研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
| 2025-03 |
- |
17 |
| 2024-03 |
- |
21 |
| 2023-03 |
- |
74 |
| 2022-03 |
- |
52 |
| 2021-03 |
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39 |
研究開発活動(本文)
FY2025|5,694 文字
6 【研究開発活動】当社では、「環境・防災技術、リニューアル、脱炭素、省力化・合理化、情報化施工」をテーマにし、「社会のニーズをふまえ、営業戦略に密着した技術の開発」に主眼をおき、髙松コンストラクショングループ技術研究所を中心に建築事業および土木事業に係る研究開発活動に取り組んでおります。髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱は当研究所内で、その他の子会社は自社施設で、各社が得意とする技術分野において研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は576百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。(1) 髙松建設㈱① CFT造施工技術に関する調査研究コンクリート充填鋼管構造(CFT造)は、他の構造と比較して強度と剛性に優れ、工期の短縮や省資源などの利点もある一方、施工難易度が高く、鋼管内部に隙間なくコンクリートを充填するためには高度な技術が必要です。髙松建設㈱では、各種試験や実大施工実験を実施し、コンクリートの品質管理方法や圧入・充填状況の管理・確認方法を調査・習得しています。また、(一社)新都市ハウジング協会が定める施工技術ランクを取得しています。② CLT-RC合成床スラブの開発設計地震力は建物の重量に比例するため、建物の重量を減らすことで柱や梁をスリム化し、鉄筋量を削減することが可能です。髙松建設㈱では、床スラブの軽量化に着目し、CLT(直交集成材)とRC(鉄筋コンクリート)の合成構造によるスラブを開発しています。RCが本来担う曲げモーメントとせん断力をCLTにも負担させることで、比重の大きいRCの使用量を減らし、建物全体の重量を削減します。合成構造の詳細を決定し、第三者評価機関による認定取得に向けて、構造・耐火・遮音に関する各種性能試験を実施しています。③ ローコストZEB,ZEH-Mの開発地球温暖化や資源エネルギー問題が深刻化する中、環境配慮型の建物としてZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)やZEH-M(ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)が注目されています。しかし、初期費用の増大や設計上の制約から、ZEBやZEH-Mの普及は進んでいないのが現状です。髙松建設㈱では、ZEBやZEH-Mの普及促進に向けて、外壁・窓・床・屋根などの外皮の断熱性能の向上や、エアコン・給湯器・換気システムなどの設備の高効率化など、省エネルギー技術の体系的な整備と、当社独自の仕様策定に取り組んでいます。あわせて、さらなる低コストでの実現を目的として、要素技術の開発にも注力しています。④ 木造を活用した中層建物の開発地球環境問題への対応と持続可能な社会の実現に向けて、木材の活用が重要な選択肢となっています。木材は耐火性やメンテナンス面で課題を抱える一方で、コンクリートと比べて格段に軽量であり、建設コストの削減にも寄与する可能性があります。髙松建設㈱では、独自の木造活用モデルの構築を目指し、大断面集成材を用いた純木造の2方向ラーメン構造に関する研究開発を進めています。この構造の実現に向けては、柱・梁の接合構法にGIR接合(Glued-In Rod接合)を適用し、その構造性能の妥当性を検証するため、実物大試験体を用いた加力実験を実施しています。これにより、高耐力・高剛性を有する接合構法の確立をはかり、中層木造建物における構造的信頼性の向上を目指しています。⑤ 新型免震構造の実用化研究大地震に対する安心感をもたらすことができる免震構造のニーズが高まっています。髙松建設㈱では、東京都市大学と共同開発した高減衰積層ゴム支承の実用化に取り組んでいます。従来の免震構造用積層ゴム支承は、建物の規模や設計条件に応じて一品生産されることが一般的でしたが、新たに開発した積層ゴム支承は、支承の形状を大型化するのではなく、同一仕様の支承を複数配置することで対応する設計方式を採用します。このアプローチにより、「積層ゴムの製造と品質管理」と「構造設計と施工管理」の二つのプロセスを分離することが可能であり、免震部材の大量生産と品質管理の合理化が期待できます。この新しい積層ゴム支承を用いた免震構造を「新型免震構造」と呼び、トータルコストの低減をはかりつつ、実用性の高い免震構造の普及に向けて取り組んでいます。 ⑥ コンクリートの品質向上技術に関する研究開発猛暑日や酷暑日が増加している昨今、気温が高く日射も厳しい施工現場では、コンクリートの打設時における品質確保が一層困難になっています。特に、スランプの低下は施工性の悪化を招き、じゃんか(豆板)やコールドジョイントの発生といった打ち込み不良のリスクを高める要因となっています。これらの課題に対処するため、髙松建設㈱では、JIS規格に適合した「あと添加型化学混和剤」を活用する施工技術の導入を進めています。具体的には、施工現場に到着したアジテータ車内のコンクリートに化学混和剤を追加投入することで、スランプの低下を抑制し、施工性の確保および品質の安定化をはかるものです。性能と品質に関する裏付けデータの整備を進めながら、本方策の実運用を着実に推進するとともに、より効率的で実効性の高い酷暑対策技術の開発に取り組んでいます。⑦ 山留め工法の選定基準に関する研究開発山留めは、掘削による地盤の崩壊や隣接構造物の沈下・傾斜を防ぐため、安全確保に不可欠な技術です。一方で、鋼材の使用量が多く、コスト面での課題も抱えています。そのため、地盤条件に応じたコストと工期の両面で効率的な工法の整備が求められています。山留工法には多様な種類があり、敷地や施工条件に応じた適切な選定が必要ですが、実際には必ずしも有効な工法が採用されていないのが現状です。代表的な工法には親杭横矢板やシートパイルがありますが、その他にも多くの選択肢が存在します。そこで、各工法の簡易な準備計算法を整備し、実用的な工法選定基準の策定を目指します。これにより、安全性と経済性を両立した山留計画の実現をはかります。(2) 青木あすなろ建設㈱(建築事業)① 折返し機構を用いたブレース材および制震部材の開発折返し機構は、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すため、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。2025年3月期は、ブレース材の疲労特性を確認する追加実験をおこない、信頼性向上をはかりました(累計施工実績10件)。また、折返し機構を応用した制震部材(座屈拘束ブレース)の開発に取り組み、実大試験体を用いた性能確認実験をおこないました。2026年3月期は、制震部材の技術資料を作成し、技術評価を取得する予定です。② 格子固定天井の吊りボルトスパン拡大に関する開発音楽ホールなどに用いられる壁面との隙間を設けない天井として、格子固定天井を開発しました。格子固定天井は、一般的な隙間なし天井で用いる重量鉄骨を不要とし、軽量角型鋼管や吊りボルトで構成されるため、既存天井の耐震補強としても有効です。2025年3月期は、吊りボルトスパンおよび吊り長さを拡大することで、コスト削減および施工性の向上に取り組みました。また、技術評価取得に向けた強制変位実験、部材試験をおこない、技術資料を作成し、技術評価の審査申請を実施しました。③ CELBIC(適用拡大・再生骨材)に関する開発二酸化炭素排出量を削減するための環境配慮型コンクリートの開発に取り組み、2021年に建設材料技術性能証明を取得しております。2025年3月期は、適用範囲の拡大および再生骨材を用いたC種クラスの実用化に向けた各種実験を実施し、技術資料を作成しました。④ 部分高強度鉄筋基礎梁端部の過密配筋の緩和およびコスト削減(鉄筋量削減、部材断面縮減、根入れ深さ低減)をはかるため、部分高強度鉄筋を用いた外付け新定着工法の開発に取り組んでおります。2025年3月期は、次年度の新規・発展に向けた各種課題を精査・検討(調査、試設計等)と共同特許出願をおこないました。2026年3月期は性能証明取得に向けた要素実験の実施および接合部実験に向けた調査検討を実施する予定です。(土木事業)① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究2013年より、首都高速道路グループと、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する共同研究を実施しております。その成果により、これまで首都高速道路11号台場線(2020年、摩擦ダンパー6基)と首都高速道路1号上野線(2022年、摩擦ダンパー26基)の2件の耐震補強に摩擦ダンパーが採用され、設置工事が完了しております。2025年3月期は、摩擦ダンパー(両端ジョイント型)の現業支援の強化をはかるため、氷点下における性能確認試験を実施し、温度依存性の小さい優れた性能を有することを確認し、現在は試験結果報告書を作成しております。2026年3月期は、販売拡大に向けた開発に焦点を当て、営業部門との連携をはかると共に、共同研究(名古屋工業大学、国立研究開発法人土木研究所等)を通じて適用拡大に資する実験・検討を実施する予定です。 ② カーボンプール(CP)コンクリートの開発セメント焼成工程などで発生する二酸化炭素(CO2)を、コンクリート由来の産業廃棄物に固定化させるという「地域内循環の構築」、さらに新たな技術を用いて引渡しまでにCO2固定量を最大化する「カーボンプール(CP)コンクリートの開発」に取り組んでおります。これは、当社を含む企業・大学・国立研究開発法人がコンソーシアムを構成し応募したNEDO(※)、グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」に採択されたものです。事業期間は、2021年度~2030年度の10年間となっております。(※)NEDOとは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の略称です。③ 盛土の締固めの新しい管理方法の開発建設発生土など複合的な土質特性を持つ材料を用いた盛土の締固め管理において、複合的な土質をいかに適切に管理するかという課題を解決し、その適正化をはかるため、電気的性質を利用した締固め管理手法を開発しました。これは、盛土の比抵抗値を計測し、計測した比抵抗値等から盛土の乾燥密度を算出するもので、測定手段としてハンマードリルなどで貫入可能な小型・軽量な計測器、スウェーデン式サウンディング試験用の貫入装置を転用する計測器などを開発しました。