研究開発活動(本文)
FY2025|8,996 文字
6 【研究開発活動】当社グループにおける研究開発活動は、次世代の事業を創出するためにグループ横断的に中長期的なテーマを開拓するコーポレートの研究開発機能と、事業競争力の強化に必要なテーマを深掘りする各事業の研究・技術開発機能の体制で推進しています。当社及び連結子会社の研究費、主たる研究開発活動の概要及び成果は以下のとおりです。 当連結会計年度 マテリアル43,511百万円 住宅3,814百万円 ヘルスケア52,247百万円 その他137百万円 計99,708百万円 全社10,933百万円 合計110,641百万円 1 コーポレートの研究開発における基本方針(1) ミッションとあるべき姿コーポレートの研究開発のミッションを以下のとおり定め、研究開発におけるコア技術の育成・獲得・深耕及びイノベーションによる新事業創出を当社グループの成長戦略の両輪として、様々な社会課題を成長のエンジンへ転換し、持続的な成長を実現する原動力とすることを、あるべき姿として目指していきます。(コーポレートの研究開発のミッション)コア技術の育成・獲得・深耕差別性・優位性の高い製品・サービス開発のためのコア技術の深化及び外部技術獲得・育成イノベーションによる新事業創出自社の研究開発のマネジメントの強化に加え、CVCやオープンイノベーション等、社外との連携も加速技術基盤機能の深化と進化当社グループを支える技術基盤機能の深化と進化 (2) 重点戦略分野等重点戦略分野として、「脱炭素・水素(カーボンニュートラル)」「膜・セパレーション技術」「化合物半導体」の3分野を設定して研究開発テーマに資源配分を進めています。また、これらを含めた研究開発を進めるにあたっては、オープンイノベーションを通じて共創による開発を進めるとともに社会実装を加速し、さらに、DXや知的財産権のフル活用により無形資産の価値の最大化を図り、新事業創出による持続可能な社会への貢献を目指していきます。無形資産の価値の最大化については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 <経営方針・経営戦略> ●「中期経営計画2027 ~Trailblaze Together~」の概要 v 経営基盤の強化 ■ 無形資産の最大活用」もご参照ください。 2 新事業創出に向けた研究開発の加速のための取り組み(1) CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の活動当社グループは、2008年に日本国内でCVCを設立し、2011年から米国を拠点として、スタートアップ企業への投資を通して最先端技術・ビジネスを獲得し、新事業の創出を行ってきました。現在は、米国、ドイツ、中国の拠点でグローバルな活動の幅を広げ、3年間で6,000万ドルの投資枠を設けて、1社当たり500万ドルまでの投資に関しては本社での決裁を不要とするなど、スピーディな意思決定、手続きができるような仕組みを運用しています。2023年4月には、「Care for Earth」投資枠を設定し、水素、蓄エネルギー、カーボンマネジメント、バイオケミカルなどの環境分野の課題解決に取り組むアーリーステージのスタートアップ企業を対象に、2027年度までの5年間にグローバルで1億ドルの出資を実施していく予定です。この投資枠を使い、2023年12月にはアニオン交換型の水電解装置用の膜を開発するカナダのIonomr Innovations Inc.への出資参画を決定しました。詳細は「3 主な研究開発活動 (1) 当社グループ全体(コーポレート) ② 膜・セパレーション技術の開発」をご参照ください。 (2) オープンイノベーションによるミッシングパーツの取り込み研究テーマの探索/研究開発/事業開発のそれぞれの段階で、アセットライト、高付加価値化、スピードアップの実現へ向けて産官学のパートナーと連携を進めています。外部のオープンイノベーションプラットフォームも積極的に活用し、例えば、サステナブルな価値の提供を目指すオープンイノベーションプログラム「Asahi Kasei Value Co-Creation Table 2024」を前期に引き続き進めており、従来の商流にとらわれない新たなパートナーとの共創を加速しています。 (3) 社内基盤の強化(事業開発視点を重視した独自のアジャイル型ステージゲート管理や、オープンイノベーション文化の醸成)研究開発テーマのポートフォリオ管理や適切な資源配分を目的として、アジャイル型ステージゲート制度を導入しています。探索、研究、開発、事業開発、事業化準備の各ステージの要件や、各研究開発テーマのステージ上の位置付けを明確にし、研究開発テーマを次のステージに移行させる判断にあたっては、技術視点のみならず、顧客価値視点を重視し、ビジネスモデル、事業戦略、特許戦略、品質保証、製造、環境安全対応等、ステージごとに必要な審査を強化しています。さらに、審査プロセスを通じて、研究開発部門の内外のメンバーから多面的な助言を得ることや、各事業との連携を深め、既存事業との関係性の整理・明確化、パートナー連携の活用強化や出口戦略の多様化に取り組んでいます。また、研究開発に関わる高度専門人材があふれ出る仕組みの構築と風土の醸成へ向けて、働き方やDE&I、キャリア支援、組織の支援や個の支援の各場面において、挑戦・成長を促して多様性を拡げるためのキャリア施策とマネジメント施策を進め、社内での対話を通じた共創・イノベーションを目指しています。 3 主な研究開発活動(1) 当社グループ全体(コーポレート)① 炭素・水素循環型社会実現への貢献 ⅰ バイオエタノールからのバイオ化学品製造の実証バイオエタノールからバイオ基礎化学品を製造するプロセス開発・設計を進めており、4~5万トン規模のプラントについて2027年稼働を目標に検討を進めています。GHG排出量を削減し、自社基礎化学品や誘導品のCFP低減を推進するとともに、ISCC PLUS認証やバイオマスバランスアプローチを適用したバイオ化学品サプライ事業を目指し、実証実験を通じたデータ取得や技術のパッケージングを実施していきます。 ⅱ アルカリ水電解システムの開発カーボンニュートラルを実現するための取り組みとして、再生エネルギーを活用したアルカリ水電解システムの開発を実施しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の「グリーンイノベーション基金事業/再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造」において、2021~2030年度を事業期間と想定した「大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発及びグリーンケミカルプラントの実証」と題したプロジェクトとして、福島県浪江町での10MW級アルカリ水電解システム及び中規模グリーンケミカルプラントの検証や、マレーシアでの60MW級アルカリ水電解システム及びグリーンケミカルプラントの実証を、日揮ホールディングス株式会社と進め、水素を用いたエネルギー貯蔵・利用の実用化に向けた技術開発事業の拡充・強化を行っています。また、同基金の助成を受けて、多様な実証実験が可能な水素製造用のアルカリ水電解パイロット試験設備が2024年5月に当社川崎製造所にて本格稼働しました。同設備に組み込む電解セルは商業機と同じサイズの設備であり、部材の性能や長期耐久性といった開発品の評価試験から、水電解システム全体の信頼性を確認することができるため、当社の水電解技術の開発と事業化を大きく加速させていきます。 ⅲ CO2ケミストリー技術、CO2分離回収システムの開発当社グループでは、有毒な化合物(ホスゲン)を使用せず、CO2を原料に使用する地球環境負荷の低いポリカーボネート(PC)樹脂製造プロセスを世界で初めて確立し、社会へ新たな価値を提供してきました。また、2018年に実証が完了したCO2を原料とするジフェニルカーボネート製造プロセスや、現在開発中であるCO2誘導体利用技術のイソシアネート製法など、さらなる展開を進めていきます。加えて、ゼオライトを吸着材として用いたCO2分離回収システムの開発も進めており、岡山県倉敷市との間でバイオガス精製システムの性能評価、実証を行う契約を締結し、倉敷市の児島下水処理場においてゼオライト系CO2分離回収システムの実証運転を2025年2月に開始しました。 ② 膜・セパレーション技術の開発当社グループのコア技術である相分離技術をベースに膜・セパレーション技術の研究開発を進めることにより、既存事業の強化に加えて、新たな事業展開を加速しています。 ⅰ バイオプロセスFO(正浸透)膜医薬品製造プロセスで使用されるバイオプロセスFO(正浸透)膜は、FOシステムとMD(膜蒸留)システムのハイブリッドにより、非加熱・非加圧で濃縮できるため医薬品の変性を防ぐとともに、凍結時間の短縮やエネルギー負荷の低減の実現を通じて医薬品製造プロセスを革新するものであり、既に複数の顧客候補と実証実験に取り組んでいます。 ⅱ アニオン交換型の水電解装置用の膜水電解にはアルカリ水電解型を含めていくつかの方式がありますが、性能・コストの両面で大幅な改善が期待される次世代膜として、アニオン交換型の水電解装置用の膜(Anion-Exchange Membranes、AEM)への展開にも取り組んでいます。2023年12月にCVCの「Care for Earth」投資枠で出資参画したカナダのIonomrが手掛けるアニオン交換型の水電解は、再生可能エネルギーを利用する際に特に求められる負荷変動対応で優れる他、希少金属を使わないことからコスト面でのポテンシャルも期待されています。今後、研究開発面での同社とのコラボレーションを進め、AEMに関する知見を蓄えるとともに、当社が保有する知見・技術を活用し、同社の膜の性能向上も支援していきます。 ③ 化合物半導体の開発 ⅰ 深紫外LED/深紫外レーザー現在、殺菌、ウイルス不活性化に最も効果の高い、波長265nmを高出力で実現できる深紫外LEDの展開を実施していますが、さらなる高出力化に向けた研究や高効率化のための開発に取り組んでいます。また、名古屋大学との協力により、深紫外レーザーダイオードの開発を行っており、2019年には世界で最も短波長のレーザーダイオードの発振に成功しました。また、その技術をさらに進化させ、2022年11月には深紫外半導体レーザーの室温連続発振に世界で初めて(※)成功し、電池駆動も可能なレーザー発振の成功により、実用化に向けて飛躍的に前進しています。今後は、計測・解析、殺菌などの用途での実用化を目指した取り組みを進めていきます。 ⅱ 窒化アルミニウム(AlN)系材料窒化アルミニウム(AlN)系材料は、低い電力損失と高い耐圧の特徴を併せ持ち、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりも高いエネルギー効率を実現するポテンシャルを有することから、次世代のパワーデバイスへの適用やRF(高周波)アプリケーションへの展開が期待されています。2023年8月には当社グループのCrystal IS, Inc.が4インチ(直径100mm)のAlN単結晶基板の製造に世界で初めて(※)成功しました。また、名古屋大学との協力により、同年12月には電流-電圧特性、耐電圧特性において非常に良好な特性を示す、理想的なAlN系の「pn接合」の実現に世界で初めて(※)成功しました。さらに、2024年11月には実用デバイスにも用いられるHEMT構造で従来から2倍程度向上した2.2MV/cmという耐電圧の向上にも成功しました。また、Crystal ISが製造する4インチ(直径100mm)AlN単結晶基板の使用可能面積が99%を超えてきたことから、国内外の半導体デバイスメーカーへのサンプル基板の提供を2024年度下期より開始しました。各種デバイス生産能力・効率の大幅な向上への貢献を目指してさらなる改善を行っていきます。 ※これまでの学会発表や論文などから当社グループ調べによるもの ④ セルロースナノファイバー系材料の開発バイオ由来のセルロースナノファイバーと、樹脂又は繊維をナノコンポジット化することで、素材の高機能化と環境技術を両立し、サステナビリティに貢献する製品の実現を目指しています。当社グループでは、セルロースナノファイバーからセルロースナノファイバーコンポジットまでの一貫製造プロセスを保有していることの特長を活かし、低コスト、低環境負荷、高機能を満たす製品開発及びマーケティング活動を通じた事業化の検討を進めています。2023年6月には、プラスチックの合成繊維にセルロースナノファイバーを10質量%混ぜて成形した材料で、一般的なフェルトの防音材と比べて厚さが40分の1の0.5mmという薄さながら同等の防音性能を実現しました。開発品は幅広い周波数領域で吸音かつ遮音性能を併せ持ち、薄膜でも立体的に成形できる特徴があります。モーターやコンプレッサーなどの形状に合わせたケースに成形し、騒音源を囲うような使い方を想定し、今後、自動車向けの防音材としての製品化を目指していきます。 ⑤ 「旭化成-産総研 サステナブルポリマー連携研究ラボ」の設立当社と産総研グループは、サステナブルポリマーの提供を可能にする社会システムの実現を目標に、2025年1月1日に「旭化成-産総研 サステナブルポリマー連携研究ラボ」を設立しました。本連携ラボでは、「リサイクル材の確保と利用」を可能にするポリマーリサイクルシステムの社会実装、及び「機能を伴ったリサイクルしやすい設計」を実現する技術・システムの提供を目指します。具体的には、「リサイクル材の確保と利用」に向けた課題の一つである品質確保に向けたグレーディングのモデルケースの創出を目指します。また、「機能を伴ったリサイクルしやすい設計」の実現のために、易解体接着剤に着目し、使用材料の再生・再利用につながる易解体ソリューションの提供に向けた開発を行います。 (2) 「マテリアル」セグメント・ 環境ソリューション事業セパレータ事業では、高分子設計・合成、製膜加工や塗工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー・コストダウン」「環境負荷軽減」「再生可能エネルギーの普及」に向けた開発を推進しています。電気自動車等の環境対応車、電子機器、電動ツールや蓄電システム用途に展開するリチウムイオン電池用高機能セパレータ等の環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。また、セパレータの知見を通じて取得できるデータをもとにした、電池の耐久性や寿命、航続距離を伸ばすソリューションの開発も併せて検討していきます。イオン交換膜事業では製造型リカーリングを推進しており、「メンテナンス最適化」「トラブルレス」「運転条件最適化・簡易化」の顧客課題をソリューション開発により解決するため、顧客とのデータ基盤の構築やシステムの構築に向けた取り組みを行い、ソリューション提案を推進しています。また、イオン交換膜法食塩電解事業で構築した事業基盤を、アルカリ水電解水素製造のビジネスへ展開していきます。中期的には、グリーン水素製造用/イオン交換膜法食塩電解プロセス用が併産できる生産設備を稼働させる予定であり、イオン交換膜事業と水素ビジネスが一体となって成長を目指します。 ・ モビリティ&インダストリアル事業自動車内装材事業では、環境負荷低減に貢献する取り組みとして、スエード調人工皮革「Dinamica®」のリサイクル原料比率向上やモノマテリアル化などを通じたサステナビリティ強化、米国スタートアップNFW社との非石油由来レザーの共同開発など、リサイクル性の高い素材やバイオマス由来原料の積極的な活用を検討しています。 ・ ライフイノベーション事業電子材料事業では、微細化、高集積化、高速化を支える最先端半導体・実装プロセス革新に向け、感光性ポリイミド「パイメル™」や感光性ドライフィルム「サンフォート™」など先進・独自の技術による高付加価値製品の展開を進めています。特にDXの加速によって、知財データの活用や、マテリアルズインフォマティクス(MI)などによる、開発競争の強化を図っています。自律成長に加え、技術導入等による価値創出を模索し、電子部品事業との融合も図り、デジタル社会で求められるニーズに対し特徴ある部品、部材、ソリューションを展開していきます。電子部品事業では、デジタル社会の進展に対応し、「音」「磁気」「ガス」のセンシング技術を主軸に、省エネ・健康・快適に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、センサ技術、アナログ信号処理技術、アルゴリズム技術等を融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型ビジネスへの展開にも積極的に取り組んでいきます。特に電気自動車(EV)化に伴うパワー系のセンシングソリューション、またサウンドマネジメントソリューションのトレンドを的確に掴んだ、特徴のあるソリューション提案を進めています。