事業等のリスク
ニッスイグループは、事業活動における様々なリスクを経営の重要課題と認識し、リスクマネジメント委員会を中心に全社的な管理体制を構築しています。主なリスクとして、少子高齢化による国内での優秀な人材確保の困難さや、多様な人材への対応の遅れによる生産性の停滞、事業拡大の阻害が挙げられます。また、グローバル人材やDX人材、サステナビリティ人材など、専門性の高い人材の不足も生産性や事業拡大に影響を及ぼす可能性があります。従業員エンゲージメントの低下も人材確保を難しくする要因となり得ます。
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FY2025|13,432 文字
3 【事業等のリスク】(1)当社グループのリスクマネジメント①リスクマネジメントの考え方当社は、「リスクマネジメント規程」において、企業の存続に影響を与えると考えられる事象発生の不確実性を「リスク」、企業が経営を行っていく上で事業に関連する内外の様々なリスクを適切に管理する活動を「リスクマネジメント」と定義しており、適切な「リスクマネジメント」の実行が経営の重要課題であると認識しています。 ②リスクマネジメントの基本方針当社及び当社グループは、事業活動の妨げとなるリスクの未然防止に努め、緊急時には人命尊重を第一に損失の発生を最小限に抑え、被災者支援など社会への配慮を行うとともに経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすことで、企業価値を維持・向上していくことをリスクマネジメントの基本方針として「リスクマネジメント規程」において定めています。 ③リスクマネジメント体制当社は、リスクマネジメントの実効性を高めるため、全社的リスクマネジメントシステムの構築とその維持・向上を任務とする、社長直轄の組織であるリスクマネジメント委員会を設置しています。同委員会は全執行役員によって構成され、社長が委員長を務め、リスクマネジメント担当執行役員は、取締役会へ定期的に活動報告をしています。また2023年度からグループ全体のリスクを適宜、的確に捉える新しい体制への見直しを図り、リスクマネジメント委員会・サステナビリティ委員会・品質保証委員会・執行役員会の事務局が連携して、重要リスク対応を全社グループ視点で一元管理する体制へ移行し、リスク対応に優先順位を付けて経営戦略に落とし込み、将来の成長の機会とリスクの的確なマネジメントに取組んでいます。新しいリスクマネジメント体制を踏まえ、リスクマネジメント委員会は全社重要リスクを一元的に把握・管理する統合リスク管理機能として、次の事項を審議・承認し、取締役会へ報告することで、全社的リスクマネジメントシステムの構築とその維持・向上の役割を果たしていきます。 ・重要リスク(注1)の特定 (重要リスク管理組織(注2)の特定)・重要リスク対応計画の審議 (重要リスク管理組織が策定・報告)・重要リスク対応計画実行のレビュー (過年度総括・評価・是正)・重要リスク対応計画の網羅的な把握・確認 (次年度計画の全社集約・一元化) (注1)重要リスク:当社のグループ経営において極めて重要度が高く優先的に対応すべきと判断したリスク(注2)重要リスク管理組織:重要リスクごとに設置し、全社横断的なリスク対応計画の管理責任を負う組織 ④リスクマネジメントプロセス当社グループでは、新しいリスクマネジメント体制において、リスクマネジメントプロセスを年間のPDCAサイクルとして、リスクマネジメント活動を推進していきます。中長期的な経営戦略を見据えた重要リスクを特定するため、マテリアリティをリスクマネジメントの起点としており、マテリアリティを見直すタイミングで、定期的に重要リスクの見直しを図っていきます。ただし大きな環境変化があった場合は、年度の進捗確認・評価で議論します。 ⑤重要リスクの特定プロセス当社グループは、中長期的に企業価値を維持・向上していくためには、政治・経済・社会・テクノロジーなどの外部環境の変化がもたらすリスクと機会に戦略的に対応することが重要と考えています。当社グループでは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記述の通り、昨今の外部環境の変化を捉えたマテリアリティの見直しを行い、その過程でマテリアリティに関連する機会とリスクを抽出・分析し、中長期的な重要課題・事業戦略に重大な影響を及ぼすと認識するリスク項目を重要リスクとして特定しました。また、プラスとマイナスの影響を持ち併せたリスクとマイナスの影響を主とするリスクの両方を統合管理するリスクマネジメント体制へ移行するにあたり、前者を経営戦略リスク、後者を経営基盤リスクの2つに分類して整理しています。 ■重要リスクの特定プロセス <「リスク項目の特定」と「リスク評価」について>マテリアリティに関連するリスクを抽出・分析し、リスク属性で整理した結果、17のリスク項目を特定しました。その中から、中長期的な重要課題・事業戦略に及ぼす影響を評価し、極めて重大と判断した11の重要リスクは以下の通りです。 経営戦略リスク経営基盤リスク影響重大・人的資本への対応に関するリスク・気候変動への対応に関するリスク・生物多様性への対応に関するリスク・サプライチェーンの環境・人権に関するリスク・海外事業展開に関するリスク・地政学的問題に関するリスク・製品の安全安心・品質に関するリスク・情報セキュリティに関するリスク・コンプライアンスに関するリスク・大規模自然災害・事故に関するリスク・労働安全衛生に関するリスク ■リスクマネジメント推進体制図 (2)重要リスク当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重大な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。以下に記載したリスクは、当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、本文中における将来に関する事項は、別段の記載がない限り当年度末において当社が判断した内容に基づきます。 ≪経営戦略リスク≫(戦略1)人的資本への対応に関するリスク<概要>当社グループの経営計画達成のために、事業創出・企画運営の能力のある経営を担う人財、海外国内を問わず活躍できるグローバル人財やプロフェッショナル人財、各生産拠点で成果を上げる人財の確保と育成が必要ですが、日本国内の少子高齢化と人口減少が進むにつれ、国内での優秀な人財確保が難しくなりつつあります。また、多様な人財が働けるダイバーシティ対応に後れをとると、必要な人財確保が困難になると想定されます。主なリスク・プロフェッショナル人財(※)の不足による生産性の停滞、事業拡大の停滞(※)グローバル人財、DX人財のほか、サステナビリティ人財、R&D人財など・従業員エンゲージメントの低下による人財確保の難化・生産年齢人口減少に伴う現場労働力の不足による生産性停滞・人財不足に伴う新規事業拡大の停滞、顧客ニーズへの対応不能主な機会・プロフェッショナル人財の確保・育成による事業拡大への貢献・プロフェッショナル人財の確保・育成による生産性向上への貢献・現場労働力の確保による生産性向上関連するマテリアリティ・人財育成と多様な人財の活躍 ・労働力確保と生産性の向上・ミッションへの共感とブランディング <主な対応策>当社グループでは、経営戦略と連動した人財戦略・人財育成を実行していますが、今後の事業展開にあたり、事業を牽引する人財育成が急務である一方、専門性をもって事業に貢献する人財の確保もまた重要であると考えており、社内の多様な価値観・キャリア志向尊重の観点から、外部にも通用する専門性の高い人財を育成・処遇しています。若手社員については、複数の事業・職種を経験することで、視座を高め、仕事の幅を広げ、変化対応力を高めることを狙いとした「育成ローテーション」を実施しています。将来海外で活躍するグローバル人財候補を育成する「グローバル人財育成制度」も2016年より展開しています。従業員エンゲージメントは2021年度から測定しており、抽出された課題に対して個別にアクションプランを策定し実行することで組織風土の改善を促しています。また、ミッションの社内浸透を図るとともに、全社員が新しい“食”について考え、意見交換を行うことでエンゲージメントの向上につなげる取り組み「GOOD FOODS Talk」を2023年度より全職場で実施しています。引き続き国内グループ会社にも展開し、各社において自発的貢献意欲の向上と組織風土や職場状況を改善する施策を実施していきます。少子高齢化による労働人口の減少に伴う人手不足の深刻化への対応としては、多様な働き方の実現、労働環境・労働条件の改善、地方自治体との連携による人財確保などにより、選ばれる企業を目指しています。人財のリテンションと同時に、自動化や業務改善による省人化・省力化で生産性向上を図ることで、変化に対応できる人財ポートフォリオを構築していきます。 ※詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 人的資本への対応」をご参照ください。 (戦略2)気候変動への対応に関するリスク<概要>近年、世界中で気候変動が深刻化しており、その影響はますます顕著になっています。温暖化による異常気象や自然災害は、当社グループの原材料調達、生産、物流、販売などあらゆる事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動への対応を目的とした新たな規制や市場動向の変化によって、当社のビジネスモデルが脅かされる可能性もあります。主なリスク・激甚化する台風、豪雨、洪水等による事業停止に伴うビジネス機会の喪失、コスト増加・異常気象や海洋環境の変化による天然魚、養殖魚の漁獲量の減少、調達コスト増加・水資源の減少、枯渇による事業停止に伴うビジネス機会の喪失、コスト増加・カーボンプライシングの導入による対応コスト増加・省エネ・GHG排出等の規制強化による対応コスト増加主な機会・省エネ、高効率設備の導入による生産性向上・コスト削減・GHG排出量削減によるカーボンプライシング影響の軽減・サステナブル、低カーボン製品への需要の高まりに伴う水産物の販売機会拡大関連するマテリアリティ脱炭素・循環型社会への貢献 <主な対応策>当社グループでは、2018年度比でCO2排出量を2030年までに30%削減することをサステナビリティ目標として掲げ、削減に取り組んでいます。生産拠点においては、省エネルギーの推進や高効率機器への更新、自然冷媒への切り替え、燃料転換、魚油・廃油の燃料活用に加え、太陽光発電設備の導入や再生可能エネルギー由来電力への切り替えを積極的に進め、CO2排出量の削減に取り組んでいます。 気候変動に伴う漁獲量の減少や調達コストの上昇に対応するため、産地の分散化や調達ネットワークの強化、代替原料の開発などを進め、サプライチェーンのレジリエンスを向上します。さらに、風水害の激甚化や渇水による事業停止リスクへの対応として、BCPの見直しやハザードマップ等を活用した詳細なリスク評価を行い、拠点の移転や分散の検討も進めます。※詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 自然資本の持続可能性向上に向けた対応 ①気候変動への対応(TCFD提言への取組)」をご参照ください。 (戦略3)生物多様性への対応に関するリスク<概要>水産資源の減少に伴い、漁獲制限などの規制が強化されることで、当社グループの漁業や原材料調達に影響を及ぼす可能性があります。また水産業界全体において水産物の流通量が減少した場合、水産物価格の上昇を招き、消費者の水産物離れが進むことで、市場の縮小につながる恐れがあります。 また、近年、日常生活に欠かせない飲食料品の容器包装や事業活動に使用されるプラスチックが海洋環境へ与える影響が社会課題として注目されています。プラスチックごみによる海洋汚染は、生態系の破壊や生物の減少を引き起こし、食品や水産事業における原料調達や食の安全性に影響を及ぼす可能性があります。主なリスク・水産資源の枯渇化・海洋環境の変化(従来の漁場や海面養殖場の不適地化等)に伴う漁獲量減少、調達コスト増加・漁業における漁獲制限や養殖における環境規制の強化・魚病による養殖魚の斃死・対応後れによるステークホルダーからの評判低下主な機会・水産物の持続的調達によるサプライチェーンの安定化・消費者の購買行動変化(持続可能性に配慮した製品の需要増加)による売上の拡大・サステナブルな養殖技術開発による事業のレジリエンス強化と競争優位性の確立・対応策の推進によるステークホルダーからの評判の向上関連するマテリアリティ海洋の生物多様性の主流化 <主な対応策>当社グループでは、2023年度よりTNFDのLEAPアプローチ(注1)を活用し、事業活動による自然への依存と影響を把握することで、負の影響の回避・軽減に努めています。水産資源の持続的な利用に向け、持続可能な調達比率100%を2030年までのサステナビリティ目標として設定し、3年ごとに「取り扱い水産物の資源状態調査」を実施しています。調査結果を分析し、調達の見直しや認証品の取り扱い比率向上などの対応策を講じることで、持続可能な水産物の利用につなげています。また、養殖においては、養殖漁場の沖合化や自動給餌制御システムの活用により、海洋環境への負荷軽減を図っています。さらに、天然種苗に依存しない完全養殖の魚種拡大や、陸上養殖の推進を通じた海洋環境への負荷低減にも取り組んでいます。海洋のサステナビリティ課題の解決には、一社単独では対応が難しいケースも多いため、SeaBOS(注2)などの業界イニシアティブを通じて、国内外のステークホルダーと連携した取り組みを進めています。(注1)LEAPアプローチ : TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。 分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。(注2)SeaBOS : Seafood Business for Ocean Stewardship、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブ。 ※詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 自然資本の持続可能性向上に向けた対応 ②生物多様性への対応(TNFD提言への取組)」をご参照ください。 (戦略4)サプライチェーンの環境・人権に関するリスク<概要>企業活動のグローバル化が進む中、サプライチェーンにおける環境や人権への負の影響が顕在化しており、国際機関や各国政府による基準策定や法整備が進められています。当社グループにおいても、事業活動に関連し、人間が本来持つべき自由や権利を侵害するリスクを正確に把握し、適切に対処することが求められます。サプライチェーン上で環境配慮や人権尊重が不十分な問題が発生した場合、調達の困難化にとどまらず、訴訟や行政処分、企業イメージの低下、不買運動などにつながる可能性があります。主なリスク・サプライチェーンの見直しに伴う調達コストの上昇や調達の不安定化・販売先の調達基準や要請事項を満たさないことによる取引の縮小や販売機会の逸失・環境問題や人権侵害等を直接引き起こした、または間接的に関与した場合の訴訟や行政罰リスク・環境問題や人権侵害等を直接引き起こした、または間接的に関与した場合の評判低下・環境、人権デューデリジェンスの義務化に伴う対応コストの増加主な機会・対応策の推進による安定的な調達、生産、供給の実現と競争力の向上・対応策の推進による販売機会の拡大(新規取引や他社からのシェア移行)・対応策の推進によるステークホルダーからの評判の向上・対応策の推進によるグローバルなブランド価値の向上関連するマテリアリティ持続可能なサプライチェーンの構築 <主な対応策>当社グループでは、サプライチェーンにおける潜在的な人権リスクを把握し、適切に対処することで、ライツホルダー(企業が尊重すべき人権の主体)への負の影響を最小化することを重視しています。また、サプライチェーンのあらゆる段階で環境・人権リスクを低減するためには、サプライヤーとの強固な協力関係が不可欠です。そのため、「サプライヤーガイドライン」を通じて、特に強制労働や児童労働の禁止、およびIUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)による水産物や原材料の取り扱いを厳格に禁止するよう求めています。当社の一次サプライヤーに対しては、ガイドラインの配布と説明を行い、 同意確認書の署名回収を進めるとともに、SAQ(自己評価アンケート)や対話を通じて遵守状況を確認しています。今後は優先して確認すべき原材料や産地を特定し、より詳細な確認を進めていきます。当社グループ内では、年に一度「外国人労働者の労働環境調査」を実施し、各事業所における外国人労働者の人権保護と負の影響防止・軽減に努めています。また、救済の仕組みとして、当社グループ内の内部通報制度とは別に、外部のプラットフォームを活用した外国人労働者向けの相談窓口を設置しています。さらに、サプライヤーをはじめとするその他のステークホルダーに対しても、同様に外部のプラットフォームを活用した相談窓口を提供しています。 (戦略5)海外事業展開に関するリスク<概要>当社グループ主要戦略のひとつとして、海外展開の加速を目指し、水産・食品事業における北米・欧州での更なる拡大とアジアでの事業基盤構築、ファインケミカル事業における医薬品原料の海外展開を掲げていますが、事業展開する国において、経済環境および法規制の変更等の各国固有のリスクが顕在化した場合、事業の基本的戦略や収支に影響を与える可能性があります。主なリスク・税制・漁獲枠・賃金・規制など各国の政治的判断による方向性の変換・海外子会社におけるガバナンス不全や社内管理の不備等による不祥事の発生・為替の急激な変動による海外子会社業績への影響・その他の地域的特殊性及びこれらの諸要因の急激な変化の影響主な機会・販路拡大、市場開拓・資源アクセス強化に伴うサプライチェーンの強靭化・対応策の推進によるグローバルなブランド価値の向上関連するマテリアリティグローバル展開の加速 <主な対応策>当社グループでは、2030年に海外所在地売上高比率50%を目指しており、グループガバナンスの取り組みをより一層強化しています。具体的には、当社グループの強みの一つに「グローバルリンクス」があり、資源アクセスから生産・販売に至る各機能を担う国内外の企業ネットワークで、各社が独自の強みを生かしつつシナジーを発揮していることが特色ですが、食文化や価値観は世界各地で異なります。意思決定の迅速性の観点などから、現地マネジメントに裁量を委ねるべきところは委ね、一方で、リスクコントロールや資本効率などの観点では、グローバルガバナンスを強化し、グリップを効かせることが重要と考えています。ガバナンスの実効性を高めるためには、ルールづくりや管理・監査などのシステムを強化することはもちろんですが、それ以上に、「新しい“食”の創造」というミッションを共有し、志を同じくすることが重要であると考えています。そのため、当社ではミッションや長期ビジョンの浸透に継続的に取り組むとともに、リスクと機会の特定とそれへの対策を通じて、これまで以上のシナジー創出や付加価値の向上に努めていきます。 (戦略6)地政学的問題に関するリスク<概要>近年、地政学的な要因が事業に影響を及ぼす可能性を考慮する必要性が高まっていると認識されています。例えば、当社グループが事業を展開するエリアにおいて、国境封鎖、制裁、輸出入規制、主要輸送ルートの遮断など国際貿易が阻害されるリスクが想定され、これらが顕在化した場合には、当社グループの中長期経営方針の実行や業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。主なリスクサプライチェーンにおける政治的・軍事的・社会的な情勢変化等による製品供給・サービス提供の遅延や中断・停止に伴うビジネス機会の喪失主な機会対応策の推進によるレジリエンス強化に伴うサプライチェーンの強靭化関連するマテリアリティ持続可能なサプライチェーンの構築 <主な対応策>当社グループでは、地政学的リスクに関する動向の情報収集と分析をもとに、リスクシナリオの策定及びリスクの把握を行い、その影響を低減するための適切な対策の検討を進めてまいります。既に、事業展開国・地域におけるカントリーリスクの調査、情報収集、評価をもとに、調達先の分散の検討、複数拠点からの製品供給体制の構築を図っております。引き続き、情勢を注視しながら、事業活動に及ぼす影響の最小化に向けたサプライチェーンの強靭化に努めてまいります。 ≪経営基盤リスク≫(基盤1)製品の安全安心・品質に関するリスク<概要>安全性や品質管理に対する消費者の関心が一層高まっているなか、国内外を問わず、安全、安心な商品を提供していくことが強く求められており、食を取り扱う当社グループでは、より一層の安全性、品質管理が求められていると認識しています。製品の品質事故や、表示偽装などの品質不正といったお客様の安全安心を脅かす事象が発生すると、当社グループ全体への信用が損なわれ、ブランド価値が大きく棄損し、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。主なリスク・製造物責任、リコール、自主回収による経済損失・品質事故・トラブルによる顧客信頼の低下(ブランド価値毀損)・新規事業、拡大事業(健康訴求商品等)における品質リスクの拡大・グループ会社(国内外)のニッスイブランド以外の商品の品質保証水準の管理不十分関連するマテリアリティ持続可能なサプライチェーンの構築 <主な対応策>当社グループでは、品質保証憲章において、全ての役職員がお客様起点で品質と食品安全のリスクを考え行動が出来るよう、品質保証の理念をもとに品質方針・行動指針を制定し、その下に品質保証に関する各基準を定めています。製商品の品質の安全性を確保する基準として、関連法規より厳格な当社独自の「ニッスイ品質保証基準」を設けております。同基準には、HACCP(注1)管理を前提としたニッスイ工場認定基準を核に、使用水基準、薬剤管理基準、防虫管理基準、樹脂部品基準、原材料基準、包材基準、アレルギー物質のコンタミ防止基準、フードディフェンス基準などを定めています。ニッスイブランド商品はニッスイ工場認定基準により認定した工場のみで生産しており、認定後も品質保証部による定期的な監査を実施、工場指導を行っております。また工場間の情報共有や課題解決を目的とし、工場経営者会議、工場品質管理担当者会議などを定期的に開催しております。また、食品安全の第三者認証であるFSSC22000(注2)の認証取得を生産工場で推進し、原材料情報の一元管理体制の構築、グローバルでの検査体制の確立およびエクセレントラボによる検査精度の向上などの取り組みも行っております。引き続き、従業員への品質教育の強化に努め、食品安全文化の醸成を図ってまいります。 (注1)HACCP : Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス) 委員会が発表し,各国にその採用を推奨しております。日本では2020年の食品衛生法の改正に伴いHACCPによる衛生管理が義務化されています。(注2)FSSC22000 : Food Safety System Certificationの略。FSSC22000財団(Foundation FSSC22000)により開発された食品安全のためのマネジメントシステム規格。食品小売業界が中心の非営利団体、国際食品安全イニシアティブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)により、食品安全の認証スキームの一つとして承認された規格です。 (基盤2)情報セキュリティに関するリスク<概要>今後、生産・物流・販売でのシステム連携による効率化が進むにつれ、システム停止による事業活動への影響は増加すると考えられます。システム停止はハードウェア障害、ソフトウェアのバグや脆弱性、人為的ミスなど、様々な要因によって引き起こされますが、昨今では外部サイバー攻撃に代表される情報セキュリティリスクが最も懸念される要因となっています。また、情報セキュリティインシデントが生じた場合、システム停止による直接的な影響にとどまらず、信頼性が低下する他、損害賠償等の多額の費用負担発生など当社グループに重大な影響を及ぼす可能性があります。主なリスク・外部脅威(標的型攻撃、ハッキング、なりすまし、DDos攻撃、フィッシング等)・内部過失(紛失/盗難、私物PCや外部記憶媒体利用、不正アクセス、システム障害等)・内部悪意 (不正操作、情報持ち出し等) <主な対応策>グループ経営を進める中、当社グループ内でデータ漏洩、システム破壊が発生すると、グループ全体の事業に大きく影響を与える可能性があります。そこで、国内グループでは、個人情報や経営、事業、研究などに関する重要な情報の漏洩・紛失を防止するため、「情報セキュリティ基本方針」などの規程やルールの徹底、システムの管理体制の強化、教育や訓練を含めた人的対策の領域において、各到達点を具体的に策定し、ニッスイグループIT部門会議を定期的に開催するなどの取り組みにより均質化を進めてまいりました。また、2024年度からは海外グループを含む全グループに対し、サイバー攻撃を受けるリスクの高い社外公開サーバの脆弱性を検知するサービスを導入し、リスクを検知した場合、グループ会社に通知し是正措置を促す体制づくりを構築しました。引き続き、グループ会社の情報セキュリティ対策が有効に機能しているかを定期的に確認し、情報セキュリティ確保への継続的な改善・向上に努めてまいります。 (基盤3)コンプライアンスに関するリスク<概要>当社グループは、日本および事業を行う海外における多岐にわたる法規制の適用を受けており、当社グループによる法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが大きく増加する可能性があります。また、お客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が大きく毀損し、当社グループの事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。 主なリスク・役職員不祥事の発生、法令違反等による業務への悪影響、営業停止等・刑事罰、損害賠償請求等の法的責任による経済損失、社会的制裁、株価下落等・対応不足、対応後れ等によるレピュテーション低下 <主な対応策>当社グループでは、企業としての責任を果たすため、倫理憲章を制定し、国内外の法令および社内諸規程の遵守といった、コンプライアンスの徹底に取り組んでいます。これら当社グループのコンプライアンス向上施策の策定・実施を行うため倫理部会を設置しています。また、法令等に違反している疑いのある行為について、当社グループの役職員が通報できる内部通報制度を設けており(社内外に窓口を設置)、倫理部会は内部通報制度の適正な運営も担っています。内部通報制度の運営やコンプライアンスアンケートの実施等により、法令等に違反する疑いのある行為やコンプライアンス課題を早期発見し、関係する役員・部門と協働して、個別事象の是正はもちろん、必要な場合に再発防止策も含めて検討のうえ実施しています。また、コンプライアンス向上施策として、2020年度より、当社グループの子会社と個別にコンプライアンスワークショップを実施しコンプライアンスに関するありたい姿を共有、各社のコンプライアンス課題・施策について協議を行うことにより、当社グループ全体のコンプライアンス向上を推進しております。 (基盤4)大規模自然災害・事故に関するリスク<概要>大規模な地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、国内外問わず、世界各地で大規模災害が現実のものとなっており、今後も中長期的な継続や規模の拡大が懸念されています。このような大規模な自然災害の発生により、当社グループ従業員およびその家族への被害、事務所・工場等当社グループ拠点の損壊、ユーティリティー(電気、ガス、水)遮断による拠点稼働停止等、重要な経営資源喪失による事業活動の停止によって、当社グループの事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。主なリスク自然災害(地震・噴火・津波・風災・水災等)、火災・爆発事故等による製品供給・サービス提供の遅延や中断、停止に伴うビジネス機会の喪失 <主な対応策>当社グループでは、大規模災害に直面した場合でも人命を第一とした上で、従業員・お客様・ステークホルダーにとって必要な支援・サービス等を継続するため、「災害BCP基本方針」のもとに「災害BCP部会」が中心となり事業継続計画を推進しております。近年、首都直下型や南海トラフなどの大型地震に関して高い確率で発生が予測されています。そこで、大規模災害の発生時に、災害対策本部が各拠点やグループ各社から迅速に情報を収集し、的確な判断・対応を取ることが出来るよう、安否確認や拠点被害報告等の情報収集システムを導入しました。災害対策本部訓練も定期的に実施し、引き続き初動対応力強化を図っております。従業員に対しては、防災意識の向上と災害時の初動確認を目的とし、各システムの操作確認訓練や防災教育eラーニングを実施しております。また、地球温暖化による気候変動は、台風・洪水などの自然災害の頻度を増加させ、激甚化させる傾向にあります。その対応として、自然災害リスク(地震・風水災等)の影響度定量評価の実施やオールハザード型BCP(注1)への見直しに向けて取り組んでいます。 (注1) オールハザード型BCP : リスク(原因事象)を問わず、必要な経営資源が何らかの理由で被害を受けた場合の(結果事象)の影響に基づき、対応策を考える事業継続計画 (基盤5)労働安全衛生に関するリスク<概要>企業価値向上に最も重要な要素は「人財」と考えていることから、労働環境の維持・向上が経営戦略に重要な影響を及ぼし、多様性を尊重して働きやすい職場環境の維持、向上に努める必要があると認識していますが、各施策が計画通りに進捗せず、労働災害や健康被害、ハラスメント等が発生した場合には、業務パフォーマンスの悪化や労災補償、ブランド価値の毀損が発生し、当社グループの事業継続に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。主なリスク・高齢化に伴う労働災害の増加(技能不足の若年層の労災含む)・違法残業、過労死、ハラスメント事案等の発生・労働環境、職場環境の悪化による生産性・メンタル面への悪影響 <主な対応策>当社グループでは、何よりも従業員を守る「安全」を最優先とすべきことを永遠に不変の考え方としており、「ニッスイグループ安全宣言」のもとに、労務安全衛生部会を通じて各社各事業所の安全活動を推進しています。2025年度からはその安全第一の原点に今一度立ち返り、管理者のみならず従業員ひとりひとりが自身と同僚を守るという決意を持って安全活動に自分事として参画し、それが当然になる「安全文化」が醸成されていることを目指し、その実現に向けた活動を展開していきます。具体的には、全事業所全社員において現場の実情やリスクなどからそれぞれの「安全宣言」を主体的に考えて実践することとします。あわせて、職長教育やリスクアセスメント実践者教育などの実施を強化するとともに、管理者や安全担当だけでなく全従業員が安全パトロールをできる状態を目指します。さらに、自職場だけでなく他職場とのクロスパトロールも拡充することで、従業員ひとりひとりの意識および安全活動全体のレベルアップを促進します。ハラスメントおよびメンタルヘルスについては、社員ひとりひとりの意識向上と相談員レベル・相談体制の強化によりトラブルが深刻化する前に防止できる状態を目指して、相談員研修や一般社員向けの教育ツールを拡充し、また早期相談・早期対応ができるよう、相談窓口の継続的な周知も図っていきます。労働時間についても、ルールの周知徹底を繰り返し行うとともに毎月の勤怠状況確認も引き続き実施し法令・協定違反を防止します。グループ各社に対しても、その労働時間管理実態を正しく把握し、その課題への取り組み状況と適切な運営が確認できるように、定期的な実態調査と必要に応じた個別のフォローも行ってまいります。
