研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
| 2025-03 |
- |
189 |
| 2024-03 |
- |
224 |
| 2023-03 |
- |
199 |
| 2022-03 |
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228 |
| 2021-03 |
- |
147 |
研究開発活動(本文)
FY2025|5,641 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術のほか、事業領域の拡大を図るための技術開発など多岐にわたる分野の研究開発活動を実施している。 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は163億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産及びその他の各セグメントには区分していない。 (1) 当社① 施工計画から品質管理までを自動化する「統合施工管理システム」の実証施工に成功新丸山ダム建設工事の盛土工事において、当社が開発した「統合施工管理システム」により、複数建機の自動・自律運転による盛土施工と計測ロボットを使った品質管理を行う実証施工に成功し、生産性の向上を確認した。統合施工管理システムは、施工計画を自動作成する建設マネジメントシステム(CMS:Construction Management System)、盛土の品質管理を自動化するAtlasX®(アトラスエックス)、建機フリートマネジメントシステム(※)、品質管理のデータ共有を行う現場ダッシュボードから構成される。本実証施工での1日当たりの盛土施工量は、土木工事積算基準の同種の建機を使用した場合の標準施工量260㎥を上回る285㎥を達成し、盛り土量50万㎥の施工では、施工管理者の施工計画業務を約88%削減可能な試算結果となった。 ※ 建機フリートマネジメントシステム:作業内容を入力・指示することで、複数台の建設機械が連動して協調運転するよう制御するシステム。 ② 木材を利用した鋼管柱の耐火被覆工法「O・Mega Wood X(オメガウッドエクス)コラム®」を開発し、90分耐火の大臣認定を取得木材を利用した鋼管柱の耐火被覆工法「O・Mega Wood Xコラム」を開発し、90分耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。鉄骨造の耐火建築物において柱・梁を木質化する場合、従来は鉄骨にロックウール吹付などの耐火被覆を施していたが、耐火被覆材を木材に置き換えていくことが可能となれば、2050年のカーボンニュートラルに向け、木材利用のさらなる促進が期待できる。本工法では、中高層建築で使用頻度の高い角形鋼管にヒノキやスギのCLT・集成材を被覆し、その内側に強化石こうボードによる耐火層を設けることで、木材使用量を増やしながら耐火性を確保している。耐火被覆ユニットは工場で製作し現場で簡単に取り付けられるため施工時間を短縮でき、解体も容易であるため木材のリユースやリサイクルも可能である。また、従来のロックウール吹付工法と同等のコストで、約5倍のCO2固定化効果を期待できる。今回、90分耐火の大臣認定を取得したことにより、建物の最上階から9層分の範囲で同工法を鋼管柱に適用することが可能となった。 ③ 高精度な計測が可能なAI配筋自動検査システムを開発鉄筋コンクリート工事における配筋検査を省力化する配筋自動検査システムを開発した。配筋検査は、適切に鉄筋が施工されているかを設計図面と照合し、品質に問題がないか確認する重要な検査であるが、事前準備から検査後の報告書作成まで多大な時間を要することに加え、施工管理者の知識と経験が必要となる。検査不具合やミスがあった場合にその後の工事に大きく影響を及ぼすことから、高い精度を保ったうえで自動化及び省力化が求められていた。本システムは、配筋を動画撮影するステレオカメラ(※)を搭載した検査パッケージ、計算用サーバー、タブレット端末で構成されている。ステレオカメラで配筋を動画撮影し、切り出した画像データと計算用サーバーで生成した点群データを基に、鉄筋径・間隔(ピッチ)をAIによって自動計測する。計測結果は、タブレット端末に表示されるWebアプリ上でBIMに入力された設計情報と照合し、最終的に施工管理者が設計通りの配筋がされているかの合否判定を行う。また、BIMデータを使用するため、検査前データ作成を簡略化でき、検査結果は帳票として自動作成されるため検査報告書が容易に作成できる。本システムによって熟練度によらない効率的な検査が可能となり、配筋検査業務にかかる延べ作業時間は現在使用している専用検査システムより、約36%の縮減を実現した。 ※ ステレオカメラ:二つのレンズで立体写真を撮影し、奥行き情報を記録。動画撮影で視点を動かし、隠れた物体を検知可能。 ④ 国内初、建物解体後の鉄骨およびコンクリート製の構造部材を新築建物へリユース建物解体後、通常、溶解や破砕され新たな建材としてリサイクルされる鉄骨やコンクリート製の構造部材を、新築建物の構造体にリユースする国内初の取組みを自社技術研究所(東京都清瀬市)内の実験棟オープンラボ3新築工事で行っている 。建物の構造体をリユースする取組みは、これまでコンバージョンやリノベーション、耐震改修などでは実績があり、CO2排出量の削減効果が検証されているが、それらの手法は柱・梁の位置や形状を大きく変えないことが前提となるため、設計上の制約があることが課題となっていた。本工事では、解体する実験棟の柱・梁・ブレースなど全種別の鉄骨部材及び基礎・基礎梁・小梁・床など全種別のコンクリート製構造部材を、新築建物に合わせて切断や加工を行ったうえで新実験棟の構造体としてリユースした。解体後の鉄骨やコンクリートの部材を、新築建物の構造体としてリユースするのは日本国内では例を見ない取組みである。本手法により、リユースする場所を限定せずスパンも変更可能なため、より自由度が高い、構造部材の有効活用が実現した。また、本工事では、新築建物の構造部材のうち鉄骨57%、コンクリート33%で、解体建物のリユース材を使用することにより、新たに全ての資材を調達する場合に比べ、約49%(65.8t-CO2)のCO2排出量削減を見込んでいる。 ⑤ 植林用苗木の安定供給を可能とする人工光と自然光のハイブリッド型の苗木生産システムを開発植林用苗木の安定供給を可能とする人工光と自然光を組み合わせた「ハイブリッド型苗木生産システム」を開発した。当社は、木造木質化建築をはじめとした木材の利用推進と、森林資源の持続的な循環利用に取り組んでいるが、川上にあたる「植林・育林」では、従来の自然光による育成(露地栽培)は苗木の出荷までに最長2年程度を要し、季節や天候などが成長速度に影響を与えることから、安定供給が難しいことが課題となっていた。本システムは、季節や出荷時期に応じて、育成に必要な光、温度・湿度、培地への潅水などの育成環境を制御できる人工光による育成期間と、自然光による育成期間を最適に組み合わせ運用するものであり、いずれかのみで育成した場合よりコストの抑制や出荷までの期間の短縮が可能となる。2024年6月から鳥取県日野郡日南町にパイロットプラントを設置、主に周辺地域の林業事業者向けにカラマツの苗木生産を開始しており、本パイロットプラントでは年間約1万本の苗木の供給を予定している。この苗木1万本を植林し適切に育林した場合、50年後には約1,000㎥の木材供給と、約1,120tのCO2吸収・蓄積効果が見込まれる。 ⑥ 建物計画の初期段階でCO2排出量削減効果とコストを比較検証できる「カーボンデザイナー E-CO BUILDER®」を開発省エネ技術によるCO2排出量削減効果とコストを比較検証できるシステム「カーボンデザイナー E-CO BUILDER」を開発した。2050年のカーボンニュートラル達成に向け、建築物の建設時と運用時のCO2削減が求められる中、早期段階に投資効果を検討したいという顧客のニーズが年々高まっている。しかし、カーボンニュートラルに向けた投資とその効果は、現状では建築物の詳細な仕様が決まらないと把握できないため、計画初期段階の意思決定が困難であるという課題がある。本システムでは、建築物の幅・奥行き・階数を指定し、建築・設備仕様を設定することで、基準ビルに対しての省エネ効果やCO2排出量の削減効果、コストの変動が算出される。建築・設備仕様は詳細に設定可能であり、各種の仕様の設定を変更すると、瞬時にそのシミュレーション結果が算出され、さまざまなパターンでの検討が可能になることで、顧客の事業計画に基づいた迅速な方針決定を支援することができる。 ⑦ 火薬装填作業を遠隔化・自動化する「自動火薬装填システム」を開発しトンネル切羽発破に成功遠隔で力触覚を再現する技術(リアルハプティクス(※))を応用し、山岳トンネルの掘削面(切羽)での火薬装填作業を遠隔化・自動化する「自動火薬装填システム」を、慶應義塾大学と共同で開発し、トンネル切羽発破に成功した。山岳トンネル工事における切羽直下での火薬の装填・結線作業においては、火薬や雷管などの危険性が高い材料や細かい脚線を取り扱うことから、手作業での繊細な力加減や手指の感覚が必要とされており、作業の安全性確保と生産性向上の両立が課題となっていた。本システムは、リアルハプティクスにより力触覚が伝わることで、切羽から離れた安全な場所から、あたかも切羽で直接手作業を行っているかのように直感的な火薬の装填作業が行える。今回の実証実験は、本システムを長野県下伊那郡にあるトンネル工事現場(国土交通省中部地方整備局令和4年度三遠南信6号トンネル工事)に適用し、大型重機に搭載した装填ロボットを、切羽から30m地点と、切羽から320m離れたトンネル外で操作して、火薬の装填、発破を行った。 ※ リアルハプティクス:現物との接触情報を双方向で伝送し、力触覚を再現する技術。 ⑧ 擁壁工事に3Dプリンターを活用したプレキャスト部材を適用新丸山ダム建設工事において、仮設の工事用管理施設の擁壁に規格品と建設用3Dプリンターで製作したプレキャスト部材を適用する擁壁工事のフルプレキャスト化を、日本ヒューム㈱と共同で実現した。プレキャスト工法は、規格化された製品を多く適用する場合、量産化によるコスト削減もあり有効である一方、特殊な形状の場合、専用の型枠製作に時間とコストがかかることから効果的でない。そのため、特殊形状の部分には建設現場内で型枠を製作しコンクリートを打設することが多く、生産性に課題があった。今回、当社がこれまで蓄積してきた建設用3Dプリンター技術を活用して特殊形状のプレキャスト部材の製造を行うことで、従来の専用の鋼製型枠を製作する方法と比べ約30%の作業工程の短縮と約5%のコスト削減を実現するとともに、建設現場内で型枠を製作しコンクリートを打設した場合と比べて、現場施工に係る日数を約20日から1.5日として約90%の工期短縮を実現した。 ⑨ 特定のメーカーや機種に依存せず、後付けで簡易に導入可能なホイールローダ用の自動運転装置を開発特定のメーカーや機種を選ばず後付けが可能で、作業員の熟練度に関係なく簡単に動作設定が可能、かつ、帳票機能により積み込みや投入数量なども管理できるホイールローダ用の自動運転装置を開発した。ショベルカーやダンプトラックなどの建設機械は、建設業のみならず農業、採石業、製造業などでも使用されており、各産業において労働者不足や長時間労働をはじめとする労働環境の改善などの課題を抱えている。本自動運転装置は自動運転システム、3D-LiDAR(※)や傾斜計などの各種センサー、自動運転制御盤、レバー制御装置で構成されており、すくい込み、運搬、積み込み、投入など自動運転に必要な作業設定は、遠隔で安全な場所から行うことができる。ホイールローダは各作業場所の位置を認識し、運搬物の形状から効率よくすくい込みができる位置を、各種センサーで、機体の挙動・位置を把握しながら自動的に判断し、作業位置まで走行する。その後は事前に設定した経路で運搬し、積み込みや投入作業を行う。すくい込み位置と積み込みや投入位置が固定された環境であれば昼夜に関係なく運用が可能であり、採石業やその他施設などでの活用も期待できる。当社のグループ会社である大林神栖バイオマス発電所で実証試験を行い、本発電所の1日の安定稼働に必要な135トンの燃料を約2時間半で集積場所から燃料投入口まで運搬・投入することに成功した。 ※ 3D-LiDAR:レーザー光を使って対象物までの距離を正確に測定し、遠方や周囲の状況をリアルタイムで立体的な点群データとして認識するセンサー。 (2) 大林道路㈱アスファルトプラント運営業務の効率化を可能とするスマートマニュファクチャリングツールを開発し運用を開始アスファルトプラント運営業務の効率化を目的とし、業務のデジタル化(DX)や製造設備の自動化に特化したスマートマニュファクチャリングツールを、田中鉄工㈱と開発した。本ツールは受注管理や配車管理、出荷管理などの各システムを連携させる仕組みであり、大林道路九州支店大分センターアスコンに先行導入した。本ツールの導入によって工場内の各システムの一元管理が可能となり、作業効率の向上や無人化に繋がった。本アスコン内で導入されている世界初の再生骨材貯蔵サイロにおいては、本ツールによってプラント本体への供給ルートも自動化・設備化されたことから、ホイールローダの稼働の必要性がなくなり、燃料費のコストダウンやCO2排出量の削減も実現した。