また、生活者の視点と健康で快適な暮らしへの貢献を意識し、新事業領域として、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイルの開発などにも取り組んでいます。繊維事業では、アパレルと衛生材料を重点マーケット領域と定め、キュプラ繊維「ベンベルグ®」やポリウレタン弾性繊維「ロイカ®」を軸に、独自性を活かし、かつ、サステナビリティに対応した付加価値の高い製品創出や生産プロセス革新のための研究開発を進めています。 (3) 「住宅」セグメント住宅事業では、「ロングライフの実現」を支えるコア技術について、重点的な研究開発を続けています。シェルター技術については、安全性(耐震・制震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。また、住ソフト技術については、都市部における二世帯同居やシニア等の住まい方についての研究を推進するとともに、住宅における生活エネルギー消費量削減と人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる、環境共生型住まいを実現する技術開発に注力しています。さらに、AIとデータサイエンス技術を活用して、お客様の暮らしを豊かにする多角的なサービスを提供するデジタルサービスプラットフォームの構築を目指した取り組みを行っています。2021年にはIoTを活用した宅配物の受け取りやセキュリティレベルを選択可能にした収納空間「スマートクローク・ゲートウェイ」の運用を開始し、2023年には、他社と開発を進めているAI 技術を用いて自律移動ロボットを活用し、宅配物をロボットが受け取り、自動で居住空間に運ぶ未来の暮らしの提案を行っています。今後もさらに生成 AI の開発を進め、住宅全体への展開を目指していきます。建材事業では、「良質空間を追求し、グッド・マテリアルを通じて、未来を見据え新たな価値を創造する」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、杭基礎、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。 (4) 「ヘルスケア」セグメント医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、免疫領域(SLE、移植等)、整形外科領域(骨、疼痛等)及び救急領域を中心に、有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOL(Quality of Life)向上を図ることを目指して、積極的な研究開発を行っています。創薬技術や創薬シーズ、創薬テーマについては、世界中の企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力を挙げた研究開発に取り組んでいます。グループのコア技術である膜、フィルター、吸着材等による濾過・分離技術を、化学、機械工学、医薬分野での幅広い知見や保有技術と高度に融合させることで、血液製剤や生物学的製剤のウイルス安全性確保やプロセスエンジニアリングをはじめとしたライフサイエンス分野における技術をさらに発展させていきます。2024年10月には高い透水性を特徴とした次世代ウイルス除去フィルター「プラノバ™ FG1」を発売開始しました。また、製品のみならずCRO(Contract Research Organization)やCDMO等のサービスを通じて、独自の価値を提案する事業への進化に注力し、ウイルス除去フィルターの提供を超えて医薬品製造の安全性と製造効率向上に貢献することを目指します。2024年6月にはBionovaにおいて、遺伝子治療や細胞治療の重要な原材料であるプラスミドのCDMO拠点を米国テキサス州に新設することを決定しました。クリティカルケア事業では、革新的医療の提供と収益成長の実現に注力します。従来の心肺蘇生や心疾患領域における市場ポジションの継続的な強化に加えて、睡眠時無呼吸症領域に事業拡大していきます。Respicardia、Itamar、及びZOLLの「LifeVest®」が持つ強みと市場チャネルを統合することで、心疾患と関連があると言われる睡眠時無呼吸症に対して高度な診断・治療ソリューションを提供していきます。
FY2024|8,590 文字
6 【研究開発活動】当社グループにおける研究開発活動は、長期視点で次世代の事業を創出するためにグループ横断的に中長期的なテーマを開拓するコーポレートの研究開発機能と、事業競争力の強化に必要なテーマを深掘りする各事業の研究・技術開発機能の体制で推進しています。当社及び連結子会社の研究費、主たる研究開発活動の概要及び成果は以下のとおりです。 当連結会計年度 マテリアル43,834百万円 住宅3,565百万円 ヘルスケア47,783百万円 その他137百万円 計95,319百万円 全社11,278百万円 合計106,597百万円 1 コーポレートの研究開発における基本方針(1) ミッションとあるべき姿コーポレートの研究開発のミッションを以下のとおり定め、研究開発におけるコア技術の育成・獲得・深耕及びイノベーションによる新事業創出を当社グループの成長戦略の両輪として、様々な社会課題を成長のエンジンへ転換し、持続的な成長を実現する原動力とすることを、あるべき姿として目指していきます。(コーポレートの研究開発のミッション)コア技術の育成・獲得・深耕差別性・優位性の高い製品・サービス開発のためのコア技術の深化及び外部技術獲得・育成イノベーションによる新事業創出自社の研究開発のマネジメントの強化に加え、CVCやオープンイノベーション等、社外との連携も加速技術基盤機能の深化と進化当社グループを支える技術基盤機能の深化と進化 (2) 重点戦略分野等重点戦略分野として、「脱炭素・水素(カーボンニュートラル)」「膜・セパレーション技術」「化合物半導体」の3分野を設定して研究開発テーマに資源配分を進めています。また、これらを含めた研究開発を進めるにあたっては、オープンイノベーションを通じて共創による開発を進めるとともに社会実装を加速し、さらに、DXや知的財産権のフル活用により無形資産の価値の最大化を図り、新事業創出による持続可能な社会への貢献を目指していきます。無形資産の価値の最大化については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 <経営方針・経営戦略> v 経営基盤の強化 ■ 無形資産の最大活用」もご参照ください。 2 新事業創出に向けた研究開発の加速のための取り組み(1) CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の活動当社グループは、2008年に日本国内でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立し、2011年から米国を拠点として、スタートアップ企業への投資を通して最先端技術・ビジネスを獲得し、新事業の創出を行ってきました。現在は、米国、ドイツ、中国の拠点でグローバルな活動の幅を広げ、3年間で7,500万ドルの投資枠を設けて、1社当たり500万ドルまでの投資に関しては本社での決裁を不要とするなど、スピーディな意思決定、手続きができるような仕組みを運用しています。2023年4月には、「Care for Earth」投資枠を設定し、水素、蓄エネルギー、カーボンマネジメント、バイオケミカルなどの環境分野の課題解決に取り組むアーリーステージのスタートアップ企業を対象に、2027年度までの5年間にグローバルで1億ドルの出資を実施していく予定です。この投資枠を使い、同年12月にはアニオン交換型の水電解装置用の膜を開発するIonomr Innovations Inc.(本社:カナダ・バンクーバー市、以下「Ionomr社」)への出資参画を決定しました。詳細は「3 主な研究開発活動 (1) 当社グループ全体 ② 膜・セパレーション技術の開発」をご参照ください。 (2) オープンイノベーションによるミッシングパーツの取り込み研究テーマの探索/研究開発/事業開発のそれぞれの段階で、アセットライト、高付加価値化、スピードアップの実現へ向けて産官学のパートナーと連携を進めています。外部のオープンイノベーションプラットフォームも積極的に活用し、例えば、サステナブルな価値の提供を目指すオープンイノベーションプログラム「Asahi Kasei Value Co-Creation Table 2023」を昨年度に引き続き進めており、従来の商流にとらわれない新たなパートナーとの共創を加速しています。 (3) 社内基盤の強化(事業開発視点を重視した独自のアジャイル型ステージゲート管理や、オープンイノベーション文化の醸成)研究開発テーマのポートフォリオ管理や適切な資源配分を目的として、アジャイル型ステージゲート制度を導入しています。探索、研究、開発、事業開発、事業化準備の各ステージの要件や、各研究開発テーマのステージ上の位置付けを明確にし、研究開発テーマを次のステージに移行させる判断にあたっては、技術視点のみならず、顧客価値視点を重視し、ビジネスモデル、事業戦略、特許戦略、品質保証、製造、環境安全対応等、ステージごとに必要な審査を強化しています。さらに、審査プロセスを通じて、研究開発部門の内外のメンバーから多面的な助言を得ることや、各事業との連携を深め、既存事業との関係性の整理・明確化、パートナー連携の活用強化や出口戦略の多様化に取り組んでいます。また、研究開発に関わる高度専門人材があふれ出る仕組みの構築と風土の醸成へ向けて、働き方やDE&I、キャリア支援、組織の支援や個の支援の各場面において、挑戦・成長を促して多様性を拡げるためのキャリア施策とマネジメント施策を進め、社内での対話を通じた共創・イノベーションを目指しています。 3 主な研究開発活動(1) 当社グループ全体(「全社」)① 炭素・水素循環型社会実現への貢献 i バイオエタノールからのバイオ化学品製造の実証バイオエタノールからバイオ基礎化学品を製造するプロセス開発・設計を進めており、4~5万トン規模のプラントについて2027年稼働を目標に検討を進めています。GHG排出量を削減し、自社基礎化学品や誘導品のCFP低減を推進するとともに、ISCC認証やバイオマスバランスアプローチを適用したバイオ化学品サプライ事業を目指し、実証実験を通じたデータ取得や技術のパッケージングを実施していきます。 ii アルカリ水電解システムの開発カーボンニュートラルを実現するための取り組みとして、再生エネルギーを活用したアルカリ水電解システムの開発を実施しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造」に対し、2021~2030年度を事業期間と想定した「大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発及びグリーンケミカルプラントの実証」と題したプロジェクトとして、福島県浪江町での10MW級アルカリ水電解システム及び中規模グリーンケミカルプラントの検証や、マレーシアでの60MW級アルカリ水電解システム及びグリーンケミカルプラントの実証を、日揮ホールディング株式会社と進め、水素を用いたエネルギー貯蔵・利用の実用化に向けた技術開発事業の拡充・強化を行っています。マレーシアのプロジェクトは「(2) 「マテリアル」セグメント 環境ソリューション事業」もご参照ください。また、同基金の助成を受けて、多様な実証実験が可能な水素製造用のアルカリ水電解パイロット試験設備が2024年5月に当社川崎製造所にて本格稼働しました。同設備に組み込む電解セルは商業機と同じサイズの設備であり、部材の性能や長期耐久性といった開発品の評価試験から、水電解システム全体の信頼性を確認することができるため、当社の水電解技術の開発と事業化を大きく加速させていきます。 iii CO2ケミストリー技術、CO2分離回収システムの開発当社グループでは、CO2を原料に使用するポリカーボネート(PC)樹脂製造プロセスを世界で初めて確立し、有毒な化合物(ホスゲン)を使用しない、CO2を原料に代替することによる地球環境負荷の低い製法で、社会へ新たな価値を提供してきました。また、2018年に実証が完了したCO2を原料とするジフェニルカーボネート製造プロセスや、現在開発中であるCO2誘導体利用技術のイソシアネート製法など、更なる展開を進めていきます。加えて、ゼオライトを吸着材として用いたCO2分離回収システムの開発も進めており、2022年9月には当社と岡山県倉敷市とでバイオガス精製システムの性能評価、実証を行う契約を締結し、ゼオライト系CO2分離回収システムの実証開始へ向けて取り組んでいます。 ② 膜・セパレーション技術の開発当社グループのコア技術である相分離技術をベースに膜・セパレーション技術の研究開発を進めることにより、既存事業の強化に加えて、新たな事業展開を加速しています。 i バイオプロセスFO(正浸透)膜医薬品製造プロセスで使用されるバイオプロセスFO(正浸透)膜においては、FOシステムとMDシステムのハイブリッドにより、非加熱・非加圧で濃縮できるため医薬品の変性を防ぐとともに、凍結時間の短縮やエネルギー負荷の低減の実現を通じて医薬品製造プロセスを革新するものであり、既に複数の顧客候補と実証実験に取り組んでいます。 ii アニオン交換型の水電解装置用の膜水電解にはアルカリ水電解型を含めていくつかの方式がありますが、性能・コストの両面で大幅な改善が期待される次世代膜として、アニオン交換型の水電解装置用の膜(Anion-Exchange Membranes、AEM)への展開にも取り組んでいます。2023年12月にCVCの「Care for Earth」投資枠で出資参画したカナダのIonomr社が手掛けるアニオン交換型の水電解は、再生可能エネルギーを利用する際に特に求められる負荷変動対応で優れる他、希少金属を使わないことからコスト面でのポテンシャルも期待されています。今後、研究開発面での同社とのコラボレーションを進め、AEMに関する知見を蓄えるとともに、当社が保有する知見・技術を活用し、同社の膜の性能向上も支援していきます。 ③ 化合物半導体の開発(深紫外LED/深紫外レーザーや窒化アルミニウム(AlN)系材料の開発) i 深紫外LED/深紫外レーザー現在、殺菌、ウイルス不活性化に最も効果の高い、波長265nmを高出力で実現できる深紫外LEDの展開を実施していますが、更なる高出力化に向けた研究や、基板の大口径化や高品質化にも継続して取り組んでいます。また、名古屋大学との協力により、深紫外レーザーの開発を行っており、2019年にはUV-C帯の世界で最も短波長のレーザー発振に成功しました。また、その技術をさらに進化させ、2022年11月には深紫外半導体レーザーの室温連続発振に世界で初めて(※)成功し、電池駆動も可能なレーザー発振の成功により、実用化に向けて飛躍的に前進しています。今後は、ガス分析等センシングへの応用、局所殺菌、DNAや微粒子などの計測・解析といった、ヘルスケア・医療分野への応用の検討を進めていきます。 ii 窒化アルミニウム(AlN)系材料窒化アルミニウム(AlN)系材料は、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりも電力損失が小さく、耐圧が高いポテンシャルを有することから、エネルギー効率に優れ、次世代のパワーデバイスへの適用やRF(高周波)アプリケーションへの展開が期待されています。2023年8月には当社グループのCrystal IS, Inc.が4インチ(直径100mm)のAlN単結晶基板の製造に世界で初めて(※)成功しました。各種デバイス生産能力・効率の大幅な向上への貢献を目指してさらなる改善を行っていきます。また、名古屋大学との協力により、同年12月には電流-電圧特性、電圧-容量特性、電流注入による発光特性において非常に良好な特性を示す、理想的なAlN系の「pn接合」の実現に世界で初めて(※)成功しました。pn接合は半導体デバイスの根幹をなす基本構造であり、本成果はAlN系デバイスの今後の発展の礎となるものであり、産学連携をさらに強化していきます。※これまでの学会発表や論文などから当社グループ調べによるもの ④ セルロースナノファイバー系材料の開発バイオ由来のセルロースナノファイバーと、樹脂又は繊維をナノコンポジット化することで、素材の高機能化と環境技術を両立し、サステナビリティに貢献する製品の実現を目指しています。当社グループでは、セルロースナノファイバーからセルロースナノファイバーコンポジットまでの一貫製造プロセスを保有していることの特長を活かし、低コスト、低環境負荷、高機能を満たす製品開発及びマーケティング活動を通じた事業化の検討を進めています。2023年6月には、プラスチックの合成繊維にセルロースナノファイバーを10質量%混ぜて成形した材料で、一般的なフェルトの防音材と比べて厚さが40分の1の0.5mmという薄さながら同等の防音性能を実現しました。開発品は幅広い周波数領域で吸音かつ遮音性能を併せ持ち、薄膜でも立体的に成形できる特徴があります。