6 【研究開発活動】当社グループは、中期経営計画に基づき、施工の自動化やデジタル化など中核事業の一層の強化に資する技術とともに、社会課題解決型ビジネスやオープンイノベーションによる新たな価値創出への挑戦を目指して、CO2削減に寄与する環境配慮型技術などの開発を進めている。当連結会計年度における研究開発費の総額は222億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。 (建設事業)1 当社(1) 中核事業の一層の強化① 鉄骨梁の製作手間と現場溶接量を削減する「鹿島式ストレート梁工法」を実導入当社は、高層建築物の鉄骨梁端部の接合部を合理化することで品質と生産性が向上した「鹿島式ストレート梁工法」を開発し、(仮称)札幌4丁目プロジェクト新築計画(札幌市中央区)ほか8件の工事に採用した。本工法では、CFT柱と鉄骨梁の接合部に、孔あき鋼板ジベル(*1)を用いて接合部を補強する技術を活用した。これにより、梁端フランジへの水平ハンチ(*2)の取付けが不要になることで、鉄骨梁の製作手間や現場での溶接作業量を軽減できる。同時に高い構造性能を確保しながら柱周りのスペースを広げることが可能となる。*1:鋼材とコンクリート間の応力伝達を可能とする接合技術*2:フランジ破断を防止するために、梁端のフランジを拡幅したもの ② 柱一本を全自動で溶接する新型のマニピュレータ型現場溶接ロボットを実導入当社は、溶接量が多い大型鉄骨柱を主な対象として、柱の全周溶接に伴う一連の繰り返し作業を全自動化する新型の「マニピュレータ(多関節型アーム)型現場溶接ロボット」を開発し、横浜市内の当社施工中ビルにおいて実導入した。本ロボットは、開先(*3)形状計測、溶接、スラグ(*4)除去の一連のフローを熟練技能者と同等以上の高い品質を確保しながら全自動で繰り返すことができるため、昼夜連続作業が可能となるほか、技能者が作業中のロボットから離れ、同時に複数台のロボットを運用するなど他の作業を行うことが可能となる。*3:部材同士を繋ぎ合わせるために、溶接材料で埋める隙間*4:溶接時に表面に発生する不純物 ③ 70年ぶりの新工法となる「型枠一本締め※工法」を開発し歩掛(*5)を20%向上当社は、岡部㈱、㈱丸久、㈱楠工務店と共同で、コンクリート構造物の施工に不可欠な型枠工事を省力化する「型枠一本締め※工法」を開発し、全国20件以上の現場に導入した。在来工法が普及し始めた1950年代以降、画期的な技術革新がなかった型枠工事において、約70年ぶりの新工法となる。本工法は、在来工法に比べて、使用するパイプの軽量化と本数の削減、並びに施工方法の簡素化により、歩掛を約20%向上できる。これにより、技能者の身体的負担を大幅に軽減するとともに、歩掛の向上は作業時間の短縮に直結するため、時間外労働時間の上限規制への対応にも繋がる。さらに、運搬由来のCO2発生量を約50%削減できるほか、パイプ等に採用したアルミ材はリサイクル率が高いことから産業廃棄物を削減できるなど、環境負荷低減にも貢献する。*5:作業を行う場合の作業手間を数値化したもの ④ 国内で初めてUFC(*6)道路橋床版への床版取替工事を1車線規制で実現当社は、UFC道路橋床版を、幅員方向分割(2車線道路の場合1車線規制)で施工する名神高速道路(特定更新等)河内橋他1橋床版取替工事(岐阜県不破郡関ケ原町~滋賀県彦根市)に国内で初めて導入した。床版取替えに伴う道路面の高さ調整が不要なUFC道路橋床版の採用や、一次床版と二次床版の接合部の工夫による確実な一体化により、片側1車線の通行が可能な幅員方向分割の施工を実現し、工事に伴う交通規制等によるソーシャルロスを低減した。*6:Ultra-high strength Fiber reinforced Concrete(超高強度繊維補強コンクリート) ⑤ 安価で締固めが不要な高流動コンクリート「LACsコンクリート※(*7)」を開発当社は、鉄筋コンクリート構造物の施工における生産性向上を目的に、安価で締固め作業(*8)が不要な高流動コンクリート「LACsコンクリート※」(ラックスコンクリート)を開発し、横浜環状南線公田笠間トンネル工事(横浜市栄区)に初導入した。その結果、普通コンクリートで施工した場合と比べ、作業人数を約80%削減、打設時間を約60%短縮できること及び材料分離が生じることなく充填が可能で、硬化後も所定の品質を確保できていることを確認した。また、セメントよりも安価な細骨材を増量することで、トータルコストの増加を抑制した。 *7:Low Action Casting / Low Actual Cost / Limited Abandoned Compaction / Lead Abbreviation Casting / 楽(らく)コンクリート*8:コンクリート打設中にコンクリート中の空気と過剰な水を追い出し、型枠の隅々まで行き渡らせる作業 ⑥ 山岳トンネルの自動化施工システム「A4CSEL※ for Tunnel」が完成当社が2017年から開発を進めてきた、次世代の山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL※ for Tunnel」(クワッドアクセル・フォー・トンネル)が完成した。当社が各種実証試験を行っている神岡試験坑道(岐阜県飛騨市)にて当システムの実証施工を行い、山岳トンネルの掘削作業6ステップ(①穿孔 ②装薬・発破 ③ずり出し ④アタリ取り ⑤吹付け ⑥ロックボルト打設)で使用する重機の自動化・遠隔化に成功し、安全性向上並びに省力化及び生産性向上に貢献できることを確認した。 (2) 新たな価値創出への挑戦① 羽田イノベーションシティで「Wi-SUN FAN(*9)」によるロボット遠隔誘導の実証実験に成功当社は、SolidSurface㈱及び㈱日新システムズと共同で、「Wi-SUN FAN」を活用したロボット遠隔誘導の実証実験を羽田イノベーションシティにて行っている。従来、4GやWi-Fiの通信電波は、壁などの障害物に影響を受けるため、建物の最奥部やエレベータ内に電波が行き届かず、ロボットが一時的にコントロール不能になるという課題があったが、「Wi-SUN FAN」を4GやWi-Fiの補助として用いることで“電波が途切れることで生じるコントロール不能時間”を大幅に短縮することに成功した。これにより、更に安定したロボットの遠隔誘導が可能となり、実際の運用においても高い信頼性が確保できることを確認した。*9:Wireless Smart Utility Network for Field Area Network profileWi-SUNアライアンスが策定した通信仕様。2.4GHzや5GHz帯を使用するWi-Fiと異なり、920MHz帯で使用され、複数の中継器を経由した無線マルチホップ方式により屋外のような広い場所での通信に優れる。 ② 鹿島の立体音響スピーカー「OPSODIS 1」がGREEN FUNDINGの2024年最優秀プロジェクトに選出当社は、英国サウサンプトン大学と共同開発した立体音響技術「OPSODIS※(*10)」(オプソーディス)を搭載した小型スピーカー「OPSODIS 1」のプロトタイプを開発し、クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」で2024年6月から販売を開始した。その後、約8か月で単独の国内企業による製品開発プロジェクトとしては過去最高となる支援総額6億円を突破した。また、「GREEN FUNDING」で起案された優れたプロジェクトを選出する「GREEN AWARD 2024」で、その年を象徴する卓越したプロジェクトとして評価され、最優秀賞を受賞した。*10:Optimal Source Distribution(最適音源配置) ③ デジタルで森林づくりを総合支援当社は、森林内の自律飛行が可能なドローンなどを活用して取得した森林上空と森林内のデータを解析することで、森林を構成する樹種毎のボリュームや樹々毎の位置・樹高などを点群データ化し、評価する技術を開発した。本技術を用いて、自治体や企業などの森林所有者が行う森林づくり計画の提案から森林経営、活用支援までをトータルにサポートするサービス「Forest Asset※」(フォレストアセット)の提供を開始した。当サービスを活用することで、森林管理の生産性が向上するほか、森林資源を生かしたJ-クレジット制度や自然共生サイト認定の申請など、森林が持つ付加価値向上に向けた取り組みが可能となる。 ④ 月面人工重力居住施設の成立性を京都大学と鹿島が共同研究当社と京都大学は、月面人工重力居住施設「ルナグラス※」の実現に向けた第一歩として共同研究を開始した。これまで、宇宙居住に必要な3つの構想(人工重力、縮小生態系、人工重力交通システム)を掲げ、基礎的な概念の構築を行ってきた。本共同研究においては、これまでの概念検証から一歩進め将来的な実現に向けて、月面での人工重力居住施設の構造成立性、施工成立性、居住性、人体への影響評価、閉鎖生態系(ミニコアバイオーム)の確立について、研究を進める。 (3) 成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進① 大気中から回収したCO2を用いたコンクリート製造を実証当社と川崎重工業㈱は、川崎重工業㈱が保有するDAC(Direct Air Capture)技術を用いて開発した、大気中から1日5kg以上のCO2を99%以上の高純度で回収できるCO2分離・回収装置と、当社らが開発したCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM※(*11,12)」(シーオーツースイコム)にCO2を吸収・固定させるための炭酸化養生槽(*13)とを組み合わせたシステムを構築した。このシステムをプレキャストコンクリート製品工場に設置して実証実験を行った結果、所定のCO2固定量並びにコンクリートとしての品質が得られることを確認した。同システムを用いて舗装ブロック「CUCO※(*14,15)-SUICOMブロック」を製造し、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の「CUCO※-SUICOMドーム」(愛称:サステナドーム)のエントランスの一部に敷設した。 *11:CO2-Storage Utilization Infrastructure by Concrete Materials*12:当社、中国電力㈱及びデンカ㈱の登録商標*13:安定した環境でCO2を吸収・固定することを目的とした、CO2を封入したコンクリートの養生装置*14:Carbon Utilized Concrete*15:当社、デンカ㈱及び㈱竹中工務店の登録商標 ② 低炭素型コンクリート「ECM コンクリート※(*16)」を成瀬ダム堤体へ本格導入当社は、成瀬ダム堤体打設工事(秋田県雄勝郡東成瀬村)において、低炭素型コンクリート「ECM(エネルギー・CO2ミニマム)コンクリート※」計1,526m3を、ダム堤体と造成岩盤コンクリートの一部に国内で初めて導入した。当コンクリートは、普通セメントの代わりに、高炉スラグ微粉末を60~70%混合したECMセメントを使用する。当セメントは、一般的なダムコンクリートに用いられる中庸熱フライアッシュセメントと比べ、製造時に排出されるCO2を52%削減できる。これにより、本ダムの建設工事に伴い発生するCO2排出量を73t削減した。*16:当社及び㈱竹中工務店の登録商標 ③ フィリピンのサンゴ礁再生プロジェクトにおいてコーラルネット※と環境評価技術を実証当社は、東京科学大学及びフィリピン大学と共同で、衰退の危機にあるサンゴ礁の保全と再生を目的としたプロジェクト「InCORE※(*17)」(インコア)をフィリピン・パナイ島タンガラン湾で2023年2月から2024年7月にかけて実施した。その結果、数値シミュレーション技術等による環境評価と当社の「コーラルネット※」を用いて行ったサンゴ再生試験において、複数の地点でサンゴの成長やサンゴ幼生の着生が認められるなどの効果を確認した。このプロジェクトはアジア開発銀行の国際公募事業に採択されたものである。*17:Integrated Approach for Coral Conservation and Rehabilitation (国内関係会社)1 鹿島道路㈱舗装に関する新技術の開発建設副産物の有効利用とCO2排出量削減を目指し、100%リサイクル安定処理路盤材を開発した。この路盤材は、再生クラッシャランと高炉スラグ微粉末などのリサイクル材のみを原料としており、一般的なセメント安定処理路盤と同等の圧縮強度を有するため、舗装構造の高耐久化の効果も期待できる。また、作業の省力化を図るため、25tタイヤローラ搭載式平板載荷試験機を開発した。この試験機は、試験に必要な反力を十分得ることができ、100㎏程度の載荷板の設置・撤去作業を自動化することで、省力化と安全性の向上を実現した。現在、この技術は、空港の滑走路舗装工事で採用している。 2 ケミカルグラウト㈱PFAS(*18)汚染対策技術の開発PFAS汚染対策を目的として、新開発の特殊吸着材を用いた固定化技術及び低温による加熱浄化工法を開発した。この特殊吸着材は、鉱物主体の原料に電荷を付与し、PFASの優先吸着性能を向上させており、室内実験では、一般的な吸着材の活性炭のPFAS溶出量75%減に対し、95%減と効率的な流出防止が期待できる。一方、熱処理の場合、PFASは1,100℃の高温加熱処理が推奨されているが、処分場への運搬による拡散リスクや汚染土の掘削除去コストが懸念される。新開発の浄化工法は、室内試験で450℃と低温での浄化に成功したものであり、規制対象を含めた49,000種類のPFASを除去できることが確認できた。今後、温度と浄化効果の関係を評価するとともに、固定化技術及び原位置での加熱浄化工法の実証実験を行い、開発を進めていく。*18:Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances発がん性がある難分解性物質で、人体や環境中に長期間滞留するため「永遠の化学物質」とも呼ばれている。 (開発事業等及び海外関係会社)研究開発活動は特段行われていない。 (注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