FY2024|13,727 文字
3 【事業等のリスク】(1)当社グループのリスクマネジメント ①リスクマネジメントの考え方 当社は、「リスクマネジメント規程」において、企業の存続に影響を与えると考えられる事象発生の不確実性を「リスク」、企業が経営を行っていく上で事業に関連する内外の様々なリスクを適切に関する活動を「リスクマネジメント」と定義しており、適切な「リスクマネジメント」の実行が経営の重要課題であると認識しています。 ②リスクマネジメントの基本方針 当社グループは、水産物をはじめとする資源から様々な食品や医薬品原料などを製造し、世界の人々に対して供給することを使命としており、その責務を果たすべく安定した生産・販売の継続に努めています。そのような観点から、「リスクマネジメント規程」において、当社グループでは、事業活動の妨げとなるリスクの未然防止に努め、緊急時には人命尊重を第一に損失の発生を最小限に抑え、被災者支援など社会への配慮を行うとともに経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすことで、企業価値を維持・向上していくことをリスクマネジメントの基本方針として掲げています。 ③リスクマネジメント体制 当社は、リスクマネジメントの実効性を高めるため、全社的リスクマネジメントシステムの構築とその維持・向上を任務とする、社長直轄の組織であるリスクマネジメント委員会を設置しています。同委員会は全執行役員によって構成され、社長が委員長を務め、リスクマネジメント担当執行役員は、取締役会へ定期的に活動報告をしています。 また2023年度からグループ全体のリスクマネジメント体制の再構築に着手しました。従来、リスクマネジメント委員会では、情報セキュリティ・倫理(コンプライアンス)・労務安全衛生・災害BCPといった重要なオペレーショナルリスクやハザードリスクを管理する4部会を傘下に置いていました。一方で、サステナビリティに関するリスクはサステナビリティ委員会、 品質に関するリスクは品質保証委員会が管理しており、また、その他の事業リスク等については執行役員会で議論されるなど、課題テーマごとのリスクマネジメント体制となっていました。 これを、グループ全体のリスクを適宜、的確に捉える新しい体制への見直しを図っています。具体的には、リスクマネジメント委員会・サステナビリティ委員会・品質保証委員会・執行役員会の事務局が連携して、重要リスク対応を全社グループ視点で一元管理する体制へ移行し、リスク対応に優先順位を付けて経営戦略に落とし込み、将来の成長の機会とリスクの的確なマネジメントを目指します。 新しいリスクマネジメント体制を踏まえ、リスクマネジメント委員会は全社重要リスクを一元的に把握・管理する統合リスク管理機能として、次の事項を審議・承認し、取締役会へ報告することで、全社的リスクマネジメントシステムの構築とその維持・向上の役割を果たしていきます。 ・重要リスク(注1)の特定 (重要リスク管理組織(注2)の特定)・重要リスク対応計画の審議 (重要リスク管理組織が策定・報告)・重要リスク対応計画実行のレビュー (過年度総括・評価・是正)・重要リスク対応計画の網羅的な把握・確認 (次年度計画の全社集約・一元化) (注1)重要リスク:当社のグループ経営において極めて重要度が高く優先的に対応すべきと判断したリスク(注2)重要リスク管理組織:重要リスクごとに設置し、全社横断的なリスク対応計画の管理責任を負う組織 ④リスクマネジメントプロセス 当社グループでは、新しいリスクマネジメント体制において、リスクマネジメントプロセスを年間のPDCAサイクルとして、リスクマネジメント活動を推進していきます。 中長期的な経営戦略を見据えた重要リスクを特定するため、マテリアリティをリスクマネジメントの起点としており、マテリアリティを見直すタイミングで、定期的に重要リスクの見直しを図っていきます。ただし大きな環境変化があった場合は、年度の進捗確認・評価で議論します。 ⑤重要リスクの特定プロセス 当社グループは、中長期的に企業価値を維持・向上していくためには、政治・経済・社会・テクノロジーなどの外部環境の変化がもたらすリスクと機会に戦略的に対応することが重要と考えています。当社グループでは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記述の通り、昨今の外部環境の変化を捉えたマテリアリティの見直しを行い、その過程でマテリアリティに関連する機会とリスクを抽出・分析し、中長期的な重要課題・事業戦略に重大な影響を及ぼすと認識するリスク項目を重要リスクとして特定しました。 また、プラスとマイナスの影響を持ち併せたリスクとマイナスの影響を主とするリスクの両方を統合管理するリスクマネジメント体制へ移行するにあたり、前者を経営戦略リスク、後者を経営基盤リスクの2つに分類して整理しています。 ■重要リスクの特定プロセス <「リスク項目の特定」と「リスク評価」について> マテリアリティに関連するリスクを抽出・分析し、リスク属性で整理した結果、17のリスク項目を特定しました。その中から、中長期的な重要課題・事業戦略に及ぼす影響を評価し、極めて重大と判断した11の重要リスクは以下の通りです。 経営戦略リスク経営基盤リスク影響重大・人的資本への対応に関するリスク・気候変動への対応に関するリスク・生物多様性への対応に関するリスク・サプライチェーンの環境・人権に関するリスク・海外事業展開に関するリスク・地政学的問題に関するリスク・製品の安全安心・品質に関するリスク・情報セキュリティに関するリスク・コンプライアンスに関するリスク・大規模自然災害・事故に関するリスク・労働安全衛生に関するリスク ■リスクマネジメント推進体制図 (2)重要リスク 当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重大な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。以下に記載したリスクは、当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、本文中における将来に関する事項は、別段の記載がない限り当年度末において当社が判断した内容に基づきます。 ≪経営戦略リスク≫ (戦略1)人的資本への対応に関するリスク<概要>当社グループの経営計画達成のために、事業創出・企画運営の能力のある経営を担う人財、海外国内を問わず活躍できるグローバル人財やプロフェッショナル人財、各生産拠点で成果を上げる人財の確保と育成が必要ですが、日本国内の少子高齢化と人口減少が進むにつれ、国内での優秀な人財確保が難しくなりつつあります。また、多様な人財が働けるダイバーシティ対応に後れをとると、必要な人財確保が困難になると想定されます。主なリスク・プロフェッショナル人財(※)の不足による生産性の停滞、事業拡大の停滞(※)グローバル人財、DX人財のほか、サステナビリティ人財、R&D人財など・従業員エンゲージメントの低下による人財確保の難化・生産年齢人口減少に伴う現場労働力の不足による生産性停滞・人財不足に伴う新規事業拡大の停滞、顧客ニーズへの対応不能主な機会・プロフェッショナル人財の確保・育成による事業拡大への貢献・プロフェッショナル人財の確保・育成による生産性向上への貢献・現場労働力の確保による生産性向上関連するマテリアリティ・人財育成と多様な人財の活躍 ・労働力確保と生産性の向上・ミッションへの共感とブランディング <主な対応策> 当社グループでは、経営戦略と連動した人財戦略・人財育成を実行していますが、今後の事業展開にあたり、事業を牽引する人財育成が急務である一方、専門性をもって事業に貢献する人財の確保もまた重要であると考えており、社内の多様な価値観・キャリア志向尊重の観点から、外部にも通用する専門性の高い人財を育成・処遇しています。若手社員については、複数の事業・職種を経験することで、視座を高め、仕事の幅を広げ、変化対応力を高めることを狙いとした「育成ローテーション」を実施しています。将来海外で活躍するグローバル人財候補を育成する「グローバル人財育成制度」も2016年より展開しています。 従業員エンゲージメントは2021年度から測定しており、抽出された課題に対して個別にアクションプランを策定し実行することで組織風土の改善を促しています。また、ミッションの社内浸透を図るとともに、全社員が新しい“食”について考え、意見交換を行うことでエンゲージメントの向上につなげる取り組み「GOOD FOODS Talk」を2023年度より全職場で実施しています。今後は国内グループ会社にも展開し、各社において自発的貢献意欲の向上と組織風土や職場状況を改善する施策を実施していきます。 少子高齢化による労働人口の減少に伴う人手不足の深刻化への対応としては、多様な働き方の実現、労働環境・労働条件の改善などにより、選ばれる企業を目指しています。人財のリテンションと同時に、自動化や業務改善による省人化・省力化で生産性向上を図ることで、変化に対応できる人財ポートフォリオを構築していきます。 ※詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 人的資本への対応」をご参照ください。 (戦略2)気候変動への対応に関するリスク<概要>近年、世界中で気候変動が深刻化し、その影響はますます顕著になっています。温暖化による異常気象や自然災害は、当社グループの原材料調達、生産、物流、販売など様々な事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動に対応する新たな規制や市場動向の変化によって、当社のビジネスモデルが脅かされる可能性もあります。主なリスク・激甚化する台風、豪雨、洪水等による事業停止に伴うビジネス機会の喪失、コスト増加・異常気象や海洋環境の変化による天然魚、養殖魚の漁獲量の減少、調達コスト増加・水資源の減少、枯渇による事業停止に伴うビジネス機会の喪失、コスト増加・カーボンプライシングの導入による対応コスト増加・省エネ・GHG排出等の規制強化による対応コスト増加主な機会・GHG排出量削減によるカーボンプライシング影響の軽減・省エネ、高効率設備の導入による生産性向上・コスト削減・サステナブル、低カーボン製品への需要の高まりに伴う水産物の販売機会拡大関連するマテリアリティ脱炭素・循環型社会への貢献 <主な対応策> 当社グループでは、CO2排出量を2030年までに30%削減すること(2018年度対比・総量)をサステナビリティ目標として設定し、削減に取り組んでいます。生産拠点においては、省エネルギー推進や高効率機器への入替、燃料転換(電化、水素等)、魚油・廃油の燃料活用に加え、太陽光発電設備の導入や再生可能エネルギー由来電力への切り替えを積極的に進め、CO2排出量の削減に取り組みます。 気候変動に伴う漁獲量の減少や調達コストの増加に対しては、産地の分散化や調達ネットワークの構築、代替原料の開発などを進め、サプライチェーンのレジリエンスを高めます。 風水害の激甚化や渇水による事業停止リスクへの対応としては、BCPの見直しやハザードマップ等を活用した詳細なリスク評価を進め、拠点の移転や分散の検討も進めます。 ※詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 自然資本の持続可能性向上に向けた対応 ①気候変動への対応(TCFD提言への取組)」をご参照ください。 (戦略3)生物多様性への対応に関するリスク<概要>水産資源の減少により漁獲制限などの規制が強化され、当社グループの漁業や原材料調達に影響を及ぼす可能性があります。また水産業界全体に及んで水産物の流通量が減少した場合、水産物価格の上昇によって消費者の水産物離れを招くなど、水産物市場の縮小も考えられます。また、近年、日常生活に欠かせない飲食料品の容器包装や事業活動に使用されるプラスチックの海洋環境への影響が社会課題に取り上げられており、プラスチックごみによる海洋汚染は、生態系破壊や生物減少に繋がり、食品や水産事業での原料調達や食の安全性に影響を及ぼす可能性があります。主なリスク・水産資源の枯渇化・海洋環境の変化(従来の漁場や海面養殖場の不適地化等)に伴う漁獲量減少、調達コスト増加・漁業における漁獲制限や養殖における環境規制の強化・魚病による養殖魚の斃死・対応後れによるステークホルダーからの評判低下主な機会・水産物の持続的調達によるサプライチェーンの安定化・消費者の購買行動変化(持続可能性に配慮した製品の需要増加)による売上の拡大・サステナブルな養殖技術開発による事業のレジリエンス強化と競争優位性の確立・対応策の推進によるステークホルダーからの評判の向上関連するマテリアリティ海洋の生物多様性の主流化 <主な対応策> 当社グループでは、2023年度よりTNFDのLEAPアプローチ(注1)を活用して自然への依存と影響を把握し、事業活動による負の影響の回避・軽減に努めています。 水産資源の持続的な利用については、持続可能な調達比率100%を2030年に向けたサステナビリティ目標として設定し、3年毎に「取り扱い水産物の資源状態調査」を実施しています。調査結果を分析し、調達の見直しや認証品の取り扱い比率向上などの対応策を講じることで、持続可能な水産物の利用に繋げています。 また、養殖においては、養殖漁場の沖合化や自動給餌制御システムの活用などにより、海洋環境への負荷軽減を図っています。また、天然資源に依存しない完全養殖の魚種拡大や、陸上養殖による海洋環境への負荷低減にも取り組んでいます。 海洋のサステナビリティ課題の解決に向けては一社のみでは解決できない課題も多く、SeaBOS(注2)などの業界イニシアティブを通じて、国内外のステークホルダーと連携した対応も行っています。 (注1)LEAPアプローチ : TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。 分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。(注2)SeaBOS : Seafood Business for Ocean Stewardship、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブ。 ※詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 自然資本の持続可能性向上に向けた対応 ②生物多様性への対応(TNFD提言への取り組み)をご参照ください。 (戦略4)サプライチェーンの環境・人権に関するリスク<概要>企業活動のグローバル化の進展に伴い、サプライチェーンにおける企業活動が環境・人権に及ぼす負の影響が顕在化し、国際機関や国家による基準作りや法整備が進んでいます。 当社グループとしても、事業活動に関連して、人間が生まれながら当然に持つべき自由や権利を侵してしまう可能性がある、そのリスクをしっかり把握し、対処していく必要があります。サプライチェーン上で環境配慮や人権尊重に欠ける問題が生じた場合、調達が困難となるだけでなく、訴訟や行政罰、企業イメージの低下や不買運動に繋がる可能性もあります。主なリスク・環境、人権デューデリジェンスの義務化に伴う対応コストの増加・サプライチェーンの見直しに伴う調達コストの上昇や調達の不安定化・環境問題や人権侵害等を直接引き起こした、または間接的に関与した場合の評判低下・環境問題や人権侵害等を直接引き起こした、または間接的に関与した場合の訴訟や行政罰リスク主な機会・対応策の推進による安定的な調達、生産、供給の実現と競争力の向上・対応策の推進による販売機会の拡大(新規取引や他社からのシェア移行)・対応策の推進によるステークホルダーからの評判の向上・対応策の推進によるグローバルなブランド価値の向上関連するマテリアリティ持続可能なサプライチェーンの構築 <主な対応策> 当社グループでは、サプライチェーンにおける潜在的な人権リスクを把握し、そのリスクに対処することで、ライツホルダー(企業が尊重すべき人権の主体)への負の影響を最小化することを重視しています。また、サプライチェーンのすべての段階における環境・人権リスクの低減には、サプライヤーとより強く協働する必要があり、「サプライヤーガイドライン」を通じて、特に強制労働や児童労働の禁止、IUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)により漁獲された水産物および原材料を取り扱わないことを強く求めています。ニッスイ個別の一次サプライヤーに対しては、ガイドラインの配布と説明、 同意確認書の署名回収を進め、SAQ(自己評価アンケート)や対話によりガイドライン遵守状況を確認しています。今後は優先して確認すべき原材料や産地の特定を行い、より詳細な確認を進めていきます。 当社グループ内においては、年に一度の「外国人労働者の労働環境調査」を通じて、各事業所における外国人労働者の人権への負の影響の発生防止、軽減に努めています。救済の仕組みとして、当社グループ内の内部通報制度とは別に、外部のプラットフォームを活用して当社グループ内の外国人労働者を対象とした相談窓口を設置しています。また、サプライヤーなどその他のステークホルダーについても、同様に外部のプラットフォームを活用した相談窓口を設置しています。 (戦略5)海外事業展開に関するリスク<概要>当社グループ主要戦略のひとつとして、海外展開の加速を目指し、水産・食品事業における北米・欧州での更なる拡大とアジアでの事業基盤構築、ファインケミカル事業における医薬品原料の海外展開を掲げていますが、事業展開する国において、経済環境および法規制の変更等の各国固有のリスクが顕在化した場合、事業の基本的戦略や収支に影響を与える可能性があります。主なリスク・税制・漁獲枠・賃金・規制など各国の政治的判断による方向性の変換・海外子会社におけるガバナンス不全や社内管理の不備等による不祥事の発生・為替の急激な変動による海外子会社業績への影響・その他の地域的特殊性及びこれらの諸要因の急激な変化の影響主な機会・販路拡大、市場開拓・資源アクセス強化に伴うサプライチェーンの強靭化・対応策の推進によるグローバルなブランド価値の向上関連するマテリアリティグローバル展開の加速 <主な対応策> 当社グループでは、2030年に海外所在地売上高比率50%を目指しており、グループガバナンスの取り組みをより一層強化しています。具体的には、当社グループの強みの一つに「グローバルリンクス」があり、資源アクセスから生産・販売に至る各機能を担う国内外の企業ネットワークで、各社が独自の強みを生かしつつシナジーを発揮していることが特色ですが、食文化や価値観は世界各地で異なります。意思決定の迅速性の観点などから、現地マネジメントに裁量を委ねるべきところは委ね、一方で、リスクコントロールや資本効率などの観点では、グローバルガバナンスを強化し、グリップを効かせることが重要と考えています。 ガバナンスの実効性を高めるためには、ルールづくりや管理・監査などのシステムを強化することはもちろんですが、それ以上に、「新しい“食”の創造」というミッションを共有し、志を同じくすることが重要であると考えています。そのため、ミッション・長期ビジョンの浸透に継続的に取り組んでいます。2023年度、グローバルリンクスのシンボルマークを刷新しました。新しいシンボルマークのもとでミッションを共有することで、グループの一体感を改めて刺激し求心力を高めています。 (戦略6)地政学的問題に関するリスク<概要>近年、地政学的な要因が事業に影響を及ぼす可能性を考慮する必要性が高まっていると認識されています。例えば、台湾を巡る緊張の高まり、米国と中国の覇権争い、米中対立構造における日本の対応などの要因により、当社グループが事業を展開するエリアにおいて、台湾有事、輸出入制限、差別的な措置、商品不買運動、技術の分断、データに関する規制等の具体的なリスクが想定され、これらが顕在化した場合には、当社グループの中長期経営方針の実行や業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。主なリスクサプライチェーンにおける政治的・軍事的・社会的な情勢変化等による製品供給・サービス提供の遅延や中断・停止に伴うビジネス機会の喪失主な機会対応策の推進によるレジリエンス強化に伴うサプライチェーンの強靭化関連するマテリアリティ持続可能なサプライチェーンの構築 <主な対応策> 当社グループでは、地政学的リスクに関する動向の情報収集と分析をもとに、リスクシナリオの策定及びリスクの把握を行い、その影響を低減するための適切な対策の検討を進めてまいります。既に、事業展開国・地域におけるカントリーリスクの調査、情報収集、評価をもとに、資源アクセス強化による調達先の分散の検討、複数拠点からの製品供給体制の構築を図っております。引き続き、情勢を注視しながら、事業活動に及ぼす影響の最小化に向けたサプライチェーンの強靭化に努めてまいります。 ≪経営基盤リスク≫ (基盤1)製品の安全安心・品質に関するリスク<概要>安全性や品質管理に対する消費者の関心が一層高まっているなか、国内外を問わず、安全、安心な商品を提供していくことが強く求められており、食を取り扱う当社グループでは、より一層の安全性、品質管理が求められていると認識しています。製品の品質事故や、表示偽装などの品質不正といったお客様の安全安心を脅かす事象が発生すると、当社グループ全体への信用が損なわれ、ブランド価値が大きく棄損し、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。主なリスク・製造物責任、リコール、自主回収による経済損失・品質事故・トラブルによる顧客信頼の低下(ブランド価値毀損)・新規事業、拡大事業(健康訴求商品等)における品質リスクの拡大・グループ会社(国内外)のニッスイブランド以外の商品の品質保証水準の管理不十分関連するマテリアリティ持続可能なサプライチェーンの構築 <主な対応策> 当社グループでは、品質保証憲章において、全ての役職員が同じ方向を向いて行動するよう、品質保証の理念をもとに品質方針・行動指針を制定し、その下に品質保証に関する各基準を定めています。 製商品の品質の安全性を確保する基準として、関連法規より厳格な当社独自の様々な「ニッスイ品質保証基準」を設けております。同基準には、HACCP(注1)の考え方を基本としたニッスイ工場認定基準を核に、使用水基準、薬剤管理基準、防虫管理基準、樹脂部品基準、原材料基準、包材基準、アレルギー物質のコンタミ防止基準、フードディフェンス基準などがあります。 ニッスイブランド商品はニッスイ工場認定基準により認定した工場のみで生産しており、認定後も品質保証部による定期的な監査を実施、工場指導を行っております。また工場間の情報共有や課題解決を目的とし、工場経営者会議、工場品質管理担当者会議などを定期的に開催しております。 また、生産工場におけるFSSC22000(注2)認証取得、原材料情報の一元管理体制の構築、グローバルでの検査体制の確立およびエクセレントラボによる検査精度の向上などの取り組みも行っております。引き続き、従業員への品質教育の強化に努め、食品安全文化の醸成を図ってまいります。 (注1)HACCP : Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス) 委員会が発表し,各国にその採用を推奨しております。日本では2020年の食品衛生法の改正に伴いHACCPによる衛生管理が義務化されています。(注2)FSSC22000 : Food Safety System Certificationの略。FSSC22000財団(Foundation FSSC22000)により開発された食品安全のためのマネジメントシステム規格。食品小売業界が中心の非営利団体、国際食品安全イニシアティブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)により、食品安全の認証スキームの一つとして承認された規格です。 (基盤2)情報セキュリティに関するリスク<概要>今後、生産・物流・販売でのシステム連携による効率化が進むにつれ、システム停止による事業活動への影響は増加すると考えられます。システム停止はハードウェア障害、ソフトウェアのバグや脆弱性、人為的ミスなど、様々な要因によって引き起こされますが、昨今では外部サイバー攻撃に代表される情報セキュリティリスクが最も懸念される要因となっています。また、情報セキュリティインシデントが生じた場合、システム停止による直接的な影響にとどまらず、信頼性が低下する他、損害賠償等の多額の費用負担発生など当社グループに重大な影響を及ぼす可能性があります。主なリスク・外部脅威(標的型攻撃、ハッキング、なりすまし、DDos攻撃、フィッシング等)・内部過失(紛失/盗難、私物PCや外部記憶媒体利用、不正アクセス、システム障害等)・内部悪意 (不正操作、情報持ち出し等) <主な対応策> グループ経営を進める中、当社グループ内でデータ漏洩、システム破壊が発生すると、グループ全体の事業に大きく影響を与える可能性があります。 そこで、当社国内グループでは、個人情報や経営、事業、研究などに関する重要な情報の漏洩・紛失を防止するため、「情報セキュリティ基本方針」などの規程やルールの徹底、システムの管理体制の強化、教育や訓練を含めた人的対策の領域において、各到達点を具体的に策定し、ニッスイグループIT部門会議を定期的に開催するなどの取り組みにより均質化を進めてまいりました。 また、2024年度からは海外グループを含む全グループに対し、サイバー攻撃を受けるリスクの高い社外公開サーバの脆弱性を検知するサービスを導入し、リスクを検知した場合、グループ会社に通知し是正措置を促す体制づくりを進めています。 引き続き、グループ会社の情報セキュリティ対策が有効に機能しているかを定期的に確認し、情報セキュリティ確保への継続的な改善・向上に努めてまいります。 (基盤3)コンプライアンスに関するリスク<概要>当社グループは、日本および事業を行う海外における多岐にわたる法規制の適用を受けており、当社グループによる法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが大きく増加する可能性があります。また、お客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が大きく毀損し、当社グループの事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。 