2026年3月期は、現場実装を早期にはかるべくこれらの測定精度の更なる向上をはかる予定です。④ クリップ型ばねを応用した技術の開発2017年より、注入方式の接着系あと施工アンカー工法におけるアンカー筋の設置補助具として「あと施工アンカー用クリップ型ばね(製品名:アンカー留太郎)」を開発・実用化しております。アンカー留太郎の適用により、当該工法の施工品質と施工効率が向上します。2025年3月期は、アンカー留太郎の応用技術開発および普及促進に向けた課題を整理しました。2026年3月期は、引き続きアンカー留太郎の普及促進をはかりながら、応用技術の市場化および技術の深度化をはかります。⑤ AIをいた省力化技術の開発2024年3月期に開発したAIを用いたトンネルの余掘り低減技術の高度化をはかります。施工条件と発破による掘削形状の相関にディープラーニングの一つの手法であるCNN(※)を用いることで、より精度の高いAIモデルの開発を目指しています。(※)Convolutional Neural Network(畳み込みニューラルネットワーク)(3) みらい建設工業㈱① 破砕瓦の有効利用技術の開発 瓦は、古来より民家をはじめとして城、寺院の屋根材として使用されています。瓦の耐用年数は約60年であるため、近い将来大量の廃棄瓦が大量に発生します。また、巨大地震が発生すると住宅が被害を受け大量の被災瓦が発生します。 本技術は、破砕瓦の高い摩擦性、排水性、吸水性を利用して、道路舗装、埋設管の埋め戻し、擁壁裏の埋め戻しを始めとして破砕瓦を有効に利用する技術の開発をしております。また、本技術は特許出願中です。② 破砕貝殻を用いた液状化対策技術の開発水産副産物であるホタテ貝殻(以下、貝殻)は加工所周辺の沿岸域などに大量に野積みされ、景観や悪臭など地域の環境問題になっています。貝殻を野積みのまま放置するとCO2を大気中に放出することになり環境に負荷を与える要因になります。本技術は、破砕した貝殻を構造物の下に敷設することでCO2を封じ込めるとともに破砕貝殻の高い透水性を利用して液状化時に液状化対策として利用する技術の開発をしております。また、本技術は特許出願中です。(4) 東興ジオテック㈱① トーコンプラス専用削孔機械の開発老朽化した吹付モルタル面を斫り(はつり)取らずにリニューアルする「トーコンプラス工法」は、これまで補強鉄筋の打設に削岩機を用いた人力削孔がおこなわれてきました。この作業は機械の振動が激しいことに加え、作業員が削孔機を人力で上下にスライドさせる作業を繰り返す重労働でした。このたび、こうした削孔作業を省力化したトーコンプラス専用削孔機(トーコンドリル)を実用化しました。② 粒状種子実播工法のペレット種子の再商品化 車両による現場へのアプローチや機械施工が困難な荒廃地を緑化する「粒状種子実播工法」で使用するペレット種子を再商品化しました。この工法は、OEM先の製造機械の老朽化でしばらく営業休止していましたが、このたび新たな製造方法による再商品化に成功しました。今後は、近年増加している豪雨災害、地震災害、山林火災等で生じた山岳荒廃地での採用を目指して営業推進してまいります。
FY2024|4,913 文字
6 【研究開発活動】当社は、グループ全体の技術向上をはかるため、髙松コンストラクショングループ技術研究所を設けております。髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱は当研究所内で、その他の子会社は自社施設で、各社が得意とする技術分野において研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は588百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。 (1) 髙松建設㈱① 新型免震構造の実用化研究 大地震に対する安心感をもたらすことができる免震構造のニーズが高まっています。髙松建設㈱では、東京都市大学との共同研究開発により、中低層の新型免震構造の実用化研究を進めております。従来の免震構造用積層ゴム支承は、建物の規模に応じて一品生産されてきましたが、新たに開発する積層ゴム支承は、建物の規模に応じて形状を大型にするのではなく、個数を調節することで設計する方式を採用し、「積層ゴムの製造+品質管理」と「構造設計+施工管理」の二つのプロセスを分離することが可能であり、免震部品の大量生産と品質管理の合理化が見込めます。この新しい積層ゴム支承を用いた免震構造を「新型免震構造」と呼んでおります。トータルコストで安価な免震構造の実用化を目指しております。② CLT-RC合成床スラブの開発 設計地震力は建物の重量に比例するため、建物の重量を減らすことができれば、柱・梁をスリム化し、鉄筋量を削減することが可能になります。そこで、床スラブの軽量化に着目し、CLT(直交集成材)とRC(鉄筋コンクリート)の合成構造によるスラブを開発します。本来RCだけが担う曲げモーメントとせん断力をCLTにも負担させることで、比重の大きいRCを減らし、建物重量を削減します。合成構造の細部の検討をすすめ、各種性能(構造・耐火・遮音)試験を実施しております。③ 木造を活用した中層建物の開発 地球環境問題への対応と持続可能な社会の実現に向けて、木材の活用が重要な選択肢となっています。木材の利用には耐火性やメンテナンスなどの大きな課題がある一方、コンクリートと比べて格段に軽量で、建設コストを削減できる可能性があります。髙松建設㈱独自の木造活用モデルを作成するため、大断面集成材を用いた純木造2方向ラーメン構造に関する研究開発を進めております。2方向ラーメン構造を実現するために新しい接合方法を開発し、実物大実験による構造性能検証をおこなっております。本接合方法により、高耐力・高剛性を確保できるのみならず、工期短縮・現場労務費縮減も可能となります。④ ローコストZEH-Mの開発地球温暖化問題や資源エネルギー問題が深刻化する中、環境配慮型の建物としてZEH-M(ZEHマンション)が注目されています。しかし、初期費用の増大や設計上の制約などから、ZEH-Mの普及が進んでいないのが現状です。ZEH-Mの普及促進に向けて、外壁・窓・床・屋根などの外皮の断熱性能の向上や、エアコン・給湯器・換気システムなどの設備の高効率化など、ZEH-Mを実現するための省エネルギー技術を体系的に整備し、髙松建設㈱としてのZEH-M仕様を制定するとともに、より一層ローコストでZEH-Mを実現できる要素技術の開発に取り組んでおります。⑤ コンクリートの品質向上技術に関する研究開発 猛暑日・酷暑日が増加傾向にある昨今、気温が高く日射も厳しい施工現場では、コンクリートの温度も上昇し、スランプ低下による施工性の悪化、じゃんか(豆板)やコールドジョイントの発生が懸念されています。このような打ち込み不良を未然に防ぐために、JIS適合のあと添加型化学混和剤を活用する方策の検討を進めております。施工現場においてアジテータ車内のコンクリートに化学混和剤をあと添加することにより、コンクリートの流動性を高めようとするものです。本方策の実運用に向けて、あと添加したコンクリートの性能と品質に係る裏付けデータの整備と手順書の策定を実施しております。⑥ CFT造施工技術に関する調査研究 コンクリート充填鋼管構造(CFT造)は、他の構造と比べて強度と剛性に優れ、工期短縮や省資源などの利点もある一方、施工難易度が高く、鋼管の内部に隙間なくコンクリートを充填するためには高い技術力を必要とします。各種試験や実大施工実験を(一社)新都市ハウジング協会の指導の下で行いながら、コンクリートの品質管理方法と圧入状況・充填状況の管理・確認方法について調査・習得し、同協会が定める施工技術ランクの取得を目指しております。 ⑦ 配筋検査システムの開発 近年、熟練工の減少や品質管理の厳格化から、ICT技術活用による省人化、生産性向上が急務となっています。髙松建設㈱では、他社ゼネコンと共同で、AI(人工知能)および画像解析を活用した配筋検査システムを開発しております。撮影された画像より、鉄筋の径と本数、ピッチ等を算出、図面データと照合し、配筋検査を半自動化するものです。立体配筋のAI検知精度の向上・改善をはかり、2024年度から実用化の予定です。(2) 青木あすなろ建設㈱(建築事業)① 制震ブレースを用いた耐震補強工法日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。2024年3月期は、新築建物の制震化に用いる摩擦ダンパーの性能確認試験をおこない、技術資料を作成しました。② 折返しブレースを用いた耐震補強工法折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます(累計施工実績10件)。2024年3月期は、ブレース材の疲労特性を確認する実験をおこない、信頼性向上をはかりました。③ CELBIC(適用拡大・再生骨材)に関する開発二酸化炭素排出量を削減するための環境配慮型コンクリートの開発に取り組み、2021年に建設材料技術性能証明を取得しております。2024年3月期は、適用範囲の拡大および再生骨材を用いたC種クラスの実用化に向けた実験を実施し、技術資料を作成しました。④ 部分高強度鉄筋基礎梁端部の過密配筋の緩和およびコスト削減(鉄筋量削減、部材断面縮減、根入れ深さ低減)をはかるため、部分高強度鉄筋を用いた外付け新定着工法の開発に取り組んでおります。2024年3月期は、要素実験の実施により基本性能を確認、他に共同特許出願に向けた明細書を作成しました。(土木事業)① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究2013年より、首都高速道路グループと、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する共同研究を実施しております。その成果により、これまで首都高速道路11号台場線(2020年、摩擦ダンパー6基)と首都高速道路1号上野線(2022年、摩擦ダンパー26基)の2件の耐震補強に摩擦ダンパーが採用され、設置工事が完了しております。現在は、「スライド機構」という新たな機構を組み込んだ摩擦ダンパーの開発に、首都高速道路技術センターと共同で取り組んでおります。スライド機構によって、橋軸方向の地震動の直角方向への影響が解消され、摩擦ダンパーの更なる採用増加が期待できます。2024年3月期は、終局耐力検証試験やスライド部検証試験を実施し、設計で必要となるデータを取得しました。2025年3月期は、試験データを詳細に分析したうえで各種マニュアルを策定し、実用化をはかる予定です。② カーボンプール(CP)コンクリートの開発セメント焼成工程などで発生する二酸化炭素(CO2)を、コンクリート由来の産業廃棄物に固定化させるという「地域内循環の構築」、さらに新たな技術を用いて引渡しまでにCO2固定量を最大化する「カーボンプール(CP)コンクリートの開発」に取り組んでおります。