FY2024|4,433 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、中期経営計画に基づき、施工の自動化やデジタル化など中核事業の一層の強化に資する技術とともに、社会課題解決型ビジネスやオープンイノベーションによる新たな価値創出への挑戦を目指して、CO2削減に寄与する環境配慮型技術などの開発を進めている。当連結会計年度における研究開発費の総額は207億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。 (建設事業)1 当社(1) 中核事業の一層の強化① 巨大地震による長周期地震動に対して超高層建物全体の揺れを大幅に低減する「KaCLASS※(*1)」を初導入当社は、巨大地震に伴い発生する長周期地震動による超高層建物全体の揺れを、従来の耐震・制震架構と比べ大幅に低減する制御層制震構造※「KaCLASS※」を開発し、阪急阪神不動産㈱が事業を進める超高層タワーレジデンスであるジオタワー大阪十三(大阪市淀川区)に初導入した。本技術は、建物高さの70%程度の位置に設けた制御層が地震エネルギーを大きく吸収し、建物全体の揺れを大幅に低減するものである。これにより従来の耐震・制震架構と比較して少ない柱梁で高い安全性を確保できることから、開放的な空間が実現可能となる。*1:Kajima Control Layer Advanced Structural System ② 墨出しを全自動かつ高精度に行う「ロボプリン※」を開発当社は、建築工事に不可欠な墨出し作業を、全自動かつ高精度に行うロボットプリンタ「ロボプリン※」を開発した。今般、当社機械技術センター(神奈川県小田原市)において実証実験を行い、墨出し作業の生産性を約2倍に向上できることを確認した。本技術は、読み込んだ施工図面データを基に、工事に必要な基準墨や仕上げ墨などをコンクリート床にプリントするものである。特別な装置やアプリが不要であることから導入が容易であり、スタート後は全自動で作業するため、誰でも手軽に高精度の墨出しが可能となる。 ③ 現場製造式爆薬によるトンネル全断面発破を実現当社は、次世代の山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL※ for Tunnel」(クワッドアクセル・フォー・トンネル)の開発を進めている。今般、施工ステップの一つである「装薬」の自動化に向けた一歩として、岩盤面の孔内に装填するまで火薬化しない「バルクエマルション爆薬」を採用した全断面発破を、国内の山岳トンネル工事で初めて実現した。切羽での高所装填作業のための設備を含む製造許可を取得後、2024年2月に、当社が各種実証試験を行っている神岡試験坑道(岐阜県飛騨市)において同爆薬による初発破を行い、4月末までに計14回の発破を実施した。今後も、高い安全性を確保できる同爆薬を用いた技術開発を進めることで、装薬・発破作業の自動化及び効率化を目指していく。 ④ 成瀬ダムで自動化施工システムによる「現場の工場化」を実現当社は、成瀬ダム堤体打設工事(秋田県雄勝郡東成瀬村)において、2020年度から適用している自動化施工システム「A4CSEL※」(クワッドアクセル)の機能・性能の向上及び適用範囲の拡大を推進している。今般、CSG(*2)の自動搬送と自動ダンプトラックでの運搬・荷下ろし作業を実現したことで、既に適用している自動ブルドーザによるまき出し、自動振動ローラによる締固め作業と合わせて、CSGの製造から打設に至る全ての作業を完全自動化することに成功し、当社が同工事において目指してきた「現場の工場化」の一つの形が実現した。*2:Cemented Sand and Gravel現地発生材(石や砂れき)とセメント、水を混合してつくる材料 (2) 新たな価値創出への挑戦① 世界初となる通信用光ファイバを用いた工事振動の検知に成功当社は、日本電気㈱及び東日本電信電話㈱と共同で、光ファイバセンシング技術を応用し、既に電柱に共架している通信用光ファイバを振動センサとして活用する実証実験を行い、トンネル掘削工事の振動検知に世界で初めて成功した。本技術により、新たにセンサを設置することなく、建設工事現場周辺における振動状況を広範囲かつリアルタイムに把握することが可能となる。 ② 交通事故ゼロ社会の実現に向けて「スマートロード」の開発に着手当社は、トヨタ自動車㈱、㈱NIPPO、東京都市大学及びカリフォルニア大学バークレー校と共同で、将来の新たなモビリティサービスの提供や自動運転社会の到来を見据え、センシング機能を有する道路「スマートロード」の開発に着手した。今般、当社技術研究所(東京都調布市)敷地内に、光ファイバセンサを埋め込んだ試験舗装フィールドを構築し、道路上の歩行者や自転車などの移動体の位置を、同センサで検知したデータにより自動追跡できることを確認した。 ③ 月面での施工に必要な構成技術及び要素技術の妥当性を確認当社は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)及び芝浦工業大学と共同で、当社を代表者として2021年から国土交通省の公募事業「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」に参画し、研究開発を進めている。今般、当社の実験場「鹿島西湘実験フィールド」(神奈川県小田原市)とJAXA相模原キャンパス(相模原市中央区)を結び、自動遠隔建設機械による月面環境での作業を想定した実証実験を行った。その結果、月面での永久陰領域等での施工に必要となる構成技術及び要素技術の妥当性を確認することができた。 ④ シンガポールにおいて海外研究開発拠点が入る自社ビル「The GEAR(*3)」が開業当社及び当社グループのアジア開発事業統括会社であるカジマ・デベロップメント・PTE・リミテッドが、シンガポールで開発を進めてきた自社ビル「The GEAR」が2023年8月に開業した。「The GEAR」は、当社グループのアジア本社、R&Dセンター及びオープンイノベーションハブの3つの機能を併せ持つ建物である。R&Dセンターとして当社技術研究所のシンガポールオフィス(KaTRIS(*4))が建設ロボット、スマートウェルネスオフィス及び環境・バイオ等に関する研究室「ラボ」を構えており、今後、大学やスタートアップ等と連携して、アジアの成長市場に求められる技術開発を進めていく。*3:Kajima Lab for Global Engineering, Architecture & Real Estate*4:Kajima Technical Research Institute Singapore (3) 成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進① CO2排出量を70%削減した「CUCO※(*5,6)-SUICOMドーム」(クーコスイコムドーム)の試験施工を完了当社は、デンカ㈱及び㈱竹中工務店と共同で、コンソーシアム「CUCO※」の幹事会社として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」の一環として、コンクリートの製造過程で排出されるCO2の排出量が実質ゼロ以下となるカーボンネガティブコンクリートの開発を進めている。今般、当社技術研究所(東京都調布市)の隣接敷地において、当社保有の「KTドーム※」技術を活用し、躯体部分に低炭素型コンクリート「ECMコンクリート※(*7)」とカーボンネガティブコンクリート「CUCO※-SUICOMショット」を活用した「CUCO※-SUICOMドーム」の試験施工を完了した。試験施工では、これら両コンクリート材料の吹き付け並びに「CUCO※-SUICOMショット」の炭酸化養生を現場で行った。これにより、従来の吹付けコンクリートと比較して、CO2排出量の70%削減を達成した。*5:Carbon Utilized Concrete*6:当社、デンカ㈱及び㈱竹中工務店の登録商標*7:当社及び㈱竹中工務店の登録商標 ② 牛のげっぷ中のメタンガスを抑制する海藻の量産培養手法を開発当社は、牛のげっぷに含まれるメタンガス(*8)排出量低減に寄与する海藻「カギケノリ」の量産培養手法を開発した。カギケノリの形状を自然に近い状態である直立形状から球状に変えることで、人の管理のもと陸上の水槽で安定的に量産できる技術を確立した。本技術で生産した海藻を牛などの反すう動物の餌に混ぜることで、胃の中で発生するメタンガスを抑制する効果が期待できる。*8:CO2に次いで地球温暖化の原因となっている気体 (国内関係会社)1 鹿島道路㈱舗装に関する新技術の開発アスファルト舗装及びコンクリート舗装関連の各技術(材料、施工、建設機械、品質、環境、維持修繕及びDX化など)について研究開発を進めている。新たな舗装材料として、雨天でも施工可能な全天候型アスファルト緊急補修材及び環境配慮型添加材を使用したAKD(*9)舗装用混合物の開発を行った。また、舗装建設機械の自動化及び安全性向上策として、ブルドーザなどに搭載する緊急停止装置の開発を行った。なお、2024年3月に「技術開発総合センター」(埼玉県久喜市)を開設し、新たな研究開発体制を構築した。今後は、各技術部門の研究開発者を集約し、創造力の向上と開発のスピードアップを目指していく。*9:Anti Kerosene and Durability 2 ケミカルグラウト㈱微生物を利用した地盤固化に関する新技術の開発CO2排出量削減を目的として、セメントを使用しない、微生物を利用した地盤固化技術を開発した。本技術は、地盤中の微生物に栄養を与え炭酸カルシウムを析出させることで、軟弱な地盤を固めて強化するものである。本技術を用いて作製した固化体は自立し、100~200kN/㎡の一軸圧縮強度をもつ。また、透水係数は1×10-2m/secまで減少することが確認された。今回開発した技術の特徴は、外部微生物の添加は行わず工事の対象となる地盤の常在菌のみを活用し、さらに、食品添加物にも使用される中性無害な栄養剤を使用するため、周辺環境への影響が少なく、安全かつ広範囲に注入ができる点である。また、微生物の活性化に酸素を使用しないため、酸素が不足する地下水位以深の地盤にも適用可能である。今後、従来のセメントによる施工が行われている液状化対策工事や汚染物質対応の遮水壁工事などへの適用に向け、更に開発を進めていく。 (開発事業等及び海外関係会社)研究開発活動は特段行われていない。 (注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
FY2023|5,387 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、中期経営計画に基づき、建設生産システムの自動化・デジタル化やバリューチェーンの拡充による中核事業の一層の強化とともに、社会課題解決型ビジネスやオープンイノベーションによる新たな価値創出への挑戦を目指して技術開発を進めている。当連結会計年度における研究開発費の総額は182億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。 (建設事業)1 当社(1) 中核事業の一層の強化① 「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を実工事に初導入当社は、岐阜工業㈱及び㈱シンテックと共同で、「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を開発し、新名神高速道路大津大石トンネル工事(滋賀県大津市)に初導入した。本システムは、2020年に開発した締固めが不要な覆工用高流動コンクリートによる完全自動打設システムを、軽微な締固めが必要な中流動覆工コンクリートにも対応できるよう進化させたものである。これにより、中流動覆工コンクリートにおいても全自動高速打設が可能となり、省力化による生産性向上及び品質向上を実現した。 ② 1車線規制で床版取替が可能な「スマート床版更新(SDR(*1))システム※」を開発当社は、道路橋床版更新工事に伴う交通規制等によるソーシャルロスの大幅な低減を可能にする「スマート床版更新(SDR)システム※」の開発を進めており、今般、幅員方向分割(2車線道路の場合1車線規制)取替を対象とした「幅員方向分割SDRシステム」を開発した。SDRシステムは、床版取替に関わる4つの作業(既設床版の撤去、主桁ケレン、高さ調整及び新設床版の搬入・架設)を同時に並行して行う「移動式工場」を実現した施工システムで、標準的な工法と比べ、工期の大幅な短縮を実現する。*1:Smart Deck Renewal ③ ダム堤体打設工事における月間打設量の国内最高記録を樹立当社は、成瀬ダム堤体打設工事(秋田県雄勝郡東成瀬村)において、堤体のCSG(*2)の打設に、当社が開発した多数の自動化建設機械を同時に自律運転させる次世代建設生産システム「A4CSEL※」(クワッドアクセル)を導入した。