主なリスク・役職員不祥事の発生、法令違反等による業務への悪影響、営業停止等・刑事罰、損害賠償請求等の法的責任による経済損失、社会的制裁、株価下落等・対応不足、対応後れ等によるレピュテーション低下 <主な対応策> 当社グループでは、企業としての責任を果たすため、倫理憲章を制定し、国内外の法令および社内諸規程の遵守といった、コンプライアンスの徹底に取り組んでいます。 これら当社グループのコンプライアンス向上施策の策定・実施を行うため倫理部会を設置しています。また、法令等に違反している疑いのある行為について、当社グループの役職員が通報できる内部通報制度を設けており(社内外に窓口を設置)、倫理部会は内部通報制度の適正な運営も担っています。 内部通報制度の運営やコンプライアンスアンケートの実施等により、法令等に違反する疑いのある行為やコンプライアンス課題を早期発見し、関係する役員・部門と協働して、個別事象の是正はもちろん、必要な場合に再発防止策も含めて検討のうえ実施しています。また、コンプライアンス向上施策として、2020年度より、当社グループの子会社と個別にコンプライアンスワークショップを実施しコンプライアンスに関するありたい姿を共有、各社のコンプライアンス課題・施策について協議を行うことにより、当社グループ全体のコンプライアンス向上を推進しております。 (基盤4)大規模自然災害・事故に関するリスク<概要>大規模な地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、国内外問わず、世界各地で大規模災害が現実のものとなっており、今後も中長期的に継続するとともに規模の拡大が懸念されています。このような大規模な自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断による製造停止、物流機能停止により原材料資材の調達及び製品出荷が不能となり、更に事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能等も併せて、当社グループの事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。主なリスク自然災害(地震・噴火・津波・風災・水災等)、火災・爆発事故等による製品供給・サービス提供の遅延や中断、停止に伴うビジネス機会の喪失 <主な対応策> 当社グループでは、大規模災害に直面した場合でも人命を第一とした上で、従業員・お客様・ステークホルダーにとって必要な支援・サービス等を継続するため、「災害BCP基本方針」の下に「災害BCP部会」で事業継続計画を推進しております。 近年、首都直下型や南海トラフなどの大型地震に関して高い確率で発生が予測されています。そこで、大規模災害の発生時に、災害対策本部が各拠点やグループ各社から迅速に情報を収集し、的確な判断・対応を取ることが出来るよう、安否確認や拠点被害報告等の情報収集システムの整備に取り組むと同時に、災害対策本部訓練も定期的に実施し、初動対応力強化を図っております。従業員に対しては、防災意識の向上と災害時の初動確認を目的とし、各システムの操作確認訓練や防災教育eラーニングを実施しております。 また、地球温暖化による気候変動は、台風・洪水などの自然災害の頻度を増加させ、激甚化させる傾向にあります。その対応として、自然災害リスク(地震・風水災等)の影響度定量評価の実施やオールハザード型BCP(注1)への見直しに向けた検討なども進めてまいります。 (注1) オールハザード型BCP : リスク(原因事象)を問わず、必要な経営資源が何らかの理由で被害を受けた場合の(結果事象)の影響に基づき、対応策を考える事業継続計画 (基盤5)労働安全衛生に関するリスク<概要>企業価値向上に最も重要な要素は「人財」と考えていることから、労働環境の維持・向上が経営戦略に重要な影響を及ぼし、多様性を尊重して働きやすい職場環境の維持、向上に努める必要があると認識していますが、各施策が計画通りに進捗せず、労働災害や健康被害、ハラスメント等が発生した場合には、業務パフォーマンスの悪化や労災補償、ブランド価値の毀損が発生し、当社グループの事業継続に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。主なリスク・高齢化に伴う労働災害の増加(技能不足の若年層の労災含む)・違法残業、過労死、ハラスメント事案等の発生・労働環境、職場環境の悪化による生産性・メンタル面への悪影響 <主な対応策> 当社グループでは、年度毎に重点課題と活動計画を策定、労務安全衛生部会にて定期的な進捗報告を行い、取り組み内容を横展開することにより、管理体制の強化につなげています。 2024年度の主な取り組み内容は以下の通りです。 <労働安全> 安全の基本行動、リスクアセスメントとPDCA、共通ルールの整備を重点課題とし、以下を中心に取り組んでまいります。1.新人教育、安全意識の再強化(各事業所年間計画の重点項目に「新人の安全意識向上」を盛り込み、また指導を行うリーダーに対し必要な教育の再定義、対象明確化と受講推進を実施)2.重篤災害対策への注力(休業災害の削減に向けて重篤率の高い転落・転倒・激突等災害の対策を推進、転倒リスクチェックや指さし呼称、リスクアセスメントの実践者養成を強化)3.各事業の安全レベル向上(グループ共通の安全ルール制定に向けた情報収集) <ハラスメント・労働時間> 法令等遵守に向けたHowを考える機会創出と情報のグループ内展開を重点課題とし、以下を中心に取り組んでまいります。1.研修実施とグループ会社展開(ハラスメントやメンタルヘルスについて、学ぶべき原理原則に加えて、NG行動の理解だけではなく「どうするべきか」の視点から内容を検討)2.グループ人事労務会議含む各社連携強化(労務問題全般について、個別に現地訪問も実施しながらヒアリング、指導、情報交換を実施)
FY2023|10,483 文字
3 【事業等のリスク】 本項目に記載する当社グループの事業等のリスクは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクを有価証券報告書提出日現在において判断し記載しております。本項目は、当社取締役会で審議した事項であり、毎年、取締役会において審議し更新してまいります。 <当社グループのリスクマネジメント体制> 当社グループは、水産物をはじめとする資源から様々な食品や医薬品原料などを製造し、世界の人々に対して供給することを使命としており、その責務を果たすべく安定した生産・販売の継続に努めております。そのような観点から、当社グループは、事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、「リスクマネジメント規程」を制定し、リスクマネジメント委員会(注1)がリスクマネジメントシステムの構築と運用と定期的な取締役会への報告を行っております。影響の大きいリスク群については重要リスク(注2)として専門部会を設置し、リスク対応を行っております。 (注1)リスクマネジメント委員会:全執行役員で構成され、社長が委員長を務めております。(注2)重要リスク:「品質保証」「環境」「労務・安全」「コンプライアンス」「情報セキュリティ」「災害BCP(事業継続計画)」等 1.気候変動(世界的な気温上昇)による影響近年、世界中で気候変動が深刻化し、その影響はますます顕著になっています。温暖化による異常気象や自然災害は、当社グループの原材料調達、生産、物流、販売など様々な事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。さらに、気候変動に対応する新たな規制や市場動向の変化によって、当社のビジネスモデルが脅かされる可能性もあります。当社グループは、気候変動によるリスクを認識し、CO2排出量の削減をはじめとした積極的な対策に取り組んでいきます。当社は2021年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに加入しました。また、気候変動に係るリスク及び機会を特定し、シナリオ分析を通じて事業インパクトと財務影響を評価した上で、TCFD提言で推奨される「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの開示項目に沿って情報を開示しております。 詳細については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 気候変動への対応(TCFD提言への取組)」をご参照ください。 2.原料調達等に関するリスク当社グループが主要な原料としている水産物は、従来より、漁獲量・養殖生産量の増減などによる水産物市況の変動の影響を度々受けておりましたが、さらに、前出の気候変動がもたらす海洋・陸上環境の変化が水産物や農畜産物等の原料の収量を減少させ、原料価格が高騰するおそれがあります。気候変動以外でも、水産資源の乱獲や違法操業、農業における乱開発や環境破壊、畜産物における動物福祉の規制強化等が、当社グループの調達のリスクにつながる可能性があります。また、政治・経済情勢、テロ・紛争による治安の悪化や社会的混乱などの外的要因によっても、原料価格や調達・生産に係るエネルギーコスト等が高騰するリスクがあります。2022年の国際連合の発表では、世界人口は2050年に97億人を超えることが見込まれております。当社グループの事業にとっては、人口増による食料需要の増加が市場拡大をもたらし、チャンスにつながる可能性がありますが、一方で、資源獲得競争が熾烈になり、安定的な原料等の調達が困難となるおそれもあります。このような外部環境の変化による調達のリスクは、各事業の収支に影響するおそれがあります。当社グループは、従前より安定的な原料確保と製品供給の重要性を認識し、グローバルな調達先との提携やM&A、養殖事業における研究・技術開発による資源アクセスの安定的確保に努めてまいりました。今後も安定的な原料確保と商品供給のための施策を推進してまいります。 3.人為的な海洋汚染によるリスク 近年、日常生活に欠かせない飲料・食品の容器包装や、事業活動に使用されているプラスチックの海洋環境への影響が社会課題として取り上げられています。当社グループは、食品や水産事業を中心に事業活動を行っており、この問題の深刻さが増すと事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。プラスチックごみによる海洋汚染は、海洋の生態系破壊や海洋生物の減少につながるおそれがあり、食品や水産事業での原料調達や、食の安全性に影響を及ぼす重要な問題であると認識し、事業全般でのプラスチック使用に対する対策を進めており、2019年度よりサステナビリティ委員会の下に部会を設置し活動を行っています。(1)海洋環境部会海洋環境へのプラスチックの流出ゼロにつながる活動を推進しており、プラスチック製の漁具の素材変更、漁具の流出防止に向けた管理ルールの策定と運用、外部団体における海洋へのプラスチック流出調査の支援などを行っております。(2)プラスチック部会プラスチック資源の3R(リデュース、リユース、リサイクル)+R(リニューアブル(再生材の利用))の推進、プラスチック削減実績の進捗管理などを進めています。具体的な活動内容としては、生産事業所からの廃プラスチック発生量の削減、容器包装の減容化、バイオマスプラスチックや紙素材等への変更に加え、物流資材のプラスチック使用削減の検討を行っています。 4.海外事業展開におけるリスク当社グループ主要戦略のひとつとして、海外展開の加速を目指し、水産・食品事業における欧州での更なる拡大とアジアでの事業基盤構築、ファインケミカル事業における医薬品原料の海外展開を掲げております。事業展開する国において政治的な問題から生じる紛争、法規制の変更等のリスクが顕在化した場合、事業の基本的戦略や収支に影響を与える可能性があります。また海外市場における情勢の変化について早期の情報収集に努めるとともに迅速な対応を心掛けておりますが、想定を超える情勢の変化が生じた場合には、事業収支に影響を与える可能性があります。考えられる主なリスクは以下のとおりです。・各国の法令変更 ・為替リスク ・カントリーリスク(政治、紛争、テロ等の発生) ・訴訟 ・各国の保護主義台頭 ・サステナビリティ課題への対応 ・環境保護政策の変化や保護団体の活動 5.知的財産に関するリスク 当社グループは、養殖事業における養殖魚の成熟制御や育種ノウハウ、ファインケミカル事業におけるオメガ3系の必須脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)の高度精製技術等、当社グループの事業に重要な知的財産を所有しております。当社グループが目指す海外進出や各事業の技術革新により、知的財産の重要性が高まる中、当社グループのノウハウとすべき知的財産が漏洩した場合は、事業収支に影響を与える可能性があります。また、当社グループが開発した技術を特許化・ノウハウ化しなかった場合、事業の競争優位性の低下を招き、当社グループの事業戦略・収支に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループが第三者の知的財産権を侵害したと訴訟等により認定された場合は製商品販売・事業活動の差止、損害賠償等の請求を受け、当社グループの事業戦略・収支に影響を及ぼす可能性があります。当社では開発した技術の特許化・ノウハウ化を推進するとともに、後述の情報管理の徹底に加え、守秘義務契約の徹底はもとより、研究・開発部門の従業員への知的財産に関する教育に取り組んでおります。 6.人権侵害に関するリスク グローバルに事業を展開する企業には、国連や国際労働機関(ILO)等が策定している国際的な基準に沿った人権尊重の実現が求められ、当社グループもそれに従い、人権に関する法令や社会的な期待に沿った事業活動を行っています。また当社グループでは、バリューチェーンにおける潜在的な人権リスクを把握し、そのリスクに対処することで、ライツホルダー(企業が尊重すべき人権の主体)への負の影響を最小化することを重視しています。近年、ESG 投資の普及・拡大が進み、企業活動のグローバル化が引き起こす人権侵害には特に厳しい目が注がれるようになっております。自社のみならず、バリューチェーンを含めて企業が引き起こす人権侵害は、ブランドの毀損、さらには、ダイベストメントにつながるなど、企業にとってもリスクを生じさせるものと認識し、以下の取り組みを推進しております。(1)人権尊重推進体制の整備国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「ニッスイグループ人権方針」を2020年9月に策定し、人権尊重を経営課題として位置づけました。2021年度よりサステナビリティ委員会の下に新たに人権部会を設置して体制を整備し、人権デューデリジェンスに取り組むとともに、ステークホルダーとの対話や人権尊重の重要性についての従業員への理解促進にも努め、あらゆるライツホルダーの人権に配慮した企業活動を推進しています。(2)サステナブル調達サステナビリティ委員会の下にサステナブル調達部会を設置し、ニッスイグループ調達基本方針に沿った取り組みを推進しています。サプライヤー向けに「法令順守」「人権の尊重」「安全と健康」「環境への配慮」の4項目で構成するサプライヤーガイドラインを策定し、説明会を実施した上でセルフチェックシートに回答いただいています。回答結果は集計しグラフ化するだけでなく、「人権配慮」と「環境配慮」への認識・取り組みに焦点を当てたコメント付きのフィードバックシートを返却し、各社へ今後取り組みを強化いただきたい点をお伝えしています。また、回答の意図と実態を確認するために、サプライヤーへの訪問やオンラインでのヒアリングも実施し、各サプライヤーの課題確認とそれに対する改善アドバイス、他サプライヤーの好事例共有なども行っています。(3)ハラスメントの撲滅当社グループでは、倫理憲章を制定・周知しており、その中で個人の尊重と差別・ハラスメントの禁止を定めております。また当社の人事部にハラスメントデスクを設置し全従業員を対象に集合研修やEラーニングを実施し意識向上を進めるとともに、国内各グループ会社にもハラスメント相談窓口を設置し、専任担当者の集合研修を実施するなど、グループ各社の認識を高めています。2022年4月よりパワハラ防止法が中小企業にも拡大適用されることを受けて、2022年3月には社長より国内外グループの全従業員に向けたメッセージとして、改めてハラスメント撲滅を強く呼びかけました。また、2022年度はハラスメントの行為者となる可能性が高い課長職全員を対象としてハラスメント傾向チェックを行って自身の気づきを促し、その上でハラスメント防止研修を実施しました。 7.人財の確保と育成に関するリスク当社グループでは、海外事業展開を含めた中長期における当社グループの経営計画達成のために、事業創出・企画運営の能力のある経営を担う人財、海外国内を問わず活躍できるグローバル人財やプロフェッショナル人財、各生産拠点で成果を上げる人財の確保と育成が必要であると考えています。しかし、日本国内の少子高齢化と人口減少が進むにつれ、国内での優秀な人財確保が難しくなりつつあることから、多様な人財が働けるダイバーシティ対応に後れをとると、必要な人財確保が困難になると想定されます。国内での人財の確保については、経営や事業関連のスキルを持つ経験者や新卒者の採用を行うとともに、「カムバック制度」により、退職した社員が再び当社での就労を希望する場合に、再入社の機会を提供することで優秀な人財の再確保を図っています。また、長年経験を重ねてきた従業員にそのスキルを生かし活躍する場を提供するため、60歳の定年退職後の継続雇用希望者を対象としたシニア職員制度を設けています。障害者雇用についても、法定雇用率を遵守しながら障害に関する社内の相互理解を深め、更なる活躍を促進します。さらに人財確保のためには適正処遇の観点も不可欠であり、当社では評価制度に基づく毎年の定期昇給に加えて2022年・2023年と2年連続でベースアップを行うとともに、近年の業績向上を反映し賞与テーブルの改定を行いました。今後もその能力や活躍に報いる賃金制度運用および改定を行っていきます。そして、これらの多様な人財がそれぞれの能力を十分に発揮し、また更に成長していくことができるように、先述「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 人的資本への対応」に記載の通り、人財育成方針に基づき役割や職掌・年齢等に応じ、入社から退職まで一貫した教育研修プログラムを整備し運営していくとともに、健康経営推進、働き方改革、女性活躍推進等を通じて働きやすい環境整備を図っていきます。 8.製商品の品質・安全性リスク 当社グループは、製商品の品質事故や、表示偽装などの品質不正が発生すると、お客様からの当社グループ全体への信用を損ない、ブランドが棄損され、事業に多大な影響が生じると認識しており、品質保証憲章の理念において「お客様一人一人に安全・安心で価値ある品質の商品をお届けする」ことを謳っております。このリスクに対応するため、「品質保証憲章」の中に品質方針、行動指針を定め、従業員への品質教育や、生産工場における予防管理強化の基準・仕組みの構築、商品設計時の品質確認、使用原材料の品質確認、表示確認の仕組みを構築しています。2023年4月に当社グループの品質保証力を強化すべく、品質保証憲章を改定し、全ての役職員がお客様起点で食品安全・品質のリスクを考え行動する風土を作る(食品安全文化の醸成)ため、従業員教育とその浸透を図ることを新たに加えています。(1)品質保証委員会、お客様満足推進部会社長を委員長とする「品質保証委員会」を毎月開催し、お客様から寄せられた声を共有し、必要とされる社内基準やルールの策定・徹底を図っております。また、同委員会の下にお客様サービスセンター所長を部会長とする「お客様満足推進部会」を設置し、お客様から寄せられた声をもとに、商品設計やパッケージ表示の改善などに取り組んでいます。(2)ニッスイ品質保証基準と認定工場制度製商品の品質の安全性を確保する基準として、関連法規より厳格な当社独自の様々な「ニッスイ品質保証基準」を設けております。同基準には、HACCP(注)の考え方を基本としたニッスイ工場認定基準を核に、使用水基準、薬剤管理基準、防虫管理基準、樹脂部品基準、原材料基準、包材基準、アレルギー物質のコンタミ防止基準、フードディフェンス基準などがあります。ニッスイブランド商品はニッスイ工場認定基準により認定した工場のみで生産しており、認定後も品質保証部による定期的な監査を実施、工場指導を行っております。また工場間の情報共有や課題解決を目的とし、工場経営者会議、工場品質管理担当者会議などを定期的に開催しております。(注)HACCP :Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス) 委員会が発表し,各国にその採用を推奨しております。(3)生産工場におけるFSSC22000(注)認証取得の推進国内の直営工場・関係会社工場の16拠点で、国際的な食品安全マネジメントシステム規格であるFSSC22000(注)認証を取得しております。(注)FSSC22000:Food Safety System Certificationの略。FSSC22000財団(Foundation FSSC22000)により開発された食品安全のためのマネジメントシステム規格。食品小売業界が中心の非営利団体、国際食品安全イニシアティブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)により、食品安全の認証スキームの一つとして承認された規格です。(4)原材料情報の一元管理体制当社では、全ての原材料について、配合、由来原料、産地、遺伝子組み換え情報、アレルゲン、規格、食品添加物、農薬・動物用医薬品・飼料添加物情報等を記載した当社所定の「原材料規格保証書」を仕入れ先から入手し、「原材料管理システム」に登録・一元管理しており、新しい原材料を使用する場合は、現地確認することを基本に、原材料の製造現場の情報を収集しながら安全性を確認しております。(5)検査体制とエクセレントラボによる検査精度の向上原材料から製品まで、安全性を確認する検査体制を確立するため、ニッスイ認定工場に検査室を設置し、加えて食品分析部(東京イノベーションセンター)、青島日水食品研究開発有限公司(青島)、タイ品質管理課(サムットサコーン)の3拠点で検査を行える体制を構築しています。食品分析部では、ニッスイ認定工場の検査室の検査精度の維持と検査レベル向上を目指した取り組み「エクセレントラボ」活動を展開しております。具体的には、検査マニュアルを定期的に更新して配布、エクセレントラボ専用培地を全検査室で共通使用するとともに、全検査員を対象として精度管理試験を年1回実施し、検査精度を確認しています。さらに各検査員の検査技術向上のため、OJTプログラムによる教育や、レベル別の認定講習会、エクセレントラボ推進会議の定期開催による検査員のレベルアップを図っています。(6)青島日水食品研究開発有限公司、タイ品質管理課による海外工場の管理青島日水食品研究開発有限公司ならびにタイ品質管理課では、中国、東南アジアのニッスイ認定工場で生産する当社製商品の品質管理を行っており、生産工場への品質指導に加え、製商品のサンプリング検査や輸出時検査を実施、各工場の品質管理責任者の集合研修を年1回開催しています。(7)品質事故時の対応万が一品質事故が生じた際には、製品回収、状況把握と原因究明、お客様への対応等、迅速かつ適切な対応をとるための体制を整備しております。 9.消費者意識とニーズの変化に対応した新しい技術開発への後れによるリスク前出の気候変動や自然災害の頻度増・激甚化、人為的な海洋汚染による地球環境の保全への消費者の意識の高まりや、世界人口の増加と国内の人口減・少子高齢化など、消費者の生活ニーズとライフスタイルは刻々と変化し、即食・簡便ニーズや健康志向に対応した商品に対する需要が高まってきています。また、世界では代替タンパク製品の市場の出現などへの新しい技術も日々更新されております。これらの消費者意識・ニーズの変化への対応や、先端技術の開発に後れをとると、当社グループの成長に影響をおよぼすリスクがあると考えています。当社グループは、常に消費者の生活ニーズを考えながら、研究開発投資を行い、地球環境の持続可能性と人々の健やかな生活を“食”のイノベーションで解決することを研究開発の基本方針としています。2011年には、事業展開の礎である研究開発力の強化を目指し、約75億円を投じて東京都八王子市に東京イノベーションセンターを建設し、中央研究所、食品機能科学研究所、商品開発部、技術開発部、食品分析部を集約しました。最先端の基礎研究からそれを応用した製商品化まで、さらには安全性の確認まで、部署間の連携を円滑に進め、消費者意識とニーズの変化に迅速に幅広くお応えできる体制を構築しています。また1994年設立の中央研究所大分海洋研究センター(大分県)も、東京イノベーションセンターと連携を取りながら、水産資源の持続可能性につながる養殖に特化した基礎研究から事業レベルの応用研究まで幅広く取り組んでいます。水産事業においては、水産加工技術と養殖の研究投資を行っています。養殖では中長期的な視点による養殖魚の育種や陸上養殖の拡大、新規魚種の開拓、データサイエンスによる養殖技術の先端化など水産事業の成長・拡大や新規事業の創出につながる研究に取り組んでいます。食品事業においては、食品加工技術、農産品や鶏肉の研究開発、植物タンパク質の利用研究、味・香りに関する基礎研究等を行っています。また、スケソウダラは食べるだけで、特別な運動をしなくても除脂肪量(筋肉量の目安となる)が優位に増加することが研究成果として発表されており、「速筋タンパク」シリーズとしてスケソウダラすり身100%を使用した商品を展開しています。食品事業全般において、従来の開発体制に加え、「人間起点」を主眼に考えて発想する「デザイン思考」による新しい開発手法を取り入れる「未来型創造開発会議」を設置し、5~10年先の生活ニーズに応える取り組みを進めております。 10.情報セキュリティリスク当社グループでは、通信販売事業などにおいてお客様の個人情報を保有しており、このような個人情報や経営、事業、研究などに関する重要な情報の漏洩・紛失を防止するため、リスクマネジメント委員会の傘下に「情報セキュリティ部会」を設置し、「情報セキュリティ基本方針」などの規程やルールの整備、システムの管理体制の強化、定期的な従業員に対する教育や訓練を実施し、情報セキュリティ管理を徹底しております。また、グループ経営を進める中、当社グループ内でデータ漏洩、システム破壊が起きると、グループ全体の事業に大きく影響することが考えられます。そこで、当社国内グループ会社の情報セキュリティ基本方針や利用者ルールの徹底、技術的対策、教育や訓練を含めた人的対策の領域において、各到達点を具体的に策定し、ニッスイグループIT部門会議を定期的に開催するなどの取り組みにより均質化を進めてまいりました。今後はグループ会社の情報セキュリティ対策が有効に機能しているか定期的に確認し、情報セキュリティ確保への継続的な改善・向上に努めてまいります。今後、各拠点の省人化や、生産、物流、販売でのシステム連携による効率化が進むにつれ、自然災害などによる物理的なシステム破壊や、長期停電、外部からの攻撃などの要因を問わず、そのシステムの停止による事業活動への影響が増加すると考えられ、システム停止を想定した対策や有事対応の体制づくりを進めております。 11.感染症の拡大によるリスク感染症については、新型コロナウイルス(COVID-19)は病原性が一定程度低いとされるオミクロン株が主流となり、感染法上の位置付けの変更等、経済活動を再開させる動きが進んでいます。しかしながら、未知のウイルスや、感染力の高い新型コロナウイルスの変異株の出現等により、感染急拡大や重症者が多数発生するような新たなパンデミックが発生する可能性があります。新たなパンデミックが発生した場合、当社への影響は予想が困難ではありますが、漁撈・養殖や食品の生産拠点においては生産の停止や縮小、調達先や物流の過程では原料の調達が難しくなるなど、安定的な製商品の供給に支障が生じる可能性があります。また、需要減による水産市況の悪化や、安定生産を継続するための人員確保に伴うコスト増等が発生した場合、収支に影響を及ぼす可能性があり、渡航規制により事業の海外展開の遅れや、海外グループ会社とのコミュニケーション不足によるガバナンスの低下を招くおそれがあります。新型コロナウイルスの拡大に対し当社グループでは、当社製商品を継続的・安定的に世界の人々に供給する使命を全うするため、代表取締役社長執行役員(社長)を本部長とする対策本部を立ち上げ、感染対策の徹底、在宅でのテレワークの推進、罹患者が多数発生した拠点機能の速やかな回復等、各種の対策を講じてきました。新たなパンデミックが発生した場合にも、事業の継続への影響が最小限となるよう、迅速かつ柔軟に同様の対策を講じてまいります。 12.資金調達に関するリスク 当社グループでは事業活動を円滑に行うため、コストを抑えた安定資金の調達を目指し、直接金融を含めた多様な手段の中から最適な資金調達方法を選択しておりますが、金融市場の急激な変動や各種リスク要因による事業計画未達により、資金調達が制限され運転資金が不足する可能性があります。これに対し当社および国内外のグループ会社においては、円・米ドル・ユーロを基本に各国の事業規模に応じ、金融機関から資金調達を行っておりますが、その調達方法と調達先、期間は適度に分散させており、国内では複数の金融機関から円建てのコミットメントラインを設定しております。また国内・北米ではそれぞれのエリアでキャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、さらに他エリアでのグループ会社内余剰資金をグループ会社間で融通しております。 さらに急激な金利変動により資金調達コストが増減し、特に金利高上昇局面では支払利息が増加する可能性がありますが、これに対しては、金利スワップを利用した長期固定資金と変動の短期資金のバランスを1:1とすることを基本として、経済情勢等に応じ長期固定資金の比率を上げるなど、機動的に対応することで金利変動リスクを低減しております。 各リスク間の関係図
