研究開発活動(本文)
FY2025|8,608 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度は、レジリエンス、DX・GXの推進に着目した技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。なお、当連結会計年度における研究開発費は、33億円であった。また、当連結会計年度における主要な研究開発内容及び成果は次のとおりである。 (国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)1.土木分野(1) BIM/CIMへの取組み 国土交通省は2023年度に開始した「発注工事の原則BIM/CIM化」に加え、2024年4月に、より一層の省力化を目指した「i-Construction2.0」を掲げ、ICTの更なる活用を目指しており、BIM/CIMはデジタルデータの活用基盤として更に重要度を増している。当社は2016年度より港湾分野として初の全面的なBIM/CIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にBIM/CIMに取り組んでおり、当連結会計年度も土木分野で100件超の案件に取り組んだ。 当連結会計年度においては、BIM/CIMモデルを情報の基盤とした自社開発クラウド「施工情報共有システム(i-PentaCOL/3D)」について、過年度より導入してきたトンネル工事以外にも、造成工事のような土工へも適用を広げた。また、社内で蓄積したノウハウを活かして、土木職員のBIM/CIMをはじめとしたデジタル活用スキルの向上を目的とした集合研修を行うことにより、高度な施工検討、効率的な数量算出ができる若手職員の数を増やすことができた。 このほか、3Dモデルをベースとした業務により、社内業務だけでなく関連する協力会社の作業時間短縮や、VR・ARコンテンツ開発能力の向上などの成果も残すことができた。当社はこれからも、生産性・安全性の向上と現場職員の負担軽減を両立できる、BIM/CIM活用を進めていく予定である。 (2) 3D-LiDARを用いた計測管理手法の効率化 当社ではレーザー光を用いて簡便な3次元計測を可能にする3D-LiDAR※1を活用し、計測作業の省力化や新たな観測手法の開発に取り組んでいる。 防波堤築造工事における石材数量検収作業では、SLAM技術※2を活用した3次元測量により、約5人で20分程度を必要とする従来計測と比較して作業時間を30%、作業人員を20%削減することができた。捨石投入位置管理では、職員が手動で記録していた捨石投入位置を自動検出することで、職員1名あたり作業時間を4時間削減することができた。 また、東京大学と共同で応募した国土交通省の「革新的河川技術プロジェクト」に採択され、3D-LiDARによるリアルタイム波浪うちあげ高観測システムを開発した。従来、高波や高潮による陸地の浸水はビデオカメラ等による目視で確認していたが、夜間の視認性等に課題があった。本システムは3D-LiDARを活用することで昼夜問わず安定した計測を可能にした。加えて、目視観測では困難な定量的なうちあげ高の計測や遡上波と地形の同時計測を可能にし、海岸管理の高度化への貢献が期待できる。 当社はこれからも生産性向上や現場職員の負荷軽減に寄与できるように、3D-LiDARを用いた計測管理手法の高度化に取り組む予定である。※1 3D-LiDAR:レーザー光を使用してターゲットの表面までの距離を3次元的に測定するマッピング技術※2 SLAM技術:移動体が今どこにいるのかを推測する「自己位置推定」と、その周辺がどういう状況にあるのかを把握する「環境地図作成」を同時に行う技術の総称 (3) 複合構造を用いた臨港道路橋脚「シーコーム工法」の開発 近年、鉄筋コンクリート橋脚に要求される耐震性能の高まりにより、鉄筋は過密配筋となり、コンクリートの充填性や作業効率の低下が懸念されている。また、鋼管矢板井筒基礎により構築される臨港道路橋脚では、頂版部の配筋量が多く、施工時には狭隘部への鉄筋架台の設置が必要となるため、安全性及び作業効率の観点から合理化された施工が望まれている。 そこで当社は、臨港道路橋脚の作業効率や安全性の改善を目的に、太径鉄筋の代替としてスタッドを有するI形鋼材を用いた橋脚及び頂版の構築工法として「シーコーム工法」を開発した。シーコーム工法は、従来のRC橋脚ならびにRC頂版に代わる新しい合理化施工技術である。本工法に使用するI形鋼材やスタッドはともに広く普及している材料であることから、既存の橋脚合理化施工技術と比較して、納期の短縮やコストの低減が可能である。シーコーム工法の適用による工期短縮や作業人員削減の効果について、鋼管矢板井筒基礎(幅30m×奥行き12m)と橋脚(幅15m×奥行き5m×高さ25m)からなる臨港道路橋脚を対象に試算したところ、頂版から橋脚構築まで工程を約50%削減、作業人員を約50%削減できることを確認した。今後、本工法を臨港道路橋脚及び陸上橋脚に適用して、建設現場の更なる生産性の向上に取り組んでいく予定である。 (4) 山岳トンネルにおける防水シート自動溶着システムの開発 一般に、山岳トンネルの防水工においては、トンネル壁面(支保工面)全面に展張した幅約2m/枚の防水シート同士を3人の作業員が手作業で溶着して接合するが、狭隘な足場台車上での高所作業となり、トンネル天端付近は上向きの不安定な姿勢での作業となる。また、防水シートは凹凸のある吹付けコンクリート面にたるみをもたせて展張するため、溶着ラインは3次元的に不規則に波をうった状態となる。このため、確実に溶着するためには熟練の技能工が必要となる。 そこで当社は、作業員の技量によらず1人で安全に防水シートを溶着・接合できる「防水シート自動溶着システム」を開発し、高速道路トンネル新設工事に導入した。本システムは、一般に使用されている足場台車に取り付けたガイドレールを自走しながら、バランサーで3次元的な溶着ラインに沿って溶着するシステムである。作業員が足場台車に乗ることなく、複雑で不規則な溶着部のたわみやよれに追従しながら、自動で溶着できることを確認し、国土交通省が運用する新技術情報提供システム(NETIS)に登録した。 当連結会計年度は、本システムを広島県発注の道路トンネル新設工事にも適用した。その際、九州大学開発の熱画像リモートセンシング技術を用いた品質管理手法も導入して、溶着部の品質管理の自動化とあわせて、従来の抜取り検査から全数検査への対応が可能となることを確認した。今後も、センシング技術、IoT技術を活用して山岳トンネル工事における安全性と生産性の向上に資する技術開発に取り組んでいく予定である。 (5) 海外大型プロジェクトへの国内技術導入 海外の建設プロジェクトでは、国内で経験のない施工条件に対応しなければならない場合が多く、また設計や施工計画・管理に必要な気海象情報が不足することが多い。バングラデシュのマタバリプロジェクトの建設場所は波浪条件の厳しい外洋に面しており、潮流が速く海域は著しい濁りが発生する。このような環境下にあるため、これまで現地に波高・流速計、濁度計などを設置して時系列データを取得するとともに、定期的な深浅測量や採水調査などを実施し、海底地形変化や海中の濁度に関する総合的なモニタリング調査を行ってきた。これらの物理データを検証データとして、航路埋没予測解析モデルを高精度化し、予測した埋め戻り土砂量を浚渫計画に反映した。2025年に始まるマタバリ港開発事業(第一期)パッケージ1工事においても、これまでの知見を活かすとともに、新たな国内技術の導入を積極的に進めていく予定である。また、インドネシアのパティンバンプロジェクトにおいても施工中の航路の埋め戻りが懸念されたため、工事着手に先立ち、過去の実測データに基づいて埋没予測解析を実施し、施工計画に反映した。 マダガスカルのトアマシナ港拡張事業に対しては、国内で活用実績が豊富な気海象予測システム、海外機関が公開している気海象推算データに基づく稼働率解析、数値波動水路(CADMAS-SURF)等の高精度波浪解析技術を適用し、構造物の設計、海上作業の施工計画や日々の施工管理・安全管理に反映した。 (6) 桟橋の調査診断システム及び残存耐力評価技術の開発 従来の港湾施設の目視調査は、専門技術者が小型船に乗り、船上から構造物を観察して劣化状況を把握していたが、劣化状況の判断が点検実施者の主観に依存せざるを得ないこと、また桟橋下部では狭隘な空間で上向きの作業となるため労力・時間を要することが問題となっていた。そこで「i-Boat」を水面上で走行させて、搭載したカメラにより桟橋下面の劣化状況を撮影し、得られた画像から構造物の劣化度を客観的に診断できるシステムを開発し、これまで複数の桟橋調査に適用してきた。 また、点検・診断結果からAIを用いて桟橋の残存耐力を評価する技術も開発した。これは、現在及び将来(経年劣化後)の桟橋に対して、地震時の損傷状態を予測するものである。施設管理者にとって供用継続の可否や補修・補強の意思決定がしやすいため、不具合が生じてから対策を行う事後保全から、合理的・計画的な予防保全への転換が期待できる。本技術について、当社は内閣府が主導する国家プロジェクトである「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に参画し、AIを用いた残存耐力評価技術の高精度化や社会実装に向けた取り組みを産官学の共同研究体制により進めている。これまでに桟橋の残存耐力評価技術の精度向上や、地震による損傷だけでなく船舶の接岸や牽引による損傷もAIにより評価できる技術を開発した。さらに、港湾管理者が保有する桟橋を対象に開発技術を試行し、社会実装に向けた精度検証を実施した。 なお、3D画像処理から劣化度診断、残存耐力評価までの維持管理トータルシステムについては、「第7回インフラメンテナンス大賞 情報通信技術の優れた活用に関する総務大臣賞」を受賞している。 (7) 新船種作業船の開発・建造 国内洋上風力発電プロジェクトは、港湾区域に引き続き、一般海域においても洋上風力発電の開発を促進する法律が整備され、全国各地で取り組みが本格化している。また、洋上風力発電の導入が進む欧州では、風車の大型化が進んでいる。 これらの動向を見据え、洋上風車及び基礎構造の大型化に対応するため建造に着手し、10~15MWクラスの風車を複数基運搬・設置可能な1,600t吊SEP型多目的起重機船「CP-16001」の引渡しを前連結会計年度に受け、当連結会計年度には洋上風車基礎工事に従事した。また、当連結会計年度においては、外国船籍のSEP船「Sea Challenger」を1,600t吊へ大規模に改造する工事に着手し、2026年の運用開始を目指す。また、当連結会計年度に洋上風力発電向けケーブル敷設船、及び風車の大型化に伴い15MW~20MWクラスの風車の大型基礎(モノパイル)を安全かつ効率的に施工するための大型基礎施工船の建造契約をシンガポールの造船所と締結し、2028年度の運用開始を目指す。さらに、資材運搬船などの保有に向けて検討を進めている。 当社は、保有するSEP船「CP-8001」、「CP-16001」と自航式多目的起重機船「CP-5001」に加え、新たに1,600t吊SEP船「Sea Challenger」とケーブル敷設船、大型基礎施工船などを投入することで、洋上風力建設工事に積極的に参入していく予定である。 2.建築分野(1) 設計、施工へのBIM活用 当社は、フロントローディングによる品質及び生産性の向上を目指し、設計、施工各フェーズで案件毎の特性に合わせた効果的なBIM活用を推進している。 当連結会計年度においては、前連結会計年度からの継続案件と新規案件の合計52件に対しBIM活用を行い、課題の早期発見や早期解決などの業務効率化に貢献した。またクラウドソリューションを併用し、発注者や監理者、別途業者もBIMコーディネーション会議に参画することで、受発注者間の合意形成や意思決定についても有効に活用することができた。ソフト面においては、施工図の符号・寸法をBIMデータから半自動生成させるアドインを開発し、システム連携に必要な情報を入出力させるプログラムを作成するなど、属人化の解消や業務の省力化に向けた活動も進めている。 今後も働き方改革を継続し、BIM活用によるコミュニケーション活性化を更に推進すると共に、デジタルツインや施工監理システムとの効果的な連携やデジタル化に対応した技術者の育成についても精力的に取り組む予定である。 (2) ICT技術を用いた業務効率化システムの開発と運用 当社は、BIMやタブレット端末を活用したシステム開発を行い、ICT技術による現場業務の効率化及び生産性向上に向けて継続して取り組んでいる。 当連結会計年度では、BIMを活用した「五洋建設統合施工管理システムPiCOMS(ピーコムス):Penta-ocean integrated Construction Management System」でのPCa(プレキャスト)部材の運送・保管管理において、部材に添付したQRコードをスマートフォン等で読み取ることで管理情報を入力する方法を開発した。従来の方法と比較して入力の手間が大幅に減少し、建設現場での運用を通じて生産性向上効果を確認した。また、現場状況の「見える化」を改善のための第一歩として位置づけ、工事用仮設ELVの運転状況を見える化した「仮設エレベータ運転状況モニタリングシステム」や、現場内での職員の位置情報を見える化した「職員位置情報モニタリングシステム」も開発し、都内の大型現場へ導入し効果の検証を始めている。 引き続き、ICT技術の開発及び現場運用を通して、生産性向上への取組みを加速させていく予定である。 (3) CO2低減型コンクリート「CELBIC」の開発と活用 当社は、これまでに脱炭素社会の形成と地球環境問題の改善に寄与することを目的に、建築構造物に求められる所要の品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減するCELBIC(セルビック:Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete)を開発し、建設現場に導入してきた。 当連結会計年度においては、CELBICの適用範囲の拡大に取り組み、CELBICと再生骨材を併用した低炭素性と資源循環性を併せ持つ「CELBIC-RA(セルビック-アールエー:Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete - Recycled Aggregate)」の国土交通大臣認定を取得した。 今後もカーボンニュートラル社会の実現に向けて、技術開発及び普及展開を進めていく。 (4) ZEB化技術への取組み カーボンニュートラル実現に向けた機運が高まるなか、建築分野においては、建物の省エネルギー・ZEB化に対して顧客の関心が高まっている。当社は、これまでにZEB化建物の実績を積み重ねつつ、ZEB化技術の開発に積極的に取り組んでいる。当連結会計年度は、設計者が早期にZEB化の判断を可能にするために過年度に開発したZEB、ZEH-M簡易評価ツールについて、適用範囲を拡げる改良を行った。 今後も積み重ねた実績と開発した技術を活用し、顧客への設計提案、技術提案に積極的に取り組んでいく予定である。 (5) 環境配慮技術の取組み 近年働き方改革が求められるなかで、執務者のウェルネスやプロダクティビティに影響を与えるオフィス空間に、よりよい室内環境の創出が求められている。当社では、目に見えない室内環境の状態や変化を「見える化」する技術を、室内環境の評価・改善ための基本技術と位置づけ、室内環境可視化技術の開発に取り組んでいる。 当連結会計年度においては、執務者のウェルネスに加えエネルギー消費が大きい空調の省エネ運用の観点から温熱環境に焦点を当て、自社オフィスにおける被験者実験をもとに執務者の温冷感を適切に評価できる手法を開発した。 今後は、手法をもとに室内の温熱環境を定量的に評価し、空調の配置計画や運転方法、運転制御システムの実用化に向けてさらなる開発を進め、顧客施設に対し、さらなる快適な室内温熱環境の提供ができるよう努めていく予定である。 3.環境分野(1) 副産物の有効利用技術 カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として使用されている。 これまでに開発した、大規模施工に対応可能なカルシア落下混合船やバックホウ混合を効率化するカルシアバケット、軟弱な海底地盤の表層改良を可能とするカルシア改質土のバッチ式原位置混合工法の改良や適用を進めている。 (2) ブルーインフラ・ブルーカーボンへの取り組み 浚渫土に製鋼スラグ、高炉スラグ微粉末等を混合して人工石を作成し、海域に設置して海藻の着生基盤として活用可能であることを確認した。また、カルシア改質土で造成した浅場に人工石を配置し、人工石に着生・生長した海藻により固定されたCO2 が、前連結会計年度に引き続き当連結会計年度もJブルークレジットとして認証・発行された。人工石はコンクリートと比較して低炭素材料であることに加え、製造過程でCO2を供給することでCO2 をCaCO3として固定できること、材料としてカーボンネガティブ化も可能であることを確認した。今後さらに技術開発を進めるとともに、現場への適用を図る予定である。 (3) 泥土のリサイクル技術 河川・湖沼の浚渫土や陸上の掘削工事にともなって発生する泥土の利活用は重要な課題であり、その解決のため当社はこれまで様々な技術開発に取り組んできた。 吸水性泥土改質材「ワトル」は、製紙会社から発生するペーパースラッジ焼却灰(PS灰)に特殊薬剤を混合し水和処理した製品で、泥土に対し、吸水による物理的改質(瞬時の改良効果)に加え、時間経過にともなう化学的改質(緩やかな強度発現)を合わせ持つことが特徴である。従来、建設汚泥や含水比が高い発生土に対して、天日干しやセメント・石灰等による固化処理が用いられてきたが、時間やコスト、アルカリ化等の課題があった。「ワトル」はこのような課題を解決する多くの使用実績があるが、さらにカーボンリサイクルへの貢献など環境負荷の低減、利用用途の拡大など、より高機能な材料の開発へと取り組みを進めていく。 4.技術評価証等の取得NETIS<新規登録>・LiDAR を用いた施工管理システム KK-240054-A・ノンセパ+EPSによるコンクリート橋脚合理化施工法 CB-240034-A<更新>・AR安全可視化システム KTK-190007-VE 水産公共関連民間技術確認審査・評価事業<新規登録>・CFRPを用いた小規模タンクの津波対策工法 第23-A-001号 性能評定<更新>・非耐力壁の一部に水平部分を有するせっこうボードを用いた耐火壁構造(クランク耐火壁)の耐火性能に関する技術的評価:一般財団法人ベターリビング、評定CBL FP013-19号、2025年3月 大臣認定<新規登録>・高強度コンクリート(Fc60~120) :国土交通大臣認定(一般)、MCON-4737、2024年5月・再生骨材コンクリート(Fc18~45):国土交通大臣認定(一般)、MCON-4758・4759、2024年6月・仕上材・軽量気泡コンクリ-トパネル・吹付けロックウール合成耐火被覆/鉄骨はり(耐火構造3時間/はり):国土交通大臣認定(一般)、FP180BM-0827、2024年10月・軽量気泡コンクリート板/仕上材・吹付けロックウール合成被覆/鋼管柱(耐火構造3時間/柱):国土交通大臣認定(一般)、FP180CN-1094、2025年2月・軽量気泡コンクリートパネル/吹付けロックウール合成耐火被覆/CFT(耐火構造2時間/柱):国土交通大臣認定(一般)、FP120CN-1109、2025年3月・軽量気泡コンクリートパネル/吹付けロックウール合成耐火被覆/CFT(耐火構造3時間/柱):国土交通大臣認定(一般)、FP180CN-1124、2025年3月<変更>・コンクリート板/吹付ロックウール合成被覆/鉄骨はり(変更)(耐火構造1時間/はり):国土交通大臣認定(一般)、FP060BM-0655-1、2025年3月