これは、当社を含む企業・大学・国立研究開発法人がコンソーシアムを構成し応募したNEDO(※)・グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」に採択されたものです。事業期間は、2021年度~2030年度の10年間となっております。(※)NEDOとは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の略称です。③ 電気的性質を利用した盛土材(複合土質)の締固め管理方法の開発建設発生土など複合的な土質特性を持つ材料を用いた盛土の締固め管理において、複合的な土質をいかに適切に管理するかという課題を解決し、その適正化をはかるため、電気的性質を利用した締固め管理手法を開発しました。これは、小型・軽量な計測器をハンマードリルなど簡便な方法で土中に貫入し、導電率や比抵抗値を計測するもので、計測した比抵抗値等から、盛土の乾燥密度を算出することが可能です。2025年3月期は、現場実装を早期にはかるべく測定精度の更なる向上をはかる予定です。 ④ クリップ型ばねを応用した技術の開発2017年より、注入方式の接着系あと施工アンカー工法におけるアンカー筋の設置補助具として「あと施工アンカー用クリップ型ばね(製品名:アンカー留太郎)」を開発・実用化しております。アンカー留太郎の適用により、当該工法の施工品質と施工効率が向上します。2024年3月期は、アンカー留太郎のNETIS(新技術情報提供システム)登録が完了いたしました。2025年3月期は、アンカー留太郎の普及促進をはかりながら、独自技術である「クリップ型ばね」の特徴を生かした応用技術の調査研究をおこなう予定です。⑤ AIを用いた省力化技術の開発AIを用いたトンネル施工の省力化技術を開発しております。トンネル施工現場の施工データを解析し、施工条件と発破による掘削形状の相関を捉えます。求められた相関から、余掘りが低減できる掘削方法を提示するAIモデルの実証および精度向上を目指します。(3) みらい建設工業㈱① 「MC-Wake」航跡波接近警告システム(NETIS: QSK-230005-A) 本技術は、AIS、GNSS、レーダーを利用し、航行する船舶による航跡波が工事箇所へ到達することを予測・警告するシステムです。本技術の活用で航跡波の襲来を警告し、作業船の動揺による挟まれ・転倒・転落事故の発生を防止します。② 「MC-Caisson」ケーソン据付支援システム(NETIS: QSK-230004-A) 本技術は、ケーソン据付作業において、据付計画位置までの残りの距離と向きをリアルタイムに自動計測し、位置誘導画面上に表示するとともにケーソン内の注排水を自動でおこなう技術です。本技術の活用で、ケーソン位置の計測、誘導値の表示およびポンプ操作を自動化することで、ケーソン据付作業を省人化させ、生産性および安全性を向上させる効果があります。(4) 東興ジオテック㈱① 落石トメジロー斜面に存在する不安定な転石・浮石の滑動や転倒を抑止する転石一体化根固め工法を実用化しました。山間部の道路や鉄道をはじめとする施設の安全確保をはかる必要がある現場を対象とする新しい落石防止対策工法として、今後の受注拡大に寄与させてまいります。② 早期発芽力検定法これまで自社が保有する種子貯蔵出荷施設(RSセンター)で保管している法面緑化用の在来木本種子の品質証明に用いてきた技術ですが、このたび適用範囲を在来草本類にまで広げることができました。生物多様性国家戦略2023-2030を踏まえて今後引き合いが増加すると予想される在来種を使用した法面緑化の分野において、保有工法の環境保全上の優位性を持たせるための技術として、改善強化された「早期発芽力検定法」の活用を推進してまいります。
FY2023|4,831 文字
6 【研究開発活動】当社は、グループ全体の技術向上をはかるため、髙松コンストラクショングループ技術研究所を設けております。中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱は、当研究所内で、その他の子会社は自社施設で、各社が得意とする技術分野において研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は617百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。 (1) 髙松建設㈱① 新型免震構造の実用化研究大地震に対する安心感をもたらすことができる免震構造のニーズが高まっています。髙松建設㈱では、東京都市大学との共同研究開発により、中低層の新型免震構造の実用化研究を進めております。従来の免震構造用積層ゴム支承は、建物の規模に応じて一品生産されてきましたが、新たに開発する積層ゴム支承は、建物の規模に応じて形状を大型にするのではなく、個数を調節することで設計する方式を採用し、「積層ゴムの製造+品質管理」と「構造設計+施工管理」の二つのプロセスを分離することが可能であり、免震部品の大量生産と品質管理の合理化が見込めます。この新しい積層ゴム支承を用いた免震構造を「新型免震構造」と呼んでおります。トータルコストで安価な免震構造の実用化をめざしております。② 耐震設計の高度化研究髙松建設㈱では、建築基準法で定められる地震力を15%上回る厳しい耐震設計基準を設けています。しかし、10階を超える中高層建物では、配筋が高密度化し、杭の設計に苦慮する場合が多くなっています。この問題を解決するために、限界耐力計算の導入を検討しております。限界耐力計算は、従来の保有水平耐力計算と比べて高度で難解な計算方法ですが、より精緻な耐震強度を求めることが可能です。特に、10階建て程度以上では保有水平耐力計算よりも合理的な耐震設計が可能になるケースがあります。限界耐力計算に関する技術ノウハウを蓄積し、地震応答変形に立脚した耐震性能の明確化と配筋設計の適正化をはかっていきます。③ スラブ重量低減技術の開発設計地震力は建物の重量に比例するため、建物の重量を減らすことができれば、柱・梁をスリム化し、鉄筋量を削減することが可能になります。そこで、スラブの軽量化に着目し、集成材とコンクリートの合成構造によるスラブを開発します。本来コンクリートだけが担う曲げモーメントとせん断力を集成材にも負担をさせることで、コンクリートを減らし、建物重量を削減します。合成構造の細部の検討をすすめ、各種性能(構造・耐火・遮音)試験を実施しております。④ コンクリートの品質向上技術に関する研究開発 建築物の主要な材料であるコンクリートについては、施工性と出来上がり品質の向上が求められています。様々な課題がある中で、特に、土間・スラブコンクリートのひび割れ低減対策に取り組んでおります。土間・スラブコンクリートにおいては、様々な要因でひび割れが発生しますが、温度ひび割れ・収縮ひび割れに焦点を絞り、混和材・鉄筋・誘発目地・養生などを組み合わせた、有効なひび割れ低減対策の確立をめざしております。⑤ サイホン排水システムの開発 サイホン排水とは、1つ下の階に排水を落とすことでサイホン力を発生させて、強い水流により排水性能を向上させる技術です。従来の重力式排水システムと異なり、小口径で無勾配の配管システムであるため、水回り設備の自由な配置が可能となります。将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能です。満流で高速に排水されるため自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性にも優れた排水システムです。㈱ブリヂストンとの共同開発にて、髙松建設㈱の賃貸マンション仕様に適合するシステムを構築し、設計・施工指針を整備しております。2024年3月期より実装を開始し、普及展開をはかっていきます。⑥ 配筋検査システムの開発 近年、熟練工の減少や品質管理の厳格化から、ICT技術活用による省人化、生産性向上が急務となっています。髙松建設㈱では、他社ゼネコンと共同で、AI(人工知能)および画像解析を活用した配筋検査システムを開発しております。撮影された画像より、鉄筋の径と本数、ピッチ等を算出、図面データと照合し、配筋検査の半自動化をはかるものです。現在、立体配筋のAI検知精度向上段階であり、2025年3月期からの本格運用をめざしております。 (2) 青木あすなろ建設㈱(建築事業)① 制震ブレースを用いた耐震補強工法日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しました(累計施工実績は100件)。2023年3月期は、実施適用物件に対する補強効果の確認およびデータの蓄積に加え、新築建物の制震化に用いる摩擦ダンパーの実機試験体を製作し、性能確認試験をおこないました。② 折返しブレースを用いた耐震補強工法折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。2023年3月期は、ブレース材の終局メカニズムの改善に向けた試験体を製作し、性能確認実験をおこないました。(累計実績は10件)③ 耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発大地震時の大空間建物の天井被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでいます。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しました。今期は、建物の柱、梁、壁との隙間をなくした天井の技術資料を整備し、「格子固定天井」として、2022年7月に建築技術性能証明を取得しました。(累計施工実績は2件)④ 柱RC梁Sハイブリッド構法の適用範囲拡大物流施設などでニーズの高い柱RC梁Sハイブリッド構法について、使用材料の適用範囲の拡大および施工工法の合理化をはかりました。構造性能確認実験をおこない、設計施工指針を改定し、技術評価を取得しました。⑤ 鉄骨梁の横補剛省略工法の開発鉄骨造建物の施工合理化およびコストダウンをはかるため、鉄骨梁にとりつくスラブによる補剛効果を適切に評価することによって小梁を省略できる工法を開発しています。2023年3月期は既往の研究結果および設計指針を用いて、第三者機関による構造性能評価を取得しました。(土木事業)① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究2013年6月より、首都高速道路グループと、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する共同研究を実施しています。その成果により、2020年には首都高速道路11号台場線において摩擦ダンパーを用いた耐震補強が初めて採用され、摩擦ダンパー6基の設置工事が完了しました。今期は、実装第二弾として、首都高速道路1号上野線において1200kN摩擦ダンパー24基、800kN摩擦ダンパー2基の設置工事が完了しました。また、「スライド機構」という新たな機構を組み込んだ摩擦ダンパーの開発に、首都高速道路技術センターと共同で取り組んでいます。