FY2024|5,158 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術のほか、事業領域の拡大を図るための技術開発など多岐にわたる分野の研究開発活動を実施している。 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は165億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産及びその他の各セグメントには区分していない。 (1) 当社① 大風量かつ吹出し口の結露抑制が可能な空調用誘引ユニット「in-DUCT™」を開発アトリウムやスタジアムなど、主に大空間や半屋外空間向けの空調用誘引ユニット「in-DUCT™」(インダクト)を開発した。地球温暖化による夏季の高温多湿化が進み、アトリウムやスタジアムなどの大空間や半屋外空間においても、快適な空調環境の確保が求められる一方で、これらの空間は外気の流入により湿度が高くなるため、空調設備には大風量の送風と吹出し口の結露防止対策が必要となる。空調機からの空気は「in-DUCT™」を通過する際に周囲の空気を誘引(空調機送風量の約50%)し、約1.5倍の大風量の混合空気(最大18,000m³/h)として送風される。そのため、室温と送風温度との温度差が小さくなり、吹出し口の冷却による結露を抑制できる。また、「in-DUCT™」は動力が不要で、気流方向さえ守られれば、本体を設置する向きに関する制約はなく、ダクトの一部として施工できることに加えて、配管など他の吊り物と近接設置しても、誘引空気の経路が確保できるデザインとなっているので、既存の空調システムへの設置や再利用が可能である。加えて、「in-DUCT™」は周囲の空気を誘引するため、空調機で処理すべき風量を、吹出し必要風量の約3分の2に抑えることができ、空調機の能力やダクトのサイズダウン、省スペース化が可能となるため、イニシャルコストは約20%削減できる。また、空調機の風量削減に伴い、消費電力は約17%削減でき、CO2排出量削減と、ランニングコストの抑制が可能となる。 ② 建設現場のデジタルツインを構築できるアプリ「CONNECTIA」を開発高性能PCや特別なスキルを必要とせずに、容易に建設現場のデジタルツイン(※1)を構築できるデジタルツインアプリ「CONNECTIA」を開発した。これまで、デジタルツインを構築する現場の管理は、3次元モデルを扱える高性能PCの手配や、ソフトウェア操作に関する高度なスキルの習得が必要であり、加えてBIM/CIM、地形、点群などの静的データと、人や工事車両などの動的データを統合するには高度な技術が必要なことから、一部の建設現場で試験的に行われているのが実情であった。国立大学法人東京大学大学院工学系研究科と共同研究した「データ・システム連携基盤」(※2)の考え方を応用し、TIS㈱と、主にデータ統合の仕組みを構築した。そして、ビューアの操作性や快適性を向上させるため、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン㈱が提供しているゲームエンジン「Unity」を活用し、本アプリを開発した。「CONNECTIA」は一般的なPCでも3次元モデルを快適に作動・表示でき、現実空間の情報収集や再現等の操作を単一のシステムで行うことができる。これにより、誰もが簡単に利用できる直感的でシンプルな操作性を実現しているほか、クラウド上にデータが保存されることで時間や場所を問わず現場状況をデジタルツイン経由で確認可能になる。 ※1 デジタルツイン:IoTなどを活用して現実空間の情報を取得し、サイバー空間内に現実空間の環境を再現 する技術※2 大林組と国立大学法人東京大学大学院工学系研究科が開発し、概念実証を完了した、施工管理で扱う各種デ ータを相互利用することで施工管理業務の効率化をめざすシステム ③ 油圧ショベルバケットの土付着抑制部材「ジオドロップ™」を開発フッ素樹脂(PTFE)と金属を直接接合した部材「ジオドロップ™」を油圧ショベルのバケットの底面と側面に貼り付けることで滑りやすくなり、土の付着を抑制する技術を開発した。土の付着の抑制により、掘削・積み込み時のバケットに残った土砂を振り落とすための揺動・衝撃作業が9割削減され、油圧ショベルの稼働時間は1~2割抑制が可能となる。これにより、CO2排出抑制、騒音・振動の発生抑制、バケットの延命化などの効果が得られる。また、近年実用化が進められている自動・自律運転による油圧ショベルの生産性向上にも貢献する。 ④ アコースティック・エミッション技術を用いた支障物切削負荷検知システムを開発 シールド工事における地中支障物の切削において、「アコースティック・エミッション技術」(※)を用いて、 切削時に発生する特有の弾性波を検知し、支障物との接触、切削時の負荷・衝撃を評価するシステムを開発した。 支障物との接触、切削時の負荷・衝撃をいち早く検知・評価し、シールド機の掘進速度の調整と切削負荷を抑制することで、カッタービットの損傷を防ぎながら、支障物を確実に切削可能となる。 また、想定外の支障物に突き当たった場合でもいち早く検知でき、速やかな対策を取れることから、シールド機への損傷を防ぎ、円滑な施工により工程確保が可能となる。 ※ アコースティック・エミッション技術:アコースティック・エミッションとは、材料に変形、摩耗、破壊が起こった際に、内部に蓄えられた弾性エネルギーが、高い周波数をもつ音響信号「弾性波」として放出される現象。アコースティック・エミッション技術は、この「弾性波」を検出・評価する技術。 ⑤ 高精度なZEB評価を可能にする業界初(※1)の設計支援システム「SmoothSEK™」を開発㈱イズミシステム設計と共同で、BIMワンモデルからZEB認証の申請に必要な省エネ性能計算情報を自動抽出する業界初の設計支援システム「SmoothSEK™」(スムーズセック)を開発した。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、建築物のZEB化のニーズが高まっているが、ZEB認証に係る申請には、省エネルギー性能の算出に多大な時間と労力が必要であった。当社は、自社のBIM業務標準「SBS」(※2)に基づいたBIMワンモデルの一貫利用を推進しており、今回開発した「SmoothSEK™」をBIMワンモデルと連携することで省エネルギー性能の評価を正確かつ効率的に行えるようになる。 ※1 自社調べ(2023年8月)。「建築物省エネ法で規定された『標準入力法』とBIMの自動連携」として。※2 SBS(Smart BIM Standard):大林組のBIM業務標準。BIM一貫利用を幹とし、プロジェクト関係者が 等しく理解できるBIMモデルをつくるための基準。 ⑥ 場所打ちコンクリート杭の杭支持層到達確認システム「PiRuler-GEO™」を開発 AIとICTの活用により、場所打ちコンクリート杭の施工において、杭支持層への到達状況を高精度でリアルタイムに確認できるシステム「PiRuler-GEO™」(パイルーラー ジオ)を開発した。 場所打ちコンクリート杭は、土木・建築工事で多く採用されているが、複雑な地盤条件下において、杭の支持層到達状況の管理に多大な労力を要するという課題があった。 「PiRuler-GEO™」は、掘削機から得られる計測データと、設計土質や経過時間などの独自指標を用いて、機械学習させたAIソフトによって支持層の土質と地盤の固さを推定する。掘削深度や支持層到達状況などの計測データをリアルタイムで確認可能であるため、管理の安定化と省力化を図ることができるほか、手戻り工事の発生を抑制し、工期遅延の防止につながる。 ⑦ 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の廃棄物をコンクリート材に再生利用する「リカボクリート™工法」を 開発 燃料電池車「MIRAI」の水素タンクに使用されている炭素繊維強化プラスチック(以下「CFRP」という。) の端材を、コンクリート補強用短繊維(※)として再生利用する新たな技術「リカボクリート™工法」をトヨタ 自動車㈱と共同で開発した。 CFRPは、軽くて強度が高く、耐久性に優れることが特長で、水素を燃料とする燃料電池車の水素タンクや航 空機、風力発電の風車ブレードなどに利用されている。しかし、性能を保ったままで再利用することは難しく、端 材として発生したCFRPは電炉で鉄をリサイクルする工程での原料としてのみの使用にとどまっていた。そのた め、CFRPが持つ強度を活かした再利用が課題となっていた。 本技術は、CFRPに独自の熱加工を施し、適切な長さに裁断したうえで、コンクリートに添加することで、コ ンクリートのひび割れ抑制や靭性の向上を実現する。CFRPによる補強用短繊維は、新品の炭素繊維と比べて、 CO2排出量を15分の1に、通常の補強鉄筋の使用との比較では9分の1にそれぞれ低減できる。 ※ コンクリート補強用短繊維:コンクリートと混ぜることで、靭性(粘り強さ)を高めることができる繊維質の 補強材 ⑧ 建物の施工段階のCO2排出量を予測するシステム「カーボンデザイナー®」を開発 建物の計画初期段階で、施工段階のCO2排出量を容易に試算できる、CO2排出量予測システム「カーボンデザイナー®」を開発した。 従来のCO2排出量算定システムは、必要とする入力項目数が多いことや、入力値が未確定の場合は試算できないなどの課題があった。 「カーボンデザイナー®」は、大林組の豊富な施工実績におけるCO2排出量や躯体材料などのデータを基に、計画初期段階で分かる項目(「工事名称」「工事請負金額」「延床面積」「建物用途」「工期」の5項目)を入力するだけで、施工段階の燃料、電力といったScope1(※1)、Scope2(※2)のCO2排出量を表やグラフで可視化する。 また、通常の燃料、電力、資材の使用から低炭素型資材を使用した場合のCO2削減効果の試算も可能である。 ※1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出※2 Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 ⑨ コンクリート打設に関する情報を一元管理するシステム「COTOMS」を開発 コンクリート打設作業における品質管理情報を統合的に管理するためのシステムである「COTOMS」(COncrete TOtal Management System コトムス)を開発した。 コンクリート打設作業の管理者は、「COTOMS」を用いて、出荷、運搬、受入れ、打設、締固め、仕上げ、養生、検査の各プロセスの開始・終了時刻、コンクリート性状などの品質管理情報をPCやタブレットの一画面内で確認しながら管理・蓄積することが可能となる。 「COTOMS」のシステム間情報連携手法(API)により、各プロセスにおける情報を集約・連携し一元管理することで、情報の連携速度と確実性が増し、コンクリート打設管理に要する時間を約30%削減できる。また、管理情報の確実な連携だけでなく、トレーサビリティが確保されることで、品質管理の精度が向上する。 また、Webブラウザ及びインターネット利用環境があれば、発注者や協力会社、現場事務所や本支店などの支援部門ともリアルタイムに情報共有が可能である。 加えて、さまざまな場所打ちのコンクリート工事で利用でき、工種や用途に合わせて、連携するシステムの組み合わせや表示画面のカスタマイズが可能である。 (2) 大林道路㈱アスファルト混合物製造時のCO2排出量を実質ゼロとする製造プロセスを確立アスファルト混合物製造時のCO2排出量を実質ゼロとするプロセスを確立した。アスファルト混合物の製造過程において、骨材を投入したドライヤーを加熱する際、燃焼バーナーの燃料として、A重油を廃食油に置き換えることで、温室効果ガス排出量を100%削減することが可能となった。電力は環境価値証書を購入し排出量をオフセットする。大林道路は、水素を代替燃料とした混合物の製造に既に成功しており、国内各所のアスファルト混合所のカーボンニュートラル化を進める。