これにより自動化建設機械よる大量高速施工を実現し、2022年10月には、ダム工事における国内最高記録となる月間打設量27.1万m3を達成した。これまでの最高記録は、1960年8月の黒部(黒四)ダム工事の14.73万m3であり今回その記録を大幅に更新した。*2:Cemented Sand and Gravel現地発生材(石や砂れき)とセメント、水を混合してつくる材料 ④ 恵比寿ガーデンプレイスタワーの制震工事が完了当社は、サッポロ不動産開発㈱が運営する恵比寿ガーデンプレイスタワー(東京都渋谷区)の屋上に、当社が開発したTMD(*3)型制震装置「D3SKY※-L」(ディースカイエル)を設置する制震リニューアル工事を完了した。この装置の設置により、長周期地震動を含む大地震から中規模地震まで、建物の揺れ幅や揺れを強く感じる時間が大幅に低減される。今般設置した「D3SKY※-L」は、多段積層ゴム式の大地震対応の大型TMDであり、専用開発の積層ゴムを用いて装置高さを低く抑えるとともに、TMDを3基連結した構造にすることで大幅な省スペース化を実現した。*3:Tuned Mass Damper揺れの周期を調整した錘が動くことにより建物の揺れを止める制震装置 (2) 新たな価値創出への挑戦① スーパーコンピュータ「富岳」を用いた新型コロナの感染リスク評価と感染拡大抑止対策が日本オープンイノベーション大賞文部科学大臣賞を受賞当社は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理化学研究所)、豊橋技術科学大学、京都工芸繊維大学及びダイキン工業㈱と共同で参画しているプロジェクト「スパコン「富岳」による新型コロナ飛沫感染リスク評価のデジタルトランスフォーメーションと社会実装」(代表者:理化学研究所/神戸大学 坪倉教授)が、内閣府主催の第5回日本オープンイノベーション大賞文部科学大臣賞を受賞した。当社は、このプロジェクトに建設会社として唯一参画している。今回、産学連携体制で飛沫・エアロゾル感染リスク評価を具現化したこと及びパンデミック初期から感染リスク評価と感染拡大抑止対策を提案してきた社会的な意義、更に最先端科学の成果を実社会に組み入れ目に見える成果を上げた事例として高く評価され、受賞に至った。 ② 自動車専用道路の管理ツールに光ファイバを初めて採用当社は、自動車専用有料道路の熱海ビーチライン(静岡県熱海市)において、一定の区間を走行する車両の位置や速度を、道路上に敷設した光ファイバでリアルタイムに把握する実証試験を初めて行った。具体的には、ケーブル状の光ファイバセンサを車道と路肩の区画線上に設置し、高性能の光ファイバ計測器を用いて道路に生じる振動を計測した。その結果、同区間を走行する全ての車両の位置や速度などのデータが精密かつリアルタイムに取得でき、道路管理ツールとして活用可能であることを実証した。 ③ 水災害に対するトータルエンジニアリングサービスを提供開始当社は、近年、激甚化・頻発化する水災害に対して、企業の水災害を想定したBCPを支援するトータルエンジニアリングサービスを実現するためのシステムを開発し、サービスの提供を開始した。本サービスはリスク評価、対策立案、対策工事及び運用支援から構成されており、当社グループが有する技術力を結集して合理的な対策を提供し、水災害を想定した顧客にとって最適なBCPをサポートするものである。本サービスは、既設・新設の個別施設に加え、広域なスマートシティの計画にも適用可能である。 ④ 空飛ぶ部屋「フライングボックス工法※」を実工事に適用当社は、PC床版とCLT(*4)パネルを用いた新たなユニット化工法「フライングボックス工法※」を開発した。本工法は、現場敷地内の屋内地上部でPC床版にCLTパネルの壁と天井を組み立て、内装まで仕上げた後に揚重して所定の位置に取り付けるものである。在来工法に比べ、天候の影響を受けないため計画的に安定した施工が可能であり、仕上材等の揚重回数が大幅に減少するため生産性が向上する。また、作業の多くが地上部となるため安全性の向上にも繋がる。今般、当社の研修施設「鹿島テクニカルセンター」(横浜市鶴見区)に適用し、その有効性を確認した。*4:Cross Laminated Timberひき板を繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料 ⑤ 最高高さ162mの超高層ビルを「鹿島スラッシュカット工法※」で解体当社は、超高層ビルの新たな解体工法「鹿島スラッシュカット工法※」を開発し、世界貿易センタービルディング既存本館解体工事(東京都港区)に適用した。本工法は、工期の短縮に加え、超高層ビルの解体工事に欠かせない強風・地震対策や第三者災害リスクの排除に寄与するとともに、騒音の大幅な低減や施工中のCO2排出量の削減など環境にもやさしい工法である。世界貿易センタービルディングの既存本館は最高高さ162mの超高層ビルであり、解体された建物としては国内最高である。 (3) 成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進① カーボンネガティブを実現するコンクリートを用いた「CUCO※(*5,6)-SUICOM型枠」(クーコスイコム型枠)を実工事に初適用当社は、デンカ㈱及び㈱竹中工務店と共同で、コンソーシアム「CUCO※」の幹事会社として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」を推進している。今般、その最初の研究開発成果として、製造過程におけるCO2排出量が実質ゼロ以下となるカーボンネガティブコンクリートを用いた埋設型枠「CUCO※-SUICOM型枠」を国土交通省発注の放水路トンネル工事に適用し、一般的な高強度パネル使用時に比べ、CO2排出量677kg/m3の削減と実質排出量△62kg/m3のカーボンネガティブを実現した。*5:Carbon Utilized Concrete*6:当社、デンカ㈱及び㈱竹中工務店の登録商標 ② 環境配慮型コンクリートの適用により181t-CO2のJ-クレジットを取得当社は、2022年3月にコンクリートの製造・運搬に関わるCO2排出量を、ブロックチェーン技術により見える化するプラットフォームを開発した。同年5月、本プラットフォームを初めて活用し、国が運営するJ-クレジット制度(*7)において181t-CO2のクレジット(J-クレジット)を取得した。J-クレジットは、当社の単身寮「ドーミー南長崎アネックス」(東京都豊島区)において、通常のコンクリートよりもセメントの使用量が少ない環境配慮型コンクリートの「ECMコンクリート※(*8)」及び「エコクリート※BLS」を使用し、コンクリートの製造・運搬に関わるCO2排出量の削減によって取得した。*7:省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量をクレジットとして国が認証する制度*8:当社及び㈱竹中工務店の登録商標 ③ 生物多様性や雨水の貯留・浸透に貢献する総合的なソリューションを提供当社は、建物の屋上、壁面及び外構の緑化技術を最大限に活用した、生物多様性や雨水の貯留・浸透に貢献する総合的なソリューションの提供を開始した。本ソリューションは、今回新たに開発した外構緑地システム「DEWレインガーデン※」と、既存技術を改良した屋上緑化システム「エバクールガーデン※」及び壁面緑化システム「緑彩マルチパネル※.RT」を組み合わせたものである。今般、当社の研修施設「鹿島テクニカルセンター」(横浜市鶴見区)にこれら3つの技術を初めて同時に採用した。 ④ 消失が危惧される地域固有の大型海藻類を再生・保全当社は、近年、全国の沿岸域で深刻な問題となっている藻場衰退の解決に向けて、各地域に生育する固有の大型海藻類を年間を通じて生産できる技術を開発した。本技術は、大型海藻の種に相当する配偶体を少量の保存液に長期間保存し、随時、大量に増やして海藻の苗を生産するものである。当社技術研究所の葉山水域環境実験場(神奈川県三浦郡葉山町)では、人工漁礁に本技術を適用した現地試験で、大型海藻アラメの順調な生長を確認した。本技術は、脱炭素社会に向けたブルーカーボン(*9)創出やネイチャーポジティブ(*10)への貢献として注目されている。*9:海藻などの海中植物が吸収・貯蔵した炭素のことで、CO2吸収源のひとつ*10:生物多様性の減少傾向を食い止め、回復に向かわせること (国内関係会社)1 鹿島道路㈱舗装に関する新技術の開発舗装建設機械の自動化等ICTを用いた省力化・省人化技術、CO2排出抑制技術、舗装現場のDX化及び重機の安全性向上技術等について、研究開発を進めている。舗装建設機械の自動化として、自動運転ローラを開発した。本ローラは事前に設定した経路を自動的に往復走行するものであり、周囲に走行目標物がない場合や曲線部においても適正なパターン(往復距離及びラップ幅)での転圧が可能となった。また、カーボンニュートラルの実現に向けて、リサイクル素材を100%使用した安定処理路盤材を開発した。これは、高炉スラグ微粉末及び刺激剤を用いたものであり、セメントを用いた従来の製造方法と比較して約77%のCO2排出削減が可能となった。 2 ケミカルグラウト㈱高圧噴射撹拌工法の外部認証取得地盤改良用の高圧噴射撹拌工法である「ジェットクリート※」工法が、国土交通省が運営する新技術情報提供システム(以下、NETIS)の活用促進技術に指定された。活用促進技術とは、国土交通省各地方整備局等の新技術活用評価会議において全国的に普及することが有益と判断された技術であり、例えば入札時に指定技術を提案した場合には、他の技術と比較して高評価が得られるものである。なお、高圧噴射撹拌工法が地盤条件等の適用範囲を限定せずに指定されたのは現行のNETIS制度では初めてである。また、建築基礎用の高圧噴射撹拌工法である「エコタイト※-S」工法について、一般財団法人日本建築総合試験所による審査の結果、建築技術性能証明の適用範囲拡大が認められた。本工法による地盤改良体の築造において、従来の円形断面形状の改良体に加え、扇形及び矩形断面形状の改良体についても性能が証明されたことで、施工の自由度が高まった。外部認証の取得によって、両工法の信頼性が向上したことから、今後、更に積極的に提案していく。 (開発事業等及び海外関係会社)研究開発活動は特段行われていない。 (注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
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5 【研究開発活動】当社グループは、近年の社会環境の大きな変化を踏まえ、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指して技術開発を進めている。中期経営計画(2018~2020)において重点的に取り組んだ生産性向上・生産能力増強に繋がる技術開発は、デジタル建設生産システムの構築を目指す新たなフェーズに入った。さらに、長く使い続けられる社会インフラや、「鹿島環境ビジョン:トリプルゼロ2050」の実現等、社会課題解決と新たな価値創造に資する研究開発を中長期的な課題として取り組んでおり、大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。当連結会計年度における研究開発費の総額は173億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。 (建設事業)1 当社(1) 中核事業の一層の強化① 国内で初めてUFC(*1)道路橋床版を高速道路本線の床版取替工事に適用当社は、阪神高速道路㈱と共同で、UFC道路橋床版を阪神高速12号守口線本線の床版取替工事(大阪市北区)に適用した。UFC道路橋床版を適用した高速道路本線の床版取替工事は国内で初めてであり、旋回可能な専用架設機により、作業の効率化を図ることで、通行止め期間を大幅に短縮した。本工事で得られた高速道路本線における床版取替工事の知見を活かし、高度成長期に建設され老朽化が進行している床版の大規模リニューアル工事に向けた検討を進め、技術の更なる向上を図っていく。*1:Ultra-high strength Fiber reinforced Concrete(超高強度繊維補強コンクリート) ② プレキャストセグメント橋で3次元計測技術による出来形管理を実施当社は、四国横断自動車道吉野川大橋工事(徳島県徳島市)において、架設前のセグメント形状を3次元デジタルカメラにより全方向から計測し、架設線形を高精度に予測する出来形管理を実施した。本工事は、プレキャストセグメント橋として世界最長規模の張出し架設長を有するが、この技術により、架設途中での線形修正なしに施工することが可能となり、生産性の大幅な向上に繋がった。今後、本工事で活用した3次元デジタルカメラによる出来形管理を、プレキャスト部材を活用した様々な工種に展開することも検討し、更なる生産性と品質の向上に繋げていく。 ③ BIMによる進捗管理システム「BIMLOGI※」を開発当社は、工場で製作する各種部材の製作・運搬・施工の各フェーズにおける進捗予定と実績を、BIMデータと連携して管理する進捗管理システム「BIMLOGI※」を開発した。本システムの活用により、日々刻々と変化する工事の進捗状況を、リアルタイムに把握し関係者間で共有し、工事の手戻りや手待ちの発生を減らすことができる。都内の大型建築現場において、本システムによる進捗管理を実証し、所期の効果を得たことから、今後、本システムを既開発の各種現場管理ツールと連携し、より合理的な現場管理を目指す。