スライド機構によって、橋軸方向の地震動の直角方向への影響が解消され、摩擦ダンパーの更なる採用増加が期待できます。2023年3月期は、大規模な振動台実験をおこない、スライド機構が実際の地震動を再現した条件で適正に可動することを実証しました。2024年3月期は、耐久性確認などスライド機構の実用化に向けた種々の検証試験をおこなう予定です。② カーボンプール(CP)コンクリートの開発セメント焼成工程などで発生する二酸化炭素(CO2)を、コンクリート由来の産業廃棄物に固定化させるという「地域内循環の構築」、さらに新たな技術を用いて引渡しまでにCO2固定量を最大化する「カーボンプール(CP)コンクリートの開発」に取り組んでいます。これは、当社を含む企業・大学・国立研究開発法人がコンソーシアムを構成し応募したNEDO(※)・グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」に採択されたものです。事業期間は、2021年度~2030年度の10年間となっております。(※)NEDOとは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の略称です。③ 電気的性質を利用した盛土材(複合土質)の締固め管理方法の開発建設発生土など複合的な土質特性を持つ材料を用いた盛土の締固め管理において、複合的な土質をいかに適切に管理するかという課題を解決し、その適正化をはかるため、電気的性質を利用した締固め管理手法を開発しました。これは、小型・軽量な計測器をハンマードリルなど簡便な方法で土中に貫入し、導電率や比抵抗値を計測するもので、計測した比抵抗値等から、盛土の乾燥密度を算出することが可能です。2024年3月期以降は、早期の現場実装に向けて測定精度の更なる向上をはかる予定です。 ④ トンネル覆工コンクリートの充填性向上技術の開発自社開発の「排気排水・注入ホース」を使用した技術により、覆工コンクリートの充填性が良くなり品質が向上します。国土交通省発注の立野ダム仮排水路工事、掛田トンネル工事やニューマチックケーソン基礎等において効果が検証され、当技術をNETIS(新技術情報提供システム)へ登録しました。⑤ AIを用いた省力化技術の開発AIを用いたトンネル施工の省力化技術を開発しています。AIモデルの構築に必要なデータは質と量が重要となるため、施工現場での各種データ蓄積後にデータ間の解析、関連付けをおこないディープラーニング(深層学習)に供する予定です。(3) みらい建設工業㈱① クレーン吊荷接近警告システム(NETIS:QSK-220003-A) 本技術は、クレーンを使用する作業において吊荷と作業員の位置を超小型RTK-GNSSデバイスで把握し、あらかじめ設定した距離内に吊荷と作業員が接近した際、作業員とクレーンオペレータに警告するシステムです。作業員の位置はモニタで視覚的に確認もでき、危険を回避することで安全性が向上します。GNSS衛星の電波が受信できないエリア(ユニットハウス内、高架下、ケーソン製作現場など)に作業員がいる場合は、無線装置と作業員検知装置の組み合わせにより作業員の位置を把握します。(4) 東興ジオテック㈱① 高圧噴射撹拌工法の開発近年、高圧噴射撹拌工法は適用範囲が広がりつつあり、河川水域部や大径化、大深度での適用例が増加しております。これらに対応するため、独自工法であるウルトラジェット工法の基本技術をベースにバージョンアップをはかり、受注機会の拡大を目指しております。2022年3月期までに、東京機材センター内の実験用立坑を拡幅して大口径開発の環境を整備しました。また、新規二重管高圧噴射工法の基本特許出願を完了しております。2023年3月期は、水中噴射実験および改良体の造成実験によるデータ測定ならびに検証、分析を実施いたしました。② UAV吹付技術の開発ドローンを用いた植生基材吹付技術の開発に向け、無線型試験機による吹付試験をおこない、生育基盤の造成可否や、プロペラ風圧が飛行および造成基盤に与える影響等を検証しました。また検証結果から、吹付材料の供給に用いるホース部材を改良したうえで再度試験をおこない、法面近接飛行による影響や材料吐出による反力を計測しました。吹付ドローンの実機製作に向け、実証実験や試験機改良による吹付安定化を進めております。
FY2022|4,634 文字
5 【研究開発活動】当社は、グループ全体の技術向上を図るため、髙松コンストラクショングループ技術研究所を設けております。中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱は、当研究所内で、その他の子会社は自社施設で、各社が得意とする技術分野において研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は528百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。 (1) 髙松建設㈱① 流動化コンクリートによる施工品質向上技術の研究開発近年、建物の形状の複雑化や鉄筋量の増加など、コンクリートを密実に充填することが難しくなっています。2019年に新たにJIS規格化された流動化コンクリートは、施工現場においてコンクリートに流動化剤を添加するものであり、施工性の大幅な向上が期待できます。そこで、髙松建設㈱では、2020~2021年度に流動化コンクリートの実大施工実験を行い、その施工性と品質を検証しました。実験で得られた知見を基に施工マニュアルを整備し、今後、実用化を拡大していきます。② コンクリートのひび割れ低減対策に関する研究開発建物の主要な材料であるコンクリートにおいては、様々な要因でひび割れが発生し、美観や耐久性が問題となるケースがあります。多くの検討課題がある中で、特に、マスコンクリートといわれる大断面コンクリートを対象とした研究開発を実施しております。マスコンクリートでは、表面と内部の水和熱による温度差により体積変化に差が生まれ、表面上のひび割れが早期に発生しやすくなります。事前の温度応力解析により温度分布性状を予測できれば、材料・調合の設定変更、打設量の制限などにより、良質なコンクリートが実現できます。髙松建設㈱の実現場において、コンクリート内部温度の実測値と温度応力解析値との比較により、解析の有用性を検証しております。③ 限界耐力計算に基づく耐震設計高度化研究髙松建設㈱では、建築基準法で定められる地震力を15%上回る厳しい耐震設計基準を設けています。しかし、10階を超える中高層建物では、配筋が過密化し、杭の設計に苦慮する場合が多くなっています。この問題を解決するために、限界耐力計算の導入を検討しております。限界耐力計算は、従来の保有水平耐力計算と比べて高度で難解な計算方法ですが、10階建て程度以上では保有水平耐力計算よりも合理的な耐震設計が可能であると言われています。限界耐力計算に関する技術ノウハウを蓄積し、地震応答変形に立脚した耐震性能の明確化と配筋設計の適正化を図っていきます。④ スラブ重量低減技術の開発 設計地震力は建物の重量に比例するため、建物の重量を減らすことができれば、柱・梁をスリム化し、鉄筋量を削減することが可能になります。そこで、スラブの軽量化に着目し、集成材とコンクリートの合成構造によるスラブを開発します。本来コンクリートだけが担う曲げモーメントとせん断力を集成材にも負担をさせることで、コンクリートを減らし、建物重量を削減します。合成構造の細部の検討をすすめ、各種性能(構造・耐火・遮音)試験を実施していきます。⑤ サイホン排水システムの開発 サイホン排水とは、1つ下の階に排水を落とすことでサイホン力を発生させて、強い水流により排水性能を向上させる技術です。従来の重力式排水システムと異なり、小口径で無勾配の配管システムであるため、水回り設備の自由な配置が可能となります。将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能です。満流で高速に排水されるため自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性にも優れた排水システムです。髙松建設㈱の賃貸マンション仕様に適合するシステムの構築、実験検証を進めております。⑥ 配筋検査システムの開発 近年、熟練工の減少や品質管理の厳格化から、ICT技術活用による省人化、生産性向上が急務となっています。髙松建設㈱では、他社ゼネコンと共同で、AI(人工知能)および画像解析を活用した配筋検査システムを開発しております。撮影された画像より、鉄筋の径と本数、ピッチ等を算出、図面データと照合し、配筋検査の半自動化を図るものです。現在、試作デバイスによるテスト運用段階であり、2022年度中の完成をめざしております。 (2) 青木あすなろ建設㈱(建築事業)① 制震ブレースを用いた耐震補強工法日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております(累計施工実績 97件)。2022年3月期は、実施済みの適用物件に対する補強効果の確認およびデータの蓄積をはかるとともに、新築建物の制震化に摩擦ダンパーを適用するための繰返し性能確認試験をおこないました。② 折返しブレースを用いた耐震補強工法折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。2022年3月期は、制震部材としての適用性を検討するため、多数回繰り返し実験をおこない、限界性能を確認しました(累計実績 8件)。③ 耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発大地震時の大空間建物の天井脱落被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでおります。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しております。2022年3月期は、建物の柱、梁、壁との隙間をなくした天井の性能確認をおこない、建築技術性能証明の取得に向けた審査を開始しました(累計施工実績 2件)。④ レンズダンパーの設計合理化レンズダンパーは建物の耐震性を高める制震部材の一つであり、これを広く普及させることを目的とした改良と応用技術の開発に取り組んでおります。使用材料の変更を試行し、限界性能の評価や建物の設計を汎用ソフトで実施するなどの検討をおこなっております。2022年3月期は、レンズダンパーを組み込んだ建物の設計方法をマニュアル化し、関連する特許を1件出願しました。また、第三者機関による構造性能評価書を取得しております。⑤ 鉄骨梁の横補剛材省略構法の開発鉄骨造建物の施工合理化およびコストダウンを図るため、鉄骨梁にとりつくスラブによる補剛効果を適切に評価することによって小梁を省略できる構法を開発しております。2022年3月期は既往の研究結果を整理して設計指針を作成し、第三者機関による技術評価取得に向けた審査を開始しました。