FY2023|4,784 文字
6【研究開発活動】 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術のほか、事業領域の拡大を図るための技術開発など多岐にわたる分野の研究開発活動を実施している。 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は153億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産及びその他の各セグメントには区分していない。 (1) 当社① 製造工程でのカーボンネガティブを実現する「クリーンクリートN®」を開発カーボンニュートラルを実現するためのコンクリート技術として、カーボンネガティブ(CO2排出量を実質ゼロ以下に抑える)と廃棄物削減を実現する「クリーンクリートN®」を開発した。「クリーンクリートN®」は、製造時のCO2排出量を最大で80%削減できる「クリーンクリート®」(2010年開発)に、CO2を吸収し固定化した炭酸カルシウムを主成分とする粉体を混ぜ合わせ、その比率によりCO2排出量を差し引きゼロからマイナスにできるもので、プレキャスト製品だけでなくコンクリートプラントで製造、現場打設ができ、鉄筋コンクリートの材料として工事適用を目指す。加えて混合する粉体は、コンクリート産業から発生するセメント系廃棄物を原料としているため、CO2の排出量削減と同時に廃棄物の削減にも貢献できる。 ② 金属箔複合シートによる不燃化LIMEX製天井材を開発し、国土交通大臣が定める不燃材料認定を取得金属箔複合シートによる不燃化技術と石灰石を主原料とした素材LIMEX(ライメックス)(※)を利用した天井材を、㈱TBMと共同で開発し、国土交通大臣が定める不燃材料認定を取得した。建物の天井は用途や規模に応じて建築基準法に基づき、燃えにくい材料を用いる必要があるため、多くの天井には金属パネルや石膏ボードが使用されているが、これらの天井材は重く、震災時などの落下による被害が想定されるため、東日本大震災以降、安全・安心な天井材へのニーズが高まっている。LIMEX製天井材は、3層中空ハニカム構造に成形加工した軽量な中空シートの表面に、不燃材料である金属箔複合シートを貼ることで、一般的なアルミ天井パネルの半分以下の重量を実現しており、震災時の安全性向上と施工コストの低減に貢献する。また、LIMEXは、従来のプラスチックと比較して製造時のCO2排出量を削減できるほか、表面の金属箔複合シートを剥がすだけで基材と分離でき、LIMEXとしてのマテリアルリサイクルも可能であるため、環境負荷も低減することができる。 ※ LIMEX(ライメックス):LIMEXは㈱TBMが開発した石灰石を主原料とした素材で、炭酸カルシウムなど無機物を50%以上含む、無機フィラー分散系の複合素材。プラスチックや紙の代替製品として、石油や水、森林資源等枯渇リスクの高い資源の保全に貢献する。使用後はリサイクルが可能。 ③ 日本初の高層純木造耐火建築物「Port Plus®」の建設に耐火木造技術「オメガウッド®」や高い剛性・耐力・靭性を有する「十字型の剛接合仕口ユニット」を適用当社は、全ての地上構造部材(柱・梁・床・壁)を木材とした日本初の高層純木造耐火建築物「Port Plus®」の建設において、当社独自の木造建築に関する開発技術である耐火構造材「オメガウッド®」及び高い剛性・耐力・靭性を有する「十字型の剛接合仕口ユニット」を適用した。「オメガウッド®」は、㈱シェルターとの技術協力により開発した耐火木造技術である。木材に燃え止まり層(耐火層)として石膏ボード、燃えしろ層として木材を設けることで、3時間耐火までの木造建築が可能となった。「十字型の剛接合仕口ユニット」は、接合具と接着剤で木材を接合するGIR工法(Glued in Rod)と、柱と柱を貫通させて連なる貫構造を組み合わせた3層構成で、柱と梁の接合部の剛性・耐力・靭性を確保する接合法である。当社は、上記の開発技術を適用することで、木材の耐火性と耐震性を確保しつつ、CO2排出量を削減する、環境に配慮した木造建築の施工を実現した。 ④ 渋滞防止に貢献する工事車両管理支援システム「FUTRAL®(フュートラル)」を開発 工事車両の建設現場への入退場予定や走行記録を可視化し、渋滞の防止や現場作業の円滑化に貢献する工事車両管理支援システム「FUTRAL®」を開発した。大阪府大阪市此花区夢洲内の2つの建設現場で工事車両管理における有用性を実証した。 建設現場では資機材を運搬する多量の工事車両が日々入退場することから、周辺道路の渋滞や通行禁止エリアの通行を防止するためには、工事管理者が特定の時間に工事車両の入退場が偏らないように調整し、通行ルートの順守を徹底する必要がある。しかし大規模開発プロジェクトにおいては区域内に複数の建設現場が近接して稼働しているため、現場間での調整が必要で時間と手間がかかる。 「FUTRAL®」は、個々のシステム上で行う工事車両の入退場予約、位置や移動状況の把握、メッセージの送受信などのデータをダッシュボード上で集約・加工することで、工事車両管理に必要な情報を表示できるシステムである。工事管理者は、「FUTRAL®」を通じて複数現場の入退場予定を確認しながら、通行ルートごとに渋滞発生を回避するための調整や指示ができる。また、複数の施工会社で一つのプロジェクトを管理する場合は、入退場予定に関するデータを各社のシステムを通じて連携させることが可能である。 ⑤ 3Dプリンターとロボット打設技術によるコンクリート構造物の自動化施工システムを開発セメント系材料を使用した3Dプリンターによる外殻製造技術と、コンクリートの吹き付けまたは流し込みをロボットにより行う技術を用いた、コンクリート構造物の自動化施工システムを開発した。本自動化施工システムは、セメント系材料を使用して3Dプリンターで外殻をプリントし、コンクリートの打設経路をプログラミングしたロボットアームで、コンクリートを吹き付けまたは流し込むことにより、コンクリート構造物を自動で施工するものである。本システムにより、従来、コンクリート構造物の製造において必要であった鋼製型枠の製作・組み立て・解体作業やコンクリート打設作業が不要となり、従来の3分の1まで省力化が可能となるほか、コストダウンにもつながる。 ⑥ コンクリート打設時の先送りモルタルが不要な「ノンモルタル工法®」を開発㈱エコスティックと共同で、コンクリート打設時の先送りモルタルが不要になる「ノンモルタル工法®」を開発した。従来、ポンプ車で圧送を行うコンクリート打設は、配管が詰まることを防ぐために、モルタルを先行材として使うことが一般的で、それら全てが産業廃棄物として処分され、廃棄されるモルタルは国内建設現場全体で年間60万m³(当社試算)、また、原料であるセメントの生産時CO2排出量は年間23万t(当社試算)に上る。「ノンモルタル工法®」では、圧送整流プラグを配管の先頭部に設置することで、プラグの強い配管抵抗により疑似的に配管内を満水状態にし、生コンクリートを構成する水・セメント・砂・砂利の流れが制御されるため、先送りモルタルがなくても配管の詰まりを防ぐことが可能となる。また、内面が平滑化されたハイブリッド配管を使用することで接続部の伸縮やブームの揺れを防ぎ、配管内が詰まらず高品質なコンクリートを打設することができる。 ⑦ シールドマシンカッタービットの摩耗状況を色と匂いで知らせる「摩耗検知ビット」を開発・実用化 トンネル工事で使用されるシールドマシンカッタービットの摩耗状況を色と匂いで知らせる「摩耗検知ビット」を開発し、実用化した。 シールド工法では、多数のカッタービットを装備したカッターを回転させることで地盤を切削するが、カッタービットは掘進に伴い摩耗し、そのまま使い続けるとカッターが損傷して掘進不能となる。摩耗状態を電気の導通や油圧の低下により把握する従来の方式の摩耗検知ビットでは、摩耗情報をシールドマシン内に伝達するためのケーブルや配管が必要であり、配置スペースの制約から摩耗検知ビットを多数装備できず、ビットの摩耗が想定以上に進行していることがあった。 今回開発した方式の「摩耗検知ビット」は、カッタービットが摩耗すると染料や香料を噴出させ、掘削土砂に付着した色や匂いで摩耗状況を把握できるものであり、シールドマシンから離れた位置でもカッターの健全度を容易に確認できるほか、装備のためのケーブルや配管が不要になり、多数の摩耗検知ビットを装備することができるため、従来方式より正確に摩耗状況を評価し、カッタービットに起因するトラブルを未然に防止できる。 ⑧ 山岳トンネル工事におけるロックボルト遠隔打設専用機「ロボルタス®」を開発 山岳トンネル工事におけるロックボルト打設作業を遠隔操作で行うことができるロックボルト遠隔打設専用機「ロボルタス®」を開発した。 ロックボルト打設作業は掘削後の山岳トンネルを構造的に保持するために行う支保工の一つである。この作業は、作業員が切羽付近での騒音や粉じんなどにさらされながら、重量物であるロックボルトを取り扱う過酷な作業であるうえに、作業員の技量で施工スピードや品質が左右される。 「ロボルタス®」は、山岳トンネル工事におけるロックボルト打設に必要な、削孔からのモルタル注入、ロックボルト挿入までの一連の作業を遠隔操作で行うことができ、機械化による安全性向上、高品質確保及び作業の省人化を実現した。 ⑨ 苗木を安定的に栽培、育成する「人工光苗木育成技術」を開発 木造建築物の構造部材として利用可能なカラマツをはじめとした苗木を、室内で人工光による環境制御を行い安定的かつ効率的に育成する技術を開発した。 植林用苗木の生産は従来より露地栽培で行うため、天候に左右されて発芽率や育苗期間が変化し、発芽率が10%まで低下する場合もあるなど育成数量が安定しないことが課題であった。 「人工光苗木育成技術」では、室内で苗木を育成し人工光による環境制御を行うことで、環境や季節にとらわれず、植林に適した苗木を出荷時期に合わせて育成し、安定的に供給することが可能となる。本技術における幼苗期の発芽率は、60~70%程度に安定し、かつ根元が太く植林後も順調に根付く苗木を育成することができる。また、室内栽培により、冬季も含めて育苗期間と育成数量が安定するため、植林用苗木を、必要な出荷時期に必要な出荷量で確保することができる。 (2) 大林道路㈱ダンプトラック等荷台設置製品「楽フロン」を開発高い滑りやすさをもったフッ素樹脂板で表面を覆ったステンレスをダンプトラックの荷台隅角部に取り付けることで、土砂類を積み下ろす際の残土を削減する製品「楽フロン」を㈱ヒロテック、大蓉ホールディングス㈱と共同開発した。通常のダンプトラックでは荷下ろし時の土砂付着率が10%程度とされ、運搬効率の悪さなどが問題となっている。本製品をダンプトラックの荷台に設置することで、付着残土を大幅に減らすことができ、荷台清掃を効率化できるだけでなく、運搬効率の向上やそれによる燃料の削減、CO2排出の削減効果が得られる。
FY2022|4,794 文字