さらには、本システムをCO2排出量算定ツールとしても活用することで、現場毎のCO2排出量の把握と削減に取り組み、脱炭素社会への移行に積極的に貢献していく。 ④ 「KTドーム※」工法を実工事に適用当社は、ドーム・テクノロジー社との技術提携により、多様なドーム型構造体の構築が可能な「KTドーム※」工法を開発した。本工法は、工場製作したドーム型のポリ塩化ビニル膜に空気を送り込んで膨らませ、これを型枠として内側からコンクリートを吹き付けることで躯体を構築していくものであり、施工中に天候の影響を受けにくいため、工期の短縮や建設コストの低減が可能となる。2020年3月に、当社の西湘実験フィールド(神奈川県小田原市)において、国内で初めて本工法によるドーム型事務所棟を建設した実績を踏まえ、2021年6月に、本工法を貯蔵サイロ建設工事(山口県周南市)に適用した。今後、本工法の活用範囲を広げ、アリーナなど様々な用途の建物に展開していく。 (2) 新たな価値創出への挑戦① 建設施工ロボット・IoT分野における技術連携に関するコンソーシアムを設立当社は、建設会社45社とともに、建設業界全体の生産性及び魅力向上をより一層強力に推進することを目的に、建設施工ロボット・IoT分野での技術連携に関する「建設RX(*2)コンソーシアム※(*3)」を設立した。本技術連携の対象は、施工関連技術のうち、ロボット・IoTアプリ等に関する共同研究開発であり、新規開発、改良、実用化及び技術開発に伴う技術の実施許諾を含む。我が国の建設業界を担う企業及びこれに協力・支援する企業が、各々の自主性を尊重しつつ、施工に活用するロボットやIoTアプリ等の開発と利用の推進について協働することで、技術開発のコスト削減、リスクの分散、開発期間の短縮を図り、それらの普及を加速させていく。*2:Robotics Transformation*3:幹事会社である当社、清水建設㈱及び㈱竹中工務店の商標 ② 月面での建設機械の遠隔操作・自動運転を目指した遠隔施工実験の実施当社は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と、月面での無人による有人拠点建設を目指して、2016年より遠隔操作と自動制御の協調による遠隔施工システムの実現に向けた共同研究を進めてきた。2019年3月に当社の西湘実験フィールドにおいて自動化建設機械による実験を行い、その成果を基に、2021年3月に更なる発展型として、遠隔からの建設機械の操作及び自動運転による施工実験を共同で行った。その結果、JAXA相模原キャンパス(神奈川県相模原市)から1,000km以上離れたJAXA種子島宇宙センター衛星系エリア新設道路等整備工事(鹿児島県南種子町)の建設機械を遠隔で操作し、さらに相模原からの指令により自動運転に切り替えた上で作業を行い、高い精度での施工が可能であることを確認した。 ③ 当社技術研究所本館研究棟がWELL認証プラチナ、WELL健康安全性評価を取得当社は、技術研究所本館研究棟(東京都調布市)において、「WELL Building Standard(*4)」(WELL認証)の最高ランクであるプラチナ及び感染症の流行時やその他緊急事態における施設の健康安全性を評価するWELL Health-Safety Rating(WELL健康安全性評価)を取得した。WELL認証は人間の健康に焦点を置いた国際的な環境評価システムであり、特に、当社が開発した五感に訴えるウェルネス空間「そと部屋※」は先進的な取り組みとして高い評価を受けた。今回の認証及び評価取得を通じて蓄積されたナレッジをベースに、今後、建物利用者の快適性、知的生産性、健康面、安全性に配慮した空間の実現を積極的に提案していく。*4:International WELL Building Institute PBCの登録商標 ④ 「富岳(*5)」新型コロナウイルス対策プロジェクト飛沫感染チームがゴードン・ベル賞特別賞を受賞当社は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理化学研究所)を中心とした、スーパーコンピュータ「富岳」を活用した新型コロナウイルス対策プロジェクト「室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策」(代表者:理化学研究所/神戸大学 坪倉教授)に参画しており、同プロジェクトが2021年ゴードン・ベル賞COVID-19研究特別賞を受賞した。本賞は、計算科学分野で権威のある賞の一つで、スーパーコンピュータによる高性能並列計算を科学技術分野へ適用することに関してイノベーションの功績が最も顕著と認められた研究に与えられる。当社は、2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)以来の感染症の流行を受けて、2011年より室内環境におけるウイルス飛沫シミュレーションの研究開発を行っており、独自に開発したプログラム及び自社保有の計算サーバーや可視化実験装置を用いて、飛沫感染に対する建築計画及び設備計画上のノウハウを蓄積している。こうした知見を活かし、様々な室内環境の計算モデルの作成と境界条件設定などの室内環境シミュレーションや結果に対する検証、感染リスク低減策の提案を行っている。*5:理化学研究所の登録商標 ⑤ 公共施設アセットマネジメント支援システム「KCITY-M※」(ケーシティ・エム)の開発当社は、関係会社の㈱アバンアソシエイツ、㈱イー・アール・エス及び㈱カジマアイシーティと共同で、地方自治体の公共施設アセットマネジメントを支援する分析システム「KCITY-M※」を開発した。本システムは、各種のオープンデータやGIS(地理情報システム)を用いて、地域防災や将来人口・まちづくり、施設のマネジメントに資する分析サービスを提供するものである。さらに、総合分析として評価指標の重みづけを自治体の状況に応じて調整しつつ、全体最適の視点に立って、施設の総合的な特性や想定される対策の優先順位を見える化して提供する。今後、本システムを活用して、公共施設の維持・再編や防災・BCP対策等、地方自治体への支援サービスを展開し、地域社会の課題解決に貢献していく。 (3) 成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進① NEDO(*6)グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」に参画当社は、NEDOの「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」のコンクリート分野の開発項目について、デンカ㈱及び㈱竹中工務店と共同でコンソーシアム(民間企業44社、10大学及び1研究機関による)を構成して提案を行い、2022年1月24日に採択された。本研究開発においては、高いレベルで汎用性のあるカーボンネガティブコンクリートを実現するとともに、施工技術の開発、品質評価技術を確立することで、実社会への本格的な普及を目指す。併せて、今回の技術開発で取り組む積極的なコンクリートへのCO2固定化により、脱炭素から「活炭素」へのステージ移行をさらに推し進め、温室効果ガス削減という社会課題解決に貢献していく。*6:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構② NEDOグリーンイノベーション基金事業「洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」に参画当社は、日立造船㈱と共同で、NEDOの「浮体式基礎製造・設置低コスト化技術開発」事業を開始した。本事業では、「洋上風力発電のセミサブ型ハイブリッド浮体の量産化・低コスト化」をテーマに、浮体式基礎の最適化、浮体式基礎の量産化及びハイブリッド係留システムについて、研究開発を行うものである。本研究開発においては、双方がこれまで培ってきた技術力を融合し、その成果を将来の社会実装、さらにはカーボンニュートラル社会の実現に繋げられるよう取り組んでいく。 ③ 多様な再エネ熱を熱源としたヒートポンプシステムの実証試験を開始当社は、ゼネラルヒートポンプ工業㈱と共同で、NEDOの「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」事業において、㈱豊田自動織機 大府工場(愛知県大府市)に「SSHP※(*7)」(天空熱源ヒートポンプ)システムを設置し、実証試験を開始した。本実証では上流(設計段階)から下流(運用段階)に係るコンソーシアム体制を構築することで、導入コスト低減に向けた各要素技術開発と緊密に連携する。同施設での運転とモニタリングを通じてデータを収集し、システムの最適化によるコスト削減目標の実現とCO2削減を目指す。*7:Sky Source Heat Pump (国内関係会社)1 鹿島道路㈱舗装に関する新技術の開発舗装現場のDX化、CO2排出抑制技術、建機の自動化等ICTを用いた省力化、省人化技術、重機の安全性向上技術等について、研究開発を進めている。舗装現場のDX化として、アスファルト混合物の運搬状況と温度及び転圧回数をリアルタイムに確認・管理できるシステム、KSSL(*8)を開発し、実工事に適用した。また、構造物更新技術として、接着剤を用いて従来技術より高品質となるコンクリート床版拡幅技術を開発した。*8:Kajima Smart Site Link 2 ケミカルグラウト㈱環境実験室の新設とその成果土壌汚染対策のための環境技術の更なる向上を目指し、関連技術の開発速度を速めることを目的として環境実験室を新設した。本実験室は、二重床構造により汚染物質の漏洩確認を可能としたほか、床面の浸透防止塗装や排ガス・廃水処理装置を完備することで、汚染物質取り扱いの安全性を高めた。また、リアルタイムPCR分析機、ガスクロマトグラフ質量分析計及びX線分析装置付電子顕微鏡の導入により、土壌汚染対策工事に必要な汚染物質分解微生物の遺伝子解析及び土壌汚染対象物質となる有機・無機の有害物質の分析が可能となった。これらの設備を用いることで、解析・分析データの蓄積が飛躍的に増え、長年の課題であった微生物分解技術を用いた土壌浄化工法の設計手法を確立し、その結果、既存の環境技術である「バイオジェット※」工法の精度向上や適用範囲の拡大が可能となったほか、新規の研究開発を大きく進展させることができた。今後も環境技術の更なる向上のため、内製化により蓄積されるデータを基に既存技術を深化させていくとともに、新たな技術開発を進めていく。 (開発事業等及び海外関係会社)研究開発活動は特段行われていない。 (注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
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5 【研究開発活動】当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注や生産への貢献を目的に、建設事業の生産性及び品質向上のための技術開発を進めている。さらに、近年のIoTやAIの急速な技術革新がもたらす建設業のビジネスモデルの転換や、国連が採択したSDGsの実現、地球環境改善等の社会課題解決に資する研究開発を中長期的な課題として取り組んでおり、大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。当連結会計年度における研究開発費の総額は150億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。 (建設事業)1 当社(1) 次世代建設生産システムの構築① 建設現場用ロボット向けにAI技術を搭載した自律移動システムを開発当社は、㈱Preferred Networksと共同で、建設現場で使用するロボットが現場内を自律移動するためのシステム「iNohTM」(アイノー)を開発した。本システムを搭載することで、GNSS(全球測位衛星システム)や人による事前設定がなくても、各種ロボットがリアルタイムに自己位置や周辺環境を認識し、日々刻々と状況が変化する現場内を安全かつ確実に移動できるようになる。また、「iNohTM」を初搭載したAI清掃ロボット「raccoonTM」(ラクーン)を開発し、首都圏の現場に導入を開始した。今後、「iNohTM」を巡回や資材搬送などを担う各種ロボットに実装することで、建設現場へのロボット導入をさらに促進していく。 ② デジタルツイン基盤「鹿島ミラードコンストラクション※」を構築当社は、ピクシーダストテクノロジーズ㈱と共同で、「鹿島スマート生産※」で活用するデジタルツイン基盤「鹿島ミラードコンストラクション※」(Kajima Mirrored Construction、以下KMC)を構築した。併せて、KMCを用いて施工の進捗状況を部材単位で数値化・可視化するプログラムを開発し、運用を開始した。KMCはクラウド上のデータベースで、着工前に作成するBIMと施工中の建設現場に設置したセンサ・デバイスから取得する空間データを一元管理する。当社は、KMCを東京都内のプロジェクトに導入し、レーザスキャナーやToFセンサ(*1)、Webカメラによる空間データの継続取得を開始しており、取得した空間データには撮影時刻(タイムスタンプ)が付与され、日々変化する建設現場を映し出すデジタルツイン・データとして、施工管理の効率化、遠隔管理、自動搬送ロボットの運用に活用していく。