(土木事業)① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究2013年6月より首都高速道路株式会社と、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する共同研究を実施しています。その成果により、これまで1000kN摩擦ダンパー4基および650kN摩擦ダンパー2基が首都高速道路11号台場線において設置され、初めて実工事での採用に至りました。2023年3月期は首都高速道路1号上野線において1200kN摩擦ダンパー24基、800kN摩擦ダンパー2基が設置される予定です。また、橋軸方向の地震動の直角方向への影響を解消する新たなメカニズムの開発に取り組み、あらゆる支承部への設置を可能にします。2023年3月期は大型振動台を用いた実橋梁に近い条件での動的載荷実験により、実際の地震動に対して開発したメカニズムが適正に可動することを検証する予定です。② トンネル覆工コンクリートの充填性向上技術の開発当社開発の「排気排水・注入ホース」を使用した技術により、覆工コンクリートの充填性が良くなり品質が向上します。国土交通省発注の立野ダム仮排水路工事、掛田トンネル工事やニューマチックケーソン基礎等において効果が検証され、当技術をNETIS(新技術情報提供システム)へ登録申請しております。③ アワビ種苗生産及び陸上養殖の実用化に向けた技術開発アワビ種苗生産プロセスにおけるエネルギーコスト低減を目指し、玉川大学との共同研究を実施しております。実証試験により「半循環システムによる飼育方法」は、従来の「かけ流しによる飼育方法」に対して使用電気料金を大幅に削減可能という研究結果を得ることができました。2023年3月期以降は、松江市・玉川大学の産官学共同で実用化に向けて展開する予定です。④ 拡幅トンネル技術の研究国立研究開発法人土木研究所との「トンネルの更新技術に関する共同研究」において、施工性がよく経済的に既設トンネルの断面を拡大する工法を研究しております。施工中にトンネル内を走行する一般車両を防護するプロテクタを改良し、出願中の関連する特許2件において、国内優先権主張出願をおこないました。 ⑤ AI(人工知能)を用いた省力化技術の開発AIを用いたトンネル施工の省力化技術を開発しております。AIの学習には教師データ(訓練データ)の質と量が重要となるため、施工現場での各種データ蓄積後にデータ間の解析、紐づけをおこないディープラーニング(深層学習)に供する予定です。(3) みらい建設工業㈱① 発泡ウレタンによる空港プレストレストコンクリート版下面の空洞充填技術の開発 国土交通省国土技術政策総合研究所との共同研究として、発泡ウレタンによる空港プレストレストコンクリート版下面の空洞充填技術の開発に取り組んでおります。空港の抱える課題の一つとして、コンクリート舗装版の下に数mmの空洞が生じ航空機の滑走によって目地部から水が噴き出す現象があります。その対策としてコストのかかるコンクリート舗装版の打ち換えや空洞にグラウトを充填する方法がありますが、グラウトが割れて泥化してしまい再度空洞が発生する場合があります。そのため、空洞に強度が大きく割れにくいウレタン樹脂を充填することで、航空機の荷重が繰返し加わっても空洞ができないようにする技術を開発し、特許を出願しております。(4) 東興ジオテック㈱① 高圧噴射撹拌工法の開発近年、高圧噴射撹拌工法は適用範囲が広がりつつあり、河川水域部や大径化、大深度での適用例が多くなってきております。これらに対応するため、当社の独自工法であるウルトラジェット工法の基本技術をベースにバージョンアップをはかり、受注機会の拡大を目指しております。河川水域部への対応としては、ゲルタイム(注入材と湧水が触れてから固化するまでの反応時間)を有する硬化材を使用した新たなウルトラジェット工法の実用化を目指しております。また大径化については、同工法の特徴である2方向噴射方式を二重管化し、硬化材+エアーあるいは硬化材+高圧水による工法の改良実験を進めております。② 新型乾式吹付工法(改良型ニュージャストショット工法)の開発岩盤接着工法であるニュージャストショット(NJS)工法の受注拡大を目指し、曲げ接着強度や凍結融解などに対する耐久性向上のため、コンクリート補修・補強分野で実績のあるポリマーセメントモルタル技術を取り入れた改良型NJS工法の開発に取り組んでおります。
FY2021|3,290 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、当社の技術研究所(髙松コンストラクショングループ技術研究所)内に、中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱のそれぞれ研究開発部門があり、各社が得意とする技術分野において、研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は523百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。 (1) 髙松建設㈱① TAS(Takamatsu Aoki-asunaro Support)工法の開発TAS工法とは、コンクリート打設後の型枠支保工のうち一部のサポートを残し、数日で全てを解体できる工法であり、青木あすなろ建設㈱と共同開発しました。FEM解析といわれる高度な構造計算をおこなうことで、最低限必要な支保工を算出し、サポート本数の大幅な削減を実現、次工程への早期着手や型枠材の転用等による工期の短縮、材料等のコスト削減をはかりました。当社では2016年より、数多くの新築物件にて本工法を採用し、施工効率の改善に取り組んでおります。② 外壁診断調査システムの開発建築基準法では「タイル張り外壁、モルタル塗り外壁」の定期診断が定められており、建築物の所有者、管理者または占有者は経年劣化等による外壁剥離の診断が義務付けられております。しかし、外壁の診断は足場やゴンドラ等の高所作業で危険を伴うことが多く、仮設や安全対策が大がかりとなり診断費用は割高になります。そのため、外壁を走行できるロボットを用い、外壁の打診診断や目視調査が実施できるシステムを非破壊検査㈱と共同開発し、2019年度より、実際の建物で運用を開始しており、定期診断の効率化に貢献しております。③ ロングスパン建物の最適設計手法の開発流通施設や工場等の広い無柱空間が必要とされる建築物だけでなく、近年、事務所ビルや診療施設においても開放的な間取りの要求される事例が増加しており、鉄骨造による柱スパンの大きい空間が求められております。これらの設計においては、建物毎に最適な梁の断面、柱から梁の接合部の形状等、また製造しやすく施工性の優れた設計が必要となります。FEM解析であれば一般の構造計算プログラムではできない、部材の変形能力や変形状態を再現し解析することができるため、応力状態に応じた最適な設計が可能となります。解析結果を基にロングスパン建物の構造設計指針を策定し、柱スパンの大きい倉庫・工場・事務所ビルや診療施設等の建築物の設計に活用していきます。④ サイホン排水システムの開発サイホン排水システムとは、従来の重力排水システムと異なり、排水管内を満流にし、その排水の落差(サイホン作用)を活用する小口径で無勾配の排水管設置が可能となる排水システムです。キッチン等の水回り設備の自由な配置が可能となり、将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能となります。また、強力なサイホン作用による満流で高速の排水は自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性にも優れた排水システムです。キッチン系統については、昨年度より、実際の計画賃貸マンションで設備設計に取込み、施工を実施し検証を進めております。さらに、洗面・洗濯・ユニットバス等のサニタリ系統も加えて検証を進めていきます。⑤ 配筋検査システムの開発 ― 他社ゼネコンとの共同開発建築の躯体工事は、近年、熟練工の減少や品質管理の厳格化から、ICT技術活用による省人化、生産性向上が急務となっております。そこで、AI(人工知能)および画像解析を活用した配筋検査システムを開発し、撮影された配筋の径と本数、ピッチ等の算出、三次元的に配筋形状の自動計測、図面データとの照合、配筋検査帳票への自動入力を可能とし、配筋検査の半自動化をはかります。ICT技術の活用が課題となるため、他社ゼネコンと共同で試行、改良を繰り返しながら開発を進めており、本年度より試作のテスト運用を開始し、順次、本格運用を目指しております。⑥ 流動化コンクリートによる施工品質向上技術の開発鉄筋コンクリート造建物においては、近年、建物の形状の複雑化や鉄筋量の増加など、コンクリートを密実に充填することが難しくなっております。こうした課題を解決するため、流動化コンクリートの活用に向けた検討を進めております。流動化コンクリートとは、施工現場においてアジテータ車内のコンクリートに流動化剤を添加し、コンクリートの流動性を高め、施工性および品質の向上をはかるものです。昨年度は、流動化コンクリートの実大施工実験を実施し、工事施工性と施工品質を確認した上で、実験で得られた知見を基に流動化コンクリートの施工マニュアルを整備しました。さらに検証を進め、流動化コンクリートの実用化を拡大していきます。 (2) 青木あすなろ建設㈱① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究2013年6月に首都高速道路㈱が公募した共同研究テーマ「既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究」に採択され、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する研究を実施しています。その成果によりこれまで1000kN摩擦ダンパー4基および650kN摩擦ダンパー2基が首都高速道路11号台場線において設置され、初めて実工事での採用に至りました。来期は首都高速道路1号上野線において1200kN摩擦ダンパー24基、800kN摩擦ダンパー2基が採用される予定です。また、橋軸方向の地震動の影響を低減し、橋軸直角方向の地震動に対してのみ可動する新たなメカニズムの開発に取り組み、小型の振動台上の動的載荷実験によって、適切に可動する条件について検討しました。今後、大型の振動台を用いたより実橋梁に近い条件での動的載荷実験を実施し、実際の地震動に対して開発したメカニズムが適正に可動することを検証する予定です。② 拡幅トンネル技術の研究国立研究開発法人土木研究所との「トンネルの更新技術に関する共同研究」において、施工性がよく経済的に既設トンネルの断面を拡大する工法を研究しております。今期は、施工中にトンネル内を走行する一般車両を防護するプロテクタを改良して設置撤去時の施工性向上をはかり、関連する特許を2件出願しました。③ 制震ブレースを用いた耐震補強工法日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。今期は実施適用物件に対する振動測定をおこない、補強効果の確認およびデータの蓄積をはかりました。また、新築建物の制震化に摩擦ダンパーを適用するための解析検討をおこないました。施工は今期2件で、累計施工実績は95件です。 ④ 折返しブレースを用いた耐震補強工法折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。今期は円形鋼管タイプの信頼性向上に向け、短柱芯材の多数回繰り返し載荷実験をおこないました。累計実績は8件です。⑤ 耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発大地震時の大空間建物の天井被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでいます。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しました。今期は、天井裏配管の施工性向上に向け、ブレース配置の自由度を拡大する実験などをおこないました。累計施工実績は2件です。⑥ メンテフリー緑化工法の開発既存の法面緑化工法では、植生の過剰な生育が望ましくない場所において、草刈り等の定期的な管理作業をおこなう必要があるため、植物の生長する高さを抑制し維持管理費を節減できる緑化工法を開発し、受注機会の拡大をはかりました。