5【研究開発活動】 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術のほか、事業領域の拡大を図るための技術開発など多岐にわたる分野の研究開発活動を実施している。 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は158億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産及びその他の各セグメントには区分していない。 (1) 当社① MR施工管理アプリ「holonica®」を開発MR(Mixed Reality:複合現実)技術を利用して、目に見える実際の施工場所にBIMデータを重ね合わせて表示することで、設計情報確認、検査記録作成といった施工管理業務を効率化するアプリケーション「holonica®(ホロニカ)」を開発した。メガネ型ウェアラブル端末やタブレット端末など、利用シーンに適した機器を選択でき、BIMデータが持つ3次元の形状や仕様などの属性情報をMR技術により現地に重ね合わせて表示し、視覚的に設計を理解することを支援するとともに、デジタル空間内の該当箇所への施工管理情報の記録を容易にすることが可能となる。内装仕上げ検査業務では、階や部屋ごとに細かな設計の違いがあり情報の参照や記録が煩雑となりがちであるが、「holonica®」の適用により、目に見える実際の施工場所にBIMデータを重ね合わせて表示することで設計情報が確認でき、情報の伝達漏れを防止し、精度の高い施工管理を維持することができる。また、検査記録作成機能を備え、従来の紙図面を使用した検査方法と比較して約30%の時間短縮効果がある。 ② 「Smart BIM Connection®」を開発、販売へ BIMモデリングの状況を共有するマネジメントシステム「Smart BIM Connection®」をトランスコスモス㈱、応用技術㈱と共同で開発し、販売を開始した。 BIMを設計から生産設計、施工管理まで一貫して利用するためには、建築に関わる関係者全員が、一つのBIMモデルを作り上げていくこと(BIMモデリング)で、常に最新で正しい情報を共有し、効率的に活用していくことが肝要である。 一般的に、BIMモデリングは、建物の形状や仕様が不確定な状態から、顧客の要望を反映し、技術的な検討を経て、徐々に確定度合いを高めていく方法を採っている。「Smart BIM Connection®」は、BIMモデル上で部材ごとの確定度合いの入力と仕様情報の自動チェックにより、BIMモデリングとLOD(※)管理を一元化するシステムで、BIMモデリングを進めながらLODを即座に把握できるため、関係者間で確定度合いを共有でき、また、膨大なモデル情報の中から確定情報が判別できるため、効率的にBIMモデルを活用できる。 ※進展度(LOD:Level of Development):2008年にアメリカ建築家協会が制定したBIMモデルの進展度基準 ③ 猛暑日でも流動性を確保できるコンクリート「サンワーク®」を開発 特殊混和剤を用いることで、猛暑日でも良好な施工性を確保し、高品質なコンクリート構造物を構築できるコンクリート「サンワーク®」を開発した。 暑中期のコンクリート工事では、外気温の影響によりコンクリート温度も高くなるために硬化が早くなり、施工不良の発生が懸念されるため、土木学会や建築学会では、コンクリート温度の上限は35℃以下にするように定めている。しかし、近年ではヒートアイランド現象や地球温暖化の影響などにより、最高気温が35℃を超える猛暑日が発生しているため、コンクリート温度を35℃以下に制御することが困難となり、不具合が生じるリスクが高まっている。 「サンワーク®」は、特殊混和剤により、気温が35℃~40℃でも施工に必要なコンクリートの流動性を長時間確保できるため、猛暑日においても高品質なコンクリート構造物を構築できる。また、プラントで製造した一般的なコンクリートに特殊混和剤を添加し攪拌するだけで容易に製造でき、また特殊混和剤は、使用材料(セメント、骨材、混和材、化学混和剤など)の種類によらず添加でき、強度や耐久性など硬化後の性状に影響を与えることなく一般的なコンクリートに適用することが可能である。 ④ 高耐久な土系舗装「オーククレーR」を開発 ポリマー混和材「レジバインダー」を用いた高耐久な土系舗装「オーククレーR」を大林道路㈱、三光㈱と共同で開発した。 これまでの道路整備は安全かつ円滑な通行を主な目的とするため、アスファルト舗装が一般的であったが、近年では土の質感により公園や街並みと調和することに加え、土の保水性により夏場の路面温度上昇を抑制することができる土系舗装が注目されている。従来の土系舗装は路面が荒れやすいため、歩道での適用に限られていた。そこで、土の含水状態の影響を受けずに高い強度を発揮するポリマー混和材を用いることで、舗装材の強度を向上させ、高耐久で路面が荒れにくい土系舗装を開発した。 「オーククレーR」は、含水率の影響を受けることがなく、舗装材の強度を高く保てるため、車両の通行量が限られる軽交通道路であれば問題なく適用することが可能であり、また保水性があるため、夏場の路面温度の上昇を一般のアスファルト舗装に比べて最大18℃抑制でき、ヒートアイランド現象を緩和できる。 ⑤ ビジュアル工程管理システム「プロミエ®」を開発 BIMモデルやQRコード(※)を活用して各種工事の進捗を視覚的かつリアルタイムで把握できるビジュアル工程管理システム「プロミエ®」を開発した。 従来、鉄骨など各建設部材の搬入時の管理や取り付け・建て方完了時の進捗状況把握は図面の部材に色を塗るなどアナログ的な手法を用いていたことから、煩雑な作業となり管理情報の共有も難しく非効率であった。 今回開発した「プロミエ®」では、建設部材の作業工程などを管理でき、クラウドサービスと連携したBIMモデルを用いることで、対象工事の進捗状況を3Dで視覚的に確認、管理が可能となるほか、発注者や協力会社などの関係者間でリアルタイムに情報を共有することができる。さらに、BIMモデルが持つ部材の属性情報を活用することで工事出来高の算出が容易になり、従来の業務にかかっていた手間やヒューマンエラーを低減し、施工管理の業務効率化に大いに貢献する。 ※株式会社デンソーウェーブの登録商標である。 ⑥ 「スティフクリート®」を開発し、RC床版補強工事に適用 道路橋リニューアル工事における交通規制期間の短縮と耐久性の向上を目的として、大林道路㈱、宇部興産㈱と共同で「スティフクリート®」を開発した。 昨今、社会インフラの老朽化が社会問題となっており、国内の道路橋においても、その約半数が今後10年間で建設から50年を経過することから、リニューアルが急務となっている。 橋梁のRC床版が老朽化した場合、従来の補強工法では、床版が増厚になることで周囲の舗装面と高さが合わなくなり、また下部工の補強も必要となる場合があった。それに対し、今回開発した「スティフクリート®」は、超高強度材料の採用により薄層での補強が可能となり、長期耐久性にも優れている。また、「早期強度の発現性能」と「早期硬化時間の制御性能」を付与することで、施工後3時間で交通開放に必要な強度が確保でき、橋面に勾配がある橋梁への適用も可能となる。加えて、小型の施工機械で施工可能であり、車載ミキサーを含めたすべての設備が1車線内に収まるため、夜間1車線規制内で施工し、交通量の多い昼間には全車線交通開放でき、道路利用者への影響を低減できる。 ⑦ 低床式AGVを複数台連携させる自律搬送システムを開発 建設現場での資材搬送において、自律走行するAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)を複数台連携することで工事現場の規模を問わず対応できる、フレキシブルな自律搬送システムを開発した。 米国のSRI Internationalと共同で開発した自律搬送機能は、搬送先と経由地の座標を指定することで、障害物を回避しながら搬送先まで走行することを可能にする。複数台の低床式AGVを連携させることで、仮設エレベーターへの乗降を制御できるため、無駄な待ち時間や昇降回数が減り、稼働率を向上できる。また、端末を通じて稼働状況を監視できるため、オペレーター1人ですべての低床式AGVの稼働状況を管理できる。 ⑧ 避難安全検証とBIMをデータ連携した「SmartHAK™」及び耐火性能検証とBIMをデータ連携した「SHAREDTIK™」設 計システムを開発 建築物における安全安心な設計及び合理的で自由度の高い性能設計を実現するため、当社で遂行している意匠構造BIMワンモデルと連携一元化した新しい設計システム「SmartHAK™」と「SHAREDTIK™」を開発した。 「SmartHAK™」は建築設計における避難安全検証法とBIMモデルを相互連携し、データを一元的に利用する設計システムである。建築確認申請での審査となる設計法(ルートB1、B2)から国土交通省の審査による大臣認定を受ける設計法(ルートC)まで幅広い手法での活用が可能である。 「SHAREDTIK™」は、超高層建築物での耐火被覆厚低減を実現する耐火性能検証法に必要な情報を自動計算処理するプログラムである。検証作業の効率化及び審査の向上・時間短縮により、従来に比べ7割以上の大幅な業務削減効果が期待できる。 ⑨ リアルタイムに現場状況を反映する「4D施工管理支援システム」を開発 デジタル空間上に現場の人やモノといった状況をリアルタイムに反映させたデジタルツイン(※)を作成し、施工管理に活用する4D施工管理支援システムを開発した。 BIMの3Dモデルを基にした建築物の施工状況に、ドローンによって取得した点群データを重ね合わせることで現場の起伏などを再現する。そのデジタル空間をプラットフォームとし、IoT化した重機の位置や稼働状況、監視カメラの映像、作業員の出面情報など現場管理に必要な情報を連携させることで、リアルタイムに現場の状況を反映させることができる。 従来は現地で確認していた現場の稼働状況を一元的に「見える化」することで、施工管理に必要な情報の収集にかかる手間を削減するとともに、現地に行かなくても遠隔からの状況確認を可能とする。また、収集した情報を解析することで出来高の算定や施工計画のシミュレーションなどに活用することができる。 ※デジタルツイン:実空間で収集したデータを基に、デジタル空間上に実空間のモノを再現する技術 (2) ㈱内外テクノス天井ルーバー施工のための新省力化工法の開発 木材活用として室内で多く採用されている天井ルーバーの省力化工法を㈱大林組、㈱オクジュー及び太平洋マテリアル㈱と共同開発した。 従来の工法は、ルーバー吊りとボード張り作業が別々で進行し、工程数も多く、位置調整が困難であった。新工法はルーバー吊り金物と天井ルーバーに取り付けるレール状金物を一体化設計するなどして、従来の工法に比べ約2割の工数を削減。ルーバーの取り付け位置も自由に変更可能となり、施工の簡素化及び迅速化を図ることができる。
FY2021|4,607 文字