モーターやコンプレッサーなどの形状に合わせたケースに成形し、騒音源を囲うような使い方を想定し、今後、自動車向けの防音材としての製品化を目指していきます。 (2) 「マテリアル」セグメント・ 環境ソリューション事業セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工や塗工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー・コストダウン」「環境負荷軽減」「再生可能エネルギーの普及」に向けた開発を推進しています。電気自動車等の環境対応車、電子機器、電動ツールや蓄電システム用途に展開するリチウムイオン電池用高機能セパレータ等の環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。イオン交換膜事業では製造型リカーリングを推進しており、「メンテナンス最適化」、「トラブルレス」、「運転条件最適化・簡易化」の顧客課題をソリューション開発により解決するため、顧客とのデータ基盤の構築やシステムの構築に向けた取り組みを行い、ソリューション提案を推進しています。技術ライセンス事業では、脱炭素社会の実現に向けてCO2を原料としたポリマー製造技術を確立し、ライセンス事業を推進しています。CO2を原料とした化学品には、エンジニアリング樹脂に使用されるポリカーボネート、リチウムイオン電池用電解液としてエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートがあります。脱炭素原料の世界的な需要の高まりからグローバルに多くの引き合いを受けており、事業の拡大に向けて体制の強化を進めています。水素事業基盤の構築へ向けて、NEDOのグリーンイノベーション基金(GI基金)事業として、マレーシアにて、日揮ホールディングス株式会社やPetronasグループのGentari社とともに、60MW級アルカリ水電解システムにより年間8,000トン程度の水素をケミカルプラントへ供給する実証に取り組みます。変動運転のためのマルチモジュール制御技術の開発や、運転最適化のための統合制御システムの開発を進め、早期事業化を図ります。 ・ モビリティ&インダストリアル事業 機能材料事業では、自動車構造部材を重点マーケット領域と定め、自動車の更なる軽量化を実現するため、ポリアミド66とガラス繊維織物による連続繊維強化複合材料「レンセン®」の開発が進捗しています。また、3Dプリンタ―用フィラメントとして変性PPE「ザイロン®」を原料とするフィラメントを開発し、北米にて試験販売を開始しました。当社独自の樹脂CAE(Computer Aided Engineering)技術を駆使して、部品設計まで手掛けたソリューションを提供し、新規用途開拓と海外展開を加速していきます。環境負荷低減に貢献する取り組みでは、自動車内装材事業における人工皮革「Dinamica®」のサステナビリティ強化や米国スタートアップNFWとの非石化由来レザーの共同開発など、バイオマス由来原料、リサイクル原材料の積極的な活用を検討しています。 ・ ライフイノベーション事業電子材料事業では、微細化、高集積化、高速化を支える最先端半導体・実装プロセス革新に向け、感光性ポリイミド「パイメル™」や感光性ドライフィルム「サンフォート™」など先進・独自の技術による高付加価値製品の展開を進めています。特にDXの加速によって、知財データの活用や、マテリアルズインフォマティクス(MI)などによる、開発競争の強化を図っています。自律成長に加え、技術導入等による価値創出を模索し、電子部品事業との融合も図り、デジタル社会で求められるニーズに対し特徴ある部品、部材、ソリューションを展開していきます。電子部品事業では、デジタル社会の進展に対応し、「音」「磁気」「ガス」のセンシング技術を主軸に、省エネ・健康・快適に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、センサ技術、アナログ信号処理技術、アルゴリズム技術等を融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型ビジネスへの展開にも積極的に取り組んでいきます。特に電気自動車(EV)化に伴うパワー系のセンシングソリューション、またサウンドマネジメントソリューションのトレンドを的確に掴んだ、特徴のあるソリューション提案を進めています。また、生活者の視点と健康で快適な暮らしへの貢献を意識し、新事業領域として、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイルの開発などにも取り組んでいます。繊維事業では、アパレルと衛生材料を重点マーケット領域と定め、キュプラ繊維「ベンベルグ®」やポリウレタン弾性繊維「ロイカ®」を軸に、独自性を活かし、かつ、サステナビリティに対応した付加価値の高い製品創出や生産プロセス革新のための研究開発を進めています。 (3) 「住宅」セグメント住宅事業では、「ロングライフの実現」を支えるコア技術について、重点的な研究開発を続けています。シェルター技術については、安全性(耐震・制震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。また、住ソフト技術については、都市部における二世帯同居やシニア等の住まい方についての研究を推進するとともに、住宅における生活エネルギー消費量削減と人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる、環境共生型住まいを実現する技術開発に注力しています。建材事業では、「良質空間を追求し、グッド・マテリアルを通じて、未来を見据え新たな価値を創造する」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、杭基礎、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。 (4) 「ヘルスケア」セグメント医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、免疫領域(SLE、移植等)、整形外科領域(骨、疼痛等)及び救急領域を中心に、有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOL(Quality of Life)向上を図ることを目指して、積極的な研究開発を行っています。創薬技術や創薬シーズ、創薬テーマについては、世界中の企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力を挙げた研究開発に取り組んでいます。グループのコア技術である膜、フィルター、吸着材等による濾過・分離技術を、化学、機械工学、医薬分野での幅広い知見や保有技術と高度に融合させることで、人工腎臓、血液浄化治療、輸血製剤の白血球除去、製剤のウイルス安全性確保やプロセスエンジニアリングをはじめとしたバイオプロセス分野における技術をさらに発展させていきます。クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する心肺蘇生領域における技術開発を原点とし、重篤な心肺関連疾患の診断・治療・管理領域にも研究開発を広げています。予後が悪く医療ニーズの高い、心不全・急性心筋梗塞・呼吸機能障害等におけるアンメットメディカルニーズに対する新規治療法や技術の発展と提供を通じ、患者様と臨床医に役立つことを使命としています。 (5) 「その他」エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。
FY2023|6,869 文字
6 【研究開発活動】当社及び連結子会社(以下、「当社グループ」)の研究費、主たる研究開発活動の概要及び成果は以下のとおりです。 当連結会計年度 マテリアル41,844百万円 住宅3,908百万円 ヘルスケア46,572百万円 その他149百万円 計92,473百万円 全社12,554百万円 合計105,027百万円 1 コーポレートの研究開発における基本方針(1) ミッションとあるべき姿コーポレートの研究開発のミッションを以下のとおり定め、サステナビリティ(カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど)及びヘルスケア領域で、当社グループの技術フロンティアとして、新事業創出に繋がる新しい価値を創造し続けることを、あるべき姿として目指していきます。(コーポレートの研究開発のミッション)コア技術の深化・獲得差別性・優位性の高い製品・サービス開発のためのコア技術の深化及び外部技術獲得・育成新価値創造潜在的な顧客・社会ニーズを捉えた未来視点での新しい価値の創造技術基盤機能の深化と進化当社グループを支える技術基盤機能の深化と進化 (2) 重点戦略分野・重点技術プラットフォーム重点戦略分野として、「脱炭素・水素(カーボンニュートラル)」「資源循環(サーキュラーエコノミー)」「ヘルスケア」の3分野を設定し、サステナビリティの実現に貢献するための研究開発テーマに資源配分を進めていきます。また、これらを含めた研究開発を進めるにあたっては、「R&D DX」を重点技術プラットフォームとして設定し、デジタル技術を駆使した研究開発のDXを推進します。具体的には、マテリアルズ・インフォマティクスやIPランドスケープ、デジタルプラットフォーム等を駆使し、技術戦略の策定やマーケットトレンドの先読み等を積極的に実施していきます。 2 基盤的な取り組み(1) ステージゲート制度によるテーマの取り組み研究開発テーマのポートフォリオ管理や適切な資源配分を目的として、ステージゲート制度を導入しています。探索、研究、開発、事業開発、事業化準備の各ステージの要件や、各研究開発テーマのステージ上の位置付けを明確にし、研究開発テーマを次のステージに移行させる判断にあたっては、技術視点のみならず、ビジネスモデル、事業戦略、特許戦略、環境安全対応等、ステージごとに必要な審査を強化しています。また、審査プロセスを通じて、適切なテーマの管理を可能にするだけではなく、研究開発部門の内外のメンバーから多面的な助言を得ることや、各事業との連携を深め、研究開発テーマの意義、既存事業との関係性の整理・明確化、研究開発の加速に取り組んでいます。 (2) 知的財産の活用当社グループにおける知的財産に関する重点活動として、①知的財産権の活用シナリオに基づいた事業に貢献する知財網の構築、②事業遂行を保証する知財クリアランス、③事業のグローバル化を支える知財活動の実践、④DXによる業務高度化への知的財産面からの貢献、の4つに取り組むとともに、そのベースとなる計画的な人財育成プランを進めています。DXによる事業高度化については、IPランドスケープ(以下、IPL)活動を積極的に活用し、市場における当社グループの事業のポジションや強み、発展性等についての議論を行い、事業強化、知財戦略の構築、新事業の創出等に繋げています。最近では、IPLを活用し、シナジー分析を行うことで、事業統合の妥当性を検証する取組みを実施しています。また、新事業の創出を後押しする活動として、①IPLを活用し、当社の多様なコア技術とエマージング技術(将来変革をもたらす可能性のある技術)の結び付きを俯瞰するシステムを提供することや、②コア技術に関する社内専門家をリコメンドする社内知財情報を活用したシステム(SPACE)を提供することなど、全社を牽引する取り組みも行っています。IPLや当社の知的財産情報の戦略的活用については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 <経営方針・経営戦略> v 経営基盤の強化 ■ 無形資産の最大活用」もご参照ください。 (3) CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の活動当社グループは、2008年に日本国内でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立し、2011年から米国を拠点として、ベンチャー企業への投資を通して最先端技術・ビジネスを獲得し、新事業の創出を行ってきました。現在は、米国のみならず、ドイツ、中国の拠点として加え、グローバルな活動の幅を広げています。具体的な活動としては、当社グループと親和性のあるベンチャー企業を発掘するための情報ネットワーク構築と関連部門への情報発信、投資・買収の交渉と関連実務の遂行、投資先企業のサポートを通じた事業化推進を行っています。3年間で7,500万ドルの投資枠を設けており、1社当たり500万ドルまでの投資に関しては本社での決裁を不要とするなど、スピーディな意思決定、手続きができるような仕組みを運用しています。これまで既存事業から少し離れたテクノロジー、住宅及びヘルスケア関連数十社へ投資を実施してきましたが、今後は新中期経営計画における重点分野(GG10)であるサステナビリティ領域への投資機会の探索を加えます。2023年4月には、カーボンニュートラルを実現する新たな取り組みとして「Care for Earth」投資枠を設定し、水素、蓄エネルギー、カーボンマネジメント、バイオケミカルなどの環境分野の課題解決に取り組むアーリーステージのスタートアップ企業を対象に、2027年度までの5年間にグローバルで1億ドルの出資を実施していく予定です。 3 主な研究開発活動(1) 当社グループ全体(「全社」)・ アルカリ水電解システムの開発カーボンニュートラルを実現するための取り組みとして、再生エネルギーを活用したアルカリ水電解システムの開発を実施しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の事業の一環として、福島県双葉郡浪江町にて10MW級大型アルカリ水電解システムの開発に取り組んでおり、また、NEDOに創設された「グリーンイノベーション基金事業/再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造」に対し、2021~2030年度を事業期間と想定した「大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発及びグリーンケミカルプラントの実証」と題したプロジェクトを日揮ホールディング株式会社と共同提案して採択されるなど、NEDOや協力企業とともに、水素を用いたエネルギー貯蔵・利用の実用化に向けた技術開発事業の拡充・強化を行っています。2022年11月には、同基金の助成を受けて建設・運用される水素製造用のアルカリ水電解パイロット試験設備を当社川崎製造所において着工しました。現状の水電解システムに掛かるトータルコストは、水素・燃料電池ロードマップ目標値より依然として高く、さらなるイノベーションが必要と認識しています。電解槽のコストダウン検討を継続して取り組み、EPC(設計・調達・建設)費用の割合も大きいため、技術力を有する企業との連携を進めていきます。 ・ CO2ケミストリー技術、CO2分離回収システムの開発当社グループでは、CO2を原料に使用するポリカーボネート(PC)樹脂製造プロセスを世界で初めて確立し、有毒な化合物(ホスゲン)を使用しない、CO2を原料に代替することによる地球環境負荷の低い製法で、社会へ新たな価値を提供してきました。また、2018年に実証が完了したCO2を原料とするジフェニルカーボネート製造プロセスや、現在開発中であるCO2誘導体利用技術のイソシアネート製法など、更なる展開を進めていきます。加えて、ゼオライトを吸着材として用いたCO2分離回収システムの開発も進めており、2022年9月には当社と岡山県倉敷市とでバイオガス精製システムの性能評価、実証を行う契約を締結し、ゼオライト系CO2分離回収システムの実証開始へ向けて取り組んでいます。 ・ バイオマス原料由来のポリアミド66の実用化検討当社は、協力会社との提携により、開発の初期段階から「バイオマス原料をベースにしたヘキサメチレンジアミン(HMD)」を優先的に利用し、ポリアミド66用原料としての可能性を評価・検討する権利を取得し、バイオマス由来原料を利用したポリアミド66(バイオポリアミド66)の検討を加速しています。この検討は、当社グループが目指す2050年までのカーボンニュートラル実現に寄与するものと考えており、当社自身のGHG排出量の削減や、お客様の製品のライフサイクル全体での環境負荷の低減への貢献を進めるものであり、事業化の検討を進めています。 ・ XRP(セルロースナノファイバーコンポジット)の開発バイオ由来のセルロースナノファイバーと、エンジニアリング樹脂をナノコンポジット化することで、素材の高機能化と環境技術を両立し、サステナビリティに貢献する製品の実現を目指しています。当社グループでは、セルロースナノファイバーからセルロースナノファイバーコンポジットまでの一貫製造プロセスを保有していることの特長を活かし、今後は低コスト、低環境負荷、高機能を満たす製品開発及びマーケティング活動を通じた事業化の検討を進めています。 ・ エンジニアリング樹脂発泡体の開発自動車の車体軽量化に寄与する、構造部品向けのエンジニアリング樹脂発泡体の開発を進めています。ポリアミド発泡体では、高い発泡倍率と吸音性能を強みとして展開を加速し、各自動車メーカーや自動車部材メーカーとの関係を活かしたマーケティングを進めています。また、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、部品設計の提案まで手掛けることにより、提供価値の創出に努めており、事業化を加速するために事業部門への移管が完了しました。 ・ 深紫外LED/深紫外レーザーの開発現在、殺菌、ウイルス不活性化に最も効果の高い、波長265nmを高出力で実現できる深紫外LEDの展開を実施していますが、更なる高出力化に向けた研究や、基板の大口径化や高品質化にも継続して取り組んでいます。また、名古屋大学との協力により、深紫外レーザーの開発を行っており、2019年にはUV-C帯の世界で最も短波長のレーザー発振に成功しました。また、その技術をさらに進化させ、2022年11月には深紫外半導体レーザーの室温連続発振に世界で初めて成功し、電池駆動も可能なレーザー発振の成功により、実用化に向けて飛躍的に前進しています。今後は、ガス分析等センシングへの応用、局所殺菌、DNAや微粒子などの計測・解析といった、ヘルスケア・医療分野への応用の検討を進めていきます。 (2) 「マテリアル」セグメント・ 環境ソリューション事業アクリロニトリル事業では当社の強みである触媒のブラッシュアップに継続的に取り組んでいます。セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工や塗工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー・コストダウン」「環境負荷軽減」「再生可能エネルギーの普及」に向けた開発を推進しています。電気自動車等の環境対応車、電子機器、電動ツールや蓄電システム用途に展開するリチウムイオン電池用高機能セパレータ等の環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。 ・ モビリティ&インダストリアル事業 カーインテリア事業及び機能材料事業では、自動車内装材及び構造部材を重点マーケット領域と定め、人工皮革「Dinamica®」、ポリアミド66とガラス繊維織物による連続繊維強化複合材料「レンセン®」の開発が進捗しています。加えて、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の活用により、新規用途開拓と海外展開を加速していきます。また、環境負荷低減に貢献するバイオマス由来原料、リサイクル原材料の積極的な活用を検討しています。 ・ ライフイノベーション事業電子材料事業では、最先端半導体・実装プロセス革新に向け、感光性ポリイミド「パイメル™」や感光性ドライフィルム「サンフォート™」など先進・独自の技術による高付加価値製品の展開を進めています。特にDXの加速によって、知財データの活用や、マテリアルズインフォマティクス(MI)などによる、開発競争の強化を図っています。さらに電子部品事業との融合を図り、デジタル社会で求められるニーズに対し特徴ある部品、部材、ソリューションを展開していきます。電子部品事業では、デジタル社会の進展に対応し、「音」「磁気」「ガス」のセンシング技術を主軸に、省エネ・健康・快適に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、センサ・ミックスドシグナルLSI・アルゴリズム技術等を融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型ビジネスへの展開にも積極的に取り組んでいきます。特に電気自動車(EV)化に伴うパワー系のセンシングソリューション、またサウンドマネジメントソリューションのトレンドを的確に掴んだ、特徴のあるソリューション提案を進めています。また、生活者の視点と健康で快適な暮らしへの貢献を意識し、新事業領域として、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などにも取り組んでいます。繊維事業では、自動車内装材、アパレル、おむつの3つを重点マーケット領域と定め、人工皮革「Dinamica®」、ナイロン66繊維「レオナ®」、キュプラ繊維「ベンベルグ®」、ポリウレタン弾性繊維「ロイカ®」及び各種不織布を軸に、独自性を活かし、かつ、サステナビリティに対応した付加価値の高い製品創出や生産プロセス革新のための研究開発を進めています。 (3) 「住宅」セグメント住宅事業では、「ロングライフの実現」を支えるコア技術について、重点的な研究開発を続けています。シェルター技術については、安全性(耐震・制震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。また、住ソフト技術については、都市部における二世帯同居やシニア等の住まい方についての研究を推進するとともに、住宅における生活エネルギー消費量削減と人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる、環境共生型住まいを実現する技術開発に注力しています。建材事業では、「良質空間を追求し、グッド・マテリアルを通じて、未来を見据え新たな価値を創造する」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、杭基礎、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。 (4) 「ヘルスケア」セグメント医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、免疫領域(SLE、移植等)、整形外科領域(骨、疼痛等)及び救急領域を中心に、有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOL(Quality of Life)向上を図ることを目指して、積極的な研究開発を行っています。創薬技術や創薬シーズ、創薬テーマについては、世界中の企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力を挙げた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化治療、輸血製剤の白血球除去、製剤のウイルス安全性確保をはじめとしたバイオプロセス分野における技術をさらに発展させていきます。クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する心肺蘇生領域における技術開発を原点とし、重篤な心肺関連疾患の診断・治療・管理領域にも研究開発を広げています。予後が悪く医療ニーズの高い、心不全・急性心筋梗塞・呼吸機能障害等におけるアンメットメディカルニーズに対する新規治療法や技術の発展と提供を通じ、患者様と臨床医に役立つことを使命としています。 (5) 「その他」エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。
FY2022|6,685 文字
5 【研究開発活動】当社及び連結子会社(以下、「当社グループ」)の主たる研究開発活動の概要、成果及び研究開発費(総額98,693百万円)は以下のとおりです。 1 コーポレートの研究開発における基本方針(1) ミッションとあるべき姿コーポレートの研究開発のミッションを以下のとおり定め、サステナビリティ(カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど)及びヘルスケア領域で、当社グループの技術フロンティアとして、新事業創出に繋がる新しい価値を創造し続けることを、あるべき姿として目指していきます。(コーポレートの研究開発のミッション)コア技術の深化・獲得差別性・優位性の高い製品・サービス開発のためのコア技術の深化及び外部技術獲得・育成新価値創造潜在的な顧客・社会ニーズを捉えた未来視点での新しい価値の創造技術基盤機能の深化と進化当社グループを支える技術基盤機能の深化と進化 (2) 重点戦略分野・重点技術プラットフォーム重点戦略分野として、「脱炭素・水素(カーボンニュートラル)」「資源循環(サーキュラーエコノミー)」「ヘルスケア」の3分野を設定し、サステナビリティの実現に貢献するための研究開発テーマに資源配分を進めていきます。また、これらを含めた研究開発を進めるにあたっては、「R&D DX」を重点技術プラットフォームとして設定し、デジタル技術を駆使した研究開発のDXを推進します。具体的には、マテリアルズ・インフォマティクスやIPランドスケープ、デジタルプラットフォーム等を駆使し、技術戦略の策定やマーケットトレンドの先読み等を積極的に実施していきます。 2 基盤的な取り組み(1) ステージゲート制度によるテーマの取り組み研究開発テーマのポートフォリオ管理や適切な資源配分を目的として、ステージゲート制度を導入しています。探索、研究、開発、事業開発、事業化準備の各ステージの要件や、各研究開発テーマのステージ上の位置付けを明確にし、研究開発テーマを次のステージに移行させる判断にあたっては、技術視点のみならず、ビジネスモデル、事業戦略、特許戦略、環境安全対応等、ステージごとに必要な審査を強化しています。また、審査プロセスを通じて、適切なテーマの管理を可能にするだけではなく、研究開発部門の内外のメンバーから多面的な助言を得ることや、各事業との連携を深め、研究開発テーマの意義、既存事業との関係性の整理・明確化、研究開発の加速に取り組んでいます。 (2) 知的財産の活用当社グループにおける知的財産に関する重点活動として、①知的財産権の活用シナリオに基づいた事業に貢献する知財網の構築、②事業遂行を保証する知財クリアランス、③事業のグローバル化を支える知財活動の実践、④DXによる業務高度化への知的財産面からの貢献、の4つに取り組むとともに、そのベースとなる計画的な人財育成プランを進めています。DXによる事業高度化については、IPランドスケープ(以下、IPL)活動を積極的に活用し、市場における当社グループの事業のポジションや強み、発展性等についての議論を行い、事業強化、知財戦略の構築、新事業の創出等に繋げています。最近では、新事業の創出を後押しする活動として、①IPLを活用し、当社の多様なコア技術とエマージング技術(将来変革をもたらす可能性のある技術)の結び付きを俯瞰するマップを経営陣や事業部門へ提供、②コア技術に関する社内専門家をリコメンドする社内知財情報を活用したシステム(SPACE)を提供、③コア技術、マーケティング機能、企画機能を結び付け、気づきの連鎖を起こさせることで、新事業創出の前段階であるイノベーション創発を促す社内コネクトイベント(IPL de Connect)を主導するなど、全社を牽引する取り組みも行っています。IPLや当社の知的財産情報の戦略的活用については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 <経営方針・経営戦略> v 経営基盤の強化 ■ 無形資産の最大活用」もご参照ください。 (3) CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の活動当社グループは、2008年に日本国内でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立し、2011年から米国を拠点として、ベンチャー企業への投資を通して最先端技術・ビジネスを獲得し、新事業の創出を行ってきました。現在は、米国のみならず、ドイツ、中国の拠点として加え、グローバルな活動の幅を広げています。具体的な活動としては、当社グループと親和性のあるベンチャー企業を発掘するための情報ネットワーク構築と関連部門への情報発信、投資・買収の交渉と関連実務の遂行、投資先企業のサポートを通じた事業化推進を行っています。3年間で7,500万ドルの投資枠を設けており、1社当たり500万ドルまでの投資に関しては本社での決裁を不要とするなど、スピーディな意思決定、手続きができるような仕組みを運用しています。これまで既存事業から少し離れたテクノロジー、住宅及びヘルスケア関連数十社へ投資を実施してきましたが、今後は新中期経営計画における重点分野(GG10)であるサステナビリティ領域への投資機会の探索を加え、当社グループの新事業創出活動に幅広く貢献していきます。 3 主な研究開発活動(1) 当社グループ全体(「全社」)・ アルカリ水電解システムの開発カーボンニュートラルを実現するための取り組みとして、再生エネルギーを活用したアルカリ水電解システムの開発を実施しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の事業の一環として、福島県双葉郡浪江町にて10MW級大型アルカリ水電解システムの開発に取り組んでおり、また、NEDOに創設された「グリーンイノベーション基金事業/再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造」に対し、2021~2030年度を事業期間と想定した「大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発及びグリーンケミカルプラントの実証」と題したプロジェクトを日揮ホールディング株式会社と共同提案して採択されるなど、NEDOや協力企業とともに、水素を用いたエネルギー貯蔵・利用の実用化に向けた技術開発事業の拡充・強化を行っています。現在では、水電解システムに掛かるトータルコストは、水素・燃料電池ロードマップ目標値より依然として高く、さらなるイノベーションが必要と認識しています。電解槽のコストダウン検討を継続して取り組み、EPC(設計・調達・建設)費用の割合も大きいため、技術力を有する企業との連携を進めていきます。 ・ CO2ケミストリー技術、CO2分離回収システムの開発当社グループでは、CO2を原料に使用するポリカーボネート(PC)樹脂製造プロセスを世界で初めて確立し、有毒な化合物(ホスゲン)を使用しない、CO2を原料に代替することによる地球環境にやさしい製法で、社会へ新たな価値を提供してきました。また、2018年に実証が完了したCO2を原料とするジフェニルカーボネート製造プロセスや、現在開発中であるCO2誘導体利用技術のイソシアネート製法など、更なる展開を進めていきます。加えて、ゼオライトを吸着材として用いたCO2分離回収システムの開発も進めています。 ・ バイオマス原料由来のポリアミド66の実用化検討当社は、協力会社との提携により、開発の初期段階から「バイオマス原料をベースにしたヘキサメチレンジアミン(HMD)」を優先的に利用し、ポリアミド66用原料としての可能性を評価・検討する権利を取得し、バイオマス由来原料を利用したポリアミド66(バイオポリアミド66)の検討を加速しています。この検討は、当社グループが目指す2050年までのカーボンニュートラル実現に寄与するものと考えており、当社自身のGHG排出量の削減や、お客様の製品のライフサイクル全体での環境負荷の低減への貢献を進めていきます。 ・ BLUE Plasticsプロジェクトの取り組みBLUE Plastics(Blockchain Loop to Unlock the value of the circular Economy、ブルー・プラスチックス)プロジェクトを発足し、サーキュラーエコノミーを実現するための取り組みとして、再生プラスチックのリサイクルチェーンの情報をブロックチェーン上で管理・可視化し、消費者が安心して再生プラスチックを利用できる環境の整備に取り組んでいます。本プロジェクトでの実証実験を通じて得られた知見をもとに、実証実験の規模、製品や素材の種類を拡大させ、再生プラスチックの利活用促進と本プロジェクトの早期の社会実装に向けて取り組んでいきます。 ・ XRP(セルロースナノファイバーコンポジット)の開発バイオ由来のセルロースナノファイバーと、エンジニアリング樹脂をナノコンポジット化することで、素材の高機能化と環境技術を両立し、サステナビリティに貢献する製品の実現を目指しています。当社グループでは、セルロースナノファイバーからセルロースナノファイバーコンポジットまでの一貫製造プロセスを保有していることの特長を活かし、今後は低コスト、低環境負荷、高機能を満たす製品開発及びマーケティング活動を通じた事業化の検討を進めていきます。 ・ エンジニアリング樹脂発泡体の開発自動車の車体軽量化に寄与する、構造部品向けのエンジニアリング樹脂発泡体の開発を進めています。ポリアミド発泡体では、高い発泡倍率と吸音性能を強みとして展開を加速し、各自動車メーカーや自動車部材メーカーとの関係を活かしたマーケティングを進めています。