FY2022|17,489 文字
2 【事業等のリスク】本項目に記載する当社グループの事業等のリスクは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクを有価証券報告書提出日現在において判断し記載しております。本項目は、当社取締役会で審議した事項であり、毎年、取締役会において審議し更新してまいります。 <当社グループのリスクマネジメント体制>当社グループは、水産物をはじめとする資源から様々な食品や医薬品原料などを製造し、世界の人々に対して供給することを使命としており、その責務を果たすべく安定した生産・販売の継続に努めております。そのような観点から、当社グループは、事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、「リスクマネジメント規程」を制定し、リスクマネジメント委員会(注1)がリスクマネジメントシステムの構築と運用と定期的な取締役会への報告を行っております。影響の大きいリスク群については重要リスク(注2)として専門部会を設置し、とりわけ、2019年末から世界に拡大した新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大など、不測のリスクが発生した場合には、代表取締役社長執行役員(社長)を本部長とする対策本部を立ち上げ、日々変化する情勢を踏まえながら、迅速かつ柔軟にリスク対応を行っております。 (注1)リスクマネジメント委員会:全執行役員で構成され、社長が委員長を務めております。(注2)重要リスク:「品質保証」「環境」「労務・安全」「コンプライアンス」「情報セキュリティ」「災害BCP(事業継続計画)」等 1.気候変動(世界的な気温上昇)による影響2015年に開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され、各国が世界的な気温上昇を抑えるため温室効果ガスの削減に取組んでいます。また2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書によれば、工業化以降、2030~2050年に1.5℃上昇すると言われています。当社グループの水産事業、食品事業、ファインケミカル事業は、持続可能な水産物資源、農畜産物資源から水産品、食品、健康食品、医薬品原料を製造・販売しており、気候変動が進むと各事業が大きな影響を受けることが想定されます。気温上昇は、海洋における海水温と海水面の上昇、海水温の分布や海流の変化をもたらし、海洋環境を変化・悪化させる可能性があります。さらに陸上環境においても、各地の気温の上昇や天候不順などの変化・悪化が予想されます。これにより、海洋・陸上における水産物資源、農畜産物資源の生態系への影響が懸念されております。また消費者・取引先など社会における環境問題への関心は年々高まっており、環境問題に対する活動に後れが生じた場合は、当社グループの事業収支に影響を与えるおそれがあります。当社は、環境問題への対応を重要な課題と認識し、2003年に制定した「環境憲章」により環境理念や行動方針をしサステナビリティ委員会(注)直下の環境部会が、温室効果ガス排出などの環境負荷に関して以下ⅰ)~ⅵ)の取組みを行うとともに従業員への啓蒙活動を行っています。 (注) サステナビリティ委員会(旧:CSR委員会):当社グループが取り組むべき社会課題を明らかにし、活動方針を定め、その推進により企業価値の向上を図る目的で設置しています。社長を委員長とし、全ての執行役員をメンバーとして年6回開催しています。重要課題を推進する7部会(水産資源持続部会、サステナブル調達部会、海洋環境部会、プラスチック部会、フードロス部会、ダイバーシティ部会、人権部会)と環境部会で構成され、部会長には執行役員、メンバーは主に関係各署の部長、課長から選任されています。 ⅰ)CO2排出量、使用水量、事業所外排出物量、リサイクル率、フロン漏洩量の管理による環境負荷低減活動当社グループ中長期目標としてCO2排出量(Scope1・2 総量)を、2018年度比で2024年度までに10%削減、2030年度までに30%削減する。ⅱ)当社グループの国内外の主要な事業所において、環境マネジメントシステムISO14001の認証を取得ⅲ)再生可能エネルギー発電の拡大、重油からガスへの燃料転換、派生油の燃料活用ⅳ)省エネ、高効率設備の導入による温室効果ガスの削減とコストダウンⅴ)冷蔵倉庫や生産工場における高効率自然冷媒冷凍機への転換拡大ⅵ)物流におけるモーダルシフト(フェリー等内航船の活用)の拡大 2021年4月には気候変動サミットが開催され、日本を含めた先進国を中心に、2030年までの温室効果ガスの削減目標を引き上げる動きが広まりました。当社は2021年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに加入しました。また、気候変動に係るリスク及び機会を特定し、シナリオ分析を通じて事業インパクトと財務影響を評価した上で、今年度よりTCFD提言で推奨される「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの開示項目に沿って情報を開示しております。詳細はこちらをご覧ください。https://nissui.disclosure.site/ja/223 (1)資源アクセス確保に与える影響地球温暖化による気候変動は、漁獲量や農畜産物の収量の減少をもたらす可能性があり、以下のとおり、当社事業の資源アクセスに影響することが考えられます。 ≪海洋環境の変化が各事業の資源アクセスに与える影響≫当社グループの各事業は、水産物を主原料とする製商品が多くあることから、各事業の収支や事業継続に影響を与える可能性があります。著しい海洋環境の変化が生じると下記のようなリスクが生じることが考えられます。 ① 各水産品種の生息可能な水域が変化することにより、漁撈や海面養殖場への影響として、当社グループが取扱う水産品種における従来の漁場、海面養殖場の環境(海水温条件など)が、その魚種の生息条件に適さなくなり、漁獲量・養殖生産量が減る可能性があります。② 現在、水産物市場は世界で拡大しておりますが、海洋環境が変化した場合には、当社グループに限らず、水産業界全体に及ぶ可能性があることから、漁獲量・養殖生産量減少により水産物の流通量が減ることで、水産物の価格が上昇し、消費者の水産物離れを招くなど、水産物市場が縮小することが考えられます。③ 水産物市場全体の縮小が生じれば、商事事業(買付)においても影響が出ることが考えられます。④ 漁獲可能な水産品種の減少や漁獲量減少により、各国の漁獲制限などの規制の強化につながる可能性があります。⑤ 当社グループの食品事業においても、水産物を主原料とする製商品が売上高の約6割を占めるなど、水産物原料の必要量確保が難しくなると大きな影響を受けることとなります。 ≪陸上環境の変化が事業の資源アクセスに与える影響≫当社グループの食品事業は、水産物以外にも米や野菜などの農産物、鶏肉などの畜産物を原料とする製商品を販売しております。陸上環境の変化は、各地の農畜産物原料の収量に影響を与え、原料である農畜産物の産地の環境変化により、中長期的に現在の調達エリアの変更が必要になる等、食品事業の収支に影響を与える可能性があります。また、水産物における資源アクセス確保が経営の重要な課題であると認識しております。主要戦略のひとつとして、持続可能な水産資源の利用と調達の推進を掲げており、現在、サステナビリティ委員会傘下の「水産資源持続部会」により、当社グループの事業活動による水産資源への影響を把握するため、漁獲地・魚種・漁法毎の資源状態の調査活動などを進めています。また当社グループでは、漁業におけるMSC認証(注1)や、養殖業におけるASC認証(注2)、MEL認証(注3)などの取得と、これらの水産エコラベルを表示した水産物の活用に取り組むとともに、世界の水産業界のリーダー企業が参画するSeaBOS(持続可能な水産ビジネスを目指すイニシアティブ)(注4)へも参画しています。さらに持続可能な資源アクセスの確保を進めるため、養殖事業戦略として、チリのサルモネス・アンタルティカ社をはじめ、国内外グループ会社における生産基盤の安定と魚種の充実を掲げており、トラウト・ブリ・クロマグロ・ギンザケ・カンパチの養殖を行っています。また陸上施設でのバナメイエビ養殖(注5)、マサバの循環式陸上養殖(注6)など環境負荷を低減した養殖の研究・開発・商品化にも取り組んでいます。養殖事業の重要性が高まる中、将来海面の養殖適地は飽和状態になることが考えられることから、当社グループでは、水産物のサステナブルな調達力強化の一環として、海外養殖事業会社との提携や養殖の技術開発も進めています。2020年4月には、当社100%子会社のニッスイヨーロッパ社が、丸紅㈱(東京都)とともに、デンマークでサケの閉鎖循環式養殖事業を営むダニッシュ・サーモン社へ資本参加いたしました。世界的に水産物の需要が高まるなか、サケ・マス類は、生産量の約8割を養殖が占めていますが、海面の養殖適地に限界があることから、近年では陸上での養殖が注目されています。同社はアトランティック・サーモンの閉鎖循環式養殖で成功している数少ない先端企業であり、閉鎖循環式養殖は飼育環境が安定的であること、環境負荷の抑制が可能であること、消費地近隣での養殖により鮮度向上や物流コスト低減が実現できることなど、多くのメリットが期待できます。2022年には新規設備が完成予定であり、現在の水揚げ量1,000トンを2023年に2,750トンに引き上げる計画です。国内では、当社と日鉄エンジニアリング㈱(東京都)が協力し、弓ヶ浜水産㈱のギンザケ養殖場で「大規模沖合養殖システム」の技術開発を進めています。2016年12月より開始した「大規模沖合養殖システム」の実証試験では、沖合養殖で必要な(1)海上での飼料の大量貯蔵技術、(2)貯蔵タンクから生簀への飼料の長距離搬送技術、(3)遠隔漁場における適正な給餌管理等の技術検証を行いました。2022年4月時点では、実証試験機の改善・改良を進めながら拡張し、弓ヶ浜水産が操業する鳥取県境港市の沖合3キロメートル程度の美保湾の漁場に、約300平方メートルのプラットフォーム上に飼料を100t程度貯蔵できる飼料サイロを設置し、ここから直径25mの円形生簀15基に設置している自動給餌機への自動搬送を行い、飼育管理を行っております。海上飼料サイロの設置により、既存の給餌機設備と比較して、1生簀に対し約6倍量を貯蔵できるようになりました。飼料サイロから自動給餌機への飼料補給は、海底の配管を通じて自動的に搬送・充填されるため、海況悪化による給餌機会のロス削減や省力化を図ることができます。また、この設備は耐波浪性と耐潮流性を有するため、沖合での設置が可能となり、適切な給餌量をコントロールする事が可能な給餌制御システム「アクアリンガル」(注7)を併せて活用しております。 (注1)MSC認証:海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)の厳正な認証規格に適合した漁業で獲られた持続可能な水産物(天然魚)に対する認証です。通称「海のエコラベル」とも呼び、海洋の自然環境や水産資源を守って獲られた水産物(天然魚)に与えられます。MSC認証を取得した漁業で獲られた水産物は国際的なトレーサビリティが可能であり、適切な水産資源管理につながります。当社グループはアラスカのスケソウダラの他、複数の漁場魚種でMSC認証を取得した水産物を取り扱っております。(注2)ASC認証:養殖業が持続可能な方法で運営され、周辺の自然環境や地域社会への配慮が行われている「責任ある養殖水産物」であることを証明するもので、WWF (World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)とオランダの持続可能な貿易を推進する団体であるIDH(The Sustainable Trade Initiative)が設立支援した水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が運営しています。この認証制度は自然資源の持続可能な利用を補いながら、養殖そのものが及ぼす環境への負荷を軽減し、これらに配慮した養殖業に携わる地域の人々の暮らしを支えるための社会的な仕組みのひとつです。当社グループでは、サルモネス・アンタルティカ社(チリ)のトラウトと黒瀬水産㈱(宮崎県)のブリが本認証を取得しております。(注3)MEL認証:2016年12月に設立された一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会が運営する認証スキーム。水産資源の持続的利用や生態系保全に資する活動を積極的に行っている生産者や、そのような生産者からの水産物を積極的に取扱う加工・流通業者の取り組みを促進すること、漁業や養殖、加工、流通段階での水産物の取扱いについての透明性を担保し、関係事業者や消費者の選択や信頼に寄与することを目的とした認証スキームです。①漁業認証、②養殖認証、③流通加工段階(CoC)認証(CoC: Chain of Custody)の3つがあります。当社グループでは黒瀬水産㈱がブリの養殖認証と流通加工段階認証、金子産業㈱(長崎県)がクロマグロ、マダイの養殖認証、弓ヶ浜水産㈱がギンザケの養殖認証と流通加工段階認証を取得しております。(注4)SeaBOS:Seafood Business for Ocean Stewardshipの略。日本、ノルウェー、タイ、米国、韓国など世界各国から水産業界のリーダー企業が参画し、海洋環境および海洋資源の保全と持続的な資源利用を進め、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブです。スウェーデンストックホルム大学のストックホルム・レジリエンスセンターが事務局として活動を推進し、毎年1回、参加企業のCEOが集まる会議において、活動の進捗を確認しています。(注5)バナメイエビ養殖:投薬をしない安全安心で生食可能な国産陸上養殖エビ。飼育水中に微生物の集合体(バイオフロック)を浮遊させながら、水質を浄化させる「閉鎖式バイオフロック法」を採用しています。飼育水の量を必要最低限に抑制でき、従来の陸上養殖と比較して、環境負荷が低く、設備が簡易なことから事業コストの低減が期待できます。(注6)マサバの循環式陸上養殖:地下から汲み上げた海水に近似する塩分を含む地下水を利用し、日立造船㈱の水処理技術により水温・水質をコントロールし、マサバの生育に最適な環境を保ちます。外海の海水を使用しないため、寄生虫や魚病リスクを低減、自然環境に左右されない安定供給が可能となります。(注7)アクアリンガル:海上生簀での養殖において、給餌の自動化と、養殖魚が疑似餌を引く動作に基づいて食欲をはかり給餌量をコントロールする当社独自のシステムです。養殖魚の最大成長を達成しつつ、魚の食欲に合わせた飼料量の管理が可能であり、残餌による環境負荷の低減につながります。また、インターネットを活用して、天候や水温、溶存酸素濃度などの養殖環境、魚の空間分布を継続的に解析することができ、給餌時間、給餌量、給餌間隔などの遠隔での調整も可能です。すでに当社グループの弓ヶ浜水産㈱のギンザケ「境港サーモン」の養殖に実用化されており、現在、対象魚種の拡大に向けて、ファームチョイス㈱のぶり「天草ぶり」での実証試験に取り組んでおります。 (2)自然災害の頻度増加と激甚化によるリスク地球温暖化による気候変動は、近年、台風、ハリケーン、時化、豪雨、洪水、干ばつ等の自然災害の頻度を増加させ、激甚化させる傾向にあります。当社グループではリスクマネジメント委員会に「災害BCP(事業継続計画)部会」を設置し、各拠点のBCPを作成の上、体制・災害対応力の強化を図っておりますが、想定外の災害が生じた場合には、各事業に及ぼす影響が拡大する可能性があります。 ≪各事業共通のリスク≫① 当社グループの食品製造や冷蔵倉庫、養殖場、工場などの施設・設備や漁船への直接被害と修繕コスト増加② 長期停電や水道水停止等による生産・物流への影響③ 原料となる水産物・農畜産物への直接被害による確保困難④ 予防・安全対策コストとしての設備費や保険費用の増加 ≪水産事業のリスク≫ 水産事業では、台風等の悪天候による時化の増加が、漁業での漁撈日数の減少、これに伴う漁獲量の減少をもたらし、養殖事業では、海面養殖の生簀損壊、給餌回数の減少による魚の成長不足の可能性があります。また、漁撈、海面養殖の労働環境の悪化に繋がり、深刻な人手不足を招きかねないため、当社グループでは「大規模沖合養殖システム」などの海面養殖において前述の給餌制御システム「アクアリンガル」の導入や、台風等の被害による海面養殖の生簀損壊を防ぐ、沈下式生簀の導入などの対策を進めております。 (3)温室効果ガスに関する法規制強化・エネルギー政策の影響欧州では排出されるCO2に価格付けをするカーボンプライシングを拡充する動きが広がっています。また日本においても、2050年の温室効果ガスの排出量実質ゼロ実現のため、カーボンプライシングの導入が検討されています。今後も温室効果ガスに関する法規制が強化され、国のエネルギー政策に伴う電力・燃料価格の上昇が見込まれます。気候変動やこれら法規制・エネルギー政策の影響で、製商品の製造原価や、冷蔵庫・物流におけるコールドチェーン維持の管理コストが増加し、事業収支に影響を与える可能性がありますが、当社グループは、法規制を遵守することは当然として、再生可能エネルギーへの使用率向上、省エネ・高効率化設備への設備投資、その他前出の温室効果ガス排出削減に向けた取り組みを引き続き進めてまいります。 2.原料調達等に関するリスク当社グループが主要な原料としている水産物は、従来より、漁獲量・養殖生産量の増減などによる水産物市況の変動の影響を度々受けておりましたが、さらに、前出の気候変動がもたらす海洋・陸上環境の変化が水産物や農畜産物等の原料の収量を減少させ、原料価格が高騰するおそれがあります。気候変動以外でも、水産資源の乱獲や違法操業、農業における乱開発や環境破壊、畜産物における動物福祉の規制強化等が、当社グループの調達のリスクにつながる可能性があります。また、政治・経済情勢、テロ・紛争による治安の悪化や社会的混乱などの外的要因によっても、原料価格や調達・生産に係るエネルギーコスト等が高騰するリスクがあります。2019年の国際連合の発表では、世界人口は2050年に97億人を超えることが見込まれております。当社グループの事業にとっては、人口増による食料需要の増加が市場拡大をもたらし、チャンスにつながる可能性がありますが、一方で、資源獲得競争が熾烈になり、安定的な原料等の調達が困難となるおそれもあります。このような外部環境の変化による調達のリスクは、各事業の収支に影響するおそれがあります。当社グループは、従前より安定的な原料確保と製品供給の重要性を認識し、グローバルな調達先との提携やM&A、養殖事業における研究・技術開発による資源アクセスの安定的確保に努めてまいりました。今後も安定的な原料確保と商品供給のための施策を推進してまいります。 3.人為的な海洋汚染によるリスク 近年、日常生活に欠かせない飲料・食品の容器包装や、事業活動に使用されているプラスチックの海洋環境への影響が社会課題として取り上げられています。当社グループは、食品や水産事業を中心に事業活動を行っており、この問題の深刻さが増すと事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。プラスチックごみによる海洋汚染は、海洋の生態系破壊や海洋生物の減少につながるおそれがあり、食品や水産事業での原料調達や、食の安全性に影響を及ぼす重要な問題であると認識し、事業全般でのプラスチック使用に対する対策を進めており、2019年度よりサステナビリティ委員会の下に部会を設置し活動を行っています。(1)海洋環境部会海洋環境へのプラスチックの流出ゼロにつながる活動を推進、プラスチック製の漁具の管理強化や素材変更、外部団体における海洋へのプラスチック流出調査の支援を行っております。具体的には、海面養殖での生簀に使用する発泡スチロール製の浮き具からのプラスチック流出を防ぐため、堅牢な樹脂で覆った浮き具や、発泡スチロールを使用せず内部が空洞の樹脂製浮き具への全面転換を進めております。また、国内グループ養殖・漁業会社で使用する漁具の海洋流出防止に取り組む中で漁具の管理ルールの強化を進めており、自社の既存の管理ルールを、GGGI(注1)「Best Practice Framework for the Management of Fishing Gear」(注2)を参考にし、漁具の海洋流出防止という観点で改めて見直しました。この漁具の管理ルールは、設備状態のチェック、従業員への教育、使用済み漁具の適切な廃棄、万が一漁具の紛失・遺棄があった際の報告フロー等を含みます。(注1)Global Ghost Gear Initiative、漁具の海洋流出防止に取り組む国際団体(注2)漁業関係者を対象とした漁具管理のガイドライン。Prevention(防止)、Mitigation(緩和)、Recover(回収)から構成されている (2)プラスチック部会プラスチック資源の3R(リデュース、リユース、リサイクル)+R(リニューアブル(再生材の利用))の推進、プラスチック削減の中長期目標の策定、環境配慮型容器包装への一層のシフト、および「みらいの海へ」マーク対象品の拡大などを進めています。具体的には、生産事業所からの廃プラスチック発生量の削減、容器包装の減容化、紙等の代替素材への変更に加え、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチック等の利用も視野とした検討を行っています。また、当社グループでは、海面養殖事業が海洋環境に与える負荷の低減策を進めています。例えばブリの養殖において、飼料形態の変更や、前出の給餌制御システム「アクアリンガル」の開発導入による魚の食欲に合わせた投餌などを行っています。また抗生物質の使用量削減にも取り組んでいます。さらに海面養殖設備の定期的な点検・補修による堅牢化や、台風被害による設備損壊を避けるための大型沈下式生簀の利用拡大、前出のプラスチック流出を防ぐ生簀の浮き具への全面転換を進めております。 4.海外事業展開におけるリスク当社グループ主要戦略のひとつとして、海外展開の加速を目指し、水産・食品事業における欧州での更なる拡大とアジアでの事業基盤構築、ファインケミカル事業における医薬品原料の海外展開を掲げております。事業展開する国において政治的な問題から生じる紛争、法規制の変更等のリスクが顕在化した場合、事業の基本的戦略や収支に影響を与える可能性があります。また海外市場における情勢の変化について早期の情報収集に努めるとともに迅速な対応を心掛けておりますが、想定を超える情勢の変化が生じた場合には、事業収支に影響を与える可能性があります。考えられる主なリスクは以下のとおりです。・各国の法令変更 ・為替リスク ・カントリーリスク(政治、紛争、テロ等の発生) ・訴訟 ・各国の保護主義台頭 ・サステナビリティ課題への対応 5.知的財産に関するリスク 当社グループは、養殖事業における養殖魚の成熟制御や育種ノウハウ、ファインケミカル事業におけるオメガ3系の必須脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)の高度精製技術等、当社グループの事業に重要な知的財産を所有しております。当社グループが目指す海外進出や各事業の技術革新により、知的財産の重要性が高まる中、当社グループの知的財産が漏洩した場合は、事業収支に影響を与える可能性があります。また当社グループが第三者の知的財産権を侵害したと認定された場合は侵害訴訟や製商品販売・事業活動の差止請求を受け、当社グループの事業戦略・収支に影響を及ぼす可能性があります。当社では後述の情報管理の徹底に加え、守秘義務契約の徹底はもとより、研究・開発部門の従業員への知的財産に関する教育に取り組んでおります。 6.人権侵害に関するリスク 1998年、国際労働機関(ILO)でILO宣言(中核的労働基準)が採択され、労働における基本的原則および権利が定められ、経済成長と共に企業活動のグローバル化が進む中、社会が一致団結しつつ労働者の権利を保護することが求められました。2000年には、国連グローバルコンパクトが発足し「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の分野で、企業が影響力を発揮すべき10原則を定めており、2011年には「ビジネスと人権に関する国連指導原則」として人権を尊重する責任が国家のみならず、企業にもあることが明示されました。さらに2015年に発表されたSDGsでも、その前文に「誰一人取り残さない」として、全ての人々の人権とジェンダー平等の実現を目指す記述があり、働きがいのある人間らしい雇用、貧困をなくす、ジェンダー平等など具体的な目標が示されています。企業が最も重視すべき人権リスクは、企業活動に係るバリューチェーン上で、ライツホルダー(企業が尊重すべき人権の主体)に負の影響を与えるリスクです。また近年、ESG 投資の普及・拡大が進み、企業活動のグローバル化が引き起こす人権侵害には特に厳しい目が注がれるようになっております。自社のみならず、バリューチェーンを含めて企業が引き起こす人権侵害は、ブランドの毀損、さらには、ダイベストメントにつながるなど企業にとってリスクを生じさせるものと認識し、以下の取り組みを推進しております。(1)人権尊重推進体制の整備国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「ニッスイグループ人権方針」を2020年9月に策定し、人権尊重を経営課題として位置づけました。2021年度よりサステナビリティ委員会の下に新たに人権部会を設置して体制を整備し、人権デューデリジェンスに取り組むとともに、ステークホルダーとの対話や人権尊重の重要性についての従業員への理解促進にも努め、あらゆるライツホルダーの人権に配慮した企業活動を推進しています。(2)サステナブル調達ニッスイグループ調達基本方針と、「遵法・調達倫理」「環境配慮」「人権配慮」「お取引先様との協働」「品質・安全性確保」「情報セキュリティ」「社会貢献」の7項目で構成するサプライヤーガイドラインを策定しています。主要な原材料、製品を調達するサプライヤーを対象に説明会を実施し、セルフチェックシート(全132項目)に回答いただいています。回答結果は集計しグラフ化するだけでなく、「人権配慮」と「環境配慮」への認識・取り組みに焦点を当てたコメント付きのフィードバックシートを返却し、各社へ今後取り組みを強化いただきたい点をお伝えしています。また、回答の意図と実態を確認するために、サプライヤーへの訪問やオンラインでのヒアリングも実施し、各サプライヤーの課題確認とそれに対する改善アドバイス、他サプライヤーの好事例共有なども行っています。(3)ハラスメントの撲滅当社グループでは、倫理憲章を制定・周知しており、その中で個人の尊重と差別・ハラスメントの禁止を定めております。また当社の人事部にハラスメントデスクを設置し全従業員を対象に集合研修やEラーニングを実施し意識向上を進めるとともに、国内各グループ会社にもハラスメント相談窓口を設置し、専任担当者の集合研修を実施するなど、グループ各社の認識を高めています。2021年度は改めて全ての事業所において「ハラスメント防止」をリスクマネジメント課題に掲げて、部署長・課長向けのハラスメント研修やハラスメント防止ハンドブックの社員への配布、各部署での読み合わせなどを実施しています。また、2022年4月よりパワハラ防止法が中小企業にも拡大適用されることを受けて、2022年3月には社長より国内外グループの全従業員に向けたメッセージとして、改めてハラスメント撲滅を強く呼びかけました。(4)ダイバーシティの推進2016年度よりサステナビリティ委員会に「ダイバーシティ部会」を設置し、国籍、性別、年齢、身体的特徴などへの差別なく、多様な人財が働き互いに多様な価値観を尊重しつつ働ける企業を目指しています。2021年1月から「30% Club Japan」に参画し女性の採用および登用に関する数値目標を定め、社内制度の整備を進めながら女性がより一層活躍できる風土の醸成に取り組んでいます。2021年度の「ダイバーシティ部会」では、「管理職及び女性自身の無意識バイアス自覚とコントロール」、「女性の定着・育成課題の抽出と対策立案」、「ライフイベント(結婚・育児ブランクの最小化)施策の検討」を中心に討議を行いました。