FY2024|8,749 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度は、レジリエンス、DX・GXの推進に着目した技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。なお、当連結会計年度における研究開発費は、31億円であった。また、当連結会計年度における主要な研究開発内容及び成果は次のとおりである。 (国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)1.土木分野(1) BIM/CIMへの取組み 国土交通省は「発注工事の原則BIM/CIM化」を2023年までに達成するという目標を掲げ、BIM/CIM導入の取組みを加速させてきた。当社は2016年度より桟橋工事に港湾分野として初の全面的なBIM/CIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にBIM/CIMに取り組んできており、当連結会計年度も土木分野での取組案件数約100件を6年連続で達成した。 当連結会計年度においては、BIM/CIMモデルを情報の基盤とした施工情報共有システム(i-PentaCOL)をトンネル工事に適用し、出来形・品質や現場状況など日々の施工情報の集約・管理を実施した。土工現場においてはUAVやSLAM技術※1を活用した3D-LiDAR※2など、多様な三次元測量を積極的に実施し、可視化による施工検討の迅速化や出来形管理の省力化を進めた。このほか、既設構造物との干渉を避けるよう複雑な作業手順をBIM/CIMモデルで視覚化しながら策定するとともに、建設機械の最適操作手順をオペレータ目線で再現したVR施工シミュレーションを行うなど、より円滑な施工に向けた現場教育も実施した。当社はこれからも生産性向上や現場職員の負担軽減に寄与できるよう、BIM/CIMの導入・活用に積極的に取り組む予定である。※1 SLAM技術:移動体が今どこにいるのかを推測する「自己位置推定」と、その周辺がどういう状況にあるのかを把握する「環境地図作成」を同時に行う技術の総称※2 3D-LiDAR:レーザー光を使用してターゲットの表面までの距離を3次元的に測定するマッピング技術 (2) 地盤情報の可視化ツール(Gi-CIM)の開発 地盤改良工事は施工対象が地中となるため、既設埋設物との干渉リスクがあり、また出来形や品質を直接確認することができない。当社はこれらの課題に対して、既設埋設物等のCIMモデルに地盤改良の調査・設計・施工管理等の情報を3次元的に統合して可視化することができるGi-CIM(Ground improvement Construction Information Modeling)を開発し、これまで多くの工事で活用してきた。Gi-CIMには、施工管理装置のモニター画面に表示される施工情報をOCR(光学的文字認識)により数値データ化し、新たに搭載した3Dモデルの自動作成機能により、施工状況をリアルタイムで三次元的に把握することが可能となっている。 本OCR機能をこれまでは浸透固化処理工法を中心に適用してきたが、当連結会計年度においては、深層混合処理工法にも適用し、改良杭の施工履歴(セメントスラリーの添加量や攪拌翼の回転数など)をリアルタイムに見える化することで、施工不良を防止し、適正な施工品質の確保に貢献した。今後も、サンドコンパクションパイル工法や静的圧入締固め工法など他工法へ適用範囲を拡大し、地盤改良工事の安全・品質および施工の信頼性向上に取り組んでいく。 (3) プレキャスト技術の開発と現場実装 近年、建設現場における担い手不足や働き方改革を背景に、施工プロセスにおける生産性向上を図る取組みが広く行われている。港湾の桟橋工事などでは、工期短縮や作業人員の削減など生産性向上の観点からプレキャスト施工は有益な方法である。しかしながら、大型起重機船の調達、陸上製作ヤードの確保、部材接合技術が必要であり、従来の現場打ちコンクリートによる構築方法と比較して建設コストが増加する傾向にある。 当社は、国内最大の原塩ターミナルである三ツ子島埠頭の桟橋工事において、幅30m×全長240mの桟橋上部工を12基のプレキャスト部材(幅30m×長さ20m、1,600t/基)に分割し、2,200t吊起重機船を用いて据付工事を行った。鋼管杭とプレキャスト部材、プレキャスト部材同士の接合は当社で開発したスマート接合技術を適用した。プレキャスト部材としてRC中空構造のフラットスラブ形式を採用するなど上部工の軽量化や鋼管杭本数の削減により、従来の現場打ちコンクリートによる工法と比較して全体工期を56%短縮、労働員数を27%削減などプレキャスト工法のメリットを享受しながら、課題であったコスト削減(11%)をも達成した。本工事を適用した桟橋構築技術は、当連結会計年度において土木技術の発展に顕著な貢献をなし、社会の発展に寄与したと認められ「令和5年度土木学会技術賞」を受賞した。 また、北陸地方整備局発注の新潟空港進入灯(10側)橋脚工事では、橋脚コンクリートのプレキャスト化により夜間の海上高所作業が低減され、場所打ち工法と比べて労働員数を46%削減、海上施工日数を47%短縮するとともに、夜間海上作業の低減により災害発生リスクも減少させた。本工事は、建設生産プロセスの高度化・効率化、国民サービスの向上等につながる優れた実績として評価され「令和5年度インフラDX大賞優秀賞」を受賞した。 (4) 山岳トンネルにおける防水シート自動溶着システムの開発 一般に、山岳トンネルの防水工においては、トンネル壁面(支保工面)全面に展張した幅約2m/枚の防水シート同士を3人の作業員が手作業で溶着して接合するが、狭隘な足場台車上での高所作業となり、トンネル天端付近は上向きの不安定な姿勢での作業となる。また、防水シートは凹凸のある支保工面に展張されるため、溶着部が不規則に波打ち、確実に溶着するためには熟練の技能が必要となる。しかし、近年の建設業界では担い手・熟練工不足が著しい。そこで当社は、作業員の技量によらず、1人で安全に防水シートを溶着接合できる「防水シート自動溶着システム」を開発し、高速道路トンネル新設工事に導入した。一般に使用されている足場台車に追加設置した溶着機走行用レールと当社が開発した自走式溶着機により、作業員が足場台車に上ることなく、複雑で不規則な溶着部のたわみやよれに溶着機が追従しながら、自動で溶着できることを確認した。 当連結会計年度において、国土交通省が運用する新技術情報提供システム(NETIS)に登録した。今後も山岳トンネル工事における安全性・生産性の向上に資する技術開発に取り組んでいく予定である。 (5) 海外大型プロジェクトへの国内技術導入 海外のプロジェクトでは、国内で経験のない施工条件や課題が課せられる場合が多く、また設計や施工計画・管理に必要な気海象情報が不足することが多い。バングラデシュのマタバリプロジェクトの建設場所は波浪条件の厳しい外洋に面しており、潮流が速く海域は著しい濁りが発生する。このような環境下にあるため、現地に波高・流速計、濁度計などを設置して時系列データを取得するとともに、定期的な深浅測量や採水調査などを実施し、海底地形変化や海中の濁度に関する総合的なモニタリング調査を行った。これらの物理データを検証データとして、航路埋没予測解析モデルを高精度化し、予測した埋め戻り土砂量を浚渫計画に反映した。インドネシアのパティンバン新港プロジェクトにおいても施工中の航路の埋め戻りが懸念されたため、工事着手に先立ち、過去の実測データに基づいて埋没予測解析を実施し、施工計画に反映した。 また、インドネシアのパティンバン新港プロジェクトやマダガスカルのトアマシナ港拡張事業に対して、国内で活用実績が豊富な気海象予測システム、海外機関が公開している気海象推算データに基づく稼働率解析、数値波動水路(CADMAS-SURF)等の高精度波浪解析技術を適用し、構造物の設計、海上作業の施工計画や日々の施工管理・安全管理に反映した。 (6) 桟橋の調査診断システム及び残存耐力評価技術の開発 従来の港湾施設の目視調査は、専門技術者が小型船に乗り、船上から構造物を観察して劣化状況を把握していたが、劣化状況の判断が点検実施者の主観に依存せざるを得ないこと、また桟橋下部では狭隘な空間で上向きの作業となるため労力・時間を要することが問題となっていた。そこで「i-Boat」を航行させ、搭載したカメラにより桟橋下面の劣化状況を撮影し、得られた画像から構造物の劣化度を客観的に診断できるシステムを開発し、これまで複数の桟橋調査に適用してきた。 また、点検・診断結果からAIを用いて桟橋の残存耐力を評価する技術も開発した。これは、現在および将来(経年劣化後)の桟橋に対して、地震時の損傷状態を予測するものである。施設管理者にとって供用継続の可否や補修・補強の意思決定がしやすいため、不具合が生じてから対策を行う事後保全から、合理的・計画的な予防保全への転換が期待できる。本技術について、当社は当連結会計年度より、内閣府が主導する国家プロジェクトである「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に参画し、AIを用いた残存耐力評価技術の高精度化や社会実装に向けた取組みを産官学の共同研究体制により開始した。 なお、3D画像処理から劣化度診断、残存耐力評価までの維持管理トータルシステムについて、当連結会計年度において「第7回インフラメンテナンス大賞 情報通信技術の優れた活用に関する総務大臣賞」を受賞した。 (7) 可塑性グラウト増深工法の開発(社会実装に向けた現場実証) 船舶大型化に対応するため既設係船岸を増深するニーズが高まり、法線を変更せずに増深できる可塑性グラウト増深工法を開発した。本工法は捨石マウンド内の一部に可塑性グラウトを注入・固化した後、前面の捨石を掘削して増深する工法であり、(国研)港湾空港技術研究所と(一社)日本埋立浚渫協会により共同で開発した技術である。本工法の社会実装を促進するため、当社を代表とした8社は、(国研)港湾空港技術研究所から公募された「革新的社会資本整備研究開発推進事業」に応募して採択され、川崎港東扇島の実岸壁において現場実証を行った。実岸壁で一連の施工を行い、工法の実現性・有効性を示し、港湾分野において実用化できることを明らかにした。この技術的成果は、有識者や国の監修のもと「可塑性グラウト増深工法ガイドライン」としてまとめられる予定である。なお、本技術の現場実証に関して土木学会論文集に発表した論文は、「令和6年度日本港湾協会論文賞」を受賞した。 (8) 新船種作業船の開発・建造 国内洋上風力発電プロジェクトは、港湾区域に引き続き、一般海域においても洋上風力発電の開発を促進する法律が整備され、全国各地で取組みが本格化している。また、洋上風力発電の導入が進む欧州では、風車の大型化が進んでいる。 これらの動向を見据え、10~15MWクラスの風車を複数基運搬・設置可能な1,600t吊SEP型多目的起重機船「CP-16001」の建造に着手し、当連結会計年度において引渡しを受けた。さらに、現在DEME Offshore社が保有する外国船籍のSEP船「Sea Challenger」を1,600t吊に大規模改造し、2026年の運用開始を目指す予定である。また、洋上風力発電向けのケーブル敷設船、大型基礎設置船、資材運搬船などの保有に向けて検討を進めている。 当社は、保有する「CP-8001」、「CP-16001」と自航式多目的起重機船「CP-5001」に加え、新たに1,600t吊SEP型多目的起重機船1隻とケーブル敷設船などを投入することで、洋上風力建設工事に積極的に参入していく予定である。 2.建築分野(1) 設計、施工へのBIM活用 当社は、フロントローディングによる品質および生産性の向上を目指し、設計、施工の各フェーズでBIMを活用するとともに、BIMの教育についても継続的に実施してきた。 当連結会計年度では、前連結会計年度からの継続案件と新規案件の合計48件に対してBIMを活用し、その取組みを通じて現場職員へのBIMリテラシー向上を図った。また意匠・構造設計者を対象としたBIMソフトウェア教育を若手職員10人に対して実施し、これまでに累計60人以上に設計BIM技術を習得させた。冷凍冷蔵倉庫やごみ処理場、物流倉庫のランプウェイなどにおいては干渉チェックをはじめ、複雑に絡み合う部材の可視化などBIM機能を利用した効果的な活用手法を構築した。また建築遮音設計システムなど外部システムとのデータ連携を行う情報抽出用プログラムを開発し、属人化の解消に向けた取組みを進めている。今後も、BIMデジタル人材の育成をさらに推進していくとともに、BIM機能拡張に向けた技術開発にも精力的に取り組む予定である。 (2) ICT技術を用いた業務効率化システムの開発と運用 当社は、BIMやタブレット端末を活用したシステム開発を行い、ICT技術による現場業務の効率化および生産性向上に向けて継続して取り組んでいる。 当連結会計年度では、BIMを活用した「五洋建設統合施工管理システムPiCOMS(ピーコムス):Penta-ocean integrated Construction Management System」にRTK測位を用いた高精度の位置情報を組み合わせ、PCa(プレキャスト)部材の運送・保管管理業務へ適用拡大を行った。建設現場での運用を通じて生産性向上効果を確認した。またAR(Augmented Reality)技術を活用し建設重機の配置状況をタブレット端末上で確認できる「Degisite(デジサイト)-AR Lite」を開発した。建設重機の実大3Dモデルを現場映像に重ね合わせることで配置計画の事前確認が容易となり、さらに発注者や近隣住民の方などに対しわかりやすく情報伝達できることを確認した。 現場での運用を通じて、当社職員だけではなく、協力業者に対しても現場業務の効率化が図れることを確認した。引き続き、ICT技術の開発および現場運用を通して、生産性向上への取組みを加速させていく予定である。 (3) CO2低減型コンクリート「CELBIC」の開発と活用 当社は、これまでに脱炭素社会の形成と地球環境問題の改善に寄与することを目的に、建築構造物に求められる所要の品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減するCELBIC(セルビック:Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete)を開発し、建設現場に導入してきた。 当連結会計年度は、CELBICの適用範囲の拡大ならびに再生骨材を併用することで低炭素性と資源循環性を併せ持つ「高炉スラグ微粉末高含有再生骨材コンクリート」の早急な実用化に向けて開発を進めてきた。今後もカーボンニュートラル社会の実現に向けて、技術開発および普及展開を進めていく。 (4) ZEB化技術への取組み カーボンニュートラル社会の実現に向けた機運が高まる中、建物の省エネルギー・ZEB化に対して顧客の関心が高まっている。当社は、これまでにZEBの実績を積み重ねつつ、ZEB化技術の開発に積極的に取り組んでいる。 当連結会計年度では、再生可能エネルギー100%の工場として建設した自社工場「室蘭製作所」での取組みが高く評価され、北海道経済産業局より「北国の省エネ・新エネ大賞」を受賞した。またZEB化提案技術の一つとして、エネルギー効率や設置自由度が高い水冷式空調設備の省エネ運転制御技術を開発し、空調設備全体の省エネ化に効果的であることを確認した。 今後も、積み重ねた実績に裏付けられたZEB化技術を活用し、顧客への設計提案、技術提案に積極的に取り組んでいく予定である。 (5) 環境配慮技術の取組み 近年、利用者のウェルネスやプロダクティビティに影響を与えるオフィス空間に対して、より良い環境創出が求められている。当社では、室内環境を評価し改善するため人のしぐさ・行動から室内の温熱や衛生状態を見える化する技術の開発に取り組んでいる。 新型コロナウイルス感染症の流行による人々の衛生意識の高まりに鑑み、当連結会計年度では、オフィス空間に設置したカメラ画像から机上面等と執務者の手との接触を検知することで、机上面等における細菌等の付着汚染量を類推し数値化して評価する「感染リスク可視化システム」を開発した。自社施設での運用結果からカメラ画像による行動追跡に基づき算出した値が実測値と一致することを確認した。 今後は、顧客の建物施設管理業務に対しての清掃等の衛生管理サポートに関する提案力や運用データの集積・分析から室内環境改善に関する提案力を高めていくとともに、同技術の新たな活用につながる技術開発に取り組んでいく予定である。 3.環境分野(1) 副産物の有効利用技術 カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として使用されている。 これまでに開発した、大規模施工に対応可能なカルシア落下混合船やバックホウ混合を効率化するカルシアバケット、軟弱な海底地盤の表層改良を可能とするカルシア改質土のバッチ式原位置混合工法の改良や適用を進めている。今後は、これらのカルシア改質技術を活用したCO2排出量の少ない施工方法やカルシア改質土でのCO2固定方法等のカーボンニュートラル技術、ブルーカーボン生態系の形成のための海藻の生育基盤作成技術の開発を行っていく。 (2) 泥土のリサイクル技術 河川・湖沼の浚渫土や陸上の掘削工事にともなって発生する泥土の利活用は重要な課題であり、その解決のため当社はこれまで様々な技術開発に取り組んできた。吸水性泥土改質材「ワトル」は、製紙会社から発生するペーパースラッジ焼却灰(PS灰)に特殊薬剤を混合し水和処理した製品で、泥土に対し、吸水による物理的改質(瞬時の改良効果)に加え、時間経過にともなう化学的改質(緩やかな強度発現)を合わせ持つことが特徴である。従来、建設汚泥や含水比が高い発生土に対して、天日干しやセメント・石灰等による固化処理が用いられてきたが、時間やコスト、アルカリ化等の課題があった。「ワトル」はこのような課題を解決する多くの使用実績があるが、さらにカーボンリサイクルへの貢献など環境負荷の低減、利用用途の拡大など、より高機能な材料の開発へと取組みを進めていく。 4.技術評価証等の取得NETIS<新規登録>・防水シート自動溶着器 KK -230038-A・UAVによるAR施工管理支援システム KTK-230004-A・DXを使用したクラウド航行安全監視システム KTK-230006-A・深層混合処理工法 3DCIMシステム KTK-230007-A<更新>・Gi-CIM KTK-210009-A 技術評価証<新規登録>・カルシア改質土のバッチ式原位置混合工法 第 22006号<更新>・4Dソナーによる施工管理 第 12004号・高含水泥土造粒固化処理工法 第 02004号・曲がり削孔工法(リアルタイムで誘導する曲線ボーリング) 第 08001号 性能評定<新規登録>・非耐力壁の一部に水平部分を有するせっこうボードを用いた耐火壁構造(クランク耐火壁)の耐火性能に関する技術的評価:一般財団法人ベターリビング、評定CBL FP012-23号、2024年3月<更新>・異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法の設計法及び施工方法 -Dicos Beam工法-:日本ERI株式会社、構造性能評価 ERI-K19023-01、2023年7月・RCS合成壁/杭工法の合成構造としての性能:一般財団法人ベターリビング、評定CBL FP022-18号、2024年2月 大臣認定<新規登録>・押出成形セメント板/吹付けロックウール合成被覆/鋼管柱(耐火構造1.5時間/柱):国土交通大臣認定(一般)、FP090CN-0994、2023年8月・軽量気泡コンクリートパネル/吹付けロックウール合成耐火被覆/鋼管柱(耐火構造1時間/柱):国土交通大臣認定(一般)、FP060CN-1028、2024年3月・軽量気泡コンクリートパネル/吹付けロックウール合成耐火被覆/鋼管柱(耐火構造2時間/柱):国土交通大臣認定(一般)、FP120CN-1043、2024年3月・仕上材・軽量気泡コンクリ-トパネル・吹付けロックウール合成耐火被覆/鉄骨はり(耐火構造1時間/はり):国土交通大臣認定(一般)、FP060BM-0786、2024年3月・仕上材・軽量気泡コンクリ-トパネル・吹付けロックウール合成耐火被覆/鉄骨はり(耐火構造2時間/はり):国土交通大臣認定(一般)、FP120BM-0796、2024年3月