また、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、部品設計の提案まで手掛けることにより、提供価値の創出に努めています。 ・ 深紫外LED/深紫外レーザーの開発現在、殺菌、ウイルス不活性化に最も効果の高い、波長265nmを高出力で実現できる深紫外LEDの展開を実施していますが、更なる高出力化に向けた研究や、基板の大口径化や高品質化にも継続して取り組んでいます。また、名古屋大学との協力により、深紫外レーザーの開発を行っており、2019年にはUV-C帯の世界で最も短波長のレーザー発振に成功しました。今後は、ガス分析等センシングへの応用、局所殺菌、DNAや微粒子などの計測・解析といった、ヘルスケア・医療分野への応用の検討を進めていきます。 当社グループ全体(「全社」)に係る研究開発費の金額は、13,712百万円です。 (2) 「マテリアル」セグメント・ 基盤マテリアル事業アクリロニトリル事業では当社の強みである触媒のブラッシュアップに継続的に取り組んでいます。 ・ パフォーマンスプロダクツ事業繊維事業では、自動車内装材、アパレル、おむつの3つを重点マーケット領域と定め、人工皮革「ラムース®」、ナイロン66繊維「レオナ®」、キュプラ繊維「ベンベルグ®」、ポリウレタン弾性繊維「ロイカ®」及び各種不織布を軸に、独自性を活かし、かつ、サステナビリティに対応した付加価値の高い製品創出や生産プロセス革新のための研究開発を進めています。また、生活者の視点と健康で快適な暮らしへの貢献を意識し、新事業領域として、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などにも取り組んでいます。高機能ポリマー事業では、新たなポリマー設計による高剛性・易成形性のポリアミドや次世代低燃費タイヤ用変性S-SBRなどの開発が進捗しています。また、環境負荷低減に貢献するバイオマス由来原料化に加え、リサイクル原材料の積極的な活用を検討しています。さらに、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、機能樹脂事業において新規用途開拓と海外展開を加速していきます。 ・ スペシャルティソリューション事業電子材料事業では、最先端半導体・実装プロセス革新に向け、感光性ポリイミド「パイメル™」や感光性ドライフィルム「サンフォート™」など先進・独自の技術による高付加価値製品の展開を進めています。さらに電子部品事業との融合を図り、デジタル社会で求められるニーズに対し特徴ある部品、部材、ソリューションを展開していきます。セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工や塗工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー」「環境負荷軽減」「再生可能エネルギーの普及」に貢献する新規材料の開発を推進しています。電気自動車等の環境対応車、電子機器、電動ツールや蓄電システム用途に展開するリチウムイオン電池用高機能セパレータや鉛蓄電池用セパレータ等の環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。電子部品事業では、デジタル社会の進展に対応し、「音」「磁気」「ガス」のセンシング技術を主軸に、省エネ・健康・快適に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、センサ・ミックスドシグナルLSI・アルゴリズム技術等を融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型ビジネスへの展開にも積極的に取り組んでいきます。 当セグメントに係る研究開発費の金額は33,790百万円です。 (3) 「住宅」セグメント住宅事業では、「ロングライフの実現」を支えるコア技術について、重点的な研究開発を続けています。シェルター技術については、安全性(耐震・制震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。また、住ソフト技術については、都市部における二世帯同居やシニア等の住まい方についての研究を推進するとともに、住宅における生活エネルギー消費量削減と人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる、環境共生型住まいを実現する技術開発に注力しています。建材事業では、「良質空間を追求し、グッドマテリアルを通じて、未来を見据え新たな価値を創造する」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、杭基礎、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は3,688百万円です。 (4) 「ヘルスケア」セグメント医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、免疫領域(SLE、移植等)、整形外科領域(骨、疼痛等)及び救急領域を中心に、有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOL(Quality of Life)向上を図ることを目指して、積極的な研究開発を行っています。創薬技術や創薬シーズ、創薬テーマについては、世界中の企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力を挙げた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化治療、輸血製剤の白血球除去、製剤のウイルス安全性確保をはじめとしたバイオプロセス分野における技術をさらに発展させていきます。クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する技術開発を原点とし、新規領域にも研究開発を広げています。予後が悪く医療ニーズの高い、急性心筋梗塞・脳卒中・呼吸困難等の救急医療に対する新規治療法や技術の発展と提供を通じ、患者様と臨床医に役立つことを使命としています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は47,374百万円です。 (5) 「その他」エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。当セグメントに係る研究開発費の金額は129百万円です。
FY2021|6,076 文字
5 【研究開発活動】当社及び連結子会社(以下、「当社グループ」)の主たる研究開発活動の概要、成果及び研究開発費(総額89,745百万円)は以下のとおりです。 1 コーポレートの研究開発における基本方針(1) ミッションとあるべき姿コーポレートの研究開発のミッションを以下のとおり定め、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーを含むサステナビリティ及びヘルスケア領域で、当社グループの技術フロンティアとして、新事業創出に繋がる新しい価値を創造し続けることを、あるべき姿として目指していきます。(コーポレートの研究開発のミッション)コア技術の深化・獲得差別性・優位性の高い製品・サービス開発のためのコア技術の深化及び外部技術獲得・育成新価値創造潜在的な顧客・社会ニーズを捉えた未来視点での新しい価値の創造技術基盤機能の深化と進化当社グループを支える技術基盤機能の深化と進化 (2) 重点戦略分野・重点技術プラットフォーム重点戦略分野として、「脱炭素・水素」「資源循環」「ヘルスケア」の3分野を設定し、サステナビリティの実現に貢献するための研究開発テーマに資源配分を進めていきます。また、これらを含めた研究開発を進めるにあたっては、「R&D DX」を重点技術プラットフォームとして設定し、デジタル技術を駆使した研究開発のDXを推進します。具体的には、マテリアルズ・インフォマティクスやIPランドスケープ、デジタルプラットフォーム等を駆使し、技術戦略の策定やマーケットトレンドの先読み等を積極的に実施していきます。 2 基盤的な取り組み(1) ステージゲート制度によるテーマの取り組み研究開発テーマのポートフォリオ管理や適切な資源配分を目的として、ステージゲート制度を導入しています。探索、研究、開発、事業開発の各ステージの要件や、各研究開発テーマのステージ上の位置付けを明確にし、研究開発テーマを次のステージに移行させる判断にあたっては、技術視点のみならず、ビジネスモデル、事業戦略、特許戦略、環境安全対応等、ステージごとに必要な審査を強化しています。また、審査プロセスを通じて、適切なテーマの管理を可能にするだけではなく、研究開発部門の内外のメンバーから多面的な助言を得ることや、研究開発テーマの意義、既存事業との関係性の整理・明確化も実行することができています。 (2) 知的財産の活用当社グループにおける知的財産に関する重点活動として、①知的財産権の活用シナリオに基づいた事業に貢献する知財網の構築、②事業遂行を保証する知財クリアランス、③事業のグローバル化を支える知財活動の実践、④DXによる業務高度化への知的財産面からの貢献、の4つに取り組むとともに、そのベースとなる計画的な人財育成プランを進めています。DXによる事業高度化については、知財解析を経営・事業戦略の構築・見直しに活用する「IPランドスケープ」にも積極的に取り組んでいます。業界・マーケット情報を踏まえて、ビッグデータである特許や論文情報の知的財産情報を収集・加工して、俯瞰マップ等を経営・事業部へ提供しています。その後、市場における当社グループの事業のポジションや強み、発展性等についての議論を行い、最終的に、事業強化、新事業の創出、M&A等の経営・事業判断に繋げています。最近では、IPランドスケープをベースにした議論を通じて、旭化成の多様なコア技術、マーケティング機能、企画機能を結び付け、気づきの連鎖を起こさせることで、新事業の創出の前段階であるイノベーション創発を促す社内コネクトイベント(IPL de Connect) を主導するなど、全社を牽引する取り組みも行っています。このような知財活動が高く評価され、2021年4月には経済産業省特許庁が主催する、「知財功労賞」の経済産業大臣表彰を受賞しました。 (3) CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の活動当社グループは、2008年に日本国内でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立し、2011年から米国を拠点として、ベンチャー企業への投資を通して最先端技術・ビジネスを獲得し、新事業の創出を行っています。現在は、米国のみならず、ドイツ、中国の拠点において活動の幅を広げています。具体的には、当社グループと親和性のあるベンチャー企業を発掘するための情報ネットワーク構築と関連部門への情報発信、投資・買収の交渉と関連実務の遂行、投資先企業のサポートを通じた事業化推進を行っています。また、3年間で7,500万ドルの投資枠を設けており、1社当たり500万ドルまでの投資に関しては本社での決裁を不要とするなど、スピーディな意思決定、手続きができるような仕組みを運用しています。これまで数十社の企業へ投資を実施し、深紫外LEDを開発するCrystal IS, Inc.や、ガスセンサーモジュールを開発・製造・販売するSenseair ABの買収を実施してきました。今後も投資ポートフォリオの拡大とともに、CVC活動体制の最適化と拡大を図り、当社グループの新事業創出を継続的に行っていきます。 3 セグメント別の研究開発活動(1) 当社グループ全体(「全社」)・アルカリ水電解システムの開発カーボンニュートラルを実現するための取り組みとして、再生エネルギーを活用したアルカリ水電解システムの開発を実施しています。福島県双葉郡浪江町にて10MW級大型アルカリ水電解システムを立ち上げ、水素の供給運転を開始し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」において、NEDOや協力企業とともに、水素を用いたエネルギー貯蔵・利用の実用化に向けた技術開発事業の拡充・強化を行っています。現在では、水電解システムに掛かるトータルコストは、水素・燃料電池ロードマップ目標値より依然として高く、更なるイノベーションが必要と認識しています。電解槽のコストダウン検討を継続して取り組み、EPC(設計・調達・建設)費用の割合も大きいため、技術力を有する企業との連携を進めていきます。 ・CO2ケミストリー技術、CO2分離回収システムの開発当社グループでは、CO2を原料に使用するポリカーボネート(PC)樹脂製造プロセスを世界で初めて確立し、有毒な化合物(ホスゲン)を使用しない、CO2を原料に代替することによる地球環境にやさしい製法で、社会へ新たな価値を提供してきました。また、2018年に実証が完了したCO2を原料とするジフェニルカーボネート製造プロセスや、現在開発中であるCO2誘導体利用技術のイソシアネート製法など、更なる展開を進めていきます。加えて、ゼオライトを吸着材として用いたCO2分離回収システムの開発も進めています。 ・ポリエチレンリサイクルの取り組み使用済みのポリエチレンのリサイクルにおいて、大学や消費材メーカー、成型メーカー、リサイクル業者等サプライチェーンの関係者でリサイクル技術の開発に取り組んでいます。また、ブロックチェーンを活用し、サプライチェーンを管理・可視化するプラットフォーム構築に取り組んでいます。リサイクル製品を改ざん不可能なブロックチェーンで来歴管理することにより、循環性、透明性、トレーサビリティを提供することで、新たなビジネスモデルを確立し、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していきます。 ・XRP(セルロースナノファイバーコンポジット)の開発バイオ由来のセルロースナノファイバーと、エンジニアリング樹脂をナノコンポジット化することで、素材の高機能化と環境技術を両立し、サステナビリティに貢献する製品の実現を目指しています。当社グループでは、セルロースナノファイバーからセルロースナノファイバーコンポジットまでの一貫製造プロセスを保有していることの特長を活かし、今後は低コスト、低環境負荷、高機能を満たす製品開発及びマーケティング活動を通じた事業化の検討を進めていきます。 ・エンジニアリング樹脂発泡体の開発自動車の車体軽量化に寄与する、構造部品向けのエンジニアリング樹脂発泡体の開発を進めています。ポリアミド発泡体では、高い発泡倍率と吸音性能を強みとして展開を加速し、各自動車メーカーや自動車部材メーカーとの関係を活かしたマーケティングを進めています。また、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、部品設計の提案まで手掛けることにより、提供価値の創出に努めています。 ・深紫外LED/深紫外レーザーの開発現在、殺菌、ウイルス不活性化に最も効果の高い、波長265nmを高出力で実現できる深紫外LEDの展開を実施していますが、更なる高出力化に向けた研究や、基板の大口径化や高品質化にも継続して取り組んでいます。また、名古屋大学との協力により、深紫外レーザーの開発を行っており、2019年にはUV-C帯の世界で最も短波長のレーザー発振に成功しました。今後は、ガス分析等センシングへの応用、局所殺菌、DNAや微粒子などの計測・解析といった、ヘルスケア・医療分野への応用の検討を進めていきます。 当社グループ全体(「全社」)に係る研究開発費の金額は、14,185百万円です。 (2) 「マテリアル」セグメント・ 基盤マテリアル事業アクリロニトリル事業では当社の強みである触媒のブラッシュアップに継続的に取り組んでいます。 ・ パフォーマンスプロダクツ事業繊維事業では、グループ内外との連携により、研究開発機能を充実・高度化させるとともに、成果実現のスピードアップを図っています。主力製品である人工皮革「ラムース®」、キュプラ繊維「ベンベルグ®」、ナイロン66繊維「レオナ®」及び各種不織布において、独自性を活かした付加価値の高い製品の創出や、生産プロセスの革新を進めています。また、「健康で快適な生活」「環境との共生」に寄与する新事業領域の創出にも注力しており、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などに取り組んでいます。高機能ポリマー事業では、新たなポリマー設計による高剛性・易成形性のポリアミドや次世代低燃費タイヤ用変性S-SBRなどの開発が進捗しています。さらに、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、機能樹脂事業において新規用途開拓と海外展開を加速していきます。 ・ スペシャルティソリューション事業電子材料事業では、環境に配慮した食塩電解プロセス用のフッ素系イオン交換膜の開発を強化するとともに、電子材料関連では、次世代電子デバイスの要求に対応できる感光性樹脂材料の開発を加速しています。また、事業本部の広範な技術シナジーを活用した新事業創出の取組みも実施しています。セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー」「環境負荷軽減」に貢献する新規材料の開発を推進しています。電気自動車等の環境対応車や電子機器、蓄電システム用途に展開するリチウムイオン電池用高機能セパレータや鉛蓄電池用セパレータ等の環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。電子部品事業では、デジタル社会の進展に対応して、「磁気」「音」「可視外光」「高周波」を主軸に「エンドユーザーのベネフィット」に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、ミックスドシグナルLSI・化合物半導体・高機能パッケージ等を融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型製品への展開にも積極的に取り組んでいきます。 当セグメントに係る研究開発費の金額は32,848百万円です。 (3) 「住宅」セグメント住宅事業では、「ロングライフの実現」を支えるコア技術について、重点的な研究開発を続けています。シェルター技術については、安全性(耐震・制震・免震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。住ソフト技術については、二世帯同居等の住まい方についての研究を、評価・シミュレーション技術については、デジタル技術等の活用により直感的に理解可能な環境シミュレーションシステムの構築を、それぞれ進めています。また、住宅における生活エネルギー消費量削減とともに、人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる、環境共生型住まいを実現する技術開発に注力しています。建材事業では、「良質空間を追求し、グッドマテリアルを通じて、未来を見据え新たな価値を創造する」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、杭基礎、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は3,412百万円です。 (4) 「ヘルスケア」セグメント医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、整形外科領域(骨、疼痛等)、リウマチ関連領域及び救急領域を中心に、有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOL(Quality of Life)向上を図ることを目指して、積極的な研究開発を行っています。創薬技術や創薬シーズ、創薬テーマについては、世界中の企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力をあげた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化技術、白血球やウイルスの除去技術をさらに発展させていきます。クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する技術開発を原点とし、新規領域にも研究を広げています。急性心筋梗塞・脳卒中・敗血症・呼吸困難等、予後の悪い緊急疾病に対する新規治療法や技術が求められており、患者様と臨床医に役立つことを使命としています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は39,169百万円です。 (5) 「その他」エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。当セグメントに係る研究開発費の金額は131百万円です。
FY2020|3,947 文字
5 【研究開発活動】当社及び連結子会社(以下、「当社グループ」)の主たる研究開発活動の概要、成果及び研究開発費(総額90,966百万円)は以下のとおりです。 1 当社グループ全体に係る研究開発活動当社グループは、「収益性の高い付加価値型事業の集合体」を目指して、「コア技術の育成・獲得」「高付加価値化の追求」「マーケットチャネルの活用」の3軸で新事業開発及び研究開発を進めています。 (1) コア技術の育成・獲得培ってきたコア技術・ノウハウや事業プラットフォームの棚卸しを前期より行い、新事業創出を目的に強化領域を定めました。その領域の競争力を高めるべく、中核を担うプロフェッショナル人財を高度専門職に任命し、技術開発力の強化を図りました。当期は、事業基盤を担う各事業部門の固有領域や事務系職種に同制度を拡大展開し、それらの領域を牽引する人財も新たに高度専門職に任命し、新規事業・事業強化への参画・貢献を図っています。進展が著しいIoT、AI、ビッグデータなどのデジタル技術への対応については、前期から研究開発・知的財産領域、製造・生産技術領域に新たな組織を発足させ活用を推進しています。IoT、AI、ビッグデータ分析などを活用(デジタルトランスフォーメーション)し、国内外の生産拠点・関係会社の生産革新を強力に推進します。 (2) 高付加価値化の追求高付加価値化の追求に向けて、当期の主な取り組みは以下の通りです。・ 世界最小の高精度・低消費電力CO2センサの開発前期に買収したSenseair ABの光路設計の技術と、当社のコア技術である化合物半導体による赤外線小型受発光素子の技術とを組み合わせて実現するものです。この技術により、自動車の車室内、ビルや住居などの居住空間環境の空気質だけでなく、室外環境のモニタリングが可能になります。また、アルコール検知用途など、さまざまな分野への応用展開が期待されます。これらを通じて、環境エネルギー及び自動車などの安全運転支援に貢献できると考えています。・ ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州ヘルテン市に設置した水素製造の実証NRW.INVEST(ドイツNRW州経済振興公社)の協力により、ドイツのヘルテン市にある水素関連技術開発拠点「h2herten」と共同で、風力模擬電源を使ってアルカリ水からCO2フリーな「グリーン水素」を生成する実証プロジェクトを進めています。・ ALIGN-CCUSプロジェクト欧州における国際的な研究機関と企業とのパートナーシップで行う、CO2の回収・利用及び貯蔵に関する「ALIGN-CCUSプロジェクト」にも参加しています。当社グループのアルカリ水電解システムを活用し、製造した水素と火力発電所などから回収したCO2を反応させ、メタノールなどの燃料に変換しCO2の再利用につなげることで、世界の脱炭素化に貢献できると考えています。 (3) マーケットチャネルの活用これまで、コンセプトカー「AKXY™(アクシー)」を通して、お客様に対し、自動車の安全性や快適性の向上、環境への貢献に資する多様なキーアイテムを提案してきました。当期は、未来の車の快適空間を提案し、お客様とともにこれからの素材・部品・材料を開発していくことを目的として、車室空間のコンセプトモック「AKXY POD」を制作しました。「AKXY POD」は、当社グループが考える、搭乗者にとって快適・安全・安心な未来の車室空間をさまざまな繊維製品や樹脂製品、センサなどを用いて具現化したものです。実際に搭乗していただくことで、五感(触感・視覚・聴覚・嗅覚など)を通して未来の車室空間を体感・イメージしてもらい、インスピレーションを得てもらうことを目的としています。またそのデザインは、自動車と素材、搭乗者と自然とのつながりを表現し、当社ビジョンである「環境との共生」を訴求したものとしています。 当社グループ全体(「全社」)に係る研究開発費の金額は、15,369百万円です。 2 セグメント別の研究開発活動「マテリアル」セグメント・ 基盤マテリアル事業AN、MMA等事業では当社の強みである触媒のブラッシュアップに継続的に取り組んでいます。また、2018年に実証が完了した炭酸ガスを原料とするジフェニルカーボネート製造プロセスは、環境にやさしいノンホスゲン技術であり、実用化を検討中です。既存の工業用途に限らず、新規用途についてもビジネススキーム、時期を含めて検討中です。 ・ パフォーマンスプロダクツ事業繊維事業では、グループ内外との連携により、研究開発機能を充実・高度化させるとともに、成果実現のスピードアップを図っています。主力製品であるポリウレタン弾性繊維「ロイカ™」、キュプラ繊維「ベンベルグ™」、ナイロン66繊維「レオナ™」及び各種不織布において、独自性を活かした付加価値の高い製品の創出や、生産プロセスの革新を進めています。また、「健康で快適な生活」「環境との共生」に寄与する新事業領域の創出にも注力しており、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などに取り組んでいます。高機能ポリマー事業では、新たなポリマー設計による高剛性・易成形性のポリアミドや次世代低燃費タイヤ用変性S-SBRなどの開発が進捗しています。さらに、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、機能樹脂事業において新規用途開拓と海外展開を加速していきます。 ・ スペシャルティソリューション事業電子材料事業では、環境に配慮した食塩電解プロセス用のフッ素系イオン交換膜の開発を強化するとともに、電子材料関連では、次世代電子デバイスの要求に対応できる感光性樹脂材料の開発を加速しています。また、事業本部の広範な技術シナジーを活用した新事業創出の取組みも実施しています。セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー」「環境負荷軽減」に貢献する新規材料の開発を推進しています。民生・車載・電力貯蔵用途に展開するリチウムイオン電池用高機能セパレータや鉛蓄電池用セパレータなどの環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。電子部品事業では、IoT社会の進展に対応して、「磁気」「音」「可視外光」「高周波」を主軸に「エンドユーザーのベネフィット」に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、ミックスドシグナルLSI・化合物半導体・高機能パッケージなどを融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型製品への展開にも積極的に取り組んでいきます。 当セグメントに係る研究開発費の金額は36,636百万円です。 「住宅」セグメント住宅事業では、「ロングライフ住宅の実現」を支えるコア技術について重点的な研究開発を続けています。シェルター技術については、安全性(耐震・制震・免震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。住ソフト技術については、二世帯同居などの住まい方についての研究を、評価・シミュレーション技術については、ITなどの活用により直感的に理解可能な環境シミュレーションシステムの構築を、それぞれ進めています。また、住宅における生活エネルギー消費量削減とともに、人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる環境共生型住まいを実現する技術開発に注力しています。建材事業では、「絶えざる改善・革新で、お客様に安全、安心、快適を提供します」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、高機能基礎システム、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は3,628百万円です。 「ヘルスケア」セグメント医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、整形外科領域(骨、疼痛など)及び救急領域を中心に有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOLの向上を図ることを目指して積極的な研究開発を行っています。創薬技術や創薬シーズ、創薬テーマについては、世界中の企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力をあげた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化技術、白血球やウイルスの除去技術をさらに発展させていきます。クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する技術開発を原点とし、新規領域にも研究を広げています。急性心筋梗塞・脳卒中・敗血症・呼吸困難など、予後の悪い緊急疾病に対する新規治療法や技術が求められており、患者様と臨床医に役立つことを使命としています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は35,209百万円です。 「その他」エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。当セグメントに係る研究開発費の金額は124百万円です。
FY2019|3,681 文字
5 【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の主たる研究開発活動の概要、成果及び研究開発費(総額90,124百万円)は以下のとおりです。 「マテリアル」セグメント (繊維事業)繊維事業では、グループ内外との連携により、研究開発機能を充実・高度化させるとともに、成果実現のスピードアップを図っています。主力製品であるポリウレタン弾性繊維「ロイカ™」、キュプラ繊維「ベンベルグ™」、ナイロン66繊維「レオナ™」及び各種不織布において、独自性を活かした新たな価値商品の創出や、生産プロセスの革新を進めています。また、「健康で快適な生活」「環境との共生」に寄与する新事業領域の創出にも注力しており、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などに取り組んでいます。 (ケミカル事業)石油化学事業では、AN、MMA等当社の強みである触媒のブラッシュアップに継続的に取り組んでいます。また、水島製造所内に炭酸ガスを原料とするジフェニルカーボネートの実証プラントを建設し、2017年1月から実証運転を開始し、2018年度中には更なる運転安定性と操作性を確認しました。高機能ポリマー事業では、新たなポリマー設計による高剛性・易成形性のポリアミドや次世代省燃費タイヤ用変性SBRなどの開発が進捗しています。さらに、独自CAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、機能樹脂事業において新規用途開拓と海外展開を加速していきます。高機能マテリアルズ事業・消費財事業では、環境に配慮した食塩電解プロセス用のフッ素系イオン交換膜の開発を強化すると共に、電子材料関連では、次世代電子デバイスの要求に対応できる感光性樹脂材料の開発を加速しています。また、事業本部の広範な技術シナジーを活用した新事業創出の取組みも実施しています。 (エレクトロニクス事業)セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー」「環境負荷軽減」に貢献する新規材料の開発を推進しています。民生・車載・電力貯蔵用途に展開するリチウムイオン二次電池用高機能セパレータや鉛蓄電池用セパレータなどの環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。電子部品事業では、IoT社会の進展に対応して、「磁気」「音」「可視外光」「高周波」を主軸に「エンドユーザーのベネフィット」に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、ミックスドシグナルLSI・化合物半導体・高機能パッケージなどを融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型製品への展開にも積極的に取り組んでいきます。 当セグメントに係る研究開発費の金額は33,919百万円です。 「住宅」セグメント (住宅事業)住宅事業では、「ロングライフ住宅の実現」を支えるコア技術について重点的な研究開発を続けています。 シェルター技術については、安全性(耐震・制震・免震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。