*1:Time of Flightセンサセンサからパルス投光されたレーザがセンサ内の受光素子に戻ってくるまでの時間を計測し、その時間を距離に換算する測定センサ ③ トンネル覆工コンクリートの完全自動打設に成功当社は、岐阜工業㈱及び㈱シンテックと共同で、従来に無い革新的な打設配管システムを開発し、トンネルの覆工コンクリート打設を完全に自動化することに成功した。本システムは、覆工用高流動コンクリートを用いることで締固め作業を不要とし、またコンクリートポンプ車の圧送信号と配管の切替えをリンクさせることで打込み作業も不要としたことにより、人の手を全く介さずに、打上がり高さを自動で調整しながら、全断面で左右均等にコンクリートを吹上げ打設する。これにより省人化、省力化を図り、安定したコンクリート品質を確保するとともに、従来工法と同等のコストを実現した。 (2) 社会・顧客にとって価値ある建設・サービスの提供① 超高性能繊維補強セメント系複合材料(UHPFRC(*2))を用いた道路橋床版のリニューアル工法を開発当社は、中日本高速道路㈱と共同で、超高性能繊維補強セメント系複合材料(UHPFRC)を用いた道路橋床版のリニューアル工法を開発した。本工法は、鋼繊維を多量に混入したUHPFRCを現場で製造・打設して補強・補修を行い、薄層でありながら、高耐久な床版を構築するものである。UHPFRCは超高強度であるため、コンクリート床版・鋼床版のどちらのリニューアルにおいても、床版の厚さの増加を最小限に抑えることができる。そのため、道路橋床版自体の重量を減らすことができ、橋梁下部工の補強が不要となる。超高強度かつ耐久性に優れたUHPFRCを用いた現場打ち施工による補修・補強技術は、高速道路のリニューアルに大きく寄与することが期待されることから、今後は実工事への適用に向けた準備を進めていく。*2:Ultra High Performance Fiber Reinforced cement-based Composites水結合材比が15%程度で極めて緻密なセメント系材料を繊維で補強したもの ② 躯体のひずみに関する光ファイバによる高精度なリアルタイム管理システムを開発当社は、ニューブレクス㈱と共同で、これまでにない革新的な計測技術により光ファイバ上に生じたわずかなひずみ変化を検知できる管理システムを開発し、ケーソン沈設工事に適用した。他の技術では見ることのできない躯体内部全体のひずみ分布を、網羅的にリアルタイムでモニタリングし、地盤摩擦などケーソン沈設時のトラブルの予兆を捉え、高品質で周辺環境に優しい施工を実現した。わずかなひずみ変化もピンポイントかつ瞬時に捉えられる同システムは広く展開が可能であり、本設・仮設を問わず様々な工種における施工管理へ積極的に活用していく。さらに、光ファイバを残置することにより、長年にわたり構造物の維持管理に活用できることから、インフラのライフサイクル全般での当技術の普及を目指す。 ③ リアルタイム現場管理システム「3D K-Field※(*3)」をスマートシティに初適用当社は、建設現場における資機材の位置や稼働状況、人の位置やバイタル情報等をリアルタイムに3次元で表示するリアルタイム現場管理システム「3D K-Field※」を、当社など9社が出資する羽田みらい開発㈱が運営する大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY※(*4)」(東京都大田区)の施設運営ツールとして導入した。本システムを施設のデジタルツインとして活用し、各施設や自律走行バスの混雑状況並びに施設管理スタッフやサービスロボットの稼働状況を把握することで、来場者の満足度の向上や合理的な施設管理・運営を目指す。なお、本システムの導入に際しては、当社の関係会社である㈱One Teamがシステムのカスタマイズと各種センサの取付等を担当した。*3:当社、マルティスープ㈱及びアジアクエスト㈱の共同開発*4:当社の関係会社である羽田みらい開発㈱の登録商標 (3) 社会課題取組み強化(インフラ、耐震環境)① 飛沫感染対策に「富岳」による室内環境シミュレーションを活用新型コロナウイルスの脅威が続く中、当社は、室内に漂う飛沫の動きをコンピューター上で予測・見える化し、空調・換気、衝立などによる気流制御を駆使して、ウイルス感染のリスクを低減するための研究・開発を進めている。さらに部屋の広さや建材・家具に適したアドバイス・計画立案で接触感染を防ぐ除菌コンサル、レイアウト診断など多様な感染対応策の提供も行っている。当社は、2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年の新型インフルエンザの流行を契機に、いち早く飛沫に着目した研究をスタートし、2020年4月からは、国立研究開発法人理化学研究所を中心とした、世界最高性能のスーパーコンピュータ「富岳」を利用した新型コロナ対策に貢献するプロジェクトに建設会社として唯一参画している。 ② CO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM※(*5,6)」(シーオーツースイコム)を開発・実用化当社は、中国電力㈱及びデンカ㈱と共同で、硬化の過程でCO2を吸い込み、カーボンネガティブ(CO2排出量がゼロ未満)を実現する革新的なCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM※」を世界で初めて開発・実用化した。「CO2-SUICOM※」は、セメントの半分以上を産業副産物に置き換えるとともに、産業廃棄物を原料とする特殊な混和材(γ-C2S)の配合により産業活動で排出されるCO2をコンクリート中に大量に固定することができる。地球温暖化防止に向けてCO2削減が急務となっている中、2020年12月に経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では「CO2-SUICOM※」が戦略技術として取り上げられており、普及・展開に大きな期待が寄せられている。現在、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の委託を受け、「CO2-SUICOM※」の適用範囲を拡大するための開発を進めており、社会課題の解決に向けての検討をさらに加速させていく。*5:CO2-Storage Utilization Infrastructure by COncrete Materials*6:当社、中国電力㈱及びデンカ㈱の登録商標 ③ 分散ファンによる省エネ空調システム「OCTPUSTM(*7)」(オクトパス)を開発当社は、ダイキン工業㈱と共同で、分散ファンによる最適風量制御空調システム「OCTPUSTM」を開発し、本システムをみなとみらい21中央地区58街区(横浜市西区)で当社が他社と共同で開発を進めるオフィスビル「横濱ゲートタワー※」に初導入した。本システムは、大規模なオフィスビルなどで採用されるセントラル空調方式において、空調ゾーン毎にファン付風量制御装置を設置、空調機と連携させることで空調風量制御を最適化し、省エネルギーを実現する。今後、オフィスビルなどの空調システムとして「OCTPUSTM」を積極的に提案し、建物運用エネルギーの削減を図っていくほか、IoTセンサとの組み合わせによるウェルネス空間への展開も検討していく。*7:Optimal Controlled Terminal fan Powered Unit System (国内関係会社)1 鹿島道路㈱舗装に関する新技術の開発舗装現場のDX化、CO2排出抑制技術、建機の自動化等ICTを用いた省力化、省人化技術、重機の安全性向上技術等について、研究開発を進めている。舗装現場のDX化の第一ステップとして、トンネル内などの電波不感区域でデジタル通信を可能とする、PLC(*8)技術を用いた通信網構築技術を開発した。今後は、実工事への展開を図る。*8:Power Line Communication 2 ケミカルグラウト㈱土壌汚染対策遮水壁の開発施工機械の小型化とこれに対応した特殊材料の開発により、土壌汚染対策に適した遮水壁を造成する工法を開発した。従来の土壌汚染対策は、汚染土をセメント系遮水壁で囲い込むことで汚染物質の流出を防ぐことや汚染土そのものを掘削除去することが主流であったが、遮水壁の造成や掘削除去には大型機械が必要であり、汚染土直上にある工場等の稼働停止または解体撤去が必要となるなど、施工上の制約が多く、土壌汚染対策実施の足かせとなっていた。本工法は、施工機械の小型化により、狭隘な場所での施工並びに工場等の稼働を止めることなく対策工事を行うことを可能とするものである。また、小型施工機での造成用に新たに開発した特殊材料は、地盤変位に追随できる柔軟性を持つため、地震等の外力に対しても遮水壁の性能を維持することが可能となる。さらに、この特殊材料には鉄粉等の浄化材を混入させることができるため、遮水壁の造成と土壌汚染の原位置浄化を同じ機械で行うことで費用対効果の高い施工も可能となる。本技術は、土壌汚染の封じ込めと原位置浄化の適用範囲を拡大し、従来は施工が難しかった厳しい条件下での土壌汚染対策に特に有効と考えられる。今後、実工事での実績を積み、多様な地盤への適用を含めた開発をさらに進めていく。 (開発事業等及び海外関係会社)研究開発活動は特段行われていない。 (注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。また、「TM」が付されているものは当社の商標である。
FY2020|4,285 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注や生産への貢献を目的に、建設事業の生産性及び品質向上のための技術開発を進めている。さらに、近年のIoTやAIの急速な技術革新がもたらす建設業のビジネスモデルの転換や、国連が採択したSDGsの実現、地球環境改善等の社会課題解決に資する研究開発を中長期的な課題として取り組んでおり、大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。 当連結会計年度における研究開発費の総額は164億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。 (建設事業)1 当社(1) 次世代建設生産システムの構築① ロボット施工・IoT分野における技術連携当社と㈱竹中工務店(以下、竹中工務店)は、建設業界全体の生産性及び魅力向上に向け、ロボット施工・IoT分野における基本合意書を締結し、技術連携を進めることとした。「建設RX(*1)プロジェクト」チームを立ち上げており、「機械遠隔操作システム」や「場内搬送管理システム」を共同開発している。また、開発済み技術の相互利用にも着手しており、当社が開発した「溶接ロボット」や竹中工務店が開発した「清掃ロボット」を両社の現場で活用していく。今後の技術開発においても、本合意書に基づき積極的に協働を進めるとともに、こうした取組みを広く業界全体に働きかけていくことにより、建設業が抱える諸課題の解決に尽力していく。*1:ロボティクス トランスフォーメーション デジタル変革(DX)になぞらえ、ロボット変革(Robotics Transformation)の意。 ② 土木工事現場への適用性を高めた四足歩行ロボットを導入当社は、ソフトバンクロボティクス㈱並びにソフトバンク㈱の協力のもと、最先端のロボット技術を保有するBoston Dynamics社の四足歩行型ロボット「Spot」(スポット)を用いた実証実験を神奈川県のトンネル現場で実施した。その後、トンネル内の路盤などでも不自由なく歩行できるよう改良された「Spot」を、世界に先駆けて土木工事現場で活用することを目指し、2019年12月に導入した。今後はトンネル現場をはじめ様々な土木工事への活用を図る。これからも「Spot」をはじめとするロボット技術の導入を積極的に推進し、建設業界の更なる生産性や安全性の向上を図り、業務の効率化を目指す。 ③ 動画像分析を活用したコンクリートの全量受入れ管理システム土木分野のコンクリート工事において、アジテータ車から荷卸しされるコンクリートの全量を連続的にモニタリングし、その動画像から施工性の良否をリアルタイムで判定するシステムを開発した。本システムにより、施工性の悪いコンクリートを確実に排除し、配管閉塞などの施工不良を未然に防止する。また、既存技術である連続RI水分計と組み合わせて用いることで、強度や耐久性も連続してモニタリングし、少人数で総合的な品質管理、コンクリート構造物の品質確保を実現する。 (2) 社会・顧客にとって価値ある建設・サービスの提供① 建物の全てのフェーズでBIMによる「デジタルツイン」を実現当社は、建物の企画・設計から施工、竣工後の維持管理・運営までの各情報を全てデジタル化し、それらを仮想空間上にリアルタイムに再現する「デジタルツイン」を推進しており、当社のBIM推進モデルプロジェクトであるオービック御堂筋ビル新築工事(大阪市中央区)において、各フェーズにおける建物データの連携を可能にするBIMによる「デジタルツイン」を実現した。今後はBIMデータの利活用範囲をさらに拡大し、建築プロジェクトにおける様々な業務の効率化を図っていくとともに、建物オーナーや利用者の利便性・快適性と、建物資産価値のより一層の向上に寄与していく。 ② 河川の水位予測システムを実工事に適用当社は、㈱構造計画研究所が提供する「力学系理論を用いた河川の水位予測システム」を、工事の安全及び施工管理に必要な情報を提供できるようにカスタマイズし、施工中の大河津分水路新第二床固改築Ⅰ期工事(新潟県長岡市)に適用した。