FY2020|3,063 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、当社の技術研究所(髙松コンストラクショングループ技術研究所)内に、中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱のそれぞれ研究開発部門があり、各社が得意とする技術分野において、研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は510百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。 (1)髙松建設㈱①TAS(Takamatsu Aoki-asunaro Support)工法の開発コンクリート打設後の型枠支保工を一部のサポートを残し、数日で全てを解体できる工法を開発しました。FEM解析といわれる高度な構造計算をおこなうことで、最低限必要な支保工を算出し、サポート本数の大幅な削減を実現、次工程への早期着手や型枠材の転用等による工期の短縮、材料等のコスト削減をはかりました。 当社では2016年より、数多くの新築物件にて本工法を採用し、施工効率の改善に取り組んでおります。②外壁診断調査システムの開発建築基準法では「タイル張り外壁、モルタル塗り外壁」の定期診断が定められており、建築物の所有者、管理者または占有者は経年劣化等による外壁剥離の診断が義務付けられております。しかし、外壁の診断は足場やゴンドラ等の高所作業で危険を伴うことが多く、仮設や安全対策が大がかりとなり診断費用は割高になります。 そのため、外壁を走行できるロボットを用い、外壁の打診診断や目視調査が実施できるシステムを共同開発しました。昨年度より、実際の建物で運用を開始しており、定期診断の効率化に貢献しております。③ロングスパン建物の最適設計手法の開発流通施設や工場等の広い無柱空間が必要とされる建築物だけでなく、近年事務所ビルや診療施設においても開放的な間取りの要求される事例が増加しており、鉄骨造による柱スパンの大きい空間が求められております。これらの設計においては、建物毎に最適な梁の断面、柱から梁の接合部の形状等、また製造しやすく施工性の優れた設計が必要となります。FEM解析であれば一般の構造計算プログラムではできない、部材の変形能力や変形状態を再現し解析することができるため、応力状態に応じた最適な設計が可能となります。解析結果をロングスパン建物の構造設計指針としてまとめ、今後は柱スパンの大きい建築物の設計に活用していきます。④サイホン排水システムの研究サイホン排水システムとは従来の重力式排水システムと異なり、排水管内を満流にし、その排水の落差(サイホン作用)を活用する小口径で無勾配の排水管設置が可能となる排水システムです。小口径で無勾配の配管システムによりキッチン等の水回り設備の自由な配置が可能となり、将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能となります。また、強力なサイホン作用による満流で高速の排水は自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性にも優れた排水システムです。本年度より、実際の計画賃貸マンションで設備設計に取込み、施工を実施し検証を進めていきます。⑤配筋検査システム ― 他社との共同開発建築の躯体工事は、近年、熟練工の減少や品質確保の要請が顕著になっており、こうした課題を解決、施工品質を確保するためには、ICT技術活用による省人化、生産性向上が必要となります。本開発は、AI(人工知能)により撮影された配筋の径と本数、ピッチ等を算出、また三次元的に配筋形状を計測し、図面データと照合、配筋検査帳票への自動入力を可能とし、配筋検査の半自動化をはかります。AIを活用する技術の開発には費用面等、単独での開発は難しく、他社と共同で試行、改良を繰り返しながら開発を進めていきます。⑥鉄筋コンクリート造(RC造)におけるひび割れ防止手法の研究RC造の施工において、高強度コンクリートを使用した工事やマスコンクリートとなる工事では、水和熱による温度ひび割れが発生しやすく、一般的なコンクリート工事よりも品質管理に注力する必要があります。様々な施工条件下でもひび割れの生じない安定した施工品質を確保するには、FEM解析による正確な予測手法が必要となります。当社施工建物において事前にFEM解析をおこない、また、現場でのひずみや温度計測により検証することで、ひび割れ防止手法の解析精度を向上させていきます。 (2)青木あすなろ建設㈱①既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究2013年6月に首都高速道路株式会社が公募した共同研究テーマ「既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究」に採択され、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する研究を実施しています。今期は大容量の1000kN摩擦ダンパーの高速加振実験を行い、ダンパーの速度依存性を検証しました。その成果により1000kN摩擦ダンパーおよび650kN摩擦ダンパーが首都高速道路11号台場線において設置され、初めて実工事での採用に至りました。また、橋軸方向の地震動の影響を低減し、橋軸直角方向の地震動に対してのみ可動する新たなメカニズムの開発に取り組み、静的載荷試験を実施し、適切に可動する条件について検討しました。今後、振動台を用いた動的載荷試験を実施し、実際の地震動に対して開発したメカニズムが適正に可動することを検証する予定です。②拡幅トンネル技術の研究国立研究開発法人土木研究所と「トンネルの更新技術に関する共同研究」の協定を締結し、2017年4月から2021年3月までの4年間、共同研究を実施しております。今期は、実際の拡幅トンネル工事で計測した応力、沈下等から掘削時の実挙動を考察し、実現可能な支保工削減等の合理化案を研究しました。③インフラ調査・補修ロボットの研究開発コンクリートの調査点検アタッチメントの改良を実施しました。今期は阪神高速道路の7号北神戸線西堀越川橋梁の橋脚にて現地検証をおこない、実用レベルであることを確認しました。インフラ調査・補修ロボットは非破壊検査株式会社との共同開発で取り組んでおります。④制震ブレースを用いた耐震補強工法日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。今期は実施適用物件に対する振動測定をおこない、補強効果の確認およびデータの蓄積をはかりました。施工は今期3件で、累計施工実績は93件です。⑤折返しブレースを用いた耐震補強工法折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。今期は局部座屈抑制に向けた実験をおこない、信頼性の向上をはかりました。累計実績は7件です。⑥耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発大地震時の大空間建物の天井被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでいます。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しました。今期は、勾配天井への適用、壁とのクリアランス確認、耐震改修仕様などに向けた性能確認実験をおこない、適用範囲の拡大をはかりました。施工は今期1件で累積施工実績は2件です。
FY2019|3,057 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、当社の技術研究所(髙松コンストラクショングループ技術研究所)内に、中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱のそれぞれ研究開発部門があり、各社が得意とする技術分野において、研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は482百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。 (1)髙松建設㈱①TAS(Takamatsu Aoki-asunaro Support)工法コンクリート打設後の型枠支保工を一部のサポートを残し、数日で全てを解体できる工法を開発しました。 FEM解析といわれる高度な構造計算をおこなうことで、最低限必要な支保工を算出し、サポート本数の大幅な削減を実現、次工程への早期着手や型枠材の転用等による工期の短縮、材料等のコスト削減をはかりました。 当社では2016年より、数多くの新築物件にて本工法を採用し、施工効率の改善に取り組んでおります。②外壁診断調査システムの開発建築基準法では「タイル張り外壁、モルタル塗り外壁」の定期検診が定められており、建築物の所有者、管理者または占有者は経年劣化等による外壁剥離の診断が義務付けられています。しかし、外壁の診断は足場やゴンドラ等の高所作業で危険を伴うことが多く、仮設や安全対策が大がかりとなり診断費用は割高になります。 そのため、外壁を走行できるロボットを用い、外壁の打診診断や目視調査が実施できるシステムを共同開発しております。昨年度までで打診診断に関する技術を確立、本年度より実際の物件での検証を実施してまいります。③ロングスパン解析の基礎的研究近年、流通施設や工場等の広い無柱空間が必要とされる建築物だけでなく、事務所ビルや診療施設においても開放的な間取りが要求される事例が増加しており、鉄骨造による柱スパンの大きい空間設計が求められております。