2022年3月には、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している、女性活躍推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」に準じる「準なでしこ銘柄」に初めて選定されました。 7.人財の確保と育成に関するリスク当社グループでは、海外事業展開を含めた中長期における当社グループの経営計画達成のために、事業創出・企画運営の能力のある経営を担う人財、海外国内を問わず活躍できるグローバル人財やプロフェッショナル人財、各生産拠点で成果を上げる人財の確保と育成が必要であると考えています。しかし、日本国内の少子高齢化と人口減少が進むにつれ、国内での優秀な人財確保が難しくなりつつある中、多様な人財が働けるダイバーシティ対応に後れをとると、必要な人財確保が困難になると想定されます。当社グループは、雇用した人財が国籍、性別、身体的特徴などの差別なく、多様な人財が、多様な価値観を尊重しつつ健康に働ける環境を整えることが必須であると考えており、サステナビリティ委員会の中で、「健康経営」推進、「働き方改革」などの活動を進めております。本年度も経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄2022」に選定され、4年連続の受賞となりました。人財の確保と育成については、通年で計画的に、経営や事業関連のスキルを持つ経験者や新卒者の採用を国籍に関係なく行いながら、キャリア開発チームによる従業員教育の強化や、サクセッションプランに基づく経営・マネジメント人財の早期育成に取り組んでおります。2021年度は新たに「カムバック制度」を導入し、退職した社員が、再び当社での就労を希望する場合に、再入社の機会を提供することで、優秀な人財の再確保を図っています。また、長年経験を重ねてきた従業員にそのスキルを生かし活躍する場を提供するため、60歳の定年退職後の継続雇用希望者に対し、シニア職員制度を設けております。さらに全国にある国内グループ会社間のネットワークを生かし、異動・教育の仕組みを構築しております。 8.製商品の品質・安全性リスク 当社グループは、製商品の品質事故や、表示偽装などの品質不正が発生すると、お客様からの当社グループ全体への信用を損ない、ブランドが棄損され、事業に多大な影響が生じると認識しており、サステナビリティ行動宣言において「安全・安心でお客様にとって価値ある品質の商品をお届けする」ことを謳っております。このリスクに対応するため、「品質保証憲章」に品質保証理念や品質方針、行動指針を定め、お客様に安全な製商品をお届けするための品質保証に最大限努めており、従業員への品質教育や、生産工場における予防管理強化の基準・仕組みの構築、商品設計時の品質確認、使用原材料の品質確認、表示確認の仕組みを構築しています。(1)品質保証委員会、お客様満足推進部会社長を委員長とする「品質保証委員会」を毎月開催し、お客様から寄せられた声を共有し、必要とされる基準やルールの策定・徹底を図っております。また、同委員会の傘下にお客様サービスセンター所長を部会長とする「お客様満足推進部会」を設置し、お客様から寄せられた声をもとに、商品設計やパッケージ表示の改善などに取り組んでいます。(2)ニッスイ品質保証基準と認定工場制度製商品の品質の安全性を確保する基準として、HACCP(注)の考え方を基本とした、関連法規より厳格な当社独自の「ニッスイ品質保証基準」を設けております。同基準には、生産工場認定基準を核に、その詳細基準として使用水基準、薬剤管理基準、防虫管理基準、樹脂部品基準、原材料基準、包材基準、アレルギー物質のコンタミ防止基準、フードディフェンス基準などがあります。ニッスイブランド商品は生産工場認定基準により認定した工場のみで生産しており、認定後も品質保証部による定期的な監査を実施、工場指導を行っております。また工場間の情報共有や課題解決を目的とし、工場経営者会議、工場品質管理担当者会議などを定期的に開催しております。(注)HACCP :Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス) 委員会が発表し,各国にその採用を推奨しております。(3)生産工場におけるFSSC22000(注)認証取得の推進国内の直営工場・関係会社工場の16拠点で、国際的な食品安全マネジメントシステム規格であるFSSC22000(注)認証を取得しております。(注)FSSC22000:Food Safety System Certificationの略。FSSC22000財団(Foundation FSSC22000)により開発された食品安全のためのマネジメントシステム規格。食品小売業界が中心の非営利団体、国際食品安全イニシアティブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)により、食品安全の認証スキームの一つとして承認された規格です。(4)原材料情報の一元管理体制当社では、全ての原材料について、配合、由来原料、産地、遺伝子組み換え情報、アレルゲン、規格、食品添加物、農薬・動物用医薬品・飼料添加物情報等を記載した「原材料規格保証書」を作成し、「原材料管理システム」に登録・一元管理しており、新しい原材料を使用する場合は、三次原料まで遡ることを基本に、原材料の製造現場の情報を収集しながら安全性を確認しております。(5)検査体制とエクセレントラボによる検査精度の向上原材料から製品まで、安全性を確認する検査体制を確立するため、当社グループの全工場に検査室を設置し、加えて食品分析部(東京イノベーションセンター)、青島日水食品研究開発有限公司(青島)、タイ品質管理課(サムットサコーン)の3拠点で検査を行える体制を構築しています。食品分析部では、当社グループの生産工場の検査室の検査制度の維持と検査レベル向上を目指した取り組み「エクセレントラボ」活動を展開しております。具体的には、検査マニュアルを定期的に更新して配布、エクセレントラボ専用培地を全検査室で共通使用するとともに、全検査員を対象として精度管理試験を年1回実施し、検査精度を確認しています。さらに各検査員の検査技術向上のため、OJTプログラムによる教育や、レベル別の認定講習会、エクセレントラボ推進会議の定期開催による検査員のレベルアップを図っています。(6)青島日水食品研究開発有限公司、タイ品質管理課による海外工場の管理青島日水食品研究開発有限公司ならびにタイ品質管理課では、中国、東南アジアのニッスイ認定工場で生産する当社製商品の品質管理を行っており、生産工場への品質指導に加え、製商品のサンプリング検査や輸出時検査を実施、各工場の品質管理責任者の集合研修を年1回開催しています。(7)品質事故時の対応万が一品質事故が生じた際には、製品回収、状況把握と原因究明、お客様への対応等、迅速かつ適切な対応をとるための体制を整備しております。 9.消費者意識とニーズの変化に対応した新しい技術開発への後れによるリスク前出の気候変動や自然災害の頻度増・激甚化、人為的な海洋汚染による地球環境の保全への消費者の意識の高まりや、世界人口の増加と国内の人口減・少子高齢化など、消費者の生活ニーズとライフスタイルは刻々と変化し、即食・簡便ニーズや健康志向に対応した商品に対する需要が高まってきています。また、世界では代替タンパク製品の市場の出現などへの新しい技術も日々更新されております。これらの消費者意識・ニーズの変化への対応や、先端技術の開発に後れをとると、当社グループの成長に影響をおよぼすリスクがあると考えています。当社グループは、常に消費者の生活ニーズを考えながら、研究開発投資を行い、地球環境の持続可能性と人々の健やかな生活を“食”のイノベーションで解決することを研究開発の基本方針としています。2011年には、事業展開の礎である研究開発力の強化を目指し、約75億円を投じて東京都八王子市に東京イノベーションセンターを建設し、中央研究所、商品開発部、技術開発部、食品分析部を集約しました。最先端の基礎研究からそれを応用した製商品化まで、さらには安全性の確認まで、部署間の連携を円滑に進め、消費者意識とニーズの変化に迅速に幅広くお応えできる体制を構築しています。また1994年設立の中央研究所大分海洋研究センター(大分県)も、東京イノベーションセンターと連携を取りながら、水産資源の持続可能性につながる養殖に特化した基礎研究から事業レベルの応用研究まで幅広く取り組んでいます。水産事業においては、水産加工技術と養殖の研究投資を行っています。養殖では中長期的な視点による養殖魚の育種や陸上養殖の拡大、新規魚種の開拓、データサイエンスによる養殖技術の先端化など新規事業の創出につながる研究に取り組んでいます。食品事業においては、独自の加工技術の開発に加え、農産品や鶏肉の研究開発、タンパク質摂取の在り方の多様化に対応するための植物タンパク質の利用研究や味・香りに関する基礎研究も行っています。また、スケソウダラは食べるだけで、特別な運動をしなくても除脂肪量(筋肉量の目安となる)が優位に増加することが研究成果として発表されており、「速筋タンパク」シリーズとしてスケソウダラすり身100%を使用した商品を展開しています。食品事業全般において、従来の開発体制に加え、「人間起点」を主眼に考えて発想する「デザイン思考」による新しい開発手法を取り入れる「未来型創造開発会議」を設置し、5~10年先の生活ニーズに応える取り組みを進めております。 10.情報セキュリティリスク当社グループでは、通信販売事業などにおいてお客様の個人情報を保有しており、このような個人情報や経営、事業、研究などに関する重要な情報の漏洩・紛失を防止するため、リスクマネジメント委員会の傘下に「情報セキュリティ部会」を設置し、「情報セキュリティ基本方針」などの規程やルールの整備、システムの管理体制の強化、定期的な従業員に対する教育や訓練を実施し、情報セキュリティ管理を徹底しております。また、グループ経営を進める中、当社グループ内でデータ漏洩、システム破壊が起きると、グループ全体の事業に大きく影響することが考えられます。そこで、当社国内グループ会社の情報セキュリティ基本方針や利用者ルールの徹底、技術的対策、教育や訓練を含めた人的対策の領域において、各到達点を具体的に策定し、ニッスイグループIT部門会議を定期的に開催するなどの取り組みにより均質化を進めてまいりました。今後はグループ会社の情報セキュリティ対策が有効に機能しているか定期的に確認し、情報セキュリティ確保への継続的な改善・向上に努めてまいります。今後、各拠点の省人化や、生産、物流、販売でのシステム連携による効率化が進むにつれ、自然災害などによる物理的なシステム破壊や、長期停電、外部からの攻撃などの要因を問わず、そのシステムの停止による事業活動への影響が増加すると考えられ、システム停止を想定した対策や有事対応の体制づくりを進めております。 11.感染症の拡大によるリスク新型コロナウイルス(COVID-19)については、経済活動を再開させる動きが広がりつつあるものの、変異株の出現等もあり、先行き不透明な状況が続いています。当社への影響は、予想が困難ではありますが、漁撈・養殖や食品の生産拠点において感染が拡大した場合は生産の停止や縮小、調達先や物流の過程で感染が拡大した場合は原料の調達が難しくなるなど、安定的な製商品の供給に支障が生じる可能性があります。また、コロナ禍による世界的な外食・観光需要減、需要減による水産市況の悪化、安定生産を継続するための人員確保に伴うコスト増などが継続した場合、収支に影響する可能性があります。また、感染症予防による渡航規制が長期化すると、事業の海外展開に後れが出るおそれや、海外グループ会社とのコミュニケーション不足がガバナンスの低下を招くおそれがあります。当社グループでは、当社製商品を継続的・安定的に世界の人々に供給する使命を全うするため、現時点で考えられる最大限の措置を講じてきました。社長を本部長とする新型コロナウイルス対策本部を本社に設置し、当社の各事業所はもとより国内グループ会社には現地対策本部、南米、北米、欧州、アジア・オセアニアとは、各エリアの事業執行とのWEB会議等を通じて、時々刻々と変化する各国や国内情勢についての情報収集を行っております。また、WHOや関係省庁・保健行政機関から収集した情報を共有した上で、新型コロナウイルスによる当社グループへのリスクを可能な限り予測し、基本的対策を定めて実施しております。在宅でのテレワークの推進、衛生管理を徹底、罹患者(疑いを含む)が発生した場合に拠点機能を速やかに回復させるための対策など、今後も適宜、対策を講じてまいります。 各リスク間の関係図
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2 【事業等のリスク】本項目に記載する当社グループの事業等のリスクは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクを有価証券報告書提出日現在において判断し記載しております。本項目は、当社取締役会で審議した事項であり、毎年、取締役会において審議し更新してまいります。 <当社グループのリスクマネジメント体制>当社グループは、水産物をはじめとする資源から様々な食品や医薬品原料などを製造し、世界の人々に対して供給することを使命としており、その責務を果たすべく、安定した生産・販売の継続に努めております。そのような観点から、当社グループでは、事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し、損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、「リスクマネジメント規程」を制定し、リスクマネジメント委員会(注1)がリスクマネジメントシステムの構築と運用、定期的な取締役会への報告を行っております。当社グループにとって影響の大きいリスク群については重要リスク(注2)として専門部会を設置しており、とりわけ、2019年末から世界に拡大した新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大など、不測のリスクが発生した場合には、代表取締役社長執行役員を本部長とする対策本部を立ち上げ、日々変化する情勢を踏まえながら、迅速かつ柔軟にリスク対応を行っております。(注1)リスクマネジメント委員会:全執行役員で構成され、代表取締役社長執行役員が委員長を務めております。(注2)重要リスク:「品質保証」「環境」「労務・安全」「コンプライアンス」「情報セキュリティ」「災害BCP(事業継続計画)」等 1.気候変動(世界的な気温上昇)による影響2015年に開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され、各国が世界的な気温上昇を抑えるため温室効果ガスの削減に取組んでいます。また2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書によれば、工業化以降、2030~2050年に1.5℃上昇する見込みと言われています。当社グループの水産事業、食品事業、ファインケミカル事業は、持続可能な水産物資源、農畜産物資源から水産品、食品、健康食品、医薬品原料を製造・販売しており、気候変動が進むと各事業が大きな影響を受けることが想定されます。なかでも、気温上昇は、海洋における海水温と海水面の上昇、海水温の分布や海流の変化をもたらし、海洋環境を変化・悪化させる可能性があります。さらに陸上環境においても、各地の気温の上昇や天候不順などの変化・悪化が予想されます。これにより、海洋・陸上における水産物資源、農畜産物資源の生態系への影響が懸念されております。また消費者・取引先など社会における環境問題への関心は年々高まっており、環境問題に対する活動に後れが生じた場合は、当社グループの事業収支に影響を与えるおそれがあります。当社は、環境問題への対応を重要な課題と認識し、2003年に制定した「環境憲章」により環境理念や行動方針を示し、CSR委員会(注)直下の環境部会が、温室効果ガス排出などの環境負荷に関して下記ⅰ)~ⅴ)の取組みを行うとともに従業員への啓蒙活動を行っています。(注)CSR委員会:CSRと事業の融合を推進するため、CSR委員会では社長を委員長とし、全ての執行役員をメンバーとして年6回開催しています。重要課題を推進する7部会(水産資源持続部会、サステナブル調達部会、海洋環境部会、プラスチック部会、フードロス部会、ダイバーシティ部会、人権部会)と環境部会で構成され、部会長には執行役員、メンバーは主に関係各署の部長、課長から選任されています。 ⅰ)CO2排出量、使用水量、事業所外排出物量、リサイクル率、フロン漏洩量の管理による環境負荷低減活動当社グループ中長期目標としてCO2排出量(原単位)を、2015年度比で2023年度までに10%削減、2030年度まで に15%削減する。ⅱ)当社グループの国内外の主要な事業所において、環境マネジメントシステムISO14001の認証を取得ⅲ)バイオマス燃料の利用拡大、再生可能エネルギー発電の拡大、排出メタンの再利用による発電ⅳ)省エネ、高効率設備の導入による温室効果ガスの削減とコストダウンⅴ)物流におけるモーダルシフトの拡大と冷蔵庫における自然冷媒冷凍機への転換拡大による温室効果ガスの 排出削減 2021年4月には気候変動サミットが開催され、日本を含めた先進国を中心に、2030年までの温室効果ガスの削減目標を引き上げる動きが広まりました。当社としても地球温暖化対策への取り組みをさらに強化するため、より高い削減目標を設定すべく社内での検討を進めています。 (1)資源アクセス確保に与える影響地球温暖化による気候変動は、漁獲量や農畜産物の収量の減少をもたらす可能性があり、以下のとおり、当社事業の資源アクセスに影響することが考えられます。 ≪海洋環境の変化が各事業の資源アクセスに与える影響≫当社グループの各事業は、水産物を主原料とする製商品が多くあることから、各事業の収支や事業継続に影響を与える可能性があります。著しい海洋環境の変化が生じると下記のようなリスクが生じることが考えられます。 ① 各水産品種の生息可能な水域が変化することにより、漁撈や海面養殖場への影響として、当社グループが取扱う水産品種における従来の漁場、海面養殖場の環境(海水温条件など)が、その魚種の生息条件に適さなくなり、漁獲量・養殖生産量が減る可能性があります。② 現在、水産物市場は世界で拡大しておりますが、海洋環境が変化した場合には、当社グループに限らず、水産業界全体に及ぶ可能性があることから、漁獲量・養殖生産量減少により水産物の流通量が減ることで、水産物の価格が上昇し、消費者の水産物離れを招くなど、水産物市場が縮小することが考えられます。③ 水産物市場全体の縮小が生じれば、商事事業(買付)においても影響が出ることが考えられます。④ 漁獲可能な水産品種の減少や漁獲量減少により、各国の漁獲制限などの規制の強化につながる可能性があります。⑤ 当社グループの食品事業においても、水産物を主原料とする製商品が売上高の約6割を占めるなど、水産物原料の必要量確保が難しくなると大きな影響を受けることとなります。 ≪陸上環境の変化が事業の資源アクセスに与える影響≫当社グループの食品事業は、水産物以外にも米や野菜などの農産物、鶏肉などの畜産物を原料とする製商品を販売しております。陸上環境の変化は、各地の農畜産物原料の収量に影響を与え、原料である農畜産物の産地の環境変化により、中長期的に現在の調達エリアの変更が必要になる等、食品事業の収支に影響を与える可能性があります。 当社グループは、水産物における資源アクセス確保が経営の重要な課題であると認識しております。主要戦略のひとつとして、持続可能な水産資源の利用と調達の推進を掲げており、現在、CSR委員会傘下の「水産資源持続部会」により、当社グループの事業活動による水産資源への影響を把握するため、漁獲地・魚種・漁法毎の資源状態の調査活動などを進めています。また当社グループでは、漁業におけるMSC認証(注1)や、養殖業におけるASC認証(注2)、MEL認証(注3)などの取得と、これらの水産エコラベルを表示した水産物の活用に取り組むとともに、世界の水産業界のリーダー企業が参画するSeaBOS(持続可能な水産ビジネスを目指すイニシアティブ)(注4)へも参画しています。さらに持続可能な資源アクセスの確保を進めるため、養殖事業戦略として、チリのサルモネス・アンタルティカ社をはじめ、国内外グループ会社における生産基盤の安定と魚種の充実を掲げており、トラウト・ブリ・クロマグロ・ギンザケ・カンパチ・マダイの養殖を行っています。また陸上施設でのバナメイエビ養殖(注5)、マサバの循環式陸上養殖(注6)など環境負荷を低減した養殖の研究・開発・商品化にも取り組んでいます。養殖事業の重要性が高まる中、将来、海面の養殖適地は飽和状態になることが考えられることから、当社グループでは、水産物のサステナブルな調達力強化の一環として、海外養殖事業会社との提携や、養殖の技術開発も進めております。2018年には、環境基準が厳しくエビ養殖の参入障壁が高いといわれるオーストラリアで、同国の養殖エビ生産量の三分の一強を占める養殖会社シーファーム・グループ社へ資本参加し、その高品質なエビを2019年10月からニッスイブランド品として発売いたしました。2020年4月には、当社100%子会社のニッスイヨーロッパ社が、丸紅㈱(東京都)とともに、デンマークでサケの閉鎖循環式養殖事業を営むダニッシュ・サーモン社へ資本参加いたしました。世界的に水産物の需要が高まるなか、サケ・マス類は、生産量の約8割を養殖が占めていますが、海面の養殖適地に限界があることから、近年では陸上での養殖が注目されています。同社はアトランティック・サーモンの閉鎖循環式養殖で成功している数少ない先端企業であり、閉鎖循環式養殖は飼育環境が安定的であること、環境負荷の抑制が可能であること、消費地近隣での養殖により鮮度向上や物流コスト低減が実現できることなど、多くのメリットが期待できます。2021年には新規設備が完成予定であり、現在の水揚げ量1,000トンを2023年に2,750トンに引き上げる計画です。国内では、当社と日鉄エンジニアリング㈱(東京都)が協力し、弓ヶ浜水産㈱のギンザケ養殖場で「大規模沖合養殖システム」の技術開発を進めています。2016年12月より開始した「大規模沖合養殖システム」の実証試験では、沖合養殖で必要な(1)海上での飼料の大量貯蔵技術、(2)貯蔵タンクから生簀への飼料の長距離搬送技術、(3)遠隔漁場における適正な給餌管理等の技術検証を行いました。2021年4月時点では、実証試験機の改善・改良を進めながら拡張し、弓ヶ浜水産が操業する鳥取県境港市の沖合3キロメートル程度の美保湾の漁場に、約300平方メートルのプラットフォーム上に飼料を100t程度貯蔵できる飼料サイロを設置し、ここから直径25mの円形生簀15基に設置している自動給餌機への自動搬送を行い、飼育管理を行っております。海上飼料サイロの設置により、既存の給餌機設備と比較して、1生簀に対し約6倍量を貯蔵できるようになりました。飼料サイロから自動給餌機への飼料補給は、海底の配管を通じて自動的に搬送・充填されるため、海況悪化による給餌機会のロス削減や省力化を図ることができます。また、この設備は耐波浪性と耐潮流性を有するため、沖合での設置が可能となり、適切な給餌量をコントロールする事が可能な給餌制御システム「アクアリンガル」(注7)を併せて活用しております。 (注1)MSC認証:海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)の厳正な認証規格に適合した漁業で獲られた持続可能な水産物(天然魚)に対する認証です。通称「海のエコラベル」とも呼び、海洋の自然環境や水産資源を守って獲られた水産物(天然魚)に与えられます。MSC認証を取得した漁業で獲られた水産物は国際的なトレーサビリティが可能であり、適切な水産資源管理につながります。当社グループはアラスカのスケソウダラの他、複数の漁場魚種でMSC認証を取得した水産物を取り扱っております。(注2)ASC認証:養殖業が持続可能な方法で運営され、周辺の自然環境や地域社会への配慮が行われている「責任ある養殖水産物」であることを証明するもので、WWF (World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)とオランダの持続可能な貿易を推進する団体であるIDH(The Sustainable Trade Initiative)が設立支援した水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が運営しています。この認証制度は自然資源の持続可能な利用を補いながら、養殖そのものが及ぼす環境への負荷を軽減し、これらに配慮した養殖業に携わる地域の人々の暮らしを支えるための社会的な仕組みのひとつです。当社グループでは、サルモネス・アンタルティカ社(チリ)のトラウトと黒瀬水産㈱(宮崎県)のブリが本認証を取得しております。(注3)MEL認証:2016年12月に設立された一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会が運営する認証スキーム。水産資源の持続的利用や生態系保全に資する活動を積極的に行っている生産者や、そのような生産者からの水産物を積極的に取扱う加工・流通業者の取り組みを促進すること、漁業や養殖、加工、流通段階での水産物の取扱いについての透明性を担保し、関係事業者や消費者の選択や信頼に寄与することを目的とした認証スキームです。①漁業認証、②養殖認証、③流通加工段階(CoC)認証(CoC: Chain of Custody)の3つがあります。当社グループでは黒瀬水産㈱がブリの養殖認証と流通加工段階認証、金子産業㈱(長崎県)がクロマグロ、マダイの養殖認証、弓ヶ浜水産㈱がギンザケの養殖認証と流通加工段階認証を取得しております。(注4)SeaBOS:Seafood Business for Ocean Stewardshipの略。日本、ノルウェー、タイ、米国、韓国など世界各国から水産業界のリーダー企業が参画し、海洋環境および海洋資源の保全と持続的な資源利用を進め、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブです。スウェーデンストックホルム大学のストックホルム・レジリエンスセンターが事務局として活動を推進し、毎年1回、参加企業のCEOが集まる会議において、活動の進捗を確認しています。(注5)バナメイエビ養殖:投薬をしない安全安心で生食可能な国産陸上養殖エビ。飼育水中に微生物の集合体(バイオフロック)を浮遊させながら、水質を浄化させる「閉鎖式バイオフロック法」を採用しています。飼育水の量を必要最低限に抑制でき、従来の陸上養殖と比較して、環境負荷が低く、設備が簡易なことから事業コストの低減が期待できます。(注6)マサバの循環式陸上養殖:地下から汲み上げた海水に近似する塩分を含む地下水を利用し、日立造船㈱の水処理技術により水温・水質をコントロールし、マサバの生育に最適な環境を保ちます。外海の海水を使用しないため、寄生虫や魚病リスクを低減、自然環境に左右されない安定供給が可能となります。(注7)アクアリンガル:海上生簀での養殖において、給餌の自動化と、養殖魚が疑似餌を引く動作に基づいて食欲をはかり給餌量をコントロールする当社独自のシステムです。養殖魚の最大成長を達成しつつ、魚の食欲に合わせた飼料量の管理が可能であり、残餌による環境負荷の低減につながります。また、インターネットを活用して、天候や水温、溶存酸素濃度などの養殖環境、魚の空間分布を継続的に解析することができ、給餌時間、給餌量、給餌間隔などの遠隔での調整も可能です。すでに当社グループの弓ヶ浜水産㈱のギンザケ「境港サーモン」の養殖に実用化されております。 (2)自然災害の頻度増加と激甚化によるリスク地球温暖化による気候変動は、近年、台風、ハリケーン、時化、豪雨、洪水、干ばつ等の自然災害の頻度を増加させ、激甚化させる傾向にあります。当社グループではリスクマネジメント委員会に「災害BCP(事業継続計画)部会」を設置し、2017~2021年度の5か年計画で体制の強化を図っておりますが、想定外の災害が生じた場合には、各事業に及ぼす影響が拡大する可能性があります。 ≪各事業共通のリスク≫① 当社グループの食品製造や冷蔵倉庫、養殖場、工場などの施設・設備や漁船への直接被害と修繕コスト増加② 長期停電や水道水停止等による生産・物流への影響③ 原料となる水産物・農畜産物への直接被害による確保困難④ 予防・安全対策コストとしての設備費や保険費用の増加 ≪水産事業のリスク≫ 水産事業では、台風等の悪天候による時化の増加が、漁業での漁撈日数の減少、これに伴う漁獲量の減少をもたらし、養殖事業では、海面養殖の生簀損壊、給餌回数の減少による魚の成長不足の可能性があります。また、漁撈、海面養殖の労働環境の悪化に繋がり、深刻な人手不足を招きかねないため、当社グループでは「大規模沖合養殖システム」などの海面養殖において前述の給餌制御システム「アクアリンガル」の導入や、台風等の被害による海面養殖の生簀損壊を防ぐ、沈下式生簀の導入などの対策を進めております。 (3)温室効果ガスに関する法規制強化・エネルギー政策の影響欧州では排出されるCO2に価格付けをするカーボンプライシングを拡充する動きが広がっています。