FY2023|6,970 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度は、デジタルとグリーンに着目した技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。なお、当連結会計年度における研究開発費は、28億円であった。また、当連結会計年度における主要な研究開発内容及び成果は次のとおりである。 (国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)1.土木分野(1) BIM/CIMへの取組み 国土交通省は「発注工事の原則BIM/CIM化」を2023年までに達成するという目標を掲げ、BIM/CIM導入の取組みを加速させている。当社は2016年度より桟橋工事に港湾分野としては初の全面的なBIM/CIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にBIM/CIMに取り組んできており、当連結会計年度も土木分野での取組案件数約100件を5年連続で達成した。 当連結会計年度においては、3次元の空間データに時間軸を持たせた4Dシミュレーションを活用し、出水期の河川工事で起こり得るトラブルを検証し手戻りなく安全に施工するための計画立案に役立てた。また、XR(VR:Virtual Reality,MR:Mixed Realityなどの総称)を活用した安全教育や埋設物・水中の施工機械などの可視化、土工事での土砂収支の見える化、リアルタイムな工事数量の算出など、広範な用途にてBIM/CIMを活用し、多くの現場に展開した。当社はこれからも生産性向上や現場職員の負担軽減に寄与できるよう積極的にBIM/CIMの活用・導入に取組む予定である。 (2) 地盤情報の可視化ツール(Gi-CIM)の開発 地盤改良工事は施工対象が地中となるため、既設埋設物との干渉リスクがあり、また出来形や品質を直接確認することができない。当社はこれらの課題に対して、既設埋設物等のCIMモデルに地盤改良の調査・設計・施工管理等の情報を3次元的に統合して可視化することができるGi-CIM(Ground improvement Construction Information Modeling)を開発し、既に多くの工事で活用してきた。 当連結会計年度においては、曲がり削孔式浸透固化処理工法による地盤改良工事のデジタルツイン(リアルタイムの見える化)を構築した。これまで削孔出来形をリアルタイムに可視化することは可能であったが、薬液注入状況を可視化する機能はなかった。そこで薬液注入管理装置のモニター画面に表示される注入量などの施工情報をOCR(光学的文字認識)により数値データ化し、改良体の3Dモデルをリアルタイムかつ自動的に作成する機能を付加した。本技術を導入した岸壁直下地盤の液状化対策工事では、土中の削孔状況や薬液注入状況が三次元でリアルタイムに把握できるため、施工管理の高度化や品質確保に繋がった。本技術は浸透固化処理工法以外にも、サンドコンパクション工法や静的圧入締固め工法など地中に改良体を造成するタイプの地盤改良工法であれば適用が可能である。今後も地盤改良工事の安全・品質及び施工の信頼性向上に取り組んでいく。 (3) 革新的ICT技術の山岳トンネル工事への導入 当社は、国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に5年連続で採択された。 5年目となる当連結会計年度は、九州地方整備局発注の「国道57号笹原トンネル新設工事」において、山岳トンネルのコソク作業向けに開発した自律制御バックホウを改良してインバート掘削作業に適用した。また、デジタルツイン上の点群データから施工制御用のメッシュデータを作成し、インバート掘削の自動運転をコントロールする機能も構築した。このデジタルツインは、施工進捗や地山の性状を表す最新データ、自律四足歩行ロボットにより自動計測されたトンネル覆工の出来形データ、車両や作業員の位置を含むIoTデータなどをリアルタイムに反映するものである。さらに、デジタルツインをVR空間と自動連携する技術を開発したことで、いつでも最新の現場状況を反映したVR空間に没入し出来形計測機能を用いた没入型遠隔臨場検査が可能となった。引き続き当社は、これらの知見を活かし、ICT技術の適用工種を拡大していく予定である。 (4) センシング技術を用いた山岳トンネルの切羽評価システムを開発 山岳トンネル工事の切羽評価では、経験と知見が豊富な熟練技術者の減少により、属人的な技術判断を必要としない客観的な評価手法が求められている。 当社は、複数のセンシング技術を組み合わせた山岳トンネルの切羽評価システムを開発した。これまで、熟練技術者が岩石の観察や現位置試験などによって必要な項目を評価していたが、本システムでは削岩機の削孔検層、3D LiDAR、ステレオカメラ、スペクトルカメラなどの複数のセンシング技術とAI技術を用いることで、客観的な切羽評価を可能とした。 当連結会計年度は、四国地方整備局「見の越トンネル工事」において開発システムの現場実証を行い、現場への適用性を検証し、熟練技術者に頼ることなく客観的な切羽評価が行えることを確認した。当社は、山岳トンネル以外の分野でもさまざまなセンシング技術を積極的に導入して、デジタルデータに基づく施工品質の向上と作業の効率化、省力化を目指していく。 (5) 海外大型プロジェクトへの国内技術導入 海外のプロジェクトでは、国内で経験のない施工条件や課題が課せられる場合が多く、また設計や施工計画・管理に必要な気海象情報が不足することが多い。バングラデシュのマタバリプロジェクトの建設場所は波浪条件の厳しい外洋に面しており、潮流が速く海域は著しく濁っている。このような環境下にあるため、現地に波高・流速計、濁度計などを設置して時系列データを取得するとともに、定期的な深浅測量や採水調査などを実施し、海底地形変化に関する総合的なモニタリング調査を行った。これらの物理データを基に開発した航路埋没予測解析モデルをブラッシュアップし、埋め戻り土砂量を考慮した浚渫計画に反映した。 また、マダガスカルのトアマシナ港拡張事業、インドネシアのパティンバン新港事業などの大型プロジェクトに対して、海外機関が公開している気海象推算データの導入・精度検証を行った上で、国内で活用実績が豊富な気海象予測システムや稼働率算定システム、数値波動水路CADMAS-SURF等の数値解析技術を適用し、構造物の設計や施工順序などの施工計画に反映した。 (6) 桟橋の調査診断システム及び残存耐力評価技術の開発 従来の港湾施設の目視調査は、専門技術者が小型船に乗り、船上から構造物を観察して劣化状況を把握していたが、劣化状況の判断が点検実施者の主観に依存せざるを得ないこと、また桟橋下部では狭隘な空間で上向きの作業となるため労力・時間を要することが問題となっていた。そこで「i-Boat」を航行させ、搭載したカメラにより桟橋下面の劣化状況を撮影し、得られた画像から構造物の劣化度を客観的に診断できるシステムを開発し、これまで複数の桟橋調査に適用してきた。 また、点検・診断結果からAIを用いて桟橋の残存耐力を評価する技術を開発した。これは、桟橋が地震や経年劣化によってどのように損傷するかを予測するものである。施設管理者にとって供用継続の可否や補修・補強の意思決定がしやすいため、不具合が生じてから対策を行う事後保全から、合理的・計画的な予防保全への転換が期待できる。なお、本技術は当連結会計年度において「国土技術開発賞優秀賞」を受賞した。厳しい塩害環境下にある港湾施設は老朽化した施設が増加傾向にあるため、今後も港湾施設の適切な維持管理・更新に貢献していく予定である。 (7) 新船種作業船の開発・建造 国内洋上風力発電プロジェクトは、港湾区域に引き続き、一般海域においても洋上風力発電の開発を促進する法律が整備され、全国各地で取組みが本格化している。また、洋上風力発電の導入が進む欧州では、風車の大型化が進んでいる。 これらの動向を見据え、洋上風車及び基礎構造の大型化に対応するため、10~15MW クラスの風車を複数基運搬・設置可能な1,600t吊SEP型多目的起重機船を、2020年度に建造開始し、2023年内完成・引渡し予定である。さらに、現在DEME Offshore社が保有する外国船籍のSEP船「Sea Challenger」を1,600t吊に大規模改造し、2025年春の運用開始を目指す予定である。また、洋上風力発電向けのケーブル敷設船、資材運搬船などの保有に向けて検討を進めている。 当社は、保有する「CP-8001」と自航式多目的起重機船「CP-5001」に加え、新たに1,600t吊SEP型多目的起重機船2隻とケーブル敷設船などを投入することで、洋上風力建設工事に積極的に参入していく予定である。 2.建築分野(1) BIM活用の定着に向けた取組み 当社は、フロントローディングによる品質及び生産性の向上を目指し、企画・設計・施工の各段階でのBIM活用に継続的に取り組んでいる。 当連結会計年度では、前連結会計年度からの継続案件に加え、入札・設計施工・施工案件の合計22件に対しBIMを適用した。設計施工案件ではBIM特有の情報連携や伝達手法を整備することで設計時の整合性確保と施工への確実な情報伝達につながる取組みを実施した。施工案件では外壁貫通部など瑕疵が発生しやすい箇所について3次元形状での納まりの検討とその効果を確認した。 引き続きBIM標準ワークフローを制定し、BIMソフトウェアについては図面表現の統一などの環境整備を行うことで、作業効率や品質向上に努めていく予定である。 (2) ICT技術を用いた業務効率化システムの開発と運用 当社は、BIMモデルやタブレット端末を活用したICT技術による生産性向上に取組むとともに、協力業者職長にiPadを貸与し、日々の現場業務の効率化に向けて取り組んでいる。 当連結会計年度では、iPad活用の一環として、安全書類に関する業務効率化のために「Degisite(デジサイト)-安全」を開発し、社内50現場以上に導入し効果を確認した。また、前連結会計年度までに開発済みのBIMを活用した「五洋建設統合施工管理システムPiCOMS(ピーコムス):Penta-ocean integrated Construction Management System」の適用工種を解体工事や山留工事にも範囲を拡張し、現場での運用を通じて当社職員だけではなく、協力業者の現場業務についても効率化が図れることを確認した。引き続き、ICT技術の開発及び現場導入を通して、生産性向上への取組みを加速させていく予定である。 (3) CO2低減型コンクリート「CELBIC」の開発と活用 当社は、これまでに脱炭素社会の形成と地球環境問題の改善に寄与することを目的に、建築構造物に求められる所要の品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減するCELBIC(セルビック:Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete)を開発し、工事現場に導入してきた。 当連結会計年度では、土間コンクリートや外構の床下地コンクリートにA種クラスのCELBICを現場へ適用し、使用した部位についてコンクリート材料に由来する二酸化炭素を28%削減した。今後もCELBICを適材適所で活用し、カーボンニュートラル実現に向けて、普及展開を図っていく。 (4) ZEB化技術への取組み カーボンニュートラル実現に向けた機運が高まる中、建物の省エネルギー・ZEB化に対する顧客の関心が高まっている。当社は、これまでにZEB化建物の実績を積み重ねつつ、ZEB化技術の開発に積極的に取り組んできている。前連結会計年度においてZEB簡易評価支援ツールを開発し、基本計画段階でのZEB化仕様検討業務の効率化を図った。 当連結会計年度では、ZEB化建物への顧客要望の動きに迅速に応えるため、集合住宅を対象としたZEH-Mの簡易評価支援ツールを開発した。この開発したツールと、技術研究所に実装しているZEB化技術の計測結果や実験結果から得られた様々な知見を効果的に取り入れて、顧客への設計提案、技術提案に反映していく予定である。 (5) 環境配慮技術の取組み 近年、工場などの施設に設置されている機械等から発生する騒音を抑制し、近隣住民に配慮することが強く求められている。当社は、周辺環境に配慮した建築物の提供のために、計画・設計段階や施工段階での音に関する環境配慮技術の開発に取り組んできている。 当連結会計年度では、騒音対策による音の大きさの変化を、実際に耳で確認できる可聴化システムを開発した。このシステムは、数値解析で求めた敷地内外の任意の場所における音を、スピーカーによって再現することが可能で、対策前後の騒音の低減具合を体感することができる。これにより様々な騒音対策手法の中から最適な仕様を選定する意思決定までの時間を大幅に短縮することが可能になった。今後も顧客ニーズの満足度を高めた建築物の提供を進めていく予定である。 3.環境分野(1) 副産物の有効利用技術 カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として使用されている。 これまでに開発した、大規模施工に対応可能なカルシア落下混合船やバックホウ混合を効率化するカルシアバケットの改良や適用を進める一方で、軟弱な海底地盤の表層改良を可能とするカルシア改質土のバッチ式原位置混合工法を5社共同で開発した。バッチ式原位置混合工法は、①海底で一連の施工を実施するため泥土やカルシア改質土の運搬を必要としない、②密閉式バケット内でカルシア改質材と混合するため撹拌による濁りが発生しない等の特徴がある。浅場・干潟の土留め潜堤、航路内への土砂流入防止堤等の施工を効率的かつ環境負荷を低減した施工が可能である。今後もこれらのカルシア改質技術を活用し、埋立、浅場・干潟の造成、潜堤築堤等を進めていく予定である。 (2) 泥土のリサイクル技術 河川・湖沼の浚渫土や陸上の掘削工事にともなって発生する泥土の利活用は重要な課題であり、その解決のため当社はこれまで様々な技術開発に取り組んできた。 吸水性泥土改質材「ワトル」は、製紙会社から発生するペーパースラッジ焼却灰(PS灰)に特殊薬剤を混合し水和処理した製品で、泥土に対し、吸水による物理的改質(瞬時の改良効果)に加え、時間経過にともなう化学的改質(緩やかな強度発現)を合わせ持つことが特徴である。高含水比状態の建設汚泥や発生土のような泥土を処理する場合、天日干しやセメント・石灰等による固化処理が用いられてきたが、時間やコスト、アルカリ化等の課題があった。「ワトル」はこのような課題を解決する多くの使用実績があるが、さらにカーボンリサイクルへの貢献など環境負荷の低減、利用用途の拡大など、より高機能な材料の開発へと取組みを進めている。 4.技術評価証等の取得NETIS登録・カルシアバケット KKK-220001-A 技術評価証更新・繊維補強カルシア改質土 第17001号 技術評価証登録・PC圧着構造を用いた組立式プレキャスト桟橋 第22003号 性能評定・床スラブによる拘束効果を考慮した鉄骨梁横座屈補剛工法 :日本ERI株式会社、構造性能評価 ERI-K21008、2022年4月・ポーラスレジンサンド(PRS)-PRSを用いた目地充填工法- :一般財団法人日本建築総合試験所、GBRC材料証明 第22-01号、2022年5月・異幅柱接合部工法:日本ERI株式会社、構造性能評価 ERI-K22001、2022年9月 大臣認定・高強度コンクリート(Fc60~150):国土交通大臣認定(一般)、MCON-4550、2022年8月・押出成形セメント板/吹付けロックウール合成被覆/鋼管柱(耐火構造1時間/柱) :国土交通大臣認定(一般)、FP060CN-0967、2023年2月・仕上材・押出成形セメント板・吹付けロックウール合成被覆/鉄骨はり(耐火構造1時間/はり) :国土交通大臣認定(一般)、FP060BM-0720、2023年3月・仕上材・押出成形セメント板・吹付けロックウール合成被覆/鉄骨はり(耐火構造2時間/はり) :国土交通大臣認定(一般)、FP120BM-0735、2023年3月
FY2022|6,717 文字