5【研究開発活動】 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術のほか、事業領域の拡大を図るための技術開発など多岐にわたる分野の研究開発活動を実施している。 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は約136億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産及びその他の各セグメントには区分していない。 (1) 当社① 山岳トンネル統合システム「OTISM™(Obayashi Tunnel Integrated System)」の構成技術として覆工コンクリ ート打設用に「ホース伸縮式連続打設システム」を開発ホースを用いることで打ち込み時のコンクリートの落下高を最小限にできる「ホース伸縮式連続打設システム」を、北陸興産㈱と共同で開発した。従来の山岳トンネル施工における覆工コンクリート打設作業では、限られた打設口からコンクリートを流し込む特有の打設方法を採っていたため筒先からの落下高が大きくなり、コンクリートの材料分離(硬化前のコンクリートの構成材料が不均一となる現象)や余剰空気を巻き込むリスクに加え、重量物である鋼製配管の切り替え作業や清掃作業が遅延した場合、所定の時間内に打ち重ねが終わらずにコールドジョイント(コンクリートを打ち重ねる際、先に打設したコンクリートが上の層のコンクリートと一体化しない状態)が発生するリスクがあった。今回開発した「ホース伸縮式連続打設システム」は、打ち上がりの高さに応じてホースを引き上げるため、最小限の落下高での打ち込みが可能となり、前述のリスクが解消されることから、覆工コンクリートの品質向上及び打設作業に要する人員の削減が可能となった。 ② 渋滞を抑制する新たな床版取替工法「DAYFREE™」を開発 橋梁リニューアル工事での工事渋滞を抑制するため、交通量の少ない夜間の車線規制のみで工事が可能な床版取替工法「DAYFREE™」を、中日本高速道路㈱と共同で開発した。 高速道路のリニューアル工事では、上下線のいずれかを通行止めのうえ対面通行にするといった規制を行うことが多く、特に都市部ではう回路を設置する土地の確保が困難なことから交通規制が避けられないため、規制期間をできる限り短くすることが求められている。 「DAYFREE™」は、トレーラーで運搬できる半断面(2車線道路の1車線)用の移動式床版架設機「ハイウェイストライダー™」や、プレキャスト板を床版同士の接合部に設置する「スリムNEOプレート™」を活用することで、限られた時間内で既設床版の撤去から新たな床版の架設、路面復旧を行えることから、交通量の多い昼間に規制を解除することができ、1日数万台という交通量がある都市部におけるリニューアル工事においても、渋滞発生の抑制が可能となった。 ③ 既製コンクリート杭の支持層到達確認支援システム「杭番人™」を開発 既製コンクリート杭工事の支持層到達確認指標を遠隔地からもウェブ上でリアルタイムに確認できる支持層到達確認支援システム「杭番人™」を開発した。 従来、杭工事管理者や元請技術者は現場の施工管理装置モニター画面を見て施工管理に必要なデータを確認していたが、「杭番人™」は、支持層到達の判定に用いる掘削時における電流値などの各種指標をウェブ上でリアルタイムに表示することで、施工現場の情報を遠隔地からでも確認することを可能とした。これにより、効率的に支持層到達の確認ができ、作業時間を最大で50%程度低減することが可能になった。 また、杭打ち機の振動を定量化した振動指標や当社独自の新しい指標を複数加えたことにより、地盤の状況に応じた最適な支持層到達判定が可能となり、杭施工の信頼性が向上した。 ④ 「パンデミック®エマージェンシーセンター(PEC)」に新たなラインナップとして新型コロナ対応病棟を追加 新型コロナウイルス感染拡大防止と医療スタッフのための安全・安心な医療環境の実現という社会の要請に応えるため、新型コロナウイルス感染症対応病棟として患者の症状ごとに求められる機能別にユニット化した3タイプを新たにPECシリーズとして追加した。 新たなタイプの中等症患者対応の「PEC Ⅱ」、重症患者対応の「PEC/ICU」、さらに2008年に開発した「PEC original」と同じ平面図ながら部材を既製品にすることでより短工期での設置を可能とした「PEC quick」は、すべて約500m²のプレハブユニットを基本としているため、医療機関ごとに異なるニーズに合わせた組み合わせや、患者の増加に伴う増築にも対応できる。また、内部間仕切りもアレンジが可能であり、建築や設備の仕様によって柔軟に対応することで、医療機関のさまざまな要請に応えることができる。 ⑤ 持ち運びサイズの除菌装置「カセットミスト™」を開発し「マルチミスト®」の新たなラインナップとしてシリー ズ化 利用者の不在時に環境表面を自動で除菌する設備「マルチミスト®」の新たなラインナップとして持ち運び可能な「カセットミスト™」を開発した。 「マルチミスト®」は、次亜塩素酸水溶液と圧縮空気を混合させた微細なミストを噴射し、室内の手すりや家具の表面まで細部にわたって自動で効率的に除菌する設備で、配管型やカート型は既に病院や教育施設等に採用され高い評価を得ている。 今回新たに、小型で持ち運び可能な「カセットミスト™」を開発し、従来型と併せてシリーズ化した。「カセットミスト™」は、圧縮空気の配管が設けられた部屋に適用できる軽量コンパクトなタイプで、タイマーによる自動運転機能を備えている。 これにより、マルチミストシリーズは、建物の用途や規模に応じた幅広いニーズに対応することが可能となった。 ⑥ 排水が少なく環境に優しい「アワビの循環式陸上養殖技術」を開発 海水を浄化しながら再利用することで、排水による海への環境負荷をかけることなく、アワビを育成できる循環式陸上養殖技術を開発した。 昨今、水産物の安定供給を実現する養殖技術が注目される一方で、フンや残餌を含む養殖排水の海への環境負荷が問題となっている。これに対し、微生物の力で水槽の飼育水に含まれる有機物や窒素化合物などを分解除去することで清浄な水質を保つことができる、環境負荷が少ない循環式陸上養殖技術を開発した。 特に清浄な海水を好み水質など成育環境を適切に管理することが求められ、かつ近年漁獲量の低下によって養殖への期待が高まっているアワビについて、技術研究所(東京都清瀬市)において1年間実証を行い、アワビを育成するのに適切な温度管理や水槽の衛生管理手法を確立した。 ⑦ 免震建物へのフェイルセーフ機構「免震フェンダー®」を改良し、初めて中間層免震建物に適用 当社が2017年に開発した「免震フェンダー®」において、今回、中間層免震建物にも適用できるように改良した。 「免震フェンダー®」は免震建物において想定以上の地震が発生した場合に、建物利用者の安全性を向上させるフェイルセーフ機構であり、開発以来複数の基礎免震建物に採用されてきたが、免震層を1階床より上に設ける中間層免震建物においては、免震層が擁壁に囲まれていないため適用できなかった。今回、建物内側にバランス良く配置した束材(つかざい)を免震層上部の建物側から下向きに伸ばし、周囲に構築したストッパー(内側に「免震フェンダー®」を配置)をリング状に配置することで中間層免震建物にも適用できるように改良した。 これにより、想定以上の地震時に免震層上部の建物がどの方向に動いた場合でも、束材が「免震フェンダー®」に接触して可動変形量に制限をかけるため、免震装置及び建物の損傷や家具の転倒といったリスクを抑制して、建物利用者の安全性を向上させ、かつ建物の近隣への越境を防ぐことが可能になった。 ⑧ シールド自動運転「OGENTS/DRIVE®」の基幹となる「シールドAI自動方向制御システム」を開発 AIが掘進実績を学習することで、シールド機の進む方向を制御できる「シールドAI自動方向制御システム」を開発した。 シールド工法では、周辺地盤の硬さなどさまざまな要因が進む方向に影響を与えるため、状況に応じて適宜力点を調整する必要がある。また、方向を誤ることで壁面に無理な力がかかり、ひび割れが発生してしまうため、力点の調整作業には、オペレーターがシールド機の向きや位置、機械負荷など、多くのデータを総合的に評価しながら判定している。 今回開発した「シールドAI自動方向制御システム」は、オペレーターが評価に用いる多種多様なデータをAIが学習することで、シールド機の方向修正に必要な力点を自動で判定するシステムである。力点を的確に判定することで、オペレーターの技能に大きく左右されることなく、計画線に沿ったトンネルを構築することができ、また、壁面に無理な力をかけることなく施工できるため、品質の確保を図ることができる。(2) 大林道路㈱ 耐流動性・耐油性に優れた高耐久アスファルト混合物「タフアスコンTM」の開発重荷重の車両の往来が多い箇所や油漏れが懸念される箇所の舗装に用いるアスファルト混合物「タフアスコンTM」を開発した。「タフアスコンTM」は、ポリマー改質アスファルトⅡ型バインダに特殊添加剤を加えた高耐久アスファルト混合物で、耐流動性・耐油性が高い特徴があり、半たわみ性舗装に近い性能を有している。アスファルトプラントでの混合時に特殊添加剤をミキサ投入するだけで容易に製造することができ、運搬や施工も一般的なアスファルト混合物と同様に扱うことができる。また、従来重交通道路で適用されている半たわみ性舗装と比較すると、施工時のミルク注入工が不要となったため、約50%の工期短縮が可能となり、コスト縮減を図ることができる。 (3) ㈱内外テクノス金属箔を用いた展示施設でのガスバリア技術の開発展示施設における展示ケース内を良好な状態に保つ空気質対策技術の一つとして、ガス放散抑制アルミ合金箔を壁紙の下に張り付けることで、下地合板から発生するガスを簡易的に抑制する技術を、当社と共同で開発した。 ガス放散抑制技術としては2018年に当社と「ピクチャープロテクト®」を共同開発し、販売を開始しているが、壁紙だけを更新する既設の展示ケースや展示台の改修には、ガス吸着層とバリア層を一体化して接着する必要があり、施工期間や費用面で採用できないケースがあった。 今回共同開発したガスバリア技術は、「ピクチャープロテクト®」で開発したガス放散の少ない接着剤を用いてアルミ合金箔を既存の合板下地に接着し、新しい壁紙も同じ接着剤で施工することで、簡易的にガス放散を抑制し、展示ケース内に収蔵されている文化財などの劣化を防ぐことができる。
FY2020|4,020 文字
5【研究開発活動】 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術のほか、事業領域の拡大を図るための技術開発など多岐にわたる分野の研究開発活動を実施している。 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は約137億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産及びその他の各セグメントには区分していない。 (1) 当社① 床版乾式水平切断工法「サブマリンスライサー™」を開発 鋼橋の床版取替工事において床版ハンチ部(梁の接合部などで断面が他の部分より大きくなっている箇所)を水平に切断する工法「サブマリンスライサー™」を、㈱横河ブリッジ及びコンクリートコーリング㈱と共同で開発した。従来、道路橋の床版取替工事では、床版をいくつかの部分ごとに鉛直に切断したうえで撤去していたため、施工ステップが多く撤去作業に時間がかかっていた。 本工法では、乾式のワイヤーソーを用いた乾式水平切断装置で、床版下から桁と床版の接合部をずれ止めも含めて水平切断することで、施工ステップを大幅に削減し、床版撤去に伴う交通規制の期間を短縮することが可能となった。 ② シールド三次元線形管理システムを開発現在、開発に取り組んでいるシールド自動化システム「大林インテリジェントシールド(OGENTS:Obayashi Intelligent Shield)」の要素技術であるシールド自動運転「OGENTS/DRIVE™」の基本システムとなる、シールド三次元線形管理システムを開発した。シールドトンネルの線形を管理するために重要なシールド機の方向修正計画の立案において、従来の方法では、1リングごとに断面を抽出し、余掘り(シールド機を修正したい方向に大きく掘削して隙間を作ること)やクリアランス(シールド機とセグメントリングの間の隙間)が適正であることを二次元で確認していたが、実際の掘削では余掘りやクリアランスが不足し、シールド機やセグメントリングに無理な力がかかることがあった。 今回開発したシステムでは、三次元モデルにより余掘りの量やクリアランスの大小を色で識別し、立体的に表示することで、余掘り量やクリアランスを的確に把握して計画の妥当性を判断できるため、一層の品質向上を図ることが可能となった。 ③ 洋上風力発電に関する建設技術を確立洋上風車建設において、比較的水深が浅い場所に適した着床式と、水深が深い場所に適した浮体式それぞれの形式に適応した建設技術を確立した。着床式では、実大規模の「スカートサクションⓇ」(※)を実際に洋上に設置および撤去することで、洋上風車基礎としての適合性を実証した。また、浮体式では、アンカーに「スカートサクションⓇ」を活用し、コンクリート製浮体を海底地盤に緊張係留する「テンションレグプラットフォーム型浮体式洋上風力発電施設」を考案し、一般財団法人日本海事協会からの設計基本承認を取得した。 ※スカートサクションⓇ:円筒型の壁を海底地盤中に貫入して洋上風車の安定性を確保する構造体。ポンプによる排水によって沈下するため、無振動・無騒音で、大型の機械を使うことなく施工することができる。 ④ 「5G」を活用した道路造成工事に係る一連の作業の遠隔操作及び自動化の実証試験に成功第5世代移動通信システム「5G」を活用した道路造成工事の実証試験に、KDDI㈱及び日本電気㈱と共同で成功した。