また日本においても、2050年の温室効果ガスの排出量実質ゼロ実現のため、カーボンプライシングの導入が検討されています。今後も温室効果ガスに関する法規制が強化され、国のエネルギー政策に伴う電力・燃料価格の上昇が見込まれます。気候変動やこれら法規制・エネルギー政策の影響で、製商品の製造原価や、冷蔵庫・物流におけるコールドチェーン維持の管理コストが増加し、事業収支に影響を与える可能性がありますが、当社グループは、法規制を遵守することは当然として、再生可能エネルギーの使用率向上、省エネ・高効率化設備への設備投資、その他前出の環境負荷低減に向けた取り組みを引き続き進めてまいります。 2.原料調達に関するリスク当社グループが主要な原料としている水産物は、従来より、漁獲量・養殖生産量の増減などによる水産物市況の変動の影響を度々受けておりましたが、さらに、前出の気候変動がもたらす海洋・陸上環境の変化が水産物や農畜産物等の原料の収量を減少させ、原料価格が高騰するおそれがあります。また気候変動以外でも、水産資源の乱獲や違法操業、農業における乱開発や環境破壊、畜産物における動物福祉の規制強化等が、当社グループの調達のリスクにつながる可能性があります。2019年の国際連合の発表では、世界人口は2050年に97億人を超えることが見込まれております。当社グループの事業にとっては、人口増による食料需要の増加が市場拡大をもたらし、チャンスにつながる可能性がありますが、一方で、資源獲得競争が熾烈になり、安定的な原料等の調達が困難となるおそれもあります。このような外部環境の変化による調達のリスクは、各事業の収支に影響するおそれがあります。当社グループは、従前より安定的な原料確保と製品供給の重要性を認識し、グローバルな調達先との提携やM&A、養殖事業における研究・技術開発による資源アクセスの安定的確保に努めてまいりました。今後も安定的な原料確保と商品供給のための施策を推進してまいります。 3.人為的な海洋汚染によるリスク 近年、日常生活に欠かせない飲料・食品の容器包装や、事業活動に使用されているプラスチックの海洋環境への影響が社会課題として取り上げられています。当社グループは、食品や水産事業を中心に事業活動を行っており、この問題の深刻さが増すと事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。プラスチックごみによる海洋汚染は、海洋の生態系破壊や海洋生物の減少につながるおそれがあり、食品や水産事業での原料調達や、食の安全性に影響を及ぼす重要な問題であると認識し、事業全般でのプラスチック使用に対する対策を進めており、2019年度よりCSR委員会の下に部会を設置し活動を行っています。(1)海洋環境部会海洋環境へのプラスチックの流出ゼロにつながる活動を推進、プラスチック製の漁具の管理強化や素材変更、外部団体における海洋へのプラスチック流出調査の支援を行っております。具体的には、海面養殖での生簀に使用する発泡スチロール製の浮き具からのプラスチック流出を防ぐため、堅牢な樹脂で覆った浮き具や、発泡スチロールを使用せず内部が空洞の樹脂製浮き具への全面転換を進めております。(2)プラスチック部会プラスチック資源の3R(リデュース、リユース、リサイクル)+R(リニューアブル(再生材の利用))の推進、プラスチック削減の中長期目標の策定、環境配慮型容器包装への一層のシフト、および「みらいの海へ」マーク対象品の拡大などを進めています。具体的には、生産事業所からの廃プラスチック発生量の削減、容器包装の減容化、紙等の代替素材への変更に加え、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチック等の利用も視野とした検討を行っています。また、当社グループでは、海面養殖事業が海洋環境に与える負荷の低減策を進めています。例えばブリの養殖において、飼料形態の変更や、前出の給餌制御システム「アクアリンガル」の開発導入による魚の食欲に合わせた投餌などを行っています。また抗生物質の使用量削減にも取り組んでいます。さらに海面養殖設備の定期的な点検・補修による堅牢化や、台風被害による設備損壊を避けるための大型沈下式生簀の利用拡大、前出のプラスチック流出を防ぐ生簀の浮き具への全面転換を進めております。 4.海外事業展開におけるリスク当社グループは主要戦略のひとつとして、海外展開の加速を目指し、水産・食品事業における欧州での更なる拡大とアジアへの注力、ファインケミカル事業における医薬品原料の海外展開を掲げております。事業展開する国において政治的な問題から生じる紛争、法規制の変更等のリスクが顕在化した場合、事業の基本的戦略や収支に影響を与える可能性があります。また海外市場における情勢の変化について早期の情報収集に努めるとともに迅速な対応を心掛けておりますが、想定を超える情勢の変化が生じた場合には、事業収支に影響を与える可能性があります。考えられる主なリスクは以下のとおりです。・各国の法令変更 ・為替リスク ・カントリーリスク(政治、紛争、テロ等の発生) ・訴訟 ・各国の保護主義台頭 ・サステナビリティ課題への対応 5.知的財産に関するリスク 当社グループは、養殖事業における養殖魚の成熟制御や育種ノウハウ、ファインケミカル事業におけるオメガ3系の必須脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)の高度精製技術等、当社グループの事業に重要な知的財産を所有しております。当社グループが目指す海外進出や各事業の技術革新により、知的財産の重要性が高まる中、当社グループの知的財産が漏洩した場合は、事業収支に影響を与える可能性があります。また当社グループが第三者の知的財産権を侵害したと認定された場合は侵害訴訟や製商品販売・事業活動の差止請求を受け、当社グループの事業戦略・収支に影響を及ぼす可能性があります。当社では後述の情報管理の徹底に加え、守秘義務契約の徹底はもとより、研究・開発部門の従業員への知的財産に関する教育に取り組んでおります。 6.人権侵害に関するリスク 1998年、国際労働機関(ILO)でILO宣言(中核的労働基準)が採択され、労働における基本的原則および権利が定められ、経済成長と共に企業活動のグローバル化が進む中、社会が一致団結しつつ労働者の権利を保護することが求められました。2000年には、国連グローバルコンパクトが発足し「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の分野で、企業が影響力を発揮すべき10原則を定めており、2011年には「ビジネスと人権に関する国連指導原則」として人権を尊重する責任が国家のみならず、企業にもあることが明示されました。さらに2015年に発表されたSDGsでも、その前文に「誰一人取り残さない」として、全ての人々の人権とジェンダー平等の実現を目指す記述があり、働きがいのある人間らしい雇用、貧困をなくす、ジェンダー平等など具体的な目標が示されています。人権侵害は、調達・製造・販売から広告宣伝にいたる過程でひとたび発生すれば、当社グループの事業活動すべてに悪影響を及ぼす可能性があります。また近年、ESG 投資の普及・拡大が進み、企業活動のグローバル化が引き起こす人権侵害には特に厳しい目が注がれるようになっております。自社のみならず、サプライチェーンを含めて企業が引き起こす人権問題は、ブランドの毀損、さらには、ダイベストメントにつながるなど企業にとって致命的なリスクを生じさせるものと認識し、下記の取り組みを推進しております。(1)人権尊重推進体制の整備国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「ニッスイグループ人権方針」を2020年9月に策定し、人権尊重を経営課題として位置づけました。2021年度よりCSR委員会の下に新たに人権部会を設置して体制を整備し、人権デューデリジェンスに取り組むとともに、ステークホルダーとの対話や人権尊重の重要性についての従業員への理解促進にも努め、人権に配慮した企業活動を推進しています。(2)CSR調達ニッスイグループ調達基本方針と、「遵法・調達倫理」「環境配慮」「人権配慮」「お取引先様との協働」「品質・安全性確保」「情報セキュリティ」「社会貢献」の7項目で構成するサプライヤー行動指針を策定しています。主要な原材料、製品を調達するサプライヤーを対象に説明会を実施し、「ニッスイCSR購買取り組みセルフチェックシート」(全132項目)に回答いただき、そのデータを分析の上、各社にフィードバックしています。新規サプライヤー向けにはヒアリング形式で行う「CSR購買取り組みチェックシート」(全17項目)を実施し、当社グループのCSR調達の考え方や目指す姿をご説明し、協働の意思確認を行っています。さらに複数のサプライヤーを訪問し、労働環境や労務管理を確認する「簡易チェック(人権配慮のみ9項目)」を行っています。(3)ハラスメントの撲滅当社グループでは、倫理憲章を制定・周知しており、その中で個人の尊重と差別・ハラスメントの禁止を定めております。また当社の人事部にハラスメントデスクを設置し、全従業員を対象に集合研修やEラーニングを実施し意識向上を進めるとともに、国内各グループ会社にも、ハラスメント相談窓口を設置し、専任担当者の集合研修を実施するなど、グループ各社の認識を高めています。2020年6月には、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)の改正施行にあたり、社長よりニッスイ国内グループの全従業員に向けたメッセージとして、職場でのハラスメント撲滅を改めて強く呼びかけました。併せて部署長、課長向けのハラスメント研修やハラスメント防止ハンドブックの社員への配布、各部署での読み合わせなどを実施しています。(4)ダイバーシティの推進CSR委員会に「ダイバーシティ部会」を設置し、国籍、性別、年齢、身体的特徴などへの差別なく、多様な人材が働き、互いに多様な価値観を尊重しつつ働ける企業を目指しています。また、2021年1月には「30% Club Japan」に参画し、社内制度の整備を進めながら女性がより一層活躍できる風土を醸成しています。 7.人材の確保と育成に関するリスク当社グループでは、海外事業展開を含めた中長期における当社グループの経営計画達成のために、事業創出・企画運営の能力のある経営を担う人材、海外国内を問わず活躍できるグローバル人材やプロフェッショナル人材、各生産拠点で成果を上げる人材の確保と育成が必要であると考えています。しかし、日本国内の少子高齢化と人口減少が進むにつれ、国内での優秀な人材確保が難しくなりつつある中、多様な人材が働けるダイバーシティ対応に後れをとると、必要な人材確保が困難になると考えています。当社グループは、雇用した人材が国籍、性別、身体的特徴などの差別なく、多様な人材が、多様な価値観を尊重しつつ健康に働ける環境を整えることが必須であると考えており、CSR委員会の中で、「健康経営」推進、「働き方改革」などの活動を進めており、本年度も、経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄2021」に選定され、3年連続の受賞となりました。人材の確保と育成については、通年で計画的に、経営や事業関連のスキルを持つ経験者や新卒者の採用を国籍に関係なく行いながら、キャリア開発チームによる従業員教育の強化や、サクセッションプランに基づく経営・マネジメント人材の早期育成に取り組んでおります。また、長年経験を重ねてきた従業員にそのスキルを生かし活躍する場を提供するため、60歳の定年退職後の継続雇用希望者に対し、シニア職員制度を設けております。さらに全国にある国内グループ会社間のネットワークを生かし、異動・教育の仕組みを構築しております。 8.製商品の品質・安全性リスク 当社グループは、製商品の品質事故や、表示偽装などの品質不正が発生すると、お客様からの当社グループ全体への信用を損ない、ブランドが棄損され、事業に多大な影響が生じると認識しており、CSR行動宣言において「安全・安心でお客様にとって価値ある品質の商品をお届けする」ことを謳っております。当社グループは、このリスクに対応するため、「品質保証憲章」に品質保証理念や品質方針、行動指針を定め、お客様に安全な製商品をお届けするための品質保証に最大限努めており、従業員への品質教育や、生産工場における予防管理強化の基準・仕組みの構築、商品設計時の品質確認、使用原材料の品質確認、表示確認の仕組みを構築しています。(1)品質保証委員会、お客様満足推進部会代表取締役社長執行役員を委員長とする「品質保証委員会」を毎月開催し、お客様から寄せられた声を共有し、必要とされる基準やルールの策定・徹底を図っております。また、同委員会の傘下にお客様サービスセンター所長を部会長とする「お客様満足推進部会」を設置し、お客様から寄せられた声をもとに、商品設計やパッケージ表示の改善などに取り組んでいます。(2)ニッスイ品質保証基準と認定工場制度製商品の品質の安全性を確保する基準として、HACCP(注)の考え方を基本とした、関連法規より厳格な当社独自の「ニッスイ品質保証基準」を設けております。同基準には、生産工場認定基準を核に、その詳細基準として使用水基準、薬剤管理基準、防虫管理基準、樹脂部品基準、原材料基準、包材基準、アレルギー物質のコンタミ防止基準、フードディフェンス基準などがあります。ニッスイブランド商品は生産工場認定基準により認定した工場のみで生産しており、認定後も品質保証部による定期的な監査を実施、工場指導を行っております。また工場間の情報共有や課題解決を目的とし、工場経営者会議、工場品質管理担当者会議などを定期的に開催しております。(注)HACCP :Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス) 委員会が発表し,各国にその採用を推奨しております。(3)生産工場におけるFSSC22000(注)認証取得の推進国内の直営工場・関係会社工場の18拠点で、国際的な食品安全マネジメントシステム規格であるFSSC22000(注)認証を取得しております。(注)FSSC22000:Food Safety System Certificationの略。FSSC22000財団(Foundation FSSC22000)により開発された食品安全のためのマネジメントシステム規格。食品小売業界が中心の非営利団体、国際食品安全イニシアチブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)により、食品安全の認証スキームの一つとして承認された規格です。(4)原材料情報の一元管理体制当社では、全ての原材料について、配合、由来原料、産地、遺伝子組み換え情報、アレルゲン、規格、食品添加物、農薬・動物用医薬品・飼料添加物情報等を記載した「原材料規格保証書」を作成し、「原材料管理システム」に登録・一元管理しており、新しい原材料を使用する場合は、三次原料まで遡ることを基本に、原材料の製造現場の情報を収集しながら安全性を確認しております。(5)検査体制とエクセレントラボによる検査精度の向上原材料から製品まで、安全性を確認する検査体制を確立するため、当社グループの全工場に検査室を設置し、加えて食品分析部(東京イノベーションセンター)、青島日水食品研究開発有限公司(青島)、タイ品質管理課(サムットサコーン)の3拠点で検査を行える体制を構築しています。食品分析部では、当社グループの生産工場の検査室の検査制度の維持と検査レベル向上を目指した取り組み「エクセレントラボ」活動を展開しております。具体的には、検査マニュアルを定期的に更新して配布、子会社である日水製薬㈱で製造するエクセレントラボ専用培地を全検査室で共通使用するとともに、全検査員を対象として精度管理試験を年1回実施し、検査精度を確認しています。さらに各検査員の検査技術向上のため、OJTプログラムによる教育や、レベル別の認定講習会、エクセレントラボ推進会議の定期開催による検査員のレベルアップを図っています。(6)青島日水食品研究開発有限公司、タイ品質管理課による海外工場の管理青島日水食品研究開発有限公司ならびにタイ品質管理課では、中国、東南アジアのニッスイ認定工場で生産する当社製商品の品質管理を行っており、生産工場への品質指導に加え、製商品のサンプリング検査や輸出時検査を実施、各工場の品質管理責任者の集合研修を年1回開催しています。(7)品質事故時の対応万が一品質事故が生じた際には、製品回収、状況把握と原因究明、お客様への対応等、迅速かつ適切な対応をとるための体制を整備しております。 9.消費者意識とニーズの変化に対応した新しい技術開発への後れによるリスク前出の気候変動や自然災害の頻度増・激甚化、人為的な海洋汚染による地球環境の保全への消費者の意識の高まりや、世界人口の増加と国内の人口減・少子高齢化など、消費者の生活ニーズとライフスタイルは刻々と変化し、即食・簡便ニーズや健康志向に対応した商品に対する需要が高まってきています。また、世界では代替タンパク製品の市場の出現などへの新しい技術も日々更新されております。これらの消費者意識・ニーズの変化への対応や、先端技術の開発に後れをとると、当社グループの成長に影響をおよぼすリスクがあると考えています。当社グループは、常に消費者の生活ニーズを考えながら、研究開発投資を行い、世界の人々のいきいきとした生活と希望ある未来にお役立ちできる様々な製商品を製造・販売することを使命と考えております。2011年には、事業展開の礎である研究開発力の強化を目指し、約75億円を投じて東京都八王子市に東京イノベーションセンターを建設し、中央研究所、商品開発部、技術開発部、食品分析部を集約しました。また1994年設立の中央研究所大分海洋研究センター(大分県)も、東京イノベーションセンターと連携を取りながら、水産資源の持続可能性につながる養殖に特化した研究開発を進めています。最先端の研究開発(基礎研究)から最前線の研究開発(事業レベルへの応用)まで幅広い課題に取り組んでいます。さらに、従来の研究開発テーマに加え、水産事業においては中長期的な視点による新規魚種の開拓や陸上養殖の拡大、2017年に完全養殖に成功したマダコの養殖技術開発など新規事業の創出につながる研究投資を行っております。食品事業においては、代替タンパクの研究開発に注力しており、代替タンパクの需要拡大に対応できるよう、基礎および応用研究を進めています。当社グループのシテマリン社(フランス)では、植物性タンパク質のハンバーグ型のパテの販売を開始しています。この他、近年の健康志向による「減塩」へのニーズの高まりに応えるため、塩分を減らしても美味しさが損なわれない、塩味とうま味を増強する成分の研究や、コクのあるうま味を感じさせる成分、苦味や酸味を包んで感じにくくする成分に着目した味覚研究にも取り組んでいます。また、スケソウダラは食べるだけで、特別な運動をしなくても除脂肪量(筋肉量の目安となる)が優位に増加することが研究成果として発表されており、「速筋タンパク」シリーズとしてスケソウダラすりみ100%を使用した商品を展開しています。さらに食品事業全般において、従来の開発体制に加え、使う人が感じる価値を主眼に考えて発想する「デザイン思考」による新しい開発手法を取り入れる「未来型創造開発会議」を設置し、5~10年先の生活ニーズに応える取り組みを進めております。 10.情報セキュリティリスク当社グループでは、通信販売事業などにおいてお客様の個人情報を保有しており、このような個人情報や経営、事業、研究などに関する重要な情報の漏洩・紛失を防止するため、リスクマネジメント委員会の傘下に「情報セキュリティ部会」を設置し、「情報セキュリティ基本方針」などの規程やルールの整備、システムの管理体制の強化、定期的な従業員に対する教育や訓練を実施し、情報セキュリティ管理を徹底しております。またグループ経営を進める中、当社グループ内でデータ漏洩、システム破壊が起きると、グループ全体の事業に大きく影響することが考えられます。そこで、当社国内グループ会社の情報セキュリティ基本方針や利用者ルールの徹底、技術的対策、教育や訓練を含めた人的対策の領域において、各到達点を具体的に策定し、ニッスイグループIT部門会議を定期的に開催するなどの取り組みにより均質化を進めてまいりました。今後はグループ会社の情報セキュリティ対策が有効に機能しているか定期的に確認し、情報セキュリティ確保への継続的な改善・向上に努めてまいります。また、今後、各拠点の省人化や、生産、物流、販売でのシステム連携による効率化が進むにつれ、自然災害などによる物理的なシステム破壊や、長期停電、外部からの攻撃などの要因を問わず、そのシステムの停止による事業活動への影響が増加すると考えられ、システム停止を想定した対策や有事対応の体制づくりを進めております。 11.感染症の拡大によるリスク世界で猛威をふるっている新型コロナウイルス(COVID-19)については、一部の国々でワクチン接種が進み経済活動を再開させる動きが広がる一方、変異株の拡散により収束の見通せない国々が存在するなど、予断を許さない状況が続いています。当社への影響は、予想が困難ではありますが、漁撈・養殖や食品の生産拠点において感染が拡大した場合は生産の停止や縮小、調達先や物流の過程で感染が拡大した場合は原料の調達が難しくなるなど、安定的な製商品の供給に支障が生じる可能性があります。また、コロナ禍による世界的な外食・観光需要減、需要減による水産市況の悪化、安定生産を継続するための人員確保に伴うコスト増などが継続した場合、収支に影響する可能性があります。また感染症予防による渡航規制が長期化すると、事業の海外展開に後れが出るおそれや、海外グループ会社とのコミュニケーション不足がガバナンスの低下を招くおそれがあります。当社グループでは、当社製商品を継続的・安定的に世界の人々に供給する使命を全うするため、現時点で考えられる最大限の措置を講じています。代表取締役社長執行役員を本部長とする新型コロナウイルス対策本部を本社に設置し、当社の各事業所はもとより国内グループ会社には現地対策本部、南米、北米、欧州、アジア・オセアニアとは、各エリアの事業執行とのWEB会議を通じて、時々刻々と変化する各国や国内情勢についての情報収集を行っております。また、WHOや関係省庁・保健行政機関から収集した情報を共有した上で、新型コロナウイルスによる当社グループへのリスクを可能な限り予測し、基本的対策を定めて実施しております。在宅でのテレワークの推進、衛生管理を徹底、罹患者(疑いを含む)が発生した場合に拠点機能を速やかに回復させるための対策など、今後も適宜、対策を講じてまいります。 各リスク間の関係図
FY2020|15,813 文字
2 【事業等のリスク】本項目に記載する当社グループの事業等のリスクは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクを有価証券報告書提出日現在において判断し記載しております。本項目は、当社取締役会で審議した事項であり、毎年、取締役会において審議し更新してまいります。 <当社グループのリスクマネジメント体制>当社グループは、水産物をはじめとする資源から様々な食品や医薬品原料などを製造し、世界の人々に対して供給することを使命としており、その責務を果たすべく、安定した生産・販売の継続に努めております。そのような観点から、当社グループでは、事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し、損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、「リスクマネジメント規程」を制定し、リスクマネジメント委員会(注1)がリスクマネジメントシステムの構築と運用、定期的な取締役会への報告を行っております。当社グループにとって影響の大きいリスク群については重要リスク(注2)として専門部会を設置しており、とりわけ、2019年末から世界に拡大した新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大など、不測のリスクが発生した場合には、代表取締役社長執行役員を本部長とする対策本部を立ち上げ、日々変化する情勢を踏まえながら、迅速かつ柔軟にリスク対応を行っております。(注1)リスクマネジメント委員会:全執行役員で構成され、代表取締役社長執行役員が委員長を務めております。(注2)重要リスク:「品質保証」「環境」「労務・安全」「コンプライアンス」「情報セキュリティ」「災害BCP(事業継続計画)」等 1.気候変動(世界的な気温上昇)による影響2015年に開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され、各国が世界的な気温上昇を抑えるため温室効果ガスの削減に取組んでいます。また2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書によれば、工業化以降、2030~2050年に1.5℃上昇する見込みと言われています。当社グループの水産事業、食品事業、ファインケミカル事業は、持続可能な水産物資源、農畜産物資源から水産品、食品、健康食品、医薬品原料を製造・販売しており、気候変動が進むと各事業が大きな影響を受けることが想定されます。なかでも、気温上昇は、海洋における海水温と海水面の上昇、海水温の分布や海流の変化をもたらし、海洋環境を変化・悪化させる可能性があります。さらに陸上環境においても、各地の気温の上昇や天候不順などの変化・悪化が予想されます。これにより、海洋・陸上における水産物資源、農畜産物資源の生態系への影響が懸念されております。 また消費者・取引先など社会における環境問題への関心は年々高まっており、環境問題に対する活動に後れが生じた場合は、当社グループの事業収支に影響を与えるおそれがあります。当社は、環境問題への対応を重要な課題と認識し、2003年に制定した「環境憲章」により環境理念や行動方針を示し、CSR委員会(注)直下の環境部会が、温室効果ガス排出などの環境負荷に関して下記ⅰ)~ⅴ)の取組みを行うとともに従業員への啓蒙活動を行っています。(注) CSR委員会:13ページ参照 ⅰ)CO2排出量、使用水量、事業所外排出物量、リサイクル率、フロン漏洩量の管理による環境負荷低減活動当社グループ中長期目標としてCO2排出量(原単位)を、2015年度比で2023年度までに10%削減、2030年度までに15%削減する。ⅱ)当社グループの国内外の主要な事業所において、環境マネジメントシステムISO14001の認証を取得ⅲ)バイオマス燃料の利用拡大、再生可能エネルギー発電の拡大、排出メタンの再利用による発電ⅳ)省エネ、高効率設備の導入による温室効果ガスの削減とコストダウンⅴ)物流におけるモーダルシフトの拡大による温室効果ガスの削減 (1)資源アクセス確保に与える影響地球温暖化による気候変動は、漁獲量や農畜産物の収量の減少をもたらす可能性があり、以下のとおり、当社事業の資源アクセスに影響することが考えられます。 ≪海洋環境の変化が各事業の資源アクセスに与える影響≫当社グループの各事業は、水産物を主原料とする製商品が多くあることから、各事業の収支や事業継続に影響を与える可能性があります。著しい海洋環境の変化が生じると下記のようなリスクが生じることが考えられます。 ① 各水産品種の生息可能な水域が変化することにより、漁撈や海面養殖場への影響として、当社グループが取扱う水産品種における従来の漁場、海面養殖場の環境(海水温条件など)が、その魚種の生息条件に適さなくなり、漁獲量・養殖生産量が減る可能性があります。② 現在、水産物市場は世界で拡大しておりますが、海洋環境が変化した場合には、当社グループに限らず、水産業界全体に及ぶ可能性があることから、漁獲量・養殖生産量減少により水産物の流通量が減ることで、水産物の価格が上昇し、消費者の水産物離れを招くなど、水産物市場が縮小することが考えられます。③ 水産物市場全体の縮小が生じれば、商事事業(買付)においても影響が出ることが考えられます。④ 漁獲可能な水産品種の減少や漁獲量減少により、各国の漁獲制限などの規制の強化につながる可能性があります。⑤ 当社グループの食品事業においても、水産物を主原料とする製商品が売上高の約7割を占めるなど、水産物原料の必要量確保が難しくなると大きな影響を受けることとなります。 ≪陸上環境の変化が事業の資源アクセスに与える影響≫当社グループの食品事業は、水産物以外にも米や野菜などの農産物、鶏肉などの畜産物を原料とする製商品を販売しております。陸上環境の変化は、各地の農畜産物原料の収量に影響を与え、原料である農畜産物の産地の環境変化により、中長期的に現在の調達エリアの変更が必要になる等、食品事業の収支に影響を与える可能性があります。 当社グループは、水産物における資源アクセス確保が経営の重要な課題であると認識しております。中期経営計画「MVIP+(プラス)2020」では、主要戦略のひとつとして、持続可能な水産資源の利用と調達の推進を掲げており、現在、CSR委員会傘下の「海洋・資源持続ワーキンググループ」により、当社グループの事業活動による水産資源への影響を把握するため、漁獲地・魚種毎の資源状態の調査活動などを進めています。また当社グループでは、漁業におけるMSC認証(注1)や、養殖業におけるASC認証(注2)、MEL認証(注3)などの取得と、これらの水産エコラベルを表示した水産物の活用に取り組むとともに、世界の水産業界のリーダー企業が参画するSeaBOS(持続可能な水産ビジネスを目指すイニシアティブ)(注4)へも参画しています。