本システムは、測定地点の6時間後の水位を予測するもので、2019年10月より本工事に適用し、取得した測定地点の予測と実測水位を比較した結果、その有用性が確認できた。各種作業の実施や継続の可否、避難の要否の判断に非常に有益であることから、今後、他の河川内工事等への適用を進め、工事の安全及び施工管理の更なる向上を図っていく。 ③ 新たなプラットフォームを活用した建物管理サービスの提供当社と鹿島建物総合管理㈱は、日本マイクロソフト㈱と連携し、建物管理プラットフォーム「鹿島スマートBM※」(Kajima Smart Building Management)を開発、サービスの提供を開始した。空調や照明などの稼働状況、温度や照度などの室内環境並びにエネルギー消費量など、建物に関する様々なデータをIoTを活用してマイクロソフトのクラウドプラットフォーム(Microsoft Azure)に蓄積しAIを用いて分析することで、設備の最適調整や省エネルギー支援によるランニングコストの削減、機器の異常や故障の早期把握などを実現する。2019年度中に国内の既存建物に適用しており、今後更なる展開を進めていく。 (3) 社会課題取組み強化(インフラ、耐震環境)① 安価で高速施工を可能にする「スマート床版更新(SDR(*2))システムTM」を開発道路橋床版更新工事に伴う交通規制等によるソーシャルロスの大幅な低減を可能にする新しい床版更新システム「スマート床版更新(SDR)システムTM」を開発した。本システムを適用することで、既設床版の撤去、鋼桁上フランジの錆などを除去するケレン作業、高さ調整工、新設床版の架設を同時並行で進めることができ、標準的な施工方法と比較し、床版取替工程を約1/3に短縮することが可能となる。また、新たに開発した軽量な床版撤去機及び架設機を適用することで、交通規制範囲の最小化、並びに近接する交通や周辺施設に対する高い安全性の確保が可能となる。さらには、工事現場の近傍に設置したプレキャスト工場で床版を製作することにより、2割程度の工事費低減が見込まれる。実工事への適用に向け、本システムを積極的に提案していく。*2:Smart Deck Renewal ② 中低層建物用TMD(*3)「D3SKY※-c」(ディースカイシー)を既存ビルの制震改修工事に初適用2019年1月に中低層建物向けに開発したコンパクトで低コスト型の制震装置TMD「D3SKY※-c」を、福岡フジランドビル(福岡市博多区)の制震改修工事に初適用し、従来にない合理的な制震改修を実現した。「D3SKY※-c」は、超高層建物用に開発した超大型TMD「D3SKY※」に改良を加え、これまで十分なソリューションがなかった中低層建物向けの制震技術として開発した制震装置で、風揺れから大地震まで様々な種類の揺れを効果的に低減する。今後、建物の耐震安全性だけでなく居住性や安心感の向上に向け、新築・既存改修を問わず、市街地中心部や繁華街に位置する30~60mの中低層建物に、「D3SKY※-c」を積極的に提案していく。*3:Tuned Mass Damper 建物に設置した錘が揺れることによって、地震や風に対する建物の振動を抑制する制震装置。 ③ 環境DNA(*4)技術を用いたホタルの調査手法を開発微量な環境DNAを検出し、小型で発見しづらい水中のホタル幼虫の生息状況を調査する手法を開発した。独自に開発したPCRプライマー(*5)を用いて、通常は成虫の飛翔を目視で数えて把握するホタルの生息状況を生化学分析で行うことにより、これまで困難であった水中生活期のホタルの幼虫のモニタリングが可能となる。また、調査自体がもたらす人為的な影響を最小限に抑える環境に優しい手法であり、広範囲かつ幅広い動植物を対象とする網羅的な生物モニタリングにも応用できる。これらの技術を発展させ、当社が施工するグリーンインフラの品質確保や、地域の環境保全ニーズに対するソリューションに積極的に貢献できるよう、今後も研究を進めていく。*4:生物の生息環境(水中や土中等)に生物が放出したDNA。*5:目的のDNAを判別する目印の働きをする合成DNA。 (国内関係会社)1 鹿島道路㈱舗装に関する新技術の開発再生アスファルト混合物の品質向上技術を開発し、アスファルト合材製造所に実装した。今後は全国のアスファルト合材製造所への展開を図る。また、アスファルト混合物の環境配慮型製造技術、建機の自動化等ICTを用いた省力化、省人化技術、重機の安全性向上技術等について、引き続き研究開発を進めている。 2 ケミカルグラウト㈱品質管理システムの確立高圧噴射攪拌工法(ジェットグラウト工法)において、施工中にリアルタイムで品質管理を行うことが可能となる品質管理システムを開発した。同工法における地盤改良の品質は、従来は造成した改良体の固化後にコアを採取し評価していたが、セメント系固化材の固化後では品質不良が発見されても再施工は困難であるため、施工中にリアルタイムで改良体の品質を測定する管理技術が求められていた。本システムは、従来の既存技術のACI(*6)のデータと施工中に自動で収集した排泥の性状データを評価、統合し、リアルタイムにモニター上へ表示するとともに、改良体の品質不良が予測された場合に現場作業者へ警告を行うシステムである。これにより、改良体の品質不良低減はもとより、同社の工法の更なる信頼性向上を図り、他の高圧噴射攪拌工法との差別化を行い市場競争力の強化を目指す。なお、2019年度には実用可能な装置が完成したため、今後実工事での検証を進め、更に予測精度を上げることにより、改良体の品質不良の低減につなげていくこととする。*6:Acoustic Column Inspector 音響改良径判定 (開発事業等及び海外関係会社)研究開発活動は特段行われていない。 (注) 工法等に「※」が付されているものは、当社の登録商標である。また、「TM」が付されているものは当社の商標である。
FY2019|3,958 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注や生産への貢献を目的に、建設事業の生産性及び品質向上のための技術開発を進めている。さらに、近年のIoTやAIの急速な技術革新がもたらす建設業のビジネスモデルの転換や、国連が採択したSDGsの実現、地球環境改善等の社会課題解決に資する研究開発を中長期的な課題として取り組んでおり、大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。 当連結会計年度における研究開発費の総額は139億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。 (建設事業)1 当社(1) 次世代建設生産システムの構築① 建設機械の自動化を核とした自動化施工システム生産性、安全性の向上に大きく貢献することを目的に開発を進めている次世代建設生産システム「A4CSEL※」(クワッドアクセル※)は、建設機械を自動運転させて作業を行う、全く新たなコンセプトによる建設施工システムである。これまでに3種類の建設機械を自動化し、実工事に導入してきた。2018年には小石原川ダム本体建設工事(福岡県朝倉市)において、コア材の盛立作業を7台の自動化建機を用いて全自動で実施した。次期適用予定の台形CSGダム(*1)建設工事では、20台以上の自動化建機を導入し、現場の「工場化」を発展させていく計画である。*1:現地発生土材とセメント・水を混合した材料であるCSG(Cemented Sand and Gravel)を用いて造る台形形状のダム。 ② リアルタイム地質評価システム山岳トンネル工事の掘削は、事前の地質調査から得られた情報をもとに切羽で地山状況を直接確認しながら慎重に進める必要があるため、IoT技術を活用しリアルタイムに地質を評価するシステム「スマート「切羽ウォッチャー※」」を開発した。本システムを岩手県のトンネル工事に適用し、コンピュータジャンボの穿孔データを地球統計学手法により解析して得られる前方地質の予測結果や、デジタルカメラで撮影した切羽の画像データの解析により得られる剥落危険度の評価結果を現場の切羽でリアルタイムに確認できることを検証した。なお、本技術は2018年度土木学会賞(技術開発賞)及び2018年度岩の力学連合会賞(技術賞)を受賞した。 ③ 「鹿島スマート生産ビジョン」の策定建設就業者不足への対応や働き方改革の実現に向けて、建築工事に関わるあらゆる生産プロセスの変革を推進し、生産性向上を目指す「鹿島スマート生産ビジョン」を策定した。その第一段階として、愛知県名古屋市の「(仮称)鹿島伏見ビル新築工事」をパイロット現場として選定し、施工ロボット技術の他に疲労軽減アシストスーツや顔認証入退場管理システム等のICTを活用した技術・システムを集中的に適用し、その効果を測定しつつ、実現に向けた実証を進めた。 ④ 鉄骨溶接ロボットの活用「鹿島スマート生産ビジョン」の実現に向けて実証を進めている前述のパイロット現場において、「作業の半分はロボットと」をコアコンセプトに、柱の全周溶接と梁の上向溶接に汎用可搬型溶接ロボットを本格的に適用した。これには鹿島クレス㈱と協働で溶接ロボットの運用体制を構築するとともに、高品質な溶接を実現するために柱全周溶接の四隅(曲線部)の溶接処理や梁の上向溶接における溶接金属の垂れ等の高度な技術的課題を克服しながら、トータルな技術・施工システムを構築することで対応した。これにより、柱10箇所、梁585箇所の溶接作業を溶接ロボットにて安全かつ高品質に完了した。 ⑤ ハイブリッド耐火被覆工法の開発「鹿島スマート生産ビジョン」で目指す耐火被覆ロボットの実用化に向け、鹿島フィット㈱及び㈱万象ホールディングスと共同で鉄骨造建物の耐火被覆工事に「巻付け」と「吹付け」の2通りの工法を併用するハイブリッド耐火被覆工法を開発し、1時間耐火から3時間耐火までの国土交通大臣認定を取得するとともに、都内の建築工事において、梁の耐火被覆作業の試適用を行った。本工法の採用により、下フランジは人手による巻付け、ウェブと上フランジはロボットによる吹付けといった作業分担が可能となり、耐火被覆吹付ロボットの実用化に向け大きく前進した。 (2) 社会・顧客にとって価値ある建設・サービスの提供① コンクリートの表層品質向上「美(うつく)シール※」工法の生産性向上並びに品質確保を目的として、高撥水性特殊シート「美(うつく)シート※」を型枠材に自動で貼り付ける装置を開発した。本装置を用いることで、作業員1人で短時間に気泡やシワなく確実に貼り付けられ、本工法の大幅なコスト削減が可能となった。なお、本工法は2014年に積水成型工業㈱及び東京大学の石田哲也教授と共同で開発したもので、「美シート※」をあらかじめ貼り付けた型枠にコンクリートを打設することにより、コンクリート表面の気泡が大幅に低減されるとともに、型枠の取り外しの際には「美シート※」がコンクリート側に残置され、コンクリートの表面を一度も乾燥させることなく、湿潤状態を保つことを可能とする工法である。これにより、コンクリート表面が平滑かつ緻密な仕上がりとなり、コンクリートの高品質・高耐久化を実現した。 ② リニューアル工事の施工合理化2011年より阪神高速道路㈱と共同で開発を進めていた「超高強度繊維補強コンクリート(UFC(*2))道路橋床版」を阪神高速道路15号堺線の玉出入路リニューアル工事(大阪市西成区)へ試験的に適用し、2018年11月12日に供用を開始した。高度成長期に建設された高速道路橋では、老朽化した鉄筋コンクリート床版を取り替えるリニューアル工事が進められており、近年の車両の大型化に伴って改訂された現行基準に従えば、重荷重に耐えられる疲労耐久性の高い床版への取り替えが求められる。そこで、非常に高い疲労耐久性をもつと同時に、床版の軽量化が可能なUFC床版を開発した。*2:Ultra-high strength Fiber reinforced Concrete水結合材比が15%程度、圧縮強度が150N/mm2以上で極めて緻密な鋼繊維補強コンクリート。 (3) 社会課題取り組み強化(環境)① サンゴ礁のモニタリング高水温による白化現象やオニヒトデによる食害、赤土流出等によるサンゴの衰退が問題となっている。そこで、沖縄県慶良間諸島海域のサンゴ礁において、サンゴが自然に着生し成長する人工基盤「コーラルネット※」を活用したサンゴ再生に向けた環境保全活動に取り組んでいる。また、上空と水中両方の撮影により、迅速かつ正確なサンゴのモニタリングが可能な水面浮体型ドローン「SWANS※(*3)」(スワンズ)を開発し、「コーラルネット※」を活用したサンゴ再生状況などのモニタリングを効率的に実施することを可能とした。*3:System of Water and Aerial Nearshore Survey ② 環境配慮型コンクリートの開発と適用これまで有効な手段がなく廃棄処分していた戻りコンクリート(*4)を原材料として再利用する環境配慮型コンクリート「「エコクリート※」R3(アールスリー)」を、2012年度から環境省環境研究総合推進費による研究助成を受け、三和石産㈱及び東海大学の笠井哲郎教授と共同で開発し、神奈川県の物件に大規模適用した。また、普通セメントの代わりに高炉スラグ微粉末を60~70%使用することで製造時のCO2排出量を60%程度低減する低炭素型コンクリート「ECMコンクリート※」(2014年に開発)を初めて土木構造物に適用した。なお、「ECMコンクリート※」を含む高炉スラグ微粉末を用いた環境配慮型(低炭素型)コンクリートは㈱竹中工務店と連名で2019年日本建築学会賞(技術)を受賞した。*4:受け入れ検査に使用したものなど、やむを得ない理由から使用されず工場に戻される生コンクリート。 (国内関係会社)1 鹿島道路㈱舗装に関する新技術の開発舗装路面の高耐久型補修材を開発し、市場への展開を進めている。また、2017年度に開発した舗装用重機自動ブレーキアシスト装置を搭載した重機を実工事に適用し、性能検証を行った。今後、作業員への警告システムの追加等、更なる機能向上を図る。 2 ケミカルグラウト㈱既存杭補強工法の開発建築構造物の既存杭を活用する方策の一つとして、高圧噴射攪拌工法(*5)による既存杭補強工法を開発した。本工法は、既存杭の周辺地盤に固化材料を注入し補強することで、建物の耐震性能を向上させるものである。上部構造を残したまま施工を行うことができるため、施設利用者の活動を妨げずに工事を行うことが可能となる。また、使用する機械が小さいため、狭隘な箇所での施工など、様々な現場条件に対応することが可能となる。今後、さらなる実証実験と施工実績を重ね、病院、学校等の公共建築物や工場、倉庫等の生産施設等への適用を目指していく方針である。*5:「2018年版 建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針」(国土交通省他監修、一般財団法人日本建築センター他発行)において、高圧噴射攪拌工法が新たに採用された。これにより、高圧噴射攪拌工法の建築分野での利用が可能となった。 (開発事業等及び海外関係会社)研究開発活動は特段行われていない。 (注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