これらの設計においては、建物毎に最適な梁の断面、柱から梁の接合部の形状等、また製造しやすく施工性の優れた設計が必要となります。FEM解析であれば一般の構造計算プログラムではできない、部材の変形能力や変形状態を再現し解析することができるため、応力状態に応じた最適な設計が可能となります。解析結果をロングスパン建物の構造設計指針としてまとめ、今後は柱スパンの大きい建築物の設計に活用していきます。④サイホン排水システムの研究サイホン排水システムとは従来の重力式排水システムと異なり、排水管内を満流にし、その排水の落差(サイホン作用)を活用する小口径で無勾配の排水管設置が可能となる排水システムです。無勾配で小口径の配管システムによりキッチン等の水回り設備の自由な配置が可能となり、将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能となります。また、強力なサイホン作用による満流で高速の排水は自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性に優れた排水システムです。当社が施工する賃貸マンションの平面計画に適した排水システムを目指し研究を進めております。⑤中断熱工法省エネルギー基準が強化される中、RC構造においても断熱材の使用による躯体の高断熱化が必須となっております。一方、RC建築の特徴的なコンクリート打放しのデザインを好まれるお客様も多く、断熱性能とデザインを両立させることが要望されております。本工法は50㎜の断熱材の両面に厚さ120㎜の鉄筋コンクリートの壁を作り、断熱材を埋め込んで耐震構造壁としたもので、断熱性能とデザインの両立と共に断熱材の施工性向上をはかったものであり、構造実験により厚さ240㎜の鉄筋コンクリート壁と同等の構造耐力のあることを確認しております。⑥省エネルギー仕様の開発「我が国のエネルギー基本計画」において、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及目標が「2030年までに新築建物の平均でZEBの実現」、「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現」と設定されています。地球温暖化対策や災害時におけるエネルギー自給の観点からZEHおよびZEBの普及が当社としても重要と認識しており、それを実現するための断熱仕様、空調、照明、給湯等の設備仕様や様々な環境配慮技術の効果をエネルギー消費性能計算プログラムにより算出、また部材費や施工効率をふまえた最適な仕様・設備の検討をおこなっております。 (2)青木あすなろ建設㈱①既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究2013年6月に首都高速道路株式会社が公募した共同研究テーマ「既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究」について、摩擦ダンパーを既設橋梁に応用する研究を実施しています。今期は橋軸方向の地震動の影響を低減し、橋軸直角方向の地震動に対してのみ可動するメカニズムの開発に取り組みました。同時に従来の摩擦ダンパーについても耐久性試験、実橋梁に適用した場合の効果を調べる動的解析を実施しました。②無人化施工・水陸両用機械における操作ガイダンス技術の開発重機の位置姿勢情報やドローン撮影による地形画像を用いて、コンピュータ画面上に複数重機を統合表示する技術です。無人化施工や水陸両用機械の遠隔操作においてカメラ映像を見ずに遠隔操作することが可能になります。今期はバックホウの姿勢情報を検出することで、カメラ映像を見ずにダンプトラックへ土砂等の積込みができるように改良しました。③コンクリートの品質向上技術の開発コンクリートひび割れ制御システムを改良し、コンクリート構造物の躯体内にパイプを設置し、コンクリートの温度上昇を抑制するパイプクーリングを自動運転管理する機能に、タブレットで遠隔管理および遠隔操作を追加したことで更なる省人化をはかるとともに、品質の向上を実現しました(名古屋港飛島ふ頭改良工事で実施)。また、本技術は2016年11月17日にNETIS新技術情報提供システムに登録された他に、2019年2月1日に特許登録されました。④制震ブレースを用いた耐震補強工法日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法で、高性能・居ながら補強・短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。今期は、これまでの施工物件で用いた摩擦ダンパー約3,600基のデータを確認するとともに、品質管理方法の改善をはかりました。また、補強工事後20年が経過したダンパーの検査をおこない、初期の性能を維持していることを確認しました。⑤折返しブレースを用いた耐震補強工法折返しブレースは断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示し、合理的な鉄骨造建物を建設できます。今期は、円形鋼管タイプの性能確認実験データを分析し、信頼性の向上をはかりました。⑥耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発大地震時の大空間建物の天井被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでいます。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しました。今期は、鉄骨造を対象とした仕様書の作成および天井の吊り長さを4.5mとした場合の性能確認実験をおこない、適用範囲の拡大をはかりました。
FY2018|2,824 文字
5 【研究開発活動】当社グループは、当社の技術研究所(髙松コンストラクショングループ技術研究所)のもと、中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱にそれぞれ研究所を設け、各社が得意とする技術分野において、研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は429百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。 (1)髙松建設㈱①TAS(Takamatsu Aoki-asunaro Support)工法コンクリート打設後の型枠支保工を一部のサポートを残し、数日で全てを解体できる工法を開発しました。 FEM解析といわれる高度な構造計算をおこなうことで、最低限必要な支保工を算出し、サポート本数の大幅な削減を実現、次工程への早期着手や型枠材の転用等による工期の短縮、材料等のコスト削減をはかりました。 更に型枠支保工の作業効率をはかるため、支持力の大きい軽量なアルミ製サポート材についてFEM解析、載荷試験により計算方法を擁立、大幅な施工効率向上を実現しました。②外壁診断調査システムの開発建築基準法では「タイル張り外壁、モルタル塗り外壁」の定期検診が定められており、建築物の所有者、管理者または占有者は経年劣化等による外壁剥離の診断が義務付けられています。しかし、外壁の診断は足場やゴンドラ等の高所作業で危険を伴うことが多く、仮設や安全対策が大がかりとなり診断費用は割高になります。 そのため、外壁を走行できるロボットを用い、外壁の打診診断や目視調査が実施できるシステムを共同開発しております。打診診断に関する技術は確立済みであり、本年度より実際の物件での検証を実施導入してまいります。③ロングスパン解析の基礎的研究近年、流通施設や工場等の広い無柱空間が必要とされる建築物に限らず、事務所ビルや診療施設においても開放的な間取りが要求される事例が増加しており、S造による柱スパンの大きい空間設計が求められております。 これらの設計においては、建物毎に最適な梁の断面、柱から梁の接合部の形状等、また製造しやすく施工性の優れた設計が必要となります。FEM解析であれば従来型構造分析(2次元フレーム解析)と異なり、構造物の応力状態が3次元的に確認できるため、応力状態に応じた経済設計が可能となります。 現在、FEM解析に必要な解析モデル、入力データを実際の建物での振動測定により検証しながら研究をおこなっております。④サイホン排水システムの研究サイホン排水システムとは従来の重力式排水システムと異なり、排水管内を満流にし、その排水の落差(サイホン作用)を活用する小口径で無勾配な排水管の設置が可能となる排水システムです。無勾配で小口径の配管システムによりキッチン等の水回り設備の自由な配置が可能となり、将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能となります。 また、強力なサイホン作用による満流で高速の排水は自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性に優れた排水システムです。当社が施工する賃貸マンションに適した平面配置での排水システムを目指し研究を進めております。⑤中断熱工法省エネルギー基準が強化される中、RC構造においても断熱材の使用による躯体の高断熱化が必須となっております。一方、RC建築の特徴的なコンクリート打放しのデザインを好まれるお客様も多く、断熱性能とデザインを両立させることが要望されております。本工法は50㎜の断熱材の両面に厚さ120㎜の鉄筋コンクリートの壁を作り、断熱材を埋め込んで耐震構造壁としたもので、断熱性能とデザインの両立と共に断熱材の施工性向上をはかったものであり、構造実験により240㎜のコンクリート壁と同等の構造耐力のあることを確認しております。⑥省エネルギー仕様の開発「我が国のエネルギー基本計画」において、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及目標が「2030年までに新築建物の平均でZEBの実現」、「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現」と設定されています。地球温暖化対策や災害時におけるエネルギー自給の観点からZEHおよびZEBの普及が当社としても重要と認識しており、ZEH、ZEBを実現するための断熱仕様や、様々な環境配慮技術の効果をエネルギー消費性能計算プログラムにより算出、また部材費や施工効率をふまえた最適な仕様・設備の検討をおこなっております。 (2)青木あすなろ建設㈱①既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究2013年6月に首都高速道路株式会社が公募した共同研究テーマ「既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究」について、摩擦ダンパーを既設橋梁に応用する研究を実施しています。今期は摩擦ダンパーを現場に適用する際に必要となる技術データを検討するために加振実験や振動台実験を実施しました。