さらに持続可能な資源アクセスの確保を進めるため、養殖事業戦略として、チリのサルモネス・アンタルティカ社をはじめ、国内外グループ会社における生産基盤の安定と魚種の充実を掲げており、トラウト・ブリ・本マグロ・ギンザケ・カンパチ・マダイ・スマに加え、陸上施設でのバナメイエビ養殖(注5)、マサバの循環式陸上養殖(注6)など環境負荷を低減した養殖の研究・開発・商品化にも取り組んでいます。また、養殖事業の重要性が高まる中、将来、海面の養殖適地は飽和状態になることが考えられることから、当社グループでは、水産物のサステナブルな調達力強化の一環として、海外養殖事業会社との提携や、養殖の技術開発を進めております。2018年には、環境基準が厳しくエビ養殖の参入障壁が高いといわれるオーストラリアで、同国の養殖エビ生産量の三分の一強を占める養殖会社シーファーム・グループ社へ資本参加し、その高品質なエビを2019年10月からニッスイブランド品として発売いたしました。同社は同国北部地域における大規模なエビ養殖事業を計画、建設に着手しており、この事業を担う同社子会社のプロジェクト・シー・ドラゴン社では、2022年からブラックタイガーの出荷を開始する予定です。当社グループではこれを日本、オーストラリア、ニュージーランド市場で独占的に販売する他、関連製品を当社グループ会社の販売網を通じてグローバルに販売していく計画です。2020年4月には、当社100%子会社のニッスイヨーロッパ社が、丸紅㈱(東京都)とともに、デンマークでサケの閉鎖循環式養殖事業を営むダニッシュ・サーモン社へ資本参加いたしました。世界的に水産物の需要が高まるなか、サケ・マス類は、生産量の約8割を養殖が占めていますが、海面の養殖適地に限界があることから、近年では陸上での養殖が注目されています。同社はアトランティック・サーモンの閉鎖循環式養殖で成功している数少ない先端企業であり、閉鎖循環式養殖は飼育環境が安定的であること、環境負荷の抑制が可能であること、消費地近隣での養殖により鮮度向上や物流コスト低減が実現できることなど、多くのメリットが期待できます。2021年には新規設備が完成予定であり、現在の水揚げ量1,000トンを2022年に2,700トンに引き上げる計画です。国内では、当社と日鉄エンジニアリング㈱(東京都)が協力し、弓ヶ浜水産㈱のギンザケ養殖場で「大規模沖合養殖システム」の技術開発を進めています。2016年12月より開始した「大規模沖合養殖システム」の実証試験では、沖合養殖で必要な(1)海上での飼料の大量貯蔵技術、(2)貯蔵タンクから生簀への飼料の長距離搬送技術、(3)遠隔漁場における適正な給餌管理等の技術検証を行いました。2020年4月時点では、実証試験機の改善・改良を進めながら拡張し、弓ヶ浜水産が操業する鳥取県境港市の沖合3キロメートル程度の美保湾の漁場に、約300平方メートルのプラットフォーム上に飼料を100t程度貯蔵できる飼料サイロを設置し、ここから直径25mの円形生簀10基に設置している自動給餌機への自動搬送を行い、飼育管理を行っております。海上飼料サイロの設置により、既存の給餌機設備と比較して、1生簀に対し約6倍量を貯蔵できるようになりました。また、飼料サイロから自動給餌機への飼料補給は、海底の配管を通じて自動的に搬送・充填されるため、海況悪化による給餌機会のロス削減や省力化を図ることができます。また、この設備は耐波浪性と耐潮流性を有し、沖合での設置が可能であり、適切な給餌量をコントロールする事が可能な給餌制御システム「アクアリンガル」(注7)を活用しております。 (注1) MSC認証:海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)の厳正な認証規格に適合した漁業で獲られた持続可能な水産物(天然魚)に対する認証です。通称「海のエコラベル」とも呼び、海洋の自然環境や水産資源を守って獲られた水産物(天然魚)に与えられます。MSC認証を取得した漁業で獲られた水産物は国際的なトレーサビリティが可能であり、適切な水産資源管理につながります。当社グループはアラスカのスケソウダラの他、複数の漁場魚種でMSC認証を取得した水産物を取り扱っております。(注2) ASC認証:養殖業が持続可能な方法で運営され、周辺の自然環境や地域社会への配慮が行われている「責任ある養殖水産物」であることを証明するもので、WWF (World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)とオランダの持続可能な貿易を推進する団体であるIDH(The Sustainable Trade Initiative)が設立支援した水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が運営しています。この認証制度は自然資源の持続可能な利用を補いながら、養殖そのものが及ぼす環境への負荷を軽減し、これらに配慮した養殖業に携わる地域の人々の暮らしを支えるための社会的な仕組みのひとつです。当社グループでは、サルモネス・アンタルティカ社(チリ)のトラウトと黒瀬水産㈱(宮崎県)のブリが本認証を取得しております。(注3) MEL認証:2016年12月に設立された一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会が運営する認証スキーム。水産資源の持続的利用や生態系保全に資する活動を積極的に行っている生産者や、そのような生産者からの水産物を積極的に取扱う加工・流通業者の取り組みを促進する事、漁業や養殖、加工、流通段階での水産物の取扱いについての透明性を担保し、関係事業者や消費者の選択や信頼に寄与することを目的とした認証スキームです。①漁業認証、②養殖認証、③流通加工段階(CoC)認証(CoC:Chain of Custody)の3つがあります。当社グループでは黒瀬水産㈱がブリの養殖認証と流通加工段階認証、金子産業㈱(長崎県)がクロマグロ、マダイの養殖認証、弓ヶ浜水産㈱がギンザケの養殖認証と流通加工段階認証を取得しております。(注4) SeaBOS:Seafood Business for Ocean Stewardshipの略。日本、ノルウェー、タイ、米国、韓国など世界各国から水産業界のリーダー企業が参画し、海洋環境および海洋資源の保全と持続的な資源利用を進め、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブです。スウェーデン ストックホルム大学のストックホルム・レジリエンスセンターが事務局として活動を推進しています。2018年9月、軽井沢で開催された第3回SeaBOS会議では、当社を含む世界の水産企業10社のCEOが出席し、国連SDGsの推進役であり、本イニシアティブを支援するスウェーデン皇太子が隣席され、IUU(違法・無報告・無規制)漁業や奴隷労働の撲滅などに取り組むことで合意したほか、海洋プラスチックごみ問題についても新たに戦略を策定していくことを決定しています。(注5) バナメイエビ養殖:投薬をしない安全安心で生食可能な国産陸上養殖エビとして、飼育水槽内の微生物集合体に水を処理させ使用する飼育水の量を必要最低限に抑制できる「閉鎖式バイオフロック法」により養殖しています。従来の陸上養殖と比較して、環境負荷が低く、設備が簡易なことから事業コストの低減が期待できます。(注6) マサバの循環式陸上養殖:地下から汲み上げた海水に近似する塩分を含む地下水を利用し、日立造船㈱の水処理技術により水温・水質をコントロールし、マサバの生育に最適な環境を保ちます。外海の海水を使用しないため、寄生虫や魚病リスクを低減、自然環境に左右されない安定供給が可能となります。(注7) アクアリンガル:海上生簀での養殖において、給餌の自動化と、養殖魚が疑似餌を引く動作に基づいて食欲をはかり給餌量をコントロールする当社独自のシステムです。養殖魚の最大成長を達成しつつ、魚の食欲に合わせた飼料量の管理が可能であり、残餌による環境負荷の低減につながります。また、インターネットを活用して、天候や水温、溶存酸素濃度などの養殖環境、魚の空間分布を継続的に解析することができ、給餌時間、給餌量、給餌間隔などの遠隔での調整も可能です。すでに当社グループの弓ヶ浜水産㈱のギンザケ「境港サーモン」の養殖に実用化されております。 (2)自然災害の頻度増加と激甚化によるリスク地球温暖化による気候変動は、近年、台風、ハリケーン、時化、豪雨、洪水、干ばつ等の自然災害の頻度を増加させ、激甚化させる傾向にあります。当社グループではリスクマネジメント委員会に「災害BCP(事業継続計画)部会」を設置し、2017~2021年度の5か年計画で体制の強化を図っておりますが、想定外の災害が生じた場合には、各事業に及ぼす影響が拡大する可能性があります。 ≪各事業共通のリスク≫① 当社グループの食品製造や冷蔵倉庫、養殖場、工場などの施設・設備や漁船への直接被害と修繕コスト増加② 長期停電や水道水停止等による生産・物流への影響③ 原料となる水産物・農畜産物への直接被害による確保困難④ 予防・安全対策コストとしての設備費や保険費用の増加 ≪水産事業のリスク≫ 水産事業では、台風等の悪天候による時化の増加が、漁業での漁撈日数の減少、これに伴う漁獲量の減少をもたらし、養殖事業では、海面養殖の生簀損壊、給餌回数の減少による魚の成長不足の可能性があります。また、漁撈、海面養殖の労働環境の悪化に繋がり、深刻な人手不足を招きかねないため、当社グループでは「大規模沖合養殖システム」などの海面養殖において前述の給餌制御システム「アクアリンガル」の導入や、台風等の被害による海面養殖の生簀損壊を防ぐ、沈下式生簀の導入などの対策を進めております。 (3)温室効果ガスに関する法規制強化・エネルギー政策の影響今後も温室効果ガスに関する法規制が強化され、国のエネルギー政策に伴う電力・燃料価格の上昇が見込まれます。気候変動やこれら法規制・エネルギー政策の影響で、製商品の製造原価や、冷蔵庫・物流におけるコールドチェーン維持の温度管理コストが増加し、事業収支に影響を与える可能性がありますが、当社グループは、法規制を遵守することは当然として、再生可能エネルギーへの転換、省エネ・高効率化設備への設備投資、その他前出の環境負荷低減に向けた取り組みを引き続き進めてまいります。 2.原料価格の高騰・乱高下によるリスク 従来より、水産物の漁獲量・養殖生産量の増減などによる水産物市況の変動は度々生じておりましたが、さらに、前出の気候変動がもたらす海洋・陸上環境の変化が水産物・農畜産物原料の収量を減少させ、原料価格が高騰するおそれがあります。 また、2019年の国際連合の発表では、世界人口は2050年に97億人を超えることが見込まれております。当社グループの事業にとっては、人口増による食料需要の増加が市場拡大をもたらし、チャンスにつながる可能性がありますが、一方で、資源獲得競争が熾烈になり、原料価格の高騰をもたらすおそれもあります。このような外部環境の変化による原料価格の高騰がもたらされれば、各事業の収支に影響するおそれがあります。当社グループは、従前より安定的な原料確保と製品供給の重要性を認識し、グローバルな調達先との提携やM&A、養殖事業における研究・技術開発による資源アクセスの安定的確保に努めてまいりました。さらに、前出のとおり、中期経営計画「MVIP+(プラス)2020」の主要戦略のひとつとして、持続可能な水産資源の利用と調達の推進を進めており、今後も安定的な原料確保のための施策を推進してまいります。 3.人為的な海洋汚染によるリスク 近年、日常生活に欠かせない飲料・食品の容器包装や、事業活動に使用されているプラスチックの海洋環境への影響が社会課題として取り上げられています。当社グループは、食品や水産事業を中心に事業活動を行っており、この問題の深刻さが増すと事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。プラスチックごみによる海洋汚染は、海洋の生態系破壊や海洋生物の減少につながるおそれがあり、食品や水産事業での原料調達や、食の安全性に影響を及ぼす重要な問題であると認識し、事業全般でのプラスチック使用に対する対策を進めており、2019年度よりCSR委員会の下に部会を設置し、ワーキンググループによる活動を行っています。(1)海洋環境ワーキンググループ海洋環境へのプラスチックの流出ゼロにつながる活動を推進、プラスチック製の漁具の管理強化や素材変更、外部団体における海洋へのプラスチック流出調査の支援を行っております。具体的には、海面養殖での生簀に使用する発泡スチロール製の浮き具からのプラスチック流出を防ぐため、堅牢な樹脂で覆った浮き具や、発泡スチロールを使用せず内部が空洞の樹脂製浮き具への全面転換を進めております。(2)プラスチックワーキンググループプラスチック資源の3R(リデュース、リユース、リサイクル)+R(リニューアブル(再生材の利用))の推進、および、生分解性プラスチックの利用検討などを進めています。具体的には、生産事業所からの廃プラスチック発生量の削減、容器包装の減容化、紙等の代替素材への変更に加え、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチック等の利用も視野とした検討を行っています。また、当社グループでは、海面養殖事業が海洋環境に与える負荷の低減策を進めています。例えばブリの養殖において、天然のブリの種苗は、出荷サイズまでの育成には一定期間を要しますが、当社の人工種苗研究と養殖技術開発により、海洋での短期間での育成・水揚げを実現しています。その他に、飼料形態の変更や、前出の給餌制御システム「アクアリンガル」の開発導入による魚の食欲に合わせた投餌など、環境への負荷の低減に取り組んでいます。また、海面養殖設備の定期的な点検・補修による堅牢化や、台風被害による設備損壊を避けるための大型沈下式生簀の利用拡大、前出のプラスチック流出を防ぐ生簀の浮き具への全面転換を進めております。 4.海外事業展開におけるリスク当社グループの中期経営計画「MVIP+(プラス)2020」の主要戦略のひとつとして、海外展開の加速を目指し、水産・食品事業における欧州での更なる拡大とアジアへの注力、ファインケミカル事業における医薬品原料の海外展開を掲げております。事業展開する国において政治的な問題から生じる紛争、法規制の変更等のリスクが顕在化した場合、事業の基本的戦略や収支に影響を与える可能性があります。また海外市場における情勢の変化について早期の情報収集に努めるとともに迅速な対応を心掛けておりますが、想定を超える情勢の変化が生じた場合には、事業収支に影響を与える可能性があります。考えられる主なリスクは以下のとおりです。・各国の法令変更 ・為替リスク ・カントリーリスク(政治、紛争、テロ等の発生) ・訴訟 ・各国の保護主義台頭 5.知的財産に関するリスク 当社グループは、養殖事業における養殖魚の育種ノウハウ、ファインケミカル事業におけるオメガ3系の必須脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)の高度精製技術等、当社グループの事業に重要な知的財産を所有しております。当社グループが目指す海外進出や各事業の技術革新により、知的財産の重要性が高まる中、当社グループの知的財産が漏洩した場合は、事業収支に影響を与える可能性があります。また当社グループが第三者の知的財産権を侵害したと認定された場合は侵害訴訟や製商品販売・事業活動の差止請求を受け、当社グループの事業戦略・収支に影響を及ぼす可能性があります。当社では後述の情報管理の徹底に加え、守秘義務契約の徹底はもとより、研究・開発部門の従業員への知的財産に関する教育に取り組んでおります。 6.人権に関するリスク 1998年、国際労働機関(ILO)でILO宣言(中核的労働基準)が採択され、労働における基本的原則および権利が定められ、経済成長と共に企業活動のグローバル化が進む中、社会が一致団結しつつ労働者の権利を保護することが求められました。2000年には、国連グローバルコンパクトが発足し「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の分野で、企業が影響力を発揮すべき10原則を定めており、2011年には「ビジネスと人権に関する国連指導原則」として人権を尊重する責任が国家のみならず、企業にもあることが明示されました。さらに2015年に発表されたSDGsでも、その前文に「誰一人取り残さない」として、全ての人々の人権とジェンダー平等の実現を目指す記述があり、働きがいのある人間らしい雇用、貧困をなくす、ジェンダー平等など具体的な目標が示されています。これらの前提に立ち、当社では自社の労働者に対する権利の保護とともに、当社グループの事業活動に関わるサプライチェーンにおける人権保護に取り組んでいます。近年、ESG 投資の普及・拡大が進み、企業活動のグローバル化が引き起こす人権侵害には特に厳しい目が注がれるようになっております。自社のみならず、サプライチェーンを含めて企業が引き起こす人権問題は、ブランドの毀損、さらには、ダイベストメントにつながるなど企業にとって致命的なリスクを生じさせるものと認識し、下記の取り組みを推進しております。(1)CSR調達ニッスイグループ調達基本方針と、「遵法・調達倫理」「環境配慮」「人権配慮」「お取引先様との協働」「品質・安全性確保」「情報セキュリティ」「社会貢献」の7項目で構成するサプライヤー行動指針を策定しています。主要な原材料、製品を調達するサプライヤーを対象に説明会を実施し、「ニッスイCSR購買取り組みセルフチェックシート」(全132項目)に回答いただき、そのデータを分析の上、各社にフィードバックしています。新規サプライヤー向けにはヒアリング形式で行う「CSR購買取り組みチェックシート」(全17項目)を実施し、当社グループのCSR調達の考え方や目指す姿をご説明し、協働の意思確認を行っています。さらに複数のサプライヤーを訪問し、労働環境や労務管理を確認する「簡易チェック(人権配慮のみ9項目)」を開始しています。(2)ハラスメントの撲滅当社グループでは、倫理憲章を制定・周知しており、その中で個人の尊重と差別・ハラスメントの禁止を定めております。また当社の人事部にハラスメントデスクを設置し、全従業員を対象に集合研修やEラーニングを実施し意識向上を進めるとともに、国内各グループ会社にも、ハラスメント相談窓口を設置し、専任担当者の集合研修を実施するなど、グループ各社の認識を高めています。(3)ダイバーシティの推進CSR委員会に「ダイバーシティ・人材育成部会」を設置し、国籍、性別、年齢、身体的特徴などへの差別なく、多様な人材が働き、互いに多様な価値観を尊重しつつ働ける企業を目指しています。 7.人材の確保と育成に関するリスク当社グループでは、海外事業展開を含めた中長期における当社グループの経営計画達成のために、事業創出・企画運営の能力のある経営を担う人材、海外国内を問わず活躍できるグローバル人材やプロフェッショナル人材、各生産拠点で成果を上げる人材の確保と育成が必要であると考えています。しかし、日本国内の少子高齢化と人口減少が進むにつれ、国内での優秀な人材確保が難しくなりつつある中、多様な人材が働けるダイバーシティ対応に後れをとると、必要な人材確保が困難になると考えています。当社グループは、雇用した人材が国籍、性別、身体的特徴などの差別なく、多様な人材が、多様な価値観を尊重しつつ健康に働ける環境を整えることが必須であると考えており、CSR委員会の「ダイバーシティ・人材育成部会」の中に「健康経営ワーキンググループ」を設置し、「健康経営」推進、「働き方改革」などの活動を進めており、本年度も、昨年度に続き経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄2020」に選定されました。人材の確保と育成については、通年で計画的に、経営や事業関連のスキルを持つ経験者や新卒者の採用を国籍に関係なく行いながら、キャリア開発チームによる従業員教育の強化や、サクセッションプランに基づく経営・マネジメント人材の早期育成に取り組んでおります。また、長年経験を重ねてきた従業員にそのスキルを生かし活躍する場を提供するため、60歳の定年退職後の継続雇用希望者に対し、シニア職員制度を設けております。さらに全国にある国内グループ会社間のネットワークを生かし、異動・教育の仕組みを構築しております。 8.製商品の品質・安全性リスク 当社グループは、製商品の品質事故や、表示偽装などの品質不正が発生すると、お客様からの当社グループ全体への信用を損ない、ブランドが棄損され、事業に多大な影響が生じると認識しており、CSR行動宣言において「安全・安心でお客様にとって価値ある品質の商品をお届けする」ことを謳っております。当社グループは、このリスクに対応するため、「品質保証憲章」に品質保証理念や品質方針、行動指針を定め、お客様に安全な製商品をお届けするための品質保証に最大限努めており、従業員への品質教育や、生産工場における予防管理強化の基準・仕組みの構築、商品設計時の品質確認、使用原材料の品質確認、表示確認の仕組みを構築しています。(1)品質保証委員会、お客様満足推進部会代表取締役社長執行役員を委員長とする「品質保証委員会」を毎月開催し、お客様から寄せられた声を共有し、必要とされる基準やルールの策定・徹底を図っております。また、同委員会の傘下にお客様サービスセンター所長を部会長とする「お客様満足推進部会」を設置し、お客様から寄せられた声をもとに、商品設計やパッケージ表示の改善などに取り組んでいます。(2)ニッスイ品質保証基準と認定工場制度製商品の品質の安全性を確保する基準として、HACCP(注)の考え方を基本とした、関連法規より厳格な当社独自の「ニッスイ品質保証基準」を設けております。同基準には、生産工場認定基準を核に、その詳細基準として使用水基準、薬剤管理基準、防虫管理基準、樹脂部品基準、原材料基準、包材基準、アレルギー物質のコンタミ防止基準、フードディフェンス基準などがあります。ニッスイブランド商品は生産工場認定基準により認定した工場のみで生産しており、認定後も品質保証部による定期的な監査を実施、工場指導を行っております。また工場間の情報共有や課題解決を目的とし、工場経営者会議、工場品質管理担当者会議などを定期的に開催しております。(注) HACCP :Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会が発表し,各国にその採用を推奨しております。(3)生産工場におけるFSSC22000(注)認証取得の推進国内の直営工場・関係会社工場の18拠点で、国際的な食品安全マネジメントシステム規格であるFSSC22000(注)認証の取得を進めており、2019年10月現在で17の拠点が取得済です。2020年度中に18拠点の取得が完了する予定です。(注) FSSC22000:Food Safety System Certificationの略。FSSC22000財団(Foundation FSSC22000)により開発された食品安全のためのマネジメントシステム規格。食品小売業界が中心の非営利団体、国際食品安全イニシアチブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)により、食品安全の認証スキームの一つとして承認された規格です。(4)原材料情報の一元管理体制当社では、全ての原材料について、配合、由来原料、産地、遺伝子組み換え情報、アレルゲン、規格、食品添加物、農薬・動物用医薬品・飼料添加物情報等を記載した「原材料規格保証書」を作成し、「原材料管理システム」に登録・一元管理しており、新しい原材料を使用する場合は、三次原料まで遡ることを基本に、原材料の製造現場の情報を収集しながら安全性を確認しております。(5)検査体制とエクセレントラボによる検査精度の向上原材料から製品まで、安全性を確認する検査体制を確立するため、当社グループの全工場に検査室を設置し、加えて食品分析部(東京イノベーションセンター)、青島日水食品研究開発有限公司(青島)、タイ品質管理課(サムットサコーン)の3拠点で検査を行える体制を構築しています。食品分析部では、当社グループの生産工場の検査室の検査精度の維持と検査レベル向上を目指した取り組み「エクセレントラボ」活動を展開しております。具体的には、検査マニュアルを定期的に更新して配布、子会社である日水製薬㈱で製造するエクセレントラボ専用培地を全検査室で共通使用するとともに、全検査員を対象として精度管理試験を年1回実施し、検査精度を確認しています。さらに各検査員の検査技術向上のため、OJTプログラムによる教育や、レベル別の認定講習会、エクセレントラボ推進会議の定期開催による検査員のレベルアップを図っています。(6)青島日水食品研究開発有限公司、タイ品質管理課とによる海外工場の管理青島日水食品研究開発有限公司ならびにタイ品質管理課では、中国、東南アジアのニッスイ認定工場で生産する当社製商品の品質管理を行っており、生産工場への品質指導に加え、製商品のサンプリング検査や輸出時検査を実施、各工場の品質管理責任者の集合研修を年1回開催しています。(7)品質事故時の対応万が一品質事故が生じた際には、製品回収、状況把握と原因究明、お客様への対応等、迅速かつ適切な対応をとるための体制を整備しております。 9.消費者意識とニーズの変化に対応した新しい技術開発への後れによるリスク前出の気候変動や自然災害の頻度増・激甚化、人為的な海洋汚染による地球環境の保全への消費者の意識の高まりや、世界人口の増加と国内の人口減・少子高齢化など、消費者の生活ニーズとライフスタイルは刻々と変化しております。また、世界では代替タンパク製品の市場の出現などへの新しい技術も日々更新されております。これらの消費者意識・ニーズの変化への対応や、先端技術の開発に後れをとると、当社グループの成長に影響をおよぼすリスクがあると考えています。当社グループは、常に消費者の生活ニーズを考えながら、研究開発投資を行い、世界の人々のいきいきとした生活と希望ある未来にお役立ちできる様々な製商品を製造・販売することを使命と考えております。2011年には、事業展開の礎である研究開発力の強化を目指し、約75億円を投じて東京都八王子市に東京イノベーションセンターを建設し、中央研究所、商品開発部、技術開発部、食品分析部を集約しました。また1994年設立の中央研究所大分海洋研究センター(大分県)も、東京イノベーションセンターと連携を取りながら、水産資源の持続可能性につながる養殖に特化した研究開発を進めています。最先端の研究開発(基礎研究)から最前線の研究開発(事業レベルへの応用)まで幅広い課題に取り組んでいます。さらに、従来の研究開発テーマに加え、水産事業においては中長期的な視点による新規魚種の開拓や陸上養殖の拡大、2017年に成功したマダコの完全養殖の事業化など新規事業の創出につながる研究投資を行っております。代替タンパクの需要に対しては既に当社グループのシテマリン社(フランス)において植物性タンパク質のハンバーグ型のパテの販売を開始しており、今後も研究を継続してまいります。さらに食品事業全般において、従来の開発体制に加え、使う人が感じる価値を主眼に考えて発想する「デザイン思考」による新しい開発手法を取り入れる「未来型創造開発会議」を設置し、5~10年先の生活ニーズに応える取り組みを進めております。 10.情報セキュリティリスク当社グループでは、通信販売事業などにおいてお客様の個人情報を保有しており、このような個人情報や経営、事業、研究などに関する重要な情報の漏洩・紛失を防止するため、リスクマネジメント委員会の傘下に「情報セキュリティ部会」を設置し、「情報セキュリティ基本方針」などの規程やルールの整備、システムの管理体制の強化、定期的な従業員に対する教育や訓練を実施し、情報セキュリティ管理を徹底しております。またグループ経営を進める中、当社グループ内でデータ漏洩、システム破壊が起きると、グループ全体の事業に大きく影響することが考えられます。そこで、当社国内グループ会社の情報セキュリティレベルの2020年度までの均質化を目標とし、情報セキュリティ基本方針と利用者ルールの徹底、技術的対策、教育や訓練を含めた人的対策の領域において、各到達点を具体的に策定し、ニッスイグループIT部門会議を定期的に開催するなどの取り組みを進めております。また、今後、各拠点の省人化や、生産、物流、販売でのシステム連携による効率化が進むにつれ、自然災害などによる物理的なシステム破壊や、長期停電、外部からの攻撃などの要因を問わず、そのシステムの停止による事業活動への影響が増加すると考えられ、システム停止を想定した対策や有事対応の体制づくりを進めております。 11.感染症の拡大によるリスク世界で猛威をふるっている新型コロナウイルス(COVID-19)の当社への影響は、予想が困難なものの、漁撈・養殖や食品の生産拠点において感染が発生し拡大した場合は生産の停止や縮小、調達先や物流の過程で感染が拡大した場合は原料の調達自体が難しくなるなど、安定的な製商品の供給に支障が生じる可能性があります。また、安定生産を継続するための人員確保、マスクなど間接材の確保に加え、価格の上昇も予想され、収支に影響する可能性があります。各国の外出規制が長期に及ぶ場合は、外食、産業・学校給食向け業務用食品の売上減少が一層懸念されますが、一方で家庭用食品や量販店の惣菜向け製商品の需要増加が見込まれます。当社グループでは、当社製商品を継続的・安定的に世界の人々に供給する使命を全うするため、現時点で考えられる最大限の措置を講じています。代表取締役社長執行役員を本部長とする新型コロナウイルス対策本部を本社に設置し、当社の各事業所はもとより国内グループ会社には現地対策本部、南米、北米、欧州、アジア・オセアニアとは、各エリアの事業執行とのWEB会議を通じて、時々刻々と変化する各国や国内情勢についての情報収集を行っております。また、WHOや関係省庁・保健行政機関から収集した情報を共有した上で、新型コロナウイルスによる当社グループへのリスクを可能な限り予測し、基本的対策を定めて実施しております。在宅でのテレワークの推進、衛生管理を徹底、罹患者(疑いを含む)が発生した場合に拠点機能を速やかに回復させるための対策など、今後も適宜、対策を講じてまいります。 各リスク間の関係図