本実証試験では、5Gを使った3台の建設機械の遠隔操作や、自動運転システムを搭載した振動ローラの同時連携に加え、工事に必要な施工管理データのリアルタイム伝送・解析を行うことで、一般的な道路造成工事に係る一連の作業を遠隔操作、自動化で実現することに成功した。 将来的には、オフィスに設置した遠隔施工管理室から複数の建設現場に連続してアクセスしたり、一人の熟練工が複数の建設現場で複数重機に同時に対応できるようになり、建設現場までの移動時間や工数の削減につながることが期待される。 ⑤ 耐火被覆の吹付け作業を自動化する「耐火被覆吹付けロボット」を開発建設技能者の不足が著しい耐火被覆工事において、作業負担の大きいロックウール等の吹付け作業を自動化することで省人化を実現するとともに、作業効率と作業環境の改善も実現する耐火被覆吹付けロボットを開発した。今回開発した耐火被覆吹付けロボットは、あらかじめ登録した作業データに従って建設現場内を走行し、半日もしくは1日単位の吹付け作業を自動化する。また、最大吹付け幅が建設技能者と比較して約2倍となることで作業効率が3割程度向上する。さらに、ロックウールの飛散量を約7割低減する粉じん飛散防止ノズルや、センサー認識による安全機能を備え、ロボットと協働する建設技能者の作業環境を改善する。2020年度中に同ロボットを建築現場へ実適用することとしている。 ⑥ 建設現場のIoT化に対応した通信環境を簡便に構築する多機能分電盤「ノアキューブ™」を開発建設現場に設置する分電盤に、さまざまな規格の通信機能やネットワークカメラなどを付加した多機能分電盤「ノアキューブ™」を開発し建設現場に導入した。「ノアキューブ™」は、設置して電力線を配線するだけで、追加の作業を行うことなく通信環境を構築することができるため、多種多様なIoT機器を通信規格に捉われることなく利用することができる。また、付属のネットワークカメラが建設現場内を遠隔監視する他、火花の自動検知機能を持つため、火気作業に起因する災害発生リスクが低減する。それに加え、照明設備や工事用機械の消費電力量を一元的に監視し、利用状況に応じて遠隔で電源のON/OFF操作が可能なため、無駄な消費電力を減らして省エネに貢献する。 すでに全国の建設現場で「ノアキューブ™」の導入を進めており、今後も標準の分電盤として普及展開していく予定である。 ⑦ セメント系材料を用いた3Dプリンターで国内最大規模となる構造物を製造3Dプリンター用特殊モルタルで製造した外殻に超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリートⓇ」を流し込むことで、型枠や鉄筋を使用せずに複雑なデザインの構造物を製造する技術を確立した。 一般的に、コンクリート製の構造物は引張強度を保つために、鉄筋などと組み合わせることが必要だが、引張強度が高く単独でも構造物として使用できる「スリムクリートⓇ」は、3Dプリンターで製造した外殻に流し込むことで軽量かつ丈夫な構造となるため、曲面や中空のある複雑なデザインを可能とした。併せて、独自の積層制御技術および大型ロボットアーム(アーム長約3.0m)を用いた3Dプリンターの導入により、国内最大規模の構造物の製造を実現した。 ⑧ AIによる構造物の振動制御技術を開発AI技術の一つである強化学習をアクティブ・マスダンパー(AMD)(※)に適用する手法を㈱Laboro.AIと共同で開発し、大林組技術研究所本館内ブリッジに設置しているAMDに試験適用し、高い制振効果を得た。今回の強化学習の適用において、実際のブリッジの揺れをコンピューターでシミュレーションする段階で、装置の能力や実際の環境などに合わせた振動の制御を、試行錯誤を重ねながら学習していった。その結果、徐々に揺れを抑えることが可能となり、従来の理論による結果を上回る振動の制御を実現した。今後は、地震や風による高層建物の揺れを抑えることのできる建物頂部のAMDに強化学習を適用するための開発も進め、将来の実用化を目指していく。 ※アクティブ・マスダンパー:対象構造物に取り付けた重りを能動的に動かすことで対象構造物の振動を低減する技術。 (2) 大林道路㈱ 計量装置を搭載し、積載重量表示を可能とした「スケールダンプ」の開発道路舗装の切削オーバーレイ工事等における切削廃材の積み込み時の積載量をデジタル表示する「スケールダンプ」を、大煌工業㈱、極東開発工業㈱と共同開発した。「スケールダンプ」は、車体の3箇所に登載したロードセル(計量装置)で計測した積載量をリアルタイムで表示することを可能としたダンプトラックであり、路面切削機による切削材の積み込み作業時(概ね5~8km/hの低速走行時)も車内外の表示計で積載量を確認できる。 これにより、ダンプトラックの積載能力を最大限に活用した運用が可能となり、車両の稼働率の向上とともに、過積載による道路損傷の発生を抑制することができる。また、従来の切削オーバーレイ工事において、積載量を体積から算出するために行っていた路面へのマーキング作業が不要となり、現場作業の負担も軽減できる。 (3) 内外テクノス㈱金属箔を用いた不燃化木材ボードの開発天然木ツキ板とアルミ合金箔を木材の上に貼ることで、難燃薬剤を使用しない不燃化技術を当社と共同開発し、スギ基材で不燃認定を取得した。 従来の不燃化技術では、木材に水溶性の難燃薬剤を注入するため、薬剤による白華現象を防ぐために樹種は注入しやすい針葉樹に限定されていた。また、注入処理から乾燥まで製作に2ヶ月程度を要していた。 今回開発した不燃化ボードは、難燃薬剤を使用しないため白華現象が生じず、表面には広葉樹を含む幅広い樹種が採用可能となるため、意匠性が向上した。また、薬剤注入処理及び乾燥工程が不要で、接着加工のみで対応できるため、コスト削減が図れ、納期も2週間程度に短縮される。
FY2019|4,084 文字
5【研究開発活動】 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術のほか、事業領域の拡大を図るための技術開発など多岐にわたる分野の研究開発活動を実施している。 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は約123億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産及びその他の各セグメントには区分していない。 (1) 当社① 革新的な高流動コンクリート「ニューロクリートNeoⓇ」を開発・適用 普通コンクリートに特殊増粘剤と高性能AE減水剤を添加するだけで、ひび割れが発生しにくい高品質なコンクリート構造物を低コストで構築できる、高流動コンクリート「ニューロクリートNeoⓇ」を開発した。従来の高流動コンクリートは、単位セメント量(1m3に含まれるセメント質量)を大幅に増加させることで材料分離抵抗性を高めていることから、材料コストが上昇するとともに温度ひび割れが発生しやすくなる。今回開発した「ニューロクリートNeoⓇ」は、従来の高流動コンクリートに比べ単位セメント量が圧倒的に少ないことで、ひび割れが発生しにくいうえに、材料費を約25~35%削減できる。また、普通コンクリートと異なり、建設技能者がバイブレーター等で締固め作業を行わなくても自重で型枠内の隅々まで均質に充填する性能があることから、生産性が向上すると同時にコンクリート工事に係る建設技能者数を約30~50%低減できる。既に8件の道路トンネル工事に適用している。 ② システム天井用の面発光LED照明器具「エコルミスクエアⓇ」を開発・適用 高い意匠性と省エネルギー性を兼ね備えた、システム天井用の面発光照明器具「エコルミスクエアⓇ」を開発した。 「エコルミスクエアⓇ」は、システム天井のグリッドサイズ(600mm角)に合わせた照明器具で、LED光源からの光を導光板を用いて効率的に拡散させることにより、面全体がまぶしさや不快感を感じずやわらかい光を発光し、消費電力を大幅に低減することで、省エネルギーに貢献する。また、導光板の活用により、器具の薄型・軽量化を実現し、レイアウトの可変性やデザインの自由度を広げ、意匠性の高い空間を実現しており、既に4件のオフィスビルなどに適用している。 ③ 廃棄物最終処分場に敷設する「導電性自己修復マット」を開発・適用 廃棄物最終処分場に低コスト、短工期で敷設できる「導電性自己修復マット」を開発した。 廃棄物最終処分場では、地下水汚染を招かないよう厳重な漏水対策を実施することが義務付けられている。従来は、遮水シートが破損した場合の漏水リスクを低減するため、二重に敷設した遮水シートの間に、遮水シートの破損箇所を電気的に特定するための導電性マットと、水分に触れると膨張して小さな穴や隙間をふさぐ自己修復マットを敷設していた。 今回開発した導電性自己修復マットは、自己修復マット上面の不織布に電気を流せるカーボン繊維を混合することで、導電性と自己修復性の両方の機能を1枚のマットで併せ持つため、材料コストの低減と作業時間の短縮が可能となった。既に一般廃棄物最終処分場の建設工事に適用している。 ④ 米国シリコンバレーにてオープンイノベーションにより次世代型の自動品質検査システムを開発 新たな技術の研究開発を進め、次世代生産システムの構築に取り組むために、米国シリコンバレーに開設した「シリコンバレー・ベンチャーズ&ラボラトリ(Silicon Valley Ventures & Laboratory)」において、飛躍的に建設現場の生産性を向上させる次世代型の自動品質検査システムをSRI Internationalと共同で開発し、建設現場の配筋検査への適用性を実証した。従来の一般的な2次元の設計図面による配筋検査作業では、施工管理者が工事の進捗に合わせて移動し、対象部位の図面を探して検査するという作業に、多大な労力と時間を費やしていた。 本システムでは、タブレット端末であるべき姿のBIM(Building Information Modeling)モデルと実際の配筋を重ね合わせたMR(Mixed Reality:複合現実)の映像を確認するだけで、設計図面通りに組み立てられているかを瞬時に判別できるため、配筋検査作業の画期的な効率化と品質向上の両方を実現した。 ⑤ 建設技能者の接近を検知して建設重機との接触を防止する安全装置「クアトロアイズⓇ」を開発 AIを活用して、建設重機に設置した複数のカメラが建設技能者を高精度に認識し、接近の恐れを検知すると強制的に重機を停止させて接触事故を防止する安全装置「クアトロアイズⓇ」を開発した。 従来の超音波センサーやICタグを用いた安全装置は、資材や危険区域外の建設技能者にも反応して警報が頻発するなどの課題があった。「クアトロアイズⓇ」は、あらかじめ建設技能者の作業姿勢やヘルメットの形状を学習させたAIを活用することで、検知精度が飛躍的に向上し、従来困難であった、屈んだ姿勢や材料を運ぶ建設技能者の検知が可能となった。また、ステレオカメラにより距離を正確に計測できるため、接触の恐れがある場合は強制的に停止させる機能を備えたことにより、接触事故を確実に防ぐことができる。 ⑥ 解体作業時の騒音を低減する「バブルサイレンサー™」を開発 建物の解体作業時のコンクリートを破砕する際に発生する騒音を低減する装置「バブルサイレンサー™」を開発した。 「バブルサイレンサー™」を、地下や基礎部分のコンクリート破砕に使用する建設重機「ジャイアントブレーカー」に装着し、騒音発生源である先端ノミ部分を泡で覆うことにより、特に人が不快に感じる高音域の騒音及び粉じんの飛散を抑制し、周辺環境への影響を軽減できる。また、放出する泡は工事で一般に使われている安全な材料を使用するため、従来通りの方法で処分できる。 ⑦ 地震後の建物安全性判定支援システム「ポケレポ™」を開発地震発生後の建物の安全性の判定を支援するシステム「ポケレポ™」を、㈱中電シーティーアイと共同で開発した。「ポケレポ™」は、配線が不要な無線加速度計とクラウドを活用することで、新築、既存を問わず短期間、低コストで導入できる。また、地震直後にデータをクラウドへアップロードし、安全性判定支援情報を作成するため、建物管理者は、遠方からも複数の建物の情報を一括で把握することができる。さらに、建物ごとの過去の地震観測記録はクラウド上に蓄積されるため、長期間にわたり当該建物の構造安全性を定量的に確認することが可能となる。 今後は実証実験を経て、2019年度中を目標に実用化をめざす。 ⑧ 「5G」を活用し、2台の建機を遠隔操作により連携させる実証試験に成功 次世代移動通信システム「5G」を活用し、2台の建設機械(以下「建機」)を遠隔操作により連携させる実証試験に、KDDI㈱及び日本電気㈱と共同で成功した。 災害時の復旧工事では、安全を確保する観点から建機を遠隔で操作するシステムの活用が期待されているが、従来のWi-Fiを利用した遠隔操作では、映像のずれにより作業効率が低下する課題があった。実証試験では、2台の建機に搭載した8台のカメラ映像と音声情報を、高速、大容量及び低遅延通信が特長の「5G」を活用し、リアルタイムで伝送することで、2台の異なる建機を遠隔操作により連携させ、土砂を運搬することに成功した。加えて、車載型の「5G」基地局を導入して復旧活動を迅速かつ安全に進められることを実証した。また、国内で初めて対話型の音声制御システムを導入し、建機を音声のみで遠隔操作することにより、一人のオペレーターが2台の建機を同時に遠隔操作できることを実証した。 ⑨ 施工に最適なノズル位置を自動で保つコンクリート吹付け機を開発山岳トンネル掘削時の支保部材である吹付けコンクリートの施工において、簡易な操作で最適な吹付け位置を維持し、高品質の施工を可能とする吹付け機を、古河ロックドリル㈱と共同で開発した。従来の吹付け機では、アーム先端部のノズルを正しい位置から外れないように、素早く手動でアームを伸縮させる高度な熟練作業が要求された。 今回開発した吹付け機は、アームの伸縮動作を自動化して操作を簡易化したことで、技能の熟練度によらない吹付けが可能となり、オペレーターの技能習得にかかる時間を短縮できる。さらに、ノズル位置を施工に最適な軌道上に自動で保つことができるため、施工品質の向上とともに、材料コストの抑制や作業環境の悪化を防止することも可能となった。(2) 大林道路㈱ 置き型・フルカラーLEDの路面誘導灯の開発工事による道路交通規制の際、安全かつ円滑に車両誘導を促すための路面誘導灯「ミチテラ™」を、早水電機工業㈱及びウシオライティング㈱と共同開発した。「ミチテラ™」は、路面に置くタイプの点滅誘導灯で、堅牢性、防塵性及び防水性に優れているうえ、複雑な配線作業を伴うことなく、ケーブルに電源を接続するだけで使用でき、設置・撤去が容易である。また、円盤型の本体の四方には、フルカラーLED(青・赤・緑)を搭載しており、多様な色を表現できるほか、視認性が高く、あらゆる方向から、また晴天時には100m離れた位置からでも光を確認できる。 点滅パターンは、自由にプログラミングが可能であり、制限速度に合わせた点滅間隔に調整することで、ドライバーに違和感を与えず自然な車線変更を促し、安全かつ円滑な車両誘導を実現することができる。
FY2018|3,391 文字
5【研究開発活動】(建設事業) 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術の開発を行うなど、主に建設事業に関して多岐にわたる研究開発活動を実施している。 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は約106億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木及び海外土木の各セグメントには区分していない。 (1) 当社① アクアジャスター®を搭載した水中インフラ点検ロボット「ディアグ®」を開発 水中インフラの点検時に無人潜水機を静止させて鮮明な映像を撮影できるロボット「ディアグ®」を開発した。 地上や船上からの遠隔操作が可能であり、水流による機体の揺れを抑え、ほぼ静止した状態で対象物を撮影できる。潜水士による点検では水深約40mが限界で作業時間も限られていたが、「ディアグ®」は100mまで潜水し長時間点検を行うことができる。国土交通省による公募「次世代社会インフラ用ロボット技術・ロボットシステム」に採択され、実証実験を重ねた結果、最高ランクの評価を獲得した。 ② 大型風車をリフトアップで組み立てる装置「ウインドリフト®」を開発 風力発電用の大型風車の建設工事において、超大型クレーンを使わずにリフトアップで組み立てる装置「ウインドリフト®」を㈱巴技研と共同で開発した。 従来、発電容量3メガワットクラスの風車の建設は、ハブ(風車の中心部)やブレード(風車の羽)部材の組み立てなどに1,200トン級の超大型クレーンが必要であった。「ウインドリフト®」は、部材をジャッキアップ式の装置で建て起こしながらリフトアップするため、施工スペースを縮減でき、風による施工への影響も低減できる。当社グループ最初の風力発電事業、三種浜田風力発電所(秋田県三種町)の風車建設において本装置を使用した結果、約10%のコスト削減を実現した。 ③ 山岳トンネル工事の切羽(掘削面)評価にディープラーニングを適用 山岳トンネルの切羽を評価する際に、AI技術の一つであるディープラーニング(システムがデータの特徴を学習して事象の認識や分類を行う「機械学習」の技術)を適用した。 山岳トンネル工事の標準工法においては、事前の地質調査に基づいて主要な支保工の規模を計画し、工事中も切羽の強度や割目間隔などを評価のうえ随時計画を見直している。AI技術であるディープラーニングを使うことで、地質学の専門家と同等の評価が可能になる。切羽の画像と専門家の評価結果を機械学習させ、地質状況を細部まで高精度に評価することで、技術者不足の問題を解決し、工事の安全性と経済性を向上させる。 ④ 「5G」、4K3Dモニターを活用した建設機械の遠隔施工に成功 次世代移動通信システム「5G」と4K3Dモニターを活用した建設機械による遠隔施工(以下「本実証試験」)をKDDI㈱及び日本電気㈱と共同で開発し、国内で初成功させた。 災害復旧などの危険作業においては、オペレーターが建設機械に搭乗せず、離れた場所から映像を頼りに操作する無人運転が求められる。本実証試験では、「5G」の特長である高速・大容量通信を建設機械の遠隔操作に応用し、既存のモバイル通信では困難な高精細映像の伝送を実現することで、遠隔操作の作業効率を従来に比べ15%~25%改善した。本実証試験は、総務省が新技術の早期実現化を図るために行う技術的検討の一つとして行われた。 ⑤ 最適な建物管理を実現するビルマネジメントシステムを開発 IoT・AI技術の活用により建物利用者の快適性・利便性を高め、ウェルネスの観点からも様々なサービスを提供するビルマネジメントシステムの開発を進めている。 実証段階にある本システムは、IoT技術を用いて建物内外の多様な情報(湿度・照度・映像等)や建物利用者一人ひとりの快適感(温熱・光環境の好み等)の情報をクラウドシステムに蓄積し、AIで分析することにより、快適、健康、安全・安心、利便性、省エネルギーなどの要求に対する最適な建物制御を行う。建物利用者が長く使うほど最適な環境に近づける学習制御も実現する。また、エネルギー消費量や運転効率など複数のデータを多面的に解析することにより、設備機器のメンテナンスや更新時期を予測することもできる。 ⑥ 木造技術「オメガウッド・カラムウォール®」を開発 汎用木材を活用して高剛性・高耐力の柱を造る「オメガウッド・カラムウォール®」を開発した。 国内で大量生産される汎用木材(断面幅450㎜、厚さ90㎜程度の単板積層材)を接合金物やつづり材等で幅900㎜程度、厚さ180㎜以上に一体化し、中高層建築物の主架構(柱)とする。一般的な耐震壁付き軸組工法の場合よりも耐震壁を少なくでき、開口部面積を1.5倍程度まで拡大できる。また、一定条件の下、準耐火構造及び2時間までの耐火構造とすることが可能なため、耐火性能が要求される事務所、商業施設、医療福祉・教育施設など幅広い用途の中高層建築物を木造で建設できる。 ⑦ CO2フリー水素を製造する水素エネルギーシステムを構築 再生可能エネルギーでCO2フリー水素を製造する水素エネルギーシステムを構築した。 当社技術研究所に設置されている再生可能エネルギー発電設備(太陽光、風力)を活用し、水の電気分解により製造した水素を気体の状態で貯蔵のうえ、需要に応じて酸素と反応させて発電する。製造から利用までの各段階で実証することで、クリーンで効率的な水素エネルギーシステムの最適化を目指す。水電解装置と蓄電システムの併用により、天候の影響を受けない安定的な電力供給や停電時の自立運転が可能になる。本実証では、水電解装置と蓄電池容量の最適な組み合わせや各設備の制御手法などを検証する。 ⑧ 鉄骨柱・梁の溶接作業のすべてを自動化する「現場ロボット溶接工法」を開発 鉄骨造建築物における柱・梁の現場溶接作業をすべて自動化することで、省力化と高品質化を実現する「現場ロボット溶接工法」を開発した。 鉄骨造建築物の現場溶接作業には建設技能者の高度な技能が求められるなか、溶接の難易度が高い梁下フランジ、梁ウェブ、角形鋼管柱の溶接においてもロボットによる自動化を実現した。1人のオペレーターがロボットを2台同時に稼働させた場合、単位時間当たりの作業効率は溶接技能者の1.5倍であるため、省力化により技能労働者不足の解決に寄与する。また、ロボットの特長である正確な施工再現性により、高い溶接品質を安定的に確保できる。 (2) 大林道路㈱ 「全天候型高耐久常温アスファルト合材」の開発 水と反応して硬化する性質を持つ「全天候型高耐久常温アスファルト合材」を開発した。 アスファルト舗装及びコンクリート舗装の劣化に伴って生じるポットホールや段差等の補修において、雨天時及び水溜り箇所での施工が可能となる。また、従来の揮発硬化性の常温アスファルト合材と比べて耐久性が高く、硬化速度が速いため、施工後は直ちに交通開放することが可能である。 (3) ㈱内外テクノス 金属箔を用いた不燃化木材ボードの開発 天然木化粧単板と金属箔を木質材料の上に貼り合わせることで、難燃薬剤を使用しない不燃化技術を当社と共同開発した。 従来の不燃化技術は難燃薬剤を注入するため、使用できる天然木化粧単板の樹種が限定されるうえ、薬剤に起因して白華が発生しやすく、納期に時間を要するとともに高コストであった。 今回開発した不燃化木材ボードは難燃薬剤を使用しないため、広葉樹を含む幅広い樹種を採用できる。また、ボード中間層に金属箔を用いることで、高い不燃性の確保及び燃焼時に下地木質材料から発生するガスの抑制が可能となる。今後は合板やCLT(直交集成板)を含む様々な木質材料の不燃化を図り、コストダウンや納期短縮を目指す。 (不動産事業及びその他) 研究開発活動は特段行っていない。
FY2017|3,132 文字