5 【研究開発活動】当連結会計年度は、デジタルとグリーンに着目した技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。なお、当連結会計年度における研究開発費は、24億円であった。また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次のとおりである。 (国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)1.土木分野(1)BIM/CIMへの取組み 国土交通省は「発注工事の原則BIM/CIM化」を2023年までに達成するという目標を掲げ、BIM/CIM導入の取り組みを加速させている。当社は2016年度より桟橋工事に港湾分野としては初の全面的なBIM/CIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にBIM/CIMに取り組んできており、当連結会計年度も土木分野での取組案件数約100件を四年連続で達成した。 当連結会計年度においては、3次元の空間データに時間軸を持たせた4Dシミュレーションによる施工工程確認、XR(VR:Virtual Reality,MR:Mixed Realityなどの総称)を活用した安全教育や埋設物などの可視化、現地計測点群データとの重畳による干渉チェックなど、広範な用途にてBIM/CIMを活用し、多くの現場に展開した。当社はこれからも生産性向上や現場職員の負担軽減に寄与できるよう積極的にBIM/CIMの活用・導入に取り組む予定である。 (2)地盤情報の可視化ツール(Gi-CIM)の開発 地盤改良工事は施工対象が地中となるため、既設埋設物との干渉リスクがあり、また出来形や品質を直接確認することができない。当社はこれらの課題に対して、既設埋設物等のCIMモデルに地盤改良の調査・設計・施工管理等の情報を3次元的に統合して可視化することができるGi-CIM(Ground improvement Construction Information Modeling)を開発し、既に多くの工事で活用してきた。 曲がり削孔式浸透固化処理工法による空港の滑走路、誘導路等の地盤改良工事では、危険箇所(削孔と既設埋設物との干渉)の見える化によるトラブル回避、削孔出来形(設計との誤差把握)を反映した薬液注入計画の最適化など、安全・品質に関する効果を確認した。また、当連結会計年度においては、曲がり削孔による削孔出来形をリアルタイムに可視化する機能を付加し、施工リスクのさらなる低減を図ってきた。今後も、地盤情報と施工情報を3次元的かつリアルタイムに統合することにより地盤改良工事の見える化を行い、安全・品質の向上に取り組んでいく。なお、本技術を適用した「平成30年北海道胆振東部地震により被災した札幌市清田区里塚地区の市街地復旧プロジェクト」は当連結会計年度において「地盤工学会技術業績賞」を受賞した。 (3)革新的ICT技術の山岳トンネル工事への導入 当社は、国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に四年連続で採択された。 四年目となる当連結会計年度は、四国地方整備局発注の「平成29-32年度見の越トンネル工事」において、自律制御バックホウによる自動コソク作業を現場試行し、切羽付近の安全性の向上と作業員の省人化を実現した。また、デジタルツインによる没入型遠隔臨場を開発・導入し、施工管理IоTデータをデジタルツインにリアルタイムに反映させ、タブレットなどを用いた関係者の常時現場確認を可能にした。さらに、VRデバイスを用いてデジタルツインに没入することにより、実寸での現場状況確認や切羽付近における多人数での打合せを安全に行うことが可能になった。引き続き当社は、これらの知見を活かし、ICT技術の適用工種を拡大していく予定である。 (4)センシング技術を用いた山岳トンネルの切羽評価システムを開発 山岳トンネル工事の切羽評価では、経験と知見が豊富な熟練技術者の減少により、属人的な技術判断を必要としない客観的な評価手法が求められている。 当社は、複数のセンシング技術を組み合わせた山岳トンネルの切羽評価システムを開発した。これまで、熟練技術者が岩石の観察や現位置試験などによって必要な項目を評価していたが、本システムでは削岩機の削孔検層、3D LiDAR、ステレオカメラ、スペクトルカメラなどの複数のセンシング技術とAI技術を用いることで、客観的な切羽評価を可能とした。当社は、山岳トンネル以外の分野でもさまざまなセンシング技術を積極的に導入して、デジタルデータに基づく施工品質の向上と作業の効率化、省力化を目指していく。 (5)海外大型プロジェクトへの国内技術導入 海外のプロジェクトでは、国内で経験のない施工条件や課題が課せられる場合が多く、また設計や施工計画・管理に必要な気海象情報が不足することが多い。バングラデシュのマタバリプロジェクトの建設場所は波浪条件の厳しい外洋に面しており、潮流が速く海域は著しく濁っている。このような環境下にあるため、現地に波高・流速計、濁度計などを設置して時系列データを取得するとともに、定期的な深浅測量や採水調査などを実施し、海底地形変化に関する総合的なモニタリング調査を行った。これらの物理データを基に開発した航路埋没予測解析モデルをブラッシュアップし、埋め戻り土砂量を考慮した浚渫計画に反映した。 また、マダガスカルのトアマシナ港拡張事業、インドネシアのパティンバン新港事業などの大型プロジェクトに対して、海外機関が公開している気海象推算データの導入・精度検証を行った上で、国内で活用実績が豊富な気海象予測システムや稼働率算定システム、数値波動水路CADMAS-SURF等の数値解析技術を適用し、構造物の設計や施工順序などの施工計画に反映した。 (6)桟橋の調査診断システムおよび残存耐力評価技術の開発 港湾施設の目視調査は、専門知識を有するものが小型船に乗り、船上から構造物を観察して劣化状況を把握するが、専門家の確保が困難であること、特に桟橋下面は狭い空間で上向きの調査となるため労力・時間を要することが問題となっていた。そこで「i-Boat(旧称:無線LANボート)」を航行させ、搭載したカメラにより桟橋下面の劣化状況を撮影し、得られた画像から構造物の劣化度を診断できるシステムを開発し、これまで複数の桟橋調査に適用してきた。 また、点検・診断結果からAIを用いて桟橋の残存耐力を評価する技術を開発した。これは、桟橋が地震や経年劣化によってどのように損傷するかを予測するものである。施設管理者にとって供用継続の可否や補修・補強の意思決定がしやすいため、不具合が生じてから対策を行う事後保全から、合理的・計画的な予防保全への転換が期待できる。なお、本技術は当連結会計年度において「日本港湾協会論文賞」を受賞した。 厳しい塩害環境下にある港湾施設は老朽化した施設が増加傾向にあるため、今後も港湾施設の適切な維持管理・更新に貢献していく予定である。 (7)新船種作業船の開発・建造 国内洋上風力発電プロジェクトは、港湾区域に引き続き、一般海域においても洋上風力発電の開発を促進する法律が整備され、全国各地で取り組みが本格化している。また、洋上風力発電の導入が進む欧州では、風車の大型化が進んでいる。 これらの動向を見据え、洋上風車および基礎構造の大型化に対応するため、10~15MWクラスの風車を複数基運搬・設置可能な1,600t吊SEP型多目的起重機船を、前々連結会計年度に建造開始し、2023年3月就役予定である。 さらに、連結子会社であるジャパンオフショアマリン㈱において、現在DEME Offshore社が保有する外国船籍のSEP船「Sea Challenger」を取得の上、1,600t吊に大規模改造し、2025年春の供用開始を目指して日本船籍化して保有する予定である。また、洋上風力発電向けのケーブル敷設船の保有に向けて検討を進めている。 当社グループは、保有する「CP-8001」と自航式多目的起重機船「CP-5001」に加え、新たな1,600t吊SEP型多目的起重機船を2隻とケーブル敷設船を投入することで、洋上風力建設工事に積極的に参入していく予定である。 2.建築分野(1)設計、施工へのBIM活用 当社は、フロントローディングによる品質および生産性の向上を目指し、計画・設計段階や施工段階でのBIM活用に取り組んでいる。 当連結会計年度は、6件の設計施工案件に対してBIMを適用し、基本設計・実施設計を行った。まず、基本設計段階において意匠設計と構造設計の3次元モデルを統合して納まりを調整し、その後、実施設計段階において建築(意匠・構造)と設備(電気・機械)の統合・調整をおこなった。これにより、意匠・構造・設備間で整合性が取れた3次元モデルから任意の2次元設計図を作成することが可能となり、品質の向上につなげることができた。さらに、実施設計が完了した4件については設計の3次元モデルを施工に引き継ぎ、施工図の作成に活用した。また、施工支援として15件の工事に対し、施工検討や納まり調整等にBIMを導入・活用した。今後も、設計施工案件や施工案件でBIM活用を進め、さらなる品質と生産性の向上を目指していく。 (2)ICTを用いた施工管理システムの開発と導入 当社は、これまでにBIMモデルを活用して建築工事を統括管理する「五洋建設統合施工管理システム」(PiCOMS(ピーコムス):Penta-ocean integrated COnstruction Management System)を開発し、生産性向上に資するICT技術として工事現場へ導入してきた。 当連結会計年度は5件の建築工事へ導入、プレキャスト外壁工事や杭工事にも適用範囲を拡張し、それぞれの現場での運用を通じて生産性向上に対する効果を確認した。今後も他工種および品質管理にも展開し、さらなる生産性向上に向けて現場導入を加速させる予定である。 (3)環境配慮型BFコンクリート「CELBIC」の開発と活用 前連結会計年度において、脱炭素社会の形成と地球環境問題の改善に寄与することを目的とし、建築コンクリート構造物に求められる所要の品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減するCELBIC(セルビック:Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete)を13社共同で開発した。 当連結会計年度では、当社初めての実績(共同開発グループ内で2例目)としてヒューリック錦糸町へB種クラスを適用し、建築物のコンクリート材料に由来する二酸化炭素の51%削減を達成した。今後もカーボンニュートラル実現へ向けCELBICを適材適所に活用し、普及展開を図っていく予定である。 (4)室内(空気)環境改善に関する技術開発 室内の環境の良し悪しは、健康や知的生産性等多くの面で人の活動に影響を与える。その中でも、空気環境に位置付けられる花粉やPM2.5などの微粒子の侵入や不快な臭気、有害な化学物質の発生、さらに最近はコロナウイルスや菌などの脅威にも晒されることがあり、室内環境を改善することが重要な課題となっている。そこで当社では、医療施設等不特定多数が利用する施設を対象に菌や化学物質の除去に有効な空気清浄システムの開発に取り組んでいる。前連結会計年度は、第三者試験機関において空気清浄システムの除菌性能を確認し、同システムの最適配置を検討するための解析ツールの整備を図った。 当連結会計年度では、実建物(飲食店)への適用を実現し、施設での運用を通じて除菌性能に対する効果を確認した。今後は、当社が提供する施設建物への適用に向け取り組みを加速させていく予定である。 (5) ZEB化技術への取り組み 地球温暖化防止に向けた脱炭素化への動きを背景に、省エネルギー・ZEB化に対する顧客の関心が高まっている。前々連結会計年度末に竣工し、設計において建築物省エネルギー制度(BELS)の最高ランク「ZEB」(Net Zero Energy Building)の認証を受けた久光製薬ミュージアムでは、運用データの分析結果においても二年連続して、「ZEB」を達成していることを確認した。 当連結会計年度では、BELSのNearly ZEBの認証を受けたJR九州社員研修センターやホーコス株式会社本社ビルをZEBの実績を活かして施工した。また、そのほかにも建物のZEB化提案や施工を進めている。今後とも、各施設のZEB化で得たデータ、知見を活かして、顧客への設計提案、技術提案に積極的に取り組んでいく予定である。 3.環境分野(1)浚渫土の有効利用技術 カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として使用されている。前連結会計年度は、大規模施工(2,500~4,000m3/日)に対応可能なカルシア落下混合船「オーシャン3号」を建造した。従来は、カルシア改質土の製造・運搬・投入作業をバックホウ、土運船、グラブ浚渫船など複数の重機と作業船で行っていたが、カルシア改質土の製造から投入までの作業を一隻で行うことが可能となった。 ただし、「オーシャン3号」が有する高い施工能力を発揮するためには、カルシア改質土の投入時の材料分離と海域の濁りを抑制する必要があった。そこで当連結会計年度は、浅場造成工事において新たに開発したトレミー管を用いてカルシア改質土の水中投入を行った。カルシア改質土の品質確保と海洋環境の保全を満足しつつ急速施工を実現することが確認できた。今後もカルシア落下混合船とトレミー管を活用し、埋立や干潟・浅場の造成等を効率的に進めていく予定である。 (2)泥土のリサイクル技術 河川・湖沼の浚渫土や陸上の掘削工事にともなって発生する泥土の利活用は重要な課題であり、その解決のため当社はこれまで様々な技術開発に取り組んできた。 吸水性泥土改質材「ワトル」は、製紙会社から発生するペーパースラッジ焼却灰(PS灰)に特殊薬剤を混合し水和処理した製品で、泥土に対し、吸水による物理的改質(瞬時の改良効果)に加え、時間経過にともなう化学的改質(緩やかな強度発現)を合わせ持つことが特徴である。高含水比状態の建設汚泥や発生土のような泥土を処理する場合、天日干しやセメント・石灰等による固化処理が用いられてきたが、時間やコスト、アルカリ化等の課題があった。「ワトル」はこのような課題を解決する多くの使用実績があるが、さらにカーボンリサイクルへの貢献など環境負荷の低減、利用用途の拡大など、より高機能な材料の開発へと取り組みを進めている。なお、本技術は当連結会計年度において「国土技術開発賞優秀賞」を受賞した。 4.技術評価証等の取得 NETIS更新・吸水性泥土改質材「ワトル」 TK-160010-VR NETIS登録・CIMを活用した施工情報収集共有システム(i-PentaCOL) QS-210005-A・航跡波予測システム KTK-210008-A・Gi-CIM KTK-210009-A・ポンプ浚渫船の自動浚渫制御システム KTK-210010-A・土質定数推定システム「サウンディングAI」 KTK-210017-A・トラックスケール自動計量・伝票発行システム「K-GO!システム」 KTK-210018-A 建築物防災技術評価・鋼構造物の耐震補強を対象とした高力ボルトによる挟み込み接合(PNW工法)2021年6月 性能評定・非耐力壁の一部に水平部分を有するせっこうボードを用いた耐火壁構造(クランク耐火壁) の耐火性能に関する技術的評価:一般財団法人ベターリビング、CBL PF012-20号 2022年3月 大臣認定・高強度コンクリート(Fc60~120):国土交通大臣認定(一般) 2021年8月
FY2021|5,938 文字
5 【研究開発活動】当連結会計年度は、生産性向上とICT技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。なお、当連結会計年度における研究開発費は、23億円であった。また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次のとおりである。 (国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)1.土木分野(1)BIM/CIMへの取組み 国土交通省は「発注工事の原則BIM/CIM化」を当初計画より二年前倒しとなる2023年までに達成すると発表し、BIM/CIM導入の取り組みを加速させている。当社は2016年度より桟橋工事に港湾分野としては初の全面的なBIM/CIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にBIM/CIMに取り組んできており、当連結会計年度も土木分野での取組案件数約100件を三年連続で達成した。 当連結会計年度においては4Dシミュレーションによる施工工程確認、XR(VR:Virtual Reality,MR:Mixed Realityなどの総称)を活用した安全教育や埋設物などの可視化、現地計測点群データとの重畳による干渉チェックなど、施工現場でのBIM/CIM活用の幅も広げてきた。当社はこれからも生産性向上や現場職員の負担軽減に寄与できるよう積極的にBIM/CIMの活用・導入に取り組む予定である。 (2)地盤情報の可視化ツール(Gi-CIM)の開発 地盤改良工事は施工対象が地中となるため、既設埋設物との干渉リスクがあり、また出来形や品質を直接確認することができない。当連結会計年度はこれらの課題に対して、既設埋設物等のCIMモデルに地盤改良の調査・設計・施工管理等の情報を三次元的に統合して可視化することができるGi-CIM(Ground Improvement Construction Information Modeling)を開発した。 曲がり削孔式浸透固化処理工法による地盤改良工事にGi-CIMを導入した結果、危険箇所(削孔と既設埋設物との干渉)の見える化によるトラブル回避、削孔出来形(設計との誤差把握)を反映した薬液注入計画の最適化など、安全・品質に関する効果が確認できたGi-CIMは、サンドコンパクションパイル工法(SCP工法)、深層混合処理工法(CDM工法)等の多様な地盤改良工事へも適用可能である。今後も、地中の地盤情報を三次元的に統合することにより地盤改良工事の見える化を行い、安全・品質の向上に取り組んでいく。 (3)革新的ICT技術の土工事への導入 当社は、国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に三年連続で採択された。 三年目となる当連結会計年度は、中部地方整備局発注の「平成31年度設楽ダム廃棄岩骨材運搬路整備工事」において、IoTバックホウによる法面地質AI自動判別システムを開発・導入したことで、重機オペレータや現場職員の省力化が実現した。また、「抜き取り測定」が標準的な品質管理手法となっている路床のプルーフローリング試験におけるたわみ測定、盛土敷均しにおける撒き出し厚測定などについて、施工機械が稼働すると同時に計測も完了する「全量測定」システムを開発し、客観的なデジタル指標による品質管理の高度化を実現した。さらに、XRを用いた遠隔臨場システムを導入したことで、よりタイムリーに的確に発注者を含めた多くの関係者間で施工状況の確認や技術的な打ち合わせが可能となった。引き続き当社は、これらの知見を活かし、ICT技術の適用工種を拡大していく予定である。 (4)センシング技術を用いた山岳トンネルの切羽評価システムを開発 山岳トンネル工事での切羽評価は、技術者の経験や知識により実施されることが多いが、熟練技術者の減少に伴い、属人的な技術判断を必要としない客観的な評価手法が求められている。 当社は、複数のセンシング技術を組み合わせた山岳トンネルの切羽評価システムを開発した。