FY2019|2,579 文字
2 【事業等のリスク】投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがある。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。① 食品の安全性に係るリスク近年、残留農薬問題、鳥インフルエンザ、放射能汚染問題や冷凍食品業界での農薬混入事件など食品の品質に関する問題が発生している。当社グループでは、厳しい品質保証基準と品質保証の仕組みを構築しており、例えば、工場内への持込み物禁止ルールの徹底、薬剤保管庫・検査室の管理徹底など、お客様に安全な商品をお届けするための品質保証に最大限努めている。しかしながら、想定を超える問題等が発生した場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。② 水産物市況によるリスク当社グループが取り扱う水産物は、主に海外から国内へ輸入・販売している。生鮮魚類の水揚げ数量の増減、養殖における魚病の発生、大規模な自然災害などによる需給変動の影響を受け、水産物市況の動向が想定を超える場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。③ 原材料価格の変動によるリスク当社グループの使用する燃料、主副原料、資機材等の原材料は、その価格が市場の状況により変動する。これら原材料価格が予想を大きく超えて高騰しコストダウンで吸収しきれない場合、また販売価格に転嫁できない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。④ 海外事業におけるリスク当社グループは、北米、南米、アジアならびにヨーロッパ等において事業を展開しているが、それらの地域において政治や経済動向の変化、戦争、テロ、養殖事業における魚病の発生、大規模な自然災害などが発生した場合には、当社グループの経営状況に影響を及ぼす可能性がある。⑤ 養殖事業におけるリスク当社グループは、国内や海外において養殖事業を営んでいるが、予防困難な魚病等が発生した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。⑥ 為替レートの変動によるリスク当社グループは、商品や原材料の輸出入取引があり為替レート変動の影響を受けている。このリスクを軽減するため為替予約等を行っているが、予測を超えた大幅な為替レートの変動があった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。⑦ 法的規制等の変更等によるリスク当社グループは、事業を遂行していくうえで、国内および海外の様々な法的規制を受けている。将来において、現在予期しえない法的規制等の変更や新設があった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。⑧ 会計制度の変更によるリスク当社グループでは、新たな会計基準の適用など会計制度の変更によって、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性がある。⑨ 株価変動等による保有資産への影響によるリスク当社グループでは保有する有価証券等の資産について取引先との関係や資産状況等を勘案しながら随時見直しを行っている。しかしながら、急激な株価変動や投資先の業績不振等により有価証券等の資産価値が下落し、減損処理を必要とする場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 ⑩ 情報システムに関するリスク当社グループでは、販売促進キャンペーン、通信販売等により多数のお客様の個人情報を保有している。当社グループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改竄等を防止するため、規程等を整備するほか、従業員に対する教育・研修等を通じた情報管理の重要性の周知徹底を行うなど、適切なセキュリティ対策を実施している。しかしながら、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、コンピュータウィルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超える出来事により、情報システムの崩壊、停止または一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改竄等のリスクが考えられ、これらの事態が発生した場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 ⑪ 環境に関するリスク当社グループは、廃棄物削減・再資源化、省エネルギー、二酸化炭素排出の削減、包装容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していくうえで環境に関連する各種法律、規制を遵守している。 しかしながら、関係法令等の変更によって新規設備の投資、廃棄物処理方法の変更等による大幅なコストの増加が発生する場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 ⑫ 訴訟のリスク当社グループは、事業を遂行していくうえで、各種関係法令を遵守し、従業員がコンプライアンスを理解し、実践することに最善の努力をしている。 しかしながら、事業を遂行していくうえで、国内国外を問わず訴訟提起をされるリスクを抱えており、万一当社グループが訴訟を提起された場合、その結果によっては当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 ⑬ 人材の確保・育成によるリスク当社グループが今後の成長を実現していくためには、営業・技術・経営管理等の各方面において優秀な人材を確保・育成していくことが重要な課題と認識しており、必要な施策を実施している。しかしながら、人材の確保・育成ができなかった場合には、当社グループの事業目的の達成が困難となる可能性がある。 ⑭ 事業を取り巻く環境の変化によるリスク当社グループは、事業の遂行にあたって景気等の経済状態による消費動向が大きく影響を及ぼす可能性がある。世界同時不況による消費不振や需要減退等が起こった場合は、当社グループの業績・財政状態に悪影響を及ぼすリスクが考えられる。また、日本国内の少子・高齢化現象が市場全体の縮小を及ぼすリスクが考えられる。 ⑮ 債権管理に関するリスク当社グループは、取引先の信用リスクに備えているが、取引先の信用不安による予期せぬ貸倒れリスクなどが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 ⑯ 自然災害に関するリスク当社グループは、生産ラインの安全で正常な稼動を確保するために定期的な設備点検を行っているが、地震、台風および津波などに被災し、長期間稼動が停止した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。
FY2018|2,566 文字
2 【事業等のリスク】投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがある。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。① 食品の安全性に係るリスク近年、残留農薬問題、鳥インフルエンザ、放射能汚染問題や冷凍食品業界での農薬混入事件など食品の品質に関する問題が発生している。当社グループでは、厳しい品質保証基準と品質保証の仕組みを構築しており、例えば、工場内への持込み物禁止ルールの徹底、薬剤保管庫・検査室の管理徹底など、お客様に安全な商品をお届けするための品質保証に最大限努めている。しかしながら、想定を超える問題等が発生した場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。②水産物市況によるリスク当社グループが取り扱う水産物は、主に海外から国内へ輸入・販売している。生鮮魚類の水揚げ数量の増減、養殖における魚病の発生、大規模な自然災害などによる需給変動の影響を受け、水産物市況の動向が想定を超える場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。③ 原材料価格の変動によるリスク当社グループの使用する燃料、主副原料、資機材等の原材料は、その価格が市場の状況により変動する。これら原材料価格が予想を大きく超えて高騰しコストダウンで吸収しきれない場合、また販売価格に転嫁できない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。④ 海外事業におけるリスク当社グループは、北米、南米、アジアならびにヨーロッパ等において事業を展開しているが、それらの地域において政治や経済動向の変化、戦争、テロ、養殖事業における魚病の発生、大規模な自然災害などが発生した場合には、当社グループの経営状況に影響を及ぼす可能性がある。⑤養殖事業におけるリスク当社グループは、国内や海外において養殖事業を営んでいるが、予防困難な魚病等が発生した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。⑥為替レートの変動によるリスク当社グループは、商品や原材料の輸出入取引があり為替レート変動の影響を受けている。このリスクを軽減するため為替予約等を行っているが、予測を超えた大幅な為替レートの変動があった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。⑦法的規制等の変更等によるリスク当社グループは、事業を遂行していくうえで、国内および海外の様々な法的規制を受けている。将来において、現在予期しえない法的規制等の変更や新設があった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。⑧会計制度の変更によるリスク当社グループでは、新たな会計基準の適用など会計制度の変更によって、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性がある。⑨株価変動等による保有資産への影響によるリスク当社グループでは保有する有価証券等の資産について取引先との関係や資産状況等を勘案しながら随時見直しを行っている。しかしながら、急激な株価変動や投資先の業績不振等により有価証券等の資産価値が下落し、減損処理を必要とする場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 ⑩情報システムに関するリスク当社グループでは、販売促進キャンペーン、通信販売等により多数のお客様の個人情報を保有している。当社グループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改竄等を防止するため、規程等を整備するほか、従業員に対する教育・研修等を通じた情報管理の重要性の周知徹底を行うなど、適切なセキュリティ対策を実施している。しかしながら、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、コンピュータウィルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超える出来事により、情報システムの崩壊、停止または一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改竄等のリスクが考えられ、これらの事態が発生した場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 ⑪環境に関するリスク当社グループは、廃棄物削減・再資源化、省エネルギー、二酸化炭素排出の削減、包装容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していくうえで環境に関連する各種法律、規制を遵守している。 しかしながら、関係法令等の変更によって新規設備の投資、廃棄物処理方法の変更等による大幅なコストの増加が発生する場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 ⑫訴訟のリスク当社グループは、事業を遂行していくうえで、各種関係法令を遵守し、従業員がコンプライアンスを理解し、実践することに最善の努力をしている。 しかしながら、事業を遂行していくうえで、国内国外を問わず訴訟提起をされるリスクを抱えており、万一当社グループが訴訟を提起された場合、その結果によっては当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 ⑬人材の確保・育成によるリスク当社グループが今後の成長を実現していくためには、営業・技術・経営管理等の各方面において優秀な人材を確保・育成していくことが重要な課題と認識しており、必要な施策を実施している。しかしながら、人材の確保・育成ができなかった場合には、当社グループの事業目的の達成が困難となる可能性がある。 ⑭事業を取り巻く環境の変化によるリスク当社グループは、事業の遂行にあたって景気等の経済状態による消費動向が大きく影響を及ぼす可能性がある。世界同時不況による消費不振や需要減退等が起こった場合は、当社グループの業績・財政状態に悪影響を及ぼすリスクが考えられる。また、日本国内の少子・高齢化現象が市場全体の縮小を及ぼすリスクが考えられる。 ⑮債権管理に関するリスク当社グループは、取引先の信用リスクに備えているが、取引先の信用不安による予期せぬ貸倒れリスクなどが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 ⑯自然災害に関するリスク当社グループは、生産ラインの安全で正常な稼動を確保するために定期的な設備点検を行っているが、地震、台風および津波などに被災し、長期間稼動が停止した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。
FY2017|2,609 文字
4 【事業等のリスク】投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがある。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。(1) 食品の安全性に係るリスク近年、残留農薬問題、鳥インフルエンザ、放射能汚染問題や冷凍食品業界での農薬混入事件など食品の品質に関する問題が発生している。当社グループでは、厳しい品質保証基準と品質保証の仕組みを構築しており、例えば、工場内への持込み物禁止ルールの徹底、薬剤保管庫・検査室の管理徹底など、お客様に安全な商品をお届けするための品質保証に最大限努めている。しかしながら、想定を超える問題等が発生した場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。(2) 水産物市況によるリスク当社グループが取り扱う水産物は、主に海外から国内へ輸入・販売している。生鮮魚類の水揚げ数量の増減、養殖における魚病の発生、大規模な自然災害などによる需給変動の影響を受け、水産物市況の動向が想定を超える場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。(3) 原材料価格の変動によるリスク当社グループの使用する燃料、主副原料、資機材等の原材料は、その価格が市場の状況により変動する。これら原材料価格が予想を大きく超えて高騰しコストダウンで吸収しきれない場合、また販売価格に転嫁できない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。(4) 海外事業におけるリスク当社グループは、北米、南米、アジアならびにヨーロッパ等において事業を展開しているが、それらの地域において政治や経済動向の変化、戦争、テロ、養殖事業における魚病の発生、大規模な自然災害などが発生した場合には、当社グループの経営状況に影響を及ぼす可能性がある。(5) 養殖事業におけるリスク当社グループは、国内や海外において養殖事業を営んでいるが、予防困難な魚病等が発生した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。(6)為替レートの変動によるリスク当社グループは、商品や原材料の輸出入取引があり為替レート変動の影響を受けている。このリスクを軽減するため為替予約等を行っているが、予測を超えた大幅な為替レートの変動があった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。(7) 法的規制等の変更等によるリスク当社グループは、事業を遂行していくうえで、国内および海外の様々な法的規制を受けている。将来において、現在予期しえない法的規制等の変更や新設があった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。(8) 会計制度の変更によるリスク当社グループでは、新たな会計基準の適用など会計制度の変更によって、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性がある。(9)株価変動等による保有資産への影響によるリスク当社グループでは保有する有価証券等の資産について取引先との関係や資産状況等を勘案しながら随時見直しを行っている。しかしながら、急激な株価変動や投資先の業績不振等により有価証券等の資産価値が下落し、減損処理を必要とする場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 (10)情報システムに関するリスク当社グループでは、販売促進キャンペーン、通信販売等により多数のお客様の個人情報を保有している。当社グループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改竄等を防止するため、規程等を整備するほか、従業員に対する教育・研修等を通じた情報管理の重要性の周知徹底を行うなど、適切なセキュリティ対策を実施している。しかしながら、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、コンピュータウィルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超える出来事により、情報システムの崩壊、停止または一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改竄等のリスクが考えられ、これらの事態が発生した場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 (11)環境に関するリスク当社グループは、廃棄物削減・再資源化、省エネルギー、二酸化炭素排出の削減、包装容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していくうえで環境に関連する各種法律、規制を遵守している。 しかしながら、関係法令等の変更によって新規設備の投資、廃棄物処理方法の変更等による大幅なコストの増加が発生する場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 (12)訴訟のリスク当社グループは、事業を遂行していくうえで、各種関係法令を遵守し、従業員がコンプライアンスを理解し、実践することに最善の努力をしている。 しかしながら、事業を遂行していくうえで、国内国外を問わず訴訟提起をされるリスクを抱えており、万一当社グループが訴訟を提起された場合、その結果によっては当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 (13)人材の確保・育成によるリスク当社グループが今後の成長を実現していくためには、営業・技術・経営管理等の各方面において優秀な人材を確保・育成していくことが重要な課題と認識しており、必要な施策を実施している。しかしながら、人材の確保・育成ができなかった場合には、当社グループの事業目的の達成が困難となる可能性がある。 (14)事業を取り巻く環境の変化によるリスク当社グループは、事業の遂行にあたって景気等の経済状態による消費動向が大きく影響を及ぼす可能性がある。世界同時不況による消費不振や需要減退等が起こった場合は、当社グループの業績・財政状態に悪影響を及ぼすリスクが考えられる。また、日本国内の少子・高齢化現象が市場全体の縮小を及ぼすリスクが考えられる。 (15)債権管理に関するリスク当社グループは、取引先の信用リスクに備えているが、取引先の信用不安による予期せぬ貸倒れリスクなどが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 (16)自然災害に関するリスク当社グループは、生産ラインの安全で正常な稼動を確保するために定期的な設備点検を行っているが、地震、台風および津波などに被災し、長期間稼動が停止した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。
FY2016|2,608 文字
4 【事業等のリスク】投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがある。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。(1) 食品の安全性に係るリスク近年、残留農薬問題、鳥インフルエンザ、放射能汚染問題や冷凍食品業界での農薬混入事件など食品の品質に関する問題が発生している。当社グループでは、厳しい品質保証基準と品質保証の仕組みを構築しており、例えば、工場内への持込み物禁止ルールの徹底、薬剤保管庫・検査室の管理徹底など、お客様に安全な商品をお届けするための品質保証に最大限努めている。しかしながら、想定を超える問題等が発生した場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。(2) 水産物市況によるリスク当社グループが取り扱う水産物は、主に海外から国内へ輸入・販売している。生鮮魚類の水揚げ数量の増減、養殖における魚病の発生、大規模な自然災害などによる需給変動の影響を受け、水産物市況の動向が想定を超える場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。(3) 原材料価格の変動によるリスク当社グループの使用する燃料、主副原料、資機材等の原材料は、その価格が市場の状況により変動する。これら原材料価格が予想を大きく超えて高騰しコストダウンで吸収しきれない場合、また販売価格に転嫁できない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。(4) 海外事業におけるリスク当社グループは、北米、南米、アジアならびにヨーロッパ等において事業を展開しているが、それらの地域において政治や経済動向の変化、戦争、テロ、養殖事業における魚病の発生、大規模な自然災害などが発生した場合には、当社グループの経営状況に影響を及ぼす可能性がある。(5) 養殖事業におけるリスク当社グループは、国内や海外において養殖事業を営んでいるが、予防困難な魚病等が発生した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。(6)為替レートの変動によるリスク当社グループは、商品や原材料の輸出入取引があり為替レート変動の影響を受けている。このリスクを軽減するため為替予約等を行っているが、予測を超えた大幅な為替レートの変動があった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。(7) 法的規制等の変更等によるリスク当社グループは、事業を遂行していくうえで、国内および海外の様々な法的規制を受けている。将来において、現在予期しえない法的規制等の変更や新設があった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。(8) 会計制度の変更によるリスク当社グループでは、新たな会計基準の適用など会計制度の変更によって、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性がある。(9)株価変動等による保有資産への影響によるリスク当社グループでは保有する有価証券等の資産について取引先との関係や資産状況等を勘案しながら随時見直しを行っている。しかしながら、急激な株価変動や投資先の業績不振等により有価証券等の資産価値が下落し、減損処理を必要とする場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 (10)情報システムに関るリスク当社グループでは、販売促進キャンペーン、通信販売等により多数のお客様の個人情報を保有している。当社グループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改竄等を防止するため、規程等を整備するほか、従業員に対する教育・研修等を通じた情報管理の重要性の周知徹底を行うなど、適切なセキュリティ対策を実施している。しかしながら、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、コンピュータウィルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超える出来事により、情報システムの崩壊、停止または一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改竄等のリスクが考えられ、これらの事態が発生した場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 (11)環境に関するリスク当社グループは、廃棄物削減・再資源化、省エネルギー、二酸化炭素排出の削減、包装容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していくうえで環境に関連する各種法律、規制を遵守している。 しかしながら、関係法令等の変更によって新規設備の投資、廃棄物処理方法の変更等による大幅なコストの増加が発生する場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 (12)訴訟のリスク当社グループは、事業を遂行していくうえで、各種関係法令を遵守し、従業員がコンプライアンスを理解し、実践することに最善の努力をしている。 しかしながら、事業を遂行していくうえで、国内国外を問わず訴訟提起をされるリスクを抱えており、万一当社グループが訴訟を提起された場合、その結果によっては当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 (13)人材の確保・育成によるリスク当社グループが今後の成長を実現していくためには、営業・技術・経営管理等の各方面において優秀な人材を確保・育成していくことが重要な課題と認識しており、必要な施策を実施している。しかしながら、人材の確保・育成ができなかった場合には、当社グループの事業目的の達成が困難となる可能性がある。 (14)事業を取り巻く環境の変化によるリスク当社グループは、事業の遂行にあたって景気等の経済状態による消費動向が大きく影響を及ぼす可能性がある。世界同時不況による消費不振や需要減退等が起こった場合は、当社グループの業績・財政状態に悪影響を及ぼすリスクが考えられる。また、日本国内の少子・高齢化現象が市場全体の縮小を及ぼすリスクが考えられる。 (15)債権管理に関するリスク当社グループは、取引先の信用リスクに備えているが、取引先の信用不安による予期せぬ貸倒れリスクなどが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。 (16)自然災害に関するリスク当社グループは、生産ラインの安全で正常な稼動を確保するために定期的な設備点検を行っているが、地震、台風および津波などに被災し、長期間稼動が停止した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がある。