FY2018|3,439 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注並びに生産への貢献を目的に、建設事業の品質及び生産性向上のための技術をはじめとして、将来的なニーズを先取りする技術まで幅広い課題に関する研究開発活動を大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。 当連結会計年度における研究開発費の総額は103億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。 (建設事業)1 当社(1) 設計・施工合理化技術① 快適な光環境近年、人が室内空間全体から感じる明るさの印象(明るさ感)に着目した光環境の評価手法が広く用いられるようになっているが、従来の手法では室内空間から目に入ってくる光の量の平均から明るさ感を求めていたため、評価結果と実際の明るさ感にズレが生じていた。そこで、当社は明るさ感が視野内の輝度の「対比」の影響を受けることに着目して、光環境を評価する新手法を開発し、人の感覚により近い明るさ感の評価と室内空間の明暗の制御によるきめ細かな光環境デザインを可能にした。 ② 大型既存杭の解体工法都市部の再開発工事においては、既存建物の基礎や杭を解体する必要があるが、地下の狭あいな場所での非効率的な作業や騒音、振動等による周辺環境への影響が課題であった。そこで、2011年に開発した微少発破による建物基礎の解体工法である「鹿島MB工法※」をより深い場所まで一度に発破できるように改良した「パイルMB工法※」を国立研究開発法人産業技術総合研究所、カヤク・ジャパン㈱と共同で開発した。これにより、従来の約5~6倍の深さまで一度に発破することが可能となり、都内再開発工事の大型既存杭解体工事に適用した結果、騒音・振動の低減、解体工期の削減に大きな効果があることを確認した。 ③ 小型地盤調査車軟弱な地盤に建物を構築する場合には、杭を硬質な支持層に確実に到達させる必要があり、敷地の地盤状況を正確に把握することが不可欠である。当社では、複雑な地盤を正確に把握するための独自装置として、地盤調査車「GEO-EXPLORER※」(ジオ・エクスプローラー)を1994年に開発し継続的に運用を進めてきた。昨今の支持層確認ニーズの高まりを踏まえ、不整地や狭小地への適用性を高めるため、本装置の主要機能を引継ぎ大幅に小型化した小型地盤調査車「miniGeo※」(ミニジオ)を新たに開発し、運用を開始した。 ④ 配筋検査の省力化コンクリート構造物における配筋検査は、鉄筋径を区別するマーキングや鉄筋の間隔を示すスケールスタッフの設置など検査前の準備作業に多くの手間がかかり、省力化が強く望まれていたため、日本電気㈱、オリンパス㈱と共同でステレオカメラ(*1)とタブレット端末を連動させた自動配筋検査システムを開発した。本システムの適用により、配筋した検査対象を撮影するだけで、鉄筋径、間隔、本数の自動計測が瞬時にできるため、配筋検査の大幅な省力化の実現とヒューマンエラーのない確実な検査の実施が可能となった。*1:立体写真撮影用のカメラ。対象物を異なる方向から同時に撮影することにより、その奥行き方向の情報も記録できる。 (2) 社会基盤構築技術① トンネル前方地下水モニタリング山岳トンネル工事において、切羽(トンネルにおける掘削面)から100m程度先までの地質等を調査する中尺ボーリングを活用して、切羽前方の湧水区間の水圧を連続的にモニタリングするシステム「中尺「スイリモ※」(中尺ボーリング版 水(すい)リサーチ・モニター)」を鉱研工業㈱と共同で開発した。湧水圧の変動を正確に把握することで適切な対策を事前に検討することができるようになったため、トンネル掘削における安全性の向上と工程遅延リスクの低減が期待できる。 ② 都市部トンネル構築技術建設業では、将来的な熟練作業員不足が懸念される中、現場作業の省力化による生産性の向上が課題となっている。そこで、都市部の道路トンネルなどを開削工法により構築するにあたり、現場作業を低減するプレキャスト化のメリットを活かしつつ、コストは従来工法と同等としながらも大幅な省力化と工程短縮を実現する「スーパーリング※工法」を開発した。本工法のコストは従来の場所打ちコンクリートによるボックスカルバートと同等ながら、現場での作業員数を約90%削減するとともに、躯体構築の工程も約50%短縮を可能とした。 ③ 都市部の地下空間構築当社は複雑化する都市部の地下空間構築のため、矩形シールド・推進工法「VERSATILE BOX※工法」のラインナップの充実に向けて開発を行っている。高速道路出口ランプ部の構築においては、非開削工法の密閉型矩形シールドマシン「アポロカッター※」を用いてさまざまな安全対策と切羽の厳格な土圧管理を実施し、地表面への影響を最小限に抑えながら掘削を行った。また、地下連絡通路の構築においては、密閉型矩形シールド「EX-MAC(*2)(イー・マック)」を用いて、伸縮カッターに連動して動く土圧変動抑制装置を左右2箇所に装備することで、泥土圧を安定させ、都心の地下で安全な掘進を実施した。 *2:EX-MAC:EXcavation Method of Adjustable Cutter (3) 震災対策関連技術 地震時の安全性を備えた天井システム一般的な下地材とボード類により構成される吊り天井は、概ね10kg/㎡以上の重量があり、また固く割れやすい面材を用いると、大きな地震による破壊・脱落によって人的被害が発生するおそれがある。そこで、脱落しにくい軽量な吊り天井を実現することにより、安全性・生産性・経済性の向上を目指した「セーフティ・ダイア※‐K」を開発した。高く広い天井にも適用可能であり、超軽量、かつ脱落しにくい構造により、地震時にも重大な人的被害の回避が期待できる。 (4) 地球環境技術 汚染土壌対策2010年の土壌汚染対策法改正により、環境基準値を超過する自然由来の重金属含有土も法律の適用範囲となり、シールド工事において重金属を含む地盤を掘削する場合も土壌汚染への対応が求められている。そこで、砒素等の重金属に汚染された土壌を現場で磁気分離処理して浄化する技術「M(エム)・トロン※」を泥土圧・流体圧送シールド工事で適用し、砒素汚染掘削土砂(泥水性状)の連続浄化に成功した。また、そこで得た知見から、汚染泥水の発生量が膨大な大断面シールド工事においても連続浄化を可能とする処理フローを開発した。 (国内関係会社)1 鹿島道路㈱舗装に関する新技術の開発既存技術の適用性拡大のため、ヒートスティック工法を用いた薄層凍結抑制舗装を開発し、実路において、凍結抑制効果と共用性を確認した。また、生産性向上を目指しICT(情報通信技術)を活用した「i-Pavement(舗装)対応技術」等について、引続き研究開発を進めている。加えて、重機災害防止に向け、人や障害物を感知すると自動的にブレーキが作動する舗装用重機自動ブレーキアシスト装置を開発し、良好な試験結果を得た。 2 ケミカルグラウト㈱高強度耐久グラウトの開発地震による液状化現象対策の一つとして薬液注入工法が有効である。薬液注入工法でレベル2地震動による液状化現象を抑止することを目指し、 耐久グラウト「エコリヨン※」を従来強度(qu=50~100kN/㎡(*3))の2倍程度となる高強度配合を開発した。この高強度配合を用いて模擬地盤に実物大の薬液注入を行い、従来と同等の施工方法によっても目標とする高強度の改良体を造成できることを確認した。今後、地震動の大きさに応じた対策工法として、従来の薬液注入による低強度改良と高圧噴射撹拌工法による高強度改良に加えて、その中間領域への適用を提案していく方針である。*3:qu:室内試験で土のせん断強さを求める方法の一つである一軸圧縮試験から得られる圧縮強さ。土に対して水平方向から力を加えない状態で鉛直方向に圧縮したときに抵抗する最大値の応力。 (開発事業等及び海外関係会社)研究開発活動は特段行われていない。 (注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
FY2017|3,907 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注並びに生産への貢献を目的に、建設事業の品質及び生産性向上のための技術をはじめとして、将来的なニーズを先取りする技術まで幅広い課題に関する研究開発活動を大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。 当連結会計年度における研究開発費の総額は82億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。 (建設事業)1 当社(1) 設計・施工合理化技術① 溶接ロボットの現場適用近く予想される溶接技能工不足や将来的な溶接技能工の高齢化への対策として、建築工事において「汎用可搬型溶接ロボット」を有効に活用するための手法を㈱横河ブリッジと共同で開発し、複数工事の鉄骨溶接作業に適用して良好な結果を得た。また、今後、全国の建築工事へ溶接ロボットによる施工を迅速に普及・展開させるとともに、施工品質を保証する体制を鹿島グループ全体で確立するため、グループ会社である鹿島クレス㈱に溶接事業部を発足させ、同社の社員を溶接ロボットのオペレータとして育成する取り組みを開始した。 ② 建設機械による自動化施工熟練技能者の減少への対応や土木工事全般の生産性及び安全性の向上を目指し、建設機械の自動化技術による次世代の建設生産システム「A4CSEL※(クワッドアクセル※)」の高度化に取り組んでおり、今般、㈱小松製作所と共同で大分川ダム堤体盛立工事において自動ダンプトラックの導入試験を行い、盛立部におけるダンプトラックの運搬・荷下ろし作業の自動化に成功した。既に開発している自動振動ローラと自動ブルドーザを組み合わせることで、ダム工事や造成工事において大きな比率を占める複数の建設機械による連携作業全体の自動化が可能であることを確認した。 ③ 医療機関における睡眠環境の改善病院の多床室(相部屋)に入院する患者個々に対して、睡眠に与える影響力の大きい「温熱」・「音」・「光」環境を最適化し、睡眠環境を向上する技術を構築した。本技術により、患者の睡眠環境を整え生体リズムを安定させることで療養環境が向上するだけでなく、夜間のナースコール呼出の減少により医療スタッフの業務負荷が軽減されることが期待できる。本技術の構築にあたり、東北大学大学院医学系研究科 尾崎教授と共同で多床室の環境特性と患者の睡眠状態の実態調査を実施するとともに、東京睡眠医学センター長・慶應義塾大学医学部睡眠医学講座 遠藤教授の監修のもとで被験者実験を実施した。 (2) 社会基盤構築技術① 山岳トンネルの掘削技術岩手県で施工中の国道45号唐丹第3トンネル工事において、掘削工事の高速化のため、さまざまな施工の合理化を図った結果、NATM(*1)による大断面トンネルとしては国内最高記録となる月進(月間掘削距離)270mを達成した。また、本トンネル工事では、山岳トンネルの効率的かつ高速な施工を目的として、ドリルジャンボ(発破用の爆薬の装填やロックボルトの孔を開けるための施工機械)の新しい削孔誘導システム「MOLEs(*2)(モールス)」を㈱演算工房と共同で開発し、初適用した。*1:NATM:New Austrian Tunneling Method 地山自体の保持力を利用してトンネルを支保する工法*2:MOLEs:Mograss Operate with Laser scanning Engine system ② ドローンによるレーザ測量ドローンを使ったレーザ測量技術を㈱ニコン・トリンブル及びルーチェサーチ㈱と共同で実施し、大分川ダム建設工事において、日本で初めてドローンによるレーザ測量を行い、高密度・高精度の測量が可能であることを確認した。従来技術のドローンによる写真測量では、予め基準点を地表面に複数設置する必要があるが、本測量では地表面に向けてレーザを照射することで得られる距離と、機体に内蔵されたGNSS(*3)とジャイロセンサーにより機体の位置情報を得られるため、基準点の設置が不要となった。また、レーザは樹木の隙間を通り地表面まで到達するため、伐採・除根前に地山を計測することが可能である。