これまで、熟練技術者が観察や打診などによって必要な評価項目を評価していたが、本システムでは削岩機の油圧データ、ステレオカメラ画像、スペクトルカメラから得られるスペクトル特性などの複数のセンシング技術とAI技術を用いることで、客観的な切羽評価が可能となった。今後も当社は、山岳トンネルに限らずセンシング技術を積極的に導入して、デジタルデータに基づく施工品質の向上を目指していく。 (5)海外大型プロジェクトへの国内技術導入 海外のプロジェクトでは、国内で経験のない施工条件や課題が課せられる場合が多く、また設計や施工計画・管理に必要な気海象情報が不足することが多い。バングラデシュのマタバリプロジェクトの建設場所は波浪条件の厳しい外洋に面しており、潮流が速く海域は著しく濁っている。このような環境下にあるため、現地に波高・流速計、濁度計などを設置して時系列データを取得するとともに、定期的な深浅測量や採水調査などを実施し、海底地形変化に関する総合的なモニタリング調査を行った。これらの物理データを基に開発した航路埋没予測解析モデルをブラッシュアップし、埋め戻り土砂量を考慮した浚渫計画に反映した。 また、マダガスカルのトアマシナ港拡張事業、インドネシアのパティンバン新港事業などの大型プロジェクトに対して、海外機関が公開している気海象推算データの導入・精度検証を行った上で、国内で活用実績が豊富な気海象予測システムや稼働率算定システム、数値波動水路CADMAS-SURF等の数値解析技術を適用し、構造物の設計や施工順序などの施工計画に反映した。 (6)桟橋の調査診断システムの開発 港湾施設の目視調査は、専門知識を有するものが小型船に乗り、船上から構造物を観察して劣化状況を把握するが、専門家の確保が困難であること、特に桟橋下面は狭い空間で上向きの調査となるため労力・時間を要することが問題となっていた。そこで「i-Boat(旧称:無線LANボート)」を航行させ、搭載したカメラにより桟橋下面の劣化状況を撮影し、得られた画像から構造物の劣化度を診断できるシステムを開発し、これまで複数の桟橋調査に適用してきた。 当連結会計年度には、「i-Boatを用いた港湾構造物の点検・診断システム」が国土交通省港湾局による「港湾の施設の新しい点検技術カタログ」に掲載された。厳しい塩害環境下にある港湾施設は老朽化した施設が増加傾向にあるため、今後も港湾施設の適切な維持管理・更新に貢献していく予定である。 (7)新船種作業船の開発・建造 国内洋上風力発電プロジェクトは、港湾区域に引き続き、一般海域においても洋上風力発電の開発を促進する法律が整備され、全国各地で取り組みが本格化している。また、洋上風力発電の導入が進む欧州では、風車の大型化が進んでいる。 これらの動向を見据え,洋上風車および基礎構造の大型化に対応するため、10~14MWクラスの風車を複数基運搬・設置可能な1,600t吊SEP型多目的起重機船を、前連結会計年度に建造開始し、2022年9月完成・引渡し予定である。同船には、当社保有の800t吊SEP型多目的起重機船「CP-8001」に搭載している開発済みの「リアルタイムLEG着底監視システム」を導入するとともに、運用で得られたノウハウ、技術を結集する。 当社は、保有する「CP-8001」と自航式多目的起重機船「CP-5001」に加え、新たな1,600t吊SEP型多目的起重機船を投入することで、洋上風力建設工事に積極的に参入していく予定である。 2.建築分野(1)設計、施工へのBIM活用 当社は、フロントローディングによる品質および生産性の向上を目指し、計画・設計段階や施工段階でのBIM活用に取り組んでいる。 当連結会計年度は、4件の設計施工案件に対してBIMを適用し、基本設計・実施設計を行った。まず、基本設計段階において意匠設計と構造設計の3次元モデルを統合して納まりを調整し、その後、実施設計段階において建築(意匠・構造)と設備(電気・機械)の統合・調整をおこなった。これにより、意匠・構造・設備間で整合性が取れた3次元モデルから任意の2次元設計図を作成することが可能となり、品質の向上につなげることができた。今後は実施設計段階の3次元モデルを施工に引き継ぎ、施工図の作成に活用する予定である。また、施工支援として30件の工事に対し、施工検討や納まり調整等にBIMを導入・活用した。今後も、設計施工案件や施工案件でBIM活用を進め、さらなる品質と生産性の向上を目指していく。 (2)ICTを用いた施工管理システムの開発と導入 当社は、前連結会計年度にBIMモデルを活用して建築工事を統括管理する「五洋建設統合施工管理システム」(PiCOMS(ピーコムス):Penta-ocean integrated COnstruction Management System)を開発し、生産性向上に資するICT技術として工事現場へ導入した。 前連結会計年度はプレキャスト工事のみへの適用であったが、当連結会計年度は6件の鉄骨工事にも適用を拡張し、それぞれの現場での運用を通じて生産性向上に対する効果を確認した。今後も他工種および品質管理にも展開し、さらなる生産性向上に向けて現場導入を加速させる予定である。 (3)「CELBIC-環境配慮型BFコンクリート-」の開発 当社は、脱炭素社会の形成と地球環境問題の改善に寄与することを目的とし、建築コンクリート構造物に求められる所要の品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減するCELBIC(セルビック:Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete)を13社共同で開発した。 CELBICは、建築物の部位・部材や所定の性能に合わせて、セメントの10~70%を高炉スラグ微粉末と置換したコンクリートである。使用する高炉スラグ微粉末の量に応じて、A種クラス(普通ポルトランドセメントと類似した性能)、B種クラス(高炉セメントB種と類似した性能)、C種クラス(適用箇所は限定されるが、60%以上の二酸化炭素排出量を削減することが可能)の3種類に分類される。今後は、環境配慮性を有したCELBICを適材適所に活用し、普及展開を図っていく予定である。(建設材料技術性能証明)CELBIC-環境配慮型BFコンクリート-:一般財団法人日本建築総合試験所 GBRC材料証明 第20-04号 (4)室内(空気)環境改善に関する技術開発 室内の環境の良し悪しは、健康や知的生産性等多くの面で人の活動に影響を与える。その中でも、空気環境に位置付けられる花粉やPM2.5などの微粒子の侵入や不快な臭気、有害な化学物質の発生、さらに最近は菌、ウイルスなどの脅威にも晒されることがあり、室内空気環境を改善することが重要な課題となっている。そこで当社では、医療施設等を対象に菌や化学物質の除去に有効な空気清浄システムの開発に取り組んでいる。当連結会計年度は、第三者試験機関において空気清浄システムの除菌性能を確認し、同システムの最適配置を検討するための解析ツールの整備を図った。今後、当社が提供する施設建物への適用に向け取り組みを加速させていく予定である。 (5) ZEB化技術への取り組み 地球温暖化防止に向けた脱炭素化への動きを背景に、省エネルギー・ZEB化に対する顧客の関心が高まっている。前連結会計年度末に竣工し、設計において建築物省エネルギー制度(BELS)の最高ランク「ZEB」(Net Zero Energy Building)の認証を受けた久光製薬ミュージアムでは、当連結会計年度での運用データの分析結果においても「ZEB」を達成していることを確認した。 当連結年度では、ZEBの実績を生かして建設した協和エクシオ南関東支店でも、BELSのNearly ZEBの認証を受けており、そのほかZEB化建物の提案や建設を進めている。今後とも、各施設のZEB化で得たデータ、知見を活かして、顧客への設計提案、技術提案に積極的に取り組んでいく予定である。 3.環境分野(1)浚渫土の有効利用技術 カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として使用されている。前連結会計年度は、浚渫土とカルシア改質材をバックホウで効率よく混合できるカルシア混合バケットを開発した。 当連結会計年度は、大規模施工(2,500~4,000m3/日)に対応可能なカルシア落下混合船「オーシャン3号」を新たに建造した。材料の混合比率、含水比や湿潤密度などをリアルタイムで測定する機能を備えているため、品質の良いカルシア改質土の製造が可能となる。試験施工によって施工性や品質に関する性能を確認した後、カルシア改質土による中仕切堤の築造工事に適用した。今後さらに、カルシア落下混合船を活用し、埋立や浅場・干潟の造成等を効率的に進めていく予定である。 4.技術評価証等の取得NETIS登録・盛土併用真空圧密工法の自動動態観測システム HK-200012-A・キュアロード HK-200019-A 大臣認定・高強度コンクリート(Fc60~120):国土交通大臣認定(一般) 2020年4月・高強度コンクリート(Fc60~120):国土交通大臣認定(一般) 2020年5月・高強度コンクリート(Fc60~120):国土交通大臣認定(一般) 2020年7月 (2件)・高強度コンクリート(Fc60~120):国土交通大臣認定(一般) 2020年8月 (2件)・高強度コンクリート(Fc60~150):国土交通大臣認定(一般) 2020年9月・耐火構造(CFT):国土交通大臣認定(一般) 2020年7月 (2件)・耐火構造(CFT):国土交通大臣認定(一般) 2020年8月 (2件)・耐火構造(鋼管柱):国土交通大臣認定(一般) 2020年10月
FY2020|6,436 文字
5 【研究開発活動】当連結会計年度は、生産性向上とICT技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。なお、当連結会計年度における研究開発費は、24億円であった。また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次のとおりである。 (国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)1.土木分野(1)CIMへの取組み 国土交通省はCIM(Construction Information Modeling/ Management)導入ガイドライン制定(2017年3月)に続き、その港湾版を2019年3月に公開するなど、CIM導入の取り組みを加速させている。当社はこれらの動きを先取りし、2016年度より桟橋工事に港湾分野としては初の全面的なCIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にCIMに取り組んできた。 当連結会計年度も適用工種や用途を拡大し、約100件のCIM案件に取り組んだ。これらの取り組みを通して、BIM/CIMに関する国内・国際部門の連携が進み、計画・設計段階や施工段階での効果的な活用方法を見出すことができた。当社はこれからも生産性向上や現場職員の負担軽減に寄与できるよう積極的にCIMの活用・導入に取り組む予定である。 (2)ICT技術のトンネル工事への導入 当社は、東北の復興支援道路「国道106号与部沢トンネル工事」において、国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に前連結会計年度及び当連結会計年度の2回にわたり採択され、生産性向上に資するICT技術を工事現場に導入した。 当現場では、MRやVR※を応用し遠隔地から現場の状況を3次元映像等で体感する技術や、AIにより岩種を判定し書類作成を効率化する技術、BIM/CIM対応クラウドにより発注者へ遠隔自動説明を行う技術、自律飛行型ドローンとAIによりコンクリート点検を省力化する技術などを導入することによって、受発注者双方の生産性向上に寄与することができた。引き続き当社は、これらの取り組みで得られた知見を活かし、トンネル以外の工種にもICT技術の適用を拡大し、省人化や生産性向上に取り組んでいく。※MR:Mixed Realityの略で「複合現実」といい、仮想世界と現実世界を融合させる技術VR:Virtual Realityの略で「仮想現実」といい、人工的に作られた仮想世界を現実かのように体感させる技術 (3)人工知能(AI)を活用した埋立管理システム 海域の埋立によって土地を造成する場合、砂質土が一般に用いられているが、その確保が困難となりつつある。社会の持続的発展の観点からは、航路や泊池の浚渫等で発生する粘性土を有効利用することが今後ますます重要になっている。しかしながら、粘性土を使用する際には、地盤のすべりや支持力破壊に対する安定性の確保、将来沈下量を踏まえた埋立高さの嵩上げや地盤改良方法の検討が必要であり、埋立の土層構成や土質性状を事前に把握することが重要である。 当社は、土運船に積載された粘性土の土源情報、湿潤密度、写真等の情報に基づき、強度定数や圧密定数を推定する人工知能技術を構築するとともに、土運船から投入された粘性土の堆積形状(土層構成)の解析技術と圧密沈下の3次元解析技術を統合した新しい埋立管理システムを構築し、海上工事の現場に適用した。 (4)ARを活用した安全可視化システムの開発と現場適用 当社はこれまで、電気、ガス、水道などが3次元的に複雑に埋設された環境下で地下構造物を構築する工事にAR※を導入してきた。現場地表面映像に埋設管・地下構造物躯体の3Dモデルを重ねて表示させることで、工事関係者間での不可視領域のイメージ共有が容易となり、より高度な施工検討を事前に行うことが可能となった。 当連結会計年度は、あらゆる現場で活用できる汎用的な「AR安全可視化システム」を開発した。港湾工事において、作業船の航行時に予定針路や進入禁止エリア、周辺の船舶情報を現場海面映像に重ねて表示させることで、夜間や濃霧時などの目視確認が困難な条件においても状況把握が容易となり、船舶航行時の安全性を向上させることができた。また、港湾防波堤工事や河川内の橋梁下部工事にも本技術を適用し、クレーンオペレータからは見えない水面下の状況をARで可視化することで、より安全に施工することができた。 ※AR:Augmented Realityの略で「拡張現実」といい、現実世界に仮想世界を反映(拡張)させる技術 (5)桟橋上部工の汎用プレキャスト技術の開発 桟橋工事では海上作業を最小限に抑えるプレキャスト施工が生産性向上の有効な手段として期待されている。これまで、桟橋上部工のプレキャスト床版は実用化されているものの、より海水面に近い梁部材においては、鋼管杭との有効な接合技術が確立されておらず、プレキャスト化が進んでいなかった。当社は、国立大学法人東京工業大学および国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所との共同研究により、桟橋上部工の杭頭接合構造技術を開発した。本技術は、国土交通省東北地方整備局発注工事に採用され、上部工の梁工事に関して従来の現場打ちコンクリート施工に対して約30%の工期短縮を達成した。 桟橋上部工のプレキャスト化にあたっては、杭頭部の剛結接合条件が技術的課題となるが、現場溶接が不要で施工性の優れた鞘管方式を提案した。性能確認実験・構造解析に基づき本構造に関する設計手法を確立した。本構造は、新設・更新工事の区別なく、梁形式やスラブ形式などの多様な構造形式にも対応可能であり、調達できる起重機船の吊能力や作業ヤードの広さに応じてプレキャスト材の大きさを自由に割り付けできるため、汎用的なプレキャスト技術として活用が期待できる。(表彰)日本港湾協会論文賞:2019年5月 (6)海外大型プロジェクトへの国内技術導入 海外のプロジェクトでは、国内で経験のない施工条件や課題が課せられる場合が多い。バングラデシュのマタバリプロジェクトの建設場所は波浪条件の厳しい外洋に面しており、潮流が速く海域は著しく濁っている。このような環境下にあるため、現地に波高・流速計、濁度計などを設置して時系列データを取得するとともに、定期的な深浅測量や採水調査などを実施し、海底地形変化に関する総合的なモニタリング調査を行った。これらの物理データを基に開発した航路埋没予測解析モデルをブラッシュアップし、埋め戻り土砂量を考慮した浚渫計画に反映した。 また、マダガスカルのトアマシナ港拡張事業、インドネシアのパティンバン新港事業などの大型プロジェクトに対して、国内で活用実績が豊富な気海象予測システムや稼働率算定システム、数値波動水路CADMAS-SURF等の数値解析技術を適用し、構造物の設計や施工順序などの施工計画に反映した。 (7)桟橋の調査診断システムの開発 港湾施設の目視調査は、専門知識を有するものが小型船に乗り、船上から構造物を観察して劣化状況を把握するが、専門家の確保が困難であること、特に桟橋下面は狭い空間で上向きの調査となるため労力・時間を要することが問題となっていた。そこで『i-Boat(旧称:無線LANボート)』を航行させ、搭載したカメラにより桟橋下面の劣化状況を撮影し、得られた画像から構造物の劣化度を診断できるシステムを開発し、これまで複数の桟橋調査に適用してきた。 これまで専門家が手動でひび割れや剥落部の抽出を行っていたが、当連結会計年度はこれらの検知を自動化するAI技術を構築した。また、桟橋管理者自らの施設管理計画を支援するため、過去に取得した3D画像や劣化診断結果から劣化の進行状況等を容易に閲覧できる維持管理システムを構築した。 (8)新船種作業船の開発・建造 我が国における洋上風力発電プロジェクトは、港湾区域に引き続き、一般海域においても洋上風力発電の開発を促進する法律が整備され、全国各地で取り組みが本格化している。これらの動向を見据え、前連結会計年度に建造した800t吊SEP型多目的起重機船「CP-8001」に続き、当連結会計年度は洋上風車およびその基礎構造の大型化に対応するため,10~12MWクラスの風車を複数基運搬・設置可能な1,600t吊SEP型多目的起重機船の建造を開始した。 また、SEP型多目的起重機船のレグを効率的かつ安全に海底に設置できるよう,設置状況を計測しながら、リアルタイムで可視化する「リアルタイムLEG着底監視システム」をフランスのiXblue S.A.Sと共同で開発し、「CP-8001」に導入した。建造中の2隻目のSEP型多目的起重機船にも同システムの導入を予定している。 当社は、保有する800t吊SEP型多目的起重機船「CP-8001」と自航式多目的起重機船「CP-5001」に加え、新たな1,600t吊SEP型多目的起重機船を多種多様な工事に積極的に投入していく予定である。 2.建築分野(1)設計、施工へのBIM活用 当社は、建築分野での品質および生産性の向上を目指し、計画・設計段階や施工段階でのBIM(Building Information Modeling/ Management)活用に取り組んでいる。 当連結会計年度は、RC造事務所ビルの設計施工案件に対し、基本計画から実施設計までの各段階においてBIMを適用した。まず、基本設計段階で意匠設計と構造設計の3次元モデルを統合して納まりを調整し、その後、実施設計段階で建築(意匠・構造)と設備(電気・機械)の統合・調整をおこなった。