6【研究開発活動】(建設事業) 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術の開発を行うなど、主に建設事業に関して多岐にわたる研究開発活動を実施している。 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は約105億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木及び海外土木の各セグメントには区分していない。 (1) 当社① 高強度かつ高耐久性のセメント系繊維補強材料「タフショットクリート®」を開発 コンクリート構造物のリニューアル工事に使用する長期耐久性に優れた補修・補強材料「タフショットクリート®」を宇部興産㈱と共同で開発した。 ノンポリマーの補修・補強材料であり、従来のポリマーセメントモルタルに比べ、コストは同等ながら高強度かつ高耐久性を有する。100N/mm²以上の圧縮強度を長期的に確保し、従来よりも部材の厚さを低減できるほか、組織が緻密なため二酸化炭素、塩分、水分が浸透しにくく、中性化、塩害、凍害に対して高い抵抗性がある。また、50年以上の耐久性があることからライフサイクルコストの低減も可能である。 ② バックホウなどの建設機械を無人で運転する汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を開発 バックホウなどの建設機械を無人で運転する汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を大裕㈱と共同で開発した。 低コストで汎用性が高く、一般的な建設機械を改造することなく容易に着脱できる。本装置を装着したままで遠隔操縦と搭乗操縦を簡易な作業で切り替えられるので、作業環境に応じて使い分け、災害復旧の現場などでの作業を迅速かつ柔軟に進めることが可能となる。 ③ ICTとCIMを活用したコンクリート施工管理システムを開発 ICTとCIMを活用したコンクリート施工管理システムを㈱スカイシステムと共同で開発した。 コンクリートは時間経過とともに流動性が低下するという特徴があり、一定の時間内に打設する必要がある。本システムは、タブレット端末のアプリケーションやICタグ、GPSなどを使用し、コンクリートの練り混ぜ開始から打設終了までの時間、打設区画、品質試験結果などの情報をリアルタイムかつ一元的に管理することが可能である。本システムの情報はCIMの属性情報としても記録され、現場を監督する技術者などは3Dモデル上で最新情報を共有することができる。これにより正確かつ効率的な施工管理が可能になるとともに、一元化された情報を施工後の維持管理に活用できる。 ④ ポリビニルブチラール樹脂及び硅砂を用いた高性能な防食鉄筋「サンドグリップバー」を開発 ポリビニルブチラール樹脂及び硅砂を用いた高性能な防食鉄筋「サンドグリップバー」を㈱川熱、朝日工業㈱と共同で開発した。 コンクリート構造物に使用された鉄筋が塩害や中性化によって腐食すると、鉄筋強度の低下や、錆の膨張圧によるコンクリートのひび割れが発生する。サンドグリップバーは、エポキシ樹脂よりも伸び率の高いポリビニルブチラール樹脂で鉄筋を被覆し、さらにその周囲に硅砂を付着させることで、鉄筋とコンクリートの付着強度の低下などの課題を解決した。エポキシ樹脂塗装鉄筋と同等の防食性を有しながら価格は同等以下であり、鉄筋を重ね合わせる際の継手の延長も不要である。一般財団法人沿岸技術研究センターの「港湾関連民間技術の確認審査・評価事業」において評価を取得している。 ⑤ BIMを活用した建物維持管理ツール「BIMobile®(ビーモバイル)」を開発 建物維持管理業務を支援する、BIMを活用した管理ツール「BIMobile®」を開発した。 データ容量を軽量化したBIMの3Dモデルと、モデルにひも付いた属性情報をタブレット端末に表示することが可能で、さらに写真や点検記録などの情報を追加入力することができる。また、サーバーに保存された図面や取扱説明書などのドキュメントを閲覧することも可能である。タブレット端末で3Dモデルやその属性情報を単に参照するだけでなく、その場で同時に点検記録などの情報を入力可能とする技術は建設業界初である。 ⑥ 建物利用者を快適な空間へと個別誘導するアプリを開発 利用者にとって快適な空間を個別に紹介する誘導アプリを㈱電通国際情報サービスと共同で開発し、「グランフロント大阪」でデジタルサイネージを用いた実証実験を行った。 本アプリは、利用者の空間へのニーズを生理状態や環境条件などからリアルタイムに評価し、その利用者にとって最適な空間での過ごし方を提案する。屋内からより快適な屋外へ利用者を誘導するための快適性評価方法を確立した本アプリの有効性を、今回の実証実験で確認した。 ⑦ パイロット孔なしでコンクリート壁や床板を高精度に切断できるワイヤーソー装置「ディープノンループカッター」を開発 鉄筋コンクリート構造物の解体作業においてダイヤモンドワイヤーを切断面に直接押しつけて切断するワイヤーソー装置「ディープノンループカッター」を㈱コンセックと共同で開発した。 本装置は切断箇所への設置が容易で、前面から直接構造物を切断することができる。ダイヤモンドワイヤーの巻き付け、パイロット孔の削孔など事前準備の手間を省くことができることに加え、より高精度な解体が可能となる。 ⑧ VR技術を活用した施工管理者向け教育システム「VRiel(ヴリエル)」を開発 ヴァーチャルリアリティ(VR)技術を用いたVR教育システム「VRiel(ヴリエル)」を開発した。 当社は鉄筋や型枠を組んだ教育用の躯体モックアップを自社施設内に構築し、鉄筋配置の不具合箇所を発見する体験型研修を実施しているが、定期的にモックアップを作り替えたり、受講者が実習施設所在地に赴いたりする必要があるなど、相当のコストと時間を費やしていた。本システムを使用することで、場所を選ばず手軽に、施工現場同様の環境で教育を実施することができる。また、素材としてBIMデータを活用できることから、さまざまな教育ツールを容易に作成することが可能となる。 ⑨ 免震建物へのフェイルセーフ機構「免震フェンダー®」を開発 建築基準法などで定められている地震動を超える巨大地震が発生した場合に、免震建物が免震擁壁などへ衝突した際のリスクを軽減する緩衝装置「免震フェンダー®」を開発した。 「免震フェンダー®」は建物と擁壁(またはストッパー)との間に設置する緩衝装置で、高減衰ゴム製の緩衝材が衝突のエネルギーを吸収し、衝撃力を緩和して建物の健全性と居住者の安全性を保つ。シンプルな装置であるため非常に安価であり、建築基準法で定められた大地震の約1.5~2.0倍の地震動に対して、衝突時の衝撃力を約2分の1から3分の2に低減する。 (2) ㈱内外テクノス 美術館展示ケース用空気質対策技術を開発 有害ガスが発生しない展示ケース壁構造を当社、大谷塗料㈱と共同で開発した。 合板への金属箔(ガスバリア層となる)とガス吸着シートの貼付と、有害ガスの発生しない接着剤の使用により、展示ケース内の展示物にとって有害なガスを放出する期間が不要になり、展示ケースの使用開始時期を数か月早めることが可能となる。 (不動産事業及びその他) 研究開発活動は特段行っていない。
FY2016|3,018 文字
6【研究開発活動】(建設事業) 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術の開発を行うなど、主に建設事業に関して多岐にわたる研究開発活動を実施している。 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は約100億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木及び海外土木の各セグメントには区分していない。 (1) 当社① 建設現場で複数点のWBGT(暑さ指数)を連続測定・一括管理できる「暑さ指数ウォッチャー」を開発建設現場で働く作業員や従業員の安全な作業環境を整備するため、現場内の複数箇所で暑さ指数(人体に影響する湿度、日射・輻射、気温などを取り入れた指標)を分単位で連続測定し、その情報を工事事務所で一元管理できるシステム「暑さ指数ウォッチャー」を開発した。測定値のグラフ表示や帳票出力、危険度通知のメール配信などの機能があり、作業員の作業強度や着衣量、暑さへの慣れなどを考慮した基準値を自動設定できる機能も有する。既存の計測機に比べコンパクト化と低コスト化を実現した。 ② 自動搬送システムの機能向上に向けて新たに「低床式AGV(無人搬送車)」を開発 建設現場の生産性向上を図るため、資機材を自動で運搬する「低床式AGV(無人搬送車)」を開発した。 当社が平成25年に開発した無人搬送車による自動搬送システムの機能を向上させ、磁気テープ上での自動走行だけでなく、無線コントローラーを使った自在な走行や段差やスロープを乗り越える走行を可能にした。さらに、運搬する資機材の下に車体全体が収まるコンパクトな形状になったことに加えて、資機材を積載したまま工事用の仮設エレベーターに乗り込むことが可能となった。これにより、資機材を上層階へ搬送する際に搬送車への積み込み、積み降ろし作業がなくなり、生産性が大幅に向上する。 ③ 生コンクリートの鮮度を保ちコールドジョイントを防止する「フレッシュキープ工法」を開発生コンクリートの流動性を最大3時間延長し、コールドジョイント(打継ぎ部の不連続面)や充填不良を防止する「フレッシュキープ工法」を開発した。コンクリートの許容打重ね時間の間隔は、コンクリート標準示方書では2.5時間以内とされているが、竹本油脂㈱と共同開発した特殊混和剤を製造後のコンクリートに混入するだけで、最大3時間延長できる。流動化剤を使用するより長時間流動性を保持でき、強度発現時期は従来のコンクリートと変わらない工法である。 ④ 2液混合型注入止水工法「ミクストグラウト™」を開発コンクリートのひび割れ部からの漏水を確実に遮断する工法「ミクストグラウト™」を㈱MASUDAと共同開発した。ポリウレタン樹脂と特殊水性エマルションを混合させる2液混合型注入止水工法である。ポリウレタン樹脂は特殊水性エマルションと混合させることで速やかに硬化し、止水性能を発揮する。本工法の止水材は乾燥した際の収縮が小さいことも特長である。コンクリートのひび割れ部の漏水量や乾湿状態を問わず施工できる。 ⑤ 鉄道ラーメン高架橋の新プレキャスト工法を開発・実用化モルタルスリーブ継手を用いて柱と梁の接合部も含めてフルプレキャスト化する鉄道ラーメン高架橋工法を公益財団法人鉄道総合技術研究所と共同で開発した。当社が多くの高層ビル建築に適用してきたプレキャスト工法を鉄道ラーメン高架橋の施工に応用し、シース管とモルタルスリーブ継手を用いることで、仕口部を含めてフルプレキャスト化したものである。これまで鉄道ラーメン高架橋に適用してきたハーフプレキャスト工法に比べて省力化でき、工期を最大30%短縮できる。また、部材を工場製作することで、安定した品質を確保できる。 ⑥ メタル調の仕上がりを実現したプレキャストコンクリート用塗装技術「エココート工法®」を開発・適用建物の外壁カーテンウォールなどに使用されるプレキャストコンクリート板をメタル調に仕上げる、意匠性の高い塗装技術「エココート工法®」を開発した。新たに開発した水系塗装材料を適用することで、塗装仕上げが難しい軽量コンクリート製のプレキャストコンクリート板も、メタル調の美しい鏡面仕上げができるようになった。「エココート工法®」は、既に複合ビルの外壁などに適用している。⑦ 洋上風車の基礎及びアンカーに適用する「スカートサクション」を開発洋上風車を海底地盤に固定する海洋構造物「スカートサクション」を開発した。スカートサクションは頂版及び頂版から下方に伸びた円筒形の鉛直壁(スカート)で構成され、スカートを海底地盤に貫入させることで、従来の基礎やアンカーに比べ強固に洋上風車を海底地盤に固定する。引き抜き抵抗は通常の着床式の基礎に比べ約3倍、浮体式のアンカーに比べ約5~8倍である。また、海底地盤へ設置する際に大型の機械などを使用しないため、従来に比べ大幅なコスト低減と工期短縮を可能にする。 ⑧ スマートシティエネルギーシステムの設計支援ツール「エコナビ®(シティ版)」を開発スマートシティにおけるエネルギーシステムの設計支援ツール「エコナビ®(シティ版)」を開発した。近年、各地で計画されているスマートシティでは、個々の建物の省エネ・低炭素化に加え、エリア内の複数の建物群をネットワーク化し、分散型電源システムの導入、建物間で電気・熱を融通するエネルギーの共同利用等により、さらに大きな省エネルギー効果が期待されている。今回開発した「エコナビ®(シティ版)」は、複数の建物や施設からなるエリアの省エネ・低炭素化を図るとともに、エリア内のエネルギー消費量や電力自給率等を簡単に評価できる最適なシステム設計ツールである。 (2) 大林道路㈱アスファルト合材温度の遠隔測定装置「温度はかり隊」を東海電気工業㈱と共同で開発し、実用化した。ダンプトラックに測定装置を取り付け、アスファルト合材の中に温度センサーを挿入することで、工場出荷時と現場到着時の温度だけではなく、ダンプでの輸送中や、アスファルトフィニッシャーへの投入時の温度の自動測定・記録が可能となり、安定した品質管理に役立てることができる。また、長大橋や都市部の高速道路などで今後需要が見込まれる舗装の全層打ち換えに対応して、鋼床版の防水層と舗装の基層を兼ねて施されるグース舗装の耐久性と汎用性を改善し、環境負荷を低減した「改質グース」を開発した。 (3) ㈱内外テクノス不燃木材の薬剤溶出を抑制できる塗料を当社、大谷塗料㈱と共同開発し、実用化した。不燃木材に塗布する薬剤は、高湿度の環境下で溶けやすいため、溶け出した薬剤が乾いて固着し白くなる白華現象が発生しやすい。今回共同開発した塗料は、主成分に標準的なウレタン樹脂を用いながら添加剤を加えることで、既存の不燃認定の仕様を変えることなく薬剤が溶け出すことを防ぎ、白華現象を抑制することが可能となった。 (不動産事業及びその他) 研究開発活動は特段行っていない。