住ソフト技術については、二世帯同居などの住まい方についての研究を、評価・シミュレーション技術については、ITなどの活用により直感的に理解可能な環境シミュレーションシステムの構築を、それぞれ進めています。また、住宅における生活エネルギー消費量削減とともに、人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる環境共生的住まいを実現する技術開発に注力しています。 (建材事業)建材事業では、「絶えざる改善・革新で、お客様に安全、安心、快適を提供します」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、高機能基礎システム、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は3,814百万円です。 「ヘルスケア」セグメント (医薬事業)医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、整形外科領域(骨、疼痛など)及び救急領域を中心に有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOLの向上を図ることを目指して積極的な研究開発を行っています。 創薬技術や創薬シーズ、創薬テーマについては、世界中の企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。 (医療事業)医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力をあげた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化技術、白血球やウイルスの除去技術をさらに発展させていきます。 (クリティカルケア事業)クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する技術開発を原点とし、新規領域にも研究を広げています。急性心筋梗塞・脳卒中・敗血症・呼吸困難など、予後の悪い数多い緊急疾病に対する新規治療法や技術が求められている昨今、全ての事業にわたり、患者と臨床医に役立つことを共通の使命としています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は37,183百万円です。 「その他」エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。当セグメントに係る研究開発費の金額は141百万円です。 当社グループは、「収益性の高い付加価値型事業の集合体」を目指して、「コア技術の育成・獲得」「高付加価値化の追求」「マーケットチャネルの活用」の3軸で新事業開発及び研究開発を進めています。「コア技術の育成・獲得」については、培ってきたコア技術・ノウハウや事業プラットフォームの棚卸しを前期より行い、新事業創出を目的に強化領域を定めました。その領域の競争力を高めるべく、中核を担うプロフェッショナル人財を高度専門職に任命し技術開発力の強化を図りました。当期は、事業基盤を担う各事業部門の固有領域や事務系職種に同制度を拡大展開し、それらの領域を牽引する人財も新たに高度専門職に任命し、新規事業・事業強化への参画・貢献を図っています。進展が著しいIoT、AI、ビッグデータなどのデジタル技術への対応については、前期から研究開発・知的財産領域、製造・生産技術領域に新たな組織を発足させ活用を推進しています。当期はその活動を強化・スピードアップすべく、デジタルイノベーションセンターを立ち上げました。IoT、AI、ビッグデータ分析などを活用(デジタルトランスフォーメーション)し、国内外の生産拠点・関係会社の生産革新を強力に推進します。「高付加価値化の追求」の具体例としては、「液体を高度に濃縮できる新規の膜システムの開発」や「世界最小の高精度・低消費電力CO2センサの開発」などが挙げられます。「液体を高度に濃縮できる新規の膜システムの開発」は、当社のコア技術であり、多岐にわたる事業を生み出してきた膜・セパレーション技術を活かしたものです。加熱や加圧プロセスが不要となる新規濃縮技術を実現し、熱に弱い有効成分などの品質を保持したまま高度濃縮する技術が求められている食品・医薬用途などでの早期実用化を目指します。「世界最小の高精度・低消費電力CO2センサの開発」は、当期に買収したSenseair ABの光路設計の技術と、当社のコア技術である化合物半導体による赤外線小型受発光素子の技術とを組み合わせて実現するものです。この技術により、自動車の車室内、ビルや住居などの居住空間環境の空気質だけでなく、室外環境のモニタリングが可能になります。また、アルコール検知用途など、さまざまな分野への応用展開が期待されます。これらを通じて、環境エネルギー及び自動車などの安全運転支援に貢献できると考えています。「マーケットチャネルの活用」の取り組みについては、コンセプトカー「AKXY™(アクシー)」を通して、お客様に対し、自動車の安全性や快適性の向上、環境への貢献に資する多様なキーアイテムを提案しています。当期は、当社技術の「進化」をテーマに、車体のさらなる軽量化・低燃費化や安全性・快適性の一層の向上を実現する構造材料やセンシング技術など、8製品を新たに「AKXY™」に搭載し、より多くのニーズに対してご提案ができるようリニューアルしました。このコンセプトは欧州で高く評価され、「ドイツデザインアワードSpecial Mention Category 2019」を受賞しました。全社に係る研究開発費の金額は、15,067百万円です。
FY2018|3,986 文字
5 【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の主たる研究開発活動の概要、成果及び研究開発費(総額85,695百万円)は以下のとおりです。なお、第1四半期連結会計期間より、組織変更に伴い、従来「その他」に含めていた電気供給事業を「マテリアル」セグメントに含めて表示しています。 「マテリアル」セグメント (繊維事業)繊維事業では、グループ内外との連携により、研究開発機能を充実・高度化させるとともに、成果実現のスピードアップを図っています。主力製品であるポリウレタン弾性繊維「ロイカ™」、キュプラ繊維「ベンベルグ™」、ナイロン66繊維「レオナ™」及び各種不織布において、独自性を活かした新たな価値商品の創出や、生産プロセスの革新を進めています。また、「健康で快適な生活」「環境との共生」に寄与する新事業領域の創出にも注力しており、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などに取り組んでいます。 (ケミカル事業)石油化学事業では、AN、MMA等当社の強みである触媒のブラッシュアップに継続的に取り組んでいます。また、水島製造所内に炭酸ガスを原料とするジフェニルカーボネートの実証プラントが完成し、2017年1月から実証運転を開始しました。高機能ポリマー事業では、新たなポリマー設計による高剛性・易成形性のポリアミドや次世代省燃費タイヤ用変性SBRなどの開発が進捗しています。さらに、独自CAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、機能樹脂事業において新規用途開拓と海外展開を加速していきます。高機能マテリアルズ事業・消費財事業では、環境に配慮した食塩電解プロセス用のフッ素系イオン交換膜の開発を強化すると共に、電子材料関連では、次世代電子デバイスの要求に対応できる感光性樹脂材料の開発を加速しています。また、事業本部の広範な技術シナジーを活用した新事業創出の取組みも実施しています。 (エレクトロニクス事業) セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー」「環境負荷軽減」に貢献する新規材料の開発を推進しています。民生・車載・電力貯蔵用途に展開するリチウムイオン二次電池用高機能セパレータや鉛蓄電池用セパレータなどの環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。電子部品事業では、IoT社会の進展に対応して、「磁気」「音」「可視外光」を主軸に「エンドユーザーのベネフィット」に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、ミックスドシグナルLSI・化合物半導体・高機能パッケージなどを融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型製品への展開にも積極的に取り組んでいきます。 当セグメントに係る研究開発費の金額は32,156百万円です。 「住宅」セグメント (住宅事業)住宅事業では、「ロングライフ住宅の実現」を支えるコア技術について重点的な研究開発を続けています。 シェルター技術については、安全性(耐震・制震・免震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。住ソフト技術については、二世帯同居などの住まい方についての研究を、評価・シミュレーション技術については、ITなどの活用により直感的に理解可能な環境シミュレーションシステムの構築を、それぞれ進めています。また、住宅における生活エネルギー消費量削減とともに、人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる環境共生的住まいを実現する技術開発に注力しています。 (建材事業)建材事業では、「絶えざる改善・革新で、お客様に安全、安心、快適を提供します」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、高機能基礎システム、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は3,748百万円です。 「ヘルスケア」セグメント (医薬事業)医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、整形外科領域(骨、疼痛など)及び救急領域を中心に有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOLの向上を図ることを目指して積極的な研究開発を行っています。 創薬技術については、世界中の優れた技術を持つ企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。 (医療事業)医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力をあげた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化技術、白血球やウイルスの除去技術をさらに発展させていきます。 (クリティカルケア事業)クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する技術開発を原点とし、新規領域にも研究を広げています。急性心筋梗塞・脳卒中・敗血症・呼吸困難など、予後の悪い数多い緊急疾病に対する新規治療法や技術が求められている昨今、全ての事業にわたり、患者と臨床医に役立つことを共通の使命としています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は34,301百万円です。 「その他」エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。当セグメントに係る研究開発費の金額は151百万円です。 当社グループでは、2016年4月の事業持株会社制への移行に伴い、研究開発組織の再編を行うことで、社内融合を促進させる体制としました。また、中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」をスタートさせ、多彩な技術と多角的な事業を展開している当社グループの強みを結合し、「コア技術の育成・獲得」「高付加価値化の追求」「マーケットチャネルの活用」の3軸の視点で研究開発を進め、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)や共同研究など外部との連携を深めながら新事業の創出を目指しています。当期の「コア技術の育成・獲得」に向けた取組みについては、当社グループの競争力の源泉である、培ってきたコア技術・ノウハウや事業プラットフォームの棚卸しを行い、新事業創出を目的に強化領域を定め、その領域を牽引するプロフェッショナル人財を体系的に育成・確保するために、高度専門職制度の構造的改定を実施しました。また、進展が著しいIoT、AI、ビッグデータの活用は事業活動に大きなインパクトをもたらすとの視点から、2017年4月、研究・開発本部内に、デジタル技術を材料開発に活かすマテリアルズ・インフォマティクス(以下、「MI」)を育成・推進する「MI推進部」を、また、生産技術本部内に、製造力強化・生産革新のためにIT技術を製造現場に展開する「IoT推進部」を新たに発足しました。MIの応用については、樹脂コンパウンドの開発や触媒開発などにすでに展開しており、開発のスピードアップなどで成果が得られつつあります。今後もデジタル技術を当社グループの新たな基盤技術として育成していきます。「高付加価値化の追求」における環境に貢献する新事業創出への取組みの具体例としては、「アルカリ水電解水素製造システムの開発」「CO2 ケミストリーによる基礎化学品の製造」「高出力殺菌用深紫外LED(以下、「UVC-LED」)」などが挙げられます。1点目の再生可能エネルギーから高効率に水素を製造する「アルカリ水電解水素製造システムの開発」においては、2017年4月に、新たに推進組織「クリーンエネルギープロジェクト」を発足しました。神奈川県横浜市で商用機仕様の大型電解装置による実証を行い、2018年4月からは、環境問題への取組みが活発なドイツにて実証テストを開始するなど、欧州のマーケティング活動を今後強化します。2点目の「CO2 ケミストリーによる基礎化学品の製造」においては、当社独自の取組みとして、CO2を原料とするジアルキルカーボネートを経由してポリカーボネートの原料であるジフェニルカーボネートを製造するプロセスの実証プラントで、2016年5月に1,000時間以上の連続運転を達成し、運転安定性と操作性を確認しました。本製法は従来の当社の非ホスゲン法をさらに進化させたものであり、エチレンオキサイドを原料としないため、エチレンセンターの所在に依存せず製造場所の立地制約が緩和され、新たなCO2ケミストリーとして期待されています。3点目の「UVC-LED」においては、新しい殺菌用製品として、水殺菌に適した「Klaran™」のWDシリーズを2018年1月に販売開始しました。今後もより性能を高めた製品を開発し、「UVC-LED」による安全な水の提供、衛生環境の実現など、独自の新市場創出へ向けて邁進していきます。「マーケットチャネルの活用」の取組みについては、グループ総合力でマーケット開拓を進めるべく、欧州における自動車関連ビジネスの拡大に向けて、旭化成ヨーロッパの機能の拡大を推進中であり、さらには、新事業開発の加速及び事業の拡大を図るため、2017年10月に欧州R&Dセンターをドイツ・ドルマーゲン市に開設しました。全社に係る研究開発費の金額は、15,339百万円です。
FY2017|3,676 文字