これにより、意匠・構造・設備間で整合性が取れた3次元モデルから任意の2次元設計図を作成することが可能となり、品質の向上につなげることができた。今後はこの3次元モデルを施工に引き継ぎ、施工図の作成等に活用する予定である。また、施工支援として25件の工事に対し、施工段階での納まり調整等にBIMを導入・活用した。今後も設計施工案件や施工案件でBIM活用を進め、さらなる品質と生産性の向上を目指していく。 (2)ICTを用いた施工管理システムの開発と導入 当社は、「武蔵小山駅前通り地区第一種市街地再開発事業施設建築物新築工事」において、BIMモデルを活用して建築工事を統括管理する「五洋建設統合施工管理システム」(PiCOMS(ピーコムス):Penta-ocean integrated COnstruction Management System)を開発し、生産性向上に資するICT技術として導入した。 当現場はプレキャスト部材を用いた超高層建物新築工事であり、プレキャスト部材の製造・取付の情報(予定日時や完了日時など)を、製作工場を含めた工事関係者間でリアルタイムに共有することで、工事の進捗状況の「見える化」が可能となり、施工管理業務の生産性向上を達成した。今後は本システムをプレキャスト工事だけでなく他工種へも展開し、さらなる生産性向上に向けて現場導入を加速させる予定である。 (3) 異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート造梁工法の開発 ハーフプレキャストの梁は、梁上部と梁下部に同一の高強度コンクリートを使用し、スラブの低強度コンクリートと打ち分ける工法が一般的に用いられている。ただし、梁とスラブの境界が強度の異なるコンクリートの打ち継ぎ面となり、施工性の課題やひび割れ発生が懸念されるなどの品質の問題を抱えていた。 そこで、高強度コンクリートで打設された梁下部の上に、梁上部とスラブを低強度コンクリートで一体的に打設する造梁工法(DicosBeam工法:Difference concrete strength Beam Method)を開発した。本工法の採用によって、施工の合理化が図られ、打ち継ぎ面のひび割れ発生リスクの低減が可能となる。梁断面内で強度が異なるコンクリートを使用するため、構造実験および構造解析に基づき、梁の耐力にスラブを考慮した等価平均強度を採用して設計することを定義し、設計法および施工法について構造性能評価を取得した。(構造性能評価)異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート造梁工法の設計法及び施工方法 -DicosBeam工法-構造性能評価書:日本ERI株式会社 ERI-K19023 2019年11月 (4)PSP工法:一般評定改定 PSP(Permanent Soil cement mixing Pile)工法は、仮設の山留壁として用いられるソイルセメント柱列壁の芯材(H形鋼)を本設地下外壁に使用するもので、基礎構造の大幅な合理化とコストダウンが図れる工法として開発し、現場適用を推進してきた。 当連結会計年度は、これまで適用範囲外であった地震時に作用する引抜き力に抵抗する鉛直アンカーとしての適用技術を開発した。対象建物は塔状比の大きい中低層建物としている。構造実験および構造解析結果に基づき設計手法・施工方法を確立し、(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明を改定した。(一般評定改定)PSPII工法 ―芯材を有するソイルセメント改良体工法― (改造2)建築技術性能証明書: 日本建築総合試験所 GBRC性能証明第02-22号改2 2020年2月 (5) ZEB化技術への取り組み 地球温暖化防止に向けた脱炭素化への動きを背景に、お客様の省エネルギーやZEB化に対する関心が高まっている。当社は、久光製薬ミュージアムにおいて、創エネルギーを含めた省エネ率103%を達成し、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:Building Energy-efficiency Labeling System)の最高ランクの「ZEB(Zero Energy Building)」の認証を取得した。 当連結会計年度は、ZEB化技術への取り組みを加速するため、当社技術研究所内の展示実験棟の省エネルギー化改修工事を実施した。省エネ化にあたり、最新技術を含め約30の省エネ技術をバランスよく組み合わせて配置することで、省エネルギー率70%超を見込んだ省エネルギー建物を実現した。 今後、導入したZEB化技術の運用効果について計測・分析・検証を繰り返し、その成果をお客様への設計提案、技術提案に反映・活用して行く予定である。 3.環境分野(1) 浚渫土の有効利用技術 カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として使用されている。 当連結会計年度は、港湾域でのカルシア改質土の活用促進を見込み、施工の効率化を図るために解泥・混合・打設技術の開発に取り組み、浚渫土とカルシア改質材のより効果的な混合を実現する混合バケットを開発し,実現場に導入した。今後、ICT技術を活用したリアルタイム品質管理方法の開発、吸水性改質材や短繊維を添加することにより新たな用途に適用可能な高機能カルシア改質材料の技術開発を進めていく。 4.技術評価証等の取得NETIS登録・AR安全可視化システム: KTK-190007-A 2020年2月・石材・ブロック等大水深投入支援システム:KTK-190008-A 2020年3月 大臣認定・高強度コンクリート(Fc60~150):国土交通大臣認定(一般) 2020年3月
FY2019|6,296 文字
5 【研究開発活動】当連結会計年度は、生産性向上とICT技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。なお、当連結会計年度における研究開発費は、23億円であった。また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次のとおりである。 (国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)1.土木分野(1)CIMへの取組み 国土交通省はCIM(Construction Information Modeling)導入ガイドライン制定(2017年3月)に続き、その港湾版を2019年3月に公開するなど、CIM導入の取り組みを加速させている。当社はこれらの動きを先取りし、2016年度より桟橋工事に港湾分野としては初の全面的なCIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にCIMに取り組んできた。 当連結会計年度は適用工種をさらに拡大するとともに、設計や技術提案などにも展開したことで、CIM導入件数は約100件となった。その中で、斜杭式桟橋の複雑な杭配置における施工上注意すべき箇所のビジュアル化と杭の施工手順の計画、気中・水中の地形測量成果の統合と桟橋構造物設計への反映、切土・盛土の施工量が最小となる工事用道路の最適化計画など新たなCIMの活用方法や効果を見出すことができた。当社はこれからも生産性向上や現場職員の負担低減に寄与できるよう積極的にCIMの活用・導入に取り組む予定である。 (2)ICT技術のトンネル工事への導入 当社は、東北の復興支援道路「国道106号与部沢トンネル工事」において、国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に採択され、生産性向上に資するICT技術を工事現場に導入した。 当現場では、BIM(Building Information Modeling)/CIMに対応したクラウドによる受発注者間連携、自律飛行型ドローンによるコンクリート壁面の点検、発注者事務所からの遠隔現場検査、AR/MR※により検査者の周囲に土質情報等が表示される体感型検査等を実施し、多面的に生産性の向上と管理の高度化を行った。当社は、この取り組みで得られた知見を活かし、このような革新的ICT技術の水平展開を図り、技術に裏付けられた省人化、生産性向上を加速する。 ※AR:Augmented Realityの略で「拡張現実」といい、現実世界に仮想世界を反映(拡張)させる技術 MR:Mixed Realityの略で「複合現実」といい、仮想世界と現実世界を融合させる技術 (3)AIによる土質及び強度推定の自動化 既存の施設や構造物が存在する条件で地盤の液状化対策を行う場合、地盤の隆起や側方変位等の影響が小さい薬液注入工法が広く適用されている。工法の適用に際しては、地表面への薬液の漏出や地盤の隆起が生じないように、注入位置の土質性状に応じて注入率や注入速度等を適切に設定する必要があるが、事前のボーリング調査だけで、対象区域全体の土質性状を綿密に把握することは極めて難しい。 当社は、薬液注入工法における先行削孔時の計測データを用いて、N値および細粒分含有率を効率的かつ精度良く推定するディープラーニングモデルを開発した。対象区域における適切な地盤改良範囲の設定や、薬液注入工法における最適な注入諸元の決定が可能となる。今後、必要に応じて追加の学習や検証を行い、モデルの精度をさらに向上させながら、地盤改良の設計や提案、対策工である薬液注入工法の品質の向上のために、本技術を適用していく予定である。 (4)ARを活用した施工支援システムの現場適用 当社は、電気、ガス、水道などが3次元的に複雑に埋設された環境下で地下構造物を構築する工事にARを適用した。平面図と現場の3Dモデルを重ねて表示させることで、平面図では把握しにくい3次元的な埋設管配置の理解が容易になり、より高度な施工検討が可能となった。また、現場地表面映像に埋設管・地下構造物躯体の3Dモデルを重ねて表示することで、施工関係者間で見えない部分のイメージ共有が容易になった。これからもBIM/CIMと連携したARを現場に取り組むことで、現場の生産性向上を進めていく予定である。 (5)多様なPCa(プレキャスト)桟橋形式に対応した杭頭接合構造の開発 港湾の桟橋工事では海上作業を最小限に抑えるプレキャスト工法が生産性向上の有効な手段として注目されている。桟橋施設には一般的な直杭式に加えて、より水平剛性を高めた斜杭式も広く適用されており、多様な形式に対応したプレキャスト上部工との杭頭接合構造が求められている。 当社は、国立大学法人東京工業大学および国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所との共同研究により、構造実験を通して優れた構造性能を有する杭頭接合構造(直杭式:鞘管方式、斜杭式:ソケット鉄筋方式)を開発した。 (6)海外大型プロジェクトへの技術導入 海外のプロジェクトでは、国内で経験のない施工条件や課題が課せられる場合が多い。特にバングラデシュのマタバリ石炭火力プロジェクトでは、発電所建設予定地が漂砂環境の厳しいベンガル湾奥に位置するため、新設する航路が著しく埋没してしまう懸念が生じた。このため、衛星写真や地形データ等の現地データの収集分析を基に、現地の実態にあった航路埋没予測解析モデルを開発し、効果的な航路埋没対策工や浚渫計画の立案に活用した。また、国内でも実績のある気海象観測予測システムを本プロジェクトに導入し、リアルタイムに現地状況をモニターしながら日々の工事に活用している。 (7)沈埋トンネル最終接合工法(キーエレメント工法)の現地適用 水底トンネルの1つである沈埋トンネル工法は、従来、最終沈埋函を沈設した後に間隙が残り、最終継手の施工が必要であった。当社が開発したキーエレメント工法は、合理的水圧接合構造と施工誤差吸収機構を持つ高止水ゴムを最終函に導入することで、最終継手を省略できる技術である。また、大型起重機船が不要で、一般の沈埋函と同様の施工が可能である。 現在施工中の東京港臨港道路南北線整備事業には、延長2.5kmの海底トンネルの最終函に本技術が適用されている。当社は2018年9月より最終函の製作を開始し、2019年度に沈設を予定している。(表彰)国土技術開発賞二〇周年記念大賞:一般財団法人国土技術研究センター・一般財団法人沿岸技術研究センター 2018年8月 (8)桟橋の調査診断システムの開発 港湾施設の目視調査は、専門知識を有するものが小型船に乗り、船上から観察して劣化状況を把握するが、専門家の確保や調査時間・コストがかかり、特に桟橋下面の調査は労力を要することが課題となっていた。そこで高精度カメラを搭載した『i-Boat(旧称:無線LANボート)』を操船し、桟橋下面の画像データを取得するとともに、ひび割れや剥離などの正確な位置把握や劣化度診断まで自動で行うことができるシステムを開発した。 i-Boatは全長が2.2mであり、遠隔からの無線操船と撮影用カメラの操作が可能である。撮影した画像から、SfM/MVS (Structure from Motion/ Multi-View Stereo)技術により、3次元モデルが構築され、専用のソフトウェアを用いることでひび割れ密度や剥落面積の有無、鉄筋の露出面積割合などの判定基準をもとに劣化度を自動で診断できる。当連結会計年度も、民間桟橋や公共桟橋に対して調査・劣化診断を実施した。今後も港湾構造物の維持管理に積極的に活用していく予定である。(表彰)De Paepe-Willems賞:国際航路協会PIANC 2018年5月第2回インフラメンテナンス大賞国土交通省特別賞:2018年5月 (9)新船種作業船の開発・建造 近年、海洋工事も沖合へと展開していくなか、洋上風力や離島での各種土木工事の実施、大水深防波堤の築造、海洋資源開発など外洋における様々な工事の実施が見込まれている。これらの動向を見据え、SEP型多目的起重機船「CP-8001」の開発・建造を行った。2018年12月に完成し習熟訓練も実施した。 本船は800t吊全旋回式起重機船にSEP機能を付加することにより、気象・海象条件の厳しい海域であっても安全性、稼働率、施工精度の高いクレーン作業が可能である。また、十分な居住スペースと人員輸送のヘリデッキを備えており、遠隔地での作業と長期滞在を可能としている。当社が保有する自航式多目的起重機船「CP-5001」と併用することにより、多種多様な工事に対応可能であり、今後も積極的に投入していく予定である。 2.建築分野(1)設計、施工へのBIM活用 当社は、品質および生産性の向上を目指し、施工段階や設計段階でのBIM活用に取り組んでいる。当連結会計年度は、事務所ビルの設計施工案件に対し、実施設計から施工までを通してBIMを適用した。まず、実施設計段階において建築と設備の3次元モデルを統合して納まりを調整し、その後、整合性が確保された3次元モデルから2次元図面を切り出すことにより、意匠、構造、設備間で整合性が取れた2次元設計図を作成し、品質の向上につなげることができた。次に、この設計段階の3次元モデルを施工に引き継ぎ、施工段階で決定する設備機器や詳細納まりに合わせて改めて納まりを調整し、若干の修正を施すことにより、2次元施工図を作成することができ、生産性の向上につなげることができた。今後とも、施工案件、設計施工案件でBIM活用を進め、さらなる品質と生産性の向上を目指す予定である。 (2)基礎合理化工法の適用 当社は、基礎工事の省力化および工期短縮を目的として、トラス筋を有するハーフPCa床版を側面型枠として使用するとともに、基礎躯体の一部とする基礎合理化工法の開発を進めている。 当連結会計年度は本工法を建築現場の基礎梁の一部に適用した。その結果、在来工法と比較して、省力化や工期短縮が実現できた。また、配管ピット内では、PCa版をそのまま仕上げ面として使用できることが併せて確認でき、本工法の有用性が検証された。今後も、適用範囲の拡大を図るため、本工法の改良を進めていく予定である。 (3)シアキー型耐震改修工法:性能証明取得 外側から補強鉄骨により耐震補強を行う工法は、建物内部の工事を減らすことができるため、建築物を供用しながらの耐震補強が可能であり、居住者等への負担が少ないという特長がある。しかし、外壁にALC板などの外壁パネルを使用した鉄筋コンクリート造および鉄骨鉄筋コンクリート造建物では、外付け耐震補強工法を適用する場合、外壁パネルを撤去する必要があるため、補強費用が増大し、建物を供用しながらの施工ができない。 そこで、既存梁と補強鉄骨の接続においては、一般に用いられる直径20mm程度の後施工アンカーではなく、直径105mmの剛性、耐力が高い鋼製シアキーを用いる工法を開発することにより、既存梁と補強鉄骨の距離が外壁パネルの厚み分だけ離れていたとしても、補強対象建物の地震力を補強鉄骨に伝えることができるようになった。これにより、コスト削減と供用しながらの施工が可能となった。(性能証明)Hyper Lock工法 建築技術性能証明書:一般財団法人日本建築総合試験所GBRC 性能証明 第18-17号 2018年12月 (4)RCS合成壁:一般評定改定 仮設山留め壁として使用されるSMWの芯材を露出させ、芯材フランジ面に施工したスタッドにより地下外壁と一体化し、芯材を地下外壁構造の一部に取り入れることが可能な工法として、RCS合成壁工法がある。 当連結会計年度は、本工法について既に取得しているベターリビングの一般評定(CBL FP005-04号)の改定を行った。今回の改定では、SMW協会の基準に基づく芯材の建入れ精度(1/200)を考慮した施工誤差(鉄筋とスタッドの離隔≦100mm)が許容されるとともに、芯材と地下外壁間に施工される防水材(厚み4㎜以下)の仕様が追加され、工法の適用範囲が拡大された。今後も本工法の現場適用を推進し、建設現場の生産性向上と施工合理化を図る予定である。(一般評定改定)RCS合成壁/杭工法の合成構造としての性能評価書:一般財団法人ベターリビング評定CBL FP022-18号 2019年2月 (5)実案件適用によるZEB実証 当社施工の久光製薬ミュージアムにおいて、断熱強化や空調・照明の最適制御等による高効率化、換気・昇降機設備の高効率化などの省エネ技術を適切に組み合わせるとともに、基本デザインを変えずに屋根面に太陽光パネルを配置するなどの技術提案を行い、創エネルギーを含めた省エネ率103%を達成し、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:Building Energy-efficiency Labeling System)において、最高ランクの「ZEB(Zero Energy Building)」認証を取得した。併せて建物にBEMS(Building and Energy Management System)を導入しており、今後、エネルギー分析を行い、最適運用の提案などにつなげていく予定である。 3.環境分野(1)発生土砂分別・再利用基地の建設・運営 建設発生土は積極的に有効利用されているものの、大量に発生する建設発生土の再利用には課題が多い。当社では、船舶による大量輸送を活用した建設発生土の広域利用の取組みを進めており、建設発生土を集積・保管し、船舶へ積出する土壌再利用センター事業を展開している。汚染土壌については、岩石やコンクリートくず等を分別することや、生石灰や当社技術による製紙灰系泥土改良材「ワトル」を添加して含水比調整を行っている。これまで関東地域を対象とした、千葉県市川市、横浜市の拠点基地を運営していたのに加え、名古屋市に拠点基地を整備し中部地域を対象として運営を開始した。 (2)浚渫土の有効利用技術 カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として広く使用されている。しかし、水中打設に伴う濁りや強度への影響は十分に把握されていなかった。そこで、京浜港ドックを使用した大規模実験により、汚濁の発生を抑制した施工方法を立案するとともに、投入により築造した潜堤の特性(形状や強度)を確認した。 また、効率的なカルシア改質土の混合方法や適切な品質管理方法の開発、吸水性改質材や短繊維を添加することにより新たな用途に適用可能な高機能カルシア改質技術の開発を進めている。 4.技術評価証等の取得NETIS登録・電子式看板: KT-180126-A 2019年3月大臣認定・高強度コンクリート(Fc39~120):国土交通大臣認定(一般) 2018年8月・高強度コンクリート(Fc80~120):国土交通大臣認定(一般) 2019年3月