同時に、摩擦ダンパーをRC橋脚に取り付けるための方法として、独自のあと施工アンカー工法に関しても研究し特許申請をおこないました。②コンクリートの品質向上技術の工場コンクリートひび割れ制御システムを開発し、養生温度・湿度を遠隔で自動運転管理することで省人化をはかるとともに、品質の向上を実現しました(博多港橋梁下部工事で運用中)。また、水中コンクリートの連続打設管理システムを開発し、打設状況を見える化することで潜水作業を軽減し省力化をはかるとともに、型枠の隅々まで材料分離の無いコンクリートを連続打設することで品質の向上を実現しました。③制震ブレースを用いた耐震補強工法日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法で、高性能・居ながら補強・短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。今期は、前期に引き続き実施適用物件に対する振動測定をおこない、データの蓄積をはかりました。④折返しブレースを用いた耐震補強工法折返しブレースは断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示し、合理的な鉄骨造建物を建設できます。今期は、円形鋼管タイプの性能確認実験を成功裡に終了し、信頼性の向上をはかりました。⑤耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発大地震時の大空間建物の天井被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでいます。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しました。今期は、天井の吊り長さの適用範囲を1.5mから3.0mに拡大するための性能確認実験をおこない、建築技術性能証明を更新しました。また今期は本工法が初採用され1件受注しました。
FY2017|1,683 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、当社の技術研究所(髙松コンストラクショングループ技術研究所)のもと、中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱にそれぞれ研究所を設け、各社が得意とする技術分野において、研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は438百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。 (1)髙松建設㈱①TAS(Takamatsu Aoki-asunaro Support)工法コンクリート打設後の型枠支保工を一部のサポートを残し、数日で全て解体できる工法を開発しました。有限要素解析といわれる高度な構造計算をおこなうことで、最低限必要な支保工を算出し、サポート本数の大幅な削減を実現、次工程への早期着手や型枠材の転用等による工期の短縮、材料等のコスト削減をはかりました。また今期は、更にそのサポート材の軽量化(材質)をはかる部材の実験を継続し開発中であります。②外壁診断調査システムの開発2008年に建築基準法改定で義務付けられた外壁タイルを使用した建築物の定期点検、およびコンクリート躯体の経年劣化に伴う外壁調査において、建物外壁の全面的な調査を実施する場合、足場またはゴンドラ・高所作業車などを用い高所作業に危険を伴うことが多く、また仮設費・作業日数がかさみます。その効率化策として外壁を走行できるロボットを用い、打音・スコープにより時間・コスト削減に向けたシステムを共同開発中で、実走実験を実施しております。③ロングスパン解析の基礎的研究近年、流通施設やスポーツ施設等、大空間の建築事例が増えていることから、他社との競争力向上のため、柱間を飛ばすロングスパン構造についてFEM分析および実験検証をおこない、現在、実現可能な構造設計の計画に向け研究しております。(2)青木あすなろ建設㈱①既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究2013年6月に首都高速道路株式会社が公募した共同研究テーマ「既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究」について、摩擦ダンパーを既設橋梁に応用する研究を実施しています。今期は国立研究開発法人土木研究所内の施設での振動台実験の結果を踏まえ、これまでの成果と合わせてマニュアルの整備をおこないました。②インフラ調査・補修ロボットの研究開発阪神高速道路株式会社が公募した「コミュニケーション型共同研究」に青木あすなろ建設が応募した「壁面走行ロボットの導入と応用技術の開発」が採択され、道路構造物の点検・補修のロボット化を目指し、共同研究を開始しました。今期は壁面走行ロボットの走行(コンクリートや鋼製柱脚)の適用性の課題と対策を整理し、さらに走行ロボットに装着するコンクリートひび割れ補修アタッチメントを自社開発し、試作機を製作しました。③ICTによる3次元データを使用した施工管理技術の開発港湾工事では全国で初めてのICT活用調査モデル工事である「八戸港河原木地区航路・泊地(-14m)浚渫工事」で、ドローンやラジコンボート等を用いた測量技術や水中可視化技術による3次元データを使用した施工管理技術を開発・実施しました。本技術により浚渫部から埋立部まで一気通貫した施工管理が可能となり、浚渫と埋立の土量バランスを把握し、効率的な浚渫をおこないました。④制震ブレースを用いた耐震補強工法日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法で、高性能・居ながら補強・短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。今期は、前期に引き続き実施適用物件に対する振動測定をおこない、データの蓄積をはかりました。⑤折返しブレースを用いた耐震補強工法折返しブレースは断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示し、合理的な鉄骨造建物を建設できます。今期は、前期に引き続き倉庫等への適用範囲拡大に向け開発を実施しました。
FY2016|1,817 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、当社の技術研究所(髙松コンストラクショングループ技術研究所)のもと、中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱にそれぞれ研究所を設け、各社が得意とする技術分野において、研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は330百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。 (1)髙松建設㈱①中断熱工法壁の開発中断熱工法は、壁式鉄筋コンクリート造住宅の新しい外壁構法であり、壁厚310mmの中央に厚さ50mmの押出法ポリスチレンフォーム保温板を設置し、コンクリートを打設するもので打ち放しやコンクリートに直接仕上げをしても結露の心配がありません。また、壁厚を厚め、構造規定の壁量を減らすことができ、工期短縮やコストダウンを図れるほか、通常の構造計算と確認申請が可能です。②TAS(Takamatsu Aoki-asunaro Support)工法の開発コンクリート打設後の型枠支保工を一部のサポートを残し、数日で全て解体できる工法を開発しました。有限要素解析といわれる高度な構造計算をおこなうことで、最低限必要な支保工を算出し、サポート本数の大幅な削減を実現、次工程への早期着手や型枠材の転用等によるコスト削減がはかれます。③間仕切り構造の開発賃貸マンションの入居者が間取りを変更できる「間仕切り構造」を開発しました。入居者のライフステージに合わせた間取りが可能となり、多彩な空間構成を実現することができました。(2)青木あすなろ建設㈱①制震ブレースを用いた耐震補強工法日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法で、高性能・居ながら補強・短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。今期は、実施適用物件に対する振動測定をおこない、データの蓄積をはかりました。②折返しブレースを用いた耐震補強工法折返しブレースは断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示し、合理的な鉄骨造建物を建設できます。今期は倉庫等への適用範囲拡大に向け開発を実施しました。③杭-柱直接接合工法の開発鉄骨造建物の地中梁を不要化することにより、建設コストの低減および施工の合理化をはかる構法の開発に取り組みました。建物1階の柱脚部に螺旋状にスリットを入れた鋼管を設置することにより、耐震性を確保しながら地中梁の不要化を実現し、スリット付鋼管の性能確認実験を実施しました。④既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究2013年6月に首都高速道路株式会社が公募した共同研究テーマ「既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究」について、摩擦ダンパーを既設橋梁に応用する研究を実施しています。今期は既設橋梁補強の振動解析、解析結果にもとづく試作品の製作とその性能確認実験および国立研究開発法人土木研究所内の施設で振動台実験を実施しました。実用化の目処を付けるため、共同研究の期間が再延長され、2017年1月末までとなりました。⑤遠隔操作式水陸両用バックホウ工法の開発海岸工事や河川工事における省人化・省資源化・低コスト化を目指した工法であります。今期は福島県沿岸部の災害復旧工事において、開発した遠隔操作式水陸両用バックホウを使用して、ブロック据付作業量や揚程、作業半径等の能力を計測し、来期以降の開発課題を抽出しました。⑥水陸両用ブルドーザ施工支援システム当社保有の水陸両用ブルドーザの操作に、マシンガイダンスを適用させた情報化施工技術で、高効率で高精度な施工を実現するシステムです。今期は引続きシステムを複数台同時に稼働させるための改良を実施しました。⑦流起式(可動)防波構造体津波発生時に津波による流れによって起き上がり、津波の力を抑制する可動式の防波構造体です。人為的な操作を必要としないこと、動力源を使用しないことから地震発生後にライフラインが遮断されたとしても稼働するのが大きな特徴です。今期は、立ち上がる壁の高さが2.24mのモデルを用いて、国立研究開発法人港湾空港技術研究所の大規模波動地盤総合水路において実験をおこない、実物に近い津波の規模でも壁が起き上がり、津波の力を抑制できることを確認しました。