-19治療薬2021年12月7日、当社グループは、COVID-19 Therapeutics Accelerator(新型コロナウイルス感染症の治療推進プロジェクト)(以下、「アクセラレーター」)を通じて、Wellcome(以下「ウェルカム財団」)から助成金を受領したことを発表しました。この資金はCOVID-19の治療を目的に、SARS-CoV-2(COVID-19の原因ウイルス)の複製に必須な酵素であるSARS-CoV-2メインプロテアーゼ(Mpro)を標的とする、当社グループの新規かつ低分子の、経口抗ウイルス薬候補の前臨床開発を進めるために使用されます。当社グループは、世界をリードする構造ベース創薬を応用し、Mproを選択的に阻害する薬剤候補を作製するため、2020年4月にCOVID-19に対する研究開発プログラムを開始しました。また当社グループは、SARS-CoV-2 Mproの高度に保存された構造に対して薬剤候補を設計しており、これらはSARS-CoV-2の将来予測される変異ウイルスや、関連するヒトのウイルスに対しても有効な可能性があります。本プログラムから得られた薬剤候補のうち最も前進しているSH-879は、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性が高いだけでなく、経口投与可能であり、さらにCOVID-19を対象とした承認済みあるいは後期開発段階にある他の抗ウイルス剤とは差別化されたプロファイルを持っています。当社グループは、ウェルカム財団からの資金を活用して、SH-879及びその他の候補化合物の前臨床試験による開発を加速させ、投与方法の利便性が高く、かつ他の抗ウイルス剤との併用の必要がない単一の臨床開発候補物質の選定を目指します。本研究はアクセラレーターを通じて、ウェルカム財団からの助成金による支援を受けます。アクセラレーターは、COVID-19に対する既存の治療法開発における不足に対処し、治療法開発を加速するために、ウェルカム財団、ビル&メリンダ・ゲイツ財団及びマスターカードが2020年3月に立ち上げ、さまざまな資金提供先から追加資金を得ています。