FY2018|4,921 文字
5 【研究開発活動】当連結会計年度は、生産性向上とICT技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。なお、当連結会計年度における研究開発費は、2,122百万円であった。また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次のとおりである。 (国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)1.土木分野(1)CIMへの取組み 国土交通省は平成29年3月にCIM(Construction Information Modeling)導入ガイドラインを公開し、また港湾分野でも平成30年度中に港湾版CIM導入ガイドラインの公開を予定するなどCIM導入を加速している。当社は、この動きに先行して、将来的な港湾工事の生産性向上に資するため、相馬港のLNG基地建設工事において本格的なCIMを導入した。 CIMの導入により、構造物の位置関係や各部材、仮設構造の取り合いなどの干渉チェックの効率化に加え、船舶の配置計画や資機材の搬入計画、その他の作業計画を3Dモデルに統合し、工事の進捗状況を反映した4Dシミュレーションを可能にした。これらの取り組みにより工事関係者の意思疎通を円滑に行い、施工の効率化、安全性の向上を可能にした。 当社はこれからも積極的にCIMに取り組むことで、建設生産プロセスの効率化・合理化につとめ、建設現場の生産性向上に貢献していく予定である。 (2)PCa(プレキャスト)桟橋の開発 近年、建設工事における担い手不足を背景に、省力化・省人化の取組みが求められている。とりわけ、海上に構築される桟橋工事では、気象海象の影響を受けやすく、海上での作業を最小限に抑えるプレキャスト施工が有効な手段として注目されている。 当社は、国立大学法人東京工業大学および国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所との共同研究により、構造実験を通して優れた構造性能を有する杭頭接合構造を開発し、東北地方整備局発注の桟橋工事において適用した。今後は、CIM施工と連携しながら、多様な桟橋形式の生産性を向上させていく予定である。 (3)京浜港ドックを活用した重力式係船岸増深工法の実大規模実験 船舶の大型化に対して既存係船岸を増深する検討事例が増加している。そのため捨石マウンドの一部を注入・固化することで、法線位置を変更せずに重力式係船岸の増深を可能とする工法が国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所と一般社団法人 日本埋立浚渫協会の共同研究により平成25年に開発された。しかしながら当該工法は注入・固化に用いる可塑状グラウトの2次元注入実験を行った段階であり、実施工上の課題は未検討であった。 当社及び東洋建設㈱は、関東地方整備局から一般公募された「海洋・港湾技術の早期実用化に向けた実証試験」に共同で応募し、京浜港ドックにて増深工法の実大規模実験を行った。容易に注排水できるドック内に実大規模の捨石マウンドを構築し、水中にて捨石マウンド内へのグラウト注入や潜水士による捨石掘削など増深手順を模擬した実証試験を行い、当該工法が施工可能であることを確認した。その後ドック内から排水して増深時の捨石斜面の状況を確認し、さらに未固結の捨石を撤去してグラウトの注入範囲を陸上計測し、増深工法の実施工に向けた貴重なデータを得ることができた。 (4)桟橋の調査診断システムの開発 港湾施設の目視調査は、専門知識を有する者が小型船に乗り、船上から観察して劣化状況を把握するが、船舶接岸中に調査することも多く、専門家の確保や調査時間・コストがかかることが問題となっている。 そこで桟橋下面に『無線LANボート』を航行させ、搭載したカメラにより劣化状況を撮影し、画像を3次元化することでひび割れや剥離などの欠陥位置を正確に把握でき、劣化度の診断を自動で行うことができるシステムの開発を行った。 無線式LANボートは、全長が2.2mであり、遠隔からの無線操船と撮影用カメラの操作が可能である。撮影した画像から、SfM/MVS (Structure from Motion/Multi-View Stereo)技術により、3次元モデルが構築され、専用のソフトウェアを用いることでひび割れ密度や剥落面積の有無、鉄筋の露出面積割合などの判定基準をもとに劣化度を自動で診断できる。 平成29年度には民間桟橋に対して無線LANボートによる調査を初めて受注し劣化診断を実施した。今後は港湾構造物の維持管理に積極的に活用していく予定である。 (5)五洋土工情報収集システム(i-PentaCOL)の開発 一般的なICT土工事では、複数の重機や機器ごとに異なる施工情報を収集し、管理を行っている。最近では、クラウドへデータを集約化し、独自ソフトウェアでデータを統合する取組みも進んではいるものの、複数のクラウドと連携し、自動的にデータを集約するものは無かった。また、建設現場では、ICT化の進展により職員がシステム操作やデータ処理に時間をとられることが新たな負担となっており、それらに関わる時間を短縮することが求められている。本システムでは、多様な機器のICT施工情報から自動的にデータをクラウドサーバーに集約させ、各システムを連携することにより、①システム担当職員の負担軽減、②トレーサビリティの確認、③効率的な出来高の管理や施工計画への反映、④計測データのリアルタイム把握による安全管理が可能となる。 今回、延長約11km、土工数量約80万m3の道路工事現場でICTバックホウ1台、ブルドーザ2台、振動ローラ2台を稼動させ、約6,000m3/月の土工事に本システムを運用したところ、2名の担当職員のデータ処理や機器操作に必要な時間を1人あたり1日約1.2時間低減することができた。 (6)新船種作業船の開発・建造 近年、沖合での洋上風力施設の設置や離島での各種土木工事、大水深防波堤の築造、海洋資源開発など外洋における様々な工事が見込まれている。特に洋上風力発電施設の設置に関しては、平成30年3月に国土交通省と経済産業省によって「港湾における洋上風力発電設備の施工に関する審査の指針」「洋上風力発電設備に関する技術基準の統一的解説」が策定され、プロジェクトの本格的な進展が見込まれている。当社はこれらの工事の受注に向け、日本初のSEP型多目的起重機船「CP-8001」を建造している。 本船は800t吊全旋回式起重機船にSEP機能を付加することにより、気象・海象条件の厳しい海域であっても安全性、稼働率、施工精度の高いクレーン作業が可能となる。また、充分な居住スペースと人員輸送のヘリデッキを備えており、遠隔地での作業と長期滞在を可能としている。完成後(平成30年11月予定)は、当社保有の自航式多目的起重機船「CP-5001」などと併用することにより、多種多様な工事に積極的に投入していく予定である。 2.建築分野(1)設計、施工におけるBIM活用 設計施工案件の実施設計において意匠、構造、設備の3次元BIM(Building Information Modeling)モデルを作成し、それらを統合して納まり調整を行うとともに、3次元BIMモデルから実施設計図を作成して図面間の整合性を確保した。また施工案件では、スロープの形状、躯体と仕上、設備等の施工詳細納まりについて3次元BIMモデルを用いて事前検討・調整を行い、現場施工に反映した。 (2)200N級超高強度コンクリート 設計基準強度200N/mm2のコンクリートの結合材として使用するシリカフューム混合セメントおよびシリカフューム(混和材)の比表面積から、フレッシュコンクリートのワーカビリティーを評価する方法を確立した。これにより、良好なワーカビリティーを確保するための対策を事前に取ることができるため、品質の安定した超高強度コンクリートの製造が可能になった。 (3)鉄筋コンクリート(RC)基礎合理化工法① トラス筋を有するハーフPCa版を基礎梁の構造体の一部として型枠使用する基礎の省力化工法について、基礎梁の構造性能および施工精度等を検証した。② 構造実験により、本開発工法の基礎梁が短期許容応力時に要求される目標性能(構造耐力・損傷程度)を満足していることを確認した。③ 施工実験により、本開発工法を用いた基礎梁ユニットの地組み・据付けの各段階において、PCa版と鉄筋の施工手順および施工精度を確認した。 (4)長周期地震動対策技術 超高層建築物を対象とした南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動対策として、制震装置の選定方法および解析技術に関する整備を行い、超高層建築物案件に適用した。 (5)非線形有限要素解析ソフトの活用技術① RC構造物を対象とする汎用非線形FEM解析プログラムを導入し、過年度に実施した構造実験との比較検証結果を用いて、構造実験で確認していない因子(コンクリート強度の組合せ、断面形状)が、梁の荷重変形性能および構造耐力に及ぼす影響をFEM解析により検証した。② 構造実験において確認していない因子について、設計に関わる有用な知見が得られた。また、構造実験の実施をFEM解析で補完することにより、開発業務の省力化と開発費用の削減を図ることができた。 (6)省エネ評価ツールの開発、省エネ技術の開発と検証① 建物の計画、設計時の省エネ化、ZEB(Zero Energy Building)化検討において、各種省エネ技術を組み合わせて導入した場合のエネルギー評価を行えるZEB評価ツールをゼネコン6社で共同開発した。② 建物の省エネ化技術の一つとして、消費割合が高い空調のエネルギーを低減するため、自然エネルギーである地中熱を利用した換気システムについて、シミュレーションおよび実大実験で効果検証を行った。 3.環境・リサイクル分野(1)繊維補強カルシア改質土の開発 従来のカルシア改質土に比べて靱性を高めた繊維補強カルシア改質土を開発し、一般財団法人 沿岸技術研究センターが実施する港湾関連民間技術の確認審査・評価事業において、評価証を取得した。 浚渫土とカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理・粒度調整した材料)を混合したカルシア改質土は、強度発現・濁り発生抑制等の特徴があり、埋立材や浅場・干潟の基盤材、深掘跡の埋戻し材等に使用されている。これに対し、カルシア改質土に短繊維を添加した繊維補強カルシア改質土では、変形追随性が高い特徴を活かし、海面処分場の底面遮水材、潜堤材、吸出し防止材等への適用を図る予定である。 (2)洋上風力発電 再生可能エネルギーの一翼を担う洋上風力発電は、平成28年改正港湾法施行による港湾区域への導入が促進され、平成30年3月には日本特有の自然条件や日本国内関連法規に鑑みた適合すべき基準の統一的な考え方や施工審査に関する指針類が整備された。また、一般海域においても、洋上風力発電の占用ルールに関する法律案が平成30年3月に閣議決定され、多種多様な海域において洋上風力発電の建設が今後益々推進されると考えられる。 当社は、洋上風力発電設備建設に向けて建造中である国内初のSEP型多目的起重機船の活用を目的として、平成29年度は基礎構造設計手法の確立に向けた、水中振動台等による実験的検討および解析的検討を行った。 4.技術評価証等の取得・繊維補強カルシア改質土:港湾関連民間技術の確認審査・評価 評価証(一般財団法人 沿岸技術研究センター) 平成29年9月・高強度コンクリート(Fc80~120):国土交通大臣認定(一般)2件、平成29年11月・高強度コンクリート(Fc48~100):国土交通大臣認定(一般)、平成30年1月・高強度コンクリート(Fc39~120):国土交通大臣認定(一般)、平成30年1月 (国内開発事業及びその他事業)研究開発活動は特段行っていない。
FY2017|5,752 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度は、技術基盤の強化を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。なお、当連結会計年度における研究開発費は、1,952百万円であった。また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次のとおりである。 (国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)1.土木分野(1)衛星画像データを用いたモニタリング技術の研究開発 港湾施設の維持管理を進めるに当たって、施設の点検は必須である。しかし、港湾施設は点検範囲が広域にわたる場合が多く、離島港湾や点検が急がれる災害時などには施設へのアクセス自体に問題があるなど管理上の課題も挙げられる。 これらの課題を解決する港湾施設のモニタリング手法を平成26年度後半から宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同開発している。衛星画像データを用いることで港湾施設の変動を広域かつ定期的に捉え、高精度に解析評価する。災害時は緊急モニタリングを実施することで対応可能である。当連結会計年度は人工衛星(ALOSないしALOS-2)の観測データから実証港湾空港における災害時の被災速報図の作成を行ったほか、埋立土の鉛直変動や屋外に設置した構造物へ与えた変動などを衛星データからこれまで以上に高精度に解析することに成功した。なお本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーションプログラム)に公募採用された技術であり、5年計画の3年目に相当する。 (2)遠隔操作無人探査機を利用した大水深水中調査ロボットの開発 高度経済成長期を中心に整備された社会インフラは、老朽化が進行しており、効率的・効果的な維持管理を行う必要が生じている。構造物の維持管理を行う上で点検・調査が基本となるが、ダム堤体などの水深40m以上の大水深の条件では、安全面と効率面から潜水士による目視調査が難しい。このような背景を踏まえ、遠隔操作無人探査機(Remotely operated vehicle : ROV)を利用した水中調査ロボットを開発した。 当連結会計年度は国土交通省が実施した「次世代社会インフラ用ロボット現場検証の試行的導入」に参加し、ダム堤体の調査において、ROVに追加搭載した漏水量計測装置の実用性を確認した。今後は、さらに検査技術の高度化や自律航行技術の開発などを進め、様々な大水深域の構造物へ適用できるように、本技術の汎用性の向上に取り組んでいく予定である。 (3)ラジコンボートを用いた港湾構造物の点検・診断システムの開発 港湾施設の目視調査では、専門知識を有する者が小型船に乗り、船上から観察して劣化状態を把握するが、施設の供用中に調査することも多く、相応の人員、時間およびコストが必要である。 そこで、平成26年度からラジコンボートを用いた港湾構造物の点検・診断システムの開発を行っている。当連結会計年度は、3年計画の最終年として、ラジコンボートを用いて実際の桟橋下面の画像を撮影し、SfM/MVS(Structure from Motion/Multi-view Stereo)技術による画像解析と専用ソフトによる劣化診断を行い、本技術が実構造物の点検・診断に活用できることを確認した。本技術によりこれまでの人による調査の2倍以上の速度で実施可能であることから、調査・点検の効率化が図れる。 今後は、開発したシステムを実構造物の点検・診断に積極的に展開していく予定である。なお、本技術の開発は内閣府総合科学技術・イノベーション会議のSIPに公募採用されて実施した。 (4)港湾工事へのCIM適用 国土交通省が推進するCIM(Construction Information Modeling)は、社会インフラの調査設計から施工、維持管理段階まで、ライフサイクル全般にわたる合理化に対する期待から、建設業全体で広く適用されつつある。しかしながら、港湾工事ではCIMの実施例は少なく、あまり活用されていないのが現状である。 当社では前連結会計年度より、港湾の桟橋工事において、他社に先がけて本格的にCIMへの取り組みを開始した。当連結会計年度は、①ボーリングデータを基に支持層の3Dモデルを確認しながら杭の打設を行うとともに、②工場製作のジャケットの既設杭への据付や仮設部材設置・撤去時の干渉などを事前に3Dモデルでシミュレーションするなど、桟橋工事における効果的なCIMの活用手法を確立したことにより、施工の確実性が向上した。今後は、今回得られた知見を踏まえ、様々な港湾工事へのCIMの適用を進めていく予定である。 (5)鋼管杭式桟橋の耐震補強工法の開発 民間が保有する桟橋は、地震による災害対応のための対策が遅れがちである。しかしながら、平成25年6月の改正港湾法の公布により、今後、耐震補強の必要性が高まるものと考えられる。 耐震補強の方法として、民間の顧客からは、施設を供用しながら対策を実施できる方法を強く望まれることが多い。当社は、桟橋施設を供用しながら杭に設置できる制震ダンパーを用いる耐震補強工法を考案した。水中振動台による実験により耐震補強効果の検証を踏まえ、数値解析モデルにより効果を評価する技術を構築し、ダンパーの最適配置に関する設計手法も確立している。 今後は、民間顧客の老朽化により耐力が低下している桟橋に対して本工法を積極的に提案していく予定である。 (6)ジオグリッド補強材を用いた矢板式護岸・岸壁の開発 補強材を用いた補強土壁工法は優れた耐震性を有し、擁壁等の陸上工事において広く用いられている。一方、港湾の係船岸では、ケーソンやL型ブロックに代表される重力式、あるいは鋼管杭や鋼矢板を用いた鋼(管)矢板式が一般的であり、補強材を利用した形式は適用されていない。 