*3:GNSS:Global Navigation Satellite System(全球測位衛星システム) GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムの総称 ③ 光ファイバーによるPC張力計測技術光ファイバーを用いたひずみ計測技術を応用し、PC(プレストレストコンクリート)に使用するPCケーブルの張力を計測する技術を住友電工スチールワイヤー㈱及びヒエン電工㈱と共同で開発した。本計測技術を国道115号月舘高架橋上部工工事に適用し、PCケーブルの緊張作業時の張力並びに定着後や施工完了後の導入張力(コンクリートを圧縮する力)の分布を現場で高い精度で計測できることを確認した。本技術を適用することで、従来困難であったPCケーブルの張力管理を施工時から維持管理まで的確に行うことが可能となった。 (3) 震災対策関連技術① 長周期地震動対策既存超高層ビル「サンシャイン60」において、巨大地震が発生した際に予想される長周期地震動に対する安全性を一層高めることを目的として、新たに開発された変形制御ダンパ「S-Lockダンパ※」を含む3種類のダンパを組み合わせる日本初の工法による長周期地震動対策工事を実施した。「サンシャイン60」は既に新耐震設計基準により設計された建築物と同等以上の耐震性を有しているが、本対策により建物の安全性を更に確かなものとした。 ② 福島第一原子力発電所 汚染水対策東京電力福島第一原子力発電所における汚染水対策として、原子炉建屋群の周囲に水を通さない壁(陸側遮水壁)を造成することとなり、当社は遮水性や施工性に優れた凍土方式による遮水壁を提案し、2013年に採用された。2015年度末から凍土壁の造成を段階的に進めた結果、地下水位の変化から凍土壁が遮水壁として機能していることが確認された。遮水壁は造成後も長期にわたり安定して運用する必要があるため、地中の壁の健全性を温度で常時確認することができるモニタリングシステムや、万一、凍結管が損傷しても凍結管を容易に交換できる三重管構造など、様々な安全対策を構築した。 (4) 地球環境技術① コンクリート技術高い環境性能・品質・経済性を兼ね備えた新しい環境配慮型コンクリート「エコクリート※BLS(*4)」を開発した。建築物を構築する上で不可欠な材料であるセメントは製造過程で大量のCO2を排出することから、CO2排出量の少ない低炭素セメントを用いたコンクリートの使用が求められている。本コンクリートは、低炭素セメントである高炉セメントA種(*5)を改良し、製造時におけるCO2排出量を一般的なセメントより25%削減しながらも、高いひび割れ抵抗性と汎用性を兼ね備えるとともに、普通コンクリートと同レベルのコストを実現したものである。*4:BLS:Blast-furnace slag(高炉スラグ)Low Shrinkage(低収縮)*5:高炉スラグ含有率が5~30%のセメント ② 土質改良材環境負荷が小さい土質改良材「泥CURE※(デイキュア)」を開発した。本土質改良材を岩手県で施工中の二級河川閉伊川筋藤原地区河川災害復旧(23災662号)水門土木工事に適用した結果、軟弱な河床堆積物が、24時間後には調査のための重機走行が可能な状態となった。本土質改良材は、重金属等の有害物質を含まず、中性~弱アルカリ性の複数の無機材料を組み合わせたものであり、生息する魚類等の生育環境への配慮が必要な水域での掘削・埋戻し作業に適用可能である。 (国内関係会社)1 鹿島道路㈱舗装に関する新材料、新工法の開発既存技術の適用性拡大に向け技術の改善及び拡充を図り、試験施工を実施した。今後は、試験施工箇所の性能を評価した上で、実工事に順次適用していく予定である。また、ICT(情報通信技術)を活用した「i-Pavement(舗装)対応技術」や低騒音性と遮水性の両方の特長を併せ持つ「ハイブリッドコンクリート舗装」等について、引続き研究開発を進めている。 2 ケミカルグラウト㈱新凍結工法「ICECRETE(アイスクリート)※工法」の実用化フロン排出規制の国際的な枠組みへの対応が求められる中、自然冷媒であるCO2気液混合流体を活用した新凍結工法「ICECRETE(アイスクリート)※工法」を海底シールドトンネルの地中接続工事に初めて適用し、接続部の周辺土壌を事前に凍結させることで、シールド内への海水及び土砂の流入を防ぐことに成功した。新凍結工法では、液化したCO2を凍結管に循環させ気化潜熱で地盤から効率良く熱を奪うことにより、従来工法に比べ、冷媒量を大幅に削減することができるため、冷凍機、配管等の設備の小型化、省電力化が可能となった。また、設備の小型化により、シールド内の作業スペースが広がったことで、それまで段階的に行っていた作業を並行して進めることが可能となり、同工事の大幅な工期短縮に寄与した。 (開発事業等及び海外関係会社)研究開発活動は特段行われていない。 (注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
FY2016|3,660 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注並びに生産への貢献を目的に、建設事業の品質及び生産性向上のための技術をはじめとして、将来的なニーズを先取りする技術まで幅広い課題に関する研究開発活動を大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。 当連結会計年度における研究開発費の総額は78億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。 (建設事業)1 当社(1) 設計・施工合理化技術① 制震装置の開発建物用制震ダンパーとして、世界初となる振動エネルギー回生システムを搭載した新世代制震オイルダンパー「HiDAX※-R(Revolution)」を開発した。本ダンパーは、自動車のブレーキ制御等で用いられているエネルギー回生システムの原理を初めて建物に応用したもので、地震による建物の振動エネルギーを一時的に補助タンクに蓄え、ダンパーの制震効率を高めるアシスト力として利用することにより、従来型装置の限界を大幅に超えた世界最高の制震効率を達成した。なお、本技術は、日刊工業新聞社が主催する「日本産業技術大賞」において、「文部科学大臣賞」を受賞した。 ② ドローンを用いた写真測量による土量管理ドローンによる写真測量を利用して高精度な3次元図面を短時間で作成し、土量管理及び工事の進捗管理に利用するシステムを㈱リカノスと共同で開発した。本システムにより、空撮からデータ処理までの一連の作業において、ドローンやカメラ等の機器の選定、作業方法や使用ソフトの最適化を図ることで高精度な空撮測量が可能となった。本システムを大規模造成工事に適用したところ、誤差±6cm以下まで精度が向上し、測定時間や費用の大幅な削減が可能であることが確認できた。 ③ 無線LAN環境の構築建物内の無線LAN環境導入と運用コストの削減を実現するWi-Fiアンテナケーブル(WBLCX:Wireless Broadband Leaky Coaxial Cable)の縦敷設技術を㈱フジクラと共同で実用化した。建物を新築する際に無線LAN環境を構築する事例が増加しているが、本技術は、Wi-Fiアンテナケーブルを建設工事中にパイプシャフトなどの縦貫通孔に敷設し、無線アクセスポイントの配置を工夫しながらその数を大幅に削減するもので、初期導入コストだけでなく、保守経費などの維持管理コストも削減可能となった。 (2) 社会基盤構築技術① 山岳トンネルの切羽前方湧水評価技術長大トンネルにおいて有用な地質等の前方探査方法である超長尺コントロールボーリング調査において、これまでは把握が困難であった削孔先端部の湧水圧と口元湧水量(*1)をボーリング削孔と同時に連続的に計測するシステム「スイリモ※(水(すい)リサーチ・モニター)」を開発した。これにより、切羽前方にある湧水区間の状況をこれまで以上に正確に把握し、本掘削の前に適切な湧水対策工を検討・選択できるため、より安全に工事を行うことが可能となった。*1:口元湧水量:ボーリング削孔を開始した場所(口元)で計測される湧水量 ② 重力式コンクリートダムの合理化施工法近年、重力式コンクリートダムの建設工事は、RCD(Roller Compacted Dam-concrete)工法が主流となり、施工の高速化が進んでいる。当社は、(一財)ダム技術センターによって開発された、打設速度の速い内部コンクリートを打設速度の遅い外部コンクリートよりも先行して施工することで全体の打設速度を向上させる「巡航RCD工法」を、福岡県五ケ山ダム堤体建設工事に初めて全面的に採用するとともに、本工法の更なる高速化を実現する打設技術を開発した。これにより、「巡航RCD工法」を適用する範囲について、工期の約18%短縮を実現した。 (3) 震災対策関連技術① 汚染水の漏洩リスク低減福島第一原子力発電所の海水配管トレンチ(*2)の内部を充填するため、長距離水中流動充填材「HiloTM(High leveling for long distance)(ヒーロー)」を東京電力ホールディングス㈱、東京パワーテクノロジー㈱と共同で開発した。「HiloTM」は、水中100mの距離を流動させても材料分離や品質の低下が生じない特殊な材料であり、本材料を内部充填工事に適用することで、新たに打設孔を設けることなく、既存設備を利用した打設作業を行うことが可能となった。これにより、作業に伴う被ばく線量を最小限に抑えつつ、海水配管トレンチ内に滞留していた約1万トンの高濃度汚染水を除去することに成功した。なお、本技術を適用した工事について、内閣総理大臣より感謝状を受領した。*2:海水配管トレンチ:配管やケーブルを収納している地下トンネル ② 除去土壌の選別効率化福島第一原子力発電所事故に伴い広域に拡散した放射能汚染に対して、順次、除染が行われている。除染により発生した除去土壌を減容化するためには、草木や根などを選別・除去する必要があり、その際に用いる選別補助材として、生石灰等の従来品よりも高機能な「泥DRY※(デイドライ)」を開発した。これにより、粘性が高く団粒化した除去土壌を低粘性の細粒に素早く改質することが可能となり、選別作業効率が格段に向上した。 (4) 地球環境技術① 建築物環境性能評価システムの認証取得当社技術研究所本館「研究棟」において、2015年8月にLEED-EBOM(*3)の最高ランクであるプラチナ認証を取得した。本研究棟は、当社のZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)実現に向けたリーディングプロジェクトと位置付けられ、2011年11月の建物運用開始以来、当社が開発した様々な技術を適用して、エネルギー効率の向上に努めており、2014年度の一次エネルギー消費量は、オフィス基準値より約52%の削減を実現した。*3:LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)は、米国USGBC(U.S. Green Building Council)により運営され、世界各国に普及している建築物環境性能評価システムであり、LEED-EBOM(=LEED for Existing Buildings: Operations and Maintenance)はこの中で、既存ビルの運用・管理について、その評価・認証を行うもの。 ② 洋上風力発電今後増加が予想される洋上風力発電施設を建設するための海上作業構台「Kプラットフォーム コンボTM」と、これを利用した洋上風車組立工法や基礎の施工法、風車の急速施工法を開発した。「Kプラットフォーム コンボTM」は、日本国内の洋上ウインドファーム計画地として想定される港湾区域内での建設条件に合わせた作業構台であり、基礎の構築から風車の組立、メンテナンス、最終的な撤去作業までを、用途によりアタッチメントを取り換えることで対応可能である。 ③ 水産資源の保全「蛇カゴ(*4)」を用いて、人力によって組立て可能な簡易型の魚道を開発した。この魚道を鹿児島県高尾野川のコンクリート製の堰(せき)に設置したところ、アユの遡上が観測され、魚道として機能することが確認された。今後、この「組立式蛇カゴ魚道」をアユ以外の生物にも適用させていくことにより、水域生物の生育を図るほか、自然の恵みを利用した地域振興や自然と共生した国土づくりに貢献する。*4:「蛇カゴ」: カゴ状の構造物で、内部に自然石、砕石などを詰めたもの。 (国内関係会社)1 鹿島道路㈱舗装に関する新材料、新工法の開発高耐久性舗装を開発し、試験施工を実施した。今後、試験施工箇所の性能を評価した上で、実工事に順次適用していく予定である。また、低騒音性と遮水性の両方の特長を併せ持つ「ハイブリッドコンクリート舗装」や施工合理化技術である「転圧管理システム(ICT施工)」の機能向上等について、引続き研究開発を進めている。 2 ケミカルグラウト㈱「新凍結工法」の開発地球環境に優しいノンフロン冷媒のCO2気液混合流体を活用した地盤凍結工法を開発した。CO2冷媒を使用する本工法は、従来工法に比べ必要な冷媒量が大幅に少ないため、設備の小型化、電力消費量の削減(従来工法から40~50%減)が可能となった。また、冷媒の粘性が低いことから、従来よりも小型軽量の配管を使用することができるため、作業効率が向上し、工期短縮(同30%減)も可能となった。 (開発事業等及び海外関係会社)研究開発活動は特段行われていない。 (注) 工法等に「※」が付されているものは、当社の登録商標である。また、「TM」が付されているものは当社の商標である。