6 【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の主たる研究開発活動の概要、成果及び研究開発費(総額79,566百万円)は以下のとおりです。なお、第1四半期連結会計期間より、報告セグメントを従来の「ケミカル・繊維」「住宅・建材」「エレクトロニクス」「ヘルスケア」の4報告セグメント及び「その他」の区分から、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3報告セグメント及び「その他」の区分に変更しています。 「マテリアル」セグメント (繊維事業)繊維事業では、グループ内外との連携により、研究開発機能を充実・高度化させるとともに、成果実現のスピードアップを図っています。主力製品であるポリウレタン弾性繊維「ロイカ™」、キュプラ繊維「ベンベルグ™」、ナイロン66繊維「レオナ™」及び各種不織布において、独自性を活かした新たな価値商品の創出や、生産プロセスの革新を進めています。また、「健康で快適な生活」「環境との共生」に寄与する新事業領域の創出にも注力しており、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などに取り組んでいます。 (ケミカル事業)石油化学事業では、石化原料の多様化に向けた新技術として、エタンなどさまざまなエチレン性原料やバイオエタノールを原料にプロピレンを高効率的に製造するE-FLEXプロセス及びブテンからブタジエンを製造するBB-FLEXプロセスの実用化に向けた検討を行っています。また、水島製造所内に炭酸ガスを原料とするジフェニルカーボネートの実証プラントが完成し、本年1月から実証運転を開始しました。 高機能ポリマー事業では、新たなポリマー設計による高剛性・易成形性のポリアミドや次世代省燃費タイヤ用変性SBRなどの開発が進捗しています。さらに、独自CAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、機能樹脂事業において新規用途開拓と海外展開を加速していきます。 高機能マテリアルズ事業・消費財事業では、環境・エネルギー関連として、太陽電池や自動車などに使用される高機能コーティング剤の開発を進めています。さらに、再生可能エネルギーや省エネ関連素材の開発も進捗しており、社内外の技術を融合して開発を加速し、新製品・新事業の創出と立上げを推進していきます。 (エレクトロニクス事業)セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工、表面微細加工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー」「環境負荷軽減」「健康で快適な暮らし」に貢献する新規材料の開発を推進しています。民生・車載用途に展開するリチウムイオン二次電池用高機能セパレータや鉛蓄電池用セパレータなどの環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。電子部品事業では、IoT社会の進展に対応して、「磁気」「音」「可視外光」を主軸に「エンドユーザーのベネフィット」に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、ミクスドシグナルLSI・化合物半導体・高機能パッケージなどを融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型製品への展開にも積極的に取り組んでいきます。 当セグメントに係る研究開発費の金額は31,527百万円です。 「住宅」セグメント (住宅事業)住宅事業では、「ロングライフ住宅の実現」を支えるコア技術について重点的な研究開発を続けています。 シェルター技術については、安全性(耐震・制震・免震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。住ソフト技術については、二世帯同居などの住まい方についての研究を、評価・シミュレーション技術については、ITなどの活用により直感的に理解可能な環境シミュレーションシステムの構築を、それぞれ進めています。また、住宅における生活エネルギー消費量削減とともに、人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる環境共生的住まいを実現する技術開発に注力しています。 (建材事業)建材事業では、「絶えざる改善・革新で、お客様に安全、安心、快適を提供します」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、高機能基礎システム、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。また、断熱分野においては人びとの健康・快適に貢献する温熱空間の実現を目指しており、本年1月に茨城県猿島郡に優れた温熱環境を体験・学習できる「快適空間ラボラトリー™」をオープンしました。 当セグメントに係る研究開発費の金額は3,364百万円です。 「ヘルスケア」セグメント (医薬事業)医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、整形外科領域(骨、疼痛など)及び救急領域を中心に有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOLの向上を図ることを目指して積極的な研究開発を行っています。 創薬技術については、世界中の優れた技術を持つ企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。 (医療事業)医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力をあげた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化技術、白血球やウイルスの除去技術をさらに発展させていきます。 (クリティカルケア事業)クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する技術開発を原点とし、新規領域にも研究を広げています。急性心筋梗塞・脳卒中・敗血症・呼吸困難など、予後の悪い数多い緊急疾病に対する新規治療法や技術が求められている昨今、私たちは全ての事業にわたり、患者と臨床医に役立つことを共通の使命としています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は31,106百万円です。 「その他」エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。当セグメントに係る研究開発費の金額は62百万円です。 当社グループでは、昨年4月の事業持株会社制への移行に伴い、研究開発組織の再編を行うことで、社内融合を促進させる体制としました。また、中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」をスタートさせ、多彩な技術と多角的な事業を展開している当社グループの強みを結合し、「コア技術の育成・獲得」「高付加価値化の追求」「マーケットチャネルの活用」の3軸の視点で研究開発を進め、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)や共同研究など外部との連携を深めながら新事業の創出を目指しています。当期においては、「環境・エネルギー」「自動車」「ヘルスケア」の3分野を重点領域に定め、積極的に経営資源を投入し、新規事業の開発を進めました。「環境・エネルギー」分野では、二酸化炭素を原料とする非ホスゲン法ポリカーボネート法の新製法として、ジアルキルカーボネートを経由してポリカーボネートの原料であるジフェニルカーボネートを製造するプロセスの実証プラントが岡山県倉敷市で稼働しました。本法は、従来の当社非ホスゲン法と異なりエチレンオキシドを原料としないため、エチレンセンターの所在に依存せず製造場所の立地制約が緩和され、新たなCO2化学として期待されています。また、再生可能エネルギーから低コストで水素を製造するアルカリ水電解プロセスの実証試験においては、平成27年11月にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受けて神奈川県横浜市に設置した商用機仕様の大型電解装置で、8,000時間を超えて安定的に稼働することが確認できました。「自動車」分野では、ナイロン66繊維とガラス繊維を混繊して原反とし、ハイブリット成型することで、設計自由度が高く、比強度に優れるコンポジットテキスタイルや、セルロースナノファイバー不織布シートといった高機能複合材の開発を進め、自動車材料の軽量化に対応した金属代替材料の事業化を目指しています。「ヘルスケア」分野では、社外の先進的な技術や革新的なビジネスモデルを積極的に活用するため、米国マサチューセッツ州にも新たにCVCの拠点を設け、ベンチャー企業に対し、従来より出資枠を引き上げて投資活動を行いました。また、水・空気・表面殺菌に使用可能な高出力殺菌用深紫外LED「Klaran™」の販売を昨年5月から開始しましたが、今後は医療用途への展開も視野に入れています。全社に係る研究開発費の金額は13,507百万円です。
FY2016|3,818 文字
6 【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の主たる研究開発活動の概要、成果及び研究開発費(総額81,118百万円)は以下のとおりです。 「ケミカル・繊維」セグメント (ケミカル事業)ケミカル事業では、これまで蓄積してきたコア技術の深耕と新たな技術獲得を通じ「環境・資源・エネルギー」にフォーカスした研究開発を推進することで社会に新たな価値を提供していきます。 石油化学系事業では、石化原料の多様化に向けた新技術として、エタンなどさまざまなエチレン性原料やバイオエタノールを原料にプロピレンを高効率的に製造するE-FLEXプロセス及びブテンからブタジエンを製造するBB-FLEXプロセスの実証を進めており、実用化に向けた検討を行っています。また、水島製造所内に炭酸ガスを原料とするジフェニルカーボネートの実証プラント建設に着工しました。 高機能ポリマー系事業では、新たなポリマー設計による超高耐熱・高剛性・易成形性のポリアミドや次世代省燃費タイヤ用変性SBRなどの開発が進捗しています。また、完全光学等方性を有する新規光学特性樹脂の生産設備を当社川崎製造所千葉工場内に新設し、2015年度に稼働しました。さらに、独自CAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、機能樹脂事業において新規事業開拓と海外展開を加速していきます。 高付加価値系事業では、膜・水処理関連として、多孔質構造を有した世界最速のリン吸着剤及びリン吸着・回収システムの大型下水処理施設での実証試験が終了し、日本国内だけでなく、水環境悪化や水不足が進行している米国や中国・アジアへの市場開拓を進めています。また、環境・エネルギー関連として、太陽電池や自動車などに使用される高機能コーティング剤の開発を進めています。さらに、再生可能エネルギーや省エネ関連素材の開発も進捗しており、社内外の技術を融合して開発を加速し、新製品・新事業の創出と立上げを推進していきます。 (繊維事業)繊維事業では、グループ内外との連携により、研究開発機能を充実・高度化させるとともに、成果実現のスピードアップを図っています。主力製品であるポリウレタン弾性繊維「ロイカ™」、再生セルロース繊維「ベンベルグ™」、ナイロン66繊維「レオナ™」及び各種不織布において、独自性を活かした新たな価値商品の創出や、生産プロセスの革新を進めています。また、「健康で快適な生活」「環境との共生」に寄与する新事業領域の創出にも注力しており、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などに取り組んでいます。 当セグメントに係る研究開発費の金額は19,410百万円です。 「住宅・建材」セグメント (住宅事業)住宅事業では、「ロングライフ住宅の実現」を支えるコア技術について重点的な研究開発を続けています。 シェルター技術については、安全性(耐震・制震・免震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。住ソフト技術については、二世帯同居などの住まい方についての研究を、評価・シミュレーション技術については、ITなどの活用により直感的に理解可能な環境シミュレーションシステムの構築を、それぞれ進めています。また、住宅における生活エネルギー消費量削減とともに、人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる環境共生的住まいを実現する技術開発に注力しています。 (建材事業)建材事業では、「絶えざる改善・革新で、お客様に安全、安心、快適を提供します」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、高機能基礎システム、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。また、ALC外装リニューアル事業への展開、断熱リフォーム向け製品の開発など、既存事業の周辺領域を取り込んだ新製品及びサービスの開発により、新たなソリューションビジネスも積極的に展開していきます。 当セグメントに係る研究開発費の金額は3,403百万円です。 「エレクトロニクス」セグメント (電子部品系事業)電子部品系事業では、技術革新の速い事業環境において、豊富な設計資産と有機的なエンジニア組織体制の構築により、ユニークかつタイムリーなデバイスの提供を図っています。高感度磁気センサの開発を通して蓄積してきた化合物半導体プロセス技術及びミクスドシグナルLSI技術を基盤とする高機能電子部品の開発を積極的に進めていきます。 (電子材料系事業)電子材料系事業では、高分子設計・合成や、製膜加工、表面微細加工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー」「環境負荷軽減」「健康で快適な暮らし」に貢献する新規材料の開発を推進しています。民生・車載用途に展開する高機能リチウムイオン二次電池用セパレータなどの環境・エネルギー関連素材や、半導体・プリント配線基板の微細配線化といった先端技術トレンドを支える新規材料の展開に注力していきます。 当セグメントに係る研究開発費の金額は17,805百万円です。 「ヘルスケア」セグメント (医薬事業)医薬事業では、成熟化・高齢化社会において今後一層高まる「健康で快適な生活」へのニーズに応えるため、整形外科領域、中でもロコモティブシンドローム(運動器症候群)領域を中心に、「未だ有効な治療方法がない医療ニーズ(アンメットメディカルニーズ)」の解決に向けた積極的な研究開発を行っています。研究開発対象の新規開拓に加え、自社技術の絶えざる革新と、世界の優れた技術とのコラボレーションを積極的に推進します。 (医療事業)医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力をあげた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化技術、白血球やウイルスの除去技術をさらに発展させていきます。 (クリティカルケア事業)クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する技術開発を原点とし、新規領域にも研究を広げています。急性心筋梗塞・脳卒中・敗血症・呼吸困難など、予後の悪い数多い緊急疾病に対する新規治療法や技術が求められている昨今、私たちは全ての事業にわたり、患者と臨床医に役立つことを共通の使命としています。 当セグメントに係る研究開発費の金額は32,318百万円です。 「その他」エンジニアリング分野では、次世代の生産技術や設備保全関連の検査技術などの研究開発に取り組んでいます。 当セグメントに係る研究開発費の金額は60百万円です。 持株会社では、成長戦略の重点分野と定めた「環境・エネルギー」「住・くらし」「ヘルスケア」関連分野において、積極的に経営資源を投入し、新規事業の開発を進めました。「環境・エネルギー」関連分野では、深紫外発光ダイオード(UVC-LED)の用途開発が進み、分析計測機器用途の「Optan™」に加え、さらなる市場のニーズに対応する「Optan™ SMD」の販売を昨年8月から開始しました。今後は殺菌用途向けの開発を進め、早期の製品化を目指すとともに、水や空気、食品、医療など幅広い分野の新市場を開拓していきます。また、「クリーンな環境エネルギー社会」の実現を目指し、水素製造システムの開発にも取り組んでいます。本開発は、世界トップレベルのイオン交換膜法食塩電解プロセス技術を活かした、高効率なアルカリ水電解プロセスの開発であり、現在、他の企業と共同で実用に向けた実証試験を行っています。「住・くらし」関連分野では、静岡県富士市に建設した「ヘーベルハウス™」の実証棟「HH2015」において、グループ内外の技術や製品を用いて「医療関連事業」及び「シニア関連事業」の検証を完了しました。「医療関連事業」では、在宅透析の検証に加え、深紫外発光ダイオード(UVC-LED)による空気や水の浄化など、シナジー効果を高めた事業展開の検証を実施し、「シニア関連事業」では、高齢者のくらしの実態の把握とともに、シニア向け集合住宅の実証試験を行い、自立した高齢者が快適に暮らすための研究を行いました。現在、「シニア関連事業」の検証の場を現場に移し、自立から介護まで切れ目のない最適な住まいとサービスの提供について具体的な検討を開始しています。「ヘルスケア」関連分野では、新規分野の開拓活動に加えて、拡大するクリティカルケア事業と既存の医薬・医療事業とのシナジーを追及する為に、グループ内に設置された「ヘルスケア協議会」においてグローバル事業基盤の強化に向けた議論を進めています。今後は、事業持株会社制への移行に伴い、研究開発組織の再編を行うことで社内の融合を生む体制とします。「コア技術の育成・獲得」「高付加価値化の追求」「マーケットチャネルの活用」の3軸の視点で研究開発に取り組み、新事業の創出につなげていきます。全社に係る研究開発費の金額は8,123百万円です。