当社は国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所との共同研究により、矢板の補強材としてジオグリッドを配置する新しい護岸・岸壁の開発を行っている。遠心載荷実験により、開発した係船岸の耐震性能を確認するとともに、ジオグリッドの最適配置方法等の設計法および最適施工方法を検討した。今後は、試験施工等を通して設計法や施工方法を確立し、護岸や岸壁工事に対して本工法を提案していく予定である。 (7)新船種作業船の開発・建造 近年、海洋工事も沖合へと展開していくなか、洋上風力や離島での各種土木工事、大水深防波堤の築造、海洋資源開発など外洋における様々な工事が見込まれている。これらを競合他社より効率的に受注するためにSEP型多目的起重機船の開発・建造に着手した。 本船は800t吊全旋回式起重機船にSEP機能を付加することにより、気象・海象条件の厳しい海域であっても安全性、稼働率、施工精度の高いクレーン作業(施工)が可能である。また、充分な居住スペースと人員輸送のヘリデッキを備えており、遠隔地での作業と長期滞在を可能としている。完成後(平成30年9月予定)は、当社が保有する自航式多目的起重機船「CP-5001」などと併用することにより、多種多様な工事に積極的に投入していく予定である。 2.建築分野(1)梁・スラブコンクリートの打ち分け工法 異種強度のコンクリートで構成される鉄筋コンクリート(RC)梁に対する現行規準(RC規準等)の適用について、構造性能確認実験の範囲内(スラブ:設計基準強度30N/mm2、梁:同48N/mm2)で妥当性を検証し、確認することができた。本工法により、コンクリート止めの処置を施すことなく、異種強度コンクリートが打ち分けられ、梁部高強度コンクリートによるひび割れ発生を防止することができる。 (2)設計・施工へのBIM適用と効果検証① 実施検証実案件の実施設計において、実施設計図を作成するとともに、防熱の納まり確認や建築・設備の納まり調整を行い、実施設計段階へのBIM(Building Information Modeling)適用の効果を確認した。② 施工図作成検証実案件において、自社開発の施工図テンプレートを用いて施工図(基礎伏図、床伏図、平面詳細図、天井伏図)を作成し、各図面間の整合性を確保することができた。③ 営業・施工支援 7案件について、施工ステップの作成や納まり調整を行い、関係者間の共通認識の形成、現場作業の効率化に寄与することができた。 (3)動的破砕による杭頭処理工法の最適化 今回新たに、施工による影響を受け難い後施工方式を検討し、横孔を放射状に配置する装薬方法による動的破砕・杭頭処理工法を確立した。さらに、水平破断位置に、横孔を放射状に4本配置する装薬方法を標準工法とし、装薬孔長に対する装薬長の比率及び杭径と装薬孔長の比率の最適値を検証した。これにより、杭径によらず、適切な破砕規模で動的破砕による杭頭処理を行うことが可能になった。 (4)150N級コンクリートの構造性能検証 150N級のコンクリートを用いた柱部材は、建築学会の主な規準の適用範囲外であり、変形角が小さい範囲で、かぶり部のコンクリートが剥落することが知られている。そこで、今回は、かぶりコンクリートの剥落防止のために、コンクリートに鋼繊維を所定量混入した柱部材試験体により、構造性能確認実験を行った。その結果、容積比0.5%以上の鋼繊維を混入させることにより、150N級コンクリート柱部材の所要構造性能が確認されるとともに、最適な曲げ耐力式、せん断耐力式が検証された。 (5)ZEB(Zero Energy Building)化実現へ向けた省エネ技術の開発① 本社別館を対象に、事務所ビルの消費エネルギー状況を把握し、導入した各省エネ技術の効果を検証した。② 事務所ビルにおいて、消費エネルギー比率が高い空調について、気流制御により効率的に空調する手法の有効性を検証した。③ 同空調について、自然換気システムによる空調消費エネルギーの低減効果を検証した。④ ZEB実現性について、エネルギー、コスト面での実現性を検証するため、モデルケースでの試算を実施した。 (6)環境配慮型コンクリート① 高流動再生骨材コンクリート外部環境の影響が緩和されるCFTコンクリート造適用の高流動再生骨材コンクリートについて、室内および実機試し練りを実施し、所要性能を有する同コンクリートの製造・施工・品質管理に関する手法を整備した。② 低炭素型再生骨材コンクリート環境配慮型混和材である高炉スラグ微粉末、フライアッシュを比較的多量に用いるとともにリサイクル材である再生骨材を併用した低炭素型再生骨材コンクリートについて、室内実験により基礎性状を確認するとともに、CO2排出量低減効果を確認した。 3.環境・リサイクル分野(1)石炭灰を主材料とする土質系遮水材の開発 変形追随遮水工法(Clay Guard工法)は、浚渫工事等で発生する粘性土を主材料とし、遮水性を高めるためにベントナイトを添加混合することにより、変形に追随する土質系遮水材を製造し、管理型海面処分場の底面・側面遮水工を構築する技術であり、すでに多くの実績がある。 新たに、石炭火力発電所から排出される石炭灰を有効活用することを目的として、粘性土の代わりに石炭灰を主材料とした土質系遮水材の開発を行い、一般財団法人沿岸技術研究センターが実施する港湾関連民間技術の確認審査・評価事業において、評価証(部分変更)を取得した。今後、再生資源の有効活用、環境保全に貢献しながら、開発した工法を管理型処分場の建設工事へ展開していく予定である。 (2)亜熱帯・遠隔離島の沿岸環境保全技術の開発 亜熱帯沿岸や遠隔離島の開発ではサンゴをはじめとする特有の生物の保全が不可欠なことは言うまでもない。平成16年度より小笠原や沖縄地区でサンゴの付着基盤や、サンゴ礁の地形成立に関する研究を実施してきた。これらの海域における波浪や濁りなどがサンゴや海草の分布へ及ぼす影響を評価する技術の開発や現地データを用いた実証などを引き続き継続している。また、これまでに得られた知見を基にした実施工への対応について、検討を進めている。 (3)干潟・浅場等沿岸環境保全技術の開発 沿岸環境にとって干潟・浅場等の保全や再生は重要なテーマである。当社は数多くの人工干潟や浅場を施工しており、東京湾奥部や瀬戸内海での施工場所について、長期的な環境や機能の変化等のモニタリング及び改善提案を継続的に行っている。 また、当連結会計年度から、既設護岸に簡易的な工夫を付加して生物的多様性を高める環境共生護岸の実証実験を東京湾及び大阪湾で開始した。 (4)発生土砂分別・再利用基地の建設・運営 建設発生土は積極的に有効利用されているものの、大量に発生する建設発生土の再利用には課題が多い。当社では、船舶による大量輸送を活用した建設発生土の広域利用の取組みを進めており、建設発生土を集積・保管し、船舶へ積出する土壌再利用センター事業を展開している。これまで関東地域を対象に、千葉県市川市に整備した拠点基地を運営していたのに加え、当連結会計年度には横浜にも拠点基地を整備し運営を開始した。さらに、平成30年度の開設を目標に名古屋にも拠点を整備し、中部地域への展開を進める。 4.技術評価証等の取得・変形追随遮水工法(Clay Guard工法、部分変更):港湾関連民間技術の確認審査・評価 評価証(一般財団法人沿岸技術研究センター) 平成28年3月・高流動再生骨材コンクリート:国土交通大臣認定(一般)を取得 平成28年7月・異形鉄筋を用いるひび割れ誘発目地付耐震壁構法(CCB-NAC工法[Crack Control Bar No Additional Concrete]):建築技術性能証明(曲げ破壊型適用) 平成28年10月 なお、連結子会社においては、研究開発活動は特段行っていない。 (国内開発事業及びその他事業)研究開発活動は特段行っていない。
FY2016|4,752 文字
6 【研究開発活動】当連結会計年度は、技術基盤の強化を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。なお、当連結会計年度における研究開発費は、1,730百万円であった。また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次のとおりである。 (国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)1.土木分野(1)遠隔操作無人探査機を利用した大水深水中調査ロボットの開発 高度経済成長期を中心に整備された社会インフラは、老朽化が進行しており、効率的・効果的な維持管理を行う必要が生じている。構造物の維持管理を行う上で点検・調査が基本となるが、ダム堤体などの水深40m以上の大水深の条件では、安全面と効率面から潜水士による目視調査が難しいという課題がある。このような背景を踏まえ、遠隔操作無人探査機(Remotely operated vehicle : ROV)を利用した水中調査ロボットを開発した。 前連結会計年度に引き続き、国土交通省が公募した「次世代社会インフラ用ロボット現場検証」に参加し、ダムにおいて潜水士による近接目視の代替または支援ができる技術システムとして、一定の点検支援効果が確認されたため「試行的導入」を推薦する、との評価を受けた。 今後は、翌連結会計年度に国土交通省が予定している「試行的導入」に対応していくと共に、ROVに搭載する検査技術の高度化や自律航行技術の開発などを進め、様々な大水深域の構造物へ適用できるように、本技術の汎用性の向上に取り組んでいく予定である。 (2)3D維持管理システムの開発 国土交通省が推進するCIM(Construction Information Modeling)により、建設業では、全体の合理化を目的として調査設計から維持管理にわたる3次元モデルの活用が広がっている。ところがCIMで利用されているソフトウェアの多くは、利用者にとって、まだ扱いが難しいとの指摘が多い。そこで、CIMの新たな運用・利用方法として、インターネット上の3次元モデルを一般的なブラウザで利用することができる3D維持管理システムを開発した。 本システムは、顧客所有のパソコンやタブレット等に標準的に備えられているブラウザから利用することが可能で、特殊なソフトウェアをインストールする必要がない。利用者はインターネットブラウザを介し、遠隔地からまるで実物を目の前にしているように構造物の状態を確認することができ、写真や劣化診断データを3次元モデル上で立体表示することにより、これまで熟練者でなければ把握できなかった構造物全体の劣化の度合いを、誰もが直感的に把握することができる。今後、このシステムを用いて、民間の桟橋などをターゲットに維持管理CIMを展開していく。 (3)浚渫土の有効利用技術の開発 港湾工事から発生する浚渫土の有効利用技術の開発を継続的に行っている。この一環として、浚渫土と転炉系製鋼スラグを混合したカルシア改質土や浚渫土と製鋼スラグにさらに高炉スラグ微粉末を混合して製造した浚渫土人工石の開発に取り組んでおり、カルシア改質土は干潟の中詰材としての利用を、浚渫土人工石は漁礁や藻礁石としての利用を進めるための試験施工を実施した。今後、施工後の調査を実施しその有効性を検証していく。 (4)砂を主材とする固化処理土圧送工法の開発 大量に発生する浚渫土、また建設発生土等を処分するのでなく、良質化して有効利用することは、重要な技術的課題である。砂質土の有効利用技術として、水中に圧送施工可能な、材料分離防止性能と流動性を合わせ持つ固化処理土の製造・施工技術「FL-SAND工法」を開発した。この工法は、福島第一原子力発電所の港内の海底土を封じ込める目的の被覆工事に採用されている。さらに、港内に生息する魚類に対する対策のため、「FL-SAND工法」における添加材の配合量や、作製した材料の打設方法を改良し、防波堤港内側に設置された根固工の表面の空隙を充填、被覆することが可能な工法を実現した。 (5)新船種作業船の開発・建造 近年、工事の多様化と護岸の大水深施工が見込まれている。これらを競合他社より効率的に受注するために2隻の新しい作業船の開発・建造を実施した。 1隻は、港湾・河川から発生した軟弱土砂を、揚土・固化処理し、打設できるプレミックス船「PM-6001」の開発・建造である。「PM-6001」は軟弱浚渫土をセメントなどの固化材を混合することで、所定の強度や流動性を確保でき、揚土・混合処理・打設を安定的かつ連続的に行うと共に、大量急速施工が可能である。 もう1隻は、大水深にて多様な作業が行える多機能型バックホウ浚渫船「BHC-2401」の開発・建造である。近年、基礎捨石均しの深度が20mを超えてきており、潜水士での施工が困難になりつつある。「BHC-2401」は国内最長のロングアームを備えたバックホウを搭載し、浚渫のみならず各種アタッチメントにより最大水深24mまで作業を可能としている。 これらの新船種を保有作業船のラインナップに加え、今後も多種多様な工事に積極的に投入していく予定である。 2.建築分野(1) RC梁合理化工法の実用化 躯体コストの相当分を占める型枠大工の省人化のためには、型枠量の多いRC造建物の梁部材の合理化工法が有効であると考えられる。そこで、プレキャスト(PCa)床版を製作する要領で梁の側版部分と底版部分(せん断補強筋内蔵)を作製し、これらを組み合わせて梁部材の外殻部分を形成するPCa工法について前連結会計年度より開発を開始した。当連結会計年度は、本工法による梁部材について構造性能確認実験を実施し、その性能が在来工法による梁部材と比べて遜色ないことを確認した。また、実大規模の梁を対象とした製作・施工実験を実施し、在来工法と比べて製作手間が少なく、施工性が良好であることを確認した。 (2)設計・施工へのBIM適用と効果検証 建築分野では各社ともBIMの有効活用に取り組んでいるが、建物のライフサイクルをとおしたBIM活用の中で、特に設計・施工一貫でのBIM活用は有効となる。 当社は、工程シミュレーションや仮設検討、施工納まり調整といった施工段階でのBIM活用から取組みを開始したが、当連結会計年度は、設計段階の納まり調整や実施設計図の作成に取り組み、3次元の設計BIMモデルから2次元の設計図を作成する際に必要となる設計テンプレートを開発し、実用化への検証を行った。 現在、設計段階で作成した設計BIMモデルから施工段階で使用する施工BIMモデルを作成し、さらに施工図へと一貫して繋げる仕組みづくりに取り組んでいる。 (3)動的破砕による杭頭処理・解体工法の最適化 動的破砕による杭頭処理工法については、これまでの杭施工前に装薬や準備作業を行う前施工方式から施工による影響を受け難い後施工方式に方向転回し、横孔を放射状に配置する装薬方法による破砕工法を確立した。当連結会計年度は、横孔を放射状に6本配置する標準工法から横孔4本でも破砕できる工法を確立するなど最適化を図った。 また、解体工事においてスラブ部分の外周に非火薬の破砕剤を一定間隔で装薬し、一気にスラブ外端部を全周分破砕し、その後露出した鉄筋を切断することで、スラブを1スパン分一度に解体する工法を確立した。 (4) ZEB(Zero Energy Building)化実現へ向けた省エネ技術の整備 各種省エネ技術を盛り込んだ本社別館や、土壌と熱交換を行うことにより外気に比べて安定した温度の空気を得る空調技術であるアースピット方式を採用した建物における省エネ効果を検証し、ZEB化実現に必要なデータの蓄積を図った。また、前連結会計年度から継続している空調方式に関する実大模擬実験室による効果検証に加え、自然換気制御方式に関する効果検証を開始した。 (5)五洋式解体工法の実用化 人荷用エレベーター(EV)などに用いられるラック&ピニオンを駆動機とする簡易EVにより解体重機を施工階である最上層まで揚重し、施工階の外周をやはりラック&ピニオンを駆動機とする閉鎖式仮囲いで養生する解体システムを確立した。簡易EVの適用により、従来、大型クレーンで解体重機を施工階に揚重していた施工方法を、大幅に省力化した。また、閉鎖型仮囲いは、1階部分で組み立てられ、最上層まで建て枠足場をガイドとして昇降する。2ヶ年にわたり、簡易EVおよび閉鎖式仮囲いともに、実装機を試作し、実荷重を積載した状態で基本動作を繰り返し、その精度と構造性能について検証した。 (6)再生骨材コンクリートの適用拡大 再生骨材H(高品質)に近い品質の再生粗骨材M(中品質)を用いたコンクリートの適切な品質管理方法を構築し、乾燥収縮の影響を受ける地上躯体に使用可能なコンクリートとして国土交通大臣認定を取得した。これにより、従来は場所打ち杭や地下躯体に限定されていた使用部位を地上躯体まで拡大した。 また、CFT造の充填コンクリートとして使用できる再生粗骨材Mを用いた再生骨材コンクリートの出荷範囲を広げることを目的に実験を行っており、翌連結会計年度には国土交通大臣認定を取得する予定である。 3.環境・リサイクル分野(1)亜熱帯・遠隔離島の沿岸環境保全技術の開発 亜熱帯や遠隔離島の沿岸開発ではサンゴをはじめとする特有の生物の保全が不可欠なことは言うまでも無い。平成16年度より小笠原や沖縄地区でサンゴの付着基盤や、サンゴ礁の地形成立に関する研究を実施してきた。さらに、これらの海域で波浪・濁りなどがサンゴや海草の分布に及ぼす影響を評価する技術について技術開発や現地データを用いた実証など、引き続き継続している。 (2)干潟・浅場等沿岸環境保全技術の開発 沿岸環境にとって干潟・浅場等の保全や再生は重要なテーマである。当社は数多くの人工干潟等を施工しており、東京湾奥部や瀬戸内海で施工した干潟や浅場の長期的な環境や機能の変化についてモニタリングを継続している。 また、前連結会計年度からは干潟のアサリ食害対策や仔稚魚の干潟浅場の活用状況調査など、干潟の機能維持にかかわる調査研究も進めている。 (3)ビオトープ関連技術の開発 生物多様性の保全が求められるなかで、栃木県那須塩原市の技術研究所の敷地内に設置したビオトープにおいて、長期的な生物調査を実施してビオトープ関連技術の開発を継続的に行っている。 造成後20年後の当連結会計年度の調査では、動植物の出現種数が増加していること、オオタカやクロゲンゴロウ、ギンラン等のレッドリストに該当する重要な種が出現することを確認した。また、技術研究所のホームページにおいて、こうした生物の出現状況やビオトープに設置したライブカメラの映像を公開している。 4.技術評価証等の取得・乾燥収縮の影響を受ける地上躯体に使用できる再生骨材コンクリート:国土交通大臣認定を取得 平成27年12月・Fc130~Fc150N/mm2の高強度コンクリート:国土交通大臣認定を取得 平成27年6月・ひび割れ誘発目地付き耐力壁工法(CCB工法[Crack Control Bar]):国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)に申請し、登録(登録番号:KT-150088-A) 平成27年11月 なお、連結子会社においては、研究開発活動は特段行っていない。 (国内開発事業及びその他事業)研究開発活動は特段行っていない。